説明

MEMS製造のための薄膜プレカーソルスタック

【課題】
【解決手段】本発明は、MEMSデバイスの製造で用いるプレカーソル膜スタックを提供する。プレカーソル膜スタックは、キャリア基板と、当該キャリア基板の上に形成される第1の層と、当該第1の層上に形成される、絶縁体材料から成る第2の層と、当該第2の層の上に形成される、犠牲材料から成る第3の層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、超小型電子機械式システム(MEMS)デバイスの製造プロセスに関し、特に、干渉変調器(interferometric modulators)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉変調器は、参照することで本明細書に組み込まれる、米国特許第5,835,255号、第5,986,796号、第6,040,937号、第6,055,090号、及び係属中の米国特許出願第09/966,843号、第09/974,544号、第10/082,397号、第10/084,893号、並びに第10/878,282号を含む種々の特許に記載され、且つ、記録されているMEMS(超小型電子機械式システム)デバイスの一種である。これらのデバイスの重要な特性の一つは、これらが半導体のような製造プロセスを用いてモノリシックに(monolithically)製造されるという事実である。具体的には、これらのデバイスは、種々の技術を用いてエッチング、フォトリソグラフィ、膜蒸着を結合する一連のステップで製造される。これらのプロセスについての更なる詳細は、2002年2月12に出願された特許出願第10/074,562号に記載されており、参照することで本明細書に組み込まれる。
【発明の開示】
【0003】
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
以下の本発明の実施形態の詳細な説明においては、本発明の完全な理解を提供するために、具体的な材料、機械、及び方法の例といった、多くの具体的な詳細が述べられる。しかし、本発明を実行するためにこれらの具体的な詳細が採用される必要がないことは、当業者には明白であろう。他の場合では、本発明を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の材料、機械、又は方法が詳細には記載されていない。
【0005】
MEMSデバイスを製造するためのプロセスの一般的な特徴は、それらが複数の薄膜のスタックの蒸着から始まることであるが、これらは当該デバイスの動作及びその後の製造に極めて重大である。これらのプレカーソル膜は、干渉変調器(interferometric modulators)を含む幅広い種類のMEMSデバイスの製造において有用であり、それらの蒸着は、MEMSデバイスを製造するためのより大きなプロセスの一部として生じることができる。本発明の一実施形態では、複数の膜は、スタンドアロンの設備で別々に蒸着されてプレカーソルスタックを形成するが、これは次に、処理を完成させる複数の設備に送られる。主要な利点は、統合された(integrated)工場、すなわち、蒸着処理及び蒸着後の処理の双方を行う工場では不可能な規模の経済を可能にする、非常に高いスループットでこれらの膜又はプレカーソルスタックを生産するために、スタンドアロンの設備が最適化できるということである。さらに、プレカーソルスタックの技術開発は、スタンドアロンの設備で起こるため、その後の処理ステップを実行することを望むエンティティ(entities)は、より低い技術参入障壁に直面する。
【0006】
参照することで本明細書に組み込まれる、特許出願第10/074,562号は、干渉変調器を構築するための原型的な製造手順を記載している。一般に、干渉変調器製造手順と手順の種類(categories of sequences)は、それらの単純さと費用対効果ゆえに注目に値する。これは主に、物理蒸着法(PVD)技術を用いて膜の全てが蒸着されるという事実によるが、スパッタリングが好適且つ最も安価なアプローチである。単純さの一部は、あらゆる干渉変調器構造、及び実際に多くの他の平面的なMEMS構造が、これらが下部電極、短絡を防ぐための絶縁構造、犠牲材料、及び、作動可能な(actuatable)又は移動可能な構造を必要とするという事実に束縛されるという事実に由来する。絶縁構造は、それがその形(form)ではなく機械的な手段で連続しており、その本体を介して電気的な接触を防止することができるという点で膜とは異なる。この事実は、これらの膜のサブセット、すなわち、下部電極、絶縁構造、犠牲層、及び、随意的に、作動可能な構造のうちの一つ以上を備えるプレカーソルスタックが別々に、且つ、一又は複数の作動可能な構造に先立って製造され得るという機会を与える。
