説明

N−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の製造法

【課題】発火の危険性が高い還元剤を用いることなく簡便かつ安全な、N−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の製造法の提供。
【解決手段】N−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を酸触媒の存在下で分子内脱水縮合反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の製造方法に関する。
N−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類は、医農薬中間体、光褪色防止剤、有機合成用触媒、染色剤、化学吸着剤、抗菌剤等への利用が期待される化合物である。
【背景技術】
【0002】
一般にN−(2−ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンを得る製造法としては、ピペラジンと2,3−ジブロモプロピオン酸エチルとを、例えば、トルエン又はベンゼンのような不活性溶媒中で反応させて、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−カルボン酸エチルを調製し、次いで得られたエステルを、例えば、水素化リチウムアルミニウムを用いて還元する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この製造方法では、原料として用いる2,3−ジブロモプロピオン酸エチルが非常に高価であり、またピペラジンと2,3−ジブロモプロピオン酸エチルとを低い基質濃度で反応させる必要があるため生産性に劣るという欠点を有する。更に第二工程では、還元剤として発火の危険性が高い水素化リチウムアルミニウムを使用するため、工業的に好ましい方法とは言えない。
【0004】
他に、トリエチレンジアミン類の一般的な製法として、ヒドロキシエチルピペラジンを酸触媒の存在下で環化させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、これと同様の製法を用いて、N−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類からの環化反応により、N−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を合成した例は、これまで報告されていない。
【0006】
更に、特許文献3によれば、N−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類は、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンからのエーテル化反応で得られるものと推測される。
【0007】
ところで、この方法で用いられる中間体であるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類の製造法に関して課題が残されていた。
【0008】
即ち、N−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類は、エポキシ化合物とピペラジンとの付加反応で得られることが知られているが(例えば、非特許文献1参照)、ジ置換体が多量に副生するため選択的にモノ置換体を得ることは難しい。
【0009】
同様に、エタノール中で1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−tert−ブトキシプロパンとピペラジンとを水酸化カリウム存在下反応させた例があるが(例えば、非特許文献2参照)、1,4−位が二ヶ所とも置換されたN,N’−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブトキシプロピル)ピペラジンを得た例のみが示されている。
【0010】
更に、一般にN−モノ置換ピペラジン類を選択的に得る方法として、ジエタノールアミンとN−置換アミンとをゼオライト触媒を用いて環化させる方法が知られているが(例えば、非特許文献3参照)、この方法でも選択的にN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類が得られたという報告例はない。
【0011】
以上のように、ピペラジン環の一方のアミノ基のみが置換されたN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を選択的に合成し、それを環化させることにより、N−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を効率的に合成することは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−504855号公報
【特許文献2】特開平4−261177号公報
【特許文献3】特開昭63−259565号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Zhunal Prikladnoi Khimii(Sankt−Peterburg,Russian Federation)(1984),57(9),2138頁
【非特許文献2】Journal of Pharmacy and Pharmacology (1960),12,37頁
【非特許文献3】Journal of Organic Chemistry(1994),59,3998頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、発火の危険性が高い還元剤を用いることなく、簡便且つ安全にN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下に示すとおりのN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の製造方法に関するものである。
【0017】
[1]下記式(1)
【0018】
【化1】

(式中、Rは、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数3〜12のアルキル基、又はベンジル基を表す。)
で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を酸触媒の存在下で分子内脱水縮合反応させることを特徴とする下記式(2)
【0019】
【化2】

(式中、Rは上記と同じ定義である。)
で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の製造方法。
【0020】
[2]酸触媒が、金属リン酸塩及び有機リン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を含むことを特徴とする上記[1]に記載の製造方法。
【0021】
[3]下記式(3)
【0022】
【化3】

(式中、Rは、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数3〜12のアルキル基、又はベンジル基を表す。)
で示される1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパン類とピペラジンとを、脱ハロゲン化水素剤の存在下又は非存在下で反応させることを特徴とする下記式(1)
【0023】
【化4】

(式中、Rは上記と同じ定義である。)
で表されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類の製造方法。
【0024】
[4]ピペラジンの量が1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパンに対して等モル以上であることを特徴とする上記[3]に記載の製造方法。
【0025】
