説明

MDM2とプロテアソームの間の結合の検出方法

本発明は、単離されたタンパク質−HDM2結合部位ならびに単離されたタンパク質−プロテアソーム結合部位(ED(X)Y配列)をコードする核酸およびアミノ酸双方の配列を提供する。さらなる一局面において、本発明は、関連する核酸、アミノ酸、ベクター、宿主細胞、製薬学的組成物および製品もまた提供する。本発明は、試験化合物がHDM2とプロテアソームの間の結合と相互作用するかどうかの決定方法、ならびに、とりわけ抗癌剤としての、なおより具体的には被験体における細胞増殖性障害を処置するための前記試験化合物を含んでなる製薬学的組成物をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HDM2若しくは関連タンパク質のプロテアソームとの相互作用の特徴付け、および、この相互作用の破壊が例えばユビキチン(Ub)−プロテアソームタンパク質分解(UPS)経路にどのように影響を及ぼし得るかに基づく。従って、単離されたタンパク質−HDM2結合部位、ならびに単離されたタンパク質−プロテアソーム結合部位(ED(X)Y配列およびそれらの対蹠物)をコードする核酸およびアミノ酸双方の配列を提供する。さらなる一局面において、本発明は、関連する核酸、アミノ酸、ベクター、宿主細胞、製薬学的組成物および製品もまた提供する。本発明は、試験化合物がHDM2とプロテアソームの間の結合と相互作用するかどうかの決定方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
Hdm2は、hdm2遺伝子増幅、ならびにp14ARFおよびPTENのような上流の腫瘍抑制因子の欠失を包含する多様な機序により多数の癌患者で活性化されている重要な癌遺伝子である。Hdm2は、骨肉腫、軟組織肉腫および神経膠腫を包含する数種の型の悪性病変で過剰発現されており、そして高レベルのhdm2は不良な予後を伴う(非特許文献1)。興味深いことに、hdm2発現を増大するhdm2プロモーター中の単一ヌクレオチド多形が、ヒトでの遺伝性および散発性双方の癌における加速された腫瘍形成と関連している(非特許文献2)。
【0003】
HDM2は、細胞周期調節タンパク質と会合してそれらの活性および安定性を調節することにより腫瘍形成を促進する。HDM2の基質の数は急速に拡大しており、重要な例は、腫瘍抑制因子p53ならびにそのファミリーメンバーp63およびp73、E2F1ならびにp21waf1,cip1を包含する(非特許文献3)。最も広範囲に研究されているのはp53である。HDM2はp53タンパク質を結合かつユビキチン化し、それはプロテアソームによるp53の迅速な分解をもたらす。HDM2−p53複合体の分解の抑止は、p53安定化およびp53の下流の遺伝子のその後の転写活性化を引き起こす(非特許文献4に総説されている)。ユビキチンリガーゼ機能に加え、HDM2の他の活性もまた、HDM2の中央ドメインでのリン酸化が抑止される場合にユビキチン化されたp53の蓄積により明示されるとおり、p53分解に必要とされる(非特許文献5)。S4、S5a、S6aおよびS6bのような26Sプロテアソームの多様なサブユニットとのHDM2の会合(第3回Mdm2ワークショップ、独国コンスタンスにおいて2005年9月)が、この過程で重要な役割を演じているかもしれない。
【0004】
HDM2腫瘍形成の重要な役割と一致して、hdm2癌遺伝子のアンタゴニストすなわちペプチドおよび小分子は、in vitroで腫瘍細胞増殖、およびin vivoで免疫不全マウスにおけるヒト異種移植片の増殖を阻害する(非特許文献6、7)。Hdm2アンタゴニストは、機能的p53を欠く腫瘍細胞中で抗増殖効果をなお表しうる。これは、HDM2タンパク質を、抗癌療法の開発のための魅力的な標的と位置づける。
【0005】
腫瘍形成におけるHDM2の中心的役割を考えれば、HDM2−プロテアソーム相互作用の調節が、癌の処置のための新たな化学療法剤の開発のための新規機序を提供し得ることが期待されるはずである。
【0006】
例えばHDM2−プロテアソーム相互作用を妨害することが可能でかつ従って例えばUPS経路の破壊により細胞増殖性障害の処置で有用な化合物を同定することを可能にするタンパク質−HDM2結合部位ならびにタンパク質−プロテアソーム結合部位(ED(X)Y配列およびそれらの対蹠物)を特徴付けることが、本発明の一目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cordon−Cardo C,Latres E,Drobnjak M,Oliva MR,Pollack D,Woodruff JM,Marechal V,Chen J,Brennan MFとLevine AJ.Molecular abnormalities of mdm2 and p53 genes in adult soft tissue sarcomas.(1994)Cancer Res.54、794−9。
【非特許文献2】Bond GL,Hu WW,Bond EE,Robins H,Lutzker SG,Arva NC,Bargonetti J, Bartel F,Taubert H,Wuerl P,Onel K,Yip L,Hwang SJ,Strong LC,Lozano GとLevine AJ.A single nucleotide polymorphism in the MDM2 promoter attenuates the p53 tumor suppressor pathway and accelerates tumor formation in humans.(2004)Cell 119、591−602。
【非特許文献3】Zhang ZとZhang R.p53−independent activities of Mdm2 and their relevance to cancer therapy.Current Cancer Drug Targes;2005;5:9−20。
【非特許文献4】Brooks CLとGu W.p53 ubiquitination:mdm2 and beyond.Molecular Cell 21、307−315.5。
【非特許文献5】Blattner C,Hay T,Meek D,Lane DP.Hypophosphorylation of Mdm2 augments p53 stability.(2002)Mol.Cell.Biol.、22、6170−6182。
【非特許文献6】Vassilev LT,Vu BT,Graves B,Carvajal D,Podlaski F,Filipovic Z,Kong N,Kammlott U,Lukacs C,Klein C,Fotouhi N,Liu EA.In Vivo Activation of the p53 Pathway by Small−Molecule Antagonists of MDM2.Science;2004;303:844−848。
【非特許文献7】Grasberger BL,Lu T,Schubert C,Parks DJ,Carver TE,Koblish HK,Cummings MD,LaFrance LV,Milkiewicz KL,Calvo RR,Maguire D,Lattanze J,Franks CF,Zhao S,Ramachandren K,Bylebyl GR,Zhang M,Manthey CL,Petrella EC,Pantoliano MW,Deckman,IC,Spurlino,JC,Maroney AC,Tomezuk BE,Molloy CJ,Bone RF.Discovery and Cocrystal Structure of Benzodiazepinedione HDM2 Antagonists that Activate p53 in Cells.J.Med.Chem.;2005;48:909−12
【発明の概要】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメント、ならびにタンパク質−プロテアソーム結合部位のタンパク質若しくは小分子との相互作用
、とりわけS2、S4、S5a、S6a若しくはS6bまたはそれらのフラグメントよりなる群から選択されるプロテアソームサブユニットを含んでなる相互作用を利用するアッセイを提供する。
【0009】
該アッセイは、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの別のタンパク質、プロテアソーム若しくはプロテアソームサブユニットとの相互作用を試験化合物が変え得るかどうかを同定するのに有用である。該アッセイは、試験化合物がUPS経路のアゴニストであるかアンタゴニストであるかを決定するのにもまた有用である。上のアッセイは、HDM2(配列番号5)、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの別のタンパク質、プロテアソーム若しくはプロテアソームサブユニットとの相互作用が、陽性若しくは陰性対照として評価されるか、または該試験化合物で得られる結果と比較される、競合、非競合および比較アッセイを包含する多様な形式で実施し得る。
【0010】
別の局面において、本発明は、単離されたタンパク質−HDM2結合部位ならびに単離されたタンパク質−プロテアソーム結合部位(ED(X)Y配列)をコードする単離かつ精製されたポリペプチドおよびポリヌクレオチド分子、ならびに本発明のアッセイでの前記結合領域の使用に関する。
【0011】
さらなる一態様において、本発明は、本発明により提供されるペプチド、ペプチド模倣物若しくはポリヌクレオチドを含んでなる製薬学的組成物、ならびに癌および乾癬のような増殖性状態を阻害するためのそれらの治療的使用に関する。本発明は、本発明のペプチド、ペプチド模倣物若しくはポリヌクレオチドの有効量を投与することによる、形質転換細胞を包含する細胞の異常増殖の阻害方法を提供する。細胞の異常増殖は正常な調節機構に依存しない細胞増殖(例えば接触阻害の喪失)を指す。これは、癌細胞の増殖停止、最終分化および/若しくはアポトーシスを引き起こすことにより直接、ならびに腫瘍の血管新生を阻害することによる間接的の双方の腫瘍増殖の阻害を包含する。
【0012】
これおよび本発明のさらなる局面は下により詳細に論考されるであろう。
【0013】
[発明の詳細な記述]
定義
別の方法で明示的に本明細書に提供されるところを除き、本出願で使用されるところの以下の用語のそれぞれは、下に示す意味を有する。
【0014】
「MDM2」としてもまた知られる「HDM2」は「mouse double minute 2ホモログ」(SwissProtエントリQ00987)を意味し、そしてヒトタンパク質に制限されないが、しかしマウスタンパク質(SwissProtエントリP23804)、イヌタンパク質(SwissProtエントリP56950)、ウマタンパク質(SwissProtエントリP56951)、ネコタンパク質(SwissProtエントリQ7YRZ8)のような関連タンパク質、またはヒト配列(SwissProtエントリQ00987)に対する最低70、80、90、95、97若しくは99%の配列同一性を有するタンパク質を包含する。p53結合タンパク質MDM2としてもまた知られるHDM2は、元はOlinerら(Nature、(1992);358:80−83)によりクローン化された。「関連タンパク質」で、ヒト配列(SwissProtエントリQ00987)に対する最低40、60若しくは69%の配列同一性を有するタンパク質を意味している。
【0015】
「プロテアソーム」はユビキチン化されたタンパク質の分解を標的とする大型の多サブユニット複合体を意味している。
【0016】
「プロテアソームサブユニット」は、プロテアソームサブユニット6A、S6A若しくはPSMC3;プロテアソームサブユニット6B、S6B若しくはPSMC4;プロテアソームサブユニット5A、S5A若しくはPSMD4;プロテアソームサブユニット2、S2若しくはPSMD2;またはプロテアソームサブユニット4、S4若しくはPSMC1を意味している。それはヒトタンパク質に制限されないが、しかしマウスS6A(SwissProtエントリQ88685)、ラットS6A(SwissProtエントリQ63569)、マウスS6B(SwissProtエントリP54775)、ラットS6B(SwissProtエントリQ63570)、ウシS6B(SwissProtエントリQ3T030)、マカクS6B(SwissProtエントリQ4R7L3)、マウスS5A(SwissProtエントリQ35226)、ウシS5A(SwissProtエントリQ58DA0)、マウスS2(SwissProtエントリQ8VDM4)、ウシS2(SwissProtエントリP56701)、マウスS4(SwissProtエントリP62192)、若しくはラットS4(SwissProtエントリP62193)のような関連タンパク質を包含する。それはまた、ヒト配列S6A(SwissProtエントリP17980)、S6B(SwissProtエントリP43686)、S5A(SwissProtエントリP55036)、S2(SwissProtエントリQ13200)若しくはS4(SwissProtエントリP62191)に対する最低70、80、90、95、97若しくは99%の配列同一性を有するタンパク質も包含する。
【0017】
「投与すること」は、当業者に既知の多様な方法および送達系のいずれかを使用して遂げられ若しくは実施される様式で送達することを意味している。投与することは、例えば、局所で、静脈内で、心周囲に、経口で、植込み物を介して、経粘膜で、経皮で、筋肉内で、皮下で、腹腔内で、くも膜下腔内で、リンパ内に、病変内で若しくは硬膜外で実施し得る。投与することは、例えば1回、複数回、および/または1若しくはそれ以上の延長された期間でもまた実施し得る。
【0018】
「宿主細胞」は、限定されるものでないが細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を挙げることができる。細菌細胞は、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法および微小注入法のような当該技術分野で公知の方法によりトランスフェクトし得る。
【0019】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書で互換性に使用され、そしてそれぞれデオキシリボヌクレオチドおよび/若しくはリボヌクレオチドのポリマーを指す。デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは天然に存在し得るか、若しくはそれらの合成アナログであり得る。
【0020】
「生理学的状態」という用語は、所定の細胞に関して、細胞の生化学的環境を通常構成するとみられる状態を意味している。細胞の生化学的環境は、細胞が通常曝露される数種若しくは全部のプロテアーゼを制限なしに包含する。こうした状態は、限定されるものでないがin vivo状態を挙げることができる。
【0021】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は本明細書で互換性に使用され、そしてそれぞれアミノ酸残基のポリマーを意味している。アミノ酸残基は天然に存在し得るか、若しくはそれらの化学的アナログであり得る。ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質は、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、水酸化およびADP−リボシル化のような修飾もまた包含し得る。
