OFDM方式における演算処理装置および演算処理方法
【課題】移動端末が送信するデータの周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置およびFFT演算処理方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る演算処理装置は、第1のビット数の固定小数点数で表された無線信号のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数のデータに変換するFFT演算部10と、前記無線信号の使用周波数の程度に応じて定まるビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すビット切り出し部20と、
を備える。
【解決手段】本発明に係る演算処理装置は、第1のビット数の固定小数点数で表された無線信号のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数のデータに変換するFFT演算部10と、前記無線信号の使用周波数の程度に応じて定まるビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すビット切り出し部20と、
を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM方式における演算処理装置および演算処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)システム等の無線通信システムにおいては、信号多重方式は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が採用され、無線アクセス方式は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)およびSCFDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されている。これらの無線アクセス方式は、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)、逆高速フーリエ変換(IFFT: Inverse Fast Fourier Transform)をディジタル信号処理で実行している。時間軸の信号は、FFTにより周波数軸の信号に変換され、周波数軸の信号は、IFFTにより時間軸の信号に変換される。
【0003】
基地局等におけるFFT/IFFTのディジタル信号処理は、固定小数点数で行われることが多い。固定小数点数は、整数部分に使用するビット数、および小数部分に使用するビット数をあらかじめ固定することにより、高速な演算を可能としている。
【0004】
図1に固定小数点数の加算の具体例を示す。図1は、10進数の2.375と5.25を、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数で00010.011と00101.010と表し、加算したものである。ここで、8ビットQ3フォーマットとは、固定小数点数全体のビット数を8ビット、固定小数点数の小数点数以下のビット数を3ビットとするフォーマットである。図1に示す例の場合、加算した結果は00111.101となる。この値は、10進数で表すと7.625であり、正確な値である。
【0005】
図2に固定小数点数の乗算の具体例を示す。図2は、10進数の2.375と5.25を、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数で表し、乗算したものである。図2に示す例の場合、乗算結果は、0001100.01111であり、これは、12ビットQ5フォーマットである。12ビットQ5フォーマットの乗算結果から、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を切り出して出力すると、上位2ビットおよび下位2ビットを切り捨てて、01100.011となる。この値は10進数で表すと12.375であり、正確な値12.46875より0.09375小さい。このように、12ビットQ5フォーマットの固定小数点数から、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を切り出して出力すると、計算誤差が発生する。
【0006】
FFT/IFFT演算は、加算と乗算を繰り返し実行する。したがって、FFT/IFFT演算を固定小数点数で実行すると、1回乗算する毎に計算誤差が発生し、乗算を繰り返すことによって計算誤差が積み重なっていく。その結果、演算結果は、最終的には大きな計算誤差を生じる。FFT演算とIFFT演算は、加算と乗算を繰り返すという点で同等の演算であるため、以下、FFT演算を例に説明する。
【0007】
図3に、FFT演算の計算誤差を小さくするための、従来技術の一例を示す。FFT演算部は、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を受け取る。FFT演算部は、受け取った固定小数点数を12ビットQ5フォーマットの固定小数点数に変換する。FFT演算部は、変換した12ビットQ5フォーマットの固定小数点数を用いて12ビットQ5フォーマットでFFT演算を実行する。その結果、FFT演算において乗算を繰り返しても、8ビットQ3フォーマットで乗算を繰り返す場合に比べて計算誤差が小さい。ビット切り出し部は、FFT演算部から、演算結果を12ビットQ5フォーマットで受け取る。ビット切り出し部は、12ビットQ5フォーマットの固定小数点数から、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を切り出して出力する。このように、従来技術は、乗算が繰り返されるFFT演算を固定小数点数全体のビット数を増やして実行することによって、乗算ごとに計算誤差が積み重なり最終的に大きな計算誤差が発生することを防いでいる。
【0008】
また、後続のディジタル処理部での計算誤差を小さくするために、FFT演算後の信号レベルを正規化するという発明がなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−147603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4に、LTEシステムにおける基地局受信装置の機能構成図を示す。基地局は、移動端末から、移動端末が基地局に送信するアップリンク信号を受信する。基地局が受信したアップリンク信号は、無線処理を行うRF(Radio Frequency)部100内のLNA(Low Noise Amplifier)102、VGA(Variable Gain Amplifier)108により所定の電力に調整された後、ADC(Analog to Digital Converter)によりアナログ信号からディジタル信号に変換される。ベースバンド処理を行うBB(ベースバンド)部200は、RF部100から、変換されたディジタル信号を受け取り、FFT演算等のベースバンド演算を実行してプロセッサ300に信号を出力する。プロセッサ300は、受け取った信号に対し、上位層(L2/L3等)における処理を実行する。
