説明

N−複素環式カルベンおよび金属アミドまたは金属アルコキシド触媒を使用する環状アミドの重合

N−複素環式カルベンと金属アミドまたは金属アルコキシドの混合物または付加物は、環状アミドの重合のための有効な触媒である。この触媒は重合温度で安定であり、そして重合は迅速であり、高いモノマー変換率、高分子量および機械的に良好な材料がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状アミドの開環重合に関する。特に高いモノマー変換率で急速な重合を提供し、高分子量であって機械的に良好なポリマーを製造するかかる重合のための触媒の種類に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、2004年11月9日出願の米国特許公報(特許文献1)の利益を主張する。これは全目的に関して、本願の一部としてそのまま援用される。
【背景技術】
【0003】
ラクタムの開環重合は、ナイロン6およびナイロン12のような商業用ポリアミドへの重要ルートである。最初に、ナイロン6は、少量の酸または水の存在下でのε−カプロラクタムの開環重合(「ROP」)によって製造されていた。その後、アニオンROPが好まれるようになり、典型的に、ナトリウムラクタメート塩触媒およびイソシアネート/ラクタム付加物が開始剤として使用される。ε−カプロラクタムのグリニャール塩もラクタムのROPのための触媒として使用され(非特許文献1)、ポリ(アミノホスファゼン)およびプロトホスファトランを有する(非特許文献2)。ラクタムのアニオンROPからのポリアミドの製造に関するより多くの情報は、例えば、(i)(非特許文献3);(ii)(非特許文献4);(iv)(非特許文献5);および(v)(非特許文献6)を含む様々な情報源において入手可能である。
【0004】
大環状アミドは、直鎖ポリアミドの製造における微量副産物として形成可能である。例えば、ナイロン66を製造するためにヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を重合させる場合、環状種は約1.5%のレベルで製造され;すなわち、環状ユニマー、環状ダイマー、環状トリマーおよびより高度な環状オリゴマーの痕跡である。大環状芳香族アミドも既知であり、そして希釈反応条件下で合成される。弾性リンクおよびよじれは、 大環状を形成する傾向を増加させる(非特許文献7)。
【0005】
直鎖ポリアミドは、押出、圧縮成形および射出成形を含む多くの既知の技術によって製造物品へと製造され得る。しかしながら、ラクタムおよび大環状アミドは、エンジニアリング熱可塑性物質複合材のためのマトリックスとして魅力的なユニークな特性を有する。所望の特性は、ラクタムおよび大環状アミドが低い融解粘度を示すという事実から生じ、これによって、それらを高密度の繊維状プレフォームに含浸させることが容易となり、それに続いてポリアミドへの重合が行なわれる。融解時および適切な触媒の存在下で、実質的に等温で重合および結晶化が生じ得る。
【0006】
従って、環状アミドから直鎖ポリアミドを調製するための有効かつ効率的な高温プロセスがなお必要とされる。
【0007】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/626,185号明細書
【非特許文献1】K.ウエダ(K.Ueda)ら、ポリマー ジャーナル(Polymer Journal)(1996)、28(5)、446−451
【非特許文献2】W.メメガー,Jr.(W.Memeger,Jr.)ら、マクロモレキュールス(Macromolecules)(1996)、29、6475−6480
【非特許文献3】リング−オープニング ポリマリゼーション(Ring−Opening Polymerization)におけるH.セキグチ(H.Sekiguchi)、「ラクタムス アンド サイクリック イミドズ(Lactams and Cyclic Imides)」、K.J.イヴィン(K.J.Ivin)およびT.サエグサ(T.Saegusa)編、エルゼビア アプライド サイエンス パブリッシャーズ リミテッド(Elsevier Applied Science Publishers Ltd.)、英国、エセックス州(Essex,England)、第2巻(1984)、第12章、809−918
【非特許文献4】K.ウディピ(K.Udipi)ら、ポリマー(Polymer)(1997)、38(4)、927−938;(iii)R.S.デイブ(R.S.Dave)ら、Ibid.、939−947
【非特許文献5】R.S.デイブ(R.S.Dave)ら、Ibid.、949−954
【非特許文献6】J.セベンダ(J.Sebenda)、プログレス イン ポリマー サイエンス(Prog.Polym.Sci.)(1978)、6、123−167
【非特許文献7】ポリマー マテリアルズ エンサイクロペディア(Polymeric materials Encyclopedia)におけるW.メメガー,Jr.(W.Memeger,Jr.)、「マクロサイクリック アラミドズ(Macrocyclic Aramids)」、J.C.サラモン(J.C.Salamone)編集主任、CRCプレス インコーポレイテッド(CRC Press,Inc.)、フロリダ州、ボカ ラトン(Boca Raton,Florida)(1996)、3873−3882
【非特許文献8】S.モリ(S.Mori)、M.フルサワ(M.Furusawa)およびT.タケウチ(T.Takeuchi)、アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistry)(1970)、42(6)、661−662
