説明

OA機器用のチューブ

【課題】柔軟性を有しながら、耐熱性、耐摩耗性およびトナー非粘着性、耐油性を兼ね備えた含フッ素多元セグメント化ポリマーからなるチューブを提供する。
【解決手段】エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBを有する含フッ素多元セグメント化ポリマーであって、該エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAがポリマー全体に柔軟性を与えうるものであり、セグメントAの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィン単位である含フッ素多元セグメント化ポリマーからなるチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフィスオートメーション機器(OA機器)の耐熱性を必要とする部品に用いられる柔軟性を有する含フッ素多元セグメント化ポリマーに関する。さらに該含フッ素多元セグメント化ポリマーを用いた塗料用材料およびOA機器に用いるチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷機用ロール、プラテンロールなどにはウレタンゴム、EPゴム、シリコーンゴムなどが使用されており、また、電子写真複写機の定着用ロールとしては、シリコ−ンゴムロールあるいはフッ素ゴムロールなどが知られている。しかしながら、これらは離型性トナーを使用したばあいにおいても、離型性(トナー非粘着性)が充分でないため、フッ素樹脂を被覆した非弾性ロール、あるいは弾性ロール表面にフッ素樹脂収縮チューブなどを被覆したものなどが提案されている。さらに、弾性ロール表面にフッ素ゴムとフッ素樹脂粉末の混合物を塗布、焼き付けし、表面にフッ素樹脂粉末層を形成したもの(特許文献1)、フッ素ゴムとフッ素樹脂粉末を塗布、焼き付け後さらにフッ素樹脂粉末を塗布しフッ素樹脂層を形成したもの(特許文献2)なども提案されている。
【0003】
電子写真複写機における定着操作に際して、定着ロールの離型性を改善するために離型油、一般にはシリコーン油を塗布することが行なわれているが、そのばあい、シリコーン油が内部に浸透して定着ロールが膨潤するのを防止するために、弾性ロール表面にフッ素樹脂収縮チューブなどを被覆したもの、あるいは特許文献3などに記載のように、芯金上にシリコーンゴム層、フッ素ゴム層あるいはフルオロシリコーンゴム層、シリコーンゴム層を順次設けた定着ロールが提案されている。
【0004】
また、特許文献4には、本発明者らによって、耐熱性エラストマー材を、フィブリル化されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、特に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンに含浸、接合させた被覆層を芯金上に形成した弾性ロールが提案されている。
【0005】
ところで、ウレタンゴム、EPゴム、シリコーンゴムなどを使用した印刷機用ロール、プラテンロールなどにおいては、ロールの弾性は良好であるが、離型性の面では必ずしも良好なものとはいい難く、そのため、トナーの付着、紙粉の付着による印刷物の汚染、紙のロールへの巻き付きなどのトラブルが発生するという問題があった。
【0006】
また、特に電子写真複写機の定着ロールにおいて、PTFEやPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)などのフッ素樹脂を被覆した非弾性ロールは弾性がないという欠点を有し、また弾性ロール表面にフッ素樹脂収縮チューブなどを被覆したものなどは、フッ素樹脂が硬く、伸びが小さいため、表面弾性という面では必ずしも満足のいくものではなかった。さらに、弾性ロール表面にフッ素樹脂粉末層(PFAの粉体塗装などによる)を形成したものは、初期においては弾性、離型性とも良好であるが、表面のフッ素樹脂粉末が剥離、離脱し易いため、その離型性の寿命は短いものであり、さらに150〜200℃といった高温化する定着ロール用途においては耐熱性が不充分であり、特にフッ素ゴム成分が劣化したり、強度低下したりするためロールの耐久性が低下する。
【0007】
また、特許文献3などに記載のように、フッ素ゴム層あるいはフルオロシリコーンゴム層の上にシリコーンゴム層を形成したものは、表面のシリコーンゴム層の強度が充分でない。そこで強度を向上させるために充填剤の量を増加させると離型性が低下する。また、シリコーンゴム層とフッ素ゴム層あるいはフルオロシリコーンゴム層との接着強度が充分でないために、シリコーン油を反復塗布して定着操作を繰り返すことにより、表面のシリコーンゴム層にクラックが発生し、最悪のばあいには、剥離が生じるという問題を有している。さらに表面のシリコーンゴム層やその内部のフルオロシリコーンゴム層または、フッ素ゴム層は、それ自体耐熱性が不充分であり、150〜200℃といった高温化する定着ロール用途では劣化したり、強度低下により摩耗したりする。
【0008】
また、特許文献4に開示されている弾性ロールは、離型性において非常に優れており、また、シリコーン油とのなじみ性や耐膨潤性は良好であるが、弾性特性が劣り、特に弾性回復力において劣っている。さらに、熱伝導性がわるく、特に連続コピー時にロールの表面温度が低下してしまうという問題も有していた。
【0009】
近年コピー機、複写機はカラー化、高速化に向かっており、定着部のロールもより柔軟性と耐熱性、耐摩耗性を兼ね備えた表面材料が求められている。
【0010】
【特許文献1】特公平1−36622号公報
【特許文献2】特公平6−100876号公報
【特許文献3】特開平1−205188号公報
【特許文献4】特開昭62−285839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の上記のような問題点に鑑みてなされたものである。
【0012】
したがって、本発明の目的は、好ましい柔軟性と耐摩耗性および優れた離型性を有するOA機器用耐熱性材料、特にOA機器ロールまたはベルト用耐熱性材料を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、シリコーン油などによる膨潤が乏しく、離型性(トナー非粘着性)、用紙剥離性、定着性、発色性が良好であって、耐熱性、耐久性に優れたOA機器用耐熱性材料、OA機器ロールまたはベルト用耐熱性材料を提供することにある。
【0014】
本発明者らは、重合体全体に柔軟性を与えうるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを同時に有する特定の含フッ素多元セグメント化ポリマー自体が、耐熱性、柔軟性、非粘着性が要求されるOA機器用途の材料として適していることを見出した。
【0015】
なかでも、電子式定着・感光部用途のOA機器ロール用の材料に好ましく用いることができ、特に定着ロールに用いることによって優れた定着性・発色性と耐油性、トナー非粘着性、用紙剥離性を兼ね備え、さらに耐熱性、耐久性、耐摩耗性をロール表面に与えうることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の柔軟性を有するOA機器用耐熱性フッ素材料であるチューブは、重合体全体に柔軟性を与えうるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBからなる含フッ素多元セグメント化ポリマーであって、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAがポリマー全体に柔軟性を与えうるものであり、かつその構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィン単位であることを特徴とする含フッ素多元セグメント化ポリマーからなるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柔軟性を有しながら、耐熱性、耐摩耗性およびトナー非粘着性、耐油性を兼ね備えた含フッ素多元セグメント化ポリマーからなる、特に定着部ロールまたはベルトなどの表面に用いられるOA機器用耐熱性材料、塗料用材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つまり、本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーは1分子中にエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントA(以下、「エラストマー性セグメントA」という)と非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントB(以下、「非エラストマー性セグメントB」という)がブロックやグラフトの形態で結合した含フッ素多元セグメント化ポリマーであることが重要である。
【0019】
本発明においてエラストマー性セグメントAと非エラストマー性セグメントBとをブロックやグラフトなどの形態でつなぎ、含フッ素多元セグメント化ポリマーとする方法については、公知の種々の方法が採用できるが、なかでも特公昭58−4728号公報などに示されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法や、特開昭62−34324号公報に示されたグラフト型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法などが好ましく採用できる。
【0020】
とりわけ、セグメント化率(ブロック化率)も高く、均質で規則的なセグメント化ポリマーがえられることから、特公昭58−4728号公報、高分子論文集(Vol.49、No.10、1992)記載のいわゆるヨウ素移動重合法で合成されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーが好ましい。
【0021】
一方、エラストマー性含フッ素重合体と非エラストマー性含フッ素重合体との単なる混合物を用いたものは、混合するそれぞれの重合体の種類、混合性、相溶性などによって異なるが、一般的に機械的特性(特に高温時)が不充分となったり、耐摩耗性が低下したり、柔軟性が低下したり、耐久性が低下したりする。
【0022】
これに対し、本発明のようにエラストマー性セグメントAと非エラストマー性セグメントBをブロックやグラフトなどで結合させ、多元セグメント化ポリマーとすることによって、上記のエラストマー性含フッ素重合体と非エラストマー性含フッ素重合体とを単に混合したものなどに比べて、耐熱性、機械的特性(特に高温時)などが向上し、ロール用としたばあいも耐熱性、耐久性、耐摩耗性をより効果的に改善できるものである。
【0023】
また一方、フッ化ビニリデンを主成分としたエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを有する含フッ素熱可塑性ゴムの被覆層を外周面に設けたゴムロールが提案されている(実公平2−15873号公報)。これらは含フッ素セグメント化ポリマーを用いていても、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントがパーハロオレフィン単位を主成分としていないため、耐熱性、非粘着性が不充分である。
【0024】
また本発明者らはさらにヨウ素移動重合法において、エラストマー性セグメントAの構成単位の90モル%以上をパーハロオレフィン単位とすることにより、非エラストマー性セグメントB用の単量体とのブロック共重合反応が規則的に均一に進行し、非エラストマー成分が結合しないエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのみからなる分子や結合しても分子量の低い非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントなどの目的外の生成物量を大幅に少なくできることを見出し、さらにこれらを用いた成形品がOA機器用耐熱材料、特にOA機器ロールまたはベルト用として有用であることを見出した。一方、目的外の未反応のエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントなどを含む含フッ素多元セグメント化ポリマーからなる材料は、それを用いて作製したOA機器用部品に機械的強度の低下、耐熱性の低下、耐摩耗性の低下など悪影響を及ぼすものである。
【0025】
