説明

LK8タンパク質を有効成分として含む抗癌剤

本発明は、 LK8タンパク質を有効成分として含む抗癌剤に関する。本発明の抗癌剤は、悪性腫瘍の成長および転移抑制に効果的であり、したがって、前記抗癌剤は、癌転移の抑制だけではなく、原発腫瘍の治療剤とし有効に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定タンパク質を有効成分として含む抗癌剤に関するものである。より詳細には、アポリポタンパク質(a)のクリングル(kringle)KV38にあたるタンパク質を有効成分として含む抗癌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、異常かつ非制御性で無秩序な細胞増殖の産物である。このような腫瘍に破壊的な成長性、浸湿性及び転移性があれば悪性に分類される。浸湿性とは、周囲組職を浸潤または破壊する性質で、一般的に組職の境界をなす基底層を破壊して腫瘍が局所的に伝播することを意味し、体内の循環系にもたびたび流入する。転移とは、一般的にリンパ管または血管によって原発位置とは違う所に腫瘍細胞が広がることを意味する。転移はまた、漿液性体腔または他の空間を通じて直接伸長して腫瘍細胞を移動させることも意味する。
【0003】
現在、癌は主に3種の治療法、すなわち外科的手術、放射線照射及び化学療法の内の1種またはこれらの組合わせにより治療されている。手術は、疾病組職を大部分除去することを含む。このような外科的手術は、特定部位、例えば乳房、結腸及び皮膚に位置した腫瘍を除去するには効果的だが、脊椎のように一部区域にある腫瘍を治療したり白血病のような分散性腫瘍疾患を治療したりするには用いることができない。
【0004】
化学療法は、細胞複製または細胞代謝を崩壊させ、乳房、肺及び定所の癌を治療するのに多く用いられる。腫瘍疾病を治療するのに使用される全身化学療法の副作用は、癌治療を受ける患者に一番の問題になる。このような副作用の中で吐き気と嘔吐は最も一般的で深刻な副作用である。化学療法による副作用は、患者の生命に大きな影響を及ぼして治療に対する患者の順応性を急激に変化させる。また、化学治療剤と係わる副作用としては、一般的にこのような薬物の投与時に気を付けなければならない用量制限毒性(DLT)がある。例えば、粘膜炎は多くの抗癌剤、例えば抗代謝物質細胞毒素剤である5−フルオロウラシル、メトトレキサート及び抗腫瘍抗生剤(例、ドキソルビシン)などに対する用量制限毒性である。このような化学療法に由来する副作用の中で大部分は、ひどい場合は入院を要したり痛みを治療するために痛み止めを必要としたりする。このように化学治療剤及び放射線治療による副作用は、癌患者の臨床的処置時の主要問題になっている。
【0005】
したがって、化学療法治療剤の副作用を減少させることが可能な生物体に由来した物質を利用した抗癌剤の開発が至急な実情である。特に生物体で生成された物質の中で癌細胞に直接作用するよりは癌細胞の成長を助ける多様な内皮細胞に作用することにより癌細胞の成長を遮断して抗癌剤としての利用が期待される物質がある。前記物質を利用した抗癌剤は、単純な癌治療だけではなく癌転移を遮断する機能も持っている。
【0006】
クリングル(kringle)は、約80個のアミノ酸と三つの分子内二硫化結合で構成されたタンパク質の構造領域である。クリングル構造は、プロトロンビン(非特許文献1)、ユロキナーゼ(非特許文献2)、肝細胞成長因子(非特許文献3)及びアポリポタンパク質(a)(apolipoprotein(a);以下、「アポ(a)」と略称する)(非特許文献4)等のような多数のタンパク質で発見される。クリングル領域は、独立的な折りたたみ単位(folding unit)で構成されてその機能的な役目はまだ明確に明かされていない。
【0007】
アポ(a)は、二つの種類のクリングル領域であるKIV及びKVと非活性のタンパク質分解酵素類似(protease−like)領域を含んでいる。KIVクリングル領域は、アミノ酸配列の相同性によって10種の亜形(subtype;KIV−1乃至KIV−10)に分けられ、アポ(a)遺伝子の多様なヒト対立遺伝子に15乃至40個の複製数(copy number)で存在する。アポ(a)は、低密度リポタンパク質(LDL)の主要タンパク質成分であるアポB−100と共有的に結合して、リポタンパク質(a)(Lipoprotein(a)、以下「Lp(a)」と略称する)を形成して(非特許文献5)、Lp(a)の細胞質内濃度増加は、単独的でも動脈硬化(Artherosclerosis)の主要危険要素になる(非特許文献6、7)。
【0008】
これに、本発明者らは、動脈硬化と癌の成長が血管新生に依存的であるという事実に基づいて、ヒトアポ(a)クリングル中の一つであるKV38の坑癌活性に対して研究した結果、前記タンパク質が癌細胞の成長に必須なbFGFのような内因性成長因子による血管新生を抑制することができて抗癌剤として有用に使用できることを明らかにすることにより本発明を完成した。
