説明

MR画像生成方法およびMRI装置

【課題】複数のコイルを用いて、少ない演算量かつ短い処理時間で、水脂肪分離画像を得る。
【解決手段】水と脂肪に位相差を付けないシーケンスにより被検体からのNMR信号をボディコイルおよび受信コイルで並列に受信して校正データを収集し(ステップQ1)、水と脂肪の位相差を利用して両者を区別するためのシーケンスにより被検体からのNMR信号を受信コイルで並列に受信して各コイルの本データを収集し(ステップQ2)、校正データと本データを基に合成画像を生成し(ステップQ3)、合成画像から水画像と脂肪画像を生成する(ステップQ4)。
【効果】演算量が多く且つ処理時間がかかる水脂肪分離処理(ステップQ4)を、コイル毎に行うのではなく、合成画像Vについて行うから、演算量を減らすことが出来、処理時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MR(Magnetic Resonance)画像生成方法およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置に関し、さらに詳しくは、複数のコイルを用いて、少ない演算量かつ短い処理時間で、正確な水脂肪分離画像を得ることが出来るMR画像生成方法およびMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LCSSFP(Linear Combination SSFP)法やディクソン(Dixon)法や3ポイント・ディクソン(Dixon)法などの水脂肪分離画像を得る手法、すなわち、水と脂肪との位相差を利用して水画像または脂肪画像を得る技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照。)。
他方、サム・オブ・スクエア(sum of square)法などの画像合成法やSENSE(SENSitivity Encoding)法などのパラレルイメージングの技術、すなわち、複数のコイルで並列に被検体からのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号を受信し処理して1つのMR画像を生成する技術が知られている(例えば、特許文献3、非特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第3353826号公報
【特許文献2】特開2003−52667号公報
【特許文献3】特開2003−79595号公報
【非特許文献1】Vasanawala et al.“Linear Combination Steady State Free Precession MRI”Magnetic Resonance in Medicine 43(2000) pp.82-90
【非特許文献2】Klaas P. Pruessmann et al.“SENSE:Sensitivity Encoding for Fast MRI”Magnetic Resonance in Medicine 42(1999) pp.952-962
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のコイルを用いて水脂肪分離画像を得るための従来の手法の手順は、例えば次の(1)〜(4)のようになる。
(1)水に対して脂肪に−90゜の位相差を付けるシーケンスにより被検体からのNMR信号をI(≧2)個のコイルで並列に受信してコイル毎の複素数画像H-R(1)〜D-R(I)を生成する。
(2)水に対して脂肪に+90゜の位相差を付けるシーケンスにより被検体からのNMR信号をI個のコイルで並列に受信してコイル毎の複素数画像H+R(1)〜H+R(I)を生成する。
(3)コイル毎の水画像w(i)=H-R(i)+H+R(i)およびコイル毎の脂肪画像f(i)=H-R(i)−H+R(i)、i=1,2,…,Iを得る。
(4)コイル毎の水画像w(i)を、例えばパラレルイメージングのサム・オブ・スクエア法を利用して合成し、1つの水画像Wを得る。また、コイル毎の脂肪画像f(i)を、同様にして合成し、1つの脂肪画像Fを得る。
【0005】
しかしながら、上記手順では、(3)でコイル数に応じた回数だけ演算を繰り返し行う必要があり、演算量が多くなると共に処理時間が長くかかる問題点がある。
また、複数のコイルを用いて水脂肪分離画像を得るための従来の手法と従来のパラレルイメージングの技術とを組み合わせることが考えられる。ところが、従来のパラレルイメージングの技術では、スキャン時間短縮のためグラジエントエコー系シーケンスが用いられており、このグラジエントエコー系シーケンスでは校正データの水と脂肪とに位相差が生じ、本データに含まれる水と脂肪の位相差が合成過程で失われてしまい、正確な水脂肪分離画像が得られない問題点がある。
そこで、本発明の目的は、複数のコイルを用いて、少ない演算量かつ短い処理時間で、正確な水脂肪分離画像を得ることが出来るMR画像生成方法およびMRI装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、本発明は、水と脂肪とに位相差を付けないシーケンスによりコイルの感度分布を表す校正データを収集する校正スキャン過程と、水と脂肪の位相差を利用して両者を分離するためのシーケンスにより被検体からのNMR信号をI(≧2)個のコイルで並列に受信してコイル毎の本データを収集する本スキャン過程と、前記校正データと前記コイル毎の本データを基に位相エンコード方向の折り返しを除去する演算を行い合成画像を生成する合成過程と、前記合成画像から水画像および脂肪画像の少なくとも一方を生成する水脂肪分離過程とを有することを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第1の観点によるMR画像生成方法では、演算量が多く且つ処理時間がかかる水脂肪分離処理を、コイル毎に行うのではなく、合成画像について行うから、演算量を減らすことが出来、処理時間を短縮できる。
