PCR中のハイブリダイゼーションのモニタリング
【課題】ポリメラーゼ・チェーン・リアクション中のハイブリダイゼーションをモニタする方法の提供。
【解決手段】高速熱サイクルと二重鎖DNA染料又は特異性ハイブリダイゼーション・プローブの使用で実現される。蛍光共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5又はCy5.5を含む。増幅DNAを定量し純度を判定するための方法は解離及び徐冷復元曲線の分析により行なわれる。
【解決手段】高速熱サイクルと二重鎖DNA染料又は特異性ハイブリダイゼーション・プローブの使用で実現される。蛍光共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5又はCy5.5を含む。増幅DNAを定量し純度を判定するための方法は解離及び徐冷復元曲線の分析により行なわれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR中のハイブリダイゼーションのモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般にポリメラーゼ連鎖反応に関連したハイブリダイゼーションにより得られる蛍光シグナルを観察することに関する。さらに詳しくは、本発明はPCR実施中および/または直後に蛍光によるハイブリダイゼーションの観察及びこの情報を生成物の同定、配列変化検出及び定量に使用することに関する。
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は分子生物学の基本であり臨床検査的に第1の実用分子技術である。その有用性や一般性にもかかわらず、PCRについての現在の理解は非常に進んでいるとはいえない。増幅が成功するのに充分な条件は試行錯誤によって見つけ出す必要があり最適化は経験に頼っている。当業者であっても工程についての分かり易い又は予測的理論なしで強力な技術を使用する必要がある。
【0004】
PCRはサンプルの熱サイクルによって行なわれ、DNAを変性(分離)し、特定プライマーを付着(アニーリング)し、複製を行なわしめる(伸長)。PCRの1サイクルは一般に2から8分で行なわれ、30サイクルの増幅には1から4時間を必要とする。大抵のPCR装置におけるサンプル温度応答は変性、アニーリング、伸長に必要な時間に比べれば非常に遅い。PCRでの物理的(変性及びアニーリング)及び酵素的(伸長)反応は非常に迅速に起こる。PCRの増幅時間は数時間から15分以内に減少可能である。本明細書において参照に含まれる特許文献1では、このような高速サイクル・システムを開示している。高速サイクル技術は表面積対容積比が大きなサンプル容器たとえば毛細管のサンプルで可能な高速温度応答及び温度均一性によって可能になる(さらに詳しい情報については、非特許文献1の高速サイクルDNA増幅も参照のこと)。温度均一性の改善によりPCRの時間及び温度条件は良く定義され理解されるようになる。温度均一性の改善は増幅中のPCRをモニタするために使用される分析技術の精度も向上させる。
【0005】
蛍光定量法は分子生物学に多くの用途を持つ高感度で汎用の技術である。臭化エチジウムはゲル電気泳動により分離される核酸のサイズ分布を視覚化するために長年の間使用されてきた。通常はゲルを紫外光で透過照射すると二重鎖核酸の赤色蛍光が観察される。さらに詳しくは、臭化エチジウムは増幅が完了した後でPCRの生成物を分析するために共通に使用される。さらに、本明細書で参照に含まれるヒグチ&ワトソンの特許文献2では増幅中に臭化エチジウムを使用して各サイクルで蛍光を測定することによる二重鎖DNAの量をモニタする方法を開示している。蛍光強度は温度に逆比例して上下し、アニーリング/伸長温度(50℃)で最大、また変性温度(94℃)で最低だったと記載された。最大の蛍光は各サイクルでDNA量の尺度として取得された。ヒグチ&ワトソンの出願はハイブリダイゼーション発生をモニタするために蛍光を使用することを教示しておらず、ハイブリダイゼーションの範囲を追跡するため異なる温度での蛍光を観察することも示唆していない。さらに、ヒグチ&ワトソンはPCR生成物の同定又は定量のためにPCR生成物ハイブリダイゼーションの温度依存性を使用することも教示又は示唆し得なかった。
【0006】
しかしヒグチ&ワトソン出願は、ゲルファンドらへの特許文献4に開示されているように、ある種のDNAポリメラーゼの5’エクソヌクレアーゼ活性で加水分解される場合に蛍光を発生する二重標識プローブ・システムを含む他の蛍光を使用する方法を記述している。これらのプローブから観察される蛍光は主として二つの蛍光物質の間でプローブの加水分解に依存する。PCR生成物の量は各サイクル毎に1回蛍光を測定することで推定される。これらのプローブのハイブリダイゼーションは加水分解が発生する必要があるように見えるが、蛍光シグナルは主としてプローブの加水分解から得られるもので、ハイブリダイゼーションによるものではなく、対向する端部に蛍光染料を付けたオリゴヌクレオチド・プローブはPCR生成物と核酸ハイブリダイゼーションを検出するために有用な消光プローブ・システムを提供する(例えば、非特許文献2参照)。蛍光でプローブハイブリダイゼーションの温度依存に追従しPCR生成物の配列変化を同定することにはなんの示唆もされていない。
【0007】
同定のための相補鎖に対する核酸の特異的ハイブリダイゼーションは多くの異なるフォーマットで開発されてきた。たとえば、制限酵素による消化の後で、ゲノムDNAをサイズによって分離し、サザンブロッティングによりプローブとハイブリダイズさせることができる。別の例として、単一の塩基変異が対立遺伝子特異性オリゴヌクレオチドによる「ドット・ブロット」で検出できる。通常、ハイブリダイゼーションは単一温度で数分から数時間にわたって実施し必要な弁別を行なう。これ以外に、蛍光技術を用いることで温度を変化させながらハイブリダイゼーション範囲を動的にモニタすることができる。たとえば、蛍光解離曲線はハイブリダイゼーションをモニタするために使用されてきた(例えば、非特許文献3参照)。温度スキャン・レートは一般に毎時10℃またはそれ以下で、一部には蛍光光度計キュベットの熱容量が大きいことによる。
【0008】
ハイブリダイゼーションをモニタするための現行方法は多くの時間を必要とする。ハイブリダイゼーションが数時間ではなく数秒で起これば、高速サイクルPCRの最中であってもハイブリダイゼーションはPCR増幅中にモニタできる。PCR中のハイブリダイゼーションモニタリングの多くの用途は、本明細書で完全に開示するように、生成物の同定と定量、配列変化の検出、蛍光フィードバックによる温度サイクル・パラメータの自動制御を含む。
【0009】
前述のように、従来技術では温度サイクルをゆっくりとまた経験的に行なってきた。ハイブリダイゼーションによるPCR生成物の分析が必要な場合、さらに時間のかかるステップが必要である。つまり、PCR中のハイブリダイゼーションをモニタし、反応が行なわれている最中につまりサンプル操作なしで温度サイクルの最中又は直後に反応を分析する方法を提供するのは当該技術における大きな進歩である。PCR中のハイブリダイゼーションをモニタすることで、PCRが機能することのできる基本原理に追従しまた使用して増幅中の反応を分析し最適化することができる。
【特許文献1】米国特許出願第08/537,61号(1995年10月2日出願)
【特許文献2】EPA特許出願第0640828A1号
【特許文献3】米国特許第5,210,015号
【非特許文献1】C. T. Wittwer, G. B. Reed, and K. M. Ririe, Rapid cycle DNA amplification in K. B. Mullis. F. Ferre. And R.A. Gibbs.
【非特許文献2】K. J. Livak et al., 4 PCR Meth. Appl. 357-362(1995)
【非特許文献3】L. E. Morrison & L.M. Stols, Sensitive fluorescence-based thermodynamic and kinetic measurements of DNA hybridization in solution, 32 Biochemistry 3095 -3104, (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はPCR中の生成物ハイブリダイゼーションをモニタするための二重鎖特異性DNA染料を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は蛍光解離曲線によるPCR増幅生成物を同定するためのシステムを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は二重鎖特異性DNA染料によるPCR定量感度の改善のための方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は解離曲線によりPCRで増幅された特定生成物の量を決定して二重鎖特異性DNA染料により検出された非特異的増幅を補正することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は二重鎖特異性DNA染料による異なったPCR生成物の相対的定量の方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は二重鎖特異性DNA染料の存在下に生成物のアニーリング速度論による生成物定量の方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的はプライマーおよび/またはプローブのハイブリダイゼーションをモニタするための新規な共鳴エネルギー転移対を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は共鳴エネルギー転移対を使用する生成物に対するプローブのアニーリング速度論による生成物定量の方法を提供することである。
【0018】
本発明の目的はPCR増幅中に各サイクルのハイブリダイゼーション・プローブ又はプローブ群の蛍光を追跡することにより初期テンプレート・コピー数を決定する方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は両PCRプライマーの内側でハイブリダイゼーションする二つの標識プローブの間での共鳴エネルギー転移によるPCR生成物の均質な検出のためのシステムを提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は1つの標識プライマーと両PCRプライマーの内側でハイブリダイゼーションする1つの標識プローブの間の共鳴エネルギー転移によりPCR生成物の均質な検出のためのシステムを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は共鳴エネルギー転移とプローブ解離曲線による両PCRプライマーの内側配列変化の検出のためのシステムを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的はプローブ解離曲線による異なったPCR生成物の相対定量のためのシステムを提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は蛍光対サイクル数プロットを曲線適合することで初期テンプレートのコピー数を決定するための方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的はPCRを高速で行なうためと反応を連続的にモニタし反応が進行中に反応パラメータを調節するためのシステム及びその方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は合成核酸アナログ又は誘導体による、たとえばペプチド核酸(PNA)により、蛍光化合物でこれらも又標識できる場合に核酸プローブを置き換えることである。
【0026】
本発明の上記及びその他の目的と利点は後述の詳細な説明と請求項とからさらに完全に明らかになるか、または本発明の実施により学習されよう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明はDNA増幅の連続的蛍光モニタのための方法とその応用を提供する。各種の異なる蛍光技術によるDNA増幅を連続的にモニタするために、必要とされる器具類は、光学的な構成要素と高速温度サイクルを提供するためのシステムとの組合せである。1つの図示した実施例において、蛍光は単一サンプルから連続的に、又はこれ以外ではサンプル全部に同時に高速熱サイクルが行なわれるようにした回転カローセル上の多数サンプルから連続的に取得する。関連装置についてのさらなる情報は上記で参照した米国特許出願に見ることができる。
【0028】
本発明の1つの側面において、DNA増幅中の蛍光は、1)二重鎖特異性染料SYBRTMグリーンI、及び2)ハイブリダイゼーション・プローブ付きCy5TM及びCy5.5TMへのフルオレセインの共鳴エネルギー転移によりモニタされた。サイクル毎に1回取得した蛍光データで初期テンプレート・コピー数の定量が行なえる。
【0029】
さらに、サイクルあたり1回の蛍光測定とは対照的に、各サイクルの間中連続的に温度、時間、蛍光をモニタし、三次元螺旋を作成する本発明の実施例が開示される。この三次元螺旋は温度対時間、蛍光対時間、蛍光対温度プロットに還元可能である。ハイブリダイゼーション・プローブからの蛍光の蛍光対温度プロットは生成物の配列変化を検出するために使用できる。これらの配列変化は突然変異又は多型性等では自然的、定量PCRの工学的変更テンプレート等では人工的なものである。
【0030】
本発明の別の側面において、蛍光モニタリングを用いて二重鎖特異性DNA特異的染料による蛍光モニタリングによるPCR中の生成物解離曲線を取得する。熱サイクラが生成物解離温度を通して加熱する際に温度の関数として蛍光をプロットすることで、PCR生成物解離曲線を得る。このDNA解離曲線の形状と位置はGC/AT比及び配列の関数であり、解離温度2℃以内で分離された増幅生成物を区別するために使用できる。所望する生成物は、プライマー・ダイマーを含む所望しない生成物から識別できる。解離曲線の分析を用いると定量PCRのダイナミックレンジを拡大し、また多重増幅での異なる生成物を識別することができる。二重鎖染料、生成物変性、アニーリング、伸長の使用は各サイクル内で継続できる。蛍光の連続モニタリングによって温度サイクル中の解離曲線と生成物アニーリング曲線の取得ができるようになる。
【0031】
本発明は30分以内での、さらに望ましくは15分以内で、またもっとも望ましくは10分以内で、蛍光モニタリングによる増幅と分析を組み合わせた高速サイクルPCRのための試薬ならびに方法を提供する。
【0032】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
前記標的配列の隣接領域にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応法により前記標的配列を増幅し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識して前記2種類のプローブと前記標的配列とのハイブリダイゼーション時に前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは互いに25核酸以内にあり、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含む増幅ステップと、
前記ドナーフルオロフォアによって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記蛍光エネルギー転移対からの発光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0033】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
前記標的配列の隣接領域にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応法により前記標的配列を増幅し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識して前記2種類のプローブと前記標的配列とのハイブリダイゼーション時に前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは互いに25核酸以内にあり、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含む増幅ステップと、
前記ドナーフルオロフォアによって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起するステップと、
前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0034】
生物学的サンプルの標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法は、
(a)前記生物学的サンプルに2種類の核酸プライマーと核酸プローブとの有効量を添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々がアクセプターフルオロフォアとドナーフルオロフォアとを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブは前記標識されたプライマーの15ヌクレオチド以内の標的核酸配列の増幅コピーとハイブリダイゼーションするステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、
(c)前記ドナーフルオロフォアによって吸収される選択波長の光で前記生物学的サンプルを照射するステップと、
(d)前記サンプルの蛍光発光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0035】
生物学的サンプルの標的核酸配列を増幅する方法の改良は、
(a)前記生物学的サンプルに核酸結合性蛍光体の有効量を添加するステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応を用いて前記標的核酸配列を増幅するステップであって、初期の所定温度と時間パラメータを用いて前記生物学的サンプルを熱サイクルし、さらに、
(i)前記ポリメラーゼ連鎖反応中の蛍光体によって吸収される光の選択波長で前記生物学的サンプルを照射するステップと、
(ii)前記サンプルからの蛍光をモニタして前記ポリメラーゼ連鎖反応の最適温度及び時間パラメータを決定するステップと、
(iii)前記蛍光により前記初期温度及び時間を調節するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0036】
図示した1つの実施例において、蛍光体は二重鎖特異性DNA結合染料を含み、別の図示した実施例においては、蛍光体は標的核酸配列にハイブリダイゼーションする蛍光標識オリゴヌクレオチド・プローブを含む。
【0037】
生物学的サンプルの標的核酸配列を検出するための方法は、
(a)前記生物学的サンプルに前記標的核酸配列とハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド・プローブの対の有効量を添加し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識され、他方のプローブは蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識され、前記ドナーフルオロフォアの発光スペクトルと前記アクセプターフルオロフォアの吸収スペクトルは25%未満で重なり合い、前記アクセプターフルオロフォアは100,000M-1cm-1より大きいピーク減衰係数を有し2種類のプローブのハイブリダイゼーション時には前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは互いに25ヌクレオチド以内にあるステップと、
(b)前記ドナーフルオロフォアによって吸収される光の選択波長で前記生物学的サンプルを照射するステップと、
(c)前記生物学的サンプルの発光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0038】
図示した共鳴エネルギー転移対はドナーとしてフルオレセイン、又アクセプターとしてCy5又はCy5.5を含む。
【0039】
生物学的サンプルの標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法は、
前記標的配列の隣接領域とハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識され前記他方のプローブは蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識されて、前記2種類のプローブと前記標的配列のハイブリダイゼーション時に、前記ドナーフルオロフォアと前記アクセプターフルオロフォアは互いに25ヌクレオチド以内にあり、前記ポリメラーゼ連鎖反応は前記標的核酸配列の熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、
前記ドナーフルオロフォアにより吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの発光を検出するステップと、
前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0040】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法は、
SYBRTMグリーンIの存在下にポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応は前記標的核酸配列の熱安定性ポリメラーゼとプライマーとを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップを含むステップと、
前記SYBRTMグリーンIによって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの発光を検出するステップと、
前記SYBRTMグリーンIからの温度依存性蛍光をモニタするステップと、を含むことを特徴とする。望ましくは、前記モニタするステップは前記増幅された標的配列の解離プロファイルを決定するステップを含む。
【0041】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
(a)2種類の核酸プライマーと核酸プローブとの有効量を前記生物学的サンプルに添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々がアクセプターフルオロフォアとドナーフルオロフォアからなる蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブは前記標識されたプライマーから15ヌクレオチド以内の前記標的核酸配列の増幅コピーとハイブリダイゼーションするステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、
(c)前記ドナーフルオロフォアによって吸収される選択波長の光で前記生物学的サンプルを照射して前記サンプルの蛍光発光を検出するステップと、を含むことを特徴とする。別の図示した実施例において、本方法はさらに、望ましくは前記増幅した標的配列の解離温度を決定することによって、前記サンプルの温度依存性蛍光をモニタするステップを含む。
【0042】
第1の核酸において選択した遺伝子座での相違を第2の核酸と比較して検出する方法は、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応により、前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択したセグメントとこれに対応するセグメントは各々が前記選択した遺伝子座を含み、前記選択した遺伝子座のコピーを含む増幅生成物が得られるようにするステップと、
(b)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光共鳴エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識しておき前記2種類のプローブと前記増幅生成物のハイブリダイゼーション時に前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアが共鳴エネルギー転移の関係にあるようにし、前記プローブの一方は前記増幅生成物とハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブの前記一方が前記選択された遺伝子座に広がり前記第1の核酸において前記第2の核酸の解離プロファイルとは識別可能な差が存在する場合に解離プロファイルを示すようにするステップと、
(c)前記第1の核酸の前記選択したセグメントと前記第2の核酸の前記これに対応するセグメントとを有効量のプローブの存在下にポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントが得られるようにし、その少なくとも一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対でこれらにハイブリダイゼーションされた両方のプローブを有するステップと、
(d)ハイブリダイゼーションされたプローブを有する前記増幅された選択セグメントと前記増幅された対応セグメントとを選択された波長の光で照射して前記蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を照射させるステップと、
(e)温度の関数として蛍光発光を測定して第1の核酸の前記増幅選択セグメントから解離する前記一方のプローブの第1の解離プロファイルと第2の核酸の前記増幅対応セグメントから解離する前記一方のプローブの第2の解離プロファイルにおいて決定するステップと、
(f)前記第1の解離プロファイルを前記第2の解離プロファイルと比較し、ここでの相違が前記サンプル核酸における相違の存在を示すようにするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0043】
第1の核酸において第2の核酸と比較して選択した遺伝子座での相違を検出する方法は、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応により、前記第1の核酸の選択されたセグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択セグメントと対応セグメントの各々が前記選択された遺伝子座を含み、前記選択された遺伝子座のコピーを含む増幅生成物を得るようにするステップと、
(b)オリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プライマーの一方と前記プローブとが各々ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブと標識されたプライマーは前記増幅生成物とハイブリッド化して前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとが共鳴エネルギー転移関係に置かれるようにし、前記プローブは前記増幅生成物とハイブリッド化するように構成されて前記プローブは前記選択された遺伝子座に広がり前記第2の核酸の解離プロファイルから識別できる前記第1の核酸に相違が存在する場合には解離プロファイルを示すステップと、
(c)前記第1の核酸の選択セグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとをポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプライマー及びプローブの存在下にて増幅し増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントを得るようにし、その少なくとも一部分は共鳴エネルギー転移関係にある前記蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた標識プライマー及びプローブを有するステップと、
(d)前記標識プライマー及びプローブがハイブリッド化された前記増幅選択セグメントと前記増幅対応セグメントを選択した波長で照射して前記蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を照射するステップと、
(e)前記第1の核酸の前記増幅選択セグメントから解離する前記プローブの第1の解離プロファイルと前記第2の核酸の前記増幅対応セグメントから解離する前記プローブの第2の解離プロファイルとを決定するステップと、
(f)前記第1の解離プロファイルと前記第2の解離プロファイルとを比較して、相違が前記サンプル核酸に置ける相違の存在を表わすステップと、
を含むことを特徴とする。
【0044】
個人のゲノムにおいて選択された遺伝子座でのヘテロ接合性を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異性対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、その各々が選択された遺伝子座を含み、
(a)前記個人からサンプルとなるゲノムDNAを採得するステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記突然変異対立遺伝子の第1の選択したセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択したセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択されたセグメントとの両方ともが前記選択された遺伝子座を含むステップと、
(c)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光共鳴エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識して前記増幅した第1と第2の選択セグメントと前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記プローブの一方は前記選択された遺伝子座に広がり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の解離プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の解離プロファイルを示すようにするステップと、
(d)ポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプローブの存在下でサンプル・ゲノムDNAの前記第1と第2の選択セグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分が両方とも共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされたプローブを有するステップと、
(e)選択した波長の光によりハイブリダイゼーションされたプローブを有する前記増幅された第1と第2の選択セグメントを照射して、前記ドナーとアクセプターによる蛍光を照射するステップと、
(f)温度の関数として蛍光発光を測定して、前記増幅した第1の選択セグメントから解離する前記一方のプローブの第1の解離プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから解離する前記一方のプローブの第2の解離プロファイルとを決定するステップと、
(g)前記第1の解離プロファイルと前記第2の解離プロファイルとを比較して、識別可能な解離プロファイルが前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすようにするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0045】
個人のゲノムにおいて選択された遺伝子座でのヘテロ接合性を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、各々が選択された遺伝子座を含み、
(a)前記個人からサンプル・ゲノムDNAを採得するステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応によって前記突然変異対立遺伝子の第1の選択されたセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択されたセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択セグメントにはどちらも前記選択された遺伝子座を含むステップと、
(c)オリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブと標識されたプライマーは前記増幅された第1と第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションして前記プローブの一方が前記選択された遺伝子座に広がり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の解離プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の解離プロファイルを示すようにするステップと、
(d)有効量のプライマー及びプローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応によりサンプル・ゲノムDNAの第1と第2の選択されたセグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた標識プライマー及びプローブを有するようにするステップと、
(e)前記標識したプライマーとプローブがハイブリダイゼーションされている前記増幅した第1と第2の選択セグメントを選択した波長の光で照射して前記ドナー及びアクセプターによる蛍光を照射するステップと、
(f)温度の関数として蛍光発光を測定して前記増幅した第1の選択セグメントから解離する前記プローブの第1の解離プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから解離する前記プローブの第2の解離プロファイルとを決定するステップと、
(g)前記第1の解離プロファイルと前記第2の解離プロファイルを比較し、識別可能な解離プロファイルは前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすステップと、
を含むことを特徴とする。
【0046】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物が2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プライマー、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物においてポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法は、
(a)前記混合物に(1)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識され、選択された温度条件と単価イオン強度で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成された有効量のオリゴヌクレオチド・プローブと、(2)前記ドナー又は前記アクセプターで標識され、前記プローブと基準オリゴヌクレオチドの間で一方が前記ドナーで標識され他方が前記アクセプターで標識され、前記基準オリゴヌクレオチドは前記選択された温度及び単価イオン強度の条件下で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドが両方とも前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合前記ドナー及び前記アクセプターが共鳴エネルギー転移関係にあるようにする有効量の基準オリゴヌクレオチドとを添加するステップと、
(b)前記核酸の選択セグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して前記増幅生成物を得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、
(c)選択した波長の光でハイブリダイゼーションされたプローブと基準オリゴヌクレオチドとを有する前記増幅生成物を照射して前記蛍光共鳴エネルギー対による蛍光を照射させ、蛍光発光をモニタして、前記蛍光発光が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0047】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物は2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プライマー、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物におけるポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法は、
(a)前記混合物に有効量の核酸結合蛍光染料を添加するステップと、
(b)前記核酸結合蛍光染料が添加された前記混合物でポリメラーゼ連鎖反応により前記選択した核酸セグメントを増幅して核酸結合蛍光染料が結合した前記増幅生成物を得るステップと、
(c)核酸結合蛍光染料が結合している増幅生成物に選択した波長の光を照射してここからの蛍光を照射し、蛍光発光をモニタして、前記蛍光発光が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、
を含むことを特徴とする。望ましくは、核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択した構成要素とし、さらに望ましくはSYBRTMグリーンIとする。
【0048】