[5]水、炭素数1〜12のアルコール類、炭素数1〜8のエーテル類、双極性非プロトン溶媒、第三級アミン類、及びピリジン類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を含む溶媒中で反応させることを特徴とする上記[3]又は[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の製造方法によれば、発火の危険性が高い還元剤を用いることなく、簡便且つ安全にN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明の製造方法は、上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を酸触媒の存在下で分子内脱水縮合反応させることにより上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を得ることをその特徴とする。
【0029】
上記式(1)中、Rは、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数3〜12のアルキル基、又はベンジル基を表す。
【0030】
上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類としては、特に限定するものではないが、例えば、N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−secブトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−イソブトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキシルオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ペプチルオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ノナオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−デカンオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ノナデカンオキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−ドデカンオキシプロピル)ピペラジン等が挙げられる。これらのうち、原料のアルコールの入手し易さと経済性から、N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロピル)ピペラジ、N−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)ピペラジンが好ましい。
【0031】
また、上記式(2)中、Rは、上記と同じ定義、すなわち、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数3〜12のアルキル基、又はベンジル基を表す、
上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類としては、特に限定するものではないが、例えば、N−(2−ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−エトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−プロポキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−イソプロポキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ブトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−secブトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2イソブトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ペンチルオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ヘキシルオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−へプチルオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−オクチルオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ノナオキシメチル)トリエチレンジアミン、N―(2−デカンオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ノナデカンオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ドデカンオキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ベンジルオキシメチル)トリエチレンジアミン等が挙げられる。これらのうち、原料のアルコールの入手し易さと経済性から、N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−エトキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−イソプロポキシメチル)トリエチレンジアミン、N−(2−ブトキシメチル)トリエチレンジアミンが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法において、上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を酸触媒の存在下で分子内脱水縮合反応させることにより上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を得る場合の酸触媒としては、特に限定するものではなく、例えば、金属リン酸塩や有機リン化合物等のリン含有物質、窒素含有物質、硫黄含有物質、ニオブ含有物質、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、ゼオライト、ヘテロポリ酸、第4B族金属酸化物縮合触媒、第6B族金属含有縮合触媒、ブレンステッド酸、ルイス酸、リンアミド等が挙げられるが、これらのうちリン含有物質が特に好ましい。
【0033】
本発明の製造方法において、金属リン酸塩としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の金属塩が挙げられる。リン酸と塩を形成する金属としては、特に限定するものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、パラジウム、銀、スズ、鉛等が挙げられる。
【0034】
また、有機リン化合物としては、従来公知のものでよく、特に制限はないが、例えば、リン酸メチル等のリン酸エステル、リン酸ジメチル等のリン酸ジエステル、リン酸トリフェニル等のリン酸トリエステル、亜リン酸メチル、及び亜リン酸フェニル等の亜リン酸エステル、亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸ジエステル、亜リントリフェニル等の亜リン酸トリエステル、フェニルホスホン酸等のアリールホスホン酸、メチルホスホン酸等のアルキルホスホン酸、メチル亜ホスホン酸等のアルキル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアリール亜ホスホン酸、ジメチルホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のアルキルアリールホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸等のアルキル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等のアリール亜ホスフィン酸、フェニルメチル亜ホスフィン酸等のアルキルアリール亜ホスフィン酸、ラウリルアシッドホスフェイト、トリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト等の酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルの塩類等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、これらから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
