説明

MIR−122Aをモジュレートする使用方法

miR−122aのレベルまたは活性をモジュレートするオリゴマー化合物の投与を通じ、高血清総コレステロール、高血清LDLコレステロールまたは高血清トリグリセリドによって特徴づけられる心血管疾患または代謝性疾患の処置のための方法が提供される。さらに、miR−122aのレベルまたは活性をモジュレートするオリゴマー化合物の投与を通じ、肝臓脂肪症または肝組織トリグリセリド蓄積を低下させる方法が提供される。該方法は、miR−122aを含むかもしくはコードする核酸分子とハイブリダイズするか、または立体的に干渉するオリゴマー化合物を用いる。そのようなオリゴマー化合物は、該オリゴマー化合物の活性、安定性またはヌクレアーゼ抵抗性を改善し得る1つまたはそれ以上の修飾をそれ上に含んでもよい。これらの修飾オリゴマー化合物は、単一の化合物として、または、医薬組成物を含む組成物で、miR−122aを含むもしくはコードする標的化核酸をモジュレートするか、または模倣するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下で、2005年8月29日に出願された米国仮出願番号第60/712,211号、2005年10月28日に出願された米国仮出願番号第60/731,377号および2006年2月7日に出願された米国仮出願番号第60/771,592号に対する優先権を主張し、その各々はその全部が出典明示により本明細書中の一部とされる。
【0002】
本出願は、2003年7月31日に出願された米国仮出願番号第60/492,056、2003年10月31日に出願された第60/516,303号、2003年12月19日に出願された第60/531,596号、および2004年4月14日に出願された第60/562,417号に対する優先権を主張する2004年7月30日に出願された米国特許出願番号第10/909,125号と関連し、その各々はその全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、小さい非コードRNA、特にmiR−122aをモジュレートする方法を提供する。miR−122aのレベルまたは活性を阻害するアンチセンス化合物の投与を通じて、高血清総コレステロール、高血清LDLコレステロールまたは高血清トリグリセリドによって特徴づけられる心血管疾患または代謝性疾患の処置方法が、提供される。さらに、miR−122aのレベルまたは活性を阻害するアンチセンス化合物の投与を通じて、肝臓脂肪症または肝組織トリグリセリド蓄積を低下させる方法が、提供される。該方法は、miR−122aを含むもしくはコードする核酸分子とハイブリダイズするか、または立体的に干渉するアンチセンス化合物を用いる。そのようなアンチセンス化合物は該アンチセンス化合物の活性、安定性またはヌクレアーゼ抵抗性を改善し得る1つまたはそれ以上の修飾をそれ上に含んでもよい。これらの修飾されたアンチセンス化合物は、単一の化合物として、または、医薬組成物を含む組成物で、miR−122aを阻害するために用いられる。
【背景技術】
【0004】
マイクロRNA(miRNA)は、植物および動物のゲノムでコードされる、小さい(約21−24ヌクレオチド長、これらは、「成熟」miRNAとしても知られている)非コードRNA分子である。これらの非常に保存された、内因性発現されるRNAは、特定のmRNAの3’−非翻訳領域(3’−UTR)に結合することによって遺伝子の発現を調節すると考えられている。miRNAは、細胞過程、例えば細胞増殖、細胞死(アポトーシス)、代謝および細胞分化の重要な調節装置として作用し得る。より大きな規模では、miRNA発現は、初期発生、脳発生、疾病進行(例えば癌およびウイルス感染)と関係する。より高度な真核細胞では、遺伝子発現を調節するmiRNAの役割は、転写制御因子の役割と同程度重要であり得ることが推測される。200以上の異なるmiRNAが、植物および動物で確認された(Ambrosら、Curr. Biol., 2003, 13, 807-818)。成熟miRNAは、しばしば何百ものヌクレオチド長の長い内因性の初期miRNA転写産物(別名pri−miRNA、pri−mir、pri−miRまたはpri−pre−miRNAとしても知られる)から生じるようである(Leeら、EMBO J., 2002, 21(17), 4663-4670)。
【0005】
哺乳動物では、ほんのわずかなmiRNAだけが何らかの機能を割り当てられているが、生物情報科学標的予測に基づく見積もりでは、30%程度の範囲に及ぶ高い百分率の遺伝子を調節することが予想されている(Lewisら、2005)。無脊椎動物での初期試験に基づけば、miRNAは、哺乳動物の発達制御および細胞分化で類似の役割を有すること、および、心臓発生(Zhaoら、2005)とリンパ球発生(Chenら、2004)におけるmiRNAの役割が実際に示された。いくつかの研究で、miRNA遺伝子が癌と関連するゲノム領域でしばしば見出されるという報告(Calinら、2004;McManus, 2003)およびmiRNA発現プロフィールが発生系譜および腫瘍の分化状態と相関するという研究(Luら、2005)を含み、miRNAとヒト癌との間にも強い関係が見られた。miRNAの代謝経路における潜在的な役割は、miRNAが、脂肪細胞分化(Esauら、2004)および膵臓膵島細胞からのグルコース刺激性のインスリン分泌の調節(Poy ら、2004)と関係するという研究により示唆された。miR−122aは、発生中の肝臓(Changら、2004)で、また成体肝臓では高度レベルで発現され、それは全miRNA(Changら、2004;LagosQuintanaら、2002)の最大70%を占める。これは、組織の分化状態を維持する役割を果たし得る遺伝子発現パターンを確立するために重要であると考えられる多くの組織特異マイクロRNAのうちの1つである(Lagos-Quintanaら、2002;Limら、2005)。miR−122aは、まだ理解されていない新しい機序を通じてHCVの複製を増強させることも報告されており、それにより、HCV感染症に対する潜在的な治療標的となった(Joplingら、2005)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
miR−122aのモジュレーションが、高血清コレステロール、高血清トリグリセリドまたは肝臓脂肪症によって特徴づけられる疾病および状態における魅力的なアプローチであると、本明細書中で記載される。従って、本発明は、miR−122aをモジュレートし、動物におけるコレステロール状態および脂質状態の臨床上の望ましい変化を達成するために有用なアンチセンス化合物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高血清総コレステロール、高血清LDLコレステロールおよび高トリグリセリドレベルを含む心血管疾患リスクの血清指標を低下させる方法であって、高い心血管疾患の血清指標を有する動物を選択すること、および該動物にmiR−122aを標的とするアンチセンス化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0008】
本発明は、高血清コレステロールレベルを有する動物を選択すること、それから、該動物にmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量を投与することを含む、動物の血清コレステロールを低下させる方法を提供する。血清コレステロールレベルは、血清総コレステロールレベルまたは血清LDLコレステロールレベルであってよい。
本発明は、高トリグリセリドレベルを有する動物を選択すること、それから、該動物にmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量を投与することを含む、動物のトリグリセリドレベルを低下させる方法をさらに提供する。トリグリセリドレベルは、血清トリグリセリドレベルまたは肝組織トリグリセリドレベルであってよい。
【0009】
さらに、高血清リポ蛋白質を有する動物を選択すること、および該動物にmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量を投与することを含む、動物の血清リポ蛋白質を低下させる方法が提供される。血清リポ蛋白質は、アポリポ蛋白質B−100であってよい。
本発明は、肝臓脂肪症を有する動物を選択すること、および該動物にmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量を投与することを含む、動物の肝臓脂肪症を軽減させる方法を提供する。肝臓脂肪症は、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎であってよい。
【0010】
動物にmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量を投与することを含む、動物の肝臓におけるトリグリセリド蓄積を低下させる方法がさらに提供される。
本発明は、動物にmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量を投与することを含む、動物の代謝経路をモジュレートする方法を提供する。代謝経路は、脂質生成、脂肪酸酸化、脂肪酸合成速度またはステロール合成から選択される。本方法は、脂質生成を低下させるか、脂肪酸合成速度を低下させるか、ステロール合成を低下させるか、または脂肪酸酸化を増加させることを提供する。
【0011】
動物をmiR−122a核酸と本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量と接触させることを含む、動物の肝機能を改善する方法がさらに提供される。肝機能の改善は、血漿アミノ基転移酵素の減少が肝機能の改善を示すので、血漿アミノ基転移酵素のレベルを測定することで測定される。
また、糖尿病、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、非アルコール性脂肪肝疾病、非アルコール性脂肪性肝炎または代謝症候群から選択される心血管疾患または代謝性疾患または障害を処置する方法が提供される。動物は、miR−122a核酸に本質的に相補的なアンチセンス化合物の治療上の有効量の投与を通じて処置される。
【0012】
上述の方法のいずれかにおいて、アンチセンス化合物は、miR−122a標的核酸に本質的に完全に相補的である。別には、アンチセンス化合物は、miR−122a標的核酸と完全に相補的である。アンチセンス化合物は、複数の糖修飾されたヌクレオシドを含む。複数の糖修飾されたヌクレオシドは、いくつかの実施形態で、2つの異なる糖修飾を含んでもよい。いくつかの実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、少なくとも1個の二環式糖修飾をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、複数の糖修飾ヌクレオシドのヌクレオシドはそれぞれ、2’−MOE糖修飾を含んでもよい。アンチセンス化合物は、少なくとも1個のホスホロチオエート・ヌクレオシド内結合を含んでもよい。アンチセンス化合物は、少なくとも1個の5‐メチルシトシンをさらに含んでもよい。
【0013】
配列番号:1記載の核酸塩基配列を含むアンチセンス化合物は、上述の方法のいずれかに用いることができる。さらに、配列番号:2記載の核酸塩基配列を含むアンチセンス化合物は、上述の方法のいずれかに用いることができる。アンチセンス化合物は、ISIS 327895またはISIS 387574を含んでもよい。
【0014】
本発明は、心血管疾患リスクの血清指標が高血清コレステロールレベル、高血清トリグリセリドレベルまたは高リポ蛋白質レベルから選択される、心血管疾患リスクの血清指標を低下させる医薬の調製のための、miR−122核酸に本質的に完全に相補的なアンチセンス化合物の使用を提供する。高血清コレステロールは、高LDLコレステロールまたは高血清総コレステロールであってよい。高血清リポ蛋白質は、高血清ApoB−100であってよい。
【0015】
本発明は、肝臓脂肪症を低下させる医薬の調製のための、miR−122a核酸と本質的に完全に相補的なアンチセンス化合物の使用をさらに提供する。肝臓脂肪症は、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎である。
本発明は、さらに、糖尿病、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、非アルコール性脂肪肝疾病、非アルコール性脂肪性肝炎または代謝症候群から選択される疾病または障害を処置するための医薬の調製における、miR−122a核酸と本質的に完全に相補的なアンチセンス化合物の使用を提供する。
【0016】
上述の使用のいずれかで、医薬の調製に用いられるアンチセンス化合物は、21〜23ヌクレオシド長である。さらに、アンチセンス化合物は、miR−122a核酸と完全に相補的であってよい。加えて、アンチセンス化合物は、複数の2’−糖修飾ヌクレオシドを含んでもよい。アンチセンス化合物は、少なくとも1個の二環式糖修飾ヌクレオシドをさらに含んでいてもよい。加えて、アンチセンス化合物は、配列番号:1記載の核酸塩基配列を含む。別には、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を含む。医薬の調製で用いられるアンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾ヌクレオシドを均一に含み得る。アンチセンス化合物は、少なくとも1個のホスホロチオエート・ヌクレオシド内結合をさらに含んでいてもよい。アンチセンス化合物は、さらに少なくとも1個の5‐メチルシトシンを含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
miR−122aのアンチセンス阻害が、高脂血症と肥満の動物モデルでコレステロールと脂質状態の臨床的に望ましい改善をもたらすことが見い出された。したがって、本発明は、miR−122a標的核酸とハイブリダイズし、そしてそのレベル、活性または発現を阻害するアンチセンス化合物(すなわち、該アンチセンス化合物は、miR−122a核酸を標的とする)を提供する。アンチセンス化合物は、miR−122a核酸の安定性と結合性を増強させるため、化学的に修飾される。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、複数の糖修飾ヌクレオシドを含む。別の実施形態において、複数の糖修飾ヌクレオシドは、少なくとも2つの異なる糖修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、複数の糖修飾ヌクレオシドは、少なくとも1個の二環式糖修飾ヌクレオシドを含む。さらなる実施形態において、ヌクレオシドがそれぞれ2’−MOE修飾を有するように、アンチセンス化合物は均一に修飾される。いくつかの実施形態において、アンチセンス化合物は、核酸塩基配列CAAACACCATTGTCACACTCCA(配列番号:1)を含む。好ましい実施形態において、アンチセンス化合物は、核酸塩基配列ACAAACACCATTGTCACACTCCA(配列番号:2)を有する。さらなる実施形態において、アンチセンス化合物はISIS 327895またはISIS 387574である。
【0018】
本発明は、血清コレステロール、血清LDLコレステロールまたは血清トリグリセリドを低下させるため、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物を動物に投与する方法を提供する。本発明はまた、肝臓脂肪症、肝臓トリグリセリドレベルおよび肝臓重量を低下させる方法を提供する。加えて、例えば、血清アミノ基転移酵素の減少によって評価される肝機能を改善する方法が提供される。また、miR−122a mRNA標的、例えばALDO Aの発現をモジュレートする方法が提供される。本発明のアンチセンス化合物はまた、代謝経路のモジュレーションのため、例えば、ステロール合成を低下させるために、脂質生成を低下させるために、脂肪酸合成速度も低下させるために、ステロール合成も低下させるために、または脂肪酸酸化を増加させるために用いられる。
本発明は、高血清コレステロールレベル、高血清トリグリセリドレベルまたは高肝臓トリグリセリドレベルによって特徴づけられる疾病または健康状態の処置のための方法を提供する。これらの疾病または健康状態は、血漿アミノ基転移酵素の増加により測定されるような、損なわれた肝機能によってさらに特徴づけられ得る。
【0019】
1つの実施形態において、本明細書中で提供される方法は、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症または高脂肪酸血症を含む疾病または健康状態の処置に有用である。さらなる実施形態において、本方法は、肝臓脂肪症または非アルコール性脂肪肝疾病の処置に有用である。いくつかの実施形態において、脂肪症は脂肪性肝炎である。さらなる実施形態において、脂肪症はNASHである。さらなる実施形態は、代謝症候群の処置のために提供される本方法の使用を含む。1つの実施形態において、本方法は、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾病または代謝症候群を含むがこれに限定されない疾病または健康状態を有するまたは罹患しやすい動物、特にヒトへの、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物の投与を含む。1つの態様において、その疾病または健康状態は、治療上の有効量の本発明のアンチセンス化合物のヒトへの投与を通じて処置されるか、または改善される。別には、その疾病または健康状態の発症は、予防上の有効量の本発明のアンチセンス化合物のヒトへの投与を通じて遅延されるか、または予防される。
【0020】
本明細書中に記載の実施形態は、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症または高脂肪酸血症を含む疾病または健康状態の処置のための医薬の調製における、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の使用にさらに関する。さらなる実施形態において、医薬は、脂肪性肝炎またはNASHまたは非アルコール性脂肪肝疾病でもよい肝臓脂肪症の処置に用いられる。さらなる実施形態において、医薬は代謝症候群の処置に用いられる。さらなる実施形態において、医薬は肝機能の改善に用いられる。いくつかの実施形態で、医薬は、静脈内投与および皮下投与を含み、非経口的に投与されてもよい。
【0021】
本発明のアンチセンス化合物は、miR−122a核酸にハイブリダイズし(すなわち、アンチセンス化合物は、miR−122a核酸を標的とする)、それによってその内因性の機能と干渉し、miR−122a核酸のレベル、活性または発現をモジュレートする。miR−122a核酸を標的とし、その各々がmiR−122a核酸の活性を干渉するアンチセンス化合物のハイブリダイゼーションは、miR−122a核酸の分解、開裂および/または分離を生じさせ得る。miR−122aを標的とするアンチセンス化合物のハイブリダイゼーションは、立体化学的閉塞によってmiR−122aの活性を干渉し得る。miR−122a核酸にハイブリダイズするアンチセンス化合物から生じるmiR−122aレベル、活性または発現の阻害は、「アンチセンス阻害」と称される。
【0022】
本発明の関係において、「miR−122a核酸のモジュレーション」は、miR−122a核酸のレベル、活性または発現における増加(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。マイクロRNAは蛋白質をコードする核酸を負に調節するため、マイクロRNAの阻害は、一般に、そのマイクロRNAによって調節される1つまたはそれ以上の蛋白質をコードする核酸の発現の刺激を生じる。miR−122aの阻害は、miR−122a核酸のモジュレーションの好ましい形態である。刺激は、miR−122a(例えばALDO A)により調節されるmRNAのモジュレーションの好ましい形態である。
【0023】
1つの実施形態において、miR−122a核酸のレベル、活性または発現は、表現型変化、例えば減少の血清コレステロールまたは低下の肝臓脂肪症に結びつく程度まで阻害される。「miR−122a核酸レベル」または「miR−122aレベル」は、試料、例えば動物細胞または組織中のmiR−122a核酸の存在量を示す。「miR−122aレベル」はまた、対照試料(例えば、未処置の動物からの組織)と比較して、実験試料(例えば、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を用いて処置された動物からの組織)中のmiR−122a核酸の相対的な存在量を示し得る。「miR−122a活性」は、miR−122aによる蛋白質コード核酸の調節を意味する。「miR−122a発現」は、成熟miR−122aが、miR−122aをコードするDNA配列から誘導される過程を意味し、いくつかの段階、例えば転写、DroshaプロセッシングおよびDicerプロセッシングを含む。miR−122a発現は、単一段階の過程でまたは複数の工程で調節されてもよい。
【0024】
本明細書中で用いられる用語「小さい非コードRNA」は、限定するものではなく、内因的に転写されてもよいし、または外因的に産生されてもよいが(化学的に、または、合成的に)、蛋白質に翻訳されない約17〜約450ヌクレオシド長の範囲にあるポリヌクレオチド分子を包含して用いられる。当分野で知られていているように、初期miRNA(pri−pre−miRNA、pri−miRおよびpri−miRNAとしても知られている)は約70ヌクレオシド長〜約450ヌクレオシド長の範囲にあり、しばしばヘアピン構造を形成する。次に、初期miRNAは、Droshaによって処理され、約50ヌクレオシド長〜約110ヌクレオシド長の範囲にあるpre−miRNA(pre−mirおよびフォールドバックmiRNA前駆体としても知られる)が産生される。pre−miRNAは、次に、Dicerによって処理され、19〜24ヌクレオシド長の範囲あるmiRNA(マイクロRNA、Mir、miR、mirおよび成熟miRNAとしても知られる)が産生される。小さい非コードRNAは、単離された一本鎖、二本鎖、またはマルチ鎖(multiple-stranded)分子を含んでもよく、そのいずれも鎖内に、完全もしくは不完全な相補性領域による完全もしくは部分的に二本鎖またはマルチ鎖の特徴を有する分子に折り畳むまたは形成することができる核酸塩基相補性領域を含み得る。
【0025】
