説明

N末端で置換されたグレリン類似体

本発明は、GHS受容体において活性な、より大きな安定性をもつ、下記の式によるグレリンのペプチジル類似体:(R2)-A1-A2-A3-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-A11-A12-A13-A14-A15-A16-A17-A18-A19-A20-A21-A22-A23-A24-A25-A26-A27-A28-R1[式中のA〜A、RおよびRの定義は明細書中に示され、ただし、N末端アミノ酸はInp、1−Apeおよび4−Apeよりなる群から選択しなければならない]、その医薬的に許容できる塩、ならびに有効量の前記化合物を含む医薬組成物、ならびにその療法用途および療法以外の用途を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレリンのペプチジル類似体およびそれらの療法用途に関する。
【背景技術】
【0002】
最近発見された食欲促進ホルモンであるグレリンは、プレプロホルモンとして産生され、これがタンパク質分解処理されて下記の配列をもつペプチドを生成する:H-Gly-Ser-Ser-Phe-Leu-Ser-Pro-Glu-His-Gln-Arg-Val-Gln-Gln-Arg-Lys-Glu-Ser-Lys-Lys-Pro-Pro-Ala-Lys-Leu-Gln-Pro-Arg-NH2(Kojima, M. et al., Nature, (1999), 402(6762): 656-60)。グレリンは、胃基底部を裏打ちする上皮細胞により産生され、食欲を刺激する機能をもつ;それの濃度は食前に上昇し、食後に低下する。
【0003】
数種の哺乳動物および哺乳動物以外に由来するグレリンの天然構造が知られている(Kaiya, H. et al., J. Biol. Chem., (2001), 276(44): 40441-8;および国際特許出願PCT/JP00/04907 [WO 01/07475])。グレリン中に存在するコア領域が、GHS受容体においてみられる活性に関与する;これは4個のN末端アミノ酸を含み、そのうち3番目の位置にあるセリンが普通はn−オクタン酸で修飾される。n−オクタン酸によるアシル化のほか、天然グレリンはn−デカン酸によりアシル化される場合もある(Kaiya, H. et al., J. Biol. Chem., (2001), 276(44): 40441-8)。
【0004】
肥満症の個体の血漿グレリン濃度はより痩せた個体の場合より低く、より痩せた個体の場合には一日のうち夜間から夜明けにかけてグレリン濃度が上昇する;これは肥満症個体の循環系に欠陥があることを示唆する(Yildiz, B. O. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2004), 101(28): 10434-9)。摂食障害である神経性食欲不振に罹患している個体および癌誘発性悪液質を伴う患者は、より高い血漿グレリン濃度をもつことが見いだされた(Garcia, J. M. et al., J. Clin. Endocrin. Metab., (2005), 90(5): 2920-6)。
【0005】
動物およびヒトの両方において、グレリンは、下垂体前葉の主に視床下部レベルからの成長ホルモン(GH)分泌を、グレリンとGH分泌促進物質(GHS)受容体(GHS−R)との相互作用によって強力に刺激する(Ukkola, O. et al., Ann. Med., (2002), 34(2): 102-8;およびKojima, M. et al., Nature, (1999), 402(6762): 656-60)。グレリンのGH放出活性は、下垂体の、主に視床下部レベルのGHS受容体の活性化により仲介される(Kojima, M. et al., Nature, (1999), 402(6762): 656-60)。
【0006】
グレリンがGHS受容体に対する天然リガンドであることが発見される以前に、下垂体の成長ホルモン産生細胞(somatotrop)からのGHの拍動放出が2種類の視床下部神経ペプチド:GH放出ホルモン(GHRH)およびソマトスタチンにより調節されることが知られていた。GHRHはGHの放出を刺激し、これに対しソマトスタチンはGHの分泌を阻害する(Frohman, L. A. et al., Endocr. Rev., (1986), 7(3): 223-53;およびStrobl, J. S. et al., Pharmacology Review (1994) 46: 1-34)。グレリンはGHRH分泌ニューロンの活性を高める一方で、同時に機能性ソマトスタチンアンタゴニストとして作用すると思われる(Ghigo, E. et al., Eur. J Endocri., (1997), 136(5): 445-60)。
【0007】
下垂体の成長ホルモン産生細胞からのGH放出は、GH放出ペプチド(GHRP)により制御される可能性もある。ヘキサペプチドHis-D-Trp-Ala-Trp-D-Phe-Lys-アミド(GHRP−6)は、ヒトを含めた数種において用量依存性で成長ホルモン産生細胞からGHを放出することが見いだされた(Bowers, C. Y. et al., Endocrinology, (1984), 114(5): 1537-45)。GHRP−6に関するその後の化学的研究により、他の有効な合成GH分泌促進物質、たとえばGHRP−I、GHRP−2およびヘキサレリン(hexarelin)が同定された(Cheng, K. et al., Endocrinology, (1989), 124(6): 2791-8; Bowers, C. Y., Novel GH-Releasing Peptides, Molecular and Clinical Advances in Pituitary Disorders, Ed: Melmed, S., Endocrine Research and Education, Inc., Los Angeles, CA, USA, (1993), 153-7;およびDeghenghi, R. et al., Life Sci., (1994), 54(18): 1321-8)。これら3種類の化合物の構造は下記のものである:
GHRP-1 Ala-His-D-(2')-Nal-Ala-Trp-D-Phe-Lys-NH2
GHRP-2 D-Ala-D-(2')-Nal-Ala-Trp-D-Nal-Lys-NH2;および
ヘキサレリン His-D-2-MeTrp-Ala-Trp-D-Phe-Lys-NH2
【0008】
GHSは、GHRHのものとは異なる機序でGHの分泌を刺激することができる(Bowers, C. Y. et al., Endocrinology, (1984), 114(5): 1537-45; Cheng, K. et al., Endocrinology, (1989), 124(6): 2791-8; Bowers, C. Y., Novel GH-Releasing Peptides, Molecular and Clinical Advances in Pituitary Disorders, Ed: Melmed, S., Endocrine Research and Education, Inc., Los Angeles, CA, USA, (1993), 153-7;およびDeghenghi, R. et al., Life Sci., (1994), 54(18): 1321-8)。
【0009】
ペプチジルGHSの経口による生物学的利用能が低いため(<1%)、下垂体におけるGHRP−6の作用を模倣した非ペプチド化合物の研究が促進された。幾つかのベンゾラクタム類およびスピロインダン類がヒトを含めた多様な動物種においてGH放出を刺激すると報告された(Smith, R. G. et al., Science, (1993), 260(5114): 1640-3; Patchett, A. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1995), 92(15): 7001-5; Chen, M.-H. et al., Bioorg. Mod. Chem. Letts., (1996), 6(18): 2163-8)。低分子スピロインダンの具体例はMK−0677である(Patchett, A. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1995), 92(15): 7001-5):
【0010】
【化1】

