説明

LNG気化設備

【課題】低圧系統と高圧系統のそれぞれに対して予備の気化器を設ける場合の、設置スペースの面及び建設コストの面の無駄を無くす。
【解決手段】本発明は、低圧ガス生成用気化器7を有する低圧系統5a,8と、高圧ガス生成用気化器11を有する高圧系統5b,12とを備えたLNG気化設備において、予備気化器16を有する予備系統5a’,5b’,17,20が、低圧ガス生成用気化器を跨ぐようにして低圧系統に接続されると共に、高圧ガス生成用気化器を跨ぐようにして高圧系統にも接続され、該予備系統に対し、低圧系統におけるLNG又は高圧系統におけるLNGの何れかを選択的に供給可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGプラントにおけるLNG気化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加による地球温暖化問題などに対し、地球規模での環境保全への取り組みの強化が求められている。また、国内では環境問題への取り組みと並行して、エネルギー産業の規制緩和が進む中、エネルギー供給元の選択肢が多様化している。そうした背景からクリーンなエネルギーであるLNGの需要は年々拡大し、発電用・都市ガス用をはじめ、産業用の燃料としても評価されてきている。
【0003】
LNGプラントは、LNGタンクに貯蔵されたLNGをポンプで供給ラインを介して気化器に送り、ここでLNGを熱交換により気化させて各供給先(例えば、火力発電所等、LNGを燃料とする場所)にLNGガスをパイプラインで送るものであるが、供給先の目的に応じて低圧ガスと高圧ガスの二種類を生成することができるLNGプラントも一般的に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のLNGプラントにあっては、安定供給の観点から、低圧ガス生成用気化器及び高圧ガス生成用気化器のそれぞれに対して予備の気化器を設け、通常用いられる気化器の定期点検時や故障等の不測の事態にいつでも対応できるようになっているが、そのような時にしか稼働しないものを二つ(低圧、高圧に各1つずつ)も設けることは、設置スペースの面でも建設コストの面でも極めて無駄である。
【0005】
この点を鑑みて、近年、予備の気化器として高圧ガス生成用気化器1つのみを設け、通常用いられる高圧ガス生成用気化器が停止した場合は、予備の高圧ガス生成用気化器に切り替えることで高圧ガスを生成し、低圧ガス生成用気化器が停止した場合でも予備の高圧ガス生成用気化器に切り替えて高圧ガスを生成し、それを減圧することで低圧ガスを生成するという対応も試みられている。しかし、この方法においても、高圧ガスを低圧ガスに減圧する際、断熱膨張に伴ってガスの温度が低下するため、ガスヒーターを新たに設置しなければならないという問題があり、また、高圧に昇圧する動力費の無駄の問題もある。さらに、通常使用される海水との熱交換によりLNGを気化させる方式の気化器では、海水ポンプ運転とLNG供給管冷却保持の状態で待機しないと、予備器として使用する際のスタートアップに時間がかかるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、低圧ガス生成用気化器を有する低圧系統と、高圧ガス生成用気化器を有する高圧系統とを備えたLNG気化設備において、予備気化器を有する予備系統が、前記低圧ガス生成用気化器を跨ぐようにして低圧系統に接続されると共に、前記高圧ガス生成用気化器を跨ぐようにして高圧系統にも接続され、該予備系統に対し、低圧系統におけるLNG又は高圧系統におけるLNGの何れかを選択的に供給可能に構成されてなることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、低圧ガス生成用気化器へのLNGの供給を停止し、該LNGを予備気化器に供給することにより、低圧ガス生成用気化器から予備気化器への切り替えが行われ、該予備気化器にて低圧ガスが生成される。また、高圧ガス生成用気化器へのLNG(低圧系統におけるLNGよりも昇圧されたLNG)の供給を停止し、該LNGを予備気化器に供給することにより、高圧ガス生成用気化器から予備気化器への切り替えが行われ、該予備気化器にて高圧ガスが生成される。また、予備気化器にて生成された低圧ガスは、低圧系統に送られ、予備気化器にて生成された高圧ガスは、高圧系統に送られ、低圧高圧のいずれかがダウンしても、低圧ガス及び高圧ガスは供給先に安定供給されるようになっている。
【0008】
また、本発明は、予備系統のうち、低圧ガス生成用気化器の上流側における低圧系統への接続部分、低圧ガス生成用気化器の下流側における低圧系統への接続部分、高圧ガス生成用気化器の上流側における高圧系統への接続部分、及び高圧ガス生成用気化器の下流側における高圧系統への接続部分のそれぞれに、切換弁が設けられてなる構成を採用することができる。
【0009】