【0011】
LTEシステムにおいては、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅は、固定ではなく可変である。したがって、RF部100においてADC110に入力される信号を所定のレベルに調整しても、FFT演算後の単位周波数あたりの信号レベルは、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅によって異なる。
【0012】
図5に、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅とFFT処理後の単位周波数あたりの信号レベルとの関係を示す。図5(a)は、周波数帯域幅が広い場合を示す。図5(b)は、周波数帯域幅が狭い場合を示す。図5(a)、図5(b)の左側に示す平均電力の図は、図5(a)の場合と図5(b)の場合のFFT処理部が受け取る信号の平均電力が同程度であることを示す。FFT処理後は、単位周波数あたりの電力を周波数帯域幅で積分した値は、FFT処理前の平均電力に等しくなる。したがって、図5(a)のように周波数帯域幅が広いときは、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が小さく、図5(b)のように周波数帯域幅が狭いときは、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が大きい。
【0013】
上記のように、データ通信に用いられる周波数帯域幅に応じてFFT処理後の単位周波数あたりの電力は異なる。したがって、周波数帯域幅が狭く、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が大きい場合は、固定小数点数のビット切り出し位置を上位ビット側にずらし、周波数帯域幅が広く、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が小さい場合は、固定小数点数のビット切り出し位置を下位ビット側にずらすことが好ましい。
【0014】
従来技術は、FFT演算を、固定小数点数のビット数を増やして演算することにより、乗算ごとに計算誤差が積み重なって最終的に大きな誤差が発生することを防いでいる。しかし、従来技術のビット切り出しは、LTEにおいてはデータ通信に用いられる周波数帯域幅が可変であり、周波数帯域幅に応じてビット切り出しの最適位置が異なることに対応していない。したがって、従来技術のビット切り出し位置の決定方法は、周波数帯域幅が広くFFT処理後の単位周波数あたりの電力が小さい場合に、固定小数点数の上位ビットを有効に使えていないことになる。その結果、従来技術のビット切り出し部は、ビット数を有効に使用すれば達成できる精度よりも、低い精度の値を出力している。
【0015】
特許文献1の発明は、FFT演算後の出力レベルを後続のディジタル処理部に対して最適になるように正規化している。しかし、この方法は、単純にデータを定数倍するに過ぎないため、データ精度は改善されない。
【0016】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置およびFFT演算処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による演算処理装置は、
第1のビット数の固定小数点数で表された無線信号のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数のデータに変換するFFT演算部と、
前記無線信号の使用周波数の程度に応じて定まるビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すビット切り出し部と、
を備えるものである。
【0018】
また、前記ビット切り出し部は、前記無線信号の使用周波数の程度が少ない場合は、小数点以下のビット数が少ない位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、または、前記無線信号の使用周波数の程度が多い場合は、小数点以下のビット数が多い位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すことが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置およびFFT演算処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】固定小数点数の加算の一例である。
【図2】固定小数点数の乗算の一例である。
【図3】固定小数点数におけるFFT演算とビット切り出しの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける基地局受信装置の構成を図である。
【図5】FFT演算後の単位周波数あたりの電力を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける基地局装置の構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る図6に記載のFFT処理部の詳細な構成図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るリソースブロックの使用数とビット切り出し位置の対応表を示した図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るFFT演算後のビット切り出し位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図6は、本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける基地局装置の構成図である。本基地局構成は、無線処理を行うRF部100、ベースバンド信号を処理するBB部200およびL2,L3層などの上位層における処理を行うプロセッサ300を有する。プロセッサ300は、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いる周波数や周波数帯域幅などのスケジューリング情報を、伝送路状態やセル内のユーザ数などを基に決定する。
【0023】
