説明

O−結合型糖アミノ酸

【課題】 糖鎖分析用の標準サンプル等として有用な新規なO−結合型糖アミノ酸及びその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】 下記式(I):
【化1】


[式中、
Rは、
【化2】


等であり;
Xは、水素等であり;
Yは、水素等であり;
、Zはそれぞれ独立して水素等であり;
但し、XとYは同時に水素となることはない。]
で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々のO−結合型糖アミノ酸の合成のための出発化合物として有用な糖アミノ酸、及びそれを用いるO−結合型糖アミノ酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のゲノム研究の発展により、核酸とタンパク質に関する研究は急速に発展した。タンパク質が実際に機能するためには正しくフォールディングし、特定の部位へ輸送される必要があるが、これに糖鎖が深く関わっていることが近年報告され、その詳細な機構の解明が期待されている。さらに、特定の部位に配置されたタンパク質が様々な相互作用を利用して機能する場面においても、多くの場合、糖鎖との相互作用は避けて通ることのできない重要な情報伝達経路である。
【0003】
このようにポストゲノム分野において糖鎖はきわめて重要な役割を果たしているにもかかわらず、その詳細な機能の解明はあまり進んでいない。その主な理由として糖鎖はタンパク質などとの複合体として機能していることが多く、さらに特定のタンパク質に特定の糖鎖が修飾されるわけではなく、加齢、病変などに伴いその糖鎖構造は多様に変化することがあげられる。また、特定のタンパク質上の糖鎖構造の変化を測定する技術に関してもまだ有力なものは開発されていない。
【0004】
糖鎖の機能をより詳細に解明するには、まず、構造が明確で純粋な(均一な)複合糖質サンプルを容易にしかも迅速に合成できなければならない。
【0005】
しかしながら、現在のところ標準糖鎖として入手可能な糖タンパク質関連糖鎖はほぼN−結合型糖アミノ酸のものに限られており(例えば、特開2001−115616号公報、特開平11−255807号公報)、O−結合型糖アミノ酸の標準サンプルは入手は非常に困難である。一部のO−結合型糖アミノ酸について報告されているが、その簡便な合成法についは知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−255807号公報
【特許文献2】特開2001−115616号公報
【非特許文献1】Y.Nakahara et al., Tetrahedron, 59, 8415-8427(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多様な糖鎖を有する種々のO−結合型糖アミノ酸の簡便な製造方法及びそのための原料化合物、並びに新規なO−結合型糖アミノ酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の糖アミノ酸を出発化合物として用い、これに糖転移酵素を作用させることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)下記式(I):
【化1】

[式中、
Rは、
【0010】
【化2】

であり;
X、Yは、それぞれ独立して、水素、単糖残基又はオリゴ糖残基であり;
Zは、水素、アミノ基の保護基又は標識基であり;
Zは、ヒドロキシル基、カルボキシル基の保護基、活性化基又は標識基である。]
で表される化合物。
但し、X及びYが同時に水素となることはなく、また下記化合物を除く:
【0011】
【化3】

【0012】
(2)Rは、
【化4】

であり;
X及びYは、それぞれ独立して、水素、
【0013】
【化5】

であり;
Zは、ヒドロキシル基、
【0014】
【化6】

であり;
、R及びR6’は、互いに独立して、水素、又は
【0015】
【化7】

であり;
3’及びR3”は、互いに独立して、水素又は、
【0016】
【化8】

であり;
nは1〜20までの整数である;
の前記(1)記載の化合物。
【0017】
(3)下記式:
【化9】



で表される前記(1)記載の化合物。
【0018】
(4)下記式:
【化10】


で表される前記(1)記載の化合物。
【0019】
(5)前記(1)記載の式(I)の化合物を出発原料として用いるO−結合型糖アミノ酸の製造方法。
(6)糖供与体の存在下で、前記(1)記載の式(I)の化合物に糖転移酵素を作用させて、式(I)の化合物の糖鎖を伸長することを特徴とするO−結合型糖アミノ酸の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法によれば、特定のコア構造を有する糖アミノ酸を出発化合物として、これに糖転移酵素を作用させることにより、糖鎖が均一なO−結合型糖アミノ酸を容易に得ることができる。また、本発明の新規なO−結合型糖アミノ酸は、糖鎖分析用の標準サンプルとして、又はタンパク質との相互作用解析用サンプル等として有用である。さらには、本発明のO−結合型糖アミノ酸は、これ自体を原料とし、糖転移酵素を作用させることにより糖鎖を伸長させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、下記式(I):
【化11】