【0011】
GHS(ペプチドおよび非ペプチドの両方とも)の作用は、特異的なGHS受容体(GHSR;Howard, A. D. et al., Science, (1996), 273(5277): 974-7;およびPong, S. S. et al., Mol. Endocri., (1996), 10(1): 57-61)により仲介されると思われる。GHS受容体は多様な哺乳動物種の下垂体および視床下部に存在し(GHSR1a)、GH放出ホルモン受容体とは異なる。GHS受容体は中枢神経系の他の領域および末梢組織、たとえば副腎、甲状腺、心臓、肺、腎臓および筋肉にも検出された(Chen, M.-H. et al., Bioorg. Med. Chem. Letts., (1996), 6(18): 2163-9; Howard, A. D. et al., Science, (1996), 273(5277): 974-7; Pong, S. S. et al., Mol. Endocri., (1996), 10(1): 57-61; Guan, X.-M. et al., Mol. Brain Res., (1997), 48(1): 23-9;およびMcKee, K. K. et al., Genomics, (1997), 46(3): 426-34)。トランケート型のGHSR1aが報告された(Howard, A. D. et al., Science, (1996), 273(5277): 974-7)。
【0012】
GHS受容体はGタンパク質共役型受容体である。GHS受容体活性化の作用には、脱分極およびカリウムチャンネル阻害、細胞間イノシトール三リン酸(IP3)濃度の上昇、ならびに細胞内カルシウム濃度の一過性上昇が含まれる(Pong, S. S. et al., Mol. Endocri., (1996), 10(1): 57-61; Guan, X.-M. et al., Mol. Brain Res., (1997), 48(1): 23-9;およびMcKee, K. K. et al., Genomics, (1997), 46(3) : 426-34)。
【0013】
GHS分子、たとえばグレリンおよびその類似体は、多様な療法用途(U.S. Patent No. 6,566,337; Inui, A., FASEB J., (2004), 18(3): 439-56; Muller, E. E. et al., Neurobiol. Aging, (2002), 23(5): 907-19; Casanueva, F. F. et al., Trends Endocrinol. Metab., (1999), 10(1): 30-8;およびAnkerson, M. et al., Drug Discovery Today, (1999), 4: 497-506)および診断用途をもつ。GHS受容体においてアゴニスト作用を示す化合物は、GH欠乏状態を改善し(U.S. Patent Nos. 6,861,409および6,967,237;ならびにCasanueva, F. F. et al., Trends Endocrinol. Metab, (1999), 10(1): 30-8)、筋量を増加させ(U.S. Patent Nos. 6,861,409 and 6,967,237)、および/または身体強度を高め(Ankerson, M. et al., Drug Discovery Today, (1999), 4: 497-506)、骨密度を改善し(U.S. Patents Nos. 6,861,409, 6,967,237および6,251,902;ならびにSibilia, V. et al., Growth Horm. IGF Res., (1999), 9(4): 219-27)、骨粗鬆症を治療し(国際特許出願Nos. PCT/IB96/01353 [WO 97/24369]およびPCT/IB98/00873 [WO 98/58947];ならびにCasanueva, F. F. et al., Trends Endocrinol. Metab., (1999), 10(1): 30-8)、性的機能障害を克服し(U.S. Patent No. 6,967,237;およびCasanueva, F. F. et al., Trends Endocrinol. Metab., (1999) 10(1): 30-8)、心血管疾患を治療し(国際特許出願Nos. PCT/IB96/01353 [WO 97/24369]およびPCT/IB98/00873 [WO 98/58947]; U.S. Patent No. 6,251,902; De Gennaro Colonna, V. et al., Eur. J. Pharmacol., (1997), 334(2-3): 201-7;ならびにCasanueva, F. F. et al., Trends Endocrinol. Metab., (1999), 10(1): 30-8)、関節痛を軽減し(Granado, M., Am. J. Endo. Metab., (2005), 288: 486-92)、アルツハイマー病の発症を予防または軽減し(U.S. Patent Nos. 6,686,359および6,566,337)、および/または全身性エリテマトーデスもしくは炎症性腸疾患、たとえばクローン病もしくは潰瘍性大腸炎を治療する(U.S. Patent Publication No. 2002/0013320)ことが示されている。
【0014】
グレリンのアゴニスト類似体は体重増加を促進することができ(U.S. Patent No. 6,967,237; Tschop, M. et al., Nature, (2000), 407(6806): 908-13;およびTschop, M. et al., Endocrinology, (2002), 143(2): 558-68)、これは目的体重の維持(U.S. Patent Nos. 6,861,409および6,967,237)および/または身体機能の回復(U.S. Patent Nos. 6,967,237および6,251,902;ならびに国際特許出願No. PCT/IB96/01353 [WO 97/24369])に利用できる。
【0015】
グレリンは食欲も増進する(U.S. Patent No. 6,967,237;およびOkada, K. et al., Endocrinology, (1996), 137(11): 5155-8)。したがって、グレリンは伝統的に望ましくない体重減少を伴う特定の疾患もしくは障害に罹患しているかまたは医療計画を受けている患者の処置にしばしば用いられる:たとえば食欲不振(U.S. Patent No. 6,967,237;およびTschop, M. et al., Endocrinology, (2002), 143(2): 558-68)、食欲異常亢進(U.S. Patent No. 6,967,237)、悪液質(U.S. Patent Nos. 6,967,237および6,251,902)、特に癌誘発性悪液質(U.S. Patent No. 6,967,237; 国際特許出願No. PCT/DK2004/000529 [WO 05/014032];およびTschop, M. et al., Endocrinology, (2002), 143: 558-68)、エイズ(U.S. Patents Nos. 6,861,409および6,967,237;ならびにTschop, M. et al., Endocrinology, (2002), 143(2): 558-68)、虚弱者および高齢者における消耗症候群(U.S. Patent Nos. 6,861,409および6,967,237;国際特許出願No. PCT/IB96/01353 [WO 97/24369];ならびにAnkerson, M. et al., Drug Discovery Today, (1999) 4: 497-506)、ならびに慢性腎不全(Casanueva, F. F. et al., Trends Endocri. Metab., (1999), 10(1): 30-8)。伝統的に体重減少を伴う疾患もしくは障害または医療処置には、化学療法、放射線療法、一時固定もしくは永続固定および/または透析が含まれる(U.S. Patent Nos. 6,967,237および6,251,902)。
【0016】
肥満症は糖尿病の主要なリスク因子であり、非インスリン依存性糖尿病(あるいは”NIDDM”と呼ばれる)患者の大部分は肥満症である。両状態とも、循環インスリン濃度の上昇およびGH濃度の低下を特徴とする。GH欠乏成人(Jorgensen, J. O. et al., Lancet, (1989), 1(8649): 1221-5)、肥満症の女性(Richelsen, B. et al., Am. J. Physiol., (1994), 266(2 Pt 1): E211-6)、および高齢の男性(Rudman, D. et al., Horm. Res., (1991), 36 (Suppl 1): 73-81)のGH処置は痩身性、肝臓量および筋肉量を増大させ、一方では脂肪量を減少させることが示された。したがって、GHの糖尿病誘発作用以外は、グレリンアゴニストの投与は肥満症に対する魅力的な療法である(U.S. Patent No. 6,251,902; Ankerson, M. et al., Drug Discovery Today, (1999) 4: 497-506;およびCasanueva, F. F. et al., Trends Endocri. Metab., (1999), 10(1): 30-8)。糖尿病の合併症、たとえば網膜障害、および/または心血管障害の処置(U.S. Patent No. 6,967,237;およびU.S. Patent Application Publication No. 2003/0211967)も、グレリンによって間接的に処置できる。
【0017】
成長ホルモン(GH)を放出させるペプチド、たとえばGHRP−1、GHRP−2およびグレリンは、胃の運動作用、すなわち”運動促進”作用を示すとも考えられている(U.S. Patent No. 6,548,501; Peeters, T. L., J Physiol. Pharmacol., (2003), 54 (supp 4): 95-103、およびそれの参考文献; Trudel, L. et al, J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., (2002), 282: G948-52)。したがって、GH分泌促進物質の類似体は、特に術後イレウスにより生じた胃腸運動低下、または糖尿病の発症もしくは慢性糖尿病状態に随伴する胃不全麻痺を伴う患者において、胃腸の運動を促進するためにも用いられている(U.S. Patent No. 6,548,501)。
【0018】
胃腸(GI)運動は消化器系を通して栄養素を輸送する神経筋協調プロセスであり(Scarpignato, C., Dig. Dis., (1997), 15: 112)、その障害は下記を含めた多様な疾患を生じる可能性がある:胃食道逆流性疾患(GERD)、胃不全麻痺(たとえば糖尿病性および術後)、過敏性大腸症候群(IBS)、便秘(たとえばIBSの運動低下期に関連するもの)、嘔吐(たとえば癌の化学療法薬により起きるもの)、イレウスおよび結腸偽閉塞(U.S. Patent No. 6,548,501; U.S. Patent Application No. 20040266989)。胃腸運動障害のこれらの多様な合併症は、先進国のヘルスケア負担に重大な関係をもつ(U.S. Patent No. 6,548,501; Feighner, S. D. et al., Science, (1999), 284: 2184-8)。
【0019】
”イレウス”は、腸管(bowelまたはgut)、特に結腸の閉塞を表わす(たとえばDorland's Illustrated Medical Dictionary, p. 816, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)を参照)。一般に、抑制性神経反射を活性化する炎症仲介物質を放出するような何らかの胃腸管に対する外傷は、イレウスを発症させるであろう。イレウスは、腸管の正常な協調運動が撹乱されて腸内容物の押出が損なわれていることにより診断できる(Resnick, J., Am. J. of Gastroentero., (1997), 92: 751; Resnick, J., Am. J. of Gastroentero., (1997), 92: 934)。イレウスは、糞便の排泄が不規則または困難であることを表わす便秘とは区別すべきである(たとえばDorland's Illustrated Medical Dictionary, p. 375, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)を参照)。
【0020】
イレウスは、多様な原因によりもたらされる可能性がある:たとえば分娩;腸虚血;後腹膜血腫;腹腔内敗血症;腹腔内炎症、たとえば急性虫垂炎、胆嚢炎、膵臓炎;脊椎破損;尿管仙痛;胸郭損傷;基底肺炎;肋骨骨折;心筋梗塞;および代謝障害。分娩後イレウスは出産後の期間における女性にとって一般的な問題であり、出産ストレスの結果として自然オピオイド濃度が変動することにより起きると考えられる。腹部膿瘍もしくは小腸移植(SITx)のための開腹術を含めた大きな腹部手術、胸部、骨盤もしくは整形外科の手術などの処置を受けた患者には、しばしば、術後イレウス(post-surgicalまたはpost-operative ileus)(以下、POIと呼ぶ)と呼ばれる一過性の腸機能不全の期間がある。
【0021】
POIは一般に術後24〜72時間に起きる。場合により、腸機能不全はかなり重篤になり、1週間以上持続し、胃腸管の一部より多くの部分に及ぶ可能性がある(Livingston, E. H. et al., Digest. Dis. and Sci., (1990), 35: 121)。POIに関連する胃腸運動障害は、一般に結腸において最も重篤である。POIは腹部吐き気、膨満、嘔吐、便秘、摂食不能および痙攣を特徴とする。POIは、術後の摂食の正常な回復を遅らせて入院を長引かせるだけでなく、術後合併症、特に吸引性肺炎も助長する。
【0022】
術後の患者に対するオピオイド鎮痛薬の投与は、しばしば腸機能不全の一因となり、および/または既存の腸機能不全を増悪させ、これによって正常な腸機能の回復を遅らせる可能性がある。手術、特に大手術の後の疼痛緩和のために実質的にすべての患者にオピオイド鎮痛薬、たとえばモルヒネまたは他の麻薬が投与されるので、現在の術後疼痛処置は正常な腸機能の回復を実際に遅らせ、その結果、退院が遅れ、医療費が増加する可能性がある。
【0023】
胃腸運動に作用を及ぼす薬剤は、嘔吐を伴う患者にも有益な効果を及ぼす可能性がある。嘔吐(emesisまたはvomiting)に先立ってしばしば吐き気が起き、乾性上下動(dry heaves)が伴う場合がある。嘔吐は、消化管の平衡異常、たとえばイレウス、消化不良、もしくは胃壁の炎症により、または感覚系もしくは脳の平衡異常、たとえば乗り物酔い、片頭痛もしくは腫瘍により起きる可能性がある。嘔吐は食欲不振または食欲異常亢進などに際して自己誘発される場合があり、激しい痛み、情動反応(たとえば不快な光景または臭気に対するもの)または妊娠に応答して起きる可能性もある。嘔吐は多くの投薬、特に化学療法などの抗癌処置に伴う、一般的な合併症である。長期間のエピソードまたは反復性の嘔吐は、脱水および電解質平衡異常を含めて、生体に対する多様な傷害を生じる可能性がある(Quigley, E. M. et al., Gastroentero., (2001), 120: 263-86)。
【0024】
胃腸運動に作用を及ぼす薬剤は、胃不全麻痺を伴う患者にも有益な効果を及ぼす可能性がある。胃内容排出遅延とも呼ばれる胃不全麻痺は、胃に達する神経が損傷を受け、または作動を停止し、胃がその内容物を排出するのに時間がかかりすぎる障害である。たとえば、消化管を通る食物の移動を制御する神経である迷走神経に対する損傷を受けた後には、胃および小腸の筋肉が正常に作動せず、食物の移動が遅延または停止する。高血糖は神経に化学変化を起こし、酸素および栄養素を神経へ運ぶ血管に損傷を与える。糖尿病の場合にしばしばそうであるように長期間にわたって血糖値が高いままであれば、迷走神経は損傷を受ける可能性がある;胃不全麻痺は、1型糖尿病または2型糖尿病を伴う患者にしばしば起きる(Murray, C. D. et al., Gut, (2005), 54: 1693-8)。
【0025】
胃腸運動障害に対する伝統的な療法、たとえばイレウス、胃不全麻痺および嘔吐の療法は、効果がないと考えられる。イレウスを処置するための現在の療法には、胃腸管の機能刺激、糞便軟化剤、緩下剤、たとえばダルコラックス(Dulcolax)(登録商標)、潤滑剤、静脈内水分補給、経鼻胃管吸引、運動促進薬、早期経腸栄養補給、および経鼻胃減圧が含まれる。胃の減圧のための経鼻胃挿管も、イレウスの処置に伝統的に用いられている。
【0026】
胃腸運動障害、たとえばイレウスの処置のために用いられている伝統的な医薬には、結腸運動を高める作用をもつ薬物、たとえばLeu13−モチリン(Leu13-motilin)およびプロスタグランジンF2アルファ、ならびに運動促進薬、たとえばシサプリド(Cisapride)(登録商標)が含まれる。シサプリド(登録商標)1水和物を含有するプロパルシド(PROPULSID)(登録商標)は経口胃腸薬であり(U.S. Patent No. 4,962,115)、胃食道逆流性疾患による夜間胸焼けを伴う成人患者の対症処置に適用される。他の運動促進薬には、たとえばメトクロプラミド(metoclopramide)、ドンペリドン(domperidone)、オンダンセトロン(ondansetron)、トロピセトロン(tropisetron)、モサプリド(mosapride)およびイトプリド(itopride)が含まれる。他の処置には下記の投与が含まれる:アデノシン拮抗性ピラゾロピリジン化合物(U.S. Patent No. 6,214,843);下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)受容体アンタゴニストと血管作動性腸ペプチド(VIP)受容体アンタゴニストの組合わせ(U.S. Patent No. 6,911,430);フェドトジン(fedotozine)(U.S. Patent No. 5,362,756);神経ペプチド(U.S. Patent No. 5,929,035);およびプロテイナーゼ活性化受容体−2アンタゴニスト(U.S. Patent No. 5,929,035)。極度の症例では、イレウスは結腸の障害を取り除くための外科的介入により処置されている。
