説明

NKT細胞活性化用組成物、IL−4産生促進用組成物、IFN−γ産生促進用組成物、樹状細胞活性化用組成物、IL−12産生促進用組成物、IL−10産生促進用組成物、NK細胞活性化用組成物、抗腫瘍作用組成物、抗アレルギー作用組成物、感染抵抗性増強用組成物、抗ウイルス作用組成物、IL−6産生促進用組成物、NO産出促進用組成物

【課題】 より効果的なNKT細胞活性化用組成物等を提供する。
【解決手段】
下記式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするNKT細胞活性化用組成物。
式(1)


(式(1)中、R1は、下記式(1−1)
式(1−1)


(式(1−1)中、R3は、アルキル基またはアルケニル基であり、R4は、アルキル基である。)を表し、
2は、水素原子または、α−ガラクトース基、α−グルコース基、α−マンノースらの組み合わせからなる基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特定の構造からなるスフィンゴ糖脂質を含むNKT細胞活性化用組成物、IL−4産生促進用組成物、IFN−γ産生促進用組成物、樹状細胞活性化用組成物、IL−12産生促進用組成物、IL−10産生促進用組成物、NK細胞活性化用組成物、抗腫瘍作用組成物、抗アレルギー作用組成物、感染抵抗性増強用組成物、抗ウイルス作用組成物、IL−6産生促進用組成物、NO産出促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スフィンゴ糖脂質は動物細胞等の表層に存在している物質であり、認識機構に関与するものと考えられている。一方、グラム陰性細菌はその細胞表層に、リポ多糖、蛋白質及びリン酸よりなる外膜を持っており、これを介して外界とのやりとりを行っている。従って、外膜の主要成分であるリポ多糖は全てのグラム陰性菌に共通に存在し、必須なものであると考えられてきた。ところが、近年になって、好気性グラム陰性菌であって、以前シュードモナス パウシモビリス(Pseudomonas paucimobilis)と呼ばれていたスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)は、リポ多糖を全く保有しないこと及びこの菌は菌体脂質としてスフィンゴ糖脂質を含有していることが知られてきた。
そこで、本願出願人は、上記スフィンゴモナス パウシモビリスの菌体から糖脂質を単離し、さらに、その化学構造を解析し、同定することに成功している(特許文献1)。そして、本願出願人は、上記スフィンゴ糖脂質が優れた保湿効果と肌荒れ防止効果を有しているため化粧品として広く採用しうることを開示している(特許文献2)。加えて、本願出願人は、上記スフィンゴ糖脂質が優れた乳化作用を有することも明らかにしている(特許文献3)。
加えて、本願出願人は、他のスフィンゴモナス科の菌株から得られたスフィンゴ糖脂質についても化粧組成物及び医薬組成物として優れていることを開示している(特許文献4)。
【0003】
一方、T細胞レセプター(TCR)を発現するNKT細胞は、Large Granular Lymphocyte(LGL)様の形態を示すこと、IL−2R β鎖を常時表出すること、パーフォリンを有する点などでは、NK細胞と類縁の細胞であるが、TCRを有するという点でNK細胞とは決定的に異なる細胞群であることが報告されている(非特許文献1)。
かかる状況のもと、非特許文献2、非特許文献3には、マウスではIL−12により活性化されたT細胞の中でもNK1.1を発現しているNKT細胞が、腫瘍の肝臓や肺への血行性転移抑制の重要なエフェクター細胞であることが報告されている。
以上のように、このNKT細胞は、近年、新しい細胞群として非常に注目を集めている細胞群である。
さらに特許文献5は、特定の構造を有するα−グリコシルセラミドがNKT細胞活性剤として有効であると述べている。しかしながら、より効果的なNKT細胞活性化剤が求められている。
【0004】
【特許文献1】国際公開92/12986号公報
【特許文献2】特開平11−43437号公報
【特許文献3】特開2000−51676号公報
【特許文献4】特開2002−010797号公報
【特許文献5】国際公開98/44928号公報
【非特許文献1】J.Immunol.,155,2972(1995)
【非特許文献2】J.Immunol.,154,4333(1995)
【非特許文献3】J. Immunol.,88,82(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の目的は、上記課題を解決することであって、より効果的なNKT細胞活性化用組成物を提供することを目的とする。さらに、スフィンゴ糖脂質を含むIL−4産生促進用組成物、IFN−γ産生促進用組成物、樹状細胞活性化用組成物、IL−12産生促進用組成物、IL−10産生促進用組成物、NK細胞活性化用組成物、抗腫瘍作用組成物、抗アレルギー作用組成物、感染抵抗性増強用組成物、抗ウイルス作用組成物、IL−6産生促進用組成物、NO産出促進用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本願発明者は下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)下記式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするNKT細胞活性化用組成物。
式(1)
【0007】
【化1】

(式(1)中、R1は、下記式(1−1)
式(1−1)
【0008】
【化2】

(式(1−1)中、R3は、アルキル基またはアルケニル基であり、R4は、アルキル基である。)を表し、
2は、水素原子または、α−ガラクトース基、α−グルコース基、α−マンノース基、α−グルコサミン基若しくはβ−グルコサミン基またはこれらの組み合わせからなる基である。)
(2)前記式(1)は、下記式(3)で表される、(1)に記載のNKT細胞活性化用組成物。
式(3)
【0009】
【化3】

(式(3)中、R5は、下記R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77又はR78を表し、R6は、水素原子、R62、R63、R64又はR65を表す。)
【0010】
【化4】

