説明

PA−CARDを用いて癌を予防及び/又は治療するための組成物及び方法

本発明は、細菌由来のタンパク質を用いて癌細胞を死滅させるための方法及び物質に関する。本発明は、特に、アズリン、Laz、Pa−CARD、並びに融合タンパク質Azu−H.8及びH.8−Azu、並びに白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞の死滅におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法119条及び120条に基づいて、2009年2月20日に出願された米国仮出願第61/154,236号、及び2009年5月19日に出願された米国仮出願第61/179,435号に対する優先権を主張するものであり、2008年12月15日に出願された米国特許出願第12/314,703号の一部継続出願であり、2006年8月23日に出願された米国特許出願第11/508,173号の一部継続出願であり、2005年10月6日に出願された米国特許出願第11/244,105号の一部継続出願であり、2006年7月19日に出願された米国特許出願第11/488,695号の一部継続出願である。これら出願の全内容は、参照により全て本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
白血病は、骨髄及び血液の悪性癌である。白血病は、異常血液細胞が制御されずに蓄積されることを特徴とし、正常な血液細胞機能の阻害、及び多くの場合、死に結び付く。2008年には、合衆国でおよそ44,270人が、新たに白血病に罹患したと推定された。白血病は、男性の場合、癌による死亡の5番目に多い原因であり、女性の場合、癌による死亡の6番目に多い原因である。白血病は、20歳未満の小児では、他のいかなる癌より多くの死亡を引き起こしている。(「Cancer facts and figures 2008」,Atlanta:American Cancer Society(2008);Xie Y etal.,Cancer 97:2229〜35(2003))。あるタイプの白血病は、治療が非常に難しく、例えば、急性前骨髄球白血病(APL)は、稀であるが致死的疾患であることが多く、30%の患者が標準的化学療法に応答するに過ぎない。
【0003】
多くの現行の治療方法は、ある程度有効であるが、癌細胞に対する特異性が欠如しているため著しく有害な副作用を示す。イマチニブという、Gleevec(登録商標)として知られている非常に効果的な薬物が成功したことにより、標的特異的療法薬を開発しようとする努力が大きく加速している。Gleevec(登録商標)は、Bcr−Ablチロシンキナーゼを特異的に阻害する。慢性骨髄性白血病(CML)では、染色体転座により、Bcr−Ablチロシンキナーゼの構成的活性化がもたらされ、次いでそれにより、癌増殖を促進する細胞シグナル伝達の活性化がもたらされる。レチノイン酸は、細胞分化に関与するホルモンであり、三酸化ヒ素の(As2O3)と共に、APLに対する好適な治療剤である。
【0004】
しかしながら、耐性の発現は、キナーゼ等の単一攻撃点を標的とする薬物に伴う大きな問題であり、薬物の立体構造特異的結合性が変化する可能性がある。白血病患者において耐性が増加した場合、臨床医は、従来の複合薬療法に頼らざるを得ず、複合薬療法では、腫瘍特異的薬物を組み合わせて薬物活性の相乗作用を生み出し、非特異的薬物をより低用量で使用することを可能にし、他の効果的な治療を探求する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、癌、特に白血病及び/又は卵巣癌を死滅させる細胞毒性ペプチドの組成物及び使用方法に関する。本発明の1つの態様は、カスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドである。単離ペプチドは、細菌、特にシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)に由来してもよい。幾つかの実施形態では、単離ペプチドは、Pa−CARDである。他の実施形態では、単離ペプチドは、配列番号27を含むか又はからなる。幾つかの実施形態では、単離ペプチドは、白血病細胞、線維肉腫細胞、卵巣癌細胞、及び/又は乳癌細胞を死滅させることが可能である。他の実施形態では、単離ペプチドは、その血中半減期を延長又は最適化するために、化学的に修飾されている。
【0006】
本発明は、カスパーゼ動員(CARD)様ドメイン、Laz、H8−Azu、及びAzu−H8を含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と細胞を接触させることにより、癌細胞を死滅させる方法にも関する。幾つかの実施形態では、癌細胞は、白血病細胞、線維肉腫細胞、卵巣癌細胞、及び乳癌細胞からなる群から選択される。この方法は、癌細胞を死滅させることが可能な1つ又は複数の細胞毒性剤と細胞を接触させることを更に含んでいてもよい。これら細胞毒性剤は、これらに限定されないが、シスプラチン、Gleevec(登録商標)、レチノイン酸、5’−アザ−2’−デオキシシチジン、及び三酸化ヒ素であってもよい。特定の実施形態では、本方法は、癌細胞をシスプラチンと接触されることを含む。別の実施形態では、癌細胞を、1つ又は複数のタンパク質とほぼ同時に、1つ又は複数の細胞毒性剤と接触させる。
【0007】
本発明は、癌を罹患している哺乳類患者に、カスパーゼ動員(CARD)様ドメイン、Laz、H8−Azu、及びAzu−H8を含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質を投与することを含む方法にも関する。幾つかの実施形態では、癌は、白血病、線維肉腫、卵巣癌、及び乳癌からなる群から選択される。更なる実施形態では、癌細胞を死滅させることが可能な1つ又は複数の細胞毒性剤は、患者に投与することもできる。細胞毒性剤には、これらに限定されないが、シスプラチン、Gleevec(登録商標)、レチノイン酸、5’−アザ−2’−デオキシシチジン、及び三酸化ヒ素が含まれていてもよい。更なる実施形態では、患者に投与される追加的な細胞毒性剤は、シスプラチンである。別の実施形態では、1つ又は複数の細胞毒性剤は、1つ又は複数のタンパク質とほぼ同時に投与される。
【0008】
本発明は、アズリン及びLazのH.8領域を含むペプチドと細胞を接触させることにより白血病細胞を死滅させることを含む方法にも関する。更なる実施形態では、白血病細胞を、アズリン及びLazのH.8領域を含むペプチドと同時に又はほぼ同時に接触させる。
【0009】
本発明は、白血病を罹患している哺乳類患者に、アズリン及びLazのH.8領域を含むペプチドを投与することを含む方法にも関する。更なる実施形態では、アズリン及びLazのH.8領域を含むペプチドは、同時に又はほぼ同時に患者に投与される。
【0010】
本発明は、Laz、アズリン、H.8−Azu、Azu−H.8、及びカスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と白血病細胞を接触させることにより、白血病細胞の細胞分化を誘導することを含む方法にも関する。
【0011】
本発明は、Laz、アズリン、H.8−Azu、Azu−H.8、及びカスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と癌細胞を接触させることにより、癌細胞に選択的に進入することを含み、癌細胞が、白血病細胞及び卵巣癌細胞からなる群から選択される方法にも関する。
【0012】
本発明は、Laz、アズリン、H.8−Azu、Azu−H.8、及びカスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と癌細胞を接触させることにより、癌細胞の細胞周期停止を誘導することを含む方法にも関する。癌細胞は、白血病細胞、線維肉腫細胞、乳癌細胞、及び卵巣癌細胞からなる群から選択されてもよい。更なる実施形態では、タンパク質は、細胞のWeelタンパク質レベルを増加させる。別の実施形態では、タンパク質は、リン酸化AKT−Ser−473の枯渇を引き起こす。更に別の実施形態では、タンパク質は、細胞のWeelタンパク質レベルを増加させ、且つリン酸化AKT−Ser−473の枯渇を引き起こす。
【0013】
本発明は、カスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドと癌細胞を接触させることにより、カスパーゼ3活性化による癌細胞のアポトーシスを誘導することを含む方法にも関する。更なる実施形態では、癌細胞は、卵巣癌細胞である。
【0014】
本発明は、カスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドと癌細胞を接触させることにより、癌細胞のNF−kBシグナル伝達経路遺伝子の発現を調節することを含む方法にも関する。更なる実施形態では、癌細胞は、卵巣癌細胞である。
【0015】
本発明は、カスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドをコードする発現ベクターにも関する。特定の実施形態では、発現ベクターは、Pa−CARDをコードする。
【0016】
本発明は、カスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチドを含む医薬組成物にも関する。更なる実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む。別の実施形態では、医薬組成物は、アズリン、Laz、H.8−Azu、及びAzu−H.8からなる群から選択されるタンパク質を更に含む。別の実施形態では、医薬組成物は、癌細胞を死滅させることが可能な1つ又は複数の細胞毒性剤を更に含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈注射に適切な薬学的に許容される担体を含む。
【0017】
本発明は、白血病を罹患している患者に、本発明で開示された医薬組成物の1つ又は複数を治療上有効量で投与することを含む方法にも関する。更なる実施形態では、医薬組成物は、静脈内、局所的、皮下、筋肉内、経口、及び腫瘍内からなる群から選択される様式で患者に投与される。
【0018】
本発明の別の態様は、本明細書で開示された単離ペプチドの1つ又は複数コードする核酸分子である。
【0019】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の医薬組成物の1つ又は複数を含むキットである。
【0020】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)laz遺伝子のゲノムDNAコード配列、Genbank受入番号Y00530である(ctggcaggct tgacgcttcg atacgctctg tttcggtcag gctggtcccg aaaccggaaa aaccgccgaa aaccaatacc ctgcatttga gtaaggctgc gctggagagt ttcggttcgg cggcggcaaa gttggaaaaa cggcatcccg aattggcgga ggcattggca aacttggtta gaaggcatgg cgcataaaat gtatacggga atttgtgtaa acatccgtta atattaagaa gtaaaggata atgggtctaa tactaaagaa ataggttcgg ggtaaaattg ccccttttaa agtaaacgat tgtaaacttg cagacaggct ttgatttcaa atgaaatttg tagcaaaatg ccgccccgaa acatctgttt gtgcaacgcg gcggaatctt tttcaaggtt ttgttaatgg cggttgcact ttgatttctg taaaaccgaa tattatttta tcgattggag atttaccatg aaagcttatc tggctctgat ttctgccgcc gttatcggtt tggctgcctg ctctcaagaa cctgccgcgc ctgctgccga ggcaactcct gctgctgaag cacccgcttc cgaagcgcct gccgccgaag ctgctcctgc agatgctgcc gaagcccctg ctgccggcaa ttgtgcggca actgtcgaat ccaacgacaa tatgcagttc aacaccaaag acatccaagt cagcaaagca tgtaaagagt ttaccatcac tctgaaacat accggtacgc aacccaaagc cagcatgggt cacaaccttg tgattgccaa agctgaagac atggacggcg tatttaaaga cggcgtaggt gctgccgata ccgactatgt caaacctgac gatgcgcgcg ttgttgccca caccaaactg atcggcggcg gcgaagagtc ttccctgact ctggatcctg ccaaattggc tgacggcgac tacaaatttg cctgcacttt cccgggtcac ggtgctttga tgaacggcaa agtgactttg gtcgattaat ccgcttaaag tctcaaaaga cggacagcct gctttgtgca ggctgtttta ttataaaatg actgcttgaa aagtgccccg ttgagaacga aaacatgaat ccgtttgaaa)。
【0021】
配列番号2は、シュードモナス・エルギノーサアズリン遺伝子のゲノムDNAコード配列である(ctttttcatg cagcggatcg ctcgcgcatc acttcagggt cagggtgccc ttcatcagcg cggagtggcc cgggaaggtg cagaagaaca tgtactgctc gccttccttc agcttggaga cgtcgaaggt caccgagtcc ttctcgcccg agccgatcag cttggtgtgg gcgatgacac ggctgtcgtc gggcttcagg taatccttgt ccaggccgga agccatgccg tcggtgacca cgccctgcat gtcggcggcg gtgctcagta cccagttgtg gcccatgacg ttcttcggca ggttgccggg gtgggacagg ttgacggtga actgcttgca gctcttgtcg acggtgatgg cattggtgtt gaactgcatc tggtcgttac cctggatgtc caccgagcac tcggcagcca gcagtggcgc actgagcagg gacagcaggg ataccgcagc gagtttacgt agcatggagc agcctcctag gcaggttggg cgatgaatcc tgaaagagca gactgcccga tcgggcaccg)。
【0022】
配列番号3は、ナイセリア・ゴノレアlaz遺伝子のH.8領域のゲノムDNAコード配列である(tgctctcaag aacctgccgc gcctgctgcc gaggcaactc ctgccggtga agcacccgct tccgaagcgc ctgccgccga agctgctcct gcagatgctg ccgaagcccc tgctgcc)。
【0023】
配列番号4は、ナイセリア・ゴノレアのLazコード遺伝子(laz)をPCR増幅するための順方向プライマーである(ccggaattcc ggcagggatg ttgtaaatat ccg)。
【0024】
配列番号5は、ナイセリア・ゴノレアのLazコード遺伝子(laz)をPCR増幅するための逆方向プライマーである(ggggtaccgc cgtggcaggc atacagcatt tcaatcgg)。
【0025】
配列番号6は、pUC18−lazの3.1kb断片をPCR増幅するための順方向プライマーである(ggcagcaggg gcttcggcag catctgc)。
【0026】
配列番号7は、pUC18−lazの3.1kb断片をPCR増幅するための逆方向プライマーである(ctgcaggtcg actctagagg atcccg)。
【0027】
配列番号8は、pUC19−pazの0.4kb断片をPCR増幅するための順方向プライマーである(gccgagtgct cggtggacat ccagg)。
【0028】
配列番号9は、pUC19−pazの0.4kb断片をPCR増幅するための逆方向プライマーである(tactcgagtc acttcagggt cagggtg)。
【0029】
配列番号10は、pUC19−pazの3.3kb断片をPCR増幅するための順方向プライマーである(cttcagggtc agggtgccct tcatc)。
【0030】
配列番号11は、pUC19−pazの3.3kb断片をPCR増幅するための逆方向プライマーである(ctgcaggtcg actctagagg atcccg)。
【0031】
配列番号12は、pUC18−lazの0.13kb断片をPCR増幅するための順方向プライマーである(tgctctcaag aacctgccgc gcctgc)。
【0032】
配列番号13は、pUC18−lazの0.13kb断片をPCR増幅するための逆方向プライマーである(taggatcctt aggcagcagg ggcttcggca gcatctgc)。
【0033】
配列番号14は、pGEX−5X−3からGSTコード遺伝子をPCR増幅するための順方向プライマーである(cgagctcatg tcccctatac taggttattg g)。
【0034】
配列番号15は、pGEX−5X−3からGSTコード遺伝子をPCR増幅するための逆方向プライマーである(cccaagcttt caggggatcc cacgaccttc gatcagatcc)。
【0035】
配列番号16は、pUC18−lazからlazのシグナルペプチド及びH.8コード領域をPCR増幅するための順方向プライマーである(ggaattcata tgaaagctta tctggc)。
【0036】
配列番号17は、pUC18−lazからlazのシグナルペプチド及びH.8コード領域をPCR増幅するための逆方向プライマーである(ccggaattcg gcagcagggg cttcggc)。
【0037】
配列番号18は、pUC18−lazからH.8コード領域をPCR増幅するための順方向プライマーである(cgggatcccc tgctctcaag aacctgccgc gee)。
【0038】
配列番号19は、pUC18−lazからH.8コード領域をPCR増幅するための逆方向プライマーである(cggaattctt aggcagcagg ggcttcggca gcatctgcag g)。
【0039】
配列番号20は、pGEX−5X−3−H.8からGST−H.8融合体領域をPCR増幅するための順方向プライマーである(cgagctcatg tcccctatac taggttattg g)。
【0040】
配列番号21は、pGEX−5X−3−H.8からGST−H.8融合体領域をPCR増幅するための逆方向プライマーである(ccgctcgagt caggcagcag gggcttcggc ag)。
【0041】
配列番号22は、ナイセリア・ゴノレア株F62Lazタンパク質のアミノ酸配列、Genbank受入番号Y00530である(Cys Ser Gln Glu Pro Ala Ala Pro Ala Ala Glu Ala Thr Pro Ala Gly Glu Ala Pro Ala Ser Glu Ala Pro Ala Ala Glu Ala Ala Pro Ala Asp Ala Ala Glu Ala Pro Ala Ala Gly Asn Cys Ala Ala Thr Val Glu Ser Asn Asp Asn Met Gln Phe Asn Thr Lys Asp Ile Gln Val Ser Lys Ala Cys Lys Glu Phe Thr Ile Thr Leu Lys His Thr Gly Thr Gln Pro Lys Ala Ser Met Gly His Asn Leu Val Ile Ala Lys Ala Glu Asp Met Asp Gly Val Phe Lys Asp Gly Val Gly Ala Ala Asp Thr Asp Tyr Val Lys Pro Asp Asp Ala Arg Val Val Ala His Thr Lys Leu Ile Gly Gly Gly Glu Glu Ser Ser Leu Thr Leu Asp Pro Ala Lys Leu Ala Asp Gly Asp Tyr Lys Phe Ala Cys Thr Phe Pro Gly His Gly Ala Leu Met Asn Gly Lys Val Thr Leu Val Asp)。
【0042】
配列番号23は、シュードモナス・エルギノーサアズリンのアミノ酸配列である(Ala Glu Cys Ser Val Asp Ile Gln Gly Asn Asp Gln Met Gln Phe Asn Thr Asn Ala Ile Thr Val Asp Lys Ser Cys Lys Gln Phe Thr Val Asn Leu Ser His Pro Gly Asn Leu Pro Lys Asn Val Met Gly His Asn Trp Val Leu Ser Thr Ala Ala Asp Met Gln Gly Val Val Thr Asp Gly Met Ala Ser Gly Leu Asp Lys Asp Tyr Leu Lys Pro Asp Asp Ser Arg Val Ile Ala His Thr Lys Leu Ile Gly Ser Gly Glu Lys Asp Ser Val Thr Phe Asp Val Ser Lys Leu Lys Glu Gly Glu Gln Tyr Met Phe Phe Cys Thr Phe Pro Gly His Ser Ala Leu Met Lys Gly Thr Leu Thr Leu Lys)。
【0043】
配列番号24は、ナイセリア・ゴノレア株F62Lazタンパク質に由来するH.8領域のアミノ酸配列である(Cys Ser Gln Glu Pro Ala Ala Pro Ala Ala Glu Ala Thr Pro Ala Gly Glu Ala Pro Ala Ser Glu Ala Pro Ala Ala Glu Ala Ala Pro Ala Asp Ala Ala Glu Ala Pro Ala Ala)。
【0044】
