説明

Norrinを調整するための作用物質を同定するための物質および方法、Norrin模倣体ならびにそれによって同定された作用物質

本明細書は、Norrin活性がWnt経路シグナル伝達に関する時に、Norrin活性を調整する試薬をスクリーニングし、同定するための物質および方法を開示する。好ましくは、それによって同定された作用物質は、骨リモデリングおよび/または脂質レベルを調整し、Norrin模倣体およびNorrinアゴニストならびにLRP5/Norrin/Frizzled4複合体の他のアゴニストおよび模倣体とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表への参照)
本明細書とともに提出される配列番号1〜28を含む配列表は、全ての目的のために参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Norrin遺伝子もしくはNorrinタンパク質を調節する物質および方法、Norrin模倣体、またはNorrinと相互作用し、それによってLRP5/Norrin/Frizzled4複合体におけるその活性を調整する作用物質に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
NorrinまたはNorrie疾患タンパク質(NDPもしくはNdph)における突然変異は、X連鎖劣性神経症候群であるNorrie疾患(ND)につながる(非特許文献1;および非特許文献2;たとえば、ヒト配列については、NCBI受託番号AAH29901、BC029901、およびCAA46639ならびにハツカネズミ配列については、NCBI受託番号CAA58725、CAA63134、およびX83794)。NDPをコードする遺伝子は、ヒトゲノム上のXpl1.4に位置する。疾患の特徴は、網膜形成異常、失明、および精神遅滞を含む。NDPノックアウトマウスは、ヒトNorrie疾患に似ている眼表現型を有し(非特許文献3)、網膜血管形成における不全を示す。この遺伝子はまた、コーツ病(網膜毛細管拡張症)、X連鎖滲出性硝子体網膜症(EVRX)、および進行した未熟児網膜症(ROP)にも関係づけられる。
【0004】
NDP突然変異はまた、ND症状のいくつかを隠し持つ、X連鎖型の家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)を引き起こし得る。FEVRはまた、Wntシグナル伝達の10種の蛇行している7回膜貫通型受容体の1つをコードするFrizzled4(Fz4)遺伝子における突然変異によっても引き起こされる(非特許文献4)。
【0005】
Wntファミリーは、19種のメンバーから成り、それらは、10種のFrizzled(Fz)タンパク質との高親和性相互作用を示す。異なるWntは、種々のFrizzledタンパク質に対して異なる親和性を有し、異なる経路に従事する可能性がある(非特許文献5)。Wnt標準経路は、Frizzledおよびその共受容体であるリポタンパク質関連受容体タンパク質5または6(LRP5/LRP6)との相互作用を介したベータ−カテニン安定化を伴う。患者およびマウスでは、LRP5における機能喪失型突然変異もまた、骨粗鬆症に加えて血管の眼異常を示し、骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)を起こす(非特許文献6;および非特許文献7)。
【0006】
Norrinは、Wntベータ−カテニン経路を誘発することができる(非特許文献8)。Norrinは、Wntと同様に機能する、なぜなら、両者は、シグナル伝達のために、Fz受容体およびLRP5/LRP6共受容体を必要とし、両者は、ナノモルの親和性で、Fzのシステインリッチドメイン(CRD)に主に結合するからである(非特許文献9;非特許文献10;および非特許文献8)。Norrinは、分泌されるシステインリッチ低分子タンパク質であり、Norrinは、ジスルフィド連結型オリゴマーを形成し、細胞表面および細胞外マトリックスと関連し続ける(非特許文献11)。配列比較およびモデリング研究から、Norrinは、TGF−ベータ(非特許文献12)、フォンウィルブランド因子、およびムチン(非特許文献13)との三次構造類似性を有することが提唱された。Norrin遺伝子は、脳および網膜中で主に発現される(非特許文献14;および非特許文献2)。
【0007】
骨リモデリングに関する疾患を処置するための薬剤候補は、絶えず求められている。ヒト成人骨格は、動的状態にあり、絶え間なく分解され、骨梁骨(海綿骨とも呼ばれる)表面上およびハバース系における破骨細胞および骨芽細胞の協調的な作用により再編成される。骨リモデリングの破壊は、骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、移植誘発性骨粗鬆症、および若年性)、くる病、骨軟化症、腫瘍誘発性骨軟化症、低ホスファターゼ血症、パジェット病、ならびに他のもの等の疾患および状態につながり得る。したがって、骨リモデリングを制御する経路をより十分に解明することおよびそれらのカスケードにおける標的を同定することは、標的を調整する作用物質を開発するのに有用であり、必要とされる。
【非特許文献1】Bergerら、1992年 Nat. Genet. 1号:199〜203頁
【非特許文献2】Chenら、1992年 Nat. Genet. 1号:204〜208頁
【非特許文献3】Rhemら、2002年 J. Neuroscience 22号:4286〜4292頁
【非特許文献4】Robitailleら、2002年 Nat. Genet. 32号:326〜330頁
【非特許文献5】Wuら、2002年 J. Biol. Chem. 277号:41762〜41769頁
【非特許文献6】Gongら、2001年 Cell 207号:513〜523頁
【非特許文献7】Katoら、2002年 J. Cell Biol. 157号:303〜314頁
【非特許文献8】Xuら、2004年 Cell 116号:883〜895頁
【非特許文献9】Hsiehら、1999年 Proc. Nat’l. Acad. Sci. 96号:3546〜3551頁
【非特許文献10】Wuら、2002年 J. Biol. Chem. 277号:41762〜41769頁
【非特許文献11】Perez−Vilarら、1997年 J. Biol. Chem. 272号:33410〜33415頁
【非特許文献12】Meitingerら、1993年 Nat. Genet. 5号:376〜380頁
【非特許文献13】Meindlら、1992年 Nat. Genet. 2号:139〜143頁
【非特許文献14】Bergerら、1992年 Nat. Genet. 1号:199〜203頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書に記載される物質ならびに方法は、LRP5およびLRP6ならびにFrizzled4とのその相互作用を介した、骨リモデリングおよび脂質代謝調整のための、Wnt経路へのNorrinの関与について、より多くの解明を提供し、一般に、NorrinおよびNorrinと相互作用する化合物(たとえばNorrinアゴニスト)を使用した、骨障害の調整および脂質調整に有用な化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。Norrin模倣体およびLRP5/Frizzled4/Norrin複合体の他の模倣体を同定するための方法および物質もまた企図される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様は、骨または脂質を調整する作用物質を同定する方法であって、(a)作用物質の存在下で、LRP5タンパク質または生物学的活性LRP5タンパク質と共に、Frizzled4タンパク質または生物学的活性Frizzled4ポリペプチドを提供するステップおよび(b)上述の作用物質が、Frizzled4および/もしくはLRP5またはFrizzled4もしくはLRP5の生物学的活性ポリペプチドと相互作用する作用物質であり、作用物質の存在下で、骨および/または脂質の少なくとも1つのパラメーターを調整するかどうかを決定するステップを含む方法を対象とする。一態様は、LRP5タンパク質またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片に連結されたFrizzled4タンパク質または生物学的活性Frizzled4ポリペプチド断片を有し、これは、融合タンパク質の形態とすることができる。この方法によりスクリーニングされる作用物質は、Norrin模倣体ならびにNorrinのアゴニストおよびアンタゴニストとすることができる。
【0010】
他の態様は、骨代謝または脂質代謝を調整する作用物質を同定する方法であって、(a)作用物質の存在下で、Norrinタンパク質または生物学的活性Norrinポリペプチド断片ならびにLRP5および/もしくはLRP6タンパク質またはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片に融合されたFrizzled4タンパク質または生物学的活性ポリペプチド断片を提供するステップおよび(b)骨調整および/または脂質調整の少なくとも1つのパラメーターを、骨代謝または脂質代謝を調整する作用物質を同定するためにin vitroでまたはin vivoで測定するステップを含む方法を対象とする。
【0011】
論じられる方法のいずれかについての、骨調整のパラメーターは、骨密度、骨強度、骨梁数、骨の大きさ、もしくは組織結合性またはそれらの任意の組合せのうちの任意の1つまたは複数とすることができる。これらのスクリーニング方法のいずれかにおいて論じられる脂質調整のパラメーターは、HDL、VLDL、コレステロール、トリグリセリド、apoE、またはLDLのレベルの変化を含むことができる。これらの方法における作用物質をスクリーニングする他の態様は、作用物質が、脂質代謝または骨代謝に関連する遺伝子の発現パターンを変更させるかどうかを確かめることである。たとえば、作用物質は、COX−2、Jun、Fos、サイクリンD1、Wnt10B、SFRP1、コネキシン43、eNOS、Wnt10B、サイクリンD1、Frizzled2、およびWISP2のうちの1つまたは複数の発現を変更し、発現が調整される。
【0012】
この方法は、Dkkタンパク質もしくは生物学的活性Dkkポリペプチド断片および/またはKremenタンパク質もしくは生物学的活性Kremenポリペプチド断片ならびに/またはWntタンパク質もしくは生物学的活性Wntポリペプチド断片をさらに含むことができる。
【0013】
他の態様では、方法は、Norrin−Frizzled4活性を調整する作用物質を同定するための方法であって、(a)作用物質、LRP5および/もしくはLRP6またはLRP5および/もしくはLRP6の生物学的活性ポリペプチド断片に融合したまたはLRP5もしくはLRP6のポリペプチド断片を含有するリガンド結合ドメイン(LBD)に融合したNorrinタンパク質またはNorrinの生物学的活性ポリペプチド断片およびFrizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片ならびに
(i)Kremenタンパク質もしくはKremenの生物学的活性ポリペプチド断片および/または
(ii)Dkkタンパク質もしくはDkkの生物学的活性ポリペプチド断片
を提供するステップおよび
(b)作用物質が、Norrin−Frizzled4活性を調整するかどうかを決定するステップを含む方法が企図される。作用物質は、Norrin模倣体、Norrinアゴニスト、Dkkアンタゴニスト、またはKremenアンタゴニストとすることができる。この方法はまた、Frizzled4アゴニストおよびLRP5アゴニストを評価するためのものとすることができる。
【0014】
これらの方法のいくつかについて、タンパク質またはタンパク質の生物学的活性ポリペプチド断片は、PVDFまたはニトロセルロース等の基体上に添加することができる。
【0015】
さらなる態様は、骨調整または脂質調整を調節する作用物質を同定する方法であって、(a)Frizzled4およびLRP5を発現する細胞に作用物質を投与するステップであって、Frizzled4は、Frizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片であり、LRP5は、LRP5タンパク質またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片であるステップ、(b)上述の試験薬の投与が、LRP5−Frizzled4相互作用を調整するかどうかを決定するステップ、および(c)作用物質が、骨パラメーターおよび/または脂質パラメーターを調整するかどうかを決定するステップを含む方法を企図する。この方法の一態様は、細胞が、Norrinを発現せず、細胞は、Norrin模倣体を同定するのに有用であることを企図する。他の態様は、非内在性Frizzled4、LRP5、LRP6、および/またはNorrinを発現する細胞ならびにたとえばNorrinアゴニストを同定するために細胞を使用することを有する。
【0016】
他の態様は、骨調整または脂質調整を調節する作用物質を同定する方法であって、(a)LRP5、Norrin、およびFrizzled4を発現する細胞に試験薬を投与するステップであって、LRP5は、LRP5タンパク質またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片であり、Norrinは、Norrinタンパク質または生物学的活性Norrinポリペプチドであり、Frizzled4は、Frizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片であるステップ、(b)上述の試験薬の投与が、Norrin−Frizzled4相互作用を調整するかどうかを決定するステップ、および(c)試験薬が、骨調整または脂質調整のパラメーターを調整するかどうかを決定するステップを含む方法を企図する。これは、非内在性Norrin、LRP5、および/またはFrizzled4を任意選択で発現する細胞を企図する。あるいは、細胞は、内在性Norrin、LRP5、LRP6、および/またはFrizzled4を発現しなくてもよい。
【0017】
試験した作用物質のいずれも、Norrin模倣体、Dkkアンタゴニスト、またはKremenアンタゴニストならびにFrizzled4アゴニストおよび模倣体、Norrinアゴニスト、ならびにLRP5アゴニストとすることができる。
【0018】
企図される方法または細胞のいずれにおいても、細胞は、脊椎動物細胞とすることができる。脊椎動物細胞は、骨細胞、腎臓細胞、間葉系細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、またはアフリカツメガエル細胞を含むことができるが、これらに限定されない。
【0019】
論じられる方法、キット、細胞/細胞株のいずれにおいても、Dkkは、Dkk1、Dkk2、Dkk3、もしくはDkk4またはDkk1、Dkk2、Dkk3、もしくはDkk4の生物学的活性ポリペプチドとすることができる。同様に、Kremenについては、Kremenが任意の態様において記載される場合、Kremenは、Kremen1もしくはKremen2またはKremen1もしくはKremen2の生物学的活性ポリペプチドとすることができる。Wntもまた、Wnt1〜Wnt19のいずれか(たとえば、Wnt1、Wnt3、Wnt3a、もしくはWnt10b)またはこれらのいずれかの生物学的活性断片とすることができる。
【0020】
方法およびキットのいずれかでの使用のための細胞株は、KHOS/NP細胞、KHOS−240S細胞、KHOS−321H細胞、DSDh細胞、VA−ES−BJ細胞、7F2細胞、U2OS細胞、HOSTE85細胞、ROS細胞、MC3T3−E6細胞、UMR−106細胞、Saos2細胞、MG63細胞、HOB細胞、間葉系幹細胞(たとえばヒト成人間葉系幹細胞)、C3H10T1/2細胞、HEK293A細胞、またはHEK293T細胞を含むが、これらに限定されない。
【0021】
動物もまた、骨代謝および脂質代謝を調整するための試薬のスクリーニングにおける使用のために企図される。動物モデルは、トランスジェニック動物を含む。たとえば、動物は、LRP5またはHBMを発現するトランスジェニック動物とすることができる。あるいは、動物は、ノックアウト動物であってもよく、LRP5、LRP5、Norrin、Dkk、Kremen、Wnt、およびFrizzled4のうちの1つまたは複数がノックアウトされる。あるいは、動物はまた、ノックアウトの組合せおよび遺伝子の導入も企図する。動物は、アフリカツメガエルまたはマウス等の任意の脊椎動物とすることができる。
【0022】
他の実施形態は、Norrin−Frizzled4活性を調整する作用物質を同定するためのキットであって、(a)Frizzled4またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片およびLRP5またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片をコードする核酸で同時形質移入した、Norrinを発現することができない一連の細胞、(b)任意選択で、Frizzled4またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片およびLRP5またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのDkk核酸、(c)任意選択で、Frizzled4もしくはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片およびLRP5もしくはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのならびに/またはFrizzled4もしくはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片、LRP5もしくはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片、およびDkkもしくはDkkの生物学的活性断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのKremen核酸、(d)任意選択で、Frizzled4またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片およびLRP5またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのLRP6核酸、ならびに(e)任意選択で、Frizzled4またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片およびLRP5またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのWnt核酸を含むキットを企図する。
【0023】
企図される他の態様は、天然Norrinを欠き、非天然LRP5および非天然Frizzled4を発現する細胞または細胞株であり、非天然LRP5は、非天然LRP5タンパク質であり、非天然Frizzled4は、非天然Frizzled4タンパク質であり、LRP5は、完全タンパク質またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片であり、Frizzled4は、完全タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片であり、Norrinは、完全タンパク質またはNorrinの生物学的活性ポリペプチド断片である。これらのタンパク質の発現は、一過性または安定性の発現とすることができる。他の態様は、LRP5、LRP6、Frizzled4、Dkk、および/またはKremenの非天然の(非内在性)発現を企図し、これらのいずれも全タンパク質またはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片とすることができる。
【0024】
他の態様は、上記の方法のいずれかにより、単独でまたは適した薬学的に許容し得る賦形剤および/もしくは担体を有する医薬組成物中で同定される作用物質を企図する。作用物質は、脂質障害および/もしくは骨障害を処置するために使用することができるまたはこれらの障害の1つの処置における使用のための医薬を製剤するために使用することができる。
【0025】
前述の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示的で説明的なものであり、請求される本発明のさらなる説明を提供することが意図されることを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
添付の図面は、開示される物質および方法についてのさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、実施形態を示す。
(詳細な説明)
3つの遺伝子、NDP、Frizzled4(Fz4)、およびリポタンパク質関連受容体タンパク質5(LRP5)が網膜の血管新生に関与することが分かったことが興味深かったので、これらの系に関する調査により、それらが分子レベルで相互作用し、NorrinがLRP5−Fz4複合体のリガンドであることを明らかにした。LRP5/6のNorrin媒介性の活性化は、Fz4を必要とし、Fzファミリーの他の5種のメンバー(つまりmFZ3、hFZ5、mFz6、mFz7、およびmFz8)を必要としないことに注目するのは興味をそそるものである。しかしながら、Norrinは、Fz4に対する特異性を有し、Wntに対するいかなる著しい配列相同性も示さない。
【0027】
ヒトおよびマウスにおけるLRP5突然変異は、LRP5およびWntシグナルが骨代謝において果たす中心的な役割を明らかにした(Gongら、2001年 Cell 207号:513〜523頁;Katoら、2002年 J. Cell Biol. 157号:303〜314頁;Boydenら、2002年 N. Engl. J. Med. 346号:1513〜1521頁;およびLittleら、2002年 Am. J. Hum. Genet. 70号:1〜19頁)。G171V(高骨量または「HBM」型)突然変異およびLRP5の第1のプロペラドメインにおける他の同様な突然変異は、野性型LRP5を用いた親和性と比較して、Dikkopf1(Dkk1)タンパク質に対するHBM変異体の親和性の減少をもたらす(Boydenら、2002年 N. Engl. J. Med. 346号;およびAiら、2005年 Mol. Cell. Biol. 25号:4946〜4955頁)。HBM突然変異は、in vitroでのDkk1による阻害の減少およびHBM突然変異体媒介性Wnt−ベータ−カテニンシグナルの活性化につながる。この現象は、HBM型突然変異を有するヒトおよびトランスジェニックマウスにおける高骨量(HBM)表現型にとって重要な、根底にある分子機構であることが推測される(Babijら、2003年 J. Bone Mineral Res. 18号:960〜974頁)。
【0028】
Dkk1は、LRP5/6−Wntシグナルの分泌型アンタゴニストの1つである(Glinkaら、1998年 Nature 391号:357〜362頁;Kawanoら、2003年 J. Cell. Sci. 116号:2627〜2634頁;およびBaficoら、2001年 Nat. Cell Biol. 3号:683〜686頁)。そのうえ、他の種類の1回貫通膜貫通型受容体であるKremen1/2の存在下でのDkk1は、Wntを介して媒介されるLRP5/6−TCFシグナルの阻害を、LRP5−Dkk1−Kremen三元複合体のインターナリゼーションにより増大させる(Maoら、2002年 Nature 417号:664〜667頁)。Kremenは、LRP5/6およびDkk1と細胞表面で三元複合体を形成し、それらのインターナリゼーションまたはエンドサイトーシスを促進する。Kremenは、細胞膜からの、LRP5およびLRP6の迅速なエンドサイトーシスを促進し、それによって、LRP5/6−Wntシグナル伝達をブロックする。本明細書に開示される物質および方法は、所定の細胞型におけるこれらの相互関係物の発現パターンが、Wnt−シグナル伝達を調節するまたは骨芽細胞等の細胞におけるLRP5/6機能に対するさらなる特異性をもたらすことができるといった推測から生じた。特に記載されていない限り、Dkk1について言及されるすべての場合において、他のDkkのいずれかを、単独でまたは組み合わせて代わりに用いてもよいことに留意されたい。
【0029】
Kremen2(Krm2)の4種のスプライス変異体の分析により、LRP5/6のDkk1媒介性阻害を増大させることができる、カルボキシ末端で44個のアミノ酸を欠く変異体が明らかにされた(B. Maoら、「Kremen proteins are Dickkopf Receptors that Regulate Wnt/beta−Catenin Signaling」、2002年 Nature 417号(6889):664〜667頁)。Dkk1増大の最大の効果は、完全長Krm2クローンを用いて確かめられる。Krm2活性は、Dkk1の第2のシステインリッチドメインとのその相互作用により媒介される。Krm2はまた、LRP6−Wntシグナル活性化因子Dkk2をHEK−293A細胞において阻害因子に変換することができる。特に記載されていない限り、Kremen2について言及されるすべての場合において、Kremen1を、単独でまたはKremen2と組み合わせて、代わりに用いてもよいことに留意されたい。
【0030】
本明細書に開示される物質および方法は、Norrin、Frizzled4、LRP5、またはLRP5のHBM変異体、たとえばG171Vの間の機能的相互作用を対象とする。本明細書に記載されるように、Norrinは、U2OS骨細胞において、G171V−LRP5突然変異体のTCF−シグナルを、LRP5を用いて観察されたシグナルに対して適度に増大させる。Norrinはまた、Dkk1および/またはKremen2による、経路の阻害の減少ももたらす。Norrin模倣体およびNorrinアゴニストである試薬を発見するためのスクリーニング剤としてのNorrinの使用のための物質および方法が本明細書に開示される。上記Norrin調整剤およびNorrin模倣体は、骨調整のために有用である可能性がある。Norrin調整因子およびNorrin模倣体は、低分子化学分子、ポリペプチド、ペプチド、siRNA、および免疫グロブリンを含むが、これらに限定されない。
【0031】
1.略語および定義
1.1 略語
以下の略語が明細書において使用される。これらの頭文字および略語は、他の技術において異なる意味を有する可能性があるけれども、それらは、下記に示されるとおりまたは明細書で個別に区別されるとおりである。
ACP5 酸性ホスファターゼ5
Akt−3 プロテインキナーゼB(PKB)またはRAC−PK
AlPASE アルカリ性ホスファターゼ
ALPHA 増幅発光近接ホモジニアスアッセイ
APE アダプター関連タンパク質1
AP1B1 アダプタータンパク質複合体AP−1、ベータ1サブユニット
AXIN アキシン
b.i.d. 1日2回(毎日2回)
BGN 骨特異性バイグリカン
BMC 骨ミネラル含量
BMD 骨ミネラル密度
BMP1 骨形態形成タンパク質1
BMP4 骨形態形成タンパク質4
BMU 骨リモデリングユニット
BSA ウシ血清アルブミン
BTG2 B細胞転座遺伝子2、抗増殖性
CBFB コア結合因子ベータ
CCND1 サイクリンD1
CCND3 サイクリンD3
CCNI サイクリンI
cDNA 相補的DNA
CELSR2 カドヘリンEGF LAG 7回貫通G型受容体2
CFP シアン蛍光タンパク質
CHUK/IKK アルファ保存ヘリックス−ループ−ヘリックス遍在性キナーゼ、IkBキナーゼアルファ
CK1アルファ カゼインキナーゼ1、アルファ1
CKB クレアチンキナーゼ、脳
CNK1 KSR様のコネクターエンハンサー
Col1A1 コラーゲン、1型、アルファ1
Col3A1 コラーゲン、3型、アルファ1
Col6A3 コラーゲン、VI型、アルファ3
Connx43 コネキシン43
COX−2 シクロオキシゲナーゼ−2
CRABP2 細胞内レチノイン酸結合タンパク質II