【非特許文献1】Walz,D.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,1977年,第74巻,1069−1073頁
【非特許文献2】Pennica,D.ら.,Nature,1983年,第301巻,579−582頁
【非特許文献3】Lukker,N.A.ら、Protein Eng.,1994年,第7巻,895−903頁
【非特許文献4】McLean,J.W.ら.,Nature,1987年,第330巻,132−137頁
【非特許文献5】Fless,G.M.,J.Biol.Chem.,1986年,第261巻,8712−8717頁
【非特許文献6】Armstrong,V.W.ら.,Artherosclerosis,1986年,第62巻,249−257頁
【非特許文献7】Assmann,G.,Am.J.Cardiol.,1996年,第77巻,1179−1184頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の目的は、ヒトアポ(a)クリングルKV38(以下、「LK8タンパク質」とする)を有効成分として含む抗癌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を果たすために、本発明は、LK8タンパク質を有効成分として含む抗癌剤を提供する。
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の抗癌剤は、配列番号1で記載されるアミノ酸配列を持つLK8タンパク質を有効成分として含むことを特徴とし、癌転移抑制剤に使用することが好ましく、結腸癌または直腸癌の肝転移を抑制させるのに使うことがより好ましい。
【0012】
また、本発明の抗癌剤原発腫瘍を治療するのに使用することが好ましく、前立腺癌腫、肺癌腫、結腸癌腫及び直腸癌腫からなる群から選択された癌腫を治療するのに使用することがさらに好ましい。
【0013】
本発明の抗癌剤において、LK8タンパク質の有効用量は、0.1乃至100mg/kgであることが好ましく、1乃至50mg/kgであることがさらに好ましく、一日に1〜4回投与することができる。しかし、前記のような組成は必ずこれに限定されるのではなく、患者の状態、疾患の種類及び進行程度によって変わる。
【0014】
本発明において、「KV38」はアポ(a)のクリングルを意味して、「LK8」は KV38の組換えタンパク質を意味するが、特別に前記のように具体的に限定しない限り一般的にはKV38及び組換えLK8タンパク質を皆、LK8タンパク質と通称を使う。
【0015】
本発明において、LK8タンパク質は、アポ(a)クリングル領域の中でKV38クリングルにあたる部位で、試験管内条件(in vitro)及び生体内条件(in vivo)で血管内皮細胞の活性を抑制して腫瘍細胞の増殖、転移及び分化を抑制する効果を現わす。本発明の好ましい実施例に記載したように、LK8タンパク質を全身投与すれば原発性腫瘍の成長が抑制されて、癌細胞の転移においても相当な抑制効果がある(図2乃至図6参照)。よって、本発明のLK8タンパク質は、腫瘍の成長と転移を抑制することができるので、原発腫瘍の治療及び癌転移抑制剤として有用に使用することができる。
【0016】
一方、本発明のLK8タンパク質は、既存の坑癌化学療法や放射線療法と併用した場合、相乗効果を発揮することが期待される。例えば、1次的腫瘍を破壊するのに使用する放射線治療時に本発明のLK8タンパク質を併用して処理する場合、癌の転移がより効果的に抑制され得る。既存の化学坑癌療法の場合、多量の化学抗癌剤投与による毒性が一番大きな問題点として指摘されるが、本発明のLK8タンパク質と併用する場合、毒性がない程度の少量の化学抗癌剤を投与した場合にも、その坑癌効果は顕著に増加する結果を示すことが期待される。
【0017】
すなわち、腫瘍の場合に従来の外科的手術、放射線治療または化学治療、免疫治療などにLK8タンパク質を併用することでその治療効能を極大化して、継続的にLK8タンパク質を投与することで微細転移の休止(dormancy)を延長させて、原発性腫瘍の成長を抑制及び安定化させることができる。また、多くの抗癌剤は、製剤の特性上長期間患者に投与しなければならないため、タンパク質の生産及び生産されたタンパク質の高い単価等いろいろ難しい点が発生するようになる。このような短所を克服できる代替方案の一つとして遺伝子治療法が台頭してきている。LK8タンパク質の場合においても遺伝子治療方法の導入を通じて抗癌剤または癌転移抑制剤の効能を極大化できる多くの可能性がある。
【0018】
本発明のLK8タンパク質を含む抗癌剤は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能で一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