配列番号25は、ペプタペプチド(peptapeptide)モチーフのアミノ酸配列である(Ala Ala Glu Ala Pro)。
【0045】
配列番号26は、P.エルギノーサアルギニンデイミナーゼ(ADI)のアミノ酸配列である(Met Ser Thr Glu Lys Thr Lys Leu Gly Val His Ser Glu Ala Gly Lys Leu Arg Lys Val Met Val Cys Ser Pro Gly Leu Ala His Gln Arg Leu Thr Pro Ser Asn Cys Asp Glu Leu Leu Phe Asp Asp Val Ile Trp Val Asn Gln Ala Lys Arg Asp His Phe Asp Phe Val Thr Lys Met Arg Glu Arg Gly Ile Asp Val Leu Glu Met His Asn Leu Leu Thr Glu Thr Ile Gln Asn Pro Glu Ala Leu Lys Trp Ile Leu Asp Arg Lys Ile Thr Ala Asp Ser Val Gly Leu Gly Leu Thr Ser Glu Leu Arg Ser Trp Leu Glu Ser Leu Glu Pro Arg Lys Leu Ala Glu Tyr Leu Ile Gly Gly Val Ala Ala Asp Asp Leu Pro Ala Ser Glu Gly Ala Asn Ile Leu Lys Met Tyr Arg Glu Tyr Leu Gly His Ser Ser Phe Leu Leu Pro Pro Leu Pro Asn Thr Gln Phe Thr Arg Asp Thr Thr Cys Trp Ile Tyr Gly Gly Val Thr Leu Asn Pro Met Tyr Trp Pro Ala Arg Arg Gln Glu Thr Leu Leu Thr Thr Ala Ile Tyr Lys Phe His Pro Glu Phe Ala Asn Ala Glu Phe Glu Ile Trp Tyr Gly Asp Pro Asp Lys Asp His Gly Ser Ser Thr Leu Glu Gly Gly Asp Val Met Pro Ile Gly Asn Gly Val Val Leu Ile Gly Met Gly Glu Arg Ser Ser Arg Gln Ala Ile Gly Gln Val Ala Gln Ser Leu Phe Ala Lys Gly Ala Ala Glu Arg Val Ile Val Ala Gly Leu Pro Lys Ser Arg Ala Ala Met His Leu Asp Thr Val Phe Ser Phe Cys Asp Arg Asp Leu Ile Val Pro Phe Ser Leu Arg Pro Asp Pro Ser Ser Pro Tyr Gly Met Asn Ile Arg Arg Glu Glu Lys Thr Phe Leu Glu Val Val Ala Glu Ser Leu Gly Leu Lys Lys Leu Arg Val Val Glu Thr Gly Gly Asn Ser Phe Ala Ala Glu Arg Glu Gln Trp Asp Asp Gly Asn Asn Val Val Cys Leu Glu Pro Gly Val Val Val Gly Tyr Asp Arg Asn Thr Tyr Thr Asn Thr Leu Leu Arg Lys Ala Gly Val Glu Val Ile Thr Ile Ser Ala Ser Glu Leu Gly Arg Gly Arg Gly Gly Gly His Cys Met Thr Cys Pro Ile Val Arg Asp Pro Ile Asp Tyr)。
【0046】
配列番号27は、P.エルギノーサADIのCARD領域、残基75〜225のアミノ酸配列である(Leu Leu Thr Glu Thr Ile Gln Asn Pro Glu Ala Leu Lys Trp Ile Leu Asp Arg Lys Ile Thr Ala Asp Ser Val Gly Leu Gly Leu Thr Ser Glu Leu Arg Ser Trp Leu Glu Ser Leu Glu Pro Arg Lys Leu Ala Glu Tyr Leu Ile Gly Gly Val Ala Ala Asp Asp Leu Pro Ala Ser Glu Gly Ala Asn Ile Leu Lys Met Tyr Arg Glu Tyr Leu Gly His Ser Ser Phe Leu Leu Pro Pro Leu Pro Asn Thr Gln Phe Thr Arg Asp Thr Thr Cys Trp Ile Tyr Gly Gly Val Thr Leu Asn Pro Met Tyr Trp Pro Ala Arg Arg Gln Glu Thr Leu Leu Thr Thr Ala Ile Tyr Lys Phe His Pro Glu Phe Ala Asn Ala Glu Phe Glu Ile Trp Tyr Gly Asp Pro Asp Lys Asp His Gly Ser Ser Thr Leu Glu Gly)。
【0047】
配列番号28は、P.エルギノーサADIの遺伝子のCARDモチーフをPCR増幅するための順方向プライマーのヌクレオチド配列である(ATGCACAATC TGCTGACCGA GACCATCCAG)。
【0048】
配列番号29は、P.エルギノーサADIの遺伝子のCARDモチーフをPCR増幅するための逆方向プライマーのヌクレオチド配列である(CAGGTCGAGG AGCCGTGGTC CTTGTC)。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、ナイセリア・ゴノレア由来のlaz(A)及びシュードモナス・エルギノーサ由来のpaz(B)の概略図である。大腸菌(E.coli)にクローニングし高発現させるためのP.エルギノーサアズリン遺伝子は、アズリン遺伝子自体(paz)及びその周辺質位置を決定するシグナルペプチド(psp)配列で構成されていた(B)。lazのH.8領域を、ナイセリア(Neisserial)シグナル配列nspを含むpaz遺伝子の5’末端(pUC18−H.8−paz)(C)、又はpaz遺伝子の3’末端(pUC19−paz−H.8)(D)のいずれかにインフレームでクローニングした。構築体を調製するための詳細な手順は、実施例1に示されている。naz、laz遺伝子に存在するナイセリア・ゴノレアのアズリン様配列;nsp、ナイセリアシグナルペプチド配列。いずれの場合でも、シグナルペプチド配列は切断されて、成熟Paz(周辺質)及びLaz(表面露出)タンパク質が産生される。(E)Laz、Paz、及び融合タンパク質のSDS−PAGE。Laz、H.8−Paz、又はPaz−H.8等のH.8融合タンパク質(全て約17kDa)の変則的泳動は、ラピデイト化(lapidated)H.8含有タンパク質について以前に記述されている(Cannon、Clin.Microbiol.Rev.2巻:S1〜S4頁(1989年);Fisetteら、J.Biol.Chem.278巻:46252〜46260頁(2003年))。
【図2】図2は、H.8−Paz融合タンパク質が種々の癌細胞に対して細胞毒性である程度を例示するグラフである。(A)神経膠芽腫LN−229細胞に対する、合成H.8ペプチド、Paz、Laz、並びにPazのカルボキシ末端(Paz−H.8)及びPazのアミノ末端(H.8−Paz)でのH.8融合体の細胞毒性。細胞を、3つの異なる濃度(10、20、及び40μM)のタンパク質で、6、12、及び24時間処理した。MTTアッセイを実施して、細胞毒性(細胞死パーセント)の根拠となる生細胞の程度を測定した。細胞毒性パーセントを算出するために、未処理生細胞の値を100%として、Paz、Laz、及びH.8−融合タンパク質で処理した試料における生細胞の数を決定した。その後、細胞毒性の程度(%)を、死細胞の数から決定した。(B)ヒト乳癌MCF−7細胞に対するH.8ペプチド、Paz、Paz−H.8、H.8−Paz、及びLazの細胞毒性。処理条件は全て、上記(A)と同様である。
【図3】図3は、種々の蛍光標識アズリン関連タンパク質の、神経膠芽腫LN−229及び乳癌MCF−7細胞への進入を示す図である。(A)Alexa fluor(登録商標)568が結合されたH.8ペプチド、Paz、Paz−H.8、H.8−Paz、及びLaz(各々20μM)を、LN−229細胞と共に、37℃で30分間カバーガラス上にてインキュベートし、その後画像を撮影した。(B)共焦点顕微鏡で視覚化した、(A)に記述されている種々のAlexa fluor(登録商標)568結合タンパク質のMCF−7細胞内への内部移行。(C)Lazの内部移行を、共焦点顕微鏡で視覚化した。種々の濃度(2、4、8、及び16μM)の蛍光標識Lazを、37℃で30分間LN−229細胞と共にインキュベートした。核は、DAPI(4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)で青色標識されている。(D)Alexa fluor(登録商標)568結合Laz(10μM)を、LN−229細胞と共に種々の期間(5、10、20、及び30分間)37℃でインキュベートした。内部移行を、共焦点顕微鏡で視覚化した。(E)Alexa fluor(登録商標)568結合Paz(10μM)を、LN−229細胞と共にカバーガラス上で37℃にて種々の時間インキュベートし、その後画像を撮影した。測定可能な蛍光は、ほとんど検出されなかった(E)。
【図4】図4は、図3A〜Dの共焦点顕微鏡画像に見出される蛍光の定量化を示す棒グラフである。(A)図3Aの画像における蛍光の定量化。アズリンタンパク質の蛍光の定量化は、Adobe(登録商標)Photoshop(登録商標)を使用することにより実施した。エラーバーは、単一試料中の3つの異なる細胞の蛍光の標準偏差を表す。(B)図3Bの画像における蛍光の定量化。定量化を図4Aのように実施した。(C)図3Cの画像における蛍光の定量化。定量化を図4Aのように実施した。(D)図3Dの画像における蛍光の定量化。定量化を図4Aのように実施した。
【図5】図5は、細胞内の標識融合タンパク質の画像、並びに取込み及び細胞毒性のグラフをそれぞれ示す図である。H.8−GST融合タンパク質と併用処理することにより、神経膠芽腫LN−229細胞へのAlexa fluor(登録商標)568標識Pazの取込みが容易になる。未標識20μMの(A)H.8、(B)GST、(C)GST−H.8、(D)H.8−GST、(E)PBS緩衝液、及び20μMのAlexa fluor(登録商標)568結合Pazを、37℃で30分間LN−229細胞と共にインキュベートした。内部移行を、共焦点顕微鏡で視覚化した。(F)Pazが存在する又はしない場合の、合成H.8ペプチド、GST、及びGST−H.8/H.8−GST融合誘導体の細胞毒性。およそ5×10個のLN−229細胞を96ウエル培養プレートに播種し、20μMのPazと共に(+Paz)又は伴わずに(−Paz)、各々20μMのH.8ペプチド、GST、GST−H.8、H.8−GST、又は同体積のPBS緩衝液で24時間処理した。
【図6】図6は、IRdye(登録商標)800CW(LI−COR Biotechnology社製、リンカーン、ネブラスカ州)が結合されたPaz、H.8−Paz、及びLazを注射したマウスの脳画像である。(A)生存マウスの脳画像。IRdye(登録商標)800CWが結合された500μgのPaz、H.8−Paz、及びLazを、生存ヌードマウスに腹腔内注射した。24時間後、マウスを犠牲し、脳を摘出し、蛍光をLI−COR Odyssey(登録商標)赤外線画像化システムで検出及び測定した。(B)(A)のように処理したヌードマウス脳の頭側中脳領域の画像。マウス脳を水平に切断し、画像を撮影した。
【図7】図7は、大腸菌におけるH.8−Gst融合タンパク質の局在化に関するSDS−PAGE、ウエスタンブロット、及び共焦点顕微鏡画像である。(A)クローニングされたgst、H.8−gst、又はgst−H.8遺伝子を有する大腸菌BL21(DE3)細胞を、0.1mMのIPTGと共に37℃で培養した。細胞ペレットをPBSで2回洗浄し、全細胞溶解物をSDS−PAGEで泳動した。タンパク質検出にはクマシーブルー染色を使用した。(B)上記の手順を繰り返したが、今回は、全細胞溶解物及び細胞膜周辺腔の内容物を両方とも別々に単離し、SDS−PAGE(20μgタンパク質)で泳動し、GST又はGST−H.8融合タンパク質を、モノクローナル抗−GST抗体を用いたウエスタンブロットで検出して、タンパク質の総濃度及び周辺質濃度を決定した。(C)クローニングされたgst、H.8−gst、又はgst−H.8遺伝子を保持する大腸菌株BL21(DE)細胞を、0.4mMのIPTGと共に37℃で培養した(表2)。これら細菌培養の各々1mlを遠心分離し、その結果生じた細菌ペレットを収集した。PBSで2回洗浄した後、抗GST抗体(1:2000)を含有する1mlの1%FBS−PBSを添加した。細胞懸濁液を1時間インキュベートし、その後PBSで2回洗浄した。細菌細胞を、FITC結合抗ウサギIgGと共に1%FBS−PBS中で30分間インキュベートした。未結合抗体を除去するために細胞を再び洗浄し、氷上にでエタノールで固定した。DAPI(青色着色を付与する)で処理した大腸菌試料を、共焦点顕微鏡(×100対物レンズ)で観察し、単一細胞の撮影も行った。(D)pUC19−paz(P.エルギノーサアズリン)、pUC19−laz(ナイセリア)、pUC18−H.8−paz、又はpUC18−paz−H.8を保持する大腸菌細胞を、37℃にて0.1mM IPTGの存在下で終夜培養した。このような培養の0.5mlを遠心分離して、その結果生じた細菌ペレットを、冷却PBSで2回洗浄した。1mlの1%FBS−PBS中の抗アズリン抗体(1:500)を添加し、氷上で1時間インキュベートした。PBSで2回洗浄した後、FITC結合抗ウサギ抗体を添加し、氷上で30分間インキュベートし、PBSで2回洗浄し、冷却エタノールで固定した。細菌試料を、共焦点顕微鏡(×100対物レンズ)で観察した。
【図8】図8は、MTTアッセイにより決定された細胞毒性を示すグラフである。(A及びB)細胞毒性は、10μMのLaz、アズリン(Azu)、H8−Azu、及びAzu−H8、又は陽性対照としての5μM DACで処理されたHL60細胞(A)及びK562細胞(B)のMTTアッセイで、24時間、48時間、及び72時間後に決定した。(C)低濃度:3.75nM、37.5nM、75nM、2.5μM、5μM、及び10μMのLaz、Azu、H8−Azu、Azu−H8、又は陽性対照としての5μM DACで処理されたK562細胞。(D)様々な濃度、1μM、2.5μM、5μM、及び10μMのLaz、Azu、H8−Azu、Azu−H8、又は5μMのDACで処理されたHL60細胞のMTTアッセイにより決定された細胞毒性。データは、三重反復で行われた3つの別々の実験の平均(±標準誤差)で表されている。数値は全て、対照と有意に異なっている(p<0.05)。
【図9】図9は、HL60細胞及びK562細胞においてLaz及びアズリンにより誘導された細胞形態の変化に関する蛍光顕微鏡画像である。Lazは、蛍光顕微鏡により示されているように、HL60細胞及びK562細胞の形態変化を誘導する。(A)及び(B)は、未処理HL60細胞及びK562細胞を表す。10μMのLazで48時間処理されたHL60細胞(C)又はK562細胞(D)は分化を起こし、分化は、その後細胞アポトーシスに繋がるプロセスである。矢印は、分化した肉芽腫性細胞を指している。細胞毒性は高かったが、10μMのアズリンで48時間処理されたHL60細胞(E)又はK562細胞(F)で見られる形態変化は、より少ない。
【図10】図10は、HL60細胞及びK562細胞内へのLaz及びアズリンの選択的進入を示す共焦点顕微鏡の画像である。パネル1:アズリン及びLazはいずれも、10μM濃度で1時間インキュベーションした後、正常末梢血液単核細胞(PBMC)に進入しない(A及びB)。アズリンは、Lazと同様に(C)、1時間のインキュベーション後にK562細胞に進入する(D)。アズリンは、Lazと同様に(E)、1時間のインキュベーション後にHL60細胞に進入する(F)。パネル2:対照K562細胞と比較して、Azu−H8、H8−Azuは、Lazと同様に、そのようなK562細胞に進入する。
【図11】図11は、アズリン、Laz、及びDACの非存在下及び存在下での細胞周期進行を図表化にするグラフである。K562細胞を、以前に記述されているように10μMのLaz、アズリン、及び5μMのDACで48時間処理し、固定し、染色し、DNA含有量を分析した。
【図12】図12は、免疫ブロットの画像である。この図は、細胞質抽出物及び核抽出物における、Laz及びPa−CARDで処理されたK562及びHL−60細胞中のタンパク質の免疫ブロットによるAKT(AKT−P−Ser473)のリン酸化状態及びWeelタンパク質レベルの分析を提供する。未処理細胞の対照と比較した、10μMのLaz又は10μMのPa−CARDで48時間処理した後のHL60細胞及びK562細胞に由来するWeel及びホスホ−AKTセリン473のレベルを比較する、細胞質タンパク質及び核タンパク質のウエスタンブロット分析が示されている。
【図13】図13は、白血病細胞に対して細胞毒性活性を示すP.エルギノーサ由来のADIのCARDドメインの概略図である。(A)構造に基づく配列アラインメントが示すように、CARDドメインは、Pa−ADI及びMa−ADIに存在するが、DDAH及びAGAT等のグアニジノ基を修飾するスーパーファミリー酵素の他のメンバーには存在しない。CARDドメインは、哺乳類カスパーゼ−9.DDAH、ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ;AGAT、アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼのCARDドメインである。β−ストランド及びα−ヘリックスは、それぞれ矢印及び細長い帯として示されている。I〜Vのローマ数字は、5つのββαβサブユニットである。clip部分(α−ヘリックスモジュール)は、Pa−ADI、及びカスパーゼ−9タンパク質分子のCARDドメインを形成する6α−ヘリックスモジュールに対して構造的相同性を保持するM.アルギニニ(M.arginini)ADI(Ma−ADI)に見られる。N,N−末端;C,C−末端。(B)P.エルギノーサに由来する精製された46kDaのADI及び17kDaのCARDタンパク質のSDS−PAGEゲルの泳動。(C)線維肉腫(HT−1080)、乳癌(MCF−7)、及び白血病(HL60)細胞に対するPa−ADI及びPa−CARDの細胞毒性活性。細胞を、10μMのPa−ADI又はPa−CARDで48時間インキュベートし、その後細胞生存率をMTTアッセイで決定した。
【図14】図14は、マイコプラズマ・アルギニニ(Mycoplasma arginini)及びシュードモナス・エルギノーサに由来するアルギニンデイミナーゼ(ADI)酵素の構造的特徴を示す画像である。(A)P.エルギノーサADI(1RXX_A)のリボン図であり、2つのドメインが強調されている(MolMolプログラム)。(B)ここにあるのは、図13Aで示されている図の写しである。(C)記載されているP.エルギノーサADI(Pa−ADI)の全体的な折り畳み構造及びトポロジーを示す模式図である。
【図15】図15は、Pa−ADI及びPa−CARDの精製及びアルギニンデイミナーゼ酵素活性を示すゲル画像及びグラフである。(A)P.エルギノーサに由来する精製ADI及びCARDタンパク質のSDS−PAGEゲルの泳動。(B)精製Pa−ADI及びPa−CARDの37℃及びpH7.2におけるADI活性の動力学。酵素反応の産物であるシトルリンを、490nmで測定した。Pa−CARDのアルギニンデイミナーゼ酵素活性は、検出されなかった。
【図16】図16は、Pa−CARDが、一連の癌細胞に対してPa−ADIより高い細胞毒性を有することを示すグラフである。(A)線維肉腫(HT−1080)、乳癌(MCF−7)、及び卵巣癌(SKOV−3)細胞を、20μMのPa−ADI又はPa−CARDと共に48時間インキュベートし、その後細胞生存率をMTTアッセイで決定した。1ウエル当たりの生細胞数の平均(±標準誤差)を、3つの実験から三重重複培養で決定した。数値は全て、対照と有意に異なっている(p<0.05)。(B)Pa−CARDにより示された、卵巣癌SKOV−3細胞に対する用量依存的細胞毒性。時間(24、48、及び72時間)の関数として表されている。(C)同じ実験を、Pa−ADIを用いて実施した。1ウエル当たりの生細胞数の平均(±標準誤差)を、Aに記述されているように3つの実験から三重重複培養で決定した(p<0.05)。
【図17】図17は、卵巣癌SKOV−3細胞におけるPa−CARD、アズリン、及びシスプラチンの比較細胞毒性効果を示すグラフである。(A)全て20μMのPa−ADI、Pa−CARD、アズリン、及びシスプラチンを、SKOV−3細胞又は正常卵巣HOSE6−3細胞のいずれかと共に48時間インキュベートし、その後細胞生存率をMTTアッセイで決定した。(B)Pa−CARDは、SKOV−3細胞を用いた個々の処理と比較して、シスプラチンとの相加効果をある程度示す。
【図18】図18は、Pa−CARDは、カスパーゼ活性化によりSKOV−3細胞でアポトーシスを誘導するが、HOSE6−3細胞では誘導しないことを示す画像である。in situ細胞死検出フルオレセインキット(Roche社製)を使用してフルオレッセインタグ化dUTPの組込みを測定することによりアポトーシス誘導性DNA鎖切断を検出するために、TUNELアッセイを使用した。SKOV−3細胞及びHOSE6−3細胞を、8ウエルLab Tekチャンバースライドで増殖させ、10μMのPa−CARD、Pa−ADI、及びアズリンと共に48時間インキュベートした。未処理陰性対照又はBSA処理陰性対照も並行して維持した(最下段の行)。細胞核を、DAPIで青色染色した。緑色(A)及び青色(B)チャネル下で観察された細胞、並びに重ね合わせ画像(C)(シアン色)が示されている。
【図19】図19は、Pa−CARDによるカスパーゼ活性化を示すグラフである。カスパーゼ活性は、Promega社から購入したカスパーゼ−GloTM3/7アッセイキットで測定した。Pa−ADI及びPa−CARDを2つの異なる濃度で使用して、用量応答効果を評価した。カスパーゼ活性の増加は、薬物処理をしない対照と比較した倍数増として表されている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