CRD システインリッチドメイン
CSF1R コロニー刺激因子1受容体
CSPG2 コンドロイチン硫酸プロテオグリカン
CTGF 結合組織成長因子
CTSK カテプシンK
CX3CR1 ケモカイン(C−X3−C)受容体1
サイクリンD1 CCND1もまた参照されたい
DELTEX deltexホモログ2(ショウジョウバエ)、EphB2を参照されたい
Dkk Dikkopf
Dkk1 Dikkopf1
Dkk2 Dikkopf2
Dkk3 Dikkopf3
Dkk4 Dikkopf4
DMSO ジメチルスルホキシド
dsRNA 二本鎖RNA
DVL1 disheveled、dshホモログ(ショウジョウバエ)
DXA 二重X線吸収法
EDTA エチレンジアミンテトラ酢酸
EGTA エチレングリコール−O−O’−ビス(2−アミノ−エチル)−N,N,N’N’−四酢酸
eNOS 興奮性一酸化窒素合成酵素
EPHB2 KSR様のコネクターエンハンサー(rasのショウジョウバエキナーゼサプレッサー)
EPHB6 Eph受容体B6
ERBB3 GRO1癌遺伝子
ERK マイトジェン活性化プロテインキナーゼp44/42(MAPK)としても知られている
EVRX X連鎖滲出性硝子体網膜症
FAP 線維芽細胞活性化タンパク質、アルファ
FBLN1 フィブリン1
FBS ウシ胎児血清
FEVR 家族性滲出性硝子体網膜症
FGF−2 線維芽細胞成長因子2(塩基性)
FGF−7 線維芽細胞成長因子7(ケラチノサイト成長因子)
FOS FBJネズミ骨肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ
FOSL1 Fos様抗原1
FRET 蛍光共鳴エネルギー移動
Frizzled2 Frizzled(ショウジョウバエ)ホモログ2、FZD2とも呼ばれる
Fz Frizzled
Fz4 Frizzled4
FZD2 Frizzled(ショウジョウバエ)ホモログ2
FZD4 Frizzledホモログ4
G171V ヒトLRP5の位置171でのグリシンからバリンへの突然変異
GADD45A 成長停止およびDNA損傷誘発型、アルファ
GADD45B 成長停止およびDNA損傷誘発型45、ベータ
GADD45G 成長停止およびDNA損傷誘発型45、ガンマ
GAS6 成長停止特異的6
GFP 緑色蛍光タンパク質
GJA1 ギャップジャンクション膜チャネルタンパク質アルファ1(コネキシン43としても知られている)
GJB3 ギャップジャンクション膜チャネルタンパク質ベータ3
GSK−3 グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3
GSK−3α グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3、アルファアイソフォーム
GSK−3β グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3、ベータアイソフォーム
HBM 高骨量表現型
HDL 高密度リポタンパク質
HEK ヒト胚性腎臓
HERPUD1 ホモシステイン誘発型、小胞体ストレス誘発型、ユビキチン様ドメインメンバー1
HRT ホルモン補充療法
i.m. 筋肉内
i.v. 静脈内
IDB2 DNA結合の阻害因子2
IDB3 インスリン様成長因子2(ソマトメジンA)
IGF2R インスリン様成長因子2受容体
IGFBP6 インスリン様成長因子結合タンパク質6
iGSK GSK阻害因子
iGSK−3 GSK−3阻害因子
IL−1 インターロイキン−1
IL1R1 インターロイキン−1受容体、1型
IL1RL1インターロイキン−1受容体様1
IL4RA インターロイキン4受容体、アルファ
IL−6 インターロイキン−6
ITGA5 インテグリンアルファ5(フィブロネクチン受容体アルファ)
ITGB5 インテグリン、ベータ
ITGBL1 インテグリン、ベータ様1
JNK c−junアミノキナーゼ経路
JUN v−junトリ肉腫ウイルス17癌遺伝子ホモログ
JUND1 Jun癌原遺伝子関連遺伝子d1
Kremen 眼および鼻を作るKringleコード遺伝子
Krm1 Kremen1
Krm2 Kremen2
LBD LRP5、LRP6、HBMのリガンド結合ドメイン
LDL 低密度リポタンパク質
LDLR 低密度リポタンパク質受容体
LOX リシルオキシダーゼ
LRP5 低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5
LRP6 低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6
LSP1 リンパ球特異的タンパク質1
LUM ルミカン
mAb モノクローナル抗体
MAPK マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p42、44)(ERK)
MAPKAPK2 マイトジェン活性化プロテインキナーゼ活性化プロテインキナーゼ2、MK2とも呼ばれる
MCC 結腸直腸癌での突然変異
MDSC 間葉由来幹細胞
MET met癌原遺伝子(肝細胞成長因子受容体)
MMP−14 マトリックスメタロプロテイナーゼ14
MMP−9 マトリックスメタロプロテイナーゼ9
MSX1 ホメオボックス、msh様1
MYBL1 v−myb骨髄芽球症ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ)様1
MYC v−mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ
MYCS Myc様癌遺伝子、s−mycタンパク質
NCAM1 神経細胞接着分子1
ND Norrie疾患
NDP Norrie疾患タンパク質(またNdph)
NFATC1 活性化T細胞の核因子、細胞質内1
NFKB1 B細胞におけるカッパ軽鎖遺伝子エンハンサーの核因子1、p105
非TG 非トランスジェニック
NOS3 一酸化窒素合成酵素3、eNOSとしても知られている
NR4A1 核受容体サブファミリー4、A群、メンバー1
OGN オステオグリシン
OPG オステオプロテゲリン
OPPG 骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群
OSMR オンコスタチンM受容体
PCOLCE プロコラーゲンc−プロテイナーゼエンハンサータンパク質
PDGFA M29464を含むクラスター:血小板由来成長因子アルファ
PDGFRA 血小板由来成長因子受容体アルファポリペプチド
PKA プロテインキナーゼA
PKC プロテインキナーゼC
PLAT 組織型プラスミノーゲン活性化因子、t−PA
PNA ペプチド核酸
PRDC DACおよびケルベロスに関するタンパク質
PTGIS プロスタグランジン合成酵素
PTGS 転写後遺伝子サイレンシング
PTGS1 プロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素1、COX−1とも呼ばれる
PTGS2 プロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素2(プロスタグランジンG/H合成酵素もしくはシクロオキシゲナーゼ2)またはCOX−2
PTH 副甲状腺ホルモン
RAMP3 受容体(カルシトニン)活性修飾タンパク質3
RANK NF−kBの受容体活性化因子
RANKL NF−kBの受容体活性化因子リガンド
RLU 相対的ルシフェラーゼユニット
RNAi RNA干渉
ROP 未熟児網膜症
RUNX1 runt関連転写因子1
RUNX2/CBFA1 runt関連転写因子2
S100A10 カルパクチンに類似するカルシウム結合タンパク質
SDC1 シンデカン1
SDF1 ストローマ由来因子1
SERM 選択的エストロゲン受容体調整因子
SERPINE1 セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害因子、クレードE(ネキシン、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1型)、メンバー1
SFRP1 分泌型frizzled関連タンパク質1
SFRP4 分泌型frizzled関連タンパク質4
shRNA 低分子ヘアピン型RNA
siRNA 低分子干渉RNA
SPARC sparc/オステオネクチン
SPARCL1 SPARC様1(mast9、hevin)
SPP1 分泌型リンタンパク質1
SPR 表面プラズモン共鳴
STAT1 シグナルトランスデューサー転写活性化因子1
STAT3 RIKEN cDNA 1110034C02遺伝子
TANK TRAFファミリーメンバー関連Nf−カッパB活性化因子
TCF T細胞因子
TG トランスジェニック
TGFB1 形質転換成長因子、ベータ1
TGFBR2 形質転換成長因子、ベータ受容体II
TGF−β 腫瘍成長因子ベータ
THBD トロンボモジュリン
THBS1 トロンボスポンジン1
TIEG TGFB誘発型初期遺伝子
TIMP1 組織メタロプロテイナーゼ阻害因子
TIMP2 組織メタロプロテイナーゼ阻害因子2
TIMP3 組織メタロプロテイナーゼ阻害因子3
TNF 腫瘍壊死因子
TNFRSF10B 腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー10b
TNFRSP11B 腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー11b(オステオプロテゲリン)
TNFSF11 腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー11(RANKLを参照されたい)
TOB1 ErbB−2.1のトランスデューサー
TRAF3 TNF受容体関連因子3
TUNEL 末端デオキシヌクレオチド転移酵素dUTPニックエンド標識
UNK_D83402 プロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)合成酵素
VCAM1 血管細胞接着分子1
VEH 媒体
VLDL 超低密度リポタンパク質
WIF Wnt抑制因子
WISP1 WNT1誘発型経路タンパク質1
WISP2 WNT1誘発型シグナル伝達経路タンパク質2
Wnt3A wingless型MMTV組込み組織ファミリーメンバー
Wnt wingless型MMTV組込み部位ファミリー(たとえばWnt1〜Wnt19)
Wnt10B wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー10B
Wnt6 wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー6
YFP 黄色蛍光タンパク質
1.2 定義
この詳細な記載に従って、以下の略語および定義が適用される。本明細書に使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に規定していない限り、複数形の指示物を含むことに留意されたい。したがって、たとえば、「模倣体」に対する言及は複数の上記模倣体を含み、「投薬量」に対する言及は、当業者に知られている1つまたは複数の投薬量およびその均等物に対する言及を含む、等である。
【0032】
特に定義されていない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者により共通して理解される意味と同じ意味を有する。以下の用語は下記に提供される。本明細書に言及される遺伝子は、言及される受託番号および指定されていない他の配列を含むことを意味する。
【0033】
「動物」は、あらゆる脊椎動物を意味する。「動物」は「哺乳動物」を含む。好ましい哺乳動物は、家畜動物(たとえばウシ、バッファロー、ウマ、ヒツジ、ブタ、およびヤギ等の有蹄動物)ならびにげっ歯動物(たとえばマウス、ハムスター、ラット、およびモルモット)、イヌ科の動物、ネコ科の動物、霊長動物(たとえば、チンパンジー、オランウータン、ヒト)、オオカミ、ラクダ科の動物、ならびにシカ科の動物を含む。他の脊椎動物は、トリ(たとえば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、家禽)、両生動物(たとえばアフリカツメガエル)、および魚類(魚)を含む。
【0034】
「Norrin」は、Norrinのすべての脊椎動物形態ならびにすべてのそのポリペプチド形態および核酸形態を含むことを意味する。「Norrin」はまた、ND、Norrie疾患タンパク質、Norrin前駆物質、NDP、Ndp、およびNorrie疾患タンパク質相同体(Ndph)とも称される。Norrin変異体もまた企図される。
【0035】
「Norrin活性」は、Norrin活性がWntシグナル伝達経路ならびにFrizzled4およびLRP5/6とのその相互作用を伴う時のNorrin活性であろう。これは、Frizzled4(Fz4)とのNorrinの相互作用およびLRP5活性のNorrinによる増大を含むであろう。Norrinが相互作用する唯一のFrizzledタンパク質は、Frizzled4である。しかしながら、本明細書に論じられるWntは、Wntシグナル伝達系におけるNorrin−Frizzled4ならびにLRP5およびLRP6の相互作用を調整するであろう任意の分子の特異性を比較するためのアッセイ系において使用することができる。したがって、「Norrin調整剤」は、Norrin活性を調整する作用物質であり、Norrin活性は、Wntシグナル伝達の一部である。好ましいNorrin活性は、骨リモデリングおよび/または脂質調整の調節である。脂質調整に関しては、米国特許出願第09/578,900号を参照されたい。米国特許出願第09/578,900号の内容は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。Norrin調整剤は、骨活性および/または脂質レベルのアゴニストおよびアンタゴニストを含む。Norrinアゴニストは、たとえば、投与されると、被検者における骨成長を増大させるであろう。
【0036】
「Dkk」は、Dkk1、Dkk2、Dkk3、およびDkk4のすべての脊椎動物形態ならびにすべての核酸形態およびポリペプチド形態を含むことが意味される。「Dkk1」はまた、Dickkopf−1、Dickkopf関連タンパク質−1前駆物質、Dkk−1、DKK−1、hDkk−1(Dkk1のヒト形態)、AK、およびUNQ492/PRO1008とも称される。「Dkk2」もまた、Dickkopf−2、Dickkopf関連タンパク質−2前駆物質、Dkk−2、DKK−2、hDkk−2(Dkk2のヒト形態)、およびUNQ682/PRO1316を含むことが意味される。「Dkk3」もまた、Dickkopf−3、Dickkopf関連タンパク質−3前駆物質、Dkk−3、hDkk−3(Dkk3のヒト形態)、REIC、およびUNQ258/PRO295を含むことが意味される。「Dkk4」は、Dickkopf−4 Dickkopf関連タンパク質−4前駆物質、Dkk−4、DKK−4、およびhDkk−4(Dkk4のヒト形態)を含むことが意味される。Dkk変異体もまた企図される。Dkk調整剤は、DkkアンタゴニストおよびDkkアゴニストを含むであろう。
【0037】
「Kremen」により、Kremen1およびKremen2のすべての脊椎動物形態ならびにすべての核酸形態およびポリペプチド形態を含むことが意味される。「Kremen1」はまた、Dickkopf受容体、FLJ31863、KREMEN、眼および鼻を特徴づけるKringle含有タンパク質、Kringle含有膜貫通型タンパク質1、ならびにKRM1とも称される。「Kremen2」はまた、Dickkopf受容体2、Kremenタンパク質2前駆物質、眼および鼻を特徴づけるKringle含有タンパク質、KRM2、MGC10791、MGC16709、ならびにthe Mammalian Gene Collection (MGC) Program Team、2002年 「Generation and initial analysis of more than 15,000 full length human and mouse cDNA sequences」、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 99号(26):16899〜16903頁に関連するKremen2形態とも称される。Kremen変異体もまた企図される。Kremen調整剤は、KremenアンタゴニストおよびKremenアゴニストを含むであろう。
【0038】
「LRP5」または「低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5」は、LRP5のすべての脊椎動物の核酸形態およびポリペプチド形態を含むことを意味する。LRP5および関係するホモログについての他の名称は、BMND1、Zmax1、HGNC:8152、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5前駆物質、LR3、LRP7、OPPG、OPS、およびVBCH2を含む。「LRP5」はまた、ショウジョウバエにおける「arr」としても知られており、以下のさらなる別名を有する:BEST:CK00539、CK00539、1(2)k08131、LDLR様、LRP、LRP5/6、およびLRP6。たとえば、LRP5の1つの「HBM」変異体または「高骨量」変異体は、ヒトポリペプチド配列における位置171でのグリシンからバリンへの、ポリペプチド形態における単一のアミノ酸変化を有する。マウス配列の位置170での類似する突然変異がある。他の脊椎動物におけるさらなるホモログは、三次元プロペラドメインを考慮すると、他の種において決定することができる。HBMの使用は、他の脊椎動物種からのG171V変異体およびそのホモログの包含を企図する。あるHBM変異体は、高骨量表現型をもたらす変異体であり、G171V変化以外の、LRP5における突然変異に起因する。Zmax1形態およびHBM形態については、米国特許第6,770,461号を参照されたい。この特許は、すべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。したがって、LRP5の野性型変異体またはホモログの例は、Zmax1である。LRP5が言及される場合、野性型変異体またはホモログを含むLRP5のすべての形態が企図される。LRP5の変異体およびHBMもまた企図される。LRP5調整剤は、LRP5のアゴニストおよびアンタゴニストを含むであろう。LRP5模倣体もまた企図される。
【0039】
「LRP6」または「低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6」は、LRP6のすべての脊椎動物の核酸形態およびポリペプチド形態を含むことを意味する。LRP6はまた、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6前駆物質とも称される。LRP6の変異体もまた企図される。LRP6が言及される場合、野性型変異体またはホモログを含むLRP6のすべての形態もまた企図される。Frizzled4/LRP5複合体が論じられる場合、複合体はまた、Frizzled4/LRP6およびFrizzled4/LRP5/LRP6を含むことも意味する。LRP6調整剤は、LRP6アゴニストおよびLRP6アンタゴニストを含む。LRP6模倣体もまた、骨成長を増大させる様式での、Wnt経路の調整における使用のために本明細書において企図される。
【0040】
「Wnt」は、任意のWnt(wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー)タンパク質およびWnt1〜Wnt19の核酸を含む核酸を含むことを意味する。例示的なWnt形態は、Wnt1(wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー1、INT1、およびWnt−1癌原遺伝子タンパク質前駆物質としても知られている)、Wnt3(wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー3、INT4、およびWnt−3癌原遺伝子タンパク質前駆物質としても知られている)、Wnt3a(wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー3AおよびWnt−3aタンパク質前駆物質としても知られている)、ならびにWnt10b(wingless型MMTV組込み部位ファミリーメンバー10B、Wnt−10bタンパク質前駆物質、WNT−12、Wnt−12、およびWNT−12としても知られている)を含む。Wnt形態のいずれかの変異体もまた企図される。Wnt調整剤は、WntアゴニストおよびWntアンタゴニストを含む。
【0041】
「変異体」は、タンパク質をコードする核酸の形態を含むことを意味し、タンパク質は、Wntカスケードにおいて生物活性を有し、骨代謝および脂質代謝の調整に関与する。これは、G171V変異体のタンパク質を発現するヒトにおいて高骨量をもたらすG171V変異体等の、LRP5の増強した変異体を含むことができる。
【0042】
「生物学的活性断片」、「ポリペプチド断片」、および「生物学的活性ポリペプチド」は、LRP5、LRP6、HBM、Kremen1、Kremen2、任意のDkk、任意のWnt、およびNorrinの生物学的活性断片を意味し、上記活性は、Wnt経路、好ましくは骨発達、骨調整、および/または脂質の代謝に関するWnt経路を調整する。これらは、Wntシグナル伝達に関与する完全タンパク質のドメインであり、それによって、Wnt経路は、脂質の調整および/または骨発達を誘発した。たとえば、LRP5およびLRP6の生物学的活性ポリペプチドは、それらのタンパク質の細胞外部分(たとえばヒトLRP5(GenBank受託番号NP_002326)、Zmax1、またはHBMのアミノ酸1〜1376)とすることができる。さらに、1615アミノ酸長であるヒトLRP5については、生物活性を有する他のドメインは、膜貫通型ドメイン(アミノ酸1385〜1407)、細胞質ドメイン(アミノ酸1408〜1615)、および細胞外ドメイン(アミノ酸1〜1384またはシグナルペプチドの最初の19個のアミノ酸が除去される場合、20〜1384)を含むことができる。1613アミノ酸長であるヒトLRP6については、以下の類似性のドメインを有するであろう:細胞外ドメイン(アミノ酸1〜1370またはシグナルペプチドの最初の19個のアミノ酸が除去される場合、20〜1370)、膜貫通型ドメイン(アミノ酸1371〜1393)、および細胞質ドメイン(アミノ酸1394〜1613)。Frizzled4の細胞外システインリッチドメイン(CRD)、すなわち、アミノ酸36〜165(受託番号IPR000024;GenBank受託番号NP_036325;Xuら、2004年 Cell 116号:883〜895頁)は、Norrinと相互作用することが示され、したがって、Frizzled4の生物学的活性ポリペプチドはCRDを含むことができる。Nonrinの生物学的活性ポリペプチドは、NorrinのCRDのドメイン、たとえばアミノ酸15〜150を含むことができる。他の実施例では、Dkkタンパク質がKremen1またはKremen2に結合するために、全細胞外ドメイン、たとえばヒトKremen2(GenBank受託番号BAC00872)のアミノ酸1〜362が必要とされることが報告された。したがって、Kremen1およびKremen2の生物学的活性部分は、少なくとも細胞外ドメインおよびそれよりも長いその配列を含有するであろう。Dkk1については、たとえば、生物学的活性ポリペプチドは、少なくともC−末端システインリッチドメイン(ヒトDkk1のアミノ酸183〜266;GenBank受託番号AAQ89364)を含有するであろう。このC−末端システインリッチドメインは、Kremen2に対するLRP5およびLRP6の結合に関与することが知られている。したがって、Dkkタンパク質の任意の生物学的活性ポリペプチドについては、ポリペプチドは、各Dkkの少なくともシステインリッチドメインを含有することができる。しかしながら、他の実施例は、Dkkタンパク質のシステインリッチドメインならびにたとえばDkk1では、Dkk1のシステインリッチドメインのN末端側および/またはC末端側の両方に対する配列を含有するポリペプチドを含む。類似する配列が他のDkkについて企図されるであろう。上記生物学的活性断片はまた、カルボキシ末端もしくはアミノ末端のいずれかまたはタンパク質を形成するポリペプチド内で1つまたは複数のアミノ酸がないが、完全長タンパク質と同じ活性を有する完全タンパク質を含むこともでき、上記生物学的活性ポリペプチド断片は、完全長ポリペプチドにより誘発される活性と比較した場合に、ブロッキング阻害因子として作用しない。
【0043】
「脂質パラメーター」は、これに限定されないが、試薬に対する暴露に基づく、脂質濃度の変化を分析するためにin vitroまたはin vivoで測定されたパラメーターを含むことを意味する。脂質パラメーターは、apoE、HDL、LDL、VLDL、トリグリセリド、コレステロール、脂肪細胞の数、脂肪細胞遺伝子発現における変化、またはこれらのパラメーターの組合せの測定を含むことができる。脂質パラメーターはまた、たとえばHDL:VLDLの比を含むことを意味する。in vivoでの変化を研究する場合、試験試薬の投与による脂質レベルの調整を評価するために、空腹時の脂質プロファイル(総コレステロール、トリグリセリド、LDL、およびHDL)等の脂質プロファイルを研究することができる。
【0044】
Norrinにより媒介される可能性のある「脂質障害」、「脂質疾患」、および「脂質状態」は、これらに限定されないが、家族性リポタンパク質リパーゼ欠損症、家族性アポタンパク質CII欠損症、家族性3型高リポタンパク血症、家族性高コレステロール血症、家族性高トリグリセリド血症、多種リポタンパク質型高脂血症、透析および/または糖尿病による脂質レベルの上昇、ならびに知られていない病因についての脂質レベルの上昇を含むことが意味される。
【0045】
「骨発達」は、一般に、長い間にわたる骨の変化に関与する任意のプロセスについて言及するものであり、たとえば、正常な発達、疾患状態の間の起こる変化、および老齢化またはホルモンパターンにおける変化の間に起こる変化を含む。これは、構造変化および成長率、吸収率、骨修復率等の動的な率の変化について言及するものであってもよい。「骨発達障害」は、骨発達における任意の障害について特に言及するものであり、たとえば、疾患状態の間に起こる変化および老齢化の間に起こる変化を含む。骨発達は、性質上、進行性または周期性のものであってもよい。発達の間に変化する可能性のある、骨の態様は、たとえば、鉱化作用、特異的解剖学的特色の形成、および種々の細胞型の相対数または絶対数を含む。発達に関係づけられない可能性のある、企図される他の骨障害は、骨の、加齢に関係した損失、骨折(たとえば、股関節部骨折、コリース骨折、椎骨圧迫骨折)、軟骨異栄養症、薬剤誘発性障害(たとえば、グルココルチコイドまたはヘパリンの投与による骨粗鬆症および水酸化アルミニウム、抗痙攣薬、またはグルテチミドの投与による骨軟化症)、高骨代謝回転、高カルシウム血症、骨化過剰症、骨形成不全症、骨軟化症、骨髄炎、骨粗鬆症、パジェット病、骨関節炎、ならびにくる病を含むが、これらに限定されない。
【0046】
「骨調整」または「骨の形成の調整」は、当業者により十分に理解されるように、たとえば、数ある中で破骨細胞活性および骨芽細胞活性による骨吸収および付着成長による骨成長を含む骨リモデリングに関与する生理的なプロセスのいずれかに影響を及ぼす能力について言及するものであり、本明細書に使用される骨の形成および骨発達のいくつかまたはすべてを含んでいてもよい。
【0047】
骨は、破骨細胞による古いまたは不必要な骨の更新および骨芽細胞による新しい骨の再建を介して、絶え間なくそれ自体を適応させ、更新している動的組織である。これらのプロセスの間の共役の性質は、成長の間の骨のモデリングならびに機械的な使用の日々の必要性を満たすためのリモデリングおよび修復を介した成人骨格の完全性の維持の両方を担う。骨吸収および形成の間のバランスが共役しないことに起因する多くの疾患がある。老齢化と共に、骨代謝回転が、緩やかに「生理学的に」アンバランスとなり、骨の進行性の損失をもたらす、エストロゲン支援の、閉経期での損失により、女性において特に悪化する。骨ミネラル密度が母集団基準より下に下がると、骨脆弱性および特発性骨折に対する感受性の増加が結果として起こる。失われる骨の10パーセントごとに、骨折の危険性が2倍になる。脊椎または近位大腿骨における骨ミネラル密度(BMD)が2.5標準偏差以上、正常な最大骨量を下回る個人は、骨粗鬆症と分類される。しかしながら、BMDが1〜2.5の標準偏差の間で基準を下回る骨減少性の個人もまた危険な状態にある。