【0027】
しかし、これらの療法計画には多くの問題がある。たとえば、プロパルシド(登録商標)は、心不整脈を誘発する可能性があるため、市場から最近排除された(U.S. Patent No. 6,548,501)。Adolor Corporationは現在、アルビモパン(Alvimopan)(Entereg(登録商標))を用いて術後イレウスを処置する療法について第III相臨床試験を行なっている。しかし、Adolorの療法はオピオイド受容体アンタゴニストを用いている;これは、実際にイレウス状態を緩和するのではなく、オピエート鎮痛薬の副作用を遮断するにすぎない。この第III相臨床試験は、イレウス、特に術後イレウスの処置について、効果が十分ではないことおよび適用性が最低限であることを示している。
【0028】
さらに、胃腸運動障害を処置するためのこれらの先行技術方法は、異なるタイプの障害、たとえば術後イレウスまたは分娩後イレウスに対する特異性をもたない。これらの先行技術方法は、胃腸運動障害の予防、たとえばイレウス、胃不全麻痺および嘔吐の予防のための手段も提供しない。イレウス、胃不全麻痺および嘔吐などの胃腸運動障害を予防できれば、またはより効果的に治療できれば、入院期間、回復時間および医療費が著しく削減され、さらに患者の不快感を最小限に抑えるという利点が得られるであろう。
【0029】
胃腸運動を選択的にターゲティングして術後イレウスにより起きる胃腸機能不全を矯正する薬物は、術後および分娩後イレウスを予防および/または治療するための理想的な候補となるであろう。そのような薬物は、胃不全麻痺および/または嘔吐、特に化学療法関連の嘔吐、あるいは他の薬物誘発性胃腸機能障害の処置のための卓越した候補にもなるであろう。これらのうち、オピオイド鎮痛薬の作用を妨げない薬物は、疼痛管理のための薬物と同時に投与でき、それに伴う副作用が少ないという点で、特に有益であろう。
【0030】
多数の最近の研究により、GHS、たとえばグレリン、GHRP−6その他は、胃腸管の運動活性を刺激するために、ならびにイレウスおよび嘔吐などの状態を処置するために使用できる可能性のあることが証明された。たとえばグレリンおよびGHRP−6はラットおよびマウスにおいて胃内容排出を促進することが示された(Peeters, T. L., J Physiol. Pharmacol., (2003), 54 (supp 4): 95-103)。ラットにおいて、グレリンは術後イレウスのモデルにおいて胃内容排出の遅延を復帰させることが示され(Peeters, T. L., J Physiol. Pharmacol., (2003), 54 (supp 4): 95-103; Trudel, L. et al., J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., (2002), 282(6): G948-52)、腹壁切除術を施したイヌにおいて、グレリンは処置した動物のPOIを改善することが示された(Trudel, L. et al, Peptides, (2003), 24: 531-4)。敗血症マウスにおいて、グレリンおよびGHRP−6は胃内容排出を促進したが、小腸通過の促進にはほとんど影響を及ぼさなかった(De Winter, B. Y. et al., Neurogastroenterol. Motil., (2004), 16: 439-46)。
【0031】
POIに罹患しているヒト患者の入院状態を模倣するために設計された実験において、腹壁切除術を施したラットがオピエートおよびグレリン類似体RC−1139で処置された(Poitras, P. et al., Peptides, (2005), 26: 1598-601)。胃内容排出を測定するアッセイにおいて、RC−1139はモルヒネの存在下で対照および腹壁切除術を施したラットのPOIを復帰させることが示された。したがって、グレリンはオピエート活性を妨害せずに胃運動促進作用を示すと考えられる。
【0032】
細胞毒性抗癌薬シスプラチンで処置したフェレットは、グレリンを脳室内投与した後、吐き気や嘔吐の発生率が有意の低下を示し(Rudd, J. A. et al., Neurosci. Lett., (2006), 392: 79-83)、したがって、グレリンは胃腸機能の調節におけるその役割と一致した様式で吐き気を低下させうることが確認された。胃腸運動の調節におけるグレリンの役割はGH分泌の活性化とは無関係であり、迷走神経−コリン作動性ムスカリン経路により仲介されている可能性があると考えられる(U.S. Patent Application No. 20060025566)。
【0033】
グレリンは糖尿病性の胃不全麻痺を伴う患者において胃内容排出を高めることも示された(Murray, C. D. et al., Gut, (2005), 54: 1693-8)。
前記に述べた試験において、グレリンまたはグレリン類似体は腹腔内(ip)、静脈内(iv)または脳室内(icv)注射により投与されたことに言及するのは興味深い。他の開示(U.S. Patent No. 6,548,501; U.S. Patent Application No. 20020042419; U.S. Patent Application No. 20050187237; U.S. Patent Application No. 20060025566)は、胃腸運動障害を処置する手段としてGHSの経口投与を報告している。
【0034】
当技術分野において胃腸運動障害を処置するのに有用なことが知られている化合物はごくわずかであり、胃腸運動に作用する化合物、たとえば運動を刺激する化合物がさらに多数があれば、きわめて望ましいであろう。胃腸運動に作用する化合物は、正常な胃腸機能の障害、たとえばイレウスおよび吐き気の処置に有用である。
【0035】
逆に、グレリンアンタゴニストも患者に有用な効果を達成するために使用できる可能性がある(U.S. Patent Publication Nos. 2002/187938, 2003/0211967および2004/0157227;ならびにU.S. Patent No. 6,967,237)。たとえば、GHS受容体においてアンタゴニスト作用を示してGH分泌を抑制する化合物、たとえばグレリンのアンタゴニスト類似体は、過度のGH分泌を復帰させ(U.S. Patent Application Publication No. 2002/0187938)、肥満症でない者において体重減少を促進し(U.S. Patent No. 6,967,237)、理想体重を維持し、および/または食欲を低下させる(U.S. Patent No. 6,967,237)ことが指摘されている。グレリンアンタゴニストは、肥満症がNIDDMの発症によるものではない肥満症個体において体重減少を促進するためにも使用できる(U.S. Patent No. 6,967,237;およびU.S. Patent Application Publication No. 2003/0211967)。
【0036】
過体重は多くの疾患または状態に関連する要因である:たとえば高血圧症、異脂肪血症および心血管疾患(U.S. Patent Application Publication No. 2003/0211967;およびU.S. Patent No. 6,967,237)、ならびに胆石、骨関節炎(U.S. Patent No. 6,967,237)、特定の癌(U.S. Patent Application Publication Nos. 2003/0211967および2004/0157227;ならびにU.S. Patent No. 6,967,237)、ならびにプラダー−ウィリ症候群(U.S. Patent No. 6,950,707;国際特許出願No. PCT/US2004/008385 [WO 04/084943]; Haqq, A. M. et al., J. Clin. Endocri. Metab., (2003), 88(1): 174-8;およびCummings, D. E. et al., Nat. Med., (2002), 8(7): 643-4)。したがって、体重減少を促進するグレリンアンタゴニストは、そのような疾患もしくは状態の可能性を低下させ、および/またはそのような疾患もしくは状態の処置の少なくとも一部を構成するであろう。GHS分子のアンタゴニストは腫瘍形成組織への結合を示し、標的組織、たとえば肺、乳腺、甲状腺または膵臓の腫瘍における腫瘍形成細胞数を減少させることも開示された(国際特許出願No. PCT/EP99/08662 [WO 00/29011])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】PCT/JP00/04907 [WO 01/07475]
【特許文献2】U.S. Patent No. 6,566,337
【特許文献3】U.S. Patent No. 6,861,409
【特許文献4】U.S. Patent No. 6,967,237
【特許文献5】U.S. Patent No. 6,251,902
【特許文献6】PCT/IB96/01353 [WO 97/24369]
【特許文献7】PCT/IB98/00873 [WO 98/58947]
【特許文献8】U.S. Patent No. 6,686,359
【特許文献9】U.S. Patent Publication No. 2002/0013320
【特許文献10】PCT/DK2004/000529 [WO 05/014032]
【特許文献11】U.S. Patent Application Publication No. 2003/0211967
【特許文献12】U.S. Patent No. 6,548,501
【特許文献13】U.S. Patent Application No. 20040266989
【特許文献14】U.S. Patent No. 4,962,115
【特許文献15】U.S. Patent No. 6,214,843
【特許文献16】U.S. Patent No. 6,911,430
【特許文献17】U.S. Patent No. 5,362,756
【特許文献18】U.S. Patent No. 5,929,035
【特許文献19】U.S. Patent Application No. 20060025566
【特許文献20】U.S. Patent Application No. 20020042419
【特許文献21】U.S. Patent Application No. 20050187237
【特許文献22】U.S. Patent Publication No. 2002/187938
【特許文献23】U.S. Patent Publication No. 2004/0157227
【特許文献24】U.S. Patent No. 6,950,707
【特許文献25】PCT/US2004/008385 [WO 04/084943]
【特許文献26】PCT/EP99/08662 [WO 00/29011]
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】Kojima, M. et al., Nature, (1999), 402(6762): 656-60
【非特許文献2】Kaiya, H. et al., J. Biol. Chem., (2001), 276(44): 40441-8
【非特許文献3】Yildiz, B. O. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2004), 101(28): 10434-9
【非特許文献4】Garcia, J. M. et al., J. Clin. Endocrin. Metab., (2005), 90(5): 2920-6
【非特許文献5】Ukkola, O. et al., Ann. Med., (2002), 34(2): 102-8
【非特許文献6】Frohman, L. A. et al., Endocr. Rev., (1986), 7(3): 223-53
【非特許文献7】Strobl, J. S. et al., Pharmacology Review (1994) 46: 1-34
【非特許文献8】Ghigo, E. et al., Eur. J Endocri., (1997), 136(5): 445-60)
【非特許文献9】Bowers, C. Y. et al., Endocrinology, (1984), 114(5): 1537-45
【非特許文献10】Cheng, K. et al., Endocrinology, (1989), 124(6): 2791-8
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【非特許文献12】Deghenghi, R. et al., Life Sci., (1994), 54(18): 1321-8
【非特許文献13】Smith, R. G. et al., Science, (1993), 260(5114): 1640-3
【非特許文献14】Patchett, A. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1995), 92(15): 7001-5
【非特許文献15】Chen, M.-H. et al., Bioorg. Mod. Chem. Letts., (1996), 6(18): 2163-9)
【非特許文献16】Howard, A. D. et al., Science, (1996), 273(5277): 974-7
【非特許文献17】Pong, S. S. et al., Mol. Endocri., (1996), 10(1): 57-61
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【非特許文献28】Tschop, M. et al., Endocrinology, (2002), 143(2): 558-68
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【非特許文献32】Rudman, D. et al., Horm. Res., (1991), 36 (Suppl 1): 73-81
【非特許文献33】Peeters, T. L., J Physiol. Pharmacol., (2003), 54 (supp 4): 95-103
【非特許文献34】Trudel, L. et al, J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., (2002), 282: G948-52
【非特許文献35】Scarpignato, C., Dig. Dis., (1997), 15: 112
【非特許文献36】Feighner, S. D. et al., Science, (1999), 284: 2184-8
【非特許文献37】Dorland's Illustrated Medical Dictionary, p.375, p. 816, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)
【非特許文献38】Resnick, J., Am. J. of Gastroentero., (1997), 92: 751
【非特許文献39】Resnick, J., Am. J. of Gastroentero., (1997), 92: 934
【非特許文献40】Livingston, E. H. et al., Digest. Dis. and Sci., (1990), 35: 121
【非特許文献41】Quigley, E. M. et al., Gastroentero., (2001), 120: 263-86
【非特許文献42】Murray, C. D. et al., Gut, (2005), 54: 1693-8
【非特許文献43】Trudel, L. et al, Peptides, (2003), 24: 531-4
【非特許文献44】De Winter, B. Y. et al., Neurogastroenterol. Motil., (2004), 16: 439-46
【非特許文献45】Poitras, P. et al., Peptides, (2005), 26: 1598-601
【非特許文献46】Rudd, J. A. et al., Neurosci. Lett., (2006), 392: 79-83
【非特許文献47】Haqq, A. M. et al., J. Clin. Endocri. Metab., (2003), 88(1): 174-8
【非特許文献48】Cummings, D. E. et al., Nat. Med., (2002), 8(7): 643-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
しかし、天然グレリンは比較的短い半減期をもち、このため、摂食および/または体重減少に対して観察可能な効果を得るために利用できる投与経路および用量が制限される。ラットにおける外因性グレリンの見掛けの半減期は30分(Tolle, V. et al., Endocrin., (2002), 143: 1353-61)、ヒトにおいてはわずか10分(Nagaya, N. et al., Am. J. Physiol. Regul. Integr. Comp. Physiol., (2001), 280: R1483-R1487)であると報告されている。GHSが提供するはずの多様な有益な効果があるので、有効な生物学的に安定なグレリン類似体分子が当技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本明細書に記載するグレリン類似体はGHS受容体において活性である。これらの類似体は、この受容体に結合してGHS受容体の活性を刺激または阻害することができる。グレリン類似体は多様な用途をもち、これには研究用ツールまたは療法薬としての使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
合成アミノ酸であるイソニペコチン酸(Inp)
【0042】
【化2】