上記構成によれば、四つの切換弁の開閉操作を適宜行うことにより、低圧ガス生成用気化器から予備気化器への切り替え、あるいは高圧ガス生成用気化器から予備気化器への切り替えを適宜行うことができる。また、低圧、高圧それぞれの系統の圧力が得られるので、高圧ガス生成用気化器を低圧系統の予備器として使用した場合のような減圧設備及びガスヒーターを新たに設置する必要はない。さらに、予備気化器として、スチームにより加熱された温水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器(例えば、スチームエジェクタ式気化器)を用いる場合には、急速起動が可能なので、速やかにスタートアップでき、ガスの供給を復旧することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上の如く、本発明は、低圧系統と高圧系統とで予備の気化器を供用するため、それぞれに対して予備の気化器を設ける場合に比べて気化器の台数が減る分、設置スペースの面でも建設コストの面でも極めて有用である。
【0011】
また、高圧ガス生成用気化器を低圧系統の予備器として使用した場合のような減圧設備及びガスヒーターを新たに設置する必要はない。さらに、スチームにより加熱された温水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器(例えば、スチームエジェクタ式気化器)を用いる場合には、速やかなスタートアップでガスの供給を復旧でき、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るLNGプラントの概念図を示す。
【図2】本実施形態に係るLNGプラントと製油プラントとの複合プラントの概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るLNG気化設備の一実施形態を含むLNGプラントについて図1に基づき説明する。
【0014】
本実施形態に係るLNGプラントは、LNG船1に積み込まれたLNGを受入ライン2を介してLNGタンク3に貯蔵し、該LNGタンク3内のLNGを第一ポンプ4で供給ライン5を介してLNG気化設備に送り、ここでLNGを熱交換により気化させて各供給先にLNGガスをパイプラインで送ったり、あるいは、LNGを気化させずに液体のままローリー出荷するプラントである。
【0015】
供給ライン5は、低圧ガス(例えば約1MPa)を生成するための第一供給ライン5aと、高圧ガス(例えば約5MPa)を生成するための第二供給ライン5bと、上記ローリー出荷のための第三供給ライン5cとに分岐される。
【0016】
第一供給ライン5aは、調節弁6を介して第一気化器7に接続され、該第一気化器7で生成された低圧ガスは、第一パイプライン8を介して供給先に送られる。一方、第二供給ライン5bは、第一ポンプ4で昇圧されたLNGをさらに昇圧するための第二ポンプ9及び調節弁10を介して第二気化器11に接続され、該第二気化器11で生成された高圧ガスは、第二パイプライン12を介して供給先に送られる。
【0017】
また、第一供給ライン5aからは第一予備供給ライン5a’が分岐され、該第一予備供給ライン5a’は、第一切換弁13、逆止弁14及び調節弁15を介して予備気化器16に接続され、該予備気化器16で生成された低圧ガスは、第二切換弁18を有する第一中継ライン17を介して前記第一パイプライン8に送られる。一方、第二供給ライン5bであって前記第二ポンプ9よりも下流側位置からは第二予備供給ライン5b’が分岐され、該第二予備供給ライン5b’は、第三切換弁19及び前記調節弁15を介して前記予備気化器16に接続され、該予備気化器16で生成された高圧ガスは、逆止弁21及び第四切換弁22を有する第二中継ライン20を介して前記第二パイプライン12に送られる。
【0018】
そして、第一気化器7及び第二気化器11には、海水との熱交換によりLNGを気化させる温水式気化器、より詳しくは、海水との熱交換により中間媒体(プロパン、ブタン、フロン等)を蒸発させ、この蒸気中に配置される配管内のLNGを気化させる中間媒体式気化器が用いられる。この気化器は、オープンラック式気化器に比べて必要な海水量が少なくて済むため、配管系が小さく、全体的に小型であり、省スペース化を図ることができるという特徴がある。
【0019】
一方、予備気化器16には、蒸気との熱交換によりLNGを気化させる温水式気化器、より詳しくは、水蒸気をスチームエジェクタを介して水中に供給し、この加熱された温水中に配置される配管内のLNGを気化させるスチームエジェクタ式気化器が用いられる。この気化器は、スチームエジェクタより吸引される空気が温水を激しく撹拌することにより、高い熱交換性能を有するという特徴がある。
【0020】