【0048】
骨は、数種の異なる形態のX線吸収法により測定される。機器はすべて、骨の無機物含量または骨ミネラル含量を測定する。標準的なDXA測定により、面密度測定値である値が与えられ、密度(質量/単位体積)の古典的な定義による真密度測定値は与えられない。それにもかかわらず、これは、骨粗鬆症を診断するために臨床的に使用される測定の種類となっている。しかしながら、BMDが骨強度に対する主要な寄与因子である一方、40%もの骨強度が、以下を含むが、これらに限定されない他の因子から生じる:(1)骨の大きさ(つまり、密度が低くても、直径が大きければ組織レベルで剛性を増加させる);(2)骨梁の構造の結合性;(3)リモデリングのレベル(リモデリングの場所はひずみが局所的に集中している);ならびに(4)骨の物質自体の本質的な強度、これは、言い換えると荷重履歴の(つまり蓄積された疲労損傷を介した)関数である、およびコラーゲン架橋の度合いおよび鉱化作用のレベル。多数の骨外性の影響(転倒パターン、軟部組織軟質物質、および中枢神経系反射応答性等を含むが、これらに限定されない)もまた役割を演ずるように、これらの強度因子/脆弱性因子のすべてが骨粗鬆症性骨折においていくつかの役割を演ずるという十分な証拠がある。
【0049】
さらなる分析機器を、骨のこれらの特色を扱うために使用することができる。たとえば、pQCTは、大きさおよび密度について、個々の骨梁区画および皮質区画の測定を可能にする。μCT(マイクロCT)は、骨梁結合性等の構成的な特色についての定量的な情報を提供する。μCTにより真の骨密度測定値もまた与えられる。これらの手法を用いると、重要な非BMDパラメーターを、疾患の度合いおよび処置の効力を診断するために測定することができる。骨粗鬆症のための現在の処置は、骨吸収を予防するまたは遅らせるための薬剤の能力に基づくものである。より新しい再吸収阻害薬が、骨粗鬆症の療法において有用であることが証明されているけれども、それらは、上述の骨量パラメーターおよび/または骨質パラメーターを増加させることとなる処置を開発するためのより最終的な難題に対する短期的な解決策と見なされている。したがって、骨調整は、pDXA X線方法による骨ミネラル密度(BMD)および骨ミネラル含量(BMC)、X線により測定される骨の大きさ、厚さ、または体積、たとえばカルセイン標識により測定される骨の形成率、全体としての密度、骨梁密度、および骨幹中央の密度(pQCT方法および/またはμCT方法により測定される)、結合性および他の組織学的パラメーター(μCT方法により測定される)、機械的な曲げ強度および圧縮強度(好ましくは大腿骨および椎骨においてそれぞれ測定される)等のパラメーターの測定により評価されてもよい。したがって、測定可能なパラメーターは、骨密度、骨強度、骨梁数、骨の大きさ、および骨組織結合性を含むが、これらに限定されない。これらの測定の性質により、熟練の開業医が評価するように、それぞれ、所定の状況に対して多かれ少なかれ適切であるとしてよい。さらに、骨折のない病歴等のパラメーターおよび方法論、骨の形状、骨の形態、結合性、正常な組織構造、骨折修復率、ならびに他の骨質パラメーターが、当技術分野で知られており、使用されている。最も好ましくは、骨質は、上記の測定が適切な場合、椎骨の圧縮強度により評価されてもよい。骨調整はまた、種々のパラメーターにおける変化率により評価されてもよい。最も好ましくは、骨調整は、1回を超える年齢で評価される。化合物は、骨密度の調整を決定するために本明細書に列挙されるパラメーターのうちの任意の1つまたは複数に関して評価することができる。
【0050】
「正常な骨密度」は、HBM関連性研究という状況でZスコアが0から2標準偏差内の骨密度について言及するものである。一般的な状況では、正常な骨密度パラメーターの範囲は、ルーチン的な統計的方法により決定される。正常なパラメーターは、年齢および性別の正規化パラメーターの約1または2標準偏差、好ましくは約2標準偏差以内である。有意味度の統計的尺度は、関連する測定値が平均値と著しく異なる可能性を表すことができるP値である。有意なP値は、P<0.05、0.01、0.005、および0.001、好ましくは少なくともP<0.01である。
【0051】
用語「力」、「荷重」、「応力」、および「ひずみ」は、区別なく本明細書で使用され、力の原理に関するものであり、力は、力学において、体の位置を維持するもしくは変更させるまたは体をねじる傾向がある任意の作用であり、この用語は、本文書中で荷重と区別なく使用される。単位面積当たりの尺度としての力は、「応力」として定義され、また「機械的応力」としても本明細書で言及され、力(荷重)がどのようにかかるかに依存して、圧縮、引っ張り、または剪断と分類することができる。特に、物質がより短くなるように荷重がかけられた場合に、圧縮応力は発生するのに対して、物質が引き伸ばされた場合に、引張応力は発生する。物質の一領域が隣接した領域に対して滑る場合に、剪断応力は発生する。応力の結果は、変形として定義され、相対的な変形または長さにおける変化の割合は「ひずみ」と名づけられる。たとえば、物質が、その原長の101%まで引き伸ばされた場合、物質は、0.01または1%のひずみを有する。ひずみは単位を有していないので、0.01のひずみが1%の変形と等しい相対的な変形としてまたは10,000マイクロひずみが0.01のひずみもしくは1%の変形と等しいマイクロひずみによって報告される(Turnerら、1993年 Bone、14号:595〜608頁)。
【0052】
「試験薬」および「試験試薬」は、低分子化合物、組成物、ペプチド、模倣体、ポリペプチド、siRNA、および免疫グロブリンを含むことを意味する。組成物は、2つ以上の活性化合物の組合せを含み、活性化合物のうちの1つまたは複数は、Wnt経路(カスケード)調整因子である。
【0053】
「免疫グロブリン」は、抗体および抗体断片を含むことを意味する。本明細書に使用されるように、用語「抗体」は、完全でそのままの抗体、二重特異性抗体、ならびにFab断片、Fab’断片、およびF(ab)断片等の抗体断片について言及することを意味する。完全な抗体は、ネズミモノクローナル抗体等のモノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長動物化抗体、およびヒト抗体を含む。抗体および抗体の遺伝子的に操作されたまたは酵素的に産生された部分の産生ならびに上記分子をコードする遺伝子配列の構築は、よく知られており、たとえば、Harlowら、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y. (1988年);Harlowら、USING ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL、(Cold Spring Harbor Press、New York、1998年);およびBreitlingら、RECOMBINANT ANTIBODIES (Wiley−Spektrum、1999年)に記載され、これらは、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。免疫グロブリンはまた、scFv等の断片も含む。
【0054】
「免疫学的に活性の」は、抗原を認識して、それに結合する任意の免疫グロブリンタンパク質またはその断片を意味する。好ましくは、免疫学的に活性のタンパク質またはその断片は、それが結合する抗原を調整する。たとえば、それがNorrinまたはNorrinのリガンドに結合する場合、免疫学的に活性のタンパク質またはその断片は、Norrin活性またはNorrinリガンドの活性を調整するであろう。
【0055】
「一本鎖Fv」(「scFv」)は、ポリペプチドリンカーにより互いに共有結合された可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)のみから成る組換え抗体断片である。VまたはVのいずれかは、NH末端ドメインであってもよい。2つの可変ドメインが深刻な立体障害を伴わず架橋される限り、ポリペプチドリンカーは可変の長さおよび組成であってもよい。典型的に、リンカーは、主として、溶解性のために点在したいくつかのグルタミン酸残基またはリシン残基を有する、ある長さのグリシン残基およびセリン残基から構成される。
【0056】
「二重特異性抗体」は、二量体のscFvである。二重特異性抗体の成分は、ほとんどのscFvよりも短いペプチドリンカーを典型的に有し、それらは、二量体として会合することに対する選好を示す。
【0057】
「Fv」断片は、非共有結合の相互作用により共に保持された1つのVおよび1つのVドメインから成る抗体断片である。用語「dsFv」は、V−Vペアを安定化するための、操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvについて言及するために本明細書で使用される。
【0058】
「F(ab’)」断片は、pH4.0〜4.5での、酵素ペプシンを用いた消化により免疫グロブリン(典型的にIgG)から得られた抗体断片と本質的に等価な抗体断片である。断片はまた、組換えで産生されてもよい。
【0059】
「Fab」断片は、F(ab’)断片における2本の重鎖片をつなぐ1つまたは複数のジスルフィド架橋の還元により得られる抗体断片と本質的に等価な抗体断片である。Fab’断片もまた組換えで産生されてもよい。
【0060】
用語「タンパク質捕捉剤」は、タンパク質をそれ自体に結合することができる分子または多分子複合体を意味する。タンパク質捕捉剤は、実質的に特異的な様式でそれらの結合パートナーに好ましくは結合する。約10−6未満の解離定数(K)を有するタンパク質捕捉剤が好ましい(たとえば10−7、10−8、10−9、10−10)。抗体または抗体断片は、タンパク質捕捉剤としてきわめて適している。抗原は抗体に結合することができるので、抗原もまた、タンパク質捕捉剤として働いてもよい。タンパク質リガンドに結合する受容体は、可能性として考えられるタンパク質捕捉剤の他の例である。タンパク質捕捉剤は、非共有結合の相互作用を介してそれらの結合パートナーと相互作用するのみの作用物質に限定されないことが理解される。タンパク質捕捉剤はまた、任意選択で、それらが結合するタンパク質に対して共有結合するようになってもよい。たとえば、タンパク質捕捉剤は、結合の後でその結合パートナーと光架橋結合されてもよい。
【0061】
用語「結合パートナー」は、好ましくは実質的に特異的な様式で、特定のタンパク質捕捉剤が結合するタンパク質を意味する。いくつかの場合では、結合パートナーは、タンパク質捕捉剤であるタンパク質がin vivoで通常結合するタンパク質であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、結合パートナーは、タンパク質捕捉剤が選択される(in vitroもしくはin vivoでの選択を介して)または産生される(抗体の場合でのように)タンパク質またはペプチドであってもよい。結合パートナーは、1つを超えるタンパク質捕捉剤により共有されてもよい。たとえば、様々なポリクローナル抗体が結合する結合パートナーは、多くの異なるエピトープを持っていてもよい。1つのタンパク質捕捉剤はまた、多数の結合パートナーに結合してもよい(たとえば、結合パートナーが同じエピトープを共有する場合)。
【0062】
「タンパク質結合に適した条件」は、溶液中での、タンパク質およびその結合パートナーの間に起こる結合を考慮に入れる条件(塩濃度、pH、界面活性剤、タンパク質濃度、温度等に関する)を意味する。好ましくは、条件は、著しい量の非特異的タンパク質の結合が起こるほど厳しくないものではない。
【0063】
「アレイ」は、基体上にあるパターンで配置された実体である。パターンは、二次元パターンであることが多いけれども、パターンはまた、アレイ基体に対する物質のよりいっそうの適用のために三次元パターンであってもよい。
【0064】
用語「基体」は、本発明のアレイの大量で、基礎となる、中心的な物質について言及するものである。基体は、核酸、抗体、免疫グロブリン、および他の化合物が添加される物質である。
【0065】
「トランスジェニック動物」は、その生殖細胞系中に、cDNA技術により導入された遺伝子または核酸を収容する動物を意味する。これは、たとえば、げっ歯動物中へのヒト遺伝子の導入またはマウスにおけるマウス遺伝子の導入とすることができる。この用語は、ノックアウト動物およびノックイン動物ならびに組合せを含むことができ、たとえば、動物は、その野性型遺伝子がノックアウトされ、次いで交換される。交換される遺伝子は、天然野性型遺伝子、ヒト遺伝子等の他の動物からの同族遺伝子、またはLRP5等の変異体とすることができる。導入される遺伝子はまた、誘発型プロモーターの制御下とすることができる。HBM変異体cDNAは、天然変異体または非天然変異体とすることができる。たとえば、G171VのヒトHBM変異体は、マウス中に導入することができる。あるいは、G171Vに対するマウス対応物もまた、マウス中に導入し、天然HBM変異体を発現するトランスジェニックHBMマウスを得ることができる。トランスジェニック動物は、トランスジェニックヒトを含むことを意味しないが、非ヒト霊長動物および他の動物を含むことができる。トランスジェニック動物は、ノックアウトされたまたは導入された、任意の1つまたは複数のDkk、Norrin、LRP5、LRP6、Kremen、Wnt、またはFrizzled4を有することができる。トランスジェニック動物は、非ヒト動物であることが企図されるが、非ヒト霊長動物を含むことができる。
【0066】
「LRP5トランスジェニック動物」は、LRP5の天然形態およびcDNA形態の両方をまたは動物のLRP5の天然形態が除去されているもしくは機能できない(ノックアウトされている)場合、LRP5のcDNA形態のみを発現する動物を含むことを意味する。LRP5のcDNA形態は、誘発型要素下としてもよい。動物は、天然遺伝子がノックアウトされ、天然または非天然LRP5が導入されたまたはノックインされた動物とすることができる。これらのノックイン動物は、遺伝子を、好ましくは誘発型制御の下でさらに有することができる。
【0067】
「HBMトランスジェニック動物」は、天然LRP5が存在するまたはノックアウトされており、HBM変異体をコードするcDNAが存在する動物を意味する。
【0068】
「有効量」または「用量有効量」または「治療的有効量」は、骨パラメーターおよび/または脂質パラメーターを調整するのに十分なNorrinの生物活性を調整する作用物質の量を意味する。
【0069】
用語「認識し、結合する」は、アンチセンスヌクレオチド、siRNA(低分子阻害RNA)、またはshRNA(低分子ヘアピン型RNA)の、標的配列との相互作用を定義するために使用される場合、特定のアンチセンス配列、siRNA配列、またはshRNA配列が、標的配列に対して実質的に相補的であり、したがってポリペプチドをコードするmRNAの部分に特異的に結合することとなることを意味する。そのため、典型的に、配列は、mRNA標的配列に対してきわめて相補的であり、せいぜい1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の塩基ミスマッチを配列にわたりを有することとなる。多くの場合では、配列は正確にマッチする、つまり、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する配列に対して完全に相補的であり、したがって、相補的な範囲に沿ってミスマッチが0であることが望ましい可能性がある。きわめて相補的な配列は、典型的に、mRNAの標的配列領域に対してかなり特異的に結合し、したがって、ポリペプチド産物への標的mRNA配列の翻訳を低下させることおよび/またはさらに阻害することにおいてきわめて効果的となる。
【0070】
実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列は、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する、対応するmRNA標的配列に対して約80パーセントを超えて相補的(または「%同一性」)となり、より好ましくは、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する、対応するmRNA標的配列に対して約85パーセントを超えて相補的となる。ある種の態様では、上記のように、本発明の実施での使用のためのさらに実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列を有することが望ましいと考えられ、そして上記の場合では、オリゴヌクレオチド配列は、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する、対応するmRNAの標的配列に対して約90パーセントを超えて相補的となり、そしてある種の実施形態では、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する、対応するmRNA標的配列に対して約95パーセントを超えて相補的となってもよく、設計されたオリゴヌクレオチドが特異的に結合する標的mRNAに対してさらに96%、97%、98% 99%まで、さらに100%正確にマッチして、相補的となってもよい。
【0071】
開示された配列のいずれかの類似性パーセントまたは相補的パーセントは、たとえば、ウィスコンシン大学Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を使用して、配列情報を比較することにより決定されてもよい。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunsch、1970年 J. Mol. Biol. 48号(3):443〜53頁のアラインメント方法を活用する。手短に言えば、GAPプログラムは、2つの配列のうちの短い方の配列中の記号の総数で割った、類似する、整列化された記号(つまりヌクレオチドまたはアミノ酸)の数として類似性を定義する。GAPプログラムのための好ましいデフォルトパラメーターは、以下のものを含む:(1)ヌクレオチドについては、単項比較マトリックス(同一の場合には1、同一でない場合には0という値を含有する)ならびにGribskovおよびBurgess (1986年 Nucleic Acids Res. 14号(1):327〜34頁)の加重比較マトリックス、(2)各ギャップに3.0のペナルティーおよび各ギャップ中の各記号にさらに0.10のペナルティー、ならびに(3)エンドギャップにペナルティーなし。
【0072】
「模倣体」は、同じ機能を果たすまたは模倣された作用物質に対して類似して挙動するもしくは模倣されている作用物質の活性に対して増大した活性を有する分子を意味する。たとえば、Norrin模倣体は、Norrinポリペプチドが相互作用するように、LRP5および/またはLRP6ならびにFrizzled4と相互作用するであろう、そして骨量および/または脂質のレベルを、Norrinと同様にまたはNorrinについて観察されたレベルに対して増大したレベルで調整するであろう。たとえば、模倣体は、HBM表現型について観察される等の表現型と同様な高骨量を誘発することができる(この表現型は、たとえば、ヒトLRP5ポリペプチドにおけるG171V突然変異または他の脊椎動物LRP5における同族の場に起因する)。模倣体分子は、ポリペプチド、ペプチド、免疫グロブリン、または低分子化学分子とすることができる。
【0073】
「レポーター要素」は、スクリーニングアッセイにおいて検出することができるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。レポーター要素によりコードされるポリペプチドの例は、lacZ、GFP、YFP(または他の蛍光性レポーター)、ルシフェラーゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを含むが、これらに限定されない。
【0074】
「細胞」または「宿主細胞」は、脊椎動物細胞および酵母細胞またはスクリーニングアッセイで使用されるある種の原核細胞を含むことを意味する。たとえば、適した細胞は、酵母2ハイブリッドアッセイにおける酵母細胞であってもよい。
【0075】
「骨細胞」は、組織培養(「培養細胞」)からの細胞または骨組織から得られた細胞を含むことを意味する。上記細胞は、骨芽細胞、前骨芽細胞、骨芽前駆細胞、破骨細胞、骨細胞、間葉系幹細胞、本明細書で論じられる細胞のいずれか、または任意のそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。骨組織は、骨生検から得られる可能性のある、これらの細胞の組合せを含むことを意味するであろう。
【0076】
「Dkkアンタゴニスト」は、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはその免疫原性活性断片、ペプチドアプタマー、GSK結合タンパク質、GSK核酸に対するアンチセンス分子、RNA干渉分子、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、リボザイム、およびWnt経路においてDkk活性を阻害することができるペプチドを含むが、これらに限定されないことを意味する。
【0077】
同様に、「Kremenアンタゴニスト」は、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはその免疫原活性断片、ペプチドアプタマー、RNA干渉分子、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、リボザイム、およびWnt経路においてKremen活性を阻害することができるペプチドを含むが、これらに限定されないことを意味する。
【0078】
「Wnt3Aアゴニスト」は、Wnt3A合成および/または活性をアップレギュレートすることができる試薬を含むことが意味される。「Wnt3A模倣体」は、Wnt3A活性を模倣する分子を意味する。「Wnt3A変異体」は、荷重を伴って投与された場合に、Wnt/β−カテニン応答を有する活性化を増大させることができる任意の機能的変異体を含むであろう。
【0079】
用語「融合タンパク質」は、典型的に、それらの天然状態では共につながれていないけれども、それらのそれぞれのアミノ末端およびカルボキシル末端により、ペプチド連結を介してつながれ、単一の連続的なポリペプチドを形成する、2つ以上のポリペプチドから構成されるタンパク質について言及するものである。2つ以上のポリペプチド成分は、ペプチドリンカー/スペーサーを介して、直接的につなぐまたは間接的につなぐことができることが理解される。
【0080】
2.Norrinを調整する試験薬をスクリーニングするためのアッセイ
本明細書に開示される物質および方法は、NDP遺伝子もしくはそれらの遺伝子によりコードされるNorrinタンパク質を調整する作用物質をスクリーニングするまたはNorrin模倣体およびNorrinアゴニストを同定する方法を部分的に対象とする。アッセイはまた、Norrinタンパク質と相互作用する試薬を調整する作用物質をスクリーニングし、Norrinアゴニストを同定し、Norrin模倣体を同定する物質および方法を対象とする。これらは、Frizzled4と結合することによりNorrin活性を調整する試薬とすることができる。これらはまた、Dkk1活性(遺伝子またはタンパク質のいずれか)を調整することによりNorrin活性を調整する試薬とすることもできる。他の実施例は、Kremen2であろう、Kremen2(遺伝子またはタンパク質のいずれか)の調整はNorrin活性を調整するであろう。Dkk1およびKremen2の場合では、好ましくは、これらの化合物の活性を調整する試薬は、Dkk1またはKremen2のアンタゴニストであろう。好ましくは、アッセイにより、Frizzled4およびNorrinの相互作用を介して、LRP5活性もまた調整する試薬がもたらされるであろう。好ましいLRP5調整は、アゴニストまたは模倣体(たとえばNorrin模倣体またはFrizzled4模倣体)により産生された等の、活性が増大した形態であろう。
【0081】
アッセイ系は、試験薬が、Frizzled4、Norrin、Dkk1、Kremen2、LRP5に対して結合するまたはNorrin模倣体として作用するそれらの能力についてスクリーニングされるステップを含むことができる。これは、基体を必要とするまたは溶液中で遊離している任意の系とすることができ、前述の基体のいずれかに対する試験薬の結合が起こることが可能にされ、次いで、結合を決定するためにアッセイされる。試験薬は、生理学的条件下(たとえば、pH約7.0〜7.4;24℃〜約40℃)で、結合を可能にする十分な時間、たとえば約1分間〜6時間、Frizzled4、Norrin、Dkk1、Kremen2、またはLRP5と混合することができる。
【0082】
試験薬は、上記に論じられるように、結合についてスクリーニングすることができるまたは任意の化学的ライブラリーからの候補とすることができる。次いで、試験薬は、細胞ベースのアッセイ系においてアッセイすることができる。上記の細胞ベースのアッセイ系は、細胞が、以下の少なくとも1つをコードする核酸で一過性にまたは安定的に形質移入されるアッセイ系とすることができる:Frizzled4、Norrin、Dkk1、Kremen2、もしくはLRP5またはそれらの任意の組合せ。したがって、細胞は、少なくともFrizzled4およびNorrinならびに残りの3つの遺伝子を個々に発現するであろう。核酸の以下の組合せで安定的にまたは一過性に同時形質移入された一連の細胞もまたあるであろう:
(a)NorrinならびにLRP5および/もしくはLRP6
(b)Norrin、Dkk(たとえばDkk1〜Dkk4)、ならびにLRP5および/もしくはLRP6
(c)Norrin、Kremen(たとえばKremen1もしくは2)、ならびにLRP5および/もしくはLRP6
(d)Norrin、Kremen、Dkk、ならびにLRP5および/もしくはLRP6
(e)Frizzled4およびNorrin;
(f)Frizzled4、Norrin、およびLRP5
(g)Frizzled4、Norrin、およびDkk(たとえばDkk1〜Dkk4);
(h)Frizzled4、Norrin、ならびにKremen(たとえばKremen1および/もしくは2);
(i)Frizzled4、Norrin、Dkk、およびKremen2;
(j)Frizzled4、Norrin、LRP5、およびDkk1;
(k)Frizzled4、Norrin、LRP5、およびKremen2ならびに/または
(l)Frizzled4、Norrin、LRP5、Dkk1、およびKremen2ならびに/または
(m)または任意の組合せ。
上述の組合せのいずれかについて、LRP6、HBM、他のDkk(たとえばDkk2、Dkk3、および/もしくはDkk4)、Wnt、ならびに/またはKremen1もまた企図される。
【0083】
上記のアッセイ系はまた、ベクターコントロールを必要としてもよく、このベクターは、上述のタンパク質のいずれかをコードする核酸が細胞における発現のために操作可能に連結されるベクターであることが当業者により理解されるであろう。ベクターコントロールは、このベクターのみでのおよび/またはベクターなしでの、細胞の一過性または安定性の形質移入から成ることができる。細胞の一過性形質移入および安定性形質移入は、当技術分野で知られている技術を使用して実行することができる。たとえば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、1〜3巻(第3版、Cold Spring Harbor Press、NY 2001年)またはSambrookによる前の版のいずれかを参照されたい。同時形質移入は、当技術分野で知られているように、一過性にまたは安定的に調製することができる。Sambrookら、2001。
【0084】
Frizzled4、Norrin、LRP5、Dkk1、およびKremenをコードする核酸を、それらの関連するタンパク質配列と共に、一部、下記に列挙する。本出願の実施形態は、本明細書に開示される配列に限定されない。
【0085】
【表1−1】

