説明

N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用いたチャバザイトの製造方法

【課題】SiO/Alが10以上50以下のチャバザイトは、高価な有機系構造指向剤であるN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムイオンを用いなければ工業的に製造することができなかった。
【解決手段】有機系の構造指向剤としてN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用い、仕込のHO/Siを6以上40未満の条件下において水熱合成によって製造する。仕込み原料のOH/HOは0.010以上0.038以下にすると、Siの収率が高くなり好ましく、又、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/(N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン+アルカリ金属イオン)を0.20以上0.40以下にすると、高い純度でチャバザイトを製造することができ、好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、吸着剤、イオン交換体などとして利用される高シリカチャバザイトの合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チャバザイトは、構造コードCHAで表されるアルミノシリケート系ゼオライトの一種である。アルミナに対するシリカの比が大きい高シリカチャバザイトは、SSZ−13と呼ばれている。
【0003】
高シリカチャバザイトは、メタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの低級の有機酸素化合物からエチレン、プロピレン等の低級オレフィンとする触媒、自動車排ガス中の窒素酸化物を浄化する触媒、軽質炭化水素の吸着分離剤などとして有用なゼオライトである。
【0004】
高シリカチャバザイトは、様々な有機系の構造指向剤を用いて合成されている。また、合成時の濃度を示す指標である原料組成物のHO/Siも、様々な範囲で合成されている。
【0005】
特許文献1では、有機系の構造指向剤として、高価なN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムイオン、N−アルキル−3キヌクリジノールイオン、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナンが開示されている。また原料組成物のHO/Siは35などであり、汎用性の高い反応釜と攪拌羽根で合成可能なスラリーとして合成されている。しかしこれらの有機系の構造指向剤はいずれも高価であり、製造コストが高いという問題があった。
【0006】
特許文献2には、有機系の構造指向剤として、高価なN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムイオンを削減させるため、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムイオンと安価なN,N,N−トリアルキル−ベンジルアンモニウムイオンを混合して用いる製造方法が開示されている。このときの原料組成物のHO/Siは40であり、汎用性の高い反応釜と攪拌羽根で合成可能なスラリーとして合成されているが、やはり高価なN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムイオンを用いることが必須であった。
【0007】
特許文献3には、有機系の構造指向剤として、安価なN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンのみを用いた合成が開示されている。当該報告における原料組成物のHO/Siは約5であり、原料組成物はスラリーではなく、特殊な反応釜が必要な細粒として合成されている。なお、原料組成物のHO/Siが約5程度、即ち原料組成物が細粒の状態でのゼオライトの特殊な合成方法については、同一発明者により特許文献4が開示されている。この様な方法では、得られた結晶を反応釜から取り出しが困難であり、工業的ではなかった。
【0008】
一方、有機系の構造指向剤として、安価なN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用い、原料組成物のHO/Siが6以上のスラリー状態でのゼオライトの合成としては、特許文献5においてリンデT(エリオナイト)が、特許文献6においてモルデナイトが、特許文献7においてUZM−16(オフレタイト)が、非特許文献1においてZSM−12が報告されている。
【0009】
しかし、有機系の構造指向剤として安価なN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用いて、汎用性の高い反応釜と攪拌羽根で合成可能な原料組成物のHO/Siが6以上40未満のスラリー状態での高シリカチャバザイト合成は報告がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許4544538号(請求項1,2,例2)
【特許文献2】米国特許2008−0075656A1号(例1,2)
【特許文献3】米国特許2008−0159950A1号(例1〜3)
【特許文献4】米国特許5558851号(要旨など)
【特許文献5】特開昭50−23400号(例1〜6)
【特許文献6】特開昭58−88118号(例1〜5)
【特許文献7】特表2007−533588号(実施例1〜3)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proceedings of the 12th zeolite conference,VolumeIII,p.1655(1999)(p.1665要旨1〜2行目)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、安価な有機系の構造指向剤を用いて、汎用性の高い反応釜と攪拌羽根で合成可能なスラリー状態での高シリカチャバザイトの合成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用いて、原料組成物のHO/Siが6以上のスラリー状態でのゼオライト合成について鋭意検討を重ねた結果、高シリカチャバザイトが合成できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