【0036】
本発明の製造方法において、酸触媒の使用量は、特に限定するものではないが、原料である、上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類の使用量に対し、通常0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。0.01重量%よりも少ない場合、反応が著しく遅くなるおそれがあり、20重量%を超えて使用しても経済的に不利となるおそれがある。
【0037】
本発明の製造方法において、反応は気相で行っても液相で行っても良い。また、反応は懸濁床による回分、半回分、連続式でも、また固定床流通式でも実施できるが、工業的には、固定床流通式が操作、装置、経済性の面から有利である。
【0038】
本発明の製造方法においては、希釈剤として、窒素ガス、水素ガス、アンモニアガス、水蒸気、炭化水素等の不活性ガスや、水、不活性な炭化水素等の不活性溶媒を用いて、原料である、上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を希釈し、反応を進行させることができる。これらの希釈剤は任意の量で使用でき、特に限定するものではないが、[上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類]/[希釈剤]のモル比は0.01〜1の範囲とすることが好ましく、0.05〜0.5の範囲とすることがさらに好ましい。モル比0.01以上とすると、上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の生産性が向上する。また、モル比1以下とすると、上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の選択性が向上する。
【0039】
本発明の製造方法において、希釈剤は、上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類と同時に反応器内に導入してもよいし、予め上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を希釈剤に溶解させた後に、原料溶液として反応器に導入してもよい。
【0040】
本発明の製造方法において、反応が気相で行われる場合、通常は、窒素ガス、アルゴンガス等の反応に不活性なガスの共存下で行われる。かかるガスの使用量は上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類1モルに対して、通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルの範囲である。
【0041】
本発明の製造方法において、反応温度は、通常150〜500℃、好ましくは200〜400℃の範囲である。500℃以下とすることで、原料及び生成物の分解が抑制されるため、上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の選択率が向上し、150℃以上とすることで十分な反応速度が得られる。
【0042】
本発明の製造方法においては、反応が気相で行われる場合、反応終了後、上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を含有する反応混合ガスを、水又は酸性水溶液に通じて溶解させ、上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を含有する反応混合液を得る。そして、得られた反応混合液から、抽出、濃縮等の所望の分離精製操作により、上記式(2)で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類を得ることができる。また、ハロゲン化水素酸を用いて、ハロゲン化水素酸塩として得ることもできる。
【0043】
一方、上記式(1)で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類は、例えば、上記式(3)で示される1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパンを、脱ハロゲン化水素剤の存在下又は不存在下、ピペラジンと反応させることで得られる。
【0044】
その際、反応に使用するピペラジンの量は、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパンと等モル以上が好ましく、それよりも少ないと収率の低下が見られ、等モル以上あれば選択的に目的の2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピルピペラジン類が得られる。更にピペラジンの量を増やすと選択率及び収率の向上が認められる。しかし、10倍モルを超えてピペラジンを加えても、収率は100%近くなるため差異が少なくなり、却ってピペラジンの回収等の操作が煩雑となるため、工業的な意味は小さい。
【0045】
本発明の製造方法において、脱ハロゲン化水素剤を使用すると転化率及び収率の向上が認められる。用いられる脱ハロゲン化水素剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属ナトリウム等のアルカリ金属、水素化ナトリウム、水素化カルシウム等のアルカリ水素化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を挙げることができる。これらのうち、工業的に容易に入手可能な水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、特に経済的に有利な水酸化ナトリウムが好ましい。
【0046】
反応に使用する脱ハロゲン化水素剤の量としては、用いられる1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパンに対し、当量以上あればよい。
【0047】
反応に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、又は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドヘキサメチルホスホロアミド等の双極性非プロトン溶媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリペンチルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシル、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、トリフェニルアミン、N,N,N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチレンジアミン等の第三級アミン類、及びピリジン類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
【0048】
反応温度として好適な温度は、用いる溶媒の沸点により異なるが、通常0℃〜200℃であり、好ましくは30℃〜100℃であり、更に好ましくは50℃〜80℃である。
0℃よりも低い温度では、十分な反応速度が得られず、また、200℃以上の温度では、
目的生成物の分解等が起きる可能性がある。
精製法としては、溶媒を濃縮後、減圧蒸留で目的物を精製単離することができる。
【実施例】
【0049】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、本実施例における生成物の収率は、ガスクロマトグラフィーで確認した。
【0050】
ガスクロマトグラフィーには、ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−2014)、キャピラリーカラム(J&W Scientific社製 DB−1)、及び検出器(FID)を使用した(昇温)。
【0051】
また、化合物のH−NMR及び13C−NMRの測定には、Varian社製Gemini−200を使用した。
【0052】
合成例(1)1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシプロパンの合成.