【0022】
「被験体」は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス若しくはラットのようなげっ歯類、シチメンチョウ、ニワトリおよび霊長類を制限なしに包含する哺乳動物若し
くは鳥類のようないかなる動物も意味している。好ましい態様において、被験体はヒトである。
【0023】
「処置すること」は、被験体の疾患を排除すること、その経過を復帰させること、その進行を遅らせること、その症状を低下させること,若しくは別の方法で軽減することを制限なしに包含する。
【0024】
「ベクター」は当該技術分野で既知のいかなる核酸ベクターも意味している。こうしたベクターは、限定されるものでないがプラスミドベクター、コスミドベクターおよびバクテリオファージベクターを挙げることができる。
【0025】
本明細書で使用されるところの「化合物」は、いずれかの大きさの原子の有機若しくは無機集成体であり、そして小分子(約2500ダルトン未満)若しくは大型分子、例えばペプチド、ポリペプチド、全タンパク質およびポリヌクレオチドを包含する。
【0026】
「候補物質」および「試験化合物」という用語は互換性に使用され、そしてHDM2、関連タンパク質若しくはそれらのフラグメントのプロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのフラグメントとの結合と相互作用すると考えられる物質を指す。本発明の方法を使用して検討し得る例示的候補物質は、限定されるものでないが、ペプチド、酵素、酵素基質、補助因子、糖、オリゴヌクレオチド、化合物小分子およびモノクローナル抗体を挙げることができる。
【0027】
「調節する」は、野生型若しくは変異体のHDM2、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくは関連タンパク質のいずれかの若しくは全部の化学的および生物学的活性若しくは特性の増大、減少若しくは他の変化を意味している。
【0028】
「相互作用する」は、分子間の「結合」相互作用を包含する分子間の検出可能な直接および間接的相互作用を意味している。相互作用は、例えば性質がタンパク質−タンパク質若しくはタンパク質−核酸であり得る。こうした相互作用は技術既知の手順、例えば酵母2ハイブリッドアッセイ、免疫沈降、SPAアッセイ若しくはフィルター結合アッセイを使用して検出し得る。
【0029】
「プロテアソーム結合ドメイン」若しくは「プロテアソーム結合フラグメント」で、プロテアソーム若しくはプロテアソームサブユニットに結合し得るHDM2タンパク質若しくは関連タンパク質の部分を意味している。
【0030】
「ED(X)Y配列およびそれらの対蹠物」で、Hdm2、Hdm2関連タンパク質、プロテアソームおよびプロテアソームサブユニットに存在する下述されるところのポリペプチドならびにそれらのホモログおよびアナログ、ならびにこれらの配列が結合するそれらの対蹠物ポリペプチドを意味している。
【0031】
本明細書で使用されるところの「単離された」は、問題のポリヌクレオチド、タンパク質およびポリペプチド若しくはそれらのそれぞれのフラグメントが、それらが当業者により操作され得るように(限定されるものでないが配列決定、制限消化、部位特異的突然変異誘発、および核酸フラグメントのための発現ベクターへのサブクローニング、ならびにポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を生成する機会を提供する量のタンパク質若しくはタンパク質フラグメントを得ること、アミノ酸配列決定およびペプチド消化を挙げることができる)それらのin vivo環境から取り出されているという事実を指す。言い換えれば、「単離された」は、天然に存在する配列がその天然の細胞の情況から取り出されていることを意味している。従って、該配列は細胞を含まない溶液中にありうるか、
または異なる細胞環境若しくは核酸の情況に置かれることができる。従って、本明細書で特許請求される核酸は、全細胞若しくは細胞ライセート中、または部分的、実質的若しくは完全に精製された形態の不均質な物質として存在し得る。
【0032】
ポリヌクレオチドは、それが環境汚染物質から精製される場合に「精製された」とみなされる。従って、細胞から単離されたポリヌクレオチドは、標準的方法により細胞成分から精製される場合に実質的に精製されているとみなされる一方、化学合成される核酸配列はその化学的前駆体から精製されている場合に実質的に精製されているとみなされる。「実質的に純粋な」タンパク質若しくは核酸は、典型的にサンプルの最低85%を含むことができ、より大きいパーセンテージが好ましい。タンパク質若しくは核酸分子の純度の測定方法は、ポリアクリルアミド若しくはアガロースのようなマトリックス中で調製物を電気泳動することによる。純度は染色後の単一バンドの出現により明示される。他の純度評価方法は、クロマトグラフィー、質量分析および分析的遠心分離を包含する。
【0033】
本明細書で使用されるところの「相補的」若しくは「相補性」という用語は、水素結合により会合して二本鎖核酸分子を形成するプリンおよびピリミジンヌクレオチドの能力を指す。以下の塩基対すなわちグアニンおよびシトシン;アデニンおよびチミン;ならびにアデニンおよびウラシルが相補性により関係する。本明細書で使用されるところの「相補的」は、前記分子の長さ全体にわたり2種の一本鎖核酸分子を含んでなる実質的に全部の塩基対に前述の関係が当てはまることを意味している。「部分的に相補的」は、2種の一本鎖核酸分子の一方が、該分子の一方の一部分が一本鎖のまま留まるような他者より長さが短い、前述の関係を指す。
【0034】
本明細書で使用されるところの「ハイブリダイゼーション」という用語は、一本鎖核酸分子がヌクレオチド塩基対形成により相補鎖と結合する過程を指す。
【0035】
「ストリンジェンシー」という用語はハイブリダイゼーション条件を指す。高ストリンジェンシー条件は非相同塩基対形成を嫌う。低ストリンジェンシー条件は反対の効果を有する。ストリンジェンシーは例えば温度および塩濃度により変えることができる。「ストリンジェンシー条件」は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、Denhardt液、10%デキストラン硫酸および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含んでなる溶液中42℃で一夜インキュベーション、次いで0.1×SSC中約65℃でフィルターを洗浄することを指す。さらなる適するハイブリダイゼーション条件を実施例に記述する。
【0036】
「ベクター」という用語は、宿主細胞による外因性DNAの複製および/若しくは適切な発現のため宿主細胞中にDNAを移入するのに有用である外因性DNAのいかなる担体も指す。
【0037】
本記述を通じて、分子生物学技術の情況で使用される場合の「標準的方法」、「標準的プロトコル」および「標準的手順」という用語は、Current Protocols
in Molecular Biology、編者F.Ausubelら、John Wiley and Sons,Inc.1994、若しくはSambrook,J.,Fritsch,E.F.とManiatis,T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989のような通常の実験室手引書に見出されるプロトコルおよび手順として理解されるべきである。
【0038】
本発明の態様
HDM2タンパク質、関連タンパク質およびそれらのタンパク質結合フラグメント
本発明はHDM2のタンパク質結合フラグメントをコードする単離されたポリペプチド分子を提供し、前記フラグメントは、親タンパク質中で連続である最低10アミノ酸を含んでなるが、しかし親タンパク質中で連続である最低11、12、13、14、15、20、30、40、60、80、100、150、200、250、300若しくは350アミノ酸を望ましくは含有することができ、また、前記フラグメントは、限定されるものでないがHDM2タンパク質、プロテアソーム若しくはプロテアソームサブユニットの別の部分を挙げることができる他のタンパク質を結合することが可能である。
【0039】
本発明は、親タンパク質中で連続である最低10アミノ酸を含んでなるが、しかし親タンパク質中で連続である最低11、12、13、14、15、20、30、40、60、80、100、150、200、250、300若しくは350アミノ酸を望ましくは含有しうる、HDM2関連タンパク質のタンパク質結合フラグメントをコードする単離されたポリペプチド分子をさらに提供し、そして前記フラグメントは他のタンパク質を結合することが可能である。
【0040】
特定の一態様において、前記タンパク質結合フラグメントは、
a)HDM2(配列番号5)のN末端ドメイン、
b)HDM2(配列番号5)のアミノ酸0−200、
c)HDM2(配列番号5)の中央ドメイン、
d)HDM2(配列番号5)のアミノ酸200−400、
e)HDM2(配列番号5)のアミノ酸200−300、若しくは
f)HDM2(配列番号5)のアミノ酸300−400
を含んでなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0041】
より特定の一態様において、前記タンパク質結合フラグメントは、
a)1若しくは2個のEDY配列(配列番号11若しくは配列番号12)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号11若しくは配列番号12に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)HDM2のアミノ酸配列252−264(配列番号11)若しくは387−399(配列番号12)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号11若しくは配列番号12に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、あるいは
c)HDM2(配列番号5)のアミノ酸257−259若しくは392−394またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号5に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0042】
なおさらなる特定の一態様において、前記タンパク質結合フラグメントは、
a)1若しくは2個のEDY配列(配列番号11若しくは配列番号12)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号11若しくは配列番号12に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)HDM2のアミノ酸252−264(配列番号11)若しくは387−399(配列番号12)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号11若しくは配列番号12に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、あるいは、
c)HDM2(配列番号5)のアミノ酸257−259若しくは392−394またはそ
れらのホモログであって、前記ホモログは配列番号5に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
よりなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0043】
本発明は前記HDM2フラグメントをコードする単離された核酸をさらに提供し、前記フラグメントは上で定義されたところのタンパク質結合ドメインを最小にコードするとみられる。該核酸はRNA、若しくはcDNAおよびゲノムDNAを包含するDNA、とりわけDNAであり得る。
【0044】
特定の一態様において、前記核酸配列は、
a)HDM2(配列番号25)のN末端ドメイン、
b)HDM2(配列番号25)のヌクレオチド配列0−600、
c)HDM2(配列番号25)の中央ドメイン、
d)HDM2(配列番号25)のヌクレオチド配列600−1600、
e)HDM2(配列番号25)のヌクレオチド配列600−1100、
f)HDM2(配列番号25)のヌクレオチド配列1100−1600
を含んでなるヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0045】
より特定の一態様において、前記核酸配列は、
a)1若しくは2個のEDYヌクレオチド配列(配列番号18若しくは配列番号19)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号18若しくは配列番号19に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)HDM2のヌクレオチド配列1050−1088(配列番号18)若しくは1455−1493(配列番号19)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号18若しくは配列番号19に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、あるいは、
c)配列番号18若しくは配列番号19のヌクレオチド配列16−24またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号25に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなるヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0046】
なおさらなる特定の一態様において、前記核酸配列は、
a)1若しくは2個のEDYヌクレオチド配列(配列番号18若しくは配列番号19)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号18若しくは配列番号19に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)HDM2のヌクレオチド配列1050−1088(配列番号18)若しくは1455−1493(配列番号19)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号18若しくは配列番号19に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、あるいは
c)配列番号18若しくは配列番号19のヌクレオチド配列16−24またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号25に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
よりなるヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0047】
HDM2内の結合フラグメントの同一性および特徴付けを考えれば、
(a)上述されたポリヌクレオチドに相補的である核酸分子;
(b)上のポリヌクレオチドの最低15の連続する塩基を含んでなる核酸分子;