LNGプラントは、以上のように構成されており、第一供給ライン5a及び第一パイプライン8が本発明に係る「低圧系統」に相当し、第二供給ライン5b及び第二パイプライン12が本発明に係る「高圧系統」に相当し、第一予備供給ライン5a’、第二予備供給ライン5b’、第一中継ライン17及び第二中継ライン20が本発明に係る「予備系統」に相当し、第一予備供給ライン5a’が本発明に係る「予備系統のうち、低圧ガス生成用気化器の上流側における低圧系統への接続部分」に相当し、第一中継ライン17が本発明に係る「予備系統のうち、低圧ガス生成用気化器の下流側における低圧系統への接続部分」に相当し、第二予備供給ライン5b’が本発明に係る「予備系統のうち、高圧ガス生成用気化器の上流側における高圧系統への接続部分」に相当し、第二中継ライン20が本発明に係る「予備系統のうち、高圧ガス生成用気化器の下流側における高圧系統への接続部分」に相当する。
【0021】
通常は、第一〜第四切換弁13,18,19,22が閉じられることにより、LNGが第一気化器7及び第二気化器11にのみ供給される。しかも、第一気化器7及び第二気化器11のそれぞれ上流側、即ち第一供給ライン5a及び第二供給ライン5bは、第一予備供給ライン5a’及び第二予備供給ライン5b’を介して接続されているが、第一切換弁13及び第三切換弁19が閉じられているので、第二ポンプ9で昇圧されたLNGが低圧系統に流入することはなく、また、第一気化器7及び第二気化器11のそれぞれ下流側、即ち第一パイプライン8及び第二パイプライン12は、第一中継ライン17及び第二中継ライン20を介して接続されているが、第二切換弁18及び第四切換弁22が閉じられているので、高圧ガスが低圧系統に流入することはない。その結果、第一気化器7では低圧ガスが、第二気化器11では高圧ガスが、それぞれ生成される。
【0022】
そして、点検、故障等の理由により第一気化器7が停止した場合は、調節弁6を閉じると共に、第一切換弁13及び第二切換弁18を開くことにより、LNGが予備気化器16及び第二気化器11にのみ供給される。しかも、予備気化器16及び第二気化器11のそれぞれ上流側、即ち、第一予備供給ライン5a’及び第二供給ライン5bは、第二予備供給ライン5b’を介して接続されているが、第三切換弁19が閉じられているので、第二ポンプ9で昇圧されたLNGが低圧系統に流入することはなく、また、予備気化器16及び第二気化器11のそれぞれ下流側、即ち、第一中継ライン17及び第二パイプライン12は、第二中継ライン20を介して接続されているが、第四切換弁22が閉じられているので、高圧ガスが低圧系統に流入することはない。その結果、予備気化器16では低圧ガスが、第二気化器11では高圧ガスが、それぞれ生成される。
【0023】
一方、点検、故障等の理由により第二気化器11が停止した場合は、上記通常状態から、調節弁10を閉じると共に、第三切換弁19及び第四切換弁22を開くことにより、LNGが第一気化器7及び予備気化器16にのみ供給される。しかも、第一気化器7及び予備気化器16のそれぞれ上流側、即ち、第一供給ライン5a及び第二予備供給ライン5b’は、第一予備供給ライン5a’を介して接続されているが、第一切換弁13が閉じられているので、第二ポンプ9で昇圧されたLNGが低圧系統に流入することはなく、また、第一気化器7及び予備気化器16のそれぞれ下流側、即ち、第一パイプライン8及び第二中継ライン20は、第一中継ライン17を介して接続されているが、第二切換弁18が閉じられているので、高圧ガスが低圧系統に流入することはない。その結果、第一気化器7では低圧ガスが、予備気化器16では高圧ガスが、それぞれ生成される。
【0024】
このように、本実施形態に係るLNGプラントによれば、切換弁13,18,19,22の適宜な制御により、低圧系統と高圧系統とで予備気化器を供用することができ、従来に比べて気化器の台数が減る分、LNGプラントの建設用地が少なくて済み、また、建設コストも低減することができる。
【0025】
さらに、LNG気化器で各切換弁13,18,19,22は、高圧系(第二予備供給ライン5b’、第二中継ライン20)から低圧系(第一予備供給ライン5a’、第一中継ライン17)へ流入しないよう、切り替え時は定められた条件で順次作動するようシステム構成されている。また、弁13,18,19,22が誤作動・故障した場合でも高圧側(第二予備供給ライン5b’)LNGが低圧側(第一予備供給ライン5a’)へ、高圧側(第二中継ライン20)ガスが低圧側(第一中継ライン17)へ流入しないよう、各々に逆止弁14,21を設置し、流入防止を図っている。
【0026】
尚、変則的な使用方法であるが、上記通常状態から第一切換弁13及び第二切換弁18を開くことにより、LNGが予備気化器16にも供給されるため、低圧ガスを予備気化器16の分だけ増産することができる一方、上記通常状態から第三切換弁19及び第四切換弁22を開くことにより、第二ポンプ9により昇圧されたLNGが予備気化器16にも供給されるため、高圧ガスを予備気化器16の分だけ増産することができる。
【0027】
ところで、本実施形態に係るLNGプラントは、昨今のLNGの需要増大に伴って製油所の用地の一部をLNGプラントの用地に代替し、既設の製油所に併設されて複合プラントの形態を採るものである。それを図2に示す。
【0028】
