説明

LPG加熱装置

【課題】ベーパライザのLPG加熱装置について、ヒータユニットにおける電極板の接触不良の発生を回避できるようにする。
【解決手段】2枚の電極板12,13の間にPTCセル11を挟んで外周側をシール部材15で封止してなるヒータユニット10,10を内蔵したLPG加熱装置1において、ヒータユニット10複数枚が並列して内蔵されているとともに、対向するヒータユニット10,10の電極板12,12間に、少なくとも1個のばね8が両端側を電極板12,12の外面に当接して圧縮状態で挟装されているとともに、複数枚のヒータユニット10,10の内で最外側に位置するヒータユニット10の外側の電極13,13に沿ってばね8の配置位置にばね8の弾発力を受け止める支持部材51が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPGを加熱・気化してエンジンに供給するためにベーパライザに設けられるLPG加熱装置に関し、殊に、PTCセルを2枚の電極板で挟持してなるヒータユニットを内蔵したLPG加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LPG(液化石油ガス)を所定正圧の気体にしてエンジンの吸気管路に噴射させる燃料供給方式が広く普及しているが、この方式において液体の状態で燃料タンクに貯留したLPGを加熱・気化させる手段として、エンジン冷却水の熱を利用する加熱気化手段をベーパライザに付設し、エンジン冷却水とLPGとの間で熱交換を行うことが慣用されている。
【0003】
しかし、エンジン冷却水の熱を利用する加熱気化手段では、冷機時においてエンジン冷却水が低温であるために液体のLPGを充分に気化させることができないことがある。そこで、例えば特開平11−324813号公報に記載されているように、エンジン冷却水の熱を利用することに加えLPG流路に形成した高圧燃料室中に、図6に示すLPG加熱装置1Cを配置することにより、エンジン冷却水が低温の場合でも、LPGを充分に加熱・気化可能としたものが普及するようになった。
【0004】
このようなLPG加熱装置1では、加熱板を兼ねた電極板12,13で板状のPTCセル11をサンドイッチ状に挟み、その外周側をゴム製のシール部材14で封止して固定してなるヒータユニット10を複数枚並列した状態で内蔵し、そのヒータユニット10,10間を流路として通過する液体LPGを加熱することにより、その気化を促進させるものである。
【0005】
ところで、前記ヒータユニット10は、前述のように板状のPTCセル11を電極板12,13で挟んだものであり、PTCセル11と電極板12,13との密着状態にムラが生じ易いという問題があり、PTCセル11と電極板12,13との間に隙間が生じた場合、通電により発生した熱が電極板12,13の外面まで充分に伝導されないことになり、その部分の熱交換量が不足して燃料の気化不良に繋がる結果となる。即ち、PTCセル11の両外面と電極板12,13内面との接触状態にバラツキがある場合には、LPG加熱装置1Cにおける電極板12,13からの熱の伝達による熱交換性能(ヒータ性能)のバラツキに繋がることから、製品間で安定した品質を確保することを困難にする原因となっていた。
【0006】
更に、前記ヒータユニット10において電極板12,13は外周側をゴム製のシール部材14により封止されているが、高温下においてLPGガスの透過性が高くなることで、図中の拡大した円形部分に示すように、高温時にヒータユニット10内部に侵入したLPGガスによる圧力が外部圧力よりも高くなると、電極板12,13を内側から押し広げるように膨張してPTCセル11表面との間に隙間を形成することになり、これにより通電部分の接触不良を生じてLPGの充分な加熱・気化が行われない状況に陥る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−324813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、PTCヒータを電極間に挟んだ複数のヒータユニットを並設させたLPG加熱装置において、前記PTCヒータと電極との間の接触状態を良好として安定した熱交換性能を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、2枚の電極板の間にPTCセルを挟んで外周側をシール部材で封止してなるヒータユニットを内蔵したLPG加熱装置において、前記ヒータユニットは複数枚が並列して内蔵されているとともに、対向する前記ヒータユニットの電極板間に、少なくとも1個のばねが両端側を前記両電極板の外面に当接して圧縮状態で挟装されているとともに、前記複数枚のヒータユニットの内で最外側に位置するヒータユニットの外側の電極に沿って前記ばねの配置位置に前記ばねの弾発力を受け止める支持部材が配置されて、前記ヒータユニットに両側から加重を加えて前記電極板と前記PTCセルとが密着する方向に各々付勢している、ことを特徴とする。
