説明

OLEDデバイスのアミノアントラセン化合物

OLEDデバイスは、カソードと、アノードと、それらの間にある発光層とを備えるとともに、該発光層のカソード側に、ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を含む層をさらに備えるが、但し(1)ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を実質的に含まない有機層が該カソードに隣接して存在しているか、又は(2)該アントラセンの9位と10位の両方に独立に選択されたジアリールアミン基が存在している。本発明により、効率、動作寿命、より低い動作電圧の改善された組み合わせが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアントラセン化合物を含む電子輸送層を備える有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、性能が限られているため、望ましい多くの用途にとっての障害となっていた。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて、電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とで構成されている。このようなデバイスは、一般に有機発光ダイオード、またはOLEDとも呼ばれる。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に付与されたGurneeらのアメリカ合衆国特許第3,172,862号;1965年3月9日に付与されたGurneeのアメリカ合衆国特許第3,173,050号;Dresner、「アントラセンにおける二重注入エレクトロルミネッセンス」、RCA Review、第30巻、322〜334ページ、1969年;1973年1月9日に付与されたDresnerのアメリカ合衆国特許第3,710,167号である。これらデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されているために非常に厚かった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0003】
より最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードに挟まれた極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。この明細書では、“有機EL素子”という用語に、アノード電極とカソード電極に挟まれたいろいろな層が含まれる。厚さを薄くして有機層の抵抗値を小さくすることで、デバイスがはるかに低電圧で動作できるようになった。アメリカ合衆国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、EL素子のアノードに隣接する一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と呼ばれ、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と呼ばれる。有機EL素子の内部で注入された正孔と電子が再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが出る。
【0004】
正孔輸送層と電子輸送層の間に有機発光層(LEL)を含む3層有機ELデバイスも提案されている。それは例えば、 Tangら(J. Applied Physics、第65巻、3610〜3616ページ、1989年)によって開示されているものである。発光層は、一般に、ゲスト材料をドープされたホスト材料からなる。さらに、アメリカ合衆国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを備える4層EL素子が提案されている。これらの構造によってデバイスの効率が向上した。
【0005】
多くのOLEDデバイスで用いられている最も一般的な材料の1つはトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)である。この金属錯体は優れた電子輸送材料であり、長年にわたって産業界で使用されてきた。
【0006】
例えば日本国特開2003-28534に開示されているように、アミノアントラセンはELデバイスにおいて有用であり、HTLまたはLELで一般に使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしエレクトロルミネッセンス・デバイスにおいて効率、動作寿命、より低い動作電圧をさらに改善できるであろう新しい材料をAlqに代わりに見いだすことが望ましかろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、カソードと、アノードと、それらの間にある発光層とを備えるとともに、該発光層のカソード側に、ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を含む層をさらに備えるが、但し(1)ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を実質的に含まない有機層が上記カソードに隣接して存在しているか、又は(2)上記アントラセンの9位と10位の両方に独立に選択されたジアリールアミン基が存在しているOLEDデバイスが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、効率、動作寿命、より低い動作電圧の改善された組み合わせが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、全体として上記の通りである。本発明の一実施態様によると、OLEDデバイスとして、カソードと、アノードと、その間にある発光層とを備えるとともに、その発光層のカソード側に、ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を含む層をさらに備えていて、ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を実質的に含まない有機層がカソードに隣接して存在しているOLEDデバイスが提供される。本出願では、実質的に含まないは、10質量%未満を意味する。
【0011】
発光層のカソード側にある層に含まれるアントラセン化合物は、一般式(I):
【化1】

で表わすことができる。ただし、それぞれのR1は、アリールアミン基、アルキルアミン基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から独立に選択され;それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基が互いに合わさって縮合環を形成することができ;それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;nは、0〜4の中から独立に選択された整数であり;xは、0〜3の中から独立に選択された整数である。
【0012】
このアントラセンの好ましい一実施態様では、それぞれのR1は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択され;それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができる。R1の例は、置換されたフェニル基、置換されていないフェニル基、置換されたナフチル基、置換されていないナフチル基、置換されたアントリル基、置換されていないアントリル基である。
【0013】
カソードに隣接した層は、少なくとも1つの複素芳香族環を有する化合物を含んでいることが望ましい。そのような化合物の例としてさまざまなクラスの多彩な材料があり、例えば、フェナントロリン、ベンズアゾール、金属キレート化オキシノイド、トリアジン、トリアゾール、ピリジン、オキサジアゾール、キノキサリンと、これらの誘導体が挙げられるが、これですべてではない。カソードに隣接した層で使用するのに適した他の材料は、イミダゾール、オキサゾール、ピリミジン、ピラジンと、これらの誘導体の中から選択することができる。
【0014】
フェナントロリンは、一般式(ETF-1):
【化2】

で表わすことができる。ただし、R1〜R8は、独立に、水素、アルキル基、アリール基、置換されたアリール基のいずれかであり、R1〜R8のうちの少なくとも1つはアリール基または置換されたアリール基である。フェナントロリンの例は、
【化3】


【化4】

である。
【0015】
構造式(ETF-2)を満たすベンズアゾール:
【化5】

もカソードに隣接する材料として有用である。ただし、nは3〜8の整数であり;Zは、O、NR、Sのいずれかであり;RとR'は、個別に、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);アリール、またはヘテロ原子で置換されたアリールで炭素原子が5〜20個のもの(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルや、これら以外の複素環系);フルオロ;縮合芳香族環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;Xは、炭素、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールからなる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)である。
【0016】
金属キレート化オキシノイド(一般式(ETF-3)):
【化6】