【0011】
【化5】

【0012】
【化6】

【0013】
【化7】

【0014】
【化8】

【0015】
(3)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするIL−4産生促進用組成物。
(4)前記式(1)は、式(3)で表される、(3)に記載のIL−4産生促進用組成物。
(5)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするIFN−γ産生促進用組成物。
(6)前記式(1)は、式(3)で表される、(5)に記載のIFN−γ産生促進用組成物。
(7)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする樹状細胞活性化用組成物。
(8)式(1)は、式(3)で表される、(7)に記載の樹状細胞活性化用組成物。
(9)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするIL−12産生促進用組成物。
(10)式(1)は、式(3)で表される、(9)に記載のIL−12産生促進用組成物。
(11)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするIL−10産生促進用組成物。
(12)式(1)は、式(3)で表される、(11)に記載のIL−10産生促進用組成物。
(13)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするNK細胞活性化用組成物。
(14)式(1)は、式(3)で表される、(13)に記載のNK細胞活性化用組成物。
(15)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする抗腫瘍作用組成物。
(16)式(1)は、式(3)で表される、(15)に記載の抗腫瘍作用組成物。
(17)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする抗アレルギー作用組成物。
(18)式(1)は、式(3)で表される、(17)に記載の抗アレルギー作用組成物。
(19)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする感染抵抗性増強用組成物。
(20)式(1)は、式(3)で表される、(19)に記載の感染抵抗性増強用組成物。
(21)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする抗ウイルス作用組成物。
(22)式(1)は、式(3)で表される、(21)に記載の抗ウイルス作用組成物。
(23)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするIL−6産生促進用組成物。
(24)式(1)は、式(3)で表される、(23)に記載のIL−6産生促進用組成物。
(25)式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするNO産出促進用組成物。
(26)式(1)は、式(3)で表される、(25)に記載のNO産出促進用組成物。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の組成物を採用することにより、より効果的なNKT細胞活性化用組成物が得られた。また、IL−4産生促進用組成物、IFN−γ産生促進用組成物、樹状細胞活性化用組成物、IL−12産生促進用組成物、IL−10産生促進用組成物、NK細胞活性化用組成物、抗腫瘍作用組成物、抗アレルギー作用組成物、感染抵抗性増強用組成物、抗ウイルス作用組成物、IL−6産生促進用組成物、NO産出促進用組成物が得られた。特に、これらを併せ持つという点でも本願発明の組成物は有意である。
さらに、本願発明の組成物は、毒性が低く、エンドトキシントレランスが誘導されないため、副作用が低いという観点からも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下において、本願発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本願明細書において、上記式(3)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78を、「R51〜R78」と示すことがある。
本願発明で採用するスフィンゴ糖脂質(以下、「GSL」と呼ぶことがある)は、上記式(1)で表される構造を有するものである。ここで、式(1)のR1に含まれるR3のアルキル基は、シクロアルキル基を有していてもよく、該シクロアルキル基は、R3のアルキル末端でもよいし、鎖の中に含まれていてもよい。好ましいシクロアルキル基としては、シクロプロパン基があげられる。R3のアルキル基の炭素数としては、好ましくは13〜23、より好ましくは15、16、17、18、19、20又は21である。また、R3のアルキル基及びアルケニル基は、好ましくは置換または無置換の直鎖のものである。また、アルケニル基に含まれる2重結合は、いずれの位置にあってもよい。
一方、R4のアルキル基の炭素数は好ましくは10〜20、より好ましくは10、11、12、13、14、15又は16であり、さらに好ましくは、10、11、12、13、14または15である。さらに、R4のアルキル基は、置換または無置換の直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0018】
さらに好ましくは、R1が上記R51〜R78のいずれかである。
また、式(1)のR1は、下記式(1−2)の立体構造をとるものが好ましい。
式(1−2)
【0019】
【化9】

ここで、上記式(1−2)中のR3およびR4は、上記式(1−1)のR3およびR4と同義である。従って、上記R51〜R78も上記立体構造をとるものがより好ましい。
また、上記式(1)は、好ましくは、式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表されるものである。ここで、式(2)は、
式(2)
【0020】
【化10】

式(2)中、R1は及びR2は式(1)と同義であり、好ましい範囲も同義である。
また、式(3)において、好ましくは、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6が水素原子の場合(以下、構造Aということがある)、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6がR62の場合(以下、構造Bということがある)、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6がR63の場合(以下、構造Cということがある)、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6がR64の場合(以下、構造Dということがある)、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6がR65の場合(以下、構造Eということがある)である。さらにまた、構造Aの中でも、R5が、R51、R52又はR53のものをより好ましく採用できる。
【0021】
式(4)
【化11】

式(4)中、R1は、上記式(1)のR1と同義である。また、R1の好ましい範囲も上記とR1と同義である(式(4)で表される化合物の少なくとも一種を含むものを以下、構造AAと呼ぶことがある)。
式(5)
【0022】
【化12】

式(5)中、R1は、上記式(1)のR1と同義である(以下、構造Fということがある)。また、R1の好ましい範囲も上記R1と同義である。
【0023】
さらに、本願発明のスフィンゴ糖脂質は1種類のみを採用しても良いし、2種類以上を採用しても良い。2種以上を組み合わせて含有させる場合の各成分の比率は特に制限されない。例えば、上記構造Aに該当する3種類の化合物のうち1種類以上を含むもの、上記構造Bに該当する3種類の化合物のうち1種類以上を含むもの、上記構造Fに該当する化合物を少なくとも1種以上含むもの等を挙げることができる。この中でも好ましくは、R1が、R51、R52又はR53のいずれかの場合である(以下、構造FAと呼ぶことがある)。
本願発明で開示する組成物には、上記に加えて、上記式(1)において、式(1)中の式(1−1)が式(1−1−1)の立体構造で表されるものも含まれていてもよい。
式(1−1−1)
【0024】
【化13】