二重鎖特異性蛍光染料を含むポリメラーゼ連鎖反応混合物のアニーリング、伸長、変性フェーズの反復サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応の温度サイクル・パラメータを制御する方法であって、前記パラメータは前記アニーリング・フェーズの持続時間と、前記変性フェーズの持続時間と、サイクル数とを含み、
(a)選択した波長の光で前記反応を照射して前記蛍光染料からの蛍光を照射させ前記反復アニーリング、伸長、変性フェーズの間に蛍光を連続モニタするステップと、
(b)少なくとも、
(i)前記伸長フェーズの間に蛍光が増加を停止する持続時間、又は
(ii)前記変性フェーズの間に前記蛍光が基線レベルまで減少する持続時間、又は、
(iii)前記伸長フェーズの間に前記蛍光が所定のレベルに達した回数
を決定するステップと、
(c)前記伸長フェーズの間に蛍光が増加を停止する時間の長さに基づいた前記伸長フェーズの長さ、前記変性フェーズの間に蛍光が前記基線レベルまで減少した時間の長さに基づいた前記変性フェーズの長さ、又は前記伸長フェーズの間に蛍光が前記所定レベルに達したサイクル数に基づくサイクル数を調節するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0049】
選択したポリメラーゼ連鎖反応混合物における増幅生成物の濃度を決定する方法は、
(a)前記増幅生成物の既知の濃度のハイブリダイゼーションのレートをモニタすることにより選択した温度と反応条件での前記増幅生成物での2次速度定数を決定するステップと、
(b)前記増幅生成物の未知の濃度でのアニーリング速度を決定するステップと、
(c)前記アニーリング速度と前記2次速度定数から前記増幅生成物の濃度を計算するステップと、
を含むことを特徴とする。望ましくは、アニーリング速度は多数の増幅サイクルの後で決定される。2次速度定数を決定する1つの代表的な方法は、既知の濃度の前記増幅生成物と有効量の二重鎖特異性蛍光染料とを含む第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以上に上昇して変性増幅生成物を得るステップと、
前記既知の量の変性増幅生成物を含む前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以下の選択した温度まで急冷すると同時に時間の関数として前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の蛍光を連続モニタするステップと、
極大蛍光、極小蛍光、極小蛍光の時間、及び増幅生成物の既知の濃度での2次速度定数を決定するため、式:
(ただし、Fは蛍光、Fmaxは極大蛍光、Fminは極小蛍光、kは2次速度定数、t0はFminでの時間、[DNA]は前記増幅生成物の既知の濃度である)から時間の関数として蛍光をプロットするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0050】
競合的定量ポリメラーゼ連鎖反応による選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法は、
(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択したセグメントと相補的テンプレートのこれに対応する選択したセグメントを増幅してこれらの増幅生成物を得るように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対の各々の有効量と、
(ii)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識された有効量のオリゴヌクレオチド・プローブであって、前記プローブが前記競合的テンプレートの増幅生成物から解離する解離温度から識別可能な解離温度での前記選択したテンプレートの増幅生成物から解離するように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されている前記プローブと、
(iii)前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が前記ドナーにより標識され他方が前記アクセプターにより標識されているとして、前記ドナー又は前記アクセプターで標識された有効量の基準オリゴヌクレオチドであって、前記基準オリゴヌクレオチドは前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に前記ドナーと前記アクセプターが共鳴エネルギー転移関係になるように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするよう構成されたオリゴヌクレオチドと、
を含む反応混合物において、
ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の選択したテンプレートと既知の量の前記競合的テンプレートを増幅して前記増幅生成物を得るステップと、
(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照射して蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を照射させ、反応混合物の温度が変化して前記選択したテンプレートの前記増幅生成物から解離する前記プローブの第1の解離曲線と前記競合的テンプレートから解離する前記プローブの第2の解離曲線とを得る場合に温度の関数として蛍光発光を決定するステップと、
(c)前記第1と第2の解離曲線から第1と第2の解離ピークに変換して当該解離ピークから前記選択したテンプレートと前記競合的テンプレートの相対量を決定するステップと、
(d)前記既知の量の前記競合的テンプレートと、前記選択したテンプレート及び競合的テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0051】
蛍光共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5、又はCy5.5からなる。
【0052】
ポリメラーゼ連鎖反応において選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法は、
(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅した第1の生成物を得るように構成された第1のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において基準テンプレートの選択した第2のセグメントを増幅して増幅した第2の生成物を得るように構成された第2のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(iii)核酸結合蛍光染料の有効量と、
を含む反応混合物において、
ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の前記選択したテンプレートを増幅して前記増幅した第1の生成物を得る及び既知の量の前記基準テンプレートを増幅して前記増幅した第2の生成物を得るステップと、
(b)選択した波長の光で前記反応混合物を照射して核酸結合蛍光染料による蛍光を照射させ、温度の関数として発光された蛍光を連続的にモニタして第1の生成物と第2の生成物が異なる温度で解離するような前記増幅生成物の解離曲線を得るステップと、
(c)前記解離曲線を解離ピークに変換して当該解離ピークから前記選択したテンプレートと前記基準テンプレートの相対量を決定するステップと、
(d)前記既知の量の前記基準テンプレートと選択したテンプレート及び基準テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0053】
陽性対照テンプレートも含むポリメラーゼ連鎖反応において選択したテンプレートの増幅をモニタする方法は、
(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅された第1の生成物を得るように構成された第1のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において、陽性対照テンプレートの選択された第2のセグメントを増幅して増幅された第2の生成物を得るように構成された第2のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(iii)有効量の核酸結合蛍光染料と、
を含む反応混合物において、
前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するための条件に前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをさらすステップと、
(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照射して核酸結合蛍光染料による蛍光を照射し、前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクル中に温度の関数として発光される蛍光を連続的にモニタして前記選択したテンプレートが増幅される場合前記増幅された第1の生成物の第1の解離ピークを、また前記陽性対照テンプレートが増幅される場合前記増幅された第2の生成物の第2の解離ピークを取得するステップとを含み、
前記第2の解離曲線の取得はポリメラーゼ連鎖反応が作用したことを表わし、前記第1の解離曲線の取得は前記選択した第1のセグメントが増幅可能であることを表わし、前記第1の解離曲線が欠如していることは前記選択した第1のセグメントが増幅不可能であることを表わすことを特徴とする。
【0054】
個人の第V因子ライデン変異を検出する方法であって、第V因子ライデン変異は野生型と比較して第V因子ライデン変異遺伝子座での単一塩基変化で構成され、
(a)前記個人からサンプル・ゲノムDNAを採得するステップと、
(b)対照として野生型ゲノムDNAを提供するステップと、
(c)前記サンプル・ゲノムDNAと前記野生型ゲノムDNAの選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択したセグメントは第V因子ライデン変異遺伝子座を含み、第V因子ライデン変異遺伝子座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、
(d)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プローブは前記増幅された生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブが前記変異遺伝子座に広がり前記サンプル・ゲノムDNAに前記野生型ゲノムDNAの解離プロファイルから区別できる第V因子ライデン変異が存在する場合解離プロファイルを示すステップと、
(e)共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識された転移オリゴヌクレオチドを提供し、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が共鳴エネルギー転移ドナーで標識され他方が共鳴エネルギー転移アクセプターで標識されているとして、前記転移オリゴヌクレオチドは前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成して前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に共鳴エネルギー転移ドナーと共鳴エネルギー転移アクセプターが共鳴エネルギー転移関係にあるようにするステップと、
(f)有効量のオリゴヌクレオチド・プローブと転移オリゴヌクレオチドの存在下でサンプル・ゲノムDNAと野生型ゲノムDNAの前記選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応により増幅して、増幅された選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、
(g)前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクルの間の温度の関数として蛍光を測定してサンプル・ゲノムDNAの前記増幅セグメントから解離する前記プローブの解離プロファイルと前記野生型ゲノムDNAの増幅セグメントから解離する前記プローブの解離プロファイルとを取得するステップと、
(h)前記サンプル・ゲノムDNAについての前記解離プロファイルを前記野生型ゲノムDNAについての前記解離プロファイルと比較し、これらの差が前記サンプル・ゲノムDNAにおける第V因子ライデン変異の存在を表わすステップと、
を含むことを特徴とする。
【0055】
核酸ハイブリダイゼーションを分析するための方法は、
(a)分析すべき核酸サンプルと核酸結合蛍光体とを含む混合物を提供するステップと、
(b)温度を≧毎秒0.1℃の速度で変化させながら蛍光をモニタするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0056】
未知の量の核酸を含むサンプルの初期コピー数を定量する方法は、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応により既知の濃度の少なくとも一つの標準を、前記標準と核酸結合蛍光体とを含む混合物中で増幅するステップと、
(b)サイクル数の関数として蛍光を測定して一組のデータ点を得るステップと、
(c)初期核酸濃度とサイクル数の関数として蛍光を記述する任意の所定の式に前記データ点を当てはめるステップと、
(d)前記サンプルと前記核酸結合蛍光体とを含む混合物中で未知の量の核酸を含む前記サンプルを増幅してこれの蛍光をモニタするステップと、
(e)ステップ(c)で求めた式から初期核酸濃度を決定するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0057】
蛍光共鳴エネルギー転移対が開示され、前記対は発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアと、吸収スペクトルを有し減衰係数が100,000M-1cm-1より大きいアクセプターフルオロフォアとを含む含み、前記ドナーフルオロフォアの発光スペクトルと前記アクセプターフルオロフォアの吸収スペクトルは25%未満でオーバラップする。本明細書で説明される1つの代表的な蛍光共鳴エネルギー転移対はドナーフルオロフォアがフルオレセインでありアクセプターフルオロフォアがCy5又はCy5.5である。
【0058】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
核酸結合蛍光体の存在下でポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的とされる核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加して少なくとも変性温度と伸長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップを含むステップと、
前記核酸結合蛍光体により吸収される波長の光によって前記サンプルを励起するステップと、
前記サンプルの温度が変化する際に前記核酸結合蛍光体からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、を含むことを特徴とする。望ましくは、核酸結合蛍光体には二重鎖核酸結合蛍光染料たとえばSYBRTMグリーンI等を含む。温度依存性蛍光は、望ましくは解離曲線分析によって、増幅生成物を識別するために使用できる。2種類又は3種類以上の増幅生成物の相対量を解離曲線の分析で求めることができる。たとえば、解離曲線より下の領域は多重ガウス分布の和の非線形最小二乗回帰で見付けられる。
【0059】
<関連出願への相互参照>
自動ポリメラーゼ連鎖反応装置と題する1990年6月4日付米国特許出願第07/534,029号(現在は放棄されている)の一部継続出願である高速熱サイクル装置と題する1992年1月2日付米国特許出願第07/815,966号(現在は放棄されている)の一部継続出願である高速熱サイクル装置と題する1994年1月10日付米国特許出願第08/179,969号(現在の米国特許第5,455,175号)の一部継続出願である生物学的サンプルの高速熱サイクルのための方法と題する1995年10月2日付米国特許出願第08/537,612号の一部継続出願であるPCR処理をモニタするためのシステム及び方法と題する1996年6月4日付米国特許出願第08/658,993号の一部継続出願である第V因子ライデン変異を検出するための方法と題する1997年3月17日付米国特許出願第08/818,267号。上記出願の各々はその全体で本明細書において参照として個別に各々含まれる。生物学的処理を実施しモニタするためのシステム及びその方法と題し、ユタ大学研究財団が出願人でカール・T・ウィットワー、カーク・M・ライリー、ランディ・P・ラスムッセン、デビッド・R・ヒルヤードを米国における発明者兼出願人とする同時出願中の1997年6月4日付米国事務局(RO/US)受付PCT出願番号PCT/US97/もその全体を本明細書の参照に含む。
【発明の効果】
【0060】
本発明はPCR増幅と分析に必要な総時間数を従来技術に比べてとくに減少する一方で同時に増幅条件を最適化することにより反応量を有意に増加するオプションを可能にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
PCR中のハイブリダイゼーションをモニタする本発明の方法を開示し説明する前に、本発明は本明細書で開示される特定の構成、処理ステップ、材料に制限されるものではなく、こうした構成、処理ステップ、材料は何らか変化することがあることを理解されるべきである。また本発明の範囲は付録の請求項及びその等価物によってのみ制限されるものであるから本明細書で用いられている術語は特定の実施例を説明する目的でのみ用いられていることも理解されて然るべきである。
【0062】
本明細書及び付録の請求項で用いられているように、単数形表現“a”“an”“the”はコンテクストでとくに何らか明言していない限り複数対象も含むことには注意すべきである。
【0063】
本発明の説明と請求において、以下の術語は以下に明示した定義にしたがって用いられる。
【0064】
本明細書で用いている「核酸」「DNA」及び類似の術語も核酸アナログ、即ちリン酸ジエステル骨格以外を有する類似物も含む。たとえば、いわゆる「ペプチド核酸」は従来技術で公知となっているが骨格においてリン酸ジエステル結合の代わりにペプチド結合を有しており、本発明の範囲内に含まれるものと解釈される。
【0065】
本明細書で用いている「連続モニタリング」及び類似の術語はPCRのサイクルの間の多数の時刻でモニタし、望ましくは温度遷移中、又さらに望ましくは各温度遷移において少なくとも一つのデータ点を取得することを表わす。
【0066】
本明細書で用いている「サイクル毎」モニタリングは各サイクル毎に1回、望ましくはPCRのアニーリング相の間に、PCR反応をモニタすることを意味する。
【0067】
本明細書で用いている「蛍光共鳴エネルギー転移関係」及び類似の術語は、ドナーフルオロフォアが共鳴エネルギーをアクセプターフルオロフォアに転移してアクセプターフルオロフォアが測定可能な蛍光発光を発生することができるようにするように、ドナーフルオロフォアで標識されたオリゴヌクレオチドとアクセプターフルオロフォアで標識されたオリゴヌクレオチドとの核酸に対する隣接ハイブリダイゼーションを表わす。ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアがあまり遠すぎる距離に離れていると、アクセプターフルオロフォアが測定可能な蛍光を発光できるようにアクセプターフルオロフォアへ共鳴エネルギーを転移することができず、したがってドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは共鳴エネルギー転移関係にはない。望ましくは、2種類の標識されたオリゴヌクレオチドが両方ともプローブであり、どちらもPCRプライマーとして機能しない場合、(「プローブ−プローブ」)ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアはおよそ0〜25ヌクレオチド以内であり、さらに望ましくは0〜5ヌクレオチド以内、また最も望ましいのは0〜2ヌクレオチド以内である。特に好適な間隔は1ヌクレオチドである。標識オリゴヌクレオチドの一方がPCRプライマーとしても機能する(「プローブ−プライマー」)場合、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアはおよそ0〜15ヌクレオチド以内が望ましく、およそ4〜6ヌクレオチド以内がさらに望ましい。
【0068】
本明細書で用いている「有効量」は選択した効果を発生するのに充分な量を表わす。たとえば、PCRプライマーの有効量は、DNAポリメラーゼ、バッファ、テンプレート、及び温度条件を含めてPCRを実施するのに必要であることが従来技術で知られているその他の条件も提供されている場合にPCRによって核酸のセグメントを増幅するのに充分な量である。
【0069】
PCRは反復的テンプレート変性とプライマーのアニーリングを必要とする。これらのハイブリダイゼーション遷移は温度依存である。増幅を進めるPCRの温度サイクルは、高温で生成物の変性蓄積と低温での生成物へのプライマー付着(アニーリング)を交互に行なう。生成物の変性とプライマー・アニーリングの遷移温度はGC成分と長さに依存する。プローブがPCR生成物に内部でハイブリダイゼーションするように設計されている場合、プローブの解離温度もまたGC成分、長さ、及び標的に対する相補性の度合に依存する。PCRで互換性のある蛍光プローブは増幅中のハイブリダイゼーションをモニタできる。
【0070】
高速サイクルとの関連で使用されるのが望ましい(1996年6月4日付でPCR処理をモニタするためのシステム及びその方法と題する前述の米国特許出願番号第08/658,993号、及び1995年10月2日付で生物学的サンプルの高速熱サイクルのための方法と題する米国特許出願番号第08/537,612号に完全に説明されている)本発明によれば、PCRの速度論の典型例が適切である。PCRについて3種類の反応(変性、アニーリング、伸長)が3つの時間間隔の間に3つの異なる温度で起こると考えるのではなく(図1A)、PCRの速度論の典型例がもっと有用である(図1B)。速度論の典型例では、温度対時間曲線はオーバラップする反応の間の連続遷移から構成される。変性とアニーリングは非常に高速で特定温度での保持時間は必要としない。伸長は変化する速度である温度範囲にわたって起こる。完全な分析には全ての温度にわたる全部の関連速度定数についての知識が必要であろう。全反応の速度定数が分かっていれば、「PCRの物理化学的説明」が発達する。これらの速度を決定するには正確な温度制御が必要であり温度サイクル中の反応モニタリングによって大幅に簡略化される。
【0071】
図2は蛍光ハイブリダイゼーション・モニタリングでの有用な温度対時間セグメントを示している。生成物解離曲線はゆっくりと変性へ向かう温度上昇中に得られる。変性後に一定温度へ温度を急激に下げることによって、生成物、プローブ、又はプライマーのアニーリングがオプションとして後続できる。プローブ解離曲線はプローブTm付近の温度を通ってゆっくりと加熱すると得られる。図2に図示してある実施例は温度サイクル中の全分析をすぐリアルタイムの表示で提供する。蛍光プローブは温度サイクル中のプライマー、プローブ、又は生成物ハイブリダイゼーションの連続モニタリングのために増幅溶液の一部分として含めてある。
【0072】
本発明に含まれる蛍光ハイブリダイゼーション技術は高速サイクルに基づくもので、速度と特異性を利点とする。
【0073】
高速サイクルPCR中のサンプル温度プロファイルを図3に図示してある。変性とアニーリングは、従来のPCRの温度サイクルたとえば図1Aでの広い平坦域とは対向して、これらの図面では温度「スパイク」として現われている。高速温度サイクルは図4の従来の温度サイクルと対照され、30サイクルの増幅が15分で完了し得られたPCR生成物はかなり少ない副生成物しか含まないことが示されている。つまり、高速サイクルによると必要とされる増幅時間はおよそ10分の1に減少し、特異性が向上する。
【実施例】
【0074】
<実施例1>
図4は4種類の異なる温度/時間プロファイル(A〜D)の結果と30サイクル後にそれらで得られた増幅生成物(A〜D)を示す。図4のプロファイルAとBは従来技術の微量遠沈管を使用する従来技術の加熱ブロック装置を用いて得られた。図4から分かるように、温度間の遷移はゆっくりでプロファイルAとBには多数の非特異性バンドが存在する。プロファイルBは各々のサンプルが各々の温度に留まる時間を制限することによって非特異性バンド(プロファイルAとは対照的に)の幾つかを排除する点で改善を示している、つまり短時間ではさらに望ましい結果が発生することを表わしている。
【0075】
プロファイルCとDは高速温度サイクラを使用して得られた。図4から分かるように、増幅は特異的であり、収量は60秒の伸長時間(C)で最大となるが、10秒の伸長時間(D)でも全体として充分である。
【0076】
ヒトゲノムDNA由来のβグロビン536bpフラグメントの増幅に最適な時間と温度も決定された。増幅収量と生成物の特異性は変性(93℃)とアニーリング(55℃)が1秒未満の場合に最適だった。変性又はアニーリング時間が長くても何らの利点は見られなかった。収量は77℃で長い伸長時間だと増加したが、10〜20秒より長い伸長時間ではほとんど変化が見られなかった。このように予想しなかった結果は、DNA増幅のために用いられる従来利用可能な装置が物理的酵素的な反応条件を最適化するのに必要とされる条件を最大にしていないことを表わしている。
【0077】
さらに詳しい情報は、C.T.ウィットワーら、嚢胞性線維症デルタF(508)遺伝子座での高速サイクル対立遺伝子特異性増幅、(C. T. Wittwer et al.,Rapid Cycle Allele-Specific Amplification with Cystic Fibrosis deltaF(508) Locus, 39, Clinical hemistry 804 (1993))及びC.T.ウィットワーら、高速DNA増幅、(C. T. Wittwer et al., Rapid DNA Amplification, The Polymerase Chain Reaction 174 (1994)に解説されており、これらはどちらも本明細書で参照に含まれる。蛍光観察と高速温度サイクルに用いられる機材は前述の米国特許出願第08/537,612号に完全に開示されている。
【0078】
先に述べたように、ポリメラーゼ連鎖反応は高速で実行できる。急速熱伝導を容易にすることに加えて光学的に透明な毛細管を使用すると本発明によるDNA増幅の連続的蛍光モニタリングが可能になる。
【0079】
蛍光プローブはDNA増幅を検出しモニタするために使用できる。有用なプローブとしては、二重鎖DNA特異性染料や配列特異性プローブが挙げられる。DNA増幅を追跡するための3種類の異なる蛍光技術を図5で比較している。図5Aでは、蛍光は二重鎖特異性DNA染料で検出されるPCR生成物のハイブリダイゼーションに依存している。図5Bにおいて、蛍光は5’−エクソヌクレアーゼ消光プローブの加水分解に依存しており、これは前述のように従来技術で周知となっている。図5Cでは2つの隣接プローブにおける蛍光物質間の共鳴エネルギー転移に基づいたハイブリダイゼーション方式を図示している。図5Aの方法は配列特異性ではないが、生成物の特異性は解離曲線によって決定でき、これは本発明の1つの側面である。図5B及び図5Cは両方とも配列特異性である。しかし該ハイブリダイゼーション法は解離曲線による分析を可能にし、これは本発明の別の側面である。
【0080】
図5Bに図示したように加水分解プローブが関係する反応からと図5Cに図示したようにハイブリダイゼーション・プローブが関係する反応からの蛍光をモニタする際、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォア両方から発光される蛍光を測定するのが有利である。具体的には、加水分解プローブによって発光される蛍光の大半はドナーフルオロフォアからのもので、ハイブリダイゼーション・プローブによって発光される蛍光の大半はアクセプターフルオロフォアからのものである。
【0081】
===二重鎖特異性DNA染料の選択===
蛍光技術に臭化エチジウムを用いるのが当業者には馴染み深いであろう。二重鎖特異性蛍光染料が増幅中に存在する場合、二重鎖生成物が多く作られる程蛍光は一般に増加する。R.ヒグチら、特定DNA配列の同時増幅と検出、(R. higuchi et al., Simultaneous amplification anddetection of specific DNA sequences, 10 Bio/Technology 413-417 (1992))参照。インターカレータYO−PRO−1を用いたhepatitis C(C型肝炎)RNAの蛍光PCRアッセイも従来技術で公知である。T.イシグロら、蛍光インターカレータ存在下のポリメラーゼ連鎖反応によるhepatitis CウィルスRNAの均質定量アッセイ(T. Ishiguro et al., Homogenenous quantitative assay ofhepatitis C virus RNA by polymerase chain reaction in the presence of a fluorescent intercalater, 229 Anal. Biochem. 207 - 213 (1995))参照。従来技術で公知であり、米国オレゴン州ユージーンにあるモレキュラー・プローブズ社(Molecular Probes of Eugene, Oregon)から入手できるSYBRTMグリーンIを二重鎖特異性染料として使用するのが好適である。この染料の分子構造は企業秘密であるが、ゲル上でのDNA検出用にさらに高感度の二重鎖特異性染料としてメーカーから推奨されている。SYBRTMグリーンIは熱安定性が悪いが、しかしそのために長い時間間隔にわたって反応混合物の温度が解離温度に維持されるような従来方によるポリメラーゼ連鎖反応の蛍光モニタリングには有用ではない。この熱不安定性のため、解離温度が長時間にわたって維持されない場合、即ちPCRが前述した速度論の典型例にしたがって高速サイクルにより行なわれる場合に、SYBRTMグリーンIがPCR反応をモニタするために使用できることが発見されたのは予想外だった。
【0082】
<実施例2>
10,000テンプレートコピーからのヒトβグロビン遺伝子のPCO3/PCO4プライマー対からの110塩基対断片の増幅をモニタすることにより異なった二重鎖特異性DNA染料を比較した。プライマーは従来技術で公知の通りに標準的ホスホラミダイト化学によって、即ちファルマシア・バイオテック遺伝子アセンブラ・プラス(Pharmacia Biotech Gene Assembler Plus)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用して合成された。ヒトβグロビン・プライマーPC03/PC04(110塩基対)はC.T.ウィットワーら、熱気による毛細管内自動ポリメラーゼ連鎖反応 (C. T. Wittwer et al., Automated polymerase chain reaction in capillary tubes with hot air, 17 Nucl. Acids. Res. 4353 - 4357 (1989))に説明されており、本明細書で参照に含まれる。DNA増幅は、以下の実施例で特に記載していない限り、50mMトリス、pH8.5(25℃),3mMMgCl2,500μg/mlウシ血清アルブミン、0.5μMの各プライマー、0.2mMの各デオキシヌクレオシド三リン酸、5μlサンプルあたり0.2単位のTaqポリメラーゼで行なった。精製した増幅生成物をDNAテンプレートとして使用し、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿法で得られた。D.M.ウォーレス、核酸の大規模及び小規模フェノール抽出及び沈殿法 (D. M. Wallace, Large- and Small-scale phenol extractions and precipitation of nucleic acids, 152 Methods in Enzymology 33-48 (1987))参照。これに続けてセントリコン30マイクロコンセントレータによる反復洗浄でプライマーの除去を行なった(アミコン社、マサチューセッツ州ダンバース)。テンプレート濃度は260ナノメートルの吸光度で求めた。テンプレートのA(260):A(280)比は1.7以上だった。
【0083】
SYBRTMグリーンI(モレキュラー・プローブズ社、オレゴン州ユージーン)を1:10,000倍希釈、臭化エチジウムは5μg/ml、アクリジン・オレンジは3μg/mlで用いた。これらの濃度は各々の染料で増幅中に観察される蛍光シグナルが最大になる最適濃度となるように決定した。励起はキセノン・アーク光源から450〜490ナノメートル干渉フィルタを通したが、臭化エチジウムでは520〜550ナノメートル励起を使用した。SYBRTMグリーンIでは、520〜550ナノメートルの発光をモニタした。臭化エチジウム蛍光は580〜620ナノメートル・バンドパスフィルタ経由で観察した。アクリジン・オレンジのシグナルは緑色(520〜550ナノメートル)の赤色(>610ナノメートル)蛍光に対する比として取った。増幅前のサンプルの蛍光を35サイクル後の蛍光(最高94℃、60℃で20秒)と60℃で比較した。蛍光の増加はSYBRTMグリーンIで5.3倍、臭化エチジウムで1.7倍、アクリジン・オレンジで1.2倍だった。別の実験で、SYBRTMグリーンIからの蛍光は70℃で30分以上にわたり安定していた。また便利なことに可視光で励起され臭化エチジウムより変異原物質になりにくいと主張されている。全例でのバックグラウンド蛍光は主としてプライマーから発していた。
【0084】
SYBRTMグリーンIは主として二重鎖と一重鎖核酸の間の優れた識別能に由来する高感度のため、PCRの蛍光モニタリングに適した二重鎖特異性染料である。SYBRTMグリーンIはあらゆる増幅で使用できかつ安価である。さらに、後述するように解離曲線の分析で生成物特異性を得ることができる。
【0085】
===ハイブリダイゼーション・プローブ用の共鳴エネルギー転移染料選択===
蛍光共鳴エネルギー転移は2つの蛍光物質が物理的に接近し一方の蛍光物質の発光スペクトルが他方の励起スペクトルとオーバラップしている場合に発生し得る。蛍光共鳴エネルギー転移の導入理論は多くの最近の紹介論文に見ることができる。共鳴エネルギー転移のレートは:
(8.785E−5)(t-1)(k2)(n-4)(qD)(R-6)(JDA)
ただし、
t=アクセプター欠如時のドナーの励起状態寿命
k2ドナーとアクセプターの間の指向性係数
n=介在する媒体の可視光反射率
qD=アクセプター欠如時のドナー量子効率
R=ドナーとアクセプターの間の距離(オングストローム単位)
JDA=オーバラップする全波長に対して(FD)(eA)(W4)の積分
ここでFD=ドナーのピーク正規化蛍光スペクトル
またeA=アクセプターの分子減衰係数(Mー1cm-1)
W=波長(ナノメートル)とする。
【0086】
何らかの任意のドナーとアクセプターで、50%共鳴エネルギー転移が発生する距離を計算することができこれをR0で表わす。共鳴エネルギー転移のレートはドナーとアクセプターの間の距離の6乗に比例するので、RがR0から移動すると共鳴エネルギー転移は急激に変化する。2R0では、非常に僅かな共鳴エネルギー転移しか発生せず、0.5R0では他の形の脱励起(即ち衝突消光)が優勢でない限り転移効率はほぼ完全である。多様なドナーとアクセプターの対でのR0の値が集積されており22から72オングストロームの間で変化している。
【0087】
二重螺旋DNAでは、10塩基が約34オングストロームは離れている。ドナーフルオロフォア又はアクセプターフルオロフォアでDNAの塩基を標識することによって、DNAの螺旋構造を観察するためのスペクトル的定規として共鳴エネルギー転移を使用し4種類のDNA結合の構造を分析できる。共鳴エネルギー転移はハイブリダイゼーションのモニタとしても使用できる。標識したオリゴヌクレオチドが標識テンプレート鎖にハイブリダイゼーションされると、RはR0より相当大きな値からR0以下に移動し、共鳴エネルギー転移が急激に増加する。これ以外にも、2種類の標識プローブを同じテンプレート鎖にハイブリダイゼーションして蛍光エネルギー転移に同様の変化を起こすことができる。
【0088】
ハイブリダイゼーションをモニタするために実際に共鳴エネルギー転移を使用するのは、要求される感度とどの程度の時間が使えるかによって変わる。1ナノモル標識プローブでの競合ハイブリダイゼーション技術を使用すると、PCR増幅DNAは40℃で15分後に検出された。もっと高速のシグナル生成が望ましい。ハイブリダイゼーションに秒単位しか必要でないなら、PCR生成物は増幅の各サイクルで便利に定量できる。さらには、プローブハイブリダイゼーションの範囲を温度サイクル内でモニタできる。
【0089】
ハイブリダイゼーションは秒単位の処理である(B.ヤング&M.アンダーソン、溶液ハイブリダイゼーションの定量分析(B. Young & M. Anderson,Quantitative analysis of solution hybridization, In: Nucleic AcidHybridization: A Practical Approach 47-71, (B. Hames, S. Higgins eds.,1985))参照)。プローブの濃度が標的濃度より大幅に高い場合、ハイブリダイゼーション・レートはプローブ濃度に逆比例する。たとえば、プローブ濃度を2倍にするとハイブリダイゼーション時間は半分に減少する。ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション部位がポリメラーゼ伸長で被覆される前に起こる必要があるため、高いプローブ濃度がPCR中のサイクル後とモニタリングに必要である。
【0090】
PCR中のハイブリダイゼーション・モニタリングに必要な高いプローブ濃度はユニークな特性の共鳴エネルギー転移対を要求する。ドナー(D)とアクセプター(A)の対の光による励起を考えてみる。直接励起されたDとAの蛍光の数は励起波長での各蛍光物質の減衰係数(e)に比例することになる、即ち、