は、カソードに隣接した層で用いるのに役立つ材料の別のクラスを構成する。ただし、Mは金属を表わし;nは1〜4の整数であり;Zは、現われるごとに独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0017】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価、四価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(アルミニウム、ガリウムなど)、遷移金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価、四価の金属を使用することができる。
【0018】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0019】
有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III);Alq];
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)];
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II);
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III);
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム];
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)];
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)];
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0020】
ピリジン含有材料(以下のETF-4)は、カソードに隣接した層で用いるのに役立つ材料の別のクラスを構成する。
【化7】

ただし、R1〜R5は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリールであり、R1とR2、またはR2とR3、またはR3とR4、またはR4とR5は、独立に、合わさって縮合環を形成することができる。
【0021】
有用なピリジン化合物の代表例は以下の通りである。
【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
トリアジン含有材料(以下のETF-5)は、カソードに隣接した層で用いるのに役立つ材料の別のクラスを構成する。
【化10】

ただし、R1〜R3は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリールのいずれかである。
【0025】
有用なトリアジン化合物の代表例は以下の通りである。
【0026】
【化11】

【0027】
トリアゾール含有材料(以下のETF-6)は、カソードに隣接した層で用いるのに役立つ材料の別のクラスを構成する。
【化12】

ただし、R1〜R3は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリールのいずれかであり、R1とR2、またはR1とR3は、独立に、合わさって縮合環を形成することができる。
【0028】
有用なトリアゾール化合物の代表例は以下の通りである。
【0029】
【化13】

【0030】
オキサジアゾール含有材料(以下のETF-7)は、カソードに隣接した層で用いるのに役立つ材料の別のクラスを構成する。
【化14】

ただし、R1〜R2は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリールのいずれかである。
【0031】
有用なオキサジアゾール化合物の代表例は以下の通りである。
【0032】
【化15】

【0033】
キノキサリン含有材料(以下のETF-8)は、カソードに隣接した層で用いるのに役立つ材料の別のクラスを構成する。
【化16】

ただし、R1〜R6は、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリールであり、R1とR2、またはR3とR4、またはR4とR5、またはR5とR6は、独立に、合わさって縮合環を形成することができる。
【0034】
有用なキノキサリン化合物の代表例は以下の通りである。
【0035】
【化17】

【0036】
好ましい一実施態様では、アントラセン化合物は、9位と10位の一方にジアリールアミン基を備え、9位と10位の他方に置換基を備えていて、そのような化合物を実質的に含まない有機層がカソードに隣接して存在している。
【0037】
発光層のカソード側にある層に含まれるアントラセン化合物は、一般式(II):
【化18】

で表わすことができる。ただし、R1は9位または10位にあって、H、アリールアミン基、アルキルアミン基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択され;それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;それぞれのnは、0〜4の中から独立に選択された整数である。
【0038】
一例では、R1は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択され;それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができる。R1の例は、置換されたフェニル基、置換されていないフェニル基、置換されたナフチル基、置換されていないナフチル基、置換されたアントリル基、置換されていないアントリル基である。
【0039】
別の一例では、R1は以下に示す置換された基または置換されていない基の中から選択される。
【0040】
【化19】

【0041】
カソードに隣接する層は、少なくとも1つの複素芳香族環を有する化合物を含んでいることが望ましい。そのような化合物の例としてはさまざまなクラスからの多彩な材料があり、例えば、フェナントロリン、ベンズアゾール、金属キレート化オキシノイド、トリアジン、トリアゾール、ピリジン、オキサジアゾール、キノキサリンなどと、これらの誘導体が挙げられるが、これですべてではない。カソードに隣接する層で用いるのに適した他の材料は、イミダゾール、オキサゾール、ピリミジン、ピラジンと、これらの誘導体の中から選択することができる。これらの例はすでに示したものである。
【0042】
本発明の別の一実施態様によると、OLEDデバイスとして、カソードと、アノードと、その間にある発光層とを備えるとともに、その発光層のカソード側に、9位と10位に独立に選択されたジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を含む層をさらに備えるOLEDデバイスが提供される。
【0043】
発光層のカソード側にある層に含まれるアントラセン化合物は、一般式(III):
【化20】

で表わすことができる。ただし、それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;それぞれのnは、0〜4の中から独立に選択された整数である。
【0044】
好ましい一実施態様では、一般式(III)で表わされるアントラセン化合物は、9,10-ジ(ナフチルフェニルアミン)アントラセンである。
【0045】
別の好ましい一実施態様では、発光層のカソード側にある層に含まれるアントラセン化合物は、一般式(IV):
【化21】