製油所Aは、原油タンクの他、常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、ナフサ水素化脱硫装置、接触改質装置、脱ベンゼン装置、灯油水素化脱硫装置、軽油深度水素化脱硫装置、重質軽油水素化分解装置、重油直接脱硫装置、重油流動接触分解装置等の各種製油設備30が設置されている。尚、これらの設備は周知であるので詳細な説明は割愛し、また、製油所の規模等によっても設備に若干の変動はあることを述べておく。
【0029】
各種製油設備は、製油プロセスを実施するに当たって冷却が必要となるものがあるので、それらについては、海水を取水し冷却水として用いるようになっている。海水は、取水口31から海水取水設備(図示しない)によって取水され、取水ライン32を通って各種製油設備30に供給され、そして、冷却系統を通って熱交換された海水は、放水(排水)ライン33を通って放水(排水)口34から海に戻される。
【0030】
そして、LNGプラントBの第一及び第二気化器7,11で用いられる海水は、製油所Aの取水ライン32から供給を受けるようになっている。即ち、取水ライン32からは、一部の海水が第一及び第二気化器7,11に流れるよう供給ライン35が分岐されている。また、熱交換後の海水は、取水ライン32へ戻されるようになっている。即ち、第一及び第二気化器7,11からの熱交換後の海水が返送ライン36を通って取水ライン32に返送されるようになっている。
【0031】
返送ライン36は、供給ライン35よりも取水ライン32の下流側に接続されており、そのため、供給ライン35を通って第一及び第二気化器7,11に至る海水は、LNGの冷熱により冷却され、この冷却された海水が返送ライン36を通って取水ライン32に流れ込み、その結果、取水ライン32から各種製油設備30に至る海水全体の水温が下がり、この海水が各種製油設備30の冷却水として用いられることとなって、各種製油設備30における冷却効率が高められる。
【0032】
また、各種製油設備30内の冷却系統を通って熱交換された海水は、入熱によって水温が冷却水供給時よりも上昇するが、もともとLNGの冷熱によって海水が冷却されているため、海水を第一及び第二気化器7,11に通さない場合よりも温度は低く抑えられる。その結果、冷却系統を通って熱交換される海水温度(即ち、排水温度)を引き下げることができ、温排水に対する有効な環境対策となる。
【0033】
一方、LNGプラントBの予備気化器16で用いられる水蒸気は、製油プロセスを実施するに当たって各種製油設備30から発生する水蒸気を利用するようになっている。即ち、各種製油設備30からは、発生した水蒸気が予備気化器16に流れるよう供給ライン37が配管されている。
【0034】
このように、製油所Aの用地の一部をLNGプラントBの用地に代替し、既設の製油所AにLNGプラントBを併設する場合、LNGプラントBが既設の製油所Aの海水取水設備、排水処理設備、あるいは蒸気発生設備等の付帯設備を供用できるので、予備気化器16の供用と合わせて、さらにプラントBの建設用地を少なく済ませることができ、且つさらに建設コストを低減することができる。
【0035】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0036】
上記実施形態においては、LNGを一旦LNGタンク3に貯蔵し、ここからLNGを各気化器7,11に供給するようにしているが、例えばLNG船から直接的に供給するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、一本の供給ライン5を第一供給ライン5aと第二供給ライン5bとに分けてLNGを供給するようにしているが、第一供給ライン5aと第二供給ライン5bとは互いに独立したラインであってもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、気化器7,11に対する海水の供給源、及び予備気化器16に対する水蒸気の供給源を製油所Aに頼っているが、LNGプラント単独である場合は、海水取水設備、排水処理設備、あるいは蒸気発生設備等の付帯設備が当然に設けられ、ここから海水及び水蒸気の供給を受けることとなる。
【0039】
また、複合プラントの形態を採る場合であっても、要は、所定の製造プロセスを実施するに当たって海水を取水し冷却水として用いると共に、製造プロセスにおいて水蒸気が発生し得る所定の製造プラント(例えば、化学プラント、製鉄所、火力・原子力発電所)であればよく、製油所(製油プラント)には限定されない。
【0040】
また、上記実施形態においては、第一又は第二気化器7,11から予備気化器16への運転切り替えの契機として、第一又は第二気化器7,11の点検、故障等を挙げているが、取水系統の不具合によって第一又は第二気化器7,11に海水が供給されなくなるような場合にも適用され得る。
【0041】
また、上記実施形態においては、通常用いられる気化器として中間媒体式気化器が用いられ、予備の気化器としてスチームエジェクタ式気化器が用いられているが、本発明はこれらに限定されるものではない。オープンラック式気化器、サブマージド式気化器を含め、これらを適宜選択することができる。