RF部100は、受信信号を処理するブロックとして、LNA102、BPF(Band Pass Filter)104、Q−Demod(Quadrature Demodulator)部106、VGA108およびADC110を有する。また、RF部100は、送信信号を処理するブロックとして、DAC(Digital to Analog Converter)120、LPF(Low Pass Filter)118、QMod(Quadrature Modulator)部116、BPF114およびPA(Power Amplifier)112を有する。
【0024】
RF部100の受信処理においては、LNA102は、移動端末が送信するアップリンク信号を受信し、受信した信号を低ノイズで増幅する。BPF104は、LNA102から受け取った信号から、通信システムの帯域外の妨害波等を除去する。Q−Demod部106は、BPF104から受け取った信号を、直交する2つのベースバンド信号にダウンコンバートする。VGA108は可変増幅器であり、Q−Demod部106から受け取った信号を、所定の信号レベルになるように増幅する。ADC110は、VGA108から受け取ったアナログ信号をディジタル信号に変換し、ディジタル信号をBB部200に出力する。
【0025】
RF部100の送信処理においては、DAC120は、BB部200から受け取ったディジタル信号をアナログ信号に変換する。LPF118は、DAC120から受け取った信号から、不要な高周波信号を除去する。QMod部116は、LPF118から受け取った信号で搬送波を変調する。BPF114は、QMod部116から受け取った信号から、通信システムの帯域外の不要波を除去する。PA112はパワーアンプであり、PF114受け取った信号を、所定のパワーに増幅する。
【0026】
BB部200は、受信信号を処理するブロックとして、CP(Cyclic Prefix)除去部202、FFT処理部204、デマッピング部206およびデコード部210を有する。また、BB部200は、送信信号を処理するブロックとして、エンコード部218、マッピング部216、IFFT処理部214およびCP付加部212を有する。
【0027】
BB部200の受信処理においては、CP除去部202は、ADC110からディジタル信号を受信し、受信した信号からガードインターバルとして付加されたCPを除去する。FFT処理部204は、CP除去部202から受け取った信号を、時間軸の信号から周波数軸の信号に変換する。デマッピング部206は、FFT処理部204から受け取った位相および振幅からなる信号を、対応するシンボルに関連付ける。デコード部210は、デマッピング部206から受け取ったデータを復号し、もとのデータを取り出してプロセッサ300に出力する。
【0028】
BB部200の送信処理においては、エンコード部218は、プロセッサ300から受けとったデータを符号化する。マッピング部216は、エンコード部218から受け取ったデータを対応する位相および振幅に関連付ける。IFFT処理部214は、エンコード部218から受け取ったデータを、周波数軸の信号から時間軸の信号に変換する。CP付加部212は、IFFT処理部214から受け取ったデータにCPを付加し、RF部100に出力する。
【0029】
図7は、本発明の一実施形態に係る図6のFFT処理部204の詳細な構成図である。FFT処理部204は、FFT演算部10、ビット切り出し部20およびスケジューラ情報判定部30を有する。
【0030】
FFT演算部10は、CP除去部202からCP除去された信号を受け取る。FFT演算部10は、受け取った信号に対しFFT演算を実行し、時間軸の信号を周波数軸の信号に変換する。FFT演算部10は、FFT演算において乗算を繰り返すことにより、最終的に大きな計算誤差が発生することがないように、固定小数点数全体のビット数を増やして、FFT演算を実行する。FFT演算部10は、FFT演算後のデータを、固定小数点数全体のビット数を増やしたフォーマットのまま、ビット切り出し部20に出力する。
【0031】
ビット切り出し部20は、FFT演算部10から、固定小数点数全体のビット数が増えた状態のデータを受け取る。ビット切り出し部20は、受け取ったデータから、所定のビット数の固定小数点数を切り出して、デマッピング部216に出力する。所定のビット数は、例えば、FFT演算部10に入力される固定小数点数全体のビット数であるが、異なるビット数でも良い。ビット切り出し部20は、スケジューラ情報判定部30から、所定のビット数の固定小数点数を切り出す際のビット切り出し位置の情報を受け取る。ビット切り出し部20は、スケジューラ情報判定部30から受け取ったビット切り出し位置の情報に基づいて固定小数点数を切り出し、デマッピング部216に出力する。
【0032】
スケジューラ情報判定部30は、プロセッサ300から受け取ったスケジューリング情報に基づいてビット切り出し位置を決定し、決定したビット切り出し位置をビット切り出し部20に出力する。スケジューリング情報には、移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数の情報が含まれている。ここで、リソースブロック(RB: Resource Block)とは、LTEシステムにおいて周波数帯域幅を可変とする際の、基本単位である。データ伝送に使用するリソースブロック数が多いときは周波数帯域幅が広く、リソースブロック数が少ないときは周波数帯域幅が狭い。なお、本実施例の周波数帯域幅については、リソースブロックを用いているが、本発明では、使用されている周波数帯域幅の程度に応じてビット切り出し位置が決定されればよい。
【0033】
ビット切り出し位置の決定において、上位ビット側をビット切り出し位置とした場合、すなわち、固定小数点数の整数部分のビット数を多くし、小数点以下のビット数を少なくした場合は、切り出した固定小数点数のステップは粗くなるが、大きい信号レベルに対応することができる。下位ビット側をビット切り出し位置とした場合、すなわち、固定小数点数の整数部分のビット数を少なくし、小数点以下のビット数を多くした場合は、対応できる信号レベルは小さくなるが、切り出した固定小数点数のステップが細かくなるため、出力する信号レベルが小さい場合に、切り出した固定小数点数のデータの精度が高くなる。
【0034】
したがって、スケジューラ情報判定部30は、移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数が少ない場合、すなわち、周波数帯域幅が狭くFFT演算部10が出力する単位周波数あたりの信号レベルが大きい場合は、上位ビット側にビット切り出し位置を決定する。移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数が多い場合、すなわち、周波数帯域幅が広くFFT演算部10が出力するる単位周波数あたりの信号レベルが小さい場合は、下位ビット側にビット切り出し位置を決定する。
