説明

MOXガスセンサーを動作させるための方法及びデバイス

周囲におけるガス濃度を測定するために利用されるMOXガスセンサー(1)を動作させるための方法及びデバイスであって、前記MOXセンサー(1)は電源(2)によって加熱され、及びガス濃度を示すセンサー(1)の電気出力変数が検出及び解析される。本発明に従って、前記MOXセンサー(1)は電源(2)によって離散的な測定時間で断続的に加熱され、及びガス濃度を示す測定値は離散的な測定時間の間で検出されたセンサー(1)の電気出力変数から生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMOXガスセンサーを動作させるための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
MOXガスセンサーは該センサーの周囲に存在するガス濃度を測定するために用いられている。MOXセンサーの機能は、過熱されうる基板上に提供される金属酸化物層(MOX)の抵抗または伝導度の解析に基づく。従来的に、このようなMOXセンサーは連続的に加熱され、エネルギーの高い消費を必要とする。結果として、低容量のバッテリーを有するバッテリー式のシステムでMOXセンサーを提供することが可能ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、低い加熱エネルギーでMOXガスセンサーを動作させるための方法及びデバイスを提供することである。
【0004】
前記目的は請求項1の特徴を有する方法によって達成される。さらに、前記目的は請求項11の特徴を有するデバイスによって達成される。
【0005】
有利的な実施形態及び本発明のさらなる展開はそれぞれ下位クレームに示されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、周囲に存在するガス濃度を測定するために提供されたMOXガスセンサーを動作させる方法を生み出す。前記方法の場合、MOXセンサーは電源によって加熱され、ガス濃度を示すMOXセンサーの電流出力量が検出され解析される。本発明に従って、MOXセンサーは電源による離散的な測定時間で不連続に加熱され、ガス濃度を示す測定値は離散的な測定時間の間に検出されたセンサーの電気出力量から生み出される。
【0007】
本発明の実施形態に従って、平均値は離散的な測定時間の間に測定された電気出力量から生成される。
【0008】
ガス濃度を示す測定値は、離散的な測定時間の一部の間でその都度検出されたMOXセンサーの電気出力量から生成される。
【0009】
前記電気出力量は前記離散的な測定時間の間で前記電気出力量が本質的に一定な間に測定されうる。
【0010】
MOXセンサーの抵抗または伝導度を電気出力量として検出することができる。
【0011】
MOXセンサーでの電圧または電流を電気出力量として検出することができる。
【0012】
ガスセンサーの周囲におけるアンモニアのガス濃度を測定することができる。
【0013】
ガスセンサーの周囲におけるエタンのガス濃度を測定することができる。
【0014】
さらに、NO、NO、CO、などのような多くの追加的なガスのガス濃度が測定されることが一般的に考えられる。
【0015】
前記方法はバッテリー式デバイスによって実装される。
【0016】
本発明の実施形態に従って、前記方法はRFIDタグ上に提供されるバッテリー式デバイスによって実装されうる。
【0017】
さらに、本発明の結果として、デバイスは周囲に存在するガス濃度を測定するために提供されたMOXガスセンサーを動作させるために作られる。前記デバイスはガスセンサーを加熱するための電源と、及びガス濃度を示すガスセンサーの電気出力量を検出及び解析するための測定装置と、を備えている。本発明に従って、前記電源は離散的な測定時間でMOXセンサーを不連続に加熱するために提供され、及び前記測定装置は離散的な測定時間の間に検出されたセンサーの電気出力量からガス濃度を示す測定値を生成するために提供される。
【0018】
本発明の実施形態に従って、前記デバイスは離散的な測定時間の間に検出された電気出力量から平均値を生成するために提供される。
【0019】
本発明の実施形態に従って、前記デバイスは離散的な測定時間の一部の間でその都度測定されたMOXセンサーの電気出力量からガス濃度を示す測定値を生成するために提供される。
【0020】
前記デバイスは、離散的な測定時間の一部の間で電気出力量が本質的に連続的な間にその都度電気出力量を検出するために提供される。
【0021】
前記デバイスは電気出力量としてMOXセンサーの抵抗または伝導度を検出するために提供される。
【0022】
前記デバイスは電気出力量としてMOXセンサーでの電圧または電流を検出するために提供される。
【0023】
前記デバイスはガスセンサーの周囲におけるアンモニアのガス濃度を測定するために提供される。
【0024】
前記デバイスはガスセンサーの周囲におけるエタンのガス濃度を測定するために提供される。
【0025】
前記デバイスはバッテリー式でありうる。
【0026】
本発明の実施形態に従って、前記デバイスはバッテリー式であり、及びRFIDタグ上に提供される。
【0027】