直接励起されたD分子数=(K)(eD)
直接励起されたA分子数=(K)(eA)
ここでKは比例定数である。ドナーの脱励起は、蛍光、共鳴エネルギー転移、その他の熱的消光と要約される過程によって発生する。PF=共鳴エネルギー転移の確率、PTD=ドナーの熱的消光の確率、とすると、ドナー蛍光の確率は、
1−PF−PTD
また蛍光を発するドナー分子数は、
(K)(eD)(1−PF−PTD)
である。ドナー発光ウィンドウ(たとえばバンドパスフィルタ・ウィンドウ)内でのドナー発光を検出する確率をPDDとすると、観察されるドナー発光個数は、
(PDD)(K)(eD)(1−PF−PTD)
ここで、励起されたアクセプターフルオロフォア数が直接励起されたアクセプターと共鳴エネルギー転移により励起されたアクセプターの和であるので、
(K)(eA)+(K)(eD)(PF)
PTA=アクセプターの熱的消光の確率とすると、アクセプター蛍光の確率は、
1−PTA、
また蛍光を発するアクセプター分子の個数は、
[(K)(eA)+(K)(eD)(PF)][1−(PTA)]
またアクセプター発光ウィンドウ内でアクセプター発光を検出する確率をPAAとすると、観察されるアクセプター発光の個数は、
(PAA)[(K)(eA)+(K)(eD)(PF)][1−(PTA)]
最後に、アクセプター発光ウィンドウ内でドナー発光を観察する確率をPDAとした場合に、アクセプター発光ウィンドウ内で観察される(DとAの両方の)発光の個数は、
(PAA)[(K)(eA)+(K)(eD)(PF)][1−(PTA)]+
(PDA)(K)(eD)(1−PF−PTD)
蛍光測定は相対的でありKが全ての項で存在することから、Kを除外して式を組み立て直すと、ドナーウィンドウで観察される強度は(ドナー励起)−(エネルギー転移)に比例し:
1)(eD)(pDD)(1−PTD)−(eD)(PDD)(PF)
またアクセプターウィンドウで観察される強度は(アクセプター励起)+(エネルギー転移)+(アクセプターウィンドウでのドナー発光)に比例するから、
2)(eA)(PAA)(1−PTA)+(eD)(PDD)(PF)(1−PTA)
+(eD)(PDA)(1−PTD−PF)
共鳴エネルギー転移が増加すると、ドナーシグナルが減少してアクセプターシグナルが増加する。百分率シグナル変化は各ウィンドウ内のバックグラウンド光強度に依存する。プローブの濃度が高いと、バックグラウンド光強度が高い。PCR中、標的(生成物)濃度変化をモニタする必要がある場合、ドナー濃度を標的濃度と一致させることは可能ではない。過剰なドナー分子がドナー及びアクセプターウィンドウの両方でのバックグラウンド光強度に関係し部分的にエネルギー転移現象を隠蔽する。アクセプターウィンドウでのバックグラウンド光はアクセプターウィンドウ内でのドナー発光だけではなくアクセプターの直接励起からも発生する。このバックグラウンドはeAが低くPDAも低いと最少にできる。
【0091】
フルオレセイン/ローダミン蛍光エネルギー転移対は、核酸検出に共通に使用され、高いバックグラウンド蛍光を有している。直接アクセプター励起(eA、ほぼ10%emax)と、アクセプター発光(PDA、ほぼ20%ピーク発光)を検出するために使用される波長でのドナー発光の双方が高い。この対はプローブ濃度が標的濃度に近くハイブリダイゼーションを完了するのに充分な時間が与えられている場合にハイブリダイゼーションをモニタするために使用できる。高いプローブ濃度が必要とされPCRでのテンプレート濃度が連続的に変化することから、PCRの連続モニタでは蛍光体の有用な対ではない。
【0092】
ハイブリダイゼーションによるPCR中の生成物濃度のモニタリングは、受け入れ可能な共鳴エネルギー転移対が見付からなかったため過去においては不可能だった。共鳴エネルギー転移を直接「非競合的」ハイブリダイゼーション検出に使用する試みが幾つかなされてきた。たとえば、米国特許第5,565,322号では「アクセプターによる再発光に関して観察されるエネルギー転移効率は比較的低い」と述べている。有意なハイブリダイゼーションが秒単位で起こせる程にまで充分に高いプローブ濃度では、バックグラウンド蛍光が高すぎる。
【0093】
フルオレセインは恐らくもっとも広範に使用されている蛍光物質である。これの減衰係数と量子効率は高く、顕微鏡下、イムノアッセイ、フローサイトメトリーで広く使用されている。これはローダミンと併せて共通に使用される共鳴エネルギー転移対でのドナーである。Cy5は一般的な赤色発光蛍光物質で減衰係数が非常に高い。Cy5のN−ハイドロキシサクシニミド・エステルの構造を図6に図示し、関連した染料であるCy5.5の構造を図7に図示してある。これらの染料はインドジカルボシアニン染料で、フローサイトメトリーや自動蛍光シーケンサで共通に使用されており、アマシャム(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手できる。フルオレセインとCy5はどちらもオリゴヌクレオチドへの直接自動組み込み用にアミダイトとして商業的に利用できる。しかし、Cy5はフルオレセインとの共鳴エネルギー転移対として報告されたことがない。直感的に理解されるようにフルオレセイン発光とCy5吸収は共鳴エネルギー転移を考慮するには充分にオーバラップしていない。フルオレセインの発光スペクトルとオリゴヌクレオチドに付着したCy5の吸収スペクトルは図8に図示してある。曲線の下側の領域を正規化すると、技術的スペクトルからのオーバラップは19%である。Cy5.5の励起は約25ナノメートルだけ赤色に変移しており、フルオレセイン発光とのオーバラップは約15%にまで減少する。スペクトルの赤色、赤外領域での作業は測定機材の光学部品を選択する際に有利である。照射用にレーザーダイオードを使用でき、フォトダイオード検出器は優れた感度を有しており、大半の材料は関係のあるスペクトル領域で自発蛍光が最少である。
【0094】
スペクトル的なオーバラップが低いにもかかわらず、フルオレセインとCy5又はCy5.5の一方とがPCR中のハイブリダイゼーションモニタリングに優れた共鳴エネルギー転移対を構成することが発見された。
【0095】
<実施例3>
内部プローブCAAACAGACA CCATGGTGCA CCTGACTCCT GAGGAフルオレセイン(配列ID No. 3)とCy5−GAAGTCTGCC CTTACTGCCC TGTGGGGCAA G−p(配列ID No.18)それぞれ0.2μモルと0.8単位KlenTaq1ポリメラーゼ(Taqポリメラーゼの5’−エクソヌクレアーゼ欠損変異体──米国特許第5,436,149号)を10μl反応で用いた実施例2の手順にしたがって、110bpβグロビンフラグメントを50ngヒトゲノムDNAから増幅した。プローブは同一鎖でプライマーに内部ハイブリダイゼーションし何らかの介在塩基なしにすぐ隣接していた。
【0096】
プローブとプライマーは、従来技術で公知のように標準的ホスホラミダイト化学により、即ちファルマシア・バイオテック遺伝子アセンブラ・プラス(Pharmacia Biotech Gene Assembler Plus)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用して合成した。3’−フルオレセイン標識したプローブはフルオレセイン標識したCPGカセット(グレン・リサーチ社、バージニア州スターリング)上で最終トリチル−ONをC18逆相HPLC精製の補佐に用いて合成した。遅い溶出ピークを回収し、トリチル残基をポリパック(グレン・リサーチ社)で除去した。フルオレセイン標識オリゴヌクレオチドは50%アセトニトリルで溶出しC18逆相HPLCでもう一度精製した。5’−Cy5−標識プローブは3’末端の化学的リン酸化剤(グレン・リサーチ社)を用い、トリチル−OFF合成中にCy5アミダイト(ファルマシア社)を5’末端に追加して合成した。失敗した配列はC18逆相HPLCで除去した。プローブ純度はポリアクリルアミド電気泳動と染料及びオリゴヌクレオチドの吸光度でチェックした。
【0097】
HPLCは4×250mm Hypersil ODSカラム(ヒューレットパッカード社)で0.1Mトリエタノールアミン:酢酸移動相とアセトニトリル・グラジエントを用い1ml/分で行なった。溶出は吸光度(A260)と蛍光(フルオレセインでは490nm励起、520nm発光、またCy5については650nm励起、670nm発光)をモニタした。トリチレート及びフルオレセイン標識オリゴヌクレオチドは10〜20%のアセトニトリル・グラジエントに溶出し、Cy5標識オリゴヌクレオチドは10〜40%アセトニトリル・グラジエントに溶出した。
【0098】
温度サイクルは、20℃/毎秒のプログラム式アプローチ速度で94℃0秒、アプローチ速度20℃/毎秒で60℃20秒、また1℃/毎秒のアプローチ速度で75℃0秒とし毛細管蛍光高速温度サイクラによった。温度サイクル中、フルオレセインとCy5の蛍光はアニーリング・伸長セグメントの終りで各サイクルで取得した。共鳴エネルギー転移は増幅サイクル26あたりで始まったフルオレセイン蛍光の減少とCy5蛍光の増加の両方として観察された(図9)。一般に、フルオレセイン蛍光に対するCy5の蛍光比は好適である。
【0099】
フルオレセイン/Cy5対で予想しない良好な結果について、少なくとも部分的には説明を付けることができる。重なり積分JDAはスペクトルのオーバラップだけでなく、アクセプターの減衰係数にも依存し(Cy5は650nmで250,000Mー1cm-1の減衰係数を有する)、波長の4乗で変化する。これらの要素のどちらも、スペクトル的オーバラップが低いとしてもCy5で高いJDAに有利である。最近、フィコエリスリンとCy7は、スペクトル・オーバラップが低いにもかかわらず、免疫蛍光に有効なタンデム・プローブであると示された。後者の例で、ハイブリダイゼーション・プローブの標識としてのフルオレセインとCy5.5の有用性が示されている。蛍光共鳴エネルギー転移は相互作用する染料がスペクトル的に低いオーバラップを有している場合でも核酸ハイブリダイゼーションをモニタするために使用することができる。フルオレセインとCy5,Cy5.5,及びその他の赤色又は赤外発光染料をハイブリダイゼーションのモニタリング用共鳴エネルギー転移対として使用することは従前には認識されて来なかった。フルオレセインは600nm、700nmに及ぶ長い発光「尾部」を有し遠赤色や赤外染料を励起するのに使用できる範囲を越えている。エネルギー転移レートは重なり積分に依存するが、これも蛍光物質間の距離の6乗で起こる。共鳴エネルギー転移染料が接近するようにプローブが設計されている場合、転移レートは高い。少なくともフルオレセイン/Cy5,フルオレセイン/Cy5.5,及び同様の対で、蛍光物質が介在塩基なしに隣接プローブに付着される上記実施例と同様に蛍光物質どうしが接近している場合に、共鳴エネルギー転移は衝突消光やその他の形のエネルギー損失より優位であるように見える。
【0100】
ハイブリダイゼーション・プローブとしての共鳴エネルギー転移対の潜在的有用性は極小及び極大共鳴エネルギー転移でのドナー及びアクセプターの光強度比の変化を観察することにより判定することができる。極小及び極大の転移を得る1つの方法としては、両方の蛍光物質を同一オリゴヌクレオチドに付着させホスホジエステラーゼによる消化の前後で蛍光比を測定することが挙げられる。
【0101】
<実施例4>
2重標識フルオレセイン/Cy5プローブCy5−CTGCCG−F−TACT GCCCTGTGGG GCAAGGp(配列ID No.19)を標準ホスホラミダイト化学で合成した。ここでpは末端3’リン酸(化学的リン酸化剤、グレン・リサーチ社)、Fは2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール骨格を有するアミダイトとして自然の3炭素ヌクレオチド間リン酸ジエステル距離を保つために導入したフルオレセイン残基(クロンテック社、カリフォルニア州パロアルト)、Cy5はアミダイトとして添加(ファルマシア社)した。0.1MトリスpH8.0でのフルオレセイン蛍光に対するCy5の比はホスホジエステラーゼ(シグマ、モンタナ州セントルイス)による完全加水分解の前後に得られた。蛍光比の変化は加水分解後に220倍だった。2重標識フルオレセイン/ローダミン・プローブF−ATGCCCT*CCC CCATGCCATC CTGCGTp(配列ID No.20)をパーキン・エルマー社(カリフォルニア州フォスターシティ)から購入した。ここでFはフルオレセイン、*はアミノ・リンカー腕で改変T残基に付着させたローダミンである。蛍光比の(フルオレセインに対するローダミンの)変化はホスホジエステラーゼによる加水分解後に22倍だった。
【0102】
フルオレセイン/Cy5対からの潜在的シグナルはフルオレセイン/ローダミン対のそれより10倍だった。
【0103】
<実施例5>
PCR中のフルオレセイン及びCy5で標識した隣接ハイブリダイゼーション・プローブの比率、濃度、間隔の影響について研究した。βグロビン遺伝子座と実施例3のプローブ対の増幅を用いCY5のフルオレセインに対する蛍光比の最大変化を観察した。極大シグナルはCy5のフルオレセイン標識プローブに対する比が2:1の場合に発生した(図10)。2:1の比では、最良のシグナルは、フルオレセイン・プローブ濃度0.2μモル、Cy5標識プローブ濃度0.4μモルで発生した(図11)。PCR中に隣接ハイブリダイゼーション・プローブの間で最適な介在塩基数も決定した。長さが同じでハイブリダイゼーション位置が僅かに変移している数種類のプローブを実施例3にしたがって合成し、βグロビン標的にハイブリダイゼーションした場合に、プローブ間に0,1,2,3,4,又は6塩基が残るようにした。PCR中で最高のシグナルは介在塩基数1で発生した(図12)。ある程度の共鳴エネルギー転移が15塩基の間隔又25塩基でも検出されたが、もっと良好な転移は0〜5塩基で発生した。
【0104】
ヘラーら(米国特許第4,996,143号)は、蛍光物質間のヌクレオチド数が4から0ユニットに減少するとエネルギー転移効率が減少することを発見した。対照的にフルオレセイン/Cy5対による最高のエネルギー転移は介在ヌクレオチド数が0から2で見られた。
【0105】
===ハイブリダイゼーション・プローブ法===
標的に隣接してハイブリダイゼーションする2つのプローブを合成し各々を共鳴エネルギー転移対の一方の蛍光物質で標識した場合、共鳴エネルギー転移はハイブリダイゼーションが起こった場合に増加する(図5C)。フルオレセイン/ローダミン対は核酸検出でもっとも共通に使用されている。
【0106】
本発明の1つの側面はPCR生成物の検出のために配列特異性の均質ハイブリダイゼーション法を提供することである。どのようにすればこれを実現できるかは明らかではない。増幅中にハイブリダイゼーション・プローブを使用するのは直感的に分かり辛い。プローブのハイブリダイゼーションとポリメラーゼ伸長が両方とも起こり得るとは思われない。配列特異性の蛍光を得るためには、プローブをハイブリダイゼーションする必要があるが、ポリメラーゼがプライマー伸長を完了し指数関数的にDNAを増幅すべき場合にはプローブはハイブリダイゼーションできない。
【0107】
この問題に対する1つの解決策は、2重標識した単一のプローブを使用し、共通の熱安定性DNAポリメラーゼの5’−エクソヌクレアーゼ活性を用いて伸長中のプローブを割断し、これによって2つの蛍光物質を分離することである。この場合、蛍光シグナルはプローブ加水分解時に共鳴エネルギー転移対の分離から発生し(図5B)、隣接ハイブリダイゼーションによる蛍光物質の接近によるものではない(図5C)。しかし、2重標識プローブは作成が困難で、オリゴヌクレオチドへ少なくとも一つの蛍光物質を用手的に追加する必要があり、一般に相当以上の精製を必要とする。プローブは高価であり、2種類の2重標識プローブが標的の競合的定量又は突然変異検出に必要である。さらに問題なのは観察される蛍光が加水分解されたプローブの累積量によって変化することで、何らか任意のサイクルに存在する生成物の量に直接依存しないことである。これによってPCRのプラトー域に達した後でも蛍光が連続的に増加する。最後に又もっとも重要なことに、プローブの加水分解はポリメラーゼ伸長中に必ず発生するわけではなく、この効果は良く理解されていない。たとえば、実施例4の2重標識フルオレセイン/Cy5プローブは、プライマーによって挟まれた場合にPCR中に非常に乏しい加水分解を示した。実際、数種類の2重標識フルオレセイン/Cy5プローブが、末端標識したプローブを含めて作成され、その全てが乏しい加水分解と増幅中のシグナル精製を示した。
【0108】
隣接ハイブリダイゼーション・プローブのあるPCR生成物の均一な検出は5’−エクソヌクレアーゼ系に見られる問題の多くを解決する。隣接ハイブリダイゼーション・プローブの合成は、フルオレセインとCy5両方のアミダイトが自動合成中の直接組み込み用に入手できるためと1つのプローブの2重標識化が必要とされないため、比較的簡単である。加水分解ではなくハイブリダイゼーションから蛍光が得られるので、プローブ蛍光の温度依存性を変移検出と定量に用いることができる。しかし、PCR生成物の均一検出に隣接ハイブリダイゼーション・プローブを用いることはこれまで報告されていない。驚くべきことに、シグナル精製のためのハイブリダイゼーションとプローブによってブロックされた領域を通るポリメラーゼ伸長による増幅がどちらも起こり得る。
【0109】
<実施例6>
110bpβグロビンフラグメントを、実施例3に記載した隣接フルオレセイン及びCy5標識プローブを用いてゲノムDNAから増幅した。10μl反応に0.4U(Taq)又は0.8U(Stoffelフラグメント、パーキン・エルマー社、又はKlenTaq1)いずれか一方の酵素を使用した。特に示していない限り、温度サイクルはプログラム式アプローチ速度20℃/毎秒で94℃0秒、アプローチ速度20℃/毎秒で60℃20秒、アプローチ速度1℃/毎秒で75℃0秒とした。図13は30サイクルにわたってテンプレートを増幅した直後での2種類の隣接ハイブリダイゼーション・プローブによる蛍光の発生を示す。短時間の94℃での変性後、温度を60℃まで下げ約20秒にわたり蛍光が増加した。シグナル強度は5’−エクソヌクレアーゼ活性を含む自然のTaqポリメラーゼよりもエクソヌクレアーゼ欠乏ポリメラーゼ(Stoffelフラグメント)のほうが大きかった。約20秒後、ポリメラーゼがプローブを移動および/または加水分解すると蛍光は低下する。蛍光の相対的低下は、ポリメラーゼが5’−エクソヌクレアーゼ活性を有する場合(TaqDNAポリメラーゼ)のほうがこの活性を欠く場合(Stoffelフラグメント)より僅かに早い。
【0110】
図14(上部パネル)において、94℃と60℃の間で温度をサイクルし60℃で20秒保持している。蛍光が最大になる20秒の終りで蛍光を採取する。Taq(exo+)では良好な増幅が見られるが、蛍光の発生とアガロースゲル(ゲルは図示していない)両方で確認されるようにStoffelフラグメント(exo−)では発生しない。しかし、60℃での時間を20秒から120秒に伸長すると(図14,中央パネル)、exo−ポリメラーゼも良好に増幅する。exo−ポリメラーゼによるプローブ移動速度が遅いことは、見かけ上exo+ポリメラーゼより効率的な増幅に60℃でさらに時間を必要とする。exo−ポリメラーゼに必要な時間は60℃から75℃へ温度をゆっくりと上げることによって減少できる(図14,下部パネル)。ポリメラーゼはプローブに到達すると停止する。しかし、プローブ解離温度では、プローブがテンプレートを解離しポリメラーゼは鎖の重合完了まで妨害されずに進行する。重合はプローブ解離後に温度があまり急速に上昇しない限り完了する。図14は(下部パネル)exo+ポリメラーゼ1種類(Taq)とexo−ポリメラーゼ2種類(StoffelフラグメントとKlenTaq1)を示す。
【0111】
エクソヌクレアーゼ活性が存在する場合、幾つかのプローブは大幅増幅による蛍光の減少によって明らかになるように各サイクルで加水分解されている。これは図13及び図14(中央と下部のパネル)で観察されるが、exo−ポリメラーゼでは発生しない。蛍光が大幅増幅で安定していることから、KlenTaq1などのexo−ポリメラーゼが適当である。
【0112】
隣接ハイブリダイゼーション・プローブを使用してのPCRのモニタリングが成功するかどうかは幾つかの要因によって決まる。共鳴エネルギー転移は隣接ハイブリダイゼーション・プローブ間に0から2個の介在塩基が存在する場合に最大になる。プライマーがプローブ・ハイブリダイゼーション領域で伸長する前にプローブにハイブリダイゼーションする鎖の一部を増加させるには、プローブ解離温度をプライマー解離温度より高くすべきである(望ましくは>5℃)。
【0113】
===サイクル毎の蛍光===
ゲル電気泳動によるDNA増幅における従来のエンドポイント分析では生成物のサイズを同定して純度を推定している。しかし、増幅は、最初は確率論的に、次に指数関数的に、最後には停滞的に行なわれるので、エンドポイント分析の使用は定量に限られる。本発明の1つの側面には、ハイブリダイゼーション・プローブによる初期テンプレートのコピー数の定量のためのサイクル毎のモニタリングが含まれる。当業者には理解されるように、DNA増幅を行なっている多数サンプルのサイクルあたり1回のモニタリングは強力な定量ツールである。サイクル毎モニタリングは各サイクルの伸長又はアニーリング/伸長組み合わせフェーズの間に蛍光を観察し蛍光を生成物濃度と相関することによって実現される。
【0114】
<実施例7>
3種類の異なる蛍光技術によりPCRのサイクル毎モニタリングを行なった。蛍光は、(i)二重鎖特異性染料であるSYBRTMグリーンI、(ii)2重標識加水分解プローブのエクソヌクレアーゼ開裂後のローダミンによるフルオレセイン消光の減少、(iii)隣接ハイブリダイゼーション・プローブによるフルオレセインからCy5への共鳴エネルギー転移、によりモニタした。増幅試薬及び条件は実施例2に記載した通りとした。ヒトβグロビン・プライマーであるRS42/KM29(536塩基対)とPC03/PC04(110塩基対)についてはC.T.ウィットワーら、熱気による毛細管内自動ポリメラーゼ連鎖反応(C. T. Wittwer et al., Automated polymerase chain reaction in capillary tubes with hot air, 17 Nucl. Acids. Res. 4353 - 4357 (1989))に説明されており、本明細書で参照に含まれる。βグロビンの温度サイクルは最高95℃、最低61℃、72℃15秒間で温度間の平均レートは5.2℃/秒だった。βアクチン・プライマーとフルオレセイン/ローダミン2重標識プローブはパーキン・エルマー(番号N808−0230)から入手した。βアクチンの温度サイクルは最高94℃、60℃15秒間で温度間平均レートは6.2℃/秒だった。単一標識プローブである5’−CAAACAGACA CCATGGTGCA CCTGACTCCT GAGGA−フルオレセイン−3’(配列ID No.3)と5’−Cy5−AAGTCTGCCG TTACTGCCCT GTGGGGCAAGp(配列ID No.4)を実施例3の通りに合成した。これらの隣接プローブは同一DNA鎖のPC03/PC04βグロビン・プライマー対と内部ハイブリダイゼーションし塩基対1個で隔てられる。温度サイクルは最高94℃、59℃20秒間で温度間平均レートは7.0℃/秒だった。ハイブリダイゼーション・プローブ(βアクチンとβグロビン)は各々0.2μモルで使用した。
【0115】
SYBRTMグリーンIにより多数サンプルを各サイクルで一度にモニタする場合、10の7乗から10の8乗の初期テンプレート濃度範囲が図15に図示してあるように識別できる。この増幅は2重特異性染料としてSYBRTMグリーンIを用いたβグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントによるものである。各サンプルのパーセント最大蛍光でデータを正規化した場合、初期100コピーが10コピーから明らかに分離した。しかし、1と10コピーの間の相違は微妙(marginal)であり、サンプルあたり0及び1平均コピー間での相違は観察されなかった。
【0116】
これとは対照的に、配列特異性プローブは同様のダイナミックレンジを有するが、陰性対照から単一の初期テンプレートコピーでさえ識別するように見える。5’−エクソヌクレアーゼ・プローブ(βアクチン・フラグメント、図16)のシグナル生成はDNA合成に依存する他、2重標識プローブの蛍光物質間のハイブリダイゼーションと加水分解を必要とする。この加水分解は消光を減少させ、フルオレセインのローダミン発光に対する蛍光比が増加する。二重鎖染料からの蛍光が過剰サイクルでレベル低下する一方(図15)、エクソヌクレアーゼ・プローブからのシグナルは各サイクルで増加し続ける(図16)。実質生成物が合成されていないとしてもプローブのハイブリダイゼーションと加水分解は起こり続ける。テンプレートのコピー数が10の3乗未満に減少すると、シグナル強度は減少するものの、陰性対照シグナルが安定していることから少ないコピー数をまだ定量することができる。
【0117】
図17において、増幅は隣接ハイブリダイゼーション・プローブを用いてモニタしておりCy5のフルオレセイン蛍光に対する比率として表現している。蛍光比の変化は大半が共鳴エネルギー転移からのCy5蛍光の増加によるものである(図9)。2重標識加水分解プローブとは対照的に、ハイブリダイゼーション・プローブの蛍光シグナルはポリメラーゼがエクソヌクレアーゼ活性を含む場合高いサイクル数で減少する(図14も参照)。
【0118】
PCR中のハイブリダイゼーションの共鳴エネルギー転移検出に2種類の異なる方法を用いる本発明の実現可能性をここで示すことにする。第一の方法は、一方が3’末端にフルオレセイン、他方が5’末端にCy5を標識してある2種類の隣接ハイブリダイゼーション・プローブを使用する。PCR中に生成物が多くなると、プローブは各サイクルのアニーリング・セグメントの間に互いに隣接してハイブリダイゼーションする。第2の方法はCy5を標識したプライマーと単一のハイブリダイゼーション・プローブを使用する。標識プライマーは増幅中にPCR生成物に組み込まれ単一のハイブリダイゼーションしか必要としない。
【0119】
<実施例8>
Cy5標識プライマーとフルオレセイン標識ハイブリダイゼーション・プローブの間の共鳴エネルギー転移によるPCRのサイクル毎モニタリングを行なった。これを、隣接Cy5/フルオレセイン・ハイブリダイゼーション・プローブによるモニタリングと比較した。Cy5標識プライマーはCAACTTCATC CACGT*TCACC(配列ID No.21)、ただしT*はCy5を付着させた改変T塩基、またこれに対応するプローブはGTCTGCCGTT ACTGCCCTGT GGGGCAA−フルオレセイン(配列ID No.22)だった。隣接ハイブリダイゼーション・プローブはCCTCAAACAG ACACCATGGT GCACCTGACTCC−フルオレセイン(配列ID No.23)、及びCy5−GAAGTCTGCC GTTACTGCCC TGTGGGGCAAp(配列ID No.24)だった。ハイブリダイゼーション・プローブは実施例3にしたがって合成し0.2μモルで使用した。Cy5標識プライマーは2ステップで合成した。自動合成を用いて所望するT位置にアミノ・モディファイアC6dT(グレン・リサーチ社)を組み込んだ。次に、Cy5の1価N−ハイドロキシサクシニミド・エステル(図6)をメーカー指示(アマシャム)にしたがってアミノ・リンカに用手的に結合した。HPLC精製は実施例3に説明した通りに行なった。
【0120】
Cy5標識プライマー(0.5μモル)をPCO4の代わりに使用して、実施例3と同様にヒト・ゲノムDNAから110塩基対βグロビンフラグメントを増幅したが、10μlあたりTaqポリメラーゼ0.4単位を使用した点が異なる。隣接ハイブリダイゼーション・プローブでも同一のβグロビンフラグメントの増幅をモニタした。温度サイクルは94℃0秒及び60℃20秒で行なった。蛍光は各サイクルとも1回アニーリング/伸長区間の終りにモニタした。両方法において、Cy5の共鳴エネルギー転移はハイブリダイゼーションで増加しており、Cy5のフルオレセイン蛍光に対する比としてプロットしてある(図18)。
【0121】
追加の実験において、Cy5標識とフルオレセイン標識を隔てている塩基数を変化させた。最高の蛍光共鳴エネルギー転移は蛍光物質間の約4〜6塩基で観察されたが、シグナルは少なくとも15塩基まで検出可能だった。
【0122】
加水分解プローブとは対照的に、ハイブリダイゼーション・プローブからの蛍光シグナルは累積したものではなく、各アニーリング・フェーズの間に新規に発生している。ハイブリダイゼーションは疑似一次反応であるため蛍光が生成物濃度の直接的指標である。プローブ濃度が生成物より大幅に高いことからプローブにハイブリダイゼーションした生成物の一部分は生成物濃度に依存しない。こうした特性は標識プライマーと一緒に単一のハイブリダイゼーション・プローブを使用することで定量のために生成物堆積の優れたモニタを提供し得るであろうことを示している。サイクル毎モニタリング中の異なる蛍光技術に固有の変動も定量には重要である。
【0123】
<実施例9>
3種類の異なる蛍光モニタリング方の各々について実施例2にしたがってDNA増幅を実施した。プライマーKM29とPC04からの205塩基対ヒトβグロビンフラグメントの増幅においてSYBRTMグリーンIを1:10,000倍希釈で使用した。加水分解プローブと条件は実施例7に指定したものである。ハイブリダイゼーション・プローブTCTGCCGTTA CTGCCCTGTG GGGCAAG−フルオレセイン(配列ID No.5)をKM29、またCy5標識プライマーCAACTTCATCCACGTT*CACC(配列ID No.6)と用い、ここでT*は実施例8と同様に合成したCy5標識T塩基とした。全ての増幅は15,000テンプレート・コピーによる10複製(ヒトゲノムDNA50ng/10μl)で行なった。温度サイクルは長さ31秒(最高94℃、60℃20秒間、温度間平均レート6.2℃/秒)だった。蛍光はアニーリング/伸長フェーズの15秒目から20秒目の間で各サンプルについて観測した。
【0124】
図19ではPCRについて3種類の蛍光モニタリング技術を比較できる。蛍光プローブは二重鎖DNA染料SYBRTMグリーンI(図19A)2重標識フルオレセイン/ローダミン加水分解プローブ(図19B)、フルオレセイン標識ハイブリダイゼーション・プローブとCy5標識プライマー(図19C)である。全部のプローブがサイクル20付近で発生する検出可能な蛍光に対してほとんど同じ感度を有していた。増幅を伸長すると、シグナルは加水分解プローブに併せて増加を続け、SYBRTMグリーンIで同等、またハイブリダイゼーション・プローブで僅かに減少した。3種類の蛍光モニタリング技術の精度は図19Dで比較している。平均±標準偏差が各点についてプロットしてある。データは基線以上の蛍光比(サイクル11〜15の平均として取った)の変動係数(標準偏差/平均)としてプロットした。
【0125】
加水分解プローブからの蛍光比変化はハイブリダイゼーション・プローブからのそれより大きい(図19B及び図19C)が、加水分解プローブからの蛍光の変動係数の方が大きい(図19D)。つまり、ハイブリダイゼーション・プローブ法から得られる蛍光は、絶対シグナルレベルが低いとしても、加水分解プローブを用いるより正確である。これは一般的な2重標識加水分解プローブに勝るハイブリダイゼーション・プローブの予期しなかった利点である。
【0126】
===初期テンプレート・コピー数の定量===
定量PCRは医生物学的研究と臨床検査の双方で重要な技術となった。定量処理は標的配列の既知のコピー数を含むサンプルの標準曲線を作ることを含む。未知のサンプルのコピー数は既知の値の間に外挿することで決定される。完全な増幅曲線が存在するDNA量に比例したシグナルをもたらす蛍光、放射線、又は何らかの他の方法を用いてサイクル毎にモニタされる場合、分析には多くのデータ点を利用でき、標準又は未知を表わすのにどの値を選択するかは明確ではない。従来技術ではシグナルの「閾値」を選択して標準又は未知が代表的な値としてその閾値と交差する時のサイクル数を使用している(ヒグチ&ワトソンのEPA0 640 828 A1出願を参照)。このアプローチは増幅曲線で利用可能なデータのうちの非常に少ない量を使用するものである。さらに、閾値の割り当ては非常に主観的であり意識的又は無意識的な偏倚を受ける。非線形カーブフィッティング技術を増幅曲線のデータに適用することによりもっと多くの利用可能なデータを客観的に使用することができる。望ましくは、基本となる過程の要因をモデル化することによって増幅曲線の形状を記述する式を見付けるのが良い。
【0127】
多数の異なる式を用いて増幅中に作成したデータをカーブフィッティングすることができる。DNA増幅は代表的には対数線形セグメントを有するのでこのセグメントのデータをDNA増幅で想定したのと同様の指数関数的増加を記述する式に当てはめることができる。DNA増幅の対数線形部分は次式によって記述できる:
y=A*[DNA]*(1+E)n
ここでAはシグナルの単位をDNAの単位に変換する倍率係数、[DNA]は反応におけるDNAの開始濃度、Eは反応の効率、nはサイクル数である。
【0128】
定量処理は、(1)既知の標準をこの式に当てはめてパラメータAとEが浮動するようにし、(2)標準からAとEの値を用いて未知のサンプルを式に当てはめ[DNA]が浮動するようにする。この技術はもっと多くのデータを使用しており、もっとも情報量が豊富であろうと思われるデータの一部である対数線形部分を使用している。図20,図21,図22はこのアプローチの例を示す。精製PCR生成物の10倍希釈を標準曲線として増幅し「未知の」ヒトゲノムDNA鎖を用いた。図20は対数線形部分が使用者又はソフトウェアどちらかによって簡単に同定されることを示している。図21は10の4乗コピー標準への式y=A*[DNA]*(1+E)nの適用を示す。図22はAとEについて数個の標準からの平均値を使用し[DNA]を適用する。適用した値16,700はゲノムDNAの単一コピー遺伝子についての理論値(15,000コピー)に非常に近い。
【0129】
増幅曲線のデータ全部を使用するとバックグラウンド・レベルとプラトー値が含まれる。高いコピー数ではプラトーが情報量豊富でないものの、低いコピー数では開始コピー数に比例することが多い。バックグラウンド・レベルはシグナルの有意な増加を示す最初の点を決定するのに有用であろう。この時点でDNA増幅曲線の形状に関係する全ての要因が既知ではないので、1つのアプローチで曲線の形状を記述する。図23は蛍光ハイブリダイゼーション・プローブを用いてDNAテンプレート濃度の5桁の大きさ範囲を検出する増幅曲線を示す。各々の曲線は次式にフィッティングする:
y={(as*x+ab)−(ds*x+db)}/(1+(x/c)^b)+(ds*x+db)
ここで「as」は傾斜線のバックグラウンド、「ab」はバックグラウンド線のy切片、「ds」はプラトー線の傾き、「db」は傾斜線のy切片、「c」はサイクル数で、反応はバックグラウンドからプラトーの中央(A50)である。また「b」は増幅の対数線形部分の傾きである。
【0130】
この式はこの増幅データに良好なカーブフィッティングを示し、図24はA50の値が7桁の大きさにわたる開始コピー数の対数と良く相関していることを示す。図25は加水分解プローブを用いて5桁の大きさ範囲にわたるDNAテンプレートを検出した増幅からのデータに適用した同じ式を示す。この式はこの増幅データに良好なカーブフィッティングを示しており、図26はA50の値が開始コピー数の対数と良く相関していることを示している。これは式がハイブリダイゼーション・プローブ増幅曲線のシャープなプラトー群と加水分解プローブ曲線の安定的に増加する「プラトー」群の双方に対して良好なカーブフィッティングを与えることから全カーブフィッティング・アプローチの柔軟性を明示している。
【0131】
全カーブフィッティングはこの式に限定されない。図27は次式への3種類の濃度のDNAテンプレート・フィッティングの増幅を示している:
y=(((as*x+ab)−(dmax*x/dd+x)/(1+(x/c)^b))+(dmax*x/dd+x)
これは最初の6パラメータの式と似ているが直線ではなく双曲線によってプラトーが定義されている点が異なっている。図28はこの式についてのA50が開始コピー数に良く相関することを示す。
【0132】
A50を上記実施例では用いたが増幅プロファイルにおいて特定の技術がもっと頑丈に低いか又は高い場合にバックグラウンドとプラトーの間のレベルを選択できる。たとえば一連の増幅標準曲線を開始コピー数とA50、A40,A30,A20,A10の間の最高の相関について評価する。既知の開始コピー数と最も良く相関する増幅のレベルが決定される。これは違う検出系では異なったものになる。図19は各種検出システムでの変動係数を示す。最も良く予測している増幅レベルは変動係数が最低のレベルになり易いと思われる。
【0133】
DNA増幅反応自体が良く理解されるようになると、物理的処理を反映するパラメータを有する他の式を用いることができる。DNA増幅曲線のプラトーは異なる反応で異なった原因を有している。これはプライマーが後の方のサイクルで生成物アニーリングを完了できないことに由来することが多い。この効果は反応生成物濃度の自乗に依存するパラメータで捕捉できる(アニーリング・レートは生成物濃度の自乗に比例する)。プラトーの別の原因はプライマーの欠乏であり得る。プライマーで制限される反応は特徴的な形状を有し、識別し得る非常にシャープなプラトーを有している。プライマーで制限される反応のフィッティングはこのシャープな頂点を定義するパラメータを含む。酵素制限反応は非常に丸いプラトーを有しておりこれに合わせたカーブフィッティングができる。重み付け因子は任意のシステムで既知の変動係数を反映して信頼性の高いデータ点程重くなるように重み付けする工夫ができる。増幅プロファイルのより多くの点をカーブフィッティングすることにより、開始コピー数のより正確で頑丈な推定を得ることができる。1つまたはそれ以上のこれらのカーブフィッティング・パラメータを用いて未知のサンプルの開始コピー数を推定することができる。
【0134】
===PCRの連続蛍光モニタリング===