【0043】
または(1−Apcまたは4−Apc)でN末端において置換されたグレリン類似体は天然グレリンと比較してより良好なタンパク質分解抵抗性およびGHS受容体における活性の増大を示すことが見いだされた。
【0044】
本発明の観点は、式(I)をもつグレリン類似体またはその医薬的に許容できる塩を記載する;式中のA〜A28の定義に挙げた最初のアミノ酸は、配列中の第1アミノ酸、すなわちN末端残基以外は、天然グレリンの配列、すなわちH-Gly-Ser-Ser-Phe-Leu-Ser-Pro-Glu-His-Gln-Arg-Val-Gln-Gln-Arg-Lys-Glu-Ser-Lys-Lys-Pro-Pro-Ala-Lys-Leu-Gln-Pro-Arg-NH2中の対応する位置にみられるアミノ酸である:
(R2)-A1-A2-A3-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-A11-A12-A13-A14-A15-A16-A17-A18-A19-A20-A21-A22-A23-A24-A25-A26-A27-A28-R1
(I)
[式中:
は、Inp、1−Apcまたは4−Apcであり;
は、Ser、Abu、Acc、Act、Aib、Ala、Ava、ThrまたはValであり;
は、Ser、Asp(NH−R)、Asp(O−R)、Cys(S−R)、Dab(S(O)−R)、Dap(S(O)−R)、Glu(NH−R)、Glu(O−R)、Ser(C(O)−R10)、Thr(C(O)−R11)またはHN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であり;
は、Phe、Acc、Aic、Cha、2−Fua、1−Nal、2−Nal、2−Pal、3−Pal、4−Pal、hPhe、(X,X,X,X,X)Phe、Taz、2−Thi、3−Thi、TrpまたはTyrであり;
は、Leu、Abu、Acc、Aib、Ala、Cha、Ile、hLeu、Nle、Nva、Phe、TleまたはValであり;
は、Ser、Abu、Acc、Act、Aib、Ala、Gly、ThrまたはValであり;
は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、ThzまたはTicであり;
は、Glu、Acc、Aib、Arg、Asn、Asp、Dab、Dap、Gln、Lys、OrnまたはHN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であり;
は、His、Acc、Apc、Aib、2−Fua、2−Pal、3−Pal、4−Pal、(X,X,X,X,X−)Phe、Taz、2−Thiまたは3−Thiであり;
10は、Gln、Acc、Aib、Asn、AspまたはGluであり;
11は、Arg、Apc、hArg、Dab、Dap、Lys、OrnまたはHN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であり;
12は、Val、Abu、Acc、Aib、Ala、Cha、Gly、Ile、Leu、Nle、NvaまたはTleであり;
13は、Gln、Acc、Aib、Asn、AspまたはGluであり;
14は、Gln、Acc、Aib、Asn、AspまたはGluであり;
15は、Arg、Acc、Aib、Apc、hArg、Dab、Dap、LysまたはOrnであり;
16は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Ornであるか、または欠失しており;
17は、Glu、Arg、Asn、Asp、Dab、Dap、Gln、Lys、Orn、Asp(NH−R)、Asp(O−R)、Cys(S−R)、Dab(S(O)−R)、Dap(S(O)−R)、Glu(NH−R)、Glu(O−R)、Ser(C(O)−R10)、Thr(C(O)−R11)、HN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であるか、または欠失しており;
18は、Ser、Abu、Acc、Act、Aib、Ala、Thr、Valであるか、または欠失しており;
19は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Ornであるか、または欠失しており;
20は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Ornであるか、または欠失しており;
21は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、Thz、Ticであるか、または欠失しており;
22は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、Thz、Ticであるか、または欠失しており;
23は、Ala、Abu、Acc、Act、Aib、Apc、Gly、Nva、Valであるか、または欠失しており;
24は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Orn、HN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であるか、または欠失しており;
25は、Leu、Abu、Acc、Aib、Ala、Cha、Ile、hLeu、Nle、Nva、Phe、Tle、Valであるか、または欠失しており;
26は、Gln、Aib、Asn、Asp、Gluであるか、または欠失しており;
27は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、Thz、Ticであるか、または欠失しており;
28は、Arg、Acc、Aib、Apc、hArg、Dab、Dap、Lys、Orn、HN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であるか、または欠失しており;
は、−OH、−NH、−(C−C30)アルコキシまたはNH−X−CH−Zであり、ここでXは(C−C12)アルキルまたは(C−C12)アルケニルであり、Zは、−H、−OH、−COHまたは−C(O)−NHであり;
は、H、(C−C30)アルキル、(C−C30)ヘテロアルキル、(C−C30)アシル、(C−C30)アルケニル、(C−C30)アルキニル、アリール(C−C30)アルキル、アリール(C−C30)アシル、置換(C−C30)アルキル、置換(C−C30)ヘテロアルキル、置換(C−C30)アシル、置換(C−C30)アルケニル、置換アリール(C−C30)アルキル、置換(C−C30)アルキニルまたは置換アリール(C−C30)アシルであり;
、R、R、R、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ、そのそれぞれの場合について独立して、(C−C40)アルキル、(C−C40)アルケニル、置換(C−C40)アルキル、置換(C−C40)アルケニル、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールおよび置換アリールよりなる群から選択され;
12およびR13はそれぞれ、そのそれぞれの場合について独立して、H、(C−C40)アルキル、(C−C40)ヘテロアルキル、(C−C40)アシル、(C−C40)アルケニル、(C−C40)アルキニル、アリール(C−C40)アルキル、アリール(C−C40)アシル、置換(C−C40)アルキル、置換(C−C40)ヘテロアルキル、置換(C−C40)アシル、置換(C−C40)アルケニル、置換(C−C40)アルキニル、置換アリール(C−C40)アルキル、置換アリール(C−C40)アシル、(C−C40)アルキルスルホニルまたは−C(NH)−NHよりなる群から選択され;
nは、そのそれぞれの場合について独立して、1、2、3、4または5であり;
、X、X、XおよびXはそれぞれ、そのそれぞれの場合について独立して、H、F、Cl、Br、I、(C1−10)アルキル、置換(C1−10)アルキル、アリール、置換アリール、OH、NH、NOおよびCNよりなる群から選択され;
ただし:
12が(C−C40)アシル、アリール(C−C40)アシル、置換(C−C40)アシル、置換アリール(C−C40)アシル、(C−C40)アルキルスルホニルまたは−C(NH)−NHである場合、R13はHまたは(C−C40)アルキル、(C−C40)ヘテロアルキル、(C−C40)アルケニル、(C−C40)アルキニル、アリール(C−C40)アルキル、置換(C−C40)アルキル、置換(C−C40)ヘテロアルキル、置換(C−C40)アルケニル、置換(C−C40)アルキニルまたは置換アリール(C−C40)アルキルである]。
【0045】
グループ1の化合物と呼ぶ、前記式(I)による好ましいグループの化合物は、下記のものまたはその医薬的に許容できる塩である:
はSerまたはAibであり;
はSerまたはGlu(NH−R)であり;
はPheであり;
はLeuであり;
はSerであり;
はProであり;
はGluまたはAibであり;
はHisであり;
10はGlnまたはAibであり;
11はArgであり;
12はValであり;
13はGlnであり;
14はGlnであり;
15はArgであり;
16はLysであり;
17はGluまたはSer(C(O)−R10)であり;
18はSerであり;
19はLysであり;
20はLysであり;
21はProであり;
22はProであり;
23はAlaであり;
24はLysであり;
25はLeuであり;
26はGlnであり;
27はProであり;かつ
28はArgである。
【0046】
グループ2の化合物と呼ぶ、前記式の他の好ましい化合物は、下記のものまたはその医薬的に許容できる塩である:
はNHであり;
はHまたはアシルであり;
はヘキシルであり;かつ
10はオクタニルである。
【0047】
グループ3の化合物と呼ぶ、上記グループの化合物のうちさらに好ましいグループの化合物は、下記の化合物またはその医薬的に許容できる塩である:
はAibであり;
はGlu(NH−ヘキシル)であり;
はAibであり;
10はAibであり;かつ
17はSer(n−オクタノイル)である。
【0048】
全体としてグループ4の化合物と呼ぶ、前記式(I)による他の好ましいグループの化合物は、下記の式による化合物またはその医薬的に許容できる塩からなる:
(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)
(Inp,Aib)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)
(Inp,Aib,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:3)
(Inp,Aib2,10)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:4)
(Inp,Aib2,8)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:5)
(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:6)
(Inp,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:6)および
(Inp,Aib2,8,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:7)。
【0049】
1観点において、上記のうち好ましい化合物は(Inp)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:2)またはその医薬的に許容できる塩である。他の観点において、上記のうち好ましい化合物は(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)またはその医薬的に許容できる塩である。
【0050】
1観点において、本発明は、有効量の前記式の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、ならびに医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0051】
研究用ツールとしての用途は、一般にグレリン類似体の使用およびGHS受容体またはそのフラグメントの使用を伴う。GHS受容体は、種々の環境、たとえば哺乳動物対象、全細胞または膜フラグメント中に存在することができる。研究用ツールとしての用途の例には、GHS受容体において活性である化合物のスクリーニング、試料または調製物中におけるGHS受容体の存在の判定、およびグレリンの役割または作用の検査が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
グレリン類似体は、グレリンアゴニストおよびグレリンアンタゴニストの両方のスクリーニングに使用できる。グレリンアゴニストのスクリーニングは、たとえばグレリン類似体を被験化合物との競合実験に用いることにより実施できる。グレリンアンタゴニストのスクリーニングは、たとえばグレリン類似体を用いてGHS受容体活性を生じさせ、次いで、ある化合物がGHS受容体活性を変化させる能力を測定することにより実施できる。
【0053】
本発明の他の観点は、GHS受容体に結合しうる化合物をスクリーニングする方法である。この方法は、この受容体、受容体のグレリン結合部位を含むフラグメント、そのフラグメントを含むポリペプチド、またはそのポリペプチドの誘導体への、グレリン類似体の結合に、ある化合物が影響を及ぼす能力を測定する段階を含む。スクリーニングに有用な化合物には、前記式の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、ならびに医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤が含まれる。
【0054】
他の観点において、本発明はグレリン受容体からの応答の誘発を必要とする対象においてその応答を誘発する方法であって、その対象に療法有効量の前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)によるグレリン類似化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0055】
本発明の他の観点は、対象において有益な効果を達成するための方法であって、その対象に有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法であり、その際、有効量は疾患または障害の治療(たとえば治癒させ、または重症度を軽減する)または予防(たとえば発症または重症化する可能性を軽減する)を補助するのに有益な効果を生じるのに有効である。
【0056】
グレリンは一次培養下垂体細胞からのGHホルモン放出を用量依存性で誘発し、他の下垂体ホルモンの放出を刺激することはない。グレリンは、麻酔したラットに静脈内注射すると、GHの拍動放出を刺激した(Kojima, M. et al., Nature, (1999), 402 (6762): 656-60);したがって、本発明の他の観点は、GH分泌の刺激を必要とする対象においてそのような分泌を刺激するための方法であって、有効量の式(I)による1以上のアゴニスト化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上によるアゴニスト化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法であり、その際、有効量は少なくとも検出可能なほどGH分泌の増加を生じるのに十分な量、好ましくは患者において有益な効果を生じるのに十分な量である。
【0057】
上記方法の好ましい方法は、GH分泌の刺激が、GH欠乏状態の処置、筋量および/または骨密度の増大、性的機能障害の克服、体重増加および/または理想体重維持、身体機能の維持および/または回復、ならびに/あるいは食欲増進のために適用されるものである。
【0058】
上記方法の好ましい方法は、体重増加もしくは体重維持または食欲増進が、体重減少を伴う疾患もしくは障害を有するかまたは体重減少を伴う処置を受けている患者に適用されるものである。
【0059】
上記方法の好ましい方法は、体重減少を伴う疾患が悪液質に関連するものであり、これには食欲不振、食欲異常亢進、癌、エイズおよび慢性閉塞性肺疾患(COPD)が含まれるが、これらに限定されない。上記方法の他の好ましい観点は、体重減少が、特に虚弱者および高齢者における消耗症候群の発症によるものである。上記方法の他の好ましい方法は、他の点では健康な高齢の患者において未解明の体重減少後の体重増加を促進し、またはアルツハイマー病の発症を予防、治療または軽減するものである。上記方法のさらに他の好ましい方法は、体重減少を伴う処置が、化学療法、放射線療法、一時固定、永続固定および透析を含むものである。
【0060】
上記方法の他の好ましい方法は、体重増加もしくは体重維持および/または食欲増進が、特定の疾患または障害に罹患しておらず、前記のいずれかの処置を受けていない、他の点では健康な患者に適用されるものである。
【0061】
他の観点において本発明は、慢性閉塞性肺疾患の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、有効量の式(I)による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法である。
【0062】
本発明は、患者(たとえばヒトなどの哺乳動物)において胃腸運動を刺激する方法に関する。この方法は、療法有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を、胃腸運動異常に罹患しているかまたはそのリスクをもつ患者に投与する段階を含む。
【0063】
1観点において本発明は、胃腸運動異常状態を減退させるのに適切な有効量のグレリンのペプチジル類似体またはそのプロドラッグを投与することにより、胃腸運動異常状態を処置する方法を提供し、その際、類似体またはプロドラッグは、前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物である。この本発明方法は、患者(たとえばヒトなどの哺乳動物)において胃および胃腸の運動を促進するのに有用であり、したがって、胃および胃腸の運動の改善が有益となる状態、たとえば胃食道逆流性疾患(GERD)、過敏性腸症候群(IBS)、便秘、イレウス、嘔吐、胃不全麻痺、結腸偽閉塞などを処置するのに有用である。
【0064】
他の観点において本発明は、療法有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することにより、患者(たとえばヒトなどの哺乳動物)において胃および胃腸の運動を促進するのに有用な方法を提供し、その際、胃運動異常またはイレウスはオピエート、たとえばモルヒネ(これに限定されない)の投与によるものである。
【0065】
他の観点において本発明は、イレウス、胃不全麻痺または嘔吐を減退させるのに適切な、療法有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することにより、イレウス、胃不全麻痺または嘔吐を処置する方法を提供する。さらに他の観点において、本発明方法により処置される状態はイレウス、たとえば術後イレウスであり、その手術は胃腸手術、たとえば腹部手術であってもよい。術後イレウスは、胃腸管のいずれかの部分、たとえば胃、小腸または大腸に起きる可能性がある。術後イレウスは、モルヒネの存在に関連する場合がある。他の観点において、イレウスは胃腸外科処置以外の要因が原因であって、胃腸管のいずれかの部分、たとえば胃、小腸または大腸に起きる可能性がある。本発明のさらに他の観点において、本発明方法により処置される状態は嘔吐、たとえば抗癌化学療法薬の投与、妊娠、食欲異常亢進もしくは食欲不振に関連するか、またはそれらにより誘発される嘔吐である。さらに他の観点において、本発明方法により処置される状態は胃不全麻痺、たとえば糖尿病性の胃不全麻痺である。糖尿病はI型またはII型糖尿病の可能性がある。
【0066】
他の観点において本発明は、患者において外科処置を実施する方法であって、患者に療法有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法を提供する。上記方法の1態様において、外科処置を実施する方法はその外科処置を必要とする患者の同定を含む。
【0067】
外科処置を実施する方法の1態様において、外科処置は胃腸管を直接または間接的に処置するものであってよい。本発明方法が有益となる可能性のある種類の外科処置には、開腹術、移植手術、尿生殖器系の外科処置、リンパ系の外科処置、呼吸器系の外科処置、および腹部内のいずれかの臓器または組織の癌を処置するための外科処置が含まれるが、これらに限定されない。外科処置を行なう方法を実施するのに有用な前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を、外科処置の前、途中もしくは後、またはそのいずれかの組合わせで投与することができる。
【0068】
他の観点において本発明は、術後イレウスの予防を必要とする患者においてそれを予防する方法であって、その患者に外科処置の前、途中もしくは後、またはそのいずれかの組合わせで、療法有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0069】
他の観点において本発明は、逆流性疾患、嘔吐、胃不全麻痺、過敏性腸症候群、便秘または結腸偽閉塞の予防を必要とする患者においてそれを予防する方法であって、その患者に療法有効量の前記式による1以上の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ1、グループ2、グループ3、グループ4、(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)および/または(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)のうち1以上による化合物あるいはその医薬的に許容できる塩、あるいは本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法を提供する。嘔吐は、抗癌化学療法薬による処置、妊娠、食欲異常亢進または食欲不振に関連する可能性がある。胃不全麻痺は、糖尿病に関連する可能性がある;糖尿病はI型またはII型糖尿病の可能性がある。
【0070】
全体としてグループ5の化合物と呼ぶ、前記式(I)による第2の最も好ましいグループの化合物は、下記の式による化合物またはその医薬的に許容できる塩からなる:
(Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:1)
(1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:1)
(Ac−Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:8)および
(Ac−1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:8)。
【0071】
1観点において、好ましい化合物は(Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:1)またはその医薬的に許容できる塩である。他の観点において、好ましい化合物は(1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:1)またはその医薬的に許容できる塩である。他の観点において、好ましい化合物は(Ac−Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:8)またはその医薬的に許容できる塩である。他の観点において、好ましい化合物は(Ac−1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:8)またはその医薬的に許容できる塩である。
【0072】
他の観点において、本発明は、有効量の前記式の化合物、より好ましくは前記に定めたグループ5による化合物またはその医薬的に許容できる塩、および医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0073】
1観点において本発明は、GHS受容体に結合しうる化合物をスクリーニングする方法であって、この受容体への、受容体のフラグメントへの、そのフラグメントを含むポリペプチドへの、またはそのポリペプチドの誘導体への、前記に定めたグループ5による化合物またはその医薬的に許容できる塩の結合に、ある化合物が影響を及ぼす能力を測定することを含む方法を提供する。
【0074】
他の観点において、本発明はグレリン受容体からの応答の誘発を必要とする対象においてその応答を誘発する方法であって、その対象に療法有効量の前記に定めたグループ5によるグレリンアンタゴニスト類似化合物もしくはその医薬的に許容できる塩、または本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0075】
他の観点において本発明は、対象において有益な効果を達成するための方法であって、その対象に有効量の前記に定めたグループ5によるグレリン類似化合物もしくはその医薬的に許容できる塩、または本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法を提供し、その際、有効量は疾患または障害の治癒もしくは重症度の軽減または発症もしくは重症化の可能性の軽減を補助するのに有益な効果を生じるのに有効である。1観点において、有益な効果は、疾患または障害の治癒もしくは重症度の軽減または発症もしくは重症化の可能性の軽減を補助する。
【0076】
GH分泌の過剰発生は臨床的に多数の疾患および/または状態の原因であるとされている。本発明の他の観点は、GH分泌の抑制を必要とする対象においてそれを抑制するための方法であって、有効量の前記に定めたグループ5による1以上の化合物もしくはその医薬的に許容できる塩、または本明細書に定めるその組成物を投与することを含む方法であり、その際、有効量は少なくとも検出可能なほどGH分泌の減少を生じるのに十分な量、好ましくは患者において有益な効果を達成するのに十分な量である。
【0077】
前記に定めたグループ5によるグレリンアンタゴニスト化合物もしくはその医薬的に許容できる塩、または本明細書に定めるその組成物は、患者において有益な効果を達成するのにも使用できる。上記方法の好ましい方法は、GH分泌の抑制が体重減少および/または食欲低下の促進、理想体重の維持、肥満症の復帰、糖尿病およびその合併症、たとえば網膜障害の処置、および/または心血管障害の改善のために適用されるものである。過体重は種々の疾患に関連する要因であり、これには高血圧症、糖尿病、異脂肪血症、心血管疾患、胆石形成、骨関節炎、プラダー−ウィリ症候群および/またはある形態の癌が含まれるが、これらに限定されない。体重減少は、そのような疾患の処置の一部として処方された場合、そのような疾患の可能性を低下させることが証明されている。
【0078】
他の観点において本発明は、成長ホルモン分泌の抑制を必要とする対象においてそれを抑制するための方法であって、対象に有効量の前記に定めたグループ5によるグレリン類似化合物もしくはその医薬的に許容できる塩、または本明細書に定めるその組成物を投与する段階を含む方法を提供し、その際、有効量は少なくとも検出可能なほど成長ホルモン分泌の減少を生じるのに十分な量である。
【0079】
上記観点の好ましい観点において、成長ホルモン分泌の抑制は、過度の成長ホルモン分泌を特徴とする疾患または状態の処置のために、過体重の減少促進のために、食欲低下の促進のために、体重の維持の促進のために、肥満症の処置のために、糖尿病の処置のために、網膜障害を含めた糖尿病合併症の処置のために、または心血管障害の改善のために適用される。他の観点において、過体重は高血圧症、糖尿病、異脂肪血症、心血管疾患、胆石、骨関節炎および癌を含めた疾患または状態に関連する要因である。体重減少の促進はそのような疾患または状態の可能性を低下させると考えられる。他の観点において、体重減少の促進はそのような疾患または状態の処置の少なくとも一部を構成する。他の観点において、過体重はプラダー−ウィリ症候群によるものである。さらに他の観点においては、肥満症を処置する。
【0080】
本発明のいずれかの観点による1以上のグレリン類似化合物およびその組成物であって、それらのいずれかの観点を実施するのに適切なものの有効量を、投与が必要な対象に、許容できる適切ないずれかの医療手段で投与することができ、これには静脈内、皮下もしくは経口による方法、または持続放出製剤の埋込みが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明の他の形態および利点は、各種の例を含めた本明細書に示す他の記載から明らかである。提示する例は、本発明の実施に有用な種々の成分および手法を示す。これらの例は、特許請求の範囲に記載する本発明を限定するものではない。本明細書の開示に基づいて、当業者は本発明の実施に有用な他の成分および手法を確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、タンパク質分解に対して抵抗性であり、さらにGHS受容体におけるグレリン活性を促進するグレリン類似体(すなわちアゴニスト)または抑制するグレリン類似体(すなわちアンタゴニスト)である。前記に詳述したように、本発明の類似体は対象における多様な疾病の処置に有用である。
【0083】
本明細書中で用いる”対象”は、哺乳動物または哺乳動物以外の動物を表わし、これにはたとえば限定ではないが、ヒト、ラット、マウスまたは農場動物が含まれる。対象という表現は必ずしも疾患または障害の存在を示すものではない。用語”対象”には、たとえば実験の一部としてグレリン類似体を投与される哺乳動物または哺乳動物以外の動物、疾患または障害の軽減を補助するために処置される哺乳動物または哺乳動物以外の動物、および疾患または障害の発症を遅延または阻止するために予防処置される哺乳動物または哺乳動物以外の動物が含まれる。
【0084】
本発明の化合物または組成物の”療法許容量”は、製剤または投与経路に関係なく、対象において目的とする生物学的応答を誘発する量である。療法量の生物学的効果は、生物において多くのレベルで起きる可能性があり、かつ測定することができる。たとえば、療法量の生物学的効果は、細胞レベルで起きる可能性があり、グレリンおよび/またはグレリン類似体を結合する受容体において応答を測定することにより測定できる;あるいは、療法量の生物学的効果は、たとえば循環している成長ホルモンの濃度の上昇/低下に作用する系のレベルで起きる可能性があり、かつ測定することができる。療法量の生物学的効果は、生体レベルで、たとえば対象における疾患または状態の症状(1以上)または進行の軽減において起きる可能性があり、かつ測定することができる。本発明の化合物または組成物の療法許容量は、製剤または投与経路に関係なく、対象において1以上の生物学的応答を生じることができる。本発明の化合物または組成物をインビトロ系における試験に用いる場合、本発明の化合物または組成物の療法許容量は、選択したインビトロ系において測定可能な応答を生じる量であると考えることができる。
【0085】
本明細書に記載するグレリンアゴニストおよびアンタゴニスト、たとえばグループ1、2、3、4および/または5のものは、それを必要とする対象において体重を増加、減少および/または維持するのに有用である。体重は、肥満指数(”BMI”)を決定するためにしばしば測定して利用される。対象のBMI値は、体重(キログラム)を身長(メートル)の平方で割る計算により決定される。当技術分野で周知のBMI”正常”範囲は19〜22である。肥満指数が”正常”範囲より低い個体はより疾患に罹患しやすく、特定の有益な医療処置、たとえば化学療法は、正常下BMIをもつ個体には効果がより低い。
【0086】
本明細書中で用いる、肥満症の対象または哺乳動物は、その対象の正常体重より約20%、約25%、約30%、またはさらに多い体重をもつことを特徴とする。正常体重は、以前の時点における、たとえばグレリン濃度が正常であった時点におけるその対象の体重の比較により、あるいは同様な年齢および/または条件の他の対象の平均と比較したその対象のグレリン濃度の比較により、決定することができる。
【0087】
本明細書中で用いる、過体重の対象または哺乳動物は、その対象についての正常体重より約5%〜約20%多い体重をもつことを特徴とする。正常体重は、以前の時点における、たとえばグレリン濃度が正常であった時点におけるその対象の体重の比較により、あるいは同様な年齢および/または条件の他の対象の平均と比較したその対象のグレリン濃度の比較により、決定することができる。
【0088】
本明細書中で用いる、正常な対象または哺乳動物は、その対象についての正常体重より約5%多い〜約5%少ない体重をもつことを特徴とする。正常体重は、以前の時点における、たとえばグレリン濃度が正常であった時点におけるその対象の体重の比較により、あるいは同様な年齢および/または条件の他の対象の平均と比較したその対象のグレリン濃度の比較により、決定することができる。正常体重の対象は、19〜22のBMIをもつ可能性がある。
【0089】
本明細書中で用いる、痩せた対象または哺乳動物は、その対象についての正常体重より約5%〜約30%、またはさらに50%少ない体重をもつことを特徴とする。正常体重は、以前の時点における、たとえばグレリン濃度が正常であった時点におけるその対象の体重の比較により、あるいは同様な年齢および/または条件の他の対象の平均と比較したその対象のグレリン濃度の比較により、決定することができる。
【0090】
本明細書中で用いる用語”処置する”、”処置すること”および”処置”には、対症処置、治癒処置および予防処置が含まれる。
本明細書中で用いる”測定可能な”は、生物学的効果が再現性をもち、かつアッセイのベースライン変動性とは有意に異なることを意味する。
【0091】
本明細書中で用いる”タンパク質分解”は、プロテアーゼと呼ばれる細胞性タンパク質分解酵素によりペプチド結合が加水分解されることによる、ペプチドの指向性分解、すなわち開裂を表わす。
【0092】
別途定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味をもつ。本明細書中に述べるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献も援用する。
【0093】
本発明化合物中に存在する特定のアミノ酸は以下に提示することができ、以下に提示するものである。
名称および略号
【0094】
【表1−1】