本発明の製造方法では、チャバザイトを少なくともシリカ源、アルミニウム源、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン、水酸化物イオン、水を含むスラリーから合成する。スラリー中の他の成分としては、アルカリ金属イオン、ハロゲンイオンなどが例示できる。
【0015】
シリカ源としては、シリカゾル、ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、ケイ酸ソーダ、シリカアルミナゲル、テトラエトキシラン、ゼオライトなどが例示できる。ゼオライトの中では、フォージャサイト、P型ゼオライト、A型ゼオライトなど4員環を多く含むゼオライトが好ましい。
【0016】
アルミニウム源としては、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミン酸ソーダ、シリカアルミナゲル、アルミニウムイソプロポキシド、ゼオライトなどが例示できる。ゼオライトの中では、フォージャサイト、P型ゼオライト、A型ゼオライトなど4員環を多く含むゼオライトが好ましい。
【0017】
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンとしては、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムヒドロシキシド、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムブロマイド、及びそれらの混合物が例示できる。
【0018】
アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、またはナトリウムイオンとカリウムイオンの混合物が例示できる。アルカリ金属イオンは、アルカリ金属の水酸化物、ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダとして添加することが例示できる。
【0019】
ハロゲンイオンは、必須ではないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンが例示できる。ハロゲンイオンは、N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンのカウンターイオンとして、またはアルカリ金属イオンのカウンターイオンとして、またはハロゲンイオンのプロトン酸として添加することが例示できる。
【0020】
本発明の合成方法の原料組成物のSiO/Alとしては、10以上100以下が例示できる。原料組成物のSiO/Alが100より大きいと、SiO/Alが50以下のチャバザイトの合成が困難である。原料組成物のSiO/Alが10より小さいときは、同比が10以下のチャバザイトとなるが、同比のチャバザイトはベンジルトリメチルアンモニウムイオンがなくてもチャバザイトが合成できる。
【0021】
本発明の方法では、原料組成物のHO/Siは、6以上40未満であることが必須である。6より小さいと、反応混合物がスラリーではなく細粒となるため、汎用性の高い反応釜と攪拌羽根で合成不可となり特殊な反応釜が必要となる。40以上ではチャバザイト以外の不純物結晶相が副生し、チャバザイトの収率が小さくなるため、他の有機指向剤の併用等が必要となる。
【0022】
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Siは、0.05以上0.40以下が好ましい。0.05より小さいとチャバザイトの合成が困難で、0.40より大きいと著しく多くのN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンの使用量が必要となる。
【0023】
原料組成物のアルカリ金属イオン/Siは、0以上0.50以下、特に0.10以上0.40以下が好ましい。
【0024】
原料組成物のN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/(N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン+アルカリ金属イオン)としては、0.10から1.00が好ましく、特に0.15から0.50、さらに0.20以上0.40以下が好ましい。
【0025】
本発明のチャバザイトの製造方法では、不純物を含まないことが好ましく、原料組成物のN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/(N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン+アルカリ金属イオン)をこの範囲にすることで、不純物が少ないチャバザイト、特にベータの割合が16%以下、好ましくは12%以下である高い純度のチャバザイトを製造することができる。
【0026】
ここで、ベータの割合は、本発明の製造方法で得られたチャバザイトのXRD測定結果から下記の式を用いて求めることが出来る。
【0027】
(101)β/((2−10)CHA+(101)β)×100
なお、(2−10)CHAはチャバザイトの(2−10)面のピーク強度であり、(101)βはベータの(101)面のピーク強度である。
【0028】
原料組成物のOH/HOは、0.010以上0.038以下が好ましい。0.010より小さいと、チャバザイトの合成が困難、あるいは合成に長時間を要する。また、0.038より大きいと、チャバザイトの合成が困難、あるいはチャバザイト以外の不純物結晶相が副生又は液相へのSi溶解量の増加により、チャバザイトの収率が小さくなる。
【0029】
本発明の方法では、種晶などの結晶化促進作用を有する成分を添加しても良い。種晶としては、SiO/Alが10以上50以下の高シリカチャバザイトだけでなく、SiO/Alが10より小さい低シリカチャバザイトも使用することができる。
【0030】
本発明の方法では、反応混合物スラリーを密閉式圧力容器で100〜200℃の任意の温度でチャバザイトを結晶化させる。結晶化の時間としては、1時間から14日間が例示できる。結晶化の際、原料混合物は混合攪拌された状態でもよいし、静置した状態でも良い。結晶化終了後、放冷し、固液分離、純水洗浄し、100〜150℃の任意の温度で乾燥して本発明のチャバザイトが得られる。
【0031】
本発明の方法では、SiO/Alが10以上50以下の高シリカチャバザイトが得られる。
【0032】
