説明

MIR604系統トウモロコシ

MIR604という新規の形質転換トウモロコシ系統が開示される。本発明は、トウモロコシのゲノムに挿入された形質転換体コンストラクトの、また挿入部位に隣接するゲノム配列の、MIR604系統を生じさせる結果となったDNA配列に関する。本発明はさらに、MIR604のDNA配列の存在を検出するための検定方法に、MIR604の遺伝子型を含むトウモロコシの植物体及び種子に、またMIR604遺伝子型を含むトウモロコシ植物体を自己又は他品種トウモロコシと交配させることによってトウモロコシ植物体を生産する方法に、それぞれ関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に植物分子生物学、植物形質転換及び植物育種の分野に関する。本発明は特に、新規な形質転換体遺伝子型を含む昆虫抵抗性形質転換トウモロコシ植物体、及びサンプル及びその組成物中の該トウモロコシ植物体DNAの存在を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の有害生物は世界の主要な農作物に大きな被害を及ぼしている。哺乳動物以外の害虫等の有害生物による農作物の被害額は米国だけで毎年80億ドル程度にのぼる。トウモロコシの害虫で最大の被害を及ぼしているのはコーンルートワーム(corn rootworm)とされる。コーンルートワームにはウェスタンコーンルートワーム(western corn rootworm)(Diabrotica virgifera virgifera)、ノーザンコーンルートワーム(northern corn rootworm)(D. longicornis barberi)、サザンコーンルートワーム(southern corn rootworm)(D. undecimpunctata howardi)及びメキシカンコーンルートワーム(Mexican corn rootworm)(D. virgifera zeae)などの種がある。
【0003】
コーンルートワームの主な防除法は化学農薬の集中散布である。コーンルートワーム対策としてはそれで十分であっても、農薬の使用は有益な生物に悪影響を及ぼす場合もある。化学農薬の広範な使用に伴うもう1つの問題は耐性種害虫の出現である。これは種々の耐性管理基準により部分的に緩和されてきたが、代わって害虫防除対策の必要性は増す一方である。そうした代替策の1つとして殺虫タンパク質をコードする外来遺伝子を形質転換植物の中で発現させるという方法がある。このアプローチは特定の害虫を効率的に防除する手段となるに至ったし、また殺虫毒素を発現する形質転換植物はすでに商業化され、農家の農薬使用の低減を可能にしている。
【0004】
植物中での外来遺伝子の発現は外来遺伝子の染色体上の位置による影響を受けるが、それはおそらくクロマチン構造によるか、又は統合部位との転写調節エレメントの近接性による(例えば、Weising et al., 1988, “Foreign Genes in Plants(植物体内の外来遺伝子)” Ann. Rev. Genet. 22:421-477を参照)。そこで、何百もの異なる形質転換系統を生産し、それら系統から所期の導入遺伝子発現レベル及びパターンを示す単一系統を商業目的にスクリーニングするのが普通である。所期の導入遺伝子発現レベル及びパターンを示す系統は、通常の育種法を用いた有性異系交配により該導入遺伝子を他の遺伝的環境へと移入するうえで有用である。そうした交配種の子孫は元の形質転換体の導入遺伝子発現特性を維持する。このやり方は、現地の栽培条件によく適応した多数の品種で、信頼性の高い遺伝子発現を確実なものにするために使用される。
【0005】
特定の系統の存在を検出することができれば、ある有性交配種の子孫が注目の導入遺伝子を含むかどうかを判定するのに有利であろう。加えて、特定の系統を検出する方法は遺伝子組み換え作物に由来する食品の市販前承認や表示などに関する規制の遵守にも役立とう。導入遺伝子の存在は、ポリヌクレオチドプライマーを使用するサーマルサイクラー増幅(PCR)法又は核酸プローブを使用するDNAハイブリダイゼーション法などを非限定的に含む任意周知の核酸検出法により検出することができる。一般にこれらの検出法は、多様な植物品種の形質転換に使用された特定DNAコンストラクトの検出に使用する試薬及び方法を使い易くし統一するために、よく使用される遺伝子エレメント例えばプロモーター、ターミネーター、及びマーカー遺伝子に重点を置くのが普通である。というのは、多くのDNAコンストラクトではコード配列領域は置き換え可能だからである。そのため、そうした方法はコード配列だけが異なるようなコンストラクト同士の区別には役立たないかもしれない。そのうえ、そうした方法は異系統間の区別にも、特に同じDNAコンストラクトを使用して生産される系統間の区別には、挿入異種DNAに隣接する染色体DNA (隣接DNA)の配列が判明しない限り、役立たないかもしれない。
【0006】
本発明は、害虫(Diabrotica spp.)の防除に有効であるCry3A055殺虫毒素をコードするcry3A055遺伝子(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO 03/018810号(2003年3月6日公開)パンフレットで開示されている)をそのゲノムに組み込んだ昆虫抵抗性形質転換トウモロコシ系統を包含する。該形質転換トウモロコシ系統は、該植物体が炭素源としてマンノースを利用することを可能にする、選択マーカーとして有用である、ホスホマンノースイソメラーゼ酵素(PMI)をコードするpmi遺伝子(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,767,378号明細書で開示されている)をもそのゲノムに組み込んでいる。本発明はさらに、該形質転換トウモロコシ系統に特有であり、かつ生物サンプル中の該形質転換トウモロコシ系統の特定及び該形質転換トウモロコシ系統に由来する核酸の検出に有用である新規の単離核酸配列、ならびに生物サンプル中のこれらの核酸の検出に使用される必要試薬を含めたキットを包含する。
【発明の開示】
【0007】
概要
本発明はMIR604という形質転換トウモロコシ系統に関するが、該MIR604系統は該MIR604系統とその子孫に昆虫抵抗性とマンノースを炭素源としての利用する能力とをそれぞれ付与するcry3A055遺伝子とpmi遺伝子とを含む新規な形質転換体遺伝子型を含む。本発明はまた、本発明の遺伝子型を含む形質転換トウモロコシ植物体、本発明の遺伝子型を含む形質転換トウモロコシ植物体に由来する種子、及び本発明の遺伝子型を含むトウモロコシ自殖系統をそれ自身又は遺伝子型が異なる別のトウモロコシ系統と交配することにより本発明の遺伝子型を含む形質転換トウモロコシ植物体を生産する方法を提供する。本発明の形質転換トウモロコシ植物体は、対応する非形質転換トウモロコシ植物体の形態特性や生理特性をほぼすべて、本発明の新規な遺伝子型によって該トウモロコシ植物体に付与されるそうした特性とは別に、有してもよい。本発明はまた、MIR604系統に由来する核酸の存在を、トウモロコシのゲノムに挿入されてMIR604系統を生じさせる結果となった組み換え体発現カセットのDNA配列とカセット挿入部位に隣接するゲノム配列のDNA配列とに基づいて、検出するための組成物及び方法を提供する。MIR604系統については、Cry3A055、PMI両タンパク質の発現レベルの分析とコーンルートワームに対する効果の試験とにより、さらに特性解析することができる。
【0008】
ある観点に従い、本発明はMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の少なくとも10連続ヌクレオチドとMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の挿入部位に隣接するトウモロコシ植物体ゲノムの少なくとも10連続ヌクレオチドを含む単離核酸分子を提供する。この態様による単離核酸分子は、MIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の少なくとも20又は少なくとも50連続ヌクレオチドとMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の挿入部位に隣接するトウモロコシ植物体ゲノムの少なくとも20又は少なくとも50連続ヌクレオチドとを含んでよい。
【0009】
別の観点に従い、本発明は配列番号1、配列番号2及びこれらの相補配列からなる群より選択されるMIR604系統の少なくとも1つのジャンクション配列を含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。ジャンクション配列は、トウモロコシゲノムに挿入された発現カセットを含む異種DNAと挿入部位に隣接するトウモロコシゲノムに由来するDNAとの間のジャンクションにまたがり、またMIR604系統の特徴である。
【0010】
別の観点に従い、本発明は配列番号1、配列番号2及びこれらの相補配列からなる群より選択される約11〜約20連続ヌクレオチドの配列を含むMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに異種DNA分子を連結する単離核酸を提供する。
【0011】
別の観点に従い、本発明は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0012】
本発明の別の観点に従い、本発明の核酸分子を含むアンプリコンが提供される。
【0013】
本発明のさらに別の観点に従い、MIR604系統を検出するための隣接配列プライマーが提供される。そうした隣接配列プライマーは配列番号3 (ここでは仮に5'側隣接配列と呼ぶ)のヌクレオチド1〜801又はその相補配列に由来する少なくとも10〜15連続ヌクレオチドを含む単離核酸配列を含む。本態様の一実施形態では、該隣接配列プライマーは配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及びこれらの相補配列からなる群よりより選択される。
【0014】
本発明の別の観点では、隣接配列プライマーは配列番号4 (ここでは仮に3'側隣接配列と呼ぶ)のヌクレオチド507〜1570又はその相補配列に由来する少なくとも10〜15連続ヌクレオチドを含む単離核酸配列を含む。本態様の一実施形態では、該隣接配列プライマーは配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46及びこれらの相補配列からなる群よりより選択される。
【0015】
本発明の別の態様では、例えば核酸増幅などに有効であるプライマー対が提供される。そうしたプライマー対は前記ゲノム隣接配列(配列番号3又は配列番号4)のうちいずれか1つ又はその相補配列である鎖長10〜15連続ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列を含む第1プライマーとMIR604系統ゲノム中に挿入される異種DNAの鎖長10〜15連続ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列を含む第2プライマーとを含む。該第2プライマーは、配列番号3のヌクレオチド位置802〜1310及び配列番号4のヌクレオチド位置1〜506で示す該植物体ゲノム隣接DNA配列に隣接するインサート配列であるか又はその相補配列であるヌクレオチド配列を含むのが好ましい。
【0016】
本発明の別の観点に従い、生物サンプル中のMIR604系統に対応するDNAの存在を検出する方法が提供される。そうした方法は次の工程を含む: (a)DNAを含む該サンプルを、MIR604系統由来ゲノムDNAと共に核酸増幅反応に使用したときにMIR604系統の特徴であるアンプリコンを生成するようなプライマー対と、接触させる工程; (b)核酸増幅反応を行い、以って該アンプリコンを生成させる工程; 及び(c)該アンプリコンを検出する工程。本態様の一実施形態では、該アンプリコンは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0017】
別の観点に従い、本発明は生物サンプル中のMIR604系統に対応するDNAの存在を検出する方法を提供する。そうした方法は次の工程を含む: (a)DNAを含む該サンプルを、高ストリンジェンシー条件下でMIR604系統由来ゲノムDNAとハイブリダイズするが対照トウモロコシ植物体のDNAとは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズしないプローブと、接触させる工程; (b)該サンプル及びプローブを高ストリンジェンシー条件下に置く工程; 及び(c)該プローブと該DNAのハイブリダイゼーションを検出する工程。
【0018】
本発明の別の観点に従い、生物サンプル中のMIR604系統核酸を検出するためのキットが提供される。該キットは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又はそれらの相補配列である十分な鎖長のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのDNA配列を含むが、該DNA配列はMIR604系統由来の単離DNAとハイブリダイズするプライマー又はプローブとして有用であり、かつサンプル中の核酸配列の増幅又は該核酸配列とのハイブリダイゼーションとそれに続く該標的配列の増幅又は該標的配列とのハイブリダイゼーションの検出後は、MIR604系統由来の核酸配列が該サンプル中に存在することの特徴となる。概キットは更に核酸ハイブリダイゼーション又は増幅法を行うために必要なほかの材料を含む。
【0019】
別の観点において、本発明は生物サンプル中のMIR604系統を検出するための、次の工程を含む方法を提供する: (a) MIR604系統トウモロコシ組織サンプルからタンパク質を抽出する工程; (b) MIR604系統によって産生される殺虫タンパク質又は選択マーカータンパク質に対して特異的である抗体の使用を含む免疫学的方法により該抽出タンパク質を検定する工程; 及び(c)該抗体の該殺虫タンパク質又は選択マーカータンパク質への結合を検出する工程。
【0020】