【0095】
【表1−2】

【0096】
【表1−3】

【0097】
アミノ酸が異性形態をもつ場合、別途明確に指示しない限り、表わされるのはL形のアミノ酸である。
ペプチドを定義するために用いた命名法は、当技術分野で一般的に用いられているものであり、N末端アミノ基が左に、C末端カルボキシル基が右にある:すなわち構造−NH−C1(R’)−CO−を表わす;ここで、RおよびR’はそれぞれ独立して、水素またはアミノ酸の側鎖であり(たとえば、AlaについてはR=CHおよびR’=H)、あるいはRとR’は結合して環系を形成することができる。N末端アミノ酸について、この略号は下記の構造を表わす:
【0098】
【化3】

【0099】
あるいは、N末端アミノ酸がイソニペコチン酸(Inp)である場合、この略号は下記の構造を表わす。
【0100】
【化4】

【0101】
本発明のペプチドは、本明細書中において他の形で、たとえば(Aib)hGhrelin(1−28)−NHでも記載される;天然アミノ酸配列から置換したアミノ酸を第1組のかっこ内に配置する(たとえばhGhrelin中のSerの代わりにAib)。第2組のかっこ内の数値は、そのペプチド中に存在するアミノ酸の個数を表わす(たとえばhGhrelin(1−18)は、ヒトグレリンのペプチド配列のアミノ酸1から18までを表わす)。たとえば(Aib)hGhrelin(1−28)−NH中の表示”NH”は、そのペプチドのC末端がアミド化されていることを示す。(Aib)hGhrelin(1−28)または(Aib)hGhrelin(1−28)−OHは、C末端が遊離酸であることを示す。”Ghrelin”の前に挿入されている小文字はそれの起源または由来を示す;たとえば”h”はそのグレリンがヒト(homo sapience)にみられる形態のグレリンの相同体であることを示す。
【0102】
別途記載しない限り、キラル中心をもつアミノ酸はL−鏡像異性体として提示される。”その誘導体”という表現は、修飾されたアミノ酸、たとえば対応するD−アミノ酸、N−アルキル−アミノ酸、β−アミノ酸または標識アミノ酸を表わす。
【0103】
本明細書中で用いるAccは、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボン酸(A3c);1−アミノ−1−シクロブタンカルボン酸(A4c);1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸(A5c);1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸(A6c);1−アミノ−1−シクロヘプタンカルボン酸(A7c);1−アミノ−1−シクロオクタンカルボン酸(A8c);および1−アミノ−1−シクロノナンカルボン酸(A9c)よりなる群から選択されるアミノ酸を含む。
【0104】
”アシル”は、R”−C(O)−を表わし、ここでR”はH、アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、アルキルアリールまたは置換アルキルアリールである。
【0105】
”アルキル”は、1個以上の炭素原子を含む炭化水素基を表わし、その際、複数の炭素原子が存在する場合、それらは単結合により結合している。アルキル炭化水素基は直鎖であってもよく、あるいは1以上の枝分かれまたは環式基を含んでもよい。
【0106】
”置換アルキル”は、炭化水素基の1個以上の水素原子が、下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で交換されたアルキルを表わす:ハロゲン(すなわちフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、−OH、−CN、−SH、−NH、−NHCH、−NO、1〜6個のハロゲンで置換された−C1−20アルキル、−CF、−OCH、−OCFおよび−(CH0−20−COOH。種々の態様において、1、2、3または4個の置換基が存在する。−(CH0−20−COOHが存在すると、アルキル酸が生成する。−(CH0−20−COOHを含む、またはそれからなるアルキル酸の例には、2−ノルボルナン酢酸、tert−酪酸および3−シクロペンチルプロピオン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
”ヘテロアルキル”は、炭化水素基の1個以上の炭素原子が、1個以上の下記の基で交換されたアルキルを表わす:アミノ、アミド、−O−、−S−またはカルボニル。種々の態様において、1または2個のヘテロ原子が存在する。
【0108】
”置換ヘテロアルキル”は、炭化水素基の1個以上の水素原子が、下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で交換されたヘテロアルキルを表わす:ハロゲン(すなわちフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、−OH、−CN、−SH、−NH、−NHCH、−NO、1〜6個のハロゲンで置換された−C1−20アルキル、−CF、−OCH、−OCFおよび−(CH0−20−COOH。種々の態様において、1、2、3または4個の置換基が存在する。
【0109】
”アルケニル”は、2個以上の炭素から構成される炭化水素基であって、1以上の炭素−炭素二重結合が存在するものを表わす。アルケニル炭化水素基は直鎖であってもよく、あるいは1以上の枝分かれまたは環式基を含んでもよい。
【0110】
”置換アルケニル”は、1個以上の水素原子が、下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で交換されたアルケニルを表わす:ハロゲン(すなわちフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、−OH、−CN、−SH、−NH、−NHCH、−NO、1〜6個のハロゲンで置換された−C1−20アルキル、−CF、−OCH、−OCFおよび−(CH0−20−COOH。種々の態様において、1、2、3または4個の置換基が存在する。
【0111】
”アリール”は、共役π電子系をもつ少なくとも1つの環をもち、最高2つの共役または縮合した環系を含む、場合により置換された芳香族基を表わす。アリールには炭素環式アリール、複素環式アリールおよびビアリール基が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、アリールは5−員または6−員環である。複素環式アリールに好ましい原子は、1個以上の硫黄、酸素および/または窒素である。アリールの例にはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インドール、キノリン、2−イミダゾールおよび9−アントラセンが含まれるが、これらに限定されない。アリールの置換基は下記よりなる群から選択される:−C1−20アルキル、−C1−20アルコキシ、ハロゲン(すなわちフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、−OH、−CN、−SH、−NH、−NO、1〜5個のハロゲンで置換された−C1−20アルキル、−CF、−OCFおよび−(CH0−20−COOH。種々の態様において、アリールは0、1、2、3または4個の置換基を含む。
【0112】
用語”ハロ”には、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが含まれる。
用語”(C−C12)炭化水素部分”には、アルキル、アルケニルおよびアルキニルが含まれ、アルケニルおよびアルキニルの場合はC−C12である。
【0113】
”アルキルアリール”は、”アリール”に結合した”アルキル”を表わす。
Glu(NH−ヘキシル)が意味するのは下記のものである:
【0114】
【化5】

【0115】
Ser(n−オクタノイル)またはSer(C(O)−ヘプチル)が意味するのは下記のものである:
【0116】
【化6】

【0117】
N末端アミノ酸InpおよびApcは下記の構造をもつ:
【0118】
【化7】

【0119】
本発明には、ジアステレオマーならびにそれらのラセミ形および分割した鏡像異性体として純粋な形が含まれる。グレリン類似体はD−アミノ酸、L−アミノ酸またはそのいずれかの組合わせを含むことができる。好ましくは、グレリン類似体中に存在するアミノ酸はL−鏡像異性体である。
【0120】
本発明の類似体の好ましい誘導体には、D−アミノ酸、N−アルキル−アミノ酸、β−アミノ酸、および/または1以上の標識アミノ酸(D−アミノ酸、N−アルキル−アミノ酸またはβ−アミノ酸の標識された形態)が含まれる。標識誘導体は、アミノ酸および/またはアミノ酸誘導体を検出可能な標識で変化させたものを示す。検出可能な標識の例には、蛍光、酵素および放射性標識が含まれる。標識の種類および標識の位置は両方とも類似体の活性に影響を及ぼす可能性がある。標識は、GHS受容体におけるグレリン類似体の活性を実質的に変化させないように選択および配置すべきである。特定の標識および位置がグレリン活性に及ぼす影響は、グレリンの活性および/または結合を測定するアッセイにより判定できる。
【0121】
C末端カルボキシ基に共有結合した保護基は、インビボ条件下でカルボキシ末端の反応性を低下させる。カルボキシ末端保護基は、好ましくは最後のアミノ酸のα−カルボニル基に結合する。好ましいカルボキシ末端保護基には、アミド、メチルアミドおよびエチルアミドが含まれる。
【0122】
本明細書中で用いる特定の他の略号は下記に定めるものである。
名称および略号
【0123】
【表2−1】

【0124】
【表2−2】

【0125】
合成法
本発明化合物は、本明細書の実施例に開示する方法および当技術分野で周知の方法により製造できる。たとえば、グレリン類似体のポリペプチド領域は化学的または生化学的に合成および修飾することができる。細胞への核酸の導入および核酸の発現を伴う生化学的合成法の例は、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley, 1987-1998およびSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989に示されている。ポリペプチドの化学的合成法も当技術分野で周知である(Vincent,Peptide and Protein Drug Delivery, ニューヨーク州ニューヨーク, Dekker, 1990)。たとえば、本発明のペプチドは標準固相ペプチド合成法により製造できる(Stewart, J.M. et al., Solid Phase Synthesis, Pierce Chemical Co., 第2版 1984)。
【0126】
前記一般式の置換基Rは、当技術分野で既知の標準法によりN末端アミノ酸の遊離アミンに結合させることができる。たとえば、アルキル基、たとえば(C−C30)アルキルは、還元アルキル化により結合させることができる。ヒドロキシアルキル基、たとえば(C−C30)ヒドロキシアルキルも還元アルキル化により結合させることができ、その際、遊離ヒドロキシ基をt−ブチルエステルで保護する。アシル基、たとえばCOEは、遊離酸、たとえばECOOHを、N末端アミノ酸の遊離アミンに結合させることによって結合させることができる;完成した樹脂と3モル当量の遊離酸およびジイソプロピルカルボジイミドの両方を塩化メチレン中で1時間混合することによる。遊離酸が遊離ヒドロキシを含む場合、たとえばp−ヒドロキシフェニルプロピオン酸の場合、さらに3モル当量のHOBTを用いて結合を行なうべきである。
【0127】
がNH−X−CH−CONH(すなわちZ=CONH)である場合、ペプチドの合成はRink Amide−MBHA樹脂(Amide−4−メチルベンジルヒドリルアミン,Novabiochem(登録商標)から入手,カリフォルニア州サンディエゴ)に結合したFmoc−HN−X−CH−COOHから開始する。RがNH−X−CH−COOH(すなわちZ−COOH)である場合、ペプチドの合成はWang樹脂に結合したFmoc−HN−X−CH−COOHから開始する。
【0128】
A5c、A6cおよび/またはAibを含む本発明のグレリン類似体の合成の場合、これらの残基とそれらの直後の残基との結合時間は2時間である。
【実施例】
【0129】
本発明の種々の形態をさらに説明するために以下に実施例を示す。実施例には本発明を実施するために有用な手法も説明する。これらの実施例は特許請求の範囲に記載した本発明を限定するものではない。
【0130】
実施例2:(Ac−1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:8)
側鎖を保護したFmoc−(Aib2,10,Glu)hGhrelin(2−28)−Rink amide−MBHA樹脂を、433Aペプチド合成装置(Applied Biosystems(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州フォスター・シティー)により、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学を用いて合成した。置換度0.64mmol/gのRink Amide−4−メチルベンジルヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Novabiochem(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いた。使用したFmocアミノ酸(AnaSpec(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンホゼ)は、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Aib−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Glu(tBu)−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、およびFmoc−Val−OHであった。さらに、Fmoc−Glu(O−2−PhiPr)−OH(Novabiochem(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンディエゴ)をAに用いた。合成を0.1mmol規模で実施した。N−メチルピロリドン(NMP)中の20%ピペリジンで30分間処理することによりFmoc基を除去した。各結合工程で、Fmocアミノ酸(3当量,0.3mmol)を、NMP中の0.45M 2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,2,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート/1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HBTU/HOBT)溶液2mL中でまず予備活性化した。この活性化したアミノ酸エステルに、1mLのジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および1mLのNMPを添加した。ABI 433Aペプチド合成装置を下記の実施のためにプログラミングした:
(1)NMPで洗浄する;
(2)Fmoc保護基をNMP中の20%ピペリジンで30分間除去する;
(3)NMPで洗浄する;および
(4)予備活性化したFmocアミノ酸と1〜3時間結合させる。
樹脂を表題ペプチドの配列に従って逐次結合させた。ペプチド鎖を組み立てた後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジクロロメタン(DCM)で樹脂を完全に洗浄した。
【0131】
433Aによるペプチド鎖の組立てが終了した時点で、ペプチド−樹脂を振とう器上の反応器へ移し、25% Pip/DMFを用いて30分間、Fmocを除去した。樹脂をDMFで洗浄した。Fmoc−Apc−OH(0.4mmole)を、TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート)(Perceptive Biosystems(登録商標)から入手,英国ワリントン)(0.4mmole)、HOAt(0.4mmol)、DMAP(ジメチルアミノピリジン)(0.1g)およびDIEA(1.2mmole)により、4時間サイクルで1回、次いで再び一夜、結合させた。
【0132】
Fmoc基を前記と同様に除去し、ペプチドをAc2O(無水酢酸)(5mmole)およびDIEA(5mmole)によりDMF中で30分間キャッピングした。PhiPr基をGluから、DCM中の3% TFAにより10分サイクルで2回、除去した。Lysの側鎖から部分的に除去されたBocをBoc2O(0.8mmole)およびDIEA(0.8mmole)によりDCM中で一夜置換した。次いで樹脂をPyAOP(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート)(Applied Biosystems(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州フォスター・シティー)(0.6mmole)、HOAt(0.6mmole)、DMAP(0.1g)およびDIEA(1.8mmole)により10分サイクルで処理した後、ヘキシル−NH、すなわちヘキシルアミン(Sigma−Aldrich Chemicals(登録商標)から入手,米国ミズーリ州セントルイス)(2.0mmole)を添加し、得られた樹脂を一夜、連続振とうした。
【0133】
表題ペプチドを開裂させるために、樹脂をTFA、HOおよびトリイソプロピルシラン(TIS)の混合物(9.5mL/0.85mL/0.8mL)で4時間処理した。樹脂を濾去し、濾液を200mLのエーテルに注入した。沈殿を遠心分離により採集した。粗生成物をアセトニトリルと水の混合物に溶解し、逆相分離用HPLCシステムによりC18 DYNAMAX−100 Aカラム(4x43cm)(Varian(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州ウォールナッツ・クリーク)を用いて精製した。カラムを92% A:8% B〜72% A:28% Bの直線勾配により約1時間かけて溶離した;ここでAは水中の0.1% TFA、Bはアセトニトリル中の0.1% TFAであった。画分を分析用HPLCにより検査し、純粋な生成物を含有するものをプールし、乾固するまで凍結乾燥して1.5mg(0.5%)の収量の白色固体を得た。純度をHPLCにより測定して、約97.5%であることが認められた。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により、3435.1の分子量が得られた(計算分子量3434.5と一致する)。
【0134】
実施例4:(1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:1)
側鎖を保護したFmoc−(Aib2,10,Glu)hGhrelin(2−28)−Rink amide−MBHA樹脂を、433Aペプチド合成装置(Applied Biosystems(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州フォスター・シティー)により、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学を用いて合成した。置換度0.64mmol/gのRink Amide−4−メチルベンジルヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Novabiochem(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いた。使用したFmocアミノ酸(AnaSpec(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンホゼ)は、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Aib−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Glu(tBu)−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、およびFmoc−Val−OHであった。さらに、Fmoc−Glu(O−2−PhiPr)−OH(Novabiochem(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンディエゴ)をAに用いた。合成を0.1mmol規模で実施した。N−メチルピロリドン(NMP)中の20%ピペリジンを用いて30分サイクルで処理することによりFmoc基を除去した。各結合工程で、Fmocアミノ酸(3当量,0.3mmol)を、NMP中の0.45M 2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,2,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート/1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HBTU/HOBT)溶液2mL中でまず予備活性化した。この活性化したアミノ酸エステルに、1mLのジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および1mLのNMPを樹脂に添加した。ABI 433Aペプチド合成装置を下記反応の実施のためにプログラミングした:
(1)NMPで洗浄する;
(2)Fmoc保護基をNMP中の20%ピペリジンで30分間除去する;
(3)NMPで洗浄する;および
(4)予備活性化したFmocアミノ酸と1〜4時間結合させる。
樹脂を表題ペプチドの配列に従って逐次結合させた。ペプチド鎖を組み立てた後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジクロロメタン(DCM)で樹脂を完全に洗浄した。
【0135】
433Aによるペプチド鎖の組立てが終了した時点で、ペプチド−樹脂を振とう器上の反応器へ移し、25% Pip/DMF溶液に約30分間浸漬することによりFmocを除去した。その後、樹脂をDMFで洗浄した。Fmoc−Apc−OH(0.4mmole)を、TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート)(Perceptive Biosystems(登録商標)から入手,英国ワリントン)(0.4mmole)、HOAt(0.4mmol)、DMAP(ジメチルアミノピリジン)(0.1g)およびDIEA(1.2mmole)により、4時間サイクルで1回、次いで再び一夜、結合させた。
【0136】
Fmoc基を前記と同様に除去した。PhiPr基をGluから、DCM中の3% TFAにより1回当たり10分で2回、除去した。処理中にLysの側鎖から部分的に除去されたBocをBoc2O(0.8mmole)およびDIEA(0.8mmole)によりDCM中で一夜置換した。次いで樹脂をPyAOP(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート)(Applied Biosystems(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州フォスター・シティー)(0.6mmole)、HOAt(0.6mmole)、DMAP(0.1g)およびDIEA(1.8mmole)により10分間処理した後、ヘキシル−NH、すなわちヘキシルアミン(Sigma−Aldrich Chemicals(登録商標)から入手,米国ミズーリ州セントルイス)(2.0mmole)を添加し、樹脂溶液を一夜振とうした。
【0137】
樹脂をTFA、HOおよびトリイソプロピルシラン(TIS)の混合物(9.5mL/0.85mL/0.8mL)で約4時間処理することにより、表題ペプチドを樹脂から開裂させた。樹脂を濾去し、濾液を200mLのエーテルに注入した。沈殿を遠心分離により採集した。粗生成物をアセトニトリルと水の混合物に溶解し、逆相分離用HPLCシステムによりC18 DYNAMAX−100 Aカラム(4x43cm)(Varian(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州ウォールナッツ・クリーク)を用いて精製した。カラムを92% A:8% B〜72% A:28% Bの直線勾配により約1時間かけて溶離した;ここでAは水中の0.1% TFA、Bはアセトニトリル中の0.1% TFAであった。画分を分析用HPLCにより検査し、純粋な生成物を含有するものをプールし、乾固するまで凍結乾燥して4.6mg(14%)の白色固体を得た。純度をHPLCにより測定して、約99.8%であることが認められた。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により、3393.5の分子量が得られた(計算分子量3393.1と一致する)。
【0138】
実施例11:(Inp,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)
側鎖を保護したFmoc−(Ser17)hGhrelin(2−28)−Rink amide−MBHA樹脂を、433A型ペプチド合成装置(Applied Biosystems(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州フォスター・シティー)により、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学を用いて合成した。置換度0.64mmol/gのRink Amide−4−メチルベンジルヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Novabiochem(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いた。使用したFmocアミノ酸(AnaSpec(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンホゼ)は、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Aib−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Glu(tBu)−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、およびFmoc−Val−OHであった。さらに、Fmoc−Ser(Trt)−OH(同様にAnaSpec(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州サンホゼ)をAおよびA17に用いた。合成を0.2mmol規模で実施した。N−メチルピロリドン(NMP)中の20%ピペリジンを用いて30分間処理することによりFmoc基を除去した。各結合工程で、Fmocアミノ酸(3当量,0.3mmol)を、NMP中の0.45M 2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,2,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート/1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HBTU/HOBT)溶液2mL中でまず予備活性化した。この活性化したアミノ酸エステルに、1mLのジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および1mLのNMPを添加した。ABI 433Aペプチド合成装置を下記の実施のためにプログラミングした:
(1)NMPで洗浄する;
(2)Fmoc保護基をNMP中の20%ピペリジンで30分間除去する;
(3)NMPで洗浄する;および
(4)予備活性化したFmocアミノ酸と1または2時間結合させる。
樹脂を表題ペプチドの配列に従って逐次結合させた。ペプチド鎖を組み立てた後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジクロロメタン(DCM)で樹脂を完全に洗浄した。
【0139】
433Aによるペプチド鎖の組立てが終了した時点で、ペプチド−樹脂を振とう器上の反応器へ移し、25% Pip/DMFを用いて30分サイクルでFmocを除去した。樹脂をDMFで洗浄した。Fmoc−Inp−OH(1.0mmole)を、TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート)(Perceptive Biosystems(登録商標)から入手,英国ワリントン)(1.0mmole)、HOAt(1.0mmol)、DMAP(ジメチルアミノピリジン)(0.1g)およびDIEA(3.0mmole)により1回、一夜結合させた。
【0140】
Trt基をSerおよびSer17から、DCM中の3% TFAで2回、各回を約10分間続けて除去した。前記のようにLysの側鎖から部分的に除去されたBocを、Boc2O(0.8mmole)およびDIEA(0.8mmole)によりDCM中で一夜置換した。オクタン酸(10mmole)を、DIC(5mmole)、DMAP(0.2mg)およびDIEA(5mmole)によりDCM中で一夜、SerおよびSer17側鎖に結合させた。
【0141】
25% Pip/DMFに30分間浸漬することにより、末端Fmocを除去した。次いで樹脂をDMFで洗浄した。TFA、HOおよびトリイソプロピルシラン(TIS)の混合物(9.5mL/0.85mL/0.8mL)を約4時間用いて、樹脂から表題ペプチドを開裂させた。樹脂を濾去し、濾液を200mLのエーテルに注入した。沈殿を遠心分離により採集した。粗生成物をアセトニトリルと水の混合物に溶解し、逆相分離用HPLCシステムによりC18 DYNAMAX−100 Aカラム(4x43cm)(Varian(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州ウォールナッツ・クリーク)を用いて精製した。カラムを85% A:15% B〜55% A:45% Bの直線勾配により約1時間かけて溶離した;ここでAは水中の0.1% TFA、Bはアセトニトリル中の0.1% TFAであった。画分を分析用HPLCにより検査し、純粋な生成物を含有するものをプールし、乾固するまで凍結乾燥して41.7mg(5.9%)の収量の白色固体を得た。純度をHPLCにより測定して、約96.6%であることが認められた。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により、3507.4の分子量が得られた(計算分子量3508.16と一致する)。
【0142】
上記に一般的に開示したものと同様な合成法を用いて当業者は下記の本発明ペプチドを製造することができる:
実施例1:(Ac−Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:8)
実施例2:(Ac−1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:8)
実施例3:(Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:1)
実施例4:(1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:1)
実施例5:(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)
実施例6:(Inp,Aib)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)
実施例7:(Inp,Aib,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:3)
実施例8:(Inp,Aib2,10)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:4)
実施例9:(Inp,Aib2,8)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:5)
実施例10:(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:6)
実施例11:(Inp,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:6)および
実施例12:(Inp,Aib2,8,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:7)。
【0143】
前記に挙げた選択された好ましい態様をエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により分析して分子量を判定した。下記の表1にこの試験に際して収集したデータを報告する。HPLCにより検査した、選択された化合物それぞれの純度も示す。
【0144】
【表3】

