説明

MFI型ゼオライト膜配設体、及びガス分離方法

【課題】六フッ化硫黄(SF)又は四フッ化炭素(CF)を含有する混合ガスから、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素をMFI型ゼオライト膜に選択的に透過させることにより、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を分離することができるMFI型ゼオライト膜配設体を提供する。
【解決手段】多孔質基体と、多孔質基体の表面に配設されたMFI型ゼオライト膜とを備え、MFI型ゼオライト膜が、カリウムを骨格に有し、MFI型ゼオライト膜のSiO/Alモル比が、50〜300であるMFI型ゼオライト膜配設体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MFI型ゼオライト膜配設体、及びガス分離方法に関し、更に詳しくは、六フッ化硫黄(SF)又は四フッ化炭素(CF)を含有する混合ガスから、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素をMFI型ゼオライト膜に選択的に透過させることにより、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を選択的に分離することができるMFI型ゼオライト膜配設体、及びこのような分離を行うガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
六フッ化硫黄(SF)は人体に無害であることや化学的、熱的には安定で絶縁特性に優れることから、ガス絶縁開閉装置やガス絶縁変圧器などの電力機器に広く採用されてきた。しかしながら、地球温暖化係数が二酸化炭素の23900倍と極めて高く、その大気放出量の削減が課題となっている。トランスや遮断器に充填されている六フッ化硫黄は純度が100%のものもあるが、窒素ガス等の希釈ガスにより希釈されて充填されているものがある。このように希釈されている場合には、六フッ化硫黄を分離して回収する手段が必要となる。
【0003】
四フッ化炭素(CF)などに代表されるPFC(Perfluoro-compound)ガスは、主にプラズマエッチングやCVD(Chemical Vapor Deposition)装置のクリーニングに用いられてきた。しかしながら、PFCガスは、大気中での寿命が非常に長く、その地球温暖化係数は二酸化炭素の1万倍にも達することから、六フッ化硫黄と同様にその大気放出量の削減が課題となっている。エッチングガスとして用いられる場合、他のガスと混合し、希釈されて用いられる場合がある。このように希釈されている場合には、四フッ化炭素を分離して回収する手段が必要となる。
【0004】
六フッ化硫黄が希釈されている場合の、六フッ化硫黄の分離回収法としては、吸着法(例えば、特許文献1,2参照)、膜分離法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。膜分離法に関してはゼオライト膜を用いることで、大気の主成分である窒素と六フッ化硫黄とを分離できることが知られている。これはゼオライトの細孔を篩として、両者の分子径の違いを利用したものである。この膜からは分子径の小さな分子が分子径の大きな六フッ化硫黄に対して選択的に透過する。また、モレキューラーシーブ膜を用いた六フッ化硫黄及び四フッ化炭素と窒素の分離法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。これは、モレキューラーシーブ膜の分子篩作用により、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素と比較して、分子径が小さな窒素を選択的に透過させ、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素と窒素とを分離しようとするものである。
【0005】
このように、窒素と六フッ化硫黄又は四フッ化炭素とを分離する膜が報告されているが、膜を透過し、抽出されるのは分子径の小さな窒素である。通常、電力機器等に用いられる、窒素と六フッ化硫黄又は四フッ化炭素との混合ガスにおいては、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素が窒素中に低濃度で存在するものである。そのため、上記膜を用いてこの低濃度の六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を濃縮する場合には、処理すべき混合ガスの大半が多量の窒素であるため、多量の膜が必要となったり、長時間の分離時間を要するという問題があった。また、吸着法により窒素と六フッ化硫黄又は四フッ化炭素とを分離する場合、分離に要するエネルギーが大きくなるという問題があった。
【特許文献1】特開2001−314726号公報
【特許文献2】特表2002−523208号公報
【特許文献3】特開2004−105942号公報
【特許文献4】特表2001−510395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、六フッ化硫黄(SF)又は四フッ化炭素(CF)を含有する混合ガスから、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素をMFI型ゼオライト膜に選択的に透過させることにより、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を選択的に分離することができるMFI型ゼオライト膜配設体、及びこのような分離を行うガス分離方法を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明によって以下のMFI型ゼオライト膜配設体及びガス分離方法が提供される。