で表わすことができる。ただし、それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;それぞれのnは、0〜4の中から独立に選択された整数である。
【0046】
本発明の実施態様により、動作効率、より大きな輝度、色相、低い駆動電圧、改善された動作安定性といった有利な特徴を提供することができる。
【0047】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。さらに、“基”という用語を用いる場合、置換基が置換可能な1つの水素を含んでいるのであれば、この用語に置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数個の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質をその置換基が失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リンからなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいて、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、アゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリジノニル、キノリニル、イソキノリニル、2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルがある);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0048】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0049】
本発明の目的のためには、複素環の定義に配位結合または供与結合を含む環も含まれる。配位結合の定義は、『グラントとハックーの化学事典』、91ページに見いだすことができる。要するに、配位結合は、電子が豊富な原子(例えばOやN)が一対の電子を電子が欠乏した原子(例えばAlやB)に与えるときに形成される。
【0050】
当業者であれば、特定の基が電子供与基であるか電子受容基であるかを十分に判断できよう。電子供与特性と電子受容特性の最も一般的な指標はハメットσ値である。水素はハメットσ値がゼロであるのに対し、電子供与基は負のハメットσ値を持ち、電子受容基は正のハメットσ値を持つ。『ランゲの化学ハンドブック』、第12版、マグロウ・ヒル社、1979年、表3-12、3-134〜3-138ページ(参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に、一般的に遭遇する多数の基のハメットσ値が掲載されている。ハメットσ値は、フェニル環置換に基づいて割り当てられるが、電子供与基と電子受容基を定性的に選択するための実用的なガイドとなる。
【0051】
適切な電子供与基の選択は、-R'、-OR'、-NR'(R")の中から行なうことができる。ただしR'は、炭素原子を6個まで含む炭化水素であり、R"は、水素またはR'である。電子供与基の具体例として、メチル、エチル、フェニル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-NHCH3、-N(C6H5)2、-N(CH3)(C6H5)、-NHC6H5などがある。
【0052】
適切な電子受容基の選択は、シアノ置換基、α-ハロアルキル置換基、α-ハロアルコキシ置換基、アミド置換基、スルホニル置換基、カルボニル置換基、カルボニルオキシ置換基、オキシカルボニル置換基のうちで炭素原子を10個まで含むものの中から行なうことができる。具体例として、-CN、-F、-CF3、-OCF3、-CONHC6H5、-SO2C6H5、-COC6H5、-CO2C6H5、-OCOC6H5などがある。
【0053】
特に断わらない限り、ある材料の“パーセンテージ”または“パーセント”という用語と“%”という記号は、層の中に存在する材料の体積パーセントを表わす。
【0054】
本発明において有用な化合物として以下のものが挙げられる。
【0055】
【化22】

【0056】
【化23】

【0057】
【化24】

【0058】
【化25】

【0059】
【化26】

【0060】
【化27】

【0061】
【化28】

【0062】
【化29】

【0063】
【化30】

【0064】
【化31】

【0065】
【化32】

【0066】
【化33】

【0067】
【化34】

【0068】
【化35】

【0069】
【化36】

【0070】
【化37】

【0071】
【化38】

【0072】
【化39】

【0073】
【化40】

【0074】
デバイスの一般的な構造
【0075】
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、またはこれらの組み合わせを用いた多くのOLEDデバイス構造で利用することができる。このような構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0076】
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。OLEDにとっての必須の条件は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に位置する有機発光層とが存在していることである。追加の層を使用できるが、それについては後でさらに詳しく説明する。
【0077】
小分子デバイスにとって特に有用な典型的な構造は図1に示したものであり、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、カソード113からなる。これらの層について以下に詳しく説明する。基板をカソードに隣接した位置にすることや、基板が実際にアノードまたはカソードを構成することも可能であることに注意されたい。アノードとカソードに挟まれた有機層を、便宜上、有機EL素子と呼ぶ。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが望ましい。
【0078】
OLEDのアノードとカソードは、導電体160を通じて電圧/電流源150に接続されている。OLEDは、アノードとカソードの間に、アノードがカソードと比べて正の電位となるように電圧を印加することによって動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入され、電子はカソードから有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中にポテンシャル・バイアスが逆転して電流が流れないわずかな期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現できることがときにある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0079】
基板
【0080】
本発明のOLEDデバイスは、支持用基板101の上に形成されて、カソードまたはアノードが基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板は、複数の材料層を含む複合構造にすることができる。これは、TFTがOLED層の下に設けられているアクティブ・マトリックス基板で一般的である。それでも基板の少なくとも画素化された発光領域は、ほぼ透明な材料でできている必要がある。基板と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノードであることが一般的だが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、回路板材料などがある。このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0081】
アノード
【0082】
望むエレクトロルミネッセンス光(EL)をアノードを通して見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物だが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光をカソードだけを通して見るような用途ではアノードの透光特性は重要でないため、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0083】
正孔注入層(HIL)
【0084】
必ずしも必要ではないが、正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107の間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121号と第1 029 909号に記載されている。
【0085】
正孔輸送層(HTL)
【0086】
有機ELデバイスの正孔輸送層107は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0087】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を有するものである。そのような化合物として、構造式(A)で表わされるものがある。
【0088】
【化41】

ただし、Q1とQ2は、独立に選択された芳香族第三級アミン部分であり、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0089】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B)で表わされる。
【0090】
【化42】

ただし
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化43】

に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に選択されたアリール基である。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0091】
芳香族第三級アミン基の別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミン基として、一般式(D)で表わされるものがある。
【0092】
【化44】

ただし、
それぞれのAreは、独立に選択されたアリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)であり;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R7、R8、R9は、独立に選択されたアリール基である。
【0093】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0094】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0095】
正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、またはそのような化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて用いる場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入・輸送層に挟まれた層として配置される。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン
【0096】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3個以上のアミン基を有する芳香族第三級アミンを使用できる(その中にオリゴマー材料も含まれる)。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0097】
発光層(LEL)
【0098】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)は、蛍光材料またはリン光材料を含むことができ、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。発光材料は、通常は強い蛍光染料とリン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は一般にホスト材料の0.01〜10質量%の割合で組み込まれる。
【0099】
ホスト材料と発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))が可能である。ポリマーの場合には、小分子発光材料をポリマーからなるホストに分子として分散させること、または発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。
【0100】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ電位の比較である。ホストから発光材料に効率的にエネルギーが移動するための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体の場合には、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高くてホストから発光材料にエネルギーが移動できることも重要である。
【0101】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0102】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0103】
【化45】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、現われるごとに独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0104】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価、四価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(アルミニウム、ガリウムなど)、遷移金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価、四価の金属を使用することができる。
【0105】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0106】
有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III);Alq];
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)];
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II);
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III);
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム];
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)];
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)];
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0107】
アントラセンの誘導体(一般式F)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。アメリカ合衆国特許第6,465,115号とWO 2004/018587に開示されている非対称なアントラセン誘導体も有用なホストである。
【0108】
【化46】