本明細書中で用いられる「miR−122a核酸」は、pri−miR−122a、pre−miR−122aおよびmiR−122aを含む。本発明の関係において、pri−miR−122aは、初期miRNAであり、pre−miR−122aはpre−miRNAであり、そしてmiR−122aは成熟miRNAである。「成熟miR−122a」および「miR−122a」は、本明細書中で交換可能に用いられ得る。
本明細書中で用いられる「miR−122aまたはその前駆体」は、miR−122a、pre−miR−122a、pri−miR−122a、またはmiR−122aあるいはその前駆体が誘導される一次RNA転写産物を含む。
本明細書中で用いられる「miR−122a標的核酸」は、pri−miR−122a、pre−miR−122aおよびmiR−122aを含む。
【0026】
本発明の関係において、miR−122a(すなわち、成熟miR−122a)は、核酸塩基配列5’−UGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGU−3’(配列番号:3)を有する。他のmiR−122a、「miR−122a/b(Tuschl)が、当分野で提唱された。miR−122a/b(Tuschl)は、miR−122aと比較して3’の大部分のヌクレオシドを欠き、したがって、核酸塩基配列5’−UGGAGUGUGACAAUGGUGUUUG−3’(配列番号:4)を有する。当業者であれば、本発明のアンチセンス化合物がmiR−122aまたはmiR−122a/b Tuschlを標的とし得ることは理解されよう。
本明細書中で用いられる用語「miR−122aシード配列」は、miR−122a配列の5’末端からの2個〜8個のヌクレオシドを意味する。本発明の関係において、miR−122aシード配列は、5’−GGAGUGU−3’である
本発明は、1つまたはそれ以上の改変または構造要素またはその化合物をmiR-122aまたはその前駆体を模倣もしくは置換させ得るモチーフを含む「miR−122a模倣体」として知られている、アンチセンス化合物もまた提供する。
【0027】
治療法
miR−122aを標的とするアンチセンス化合物およびその組成物の特異性と感受性は、治療的使用に当業者により利用され得る。様々な治療領域で、他の標的物に対するアンチセンス化合物を試験するための多くの臨床試験が現在行われている。
【0028】
「処置を必要とするヒト」または「処置を必要とする被検体」は、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の投与によって処置、改善または予防され得る疾病または健康状態に罹患しているもしくは罹患し易いと診断されたヒトまたは被検体を含む。そのような疾病または健康状態には、限定するものではないが、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症または高脂血症、非アルコール性脂肪肝疾病、肝臓脂肪症(非アルコール性脂肪性肝炎および脂肪性肝炎を含む)および代謝症候群が含まれる。処置を必要とする被検体はまた、本明細書中に記載の1つまたはそれ以上の疾病または健康状態、例えば高コレステロール血症または肝臓脂肪症を有し、HCVと診断された被検体を含み得る。前記の疾病または健康状態のいずれかの診断は、日常的に臨床設定で、例えば医師が行う。処置を必要とするヒトまたは被検体には、心血管疾患の危険因子および/または代謝症候群の危険決定因子を有すると医学専門家、例えば医師により認められる者が含まれる。
【0029】
本明細書中で用いられる「治療上の有効量」は、前記の疾病または健康状態の1つまたはそれ以上に罹患しているヒトに投与された場合に臨床上望ましい結果を生じる、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の量である。そのような臨床上望ましい結果は、限定するものではなく、減少の血清総コレステロール、減少の血清LDLコレステロール、減少の血清トリグリセリド、減少の肝臓トリグリセリド、低下の脂肪症、改善された肝機能または増加の脂肪酸酸化を含み得る。
本明細書中で用いられる「予防上の有効量」は、ヒトに投与した場合に前記の疾病または健康状態の1つまたはそれ以上に対するヒトの罹病性を予防もしくは低下させる、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の量である。前記の疾病または健康状態に対するヒトの罹病性の予防または低下は、高血清総コレステロール、高血清LDLコレステロール、高血清トリグリセリド、高肝臓トリグリセリド、肝臓脂肪症、異常な肝機能または脂肪酸酸化の低下を防ぐことによって達成され得る。
【0030】
本明細書中で用いられる用語「予防」は、健康状態または疾病の発症もしくは発生をある期間、好ましくは数週間、数ヵ月または何年の間遅延させるか、あるいは未然に対処することを意味する。本明細書中で用いられる用語「改善」は、本明細書中で開示される1つまたはそれ以上の代替指標の改善によって示される、健康状態または疾病の重症度を減ずることを意味する。そのような指標の改善は、当業者には既知の主観的もしくは客観的な計測により決定され得る。本明細書中で用いられる「処置」は、疾病または健康状態の変化または改善をもたらす、本発明組成物の投与を意味する。予防、改善および/または処置は、健康状態または疾病の経過を変えるため、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の反復投与を要求してもよい。さらに、単一のアンチセンス化合物は、健康状態または疾病の予防、改善または処置のいずれかを組み合わせて達成する目的で、単一個体に用いることができ、そして、そのような組み合わせは同時的にまたは順次達成されてもよい。本発明のアンチセンス化合物は、いくつかの例で、他の処置で投与されてもよい。
【0031】
投与の適切な方法は、例えば、静脈内投与、皮下投与および腹腔内投与を含む、非経口投与である。本発明は、非経口的に、例えば、静注でまたは皮下に投与される医薬の調製のための、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の使用を提供する。
【0032】
本明細書中で用いられる用語「心血管疾患リスクの血清指標」は医療専門家によって認識される危険因子を含み、全米コレステロール教育プログラム(NCP)に記載のもの、例えば、高血清コレステロール、高血清トリグリセリドまたは高血清リポ蛋白質を含む。血清コレステロールは、血清総コレステロールと血清LDLコレステロールをさらに含む。血清リポ蛋白質は、血清ApoB−100蛋白質をさらに含む。臨床設定では、心血管疾患リスクの血清指標は、本明細書に記載の疾病または健康状態の処置または予防の必要性を決定するために測定される。脂質を低下させる治療のガイドラインは、NCEPのアダルト・トリートメント・パネル(Adult Treatment Panel)III(ATP III)により2001年に確立されて、2004年に更新された(Grundyら、Circulation, 2004, 110, 227-239)。このガイドラインは、LDLコレステロール、総コレステロールおよびHDLコレステロールレベルを決定すること(すなわち、リポ蛋白質レベルを決定すること)を含む。最近確立されたガイドラインによれば、LDLコレステロールレベルが130−159mg/dL、160−189mg/dL、そして190mg/dL以上は、それぞれ高い境界線、高い、そして非常に高いとされる。総コレステロールが200−239そして240超もしくは240は、それぞれ高い境界線そして高いとされる。40未満のHDLコレステロールレベルは、低いとされる。血清トリグリセリドレベルが150−199、200−499そして500以上は、それぞれ高い境界線、高い、そして非常に高いとされる。処置が開始される時点の血清コレステロールレベル(例えばLDLコレステロール、総コレステロール)および/または血清トリグリセリドレベルは、臨床虚血性心疾患、症候性頚動脈疾患、末梢動脈疾患のような虚血性心疾患に高い危険性を与える臨床アテローム性動脈硬化症または腹部大動脈瘤の存在、同様に、さらなる危険因子、例えばタバコ喫煙、高血圧、低HDLコレステロール、虚血性心疾患の家族歴および年齢に依存する。処置に対する被検体の応答は、治療量および期間を決定するため、医師により用いられる。
【0033】
NCEP ATP IIIは、5つのリスク決定因子のうちの3つまたはそれ以上が存在する代謝症候群の診断の基準も確立した。「代謝症候群」は、代謝起源の脂質および非脂質心血管危険因子のクラスター形成と定義される。それは、インスリン抵抗性として知られる全身性代謝異常と密接に関連している。5つのリスク決定因子は、男性は102cm超または女性は88cm超の胴囲、150mg/dL以上のトリグリセリドレベル、男性は40mg/dL未満および女性は50mg/dL未満のHDLコレステロールレベル、130/85mm Hg以上の血圧ならびに110mg/dL以上の空腹時血糖値レベルとして定義される、腹部肥満である。これらの決定因子は、臨床実地で容易に測定することができる(JAMA、2001、285、2486-2497)。
【0034】
当業者であれば、多少強力な治療が必要な場合には、医師が容易に個人の患者に関する心血管リスクの決定を修飾し得ることとは認められよう。当業者であれば、本発明の範囲が、NCEPによって提供されるいずれかの改訂ガイドラインに、または、本明細書中で列挙された疾病または健康状態のいずれかを処置する際に使用される医師のガイドラインを確立する他のものに応用されるように、心血管疾患リスクを決定し代謝症候群を診断することに関し、本明細書記載の方法の実地を含むことも理解されよう。
本明細書記載の実施形態は、心血管疾患リスクの血清指標を減少するための医薬の調製における、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の使用を提供し、該血清指標は、高血清総コレステロール、高血清LDLコレステロールまたは高血清トリグリセリドから選択される。
【0035】
miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の投与に続く、miR−122aレベル、活性または発現を直接測定することが困難なため、本発明のアンチセンス化合物の投与の効果を評価するために、代わりの指標の使用が必要とされる。代替指標は、miR−122aのアンチセンス阻害から生じる表現型変化を評価するために用いられる。代替指標は、動物の血清中で、別には血漿中でしばしば見出される。分析のために血清または血漿サンプルを得る方法および分析を可能にする血清サンプルの調製法は、当業者に周知である。リポ蛋白質、コレステロール、およびトリグリセリドの測定に関して、用語「血清」および「血漿」は本明細書中で交換可能に用いられる。
【0036】
本発明の関係において、「代替指標」は、心血管疾患リスク(危険性)、例えば血清LDLコレステロールレベルおよび血清総コレステロールレベル、および血清トリグリセリドレベルの血清指標を含む。血清指標は、血清アミノ基転移酵素レベルをさらに含む。本発明の関係において、「血清LDLコレステロールレベル」は、血清LDL粒子にて運搬されるコレステロール量を意味し、典型的にはmg/dLまたはnmol/Lで測定される。また、mg/dLで発現される「血清総コレステロールレベル」は、その中にLDLコレステロールとHDLコレステロールを含む血清コレステロールの異なるすべての型の合計を意味する。
miR−122a阻害の代替指標の好ましい変化は、減少の血清LDLコレステロールレベル、減少の血清トリグリセリドレベル、減少のリポ蛋白質レベルを含む。これらの前記変化は臨床上望ましく、本明細書中で開示される疾病および障害の予防、改善および/または処置に有用である。
【0037】
「血清リポ蛋白質」は、限定するものではないが、アポリポ蛋白B(ApoB−100)、低密度リポタンパク質(LDL)および超低密度リポ蛋白質(VLDL)を含む。
肝臓脂肪症の検出方法は、当分野で周知であり、磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影および超音波検査が挙げられる。肝臓脂肪症の検出に用いられる方法は、本明細書中で開示される疾病および障害の予防、改善および/または処置をモニターするために用いることができる。
【0038】
本発明の関係において、用語「改善された肝臓の機能」または「改善された肝機能」は、動物の肝臓で実施される正常な機能の改善を意味する。肝機能検査の1つの非限定的な例としては、血清アミノ基転移酵素の測定が挙げられ、これは、アラニンアミノ基転移酵素またはアスパラギン酸アミノ基転移酵素などの血清アミノ基転移酵素の減少が肝機能の改善を示す、さらなる代替指標である。「血清アミノ基転移酵素レベル」は、血清中のアミノ基転移酵素の存在量(典型的に、ユニット/dLとして表される)を意味し、「血清アラニンアミノ基転移酵素レベル」および「血清アスパラギン酸アミノ基転移酵素レベル」が挙げられる。これらの酵素の増加は、しばしば肝臓の炎症または肝臓細胞死と関連しており、場合によっては、健康状態、例えば高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症または高脂血症に起因し得る。血清アミノ基転移酵素の減少は、臨床上望ましく、本明細書中で開示される疾病および障害の予防、改善および/または処置に有用である。
【0039】
用語「非アルコール性脂肪肝疾病」(NAFLD)は、肝細胞(肝臓脂肪症)の単純なトリグリセリド蓄積から炎症(脂肪性肝炎)、線維形成および肝硬変を伴う肝臓脂肪症までの範囲にある疾病スペクトラムを包含する。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、トリグリセリドの沈着を越えてNAFLDの進行により生じる。壊死、炎症および線維形成を誘導し得る第2の生理的発作は、NASH発症に要求される。その第2の発作の候補物質は、大きなカテゴリー:酸化ストレスの増加を引き起こす因子および炎症誘発性サイトカインの発現を促進する因子に分類され得る。増加した肝臓トリグリセリドが、動物とヒトの肝細胞における増加した酸化ストレスを引き起こすことが示され、これは、肝臓のトリグリセリド蓄積、酸化ストレスと肝臓脂肪症のNASHへの進行との間に潜在的な因果関係を示す(BrowningおよびHorton, J. Clin. Invest., 2004, 114, 147-152)。高トリグリセリド血症および高脂肪酸血症は、末梢組織においてトリグリセリド蓄積を引き起こし得る(Shimamuraら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 2004, 322, 1080-1085)。本発明の関係において、さらなる臨床上望ましい結果は、肝臓脂肪症、脂肪性肝炎、線維形成または肝硬変の軽減を含む。
【0040】
本明細書中で記載される疾病または健康状態、例えば高い血清LDLコレステロールまたは肝臓脂肪症は、HCV感染症と診断されたヒトで生じ得る。従って、本明細書で提供される方法は、HCV感染症と診断された被検体に用いられ得る。加えて、本発明は、HCVに罹患している動物の血清コレステロール、血清トリグリセリドまたは血清リポ蛋白質を減少させるための医薬の製造における、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の使用を提供する。
【0041】
創薬
本発明のアンチセンス化合物および組成物は、さらなる研究と創薬のために利用され得る。
研究での使用について、本発明のアンチセンス化合物は、miR-122a標的核酸の通常の機能と干渉させるために用いられる。本発明の1つまたはそれ以上アンチセンス化合物または組成物で処置された細胞または組織中の発現パターンは、アンチセンス化合物または組成物で処置されていない対照細胞または組織と比較され、そして、それらは、例えば試験される遺伝子の疾病関連性、シグナル伝達経路、細胞局在、発現レベル、大きさ、構造または機能に関係するので、得られる発現パターンが核酸発現の様々なレベルについて分析される。これらの分析は、刺激されたまたは刺激されていない細胞において、そして発現パターンに影響を及ぼす他の化合物の有無において実施され得る。例として、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物は、miR−122a調節に影響される代謝経路を解明するために用いられた。
【0042】
創薬での使用について、本発明のアンチセンス化合物は、miR−122aまたはその前駆体と疾病状態、表現型または健康状態との間に存在する関係を解明するために用いられる。これらの方法は、本発明のアンチセンス化合物および組成物を試料、組織、細胞または生物と接触させること、それによる標的miR−122a核酸レベルおよび/またはmRNAを含む下流の遺伝子産物レベルまたはコードされる蛋白質を測定すること、さらに、処置の後のある時点での表現型変化を評価することを含み、miR−122a核酸を検出またはモジュレートすることを含む。これらの方法は、標的確認の過程に関する未知の遺伝子の機能を決定するために、または処置もしくは疾病予防のための標的として、特定のmiR−122a標的核酸の有効性を決定するために、他の実験と平行してまたは組み合わせて実施さ得る。例として、本明細書中で記載されるように、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物は、表現型変化、例えば低血清コレステロール、低肝臓トリグリセリドおよび低下された肝臓脂肪症をもたらすために用いられた。
【0043】
アンチセンス化合物
本発明の関係において、用語「オリゴマー化合物(群)」は、少なくともRNA分子のある領域にハイブリダイズできる重合体構築物を意味する。一般に、5’から3’方向に記載され、それが標的核酸の対応する領域の逆相補性を含む場合、オリゴマー化合物は標的核酸に対して「アンチセンス」である。そのようなオリゴマー化合物は、「アンチセンス化合物」として知られており、それには、限定するものではないが、オリゴヌクレオチド(すなわちアンチセンスオリゴヌクレオチド)、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド模倣体およびこれらの組み合わせが含まれる。一般に、アンチセンス化合物は、連結された単量体サブユニットの骨格(糖部分)を含み、そこで、各々連結された単量体サブユニットは、複素環式の塩基部分と直接または間接的に連結される。アンチセンス化合物に対する修飾は、ヌクレオシド内結合、糖部分または複素環式の塩基部分(例えば後述のもの)への置換または変化を包含する。本明細書中で用いられる用語「修飾」は、最初もしくは天然ヌクレオシドまたはヌクレオチドからの置換および/またはいずれかの変化を含む。修飾されたアンチセンス化合物は、所望の特性、例えば増強された細胞取り込み、核酸標的に対する増強された結合性、ヌクレアーゼ存在下での増大した安定性または増大した阻害活性のため、しばしば天然型より好まれる。アンチセンス化合物は、標的とハイブリダイズした際に、標的遺伝子発現または標的遺伝子活性の低下を誘導するかもしくは誘発することが可能であるとのさらなる限定を含むものとして、当分野でしばしば定義される。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、miR−122a核酸標的のレベル、活性または発現の低下を誘発する。
【0044】
アンチセンス化合物は、直鎖型に日常的に調製されるが、環状に連結されてもよいし、あるいは調製されてもよく、分岐型を含んでいてもよい。分離のアンチセンス化合物は、平滑末端であってもよいし、一端もしくは両端に突出を含んでもよい二本鎖化合物を形成するためにハイブリダイズし得る。
本発明によるアンチセンス化合物は、15〜30のヌクレオシド長、すなわち、15個から30個の連結されたヌクレオシドを含む。当業者であれば、これが15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオシド長のアンチセンス化合物を例示することは認められよう。
1つの実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、本明細書中で例示されるように17〜25ヌクレオシド長である。
好ましい実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、19、20、21、22または、23ヌクレオシド長である。
本明細書中で用いられて、用語「約」は、以後可変部分の±5%を意味する。
【0045】
本明細書中で用いられる「相補的」は、核酸塩基間のハイブリダイゼーション能力を意味する。アンチセンス化合物の各核酸塩基が標的核酸と等しい数の核酸塩基と相補的である場合、アンチセンス化合物と標的核酸は互いに「完全に相補的」である。例えば、アンチセンス化合物の23個の核酸塩基の各々がmiR−122aに相補的である場合、miR−122aを標的とした23ヌクレオシド長のアンチセンス化合物は、miR−122aと完全に相補的である。正味の塩基対形成の程度は、アンチセンス化合物と標的核酸との間に安定かつ特異的な結合を可能にし、そのため、アンチセンス化合物が標的核酸のレベル、活性または発現を阻害する場合、そのアンチセンス化合物とその標的核酸は互いに「本質的に完全に相補的」である。miR−122a標的核酸に関して1個または2個の非相補的核酸塩基を有するアンチセンス化合物は、完全に本質的に相補的と考えられる。「十分に相補的」は、「本質的に完全に相補的」の代わりに用いられ得る。
【0046】
本発明の関係において、「ハイブリダイゼーション」は、アンチセンス化合物の標的核酸中の対応する核酸塩基との核酸塩基対合を意味する。本発明の関係において、対合の機序は、対応する核酸塩基との間の水素結合(ワトソン−クリック、フーグスティーン(Hoogsteen)または逆フーグスティーン水素結合であってよい)を含む。例えば、アデニンとチミンは、水素結合の形成を通じて対合する相補的核酸塩基である。天然のおよび修飾された核酸塩基は、水素結合に関与することができる。ハイブリダイゼーションは、様々な状況下で生じ得る。
【0047】