式(1−1−1)中、R3及びR4は、それぞれ、上記式(1−1)と同義であり、好ましい範囲も同義である。
式(1−1−1)は、さらに好ましくは、下記式(1−1−2)で表される立体構造のものである。
式(1−1−2)
【0025】
【化14】

式(1−1−2)中、R3及びR4は、それぞれ、上記式(1−1)と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0026】
式(1)で表されるスフィンゴ糖脂質は、スフィンゴ糖脂質を有する菌体から抽出することによって得ることができる。例えば、国際公開WO92/12986号パンフレットや特開2002−10797号公報に記載の方法を採用することができる。スフィンゴ糖脂質は、スフィンゴモナス科に属する菌体中に含まれていることから、スフィンゴモナス科に属する菌のいずれかを用いて抽出すれば式(1)で表されるスフィンゴ糖脂質を得ることができる。ここで、スフィンゴモナス科に属する菌とは、従来から一般的に「スフィンゴモナス属」(Sphingomonas)に属する菌と言われているものの他、該菌と実質的に同じ科に属するものとして分類される菌を含む趣旨である。本願発明で採用できる菌株としては、例えば、Microbiol. Immunol.,2000,44,563-575に示されるいずれの菌株も採用することができる。
【0027】
式(1)で表されるスフィンゴ糖脂質は、アセトンに対して不溶性であることから、抽出操作を行なう前に菌体をアセトンで洗浄しておくのが好ましい。式(1)のスフィンゴ糖脂質の抽出に用いる溶媒は、メタノールなどのアルコール系溶媒またはアルコール系溶媒とクロロホルムなどの極性溶媒の混合溶媒にするのが収率の点で好ましい。ただし、スフィンゴ糖脂質溶解性の溶媒であれば、これらの以外の溶媒を用いても構わない。
スフィンゴ糖脂質の混合物が得られた場合は、本技術分野で周知の方法にしたがって各成分を分離することができる。たとえば、クロマトグラフィー法によって、スフィンゴ糖脂質は完全に分離することができる。溶出液としてクロロホルム/メタノール混合溶液を用いた場合は、構造A、構造F、構造C、構造Bあるいは構造Dあるいは構造Eの順に各スフィンゴ糖脂質が溶出し、構造B、D、Eは、一般的に異なる菌株が産生するため、極めて簡便に分離することができる。充填剤、溶出液、溶出速度、圧力、温度などのクロマトグラフィーの分離条件については、適宜調節することができる。また、スフィンゴ糖脂質の混合物に含まれる特定の物質のみに選択的に反応する試薬を作用させて該物質の誘導体を調製し、その誘導体の化学的性質または物理的性質を利用して分離を行なうこともできる。菌として、スフィンゴモナスパウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)を用いた場合には、一般に構造Aのスフィンゴ糖脂質と構造Bのスフィンゴ糖脂質が得られる。また、スフィンゴモナスカプスラータ(Sphingomonas capsulata)(新名:Novosphingobium capsulatum)を用いた場合には、一般に構造Aのスフィンゴ糖脂質と構造Cのスフィンゴ糖脂質が得られる。さらに、スフィンゴモナスアドハエシバ(Sphingomonas adhaesiva)を用いた場合には、一般に構造Aのスフィンゴ糖脂質と構造Dのスフィンゴ糖脂質が得られる。加えて、スフィンゴモナススピーシーズMK346(Sphingomonas sp. MK346)を用いた場合には、一般に構造Aのスフィンゴ糖脂質と構造Eのスフィンゴ糖脂質が得られる。また、スフィンゴモナスウィッティチアィ(Sphingomonas wittichii)、スフィンゴモナスマクロゴルタビダス(Sphingomonas macrogoltabidus)(新名:Sphingopyxis macrogoltabida)、スフィンゴモナステラエ(Sphingomonas terrae)又はスフィンゴモナスヤノイクヤエ(Sphingomonas yanoikuyae)(新名:Sphingobium yanoikuyae)を用いた場合には、一般に構造AA(例えば、構造A)のスフィンゴ糖脂質と構造F(例えば、構造FA)のスフィンゴ糖脂質が得られる。したがって、これらの情報に基づいて菌を選択すれば、目的とするスフィンゴ糖脂質を効率よく得ることができる。
式(1)で表されるスフィンゴ糖脂質は、周知の合成法を組み合わせることによって合成することもできる。たとえば、糖とスフィンゴシン部分をあらかじめ合成するか、菌体から抽出しておき、アミド結合を形成することによって式(1)で表される各スフィンゴ糖脂質を調製することができる。
【0028】
本願発明のNKT細胞とは、例えば、ヒトVα24+NKT細胞及びマウスVα14+NKT細胞を含む趣旨である。また、NKT細胞活性化とは細胞傷害活性の増強、サイトカイン産生増強及びNKT細胞の増殖促進を含む意図である。さらに、本願発明のNKT細胞活性化用組成物は、結果として、IL−4の産生及びIFN−γの産生を促進する。従って、IL−4又はIFN−γによって促進される各種機能の促進用組成物としても使用することができる。NKT細胞活性化用組成物としては、本願発明で採用するGSLのうち、ガラクツロン酸型のスフィンゴ糖脂質な構造を有するものが特に好ましい。
IL−4によって促進されるものの例としては、Th2の誘導、抗体のクラススイッチの誘導が挙げられ、IFN−γによって促進されるものの例としては、IFN−γによって促進されるTh1の誘導、マクロファージ活性化作用が挙げられる。
ここで、サイトカインの増強として、上記のほか、各種IL、IFN−α、IFN−β、腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシン、造血因子のコロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン、造血因子の上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)産生又は活性化促進作用組成物としても利用することができる。さらに、本願発明で開示した上記スフィンゴ糖脂質は、上記以外の免疫活性化組成物や、がん細胞のアポトーシス誘導化組成物、NF−kappaB活性化促進、IkappaBの分解、p38のリン酸化、Aktのリン酸化等を目的とした、産生又は活性化促進用組成物としても利用できる。
本願発明でいう、樹状細胞活性化とは、例えば、抗原提示能亢進を含む意図である。
本願発明のGSLはIL−12の産生及びIL−10の産生を促進する。従って、IL−12の産生及びIL−10の産生によって促進される各種機能の促進用組成物としても使用することができる。特に、本願発明のIL−12の産生及び/または
IL−10の産生組成物としては、グルクロン酸型のスフィンゴ糖脂質を用いることが好ましい。
【0029】
本願発明でいう、NK細胞活性化とは、例えば、感染細胞傷害を含む意図である。NK細胞活性化用組成物としては、本願発明で採用するGSLのうち、単糖型のスフィンゴ糖脂質であるものが特に好ましい。
本願発明でいう、抗腫瘍作用とは、例えば、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞活性化を含む意図である。抗腫瘍作用組成物としては、本願発明で採用するGSLのうち、四糖型のスフィンゴ糖脂質であるものが特に好ましい。
本願発明でいう、抗アレルギー作用とは、例えば、好酸球浸潤抑制、肥満細胞抑制作用、IgE産生抑制、化学伝達物質放出抑制を含む意図である。
さらに、本願発明の抗アレルギー作用組成物は、副作用が弱い傾向にあり、花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等への利用に特に有用である。
本願発明でいう、感染抵抗性増強作用とは、例えば、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞活性化を含む意図である。本願発明の感染抵抗性増強作用組成物は、サルモネラ感染症、結核への利用に特に有用である。感染抵抗性増強作用組成物としては、本願発明で採用するGSLのうち、四糖型のスフィンゴ糖脂質であるものが特に好ましい。
