説明

MRIの自動3次元分割方法

【課題】3次元磁気共鳴画像から被験者の乳房のような関心体積(volume-of-interest)を分割する方法を提供する。
【解決手段】3次元画像は、複数の空間的に連続的な2次元画像を含んでも良い。その画像を単一信号に変換するが、その単一信号を分析して、単一信号における最大位相一致に相応する画像における位置を決定する。これらの位置の配向を決定して、関心体積の境界面を推定するためにその位置と共に使用する。推定された表面は、そのまま画像を分割するのに使用されても良く、または、画像を分割するために用いられる統計的形状モデルのような表面モデルを生成するのに使用されても良い。本発明の方法は、乳房組織と、胸壁の内部または胸壁の周りの組織間に低いコトラスト対ノイズの比率を有する画像における胸壁境界においても、被験者の乳房を分割することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI(magnetic resonance imaging)用システムおよびその方法に関する。より詳細に、本発明は、乳房の画像のようなMRIシステムで得られた画像を自動的に分割するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんは、現に女性にもっとも一般的に診断され、また有意な死因となっている病気である。乳房に存在する密集した実質の量(amount of dense parenchyma)を示す乳房密度は、乳がんを発病させる有意義なリスクファクタ(risk factor)として同定された。リスクファクタとしての乳房密度に関する疫学的証拠の大部分は、x線マンモグラフィによる乳がん検診データから得られるが、一部の研究者は、MRIのように、異なる画像モダリティを備えた乳房密度を検査することの利点を理解している。MRIは、イオン化放射能への露出からのリスクなしに、体積乳房密度(volumetric breast density)を評価するための、乳房の3次元図(three-dimensional view)を提供する多用途の画像化モダルティ(imaging modality)である。
【0003】
しかしながら、MRIを使用した乳房密度(breast density)の定量的評価(quantitative evaluation)は、乳房の密度を正確に測定する標準化アルゴリズムの欠如、および、一貫性のない(inconsistent)乳房境界分割(boundary segmentation)を含めたいくつかの壁にぶつかる。乳房を分割して、乳房の3次元の総体積(total volume)を抽出する、一貫性のある(consistent)健全な(robust)コンピュータを使った分析ツールを持つほうが望ましい。
【0004】
MRIを使った乳房密度の定量的な評価のために、乳房の水および脂肪の別々の画像を得ることができ、そして、乳房の水は、乳腺(fibroglandular)組織および基質(stroma)に代わって測定される。しかし、これらの方法では、乳房の分割からは、さらにノイズアーチファクト(noise artifact)を取り除くとともに、胸壁の周囲筋肉組織を排除する必要がある。したがって、健全かつ信頼できる自動分割が求められる。乳房MRIでは、画像強度の分布が、選択されたMRIスキャニングプロトコールおよび取得パラメータ(acquisition parameter)に依存することから、選択的な閾値化(selective thresholding)のようなグレースケール強度の分離に基づく分割は、不十分で、かつ、異なるスキャニングプロトコールを使用したときの一般化(generalization)に欠ける。また、乳房と隣接構造(例えば、胸の筋肉)間のコントラストは、明確に区画できない(つまり、明確ではない)。
【0005】
したがって、MRIで得られた3次元画像から乳房組織を分割するための方法であって、その分割が画像におけるグレースケール強度差(grayscale intensity difference)に依存せずに、異なるスキャニングプロトコールで得られた画像が信頼性のある比較のために同様に分割され得る方法に対するニーズが依然として存在していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、3次元磁気共鳴画像から被験者の乳房のような関心体積(volume-of-interest)を分割する方法を提供することによって、前述の問題を解決する。その方法は、3次元画像を単一信号(monogenic signal)に転換することによる。その単一信号から、グレースケール強度から独立した、関心体積の境界の測定(値)は得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの側面において、本発明は、磁気共鳴画像システム(以下、「MRIシステム」という。)で得た、被験者を示す、3次元画像を自動的に分割する方法を提供する。