【0145】
前記に挙げた選択された好ましい態様を当業者に既知の方法により分析して、安定性、すなわちラットモデルにおける血漿中半減期を判定した。下記の表2にこの試験に際して収集したデータを報告する。
【0146】
【表4】

【0147】
生化学的活性の測定
ここには、本発明化合物の特性を判定するために使用できる方法であって、そのために使用した方法を記載する。これらのアッセイ法に匹敵する結果をもたらす変法が当業者には自明であろう。ここに記載する結果を得るためにかつ特性を識別するために他のアッセイ法を使用できることは当業者にも自明であろう。
【0148】
GHS受容体結合測定アッセイ
GHS受容体における本発明化合物の活性は、以下に示す例に記載する方法を用いて測定でき、そのような方法で測定された。IC50に関して、効力がより大きいことを示し、したがって結合阻害を達成するために必要な量がより少ない。
【0149】
結合アッセイは、種々の環境に存在する組換え産生したGHS受容体ポリペプチドを用いて実施できる。そのような環境には、たとえば組換え核酸または天然核酸から発現したGHS受容体ポリペプチドを含有する細胞抽出物および精製した細胞抽出物が含まれる;たとえば、組換え手段で、または種々の環境に導入した天然核酸から産生された精製GHS受容体ポリペプチドの使用も含まれる。
【0150】
GHS受容体活性化合物のスクリーニング
組換え発現した受容体を用いてGHS受容体活性化合物のスクリーニングを行なうことができる。組換え発現GHS受容体は、受容体を特定の細胞系において発現させることができ、このためある化合物に対するGHS受容体における応答を他の受容体における応答からより容易に識別できるなど、幾つかの利点をもたらす。たとえばGHS受容体を普通は発現しないHEK 293、COS 7およびCHOなどの細胞系において、GHS受容体を発現ベクターにより発現させることができ、その際、その発現ベクターを含まない同一細胞系を対照として使用できる。
【0151】
GHS受容体活性を低下させる化合物のスクリーニングは、GHS受容体活性を示すグレリン類似体をアッセイに用いて行なうことができる。被験化合物がそのような活性に及ぼす影響を測定して、たとえばアロステリックモジュレーターおよびアンタゴニストを同定することができる。
【0152】
GHS受容体活性は、種々の方法により、たとえばGHS受容体の細胞内コンホメーションの変化、Gタンパク質共役活性の変化、および/または細胞内メッセンジャーの変化を検出する方法により測定できる。好ましくは、細胞内Ca2+を測定する方法などの方法を用いてGHS受容体活性を測定する。Ca2+を測定するために利用できる当技術分野で周知の方法の例には、Fura−2などの色素の使用、およびCa2+−生物発光感受性レポータータンパク質、たとえばエクオリンの使用が含まれる。Gタンパク質活性を測定するためにエクオリンを用いる細胞系の例は、HEK293/aeq17である(Button, D. et al., Cell Calcium, (1993), 14(9): 663-71;およびFeighner, S. D. et al., Science, (1999), 284(5423): 2184-8)。
【0153】
種々のGタンパク質に機能可能な状態で結合したグレリン結合領域を含むキメラ受容体も、GHS受容体活性を測定するために使用できる。キメラGHS受容体は、N末端細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン(膜貫通領域、細胞外ループ領域および細胞内ループ領域から構成される)、および細胞内カルボキシ末端を含む。キメラ受容体を作製する方法およびGタンパク質結合応答を測定するための方法は、たとえば国際特許出願No. PCT/US96/12336 [WO 97/05252]およびU.S. Patent 5,264,565に示されており、これを本明細書に援用する。
【0154】
GHS受容体活性の刺激
グレリン類似体はGHS受容体活性を刺激するために使用でき、これを利用してたとえばGHS受容体調節の影響および/またはGH分泌を研究し、グレリンアンタゴニストを同定し、ならびに/あるいはGH欠乏状態、筋量および/または骨密度の低下、性的機能障害、不健康な体重、運動技能および/または身体機能の喪失、および/または正常な食欲の欠如などの疾患または状態に罹患している対象に有益な効果を与えることができる。
【0155】
体重または食欲の増加は、体重が減少しやすい個体、たとえば病人または高齢者において、理想的な健常体重を維持するのに重要である。低体重の対象において体重減少または食欲喪失は重大な健康問題を生じる可能性がある。体重減少および/または正常な食欲の欠如を引き起こす疾患に罹患しているかあるいはそのような医療処置を受けている患者において、それらの疾患または状態の処置の有効性は、患者が一定の体重を維持できることによって決まる。
【0156】
逆に、グレリンのアンタゴニストは体重減少が必要な対象において体重減少を促進するための処置に有用である。
生物学的アッセイ−実施例
1.受容体結合アッセイ
1A.ヒト組換えGHS受容体を発現するCHO−K1細胞の作製
ヒトGH分泌促進物質受容体(hGHS−Rまたはグレリン受容体)に対するcDNAを、当技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によりクローニングした;その際、ヒト脳RNAを鋳型として用い(Clontech(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州パロアルト)、hGHS−Rの全長コード配列をフランキングする遺伝子特異的プライマー(S:5' - A T G T G G A A C G C G A C G C C C A G C G A A G A G - 3'およびAS:5' - T C A T G T A T T A A T A C T A G A T T C T G T C C A - 3')、およびAdvantage 2 PCR Kit(登録商標)(Clontech(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州パロアルト)を使用した。PCR生成物をpCR2.1ベクター中へ、Original TA Cloning Kit(登録商標)(Invitrogen(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州カールズバッド)によりクローニングした。全長ヒトGHS−Rを哺乳動物配列ベクターpcDNA3.1(Invitrogen(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州カールズバッド)中へサブクローニングした。このプラスミドを、チャイニーズハムスター卵巣細胞系CHO−K1(American Type Culture Collection(登録商標)により提供,米国メリーランド州ロックビル)に、既知のリン酸カルシウム法によりトランスフェクションした;Wigler, M. et al., Cell, (1977), 11(1): 223-32に記載。クローニングリング内において、RPMI 1640培地に10%ウシ胎仔血清および0.8mg/mlのG418を含有する1mMピルビン酸ナトリウムを補充したもの(Gibco(登録商標)から購入,米国ニューヨーク州グランドアイランド)で培養したトランスフェクション細胞を選択することにより、hGHS−Rを安定発現する単一細胞クローンを得た。
【0157】
1B.GHS−R結合アッセイ:
ヒト組換えGHS受容体を発現する上記のCHO−K1細胞を、約20mlの氷冷50mM Tris−HCl中においてBrinkman Polytron(登録商標)(Brinkman(登録商標),米国ニューヨーク州ウェストベリー)を用いて設定6で約15秒間ホモジナイズすることにより、放射性リガンド結合試験のための膜を調製することができ、これにより調製した。ホモジェネートを遠心分離により2回洗浄し(39,000g/10分)、最終ペレットを約50mMのTris−HCl(2.5mM MgClおよび0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有)に再懸濁した。選択したアッセイ用に、約0.4mlずつを0.05nM(125I)グレリン(約2000Ci/mmol;Perkin Elmer Life Sciences(登録商標),米国マサチュセッツ州ボストン)と共に、0.05mlの標識していない競合被験ペプチドを添加して、または添加せずに、インキュベートした。4℃で約60分後、0.5%ポリエチレンイミン/0.1% BSAに予め浸漬したGF/Cフィルター(Brandel(登録商標)から入手,米国メリーランド州ガイザースバーグ)で急速濾過することにより、結合した(125I)グレリンを遊離グレリンから分離した。次いでフィルターを5mlずつの氷冷した50mM Tris−HClおよび0.1% BSAで3回洗浄した。フィルターに捕獲された結合放射能をガンマ分光法により計数した(Wallace LKB(登録商標)からの分光計を使用,米国メリーランド州ガイザースバーグ)。1000nMのグレリン(Bachem(登録商標)から入手,米国カリフォルニア州トレンス)の存在下で結合した(125I)グレリンを結合した全(125I)グレリンから差し引くことにより、特異的結合を決定した。
【0158】
選択した好ましい態様を前記で考察した受容体結合アッセイにより試験し、それらの化合物についての結果を下記に示す表3に報告する。
【0159】
【表5】