本化合物は三フッ化ホウ素ジエチルエーテルを錯体触媒に用いたアルコールとエピクロロヒドリンの反応〔例えば、工業化学雑誌,66(12),1827(1963)参照〕、又は、硫酸触媒を用いた方法(例えば、非特許文献3参照)に従って合成した。
【0053】
1000mlの反応器に、メタノール320.4g(10.0モル)と三フッ化ホウ素
ジエチルエーテル錯体1.6g(0.01モル)を仕込み、撹拌しながら内温を20℃とした。そこに、内温を25℃以下に保ちながらエピクロロヒドリン370.1g(4.0モル)を1時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を20時間継続し、無色透明の反応液676.8gを得た。得られた反応液から57.1gを秤取し、常圧で蒸留したところ、沸点172〜175℃の留出物32.7gを得た。得られた留出物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度96.8%であり、H−NMR及び13C−NMRから1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシプロパンであることが確認できた。
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、1−クロ
ロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシプロパンの収率は、90.1%であった。
【0054】
H−NMR(CDCl,200MHz),
δ:3.98(m,1H),3.63(m,1H),3.59(m,1H),3.51(d,2H),3.41(s,3H),2.65(bs,1H)。
【0055】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:73.35(CH),70.23(CH),59.34(CH),46.04(CH)。
【0056】
合成例(2)1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−エトキシプロパンの合成.
合成例(1)と同様に、300mlの反応器に、エタノール115.2g(2.5モル)と濃硫酸3.7g(0.038モル)を仕込み、撹拌しながら内温を30℃とした。
【0057】
そこに、内温を32℃以下に保ちながらエピクロロヒドリン92.5g(1.0モル)を3時間かけて滴下し、エタノール4.4gで洗い込んだ後、更に濃硫酸5.5g(0.055モル)を追加して同温度条件のまま還流撹拌を52時間継続し、無色透明の反応液221.4gを得た。得られた液から1.0gを秤取し、炭酸水素ナトリウムで中和後、生成塩をろ過して濃縮したところ、油状物0.6gを得た。得られた油状物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度88.2%であり、H−NMR及び13C−NMRから1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−エトキシプロパンであることが確認できた。
【0058】
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、1−クロ
ロ−2−ヒドロキシ−3−エトキシプロパンの収率は、77.6%であった。
【0059】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:3.97(m,1H),3.64〜3.48(m,6H),2.62(bs,1H),1.22(t,3H,J=7.0)。
【0060】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:73.31(CH),70.34(CH),67.05(CH),46.12(CH),15.19(CH)。
【0061】
合成例(3)1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロパンの合成.
合成例(1)と同様に、100mlの反応器に、イソプロパノール15.0g(0.25モル)と三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.04g(0.28ミリモル)を仕込み、撹拌しながら内温を20℃とした。そこに、内温を25℃以下に保ちながらエピクロロヒドリン9.3g(0.1モル)を1時間かけて滴下し、同温度条件のまま還流撹拌を20時間継続し、無色透明の液24.3gを得た。得られた液に32%苛性水溶液0.3g(2.4ミリモル)を添加し中和後、蒸留したところ、沸点105℃/5.5KPaの留出物2.3g(収率15.2%)を得た。得られた留出物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度95.7%であり、H−NMR及び13C−NMRから1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロパンであることが確認できた。
【0062】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:3.93(m,1H),3.64〜3.52(m,5H),2.64(bs,1H),1.17(d,6H,J=6.2)。
【0063】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:72.45(CH),70.49(CH),68.60(CH),46.06(CH),22.13(CH)。
【0064】
また同様に、反応用サンプルの合成を行った。
【0065】
合成例(1)と同様に、1000mlの反応器に、イソプロパノール150.3g(2.5モル)と濃硫酸4.0g(0.041モル)を仕込み、撹拌しながら内温を30℃とした。そこに、内温を35℃以下に保ちながらエピクロロヒドリン92.5g(1.0モル)を4時間かけて滴下し、更に濃硫酸5.3g(0.053モル)を追加して同温度条件のまま96時間撹拌を継続し、無色透明の液249.2gを得た。得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロパンの収率は、56.0%であった。
【0066】
合成例(4)1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロパンの合成.