その方法は、a)前記MRIシステムを使用して、前記被験者の画像データを得るステップと、b)前記ステップa)から得た前記画像データから、前記被験者および分割すべき関心体積を示す3次元画像を再構成するステップと、c)前記ステップb)において再構成された前記3次元画像から、前記3次元画像を示す単一信号を生成するステップと、d)前記ステップc)において生成された前記単一信号を分析して、最大位相一致点に相応する前記3次元画像における位置を決定するステップと、e)前記ステップd)において決定された前記最大位相一致点それぞれの配向を決定するステップと、f)決定された前記最大位相一致点、及び、決定された前記最大位相一致点それぞれの前記配向を使用して、前記関心体積の表面を推定するステップと、g)推定された前記関心体積の表面を使用して、前記3次元画像から前記関心体積を分割するステップと、を含む。同様に、推定された表面を使用して、関心体積の統計的形状モデルを生成しても良く、そして、この統計的形状モデルを使用して3次元画像を分割しても良い。
【0008】
また、別の側面において、本発明は、医療画像から被験者の乳房を示す関心体積を自動的に分割する方法を提供する。その方法は、a)医療画像システムで得た画像を用意するステップと、b)前記ステップa)において用意された前記画像を単一信号に変換するステップと、c)最大位相一致を有する前記画像における位置に相応する前記単一信号における位置を決定するステップと、d)最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの配向を決定するステップと、e)最大位相一致を有する前記画像における前記位置、及び、最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの前記配向を使用して、分割すべき前記関心体積の境界面を推定するステップと、f)推定された前記境界面を使用して、前記画像から前記関心体積を分割するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
単一信号における最大位相一致に相応する画像における位置、および、その位置の配向を決定し、その決定された位置および配向を使用して、関心体積の境界面を推定する。推定された表面は、そのまま画像を分割するのに使用されても良く、または、画像を分割するために用いられる統計的形状モデルのような表面モデルを生成するのに使用されても良い。本発明の方法は、乳房組織と、胸壁の内部または胸壁の周りの組織間に低いコトラスト対ノイズの比率を有する画像における胸壁境界においても、被験者の乳房を分割する信頼できる方法である。
【0010】
本発明の前述の特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明から明確になる。詳細な説明は、添付した図面に基づいて説明されているが、本発明の好ましい実施例を記載したのに過ぎない。こうした実施例は、必ずしも本発明のすべての範囲を示すものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって定まる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に基づく、3次元MRI(magnetic resonance image)を自動的に分割する方法の一例のステップを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に基づく3次元画像における最大位相一致(maximal phase congruency)の点を決定するための方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】MRIシステムの一例のブロックダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
3次元MRI(magnetic resonance image)から関心体積(volume-of-interest)を自動的に分割するシステムおよび方法を提供する。所定の関心体積の一例は、患者の乳房である。ここでは3次元画像の処理について説明するが、当業者は、3次元画像体積が、複数の連続した2次元画像をも含み得ることをも理解しているだろう。一般的に、こうした分割(segmentation)についてはポアゾン‐ラプラスフレームワーク(Poisson-Laplacian framework)を提供する。所定の関心体積のエッジ(edge)を検出するために位相一致(phase congruency)が使用され、そして、それが強度変化(intensity variation)および不均等性(inhomogeneity)に変わらないがために、その目的で有用である。ポアソン表面再構成(Poisson surface reconstruction)及び、その後のラプラス表面マッピングフレームワーク(Laplacian surface mapping framework)は、関心体積を分割するのに使用される。また、これらのステップは、3次元統計的形状モデル(three-dimensional statistical shape model;SSM)を使用して分割を初期化するのに使用され得る。MRIを分割することに関する説明が続くが、この方法は、X線コンピュータ断層撮影(x-ray computed tomography)およびX線トモシンセシス(x-ray tomosynthesis)などのその他の医学的画像化モダリティ(medical imaging modaility)に適用可能である。