別の観点において、本発明はMIR604系統トウモロコシの植物体、組織又は種子に由来する生物サンプルを提供するが、該サンプルは配列番号1と配列番号2からなる群より選択される配列又はその相補配列であるヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、また該配列は核酸増幅法又は核酸ハイブリダイゼーション法によりサンプルから検出可能であることを特徴とする。本態様の一実施形態では、該サンプルはトウモロコシ粉、挽き割りトウモロコシ、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トウモロコシでんぷん、及びトウモロコシ副産物を含めるように全粒又は部分加工したシリアルからなる群より選択される。
【0021】
別の観点において、本発明はMIR604系統トウモロコシの植物体、組織又は種子に由来する抽出物であって、配列番号1と配列番号2からなる群より選択される配列又はその相補配列であるヌクレオチド配列を含む抽出物を提供する。本態様の一実施形態では、該配列は核酸増幅法又は核酸ハイブリダイゼーション法により該抽出物から検出可能である。本態様の一実施形態では、該サンプルはトウモロコシ粉、挽き割りトウモロコシ、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トウモロコシでんぷん、及びトウモロコシ副産物を含めるように全粒又は部分加工したシリアルからなる群より選択される。
【0022】
本発明の別の観点に従い、本発明の核酸分子を含むトウモロコシ植物体及び種子が提供される。
【0023】
別の観点に従い、本発明は少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性であるトウモロコシ植物体を生産するための、次の工程を含む方法を提供する: (a)どちらかがMIR604系統DNAを含む第1親トウモロコシ植物体と第2親トウモロコシ植物体を有性交配して、複数の第1世代子孫植物体を生産する工程; (b) 少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性である第1世代子孫植物体を選定する工程; (c)第1世代子孫植物体を自家受粉させて、複数の第2世代子孫植物体を生産する工程; (d) 第2世代子孫植物体から少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性である植物体を選定する工程。ただし、第2世代子孫植物体は配列番号1と配列番号2からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0024】
さらに別の観点に従い、本発明はトウモロコシの種子を生産するための、第1親トウモロコシ植物体を第2親トウモロコシ植物体と交配する工程及びその結果としての第1世代トウモロコシの種子を収穫する工程とを含む方法であって、該第1又は第2親トウモロコシ植物体は本発明の自殖トウモロコシ植物体であることを特徴と方法を提供する。
【0025】
別の観点に従い、本発明は雑種トウモロコシの種子を生産するための、次の工程を含む方法を提供する: (a)本発明の第1自殖系統トウモロコシの種子及び異なる遺伝子型の第2自殖系統トウモロコシの種子をまく工程; (b)該播種に由来するトウモロコシ植物体を開花期まで栽培する工程; (c)一方の自殖系統のトウモロコシ植物体の花を除雄処理する工程; (d)他方の自殖系統を自然に受粉させる工程; 及び(e)それによって生産される種子を収穫する工程。
【0026】
本発明の種々の態様は、前記態様を含めて、以下の詳細な説明によりさらに明らかとなろう。
【0027】
以下、本発明をさらに明確にし、また本発明実施のための指針を当業者に示すべく、用語の意味と種々の方法について説明する。ここで使用する用語は特に断らない限り、当業者により慣用に従って理解されるものとする。一般的な分子生物学用語の意味はRieger et al., Glossary of Genetics: Classical and Molecular, 5th edition, Springer-Verlag: New York, 1994にも求められよう。
【0028】
本明細書に使用される用語「増幅(した、された)」は、少なくとも1の核酸分子を鋳型として使用して核酸分子又はその相補配列の複数コピーが作製されることを意味する。増幅法にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、リガーゼ連鎖反応(LCR)法、核酸配列に基づく増幅法(NASBA, Cangene, Mississauga, Ontario)、Q-Beta Replicase法、転写に基づく増幅法(TAS)、及び鎖置換型合成法(SDA)などがある。例えばDiagnostic Molecular Microbiology: Principles and Applications, D.H. Persing et al., Ed., American Society for Microbiology, Washington, D.C. (1993)を参照。増幅産物はアンプリコンという。
【0029】
「コード配列」は、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、センスRNA、アンチセンスRNAなどのRNAへと転写される核酸配列である。該RNAは次いで生体内でタンパク質を産生するために翻訳されるのが好ましい。
【0030】
本明細書に使用される「検出キット」は、MIR604植物体由来DNAのサンプル中の存在又は不存在の検出に使用するためのキットであって、高ストリンジェンシー条件下で標的DNA配列と特異的にハイブリダイズする本発明の核酸プローブ及びプライマー、それに核酸ハイブリダイゼーション又は増幅法を実現可能にするための他資材を含むキットをいう。
【0031】
形質転換「系統(event)」という用語はここでは、単一植物細胞の、異種DNA(例えば注目の遺伝子を入れた発現カセット)による形質転換及び再生によって生産される組み換え植物体をいう。用語「系統」は、該異種DNAを含む原初の形質転換体及び/又はその子孫をいう。用語「系統」はまた、該形質転換体と別のトウモロコシ系統の間での有性異系交配によって生産される子孫をいう。反復親との繰り返し戻し交配の後でも、挿入DNA及び親の形質転換体に由来する隣接DNAは交配種の子孫に、染色体位置を変えずに、受け継がれる。通常、植物体組織の形質転換は、植物細胞ゲノムに挿入されるDNAコンストラクトの位置の違いを反映して、複数の系統を生み出す。特定の系統が、導入遺伝子の発現又は他の望ましい特性に基づいて、選択される。従って「系統MIR604」、「MIR604」又は「MIR604系統」はここでは原初のMIR604形質転換体及び/又は該MIR604形質転換体の子孫を意味する。
【0032】
「発現カセット」はここでは、適正宿主細胞中で特定ヌクレオチド配列の発現を導くことができる核酸分子であって、終止シグナルに作動可能に連結された該関心ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸分子を意味する。発現カセットは該ヌクレオチド配列の適正な翻訳に必要とされる配列をも含むのが普通である。また、関心ヌクレオチド配列の直接発現には必要とされないが、該カセットを発現ベクターから取り出すのに好都合な制限部位との関係で存在するような配列を含んでもよい。関心ヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラ型でもよい。これはその構成要素のうちの少なくとも1つがそれ以外の構成要素のうちの少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットはまた、天然にも存在するが、異種発現に役立つような組み換え体として得られたものでもよい。しかし一般に、発現カセットは宿主に対して異種である。すなわち、発現カセットの特定核酸配列は宿主細胞中に天然には存在しないので、技術上周知の組み換え法により宿主細胞に、又は宿主細胞の先祖に、導入しておかなければならない。発現カセット中の該ヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーターの、又は宿主細胞が特定の外部刺激を受けるときに限って転写を開始させるような誘導的プロモーターの、調節を受けるようにしてもよい。植物などのような多細胞生物の場合には、該プロモーターは特定の組織、又は器官又は発生段階に対して特異的でもよい。発現カセット又はその断片は、植物体に導入された後は、「インサート配列」また「挿入配列」と呼ぶこともできる。
【0033】
「遺伝子」はゲノム内に位置する特定領域であって、前記のコード核酸配列とは別に他の(主として調節的な、コード領域の発現すなわち転写と翻訳の調節に与る)核酸配列をも含む特定領域である。遺伝子はまた、他の5'側及び3'側非翻訳領域及び終止配列を含んでもよい。存在してもよいさらなるエレメントは例えばイントロンである。
【0034】
「注目の遺伝子」は、植物に移入されたときに望ましい特性例えば抗生物質抵抗性、ウイルス抵抗性、昆虫抵抗性、病害抵抗性、又は他病虫害抵抗性、栄養価向上、工業的方法の性能向上、又は他の繁殖機能の変化などを該植物に付与する任意の遺伝子をいう。「注目の遺伝子」はまた、商業的に価値のある酵素又は代謝産物を植物に産生させるために該植物に移入される遺伝子でもよい。
【0035】
「遺伝子型」はここでは、親トウモロコシ植物体から子孫トウモロコシ植物体に受け継がれるが、そのすべてが発現するとは限らない遺伝物質である。MIR604遺伝子型は植物体ゲノムへと導入される異種遺伝物質及びインサート配列に隣接する遺伝物質をいう。
【0036】
「異種」核酸配列は、天然では導入先の宿主細胞とは関連がない核酸配列例えば天然に存在する核酸配列の非天然に存在する複数コピーなどである。
【0037】
「相同」核酸配列は、天然で導入先の宿主細胞と関連がある核酸配列をいう。
【0038】
「作動可能に連結した」は、単一核酸断片上の核酸配列間の、一配列の機能が他配列の機能に影響するような関連性をいう。例えばプロモーターは、コード配列又は機能的RNAの発現に影響を及ぼしうる(すなわちコード配列又は機能的RNAが該プロモーターの転写調節を受ける)とき、該コード配列又は機能的RNAと作動可能に連結している。センス鎖又はアンチセンス鎖のコード配列は調節配列と作動可能に連結することができる。
【0039】
「プライマー」はここでは、核酸ハイブリダイゼーション法により相補的な標的DNA鎖とアニールさせて、該プライマーと該標的DNA鎖の間にハイブリッドを形成し、次いでポリメラーゼ例えばDNAポリメラーゼにより標的DNA鎖に沿って伸長させる単離核酸をいう。核酸分子の(例えばPCR法又は他の通常の核酸増幅法による)増幅にはプライマー対又はセットを使用することができる。
【0040】
「プローブ」は、通常の検出可能な標識又はレポーター分子例えば放射性同位体、リガンド、化学発光物質、又は酵素などの結合相手となる単離核酸である。そうしたプローブは標的核酸鎖に対して、本発明の場合にはトウモロコシMIR604系統由来のゲノムDNA鎖に対して、相補的である。MIR604系統のゲノムDNAはトウモロコシ植物体、該系統由来DNAを含むサンプルのいずれに由来してもよい。本発明のプローブはデオキシリボ核酸又はリボ核酸だけでなく、標的DNA配列と特異的に結合するポリアミド又は他プローブ物質をも含み、また該標的DNA配列の存在を検出するために使用することができる。
【0041】
プライマーとプローブは一般に鎖長が10〜15ヌクレオチド以上の範囲である。プライマーとプローブはまた、鎖長が少なくとも20ヌクレオチド以上、少なくとも25ヌクレオチド以上、又は少なくとも30ヌクレオチド以上でもよい。そうしたプライマーとプローブは高ストリンジェンシー条件下で標的配列と特異的にハイブリダイズする。本発明のプライマーとプローブは標的配列に対して完全な配列相補性を有してもよい。ただし、標的配列とは異なるが標識配列とのハイブリダイゼーション能を維持しているプローブを常法で設計してもよい。
【0042】
「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、プローブが標的配列に対して、他配列に対するよりも検出可能に強くハイブリダイズするような条件を含む。ストリンジェントな条件は標的配列次第であり、またポリヌクレオチドの構造によっても異なろう。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄のストリンジェンシーを調節することにより、プローブに対して100%相補的である標的配列を特定することができる(相同プロービング)。あるいはストリンジェンシー条件を調節して、若干の配列ミスマッチングを許容し、より低い類似性の度合いでも検出されるようにすることもできる。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの幅広い手引きはTijssen (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part 1, Chapter 2 “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”, Elsevier: New York; Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Ausubel et al., Eds., Greene Publishing and Wiley-Interscience: New York (1995); 及びSambrook et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (5th Ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)などに求められる。
【0043】