(c)上述されたポリヌクレオチド分子にストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸分子;若しくは
(d)上述されたポリヌクレオチドのいずれかのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に遺伝暗号の結果として縮重されるヌクレオチド配列を含んでなるHDM2のタンパク質結合フラグメントをコードする核酸分子
よりなる群若しくは群のメンバーから選択される単離かつ精製された核酸分子を提供することもまた本発明の一目的である。
【0048】
本発明は、上で定義されたところの単離された核酸分子を含んでなるベクター、ならびにこうしたベクターで安定に形質転換されている宿主細胞もまた提供する。従って、特定の一態様において、前記ベクターは、pGL3luc、pBLCAT5(LMBP 2451)、pGMCSFlacZ(LMBP 2979)、pEGFP若しくはpSEAPbasic(DMB 3115)のような発現ベクターであり、LMBPおよびDMB番号はベルギー微生物共同コレクション(Belgian Co−ordinated Collections of Micro−organisms)のこれらの発現ベクターの受託番号を指す。本発明のベクターを内部に持つ宿主細胞もまた本発明に包含される。こうした宿主細胞は、原核生物細胞、単細胞真核生物細胞、若しくは多細胞生物体由来の細胞であり得る。宿主細胞は、従って、例えば、大腸菌(E.coli)細胞のような細菌細胞;サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)若しくはピキア パストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、またはHEK293細胞のような哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞へのベクターの導入を遂げるのに使用される方法は、組換えDNA法になじみのある当業者に公知の標準的方法である。
【0049】
従って、さらなる一態様において、本発明は、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの別のタンパク質、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントとの相互作用を利用するアッセイ若しくは精製方法における、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントをコードする単離かつ精製されたポリペプチドの使用に関する。
【0050】
とりわけ、本発明は、上述された単離かつ精製されたポリペプチドの本発明のアッセイ若しくは方法における使用を包含する。
【0051】
さらなる一態様において、本発明は、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントをコードする上述された単離かつ精製された核酸分子に関し、前記核酸分子は、医薬品としての使用のためRNA、DNA、cDNA若しくはゲノムDNAのいずれかである。
【0052】
当業者は、遺伝暗号の縮重の結果、ヌクレオチド塩基対の多数の「サイレント」置換を、コードされるアミノ酸(1種若しくは複数)若しくはタンパク質産物の同一性を変えることなく、配列番号18若しくは配列番号19と同定される配列または前記配列の上で同定されたフラグメントに導入し得ることを認識するであろう。全部のこうした置換は本発明の範囲内にあることを意図している。
プロテアソーム、プロテアソームサブユニットおよびそれらのタンパク質結合フラグメント。
【0053】
本発明は、プロテアソーム若しくはプロテアソームサブユニットのタンパク質結合領域
をコードする単離されたポリペプチド分子を提供し、前記フラグメントは親タンパク質中で連続である最低10アミノ酸を含んでなるが、しかし親タンパク質中で連続である最低11、12、13、14,15、20、30、40、60、80、100、150、200、250、300若しくは350アミノ酸を望ましくは含有することができ、また、前記フラグメントは例えばHDM2若しくはそのプロテアソーム結合フラグメントのようなタンパク質を結合することが可能である。
【0054】
特定の一態様において、プロテアソーム若しくはプロテアソームサブユニットの前記タンパク質結合フラグメントは、限定されるものでないがプロテアソームサブユニットS6A、S6B、S5A、S2若しくはS4またはそれらのホモログに存在するタンパク質結合フラグメントを挙げることができるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択され、前記ホモログは、配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
【0055】
より特定の一態様において、前記タンパク質結合フラグメントは、
a)アミノ酸配列、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13のいずれか1種に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)S6Aのアミノ酸413−425(配列番号7)、S6Bのアミノ酸356−368(配列番号8)、S5Aのアミノ酸318−331(配列番号9)、S2のアミノ酸432−444(配列番号10)若しくはS4のアミノ酸431−440(配列番号13)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有するか、あるいは
c)S6A(配列番号1)のアミノ酸418−420、S6A(配列番号2)のアミノ酸418−420、S6B(配列番号3)のアミノ酸361−363、S5A(配列番号4)のアミノ酸323−326、S2(配列番号6)のアミノ酸437−439若しくはS4(配列番号13)のアミノ酸436−439またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0056】
なおさらなる特定の一態様において、前記タンパク質結合フラグメントは、
a)アミノ酸配列、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13のいずれか1種に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)S6Aのアミノ酸413−425(配列番号7)、S6Bのアミノ酸356−368(配列番号8)、S5Aのアミノ酸318−331(配列番号9)、S2のアミノ酸432−444(配列番号10)若しくはS4のアミノ酸431−440(配列番号13)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有するか、あるいは
c)S6Aの(配列番号1)アミノ酸418−420、S6A(配列番号2)のアミノ酸418−420、S6B(配列番号3)のアミノ酸361−363、S5A(配列番号4)のアミノ酸323−326、S2(配列番号6)のアミノ酸437−439若しくはS
4(配列番号13)のアミノ酸436−439またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
よりなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0057】
本発明は、上で定義されたところのタンパク質結合ドメインをコードする単離された核酸をさらに提供する。該核酸はRNA、若しくはcDNAおよびゲノムを包含するDNA、とりわけDNAであり得、そしてさらなる一態様において、プロテアソームサブユニットからのタンパク質結合ドメインおよびHDM2結合ドメインをコードする核酸配列から選択される。
【0058】
特定の一態様において、単離された核酸分子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号6よりなる群から選択されるアミノ酸配列よりなるプロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2に存在する結合フラグメントをコードする。より特定の一態様において、前記単離された核酸は、S6Aのアミノ酸413−425(配列番号7)、S6Bのアミノ酸356−368(配列番号8)、S5Aのアミノ酸318−331(配列番号9)、S2のアミノ酸432−444(配列番号10)若しくはS4のアミノ酸431−440(配列番号13)またはそれらのホモログ(前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有し)、あるいは前述の核酸配列のいずれかに対する最低70、80、90、95、97、若しくは98%の配列同一性を有する核酸配列よりなるタンパク質結合領域を含んでなるフラグメントをコードする。
【0059】
より特定の一態様において、前記核酸配列は、
a)プロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2のEDYヌクレオチド配列であって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
b)プロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2の配列番号21のヌクレオチド配列1431−1469、配列番号22の1103−1141、配列番号23の1014−1055、配列番号24の1327−1365、若しくは配列番号26の1339−1371またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24若しくは配列番号16に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
c)配列番号14、配列番号15若しくは配列番号17のヌクレオチド配列1−39、配列番号16のヌクレオチド配列1−42、または配列番号20のヌクレオチド配列1−33あるいはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する。
d)配列番号14、配列番号15若しくは配列番号17のヌクレオチド配列16−24、配列番号16若しくは配列番号20のヌクレオチド配列16−27またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する
を含んでなるヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0060】
なおさらなる特定の一態様において、前記核酸配列は、
a)プロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2のEDYヌクレオチド配列であって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
b)プロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2の配列番号21のヌクレオチド配列1431−1469、配列番号22の1103−1141、配列番号23の1014−1055、配列番号24の1327−1365若しくは配列番号26の1339−1371またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24若しくは配列番号16に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
c)配列番号14、配列番号15若しくは配列番号17のヌクレオチド配列1−39、配列番号16のヌクレオチド配列1−42または配列番号20のヌクレオチド配列1−33、あるいはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する。
d)配列番号14、配列番号15若しくは配列番号17のヌクレオチド配列16−24、配列番号16若しくは配列番号20のヌクレオチド配列16−27またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
よりなるヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバーから選択される。
【0061】
プロテアソームのコンセンサス結合領域の同一性および特徴付けを考えれば、
a)上のポリヌクレオチドに相補的である核酸分子;
b)上のポリヌクレオチドの最低15の連続する塩基を含んでなる核酸分子;
c)上のポリヌクレオチド分子に緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子;若しくは
d)遺伝暗号の結果として上のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に縮重されるヌクレオチド配列を含んでなる、プロテアソームサブユニットのタンパク質結合領域をコードする核酸分子およびそれらの対蹠物
よりなる群から選択される単離かつ精製された核酸分子を提供することもまた本発明の一目的である。
【0062】
本発明は、上で定義されたところの単離された核酸分子を含んでなるベクター、ならびにこうしたベクターで安定に形質転換されている宿主細胞もまた提供する。従って、特定の一態様において、前記ベクターは、pGL3luc、pBLCAT5(LMBP 2451)、pGMCSFlacZ(LMBP 2979)、pEGFP若しくはpSEAPbasic(DMB 3115)のような発現ベクターであり、LMBPおよびDMB番号はベルギー微生物共同コレクション(Belgian Co−ordinated Collections of Micro−organisms)のこれらの発現ベクターの受託番号を指す。本発明のベクターを内部に持つ宿主細胞もまた本発明に包含される。こうした宿主細胞は、原核生物細胞、単細胞真核生物細胞、若しくは多細胞生物体由来の細胞であり得る。宿主細胞は、従って、例えば、大腸菌(E.coli)細胞のような細菌細胞;サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)若しくはピキア パストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、またはHEK293細胞のような哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞へのベクターの導入を遂げるのに使用される方法は、組換えDNA法になじみのある当業者に公知の標準的方法である。
【0063】
従って、さらなる一態様において、本発明は、HDM2および関連タンパク質のプロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントとの相互作用を利用するアッセイにおける、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントをコードする単離かつ精製されたポリペプチドの使用に関する。
【0064】
とりわけ、本発明は、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントをコードする上述された単離かつ精製されたポリペプチドの本発明のアッセイでの使用を包含する。
【0065】