【0007】
第2の観点では、本発明は、上記第1の観点によるMR画像生成方法において、前記校正スキャン過程で、スピンエコー系シーケンスを用いることを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第2の観点によるMR画像生成方法では、スピンエコー系シーケンスを用いるため、校正データの水と脂肪とに位相差が生じない。このため、本データに含まれる水と脂肪の位相差が合成過程を経ても保存される(校正データで乱されない)。これによって、合成過程の後で、正確に水脂肪分離過程を実行することが出来るようになる。
なお、従来のパラレルイメージングでは、スキャン時間短縮のため、グラジエントエコー系シーケンスが用いられている。しかし、グラジエントエコー系シーケンスでは、校正データの水と脂肪とに位相差が生じてしまう。このため、本データに含まれる水と脂肪の位相差が合成過程で失われてしまう(校正データで乱されてしまう)。従って、合成過程の後で、水脂肪分離過程を実行できなくなる。
【0008】
第3の観点では、本発明は、上記第2の観点によるMR画像生成方法において、前記スピンエコー系シーケンスが、90−180−エコーの形をとるSE(Spin Echo)、または、90−180−エコー−180−エコー−180−エコー…の形をとるFSE(Fast Spin Echo)、または、FSEでスライス方向にも位相エンコードを行う3D・FSEであることを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第3の観点によるMR画像生成方法では、スピンエコー系シーケンスとして、SE、または、FSE、または、3D・FSEを使うことが出来る。
【0009】
第4の観点では、本発明は、上記第1から上記第3のいずれかの観点によるMR画像生成方法において、前記校正スキャン過程で、前記I個のコイルおよびボディコイルにより校正データを収集することを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第4の観点によるMR画像生成方法では、合成過程で、I個のコイルの各校正データc(i)から複素数画像C(i)を生成し、ボディコイルの校正データc(0)から複素数画像C(0)を生成し、各コイルの複素数画像C(i)をボディコイルの複素数画像C(0)で割り算することにより各コイルの感度マップs(i)を得ることが出来る。そして、各コイルの感度マップs(i)を順に並べた感度マトリクスSと各コイルの本データh(i)から生成した複素数画像H(i)を順に並べた画像マトリクスAとから合成画像Vを求めることが出来る。
V=(SHΨ-1S)-1HΨ-1
上式で、SHは、Sの随伴行列(conjugate transpose)である。Ψは、noise correlation matrix である。noise correlation matrix を使用しない場合は、Ψは、単位行列とする。この計算は、ピクセル毎に行われる。
なお、上式は、非特許文献2(Klaas P. Pruessmann et al.“SENSE:Sensitivity Encoding for Fast MRI”Magnetic Resonance in Medicine 42(1999) pp.952-962)に記載されている。
【0010】
第5の観点では、本発明は、上記第1から上記第3のいずれかの観点によるMR画像生成方法において、前記校正スキャン過程で、前記I個のコイルのみにより校正データを収集することを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第5の観点によるMR画像生成方法では、合成過程で、I個のコイルの各校正データc(i)から複素数画像C(i)を生成し、それら複素数画像C(i)にサム・オブ・スクエア法を適用して各コイルの感度マップs(i)を得ることが出来る。そして、各コイルの感度マップs(i)を順に並べた感度マトリクスSと各コイルの本データh(i)から生成した複素数画像H(i)を順に並べた画像マトリクスAとから合成画像Vを求めることが出来る。
V=(SHΨ-1S)-1HΨ-1
なお、上式は、非特許文献2(Klaas P. Pruessmann et al.“SENSE:Sensitivity Encoding for Fast MRI”Magnetic Resonance in Medicine 42(1999) pp.952-962)に記載されている。
【0011】
第6の観点では、本発明は、上記第1から上記第5のいずれかの観点によるMR画像生成方法において、前記本スキャン過程で、水と脂肪の位相差が2π/n(n≧2)になるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成過程で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H(i)とから合成画像Vを生成し、前記水脂肪分離過程で、前記合成画像Vから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第6の観点によるMR画像生成方法は、公知の特許文献1(特許第3353826号公報)に記載されている技術を本発明に応用したものである。