【非特許文献9】セチンカヤ,E.(Cetinkaya,E.);ヒッチコック,P.B.(Hitchcock,P.B.);キューキュークベイ,H.(Kuecuekbay,H.);ラッパート,M.F.(Lappert,M.F.);アル−ジュエイド,S.(Al−Juaid,S.);ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organometallic Chemistry)(1994),481,89−95
【非特許文献10】テレス,J.H.(Teles,J.H.);メルダー,J.−P.(Melder,J.−P.);エベル,K.(Ebel,K.);シュナイダー,R.(Schneider,R.);ゲーラー,E.(Gehrer,E.);ハーダー,W.(Harder,W.);ブロド,S.(Brode,S.);およびエンダース,D.(Enders,D.);ブルアー,K.(Breuer,K.);ラーベ,G.(Raabe,G.);ヘルベチカ ケミカ アクタ(Helvetica Chimica Acta)(1996),79(1),61−83
【非特許文献11】M.ニーヒュエス(M.Niehues),G.ケーア(G.Kehr),G.エーカー(G.Erker),B.ウィベリング(B.Wibbeling),R.フローリッヒ(R.Frohlich),O.ブラックエ(O.Blacque),H.バーク(H.Berke),ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organometallic Chem.),2002,第663巻,第192−203頁
【非特許文献12】W.A.ハーマン(W.A.Herrmann),C.コッヘル(C.Kocher),L.J.ゴーゼン(L.J.Goozen)およびG.R.J.アルタス(G.R.J.Artus),ケミストリー:ヨーロピアン ジャーナル(Chem.Eur.J.)1996,p.1627
【非特許文献13】A.J.アルデュンゴ,III(A.J.Arduengo,III),R.カラフコジック(R.Krafczyk),R.シュムツラー(R.Schmutzler),H.A.クレイグ(H.A.Craig),J.R.ゴアリッチ(J.R.Goerlich),W.J.マーシェル(W.J.Marshall),M.アンベルガジット(M.Unverzagt),テトラヘドロン(Tetrahedron),1999,第55巻,第14523−14534頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、少なくとも1種の環状アミドを、以下に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物と接触させる工程を含む熱可塑性ポリアミドの調製法であって、
(a)は、式I、IIおよび/またはIIIのいずれかによって表されるN−複素環式カルベン含有触媒のいずれか1種または複数を含み:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1、R5、R9およびR11は、それぞれ独立して、アダマンチル、アルカリルまたはアルキル基であり、
2、R3、R6、R7およびR10は、それぞれ独立して、水素またはC1~12アルキル基であり、
n=1または2であり、
n=1である場合、R4はR1に等しく、そしてn=2である場合、R4はアルキレン基であり、
n=1である場合、R8はR5に等しく、そしてn=2である場合、R8はアルキレン基である)および、
(b)は、式IV、V、VI、VIIおよび/またはVIIIによって表される化合物のいずれか1種または複数を含む:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基であり、そして、
16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)。
【0013】
本発明のさらなる実施形態において、(フィラーの有無にかかわらず)環状アミド材料を使用して、物品の形成プロセスにおいてそれを重合させることによって、限定されないが、射出および回転成形、樹脂フィルムインフュージョン、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング、プレプレグまたはフィルムを形成するための粉体コーティング、ホットメルトプレプレグ調製、圧縮成形、ロールラッピングおよび引出成形を含むプロセスを使用して物品が製造される。これらは全て任意に強化材を伴う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示の文脈において、多くの用語が利用される。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「環状アミド」は、少なくとも1個の同定可能なアミド官能性繰り返し単位を含有しているその分子構造内に少なくとも1個の環を有する環状分子を示す。アミド官能性単位は典型的に−NH−C(O)−であるが、N−置換は例えばC1~12アルキル基によっても可能である。環状アミドはオリゴマーであってもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「混合物」は、互いに反応してもしなくてもよい少なくとも2種の物質の物理的な組み合わせを示す。
【0017】
用語「付加物」は、本明細書で使用される場合、特に、化合物Yの金属中心へと電子対を供与する化合物Xから形成された配位化合物XYを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「N−複素環式カルベン」は、少なくとも1個の窒素環原子と、二価の炭素である環原子とを含有する閉鎖環系を示す。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「アダマンチル」は、アダマンタン(C1016)から水素原子の喪失によって形成される基を意味する。2−異性体を以下に示す。
【0020】
【化3】