本明細書で使用される場合、用語「細胞」は、「単一細胞」と特に記述されていない限り、この用語の単数又は複数を両方とも含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「細胞毒性ペプチド」は、癌細胞、特に白血病細胞に対して選択的に細胞毒性であるが、正常細胞には細胞毒性でない本発明のペプチドを意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに適用される。この用語は、天然アミノ酸ポリマーにも適用される。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、これらに限定されないが、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADP−リボシル化を含む修飾も包含する。ポリペプチドは、必ずしも完全に直鎖であるとは限らないことが認識されるだろう。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐している場合があり、一般的に、天然のプロセシング事象及び自然には生じない人工的操作によりもたらされる事象を含む翻訳後事象の結果として環状(分岐有り又は分岐無し)である場合がある。環状ポリペプチド、分岐ポリペプチド、及び分岐環状ポリペプチドは、非翻訳性の天然プロセスにより合成されてもよく、同様に、完全に合成的な方法により合成されてもよい。合成ペプチドとは、細胞成分の支援を受けずに製作されたペプチドである。ペプチドを製作する合成的方法は、当技術分野で周知であり、商業的に利用可能である。更に、本発明では、本発明のタンパク質のメチオニン含有アミノ末端変異体及び無メチオニンアミノ末端変異体の両方の使用が企図される。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「症状」は、生存動物又はその部分の1つの正常状態の障害を構成し、身体的機能のパフォーマンスを中断又は変更する正常性からの解剖学的及び生理学的逸脱を含む。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「細胞増殖を阻害する」は、細胞分裂及び/又は細胞増殖を遅延又は停止させることを意味する。この用語は、細胞発生の阻害又は細胞死に増加も含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「〜を罹患している」は、症状の兆候を現在示していることを含み、症状からの回復中及び症状から回復に際して、症状に顕著な兆候がない場合をさえ含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「治療」は、治療されている症状に関連した症状又は兆候の進行又は重症度を予防、低下、停止、又は逆行させることを含む。従って、用語「治療」は、必要に応じて、医学的、治療的、及び/又は予防的な投与を含む。治療は、前癌病変又は癌等の症状の発症を予防又は軽減させることを含むこともできる。
【0057】
「治療上有効量」は、治療されている対象体の特定の症状の発症を予防、低下、停止、又は逆行させるか、又は治療されている対象体の特定の症状の既存の兆候を部分的に又は全体的に緩和するのに有効な量である。治療上有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0058】
用語「実質的に純粋な」は、本明細書で使用される場合、本発明のタンパク質又は他の細胞性産物を修飾するために使用される場合に、例えば、他のタンパク質及び/又は活性阻害化合物が実質的に含まれていないか又は混入されていない形態の、増殖培地又は細胞内容物から単離されたタンパク質を指す。用語「実質的に純粋な」は、乾燥重量で単離画分の少なくとも約75%の量又は少なくとも「75%実質的に純粋な」量の数値を参照する、より限定的には、用語「実質的に純粋な」は、乾燥重量で少なくとも約85%又は少なくとも「85%実質的に純粋」な活性化合物の化合物を指す。最も限定的には、用語「実質的に純粋な」は、乾燥重量で少なくとも約95%又は少なくとも「95%実質的に純粋」な活性化合物の化合物を指す。用語「実質的に純粋な」は、例えば、合成タンパク質が、合成反応(複数化)の試薬及び副産物から単離される場合、合成的に製作された本発明のタンパク質又は化合物を修飾するために使用することもできる。
【0059】
用語「医薬品等級」は、本明細書で使用される場合、本発明のペプチド又は化合物を指す場合に、合成試薬及び副産物を含む、その自然状態で見出される物質に通常伴っている成分から実質的に又は本質的に単離されており、医薬品としての使用を損なう可能性がある成分から実質的に又は本質的に単離されているペプチド又は化合物である。例えば、「医薬品等級」ペプチドは、あらゆる発癌物質から単離されていてもよい。幾つかの場合では、「医薬品等級」は、組成物を患者への静脈内投与に不適にする可能性があるあらゆる物質から実質的に又は本質的に単離されているペプチド又は化合物を指定するために、「静脈用医薬品等級」等、意図されている投与方法により修飾されている場合がある。例えば、「静脈用医薬品等級」ペプチドは、SDS等の界面活性剤、及びアジ化物等の抗細菌剤から単離されていてもよい。
【0060】
語句「単離された」、「精製された」、又は「生物学的に純粋な」は、その天然状態で見出される物質に通常伴っている成分が実質的に又は本質的に含まれていない物質を指す。従って、本発明による単離されたペプチドは、好ましくは、それらのin situ環境にあるペプチドに通常関連している物質を含有しない。「単離された」領域は、その領域が由来するポリペプチドの配列全体を含まない領域を指す。「単離された」核酸、タンパク質、又はそれらの対応する断片は、そのin vivo環境から実質的に取り出されており、そのため、これらに限定されないが、ヌクレオチド配列決定、制限消化、指定部位突然変異誘発、及び核酸断片用発現ベクターへのサブクローニング、並びに実質的に純粋な量のタンパク質又はタンパク質断片の取得等、当業者により操作されていてもよい。
【0061】
ペプチドに関して本明細書で使用される場合、用語「変異体」は、野生型ポリペプチドと比較して、アミノ酸が置換、欠失、又は挿入されている場合があるアミノ酸配列変異体を指す。変異体は、野生型ペプチドの切断型であってもよい。「欠失」は、野生型タンパク質内部から1つ又は複数のアミノ酸を除去することであり、「切断」は、野生型タンパク質の1つ又は複数の末端から1つ又は複数のアミノ酸を除去することである。従って、変異体ペプチドは、ポリペプチドをコードする遺伝子を操作することにより製作することができる。変異体は、ポリペプチドの基本的な組成又は特徴を変更するが、少なくともその根本的活性の幾つかは変更しないように製作することができる。例えば、ナイセリアペプチド又はPa−CARDペプチドの「変異体」は、白血病細胞を死滅させる能力を保持する変異ナイセリアペプチド又はPa−CARDペプチドであってもよい。幾つかの場合では、変異体ペプチドは、ε−(3,5−ジニトロベンゾイル)−Lys残基等の非天然アミノ酸を用いて合成される。(Ghadiri及びFernholz、J.Am.Chem.Soc、112巻:9633〜9635頁(1990年))。幾つかの実施形態では、変異体は、野生型のペプチドと比較して、20、19、18、17、又は16個以下のアミノ酸が、置換、欠失、又は挿入されている。幾つかの実施形態では、変異体は、野生型のペプチドと比較して、15、14、13、12、又は11個以下のアミノ酸が、置換、欠失、又は挿入されている。幾つかの実施形態では、変異体は、野生型のペプチドと比較して、10、9、8、又は7個以下のアミノ酸が、置換、欠失、又は挿入されている。幾つかの実施形態では、変異体は、野生型のペプチドと比較して、6個以下のアミノ酸が、置換、欠失、又は挿入されている。幾つかの実施形態では、変異体は、野生型のペプチドと比較して、5又は4個以下のアミノ酸が、置換、欠失、又は挿入されている。幾つかの実施形態では、変異体は、野生型のペプチドと比較して、3、2、又は1個以下のアミノ酸が、置換、欠失、又は挿入されている。幾つかの実施形態では、変異体は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/389,120号に記載の技術及び方法を使用して生成される。
【0062】
用語「アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、任意の天然又は非天然又は合成アミノ酸残基を含むアミノ酸部分、つまり1個、2個、又は3個以上の炭素原子、典型的には1個の(α)炭素原子により直接連結されている少なくとも1個のカルボキシル残基及び少なくとも1個のアミノ残基を含むあらゆる部分を意味する。用語「残基」は、「アミノ酸」と同義である。
【0063】
用語「誘導体」は、ペプチドに関して本明細書で使用される場合、対象ペプチドから誘導されるペプチドを指す。誘導には、ペプチドがその根本的活性の幾つかを依然として保持するように、ペプチドを化学的に修飾することが含まれる。例えば、ナイセリアペプチド又はPa−CARDペプチドの「誘導体」は、白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞を死滅させるその能力を保持している化学的に修飾されたナイセリアペプチド又はPa−CARDペプチドであってもよい。対象となる化学的修飾には、これらに限定されないが、ペプチドのアミド化、アセチル化、硫酸化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾、リン酸化、又はグリコシル化が含まれる。加えて、誘導体ペプチドは、ポリペプチド又はその断片と、これらに限定されないが、別のペプチド、薬物分子、又は他の治療剤、又は医薬品、又は検出可能なプローブ等の化学化合物との融合体であってもよい。幾つかの実施形態では、誘導体は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/389,120号に記載の技術及び方法を使用して生成される。
【0064】
用語「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、2つの配列をアラインする場合に、候補配列のアミノ酸残基と同一であるポリペプチドのアミノ酸残基のパーセントと定義される。アミノ酸同一性%を決定するためには、配列をアラインし、必要に応じて、ギャップを導入して最大配列同一性%を達成し、保存的置換は、配列同一性の一部とはみなされない。同一性パーセントを決定するためのアミノ酸配列アラインメント手順は、当業者に周知である。多くの場合、BLAST、BLAST2、ALIGN2、又はMegalign(DNASTAR社製)ソフトウェア等の公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、ペプチド配列をアラインする。特定の実施形態では、Blastp(国立バイオテクノロジー情報センター、ベテスダ、メリーランド州)が、長複雑度フィルターの初期設定パラメーター、expect 10、word size 3、existence 11、及びextension 1を使用して使用される。
【0065】
アミノ酸配列をアラインする場合、所与のアミノ酸配列Bに対する、Bとの、又はBと比べた、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%は(或いは、所与のアミノ酸配列Bに対して、Bとの、又はBと比べて、あるアミノ酸配列同一性%を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aと言い直すことができる)、以下のように計算することができる:
アミノ酸配列同一性%=X/Y*100
式中、Xは、A及びBの配列アラインメントプログラム又はアルゴリズムのアラインメントにより同一性一致として得点されたアミノ酸残基の数であり、
Yは、Bのアミノ酸残基の総個数である。
【0066】
アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならいないだろう。より長い配列をより短い配列と比較する場合は、より短い配列が、「B」配列とされるだろう。例えば、切断型ペプチドを、対応する野生型ポリペプチドと比較する場合、切断型ペプチドが、「B」配列とされるだろう。
【0067】
一般
本発明は、癌細胞に対して細胞毒性効果を示すが、正常細胞には示さない細菌性ペプチド、並びにそのようなペプチドの変異体、誘導体、及び構造的等価物を含む組成物、並びに哺乳類の癌の発症を予防し、哺乳類の癌を治療し、哺乳類の癌細胞を死滅させる方法を提供する。特に、本明細書で開示された組成物及び方法は、白血病及び/又は卵巣癌を予防、治療、及び/又は死滅させるために使用することができる。
【0068】
多くのクプレドキシンタンパク質、特にシュードモナス・エルギノーサアズリン、及びそれらの切断型は、in vivo及びin vitroの両方において、多くのタイプの固形哺乳類癌細胞に優先的に進入及び死滅させる能力を有することが示されている。(Yamadaら、Cell.Biol.7巻:1418〜1431頁(2005年);Hiraokaら、PNAS 101巻:6427〜6432頁(2004年);Hiraokaら、Biochem.Biophys.Res.Comm.338巻:1284〜1290頁(2005年))。また、米国特許第7,491,394号、第7,381,701号、及び第7,084,105号、並びに米国特許出願第11/488,693号、第11/950,165号、第11/854,654号、及び第12/338,480号を参照されたい。これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。アズリン様遺伝子は、ナイセリア・ゴノレア及びN.メニンギティディス(N.meningitidis)等の多くの淋菌及び髄膜炎菌に存在する。(Gotschlich及びSeiff、FEMS Microbiol.Lett.43巻:253〜255頁(1987年);Kawulaら、Mol.Microbiol.1巻:179〜185頁(1987年))。アズリンは、多数の病原性細菌により生成され、そのような遺伝子の中には著しい配列相同性が存在する(Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))。
【0069】
「H.8」と名付けられているタンパク質エピトープは、病原性ナイセリア種中で保存されており、H.8と称されるモノクローナル抗体の結合により検出される。別の淋菌遺伝子lazは、H.8モノクローナル抗体と交差反応するタンパク質をコードする。(Hayashi及びWu、J.Bioenerg.Biomembr.22巻:451〜471頁(1990年))。
【0070】
Lazは、細菌性酵素シグナルペプチターゼIIにより認識されるシグナルペプチドリポタンパク質コンセンサス配列を含有する淋菌性細胞表層タンパク質であり、このペプチターゼは、この配列をプロセシングして、脂肪酸及びグリセロールによるシステイン残基のN末端アシル化をもたらす。(Hayashi及びWu、同上;Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))。Lazリポタンパク質は、約17kDaであり、モチーフAla−Ala−Glu−Ala−Pro(AAEAP(配列番号25))の不完全なペンタペプチド反復を含有するN末端の39アミノ酸領域であるH.8領域を含む。(Gotschlich及びSeiff、同上;Kawulaら、同上;Woodsら、Mol.Microbiiol.3巻:43〜48頁(1989年))。Lazのこの39アミノ酸N末端領域の先には、P.エルギノーサアズリンに対して高度に相同性の127アミノ酸領域がある。(Cannon、Clin.Microbiol.Rev.2巻:S1〜S4頁(1989年))。Lazは、酸化ストレス及び銅毒性に対する防御に関与しており、ex vivo初代ヒト子宮膣部上皮アッセイにいて生存を増加させる。(Wuら、Infect.Immun.73巻:8444〜8448頁(2005年))。
【0071】
Lazタンパク質、ナイセリア・ゴノレア及び他のナイセリア種に由来するアズリン様タンパク質は、神経膠芽腫細胞等の脳癌細胞並びに他の腫瘍に特異的に進入及び死滅させることが可能であることが、今や判明している。実施例2及び7を参照されたい。更に、Lazタンパク質のH.8領域は、そのN末端又はC末端のいずれかに融合された場合、P.エルギノーサアズリンに対して、神経膠芽腫細胞に進入及び死滅させる能力を付与することができることが、今や判明している。実施例2及び3を参照されたい。
【0072】
H.8領域は、神経膠芽腫細胞に進入する能力をタンパク質に付与するのに、アズリン等の同時投与されるタンパク質と物理的に結合されている必要がないことも、今や判明している。実施例5を参照されたい。H.8及びGSTのN−末端に融合されたH.8は両方とも、アズリン単独と比較して、物理的に結合されていないアズリンの神経膠芽腫細胞への進入を増加させたが、GSTのC末端に融合されたH.8は、効果がなかった。更に、H.8及びGSTのN末端に融合されたH.8は両方とも、アズリンと同時投与された場合、神経膠芽腫細胞に対するアズリンの細胞毒性を増強した。実施例5を参照されたい。このAAEAP(配列番号25)反復単位を使用して、白血病細胞を死滅させることになるペプチドを設計することができることも企図される。
【0073】
アズリン及びlazは、p53の複雑な形成及び安定化によるアポトーシスの誘導、血管新生の阻害、並びにEphB2/エフリンB2等の受容体チロシンキナーゼにより媒介される細胞シグナル伝達の阻害等の癌進行経路における複数のステップを標的にし、それにより耐性発現の可能性を最小限に抑えることが知られている。例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,381,701号を参照されたい。アズリン及びLazは、正常細胞と比較して、メラノーマ又は乳癌細胞に進入特異性を示すことが知られている。
【0074】
驚くべきことに、アズリン及びLazタンパク質は、固形タイプの癌細胞に対して胞毒性であることに加えて、本明細書に記載の実施例により実証されているように、白血病等の液体媒介性癌に対しても有効である。本実施例では、アズリン及びLazは各々が、白血病細胞系に進入し、そこで細胞毒性効果を示すことができることが実証されている。更に、実施例9及び11で考察され、図8〜11でに実証されているように、Lazは、白血病細胞系に対して細胞毒性効果を発揮するが、正常な末梢血液単核細胞(PBMC)に対してはほとんど効果を示さず、進入は非常に限定されている。これら細菌性タンパク質は、白血病細胞に進入特異性を示すが、正常PBMCでは進入特異性を示さない(図10、パネル1)。
【0075】
アズリン及びLazに加えて、アスパラギナーゼ及びアルギニンデイミナーゼ(ADI)は、乳癌、メラノーマ、腎細胞癌、肝細胞癌等を含む固形腫瘍に対して活性であることが示されており、マイコプラズマ・アルギニニ由来のADI(Ma−ADI)も、ヒト白血病細胞の増殖を阻害することが報告されている。(Yamada Tら、Proc Natl Acad Sci USA 2002年;99巻:14098〜103頁;Punj Vら、Oncogene 23巻:2367〜78頁(2004年);Ni Yら、Cancer Lett.261巻:1〜11頁(2008年);Fialho AM、Chakrabarty AM、Anticancer Drug Discov 2巻:224〜34頁(2007年);Ensor CMら、Cancer Res 62巻:5443〜50頁(2002年);Yoon CYら、Int.J Cancer 120巻:897〜905頁(2007年);Gong Hら、Leukemia 14巻:826〜9頁(2000年))。Ma−ADIの触媒トライアドは、Cys398−His269−Glu213である。しかしながら、白血病細胞に対するMa−ADIの効果に関する報告は1報しかなく、それを別にすると、白血病に対する考え得る治療応用における、ADI等の細菌性タンパク質の役割については、これまでほとんど知られていなかった。
【0076】
シュードモナス・エルギノーサも、Cys406−His278−Asp166を触媒トライアドに有し、Ma−ADIと一次配列相同性を有するADI(Pa−ADI)を産生する。二次構造マッチング(SSM)プログラムを使用することにより、Pa−ADI(Protein Data Bank、PDB IDコード1RXX)のN末端領域にカスパーゼ動員ドメイン(「CARD」)様ドメインが明らかされ、それは、CARDドメインを保持するカスパーゼ−9のプロドメイン(PDB IDコード 3YGS)に対して識別可能な構造相同性を示す。図14Dに示されているように、グアニジン基スーパーファミリーのメンバーの中で、ADIは、CARDドメインを保持するという点で独特である。細菌性タンパク質のCARD様ドメインは、上記で考察されたM.アルギニニADI(PDB IDコード 1LXY)のCARD様ドメイン以外には、知られていない。驚くべきことに、本明細書で開示されたように、Pa−ADIのCARDドメイン(Pa−CARD)は、強力な抗癌活性を有する。手短に言えば、CARDドメインポリペプチドは、著しい抗癌活性示すが、正常細胞に対しては細胞毒性をほとんど示さない。
【0077】
哺乳類CARD含有タンパク質は、通常およそ95アミノ酸残基で構成されており、デスドメイン(DD)及びデスエフェクタードメイン(DED)に対して配列類似性を有する。CARDの結晶構造は、CARDが、疎水性ポケットを取り囲む約6つの緊密にパックされたアルファ−ヘリックスで構成されることを示唆する。同様に、Pa−CARDは、「clip−on−fan」部分の形態をとる5つのパックされたアルファ−ヘリックスを形成する85アミノ酸残基で構成されている(図14B及び14C)。幾つかの哺乳類CARDドメインは癌増殖を促進するため、細菌性CARDが、哺乳類CARD活性の妨害に寄与し、それにより推定CARD様ドメインを含有するPa−ADIの抗癌活性に寄与するという可能性があることは興味深い。Pa−CARDドメインは、哺乳類CARDタンパク質保有タンパク質から動員されてもよく、Pa−CARDは、少なくとも部分的には、癌細胞で高発現されることが知られている哺乳類CARDタンパク質とのタンパク質間相互作用により、その細胞毒性を癌細胞で発揮することができることが企図される。この相互作用は、癌増殖の調節におけるADIの作用の原因であり得ることが更に企図される。
【0078】