本発明の方法で得られたチャバザイトは、焼成及び/またはイオン交換及び/または金属担持により適宜修飾し、触媒、吸着剤、イオン交換体として利用することができる。
【0033】
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンの除去等のための焼成は、400〜800℃、0.5〜12時間、酸素を含むガス流れ等の条件が例示できる。
【0034】
イオンの一部又は全部をプロトンとするには、合成後の未焼成チャバザイトまたは焼成後の焼成チャバザイトをアンモニウムイオン含有溶液と25〜200℃で接触させ、その後、300〜800℃、0.5〜12時間の熱処理により脱アンモニウムすることが例示できる。
【0035】
鉄、銅、白金等の活性金属を担持する方法としては、イオン交換法、含浸担持法などが例示できる。
【発明の効果】
【0036】
安価な有機系の構造指向剤であるN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用い、工業的な方法で高純度のチャバザイトを合成する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1で得られた乾燥粉末のX線回折チャート
【図2】実施例2で得られた乾燥粉末のX線回折チャート
【図3】実施例3で得られた乾燥粉末のX線回折チャート
【図4】実施例8で得られた乾燥粉末のX線回折チャート
【実施例】
【0038】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
(XRD測定)
得られたチャバザイトのXRDは、一般的なX線回折装置(マックサイエンス社製MXP−3)を使用して測定した。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は毎秒0.02°、計測時間は1秒、および測定範囲は2θとして3°から43°の範囲で測定した。得られたX線回折チャートから21.0°付近のピークをチャバザイトの(2−10)面、7.8°付近のピークをベータの(101)面のピークとした。
【0040】
実施例1
Si/Al=6のNaYを塩酸水溶液と接触攪拌後、洗浄乾燥することにより、Si/Al=26、Na/Al<0.03の高シリカY型ゼオライトを得た。
【0041】
高シリカY型ゼオライトに、試薬特級の40%N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムヒドロキシド水溶液、試薬特級の48%水酸化ナトリウム水溶液、純水を汎用の攪拌羽根で混合し、以下の仕込組成比の混合スラリー50gを調製した。
【0042】
Si/Al=26
O/Si=18
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Si=0.12
Na/Si=0.28
OH/HO=0.022
上記混合スラリーに、更に種晶として、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムイオンを用いて合成したSi/Al=24のチャバザイトをスラリー中固形分に対して2重量%添加し均一混合した。
【0043】
混合スラリーをオートクレーブ中、140℃で7日間、回転下で水熱合成により結晶化した。結晶化後のスラリーは、洗浄し、110℃で乾燥した。
【0044】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトに相当するX線ピークが観測された(図1)。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=20、Na/Al=0.20であった。
【0045】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、75%であった。
【0046】
実施例2
実施例1において、
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Si=0.20
Na/Si=0.20
とした以外は同一にして水熱合成した。
【0047】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトとベータに対応するX線ピークが観測され、ベータの割合は18%であった(図2)。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=20、Na/Al=0.09であった。
【0048】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、73%であった。
【0049】
実施例3
実施例1において、
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Si=0.28
Na/Si=0.12
とした以外は同一にして水熱合成した。
【0050】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトとベータに対応するX線ピークが観測され、ベータの割合は29%であった(図3)。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=20、Na/Al=0.07であった。
【0051】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、74%であった。
【0052】
実施例4
混合スラリーをオートクレーブ中で水熱合成する温度と日数を160℃で3日間とした以外は実施例1と同一の条件で水熱合成した。
【0053】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトに相当するX線ピークが観測された。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=20、Na/Al=0.17であった。
【0054】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、74%であった。
【0055】
実施例5
混合スラリーに種晶を添加しない以外は、実施例1の条件と同一にして水熱合成した。
【0056】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトに相当するX線ピークが観測された。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=19、Na/Al=0.20であった。