医薬品としての使用のための、プロテアソームサブユニット、タンパク質結合フラグメント若しくはHDM2結合フラグメントをコードする上述された単離かつ精製されたポリペプチドおよび核酸分子を提供することもまた、本発明の一態様である。
【0066】
当業者は、遺伝暗号の縮重の結果、ヌクレオチド塩基対の多数の「サイレント」置換を、コードされるアミノ酸(1種若しくは複数)若しくはタンパク質産物の同一性を変えることなく、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20と同定される配列または前記配列の上で同定されたフラグメントに導入し得ることを認識するであろう。全部のこうした置換は本発明の範囲内にあることを意図している。
【0067】
核酸およびポリペプチド配列の同一性パーセントは、問い合わせ配列と参照配列を比較する商業的に入手可能なアルゴリズムを使用して計算し得る。以下のプログラム(国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)により提供される)すなわちBLAST、gapped BLAST、BLASTNおよびPSI−BLASTを使用して相同性/同一性を決定することができ、これらはデフォルトのパラメータとともに使用しうる。
【0068】
アルゴリズムGAP(Genetics Computer Group、ウィスコンシン州マディソン)は、一致の数を最大にしかつギャップの数を最少にする、2種の完全な配列を整列すためのNeedlemanとWunschのアルゴリズムを使用する。一般に、デフォルトのパラメータを使用し、gap creation penalty=12およびgap extension penalty=4である。
【0069】
核酸配列若しくはその一部分と問い合わせ配列の間の最良の全体的一致の別の決定方法は、Brutlagら(Comp.App.Biosci.、6;237−245(1990))のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムの使用である。該プログラムは包括的配列アライメントを提供する。前記包括的配列アライメントの結果は同一性パーセントである。同一性パーセントを計算するためのDNA配列のFASTDB検索で使用される適するパラメータは、Matrix=Unitary、k−tuple=4、Mismatch penalty=1、Joining Penalty=30、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05およびWindow Size=500若しくはヌクレオチド塩基での問い合わせ配列長さのいずれか短い方である。アミノ酸アライメントの同一性および類似性パーセントを計算するのに適するパラメータは、Matrix=PAM 150、k−tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05およびWindow Size=500若しくはヌクレオチド塩基での問い合わせ配列長さのいずれか短い方である。
【0070】
本発明のタンパク質およびペプチドは全部の可能な保存的アミノ酸変化を包含し、「保存的アミノ酸変化」は、ある種のアミノ酸の技術に認識される置換可能性に基づく、親分子の生物学的活性に影響を及ぼさない親受容体タンパク質若しくはペプチド中の1個若しくはそれ以上のアミノ酸残基の置換を指す(例えばM.Dayhoff、In Atlas of Protein Sequence and Structure、Vol.5、Supp.3、345−352ページ、1978を参照されたい)。
【0071】
当業者は、本発明のポリペプチド、すなわちHDM2タンパク質、関連タンパク質、それらのタンパク質結合フラグメント、プロテアソーム、プロテアソームサブユニットおよびそれらのタンパク質結合フラグメントを、例えばハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅若しくは新規DNA合成を包含する複数の組換えDNA技術により得ることができることを認識するであろう(例えば、T.Maniatisら Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第14章(1989)を参照されたい)。
【0072】
本発明のペプチドおよび誘導体は、十分に確立された標準的な液相若しくは好ましくは固相ペプチド合成法に従って容易に製造し得、それらの一般的記述は広範に入手可能であるか、または、それらは液相法、若しくは固相、液相および溶液化学のいずれかの組み合わせにより溶液中で製造しうる。
【0073】
本発明のポリペプチドは、例えばコーディング核酸からの発現による産生後に単離かつ/若しくは精製(例えば抗体を使用して)しうる。
【0074】
単離かつ/若しくは精製されたポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、最低1種の付加的な成分を包含しうる組成物、例えば製薬学的に許容できる賦形剤、ベヒクル若しくは担体を包含する製薬学的組成物の製剤で使用しうる。
【0075】
本発明のポリペプチドは、免疫原として、若しくは、そうでなければ特定の抗体を得ることにおいて使用しうる。抗体はポリペプチドの精製および他の操作、診断スクリーニングならびに治療の情況で有用である。本発明のポリペプチドに対する抗体は、有利には当該技術分野で既知である技術により製造しうる。例えば、ポリクローナル抗体は、マウスのような宿主動物に増殖因子若しくはそのエピトープを接種すること、および免疫血清を回収することにより製造しうる。モノクローナル抗体は、Kohler R.とMilstein C.、Nature(1975)256、495−497により記述されたような既知技術により製造しうる。
【0076】
アッセイ
本発明のアッセイは、生物学的活性若しくは結合タンパク質についての化合物のスクリーニングの技術分野で公知の多くの形式で設計し得る。
【0077】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、1種若しくはそれ以上の疾患状態、とりわけ上で挙げられた疾患を包含する1種若しくはそれ以上の生物学的機能を司る。従って、例えばUPS経路を妨害する化合物を同定するためのスクリーニング方法を考案することが望ましい。
【0078】
本発明のアッセイは、有利には、HDM2とプロテアソーム、プロテアソームサブユニットおよびそれらの結合フラグメントの間の相互作用の破壊が例えばユビキチン化されたタンパク質の下流での標的を定めた分解に影響を及ぼすという事実を活用する。
【0079】
さらに、本発明は、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントに特異的に結合する化合物の同定方法を包含し、前記化合物は、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントと別のタンパク質、プロテアソーム若しくはそのサブユニットの間の相互作用に影響を及ぼす。
【0080】
HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントへの化合物の結合は、アミノ酸の単純な直線的伸長のみを必要とし得るか、例えば改変された(例えばリン酸化若しくは水酸化)またはコンホメーション的に感受性のモチーフを含み得るか、あるいは該タンパク質に沿って特定の方法で分布されている数種のアミノ酸配列を必要とし得る。
【0081】
本発明の第一の方法は、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの化合物との相互作用がHdm2結合タンパク質をタンパク質分解に対し保護する最低1段階を該アッセイが組み込むため、当該技術分野で記述されたものと異なる。より具体的には、該化合物はUPS経路によるタンパク質分解に対しHdm2結合タンパク質を保護する。
【0082】
従って、本発明は、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントへのHdm2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの結合に影響を及ぼす化合物の同定方法を提供し、前記方法は
a)試験されるべき化合物を、HDM2タンパク質若しくは関連タンパク質またはそれらのタンパク質結合フラグメントと接触させること、および
b)前記化合物が、ユビキチン−プロテアソームタンパク質分解経路によるHdm2結合タンパク質のタンパク質分解に影響を及ぼすかどうか決定すること
を含んでなる。
【0083】
本発明の一態様において、HDM2結合タンパク質のタンパク質分解は、細胞、細胞ライセート、in vitro UPS系若しくはin vivo系で遂げることができる。
【0084】
別の態様において、Hdm2結合タンパク質はp53である。
【0085】
別の態様において、Hdm2結合タンパク質はp53以外である。
【0086】
本発明の第二の方法は、ポリペプチドと直接若しくは間接的に会合した標識によって、ポリペプチド、または該ポリペプチドを持つ細胞若しくは膜、またはそれらの融合タンパク質への候補化合物の結合を単純に測定しうる。それらのアッセイは、それらがED(X)Y配列若しくはそれらの対蹠物を適用するために当該技術と異なる。
【0087】
従って、一態様において、該スクリーニング方法は、標識HDM2、標識関連タンパク質若しくは標識したそれらのフラグメントを含んでなり、前記標識は、プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントに結合されたHDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの量に対する試験化合物の影響を測定するのに使用する。
【0088】
従って、本発明は、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントへのHdm2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの結合に影響を及ぼす化合物の同定方法を提供し、前記方法は
a)プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントを、標識HDM2、標識関連タンパク質若しくは標識したそれらのタンパク質結合フラグメントととも
にインキュベートすること、
b)試験化合物をインキュベーション混合物に添加すること、および
c)プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントに結合された標識HDM2、標識関連タンパク質若しくは標識したそれらのタンパク質結合フラグメントの量に対する試験化合物の影響を測定すること
を含んでなる。
【0089】
あるいは、該スクリーニング方法は標識プロテアソームサブユニット若しくは標識したそのタンパク質結合フラグメントを含んでなり、前記標識は、プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントに結合されたHDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの量に対する試験化合物の影響を測定するのに使用する。
【0090】
従って、本発明は、Hdm2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントのプロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントへの結合に影響を及ぼす化合物の同定方法を提供し、前記方法は
a)標識プロテアソームサブユニット若しくは標識したそのタンパク質結合フラグメントを、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントとともにインキュベートすること、
b)試験化合物を該インキュベーション混合物に添加すること、および
c)HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントに結合された、標識プロテアソームサブユニット若しくは標識したそのタンパク質結合フラグメントの量に対する試験化合物の影響を測定すること
を含んでなる。
【0091】
可能な結合アッセイの例は、下の実施例で提供されるところの免疫沈降アッセイ、若しくはBiacore装置により活用される表面プラズモン共鳴効果の使用(Malmqvist M.、Biochem Soc Trans.1999 Feb;27(2):335−40)である。後者において、本発明のポリペプチドのFLAG標識若しくはHis標識バージョンをBiacoreのバイオセンサーチップに結合し得、そして、化合物の存在および非存在下で結合パートナーの結合を検査して結合部位の競合相手を同定し得る。例えば、一態様において、上で定義されたところのプロテアソームサブユニットをFlag標識を使用してBiacoreチップに固定することができ、そして化合物の存在および非存在下でタンパク質若しくはそのフラグメントの結合を検査して結合部位の競合相手を同定することができる。あるいは、上で定義されたところのプロテアソームのHDM2結合フラグメント若しくはそのホモログをFlag標識を使用してBiacoreチップに固定することができ、そして化合物の存在および非存在下でHDM2若しくはそのプロテアソーム結合フラグメントの結合を検査して結合部位の競合相手を同定することができる。
【0092】
本発明のポリペプチドの標識は、放射標識リガンドの結合および競合相手による該結合部位のこうした放射リガンドの置換を検出するための慣習的フィルター結合アッセイ(例えばBrandelフィルターアッセイ装置を使用する)若しくはハイスループットのシンチレーション近接型結合アッセイ(SPAおよびCytostar−Tフラッシュプレート技術;Amersham Pharmacia Biotech)で前記分子を固定するのにもまた有用である。放射活性は、96、384、1536マイクロタイターウェル形式から迅速測定を行うことが可能なPackard Topcount若しくは類似の装置で測定し得る。SPA/Cytostar−T技術はハイスループットスクリーニングの影響をとりわけ受けやすく、そして従ってこの技術は標準的リガンドを置換することが可能な化合物についてのスクリーニングとして使用するのに適する。
【0093】
さらに、これらのスクリーニング方法は、酵素の酵素活性に適切な検出系を使用して、前記酵素の活性化若しくは阻害により生成されるシグナルを候補化合物がもたらすかどうかを試験しうる。酵素活性は一般に、プロセシングに際して測定可能なシグナルを提供する適切な基質を使用して評価する。
【0094】
化合物は、多様な供給源、例えば細胞、細胞を含まない調製物、化学物質ライブラリーおよび天然産物の混合物から同定しうる。そのように同定されるこうしたアゴニスト若しくはアンタゴニストは、場合によっては受容体ポリペプチドの天然の若しくは修飾ペプチド、リガンド、酵素などでありうるか;またはそれらの構造若しくは機能の模倣物でありうる(Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):第5章(1991)を参照されたい)。
【0095】
