PC緊張材の上端部処理方法
【課題】PC緊張材の上端部処理方法に関し、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できる方法を提供する。
【解決手段】ポストテンション方式で施工された縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部101近傍の縦シース20内にグラウト30を充填するにあたり、コンクリート40外面から縦シース20内に連通するグラウト注入部41と、グラウト注入部41より下方にコンクリート40外面から縦シース20内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部43とを設け、発砲ポリウレタン樹脂注入部43を通って縦シース20内に発砲ポリウレタン樹脂50を注入し、その後、グラウト注入部41を通って縦シース20内にグラウト30を注入する。
【解決手段】ポストテンション方式で施工された縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部101近傍の縦シース20内にグラウト30を充填するにあたり、コンクリート40外面から縦シース20内に連通するグラウト注入部41と、グラウト注入部41より下方にコンクリート40外面から縦シース20内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部43とを設け、発砲ポリウレタン樹脂注入部43を通って縦シース20内に発砲ポリウレタン樹脂50を注入し、その後、グラウト注入部41を通って縦シース20内にグラウト30を注入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC緊張材の上端部処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、煙突、タワーに代表される塔状構築物やタンクや建築構築物などといった高さの高いコンクリート構築物では、コンクリート構築物内に予め縦シースを設け、この縦シース内に配置するPC緊張材として、単線のPC鋼より線やPC鋼より線を複数本束ねた大容量ケーブルであるPC鋼より線束を用いることが増えてきた。
【0003】
ここで、コンクリート構築物に要求される性能によっては、所謂アンボンド構造とすることが合理的である場合も多い。この場合、縦シース内に配置されたPC緊張材は、定着部近傍が定着のために防錆材保護被覆されておらず、その防錆材保護被覆されていない定着部近傍の縦シース内にのみ、主に防錆のためにグラウトを充填することが好ましい。
【0004】
しかし、グラウトは流動性を有するものであるため、縦シース内にグラウトを充填するためには、縦シース下端部よりグラウトを注入して縦シース上端部まで縦シース全長に渡って充填する必要がある。従って、PC緊張材がアンボンドケーブルの場合であっても、グラウト充填の必要がない防錆材保護被覆されている中間部の縦シース内にまでグラウトが充填されてしまうこととなり、特にPC緊張材が長尺である場合には著しい無駄が生じていた。
【0005】
従来、シース内へのグラウトの充填に関し、ポストテンション方式かつ外ケーブル方式でPC緊張材を配設する橋梁構造において、シースが配設された外ケーブルの定着部背面のみに真空ポンプを併用してシース内にグラウトを注入する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、グラウト止めスペーサにてグラウト流出防止を図るものの、完全には防止できないので、発泡ウレタンを注入している。
【0006】
また、アースアンカーの自由長部をシース材で覆い、シース材内に発泡ウレタン等の発泡止水剤を注入し、シース材内で発泡させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−353241号公報
【特許文献2】特公昭61−229020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、縦シース内にグラウトを充填するためには、縦シース下端部よりグラウトを注入して縦シース上端部まで縦シース全長に渡って充填する必要があるため、PC緊張材がアンボンドケーブルの場合であっても、グラウト充填の必要がない防錆材保護被覆されている中間部の縦シース内にまでグラウトが充填されてしまうこととなる。このようなPC緊張材では、定着部近傍の縦シース内にのみグラウトを充填できれば、少量の材料および仮設設備または施工のための設備で済むところも、縦シース全長に渡ってグラウトを充填せざるを得ないことから、それらが多量に必要となり、工期が長くかかりコスト増の要因となっていた。