【0008】
[1] 多孔質基体と、前記多孔質基体の表面に配設されたMFI型ゼオライト膜とを備え、前記MFI型ゼオライト膜が、カリウムを骨格に有し、前記MFI型ゼオライト膜のSiO/Alモル比が、50〜300であるMFI型ゼオライト膜配設体。
【0009】
[2] 前記MFI型ゼオライト膜が、アルカリ源としてカリウムを含有するとともにSiO/Alモル比が30〜100の原料ゾルを、水熱合成して得られたものである[1]に記載のMFI型ゼオライト膜配設体。
【0010】
[3] 前記MFI型ゼオライト膜が、K/Siモル比が0.21〜0.30であるとともにSiO/Alモル比が30〜100の原料ゾルを、水熱合成して得られたものである[2]に記載のMFI型ゼオライト膜配設体。
【0011】
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載のMFI型ゼオライト膜配設体を用いて、SF及びCFからなる群から選択される少なくとも1種を含有する混合ガスから、当該含有される成分を透過分離するガス分離方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体によれば、MFI型ゼオライト膜が、カリウムを骨格に有し、MFI型ゼオライト膜のSiO(シリカ)/Al(アルミナ)モル比が、50〜300であるため、窒素と六フッ化硫黄との混合ガス、又は窒素と四フッ化炭素との混合ガスのなかの、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素が選択的にMFI型ゼオライト膜を透過し、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を選択的に分離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0014】
(1)MFI型ゼオライト膜配設体:
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体は、多孔質基体と、多孔質基体の表面に配設されたMFI型ゼオライト膜とを備え、MFI型ゼオライト膜が、カリウムを骨格に有し、MFI型ゼオライト膜のSiO(シリカ)/Al(アルミナ)モル比が、50〜300である。ここで、ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩の骨格構造を有する物質の総称であり、分子レベルの微小かつ均一な網目構造を備えている。二酸化ケイ素からなる骨格を基本とするが、一部のケイ素をアルミニウムに置き換えることができる。この場合、結晶格子全体が負に帯電することになるため、骨格にカチオンを配置することで電荷のバランスを取る。ゼオライトにはLTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDRといった数多くの種類が存在する。これらの中でMFIは酸素8員環を含む多面体によって形成され、その構造内にストレートチャンネルとジグザグチャンネルと呼ばれる2種類の細孔を有していることが知られている。ゼオライトは、その特異な吸着特性や分子篩特性から、吸着剤や触媒などに工業的に広く用いられている。また、近年、金属やセラミックスからなる多孔質基材上に成膜されたゼオライト膜がガスや液体の分離に用いられるようになってきている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0015】
(1−1)MFI型ゼオライト膜;
また、MFI型ゼオライト膜は、SiO/Alモル比(シリカ/アルミナ(モル比))が、50〜300であり、80〜200であることが好ましく、100〜150であることが更に好ましい。ここで、「SiO/Alモル比」とは、MFI型ゼオライト膜中に含有されるシリカの量(モル)を、MFI型ゼオライト膜中に含有されるアルミナの量(モル)で除した値である。また、MFI型ゼオライト膜中に含有されるシリカの量(モル)及びアルミナの量(モル)は、X線エネルギー分析装置(Energy dispersive spectroscopy:EDS)を用いて分析した値である。上記、シリカ/アルミナ(モル比)が、50より小さいと欠陥の無いMFI型ゼオライト膜が形成され難くなることがあり、300より大きいと、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素を選択的に透過させる機能が低下することがある。
【0016】
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体を構成するMFI型ゼオライト膜は、カリウムを骨格に有し、その含有率は、K/Alモル比(MFI型ゼオライト膜中に含有されるカリウムのモル数をMFI型ゼオライト膜中に含有されるアルミニウムのモル数で除した値)が0.8〜1.3が好ましい。MFI型ゼオライトの骨格構造は基本的にケイ素(Si)とアルミニウム(Al)が酸素(O)を介して結合した、Si−O−Al−O−Siが三次元的に組み合わさることによって形成される。ケイ素(+4価)とアルミニウム(+3価)では電荷が異なるため、この電荷の差を補償するために陽イオンが必要となり、これがアルミニウム原子の近傍に位置する。従って、+1価のカリウムが陽イオンの場合には、「K/Alモル比」は基本的には1となるものである。MFI型ゼオライト膜中の「K/Alモル比」は、X線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro−Analysis:EPMA)を用いて分析した値である。