【0019】
すなわち、本発明の抗癌剤は、実際の臨床投与時に経口及び非経口のさまざまな剤形で投与することができる。製剤化する場合には、普通に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使って調剤する。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、LK8タンパク質に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤する。また単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用できる。経口のための液状製剤では、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、よく使用する単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基材では、ハードフアット(witepsol)、マクロゴ−ル、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0020】
前記LK8タンパク質は、静脈投与最小致死量(LD50)が約1,000mg/kgである安全な物質なので、本発明の抗癌剤は安全な物質であると判断される(表2参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するだけのものであり、本発明の内容が下記実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
<実施例1>LK8タンパク質の製造
<1−1>LK8発現ベクターpMBRI−LK8の製造
本発明者らは、LK8タンパク質を効率的に製造するために、まずLK8発現ベクターを製造した。
【0023】
LK8遺伝子を発現するための基本ベクターにpPIC9ベクター(8.0kb、Invitrogen、オランダ)を利用した。pPIC9ベクターの制限要素開裂地図をよく見れば、メタノールによる高い発現を可能にするプローモーターAOX1と発現されたタンパク質の分泌を可能にするα−因子分泌信号(α−factor secretion signal)、転写の効果的な終決とポリアデニレーション(polyadenlylation)を可能にするAOX1のポリアデニレーション信号(polyadenylation signal)である3’AOX1(TT)及び前記菌株の形質転換体の表示マーカー(selectable maker)として酵母である野生型ピチアパストリスのヒスチジノ−ル脱水素酵素(histidinol dehydrogenase)を暗号化するDNA断片を一連の順に含んでいる。
【0024】
まず、pET15b/LK8(PCT/KR99/00554参照)を鋳型(template)に使用して配列番号2で記載されるLK8N−XhoI及び配列番号3で記載されるLK8C−EcoRIプライマーでLK8遺伝子をPCRで大量増幅して、これを制限酵素XhoIとEcoRIで切断した後、同じ方法で制限酵素切断を行なったpPIC9ベクターに挿入するサブクローニングを遂行して、LK8遺伝子の最終発現ベクターであるpMBRI−LK8(8.25kb)を製造した(図1)。
【0025】
<1−2>pMBRI−LK8が導入された形質転換体の製造
組換え形質転換体を製作するための宿主としては、メタノール資化酵母であるピチアパストリスを利用した。
【0026】
具体的に、LK8遺伝子の発現ベクターである前記pMBRI−LK8をSacI制限酵素で処理して線形化した後、前記宿主菌株染色体のAOXI遺伝子内で相同組換え(homologous recombination)を利用して挿入させた。この時、形質転換は、エレクトロポレーション(electroporation)方法で実施し、組換え酵母形質転換体はヒスチジン(Histidine)欠損培地でコロニーの形成有無で選別し、前記選別した組換え形質転換体の染色体内AOX1部位にLK8 cDNAが挿入されたことをPCRを通じて確認した。また、前記組換え形質転換体の培養及びメタノールで発現を誘導することでLK8遺伝子の発現有無を観察した結果、LK8遺伝子が発現されて前記タンパク質が培養培地で大量に分泌したことを確認した。
【0027】
ここで、前記分泌した本発明のLK8タンパク質は、配列番号1で記載されるアミノ酸配列で構成される。
【0028】
<1−3>組換え菌株の培養
<1−3−1>種菌培養
本発明では、まずピチアパストリスにLK8遺伝子を導入した組換え菌株を構築してその後、24時間適切な菌体量と活性度(20倍に希薄した時、OD 600nm=0.8乃至1.2)を得るように種菌培養させた。
【0029】