であらわされ、式中、
Rは、
【0022】
【化12】

である。
【0023】
上記X及びYとしては、互いに独立して、水素、糖残基又は2〜30糖の糖鎖が挙げられる。前記糖残基又は2〜30糖の糖鎖としては、単糖及びオリゴ糖(2〜30糖、好ましくは2〜15糖、さらに好ましくは2〜10糖)のいずれでもよく、また、各構成糖はペントース、ヘキソース及びヘプトース等のいずれであってもよい。3糖以上のオリゴ糖鎖である場合には直鎖状糖鎖及び分岐状糖鎖のいずれでもよい。前記糖残基又は糖鎖は、その水酸基の1つ以上が硫酸基、リン酸基、メチル基及び/又はアセチル基により置換されていてもよい。前記糖残基又は糖鎖の糖鎖構造は天然型および非天然型のいずれでもよい。
【0024】
前記糖残基又は糖鎖の具体例としては、例えば、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、マンノース、ガラクトース、グルコース、フコース、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコイルノイラミン酸、N−アセチルラクトサミン、リボース、ラクトース、マルトース等の単糖類、並びにこれらの構成糖単位を含み直鎖状又は分岐状に結合したオリゴ糖が挙げられる。
【0025】
Zは水素、アミノ基の保護基、又は標識基である。アミノ基の保護基としては例えば、9−フルオレニルオキシカルボニル基(Fmoc基)、ベンジルオキシカルボニル基、第3ブチルオキシカルボニル基等が挙げられ、特にFmoc基が好ましい。また、標識基としては発色団、蛍光基又は放射性同位体が挙げられる。
【0026】
Zはヒドロキシル基、カルボキシル基の保護基、標識基、又はカルボキシル基の活性化基である。通常は遊離酸(即ち、Zはヒドロキシル基)の状態で使用されるが、必要に応じて発色団、蛍光基、放射性同位体等の標識基を導入してもよく、ペプチド合成を行う場合には、保護基により保護したり、活性化してもよい。カルボキシル基の活性化基とは、カルボキシル基のカルボニル炭素の反応性を高める目的で導入される官能基である。カルボキシル基の保護基及び活性化基Rとしては、例えば、−OR(エステル:−COORとして)、Pfp(ペンタフルオロフェニル基)、フッ素基、S−アルキル基及びS−アリール基(チオエステル:−COSRとして)等が挙げられる。ここで、前記Rは低級アルキル又はアリール基である。
【0027】
本明細書で言う発色団とはUV−VIS(可視)領域の電磁波(200〜800nmが好ましい)を吸収する官能基であり、蛍光基とはUV−VIS領域の電磁波を吸収することによりVIS領域の電磁波(300〜900nmが好ましい)を発する官能基を指す。そのような発色団及び蛍光基の具体例としては、例えば、フルオレセイン基、ダンシル基、AMCA基、DIDS基、ピリジルアミノ基、ローダミン基、テトラメチルローダミン基、クマリン基、7−メトキシクマリン基、ピレン基、NBD基等が挙げられる。
【0028】
但し、本発明の化合物は、式(I)においてX及びYが同時に水素となることはなく、また下記化合物は除外される:
【0029】
【化13】

式(I)において、好ましい置換基は以下のとおりである。
【0030】
好ましくは、Rは
【化14】

である。
【0031】
好ましくは、X、Yは、それぞれ独立して、水素、
【化15】

である。
【0032】
好ましくは、前記Zは、水素、
【化16】

である。
【0033】
好ましくは、前記R、R及びR’は、互いに独立して、水素又は、
【化17】

である。
【0034】
好ましくは、前記R'及びR3”は、互いに独立して、水素又は、
【化18】

である。
【0035】
好ましくは、前記nは1〜20までの整数である。
本発明のO−結合型糖アミノ酸は糖転移酵素を用いて製造することができる。出発化合物としては、特に限定されるものではないが、以下のコア構造を有する糖アミノ酸:
【0036】
【化19】