【0012】
第7の観点では、本発明は、上記第1から上記第5のいずれかの観点によるMR画像生成方法において、前記本スキャン過程で、ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成過程で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記水脂肪分離過程で、前記合成画像V1とV2とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第7の観点によるMR画像生成方法は、公知のディクソン法を本発明に応用したものである。
【0013】
第8の観点では、本発明は、上記第1から上記第5のいずれかの観点によるMR画像生成方法において、前記本スキャン過程で、3ポイント・ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成過程で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i),H3(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H3(i)とから合成画像V3を生成し、前記水脂肪分離過程で、前記合成画像V1とV2とV3とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMR画像生成方法を提供する。
上記第8の観点によるMR画像生成方法は、公知の3ポイント・ディクソン法を本発明に応用したものである。
【0014】
第9の観点では、本発明は、ボディコイルと、I(≧2)個のコイルと、水と脂肪とに位相差を付けないシーケンスによりコイルの感度分布を表す校正データを収集する校正スキャン手段と、水と脂肪の位相差を利用して両者を分離するためのシーケンスにより被検体からのNMR信号を前記I(≧2)個のコイルで並列に受信してコイル毎の本データを収集する本スキャン手段と、前記校正データと前記コイル毎の本データを基に位相エンコード方向の折り返しを除去する演算を行い合成画像を生成する合成手段と、前記合成画像から水画像および脂肪画像の少なくとも一方を生成する水脂肪分離手段とを具備することを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第9の観点によるMRI装置では、前記第1の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0015】
第10の観点では、本発明は、上記第9の観点によるMRI装置において、前記校正スキャン手段で、スピンエコー系シーケンスを用いることを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第10の観点によるMRI装置では、前記第2の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0016】
第11の観点では、本発明は、上記第10の観点によるMRI装置において、前記スピンエコー系シーケンスが、90−180−エコーの形をとるSE(Spin Echo)、または、90−180−エコー−180−エコー−180−エコー…の形をとるFSE(Fast Spin Echo)、または、FSEでスライス方向にも位相エンコードを行う3D・FSEであることを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第11の観点によるMRI装置では、前記第3の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0017】
第12の観点では、本発明は、上記第9から上記第11のいずれかの観点によるMRI装置において、前記校正スキャン手段で、前記I個のコイルおよびボディコイルにより校正データを収集することを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第12の観点によるMRI装置では、前記第4の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0018】
第13の観点では、本発明は、上記第9から上記第11のいずれかの観点によるMRI装置において、前記校正スキャン手段で、前記I個のコイルのみにより校正データを収集することを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第13の観点によるMRI装置では、前記第5の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0019】
第14の観点では、本発明は、上記第9から上記第13のいずれかの観点によるMRI装置において、前記本スキャン手段で、水と脂肪の位相差が2π/n(n≧2)になるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成手段で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H(i)とから合成画像Vを生成し、前記水脂肪分離手段で、前記合成画像Vから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第14の観点によるMRI装置では、前記第6の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0020】