本発明の一態様において、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントのプロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントへの結合に影響を及ぼす化合物は、ペプチド、より具体的には上述されたポリペプチドの1種、若しくは前記ペプチドの融合タンパク質である。
【0096】
さらなる一局面において、本発明は、溶質(solute)支持体に固定した本発明のペプチド若しくはペプチド模倣物と細胞画分を接触させること、およびそれから結合パートナーを溶離することを含んでなる、タンパク質例えばHDM2結合タンパク質若しくは関連タンパク質、プロテアソームサブユニットまたはプロテアソーム結合タンパク質を含有する細胞画分からのそれらの単離方法を提供する。
【0097】
本発明の別の態様において、プロテアソーム、プロテアソームサブユニット若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントへのHDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントの結合に影響を及ぼす化合物は、小分子、より具体的には化合物JNJ #1である。
【0098】
ED(X)Y配列の発見を、
a)HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントでプロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントをプロービングすること、b)HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントと相互作用するプロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメント(または逆もまた真)の結合部位の接触原子を同定すること、
c)(b)で同定された原子と相互作用する試験化合物を設計すること、および
d)前記設計された試験化合物を、プロテアソームサブユニット、そのタンパク質結合フラグメント、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントと接触させて、HDM2とプロテアソームの間の相互作用を調節する、若しくはユビキチン−プロテアソームタンパク質分解を調節する前記化合物の能力を測定すること
により、プロテアソームサブユニットへのHDM2若しくは関連タンパク質の間の結合のアンタゴニストの構造に基づくすなわち合理的な設計方法でもまた使用しうることが、当業者により容易に認識されるであろう。
【0099】
受容体および酵素のコンホメーションのモデルを創製かつ利用するのに適切なハードウェアおよびソフトウェア双方を包含する分子モデル化技術が当該技術分野で既知である。
【0100】
多数のコンピュータプログラムが、本明細書に記述される方法での潜在的に相互作用する化合物のコンピュータモデル化、モデル構築、ならびにコンピュータでの同定、選択および評価の過程に利用可能でありかつ適する。これらは、例えば、GRID(英国オック
スフォード大学から入手可能)、MCSS(Accelrys,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能)、AUTODOCK(Oxford Molecular Groupから入手可能)、FLEX X(Tripos、ミズーリ州セントルイスから入手可能)、DOCK(カリフォルニア大学、カリフォルニア州サンフランシスコから入手可能)、CAVEAT(カリフォルニア大学バークレー校から入手可能)、HOOK(Accelrys,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能)、ならびにMACCS−3D(MDL Information Systems、カリフォルニア州サンレアンドロから入手可能)、UNITY(Tripos、ミズーリ州セントルイスから入手可能)およびCATALYST(Accelrys,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能)のような3Dデータベースシステムを包含する。潜在的候補物質は、LUDI(Biosym Technologies、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能)、LEGEND(Accelrys,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴから入手可能)およびLEAPFROG(Tripos、ミズーリ州セントルイスから入手可能)のようなソフトウェアパッケージを使用してコンピュータで「新規」にもまた設計しうる。化合物の変形エネルギーおよび静電反発は、GAUSSIAN 92、AMBER、QUANTA/CHARMMおよびINSIGHT II/DISCOVERのようなプログラムを使用して解析しうる。これらのコンピュータ評価およびモデル化技術は、例えばSilicon Graphics、Sun Microsystemsおよび他者から入手可能なワークステーションを包含するいずれかの適するハードウェアで実施しうる。これらのモデル化技術、方法、ハードウェアおよびソフトウェアパッケージは代表的なものであり、そして包括的一覧であることを意図していない。当該技術分野で既知の他のモデル化技術もまた本発明により使用しうる。例えばN.C.Cohen、Molecular Modeling in Drug Design、Academic Press(1996)を参照されたい。
【0101】
本発明の一態様において、プロテアソーム結合ドメインの三次元構造を、S5aプロテアソームサブユニットの原子座標(タンパク質データベースIEUL)±10Å以下、好ましくは5Å以下の前記アミノ酸のバックボーン原子の標準偏差を使用して生成する。
【0102】
本スクリーニングにおいては、結合部位へのこうした化合物の適合の質を形状相補性若しくは推定相互作用エネルギー(Meng,E.C.ら、J.Coma.Chem 13:505−524(1992))のいずれによっても判断しうる。
【0103】
他の分子モデル化技術もまた本発明により使用しうる。例えば、Cohen,N.C.ら、”Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry、J.Med.Chem.33:882−894(1990)を参照されたい。Navia,M.A.とM.A.Murcko、”The Use of Structural Information in Drug Design”、Current Opinions in Structural Biology、2、pp.202−210(1992)もまた参照されたい。
【0104】
化合物が上の方法により一旦設計若しくは選択されれば、その化合物がプロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインと結合若しくは相互作用しうる親和性を、コンピュータ評価および/若しくは該化合物を合成した後に生物学的活性を試験することにより試験かつ最適化しうる。阻害剤若しくは化合物は、全体的結合エネルギーが同様である1以上のコンホメーションでプロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインと相互作用しうる。それらの場合、結合の変形エネルギーは、遊離化合物のエネルギーと、プロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインに該化合物が結合する場合に観察されるコンホメーションの平均エネルギーの間の差違であると解釈される
べきである。
【0105】
プロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインと結合若しくは会合するとして設計若しくは選択された化合物を、その結合された状態でそれが好ましくは結合ドメインとの反発する静電相互作用を欠くことができるようにさらにコンピュータで最適化しうる。こうした非相補的(例えば静電)相互作用は反発する電荷−電荷、双極子−双極子および電荷−双極子相互作用を包含する。とりわけ、阻害剤が結合されている場合の阻害剤とプロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインの間の全静電相互作用の総和は、好ましくは結合のエンタルピーに対し中立の若しくは好ましい寄与をなす。弱結合化合物はSARを決定するようにこれらの方法によってもまた設計することができる。例えば米国特許出願第60/275,629号;同第60/331,235号;同第60/379,617号;および同第10/097,249号明細書を参照されたい。
【0106】
特定のコンピュータソフトウェアが化合物の変形エネルギーおよび静電相互作用を評価するために当該技術分野で利用可能である。こうした用途のため設計されたプログラムの例は、Gaussian 92、revision C(M.J.Frisch、Gaussian,Inc.、ペンシルベニア州ピッツバーグ、著作権(COPYRGT)1992);AMBER、version 4.0(P.A.Kollman、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、著作権1994);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations,Inc.、マサチューセッツ州バーリントン、著作権1994);およびInsight II/Discover(Biosysm Technologies Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ、著作権1994)を包含する。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージが当業者に既知であろう。
【0107】
プロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインと会合する化合物が上述されたとおり一旦最適に選択若しくは設計されていれば、その後、その結合特性を改良若しくは改変するためにその原子若しくは側基のいくつかで置換を行いうる。一般に最初の置換は保存的である。すなわち置換基は元の基とほぼ同一の大きさ、形状、疎水性および電荷を有することができる。もちろん、コンホメーションを変えることが当該技術分野で既知の成分を回避しうることが理解されるべきである。こうした置換化合物をその後、上に詳述された同一のコンピュータの方法により、プロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインへの適合の効力について解析しうる。
【0108】
本発明は本明細書に記述されるポリペプチドのペプチド模倣物もまた提供する。ペプチドアナログは、鋳型ペプチドの特性に類似の特性をもつ非ペプチド薬物として製薬業界で一般に使用されている。これらの型の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物(peptide mimetics)」若しくは「ペプチド模倣物(peptidomimetics)」と命名され(Fauchere(1986)Adv.Drug Res.15:29;VeberとFreidinger(1985)TINS p.392;およびEvansら(1987)J.Med.Chem.30:1229)、そしてコンピュータ化分子モデル化の助けを借りて通常開発される。治療上有用なペプチドに構造的に類似であるペプチド模倣物を、同等の治療若しくは予防効果を生じるのに使用しうる。
【0109】
本発明は、本明細書に記述される配列および/若しくは構造座標を含有するシステム、とりわけコンピュータに基づくシステムをさらに提供する。こうしたシステムは、プロテアソーム結合ドメイン若しくはタンパク質結合ドメインの構造決定および合理的ドラッグデザインを行うよう設計されている。コンピュータに基づくシステムは、上に詳述されたコンピュータの方法のいずれかで本発明の配列および/若しくは構造座標を解析するのに使用されるハードウェア手段、ソフトウェア手段およびデータ記憶手段を指す。本発明の
コンピュータに基づくシステムの最小ハードウェア手段は、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段およびデータ記憶手段を含んでなる。当業者は、現在入手可能なコンピュータに基づくシステムのどれが本発明での使用に適するかを容易に認識し得る。
【0110】
従って、本明細書に記述される構造座標を含有するコンピュータ可読データ記憶媒体を提供することが本発明の一目的である。本明細書で使用されるところの「コンピュータ可読データ記憶媒体」は、コンピュータにより直接読み込み若しくはアクセスされ得るいかなる媒体も指す。こうした媒体は、限定されるものでないが、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体および磁気テープのような磁気記憶媒体;光ディスク若しくはCD−ROMのような光記憶媒体;RAMおよびROMのような電子記憶媒体;ならびに磁気/光記憶媒体のようなこれらの範疇の混成物を挙げることができる。
【0111】
治療的使用
一般に、本発明のポリペプチド(ED(X)Y配列およびそれらの対蹠物)ならびにポリヌクレオチドを、上および下で挙げられるような疾患のため治療および予防目的上使用しうる。
【0112】
従って、本発明は、医薬品として、および腫瘍の増殖を阻害する処置での使用のための、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、プロテアソームサブユニット、それらのタンパク質結合フラグメント、HDM2、関連タンパク質、それらのタンパク質結合フラグメント、およびポリヌクレオチドから選択される群の1若しくはそれ以上のメンバーの使用に関する。
【0113】
従って、本発明は、癌および白血病の処置のための医薬品の製造のための上述されたポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用に関する。
【0114】
本発明は、医薬品としての、および腫瘍の増殖を阻害する処置での使用のための、前記ポリペプチドおよび前記ポリヌクレオチドの使用にさらに関する。
【0115】
阻害されうる腫瘍の例は、限定されるものでないが、肺癌(例えば腺癌、および非小細胞肺癌を包含する)、膵癌(pancreatic cancer)(例えば、膵内分泌腫瘍のような例えば膵癌(pancreatic carcinoma))、結腸癌(例えば、結腸腺癌および結腸腺腫のような例えば結腸直腸癌)、進行疾患を包含する前立腺癌、リンパ系列の造血器腫瘍(例えば急性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺濾胞癌、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉起源の腫瘍(例えば線維肉腫および横紋筋肉腫)、骨髄腫、奇形癌腫、神経芽腫、神経膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば角化棘細胞腫)、乳癌(例えば進行乳癌)、腎癌、卵巣癌、膀胱癌および表皮癌を挙げることができる。
【0116】