が好ましい。
【0037】
Core2と呼ばれる分岐型3糖を有する上記糖アミノ酸化合物1から出発して、糖転移酵素を用いて、例えば、以下のようなスキームにより多様なO−結合型糖アミノ酸を製造することができる。
【0038】
【化20】


【0039】
以下に、上記化合物1を出発化合物とする本発明のO−結合型糖アミノ酸の製造方法について例を示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、生成したO−結合型糖アミノ酸の分離精製及び分析感度の点から、そのアミノ基部位は非極性の置換基であるFmoc基が望ましい。
【0040】
糖転移酵素としては、例えば、グルコース転移酵素(GlcT)、ガラクトース転移酵素(GalT)、N-アセチルグルコサミン転移酵素(GlcNAcTまたはGnT)、N-アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAcT)、グルクロン酸転移酵素(GlcAT)、マンノース転移酵素(ManT)、フコース転移酵素(FucT)、シアル酸転移酵素(SiaT)、キシロース転移酵素(XylT)、ガラクツロン酸転移酵素(GalAT)等が挙げられ、より具体的には、β−1,4−GlcT、α−1,2−GlcT、α−1,3−GlcT、α−1,4−GlcT、β−1,2−GlcNAcT、β−1,3−GlcNAcT、β−1,4−GlcNAcT、β−1,6−GlcNAcT、β−1,3−GalNAcT、β−1,4−GalNAcT、β−1,6−GalNAcT、α−1,2−GalNAcT、α−1,3−GalNAcT、α−1,4−GalNAcT、α−1,6−GalNAcT、β−1,4−GalT、β−1,3−GalT、α−1,4−GalT、α−1,3−GalT、α−1,2−ManT、α−1,3−ManT、α−1,6−ManT、α−2,3(O)−SiaT、α−2,3(N)−SiaT、α−2,3−SiaT、α−2,6(N)−SiaT、α−2,6−SiaT、α−2,3/8−SiaT、α−2,8−SiaT、α−2,8/9−SiaT、α−1,2−FucTI、α−1,2−FucTII、α−1,3/4−FucTIII、α−1,3/4−FucTIII、α−1,3−FucTIV、α−1,3−FucTV、α−1,3−FucTVI、α−1,3−FucTVII、α−1,6−FucTVIII、α−1,3−FucTIX、α−1,4−GalAT、α−1,3−XylT、β−1,2−XylT等が挙げられる。
【0041】
本発明に用いる糖鎖供与体としては、糖転移酵素の基質となり得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、UDP−Glc、UDP−Gal、UDP−GlcNAc、UDP−GalNAc、UDP−GlcA、UDP−GalA、UDP−Xyl、GDP−Glc、GDP−Man、GDP−Fuc、CMP−NeuAc、及びこれらのナトリウム塩等が挙げられる。また、酵素的あるいは化学的に修飾された糖鎖、あるいは化学合成された糖鎖も用いることができる。
【0042】
本発明の反応は、基質の糖供与体、糖受容体である糖アミノ酸及び糖転移酵素を緩衝溶液中で混合することにより行われる。通常、糖供与体の濃度を1mM以上、好ましくは10〜100mM、糖アミノ酸の濃度を0.1mg/ml以上、好ましくは1.0〜20mg/mlになるように加える。酵素量は、好ましくは0.1〜500mU、さらに好ましくは5〜200mU程度の量で用いる。緩衝液としては、pH5〜10程度、濃度10〜200mM、好ましくは20〜100mMの適当な緩衝液(例えば、HEPES、MES緩衝液)が用いられる。また、必要に応じて金属塩を追加してもよい。添加できる金属塩としてはMg、Mn、Ca、Co、Zn、Cu等があり、通常塩化物等の形で添加することができる。
【0043】
反応温度は通常、酵素の至適温度、例えば、10〜50℃程度、好ましくは20〜40℃で行われ、反応時間は1〜48時間、好ましくは1〜24時間程度である。
【0044】
生成したO−結合型糖アミノ酸は公知の手段に従って反応終了液から容易に分離精製することができる。例えば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により反応終了液から反応生成物のO−結合型糖アミノ酸を分離し、更に必要に応じて濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
さらに糖鎖を伸長する場合には、上記の操作を繰り返し行えばよい。
【0045】
このように作用させる糖転移酵素の種類、順番を変えることにより、さまざまな構造のO−結合型糖アミノ酸を調製することができる。
【0046】
上記の方法により、例えば、以下のようなO−結合型糖アミノ酸を製造できる:
このような化合物の具体例としては、以下の化合物:
【0047】
【化21】