【0086】
【表1−2】

さらなるHBM配列およびLRP5配列(たとえばZmax1)は、米国特許出願第09/544,398号(現在米国特許第6,770,461号)および第10/240,851号に開示され、これらは、すべての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
形質移入することができる細胞は、任意の哺乳動物細胞株とすることができる。好ましい細胞株は、とりわけ上述のいずれかのために、ヒトタンパク質をコードする核酸を使用する場合、ヒト細胞株とする。したがって、形質移入は、マウス核酸についてはマウス系においてまたはヒト核酸についてはヒト系において起こり得る。細胞株は、ヒトまたは他の脊椎動物からの骨細胞株、腎臓細胞株、幹細胞株とすることができる。例示的な腎臓細胞株は、HEK−293細胞(ATCC(登録商標)No.CRL−1573)およびHepG2細胞を含むが、これらに限定されない。例示的な骨細胞株は、KHOS/NP(R−970−5)(ATCC(登録商標)No.CRL−1544)、KHOS−240S(ATCC(登録商標)No.CRL−1545)、KHOS−321H(ATCC(登録商標)No.CRL−1546)、DSDh(ATCC(登録商標)No.CRL−2131)、VA−ES−BJ(ATCC(登録商標)No.CRL−2138)、7F2(ATCC(登録商標)No.CRL−12557)、U−2OS(U2OSとしても知られている;ATCC(登録商標)No.HTB−96)、HOSTE85、ROS、MC3T3−E6、UMR−106、Saos2、MG63、およびHOBを含むが、これらに限定されない。例示的な幹細胞株は、ヒト成人間葉系幹細胞(Cambrex Bioscience社)およびマウス幹細胞株、C3H10T1/2(ATCC)を含むが、これらに限定されない。
【0088】
タンパク質のいずれかをコードする核酸は、オープンリーディングフレーム(ORF)ならびに転写および翻訳に必要な任意の転写情報を含むであろう。タンパク質をコードする核酸は、次には、細胞における安定性および/または一過性の形質移入に適したベクターに操作可能に連結されるであろう。適したベクターは、TK−ウミシイタケ、pcDNA3.1(Invitrogen社)、およびpUSE(Upstate Biotech社)を含むが、これらに限定されない。脊椎動物細胞における発現が可能な他の操作可能なベクターが使用されてもよい。
【0089】
遺伝子およびそれらの関連するタンパク質の調節についての情報を提供する任意のレポーター系を活用することができ、これにはTK−ウミシイタケ、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)、アルカリ性ホスファターゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、または他の蛍光タンパク質マーカーを含むが、これらに限定されない。好ましい系は、本明細書に記載されるように、実施例で記載される、TCF−luciおよびTK−ウミシイタケの組合せである。脊椎動物細胞において効力のある、他のレポーターおよびベクターの組合せもまた活用されてもよい。
【0090】
一態様では、試験されることになる作用物質に暴露された細胞集団のNorrinまたはNorrin相互作用タンパク質の相対量は、非暴露コントロール細胞集団と比較される。抗体は、異なる細胞集団におけるタンパク質の特異な発現を監視するために使用することができる。細胞株または細胞集団は、適切な条件および時間の下で、試験されることになる作用物質に暴露される。細胞溶解物は、暴露された細胞株または細胞集団およびコントロール、非暴露の細胞株、または非暴露の細胞集団から調製されてもよい。次いで、当技術分野で知られているであろうが、細胞溶解物はプローブを用いて分析される。たとえば、Ed HarlowおよびDavid Lane、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL (Cold Spring Harbor、NY、1988年)ならびにEd HarlowおよびDavid Lane、USING ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL (Cold Spring Harbor、NY 1998年)を参照されたい。
【0091】
たとえば、NorrinのN−末端断片およびC−末端断片は、細菌で発現させ、これらの断片に結合するタンパク質を調査するために使用することができる。NorrinのN−末端領域もしくはC−末端領域(またはNorrinの生物学的活性ドメインに対する)または全Norrinタンパク質に対するHisタグまたはGSTの融合等の融合タンパク質を調製することができる。これらの融合タンパク質は、たとえばTalonビーズまたはグルタチオンセファロースビーズにカップルし、次いで、Norrinに結合する分子を同定するために細胞溶解物を用いて調べることができる。溶解より前に、細胞は、Wntシグナル伝達またはWnt経路の下流要素と相互作用するタンパク質を調整する可能性のある精製Wntタンパク質、RNA、または薬剤を用いて処置されてもよい。融合タンパク質に結合している溶解物タンパク質は、SDS−PAGEにより分離し、当技術分野で知られているたとえばタンパク質配列決定または質量分析により単離し、同定することができる。たとえば、PROTEIN PURIFICATION APPLICATIONS: A PRACTICAL APPROACH (Simon Roe編、第2版 Oxford Univ. Press、2001年)および「Guide to Protein Purification」 in Meth. Enzymology 182巻 (Academic Press、1997年)を参照されたい。
【0092】
Norrin、Norrin模倣体、Norrin相互作用タンパク質(たとえばNorrinアゴニストもしくはNorrinアンタゴニスト)、またはLRP5/LRP6/HBMおよび/またはKremenタンパク質もしくはDkkタンパク質とのNorrinの複合体の活性は、NorrinおよびNorrin相互作用タンパク質ならびに/もしくはNorrinおよびLRP5/LRP6/HBMの間の相互作用、Norrinおよび/もしくはFrizzled4、Dkkタンパク質、またはKremenタンパク質を調整する化合物により影響を及ぼされる可能性がある。これらの化合物の発見および特徴づけのための方法およびリサーチツールが本明細書に提供される。NorrinもしくはNorrin模倣体およびNorrin/Frizzled4相互作用タンパク質ならびに/またはNorrinおよびLRP5/6/HBMならびにNorrin/DkkならびにNorrin/Kremenの間の相互作用は、in vivoおよびin vitroで監視されてもよい。類似するアッセイもまた、NorrinアゴニストおよびNorrinアンタゴニストを評価するために使用することができる。Norrin/Fz4複合体の安定性を調整する化合物は可能性のある治療化合物である。
【0093】
例となるin vitro方法は、LRP5/6/HBM、Norrin/Fz4、またはNorrin/Fz4相互作用タンパク質を、プラズモン共鳴分光法による観察の実行のためにBiacore社(ウプサラ、スウェーデン)により作製されたような機器のために設計されたセンサーチップに結合することを含む。たとえば、この方法を使用して、Norrin/Fz4、Norrin/Fz4相互作用タンパク質、またはLRP5/LRP6のうちの1つを有するチップは、それらが複合体を形成することを可能にする条件下で他のものに最初に暴露することができる。次いで、試験化合物が導入され、機器の出力シグナルは、試験化合物により及ぼされた任意の効果の指標を提供する。この方法により、化合物は速やかにスクリーニングされてもよい。この方法は、LRP5、LRP6、HBM、任意のDkk、任意のKremen、任意のWnt、およびそれらの任意の組合せとの、任意のNorrin/Fz組合せに使用することができる。
【0094】
他のin vitro方法は、SAR−by−NMR方法により例示される(Shukerら、1996年 Science 274号:1531〜4頁)。たとえば、Norrin/Fz4結合ドメインおよび/またはLRP5/LRP6/HBM LBDは、標識培地中での発現により15N−標識タンパク質として発現させ、精製することができる。標識タンパク質(複数可)は、核磁気共鳴(NMR)試料管において、溶液中で複合体を形成することが可能である。試験化合物の存在下および非存在下での異種核相関スペクトルは、試験化合物との相互作用に関する、個々の残基のレベルでのデータを提供し、複合体のタンパク質間の界面で変化する。この方法は、LRP5、LRP6、HBM、任意のDkk、任意のKremen、任意のWnt、およびそれらの任意の組合せとの、任意のNorrin/Frizzled4組合せを用いて使用することができる。
【0095】
当業者は、他の多くのプロトコール、たとえばアフィニティーキャピラリー電気泳動(Okunら、2001年 J. Biol Chem. 276号:1057〜1062頁)、蛍光分光法、電子常磁性共鳴等を知っており、これらはまた、複合体の調整を監視するならびに/またはタンパク質もしくはその生物学的活性断片の上述の列挙された組合せのいずれかに対する、試験薬の存在下および非存在下での複合体形成のための結合親和性を測定するために使用することができる。
【0096】
LRP5、LRP6、HBM、Kremen1、Kremen2、任意のDkk、および任意のWntのうちの任意の1つまたは複数との、Norrin/Frizzled4相互作用、Norrin/LRP5/Frizzled4相互作用、またはNorrin模倣体の相互作用の調整を監視するためのプロトコールは、酵母ハイブリッドプロトコールを使用して実行することができる。酵母の2つ以上のハイブリッド方法は、Norrin/Frizzled4の融合タンパク質の複合体および/または上述の列挙された他のタンパク質のいずれかの形成により活性化された遺伝子の発現を監視することにより、複合体の調整を監視するために使用されてもよい。LRP5、LRP6、またはHBMを使用する場合、完全なタンパク質またはリガンド結合ドメイン(LBD)もしくはYWTD反復配列を含有するベータプロペラの部分を使用することができる。相互作用するNorrinおよびFrizzled4またはNorrinおよびLRP5/LRP6/HBMのLBDドメインをコードする、本発明による核酸は、ベイトプラスミドおよびプレイプラスミド中に組み込まれる。酵母2ハイブリッド(Y2H)方法または3つ以上のタンパク質のための酵母ハイブリッド方法は、1つまたは複数の試験化合物の存在下で実行される。複合体の調整は、複合体により活性化された遺伝子の発現における変化により観察される。試験化合物は、アッセイに直接的に追加することができるまたは、タンパク質の場合には、ベイト化合物およびプレイ化合物と共に、酵母中で同時発現させることができることが当業者により十分に理解されることとなる。類似して、NorrinおよびNorrin相互作用タンパク質の融合タンパク質もまた、Norrin/Frizzled4複合体を調整する他のタンパク質(Dkk、Kremen、他の負の調節因子、および正の調節因子等)を同定するために、Y2Hスクリーンで使用することができる。酵母ハイブリッド技術は、当技術分野で知られている。たとえばLI ZHUおよびGREGORY J. HANNON、YEAST HYBRID TECHNOLOGIES (2000年)を参照されたい。
【0097】
これら等のアッセイプロトコールは、Norrin/Frizzled4複合体を調整する化合物、薬剤、処置について、上記の調整が、Norrin模倣体としての競合的結合、作用によりまたはNorrin/Frizzled4複合体の構造を変更することによりまたはタンパク質間界面の安定化もしくは不安定化により起こるかどうかをスクリーニングするための方法において使用されてもよい。静的効果による結合部位構造の変更の誘発もまた可能性として考えられるけれども、ペプチドアプタマーが競合的に結合する可能性があることが期待されるかもしれない。本明細書に使用されるように、Norrin/Frizzled4およびNorrin/Fz4/LRP5複合体により調整される生物学的プロセスまたは病理学的プロセスは、Norrinの、Frizzled4に対する結合またはNorrin/Frizzled4/LRP5複合体と相互作用するまたはNorrin/Frizzled4複合体のDkkおよび/もしくはKremenによるダウンレギュレーションを予防するタンパク質に対する結合を含んでいてもよい。これは、Norrinと相互作用するまたは複合体およびNorrin模倣体に関与するタンパク質の合成を調整する化合物を含むことができる。
【0098】
さらに、本明細書に論じられるように、Norrin/Frizzled4/LRP5複合体の調整の生化学分析と共に評価することができる他の骨関連因子に加えて、アルカリ性ホスファターゼ活性、オステオカルシン産生、または鉱化作用等の骨関連マーカーが観察されてもよい。
【0099】
病理学的プロセスは、有害性の影響をもたらす生物学的プロセスのカテゴリーについて言及するものである。たとえば、LRP5もしくはLRP6ならびに/またはDkkおよび/もしくはDkk相互作用タンパク質の発現または発現のアップレギュレーションは、ある種の疾患または病理学的状態に関連する可能性がある。本明細書に使用されるように、作用物質は、作用物質が、被検者におけるその基本的なレベルから統計的に有意なレベルまでプロセスを変更させる場合、病理学的プロセスを調整すると表現される。たとえば、作用物質は、作用物質が投与された被検者において、そのタンパク質により媒介されたプロセスの程度または重症度を低下させてもよい。たとえば、疾患または病理学的状態は、予防されてもよく、または疾患進行は、いくつかの方法において、本発明のタンパク質の発現もしくは少なくとも1つの活性を低下させるもしくは調整する作用物質の投与により調整されてもよい。
【0100】
Frizzled4/NorrinおよびLRP5/LRP6(ならびにKremen、Dkk、およびWnt)は、骨量調整に、直接的にならびに/または間接的に関与するので、本発明の一実施形態は、骨状態または骨疾患を診断する方法として、Norrin/Frizzled4複合体およびNorrin/Frizzled4複合体リガンドを使用することである。ある種のマーカーは、特異的なWntシグナル伝達状態(たとえばTCF/LEF活性化)に関連する。骨状態についての診断試験は、サンプルまたはその抽出物を、DkkもしくはDkk相互作用タンパク質の核酸(つまりDNAもしくはRNA)、オリゴマーもしくはその断片、またはTCF/LEFにより調節された発現についてのタンパク質産物の存在について試験するステップを含んでいてもよい。たとえば、標準的なin situハイブリダイゼーションまたは他の画像技術は、Wntシグナル伝達の産物を観察するために活用することができる。
【0101】
さらに、骨発達状態または骨損失状態を調整するための方法および物質が本明細書に論じられる。骨損失の阻害は、Norrin/Frizzled4複合体およびそれによってWntシグナル伝達経路における変化を阻害することまたは調整することにより達成されてもよい。たとえば、Norrin活性の非存在またはDkk1活性の増加は、低骨量と関連する可能性がある。NorrinおよびFrizzled4の活性増加は、高骨量と関連する可能性がある。したがって、Norrin/Frizzled4活性の調整は、次には、骨量を調整することとなる。アゴニストおよびアンタゴニストを介した、Norrin/Frizzled4複合体とのDkkの相互作用の調整は、骨発達を調節するための方法の一実施形態である。
【0102】
本発明の作用物質は、単独でまたは特定の病理学的プロセスを調整する他の作用物質と組み合わせて提供することができる。本明細書に使用されるように、2つの作用物質は、2つの作用物質が、同時に投与されるまたは作用物質が並行して作用するように独立して投与される場合、組み合わせて投与されると表現される。
【0103】
本発明の作用物質は、たとえば非経口経路、皮下経路(s.c.)、静脈内経路(i.v.)、筋肉内経路(i.m.)、腹腔内経路(i.p.)、経皮経路、または口内経路を介して非ヒト試験動物に投与することができる。代わりにまたは併用的に、投与は、経口経路によるものであってもよい。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康、および体重、併用処置の種類、もし併用処置があれば処置の頻度、ならびに所望される効果の性質に依存性となる。
【0104】
本発明は、NorrinもしくはNorrin/Frizzled4複合体の発現もしくは少なくとも1つの活性を調整するまたはNorrin模倣体として作用する1つまたは複数の作用物質を含む組成物をさらに提供する。個々の必要性は変動するが、各成分の有効量の最適な範囲の決定は、当技術分野の技術の範囲内である。Norrin、Norrin相互作用タンパク質、またはNorrin/Frizzled4複合体(もしくはNorrin/Frizzled4/LRP5複合体、これは、Norrin/Frizzled4複合体が論じられる所で企図される)のリガンドの媒体となるNorrin模倣体または作用物質を含む活性剤の典型的な投薬量は、約0.0001〜約50mg/体重kgを含んでいてもよい。好ましい投与量は、約0.001〜約50mg/体重kgを含んでいてもよい。最も好ましい投与量は、約0.1〜約1mg/体重kgを含んでいてもよい。70kgの平均的なヒトでは、範囲は、約7μg〜約3.5gであり、好ましい範囲は、約0.5mg〜約5mgであろう(たとえばこの範囲内の任意の0.1mgごとの値)。
【0105】
薬理学的活性剤に加えて、本発明の組成物は、適した薬学的に許容し得る担体を含有し、作用部位への送達のために薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を促進する賦形剤、担体、および佐剤を含んでいてもよい。非経口投与に適した製剤は、水溶性形態、たとえば水溶性の塩の、活性化合物の水性液剤を含む。そのうえ、適切な油性注射懸濁剤としての、活性化合物の懸濁剤が投与されてもよい。適した親油性溶媒または媒体は、脂肪油(たとえばゴマ油等の植物性油)または合成脂肪酸エステル(たとえばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド)を含む。水性注射懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増加させる物質を含有していてもよく、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含んでいてもよいが、これらに限定されない。任意選択で、この懸濁剤はまた、安定剤を含有していてもよい。リポソームおよび他の非ウイルスベクターもまた、細胞中への送達のために、作用物質をカプセル化するために使用することができる。
【0106】
本発明による全身性投与のための医薬製剤は、腸内投与、非経口投与、局所(top)投与のために製剤されてもよい。実際に、すべての3つの種類の製剤が、活性成分の全身性投与を達成するために同時に使用されてもよい。
【0107】
経口投与に適した製剤は、硬質もしくは軟質のゼラチンカプセル剤、丸剤、コーティング錠を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、または吸入剤およびそれらの放出制御形態を含む。
【0108】
潜在的に、Norrin、Norrin模倣体、Norrinリガンド、またはNorrin/Frizzled4複合体に結合し、それによって調整する任意の化合物は、治療化合物としてもよい。本発明の一実施形態では、本発明によるペプチドまたは核酸アプタマーは、治療用組成物中に使用される。上記組成物は、無修飾もしくは修飾アプタマーまたはNorrin/Frizzled4断片を含んでいてもよい。他の実施形態では、治療化合物は、Norrin相互作用タンパク質もしくはNorrin/Frizzled4複合体相互作用タンパク質またはその生物学的活性断片を含む。
【0109】
核酸アプタマーは、たとえば取り込みを促進するまたはアプタマーを安定化させる可能性のあるポリエチレングリコール(PEG)等の担体分子への化学結合により、組成物中に使用されてきた。RNAに付いたジアルキルグリセロール部分は、リポソーム中にアプタマーを包埋するために使用し、それによって、化合物を安定化することができる。化学的置換(つまり、RNA中での、リボースの2’−OH基の2’−NHへの変化は、リボヌクレアーゼ抵抗性を付与する)の組み込みおよびキャッピング等は、崩壊を予防することができる。数種の上記技術は、RNAアプタマーについて、BrodyおよびGold、2000年 Rev. Mol. Biol. 74号:3〜13頁に論じられている。
【0110】
ペプチドアプタマーは、たとえば、レトロウイルス送達による、送達複合体にDNAをカプセル化することによる、または単に裸のDNA注射による等の、アプタマー発現を対象とする発現ベクターの罹患組織中への導入により、治療用途において使用されてもよい。あるいは、アプタマー自体または合成類似体は、薬剤として直接的に使用されてもよい。ポリマーおよび脂質におけるカプセル化は送達を援助する可能性がある。治療薬および診断薬としてのペプチドアプタマーの使用は、Hoppe−SylerおよびButz、2000年 J. Mol. Med. 78号:426〜430頁により検討されている。
【0111】
他の態様では、本発明の拘束されたペプチドアプタマーの構造は、NMRまたはX線結晶学により等で決定されてもよい(Cavanaghら、PROTEIN NMR SPECTROSCOPY: PRINCIPLES AND PRACTICE、Academic Press、1996年;Drenth、PRINCIPLES OF PROTEIN X−RAY CRYSTALLOGRAPHY、Springer Verlag、1999年)。好ましくは、構造は、標的タンパク質と複合させて決定することができる。次いで、低分子類似体は、アプタマーの3D構造の機能要素の位置に従って設計される(GUIDEBOOK ON MOLECULAR MODELING IN DRUG DESIGN、Cohen編、Academic Press、1996年;MOLECULAR MODELING AND DRUG DESIGN (TOPICS IN MOLECULAR AND STRUCTURAL BIOLOGY)、VinterおよびGardner編、CRC Press、1994年)。Norrinの活性を調整し、Norrin模倣体、Norrin相互作用タンパク質、Norrin/Frizzled4相互作用タンパク質、およびNorrin/Frizzled4複合体のように作用する有効で特異的な薬剤を同定し、設計するための方法が、本明細書で提供される。ペプチドアプタマーの低分子模倣体もまた範囲内に包含される。
【0112】