当分野では、アンチセンス化合物の配列は、その標的核酸の活性を阻害する際に活性であれば、標的核酸の配列と完全に相補的である必要がないことは理解される。さらに、アンチセンス化合物は、間のまたは隣のセグメントがハイブリダイゼーションに関与しないような1つまたはそれ以上のセグメント(例えば、突出部、ループ構造、またはヘアピン構造)を越えてハイブリダイズし得る。いくつかの実施形態において、アンチセンス化合物と標的核酸間の「非相補的」部位(「ミスマッチ」としても知られる)が存在し、アンチセンス化合物が標的核酸に対して特異的にハイブリダイズするのであれば、アンチセンス化合物と標的核酸との間のそのような非相補的部位は許容的され得る。「非相補的核酸塩基」は、標的核酸の対応する部位の核酸塩基と正確な塩基対形成ができないアンチセンス化合物の核酸塩基を意味する。本明細書中で用いられる用語「非相補的な」と「ミスマッチ」は、相互変換可能である。3個までの非相補的核酸塩基は、標的核酸の活性、レベルまたは機能をモジュレートするアンチセンス化合物の能力に有意な低下を引き起こすことがなければ、アンチセンス化合物ではしばしば許容される。好ましい実施形態において、アンチセンス化合物は、miR−122a標的核酸に関して、わずか2個または1個の非相補的核酸塩基しか含まない。例えば、そのうちの22個は標的核酸の対応する部位の核酸塩基と正確な塩基対合を受けることができ、そのうちの1個はそのような塩基対合を受けることができない、23ヌクレオシド長のアンチセンス化合物は、1個の非相補的核酸塩基を有すると考えられる。そのような非相補的核酸塩基の場所はアンチセンス化合物の5’末端または3’末端が好ましいが、しかしながら非相補的核酸塩基はアンチセンス化合物のいずれの部位にあってもよい。いくつかの実施形態において、非相補的核酸塩基は、miR−122aのシード配列に相補的なアンチセンス化合物の領域の外が好ましい。2個またはそれ以上の非相補的核酸塩基が存在する場合、それらは隣接してもよいし(すなわち、連結されている)、あるいは隣接していないくてもよい。
【0048】
本発明の他の実施形態において、アンチセンス化合物は、miR−122a標的核酸と少なくとも90%配列相補性を含む。本発明のさらなる実施形態において、アンチセンス化合物は、miR−122a標的核酸と少なくとも95%配列相補性を含む。例えば、アンチセンス化合物の23個の核酸塩基のうち22個がmiR−122a核酸と相補的なアンチセンス化合物(すなわち、1個の核酸塩基が非相補的である)は、95.6%の相補性を表す。同様に、23個の核酸塩基のうち21個がmiR−122a核酸と相補的なアンチセンス化合物(すなわち、2個の核酸塩基が非相補的である)は、91.3%の相補性を表す。標的核酸の領域とのアンチセンス化合物の相補性パーセントは、日常的に当業者により決定されてよく、当分野で既知のBLASTプログラム(basic local alignment search tools)およびPowerBLASTプログラムを用いて達成することができる(Altschulら、J. Mol. Biol., 1990, 215, 403-410;ZhangおよびMadden, Genome Res., 1997, 7, 649-656)。
【0049】
本発明において、成句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェントな条件」は、本発明のアンチセンス化合物がその標的配列にハイブリダイズし、最小数の他の配列とハイブリダイズする条件を意味する。ストリンジェントな条件は、配列に依存するものであり、異なる状況で、そして本発明の内容で変わり得る;アンチセンス化合物が標的配列にハイブリダイズする「ストリンジェントな条件」は、アンチセンス化合物の性質と組成およびそれらが調査されるアッセイによって決定される。当業者であれば、実験プロトコルの変動性を理解するであろうし、最小の非特異的なハイブリダイゼーション事象を伴うストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の最適なところを決定することが可能であろう。
【0050】
アンチセンス化合物は、配列番号または特異的なISIS番号を有するアンチセンス化合物と同一の定義パーセントを有していてもよい。この同一性は、アンチセンス化合物の全長に及んでいてもよいし、またはアンチセンス化合物の全長未満であってもよい。アンチセンス化合物が本明細書中記載のアンチセンス化合物と同様に機能すれば、本明細書中記載の配列と同一の配列を有する必要がないことは、当業者により理解される。本明細書中で教示されたアンチセンス化合物の短いもしくは切断型は、1個、2個またはそれ以上の欠失ヌクレオシドを有し、本発明の範囲内にある。アンチセンス化合物が2個またはそれ以上の欠失ヌクレオシドを有する場合、欠失されるヌクレオシドは互いに隣接してもよく、例えば、アンチセンス化合物の5’末端から(5’切断)、あるいは3’末端から(3’切断)切断された2個のヌクレオシドを有するアンチセンス化合物であってよい。別には、欠失ヌクレオシドは、アンチセンス中で分離されていてもよく、例えば、5’末端から1個の欠失ヌクレオシドと3’末端から1個の欠失ヌクレオシドを有しているアンチセンス化合物であってよい。
【0051】
また、本明細書中で教示されるアンチセンス化合物の長い形態、すなわち、本明細書中で開示されるアンチセンス化合物と比較して1個またはそれ以上の付加的なヌクレオシドを有するアンチセンス化合物もまた本発明の範囲内にある。2個またはそれ以上の付加的なヌクレオシドが存在する場合、その付加ヌクレオシドは、互いに隣接していてもよく、例えば、アンチセンス化合物の5’末端に(5’付加)、あるいは3’末端に(3’付加)付加された2個のヌクレオシドを有するアンチセンス化合物であってよい。別には、付加ヌクレオシドは、アンチセンス化合物中で分離されていてもよく、例えば、5’末端に付加された1個のヌクレオシドと3’末端に付加された1個のヌクレオシドを有するアンチセンス化合物であってよい。
【0052】
アンチセンス化合物の同一性パーセントは、配列番号と同一である核酸塩基数または比較されるアンチセンス化合物により算出される。そのような算出は、当業者の能力の範囲内にある。例えば、23個のヌクレオシドアンチセンス化合物の2−21と同じ核酸塩基配列を有する21個のヌクレオシドアンチセンス化合物は、23個のヌクレオシドアンチセンス化合物と91.3%同一である。別には、23個のヌクレオシドアンチセンス化合物と比較して1個のヌクレオシドの付加のみ配列に違いのある24個のヌクレオシドアンチセンス化合物は、23個のヌクレオシドに対しては100%同一性があるが、全体的には95.8%の同一性を有し得る。
miR−122a核酸を含む特定の核酸分子に対してアンチセンス化合物を「標的化する」ことは、この発明の関係では多段階過程であってもよい。通常、この過程は、モジュレートされるべき標的核酸のレベル、発現または機能の同定から始まる。本発明の関係において、標的核酸は、miR−122a標的核酸である。
【0053】
標的化過程はまた、通常、所望の効果、例えばレベル、活性または発現のモジュレーションが生じるように相互作用を生じさせるための、miR−122a標的核酸内の少なくとも1つの標的部分の決定を含む。本明細書中で用いられる「標的部分」は、1つまたはそれ以上のアンチセンス化合物が相補的なmiR−122a核酸の配列を意味する。所定の標的部分と相補的な複数のアンチセンス化合物は、重なり合う配列を有してもよいし、あるいは有しなくてもよい。本発明の関係で、用語「標的部位」は、1個の核酸塩基配列が相補的なmiR−122a核酸の配列と定義される。例えば、配列番号:8の核酸塩基配列は、配列番号:5の標的部位27〜49に相補的であり、そして、配列番号:2の核酸塩基配列は配列番号:5の標的部位29〜51に相補的である。したがって、配列番号:5のヌクレオシド27〜51は、配列番号:5の標的部分を表す。いくつかの実施形態において、標的部分と標的部位は、同じ核酸塩基配列を表す。
【0054】
標的部位および標的部分は、pri−miR−122aが誘導されるmiRNA遺伝子中で見つかる場合があり、それは、単独の転写産物として見つかる場合があるし、あるいはそれはイントロン内の5’非翻訳領域(5’UTR)中に、または遺伝子の3’非翻訳領域(3’UTR)中で見つかる場合もある。
本発明のアンチセンス化合物はまた、標的部位の部分に対して相補的と記載されてもよい。「部分」は、標的部位の少なくとも18個の連続ヌクレオシドと定義される。他の実施形態において、部分は標的部位の19個または20個の連続ヌクレオシドである。好ましい実施形態において、部分は標的部位の21個または22個の連続ヌクレオシドである。
ひとたび1個またはそれ以上の標的部分または標的部位が認められると、アンチセンス化合物は、標的部分または標的部位に十分相補的となるように、すなわち、十分によく特異的にハイブリダイズし所望の効果を与えるように、設計される。所望の効果には、限定するものではないが、miR−122a標的核酸のレベル、発現または活性のモジュレーションが含まれ得る。所望の効果は、表現型変化をさらに含む。
【0055】
本発明のアンチセンス化合物は、一本鎖、二本鎖、環状、またはヘアピンアンチセンス化合物の形であってよく、内部もしくは終端の突出部またはループなどの構造要素を含んでもよい。ひとたび系に導入されると、本発明のアンチセンス化合物は、その標的核酸のレベル、発現または機能のモジュレーションに影響を及ぼす1つまたはそれ以上の酵素または蛋白質の作用を引き出し、または阻害し得る。そのような蛋白質の1つの非限定的な例としては、Drosha RNアーゼIII酵素がある。さらに非限定的な例としては、酵素のRISC複合体が挙げられる。
【0056】
本発明のアンチセンス化合物または組成物は、RISC複合体によって処理される低分子非コードRNAに対する相互作用または模倣を通じて、遺伝子機能の強力な特異的モジュレーションを誘導するために用いられ得る。これらの化合物は、RISC複合体で結合する一本鎖のアンチセンス化合物、アンチセンス化合物の二本鎖のアンチセンス/センス対、またはアンチセンス部分とセンス部分を含む一本鎖のアンチセンス化合物を含む。
【0057】
オリゴヌクレオチド合成
アンチセンス化合物とホスホラミダイトは、当業者に周知の方法によって作製される。修飾および非修飾ヌクレオシドのオリゴマー形成は、必要に応じて、DNA様化合物合成(Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Ed. Agrawal (1993), Humana Press)および/またはRNA様化合物合成(Scaringe、Methods(2001)、23、206-217. Gaitら、Applications of Chemically synthesized RNA in RNA:Protein Interactions, Ed. Smith (1998), 1-36. Galloら、Tetrahedron (2001), 57, 5707-5713)に関する文献手順によって実施される。RNAオリゴマーは、本明細書中で開示される方法により合成されてもよいし、様々なRNA合成会社、例えば、Dharmacon Research社(ラフィーエット、CO)から購入してもよい。
【0058】
用いられる特定のプロトコルに関わらず、本発明に関して用いられるアンチセンス化合物は、固相合成の周知技術により便利にそして日常的に作製され得る。そのような合成用の機器は、例えば、アプライドバイオシステム(フォスターシティー、カリフォルニア州)を含む、いくつかの業者により販売されている。当分野で既知の該合成のためのいずれかの他の方法が、さらにもしくは代わりに用いられてよい。
オリゴヌクレオチドの単離および分析法は、当分野で周知である。96ウエルプレート形式は、特にオリゴヌクレオチドの合成、単離および分析に有用である。
【0059】
RNA合成
RNAの合成法は、当分野で周知である(Scaringe, S. A. Ph.D. Thesis, University of Colorado, 1996;Scaringe, S. Aら、J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 11820-11821;Matteucci, M. D.およびCaruthers, M. H. J. Am. Chem. Soc., 1981, 103, 3185-3191;Beaucage, S. L.およびCaruthers, M. H. Tetrahedron Lett., 1981, 22, 1859-1862;Dahl, B. Jら、Acta Chem. Scand,. 1990, 44, 639-641;Reddy, M. Pら、Tetrahedrom Lett., 1994, 25, 4311-4314;Wincott, F.ら、Nucleic Acids Res., 1995, 23, 2677-2684;Griffin, B. Eら、Tetrahedron, 1967, 23, 2301-2313;Griffin, B. Eら、Tetrahedron, 1967, 23, 2315-2331)。
【0060】
アンチセンス化合物修飾
本明細書中で教示されるアンチセンス化合物のいずれも、限定するものではないが、改善された結合親和性、安定性、電荷、局在性または取込みを含む、アンチセンス化合物に所望の薬物動態学的および/または薬力学的特性を与える修飾を含んでいてよい。さらに、本発明の修飾合成アンチセンス化合物は、内因性低分子非コードRNAを模倣して設計されてもよい。
【0061】
当分野で知られていているように、ヌクレオシドは塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基(別名、核酸塩基)部分は、通常、複素環式の塩基部分である。そのような複素環式塩基の最も一般的な2つのクラスは、プリンとピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合で連結されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドに関して、リン酸基は、糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に連結されてよい。オリゴヌクレオチドを形成するにあたって、リン酸基は共有結合で隣接するヌクレオシドと互いに連結され、直線状の高分子化合物を形成する。この直線状の重合体構造のそれぞれの端は、ハイブリダイゼーションによって、または、共有結合の形成によって、環状構造を形成するよう連結されてもよい。加えて、直線状の化合物は、内部の塩基(すなわち核酸塩基)相補性を有してもよく、かくして完全にもしくは部分的に二本鎖の構造を形成するような方式で折り畳まれ得る。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド内結合を形成するものと称される。RNAとDNAの正常なヌクレオシド内結合は、3’から5’のホスホジエステル結合である。
【0062】
本発明の関係において、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマーまたはポリマーを一般に意味し、非修飾オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体を意味して用いることができる。用語「非修飾オリゴヌクレオチド」は、天然の核酸塩基、糖および共有結合ヌクレオシド内結合から成るオリゴヌクレオチドを一般に意味する。用語「オリゴヌクレオチド類似体」は、1つまたはそれ以上の非天然核酸塩基、糖および/またはヌクレオシド内結合を有するオリゴヌクレオチドを意味する。そのような非天然のオリゴヌクレオチドは、所望の特性、例えば増加した細胞取込み、他のオリゴヌクレオチドまたは核酸標的について増強された結合性、ヌクレアーゼ存在下での増大した安定性または増大した阻害活性により、天然型よりもしばしば選択される。
【0063】
修飾されたヌクレオシド内結合
この発明で有用なアンチセンス化合物の特定の例としては、修飾された、すなわち非天然のヌクレオシド内結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。そのような非天然ヌクレオシド内結合は、所望の特性、例えば増加した細胞取込み、他のオリゴヌクレオチドまたは核酸標的について増強された結合性およびヌクレアーゼ存在下での増大した安定性のため、天然型よりもしばしば選択される。
本発明のアンチセンス化合物は、1つまたはそれ以上の修飾されたヌクレオシド内結合を有してもよい。本明細書で定義されるように、修飾されたヌクレオシド内結合を有するオリゴヌクレオチドには、リン原子を有するヌクレオシド内結合と、リン原子を有しないヌクレオシド内結合がある。本明細書の目的に関し、また当分野で場合により言及されるように、ヌクレオシド内骨格にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドは、「オリゴヌクレオシド」と見做すことができる。
【0064】
適切なリン含有の修飾されたヌクレオシド内結合は、ホスホロチオエート・ヌクレオシド内結合である。リン原子をその中に含むさらなる修飾されたヌクレオシド内結合としては、例えば、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィナート、3’アミノホスホルアミデートやアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、そして通常の3’−5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’連結類似体、そして逆の極性を有するものが挙げられ、ここで、1つまたはそれ以上のヌクレオシド内結合は、3’から3’、5’から5’または2’から2’の連結である。逆の極性を有するオリゴヌクレオチドは、ほとんど3’にヌクレオシド内結合、すなわち、無塩基でもよい単一の逆のヌクレオシド残基(核酸塩基が失われているか、その部分にヒドロキシル基を有する)で、単一の3’から3’連結を含む。様々な塩類、混合塩類および遊離酸型が含まれる。
【0065】
上記のリン含有連結の調製を教示する代表的な英国特許としては、限定するものではないが、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;第5,194,599号;第5,565,555号;第5,527,899号;第5,721,218号;第5,672,697号および第5,625,050号が挙げられ、その各々は出典明示により本明細書の一部とされる。
【0066】
本発明の他の実施形態において、アンチセンス化合物は、1つまたはそれ以上のホスホロチオエートおよび/またはヘテロ原子ヌクレオシド内結合、特に−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる)、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−N(CH)−CH−および−O−N(CH)−CH−CH−(ここで、天然のホスホジエステルヌクレオシド内結合は、−O−P(=O)(OH)−O−CH−と表される)を有する。MMI型ヌクレオシド内結合は、上述の米国特許第5,489,677号で開示される。アミドヌクレオシド内結合は、上述した米国特許第5,602,240号で開示される。
【0067】
リン原子をその中に含まない修飾されたヌクレオシド内結合は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド内結合、混合ヘテロ原子とアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド内結合、または1つまたはそれ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド内結合により形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ連結(ヌクレオシドの糖部分の一部で形成される);シロキサン骨格;硫化物、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホンネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合N、O、SおよびCHを有する他の構成要素を有するものが含まれる。
【0068】
上記のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許には、限定するものではないが、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;第5,792,608号;第5,646,269号および第5,677,439号が挙げられ、その各々は出典明示により本明細書の一部とされる。
【0069】
アンチセンス化合物は、「オリゴヌクレオチド模倣体」を含んでもよく、それはフラノース環のみ、またはフラノース環とヌクレオシド内結合の両方が新たな基で置換されているオリゴヌクレオチドを意味する。フラノース環だけの置換も、当分野では糖の代用物であることを意味する。複素環式の塩基部分または修飾された複素環式の塩基部分は、適当な標的核酸とのハイブリダイゼーションが維持される。オリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)修飾を含有するアンチセンス化合物を含み得る。PNAアンチセンス化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、骨格、特にアミノエチルグリシン骨格を含有するアミドで置換される。核酸塩基は保持され、直接的もしくは間接的に骨格のアミド部分のアザ窒素原子に結合する。PNAアンチセンス化合物の調製を教示する代表的な米国特許は、限定するものではないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号および第5,719,262号が挙げられ、その各々は出典明示により本明細書の一部とされる。PNAアンチセンス化合物の教示は、Nielsenら、Science, 1991, 254, 1497-1500で見つけることができる。基本的なPNA構造が最初に調製されたため、PNAは修飾され、多数の修飾を有する。
【0070】
研究されたオリゴヌクレオチド模倣体の別の種類は、モルホリノ環に結合された複素環式塩基を有する連結されたモルホリノ単位(モルホリノ核酸)に基づく。モルホリノ核酸中にモルホリノモノマー単位を連結する多くの連結基が報告された。モルホリノに基づくアンチセンス化合物は、1991年7月23日に出願された米国特許第5,034,506号に開示されている。アンチセンス化合物のモルホリノのクラスは、単量体サブユニットを連結する多種多様な連結基を有して調製された。
オリゴヌクレオチド模倣体の別の種類は、シクロヘキセニル核酸(CeNA)と称される。DNA/RNA分子中に通常存在するフラノース環が、シクロヘキセニル環で置換される。CeNA DMT保護ホスホラミダイト・モノマーが調製され、典型的なホスホラミダイト化学にならいアンチセンス化合物の合成に用いた。CeNAで修飾された特定の部位を有し、完全に修飾されたCeNAアンチセンス化合物およびオリゴヌクレオチドが調製されて、研究された(Wangら、J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8595-8602を参照のこと)。
【0071】
修飾された糖部分