が挙げられる。
【0048】
また、本発明の化合物のアミノ酸残基(即ち、トレオニン又はセリン)に他のアミノ酸を結合してペプチドを形成してもよい。
【0049】
ペプチド鎖を形成するには公知のペプチド合成反応を利用して行うことができる。例えば、公知の縮合剤(例えば、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ジエチルホスホリルシアニデート、アジドトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩等の有機リン化合物、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジハイドロキノリン(EEDQ)、1−イソブチル−2−イソブチル−1,2−ジヒドロキシキノリン等のキノリン系ペプチド縮合剤、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、DCC等のカルボジイミド類等)を用いて、本発明の化合物のトレオニン又はセリン残基のアミノ基又はカルボキシル基に、順次アミノ酸を結合していくことによりペプチド鎖を伸長することができる。また、マイクロ波を照射しながら行ってもよい。本明細書で言う「マイクロ波」とは波長約0.3〜30cm程度の電磁波(1〜100GHzに相当する)のことをいう。マイクロ波の波長としては、好ましくは2300〜2600MHzであるが、さらに好ましくは2350〜2550MHz、特に好ましくは2400〜2500MHzである。
【0050】
このペプチド合成は固相反応により行ってもよく、例えば、固相担体に本発明の化合物のN末端アミノ基又はC末端カルボキシル基を結合して(例えば、C末端のカルボキシル基をクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、p−アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合する)、通常の固相合成反応と同様にして行うことができる。
【実施例】
【0051】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0052】
HPLCによる生成物の分析
以下に示される条件で分析を行った。また、生成物の分取も同条件で行った。
カラム:Inertsil ODS−3(GLサイエンス製、内径4.6mm、長さ250mm)
移動相:A:0.1%トリフロロ酢酸、B:アセトニトリル(0.1%トリフロロ酢酸)
0→5min A:B=85:15
5→35min A:B=85:15→45:55
35→35.1min A:B=45:55→10:90
35.1→45min A:B=10:90
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
検出:UV254nm
参考例 コア(Core)2トレオニン誘導体の調製
下記の合成スキームにしたがってコア2トレオニン誘導体(化合物8)を調製した。
【0053】
【化22】