ただし、R1とR2は、独立に選択されたアリール基(例えばナフチル、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、アントラセン)を表わし;
R3とR4は、それぞれの環上の1個以上の置換基を表わす。この場合の各置換基は、以下に示すグループの中から個別に選択される。
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合ヘテロ芳香族環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子からなるヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子が1〜24個のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素またはシアノ。
【0109】
アントラセンの有用な1つのクラスは9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式G)である。
【0110】
【化47】

ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれの環上の1個以上の置換基を表わす。この場合の各置換基は、以下に示すグループの中から個別に選択される。
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合ヘテロ芳香族環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子からなるヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子が1〜24個のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素またはシアノ。
【0111】
発光層で用いるアントラセン材料の代表例として、2-(4-メチルフェニル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)-アントラセン、2-フェニル-9,10-ジ-(2-ナフチル)-アントラセン、9-(2-ナフチル)-10-(1,1'-ビフェニル)-アントラセン、10-(4-ビフェニル)-9-(2-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]-アントラセンと、以下に示す化合物がある。
【0112】
【化48】

【0113】
【化49】

【0114】
ベンズアゾール誘導体(一般式H)はエレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の別のクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0115】
【化50】

ただし、
nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、個別に、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);アリール、またはヘテロ原子で置換されたアリールで炭素原子が5〜20個のもの(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルや、これら以外の複素環系);フルオロ;縮合芳香族環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかからなる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0116】
アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているように、ジスチリルアリーレン誘導体も有用なホストである。カルバゾール誘導体はリン光発光体のための特に有用なホストである。
【0117】
有用な蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。有用な材料の代表例として以下のものがあるが、これですべてではない。
【0118】
【化51】

【0119】
【化52】

【0120】
【化53】

【0121】
【化54】

【0122】
【化55】

【0123】
【化56】

【0124】
電子輸送層(ETL)
【0125】
本発明の有機ELデバイスの電子輸送層を構成するのに用いられる一般的な薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物であり、その中にはオキシンそのもの(一般に8キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、高性能を示し、容易に薄膜の形態になる。ここで考慮するオキシノイド系化合物の例は、すでに説明した一般式(E)を満たす化合物である。
【0126】
他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体と、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。一般式(H)を満たすベンズアゾールも有用な電子輸送材料である。トリアジンも電子輸送材料として有用であることが知られている。
【0127】
カソード
【0128】
アノードだけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソードは、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、カソードと、有機層(例えば電子輸送層(ETL))に接する薄い電子注入層(EIL)とを備えた構成の二層があり、カソードの上にはより厚い導電性金属層を被せる。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つの二層カソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料のセットとしては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0129】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、アメリカ合衆国特許第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1 076 368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー-マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー・アブレーション、選択的化学蒸着などがある。
【0130】
他の有用な有機層とデバイスの構造
【0131】
層109と111を場合によってはまとめて単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。発光材料が正孔輸送層に含まれていてよいことも従来技術で知られている。その場合、正孔輸送層がホストとして機能する。多数の発光材料を1つ以上の層に添加し、例えば青色発光材料と黄色発光材料、またはシアン色発光材料と赤色発光材料、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせて白色発光OLEDを作ることができる。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0025419、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号に記載されている。白色発光デバイスに適切な構成のフィルタを取り付けて着色光を発生させることができる。
【0132】
従来技術で知られている追加の層(例えば電子阻止層、正孔阻止層)を本発明のデバイスで使用することができる。正孔阻止層は、発光層と電子輸送層の間に用いることができる。電子阻止層は、正孔輸送層と発光層の間に用いることができる。これらの層は、例えばアメリカ合衆国特許出願公開2002/0015859に記載されているように、一般に発光効率を向上させるのに用いられる。本発明のいくつかの実施態様では、デバイスは、カソードに隣接した層112を備えている。
【0133】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,337,492号に記載されているようないわゆる積層デバイス構造で使用することができる。
【0134】
有機層の堆積
【0135】
上記の有機材料は、その有機材料の形態に適した任意の手段で堆積させることが好ましい。小分子の場合には、昇華を通じてうまく堆積するが、他の手段で(例えば溶媒から)堆積させることもできる(そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から蒸発させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料を含む層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0136】
本発明の材料を堆積させる好ましい1つの方法は、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0255857とアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/945,941号に記載されている。この方法では、異なる蒸発源を用いて本発明のそれぞれの材料を蒸発させる。第2の好ましい方法では、温度制御された材料供給路に沿って材料が計量供給されるフラッシュ気化が利用される。好ましいこのような方法は、譲受人に譲渡された以下の特許出願:アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号、第10/805,980号、第10/945,940号、第10/945,941号、第11/050,924号、第11/050,934号に記載されている。この第2の方法を利用し、異なる蒸発源からそれぞれの材料を蒸発させること、または複数の固体材料を混合した後に同じ蒸発源を用いて蒸発させることができる。
【0137】
封止
【0138】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封止と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx)、テフロン(登録商標)、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封止法として知られている。
【0139】
光学的最適化
【0140】
本発明のOLEDデバイスでは、特性の向上を望むのであれば、公知のさまざまな光学的効果を利用することが可能である。例示すると、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、色変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、特にカバーの上に、またはカバーの一部として設けることもできる。
【0141】
アミノアントラセンはさまざまな方法で合成することができる。特別な1つの方法の概略を以下の合成スキーム(I)に示してある。この例では、鈴木交差カップリングを利用して9-ブロモアントラセンを特別なアリール基と結合させ、Int-Aを形成する。Int-Aを臭素化するとInt-Bが得られる。それをPd触媒によってアミンと交差カップリングさせるとIC-1になる。これは本発明において有用な材料の1つのクラスである。
【0142】
【化57】