以下において、本発明の実施形態は図面によって説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1はMOXガスセンサーを動作させるために提供されたデバイスの簡易化したブロック図である。MOXセンサー1は、食品輸送の場合に必要とされるような場合、周囲に存在するアンモニアやエタンのようなガス濃度の測定のために利用される。MOXセンサー1は電源2によって加熱される。測定装置3,4は、ガス濃度を示すガスセンサー1の電気出力量を検出または解析するために用いられる。利用される測定方法に応じて、この電気出力量は例えば、MOXセンサー1での電圧または電流測定、または抵抗または伝導度の測定である。測定装置3,4は、電源2と共にセンサードライバ5内に提供されて、センサー1の上述した電気出力量を直接検出する測定部3と、及び、測定部3に接続されて、例えばマイクロコントローラまたはコンピュータによって形成されうる解析回路4と、を備えている。センサードライバ5において提供される電源2は、MOXセンサー1が離散的な測定時間で不連続に加熱されるように構成、または制御される。測定装置3,4は、ガス濃度を示す測定値がこれらの離散的な測定時間の間で測定されたセンサー1の電気出力量から生み出されるように構成される。
【0029】
図2は、上部の不連続な曲線において、離散的な測定時間で不連続に測定された所定のエタン濃度の測定と、図表の下部に図示された従来に実施されるような連続的な測定との比較を示している。不連続な測定の曲線により図示されるように、MOXセンサー1の不連続な過熱のときに、MOXセンサーの突然の抵抗率の減少が2マグニチュード(magunitude)以上の量で起こる。
【0030】
図3a)及びb)は、合成空気中で100ppmのアンモニア濃度または合成空気中で100pmのエタン濃度の場合において、不連続な測定の間で図2において円で示された領域の拡大図である。不連続な測定の最初で、ピークの形をした測定曲線のオーバースイングが立ち下りで最初に起こり、それから本質的に一定値に安定することが示されている。図2において、不連続な測定に対する測定曲線と連続的な測定に対する測定曲線とを比較すると、安定状態、つまりほとんど一定の測定値は連続的な測定の測定値の上にあることを示している。このように、抵抗は連続的な測定の値にまで完全に落ちない。
【0031】
ガス濃度を示す測定値は、ここで開示された実施形態において、離散的な測定時間の一部の間でその都度検出された電気出力量から生み出され、それ故、MOXセンサー1の抵抗がこれらの値の平均値で形成される。
【0032】
図4及び5は、不連続な測定、それから得られた平均値、及び連続的な測定の間で従来的に得られた測定値、を示している。図の左部分は純粋な合成空気に対する測定を示している。図の右部分は、アンモニア100ppmの濃度(図4)、またはエタン100ppmの濃度(図5)に対する測定を示している。図の推移は両者のケースに対して、従来の連続的な測定において、近似的に1マグニチュードで抵抗の低下を示している。記入した平均値によって示されるように、それらは上方向に置き換えられるとはいえ、離散的な測定は連続的な測定に従っている;すなわち、離散的な測定の平均値が近似的に1マグニチュードの大きさで同様な下降を示している。結果として、ガス濃度の信頼できる測定が可能となる。
【0033】
電気抵抗、伝導度の代わりに、MOXセンサー1での電圧または電流が検出されうる。
【0034】
前記測定は低容量バッテリーを用いてバッテリー式でも実行されうる。結果として、例えばRFIDタグ(radio frequency identification)上での測定に対して用いられるデバイスを提供することを可能にしている。そのようなRFIDタグは食品輸送、または他の痛みやすい商品の輸送のような製品のロジスティック、または他の分野においてますます利用されている。これは、低いガス濃度のモニタリングが重要な全ての目的に対して有利である。
【0035】
全体の測定デバイスはチップ上の集積回路の形で提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態によるMOXガスセンサーを動作させるためのデバイスの簡易化したブロック図である。
【図2】連続的な動作、及び本発明の実施形態による動作の間で、MOXセンサーで測定された抵抗の推移を示す図表である。
【図3a】アンモニアを測定した場合に対して、図2において円で記された測定曲線の領域拡大図である。
【図3b】エタンを測定した場合に対して、図2において円で記された測定曲線の領域拡大図である。
【図4】本発明の実施形態によるアンモニアの測定に対する図2と同様の図表である。下部領域に示された実線は従来の方法で連続的に加熱されたMOXガスセンサーに対する推移を示している。上部領域に示された線は離散的な測定時間で不連続に加熱されたMOXセンサーによる測定を示している。破線の水平な延長線は本発明の実施形態による不連続な測定のそれぞれの平均値を示している。
【図5】本発明の実施形態によるエタンの測定に対する図2と同様の図表である。下部領域に示された実線は従来の方法で連続的に加熱されたMOXガスセンサーに対する推移を示している。上部領域に示された線は離散的な測定時間で不連続に加熱されたMOXセンサーによる測定を示している。破線の水平な延長線は本発明の実施形態による不連続な測定のそれぞれの平均値を示している。
【符号の説明】
【0037】
1 MOXセンサー
2 電源
3 測定回路
4 マイクロコントローラ
5 センサードライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に存在するガス濃度を測定するために提供されたMOXガスセンサーの動作方法であって、
電源(2)によってMOXセンサー(1)を加熱する段階と、
ガス濃度を示す前記センサー(1)の電気出力量が検出及び解析される段階と、を含み、
前記MOXセンサー(1)は電源(2)によって離散的な測定時間で不連続に加熱され、及び、ガス濃度を示す測定値は、離散的な測定時間の間で検出されたセンサー(1)の電気出力量から生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