本発明のアンチセンス化合物は、1つまたはそれ以上の修飾または置換された糖部分を含んでいてもよい。塩基部分(天然、修飾型またはその組み合わせ)は、適当な核酸標的とのハイブリダイゼーションを維持する。糖修飾は、ヌクレアーゼ安定性、結合親和性またはいくつかの他の有益な生物学的特性をアンチセンス化合物に与え得る。代表的な修飾された糖は、炭素環式もしくは非環式の糖、その2’、3’もしくは4’部位の1個またはそれ以上に置換基を有する糖、糖の1個またはそれ以上の水素原子の代わりに置換基を有する糖および糖中のいずれか2個の他の原子の間に連結を有する糖を含む。本発明で特定の使用におけるアンチセンス化合物は、OH;ハロ;O−、S−またはN−アルキル;O−、S−またはN−アルケニル;O−、S−またはN−アルキニル;または、O−アルキル−O−アルキル(ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換もしくは未置換のC〜C10アルキルまたはC〜C10アルケニルおよびアルキニルである)から選択される糖置換基を含んでもよい。特に適切なものは、O((CHO)CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONHおよびO(CHON((CHCHであり、ここで、nおよびmは、0から約10までである。いくつかのオリゴヌクレオチドは、C〜C10低アルキル、置換低アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルもしくはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、F、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター遺伝子、インターカレータ、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善する基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する基、および類似の特性を有する他の置換基、から選択される糖置換基を含む。
【0072】
増加したヌクレアーゼ抵抗と非常に高度な結合親和性をヌクレオシドに与える1つの修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−MOEまたは2’−OCHCHOCH)側鎖(Bakerら、J. Biol. Chem., 1997, 272, 11944-12000)。2’−MOE置換の直接の長所の1つは、結合親和性の改善であり、それは多くの類似の2’修飾、例えばO−メチル、O−プロピルとO−アミノプロピルより大きい。2’−O−メトキシエチル置換基を有するオリゴヌクレオチドは、また、インビボ使用において有望な特徴を有する遺伝子発現のアンチセンス阻害剤であることが示された(Martin, P., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504;Altmannら、Chimia, 1996, 50, 168-176;Altmannら、Biochem. Soc. Trans., 1996, 24, 630-637;およびAltmannら、Nucleosides Nucleotides, 1997, 16, 917-926)。DNAと比較して、2’−MOE修飾を有するオリゴヌクレオチドは、改善されたRNA結合性とより高いヌクレアーゼ抵抗性を示した。1つまたはそれ以上2’−MOE修飾を有するアンチセンス化合物は、インビトロおよびインビボでmiRNA活性を阻害することができる(Esauら、J. Biol. Chem., 2004, 279, 52361-52365;米国特許公報第2005/0261218号)。
さらなる修飾は、2’−ジメチルアミノフェノール、すなわち、O(CHON(CH基、別名2’−DMAOE、および2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(また、当分野で2’−O−ジメチル−アミノ−エトキシ−エチルまたは2’−DMAEOEとして知られる)、すなわち2’−O−CH−O−CH−N(CHを含む。
【0073】
他の糖置換基には、メトキシ(−O−CH)、アミノプロポキシ(−OCHCHCHNH)、アリル(−CH−CH=CH)および−O−アリル(−O−CH−CH=CH)が含まれる。2’−糖置換基は、アラビノ(上)部またはリボ(下)部であってもよい。類似の修飾は、アンチセンス化合物の他の部位、特に3’端末ヌクレオシドの糖の3’位、または、2’−5’結合オリゴヌクレオチド、そして5’端末ヌクレオシドの5’位でなされてもよい。アンチセンス化合物は、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体を有してもよい。そのような修飾された糖構造の調製を教示する代表的な米国特許には、限定するものではないが、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;第5,792,747号および第5,700,920号が挙げられ、その各々は、出典明示により本明細書の一部とされる。
【0074】
代表的な置換基は、標題「Capped 2’- Oxyethoxy Oligonucleotides」の米国特許6,172,209号で開示されており、その全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
代表的な環式置換基は、標題「RNA Targeted 2’Oligomeric compounds that are Conformationally Preorganized」の米国特許第6,271,358号で開示されており、その全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
代表的なグアニジノ置換基は、標題「Functionalized Oligomers」の米国特許第6,593,466号で開示されており、その全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
代表的なアセトアミド置換基は、米国特許第6,147,200号で開示されており、その全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
代表的なジメチルアミノエチルオキシエチル置換基は、1999年8月6日に出願された標題「2’-O-Dimethylaminoethyloxyethyl-Oligomeric compounds」の国際特許出願PCT/US99/17895で開示されており、その全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
【0075】
さらなる糖修飾は、糖環をロックされた3’−エンド立体結合構造にあてはめる2’、4’架橋を有する二環式糖部分を含む。二環式修飾は、アンチセンス化合物に核酸標的に対する非常に増加した結合性を与える。さらにまた、二環式糖修飾を有するヌクレオシドは、キメラアンチセンス化合物の核酸標的に対する結合性を増強するため、キメラアンチセンス化合物のDNAやRNAと協調して作用しもよい。二環式糖部分は、式4’−(CH)n−X−2’(ここで、Xは、例えばOまたはSであってよい)により表される。LNA(登録商標)は、4’−CH−O−2’架橋(すなわち、XはOであり、nは1である)を有する二環式糖部分である。α−Lヌクレオシドもまた報告されており、その連結は上記のように、環と複素環式塩基がβ立体配座ではなくα立体配座である(米国特許出願公報第2003/0087230号を参照のこと)。キシロ類似体もまた調製された(米国特許出願公報第2003/0082807号を参照のこと)。別の二環式糖部分はENATMであり、前記の式中、XはOであり、nは2である。用語「ロックされた核酸」は、「ロックされた」立体配座を有するいずれかの二環式糖部分を記載するために用いられ得る。
【0076】
LNA(登録商標)およびENA(登録商標)類似体を一部とするアンチセンス化合物は、相補DNAおよびRNAとで非常に高い二本鎖熱安定性(Tm=+3℃〜+10℃)、3’ヌクレオチド鎖分解性分解に対する安定性および良好な溶解度特性を示す。
【0077】
LNA(登録商標)モノマーのアデニン、シトシン、グアニン、5−メチル−シトシン、チミンおよびウラシルの合成および調製、それらのオリゴマー形成とともに、さらに核酸認識特性は記載されている(Koshkinら、Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630)。LNAおよびその調製法もまた、国際公開公報第98/39352号および第99/14226号に記載されている。
【0078】
LNA(登録商標)の類似体、例えば、ホスホロチオエート−LNAおよび2’−チオ−LNA(すなわち2’−S−CH−4’)もまた調製された(Kumarら、Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219-2222)。核酸ポリメラーゼの基質としてのオリゴデオキシリボヌクレオチド二本鎖を含むロックされたヌクレオシド類似体の調製もまた記載されている(Wengelら、PCT国際特許出願第98-DK393 19980914号)。さらにまた、2’-アミノ−LNA、ハンドルを有する新規の高次構造制限的な高結合性オリゴヌクレオチド類似体の合成が、当分野で記載された(Singhら、J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039)。加えて、2’−アミノ−および2’−メチルアミノ−LNAが調製され、また相補的RNAおよびDNAストランドとの二本鎖の熱安定性が以前に報告された。
【0079】
二環式および三環ヌクレオシドの類似体を含み、いくつかのオリゴヌクレオチド模倣体が調製されている(Steffensら、Helv. Chim. Acta, 1997, 80, 2426-2439;Steffensら、J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 3249-3255;およびRennebergら、J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 5993-6002を参照のこと)。これらの修飾されたヌクレオシド類似体は、ホスホラミダイト法を用いてオリゴマー形成され、そして、その結果得られる三環ヌクレオシド類似体を含有するアンチセンス化合物は、DNA、RNAおよびそれ自体がハイブリダイズした場合に増加した熱安定性(Tm)を示す。二環式ヌクレオシド類似体を含有するアンチセンス化合物は、DNA二本鎖の熱安定性に近い熱安定性を示す。
オリゴヌクレオチド模倣体の別の種類は、ホスホノモノエステル核酸と称され、骨格にリン基を含む。この種類のオリゴヌクレオチド模倣体は、遺伝子発現を阻害する領域で有用な物理的および生物学的そして薬理学特性を有することが報告されている。
【0080】
核酸塩基修飾
本発明のアンチセンス化合物は、天然もしくは合成の非修飾核酸塩基と、構造的に識別可能であるが、機能的に交換可能な1つまたはそれ以上核酸塩基(当分野では、しばしば単に「塩基」と称される)修飾または置換を含んでもよい。そのような核酸塩基修飾は、ヌクレアーゼ安定性、結合親和性またはいくつかの他の有益な生物学的特性をアンチセンス化合物に与え得る。本明細書中で用いられる「非修飾」または「天然」核酸塩基は、プリン塩基のアデニン(A)とグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。また、本明細書中で複素環式塩基部分と称される修飾された核酸塩基は、他の合成および天然核酸塩基、例えば、5‐メチルシトシン(5−me−C)、5‐ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチルとアデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、2−プロピルとアデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、2‐チオウラシル、2−チオチミンと2−チオシトシン、5−ハロウラシルとシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基、6−アゾウラシル、シトシンとチミンの他のアルキニル誘導体、5−ウラシル(シュードウラシル)、4‐チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンとグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルとシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8‐アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンを含む。
【0081】
複素環式の塩基部分には、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンと2−ピリドキサルで置換されたものが挙げられる。いくつかの核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に記載のもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858-859頁、Kroschwitz, J.I., 編. John Wiley & Sons, 1990に開示のもの、Englischら、Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613により開示されたもの、そして、Sanghvi, Y.S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S.T. およびLebleu, B. , 編., CRC Press, 1993により開示されたものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明のアンチセンス化合物の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2、N−6とO−6置換プリンが含まれ、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンが挙げられる。
【0082】
本発明の1つの態様において、1つまたはそれ以上の複素環式の塩基部分の代わりに多環式ヘテロ環式化合物を有するアンチセンス化合物が、調製される。多くの三環ヘテロ環式化合物が、これまでに報告された。これらの化合物は、修飾されたストランドの結合特性を標的ストランドに対して増大させるためのアンチセンスの応用に通常用いられる。最も研究された修飾は、グアノシンに標的化され、G−クランプまたはシチジン類似体と称される。
【0083】
第二のストランドのグアノシンと3個の水素結合を作る代表的なシトシン類似体には、1,3−ジアザフェノキサジン−2−オン(R10=O、R11−R14=H)(Kurchavovら、Nucleosides and Nucleotides, 1997, 16, 1837-1846)、1,3−ジアザフェノチアジン−2−オン(R10=S、R11−R14=H)、(Lin, K.-Y.; Jones, R. J.; Matteucci, M. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 3873-3874)および6,7,8,9−テトラフオロ−1,3−ジアザフェノキサジン−2−オン(R10=O、R11−R14=F)(Wang, J.; Lin, K.-Y., Matteucci, M. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 8385-8388)が含まれる。オリゴヌクレオチドに組み込まれた場合、これらの塩基修飾は、相補的なグアニンとハイブリダイズすることが示され、また、後者はアデニンとハイブリダイズし、増大したスタッキング相互作用によってヘリックスの熱安定性が増強されることも示された(また、米国特許出願第20030207804号および米国特許出願第20030175906号を参照のこと、この両方は、その全部が出典明示により一部とされる)。
【0084】
本発明に基づく三環複素環式の化合物およびそれらの使用方法は、米国特許第6,028,183号および米国特許第6,007,992号(両方の開示内容はその全部が本明細書の一部とされる)に開示されている。
フェノキサジン誘導体の増強の結合親和性に加え、その配列特異性は、それらを、より強力なアンチセンスに基づく薬物開発の有益な核酸塩基類似体とする。実際に、フェノキサジン置換を含有するヘプタヌクレオチドが、RNaseHを活性化し、細胞取込みを増強し、そして増強されたアンチセンス活性を示し得ることを実際に示す有望なデータが、インビトロ実験から得られた(Lin, K-Y; Matteucci, M. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 8531-8532)。この活性の増強は、単一の置換が20個のヌクレオシド、2’デオキシホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドのインビトロ効力の有意な改善を示すため、さらにGクランプとも称さる(Flanagan, W. M.;Wolf, J.J.;Olson, P.;Grant, D.;Lin, K.-Y.;Wagner, R. W.;Matteucci, M. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1999, 96, 3513-3518)。
【0085】
複素環式塩基として有用な修飾された多環式ヘテロ環式化合物は、限定するものではないが、上記の米国特許第3,687,808号、ならびに米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,434,257号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,645,985号;第5,646,269号;第5,750,692号;第5,830,653号;第5,763,588号;第6,005,096号および第5,681,941号および米国特許出願公報第20030158403号に開示されており、その各々は、その全部が出典明示により本明細書の一部とされる。
【0086】
5−メチルシトシン置換を含む、いくつか核酸塩基置換は、特に本発明のオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるのに有用である。例えば、5−メチルシトシン置換は、核酸二本鎖の安定性を0.6℃〜1.2℃増加させることが示され(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T.およびLebleu, B., 編., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、特に、好ましい塩基置換であり、また2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合にはさらに好ましい。
【0087】
コンジュゲート型アンチセンス化合物
本発明のアンチセンス化合物に付け加え得る1つの置換には、結果として生じるアンチセンス化合物の活性、細胞分布または細胞取込みを増強する1つまたはそれ以上の部分またはコンジュゲート結合が含まれる。1つの実施形態において、そのような修飾されたアンチセンス化合物は、コンジュゲート基を官能基(例えばヒドロキシルまたはアミノ基)に共有結合で結合させることにより調製される。本発明のコンジュゲート基は、インターカレータ、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール類、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、およびアンチセンス化合物の薬物動態学的特性を増強する基が含まれる。典型的なコンジュゲート基は、コレステロール部分と脂質部分を含む。さらなるコンジュゲート基は、炭水化物、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンと色素を含む。本発明の関係で薬力学的特性を増強する基は、アンチセンス化合物に、改善された取込み、分解に対する増強の抵抗性および/またはRNAとの増強のハイブリダイゼーションなどの特性を与える基を含む。この発明の関係で、薬物動態学的特性を増強する基には、アンチセンス化合物に、例えば改善された取込み、分布、代謝または排出などの特性を与える基が含まれる。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日に出願された国際特許出願PCT/US92/09196に開示されており、その全開示内容は出典明示により本明細書の一部とされる。
【0088】
さらにまた、本発明のアンチセンス化合物は、アンチセンス化合物の能動もしくは受動輸送、局在化またはコンパートメント化を容易にするために、1つまたはそれ以上のコンジュゲート部分を有してもよい。細胞局在化は、限定されるものではないが、核、核小体または細胞形質への局在を含む。コンパートメント化は、限定するものではないが、核、核小体、ミトコンドリアを含む細胞区画への方向づけられた移動、または細胞膜への埋め込みを含む。さらにまた、本発明のアンチセンス化合物は、転写後修飾を容易にする1つまたはそれ以上のコンジュゲート部分を含む。
【0089】
本発明の組成物で用いられるアンチセンス化合物は、例えばヌクレアーゼ安定性などの特性を増強するため、一般的にアンチセンス化合物の一端または両端に付す1つまたはそれ以上の安定化基を含めて修飾してもよい。キャップ構造は安定化基に含まれる。アンチセンス化合物のいずれの末端にも組み込まれる「キャップ構造」または「末端のキャップ部分」は、化学修飾を意味する(例えば、Wincottら、国際特許公報第97/26270号、出典明示により本明細書の一部とされる)。これらの末端修飾は、末端の核酸分子を有するアンチセンス化合物をエキソヌクレアーゼ分解から保護し、細胞内での送達および/または局在化をよくし得る。キャップは、5’−末端(5’−キャップ)に、または3’−末端(3’−キャップ)に存在してもよし、あるいは両端に存在してもよい。二本鎖アンチセンス化合物について、キャップは、いずれかのストランドの一端もしくは両端に存在し得る。キャップ構造は当分野で周知であり、例えば、逆デオキシ無塩基キャップを含む。さらに、ヌクレアーゼ安定性を与えるため、アンチセンス化合物の一端または両端をキャップするために用いることができる3’と5’安定化基としては、2003年1月16日に公開された国際特許公報第03/004602号に開示されたものが挙げられる。