【0010】
このような本発明によれば、ばねの弾発力によりヒータユニットを両側から加重を加えることにより、電極板のPTCセルへの押し付け力を補強して接触不良の発生を回避して電極板とPCTセルとの密着性を確保させることにより、従来の2枚の電極板の間にPTCセルを挟んで外周側をシール部材で封止してなるきわめて簡易な構成のヒータユニットを用いてLPGの充分な加熱・気化を行うことができる。
【0011】
また、ばねの設置が複数個であるとともにそれぞれのばねが前記電極板の中心と電極板の端縁とのほぼ中間にそれぞれ所定の間隔を有して配設することにより、電極板の全域にわたってばねの加重を均一に作用させることができ、PTCセルの両外面と電極板内面との接触不良発生の回避が一層確実なものとなる。
【0012】
特に、前記ばねが前記並列しているヒータユニットの間に配置されたLPGの流路を形成してなる支持プレートに貫通形成された貫通部に挿入保持させる場合には、ばねの配置が簡単且つ確実となり、製造や保守も容易となる。
【0013】
更に、前記支持部材が前記最外側に位置するヒータユニットの外側の電極に沿って配置されるパネルに一体的に形成されている場合には支持部材を所定の位置に簡単かつ確実に配置することかできる。
【発明の効果】
【0014】
ばねの弾発力によりヒータユニットを両側から加重を加えることにより、電極板のPTCセルへの押し付け力を補強する本発明により、従来の2枚の電極板の間にPTCセルを挟んで外周側をシール部材で封止してなる簡易な構成の複数のヒータユニットにおいて、電極板とPCTセルとの密着性を確保させることにより、安定した熱交換性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における実施の形態のLPG加熱装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示した実施の形態におけるLPG加熱装置の蓋体を取り外した状態の外観斜視図である。
【図3】図1に示した実施の形態のLPG加熱装置に用いられているPTCユニットの分解斜視面図である。
【図4】図1に示した実施の形態のLPG加熱装置の拡大部分縦断面図である。
【図5】本発明における異なる実施の形態のLPG加熱装置に用いられているPTCユニットの分解斜視面図である。
【図6】従来例を示す部分縦断面図(円中は部分拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1乃至図4は本実施の形態であるLPG加熱装置1を示すものであり、このLPG加熱装置1は、ベーパライザ(図示せず)に内蔵されて液体のLPGを導入しながら加熱することでLPG燃料の気化を促進するためのものであり、頂面を開放したケース体2の内部にヒータユニット10,10を並列した状態で内蔵しており、間にLPGの流路を形成するように両ヒータユニット10,10を支持プレート4で支持させるとともに両ヒータユニット10,10の外側にスペーサ5,5を配置して開放面側を蓋材6,底材7で閉鎖してなるものである。
【0018】
そして、前記ヒータユニット10は、従来から知られている2枚の電極板12,13の間にPTCセル11を挟んで外周側を例えばゴム製のシール部材14で封止した簡易な構成であり、ヒータユニット10,10が並列して内蔵されその間にLPGの流路を形成してなる支持プレート4には電極板10,10の中心と電極板の端縁とのほぼ中間にそれぞれ所定の間隔を有して例えば正方形の角部位置になるように孔状の貫通部41・・41が貫通形成されており、前記各貫通部41にコイル状のばね8が挿入支持されてコイルバネ8の両端部がヒータユニット10,10における対向する電極板12,12の外面に当接して圧縮状態で挟装されて、各電極板12,12内面とPTCセル11表面とが密着する方向に各々付勢する。
【0019】
また、ヒータユニット10,10における外側の電極13,13に沿って配置されるスペーサ5,5の前記ばね8の配置位置にばね8の弾発力を受け止める支持部材51・・51が配置されており、ヒータユニット10,10に両側から加重を加えて各ヒータユニット10の電極板13,13の内面とPTCセル11とが互いに密着する方向に各々付勢している。