【0013】
図1には、3次元MRI(magnetic resonance image)を自動的に分割する方法の一例の各ステップを示すフローチャートが記載されている。被験者の画像を得るべきかどうかの決定は、決定ブロック102においてなされる。もしそうだとすると(得るべきだとすると)、その方法は、必要に応じて、ステップ104において示すように、画像データの取得し、そして、ステップ106において示すように、分割すべき1以上の画像を再構成することから始まってもよい。しかし、その代わりに、その方法は、前から存在していた画像を処理することで作動するものであっても良い。
【0014】
一般的に、画像データは、MRIシステムを、k−空間において核磁気共鳴(NMR)エコー信号をサンプリングするように命令することによってk−空間データとして得られる。例えば、MRIシステムは、k−空間データを取得するために、fast-spin-echo ("FSE") パルスシーケンスを行うように命令される。その代わりに、その他のパルスシーケンスを使用してk−空間データを得ることも可能である。MIRシステムは、ディクソンイメージング技術(Dixon imaging technique)に基づいて、FSEまたはその他のパルスシーケンスを行うように命令される。ここでは、相応する複数の異なるエコー時間(echo time)において形成された複数の異なるエコー信号をサンプリングすることによってk−空間データが得られる。例えば、三点ディクソンイメージング技術において、k−空間データは、3つの異なるエコー時間で形成された3つの異なるエコー信号から得られる。例えば、3つの異なるそれぞれのエコー時間に相応する3つのk−空間データセットは、水および脂肪信号が0、π、および、2πの相対的位相シフトを含むように得られても良い。0°および2π°位相シフトに相応する画像は、位相内に(in phase)脂肪および水の両方が存在する画像に相応する。そのようなディクソンイメージング技術を使用するときに、これらの同相画像(in-phase image)のひとつは、ここに説明する分割のために用いられ得る。当業者は、異なるコントラスト特徴(contrast characteristics)を有する画像が、異なるパルスシーケンスで同様に得られ、かつ、本発明の方法に基づいて分割されることが理解できるだろう。
【0015】
3次元画像の分割は、画像における最大位相一致点(maximal phase congruency point)の決定から始まる。これに関しては、ステップ108参照。位相一致(phase congruency)は、所定の空間位置における局所位相情報を得るように、ひとそろいの配向フィルター(orientated filter)を介して2次元において計算される。しかし、ひとそろいのフィルターを使用して3次元における位相一致を計算することは、コンピュータ的に(計算的に)複雑で、難しい作業である。なぜならば、それは、多数の適切なフィルター配向(filter orientation)、および、全体の画像スペクトルを均一にカバーするそれらの角拡散(angular spread)を定義しなければならないからだ。こうした複雑さおよび計算的な負担を克服するために、本発明は、最大局所エネルギー点として最大位相一致点を検出することによって行う。最大位相一致点を同定する(確認する)最大局所エネルギーは、処理すべき画像の単一信号表示(monogenic signal representation)を分析することによって推定することができる。一般に、単一信号(monogenic signal)は、ベクトル値奇数フィルター(vector-value odd filter)を介した、1次元分析信号のより高い次元へ等方性拡張(拡大)(isotropic extension)である。位相一致は、例えば、3次元画像の単一信号表示のフーリエシリーズを分析することによって、計算され得る。例えば、位相一致は、局所エネルギー作用(local energy function)の最大値を決定することによって計算することができる。単一信号は、例えば、Rieszフィルター(Riesz filter)の成分(component)で元のlog−Gaborフィルター化(filtered)3次元画像をコンボリューションする(convolve)ことによって形成することができる。単一信号は、その後、局所エネルギー関数E(χ)の計算に使用することができる。その局所エネルギー関数E(χ)は次のとおり定義することができる。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、 FMii=1,2,3,4は各単一信号成分である。局所エネルギー関数E(χ)を使用して、次の関係(式)に基づいて、最大位相一致点を決定することができる。
【0018】
【数2】