特異性はハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、決定的な因子は最終洗浄液のイオン強度と温度である。一般に、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は規定イオン強度及びpHでの特異的配列の熱融解点(Tm)を約5℃下回るようにする。このTmは(規定イオン強度及びpHの下で)標的配列の50%が完全マッチ配列とハイブリダイズする温度である。一般に、高ストリンジェンシー条件下では、プローブはその標的配列とハイブリダイズするが、他配列とはハイブリダイズしない。
【0044】
サザン又はノーザン法でフィルター上に100を超える相補的残基を有する相補的核酸間のハイブリダイゼーションに関する高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例は「50%ホルムアミド+ヘパリン1mg、42℃での終夜のハイブリダイゼーション」である。超高ストリンジェンシー洗浄条件の例は「0.15M NaCl洗浄72℃、約15分間」である。高ストリンジェンシー洗浄条件の例は「0.2×SSC洗浄65℃、約15分間」である(SSCバッファーについては例えば後掲Sambrookを参照)。
【0045】
本発明に関する例示的なハイブリダイゼーション条件には7%SDS、0.25M NaPO4、pH 7.2、67℃での終夜のハイブリダイゼーションとそれに続く5%SDS、0.20M NaPO4、pH 7.2、65℃での2回各30分間の洗浄及び1%SDS、0.20M NaPO4、pH 7.2、65℃での2回各30分間の洗浄などがある。例示的な中ストリンジェンシー洗浄は例えば100ヌクレオチド超の2本鎖の場合で1×SSC洗浄45℃、15分間である。例示的な低ストリンジェンシー洗浄は例えば100ヌクレオチド超の2本鎖の場合で4〜6×SSC洗浄40℃、15分間である。
【0046】
約10〜50ヌクレオチドのプローブなら、高ストリンジェンシー条件は一般に、約1.0M未満のNaイオン濃度一般に約0.01〜1.0M Naイオン濃度の塩(又は他の塩)をpH 7.0〜8.3で使用し、又は温度は一般に少なくとも約30℃である。ホルムアミドなどの不安定化剤を添加すれば高ストリンジェンシー条件の実現も可能である。一般に、特定ハイブリダイゼーション試験で非関連プローブの場合に観測されるSN比の2倍(以上)の値は特異的ハイブリダイゼーションの検出を意味する。高ストリンジェンシー条件下で互いにハイブリダイズしない核酸でも、それらがコードするタンパク質が実質的に同じなら、やはり実質的には同じである。これは、例えば核酸のコピーが遺伝暗号によって許容される最大コドン縮重を使用して作製されるときに起こる。
【0047】
以下は、本発明の参照ヌクレオチド配列と実質的に同じであるヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに使用してもよい例示的なハイブリダイゼーション/洗浄条件のセットである。好ましくはハイブリダイゼーション: 7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA、50℃; 洗浄: 2×SSC、0.1%SDS、50℃であり、より望ましくはハイブリダイゼーション: 7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA、50℃; 洗浄: 1×SSC、0.1%SDS、50℃であり、さらに望ましくは7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA、50℃; 洗浄: 0.5×SSC、0.1%SDS、50℃であり、好ましくは7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA、50℃; 洗浄: 0.1×SSC、0.1%SDS、50℃であり、より好ましくは7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA、50℃; 洗浄: 0.1×SSC、0.1%SDS、65℃である。本発明の配列は以上いずれの条件を使用して検出してもよい。本発明を明確にするという説明目的では、高ストリンジェンシー条件を使用する。
【0048】
「形質転換」は異種核酸を宿主細胞又は生物に導入することをいう。特に、形質転換はDNA分子の、関心生物ゲノムへの安定的な組み込みを意味する。
【0049】
「形質転換(した)/トランスジェニック/組み換え(た)」は異種核酸分子が導入された細菌又は植物などのような宿主生物についていう。該核酸分子は該宿主に安定的に組み込まれてもよいし、染色体外分子として存在してもよい。そうした染色体外分子は自己複製する分子でもよい。形質転換した細胞、組織又は植物体は形質転換の最終生産物だけでなく、その形質転換子孫をも包摂するものとする。「非形質転換/非トランスジェニック/非組み換え」宿主は、該異種核酸分子を含んでいない野生型の生物例えば細菌又は植物をいう。「トランスジェニック」はここでは、周知の遺伝子操作又は遺伝子挿入手法により、注目の遺伝子に相当する核酸配列を植物ゲノムに、また一般に細胞核、ミトコンドリア又は他の含染色体オルガネラの染色体に、天然植物体又は植物細胞中に通常存在するものと比べて、異なる遺伝子座に、又はより多数のコピーで、組み込んである植物体、植物細胞、又は多数の構造化又は非構造化植物細胞をいう。トランスジェニック植物は、天然に起こる突然変異にではなく、そうした核酸配列の操作及び挿入に由来し、天然には存在しない植物又は天然には存在しない遺伝子型をもつ植物を生産する。植物体又は植物細胞の形質転換手法は技術上周知であり、例えばエレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、アグロバクテリウム法、遺伝子銃法などがある。
【0050】
DNA塩基及びアミノ酸の命名法は、本明細書では37 C.F.R. §1.822に定めるものを使用する。
【0051】
発明の詳細な説明
本発明は、昆虫防除タンパク質Cry3A055と植物体による炭素源としてのマンノースの利用を可能にするホスホマンノースイソメラーゼ酵素(PMI)とを産生する遺伝子改良系統のトウモロコシに関する。本発明は特に、新規な遺伝型を含む形質転換トウモロコシ系統MIR604に、また生物サンプル中の該系統由来核酸を検出するための組成物及び方法に、関する。本発明はさらに、MIR604遺伝子型を含むトウモロコシ植物体、該トウモロコシ植物体に由来する形質転換種子、及びMIR604遺伝子型を含むトウモロコシ自殖系統をそれ自身又は遺伝子型が異なる別のトウモロコシ系統と交配することによりMIR604遺伝子型を含むトウモロコシ植物体を生産する方法を提供する。本発明のMIR604遺伝子型を含むトウモロコシ植物体はDiabrotica virgifera virgifera (western corn rootworm)やD. virgifera zeae (Mexican corn rootworm)、D. longicornis barberi (northern corn rootworm)などのコーンルートワームを含む鞘翅目(coleopteran)害虫の防除に有用である。本発明のMIR604遺伝子型を含むトウモロコシ植物体はまた、マンノースを炭素源として利用することができる。
【0052】
一実施形態では、本発明はトウモロコシ系統MIR604のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の少なくとも10以上(例えば15、20、25又は50)の連続ヌクレオチドとトウモロコシ系統MIR604のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の挿入部位に隣接するトウモロコシ植物体ゲノムDNAの少なくとも10以上(例えば15、20、25又は50)の連続ヌクレオチドとを含む単離核酸分子を包摂する。また、MIR604系統由来の連続インサート配列の10以上のヌクレオチドと該インサート配列に隣接するMIR604系統由来の隣接DNAの少なくとも1つのヌクレオチドとを含むヌクレオチド配列も包摂する。そうしたヌクレオチド配列はMIR604系統の特徴である。MIR604系統由来のゲノムDNAの核酸増幅では、そうした特徴ヌクレオチド配列を含むアンプリコンが生産される。
【0053】
別の実施形態では、本発明は配列番号1、配列番号2及びこれらの相補配列からなる群より選択されるMIR604系統の少なくとも1つのジャンクション配列を含むヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ジャンクション配列は、トウモロコシゲノムに挿入された発現カセットを含む異種DNAと挿入部位に隣接するトウモロコシゲノムに由来するDNAとの間のジャンクションにまたがり、またMIR604系統の特徴であることを特徴とする単離核酸分子を包摂する。
【0054】
別の実施形態では、本発明は配列番号1、配列番号2及びこれらの相補配列からなる群より選択される約11〜約20連続ヌクレオチドの配列を含むMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに異種DNA分子を連結する単離核酸を提供する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を包摂する。
【0056】
本発明の一実施形態では、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むアンプリコンが提供される。
【0057】
別の実施形態では、本発明はMIR604系統を検出するための隣接配列プライマーを包摂する。そうした隣接配列プライマーは配列番号3 (ここでは仮に5'側隣接配列と呼ぶ)のヌクレオチド1〜801又はその相補配列に由来する少なくとも10〜15連続ヌクレオチドを含む単離核酸配列を含む。本実施形態の一観点に従い、該隣接配列プライマーは配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及びこれらの相補配列からなる群より選択される。
【0058】
別の実施形態では、本発明は配列番号4 (ここでは仮に3'側隣接配列と呼ぶ)のヌクレオチド507〜1570又はその相補配列に由来する少なくとも10〜15連続ヌクレオチドを含む隣接配列プライマーを包摂する。本実施形態の一観点に従い、該隣接配列プライマーは配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46及びこれらの相補配列からなる群よりより選択される。
【0059】
さらに別の実施形態では、本発明はサンプル中のトウモロコシMIR604系統DNA鋳型の存在下に一緒に働いてトウモロコシMIR604系統の特徴であるアンプリコンを産生する第1ポリヌクレオチドプライマーと第2ポリヌクレオチドプライマーとを含むポリヌクレオチドプライマー対であって、該第1プライマー配列はトウモロコシMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の挿入部位に隣接するトウモロコシ植物体ゲノム又はその相補配列であり、また該第2プライマー配列はトウモロコシMIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列又はその相補配列であることを特徴とするポリヌクレオチドプライマー対を包摂する。
【0060】
本実施形態の一観点に従い、第1ポリヌクレオチドプライマーは配列番号3の位置1〜801又はその相補配列に由来する少なくとも10連続ヌクレオチドを含む。本実施形態のさらなる観点に従い、第1ポリヌクレオチドプライマーは配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15又はそれらの相補配列に示されるヌクレオチド配列を含む。本実施形態の別の観点に従い、第1ポリヌクレオチドプライマーは配列番号4の位置507〜1570又はその相補配列に由来する少なく(とも)10連続ヌクレオチド(を含む)。本実施形態の別の観点に従い、第1ポリヌクレオチドプライマーは配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46又はそれらの相補配列に示されるヌクレオチド配列を含む。本実施形態のさらに別の観点に従い、第2ポリヌクレオチドプライマーは配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63又はそれらの相補配列に示される少なくとも10連続ヌクレオチドを含む。本実施形態のさらになお別の観点に従い、第2ポリヌクレオチドプライマーは配列番号16〜38又はその相補配列に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本実施形態の別の観点に従い、配列番号15に示される第1ポリヌクレオチドプライマー及び配列番号28に示される第2ポリヌクレオチドプライマーは、実施例4に記載のように、サンプル中のトウモロコシMIR604系統DNA鋳型の存在下に一緒に働いて、トウモロコシMIR604系統の特徴であるアンプリコンを産生する。本実施形態の別の観点に従い、配列番号45に示される第1ポリヌクレオチドプライマー及び配列番号27に示される第2ポリヌクレオチドプライマーは、実施例4に記載のように、サンプル中のトウモロコシMIR604系統DNA鋳型の存在下に一緒に働いて、トウモロコシMIR604系統の特徴であるアンプリコンを産生する。
【0062】
もちろん、挿入異種DNA配列のいずれかの末端に隣接するゲノム配列のさらに中へと追加配列を、MIR604系統の特徴である配列の増幅のためにそうしたプライマー対に使用しうるプライマー配列用として、求めることは技術上十分に可能である。本明細書では、「挿入異種DNA配列のいずれかの末端に隣接するゲノム配列のさらに中へと」は特に、挿入異種DNA配列の両末端すなわち該挿入DNA配列が天然ゲノムDNA配列に隣接する部位から、該異種DNA配列の挿入先となる特定染色体のゲノムDNAの中への、連続的な移動をいう。インサート配列と部分的に対応する又は部分的に相補的であるプライマー配列は好ましくは、新生鎖DNA又はRNAの、最寄りの隣接配列ジャンクション方向への転写伸長をプライミングする。従って、ゲノム隣接配列と部分的に対応する又は部分的に相補的であるプライマー配列は新生鎖DNA又はRNAの、最寄りの隣接配列ジャンクション方向への転写伸長をプライミングするはずである。プライマー配列は該植物体の染色体に挿入される異種DNA配列でもゲノム隣接配列でも(又はそれらの相補配列でも)よい。プライマー配列を挿入異種DNA配列内の記載の配列、配列番号3又は配列番号4に示される配列のいずれ(又はそれらの相補配列)とするのが有利かは、ゲノムDNA配列と挿入異種DNA配列の間のジャンクションを含む特定隣接配列増幅用のネスト化プライマーセットの使用によって得られる所期産生物の性格次第であり、当業者には容易に見分けられよう。