【0054】
化合物(1)の合成
3,4,6−トリ−O−アセチル−D−ガラクタール(68.9g)を乾燥アセトニトリル(1000ml)に溶かし、−20℃に冷却した。−20℃まで冷えたらセリウムアンモニウムナイトレート(216g)及びアジ化ナトリウム(13.0g)を加え、−20℃で激しく攪拌した。1時間後、さらにセリウムアンモニウムナイトレート(200g)及びアジ化ナトリウム(11.7g)を加え、−20℃で攪拌した。6時間後、反応液にエーテルと水とを加え、分液操作により有機層を集め、水層からエーテルで2回抽出操作を行った。有機層を集め、硫酸マグネシウム乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲル(200g)を充填したショートカラムに加え、ヘキサン−酢酸エチル(1:1)で溶出した。得られた粗生成物画分を集め、濃縮し、その残渣をアセトン−水(1:1)混合液(1000ml)に溶かし、これに炭酸カルシウム(25g)を加え、室温で3日間攪拌した。反応懸濁液からカルシウム塩を濾別したのち、濾液を半量になるまで濃縮し、酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機層を乾燥、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[トルエン−酢酸エチル(2:1)]により精製し、化合物(1)(43g、52%)を得た。化合物(1):Rf0.3[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0055】
化合物(2)の合成
化合物(1)(4.05g)とトリクロロアセトニトリル(2.45ml)とのジクロロメタン(40ml)溶液に無水炭酸カリウム(1.69g)を加え、室温で7時間激しく攪拌した。炭酸カリウムをセライトろ過により濾別した後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[トルエン−酢酸エチル−トリエチルアミン(150:50:1)]により精製し、化合物(2)(4.6g、79%)を得た。化合物(2):Rf0.4[トルエン−酢酸エチル−トリエチルアミン(150:50:1)]。
【0056】
化合物(3)の合成
化合物(2)(25.0g)とN−α−Fmoc−L−トレオニン−t−ブチルエステル(11.4g)をジクロロメタン−エーテル(1:1)の乾燥混合液(200ml)に溶かし、−30℃に冷却した後、TMSOTf(516μl)を滴下した。反応液を−30℃で30分間攪拌した後、トリエチルアミン(400μl)で中和し、クロロホルムで希釈した後、0.1M 塩酸で洗浄、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を順次行った。残渣を減圧乾燥した後、乾燥メタノールに溶かし、これに、pH8〜9の範囲に保つように注意しながら0.5M ナトリウムメトキシドメタノール溶液を滴下した。TLCで目的物(Rf0.5;酢酸エチル)の蓄積を確認した後、反応液に酢酸(2.0ml)を加え、減圧濃縮した。次に、残渣をクロロホルムに溶かし、飽和炭酸水素ナトリウム水、水で順次洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し、減圧乾燥した。続いて、残渣を乾燥アセトニトリルに溶かし、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(8.5ml)とCSA(200mg)を加え、室温で3時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水を加え、この懸濁液からクロロホルムで3回抽出した。抽出液を硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(3:2)]により精製し、化合物(3)(7.2g、38%)を得た。化合物(3):Rf0.6[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0057】
化合物(4)の合成
化合物(3)(200mg)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−ガラクトーストリクロロアセトイミデート(200mg)のジクロロメタン(4ml)溶液を0℃に冷却し、TMSOTf(11μl)を滴下した。0℃で時間攪拌した後、反応液にトリエチルアミン(8μl)を加え、反応液に0.1M塩酸を加えた。有機層の分液及び水層のクロロホルム抽出を行った後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]により精製し、化合物(4)(249mg、84%)を得た。化合物(4):Rf0.4[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0058】
化合物(5)の合成
化合物(4)(224mg)を80%酢酸水に溶かし、80℃で2時間攪拌した。反応液の濃縮、トルエン共沸を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]により精製し、化合物(5)(176mg、86%)を得た。化合物(5):Rf0.2[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]。
【0059】
化合物(6)の合成
化合物(5)(1.71g)と3,4,6−トリ−O−アセチル−N−(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル)−D−グルコサミントリクロロイミデート(2.28g)の乾燥ジクロロメタン(50ml)溶液を−40℃に冷却し、TMSOTf(48μl)を滴下した。10分後、反応液にトリエチルアミン(38μl)を加え、反応液に0.1M塩酸を加えた。有機層の分液及び水層のクロロホルム抽出を行った後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:2)]により精製し、化合物(6)(3.15g、92%)を得た。化合物(6):Rf0.6[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]。
【0060】
化合物(7)の合成
化合物(6)(3.5g)及び酢酸(8.0ml)の酢酸エチル溶液(60ml)に亜鉛粉末(19g)を加え、激しく攪拌した。30分後、反応液に無水酢酸(8.0ml)を加え、さらに30分間攪拌した。未反応の亜鉛末をセライトろ過により濾別した後、濾液を0.1M塩酸及び水で順次洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮した。残渣にシリカゲルカラムクロマトグラフィー[アセトン−ヘキサン(2:1)]を行い(7)の粗生成物(3.0g、94%)を得た。さらにクロロホルム−ヘキサンより3回再結晶することにより化合物(7)の精製物(1.9g、60%)を得た。化合物(7):Rf0.3[アセトン−ヘキサン(2:1)]。
【0061】
化合物(8)の合成
化合物(7)(1.8g)を95%TFAに溶かし、室温で1時間攪拌した。反応液をトルエンで希釈した後濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行い、化合物(8)(1.7g、100%)を得た。化合物(8):Rf0.5[クロロホルム−メタノール(4:1)]。化合物8の水酸基を保護するアセチル基を定法により脱保護して、以下の実施例で使用する化合物1を得た。
【0062】
実施例1 化合物2の合成
【化23】