本発明のOA機器用耐熱性含フッ素材料は、用いられる含フッ素多元セグメント化ポリマー中のエラストマー性セグメントAによって、良好な柔軟性が与えられる。特にOA機器ロールまたはベルト用としたばあい、含フッ素セグメント化ポリマー全体の弾性率が150℃で7×108dyn/cm2以下であること、さらに150℃で5×108dyn/cm2以下であることが特に好ましく、それによって高画質化、カラー化に向かう定着ロールまたはベルトの用途においても良好な定着性、発色性を与えうる。
【0026】
エラストマー性セグメントAの構成単位として使用可能なパーハロオレフィンとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔アルキル基の炭素数は1〜5〕(PAVE)、
【化1】

(式中、YはFまたはCF3、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、pは0〜5の整数、qは0〜5の整数、ただしp+q≧1)などのパーフルオロビニルエーテル類、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などがあげられ、これらのうちからエラストマー性をもつ組合せと組成のものが使用できる。なお、パーオキサイド加硫やポリオール加硫、ポリアミン加硫やその他の硬化反応のために硬化部位を与える単量体や他材との接着性などの機能付与のための官能基含有単量体を10モル%以下、導入してもよい。
【0027】
本発明で用いる含フッ素多元セグメント化ポリマーにおいて、エラストマー性セグメントAとは、ガラス転移点が25℃以下であるセグメントを示し、一般的には非晶性である。具体的に好ましい組成としては、たとえばTFE/PAVE/硬化や接着機能を与える単量体があげられ、その好ましい組成は50〜85/15〜50/0〜10モル%、特に50〜80/20〜50/0〜5モル%である。
【0028】
硬化部位を与える単量体としては、たとえばフッ化ビニリデン、CX2=CX−Rf3CHRI(式中、XはH、FまたはCH3、Rf3は1個以上のエーテル型酸素原子を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のフルオロ−またはパーフルオロアルキレン基、またはフルオロ−またはパーフルオロオキシアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、RはHまたはCH3)で示されるヨウ素含有単量体、CF2=CHI、
【化2】

[X4はCN、COOHまたはCOOR1(R1は炭素数1〜10のフッ素原子を含んでいてもよいアルキル基)である]
で示されるニトリル基含有単量体、臭素含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられ、通常、ヨウ素含有単量体、ニトリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体などが好適である。
【0029】
ヨウ素含有単量体としては、パーフルオロビニルエーテル化合物がその共重合性から好適である。たとえばパーフルオロ(6,6ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)や、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などが好適である。
【0030】
そのほか特公平5−63482号公報に記載されている一般式:
【化3】

(式中、Y3はトリフルオロメチル基、nは0〜2)で示されるフルオロビニルエーテルなどがあげられる。
【0031】
また、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属やシリコーンゴム、ポリイミドなどの有機材料などの他材との接着などを与えうる単量体としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸誘導体、スルホン酸、スルホン酸誘導体、エポキシ基、アセチル基などを有する含フッ素単量体または、フッ素不含単量体などがあげられる。
【0032】
なかでも本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーにおいて、OA機器ロール、特に定着ロール、加圧ロールのソフトロール用に利用するのに充分な柔軟性を与えるためには、エラストマー性セグメントA部分のガラス転移点が10℃以下であることが好ましい。
【0033】
エラストマー性セグメントAはフッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法で製造できる(特公昭58−4728号公報、特開昭62−12734号公報)。
【0034】
たとえば実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記パーハロオレフィンと、要すれば硬化部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下乳化重合を行なう方法があげられる。
【0035】
用いるジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカンおよび1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタンである。これらの化合物は単独で使用してもよく、相互に組み合せて使用することもできる。なかでも、1,4−ジヨードパーフルオロブタンが好ましい。ジヨウ素化合物の量は、エラストマー性セグメントA全重量に対して0.01〜1重量%である。
【0036】
本発明におけるエラストマー性セグメントAの製造で使用するラジカル重合開始剤は、従来からフッ素系エラストマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。
【0037】
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖または、フルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜2重量%が望ましく、特に0.2〜1.5重量%が望ましい。
【0038】
本発明で使用するモノマー混合ガスは、カルブ(G.H.Kalb)ら、アドヴァンシーズ・イン・ケミストリー・シリーズ(Advances in Chemistry Series.)129,13(1973)に記載されるように、爆発性を有するので、重合装置には着火源となるスパークなどが発生しないように工夫する必要がある。また、その意味からは、重合圧力はできる限り低く抑えることが好ましい。
【0039】
重合圧力は、広い範囲で変化させることができる。一般には、0.5〜5MPaの範囲である。重合圧力は、高い程重合速度は大きくなるため、生産性の向上の観点から、0.8MPa以上であることが望ましい。
【0040】
かくしてえられるエラストマー性セグメントAは数平均分子量が5,000〜750,000、特に20,000〜400,000のものが、えられる含フッ素多元セグメント化ポリマー全体への柔軟性の付与、弾性の付与、機械的物性の付与の点から好ましい。
【0041】
このようにしてえられるエラストマー性セグメントAの末端部分はパーハロ型となっており、非エラストマー性セグメントBのブロック共重合の開始点となるヨウ素原子を有している。
【0042】
本発明において非エラストマー性セグメントBとしては、フッ素原子を含み前記エラストマー性を有していなければ基本的には限定されず、非エラストマー性セグメントBをブロック共重合することによりえようとする特性・機能に合わせて選択すればよい。
【0043】
非エラストマー性セグメントBを構成しうる単量体のうち含フッ素単量体としては、たとえばTFE、CTFE、PAVE、HFP、CF2=CF(CF2)pX3(pは1〜10の整数、X3はFまたはCl)、パーフルオロ−2−ブテンなどのパーハロオレフィン類;フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、
【化4】

(X1およびX2はHまたはF、qは1〜10の整数)、CH2=C(CF32などの部分フッ素化オレフィン類の1種または2種以上があげられる。また、これらと共重合可能な単量体、たとえばエチレン、プロピレン、塩化ビニル、ビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル類の1種または2種以上も共重合成分として使用できる。
【0044】
これらのうち、耐薬品性、耐熱性の点から、主成分に用いる単量体としては含フッ素オレフィン単独または含フッ素オレフィン同士の組合せ、エチレンとTFEの組合せ、エチレンとCTFEの組合せが好ましく、特にパーハロオレフィンの単独またはパーハロオレフィン同士の組合せが好ましい。
【0045】
具体的には、
(1)VdF/TFE(0〜100/100〜0)、特にVdF/TFE(70〜99/30〜1)、PTFEまたはPVdF;
(2)エチレン/TFE/HFP(6〜43/40〜81/10〜30)、3,3,3−トリフルオロプロピレン−1,2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピレン−1/PAVE(40〜60/60〜40);
(3)TFE/CF2=CF−Rf1(非エラストマー性を示す組成範囲、すなわち、CF2=CF−Rf1が15モル%未満、Rf1はCF3またはORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基));
(4)VdF/TFE/CTFE(50〜99/30〜0/20〜1);
(5)VdF/TFE/HFP(60〜99/30〜0/10〜1);
(6)エチレン/TFE(30〜60/70〜40);
(7)ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);
(8)エチレン/CTFE(30〜60/70〜40)
などがあげられる。
【0046】
なかでも、定着ロールまたはベルト用材料など、耐熱性、耐摩耗性を必要とするばあいの非エラストマー性セグメントBは、結晶融点が150℃以上であることが好ましく、また特に高速機の複写機やプリンター用の定着ロールまたはベルト材料に適用するためには、特に結晶融点が250℃以上であることが好ましい。それらのなかでも特に耐熱性や非粘着性、耐摩耗性の良好な点で、パーハロオレフィンを主構成単位とした非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントとすることが好ましい。
【0047】
具体的には本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性セグメントBとしては、テトラフルオロエチレン85モル%を超え100モル%以下および式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中Rf1はCF3またはORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))0〜15モル%未満からなるポリマー鎖であるものが特に好ましい。このものは、OA機器ロール、定着用ロールに用いたばあい、優れた耐熱性、耐摩耗性とともに、トナーなどの非粘着性にも優れた性能を示す。
【0048】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーの分子末端のヨウ素原子は種々の方法により別の原子、有機基などに変換することができる。
【0049】
たとえば、パーハロオレフィンのみからなる本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーをフッ素ガスにより処理することによって分子末端をフッ素化し、−CF3基とすることができる。
【0050】
それによって、含フッ素多元セグメント化ポリマーの非粘着性、耐熱性、耐油性、耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0051】
フッ素ガス処理は、パーハロオレフィンのみからなる本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーをフッ素ガスと通常50〜250℃、好ましくは200℃までの温度で1〜10時間、好ましくは2〜5時間接触させることによって行なう。圧力は1〜10kgG/cm2の範囲でよいが通常大気圧で行なわれる。用いるフッ素ガスは純粋なフッ素ガスを用いてもよいが、安全性の面から窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスで2〜25容量%、好ましくは7〜15容量%に希釈したガスが好ましい。
【0052】
フッ素ガスと接触させる際、含フッ素多元セグメント化ポリマーは、粉末状、ペレット状、フレーク状のいずれの形状であってもよく、さらにフィルムやチューブ、その他の成形品の形状としてからフッ素化処理することも可能である。