【0021】
本明細書で使用される場合、「大環状」分子は、環を形成するように共有結合した8個以上の原子を含有するその分子構造内に少なくとも1個の環を有する環状分子を意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「オリゴマー」は、同一または異なる式の2個以上の同定可能な構造繰り返し単位を含有する分子を意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル基」は、いずれかの炭素原子から水素原子を除去することによるアルカンから誘導される一価の基:−Cn2n+1(式中、n≧1である)を示す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル基」は、環状アルキル基−Cn2n+1-x(式中、xは環化によって置換されるHの数を表す)を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アルキレン基」は、二価の基−Cn2n−(式中、n≧1である)を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「二価の芳香族基」は、環状分子の他の部分への結合を有する芳香族基を意味する。例えば、二価の芳香族の基は、メタ−またはパラ−結合された単環式芳香族基を含み得る。例はメタ−およびパラ−フェニレン基である。
【0027】
【化4】

【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリアミド複合材」は、繊維状材料または粒子材料のようなもう1つの基材と関連したポリアミドを意味する。粒子材料の実例は、チョップドファイバー、ガラスミクロスフィアおよび砕石である。従って、ポリアミドポリマー複合材を調製するために、特定のフィラーおよび添加剤を使用することができる。用語「繊維状材料」または「繊維状物質」は、より連続的な基材、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維またはアラミド繊維のような有機ポリマーを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「湿潤(wet−out)」は、空気または他の気体の実質的な量が液体基材と固体基材との間に閉じ込められないような液体基材と固体基材との間の良好で持続した接触の物理的状態を生じるプロセスを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「繊維」はポリマーまたは天然繊維のような細長い構造を有するいずれかの材料を意味する。材料は、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維またはアラミド繊維のような有機ポリマーであり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、繊維「トウ」または「ストランド」は、繊維が一緒になった群または繊維の束であり、通常、スプール上に巻き上げられ、またねじれていても、ねじれていなくてもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「繊維プレフォーム」は所望の形状で一緒に保持された繊維トウのアセンブリおよび/または布である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「プレプレグ」は、複合材のマトリックスを提供するために、そして樹脂に対する繊維の比率が密接に制御されるように、十分な容積で樹脂材料によって含浸された炭素、ガラスまたは他の繊維のような繊維材料である。繊維配置はトウの形態にあり得るか、布へと織られるか、もしくは編まれるか、または一方向性テープにあり得る。
【0034】
N−複素環式カルベンを含有する化合物と、金属アミドもしくは金属アルコキシドとの混合物または付加物が環状アミドの開環重合を有効に触媒することがわかっている。かかる触媒は、重合に必要とされる温度で安定であり、そして高いモノマー変換率、高分子量および機械的に良好な材料をもたらす。重合は迅速であり、5〜60分で高度の変換が可能である。
【0035】
本発明で利用されてもよい環状アミドは脂肪族化合物であってもよく、または1種または複数の二価の芳香族の基を含んでもよいが、ただし、融点が約260℃未満であることを条件とする。
【0036】
限定されないが、好適な脂環式アミドとして:
【0037】
【化5】

【0038】
が挙げられる。
【0039】
少なくとも1個の芳香族環を含有する適切な環状アミドのいくつかの例は:
【0040】
【化6】

【0041】
である。
【0042】
また環状アミドは、ナイロン6およびナイロン66のような直鎖ポリアミドから、例えばエタノールによる抽出によって得ることができ、そしてガスクロマトグラフィーによって分析される[例えば、(非特許文献8)を参照のこと]。
【0043】
コポリアミドを製造するために環状コアミドまたは少なくとも2種の異なる環状アミドの混合物を利用することも本発明の範囲内である。従って、特記されない限り、環状アミドに関連する組成物、物品またはプロセスの実施形態は、環状コアミドを利用する実施形態および少なくとも2種の異なる環状アミドの混合物を利用する実施形態も含む。
【0044】
本発明の一実施形態において、混合物または付加物中のN−複素環式カルベン含有触媒は、次式
【0045】
【化7】

【0046】
(式中、R1は、アダマンチル、アルキルまたはシクロアルキル基であり、
2およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1~12アルキル基であり、
nは1または2に等しく、そして
nが1に等しい場合、R4はR1に等しく、そしてnが2に等しい場合、R4はアルキレン基である)の化合物であってよい。
【0047】
好ましくは、R1がアダマンチルであり、R2およびR3が水素であり、そしてR4=R1である化合物である。式Iの非限定的な実例は:
【0048】
【化8】

【0049】
1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン
および
【0050】
【化9】

【0051】
1,3−ビス(シクロヘキシル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデンである。
【0052】
本発明のもう1つの実施形態において、混合物または付加物中のN−複素環式カルベン含有触媒は、次式
【0053】
【化10】