【0090】
アンチセンス化合物モチーフ
本発明のアンチセンス化合物は、化学的に修飾されたサブユニットが、そのアンチセンス化合物の阻害活性を増強するパターンにて配置されていてもよい。これらのパターンは、本明細書中「モチーフ」と記載され、それは均一に修飾されたモチーフ、位置的に修飾されたモチーフ、ギャップマー(gapmer)あるいはギャップした(gapped)モチーフ、交互(alternating)モチーフ、ヘミマー(hemimer)およびブロックマー(blockmer)モチーフを含む。
【0091】
本発明で用いられる用語「均一な・モチーフ」は、各ヌクレオシドが天然の糖または修飾された糖でもよい同型の糖部分を有するアンチセンス化合物を含むことを意味する。さらに、「均一に修飾されたモチーフ」、「均一な修飾」、および「均一に修飾された」は、各ヌクレオシドが同型の糖修飾を有するアンチセンス化合物を含むことを意味する。適切な糖部分は、限定されるものではないが、2’−O(CHOCH[2’−MOE]、2’−OCH[2’−O−メチル]、LNAおよびENA(登録商標)を含む。例えば、アンチセンス化合物は、その各糖修飾が2’−MOE糖修飾となるよう、均一に修飾されてもよい。別には、アンチセンス化合物は各糖修飾が2’−O−メチル糖修飾であるように、均一に修飾されてもよい。
【0092】
本発明で用いられる用語「ギャップしたモチーフ」または「ギャップマー」は、2つの外部領域(また、「ウィング」もしくは「ウィング部分」と称される)の間に位置する内部領域(また、「ギャップ」または「ギャップ部分」と称される)を有するアンチセンス化合物を含むことを意味する。この領域は、各異なる領域を含む糖部分の型によって区別される。ギャップマーの領域を区別するために用いられる糖部分の型は、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシリボヌクレオシド、2’修飾されたヌクレオシド(そのような2’−修飾されたヌクレオシドは、特に2’−MOEと2’−O−CHを含み得る)および二環式糖修飾ヌクレオシド(そのような二環式糖修飾ヌクレオシドは、特にLNA(登録商標)またはENA(登録商標)を含み得る)を含む。一般に、各異なる領域は、領域内の均一な・モチーフ糖部分が均一であることを要する。
【0093】
ギャップしたモチーフまたはギャップマーは、「対称」または「非対称」のいずれかによって、さらに定義される。第一のウィングのヌクレオシドが、第二のウィングのヌクレオシドと同じ糖修飾を有するギャップマーは、対称のギャップしたアンチセンス化合物と称される。対称のギャップマーは、例えば、少なくとも1つの糖部分が修飾された糖部分である、第一の糖部分を含む内部領域およびそれぞれ第二の糖部分を含む外部領域を有してもよい。
【0094】
本発明で用いられるギャップマーは、独立して1個から7個のヌクレオシドを有するウィングを含む。従って、本発明は、各ウィングが独立して1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個のヌクレオシドを含むギャップマーを含む。各ウィングのヌクレオシド数は、同じであっても異なっていてもよい。1つの実施形態において、内部領域またはギャップ領域は、17個から21個のヌクレオシドを含み、それは17個、18個、19個、20個または21個のヌクレオシドを含むと理解される。
【0095】
本発明で用いられる用語「位置的に修飾されたモチーフ」は、その配列が1個〜約8個の糖修飾ヌクレオシドを含む2個またはそれ以上の領域により分断されており、内部領域は一般に1個〜約4個のヌクレオシドである、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシリボヌクレオシドまたは糖修飾ヌクレオシドを含むことを意味する。言い換えれば、特定の糖部分を有する領域が、異なる糖部分を有する領域で分離されている。糖修飾ヌクレオシドを含む領域は、同じ糖修飾を有するか、あるいは、ある領域が別の領域とは異なる糖修飾を有するよう変化する。位置的に修飾されたモチーフは、核酸塩基配列またはヌクレオシド内結合の場所もしくは型によっては決まらない。用語「位置的に修飾されたモチーフ」は、多くの異なる特異的な置換パターンを含む。これらの置換パターンの多くが、組成物に調製され、試験された。
【0096】
本発明は、第二の異なる2’−糖修飾ヌクレオシドまたは二環式修飾された糖ヌクレオシド領域によって分離された、2’−糖修飾ヌクレオシド領域によって特徴づけられる位置的に修飾されたモチーフを有するアンチセンス化合物を含む。好ましい2’−糖部分は、2’−O−メチルと2’−MOEを含む。好ましい二環式糖部分は、LNAおよびENAを含む。2’−糖修飾部分の領域は、2〜8ヌクレオシド長でもよく、また二環式修飾された糖部分の領域は、1または2ヌクレオシド長でもよい。
【0097】
1つの実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、5’−末端から始まって、アンチセンス化合物は第1位と第2位のいずれにも2’−糖修飾ヌクレオシドを有し、第3位のすべてに二環式の修飾されたヌクレオシドを有するように、1つの二環式の修飾されたヌクレオシドの領域によって分離された、2つの2’−糖修飾ヌクレオシドの領域により特徴づけられる。そのようなモチーフは、式5’−(A−A−B)n(−A)nn−3’(ここで、Aは第一の糖部分であり、Bは第二の糖部分であり、nは6〜7であり、そしてnnは0〜2である)により示される。好ましい実施形態において、Aは2’−MOEであり、BはLNAである。さらなる実施形態において、Aは2’−O−メチルであり、そしてBはLNAである。いくつかの実施形態において、そのようなモチーフが、アンチセンス化合物(例えば、21ヌクレオシド長のアンチセンス化合物)の3’−末端に二環式ヌクレオシドを生じる場合、2’−糖修飾ヌクレオシドが、二環式修飾されたヌクレオシドに代えて一部とされる。例えば、nが7であり、nnが0である場合、2’−糖修飾ヌクレオシドは、二環式修飾されたヌクレオシドに代えて3’末端部位に利用される。
【0098】
標準的でないパターンを有する位置的に修飾されたモチーフもまた、本発明に含まれる。例えば、大部分の2’−糖修飾領域は2ヌクレオシド長であってよく、少数の2’−糖修飾領域は1ヌクレオシド長でもあってもよい。同様に、大部分の二環式修飾された領域は1ヌクレオシド長であってよく、少数の二環式修飾された領域は2ヌクレオシド長であってよい。前の段落で記載されるように、そのようなアンチセンス化合物の1つの非限定的な例は、位置的に修飾されたモチーフを含み、1ヌクレオチド長の1個の2’−糖修飾された領域、そして2ヌクレオシド長の1個の二環式修飾された領域を有する。
【0099】
本発明で用いられる用語「交互モチーフ」は、本質的に全長の化合物が2つの異なる交互のヌクレオシドからなる連続配列を含むことを意味する。この交互のパターンは、式:5’−A(B−A)n(−B)nn−3’(式中、AおよびBは、少なくとも異なる糖部分を有することにより区別されるヌクレオシドであり、nnは0または1であり、そしてnは約7〜約11である)により記載され得る。これは、17〜24ヌクレオシド長のアンチセンス化合物であってよい。この長さの範囲は制限を意味するものではなく、より長いおよびより短いアンチセンス化合物もまた本発明にある。また、この式は5’−および3’−末端ヌクレオシドが同じ(余分の)または異なる(同等の)糖部分を含む、同等および余分な長さの交互アンチセンス化合物を可能にする。
【0100】
本発明の交互のアンチセンス化合物を含む「A」および「B」ヌクレオシドは、少なくとも異なる糖部分を有することによって互いに区別される。AおよびBヌクレオシドはそれぞれ、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシリボヌクレオシド、2’修飾されたヌクレオシド(そのような2’修飾されたヌクレオシドは、特に2’−MOEおよび2’−O−CHを含んでいてもよい)、および二環式糖修飾ヌクレオシド(そのような二環式糖修飾ヌクレオシドは、特にLNAまたはENAを含んでいてもよい)から選択される、修飾された糖部分を有する。交互のモチーフは、核酸塩基配列とヌクレオシド内結合から独立している。ヌクレオシド内結合は、各部位でまたは特定の選択された部位で変わってもよいし、あるいはアンチセンス化合物の全体を通じて一様であってもよいし、または交互になっていてもよい。
【0101】
本発明で用いられる用語「ヘミマー・モチーフ」は、一様な糖部分(同一の糖、修飾されるかもしくは非修飾)を有するヌクレオチドの配列を含むことを意味し、ここで、5’末端または3’末端のうちの一方は、2個〜12個のヌクレオチドの配列を有し、それは糖修飾されたヌクレオシドであり、ヘミマー修飾されたアンチセンス化合物において他のヌクレオシドから区別される。典型的なヘミマーの例は、一方の末端ではβ−D−リボヌクレオシドまたはβ−D−デオキシリボヌクレオシドの配列、そして他の末端では糖修飾されたヌクレオシドの配列を含むアンチセンス化合物である。あるヘミマー・モチーフは、一方の末端にβ−D−リボヌクレオシドまたはβ−D−デオキシリボヌクレオシドの配列、次にもしくは前に、他の末端には2個〜12個の糖修飾ヌクレオシドの配列を含む。別のヘミマー・モチーフは、一方の末端にβ−D−リボヌクレオシドまたはβ−D−デオキシリボヌクレオシドの配列、次にもしくは前に、同様に適切な2個〜4個の糖修飾ヌクレオシドを有する、他の末端に位置する2個〜6個の糖修飾ヌクレオシドを含む。本発明の好ましい実施形態において、ヘミマー・アンチセンス化合物は、2’−MOE修飾されたヌクレオシド領域とβ−D−デオキシリボヌクレオシド領域を含む。1つの実施形態において、β−D−デオキシリボヌクレオシドは、アンチセンス化合物内に13個未満の連続ヌクレオシドを含む。
【0102】
本発明で用いられる用語「ブロックマー・モチーフ」は、均一に修飾された糖修飾ヌクレオシドのブロックによって内部で分断された均一な糖(同一の糖、修飾もしくは非修飾)を有するヌクレオシドの配列を含むことを意味し、ここで、該修飾は他のヌクレオシドと異なる。より一般には、ブロックマー・モチーフを有するアンチセンス化合物は、2個〜6個、または2個〜4個の糖修飾ヌクレオシドからなる内部ブロックを有するβ−D−リボヌクレオシドまたはβ−D−デオキシリボヌクレオシドの配列を含む。内部のブロック領域は、それが一方の末端にあってヘミマーとならない限り、アンチセンス化合物内のいずれいの部位にあってもよい。塩基配列およびヌクレオシド内結合は、ブロックマー・モチーフ内のいずれの部位に変わってもよい。
【0103】
均一に、位置的に修飾された、交互の、ギャップした、ヘミマーまたはブロックマーから選択されるモチーフを有するアンチセンス化合物は、ヌクレオシド内結合修飾または核酸塩基修飾、例えば本明細書に記載のものをさらに含んでいてもよい。
【0104】
この発明の関係において、「キメラ・アンチセンス化合物」または「キメラ」は、それぞれ少なくとも1個のモノマー単位(すなわち、核酸に基づくアンチセンス化合物の場合ヌクレオチドまたはヌクレオシド)からなる少なくとも2つの化学的に異なる領域のある、アンチセンス化合物である。したがって、位置的に修飾された、ギャップマー、交互の、ヘミマーまたはブロックマーから選択されるモチーフを有するアンチセンス化合物は、キメラ・アンチセンス化合物であると考えられる。
【0105】
キメラ・アンチセンス化合物は、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する増大した抵抗性、増大した細胞摂取、標的核酸に対する増加した結合親和性および/または増加した阻害活性を与えるように修飾された少なくとも1つの領域を含む。例として、アンチセンス化合物は、RNA:DNA二本鎖のRNAストランドを切断する細胞エンドヌクレアーゼRNaseHの基質として働く領域を含むよう設計され得る。従って、開裂領域を有するアンチセンス化合物によるRNaseHの活性化は,RNA標的を開裂することとなり、それによりアンチセンス化合物の効率が増強する。別には、アンチセンス化合物は、アンチセンス阻害が酵素の開裂よりむしろ立体化学的閉鎖のような機序を通じて達成されるように、増加した結合性または活性をアンチセンス化合物に与える領域を含むよう、設計し得る。
【0106】
化学修飾ヌクレオシドは、短いもしくは切断されたアンチセンス化合物のその標的核酸に対する結合親和性を増加させるために用いることができる。従って、相当する結果は、そのような化学修飾ヌクレオシドを有する、より短いアンチセンス化合物を用いてしばしば得ることができる。
均一に、位置的に修飾された、交互の、ギャップマー、ヘミマーまたはブロックマーから選択されるモチーフを有する、本明細書記載のアンチセンス化合物のいずれも、本明細書に記載のようなヌクレオシド内結合修飾および/または核酸塩基修飾をさらに含んでいてもよい。
【0107】
天然、修飾の両方のヌクレオシドは、そのハイブリダイゼーションおよび結合性特性に影響を及ぼす特定の立体配座ジオメトリーを有する。ホモ二本鎖核酸の立体配座のジオメトリーを記載するために用いられる用語は、RNAについては「A型」およびDNAについては「B型」である。一般に、RNA:RNA二本鎖は、DNA:DNA二本鎖より安定で、より高い融解温度(Tm)を有する(Sangerら、Principles of Nucleic Acid Structure, 1984, Springer-Verlag; New York, NY.;Lesnikら、Biochemistry, 1995, 34, 10807-10815;Conteら、Nucleic Acids Res., 1997, 25, 2627-2634)。RNAの増大の安定性は、いくつかの構造上の特徴、特にA型ジオメトリーの結果としての、改善された塩基スタッキング相互作用に起因する(Searleら、Nucleic Acids Res., 1993, 21, 2051-2056)。RNA中の2’ヒドロキシルの存在が、糖にC3’エンド・パッカー(endo pucker)に対する偏りを与え(すなわち、ノーザン・パッカー(Northern pucker)とも称される)、それが、この二本鎖がA型ジオメトリーをとりやすくなる要因である。加えて、RNA中の2’ヒドロキシル基は、RNA二本鎖を安定させるのを助ける水媒介性の水素結合ネットワークを形成し得る(Egliら、Biochemistry, 1996, 35, 8489-8494)。一方、デオキシ核酸は、C2’エンド糖パッカーを好み(すなわち、サザン・パッカー(Southern pucker)としても知られる)、それはより安定でないB型ジオメトリーを与えると考えられている(Sanger, W. (1984) Principles of Nucleic Acid Structure, Springer-Verlag, New York, NY)。本明細書中で用いられるB型ジオメトリーは、C2’−エンド・パッカーおよびO4’−エンド・パッカーの両方を含む。B型二本鎖を引き起こすフラノース立体配座を考慮した場合に、O4’−エンド・パッカー立体配座を与えられなければないことを考慮して指摘したBergerら、Nucleic Acids Research, 1998, 26, 2473-2480と一致する。
【0108】
しかしながら、DNA:RNAハイブリッド二本鎖は、通常、純粋なRNA:RNA二本鎖より安定でなくて、その配列によってはDNA:DNA二本鎖より多少安定であり得る(Searleら、Nucleic Acids Res., 1993, 21, 2051-2056)。ハイブリッド二本鎖の構造は、A型とB型ジオメトリーとの中間にあり、それは弱いスタッキング相互作用であり得る(Laneら、Eur. J. Biochem., 1993, 215, 297-306;Fedoroffら、J. Mol. Biol., 1993, 233, 509-523;Gonzalezら、Biochemistry, 1995, 34, 4969-4982;Hortonら、J. Mol. Biol., 1996, 264, 521-533)。これらの機序はRNA標的ストランドに対する合成配列ストランドのハイブリダイゼーションまたは立体障害が関与するので、標的RNAと合成配列とで形成された二本鎖の安定性は、限定するものではないが、RNase H媒介型を含むアンチセンス機序およびRNA干渉機序などの治療に重要である。
【0109】
糖パッカリングを修飾する1つの通常用いられる方法は、糖ジオメトリーに影響する置換基を用いた2’位の糖置換である。環立体配座における影響は、2’位での置換基の性質に依存する。多くの異なる置換基は、その糖パッカリング効果を決定するために研究された。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態において、二本鎖安定性は、A−型ジオメトリーを示す修飾された糖部分を組み込むことにより増強され得る。当業者であれば、所定の置換糖がA−型ジオメトリーを有するかどうか決定することができる。
【0111】
本発明の1つの態様において、アンチセンス化合物は、3’エンド糖立体配座を誘導するために合成により修飾されたヌクレオシドを含む。ヌクレオシドは、所望の3’エンド糖立体配座を誘導するため、複素環式の塩基、糖部分またはその両方に合成修飾を組み込むことができる。これらの修飾されたヌクレオシドは、所望の3’エンド立体配座ジオメトリーを維持しながら、アンチセンス化合物の特定の特性が増強され得るよう、RNA様ヌクレオシドを模倣するために用いられる。RNA型二本鎖(A型ヘリックス、主に3’エンド)は、RNA干渉の要求(例えばトリガー)としての明白な優先性がある。より安定な3’エンドヌクレオシドを使用することで増強される特性は、以下:蛋白結合;蛋白質の解離速度;吸着および除去;ヌクレアーゼ安定性ならびに化学安定性のモジュレーション;結合親和性およびアンチセンス化合物の特異性(酵素ならびに相補的配列に対する結合性および特異性)のモジュレーション;RNA開裂の増加した効能;および増加の立体化学的閉塞の1つまたはそれ以上のモジュレーションを含む。本発明は、C3’エンド型立体配座を与える様式で修飾された1つまたはそれ以上のヌクレオシドを有する、RNAiのトリガーとして作用するよう設計されたアンチセンス化合物を提供する。
【0112】
修飾されたヌクレオシドの立体配座およびそれらを含むアンチセンス化合物は、様々な方法、例えば分子動力学算出、核磁気共鳴スペクトル測定法およびCD測定により評価することができる。したがって、RNA様立体配座を誘導すると予測される修飾(アンチセンス化合物の内容ではA型二本鎖ジオメトリー)は、本発明のアンチセンス化合物に有用である。本発明に従う修飾されたヌクレオシド合成は、当分野で既知である(例えば、Chemistry of Nucleosides and Nucleotides Vol 1-3, ed. Leroy B. Townsend, 1988, Plenum Pressを参照のこと)。
【0113】
1つの態様において、本発明は天然のRNAと比較して増強された特性を有するよう設計されたアンチセンス化合物に関する。最適化または増強のアンチセンス化合物を設計する1つの方法は、選択された配列の各ヌクレオシドが可能な増強化修飾について精査することを含む。1つの修飾は、同じ3’エンド立体配座ジオメトリーを有するヌクレオシドによる1つまたはそれ以上のRNAヌクレオシドの置換である。合成および/またはオリゴヌクレオチドへの組み込みが非常により安価でより容易となると共に、該修飾は、天然のRNAと比較して化学的安定性およびヌクレアーゼ安定性を増強し得る。配列は、キメラ立体配置の結果として増強性の修飾に関して評価された領域と各領域のヌクレオシドに、さらに分けることができる。1つまたはそれ以上の末端のヌクレオシドに行うことができるしばしば有利な修飾があるので、5’と3’末端に与えることも考えられる。本発明のアンチセンス化合物は、一本鎖上に少なくとも1個の5’修飾されたリン酸基または二本鎖の配列または配列群の少なくとも1個の5’位を含んでもよい。考えられる他の修飾には、ヌクレオシド内結合、コンジュゲート基、置換糖または塩基、1つまたはそれ以上ヌクレオシドのヌクレオシド模倣体による置換、およびアンチセンス化合物の所望の特性を増強し得る他のいずれかの修飾がある。
【0114】
本明細書中で特に定義されない限り、アルキルは、C−C12、C−CまたはC−Cの直鎖または(可能な場合には)分岐脂肪族ヒドロカルビルを意味する。
本明細書中で特に定義されない限り、ヘテロアルキルは、鎖の末端を含む鎖内に少なくとも1個、または約1個〜約3個のヘテロ原子を含む、C−C12、C−CまたはC−Cの直鎖または(可能な場合には)分岐鎖脂肪族ヒドロカルビルを意味する。適切なヘテロ原子は、N、OおよびSを含む。
【0115】
本明細書中で特に定義されない限り、シクロアルキルは、C−C12、C−CまたはC−C脂肪族ヒドロカルビル環を意味する。
本明細書中で特に定義されない限り、アルケニルは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖または(可能な場合には)分岐ヒドロカルビル部分であってよいC−C12、C−CまたはC−Cアルケニルを意味する。
本明細書中で特に定義されない限り、アルキニルは、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖または(可能な場合には)分岐ヒドロカルビル部分であってよいC−C12、C−CまたはC−Cアルキニルを意味する。
【0116】
本明細書中で特に定義されない限り、ヘテロシクロアルキルは、少なくとも3個の環メンバーを含み、そのうちの少なくとも1個は炭素であり、そして1個、2個または3個の環メンバーは、炭素以外の環部分を意味する。炭素原子の数は、1個〜約6個、1個〜約12個まで変化してよく、そして環メンバーの総数は3個〜約15個、または約3個〜約8個まで変化する。適切な環ヘテロ原子は、N、OおよびSである。適切なヘテロシクロアルキル基は、限定するものではないが、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペリジニル、ホモピペラジニル、ホモモルホリノ、ホモチオモルホリノ、ピロロジニル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイミダゾリル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、テトラヒドロピラゾリル、フラニル、ピラニルとテトラヒドロイソチアゾリルを含む。
【0117】