【0017】
MFI型ゼオライト膜は、カリウムを骨格に含有し、SiO/Alモル比が50〜300であることより、細孔径と透過分子のサイズとの差に起因した分子篩特性と、細孔表面と透過分子との親和性に基づいた吸着特性とが、窒素の透過を抑制するとともに、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素を選択的に透過させるのに好適なバランスになっているものと考えられる。これにより、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素を選択的に透過させることができるため、MFI型ゼオライト膜の膜面積を大きくしなくても、短時間で、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素の濃度が低い混合ガスから、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を分離することができる。被処理ガスである混合ガスは、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素以外には、窒素、ヘリウム、酸素、アルゴン、水素等を含有するものであることが好ましい。また、六フッ化硫黄と四フッ化炭素の両方が含まれても良い。また、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素の濃度が低いとは、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素の濃度が0体積%より大きく、50体積%以下のことをいう。
【0018】
また、MFI型ゼオライト膜は、アルカリ源としてカリウムを含有するとともにSiO/Alモル比が30〜100の原料ゾルを、水熱合成して得られたものであることが好ましく、K/Siモル比が0.21〜0.30であるとともにSiO/Alモル比が30〜100の原料ゾルを、水熱合成して得られたものであることが更に好ましい。これにより、MFI型ゼオライト膜が、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素を選択的に分離することが可能な膜となる。原料ゾル中のカリウムの含有量がK/Siが0.21より少ない、或いは、K/Siが0.30より多いとMFI型ゼオライト膜が形成され難くなることがある。原料ゾル中のSiO/Alモル比が30より小さいと、欠陥が無いMFI型ゼオライト膜が形成され難くなることがあり、100より大きいと、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素を選択的に透過し難くなることがある。また、MFI型ゼオライト膜は、K/Siモル比が0.25〜0.29であるとともにSiO/Alモル比が40〜80の原料ゾルを、水熱合成して得られたものであることが特に好ましい。ここで、水熱合成とは、水、及びシリカ等のゼオライトの原料を加熱して、水蒸気存在下でゼオライト膜を合成することをいう。
【0019】
MFI型ゼオライト膜は、膜厚が0.01〜20μmであることが好ましく、0.11〜10μmであることが更に好ましい。0.01μmより薄いと、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素からなる群から選択される少なくとも1種(以下、「分離対象成分」ということがある。)を含有する混合ガスから、当該含有される成分(六フッ化硫黄及び四フッ化炭素からなる群から選択される少なくとも1種)を分離するとき、分離しようとする成分以外の窒素等の成分の透過量も多くなり、分離効率が低くなることがある。20μmより厚いと、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素の透過速度が遅くなり、膜分離に時間がかかることがある。ここで、MFI型ゼオライト膜の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)によってMFI型ゼオライト膜の断面を観察して得られた値とする。
【0020】
(1−2)多孔質基体;
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体は、MFI型ゼオライト膜が多孔質基体の表面に配設されたものであるが、MFI型ゼオライト膜が多孔質基体表面に配設されることにより、MFI型ゼオライト膜を薄膜としても、多孔質基体に支えられてその形状を維持し破損等を防止することが可能となる。多孔質基体は、その表面にMFI型ゼオライト膜を形成することができれば特に限定されるものではなく、その材質、形状及び大きさは用途等に合わせて適宜決定することができる。多孔質基体を構成する材料としては、アルミナ、ムライト、ジルコニア等のセラミックス、ステンレス等の金属、MFI型ゼオライト等を挙げることができる。これらの中でも、多孔質基体の作製の容易さ、及び入手の容易さの点から、アルミナが好ましい。アルミナとしては、平均粒径0.001〜30μmのアルミナ粒子を原料として成形、焼結させたものが好ましい。多孔質基体の形状としては、棒状、ペレット状、平板状、チューブ状(円筒状、断面多角形の管状等)、モノリス形状、ハニカム形状等いずれの形状でもよい。