【0053】
また、本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性セグメントBにおいても、必要に応じてまたセグメント化ポリマー自体の構造に対して、官能基含有モノマーの共重合により、またはセグメント化ポリマーの末端基の反応により、当該セグメント化ポリマー中にカルボキシル基やその誘導体、ヒドロキシル基、スルホン酸基やその誘導体、エポキシ基などを導入することができ、それによって基材との密着性、架橋反応性、充填材などとの親和性を向上させることができ、その他の種々の機能も付与できるものである。
【0054】
非エラストマー性セグメントBのブロック共重合は、エラストマー性セグメントAの乳化重合に引き続き、単量体を非エラストマー性セグメントB用に変えることにより行なうことができる。
【0055】
非エラストマー性セグメントBの数平均分子量は、1,000〜1,200,000、好ましくは3,000〜600,000と広い幅で調整できる。本発明における重要な特徴は、エラストマー性セグメントAに確実に非エラストマー性セグメントBをブロック共重合でき、しかも非エラストマー性セグメントBの分子量(重合度)を大きくすることができた含フッ素多元セグメント化ポリマーを用いる点にある。この点は前述したとおり、エラストマー性セグメントAの構成単位の90モル%以上、好ましくは95モル%以上をパーハロオレフィン単位とすることにより達成できる。
【0056】
かくしてえられる含フッ素多元セグメント化ポリマーは、エラストマー性セグメントAの両側に非エラストマー性セグメントBが結合したポリマー分子(B−A−B)、エラストマー性セグメントAの片側に非エラストマー性セグメントBが結合したポリマー分子(A−B)を主体とするものであり、非エラストマー性セグメントBが結合していないエラストマー性セグメントAのみのポリマー分子(C)は、含フッ素多元セグメント化ポリマー中のセグメントAとポリマー分子(C)との合計量に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0057】
このポリマー分子(C)が20重量%を超えて存在すると、これを用いたOA機器用部品の機械的物性、耐摩耗性が低下したりする。特に150℃以上という高温化するOA機器用ロールまたはベルトに用いたばあい、特に高温での耐摩耗性が低下する。
【0058】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマー中のエラストマー性セグメントAと非エラストマー性セグメントBの存在比率は、OA機器用途の使用部材、ロールまたはベルト種類、要求特性などにより適宜選択され、また各セグメントの組成によって異なってくるが、エラストマー性セグメントA:非エラストマー性セグメントBが5:95〜98:2(重量%)の範囲から好ましく選ばれる。その中でも特に柔軟性と耐熱性、耐摩耗性を兼ね備える必要のある定着部のロール用材料用として用いるばあいは、エラストマー性セグメントA:非エラストマー性セグメントBが20:80〜95:5(重量%)であることが好ましく、特に30:70〜90:10(重量%)であることが好ましい。
【0059】
OA機器ロールまたはベルト用として用いたばあい、エラストマー性セグメントAの存在比率が少なすぎると柔軟性が不足し、定着性、発色性が不足したりする。また非エラストマー性セグメントBの存在比率が少なすぎると、耐熱性、高温での使用時の機械的物性、耐摩耗性が不足し、好ましくない。
【0060】
またエラストマー性セグメントAに硬化部分を導入して架橋点を設けたばあい、加硫(架橋)を公知の有機過酸化物によるパーオキサイド加硫や公知の多価アルコール類によるポリオール加硫、公知の多価アミン化合物によるポリアミン加硫などにより行なうことができる。
【0061】
その他有機スズ化合物によりトリアジン環を形成させるトリアジン加硫(たとえば特開昭58−152041号公報参照)、同じくニトリル基を架橋点として導入した含フッ素エラストマーを使用し、ビスアミノフェノールによりオキサゾール環を形成させるオキサゾール加硫(たとえば、特開昭59−109546号公報参照)、テトラアミン化合物によりイミダゾール環を形成させるイミダゾール加硫(たとえば、特開昭59−109546号公報参照)、ビスアミノチオフェノールによりチアゾール環を形成させるチアゾール加硫(たとえば、特開平8−104789号公報参照)などによっても行うことができる。
【0062】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーには、用途、目的に応じて種々の充填剤を混合させることができる。
【0063】
なかでも複写機、プリンターなどの定着ロールに代表されるOA機器ロールまたはベルト用の材料として本発明の含フッ素セグメント化ポリマーを用いるばあいは、主としてロール表面に導電性を付与できるような充填剤が混合される。
【0064】
導電性を付与するための充填剤としては、カーボンブラック(ケッチェン、アセチレンなど)類;PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、膨張化黒鉛粉砕品などのカーボン類;およびこれらカーボン類を完全または部分的にフッ素化したフッ化カーボン類;Ag、Ni、Cu、黄銅、銀メッキ銅、Zn、Al、ステンレススチールなどの金属類(粉末状、フレーク状、繊維状など);SnO2(Sbドープ)、In23(Snドープ)、ZnO(Alドープ)などの微粒子状の金属酸化物類;フェライト類;チタン酸バリウムなどの高誘電体などがあげられる。
【0065】
導電性を付与できる充填剤の添加量は、使用するOA機器ロールまたはOA機器ベルトなどの目的とする表面抵抗値または体積固有抵抗値によって、さらには用いる導電性充填剤の種類によって適宜選択されるが、含フッ素多元セグメント化ポリマーと充填剤からなる組成物全体に対し0.1〜40重量%程度、好ましくは1〜30重量%である。
【0066】
なかでも部分的にフッ素化したカーボンが抵抗値を108〜1013Ωcmの狭い範囲に安定してコントロールできることから、また、フッ素ポリマーの非粘着性を低下させないで導電性を付与できることから好ましい。
【0067】
部分的にフッ素化したカーボンとしては、カーボンブラック、炭素繊維、石油コークス、黒鉛粉などの炭素材料をフッ素化したものが好ましい。
【0068】
これらのうち、カーボンブラックをフッ素化してえられるフッ素化カーボンブラック、特に炭素原子に対するフッ素原子の比F/Cが0.1以上1.0未満、とりわけ0.1以上0.5未満であるフッ素化カーボンブラックが好ましい。
【0069】
フッ素化カーボンブラックのF/Cが0.1未満のときは、フッ素化の効果が不充分であり、フッ素化前の炭素材料のもつ問題点、すなわち、配合量に対する抵抗の変化率が非常に大きく導電性のコントロールが困難であること、また、発達したストラクチャーのためフッ素化カーボンブラックの分散が不均一となったり、えられる組成物が硬くなるといった問題点がそのまま残る。F/Cが1.0以上のときは、目的とする導電性を組成物に付与することができない。
【0070】
本発明において、F/Cはつぎのようにして測定される。フッ素化カーボンブラックを助燃剤Na22およびポリエチレンフィルムとともに濾紙に包みこみ、酸素を充填した密閉フラスコ内で燃焼し、発生したフッ化水素をフッ化物イオンメータ(オリオン社製:イオンアナライザ901)を用い、常法により測定する。この値からフッ素含有量を算出する。えられたフッ素含有量に基づいてF/Cを算出する。
【0071】
かかるフッ素化カーボンブラックはポリ(カーボンモノフルオライド)が主成分をなすものであり、平均粒径0.01〜50μm、好ましくは0.01〜1μmのカーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化したものが好ましい。平均粒径が50μmを超える炭素材料、たとえば石油コークス、黒鉛粉末、炭素繊維などを原料としてえられるフッ素化カーボンブラックは、樹脂に導電性および非粘着性を付与するための量を多くしなければならず、えられる組成物に表面粗度の上昇、機械的強度の劣化、抵抗率の不均一などの不都合が生ずる傾向にある。
【0072】
フッ素化カーボンブラックの炭素材料として適するものは前記の平均粒径を有するカーボンブラックである。カーボンブラックとしては、たとえばゴム用ファーネスブラック(たとえば旭カーボン(株)製の旭#55など)、カラー用チャネルブラック(たとえばコロンビアカーボン社製のレーベン7000)、サーマルブラック(コロンビアカーボン社製のセバカーボMT−C1)などの市販のものが使用できる。
【0073】
カーボンブラックのうち、とくに一般に導電性カーボンブラックと称されているものが好ましい。導電性カーボンブラックは、平均粒径が小さい(平均粒径0.1μm以下)、表面積が大きい(N2表面積50m2/g以上)、ストラクチャーが発達している(吸油量100cc/g以上)、不純物が少ない(灰分0.1%未満)、グラファイト化が進んでいる、というファクターで定義されるものであり、比較的少ない配合量で材料に導電性を付与できるため、広く使用されているものである。具体例としては、たとえばケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(以上、ケッチェンブラックインターナショナル(株))、ブラックパールズ2000、バルカンXC−72、CSX−99(以上、キャブラック(株))、デンカブラック(電気化学工業(株))、コンダクテックス950(コロンビアカーボン(株))などが市販されている。
【0074】
本発明において使用されるフッ素化カーボンブラックは、こうした炭素材料を200〜600℃の範囲の温度で、より好ましくは300〜500℃の範囲の温度でフッ素ガスと接触させることによってえられる。この範囲より低い反応温度では、フッ素化反応の進行が遅い、フッ素化度が上がりにくい、熱安定性が充分ではない、フッ素化カーボンブラック特有の非粘着性、潤滑性などの特性が発揮されない、といった問題が起こる。逆に、この範囲よりも高い反応温度では熱分解反応がおこりやすく、えられるフッ素化カーボンブラックの収率が低くなる。また、ときとして急激な熱分解反応が生じ爆発にいたることがあるので充分注意する必要がある。
【0075】
反応に使用するフッ素ガスはチッ素、アルゴン、ヘリウム、四フッ化炭素などの不活性ガスで希釈されていてもよく、フッ化水素を含んでいてもよい。また、反応は常圧で行なうことができるが、減圧下あるいは加圧下であっても何らさしつかえない。
【0076】
前記条件のほか、反応時間、フッ素ガス流量などは原料の炭素材料のフッ素との反応性や希望するF/C(フッ素含有量)に応じて適宜調節すればよい。
【0077】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーと上記フッ素化されたカーボンとの配合割合は、目標とする抵抗値により適宜選択されるが、1/99〜20/80(重量比。以下同様)である。フッ素化カーボンブラックが少なくなると添加した効果が充分えられず、多くなりすぎると引張強度などの機械的強度が低下する傾向にある。
【0078】
さらに機械的物性や圧縮復元性を高めるために、充填剤を混合してもよく、代表的なものとしてガラス繊維、カーボン繊維、アスベスト繊維、チタン酸カリウム繊維などの繊維状の充填剤が好ましくあげられる。
【0079】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーをOA機器ロールとして用いたばあいの具体的な構成例について示す。
【0080】
構成例1
(i)アルミニウムやステンレススチールなどの金属からなる芯金。
(ii)エラストマー性セグメントAとしてテトラフルオロエチレン50〜85モル%およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)15〜50モル%からなる単量体を共重合してなる分子量5,000〜750,000の重合体鎖からなる1種または2種以上のセグメントと非エラストマー性セグメントBとしてテトラフルオロエチレン85モル%を超え100モル%以下および式(1)
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1はCF3または−ORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))0〜15モル%未満からなる単量体を重合してなる分子量3,000〜1,200,000の重合体鎖からなる1種または2種以上のセグメントとを有する含フッ素多元セグメント化ポリマー。
(i)に(ii)を外層として積層した定着部の定着ロールまたは加圧ロール。