第15の観点では、本発明は、上記第9から上記第13のいずれかの観点によるMRI装置において、前記本スキャン手段で、ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成手段で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記水脂肪分離手段で、前記合成画像V1とV2とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第15の観点によるMRI装置では、前記第7の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【0021】
第16の観点では、本発明は、上記第9から上記第13のいずれかの観点によるMRI装置において、前記本スキャン手段で、3ポイント・ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成手段で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i),H3(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H3(i)とから合成画像V3を生成し、前記水脂肪分離手段で、前記合成画像V1とV2とV3とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMRI装置を提供する。
上記第16の観点によるMRI装置では、前記第8の観点によるMR画像生成方法を好適に実施することが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明のMR画像生成方法およびMRI装置によれば、複数のコイルを用いて、少ない演算量かつ短い処理時間で、正確な水脂肪分離画像を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1にかかるMRI装置100を示すブロック図である。
このMRI装置100において、マグネットアセンブリ101は、内部に被検体を挿入するための空間部分(ボア)を有し、この空間部分を取りまくようにして、被検体に一定の静磁場を印加する静磁場コイル101Cと、X軸,Y軸,Z軸の勾配磁場を発生するための勾配コイル101Gと、被検体内の原子核のスピンを励起するためのRFパルスを与える送信コイル101Tと、被検体からのNMR信号を受信するためのボディコイル101(0)およびIチャンネルの受信コイル101(1),…,101(I)とが配置されている。
静磁場コイル101C,勾配コイル101G,送信コイル101Tは、それぞれ静磁場電源102,勾配コイル駆動回路103,RF電力増幅器104に接続されている。また、ボディコイル101(0),受信コイル101(1),…,101(I)は、それぞれ前置増幅器105(0),105(1),…,105(I)に接続されている。
なお、ボディコイル101(0)を送信コイル101Tとして使用する場合もある。
また、静磁場コイル101Cの代わりに永久磁石を用いてもよい。
【0025】
シーケンス記憶回路108は、計算機107からの指令に従い、記憶しているパルスシーケンスに基づいて勾配コイル駆動回路103を操作し、勾配コイル101Gから勾配磁場を発生させると共に、ゲート変調回路109を操作し、RF発振回路110の搬送波出力信号を所定タイミング・所定包絡線形状・所定位相のパルス状信号に変調し、それをRFパルスとしてRF電力増幅器104に加え、RF電力増幅器104でパワー増幅した後、送信コイル101Tに印加する。
【0026】
セレクタ111は、ボディコイル101(0),受信コイル101(1),…,101(I)で受信され前置増幅器105(0),105(1),…,105(I)で増幅されたNMR信号をm個のレシーバ112(1),112(2),…,112(m)に伝達する。これは、ボディコイル101(0),受信コイル101(1),…,101(I)とレシーバ112(1),112(2),…,112(m)の対応を可変にするためである。
【0027】
レシーバ112(1),112(2),…,112(m)は、NMR信号をデジタル信号に変換し、計算機107に入力する。
【0028】
計算機107は、レシーバ112からデジタル信号を読み込み、処理を施して、MR画像を生成する。また、計算機107は、操作卓113から入力された情報を受け取るなどの全体的な制御を受け持つ。
表示装置106は、画像やメッセージを表示する。
【0029】
図2は、実施例1に係るMR画像生成処理を示すフロー図である。
ステップQ1では、水と脂肪に位相差を付けないシーケンスにより被検体からのNMR信号をボディコイル101(0),受信コイル101(1),…,101(I)で並列に受信して各コイルの校正データc(0),c(1),…,c(I)を収集する。
【0030】
図3に、水と脂肪に位相差を付けないシーケンスを例示する。