本願発明でいう、抗ウイルス作用とは、例えば、I型インターフェロン産生増強、
ヘルパーT細胞およびキラーT細胞活性化を含む意図である。本願発明の抗ウイルス作用組成物は、サイトメガロウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症などヘルペスウイルス科感染症への利用に特に有用である。
【0030】
また、本願発明の組成物を医薬品若しくは医薬部外品やその有効成分として利用する場合、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な医薬組成物として投与することができる。医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等をあげることができる。上記の医薬組成物は、薬理学的、製剤学的に許容し得る添加物を加えて製造することができる。薬理学的、製剤学的に許容し得る添加物の例としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし崩壊補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等をあげることができる。上記の医薬組成物には、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の効能を有する成分を1種又は2種以上配合してもよい。本願発明の医薬の投与量は特に限定されず、有効成分の種類などに応じて適宜選択することができ、さらに患者の体重や年齢、疾患の種類や症状、投与経路など通常考慮すべき種々の要因に応じて、適宜増減することができる。一般的には、成人一日あたり、0.001〜100mg好ましくは0.01〜10mgの範囲で用いることができる。また、投与方法も特に限定されず、注射剤、輸液剤等として、静脈注射により投与してもよいし、経口的に投与してもよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本願発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本願発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本願発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0032】
本実施例においては、GSLとして、スフィンゴモナスパウシモビリスから産生された構造Aのもの(GSL−1)、スフィンゴモナスパウシモビリスから産生された構造Bのもの(GSL−2)、スフィンゴモナスカプスラータから産生された構造Cのもの(GSL−3)、スフィンゴモナスアドハエシバから産生された構造Dのもの(GSL−4)、スフィンゴモナススピーシーズMK346から産生された構造Eのもの(GSL−5)、スフィンゴモナスヤノイクヤエから産生された構造AAのもの(GSL−6)、スフィンゴモナスヤノイクヤエから産生された構造Fのもの(GSL−7)、スフィンゴモナスウィッティチアィから産生された構造AAのもの(GSL−8)、スフィンゴモナスウィッティチアィから産生された構造Fのもの(GSL−9)、スフィンゴモナスマクロゴルタビダスから産生された構造AAのもの(GSL−10)、スフィンゴモナスマクロゴルタビダスから産生された構造Fのもの(GSL−11)、スフィンゴモナステラエから産生された構造AAのもの(GSL−12)、スフィンゴモナステラエから産生された構造Fのもの(GSL−13)を採用した。これらは、国際公開WO92/12986号公報、特開2002−010797号公報に記載の方法に従って分離した。
【0033】
実施例1 NKT細胞活性化作用の測定
動物:
試験用マウスとして、C57BL/10ScSnマウス(以下、正常マウスという。)及びC57BL/10ScCrマウス(TLR4欠損IL−12Rβ2鎖変異マウス)(以下、TLR4欠損マウスという。)(マックスプランク免疫生物学研究所、ドイツ、フライブルグ市)(7週齢、雌)を使用した。GSL−1およびGSL−2はTLR4を介して正常マウスのマクロファージを活性化し、IL−12産生を誘導する。TLR4欠損マウスは、IL−12受容体のβ鎖に変異があり、IL−12が作用しないものである。IL−12は免疫系を強力に活性化する物質であるが、本実施例のTLR4欠損マウスを用いると本願発明で採用するスフィンゴ糖脂質のNKT細胞に対する活性化促進をIL−12の作用を受けない状態で、より明確にすることができる。
サンプルの作成:
各GSLのいずれか10μgを、正常マウス及びTLR4欠損マウスに投与した。投与は、尾静脈内投与により行った。そして、対照として生理食塩水を投与したもの(コントロール)、投与後1日経過時(1日目)及び2日経過時(2日目)の血清及び肝臓を採取した。
【0034】
肝臓内白血球の分離:
採取した肝臓を2枚のスライドガラスを用いてつぶした。細胞浮遊液を500rpm、1分間遠心した。得られた上清を1200rpm(300g)、5分間遠心した。その沈渣を30%のパーコール(ファルマシア社製)に懸濁し、さらに、これを、67.5% パーコールの上に重層して、20℃、2000rpm(800g)、30分間遠心し、30%と67.5%パーコールの境界に白血球を集積させ回収した。得られた細胞をハンクス液で3回洗浄して肝臓内白血球を得た。
【0035】
フローサイトメトリー:
FcRを介した蛍光標識抗体の非特異的結合を防ぐため、抗FcγR(2.4G2)を用いた。抗体は、PE標識抗NK1.1抗体(日本ベクトン・ディッキソン(株)製、PK136)及びビオチン標識抗TCRαβ抗体(日本ベクトン・ディッキソン(株)製、H57−597)を用いた。細胞に各抗体を添加した後、4℃、暗所で30分反応させた。尚、ビオチン標識抗体を用いた細胞は、Cy−chrome結合ストレプトアビジン(日本ベクトン・ディッキソン株式会製、554062)を4℃、暗所で30分反応させた。上記抗体、Cy−chrome結合ストレプトアビジンの染色及び細胞の洗浄には0.1%NaN3含有1%血清アルブミンを用いた。細胞は染色後、1%パラホルムアルデヒド含有PBS(-)で固定した。測定は HYPERLINK "http://cent-scorpio.asahikawa-med.ac.jp/central/image/biochemistry/fcm.html" 自動細胞解析分離装置(ベックマンコールター(株)、COULTER EPICS ELITE ESP)で行った。また、PE標識抗NK1.1抗体を、FITC標識抗CD11a抗体(日本ベクトン・ディッキソン株式会社製、M17/4)に代えて同様に行った。
上記PE標識抗NK1.1抗体(又はCD11a)を用いた方法によって得られたフローサイトメトリーの結果を図1〜図6に示した。ここで、図1〜図4は、それぞれ、正常マウスを用いた場合で、順に、GSL−1、2、6、7を投与した場合を、図5及び図6は、それぞれ、TLR4欠損マウスを用いた場合で、順に、GSL−1、2を投与した場合を示した。
ここで、図中に示した数字は、NK1.1(又はCD11a)とTCRαβの両方を発現した細胞の割合(%)を示している。尚、NK1.1(又はCD11a)とTCRαβの両方を発現したものは、NKT細胞である。
また、日を変えて、上記と同様に、PE標識抗NK1.1抗体を用いた方法によって得られた正常マウスのフローサイトメトリーの結果(NKT細胞の割合)を図7に示す。ここで、図中に示した数字は両方を発現した細胞の割合(%)を示し、図中の米印は、t検定により統計的にコントロールと有意な差が認められたものである。
【0036】
IFN−γの存在の確認:
GSL−1又はGSL−2を添加した場合の血中のIFN−γ量について検討した。正常マウス及びTLR4欠損マウスに、GSL−1又はGSL−2を上記と同様の方法により投与し、血清中に含まれるIFN−γを解析した。