Pa−CARD(配列番号27)は、白血病細胞及び卵巣癌細胞に対して予期しない細胞毒性活性を示す。特に、Pa−CARDポリペプチドは、白血病細胞増殖を阻害する能力を有する。白血病細胞系HL60及びK562では、Laz及びPa−CARDの抗癌活性は、Weelタンパク質安定化及び多くの癌タイプで調節不全であることが多いセリン/トレオニンキナーゼの活性型であるリン酸化AKT−Ser−473の枯渇を伴うG2/M期での細胞周期停止により媒介される。実施例11及び12、並びに図12を参照されたい。特に、Pa−CARD及びLazは、K562細胞ではWeelタンパク質の上方制御により、HL60細胞では活性AKT P−Ser473の下方制御により、白血病細胞の細胞周期を阻害する(図12)。
【0079】
Weel及びリン酸化AKT−Ser473(AKT−P−Ser473)は両方とも、ひいては細胞死に結び付くことが知られているG2/M期での細胞周期停止に関与することが知られている。例えば、CDK1としても知られている有糸分裂促進性キナーゼCDC2の活性化は、真核細胞のG2からM期への移行に必要であり、そこではThr−14及びTyr−15残基でのCDC2のリン酸化が重要である。阻害性Tyr−15リン酸化は、Weelプロテインキナーゼにより媒介され、従って、そのレベルが増強されることにより、そのようなM期移行の阻害が媒介される。ウイルスタンパク質は、Laz/Pa−CARD媒介性Weeプロテインキナーゼレベルの上昇を模倣することが知られている。ヒトパピローマウイルス1型(HPV−1)E4タンパク質は、Weelのレベルが上昇することにより触媒される阻害性Tyr−15リン酸化によって不活性サイクリンB1−CDK1複合体が形成されることにより、細胞周期のG2期からM期への移行を阻害する。従って、Weelの過剰発現は、G2期での細胞周期停止を増強する一方で、低分子干渉RNA(siRNA)によるWeelの枯渇は、E4誘導性G2期移行阻止を緩和する。同様に、AKT(プロテインキナーゼB)、ウイルス癌遺伝子v−aktのヒト相同体は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)経路において役割を果たす。PDK2によるAKT−1のSer−473残基におけるリン酸化は、細胞周期進行にとって重要であり、HL60細胞でのLaz及びPa−CARDの両方により明らかにされたように、リン酸化Akt Ser−473(Akt−P−S473)レベルの低減は、G2/M期停止を増強する。
【0080】
Pa−CARDは、GM−CSFをコードする遺伝子の転写刺激により、SKOV−3(卵巣癌)細胞に対して効果を示す。その遺伝子が約3倍刺激されるGM−CSF及びIL−12は両方とも、多くの腫瘍モデルにおいて抗腫瘍免疫の強力な誘導因子であり、腫瘍部位での顆粒球、マクロファージ、及び樹状細胞の浸潤を誘発させ、それにより腫瘍抗原提示を大幅に増強することが知られている。従って、Pa−CARD誘導性アポトーシス(図18)は、Pa−CARDの存在下で過剰産生されるあらゆるGM−CSFの抗腫瘍応答を著しく増大させることができると考えられる。遺伝子発現様式は、多くのサイトカイン遺伝子の刺激を示したが、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)としても知られているケモカインCCL2(C−Cモチーフリガンド2)の遺伝子は、著しい(17倍)の抑制を示した(表3)。CCL2は、多くの場合、腫瘍の単球動員及び有害な腫瘍関連マクロファージ(TAM)を増加させることにより、乳癌の悪性転換を促進することが示されている。CCL2は、恐らくは、カドヘリン遺伝子cdhl2及びcdhl9の転写を活性化する新規の転写因子MCPIPにより、血管新生及び転移を促進することも知られている。従って、Pa−CARDによるCCL2レベルの低減は、血管新生及び腫瘍増殖進行を妨害することにより、腫瘍退縮を可能することができる。
【0081】
要約すると、本明細書の実施例及び開示は、アズリン、Laz、及びPa−CARD等の細菌性タンパク質が、白血病細胞に進入することができ、CDC2−サイクリンB抑制経路及び細胞性PI3K/AKT経路により媒介される細胞シグナル伝達の調節により誘発されると考えられるG2/M期での細胞周期停止を誘導することができることを実証する。更に、ADIは、アルギニンの酵素的枯渇によること、及びADI活性のないN末端推定CARD様ドメインによることを含む幾つかの様式で、抗癌活性を示すことができる(図14〜16)。Pa−cARDタンパク質は、主に癌細胞に対して阻害的役割を示すが、正常細胞に対しては示さない(図18)。更に、抗癌活性は、カスパーゼ活性により媒介される場合があり(図19)、卵巣癌細胞でアポトーシスを誘導することができる。
【0082】
本発明の組成物
本発明は、細胞毒性ペプチド及び/又はそのようなペプチドの変異体、誘導体、切断型、又は構造的等価物を、単独で又は1つ又は複数の他の細胞毒性剤と組み合わせて提供する。
【0083】
幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、クプレドキシン又はその切断型である。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、アズリン又はその切断型である。他のそのような実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Laz又はその切断型である。他の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、LazのH.8領域である。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、配列番号22〜24からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つ又は複数を含む。
【0084】
他の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、CARDドメインを含む。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、CARD保有タンパク質である。幾つかの実施形態では、CARD保有タンパク質は、細菌に由来する。別の実施形態では、細菌は、P.エルギノーサである。1つの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Pa−CARDである。別のそのような実施形態では、細胞毒性ペプチドは配列番号27を含む。
【0085】
幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、当技術分野で周知の技術を使用して、より大きな細胞毒性効果をそれに付与する別のペプチドに融合されている。1つのそのような実施形態では、他のペプチドは、LazのH.8領域である。別のペプチドでは、他のペプチドは、配列番号24を含む配列を有する。1つの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、融合タンパク質Azu−H.8である。別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、融合タンパク質H.8−Azuである。図1。
【0086】
本明細書に記載の細胞毒性ペプチドと組み合わせて投与することができる1つ又は複数の他の細胞毒性剤は、これらに限定されないが、シスプラチン、Gleevec(登録商標)、レチノイン酸、5’−アザ−2’−デオキシシチジン(「DAC」)、及び/又は三酸化ヒ素とレチノイン酸の併用を含む癌治療薬であってもよい。Gleevec(登録商標)、レチノイン酸、DAC、及び/又は三酸化ヒ素とレチノイン酸の併用以外の癌治療薬には、以下のものが含まれる:p53等の細胞周期制御タンパク質;p16、p21、又はp27等のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤;チミジンキナーゼ又はニトロレダクターゼ等の自殺タンパク質;インターロイキン1、インターロイキン2、又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)等のサイトカイン又は他の免疫調節タンパク質;シュードモナス・エルギノーサ菌体外毒素A等の毒素;5−フルオロウラシル;インターフェロンα;メトトレキサート;タモキシフェン;ラロキシフェン;ビンクリスチン(Vincrinstine);ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、エチレンイミン、及びトリアゼン等のアルキル化剤;葉酸アンタゴニスト、プリン類似体、及びピリミジン類似体等の代謝拮抗剤;アントラサイクリン、ブレオマイシン、ミトマイシン、ダクチノマイシン、及びプリカマイシン等の抗生物質;L−アスパラギナーゼ等の酵素;ファルネシル−タンパク質転移酵素阻害剤;5アルファ−リダクターゼ阻害剤;17ベータ―ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型の阻害剤;グルココルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン、アンドロゲン/抗アンドロゲン、プロゲスチン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、酢酸オクトレオチド等のホルモン剤;エクチナサイジン又はそれらの類似体及び誘導体等の微小管破壊剤;タキサン、例えばパクリタキセル(Taxol(商標))、ドセタキセル(Taxotere(商標))、及びそれらの類似体、並びにエポチロンA〜F及びそれらの類似体等のエポチロン等の微小管安定化剤;ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサン等の植物由来産物;並びにトポイソメラーゼ(topiosomerase)阻害剤;プレニルタンパク質転移酵素阻害剤;並びにヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、シスプラチン及びカルボプラチン等の白金配位錯体等の様々な作用剤;並びに抗癌剤として使用される他の作用剤、及び生物応答修飾物質、増殖因子等の細胞毒性剤;免疫調節因子及びモノクローナル抗体;塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、イホスファミド、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、チオテパ、ダカルバジン、メトトレキサート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、硫酸ブレオマイシン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キノカルシン、ディスコデルモリド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン、ジイネセス(diyneses)、レバミソール、アフラコン(aflacon)、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、塩酸イリノテカン、ベタメタゾン(betamethosone)、塩酸ゲムシタビン、アルトレタミン、及びトポテカ(topoteca)、並びにそれらの任意の類似体又は誘導体。
【0087】
他の細胞毒性剤の例には、以下のものも含まれる:ドイツ特許第4138042.8号;国際公開第97/19086号、国際公開第98/22461号、国際公開第98/25929号、国際公開第98/38192号、国際公開第99/01124号、国際公開第99/02224号、国際公開第99/02514号、国際公開第99/03848号、国際公開第99/07692号、国際公開第99/27890号、国際公開第99/28324号、国際公開第99/43653号、国際公開第99/54330号、国際公開第99/54318号、国際公開第99/54319号、国際公開第99/65913号、国際公開第99/67252号、国際公開第99/67253、及び国際公開第00/00485に見出されるようなエポチロン誘導体;国際公開第99/24416号に見出されるようなサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(米国特許第6,040,321号も参照);及び国際公開第97/30992号及び国際公開第98/54966号に見出されるようなプレニルタンパク質転移酵素阻害剤;及び米国特許第6,011,029号に遺伝学的及び特異的に記載されているもの等の作用剤;特に癌の治療において、ARモジュレーター、ERモジュレーター等の任意のNHRモジュレーターと共に、LHRHモジュレーターと共に使用することができる化合物。
【0088】
本発明は、クプレドキシン及び/又はCARD保有タンパク質の変異体、誘導体、切断型、又は構造的等価物である細胞毒性ペプチドを更に提供する。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは単離されている。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、実質的に純粋であるか又は医薬品等級である。他の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、細胞毒性ペプチドを含むか、又はから本質的になる組成物中にある。他の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、細胞毒性ペプチド及び少なくとも1つの他の細胞毒性剤を両方とも含む組成物中にある。別の特定の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、非抗原性であり、哺乳類及びより特定的にはヒトにおいて免疫応答を誘発しない。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、全長クプレドキシン又はCARD保有タンパク質より短く、全長タンパク質の薬理学的活性の幾つかを保持している。特に、幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、癌細胞、特に白血病細胞を死滅させる能力を保持することができる。
【0089】
クプレドキシン間の構造相同性は高いため、他のクプレドキシンは、特に白血病に関して、アズリン及びLazと同じ細胞毒特性を有するだろうということが企図される。幾つかの実施形態では、クプレドキシンは、これらに限定されないが、アズリン、シュードアズリン、プラストシアニン、ルスチシアニン、オーラシアニン(auracyanin)、ステラシアニン、キュウリ塩基性タンパク質、又はLazである。特に、特定の実施形態では、アズリン又はLazは、シュードモナス・エルギノーサ、アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、アクロモバクター・キシロスオキシダンス種デニトリフィカンスI(Achromobacter xylosoxidans ssp.denitrificans I)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、メチロモナス種、ナイセリア・メニンギティディス( Neisseria meningitidis)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhea)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、キシレラ・ファスティディオーサ(Xylella fastidiosa)、ウルバ・ペルツッシス(Ulva pertussis)、又はビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)に由来する。特定の実施形態では、アズリンは、シュードモナス・エルギノーサに由来する。
【0090】
本発明は、野生型クプレドキシン又はCARD保有タンパク質と比較して、アミノ酸が置換、欠失、又は挿入されたクプレドキシン又はCARD保有タンパク質のアミノ酸配列変異体である細胞毒性ペプチドを提供する。本発明の変異体は、野生型タンパク質の切断型であってもよい。幾つかの実施形態では、本発明の細胞毒性ペプチドは、全長野生型ポリペプチドより短いクプレドキシン又はCARD保有タンパク質の領域を含む。
【0091】
本発明の細胞毒性ペプチドは、天然に存在しない合成アミノ酸で製作されたペプチドを含むこともできる。例えば、非天然アミノ酸を化学予防剤に組み込んで、血流中における組成物の半減期を延長又は最適化することができる。そのような化学予防剤には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:D,L−ペプチド(ジアステレオマー)(例えば、Futakiら、J.Biol.Chem.276巻(8号):5836〜40頁(2001年);Papoら、Cancer Res.64巻(16号):5779〜86頁(2004年);Millerら、Biochem.Pharmacol.36巻(1号):169〜76頁(1987年);非通常アミノ酸を含有するペプチド(例えば、Leeら、J.Pept.Res.63巻(2号):69〜84頁(2004年))、その後炭化水素ステープリング(hydrocarbon stapling)されたオレフィン含有非天然アミノ酸(例えば、Schafmeisterら、J.Am.Chem.Soc.122巻:5891〜5892頁(2000年);Walenskiら、Science 305巻:1466〜1470頁(2004年))、及びε−(3,5−ジニトロベンゾイル)−Lys残基を含有するペプチド。
【0092】
他の実施形態では、本発明の細胞毒性ペプチドは、クプレドキシン又はCARD保有タンパク質の誘導体である。クプレドキシン又はCARD保有タンパク質の誘導体は、ペプチドがその根本的活性の幾つかを依然として保持しているような、ペプチドの化学的修飾である。例えば、アズリン、Laz、又はPa−CARDの「誘導体」は、癌細胞、特に白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞を死滅させるその能力を保持している化学的に修飾されたタンパク質である。別の誘導体は、血中半減期を増加又は最適化したものであってもよい。化学的修飾には、これらに限定されないが、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/389,120号で開示されたものが含まれる。
【0093】
幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、これらに限定されないが、ペプチドの加水分解を減少させる方法、ペプチドの脱アミド化を減少させる方法、酸化を減少させる方法、免疫原性を減少させる方法、及び/又はペプチドの構造安定性を増加させる方法を含む方法を使用して修飾されていてもよい。参照により本明細書に記載又は組み込まれている修飾の2つ以上を、1つの修飾クプレドキシン由来ペプチド中で組み合わせることができることが企図され、同様に、本明細書に記載の1つ又は複数の修飾を他の修飾と組み合わせて薬物動態特性を向上させることは、当業者に周知である。そのような変異体及び誘導体を設計するための方法は、多くが当技術分野で周知である。
【0094】
使用方法
本発明は、哺乳類、特にヒトの癌細胞、特に白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞を死滅させる方法を提供する。この方法は、癌細胞を、癌細胞に対して細胞毒性を有する単離ペプチド、又はその変異体、誘導体、切断型、若しくは構造的等価物と接触させることを含む。単離ペプチドは、本明細書に記載のクプレドキシン又はCARD保有タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、単離ペプチドは、アズリンである。別の実施形態では、単離ペプチドは、Lazである。更に別の実施形態では、単離ペプチドは、Pa−CARDである。更なる実施形態では、単離ペプチドは、LazのH.8領域を含む融合タンパク質である。1つのそのような実施形態では、融合タンパク質は、H.8−Azuである。別のそのような実施形態では、融合タンパク質は、Azu−H.8である。細胞毒性ペプチドは、単独で、又は本明細書に記載の別の細胞毒性剤と組み合わせて、又はLazのH.8領域と組み合わせて、癌細胞に投与することができる。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、LazのH.8領域と同時に又はほぼ同時に投与される。他の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、配列番号24を含む配列と同時に又はほぼ同時に投与される。
【0095】
本発明は、癌細胞に対して細胞毒性効果を有する単離ペプチド又はその変異体、誘導体、切断型、若しくは構造的等価物を投与することにより、癌を有する哺乳類患者を治療する方法又はそうでなければ哺乳類患者の癌細胞を死滅させる方法も提供する。単離ペプチドは、本明細書に記載のクプレドキシン又はCARD保有タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、単離ペプチドは、アズリンである。別の実施形態では、単離ペプチドは、Lazである。更に別の実施形態では、単離ペプチドは、Pa−CARDである。更なる実施形態では、単離ペプチドは、LazのH.8領域を含む融合タンパク質である。1つのそのような実施形態では、融合タンパク質は、H.8−Azuである。別のそのような実施形態では、融合タンパク質は、Azu−H.8である。細胞毒性ペプチドは、単独で、又は本明細書に記載の別の細胞毒性剤と組み合わせて、又はLazのH.8領域と組み合わせて、投与することができる。幾つかの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、LazのH.8領域と同時に又はほぼ同時に投与される。他の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、配列番号24を含む配列と同時に又はほぼ同時に投与される。
【0096】