【0063】
β1,4−GalT(東洋紡製)を100mU/ml、UDP−Galを25mM、MnClを10mM、BSAを0.1%含む50mMHEPES緩衝液(pH7.0)1mlに化合物1を4.6mg加え、25℃で24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応を停止した。反応液1μlを蒸留水で50倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物1に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物4.3mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、1094.3[M+Na](理論値[M+Na]=1094.4)にピークが検出され、化合物2であることが確認された。
【0064】
実施例2 化合物3及び6の合成
【化24】

【0065】
Glycobiology, 9, 1061-1071(1999)に従って調製したNeisseria menigitidis MC58株(ATCC BAA-335D)由来のβ1,3-GlcNAcTを30mU/ml、UDP−GlcNAcを5mM、MgClを10mM、MnClを10mM、BSAを0.01%含む100mMグリシン緩衝液(pH10.0)2mlに実施例1で得られた化合物2を2.2mg加え、20℃で24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応を停止した。反応液5μlを蒸留水で10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物2に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物2.0mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、1296.3[M+Na](理論値[M+Na]=1097.5)にピークが検出され、化合物3であることが確認された。
なお、同様に48時間反応した後、熱処理したサンプルをHPLCで分析したところ、化合物3に対応するピークの他に新たなピークの出現が確認された。HPLCを用いて当該ピークを分取し、凍結乾燥後、得られた生成物を 2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、化合物6(理論値[M+Na]=1500.5)に対応するにピーク 1499.5[M+Na]を確認した。
【0066】
実施例3 化合物4の合成
【化25】

【0067】
Neisseria meningitidis MC58株由来β1,3−GlcNAcTを30mU/ml、UDP−GlcNAcを5mM、MgClを10mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMグリシン緩衝液(pH10.0)1mlに化合物1を1.0mg加え、20℃で24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応を停止した。反応液1μlを蒸留水で10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物1に相当するピークの他に、生成物に由来する新たなピークの出現を確認した。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥し、これを2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、化合物4(理論値[M+Na]=1135.4)に対応するにピーク 1135.4[M+Na]を確認した。
【0068】
実施例4 化合物5の合成
【化26】

【0069】
α2,3(O)−SiaT(カルビオケム社製)を169mU/ml、CMP−NeuAcを25mM、MgClを10mM、トリトンCF−54を0.1%、BSAを0.1%含む50mMHEPES緩衝液(pH7.0)1mlに化合物1を4.6mg加え、25℃で24時間反応させた。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物1に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物4.8mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1223.2[M+Na](理論値[M+Na]=1223.4)にピークが検出され、化合物5であることが確認された。
【0070】
実施例5 化合物7の合成
【化27】

【0071】
α2,3(N)−SiaT(カルビオケム社製)を20mU/ml、CMP−NeuAcを25mM、MgClを10mM、トリトンCF−54を0.1%、BSAを0.1%含む50mMMES緩衝液(pH6.5)1mlに実施例1で得た化合物2を5.4mg加え、25℃で2時間反応させた。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物2に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物5.4mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1386.3[M+Na](理論値[M+Na]=1385.5)にピークが検出され、化合物7であることが確認された。
【0072】
実施例6 化合物8の合成
【化28】

【0073】
化合物1に代えて実施例1で得た化合物2を5.4mg用いる以外は実施例4と同様の方法で反応を行った。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物2に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピーク(但し、実施例5の生成物とは異なる保持時間)が確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物5.5mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1385.4[M+Na](理論値[M+Na]=1385.5)にピークが検出され、化合物8であることが確認された。
【0074】
実施例7 化合物9の合成
【化29】

【0075】
化合物2に代えて実施例6で得た化合物8を6.8mg用いる以外は実施例5と同様の方法で反応を行った。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物8に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物6.6mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1677.2[M+Na](理論値[M+Na]=1676.6)にピークが検出され、化合物9であることが確認された。
【0076】
実施例8 化合物9の合成
【化30】