【0054】
(式中、R5は、アダマンチル、アルキルまたはシクロアルキル基であり、
6およびR7は、それぞれ独立して、水素またはC1~12アルキル基であり、
nは1または2に等しく、そして
nが1に等しい場合、R8はR5に等しく、そしてnが2に等しい場合、R8はアルキレン基である)の化合物であってよい。
【0055】
好ましくは、R5がアダマンチルであり、R6およびR7が水素であり、そしてR8=R5である化合物である。
【0056】
式(II)の化合物の非限定的な実例は、
【0057】
【化11】

【0058】
1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン
および
【0059】
【化12】

【0060】
1,3−ビス(シクロヘキシル)−イミダゾール−2−イリデン
である。
【0061】
本発明のなおもう1つの実施形態において、混合物または付加物中のN−複素環式カルベン含有触媒は、次式
【0062】
【化13】

(式中、R9およびR11は、それぞれ独立して、アダマンチルまたはアルキル基であり、そして
10は、水素またはC1~12アルキル基である)の化合物であってよい。
【0063】
好ましくは、R9=R11=アダマンチルであり、そしてR10が水素である化合物である。
【0064】
式(III)によって明示されるカルベンは、(非特許文献9);ならびに(非特許文献10)に記載される。
【0065】
本発明の一実施形態において、触媒混合物または付加物の成分(b)は、次式
【0066】
【化14】

【0067】
(式中、R12およびR13は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される化合物であってもよい。好ましい化合物は、R12=R13=メチルまたはエチルであるものである。
【0068】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒混合物または付加物の成分(b)は、次式
【0069】
【化15】

【0070】
(式中、R14およびR15は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基である)によって表される化合物であってもよい。好ましい化合物は、R14=R15=メチルまたはエチルであるものである。
【0071】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒混合物または付加物の成分(b)は、次式
【0072】
【化16】

【0073】
(式中、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される化合物であってもよい。典型的に、R16=R17=R18である。一例は、R16=R17=R18=イソプロピルである場合である。
【0074】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒混合物または付加物の成分(b)は、次式
【0075】
【化17】