この校正データ収集用シーケンスCSでは、まず、フリップ角が90゜の励起パルスRと,スライス勾配ssを印加する。次に、フリップ角が180゜の第1の反転パルスP1とスライス勾配ssを印加し、位相エンコードパルスgy1iを印加する。次に、リードパルスgxを印加しながら、エコーe1からNMR信号を受信する。その後、リワインドパルスgy1rを印加する。
次に、第2の反転パルスP2とスライス勾配ssを印加し、位相エンコードパルスgy2iを印加し、リードパルスgxを印加しながら、エコーe2からNMR信号を受信する。その後、リワインドパルスgy2rを印加する。
以下同様にして、NMR信号を受信することを繰り返す。
なお、勾配コイル101GのX軸,Y軸,Z軸の組み合わせによりスライス軸,位相エンコード軸,リード軸が形成される。
【0031】
図3の校正データ収集用シーケンスCSはFSEシーケンスであるが、SEシーケンスや3D・FSEシーケンスなどのスピンエコー系シーケンスにより、校正データc(0),c(1),…,c(I)を収集してもよい。
【0032】
図2に戻り、ステップQ2では、水と脂肪の位相差を利用して両者を区別するためのシーケンスにより被検体からのNMR信号を受信コイル101(1),…,101(I)で並列に受信して各コイルの本データh(1),…,h(I)を収集する。
【0033】
図4,図5に、水と脂肪の位相差を利用して両者を区別するためのシーケンスを例示する。
図4の本データ収集用シーケンスHS1では、水の位相と脂肪の位相とがケミカルシフト(chemical shift)により反対位相(Out-of-Phase)になる反対位相時間T_outを繰り返し時間TRとして設定し、φ1=3π/2とするときRFパルスの位相を0×φ1,1×φ1,2×φ1,3×φ1,…の順に変える定常状態パルスシーケンスにより本データh1(1),…,h1(I)を収集する。
また、図5の本データ収集用シーケンスHS2では、水の位相と脂肪の位相とがケミカルシフトにより反対位相になる反対位相時間T_outを繰り返し時間TRとして設定し、φ2=π/2とするときRFパルスの位相を0×φ2,1×φ2,2×φ2,3×φ2,…の順に変える定常状態パルスシーケンスにより本データh2(1),…,h2(I)を収集する。
【0034】
図4,図5の本データ収集用シーケンスHS1,HS2は、LCSSFP法のシーケンスである。
【0035】
図2に戻り、ステップQ3では、校正データc(0),c(1),…,c(I)と本データh(0),h(1),…,h(I)を基に、例えば次の手順により、合成画像Vを生成する。
(1)校正データc(0),c(1),…,c(I)から複素数画像C(0),C(1),…,C(I)を生成し、ボディコイル101(0)の複素数画像C(0)で受信コイル毎の複素数画像C(1),…,C(I)を割り算して各受信コイルの感度マップs(1),…,s(I)を求め、それら感度マップs(1)〜s(I)を順に並べて感度マトリクスSを得る。
(2)本データh1(1),…,h1(I)から複素数画像H1(1),…,H1(I)を生成し、それら複素数画像H1(1),…,H1(I)を順に並べて複素数画像マトリクスA1を得る。
(3)本データh2(1),…,h2(I)から複素数画像H2(1),…,H2(I)を生成し、それら複素数画像H2(1),…,H2(I)を順に並べて複素数画像マトリクスA2を得る。
(4)感度マトリクスSと複素数画像マトリクスA1から合成画像V1を得る。
V1=(SHΨ-1S)-1HΨ-1A1
(5)感度マトリクスSと複素数画像マトリクスA2から合成画像V2を得る。
V2=(SHΨ-1S)-1HΨ-1A2
【0036】
ステップQ4では、合成画像Vから、例えば次の手順により、水画像Wと脂肪画像Fを生成する。
(1)W=V1+exp(i×π/2)×V2
(2)F=V1−exp(i×π/2)×V2
【0037】
実施例1のMRI装置100によれば、演算量が多く且つ処理時間がかかる水脂肪分離処理(ステップQ4)を、コイル毎に行うのではなく、合成画像Vについて行うから、演算量を減らすことが出来、処理時間を短縮できる。また、校正スキャンでスピンエコー系シーケンスを用いるため、校正データcの水と脂肪とに位相差が生じない。このため、本データhに含まれる水と脂肪の位相差が合成過程(ステップQ3)を経ても保存される(校正データcで乱されない)。従って、合成過程(ステップQ3)の後で、正確に水脂肪分離過程(ステップQ4)を実行することが出来るようになる。
【実施例2】
【0038】
ボディコイル101(0)は受信に用いず、受信コイル101(1),…,101(I)だけで校正データc(1),…,c(I)を得て、サム・オブ・スクエア法により、各コイルの感度マップs(1),…,s(I)を求めてもよい。
【実施例3】
【0039】
特許文献1(特許第3353826号公報)に記載されている方法を本発明に適用してもよい。
その場合、本スキャン過程(ステップQ2)で、水と脂肪の位相差が2π/n(n≧2)になるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、合成過程(ステップQ3)で、校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、本データからコイル毎の複素数画像H(i)を生成し、複素数画像C(i)と複素数画像H(i)とから合成画像Vを生成し、水脂肪分離過程(ステップQ4)で、合成画像Vから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することになる。
【実施例4】
【0040】
ディクソン法を本発明に適用してもよい。