【0019】
ここで、Anは、信号のn番目のフーリエ成分の震幅(amplitude)であり、PC(χ)は点xにおける位相一致である。局所エネルギー関数が直接的に位相一致関数に比例するために、局所エネルギーのピークは位相一致におけるピークに相応する。ノイズ閾値Tは位相一致の計算に適用され得る。このノイズ閾値は、平均ノイズ反応プラス局所エネルギー分布の標準偏差の数倍kとして計算され得る(次の数参照)。
【0020】
【数3】

【0021】
ここで、μは、平均であり、σは局所エネルギー分布の標準偏差である。ノイズ閾値Tを、信号震幅の和でそれを正規化する前に、局所エネルギーから差し引く。その後、位相一致は次の数式によって求められる。
【0022】
【数4】

【0023】
ここで、εはゼロによる割り算を避けるために使用される小さい正定数(small positive constant)である。位相一致は、周波数の拡散(spread)によって重み付きされて、特徴(feature)は一般的に周波数の有意義な分布において検出される。フィルター反応拡散(filter response spread)の測定(値)は、反応の震幅の和を求め、そして、最も高い個別反応で割って、分布の幅を得ることで、生成することができる。その後、位相一致は、次の数式に基づいて求めることができる。
【0024】
【数5】

【0025】
ここで、W(χ)は、狭い周波数拡散(narrow frequency spread)で位相一致反応(phase congruency response)にペナルティーを科した重み付き関数(weighting function)である。
【0026】
したがって、一例として、最大位相一致点は、3次元画像を1次元単一信号に変換し、その画像の単一信号表示の最大局所エネルギーを計算し、そして、その最大局所エネルギーから最大位相一致点を決定することによって計算することができる。最大位相一致点については、図2に関してさらに詳しく説明することとする。
【0027】
最大位相一致点が決定されれば、ステップ110に示すように、それらはその配向(方向; orientation)を決定するように処理される。例えば、これらの点の配向(方向)は、最大位相一致点(位置)において画像勾配をサンプリングすることによって決定することができる。それらに基づいた特定の配向を有するこれらのサンプル点(sample point)は、黙示的なインジケータ関数(implicit indicator function)χのサンプルと考えられる。そのχの勾配は、次のような、標準点(point normal)によって定義された、ベクトル場(vector field)

に最も近付く。
【0028】
【数6】

【0029】
この変化問題(variational problem)は、ポアソン問題に変換することができる。ポアソン問題では、最も良い解決策を見出すことが、スカラー関数χの最小二乗近似解(least-squared approximate solution)を計算することにかかわる。スカラー関数χのラプラス(Laplacian)は、ベクトル場の発散(divergence)に等しい(次の数参照)。
【0030】
【数7】

【0031】
例えば、スカラー関数χは、適応オクツリー(adaptive octree)で表すことができ、そして、ポアソン方程式は、多数オクツリー深さ(multiple octree depth)の、連続的な、健全な(well-conditioned)スパース線形システム(sparse linear system)において解くことができる。
【0032】
関心体積とその関心体積を取り囲む領域間の不十分な画像コントラストが、画像勾配分析によって、最大位相一致点の配向の信頼できる決定を可能にする場合もあり得る。例えば、分割される画像が乳房のT1―重み付き画像であるときに、分割すべき乳房組織と胸壁の筋肉間に不十分な画像コントラストが存在し得る。この場合、エア−乳房境界(air-breast boundary)において、エア−バックグラウンド閾値化動作(air-background thresholding operation)から再構成された表面の内側ノーマル(inward normal)を分析して、その境界に沿った最大位相一致点の配向情報を提供することができる。胸壁の境界においても同じ手法を適用することができるが、元の画像の閾値化(thresholding)の代わりに、最大位相一致点を使用して胸壁部位表面ノーマル(chest-wall region surface normal)を推定する。このようにして、胸壁境界に相応する最大位相一致点の配向情報を決定することができる。
【0033】
そのように決定された最大位相一致点およびその配向(方向)に関する情報を使用して、分割すべき関心体積の表面を推定する(ステップ112参照)。例えば、最大位相一致点およびその配向(方向)を使用して等輪郭(isocontour)を形成(定義)することができる。最大位相一致点は、高エッジ強度(high edge strength)の特徴(feature)に合致しているので、最大位相一致点は、エッジポテンシャル(edge potential)の領域からのサンプル点(sample point)として解釈される。最大位相一致点は、例えば、ポアソン表面再構成を使用して、関心体積境界等輪郭(volume-of-interest boundary isosurface)を推定する目的でサンプリングすることができる。こうして、未知の表面のトポロジーは、その表面上、またはその近くにある配向された点が与えられれば、推定することができる。例えば、最大位相一致点の配向がスカラー関数χによって提供されると、その関心体積境界(volume-of-interest boundary)に相応する表面は、例えば、適応マーチング・キューブ・アルゴリズム(adaptive marching cube algorithm)を使用して、χの等輪郭(isocontour)として抽出することができる。こうしたアルゴリズムの例が、文献[J. Wilhelms, et al., in "Octrees for Faster Isosurface Generation," ACM Transactions on Graphics, 1992; 11(3):201-227]に記載されている。この表面再構成アルゴリズムは、十分に密集した点サンプル(sufficiently dense point samples)を持って最もよく動作し、小さい孔を埋めることによって不足データ(missing data)とうまく協調する。
【0034】
その後、決定ブロック114において、推定境界面が、統計的形状モデル系分割を使用して、それをさらに精密化する(一段と精妙にする)(refine)必要があるかどうか、または、画像を分割するのにそれを単独で使用するべきかどうかを決定する。統計的形状モデル系分割が望ましい場合には、ステップ116に示すように、推定表面境界を使用した画像の分割が起こる。場合によっては、推定境界面を一段と精妙化した(refine)ほうが望ましい。このときに、推定境界面は、次のモデル系分割用の初期化として使用される。例えば、3次元のランドマーク化(landmarked)境界面形状集団の平均Smeanは、生成された境界面推定値Sestimateに初期化され得る。この平均表面形状Smeanは、グループ毎の登録(group-wise registration)を使用して、境界面形状集団から得ることができる。まず、両方の表面は、例えば、生成された境界面推定値および集団形状アトラス(population shape atlas)の重心(centroid)を整列することによって始まるランドマーク系硬式登録(landmark-based rigid registration)を使用して、同じ符号のフレーム(same reference frame)に持ち込まれる。その後、平均表面から推定境界面までの3次元ランドマークをマッピングすることは、通信問題(correspondence problem)として取り扱うことができる。この問題は、次のラプラス方程式(Laplacian equation)を用いて、公式化することができる。
【0035】
【数8】