本発明の特徴である連続モニタリング、即ち各PCRサイクル内での多数回モニタリングについてここで議論する。PCR中の蛍光モニタリングは一定温度で各サイクル中に1回ずつ行なうことができるが、本発明はPCRサイクル全体を通しての連続モニタを提供することの重要な利点を提供する。蛍光が温度変化につれて変化することから温度は重要である。図29Aと図29BはSYBRTMグリーンIについて温度と蛍光の間の逆比例関係を示している。これは温度サイクル中の困惑するような作用で、一定の伸長温度でサイクルあたり1回蛍光を考慮することで通常なら排除される。しかし、本発明によれば、温度変化中の蛍光をモニタするのは非常に情報量が豊富である。本発明以前には、各サイクル1回ずつに対向する各サイクル内の連続的な蛍光モニタリングは実施されていない。本発明によれば、時間、温度と蛍光を毎秒、200ミリ秒毎、100ミリ秒毎、又はもっと高頻度で取得する。このようなデータからは生成物の変性、アニーリング、伸長についてと従来利用できた方法では入手できなかった高速サイクル中のプローブ・アニーリング及び解離についての細かな詳細を見つけ出すことができる。
【0135】
<実施例10>
プライマー5’−CGTGGTGGAC TTCTCTCAAT−3’(配列ID no.1)及び5’−AGAAGATGAG GCATAGCAGC−3’(配列ID no.2)(ジーンバンク配列HVHEPB)を使用して精製PCR生成物の10の6乗個コピーからhepatitis BB型肝炎ウィルス表面抗原遺伝子の180塩基対フラグメントを増幅した。実施例2の増幅条件にしたがったが、反応には1:20,000倍希釈したSYBRTMグリーンIと2ミリモルのMgCl2を含んでいた点が異なる。各温度サイクルは長さ27秒(最高92℃、最低59℃、70℃5秒間、温度間平均レート3.0℃/秒)とした。時間、温度、2チャンネルの蛍光を200ミリ秒毎に測定し蛍光対サイクル数及び蛍光対温度プロットとして連続表示した。図30はサイクル10からサイクル34までの温度、時間、蛍光の三次元プロットを示す。またこの3D曲線は温度対時間、蛍光対時間、蛍光対温度の2次元プロットとして図30に投影されている。図30の温度対時間投影図は各サイクル毎に反復して基本的に図3で説明したのと同じ情報を提供する。蛍光が温度に逆比例して変化しているので、図30に図示してある初期サイクルでの蛍光対時間投影は温度対時間プロット(図29参照)を伸縮した鏡像になっている。生成物が蓄積してくると、二重鎖生成物により蛍光が全ての温度で増加する。しかし変性温度では一重鎖DNAしか存在していないため蛍光は基線レベルに戻る。図30に図示した二重鎖染料の蛍光対温度投影は時間軸を省いてありDNA増幅中の鎖の状態の温度依存性を示している。
【0136】
<実施例11>
ヒトβグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントを5μl容量で25ngのゲノムDNAと1:10,000希釈SYBRTMグリーンIから増幅した。各温度サイクルは長さ28秒(最高95℃、最低61℃、72℃15秒間、温度間平均レート5.2℃/秒)だった。他の条件は図30において説明したのと同じである。サイクル15からサイクル40を表示した。PCR中の生成物鎖状態の温度依存性は図31に図示してあるように蛍光対温度プロットを用いて明らかにした。図示した初期サイクルは同一に見え、低い温度での蛍光の非線形的増加があった。増幅が進むにつれ、温度サイクルはアニーリング及び変性温度の間のループが上昇するように見える。サンプルを加熱すると、変性が起こるまで蛍光は強い。サンプルが冷えると、蛍光が増加し、生成物アニーリングを反映している。温度が伸長中に一定の時、蛍光の増加は追加DNA合成と相関する。
【0137】
本開示の理解によって明らかになるように、サイクル内の連続モニタは従来技術ではこれまで利用できなかったDNA増幅の機構に対する洞察を提供できる。本発明を用いると、これまではほとんど理解されていなかったDNA増幅の多くの態様が識別可能である。たとえば、高速サイクル増幅は1秒未満で生成物変性が起こることを主張しているが、一方で従来技術は10秒から1分間の変性を使用している。本発明による二重鎖染料を用いてリアルタイムで蛍光モニタすることにより生成物の解離を観察すると(図30及び図31)、短い変性時間を用いるのが効果的であることが示される。別の例として、既知の「プラトー効果」の多くの原因が示唆されているが、それらの間での識別にはほとんど利用できるデータがない。図31に図示してあるように、生成物のアニーリングは非常に高速である。実際、増幅サイクルの後の方では、冷却中に、プライマー・アニーリング温度に達する前に、生成物の大半が各サイクルでアニーリングしている。これは高速サイクル装置で5〜10℃/秒の冷却レートとした時に発生する。もっと緩徐な、従来技術の温度サイクラによる生成物のアニーリングはさらに広範囲になるのでこの望ましくない効果が大きくなる。生成物アニーリングが主要な、そして恐らくは唯一の、「プラトー効果」の原因であるように思われる。
【0138】
ここで排列特異性プローブの連続モニタリングについて考察してみる。本開示の理解によって分かるように、サイクル内の連続モニタリングはプローブ蛍光の性質を同定できる。
【0139】
<実施例12>
2重標識加水分解プローブ(βアクチン)及び隣接ハイブリダイゼーション・プローブ(βグロビン)を実施例7と同様に用いて200ミリ秒毎の増幅連続モニタリングを実施した。図32Aには、加水分解プローブでモニタした反応のサイクル20〜サイクル45を図示してある。加水分解プローブは多くのプローブが加水分解されるにつれて温度による蛍光比の線形変化、及び蛍光の平行的な増加を示す。これとは対照的に、ハイブリダイゼーション・プローブからの蛍光比は温度でラジカルに変化する(図32B、サイクル20〜サイクル40)。アニーリング/伸長フェーズでは、プローブは一本鎖生成物にハイブリダイゼーションし、蛍光比(Cy5/フルオレセイン)が増加する。生成物変性温度までの加熱中に、プローブは約70℃で解離し、バックグラウンド・レベルまで蛍光比が戻る。
【0140】
<実施例13>
110塩基対βグロビンフラグメントを10μl容量で50ngのゲノムDNAから増幅した。実施例3の増幅条件と隣接ハイブリダイゼーション・プローブにしたがい0.4単位のTaqポリメラーゼ又は0.8単位のKlenTaq1どちらかを用いた。蛍光は100ミリ秒毎にモニタした。KlenTaq1(図33)とTaq(図34)を用いた蛍光対温度プロットは約70℃でのプローブ解離を示している。Taqのエクソヌクレアーゼ活性のため、KlenTaq1での極大シグナルはTaqのシグナルより大きい。Taqを用いた後の方のサイクルでは、未反応プローブの濃度が減少するにつれて各サイクルの蛍光が減少し始める。温度、時間、蛍光の三次元プロットを図35(KlenTaq1)と図36(Taq)について示してある。
【0141】
本発明による(1)各温度サイクル内での連続的蛍光モニタリングと(2)ハイブリダイゼーションの温度及び時間依存性の分析の組み合わせは他では得られない利点を提供する。図2はこれまで得られなかった情報がサイクル全体を通しての連続モニタリングによって抽出され得ることを示している。サイクルの生成物解離フェーズ中の連続蛍光モニタリングはそのサイクル中に存在するDNAの純度、同一性、量について有用な情報を提供する。
【0142】
PCR反応を伸長温度から変性温度まで加熱すると、サンプル中のDNAが一本鎖に解離する。この変性はSYBRTMグリーンIの蛍光の急降下として観察できる。少量のPCR生成物では、解離遷移は狭い温度範囲で発生し、この解離範囲の中点をTmで表わす。ゲル電気泳動によるサイジングと同様に、解離ピーク分析ではDNAの基本的特性を測定しし増幅生成物の同定に使用できる。ゲル電気泳動とは異なり、解離曲線分析では同じ長さでGC/AT比が異なる生成物を区別できる。さらに、同じ長さで同じGC含量だが、GC分布の異なる(たとえば等しく分布しているものに対して一方の末端にGCクランプしているもの)2種類の生成物は解離曲線が非常に違うものになる。
【0143】
PCR生成物が解離する温度は広範囲にわたって変化する。従来技術で公知の経験的公式を用いると、DNAの解離温度TMにおけるGC含量の影響はGCデュプレックス0%はGCデュプレックス100%より41℃低い温度で解離すると予言している。同じGC含量とすると、40塩基対プライマー・ダイマーは1000塩基対生成物より12℃低い温度で解離することになる。よって考えられるPCR生成物でのTm範囲は少なくとも50℃にわたる。この広い範囲のためPCR生成物を解離曲線で区別することができる。つまり、PCRの連続蛍光モニタリングと解離曲線分析の組み合わせでPCR生成物の同時的な増幅、検出、分別を提供する。
【0144】
<実施例14>
3種類の異なるPCR生成物について、SYBRTMグリーンI蛍光用の光学系(ライトサイクラLC24、アイダホ・テクノロジー社製、アイダホ州アイダホ・フォールズ)を備えた24サンプル熱サイクラに組み込まれた微量蛍光計によりDNA解離曲線を取得した。180塩基対のhepatitis BB型肝炎ウィルス表面抗原遺伝子増幅のためのプライマーは5’−CGTGGTGGAC TTCTCTCAAT−3’(配列ID no.1)及び5’−AGAAGATGAG GCATAGCAGC−3’(配列ID no.2)とした。292塩基対前立腺特異性抗原(PSA)遺伝子増幅のためのプライマーは5’−CTGTCCGTGA CGTGGATT−3’(配列ID no.7)と5’−AAGTCCTCCG AGTATAGC−3’(配列ID no.8)とした。536塩基対ヒトβグロビン遺伝子増幅は実施例7と同様に行なった。PCRは実施例2に記載した通りに実施した。増幅生成物はフェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿によって精製した後、セントリコン30マイクロコンセントレータ(マサチューセッツ州ダンバースのアミコン社から入手)により反復洗浄した。テンプレート濃度は260ナノメートルの吸光度で決定し、1.7以上のA(260)/A(280)比を有していた。
【0145】
精製DNA50ngを、50mMトリスpH8.5、2mMMgCl2、250μg/mlウシ血清アルブミン、5μl容量で、ガラス/プラスチック複合材料試験管の開放プラスチック容器にピペット採取し、ガラス毛細管先端にサンプルがくるように低速で遠沈し、プラスチック栓で内側封止した。解離曲線の蛍光データは、0.1〜10.0℃/秒で95℃までの直線的温度変化中に0.25〜2.0秒にわたるシグナルの積分により取得した。蛍光を連続的に計測してLabViewプログラミング環境(ナショナル・インストルメント社、テキサス州オースチン)において蛍光対温度プロットとして表示した。図37は3種類の精製PCR生成物の解離曲線を示す。
【0146】
図37で3種類の生成物のTmは6度だけ広がっており2つの曲線は2度だけ離れている。この小さな隔たりは生成物の容易な識別を行なうには充分である。Tmの長さにわたるGC百分率の重要性は、もっと長い536塩基対βグロビンフラグメントよりも高温で解離する292塩基対PSA生成物で示されている。解離曲線は平衡を確実にするため0.5℃/分のレートで得ることが多い。さらに、加熱レートが低下すると、解離曲線はもっと低温側にシフトしてシャープになる(図38、hepatitis Bフラグメント)。しかし、図37の解離曲線は0.2℃/秒(12℃/分)の加熱レートの間に得たものであり2℃又はそれ以下のTm差のある生成物を区別できる。
【0147】
PCR生成物の見掛けのTmもまた二重鎖特異性DNA染料の濃度に依存している(図39、hepatitis Bフラグメント)。染料濃度が高くなるとDNAデュプレックスの安定性が向上し、ひいては観察されるTmが増加する。
【0148】
SYBRTMグリーンIによる解離曲線のモニタリングでは、好適条件はSYBRTMグリーンIを1:7,000〜30,000倍希釈、加熱レート0.1〜0.5℃/秒である。これらの条件では2℃だけTmが異なる生成物を容易に識別できる。
【0149】
もっと正確な温度制御と解離ピーク分析用ソフトウェアで数分の一度まで検出可能なTmの差を引き下げられる。これにより大半のPCR生成物の識別ができる。しかし全ての生成物をTmで識別できるわけではなく、2種類又はそれ以上の生成物の同時移動による電気泳動の結果を読み値が得ることが考えられるように、想定した範囲で解離する生成物の幾つかが意図した生成物ではない可能性がある。しかし、想定した生成物の範囲でDNAが解離しない場合、結果論的に想定した生成物が何も存在していないということはできる。
【0150】
解離曲線分析で利用可能な生成物識別の別の態様はもっと長いPCR生成物で見られるドメイン解離のはっきりとしたパターンである。短い生成物(<300塩基対)は通常1つの遷移で解離するが、長い生成物は複雑な、目立つ形状の解離曲線を描く中間解離ドメインを有することがある。これらの複雑な解離曲線は生成物同定のための指紋として使用できる。
【0151】
解離曲線分析を用いて非特異性生成物たとえばプライマー・ダイマーなどから意図した生成物を区別することができる。プライマー・ダイマーは低温で広い範囲にわたって解離し、特異的PCR増幅生成物のシャープな解離曲線とは非常に異なる。アニーリング厳密度が低い多数サイクルを実施することで得られたもっと大きなヘテロ接合性生成物は純粋PCR生成物と比較した場合に低く広い解離曲線を有している。
【0152】
<実施例15>
536βグロビン遺伝子フラグメントの増幅を、実施例7と同様の1:30,000倍希釈したSYBRTMグリーンIで、条件を変化させて実施した。反応A(図40)では、テンプレートを添加せず反応は94℃0秒、60℃0秒、72℃10秒で30サイクルにわたり反復して小さい非特異性増幅生成物を作成した。Bでは、低いストリンジェンシーで精製テンプレートの初期コピー10の6乗個(94℃0秒、50℃0秒、72℃10秒)を55サイクルして、ゲル電気泳動上で増幅生成物が広い範囲を示し、広い温度範囲にわたって解離する。Cでは、10の6乗個の精製テンプレート初期コピーを94℃0秒、60℃0秒、72℃10秒で30回サイクルしており、単一の明るいバンドを示し、シャープな遷移で解離する。温度遷移レートは0.2℃/秒だった。λファージDNA(M)のHindIII消化をマーカとして使用している。
【0153】
図40は解離曲線がPCR反応の特異性をどのように正確に反映するかを示している。シャープな、高温の解離曲線Cはゲル上の単一バンドに対応する。低温で広範囲に解離する曲線Aはテンプレート対照なしの分析によるものでプライマー・ダイマーだけを示している。Cでの生成物の過剰増幅は中間解離曲線Bとなるが特異性生成物とは明らかに識別できる。
【0154】
たとえば図37に見られる解離曲線は温度(T)に対する蛍光(F)の導関数を最初に取ることによってより良く定量できる。この導関数が−dF/dT対Tとしてプロットしてあり解離曲線を解離ピークに変換している。
【0155】
<実施例16>
実施例14の精製hepatitis B及びβグロビン遺伝子フラグメントを個別にまた一緒に温度変化レート0.2℃/秒で解離し、他の条件は実施例14で指定した通りとした(図41)。解離曲線(上部)からの幾らか主観的なTmの決定は解離ピーク(下部)から目視で簡単に行なえる。解離ピークより下の領域も曲線より下の面積の積分によって定量できる。基線の大きさが曲線より下の範囲として変化するものと仮定して、最初に蛍光基線を−dF/dT対Tプロットから減算する。次に、カーブフィッティング・パラメータとしてピークの平均、標準偏差、高さを用いてガウス曲線への非線形最小二乗回帰により当てはめた。各々のガウス曲線より下の領域はピーク領域として取った。全ての計算はLabViewプログラミング環境(ナショナル・インストルメント社、テキサス州オースチン)で実施した。図41は解離曲線から解離ピークへの変換の一例を示す。これらの計算のためのコードが付録Aに含めてある。
【0156】
プライマー・ダイマーやその他の反応アーチファクトから特異性生成物を識別できる能力は初期コピー数が低い定量での二重鎖特異性DNA染料の使用を改善する。比較的大きな初期テンプレート・コピー数は臭化エチジウムを用いて定量されている(ヒグチ&ワトソン、前出)。しかし、低い初期コピー数では、プライマー・ダイマーやその他の増幅アーチファクトのバックグラウンド増幅が特異性増幅シグナルに干渉する。非特異性アーチファクトから特異性生成物を区別できる本発明の能力では、二重鎖特異性DNA染料を用いて低初期テンプレート・コピー数を定量できる。これらの染料を用いる簡便性のため有利である。二重鎖特異性DNA染料は全ての増幅で使用でき、カスタム的に蛍光標識したオリゴヌクレオチドは必要としない。二重鎖特異性DNA染料による超低コピー数の定量には非常に良好な増幅特異性か又は、本発明で提供されるように非特異性増幅から所望の生成物を区別するための手段を必要とする。
【0157】
<実施例17>
本発明による生成物純度決定のアプローチを用いて二重鎖特異性DNA染料蛍光のサイクルあたり1回モニタリングに基づく定量PCRを改良した。蛍光は精製βグロビン・テンプレートの初期濃度を変化させた一連の反応について(図42A参照)生成物のポリメラーゼ伸長後に各サイクル毎1回計測した。βグロビン・テンプレートと増幅条件は実施例7に示した通りとした。バックグラウンド蛍光以上の対数直線性増加は初期テンプレート濃度によって変化するサイクル数で始まった。反応あたり10の6乗から10の2乗コピーまでの5種類の反応のプロットがおよそ4サイクルだけ隔たっている。反応あたり平均10の2乗個のコピーのサンプルは反応効率の低下を示し、初期コピー数100未満の反応はあまり有用でない蛍光プロファイルを示した。10及び1(平均)コピーを含む反応での蛍光プロファイルは逆の順番で増加し、陰性対照は約30サイクル後に増幅を示した。これはプライマー・ダイマーの増幅やその他非特異性増幅生成物に由来するもので二重鎖特異性DNA染料のサイクルあたり1回の蛍光モニタリングでは意図した生成物から識別することができない。
【0158】
各サンプルについて解離ピークを計測し(図42B)たところ電気泳動の結果と良く相関することが分かった(図42C)。ゼロ及び1平均初期テンプレート・コピー数を含む反応は予想される536塩基対のロケーションに識別可能な電気泳動バンドを作らなかった。10及び100初期コピー・テンプレートを含む反応は弱い電気泳動バンドを示した。これは、ゼロ及び1初期コピーを含む反応で意図した生成物範囲(90〜92℃)でのDNA解離なし、また10及び100コピーでこの温度範囲に弱いピークを示した解離ピーク分析と良く一致している。10の3乗から10の6乗初期コピーを含む反応での強い電気泳動バンドは想定した90〜92℃範囲での大きな解離ピークと良く相関している。
【0159】
解離ピーク積分によって求めた、全生成物に対する意図した生成物の比は10の5乗コピーでの0.28からゼロ初期テンプレート・コピーでの0.0002までに広がっている。図41Aの各々の蛍光値は適当な比率で乗算して補正プロットを得た(図42Dの「補正蛍光」で示す)。この手順は10及び1初期テンプレート・コピーの間まで定量の有効ダイナミック・レンジを拡大した。
【0160】
解離ピークは非特異性生成物から特異性生成物を識別でき(図40)一緒に混合された2種類の精製PCR生成物を識別できるので、単一の試験管内で一緒に増幅された2種類の特異性生成物の識別にも有用なはずである。本発明によるPCR反応の連続モニタリングによって得られた解離曲線は多重PCRで有用である。
【0161】
<実施例18>
本実施例では、ゲノムDNAから2種類の遺伝子フラグメントを同時に増幅しSYBRTMグリーンI蛍光でモニタした。各増幅サイクルの間、異なった増幅生成物が生成物の長さ、GC比、及びその他従来技術で周知の要因に依存する解離温度で変性する。各生成物が解離する温度は二重鎖特異性DNA染料であるSYBRTMグリーンIでモニタできる。嚢胞性線維症遺伝子からの81塩基対フラグメントは本明細書で配列ID No.14及び配列ID No.15として記載したプライマーを用いて増幅し、これに併せて本明細書で配列ID No.16及び配列ID No.17として記載したプライマーを用いたc−erbB−2(HER2/neu)オンコジーンの98塩基対フラグメントを増幅した。
【0162】
増幅反応は50mMトリスHClpH8.3、3mMMgCl2、500μg/mlウシ血清アルブミン、各200μMのdNTP、0.5μM嚢胞性線維症プライマー、0.3μMのHER2/neuプライマー、1:30,000倍希釈SYBRTMグリーンI、1単位AmpliTaqゴールドDNAポリメラーゼ(パーキン・エルマー社、カリフォルニア州フォスターシティ)、50ngのヒトゲノムDNAを10μlに含有していた。
【0163】
95℃30分でポリメラーゼの活性化後、サンプルは94℃0秒(傾き=20)、55℃秒(傾き=20)、70℃10秒(傾き=20)で35回サイクルした。サンプルを70℃に冷却し、0.2℃/秒の傾斜で94℃までの間蛍光を連続計測した。解離曲線(図43)は78℃(CFTR)と88℃(neu)で解離する2種類の別個の生成物を明確に示した。2種類の生成物はTmにおいておよそ10℃だけ異なっており容易に識別できる。
【0164】
多重増幅は増幅中の内部対照が必要とされる場合に有用である。たとえば、多くの転位はブレークポイントの各々の側にプライマーを配置することによりPCRで検出できる。増幅が起こらない場合、DNAが無傷で阻害剤が存在していない限り転位は存在しない。これらの可能性は同じ反応混合物で陽性対照の遺伝子座を増幅することにより除外できる。このような対照の増幅は同時的な増幅と検出の内部対照として最も良く行なわれる。
【0165】
<実施例19>
本実施例では、実施例18の手順にしたがうが95℃30分でのポリメラーゼ活性化後に、94℃0秒(傾き=20)、55℃0秒(傾き=20)、70℃10秒(傾き=20)で20サイクル、これに続けて94℃0秒(傾き=1)、55℃0秒(傾き=20)、70℃20秒(傾き=20)で15サイクルにわたりサンプルをサイクルした。サイクル26〜31では、70℃から94℃までの1℃/秒の各遷移中に蛍光を連続的に計測した。解離曲線は解離ピークに変換して表示した(図44)。CFTRフラグメントの増幅効率がneuフラグメントより大きく見えることに注意されたい。増幅効率は解離ピークデータを実施例16と同様に積分することで厳密に決定できる。
【0166】
対照を参照したこの種の定量データは多くの応用を有している。たとえば、ある種のオンコジーン、たとえばHER2/neuは多くの腫瘍では生体内増幅している。つまり、遺伝子がゲノムDNA内で、時には数倍に複製されている。しばしば腫瘍の臨床的挙動はオンコジーン複製の度合に依存する。オンコジーンと対照テンプレートの増幅により相対的コピー数の定量評価ができる。さらに別の例として、HIV又はhepatitis C(C型肝炎)に感染した患者でのウィルス負荷の定量は予後と治療の面で重要である。対照テンプレートを使用し対照と自然テンプレート両方の増幅中の増幅効率をモニタすることで初期テンプレート・コピー数の正確な定量が実現される。
【0167】
相対的定量に解離曲線を使用する本発明の特徴についてここで説明する。本発明によれば、解離曲線のさらなる用途が定量PCRである。図42は解離ピークの下側部分と特異的生成物の量の間に相関があることを示した。2種類のPCR生成物の相対的定量は2種類の生成物が同様の効率で増幅された場合(又は異なる効率が既知であり補正される場合)に可能である。解離ピーク面積の積分による(実施例16参照)2種類の生成物の相対的定量は本発明の側面である。
【0168】
<実施例20>
実施例18の嚢胞性線維症遺伝子及びHER−2−neu遺伝子フラグメントを実施例2と同様に増幅精製し、175μg/mlに調製した。サンプルを様々な比率(合計8μl)で混合しバッファ(1μl)とSYBRTMグリーンI(1μl)に添加した。終濃度は50mMトリスpH8.3、3mMMgCl2、250μg/mlウシ血清アルブミン、1:30,000倍希釈SYBRTMグリーンIだった。解離曲線は0.2℃/秒で計測し背景蛍光を減算しピークは実施例16で説明したように積分した。結果を図45に示す。解離ピークの下の相対面積と2種類の生成物の相対量の間には優れた相関が見られた。
【0169】
2種類のPCR生成物の相対的定量は多くの定量PCR応用で重要である。2種類又はそれ以上の生成物の多重増幅とそれに続く解離ピーク以下の面積の積分はこうした分野できわめて有用である。mRNAはハウスキーピング遺伝子のmRNA量に対して相対定量されることが多い。
【0170】
相対的定量の別の重要な用途は競合的定量PCRにある。代表的には同じプライミング部位を有しているがオリジナル標的配列からの長さが異なる競合遺伝子を合成する。既知の量の競合遺伝子を未知のサンプルに加え相対的定量を行なう。長さよりTmで標的遺伝子と異なる競合遺伝子を作ることができる。生成物の相対量は解離ピーク下側の面積を比較することで定量できる。生成物の一方の量が分かっている場合、オリジナルの標的の量を得ることができる。解離ピーク方を用いることで未知のサンプル各々に付いて多数の試験管で増幅し反応中の様々なサイクル数で試験管を抜き取って反応の対数直線性部分を見つけ出すことによる現在使用されている方法より有意に簡単になる。2種類の生成物の相対量を決定しなければならない。通常これはdNTPの一方を放射性同位元素で標識しておきアガロースゲル電気泳動後に各バンドに含まれる標識の量を定量することで行なっている。これに比較すると、本発明によれば反応を連続的にモニタできるので増幅の対数直線性部分は簡単に同定できる。解離ピークの積分によって相対的定量は迅速に行なうことができる。終日処理は1時間以内にまで短縮される。
【0171】
前述の議論から、DNA増幅中の蛍光モニタリングは非常に強力な分析技術であることが理解されよう。配列特異性の検出と定量が望まれる場合、共鳴エネルギー転移プローブを二重鎖特異性DNA染料の代わりに使用できる。ハイブリダイゼーション・プローブのTmは単一塩基の不整合が存在する場合に約4〜8℃シフトする。ハイブリダイゼーション・プローブが突然変異部位に配置された場合単一塩基の変移はプローブ解離温度のシフトとして検出できる。
【0172】
<実施例21>
第V因子ライデン変異はアミノ酸基506(R506Q)でグルタミン基をアルギニン基に置換する単一塩基変化(GからA)である。さらに詳しくは、R.M.バーティナら、活性タンパクC抵抗性の関与する血液凝固第V因子突然変異(R. M. Bertina et al., Mutation in Blood Coagulation Factor V Associatedwith Resistance to Activated Protein C, 369 Nature 64-67 (1994))及びJ.ヴォアベルグら、特発性静脈塞栓症と第V因子Arg506の単一の点突然変異の関連性(J. Voorberg et al., Association of Idiopathic VenousThromboembolism with a Single Point-Mutation at Arg 506 of Factor V, 343Lancet 1535-36 (1994))を参照されたい。どちらも本明細書で参照に含まれる。本明細書で用いられる「第V因子ライデン変異部位」は野生型のグアニン塩基が第V因子ライデン変異種ではアデニン塩基で置き換えられている第V因子遺伝子のヌクレオチド位置を表わす。配列IDno. 9は野生型第V因子遺伝子、配列IDno. 10は第V因子ライデン遺伝子の対応する部分を示し、各々の場合で31番目に関連ヌクレオチドがある。第V因子遺伝子の完全なヌクレオチド配列は、本発明で参照に含まれるR.J.ジェニーらヒト第V因子の完全なcDNAと誘導アミノ酸配列順序(R. J. Jenny et al., Complete cDNA and DerivedAmino Acid Sequence of Human Factor V, 84 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA4846-50 (1987))に記載されており、配列はジーンバンク遺伝子座HUMF10で得ることもできる。突然変異第V因子タンパクのアミノ酸変化はこの凝固因子を分解抵抗性にし凝固及び血栓の傾向を増加させる。先天性血栓症のもっとも共通の原因として、この突然変異が臨床分子遺伝学研究室で行なわれる共通のラボテストの標的である。
【0173】
第V因子ライデン変異分析の標準法はPCRによる遺伝子セグメントを増幅してから、野生型配列は切断するが突然変異種は切断しない制限酵素エンドヌクレアーゼで得られた増幅生成物を消化し、ゲル電気泳動により消化された野生型と未消化の変異生成物とを識別する。(R.M.バーティナら、前出)これは定義された突然変異に付いての分析のための従来技術で周知の方法である。このような試験は、通常約4時間かかり、これにはPCR増幅(2時間)、酵素消化(1時間)、電気泳動(1時間)を含む。増幅後のステップにはサンプル試験管を開き、酵素を追加し、消化されたサンプルを電気泳動装置へ移し換えるステップが含まれる。増幅後処理は最終生成物の汚染の危険を増加し用手的操作はサンプルのラベル間違いを防ぐ注意が必要である。点突然変異を同時に増幅分析する方法ではこれらの配慮が不要になる。
【0174】
同じ装置内で30分以内に第V因子ライデン変異の増幅と分析を完了する方法は変異遺伝子座を含むヒトゲノムDNAサンプルの一部を非対称的に増幅し、続けて増幅DNAの解離曲線を採取し分析するステップを含む。ゲノムDNAは従来技術で周知の方法、たとえば本明細書で参照に含めるJ.サムブルックら、分子クローニング:検査マニュアル(J. Sambrook et al., Molecular Cloning: ALaboratory Manual (2nd ed., 1989))にしたがって調製する。望ましくは、解離曲線を蛍光性ハイブリダイゼーション・プローブによる前述の共鳴エネルギー転移法によって取得する。このようなアッセイではホモ接合性野生型、ホモ接合性変異種、ヘテロ接合性遺伝子型を容易に判別する。好適実施例において、オリゴヌクレオチド・プローブはフルオレセインで3’末端標識し共鳴エネルギー転移でのCy5標識プライマーに近い増幅DNAとハイブリダイゼーションするように設計される。本法は性質のわかっている突然変異ならどんなものにでも応用可能である。
【0175】
プローブ・オリゴヌクレオチドは長さ約15〜40ヌクレオチド残基が望ましい。プローブは約10ヌクレオチド程度にまで少ない残基を含むのが良いと考えられるが、こうした短鎖オリゴヌクレオチドに考えられる欠点としては特異性の低さ、低い解離温度、バックグラウンドの増加が挙げられる。40残基より大きいオリゴヌクレオチドも使用できるが不必要に高価である。つまりプローブ・オリゴヌクレオチドのサイズ上の制約は機能によって課せられる制約だけである。プローブ・オリゴヌクレオチドは突然変異部位に広がるべきだが、変異はプローブの5’−又は3’−末端ヌクレオチド残基どちらかに対応しないのが望ましい。本発明は解離曲線に基づくものであるので、また末端での塩基対の欠如は内部よりも解離性に対する影響が少ないことが知られているので、プローブは突然変異が内部で発生するように設計すべきである。
【0176】
選択した突然変異遺伝子座の増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマーは、長さ約15〜30残基が望ましい。好適範囲より短いプライマーも使用できるが所望する程の特異的にはならない。同様に、好適範囲より長いプライマーも使用できるが、不必要に高価である。つまりPCRプライマーのサイズに関する制約は機能によって課せられる制約だけである。
【0177】
共鳴エネルギー転移対間の距離も本発明の正しい機能性に重要である。共鳴エネルギー転移対間の最適距離は約5ヌクレオチドである。約2から8ヌクレオチドの距離が好適だが、約10〜15ヌクレオチドまでの距離が機能する。隣接ヌクレオチドに共鳴エネルギー転移対を有するのは共鳴エネルギー転移対間の距離がDNAらせん上の遺伝子座によって影響されるため必ずしも有益ではない。
【0178】
本実施例において、PCR増幅は50mMトリスpH8.3、3mMMgCl2、500μg/mlウシ血清アルブミン、各200μMのdNTP、0.5μMCy5標識プライマー(配列ID no. 11)、0.2μM未標識対立プライマー(配列ID no.12)、0.1μMフルオレセイン標識プローブ(配列ID no.13)、0.4単位Taqポリメラーゼ、50ngヒトゲノムDNAを含む10μl反応混合物で実施した。4種類の異なるDNAサンプルを試験した:第V因子ライデン変異がホモ接合性のヒト由来のヒトゲノムDNA、ヘテロ接合性のヒト由来のヒトゲノムDNA、野生型第V因子対立遺伝子ホモ接合型のヒト由来のヒトゲノムDNA、DNAなしの陰性対照である。Cy5標識プライマー、フルオレセイン標識プローブ、突然変異部位(*印で表わす)の方向性は以下に示す通りである:
【0179】
未標識対立プライマーの配列はTGTTATCACACTGGTGCTAA(配列ID no.12)で増幅生成物は長さ186塩基対だった。Cy5標識プライマーは実施例8の通りに取得した。サイクル条件は94℃0秒(傾き=20)、50℃10秒、72℃0秒(傾き=1)で50サイクル、これに続けて45℃まで冷却し、解離曲線について94℃まで0.2℃/秒の傾きで連続蛍光モニタリングした。遅い温度遷移レート(0.2℃/秒──図46)では増幅の終りに最高品質の解離曲線が得られたが、50℃と94℃の間を1℃/秒で各サイクル中モニタリングしても明らかな遺伝子型同定が提供された(図47)。解離曲線は温度について蛍光の負の導関数対温度(−dF/dT対T)をプロットすることにより視覚化するのがもっとも簡単である。このようなプロットでは生の蛍光データから全ての考えられる遺伝子型の容易な視覚的同定が可能である。
【0180】
プライマーの3’−末端にCy5標識が近付く程、共鳴エネルギー転移シグナルは大きくなる。しかし、3’−末端はポリメラーゼ伸長のための自由3’−ハイドロキシル基を有していなければならずCy5の配置が3’−末端に近すぎると(3’又は次体塩基どちらかへ)ポリメラーゼ付着と伸長を阻害する。3’−フルオレセイン・プローブはできる限りプライマーに近くハイブリダイゼーションすべきで(1〜3塩基の僅かなオーバラップは許容され得る)突然変異部位はプローブ中央に近くあるべきである。ハイブリダイゼーションした蛍光物質間の5塩基の隔たりと23merプローブの8番塩基での突然変異が突然変異遺伝子と野生型配列の間に8℃の解離曲線シフトをもたらした(図46)。
【0181】
プローブ解離による突然変異の検出は1つの標識プローブと1つの標識プライマーの代わりに2種類の標識プローブで行なうこともできる。本実施例において、一方のプローブはCy5で5’に標識し他方のプローブはフルオレセインで3’に標識する。これらの蛍光プローブはどちらもアミダイトから直接合成できるので、プライマー/プローブ系のような手作業による合成過程は必要とされない。フルオレセイン標識プローブは、突然変異部位がフルオレセイン標識プローブの中央付近にくるように設計すべきである。Cy5標識プローブの長さは変異部位に広がるフルオレセイン標識プローブより高い温度で(>5℃)解離するように設計すべきである。フルオレセインからのバックグラウンドはCy5からのバックグラウンドよりも問題になるので、Cy5標識プローブの濃度は望ましくはフルオレセイン標識プローブの2〜5倍にすべきである。2種類のプローブは同一鎖のゲノムDNAにハイブリダイゼーションするはずで共鳴エネルギー転移対は約0から5ヌクレオチド残基離れるはずである。これ以外に、突然変異部位に広がるプローブをCy5で標識し、もう一方のプローブをフルオレセインで標識しても良い。
【0182】
第V因子ライデン変異の検出のために本明細書で開示した特定のプローブ及びプライマーは単に説明のためのものであり、本明細書に記載した原理及びガイドラインにしたがうことにより当業者が不当な実験なしで突然変異のための他のプローブ及びプライマーを設計することができるであろうことは理解されよう。また本発明はゲノムDNAにおける単一塩基の突然変異の検出に関して記載しているが、同じ原理をcDNAの変異の検出に応用できることも又理解されよう。さらに、同じ技術を用いて、突然変異又は多型性が存在する場合に解離温度が変化するようにハイブリダイゼーション・プローブを設計することにより挿入及び削除を検出できる。本発明はプローブが野生型に対して突然変異遺伝子にハイブリダイゼーションした場合に解離温度に相違が出るように設計できる既知のあらゆる突然変異を検出するために使用できる。
【0183】
前述の実施例ではフルオレセインとCy5を共鳴エネルギー転移標識として使用したが、他のアクセプターたとえばCy5.5などもフルオレセインとともに使用できる。
【0184】
<実施例22>
実施例21の第V因子遺伝子座を前出の通りだがプライマーをCy5の代わりにCy5.5で標識して増幅した。Cy5.5の発光は683ナノメートル・ロングパス・ダイクロイックと683〜703ナノメートル・バンドパス干渉フィルタを介して観察した。Cy5.5のフルオレセインに対する比はほぼサイクル30でバックグラウンド以上に増加し非対称増幅の50サイクルでおよそ比率が2倍になった。野生型DNAで増幅した場合、プローブTmは解離ピークで判定すると65〜66℃だった。
単一塩基突然変異を検出する別の実施例を掲載する。
【0185】
<実施例23>
アラニンをバリン残基に変換し易熱性酵素が得られるメチレンテトラハイドロ葉酸(MTHFR)レダクターゼ遺伝子(C677T)のよくみられる点突然変異が存在する。この突然変異はMTHFR活性を減少し、従来技術で公知の通り若年性血管障害や血栓症の独立した危険因子であるとされてきたホモシステイン血漿レベルを増加させることがある。プライマーの一方をCy5で標識した(TGAAGGAGAAGGTGTCT*GCGGGA)(配列ID no.25)。ここでT*はCy5に結合した改変T残基を表わす(合成と精製については実施例9を参照)。プローブ配列はフルオレセイン−CCTCGGCTAAATAGTAGTGCGTCGA(配列ID no.26)また他方のプライマーはAGGACGGTGCGGTGAGAGTG(配列ID no.27)だった。MTHFR遺伝子の198塩基対フラグメントを、10μlあたり50mMトリスpH8.3、2mMMgCl2、500μg/mlウシ血清アルブミン、各200μMのdNTP、0.5μMのCy5標識プライマー、0.1μM対立プライマー、0.1μMフルオレセイン標識プローブ、0.4単位Taqポリメラーゼ、でヒトゲノムDNA50ngから増幅した。各サイクルは長さ30秒で94℃での変性に続けて20秒60℃での組み合せアニーリング/伸長ステップから構成された。60サイクル後、次のように解離曲線を測定した:0.5℃/秒で50〜65℃、0.1℃/秒で65〜75℃、0.5℃/秒で75〜94℃まで加熱した。基線減算と解離ピークへの変換後に、全ての考えられる遺伝子型が容易に識別された(図48)。
【0186】