種菌培養は、YDP培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%デキストロース)で24時間の振盪培養を通じて遂行した。醗酵槽は、75リットル規模の醗酵槽を使用し、初期開始培地は20リットルで、流加培養(fed−batch culture)方法によって最終培養液が約40リットルになるように高濃度培養を遂行した。
【0030】
<1−3−2>本培養
前記YPD培地で種菌培養を遂行した後、初期開始培地の30%にあたる種菌培養液を接種して本培養を遂行した。下記表1の組成を持つ醗酵槽で本培養を遂行し、メタノール供給によって醗酵液の体積が飽和されてこれ以上醗酵を遂行することができない時、LK8タンパク質の生産のために10%以上の醗酵液を回収して、メタノールの供給を続けることで発現を持続的に誘導した。この工程を繰り返すことで継続してLK8タンパク質を生産することができた。前記過程の中で炭素源の消費速度は細胞の量に比例するから醗酵液の一部を回収する時、メタノールの供給速度を溶存酸素値を基準値に±20%以上を脱しないようにするメタノール供給方式を通じてメタノールの供給速度を自動調節し、前記培養過程を数回繰り返すことで分泌されたLK8タンパク質を醗酵200時間以上、1リットルの培養液当たり250mg以上を得ることができた。
【0031】
(表1)本培養培地の組成

【0032】
<実施例2>B16F10細胞の静脈内投与による肺への転移実験
C57BL/6マウス(Charles River Japan、Inc.)の尾の静脈にマウス黒色腫(melanoma)であるB16F10細胞(以下、「黒色腫細胞」と略称する)(American Type Culture Collection)を1.8×10個移植して、その翌日から14日間一日に二度ずつ(1mg/kg/日、0.2mg/kg/日、濃度)前記実施例1で製造したLK8タンパク質を皮下に投与した。ここで、LK8タンパク質の代わりにPBSを投与したグループを対照群に設定した。細胞を移植してから13日目になる日にマウスを解剖して肺を摘出して転移された癌細胞(黒色腫細胞)のコロニー数を計測した。
【0033】
その結果、PBSを投与したマウスグループでは黒色腫細胞が転移されて肺に大きなコロニーが形成されていることを観察することができた(図2のa)。一方、LK8タンパク質を投与したマウスグループでは黒色腫細胞の転移で生成されたコロニーの数が著しく減り、その大きさも小さくなったことを観察することができた(図2のb)。詳細には、1mg/kgのLK8タンパク質処理の時に対照群に比べて53%程度の癌細胞の転移抑制効果があることが示された(図2のc)。
【0034】
<実施例3>CT−26マウス大腸癌細胞の脾臓内投与による肝への転移実験
マウスの大腸癌細胞であるCT−26細胞(American Type Culture Collection)を脾臓に注入して肝への転移を誘発した条件でLK8タンパク質の癌転移抑制程度を観察した。プレート上で80%程度成長したCT−26細胞をPBSで洗浄した後、0.02%EDTAを使用して単細胞化させて、それをPBSで洗浄した後、再びPBSに注意深く再懸濁させた。前記懸濁液をトリパンブルー(Trypan blue)で染色して細胞の個数を数えた後、5×10個/mlの濃度に合わせておいて、これをマウス一匹当たり100μlずつ注入した。6乃至8週齢のBALB/c(Charles River Japan,Inc.)を使用し、痲酔後、腹腔の右側を切開して脾臓を取り出して、30ゲージのニードルを使って癌細胞懸濁液を注意深く注入した。対照群の場合、溶媒である食塩水を、実験群の場合はLK8タンパク質を10mg/kg/日の濃度で一日に二度皮下注射した。14日経過後、マウスを犠牲にして肝を摘出して(図3のa)表面に現われたコロニーの個数を数えた後、10%ホルマリン溶液に固定させた。各実験群別に重さの差は大きくなかったが、LK8タンパク質を10mg/kg/日の濃度で注射した実験群の場合、対照群に比べて肝に転移したコロニーの個数がずっと減ることを確認した。また、LK8タンパク質を10mg/kg/日で注射した実験群の場合、対照郡に比べて約60%程度コロニーの個数が減少することを確認することができた(図3のb)。また、ホルマリン溶液に固定させた肝組職切片をH&E染色して観察した結果、対照群に比べてLK8タンパク質を処理した実験群で腫瘍の占める部位がずっと少なく現われることを確認した(図3のc)。
【0035】
<実施例4>原発腫瘍の成長抑制
毛細管生成に対するLK8タンパク質の生体内での効果を観察するために異種移植された腫瘍モデルを使った。関係するすべての実験は、4週経った無作為交配系メスBalb/c nu/nuヌードマウス(Charles River Japan,Inc.)を使用して遂行し、滅菌条件で生育した。
【0036】
<4−1>ヒト前立腺癌腫(PC−3)