また、グラウトを縦シースの下部から上部へ向けて注入するには注入高さの限界があるため、特に超高コンクリート構築物に設けられた縦シース内にグラウトを充填する場合、注入作業を数回に分けて行う必要があり、そのための足場等も必要となることも工期やコスト増大の要因となっていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できるPC緊張材の上端部処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、PC緊張材の上端部近傍の縦シース内にグラウトを充填するにあたり、コンクリート外面から上記縦シース内に連通するグラウト注入部と、そのグラウト注入部より下方にそのコンクリート外面から上記縦シース内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部とを設け、その発砲ポリウレタン樹脂注入部を通って上記縦シース内に発砲ポリウレタン樹脂を注入し、その後、上記グラウト注入部を通って上記縦シース内にグラウトを注入することを特徴とする。
【0011】
本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、グラウト注入部より下方に設けられた発砲ポリウレタン樹脂注入部を通って縦シース内に発砲ポリウレタン樹脂を注入し、その後、グラウト注入部を通って縦シース内にグラウトを注入する方法である。そのため、縦シース内に充填された発砲ポリウレタン樹脂がグラウトの流下止めとして作用することとなり、PC緊張材の上端部近傍の縦シース内にのみグラウトを充填することができる。従って、本発明のPC緊張材の上端部処理方法によれば、一般的に多量の材料および仮設設備または施工のための設備を必要とするグラウトの注入作業が最小限におさえられ、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できる。
【0012】
ここで、本発明のPC緊張材の上端部処理方法において、上記発砲ポリウレタン樹脂は、熱反応によって迅速発泡硬化する2液発泡ウレタンとし、この2液発泡ウレタンの注入時間により充填量を管理することが好ましい。
【0013】
このような好ましい形態によれば、縦シース内に充填されるグラウトの重量を支持するのに必要十分な量の発砲ポリウレタン樹脂を縦シース内に確実に充填することができる。
【0014】
また、本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、上記PC緊張材が複数の縦方向アンボンドPC緊張材の集合体であって、上記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位のそれら複数の縦方向アンボンドPC緊張材のそれぞれにスペーサリングを嵌挿しておくことも好ましい形態である。
【0015】
このようなスペーサリングを嵌挿しておくと、複数の縦方向アンボンドPC緊張材相互間に発砲ポリウレタン樹脂が入り込む程度の隙間が形成されることとなる。そのため、発砲ポリウレタン樹脂を注入したときに、複数の縦方向アンボンドPC緊張材相互間に発砲ポリウレタン樹脂が行き渡る。従って、発砲ポリウレタン樹脂が縦シース内に確実に充填され、グラウトの流下を確実に防止することができる。特に縦シースが斜めに配置されている場合などは、縦方向アンボンドPC緊張材が偏ることによって相互の隙間がなくなり充填が阻害されるので、スペーサリングを嵌挿しておくことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、上記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の縦シースを、リング状ひだを有する形状としておくことがさらに好ましい。
【0017】
このような好ましい形態によれば、縦シース内に注入した発砲ポリウレタン樹脂が、リング状ひだに沿って縦シース内の充填箇所全体に行き渡りやすい。そのため、発砲ポリウレタン樹脂が縦シース内に確実に充填され、グラウトの流下を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できるPC緊張材の上端部処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である縦方向アンボンドPC緊張材の上端部処理方法における各工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部処理方法における各工程を説明する説明図である。
【0022】