【0035】
図8は、スケジューラ情報判定部30が、リソースブロックの数に基づいてビット切り出し位置を決定する際の、対応表の一例である。この例は、固定小数点数全体のビット数が12ビットの固定小数点数から、8ビットの固定小数点数を切り出す場合を示している。スケジューラ情報判定部30は、移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数が1〜12と小さい場合、すなわち、周波数帯域幅が狭い場合は、上位ビット側でビット切り出し位置を決定する。スケジューラ情報判定部30は、リソースブロックの数が40〜50と大きい場合、すなわち、周波数帯域幅が広い場合は、下位ビット側でビット切り出し位置を決定する。
【0036】
図9は、図8のリソースブロックの数とビット切り出し位置の対応表を図示したものである。図9(a)は、リソースブロックの数が1〜12の場合を示す。図9(a)の一番左側に縦に並んでいる0〜7の数字は、FFT演算前の時間軸のデータが8ビットの固定小数点数であることを示している。7は上位ビット、0は下位ビットを示す。0〜11まで並んでいる数字は、FFT演算が12ビットの固定小数点数で実行され、12ビットの固定小数点数のままビット切り出し部に入力されたものを示している。11は上位ビット、0は下位ビットを示す。ビット切り出し部20は、この12ビットの固定小数点数から8ビットの固定小数点数を切り出す。図9(a)では、4〜11ビットを切り出している。ここで、上位ビット側の8ビットを切り出すことは、切り出した固定小数点数のステップは粗くなるが、大きい信号レベルに対応することができることを意味する。したがって、リソースブロックの数が少ない場合、すなわち、FFT演算部10が出力する信号レベルが大きいときは、図9(a)のように上位ビット側をビット切り出し位置として決定することが適している。
【0037】
図9(d)は、リソースブロックの数が40〜50の場合を示す。図9(d)では、1〜8ビットを切り出している。ここで、下位ビット側の8ビットを切り出すことは、対応できる信号レベルは小さくなるが、切り出した固定小数点数のステップが細かくなるため、出力する信号レベルが小さい場合に、切り出した固定小数点数のデータの精度が高くなることを意味する。したがって、リソースブロックの数が多い場合、すなわち、FFT演算部10が出力する信号レベルが小さいときは、図9(d)のように下位ビット側をビット切り出し位置として決定することが適している。
【0038】
このように、本実施形態によれば、移動端末が送信するデータの周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置を提供することができる。
【0039】
また、スケジューラ情報判定部30は、リソースブロックの数が少ない場合は、固定小数点フォーマットを小数点以下のビット数が少ないフォーマットに決定し、リソースブロックの数が多い場合は、固定小数点フォーマットを小数点以下のビット数が多いフォーマットに決定することで、リソースブロックの数が多い場合に、FFT処理部204が出力する固定小数点数の精度を向上させることができる。
【0040】
また、スケジューラ情報判定部30は、基地局から移動端末へ通知するスケジューリング情報を受け取ることにより、複雑な計算処理を必要とせずに、リソースブロックの数の情報を得ることができる。これは、消費電力の低減、チップ面積の小型化という効果を有する。
【0041】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0042】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 FFT演算部
20 ビット切り出し部
30 スケジューラ情報判定部
100 RF部
102 LNA
104 BPF
106 Q−Demod部
108 VGA
110 ADC
112 PA
114 BPF
116 Q−Mod部
118 LPF
120 DAC
200 BB部
202 CP除去部
204 FFT処理部
206 デマッピング部
210 デコード部
212 CP付加部
214 IFFT処理部
216 マッピング部
218 エンコード部
300 プロセッサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM方式における演算処理装置および演算処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)システム等の無線通信システムにおいては、信号多重方式は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が採用され、無線アクセス方式は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)およびSCFDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されている。これらの無線アクセス方式は、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)、逆高速フーリエ変換(IFFT: Inverse Fast Fourier Transform)をディジタル信号処理で実行している。時間軸の信号は、FFTにより周波数軸の信号に変換され、周波数軸の信号は、IFFTにより時間軸の信号に変換される。
【0003】
基地局等におけるFFT/IFFTのディジタル信号処理は、固定小数点数で行われることが多い。固定小数点数は、整数部分に使用するビット数、および小数部分に使用するビット数をあらかじめ固定することにより、高速な演算を可能としている。
【0004】
図1に固定小数点数の加算の具体例を示す。図1は、10進数の2.375と5.25を、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数で00010.011と00101.010と表し、加算したものである。ここで、8ビットQ3フォーマットとは、固定小数点数全体のビット数を8ビット、固定小数点数の小数点数以下のビット数を3ビットとするフォーマットである。図1に示す例の場合、加算した結果は00111.101となる。この値は、10進数で表すと7.625であり、正確な値である。
【0005】