本発明は、白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞に1つ又は複数の細胞毒性ペプチドを投与することにより、細胞分化による白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞の死滅を誘導する方法も提供する。細胞毒性ペプチドは、本明細書に記載のクプレドキシン又はCARD保有タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、アズリンである。別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Lazである。別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、融合タンパク質H.8−Azuである。更に別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、融合タンパク質Azu−H.8である。
【0097】
本発明は、白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞に1つ又は複数の細胞毒性ペプチドを投与することにより、白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞に選択的に進入させ、そこで細胞毒性効果を示させる方法も提供する。細胞毒性ペプチドは、本明細書に記載のクプレドキシン又はCARD保有タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、細胞毒性ペプチドは、アズリンである。別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Lazである。更に別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Pa−CARDである。更なる実施形態では、細胞毒性ペプチドは、LazのH.8領域を含む融合タンパク質である。1つのそのような実施形態では、融合タンパク質は、H.8−Azuである。別のそのような実施形態では、融合タンパク質は、Azu−H.8である。
【0098】
本発明は、G2/M期で細胞周期停止を引き起こすことにより白血病細胞及び/又は卵巣癌細胞を死滅させる方法であって、1つ又は複数の細胞毒性ペプチドを投与することを含む方法を更に含む。更なる実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Weelタンパク質を安定化させ、及び/又はこれらに限定されないが、細胞の細胞質及び/又は核を含む細胞中のWeelタンパク質のレベルを増加させる。更に別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、リン酸化AKT−Ser−473を枯渇させる。更に別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Weelタンパク質を安定化/Weelタンパク質レベルを増加させ、且つリン酸化AKT−Ser−473を枯渇させる。更なる実施形態では、細胞毒性ペプチドは、アズリンである。別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Lazである。更に別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、Pa−CARDである。更に別の実施形態では、細胞毒性ペプチドは、融合タンパク質H.8−Azu及びAzu−H.8の1つ又は複数である。
【0099】
細胞毒性ペプチドをコードする核酸及び発現ベクター
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の細胞毒性ペプチド、並びにそれらの変異体、誘導体、及び/又は構造的等価物をコードする核酸分子を提供する。本発明による核酸分子は、当技術分野で公知の技術の組み合わせにより調製することができる。これら核酸に使用されるコード配列は、特定のペプチドをコードする天然ゲノムDNAに見出されるものであってもよく、又は公知のコドンから設計されてもよい。これらコード配列は、コドン使用頻度の交互化、及びペプチドが発現される生物の好ましいコドン使用頻度を考慮に入れて設計することもできる。細胞毒性ペプチドの核酸配列は、化学合成又はクローニングにより別々に調製してもよい。その後、目的の核酸分子を得るために、それら核酸配列をリガーゼでライゲーションして一緒にすることができる。
【0100】
生物間で遺伝物質を行き来させるのに使用されるベクターは、2つの一般的なクラスに分類することができる:クローニングベクターは、適切な宿主細胞中での増殖に不可欠な領域を有し、外来性DNAを挿入することができる複製用プラスミド又はファージをであり、外来性DNAは、あたかもベクターの成分であるかのように複製及び増殖される。発現ベクター(プラスミド、酵母、又は動物ウイルスゲノム等)は、Laz、アズリン、Pa−CARD、H.8−Azu、又はAzu−H.8のような細胞毒性ペプチドのDNA等の外来性DNAを転写及び翻訳するために、外来性遺伝物質を宿主細胞又は組織へ導入するために使用される。発現ベクターでは、導入されたDNAは、挿入DNAを高度に転写するように宿主細胞にシグナルを送るプロモーター等のエレメントに作用可能に連結されている。特定の因子に応答して遺伝子転写を制御する誘導可能なプロモーター等の幾つかのプロモーターは、非常に有用である。細胞毒性ペプチド並びにその変異体及び誘導体を、誘導可能なプロモーターに作用可能に連結することにより、特定の因子に応答して、細胞毒性ペプチド並びにその変異体及び誘導体の発現を制御することができる。古典的な誘導可能なプロモーターの例には、アルファ−インターフェロン、熱ショック、重金属イオン、及びグルココルチコイド(Kaufman、Methods Enzymol.185巻:487〜511頁(1990年))等のステロイド、及びテトラサイクリンに応答するものが含まれる。他の望ましい誘導可能なプロモーターには、構築体が導入される細胞に内因性ではないが、誘導剤が外因的に供給される際に、それら細胞において応答性であるものが含まれる。一般的に、有用な発現ベクターは、プラスミドであることが多い。しかしながら、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)等の他の形態の発現ベクターが企図される。
【0101】
ベクターの選択は、使用されている生物又は細胞、及びベクターの所望の運命により決定される。一般的に、ベクターは、シグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、ポリリンカー部位、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。
【0102】
細胞毒性ペプチドを含む医薬組成物
本発明は、クプレドキシン若しくはCARD保有タンパク質、又はクプレドキシン若しくはCARD保有タンパク質の変異体、誘導体、切断型、若しくは構造的等価物である少なくとも1つの細胞毒性ペプチドを、特に医薬組成物に、単独で又は少なくとも1つの他の細胞毒性剤と組み合わせて含む組成物も提供する。特定の実施形態では、医薬組成物は、特定の投与方法用に、例えば、これらに限定されないが、経口、腹腔内、又は静脈内用に設計される。そのような組成物は、水中で水和されていてもよく、又は後に水和するために乾燥されていてもよい(凍結乾燥等により)。そのような組成物は、これに限定されないが、アルコール等の水以外の溶媒中にあってもよい。
【0103】
細胞毒性ペプチドを含有する本発明の医薬組成物は、任意の従来方法で、例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖剤製作プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセス、又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。細胞毒性ペプチドは、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と容易に混合することができる。そのような担体により、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁剤等として、調製物を製剤化することができる。好適な賦形剤には、例えば、充填剤及びセルロース調製物も含まれる。他の賦形剤には、例えば、香料、着色剤、粘着防止剤、増粘剤、及び他の許容される添加剤、アジュバント、又は結合剤が含まれていてもよい。
【0104】
種々の実施形態では、組成物は、以下のものを含む:担体及び賦形剤(これらに限定されないが、緩衝剤、炭水化物、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、又はグリシン等のアミノ酸、酸化防止剤、静菌剤、キレート剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は保存剤を含む)、水、油類、生理食塩水、デキストロース及びグリセリン水溶液、緩衝剤、等張化剤、及び湿潤剤等の生理学的状態を近似するのに必要な他の薬学的に許容される補助物質。本発明の組成物は、当業者に公知の任意の好適な担体を使用して投与することができ、担体のタイプは、投与方法に応じて変わることになることが認識されるだろう。化合物は、周知の技術を使用して、リポソーム内に封入することもできる。生分解性ミクロスフェアも、本発明の組成物用の担体として使用することができる。好適な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号、第5,075,109号、第5,928,647号、第5,811,128号、第5,820,883号、第5,853,763号、第5,814,344号、及び第5,942,252号に示されている。本明細書で使用される場合、「化合物」には、本発明のペプチド、アミノ酸配列、積荷化合物及び複合体、並びに核酸が含まれる。
【0105】
本明細書で開示された細胞毒性ペプチド及び核酸を投与するための医薬組成物を調製するために使用される静脈内輸液は、晶質液又はコロイド液で構成されていてもよい。晶質液は、本明細書で使用される場合、ミネラル塩又は他の水溶性分子の水溶液である。コロイド液は、本明細書で使用される場合、ゼラチン等のより大型の不溶性分子を含有している。静脈内輸液は、無菌であってもよい。
【0106】
静脈内投与に使用することができる晶質液には、これらに限定されないが、表1に記載されているような、通常の生理食塩水(0.9%濃度の塩化ナトリウム溶液)、乳酸リンゲル液又はリンゲル液、及びD5Wと呼ばれることがある5%デキストロース水溶液が含まれる。
【0107】

【0108】
本発明の組成物の血中半減期は、当業者に周知の幾つかの方法により延長又は最適化することができ、それら方法には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:環状化ペプチド(Monkら、BioDrugs 19巻(4号):261〜78頁(2005年);DeFreestら、J.Pept.Res.63巻(5号):409〜19頁(2004年))、D,L−ペプチド(ジアステレオマー)(Futakiら、J.Biol.Chem.2月23日;276巻(8号):5836〜40頁(2001年);Papoら、Cancer Res.64巻(16号):5779〜86頁(2004年);Millerら、Biochem.Pharmacol.36巻(1号):169〜76頁(1987年));非通常アミノ酸を含有するペプチド(Leeら、J.Pept.Res.63巻(2号):69〜84頁(2004年))、並びにN−及びC−末端修飾(Labrieら、Clin.Invest.Med.13巻(5号):275〜8頁(1990年))。D置換又はL−アミノ酸置換によるd−異性化(置換)及びペプチド安定性の修飾が、特に興味深い。
【0109】
投与が注射による場合、組成物は、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液等の生理学的適合性を持つ緩衝液で製剤化することができる。溶液は、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤等の製剤用作用剤を含有していてもよい。或いは、組成物は、使用前に好適な媒体、例えば発熱性物質除去滅菌水で構成するための粉末形態であってもよい。
【0110】
投与が吸入による場合、組成物は、好適な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスを使用して、加圧容器又は噴霧器からエアゾルスプレーの形態で送達することができる。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、測定された量を送達するためのバルブを備えることにより決定することができる。タンパク質とラクトース又はデンプン等の好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、例えば吸入器又は注入器で使用されるゼラチンのカプセル及びカートリッジを製剤することができる。
【0111】
投与が局所投与による場合、組成物は、当技術分野で周知のように、液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、及び懸濁剤等として製剤化することができる。幾つかの実施形態では、投与は、経皮貼布による。投与が坐剤(例えば、直腸用又膣用)による場合、組成物は、従来の坐剤基剤を含有する組成物中に製剤化することもできる。投与が経口の場合、組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせて容易に製剤化することができる。マンニトール、ラクトース、及びステアリン酸マグネシウム等の固体担体を使用することができ、そのような担体は、ケモタキシンを、治療しようとする対象体による経口摂取用に、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁剤等として製剤化することを可能にする。例えば、散剤、カプセル剤、及び錠剤等の経口固形製剤の場合、好適な賦形剤には、糖等の充填剤、セルロース調製物、造粒剤、及び結合剤が含まれる。
【0112】
他の便利な担体には、当技術分野で周知のように、細菌性莢膜多糖、デキストラン、又は遺伝子操作されたベクター等の多価担体も含まれる。加えて、組成物を含む徐放性製剤は、長期間にわたる組成物の放出を可能にし、徐放性製剤でなければ、組成物は、治療効果を誘発又は増強する前に、対象体の系から除去されるか、並びに/又は例えばプロテアーゼ及び単純な加水分解により分解されるだろう。
【0113】
細胞毒性ペプチドを含むキット
別の態様では、本発明は、以下のうちの1つ又は複数を包装又は容器に含有するキットを提供する:(1)本明細書に記載の1つ又は複数の細胞毒性ペプチドを含む試薬;(2)薬学的に許容されるアジュバント又は賦形剤を含有する試薬;(3)注射器等の投与用媒体;(4)投与の説明書。構成要素(1)〜(4)の2つ以上が同じ容器に見出される実施形態も企図される。他の実施形態では、キット構成要素は、1つ又は複数の追加的な細胞毒性剤を含むこともできる。他の実施形態では、試薬は、静脈内投与用に製剤化されており、及び/又は投与の媒体は、静脈内投与に適切である。
【0114】
キットが供給される際、組成物の異なる成分は、別々の容器に包装されており、使用直前に混合してもよい。成分をそのように別々に包装することにより、活性成分の機能を失わずに長期間の保管が可能になる場合がある。
【0115】
キットに含まれる試薬は、様々な成分の寿命が保存され、容器の材料により吸着又は変更されないような任意の種類の容器で供給することができる。例えば、密封ガラスアンプルは、窒素等の中性の不活性ガス下で包装した凍結乾燥されたポリペプチド又はポリヌクレオチド又は緩衝液を含有することができる。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン等の有機ポリマー、セラミック、金属、又は類似の試薬を入れるために典型的に使用される任意の他の材料等の任意の好適な材料で作られていてもよい。好適な容器の他の例には、アンプルとして類似の物質で製造されていてもよい単純なボトル、及びアルミニウム又は合金等のホイルで内張りされた内部を備えていてもよい薬袋が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、又は注射器等が含まれる。容器は、皮下注射針で貫通することができる栓を有するボトル等、滅菌取出口を有していてもよい。他の容器は、取り外した際に成分の混合が可能になる容易に取り外し可能な膜により分離されている2つの区画を有していてもよい。取り外し可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴム等であってもよい。
【0116】
キットは、説明書と共に供給されてもよい。説明書は、紙又は他の基材に印刷されていてもよく、及び/又はフロッピーディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、音声テープ、フラッシュメモリ装置等の電子的に読取可能な媒体として供給されてもよい。詳細な説明書は、キットに物理的に付随していなくともよく、その代りに、キットの製造業者又は販売業者が指定するインターネットウェブサイトにユーザを誘導してもよく、又は電子メールとして供給されてもよい。
【0117】
本発明のより完全な理解は、以下の特定の実施例を参照することにより得ることができる。実施例は、例示のために記載されているに過ぎず、本発明の範囲を制限することは意図されていない。形態における変化及び等価物の置換は、状況が便宜性を示唆するか又は付与することができるように企図される。特定の用語が本明細書で使用されているが、そのような用語は、説明的な意味で意図されており、限定のためではない。上記に示されているような本発明の改変及び変異は、その趣旨及び範囲から逸脱せずに製作することができ、従って添付の実施形態により示されているような限定のみが、課されるべきである。
【0118】
実施例
実施例1.Laz及びH.8−アズリン融合遺伝子のクローニング及び発現
ナイセリア・ゴノレア由来のlaz遺伝子を、その公知の配列(配列番号1)に基づいてクローニングした(図1A)。pazと称するP.エルギノーサアズリン遺伝子(配列番号2)(図1B)、及びN.ゴノレア(N.gonnerrhoeae)に由来するlazのH.8エピトープ配列(配列番号3)を使用して、下述のように、pazの5’−末端にH.8エピトープ遺伝子をインフレームでクローニングして、H.8−paz(図1C)を生成し、pazの3’−末端にH.8エピトープ遺伝子をインフレームでクローニングして、paz−H.8(図1D)を生成した。
【0119】
細胞系及び試薬。ヒト癌細胞、細菌株、及びプラスミドは、表2に列挙されている。ヒト乳癌MCF−7細胞及び脳腫瘍LN−229細胞は、イリノイ大学シカゴ校(UIC)外科腫瘍学科の保存培養コレクションに由来する。細胞を、2mM L−グルタミン、0.1mM MEM必須アミノ酸を含有するイーグル塩を有し、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンで補完されたMEM中で培養した。細胞は全て、5%CO中37℃で増殖した。(Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99巻:14098〜14103頁(2002年);Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年))。
【0120】


【0121】
paz及びlaz遺伝子のクローニング及び発現。アズリン遺伝子のクローニング及び高発現は、記述されている。(Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99巻:14098〜14103頁(2002年);Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年))。ナイセリア・ゴノレアのLazコード遺伝子(laz)を、N.ゴノレア菌株F62のゲノムDNAを鋳型DNAとして用いてPCRで増幅した。順方向及び逆方向プライマーは、5’−CCGGAATTCCGGCAGGGATGTTGTAAATATCCG−3’(配列番号4)及び5’−GGGGTACCGCCGTGGCAGGCATACAGCATTTCAATCGG−3’(配列番号5)であり、追加導入されたEcoRI及びKpnI制限部位には、それぞれ下線が引かれている。EcoRI及びKpnIで消化された1.0kbの増幅DNA断片を、laz遺伝子がlacプロモーターの下流に配置されるようにpUC18ベクター(Yanisch−Perronら、Gene 33巻:103〜119頁(1985年))の対応する部位に挿入して、発現プラスミドpUC18−lazを得た(表2、図1)。
【0122】
N.ゴノレアLazのH.8及びP.エルギノーサのアズリン(Paz)の融合体を発現するプラスミドを、pUC19−paz及びpUC18−lazを鋳型として用いてPCRで構築した。H.8−Paz融合体の場合、pUC18−lazを鋳型とし、プライマー、5’−(リン酸化)GGCAGCAGGGGCTTCGGCAGCATCTGC−3’(配列番号6)及び5’−CTGCAGGTCGACTCTAGAGGATCCCG−3’(配列番号7)を用いて3.1kbの断片を増幅した。SalI部位には下線が引かれている。PCRで増幅された0.4kbの断片は、鋳型としてのpUC19−paz、及びプライマー、5’−(リン酸化)GCCGAGTGCTCGGTGGACATCCAGG−3’(配列番号8)及び5’−TACTCGAGTCACTTCAGGGTCAGGGTG−3’(配列番号9)から得た。XhoI部位には下線が引かれている。pUC18−lazに由来するSalIで消化されたPCR断片、及びpUC19−pazに由来するXhoIで消化されたPCR断片をクローニングして、発現プラスミドpUC18−H.8−paz(表2、図1)を得た。
【0123】
Paz−H.8融合体の場合、pUC19−pazを鋳型とし、プライマー、5’−CTTCAGGGTCAGGGTGCCCTTCATC−3’(配列番号10)及び5’−CTGCAGGTCGACTCTAGAGGATCCCG−3’(配列番号11)を用いて、3.3kbの断片を増幅した。BamHI部位には下線が引かれている。pUC18−lazを鋳型とし、プライマー、5’−(リン酸化)TGCTCTCAAGAACCTGCCGCGCCTGC−3’(配列番号12)及び5’−TAGGATCCTTAGGCAGCAGGGGCTTCGGCAGCATCTGC−3’(配列番号13)を用いて、0.13kbの断片を増幅した。BamHI部位には下線が引かれており、細菌遺伝子終止コドンに対応する追加導入されたTTAは斜字体で示されている。2つのBamHI消化PCR断片をクローニングして、発現プラスミドpUC19paz−H.8を得た(表2)。