従って、さらなる一局面において、本発明は、UPS活性を調節するのに有効な量の、製薬学的に許容できる担体と場合によっては組合せの、限定されるものでないがED(X)Y配列、それらのタンパク質対蹠物、および前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる上述されたところのUPS調節化合物の治療上有効量を哺乳動物被験体に投与することを含んでなる、UPS活性に関する医学的状態の予防、処置若しくは軽減方法を提供する。こうした担体は、限定されるものでないが、生理的食塩水、緩衝生理的食塩水、右旋糖、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せを挙げることができる。本発明は、本発明の前述の組成物の成分の1種若しくはそれ以上で満たされた1個若しくはそれ以上の容器を含んでなる製薬学的パックおよびキットにさらに関する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、単独で、若しくは治療的化合物のような他の化合物と組合せで使用しうる。
【0117】
化合物若しくは組成物は例えば全身若しくは経口投与による投与経路に適合させることができる。全身投与の好ましい形態は、典型的には静脈内注入による注入を包含する。皮下、筋肉内若しくは腹腔内のような他の注入経路を使用し得る。全身投与のための代替手段は、胆汁酸塩若しくはフシジン酸または他の洗剤のような浸透剤を使用する経粘膜および経皮投与を包含する。加えて、本発明のポリペプチド若しくは他の化合物を腸若しくは被包化製剤で処方し得る場合は経口投与もまた可能でありうる。これらの化合物の投与は、貼付剤、軟膏剤、パスタ剤、ゲル剤などの形態で局所および/若しくは限局性でもまたありうる。
【0118】
投与されるべき化合物、組成物若しくは製剤は、いずれにしても、処置されている被験体の症状を軽減するのに有効な量の有効成分(1種若しくは複数)の量を含有することができる。
【0119】
本化合物の正確な投薬量および投与頻度は、当業者に公知であるとおり、使用される特定の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重症度、特定の患者の齢、重量、性、食餌、投与時刻および全身的健康状態、投与様式、ならびに該個体が服用しているかもしれない他の医薬品に依存する。さらに、有効1日量は、処置される被験体の応答に依存して、かつ/若しくは本発明の化合物を処方する内科医の評価に依存して、減少若しくは増大しうる。
【0120】
0.25ないし95%の範囲の有効成分を含有し、残りは非毒性担体から構成される投薬形態物若しくは組成物を製造しうる。投与様式に依存して、製薬学的組成物は、好ましくは0.05から99重量%まで、より好ましくは0.1から70重量%までの有効成分、および1から99.95重量%まで、より好ましくは30から99.9重量%までの製薬学的に許容できる担体を含むことができ、全部のパーセンテージは総組成物に基づく。
【0121】
経口投与のためには、製薬学的に許容できる非毒性組成物は、例えば製薬学的等級のマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム(sodium crosscarmellose)、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、ブドウ糖、ショ糖、マグネシウム、炭酸塩、などのような通常使用される賦形剤のいずれかの組み込みにより形成される。こうした組成物は溶液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態をとる。こうした組成物は1%〜95%の有効成分、より好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%を含有しうる。
【0122】
非経口投与は、皮下、筋肉内若しくは静脈内いずれかでの注入を一般に特徴とする。注射剤は慣習的形態で、液体の溶液若しくは懸濁液、注入の前の液体中の溶液若しくは懸濁剤に適する固体の形態、または乳剤のいずれかとして製造し得る。適する賦形剤は、例えば水、生理的食塩水、右旋糖、グリセロール、エタノールなどである。加えて、所望の場合は、投与されるべき製薬学的組成物は、少量の例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、酢酸トリエタノールアミンナトリウム(triethanolamine sodium acetate)などのような、湿潤若しくは乳化剤、pH緩衝剤などのような非毒性の補助物質もまた含有しうる。
【0123】
こうした非経口組成物に含有される有効成分のパーセンテージは、それらの特定の性質ならびに化合物の活性および被験体の必要性に高度に依存する。しかしながら、溶液中0.1%ないし10%の有効成分のパーセンテージが使用可能であり、そして組成物が上のパーセンテージにその後希釈されることができる固体である場合にはより高いことができる。好ましくは、組成物は溶液中に0.2〜2%の有効成分を含むことができる。
【0124】
最後に、本発明は、(a)製薬学的剤が本発明のアッセイを使用して同定され、かつ(b)包装が被験体の細胞増殖性障害を処置するための該剤の使用を示すラベルを含んでなる、包装および製薬学的剤を含んでなる製品を提供する。とりわけ抗癌薬として。
【0125】
本発明は後に続く実験の詳細への参照によりより良好に理解されるであろうが、しかし、当業者は、これらはその後に続く請求の範囲により完全に記述されるところの本発明の具体的説明にすぎないことを容易に認識するであろう。加えて、本出願を通じて多様な刊行物が引用される。これらの刊行物の開示は、本発明が関する従来技術をより完全に記述するために本出願に引用することによりここに組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】JNJ−#1はHDM2に結合する。GST−HDM2、GST−HDMXを10μMのJNJ−#1若しくは対照のためDMSOとともにインキュベートした。その後40ngのトリプシンを添加し、そして混合物を氷上で15分間インキュベートした。サンプルを12若しくは15% SDS−PAGEゲルにより分離しかつImmobilon−Pメンブレンにブロットした。HDM2抗体4B2、SMP14およびC18とともにメンブレンをインキュベートすることによりHDM2を検出した。ウエスタンブロットをECLにより発色した。
【図2】JNJ−#1によるHDM2のタンパク質分解の阻害の用量依存性。GST−HDM2を、示される用量のJNJ−#1、または対照のためのDMSO、10μMの活性および不活性nutlin若しくはMG132とともにインキュベートした。40ngのトリプシンを添加し、そして混合物を氷上で15分間インキュベートした。サンプルを10% SDS−PAGEゲルで分離しかつImmobilon Pメンブレンにブロットした。メンブレンを抗HDM2抗体4B2とともにインキュベートした。ウエスタンブロットをECLにより発色した。
【図3】JNJ−#1はp53および下流のエフェクターを誘導する。U−87 MG神経膠芽腫細胞を示される濃度のJNJ−#1とともに24時間インキュベートした。JNJ−#1は5mMストック溶液としてジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、そしてその後組織培地で希釈して示される最終濃度をもたらした。全細胞ライセートを調製し、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS/PAGE)により分析した。タンパク質発現は特異的抗体を使用して検出した。アクチンタンパク質レベルは等しい負荷の対照として示した。
【図4】JNJ−#1はHDM2−p53会合を高める。JAR絨毛癌細胞を、示される濃度のJNJ−#1、Nutlin−3、若しくはNutlin−3の不活性鏡像異性体とともに1.5時間インキュベートした。HDM2/p53複合体を細胞ライセートから共免疫沈降し、そして方法の節で示されるところの特異的抗体を使用してタンパク質発現を検出した。免疫沈降されたHDM2タンパク質はSMP−14抗体(sc−965)を使用して示し、また、p53タンパク質はウエスタンブロット分析で明記されるとおり示した。
【図5】JNJ−#1は細胞中のp53ユビキチン化を阻害しない。U2OS細胞をHis標識ユビキチンでトランスフェクトし、そして10μMのJNJ−#1若しくはNutlin−3とともに2時間インキュベートした。インキュベーション後、ユビキチン化されたタンパク質をNi2+−アガロースへの吸着により精製しかつSDS−PAGEにより分離した。p53はウエスタンブロッティングにより検出した。(TCL:総細胞ライセート)
【図6】HDM2およびプロテアソームの相互作用の阻害の用量依存性。GST−HDM2を細菌中で発現させた。100ngのタンパク質を、示された用量のJNJ−#1の存在下若しくは対照のためのDMSOの存在下でプロテアソームとともにインキュベートした。入力対照のため、10μlの混合物を10% SDS−PAGEゲルにより分離しかつImmobilonメンブレンにブロットした。HDM2を抗HDM2抗体C18で免疫沈降しかつ10% SDS−PAGEゲルに負荷した。タンパク質をImmobilon−Pメンブレンにブロットした。メンブレンの上部を抗HDM2抗体4B2と、下部をプロテオソームサブユニットS8に向けられた抗体とハイブリダイズさせた。ウエスタンブロットをECLにより発色した。
【図7】JNJ−#1は生存細胞中でのプロテアソームとのHDM2の会合を予防する。A)293T細胞を、10μMのnutlin若しくはJNJ−#1または対照のためのDMSOとともに1.5時間インキュベートした。細胞を溶解し、そしてC18抗体を使用してHDM2を免疫沈降した。免疫沈降物を10%SDS−PAGEゲルにより分離しかつImmobilon−Pメンブレンにブロットした。発現対照のため、50μgの総細胞ライセート(TCL)をSDS−PAGEにより分離しかつImmobilon−Pメンブレンにブロットした。双方のメンブレンをS6bおよびHDM2に向けられた抗体とハイブリダイズさせた。ウエスタンブロットをECLにより発色した。B)293T細胞をMyc−MDM2でトランスフェクトした。トランスフェクション36時間後に10μMのJNJ−#1 DMSO、対照のためを添加した。細胞を1.5時間後に溶解し、そしてMDM2を抗Myc抗体9E10で免疫沈降しかつA部に記述されるとおり処理した。
【図8】JNJ−#1はin vitroでp53分解を予防する。バキュロウイルスで発現させたp53およびMDM2を精製し、そしてユビキチン;E1およびE2酵素、26Sプロテアソーム、ならびに示される場合は示される用量のJNJ−#1または対照のためのDMSO、10μMの活性および不活性nutlin若しくはMG132ともに5時間インキュベートした。混合物を10% SDS−PAGEゲルにより分離しかつImmobilonメンブレンにブロットした。メンブレンを抗p53抗体DO−1とハイブリダイズさせた。ウエスタンブロットをECLにより発色した。
【図9】多様なプロテアソームサブユニットおよびHDM2のED(X)Yモチーフを含有する配列のアライメント。
【図10】HDM2は26SプロテアソームのS6bタンパク質のEDY配列と結合する。バキュロウイルスから発現させた100ngのMDM2を、S6bタンパク質のEDY配列を含有するGST融合タンパク質100ngとともにインキュベートした。サンプルの10%を入力対照(入力)のため10% SDS−PAGEゲルに負荷した。残存するライセートにグルタチオン−セファロースを添加し、GST融合タンパク質を遠心分離により収集し、10% SDS−PAGEゲルに負荷しかつImmobilon Pブロッティングメンブレンに転写した。メンブレンをMDM2およびGSTに対する抗体とハイブリダイズさせた(プルダウン)。
【図11】EDY配列の過剰発現はp53分解を予防する。A)H1299細胞を、p53およびチオレドキシンをコードするcDNA(レーン1)、p53、チオレドキシンおよびMDM2をコードするcDNA(レーン2)、p53、挿入されたEDYモチーフを含有するS6bタンパク質からの配列を伴うチオレドキシンおよびMDM2をコードするcDNA(レーン3)、若しくはp53、挿入されたEDYモチーフを含有するHDM2タンパク質からの配列を伴うチオレドキシンおよびMDM2をコードするcDNA(レーン4)でトランスフェクトした。B)U2OS細胞を、チオレドキシンをコードするcDNA(レーン1)、挿入されたEDYモチーフを含有するHDM2タンパク質からの配列を伴うチオレドキシンをコードするcDNA(レーン2)、若しくは挿入されたEDYモチーフを含有するS6bタンパク質からの配列を伴うチオレドキシンをコードするcDNA(レーン3)でトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション48時間後に溶解し、そしてp53タンパク質濃度(および負荷対照のためのPCNA濃度)をウエスタンブロッティングにより決定した。
【図12】多様なプロテアソームサブユニットおよびHDM2のED(X)Yモチ―フを含有する完全なタンパク質配列ならびにED(X)Yモチーフのポリヌクレオチド配列。
【図13】HDM2の中央ドメインはMDM2のS6bとの会合を低下させる。293細胞を、V5標識S6bをコードするプラスミドと一緒に、Myc標識野生型(wt)、若しくは示される欠失を内部に持つ変異体MDM2をコードするプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後に細胞を溶解し、そしてプロテインAアガロースに結合した抗体9E10を使用してMDM2を沈降させた。ビーズを洗浄しかつ10% SDS−PAGEゲルに負荷した。タンパク質をImmobiloneメンブレンに転写し、そしてMDM2およびS6bの存在についてプロービングした(IP:a−Myc)。TCL:50μgの細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、Immobiloneメンブレンにブロットし、そしてS6bおよび負荷対照のためのPCNAについてプロービングした。
【実施例】
【0127】
実験
材料および方法
プラスミド
Myc−MDM2をコードするプラスミドpDWM659、ならびにプラスミドpcDNA3−Mdm2およびpcDNA3−p53は以前に記述されている(Blattnerら、2002)。完全長GST−HDM2、GST−HDM2フラグメントGST−HDM2−1−206、GST−HDM2−293−493、GST−S6b−EDYペプチドおよびGST−HDM2−EDYペプチドは、適切な制限部位を含有するプライマーを使用するPCRによりそれぞれの配列を増幅することにより創製した。GST−HDM2−100−200はAbnova Corporation−カタログ番号H00004193−Q01で注文した。PCR断片をEcoRIおよびNotIで消化しそしてpGex−4T−2ベクターにクローン化した。GST−HdmXは、鋳型としての逆転写したRNAおよび適切な制限部位をコードするプライマーを使用するPCRによりHdmXを増幅することにより創製した。該PCRフラグメントをpGEX−4T−2ベクターに連結した。タンパク質の発現および精製はpGEX−4T−2ベクターの供給元(Amersham)の推奨に従って実施した。E1を発現するバキュロウイルスおよびUbcH5のプラスミドはMartin Scheffner、コンスタンスにより恵与された。Flag−Mdm2およびFlag−p53をコードするバキュロウイルスは以前に記述されている(Brignoneら、2004)。