【0063】
別の実施形態では、本発明は生物サンプル中のMIR604系統に対応するDNAの存在を検出するための、次の工程を含む方法を包摂する: (a)DNAを含む該サンプルを、MIR604系統由来ゲノムDNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするが対照トウモロコシ植物体のDNAとは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズしないプローブと、接触させる工程; (b)該サンプル及びプローブを高ストリンジェンシー条件下に置く工程; 及び(c)該プローブと該DNAのハイブリダイゼーションを検出する工程。本実施形態の一観点に従い、該アンプリコンは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0064】
別の実施形態では、本発明は生物サンプル中のMIR604系統に対応するDNAの存在を検出するための、次の工程を含む方法を包摂する: (a)DNAを含む該サンプルを、高ストリンジェンシー条件下でMIR604系統由来ゲノムDNAとハイブリダイズするが対照トウモロコシ植物体のDNAとは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズしないプローブと、接触させる工程; (b)該サンプル及びプローブを高ストリンジェンシー条件下に置く工程; 及び(c)該プローブと該DNAのハイブリダイゼーションを検出する工程。検出には、蛍光法、化学発光法、放射線法、免疫法などを非限定的に含む技術上周知の任意の手段を用いてよい。トウモロコシMIR604系統の特徴であるアンプリコンの生成を目的とした特定配列の増幅の手段としてハイブリダイゼーション法の使用を意図する場合には、技術上周知の任意の手段による該アンプリコンの生成及び検出の目的は、使用プローブ又はプライマーの数に応じた単数又は複数の標的配列との所期のハイブリダイゼーションを指し示すことにある。用語「生物サンプル」は、挿入異種DNA配列の両末端のうちの一方又は他方が該異種DNA配列の挿入先の染色体内のゲノムDNA配列と接触するいずれかの側の部位(本明細書ではジャンクション配列ともいう)の5〜10連続ヌクレオチドを包含する核酸を含むか又は含むと疑われるサンプルを包含する。加えて、該ジャンクション配列は最低2つのヌクレオチドを含む。すなわち挿入異種DNA配列内の第1ヌクレオチドと、それに隣接し共有結合している隣接ゲノムDNA内の第1ヌクレオチドである。
【0065】
別の実施形態では、本発明は生物サンプル中のMIR604系統核酸の存在を検出するためのキットを包摂する。該キットは、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるヌクレオチド配列の相同又は相補配列である十分な鎖長の連続ヌクレオチドからなる少なくとも1つの核酸分子と該核酸分子のハイブリダイゼーション又は増幅を可能にするために必要な他の資材とを含むが、該核酸分子はMIR604系統特異的なDNAプライマー又はプローブとして機能する。検出にはTAQMAN(Perkin Elmer)法、熱増幅法、リガーゼ連鎖反応法、サザン法、ELISA法、比色法、蛍光法など種々の方法を使用することができる。本発明は特に、MIR604系統由来のゲノム核酸を含むサンプル中の標的配列の、すなわちMIR604系統トウモロコシ植物体のゲノムDNAとインサートDNAとの少なくとも一方のジャンクションの、存在を検出するためのキットを提供する。該キットは、標的部位に又は標的部位の実質的に近傍に結合しうる少なくとも1つのポリヌクレオチドと該標的部位への該ポリヌクレオチドの結合を検出するための少なくとも1つの手段からなる。該検出手段は蛍光法、化学発光法、比色法、同位体法のいずれによるものでもよいし、また少なくとも免疫法と組み合わせたものでよい。サンプル中の標的部位の、すなわちMIR604系統トウモロコシ植物体のゲノムDNAとインサートDNAとの少なくとも一方のジャンクションの、存在を検出することができるキットもまた見込まれるが、検出には2つ以上のポリヌクレオチド配列であって、標的配列に隣接する、また標的配列から約100塩基対の範囲内の、又は約200塩基対の範囲内の、又は約500塩基対の範囲内の、又は約1000塩基対の範囲内の、ヌクレオチド配列へと一緒に結合することができ、また互いの方向へ伸長させて、少なくとも該標的部位を含むアンプリコンを形成させることができる2つ以上のポリヌクレオチド配列を利用する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は生物サンプル中のMIR604系統タンパク質を検出するための、次の工程を含む方法を包摂する: (a) MIR604系統トウモロコシ組織サンプルからタンパク質を抽出する工程; (b) MIR604系統によって産生される殺虫タンパク質又は選択マーカータンパク質に対して特異的である抗体の使用を含む免疫学的方法により該抽出タンパク質を検定する工程; 及び(c)該抗体の該殺虫タンパク質又は選択マーカータンパク質への結合を検出する工程。
【0067】
本発明の別の実施形態は、MIR604形質転換系統の遺伝子型を含むトウモロコシ植物体又はその部分を包摂するが、該遺伝子型は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、又はそれらの相補配列に示されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。本実施形態の一観点に従い、トウモロコシ植物体は自殖トウモロコシ系統CG5NA58、CG5NA58A、CG3ND97、CG5NA01、CG5NF22、CG4NU15、CG00685、CG00526、CG00716、NP904、NP948、NP934、NP982、NP991、NP993、NP2010、NP2013、NP2015、NP2017、NP2029、NP2031、NP2034、NP2045、NP2052、NP2138、NP2151、NP2166、NP2161、NP2171、NP2174、NP2208、NP2213、NP2222、NP2275、NP2276、NP2316、BCTT609、AF031、H8431、894、BUTT201、R327H、2044BT及び2070BTに由来する。しかし、当業者には自明であろうが、MIR604遺伝子型はトウモロコシとの交配が可能な任意の植物種例えば野生種トウモロコシへと移入することができるので、本実施形態の好ましい自殖系統は限定的ではないものとする。
【0068】
別の実施形態では、本発明は一緒に結合されて連続ヌクレオチド配列を形成する第1 DNA配列及び第2 DNA配列を少なくとも含むトウモロコシ植物体を包摂するが、該第1 DNA配列はジャンクション配列内にあって、配列番号3のヌクレオチド792〜811、配列番号4のヌクレオチド497〜516、配列番号5、配列番号6、及びこれらの相補配列からなる群より選択され、該第2 DNA配列は配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63又はそれらの相補配列に示されるヌクレオチド配列からなる群より選択される異種挿入DNA配列内にあり、また該第1 DNA配列及び第2 DNA配列は生物サンプル中のトウモロコシ系統MIR604核酸配列の存在を検出するためのヌクレオチドプライマー又はプローブとして有用であることを特徴とする。本実施形態の一観点に従い、ヌクレオチドプライマーは該トウモロコシ植物体から抽出される鋳型DNAを増幅するためのDNA増幅法に使用され、また該トウモロコシ植物体は、配列番号1又は配列番号2を含むDNA配列に対応するアンプリコンの生成により、他トウモロコシ植物体から識別可能である。
【0069】
本発明のトウモロコシ植物体は、該植物体のゲノムDNAの制限エンドヌクレアーゼKpnIによる消化により、高ストリンジェンシー条件下にcry3A055特異的プローブを使用すると単一cry3A055ハイブリダイゼーションバンドが得られる結果となることをさらなる特徴とする。本明細書で例示するのは、配列番号56又は配列番号59に示されるヌクレオチド配列を含むcry3A055プローブである。
【0070】
本発明のトウモロコシ植物体は、該植物体のゲノムDNAの制限エンドヌクレアーゼKpnIによる消化により、高ストリンジェンシー条件下にpmi特異的プローブを使用すると単一pmiハイブリダイゼーションバンドが得られる結果となることをさらなる特徴とする。本明細書で例示するのは、配列番号62に示されるヌクレオチド配列を含むpmiプローブである。
【0071】
一実施形態では、本発明はMIR604遺伝子型により昆虫抵抗性又はマンノース利用能が付与されることを特徴とするトウモロコシ植物体を提供する。本実施形態の一観点に従い、トウモロコシ植物体に昆虫抵抗性を付与する該遺伝子型はcry3A055遺伝子を含む。本実施形態の別の観点に従い、トウモロコシ植物体にマンノース利用能を付与する該遺伝子型はpmi遺伝子を含む。
【0072】
一実施形態では、本発明はMIR604系統トウモロコシの植物体、組織又は種子に由来する生物サンプルであって、配列番号1と配列番号2からなる群より選択される配列又はその相補配列であるヌクレオチド配列を含むサンプルを提供するが、該サンプル中の該配列は核酸増幅法又は核酸ハイブリダイゼーション法により該検出可能である。本実施形態の一観点に従い、該サンプルはトウモロコシ粉、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トウモロコシでんぷん、及びトウモロコシ副産物を含めるように全粒又は部分加工したシリアルからなる群より選択される。
【0073】
別の実施形態では、本発明はMIR604系統トウモロコシの植物体、組織又は種子に由来する抽出物であって、配列番号1と配列番号2からなる群より選択される配列又はその相補配列であるヌクレオチド配列を含む抽出物を提供する。本実施形態の一観点に従い、該抽出物中の該配列は核酸増幅法又は核酸ハイブリダイゼーション法により検出可能である。本実施形態の別の観点に従い、該サンプルはトウモロコシ粉、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トウモロコシでんぷん、及びトウモロコシ副産物を含めるように全粒又は部分加工したシリアルからなる群より選択される。
【0074】
さらに別の実施形態では、本発明は少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性であるトウモロコシ植物体を生産するための、次の工程を含む方法を提供する: (a)どちらかがMIR604系統DNAを含む第1親トウモロコシ植物体と第2親トウモロコシ植物体を有性交配して、複数の第1世代子孫植物体を生産する工程; (b) 少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性である第1世代子孫植物体を選定する工程; (c)第1世代子孫植物体を自家受粉させて、複数の第2世代子孫植物体を生産する工程; 及び(d) 第2世代子孫植物体から少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性である植物体を選定する工程。ただし、第2世代子孫植物体は配列番号1と配列番号2からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0075】
さらに別の実施形態では、本発明は雑種トウモロコシの種子を生産するための、次の工程を含む方法を提供する: (a) 配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む第1自殖系統トウモロコシの種子及び異なる遺伝子型の第2自殖系統の種子をまく工程; (b)該播種に由来するトウモロコシ植物体を開花期まで栽培する工程; (c)一方の自殖系統のトウモロコシ植物体の花を除雄処理する工程; (d) 2つの異なる自殖系統を有性交配する工程; 及び(e)それによって生産される雑種の種子を収穫する工程。本実施形態の一観点に従い、第1自殖系統トウモロコシは雌性親となる。本実施形態の別の観点に従い、第1自殖系統トウモロコシは雄性親となる。本発明はまた、体化された方法によって生産される雑種の種子、及び該種子から生育させた雑種の植物体を包摂する。
【0076】
当業者には自明であろうが、本発明の形質転換遺伝子型は異なる形質転換遺伝子型を含む他トウモロコシ系統へと育種により移入することができる。例えば、本発明の形質転換遺伝子型を含むトウモロコシ自殖系統は技術上周知の鱗翅目昆虫(lepidopteran)抵抗性Bt11系統の形質転換遺伝子型を含むトウモロコシ自殖系統と交配すれば、本発明の形質転換遺伝子型とBt11形質転換遺伝子型の両方を含むトウモロコシ種子を生産することができる。本発明の形質転換遺伝子型との交配が可能な他の形質転換系統の例はグリホサート耐性系統GA21及びNK603、グリホサート耐性/鱗翅目昆虫抵抗性MON802系統、鱗翅目昆虫抵抗性DBT418系統、鱗翅目昆虫抵抗性系統DAS-06275-8、雄性不稔系統MS3、ホスフィノトリシン耐性系統B16、鱗翅目昆虫抵抗性系統MON80100、ホスフィノトリシン耐性系統T14及びT25、鱗翅目昆虫抵抗性系統176、鱗翅目昆虫抵抗性系統MON863などであり、いずれも技術上周知である。本発明の形質転換遺伝子型とは他の組み合わせも可能であり、従ってこれらの例は限定的とはみなされないものとする。
【0077】
やはり当業者には自明であろうが、本発明の形質転換遺伝子型を含む形質転換トウモロコシ種子は殺虫剤などの多様な種子処理農薬で処理して、Cry3A055タンパク質の殺虫活性の増強又は相乗化を図ることができる。例えば本発明の形質転換トウモロコシ種子は市販殺虫剤Cruiser(登録商標)で処理することができる。そうした組み合わせは発現タンパク質及び農薬の活性スペクトルを拡大し、効果を強めるために使用してもよい。