【0077】
化合物2に代えて実施例5で得た化合物7を6.8mg用いる以外は実施例6と同様の方法で反応を行った。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物7に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピーク(実施例7の生成物と同じ保持時間)が確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物6.5mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1676.9[M+Na](理論値[M+Na]=1676.6)にピークが検出され、化合物9であることが確認された。
【0078】
実施例9 化合物10の合成
【化31】

【0079】
α1,3−FucTV(カルビオケム社製)を50mU/ml、GDP−Fucを25mM、MnClを20mM、トリトンCF−54を0.1%、BSAを0.1%含む50mMHEPES緩衝液(pH7.5)1mlに実施例7で得た化合物9を8.3mg加え、25℃で24時間反応させた。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物9に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物7.2mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1824.0[M+Na](理論値[M+Na]=1824.6)にピークが検出され、化合物10であることが確認された。
【0080】
実施例10 化合物11の合成
【化32】

【0081】
化合物9に代えて実施例5で得た化合物7を6.8mg用いる以外は実施例7と同様の方法で反応を行った。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物7に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物6.0mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1533.1[M+Na](理論値[M+Na]=1533.5)にピークが検出され、化合物11であることが確認された。
【0082】
実施例11 化合物12の合成
【化33】

【0083】
化合物9に代えて実施例6で得た化合物8を6.8mg用いる以外は実施例9と同様の方法で反応を行った。反応後、実施例1と同様の方法で反応の停止及びHPLC分析を行った。その結果、原料である化合物8に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピーク(但し、実施例10の生成物とは異なる保持時間)が確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物5.9mgを得た。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法でMALDI−TOF−MS分析したところ、1532.8[M+Na](理論値[M+Na]=1533.5)にピークが検出され、化合物12であることが確認された。
【0084】
実施例12 化合物13の合成
【化34】

【0085】
β1,4−GalT(東洋紡製)を100mU/ml、UDP−Galを5mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMHEPPES緩衝液(pH7.0)1.5mlに化合物3を1.9mg加え、25℃、24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応液5μlを10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物3に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物1.8mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、1446.5[M+Na](理論値[M+Na]=1445.5)にピークが検出され、化合物13であることが確認された。
【0086】
実施例13 化合物14の合成
【化35】

【0087】
Neisseria meningitidis MC58株由来β1,3−GlcNAcTを30mU/ml、UDP−GlcNAcを5mM、MgClを10mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMグリシン緩衝液(pH10.0)1mlに化合物13を1.6mg加え、20℃で24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応を停止した。反応液2μlを蒸留水で10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物13に相当するピークはほぼ消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物1.5mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、1648.2[M+Na](理論値[M+Na]=1648.6)にピークが検出され、化合物14であることが確認された。
【0088】
実施例14 化合物15の合成
【化36】

【0089】
β1,4−GalT(東洋紡製)を100mU/ml、UDP−Galを5mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMHEPPES緩衝液(pH7.0)0.8mlに化合物14を1.3mg加え、25℃、24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応液2μlを10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物14に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物1.3mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、1810.6[M+Na](理論値[M+Na]=1810.6)にピークが検出され、化合物15であることが確認された。
【0090】
実施例15 化合物16の合成
【化37】

【0091】
Neisseria meningitidis MC58株由来β1,3−GlcNAcTを30mU/ml、UDP−GlcNAcを5mM、MgClを10mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMグリシン緩衝液(pH10.0)0.8mlに化合物15を1.1mg加え、20℃で24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応を停止した。反応液2μlを蒸留水で10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物15に相当するピークと共に、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物0.4mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、2013.9[M+Na](理論値[M+Na]=2013.7)にピークが検出され、化合物16であることが確認された。
【0092】
実施例16 化合物17の合成
【化38】

【0093】
β1,4−GalT(東洋紡製)を100mU/ml、UDP−Galを5mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMHEPPES緩衝液(pH7.0)0.3mlに化合物16を0.3mg加え、25℃、24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応液2μlを10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物16に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物0.3mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、2175.8[M+Na](理論値[M+Na]=2175.8)にピークが検出され、化合物17であることが確認された。
【0094】
実施例17 化合物18の合成
【化39】