IFN−γは、捕捉抗体として精製抗IFN−γ抗体(R4−6A2)(日本ベクトン・ディッキソン株式会製)と、検出抗体としてビオチン結合抗IFN−γ抗体(AN−18)(日本ベクトン・ディッキソン株式会製)を用いたサンドイッチELISA法で行った。ビオチン結合抗体に続く反応でアルカリ性フォスファターゼ標識ストレプトアビジン(ZYMED製、43−4822)を結合させ、パラニトロフェニルリン酸塩(SIGMA製、N−4645)を基質として発色させた。マイクロプレートリーダー(日本バイオラドラボラトリーズ株式会社、Model550)で405nmと対照として540nmの波長の吸光度を観察した。この結果、正常マウスにおいて、図8に示すように、IFN−γの産生が促進されていることが認められた。尚、TLR4欠損マウスの場合、IL−12に反応しないため、GSL−1又はGSL−2を投与してもIFN−γは検出されなかった。
【0037】
IFN−γ産生NKT細胞のフローサイトメトリー:
GSL−1又はGSL−2を投与した場合の正常マウスについて、上記と同様の方法でフローサイトメトリーを行い、(PE標識抗NK1.1抗体、ビオチン標識抗TCRαβ抗体、FITC標識抗IFN−γ抗体(日本ベクトンディッキンソン株式会社製、554410)にて染色して、IFN−γ産生NKT細胞の割合を測定した。その結果を図9に示す。ここで、図中の数字は、NK1.1とTCRαβの両方を発現した、IFN−γ産生NKT細胞の割合に相当する。
【0038】
IL−4の量の測定:
GSL−1又はGSL−2を添加した場合の血中のIL−4の量が増加するかについて検討した。上記正常マウス及びTLR4欠損マウスに、GSL−1又はGSL−2を上記と同様の方法により投与し、血清中に含まれるIL−4を解析した。
IL−4の測定は、マウスIL−4 BD Opti EIA ELISA Set(日本ベクトン・ディッキソン株式会社製、555232)を用いて該マニュアルに従って測定した。結果、いずれのマウスについても、IL−4の増加が認められた。特に、図10に示すとおり、TLR4欠損マウスにおいて、IL−4の顕著な産生促進が認められた。
GSL−1又はGSL−2を添加した場合、上記フローサイトメトリーにおいて、NK1.1とTCRαβの両方に発現したものの割合の増加が認められたこと、及び、これらの増加が大きいものについては、IFN−γとIL−4の両方が産生されていることが確認できたことから、GSL−1又はGSL−2がNKT細胞の活性化に有効であることが認められた。
【0039】
実施例2 IFN−γ産生促進作用
試験用マウスとして、C57BL/6マウスを用いた。各GSLは、各GSLは、20% ペンタジオールで最終濃度が10 mg/mlとなるように溶解した後、生理食塩水で希釈した溶液(以下、「P」と示すことがある。)、または、0.5%ペンタンジオール、0.5%N−ラウロイルサルコシン、9.8%ショ糖溶液で最終濃度が5mg/mlとなるように溶解した後、生理食塩水で希釈した溶液(以下、「P+S」と示すことがある。)を用いた。各GSLは、マウス尾静脈から投与した(投与量は100μg)。対照として溶媒のみを投与した(コントロール)。投与16時間後に摘出した肝臓から細胞浮遊液を調製し、45%パーコールと67.5%パーコールを用いた比重遠心法により肝臓内白血球を得た。白血球は、抗FcγR抗体 (2.4G2)で処理した後、FITC標識抗IFN−γ抗体、PE標識抗NK1.1抗体、ビオチン標識抗TCRαβ抗体を用いて処理した。白血球に抗体を添加した後、4℃、暗所で30分間反応させた。ビオチン標識抗体を用いた白血球は、Cy−chrome結合ストレプトアビジンを4 ℃、暗所で30分反応させた。抗体およびCY−chrome結合ストレプトアビジンの染色および細胞の洗浄には、0.1% NaN3含有1%血清アルブミンを用いた。細胞は染色後、1%パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝生理食塩(PBS(−))で固定した。測定は、上記に記載のEPICS ELITE ESPで行った。その結果を、表1に示した。ここで、表1は、IFN-γ産生NKT細胞の割合(%)を示している。なお、本実験は、実験1、2、3の3回に分けて行なった。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から明らかなとおり、IFN-γ産生促進作用が認められた。特に、GSL−1、2、4、6〜11および13についてより効果的であり、GSL−6〜9、11、13についてさらに効果的であり、GSL−7について顕著に効果的であった。
【0042】
実施例3 樹状細胞活性化作用
樹状細胞活性化作用について確認した。マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。各GSLは、上記実施例2と同様の方法で溶解した。各試料は、マウス尾静脈から投与した(投与量は100μg)。投与12時間後に摘出した脾臓から細胞浮遊液を調製した。白血球は、抗FcγR抗体 (2.4G2)で処理した後、PE標識抗CD11c抗体(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)、ビオチン標識抗CD40(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)、ビオチン標識抗CD80抗体(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)、ビオチン標識抗CD86抗体(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)を用いた。細胞に抗体を添加した後、4℃、暗所で30分間反応させた。ビオチン標識抗体を用いた細胞は、Cy−chrome結合ストレプトアビジンを4℃、暗所で30分反応させた。抗体またはCy−chrome結合ストレプトアビジンの染色および細胞の洗浄には0.1% NaN3含有1%血清アルブミンを用いた。細胞は染色後、1%パラホルムアルデヒド含有PBS (−)で固定した。測定はEPICS ELITE ESPで行った。CD11c陽性細胞中のCD40、CD80およびCD86陽性細胞の割合(%)を表2に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から明らかなとおり、樹状細胞活性化作用が認められた。特に、GSL−1、2、4、6〜13についてより効果的であり、GSL−7〜9、11、13について顕著に効果的であった。
【0045】
実施例4 IL−12の誘導およびIL−10の誘導
実施例1で採用した正常マウスの骨髄細胞を、GM−CSFおよびIL−4存在下で8日間培養し、骨髄由来の樹状細胞を得た。下記表に示した各GSLは、エタノール:ドデカン(98:2)で0.5 mg/mlで溶後し、96穴プレートに20μlずつ分注し、溶媒を揮発させ各GSLをプレートに固相化した。対照群としてエタノール:ドデカン(98:2)のみを分注し揮発させた。GSLを固相化したプレートに骨髄由来の樹状細胞を加え、24時間後の培養上清を回収した。培養上清は、ELISA法によりIL−12p70の量およびIL−10の量を BD OptEIA Kitを用いて測定した。IL−12p70の量の測定結果を表3に、IL−10の量の測定結果を表4に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
上記表から明らかなとおり、IL−12p70の誘導およびIL−10の誘導が認められた。特に、IL−12p70の誘導については、GSL−2、4、6、8、10、12についてさらに効果的であり、GSL−6、8、10、12について顕著に効果的であった。また、IL−10の誘導については、GSL−10および12について顕著に効果的であった。
【0049】
実施例5 NK細胞活性化作用
マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。各GSLは上記実施例2と同様の方法で溶解した。各試料は、マウス尾静脈から投与した(投与量は100μg)。対照として溶媒のみを投与した(コントロール)投与16時間後に摘出した脾臓から細胞浮遊液を調製した。脾臓細胞と51Cr標識YAC−1細胞を50:1の比率で混合し、4時間培養した。4時間後の培養上清中の51Cr量を、γカウンター(WALLAC製)を用いて測定した。結果を表5に示す。なお、本実験は、実験1、2、3の3回に分けて行なった。
【0050】
【表5】