【0143】
アミノアントラセンは合成スキーム(II)に従って合成することもできる。この例では、サンドマイヤー反応を利用して2-アミノ-アントラキノンを2-ブロモ-アントラキノン(Int-C)に変換する。次に、パラジウムの化学反応を利用してInt-Cを芳香族アミンと結合させ、Int-Dを得る。あるいはInt-Dは、ウルマン・カップリングを利用して2-アミノ-アントラキノンから直接合成することもできる。Int-Dとアリール・グリニャール試薬またはアリールリチウム試薬との反応の後、得られたジオールを還元するとIC-2になる。これは本発明において有用な材料の別のクラスである。
【0144】
【化58】

【0145】
アミノアントラセンは合成スキーム(III)に従って合成することもできる。この例では、パラジウム触媒を用いて2,6-ジブロモアントラキノンを芳香族アミンと交差カップリングさせ、Int-Eを得る。Int-Eをアリール・グリニャール試薬またはアリールリチウム試薬と反応させてジオールを得る。次にこのジオールを還元するとIC-3が得られる。これは本発明において有用な材料の別のクラスである。2,6-ジブロモアントラキノンは、サンドマイヤー反応を利用して2,6-ジアミノアントラキノンから合成することができる。IC-3は、2,6-ジブロモアントラキノンから出発し、ウルマン・カップリングを利用して1ステップで合成することもできる。
【0146】
【化59】

【0147】
アミノアントラセンは合成スキーム(IV)に従って合成することもできる。この例では、パラジウム触媒を用いて9,10-ジブロモアントラセンを芳香族アミンと交差カップリングさせ、IC-4を得る。これは本発明において有用な材料の別のクラスである。
【0148】
【化60】