2.1 細胞ベースのNorrin機能レポーターアッセイ
実施例において下記に記載されるTCFレポーターアッセイは、Norrin模倣体を同定するために(図1および2)またはDkk1/Kremen2のアンタゴニスト等の、Norrinシグナル阻害因子のアンタゴニストを同定するために(図3)、スクリーニングアッセイに発展させることができる。両種類のアッセイにおいて、骨細胞型または非骨細胞型で実行された場合、活性分子は、TCFルシフェラーゼシグナルまたは他の適したシグナル法を増大させるであろう。
【0113】
2.2 Norrin/LRP5/LRP6およびDkk/LRP5/LRP6/Kremenアッセイ
Frizzled4/LRP5/LRP6とのNorrinの相互作用を調整する試薬についてスクリーニングするために使用することができる他の方法は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイを介したものである。このアッセイの2つの可能性として考えられる並べ換えが例示されるが、他の並べ換えもまた活用することができる。たとえば、LRP5は、組織培養プレートウェル等の固体表面に固定することができる。当業者は、これらに限定されないが、ナイロン膜またはニトロセルロース膜、シリコーンチップ、スライドガラス、ビーズ等のような他の担体を代わりに用い、それらを活用することができることを認識するであろう。これを行う1つの様式は、融合タンパク質としての、LRP5/LRP6/Fz4の形態を有することができることであり、LRP5/LRP6/Fz4の細胞外ドメインは、ヒトIgGまたは他のIgGのFc部分に融合される。LRP5/LRP6/Fz4−Fc融合タンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(または他の適した細胞株)中で産生することができ、融合タンパク質は、細胞株または培地から抽出される。単離されたLRP5/6/Fz4−Fc融合タンパク質は、たとえば、抗ヒトFc抗体を介してまたはタンパク質Aもしくはタンパク質Gをコーティングしたプレートにより固体表面に固定することができる。次いで、基体は、任意の非結合タンパク質を除去するために洗浄することができる。分泌型Norrinタンパク質もしくは分泌型Norrinエピトープタグ付きタンパク質(または精製Norrin、精製Norrinエピトープタグ付きタンパク質、Norrin模倣体、もしくは骨調整に関与する、Norrinの生物学的活性部分を含有する断片)を含有する条件培地は、ウェルまたは容器中でインキュベートすることができる。代わりに、試験試薬は、Norrin模倣体をスクリーニングするために、固定された融合タンパク質とインキュベートすることができる。LRP5/LRP6/Fz4に対するNorrinまたはNorrin模倣体の結合は、Norrinまたはエピトープタグのいずれかに対する抗体を使用して評価することができる。たとえば、Norrin−V5エピトープタグ付きタンパク質またはその断片は、抗V5抗体を用いて検出することができる。次いで、このアッセイ系は、たとえばNorrin模倣体、Norrinアゴニスト、およびLRP5/LRP6/Fz4融合タンパク質に対するNorrinと同様な様式で結合する免疫グロブリンを同定するために使用することができる。アッセイは、たとえば、競合アッセイ、タグ付き試験試薬等の形態とすることができる。これらのアッセイ系はまたHBMと共に活用することができる。アッセイはまた、これらのタンパク質およびポリペプチドの間の複合体の相互作用および形成を調整する試験薬についてスクリーニングする場合、Dkk、Kremen、および/もしくはWntタンパク質またはその生物学的活性断片を含む洗液を有するよう修正することもできる。
【0114】
代わりに、骨調整に関与するNorrinタンパク質もしくはその生物学的活性断片(Norrinタンパク質に対するすべての言及は、生物学的活性断片も使用することができることを想定する)またはNorrin模倣体は、アルカリ性ホスファターゼ等の検出マーカーに直接的に融合することができる。ここで、Norrin−LRP5/LRP6/Fz4相互作用の検出は、続く抗体ベースの実験を伴わないで直接的に確かめることができる。結合したNorrinまたはNorrin模倣体は、アルカリ性ホスファターゼアッセイまたは他の検出アッセイで検出される。Norrin−アルカリ性ホスファターゼ融合タンパク質が、固定されたLRP5/LRP6/Fz4に結合する場合、アルカリ性ホスファターゼ活性は、比色定量読み出し、放射性読み出し、または蛍光性読み出しで検出されるであろう。結果として、この系を使用して、低分子化合物がLRP5/LRP6/Fz4に対するNorrinの結合を変更させる能力または試験試薬が、Norrin模倣体もしくはNorrinアゴニストであるかどうかをアッセイすることができる。たとえば、化合物は、プレートの各ウェルに対してNorrin(またはエピトープタグ付きNorrin)が追加された場合、適したインキュベーション時間および洗浄の後の、ウェル中で結合したNorrinのシグナル強度に基づいて、NorrinおよびLRP5/LRP6/Fz4の間の相互作用を調整するそれらの能力についてスコア化することができる。アッセイは、非標識Norrinまたは第2の種類のエピトープタグ付きNorrinを用いた競争実験を行うことにより較正することができる。Norrin−LRP5/LRP6/Fz4相互作用を調整する(たとえば増大させる)ことができる任意の分子は、適した治療候補、好ましくは、骨形成治療候補または脂質(たとえば、ApoE、LDL、HDL、VLDL、トリグリセリド、コレステロール)を調整することができる候補となる可能性がある。上記分子は、低分子化学分子、ペプチド、および免疫グロブリン(抗体、抗体断片)を含み、すべて、上記アッセイ系を使用して検査することができる。
【0115】
2.3 Norrin−LRP5/6/Fz4ホモジニアスアッセイ
タンパク質間相互作用の調整を確かめるための他の方法は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を介したものである。FRETは、量子力学的プロセスであり、ドナーである蛍光分子は、近接しているアクセプター発色団分子に対してエネルギーを移動させる。類似して、さらに増幅発光近接ホモジニアスアッセイ(ALPHAスクリーン)は、Norrin−LRP5/6またはNorrin−Fz4相互作用ドメインおよびFz4/LRP5複合体におけるNorrin模倣体の機能を評価するために使用することができる。上記系は、LRP5およびアキシンの間の分子間相互作用を特徴づけるために、文献においてうまく使用されてきた(たとえば、Maioら、Molec. Cell Biol. 7号:801〜9頁を参照されたい)。上記研究のための入手可能な多くの異なる蛍光性タグがあり、興味のあるタンパク質に蛍光タグを付けるための数種の方法がある。たとえば、CFP(つまりシアン蛍光タンパク質)およびYFP(つまり黄色蛍光タンパク質)は、ドナーおよびアクセプターとしてそれぞれ使用することができる。融合タンパク質は、ドナーおよびアクセプターと共に、操作する、発現させる、精製する、または特異的なドナービーズおよびアクセプタービーズに抱合することができる。
【0116】
たとえば、FRET型アッセイでは、精製Norrinタンパク質もしくはその生物学的活性ポリペプチドまたはNorrin模倣体としてスクリーニングされている作用物質は、CFP(または他の蛍光タンパク質)に融合することができ、YFPに融合された精製LRP5/6/Fz4タンパク質またはその生物学的活性ポリペプチド(たとえばLBDもしくはベータプロペラ含有ドメイン)は、標準的なアプローチを使用して、生成し、精製することができる。Norrin−CFPおよびLRP5/Fz4−YFPが近接している場合、CFPからYFPへのエネルギーの移動は、CFP発光の低下およびYFP発光における増加をもたらすこととなる。エネルギーは、450nmの励起波長で供給され、エネルギー移動は、480nmおよび570nmの発光波長で記録される。YFP発光とCFP発光の比は、Norrin(またはNorrin模倣体)およびLRP5/Fz4の間の相互作用における変化についての尺度を提供する。この系は、WntカスケードにおけるNorrin−LRP5/Fz4タンパク質間の相互作用および活性を変更させる可能性のある低分子化合物をスクリーニングするために適用できる。相互作用を増大させるまたは破壊する化合物は、YFP発光とCFP発光の比における増加または減少のそれぞれにより同定されるであろう。次いで、Norrinと同じ様式でLRP5/Fz4相互作用を調整する上記化合物は、Norrin模倣体分子候補と考えられるであろう。作用物質はまた、Norrin様活性を増大させる作用物質についてスクリーニングされるであろう。これらのアッセイ系は、種々の組合せでKremen、Dkk、および/またはWntを含むよう、異なる蛍光タンパク質を用いてさらに修正することができる。化合物のさらなる特徴づけは、機能的Norrinシグナル伝達に対する化合物の効果を解明するために、TCFルシフェラーゼアッセイまたはアフリカツメガエル胚アッセイを使用して行うことができる。
【0117】
2.4 酵母ハイブリッドアッセイ
2ハイブリッド系、3ハイブリッド系、または他の酵母ハイブリッド系は、タンパク質:タンパク質相互作用を研究するのに非常に有用である。たとえば、Chienら、1991年 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 88:9578〜82頁;Fieldsら、1994年 Trends Genetics 10号:286〜92頁;Harperら、1993年 Cell 75号:805〜16頁;Vojtekら、1993年 Cell 74号:205〜14頁;Lubanら、1993年 Cell 73号:1067〜78頁;Liら、1993年 FASEB J. 7号:957〜63頁;Zangら、1993年 Nature 364号:308〜13頁;Golemisら、1992年 Mol. Cell. Biol. 12号:3006〜14頁;Satoら、1994年 Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 91号:9238〜42頁;Coghlanら、1995年 Science 267号:108〜111頁;Kalpanaら、1994年 Science 266号:2002〜6頁;Helpsら、1994年 FEBS Lett. 340号:93〜8頁;Yeungら、1994年 Genes & Devel. 8号:2087〜9頁;Durfeeら、1993年 Genes & Devel. 7号:555〜569頁;Paetkauら、1994年 Genes & Devel. 8号:2035〜45頁;Spaargarenら、1994年 Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 91号:12609〜13頁;Yeら、1994 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 91号:12629〜33頁;ならびに米国特許第5,989,808号;第6,251,602号;および第6,284,519号を参照されたい。
【0118】
多くの系は、相互作用タンパク質をクローニングするために酵母ファージミドcDNAライブラリー(たとえば、Harper、CELLULAR INTERACTIONS AND DEVELOPMENT: A PRACTICAL APPROACH、153〜179頁(1993年);およびElledgeら、1991年 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 88号: 1731〜5頁を参照されたい)またはプラスミドcDNAライブラリー(Bartel、1993年 Cell 14号:920〜4頁);Finleyら、1994年 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 91号:12980〜4頁)をスクリーニングするのにならびに知られているタンパク質ペアを研究するのに利用可能である。
【0119】
2ハイブリッド系の成功は、GAL4等の多くの転写因子DNA結合ドメインおよびポリメラーゼ活性化が分離され、次いで、機能性を回復するために、再結合することができるという事実に依存する(Morinら、1993年 Nuc. Acids Res. 21号:2157〜63頁)。これらの例は、酵母系における2ハイブリッドスクリーニングを記載するが、2ハイブリッドスクリーニングは、哺乳動物細胞株等の他の系において行われてもよいことが理解される。したがって、本発明は、酵母2ハイブリッド系の使用に限定されず、上記代替系を包含する。
【0120】
たとえばGAL→LacZ、GAL→HIS3、またはGAL→URA3等の種々のレポーター遺伝子カセットの一体化されたコピーを有する酵母菌株(Bartel、IN CELLULAR INTERACTIONS AND DEVELOPMENT: A PRACTICAL APPROACH、153〜179頁 (1993年);Harperら、1993年 Cell 75号:805〜16頁;Fieldsら、1994年 Trends Genetics 10号:286〜92頁)をそれぞれ異なる融合タンパク質を発現する2種のプラスミドで同時形質転換する。一方のプラスミドは、タンパク質「X」およびたとえばGAL4酵母転写活性化因子のDNA結合ドメインの間の融合物をコードし(Brentら、1985年 Cell 43号:729〜36頁;Maら、1987年 Cell 48号:847〜53頁;Keeganら、1986年 Science 231号:699〜704頁)、他方のプラスミドは、タンパク質「Y」およびGAL4のRNAポリメラーゼ活性化ドメインの間の融合物をコードする(Keeganら、1986年)。これらのプラスミドは、調節領域がGAL4結合部位を含有するlacZ等のレポーター遺伝子を含有する酵母の菌株中に形質転換される。タンパク質XおよびYが相互作用する場合、それらは、転写を活性化するために2つのGAL4成分を十分に近位にすることにより、機能的GAL4転写活性化タンパク質を再構成する。代わりにベイトタンパク質およびプレイタンパク質の役割が切り替えられてもよく、したがって、本発明の実施形態は、両方の代替処理を企図し、包含することが十分に理解される。
【0121】
いずれかのハイブリッドタンパク質だけでは、レポーター遺伝子の転写を活性化することはできないはずである。DNA結合ドメインハイブリッドは、活性化機能を提供しないので、転写を活性化することはできないはずであり、活性化ドメインハイブリッドは、GAL4結合部位の場所を突き止めることができないので、転写を活性化することはできないはずである。2種の試験タンパク質の相互作用は、GAL4の機能を再構成し、レポーター遺伝子の発現をもたらす。レポーター遺伝子カセットは、それらのTATAボックスに対して5’にクローニングされたGAL4 DNA認識部位を含有する最小限のプロモーターから成る(Johnsonら、1984年 Mol. Cell. Biol. 4号:1440〜8頁;Lorchら、1984年 J. Mol. Biol. 186号:821〜824頁)。転写活性化は、β−ガラクトシダーゼ(もしくは他のレポーター)の発現または転写産物のための栄養要求性の選択、たとえばURA3(ウラシル選択)もしくはHIS3(ヒスチジン選択)を可能にする特定の栄養素を欠く最少培地上での形質転換体の成長のいずれかを測定することによりスコア化される。たとえばBartel、1993年;Durfeeら、1993年 Genes & Devel. 7号:555〜569頁;Fieldsら、1994年 Trends Genet. 10号:286〜292頁;および米国特許第5,283,173号を参照されたい。
【0122】
一般に、これらの方法は、酵母細胞の核中でハイブリッドとして発現される、相互作用について試験されることになる2種のタンパク質を含む。一方のタンパク質は、転写因子のDNA結合ドメイン(DBD)に融合され、他方は、転写活性化ドメイン(AD)に融合される。タンパク質が相互作用する場合、それらは、DBDのための結合部位を含有する1つまたは複数のレポーター遺伝子を活性化する機能的転写因子を再構成する。例示的な2ハイブリッドアッセイは、Norrin、Norrin/Frizzled4、またはFrizzled4/LRP5の融合物である。
【0123】
3.作用物質をアッセイするin vivo方法
本明細書で明らかにしたin vitro方法に加えて、方法および物質は、in vitro分析によりスクリーニングされ、同定された試験薬の効果を研究するために、動物の使用をさらに含むことができる。たとえば、トランスジェニック動物は、1つ(または複数)のNorrin、Kremen(Kremen1および/もしくは2)、Dkk(Dkk1、Dkk2、Dkk3、および/もしくはDkk4)、LRP5、LRP6、HBM、Wnt(Wnt1〜Wnt19)、ならびにFrizzled4の遺伝子がcDNAとして導入される。LRP5およびHBMのトランスジェニック動物の例は、国際PCT出願第PCT/US02/14876号および米国特許出願第10/680,287号に見い出される。これらの出願の主題は、すべての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
したがって、一態様では、上記に論じられる形質移入細胞株のいずれかに対して試験薬をスクリーニングするステップの後でならびに/または作用物質が、Dkk、Norrin、Frizzled4、LRP5、LRP6、HBM、Wnt、および/またはKremenのいずれかに結合するかどうかを確かめるために試験した後で、これらの試験薬はまた、in vivoでも評価することができる。in vivoで試薬を試験するステップの追加により、前掲のセクション2において論じられた手段のいずれかにより得られた試験に対する確証ステップが追加される。試薬は、化合物に適した投与の任意の手段、たとえば、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮膚等を介して動物に投与することができる。投与は、試験化合物の製剤に依存してもよい。たとえば、低分子阻害RNA(siRNA)および免疫グロブリンは、経口的にではなく静脈内に投与されてもよい。低分子化学分子は、経口的にまたは静脈内に投与されてもよい。試験化合物の量は、動物の重量ベースに基づいて投与されるであろう。
【0125】
動物は、化合物の生物学的利用能および分解産物を試験するために活用することができる。
【0126】
動物は、数日間、数週間、または数ヶ月間の期間にわたり試験化合物を投与されるであろう。投与は、毎日、毎週、隔月、毎月等とすることができる。動物に、作用物質を、単独でまたは動物の骨に対するひずみを引き起こす運動と共に投与することができる。動物の骨にどのようにひずみをかけることができるかについての解説が、国際PCT出願第PCT/US2004/17951号に記載される。この出願の内容は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
たとえば、pDXAは、種々の投与量の作用物質が投与される野性型動物およびトランスジェニック動物において測定することができる。たとえば、野性型マウスおよびトランスジェニックマウスは、麻酔をかけられ、体重を量られ、LUNAR社製の小動物PIXImusデバイスを使用して骨格の全身X線スキャンが生成される。スキャンは、マウスが離乳すると(つまり3週齢)、実行することができ、2週間の間隔で繰り返すことができる。野性型動物は、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、27、および29週目にスキャンすることができる。トランスジェニック動物のスキャンは、17週目までの期間、実行することができる。スキャンは、種々の体の領域についてのBMD(骨ミネラル密度)、BMC(骨ミネラル含量)、TTM(全組織質量)、および脂肪パーセント(%)について分析することができる。
【0128】
さらにまたは代わりに、上述の動物のfaxitron社製X線像を得ることができる。たとえば、麻酔をかけた動物のpDXAスキャンの後で、さらなるX線を、骨の大きさの測定を可能にするFaxitron社製デバイスを使用して撮ることができる。
【0129】
さらにまたは代わりに、カルセイン標識を上述の動物に対して実行することができる。たとえば、動物は、2回の連続する機会に、15mg/動物体重kgでカルセインを投薬することができる。第1の用量は、動物が安楽死させられる9日前に与えることができ、第2の用量は、動物の安楽死の2日前に与えることができる。次いで、骨の形成の測定値を決定することができる。
【0130】
上述の動物のある種類のex vivo分析もまた任意選択で実行することができる。たとえば、RNA単離は、組織から単離することができ、pQCTおよびマイクロCT(μCT)、組織検査、曲げ強度分析、椎骨の圧縮強度分析、および血清分析を実行することができる。たとえば、RNAは、mRNA発現を決定するために、TRIzol7を使用して、脛骨および他の組織から単離することができる。上述の動物のいずれかのpQCT分析は、大腿骨を得て、大腿骨から軟部組織を取り除くことにより実行することができる。次いで、大腿骨は、遠位骨幹端の密度の全体としての密度および骨梁密度の決定のために70%エタノール中で保存することができ、次いで、骨幹中央の皮質密度を決定することができる。
【0131】
動物の大腿骨の分析はまた、遠位骨幹端の骨梁指標を決定するために使用することができる。
【0132】
任意選択で、組織学的分析は、上述の動物のいずれかについて実行することができる。たとえば、マウスの大腿骨は、遠位骨幹端の骨面積ならびに静的パラメーターおよび動的パラメーターを決定するために使用することができる。代わりにまたはさらに、免疫組織化学法を実行することができる(たとえば骨形成マーカーのin situハイブリダイゼーションおよびアポトーシスを受けている細胞のTUNEL染色)。
【0133】
上述の動物のいずれかはまた、椎骨の曲げ強度または圧縮強度について骨を検査することができる。曲げ強度については、動物の大腿骨(または他の適した骨)は、軟部組織を取り除き、骨幹中央の3点曲げ強度の分析より前に約−20℃で保存することができる。圧縮強度は、たとえばマウスのT10〜L6またはL7の脊椎を摘出することにより測定することができる。軟部組織は脊椎上に残され、次いで、脊椎は分析まで約−20℃で凍結される。圧縮強度は、L5椎骨でよく測定される。
【0134】
脂質分析の目的については、動物からの血清を評価することができる。たとえば、動物を安楽死させることができ、血清は、総コレステロール、トリグリセリド、オステオカルシン、および他の生化学的代理マーカーを測定するために血液から調製することができる。
【0135】
遺伝子の転写調整および発現調整もまた動物について評価することができる。たとえば、骨に対する荷重は、以下のように遺伝子に影響を与えることで知られている。
【0136】
【表2−1】