平均値が前記離散的な測定時間の間に検出された前記出力量から生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス濃度を示す前記測定値は、前記離散的な測定時間の一部の間でその都度測定された前記MOXセンサー(1)の前記電気出力量から生成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記電気出力量は、離散的な測定時間の一部の間で前記電気出力量が本質的に一定の間にその都度測定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記MOXセンサー(1)の前記抵抗または伝導度が前記電気出力量として検出されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MOXセンサー(1)の前記電圧または電流が前記電気出力量として検出されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガスセンサー(1)の周囲に存在するアンモニアの前記ガス濃度が測定されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガスセンサー(1)の周囲に存在するエタンの前記ガス濃度が測定されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法はバッテリー式デバイスによって実装されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法はRFIDタグ上に提供されるバッテリー式デバイスによって実装されうることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
周囲に存在するガス濃度を測定するために提供されたMOXガスセンサー(1)を動作させるためのデバイスであって、前記ガスセンサーを加熱するための電源(2)と、及び前記ガス濃度を示す前記ガスセンサー(1)の電気出力量を検出及び解析するための測定装置(3,4)と、を有しており、
前記電源(2)は離散的な測定時間で前記MOXセンサー(1)を不連続的に加熱するために提供され、及び前記測定装置(3,4)は離散的な測定時間の間にその都度検出される前記センサー(1)の電気出力量から前記ガス濃度を示す測定値を生成するために提供されることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
前記測定装置(3,4)は、前記離散的な測定時間の間でその都度測定される電気出力量から平均値を生成するために提供されることを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記測定装置(3,4)は、前記離散的な測定時間の一部の間でその都度MOXセンサー(1)の前記電気出力量から、前記ガス濃度を示す前記測定値を生成するために提供されることを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記測定装置(3,4)は、前記離散的な測定時間の一部の間で前記電気出力量が本質的に一定な間にその都度前記電気出力量を検出するために提供されることを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記測定装置(3)は、前記電気出力量として前記MOXセンサー(1)の抵抗または伝導度を検出するために提供されることを特徴とする請求項11ないし14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記測定装置(3)は、前記電気出力量として前記MOXセンサー(1)で電圧または電流を検出するために提供されることを特徴とする請求項11ないし14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスは、前記ガスセンサー(1)の周囲においてアンモニアの前記ガス濃度を測定するために提供されることを特徴とする請求項11ないし16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスは、前記ガスセンサー(1)の周囲におけるエタンの前記ガス濃度を測定するために提供されることを特徴とする請求項11ないし16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスはバッテリー式であることを特徴とする請求項11ないし18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスはバッテリー式であって、RFIDタグ上に提供されることを特徴とする請求項19に記載のデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−539069(P2009−539069A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512405(P2009−512405)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000819
【国際公開番号】WO2007/137549
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(503195311)エーアーデーエス・ドイッチュラント・ゲーエムベーハー (11)
【Fターム(参考)】