本明細書中で特に定義されない限り、アリールは、少なくとも1個のアリール環を含むいずれかの炭化水素環構造を意味する。適切なアリール環は、約6個〜約20子の環炭素を有する。特に適切なアリール環は、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルを含む。
本明細書中で特に定義されない限り、ヘタリールは、炭素および非炭素原子からなる少なくとも1個の完全不飽和環を含む環部分を意味する。環系は、約1個〜約4個の環を含んでもよい。炭素原子数は、1個〜約12、1個〜約6まで変化してもよく、そして環メンバーの総数は3個〜約15個、または約3個〜約8個まで変化する。適切な環ヘテロ原子は、N、OおよびSである。適切な環ヘテロ原子は、N、OおよびSである。適切なヘタリール部分は、限定するものではないが、ピラゾリル、チオフェニル、ピリジル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニルなどを含む。
【0118】
本明細書中で特に定義されない限り、部分が化合物部分として定義されるように、例えばヘタリールアルキル(ヘタリールとアルキル)、アラルキル(アリールとアルキル)など、それぞれのサブ部分が本明細書中で定義される。
本明細書中で特に定義されない限り、電子吸引基は、電子電荷をそれが付随する炭素から引き離すシアノまたはイソシアナート基などの基である。重要な他の電子吸引基は、電気陰性が炭素のそれを上回るもの、例えば、ハロゲン、ニトロまたは1個またはそれ以上のシアノ、イソチオシアネート、ニトロもしくはハロ基でオルト位もしくはパラ位で置換されたフェニルを含む。
本明細書中で特に定義されない限り、用語ハロゲンおよびハロは、それらの通常の意味を有する。適切なハロ(ハロゲン)置換基は、F、Cl、BrおよびIである。
【0119】
前記の任意の置換基は、本明細書中で特に定義されない限り、所望の特性に応じて適切な置換基である。ハロゲン(F、Cl、Br、I)、アルキル、アルケニルとアルキニル部分、NO、NH(置換および非置換)、酸部分(例えば−COH、−OSOなど)、ヘテロシクロアルキル部分、ヘタリール部分、アリール部分などを含む。
リン酸保護基は、米国特許第5,760,209号、米国特許第5,614,621号、米国特許第6,051,699号、米国特許第6,020,475号、米国特許第6,326,478号、米国特許第6,169,177号、米国特許第6,121,437号、米国特許第第6,465,628号(その各々は明らかにその全部が出典明示により本明細書の一部とされる)に記載のものが挙げられる。
【0120】
アンチセンス化合物スクリーニング
miR−122a標的核酸の有効なモジュレーターを同定するためのスクリーニング法は、本発明によっても理解され、そして、miR−122a標的核酸またはその部分を1つまたはそれ以上の候補モジュレーターと接触させる工程、およびmiR−122a標的核酸のレベル、発現または機能を阻害する1つまたはそれ以上の候補モジュレーターを選択する工程も含む。本明細書中で記載されるように、候補モジュレーターは、pri−miRNA、またはそのいずれかの部分、成熟miRNA、Drosha認識領域、Drosha開裂領域、ヘアピンのステムまたはヘアピンのループを含む部分を標的とするアンチセンス化合物であってよい。候補モジュレーターは、miR−122a標的核酸、例えばpri−miR−122a内の構造領域の構造領域と結合する小分子化合物をさらに含む。候補モジュレーターまたはモジュレーターは、miR−122a標的核酸のレベル、発現または機能をモジュレートすることができる、好ましくは減少することができることが示されれば、そのモジュレーターはさらに調査研究に用いることができ、または、標的確認、研究、診断または本発明に従う治療薬としての使用のために用いることができる。
【0121】
組成物および医薬組成物を処方する方法
本発明はまた、本発明のアンチセンス化合物と組成物を含む医薬組成物と製剤を含む。組成物および医薬組成物の製剤法は、限定するものではないが、投与経路、疾病の範囲または投与される用量を含む多くの基準に依存する。このような考慮すべき問題は、当業者に十分理解される。
【0122】
本発明のアンチセンス化合物および組成物は、化合物または組成物の有効な量を適切な医薬上許容される希釈剤または担体に加えることによって、医薬組成物において利用され得る。本発明のアンチセンス化合物の使用および方法は予防に有用であり得る。
【0123】
本発明のアンチセンス化合物および組成物は、それがヒトを含む動物に投与されると、生物学的に活性のある代謝産物またはその部分を(直接、または、間接的に)提供することができる、医薬上許容される塩類、エステルまたは該エステルの塩類または他のいずれかの化合物を包含する。したがって、例えば、開示内容は、本発明のアンチセンス化合物のプロドラッグおよび医薬上許容される塩類、そのようなプロドラッグの医薬上許容される塩類および他の生物学的等価物を記載する。
【0124】
用語「プロドラッグ」は、内因性酵素または他の化学物質の作用および/または条件によって、体内またはその細胞内で活性型(すなわち薬物)に変わる、不活性型で調製される治療薬を示す。これは、活性アンチセンス化合物を形成するために、体内で内因性ヌクレアーゼによって切断されるさらなるヌクレオシドをアンチセンス化合物の一端または両端に組み込むことを含んでもよい。
【0125】
用語「医薬上許容される塩」は、本発明のアンチセンス化合物および組成物の生理的および医薬的に許容できる塩:すなわち、親化合物の所望の生物活性を保持し、それに対して望ましくない毒性効果を与えない塩を意味する。適切な例は、限定するものではないが、ナトリウム塩とカリウム塩を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、アンチセンス化合物は、投与の経口経路で、被検体に投与されてもよい。被検体は、哺乳動物、例えばマウス、ラット、イヌ、モルモット、ヒト以外の霊長類またはヒトであってよい。いくつか実施形態において、被検体は、miR−122a核酸レベルまたは発現のモジュレーションを必要としてもよいし、あるいは本明細書記載の代替指標のモジュレーションを必要としてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書中で記載されるように、被検体に投与するための組成物は、1つまたはそれ以上の修飾を有する修飾されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0127】
細胞培養およびアンチセンス化合物処置
miR−122aにより調節されるmiR−122a標的核酸、蛋白質をコードするRNAのレベル、活性または発現におけるアンチセンス化合物の効果は、インビトロまたは様々な細胞型で試験することができる。そのような分析に用いられる細胞型は、商業ベンダーから入手可能であり(例えば、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、マナッサス、バージニア州;ゼン−バイオ社(Zen-Bio, Inc.)、リサーチトライアングルパーク、ニューカレドニア;クローンテック社(Clonetics Corporation)、ウォーカーズビル(Walkersville)、メリーランド州)、細胞は、市販の試薬(例えば、インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ、カールズバッド、カリフォルニア州)を用い、ベンダーの指示に従って培養される。例示的な細胞型には、限定するものではないが、T−24細胞、A549細胞、正常ヒト乳房上皮細胞(HMEC)、MCF7細胞、T47D細胞、BJ細胞、B16−F10細胞、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)、ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NHDF)細胞、ヒト胚性ケラチノサイト(HEK)、293T細胞、HepG2、ヒト前脂肪細胞、ヒト分化脂肪細胞(前脂肪細胞は、当分野で既知の方法に従って分化させた)、NT2細胞(別名NTERA−2 cl.D1)およびHeLa細胞を含む。
【0128】
アンチセンス化合物による細胞の処置
一般に、細胞が約60〜約80%の集密度に達した場合に、それらを本発明のアンチセンス化合物で処置する。
アンチセンス化合物を培養細胞に導入するために通常用いられる1つの試薬として、陽イオン脂質トランスフェクション試薬LIPOFECTIN(登録商標)(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)が含まれる。アンチセンス化合物の所望の終濃度およびを典型的に100nMのアンチセンス化合物につき2〜12μg/mLの範囲のLIPOFECTIN(登録商標)濃度にするため、アンチセンス化合物をOPTI−MEM(登録商標)1(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)中のLIPOFECTIN(登録商標)と混合した。
【0129】
アンチセンス化合物を培養細胞に導入するために用いられる別の試薬には、LIPOFECTAMINE(登録商標)(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)が含まれる。アンチセンス化合物の所望の濃度および典型的に100nMのアンチセンス化合物につき2〜12のμg/mLの範囲のLIPOFECTAMINER濃度にするため、アンチセンス化合物をOPTI−MEM(登録商標)1低血清培地(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)中のLIPOFECTAMINE(登録商標)と混合した。
【0130】
細胞は、当業者に周知の通常の方法によってアンチセンス化合物を用いて処置される。細胞は、通常アンチセンス化合物処置の16〜24時間後に収集され、その時点で、標的核酸のRNAまたは蛋白質レベルを当分野で既知の、本明細書中に記載の方法で測定する。標的核酸がmiRNAである場合、miRNAによって調節される蛋白質をコードするRNAのRNAレベルまたは蛋白質レベルを測定し、miRNAに標的とされるアンチセンス化合物の効果を評価することができる。一般に、処置が複数反復して行われる場合、データは反復処置の平均で示される。
使用したアンチセンスの濃度は、細胞系から細胞系で異なる。特定の細胞系の最適のアンチセンス濃度を決定する方法は、当分野で周知である。アンチセンス化合物は、通常1nMから300nMの濃度範囲で用いられる。
【0131】
RNA単離
RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAで行い得る。RNA単離法は、当分野で周知である。RNAは、製造業者の推奨されたプロトコルに従って、例えばTRIZOL(登録商標)試薬(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)を用い、当分野で周知の方法を用いて調製される。
【0132】
標的レベルまたは発現の阻害の分析
miR−122a核酸のレベルまたは発現の阻害またはmiR−122a蛋白質をコードするRNA標的(例えばALDO A)のモジュレーションは、当分野で既知の様々な方法でアッセイすることができる。例えば、標的核酸レベルは、例えばノーザンブロット解析、競争的ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)または定量リアルタイムPCRによって定量化できる。RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAで行い得る。RNA単離法は当分野で周知である。ノーザンブロット解析も当分野では通常のものである。定量リアルタイムPCRは、PEアプライド・バイオシステム、フォスターシティー、カリフォルニア州、から入手可能な、市販のABI PRISM(登録商標)7600、7700または7900のシークエンス・ディテクションシステムを用いて便利に達成でき、製造業者の指示に従って用いられる。
【0133】
当分野で知られている遺伝子発現分析の方法のさらなる例は、DNAアレイまたはマイクロアレイ(Brazma および Vilo, FEBS Lett., 2000, 480, 17-24; Celisら、 FEBS Lett., 2000, 480, 2-16)、SAGE(遺伝子発現の連続分析)(Maddenら、 Drug Discov. Today, 2000, 5, 415-425)、READS(消化cDNAの制限酵素増幅(restriction enzyme amplification of digested cDNAs))(Prashar および Weissman, Methods Enzymol., 1999, 303, 258-72)、TOGA(全遺伝子発現分析(total gene expression analysis))(Sutcliffeら、 Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97, 1976-81)、蛋白質アレイおよびプロテオミクス(Celisら、 FEBS Lett., 2000, 480, 2-16; Jungblutら、 Electrophoresis, 1999, 20, 2100-10)、発現配列タグ(expressed sequence tag)(EST)配列決定(Celisら、 FEBS Lett., 2000, 480, 2-16; Larssonら、 J. Biotechnol., 2000, 80, 143-57)、サブトラクティブRNAフィンガープリンティング(SuRF)(Fuchsら、 Anal. Biochem., 2000, 286, 91-98; Larsonら、 Cytometry, 2000, 41, 203-208)、サブトラクティブ・クローニング、ディファレンシャルディスプレイ(DD)(Jurecic および Belmont, Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3, 316-21)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(Carulliら、 J. Cell Biochem. Suppl., 1998, 31, 286-96)、FISH(蛍光インシトゥハイブリダイゼーション)技術(Going および Gusterson, Eur. J. Cancer, 1999, 35, 1895-904)、および質量分析方法(To, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2000, 3, 235-41)を含む。
【0134】
標的RNAレベルの定量リアルタイムPCR分析
標的RNAレベルの定量化は、製造業者の指示に従ってABI PRISM(登録商標)7600、7700または7900のシークエンス・ディテクションシステム(PEアプライド・バイオシステム、フォスターシティー、カリフォルニア州)を用い定量リアルタイムPCRによって達成される。定量リアルタイムPCRの方法は当分野で周知である。
リアルタイムPCRの前に、単離されたRNAは逆転写酵素(RT)反応にかけ、それによりリアルタイムPCR増幅の基質として用いられる相補DNA(cDNA)が産生される。RTとリアルタイムPCR反応は、同じ試料ウェルで順番に行われる。RTとリアルタイムPCR試薬は、インビトロジェン(カールズバッド、カリフォルニア州)から入手できる。RT、リアルタイムPCR反応は、当業者に周知の方法によって実施される。
【0135】
リアルタイムPCRによって得られる遺伝子(またはRNA)標的量は、発現が一定の遺伝子、例えばGAPDHの発現レベルを用いて、またはRIBOGREEN(登録商標)(モレキュラープローブ社 ユージーン、オレゴン州)を用いて全RNAを定量化することにより規準化される。GAPDH発現は、標的と同時に
または別々に実行し複合化させる、リアルタイムPCRによって定量される。全RNAは、RIBOGREEN(登録商標)RNA定量試薬(モレキュラープローブ社、ユージーン、オレゴン州)を用いて定量される。RIBOGREEN(登録商標)によるRNA定量化法は、Jones, L.J、ら(Analytical Biochemistry, 1998, 265, 368-374)にて示される。CYTOFLUOR(登録商標)4000機器(PEアプライドバイオシステム社)を用いて、RIBOGREEN(登録商標)蛍光を測定する。
プローブとプライマーは、miR−122aにより調節される蛋白質コードRNA(例えばALDO A)を含む標的配列にハイブリダイズするように設計される。リアルタイムPCRプローブとプライマーを設計する方法は、当分野で周知であり、ソフトウェア、例えばPRIMER EXPRESS(登録商標)ソフトウェア(アプライドバイオシステム、フォスターシティー、カリフォルニア州)の使用を含んでもよい。
【0136】
標的RNAレベルのノーザンブロット解析
ノーザンブロット解析は、当分野で既知の通常の手順によって行われる。より高い百分率のアクリルアミドゲル、例えば10〜15%アクリルアミドウレアゲルは、通常miRNAを分離するために用いられる。15〜20マイクログラムの全RNAを、TBE緩衝系を用いる10%アクリルアミドウレアゲル(インビトロジェン)を通じ、電気泳動により分離される。RNAは、Xcell SURELOCK(登録商標)ミニセル(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)で電気ブロットすることによって、ゲルからHYBOND(登録商標)−N+ナイロン膜(アマシャム・ファルマシア・バイオテック、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に転写される。膜を、STRATALINKER(登録商標)UVクロスリンカー2400(ストラタジーン社、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を用いるUV架橋によって固定し、次いで、オリゴヌクレオチド・プローブに製造業者の推奨しているRAPID HYB(商標)緩衝液(アマシャム)を用いてプローブする。
【0137】
その配列を有する標的特異的なDNAオリゴヌクレオチド・プローブを用いて、関心あるRNAを検出する。miRNAsを検出するために用いられるプローブは、IDT(コラルビレ(Coralvill)、アイオワ州)のような商業的なベンダーによって合成される。プローブは、(γ−32P)ATP(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)とともに、T4ポリヌクレオチドキナーゼで5’末端のラベルが付いている。ローディングと転写効率の変動を規格化するため、膜をストリップし、濃度が一定のRNA(例えばGAPDH)に再びプローブする。miRNAを分離するために用いられるより高い百分率のアクリルアミドゲルについては、U6 RNAをローディングと転写効率の変動を規格化するために用いる。U6 RNA。ハイブリダイズした膜を、STORM(登録商標)860 PHOSPHORIMAGE(登録商標)システムおよびIMAGEQUANT(登録商標)ソフトウェアV3.3(モレキュラーダイナミックス、サニーヴェール、カリフォルニア州)を用いて視覚化して数量化する。
【0138】
蛋白質レベルの分析
miR−122aによってモジュレートされるか、または調節される下流の標的の蛋白質レベル(例えばALDO A)は、免疫沈降、ウェスタンブロット解析(免疫ブロット)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、定量的蛋白質アッセイ、蛋白質活性アッセイ(例えばカスパーゼ活性アッセイ)、免疫組織化学、免疫組織化学または蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)などの当分野で周知の様々な手段で、評価しまたは数量することができる。標的に対する抗体は、MSRSカタログの抗体(アエリー、バーミンガム、ミシガン州)など、様々な供給源から確認し入手することができるし、または当分野で周知の一般的なモノクローナルもしくはポリクローナル抗体産生法により調製することもできる。
【0139】
インビボ研究
本発明によれば、本発明のアンチセンス化合物は、正常マウス、痩せマウス、ob/obマウス、db/dbマウス、食餌性肥満マウス、ならびに極度の食餌性肥満マウスおよびラットモデルを含む、疾病の様々な動物モデルで試験される。
レプチンは、食欲を調節する脂肪細胞によって産生されるホルモンである。ヒトとヒト以外の動物の両方でこのホルモンの欠乏は、肥満を引き起こす。ob/obマウスは、レプチン遺伝子に変異を有し、その結果として肥満と高血糖となる。このように、これらのマウスは、肥満と糖尿病の研究に、およびこれらの病気を処置するために設計される処置の有用なモデルである。ob/obマウスは、高循環レベルのインスリンを示し、レプチン受容体に変異を有するdb/dbマウスよりも高血糖でない。db/dbマウスは、レプチン受容体遺伝子に変異を有し、その結果として肥満と高血糖となる。このように、これらのマウスは、肥満と糖尿病の研究に、およびこれらの病気の処置するために設計される処置の有用なモデルである。db/dbマウスは、低循環レベルのインスリンを示し、レプチン遺伝子に変異を有するob/obマウスよりさらに高血糖でり、II型糖尿病の齧歯類モデルとしてよく用いられる。
【0140】
C57Bl/6マウスは、対照(痩せた)動物に用いられる標準的な齧歯類の食事で育てられる。さらに、C57BL/6マウス株は、アテローム硬化型プラーク形成誘導高脂血症に罹患しやすいことが報告されている。その結果、これらのマウスは高脂肪食を与えられると、食餌性肥満を発病する。したがって、これらのマウスは、肥満の研究およびこれらの病気の処置するために設計される処置に有用なモデルである。
レヴィン・モデル(Levin Model)は、高脂肪食を与えた場合に耐糖能異常、異脂肪血症とインスリン抵抗性と関連した食餌性肥満(DIO)を発病するよう選択的に繁殖させたラットの多遺伝子性モデルである(Levinら、 Am. J. Physiol、1997、273、R725-30)。このモデルは、肥満および関連する合併症(例えば耐糖能異常、異脂肪血症およびインスリン抵抗性)に影響を及ぼすそれらの能力について、本発明のアンチセンス化合物を研究する際に有用である。
【0141】
本明細書中で開示される発明がより効率的に理解されるよう、以下に実施例を提供する。これらの実施例は例証のみを目的とし、いかようにも本発明を制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例の全体を通じて、分子クローニング反応および他の標準的な組み換えDNA技術は、特記する場合を除き、商業的に入手可能な試薬を用い、Maniatisら、Molecular Cloning - A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press (1989)に記載の方法によって実施された。