【0124】
大腸菌JM109を、アズリン及びその誘導体遺伝子の発現用宿主菌株として使用した。組換え大腸菌株を、100μg/mlアンピシリン、0.1mM IPTG、及び0.5mM CuSOを含有する2×YT培地中で16時間37℃にて培養して、アズリンタンパク質を産生した。
【0125】
融合GSTタンパク質のプラスミド構築。pGEX−5X−3(GE Healthcare Bio−Sciences Corp.製、ピスカタウエイ、ニュージャージー州)を鋳型DNAとして用いて、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)コード遺伝子をPCRで増幅した。使用した順方向及び逆方向プライマーは、5’−CGAGCTCATGTCCCCTATACTAGGTTATTGG−3’(配列番号14)及び5’−CCCAAGCTTTCAGGGGATCCCACGACCTTCGATCAGATCC−3’(配列番号15)であり、追加導入されたSacI及びHindIIIの制限部位にはそれぞれ下線が引かれており、細菌遺伝子終止コドンに対応する追加導入されたTCAは、斜字体で示されている。SacI及びHindIIIで消化された1.0kbの増幅DNA断片を、pET29aベクターの対応する部位に挿入して、発現プラスミドpET29a−gstを得た(表2)。
【0126】
H.8−GST融合体の場合、pUC18−lazを鋳型DNAとして用いて、lazのシグナルペプチド及びH.8コード領域をPCRで増幅した。使用した順方向及び逆方向プライマーは、5’−GGAATTCATATGAAAGCTTATCTGGC−3’(配列番号16)及び5’−CCGGAATTCGGCAGCAGGGGCTTCGGC−3’(配列番号17)であり、追加導入されたNdeI及びEcoRI部位の制限部位には、それぞれ下線が引かれている。NdeI及びEcoRIで消化された0.14kbの増幅DNA断片を、pET29a−gstベクターの対応する部位に挿入して、発現プラスミドpET29a−H.8−gstを得た(表2)。
【0127】
GST−H.8融合体の場合、pUC18−lazを鋳型DNAとして用いて、H.8コード領域をPCRで増幅した。使用した順方向及び逆方向プライマーは、5’−CGGGATCCCCTGCTCTCAAGAACCTGCCGCGCC−3’(配列番号18)及び5’−CGGAATTCTTAGGCAGCAGGGGCTTCGGCAGCATCTGCAGG−3’(配列番号19)であり、追加導入されたBamHI及びEcoRIの制限部位には下線が引かれており、導入された細菌遺伝子終止コドンTTAは、斜字体で示されている。BamHI及びEcoRIで消化された0.14kbの増幅DNA断片を、pGEX−5X−3ベクターの対応する部位に挿入して、pGEX−5X−3−H.8を得た。その後、pGEX−5X−3−H.8を鋳型DNAとして用いて、GST−H.8融合領域をPCRで増幅した。使用した順方向及び逆方向プライマーは、5’−CGAGCTCATGTCCCCTATACTAGGTTATTGG−3’(配列番号20)及び5’−CCGCTCGAGTCAGGCAGCAGGGGCTTCGGCAG−3’(配列番号21)であり、追加導入されたSacI及びXhoI部位の制限部位には、それぞれ下線が引かれており、細菌遺伝子終止コドンに対応する追加導入されたTCAは、斜字体で示されている。SacI及びXhoIで消化された1.1kbの増幅DNA断片を、pET29aベクターの対応する部位に挿入して、発現プラスミドpET29a−gst−H.8を得た(表2)。
【0128】
大腸菌BL21(DE3)を、gst及びその機能誘導体の発現用宿主菌株として使用した。これらプラスミドを保持する大腸菌株をIPTGの存在下で増殖させ、細胞を溶解し、タンパク質を、アズリンの場合に記述されているように精製し(Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99巻:14098〜14103頁(2002年);Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年);Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))、種々のアズリン誘導体は、SDS−PAGEで単一成分(図1E)として泳動したが、H.8含有タンパク質(約17kDa)は、以前に記述されているように変則的な泳動を示した(Cannonら、同上.;Fisetteら、同上)。
【0129】
実施例2.H.8は、神経膠芽腫細胞に対するP.エルギノーサアズリンの細胞毒性を増強するが、乳癌細胞に対しては増強しない
癌細胞に対するPazの優先的進入(Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))、並びにヒトメラノーマ(Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99巻:14098〜14103頁(2002年))及び乳癌(Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年))に対するその細胞毒性は、in vitro及びin vivoの両方で報告されている。例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/338,480号も参照されたい。しかしながら、神経膠芽腫等の脳腫瘍に対するPaz又はLazの効果は知られていない。本明細書では、神経膠芽腫(LN−229細胞系)及び乳癌(MCF−7細胞系)細胞の両方に対する、Paz、Laz、H.8−Paz(H.8エピトープは、PazのN末端にある)及びPaz−H.8(H.8エピトープは、PazのC末端にある)の効果を研究した。
【0130】
タンパク質の調製。P.エルギノーサのアズリン(Paz)、N.ゴノレアのLaz、Paz−H.8、及びH.8−Pazを、以前に記述されているように精製した。(Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99巻:14098〜14103頁(2002年);Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年);Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))。組換えGST融合誘導体は全て、以前に記述されているように精製した。(Yamadaら、Cell.Microbiol.7:1418〜1431頁(2005年))。化学合成された39アミノ酸のH.8ペプチドは、購入した。
【0131】
細胞毒性アッセイ。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル−2,5−ジフェニル)テトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを実施して、癌細胞に対する細胞毒性を決定した。細胞(1ウエル当たり5×10個)を、37℃、5%COで100:1の培地の96ウエル培養皿に播種した。終夜インキュベーションした後、上清を除去し、指定された種々の濃度のタンパク質を含有する新しい培地を、付着細胞に添加した。これら細胞を、指定された種々の期間インキュベートした後、10μlの5mg/ml MTT(Sigma−Aldrich社製、セントルイス、ミズーリ州)溶液を培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートすることによるMTTアッセイにより、生細胞の数を決定した。MTT反応は、100μlのイソプロパノール中40mM HClを添加することにより終了させた。形成されたMTTホルマザンを、Mosmann(J.Immunol.Methods 65巻:55〜63頁(1983年))により記述されている方法に従って分光測光法で測定した。
【0132】
合成H.8ペプチドは、神経膠芽腫LN−229(図2A)又は乳癌MCF−7(図2B)細胞のいずれに対しても細胞毒性をほとんど示さなかった。アズリン(Paz)の効果は、低いとはいえ、神経膠芽腫(図2A)では用量依存的であり、アズリン濃度が10μMから40μMに上昇すると共に、細胞毒性は増加したが、乳癌(図2B)細胞ではそうではなかった。6時間のインキュベーション期間後、細胞毒性は、ほんのわずかに増加したに過ぎなかった。最も注目すべきことは、神経膠芽腫及び乳癌細胞のPaz、Paz−H.8、H.8−Paz、及びLazの細胞毒性に差異があることだった。Paz、Paz−H.8、H.8−Paz、及びLazは、全ての用量で、様々なインキュベーション期間で、MCF−7細胞に対して本質的に同一の細胞毒性を示したが(図2B)、Pazは、特により短いインキュベーション期間(6時間)で、神経膠芽腫細胞に対して、Paz−H.8、H.8−Paz、又はLazよりはるかに低い細胞毒性を示した。従って、H.8部分は、それ自体は細胞毒性を欠如しているものの、神経膠芽腫に対してのみPazの細胞毒性を増強し、乳癌細胞に対しては増強しないと考えられた。
【0133】
実施例3.Paz又はLazに存在するH.8エピトープは、神経膠芽腫細胞におけるアズリンの取込みを促進する
Pazと比較して、Paz−H.8、H.8−Paz、及びLazの神経膠芽腫細胞に対する細胞毒性が増強されたことにより、H.8部分が、神経膠芽腫細胞におけるアズリンの取込みを何らかの形で促進したのかどうかという疑問が生じた。Alexa fluor(登録商標)568標識赤色蛍光タンパク質(Invitrogen−Molecular Probes Corp.製、カールズバッド、カリフォルニア州)を使用して、神経膠芽腫及び乳癌細胞内部のこれらタンパク質の内部移行を決定した。この技術は、MCF−7細胞におけるアズリンの内部移行を実証するため、以前に使用された(Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年);Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))。
【0134】
共焦点顕微鏡。顕微鏡試料を調製するために、細胞をカバーガラス上で5%CO下、37℃で終夜培養した。予め暖めておいた37℃の新しい培地を、赤色蛍光標識(Alexa fluor(登録商標)568)アズリン又はGST融合誘導体と混合し、細胞と共に指定の時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、−20℃で5分間メタノールを用いて固定した。PBSで3回洗浄し、核染色用の1.5mg/ml 4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)(VECTASHIELD(登録商標)、Vector Laboratories社製、バーリンゲーム、カリフォルニア州)を含有する封入剤を添加した後、Carl Zeiss社製LSM510レーザー走査型共焦点顕微鏡を使用することにより画像を撮影した。(Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))。
【0135】
アズリン(Paz)は、Paz−H.8、H.8−Paz、及びLazより低減された効率で内部移行し、神経膠芽腫LN−229細胞にはPaz進入に対する障壁があることが実証された(図3A及び4A)。対照的に、Pazは、乳癌MCF−7細胞では、以前に報告されているように、Paz−H.8、H.8−Paz、又はLazと同じか又は多少より高い効率で効率的に内部移行した(図3B及び4B)。(Punjら、Oncogene 23巻:2367〜2378頁(2004年);Yamadaら、Cell.Microbiol.7巻:1418〜1431頁(2005年))。LN−229細胞におけるLaz進入の用量依存性は、37℃で30分間のインキュベーション期間中の最適濃度は約16μMであり(図3C及び4C)、その後は更なる増強はなかった(データ非表示)ことを実証した。10μM濃度では、大部分のLazは、約10〜20分でLN−229細胞の中に内部移行したが(図3D及び4D)、Pazの内部移行は、そのような条件下では最小限であり(図3E)、Paz内部移行はLN−229細胞において本質的に非能率的だったことを示唆した。Paz−H.8及びH.8−Pazの著しい内部移行は、Lazと同様だっだが、LN−229細胞でのPazとは対照的であり(図3A及び4A)、PazのN末端又はC末端のいずれかにあるH.8部分の相対的位置は、神経膠芽腫細胞におけるPaz部分の内部移行を促進するその能力に影響を及ぼさなかった。
【0136】
実施例4.H.8部分は、神経膠芽腫におけるPaz進入を促進するが、乳癌細胞においては促進しない
神経膠芽腫細胞へのPaz進入を促進するために、H.8エピトープが、Lazと同様にPazの一部である必要があるかどうか又は単独で機能することができるかどうかを決定するために、H.8単独に加えて、種々のH.8融合タンパク質を使用した。39アミノ酸の合成H.8部分等の小型ペプチドは、溶液中での安定性が低いため、本発明者らは、Paz−H.8又はH.8−Pazと同様に、H.8がGSTのN末端(H.8−GST)又はGSTのC末端(GST−H.8)に組み込まれるように、H.8部分とグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合体を構築した。GST融合ペプチドの構築は、実施例1に記載されている。
【0137】
赤色蛍光を発するAlexa fluor(登録商標)568結合Pazを、対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に加えて、未標識合成H.8ペプチド、GST、GST−H.8、及びH.8−GST融合タンパク質と共に別々にインキュベートし、37℃で30分間インキュベーションした後で、LN−229細胞における20μM Paz混合物の内部移行を決定した。合成H.8ペプチドは、Pazと共に別々に導入された場合、PBS(図5E)、GST(図5B)、又はGST−H.8(図5C)と比較して、Paz内部移行を増強した(図5A)。蛍光を定量化することにより、H.8ペプチドが、Paz進入を2.1倍刺激したことが示された。しかしながら、H.8−GSTの存在は、Pazの内部移行を著しく増強した(3倍超)(図5D)。その一方で、GST−H.8は、わずかな刺激を示したに過ぎなかった(図5C)。Pazそれ自体は、ゆっくりと神経膠芽腫細胞に進入したに過ぎず(図5E)、脳腫瘍細胞における進入は、H.8により媒介されることが実証された。H.8は単独では、神経膠芽腫細胞に進入しなかったが(図3A)、Pazの内部移行を刺激するその能力(図5A)は、脳腫瘍細胞へのタンパク質の進入を促進するその能力を反映している。
【0138】
実施例5.神経膠芽腫細胞におけるH.8−GSTの存在下でのPazの内部移行の増強は、そのような細胞でのより高い細胞毒性に結び付く。
本発明者らは、合成H.8ペプチド、GST、GST−H.8、及びH.8−GSTタンパク質(各々20μM)を、20μM Pazの非存在下又は存在下で、LN−229細胞と共に24時間インキュベートし、その後24時間後にMTTアッセイより成育可能な神経膠芽腫細胞を測定することにより、細胞毒性の程度を測定した。Pazの非存在下では、H.8ペプチド、GST、又はGST融合タンパク質はいずれも、いかなる著しい細胞毒性も示さなかった(図5F、−Paz)。それ自体がH.8ペプチド又はPBSの存在下で低い細胞毒性を示す20μM Pazの存在下では(図5F、+Paz)、GSTそれ自体又はGST−H.8は、細胞毒性のある程度の増強を示したが(図5F、+Paz)、細胞毒性の大幅な増強は、H.8−GSTの存在下でのみ観察された(図5F、+Paz)。まとめると、これらのデータにより、H.8部分は、Paz等のタンパク質の一部として存在するか又はその存在下にある場合、そのような細胞内部へのPaz輸送を促進し、細胞毒性の増強をもたらすことが示唆される。
【0139】
実施例6.H.8は、BBBの通過を媒介し、脳への進入を可能にする
H.8エピトープに、神経膠芽腫LN−229細胞における融合体又は個々のタンパク質の内部移行の増強を可能にする能力があることは(図3A、4A、及び5D)、H.8−Paz又はLazのN末端の一部としてのH.8が、BBBの通過を促進し、これらタンパク質の末梢循環から脳細静脈への輸送を可能にしたかどうかという疑問を提起した。
【0140】
Odyssey(登録商標)アッセイ。タンパク質は全て、IRDye(登録商標)800CW(LI−COR Biosciences社製、リンカーン、ネブラスカ州)を製造業者により推奨された条件下で使用して標識した。IRdye(登録商標)800CWが結合された500μgのPaz、H.8−Paz、及びLazを、ヌードマウスに腹腔内注射した。24時間後、マウスを犠牲し、脳を摘出し、脳画像をLI−COR Odyssey(登録商標)赤外線画像化システム(解像度84μm、オフセット1mm)で検出した。その後、マウス脳を水平に切断し、標識タンパク質の存在を検出するために、頭側中脳領域画像を撮影した。
【0141】
アズリンタンパク質の蛍光の定量化。蛍光の定量化は、Adobe(登録商標)Photoshop(登録商標)を使用することにより、以下のように測定した:1つの細胞をPhotoshop(登録商標)の投げ縄ツール(Lasso Tool)により選択し、平均値を、画像メニューの赤色ヒストグラムから得た。1つの試料について少なくとも3つの異なる細胞を測定し、標準偏差を計算した。
【0142】
赤外色素IRdye(登録商標)800CW(LI−COR Bioscience社製)で標識された500μgのPaz、H.8−Paz、及びLazタンパク質を、生存ヌードマウスに腹腔内注射した。24時間後、マウスを犠牲し、脳を単離し、画像を、LI−COR Odyssey(登録商標)赤外線画像化システムを使用して撮影した。Pazは少量が脳細静脈に進入することが見出されたが、更により多くのLaz及び特にH.8−Paz(4倍超)が、そのような条件下において脳の内部で検出され(図6)、H.8エピトープが、融合タンパク質の脳への進入を可能にするのに明らかな役割を果たすことを実証した。
【0143】
実施例7.H.8エピトープは、N末端にある場合、周辺質タンパク質の細菌表面提示を可能にする。
LazのH.8エピトープがN末端に配置されていることが、その表面提示に寄与しているかどうかを研究するために、H.8融合誘導体を、実施例1に記載のように、GST(図5)及びPaz(図2及び図3A/B及び4A/B)のN末端及びC末端に構築した。
【0144】
大腸菌における表面露出タンパク質の局在化。pET29a−gst、pET29a−H.8.gst、又はpET29a−gst−H.8を保持する大腸菌株BL21(DE3)、及びpUC19−paz、pUC19−paz−H.8、pUC18−H.8−paz、又はpUC18−lazを保持する大腸菌株JM109を、0.4mMイソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)と共に37℃で培養した。これら細菌培養の各々1mlを遠心分離し、その結果生じたペレットを収集した。PBSで2回洗浄した後、GST誘導体に対する抗GST抗体(1:2000)又はアズリン誘導体に対する抗アズリン抗体(1:500)を含有する1mlの1%FBS−PBSを添加した。細胞懸濁液を氷上で1時間インキュベートし、その後PBSで2回洗浄した。GST誘導体に対するFITC結合抗ウサギIgG、又はアズリン誘導体に対するFITC結合抗ウサギ抗体を添加し、氷上で30分間インキュベートした。未結合抗体を除去するために細胞をPBSで2回洗浄し、氷上でエタノールを用いて固定した。その後、DAPIで処理された大腸菌試料を、共焦点顕微鏡で観察した。
【0145】
H.8融合タンパク質を精製した(図1E及び図7A)。GSTの細胞局在化、並びにN末端及びC末端の2つのH.8融合体(H.8−GST及びGST−H.8)が、図7Bに示されている。抗GST抗体を使用したウエスタンブロッティングで検出すると、3つのタンパク質は全て大腸菌中で高発現され、大腸菌の全細胞溶解物中に存在した(図7B)。周辺質画分を大腸菌から単離し、3つのタンパク質の存在を調査すると、GST及びGST−H.8タンパク質は、大量に検出されたが(図7B、周辺質画分下のレーン1及び3)、H.8−GSTは、そのような周辺質画分では、わずか少量しか検出することができなかった(図7B、周辺質画分下のレーン2)。
【0146】
残りのH.8−GST融合タンパク質が、大腸菌細胞の表面に輸送された可能性があるかどうかを調査するために、3つのタンパク質を高発現する細胞を増殖し、回収し、洗浄し、抗GST抗体で処理して、あらゆる表面露出GSTを結合させ、再び洗浄し、FITC結合二次抗体で処理した。GSTが表面に露出していれば、抗GST抗体はそれらに結合し、それはその後FITC結合二次抗体により検出することができるだろう。実際、H.8−GSTを保持する大腸菌細胞のみが、FITCの発生する緑色蛍光を示し(図7C、H.8−GST)、H.8エピトープがGSTのN末端に存在することにより、細胞表面へのH.8−GSTの輸送が促進されたことを示唆した。GSTのC末端にH.8部分が存在するもの(GST−H.8)、並びにGSTそれ自体は、大部分は周辺質及び細胞内に留まり、表面提示はされなかった(図7C、GST、及びGST−H.8)。
【0147】
上述と同じ技術を使用して、Paz及びPaz−H.8は細胞内に留まるが(図7D、Paz及びPaz−H.8)、H.8−Paz及びLazは両方とも表面提示を示したことが決定され、N−端末にH.8が存在することは、恐らくは脂質化に遊離システインが必要であるため、融合タンパク質を輸送して外膜を貫通させ表面に届けるのに重要であることが確認された。
【0148】
実施例8.白血病研究用のアズリン、Laz、及びPa−CARDペプチドの調製
野生型(wt)アズリン及び突然変異体アズリンを、Yamada Tら、Proc Natl Acad Sci USA 99巻:14098〜103頁(2002年)及びPunj Vら、Oncogene 23巻:2367〜78頁(2004年)に記述されているように精製した。Lazは、Hong CSら、Cell Cycle 5巻:1633〜41頁(2006年)に記述されているのと同じプロトコールを使用して精製した。手短に述べると、pUC18ベクターを使用してLazを大腸菌で発現させた。細胞を24時間インキュベートし、遠心し、PBSで2回洗浄し、その後周辺質画分を単離するために溶解した。周辺質画分を、タンパク質精製用Qセファロース交換のために収集する。画分を濃縮し、FPLCを実施して精製タンパク質を単離する。