【0081】
構成例2
(i)アルミニウムやステンレススチールなどの金属からなる芯金。
(ii)構成例1の(ii)(外層)に示した含フッ素多元セグメント化ポリマーに、導電性を付与できる充填剤を混合した組成物。
(i)に(ii)を外層として積層した定着部の定着ロールまたは加圧ロール。
【0082】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーはそれ自体柔軟性を有するため、上記の構成例1、2の例示のように直接芯金に施しても充分な柔軟性をえられるが、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、EPDMなどの弾性層を施すことによりロール表面により柔軟性を与えることができ、より高画質化、高速時の紙搬送性に効果的に作用する。なかでも弾性層として、ゴム硬度で10〜40度のもの、または10以下(スポンジ状のものも含む)のものが選ばれる。
【0083】
構成例3
(i)アルミニウムやステンレススチールなどの金属からなる芯金。
(ii)シリコーンゴム。
(iii)構成例1の(ii)(外層)に示した含フッ素多元セグメント化ポリマー。
(i)の芯金にシリコーンゴム層(ii)を積層し、その上に(iii)を最外層に積層した定着部の定着ロールまたは加圧ロール。
【0084】
構成例4
(i)アルミニウムやステンレススチールなどの金属からなる芯金。
(ii)シリコーンゴム。
(iii)構成例1の(ii)(外層)に示した含フッ素多元セグメント化ポリマーに導電性を付与できる充填剤を混合した組成物。
(i)にシリコーンゴム層(ii)を積層し、その上に(iii)を最外層に積層した定着部の定着ロールまたは加圧ロール。
【0085】
なお構成例1〜4の各積層ロールの各層間には密着性、接着性を改善するための接着剤、プライマーなどを使用してもよい。
【0086】
構成例3、4が好ましい例示である。通常これら定着部を構成する定着ロール、加圧ロールのいずれか一方、または両方にセラミックヒーターなどの加熱装置を備えており、トナーを軟化または融解させ、紙に画像を定着させる。本発明のOA機器用材料はこの加熱装置に対しても充分な耐熱性を有するものである。
【0087】
本発明のOA機器用材料に用いられる含フッ素多元セグメント化ポリマーは、成形用材料として用いて、シート状やフィルム状、チューブ状に成形でき、OA機器ロールまたはOA機器ベルトなどに使用される。そのばあいの成形方法は、一般に公知の成形方法が適用でき、含フッ素多元セグメント化ポリマーまたは、充填剤をブレンドした含フッ素多元セグメント化ポリマーの組成物を押出成形、射出成形、圧縮成形などにより、必要な形状に成形できる。
【0088】
さらに、本発明のOA機器用材料に用いられる含フッ素多元セグメント化ポリマーは、液状担体を含んだ組成物とすることによって、また、所定の粒径、見掛密度の粉末状に調製することによって塗料用材料とすることができる。特にこれらの塗料用材料は、OA機器用途に限らず、自動車の車両用途、半導体製造設備、化学プラント関連用途、航空機用途、食品加工設備、写真・印刷設備、塗装設備、鉄鋼生産設備などの用途の、ライニング材、ロール、ベルト、ホース、シール材などに用いることができる。本発明の塗料用材料は、含フッ素多元セグメント化ポリマーからなる塗料用材料であって、その含フッ素多元セグメント化ポリマーは、柔軟性を有するOA機器用耐熱性材料についての記載したものが同様に好ましく用いることができ、OA機器ロールやベルトをはじめ、その他用途の基材に被覆することによって柔軟性、シール性、耐熱性、耐摩耗性および非粘着性に優れた被膜をうることができる。
【0089】
本発明は、さらに前記含フッ素多元セグメント化ポリマーからなる粉体塗料に関する。
【0090】
本発明の粉体塗料には、前述の柔軟性を有するOA機器用耐熱性材料と同様のものが好ましく用いられる。
【0091】
本発明の粉体塗料は粒径10〜1000μm、見掛密度0.3〜1.2g/ccの粉体または粒状のものが好ましく用いられる。
【0092】
本発明の粉体塗料は、フッ素樹脂の耐熱性などの性能を著しく低下させない範囲で、たとえばカーボン粉末、酸化チタン、酸化コバルトなどの顔料;ガラス繊維、カーボン繊維などの粉末、マイカなどの補強材;アミン系酸化防止剤、有機イオウ系化合物、有機錫系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、金属石ケンなどの熱安定剤;レベリング剤;帯電防止剤;前述と同様の導電性を付与できる充填剤などの添加剤を適宜配合できる。
【0093】
本発明の含フッ素粉体塗料と前記添加剤との配合は、粉末状で混合(乾式)してもよいし、スラリー状で混合(湿式)してもよいが、粉末の状態で行なうのが好ましい。混合用機器としては、たとえばサンドミル、V型ブレンダー、リボン型ブレンダーなどの通常の混合機および粉砕機が使用しうる。
【0094】
本発明の含フッ素粉体塗料の塗装は、一般に静電吹付、流動層浸漬、回転ライニングなどの方法などにより行なわれたのち、焼成(好ましくは結晶融点以上の温度で)により良好な塗膜を形成することができる。
【0095】
一般に静電粉体塗装のばあい、膜厚10〜200μm、回転ライニングのばあい、膜厚200〜1000μmの塗膜が形成される。
【0096】
本発明はさらに本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーと液体媒体とからなる塗料用組成物に関する。
【0097】
本発明の塗料用組成物に用いられる含フッ素多元セグメント化ポリマーは、柔軟性を有するOA機器用耐熱性材料に記載したものと同様のものが好ましく用いられる。
【0098】
本発明の塗料用組成物に用いられる液状担体は、本発明で用いる含フッ素多元セグメント化ポリマーを溶解または分散しうる液体から選ばれ、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類のほか、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トリエチルホスフェート、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブアセテート、2−ニトロプロパン、メチルイソアミルケトン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2、4−メトキシ−4−メチルペンタノール−2などの炭化水素系溶剤;トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ジクロロジフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン、テトラクロロヘキサフルオロブタン、パーフルオロヘキサンなどのハロアルカン類;フロリナートFC−75(スリーエム社製)、フロリナートFC−77(スリーエム社製)、HFE7100(スリーエム社製)などの含フッ素エーテル類などのフッ素系溶剤;水など、またはこれらの2種以上の混合物などが例示される。
【0099】
さらに耐熱性や耐薬品性、非粘着性、低摩耗性を著しく低下させない範囲で通常使用される顔料、界面活性剤、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤などの添加物を配合することができる。
【0100】
また、他の成分として、接着性の向上のためにカップリング剤を併用することができる。
【0101】
本発明においてカップリング剤とは、有機素材と無機素材の界面に作用し、化学的結合または物理的結合により両素材間に強固なブリッジを形成させる化合物をいい、通常ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、スズ、アルミニウムまたはマグネシウムの化合物であって、有機素材と無機素材とを結合しうる基を有する化合物である。これらカップリング剤のうち、好ましいものはシランカップリング剤および周期表第IV族遷移元素(たとえばチタンまたはジルコニウムなど)のオルト酸エステルおよびその誘導体であり、そのなかでもアミノシラン化合物が最も好ましい。
【0102】
本発明の塗料用組成物は含フッ素多元セグメント化ポリマー、および要すれば前記の添加物などを含有する水性分散体、有機溶剤分散体、オルガノゾル、オルガノゾルの水中エマルジョンなどの形態をとることができる。そのなかでも環境上、安全上、水性分散体の形態をもつ塗料用水性分散体が好ましく、詳しくは前記含フッ素多元セグメント化ポリマーの0.01〜1.0μmの微粒子が水中に分散された形態のものであって、一般にその中に分散安定化のための界面活性剤が配合されてなる組成物が好ましい。
【0103】
本発明で用いる塗料用水性分散体は、種々の方法で製造できる。具体的にはたとえば、懸濁重合法などでえられた含フッ素多元セグメント化ポリマーの粉末を微粉砕し、それを水性分散媒中へ、界面活性剤によって均一に分散させる方法、乳化重合法により重合と同時に含フッ素多元セグメント化ポリマーの水性分散体を製造し、必要に応じてさらに界面活性剤や添加剤を配合する方法などがあげられるが、生産性や品質面(小粒径化や、均一粒径化)から、乳化重合法により直接水性分散体を製造する方法が好ましい。
【0104】
本発明の塗料用組成物の塗装方法は、含フッ素多元セグメント化ポリマーの種類や塗料の形態、目的や用途により適宜選択され、たとえば水性分散体や有機溶剤分散体などのばあい、一般にスプレー塗装、はけ塗り、ロールコート、スピンコーティングなどが通常行なわれ、塗布後、乾燥や焼成により基材上に被膜がえられる。焼成条件は、含フッ素多元セグメント化ポリマーの種類(組成、融点など)により適宜選択されるが、一般に含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性セグメントBの融点以上の温度で焼成される。焼成時間は、焼成温度により異なるが5分間〜3時間、好ましくは10〜30分程度である。
【0105】
本発明の含フッ素多元セグメント化ポリマーからなる塗料用材料は、柔軟性を有するOA機器用耐熱性材料として前述と同様ロール芯金(アルミやSUS)に被覆したり、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、EPDMなどの弾性層を施したものに被覆することによって、柔軟性と耐熱性、耐摩耗性を兼ね備えた、定着ロール、加圧ロールをうることができ、非粘着性、耐油性も優れたものとなる。
【0106】
本発明の塗料用材料を被覆し上記OAロールを得るためには、必要に応じて芯金や中間の弾性層にプライマーを塗布し必要に応じて焼成した後、本発明の塗料用材料からなる水性分散体塗料、溶剤可溶または分散塗料、粉体塗料のいずれかを前述の方法で塗布し、融点以上で焼成、成膜することができる。被膜の厚さは、目的、用途、下地の硬さによって異なるが、1〜500μm、好ましくは5〜150μm、とくに5〜100μmの中から選ばれ、必要に応じて表面を平滑にするために研磨してもよい。それによって表面粗度(Ra)を1.0μm以下、さらには0.5μm以下とするのが好ましい。
【0107】
またさらに本発明の塗料用材料は、OA機器用途以外においてもその耐熱性、耐薬品性、非粘着性、柔軟性、シール性、耐摩耗性を利用し、種々の用途に利用できる。その具体例を表1、2、3に示す。
【0108】
本発明のチューブとは含フッ素多元セグメント化ポリマーをチューブ状に形成した筒状体のことであり、前述の含フッ素多元セグメント化ポリマーの好ましい具体例が同様に好ましく用いられる。
【0109】
チューブのサイズは、目的、用途、使用方法によって異なり、限定されないが、通常内径約5〜50mm、厚さ1mm以下のものが用いられ、とくに定着ロール、加圧ロールなどのOAロール用途には内径10〜40mm、厚さ0.01〜0.15μmであることが好ましい。
【0110】
本発明のチューブは、通常の溶融押出法によりチューブ状に製膜される。必要に応じて、延伸(1軸または2軸)してもよいし、熱収縮性を有していてもよいが、通常では延伸や熱収縮性はなくてもよい。
【0111】
本発明のチューブには必要に応じて、前述の導電性を付与する充填剤を混合してもよく、通常溶融押出によりチューブ成形される際の原料(ペレット状または粉末状)に、混練、ドライブレンドなどで導電性付与剤をあらかじめ混合したものを用いることで作製できる。
【0112】
成形方法にもとくに制限はないが、一般には前記するように環状ダイスからの溶融押出成形が例示できる。すなわち1軸または多軸のスクリュー付き押出機によって、環状ダイスを通して、溶融押出されたフィルム筒状体をそのまま適当な冷却手段によって冷却しながら引き取るか、該環状ダイスの後にサンジング治具を使って、インサイドまたはアウトサイドに寸法・形状をさらに規制しつつ、常温または空気、水などの冷媒によって冷却して引き取ることが行なわれる。ここで筒状体内に空気を送るとか、引き取る場合に若干延伸を行なうとか、冷却を徐冷または急冷するなどの諸条件を取り入れることには何ら制約はない。