合成例(1)と同様に、100mlの反応器に、ベンジルアルコール27.3g(0.25モル)と濃硫酸0.4g(4ミリモル)を仕込み、撹拌しながら内温を20℃とした。そこに、内温を25℃以下に保ちながらエピクロロヒドリン9.3g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度条件のまま還流撹拌を14時間継続し、無色透明の液34.4gを得た。得られた液に6%炭酸水素ナトリウム水溶液11.4g(8ミリモル)を添加し中和後、蒸留したところ、沸点108℃/0.1KPaの留出物5.6g(収率25.5%)を得た。得られた油状物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度90.7%であり、H−NMR及び13C−NMRから1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロパンであることが確認できた。
【0067】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:7.40〜7.24(m,5H),4.51(S,2H),3.99(m,1H),3.68〜3.57(m,4H),2.59(bs,1H)。
【0068】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:137.58(ベンゼン核CH),128.50〜127.77(ベンゼン核CH),73.62(CH),70.87(CH),70.30(CH2),46.15(CH
2)。
【0069】
また同様に、反応用サンプルの合成を行った。
【0070】
合成例(1)と同様に、300mlの反応器に、ベンジルアルコール136.3g(1.26モル)と濃硫酸2.0g(0.02モル)を仕込み、撹拌しながら内温を20℃とした。そこに、内温を40℃以下に保ちながらエピクロロヒドリン46.6g(0.50モル)を3時間かけて滴下し、同温度条件のまま還流撹拌を20時間継続し、無色透明の液185.5gを得た。得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロパンの収率は、61.9%であった。
【0071】
次いで得られた種々の1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパン類を用いたN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジンの合成について示す。
【0072】
実施例1.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン28.7g(0.28モル)とメタノール25.8gを仕込み、撹拌しながら内温を60℃とした。そこに、内温を72℃以下に保ちながら,合成例(1)で得られた1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシプロパン反応液16.2g(0.086モル含有)を2時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を14時間継続し、無色透明の反応液70.7gを得た。得られた液を濃縮し、32%苛性水溶液13.0g(0.1モル)を添加し中和後、ろ過、濃縮、蒸留したところ、沸点133℃/27Pa以下での留出物9.7g(収率65.1%)を得た。得られた留出物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度98.9%であり、H−NMR及び13C−NMRからN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンであることが確認できた。
【0073】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:3.89(m,1H),3.43〜3.32(m,5H),2.89(m,2H),2.61(bs,1H),2.43〜2.31(m,6H)。
【0074】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:75.06(CH),65.67(CH),61.18(CH),59.24(CH),54.57(CH),46.11(CH)。
【0075】
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの収率は、86.2%であった。他の例と共に実施例1の結果を表1に示す。
【0076】
実施例2.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1でピペラジン28.7g(0.28モル)を使用した代りに、ピペラジン7.4g(0.09モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例と共に実施例2の結果を表1に示す。
【0077】
実施例3.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1でピペラジン28.7g(0.28モル)を使用した代りに、ピペラジン7.4g(0.09モル)を使用し、更に脱ハロゲン化水素剤として96%苛性2.9g(0.09モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例と共に実施例3の結果を表1に示す。
【0078】
実施例4.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1でピペラジン28.7g(0.28モル)を使用した代りに、ピペラジン14.9g(0.17モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例と共に実施例2の結果を表1に示す。
【0079】
実施例5.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1と同様に、窒素雰囲気下、1000mlの反応器に、ピペラジン286.8g
(3.33モル)とメタノール258.1gを仕込み、撹拌しながら内温を60℃とした。そこに、内温を70℃以下に保ちながら,合成例(1)と同様にして得られた1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシプロパン反応液162.4g(0.86モル含有)を2時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を24時間継続した。得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの収率は、87.6%であった。他の例と共に実施例5の結果を表1に示す。また、得られた反応液を実施例1と同様に処理して、純度97.7%以上のN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンを80.0g(収率52.2%)を得た。他の例と共に実施例5の結果を表1に示す。
【0080】
実施例6.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1でピペラジン28.7g(0.28モル)を使用した代りに、ピペラジン74.3g(0.86モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例と共に実施例8の結果を表1に示す。
【0081】
比較例1.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1でピペラジン28.7g(0.28モル)を使用した代りに、ピペラジン6.0g(0.07モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例と共に比較例1の結果を表1に示す。