【0007】
図面の図1は、統合されたMEMS製造設備102のブロック図を提供する。プレカーソル膜蒸着ツール100は、例えばスパッタリングといった一つ以上の蒸着技術を用いてこれらの膜を蒸着するように構成された、単独の又は一連の蒸着ツールを備える。膜は適当なキャリア基板(carrier substrate)の上に蒸着されるが、これは、用途に応じて例えばガラス又はプラスチックであってもよく、その後にミクロ機械加工ループ104に運ばれる。ここでは、そして前述の特許出願明細書に記載されているように、エッチング、パターニング、及び蒸着といった繰り返されるステップのシーケンスが実行され、且つ、MEMSデバイスの作動可能な構造を限定する(define)役目を果たす。
【0008】
図面の図2は、統合されていない(non-integrated)MEMS処理設備を示す。図2を参照するに、プレカーソル設備200は、プレカーソル膜蒸着ツール100のみを含むが、これは図1で説明したものと同等であり、故に同一の符号を使用する。設備200は、プレカーソル膜のタイプ及び基板の大きさの双方について変化を与えることができる。蒸着後、基板はコンテナに詰められ(containerized)、符号202で示される一つ以上の処理設備に必要に応じて輸送される。これらの設備は次に、それらが生産するように設計されている特定のMEMS製品のための機械加工ステップを必要に応じて実行する。
【0009】
図3は、本発明のプレカーソルスタックを用いて製造することができる単純なMEMSデバイスの概略図を示す。この場合は、作動可能な膜(membrane)304が支柱306の上に支持されている。膜302は、後に説明されるような、他の機能を組み込んでもよいが、少なくとも下部電極と絶縁構造を提供する材料を含む。組み立て品全体は、基板300の上に存在する(resides)。
【0010】
図面の図4Aから4Fは、本発明の異なる実施形態によるプレカーソルスタックのブロック図を示す。図4Aから4Fにおいては、同一又は類似の機能(features)/構成要素を識別するのに同一の符号が用いられている。
【0011】
図4Aは、導体スタック又は導体構造404、絶縁体層406、及び犠牲材料層408を含む一般化されたプレカーソルスタック400Aのブロック図を示す。全ての膜が基板402の上に存在する。導体スタック404は、単独の金属、導電性の酸化物あるいはポリマー、フッ化物、ケイ化物、又は、これらの材料の組み合わせを含んでもよい。導電性のスタックの正確な構成(composition)は、製造されるべきMEMSデバイスに必要な電極の特性によって決定される。絶縁体408は、酸化物、ポリマー、フッ化物、セラミックス、及び窒化物を含む、但しこれらに限定されない、様々な絶縁材料の任意の一つ又は組み合わせであることができる。犠牲材料408は、例えば、シリコン、モリブデン、又はタングステンといった材料の単独の層を含んでもよく、これらは全てXeFでエッチング可能であるが、これは先の特許に記載されているプロセスエッチングガスである。残存しなければならない材料や構造に対するエッチング媒体の適合性(compatibility)を条件として、他の材料も可能である。厚さは、最終的なデバイスに必要な性質(behavior)に応じて変わる。
【0012】
図4Bは、干渉変調器デバイスの製造で使用するために設計されたプレカーソルスタック400Bのブロック図を示す。スタック400Bは、導体スタック404を含むが、この構成は上述した。この場合における導体スタック404に適当な金属は、クロミウム、タングステン、モリブデン、又はその合金といった光沢のある金属を含む。導体スタック404は、最大で150オングストロームの厚さを有し得る。導体スタック404に使用するのに適した透明な導体は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、及び窒化チタン(TiN)を含む。透明な導体の典型的な厚さは、100から800オングストロームである。一実施形態では、導体スタック404は、透明な補償酸化物層410の上に存在する。酸化物層410は、ジルコニア(ZrO)又はハフニア(HfO)といった金属酸化物から成っていてもよいが、これらは目に見える範囲(visible range)内での有限の消散係数(extinction coefficient)を有する。補償酸化物層410は、本願明細書で議論されるあらゆる設計について任意の膜である。酸化物層410の典型的な厚さは、100から800オングストロームに及ぶ。