図1に示すように、例えばポリエチレン製の縦シース20が、コンクリート40を縦に貫通して配置されている。この縦シース20内には、縦方向アンボンドPC緊張材100がポストテンション方式で施工されている。これにより、コンクリート40に圧縮力が加えられている。縦方向アンボンドPC緊張材100は、例えばそれぞれが直径15.2mmの7本の縦方向アンボンドPC鋼材10をより合わせた集合体である。また、この縦方向アンボンドPC緊張材100は、上端部101に防錆材保護被覆されていない部分が存在するものである。また、縦方向アンボンドPC鋼材10それぞれの防錆材保護被覆されている部分の直径は例えば約20mmである。また、この縦シース20は、例えば波目が30mmピッチのリング状ひだ21を有する形状とされており、例えば内径が80mm、外径が92mmである。
【0023】
このような縦方向アンボンドPC緊張材100の防錆材保護被覆されていない上端部101近傍の縦シース20内にグラウト30を充填するにあたり、まず、コンクリート40の外面から縦シース20内に連通するグラウト注入部41を設ける。また、グラウト注入部41より上方にグラウト排出部42を設ける。
【0024】
また、グラウト注入部41より下方にコンクリート40の外面から縦シース20内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部43を設ける。また、発砲ポリウレタン樹脂注入部43よりさらに下方に発砲ポリウレタン樹脂予備注入部44を設ける。
【0025】
また、発砲ポリウレタン樹脂50を充填すべき部位の、防錆材保護被覆された7本の縦方向アンボンドPC鋼材10のそれぞれに、例えば厚さが3mm、長さが50mmのスペーサリング60を、例えば上下方向に互いに20mmの間隔をあけて嵌挿しておく。尚、スペーサリング60の嵌挿は、縦方向アンボンドPC緊張材100を縦シース20内に通線した後に一旦上方に引き抜いて嵌挿してもよく、あるいは、縦方向アンボンドPC緊張材100を縦シース20内に通線する前に嵌挿しておいてもよい。このようなスペーサリング60を嵌挿しておくと、7本の縦方向アンボンドPC鋼材10相互間に発砲ポリウレタン樹脂50が入り込む程度の隙間が形成されることとなる。そのため、発砲ポリウレタン樹脂50を注入したときに、7本の縦方向アンボンドPC鋼材10相互間に発砲ポリウレタン樹脂50が行き渡る。従って、発砲ポリウレタン樹脂50が縦シース20内に確実に充填され、グラウト30の流下を確実に防止することができる。
【0026】
次に、発砲ポリウレタン樹脂注入部43を通って縦シース20内に発砲ポリウレタン樹脂50を注入する。尚、何らかの不具合によって発砲ポリウレタン樹脂注入部43から発砲ポリウレタン樹脂50を注入することができなかったときは、発砲ポリウレタン樹脂予備注入部44を通って縦シース20内に発砲ポリウレタン樹脂50を注入する。上述したように、縦シース20はリング状ひだ21を有する形状とされていることから、縦シース20内に注入した発砲ポリウレタン樹脂50が、リング状ひだ21に沿って縦シース20内の充填箇所全体に行き渡りやすい。そのため、発砲ポリウレタン樹脂50が縦シース20内に確実に充填され、グラウト30の流下を確実に防止することができる。
【0027】
ここで、発砲ポリウレタン樹脂50は、例えば30倍の発泡倍率を有する、2液(例えばイソシアネートとポリオール)の熱反応によって迅速発泡硬化する2液発泡ウレタンである。また、シース長800mm以上の隙間に充填する量を5±2秒間に注入する。これにより、縦シース20内に充填されるグラウト30の重量を支持するのに必要十分な量の発砲ポリウレタン樹脂50を縦シース20内に確実に充填することができる。
【0028】
その後、グラウト注入部41を通って縦シース20内にグラウト30を注入する。
【0029】
以上説明した本実施形態の縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部処理方法によれば、縦シース20内に充填された発砲ポリウレタン樹脂50がグラウト30の流下止めとして作用することとなり、ポストテンション方式で施工された縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部101近傍の縦シース20内にのみグラウト30を充填することができる。従って、一般的に多量の材料および仮設設備または施工のための設備を必要とするグラウトの注入作業が最小限におさえられ、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できる。
【0030】
尚、上述した実施例では、本発明にいうPC緊張材が、縦方向アンボンドPC緊張材である例について説明したが、本発明にいうPC緊張材は、これに限られるものではなく、どのようなPC緊張材であってもよい。
【0031】
また、上述した実施例では、本発明にいうPC緊張材が、7本の縦方向アンボンドPC鋼材10をより合わせた集合体である例について説明したが、本発明にいうPC緊張材は、これに限られるものではなく、1本のPC緊張材であってもよく、あるいは、複数の縦方向アンボンドPC緊張材の集合体であってもよい。