【0082】
比較例2.N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1でピペラジン28.7g(0.28モル)を使用した代りに、ピペラジン6.0g(0.07モル)を使用し、更に脱ハロゲン化水素剤として96%苛性2.9g(0.07モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例と共に比較例2の結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

実施例7.N−(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1と同様に、窒素雰囲気下、1000mlの反応器に、ピペラジン331.6g
(3.85モル)とエタノール298.5gを仕込み、撹拌しながら内温を60℃とした。そこに、内温を70℃以下に保ちながら,合成例(2)で得られた1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−エトキシプロパン反応液221.4g(0.78モル含有)を2時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を24時間継続した。また、得られた反応液を実施例1と同様に32%の苛性水溶液83.8g(0.67mol)を加え中和後、ろ過、濃縮、蒸留処理して、沸点136℃/1KPa以下での留出物113.0g(収率71.4%)を得た。得られた留出物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度92.2%以上であり、H−NMR及び13C−NMRからN−(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル)ピペラジンであることが確認できた。
【0084】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:3.89(m,1H),3.52〜3.36(m,4H),2.87(m,2H),2.56(bs,1H),2.44〜2.31(m,2H),1.21(t,3H,J=7.0)。
【0085】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:73.11(CH),66.94(CH),65.97(CH),61.44(CH),54.72(CH),46.25(CH),15.22(CH)。
【0086】
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2
−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル)ピペラジンの収率は、79.4%であった。
【0087】
実施例8.N−(2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1と同様に、窒素雰囲気下、1000mlの反応器に、ピペラジン186.9g(2.17モル)とイソプロパノール180.0gを仕込み、撹拌しながら内温を60℃とした。そこに、内温を75℃以下に保ちながら,合成例(3)で得られた1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロパン反応液249.2g(0.56モル含有)を2時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を72時間継続した。また、得られた反応液を実施例1と同様に32%の苛性水溶液83.8g(0.67mol)を加え中和後、ろ過、濃縮、蒸留処理して、沸点103℃/40Pa以下での留出物58.2g(収率28.2%)を得た。得られた留出物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度97.7%以上であり、H−NMR及び13C−NMRからN−(2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル)ピペラジンであることが確認できた。
【0088】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:3.87(m,1H),3.60(q,1H,J=6.2),3.44〜3.40(m,2H),2.87(m,4H),2.62〜2.35(m,7H),1.17(d,6H,J=6.2)。
【0089】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:72.14(CH),70.73(CH),66.21(CH),61.61(CH2),54.71(CH),46.15(CH),22.09(CH)。
【0090】
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2
−ヒドロキシ−3−イソプロポキシプロピル)ピペラジンの収率は、44.3%であった。
【0091】
実施例9.N−(2−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロピル)ピペラジンの合成.
実施例1と同様に、窒素雰囲気下、1000mlの反応器に、ピペラジン104.2g(1.21モル)とメタノール100.4gを仕込み、撹拌しながら内温を60℃とした。そこに、内温を70℃以下に保ちながら,合成例(4)で得られた1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロパン反応液85.3g(0.26モル含有)を2時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を24時間継続した。次いで、得られた反応液から1.0gをサンプリングし、96%の苛性0.1g(2.4ミリモル)で中和後、ろ過、濃縮して、シリカゲルカラム(和光純薬工業株式会社製、C−300)で精製後、0.1gの粘調物を得た。得られた粘調物は、ガスクロマトグラフィーでの分析で純度83.4%であり、H−NMR及び13C−NMRからN−(2−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロピル)ピペラジンであることが確認できた。
【0092】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:7.35〜7.27(m,5H),4.57(S,2H),3.91(m,1H),3.50〜3.46(m,2H),2.86(m,4H),2.64〜2.34(m,7H)。
【0093】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:138.11(ベンゼン核CH),128.37〜127.64(ベンゼン核CH),73.55(CH),72.65(CH),66.15(CH),61.37(CH),54.94(CH),46.15(CH)。
【0094】
また、反応液は実施例1と同様に32%の苛性水溶液40.6g(0.31mol)を加え中和後、ろ過、濃縮して、粘調物97.2g(収率28.2%)を得た。
【0095】
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2
−ヒドロキシ−3−ベンジルオキシプロピル)ピペラジンの収率は、49.3%であった。
【0096】
実施例10.N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンの合成.