【0113】
なお、チューブは、通常は1層で構成されるが、2層以上の多層であってもよい。かかる場合、各層のポリマーは、相互の相溶性とか、後述の特定条件下での加熱温度について充分検討し、選択することが必要である。なぜなら、各層で加熱処理温度が異なるからである。なお、成形は共押出法によるが、一層の場合と同様に特別な条件はない。
【0114】
本発明のチューブは必要ならば被覆される物品との接着性を向上させるために適宜の内面処理が行なわれる。好ましい内面処理としては化学的エッチング処理を例示でき、たとえばナトリウム系エッチング剤が好んで用いられる。こうした内面処理は化学的エッチングのほかに接着性の向上が期待されるものならば何でもよい。さらに内面を化学的エッチングした後にプライマー処理を行ない、さらに下地との接着性を向上させてもよい。
【0115】
本発明のチューブはOA機器用のロール(とくに定着ロール、加圧ロール)に用いられ、ロール自体に優れた柔軟性と耐熱性を与えうる。また、本発明のチューブをロール最外表面に施すことによって前記性能に加えて良好な非粘着性をも付与できる。
【0116】
本発明のチューブを施してなるロールは、前述したとおりチューブを芯金に直接被覆したものであってもよいし、芯金とチューブの間にシリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、EPDMなどの弾性層を設けたものであってもよい。
【0117】
本発明のチューブは芯金に直接被覆してもロール表面に充分な柔軟性を与えうるが、弾性層を間に設けることによってより一層の柔軟性をロール表面に与えることができ、OA機器用の定着ロール、加圧ロールに用いた場合、高画質化、高速時の紙搬送性の向上が達成できる。この場合、ゴム硬度10〜30度程度の弾性層、または10度以下(スポンジ状も含む)の弾性層が好ましい。
【0118】
本発明のチューブとそれと接触する下地(芯金または弾性層)との接着性を付与するため、必要に応じて接着剤やプライマー処理が施される。その場合、前述のエッチングによる内面処理したチューブを用いることがより強度な接着力がえられる点で好ましい。
【0119】
本発明のチューブを金属の芯金に直接施したロールを作成する方法は、公知の方法が適宜採用できるが、チューブ内面エッチング処理を行なった熱収縮性を有するチューブを用い、プライマー処理などを施した芯金にかぶせ、融点以下(たとえば150〜200℃)で収縮させ固定した後、融点以上(たとえば320〜400℃)で焼成し融着させるのが好ましい。
【0120】
本発明のチューブと芯金の間に弾性層を設けたロールを作製する方法として、まず筒状成形体の内部に芯金と本発明のチューブとを間隔を置いて配置し、かつ筒状成形体の内表面とチューブの外表面とが接触するように配置しておき、前記した間隔に生ゴム、ラテックス、エラストマーなどを流し込み、必要ならば加硫することによりロールを得ることができる。もちろん、必要なときに筒状成形体から被覆されたチューブを含むロール部分を取り出しておかねばならない。この際、チューブの内表面にゴム部分と接触しやすいように予めエッチング処理、プライマー処理などを施こしておいてもよい。また、あらかじめゴムロールを作製しておき、その表面に本発明のチューブを被覆してもよい。この際は、チューブとしては熱収縮性を有するものを使用する方がよい。このようにロールの製造法についてはとくに制限はない。
【0121】
また、定着ロールや加圧ロールなどのOA機器用ロールに前述でえられたロールを利用する場合、必要に応じて表面を平滑にする工程を行なってもよい。
【0122】
たとえば、えられたロールの表面を研磨し、平面粗度(Ra)を低下させることができる。好ましいRaは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
【表3】

【0126】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0127】
合成例1(エラストマー性セグメントAの合成)
着火源をもたない内容積47リットルのステンレス製オートクレーブに、純水30リットルおよび乳化剤としてC715COONH4 300g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩300gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、200rpmで攪拌しながら、50℃に昇温し、TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)(32/68モル比)の混合ガスを、内圧が8.0kgf/cm2Gになるように仕込んだ。ついで、加硫酸アンモニウム(APS)の55.8mg/mlの濃度の水溶液100mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0128】
重合の進行により内圧が、7.0kgf/cm2Gまで降下した時点で、ジヨウ素化合物I(CF24Iを27.24gとC715COONH4の10重量%水溶液234gとを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が8.0kgf/cm2Gになるように、TFEを自圧にて60g、PMVE58g(TFE/PMVE=63/37モル比)をプランジャーポンプにて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、7〜8kgf/cm2Gのあいだで、昇圧、降圧を繰り返した。
【0129】
重合反応の開始から12時間後、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、6000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度18.04重量%の水性分散体をえた。
【0130】
この水性分散体の一部を取り、凍結させ凝析を行ない、解凍後、凝析物を水洗、真空乾燥してゴム状重合体をえた。この重合体のムーニー粘度ML1+10(100℃)は、94であった。極限粘度は、[η]=0.654(dl/g、35℃、FC−75(3M社製))であった。
【0131】
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE=60/40モル%であり、DSC分析により測定したTg(中央値)は、2℃であった。
【0132】
合成例2(エラストマー性セグメントAの合成)
着火源をもたない内容積47リットルのステンレス製オートクレーブに、純水30リットルおよび乳化剤としてC715COONH4を300g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩300gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、200rpmで攪拌しながら、50℃に昇温し、TFE/PMVE(32/68モル比)の混合ガスを、内圧が8.0kgf/cm2Gになるように仕込んだ。ついで、加硫酸アンモニウム(APS)の27.9mg/mlの濃度の水溶液100mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0133】
重合の進行により内圧が、7.0kgf/cm2Gまで降下した時点で、ジヨウ素化合物I(CF24Iを13.62gとC715COONH4の10重量%水溶液117gとを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が8.0kgf/cm2Gになるように、TFEを自圧にて60g、PMVE58g(TFE/PMVE=63/37モル比)をプランジャーポンプにて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、7〜8kgf/cm2Gのあいだで、昇圧、降圧を繰り返した。
【0134】
重合反応の開始から16時間後、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、6000gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度18.16重量%の水性分散体をえた。
【0135】
この水性分散体の一部を取り、凍結させ凝析を行ない、解凍後、凝析物を水洗、真空乾燥してゴム状重合体をえた。この重合体のムーニー粘度ML1+10(100℃)は、溶融せず測定できなかった。極限粘度は、[η]=1.387(dl/g、35℃、FC−75(3M社製))であった。
【0136】
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE=60/40モル%であり、DSC分析により測定したTg(中央値)は、2℃であった。
【0137】
合成例3(エラストマー性セグメントAの合成)
着火源をもたない内容積47リットルのステンレス製オートクレーブに、純水30リットルおよび乳化剤としてC715COONH4を300g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩2.7gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、200rpmで攪拌しながら、50℃に昇温し、TFE/PMVE(32/68モル比)の混合ガスを、内圧が8.5kgf/cm2Gになるように仕込んだ。ついで、加硫酸アンモニウム(APS)の87.35mg/mlの濃度の水溶液100mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0138】
重合の進行により内圧が、7.5kgf/cm2Gまで降下した時点で、ジヨウ素化合物I(CF24Iを61.59g、CF2=CFOCF2CF2CH2Iを100.4gとC715COONH4の10重量%水溶液1392gとを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が8.5kgf/cm2Gになるように、TFEを自圧にて60g、PMVE66.4g(TFE/PMVE=60/40モル比)をプランジャーポンプにて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、7.5〜8.5kgf/cm2Gのあいだで、昇圧、降圧を繰り返した。
【0139】
重合反応の開始から69時間後、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、14kgになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度30重量%の水性分散体をえた。
【0140】
この水性分散体の一部を取り、凍結させ凝析を行ない、解凍後、凝析物を水洗、真空乾燥してゴム状重合体をえた。この重合体のムーニー粘度ML1+10(100℃)は、68であった。
【0141】
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE=60/40モル%であり、DSC分析により測定したTg(中央値)は、−4℃であった。
【0142】
合成例4(エラストマー性セグメントAの合成)
着火源をもたない内容積100リットルのステンレス製オートクレーブに、純水60リットルおよび乳化剤としてC715COONH4 600g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩600gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、120rpmで攪拌しながら、50℃に昇温し、TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)(25/75モル比)の混合ガスを、内圧が8.0kgf/cm2Gになるように仕込んだ。ついで、過硫酸アンモニウム(APS)の55.8mg/mlの濃度の水溶液100ml(APS5.58g)を窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0143】
重合の進行により内圧が、7.0kgf/cm2Gまで降下した時点で、ジヨウ素化合物I(CF24I 27.3gをC715COONH4の10重量%水溶液90gで乳化したものを窒素圧にて圧入した。ついで圧力が8.0kgf/cm2Gになるように、TFEを自圧にて120g、PMVE116g(TFE/PMVE=63/37モル比)をプランジャーポンプにて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、7〜8kgf/cm2Gのあいだで、昇圧、降圧を繰り返した。