その場合、本スキャン過程(ステップQ2)で、ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、合成過程(ステップQ3)で、校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i)を生成し、複素数画像C(i)と複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、複素数画像C(i)と複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、水脂肪分離過程(ステップQ4)で、合成画像V1とV2とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することになる。
【実施例5】
【0041】
3ポイント・ディクソン法を本発明に適用してもよい。
その場合、本スキャン過程(ステップQ2)で、3ポイント・ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、合成過程(ステップQ3)で、校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i),H3(i)を生成し、複素数画像C(i)と複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、複素数画像C(i)と複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、複素数画像C(i)と複素数画像H3(i)とから合成画像V3を生成し、水脂肪分離過程(ステップQ4)で、合成画像V1とV2とV3とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することになる。
【実施例6】
【0042】
Fat Saturation RFpulse,FEMR(Fluctuation Equilibrium MR)などの手法を本発明に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のMR画像生成方法及びMRI装置は、水画像や脂肪画像を得るのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1に係るMRI装置を示す構成ブロック図である。
【図2】実施例1に係るMR画像生成処理を示すフロー図である。
【図3】校正データ収集用シーケンスの一例を示す説明図である。
【図4】本データ収集用シーケンスの一例を示す説明図である。
【図5】本データ収集用シーケンスの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
8 シーケンス記憶回路
100 MRI装置
107 計算機
101T 送信コイル
101(0) ボディコイル
101(1)〜101(I) 受信コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と脂肪とに位相差を付けないシーケンスによりコイルの感度分布を表す校正データを収集する校正スキャン過程と、水と脂肪の位相差を利用して両者を分離するためのシーケンスにより被検体からのNMR信号をI(≧2)個のコイルで並列に受信してコイル毎の本データを収集する本スキャン過程と、前記校正データと前記コイル毎の本データを基に位相エンコード方向の折り返しを除去する演算を行い合成画像を生成する合成過程と、前記合成画像から水画像および脂肪画像の少なくとも一方を生成する水脂肪分離過程とを有することを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のMR画像生成方法において、前記校正スキャン過程で、スピンエコー系シーケンスを用いることを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のMR画像生成方法において、前記スピンエコー系シーケンスが、90−180−エコーの形をとるSE(Spin Echo)、または、90−180−エコー−180−エコー−180−エコー…の形をとるFSE(Fast Spin Echo)、または、FSEでスライス方向にも位相エンコードを行う3D・FSEであることを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のMR画像生成方法において、前記校正スキャン過程で、前記I個のコイルおよびボディコイルにより校正データを収集することを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のMR画像生成方法において、前記校正スキャン過程で、前記I個のコイルのみにより校正データを収集することを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のMR画像生成方法において、前記本スキャン過程で、水と脂肪の位相差が2π/n(n≧2)になるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成過程で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H(i)とから合成画像Vを生成し、前記水脂肪分離過程で、前記合成画像Vから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