ハイブリダイゼーション・プローブの識別力を多重又は競合PCRの大きな利点にも使用した。たとえば、単一の内部の塩基変化を伴うように人工テンプレートを設計しハイブリダイゼーション・プローブは実施例21及び23のように基線変化をカバーするように設計する。競合遺伝子及び天然テンプレートの相対的増幅は実施例16のように解離ピークを測定積分することで決定される。これ以外に、異なる温度で異なる標的から順番に解離する多重検出プローブを使用する場合、同じ分析によって相対的定量が実現される。一般に、二重鎖特異性DNA染料について前述した全ての定量技術をハイブリダイゼーション・プローブによる配列特異性にすることができる。
【0187】
===生成物アニーリング速度論による絶対生成物濃度===
生成物濃度の決定はまた本発明を用いると有利に実施される。二重鎖DNA形成の連続モニタリングによりアニーリング速度論による増幅の全てのサイクルでのDNA定量ができる。サンプル温度を変性温度から急速に低下させ、もっと低いがプライマーのアニーリングを防止するのには未だ充分に高い温度で一定に維持する(図2)。生成物アニーリング速度は秒単位速度論にしたがう(本明細書で参照に含めるB.ヤング&M.アンダーソン、溶液ハイブリダイゼーションの定量分析(B. Young & M. Anderson, Quantitative analysis of solution hybridization, In: Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach 47-71, (B. Hames, S. Higgins eds.,1985))参照)。何らかの任意のPCR生成物と温度について、二次速度定数を測定できる。速度定数が分かると、未知のDNA濃度は実験的アニーリング・データから求めることができる。冷却は瞬間的になることはなく、一定温度に到達する前に何らかのアニーリングが発生する。急冷は速度定数とDNA濃度決定に利用できるデータ量を最大化する。本技術は純粋なPCR生成物を要求するが、これは本発明を用いる温度サイクル中にも得られる解離曲線によって保証できる。本発明によるこの定量法はサンプル間のあらゆるシグナル強度変化とは有利にも無関係である。
【0188】
<実施例24>
βグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントをヒトゲノムDNA(実施例7)から増幅して精製(実施例2参照)した。異なる量の精製DNAを5μlの50mMトリスpH8.3、3mMのMgCl2中の1:30,000倍希釈SYBRTMグリーンIに混和した。サンプルは94℃で変性させた後85℃まで急冷した。520〜550ナノメートルの蛍光を時間経過に併せて85℃でモニタした。異なる濃度のDNAを調べた時、アニーリング曲線の形状はDNA濃度に特徴的だった(図49参照)。任意のPCR生成物と温度で、二次速度定数を決定できる。図50は5μl中の536塩基対フラグメント100ngについて85℃での二次アニーリング速度定数の決定を示す。図50に図示した二次速度式を用い、曲線はFmax、Fmin、t0及びkを浮動パラメータとして非線形最小二乗回帰により適合させた。この種の曲線適合のための分析プログラムは従来技術で周知である(たとえば、カリフォルニア州モントレーのデルタポイント社製DeltaGraphのユーザ定義曲線適合)。速度定数が分かると、未知のDNA濃度は実験的アニーリング・データから求めることができる。
【0189】
速度定数(k)を定義すると、未知のサンプルについてDNA濃度を決定できる。未知のサンプルの蛍光対時間曲線を非線形最小二乗回帰式で、望ましくはリアルタイムでの温度サイクル中に(たとえば、LabViewプログラミング環境(ナショナル・インストルメント社、テキサス州オースチン)において非線形Levenberg−Marquardt法と説明されている方法を用いることで)適合させる。この適合では、Fmax、Fmin、t0、(DNA)は浮動パラメータ、またkは定数である。
【0190】
ある種の蛍光染料は濃度依存的にアニーリングに悪影響することから、異なる標準DNA濃度での速度定数を決定することによって、生成物アニーリングについての二次速度論を調べる。関連性を定義し適合のための別の式も必要に応じて組み込む。
【0191】
また本発明の範囲内にはプローブ・アニーリング速度を用いて生成物濃度を決定することが含まれる。蛍光共鳴エネルギー転移の速度はプライマー・アニーリング温度より高いプローブ・アニーリング温度まで急降下した後の時間経過にしたがう(図2)。標識プライマーと1種類の標識プローブによる増幅の場合、アニーリング速度(及び蛍光の発生)は2次である。2種類の標識プローブを使用する場合、蛍光発生速度は3次である。これら2種類の構成を図18に図示してある。プローブの濃度が生成物濃度より大幅に高い場合、可能性を記述するのには疑似一次式及び疑似二次式で充分である。これらの異なる条件での近似速度式は従来技術で公知となっている(B.ヤング&M.アンダーソン、前掲書)。本発明の目的では、実験的に調べられており必要な場合には補正される近似速度式を従来技術で示唆していることで充分である。
【0192】
プローブ・アニーリング速度を用いて生成物濃度を決定する場合、考えられる干渉作用としては生成物のアニーリング(分岐移動によるプローブの移動)とプローブを介したプライマーのアニーリング及び伸長が含まれる。後者はプローブのTmがプライマーのTmより高くプローブのアニーリング温度がプライマー・アニーリングを最小限に押えるように選択されている場合には最小になる。図13は伸長が起こった場合でも蛍光が約20秒にわたり時間とともに増加することを示している。この期間中、蛍光の増加は生成物濃度に依存する。
【0193】
プローブアニーリング速度は生成物アニーリングによって生成物濃度を決定する前述の方法と同様に生成物濃度を決定するために使用される。ステップを要約すると次のようになる:(1)系の適当な速度平衡を選択する、(2)既知のDNA標準を測定して速度定数を決定する、(3)異なる濃度から得られた異なる速度定数を比較することで速度平衡の変化を調べる、(4)速度定数を用いて未知試料のDNA濃度をプローブ・アニーリング・データから決定する。
【0194】
===温度サイクル制御のための蛍光フィードバック===
エンドポイント分析やサイクル毎分析とは対照的に、本発明では各温度サイクル全体を通しての蛍光もモニタできる。連続蛍光モニタリングは温度サイクル・パラメータの制御に使用できる。本発明はリアルタイム制御と増幅最適化のために蛍光フィードバックを使用する。二重鎖特異性DNA染料又は蛍光標識オリゴヌクレオチド・プローブを含むPCRサンプルの連続蛍光モニタリングは、個別の増幅サイクル中のハイブリダイゼーション及び解離をモニタするために使用できる。この情報を温度サイクル装置内部の温度制御アルゴリズムで使用して熱サイクル条件を改善しカスタマイズすることができる。従来のPCRは増幅前に全てのサイクル・パラメータをプログラミングして実施している。連続モニタリングでは、アニーリング、伸長、変性の連続観察に基づいて、熱サイクル条件の決定を増幅中に行なうことができる。ハイブリダイゼーション情報を用いて温度サイクルを制御することで考えられる利益としては:
1.各サイクルでPCR生成物の完全な変性を保証でき、同時に、
a.過剰に高い変性温度への暴露を最小限に抑さえる、つまり増幅生成物及びポリメラーゼの熱による損傷を回避できる。生成物が変性温度に暴露される時間を制限するのは長い生成物の増幅でとくに有用である。
b.変性温度を最小限に抑さえることにより反応特異性が増加する。これは意図している増幅生成物よりTmが高い生成物に対抗して選択する。
【0195】
2.各サイクルでプライマー・アニーリングに充分な時間を保証することによって増幅効率を最大にすることができ、同時に、
a.ある程度の効率でプライマー・アニーリングに達するのに必要とされる以上に長引かせないことにより増幅に必要な時間量を最小限に抑さえる。
b.アニーリング温度での時間を最小限に抑さえることにより反応特異性を拡大する。
【0196】
3.各サイクルの生成物伸長に充分な時間を保証することにより増幅効率を最大にすることができ、同時に、
a.生成物伸長を完了するのに必要とされる以上に長引かせないことにより増幅に必要とされる時間量を最小限に抑さえる。
b.意図した増幅生成物より長い生成物に対抗して選択することにより反応特異性を拡大する。
【0197】
4.得られた蛍光レベル又は増幅の現在の効率に依存した熱サイクル変化を開始する。たとえば、過剰増幅及び非特異性反応生成物は効率がある程度のレベルにまで落ちた時点で熱サイクルを終了することによって最小限に抑さえることができる。別の例として、蛍光が検出可能になった時点で解離曲線取得のためにゆっくりした温度傾斜を開始するように温度サイクルを変更することができる。これはゆっくりした温度傾斜を初期サイクルで使用する必要がないので時間を節約できる。本発明の継続的実施でその他の望ましい変化が明らかになるであろう。
【0198】
制御は蛍光データからの反応パラメータ推定に基づいている。オリジナルの蛍光データは時間に対する蛍光の変化として測定したか(変性、アニーリング、伸長の温度特異性速度)、温度に対する蛍光の変化として測定したか(生成物又はプローブTm)、又は増幅範囲の変化として測定したか(増幅収量と効率)のいずれかである。これらの速度、Tmとその一次及び二次導関数を使用して変性温度及び時間、プライマー・アニーリング温度及び時間、プローブ・アニーリング温度及び時間、酵素伸長温度及び時間、サイクル数を含む反応の最適パラメータを決定する。
【0199】
二重鎖特異性DNA染料は変性の制御、伸長の制御、及びある程度の増幅レベル又は効率で熱サイクル変化を開始するために使用する。共鳴エネルギー転移染料は以下の実施例の後で説明するようにアニーリングの制御に使用する。
【0200】
<実施例25>
市販の蛍光モニタリング熱サイクラ(ライトサイクラLC24、アイダホ・テクノロジー社製、アイダホ州アイダホ・フォールズ)を変更してソフトウェアが温度/時間セットポイントでプログラムされず、蛍光値を測定してからこれらの値を熱サイクラ制御に使用するようにした。
【0201】
機能ブロック図に図示してあるように(図51)、ランタイム・プログラムはシリアル及びDAQボード・インタフェース経由でライトサイクラと通信する。これによって温度又は蛍光データのいずれかへの高レベルのアクセスが可能になり、いずれかを温度制御用にボード・レベル・ソフトウェアで使用できる。しかし、装置の本実施例において、制御装置・ハードウェア・レベルでは温度データだけをデジタル形状に変換している。蛍光データはアナログ形状のままデジタル測定ボード・インタフェース経由で送出され、ランタイム・プログラムによって分析され、シリアル・インタフェース経由でボード・レベル・ソフトウェアに送り返される。
【0202】
===生成物解離制御===
意図したPCR生成物についての解離ピークを測定し、基線レベル蛍光は生成物が完全に解離した温度で反応カクテルを含むサンプルで測定した。
次に反応の各サイクルではこの蛍光値を目標として使用した。生成物変性へのアプローチは2段階で行ない蛍光値を遠隔計算機へ分析のために送信し値に到達したことの指示が返される要件によるタイムラグを克服した。各生成物の解離ステップでは、蛍光が中間値に達するまで温度を増加し、次いで加熱出力を低減しておよそ3℃/秒の温度傾斜速度とすることで、蛍光を分析する時間と生成物変性が発生したことを熱サイクラに通知する時間を計算機に与えるようにした。
得られた温度/時間プロット(図52)は増幅生成物の濃度が上昇するとサイクル20以降で解離温度における特徴的増加を示している。生成物Tmは生成物濃度の関数である。
【0203】
===生成物アニーリング/伸長===
アニーリング/伸長を組み合せた温度での伸長維持中に蛍光をモニタし、この情報を使用して充分だが過剰にならない時間が生成物伸長に与えられることを保証するようにした。蛍光は10秒間隔でモニタし、蛍光が設定可能な比率(代表的には1.00〜1.05)以上で増加した場合にはアニーリング/伸長ステップが継続された。それ以外の場合には次の生成物解離ステップを開始した。10秒の間隔はアニーリング/伸長温度に最小限20秒の時間を与えられるように選択した。
得られた蛍光/時間プロット(図52)は増幅生成物の濃度が増加するとアニーリング/伸長組み合せ温度でのドエル時間における特徴的増加を示している。プライマー濃度とポリメラーゼが制限因子になると各サイクルで生成物伸長を完了するのにはさらに多くの時間が必要とされる。
【0204】
===増幅プラトー===
各アニーリング/伸長ステップの終りで、蛍光値を計測して格納した。この値が最低のエンドサイクル蛍光値の1.2倍に増加してからユーザ設定可能な比率(代表的には1.00〜1.05)未満で増加が停止した時点で、熱サイクルを終了した。これに代わり、生成物Tmによるゆっくりした0.1〜0.2℃/秒の温度傾斜を入力してサンプル蛍光を連続モニタすることにより解離曲線取得ステップを開始した。
得られた蛍光/時間プロット(図52)では25サイクルの増幅後にサイクル毎蛍光比の増加が1.00未満に落ち反応が終了したことを示している。
【0205】
本発明の1つの実施例において、増幅プラトー検出を用いて多重サンプル・ランでの各サンプルについて各サンプルに最適な温度で高解像度解離曲線を採取する。サンプルが増幅プラトーに達すると、そのサンプルについて解離曲線を取得し、次いで、別の反応が増幅プラトーに達するまで通常の温度サイクルを再開する。
【0206】
伸長から区別されるアニーリングのリアルタイム・モニタリング及び制御も本発明により提供される。プライマーの一方がCy5で3’末端標識してある場合には、伸長は発生し得ない。しかし、標識プライマー(1〜10%)が未標識プライマー(90〜99%)と混合されている場合、増幅効率は僅かに減少することになるが、アニーリングは二重鎖特異性DNA染料からCy5への蛍光エネルギー転位として観察可能である。Tmが最低のプライマー(従来技術で周知のように最も近い隣接熱動力学により決定される)はCy5で標識しSYBRTMグリーンIは二重鎖特異性DNA染料として含まれる。これ以外に、等価の相補オリゴヌクレオチドによりプライマー・アニーリングを間接的にモニタすることができる。長さとTmが最低温度で解離するプライマーと同じオリゴヌクレオチドは増幅配列に対して相補性を持たないように設計される。このオリゴヌクレオチドはCy5で5’標識しこれの補体はフルオレセイン又は何らかの他の共鳴エネルギー転移対で3’標識する。これらのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは共鳴エネルギー転移が後続する。一方のプローブの濃度は最低のTmのプライマーの濃度と同じにし、他方のプローブの濃度はこれより大幅に低くして生成物にアニーリングするプライマーの疑似一次速度論を近似する疑似一次速度論を得るようにする。アニーリングの効率をモニタしこれらの方法の1つによるアニーリング温度及び時間の制御に使用する。
【0207】
温度と時間のセットポイントを蛍光フィードバック制御で完全に置き換えることも本発明の範囲に含まれる。たとえば、3種類のサンプルがフィードバック機能のある蛍光温度サイクラに配置される。サンプルは、
1.増幅生成物とSYBRTMグリーンIを含む無反応サンプル。
2.Tmが最低のプライマーと等しいTmを有し前述の濃度の相補的に蛍光標識したプライマーを含む無反応サンプル。
3.増幅すべきサンプルとSYBRTMグリーンI。
【0208】
増幅の各サイクルで、生成物の変性は温度が増加するのに併せてサンプル1をモニタすることで保証される。解離曲線はリアルタイムで求まりサンプルが変性した時点で、アニーリング・ステップへの移行が開始される。プライマー・アニーリングはサンプル2の2種類の相補的プライマーのハイブリダイゼーションにより間接的にモニタされる。プライマーの一方はフルオレセインで3’標識され他方のプライマーはCy5又は同様の染料で5’標識される。サンプル2が670/540ナノメートルでの蛍光比の増加によって表わされるプライマー・ハイブリダイゼーションを示すまで温度を下げる。この比は、蛍光対がハイブリダイゼーションにより接近する時に蛍光体間の共鳴エネルギー転移により増加する。生成物伸長に続けて実施例25に示したように1つまたはそれ以上の実際のサンプルの蛍光をモニタリングする。
【0209】
<概要>
前述の議論から、ハイブリダイゼーションをモニタするためのDNA増幅中の連続蛍光モニタリングがきわめて強力な分析技術であることが理解されよう。本明細書に記載した方法を使用し存在する初期テンプレート・コピー数に依存すると生成物の同定及び定量は温度サイクルの開始後5乃至20分で実現できる。本発明は従来技術においてこれまで利用できなかった幾つかの利点を実現する。たとえば、本発明は生成物純度、多重PCR又は競合的PCRによる相対的定量、アニーリング速度論による絶対生成物定量をモニタするための単色蛍光法と蛍光体サイクル数プロットによる初期テンプレート定量法の改良とを提供するものである。本発明はまた、配列変化検出、多重PCR又は競合的PCRによる相対的定量、プローブ・アニーリング速度論による生成物定量、蛍光体サイクル数プロットによる初期テンプレート定量のための2色配列特異的方法も提供する。
【0210】
以下の表はPCRの連続モニタリングに有用な二重鎖特異性DNA染料、加水分解プローブ、ハイブリダイゼーション・プローブを比較したものである。二重鎖特異性DNA染料の蛍光はDNAの鎖状態に依存する。2重標識加水分解プローブはプローブが加水分解される時に無傷のドナーフルオロフォアが増加する一方で消光する。ハイブリダイゼーション・プローブはハイブリダイゼーションが2つの蛍光物質を互いに近付ける場合共鳴エネルギー転移の増加に依存する。
【0211】
【0212】
本発明によれば、時間、温度、蛍光を毎秒1〜10回取得し生成物および/またはプローブ・ハイブリダイゼーションの詳細を温度サイクル中に観察する。二重鎖特異性DNA染料により温度に対する生成物のハイブリダイゼーションを用いて解離曲線で生成物を同定する。さらに、相対的生成物定量はTmが異なる2種類又はそれ以上の異なる生成物の多重増幅により実現される。さらに、競合的PCRは2種類又はそれ以上の生成物が異なるTmを有するように共通プライマーに対する内部配列を変更することで行なわれる。絶対生成物定量は変性した生成物を急冷しアニーリング速度論を観察することで得られる。蛍光体サイクル数のプロットによる初期テンプレート定量の感度は生成物解離曲線の分析によって増加し非特異性増幅及びカーブフィッティング・アルゴリズム制御を行なう。最後に、変性条件、伸長時間、及び生成物終了の制御のための即時的蛍光フィードバックは生成物の鎖状態を二重鎖特異性DNA染料によりモニタすることで得られる。
【0213】
温度サイクル中の蛍光でプローブ・ハイブリダイゼーションをモニタする能力は強力なツールである。本発明はPCR中の配列特異性検出及び定量でプローブ・ハイブリダイゼーション(加水分解ではない)に依存する2色蛍光法を提供する。ハイブリダイゼーション・プローブのアニーリング速度論及び解離は蛍光物質間のエクソヌクレアーゼ加水分解に頼るプローブでは得られない情報を提供する。配列特異性プローブのハイブリダイゼーションの連続モニタリングは温度変化につれて共鳴エネルギー転移へ続く。プローブの解離は配列と生成物への相補性によって決定される特性温度で発生する。本発明による2種類のスキーム(1)2種類の隣接ハイブリダイゼーション・プローブ、及び(2)標識プライマーを取り込む一本鎖PCR生成物にハイブリダイゼーションする1種類の標識プローブを詳解した。配列特異性プローブの解離温度はPCR中の生成物を同定し識別できる。DNA多型性又は単一塩基突然変異を含む突然変異はプローブのTmシフトにより検出される。さらに、相対的生成物定量は各々の生成物から異なる温度で解離する1種類又はそれ以上のプローブを用いて少なくとも2種類の生成物の多重増幅により実現される。さらに、競合PCRは1種類又はそれ以上のプローブが競合遺伝子及び自然のテンプレートに異なるTmでハイブリダイゼーションするように両プライマーの内側にある配列を改変することにより実施される。これ以外にも相対又は競合PCRはプローブにことなる蛍光物質たとえばCy5やCy5.5などで標識した多色分析によって行なわれる。絶対生成物濃度はプローブ・アニーリング速度論の分析により求められる。初期テンプレート・コピー数はカーブフィッティング・アルゴリズムにより蛍光体サイクル数のプロットから求められる。
【0214】
1回のPCR反応で多重分析を所望する場合、識別可能な発光スペクトルを有する異なった蛍光標識を使用して複数生成物を同定するのが共通の技術である。分析は利用できる蛍光物質の限られた数と利用できるこれらの蛍光物質の発光スペクトルがオーバラップしていることで複雑になる(H.M.シャピロら、前出)。解離曲線で生成物又はプローブ・ハイブリダイゼーションの分析は多数PCR生成物を識別する別の方法である。温度サイクル中にハイブリダイゼーションを追跡することにより、多数生成物を識別するのに必要とされるプローブ個数および/またはスペクトルの色を最小限に抑さえることができる。本発明はその精神又は基本的特徴から逸脱することなくその他の特定の態様で実現することもできる。詳述した実施例はすべての点で図示を目的とするのみであって制限的な意味合いに見なすべきものではない。したがって本発明の範囲は前述の説明によってではなく後述の請求項によって示される。請求項の等価物の意味及び範囲内に納まる全ての変化は本発明の範囲内に包含されるべきものである。
解離曲線や他の分析を行うためのプログラムコードは、以下の頁に示される。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1A及び図1Bは平衡PCRの典型例(A)と動的PCRの典型例(B)を表わすグラフである。
【図2】図2は蛍光ハイブリダイゼーションモニタリングに有用な温度対時間セグメントを表わす。
【図3】図3はPCRの高速温度サイクルで代表的な温度対時間のチャートである。
【図4】図4は4種類の異なる温度/時間プロファイル(A〜D)の結果と、これらから得られた30サイクル後の増幅生成物である。
【図5】図5A、図5B、図5CはPCRの蛍光をモニタする3種類の異なる方法での蛍光生成メカニズムを示し、(A)二重鎖DNA染料、(B)加水分解プローブ、(C)ハイブリダイゼーション・プローブである。
【図6】図6はCy5TMの一価N−ハイドロキシサクシニミド・エステルの化学構造を表わす。
【図7】図7はCy5.5TMの一価N−ハイドロキシサクシニミド・エステルの化学構造を表わす。
【図8】図8はフルオレセイン(実線)の発光スペクトルとCy5(破線)の励起スペクトルを表わす。
【図9】図9はPCR中の各サイクルでフルオレセインとCy5で標識した隣接するハイブリダイゼーション・プローブの間に発生する共鳴エネルギー転移を示す。
【図10】図10はPCR中に生成される共鳴エネルギー転移シグナルにおいてCy5プローブとフルオレセイン・プローブの比を変化させる効果を示す。
【図11】図11はPCR中に生成される共鳴エネルギー転移シグナルにおいて任意のプローブ比でのプローブ濃度を変化させる効果を示す。
【図12】図12はPCR中に生成される共鳴エネルギー転移シグナルにおいて標識オリゴヌクレオチドの間の間隔の効果を示す。
【図13】図13はTaqDNAポリメラーゼ(exo+;実線)とTaqDNAポリメラーゼのStoffel断片(exo−;点線)を用いた増幅30サイクル直後の、隣接するハイブリダイゼーション・プローブによるPCR中の蛍光発生に対する温度サイクルおよびポリメラーゼの種類の蛍光エネルギー転移による隣接プローブ・ハイブリダイゼーションの時間経過を示す。温度は太線で図示されている。
【図14】図14はTaqDNAポリメラーゼ(exo+;実線)と、TaqDNAポリメラーゼのStoffel断片(exo−;破線)とKlenTaqDNAポリメラーゼ(exo−;点線)による増幅での蛍光比対サイクル数のプロットである:上部パネル──サイクルは94℃と60℃の間で20秒間60℃で保持、中央パネル──サイクルは94℃と60℃の間で120秒間60℃で保持、下部パネル──サイクルは94℃と60℃の間で60℃から75℃までゆっくりと温度上昇。
【図15】図15はSybrTMグリーンIを用いてモニタした多数の異なる初期テンプレート・コピー反応での蛍光体サイクル数のプロットである:0,(△);1,(■);10,(─)102,(−);103,(+);104,(●)、105,(◇);106,(×);107,(▲);108,(□);109,(◆)。
【図16】図16は2重標識加水分解プローブを用いてモニタした多数の異なる初期テンプレート・コピー反応での蛍光比対サイクル数のプロットである:0,(─);1,(▲);10,(○);102,(*);103,(●);104,(□);105,(+);106,(■);107,(◇);108,(×);109,(◆)。
【図17】図17は隣接ハイブリダイゼーション・プローブでモニタした多数の異なる初期テンプレート・コピー反応での蛍光比対サイクル数のプロットである:0,(─);1,(▲);10,(○);102,(*);103,(●);104,(□);105,(+);106,(■);107,(◇);108,(×);109,(◆)。
【図18】図18は共鳴エネルギー転移によりモニタされる2種類のハイブリダイゼーション・プローブ設計を区別する蛍光比対サイクル数のプロットである:(◇)は各々フルオレセインとCy5で標識した2種類のハイブリダイゼーション・プローブ;(◆)はCy5で標識したプライマーとフルオレセインで標識したプローブである。
【図19】図19Aから図19Cは、PCRでの3種類の蛍光モニタリング技術の比較を提供し、二重鎖特異性DNA染料SYBRグリーンI(A)、2重標識フルオレセイン/ローダミン加水分解プローブ(B)、Cy5標識プライマーとフルオレセイン標識ハイブリダイゼーション・プローブ(C)を含む;図19Dは図19Aから図19Cまでに表わされている3種類のモニタリング技術の変動係数を示す。
【図20】図20はSYBRグリーンIでモニタされる標準増幅の代表的対数蛍光対サイクル数のプロットを示す。
【図21】図21は図20のデータのサイクル20〜27に適合させた双曲線を示す。
【図22】図22は増幅データから初期コピー数を決定するため未知サンプルに適合させた双曲線を表わす。
【図23】図23は各サイクル隣接ハイブリダイゼーション・プローブでモニタされる5種類の標準の代表的な蛍光対サイクル数のプロットで、初期コピー数は次のように表わしてある:103,(●);104,(◇);105,(▲);106,(□);107,(◆)。
【図24】図24は図23の標準データに適合させた曲線を示す。
【図25】図25は各サイクル加水分解プローブでモニタされる5種類の標準の代表的な蛍光対サイクル数のプロットを示し、初期コピー数は次のように表わしてある:1.5,(●);15,(◇);150,(▲);1500,(□);15,000,(◆)。
【図26】図26は図25の標準データに適合させた曲線を示す。
【図27】図27はSYBRグリーンIでモニタされる3種類の標準増幅の代表的対数蛍光対サイクル数のプロットを示し、ここでは(■);(●);(▲)である。
【図28】図28は図27の標準データに適合させた異なる曲線を示す。
【図29】図29A及び図29Bは時間対蛍光(A)と時間対温度(B)のプロットで温度と蛍光の間の逆比例関係を明示している。
【図30】図30は温度対時間、蛍光対時間、蛍光対温度の2Dプロットを示すチャートでSYBRグリーンIの存在下におけるhepatitis B(B型肝炎)ゲノムの180塩基対フラグメントの増幅について3Dプロットとしても図示してある。
【図31】図31はSYBRグリーンIの存在下でヒトβグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントの増幅についての蛍光対温度投影図である。
【図32】図32A及び図32Bは加水分解プローブについての温度による蛍光比の直線性変化(A)とハイブリダイゼーション・プローブでの温度によるラジカルな変化(B)とを示すプロットを提供する。
【図33】図33は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下にexo−ポリメラーゼによる増幅の蛍光比対温度プロットを示す。
【図34】図34は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下でexo+ポリメラーゼによる増幅の蛍光比対温度プロットを示す。
【図35】図35は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下にexo−ポリメラーゼによる増幅中の温度、時間、蛍光の三次元プロットを示す。
【図36】図36は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下にexo+ポリメラーゼによる増幅中の温度、時間、蛍光の三次元プロットを示す。
【図37】図37はhepatitis B(B型肝炎)ウィルス(●;50%GC、180bp)、βグロビン(▲;53.2%GC、536bp)、前立腺特異抗原(×;60.3%GC、292bp)のPCR増幅生成物での解離曲線を示す。
【図38】図38は0.1℃から5.0℃の加熱レートにおけるhepatitis B(B型肝炎)ウィルスのPCR増幅生成物の解離曲線を示す。
【図39】図39はSYBRTMグリーンIの各種濃度におけるhepatitis B(B型肝炎)ウィルスのPCR増幅生成物の解離曲線を示す。
【図40】図40A及び図40Bは(a)追加テンプレートなし、(b)低いストリンジェンシーの条件下で10の6乗コピーの追加テンプレート、(c)高いストリンジェンシーの条件下での10の6乗コピーの追加テンプレートで増幅したβグロビン断片物についての、(A)解離曲線と、(B)電気泳動分画バンドを示す。
【図41】図41A及び図41Bはhepatitis Bウィルス断片(HBV)、βグロビン、及びこれらの混合物の(A)解離曲線と、(B)解離ピークを示す。
【図42】図42Aから図42Dは(A)様々な量のβグロビン・テンプレートからPCR増幅した生成物についての相対蛍光対サイクル数のプロット、各種生成物の(B)解離ピークと(C)電気泳動バンド、(D)(A)のデータの補正蛍光を示す。
【図43】図43A及び図43Bは嚢胞性線維症遺伝子及びc−erbB−2オンコジーンの混合物のPCR増幅生成物からの(A)解離曲線と、(B)解離ピークを示す。
【図44】図44は嚢胞性線維症遺伝子(CFTR)とc−erbB−2(neu)について様々なサイクル数での解離ピークを示す。
【図45】図45はCFTRとneuPCT生成物の積分解離ピークのグラフである。
【図46】図46A及び図46Bは第V因子ライデン変異ヘテロ接合性のヒト(実線)、第V因子ライデン変異ホモ接合性のヒト(点線)、野生型ホモ接合性(破線)、DNAのない対照(一点鎖線)のPCR生成物についての(A)解離曲線と、(B)解離ピークを示す。
【図47】図47は第V因子ライデン変異ホモ接合性サンプル(実線)、第V因子ライデン変異ヘテロ接合性(点線)、野生型ホモ接合性(一点鎖線)のPCR生成物の40サイクル中の連続モニタの蛍光比対温度のプロットを示す。
【図48】図48はメチレンテトラヒドロ葉酸遺伝子のホモ接合型突然変異(実線)、野生型ホモ接合性(破線)、ヘテロ接合突然変異(点線)、DNAのない対照(一点鎖線)の解離ピークを示す。
【図49】図49は各種の初期テンプレート量から増幅したβグロビンPCR生成物のアニーリング曲線の形状を示す。
【図50】図50は初期テンプレート濃度を決定するための2次速度定数の決定を示す。
【図51】図51は蛍光データから熱サイクルを制御するためのブロック図である。
【図52】図52A及び図52Bは(A)20サイクル後に取得した温度対時間のプロットと、(B)25サイクル後に取得した蛍光対時間のプロットを示し、熱サイクルは蛍光データから制御した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR中のハイブリダイゼーションのモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般にポリメラーゼ連鎖反応に関連したハイブリダイゼーションにより得られる蛍光シグナルを観察することに関する。さらに詳しくは、本発明はPCR実施中および/または直後に蛍光によるハイブリダイゼーションの観察及びこの情報を生成物の同定、配列変化検出及び定量に使用することに関する。
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は分子生物学の基本であり臨床検査的に第1の実用分子技術である。その有用性や一般性にもかかわらず、PCRについての現在の理解は非常に進んでいるとはいえない。増幅が成功するのに充分な条件は試行錯誤によって見つけ出す必要があり最適化は経験に頼っている。当業者であっても工程についての分かり易い又は予測的理論なしで強力な技術を使用する必要がある。
【0004】
PCRはサンプルの熱サイクルによって行なわれ、DNAを変性(分離)し、特定プライマーを付着(アニーリング)し、複製を行なわしめる(伸長)。PCRの1サイクルは一般に2から8分で行なわれ、30サイクルの増幅には1から4時間を必要とする。大抵のPCR装置におけるサンプル温度応答は変性、アニーリング、伸長に必要な時間に比べれば非常に遅い。PCRでの物理的(変性及びアニーリング)及び酵素的(伸長)反応は非常に迅速に起こる。PCRの増幅時間は数時間から15分以内に減少可能である。本明細書において参照に含まれる特許文献1では、このような高速サイクル・システムを開示している。高速サイクル技術は表面積対容積比が大きなサンプル容器たとえば毛細管のサンプルで可能な高速温度応答及び温度均一性によって可能になる(さらに詳しい情報については、非特許文献1の高速サイクルDNA増幅も参照のこと)。温度均一性の改善によりPCRの時間及び温度条件は良く定義され理解されるようになる。温度均一性の改善は増幅中のPCRをモニタするために使用される分析技術の精度も向上させる。
【0005】
蛍光定量法は分子生物学に多くの用途を持つ高感度で汎用の技術である。臭化エチジウムはゲル電気泳動により分離される核酸のサイズ分布を視覚化するために長年の間使用されてきた。通常はゲルを紫外光で透過照射すると二重鎖核酸の赤色蛍光が観察される。さらに詳しくは、臭化エチジウムは増幅が完了した後でPCRの生成物を分析するために共通に使用される。さらに、本明細書で参照に含まれるヒグチ&ワトソンの特許文献2では増幅中に臭化エチジウムを使用して各サイクルで蛍光を測定することによる二重鎖DNAの量をモニタする方法を開示している。蛍光強度は温度に逆比例して上下し、アニーリング/伸長温度(50℃)で最大、また変性温度(94℃)で最低だったと記載された。最大の蛍光は各サイクルでDNA量の尺度として取得された。ヒグチ&ワトソンの出願はハイブリダイゼーション発生をモニタするために蛍光を使用することを教示しておらず、ハイブリダイゼーションの範囲を追跡するため異なる温度での蛍光を観察することも示唆していない。さらに、ヒグチ&ワトソンはPCR生成物の同定又は定量のためにPCR生成物ハイブリダイゼーションの温度依存性を使用することも教示又は示唆し得なかった。
【0006】
しかしヒグチ&ワトソン出願は、ゲルファンドらへの特許文献4に開示されているように、ある種のDNAポリメラーゼの5’エクソヌクレアーゼ活性で加水分解される場合に蛍光を発生する二重標識プローブ・システムを含む他の蛍光を使用する方法を記述している。これらのプローブから観察される蛍光は主として二つの蛍光物質の間でプローブの加水分解に依存する。PCR生成物の量は各サイクル毎に1回蛍光を測定することで推定される。これらのプローブのハイブリダイゼーションは加水分解が発生する必要があるように見えるが、蛍光シグナルは主としてプローブの加水分解から得られるもので、ハイブリダイゼーションによるものではなく、対向する端部に蛍光染料を付けたオリゴヌクレオチド・プローブはPCR生成物と核酸ハイブリダイゼーションを検出するために有用な消光プローブ・システムを提供する(例えば、非特許文献2参照)。蛍光でプローブハイブリダイゼーションの温度依存に追従しPCR生成物の配列変化を同定することにはなんの示唆もされていない。
【0007】
同定のための相補鎖に対する核酸の特異的ハイブリダイゼーションは多くの異なるフォーマットで開発されてきた。たとえば、制限酵素による消化の後で、ゲノムDNAをサイズによって分離し、サザンブロッティングによりプローブとハイブリダイズさせることができる。別の例として、単一の塩基変異が対立遺伝子特異性オリゴヌクレオチドによる「ドット・ブロット」で検出できる。通常、ハイブリダイゼーションは単一温度で数分から数時間にわたって実施し必要な弁別を行なう。これ以外に、蛍光技術を用いることで温度を変化させながらハイブリダイゼーション範囲を動的にモニタすることができる。たとえば、蛍光解離曲線はハイブリダイゼーションをモニタするために使用されてきた(例えば、非特許文献3参照)。温度スキャン・レートは一般に毎時10℃またはそれ以下で、一部には蛍光光度計キュベットの熱容量が大きいことによる。
【0008】
ハイブリダイゼーションをモニタするための現行方法は多くの時間を必要とする。ハイブリダイゼーションが数時間ではなく数秒で起これば、高速サイクルPCRの最中であってもハイブリダイゼーションはPCR増幅中にモニタできる。PCR中のハイブリダイゼーションモニタリングの多くの用途は、本明細書で完全に開示するように、生成物の同定と定量、配列変化の検出、蛍光フィードバックによる温度サイクル・パラメータの自動制御を含む。
【0009】
前述のように、従来技術では温度サイクルをゆっくりとまた経験的に行なってきた。ハイブリダイゼーションによるPCR生成物の分析が必要な場合、さらに時間のかかるステップが必要である。つまり、PCR中のハイブリダイゼーションをモニタし、反応が行なわれている最中につまりサンプル操作なしで温度サイクルの最中又は直後に反応を分析する方法を提供するのは当該技術における大きな進歩である。PCR中のハイブリダイゼーションをモニタすることで、PCRが機能することのできる基本原理に追従しまた使用して増幅中の反応を分析し最適化することができる。
【特許文献1】米国特許出願第08/537,61号(1995年10月2日出願)
【特許文献2】EPA特許出願第0640828A1号
【特許文献3】米国特許第5,210,015号
【非特許文献1】C. T. Wittwer, G. B. Reed, and K. M. Ririe, Rapid cycle DNA amplification in K. B. Mullis. F. Ferre. And R.A. Gibbs.