【0036】
(Ψ1、Ψ2)が2つの異なる固定ポテンシャル(fixed potential)であるときに、Smean上の境界条件(境界状態)はΨ=Ψ1であり、Sestimate上の境界条件(境界状態)はΨ=Ψ2である。数8のラプラス方程式の解法(solution)は、ネスト化された表面のセットによって定義(区画)されたように、平均表面Smeanから推定境界面Sestimateへの遷移(転移)を提供するスカラー場Ψである。また、数8のラプラス方程式の幾何学的な特徴が与えられれば、流線(streamline)として知られた、両方の表面をつなぐ力線(field line)を定義するユニットベクトル場(unit vector field)Nが、ラプラス解法の正規化ネガティブ勾配(normalized negative gradient)を計算することによって計算される(次の数9参照)。
【0037】
【数9】

【0038】
mean上のP1とSestimate上のP2をつなぐ経路(path)のような2つの相応する点間の経路は、平均表面から始まるレイキャスティングアプローチ(ray casting approach)によって、ユニットベクトル場Nの方向に流線を追うことによって見つけることができる。
【0039】
一方で、統計的形状モデルが統計的形状モデル系分割に使用される場合には、ステップ118に示すように、ラプラスの初期化平均表面Smeanから推定境界面均Sestimateを、画像境界に統計的形状モデルを適合させるための出発点として用いる。この適合された統計的形状モデルは、ステップ116に示すように、画像を分割するために使用することができる。
【0040】
図2には、3次元画像における最大位相一致点を決定する方法の一例のステップを示すフローチャートが記載されている。この方法は、ステップ302に示すように、3次元画像を画像の単一信号表示に変換することから始まる。例えば、3次元画像の単一信号表示は、Riesz変換のような適切な変換演算子(transform operator)で画像をコンボリューションする(convolve)ことによって得られる。実際、Riesz変換の無限インパルス応答は、最初に、log-Gabor関数のようなバンドパスフィルター(bandpass filter)で画像をコンボリューションすることによって減少され得る(次の数10参照)。
【0041】
【数10】

【0042】
ここで、ω0がフィルターの中心周波数(center frequency)であるときに、kはフィルターの帯域幅(filter bandwidth)をスケールするスケーリング・ファクタ(scaling factor)であり、k/ω0は、フィルター中心周波数に対する、周波数ドメインにおけるlog−Gabor遷移(転移)関数を説明するガウス拡散(spread of the Gaussian)の比率である。比率k/ω0は、概して一定に保たれて、異なるスケールにおいて同じ帯域幅を有するフィルターを生成する。
【0043】
log−Gabor応答及びlog−Gaborフィルター化Rieszカーネル応答は、異なるスケール、及び、すべてのスケール上に合計(加重)された結果に適用され得る直交対のフィルター(quadrature pair of filters)である。ひとそろいの配向フィルターアプローチとは対照的に、異なる配向(方向)に沿ったさらなる加重(合計;summation)は不要である。フィルターは、フィルターの中心周波数を変調することによって、異なるスケールについて調整され得る。所定のスケールsにおける中心周波数は、次の方程式によって決定され得る。
【0044】
【数11】