【0137】
【表2−2】

上述の言及された遺伝子のうちの任意の1つまたは複数は、任意の組合せで、試験薬、コントロール薬の投与、骨または骨細胞に対する応力等による、発現における変化について評価することができる。次いで、作成した遺伝子プロファイルは、作用物質が、Norrin−Frizzled4複合体またはFrizzled4−LRP5複合体およびWnt経路におけるその活性に対して有する影響と共に評価することができる。たとえば、Norrin−Frizzled4−LRP5複合体を調整した作用物質またはNorrin模倣体により得られた遺伝子/タンパク質プロファイルは、DkkアンタゴニストもしくはKremenアンタゴニストの投与によりまたは骨もしくは骨細胞に対する応力により観察されたようなプロファイルをもたらす。
【0138】
骨荷重および作用物質による調整に対する骨荷重の比較は、in vitroでも実行することができる。たとえば、重力荷重は、本明細書に論じられる骨細胞のいずれかに対する応力を誘発するために使用することができ、以下の遺伝子の任意の1つもしくは複数の遺伝子または任意の組合せの遺伝子発現のプロファイルもまた、骨応力プロファイルの一部として評価することができる。骨応力プロファイルは、たとえば、Norrin模倣体が、骨応力プロファイルの増大を誘発するまたは骨応力プロファイルの遺伝子に対するDkkおよび/もしくはKremenによる阻害を減少させるかどうかを確かめるために評価することができる。
【0139】
【表3−1】

【0140】
【表3−2】

投与された試験薬が骨調整効果を誘発することができるかどうかの決定は、米国出願第10/680,287号および国際PCT出願第PCT/US2004/17951号または本明細書に記載されるもしくは当技術分野で知られている方法のいずれかに記載されるように、骨密度の変化についてX線によりまたは動物の犠牲死および皮質骨の検査により評価することができる。これらの出願の内容は、すべての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
4.in vitroでの骨荷重を研究する方法
本発明の一態様は、in vitroでの骨荷重の効果の研究およびその効果により骨荷重の利点を増大させることができる(つまり骨鉱化作用の増加)手段である。骨荷重増大の研究は、in vivo(上記に論じられる)およびin vitroの両方で行うことができる。骨荷重増大は、in vitroでまず実行することができ、次いで上記に論じられる実験等のin vivoでの実験が後に続く。
【0142】
したがって、本発明の一態様は、荷重刺激をシミュレートする条件下に細胞を置くことを必要とする。in vivoで観察される骨荷重応答を模倣するための、細胞培養にひずみをかけるのに利用可能な数種の方法がある。これらの方法は、流体剪断、静水圧縮、一軸延伸、二軸延伸、重力荷重、およびFlexercell(登録商標)または等価なシステムを使用して誘発された荷重を含むが、これらに限定されない。
【0143】
4.1 骨荷重刺激
上述の方法のいずれかにより提供される骨荷重刺激等の骨荷重刺激により調整される好ましい遺伝子は、SFRP1、コネキシン43、WISP2、CCND1、Wnt10b、Jun、Fos、PTGS2(COX−2)、およびeNOSを含むが、これらに限定されない。本明細書の表の多くで反映されるように、さらなる遺伝子が、それらの活性における増加(たとえばmRNA転写物およびタンパク質の増加)について監視することができる。骨荷重に応じて一貫してアップレギュレートされることが示された少なくとも6つの遺伝子(つまりJun、Fos、eNOS、SFRP1、COX−2、およびコネキシン43)はまた、Wnt経路を活性化する作用物質の追加によっても増大する。Wnt2等の他の遺伝子は、Wnt経路を活性化した試薬の追加により増大せず(たとえばGSK−3阻害因子およびWnt3Aならびにそのアゴニスト、模倣体、および変異体)、骨荷重に対して応答するのみである。したがって、一態様は、たとえばNorrin模倣体、Norrinアゴニスト、Frizzled4模倣体、またはFrizzled4模倣体に応じた応力プロファイル遺伝子の増大を研究するための上記のin vitro系を使用することを含むであろう。
【0144】
4.1.1 流体剪断刺激
骨荷重を誘発する一方法は、流体剪断によるものである。流体剪断は、攪拌機構により連続的な層流剪断を生成するコーンプレート粘度計を活用することができる。代わりに、流動ループ装置は、並流培養庫において上記剪断を産生することができる。後者の方法および機器は、Flexcell International Corporation社により製造されたStreamerシステムにより例示される。流動ループ装置はまた、再現可能で一貫した刺激を産生することで知られている。唯一の欠点は、エンドポイントが典型的につかの間であり、これらの変化が、分化した骨芽細胞の機能に影響を与えるかどうか分からないことである(Bassoら、2002年 Bone 30号(2):347〜51頁)。
【0145】
4.1.2 静水圧縮刺激
骨荷重を誘発する第2の方法は、静水圧縮の使用である。静水圧縮は、連続的なまたは間欠的な力を生成するために圧縮空気を活用することができ、細胞が細胞外マトリックスタンパク質/接着タンパク質と相互作用する領域に力を特異的に局在化させると考えられている。
【0146】
4.1.3 一軸延伸刺激
in vitroで骨荷重を誘発する第3の手段は、一軸延伸刺激の使用である。一軸延伸方法は、一方向の延伸力を活用する。方法は、ポリスチレンフィルムまたは他のフィルムで処置したストリップ上の、組織培養物中の成長細胞を必要とし、ストリップは、シリコーンの可撓性の層に対して固定される。シリコーンの層は、2本の金属棒にさらに付けられる。金属棒は、電磁石またはいくつかの他の移動手段を使用して、互いに対して操縦することができる。この方法は、いかなる流体剪断をも作り出さない。間質液の流動が、機械的な延伸よりも、骨リモデリングにおいて、より大きな役割を演じている可能性があるので、流体剪断が欠けているのは、この方法をそれほど好ましくないものにする。したがって、この方法は、産生される再現可能で一貫した刺激にもかかわらずin vivoで起こるものを完全には模倣しない可能性がある(Bassoら、2002年 Bone 30号(2):347〜51頁)。
【0147】
4.1.4 二軸延伸刺激
二軸延伸は、本質的に、本明細書に論じられるFlexercell(登録商標)システムである。この方法は、細胞が成長する、コラーゲンがコーティングされたサイラスティック膜を使用する。次いで、プレートを、特別なトレー中に置き、トレーを真空ポンプに付ける。真空ポンプは、細胞膜を引き伸ばすまたはその他の場合ではねじることにより、膜を引き伸ばしたり、緩めたりする。さらに、任意の培地または流体の動きにより流体剪断がさらに追加されることとなる。
【0148】
4.1.5 重力荷重刺激
重力荷重は、骨荷重をin vitroで誘発することができる他の方法である。本質的に、力を細胞にかけて、細胞を平らにする。さらなる詳細については、たとえばHattonら、2003年 J. Bone & Min. Res. 18号(1):58〜66頁;およびFitzgeraldら、1996年 Exp. Cell. Res. 228号:168〜71頁を参照されたい。特に、細胞は、プレートまたはカバースリップ上で成長し、次いで、増加性のG力に暴露される。
【0149】
4.1.6 Flexercell(登録商標)刺激
Wnt経路および骨鉱化作用の、試薬ベースの増大を評価する好ましい一方法は、Flexercell(登録商標)システムである、二軸延伸刺激を使用するものである。手短に言えば、骨細胞(たとえばMC3T3細胞)は、約3,400μεに暴露される。約50με〜約5,000με(およびその間の任意の値)の荷重は、機械荷重刺激として同様に使用することができる。この範囲における任意の刺激は生理的な骨荷重刺激を模倣する。5,000μεより上の刺激は、病態生理学的荷重をもたらし、したがって、好ましくない。さらに細胞は、二軸延伸に対する暴露より前に、Wnt経路調整因子(たとえばGSK阻害因子)に暴露することができる。
【0150】
単独でまたはGSK−3阻害因子と共に荷重をかけることによりアップレギュレートされる遺伝子は、COX−2、eNOS、コネキシン43、Fos、Jun、WISP2、Wnt10b、サイクリンD1、およびSFRP1を含むが、これらに限定されない。Flexercell(登録商標)研究からin vitroで得られた発現プロファイルは、in vivo荷重遺伝子発現プロファイル(つまり、HBM TGマウス脛骨からの細胞について実行されたRNA分析、マウスは、4点系を使用して骨荷重にさらされた)を模倣する。したがって、この機械荷重アッセイまたは本明細書に開示される種々様々の細胞株を用いた他の機械荷重手段の使用は、標準Wnt経路を調整し、好ましくは活性化し、HBM表現型を模倣する低分子、ペプチド、免疫グロブリン等を同定するために使用することができる。Norrin模倣体は、骨量の増加である、LRP5のHBM変異体の応答の増大と同様に、Norrinと同じ応答または応答の増大をもたらすことができる。したがって、この系の使用は、HBM様の様式で応力プロファイルの遺伝子のアップレギュレートを増大させ、野性型Norrinと等価な様式で作用する試薬をスクリーニングするのに役立つであろう。
【0151】
細胞に対して機械的応力刺激を誘発するin vitro方法はまた、細胞増殖およびアポトーシスを研究するためにも使用することができ、機械的応力刺激は、骨リモデリングならびに骨芽細胞および破骨細胞の増殖ならびに破骨細胞吸収にとっての必要性に関連する。たとえば、HBMおよび非罹患骨芽細胞の細胞を、bioflex6ウェルプレート中に接種し、細胞が約60%コンフルエントとなるまで、10%FBSを含有する成長培地中で2〜3日間培養することができる。機械的荷重の24時間前に、培地を、約2〜約4%FBS含有する1mL基本培地と交換する。次いで、細胞を、約1〜約5時間、約50〜約5,000μεの荷重にさらす。細胞は、Norrin模倣体であるまたはLRP5/Norrin/Frizzled4複合体のアゴニスト(たとえばNorrinアゴニスト、Frizzled4アゴニスト、またはLRP5アゴニスト)およびそれらのアンタゴニストである試薬についてさらに研究することができる。
【0152】
荷重の後で、細胞を、さらなる時間、培養する。その後、細胞数および増殖は、[H]−チミジン取り込み、5−臭素−2’−デオキシウリジン(BrdU)取り込み、3−(4,5ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩(MTS)アッセイ、TUNELアッセイ(つまり末端デオキシヌクレオチド転移酵素dUTPニックエンド標識)、またはアネキシンVアッセイを含むが、これらに限定されない多くの市販のアッセイまたは当技術分野で知られているアッセイを使用して評価することができる。
【0153】
以下の遺伝子は、プロファイルに関して分析することができる。他の実施形態では、Wntアンタゴニストは、スクリーニングするまたは骨鉱物質除去(たとえば大理石骨病)が必要とされる個人を処置するために使用することができる。Wntアンタゴニストは、Dkk1アンタゴニストおよびKremenアンタゴニストを含むが、これらに限定されない。NorrinアゴニストならびにNorrin模倣体もまた、Frizzled4アゴニストおよび模倣体、Wntアゴニストおよび模倣体、ならびにLRP5およびLRP6のアゴニストおよび模倣体と共にこの系の下で評価することができる。
【0154】
【表4−1】