【0057】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、72%であった。
【0058】
実施例6
シリカ源、アルミニウム源として、珪酸ソーダ水溶液と硫酸アルミニウム水溶液から調製したSi/Al=26の粒状無定型アルミノ珪酸塩を使用し、混合スラリーをオートクレーブ中で水熱合成する日数を14日間とした以外は実施例1と同一にして水熱合成した。
【0059】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトに相当するX線ピークが観測された。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=18、Na/Al=0.29であった。
【0060】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、61%であった。
【0061】
実施例7
シリカ源、アルミニウム源として、珪酸ソーダ水溶液と硫酸アルミニウム水溶液から調製したSi/Al=47の粒状無定型アルミノ珪酸塩を使用し、以下の仕込組成比の混合スラリーを使用した以外は、実施例1と同一の条件で水熱合成した。
【0062】
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Si=0.21
Na/Si=0.49
OH/HO=0.039
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトに相当するX線ピークが観測された。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=10、Na/Al=0.46であった。
【0063】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、19%であった。
【0064】
実施例8
シリカ源、アルミニウム源として、珪酸ソーダ水溶液と硫酸アルミニウム水溶液から調製したSi/Al=47の粒状無定型アルミノ珪酸塩を使用し、以下の仕込組成比の混合スラリーを使用した以外は、実施例1と同一の条件で水熱合成した。
【0065】
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Si=0.20
Na/Si=0.30
OH/HO=0.028
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトと微量のベータに相当するX線ピークが観測され、ベータの割合は11%であった(図4)。また、乾燥粉末を硝酸及びフッ酸の混合水溶液に溶解させ、ICP発光分光分析したところ、SiO/Al=23、Na/Al=0.20であった。
【0066】
得られた乾燥粉末重量から評価したSiの収率は、50%であった。
【0067】
比較例1
Si/Al=26、Na/Al<0.03高シリカY型ゼオライトに、試薬特級の40%N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムヒドロキシド水溶液、試薬特級の塩化ナトリウム、純水を混合し、以下の仕込組成比の混合物50gを調製した。
【0068】
Si/Al=26
O/Si=5
N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/Si=0.20
Na/Si=0.10
Cl/Si=0.10
OH/HO=0.040
なお反応混合物は、スラリーではなく細粒であり、均一混合するために、乳鉢と乳棒を用いた。本合成を工業的に行うには、汎用性の高い反応釜と攪拌羽根で合成不可である。また、細粒の伝熱性が低いことから、特殊な反応釜が必要である。
【0069】
混合スラリーをオートクレーブ中、120℃で21日間、静置下で水熱合成により結晶化した。結晶化後のスラリーは、洗浄し、110℃で乾燥した。
【0070】
得られた乾燥粉末をX線回折で評価すると、チャバザイトに相当するX線ピークが観測された。
【0071】
実施例1〜8及び比較例1の仕込み組成、種晶添加の有無、結晶化条件、及び生成物の結晶相、Si/Al比、Na/Si比、Si収率を以下の表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
この表から明らかな様に、有機系の構造指向剤としてN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用い、原料組成物のHO/Siを6以上40未満において、SiO/Alが10以上50以下のチャバザイトを製造することができる。
【0074】
特に原料組成物のOH/HOが0.010以上0.038以下では、高いSi収率が得られる。また、原料組成物のN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/(N,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン+アルカリ金属イオン)が0.20以上0.40以下では、高い純度でチャバザイトを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明の合成方法で得られるチャバサイトは、自動車排ガス処理触媒や炭化水素の処理用触媒などとして利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系の構造指向剤としてN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオンを用い、原料組成物のHO/Siを6以上40未満とすることを特徴とするSiO/Alが10以上50以下のチャバザイトの製造方法。
【請求項2】
原料組成物のOH/HOが0.010以上0.038以下である請求項1記載のチャバザイトの製造方法。
【請求項3】
原料組成物のN,N,N−トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン/(N,N,N−
トリメチル−ベンジルアンモニウムイオン+アルカリ金属イオン)が0.20以上0.40以下である請求項1又は2記載のチャバザイトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−163349(P2010−163349A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109539(P2009−109539)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】