【0021】
(2)MFI型ゼオライト膜配設体の製造方法:
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体の製造方法は、シリカ、水、構造規定剤、カリウム源、及びアルミニウム源を含有する原料ゾルを、耐圧容器内に入れ、多孔質基体を原料ゾルに浸漬し、原料ゾル及び多孔質基体が入った耐圧容器を加熱して(水熱合成して)多孔質基体表面にMFI型ゼオライト膜を形成する製造方法であることが好ましい。
【0022】
(2−1)原料ゾル;
原料ゾル中の、カリウム源に由来するカリウムの含有量は、K/Siが0.21〜0.30であることが好ましく、0.25〜0.29であることが更に好ましい。原料ゾル中のK/Siが0.21より少ない、或いは、K/Siが0.30より多いと欠陥が無いMFI型ゼオライト膜が形成され難くなることがある。更に、カリウム含有量が上記範囲であるとともに、原料ゾル中のSiO/Alモル比が30〜100であることが好ましく40〜80であることが更に好ましい。原料ゾル中のSiO/Alモル比が30より小さいと、欠陥が無いMFI型ゼオライト膜が形成され難くなることがあり、100より大きいと、六フッ化硫黄及び四フッ化炭素を選択的に透過し難くなることがある。ここで、カリウム源とは、カリウムを含有する化合物のことであり、例えば、水酸化カリウム、塩化カリウム等を挙げることができる。これらの中でも水酸化カリウムが好ましい。
【0023】
シリカとしては、シリカゾルを好適に用いることができる。シリカゾルとしては、市販のシリカゾル(例えば、商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製、固形分濃度30質量%)を好適に用いることができる。ここで、固形分とはシリカのことをいう。また、シリカ微粉末を水に溶解させることにより調製したもの、或いはアルコキシシランを加水分解することにより調製したものを用いてもよい。
【0024】
アルミニウム源とは、原料ゾル中でアルミナとなる化合物のことであり、例えば、硫酸アルミニウム(14〜18水和物)、塩化アルミニウム等を挙げることができる。これらの中でも硫酸アルミニウム(14〜18水和物)が好ましい。
【0025】
MFI型ゼオライトの構造規定剤としては、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)を生じ得る、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)やテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)が用いられる。構造規定剤を水溶液として用いる場合は、TPAOH及び/又はTPABrを含む水溶液を好適に用いることができる。
【0026】
水としては、蒸留水、イオン交換水等を用いることが好ましい。
【0027】
(2−2)多孔質基体;
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体の製造に用いる多孔質基体は、上記本発明のMFI型ゼオライト膜配設体においてMFI型ゼオライト膜を支持するために使用する多孔質基体と同様である。
【0028】
(2−3)MFI型ゼオライト膜の形成;
多孔質基体と原料ゾルとを耐圧容器内に入れる。このとき、多孔質基体が、原料ゾルに浸漬されるように配置する。その後、耐圧容器内を加熱して耐圧容器内の水を水蒸気とし、水熱合成により多孔質基体表面にMFI型ゼオライト膜を形成する。尚、水熱合成により得られたMFI型ゼオライト膜は、構造規定剤を含むものである。そのため、最終的にMFI型ゼオライト膜を得るために、その後に、加熱処理を行うことが好ましい。
【0029】
耐圧容器としては、特に限定されないが、フッ素樹脂製内筒付のステンレス製耐圧容器、ニッケル金属製耐圧容器等を使用することができる。多孔質基体を原料ゾルに浸漬する場合は、少なくともMFI型ゼオライト膜を生成させる箇所を原料ゾルに沈めることが好ましく、多孔質基体全体を原料ゾルに沈めてもよい。
【0030】
水熱合成を行う場合の温度は、100〜200℃が好ましく、140〜180℃が更に好ましい。このような温度範囲とすることにより、均一な厚みで欠陥の少ない緻密なMFI型ゼオライト膜を得ることが可能となる。100℃より低温であると、水熱合成が進行し難いことがあり、200℃より高温であると、得られるMFI型ゼオライト膜を均一な、厚みの欠陥の少ない緻密なものとし難いことがある。また、水熱合成の合成時間は、3〜120時間であることが好ましく、6〜90時間であることが更に好ましく、10〜72時間であることが特に好ましい。3時間より短いと、水熱合成が十分に進行しないことがあり、120時間より長いと、MFI型ゼオライト膜が、不均一な厚さで、厚くなり過ぎることがある。ここで、MFI型ゼオライト膜が緻密であるというときは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した場合に、多孔質基体表面の露出がない状態であることをいう。また、MFI型ゼオライト膜の欠陥は、例えば、ローダミンB溶液のような着色剤を多孔質基体表面に塗布した後、速やかに水洗することにより残存する着色を目視により観察することができ、欠陥が少ないというときは、着色がほとんど残存しない状態であることをいう。
【0031】