【0076】
(式中、R19およびR20は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)によって表される化合物であってもよい。典型的に、R19=R20である。1つのかかる例は、R19=R20=メチルであるアルミニウムアセチルアセトネートである。
【0077】
本発明のもう1つの実施形態において、触媒混合物または付加物の成分(b)は、次式
【0078】
Ti(OR214 (VIII)
【0079】
(式中、R21はC1~12アルキル基である)によって表される化合物であってもよい。式VIIIの化合物の2つの適切な例は、R21がイソプロピル基であるチタンイソプロポキシド(CAS番号546−68−9);およびR21がn−ブチル基であるチタン酸テトラブチル(CAS番号55−93−70−4)である。
【0080】
重合反応は、重合が生じる温度まで加熱することによって、環状アミドが融解する高温で実行される。これは、典型的に約190℃〜約280℃の範囲である。環状アミドはその融点より高温まで加熱されるため、処理時に、それはより粘性が低くなり、そして操作がより容易となり得る。不活発な雰囲気下で撹拌を利用してもよい。
【0081】
脂肪族アミンまたはアルコールのような開始剤が存在してもよい。重合反応は、溶媒の有無にかかわらず実行されてもよい。溶媒は、1種または複数の反応物を溶解するため、そして/または反応物を混合するために使用されてよい。溶媒は、反応が実行される媒体としても使用されてよい。使用されてもよい実例となる溶媒としては、o−ジクロロベンゼンおよびメタ−テルフェニルのような高沸点化合物が挙げられる。好ましい実施形態において、重合反応において溶媒は使用されない。
【0082】
使用される触媒の総量は、典型的に、使用される環状アミドによって形成される混合物の重量に対して500〜10,000ppmの範囲である。混合物または付加物中の成分(a)対成分(b)の比率は、好ましくは約1:1であるが、約1:4〜約10:1で変動可能である。
【0083】
成分(a)および(b)は、物理的混合物として(例えば、粉末として)、または別々に製造された付加物として、反応容器に個々に添加されてもよい。後者の例として、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンおよびアルミニウムイソプロポキシドをトルエン中で透明溶液が得られるまで一緒に加熱した。NMRデータは付加物、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン−トリス−(イソプロポキシド)アルミニウムが形成されたことを示した。次いで、これを開環重合反応のための触媒として使用することができる。
【0084】
本発明の一態様において、(フィラーの有無にかかわらず)環状アミド材料を使用して、物品の形成プロセスにおいてそれを重合させることによって、限定されないが、射出および回転成形、樹脂フィルムインフュージョン、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング、プレプレグまたはフィルムを形成するための粉体コーティング、ホットメルトプレプレグ調製、圧縮成形、ロールラッピングおよび引出成形を含むプロセスを使用して物品が製造される。これらは全て任意に強化材を伴う。唯一の条件は、高分子量ポリアミドを形成する環状アミドの重合が可能であることである。すなわち、環状アミドは少なくともその融点まで加熱されなければならない。一般的に、かかるプロセスの多くは、処理される樹脂が低い融解粘度を有することを必要とし;従って、低い融解粘度を有する環状アミドがかかる処理のために特に適切である。
【0085】
例えば、環状アミドから物品を製造するための成形プロセスは、少なくとも1種の環状アミドならびに式I、IIおよび/またはIIIのいずれかによって表される触媒のいずれか1種または複数および式IV、V、VI、VIIおよび/またはVIIIのいずれかによって表される触媒の1種または複数によって形成された混合物または付加物を金型に配置する工程と、アミドオリゴマーの重合が生じるように十分高い温度まで金型の内容物を加熱する工程とを含む。これはオリゴマーの融点よりも高く、典型的に約180℃〜約280℃の範囲である。融解オリゴマーの低い粘度のため、射出成形プロセスで典型的な5,000psi〜20,000psiよりも非常に低い圧力で融解オリゴマーおよび触媒を金型に射出することができる。
【0086】
圧縮成形において、オリゴマーおよび触媒をプレス内の上部ダイと下部ダイとの間に配置する。オリゴマーおよび触媒は、典型的に繊維状ベース材料上に装填される。金型が均一に充填されるように十分な圧力によって金型のダイを一緒にプレスし、そして重合が生じるように十分高い温度まで金型の内容物を加熱する。圧縮成形は、トラックおよび自動車パネル、バンパービーム、様々なトレイおよび機械ハウジングのような穏やかな特徴および外形を有する、薄くて一般的に平坦なプラスチック複合材部品を製造するために使用される。
【0087】
回転成形において、成形プロセスは、内容物が金型の内側の意図された領域上を回転するように、二軸に対して同時に金型を回転させ、内容物が加熱される前に回転を開始し、そして内容物が重合および凝固するまで金型を回転し続ける工程をさらに含む。回転成形は、多種多様な流体貯蔵タンク、トラクターフェンダーおよび大型の子供用おもちゃのような中空熱可塑性物品を製造するためのプロセスである。
【0088】
樹脂フィルムインフュージョンにおいて、触媒を含む環状アミドの層またはフィルムが、金型中で繊維状材料の乾燥層に隣接して配置され、そして金型の内容物が加熱される時にオリゴマーおよび触媒が繊維状材料の乾燥層中に注入される樹脂フィルムインフュージョンは、一表面において主に平坦であり、そして詳細特徴を有し得るプラスチック複合材物品を製造するためのプロセスである。かかる物品の実例は、典型的に炭素繊維およびエポキシ樹脂で製造された複合材から構成されるエアクラフトウイングスキンである。
【0089】
様々な環状アミドから様々な大きさおよび形状の物品を製造するために、本発明の組成物および方法を使用することもできる。本発明によって製造され得る代表的な物品としては、限定されないが、自動車体パネルおよびシャシー部品、バンパービーム、エアクラフトウィングスキン、風車ブレード、流体貯蔵タンク、トラクターフェンダー、テニスラケット、ゴルフシャフト、ウィンドサーフィンマスト、おもちゃ、ロッド、チューブ、バーストック、自転車フォークおよび機械ハウジングが挙げられる。
【0090】