【0051】
ここで、表5から明らかなとおり、GSL−1、5、6〜9及び13についてより効果的であり、GSL−1、7、8について顕著に効果的であった。
【0052】
実施例6 抗腫瘍作用
マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。腫瘍細胞B16−F10(北海道大学遺伝子病制御研究所)(2x105個)を尾静脈から移植した。各GSLは、上記実施例2と同様の方法で溶解した。GSLの投与量は、100μgとし、腫瘍細胞移植後1日、5日、9日目に腹腔内投与した。移植14日目に解剖し、肺の転移巣数を測定した。結果を表6に示す。
【0053】
【表6】

【0054】
表6から明らかなとおり、上記いずれのGSLにおいても効果的に肺の転移を抑制した。特に、GSL−2はその効果が顕著であった。
【0055】
実施例7 抗アレルギー作用
BALB/cマウスに、それぞれ、卵白アルブミン(OVA)100μgと水酸化アルミニウムゲル1.6 mgを混合した抗原を0日および7日に皮下接種した。14、15、16日目にOVA10μgを生理食塩水に溶解し、点鼻接種3日後(初回接種から18日目)に解剖した。各GSLは、0.5%ペンタンジオール、0.5%N−ラウロイルサルコシン、9.8%ショ糖溶液で最終濃度が5mg/mlとなるように溶解した後、生理食塩水で希釈した。生理食塩水で希釈した各GSL溶液は、1日、5日、9日、13日目に腹腔内投与した。肺胞洗浄液中の全細胞数および好酸球数を計測した。全細胞数はチュルク液(和光純薬工業製)で、好酸球数はギムザ染色液(メルク株式会社製)で染色し計測した。抗OVA抗体価(IgG、IgG1、IgG2a)はOVAをコーティングした96穴プレートに段階希釈した血清を添加した。検出抗体には、アルカリホスファターゼ標識した抗マウスIgG抗体(ZYMED社製)、抗マウスIgG1抗体(ICN社製)、抗マウスIgG2a抗体(ZYMED社製)を用いた。パラニトロフェニルリン酸塩を基質として発色させ、3NのNaOHで反応停止後、マイクロプレートレーダーで405nmの吸光度を測定した。抗OVA IgE抗体価は、抗マウスIgE抗体(日本ベクトンディッキンソン株式会社製)をコーティングした96穴プレートに段階希釈した血清を添加した。次いで、各穴にビオチン標識したOVAを添加後、パーオキシダーゼ標識ストレプトアジビンを用い、SureBlue(フナコシ株式会社製)を基質として発色させた。2N H2PO4で反応停止後、マイクロプレートレーダーで450nmの吸光度を測定した。
また、コントロールは、BALB/cマウスに、GSLを投与しないで同時に行ったものである。
白血球数に関する測定結果を表7に示す。好酸球数を表8に示す。
【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
表7および表8から明らかなとおり、肺胞洗浄液中の白血球数および好酸球数は顕著に減少した。
【0059】
実施例8 感染抵抗性増強作用
マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。各GSLは、実施例2の「P」と同様の方法で溶解した。溶解したものを、Salmonella typhimurium ΔSL7207aroA株(スタンフォード大学医学部、米国)に感染させる1時間前に腹腔内投与接種した。感染3日目に解剖し、腹腔内生菌数を測定した。腹腔内生菌数の結果を表9に示した。
内生菌数を測定した。腹腔内生菌数の結果を表9に示した。
【0060】
【表9】