【非特許文献2】K. J. Livak et al., 4 PCR Meth. Appl. 357-362(1995)
【非特許文献3】L. E. Morrison & L.M. Stols, Sensitive fluorescence-based thermodynamic and kinetic measurements of DNA hybridization in solution, 32 Biochemistry 3095 -3104, (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はPCR中の生成物ハイブリダイゼーションをモニタするための二重鎖特異性DNA染料を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は蛍光解離曲線によるPCR増幅生成物を同定するためのシステムを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は二重鎖特異性DNA染料によるPCR定量感度の改善のための方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は解離曲線によりPCRで増幅された特定生成物の量を決定して二重鎖特異性DNA染料により検出された非特異的増幅を補正することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は二重鎖特異性DNA染料による異なったPCR生成物の相対的定量の方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は二重鎖特異性DNA染料の存在下に生成物のアニーリング速度論による生成物定量の方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的はプライマーおよび/またはプローブのハイブリダイゼーションをモニタするための新規な共鳴エネルギー転移対を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は共鳴エネルギー転移対を使用する生成物に対するプローブのアニーリング速度論による生成物定量の方法を提供することである。
【0018】
本発明の目的はPCR増幅中に各サイクルのハイブリダイゼーション・プローブ又はプローブ群の蛍光を追跡することにより初期テンプレート・コピー数を決定する方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は両PCRプライマーの内側でハイブリダイゼーションする二つの標識プローブの間での共鳴エネルギー転移によるPCR生成物の均質な検出のためのシステムを提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は1つの標識プライマーと両PCRプライマーの内側でハイブリダイゼーションする1つの標識プローブの間の共鳴エネルギー転移によりPCR生成物の均質な検出のためのシステムを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は共鳴エネルギー転移とプローブ解離曲線による両PCRプライマーの内側配列変化の検出のためのシステムを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的はプローブ解離曲線による異なったPCR生成物の相対定量のためのシステムを提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は蛍光対サイクル数プロットを曲線適合することで初期テンプレートのコピー数を決定するための方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的はPCRを高速で行なうためと反応を連続的にモニタし反応が進行中に反応パラメータを調節するためのシステム及びその方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は合成核酸アナログ又は誘導体による、たとえばペプチド核酸(PNA)により、蛍光化合物でこれらも又標識できる場合に核酸プローブを置き換えることである。
【0026】
本発明の上記及びその他の目的と利点は後述の詳細な説明と請求項とからさらに完全に明らかになるか、または本発明の実施により学習されよう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明はDNA増幅の連続的蛍光モニタのための方法とその応用を提供する。各種の異なる蛍光技術によるDNA増幅を連続的にモニタするために、必要とされる器具類は、光学的な構成要素と高速温度サイクルを提供するためのシステムとの組合せである。1つの図示した実施例において、蛍光は単一サンプルから連続的に、又はこれ以外ではサンプル全部に同時に高速熱サイクルが行なわれるようにした回転カローセル上の多数サンプルから連続的に取得する。関連装置についてのさらなる情報は上記で参照した米国特許出願に見ることができる。
【0028】
本発明の1つの側面において、DNA増幅中の蛍光は、1)二重鎖特異性染料SYBRTMグリーンI、及び2)ハイブリダイゼーション・プローブ付きCy5TM及びCy5.5TMへのフルオレセインの共鳴エネルギー転移によりモニタされた。サイクル毎に1回取得した蛍光データで初期テンプレート・コピー数の定量が行なえる。
【0029】
さらに、サイクルあたり1回の蛍光測定とは対照的に、各サイクルの間中連続的に温度、時間、蛍光をモニタし、三次元螺旋を作成する本発明の実施例が開示される。この三次元螺旋は温度対時間、蛍光対時間、蛍光対温度プロットに還元可能である。ハイブリダイゼーション・プローブからの蛍光の蛍光対温度プロットは生成物の配列変化を検出するために使用できる。これらの配列変化は突然変異又は多型性等では自然的、定量PCRの工学的変更テンプレート等では人工的なものである。
【0030】
本発明の別の側面において、蛍光モニタリングを用いて二重鎖特異性DNA特異的染料による蛍光モニタリングによるPCR中の生成物解離曲線を取得する。熱サイクラが生成物解離温度を通して加熱する際に温度の関数として蛍光をプロットすることで、PCR生成物解離曲線を得る。このDNA解離曲線の形状と位置はGC/AT比及び配列の関数であり、解離温度2℃以内で分離された増幅生成物を区別するために使用できる。所望する生成物は、プライマー・ダイマーを含む所望しない生成物から識別できる。解離曲線の分析を用いると定量PCRのダイナミックレンジを拡大し、また多重増幅での異なる生成物を識別することができる。二重鎖染料、生成物変性、アニーリング、伸長の使用は各サイクル内で継続できる。蛍光の連続モニタリングによって温度サイクル中の解離曲線と生成物アニーリング曲線の取得ができるようになる。
【0031】
本発明は30分以内での、さらに望ましくは15分以内で、またもっとも望ましくは10分以内で、蛍光モニタリングによる増幅と分析を組み合わせた高速サイクルPCRのための試薬ならびに方法を提供する。
【0032】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
前記標的配列の隣接領域にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応法により前記標的配列を増幅し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識して前記2種類のプローブと前記標的配列とのハイブリダイゼーション時に前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは互いに25核酸以内にあり、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含む増幅ステップと、
前記ドナーフルオロフォアによって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記蛍光エネルギー転移対からの発光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0033】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
前記標的配列の隣接領域にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応法により前記標的配列を増幅し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識して前記2種類のプローブと前記標的配列とのハイブリダイゼーション時に前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは互いに25核酸以内にあり、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含む増幅ステップと、
前記ドナーフルオロフォアによって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起するステップと、
前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0034】
生物学的サンプルの標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法は、
(a)前記生物学的サンプルに2種類の核酸プライマーと核酸プローブとの有効量を添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々がアクセプターフルオロフォアとドナーフルオロフォアとを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブは前記標識されたプライマーの15ヌクレオチド以内の標的核酸配列の増幅コピーとハイブリダイゼーションするステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、
(c)前記ドナーフルオロフォアによって吸収される選択波長の光で前記生物学的サンプルを照射するステップと、
(d)前記サンプルの蛍光発光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0035】
生物学的サンプルの標的核酸配列を増幅する方法の改良は、
(a)前記生物学的サンプルに核酸結合性蛍光体の有効量を添加するステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応を用いて前記標的核酸配列を増幅するステップであって、初期の所定温度と時間パラメータを用いて前記生物学的サンプルを熱サイクルし、さらに、
(i)前記ポリメラーゼ連鎖反応中の蛍光体によって吸収される光の選択波長で前記生物学的サンプルを照射するステップと、
(ii)前記サンプルからの蛍光をモニタして前記ポリメラーゼ連鎖反応の最適温度及び時間パラメータを決定するステップと、
(iii)前記蛍光により前記初期温度及び時間を調節するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0036】
図示した1つの実施例において、蛍光体は二重鎖特異性DNA結合染料を含み、別の図示した実施例においては、蛍光体は標的核酸配列にハイブリダイゼーションする蛍光標識オリゴヌクレオチド・プローブを含む。
【0037】
生物学的サンプルの標的核酸配列を検出するための方法は、
(a)前記生物学的サンプルに前記標的核酸配列とハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド・プローブの対の有効量を添加し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識され、他方のプローブは蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識され、前記ドナーフルオロフォアの発光スペクトルと前記アクセプターフルオロフォアの吸収スペクトルは25%未満で重なり合い、前記アクセプターフルオロフォアは100,000M-1cm-1より大きいピーク減衰係数を有し2種類のプローブのハイブリダイゼーション時には前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは互いに25ヌクレオチド以内にあるステップと、
(b)前記ドナーフルオロフォアによって吸収される光の選択波長で前記生物学的サンプルを照射するステップと、
(c)前記生物学的サンプルの発光を検出するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0038】
図示した共鳴エネルギー転移対はドナーとしてフルオレセイン、又アクセプターとしてCy5又はCy5.5を含む。
【0039】
生物学的サンプルの標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法は、
前記標的配列の隣接領域とハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識され前記他方のプローブは蛍光エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識されて、前記2種類のプローブと前記標的配列のハイブリダイゼーション時に、前記ドナーフルオロフォアと前記アクセプターフルオロフォアは互いに25ヌクレオチド以内にあり、前記ポリメラーゼ連鎖反応は前記標的核酸配列の熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、
前記ドナーフルオロフォアにより吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの発光を検出するステップと、
前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0040】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法は、
SYBRTMグリーンIの存在下にポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応は前記標的核酸配列の熱安定性ポリメラーゼとプライマーとを前記生物学的サンプルに添加するステップと、少なくとも変性温度と伸長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップを含むステップと、
前記SYBRTMグリーンIによって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの発光を検出するステップと、
前記SYBRTMグリーンIからの温度依存性蛍光をモニタするステップと、を含むことを特徴とする。望ましくは、前記モニタするステップは前記増幅された標的配列の解離プロファイルを決定するステップを含む。
【0041】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
(a)2種類の核酸プライマーと核酸プローブとの有効量を前記生物学的サンプルに添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々がアクセプターフルオロフォアとドナーフルオロフォアからなる蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブは前記標識されたプライマーから15ヌクレオチド以内の前記標的核酸配列の増幅コピーとハイブリダイゼーションするステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、
(c)前記ドナーフルオロフォアによって吸収される選択波長の光で前記生物学的サンプルを照射して前記サンプルの蛍光発光を検出するステップと、を含むことを特徴とする。別の図示した実施例において、本方法はさらに、望ましくは前記増幅した標的配列の解離温度を決定することによって、前記サンプルの温度依存性蛍光をモニタするステップを含む。
【0042】
第1の核酸において選択した遺伝子座での相違を第2の核酸と比較して検出する方法は、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応により、前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択したセグメントとこれに対応するセグメントは各々が前記選択した遺伝子座を含み、前記選択した遺伝子座のコピーを含む増幅生成物が得られるようにするステップと、
(b)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光共鳴エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識しておき前記2種類のプローブと前記増幅生成物のハイブリダイゼーション時に前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアが共鳴エネルギー転移の関係にあるようにし、前記プローブの一方は前記増幅生成物とハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブの前記一方が前記選択された遺伝子座に広がり前記第1の核酸において前記第2の核酸の解離プロファイルとは識別可能な差が存在する場合に解離プロファイルを示すようにするステップと、
(c)前記第1の核酸の前記選択したセグメントと前記第2の核酸の前記これに対応するセグメントとを有効量のプローブの存在下にポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントが得られるようにし、その少なくとも一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対でこれらにハイブリダイゼーションされた両方のプローブを有するステップと、
(d)ハイブリダイゼーションされたプローブを有する前記増幅された選択セグメントと前記増幅された対応セグメントとを選択された波長の光で照射して前記蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を照射させるステップと、
(e)温度の関数として蛍光発光を測定して第1の核酸の前記増幅選択セグメントから解離する前記一方のプローブの第1の解離プロファイルと第2の核酸の前記増幅対応セグメントから解離する前記一方のプローブの第2の解離プロファイルにおいて決定するステップと、
(f)前記第1の解離プロファイルを前記第2の解離プロファイルと比較し、ここでの相違が前記サンプル核酸における相違の存在を示すようにするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0043】
第1の核酸において第2の核酸と比較して選択した遺伝子座での相違を検出する方法は、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応により、前記第1の核酸の選択されたセグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択セグメントと対応セグメントの各々が前記選択された遺伝子座を含み、前記選択された遺伝子座のコピーを含む増幅生成物を得るようにするステップと、
(b)オリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プライマーの一方と前記プローブとが各々ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブと標識されたプライマーは前記増幅生成物とハイブリッド化して前記ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとが共鳴エネルギー転移関係に置かれるようにし、前記プローブは前記増幅生成物とハイブリッド化するように構成されて前記プローブは前記選択された遺伝子座に広がり前記第2の核酸の解離プロファイルから識別できる前記第1の核酸に相違が存在する場合には解離プロファイルを示すステップと、
(c)前記第1の核酸の選択セグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとをポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプライマー及びプローブの存在下にて増幅し増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントを得るようにし、その少なくとも一部分は共鳴エネルギー転移関係にある前記蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた標識プライマー及びプローブを有するステップと、
(d)前記標識プライマー及びプローブがハイブリッド化された前記増幅選択セグメントと前記増幅対応セグメントを選択した波長で照射して前記蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を照射するステップと、
(e)前記第1の核酸の前記増幅選択セグメントから解離する前記プローブの第1の解離プロファイルと前記第2の核酸の前記増幅対応セグメントから解離する前記プローブの第2の解離プロファイルとを決定するステップと、
(f)前記第1の解離プロファイルと前記第2の解離プロファイルとを比較して、相違が前記サンプル核酸に置ける相違の存在を表わすステップと、
を含むことを特徴とする。
【0044】
個人のゲノムにおいて選択された遺伝子座でのヘテロ接合性を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異性対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、その各々が選択された遺伝子座を含み、
(a)前記個人からサンプルとなるゲノムDNAを採得するステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記突然変異対立遺伝子の第1の選択したセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択したセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択されたセグメントとの両方ともが前記選択された遺伝子座を含むステップと、
(c)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プローブの一方はアクセプターフルオロフォアで標識し前記プローブの他方は蛍光共鳴エネルギー転移対のドナーフルオロフォアで標識して前記増幅した第1と第2の選択セグメントと前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記プローブの一方は前記選択された遺伝子座に広がり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の解離プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の解離プロファイルを示すようにするステップと、
(d)ポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプローブの存在下でサンプル・ゲノムDNAの前記第1と第2の選択セグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分が両方とも共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされたプローブを有するステップと、
(e)選択した波長の光によりハイブリダイゼーションされたプローブを有する前記増幅された第1と第2の選択セグメントを照射して、前記ドナーとアクセプターによる蛍光を照射するステップと、
(f)温度の関数として蛍光発光を測定して、前記増幅した第1の選択セグメントから解離する前記一方のプローブの第1の解離プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから解離する前記一方のプローブの第2の解離プロファイルとを決定するステップと、
(g)前記第1の解離プロファイルと前記第2の解離プロファイルとを比較して、識別可能な解離プロファイルが前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすようにするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0045】
個人のゲノムにおいて選択された遺伝子座でのヘテロ接合性を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、各々が選択された遺伝子座を含み、
(a)前記個人からサンプル・ゲノムDNAを採得するステップと、
(b)ポリメラーゼ連鎖反応によって前記突然変異対立遺伝子の第1の選択されたセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択されたセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択セグメントにはどちらも前記選択された遺伝子座を含むステップと、
(c)オリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブと標識されたプライマーは前記増幅された第1と第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションして前記プローブの一方が前記選択された遺伝子座に広がり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の解離プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の解離プロファイルを示すようにするステップと、
(d)有効量のプライマー及びプローブの存在下でポリメラーゼ連鎖反応によりサンプル・ゲノムDNAの第1と第2の選択されたセグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた標識プライマー及びプローブを有するようにするステップと、
(e)前記標識したプライマーとプローブがハイブリダイゼーションされている前記増幅した第1と第2の選択セグメントを選択した波長の光で照射して前記ドナー及びアクセプターによる蛍光を照射するステップと、
(f)温度の関数として蛍光発光を測定して前記増幅した第1の選択セグメントから解離する前記プローブの第1の解離プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから解離する前記プローブの第2の解離プロファイルとを決定するステップと、
(g)前記第1の解離プロファイルと前記第2の解離プロファイルを比較し、識別可能な解離プロファイルは前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすステップと、
を含むことを特徴とする。
【0046】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物が2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プライマー、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物においてポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法は、
(a)前記混合物に(1)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識され、選択された温度条件と単価イオン強度で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成された有効量のオリゴヌクレオチド・プローブと、(2)前記ドナー又は前記アクセプターで標識され、前記プローブと基準オリゴヌクレオチドの間で一方が前記ドナーで標識され他方が前記アクセプターで標識され、前記基準オリゴヌクレオチドは前記選択された温度及び単価イオン強度の条件下で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドが両方とも前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合前記ドナー及び前記アクセプターが共鳴エネルギー転移関係にあるようにする有効量の基準オリゴヌクレオチドとを添加するステップと、
(b)前記核酸の選択セグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して前記増幅生成物を得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、
(c)選択した波長の光でハイブリダイゼーションされたプローブと基準オリゴヌクレオチドとを有する前記増幅生成物を照射して前記蛍光共鳴エネルギー対による蛍光を照射させ、蛍光発光をモニタして、前記蛍光発光が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0047】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物は2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プライマー、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物におけるポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法は、
(a)前記混合物に有効量の核酸結合蛍光染料を添加するステップと、
(b)前記核酸結合蛍光染料が添加された前記混合物でポリメラーゼ連鎖反応により前記選択した核酸セグメントを増幅して核酸結合蛍光染料が結合した前記増幅生成物を得るステップと、
(c)核酸結合蛍光染料が結合している増幅生成物に選択した波長の光を照射してここからの蛍光を照射し、蛍光発光をモニタして、前記蛍光発光が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、
を含むことを特徴とする。望ましくは、核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択した構成要素とし、さらに望ましくはSYBRTMグリーンIとする。
【0048】
二重鎖特異性蛍光染料を含むポリメラーゼ連鎖反応混合物のアニーリング、伸長、変性フェーズの反復サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応の温度サイクル・パラメータを制御する方法であって、前記パラメータは前記アニーリング・フェーズの持続時間と、前記変性フェーズの持続時間と、サイクル数とを含み、
(a)選択した波長の光で前記反応を照射して前記蛍光染料からの蛍光を照射させ前記反復アニーリング、伸長、変性フェーズの間に蛍光を連続モニタするステップと、
(b)少なくとも、
(i)前記伸長フェーズの間に蛍光が増加を停止する持続時間、又は
(ii)前記変性フェーズの間に前記蛍光が基線レベルまで減少する持続時間、又は、
(iii)前記伸長フェーズの間に前記蛍光が所定のレベルに達した回数
を決定するステップと、
(c)前記伸長フェーズの間に蛍光が増加を停止する時間の長さに基づいた前記伸長フェーズの長さ、前記変性フェーズの間に蛍光が前記基線レベルまで減少した時間の長さに基づいた前記変性フェーズの長さ、又は前記伸長フェーズの間に蛍光が前記所定レベルに達したサイクル数に基づくサイクル数を調節するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0049】
選択したポリメラーゼ連鎖反応混合物における増幅生成物の濃度を決定する方法は、
(a)前記増幅生成物の既知の濃度のハイブリダイゼーションのレートをモニタすることにより選択した温度と反応条件での前記増幅生成物での2次速度定数を決定するステップと、
(b)前記増幅生成物の未知の濃度でのアニーリング速度を決定するステップと、
(c)前記アニーリング速度と前記2次速度定数から前記増幅生成物の濃度を計算するステップと、
を含むことを特徴とする。望ましくは、アニーリング速度は多数の増幅サイクルの後で決定される。2次速度定数を決定する1つの代表的な方法は、既知の濃度の前記増幅生成物と有効量の二重鎖特異性蛍光染料とを含む第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以上に上昇して変性増幅生成物を得るステップと、
前記既知の量の変性増幅生成物を含む前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以下の選択した温度まで急冷すると同時に時間の関数として前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の蛍光を連続モニタするステップと、
極大蛍光、極小蛍光、極小蛍光の時間、及び増幅生成物の既知の濃度での2次速度定数を決定するため、式:
(ただし、Fは蛍光、Fmaxは極大蛍光、Fminは極小蛍光、kは2次速度定数、t0はFminでの時間、[DNA]は前記増幅生成物の既知の濃度である)から時間の関数として蛍光をプロットするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0050】
競合的定量ポリメラーゼ連鎖反応による選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法は、
(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択したセグメントと相補的テンプレートのこれに対応する選択したセグメントを増幅してこれらの増幅生成物を得るように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対の各々の有効量と、
(ii)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識された有効量のオリゴヌクレオチド・プローブであって、前記プローブが前記競合的テンプレートの増幅生成物から解離する解離温度から識別可能な解離温度での前記選択したテンプレートの増幅生成物から解離するように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されている前記プローブと、
(iii)前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が前記ドナーにより標識され他方が前記アクセプターにより標識されているとして、前記ドナー又は前記アクセプターで標識された有効量の基準オリゴヌクレオチドであって、前記基準オリゴヌクレオチドは前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に前記ドナーと前記アクセプターが共鳴エネルギー転移関係になるように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするよう構成されたオリゴヌクレオチドと、
を含む反応混合物において、
ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の選択したテンプレートと既知の量の前記競合的テンプレートを増幅して前記増幅生成物を得るステップと、
(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照射して蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を照射させ、反応混合物の温度が変化して前記選択したテンプレートの前記増幅生成物から解離する前記プローブの第1の解離曲線と前記競合的テンプレートから解離する前記プローブの第2の解離曲線とを得る場合に温度の関数として蛍光発光を決定するステップと、
(c)前記第1と第2の解離曲線から第1と第2の解離ピークに変換して当該解離ピークから前記選択したテンプレートと前記競合的テンプレートの相対量を決定するステップと、
(d)前記既知の量の前記競合的テンプレートと、前記選択したテンプレート及び競合的テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0051】
蛍光共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5、又はCy5.5からなる。
【0052】
ポリメラーゼ連鎖反応において選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法は、
(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅した第1の生成物を得るように構成された第1のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において基準テンプレートの選択した第2のセグメントを増幅して増幅した第2の生成物を得るように構成された第2のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(iii)核酸結合蛍光染料の有効量と、
を含む反応混合物において、
ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の前記選択したテンプレートを増幅して前記増幅した第1の生成物を得る及び既知の量の前記基準テンプレートを増幅して前記増幅した第2の生成物を得るステップと、
(b)選択した波長の光で前記反応混合物を照射して核酸結合蛍光染料による蛍光を照射させ、温度の関数として発光された蛍光を連続的にモニタして第1の生成物と第2の生成物が異なる温度で解離するような前記増幅生成物の解離曲線を得るステップと、
(c)前記解離曲線を解離ピークに変換して当該解離ピークから前記選択したテンプレートと前記基準テンプレートの相対量を決定するステップと、
(d)前記既知の量の前記基準テンプレートと選択したテンプレート及び基準テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0053】
陽性対照テンプレートも含むポリメラーゼ連鎖反応において選択したテンプレートの増幅をモニタする方法は、
(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅された第1の生成物を得るように構成された第1のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において、陽性対照テンプレートの選択された第2のセグメントを増幅して増幅された第2の生成物を得るように構成された第2のオリゴヌクレオチド・プライマー対の各々の有効量と、
(iii)有効量の核酸結合蛍光染料と、
を含む反応混合物において、
前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するための条件に前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをさらすステップと、
(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照射して核酸結合蛍光染料による蛍光を照射し、前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクル中に温度の関数として発光される蛍光を連続的にモニタして前記選択したテンプレートが増幅される場合前記増幅された第1の生成物の第1の解離ピークを、また前記陽性対照テンプレートが増幅される場合前記増幅された第2の生成物の第2の解離ピークを取得するステップとを含み、
前記第2の解離曲線の取得はポリメラーゼ連鎖反応が作用したことを表わし、前記第1の解離曲線の取得は前記選択した第1のセグメントが増幅可能であることを表わし、前記第1の解離曲線が欠如していることは前記選択した第1のセグメントが増幅不可能であることを表わすことを特徴とする。
【0054】
個人の第V因子ライデン変異を検出する方法であって、第V因子ライデン変異は野生型と比較して第V因子ライデン変異遺伝子座での単一塩基変化で構成され、
(a)前記個人からサンプル・ゲノムDNAを採得するステップと、
(b)対照として野生型ゲノムDNAを提供するステップと、
(c)前記サンプル・ゲノムDNAと前記野生型ゲノムDNAの選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択したセグメントは第V因子ライデン変異遺伝子座を含み、第V因子ライデン変異遺伝子座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、