【0042】
但し、少なくとも予備の気化器としてスチームエジェクタ式気化器を用いれば、上述した製油所等との複合プラントであることを前提として次のようなメリットがある。例えば、通常用いられる気化器と同様、予備の気化器も海水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器とすれば、通常用いられる気化器の非常時に切り替えられる予備の気化器を即座に稼働させることができるようにするために、通常時でも常に予備の気化器に海水を通水させておく必要がある。海水が通水されていない状態でLNGを気化器内に流すと、気化器内で静水している海水が凍ってその体積膨張により気化器が破裂するおそれがあるからであるが、上記必要に答えようとすれば、その分だけ設備動力を無駄に消費し、ランニングコストが悪化してしまう。これに対し、予備の気化器が上記実施形態の如く水蒸気との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器であれば、気化器をいつでも稼働させることができるようにするために要求される蒸気の供給を、製造プラントから簡単且つ安価に受けることができる。
【符号の説明】
【0043】
A…製油所(製造プラント)、B…LNGプラント、3…LNGタンク、4…第一ポンプ、5…供給ライン、5a…第一供給ライン(低圧ガス生成用供給ライン)、5a’…第一予備供給ライン(低圧ガス生成用予備供給ライン)、5b…第二供給ライン(高圧ガス生成用供給ライン)、5b’…第二予備供給ライン(高圧ガス生成用予備供給ライン)、5c…第三供給ライン(LNG供給ライン)、7…第一気化器(低圧ガス生成用気化器)、8…第一パイプライン(低圧ガス移送用パイプライン)、9…第二ポンプ、11…第二気化器(高圧ガス生成用気化器)、12…第二パイプライン(高圧ガス移送用パイプライン)、13…第一切換弁、14…逆止弁、16…予備気化器、17…第一中継ライン、18…第二切換弁、19…第三切換弁、20…第二中継ライン、21…逆止弁、22…第四切換弁、30…製油設備、32…取水ライン、35供給ライン(海水供給ライン)、36…返送ライン(海水返送ライン)、37…供給ライン(水蒸気供給ライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧ガス生成用気化器を有する低圧系統と、高圧ガス生成用気化器を有する高圧系統とを備えたLNG気化設備において、予備気化器を有する予備系統が、前記低圧ガス生成用気化器を跨ぐようにして低圧系統に接続されると共に、前記高圧ガス生成用気化器を跨ぐようにして高圧系統にも接続され、該予備系統に対し、低圧系統におけるLNG又は高圧系統におけるLNGの何れかを選択的に供給可能に構成されてなることを特徴とするLNG気化設備。
【請求項2】
予備系統のうち、低圧ガス生成用気化器の上流側における低圧系統への接続部分、低圧ガス生成用気化器の下流側における低圧系統への接続部分、高圧ガス生成用気化器の上流側における高圧系統への接続部分、及び高圧ガス生成用気化器の下流側における高圧系統への接続部分のそれぞれに、切換弁が設けられてなる請求項1に記載のLNG気化設備。
【請求項3】
低圧ガス生成用気化器及び高圧ガス生成用気化器として、海水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器が用いられる一方、予備気化器として、水蒸気等により加熱された温水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器が用いられる請求項1又は2に記載のLNG気化設備。
【請求項4】
所定の製造プロセスを実施するに当たって海水を取水し冷却水として用いる所定の製造プラントが隣接するLNG気化設備であって、製造プラントの取水ラインから海水の少なくとも一部を低圧ガス生成用気化器及び高圧ガス生成用気化器における熱交換用の海水として供給し、熱交換後の海水を製造プラントの取水ラインに返送する請求項3に記載のLNG気化設備。
【請求項5】
所定の製造プロセスを実施するに当たって水蒸気が発生し得る所定の製造プラントが隣接するLNG気化設備であって、該水蒸気を予備気化器における熱交換用の熱源として供給する請求項3又は4に記載のLNG気化設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−62999(P2012−62999A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209923(P2010−209923)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(502260937)水島エルエヌジー株式会社 (5)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】