【0061】
表9中、cfuは、コロニー形成単位の略で生菌数を意味する。表9から明らかなとおり、GSLの投与により、感染抵抗性の増強作用が認められた。
【0062】
実施例9 抗ウイルス作用
マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。各GSLは、実施例2と同様の方法で溶解した。溶解したものを、マウスに静脈投与した。投与1時間後に、マウスに、マウスサイトメガロウイルス(Smith株)1x104pfu(pfu:プラーク形成単位の略で生菌数を意味すである)を腹腔内接種した。感染3日目に解剖し、肝臓および脾臓内ウイルス価を測定した。その結果を、表10に示した。また、脾臓の3日後のNK活性および血清中IFN−γを測定した。その結果を表11(NK活性)および表12(IFN−γ)を示す。
【0063】
【表10】

【0064】
【表11】

【0065】
【表12】

【0066】
その結果、表10に示すとおり、GSLを前投与することにより、感染抵抗性の増強作用が認められた。また、表11に示すとおり、NK活性は顕著に増強し、IFN−γレベルはコントロール群と比較して増強した。特に、GSL−6についてその効果が顕著であることが認められた。
【0067】
実施例10 IL−6産生促進作用およびNO産出促進
実施例1で用いた正常マウスに4%のチオグルコール酸3mlを腹腔内投与し、4日後に腹腔滲出細胞を採取し実験に用いた。マクロファージ細胞株RAW264細胞(理化学研究所)も実験に用いた。各GSLは、エタノール:ドデカン(98:2)溶媒で濃度が0.5mg/mlとなるように溶後し、96穴プレートに20μlずつ分注し、溶媒を揮発させてGSLをプレートに固相化した。GSLを固相化したプレートにマクロファージを加え、24時間後の培養上清を回収した。この培養上清については、ELISA法によりIL−6を、グリース試薬を用いて一酸化窒素(NO)も測定した。IL−6の測定結果を、表13に、一酸化窒素の測定結果を、表14に示した。
【0068】
【表13】