【0032】
また、上述した実施例では、本発明にいう縦シースがリング状ひだを有する形状とされている例について説明したが、本発明にいう縦シースは、これに限られるものではなく、リング状ひだを有しない形状であってもよいが、少なくとも発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の縦シースをリング状ひだを有する形状としておくことが好ましい。
【0033】
また、上述した実施例では、本発明にいう2液発泡ウレタンを、シース長800mm以上の隙間に充填する量を5±2秒間に注入する例について説明したが、本発明にいう2液発泡ウレタンは、これに限られるものではなく、2液発泡ウレタンの注入時間により充填量を管理することが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
100 縦方向アンボンドPC緊張材
10 縦方向アンボンドPC鋼材
101 上端部
20 縦シース
21 リング状ひだ
30 グラウト
40 コンクリート
41 グラウト注入部
42 グラウト排出部
43 発砲ポリウレタン樹脂注入部
44 発砲ポリウレタン樹脂予備注入部
50 発砲ポリウレタン樹脂
60 スペーサリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC緊張材の上端部処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、煙突、タワーに代表される塔状構築物やタンクや建築構築物などといった高さの高いコンクリート構築物では、コンクリート構築物内に予め縦シースを設け、この縦シース内に配置するPC緊張材として、単線のPC鋼より線やPC鋼より線を複数本束ねた大容量ケーブルであるPC鋼より線束を用いることが増えてきた。
【0003】
ここで、コンクリート構築物に要求される性能によっては、所謂アンボンド構造とすることが合理的である場合も多い。この場合、縦シース内に配置されたPC緊張材は、定着部近傍が定着のために防錆材保護被覆されておらず、その防錆材保護被覆されていない定着部近傍の縦シース内にのみ、主に防錆のためにグラウトを充填することが好ましい。
【0004】
しかし、グラウトは流動性を有するものであるため、縦シース内にグラウトを充填するためには、縦シース下端部よりグラウトを注入して縦シース上端部まで縦シース全長に渡って充填する必要がある。従って、PC緊張材がアンボンドケーブルの場合であっても、グラウト充填の必要がない防錆材保護被覆されている中間部の縦シース内にまでグラウトが充填されてしまうこととなり、特にPC緊張材が長尺である場合には著しい無駄が生じていた。
【0005】
従来、シース内へのグラウトの充填に関し、ポストテンション方式かつ外ケーブル方式でPC緊張材を配設する橋梁構造において、シースが配設された外ケーブルの定着部背面のみに真空ポンプを併用してシース内にグラウトを注入する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、グラウト止めスペーサにてグラウト流出防止を図るものの、完全には防止できないので、発泡ウレタンを注入している。
【0006】
また、アースアンカーの自由長部をシース材で覆い、シース材内に発泡ウレタン等の発泡止水剤を注入し、シース材内で発泡させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−353241号公報
【特許文献2】特公昭61−229020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、縦シース内にグラウトを充填するためには、縦シース下端部よりグラウトを注入して縦シース上端部まで縦シース全長に渡って充填する必要があるため、PC緊張材がアンボンドケーブルの場合であっても、グラウト充填の必要がない防錆材保護被覆されている中間部の縦シース内にまでグラウトが充填されてしまうこととなる。このようなPC緊張材では、定着部近傍の縦シース内にのみグラウトを充填できれば、少量の材料および仮設設備または施工のための設備で済むところも、縦シース全長に渡ってグラウトを充填せざるを得ないことから、それらが多量に必要となり、工期が長くかかりコスト増の要因となっていた。また、グラウトを縦シースの下部から上部へ向けて注入するには注入高さの限界があるため、特に超高コンクリート構築物に設けられた縦シース内にグラウトを充填する場合、注入作業を数回に分けて行う必要があり、そのための足場等も必要となることも工期やコスト増大の要因となっていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できるPC緊張材の上端部処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、PC緊張材の上端部近傍の縦シース内にグラウトを充填するにあたり、コンクリート外面から上記縦シース内に連通するグラウト注入部と、そのグラウト注入部より下方にそのコンクリート外面から上記縦シース内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部とを設け、その発砲ポリウレタン樹脂注入部を通って上記縦シース内に発砲ポリウレタン樹脂を注入し、その後、上記グラウト注入部を通って上記縦シース内にグラウトを注入することを特徴とする。