【0078】
育種
本発明の形質転換遺伝子型は技術上周知の育種手法を用いて任意のトウモロコシ自殖又は雑種系統に移入することができる。植物育種の目標は種々の望ましい遺伝形質を兼ね備えた単一種又は雑種をつくることにある。畑作物では、そうした形質の例は病害虫抵抗性、殺虫剤耐性、耐暑・耐乾性、作物の成熟所要期間の短縮、高収量、高実用品質などである。多数の作物が機械収穫となっているため、発芽と苗立ち(stand establishment)、成長率、成熟度、草丈及び着雌穂高などのような植物特性の一様性が重要である。
【0079】
畑作物の育種は該植物の受粉方法を利用する手法で行われる。植物の自家受粉では、ある花の花粉は同じ植物の同じ花又は別の花に移送される。植物の他家受粉では、花粉は異なる植物の花に由来する。
【0080】
何世代にもわたり自家受粉とタイプ選抜を経てきた植物は、ほぼすべての遺伝子座で同型接合となり、また均一集団の育種系統子孫を生み出す。2つの異なる同型接合系統間の交配は多数の遺伝子座で異型接合である均一集団の雑種植物を生み出す。各々が多数の遺伝子座で異型接合である2植物体の交配は、遺伝的に異なる、従って均一ではない雑種植物集団を生み出す。
【0081】
トウモロコシの育種は自家受粉法、他家受粉法のいずれでも行える。トウモロコシは同じ植物体の雄穂と雌穂にそれぞれ雄花と雌花を別個につける。トウモロコシでは花粉が雄穂から雌穂頂より伸びた絹糸へと風で運ばれ、自然受粉が起こる。
【0082】
雄性稔性を調節する信頼性の高い方法は植物育種の改善に資する。これは特に、ある種の雄性不稔系に依存するトウモロコシ雑種の開発について言える。育種家には雄性稔性調節のための方法としていくつかの選択肢が、例えば手作業又は機械による除雄(又は雄穂除去)、細胞質雄性不稔、遺伝子雄性不稔、除雄剤などが、与えられる。
【0083】
雑種トウモロコシの採種は一般に、雄性不稔系により、手作業又は機械による雄穂除去を取り入れて行う。畑に2種類の自殖系統トウモロコシを別々の畝に交互に植え、一方の自殖系統(雌株)から、花粉を生じる雄穂を除去する。異種トウモロコシ花粉源からの隔離が十分であれば、この雄穂除去した自殖系統の雌穂は他方の自殖系統(雄株)だけから受粉することになり、得られる種子は雑種となり、雑種植物体を形成することになろう。
【0084】
雄穂除去作業は、骨が折れるうえに信頼性が低い場合もあるが、遺伝子雄性不稔を付与する技術上周知の様々な方法を使用すれば、避けることができる。そうした方法はそれぞれ一長一短があるが、使用するアプローチも多様である。例えば、雄性組織特異的プロモーターに関連する細胞毒性物質をコードする遺伝子の植物体への導入、又は稔性に不可欠の遺伝子が特定され、その遺伝子に対するアンチセンス鎖が植物体に挿入されているアンチセンス系などである(Fabinjanski et al. EPO 89/3010153.8公開番号第329,308号明細書、及び国際公開第WO 90/08828号として公開されているPCT出願第PCT/CA90/00037号明細書を参照)。
【0085】
トウモロコシ自殖系統の開発
雄性自殖系統の使用はトウモロコシ雑種生産の一因子にすぎない。技術上周知の、またトウモロコシ育種プログラムでも使用されている、植物育種技法の非限定的な例は循環選抜、戻し交配、系統育種、制限断片長多型利用の選抜、遺伝子マーカー利用の選抜及び形質転換などである。トウモロコシ育種プログラムでの雑種開発では一般に、同型接合自殖系統の開発、該系統の交配、及び交配種の評価が必要となる。系統育種法及び循環選抜育種法は育種集団からの自殖系統の開発に使用される。トウモロコシ育種プログラムでは、複数の自殖系統又は他の多様な生殖質に由来する遺伝的背景を育種プールへと集中し、そこから自殖と所期遺伝子型の選抜により新しい自殖系統を開発する。新自殖系統を他自殖系統と交配し、得られる雑種について評価し市販可能性を有するものを特定する。トウモロコシ育種プログラムで行われるような植物育種と雑種開発は資金も時間もかかる。
【0086】
系統育種は、各々他にはないか又は互いに他を補い合うような単数又は複数の望ましい特性を有する2遺伝子型の交配から始まる。親の2元種が望ましい特性のすべてを与えてはくれない場合には、他の元種を育種集団に追加することができる。系統育種法では、優れた株を代々自殖し、選別する。その間に自家受粉と選別の結果として異型接合状態が同型接合系統に取って代わられる。一般に系統育種法では、F1→F2; F2→F3; F3→F4; F4→F5;・・・というように5代以上にわたり自殖と選抜を行う。
【0087】
循環選抜育種、例えば戻し交配法は自殖系統及びそうした自殖系統に由来する雑種の改良に使用することができる。戻し交配法を使用すれば、ある自殖系統又は元種から特定の望ましい形質を、そうした形質を欠く自殖系統に移入することができる。これは例えばまず、優れた自殖系統(繰り返し親)を、問題の形質に対応する適正遺伝子をもつ供与自殖系統(非繰り返し親)と交配することによって実現することができる。次に、この交配の子孫を優れた繰り返し親と戻し交配して、非繰り返し親から移入された望ましい形質をもつ子孫を選抜する。望ましい形質をもつ子孫の選抜を伴う戻し交配世代を5代以上経た後は、子孫は移入形質を調節する遺伝子座が同型接合となっていようが、実質的にすべての他遺伝子については繰り返し親と同様であろう。次に最終戻し交配世代の自殖により、移入遺伝子に関して純粋交配の子孫が得られる。移入形質をもつ自殖系統から開発された雑種は本質的に、移入形質をもたない同じ自殖系統から開発された雑種と同じである。
【0088】
エリート自殖系統すなわち純粋交配の同型接合自殖系統もまた、そこから他の自殖系統を開発するための育種又は元種集団向けの出発素材として使用することができる。エリート自殖系統から派生するこれらの自殖系統は前述の系統育種法及び循環選抜育種法を使用して開発することができる。例えばトウモロコシ育種プログラムで戻し交配育種法を使用してこれらの派生系統を創出するときは、エリート自殖系統を親系統又は出発素材又は元種集団として使用し、また供与親又は繰り返し親に仕立てることができる。
【0089】
トウモロコシ雑種の開発
互いに他を補い合う遺伝子型を有する2自殖系統の交配から単交配雑種トウモロコシが得られる。この一代雑種はF1という。トウモロコシ育種プログラムでの商業用雑種の開発ではF1植物体だけを追求する。好ましいF1雑種は自殖系統の両親よりも強勢である。この雑種強勢又はヘテローシスは栄養成長や収量の増進などを含む多数の多遺伝子性形質として現れうる。
【0090】
トウモロコシ育種プログラムでの雑種の開発は次の3工程を含む: (1)種々の生殖質プールから初育種交配用の植物体を選択する; (2)育種交配に由来する被選抜植物体の数世代にわたる自殖により、互いに異なるが繁殖能力があり一様性も高い一連の自殖系統を生産する; 及び(3)被選抜自殖系統を異なる自殖系統と交配して一代雑種(F1)を生産する。トウモロコシは自殖を重ねると系統の強勢が弱まる。2つの異なる自殖系統を交配して一代雑種(F1)を生み出すと強勢が回復する。自殖系統の同型接合性と異型接合性の重要な帰結は、確定した自殖系統ペアの間の雑種はいつでも同じだということである。優れた雑種を与える自殖系統がひとたび特定されたら、その雑種の種子は、親の自殖系統の同質性が維持される限り、いつまでも再生産可能である。F1雑種が示す雑種強勢は次代(F2)でかなり失われる。従って、雑種からの種子は種苗には使用しない。
【0091】
雑種採種では雌性親がつくる花粉を除去又は不活化する必要がある。花粉の除去又は不活化が不完全だと自家受粉の可能性が残る。この自家受粉種子は不本意にも雑種種子と一緒に収穫され、包装されるおそれがある。
【0092】
いったん種を播いてしまえば、自家受粉株の特定と選抜が可能になる。そうした自家受粉株は、雑種の生産に使用した雌性自殖系統と遺伝的に等価であろう。
【0093】
当業者には自明であろうが、以上は本発明の形質転換遺伝子型を他トウモロコシ系統に移入することにより本発明の自殖系統を生産する多様な方法の一端にすぎない。可能な方法は他にもあり、以上はほんの一例にすぎない。
【実施例】
【0094】
以下、詳細な実施例を以って本発明をさらに説明する。以下の実施例はもっぱら説明が目的であり、特に断らない限り限定を意図するものではない。ここで使用する標準的な組み換えDNA及び分子クローニング技法は技術上周知であり、またAusubel(ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (1994); J. Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d Ed., Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001); 及びT.J. Silhavy, M.L. Berman, and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)などでも開示されている。
【0095】
実施例1 形質転換とMIR604系統の選抜
アグロバクテリウムを用いたトウモロコシ(Zea mays)自殖系統A188の形質転換によりMIR604系統を生産した。I型の不定胚形成カルスを、参照によりここに開示されるNegrotto et al. (Plant Cell Reports 19: 798-803, 2000)に記載の要領に従い、プラスミドpZM26(図1)のDNA断片を使用して、形質転換した。pZM26はタンデム発現カセットを備えた核酸配列を含む。第1発現カセットはMTLプロモーター配列(米国特許第6,018,099号明細書)をcry3A055コード配列に作動可能に連結してなるが、該コード配列はさらにノパリン合成酵素(NOS)3'末端転写終結及びポリアデニル化配列に作動可能に連結してある。第2発現カセットはトウモロコシ・ユビキチンプロモーター(ZmUbiInt)(Christensen et al. 1992 PMB 18: 673)をpmiコード配列に作動可能に連結してなるが、該コード配列はさらにノパリン合成酵素(NOS)3'末端転写終結及びポリアデニル化配列に作動可能に連結してある。
【0096】
出穂後8〜12日の雌穂から未熟胚を摘出し、新鮮培地で洗い、形質転換に備えた。胚を、形質転換ベクターpZM26を導入したアグロバクテリウム細胞の懸濁液と混合し、30秒間ボルテックスし、さらに15分間インキュベートした。過剰アグロバクテリウム液を吸引した後、胚を、非選択培地を入れたプレートに移した。胚と残留アグロバクテリウムの同時培養を22℃、暗所で2〜3日間行った。胚を、チカルシノマイシン(100mg/ml)+硝酸銀(1.6mg/L)添加培地に移し、暗所で10日間インキュベートした。不定胚形成カルスを発生させる胚をマンノース添加細胞培地に移した。
【0097】
再生幼植物体を対象に、pmi、cry3A055両遺伝子の存在ならびに抗生物質スペクチノマイシン(spec)抵抗性遺伝子の不存在についてTAQMAN(登録商標) PCR法(実施例2を参照)で試験した。両導入遺伝子について陽性、spec遺伝子について陰性の結果が出た植物体を、さらなる繁殖を図るために温室に移した。コーンルートワームに対する昆虫使用の生物検定により、試験結果が陽性の系統を特定し、選別した。殺虫性系統のコピー数をTAQMAN法により解析した。単一コピーの導入遺伝子、ELISA法で判明した優れたタンパク質発現性、及びコーンルートワームに対する優れた殺虫活性などを有することから、MIR604系統をさらなる分析対象として選抜した。
【0098】
形質転換体(T0) MIR604の自殖系統CG00526との戻し交配からT1集団が生まれた。T1植物体の自家受粉からT2世代が生まれ、この過程の反復によりT3世代が生まれた。T3植物体の後代検定により同型接合(転換)系統を特定した。MIR604転換CG0056自殖系統を他のエリート自殖系統と交配して、さらなる研究に利用する雑種を創出した。
【0099】
実施例2 TAQMAN PCR法によるMIR604の検出
TAQMAN法を、参照によりここに開示されるIngham et al. (Biotechniques, 31:132-140, 2001)に記載の要領に従って行った。要するにPuregene(登録商標)ゲノムDNA抽出キット(Gentra Systems, Minneapolis, MN)を使用し、形質転換体及び非形質転換体のトウモロコシ葉からゲノムDNAを抽出した。抽出操作は、すべての工程を1.2mlの96穴プレート中で実行した以外、メーカーの説明書に従った。乾燥DNAペレットをTEバッファー(10mM Tris-HCl, pH 8.0, 1mM EDTA)中に再懸濁させた。
【0100】
TAQMAN反応は96穴プレート中で行った。内在性対照トウモロコシ遺伝子用に、Zea maysアルコール脱水素酵素(adh)遺伝子(Genbankアクセッション番号AF044295)に対して特異的なプライマーとプローブを設計した。当業者には自明であろうが、他のトウモロコシ遺伝子を内在性対照として使用してもよい。反応は多重化し、cry3A055とadh又はpmiとadhが同時に増幅されるようにした。各サンプルにつき、マスターミックスを生成した。要領は次のとおり: 20μLの抽出ゲノムDNAを35μL 2×TAQMAN Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems)と混合し、プライマー類(終濃度各900nM)、プローブ類(終濃度各100nM)及び水を添加して終容量を70μLとする。このミックスを96穴増幅プレートに3 replicate×20μLとして分注し、透明熱シール性フィルム(Marsh Bio Products)でシールした。PCRはABI Prism 7700を使用して、次の増幅条件で行った: 2分50℃及び10分95℃、次いで35サイクル×15秒95℃、及び1分60℃。
【0101】
TAQMAN法により、MIR604系統がcry3A055遺伝子1コピーとpmi遺伝子1コピーをもつことが明らかになった。
【0102】
