説明

OSAを治療するための予防的体液移動

本発明は、脚などの重力依存領域から上体及び吻側野への予防的体液移動を、もたれかかって寝る前にその除去及び分布を生じさせるために十分に長い時間生じさせることに基づく、閉塞性無呼吸を治療するための方法及び装置を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は35U.S.C.§119(e)の下で2009年4月24日出願の米国仮出願番号61/172,389の優先権の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は閉塞性睡眠時無呼吸を治療する方法、特に寝る前に身体の下肢から体液を移動させることによって閉塞性睡眠時無呼吸を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
姿勢変化からの重力依存体液移動は、通常、体重分布及び血管内外体液分布に著しい変化を引き起こす。こうした変化は上気道力学の重大な障害になる可能性があり、睡眠中の閉塞性無呼吸イベントにつながり得る。非肥満患者における脚からの体液の移動は、頸囲の増加、上気道内径の減少、及び虚脱(collapsibility)の増加につながることが示されている。さらに、非肥満患者の間で、睡眠中の無呼吸低呼吸指数(AHI)は脚から頸への夜間体液量移動に起因し得ることが提案されている。そしてこうした体液量移動は日中の座りがちな生活に関連する。
【0004】
座りがちな生活は日中の脚の静脈鬱血につながる。もたれかかって寝ると、脚の体液は移動し吻側野の体液量を増加させる。そして吻側野の体液量の増加は、頸囲の増加、上気道内径の減少、及び上気道の虚脱の増加につながる。そしてこれらは閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に特有の睡眠中の閉塞性事象を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、OSAにつながる体内の体液の移動を管理することによってOSAを治療する方法を持つことが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
故に、本発明の目的は、従来方法の欠点を克服する閉塞性睡眠時無呼吸を治療する方法を提供することである。この目的は本発明の一実施形態に従って、閉塞性睡眠時無呼吸を患っている患者の有効量の細胞外液を減らすことを含む方法を提供することによって達成される。
【0007】
本発明のこれらの及び他の目的、機能及び特徴、並びに操作方法、構造の関連要素の機能、部品の組み合わせ、製造の経済は、添付の図面を参照して以下の記載と添付の請求項を考慮することでより明らかとなり、これらは全て本明細書の一部を成し、同様の参照数字は様々な図面において対応する部品を指定する。しかしながら、図面は例示と説明の目的に過ぎず、本発明の制限の定義のつもりではないことが明確に理解されるものとする。明細書及び請求項において使用される通り、"a"、"an"及び"the"の単数形は文脈が他に明確に定めない限り複数の指示対象を含む。
【0008】
添付の図面は本発明の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は閉塞性睡眠時無呼吸を治療する方法に関する。具体的には、様々な実施形態は、閉塞性睡眠時無呼吸を軽減又は解消するために十分な、閉塞性睡眠時無呼吸を患っている患者の有効量の細胞外液を削減することに関する。一実施形態において、有効量の細胞外液を削減することは、患者の下肢を圧迫することを有する。別の実施形態において、圧迫は横になって寝る前に少なくとも1時間かけられる。別の実施形態において、圧迫は少なくとも20分間かけられる。好適には、圧迫は空気圧迫装置、電気的に作動する材料を利用する装置、四肢周りのバンドを収縮させる機械的アクチュエータを使用する装置、受動的弾性衣類、又は抗ショックズボンでかけられる。
【0010】
別の実施形態は患者の脚を患者の心臓よりも上に持ち上げることを有する。さらに別の実施形態は患者に電気刺激を加えることを有する。一態様において、電気刺激は経皮電気神経刺激装置で加えられる。別の実施形態において、方法はさらにむずむず脚症候群の症状を緩和する。さらに別の実施形態は患者に利尿薬を投与することを有する。別の実施形態は細胞外液の量の減少を検知することを有する。別の実施形態は検知した細胞外液の減少に基づいて治療を終了することを有する。
【0011】
通常、心臓は血液を重力に逆らって脚の静脈の上へ汲み上げようとする。人が歩くと、静脈周辺の腓腹筋の規則的な収縮と弛緩が、心臓が効率的に血液を脚の上へ移動させるのを助ける。しかしながら、通常の人が一日中連続して歩くことはあり得ない。ほとんどの人は時には座るか又は立っている。加えて、静脈壁又は弁が生まれつき弱い人もおり、これは静脈循環にさらなる困難を生じる。
【0012】
閉塞性睡眠時無呼吸は、最初に発明者らによって理解された通り、睡眠中の患者の下肢から吻側野への細胞外液の逆流のタイミングによって引き起こされ得る。しかし体液が一日の早くに(寝る前に)下肢から移動する場合、体液は全身に循環し分布する。このように、過剰体液は除去されることができ、従って吻側体液量を貯留し増加する可能性は低い。下肢からの体液の移動は、例えば体液を移動させるために圧迫治療を用いること、抗ショックズボンで下半身に圧力を加えること、又は寝る前に下半身を運動させることによって達成されることができる。
【0013】
体液を下肢から移動させるための圧迫治療の使用が図に図示される。圧力102が脚100に加えられる。圧力102は細胞外液104を脚100から上体(不図示)へ流れさせる。好適には、治療は患者が寝る前に少なくとも30分間実行される。本発明の代替的実施形態において、治療は患者が寝る前に少なくとも1時間実行される。本発明の別の代替的実施形態において、治療は患者が寝る前に少なくとも2時間実行される。本発明の別の代替的実施形態において、治療は患者が寝る前に少なくとも4時間実行される。体液を細胞外空間から血液循環中に移動させるために十分な時間がとられるべきである。そしてこれは、患者がもたれかかった姿勢のとき、夜間に上気道周辺組織へ移動する体液の量を減らす。