【0011】
本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、グラウト注入部より下方に設けられた発砲ポリウレタン樹脂注入部を通って縦シース内に発砲ポリウレタン樹脂を注入し、その後、グラウト注入部を通って縦シース内にグラウトを注入する方法である。そのため、縦シース内に充填された発砲ポリウレタン樹脂がグラウトの流下止めとして作用することとなり、PC緊張材の上端部近傍の縦シース内にのみグラウトを充填することができる。従って、本発明のPC緊張材の上端部処理方法によれば、一般的に多量の材料および仮設設備または施工のための設備を必要とするグラウトの注入作業が最小限におさえられ、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できる。
【0012】
ここで、本発明のPC緊張材の上端部処理方法において、上記発砲ポリウレタン樹脂は、熱反応によって迅速発泡硬化する2液発泡ウレタンとし、この2液発泡ウレタンの注入時間により充填量を管理することが好ましい。
【0013】
このような好ましい形態によれば、縦シース内に充填されるグラウトの重量を支持するのに必要十分な量の発砲ポリウレタン樹脂を縦シース内に確実に充填することができる。
【0014】
また、本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、上記PC緊張材が複数の縦方向アンボンドPC緊張材の集合体であって、上記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位のそれら複数の縦方向アンボンドPC緊張材のそれぞれにスペーサリングを嵌挿しておくことも好ましい形態である。
【0015】
このようなスペーサリングを嵌挿しておくと、複数の縦方向アンボンドPC緊張材相互間に発砲ポリウレタン樹脂が入り込む程度の隙間が形成されることとなる。そのため、発砲ポリウレタン樹脂を注入したときに、複数の縦方向アンボンドPC緊張材相互間に発砲ポリウレタン樹脂が行き渡る。従って、発砲ポリウレタン樹脂が縦シース内に確実に充填され、グラウトの流下を確実に防止することができる。特に縦シースが斜めに配置されている場合などは、縦方向アンボンドPC緊張材が偏ることによって相互の隙間がなくなり充填が阻害されるので、スペーサリングを嵌挿しておくことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のPC緊張材の上端部処理方法は、上記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の縦シースを、リング状ひだを有する形状としておくことがさらに好ましい。
【0017】
このような好ましい形態によれば、縦シース内に注入した発砲ポリウレタン樹脂が、リング状ひだに沿って縦シース内の充填箇所全体に行き渡りやすい。そのため、発砲ポリウレタン樹脂が縦シース内に確実に充填され、グラウトの流下を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できるPC緊張材の上端部処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である縦方向アンボンドPC緊張材の上端部処理方法における各工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部処理方法における各工程を説明する説明図である。
【0022】
図1に示すように、例えばポリエチレン製の縦シース20が、コンクリート40を縦に貫通して配置されている。この縦シース20内には、縦方向アンボンドPC緊張材100がポストテンション方式で施工されている。これにより、コンクリート40に圧縮力が加えられている。縦方向アンボンドPC緊張材100は、例えばそれぞれが直径15.2mmの7本の縦方向アンボンドPC鋼材10をより合わせた集合体である。また、この縦方向アンボンドPC緊張材100は、上端部101に防錆材保護被覆されていない部分が存在するものである。また、縦方向アンボンドPC鋼材10それぞれの防錆材保護被覆されている部分の直径は例えば約20mmである。また、この縦シース20は、例えば波目が30mmピッチのリング状ひだ21を有する形状とされており、例えば内径が80mm、外径が92mmである。