【実施例】
【0149】
合成の実施例
【0150】
9-(2-ナフチレニル)アントラセン:
【0151】
9-ブロモアントラセン(25.0g、0.088モル)と、2-ナフチルボロン酸(17.1g、0.099モル)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.7g)と、300mlのトルエンと、150mlの炭酸カリウム(2N)をすべて、窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に添加した。反応物を2日間にわたって還流温度に加熱した。溶離液としてヘキサン:ジクロロメタン(比6:1)を用いた薄層クロマトグラフィ(TLC)により、9-ブロモアントラセンがもはや存在していないことがわかった。反応物を室温まで冷却し、灰色の固形物を濾過によって回収し、水でよく洗浄した。この固形物をHCl(6M)の中で2時間にわたってわずかに加熱した後、固形物を濾過によって回収し、水でよく洗浄し、乾燥させた。灰色の固形物をジクロロメタンに懸濁させ、わずかに加熱した。懸濁液を濾過し、ジクロロメタンでよく洗浄した。濾液を回転蒸発させ、得られた黄色の固形物をジエチルエーテルの中で60分間にわたって超音波処理した。この黄色の固形物を濾過によって回収し、ジエチルエーテルで洗浄した後、炉の中で乾燥させると、黄色の純粋な生成物が16.7g(収率62%)得られた。FD-MS (m/z):304。
【0152】
9-ブロモ-10-(2-ナフチレニル)アントラセン:
【0153】
9-(2-ナフチレニル)アントラセン(24.5g、0.081モル)を400mlのジクロロメタンに溶かした。臭素(13.0g、0.081モル)を溶かした100mlのジクロロメタンを30分間かけて一滴ずつ添加し、得られた溶液を室温にて一晩にわたって撹拌した。ジクロロメタンを回転蒸発によって除去し、メタノール(250ml)をフラスコに添加した。懸濁液を濾過し、黄色の固形物をメタノールで洗浄し、乾燥させると、黄色の純粋な生成物が30g(収率97%)得られた。FD-MS (m/z):383。
【0154】
N,10-(2,-ナフタレニル)-N'-フェニル-9-アントラセンアミン(Inv-2):
【0155】
9-ブロモ-10-(2-ナフチレニル)アントラセン(5.0g、0.013モル)と、N-フェニル-2-ナフチルアミン(3.2g、0.014モル)と、1.75gのナトリウムt-ブトキシドと、0.16gの酢酸パラジウム(II)と、2滴のトリ-t-ブチルホスフィンと、25mlのo-キシレンを窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に添加した。この混合物を一晩にわたって100℃に加熱した。室温まで冷却した後、不溶性材料を濾過によって除去した。キシレンを蒸溜によって除去し、残った固形物のクロマトグラフィをシリカゲル・カラム上で実施すると、黄色の純粋な生成物が6.0g(収率88%)得られた。FD-MS (m/z):521。
【0156】
N,N'-ジ-2-ナフタレニル-N,N'-ジフェニル-9,10-アントラセンジアミン(Inv-3):
【0157】
9,10-ジブロモアントラセン(1.0g、0.003モル)と、N-フェニル-2-ナフチルアミン(1.43g、0.007モル)と、0.7gのナトリウムt-ブトキシドと、0.04gの酢酸パラジウム(II)と、0.03gのトリ-t-ブチルホスフィンと、140mlのo-キシレンを窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に添加した。この混合物を一晩にわたって還流温度に加熱した。冷却後、エタノールを添加し、固形物を濾過によって回収し、エタノールでよく洗浄した。回収した固形物のクロマトグラフィをシリカゲル・カラム上で実施すると、黄色の純粋な生成物が1.68g得られた。FD-MS (m/z):612。
【0158】
N,N,9,10-テトラフェニル-2-アントラセンアミン(Inv-6):
【0159】
(ステップ1)2-(ジフェニルアミノ)-9,10-アントラセンジオン
【0160】
2-アミノアントラキノン(5g、0.022モル)と、インドベンゼン(10.0g、0.05モル)と、ブロモベンゼン(20.0ml)と、銅(2.0g)と、炭酸カリウム(6.5g、0.05モル)を窒素雰囲気下で4日間にわたって還流させた。熱い溶液を假焼した漏斗を通過させた。冷却後、漏斗を塩化メチレンでよく洗浄し、ほとんどが固形物になるまで濾液を回転蒸発させた。アセトンを添加し、赤い固形物を濾過によって回収すると、6.0g(収率72%)が得られた。FD-MS (m/z):375。
【0161】
(ステップ2)N,N,9,10-テトラフェニル-2-アントラセンアミン(Inv-6):
【0162】
2-(ジフェニルアミノ)-9,10-アントラセンジオン(1.2g、0.003モル)と無水テトラヒドロフラン(15ml)を窒素雰囲気下で丸底フラスコに入れ、0℃に冷却した。フェニルリチウム(5.3ml、シクロヘキサン-エーテル(70:30)中に1.8M)を一滴ずつ添加した。撹拌しながら一晩放置して温め、温度を室温にした。水の中にこの反応混合物を注いだ。ジエチルエーテルで抽出した後、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を回転蒸発によって除去すると、粗固形物が得られた。この粗ジオールを32mlの酢酸に溶かした。撹拌しながらヨウ化ナトリウム(4.8g)と次亜リン酸ナトリウム水和物(4.8g)を添加した。この混合物を60分間にわたって還流温度に加熱し、室温まで冷却し、水の中に注いだ。沈澱した固形物を濾過によって回収し、水で洗浄し、少量のメタノール(約20ml)で洗浄した後、乾燥させた。カラム・クロマトグラフィによって精製すると、純粋な生成物がオレンジ色の固形物として0.95g(収率60%)得られた。FD-MS (m/z):497。
【0163】
N,10-フェニル-N'-(2-ナフタレニル)-9-アントラセンアミン(Inv-9):
【0164】
9-ブロモ-10-フェニルアントラセン(1.5g、0.005モル)と、N-フェニル-2-ナフチルアミン(0.005モル)と、0.5gのナトリウムt-ブトキシドと、0.1gの酢酸パラジウム(II)と、2滴のトリ-t-ブチルホスフィンと、40mlのトルエンを窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に添加した。この混合物を2日間にわたって還流温度に加熱した。冷却後、トルエンを回転蒸発によって除去し、残った固形物のクロマトグラフィをシリカゲル・カラム上で実施すると、黄色の純粋な生成物が1.6g(収率75%)得られた。FD-MS (m/z):471。
【0165】
10-(2-ナフタレニル)-N,N-ジフェニル-9-アントラセンアミン(Inv-10):
【0166】
9-ブロモ-10-(2-ナフチレニル)アントラセン(3.3g、0.008モル)と、ジフェニルアミン(1.5g、0.008モル)と、1.0gのナトリウムt-ブトキシドと、0.1gの酢酸パラジウム(II)と、3滴のトリ-t-ブチルホスフィンと、80mlのトルエンを窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に添加した。この混合物を2日間にわたって還流温度に加熱した。冷却後、トルエンを回転蒸発によって除去し、残った固形物のクロマトグラフィをシリカゲル・カラム上で実施すると、黄色の純粋な生成物が4.0g(収率99%)得られた。FD-MS (m/z):471。
【0167】
10-[1,1'-ビフェニル]-4-イル-N-フェニル-N'-(2-ナフタレニル)-9-アントラセンアミン(Inv-11):
【0168】
9-ブロモ-10-[1,1'-ビフェニル]-4-イル-N-アントラセン(7.0g、0.017モル)と、N-フェニル-2-ナフチルアミン(3.5g、0.017モル)と、2.7gのナトリウムt-ブトキシドと、1.0gの酢酸パラジウム(II)と、6滴のトリ-t-ブチルホスフィンと、120mlのトルエンを窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に添加した。この混合物を1日間にわたって還流温度に加熱した。冷却後、メタノールを添加し、固形物を濾過によって回収し、乾燥させた。固形物のクロマトグラフィをシリカゲル・カラム上で実施すると、黄色の純粋な生成物が7.0g(収率75%)得られた。FD-MS (m/z):547。
【0169】
デバイスの実施例:
【0170】
例1:デバイス1-1〜1-4の製造
【0171】
一連のELデバイス(1-1〜1-3)を以下のようにして構成した。
【0172】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0173】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0174】
3.次に、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる正孔輸送材料層を75nmの厚さに堆積させた。
【0175】
4.次に、10-(4-ビフェニル)-9-(2-ナフチル)アントラセンと1重量%の発光材料L-55に対応する厚さ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0176】
5.表1に示した材料からなる厚さ40nmの電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。
【0177】
6.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの層をETLの上に真空蒸着した後、厚さ100nmのアルミニウム層を堆積させ、二層カソードを形成した。
【0178】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0179】
デバイス1-4はデバイス1-1と同じ方法で構成したが、ETLを、Inv-10からなる37.5nmの層と、Bphenからなる2.5nmの層にした点が異なっている。ただしBphenはフッ化リチウムに近い側にした。
【0180】
これらデバイスの動作電圧と発光効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を電圧(V)、輝度収率(cd/A)、効率(W/A)の形態で表1に示してある。デバイスの効率は、そのデバイスが1アンペアの入力電流によって発生させる放射束(単位はワット)である。ただし放射束は、デバイスが単位時間に発生させる光のエネルギーである。光の強度は、通常はデバイスの面に垂直に測定され、角度依存性はランバートの法則によると仮定する。デバイスの動作寿命も調べた。デバイスを-14Vの逆バイアスにして100HzでAC駆動し、室温にて40mA/cm2で作動させた。T70になるまでの寿命を、光出力が初期光出力の70%に低下するまでデバイスを動作させたときの時間数として表1に示してある。
【0181】
【表1】