また、加熱する方法としては、耐圧容器を熱風乾燥機に入れて加熱したり、耐圧容器にヒーターを直接取り付けて加熱する等の方法が挙げられる。
【0032】
得られるMFI型ゼオライト膜の膜厚は、上記本発明のMFI型ゼオライト膜配設体におけるMFI型ゼオライト膜の、好ましい膜厚の範囲内であることが好ましい。
【0033】
(2−4)後処理:
水熱合成により多孔質基体表面にMFI型ゼオライト膜を形成した後には、MFI型ゼオライト膜が形成された多孔質基体を、水を使用して煮沸洗浄することが好ましい。これにより、MFI型ゼオライト膜上に余分なゼオライト結晶が析出することを防止することができる。洗浄時間は、特に限定されないが、0.5〜3時間の洗浄を1〜5回繰り返すことが好ましい。洗浄の後は、60〜120℃で、4〜48時間乾燥させることが好ましい。
【0034】
次に、上記方法により得られた、多孔質基体表面に形成されたMFI型ゼオライト膜を加熱処理(活性化処理)することにより、構造規定剤を除去し、最終的にMFI型ゼオライト膜を形成し、MFI型ゼオライト膜配設体を得る。加熱温度は、500〜600℃が好ましく、加熱時間は1〜60時間が好ましい。また、加熱に使用する機器としては、電気炉等を挙げることができる。
【0035】
(3)ガス分離方法:
本発明のガス分離方法は、上記本発明のMFI型ゼオライト膜配設体を用いて、SF及びCFからなる群から選択される少なくとも1種を含有する混合ガスから、当該含有される成分(分離対象成分)を透過分離するガス分離方法である。
【0036】
本発明のガス分離方法は、MFI型ゼオライト膜配設体を構成するMFI型ゼオライト膜の一方の面に分離対象成分を含有する混合ガスを接触させ、分離対象成分をMFI型ゼオライト膜を選択的に透過させて、分離対象成分を分離する方法である。本発明のガス分離方法は、本発明のMFI型ゼオライト膜配設体を用いて分離対象成分を選択的に分離するものであるため、膜面積が小さくても短時間でガス分離を行うことができる。
【0037】
本発明のガス分離方法は、例えば、図1に示す、ガス分離装置100を用いて実施することができる。図1は、本発明のガス分離方法に用いるガス分離装置100の断面を示す模式図である。ガス分離装置100は、一方の開口端部にMFI型ゼオライト膜配設体1が気密に装着された筒状の内管11と、内管11のMFI型ゼオライト膜配設体1が装着された一方の端部側が内部に挿入され、両端部が塞がれた筒状の外管12と、外管12の外周を覆うように配設された筒状のヒーター21とを備えるものである。MFI型ゼオライト膜配設体1は、多孔質基体3と、多孔質基体3の表面に配設されたMFI型ゼオライト膜2とを備える、上記本発明のMFI型ゼオライト膜配設体である。また、「MFI型ゼオライト膜配設体1が内管11の一方の開口端部に気密に装着された」というときは、内管11の一方の開口端部と、MFI型ゼオライト膜配設体1のMFI型ゼオライト膜2との間にガスが通過する隙間がなく、MFI型ゼオライト膜2を透過したガスだけが、内管11の外部から内部に侵入できるように、MFI型ゼオライト膜配設体1が内管11の一方の開口端部に装着されていることをいう。内管11及び外管12の材質は、特に限定されるものではなく、ステンレススチール等を挙げることができる。
【0038】
ガス分離装置100を用いて本発明のガス分離方法を実施する場合は、分離対象成分を含有する混合ガス31を外管12内に流入させ、外管12内に位置するMFI型ゼオライト膜配設体1のMFI型ゼオライト膜2に分離対象成分を接触させ、分離対象成分を、MFI型ゼオライト膜2を透過させて内管11内に流入させる。そして、内管11の他方の端部(MFI型ゼオライト膜配設体1が配設されていない側の開口端部)から内管11内に、窒素等のスイープガスを流入させ、スイープガスで希釈された分離対象成分を分離対象成分含有ガス34として内管11から外部に取り出す。また、分離対象成分が分離された後の混合ガスを、排気混合ガス32として外管12から外部に排出する。また、内管11内を減圧して混合ガスの分離を行ってもよいし(圧力差による分離方法1)、或いは、外管12内を加圧して混合ガスの分離を行ってもよい(圧力差による分離方法2)。あるいは、内管11内の減圧と外管12内の加圧を同時に行って混合ガスの分離を行ってもよい(圧力差による分離方法3)。上記、スイープガスを用いたガス分離方法では、分離対象成分含有ガスにはスイープガスが含有されるため、分離対象成分とスイープガスとを分離する必要が生じることがある。このような場合、スイープガスを使用しない、上記、圧力差による分離方法1〜3を用いることが好ましい。圧力差による分離方法1〜3によれば、スイープガスを用いないことより、分離対象成分とスイープガスとを分離する必要がないため好ましい。圧力差による分離方法1〜3の中では、内管1内を減圧する圧力差による分離方法1がより好ましい。
【0039】
混合ガスから分離対象成分を分離する処理を行うときの温度は、100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。下限については特に制限はないが、透過速度が低下するため10℃程度以上であればよい。温度調整は、ヒーター21を用いて行う。ヒーター21としては、電気炉等を用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(原料ゾルの調製)