使用した好適なプライマー/プローブ配列の組み合わせ例は次のとおりである:
【表1】

【0103】
実施例3 サザンブロット法によるMIR604の検出
サザンブロット法に使用するゲノムDNAは、戻し交配6(BC6)世代のMIR604である10個の植物体の葉組織プールから抽出した。抽出は参照によりここに開示されるThomas et al. (Theor. Appl. Genet. 86:173-180, 1993)の方法に依拠した。DNA抽出に使用して植物体はすべて、(実施例2の要領で)TAQMAN PCR法により個別に分析してcry3A055遺伝子とpmi遺伝子の存在を確認した。陰性対照の分離個体に関しては、BC4世代のMIR604系統である5個の植物体の葉組織プールからDNAを抽出した。これら陰性対照の分離個体をTAQMAN PCR法で個別に分析した。結果はcry3A055遺伝子とpmi遺伝子の存在に関しては陰性であったが、内部対照の内在性トウモロコシ遺伝子adhに関しては当然ながら陽性であった。
【0104】
通常の分子生物学的手法を用いてサザンブロット分析を行った。プラスミドpZM26由来のMIR604 T-DNAインサート内に単一認識部位をもつKpnI制限酵素でゲノムDNA(7.5μg)を消化した(図1)。この方法により、MIR604に組み込まれた各サザンブロット分析に使用される特異的プローブに対応するエレメントのコピー数の決定が可能になり、MIR604に存在するエレメント・コピーあたりハイブリダイゼーションバンドが1つ形成されるという結果になる。ハイブリダイゼーションは、アガロースゲル電気泳動とNytran(登録商標)膜へのアルカリ転写の後に、エレメント特異的な完全長PCR生成プローブを使用して行う。cry3A055及びpmiサザンブロットに使用されるプローブはそれぞれ配列番号58及び配列番号61に示されるヌクレオチド配列を含む。プローブは32Pで標識したが、標識はランダムプライミング法で、RediprimeTMIIシステム(Amersham Biosciences, Cat. No. RPN1633)を用いて行った。
【0105】
次の高ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件を使用した: 65℃予熱100μg/ml 子牛胸腺DNA (Invitrogen)添加PerfectHyb (Sigma)に、100〜200万cpm/mlを添加する。プレハイブリダイゼーションを前記と同じ溶液中、同じ温度で、終夜又は少なくとも1時間、行う。ハイブリダイゼーションを65℃で3時間行い、続いて2×SSC、0.1%SDS中、65℃で20分間の洗浄×2と0.1×SSC、0.1%SDS中、65℃で20分間の洗浄×2を行った。
【0106】
各サザンブロット分析には次の3サンプルを含めた: (1)エレメント特異的プローブとクロスハイブリダイズする可能性のある内在性Zea mays配列があればそれを特定するために使用する陰性対照の(非形質転換)分離個体に由来するDNA; (2)プローブ長からしてコピー数1に等しい量のKpnI消化pZM26を導入した陰性対照の分離個体に由来するDNA; 及び(3)ハイブリダイゼーション用の陽性対照としての、また実験の感度を証明するための、プローブ長からしてコピー数1に等しいKpnI消化pZM26プラスミド。
【0107】
ハイブリダイゼーションデータから、MIR604は単一コピーのcry3A055及びpmi遺伝子を含み、またpMZ26中に存在するベクターバックボーン配列を一切含まないというTAQMAN PCR分析結果を支持する補強証拠が得られる。cry3A055、pmi両プローブに関して予想されたように、KpnI消化物は適正サイズの単一ハイブリダイゼーションバンドをもたらし、MIR604系統には各遺伝子の単一コピーが存在することを示した。加えてバックボーンプローブに関しては、ハイブリダイゼーションの欠落は、形質転換時にMIR604に導入されるpZM26ベクターバックボーン配列が一切存在しないことを示す。
【0108】
実施例4 T−DNAインサート配列
MIR604系統中に存在する全導入遺伝子DNAインサートのヌクレオチド配列を決定して、該インサートの総合的な完全性、諸機能エレメントの連続性を示すと同時に個別の塩基対変化があればそれを示すようにした。MIR604インサートはBC5世代に由来するDNAから2つの個別重複断片としてPCR増幅した。各断片の増幅では、MIR604インサートに隣接する植物体ゲノム配列と相同のポリヌクレオチドプライマー×1とcry3A055遺伝子と相同のポリヌクレオチドプライマー×1を使用した。5'側断片を生成するために、5'側隣接配列と相同である第1ポリヌクレオチドプライマー5'S1(配列番号15)をcry3A055遺伝子内の挿入DNAと相同である第2ポリヌクレオチドプライマー5'AS1(配列番号28)と連結した。3'側断片を生成するために、3'側隣接配列と相同である第1ポリヌクレオチドプライマー9268AS(配列番号45)をcry3A055遺伝子内の挿入DNAと相同である第2ポリヌクレオチドプライマー5161S(配列番号27)と連結した。
【0109】
PCR増幅はExpand High Fidelity PCRシステム(Roche, Cat. No. 1732650)と次の増幅条件を用いて行った: 94℃-2分×1サイクル、次いで(94℃-15秒、55〜65℃-30秒、68℃-5分)×10サイクル、次いで(94℃-15秒、55〜65℃-30秒、72℃-5分+5秒/サイクル)×20、次いで72℃-7分×1サイクル。
【0110】
配列番号15と配列番号28を使用したPCR増幅に由来するアンプリコンは5'側ジャンクション配列(配列番号1)を含んだ。配列番号45と配列番号27を使用したPCR増幅に由来するアンプリコンは3'側ジャンクション配列(配列番号2)を含んだ。各配列決定用断片を個別に、pCR(登録商標)-XL-TOPOベクター(Invitrogen, Cat. No. K4700-20)中にクローニングし、各断片につき3つの異なるクローンを特定し配列決定した。配列決定はABI3730XLアナライザーにより、ABI BigDye(登録商標)1.1又はBigDye 3.1 dGTP(GCリッチ鋳型用)試薬キットを使用して行った。使用した配列決定ソフトウェアはワシントン大学で開発されたPhred、Phrap及びConsedパッケージであり、そのエラー率は10,000塩基につき1塩基未満である(Ewing and Green, 1988)。6個の個別クローン(各配列決定用断片につき3個)からの配列データを組み合わせてMIR604インサートの1つのコンセンサス配列を生成させることにより、最終コンセンサス配列を決定した。MIR604インサートとpZM26プラスミドの間の個別塩基対の不一致があれば、それをさらに検証するために、当初コンセンサス配列中に塩基対不一致が見られた領域に特異的な小(約300〜500 bp)PCR産物を、前記と同じ要領で増幅した。MIR604インサート中のすべての推定塩基対不一致について、PCR産物直接配列分析により問題のすべての塩基対で単一の明確なピークが現れる結果となった。これはMIR604インサートにそうした不一致が存在することを示唆する。ClustalWプログラムを使用して次の条件でアラインメントを行った: スコアマトリックスblosum55、ギャップ開始ペナルティ15、ギャップ伸長ペナルティ6.66 (Thompson et al, 1994, Nucleic Acids Research, 22, 4673-4680)。
【0111】
MIR604 T-DNAインサートに関するコンセンサス配列データによれば、該配列の総合的完全性と該配列内の諸機能エレメントの連続性はpZM26で意図されたとおりに維持されている。配列分析で明らかになった。配列分析によれば、MIR604系統を生み出す結果となった形質転換過程でT-DNAインサートの右境界(RB)端(配列番号57)と左境界(LB)端(配列番号62)に若干の欠失が起きている。T-DNAインサートのRB部分は44bpが、またT-DNAインサートのLB部分は43bpが、それぞれ欠失した。これらの欠失はT-DNAインサートの有効性には影響がないし、またこの現象は以前にもアグロバクテリウムの形質転換で観測されている(Tinland & Hohn, 1995, Genetic Engineering, 17:209-229)。加えて、MIR604 T-DNAインサートでは3つの塩基対変化が認められた。1つの不一致はMTLプロモーター内で、すなわちタンパク質をコードしない調節領域内で起きた。残り2つの不一致はpmiコード配列内で起き、2つのアミノ酸を変化させた。すなわち位置61のバリンはアラニンへと置換し(V61A)、また位置210のグルタミンはヒスチジンへと置換した(Q210H)。アラニンからバリンへの置換はどちらも脂肪族アミノ酸なので、同類置換となる。グルタミンからヒスチジンへの置換は酸性残基から塩基性残基への置換となる。
【0112】
実施例5 隣接DNA配列の分析
MIR604系統のトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNAに隣接するトウモロコシゲノムDNA配列を、OmniPlexTM技術を用いて、参照によりここに開示されるKamberov et al (Proceedings of SPIE, Tools for Molecular Analysis and High-Throughput Screening, 4261: 1-12, 2002)に記載の要領にほぼ従って、獲得した。
【0113】
標準PCR手法を用いて5'側及び3'側隣接配列及びジャンクション配列を確認した。5'側隣接配列及びジャンクション配列の確認には配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12又は配列番号13に示される第1ポリヌクレオチドプライマーと配列番号16又は配列番号17に示される第2ポリヌクレオチドプライマーの組み合わせを使用した。3'側隣接配列及びジャンクション配列の確認には配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43又は配列番号44に示される第1ポリヌクレオチドプライマーと配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35又は配列番号36に示される第2ポリヌクレオチドプライマーの組み合わせを使用した。当業者には自明であろうが、隣接及びジャンクション配列の確認には他のプライマー配列を使用することもできる。
【0114】
MIR604インサートは右境界(5'側)隣接配列として配列番号5に示すトウモロコシゲノム配列を有し、また左境界(3'側)隣接配列として配列番号6に示すトウモロコシゲノム配列を有する。5'側ジャンクション配列は配列番号1に示す。3'側ジャンクション配列は配列番号2に示す。
【0115】
実施例6 ELISA法によるMIR604タンパク質の検出
Cry3A055タンパク質(殺虫活性成分)とホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)(選択マーカー)タンパク質のMIR604植物体での発現範囲を解析するために、2つの雑種(MIR604-B及びMIR604-C)と1つの自殖系統(MIR604-A)で、4生育段階(whorl、開花、種子成熟、老化)にあるいくつかの植物体組織及び全植物体のCry3A055、PMI両タンパク質濃度をELISA法で測定した。両雑種はMIR604系統の導入遺伝子に関しては半接合であり、また自殖系統は該導入遺伝子に関しては同型接合である。
【0116】
全植物体及び個別部分(花粉を除く)を、コーヒー豆挽き器、ミキサー、GrindomixTMグラインダー(Brinkmann Instruments; Westbury, NY, USA)、乳鉢と乳棒又はひき臼、もしくはこれらの道具の組み合わせを使用して微粉化した。すべての処理はドライアイス又は液体窒素の存在下に行った。サンプルを混合して一様化した。全植物組織サンプル又は代表的なサブサンプルは、十分なサンプルサイズが予備植物組織サンプルのアーカイブ保存用に確保されるようにしたうえで、分析用に残した。各サンプルの乾物重を求め、処理済みサンプルを凍結乾燥時まで、およそマイナス80℃で保存した。
【0117】
新鮮な組織(花粉とサイレージを除く)及び全植物体サンプルを抽出した。各分析サンプルにつき、粉末化した新鮮素材の分割量1.0gをとり15mlポリプロピレンチューブに入れ、3ml抽出バッファー[50mM CAPS, 0.1M NaCl, 2mM EDTA, 1mMジチオスレイトール、1mMの4-(1-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドHCl、1mMロイペプチン、pH 10]中に懸濁させ、Autogizer(登録商標)ホモジナイザー(Tomtek; Hamden, CT, USA)を使用して抽出した。10,000×g、4℃で15分間の遠心後、上清のCry3A055及びPMI分析をELISA法で行った。Hill and Straka (1988)に記載の要領によるヨードアセトアミド処理後、BCATM タンパク質検定試薬(Pierce; Rockford,IL, USA)を使用して抽出物中の全タンパク質を定量した。
【0118】
花粉抽出物の調製では、花粉を抽出バッファー中に1:30(w/v)懸濁させた。氷上に30分置いた後、花粉懸濁液を約15,000psiのフレンチプレス(French pressure cell)に3回通して破砕し、次いで14,000×g、4℃で5分間遠心した。後述のように上清を対象にELISA法によるCry3A055及びPMI分析を行った。全タンパク質を前述のように定量した。
【0119】
サイレージ抽出物の調製では、サイレージを2×抽出バッファー中に1:25(w/v)懸濁させた。氷上に30分置いた後、サイレージ懸濁液を、Brinkmann Polytron(登録商標)ホモジナイザー(Brinkmann; Westbury, NY, USA)を使用して抽出した。10,000×g、4℃で15分間の遠心後、上清のCry3A055及びPMI分析をELISA法で行った。全タンパク質を前述のように定量した。