【0095】
β1,4−GalT(東洋紡製)を100mU/ml、UDP−Galを5mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMHEPPES緩衝液(pH7.0)1.0mlに化合物6を1.3mg加え、25℃、24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応液2μlを10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物6に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物1.5mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、1810.5[M+Na](理論値[M+Na]=1810.6)にピークが検出され、化合物18であることが確認された。
【0096】
実施例18 化合物19の合成
【化40】

【0097】
Neisseria meningitidis MC58株由来β1,3−GlcNAcTを30mU/ml、UDP−GlcNAcを5mM、MgClを10mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMグリシン緩衝液(pH10.0)0.8mlに化合物18を1.3mg加え、20℃で24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応を停止した。反応液2μlを蒸留水で10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物18に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物1.4mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、2216.9[M+Na](理論値[M+Na]=2216.8)にピークが検出され、化合物19であることが確認された。
【0098】
実施例19 化合物20の合成
【化41】

【0099】
β1,4−GalT(東洋紡製)を100mU/ml、UDP−Galを5mM、MnClを10mM、BSAを0.1mg/ml含む50mMHEPPES緩衝液(pH7.0)0.8mlに化合物19を1.0mg加え、25℃、24時間反応させた。反応後、95℃で3分間加熱し、反応液2μlを10倍希釈し、HPLCで分析したところ、原料である化合物19に相当するピークは消失しており、生成物に由来する新たなピークが確認された。反応液より、HPLCを用いて生成物に由来するピークを分取することにより、生成物を分離精製した。生成物画分を凍結乾燥することにより生成物1.1mgを得た。
得られた生成物を、2,5−ジヒドロ安息香酸をマトリックスとする、MALDI−TOF−MSで分析したところ、2540.9[M+Na](理論値[M+Na]=2540.9)にピークが検出され、化合物20であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のO−結合型糖アミノ酸は糖アミノ酸の糖部分の水酸基が遊離であり、糖ペプチド合成用原料に限らず、それ自体で天然糖鎖の標準サンプルとしても有用である。また、タンパク質との相互作用解析用サンプルとしても使用することができる。
【0101】
さらに本発明の糖アミノ酸から出発して多様なO−結合型糖アミノ酸を製造することができ、O−結合型糖アミノ酸ライブラリー合成を可能となり、糖タンパク質の機能解析や構造解析が飛躍的に進行するものと期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

[式中、
Rは、
【化2】

であり;
X、Yは、それぞれ独立して、水素、単糖残基又はオリゴ糖残基であり;
Zは、水素、アミノ基の保護基又は標識基であり;
Zは、ヒドロキシル基、カルボキシル基の保護基、活性化基又は標識基である。]
で表される化合物。
但し、X及びYが同時に水素となることはなく、また下記化合物を除く:
【化3】

【請求項2】
Rは、
【化4】

であり;
X及びYは、それぞれ独立して、水素、
【化5】

であり;
Zは、ヒドロキシル基、
【化6】

であり;
、R及びR6’は、互いに独立して、水素、又は
【化7】

であり;
3’及びR3”は、互いに独立して、水素又は、
【化8】

であり;
nは1〜20までの整数である;
の請求項1記載の化合物。
【請求項3】
下記式:
【化9】



で表される請求項1記載の化合物。
【請求項4】
下記式:
【化10】


で表される請求項1記載の化合物。
【請求項5】
請求項1記載の式(I)の化合物を出発原料として用いるO−結合型糖アミノ酸の製造方法。
【請求項6】
糖供与体の存在下で、請求項1記載の式(I)の化合物に糖転移酵素を作用させて、式(I)の化合物の糖鎖を伸長することを特徴とするO−結合型糖アミノ酸の製造方法。

【公開番号】特開2006−111618(P2006−111618A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264181(P2005−264181)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本発明のうちN−アセチルグルコサミン転移酵素を使用しない物質に関しては、平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム/糖鎖エンジニアリングプロジェクト/糖鎖構造解析技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(000006770)ヤマサ醤油株式会社 (56)
【Fターム(参考)】