本明細書中で記載される例に加えて、本発明のさまざまな変更は、前述の説明から当業者には明らかである。そのような変更もまた、添付の請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。本明細書にて引用される各報文(限定するものではないが、学術誌記事、米国と米国以外の特許、特許出願公報、国際特許出願公報、GENBANKR(登録商標)受入番号などを含む)は、その全部が引用により本明細書の一部とする。
【0142】
実施例
実施例1:pri−miRNA配列
pri−miR−122a配列は、本発明の特定の実施形態で、例えばmiR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の設計に用いられた。ヒトpri−miR−122aの配列は、GENBANK(登録商標)受入番号NT_033907.3を有する配列から抽出され、配列番号:5(UGGCUACAGAGUUUCCUUAGCAGAGCUGUGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGUGUCUAAACUAUCAAACGCCAUUAUCACACUAAAUAGCUACUGCUAGGCAAUCCUUCCCU)として本明細書中の一部とされる。マウスpri−miR−122a配列は、配列番号:6(UUCCUUAGCAGAGCUGUGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGUGUCCAAACCAUCAAACGCCAUUAUCACACUAAAUAGCUACUG)として本明細書中の一部とされる。ラットpri−miR−122a配列は、配列番号:7(UCCUUAGCAGAGCUCUGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGUGUCCAAAACAUCAAACGCCAUCAUCACACUAAACAGCUACUG)として本明細書中の一部とされる。配列は、5’から3’方向に記載され、DNA型で表される。当業者には、標的配列中のチミジン(T)をウラシル(U)と置換することによって、標的配列をそのRNA型に転換するできることは理解される。
【0143】
実施例2:成熟miRNA配列
pri−miR−122a配列内に見出される成熟miRNAは、本発明の特定の実施形態で、例えば、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物の設計で用いられた。アンチセンス化合物は、miR−122aを模倣するが、模倣体の1つまたはそれ以上の特性を改変する特定の化学修飾を含み、それによって内因性のmiRNAより優れた特性を有する構築物を作り出せるよう設計され得る。
【0144】
成熟miR−122a配列を表1に示す。pri−miR−122a前駆体からの成熟miR−122a配列は、いくつかの群が提案されている;従って、2つの成熟miR−122a配列を表1で開示する。配列は5’方向から3’方向に記載され、RNA型で表される。当業者であれば、単純に配列中のウラシル(U)をチミジン(T)で置換することにより、標的配列をDNA型に変換し得ることは理解される。
表1
【表1】

【0145】
実施例3:mrR−122aを標的とするアンチセンス化合物
本発明に関して、一連のアンチセンス化合物は、miR−122a核酸内の様々な部位を標的とするよう設計されて合成された。アンチセンス化合物は、上記のノーザンブロット法または定量リアルタイムPCRにより、miRNA、pre−miRNAまたはpri−miRNAレベルに関する効果について分析されるか、あるいはmiR−122aまたはmiR−122a下流標的の役割を調査するため、他のアッセイで用いることもできる。
【0146】
以下のアンチセンス化合物の相補的な標的部位は、成熟miR−122a、ならびにpri−miR−122aの標的部位を含む。例えば、配列番号:12の配列を有するアンチセンス化合物は、pri−miR−122a構造のステムループを標的とするように設計された。
【0147】
核酸塩基配列と本発明のアンチセンス化合物の標的部位を表2に示す。表2において、標的部位は、配列番号:5の配列であり、それとアンチセンス化合物は相補的である。表2の核酸塩基配列は、DNA核酸塩基の「T」でもって示されるが、当業者であればRNA配列では「T」が「U」に置換されることは理解される。例えば、特有のRNAアンチセンス化合物ISIS 342970の核酸塩基配列において、「T」が「U」に置換される。
表2:pri−miR−122aまたはmiR−122aを標的とするアンチセンス化合物の配列
【表2】

【0148】
表4は、表2で示される配列のいずれか、および本明細書中記載のモチーフのうちいずれかを有するアンチセンス化合物を列記する。表4において、「糖」はアンチセンス化合物で見出される糖型(類)を示す;「骨格」は、ヌクレオシド内結合型を示す;「モチーフ」は、アンチセンス化合物の特定のモチーフを示す。モチーフは、それぞれ別の領域でのヌクレオシド数によって記載される。例えば、2’−MOEとLNA糖を有する位置的に修飾されたモチーフ「5−1−5−1−4−1−6」は、5個の2’−MOE修飾されたヌクレオシド、続いて1つのLNA修飾されたヌクレオシド領域、およびその他の領域を有する。糖、ヌクレオシド内結合または塩基修飾の型は、tRNA修飾のような省略形を用いて示される。配列、ヌクレオシド内結合、核酸塩基および糖型は、すべて以下のように示される:
・配列の塩基は、大文字で示される
・塩基修飾は、上付き小文字コード(数は部位を示し得る)で塩基残基の前に示され、任意である
・糖型は、下付き小文字コードで塩基残基の後に示される
・ヌクレオシド内結合型は、下付き小文字コードで糖(3’側)の後に示される。
【0149】
糖、核酸塩基およびヌクレオシド内結合の省略形を表3で示す。
表3
【表3】

【0150】
表4:miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【0151】
表5:miR−122aを標的とする:2’−MOEおよびホスホロチオエート連結で均一に修飾される切断されたアンチセンス化合物
【表5】

【0152】
表6:miR−122aを標的とする:2’−MOEおよびホスホロチオエート連結で均一に修飾されるミスマッチのアンチセンス化合物
【表6】

【0153】
ISIS 343160は、化学修飾を施したmiR−122a模倣体を表すオリゴマー化合物である。ヒトmiR−122a模倣化合物は、例えば、哺乳動物由来の他のmiRNA、例えば齧歯目の種由来のものを模倣してもよいことは理解される。これらの模倣体が、化学修飾を有する化合物、例えば同型もしくはキメラ型の2’−MOEオリゴマー化合物、ならびにLNAおよびPNAを含む、核酸オリゴマー化合物の様々な変異体の基礎として用い得ることは理解される;そのようなオリゴマー化合物は本発明の範囲内にある。
【0154】
実施例4:表現型アッセイにおいてmiR−122aを標的とするアンチセンス化合物の効果
アンチセンスオリゴヌクレオチドISIS 328372、ISIS 328373およびISIS 327895のmiR−122aにおける効果は、アポトーシスアッセイ、脂肪細胞分化アッセイとインスリンシグナル伝達アッセイを含む、いくつかの表現型アッセイで試験された。これらのアッセイの実験の詳細および得られる結果は、米国特許公報第2005/0261218号で詳述され、その全部が出典明示により一部とされる。本明細書で記載されるように、ISIS 328372およびISIS 328373は、アポトーシスアッセイにおいてアポトーシスを誘導しなかった。ISIS 327895は、脂肪細胞の分化指標レベルを低下させ、インスリンシグナル伝達アッセイにおいてホリスタチンおよびPEPCKcのメッセンジャーRNA発現を減少させた。
【0155】
実施例5:アンチセンス化合物を用いたインビトロでのmiR−122a活性のモジュレーション
アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたmiR−122aの阻害をモニターするため、いくつかの演算的に予測されるmiR−122a標的の調節をインビトロで試験した。
【0156】
マウス初代肝細胞は、当分野で記載された方法(Neufeld, 1997, Methods Mol. Biol., 75:145-151.)を用いて、Balb/cマウスから単離された。細胞を、96ウェルプレート中の培地(10%ウシ胎児血清、10nM HEPESおよびペニシリン/ストレプトマイシンを加えたウィリアムス培地E)に播種し、トランスフェクションの前に一晩培養した。LIPOFECTIN(登録商標)(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)を用いたオリゴヌクレオチドのトランスフェクションは、製造業者の指示に従い、三重に実施した。細胞を、15nM、44nMまたは133nM濃度のISIS 327895または対照オリゴヌクレオチドISIS 342683のいずれかで処置した。細胞をトランスフェクションの24時間後に溶解し、そして全RNAを、BIOROBOT(登録商標)3000のQIAGEN(登録商標)RNEASY(登録商標)の96カラム(キアゲン(Qiagen)、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて集めた。
【0157】
ターゲットスキャン(TargetScan)アルゴリズム(Lewisら、2005, Cell, 120: 15-20;Lewisら、2003, Cell, 115:787-798)により予測されるmiR−122a標的遺伝子のmRNAレベルは、それぞれの特定の予測される標的遺伝子にハイブリダイズするように設計されたプライマーのプローブセットおよび通常のTAQMAN(登録商標)リアルタイムPCR法を用いて測定した。調べた予測された標的mRNAを表7で示す。また、表7では、マウスとヒト標的mRNAと関連したGENBANK(登録商標)の受入番号を示す。
表7:ターゲットスキャン・アルゴリズムによって予測されるmiR−122a標的遺伝子
【表7】

【0158】
標的のうちの5つ(GYS1、SLC7A1、ALDOA、CCNG1、P4HA1)は、ISIS 327895を用いた処置後に1.5倍〜3倍上方に調節されたが、一方で、対照オリゴヌクレオチドを用いた処置によってはいずれも影響を及ぼさなかった。予測されたMINK1(図中ではmMINKと称される)標的だけは、ISIS 327895を用いた処置後、影響を受けなかった。
【0159】
交換可能な実験でリアルタイムPCRによって評価されるように、マウス肝癌AML12細胞系のmiR−122a模倣体を用いた処置は、GYS1、SLC7A1/CAT−1およびALDOAの阻害を引き起こした。miR−122a模倣体として用いたmiR−122a二本鎖RNAは、Dharmacon(ラフィーエット、CO)から購入した。miR−122a二本鎖は、UGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGU(配列番号:3)とその相補鎖AAACACCAUUGUCACACUCCAUA(配列番号:25)から成る。5’ミスマッチmiR−122a二本鎖は、UGCACAGAGACAAUGGUGUUUGU(配列番号:26)とその相補鎖AAACACCAUUGUCUCUGUGCAUA(配列番号:27)から成る。3’ミスマッチmiR−122a二本鎖は、UGGAGUGUGACAUUGCAGUAGUG(配列番号:28)とその相補鎖AUACUGCAAUGUCACACUCCAUA(配列番号:29)から成る。AML12細胞は、初代肝細胞で見られるような(図6を参照)、miR−122aの高い発現レベルを有さない。miR−122a模倣体のトランスフェクションは、miR−122aのアンチセンス阻害に従い上方に調節された5個の同じ標的(GYS1、SLC7A1、ALDOA、CCNG1、P4HA1)のmRNAレベルの減少をもたらした。面白いことに、miR−122a模倣体は、MINKまたはNPEPPSの発現をモジュレートせず、インビトロで、miR−122a標的遺伝子に対するアンチセンスおよびmiR模倣体の効果と相関することを示した。
【0160】
実施例6:インビトロでアンチセンスmiRNAを使ったmiR−122a活性のモジュレーション
miR−122aの多様な修飾を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた阻害をモニターするため、予測されたmiR−122a標的GYS1の調節を、本明細書中記載のリアルタイムPCR法を用いてマウス初代肝細胞で評価した。細胞を、15nM、44nM、133nMまたは400nM用量の、ISIS 327895、ISIS 365219、ISIS 386653、ISIS 386654、ISIS 345363または対照オリゴヌクレオチドISIS 342683で処置した。ISIS 342683の配列は、CCTTCCCTGAAGGTTCCTCCTT(配列番号:30)である;このオリゴマー化合物は、2’−MOEヌクレオシドから均一に成り、ホスホロチオエート骨格を有し、そして、全てのシトシンは5‐メチルシトシンである。GYS1の増加した発現によって明示されるように、ISIS 327895およびISIS 365219はmiR−122aを阻害するにあたって効果的であった。ISIS 386653およびISIS 386654は、より小さい範囲であるがGYS1 mRNAレベルを増加させた。ギャップマーISIS 345363は、GYS1 mRNAレベルを顕著に増加させなかった。
【0161】
同様の実験で、試験した6個の予測されたmiR−122a標的遺伝子(GYS1、SLC7A1、ALDO A、CCNG1、MINK、P4HA1)のうちmMINKが、miR−122aを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドによってモジュレートされないことが示された。
【0162】
miR−122a阻害に関し可変長のオリゴヌクレオチド効果を調べるため、予測されたmiR−122a標的GYS1の調節を、本明細書記載の方法を用いてマウス初代肝細胞で評価した。細胞は、15nM、44nM、133nMまたは400nM用量の、ISIS 386655、ISIS 386656、ISIS 386657、ISIS 386658、ISIS 386659またはISIS 386660で処置した。切断が、GYS1 mRNAレベルのわずかに少ない刺激をもたらす一方で、いくつかの切断されたアンチセンス化合物はGYS1 mRNA発現を刺激し得た。対照試料と比較して、2個、4個または6個のヌクレオシドが5’末端から切断されたアンチセンス化合物は、このアッセイでGYS1 mRNA発現を刺激し得た。対照試料と比較して、2個のヌクレオシドが3’末端から切断されたアンチセンス化合物は、GYS1 mRNA発現を刺激し得た。しかしながら、3’末端から4個または6個のヌクレオシドの切断は、GYS1 mRNA発現を刺激するアンチセンス化合物の能力を有意に低下させた。
【0163】
予測された標的GYS1における効果を阻害するmiR−122aを標的とするオリゴヌクレオチドの能力におけるミスマッチの効果を調べるため、マウス初代肝細胞を、miR−122aに対するミスマッチを有するオリゴヌクレオチド(ISIS 386661、ISIS 386662、ISIS 386663、ISIS 386664、ISIS 386665とISIS 386666)で処置した。ミスマッチの数を増加させることは、GYS1 mRNAレベルをモジュレートするアンチセンスオリゴヌクレオチドの能力を低下させるようである。1個のミスマッチは許容的であった;しかしながら、2個のミスマッチはGYS1 mRNAレベルのわずかな増加をもたらしたが、3個〜6個のミスマッチはmiR−122aアンチセンスオリゴヌクレオチド活性を完全に取り去った。
【0164】
本発明の実施形態は、予測されたmiR−122a標的を確認する方法を含む。また、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を用いてmiR−122a標的をモジュレートする方法が提供される。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、ISIS 327895である。さらに、miR−122a標的遺伝子のモニタリング発現を含む、miR−122a阻害のアッセイ方法が提供される。
【0165】
実施例7:アンチセンスmiRNAによるインビボのmiR−122a活性のモジュレーション−正常マウス
雄C57BL/6マウスは、ジャクソン(Jackson)研究所から得た。マウスを治療群に分け、4週間、週二回、12.5mg/kg〜75mg/kg範囲のISIS 327895用量で、または75mg/kgの対照オリゴヌクレオチドISIS 342683で腹膜内処置した。さらに、食塩水だけで処置したマウスを対照として取り扱った。マウスは、正常範囲の血漿ASTとALTレベルを有し、体重または食物摂取低下もなく、処置終了後も健常で正常に見えた。肝臓部の組織学的分析は、形態学的な外見上の変化を示さなかった。(肝臓の組織学的分析は、当分野で既知の通常の手順で行われた。簡潔には、肝臓を10%緩衝ホルマリンに固定し、パラフィンろうに封埋した。4mmの切片に切り、スライドガラス上に乗せた。脱水後、切片をヘマトキシリン−エオシン染色した)。
【0166】
インビトロで特定された5個のmiR−122a標的mRNAレベルは、タックマン(Taqman)リアルタイムPCRを用い、肝組織で評価された。5個のmRNAのうちの4個(GYS1、ALDOA、P4HA1とCCNG1)は、ISIS 327895処置されたマウスで増加したが、対照オリゴヌクレオチドで処置されたマウスでは、標的mRNAに変化は観察されなかった、これは、肝臓でのmiR−122aの特異的な阻害を実際に示す。P4HA1は、試験したISIS 327895で最も低用量で、最大の上方調節を示した。本発明の実施形態は、miR−122aを標的とするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを投与することを含む、動物でmiR−122a標的をモジュレートする方法である。1つの実施形態において、標的は肝臓においてモジュレートされる。1つの実施形態において、該アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、ISIS 327895である。
【0167】
処置されたマウスの肝臓RNA中のmiR−122aに対するノーザンブロットは、ISIS 327895の最も低用量(12.5mg/kg)を用いた処置後のmiR−122aレベルの3倍の低下、そして最も高用量(75mg/kg)では10倍を超える低下を示したが、対照オリゴヌクレオチドでは、肝臓中のmiR−122aレベルに影響を及ぼさなかった。本発明の実施形態は、miR−122aを標的とするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを投与することを含む、動物における肝臓中のmiR−122aレベルを低下させる方法である。1つの実施形態において、該アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、ISIS 327895である。
【0168】
総コレステロール、トリグリセリドおよびグルコースの血漿レベルもまた、当分野で既知の方法(例えば、オリンパスAU400e自動臨床解剖学分析器(Olympus AU400e automated clinical chemistry analyzer)、メルヴィル、ニューヨーク州)を用いて観察した。処置の4週後、食塩水または対照−オリゴヌクレオチド処置したマウスと比較して、ISIS 327895を用いたmiR−122aの阻害は血漿グルコース・レベルに有意に影響を及ぼさなかったが、総コレステロールおよびトリグリセリドの有意の低下は、試験した全ての用量で観察された。
【0169】
本発明の実施形態は、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を投与することを含む、動物における血清コレステロール、グルコースまたはトリグリセリドを低下させる方法を含む。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。
【0170】
実施例8:肥満の食餌誘発性モデルにおけるmiR−122aアンチセンス・オリゴヌクレオチド処置の効果:25mg/週の研究
雄のC57bl/6マウス(6〜7週齢)は、アンチセンス・オリゴヌクレオチドによる処置を開始する前に、19週間、高脂肪食(脂肪の60%kcal)を与えられた。マウスは自由に食事をした。開始のインスリン・レベルは約15ng/dLであり、身体組成は約20%が脂肪であった。合計11回の全量について、マウスは、12.5mg/kgで週2回皮下に投薬された(すなわち25mg/週)。各治療群は、5匹のマウスから成った。
【0171】
治療群は以下の通りである:食塩水、ISIS 327895、miR−122aのアンチセンス;ISIS 342683、スクランブルの対照オリゴヌクレオチド。ISIS 342683の配列は、CCTTCCCTGAAGGTTCCTCCTT(配列番号:30)であり;このオリゴマー化合物は、2’−MOEヌクレオシドから均一に成り、ホスホロチオエート骨格を有し、そして、すべてのシトシンは5‐メチルシトシンである。
【0172】
身体組成は、研究の開始時にMRIで決定され、処置の3.5週および5週後に行った。血清生化学的検査は、処置の2週、3週、4週、5週および6週後に分析された。インスリンは、処置の3週後の食事をする状態で、そして、処置の5週後の絶食状態で通常のELISAにより測定された。経口ブドウ糖負荷試験は、処置の5週後に実施された(ルーチン手順:グルコースを投与し、血液サンプルを臨床分析器で採取し、分析した)。
【0173】
血清リポ蛋白質およびコレステロール・プロファイリングは、ベックマン・システム・ゴールド(Beckman System Gold)126HPLCシステム、507eレフリジレイティッド・オートサンプラー(refrigerated autosampler)、126フォトダイオード・アレイ探知器(photodiode array detector)(ベックマン)、およびスパーロース(Superose)6HR10/30カラム(ファイザー)を用い、記載のように(Kieftら、1991)実施した。HDL、LDLとVLDL画分を505nmの波長で測定し、コレステロール・キャリブレーション・キット(シグマ、セントルイス、MO)で確認した。各実験に関し、各リポ蛋白分画の絶対濃度を決定するために、三点標準曲線を三重に実施した。このように実施されたリポ蛋白質分析は、総コレステロールの減少が、低密度リポタンパク質と高比重リポタンパクの両方の割合の低下を反映することを示した。