【0120】
Cry3A055の定量
前述の要領で調製した抽出物について、アフィニティー精製ウサギ抗Cry3A055ポリクローナル抗体とアフィニティー精製ヤギ抗Btt(Bacillus thuringiensis subsp. tenebrionis)ポリクローナル抗体を使用してELISA法(Tijssen, 1985)でCry3A055の定量分析を行った。使用したダブルサンドイッチELISA法の定量下限を、標準曲線の直線部分上にある純粋な比較タンパク質の最低濃度、バックグラウンド干渉なしに分析しうる対照抽出物量の上限、及び分割量で表されるサンプルの対応重量を基に推定した。
【0121】
分析対象の、花粉を除くすべてのMIR604由来植物組織で定量可能レベルのCry3A055タンパク質を検出した。ほとんどの場合、結果は5 replicate組織サンプルの平均として表す。サイレージは1サンプルを分析した。従って、平均は計算できなかった。対照サンプルのレベルはすべての生育段階及び組織で定量下限を下回った。
【0122】
全生育段階を通じて、葉、根、全植物体で測定された平均Cry3A055レベルの範囲はそれぞれ、およそ3〜23 μg/g-生体重(4〜94 μg/g-乾物重)、2〜14 μg/g-生体重(7〜62 μg/g-乾物重)及び0.9〜11 μg/g-生体重(3〜28 μg/g-乾物重)であった。種子成熟期と老化期の穀粒で測定された平均Cry3A055レベルの範囲はおよそ0.6〜1.4 μg/g-生体重(0.8〜2.0 μg/g-乾物重)であった。開花期の絹糸組織で測定された平均Cry3A055レベルは定量下限(LOQ)を下回り、<0.1 μg/g-生体重(<1.0 μg/g-乾物重)となった。種子成熟期の絹糸組織で測定された平均Cry3A055レベルの範囲はおよそ0.6〜1.9 μg/g-生体重(1〜3 μg/g-乾物重)であった。花粉では自殖系統MIR604-A、雑種MIR604-B及びMIR604-CのいずれからもCry3A055タンパク質は検出不能であった[検出限界(LOD)=0.07 μg/g-生体重(0.15 μg/g-乾物重)]。
【0123】
Cry3A055レベルは雑種間では各生育段階の各組織タイプに関して総じて差がなかった。自殖系統では、Cry3A055の発現レベルは総じて、雑種のwhorl期及び開花期の葉、根及び全植物体のレベルよりも、また種子成熟期の根のレベルよりも、高かった。サイレージ組織で測定されたCry3A055レベルは15、29及び75日貯蔵の平均で2.5 μg/g-生体重(7.3 μg/g-乾物重)であった。一方、サイロ貯蔵前(0日サイレージ前)の切断材料で測定されたCry3A055レベルは約8 μg/g-生体重(20 μg/g-乾物重)であった。
【0124】
PMIの定量
前述の要領で調製した抽出物について、PMI特異的なProtein A精製ウサギ抗Cry3A055ポリクローナル・ウサギ抗体及びアフィニティー精製ヤギ抗体を使用してELISA法(Tijssen, 1985)でPMIの定量分析を行った。使用したダブルサンドイッチELISA法の定量下限を、標準曲線の直線部分上にある純粋な比較タンパク質の最低濃度、バックグラウンド干渉なしに分析しうる対照抽出物量の上限、及び分割量で表されるサンプルの対応重量を基に推定した。
【0125】
分析対象のほとんどのMIR604由来植物組織で低レベルながらPMIタンパク質を検出した。ほとんどの場合、結果は5 replicate組織サンプルの平均として表す。サイレージは1 replicateを分析した。従って、平均は計算できなかった。対照サンプルのレベルはすべての生育段階及び組織で定量下限を下回った。
【0126】
全生育段階を通じて、葉、根、全植物体で測定された平均PMIレベルの範囲はそれぞれ、検出不能(ND)〜約0.4 μg/g-生体重(ND〜2.1 μg/g-乾物重)、LOQ未満(<0.03 μg/g-生体重)〜約0.2 μg/g-生体重(<0.1〜1.0 μg/g-乾物重)、LOQ未満(<0.02 μg/g-生体重)〜約0.3 μg/g-生体重(<0.04〜2 μg/g-乾物重)であった。種子成熟期と老化期の穀粒で測定された平均PMIレベルの範囲はLOQ未満(<0.06 μg/g-生体重)〜約0.4 μg/g-生体重(<0.07〜0.5 μg/g-乾物重)であった。開花期と種子成熟期の絹糸組織で測定された平均PMIレベルはLOQ未満(<0.1 μg/g-生体重)〜約0.8 μg/g-生体重(<0.2〜6.8 μg/g-乾物重)となった。花粉のPMIの範囲はおよそ1.9〜2.6 μg/g-生体重(3.9〜5.2 μg/g-乾物重)であった。
【0127】
PMIレベルは自殖系統及び雑種遺伝子型の間では各生育段階の各組織タイプに関して総じて差がなかった。PMIはサイレージ組織では(15、29及び75日の)どのサンプリング時点でも検出不能であった。一方、サイロ貯蔵前(0日サイレージ前)の切断材料で測定されたPMIレベルは約0.3 μg/g-生体重(0.7 μg/g-乾物重)であった。
【0128】
単位面積(エーカー及びヘクタール)あたりの推定全Cry3A055タンパク質レベル
自殖系統(MIR604-A)と両雑種(MIR604-B、MIR604-C)では、植物体は種子成熟期に最高バイオマス量に到達した。植物体はやはり種子成熟期にエーカーあたり(及びhaあたり)最高推定平均Cry3A055レベルに到達し、その値はMIR604-A、MIR604-B及びMIR604-Cでそれぞれ約78、141及び240 g-Cry3A055/エーカー(193、348及び592 g/ha)と推定された。生育期間及び遺伝子型を通じて、MIR604由来植物体の平均Cry3A055レベルは、栽殖密度を26,500本/エーカー(65,500本/ha)と仮定すると、老化期の約8 g-Cry3A055/エーカー(21 g/ha)から種子成熟期の約240 g-Cry3A055/エーカー(592 g/ha)までの範囲と推定される。
【0129】
実施例7 MIR604の圃場での効果
ウェスタンコーンルートワーム及びノーザンコーンルートワーム(Western 及び Northern Corn Rootworm)
ウェスタン及びノーザンコーンルートワームに対するMIR604植物体の効果を米国内12か所で試験した。MIR604の試験では殺虫種子処理剤Cruiser(登録商標)との併用も行った。対照群は2つの異なる使用量のCruiser(登録商標)で処理した種子と無処理の照合基準(check)からなる。試験処理は4反復乱塊法で行い、試験区は17.5〜20フィート畝×2(中心間間隔30インチ)とした。10植物体/処理を無作為に選択し、0〜3スケールを用いて効果を評点を出した: 0 = 食害なし(食害最低点); 1 = 1つの節根又は全節根に相当する部分が茎(土壌面は第7節根)から約2インチ以内まで食い尽くされる; 2 = 2つの完全節根が食い尽くされる; 3 = 3つ以上の節根が食い尽くされる(食害最高点)。完全節根に満たない食害は百分率で、例えば1.50(= 1節根+1/2節根の食害)、0.25(= 1/4節根の食害)として、表した。
【0130】
表1に掲載の結果は、MIR604の2兄弟血統3-11及び3-12の根に対する食害がCruiser(登録商標)処理又は無処理の対照根に対する食害よりも有意に少なかったことを示す。MIR604-3-11及びMIR604-3-12は根への食害がそれぞれ0.44、0.42であった。それに対して、0.25及び1.25 mgA/種子Cruiser処理体ではこれがそれぞれ1.6及び0.9であったし、また対照系統では2.14であった。種子をCruiser処理したMIR604植物体は食害評点が低くなる傾向にあり、Cruiser処理がCry3A055タンパク質を増強するか、又はCruiserとCry3A055の間に相乗効果がありうることを示唆した。これは1.0及び1.25 mgA/MIR604種子処理で特に明白であり、それぞれの食害評点は0.33、0.29であった。
【表2】

【0131】
MIR604について、その効果を市販の畝間散布標準粒状殺虫剤と比較した。試験計画は前記のとおりであった。表2に掲載の結果は、コーンルートワーム食害の防除という点でのMIR604の効果が市販標準品に匹敵することを示す。
【表3】

【0132】
メキシカンコーンルートワーム(Mexican Corn Rootworm)
メキシカンコーンルートワームに対するMIR604植物体の効果をテキサス州内の2か所で評価した。試験計画はほぼ前記のとおりであった。
【0133】
表3に掲載の結果ではMIR604の両兄弟血統に対する食害が無処理の照合基準に対する食害よりも少なかった。MIR604種子をCruiserで処理するとコーンルートワーム(Mexican Corn Rootworm)防除効果が高まった。明確な使用量応答関係が明らかであった。表4に掲載の結果は、MIR604のコーンルートワーム(Mexican Corn Rootworm)防除効果が市販標準殺虫剤に匹敵することを示す。
【表4】

【表5】

【0134】
本明細書に掲げた諸々の出版物及び特許出願は本発明が関与する技術分野の当業者の技術レベルを示す。そうした諸々の出版物及び特許出願は参照によりここに開示されるが、その効果は、各個別出版物及び特許出願が個別具体的に参照により開示される旨を明示した場合と同じである。
【0135】
以上、理解を明確にするため例示と実施例を以って本発明をやや詳しく説明したが、ある種の変動や態様変更が本発明の範囲内で可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】植物発現ベクターpZM26を示す。マップではサザン分析に使用されるKpnI制限部位を特定している。
【図2】トウモロコシ系統MIR604ゲノムに挿入された異種核酸配列を含む遺伝子エレメントの構成を示すグラフィカルマップであり、該挿入核酸配列がその両末端に隣接するトウモロコシゲノムDNA配列に連結される相対位置を示す。1=5'側隣接植物体ゲノム(配列番号2); 2=右境界領域(配列番号57); 3=MTLプロモーター(配列番号58); 4=cry3A055遺伝子(配列番号59); 5=NOSターミネーター(配列番号60); 6=ZmUbINTプロモーター(配列番号61); 7=pmi遺伝子(配列番号62); 8= NOSターミネーター(配列番号60); 9=左境界領域(配列番号63); 10=3'側隣接植物ゲノム(配列番号6)。
【配列表フリーテキスト】
【0137】
配列番号1は5'ゲノム-インサートジャンクションである。
配列番号2は3'インサート-ゲノムジャンクションである。
配列番号3は5'ゲノム+インサート配列である。
配列番号4は3'インサート+ゲノム配列である。
配列番号5はインサート5'側隣接トウモロコシゲノムである。
配列番号6はインサート3'側隣接トウモロコシゲノムである。
配列番号7〜15は本発明に有用な5'側隣接配列プライマーである。
配列番号16〜20は本発明に有用なMTLプロモーター配列プライマーである。
配列番号21〜28は本発明に有用なcry3A055配列プライマーである。
配列番号29〜30は本発明に有用なZmUbiInt配列プライマーである。
配列番号31〜37は本発明に有用なpmi配列プライマーである。
配列番号38は本発明に有用なNOS配列プライマーである。
配列番号39〜46は本発明に有用な3'側隣接配列プライマーである。
配列番号47〜49はcry3A055 TAQMANプライマー及びプローブである。
配列番号50〜52はpmi TAQMANプライマー及びプローブである。
配列番号53〜55はZmADH TAQMANプライマー及びプローブである。
配列番号56は本発明に有用なMIR604プローブである。
配列番号57は右境界領域の配列である。
配列番号58はMTLプロモーターの配列である。
配列番号59はcry3A055遺伝子の配列である。
配列番号60はNOSターミネーターの配列である。
配列番号61はZmUbIntプロモーターの配列である。
配列番号62はpmi遺伝子の配列である。
配列番号63は左境界領域の配列である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2及びこれらの相補配列からなる群より選択されるMIR604系統トウモロコシの少なくとも1つのジャンクション配列を含む単離核酸分子。
【請求項2】
MIR604系統トウモロコシに由来する異種インサートDNA配列の少なくとも10連続ヌクレオチドとMIR604系統トウモロコシに由来する該インサートDNA配列に隣接するトウモロコシ植物体ゲノムDNAの少なくとも10連続ヌクレオチドとを含む単離核酸分子。
【請求項3】
MIR604系統トウモロコシに由来する異種インサートDNA配列の少なくとも20連続ヌクレオチドとMIR604系統トウモロコシに由来する該インサートDNA配列に隣接するトウモロコシ植物体ゲノムDNAの少なくとも20連続ヌクレオチドとを含む、請求項2に記載の単離核酸分子。
【請求項4】
MIR604系統トウモロコシに由来する異種インサートDNA配列の少なくとも50連続ヌクレオチドとMIR604系統トウモロコシに由来する該インサートDNA配列に隣接するトウモロコシ植物体ゲノムDNAの少なくとも50連続ヌクレオチドとを含む請求項2に記載の単離核酸分子。
【請求項5】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項6】
配列番号1、配列番号2及びこれらの相補配列からなる群より選択される約11〜約20連続ヌクレオチドの配列を含むMIR604系統トウモロコシ中のトウモロコシ植物体ゲノムに異種DNA分子を連結する単離核酸。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸分子を含むアンプリコン。
【請求項8】
サンプル中のMIR604系統トウモロコシDNAを検出するための、配列番号3に示される位置1〜801又はその相補配列に由来する少なくとも10連続ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドプライマー配列。
【請求項9】
配列番号7〜配列番号15及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載のプライマー。