ヒト前立腺癌腫であるPC−3細胞(American Type Culture Collection)を10%FBSが添加されたRPMI 1640培地(GIBCOTM、Invitrogen Corporation)で培養した。前記PC−3細胞約5×10個をヌードマウスの背中の中央部に皮下接種した。前記腫瘍を移植した後、正確に10日を経過した時、100mg/kg/日のLK8タンパク質を投与した。ここで、LK8タンパク質の代わりにPBSだけ投与したグループを対照群に設定した。処理過程は、30日余り継続し、その後に腫瘍の大きさを3乃至4日に一回ずつ測定した。その結果、LK8タンパク質処理によって腫瘍の成長の低下がみられ、対照群に比べて60%程度の腫瘍成長抑制効果を観測した(図4のa)。また、前記と同じ方法で50mg/kg/日のLK8タンパク質を投与して実験した場合にも60%以上の腫瘍抑制効果を観測した(図4のb)。
【0037】
<4−2>ヒト肺癌腫(A549)
ヒト肺癌腫であるA549細胞(American Type Culture Collection)を10%FBSが添加されたDMEM(GIBCOTM、Invitrogen Corporation)培地で培養した。前記腫瘍細胞1×10個をヌードマウスの背中の中央部に皮下接種した。前記腫瘍を移植し後、正確に5日を経過した時、50mg/kg/日のLK8タンパク質を投与した。ここで、LK8タンパク質の代わりにPBSだけ投与したグループを対照群に設定した。処理過程は46日間継続し、その後に腫瘍の大きさを3乃至4日に一回ずつ測定した。その結果、LK8タンパク質処理によって腫瘍の成長が低下されたが、対照群に比べて61%程度の腫瘍成長抑制効果が観測された(図5)。
【0038】
<4−3>ヒト結腸癌腫及び直腸癌腫(LS174T)
ヒト結腸直腸癌腫であるLS174T細胞(American Type Culture Collection)を10%FBSが添加されたRPMI(GIBCOTM、Invitrogen Corporation)培地で培養し、前記腫瘍細胞5×10個をヌードマウスの背中の筋上中央部に皮下接種した。前記腫瘍を移植した後、正確に5日が経過した時、50mg/kg/日のLK8タンパク質を投与した。ここで、LK8 タンパク質の代わりにPBSだけを投与したグループを対照群に設定した。処理過程は、34日間継続し、その後に腫瘍の大きさを3乃至4日に一回ずつ測定した。その結果、LK8タンパク質処理によって腫瘍の成長低下がみられ、対照群に比べて64%程度の腫瘍成長抑制効果が観測された(図6のa)。また、実験最終日に測定した癌腫の重さは、LK8タンパク質処理群が対照群に比べて68.7%程度低いことを観測した(図6のb)。
【0039】
<実施例5>LK8タンパク質の急性毒性試験
5週齢の特定病原不在(SPF)SD(Sprague Dawley)系ラットを使って急性毒性実験を実施した。5種群に設定したラットにそれぞれ260mg/kg、364mg/kg、510mg/kg、714mg/kg及び1000mg/kgの用量で本発明のLK8タンパク質を各群当たり5匹ずつ単回静脈投与した(表2)。試験物質であるLK8タンパク質の投与後、14日経過時までの動物の斃死有無、臨床症状、体重変化を観察して血液学的検査と血液生化学的検査を実施し、部検して肉眼で腹腔臓器と胸腔臓器の異常の有無を観察した。試験結果、1000mg/kgのLK8タンパク質の投与では一部の毒性が確認されたが、試験物質を投与した大部分のラットで特記に値する臨床症状や斃死した動物はなく、体重変化、血液検査、血液生化学検査、剖検所見などでも毒性変化は観察されなかった。以上の結果、実験したLK8タンパク質は、1000mg/kgまでは比較的安全な物質と判断され、静脈投与最小致死量(LD50)は、1000mg/kgである安全な物質であると判断された(表2)。
【0040】
(表2)LK8タンパク質の静脈投与後、経過日によるラットの死亡数

【産業上の利用可能性】
【0041】
前記で詳しく見たように、LK8タンパク質は全身投与時に癌細胞の転移抑制能力があり、また、ヒト前立腺癌腫、肺癌腫、結腸癌腫及び直腸癌腫の成長抑制効果があるので、LK8タンパク質を含む本発明の抗癌剤は、癌転移抑制または原発腫瘍の治療剤として有用に使用できる。
【0042】
当業者は、上記明細書に開示される概念および具体的な態様が、本発明と同一の目的を実施するための他の態様の改変または設計の基礎として容易に用いられることを認識するであろう。当業者はまた、このような等価な態様が、添付の特許請求の範囲に示される本発明の精神および範囲を逸脱しないことも認識すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の好ましい態様の適用は、添付の図面の参照により最も理解される。
【0044】
【図1】AOX1プローモーターとAOX1ターミネーターの間にLK8cDNA(261bp)が挿入されたLK8遺伝子の発現ベクターであるpMBRI−LK8(8.25kb)の制限要素開裂地図である。