【0160】
2.GHS−R機能活性アッセイ
2A.インビトロでのGSH受容体仲介による細胞内iCa2+移動
ヒトGHSを発現する前記のCHO−K1細胞を、0.3% EDTA/リン酸緩衝化生理食塩液中、25℃でインキュベートすることにより収穫した;次いで細胞を遠心分離により2回洗浄した。洗浄した細胞を、蛍光Ca2+指示薬Fura−2AM負荷のためにハンクス緩衝化生理食塩液(HBSS)に再懸濁した。約10個/mlの細胞懸濁液を、2μMのFura−2AMと共に約30分間、約25℃でインキュベートした。負荷されなかったFura−2AMをHBSS中で2回の遠心分離により除去し、最終懸濁液を、磁気撹拌機構および温度調節式キュベットホルダーを備えた分光蛍光光度計(日立F−2000(登録商標)型,日本,東京)へ移した。37℃で平衡化した後、細胞内Ca2+移動の測定のためにグレリン類似体を添加した。励起および発光の波長はそれぞれ340および510nmであった。Ca2+測定量の増加は被験ペプチドのアゴニスト活性の指標であり、一方、Ca2+測定量の減少(または欠如)は被験ペプチドのアンタゴニスト活性の指標であった。
【0161】
この分析法を用いて、実施例1、2、3および4の化合物はグレリン受容体においてアンタゴニスト活性を示すことが認められた。
2B.インビボGH放出/抑制
当技術分野で周知のように、化合物がインビボでGHの放出を刺激または抑制する能力を試験することができる(Deghenghi, R. et al., Life Sciences, (1994), 54(18): 1321-8;および国際特許出願No. PCT/EP01/07929 [WO 02/08250])。化合物がインビボでGHの放出を刺激する能力を確認するために、約300mg/kgの選択した化合物を10日令のラットに皮下注射する。注射の約15分後に循環GHを測定し、溶剤対照を注射したラットにおけるGH濃度と比較する。
【0162】
同様に、選択した化合物がインビボでグレリン誘発によるGH分泌に拮抗する能力を試験することができる。300mg/kg量の本発明化合物を10日令のラットにグレリンと共に皮下注射する。次いで、注射の約15分後に循環GHを測定し、グレリンのみを注射したラットにおけるGH濃度と比較する。
【0163】
2C.胃腸運動に対する影響
グレリンは、胃不全麻痺に罹患している対象において胃腸運動を高め、胃内容排出を改善することが示された。下記のアッセイ法により本発明化合物を試験して、それらの化合物が胃内容排出および腸通過に及ぼす影響を判定することができる。
【0164】
2C(i).腸通過に関するグレリンのインビボ試験
天然グレリンおよび本発明によるグレリンのペプチジル類似体が腸通過に及ぼす影響を調べることができる。そのような試験において、8匹のラットのグループを、水は自由に摂取できる状態で約24時間絶食させる。天然グレリン、選択した類似体、または対照、たとえばアトロピンを、麻酔した被験動物に投与する。グレリン、選択した類似体または対照の初回投与の約5分後に、2mlの木炭添加飼料を被験動物に食道強制投与により投与する。さらに約25分後、被験動物を頚部破断により屠殺し、小腸を摘出する。幽門からの木炭の移動距離を測定する。
【0165】
2C(ii).胃内容排出に関するグレリンのインビボ試験
本発明化合物を試験してそれらの化合物が胃内容排出に及ぼす影響を判定することができる。そのような試験において、8匹の雄Sprague Dawleyラット(体重200〜250g)のグループを、水は自由に摂取できる状態で約24時間絶食させる。天然グレリン、選択したグレリン類似体、および対照化合物、たとえばメトクロプラミド(metoclopramide)を、麻酔した被験動物に静脈内投与する。天然グレリン、選択した類似体または対照の初回投与の約5分後に、フェノールレッドでマークした飼料(全乳中、0.5mg/mlのフェノールレッドおよび1.5%のメチルセルロース)1.5mlを被験動物それぞれに食道強制投与により投与する。さらに約20分後、被験動物を頚部破断により屠殺し、胃を摘出し、個別に粉砕する。被験動物の胃内の残留フェノールレッドを抽出し、分光光度法により560nmの波長で測定する。
【0166】
他の実験において、8匹の雄Sprague Dawleyラット(体重200〜250g)のグループを、水は自由に摂取できる状態で約24時間絶食させる。ビヒクルまたは種々の投与量の天然グレリンまたは選択したグレリン類似体を、動物に皮下注射する。約15分後に、フェノールレッドでマークした栄養飼料(全乳中、0.5mg/mlのフェノールレッドおよび1.5%のメチルセルロース)1.5mlをラットに経口投与する。さらに約15分後、被験動物を頚部破断により屠殺し、幽門および噴門を鉗子で留めた後、胃を摘出する。胃内の残留フェノールレッドを抽出し、分光光度法により560nmの波長で測定する。
【0167】
2C(iii).ラットにおけるPOIに対する影響
イソフルラン麻酔した雄Sprague Dawleyラット(体重200〜250g)に、3センチメートルの開腹を用いて胃イレウスを誘発する。腹筋および皮膚を縫合糸で閉じ、動物を約2時間45分、回復させる。この時点で、開腹処置した動物にビヒクルまたは選択したグレリン類似体を皮下投与する。化合物またはビヒクルの投与の約15分後に、フェノールレッドでマークした飼料(前記を参照)を動物に導入する。さらに約15分後、被験動物を頚部破断により屠殺し、胃内容排出を前記と同様に測定する。
【0168】
2C(iv).モルヒネの存在下でのラットにおけるPOIに対する影響
イソフルラン麻酔した雄Sprague Dawleyラット(体重200〜250g)に、3センチメートルの開腹を用いて胃イレウスを誘発する。腹筋および皮膚を縫合糸で閉じ、動物を約2.5時間回復させ、この時点で、開腹処置した動物に4mg/kgのモルヒネを皮下投与する。モルヒネ投与の約15分後に、開腹処置した動物にビヒクルまたは選択したグレリン類似体を皮下投与する。化合物またはビヒクルの投与の約15分後に、フェノールレッドでマークした飼料(前記を参照)を動物に導入する。さらに約15分後、被験動物を頚部破断により屠殺し、胃内容排出を前記と同様に測定する。
【0169】
2C(v).モルヒネの存在下でのラットにおける胃運動に対する影響
雄Sprague Dawleyラット(体重200〜250g)に4mg/kgのモルヒネを皮下投与する。モルヒネ投与の約15分後に、動物にビヒクルまたは選択したグレリン類似体を皮下投与する。化合物またはビヒクルの投与の約15分後に、フェノールレッドでマークした飼料(前記を参照)を動物に導入する。さらに約15分後、被験動物を頚部破断により屠殺し、胃内容排出を前記と同様に測定する。
【0170】
2D.体重に対する影響
メラノコルチン受容体に対する本発明のリガンドを、下記の方法で摂食および/または体重に対する影響について試験することができる。本明細書に記載したものと同様な方法を用いて本発明化合物が摂食および/または体重に及ぼす影響をアッセイしうることは、当業者に既知であろう。
【0171】
2D(i).短期給餌実験(絶食)
雄Sprague Dawleyラット(250g)を個別のケージに収容し、12:12時間の明暗条件下で維持する。実験開始前の18時間、水は自由に摂取できる状態でラットを絶食させる。0時点で、選択した用量、たとえば500もしくは100nmole/kgの選択した化合物、またはビヒクルをラットに皮下注射(sc)し、飼料を与える。注射の約1、2、3、4、5および6時間後、個々の飼料摂取量を測定する。
【0172】
2D(ii).短期給餌実験(絶食なし)
雄Sprague Dawleyラット(250g)を個別のケージに収容し、12:12時間の明暗条件下で維持する。実験全体を通して飼料および水を自由に摂取させる。0時点で、8μmole/kgの化合物、またはビヒクルを、ラットに皮下注射する。注射の約0.5、1、1.5、2、3および4時間後、個々の飼料摂取量を測定する。
【0173】
2D(iii).長期給餌実験
雄Sprague Dawleyラット(250g)を個別のケージに収容し、12:12時間の明暗条件下で、飼料および水を共に自由に摂取させて維持する。1日3回(0800、1200および1600時)、種々の投与量の化合物、またはビヒクルを、ラットに7日間皮下注射する。個々の体重および飼料摂取量を毎日測定する。
【0174】
投与
グレリン類似体は、本明細書に示す説明および当技術分野で周知の方法を用いて配合し、対象に投与することができる。好ましい投与経路は、有効量の化合物が標的に到達するのを保証するものである。医薬の投与に関する指針は全般的に、たとえばRemington's Pharmaceutical Sciences 第18版, 編者 Gennaro, Mack Publishing, 1990、およびModem Pharmaceutics 第2版, 編者 Banker and Rhodes, Marcel Dekker, Inc., 1990に示されている;これらの両方を本明細書に援用する。
【0175】
グレリン類似体は酸塩または塩基塩として製造することができる。医薬的に許容できる塩類(水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物の形)には、無機酸もしくは有機酸または塩基から形成される無毒性の塩類あるいは第四級アンモニウム塩が含まれる。そのような塩類の例には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:酸付加塩、たとえば酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩;ならびに塩基塩、たとえばアンモニウム塩、アルカリ金属塩、たとえばナトリウム塩およびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム塩およびマグネシウム塩、有機塩基との塩類、たとえばジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン塩、ならびにアミノ酸、たとえばアルギニンおよびリジンとの塩類。
【0176】
グレリン類似体は、経口および経鼻摂取または経皮および経粘膜注射を含めた種々の経路で投与できる。懸濁液剤として経口投与する有効成分は、医薬製剤技術分野で周知の方法に従って調製でき、嵩を付与するための微結晶性セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、および甘味剤/着香剤を含有することができる。即時放出錠として、医薬製剤は微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよび乳糖、ならびに/あるいは他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および滑沢剤を含有することができる。
【0177】
鼻内エアゾールまたは吸入により投与される製剤は、たとえば生理食塩水中の溶液として、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤を用いて、フルオロカーボンを用いて、および/または他の可溶化剤もしくは分散剤を用いて調製することができる。
【0178】
グレリン類似体は、静脈内(ボーラスおよび注入の両方)、腹腔内、局所(閉鎖状態または閉鎖しない状態)、または筋肉内に投与することもできる。注射により投与する場合、注射用の液剤または懸濁液剤は下記のものを用いて配合することができる:適切な無毒性の非経口用として許容できる希釈剤もしくは溶剤、たとえばリンガー液もしくは等張塩化ナトリウム溶液、または適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤、たとえば無菌、無刺激性の固定油:これには合成モノ−またはジグリセリドおよび脂肪酸(オレイン酸を含む)が含まれる。
【0179】
適切な投与計画は、好ましくは当技術分野で周知の要因を考慮して決定され、これには投与される対象のタイプ;対象の年齢、体重、性別および医学的条件;投与経路;対象の腎機能および肝機能;目的とする効果;ならびに使用する特定の化合物。
【0180】
毒性なしに効果を与える範囲内の薬物濃度を達成する際の最適精度を得るには、標的部位に対する薬物有効度の動態に基づく計画が要求される。これは、薬物の分布、平衡および排出の考慮を伴う。対象についての一日量は、対象につき一日当たり約0.01〜1,000mgと予想される。
【0181】
グレリン類似体はキットとして提供することができる。そのようなキットには、一般に投与用剤形中の有効成分が収容される。剤形は、規則的な間隔で、たとえば1日1〜6回、1日以上の期間、対象に投与した際に、目的とする効果が得られるのに十分な量の有効化合物を含有する。好ましくはキットには、目的とする効果を達成するためのその剤形の使法および特定期間にわたって摂取すべき剤形量を示す指示が収容される。
【0182】
本発明を説明の形で記載した。使用した技術用語は記述のためのものであって限定のためのものではないことを理解すべきである。明らかに、前記の教示からみて本発明の多くの改変および変更が可能である。したがって、特許請求の範囲内において本発明を具体的に記載した以外の形で実施しうることを理解すべきである。
【0183】
本明細書に述べた特許および科学文献は当業者が利用できる知識を示す。本明細書中に引用したすべての特許、特許公報および他の刊行物の全体を本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)によるグレリン類似体:
(R2)-A1-A2-A3-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-A11-A12-A13-A14-A15-A16-A17-A18-A19-A20-A21-A22-A23-A24-A25-A26-A27-A28-R1
(I)
またはその医薬的に許容できる塩
[式中:
は、Inp、1−Apcまたは4−Apcであり;
は、Ser、Abu、Acc、Act、Aib、Ala、Ava、ThrまたはValであり;
は、Ser、Asp(NH−R)、Asp(O−R)、Cys(S−R)、Dab(S(O)−R)、Dap(S(O)−R)、Glu(NH−R)、Glu(O−R)、Ser(C(O)−R10)、Thr(C(O)−R11)またはHN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であり;
は、Phe、Acc、Aic、Cha、2−Fua、1−Nal、2−Nal、2−Pal、3−Pal、4−Pal、hPhe、(X,X,X,X,X)Phe、Taz、2−Thi、3−Thi、TrpまたはTyrであり;
は、Leu、Abu、Acc、Aib、Ala、Cha、Ile、hLeu、Nle、Nva、Phe、TleまたはValであり;
は、Ser、Abu、Acc、Act、Aib、Ala、Gly、ThrまたはValであり;
は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、ThzまたはTicであり;
は、Glu、Acc、Aib、Arg、Asn、Asp、Dab、Dap、Gln、Lys、OrnまたはHN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であり;
は、His、Acc、Apc、Aib、2−Fua、2−Pal、3−Pal、4−Pal、(X,X,X,X,X−)Phe、Taz、2−Thiまたは3−Thiであり;
10は、Gln、Acc、Aib、Asn、AspまたはGluであり;
11は、Arg、Apc、hArg、Dab、Dap、Lys、OrnまたはHN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であり;
12は、Val、Abu、Acc、Aib、Ala、Cha、Gly、Ile、Leu、Nle、NvaまたはTleであり;
13は、Gln、Acc、Aib、Asn、AspまたはGluであり;
14は、Gln、Acc、Aib、Asn、AspまたはGluであり;
15は、Arg、Acc、Aib、Apc、hArg、Dab、Dap、LysまたはOrnであり;
16は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Ornであるか、または欠失しており;
17は、Glu、Arg、Asn、Asp、Dab、Dap、Gln、Lys、Orn、Asp(NH−R)、Asp(O−R)、Cys(S−R)、Dab(S(O)−R)、Dap(S(O)−R)、Glu(NH−R)、Glu(O−R)、Ser(C(O)−R10)、Thr(C(O)−R11)、HN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であるか、または欠失しており;
18は、Ser、Abu、Acc、Act、Aib、Ala、Thr、Valであるか、または欠失しており;
19は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Ornであるか、または欠失しており;
20は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Ornであるか、または欠失しており;
21は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、Thz、Ticであるか、または欠失しており;
22は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、Thz、Ticであるか、または欠失しており;
23は、Ala、Abu、Acc、Act、Aib、Apc、Gly、Nva、Valであるか、または欠失しており;
24は、Lys、Acc、Aib、Apc、Arg、hArg、Dab、Dap、Orn、HN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であるか、または欠失しており;
25は、Leu、Abu、Acc、Aib、Ala、Cha、Ile、hLeu、Nle、Nva、Phe、Tle、Valであるか、または欠失しており;
26は、Gln、Aib、Asn、Asp、Gluであるか、または欠失しており;
27は、Pro、Dhp、Dmt、3−Hyp、4−Hyp、Inc、Ktp、Oic、Pip、Thz、Ticであるか、または欠失しており;
28は、Arg、Acc、Aib、Apc、hArg、Dab、Dap、Lys、Orn、HN−CH((CH−N(R1213))−C(O)であるか、または欠失しており;
は、−OH、−NH、−(C−C30)アルコキシまたはNH−X−CH−Zであり、ここでXは(C−C12)アルキルまたは(C−C12)アルケニルであり、Zは、−H、−OH、−COHまたは−C(O)−NHであり;
は、H、(C−C30)アルキル、(C−C30)ヘテロアルキル、(C−C30)アシル、(C−C30)アルケニル、(C−C30)アルキニル、アリール(C−C30)アルキル、アリール(C−C30)アシル、置換(C−C30)アルキル、置換(C−C30)ヘテロアルキル、置換(C−C30)アシル、置換(C−C30)アルケニル、置換アリール(C−C30)アルキル、置換(C−C30)アルキニルまたは置換アリール(C−C30)アシルであり;
、R、R、R、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ、そのそれぞれの場合について独立して、(C−C40)アルキル、(C−C40)アルケニル、置換(C−C40)アルキル、置換(C−C40)アルケニル、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールおよび置換アリールよりなる群から選択され;
12およびR13はそれぞれ、そのそれぞれの場合について独立して、H、(C−C40)アルキル、(C−C40)ヘテロアルキル、(C−C40)アシル、(C−C40)アルケニル、(C−C40)アルキニル、アリール(C−C40)アルキル、アリール(C−C40)アシル、置換(C−C40)アルキル、置換(C−C40)ヘテロアルキル、置換(C−C40)アシル、置換(C−C40)アルケニル、置換(C−C40)アルキニル、置換アリール(C−C40)アルキル、置換アリール(C−C40)アシル、(C−C40)アルキルスルホニルまたは−C(NH)−NHよりなる群から選択され;
nは、そのそれぞれの場合について独立して、1、2、3、4または5であり;
、X、X、XおよびXはそれぞれ、そのそれぞれの場合について独立して、H、F、Cl、Br、I、(C1−10)アルキル、置換(C1−10)アルキル、アリール、置換アリール、OH、NH、NOおよびCNよりなる群から選択され;
ただし:
12が(C−C40)アシル、アリール(C−C40)アシル、置換(C−C40)アシル、置換アリール(C−C40)アシル、(C−C40)アルキルスルホニルまたは−C(NH)−NHである場合、R13はHまたは(C−C40)アルキル、(C−C40)ヘテロアルキル、(C−C40)アルケニル、(C−C40)アルキニル、アリール(C−C40)アルキル、置換(C−C40)アルキル、置換(C−C40)ヘテロアルキル、置換(C−C40)アルケニル、置換(C−C40)アルキニルまたは置換アリール(C−C40)アルキルである]。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩:
はSerまたはAibであり;
はSerまたはGlu(NH−R)であり;
はPheであり;
はLeuであり;
はSerであり;
はProであり;
はGluまたはAibであり;
はHisであり;
10はGlnまたはAibであり;
11はArgであり;
12はValであり;
13はGlnであり;
14はGlnであり;
15はArgであり;
16はLysであり;
17はGluまたはSer(C(O)−R10)であり;
18はSerであり;
19はLysであり;
20はLysであり;
21はProであり;
22はProであり;
23はAlaであり;
24はLysであり;
25はLeuであり;
26はGlnであり;
27はProであり;かつ
28はArgである。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩:
はNHであり;
はHまたはアシルであり;
はヘキシルであり;かつ
10はオクタニルである。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩:
はAibであり;
はGlu(NH−ヘキシル)であり;
はAibであり;
10はAibであり;かつ
17はSer(n−オクタノイル)である。
【請求項5】
化合物が下記よりなる群から選択される、請求項4に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩:
(Inp)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)
(Inp,Aib)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:2)
(Inp,Aib,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:3)
(Inp,Aib2,10)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:4)
(Inp,Aib2,8)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:5)
(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:6)
(Inp,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:6)および
(Inp,Aib2,8,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:7)。
【請求項6】
化合物が(Inp)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:2)である、請求項5に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項7】
化合物が(Inp,Aib,Ser(n−オクタノイル)17)hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:6)である、請求項5に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項8】
有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩、および医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
GHS受容体に結合しうる化合物をスクリーニングする方法であって、該受容体への、該受容体のフラグメントへの、該受容体のフラグメントを含むポリペプチドへの、または該ポリペプチドの誘導体への請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の結合に、ある化合物が影響を及ぼす能力を測定する段階を含む方法。
【請求項10】
グレリン受容体からの応答の誘発を必要とする対象においてその応答を誘発する方法であって、その対象に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項11】
グレリン受容体からの応答の誘発を必要とする対象においてその応答を誘発する方法であって、その対象に療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項12】
有益な効果を必要とする対象においてその有益な効果を達成するための方法であって、その対象に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与する段階を含み、その際、有効量は疾患または障害の治癒もしくは重症度の軽減または発症もしくは重症化の可能性の軽減を補助するのに有益な効果を生じるのに有効である方法。
【請求項13】
有益な効果を必要とする対象においてその有益な効果を達成するための法であって、その対象に療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与する段階を含み、その際、有効量は疾患または障害の治癒もしくは重症度の軽減または発症もしくは重症化の可能性の軽減を補助するのに有益な効果を生じるのに有効である方法。
【請求項14】
成長ホルモン分泌の刺激を必要とする対象においてそのような分泌を刺激するための方法であって、その対象に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与する段階を含み、その際、有効量は少なくとも検出可能なほど成長ホルモン分泌の増加を生じるのに十分な量である方法。
【請求項15】
成長ホルモン分泌の刺激を必要とする対象においてそのような分泌を刺激するための方法であって、その対象に療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与する段階を含み、その際、有効量は少なくとも検出可能なほど成長ホルモン分泌の増加を生じるのに十分な量である方法。
【請求項16】
成長ホルモン分泌の刺激が、成長ホルモン欠乏状態の処置のために、筋量の増加のために、骨密度の増大のために、雄もしくは雌における性的機能障害の処置のために、体重増加の促進のために、体重維持の促進のために、身体機能維持の促進のために、身体機能回復の促進のために、または食欲増大の促進のために適用される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
体重増加の促進、体重維持の促進、または食欲増大の促進が、体重減少を伴う疾患もしくは障害を有するかまたは体重減少を伴う処置を受けている患者に適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
体重減少が悪液質によるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
悪液質が、食欲不振、食欲異常亢進、癌、エイズまたは慢性閉塞性肺疾患に罹患している対象に発生する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
体重減少が消耗症候群の発症によるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
消耗症候群に罹患しており、処置を必要とする対象が、虚弱者および高齢者である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
体重減少が未解明のものであり、対象が健康な高齢者である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
体重減少がアルツハイマー病の発症の前駆症状である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
体重減少を伴う処置が、化学療法、放射線療法、一時固定、永続固定および透析よりなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
処置を必要とする対象が、体重減少を伴う疾患または障害に罹患しておらず、体重減少を伴う処置も受けておらず、他の点でも健康である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