【0045】
ここで、λminはlog-Gaborフィルターの最も小さい波長であり、連続的なスケール間のスケーリング・ファクターである。その波長λminは、スケールの総数nまで拡大される。
【0046】
ステップ204に示すように、生成された単一信号を処理して、信号における局所エネルギーを計算する。その信号における最大局所エネルギー点は、上記数2に記載した関係式を通じた最大位相一致点に相応する。したがって、最大位相一致点の位置は、ステップ206に示すように、計算された局所エネルギー関数から決定することができる。
【0047】
前述の方法が患者の乳房に相当する関心体積を分割するのに使用されるときに、乳房組織が胸壁及びその他の隣接組織から正確に分割されるために、乳房組織の密度をより信頼できるように測定することができる。また、その分割された乳房体積は、コンピュータ支援診断(CAD)システムの有効性を高めるために、そして、分割された乳房体積の表示を放射線科医に提供するなどの一般的な視覚化のために使用することができる。
【0048】
図3には、MRIシステムの一例300が示されている。MRIシステム300は、ディスプレイ304とキーボード306を備えたワークステーション302を含む。ワークステーション302は、市販のオペレーティングシステム(operating system)を実行する市販のプログラマブルマシン(programmable machine)のようなプロセッサ308を含む。ワークステーション302は、スキャン処方箋(scan prescription)がMRIシステム300内に入られるようにするオペレータ・インターフェース(operator interface)を提供する。ワークステーション302は、4つのサーバ:パルスシーケンスサーバ(pulse sequence server)310、データ収集サーバ(data acquisition server)312、データ処理サーバ(data processing server)314、データ保存サーバ(data store server)316に結合している。ワークステーション302と、各サーバ310、312、314、316とは、互いに連絡する(communicate with)ように接続されている。
【0049】
パルスシーケンスサーバ310は、勾配システム(gradient system)318と高周波( "RF")システム320を動作させるワークステーション302からダウンロードされた命令に応答して機能する。所定のスキャンを実行するために必要な勾配波形(gradient waveform)が生成され、勾配システム318に適用される。この勾配システム318は、アセンブリ322における勾配コイルを励起させて、MR信号の位置コード化に使用される磁場勾配Gx、Gv、および、G2を生成する。勾配アセンブリ322は、偏光磁石226及び全身用RFコイル328を含む磁石アセンブリ324の一部を形成する。
【0050】
所定の磁気共鳴パルスシーケンスを実施するRFシステム320によって、RF励起波形(RF excitation waveform)が、RFコイル328、又は、別の局所コイル(local coil)(図3に図示せず)に適用される。RFコイル328、または別の局所コイル(図3には図示せず)によって検出された応答MR信号は、RFシステム320によって受信され、パルスシーケンスサーバ310によって生成されたコマンドの指示下で増幅され、復調され(demodulated)、フィルターされ(filtered)、かつ、デジタル化される。RFシステム320は、MRパルスシーケンスで使用される様々なRFパルスを生成するRF送信機(transmitter)を含む。RF送信機は、パルスシーケンスサーバ310からのスキャン処方箋(scan prescription)および指示(direction)に応答して、所定の周波数、位相、およびパルス振幅波形のRFパルスを生成する。生成されたRFパルスは、全身RFコイル328、又は、1以上の局所コイルまたはコイルアレイ(図3には図示せず)に適用され得る。
【0051】
RFシステム320はまた、1以上のRF受信機チャンネルを含む。各RF受信機チャンネルは、それが接続されたコイル328によって受信したMR信号を増幅するRF増幅器と、受信したMR信号のIおよびQ直交成分(quadrature component)を検出し、デジタル化する検出器と、を含む。したがって、受信したMR信号の大きさ(magnitude)は、IおよびQ成分の二乗和の平方根(数12)によって、任意のサンプルされた点において決定することができ、そして、受信したMR信号の位相は次のように決定することができる(数13)。
【0052】
【数12】