物品の製造において、1種または複数の様々な種類のフィラーが含まれてもよい。特定のフィラーは、所望の目的または特性を達成するためにしばしば含まれ、そして得られるポリアミドポリマー中に存在してもよい。例えばフィラーの目的は、ポリアミドポリマー製品の強度を増加させることであり得る。高レベルの熱伝導性および低レベルの導電性を必要とする適用において、フィラーとして窒化ホウ素が使用される。またフィラーは、特定の密度を達成するため、より高価な材料の代替として、そして/または当業者に認識されるような他の所望の特性を提供するために、重量または容積を提供してもよい。
【0091】
フィラーの実例は、特に、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップドファイバー、フライアッシュ、ガラスミクロスフィア、マイクロバルーン、砕石、ナノクレイ、直鎖状ポリマーおよびモノマーである。フィラーは、重合反応の前、間または後に添加されてもよい。フィラーは一般的に、フィラーおよびフィラーを添加する目的次第で、全混合物(すなわち、オリゴマーおよび触媒およびフィラーおよびいずれか存在する他の添加剤)の重量に対して約0.1重量%と70重量%との間の量で添加される。例えば、パーセンテージは、好ましくは、炭酸カルシウムの場合、25重量%と50重量%との間であり、ナノクレイの場合、2重量%と5重量%との間であり、そしてガラスミクロスフィアの場合、25重量%と70重量%との間である。ポリアミドポリマー複合材を調製するためにフィラーを使用することができる。
【0092】
さらに、物品の製造において追加的な成分(例えば、添加剤)が添加されてもよい。実例となる添加剤としては、着色剤、顔料、磁気材料、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤、難燃剤、潤滑油および離型剤が挙げられる。
【0093】
本明細書中に数値範囲が列挙されるが、特記されない限り、この範囲は、その終点、ならびに範囲内の全整数および分数を含むように意図される。範囲を定義する場合、本発明の範囲が列挙された具体的な値に限定される意図はない。
【実施例】
【0094】
本発明を以下の実施例においてさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示すが、実例として与えられているだけであることは理解されなければならない。上記の検討およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、そしてそれらの精神および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適応させるために、本発明の様々な変更および修正を実行することができる。
【0095】
略語の意味は以下の通りである:「min」は分を意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「Mn」は数平均分子量を意味し、「Mw」は重量平均分子量を意味し、「PDI」は多分散性指数を意味し、Mw/Mnに等しく、「DSC」は示差走査熱量測定を意味し、「NMR」は核磁気共鳴を意味し、そして「GPC」はゲル透過クロマトグラフィーを意味する。
【0096】
(実験)
(材料)
ビス(μ−ジメチルアミノ)テトラキス(ジメチルアミノ)ジアルミニウム(「アルミニウムアミド」、CAS番号32093−39−3、95%)およびアルミニウムイソプロポキシド(CAS番号555−31−7、98%)をストレム ケミカルズ インコーポレイテッド(Strem Chemicals,Inc.)(マサチューセッツ州、ニューバリーポート(Newburyport,Massachusetts))から得、そしてそのまま使用した。チタン(IV)イソプロポキシド(CAS番号546−68−9)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(CAS番号3275−24−9)およびカプロラクタム(CAS番号105−60−2)をアルドリッチ ケミカル カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))から得、そしてそのまま使用した。
【0097】
N−複素環式カルベンは、(非特許文献11);(非特許文献12);ならびに(非特許文献13)に記載の通りに調製された。トルエン中でカルベン1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンをアルミニウムイソプロポキシドに添加し、透明溶液が得られるまで加熱することによって、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン−トリス−(イソプロポキシド)アルミニウムを調製した。NMRによって、この2つの付加物が形成されたことが示された。
【0098】
(ポリマー特性評価)
分子量特性評価のため、ウォーターズ(Waters)410(商標)屈折率検出器(DRI)と、静的直角光散乱および示差毛管粘度計検出器を組み入れるビスコテック コーポレイション(Viscotek Corporation)(テキサス州、ヒューストン(Houston,TX))モデルT−60A(商標)二重検出器モジュールとを備えたウォーターズ コーポレイション(Waters Corporation)(マサチューセッツ州、ミルフォード(Milford,MA))からのモデル アライアンス(Model Alliance)2690(商標)から構成されるサイズ排除クロマトグラフィー系を使用した。移動相は、0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)であった。ポリマーに関してdn/dcを測定し、そして測定間に全ての試料が完全に溶出されることを仮定した。
【0099】
(実施例1)
1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンおよびテトラキス(ジメチルアミノ)チタンを使用するカプロラクタムの重合
ガラス瓶に0.033gのテトラキス(ジメチルアミノ)チタン、1mLのトルエンおよび0.050gの1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを添加した。溶媒を真空下で除去した。この残渣に500mgのカプロラクタムを添加した。次いで混合物を200℃のホットブロックに置いた。5分後、硬質の茶色固体が形成した。GPC分析によって、23,700のMnおよび59,700のMwが示され、変換率は84%であった。
【0100】
(実施例2)
1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンおよびチタン (IV) イソプロポキシドを使用するカプロラクタムの重合