10%テトラプロピアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)水溶液(和光純薬工業(株)製)、蒸留水、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)(和光純薬工業(株)製)、硫酸アルミニウム(14〜18水和物)(和光純薬工業(株)製)、30質量%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学(株)製)、4N水酸化カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)、及び4N水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)の各原料を表1に示す組成となるように混合し、卓上シェーカーを用いて室温で60分間撹拌して原料ゾルを調製した。
【0042】
(MFI型ゼオライト膜(MFI型ゼオライト膜配設体)の形成)
次いで、フッ素樹脂内筒付ステンレス製100ml耐圧容器中に、調製した原料ゾルを入れ、この中に多孔質基材を浸漬し、オーブン中、180℃、8時間反応させることにより多孔質基材の表面に、構造規定剤を含有するMFI型ゼオライト膜を成膜した。構造規定剤を含有するMFI型ゼオライト膜が形成された多孔質基材を電気炉に入れ、550℃まで昇温した後、4時間保持してテトラプロピルアンモニウム(TPA)を除去することにより、MFI型ゼオライト膜を形成し、MFI型ゼオライト膜配設体を得た。得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及び「K/Alモル比」を以下の方法で測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、以下に示す透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、50℃において行った。
【0043】
(透過分離試験)
窒素、四フッ化炭素、及び六フッ化硫黄を含有する混合ガスの透過分離試験を、図1に示すガス分離装置を用いてWicke−Kallenbach法にて実施する。約15体積%の四フッ化炭素と約15体積%の六フッ化硫黄の混合ガスを窒素ガスをキャリアーガスとして、外管12内に供給し、MFI型ゼオライト膜の片側(供給側)の面に接触させるとともに、MFI型ゼオライト膜の反対の面側(透過側)に透過してきたガスを、Heガスでスイープして回収し、ガスクロマトグラフィーで分析する。
【0044】
得られた透過分離試験の各測定結果より、SF及びCFの分離係数αを求め、分離の程度を評価した。分離係数αとは、a成分(分離対象成分)及びb成分を含有する混合ガスからa成分を透過分離する場合、供給側におけるa成分及びb成分のモル濃度をそれぞれX及びXとし、透過側におけるa成分及びb成分のモル濃度をそれぞれY及びYとしたときに、「α(a/b)=(Y/Y)/(X/X)」の式で求められる値である。従って、SFを透過分離する場合の分離係数αは、「α(SF/N)=(YSF6/YN2)/(XSF6/XN2)」の式で求められる値であり、CFを透過分離する場合の分離係数αは、「α(CF/N)=(YCF4/YN2)/(XCF4/XN2)」の式で求められる値である。
【0045】
(シリカ/アルミナ(モル比))
合成した膜のシリカ/アルミナ(モル比)はX線エネルギー分析装置(Energy dispersive spectroscopy:EDS)を用いて測定する。EDSによるシリカ/アルミナ(モル比)の測定は、MFI型ゼオライト膜の断面全体をスキャンすることにより実施する。
【0046】
「K/Alモル比」
合成した膜のK/Al(モル比)はX線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro−Analysis:EPMA)を用いて測定する。EPMAによるK/Al(モル比)の測定は、MFI型ゼオライト膜の断面全体をスキャンすることにより実施する。
【0047】
「Na/Alモル比」
合成した膜の「Na/Alモル比」はX線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro−Analysis:EPMA)を用いて測定する。EPMAによる「Na/Alモル比」の測定は、MFI型ゼオライト膜の断面全体をスキャンすることにより実施する。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
(実施例2)
原料ゾルの組成を表1に示す組成にした以外は、実施例1と同様にしてMFI型ゼオライト膜配設体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及びK/Al(モル比)を測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、50℃において行った。
【0051】
(実施例3)
原料ゾルの組成を表1に示す組成にした以外は、実施例1と同様にしてMFI型ゼオライト膜配設体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及びK/Al(モル比)を測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、200℃、100℃、及び50℃のそれぞれの温度において行った。
【0052】
(比較例1)