図2に固定小数点数の乗算の具体例を示す。図2は、10進数の2.375と5.25を、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数で表し、乗算したものである。図2に示す例の場合、乗算結果は、0001100.01111であり、これは、12ビットQ5フォーマットである。12ビットQ5フォーマットの乗算結果から、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を切り出して出力すると、上位2ビットおよび下位2ビットを切り捨てて、01100.011となる。この値は10進数で表すと12.375であり、正確な値12.46875より0.09375小さい。このように、12ビットQ5フォーマットの固定小数点数から、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を切り出して出力すると、計算誤差が発生する。
【0006】
FFT/IFFT演算は、加算と乗算を繰り返し実行する。したがって、FFT/IFFT演算を固定小数点数で実行すると、1回乗算する毎に計算誤差が発生し、乗算を繰り返すことによって計算誤差が積み重なっていく。その結果、演算結果は、最終的には大きな計算誤差を生じる。FFT演算とIFFT演算は、加算と乗算を繰り返すという点で同等の演算であるため、以下、FFT演算を例に説明する。
【0007】
図3に、FFT演算の計算誤差を小さくするための、従来技術の一例を示す。FFT演算部は、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を受け取る。FFT演算部は、受け取った固定小数点数を12ビットQ5フォーマットの固定小数点数に変換する。FFT演算部は、変換した12ビットQ5フォーマットの固定小数点数を用いて12ビットQ5フォーマットでFFT演算を実行する。その結果、FFT演算において乗算を繰り返しても、8ビットQ3フォーマットで乗算を繰り返す場合に比べて計算誤差が小さい。ビット切り出し部は、FFT演算部から、演算結果を12ビットQ5フォーマットで受け取る。ビット切り出し部は、12ビットQ5フォーマットの固定小数点数から、8ビットQ3フォーマットの固定小数点数を切り出して出力する。このように、従来技術は、乗算が繰り返されるFFT演算を固定小数点数全体のビット数を増やして実行することによって、乗算ごとに計算誤差が積み重なり最終的に大きな計算誤差が発生することを防いでいる。
【0008】
また、後続のディジタル処理部での計算誤差を小さくするために、FFT演算後の信号レベルを正規化するという発明がなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−147603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4に、LTEシステムにおける基地局受信装置の機能構成図を示す。基地局は、移動端末から、移動端末が基地局に送信するアップリンク信号を受信する。基地局が受信したアップリンク信号は、無線処理を行うRF(Radio Frequency)部100内のLNA(Low Noise Amplifier)102、VGA(Variable Gain Amplifier)108により所定の電力に調整された後、ADC(Analog to Digital Converter)によりアナログ信号からディジタル信号に変換される。ベースバンド処理を行うBB(ベースバンド)部200は、RF部100から、変換されたディジタル信号を受け取り、FFT演算等のベースバンド演算を実行してプロセッサ300に信号を出力する。プロセッサ300は、受け取った信号に対し、上位層(L2/L3等)における処理を実行する。
【0011】
LTEシステムにおいては、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅は、固定ではなく可変である。したがって、RF部100においてADC110に入力される信号を所定のレベルに調整しても、FFT演算後の単位周波数あたりの信号レベルは、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅によって異なる。
【0012】
図5に、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅とFFT処理後の単位周波数あたりの信号レベルとの関係を示す。図5(a)は、周波数帯域幅が広い場合を示す。図5(b)は、周波数帯域幅が狭い場合を示す。図5(a)、図5(b)の左側に示す平均電力の図は、図5(a)の場合と図5(b)の場合のFFT処理部が受け取る信号の平均電力が同程度であることを示す。FFT処理後は、単位周波数あたりの電力を周波数帯域幅で積分した値は、FFT処理前の平均電力に等しくなる。したがって、図5(a)のように周波数帯域幅が広いときは、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が小さく、図5(b)のように周波数帯域幅が狭いときは、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が大きい。
【0013】
上記のように、データ通信に用いられる周波数帯域幅に応じてFFT処理後の単位周波数あたりの電力は異なる。したがって、周波数帯域幅が狭く、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が大きい場合は、固定小数点数のビット切り出し位置を上位ビット側にずらし、周波数帯域幅が広く、FFT処理後の単位周波数あたりの電力が小さい場合は、固定小数点数のビット切り出し位置を下位ビット側にずらすことが好ましい。
【0014】
従来技術は、FFT演算を、固定小数点数のビット数を増やして演算することにより、乗算ごとに計算誤差が積み重なって最終的に大きな誤差が発生することを防いでいる。しかし、従来技術のビット切り出しは、LTEにおいてはデータ通信に用いられる周波数帯域幅が可変であり、周波数帯域幅に応じてビット切り出しの最適位置が異なることに対応していない。したがって、従来技術のビット切り出し位置の決定方法は、周波数帯域幅が広くFFT処理後の単位周波数あたりの電力が小さい場合に、固定小数点数の上位ビットを有効に使えていないことになる。その結果、従来技術のビット切り出し部は、ビット数を有効に使用すれば達成できる精度よりも、低い精度の値を出力している。
【0015】
特許文献1の発明は、FFT演算後の出力レベルを後続のディジタル処理部に対して最適になるように正規化している。しかし、この方法は、単純にデータを定数倍するに過ぎないため、データ精度は改善されない。
【0016】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置およびFFT演算処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による演算処理装置は、