【0144】
重合反応の開始から、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が12kgになった時点でオートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度16.0重量%の水性分散体73.6kgをえた。
【0145】
この水性分散体の一部を取り、凍結させ凝析を行ない、解凍後、凝析物を水洗、真空乾燥してゴム状重合体をえた。この重合体のムーニー粘度ML1+10(140℃)は80であった。
【0146】
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE=64/36モル%であり、DSC分析により測定したTg(中央値)は、3℃であった。
【0147】
実施例1(非エラストマー性セグメントBとのブロック共重合)
内容積3リットルのステンレス製オートクレーブに、合成例1でえられた水性分散体1096gと、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)4.15gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。400rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧8.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0148】
ついで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlにとかした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0149】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、7.0kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで8.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0150】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが29.6g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体1132gをえた。
【0151】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は19.6重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は55.3nmであった。
【0152】
ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち、{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は16.2重量%であった。
【0153】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0154】
えられた含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの組成は19F−NMR分析により、TFE/PPVE=99.5/0.5モル%であった。また、DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖のガラス転移点は2℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は324℃と検知された。また、高化式フローテスターを用いて直径2mm、長さ8mmのノズルを用い、372℃で予熱5分間、荷重7kgf/cm2でのメルトフローレートを測定したところ、43g/10minであった。
【0155】
実施例2(非エラストマー性セグメントBとのブロック共重合)
内容積3リットルのステンレス製オートクレーブに、合成例2でえられた水性分散体993.7gと、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)10.3gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。400rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧8.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0156】
ついで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlにとかした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0157】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、7.0kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで8.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0158】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが57.0g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体1200gをえた。
【0159】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は20.0重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は53.4nmであった。
【0160】
ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち、{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は24.8重量%であった。
【0161】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0162】
えられた含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの組成は19F−NMR分析により、TFE/PPVE=98.9/1.1モル%であった。また、DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖のガラス転移点は2℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は310℃と検知された。メルトフローレートは8g/10min(372℃、5kgf/cm2荷重)であった。
【0163】
実施例3(非エラストマー性セグメントBとのブロック共重合)
内容積3リットルのステンレス製オートクレーブに、合成例1でえられた水性分散体694gと、純水368g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)17.5gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。400rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧8.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0164】
ついで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlにとかした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0165】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、7.0kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで8.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0166】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが125g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体1205gをえた。
【0167】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は21.3重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は68.8nmであった。
【0168】
ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち、{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は51.7重量%であった。
【0169】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0170】
えられた含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの組成は19F−NMR分析により、TFE/PPVE=99.0/1.0モル%であった。また、DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖のガラス転移点は2℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は314℃と検知された。メルトフローレートは、15g/10min(372℃、5kgf/cm2荷重)であった。
【0171】
実施例4(非エラストマー性セグメントBとのブロック共重合)
内容積3リットルのステンレス製オートクレーブに、合成例1でえられた水性分散体349gと、純水685g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)26.4gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。400rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧8.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0172】
ついで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlにとかした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0173】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、7.0kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで8.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0174】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが189g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体1231gをえた。
【0175】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は20.2重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は82.3nmであった。
【0176】
ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち、{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は74.7重量%であった。
【0177】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0178】