原料ゾルの組成を表1に示す組成にした以外は、実施例1と同様にしてMFI型ゼオライト膜配設体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及びK/Al(モル比)を測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、50℃において行った。
【0053】
(比較例2)
原料ゾルの組成を表1に示す組成にした以外は、実施例1と同様にしてMFI型ゼオライト膜配設体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及びK/Al(モル比)を測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、50℃において行った。また、上記方法によりNa/Al(モル比)を測定した。結果は以下の(考察)に示す。
【0054】
(比較例3)
原料ゾルの組成を表1に示す組成にした以外は、実施例1と同様にしてMFI型ゼオライト膜配設体を作製し、更に、80℃で塩化アンモニウム水溶液に含浸した後、500℃で焼成し、カチオンをナトリウムからプロトンに変換した後、更に80℃で塩化カリウム水溶液に含浸し、その後、水洗、乾燥することによりカチオンをカリウムに変換して、比較例3のMFI型ゼオライト膜配設体とした。実施例1の場合と同様に、得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及びK/Al(モル比)を測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、50℃において行った。
【0055】
(比較例4)
原料ゾルの組成を表1に示す組成にした以外は、実施例1と同様にしてMFI型ゼオライト膜配設体を作製した。実施例1の場合と同様に、得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜について、シリカ/アルミナ(モル比)及びK/Al(モル比)を測定した。得られた結果を表2に示す。また、得られたMFI型ゼオライト膜配設体について、透過分離試験を行った。算出された分離係数を表2に示す。尚、透過分離試験は、50℃において行った。
【0056】
(考察)
実施例1〜3のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜は、分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)が、ともに1より大きく、SF及びCFがNに対して選択的に膜を透過したことがわかる。また、実施例3のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜を用いて、透過温度と分離係数の関係を検討した結果、温度を上げるにつれてSF及びCF選択性が低下したことがわかる。従って透過温度としては100℃以下が好ましく、50℃付近が更に好ましいと考えられる。
【0057】
比較例1のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜は、アルカリとしてカリウムを含むものの、シリカ/アルミナ(モル比)が100を超える原料ゾルを用いて作製されたものである。比較例1のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜の分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)は、共に1より若干大きな値であったが、実施例1〜3における分離係数αの値と比較すると、十分の一程度又はそれ以下の値であった。比較例2のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜は、アルカリとしてナトリウムが添加された原料ゾルを用いて作製されたものである。比較例2のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜の分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)は、共に1より小さい値であった。比較例3のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜は、比較例2の原料ゾルを用いて合成したNaカチオンを含んだMFI型ゼオライト膜を、液相イオン交換法でカチオンにイオン交換したものである。比較例3のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜の分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)は、共に1であった。比較例4のMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜の分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)は、共に1であった。
【0058】
実施例1〜3におけるMFI型ゼオライト膜のシリカ/アルミナ(モル比)の分析値が80〜200であったのに対して、比較例1においては400程度であった。そして比較例1においては分離係数αが1より若干大きい程度に留まった。比較例1のMFI型ゼオライト膜は、実施例1〜3のMFI型ゼオライト膜と同様にカチオンとしてカリウムが用いられている。しかし、原料ゾルのシリカ/アルミナ(モル比)の値が大きかったために、生成したMFI型ゼオライト膜におけるアルミニウムの量が少なくなっている。そのため、結果として、骨格内に配置されるカリウムの量が少なくなったことにより、カリウムの効果が小さくなったものと推定される。