【0128】
抗体
以下の抗体を使用した。すなわち、抗myc抗体9E10(Santa Cruz)、抗増殖細胞核抗原(PCNA)モノクローナル抗体PC10(Santa Cruz)、抗S8抗体クローンP45−110(Biomol)、抗S6bウサギポリクローナル抗体(Biomol)、抗HDM2抗体C18、SMP14(Santa Cruz)および4B2(Oncogene Sciences)、抗p53抗体DO−1(Santa
Cruz)、ならびにHRP結合抗マウス(P0161)および抗ウサギ(P0448)抗体(DAKO)ならびにTrue−blot抗ウサギ抗体(eBioscience
s)。V5に向けられたHRP結合抗体(Invitrogen)および抗GST抗体(Rockland)。
【0129】
細胞株およびそれらの処理
293T、H1299およびU2OS細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS)および100単位/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地中、加湿雰囲気で37℃かつ5% COで培養した。H1299および293T細胞はリン酸カルシウムにより一過性にトランスフェクトし、U2OS細胞は製造元の推奨に従いjetPEI(Biomol)でトランスフェクトした。
【0130】
免疫沈降およびウエスタンブロッティング
細胞を氷冷リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄し、そしてNP−40緩衝液(150mM NaCl、50mMトリス pH8、5mM EDTA、1% NP−40、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル)で溶解した。タンパク質抽出物を13000gで4℃で15分間の遠心分離により澄明にし、そしてタンパク質濃度をBradfordの方法により測定した。プロテインAアガロース(Pierce)に予め結合した9E10抗myc抗体3μlを300μgのライセートに添加し、そして混合物を回転ホイール上4℃で2時間インキュベートした。アガロースをNP−40溶解緩衝液で3回洗浄し、そして1×SDSサンプル緩衝液(2%ドデシル硫酸ナトリウム、0.08Mトリス pH6.8、10%グリセロール、2%β−メルカプトエタノール、0.001%ブロモフェノールブルー)に再懸濁した。
【0131】
ウエスタンブロッティングのため、50μgのタンパク質を等容量の2×SDSサンプル緩衝液と混合し、熱変性しかつSDS−10% PAGEゲルに負荷した。タンパク質をImmobilin−Pブロッティングメンブレン(Millipore)に転写した。免疫検出を記述された(Blattnerら、2002)とおり実施した。
【0132】
共免疫沈降
細胞からのHDM2およびp53の共免疫沈降:
JAR絨毛癌細胞を3.6×106細胞/プレートで10cm皿に播種し、そして、示された濃度のJNJ−#1、Nutlin−3若しくはNutlin−3の不活性鏡像異性体とともに翌日に1.5時間インキュベートした。
【0133】
細胞を氷冷リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄し、そしてTriton−X緩衝液(50mM NaCl、10mMトリス pH7.2、5mM EDTA、1% Triton X−100)で溶解した。タンパク質抽出物を超音波処理し(HDM2/p53 coIPのため)、13000gで4℃で15分間の遠心分離により澄明にし、そしてタンパク質濃度をBCA/Pierceの方法により測定した。ライセート(1mg)を、20μlのマウスIgG血清および30μlのプロテインAアガロースを添加すること、ならびに該混合物を回転ホイール上4℃で2時間インキュベートすることにより、予め澄明にした。その後、10μlの2A 10抗HDM2抗体を澄明にしたライセートに添加しかつ2時間回転し、そして次に30μlのプロテインAアガロースを添加し、次いで追加の16時間4℃で回転した。免疫沈降物をCo−IP洗浄緩衝液(100mM NaCl、50mMトリス pH7.5、1mM EDTA、0.1% Triton X−100、5%グリセロール)を使用して3回洗浄した。免疫沈降させたHDM2タンパク質はSMP−14抗体(sc−965)を使用して示し、また、p53タンパク質はウエスタンブロット分析で明記されるとおり示した。
【0134】
細胞からのHDM2およびプロテアソームの共免疫沈降:
細胞を氷冷リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄し、そしてNP−40緩衝液
(150mM NaCl、50mMトリス pH8、5mM EDTA、1% NP−40、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル)で溶解した。タンパク質抽出物を13000gで4℃で15分間の遠心分離により澄明にし、そしてタンパク質濃度をBradfordの方法により測定した。プロテインAアガロース(Pierce)に予め結合した9E10抗myc若しくは抗HDM2抗体3μlを1mgのライセートに添加し、そして該混合物を回転ホイール上4℃で1.5時間インキュベートした。アガロースをNP−40溶解緩衝液で3回洗浄した。40μlの1×SDSサンプル緩衝液(2%ドデシル硫酸ナトリウム、0.08Mトリス pH6.8、10%グリセロール、2%β−メルカプトエタノール、0.001%ブロモフェノールブルー)を添加し、そしてSDS−10% PAGEゲルに負荷する前にサンプルを熱変性させた。タンパク質をImmobilin−Pブロッティングメンブレン(Millipore)に転写した。免疫検出を記述された(Blattnerら、2002)とおり実施した。
【0135】
in vitroでのHDM2およびプロテアソームの共免疫沈降:
細菌中で発現させた100ngのGST−Hdm2および2μlのプロテアソーム(USbio)を、150μlのPWB緩衝液(50mMトリス pH7.5;150mM NaCl;10%グリセロール;5mM MgCl2;2mM ATP)中でJNJ−#1とプレインキュベートした。その後、HDM2およびプロテアソームを合わせかつ室温で30分間インキュベートした。20μlの混合物を入力対照のため採取し、そして20μlのプロテインAアガロースに予め結合した3μlの抗C18を添加した。該混合物を回転ホイール上4℃で1.5時間インキュベートし、PWB緩衝液で3回洗浄しかつ10% SDS−PAGEゲルで分離した。
【0136】
ライセートのウエスタンブロッティング
U87神経膠芽腫細胞を示された濃度のJNJ−#1とともに24時間インキュベートした。全細胞ライセートを調製しかつSDS/PAGEにより分析した。タンパク質のレベルは、p53(DO−1およびpAb1801、Santa Cruz)、p21waf1,cip(BD Pharmingen)、HDM2(2A10、OP115 Calbiochem)、E2F1(sc−193、Santa Cruz)、Rb(sc−102、Santa Cruz)、pRb_Ser780(9307L、Cell Signalling)、抗p73(ab22045 Abcam)、抗p63(sc−8431、Santa Cruz)、サイクリンC1(sc−320、Santa Cruz)、PIG3(PC268、Calbiochem)、MIC−1(sc−10606、Santa Cruz)に対する特異的抗体を使用して検出した。アクチンタンパク質濃度(Ab−1、Oncogene Research products)を等しい負荷の対照として示した。タンパク質−抗体複合体は、化学発光(Super Signal West Dura試薬、Pierce Chemical)および蛍光(Odyssey)により、製造元の説明書に従って可視化した。
【0137】
in vitro p53分解アッセイ
Flag−MDM2/p53複合体を、供給元(Sigma)の推奨に従い、Flag−アガロース精製キットによりHigh5昆虫細胞から精製した。
【0138】
30μlのユビキチン反応緩衝液(25mM Hepes pH7.4;10mM NaCl;3mM MgCl2;0.05% Triton X−100;0.5mM DTT)中の、昆虫細胞中で発現させた部分的に精製したE1酵素0.2μl、UbcH5を発現するBL21細胞の細菌ライセート2μl、2μlのユビキチン(5μg/μl Sigma)、5μlの精製MDM2/p53複合体、1μlのMg−ATP(100mM)。30分の反応時間後にJNJ−#1を10μMの最終濃度まで添加しそして室温で5分間インキュベートした。1μlの26Sプロテアソーム(USbio)および1μl
のATP(100mM)を添加し、そして反応を37℃で2.5時間インキュベートした。1μlのATP(100mM)を添加しかつ反応をさらなる2.5時間インキュベートした。等容量の2×サンプル緩衝液を添加し、反応を8%SDS−PAGEゲルにより分離し、そしてImmobilon−Pメンブレンにブロットした。
【0139】
制限タンパク質分解
HdmX若しくはHDM2のフラグメントに融合した100ngのGSTをJNJ−#1、活性若しくは不活性nutlin、対照のためのMG132若しくはDMSOとともに5分間インキュベートした。その後40ngのトリプシンを添加し、そして混合物を氷上で15分間インキュベートした。タンパク質分解を2×サンプル緩衝液の添加により停止した。サンプルを12若しくは15% SDS−PAGEゲルに負荷し、そしてHDM2若しくはHDMXをウエスタンブロッティングにより検出した。
【0140】
結果
JNJ−#1はHDM2に結合する。
【0141】
PCT公開第WO2006/032631号明細書でHDM2アンタゴニストであることが示された化合物の1種、JNJ−#1のHDM2への結合を検討するため、われわれはタンパク質分解酵素トリプシンによるHDM2のタンパク質分解に対するその影響を測定した。われわれは従って、HDM2のタンパク質分解が不完全であった(制限タンパク質分解)条件下で、GSTに融合した細菌で発現させたHDM2をJNJ−#1の存在若しくは非存在下にトリプシンとともにインキュベートした。
【0142】
図1に示されるとおり、JNJ−#1は完全長HDM2のタンパク質分解を強く低下したが、しかしHDM2の近接ホモログであるHDM2ファミリーメンバーHDMXのタンパク質分解はしなかった。
【0143】
JNJ−#1は約100nMの用量でHDM2タンパク質分解を妨害する。
われわれは次に、HDM2タンパク質分解の妨害に必要とされるJNJ−#1の用量を決定した。われわれは、GSTに融合した細菌に発現させたHDM2を、増大する濃度のJNJ−#1の存在下でトリプシンとともにインキュベートした。JNJ−#1化合物の特異性を検討するため、われわれは活性および不活性nutlin、ならびにプロテアソーム阻害剤MG132ともにもまたGST−HDM2をインキュベートした。図2にわれわれが示すとおり、HDM2のタンパク質分解は約100nMの用量で既にJNJ−#1により阻害された。JNJ−#1の用量を1μMまで増大させることはHDM2のタンパク質分解をさらに低下し、そして3μMではさらなる低下は観察されなかった。対照的に、10μMの用量の活性若しくは不活性nutlinとのGST−HDM2のインキュベーションは、タンパク質分解に弱くのみ影響を及ぼし、そして10μMのMG132とのGST−HDM2のインキュベーションは影響を有しなかった。
【0144】
JNJ−#1は腫瘍細胞中でp53を誘導しかつ下流のシグナル伝達を活性化する。
JNJ−#1はhDM2を結合しかつそのコンホメーションを変えることが同定されている。p53およびE2F1のようなHDM2結合パートナーの発現ならびにそれらの下流のシグナル伝達分子にJNJ−#1が影響を及ぼすかどうかに関して、該化合物を最初に検討した。U−87 MG神経膠芽腫細胞をJNJ−#1とともに24時間インキュベートし、そして図3に示されるとおり、JNJ−#1は1μMで開始してp53を誘導し、10μMまでさらに増大した。S期進行に不可欠であるE2F−1の発現は劇的に低下した。p53誘導と同時に、下流の遺伝子p21waf1,cip1、MIC−1およびPIG3の明瞭な増大が、1μMで開始して24時間のインキュベーション後に観察されたが、しかし10μMでその最大誘導に達した。またp53により転写誘導されるHit
selfは対照条件下で検出可能でなかったが、しかし1ないし10μMでJNJ−#1により明瞭に誘導された。サイクリン依存性キナーゼ(cdk)阻害剤p21waf1,cip1の誘導は、E2F−1活性の阻止およびそれによりG1細胞周期停止をもたらす網膜芽腫(Rb)癌抑制タンパク質のcdk媒介性リン酸化の減少をもたらすことが期待される。図3に示されるとおり、実際に、Ser780−Rbリン酸化の強い減少が1μMで既に観察され、それはp21waf1,cip1誘導と平行する。
【0145】
JNJ−#1はJAR絨毛癌細胞中でHDM2のp53への結合を予防しない
JNJ−#1はhDM2アンタゴニストと同定され、そしてp53タンパク質レベルを誘導するため、われわれはその後、該化合物がp53をHDM2から外してそれによりp53分解を予防するかどうか検討した。この目的上、われわれは遺伝子増幅により高HDM2発現レベルを有するJAR絨毛癌細胞を利用した。図4に具体的に示されるとおり、内因性HDM2をJAR細胞から免疫沈降させた場合、結合されるp53の量はJNJ−#1の存在下で増大した。HDM2のN末端ポケットを結合することが既知である陽性対照HDM2アンタゴニストNutlin−3は、p53をHDM2タンパク質から効率的に外した一方、Nutlin−3の不活性鏡像異性体は影響を有しなかった。これらのデータは、JNJ−#1が新規作用機序によりHDM2機能に影響を及ぼすことを示す。
【0146】
JNJ−#1はU2OS細胞中でp53ユビキチン化を阻害しない
JNJ−#1はp53の蓄積につながる。1つの非常にありそうな機序は、JNJ−#1がHDM2ユビキチンリガーゼ活性に影響を及ぼすことによりp53ユビキチン化を予防することであるとみられる。この選択肢を試験するため、われわれは該化合物の存在下で細胞ユビキチン化アッセイを実施した。図5に示されるとおり、p53のユビキチン化はNutlin−3の存在下で強く低下された一方、それはJNJ−#1により全く影響されなかった。
【0147】
JNJ−#1はHDM2のプロテアソームへの結合を用量依存的様式で予防する。
われわれは以前、HDM2がプロテアソームと会合することを観察し、そして、われわれはこの相互作用がp53分解に影響しうることを推測した。HDM2のプロテアソームとの相互作用に対するJNJ−#1の影響を検討するため、われわれは、GSTに融合した細菌で発現させたHDM2およびプロテアソームを増大する用量のJNJ−#1とともにインキュベートした。われわれはその後、HDM2の免疫沈降前にHDM2およびプロテアソームを混合しかつ該混合物を室温で30分間インキュベートした。われわれは該複合体をSDS−PAGEにより分離し、そしてHDM2と会合したプロテアソームの相対量をウエスタンブロッティングにより測定した。
【0148】