導体スタック404と補償酸化物層410の位置は、光学上の動作にほんのわずかな変化を伴って置き換え可能であることに注意すべきである。しかし、金属が、これは主要な光学上の機能を果たすが、絶縁体層406の、犠牲層408の側とは反対の側に存在しているので、この設計は、埋め込まれた(embedded)光学膜の設計と考えることができる。絶縁体層406は、干渉変調器の異なる動作モードに対しては他の厚さも有用ではあるが、良好な黒い状態(black states)のために280から840オングストロームに及ぶ厚さを持つ二酸化珪素膜を含み得る。他の酸化物又は酸化物の組み合わせも可能である。犠牲層408は、例えばシリコン、モリブデン、タングステンといった材料の単独の層を含み得るが、これらは全て、先の特許に記載されているプロセスエッチングガス(process etch gas)である、XeFでエッチング可能である。スタック400Bの場合、層408の厚さは1000から7000オングストロームに渡って変わり得る。
【0013】
図4Cは、別の実施形態による、プレカーソルスタック400Cのブロック図を示す。この場合、導体スタック404はいかなる光学上の機能も実行しない。その代わりに、別個の光学膜412が光学上の機能を実行する。光学膜412は、絶縁体膜又は絶縁体構造414によって導体スタック404とは隔てられている。この設計は、作動可能な膜が駆動されたときに、高品質な白い状態(white states)が達成されることを可能にする。この場合、光学膜412は導体としての機能を果たさない。導体として機能するのは透明な導体スタック404である。一部の実施形態では、図4Cには示されていないが図4Bの絶縁体層406に類似する、補助的な絶縁体膜又は絶縁体構造が、犠牲層408と光学膜412との間に存在し得る。絶縁体膜又は絶縁体構造の厚さは、この設計の場合、100オングストローム未満であり得る。
【0014】
図4Dは、埋没された(buried)光学膜の設計として知られる、プレカーソルスタックの一実施形態400Dを示す。この場合、光学膜412は、光学補償膜410の上に存在するが、これは絶縁体膜/構造406の下に存在する。透明な導体膜又は膜スタック404は、付加的な酸化物層416、及び犠牲膜層408に続いており、且つ、覆われている。スタック400Dの一つの利点は、それが駆動電圧を小さいままにすることを可能にする一方で、光学膜412と機械的な膜との間の有効な(effective)光学距離を大きくすることを可能にすることである。これは、駆動電圧が、導体と作動可能な膜との間の距離によって著しく(significantly)決定されてしまうからである。
【0015】
図4Eは、単層の犠牲膜の代わりに組み込まれた多層のエッチング停止スタック418を含むプレカーソルスタック400Eを示す。このスタック418は、続くミクロ機械加工の期間に限定される(defined)べき複数の作動可能な構造の高さを予め定義する便利な手段を提供する。一実施形態では、同一のリリースエッチング(release etch)を用いてエッチングすることができるが、一方の材料が他方に対するエッチング停止としての機能を果たすように、代替の且つ異なるエッチング化学特性(etch chemistries)を利用することができる少なくとも2つの材料をスタック418は含む。一つの例は、両方ともXeFでエッチング可能なモリブデンとシリコンの組み合わせであろう。しかし、シリコンに化学作用を及ぼすことなくモリブデンをエッチングするために燐酸ベースのウェットエッチング液を使用してもよく、そしてモリブデンをエッチングすることなくシリコンをエッチングするためにテトラメチル水酸化アンモニウム(TMMA)を使用してもよい。多くの他の組み合わせが存在し、当業者によって識別され且つ開発されることができる。更に、エッチング停止スタックは、単独の犠牲層の代えて、先に限定されたプレカーソルスタックの任意のものに適用し得ることに注意すべきである。
【0016】
図面の図4Fは、プレカーソルスタックの一実施形態400Fを示す。プレカーソルスタック400Fは、機械構造材料(mechanical structural material)420を含む。適当なミクロ機械加工技術及びシーケンスを用いて、機能する(functioning)MEMSデバイスを、パターニング及びエッチングのみを使用してプレカーソルスタック400Fを用いて製造し得る。従って、プレカーソルスタック400Fの後工程の期間には、蒸着が必要とされない。これは、設備202(図2を参照)といった後処理設備が、蒸着ツールへの設備投資を必要としないことを意味する。材料420は、その応力(stress)が制御されることができる、金属、ポリマー、酸化物、及びこれらの組み合わせを含む、但しこれらに限定されない、任意の数の材料を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、統合されたMEMS処理設備のブロック図を示す。