第1のビット数の固定小数点数で表された無線信号のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数のデータに変換するFFT演算部と、
前記無線信号の使用周波数の程度に応じて定まるビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すビット切り出し部と、
を備えるものである。
【0018】
また、前記ビット切り出し部は、前記無線信号の使用周波数の程度が少ない場合は、小数点以下のビット数が少ない位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、または、前記無線信号の使用周波数の程度が多い場合は、小数点以下のビット数が多い位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すことが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いられる周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置およびFFT演算処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】固定小数点数の加算の一例である。
【図2】固定小数点数の乗算の一例である。
【図3】固定小数点数におけるFFT演算とビット切り出しの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける基地局受信装置の構成を図である。
【図5】FFT演算後の単位周波数あたりの電力を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける基地局装置の構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る図6に記載のFFT処理部の詳細な構成図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るリソースブロックの使用数とビット切り出し位置の対応表を示した図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るFFT演算後のビット切り出し位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図6は、本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける基地局装置の構成図である。本基地局構成は、無線処理を行うRF部100、ベースバンド信号を処理するBB部200およびL2,L3層などの上位層における処理を行うプロセッサ300を有する。プロセッサ300は、移動端末と基地局との間のデータ通信に用いる周波数や周波数帯域幅などのスケジューリング情報を、伝送路状態やセル内のユーザ数などを基に決定する。
【0023】
RF部100は、受信信号を処理するブロックとして、LNA102、BPF(Band Pass Filter)104、Q−Demod(Quadrature Demodulator)部106、VGA108およびADC110を有する。また、RF部100は、送信信号を処理するブロックとして、DAC(Digital to Analog Converter)120、LPF(Low Pass Filter)118、QMod(Quadrature Modulator)部116、BPF114およびPA(Power Amplifier)112を有する。
【0024】
RF部100の受信処理においては、LNA102は、移動端末が送信するアップリンク信号を受信し、受信した信号を低ノイズで増幅する。BPF104は、LNA102から受け取った信号から、通信システムの帯域外の妨害波等を除去する。Q−Demod部106は、BPF104から受け取った信号を、直交する2つのベースバンド信号にダウンコンバートする。VGA108は可変増幅器であり、Q−Demod部106から受け取った信号を、所定の信号レベルになるように増幅する。ADC110は、VGA108から受け取ったアナログ信号をディジタル信号に変換し、ディジタル信号をBB部200に出力する。
【0025】
RF部100の送信処理においては、DAC120は、BB部200から受け取ったディジタル信号をアナログ信号に変換する。LPF118は、DAC120から受け取った信号から、不要な高周波信号を除去する。QMod部116は、LPF118から受け取った信号で搬送波を変調する。BPF114は、QMod部116から受け取った信号から、通信システムの帯域外の不要波を除去する。PA112はパワーアンプであり、PF114受け取った信号を、所定のパワーに増幅する。
【0026】
BB部200は、受信信号を処理するブロックとして、CP(Cyclic Prefix)除去部202、FFT処理部204、デマッピング部206およびデコード部210を有する。また、BB部200は、送信信号を処理するブロックとして、エンコード部218、マッピング部216、IFFT処理部214およびCP付加部212を有する。
【0027】
BB部200の受信処理においては、CP除去部202は、ADC110からディジタル信号を受信し、受信した信号からガードインターバルとして付加されたCPを除去する。FFT処理部204は、CP除去部202から受け取った信号を、時間軸の信号から周波数軸の信号に変換する。デマッピング部206は、FFT処理部204から受け取った位相および振幅からなる信号を、対応するシンボルに関連付ける。デコード部210は、デマッピング部206から受け取ったデータを復号し、もとのデータを取り出してプロセッサ300に出力する。
【0028】
BB部200の送信処理においては、エンコード部218は、プロセッサ300から受けとったデータを符号化する。マッピング部216は、エンコード部218から受け取ったデータを対応する位相および振幅に関連付ける。IFFT処理部214は、エンコード部218から受け取ったデータを、周波数軸の信号から時間軸の信号に変換する。CP付加部212は、IFFT処理部214から受け取ったデータにCPを付加し、RF部100に出力する。
【0029】
図7は、本発明の一実施形態に係る図6のFFT処理部204の詳細な構成図である。FFT処理部204は、FFT演算部10、ビット切り出し部20およびスケジューラ情報判定部30を有する。
【0030】
FFT演算部10は、CP除去部202からCP除去された信号を受け取る。FFT演算部10は、受け取った信号に対しFFT演算を実行し、時間軸の信号を周波数軸の信号に変換する。FFT演算部10は、FFT演算において乗算を繰り返すことにより、最終的に大きな計算誤差が発生することがないように、固定小数点数全体のビット数を増やして、FFT演算を実行する。FFT演算部10は、FFT演算後のデータを、固定小数点数全体のビット数を増やしたフォーマットのまま、ビット切り出し部20に出力する。