えられた含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの組成は19F−NMR分析により、TFE/PPVE=97.1/2.9モル%であった。また、DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖のガラス転移点は2℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は314℃と検知された。メルトフローレートは11g/10min(372℃、5kgf/cm2荷重)であった。
【0179】
実施例5(非エラストマー性セグメントBとのブロック共重合)
内容積6リットルのステンレス製オートクレーブに、合成例3でえられたディスパージョン3000gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。600rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧2.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0180】
ついで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0181】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、1.5kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで2.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0182】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが約10g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体3011gをえた。
【0183】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は31.3重量%であり、ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は4.5重量%であった。
【0184】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0185】
DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖のガラス転移点は−4℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は263℃と検知された。この含フッ素多元セグメント化ポリマーのムーニー粘度ML1+10(140℃)は101であった。
【0186】
実施例6(非エラストマー性セグメントBとのブロック共重合)
内容積6リットルのステンレス製オートクレーブに、合成例3でえられたディスパージョン300gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。600rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧2.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0187】
ついで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlにとかした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0188】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、1.5kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで2.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0189】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが約120g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体3137gをえた。
【0190】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は19.6重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は55.3nmであった。
【0191】
ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち、{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は18.5重量%であった。
【0192】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0193】
DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖のガラス転移点は−4℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は328℃と検知された。この含フッ素多元セグメント化ポリマーのムーニー測定(140℃)は溶融せず測定できなかった。
【0194】
参考例1(パーハロオレフィン以外の構造単位からなるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントをもつ含フッ素多元セグメント化ポリマーの合成)
(1)エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの合成
6リットルのステンレス製オートクレーブに純水3000gおよびパーフルオロオクタン酸アンモニウム6gを仕込み、内部空間を純窒素ガスで完全に置換した後、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン(VdF/TFE/HFP)の69/11/20モル%混合ガスで80℃、撹拌下に15kg/cm2Gに加圧した。1%APS水溶液4gを槽内に圧入すると直ちに圧力低下が起るので、圧力を保つようにVdF/TFE/HFP(50/20/30モル比)混合ガスを圧入しながら反応を継続し、追加混合ガスが2g消費した段階で1,4−ジヨードパーフルオロブタン3.1gを圧入した。以後3時間毎に1%APS水溶液2gを圧入しながら15時間反応を行なった後、急速降温およびガス放出を行なって反応を終了させた。固形分含量25%の白色水性ディスパージョンがえられた。このディスパージョンの一部をとり、強力な剪断力を有するラインミキサーにより凝析し、凝析物を水洗、乾燥して、無色透明な弾性状ポリマーをえた。19F−NMR分析より共重合体の組成は、VdF/TFE/HFP=50/20/30モル%、DSC分析によるガラス転移点は−10℃、[η]=0.65(dl/g、35℃、MEK)。ムーニー粘度ML1+20(100℃)=75であった。
【0195】
(2)(非エラストマー製セグメントBとのブロック共重合)
内容積6リットルのステンレス製オートクレーブに、上記(1)でえられたディスパージョン3000gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換した後、系内の温度を80℃に保った。200rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧1.0kgf/cm2Gとなるよう圧入した。
【0196】
次いで過硫酸アンモニウム10mgを水2mlに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0197】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので0kgf/cm2Gまで低下した時点でテトラフルオロエチレンガスで1.0kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0198】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが約40g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体3061gをえた。
【0199】
えられた水性分散体中のポリマー濃度は25.5%であり、ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率、すなわち
{(後重合でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100
は4.5重量%であった。
【0200】
えられた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体をえた。
【0201】
DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのガラス転移点−4℃に加えて、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点が305℃に検知された。この含フッ素多元セグメント化ポリマーのムーニー粘度ML1+20(100℃)は89、ML1+10(140℃)は41であった。
【0202】
参考例2(エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBとのブレンド)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体(ダイキン工業(株)製ネオフロンPFA AP−201)13.5g(15重量%)を350℃に設定した内容積60cm3のブラベンダーミキサーに投入、回転数10rpmで3分間溶融させたのち、合成例1でえられたエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのみからなるポリマー73.5g(85重量%)を加え回転数30rpmで5分間混練し、組成物をえた。
【0203】
参考例3(エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBとのブレンド)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体(参考例2と同じ)を22.5g(25重量%)、合成例1でえたエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのみからなるポリマー67.5g(75重量%)を用いること以外は参考例2と同様にして混練し、組成物をえた。
【0204】
参考例4(エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBとのブレンド)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体(参考例2と同じ)を42.5g(50重量%)、合成例1でえたエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのみからなるポリマー42.5g(50重量%)を用いること以外は参考例2と同様にして混練し、組成物をえた。
【0205】
参考例5(エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBとのブレンド)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体(参考例2と同じ)を60.0g(75重量%)、合成例1でえたエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのみからなるポリマー20.0g(25重量%)を用いること以外は参考例2と同様にして混練し、組成物をえた。
【0206】
実施例7〜11、比較例1〜2(ブロック化率の測定)
実施例1〜4および6と参考例1でえた含フッ素多元セグメント化ポリマー及び、参考例2でえた組成物について以下に示した方法でブロック化率を測定した。結果を表4に示す。
【0207】
(ブロック化率の測定)
ブロック化率とは、第1工程(エラストマー性含フッ素ポリマーの合成)でえたポリマーから後重合によって含フッ素多元セグメント化ポリマーをうる工程において、原料となるエラストマー性含フッ素ポリマーの何%がブロック化(あるいはセグメント化)するかを表わす割合を示し、以下の方法で測定した。
【0208】
えられた含フッ素多元セグメント化ポリマーのDgをフロリナート(登録商標)FC−75(住友スリーエム(株)製)(実施例1、2、4のポリマー)またはアセトン(参考例1のポリマー)に5重量%となるように入れ密封し、60℃で24時間放置した。