市販のリン酸アルミニウム(和光純薬工業株式会社製、化学用)20mlを充填した石英管(内径23mm、長さ590mm)を固定床反応器とし、窒素を60ml/minの流量で流しながら380℃に昇温後、水を30ml/hr−1で1時間流通させた。環化反応は、固定床反応器に実施例5で得られたN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの20wt%水溶液を、同温度でガス空間速度(GHSV:溶液がガス化した際の供給速度を見かけ触媒体積で除した値)1,534hr−1の流量で流通させて、反応器から留出する溶液をフラスコで受けた。得られた液をGC−MS分析したところ、分子量156のピークが検出された。更に、反応液5.1gを濃縮し得られた粘調物をシリカゲルカラム(和光純薬工業株式会社製、C−300)で単離精製したところ、目的のピークを示す化合物を0.1g得た。得られた精製品はガスクロマトグラフィーでの分析で純度94.7%であり、H−NMR及び13C−NMRからN−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンであることが確認できた。
【0097】
H−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:3.53(m,1H),3.35〜2.29(m,12H),3.38(s,3H)。
【0098】
13C−NMR(CDCl,200MHz)、
δ:73.07(CH),59.16(CH),54.30(CH),50.26(CH),49.50(CH),47.17(CH),46.30(CH),41.30(CH)。
【0099】
また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンの収率は、37.4%であった。他の例と共に実施例10の結果を表2に示す。
【0100】
実施例11.N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンの合成.
実施例10で380℃でN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの20wt%水溶液を流通した代りに、360℃で流通した以外は全て実施例10と同様に反応を行った。他の例と共に実施例11の結果を表2に示す。
【0101】
実施例12.N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンの合成.
実施例10で380℃でN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの20wt%水溶液を流通した代りに、340℃で流通した以外は全て実施例10と同様に反応を行った。他の例と共に実施例12の結果を表2に示す。
【0102】
実施例13.
200mlオートクレーブに、実施例5と同様にして得られたN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジン18.5g(純度94.5%、0.10モル)と溶媒として水100g、触媒としてフェニルホスホン酸(和光純薬工業社製、化学用)5.0gを充填し、窒素雰囲気下で280℃に加熱した。この時の反応容器圧力は8.0MPaであった。反応時間は2時間であった。
【0103】
得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンの収率は1.0%であった。他の例と共に実施例13の結果を表2に示す。
【0104】
比較例3.
200mlオートクレーブに、実施例5と同様にして得られたN−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジン18.5g(純度94.5%、0.10モル)と溶媒として水100gを充填し、触媒を添加せずに、窒素雰囲気下で280℃に加熱した。この時の反応容器圧力は8.0MPaであった。反応時間は2時間であった。
【0105】
得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル)ピペラジンの収率は0%であった。他の例と共に実施例13の結果を表2に示す。
【0106】
【表2】

参考例1.N−(2−ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンの合成.
実施例10で得られた反応液2.0gを濃縮後、更に減圧乾固して0.9gの粘調液を得た。窒素雰囲気下、この粘調液にクロロホルム2mlとヨウ化トリメチルシリル0.14g(0.7ミリモル)を加え、室温で38時間撹拌を継続した。反応液についてGC−MS分析したところ、分子量142のピークが検出され、N−(2−ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンが得られたことが確認できた。また、得られた反応液についてガスクロマトグラフィーで定量を行った結果、N−(2−メトキシメチル)トリエチレンジアミンの転化率は2%であり、N−(2−ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンの選択率は、87.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Rは、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数3〜12のアルキル基、又はベンジル基を表す。)
で示されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類を酸触媒の存在下で分子内脱水縮合反応させることを特徴とする下記式(2)
【化2】

(式中、Rは上記と同じ定義である。)
で示されるN−(2−アルコキシメチル)トリエチレンジアミン類の製造方法。
【請求項2】
酸触媒が、金属リン酸塩及び有機リン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記式(3)
【化3】

(式中、Rは、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数3〜12のアルキル基、又はベンジル基を表す。)
で示される1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパン類とピペラジンとを、脱ハロゲン化水素剤の存在下又は非存在下で反応させることを特徴とする下記式(1)
【化4】

(式中、Rは上記と同じ定義である。)
で表されるN−(2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル)ピペラジン類の製造方法。
【請求項4】
ピペラジンの量が1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロパンに対して等モル以上であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
水、炭素数1〜12のアルコール類、炭素数1〜8のエーテル類、双極性非プロトン溶媒、第三級アミン類、及びピリジン類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を含む溶媒中で反応させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−105628(P2011−105628A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261066(P2009−261066)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】