【0023】
このような縦方向アンボンドPC緊張材100の防錆材保護被覆されていない上端部101近傍の縦シース20内にグラウト30を充填するにあたり、まず、コンクリート40の外面から縦シース20内に連通するグラウト注入部41を設ける。また、グラウト注入部41より上方にグラウト排出部42を設ける。
【0024】
また、グラウト注入部41より下方にコンクリート40の外面から縦シース20内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部43を設ける。また、発砲ポリウレタン樹脂注入部43よりさらに下方に発砲ポリウレタン樹脂予備注入部44を設ける。
【0025】
また、発砲ポリウレタン樹脂50を充填すべき部位の、防錆材保護被覆された7本の縦方向アンボンドPC鋼材10のそれぞれに、例えば厚さが3mm、長さが50mmのスペーサリング60を、例えば上下方向に互いに20mmの間隔をあけて嵌挿しておく。尚、スペーサリング60の嵌挿は、縦方向アンボンドPC緊張材100を縦シース20内に通線した後に一旦上方に引き抜いて嵌挿してもよく、あるいは、縦方向アンボンドPC緊張材100を縦シース20内に通線する前に嵌挿しておいてもよい。このようなスペーサリング60を嵌挿しておくと、7本の縦方向アンボンドPC鋼材10相互間に発砲ポリウレタン樹脂50が入り込む程度の隙間が形成されることとなる。そのため、発砲ポリウレタン樹脂50を注入したときに、7本の縦方向アンボンドPC鋼材10相互間に発砲ポリウレタン樹脂50が行き渡る。従って、発砲ポリウレタン樹脂50が縦シース20内に確実に充填され、グラウト30の流下を確実に防止することができる。
【0026】
次に、発砲ポリウレタン樹脂注入部43を通って縦シース20内に発砲ポリウレタン樹脂50を注入する。尚、何らかの不具合によって発砲ポリウレタン樹脂注入部43から発砲ポリウレタン樹脂50を注入することができなかったときは、発砲ポリウレタン樹脂予備注入部44を通って縦シース20内に発砲ポリウレタン樹脂50を注入する。上述したように、縦シース20はリング状ひだ21を有する形状とされていることから、縦シース20内に注入した発砲ポリウレタン樹脂50が、リング状ひだ21に沿って縦シース20内の充填箇所全体に行き渡りやすい。そのため、発砲ポリウレタン樹脂50が縦シース20内に確実に充填され、グラウト30の流下を確実に防止することができる。
【0027】
ここで、発砲ポリウレタン樹脂50は、例えば30倍の発泡倍率を有する、2液(例えばイソシアネートとポリオール)の熱反応によって迅速発泡硬化する2液発泡ウレタンである。また、シース長800mm以上の隙間に充填する量を5±2秒間に注入する。これにより、縦シース20内に充填されるグラウト30の重量を支持するのに必要十分な量の発砲ポリウレタン樹脂50を縦シース20内に確実に充填することができる。
【0028】
その後、グラウト注入部41を通って縦シース20内にグラウト30を注入する。
【0029】
以上説明した本実施形態の縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部処理方法によれば、縦シース20内に充填された発砲ポリウレタン樹脂50がグラウト30の流下止めとして作用することとなり、ポストテンション方式で施工された縦方向アンボンドPC緊張材100の上端部101近傍の縦シース20内にのみグラウト30を充填することができる。従って、一般的に多量の材料および仮設設備または施工のための設備を必要とするグラウトの注入作業が最小限におさえられ、グラウト充填を短い工期で経済的に施工できる。
【0030】
尚、上述した実施例では、本発明にいうPC緊張材が、縦方向アンボンドPC緊張材である例について説明したが、本発明にいうPC緊張材は、これに限られるものではなく、どのようなPC緊張材であってもよい。
【0031】
また、上述した実施例では、本発明にいうPC緊張材が、7本の縦方向アンボンドPC鋼材10をより合わせた集合体である例について説明したが、本発明にいうPC緊張材は、これに限られるものではなく、1本のPC緊張材であってもよく、あるいは、複数の縦方向アンボンドPC緊張材の集合体であってもよい。
【0032】
また、上述した実施例では、本発明にいう縦シースがリング状ひだを有する形状とされている例について説明したが、本発明にいう縦シースは、これに限られるものではなく、リング状ひだを有しない形状であってもよいが、少なくとも発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の縦シースをリング状ひだを有する形状としておくことが好ましい。