【0149】
Pa−CARDのクローニング、発現、及び精製。そのN82末端領域にSUMO融合タンパク質を有するpET−SUMO発現ベクターを、P.エルギノーサADI由来の可溶性アルギニンデイミナーゼ、及びカスパーゼ動員ドメイン(CARD)含有ドメインの高レベル発現用に使用した。ADI遺伝子のCARDモチーフをpET−SUMOベクター(Invitrogen社製)にクローニングするために、以下のプライマー対を用いてP.エルギノーサの臨床分離株のゲノムDNAから、遺伝子を増幅した:F、順方向:5’−ATGCACAATCTGCTGACCGAGACCATCCAG−3’(配列番号28)及びR、逆方向:5’−TCAGGTCGAGGAGCCGTGGTCCTTGTC−3’(配列番号29)。PCR産物を、pET−SUMO TAクローニングベクターに直接ライゲーションした。その結果生じた発現ベクターの配列を確認し、大腸菌90菌株BL21(DE3)に形質転換した。
【0150】
終夜培養を、50μg/mlカナマイシンを含有する37℃のLB培地で増殖させた。OD595nmがおよそ0.5の時に、IPTGを0.5mMの終濃度で培養に添加し、37℃で5時間インキュベートした。5000rpmで15分間遠心分離することにより、細胞を収集した。細胞ペレットを、50mM Tris−Cl、100mM NaCl、及び25%(重量/容積)スクロースを含有する溶解緩衝液、pH、8.0で溶解した。溶解緩衝液を添加した後、20mg/mlリゾチームを細胞懸濁液に添加し、4℃で20分間インキュベートした。Triton X−100[終濃度0.01%(容積/容積)]を添加し、5分間インキュベートした。培養液500mlにつき100μlのDNase及びRNaseを添加し、37℃で30分間インキュベートした。細胞懸濁液を、4℃で35分間15,000rpmで遠心分離した。上清を、予め平衡化しておいた1mlのNi−NTAカラムに負荷した。負荷した後、カラムを、緩衝液(50mM Tris−Cl、300mM NaCl、10%グリセロール、10mMイミダゾール)で洗浄した。SUMO−CARDは、溶出緩衝液(100mM Tris−Cl、500mM NaCl、20mMイミダゾール、pH8.9)中の50〜500mMイミダゾールの25mlステップ勾配で溶出した。精製SUMO−CARD画分を貯留し、SUMOプロテアーゼ消化用の緩衝液(20mM Tris−Cl、150mM NaCl、pH8.0)と緩衝液を交換した。その後、SUMO−CARDタンパク質を1.5〜2mlまで濃縮した。その後、DTTを1mMの終濃度で添加した。SUMOプロテアーゼを添加した後、消化混合物を2〜3時間30℃でインキュベートし、Pa−CARDと呼ばれるCARDポリペプチドを、ニッケル樹脂を使用することにより精製した。最終タンパク濃度は、BSAを標準物質として使用して、タンパク質試薬(Pierce社製)で測定した。CARDドメインがそれに由来していたP.エルギノーサのADI酵素を、同一の手順を使用してSUMO−ADI融合タンパク質から精製した(Pa−ADI)。
【0151】
細胞培養。細胞系は全て、10%ウシ胎仔血清(FBS)、2%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び2%グルタミンで補完されたRPMI1640培地(Gibco/Life Technologies Inc.製)で培養した。細胞は全て、5%COの加湿された37℃インキュベーター中で増殖させた。
【0152】
細胞毒性アッセイ。MTT[3−(4,5ジメチルチアゾール−2−イル−2,5テトラゾリウムブロミド)]アッセイを、Yamada Tら、Proc Natl Acad Sci USA 99巻:14098〜103頁(2002年)及びPunj Vら、Oncogene 23巻:2367〜78頁(2004年)に記述されているように、wt及び突然変異体アズリンの細胞毒性を測定するために使用した。手短に述べると、水溶性テトラゾリウム塩、[3−(4,5ジメチルチアゾール−2−イル−2,5テトラゾリウムブロミド)]は、無傷ミトコンドリアデヒドロゲナーゼにより水不溶性ホルマザンに代謝される。その後、ホルマザンを、2−プロパノール+40mM HClを添加して1時間インキュベーションすることにより可溶化する。3×10個の細胞を、様々な濃度のアズリン、Laz、又はPa−CARD、並びに陽性対照としての5−アザ−2−デオキシシチジン(DAC)で処理した。細胞の生存率を、570nmの光学密度により分光測光法で検出されたホルマザンの形成に基づいて評価した。
【0153】
細胞周期分析。HL60及びK562細胞を(1ウエルにつき3×10個の細胞を24ウエルプレートに播種)、野生型アズリン、Pa−CARD、又はLaz(5及び10μM)で48時間処理した。細胞をPBSで2回洗浄し、−20℃で24時間70%メタノールを用いて固定した。固定した細胞を、PBSで2回洗浄し、20μg/mlのRNaseAを含有するPBS中50μg/mlのヨウ化プロピジウムを用いて暗所で30分間染色し、フローサイトメトリー(Becton Dickinson社製)で分析した。細胞周期の様々な期にある細胞のパーセントを、MODFIT LTソフトウェアで決定した。
【0154】
ウエスタンブロッティング。イムノブロッティングの場合、細胞質画分及び核画分を、完全プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Sigma社製)を用いて、製造業者のプロトコールに従って、NE−PER抽出試薬(Pierce社製)を使用して単離した。細胞溶解物のタンパク質濃度は、Bradford Bio−Radアッセイを使用して測定した。細胞溶解物タンパク質をSDS−PAGEで分離し、イムノブロッティング用のPVDF膜に移した。5%脱脂粉乳(Difco社製)を含有するTris緩衝生理食塩水(0.15M NaCl、0.05M Tris−HCl[pH8.0]、0.05%Tween20)中で、膜をブロッキングし、一次抗体(TBST、5%脱脂粉乳での推奨希釈)と共に、4℃で終夜穏やかに撹拌しながらインキュベートした。TBSTで3回、各回5分間洗浄した後、Zymed Laboratories社(サンフランシスコ、カリフォルニア州)から購入した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギ又はウサギ抗マウス抗体(TBST、5%脱脂粉乳中1:3000)で、膜を1時間室温で探索した。追加的洗浄ステップの後、膜を化学発光基質と共に室温で1分間インキュベートした。各抗体インキュベーション間で未結合抗体を除去するために、製造業者のプロトコールに従ってRestoreウエスタンブロットストリップ緩衝液(Pierce社製)中で膜をインキュベートし、再び探索した。抗Bアクチンは、Sigma社製だった。AKT、Weel、及び抗ホスホ−AKT−S473抗体は、Cell Signaling Technology社製(ベヴァリー、マサチューセッツ州)だった。二次抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギ及びウサギ抗マウスは、Zymed Laboratories社製(サンフランシスコ、カリフォルニア州)だった。
【0155】
共焦点顕微鏡。アズリンタンパク質及びLazタンパク質を、蛍光性化学物質AlexaFluor568(Molecular Probes社製)と結合させ、HL60、K562、又は正常末梢血単核細胞と共に1時間インキュベートした。細胞への蛍光化学標識ペプチド又はタンパク質の進入は、Yamada Tら、Cell Microbiol.7巻:1418〜31頁(2005年)に記述されているように、共焦点顕微鏡(LC510型、Carl Zeiss社製)で観察した。
【0156】
実施例9.白血病細胞に対するアズリン及びLazの効果
細菌タンパク質Laz及びアズリンを、それらが細胞毒性を誘導し、それにより2つの白血病細胞系、AML細胞系であるHL60、及びCML細胞系であるK562の生存率を低減する能力について調査した。細胞系HL60及びK562の生存率は、10μMのLaz又はアズリンで処理した24時間、48時間、72時間後に、MTTを代謝的に還元して紫色のホルマザン産物にするそれらの能力により測定した(図1A及びB)。10μMのタンパク質には、非常に細胞毒性であることが判明し、90%を超えて細胞生存率を低減させた。Lazは、アズリン部分を有するナイセリアタンパク質であり、P.エルギノーサアズリンと実質的な配列同一性を有するが、H8エピトープと呼ばれる追加的な39アミノ酸のペプチドを有する。
【0157】
このH8エピトープが、アズリンの抗癌活性を調節するかどうかを決定するために、H.8エピトープをP.エルギノーサアズリンのN末端及びC末端にクローニングして、H8アズリン(H8−Azu)及びAzu−H8を得た。Hong CSら、Cell Cycle 5巻:1633〜41頁(2006年)。これら2つのLaz様タンパク質も、白血病細胞系に対して試験した。より低い有効量を決定するために、K562細胞を、3.75nM以上の終濃度の様々な濃度のタンパク質で処理し、HL60細胞を、1〜10μMの終濃度で処理した。細菌タンパク質は全て、2つの白血病細胞系に対して用量依存的な細胞毒性効果を示した。著しい細胞生存率の低減は、ナノモル(nM)のタンパク質濃度でさえ観察され、生存率のピークは、5μMのタンパク質で低減された(図8C及びD)。この細胞毒性効果は、処理の24時間後で明らかであり、全てのタンパク質は、HL60細胞及びK562細胞の両方で細胞毒性効果を発揮した(図8A及びB)。
【0158】
Laz及びアズリンの細胞毒性効果を、公知の白血病薬、5−アザ−2’−デオキシシチジン(DAC)とも比較した。5−アザ−2’−デオキシシチジンは、DNA過剰メチル化によりサイレンシングされる腫瘍抑制遺伝子を再活性化させることにより作用するDNAメチル化阻害剤である。腫瘍抑制遺伝子の再活性化は、細胞周期停止及びアポトーシスに結び付く。各細菌タンパク質の生存率低減効果は、DACの効果より著しく良好だった(図8C及びD)。アズリン又はLazは、癌細胞に対して細胞毒性であり、正常細胞には細胞毒性でない。この細胞毒性は、エンドトキシン等の細胞性夾雑物によるものではなく、ペプチド自体によることも示された。
【0159】
Laz及びアズリンにより誘導された細胞死の考え得る機序を識別するために、明白な全体的形態変化を蛍光顕微鏡で探した。最終的に細胞死に結び付くことになるプロセスである細胞壊死、アポトーシス、及び細胞分化の識別を支援する可能性がある変化を探した。肉芽形成又は細胞肥大等の変化は、急性骨髄性及び慢性骨髄性白血病細胞の両方の場合における、考え得る分化又はネクローシス及び最終的細胞死の指標である。蛍光顕微鏡の結果は、Laz及びアズリンが、10μMの濃度で48時間インキュベーション210した後で、HL60細胞及びK562細胞の細胞分化を誘導することができることを示す(図9)。
【0160】
実施例10.HL60細胞及びK562細胞へのLaz及びアズリンの進入
HL60細胞及びK562細胞に進入するアズリン及びLazの能力を、共焦点顕微鏡及びAlexaFluor568結合赤色蛍光アズリン又はLazを使用して調査した。これら2つのタンパク質は、正常PBMCには進入しないと考えられたが(図10A及びB、パネル1)、Laz及びアズリンは、K562細胞(図10C及びD、パネル1)及びHL60細胞(図10E及びF、パネル1)の両方に著しく進入した。アズリンの進入は、より少ないことが示された(図10D及びF、パネル1)。1.0〜2.5μMのアズリンの細胞毒性レベル(図8C及びD)は、HL60細胞又はK562細胞へのその進入レベルに関連している可能性がある。
【0161】
H8結合アズリン、Azu−H8、及びH8−Azuの進入を調査し、特に1.0〜2.5μM等のより低い濃度では、アズリンと同様か又は多少より高いが、Lazに匹敵する細胞毒性があることが実証された(図8C及びD)。Azu−H8及びH8−Azuは両方とも、アズリンより高レベル、K562細胞へのLazの進入に匹敵するレベルの進入を示し(図10、パネル2)、白血病細胞へのアズリン又はLazの進入を可能にすることにH8エピトープが役割を果たしていることを実証した。
【0162】
実施例11.Lazは、Weelタンパク質レベルを増加させ、リン酸化AKTを減少させることにより、K562細胞において細胞周期停止を引き起こす
細胞周期進行に対するLaz、アズリン、及び/又は5−アザ−2−デオキシシチジン(DAC)の効果を、K562細胞のフローサイトメトリー分析を使用して評価し、K562細胞は非常に感受性であると考えられた。K562の細胞周期停止に対するLaz、アズリン、及びDACの効果を観察した(図11)。Laz、アズリン、及びDACは、G2/M期でK562細胞を停止することができる。G2/M期での細胞周期停止は、アズリン及びLazで観察されたように、アポトーシス及び細胞死の誘導に結び付くことが多い。Laz及びアズリン等のタンパク質が、白血病細胞のG2細胞周期調節因子のレベル及び/又は活性に影響を及ぼすことができるというのは考え得ることである。
【0163】
Weel及びリン酸化AKTを含む、G2期進行停止を媒介する細胞周期調節因子に対するLazの効果を分析した。Weelタンパク質は、G2/M期での細胞周期停止のメディエーターであることが知られている。多くのウイルスタンパク質が、in vivoで、Weelと相互作用しWeel活性に影響を及ぼすことにより、細胞周期をG2期で停止させることができることが示されている。10μM LazによるK562細胞の処理は、Weelがそこでその効果を発揮することが知られている細胞質及び核の両方で、Weelタンパク質レベルの増加に結び付いた(図12)。K562細胞とは対照的に、HL60細胞は、Weelタンパク質のレベルが著しく低減されたことを示した。セリン473でのAKTリン酸化の阻害、及び従ってAKT活性は、G2/M細胞周期停止にも関連している。Laz処理は、リン酸化AKTセリン473レベルの減少により明らかなように、HL60細胞におけるAKT活性の著しい減少にも結び付いた(図12)。興味深いことには、AKT−P−Ser473レベルの減少は、K562細胞よりHL60細胞でより顕著であり、Lazによる核Weelタンパク質レベルの変化は、K562細胞でより顕著だった。
【0164】
実施例12.Pa−CARD、抗癌性細菌タンパク質は、白血病細胞に対する活性を示す。
M.アルギニニADIは、G1/S期での増殖停止を引き起こし、アポトーシスに導くことにより、培養ヒトリンパ白血病細胞の増殖を阻害することが報告されている。Gong Hら、Leukemia 14巻:826〜9頁(2000年)。ADIは、アルギニンを枯渇させ、アルギニンをシトルリン及びアンモニアに変換することにより、その作用を発揮すると考えられている。哺乳類細胞は、シトルリンからアルギニンを再合成することができるため、アルギニンは、非必須アミノ酸である。しかしながら、肝細胞癌、メラノーマ、又は腎細胞癌等のある種の癌は、シトルリンからのアルギニン合成に重要な酵素であるアルギニノスクシネートシンテターゼをin vivoで発現せず、そのため、そのような癌細胞は、ADI作用によるアルギニン欠乏に対して感受性となることが特徴である。
【0165】
M.アルギニニADIの興味深い特徴は、哺乳類CARDタンパク質に対する、そのN末端部分の識別可能な構造的類似性である。真核生物、主に哺乳類のCARDタンパク質は、タンパク質間相互作用モチーフであるカスパーゼ動員ドメインと呼ばれるドメインを保有する。CARD保有タンパク質にCARDドメインが存在することは、CARD間相互作用により複合体の形成を可能にし、NF−kβにより媒介される細胞シグナル伝達又は細胞死に結び付くプロセスの活性化/阻害に結び付く。カスパーゼ等のCARD保有タンパク質は、アポトーシスの誘導に関与するだけでなく、炎症性サイトカイン産生にも関与する。従って、カスパーゼ1等のカスパーゼは、IL−1B等のサイトカインのタンパク質分解プロセシングに関与し、それが活性化形態で細胞から放出されることを可能にする。IL−1Bは、血管新生を促進し、多くの腫瘍で過剰産生されるため、カスパーゼ1等のCARD保有タンパク質は、抗癌剤としての阻害剤開発の主要な標的であるとみなされる。
【0166】
それぞれMa−ADI及びPa−ADIと呼ばれるM.アルギニニ及びP.エルギノーサに由来するADIの遺伝子配列及び結晶構造は公知であり、約27%の配列同一性を示し、N−末端に共通CARDモチーフが存在する(図13A)。ADIは、ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)及びアルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)等の他のファミリーメンバーに類似した、グアニジウム炭素原子での求核置換反応を触媒する能力を有するグアニジン修飾酵素(GME)スーパーファミリーのメンバーである。しかしながら、GMEスーパーファミリーメンバーの構造特徴をアラインメントすることにより、CARDモチーフはADIにのみ存在し、他のメンバーには存在しないことが示され(図13A)、ADIによるCARDドメインの動員を示し、それに結合する抗癌剤としてのその潜在的役割を示唆する。
【0167】
CARD(アミノ酸75〜225)の構造的特徴を有するP.エルギノーサADI由来の領域を、プラスミドpET−SUMOに由来するSUMO部分と共にインフレームでクローニングして、SUMO−CARD融合タンパク質を得た。この融合タンパク質を、Ni−NTAカラムを使用して精製し、CARDポリペプチドを、均質な17kDaタンパク質として単離した(図13B)。その後、P.エルギノーサADIのN末端CARDドメイン、並びにP.エルギノーサに由来するADI(Pa−ADI、46kDa、図13B)に由来するため、Pa−CARDと呼ばれるこのタンパク質の活性を、固形腫瘍細胞系、線維肉腫HT−1080、乳癌MCF−7、及び白血病細胞系HL−60を使用して決定した。
【0168】
Pa−CARDは、HT−1080、MCF−7、及び白血病HL60、並びに他の癌に対する著しい細胞毒性活性を示したが(図13C)、正常線維芽細胞及びMCF−10A等の正常乳腺細胞に対する細胞毒性活性はより低かった(データ非表示)。M.アルギニニADIは、細胞周期停止を誘導することによりヒト白血病細胞増殖を阻害することが報告されているため、Pa−CARDが癌細胞の細胞周期停止を誘導する能力も測定した。Laz及びアズリンについて以前に報告したように(図11)、Pa−CARDは、細胞周期の著しい停止を示した(データ非表示)。Lazと同様に、Pa−CARDは、K562細胞の核画分のWeelタンパク質レベルを増強したが、HL60細胞ではそのような活性を示さなかった(図12)。しかしながら、HL60細胞の核画分、並びにK562及びHL60細胞の細胞質画分では、AKT−P−S473レベルは、Pa−CARDにより著しく低減され(図12)、Pa−CARDによるHL60細胞の細胞周期停止の主要機序は、AKTの473位セリンのリン酸化の低減により媒介される可能性があり、その一方でK562細胞では、そのような効果は、細胞質AKTの473位セリンのリン酸化もある程度は影響されるが、核Weelタンパク質レベルの増強により主に媒介されることを示唆した。Lazは、そのような効果(K562での核Weelの増強、及びHL60細胞での細胞質AKT−S473枯渇)を媒介する際にPa−CARDを模倣し、共通の作用機序を示唆する。
【0169】
実施例13.卵巣癌研究用の物質及び方法
化学薬品、試薬、及び細胞培養:MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)及びヨウ化プロピジウムは、Sigma社から購入した。予め染色されたゲルは、Biorad社から得た。pET SUMOキット及びSUMOプロテアーゼは、Invitrogen社から購入した。ヒト癌及び正常細胞系SK−OV3、HOSE6−3、MCF−7、及びHT1080細胞は全て、イリノイ大学シカゴ校(UIC)外科腫瘍学科、シカゴの保存培養コレクションに由来する。細胞を、2mM L−グルタミン、0.1mM MEM必須アミノ酸を含有するイーグル塩を有し、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンで補完されたMEM中で培養した。細胞は全て、5%CO、37℃で増殖した。
【0170】
タンパク質のクローニング、発現、及び精製:本明細書の実施例8に記載のように実施した。
【0171】
MTT−細胞毒性アッセイ:3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル−2,5−ジフェニル)テトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを、実施例8に記載のように実施して、癌細胞に対する細胞毒性を決定した。
【0172】
カスパーゼ−3/7活性アッセイ:試験は、Yamada,T.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2002年、99巻、14098〜14103頁に記載のように、カスパーゼ−Glo3/7(Promega社製)試薬を使用して、96ウエルプレートで実施した。
【0173】
フローサイトメトリーによる細胞周期停止:SKOV3細胞を、1ウエル当たり10個の細胞の1ウエル当たり2mlの容積で6ウエルプレートに播種した。細胞ペレット(>1×10個の細胞)を回収し、1mLの70%エタノールで60分間4℃にて固定し、1mLのPBSで洗浄し、0.5mgのRNAseA(Sigma社製)を含有する400□LのPBSに再懸濁した。穏やかに混合した後、100μL等量のヨウ化プロピジウム(1g/L PBS)(Sigma社製)を添加した。細胞を、暗所で15分間室温にてインキュベートし、その後フローサイトメトリー分析するために、4℃にて暗所で保管した。各試料について、少なくとも1×10個の細胞を、Becton−Dickinson社製FACS Caliburフローサイトメーターを使用して、DNA含有量を分析した。サブG1、G1、S、及びG2−M期にある細胞の分布を、Multi Cycle AVソフトウェアを使用して決定した。
【0174】
TLR経路及びNF−kBシグナル伝達遺伝子のマイクロアレイ:SKOV3細胞(1ウエル当たり2mlの容積で1ウエル当たり100,000個の細胞)を、6ウエルプレートに播種した。タンパク質により処理した後、細胞を溶解緩衝液で回収した。トール様受容体遺伝子及びNF−kBシグナル伝達遺伝子用のマイクロアレイにするために、試料をSuperarray Biosciences社に送付した。
【0175】