【0031】
ビット切り出し部20は、FFT演算部10から、固定小数点数全体のビット数が増えた状態のデータを受け取る。ビット切り出し部20は、受け取ったデータから、所定のビット数の固定小数点数を切り出して、デマッピング部216に出力する。所定のビット数は、例えば、FFT演算部10に入力される固定小数点数全体のビット数であるが、異なるビット数でも良い。ビット切り出し部20は、スケジューラ情報判定部30から、所定のビット数の固定小数点数を切り出す際のビット切り出し位置の情報を受け取る。ビット切り出し部20は、スケジューラ情報判定部30から受け取ったビット切り出し位置の情報に基づいて固定小数点数を切り出し、デマッピング部216に出力する。
【0032】
スケジューラ情報判定部30は、プロセッサ300から受け取ったスケジューリング情報に基づいてビット切り出し位置を決定し、決定したビット切り出し位置をビット切り出し部20に出力する。スケジューリング情報には、移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数の情報が含まれている。ここで、リソースブロック(RB: Resource Block)とは、LTEシステムにおいて周波数帯域幅を可変とする際の、基本単位である。データ伝送に使用するリソースブロック数が多いときは周波数帯域幅が広く、リソースブロック数が少ないときは周波数帯域幅が狭い。なお、本実施例の周波数帯域幅については、リソースブロックを用いているが、本発明では、使用されている周波数帯域幅の程度に応じてビット切り出し位置が決定されればよい。
【0033】
ビット切り出し位置の決定において、上位ビット側をビット切り出し位置とした場合、すなわち、固定小数点数の整数部分のビット数を多くし、小数点以下のビット数を少なくした場合は、切り出した固定小数点数のステップは粗くなるが、大きい信号レベルに対応することができる。下位ビット側をビット切り出し位置とした場合、すなわち、固定小数点数の整数部分のビット数を少なくし、小数点以下のビット数を多くした場合は、対応できる信号レベルは小さくなるが、切り出した固定小数点数のステップが細かくなるため、出力する信号レベルが小さい場合に、切り出した固定小数点数のデータの精度が高くなる。
【0034】
したがって、スケジューラ情報判定部30は、移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数が少ない場合、すなわち、周波数帯域幅が狭くFFT演算部10が出力する単位周波数あたりの信号レベルが大きい場合は、上位ビット側にビット切り出し位置を決定する。移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数が多い場合、すなわち、周波数帯域幅が広くFFT演算部10が出力するる単位周波数あたりの信号レベルが小さい場合は、下位ビット側にビット切り出し位置を決定する。
【0035】
図8は、スケジューラ情報判定部30が、リソースブロックの数に基づいてビット切り出し位置を決定する際の、対応表の一例である。この例は、固定小数点数全体のビット数が12ビットの固定小数点数から、8ビットの固定小数点数を切り出す場合を示している。スケジューラ情報判定部30は、移動端末がデータ通信に用いているリソースブロックの数が1〜12と小さい場合、すなわち、周波数帯域幅が狭い場合は、上位ビット側でビット切り出し位置を決定する。スケジューラ情報判定部30は、リソースブロックの数が40〜50と大きい場合、すなわち、周波数帯域幅が広い場合は、下位ビット側でビット切り出し位置を決定する。
【0036】
図9は、図8のリソースブロックの数とビット切り出し位置の対応表を図示したものである。図9(a)は、リソースブロックの数が1〜12の場合を示す。図9(a)の一番左側に縦に並んでいる0〜7の数字は、FFT演算前の時間軸のデータが8ビットの固定小数点数であることを示している。7は上位ビット、0は下位ビットを示す。0〜11まで並んでいる数字は、FFT演算が12ビットの固定小数点数で実行され、12ビットの固定小数点数のままビット切り出し部に入力されたものを示している。11は上位ビット、0は下位ビットを示す。ビット切り出し部20は、この12ビットの固定小数点数から8ビットの固定小数点数を切り出す。図9(a)では、4〜11ビットを切り出している。ここで、上位ビット側の8ビットを切り出すことは、切り出した固定小数点数のステップは粗くなるが、大きい信号レベルに対応することができることを意味する。したがって、リソースブロックの数が少ない場合、すなわち、FFT演算部10が出力する信号レベルが大きいときは、図9(a)のように上位ビット側をビット切り出し位置として決定することが適している。
【0037】
図9(d)は、リソースブロックの数が40〜50の場合を示す。図9(d)では、1〜8ビットを切り出している。ここで、下位ビット側の8ビットを切り出すことは、対応できる信号レベルは小さくなるが、切り出した固定小数点数のステップが細かくなるため、出力する信号レベルが小さい場合に、切り出した固定小数点数のデータの精度が高くなることを意味する。したがって、リソースブロックの数が多い場合、すなわち、FFT演算部10が出力する信号レベルが小さいときは、図9(d)のように下位ビット側をビット切り出し位置として決定することが適している。
【0038】
このように、本実施形態によれば、移動端末が送信するデータの周波数帯域幅に応じて、適切な固定小数点数のフォーマットでデータを出力するFFT演算処理装置を提供することができる。
【0039】
また、スケジューラ情報判定部30は、リソースブロックの数が少ない場合は、固定小数点フォーマットを小数点以下のビット数が少ないフォーマットに決定し、リソースブロックの数が多い場合は、固定小数点フォーマットを小数点以下のビット数が多いフォーマットに決定することで、リソースブロックの数が多い場合に、FFT処理部204が出力する固定小数点数の精度を向上させることができる。
【0040】
また、スケジューラ情報判定部30は、基地局から移動端末へ通知するスケジューリング情報を受け取ることにより、複雑な計算処理を必要とせずに、リソースブロックの数の情報を得ることができる。これは、消費電力の低減、チップ面積の小型化という効果を有する。
【0041】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0042】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 FFT演算部
20 ビット切り出し部