【0059】
一方、比較例2におけるMFI型ゼオライト膜のシリカ/アルミナ(モル比)の分析値は、100であり、実施例2におけるシリカ/アルミナ(モル比)と同じ値であった。しかし、比較例2におけるMFI型ゼオライト膜は、分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)が1より小さく、N選択性であった。得られたMFI型ゼオライト膜配設体のMFI型ゼオライト膜のK/Al(モル比)、Na/Al(モル比)は、それぞれ0、1.3であった。従って実施例2のMFI型ゼオライト膜の分離係数が高いのは、アルカリが(カチオンが)カリウムであることによる効果であると推察される。
【0060】
比較例3におけるMFI型ゼオライト膜に関しては、分離係数α(SF/N)及び分離係数α(CF/N)が1であるが、これは、MFI型ゼオライト膜の骨格内に十分にカリウムが配置されているものの、イオン交換の際に欠陥が生じたために分離性を喪失したことによると考えられる。これにより、原料ゾル中にカリウムが含有され、MFI型ゼオライト膜の合成過程にカリウムが骨格に取り込まれる場合と比較して、カリウムが含まれない原料ゾルを用いてMFI型ゼオライト膜を合成した後に、イオン交換によりカリウムを骨格に取り込もうとする場合には、カリウムが骨格に取り込まれ難く、得られるMFI型ゼオライト膜の選択透過性能が低下することがわかる。
【0061】
比較例4におけるMFI型ゼオライト膜に関しては、アルカリとしてカリウムが添加された原料ゾルを用いて作製されたものである。MFI型ゼオライト膜のシリカ/アルミナ(モル比)の分析値が40であった。MFI型ゼオライト膜の表面をSEMで観察した結果、多数のクラックが観察された。従って比較例4の膜において、分離性能が発現しなかったのは欠陥があったためと考えられる。原料ゾルのシリカ/アルミナ(モル比)の値が小さいため、生成したMFI型ゼオライト膜におけるアルミニウムの量、さらにその結果として、骨格内に配置されるカリウムの量が多くなっているが、この場合、欠陥が無いMFI型ゼオライト膜が得られないものと考えられる。
【0062】
以上の実施例1〜3と比較例1、2、4の比較から、実施例1〜3におけるMFI型ゼオライト膜において、SF及びCFの選択性が発現したのは、ある一定量のカリウムカチオンがMFI型ゼオライト膜の細孔に配置されることにより、MFI型ゼオライト膜へのSFやCFの吸着能が高められたことによるものと推定される。さらに、比較例3と実施例1〜3との比較から、製法としては、カリウムをカチオンとして含む原料ゾルを用いてMFI型ゼオライト膜を合成することが好ましく、更に、得られたMFI型ゼオライト膜に含有されるカリウムが、合成過程において骨格に取り込まれたものであることが好ましいことがわかる。また、透過分離試験において、温度を100℃より高く上げると、MFI型ゼオライト膜の分離係数が低下したことに関しては、高温にすることにより、MFI型ゼオライト膜のSF及びCFを吸着する効果が弱められたことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のMFI型ゼオライト膜配設体は、ガス絶縁開閉装置やガス絶縁変圧器などの電力機器に採用される六フッ化硫黄(SF)や、プラズマエッチングやCVD装置のクリーニングに用いられる四フッ化炭素を、分離回収するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のガス分離方法に用いるガス分離装置の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1:MFI型ゼオライト膜配設体、2:MFI型ゼオライト膜、3:多孔質基体、11:内管、12:外管、21:ヒーター、31:混合ガス、32:排気混合ガス、33:キャリアーガス、34:分離対象成分含有ガス、100:ガス分離装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基体と、前記多孔質基体の表面に配設されたMFI型ゼオライト膜とを備え、
前記MFI型ゼオライト膜が、カリウムを骨格に有し、
前記MFI型ゼオライト膜のSiO/Alモル比が、50〜300であるMFI型ゼオライト膜配設体。
【請求項2】
前記MFI型ゼオライト膜が、アルカリ源としてカリウムを含有するとともにSiO/Alモル比が30〜100の原料ゾルを、水熱合成して得られたものである請求項1に記載のMFI型ゼオライト膜配設体。
【請求項3】
前記MFI型ゼオライト膜が、K/Siモル比が0.21〜0.30であるとともにSiO/Alモル比が30〜100の原料ゾルを、水熱合成して得られたものである請求項2に記載のMFI型ゼオライト膜配設体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のMFI型ゼオライト膜配設体を用いて、SF及びCFからなる群から選択される少なくとも1種を含有する混合ガスから、当該含有される成分を透過分離するガス分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−208047(P2009−208047A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56345(P2008−56345)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】