0.3mLのトルエン中で25mgの1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン、21mgのチタン(IV)イソプロポキシドから溶液を調製した。溶媒を真空下で除去し、そして500mgのカプロラクタムを添加した。次いで混合物を200℃のホットブロックに15分間置いた。GPC分析によって、63,300のMnおよび134,700のMwが示され、変換率は91%であった。
【0101】
(実施例3)
1,3−ビス(シクロヘキシル)−イミダゾール−2−イリデンおよびテトラキス(ジメチルアミノ)チタンを使用するカプロラクタムの重合
20mgの1,3−ビス(シクロヘキシル)−イミダゾール−2−イリデン、20mgのテトラキス(ジメチルアミノ)チタンおよび1.11gのカプロラクタムの混合物を200℃のホットブロックに33分間置いた。GPC分析によって、16,900のMnおよび21,700のMwが示され、変換率は76%であった。
【0102】
(実施例4)
80:1のモノマー対触媒比でアルミニウムイソプロポキシドおよび1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを使用するカプロラクタムの重合
アルミニウムイソプロポキシド(0.113g、0.552mmol)、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン(0.185g、0.552mmol)およびトルエン(20mL)をシンチレーションガラス瓶中で組み合わせ、そして60℃まで加熱した。溶解性の緑色錯体が形成した。トルエンを真空下で除去した。ガラス瓶にカプロラクタム(5g、44.2mmol)を添加し、そして反応混合物を200℃で4時間加熱した。GPC分析によって、65,700のMnおよび2.14のPDIが示された。
【0103】
(実施例6)
160:1のモノマー対触媒比でアルミニウムイソプロポキシドおよび1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを使用するカプロラクタムの重合
アルミニウムイソプロポキシド(0.056g、0.276mmol)、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン(0.093g、0.276mmol)およびトルエン(20mL)をシンチレーションガラス瓶中で組み合わせ、そして60℃まで加熱した。溶解性の緑色錯体が形成した。トルエンを真空下で除去した。ガラス瓶にカプロラクタム(5g、44.2mmol)を添加し、そして反応混合物を200℃で4時間加熱した。GPC分析によって、147,700のMnおよび2.63のPDIが示された。
【0104】
(実施例7)
320:1のモノマー対触媒比でアルミニウムイソプロポキシドおよび1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを使用するカプロラクタムの重合
アルミニウムイソプロポキシド(28.21mg、0.138mmol)、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン(46.3mg、0.138mmol)およびトルエン(20mL)をシンチレーションガラス瓶中で組み合わせ、そして60℃まで加熱した。溶解性の緑色錯体が形成した。トルエンを真空下で除去した。ガラス瓶にカプロラクタム(5g、44.2mmol)を添加し、そして反応混合物を200℃で4時間加熱した。GPC分析によって、93,900のMnおよび2.01のPDIが示された。
【0105】
(実施例8)
1280:1のモノマー対触媒比でアルミニウムイソプロポキシドおよび1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを使用するカプロラクタムの重合
アルミニウムイソプロポキシド(7.1mg、0.0345mmol)、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン(12mg、0.0345mmol)およびトルエン(20mL)をシンチレーションガラス瓶中で組み合わせ、そして60℃まで加熱した。溶解性の緑色錯体が形成した。トルエンを真空下で除去した。ガラス瓶にカプロラクタム(5g、44.2mmol)を添加し、そして反応混合物を200℃で4時間加熱した。GPC分析によって、97,000のMnおよび2.05のPDIが示された。
【0106】
(実施例9)
窒化ホウ素フィラーの存在下で、アルミニウムイソプロポキシドおよび1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを使用するカプロラクタムの重合
アルミニウムイソプロポキシド(28.21mg、0.138mmol)、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン(46.3mg、0.138mmol)およびトルエン(20mL)をシンチレーションガラス瓶中で組み合わせ、そして60℃まで加熱した。溶解性の緑色錯体が形成した。トルエンを真空下で除去した。ガラス瓶にカプロラクタム(5g、44.2mmol)および窒化ホウ素(1.5g)を添加し、そして反応混合物を200℃で1時間加熱した。GPC分析によって、50,600のMnおよび1.83のPDIが示された。
【0107】
(実施例10)
1:10のアルミニウムイソプロポキシド対1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン比でアルミニウムイソプロポキシドおよび1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデンを使用するカプロラクタムの重合
アルミニウムイソプロポキシド(1.4mg、0.0063mmol)、1,3−ジ−1−アダマンチル−イミダゾール−2−イリデン(22mg、0.0626mmol)およびトルエン(20mL)をシンチレーションガラス瓶中で組み合わせ、そして60℃まで加熱した。溶解性の緑色錯体が形成した。トルエンを真空下で除去した。ガラス瓶にカプロラクタム(5g、44.2mmol)を添加し、そして反応混合物を200℃で1時間加熱した。GPC分析によって、5,280のMnおよび1.95のPDIが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の環状アミドを、以下に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物と接触させる工程を含むことを特徴とする熱可塑性ポリアミドの調製方法:
(a)式I、IIおよび/またはIIIのいずれかによって表されるN−複素環式カルベン含有触媒のいずれか1種または複数:
【化1】