【0155】
【表4−2】

【0156】
【表4−3】

骨荷重についてのタンパク質アレイおよび核酸アレイに関する物質および方法は、国際PCT出願第PCT/US2004/17951号にさらに詳細に論じられ、この出願は、すべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
4.2 アフリカツメガエルにおけるNorrinの機能評価
アフリカツメガエル胚は、Wntシグナル伝達の調整を評価するための、有益で十分に確立されたvivoアッセイ系であり、これについては、たとえばMcMahonら、1989年 Cell 58号:1075〜84頁;WodarzおよびNusse、1998年 Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 14号:59〜88頁中で検討されたSmithおよびHarland 1991年 Cell 67号:753〜65頁)を参照されたい。
【0158】
Norrin−Frizzled4−LRP5複合体に影響を与えることによるWntシグナル伝達経路の修飾は、4または8細胞期での腹側割球へのRNA注射の後に、背側化表現型(体軸の重複)について胚を検査することにより可視化することができる。分子レベルにおいては、表現型は、10.5日期胚における種々のマーカー遺伝子の発現を調査することにより分析することができる。上記マーカーは、一般的な内胚葉マーカー、中胚葉マーカー、および外胚葉マーカーならびに様々な組織に特異的な転写物を含むであろう。
【0159】
胚の分析は、RT−PCR/TaqMan(登録商標)を使用して行うことができ、全胚組織についてまたはより制限的な様式(顕微解剖)で行うことができる。この系は、Norrin、LRP5/LRP6、およびFz4等の転写物の組合せの注射による、非常に柔軟で迅速なものなので、Norrinシグナル伝達経路の機構は詳細に分析することができる。従来の研究により、LRP6が、単独でまたはLRP5+Wnt5aと組み合わさって、この系における軸重複(背側化)を誘発することができたことが実証された(Tamaiら、2000年 Nature 407号:530〜35頁)。Norrinシグナル伝達が一度確立されると、このシグナル伝達は、DkkおよびKremenのアンタゴニストならびにNorrinアゴニストおよびNorrin模倣体により評価するために使用することができる。
【0160】
4.2.1 アフリカツメガエル発現のための構築物(ベクターpCS2
Norrin、LRP5/6、Fz4、Dkk(たとえばDkk1)、Wnt、およびKremen1/2のcDNAは、pCS2等のベクター中に、ベクターSP6プロモーターに関してセンス配向でサブクローニングすることができる。pCS2ベクターは、挿入物の下流に、SV40ウイルスポリアデニル化シグナルおよびT3プロモーター配列(アンチセンスmRNAの生成のため)を含有する。他のベクターもまた、任意の組合せで、タンパク質の発現について活用することができる。
【0161】
4.2.2 mRNA合成および微量注射プロトコール
アフリカツメガエル胚中への微量注射のためのmRNAは、たとえば鋳型として上記に記載されるpCS2ベクター中のcDNA構築物を使用して、in vitro転写により生成することができる。RNAは、Ambion社製mMessage mMachine高収率キャップRNA転写キット(Ambion社 カタログ#1340)を使用して、Sp6ポリメラーゼ反応についてのメーカーの説明書に従って、合成される。RNA産物は、滅菌ガラス蒸留水中50μLの最終容量までもたらすことができ、G50−セファデックスカラム(ロシュ社、カタログ#1274015)を使用して、放射標識RNA精製のためのQuick Spin Columnでメーカーの説明書に従って精製される。結果としての溶出液は、最終的に、標準的なプロトコールを使用して、フェノール、クロロホルム、イソアミルアルコール、およびイソプロパノールを用いて抽出し、沈殿させた(Sambrookら、1989年)。最終RNA容量は、普通約50μLである。RNA濃度は、260nmおよび280nmでの吸光度により決定することができる。RNAの完全性は、変性(ホルムアルデヒド)アガロースゲル電気泳動の臭化エチジウム染色により可視化することができる(Sambrookら、1989年)。種々の量のRNA(約2pg〜約1ng)が、4または8細胞アフリカツメガエル胚の腹側割球に注射される。これらのプロトコールは、Moonら、1989年 Technique−J. Meth. Cell. & Mot. Biol. 1号:76〜89頁およびPeng、1991年 Meth. Cell. Biol. 36号:657〜62頁に記載される。
【0162】
Norrin機能を調整するとして同定されたまたは本明細書に記載されるアッセイのいずれかにおいてNorrin模倣体分子として作用する分子は、動物モデルまたは他のin vitroスクリーニングアッセイを使用してさらに確証することができる。
【0163】
4.3 間葉系幹細胞における骨形成効果についてのNorrinの評価
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)(Cambrex Bio Science, Walkersville社、MD)およびマウス幹細胞(たとえばC3H10T1/2、ATCC)は、それぞれ骨形成培地または脂肪生成培地によりin vitroで、鉱化骨結節(Jaiswalら、1997年 J. Cell Biol. 64号:295〜312頁)または脂肪組織(Pettingerら、1999年 Science 284号:143〜147頁)に分化するよう誘発することができる。Wntシグナル活性化は、hMSCにおいて、骨形成を増大させ、脂肪生成を阻害する。Norrin−Fz4−LRP5媒介性シグナル伝達は、hMSCにおいて、類似する種類の分化パターンを提供することが期待される。したがって、hMSC(または他の脊椎動物からの他のMSC細胞)を使用するNorrin模倣体およびNorrinアゴニストの同定は、企図されるスクリーニングアッセイである。
【0164】
ヒト間葉系幹細胞に加えて、他の脊椎動物からの幹細胞もまた使用することができる。間葉系幹細胞は、種々の骨細胞(たとえば骨芽細胞)および脂肪細胞に対する前駆細胞である(たとえば、Bennettら、2005年 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 102号(9):3324〜3329頁)。代わりに、前骨芽細胞、骨細胞、および成熟骨芽細胞等のより分化した細胞を代わりに用いることができる。細胞株が、ヒト由来細胞株であることが示される場合、他の脊椎動物からの類似性の細胞を代わりに用いることができることに留意されたい。
【0165】
4.3.1 発現に対するNorrinによる骨形成活性の評価
手短に言えば、Norrinは、精製タンパク質もしくは条件培地の一部としてhMSC(継代3〜6)に追加することができるまたはウイルスベクターを使用してhMSCに感染させることにより発現することができる。代わりに、Norrin、Norrinアゴニスト、およびNorrin模倣体は、骨形成培地(10nMデキサメタゾン、50μg/mL L−アスコルビン酸、および5mMベータ−グリセロリン酸で補充した成長培地)と共にhMSCに追加することができる。適切なコントロール培地を用いた約37℃での約1〜約3週間のインキュベーションの後に、Norrinありのまたはなしの新鮮な培地の毎週の補給により、骨形成活性は、標準的な技術により測定することができる。たとえば、骨形成活性は、アルカリ性ホスファターゼ(AlkPhos)タンパク質発現についての細胞の染色、AlkPhosの酵素活性の決定、AlkPhosまたはオステオカルシンのmRNAの誘発、および適切なコントロールを用いたアリザリンレッド染色またはフォン−コッサ染色による鉱化作用の検出により測定することができる。
【0166】
4.3.2 発現に対する、Norrinによる脂肪生成の調整の評価
Norrin、Norrinアゴニスト、またはNorrin模倣体は、1〜3週間、脂肪生成分化培地(つまり10nMデキサメタゾン、50μg/mL L−アスコルビン酸リン酸塩、500μMイソブチルメチルキサンチン、および60μMインドメタシンを含有する成長培地)と共に、ウイルスまたは他の種類のベクターを使用して発現することにより、hMSCに追加することができる。脂肪細胞調整に対するNorrin、Norrinアゴニスト、またはNorrin模倣体の効果は、脂肪生成マーカー遺伝子(たとえばアジプシン)の発現の変更によりまたはオイルレッドO試薬での細胞の染色により決定することができる。
【0167】
試験薬の投与による発現における変化は、DNAアレイ技術を使用して実行することができる。上記技術は、肥満症および糖尿病について試験するために既に使用されている。したがって、一態様は、肥満症のために開発されたDNAアレイ技術を使用して試験薬をスクリーニングすることであろう。たとえば、Nadlerら、2000年 Proc. Natl. Acad. Sci. 97号(21):11371〜11376頁ならびに脂質代謝、分泌型タンパク質について示された遺伝子および肥満症と関連して発現が減少したまたは増加した他の遺伝子を参照されたい。DNAアレイ技術と共に使用される細胞は、間葉系細胞、脂肪細胞、もしくは前脂肪細胞または本明細書に論じられる他の細胞とすることができる。
【0168】
脂質レベルおよび脂肪生成におけるin vivo変化は、様々な異なる試験により測定することができる。血液および血清は、血液化学分析のために、収集し、分析することができる。したがって、Norrin模倣体またはNorrinアゴニストは、in vivoで効果についてスクリーニングすることができる。同様に、Dkk阻害因子および/またはKremen阻害因子は、LRP5/LRP6/Frizzled4複合体とのNorrinの活性(Norrinアゴニストの存在下もしくは非存在下で)またはNorrin模倣体の活性に対するそれらの影響力について、スクリーニングすることができる。
【0169】
4.3.3 Norrin遺伝子ノックダウンによる骨形成および脂肪生成の調整の評価
骨形成培地または脂肪生成培地を使用することにより、hMSCは、骨形成系統または脂肪生成系統に分化することとなる。Norrin、Frizzled4、またはLRP5の低分子ヘアピン型RNAは、経路に対するNorrinおよびFrizzled4の増大性の効果を実証するためにならびにこれらのタンパク質の阻害が脂肪生成および骨形成に対して有する影響力を示すためにコントロールとして使用することができる。たとえば、骨形成培地およびNorrin shRNAを含有するウイルスベクターの感染体の存在下で、Norrin遺伝子転写および骨芽細胞へのhMSCの分化または上記に示される種々の方法により検出することができる鉱化骨結節の産生は、ブロックされ得る。
【0170】
組織培養におけるおよびin vivoでの遺伝子ノックダウンは、選択された一本鎖遺伝子配列の活性をブロックすることができる配列特異的なDNA類似体またはRNA類似体により実現することができる。上記アプローチの例は、アンチセンスオリゴヌクレオチド技術および転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)またはRNA干渉(RNAi)とも呼ばれる、相同二本鎖RNA(dsRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)の導入を含む。これは、種々のウイルス遺伝子送達ベクターを使用してまたはプラスミドベクターの形質移入により、shRNA(低分子ヘアピン型RNA)を介して、所定の標的遺伝子mRNAに特異的なsiRNAを細胞に導入することにより達成することができる。RNA干渉および遺伝子サイレンシングを実行するための方法は、たとえばMeisterおよびTuschl、2004年 「Mechanisms of gene silencing by double−stranded RNA」、Nature 431号:343〜349頁;DorsettおよびTuschl、2005年 「siRNAs: applications in functional genomics and potential as therapeutics」、Nat. Rev. RNA Interference Collection 40〜51頁ならびにそれらの中で引用される参考文献に論じられるように知られている。一度siRNAが導入されると、標的遺伝子ノックダウンの度合いは、RNAについてはqRT−PCR、ノーザンブロットを含む標準的な技術によりまたはタンパク質発現についてはウエスタンブロットにより測定される。
【0171】
5.Norrinを調整する作用物質を試験するためのキット
他の態様は、Norrin活性を調整する作用物質を、好ましくは、Norrin活性の調整を介してWnt経路を調整する作用物質について試験するためのキットを企図する。これらのキットは、Norrin模倣体およびNorrinアゴニストならびにLRP5/Norrin/Frizzled4複合体の他の模倣体およびアゴニストについてスクリーニングするために使用することができる。
【0172】
企図されるキットは、細胞ならびに少なくともNorrinおよびFrizzled4をコードする核酸を含むであろう。好ましくは、LRP5、Dkk(Dkkのいずれか)、HBM、ならびに/またはKremen(Kremen1および2)ならびにNorrinおよびFrizzled4ならびに/またはそれらの任意の組合せをコードする核酸があるであろう。LRP6およびWntもまた含むことができる。上述のポリペプチドをコードする核酸は、ベクターに操作可能に連結されるであろう。ベクターのみもまた、コントロールとしての目的のために好ましくは含まれるであろう。一過性形質移入の使用のためにまたは安定的に細胞を形質移入するためにキットを考案することができる。
【0173】
代わりに、キットは、上述のタンパク質のいずれかの精製タンパク質を、本明細書で記載されるin vitroアッセイ系等のin vitroアッセイ系での使用のために含有することができる。それらは、ニトロセルロース、ELSAプレート、または他の適した基体等の基体を含むことができる。
【0174】
キットは、アルカリ性ホスファターゼ、1つまたは複数の蛍光タンパク質等のいずれにせよ、アッセイに適切なレポーター系を好ましくは含むであろう。
【0175】
一態様では、キットは、スクリーニングで使用される凍結細胞株を付属することができる。他の態様では、キットは、本明細書に記載されるin vitroアッセイに適した、適切な、前に試験された細胞を列挙する使用説明書を付属することができる。
【0176】
他の態様では、キットは、種々のレポーター、酵素、および調整を検出するために使用されるレポーターを検出するために必要な試薬を付属することができる。たとえば、TCF−luciおよびTK−ウミシイタケアッセイ系を使用する場合、キットは、TCF−luciおよびTK−ウミシイタケのルシフェラーゼおよび検出試薬を付属することができる。キットはまた、トランスジェニック動物も付属することができ、Dkk、Norrin、LRP5、LRP6、HBM、Kremen、Wnt、および/またはFrizzled4についてのcDNAは動物(複数可)に導入される。キットは、特定の試験試薬についての活性の解明のために一連の上記動物を含むことができる。
【0177】
6.細胞株
他の態様は、Norrinおよび/またはFrizzled4を発現しない細胞株の調製である。次いで、これらの細胞株は、LRP5、LRP6、Frizzled、Norrin、Dkk、Kremen、Wnt、およびNorrinの一過性にまたは安定的に発現した非天然形態を本明細書に論じられる組合せのいずれかで有することができる。したがって、細胞株は、Norrin模倣体またはNorrinアゴニストである試薬をスクリーニングするために使用することができる。たとえば、発現したLRP5およびFrizzled4の非天然(非内在性)形態を有し、Norrinを欠く細胞株では、LRP5−Frizzled4−Norrin機構を介してWnt経路を活性化するための手段はないであろう。しかしながら、Norrin模倣体を導入すると、経路は活性化されるであろう。上記細胞株は、Norrin模倣体を同定するための有用なコントロールとなるであろう。次いで、細胞は、スクリーニングのために導入されたDkkおよび/またはKremenのさらなる非内在性転写物を、Frizzled4−LRP5/6−Norrin複合体との、Dkkおよび/またはKremenの相互作用を調整する試験薬について、検査することができる。このプロセスを使用して、Dkkアンタゴニストおよび/またはKremenアンタゴニストは同定することができる。これらのNorrinなしの株の1つにおける非内在性Norrinの導入は、Norrin−LRP5−Frizzled4相互作用についてNorrinアゴニストを評価するために使用することができる。
【0178】
タンパク質またはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片のいずれかをコードする核酸の安定性発現および一過性発現は、当技術分野で知られている手段により達成することができる。たとえば、R. IAN FRESHNEY、CULTURE OF ANIMAL CELLS: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE (2000年)ならびにJOSEPH SAMBROOKおよびDAVID W. RUSSELL、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (第3版 2001年)を参照されたい。
【0179】
内在性Norrinを有していない細胞は、腎臓細胞を含むが、これらに限定されない。したがって、腎臓細胞は、Norrin模倣体をスクリーニングするための有用な手法を提供する。代わりに、LRP5、LRP6、Norrin、Wnt、Dkk、Kremen、および/またはFrizzled4をコードする遺伝子のうちの1つまたは複数が、内在性ポリペプチドをもはや合成することができないようにノックアウトされているノックダウン細胞株である細胞株を調製することができる。この手順は、これらに限定されないが脂肪細胞、前脂肪細胞、間葉系細胞、種々の骨細胞、および腎臓細胞等の任意の細胞に対して実行することができる。
【0180】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される物質および方法において種々の修正および変更を成すことができることは当業者にとって明白となる。したがって、修正および変更が添付の請求項および請求項の均等物の範囲に入るならば、本発明は、本発明の修正および変更を包含することが意図される。
【実施例】
【0181】
実施例1:Nonrrin/Wnt−TCFシグナルアッセイ
Norrinクローン単離.cDNAを、IMAGEクローンから、標準的なPCR法によりクローニングした。特に、NCBI(NM_000266)からのNorrinオープンリーディングフレーム(ORF)配列を、入手可能なIMAGEクローンを調査するために使用した。クローン#5179578は、予想される完全長cDNAとして同定された。IMAGEクローンは、Open Biosystems社(ハンツビル、AL)から購入した。ORFは、以下のプライマーを使用して、標準的なPCR技術により増幅した:
【0182】
【化1】

(開始ATGの5’に隣接して、クローニングのためのEcoRI部位およびコンセンサスKozakがくる)および
【0183】
【化2】

(停止コドンの後にXbaI部位およびNotI部位の両方がくる)。結果としてのPCR産物は、EcoRIおよびNotIで消化し、pcDNA3.1(Invitrogen社)のEcoRI部位およびNotIの部位中にクローニングした。正の単離物を制限消化により同定し、公開配列(受託番号NM_000266)にマッチすることをDNA配列分析により確証した。
【0184】
Kremenクローン単離.PCRにより増幅した完全長断片は、pcDNA3.1ベクター中にEcoRI/BamH1制限酵素部位にサブクローニングした。次いで、単離配列は、公開ヒトKremen2配列(受託番号NM_172229/AB086405.1、およびNP_757384.1)にマッチすることを確認した。cDNAは、ヒト骨芽細胞様U2OS細胞株全RNAから単離した。約2.5×10U2OS細胞からの全RNAは、RNeasyキット(Qiagen社、バレンシア、CA)を使用し、メーカーのプロトコールに従って精製した。Kremen2 cDNA単離物は、標準的なPCR法に従って増幅した。使用されるPCRプライマーは、以下のとおりであった:
【0185】
【化3】

PCRにより増幅した完全長断片は、pcDNA3.1ベクター中にEcoRI/BamH1制限酵素部位にサブクローニングし、全体の配列が、公開ヒトKremen2配列(受託番号NM_172229/AB086405.1、NP_757384)にマッチすることを確認した。
【0186】
Dkkクローン単離.GenBank受入番号AF127563を有するヒトcDNAは、公共データベースで入手可能であった。この配列を使用して、PCRプライマーを、開始ATGの上流に隣接してコンセンサスKozak配列を有するオープンリーディングフレームを増幅するために設計した。
【0187】
【化4】

をPCRによりヒト子宮cDNAライブラリーをスクリーニングするために使用した。結果としてのPCR産物を精製し、pCRII−TOPO(Invitrogen Corp.社)中にサブクローニングし、配列を確認し、EcoRI/XhoIで消化した。この挿入物は、pCS2ベクター中にEcoRI−XhoI部位にサブクローニングした。
【0188】
ヒトDkk2をコードする完全長cDNAは、Dkkファミリーの分子とのZmax/LRP5/HBMの相互作用の特異性を確かめるために単離した。Dkk1は、Zmax/LRP5/HBMの可能性のある結合パートナーとして酵母において同定された。Dkk1はまた、Wntシグナル伝達経路のアンタゴニストであることが文献においても示されているが、Dkk2は示されていない(Krupnikら、1999年)。Dkk2完全長DNAは、Dkkファミリー(たとえばDkk1、Dkk2、Dkk3、Dkk4、Soggy、それらのホモログ、およびそれらの変異体等)とのZmax/LRP5/HBMの相互作用の特異性および生物学的意義を識別するための手法として働く。Dkk2についてのヒトcDNA配列(GenBank受託番号NM_014421)は公共データベースで入手可能であった。この配列を使用して、PCRプライマーを、開始ATGの上流に隣接してコンセンサスKozak配列を有するオープンリーディングフレームを増幅するために設計した。
【0189】
【化5】

をPCRによりヒト胚cDNAライブラリーおよび脳cDNAライブラリーをスクリーニングするために使用した。結果としてのPCR産物を精製し、pCRII−TOPO中にサブクローニングし、配列を確認し、BamH1/EcoRIで消化した。この挿入物は、BamH1−EcoRI部位に、pCS2ベクター中にサブクローニングした。Dkk1およびDkk2のクローンに関するさらなる解説については、国際PCT出願第PCT/US02/15982を参照されたい。Dkk3およびDkk4についての類似する構築は、本明細書に言及される配列を使用して調製することができる。
【0190】
LRP6クローン.完全長LRP6は、XhoI−XbaI消化により、pED6dpc4ベクターから単離した。完全長cDNAは、pCS2のXhoI−XbaI部位中に新たに組み合わせた。挿入物の配向は、DNA配列決定により確証した。
【0191】
LRP5(Zmax1)およびHBM.挿入物cDNAは、BglII−EcoRI消化により、完全長cDNAレトロウイルス構築物(最適化Kozak配列を有する)から単離し、pCS2ベクターのBamH1−EcoRI部位中にサブクローニングした。LRP5およびHBMの構築物についてのより詳細な事柄については、米国特許第6,770,461号および「Regulating lipid levels via the Zmax1 or HBM gene」と題する国際PCT出願第PCT/US01/16946号を参照されたい。
【0192】
Wntクローン.本明細書に示される実験で活用されたWnt遺伝子は、以下のとおり得た。10種の異なる完全長Wnt cDNAは、Upstate Biotechnology社(レークプラシッド、NY)からベクターpUSEamp(+)中にある状態で購入した。遺伝子は以下のとおりである:Wnt1(カタログ番号21〜121)、Wnt2(カタログ番号21〜122)、Wnt3(カタログ番号21〜123)、Wnt3a(カタログ番号21〜124)、Wnt4(カタログ番号21〜125)、Wnt5a(カタログ番号21〜133)、Wnt5b(カタログ番号12〜126)、Wnt6(カタログ番号21〜127)、Wnt7a(カタログ番号21〜128)、およびWnt7b(カタログ番号21〜129)。挿入物は、XbaI消化により遊離し、アフリカツメガエル発現のためにpCS105ベクターのXbaI部位中にサブクローニングした。配向は、配列分析により確証した。
【0193】
完全長Wnt11 cDNAは、GCRichキット(Clontech社、マウンテンビュー、CA)および以下の特定のプライマーを使用して、RT−PCRにより1×10ヒト骨芽細胞細胞(HOB、継代#13)から単離した:(順方向):
【0194】
【化6】

(EcoRI部位を含む)および(逆方向):
【0195】
【化7】

(NotI部位を含む)。RT−PCRにより生成したDNA断片は、EcoRIおよびNotIで消化し、pcDNA3.1ベクターのEcoRIおよびNotIの作り出された部位に挿入した。完全長配列は、公開Wnt11配列(受託番号Y12692)にマッチすることを確認した。
【0196】
他のWnt遺伝子についての完全長cDNAは、プライマーを設計して、遺伝子のオープンリーディングフレームを増幅し、pCS105ベクターまたはpcDNA3.1型哺乳動物ベクターもしくは他の適した哺乳動物ベクター中にサブクローニングすることを促進するために、公共の配列を使用して、種々のヒトcDNAライブラリー源から標準的なPCR技術により得ることができる。他のWnt遺伝子に適したプライマーは、表1において下記に提示される。「F」は「順方向」プライマー、「R」は「逆方向」プライマーを表す。
【0197】
【表5−1】

【0198】
【表5−2】

レポーターアッセイ.TCFアッセイは、16xTCFレポーター(基本的なTKプロモーターを有するWnt−ベータ−カテニンシグナル応答性TCF要素の16個のコピーを含有する)およびルシフェラーゼ遺伝子を必要とする。構築物は、pGL3ベクター(Promega社、マディソン、WI)中に、最小限のTK(チミジンキナーゼ)プロモーターの上流に配置されるTCF結合部位の16個のコピーおよびルシフェラーゼ遺伝子を含有する。4つのTCF結合部位(下記のペアの配列を参照されたい)の配列は、オリゴヌクレオチド合成アプローチにより生成し、5’側および3’側にそれぞれNheIおよびXhoIの制限酵素部位を有する以下の配列を含有する。下線を引いたドメインはTCF結合部位を示す。両鎖が提供される。2本の鎖がアニールすると、NheI(5’)およびXhoI(3’)の適合性制限部位は、さらなるクローニングのために導入され、それらは、TCF結合部位(それぞれ配列番号:27および28)を含有する:
【0199】
【化8】