(d)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プローブは前記増幅された生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブが前記変異遺伝子座に広がり前記サンプル・ゲノムDNAに前記野生型ゲノムDNAの解離プロファイルから区別できる第V因子ライデン変異が存在する場合解離プロファイルを示すステップと、
(e)共鳴エネルギー転移ドナー又は共鳴エネルギー転移アクセプターで標識された転移オリゴヌクレオチドを提供し、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が共鳴エネルギー転移ドナーで標識され他方が共鳴エネルギー転移アクセプターで標識されているとして、前記転移オリゴヌクレオチドは前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成して前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に共鳴エネルギー転移ドナーと共鳴エネルギー転移アクセプターが共鳴エネルギー転移関係にあるようにするステップと、
(f)有効量のオリゴヌクレオチド・プローブと転移オリゴヌクレオチドの存在下でサンプル・ゲノムDNAと野生型ゲノムDNAの前記選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応により増幅して、増幅された選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、
(g)前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクルの間の温度の関数として蛍光を測定してサンプル・ゲノムDNAの前記増幅セグメントから解離する前記プローブの解離プロファイルと前記野生型ゲノムDNAの増幅セグメントから解離する前記プローブの解離プロファイルとを取得するステップと、
(h)前記サンプル・ゲノムDNAについての前記解離プロファイルを前記野生型ゲノムDNAについての前記解離プロファイルと比較し、これらの差が前記サンプル・ゲノムDNAにおける第V因子ライデン変異の存在を表わすステップと、
を含むことを特徴とする。
【0055】
核酸ハイブリダイゼーションを分析するための方法は、
(a)分析すべき核酸サンプルと核酸結合蛍光体とを含む混合物を提供するステップと、
(b)温度を≧毎秒0.1℃の速度で変化させながら蛍光をモニタするステップと、
を含むことを特徴とする。
【0056】
未知の量の核酸を含むサンプルの初期コピー数を定量する方法は、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応により既知の濃度の少なくとも一つの標準を、前記標準と核酸結合蛍光体とを含む混合物中で増幅するステップと、
(b)サイクル数の関数として蛍光を測定して一組のデータ点を得るステップと、
(c)初期核酸濃度とサイクル数の関数として蛍光を記述する任意の所定の式に前記データ点を当てはめるステップと、
(d)前記サンプルと前記核酸結合蛍光体とを含む混合物中で未知の量の核酸を含む前記サンプルを増幅してこれの蛍光をモニタするステップと、
(e)ステップ(c)で求めた式から初期核酸濃度を決定するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0057】
蛍光共鳴エネルギー転移対が開示され、前記対は発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアと、吸収スペクトルを有し減衰係数が100,000M-1cm-1より大きいアクセプターフルオロフォアとを含む含み、前記ドナーフルオロフォアの発光スペクトルと前記アクセプターフルオロフォアの吸収スペクトルは25%未満でオーバラップする。本明細書で説明される1つの代表的な蛍光共鳴エネルギー転移対はドナーフルオロフォアがフルオレセインでありアクセプターフルオロフォアがCy5又はCy5.5である。
【0058】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法は、
核酸結合蛍光体の存在下でポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的とされる核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加して少なくとも変性温度と伸長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップを含むステップと、
前記核酸結合蛍光体により吸収される波長の光によって前記サンプルを励起するステップと、
前記サンプルの温度が変化する際に前記核酸結合蛍光体からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、を含むことを特徴とする。望ましくは、核酸結合蛍光体には二重鎖核酸結合蛍光染料たとえばSYBRTMグリーンI等を含む。温度依存性蛍光は、望ましくは解離曲線分析によって、増幅生成物を識別するために使用できる。2種類又は3種類以上の増幅生成物の相対量を解離曲線の分析で求めることができる。たとえば、解離曲線より下の領域は多重ガウス分布の和の非線形最小二乗回帰で見付けられる。
【0059】
<関連出願への相互参照>
自動ポリメラーゼ連鎖反応装置と題する1990年6月4日付米国特許出願第07/534,029号(現在は放棄されている)の一部継続出願である高速熱サイクル装置と題する1992年1月2日付米国特許出願第07/815,966号(現在は放棄されている)の一部継続出願である高速熱サイクル装置と題する1994年1月10日付米国特許出願第08/179,969号(現在の米国特許第5,455,175号)の一部継続出願である生物学的サンプルの高速熱サイクルのための方法と題する1995年10月2日付米国特許出願第08/537,612号の一部継続出願であるPCR処理をモニタするためのシステム及び方法と題する1996年6月4日付米国特許出願第08/658,993号の一部継続出願である第V因子ライデン変異を検出するための方法と題する1997年3月17日付米国特許出願第08/818,267号。上記出願の各々はその全体で本明細書において参照として個別に各々含まれる。生物学的処理を実施しモニタするためのシステム及びその方法と題し、ユタ大学研究財団が出願人でカール・T・ウィットワー、カーク・M・ライリー、ランディ・P・ラスムッセン、デビッド・R・ヒルヤードを米国における発明者兼出願人とする同時出願中の1997年6月4日付米国事務局(RO/US)受付PCT出願番号PCT/US97/もその全体を本明細書の参照に含む。
【発明の効果】
【0060】
本発明はPCR増幅と分析に必要な総時間数を従来技術に比べてとくに減少する一方で同時に増幅条件を最適化することにより反応量を有意に増加するオプションを可能にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
PCR中のハイブリダイゼーションをモニタする本発明の方法を開示し説明する前に、本発明は本明細書で開示される特定の構成、処理ステップ、材料に制限されるものではなく、こうした構成、処理ステップ、材料は何らか変化することがあることを理解されるべきである。また本発明の範囲は付録の請求項及びその等価物によってのみ制限されるものであるから本明細書で用いられている術語は特定の実施例を説明する目的でのみ用いられていることも理解されて然るべきである。
【0062】
本明細書及び付録の請求項で用いられているように、単数形表現“a”“an”“the”はコンテクストでとくに何らか明言していない限り複数対象も含むことには注意すべきである。
【0063】
本発明の説明と請求において、以下の術語は以下に明示した定義にしたがって用いられる。
【0064】
本明細書で用いている「核酸」「DNA」及び類似の術語も核酸アナログ、即ちリン酸ジエステル骨格以外を有する類似物も含む。たとえば、いわゆる「ペプチド核酸」は従来技術で公知となっているが骨格においてリン酸ジエステル結合の代わりにペプチド結合を有しており、本発明の範囲内に含まれるものと解釈される。
【0065】
本明細書で用いている「連続モニタリング」及び類似の術語はPCRのサイクルの間の多数の時刻でモニタし、望ましくは温度遷移中、又さらに望ましくは各温度遷移において少なくとも一つのデータ点を取得することを表わす。
【0066】
本明細書で用いている「サイクル毎」モニタリングは各サイクル毎に1回、望ましくはPCRのアニーリング相の間に、PCR反応をモニタすることを意味する。
【0067】
本明細書で用いている「蛍光共鳴エネルギー転移関係」及び類似の術語は、ドナーフルオロフォアが共鳴エネルギーをアクセプターフルオロフォアに転移してアクセプターフルオロフォアが測定可能な蛍光発光を発生することができるようにするように、ドナーフルオロフォアで標識されたオリゴヌクレオチドとアクセプターフルオロフォアで標識されたオリゴヌクレオチドとの核酸に対する隣接ハイブリダイゼーションを表わす。ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアがあまり遠すぎる距離に離れていると、アクセプターフルオロフォアが測定可能な蛍光を発光できるようにアクセプターフルオロフォアへ共鳴エネルギーを転移することができず、したがってドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアは共鳴エネルギー転移関係にはない。望ましくは、2種類の標識されたオリゴヌクレオチドが両方ともプローブであり、どちらもPCRプライマーとして機能しない場合、(「プローブ−プローブ」)ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアはおよそ0〜25ヌクレオチド以内であり、さらに望ましくは0〜5ヌクレオチド以内、また最も望ましいのは0〜2ヌクレオチド以内である。特に好適な間隔は1ヌクレオチドである。標識オリゴヌクレオチドの一方がPCRプライマーとしても機能する(「プローブ−プライマー」)場合、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアはおよそ0〜15ヌクレオチド以内が望ましく、およそ4〜6ヌクレオチド以内がさらに望ましい。
【0068】
本明細書で用いている「有効量」は選択した効果を発生するのに充分な量を表わす。たとえば、PCRプライマーの有効量は、DNAポリメラーゼ、バッファ、テンプレート、及び温度条件を含めてPCRを実施するのに必要であることが従来技術で知られているその他の条件も提供されている場合にPCRによって核酸のセグメントを増幅するのに充分な量である。
【0069】
PCRは反復的テンプレート変性とプライマーのアニーリングを必要とする。これらのハイブリダイゼーション遷移は温度依存である。増幅を進めるPCRの温度サイクルは、高温で生成物の変性蓄積と低温での生成物へのプライマー付着(アニーリング)を交互に行なう。生成物の変性とプライマー・アニーリングの遷移温度はGC成分と長さに依存する。プローブがPCR生成物に内部でハイブリダイゼーションするように設計されている場合、プローブの解離温度もまたGC成分、長さ、及び標的に対する相補性の度合に依存する。PCRで互換性のある蛍光プローブは増幅中のハイブリダイゼーションをモニタできる。
【0070】
高速サイクルとの関連で使用されるのが望ましい(1996年6月4日付でPCR処理をモニタするためのシステム及びその方法と題する前述の米国特許出願番号第08/658,993号、及び1995年10月2日付で生物学的サンプルの高速熱サイクルのための方法と題する米国特許出願番号第08/537,612号に完全に説明されている)本発明によれば、PCRの速度論の典型例が適切である。PCRについて3種類の反応(変性、アニーリング、伸長)が3つの時間間隔の間に3つの異なる温度で起こると考えるのではなく(図1A)、PCRの速度論の典型例がもっと有用である(図1B)。速度論の典型例では、温度対時間曲線はオーバラップする反応の間の連続遷移から構成される。変性とアニーリングは非常に高速で特定温度での保持時間は必要としない。伸長は変化する速度である温度範囲にわたって起こる。完全な分析には全ての温度にわたる全部の関連速度定数についての知識が必要であろう。全反応の速度定数が分かっていれば、「PCRの物理化学的説明」が発達する。これらの速度を決定するには正確な温度制御が必要であり温度サイクル中の反応モニタリングによって大幅に簡略化される。
【0071】
図2は蛍光ハイブリダイゼーション・モニタリングでの有用な温度対時間セグメントを示している。生成物解離曲線はゆっくりと変性へ向かう温度上昇中に得られる。変性後に一定温度へ温度を急激に下げることによって、生成物、プローブ、又はプライマーのアニーリングがオプションとして後続できる。プローブ解離曲線はプローブTm付近の温度を通ってゆっくりと加熱すると得られる。図2に図示してある実施例は温度サイクル中の全分析をすぐリアルタイムの表示で提供する。蛍光プローブは温度サイクル中のプライマー、プローブ、又は生成物ハイブリダイゼーションの連続モニタリングのために増幅溶液の一部分として含めてある。
【0072】
本発明に含まれる蛍光ハイブリダイゼーション技術は高速サイクルに基づくもので、速度と特異性を利点とする。
【0073】
高速サイクルPCR中のサンプル温度プロファイルを図3に図示してある。変性とアニーリングは、従来のPCRの温度サイクルたとえば図1Aでの広い平坦域とは対向して、これらの図面では温度「スパイク」として現われている。高速温度サイクルは図4の従来の温度サイクルと対照され、30サイクルの増幅が15分で完了し得られたPCR生成物はかなり少ない副生成物しか含まないことが示されている。つまり、高速サイクルによると必要とされる増幅時間はおよそ10分の1に減少し、特異性が向上する。
【実施例】
【0074】
<実施例1>
図4は4種類の異なる温度/時間プロファイル(A〜D)の結果と30サイクル後にそれらで得られた増幅生成物(A〜D)を示す。図4のプロファイルAとBは従来技術の微量遠沈管を使用する従来技術の加熱ブロック装置を用いて得られた。図4から分かるように、温度間の遷移はゆっくりでプロファイルAとBには多数の非特異性バンドが存在する。プロファイルBは各々のサンプルが各々の温度に留まる時間を制限することによって非特異性バンド(プロファイルAとは対照的に)の幾つかを排除する点で改善を示している、つまり短時間ではさらに望ましい結果が発生することを表わしている。
【0075】
プロファイルCとDは高速温度サイクラを使用して得られた。図4から分かるように、増幅は特異的であり、収量は60秒の伸長時間(C)で最大となるが、10秒の伸長時間(D)でも全体として充分である。
【0076】
ヒトゲノムDNA由来のβグロビン536bpフラグメントの増幅に最適な時間と温度も決定された。増幅収量と生成物の特異性は変性(93℃)とアニーリング(55℃)が1秒未満の場合に最適だった。変性又はアニーリング時間が長くても何らの利点は見られなかった。収量は77℃で長い伸長時間だと増加したが、10〜20秒より長い伸長時間ではほとんど変化が見られなかった。このように予想しなかった結果は、DNA増幅のために用いられる従来利用可能な装置が物理的酵素的な反応条件を最適化するのに必要とされる条件を最大にしていないことを表わしている。
【0077】
さらに詳しい情報は、C.T.ウィットワーら、嚢胞性線維症デルタF(508)遺伝子座での高速サイクル対立遺伝子特異性増幅、(C. T. Wittwer et al.,Rapid Cycle Allele-Specific Amplification with Cystic Fibrosis deltaF(508) Locus, 39, Clinical hemistry 804 (1993))及びC.T.ウィットワーら、高速DNA増幅、(C. T. Wittwer et al., Rapid DNA Amplification, The Polymerase Chain Reaction 174 (1994)に解説されており、これらはどちらも本明細書で参照に含まれる。蛍光観察と高速温度サイクルに用いられる機材は前述の米国特許出願第08/537,612号に完全に開示されている。
【0078】
先に述べたように、ポリメラーゼ連鎖反応は高速で実行できる。急速熱伝導を容易にすることに加えて光学的に透明な毛細管を使用すると本発明によるDNA増幅の連続的蛍光モニタリングが可能になる。
【0079】
蛍光プローブはDNA増幅を検出しモニタするために使用できる。有用なプローブとしては、二重鎖DNA特異性染料や配列特異性プローブが挙げられる。DNA増幅を追跡するための3種類の異なる蛍光技術を図5で比較している。図5Aでは、蛍光は二重鎖特異性DNA染料で検出されるPCR生成物のハイブリダイゼーションに依存している。図5Bにおいて、蛍光は5’−エクソヌクレアーゼ消光プローブの加水分解に依存しており、これは前述のように従来技術で周知となっている。図5Cでは2つの隣接プローブにおける蛍光物質間の共鳴エネルギー転移に基づいたハイブリダイゼーション方式を図示している。図5Aの方法は配列特異性ではないが、生成物の特異性は解離曲線によって決定でき、これは本発明の1つの側面である。図5B及び図5Cは両方とも配列特異性である。しかし該ハイブリダイゼーション法は解離曲線による分析を可能にし、これは本発明の別の側面である。
【0080】
図5Bに図示したように加水分解プローブが関係する反応からと図5Cに図示したようにハイブリダイゼーション・プローブが関係する反応からの蛍光をモニタする際、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォア両方から発光される蛍光を測定するのが有利である。具体的には、加水分解プローブによって発光される蛍光の大半はドナーフルオロフォアからのもので、ハイブリダイゼーション・プローブによって発光される蛍光の大半はアクセプターフルオロフォアからのものである。
【0081】
===二重鎖特異性DNA染料の選択===
蛍光技術に臭化エチジウムを用いるのが当業者には馴染み深いであろう。二重鎖特異性蛍光染料が増幅中に存在する場合、二重鎖生成物が多く作られる程蛍光は一般に増加する。R.ヒグチら、特定DNA配列の同時増幅と検出、(R. higuchi et al., Simultaneous amplification anddetection of specific DNA sequences, 10 Bio/Technology 413-417 (1992))参照。インターカレータYO−PRO−1を用いたhepatitis C(C型肝炎)RNAの蛍光PCRアッセイも従来技術で公知である。T.イシグロら、蛍光インターカレータ存在下のポリメラーゼ連鎖反応によるhepatitis CウィルスRNAの均質定量アッセイ(T. Ishiguro et al., Homogenenous quantitative assay ofhepatitis C virus RNA by polymerase chain reaction in the presence of a fluorescent intercalater, 229 Anal. Biochem. 207 - 213 (1995))参照。従来技術で公知であり、米国オレゴン州ユージーンにあるモレキュラー・プローブズ社(Molecular Probes of Eugene, Oregon)から入手できるSYBRTMグリーンIを二重鎖特異性染料として使用するのが好適である。この染料の分子構造は企業秘密であるが、ゲル上でのDNA検出用にさらに高感度の二重鎖特異性染料としてメーカーから推奨されている。SYBRTMグリーンIは熱安定性が悪いが、しかしそのために長い時間間隔にわたって反応混合物の温度が解離温度に維持されるような従来方によるポリメラーゼ連鎖反応の蛍光モニタリングには有用ではない。この熱不安定性のため、解離温度が長時間にわたって維持されない場合、即ちPCRが前述した速度論の典型例にしたがって高速サイクルにより行なわれる場合に、SYBRTMグリーンIがPCR反応をモニタするために使用できることが発見されたのは予想外だった。
【0082】
<実施例2>
10,000テンプレートコピーからのヒトβグロビン遺伝子のPCO3/PCO4プライマー対からの110塩基対断片の増幅をモニタすることにより異なった二重鎖特異性DNA染料を比較した。プライマーは従来技術で公知の通りに標準的ホスホラミダイト化学によって、即ちファルマシア・バイオテック遺伝子アセンブラ・プラス(Pharmacia Biotech Gene Assembler Plus)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用して合成された。ヒトβグロビン・プライマーPC03/PC04(110塩基対)はC.T.ウィットワーら、熱気による毛細管内自動ポリメラーゼ連鎖反応 (C. T. Wittwer et al., Automated polymerase chain reaction in capillary tubes with hot air, 17 Nucl. Acids. Res. 4353 - 4357 (1989))に説明されており、本明細書で参照に含まれる。DNA増幅は、以下の実施例で特に記載していない限り、50mMトリス、pH8.5(25℃),3mMMgCl2,500μg/mlウシ血清アルブミン、0.5μMの各プライマー、0.2mMの各デオキシヌクレオシド三リン酸、5μlサンプルあたり0.2単位のTaqポリメラーゼで行なった。精製した増幅生成物をDNAテンプレートとして使用し、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿法で得られた。D.M.ウォーレス、核酸の大規模及び小規模フェノール抽出及び沈殿法 (D. M. Wallace, Large- and Small-scale phenol extractions and precipitation of nucleic acids, 152 Methods in Enzymology 33-48 (1987))参照。これに続けてセントリコン30マイクロコンセントレータによる反復洗浄でプライマーの除去を行なった(アミコン社、マサチューセッツ州ダンバース)。テンプレート濃度は260ナノメートルの吸光度で求めた。テンプレートのA(260):A(280)比は1.7以上だった。
【0083】
SYBRTMグリーンI(モレキュラー・プローブズ社、オレゴン州ユージーン)を1:10,000倍希釈、臭化エチジウムは5μg/ml、アクリジン・オレンジは3μg/mlで用いた。これらの濃度は各々の染料で増幅中に観察される蛍光シグナルが最大になる最適濃度となるように決定した。励起はキセノン・アーク光源から450〜490ナノメートル干渉フィルタを通したが、臭化エチジウムでは520〜550ナノメートル励起を使用した。SYBRTMグリーンIでは、520〜550ナノメートルの発光をモニタした。臭化エチジウム蛍光は580〜620ナノメートル・バンドパスフィルタ経由で観察した。アクリジン・オレンジのシグナルは緑色(520〜550ナノメートル)の赤色(>610ナノメートル)蛍光に対する比として取った。増幅前のサンプルの蛍光を35サイクル後の蛍光(最高94℃、60℃で20秒)と60℃で比較した。蛍光の増加はSYBRTMグリーンIで5.3倍、臭化エチジウムで1.7倍、アクリジン・オレンジで1.2倍だった。別の実験で、SYBRTMグリーンIからの蛍光は70℃で30分以上にわたり安定していた。また便利なことに可視光で励起され臭化エチジウムより変異原物質になりにくいと主張されている。全例でのバックグラウンド蛍光は主としてプライマーから発していた。
【0084】
SYBRTMグリーンIは主として二重鎖と一重鎖核酸の間の優れた識別能に由来する高感度のため、PCRの蛍光モニタリングに適した二重鎖特異性染料である。SYBRTMグリーンIはあらゆる増幅で使用できかつ安価である。さらに、後述するように解離曲線の分析で生成物特異性を得ることができる。
【0085】
===ハイブリダイゼーション・プローブ用の共鳴エネルギー転移染料選択===
蛍光共鳴エネルギー転移は2つの蛍光物質が物理的に接近し一方の蛍光物質の発光スペクトルが他方の励起スペクトルとオーバラップしている場合に発生し得る。蛍光共鳴エネルギー転移の導入理論は多くの最近の紹介論文に見ることができる。共鳴エネルギー転移のレートは:
(8.785E−5)(t-1)(k2)(n-4)(qD)(R-6)(JDA)
ただし、
t=アクセプター欠如時のドナーの励起状態寿命
k2ドナーとアクセプターの間の指向性係数
n=介在する媒体の可視光反射率
qD=アクセプター欠如時のドナー量子効率
R=ドナーとアクセプターの間の距離(オングストローム単位)
JDA=オーバラップする全波長に対して(FD)(eA)(W4)の積分
ここでFD=ドナーのピーク正規化蛍光スペクトル
またeA=アクセプターの分子減衰係数(Mー1cm-1)
W=波長(ナノメートル)とする。
【0086】
何らかの任意のドナーとアクセプターで、50%共鳴エネルギー転移が発生する距離を計算することができこれをR0で表わす。共鳴エネルギー転移のレートはドナーとアクセプターの間の距離の6乗に比例するので、RがR0から移動すると共鳴エネルギー転移は急激に変化する。2R0では、非常に僅かな共鳴エネルギー転移しか発生せず、0.5R0では他の形の脱励起(即ち衝突消光)が優勢でない限り転移効率はほぼ完全である。多様なドナーとアクセプターの対でのR0の値が集積されており22から72オングストロームの間で変化している。
【0087】
二重螺旋DNAでは、10塩基が約34オングストロームは離れている。ドナーフルオロフォア又はアクセプターフルオロフォアでDNAの塩基を標識することによって、DNAの螺旋構造を観察するためのスペクトル的定規として共鳴エネルギー転移を使用し4種類のDNA結合の構造を分析できる。共鳴エネルギー転移はハイブリダイゼーションのモニタとしても使用できる。標識したオリゴヌクレオチドが標識テンプレート鎖にハイブリダイゼーションされると、RはR0より相当大きな値からR0以下に移動し、共鳴エネルギー転移が急激に増加する。これ以外にも、2種類の標識プローブを同じテンプレート鎖にハイブリダイゼーションして蛍光エネルギー転移に同様の変化を起こすことができる。
【0088】
ハイブリダイゼーションをモニタするために実際に共鳴エネルギー転移を使用するのは、要求される感度とどの程度の時間が使えるかによって変わる。1ナノモル標識プローブでの競合ハイブリダイゼーション技術を使用すると、PCR増幅DNAは40℃で15分後に検出された。もっと高速のシグナル生成が望ましい。ハイブリダイゼーションに秒単位しか必要でないなら、PCR生成物は増幅の各サイクルで便利に定量できる。さらには、プローブハイブリダイゼーションの範囲を温度サイクル内でモニタできる。
【0089】
ハイブリダイゼーションは秒単位の処理である(B.ヤング&M.アンダーソン、溶液ハイブリダイゼーションの定量分析(B. Young & M. Anderson,Quantitative analysis of solution hybridization, In: Nucleic AcidHybridization: A Practical Approach 47-71, (B. Hames, S. Higgins eds.,1985))参照)。プローブの濃度が標的濃度より大幅に高い場合、ハイブリダイゼーション・レートはプローブ濃度に逆比例する。たとえば、プローブ濃度を2倍にするとハイブリダイゼーション時間は半分に減少する。ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション部位がポリメラーゼ伸長で被覆される前に起こる必要があるため、高いプローブ濃度がPCR中のサイクル後とモニタリングに必要である。
【0090】
PCR中のハイブリダイゼーション・モニタリングに必要な高いプローブ濃度はユニークな特性の共鳴エネルギー転移対を要求する。ドナー(D)とアクセプター(A)の対の光による励起を考えてみる。直接励起されたDとAの蛍光の数は励起波長での各蛍光物質の減衰係数(e)に比例することになる、即ち、
直接励起されたD分子数=(K)(eD)
直接励起されたA分子数=(K)(eA)
ここでKは比例定数である。ドナーの脱励起は、蛍光、共鳴エネルギー転移、その他の熱的消光と要約される過程によって発生する。PF=共鳴エネルギー転移の確率、PTD=ドナーの熱的消光の確率、とすると、ドナー蛍光の確率は、
1−PF−PTD
また蛍光を発するドナー分子数は、
(K)(eD)(1−PF−PTD)
である。ドナー発光ウィンドウ(たとえばバンドパスフィルタ・ウィンドウ)内でのドナー発光を検出する確率をPDDとすると、観察されるドナー発光個数は、
(PDD)(K)(eD)(1−PF−PTD)
ここで、励起されたアクセプターフルオロフォア数が直接励起されたアクセプターと共鳴エネルギー転移により励起されたアクセプターの和であるので、
(K)(eA)+(K)(eD)(PF)
PTA=アクセプターの熱的消光の確率とすると、アクセプター蛍光の確率は、
1−PTA、
また蛍光を発するアクセプター分子の個数は、
[(K)(eA)+(K)(eD)(PF)][1−(PTA)]
またアクセプター発光ウィンドウ内でアクセプター発光を検出する確率をPAAとすると、観察されるアクセプター発光の個数は、
(PAA)[(K)(eA)+(K)(eD)(PF)][1−(PTA)]
最後に、アクセプター発光ウィンドウ内でドナー発光を観察する確率をPDAとした場合に、アクセプター発光ウィンドウ内で観察される(DとAの両方の)発光の個数は、
(PAA)[(K)(eA)+(K)(eD)(PF)][1−(PTA)]+
(PDA)(K)(eD)(1−PF−PTD)
蛍光測定は相対的でありKが全ての項で存在することから、Kを除外して式を組み立て直すと、ドナーウィンドウで観察される強度は(ドナー励起)−(エネルギー転移)に比例し:
1)(eD)(pDD)(1−PTD)−(eD)(PDD)(PF)
またアクセプターウィンドウで観察される強度は(アクセプター励起)+(エネルギー転移)+(アクセプターウィンドウでのドナー発光)に比例するから、
2)(eA)(PAA)(1−PTA)+(eD)(PDD)(PF)(1−PTA)
+(eD)(PDA)(1−PTD−PF)
共鳴エネルギー転移が増加すると、ドナーシグナルが減少してアクセプターシグナルが増加する。百分率シグナル変化は各ウィンドウ内のバックグラウンド光強度に依存する。プローブの濃度が高いと、バックグラウンド光強度が高い。PCR中、標的(生成物)濃度変化をモニタする必要がある場合、ドナー濃度を標的濃度と一致させることは可能ではない。過剰なドナー分子がドナー及びアクセプターウィンドウの両方でのバックグラウンド光強度に関係し部分的にエネルギー転移現象を隠蔽する。アクセプターウィンドウでのバックグラウンド光はアクセプターウィンドウ内でのドナー発光だけではなくアクセプターの直接励起からも発生する。このバックグラウンドはeAが低くPDAも低いと最少にできる。
【0091】
フルオレセイン/ローダミン蛍光エネルギー転移対は、核酸検出に共通に使用され、高いバックグラウンド蛍光を有している。直接アクセプター励起(eA、ほぼ10%emax)と、アクセプター発光(PDA、ほぼ20%ピーク発光)を検出するために使用される波長でのドナー発光の双方が高い。この対はプローブ濃度が標的濃度に近くハイブリダイゼーションを完了するのに充分な時間が与えられている場合にハイブリダイゼーションをモニタするために使用できる。高いプローブ濃度が必要とされPCRでのテンプレート濃度が連続的に変化することから、PCRの連続モニタでは蛍光体の有用な対ではない。
【0092】
ハイブリダイゼーションによるPCR中の生成物濃度のモニタリングは、受け入れ可能な共鳴エネルギー転移対が見付からなかったため過去においては不可能だった。共鳴エネルギー転移を直接「非競合的」ハイブリダイゼーション検出に使用する試みが幾つかなされてきた。たとえば、米国特許第5,565,322号では「アクセプターによる再発光に関して観察されるエネルギー転移効率は比較的低い」と述べている。有意なハイブリダイゼーションが秒単位で起こせる程にまで充分に高いプローブ濃度では、バックグラウンド蛍光が高すぎる。
【0093】
フルオレセインは恐らくもっとも広範に使用されている蛍光物質である。これの減衰係数と量子効率は高く、顕微鏡下、イムノアッセイ、フローサイトメトリーで広く使用されている。これはローダミンと併せて共通に使用される共鳴エネルギー転移対でのドナーである。Cy5は一般的な赤色発光蛍光物質で減衰係数が非常に高い。Cy5のN−ハイドロキシサクシニミド・エステルの構造を図6に図示し、関連した染料であるCy5.5の構造を図7に図示してある。これらの染料はインドジカルボシアニン染料で、フローサイトメトリーや自動蛍光シーケンサで共通に使用されており、アマシャム(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手できる。フルオレセインとCy5はどちらもオリゴヌクレオチドへの直接自動組み込み用にアミダイトとして商業的に利用できる。しかし、Cy5はフルオレセインとの共鳴エネルギー転移対として報告されたことがない。直感的に理解されるようにフルオレセイン発光とCy5吸収は共鳴エネルギー転移を考慮するには充分にオーバラップしていない。フルオレセインの発光スペクトルとオリゴヌクレオチドに付着したCy5の吸収スペクトルは図8に図示してある。曲線の下側の領域を正規化すると、技術的スペクトルからのオーバラップは19%である。Cy5.5の励起は約25ナノメートルだけ赤色に変移しており、フルオレセイン発光とのオーバラップは約15%にまで減少する。スペクトルの赤色、赤外領域での作業は測定機材の光学部品を選択する際に有利である。照射用にレーザーダイオードを使用でき、フォトダイオード検出器は優れた感度を有しており、大半の材料は関係のあるスペクトル領域で自発蛍光が最少である。
【0094】
スペクトル的なオーバラップが低いにもかかわらず、フルオレセインとCy5又はCy5.5の一方とがPCR中のハイブリダイゼーションモニタリングに優れた共鳴エネルギー転移対を構成することが発見された。
【0095】
<実施例3>
内部プローブCAAACAGACA CCATGGTGCA CCTGACTCCT GAGGAフルオレセイン(配列ID No. 3)とCy5−GAAGTCTGCC CTTACTGCCC TGTGGGGCAA G−p(配列ID No.18)それぞれ0.2μモルと0.8単位KlenTaq1ポリメラーゼ(Taqポリメラーゼの5’−エクソヌクレアーゼ欠損変異体──米国特許第5,436,149号)を10μl反応で用いた実施例2の手順にしたがって、110bpβグロビンフラグメントを50ngヒトゲノムDNAから増幅した。プローブは同一鎖でプライマーに内部ハイブリダイゼーションし何らかの介在塩基なしにすぐ隣接していた。
【0096】
プローブとプライマーは、従来技術で公知のように標準的ホスホラミダイト化学により、即ちファルマシア・バイオテック遺伝子アセンブラ・プラス(Pharmacia Biotech Gene Assembler Plus)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用して合成した。3’−フルオレセイン標識したプローブはフルオレセイン標識したCPGカセット(グレン・リサーチ社、バージニア州スターリング)上で最終トリチル−ONをC18逆相HPLC精製の補佐に用いて合成した。遅い溶出ピークを回収し、トリチル残基をポリパック(グレン・リサーチ社)で除去した。フルオレセイン標識オリゴヌクレオチドは50%アセトニトリルで溶出しC18逆相HPLCでもう一度精製した。5’−Cy5−標識プローブは3’末端の化学的リン酸化剤(グレン・リサーチ社)を用い、トリチル−OFF合成中にCy5アミダイト(ファルマシア社)を5’末端に追加して合成した。失敗した配列はC18逆相HPLCで除去した。プローブ純度はポリアクリルアミド電気泳動と染料及びオリゴヌクレオチドの吸光度でチェックした。
【0097】
HPLCは4×250mm Hypersil ODSカラム(ヒューレットパッカード社)で0.1Mトリエタノールアミン:酢酸移動相とアセトニトリル・グラジエントを用い1ml/分で行なった。溶出は吸光度(A260)と蛍光(フルオレセインでは490nm励起、520nm発光、またCy5については650nm励起、670nm発光)をモニタした。トリチレート及びフルオレセイン標識オリゴヌクレオチドは10〜20%のアセトニトリル・グラジエントに溶出し、Cy5標識オリゴヌクレオチドは10〜40%アセトニトリル・グラジエントに溶出した。
【0098】
温度サイクルは、20℃/毎秒のプログラム式アプローチ速度で94℃0秒、アプローチ速度20℃/毎秒で60℃20秒、また1℃/毎秒のアプローチ速度で75℃0秒とし毛細管蛍光高速温度サイクラによった。温度サイクル中、フルオレセインとCy5の蛍光はアニーリング・伸長セグメントの終りで各サイクルで取得した。共鳴エネルギー転移は増幅サイクル26あたりで始まったフルオレセイン蛍光の減少とCy5蛍光の増加の両方として観察された(図9)。一般に、フルオレセイン蛍光に対するCy5の蛍光比は好適である。
【0099】
フルオレセイン/Cy5対で予想しない良好な結果について、少なくとも部分的には説明を付けることができる。重なり積分JDAはスペクトルのオーバラップだけでなく、アクセプターの減衰係数にも依存し(Cy5は650nmで250,000Mー1cm-1の減衰係数を有する)、波長の4乗で変化する。これらの要素のどちらも、スペクトル的オーバラップが低いとしてもCy5で高いJDAに有利である。最近、フィコエリスリンとCy7は、スペクトル・オーバラップが低いにもかかわらず、免疫蛍光に有効なタンデム・プローブであると示された。後者の例で、ハイブリダイゼーション・プローブの標識としてのフルオレセインとCy5.5の有用性が示されている。蛍光共鳴エネルギー転移は相互作用する染料がスペクトル的に低いオーバラップを有している場合でも核酸ハイブリダイゼーションをモニタするために使用することができる。フルオレセインとCy5,Cy5.5,及びその他の赤色又は赤外発光染料をハイブリダイゼーションのモニタリング用共鳴エネルギー転移対として使用することは従前には認識されて来なかった。フルオレセインは600nm、700nmに及ぶ長い発光「尾部」を有し遠赤色や赤外染料を励起するのに使用できる範囲を越えている。エネルギー転移レートは重なり積分に依存するが、これも蛍光物質間の距離の6乗で起こる。共鳴エネルギー転移染料が接近するようにプローブが設計されている場合、転移レートは高い。少なくともフルオレセイン/Cy5,フルオレセイン/Cy5.5,及び同様の対で、蛍光物質が介在塩基なしに隣接プローブに付着される上記実施例と同様に蛍光物質どうしが接近している場合に、共鳴エネルギー転移は衝突消光やその他の形のエネルギー損失より優位であるように見える。
【0100】
ハイブリダイゼーション・プローブとしての共鳴エネルギー転移対の潜在的有用性は極小及び極大共鳴エネルギー転移でのドナー及びアクセプターの光強度比の変化を観察することにより判定することができる。極小及び極大の転移を得る1つの方法としては、両方の蛍光物質を同一オリゴヌクレオチドに付着させホスホジエステラーゼによる消化の前後で蛍光比を測定することが挙げられる。
【0101】
<実施例4>
2重標識フルオレセイン/Cy5プローブCy5−CTGCCG−F−TACT GCCCTGTGGG GCAAGGp(配列ID No.19)を標準ホスホラミダイト化学で合成した。ここでpは末端3’リン酸(化学的リン酸化剤、グレン・リサーチ社)、Fは2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール骨格を有するアミダイトとして自然の3炭素ヌクレオチド間リン酸ジエステル距離を保つために導入したフルオレセイン残基(クロンテック社、カリフォルニア州パロアルト)、Cy5はアミダイトとして添加(ファルマシア社)した。0.1MトリスpH8.0でのフルオレセイン蛍光に対するCy5の比はホスホジエステラーゼ(シグマ、モンタナ州セントルイス)による完全加水分解の前後に得られた。蛍光比の変化は加水分解後に220倍だった。2重標識フルオレセイン/ローダミン・プローブF−ATGCCCT*CCC CCATGCCATC CTGCGTp(配列ID No.20)をパーキン・エルマー社(カリフォルニア州フォスターシティ)から購入した。ここでFはフルオレセイン、*はアミノ・リンカー腕で改変T残基に付着させたローダミンである。蛍光比の(フルオレセインに対するローダミンの)変化はホスホジエステラーゼによる加水分解後に22倍だった。
【0102】
フルオレセイン/Cy5対からの潜在的シグナルはフルオレセイン/ローダミン対のそれより10倍だった。
【0103】
<実施例5>