【0053】
【数13】

【0054】
パルスシーケンスサーバ310は、必要に応じて、生理的取得コントローラ(physiological acquisition controller)330からの患者データを受け取る。コントローラ330は、ベローズまたは他の呼吸器の監視装置からの呼吸信号又は電極からの心電図( "ECG")信号のような、患者に接続された様々な異なるセンサーから信号を受信する。このような信号は、通常、パルスシーケンスサーバ310によって使用されて、スキャンの性能を被験者の心拍、又は、呼吸に同期するか(synchronize)、又は、ゲート(gate)する。
【0055】
パルスシーケンスサーバ310はまた、患者および磁石システム(magnet system)の条件(状態)に関連付けられた各種センサーから信号を受信する走査室インターフェース回路(scan room interface circuit)332に接続する。走査室インターフェース回路332を通して、患者位置決めシステム334はスキャン中に所望の位置に患者を移動するコマンドを受信する。
【0056】
RFシステム320によって生成されるデジタル化MR信号サンプルは、データ収集サーバ312によって受信される。データ収集サーバ312は、ワークステーション320からダウンロードされた指示に応答して動作して、データオーバーラン(data overrun)によりデータが失われないように、リアルタイムMRデータを受信するとともに、バッファー記憶装置(buffer storage)を提供する。いくつかのスキャンでは、データ収集サーバ312は、データ処理サーバ314に取得されたMRデータを渡す役割をするに過ぎない。しかし、スキャンの更なる性能を制御するために取得されたMRデータに由来する情報を必要とするスキャンにおいて、データ収集サーバ312は、このような情報を生成し、パルスシーケンスサーバ310にそれ(情報)を伝えるようにプログラムされる。たとえば、予備スキャン(prescan)の際に、MRデータは、取得され、かつ、パスシーケンスサーバ310によって実行されるパルスシーケンスを較正するために使用される。また、ナビゲータ(navigator)信号は、スキャン中に取得され、そして、RFシステム320または勾配システム318の動作パラメータ(operating parameter)を調整(制御)するために、又は、k空間がサンプリングされるビューの順序(view order)を制御するために使用される。データ収集サーバ312はまた、磁気共鳴血管造影( "MRA")スキャンにおいて造影剤の到着を検出するために使用されるMR信号を処理するのに用いられる場合もある。これらすべての例において、データ収集サーバ312は、MRデータを取得するとともに、リアルタイムでそれを処理して、スキャンを制御するために使用される情報を生成する。
【0057】
データ処理サーバ314は、データ収集サーバ312からMRデータを受信し、ワークステーション302からダウンロードされた指示に基づいてそれを処理する。このような処理は、例えば、未処理(raw)のk空間MRデータをフーリエ変化して、2次元または3次元画像を生成すること、再構成画像(reconstructed image)にフィルターを適用すること、取得したMRデータの逆投影画像再構成(backprojection image reconstruction)の実行、機能的なMR画像(functional MR image)の生成、および、動き(motion)又は流れ(flow)画像の計算を含んでも良い。
【0058】
データ処理サーバ314によって再構成された画像は、それらが記憶(格納)されるワークステーション302に戻される。リアルタイムの画像は、データベースメモリキャッシュ(cache)(図3に図示せず)に格納(保存)される。このデータベースメモリキャッシュから、リアルタイム画像は、関与する医者による使用のために磁石アセンブリ324の近くに配置されたディスプレイ336又はオペレータディスプレイ312のほうに出力され得る。バッチモード画像(batch mode image)または選択されたリアルタイム画像は、ディスク記憶装置338上のホスト・データベースに格納される。このような画像が再構成され、記憶装置に転送されたとき、データ処理サーバ314は、ワークステーション302上のデータ保存サーバ(data store server)316に通知する。ワークステーション302は、オペレータによって使用されて、画像をアーカイブに保存し、フィルムを生成し、又は、ネットワークを通じてその他の施設(設備)へ画像を送る。
【0059】
本発明は、1以上の好ましい実施例に基づいて説明したが、その均等物、対案、変更、変化も本発明の範囲に含まれると解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像(以下、「MRI」という。)システムで得た、被験者を示す、3次元画像を自動的に分割する方法であって、
a)前記MRIシステムを使用して、被験者の画像データを得るステップと、
b)前記ステップa)から得た前記画像データから、前記被験者および分割すべき関心体積を示す3次元画像を再構成するステップと、
c)前記ステップb)において再構成された前記3次元画像から、前記3次元画像を示す単一信号を生成するステップと、
d)前記ステップc)において生成された前記単一信号を分析して、最大位相一致点に相応する前記3次元画像における位置を決定するステップと、
e)前記ステップd)において決定された前記最大位相一致点それぞれの配向を決定するステップと、
f)決定された前記最大位相一致点、及び、決定された前記最大位相一致点それぞれの前記配向を使用して、前記関心体積の表面を推定するステップと、