【0020】
尚、本実施の形態では前記スペーサ5は、前記支持プレート4の外周端面42に内方へ向けて突出させた係止片43により所定の位置に支持されている。従って、ヒータユニット10,10、支持プレート4,ばね8・・8,スペーサ5,5を予め一体的に組み上げたものをケース体2に収納して蓋体7をすればよく、きわめて製造が容易である。特に、ばね8の弾発力を受け止める支持部材51・・51をヒータユニット10,10の外面に沿って配置されるスペーサ5,5に一体に形成したのできわめて簡単に所定位置に配置することができるとともに組み立ても容易である。
【0021】
このLPG加熱装置1では、コイルバネ8が各電極板12,12の内面とPTCセル11の表面および各電極板13,13の内面とPTCセル11の表面との間で所定レベルの密着度を維持するように常に機能するため、電極板12,13とPTCセル11表面との間で生じる接触不良を有効に防止することができる。
【0022】
特に、本実施の形態のLPG加熱装置1では、ばね8としてコイル状のものを選択し、これらの複数個を、例えばヒータユニット10を中心として端縁とのほぼ中間に各々位置するように正方形の角部に当たる位置に配設することにより、各ヒータユニット10における電極板12,13の全域にわたってばね8の加重を均一に作用させてPTC11との隙間が生じやすい部分にまんべんなく押し付けることができる。尚、ばね8の弾発力、配置数や配置位置は本実施の形態に限るわけでなく使用するヒータユニット10の大きさや形状等に合わせて適宜最適なものを選択するとよい。
【0023】
また、図6は本発明であるLPG加熱装置の異なる実施の形態におけるPTCユニットを示すものであり、全体の構成ならびに作用・効果は前記実施の形態とほぼ同様であるが、ばね8として複数の作用点81を中心から所定の距離を隔て均一に配置した板状のものを用いた点が異なる。
【0024】
本実施の形態によれば、一対のばねを使って各ヒータユニット10における電極板12,13の全域にわたってばね8からの加重を均一に作用させてPTC11との隙間が生じやすい部分にまんべんなく押し付けることができるので、製造が簡単である点が優れている。尚、本実施の形態では、各ヒータユニット10にそれぞれ当接する一対のばね8,8を対向させて配置したので各ヒータユニット10にそれぞれ均一な加重が加わる構成としたが、例えば表面および裏面にそれぞれ作用点を有する一枚の板状のばねを用いることによっても本発明を実施することができる(図示せず)。
【0025】
以上、述べたように、ベーパライザのLPG加熱装置について、本発明により電極板の接触不良の発生を回避できるようになった。
【符号の説明】
【0026】
1 LPG加熱装置、4 支持プレート、5 スペーサ、8 コイルバネ、41 挿通孔、51 支持部材、10 ヒータユニット、11 PTCセル、12,13 電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の電極板の間にPTCセルを挟んで外周側をシール部材で封止してなるヒータユニットを内蔵したLPG加熱装置において、前記ヒータユニットは複数枚が並列して内蔵されているとともに、対向する前記ヒータユニットの電極板間に、少なくとも1個のばねが両端側を前記両電極板の外面に当接して圧縮状態で挟装されているとともに、前記複数枚のヒータユニットの内で最外側に位置するヒータユニットの外側の電極に沿って前記ばねの配置位置に前記ばねの弾発力を受け止める支持部材が配置されて、前記ヒータユニットに両側から加重を加えて前記電極板と前記PTCセルとが密着する方向に各々付勢している、ことを特徴とするLPG加熱装置。
【請求項2】
前記ばねが複数個であるとともにそれぞれのばねが前記電極板の中心と電極板の端縁とのほぼ中間にそれぞれ所定の間隔を有して配設されていることを特徴とする請求項1記載のLPG加熱装置。
【請求項3】
前記ばねが前記並列しているヒータユニットの間に配置されたLPGの流路を形成してなる支 持プレートに貫通形成された貫通部に挿入保持されている請求項1または2記載のLPG加熱装置。
【請求項4】
前記支持部材が前記最外側に位置するヒータユニットの外側の電極に沿って配置されるスペーサに一体的に形成されていることを特徴とする請求項3記載のLPG加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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