【0069】
【表14】

【0070】
表13から明らかなとおり、IL−6誘導作用が認められた。特に、GSL−5〜13についてより効果的であり、GSL−6〜13についてさらに効果的であり、GSL−7〜13について顕著に効果的であった。
また、表14から明らかなとおり、NO産出促進作用が認められた。特に、GSL−2、5、9〜13についてより効果的であり、GSL−11についてさらに効果的であった。
【0071】
実施例11
本願発明のGSL組成物についての毒性について確認した。マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。20mgのガラクトサミンを腹腔内投与直後に、リポ多糖(以下、「LPS」と示すことがある)(Salmonella abortus equi由来、マックスプランク免疫生物学研究所、ドイツ、フライブルグ市)(溶媒は生理食塩水)、または、下記表15に示したGSL(溶媒は「P+S」)の下記表15に示した量を、マウス尾静脈から投与した。投与24時間後、マウスの生死を観察した。その結果を表15に示した。
【0072】
【表15】

【0073】
LPSを添加した場合、10ngの添加でもすべてのマウスが死亡した。一方、GSLでは100μg添加してもすべてのマウスが生存していた。このように本願発明の組成物はきわめて毒性が低いことが認められた。
【0074】
実施例10
エンドトキシントレランスが誘導されるか否かについて確認した。マウスは、C57BL/6マウス(7週令、メス)を用いた。LPS(溶媒は生理食塩水)または各GSLの下記表16に示す量をマウス尾静脈から投与した。投与後24時間に、ガラクトサミン(20mg)およびLPS(100ng、溶媒は生理食塩水)を腹腔内投与し、マウスの生死を観察した。その結果を、表16に示す。
【0075】
【表16】

【0076】
表16から明らかなとおり、GSL−1、GSL−2、GSL−6およびGSL−7を100μg添加してもエンドトキシントレランスは誘導されず、すべてのマウスが死亡した。一方、LPSは100ngの添加でもエンドトキシントレランスが誘導された。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】正常マウスにGSL−1を投与した場合のフローサイトメトリーによる解析結果を示す。
【図2】正常マウスにGSL−2を投与した場合のフローサイトメトリーによる解析結果を示す。
【図3】正常マウスにGSL−6を投与した場合のフローサイトメトリーによる解析結果を示す。
【図4】正常マウスにGSL−7を投与した場合のフローサイトメトリーによる解析結果を示す。
【図5】TLR4欠損マウスにGSL−1を投与した場合のフローサイトメトリーによる解析結果を示す。
【図6】TLR4欠損マウスにGSL−2を投与した場合のフローサイトメトリーによる解析結果を示す。
【図7】正常マウスに各種GSL−1、2、6、7を投与した場合のNTK細胞の変化を示す。
【図8】正常マウスにおけるGSL−1又はGSL−2投与後のIFN−γの濃度を示す。
【図9】正常マウスにおけるGSL−1又はGSL−2を投与した場合のINF−γ産生NTK細胞の変化を示す。
【図10】TLR4欠損マウスにおけるGSL−1又はGSL−2投与後のIL−4の濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴモナスパウシモビリスから産生されたスフィンゴ糖脂質を含む医薬品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とするNKT細胞活性化用組成物。
式(1)
【化1】

(式(1)中、R1は、下記式(1−1)
式(1−1)
【化2】

(式(1−1)中、R3は、アルキル基またはアルケニル基であり、R4は、アルキル基である。)を表し、
2は、水素原子または、α−ガラクトース基、α−グルコース基、α−マンノース基、α−グルコサミン基若しくはβ−グルコサミン基またはこれらの組み合わせからなる基である。)
【請求項2】
前記式(1)は、下記式(3)で表される、請求項1に記載のNKT細胞活性化用組成物。
式(3)
【化3】

(式(3)中、R5は、下記R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77又はR78を表し、R6は、水素原子、R62、R63、R64又はR65を表す。)
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【請求項3】
前記スフィンゴ糖脂質が、スフィンゴモナスパウシモビリスおよび/またはスフィンゴモナスヤノイクヤエから産生されたものである、請求項1または2に記載のNKT細胞活性化用組成物。
【請求項4】
前記スフィンゴ糖脂質が、前記式(3)において、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6がR62のものである、請求項2または3に記載のNKT細胞活性化用組成物。
【請求項5】
下記式(1)で表される構造を有するスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする樹状細胞活性化用組成物。
式(1)
【化9】

(式(1)中、R1は、下記式(1−1)
式(1−1)
【化10】

(式(1−1)中、R3は、アルキル基またはアルケニル基であり、R4は、アルキル基である。)を表し、
2は、水素原子または、α−ガラクトース基、α−グルコース基、α−マンノース基、α−グルコサミン基若しくはβ−グルコサミン基またはこれらの組み合わせからなる基である。)
【請求項6】
前記式(1)は、下記式(3)で表される、請求項5に記載の樹状細胞活性化用組成物。
式(3)
【化11】

(式(3)中、R5は、下記R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77又はR78を表し、R6は、水素原子、R62、R63、R64又はR65を表す。)
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【請求項7】
前記スフィンゴ糖脂質が、
下記式(3)において、R5が、R51〜R78のいずれかであって、R6がR62若しくはR64のもの、
下記式(4)で表されるもの、または、
下記式(5)で表されるものである、請求項5または6に記載の樹状細胞活性化用組成物。
式(3)
【化17】

(式(3)中、R5は、下記R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77又はR78を表し、R6は、水素原子、R62、R63、R64又はR65を表す。)
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

式(4)
【化23】

(式(4)中、R1は、前記式(1)のR1と同義である。)
式(5)
【化24】

(式(5)中、R1は、前記式(1)のR1と同義である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−124403(P2006−124403A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28082(P2006−28082)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【分割の表示】特願2005−44686(P2005−44686)の分割
【原出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000141510)株式会社紀文フードケミファ (9)
【出願人】(504064836)
【Fターム(参考)】