【0182】
デバイス1-4は、Alq(デバイス1-1)と比べて安定性がいくらか劣るが、電圧と効率は大きく改善される。ETLとしてBphenだけを用いる(デバイス1-2)と、電圧と効率が同じように改善されるが、デバイスの動作寿命は劇的に低下するという欠点がある。ETLとしてInv-10だけを用いる(デバイス1-3)と、電圧と効率に改善は見られないため、二層構造が望ましいことがわかる。
【0183】
例2:ELデバイス2-1〜2-4の製造
【0184】
デバイス2-1〜2-3をデバイス1-1と同じ方法で構成したが、ETLを表2に示した化合物にした点が異なっている。
【0185】
デバイス2-4をデバイス1-1と同じ方法で構成したが、ETLを、Inv-3からなる37.5nmの層と、Bphenからなる2.5nmの層にした点が異なっている。ただしBphenはフッ化リチウムに近い側にした。
【0186】
これらデバイスの動作電圧と発光効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を電圧(V)、輝度収率(cd/A)、効率(W/A)の形態で表2に示してある。デバイスの効率は、そのデバイスが1アンペアの入力電流によって発生させる放射束(単位はワット)である。ただし放射束は、デバイスが単位時間に発生させる光のエネルギーである。光の強度は、通常はデバイスの面に垂直に測定され、角度依存性はランバートの法則によると仮定する。デバイスの動作寿命も調べた。デバイスを-14Vの逆バイアスにして100HzでAC駆動し、室温にて40mA/cm2で作動させた。T70になるまでの寿命を、光出力が初期光出力の70%に低下するまでデバイスを動作させたときの時間数として表2に示してある。
【0187】
【表2】

【0188】
デバイス2-4は、Alq(デバイス2-1)と比べて電圧と効率が大きく改善される。ETLとしてBphenだけを用いる(デバイス2-2)と、電圧と効率が同じように改善されるが、デバイスの動作寿命は劇的に低下するという欠点がある。ETLとしてInv-3だけを用いる(デバイス2-3)と、電圧と効率に改善は見られないため、二層構造が望ましいことがわかる。
【0189】
例3:デバイス3-1〜3-6の製造
【0190】
一連のELデバイス(3-1〜3-6)を以下のようにして構成した。
【0191】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0192】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0193】
3.次に、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる正孔輸送材料層を75nmの厚さに堆積させた。
【0194】
4.次に、2-フェニル-9,10-ジ-(2-ナフチル)-アントラセンと0.75重量%の発光材料L-55に対応する厚さ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0195】
5.Inv-6の後にBphenがそれぞれ表3に示した厚さになった電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。
【0196】
6.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの層をETLの上に真空蒸着した後、厚さ150nmのアルミニウム層を堆積させ、二層カソードを形成した。
【0197】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了する。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封する。
【0198】
これらデバイスの動作電圧と発光効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を電圧(V)、輝度収率(cd/A)、効率(W/A)の形態で表3に示してある。デバイスの効率は、そのデバイスが1アンペアの入力電流によって発生させる放射束(単位はワット)である。ただし放射束は、デバイスが単位時間に発生させる光のエネルギーである。光の強度は、通常はデバイスの面に垂直に測定され、角度依存性はランバートの法則によると仮定する。
【0199】
【表3】

【0200】
ETL全体の厚さは同じに維持したままETLの2つの化合物層の厚さを変化させると、電圧と効率が改善される。デバイス3-5でInv-6の代わりにTBADN(2-(t-ブチル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)-アントラセン)を用いると、駆動電圧が5.37V、輝度収率が2.98cd/A、効率が0.076W/Aのデバイスが得られる。これは、デバイス3-5と比べて優れてはいない。
【0201】
例4:デバイス4-1〜4-6の製造
【0202】
デバイス4-1〜4-6をデバイス3-1と同じ方法で構成したが、ETLにおいてInv-6の代わりにInv-9を用いた点が異なっている。ETLに含まれる各材料の厚さを表4に示す。
【0203】
これらデバイスの動作電圧と発光効率を動作電流20mA/cm2で調べた。その結果を電圧(V)、輝度収率(cd/A)、効率(W/A)の形態で表4に示してある。デバイスの効率は、そのデバイスが1アンペアの入力電流によって発生させる放射束(単位はワット)である。ただし放射束は、デバイスが単位時間に発生させる光のエネルギーである。光の強度は、通常はデバイスの面に垂直に測定され、角度依存性はランバートの法則によると仮定する。
【0204】
【表4】