内部アッセイ標準化コントロールとしてのTK−ウミシイタケ(Promega Corp.社、WI)ならびに上記に論じられるNorrin、Wnt1、Wnt3a、Dkk1、およびKremen2のcDNAのpcDNAベクターベースの構築物およびFrizzled4構築物 (Origene Tech. Inc.社;ロックビル、MD)もまた、アッセイの一部である。脊椎動物Norrin、Wnt1、Wnt3a、Dkk1、およびKremen2の異なる形態を発現することができる他のベクターを代わりに用いることができる。
【0200】
これらの遺伝子を個々に含有するクローンは、ヒト胚性腎臓(HEK)−293A細胞(ATCC、マナッサス、VA)またはヒト骨肉腫由来骨/骨芽細胞様細胞株、U2OS(ATCC)中に同時形質移入される。細胞は、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、1%グルタマックス(Invitrogen社)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)で補充されたダルベッコ最小必須培地(DMEM)(Invitrogen社)またはRPMI培地(Invitrogen社)中で培養した。
【0201】
HEK−293A細胞(1ウェル当たり50,000個の細胞)またはU2OS細胞(1ウェル当たり25,000個の細胞)を、96ウェルプレート中で平板培養した。平板培養後の24時間のインキュベーションの後に(約80〜90%コンフルエント)、培地を、100μLの新鮮な無血清OPTIM培地(Gibco/BRL社)と交換した。両細胞型は、16xTCF(TK)−ホタルルシフェラーゼ(0.3μg/ウェル)およびTK−ウミシイタケ−ルシフェラーゼ(0.06μg/ウェル)を用い、リポフェクタミン2000形質移入試薬(Promega社;マディソン、WI)を使用して、メーカーの使用説明書に従って形質移入した。実験は二通り実行した。
【0202】
試験cDNA構築物は、必要に応じて異なる濃度で形質移入した。構築物のそれぞれの約0.0005μg/ウェル〜0.05μg/ウェルのcDNAを使用した。形質移入は、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen社)を使用して、メーカーの使用説明書に従って実行した。DNA混合物および試薬は30分間インキュベートした。50μL/ウェルのDNA試薬混合物を100μLのOPTIM培地に追加した。次いで、細胞を37℃で4時間インキュベートした。形質移入培地は、HEK293A細胞およびU2OS細胞それぞれについて、新鮮な150μLのDMEM培地またはRPMI培地と交換した。COインキュベーター中での37℃での20〜24時間のインキュベーションの後、培地を除去した。形質移入した細胞単層を、150μLの、Dual Luci試薬(Promega Corp.社)の1×溶解バッファーを追加することにより溶解した。
【0203】
10分後、20μLの溶解物を、新しい96ウェル白色プレート(Packard社/Costar社)中に移動した。細胞溶解物を、100μL/ウェルのLARII緩衝液(Dual Luci試薬)と混合し、相対的ルシフェラーゼユニット(RLU)を、Packard社製Topcount NXT(商標)発光カウンター(メリデン、CT)を使用して測定した。この後に、100μL/ウェルの「stop&glo」試薬(Dual Luci試薬)を追加し、内部アッセイコントロールウミシイタケルシフェラーゼを、Packard社製Topcount NXT(商標)発光カウンターを使用して測定した。
【0204】
TCF−ホタル−lociとウミシイタケの比を算出した、また、図1〜4中に棒グラフとして提示する。実験は、4回繰り返して行い、示される誤差の程度について標準偏差を計算した。
【0205】
図1は、Norrin cDNAがヒトU2OS細胞中に形質移入された場合、Norrin cDNAは、Wnt cDNA形質移入非存在下で、TCFシグナルの約2〜3倍の誘発(ピンク色の傾線の棒)を引き起こしたことを示す。しかしながら、HEK−293A形質移入細胞は、いかなる著しいTCF−シグナル活性化をも産生しなかった。図1はまた、Norrinおよびその共受容体の1つであるLRP5のHEK−293A細胞中への同時形質移入は、TCF−シグナルを活性化しなかったことを示す(紫色の格子縞模様の棒)。
【0206】
興味深いことには、Norrin(Nr)またはLRP5(L5)についての遺伝子を含有するベクターがU2OS細胞中に同時形質移入された場合、TCF−シグナルは増大した。活用された物質および方法は上記に記載されるとおりである。図1の右側を参照されたい。NorrinおよびLRP5の両方がU2OS細胞に同時形質移入された場合、TCFシグナルは、ベクターのみに対して(コントロール)、約6倍相乗的に増大した(最も右の棒、図1)。Norrinは、LRP5/6共受容体に加えてFrizzled4(Fz4)受容体を必要とするので、データは、U2OS細胞がFz4を含有し、HEK−293A細胞がFz4を欠くことを示唆する。Fz4なしでは、Norrinは、TCF−シグナルを誘発することができず、したがって、HEK−293A細胞では応答を欠く(図1左側)。
【0207】
実施例2:Fz4は、Norrinシグナル伝達に必要とされる
Fz4−Norrin相互作用を評価するために、Norrinで形質移入した両方の細胞型中に、Fz4およびLRP5のcDNAを形質移入した。実施例1において上記に論じられるように、形質移入を実行した。TCFの検出を実行した、また、使用される構築物は実施例1で論じられるとおりである。データは、4回繰り返して得、標準偏差を算出し、統計分析により確かめた。
【0208】
HEK−293A細胞は、ベクターのみ(V)、LRP5のみ(L5)、Fz4のみ(F4)、またはLRP5およびNorrin(L5+Nr)についてTCF応答がないことを示す。NorrinおよびFz4(F4+Nr)の追加により、ベクターのみまたはFz4のみに対してTCFにおいて約6倍の増加が得られる。図2中のデータは、HEK−293A細胞において、機能的Fz4は、Norrin−TCF−シグナル活性化のために制限因子であったことを実証する。図2中のデータはまた、HEK−293A細胞において、Norrin−Fz4相互作用は、おそらく、細胞の内在性LRP5/6受容体を活用することも示す。そのうえ、HEK−293細胞における、Fz4およびNorrinとLRP5の同時形質移入(L5+F4+Nr)は、LRP5のみ(L5)およびNorrinのみ(Nr)を形質移入したHEK293A細胞に対して16倍まで、TCF−シグナルの増大をさらにもたらす。図2の左側を参照されたい。
【0209】
対照的に、同じ試験をU2OS細胞を用いて行った。U2OS細胞は、Fz4およびNorrinの同時形質移入(F4+Nr)により、ベクターのみ(V)、LRP5のみ(L5)、Frizzled4のみ(F4)、ならびにLRP5およびNorrin(L5+Nr)で同時形質移入したU2OS細胞に対して、著しく高いTCF活性を生じた。図2を参照されたい。U2OS細胞における応答は、Fz4、LRP5、およびNorrin(F4+L5+Nr)すべてが、細胞中に同時形質移入された場合、さらに増大した(約2倍〜約6倍)。U2OS細胞における上記データは、おそらく、Fz4およびLRP5/6の受容体を含む内在性Wntシグナル成分の存在を示す。
【0210】
実施例3:Norrinにより誘発されたLRP5−Fz4−TCFシグナルは、U2OS細胞において、Dkk1およびKremen2により相乗的に阻害され得る
U2OS細胞は、実施例1に記載されるアッセイ手順に従って、図3中で示されるように、ブランクベクター(V)、LRP5(L5)、Frizzled4(Fz4)、Norrin(Nr)、Kremen2(Krm2)、またはDkk1で形質移入したまたは同時形質移入した。結果は、4回繰り返して得、標準偏差をそれらから算出した。
【0211】
図3は、種々のcDNA構築物で形質移入した場合の、U2OS−TCFアッセイにおける、TCF−luciとウミシイタケのシグナル調整の比を示す。図3の右側について、棒は、LRP5(L5)、Fz4(Fz4)、またはNorrin(Nr)の形質移入は、ベクターコントロールに対して約2〜5倍までの誘発を引き起こしたことを示す。しかしながら、Fz4およびNorrin(Fz4+Nr)の両方の同時形質移入は、TCFシグナルの約15倍の誘発をもたらした。
【0212】
Fz4およびNorrinの効果は、LRP5(L5)cDNAの発現によりさらに増大した(つまり最も高く最も濃い棒)。Fz4+Nr+L5の最大活性は、Dkk1を用いた細胞の同時形質移入により部分的に阻害された。Dkk1およびKrm2の両方が、LRP5、Fz4、およびNorrin(L5+Fz4+Nr)を用いて同時形質移入された細胞に追加された場合、TCF−シグナルは、ほぼ完全に阻害される(右側、一番右の棒)。
【0213】
図3で示された結果は、Norrin−LRP5−Fz4媒介性TCF−シグナルがDkk1により阻害され得ることを示す。Dkk1は、Wnt−LRP5−Fzにより誘発されたWnt標準経路の効果的な阻害因子であると考えられる。興味深いことには、Kremen2(Krm2)追加は、Dkk1と相乗作用を示し、次には、Wnt経路を増大させるNorrin作用のブロックをもたらした。
【0214】
実施例4:HBMおよびLRP5を用いたNorrin媒介性TCF−シグナルは、Dkk1およびKremen2により異なって阻害される
LRP5または機能獲得型突然変異体であるHBMによるNorrin−TCF−シグナル調整の比較は、cDNA形質移入U2OS細胞において研究した。結果を図4に示す。HBM cDNAを用いたU2OS細胞の形質移入は、LRP5 cDNAを用いた形質移入よりもわずかに高いTCF−シグナルを生じた。図4の左側を参照されたい、左側は、ベクターのみ(V)、LRP5のみ(L5)、HBMのみ(H)、Frizzled4のみ(Fz4)、およびNorrin(Nr)のみを示す。構築および条件は、実施例1に記載されるとおりである。実験は4回繰り返して実行し、標準誤差は、それから算出した。
【0215】
NorrinおよびFz4ならびにLRP5(Nr+Fz4+L5)またはHBM(Nr+Fz4+H)によるU2OS細胞の同時形質移入は、LRP5およびHBMの両方のcDNAで、最大の、すなわち基本的な活性に対して約25倍のTCF−シグナルをもたらした。Norrin、Frizzled4、LRP5またはNorrin、Frizzled4、およびHBMの組合せによるDkk1同時形質移入は、TCFシグナルの約38〜40%の阻害をもたらした。Dkk1阻害は、Kremen2(Krm2)の追加によりさらに増大した。図2の右側、最も右の2本の棒を参照されたい。
【0216】
相対的なNorrin−TCF−シグナル分析は、LRP5突然変異G171V媒介性Norrin−Fz4−TCFシグナルは、Kremen2およびDkk1の阻害作用に対する部分的な抵抗性を与えることを示唆する。この興味をそそる観察は、Dkk1およびKremen2の存在下での、LRP5およびHBMを用いた、Wnt3aおよびWnt1媒介性のTCF−シグナルで以前に観察された結果にかなり類似する。LRP5−Wnt−TCFシグナル伝達は骨形成を調整することが報告されており、一方、HBM突然変異は、ヒトおよびトランスジェニックマウスにおいて高骨量表現型をもたらす。これらの結果に基づいて、Norrinは、LRP5−Fz4複合体の、Wntよりも特異的なリガンドとして、骨代謝において重要な役割を演ずると思われる。
【0217】
上述の実施例のそれぞれにおいて、Dkk1は、Dkk2、Dkk3、および/またはDkk4を代わりに用いることができる。さらに、Kremen2を使用する実施例では、同じアッセイにおいて、Kremen1を代わりに用い、使用することができることが理解されるであろう。さらに、タンパク質または生物学的活性ポリペプチドは、同時形質移入によりまたは精製タンパク質ならびに/またはタンパク質および/もしくは生物学的活性ポリペプチドを含有する条件培地の追加により導入することができる。
【0218】
前掲の論じられたin vitroデータにより、Norrinは、Frizzled4の形質移入を伴わないで、HEK−293A細胞においてではなく、U2OS骨細胞においてTCFレポーター活性化することにより、LRP5−Frizzled4媒介性Wnt標準経路を増大させることを示した。LRP5媒介性Wntシグナル伝達は、ヒトおよびトランスジェニック動物におけるLRP5−G171V突然変異での高骨量(「HBM」)表現型により証明されるように、骨の形成/維持において重要である。提示されるデータはまた、LRP5−G171V(HBM)突然変異体の存在下でのNorrin媒介性TCF−シグナルは、LRP5を用いたシグナルと比較して、Dkk1媒介性の阻害に対してそれほど敏感ではないことも示す。LRP5におけるG171V突然変異による阻害の減少は、HBM表現型の原因の1つであると仮定されるので、我々は、Norrin、その発現、その誘発、および/またはNorrin模倣体は、in vivoでの骨の形成または維持を増大させることができることを期待するであろう。したがって、in vivoでのNorrinノックアウトは骨減少症を示し得る。上述のアッセイは、とりわけNorrin模倣体、Norrinアゴニスト、およびFrizzled4アゴニストのスクリーニングに使用される代表的なアッセイである。
【0219】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、すべての目的のためにそれらの全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】Norrinは、HEK−293A細胞ではなくU2OS骨芽細胞様細胞におけるTCF−シグナル伝達を活性化する。一過性の同時形質移入アッセイは、TCF−luciレポーターおよびウミシイタケレポーターを用いて、ヒト胚性腎臓(HEK)HEK−293A細胞およびU2OS細胞中で行った。棒グラフは、pcDNAベクター中の異なるcDNA構築物を使用した種々の形質移入の間の応答を標準化する、TCF−luciの発光シグナルとウミシイタケシグナルの比を表す。
【図2】Frizzled4(Fz4)同時形質移入は、HEK−293A細胞におけるNorrin媒介性TCF−シグナルを誘発し、U2OS細胞においてそれを増大させる。棒グラフは、cDNAの種々の組合せを用いた、HEK−293A細胞およびU2OS細胞の一過性形質移入を使用して得られたTCF−luci応答の結果を示す。
【図3】Norrinに誘発されたLRP5−Fz4−TCF−シグナルは、U2OS細胞において、Dkk1およびKremen2により相乗的に阻害され得る。
【図4】Dkk1およびKremen2の存在下で、LRP5−G171V突然変異体(HBM表現型)を用いたNorrin媒介性TCFシグナルは、LRP5を用いたNorrin媒介性TCFシグナルほど阻害されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨または脂質を調整する作用物質を同定する方法であって、
(a)作用物質の存在下で、LRP5タンパク質または生物学的活性LRP5タンパク質と共に、Frizzled4タンパク質または生物学的活性Frizzled4ポリペプチド断片を提供するステップおよび
(b)前記作用物質が、Frizzled4もしくはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片および/またはLRP5もしくはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片と相互作用し、骨および/または脂質の少なくとも1つのパラメーターを調整するかどうかを決定するステップを含む方法。
【請求項2】
前記Frizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片は、前記LRP5タンパク質またはLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片に連結される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作用物質は、Norrin模倣体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
骨代謝または脂質代謝を調整する作用物質を同定する方法であって、
(a)前記作用物質の存在下で、LRP5タンパク質および/もしくはLRP6タンパク質またはLRP5および/もしくはLRP6の生物学的活性ポリペプチド断片に融合されたNorrinタンパク質または生物学的活性Norrinポリペプチド断片およびFrizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片を提供するステップおよび
(b)骨調整および/または脂質調整の少なくとも1つのパラメーターを、骨代謝または脂質代謝を調整する前記作用物質を同定するために測定するステップを含む方法。
【請求項5】
前記骨調整のパラメーターは、骨密度、骨強度、骨梁数、骨の大きさ、もしくは組織結合性またはそれらの任意の組合せである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質調整のパラメーターは、HDL、VLDL、コレステロール、トリグリセリド、apoE、またはLDLのレベルの変化である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定される骨パラメーターは、調整されるCOX−2、Jun、Fos、サイクリンD1、Wnt10B、SFRP1、コネキシン43、eNOS、Wnt10B、サイクリンD1、Frizzled2、およびWISP2のうちの1つまたは複数の発現の変更である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記測定される骨パラメーターは、調整されるCOX−2、Jun、Fos、サイクリンD1、Wnt10B、SFRP1、コネキシン43、およびeNOSのうちの1つまたは複数の発現の変更である、請求項1〜4および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Dkkタンパク質または生物学的活性Dkkポリペプチド断片をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Kremenタンパク質または生物学的活性Kremenポリペプチド断片をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Dkkタンパク質または生物学的活性Dkkポリペプチド断片をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Wntタンパク質または生物学的活性Wntポリペプチド断片をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Norrin−Frizzled4活性を調整する作用物質を同定する方法であって、
(a)前記作用物質、LRP5および/もしくはLRP6またはLRP5および/もしくはLRP6の生物学的活性ポリペプチド断片に融合した、またはLRP5のポリペプチド断片を含有するリガンド結合ドメイン(LBD)に融合したNorrinタンパク質またはNorrinの生物学的活性ポリペプチド断片およびFrizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチド断片ならびに
(i)Kremenタンパク質および/または
(ii)Dkkタンパク質
を提供するステップおよび
(b)前記作用物質が、Norrin−Frizzled4活性を調整するかどうかを決定するステップを含む方法。
【請求項14】
前記作用物質は、Norrin模倣体、Dkkアンタゴニスト、またはKremenアンタゴニストである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数のタンパク質は基体上に添加される請求項1〜4および13〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
骨調整または脂質調整を調節する作用物質を同定する方法であって、
(a)Frizzled4およびLRP5を発現する細胞に前記作用物質を投与するステップであって、Frizzled4は、Frizzled4タンパク質または生物学的活性Frizzled4ポリペプチドであり、LRP5は、LRP5タンパク質またはLRP5の生物学的活性ポリペプチドであるステップ、
(b)前記作用物質の投与が、LRP5−Frizzled4相互作用を調整するかどうかを決定するステップ、および
(c)前記作用物質が、骨パラメーターまたは脂質パラメーターを調整するかどうかを決定するステップを含む方法。
【請求項17】
前記作用物質は、Norrin模倣体、Dkkアンタゴニスト、またはKremenアンタゴニストである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞は、Norrinを発現しない請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞は、非内在性のFrizzled4、LRP5、および/またはNorrinを発現する請求項16に記載の方法。
【請求項20】
骨調整または脂質調整を調節する作用物質を同定する方法であって、
(a)LRP5、Norrin、およびFrizzled4を発現する細胞に前記作用物質を投与するステップであって、LRP5は、LRP5タンパク質または生物学的活性LRP5ポリペプチドであり、Norrinは、Norrinタンパク質または生物学的活性Norrinポリペプチドであり、Frizzled4は、Frizzled4タンパク質またはFrizzled4の生物学的活性ポリペプチドであるステップ、
(b)前記作用物質の投与が、Norrin−Frizzled4相互作用を調整するかどうかを決定するステップ、および
(c)前記作用物質が、骨調整または脂質調整のパラメーターを調整するかどうかを決定するステップを含む方法。
【請求項21】
前記細胞は、非内在性のNorrin、LRP5、および/またはFrizzled4を発現する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞は、内在性Norrinを発現しない請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記作用物質は、Norrin模倣体、Dkkアンタゴニスト、またはKremenアンタゴニストである請求項20に記載の方法。
【請求項24】
LRP5は、Frizzled4と共に融合ポリペプチドとして同時発現される請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞は、脊椎動物細胞である請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は、骨細胞、腎臓細胞、間葉系細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、またはアフリカツメガエル細胞である請求項20および25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記脂質調整のパラメーターは、HDL、VLDL、コレステロール、apoE、および/もしくはLDLまたはそれらの任意の組合せのレベル変化である請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記骨調整のパラメーターは、骨密度、骨強度、骨梁数、骨の大きさ、もしくは組織結合性またはそれらの任意の組合せである請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記骨調整のパラメーターは、COX−2、Jun、Fos、サイクリンD1、Wnt10B、SFRP1、コネキシン43、eNOS、Wnt10B、サイクリンD1、Frizzled2、およびWISP2のうちの1つまたは複数の前記作用物質の投与により誘発された発現の変更であり、前記作用物質の前記投与により調整される請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記骨調整のパラメーターは、COX−2、Jun、Fos、サイクリンD1、Wnt10B、SFRP1、コネキシン43、およびeNOSのうちの1つまたは複数の前記作用物質の投与により誘発された発現の変更である請求項20および29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
他の一連の細胞は、Norrin−Frizzled4およびDkkを同時発現し、前記作用物質がNorrin−Frizzled4のDkkによる阻害を調整するかどうかを決定する請求項20に記載の方法。
【請求項32】
他の一連の細胞は、Norrin、Frizzled4、およびKremenを同時発現し、前記作用物質がNorrin−Frizzled4のKremenによる阻害を調整するかどうかを決定する請求項20に記載の方法。
【請求項33】
他の一連の細胞は、Norrin、Frizzled4、Kremen、およびDkkを発現し、前記作用物質が、Norrin−Frizzled4のKremenおよび/またはDkkによる阻害を調整するかどうかを決定する請求項20に記載の方法。
【請求項34】
他の一連の細胞は、Norrin、Frizzled4、Wnt、およびDkkを発現し、前記作用物質が、Norrin−Frizzled4のDkkによる阻害を調整するかどうか決定する請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記Dkkは、Dkk1、Dkk2、Dkk3、もしくはDkk4またはDkk1、Dkk2、Dkk3、もしくはDkk4の生物学的活性ポリペプチドである請求項9、11、13〜15、17、23、31、33、および34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
Kremenは、Kremen1もしくはKremen2またはKremen1もしくはKremen2の生物学的活性ポリペプチドである請求項10、32、および33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞におけるLRP5活性の増大について前記作用物質をスクリーニングするステップをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞は、骨細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、幹細胞、または腎臓細胞である請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記骨細胞は、KHOS/NP細胞、KHOS−240S細胞、KHOS−321H細胞、DSDh細胞、VA−ES−BJ細胞、7F2細胞、U2OS細胞、HOSTE85細胞、ROS細胞、MC3T3−E6細胞、UMR−106細胞、Saos2細胞、MG63細胞、またはHOB細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記骨細胞は、U2OS細胞である請求項38および39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞およびC3H10T1/2細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記間葉系幹細胞は、ヒト成人間葉系幹細胞である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記腎臓細胞は、HEK293A細胞またはHEK293T細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項44】
動物に前記作用物質を投与するステップ、および前記作用物質が、前記動物における骨量の変化を誘発するかどうかを決定するステップをさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項45】
前記動物は、トランスジェニック動物である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記トランスジェニック動物は、LRP5またはHBMトランスジェニック動物である請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記トランスジェニック動物は、Norrinノックアウト動物またはFrizzled4ノックアウト動物である請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記動物は、マウスである請求項44〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
Wntは、Wnt1〜Wnt19である請求項12または34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
Wntは、Wnt1、Wnt3、Wnt3a、またはWnt10bである請求項12、34、および49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
LRP5−Norrin−Frizzled4活性を調整する作用物質を同定するためのキットであって、
(a)Frizzled4およびLRP5またはFrizzled4およびLRP5の生物学的活性ポリペプチド断片をコードする核酸で同時形質移入された、Norrinを発現することができない一連の細胞、
(b)任意選択で、Frizzled4およびLRP5またはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのDkk核酸、
(c)任意選択で、Frizzled4およびLRP5もしくはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのならびに/またはFrizzled4、LRP5、およびDkkもしくはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのKremen核酸、
(d)任意選択で、Frizzled4およびLRP5または生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのLRP6核酸、および
(e)任意選択で、Frizzled4およびLRP5またはそれらの生物学的活性ポリペプチド断片を同時発現する一連の細胞における同時発現のためのWnt核酸、
を含むキット。
【請求項52】
前記細胞は、脊椎動物細胞である請求項51に記載のキット。
【請求項53】
LRP5−Norrin−Frizzled4活性の調整を測定するためのレポーター系をさらに含む請求項51に記載のキット。
【請求項54】
Dkkは、Dkk1、Dkk2、Dkk3、またはDkk4であり、Kremenは、Kremen1またはKremen2である請求項51に記載のキット。
【請求項55】
前記脊椎動物細胞は、骨細胞、脂肪細胞、腎臓細胞、アフリカツメガエル細胞、または幹細胞である請求項52に記載のキット。
【請求項56】
前記骨細胞は、KHOS/NP細胞、KHOS−240S細胞、KHOS−321H細胞、DSDh細胞、VA−ES−BJ細胞、7F2細胞、U2OS細胞、HOSTE85細胞、ROS細胞、MC3T3−E6細胞、UMR−106細胞、Saos2細胞、MG63細胞、およびHOB細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記腎臓細胞は、HEK293A細胞またはHEK293T細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項58】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞およびC3H10T1/2細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項59】
前記骨細胞は、U2OS細胞である請求項55および56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項60】
Wntは、Wnt1〜Wnt19である請求項51に記載のキット。
【請求項61】
Wntは、Wnt1、Wnt3、Wnt3a、またはWnt10bである請求項51および60のいずれか一項に記載のキット。
【請求項62】
前記作用物質が、脊椎動物中の脂質を調整するかどうかを決定するステップを含む請求項1〜4、13、16、または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記作用物質が、脊椎動物中の骨を調整するかどうかを決定するステップを含む請求項1〜4、13、16、または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
天然Norrinを欠き、非天然LRP5および非天然Frizzled4を発現する細胞または細胞株であって、前記非天然LRP5は、非天然LRP5タンパク質またはその生物学的活性断片であり、前記非天然Frizzled4は、非天然Frizzled4タンパク質またはその生物学的活性断片である細胞または細胞株。
【請求項65】
前記非天然LRP5および/または非天然Frizzled4は安定的に発現される請求項64に記載の細胞株。
【請求項66】
非天然Dkkおよび/もしくは非天然Kremenまたは非天然Dkkもしくは非天然Kremenの生物学的活性ポリペプチド断片をさらに発現する請求項64に記載の細胞株。
【請求項67】
前記非天然Dkkは、Dkk1、Dkk2、Dkk3、またはDkk4であり、前記非天然Kremenは、Kremen1またはKremen2である請求項64の細胞株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−525754(P2009−525754A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554308(P2008−554308)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/003236
【国際公開番号】WO2007/092487
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】