【図2】マウス黒色腫(melanoma)であるB16F10細胞をマウス(C57BL/6)の尾の静脈に移植した時、前記マウス黒色腫細胞の転移がLK8タンパク質の処理により抑制されることを示した写真及びグラフで、(a)PBS(対照群)のみを処理したマウスの肺、(b)1mg/kgのLK8タンパク質を処理したマウスの肺写真、(c)LK8タンパク質処理によってB16F10細胞の肺への転移が抑制されたことを示したグラフである。
【図3】マウス大腸癌細胞であるCT−26細胞を脾臓に注入して肝へ転移を誘導した時、LK8タンパク質処理により大腸癌の肝転移が抑制されることを示した写真及びグラフで、(a)PBS(対照群)とLK8タンパク質(10mg/kg/日)処理したマウスの肝写真、(b)PBS(対照群)とLK8タンパク質(10mg/kg/日)処理したマウスの肝に転移したCT−26大腸癌コロニーの個数を現わしたグラフ、(c)PBS(対照群)とLK8タンパク質(10mg/kg/日)処理したマウスの肝をヘマトキシリン・エオシン染色により組織学的に観察したCT−26転移癌の分布を示した写真である。
【図4】ヒト前立腺癌腫であるPC−3細胞を移植したマウスにLK8タンパク質投与後、経過日数による腫瘍大きさの変化を現わしたグラフで、(a)LK8タンパク質を100mg/kg/日で処理した場合現われる腫瘍の大きさ変化を示したグラフ、(b)LK8タンパク質を50mg/kg/日で処理した場合現われる腫瘍の大きさ変化を示したグラフである。
【図5】ヒト肺癌腫であるA549細胞を移植したマウスにLK8タンパク質投与後、経過日数による腫瘍大きさの変化を示したグラフである。
【図6】ヒト直腸結腸癌細胞腫であるLS 174T細胞を移植したマウスでLK8タンパク質投与後経過日数による(a)腫瘍大きさ及び(b)重さの変化を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で記載されるLK8タンパク質を有効成分として含む抗癌剤。
【請求項2】
前記LK8タンパク質の有効用量が、0.1乃至100mg/kgであることを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項3】
前記LK8タンパク質の有効用量が、1乃至50mg/kgであることを特徴とする請求項2記載の抗癌剤。
【請求項4】
癌転移抑制に使用することを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項5】
前記癌転移が、結腸癌または直腸癌の転移であることを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項6】
原発腫瘍の治療に使用することを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項7】
前記原発腫瘍が、前立腺癌腫、結腸癌、直腸癌及び肺癌腫からなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載の抗癌剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で記載されるLK8タンパク質を有効成分として含む抗癌剤。
【請求項2】
前記LK8タンパク質の有効用量が、0.1乃至100mg/kgであることを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項3】
前記LK8タンパク質の有効用量が、1乃至50mg/kgであることを特徴とする請求項2記載の抗癌剤。
【請求項4】
癌転移抑制に使用することを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項5】
前記癌転移抑制が、結腸癌または直腸癌の転移を抑制することを特徴とする請求項記載の抗癌剤。
【請求項6】
原発腫瘍の治療に使用することを特徴とする請求項1記載の抗癌剤。
【請求項7】
前記原発腫瘍が、前立腺癌腫、結腸癌、直腸癌及び肺癌腫からなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載の抗癌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−518342(P2006−518342A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500650(P2006−500650)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000357
【国際公開番号】WO2004/073730
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(504385351)モガム バイオテクノロジー リサーチ インスティチュート (10)
【Fターム(参考)】