慢性閉塞性肺疾患の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、その対象に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項27】
成長ホルモン分泌の刺激が、成長ホルモン欠乏状態の処置のために、筋量の増加のために、骨密度の増大のために、雄もしくは雌における性的機能障害の処置のために、体重増加の促進のために、体重維持の促進のために、身体機能維持の促進のために、身体機能回復の促進のために、または食欲増大の促進のために適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
体重増加の促進、体重維持の促進、または食欲増大の促進が、体重減少を伴う疾患もしくは障害を有するかまたは体重減少を伴う処置を受けている患者に適用される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
体重減少が悪液質によるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
悪液質が、食欲不振、食欲異常亢進、癌、エイズまたは慢性閉塞性肺疾患に罹患している対象に発生する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
体重減少が消耗症候群の発症によるものである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
消耗症候群に罹患しており、処置を必要とする対象が、虚弱者および高齢者である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
体重減少が未解明のものであり、対象が健康な高齢者である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
体重減少がアルツハイマー病の発症の前駆症状である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
体重減少を伴う処置が、化学療法、放射線療法、一時固定、永続固定および透析よりなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
処置を必要とする対象が、体重減少を伴う疾患または障害に罹患しておらず、体重減少を伴う処置も受けておらず、他の点でも健康である、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
慢性閉塞性肺疾患の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、その対象に療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項38】
胃腸運動の刺激を必要とする対象においてそれを刺激する方法であって、その対象に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項39】
患者がヒトである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
胃腸の刺激を必要とする患者が、胃食道逆流性疾患、イレウス、嘔吐、胃不全麻痺、IBS、便秘または結腸偽閉塞に罹患している、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
患者が、イレウス、嘔吐または胃不全麻痺に罹患している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
患者がイレウスに罹患している、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
患者がオピエートの投与に関連するイレウスに罹患している、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
オピエートがモルヒネである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
イレウスが術後イレウスである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
術後イレウスがモルヒネの存在に関連する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
術後イレウスが腹部手術後に起きる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
イレウスが胃、小腸または大腸のイレウスである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
イレウスが腹部手術以外の要因により起きる、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
イレウスが胃、小腸または大腸のイレウスである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
患者が嘔吐に罹患している、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
患者が抗癌化学療法薬による処置、妊娠、食欲異常亢進または食欲不振に関連する嘔吐に罹患している、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
嘔吐が抗癌化学療法薬による処置に関連する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
嘔吐が妊娠に関連する、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
嘔吐が食欲異常亢進に関連する、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
嘔吐が食欲不振に関連する、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
患者が胃不全麻痺に罹患している、請求項41に記載の方法。
【請求項58】
胃不全麻痺が糖尿病に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
糖尿病がI型糖尿病である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
糖尿病がII型糖尿病である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
療法有効量のグレリン類似化合物または組成物を静脈内、皮下、経口、または持続放出製剤の埋込みにより投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項62】
グレリン類似体を静脈内投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
グレリン類似体を皮下投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
グレリン類似体を経口投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
グレリン類似体を持続放出製剤として埋め込む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
胃腸運動の刺激を必要とする対象においてそれを刺激する方法であって、その対象に療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項67】
患者がヒトである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
胃腸の刺激を必要とする患者が、胃食道逆流性疾患、イレウス、嘔吐、胃不全麻痺、IBS、便秘または結腸偽閉塞に罹患している、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
患者が、イレウス、嘔吐または胃不全麻痺に罹患している、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
患者がイレウスに罹患している、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
患者がオピエートの投与に関連するイレウスに罹患している、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
オピエートがモルヒネである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
イレウスが術後イレウスである、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
術後イレウスがモルヒネの存在に関連する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
術後イレウスが腹部手術後に起きる、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
イレウスが胃、小腸または大腸のイレウスである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
イレウスが腹部手術以外の要因により起きる、請求項70に記載の方法。
【請求項78】
イレウスが胃、小腸または大腸のイレウスである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
患者が嘔吐に罹患している、請求項69に記載の方法。
【請求項80】
患者が抗癌化学療法薬による処置、妊娠、食欲異常亢進または食欲不振に関連する嘔吐に罹患している、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
嘔吐が抗癌化学療法薬による処置に関連する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
嘔吐が妊娠に関連する、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
嘔吐が食欲異常亢進に関連する、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
嘔吐が食欲不振に関連する、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
患者が胃不全麻痺に罹患している、請求項69に記載の方法。
【請求項86】
胃不全麻痺が糖尿病に関連する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
糖尿病がI型糖尿病である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
糖尿病がII型糖尿病である、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
療法有効量のグレリン類似化合物または組成物を静脈内、皮下、経口、または持続放出製剤の埋込みにより投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項90】
グレリン類似体を静脈内投与する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
グレリン類似体を皮下投与する、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
グレリン類似体を経口投与する、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
グレリン類似体を持続放出製剤として埋め込む、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
患者において外科処置を実施する方法であって、その患者に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項95】
さらに、その外科処置を必要とする患者を同定することを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項96】
外科処置が、胃腸管の直接処置、胃腸管の間接処置、開腹術、移植手術、尿生殖器系に対する外科処置、リンパ系に対する外科処置、呼吸器系に対する外科処置、および腹部内のいずれかの臓器または組織の癌を処置するための外科処置よりなる群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
グレリン類似体を外科処置の前、途中もしくは後、またはそのいずれかの組合わせで投与する、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
グレリン類似体を外科処置の前に投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
グレリン類似体を外科処置の途中に投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
グレリン類似体を外科処置の後に投与する、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
術後イレウスの予防を必要とする患者においてそれを予防する方法であって、その患者に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を外科処置の前、途中もしくは後、またはそのいずれかの組合わせで投与することを含む方法。
【請求項102】
グレリン類似体を外科処置の前に投与する、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
グレリン類似体を外科処置の途中に投与する、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
グレリン類似体を外科処置の後に投与する、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
患者において外科処置を実施する方法であって、その患者に療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項106】
さらに、その外科処置を必要とする患者を同定することを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
外科処置が、胃腸管の直接処置、胃腸管の間接処置、開腹術、移植手術、尿生殖器系に対する外科処置、リンパ系に対する外科処置、呼吸器系に対する外科処置、および腹部内のいずれかの臓器または組織の癌を処置するための外科処置よりなる群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
グレリン類似体を外科処置の前、途中もしくは後、またはそのいずれかの組合わせで投与する、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
グレリン類似体を外科処置の前に投与する、請求項105に記載の方法。
【請求項110】
グレリン類似体を外科処置の途中に投与する、請求項105に記載の方法。
【請求項111】
グレリン類似体を外科処置の後に投与する、請求項105に記載の方法。
【請求項112】
術後イレウスの予防を必要とする患者においてそれを予防する方法であって、その患者に療法有効量の請求項8のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を外科処置の前、途中もしくは後、またはそのいずれかの組合わせで投与することを含む方法。
【請求項113】
グレリン類似体を外科処置の前に投与する、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
グレリン類似体を外科処置の途中に投与する、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
グレリン類似体を外科処置の後に投与する、請求項112に記載の方法。
【請求項116】
胃食道逆流性疾患、嘔吐、胃不全麻痺、過敏性腸症候群、便秘または結腸偽閉塞の予防を必要とする患者においてそれらを予防する方法であって、その患者に療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項117】
胃食道逆流性疾患を予防する、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
過敏性腸症候群を予防する、請求項116に記載の方法。
【請求項119】
便秘を予防する、請求項116に記載の方法。
【請求項120】
結腸偽閉塞を予防する、請求項116に記載の方法。
【請求項121】
嘔吐を予防する、請求項116に記載の方法。
【請求項122】
嘔吐が抗癌化学療法薬による処置、妊娠、食欲異常亢進または食欲不振に関連する、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
嘔吐が抗癌化学療法薬による処置に関連する、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
嘔吐が妊娠に関連する、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
嘔吐が食欲異常亢進に関連する、請求項122に記載の方法。
【請求項126】
嘔吐が食欲不振に関連する、請求項122に記載の方法。
【請求項127】
胃不全麻痺が糖尿病に関連する、請求項116に記載の方法。
【請求項128】
糖尿病がI型糖尿病である、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
糖尿病がII型糖尿病である、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
胃食道逆流性疾患、嘔吐、胃不全麻痺、過敏性腸症候群、便秘または結腸偽閉塞の予防を必要とする患者においてそれらを予防する方法であって、その患者に療法有効量の請求項8のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項131】
胃食道逆流性疾患を予防する、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
過敏性腸症候群を予防する、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
便秘を予防する、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
結腸偽閉塞を予防する、請求項130に記載の方法。
【請求項135】
嘔吐を予防する、請求項130に記載の方法。
【請求項136】
嘔吐が抗癌化学療法薬による処置、妊娠、食欲異常亢進または食欲不振に関連する、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
嘔吐が抗癌化学療法薬による処置に関連する、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
嘔吐が妊娠に関連する、請求項136に記載の方法。
【請求項139】
嘔吐が食欲異常亢進に関連する、請求項136に記載の方法。
【請求項140】
嘔吐が食欲不振に関連する、請求項136に記載の方法。
【請求項141】
胃不全麻痺が糖尿病に関連する、請求項130に記載の方法。
【請求項142】
糖尿病がI型糖尿病である、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
糖尿病がII型糖尿病である、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
術後イレウス、胃食道逆流性疾患、嘔吐、胃不全麻痺、IBS、便秘または結腸偽閉塞の予防を必要とする患者に、療法有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することにより、患者においてそれらを予防する方法であって、投与が静脈内、皮下、経口、または持続放出製剤の埋込みによるものである方法。
【請求項145】
グレリン類似体を静脈内投与する、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
グレリン類似体を皮下投与する、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
グレリン類似体を静脈内経口投与する、請求項144に記載の方法。
【請求項148】
グレリン類似体を持続放出製剤として埋め込む、請求項144に記載の方法。
【請求項149】
術後イレウス、胃食道逆流性疾患、嘔吐、胃不全麻痺、IBS、便秘または結腸偽閉塞の予防を必要とする患者に、療法有効量の請求項8に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することにより、患者においてそれらを予防する方法であって、投与が静脈内、皮下、経口、または持続放出製剤の埋込みによるものである方法。
【請求項150】
グレリン類似体を静脈内投与する、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
グレリン類似体を皮下投与する、請求項149に記載の方法。
【請求項152】
グレリン類似体を経口投与する、請求項149に記載の方法。
【請求項153】
グレリン類似体を持続放出製剤として埋め込む、請求項149に記載の方法。
【請求項154】
化合物が下記よりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩:
(Ac−Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:8)
(Ac−1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)NH;(SEQ ID NO:8)
(Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH;(SEQ ID NO:1)および
(1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)NH;(SEQ ID NO:1)。
【請求項155】
化合物が(Ac−Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:8)である、請求項154に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項156】
化合物が(Ac−1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)NH(SEQ ID NO:8)である、請求項154に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項157】
化合物が(Inp,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)−NH(SEQ ID NO:1)である、請求項154に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項158】
化合物が(1−Apc,Aib2,10,Glu(NH−ヘキシル))hGhrelin(1−28)NH(SEQ ID NO:1)である、請求項154に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項159】
有効量の請求項154〜158のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩、および医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項160】
GHS受容体に結合しうる化合物をスクリーニングする方法であって、該受容体への、該受容体のフラグメントへの、該受容体のフラグメントを含むポリペプチドへの、または該ポリペプチドの誘導体への請求項154〜158のいずれか1項に記載の化合物の結合に、ある化合物が影響を及ぼす能力を測定する段階を含む方法。
【請求項161】
グレリン受容体からの応答の誘発を必要とする対象においてその応答を誘発する方法であって、その対象に療法有効量の請求項154〜158のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。
【請求項162】
グレリン受容体からの応答の誘発を必要とする対象においてその応答を誘発する方法であって、その対象に療法有効量の請求項159に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項163】
有益な効果を必要とする対象においてその有益な効果を達成するための方法であって、その対象に療法有効量の請求項154〜158のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含み、その際、有効量は疾患または障害の治癒もしくは重症度の軽減または発症もしくは重症化の可能性の軽減を補助するのに有益な効果を生じるのに有効である方法。
【請求項164】
有益な効果を必要とする対象においてその有益な効果を達成するための法であって、その対象に療法有効量の請求項159に記載の組成物を投与することを含み、その際、有効量は疾患または障害の治癒もしくは重症度の軽減または発症もしくは重症化の可能性の軽減を補助するのに有益な効果を生じるのに有効である方法。
【請求項165】
成長ホルモン分泌の抑制を必要とする対象においてそのような分泌を抑制するための方法であって、その対象に療法有効量の請求項154〜158のいずれか1項に記載のグレリン類似化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与する段階を含み、その際、有効量は少なくとも検出可能なほど成長ホルモン分泌の減少を生じるのに十分な量である方法。
【請求項166】
成長ホルモン分泌の抑制を必要とする対象においてそのような分泌を抑制するための方法であって、その対象に療法有効量の請求項159に記載の組成物を投与する段階を含み、その際、有効量は少なくとも検出可能なほど成長ホルモン分泌の減少を生じるのに十分な量である方法。
【請求項167】
成長ホルモン分泌の抑制が、過度の成長ホルモン分泌を特徴とする疾患もしくは障害の処置のために、過体重の減少の促進のために、食欲低下の促進のために、体重維持の促進のために、肥満症の処置のために、糖尿病の処置のために、網膜障害を含めた糖尿病合併症の処置のために、または心血管障害の処置のために適用される、請求項165に記載の方法。
【請求項168】
過体重が、高血圧症、糖尿病、異脂肪血症、心血管疾患、胆石、骨関節炎および癌を含めた疾患または状態に関連する要因である、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
体重減少の促進がそのような疾患または状態の可能性を低下させる、請求項167に記載の方法。
【請求項170】
体重減少の促進がそのような疾患または状態の処置の少なくとも一部を構成する、請求項167に記載の方法。
【請求項171】
過体重がプラダー-ウィリ症候群によるものである、請求項167に記載の方法。
【請求項172】
肥満症を処置する、請求項167に記載の方法。
【請求項173】
成長ホルモン分泌の抑制が、過度の成長ホルモン分泌を特徴とする疾患もしくは障害の処置のために、過体重の減少の促進のために、食欲低下の促進のために、体重維持の促進のために、肥満症の処置のために、糖尿病の処置のために、網膜障害を含めた糖尿病合併症の処置のために、または心血管障害の処置のために適用される、請求項166に記載の方法。
【請求項174】
過体重が、高血圧症、糖尿病、異脂肪血症、心血管疾患、胆石、骨関節炎および癌を含めた疾患または状態に関連する要因である、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
体重減少の促進がそのような疾患または状態の可能性を低下させる、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
体重減少の促進がそのような疾患または状態の処置の少なくとも一部を構成する、請求項173に記載の方法。
【請求項177】
過体重がプラダー−ウィリ症候群によるものである、請求項173に記載の方法。
【請求項178】
肥満症を処置する、請求項173に記載の方法。

【公表番号】特表2010−504966(P2010−504966A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530382(P2009−530382)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/020595
【国際公開番号】WO2008/039415
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509111939)
【Fターム(参考)】