【0033】
また、上述した実施例では、本発明にいう2液発泡ウレタンを、シース長800mm以上の隙間に充填する量を5±2秒間に注入する例について説明したが、本発明にいう2液発泡ウレタンは、これに限られるものではなく、2液発泡ウレタンの注入時間により充填量を管理することが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
100 縦方向アンボンドPC緊張材
10 縦方向アンボンドPC鋼材
101 上端部
20 縦シース
21 リング状ひだ
30 グラウト
40 コンクリート
41 グラウト注入部
42 グラウト排出部
43 発砲ポリウレタン樹脂注入部
44 発砲ポリウレタン樹脂予備注入部
50 発砲ポリウレタン樹脂
60 スペーサリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC緊張材の上端部近傍の縦シース内にグラウトを充填するにあたり、コンクリート外面から前記縦シース内に連通するグラウト注入部と、該グラウト注入部より下方に該コンクリート外面から前記縦シース内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部とを設け、該発砲ポリウレタン樹脂注入部を通って前記縦シース内に発砲ポリウレタン樹脂を注入し、その後、前記グラウト注入部を通って前記縦シース内にグラウトを注入することを特徴とするPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項2】
前記発泡ポリウレタン樹脂は、熱反応によって迅速発泡硬化する2液発泡ウレタンとし、該2液発泡ウレタンの注入時間により充填量を管理することを特徴とする請求項1記載のPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項3】
前記PC緊張材が複数の縦方向アンボンドPC緊張材の集合体であって、前記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の該複数の縦方向アンボンドPC緊張材のそれぞれにスペーサリングを嵌挿しておくことを特徴とする請求項1または2記載のPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項4】
前記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の縦シースを、リング状ひだを有する形状としておくことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載のPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項1】
PC緊張材の上端部近傍の縦シース内にグラウトを充填するにあたり、コンクリート外面から前記縦シース内に連通するグラウト注入部と、該グラウト注入部より下方に該コンクリート外面から前記縦シース内に連通する発砲ポリウレタン樹脂注入部とを設け、該発砲ポリウレタン樹脂注入部を通って前記縦シース内に発砲ポリウレタン樹脂を注入し、その後、前記グラウト注入部を通って前記縦シース内にグラウトを注入することを特徴とするPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項2】
前記発泡ポリウレタン樹脂は、熱反応によって迅速発泡硬化する2液発泡ウレタンとし、該2液発泡ウレタンの注入時間により充填量を管理することを特徴とする請求項1記載のPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項3】
前記PC緊張材が複数の縦方向アンボンドPC緊張材の集合体であって、前記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の該複数の縦方向アンボンドPC緊張材のそれぞれにスペーサリングを嵌挿しておくことを特徴とする請求項1または2記載のPC緊張材の上端部処理方法。
【請求項4】
前記発砲ポリウレタン樹脂を充填すべき部位の縦シースを、リング状ひだを有する形状としておくことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載のPC緊張材の上端部処理方法。
【図1】
【公開番号】特開2011−241632(P2011−241632A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115685(P2010−115685)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】
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