(式中、R1、R5、R9およびR11は、それぞれ独立して、アダマンチル、アルカリルまたはアルキル基であり、R2、R3、R6、R7およびR10は、それぞれ独立して、水素またはC1~12アルキル基であり、n=1または2であり、そして、n=1である場合、R4はR1に等しく、そしてn=2である場合、R4はアルキレン基であり、n=1である場合、R8はR5に等しく、そしてn=2である場合、R8はアルキレン基であり、そして
10は、水素またはC1~12アルキル基である)、および
(b)式IV、V、VI、VIIおよび/またはVIIIのいずれかによって表される化合物のいずれか1種または複数:
【化2】

(式中、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立して、C1~12脂肪族ヒドロカルビルまたは置換脂肪族ヒドロカルビル基であり、そして、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基である)。
【請求項2】
約180℃〜約280℃の温度で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分(a)対成分(b)の比率が約1:4〜約10:1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フィラーの存在下で環状アミドを成分(a)および(b)の混合物または付加物と接触させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フィラーが、環式アミドおよび触媒およびフィラーおよびいずれか他の存在する添加剤の混合物の総重量の約0.1%〜約70%の量で存在することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フィラーが、窒化ホウ素、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップドファイバー、フライアッシュ、ガラスミクロスフィア、マイクロバルーン、砕石、ナノクレイ、直鎖状ポリマーおよびモノマーよりなる群の少なくとも一つであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
環状アミドから物品を製造する方法であって、次の工程:
(a)少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数を金型に提供する工程と、
(b)環状アミドの重合が生じる温度まで金型の内容物を加熱する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
環状アミドが溶融され、そして金型中に射出されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
内容物が金型の内側の意図された領域上を回転するように、二軸に対して同時に金型を回転させ、内容物が加熱される前に回転を開始し、そして内容物が重合および凝固するまで金型を回転し続ける工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
触媒を含む環状アミドの層またはフィルムが、金型中で繊維状材料の乾燥層に隣接して配置され、そして金型の内容物が加熱されるときに環状アミドおよび触媒が繊維状材料の乾燥層中に注入されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
金型が繊維状プレフォームを含有し、そして環状アミドおよび触媒がプレフォーム中に注入されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
環状アミドおよび触媒がプレス内の上部ダイと下部ダイとの間に配置され、そして金型が環状アミドおよび触媒によって均一に充填されるように金型のダイが一緒にプレスされることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
環状アミドおよび重合触媒からプレプレグを形成する方法であって、
(a−1)少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数を溶媒中に溶解して、溶液を形成する工程、
(a−2)溶液を繊維状ベース材料と接触させる工程及び、
(a−3)溶媒を除去する工程、
または、
(b−1)剥離ベース材料を提供する工程、
(b−2)その上に、少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数の層をコーティングする工程及び、
(b−3)加熱下で繊維状ベース材料に対して剥離ベース材料をプレスする工程、
または、
(c−1)少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数を粉体として提供する工程、
(c−2)工程c−1の粉体のコーティングを繊維状ベース材料中に含浸させる工程と;
(c−3)環状アミドを軟化させる工程及び、
(c−4)熱および圧力をかけて、繊維状ベース材料中で環状アミドの流動および重合を生じさせる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
繊維状ベース材料が、布織物、繊維トウまたは一方向性プレプレグテープであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
繊維強化物品を製造するための引出成形法であって、
a.少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数を提供する工程、
b.繊維状ストランドを延長ダイ中に引き入れる工程、
c.ダイ中で、環状アミドおよび触媒を繊維状ストランドと、その周囲で接触させる工程、
d.加熱して、環状アミドの重合を生じさせ、繊維状ストランドの周囲で高分子量直鎖状ポリアミド樹脂マトリックスを形成する工程及び、
e.所望の断面を有するダイの出口部分に直鎖状ポリアミドマトリックスを引き入れ、それによって物品を形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
環状アミドが連続的にダイの外側で溶融され、そして液体の形態でダイ中に注入されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
環状アミドから中空プラスチック複合材物品を製造するためのフィラメントワインディング方法であって、
a.少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数を提供する工程、
b.環状アミドおよび重合触媒を繊維状ストランドと接触させる工程、
c.繊維状ストランドをマンドレル上に巻き上げる工程及び、
d.重合が生じる温度まで環状アミドを加熱する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
環状アミドから管状物品を製造するためのロールラッピング法であって、
a.強化繊維のシートまたはテープを、少なくとも1種の環状アミドならびに請求項1に記載の成分(a)および(b)の混合物または付加物のいずれか1種または複数で含浸させることによって、プレプレグを形成する工程と、
b.マンドレル上でプレプレグを回転させる工程と、
c.重合が生じる温度まで環状アミドを加熱する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
少なくとも1種のフィラーが環状アミドと接触して存在することを特徴とする請求7、13、15、17または18に記載の方法。
【請求項20】
フィラーの重量が、環状アミドおよび触媒およびフィラーおよびいずれか他の存在する添加剤の反応混合物の総重量の0.1%〜70%であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
フィラーが、窒化ホウ素、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップドファイバー、フライアッシュ、ガラスミクロスフィア、マイクロバルーン、砕石、ナノクレイ、直鎖状ポリマーおよびモノマーよりなる群の少なくとも一つであることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2008−519897(P2008−519897A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541301(P2007−541301)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040643
【国際公開番号】WO2006/053077
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】