図6に示されるとおり、GST単独はS8サブユニットにより可視化されるとおりプロテアソームに弱くのみ結合した。われわれがアッセイにHDM2を包含した場合、有意により大量のプロテアソームがGST単独とよりもGST−HDM2と共沈降した。約50nMの濃度のJNJ−#1の添加はこの会合に影響を及ぼさなかった。しかしながら、われわれがJNJ−#1の濃度を500nMに上げた場合、プロテアソームとのHDM2の会合は強く低下した。JNJ−#1の用量を5μMまで増大させることはHDM2のプロテアソームとの会合をさらに低下した。
【0149】
JNJ−#1は細胞中でのHDM2のプロテアソームへの結合を予防する。
われわれは次に、JNJ−#1が細胞中でHDM2のプロテアソームとの会合もまた予防したかどうかを決定した。われわれは、10μMのJNJ−#1、10μMのnutlin若しくは対照のためのDMSOとともに細胞をインキュベートし、抗HDM2抗体でHDM2を免疫沈降し、そして会合したS6bの相対量をウエスタンブロッティングにより測定した。プロテアソームサブユニットS6bはJNJ−#1の非存在下でHDM2と
共沈降した。しかしながら、10μMのJNJ−#1の存在下若しくはnutlinの存在下で、HDM2のS6bとの会合はもはや検出可能でなかった(データは示されない)。該結果を確認するため、われわれは過剰発現させたMyc標識MDM2を用いて実験を反復した。われわれは293T細胞でMyc−MDM2をトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後に10μMのJNJ−#1若しくは対照のためのDMSOを細胞に添加した。1.5時間のインキュベーション時間後に抗Myc抗体9E10を使用してMyc−MDM2を沈降させた。会合するプロテアソームをウエスタンブロッティングにより測定した。内因性HDM2と同様、プロテアソームはMyc標識MDM2と共沈降した。JNJ−#1は再度、該相互作用を完全に予防した(図7)。
【0150】
JNJ−#1はin vitroでp53の分解を予防する。
JNJ−#1の存在下でのプロテアソームとのHDM2の会合の低下がp53分解に影響するかどうか決定するため、われわれはin vitro分解アッセイを使用した。われわれは、バキュロウイルス中で発現させたp53およびHDM2をユビキチン、26SプロテアソームならびにE1およびE2酵素と混合した。JNJ−#1の非存在下でp53は迅速に分解された。しかしながら、われわれが該反応をJNJ−#1の存在下で実施した場合、p53の分解は完全に廃止された(図8)。
【0151】
HDM2/MDM2はアミノ酸EDYを含んでなる配列モチーフを共有する
MDM2上のプロテアソームとの相互作用部位を決定するため、われわれは、プロテアソームのS6bタンパク質をコードするプラスミドと一緒に一連のMDM2欠失変異体で293T細胞をトランスフェクトした。中央ドメインを欠くMDM2の1変異体とのS6bのコトランスフェクション後に、Mdm2のS6bへの結合は野生型MDM2のS6bへの結合に比較して有意に高められた(図13)。この結果から、われわれは、中央ドメイン中の1配列モチーフがMDM2のプロテアソームへの結合を妨害すると結論付けた。従って、該中央ドメインは、プロテアソームともまた会合することが可能であるMDM2の配列に結合することによりMDM2のプロテアソームとの相互作用を低下させることができ、従って、配列モチーフがMDM2およびプロテアソームに共通であるべきである。こうした配列を探して、われわれはMDM2の中央ドメインをプロテアソームの数種のサブユニットと整列した。これにより、われわれは、MDM2、および26Sプロテアソームの数種のサブユニットに存在する3アミノ酸配列EDYモチーフを同定した(図9、図12)。
【0152】
EDYモチーフを含有するペプチドはMDM2と会合する
われわれは、EDY配列を包含するS6bタンパク質からのペプチドおよびバキュロウイルスから発現させたMDM2を含んでなるGST融合タンパク質を使用するGSTプルダウンアッセイを実施することにより、MDM2がプロテアソームのEDYモチーフと会合することが可能であるかどうか決定した。図10にわれわれが示すとおり、驚くことに、MDM2は、S6b由来ペプチドを包含するGST融合タンパク質と明瞭に会合したが、しかしGST単独とはしなかった。
【0153】
HDM2/MDM2若しくはS6bのEDYモチーフの過剰発現はp53分解を妨害する
EDYモチーフがプロテアソームとのHDM2の会合を媒介している場合、EDY配列を含有するペプチドはHDM2への結合についてプロテアソームと競合するはずである。さらに、プロテアソームとのHDM2の会合がp53分解に重要である場合、p53はこうしたペプチドの過剰発現後に蓄積するはずである。図11に、われわれはこれが実際に真実であることを示す。S6b若しくはHDM2のEDYモチーフを包含する配列をチオレドキシンタンパク質の外側ループで発現させたチオレドキシン挿入構築物をわれわれがH1299細胞にトランスフェクトした場合、MDM2によるp53分解は強く低下した。同様に、われわれがチオレドキシン挿入タンパク質をU2OS細胞で発現させた場合、
内因性p53の分解はほぼ完全に廃止された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDM2のプロテアソームへの結合に影響を及ぼす化合物の同定方法。
【請求項2】
a)HDM2タンパク質、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントと試験されるべき化合物を接触させること、および
b)前記化合物が、ユビキチン−プロテアソームタンパク質分解経路によるHDM2結合タンパク質のタンパク質分解に影響を及ぼすかどうかを決定すること
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HDM2結合タンパク質がp53である、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項4】
HDM2結合タンパク質がp53以外である、請求項1若しくは2に記載の方法。
【請求項5】
a)プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントを、標識HDM2、標識関連タンパク質若しくは標識したそれらのタンパク質結合フラグメントとともにインキュベートすること、
b)試験化合物をインキュベーション混合物に添加すること、および
c)プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントに結合された標識HDM2、標識関連タンパク質若しくは標識したそれらのタンパク質結合フラグメントの量に対する該試験化合物の影響を測定すること
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)標識プロテアソームサブユニット若しくは標識したそのタンパク質結合フラグメントを、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントとともにインキュベートすること、
b)試験化合物をインキュベーション混合物に添加すること、および
c)HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントに結合された標識プロテアソームサブユニット若しくは標識したそのタンパク質結合フラグメントの量に対する試験化合物の影響を測定すること
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
a)プロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメントを、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントでプロービングすること、
b)HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントと相互作用するプロテアソームサブユニット若しくはそのタンパク質結合フラグメント(または逆もまた真)の結合部位の接触原子を同定すること、
c)(b)で同定された原子と相互作用する試験化合物を設計し、および
d)前記設計された試験化合物を、プロテアソームサブユニット、そのタンパク質結合フラグメント、HDM2、関連タンパク質若しくはそれらのタンパク質結合フラグメントと接触して、HDM2とプロテアソームの間の相互作用を調節する若しくはユビキチン−プロテアソームタンパク質分解を調節する前記化合物の能力を測定する
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HDM2のタンパク質結合フラグメントが
a)アミノ酸配列、配列番号11若しくは配列番号12またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号11若しくは配列番号12に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)HDM2のアミノ酸252−264(配列番号11)若しくは387−399(配列
番号12)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号11若しくは配列番号1に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、あるいは
c)HDM2(配列番号5)のアミノ酸257−259若しくは392−394またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号5に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
プロテアソームユニットのタンパク質結合フラグメントが、
a)アミノ酸配列、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13のいずれか1種に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)S6Aのアミノ酸413−425(配列番号7)、S6Bのアミノ酸356−368(配列番号8)、S5Aのアミノ酸318−331(配列番号9)、S2のアミノ酸432−444(配列番号10)若しくはS4のアミノ酸431−440(配列番号13)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号13に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有するか、あるいは
c)S6A(配列番号1)のアミノ酸418−420、S6A(配列番号2)のアミノ酸418−420、S6B(配列番号3)のアミノ酸361−363、S5A(配列番号4)のアミノ酸323−326、S2(配列番号6)のアミノ酸437−439若しくはS4(配列番号13)のアミノ酸436−439またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなるポリペプチド配列の一群若しくはポリペプチド配列の一群のメンバーから選択される、請求項1、5、6若しくは7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
医薬品としての使用のための、請求項8に記載のHDM2のタンパク質結合フラグメント若しくは請求項9に記載のプロテアソームサブユニットのタンパク質結合フラグメント。
【請求項11】
医薬品としての使用のための、
a)ヌクレオチド配列、配列番号18若しくは配列番号19またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号18若しくは配列番号19に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、
b)HDM2のヌクレオチド配列1050−1088(配列番号18)若しくは1455−1493(配列番号19)またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号18若しくは配列番号19に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有するか、あるいは
c)配列番号18若しくは配列番号19のヌクレオチド配列16−24またはそれらのホモログであって、前記ホモログは配列番号25に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなる、請求項8に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバー。
【請求項12】
医薬品としての使用のための、
a)プロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2のED(X
)Yヌクレオチド配列またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
b)プロテアソームサブユニットS6a、S6b、S5a、S4若しくはS2の配列番号21のヌクレオチド配列1431−1469、配列番号22の1103−1141、配列番号23の1014−1055、配列番号24の1327−1365若しくは配列番号26の1339−1371またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24若しくは配列番号16に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の同一性を有する。
c)配列番号14、配列番号15若しくは配列番号17のヌクレオチド配列1−39、配列番号16のヌクレオチド配列1−42または配列番号20のヌクレオチド配列1−33あるいはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する。
d)配列番号14、配列番号15若しくは配列番号17のヌクレオチド配列16−24、配列番号16若しくは配列番号20のヌクレオチド配列16−27またはそれらのホモログであって、前記ホモログは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17若しくは配列番号20に対する最低70、80、85、90、95、97、98若しくは99%の配列同一性を有する、
を含んでなる、請求項9に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の一群若しくはヌクレオチド配列の一群のメンバー。
【請求項13】
癌および白血病の処置のための医薬品の製造のための、請求項7若しくは8に記載のポリペプチド配列または請求項10若しくは11に記載のヌクレオチド配列の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−529418(P2010−529418A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504714(P2010−504714)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055088
【国際公開番号】WO2008/132175
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】