【0209】
ブロック化されていないエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのみからなるポリマー分子が溶出してくるため、溶液と不溶物を分離し、溶液を取り出し120℃1時間乾燥させ溶液中の溶出してくるポリマー濃度を測定し、溶出ポリマー量(エラストマー性含フッ素ポリマーのみからなるもの)(C)を調べ、次式でブロック化率を求めた。
【0210】
【数1】

【0211】
【表4】

【0212】
実施例12〜16、比較例3〜7(物性測定)
実施例1〜4、参考例2〜5でえた含フッ素多元セグメント化ポリマーまたはエラストマー性セグメントAと非エラストマー性セグメントBとのブレンド物、およびPFA(ダイキン工業(株)製ネオフロンPFA AP230)をそれぞれ100mmφの金型に入れ、350℃に設定したプレス機にセットし、予熱を30分間行なったのち、70kg/cm2で1分間圧縮成形を行ない、厚さ約0.5mmのフィルムをえた。
【0213】
実施例5でえた含フッ素多元セグメント化ポリマーについては、160℃のプレス機を用いた以外は上記と同様にして圧縮成形を行ない、厚さ約2mmのシートをえた。
【0214】
上記でえられた成形フィルム、成形シートを用いて以下に示す各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0215】
(1)硬度
JIS K 6301に従い、A硬度およびD硬度を測定した。
(2)引張強度
上記それぞれのフィルムまたはシートをASTM−1467記載のダンベル状に切りとり、オリエンテック(株)製のテンシロン万能試験機を用い、クロスヘッドスピード200mm/minにて測定した。
(3)粘弾性
約35×5mmの短冊状に切断し、レオメトリック社製の粘弾性測定装置RSA−2にセットし、周波数1Hzにて各温度で引張弾性率を測定した。
【0216】
【表5】

【0217】
実施例17および比較例8(耐摩耗性試験)
実施例3の含フッ素多元セグメント化ポリマー、参考例4のエラストマー性セグメントAと非エラストマー性セグメントBとのブレンド物を実施例12と同様にして圧縮成形にて厚さ約0.5mmのフィルムを作製した。
【0218】
(耐摩耗性試験)
各種フィルムそれぞれについて、室温にて摩耗輪CS−17を使用し、荷重1kgで1000、2000、3000、4000回転後のそれぞれの摩耗損失量を調べた。結果を表6に示す。
【0219】
【表6】

【0220】
実施例18〜21および比較例9〜11(非粘着性試験)
実施例1〜4および参考例1の含フッ素多元セグメント化ポリマー、PFA(参考例2と同じ)について実施例12と同様にして圧縮成形にて厚さ約0.5mmのフィルムを作製した。
【0221】
さらに、ダイエルサーモプラスチックT530(ダイキン工業(株)製)について、300℃に設定したプレス機を用いた以外は実施例12と同様に圧縮成形を行ない厚さ約0.5mmのフィルムをえた。
【0222】
上記7種のフィルムを用いて以下に示す非粘着性試験(対水接触角、および31ダイン液に対する接触角)を行なった。結果を表7に示す。
【0223】
(対水接触角)
接触角計を用い、室温にてフィルム表面の対水接触角を測定した。
【0224】
(31ダイン液に対する接触角)
エチレングリコール97.5(v/v%)とホルムアルデヒド2.5(v/v%)を混合し、表面張力が31ダイン/cmとなるような液(31ダイン液)を調製した。
接触角計を用いて、この31ダイン液での接触角を測定した。
【0225】
【表7】

【0226】
実施例22(含フッ素セグメント化ポリマーの合成)
内容積170リットルのガラスライニング製オートクレーブに合成例4でえられた水性分散体68.5kg(ポリマー濃度16%、ポリマー約11kg)、純水16.0kg、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)990gを仕込み系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を50℃に保った。120rpmで撹拌を行ないながら、テトラフルオロエチレンを内圧5.5kgf/cm2Gとなるように圧入した。
【0227】
ついで過硫酸アンモニウム1.2gを水100mlにとかした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0228】
重合反応の進行にともなって、圧力が低下するので、テトラフルオロエチレンを常時供給し、圧力を5.5kgf/cm2Gに保った。
【0229】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが1.04kg消費する毎にPPVEの57gを窒素ガスを用いて圧入し、計4回同様にしてPPVE(計228g)を仕込んだ。
【0230】
重合開始よりテトラフルオロエチレンが5.2kg消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体90.4kgをえた。えられた水性分散体中のポリマー濃度は19.5重量%であった。
【0231】
ポリマー得量の増加により計算された重合体全体に対する非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの比率{(後重量でえられたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合でえられたポリマー得量)×100は37.8重量%であった。
【0232】
えられた水性分散体を硝酸により凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し白色固体16.5kgをえた。
【0233】
得られた含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの組成は、19F−NMR分析により、TFE/PPVE=96.0/4.0モル%であった。DSC分析により、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのガラス転移点は3℃であり、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は324℃に検知された。高化式フローテスターを用いたメルトフローレートは6g/10min(372℃、5kgf/cm2荷重)であった。
【0234】
実施例23(含フッ素多元セグメント化ポリマーのフッ素化処理)
230℃に保った電気炉中に実施例22でえた白色固体を入れ、炉内を窒素で置換した後、20容量%のフッ素ガス(窒素80容量%)を0.5リットル/minの流速で5時間、流通させた。終了後、充分に窒素ガスで置換、冷却後、白色固体をえた。
【0235】
実施例24(ブロック化率、物性、非粘着性の測定)
実施例23でえた含フッ素多元セグメント化ポリマーの白色固体を用いて、実施例7と同様にしてブロック化率を測定し、また実施例12と同様にして圧縮成形により厚さ0.5mmのフィルムを作製後、フィルムを用いて同様に硬度、引張強度を測定し、さらに実施例18と同様にして非粘着性の測定を行なった。結果を表8に示す。
【0236】
【表8】

【0237】
実施例25(チューブの作製)
実施例23でえた含フッ素多元セグメント化ポリマーの白色固体から押出機を用いて350℃〜370℃で押出しを行ないペレットを作製した。
【0238】
上記ペレットを環状ダイスをそなえた押出機を用いて350〜370℃で溶融押出しを行ない、外径(直径)10mm、厚さ100μmのチューブをえた。
【0239】
実施例26(ロールの作製)
実施例25でえたチューブを、中心部に外径(直径)3mmのステンレス製の芯金が配置された筒状成形体の内表面に、該内表面とチューブ外表面が接触するように配置し、かつチューブの内表面と、前記あらかじめ配置された芯金とが間隔を有するように構成しておき、芯金とチューブ内面との間隔にシリコーン系の液状ゴムを流し込み加硫した後、最外部に位置する筒状成形体を取り除き、柔軟性を有する含フッ素セグメント化ポリマーを最外層、シリコーンゴムを中間層に配したロールをえた。
【0240】
比較例12(PFAを最外層に配したロールの作成)
含フッ素多元セグメント化ポリマーにかえてPFA(ダイキン工業(株)製ネオフロン(登録商標)PFA AP230)を用いた以外は実施例25と同様に外径(直径)10mm、厚さ100μmのチューブを作製し、実施例26と同様に、PFAを最外層、シリコーンゴムを中間層に配したロールを作製した。
【0241】
実施例27、比較例13、14(表面柔軟性の評価)
実施例26、比較例11でえたロールの表面硬度をJIS K 6301に従い、A硬度を測定した(実施例27、比較例12)。
【0242】
さらに実施例26のロール表面の含フッ素多元セグメント化ポリマーを一部はがし、上記と同様にして中間層のシリコーンゴムのみの硬度を測定した。結果を表9に示す。
【0243】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBを有する含フッ素多元セグメント化ポリマーであって、
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAがガラス転移点25℃以下のポリマー鎖であって、テトラフルオロエチレン50〜85モル%およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)15〜50モル%からなる弾性ポリマー鎖であり、
非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBが結晶融点150℃以上のポリマー鎖であって、テトラフルオロエチレン85モル%を超え100モル%以下および式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1はCF3またはORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))0〜15モル%未満からなるポリマー鎖であり、
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントAと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBの存在比率A:Bが、5:95〜98:2(重量%)である
含フッ素多元セグメント化ポリマーからなるチューブ。
【請求項2】
前記含フッ素多元セグメント化ポリマーの150℃での弾性率が7×108dyn/cm2以下であることを特徴とする請求項1記載のチューブ。
【請求項3】
前記含フッ素多元セグメント化ポリマー中に含まれる非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBが結晶融点250℃以上のポリマー鎖であることを特徴とする請求項1または2記載のチューブ。
【請求項4】
前記含フッ素多元セグメント化ポリマー中に含まれる非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントBがテトラフルオロエチレン85〜99.7モル%および式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1はCF3またはORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))0.3〜15モル%からなるポリマー鎖であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチューブ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のチューブを施してなるOA機器のロール。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のチューブを施してなるOA機器の定着ロール。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のチューブを施してなるOA機器の加圧ロール。

【公開番号】特開2009−30069(P2009−30069A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256367(P2008−256367)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【分割の表示】特願2000−526562(P2000−526562)の分割
【原出願日】平成10年12月22日(1998.12.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】