【0174】
グリコーゲン合成酵素1は、miR−122aの標的であり、その発現はmiR−122aのアンチセンス阻害によってモジュレートされる。グリコーゲン合成酵素1の発現がISIS 327895で処置したマウスの肝臓で上昇したので、肝臓のグリコーゲン含有量を評価した。ISIS 327895で処置されたマウスの肝臓のグリコーゲン・レベルの有意な増加が観察され、これは、miR−122aが筋肉グリコーゲン合成酵素(GYS1)mRNAの抑制を通じてグリコーゲン貯蔵を調節し得ることを示す。
【0175】
平均インスリン・レベルを表8に示す。血清化学的検査分析を表9に示す。
表8:25mg/週DIO研究の平均インスリン・レベル
【表8】

【0176】
表9:25mg/週DIO研究の平均血清生化学的検査レベル。
GLUC=グルコース;ALT=アラニンアミノ基転移酵素;AST=アスパラギン酸アミノ基転移酵素;chol=コレステロール;trigs=トリグリセリド;HDL=HDLコレステロール;LDL=LDLコレステロール;NEFA=離脂肪酸
【表9】

【0177】
その発現がインビボでのmiR−122aのアンチセンス阻害に続いて上方調節されるmiR−122a標的遺伝子には、GYS1、ALDO A、CCNG1およびP4HA1が含まれる。mRNAレベルは、本明細書中で記載されて、当分野で一般に知られている手順を用い、リアルタイムPCRで測定された。ISIS 327895で処置されたマウスにおけるこれらの遺伝子の上方調節により、miR−122a活性の阻害が確認される。
【0178】
肝臓の組織学的分析は、ISIS 327895処置により肝臓脂肪症の実質的な軽減を示した。肝臓トリグリセリドレベルもまた、miR−122aのアンチセンス阻害で低下した。肝臓重量もまた減少した。ISIS 327895処置されたマウスにおける血漿アミノ基転移酵素レベルの低下傾向は、肝機能の改善を示す。これらの変化はまた、重要な酵素、FASN、ACC2およびSCD1のmRNAレベルの低下と相関した。
【0179】
摂食量のわずかな低下が、ISIS 327895処置されたマウスで観察された。コレステロールは、2週間の処置で約35%、そして本研究終了時に約40%減少した。HDLは、4週間の処置で50%減少し、そしてLDLは28%減少した。観察されたコレステロールの低下と一致して、ウエスタンブロット法で測定された、ISIS 327895処置されたマウス血漿中のApoB−100蛋白質レベルは、食塩水処置されたマウスと比較して減少していた。グルコース、血清アミノ基転移酵素、身体組成または摂食量に有意な変化は、観察されなかった。FFAおよび血清トリグリセリドにわずかな変化が観察された。変化は、表8で示されるようにインスリン・レベルで観察された。ISIS 327895による処置は、わずかに肝臓グリコーゲン・レベルを増加させた。
【0180】
本発明の実施形態は、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を投与することにより、動物の血清中の、インスリン感受性を改善する方法、コレステロールを低下させる方法、LDLコレステロールを低下させる方法、FFAを低下する方法、ApoB−100レベルを低下させる方法およびトリグリセリドを低下させる方法を含む。さらなる実施形態において、インスリン感受性の改善は、循環インスリン・レベルの低下として測定される。つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。さらなる実施形態において、アンチセンス化合物はISIS 327895である。
【0181】
実施例9:miR−122aのアンチセンス阻害に続く遺伝子発現変化
1つの実施形態において、miR−122aのアンチセンス阻害に続く肝臓遺伝子発現の変化は、マイクロアレイ分析によって評価した。肝臓RNAは、週二回50mg/kgのISIS 327895で処置された正常なマウスから、および食塩水単独で処置された動物から単離し、そしてマイクロアレイ分析を実施した。GE CODELINK(登録商標)Mouse Whole Genome Bioarraysは、製造業者のプロトコルに従って用いられた。ジーン・オントロジー(Gene Ontology)カテゴリーによるモジュレートされた遺伝子の分析は、脂質代謝と炭水化物代謝の調節に関与する多くの遺伝子が、ISIS 327895処置されたマウスで影響を受けたことを示した。脂肪酸合成経路、コレステロール生合成経路、アセチルCoA輸送経路および解糖経路の重要な酵素が阻害された。ホスホメバロネートキナーゼ(PMVK)mRNAの下方調節は、統計学的に有意だった。HMGCRおよびPMVKを含む、コレステロール代謝に関連するいくつかの他の遺伝子も低下した。ACC1、ACC2、ACLY、SCD1およびFASNを含む、脂肪酸合成と脂肪酸酸化を調節することが知られているいくつかの重要な遺伝子は、マイクロアレイ実験で有意に下方調節され、そして、この5個の遺伝子の下方調節はリアルタイムPCRによって確認された。
【0182】
上方調節された遺伝子の多くは、脳、受精卵および胎盤で強い発現を示す。肝細胞脱分化の指標となる遺伝子、例えばHNF−1α、HNF−1β、HNF−4、アルブミン、サイトケラチン19およびα‐フェトプロテイン)は、miR−122aのアンチセンス阻害に続いて、変化した発現を示さなかった。マイクロアレイデータは、一連の受入番号GSE3603で公的にアクセス可能なデータベースGene Expression Omnibus(GEO、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)に供託されており、出典明示により本明細書の一部とされる。
【0183】
マイクロアレイ実験は、直接的にmiR−122a標的遺伝子を特定するよりはむしろ主に慢性処置後のmiR−122a阻害の下流の影響を明らかにするために設計されたが、その3’UTRにあるマッチングのシード(種)となる限られた7個または8個のヌクレオシドを有する、有意に上方調節された108個の遺伝子が確認された。これらは、直接的なmiR−122a標的遺伝子であり得る。これら大部分のmRNAは、わずか1.5−3倍だけ増加した。これらの遺伝子は、GENBANK(登録商標)受入番号および関連遺伝子記号により、以下の表(表10)中で特定される。標的が7個または8個のヌクレオシドのシードを含むかどうかも示す。
【0184】
表10:インビボでのmiR−122aのアンチセンス阻害に続く標的遺伝子発現プロフィール
【表10−1】

【表10−2】

【表10−3】

【0185】
従って、本発明の別の実施形態は、miR−122a標的を特定する方法である。本発明の別の実施形態は、miR−122aをモジュレートすることを含む、上記表中で特定される108個の標的のいずれかの発現をモジュレートする方法である。特定の実施形態において、miR−122aは、アンチセンス化合物によってモジュレートされる。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。さらなる実施形態において、アンチセンス化合物は、ISIS 327895である。
【0186】
実施例10:miR−122aのアンチセンス阻害に続く脂質代謝のモジュレーション
脂肪酸酸化は、ATP産生異化経路である。中心的な代謝センサーAMPKは、脂肪酸酸化のようなATP生成経路を促進させるために作用し、そして脂肪酸合成のようなエネルギー貯蔵経路を阻害する重要な調節酵素である。
【0187】
脂肪酸酸化は、ISIS 327895処置されたマウスの肝臓から単離された肝細胞で測定された。初代肝細胞は、合計5回の用量で週2回、25mg/kgで食塩水、ISIS 327895またはISIS 342683処置された痩せC57Bl/6マウスから単離された。肝細胞を、フラスコに1×10細胞密度で25cmの培養フラスコに蒔いた。細胞を蒔く前に、フラスコを、室温で10分間リン酸緩衝食塩水中2mlの0.1mg/mlのコラーゲンで処置した。各肝臓で4つのフラスコを作り、そのうちの3つを脂肪酸酸化実験に用い、そのうちの1つは蛋白質測定のために取っておいた。肝細胞の各フラスコに、1.0nMインスリンおよび10%ウシ胎児血清を添加した3mlのウィリアムE培地を加えた(培地と添加剤は、例えばインビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ、カールズバッド、カリフォルニア州から入手可能である)。一晩の培養に続き、細胞を、リン酸緩衝食塩水で二回洗浄し、次に0.25%ウシ血清アルブミンと0.25uCi 14C−オレイン酸を含む2.0mlの低グルコースDMEM中で培養した。フラスコを、5%CO/95%Oで満たし、濾紙を有する0.5ml管付きの中隔ゴムストップで栓をした。3時間後、0.4mlの70%HClOを培地中に注入し、そして0.05mlの25% NaOHを、COを回収するために濾紙上に素早く注入した。CO収集の3〜4時間後、濾紙を取り出し、シンチレーション・バイアルに置いた。濾紙を含む0.5ml管を水で2回洗浄し、そしてその水をシンチレーション・バイアルから移した。培地1.2mlを、各フラスコから回収し、遠心分離して、その上清をさらなるシンチレーション管に移した。CO回収中および培地上清中の放射能を決定し、脂肪酸酸化速度を算出するために用いた。脂肪酸酸化速度は、各フラスコの蛋白質レベルで規準化した。
【0188】
結果を図5に示す。ISIS 327895による処置は、食塩水および対照オリゴヌクレオチドにより処置された試料と比較して、有意に脂肪酸酸化を増加させた。AMPKレベルは、ISIS 327895で処置されたマウスの肝臓抽出物全体のウェスタンブロット法により調べられ、食塩水または対照オリゴマー化合物で処置されたマウスと比較された。全AMPKα1蛋白質レベルは、ISIS 327895で処置されたマウスで不変であったが、リン酸化AMPKα1レベルは、食塩水で処置されたマウスと比較して2.5倍以上増加した。
【0189】
miR−122a阻害後のFASN、ACC1およびACC2 mRNAの観察された低下によれば、脂肪酸合成速度は、ISIS 327895で処置されたマウスからの肝細胞において、食塩水で処置されたマウスからの肝細胞と比較してほぼ2倍低下された。ステロール合成速度もまた、有意に低下された。ステロール合成速度および脂肪酸合成速度は、それぞれ、当分野で記載の方法を用いて、[14C]アセテートのステロールと脂肪酸への取り込みを測定することによって決定された(Jiangら、2005 J. Clin. Invest. 115:1030-1038)。
【0190】
本発明の実施形態は、動物にmiR−122aを標的とするアンチセンス化合物を投与することを含む、肝臓の脂肪酸合成とステロール合成を減少させる方法および動物で肝臓の脂肪酸酸化を増加させる方法を含む。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。
【0191】
実施例11:ob/obマウスにおけるmiR−122aアンチセンス・オリゴヌクレオチド処置の効果
8週齢のob/obマウスに、4.5週間、週2回、食塩水に25mg/kg用量で溶解させたISIS 327895または対照オリゴヌクレオチドを腹腔内注射で与えた。血液を、通常の臨床分析器(例えば、オリンパスAU400e自動臨床解剖学分析器、メルヴィル、ニューヨーク州)を用いて採取し、分析した。ISIS 327895による処置は、対照オリゴヌクレオチドによる処置(約237mg/dL)または塩類単独での処置(約241mg/dL)と比較して、血漿コレステロールレベルの有意な低下(約168mg/dL)を引き起こした。
【0192】
miR−122aのアンチセンス阻害はまた、対照オリゴヌクレオチドによる処置(約161mg/g)または塩類単独での処置(約151mg/g)と比較して、肝臓トリグリセリドレベルを低下させた(約89mg/g)。肝臓トリグリセリドレベルは、当分野で記載される通常の方法を用いて測定される(Desai, et al. 2001, Diabetes, 50: 2287-2295)。脂肪症の軽減は、ISIS 327895を用いた処置群における血漿ALTおよびASTレベルの減少に反映される。従って、本発明の他の実施形態は、miR−122a機能を阻害するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを投与することを含む、動物において肝臓トリグリセリドを低下させる方法、動物で血清コレステロールを低下させる方法および動物で肝臓機能を改善する方法を含む。本発明はまた、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を投与することを含む、動物で高脂血症または肝臓脂肪症を改善する方法または予防する方法が考えられる。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。さらなる実施形態において、アンチセンス化合物は、ISIS 327895である。
【0193】
血漿グルコースまたは耐糖能の変化は観察されず、また明白な毒性もなく、食物摂取または体重の変化は治療群全体で観察されなかった。これらの結果は、miR−122aがコレステロールおよび脂質代謝を調節する役割を果たすことを実際に示す。この効果はレプチン作用からは独立しており、そしてmiR−122aの低下に起因する明白な副作用はない。
本発明の別の実施形態は、miR−122aを阻害することによってコレステロールおよび脂質代謝を調節する方法である。
【0194】
実施例12:強化アンチセンス化合物を用いたインビボでのmiR−122a活性アンチセンス阻害
本発明のアンチセンス化合物は、それらが標的とされる低分子非コードRNAの活性または機能をモジュレートする。この実施例では、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を例示する;しかしながら、本発明のアンチセンス化合物の修飾は、miR−122aをモジュレートするアンチセンス化合物に限定されない。
【0195】
雄のC57BL/6マウスはジャクソン研究所から得た。マウスは、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物で処置するか、または対照処置として食塩水を与えた。試験したアンチセンス化合物のうちの1つには、完全にmiR−122aと相補的な2’−MOEの均一に修飾された化合物、ISIS 327895が含まれた。また、モチーフ(A−A−B)7(−A−A)1を有する位置的に修飾されたアンチセンス化合物(Aは2’−MOEであり、BはLNAである)、ISIS 387574をインビボ試験した。ISIS 387574は、完全にmiR−122aと相補的である。
【0196】
マウスは、合計6回の用量で腹膜内にアンチセンス化合物を25mg/kgの用量で投与された。治療期間の終わった後、RNAを肝臓から単離し、そしてmiR−122a標的mRNA、ALDOAのレベルをタックマン(Taqman)リアルタイムPCRを用いて測定された。食塩水処置された動物と比較して、2’−MOEで均一に修飾された化合物を用いた処置は、ALDO A mRNAレベルが、食塩水処置された動物のレベルの約4倍となった。位置的にに修飾された化合物を用いた処置は、ALDO A mRNAレベルが、食塩水処置された動物で観察されるレベルの約5倍となった。したがって、二環式糖部分の、特に均一に修飾された骨格への組み込みは、miR−122a活性を阻害するアンチセンス化合物のインビボにおける能力を増強した。
【0197】
血清総コレステロールレベルはまた、当分野で既知の方法(例えば、オリンパスAU400e自動臨床解剖学分析器を介して、メルヴィル、ニューヨーク州)を用いて観察された。総コレステロールの低下は、2’−MOEで均一に修飾された化合物または位置的に修飾された2’−MOE/LNA化合物で処置されたマウスで観察された。
【0198】
血清サンプルに対して行われるさらなる測定には、LDLコレステロール、トリグリセリドおよび血清アミノ基転移酵素測定が挙げられる。そのようなインビボ研究で実施されるさらなる分析には、形態学的変化を評価する肝臓切片の組織学的分析が含まれる。肝臓の組織学的分析は、当分野で既知の通常の手順で行われる。簡単には、肝臓を10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンろうに封埋する。4mmの切片に切り、スライドガラス上に乗せる。脱水後、切片をヘマトキシリン−エオシンで染色する。形態学的分析は、当分野で既知のオイル・レッド・オー(Oil Red O)染色手順を用いる、肝臓脂肪症の評価を含んでもよい。
【0199】
本発明の実施形態は、miR−122a核酸を標的とするアンチセンス化合物を投与することを含む、動物における血清総コレステロールを低下させる方法を含む。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列を有する。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、2’−MOE糖修飾を均一に含む。さらなる実施形態において、アンチセンス化合物が位置的に修飾されたモチーフ、5’−(A−A−B)n(−A)nn−3’(Aは2’−MOEであり、BはLNAであり、nは7であり、そしてnnは2である)を有する。さらなる実施形態において、アンチセンス化合物は、ISIS 327895である。別の実施形態において、アンチセンス化合物は、ISIS 387574である。加えて、これらのアンチセンス化合物はいずれも、1つまたはそれ以上のさらなる表現型変化、例えば低血清LDLコレステロール、低血清トリグリセリドまたは軽減された肝臓脂肪症を達成するために用いられる。
【0200】
類似の研究で、miR−122aを標的とし、そして切断を有するアンチセンス化合物をインビボ試験した。アンチセンス化合物の5’末端の単一ヌクレオシドの切断は、全長のアンチセンス化合物、ISIS 327895と同等のALDO A mRNAレベルの増加となった。5’末端から2個のヌクレオシド切断、3’末端から5個のヌクレオシド切断または3’末端から1個のヌクレオシド切断は、わずかに高いALDO A mRNAレベルとなった。3’末端から3個のヌクレオシド切断は、ALDO A mRNAレベルの増加とならなかった。従って、本発明のさらなる実施形態は、miR−122aを標的とするアンチセンス化合物を用い、本明細書中記載の方法のいずれかを行うことを含み、ここで、該アンチセンス化合物は、配列番号:2記載の核酸塩基配列と比較して、5’末端から2個までの切断または3’末端から1個までの切断を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患リスクの血清指標の低下用医薬を調製するための、miR−122核酸と本質的に完全に相補的であるアンチセンス化合物の使用であって、その心血管疾患リスクの血清指標が高血清コレステロールレベル、高血清トリグリセリドレベルまたは高リポ蛋白質レベルから選択される、ところの使用。
【請求項2】
高血清コレステロールが、高LDLコレステロールであるところの、請求項1記載の使用。
【請求項3】
高血清コレステロールが、高血清総コレステロールであるところの、請求項1記載の使用。
【請求項4】
高血清リポ蛋白質が、高血清ApoB−100蛋白質であるところの、請求項1記載の使用。
【請求項5】
肝臓脂肪症を緩和させるための医薬の調製における、本質的に完全にmiR−122a核酸と相補的なアンチセンス化合物の使用。
【請求項6】
肝臓脂肪症が、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎であるところの、請求項5記載の使用。
【請求項7】
糖尿病、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、非アルコール性脂肪肝疾病、非アルコール性脂肪性肝炎または代謝症候群から選択される疾病または障害を処置する医薬の調製における、本質的に完全にmiR−122a核酸と相補的なアンチセンス化合物の使用。
【請求項8】
アンチセンス化合物が、21〜23ヌクレオシド長であるところの、請求項1〜7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
アンチセンス化合物が、miR−122a標的核酸と完全に相補的であるところの、請求項8記載の使用。
【請求項10】
アンチセンス化合物が、複数の2’−糖修飾ヌクレオシドを含むところの、請求項8または9記載の使用。
【請求項11】
アンチセンス化合物が、少なくとも1個の二環式糖修飾ヌクレオシドをさらに含むところの、請求項8〜10のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
アンチセンス化合物が、配列番号:1記載の核酸塩基配列を含むところの、請求項8〜11のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
アンチセンス化合物が、配列番号:2記載の核酸塩基配列からなるところの、請求項8〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
アンチセンス化合物が、2’−MOE糖修飾ヌクレオシドを均一に含むところの、請求項8〜13のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
アンチセンス化合物が、少なくとも1つのホスホロチオエート・ヌクレオシド内結合を含むところの、請求項8〜14のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
アンチセンス化合物が、少なくとも1個の5‐メチルシトシンを含むところの、請求項8〜15のいずれか一項記載の使用。

【公表番号】特表2009−506124(P2009−506124A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529232(P2008−529232)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/033866
【国際公開番号】WO2007/027775
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(593073230)アイシス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Isis Pharmaceuticals, Inc.
【Fターム(参考)】