【請求項10】
配列番号4に示される位置507〜1570又はその相補配列に由来する少なくとも10連続ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプライマー。
【請求項11】
配列番号39〜配列番号46及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載のプライマー。
【請求項12】
MIR604系統トウモロコシに特徴的なアンプリコンを産生するための、サンプル中のMIR604系統トウモロコシDNA鋳型の存在下で一緒に機能する第1ポリヌクレオチドプライマーと第2ポリヌクレオチドプライマーとを含むポリヌクレオチドプライマー対であって、該第1プライマー配列はMIR604系統トウモロコシのトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列の挿入部位に隣接するトウモロコシ植物体ゲノム又はその相補配列であり、そして該第2プライマー配列はMIR604系統トウモロコシのトウモロコシ植物体ゲノムに挿入された異種DNA配列又はその相補配列であることを特徴とする、ポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項13】
第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号3に示される位置1〜801に由来する少なくとも10連続ヌクレオチド、又はその相補配列を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項14】
第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号7〜配列番号15からなる群より選択されるヌクレオチド配列、及びこれらの相補配列を含む、請求項13に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項15】
第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号4に示される位置507〜1570に由来する少なくとも10連続ヌクレオチド、又はその相補配列を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項16】
第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号39〜配列番号46からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又はこれらの相補配列を含む、請求項15に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項17】
第2ポリヌクレオチドプライマーが配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、若しくは配列番号63の少なくとも10連続ヌクレオチド、又はそれらの相補配列を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項18】
第2ポリヌクレオチドプライマーが配列番号16〜38からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又はその相補配列を含む、請求項17に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項19】
第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号15に示され、そして第2ポリヌクレオチドプライマーが配列番号28に示される、請求項12に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項20】
第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号45に示され、そして第2ポリヌクレオチドプライマーが配列番号27に示される、請求項12に記載のポリヌクレオチドプライマー対。
【請求項21】
サンプル中のDNA 配列を検出する方法であって、次の工程を含む方法:
(a) 該サンプルを、MIR604系統トウモロコシ由来DNAと共に核酸増幅反応に使用したときにMIR604系統トウモロコシに特徴的なアンプリコンを生成するようなプライマー対と、接触させる工程;
(b) 核酸増幅反応を行い、以って該アンプリコンを生成させる工程; 及び
(c) 該アンプリコンを検出する工程。
【請求項22】
アンプリコンが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4からなる群より選択されるヌクレオチド配列、及びこれらの相補配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
サンプル中のMIR604系統に対応するDNAの存在を検出する方法であって、次の工程を含む方法:
(a) 該サンプルを、高ストリンジェンシー条件下でMIR604系統トウモロコシ由来ゲノムDNAとハイブリダイズするが対照トウモロコシ植物体のDNAとは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズしないプローブと、接触させる工程;
(b) 該サンプル及びプローブを高ストリンジェンシー条件下に置く工程; 及び
(c) 該プローブの該DNAに対するハイブリダイゼーションを検出する工程。
【請求項24】
生物サンプル中のMIR604系統トウモロコシの核酸の存在を検出するためのキットであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、又はそれらの相補配列である十分な鎖長の連続ヌクレオチドを含む少なくとも1つのDNA分子を、MIR604系統の特異的なDNAプライマー又はプローブとして含むキット。
【請求項25】
生物サンプル中のMIR604系統トウモロコシのタンパク質を検出する方法であって、次の工程を含む方法:
(a) MIR604系統トウモロコシ組織のサンプルからタンパク質を抽出する工程;
(b) 該抽出タンパク質を、MIR604系統によって産生される殺虫タンパク質又は選択マーカータンパク質に対して特異的である抗体を含む免疫学的方法の使用により検定する工程; 及び
(c) 該抗体の該殺虫タンパク質又は選択マーカータンパク質への結合を検出する工程。
【請求項26】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4に示されるヌクレオチド配列、又はこれらの相補配列を含むトウモロコシ植物体。
【請求項27】
請求項26に記載のトウモロコシ植物体であって、該植物体のゲノムDNAの制限エンドヌクレアーゼKpnIによる消化の結果として、高ストリンジェンシー条件下にcry3A055特異的プローブを使用すると単一cry3A055ハイブリダイゼーションバンドが得られることを特徴とするトウモロコシ植物体。
【請求項28】
プローブが配列番号56〜配列番号59に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載のトウモロコシ植物体。
【請求項29】
請求項26に記載のトウモロコシ植物体であって、該植物体のゲノムDNAの制限エンドヌクレアーゼKpnIによる消化の結果として、高ストリンジェンシー条件下にpmi特異的プローブを使用すると単一pmiハイブリダイゼーションバンドが得られることを特徴とするトウモロコシ植物体。
【請求項30】
プローブが配列番号62に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項29に記載のトウモロコシ植物体。
【請求項31】
MIR604系統に由来する、請求項26に記載のトウモロコシ植物体。
【請求項32】
生物サンプル中のMIR604系統トウモロコシDNAの存在を検出するためのキットであって、配列番号3のほぼヌクレオチド位置792〜ヌクレオチド位置811からなる群より選択されるヌクレオチド配列又はその相補配列である少なくとも11連続ヌクレオチドを含む第1プローブ分子、及び配列番号4のほぼヌクレオチド位置497〜ヌクレオチド位置516からなる群より選択されるヌクレオチド配列又はその相補配列である少なくとも約11連続ヌクレオチドを含む第2プローブ分子を含み、該分子は高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で該ヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズすることを特徴とするキット。
【請求項33】
生物サンプル中のMIR604系統トウモロコシDNAの存在を検出する方法であって、次の工程を含む方法:
(a) 該サンプルを、MIR604系統トウモロコシに由来するDNA鋳型の存在下の核酸増幅反応において該系統トウモロコシに特徴的なアンプリコンを生成させるような機能を一緒に果たす第1ポリヌクレオチドプライマー及び第2ポリヌクレオチドプライマーと、接触させる工程;
(b) 核酸増幅反応を行い、以って該アンプリコンを生成させる工程; 及び
(c) 該アンプリコンを検出する工程。
【請求項34】
アンプリコンは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及びこれらの相補配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列、を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
アンプリコンが配列番号1を含み、第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号7〜配列番号15及びこれらの相補配列からなる群より選択され、そして第2ポリヌクレオチドプライマーが配列番号16〜配列番号38及びこれらの相補配列からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
アンプリコンが配列番号2を含み、第1ポリヌクレオチドプライマーが配列番号39〜配列番号46及びこれらの相補配列からなる群より選択され、そして第2ポリヌクレオチドプライマーが配列番号16〜配列番号38及びこれらの相補配列からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
生物サンプル中のMIR604系統トウモロコシのDNAを検出する方法であって、次の工程を含む方法:
(a) DNAを含むサンプルを、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件下でMIR604系統DNAとハイブリダイズするが、MIR604以外のトウモロコシ植物体に由来するDNAとは高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件下でハイブリダイズしないポリヌクレオチドプローブと、接触させる工程;
(b) 該サンプル及びプローブを高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件下に置く工程; 及び
(c) 該プローブの該MIR604系統DNAに対するハイブリダイゼーションを検出する工程。
【請求項38】
MIR604系統トウモロコシの植物体、組織又は種子に由来する生物サンプルであって、該サンプルは配列番号1と配列番号2からなる群より選択されるヌクレオチド配列又はその相補配列であるヌクレオチド配列を含み、そして該配列は核酸増幅法又は核酸ハイブリダイゼーション法により該サンプルから検出することが可能であることを特徴とする生物サンプル。
【請求項39】
サンプルがトウモロコシ粉、挽き割りトウモロコシ、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トウモロコシでんぷん、及びトウモロコシ副産物を含めるように全粒又は部分加工したシリアルからなる群より選択される、請求項38に記載の生物サンプル。
【請求項40】
MIR604系統トウモロコシの植物体、組織又は種子に由来する抽出物であって、配列番号1と配列番号2からなる群より選択されるヌクレオチド配列に対して相同的又は相補的であるヌクレオチド配列を含む抽出物。
【請求項41】
配列は核酸増幅法又は核酸ハイブリダイゼーション法により抽出物から検出することが可能である、請求項40に記載の抽出物。
【請求項42】
サンプルがトウモロコシ粉、挽き割りトウモロコシ、トウモロコシシロップ、トウモロコシ油、トウモロコシでんぷん、及びトウモロコシ副産物を含めるように全粒又は部分加工したシリアルからなる群より選択される、請求項41に記載の抽出物。
【請求項43】
少なくともコーンルートワームに対して抵抗性であるトウモロコシ植物体を生産するための方法であって、該方法は
(a) どちらかがMIR604系統トウモロコシのDNAを含む第1親トウモロコシ植物体と第2親トウモロコシ植物体を有性交配して、複数の第1世代子孫植物体を生産する工程;
(b) 少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性である第1世代子孫植物体を選定する工程;
(c) 第1世代子孫植物体を自家受粉させて、複数の第2世代子孫植物体を生産する工程;
(d) 第2世代子孫植物体から少なくともコーンルートワームの虫害に対して抵抗性である植物体を選定する工程;
を含み、ここで第2世代子孫植物体は配列番号1と配列番号2からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−530036(P2007−530036A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504960(P2007−504960)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/004790
【国際公開番号】WO2005/103301
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】