のMR画像生成方法において、前記本スキャン過程で、ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成過程で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記水脂肪分離過程で、前記合成画像V1とV2とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のMR画像生成方法において、前記本スキャン過程で、3ポイント・ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成過程で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i),H3(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H3(i)とから合成画像V3を生成し、前記水脂肪分離過程で、前記合成画像V1とV2とV3とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMR画像生成方法。
【請求項9】
ボディコイルと、I(≧2)個のコイルと、水と脂肪とに位相差を付けないシーケンスによりコイルの感度分布を表す校正データを収集する校正スキャン手段と、水と脂肪の位相差を利用して両者を分離するためのシーケンスにより被検体からのNMR信号を前記I(≧2)個のコイルで並列に受信してコイル毎の本データを収集する本スキャン手段と、前記校正データと前記コイル毎の本データを基に位相エンコード方向の折り返しを除去する演算を行い合成画像を生成する合成手段と、前記合成画像から水画像および脂肪画像の少なくとも一方を生成する水脂肪分離手段とを具備することを特徴とするMRI装置。
【請求項10】
請求項9に記載のMRI装置において、前記校正スキャン手段で、スピンエコー系シーケンスを用いることを特徴とするMRI装置。
【請求項11】
請求項10に記載のMRI装置において、前記スピンエコー系シーケンスが、90−180−エコーの形をとるSE(Spin Echo)、または、90−180−エコー−180−エコー−180−エコー…の形をとるFSE(Fast Spin Echo)、または、FSEでスライス方向にも位相エンコードを行う3D・FSEであることを特徴とするMRI装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載のMRI装置において、前記校正スキャン手段で、前記I個のコイルおよびボディコイルにより校正データを収集することを特徴とするMRI装置。
【請求項13】
請求項9から請求項11のいずれかに記載のMRI装置において、前記校正スキャン手段で、前記I個のコイルのみにより校正データを収集することを特徴とするMRI装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれかに記載のMRI装置において、前記本スキャン手段で、水と脂肪の位相差が2π/n(n≧2)になるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成手段で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H(i)とから合成画像Vを生成し、前記水脂肪分離手段で、前記合成画像Vから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMRI装置。
【請求項15】
請求項9から請求項13のいずれかに記載のMRI装置において、前記本スキャン手段で、ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成手段で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記水脂肪分離手段で、前記合成画像V1とV2とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMRI装置。
【請求項16】
請求項9から請求項13のいずれかに記載のMRI装置において、前記本スキャン手段で、3ポイント・ディクソン法にかかるシーケンスによりコイル毎の本データを収集し、前記合成手段で、前記校正データからコイル毎の複素数画像C(i)を生成し、前記本データからコイル毎の複素数画像H1(i),H2(i),H3(i)を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H1(i)とから合成画像V1を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H2(i)とから合成画像V2を生成し、前記複素数画像C(i)と前記複素数画像H3(i)とから合成画像V3を生成し、前記水脂肪分離手段で、前記合成画像V1とV2とV3とから水画像Wおよび脂肪画像Fの少なくとも一方を生成することを特徴とするMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−75380(P2006−75380A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263290(P2004−263290)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】