【図2】図2は、統合されていないMEMS処理設備のブロック図を示す。
【図3】図3は、本発明のプレカーソルスタックを用いて製造することができるMEMSデバイスのブロック図を示す。
【図4A】図4Aは、異なる実施形態による、本発明のプレカーソルスタックのブロック図を示す。
【図4B】図4Bは、異なる実施形態による、本発明のプレカーソルスタックのブロック図を示す。
【図4C】図4Cは、異なる実施形態による、本発明のプレカーソルスタックのブロック図を示す。
【図4D】図4Dは、異なる実施形態による、本発明のプレカーソルスタックのブロック図を示す。
【図4E】図4Eは、異なる実施形態による、本発明のプレカーソルスタックのブロック図を示す。
【図4F】図4Fは、異なる実施形態による、本発明のプレカーソルスタックのブロック図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイスを製造する方法であって、
予め製造された薄膜スタックを処理して、前記MEMSデバイスを限定する
ことを備える方法。
【請求項2】
前記予め製造された薄膜スタックは、少なくとも、導電性材料から成る第1の層、絶縁体材料から成る第2の層、及び犠牲材料から成る第3の層を備える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記処理することは、エッチング、パターニング、及び蒸着から成る組から選択される作業を備える、請求項1記載の方法。
【請求項4】
MEMSデバイスの製造で用いるプレカーソル膜スタックであって、
キャリア基板と、
前記キャリア基板の上に形成される第1の層と、
前記第1の層の上に形成される、絶縁体材料から成る第2の層と、
前記第2の層の上に形成される、犠牲材料から成る第3の層と、
を備えるプレカーソル膜スタック。
【請求項5】
前記第1、前記第2、及び前記第3の層は、蒸着技術を用いて形成される、請求項4記載のスタック。
【請求項6】
前記第1の層は、単独の金属、導電性の酸化物、フッ化物、ケイ化物、及び導電性のポリマーから成る組から選択される導電性の材料から成る、請求項4記載のスタック。
【請求項7】
前記絶縁体材料は、酸化物、ポリマー、フッ化物、セラミック、及び窒化物から成る組から選択される、請求項4記載のスタック。
【請求項8】
前記犠牲材料は、2フッ化キセノンガスを用いてエッチング可能である、請求項4記載のスタック。
【請求項9】
前記犠牲材料は、シリコン、モリブデン、及びタングステンから成る組から選択される、請求項4記載のスタック。
【請求項10】
前記第1の層と前記キャリア基板との間に蒸着される光学補償層を更に備え、前記光学補償層は有限の消散係数を持つ材料を含む、請求項4記載のスタック。
【請求項11】
前記光学補償層は、ジルコニア、ハフニア、酸化物、窒化物、及ぶフッ化物から成る組から選択される材料を含む、請求項10のスタック。
【請求項12】
前記第1の層は複数の副層を備え、前記副層の少なくとも一部は導電性の材料から成る、請求項4記載のスタック。
【請求項13】
前記キャリア基板から最も遠い前記副層は、非導電性であり、且つ、光学層を限定する、請求項12記載のスタック。
【請求項14】
前記第2及び第3の層の間に蒸着される光学層を更に備える、請求項4記載のスタック。
【請求項15】
前記第3の層は少なくとも2つの副層を備え、各副層は他の層と置換でき、各副層は、同一のリリースエッチング液でエッチングされることができるが、前記副層は互いにエッチング停止を限定する異なるエッチング化学特性を有する、請求項4記載のスタック。
【請求項16】
前記第3の層は、シリコンから成る副層と置換できる、モリブデンから成る副層を備える、請求項15記載のスタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【公表番号】特表2007−524517(P2007−524517A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517633(P2006−517633)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020330
【国際公開番号】WO2005/001545
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505258472)アイディーシー、エルエルシー (122)
【Fターム(参考)】