【0014】
座りがちな生活のために日中に液貯留を起こしやすい人は、寝る前に上体へ体液を戻すことによって閉塞性イベントを起こす可能性を減らすことができる。本発明の一実施形態において、過剰体液は腎臓系によって除去される。身体の体液調節系が寝る前に下肢からの移動による体液負荷の増加を検出する場合、この体液の利尿が増加する。さらに、身体からの体液除去は患者への利尿薬の投与によって増進されることができる。
【0015】
下肢から上体への体液移動を促進するために様々な装置が利用されることができる。装置例は限定されないが、以下を含む。
空気圧迫装置(PCD)
EPAM(電気活性高分子)などの電気的に作動する材料を利用する装置
四肢周りのバンドを収縮させる機械的アクチュエータ(モータ、ソレノイドなど)を使用する装置
周囲に沿って弾性繊維又はバンドを持つ靴下状衣類など、より連続的な圧力を四肢に与える受動的弾性衣類
抗ショックズボンに似た装置
患者の心臓よりも上に脚を持ち上げるのを助ける装置
静脈鬱滞ポンプ(すなわちAircast Venaflow)
脚からの体液移動を生じさせるために直接電気刺激を使用する装置(すなわち経皮電気神経刺激装置つまりTENS)
【0016】
本願の方法と併用できる既知の装置は以下の特許に記載されており、その内容は全体が参照によって本明細書に組み込まれる。空気圧‐米国特許番号5,651,792;4,841,956;4,614,179;4,614,180;4,702,232;6,592,534、抗ショックズボン‐4,577,622;4,355,632;4,270,527;4,039,039、弾性衣類‐6,613,007;6,338,723;5,653,244、静脈鬱滞ポンプ‐7,207,959;7,001,384;6,736,787、収縮バンド‐4,696,289、TENS/電気刺激‐6,615,080;7,499,748;7,187,973。当業者に既知の他の装置も同様に使用され得る。加えて、一部の患者は体液を戻すために散歩又は運動することができるかもしれない。さらに、一部の患者は寝ることなくただ脚を上げるか又は横になるだけで効果的であるかもしれない。
【0017】
別の実施形態において、上記の装置及び方法は体液移動に基づく閉塞性睡眠時無呼吸を患っているむずむず脚症候群(RLS)患者の治療と組み合され得る。空気圧迫装置は夕方にRLSの症状を緩和するのに有効であることが証明されている。従って、治療の組み合わせはRLSとOSAの両方を患っている患者に有利になり得る。
【0018】
別の実施形態において、体液移送システムは体液移動の効果を決定するセンサと組み合され得る。これを達成するために電気インピーダンスを利用するものを含む複数のセンサ装置がある。一態様において、センサシステムは治療セッションの終了を決定するために十分な体液移動が起こったかどうかを決定する。
【0019】
本発明は現在最も有用で好適な実施形態とみなされるものに基づいて例示を目的に詳細に記載されているが、こうした詳細は単にその目的のためだけであって、本発明は開示された実施形態に限定されず、反対に添付の請求項の精神と範囲内にある変更及び均等な配置を含むことを目的とすることが理解されるべきである。例えば、本発明は可能な限り、任意の実施形態の1つ以上の特徴が任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合されることができることを考慮することが理解されるべきである。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞性睡眠時無呼吸を治療する方法であって、
閉塞性睡眠時無呼吸を患っている患者の有効量の細胞外液を減らすステップを有する方法。
【請求項2】
有効量の細胞外液を減らすステップが、前記患者の下肢を圧迫するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧迫が横になって寝る前に少なくとも1時間かけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
圧迫が少なくとも20分間かけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
圧迫が、空気圧迫装置、電気的に作動する材料を利用する装置、四肢周りのバンドを収縮させる機械的アクチュエータを使用する装置、受動的弾性衣類、又は抗ショックズボンでかけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の心臓よりも上に前記患者の脚を持ち上げるステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に電気刺激を加えるステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電気刺激が経皮電気神経刺激装置で加えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法がさらにむずむず脚症候群の症状を緩和する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者に利尿薬を投与するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
細胞外液の量の減少を検知するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
検知した細胞外液の減少に基づいて治療を終了するステップをさらに有する、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2012−524593(P2012−524593A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506604(P2012−506604)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051118
【国際公開番号】WO2010/122435
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】