g)推定された前記関心体積の表面を使用して、前記3次元画像から前記関心体積を分割するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記関心体積が、前記非験者の乳房を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3次元画像が、空間的に連続的な複数の2次元画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップc)が、変換演算子で前記3次元画像をコンボリューションすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記変換演算子が、Riesz変化演算子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)が、前記変換演算子で前記3次元画像をコンボリューションする前に、バンドパスフィルターで前記3次元画像をコンボリューションすることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記バンドパスフィルターが、log‐Gaborフィルターである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップd)が、前記ステップc)において生成された前記単一信号の局所エネルギーを計算し、計算された前記局所エネルギーから最大位相一致点に相応する前記3次元画像における前記位置を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記最大位相一致点に相応する前記3次元画像における前記位置が、計算された前記局所エネルギーの最大点に相応するように選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップe)が、各々の前記最大位相一致点における3次元画像の勾配を分析することによって、前記ステップd)において決定された前記最大位相一致点それぞれの前記配向を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップe)が、前記最大位相一致点それぞれの前記配向を示す標準点を含むベクトル場の発散に等しいラプラスを有するスカラー関数を推定することによって、前記ステップd)において決定された前記最大位相一致点それぞれの前記配向を決定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップe)が、
‐前記3次元画像における前記位置それぞれの位相一致値を示す位相一致マップを生成し、
‐前記3次元画像を閾値化して、前記3次元画像における一部の領域間の最大位相一致点の前記配向を示す標準点を決定し、そして、
‐前記位相一致マップを閾値化して、低いコントラスト対ノイズの比率を有する前記3次元画像における領域間の最大位相一致点の前記配向を示す標準点を決定することによって、前記ステップd)において決定された前記最大位相一致点それぞれの前記配向を決定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップf)が、決定された前記最大位相一致点、及び、決定された前記最大位相一致点それぞれの前記配向を使用して、等輪郭(isocontour)を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップf)が、適応マーチング・キューブ・アルゴリズム(adaptive marching cube algorithm)を使用して前記等輪郭を生成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップg)が、同様の関心体積について生成された複数の境界面を含むアトラスを使用して、前記ステップe)において推定された前記関心体積の表面を精密化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
医療画像から被験者の乳房を示す関心体積を自動的に分割する方法であって、
a)医療画像システムで得た画像を用意するステップと、
b)前記ステップa)において用意された前記画像を単一信号に変換するステップと、
c)最大位相一致を有する前記画像における位置に相応する前記単一信号における位置を決定するステップと、
d)最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの配向を決定するステップと、
e)最大位相一致を有する前記画像における前記位置、及び、最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの前記配向を使用して、分割すべき前記関心体積の境界面を推定するステップと、
f)推定された前記境界面を使用して、前記画像から前記関心体積を分割するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記3次元画像が、空間的に連続的な複数の2次元画像を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップb)が、log−Gaborフィルターで前記画像をコンボリューションした後に、Riesz変換演算子で前記画像をコンボリューションすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップd)が、最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの前記配向を示す標準点を含むベクトル場の発散に等しいラプラスを有するスカラー関数を推定することによって、最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの前記配向を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップd)が、
‐前記画像における前記位置それぞれの位相一致値を示す位相一致マップを生成し、
‐前記画像を閾値化して、前記画像における一部の領域間の最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの配向を示す標準点を決定し、そして、
‐前記位相一致マップを閾値化して、低いコントラスト対ノイズの比率を有する前記画像における前記領域間の最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの配向を示す標準点を決定することによって、最大位相一致を有する前記画像における前記位置それぞれの前記配向を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記医療画像システムが、磁気共鳴画像システム、X線CT、及び、X線トモシンセシスシステムのうち1以上である、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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