【0205】
ETL全体の厚さは同じに維持したままETLの2つの化合物層の厚さを変化させると、電圧と効率が改善される。
【0206】
本発明を好ましいくつかの実施態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神と範囲の中でさまざまなバリエーションや変形が可能であることが理解されよう。この明細書の中で引用した特許とそれ以外の刊行物のあらゆる内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】本発明によるOLEDデバイスの断面図である。
【符号の説明】
【0208】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
111 電子輸送層(ETL)
112 カソードに隣接した層
113 カソード
150 電圧/電流源
160 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、それらの間にある発光層とを備えるとともに、該発光層のカソード側に、ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を含む層をさらに備えるが、但し(1)ジアリールアミン基を有するアントラセン化合物を実質的に含まない有機層が上記カソードに隣接して存在しているか、又は(2)上記アントラセンの9位と10位の両方に独立に選択されたジアリールアミン基が存在している、OLEDデバイス。
【請求項2】
該発光層に隣接する層に含まれるアントラセン化合物が、一般式(I):
【化1】

で表わされる(ただし、
それぞれのR1は、独立に、Hが選択されるか、アリールアミン基、アルキルアミン基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択された置換基が選択され、少なくとも1つは置換基であり;
それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;
それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;
nは、0〜4の中から独立に選択された整数であり;
xは、0〜3の中から独立に選択された整数である)、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項3】
それぞれのR1が、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択され;
それぞれのR2とR3が、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができる、請求項2に記載のOLEDデバイス。
【請求項4】
それぞれのR1が、置換されたフェニル基、置換されていないフェニル基、置換されたナフチル基、置換されていないナフチル基、置換されたアントリル基、置換されていないアントリル基の中から選択される、請求項2に記載のOLEDデバイス。
【請求項5】
カソードに隣接した上記層が、フェナントロリン、ベンズアゾール、金属キレート化オキシノイド、トリアジン、トリアゾール、ピリジン、オキサジアゾール、キノキサリンの中から選択された化合物を含む、請求項2に記載のOLEDデバイス。
【請求項6】
上記(1)において、アントラセン化合物が、9位と10位の少なくとも一方にジアリールアミン基を備え、9位と10位の他方にHまたは置換基を備えていて;そのときには、9位または10位にジアリールアミン基を備えていて、9位と10位の他方にHまたは置換基を備えるアントラセン化合物を実質的に含まない有機層が、上記カソードに隣接して存在している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項7】
該発光層に隣接する層に含まれるアントラセン化合物が、一般式(II):
【化2】

で表わされる(ただし、
R1は9位または10位にあって、H、アリールアミン基、アルキルアミン基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択され;
それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;
それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;
それぞれのnは、0〜4の中から独立に選択された整数である)、請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
それぞれのR1が、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選択され;
それぞれのR2とR3が、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができる、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
それぞれのR1が、置換されたフェニル基、置換されていないフェニル基、置換されたナフチル基、置換されていないナフチル基、置換されたアントリル基、置換されていないアントリル基の中から選択される、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
R1の選択が、以下に示す置換された基または置換されていない基の中からなされる:
【化3】

、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
カソードに隣接した上記層が、フェナントロリン、ベンズアゾール、金属キレート化オキシノイド、トリアジン、トリアゾール、ピリジン、オキサジアゾール、キノキサリンの中から選択された化合物を含む、請求項7に記載のOLEDデバイス。
【請求項12】
発光層のカソード側にある上記層に含まれるアントラセンの9位または10位の他方にある上記置換基が、フェニル基、アントリル基、ナフチル基、ペンタセニル基の中から選択される、請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項13】
上記アントラセンの9位と10位の両方に、独立に選択されたジアリールミン基が存在している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項14】
該発光層に隣接する層に含まれるアントラセン化合物が、一般式(III):
【化4】

で表わされる(ただし、
それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;
それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;
それぞれのnは、0〜4の中から独立に選択された整数である)、請求項13に記載のOLEDデバイス。
【請求項15】
一般式(III)で表わされる上記アントラセン化合物が9,10-ジ(ナフチルフェニルアミン)アントラセンである、請求項14に記載のOLEDデバイス。
【請求項16】
該発光層に隣接する層に含まれるアントラセン化合物が、一般式(IV):
【化5】

で表わされる(ただし、
それぞれのR2とR3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フルオロ基、アリールアミン基、アルキルアミン基、シアノ基の中から独立に選択され、これらの基は互いに合わさって縮合環を形成することができ;
それぞれのmは、0〜5の中から独立に選択された整数であり;
それぞれのnは、0〜4の中から独立に選択された整数である)、請求項15に記載のOLEDデバイス。
【請求項17】
アントラセンを含む上記ジアリールアミンの選択が、以下のものの中からなされる:
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項18】
二層カソードを備える、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項19】
上記二層カソードがリチウム材料を含む、請求項18に記載のOLEDデバイス。
【請求項20】
上記二層カソードがLiFを含む、請求項19に記載のOLEDデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2009−521799(P2009−521799A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547273(P2008−547273)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046668
【国際公開番号】WO2007/075286
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】