30 スケジューラ情報判定部
100 RF部
102 LNA
104 BPF
106 Q−Demod部
108 VGA
110 ADC
112 PA
114 BPF
116 Q−Mod部
118 LPF
120 DAC
200 BB部
202 CP除去部
204 FFT処理部
206 デマッピング部
210 デコード部
212 CP付加部
214 IFFT処理部
216 マッピング部
218 エンコード部
300 プロセッサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のビット数の固定小数点数で表された無線信号のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数のデータに変換するFFT演算部と、
前記無線信号の使用周波数の程度に応じて定まるビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すビット切り出し部と、
を備える演算処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算処理装置において、
前記ビット切り出し部は、
前記無線信号の使用周波数の程度が少ない場合は、小数点以下のビット数が少ない位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、または、前記無線信号の使用周波数の程度が多い場合は、小数点以下のビット数が多い位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出す演算処理装置。
【請求項3】
第1のビット数の固定小数点数で表されたアップリンク信号の時間軸のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータに変換するステップと、
前記アップリンク信号のリソースブロックの数を基に、前記第2のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータから前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータを切り出す位置を決定するステップと、
前記第2のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータから、前記データを切り出す位置を決定するステップが決定した前記データを切り出す位置で、前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータを切り出すステップと、
を備えることを特徴とする演算処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の演算処理方法において、
前記周波数軸のデータを切り出す位置を決定するステップは、前記リソースブロックの数が少ない場合は、前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータのビット切り出し位置を小数点以下のビット数が少ない前記ビット切り出し位置に決定し、前記リソースブロックの数が多い場合は、前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータのビット切り出し位置を小数点以下のビット数が多い前記ビット切り出し位置に決定すること、
を特徴とする演算処理方法。
【請求項1】
第1のビット数の固定小数点数で表された無線信号のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数のデータに変換するFFT演算部と、
前記無線信号の使用周波数の程度に応じて定まるビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出すビット切り出し部と、
を備える演算処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算処理装置において、
前記ビット切り出し部は、
前記無線信号の使用周波数の程度が少ない場合は、小数点以下のビット数が少ない位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、または、前記無線信号の使用周波数の程度が多い場合は、小数点以下のビット数が多い位置に決定された前記ビット切り出し位置に従って、前記第2のビット数のデータから、指定ビット数のデータを切り出す演算処理装置。
【請求項3】
第1のビット数の固定小数点数で表されたアップリンク信号の時間軸のデータを、前記第1のビット数よりも大きい第2のビット数の固定小数点数として演算して、前記第2のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータに変換するステップと、
前記アップリンク信号のリソースブロックの数を基に、前記第2のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータから前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータを切り出す位置を決定するステップと、
前記第2のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータから、前記データを切り出す位置を決定するステップが決定した前記データを切り出す位置で、前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータを切り出すステップと、
を備えることを特徴とする演算処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の演算処理方法において、
前記周波数軸のデータを切り出す位置を決定するステップは、前記リソースブロックの数が少ない場合は、前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータのビット切り出し位置を小数点以下のビット数が少ない前記ビット切り出し位置に決定し、前記リソースブロックの数が多い場合は、前記第1のビット数の固定小数点数の周波数軸のデータのビット切り出し位置を小数点以下のビット数が多い前記ビット切り出し位置に決定すること、
を特徴とする演算処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−95119(P2012−95119A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241043(P2010−241043)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]