TUNELアッセイ:この技術は、Yamada,T.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2002年、99巻、14098〜14103頁に記載されているように、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを使用して、DNA断片の3’末端にフルオレセイン−dUTPを酵素的に組み込むことにより、断片化DNAを含有する核を特定する。
【0176】
実施例14.ADIは推定CARD様ドメインを有する
二次構造比較は、Pa−ADIとMa−ADIとの間に27%の配列同一性があることを示した。MolMolプログラム及びVASTアルゴリズムを使用して、構造アラインメントすることにより、Pa−ADI及びMa−ADIの推定CARD様ドメイン及び触媒ドメインの両方の存在が明らかに示されている(図14A及びB)。Pa−ADI及びMa−ADIは両方とも、ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)及びアルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)タンパク質がそのメンバーであるグアニジン修飾酵素スーパーファミリーの全てのタンパク質に存在する特徴的な5つのββαβサブユニットを有する(図14B)。しかしながら、DDAH及びAGATとは異なり、Pa−ADI及びMa−ADIは両方とも、第1と第2のββαβサブドメインとの間に正確に挿入され、典型的な「Clip−on−fan」部分を生じさせる特有な85残基の5アルファヘリックス束ドメインを有する(図14B及び14C)。哺乳類CARD含有タンパク質に対して構造類似性を示すのは、この領域である。CARD様ドメインは、Pa−ADI及びMa−ADIにのみ存在するが、他のメンバーには存在しないため(図14B)、ファミリーの他のメンバーによっては動員されないが、ADIによるCARDドメインの動員が、ADIにその特有な抗癌性特性を与えている可能性が高い。
【0177】
実施例15.Pa−CARDは抗癌性活性を示す
CARD含有哺乳類タンパク質は、ヘリカーゼ、キナーゼ、及びカスパーゼ活性等の多様な機能を有する。CARDドメイン自体は、CARD間相互作用により、より大きなタンパク質複合体の形成を媒介することに以外には、いかなる他の活性も知られていない。細菌が、その生存及び増殖の供給源として身体内部で同じ栄養素を癌細胞と競争すると仮定すると、細菌が哺乳類供給源からCARDドメインを獲得して、癌増殖を妨害すると推定することは可能である。この仮説を試験するために、Pa−ADI由来の疎水性ポケットを有する推定CARDドメイン(アミノ酸75〜225)をクローニング及び精製し、抗癌剤としてのその機能並びにあらゆる考え得るADI様活性を調査した。アミノ酸75〜225を包含するPa−ADI並びに全長ADIタンパク質の遺伝子配列を、実施例8に記載されているように、プラスミドpET−SUMO(Invitrogen社製)由来のSUMO部分と共にインフレームでクローニングして、SUMOCARD融合体及びSUMO−ADIタンパク質を得た。これら組換えタンパク質を、Ni−NTAカラムを使用して単一ステップで精製し、その後SUMOプロテアーゼで切断した。これら2つの細菌タンパク質の均質性及びSDS−PAGE泳動パターンは、図15Aに示されている。予想した通り、精製Pa−ADIは、Mw46kDaの単一バンドとして泳動したが、Pa−CARDは、17kDaタンパク質として泳動した。
【0178】
次に、これら2つのタンパク質のアルギニンデイミナーゼ活性を決定した。予想した通り、Pa−ADIは、強力な酵素活性を示したが、Pa−ADIの触媒トライアドの重要なアミノ酸Cys−406及びHis−278は、Pa−CARDでは欠失しているため、Pa−CARDは、そのような活性を示さなかった(図15B)。そのような活性の存在は、Pa−ADI又はPa−CARDでは評価されていないが、M.アルギニニADI(Ma−ADI)は、抗癌活性を有することが知られている。Pa−ADI及びPa−CARDの増殖阻害活性を、線維肉腫HT−1080、乳癌MCF−7、及び卵巣癌SKOV−3等の一連のヒト癌細胞に対して調査した(図16A)。Pa−ADI及びPa−CARDは両方とも、全ての癌細胞タイプに対して著しい阻害活性を示した。最も興味深いことには、Pa−CARDは、これら癌細胞に対してPa−ADIより高い増殖阻害活性を示した(図16A)。Pa−ADI及びPa−CARDは、卵巣癌SKOV−3細胞に対して多少より高い活性を示したため、種々の濃度のPa−CARD(図16B)及びPa−ADI(図16C)の細胞毒性を、これら細胞と共にインキュベーションした時間の関数として決定した。細胞毒性活性は24時間のインキュベーション中に明らかだったが、活性は、48時間のインキュベーション中に、より高い濃度(10〜20μM)で著しく上昇した。同様に、Pa−CARDは、Pa−ADIと比較して、濃度及び時間依存的様式でより高い細胞毒性を示した。
【0179】
実施例16.Pa−CARDは、正常細胞に対して阻害効果をほとんど示さない
卵巣癌SKOV−3及び正常卵巣HOSE6−3細胞の両方に対する、20μM濃度でのPa−ADI及びPa−CARDの細胞毒性を調査した。アズリンは、一連の癌に対して抗癌活性を示すが、正常細胞には進入することができず、そのような細胞に対する細胞毒性をほとんど示さないため、これら研究では、20μMのアズリンを対照として添加した。公知の抗癌剤「シスプラチン」(cis−ジアンミンジクロロ白金(II);CDDP)を、陽性対照として使用した。HOSE6−3正常卵巣及びSKOV−3卵巣癌細胞に対するこれら作用剤の細胞毒性活性は、図17Aに示されている。Pa−ADI及びPa−CARDは両方とも、SKOV−3対して著しい細胞毒性活性を示すが、正常卵巣細胞に対しては細胞毒性をほとんど示さなかった。アズリンは、同様の細胞死特性も示した。Pa−CARD及びアズリンは両方とも、正常HOSE6−3細胞に対して、一般的に使用されている薬物であるシスプラチンより低い細胞毒性を示した。更に、Pa−CARD及びシスプラチンで処理されたSKOV−3細胞は、個々に処理された場合と比較して、多少より高い細胞毒性効果を示し(図17B)、ある程度の相加効果を示す。
【0180】
実施例17.Pa−CARDは、カスパーゼ活性化により癌細胞のアポトーシスを誘導する
Pa−CARDにより誘導される細胞死の性質を決定するため、並びにアズリン及びLaz等の他の細菌タンパク質が、カスパーゼ活性化により癌細胞のアポトーシスを誘導することが知られているため、卵巣癌SKOV−3及び正常卵巣HOSE6−3細胞の両方におけるPa−CARD、Pa−ADI、及びアズリンによるアポトーシスの誘導の程度を、in situ細胞死検出フルオレセインキット(Roche社製)を使用したTUNELアッセイにより決定した。SKOV−3又はHOSE6−3細胞をDNaseIで処理すると、本質的に全ての細胞が、緑色蛍光を発した(陽性対照、図18)。SKOV−3細胞及びHOSE6−3細胞の両方を、10μMのPa−CARD、Pa−ADI、及びアズリンで処理すると、アポトーシスは、明らかにSKOV−3細胞で選択的に増強された。また、SKOV−3細胞をPa−CARDで処理すると、Pa−ADI及びアズリンと比較して、最も高いパーセントのアポトーシスが観察された。アポトーシス細胞は、接着特性を損なう傾向があるため、アポトーシス細胞のパーセントがより高いスライドに見られる細胞はより少数である(図18)。HOSE6−3細胞は、少数の細胞が全ての条件下で緑色蛍光を示したに過ぎず(図18)、Pa−CARDは、主に癌細胞でアポトーシス性細胞死を誘導するが、正常細胞では誘導しないことを確認した。ウシ血清アルブミン(BSA)による処理又は無タンパク質処理(対照)は、視野の中に緑色蛍光を発する細胞がほとんどなく、多くが青色(非アポトーシス細胞)だったことを示し(図18、最下部行)、Pa−CARD、Pa−ADI、又はアズリンにより処理されない限り、癌又は正常細胞は、自発的にそれほどアポトーシスを起こさないことを示した。
【0181】
Pa−CARDが、カスパーゼ3活性化により、正常卵巣細胞ではなく卵巣癌細胞で細胞死を誘導するかどうかを決定するために、SKOV−3及びHOSE6−3細胞でのカスパーゼ3/カスパーゼ7のレベルを、Pa−ADI、Pa−CARD、シスプラチン、及びアズリンの非存在下又は存在下で測定した。カスパーゼ酵素活性を、カスパーゼ−GloTM3/7アッセイキット(Promega社製)で決定した。Pa−ADI及びPa−CARDを、2つの異なる濃度、10及び20μMで使用した。Pa−ADI及びPa−CARDは両方とも、用量依存的な様式でカスパーゼ3/7活性化を誘導したが、卵巣癌SKOV−3細胞においてのみだった。正常卵巣細胞HOSE6−3では、活性化はほとんど見られなかった(図19)。
【0182】
実施例18.Pa−CARDは、G2/M期で細胞周期を阻害する
マイコプラズマ・アルギニニADI(Ma−ADI)は、肝細胞癌の増殖を阻害し、白血病細胞の細胞周期停止及びアポトーシスを誘導することが以前に示されている。肝癌、白血病、及び他の癌での誘導を含む、カスパーゼ活性化によるアポトーシスの誘導は、G2/M期での細胞周期停止により媒介されることが多いことが知られている。
【0183】
Pa−ADI及びPa−CARDで処理された癌細胞、又は処理されなかった癌細胞での、G1、S、及びG2期のレベルを調査した。SKOV−3細胞を、10μM濃度で24時間Pa−ADIで処理した場合、G1期の細胞は、86.0%から69.1%に低下したが、S及びG2期の細胞は、それぞれ7.9から19.7に、及び6.1から11.2%に上昇した。しかしながら、同様の条件下でのPa−CARDによる処理は、G1期レベルの細胞を86.0から19.1%に低減させたが、細胞のS及びG2期は、それぞれ7.9から43.5%に、及び6.1から37.4%に上昇し(データ非表示)、Pa−CARDが、G2/M期で細胞周期を著しく阻害したことを明らかに示した。
【0184】
実施例19.Pa−CARDは、NF−kBシグナル経路遺伝子の発現を調節する
SKOV−3細胞におけるPa−CARDの効果を、NF−kBシグナル経路に関与する幾つかの遺伝子の発現を測定することにより調査した。目的は、Pa−CARDタンパク質による処理後に、SKOV−3細胞の運命の決定に重大な役割を果たす可能性がある遺伝子候補を特定することだった。この研究の場合、SKOV−3細胞を、各々10μMのPa−CARD及びアズリンと共に48時間インキュベートし、対照はいかなる処理もせずにインキュベートした。全RNAを単離して、定量的リアルタイムPCRマイクロアレイを実施した。ハウスキーピング遺伝子の発現で正規化することにより、制御の倍数を計算した。対照レベルの2倍を超えた変化だけが報告されている。
【0185】
遺伝子の発現プロファイルにおける顕著な観察は、SKOV−3細胞を、Pa−CARDで処理した場合、アズリンと比べて、トール様受容体(TLR)を含むNF−kB経路のほとんどの遺伝子が全体的に上方制御されたことだった(表3)。これは、SKOV−3細胞でのPa−CARD−哺乳類CARD相互作用によるものである。哺乳類CARD保有タンパク質は、NF−kBシグナル伝達経路を調節することが知られており、Pa−CARDとのあらゆる相互作用は、そのような遺伝子発現特性を観察されたように変更する可能性が高い。その一方で、アズリンは、NF−kB経路の調節によるのではなく、p53と受容体チロシンキナーゼとのタンパク質間相互作用により癌細胞増殖を阻害することが知られている。従って、これら2つの細菌抗癌性タンパク質は、2つの異なる作用機序を有する。
【0186】
SKOV−3細胞におけるPa−CARDによる遺伝子の最も著しい上方制御には、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)としても知られているコロニー刺激因子CSF2をコードする遺伝子の発現が55倍増加することが伴う。IL−12遺伝子の発現も、そのような条件下で約3倍刺激される(表3)。ウエスタンブロッティングデータ(非表示)により、そのような条件下でGM−CSFが過剰産生(約5倍)されることが確認された。そのレベルは、55倍増加よりは低かったが、それは、GM−CSFが、細胞から出て行く分泌可能なタンパク質であるためと推定される。その発現がPa−CARD処理中に上方制御される他のサイトカインは、IL−2、IL−8、IL−10、IL−1アルファ、及びIL−1ベータである(表3)。
【0187】
表3.リアルタイムPCRマイクロアレイを使用した、トール様受容体(TLR)及びNF−kB経路遺伝子のmRNAレベルの測定:SKOV−3細胞を、各々10μMのCARD及びアズリンと共に48時間インキュベートした。対照として、SKOV−3細胞の1つの試料を、未処理のままにしておいた。インキュベーションした後、細胞を回収し、全RNAを抽出した。試料は、リアルタイムPCRマイクロアレイ分析(Superarray Bioscience社製)を使用して分析した。結果は、ハウスキーピング遺伝子に対して正規化した。太字の数値は、未治療対照試料と比べた上方制御を示し、星印()が付いている数字は下方制御を示す。発現の減少は、マイナス記号で示されている。
【0188】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
カスパーゼ動員(CARD)様ドメインを含む、癌細胞を死滅させることが可能な単離ペプチド。
【請求項2】
細菌に由来する、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項3】
前記細菌が、シュードモナス・エルギノーサである、請求項2に記載の単離ペプチド。
【請求項4】
Pa−CARDである、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項5】
配列番号27を含む、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項6】
配列番号27からなる、請求項5に記載の単離ペプチド。
【請求項7】
前記癌が、白血病、卵巣癌、線維肉腫、及び乳癌からなる群から選択される、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項8】
化学的に修飾されて、その血中半減期が延長又は最適化されている、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項9】
前記細胞を、請求項1に記載の単離ペプチド、Laz、H8−Azu、及びAzu−H8からなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と接触させることにより癌細胞を死滅させることを含む方法。
【請求項10】
前記癌細胞が、白血病細胞、線維肉腫細胞、卵巣癌細胞、及び乳癌細胞からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌細胞を死滅させることが可能な1つ又は複数の細胞毒性剤と前記細胞を接触させることも含む、請求項9に記載の単離ペプチド。
【請求項12】
前記1つ又は複数の細胞毒性剤が、シスプラチン、Gleevec(登録商標)、レチノイン酸、5’−アザ−2’−デオキシシチジン、及び三酸化ヒ素からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の細胞毒性剤が、シスプラチンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌細胞を、前記1つ又は複数のタンパク質とほぼ同時に、前記1つ又は複数の細胞毒性剤と接触させる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
癌を罹患している哺乳類患者に、請求項1に記載の単離ペプチド、Laz、H8−Azu、及びAzu−H8からなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質を投与することを含む方法。
【請求項16】
前記癌が、白血病、線維肉腫、卵巣癌、及び乳癌からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者に、癌細胞を死滅させることが可能な1つ又は複数の細胞毒性剤を投与することも含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数の細胞毒性剤が、シスプラチン、Gleevec(登録商標)、レチノイン酸、5’−アザ−2’−デオキシシチジン、及び三酸化ヒ素からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数の細胞毒性剤が、シスプラチンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ又は複数の細胞毒性剤が、前記1つ又は複数のタンパク質とほぼ同時に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞を、アズリン及びLazのH.8領域を含むペプチドと接触させることにより白血病細胞を死滅させることを含む方法。
【請求項22】
前記白血病細胞に、前記アズリン及び前記LazのH.8領域を含むペプチドを同時に又はほぼ同時に接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
白血病を罹患している哺乳類患者に、アズリン及びLazのH.8領域を含むペプチドを投与することを含む方法。
【請求項24】
前記患者に、前記アズリン及び前記LazのH.8領域を含むペプチドを同時に又はほぼ同時に接触させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
Laz、アズリン、H.8−Azu、Azu−H.8、及び請求項1に記載の単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と白血病細胞を接触させることにより、前記白血病細胞の細胞分化を誘導することを含む方法。
【請求項26】
Laz、アズリン、H.8−Azu、Azu−H.8、及び請求項1に記載の単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と癌細胞を接触させることにより、前記癌細胞に選択的に進入することを含み、前記癌細胞が、白血病細胞及び卵巣癌細胞からなる群から選択される方法。
【請求項27】
Laz、アズリン、H.8−Azu、Azu−H.8、及び請求項1に記載の単離ペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質と癌細胞を接触させることにより、前記癌細胞の細胞周期停止を誘導することを含む方法。
【請求項28】
前記癌細胞が、白血病細胞、線維肉腫細胞、乳癌細胞、及び卵巣癌細胞からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質が、前記細胞のWeelタンパク質レベルを増加させる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質が、リン酸化AKT−Ser−473の枯渇を引き起こす、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質が、前記細胞のWeelタンパク質レベルを増加させ、且つリン酸化AKT−Ser−473の枯渇を引き起こす、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
癌細胞を請求項1に記載のペプチドと接触させることによるカスパーゼ3活性化により、前記癌細胞のアポトーシスを誘導することを含む方法。
【請求項33】
前記癌細胞が、卵巣癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
癌細胞を請求項1に記載のペプチドと接触させることにより、前記癌細胞のNF−kBシグナル伝達経路遺伝子の発現を調節すること含む方法。
【請求項35】
前記癌細胞が、卵巣癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の単離ペプチドをコードする発現ベクター。
【請求項37】
請求項4に記載の単離ペプチドをコードする、請求項36に記載の発現ベクター。
【請求項38】
請求項1に記載の単離ペプチドを含む医薬組成物。
【請求項39】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
アズリン、Laz、H.8−Azu、及びAzu−H.8からなる群から選択されるタンパク質を更に含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
癌細胞を死滅させることが可能な1つ又は複数の細胞毒性剤を更に含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記薬学的に許容される担体が、静脈注射に適切である、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項43】
白血病を罹患している患者に、請求項38に記載の医薬組成物を治療上有効量で投与することを含む方法。
【請求項44】
前記医薬組成物が、静脈内、局所的、皮下、筋肉内、経口、及び腫瘍内からなる群から選択される様式で前記患者に投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項38に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項46】
請求項1に記載の単離ペプチドをコードする核酸分子。
【請求項47】
請求項4に記載の単離ペプチドをコードする核酸分子。


【図1】
image rotate

image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2012−518417(P2012−518417A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551270(P2011−551270)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/024904
【国際公開番号】WO2010/096754
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(511148754)シーディージー セラピューティクス,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】