PCR中のフルオレセイン及びCy5で標識した隣接ハイブリダイゼーション・プローブの比率、濃度、間隔の影響について研究した。βグロビン遺伝子座と実施例3のプローブ対の増幅を用いCY5のフルオレセインに対する蛍光比の最大変化を観察した。極大シグナルはCy5のフルオレセイン標識プローブに対する比が2:1の場合に発生した(図10)。2:1の比では、最良のシグナルは、フルオレセイン・プローブ濃度0.2μモル、Cy5標識プローブ濃度0.4μモルで発生した(図11)。PCR中に隣接ハイブリダイゼーション・プローブの間で最適な介在塩基数も決定した。長さが同じでハイブリダイゼーション位置が僅かに変移している数種類のプローブを実施例3にしたがって合成し、βグロビン標的にハイブリダイゼーションした場合に、プローブ間に0,1,2,3,4,又は6塩基が残るようにした。PCR中で最高のシグナルは介在塩基数1で発生した(図12)。ある程度の共鳴エネルギー転移が15塩基の間隔又25塩基でも検出されたが、もっと良好な転移は0〜5塩基で発生した。
【0104】
ヘラーら(米国特許第4,996,143号)は、蛍光物質間のヌクレオチド数が4から0ユニットに減少するとエネルギー転移効率が減少することを発見した。対照的にフルオレセイン/Cy5対による最高のエネルギー転移は介在ヌクレオチド数が0から2で見られた。
【0105】
===ハイブリダイゼーション・プローブ法===
標的に隣接してハイブリダイゼーションする2つのプローブを合成し各々を共鳴エネルギー転移対の一方の蛍光物質で標識した場合、共鳴エネルギー転移はハイブリダイゼーションが起こった場合に増加する(図5C)。フルオレセイン/ローダミン対は核酸検出でもっとも共通に使用されている。
【0106】
本発明の1つの側面はPCR生成物の検出のために配列特異性の均質ハイブリダイゼーション法を提供することである。どのようにすればこれを実現できるかは明らかではない。増幅中にハイブリダイゼーション・プローブを使用するのは直感的に分かり辛い。プローブのハイブリダイゼーションとポリメラーゼ伸長が両方とも起こり得るとは思われない。配列特異性の蛍光を得るためには、プローブをハイブリダイゼーションする必要があるが、ポリメラーゼがプライマー伸長を完了し指数関数的にDNAを増幅すべき場合にはプローブはハイブリダイゼーションできない。
【0107】
この問題に対する1つの解決策は、2重標識した単一のプローブを使用し、共通の熱安定性DNAポリメラーゼの5’−エクソヌクレアーゼ活性を用いて伸長中のプローブを割断し、これによって2つの蛍光物質を分離することである。この場合、蛍光シグナルはプローブ加水分解時に共鳴エネルギー転移対の分離から発生し(図5B)、隣接ハイブリダイゼーションによる蛍光物質の接近によるものではない(図5C)。しかし、2重標識プローブは作成が困難で、オリゴヌクレオチドへ少なくとも一つの蛍光物質を用手的に追加する必要があり、一般に相当以上の精製を必要とする。プローブは高価であり、2種類の2重標識プローブが標的の競合的定量又は突然変異検出に必要である。さらに問題なのは観察される蛍光が加水分解されたプローブの累積量によって変化することで、何らか任意のサイクルに存在する生成物の量に直接依存しないことである。これによってPCRのプラトー域に達した後でも蛍光が連続的に増加する。最後に又もっとも重要なことに、プローブの加水分解はポリメラーゼ伸長中に必ず発生するわけではなく、この効果は良く理解されていない。たとえば、実施例4の2重標識フルオレセイン/Cy5プローブは、プライマーによって挟まれた場合にPCR中に非常に乏しい加水分解を示した。実際、数種類の2重標識フルオレセイン/Cy5プローブが、末端標識したプローブを含めて作成され、その全てが乏しい加水分解と増幅中のシグナル精製を示した。
【0108】
隣接ハイブリダイゼーション・プローブのあるPCR生成物の均一な検出は5’−エクソヌクレアーゼ系に見られる問題の多くを解決する。隣接ハイブリダイゼーション・プローブの合成は、フルオレセインとCy5両方のアミダイトが自動合成中の直接組み込み用に入手できるためと1つのプローブの2重標識化が必要とされないため、比較的簡単である。加水分解ではなくハイブリダイゼーションから蛍光が得られるので、プローブ蛍光の温度依存性を変移検出と定量に用いることができる。しかし、PCR生成物の均一検出に隣接ハイブリダイゼーション・プローブを用いることはこれまで報告されていない。驚くべきことに、シグナル精製のためのハイブリダイゼーションとプローブによってブロックされた領域を通るポリメラーゼ伸長による増幅がどちらも起こり得る。
【0109】
<実施例6>
110bpβグロビンフラグメントを、実施例3に記載した隣接フルオレセイン及びCy5標識プローブを用いてゲノムDNAから増幅した。10μl反応に0.4U(Taq)又は0.8U(Stoffelフラグメント、パーキン・エルマー社、又はKlenTaq1)いずれか一方の酵素を使用した。特に示していない限り、温度サイクルはプログラム式アプローチ速度20℃/毎秒で94℃0秒、アプローチ速度20℃/毎秒で60℃20秒、アプローチ速度1℃/毎秒で75℃0秒とした。図13は30サイクルにわたってテンプレートを増幅した直後での2種類の隣接ハイブリダイゼーション・プローブによる蛍光の発生を示す。短時間の94℃での変性後、温度を60℃まで下げ約20秒にわたり蛍光が増加した。シグナル強度は5’−エクソヌクレアーゼ活性を含む自然のTaqポリメラーゼよりもエクソヌクレアーゼ欠乏ポリメラーゼ(Stoffelフラグメント)のほうが大きかった。約20秒後、ポリメラーゼがプローブを移動および/または加水分解すると蛍光は低下する。蛍光の相対的低下は、ポリメラーゼが5’−エクソヌクレアーゼ活性を有する場合(TaqDNAポリメラーゼ)のほうがこの活性を欠く場合(Stoffelフラグメント)より僅かに早い。
【0110】
図14(上部パネル)において、94℃と60℃の間で温度をサイクルし60℃で20秒保持している。蛍光が最大になる20秒の終りで蛍光を採取する。Taq(exo+)では良好な増幅が見られるが、蛍光の発生とアガロースゲル(ゲルは図示していない)両方で確認されるようにStoffelフラグメント(exo−)では発生しない。しかし、60℃での時間を20秒から120秒に伸長すると(図14,中央パネル)、exo−ポリメラーゼも良好に増幅する。exo−ポリメラーゼによるプローブ移動速度が遅いことは、見かけ上exo+ポリメラーゼより効率的な増幅に60℃でさらに時間を必要とする。exo−ポリメラーゼに必要な時間は60℃から75℃へ温度をゆっくりと上げることによって減少できる(図14,下部パネル)。ポリメラーゼはプローブに到達すると停止する。しかし、プローブ解離温度では、プローブがテンプレートを解離しポリメラーゼは鎖の重合完了まで妨害されずに進行する。重合はプローブ解離後に温度があまり急速に上昇しない限り完了する。図14は(下部パネル)exo+ポリメラーゼ1種類(Taq)とexo−ポリメラーゼ2種類(StoffelフラグメントとKlenTaq1)を示す。
【0111】
エクソヌクレアーゼ活性が存在する場合、幾つかのプローブは大幅増幅による蛍光の減少によって明らかになるように各サイクルで加水分解されている。これは図13及び図14(中央と下部のパネル)で観察されるが、exo−ポリメラーゼでは発生しない。蛍光が大幅増幅で安定していることから、KlenTaq1などのexo−ポリメラーゼが適当である。
【0112】
隣接ハイブリダイゼーション・プローブを使用してのPCRのモニタリングが成功するかどうかは幾つかの要因によって決まる。共鳴エネルギー転移は隣接ハイブリダイゼーション・プローブ間に0から2個の介在塩基が存在する場合に最大になる。プライマーがプローブ・ハイブリダイゼーション領域で伸長する前にプローブにハイブリダイゼーションする鎖の一部を増加させるには、プローブ解離温度をプライマー解離温度より高くすべきである(望ましくは>5℃)。
【0113】
===サイクル毎の蛍光===
ゲル電気泳動によるDNA増幅における従来のエンドポイント分析では生成物のサイズを同定して純度を推定している。しかし、増幅は、最初は確率論的に、次に指数関数的に、最後には停滞的に行なわれるので、エンドポイント分析の使用は定量に限られる。本発明の1つの側面には、ハイブリダイゼーション・プローブによる初期テンプレートのコピー数の定量のためのサイクル毎のモニタリングが含まれる。当業者には理解されるように、DNA増幅を行なっている多数サンプルのサイクルあたり1回のモニタリングは強力な定量ツールである。サイクル毎モニタリングは各サイクルの伸長又はアニーリング/伸長組み合わせフェーズの間に蛍光を観察し蛍光を生成物濃度と相関することによって実現される。
【0114】
<実施例7>
3種類の異なる蛍光技術によりPCRのサイクル毎モニタリングを行なった。蛍光は、(i)二重鎖特異性染料であるSYBRTMグリーンI、(ii)2重標識加水分解プローブのエクソヌクレアーゼ開裂後のローダミンによるフルオレセイン消光の減少、(iii)隣接ハイブリダイゼーション・プローブによるフルオレセインからCy5への共鳴エネルギー転移、によりモニタした。増幅試薬及び条件は実施例2に記載した通りとした。ヒトβグロビン・プライマーであるRS42/KM29(536塩基対)とPC03/PC04(110塩基対)についてはC.T.ウィットワーら、熱気による毛細管内自動ポリメラーゼ連鎖反応(C. T. Wittwer et al., Automated polymerase chain reaction in capillary tubes with hot air, 17 Nucl. Acids. Res. 4353 - 4357 (1989))に説明されており、本明細書で参照に含まれる。βグロビンの温度サイクルは最高95℃、最低61℃、72℃15秒間で温度間の平均レートは5.2℃/秒だった。βアクチン・プライマーとフルオレセイン/ローダミン2重標識プローブはパーキン・エルマー(番号N808−0230)から入手した。βアクチンの温度サイクルは最高94℃、60℃15秒間で温度間平均レートは6.2℃/秒だった。単一標識プローブである5’−CAAACAGACA CCATGGTGCA CCTGACTCCT GAGGA−フルオレセイン−3’(配列ID No.3)と5’−Cy5−AAGTCTGCCG TTACTGCCCT GTGGGGCAAGp(配列ID No.4)を実施例3の通りに合成した。これらの隣接プローブは同一DNA鎖のPC03/PC04βグロビン・プライマー対と内部ハイブリダイゼーションし塩基対1個で隔てられる。温度サイクルは最高94℃、59℃20秒間で温度間平均レートは7.0℃/秒だった。ハイブリダイゼーション・プローブ(βアクチンとβグロビン)は各々0.2μモルで使用した。
【0115】
SYBRTMグリーンIにより多数サンプルを各サイクルで一度にモニタする場合、10の7乗から10の8乗の初期テンプレート濃度範囲が図15に図示してあるように識別できる。この増幅は2重特異性染料としてSYBRTMグリーンIを用いたβグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントによるものである。各サンプルのパーセント最大蛍光でデータを正規化した場合、初期100コピーが10コピーから明らかに分離した。しかし、1と10コピーの間の相違は微妙(marginal)であり、サンプルあたり0及び1平均コピー間での相違は観察されなかった。
【0116】
これとは対照的に、配列特異性プローブは同様のダイナミックレンジを有するが、陰性対照から単一の初期テンプレートコピーでさえ識別するように見える。5’−エクソヌクレアーゼ・プローブ(βアクチン・フラグメント、図16)のシグナル生成はDNA合成に依存する他、2重標識プローブの蛍光物質間のハイブリダイゼーションと加水分解を必要とする。この加水分解は消光を減少させ、フルオレセインのローダミン発光に対する蛍光比が増加する。二重鎖染料からの蛍光が過剰サイクルでレベル低下する一方(図15)、エクソヌクレアーゼ・プローブからのシグナルは各サイクルで増加し続ける(図16)。実質生成物が合成されていないとしてもプローブのハイブリダイゼーションと加水分解は起こり続ける。テンプレートのコピー数が10の3乗未満に減少すると、シグナル強度は減少するものの、陰性対照シグナルが安定していることから少ないコピー数をまだ定量することができる。
【0117】
図17において、増幅は隣接ハイブリダイゼーション・プローブを用いてモニタしておりCy5のフルオレセイン蛍光に対する比率として表現している。蛍光比の変化は大半が共鳴エネルギー転移からのCy5蛍光の増加によるものである(図9)。2重標識加水分解プローブとは対照的に、ハイブリダイゼーション・プローブの蛍光シグナルはポリメラーゼがエクソヌクレアーゼ活性を含む場合高いサイクル数で減少する(図14も参照)。
【0118】
PCR中のハイブリダイゼーションの共鳴エネルギー転移検出に2種類の異なる方法を用いる本発明の実現可能性をここで示すことにする。第一の方法は、一方が3’末端にフルオレセイン、他方が5’末端にCy5を標識してある2種類の隣接ハイブリダイゼーション・プローブを使用する。PCR中に生成物が多くなると、プローブは各サイクルのアニーリング・セグメントの間に互いに隣接してハイブリダイゼーションする。第2の方法はCy5を標識したプライマーと単一のハイブリダイゼーション・プローブを使用する。標識プライマーは増幅中にPCR生成物に組み込まれ単一のハイブリダイゼーションしか必要としない。
【0119】
<実施例8>
Cy5標識プライマーとフルオレセイン標識ハイブリダイゼーション・プローブの間の共鳴エネルギー転移によるPCRのサイクル毎モニタリングを行なった。これを、隣接Cy5/フルオレセイン・ハイブリダイゼーション・プローブによるモニタリングと比較した。Cy5標識プライマーはCAACTTCATC CACGT*TCACC(配列ID No.21)、ただしT*はCy5を付着させた改変T塩基、またこれに対応するプローブはGTCTGCCGTT ACTGCCCTGT GGGGCAA−フルオレセイン(配列ID No.22)だった。隣接ハイブリダイゼーション・プローブはCCTCAAACAG ACACCATGGT GCACCTGACTCC−フルオレセイン(配列ID No.23)、及びCy5−GAAGTCTGCC GTTACTGCCC TGTGGGGCAAp(配列ID No.24)だった。ハイブリダイゼーション・プローブは実施例3にしたがって合成し0.2μモルで使用した。Cy5標識プライマーは2ステップで合成した。自動合成を用いて所望するT位置にアミノ・モディファイアC6dT(グレン・リサーチ社)を組み込んだ。次に、Cy5の1価N−ハイドロキシサクシニミド・エステル(図6)をメーカー指示(アマシャム)にしたがってアミノ・リンカに用手的に結合した。HPLC精製は実施例3に説明した通りに行なった。
【0120】
Cy5標識プライマー(0.5μモル)をPCO4の代わりに使用して、実施例3と同様にヒト・ゲノムDNAから110塩基対βグロビンフラグメントを増幅したが、10μlあたりTaqポリメラーゼ0.4単位を使用した点が異なる。隣接ハイブリダイゼーション・プローブでも同一のβグロビンフラグメントの増幅をモニタした。温度サイクルは94℃0秒及び60℃20秒で行なった。蛍光は各サイクルとも1回アニーリング/伸長区間の終りにモニタした。両方法において、Cy5の共鳴エネルギー転移はハイブリダイゼーションで増加しており、Cy5のフルオレセイン蛍光に対する比としてプロットしてある(図18)。
【0121】
追加の実験において、Cy5標識とフルオレセイン標識を隔てている塩基数を変化させた。最高の蛍光共鳴エネルギー転移は蛍光物質間の約4〜6塩基で観察されたが、シグナルは少なくとも15塩基まで検出可能だった。
【0122】
加水分解プローブとは対照的に、ハイブリダイゼーション・プローブからの蛍光シグナルは累積したものではなく、各アニーリング・フェーズの間に新規に発生している。ハイブリダイゼーションは疑似一次反応であるため蛍光が生成物濃度の直接的指標である。プローブ濃度が生成物より大幅に高いことからプローブにハイブリダイゼーションした生成物の一部分は生成物濃度に依存しない。こうした特性は標識プライマーと一緒に単一のハイブリダイゼーション・プローブを使用することで定量のために生成物堆積の優れたモニタを提供し得るであろうことを示している。サイクル毎モニタリング中の異なる蛍光技術に固有の変動も定量には重要である。
【0123】
<実施例9>
3種類の異なる蛍光モニタリング方の各々について実施例2にしたがってDNA増幅を実施した。プライマーKM29とPC04からの205塩基対ヒトβグロビンフラグメントの増幅においてSYBRTMグリーンIを1:10,000倍希釈で使用した。加水分解プローブと条件は実施例7に指定したものである。ハイブリダイゼーション・プローブTCTGCCGTTA CTGCCCTGTG GGGCAAG−フルオレセイン(配列ID No.5)をKM29、またCy5標識プライマーCAACTTCATCCACGTT*CACC(配列ID No.6)と用い、ここでT*は実施例8と同様に合成したCy5標識T塩基とした。全ての増幅は15,000テンプレート・コピーによる10複製(ヒトゲノムDNA50ng/10μl)で行なった。温度サイクルは長さ31秒(最高94℃、60℃20秒間、温度間平均レート6.2℃/秒)だった。蛍光はアニーリング/伸長フェーズの15秒目から20秒目の間で各サンプルについて観測した。
【0124】
図19ではPCRについて3種類の蛍光モニタリング技術を比較できる。蛍光プローブは二重鎖DNA染料SYBRTMグリーンI(図19A)2重標識フルオレセイン/ローダミン加水分解プローブ(図19B)、フルオレセイン標識ハイブリダイゼーション・プローブとCy5標識プライマー(図19C)である。全部のプローブがサイクル20付近で発生する検出可能な蛍光に対してほとんど同じ感度を有していた。増幅を伸長すると、シグナルは加水分解プローブに併せて増加を続け、SYBRTMグリーンIで同等、またハイブリダイゼーション・プローブで僅かに減少した。3種類の蛍光モニタリング技術の精度は図19Dで比較している。平均±標準偏差が各点についてプロットしてある。データは基線以上の蛍光比(サイクル11〜15の平均として取った)の変動係数(標準偏差/平均)としてプロットした。
【0125】
加水分解プローブからの蛍光比変化はハイブリダイゼーション・プローブからのそれより大きい(図19B及び図19C)が、加水分解プローブからの蛍光の変動係数の方が大きい(図19D)。つまり、ハイブリダイゼーション・プローブ法から得られる蛍光は、絶対シグナルレベルが低いとしても、加水分解プローブを用いるより正確である。これは一般的な2重標識加水分解プローブに勝るハイブリダイゼーション・プローブの予期しなかった利点である。
【0126】
===初期テンプレート・コピー数の定量===
定量PCRは医生物学的研究と臨床検査の双方で重要な技術となった。定量処理は標的配列の既知のコピー数を含むサンプルの標準曲線を作ることを含む。未知のサンプルのコピー数は既知の値の間に外挿することで決定される。完全な増幅曲線が存在するDNA量に比例したシグナルをもたらす蛍光、放射線、又は何らかの他の方法を用いてサイクル毎にモニタされる場合、分析には多くのデータ点を利用でき、標準又は未知を表わすのにどの値を選択するかは明確ではない。従来技術ではシグナルの「閾値」を選択して標準又は未知が代表的な値としてその閾値と交差する時のサイクル数を使用している(ヒグチ&ワトソンのEPA0 640 828 A1出願を参照)。このアプローチは増幅曲線で利用可能なデータのうちの非常に少ない量を使用するものである。さらに、閾値の割り当ては非常に主観的であり意識的又は無意識的な偏倚を受ける。非線形カーブフィッティング技術を増幅曲線のデータに適用することによりもっと多くの利用可能なデータを客観的に使用することができる。望ましくは、基本となる過程の要因をモデル化することによって増幅曲線の形状を記述する式を見付けるのが良い。
【0127】
多数の異なる式を用いて増幅中に作成したデータをカーブフィッティングすることができる。DNA増幅は代表的には対数線形セグメントを有するのでこのセグメントのデータをDNA増幅で想定したのと同様の指数関数的増加を記述する式に当てはめることができる。DNA増幅の対数線形部分は次式によって記述できる:
y=A*[DNA]*(1+E)n
ここでAはシグナルの単位をDNAの単位に変換する倍率係数、[DNA]は反応におけるDNAの開始濃度、Eは反応の効率、nはサイクル数である。
【0128】
定量処理は、(1)既知の標準をこの式に当てはめてパラメータAとEが浮動するようにし、(2)標準からAとEの値を用いて未知のサンプルを式に当てはめ[DNA]が浮動するようにする。この技術はもっと多くのデータを使用しており、もっとも情報量が豊富であろうと思われるデータの一部である対数線形部分を使用している。図20,図21,図22はこのアプローチの例を示す。精製PCR生成物の10倍希釈を標準曲線として増幅し「未知の」ヒトゲノムDNA鎖を用いた。図20は対数線形部分が使用者又はソフトウェアどちらかによって簡単に同定されることを示している。図21は10の4乗コピー標準への式y=A*[DNA]*(1+E)nの適用を示す。図22はAとEについて数個の標準からの平均値を使用し[DNA]を適用する。適用した値16,700はゲノムDNAの単一コピー遺伝子についての理論値(15,000コピー)に非常に近い。
【0129】
増幅曲線のデータ全部を使用するとバックグラウンド・レベルとプラトー値が含まれる。高いコピー数ではプラトーが情報量豊富でないものの、低いコピー数では開始コピー数に比例することが多い。バックグラウンド・レベルはシグナルの有意な増加を示す最初の点を決定するのに有用であろう。この時点でDNA増幅曲線の形状に関係する全ての要因が既知ではないので、1つのアプローチで曲線の形状を記述する。図23は蛍光ハイブリダイゼーション・プローブを用いてDNAテンプレート濃度の5桁の大きさ範囲を検出する増幅曲線を示す。各々の曲線は次式にフィッティングする:
y={(as*x+ab)−(ds*x+db)}/(1+(x/c)^b)+(ds*x+db)
ここで「as」は傾斜線のバックグラウンド、「ab」はバックグラウンド線のy切片、「ds」はプラトー線の傾き、「db」は傾斜線のy切片、「c」はサイクル数で、反応はバックグラウンドからプラトーの中央(A50)である。また「b」は増幅の対数線形部分の傾きである。
【0130】
この式はこの増幅データに良好なカーブフィッティングを示し、図24はA50の値が7桁の大きさにわたる開始コピー数の対数と良く相関していることを示す。図25は加水分解プローブを用いて5桁の大きさ範囲にわたるDNAテンプレートを検出した増幅からのデータに適用した同じ式を示す。この式はこの増幅データに良好なカーブフィッティングを示しており、図26はA50の値が開始コピー数の対数と良く相関していることを示している。これは式がハイブリダイゼーション・プローブ増幅曲線のシャープなプラトー群と加水分解プローブ曲線の安定的に増加する「プラトー」群の双方に対して良好なカーブフィッティングを与えることから全カーブフィッティング・アプローチの柔軟性を明示している。
【0131】
全カーブフィッティングはこの式に限定されない。図27は次式への3種類の濃度のDNAテンプレート・フィッティングの増幅を示している:
y=(((as*x+ab)−(dmax*x/dd+x)/(1+(x/c)^b))+(dmax*x/dd+x)
これは最初の6パラメータの式と似ているが直線ではなく双曲線によってプラトーが定義されている点が異なっている。図28はこの式についてのA50が開始コピー数に良く相関することを示す。
【0132】
A50を上記実施例では用いたが増幅プロファイルにおいて特定の技術がもっと頑丈に低いか又は高い場合にバックグラウンドとプラトーの間のレベルを選択できる。たとえば一連の増幅標準曲線を開始コピー数とA50、A40,A30,A20,A10の間の最高の相関について評価する。既知の開始コピー数と最も良く相関する増幅のレベルが決定される。これは違う検出系では異なったものになる。図19は各種検出システムでの変動係数を示す。最も良く予測している増幅レベルは変動係数が最低のレベルになり易いと思われる。
【0133】
DNA増幅反応自体が良く理解されるようになると、物理的処理を反映するパラメータを有する他の式を用いることができる。DNA増幅曲線のプラトーは異なる反応で異なった原因を有している。これはプライマーが後の方のサイクルで生成物アニーリングを完了できないことに由来することが多い。この効果は反応生成物濃度の自乗に依存するパラメータで捕捉できる(アニーリング・レートは生成物濃度の自乗に比例する)。プラトーの別の原因はプライマーの欠乏であり得る。プライマーで制限される反応は特徴的な形状を有し、識別し得る非常にシャープなプラトーを有している。プライマーで制限される反応のフィッティングはこのシャープな頂点を定義するパラメータを含む。酵素制限反応は非常に丸いプラトーを有しておりこれに合わせたカーブフィッティングができる。重み付け因子は任意のシステムで既知の変動係数を反映して信頼性の高いデータ点程重くなるように重み付けする工夫ができる。増幅プロファイルのより多くの点をカーブフィッティングすることにより、開始コピー数のより正確で頑丈な推定を得ることができる。1つまたはそれ以上のこれらのカーブフィッティング・パラメータを用いて未知のサンプルの開始コピー数を推定することができる。
【0134】
===PCRの連続蛍光モニタリング===
本発明の特徴である連続モニタリング、即ち各PCRサイクル内での多数回モニタリングについてここで議論する。PCR中の蛍光モニタリングは一定温度で各サイクル中に1回ずつ行なうことができるが、本発明はPCRサイクル全体を通しての連続モニタを提供することの重要な利点を提供する。蛍光が温度変化につれて変化することから温度は重要である。図29Aと図29BはSYBRTMグリーンIについて温度と蛍光の間の逆比例関係を示している。これは温度サイクル中の困惑するような作用で、一定の伸長温度でサイクルあたり1回蛍光を考慮することで通常なら排除される。しかし、本発明によれば、温度変化中の蛍光をモニタするのは非常に情報量が豊富である。本発明以前には、各サイクル1回ずつに対向する各サイクル内の連続的な蛍光モニタリングは実施されていない。本発明によれば、時間、温度と蛍光を毎秒、200ミリ秒毎、100ミリ秒毎、又はもっと高頻度で取得する。このようなデータからは生成物の変性、アニーリング、伸長についてと従来利用できた方法では入手できなかった高速サイクル中のプローブ・アニーリング及び解離についての細かな詳細を見つけ出すことができる。
【0135】
<実施例10>
プライマー5’−CGTGGTGGAC TTCTCTCAAT−3’(配列ID no.1)及び5’−AGAAGATGAG GCATAGCAGC−3’(配列ID no.2)(ジーンバンク配列HVHEPB)を使用して精製PCR生成物の10の6乗個コピーからhepatitis BB型肝炎ウィルス表面抗原遺伝子の180塩基対フラグメントを増幅した。実施例2の増幅条件にしたがったが、反応には1:20,000倍希釈したSYBRTMグリーンIと2ミリモルのMgCl2を含んでいた点が異なる。各温度サイクルは長さ27秒(最高92℃、最低59℃、70℃5秒間、温度間平均レート3.0℃/秒)とした。時間、温度、2チャンネルの蛍光を200ミリ秒毎に測定し蛍光対サイクル数及び蛍光対温度プロットとして連続表示した。図30はサイクル10からサイクル34までの温度、時間、蛍光の三次元プロットを示す。またこの3D曲線は温度対時間、蛍光対時間、蛍光対温度の2次元プロットとして図30に投影されている。図30の温度対時間投影図は各サイクル毎に反復して基本的に図3で説明したのと同じ情報を提供する。蛍光が温度に逆比例して変化しているので、図30に図示してある初期サイクルでの蛍光対時間投影は温度対時間プロット(図29参照)を伸縮した鏡像になっている。生成物が蓄積してくると、二重鎖生成物により蛍光が全ての温度で増加する。しかし変性温度では一重鎖DNAしか存在していないため蛍光は基線レベルに戻る。図30に図示した二重鎖染料の蛍光対温度投影は時間軸を省いてありDNA増幅中の鎖の状態の温度依存性を示している。
【0136】
<実施例11>
ヒトβグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントを5μl容量で25ngのゲノムDNAと1:10,000希釈SYBRTMグリーンIから増幅した。各温度サイクルは長さ28秒(最高95℃、最低61℃、72℃15秒間、温度間平均レート5.2℃/秒)だった。他の条件は図30において説明したのと同じである。サイクル15からサイクル40を表示した。PCR中の生成物鎖状態の温度依存性は図31に図示してあるように蛍光対温度プロットを用いて明らかにした。図示した初期サイクルは同一に見え、低い温度での蛍光の非線形的増加があった。増幅が進むにつれ、温度サイクルはアニーリング及び変性温度の間のループが上昇するように見える。サンプルを加熱すると、変性が起こるまで蛍光は強い。サンプルが冷えると、蛍光が増加し、生成物アニーリングを反映している。温度が伸長中に一定の時、蛍光の増加は追加DNA合成と相関する。
【0137】
本開示の理解によって明らかになるように、サイクル内の連続モニタは従来技術ではこれまで利用できなかったDNA増幅の機構に対する洞察を提供できる。本発明を用いると、これまではほとんど理解されていなかったDNA増幅の多くの態様が識別可能である。たとえば、高速サイクル増幅は1秒未満で生成物変性が起こることを主張しているが、一方で従来技術は10秒から1分間の変性を使用している。本発明による二重鎖染料を用いてリアルタイムで蛍光モニタすることにより生成物の解離を観察すると(図30及び図31)、短い変性時間を用いるのが効果的であることが示される。別の例として、既知の「プラトー効果」の多くの原因が示唆されているが、それらの間での識別にはほとんど利用できるデータがない。図31に図示してあるように、生成物のアニーリングは非常に高速である。実際、増幅サイクルの後の方では、冷却中に、プライマー・アニーリング温度に達する前に、生成物の大半が各サイクルでアニーリングしている。これは高速サイクル装置で5〜10℃/秒の冷却レートとした時に発生する。もっと緩徐な、従来技術の温度サイクラによる生成物のアニーリングはさらに広範囲になるのでこの望ましくない効果が大きくなる。生成物アニーリングが主要な、そして恐らくは唯一の、「プラトー効果」の原因であるように思われる。
【0138】
ここで排列特異性プローブの連続モニタリングについて考察してみる。本開示の理解によって分かるように、サイクル内の連続モニタリングはプローブ蛍光の性質を同定できる。
【0139】
<実施例12>
2重標識加水分解プローブ(βアクチン)及び隣接ハイブリダイゼーション・プローブ(βグロビン)を実施例7と同様に用いて200ミリ秒毎の増幅連続モニタリングを実施した。図32Aには、加水分解プローブでモニタした反応のサイクル20〜サイクル45を図示してある。加水分解プローブは多くのプローブが加水分解されるにつれて温度による蛍光比の線形変化、及び蛍光の平行的な増加を示す。これとは対照的に、ハイブリダイゼーション・プローブからの蛍光比は温度でラジカルに変化する(図32B、サイクル20〜サイクル40)。アニーリング/伸長フェーズでは、プローブは一本鎖生成物にハイブリダイゼーションし、蛍光比(Cy5/フルオレセイン)が増加する。生成物変性温度までの加熱中に、プローブは約70℃で解離し、バックグラウンド・レベルまで蛍光比が戻る。
【0140】
<実施例13>
110塩基対βグロビンフラグメントを10μl容量で50ngのゲノムDNAから増幅した。実施例3の増幅条件と隣接ハイブリダイゼーション・プローブにしたがい0.4単位のTaqポリメラーゼ又は0.8単位のKlenTaq1どちらかを用いた。蛍光は100ミリ秒毎にモニタした。KlenTaq1(図33)とTaq(図34)を用いた蛍光対温度プロットは約70℃でのプローブ解離を示している。Taqのエクソヌクレアーゼ活性のため、KlenTaq1での極大シグナルはTaqのシグナルより大きい。Taqを用いた後の方のサイクルでは、未反応プローブの濃度が減少するにつれて各サイクルの蛍光が減少し始める。温度、時間、蛍光の三次元プロットを図35(KlenTaq1)と図36(Taq)について示してある。
【0141】
本発明による(1)各温度サイクル内での連続的蛍光モニタリングと(2)ハイブリダイゼーションの温度及び時間依存性の分析の組み合わせは他では得られない利点を提供する。図2はこれまで得られなかった情報がサイクル全体を通しての連続モニタリングによって抽出され得ることを示している。サイクルの生成物解離フェーズ中の連続蛍光モニタリングはそのサイクル中に存在するDNAの純度、同一性、量について有用な情報を提供する。
【0142】
PCR反応を伸長温度から変性温度まで加熱すると、サンプル中のDNAが一本鎖に解離する。この変性はSYBRTMグリーンIの蛍光の急降下として観察できる。少量のPCR生成物では、解離遷移は狭い温度範囲で発生し、この解離範囲の中点をTmで表わす。ゲル電気泳動によるサイジングと同様に、解離ピーク分析ではDNAの基本的特性を測定しし増幅生成物の同定に使用できる。ゲル電気泳動とは異なり、解離曲線分析では同じ長さでGC/AT比が異なる生成物を区別できる。さらに、同じ長さで同じGC含量だが、GC分布の異なる(たとえば等しく分布しているものに対して一方の末端にGCクランプしているもの)2種類の生成物は解離曲線が非常に違うものになる。
【0143】
PCR生成物が解離する温度は広範囲にわたって変化する。従来技術で公知の経験的公式を用いると、DNAの解離温度TMにおけるGC含量の影響はGCデュプレックス0%はGCデュプレックス100%より41℃低い温度で解離すると予言している。同じGC含量とすると、40塩基対プライマー・ダイマーは1000塩基対生成物より12℃低い温度で解離することになる。よって考えられるPCR生成物でのTm範囲は少なくとも50℃にわたる。この広い範囲のためPCR生成物を解離曲線で区別することができる。つまり、PCRの連続蛍光モニタリングと解離曲線分析の組み合わせでPCR生成物の同時的な増幅、検出、分別を提供する。
【0144】
<実施例14>
3種類の異なるPCR生成物について、SYBRTMグリーンI蛍光用の光学系(ライトサイクラLC24、アイダホ・テクノロジー社製、アイダホ州アイダホ・フォールズ)を備えた24サンプル熱サイクラに組み込まれた微量蛍光計によりDNA解離曲線を取得した。180塩基対のhepatitis BB型肝炎ウィルス表面抗原遺伝子増幅のためのプライマーは5’−CGTGGTGGAC TTCTCTCAAT−3’(配列ID no.1)及び5’−AGAAGATGAG GCATAGCAGC−3’(配列ID no.2)とした。292塩基対前立腺特異性抗原(PSA)遺伝子増幅のためのプライマーは5’−CTGTCCGTGA CGTGGATT−3’(配列ID no.7)と5’−AAGTCCTCCG AGTATAGC−3’(配列ID no.8)とした。536塩基対ヒトβグロビン遺伝子増幅は実施例7と同様に行なった。PCRは実施例2に記載した通りに実施した。増幅生成物はフェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿によって精製した後、セントリコン30マイクロコンセントレータ(マサチューセッツ州ダンバースのアミコン社から入手)により反復洗浄した。テンプレート濃度は260ナノメートルの吸光度で決定し、1.7以上のA(260)/A(280)比を有していた。
【0145】
精製DNA50ngを、50mMトリスpH8.5、2mMMgCl2、250μg/mlウシ血清アルブミン、5μl容量で、ガラス/プラスチック複合材料試験管の開放プラスチック容器にピペット採取し、ガラス毛細管先端にサンプルがくるように低速で遠沈し、プラスチック栓で内側封止した。解離曲線の蛍光データは、0.1〜10.0℃/秒で95℃までの直線的温度変化中に0.25〜2.0秒にわたるシグナルの積分により取得した。蛍光を連続的に計測してLabViewプログラミング環境(ナショナル・インストルメント社、テキサス州オースチン)において蛍光対温度プロットとして表示した。図37は3種類の精製PCR生成物の解離曲線を示す。
【0146】
図37で3種類の生成物のTmは6度だけ広がっており2つの曲線は2度だけ離れている。この小さな隔たりは生成物の容易な識別を行なうには充分である。Tmの長さにわたるGC百分率の重要性は、もっと長い536塩基対βグロビンフラグメントよりも高温で解離する292塩基対PSA生成物で示されている。解離曲線は平衡を確実にするため0.5℃/分のレートで得ることが多い。さらに、加熱レートが低下すると、解離曲線はもっと低温側にシフトしてシャープになる(図38、hepatitis Bフラグメント)。しかし、図37の解離曲線は0.2℃/秒(12℃/分)の加熱レートの間に得たものであり2℃又はそれ以下のTm差のある生成物を区別できる。
【0147】
PCR生成物の見掛けのTmもまた二重鎖特異性DNA染料の濃度に依存している(図39、hepatitis Bフラグメント)。染料濃度が高くなるとDNAデュプレックスの安定性が向上し、ひいては観察されるTmが増加する。
【0148】
SYBRTMグリーンIによる解離曲線のモニタリングでは、好適条件はSYBRTMグリーンIを1:7,000〜30,000倍希釈、加熱レート0.1〜0.5℃/秒である。これらの条件では2℃だけTmが異なる生成物を容易に識別できる。
【0149】
もっと正確な温度制御と解離ピーク分析用ソフトウェアで数分の一度まで検出可能なTmの差を引き下げられる。これにより大半のPCR生成物の識別ができる。しかし全ての生成物をTmで識別できるわけではなく、2種類又はそれ以上の生成物の同時移動による電気泳動の結果を読み値が得ることが考えられるように、想定した範囲で解離する生成物の幾つかが意図した生成物ではない可能性がある。しかし、想定した生成物の範囲でDNAが解離しない場合、結果論的に想定した生成物が何も存在していないということはできる。
【0150】
解離曲線分析で利用可能な生成物識別の別の態様はもっと長いPCR生成物で見られるドメイン解離のはっきりとしたパターンである。短い生成物(<300塩基対)は通常1つの遷移で解離するが、長い生成物は複雑な、目立つ形状の解離曲線を描く中間解離ドメインを有することがある。これらの複雑な解離曲線は生成物同定のための指紋として使用できる。
【0151】
解離曲線分析を用いて非特異性生成物たとえばプライマー・ダイマーなどから意図した生成物を区別することができる。プライマー・ダイマーは低温で広い範囲にわたって解離し、特異的PCR増幅生成物のシャープな解離曲線とは非常に異なる。アニーリング厳密度が低い多数サイクルを実施することで得られたもっと大きなヘテロ接合性生成物は純粋PCR生成物と比較した場合に低く広い解離曲線を有している。
【0152】
<実施例15>
536βグロビン遺伝子フラグメントの増幅を、実施例7と同様の1:30,000倍希釈したSYBRTMグリーンIで、条件を変化させて実施した。反応A(図40)では、テンプレートを添加せず反応は94℃0秒、60℃0秒、72℃10秒で30サイクルにわたり反復して小さい非特異性増幅生成物を作成した。Bでは、低いストリンジェンシーで精製テンプレートの初期コピー10の6乗個(94℃0秒、50℃0秒、72℃10秒)を55サイクルして、ゲル電気泳動上で増幅生成物が広い範囲を示し、広い温度範囲にわたって解離する。Cでは、10の6乗個の精製テンプレート初期コピーを94℃0秒、60℃0秒、72℃10秒で30回サイクルしており、単一の明るいバンドを示し、シャープな遷移で解離する。温度遷移レートは0.2℃/秒だった。λファージDNA(M)のHindIII消化をマーカとして使用している。
【0153】
図40は解離曲線がPCR反応の特異性をどのように正確に反映するかを示している。シャープな、高温の解離曲線Cはゲル上の単一バンドに対応する。低温で広範囲に解離する曲線Aはテンプレート対照なしの分析によるものでプライマー・ダイマーだけを示している。Cでの生成物の過剰増幅は中間解離曲線Bとなるが特異性生成物とは明らかに識別できる。
【0154】
たとえば図37に見られる解離曲線は温度(T)に対する蛍光(F)の導関数を最初に取ることによってより良く定量できる。この導関数が−dF/dT対Tとしてプロットしてあり解離曲線を解離ピークに変換している。
【0155】
<実施例16>
実施例14の精製hepatitis B及びβグロビン遺伝子フラグメントを個別にまた一緒に温度変化レート0.2℃/秒で解離し、他の条件は実施例14で指定した通りとした(図41)。解離曲線(上部)からの幾らか主観的なTmの決定は解離ピーク(下部)から目視で簡単に行なえる。解離ピークより下の領域も曲線より下の面積の積分によって定量できる。基線の大きさが曲線より下の範囲として変化するものと仮定して、最初に蛍光基線を−dF/dT対Tプロットから減算する。次に、カーブフィッティング・パラメータとしてピークの平均、標準偏差、高さを用いてガウス曲線への非線形最小二乗回帰により当てはめた。各々のガウス曲線より下の領域はピーク領域として取った。全ての計算はLabViewプログラミング環境(ナショナル・インストルメント社、テキサス州オースチン)で実施した。図41は解離曲線から解離ピークへの変換の一例を示す。これらの計算のためのコードが付録Aに含めてある。
【0156】
プライマー・ダイマーやその他の反応アーチファクトから特異性生成物を識別できる能力は初期コピー数が低い定量での二重鎖特異性DNA染料の使用を改善する。比較的大きな初期テンプレート・コピー数は臭化エチジウムを用いて定量されている(ヒグチ&ワトソン、前出)。しかし、低い初期コピー数では、プライマー・ダイマーやその他の増幅アーチファクトのバックグラウンド増幅が特異性増幅シグナルに干渉する。非特異性アーチファクトから特異性生成物を区別できる本発明の能力では、二重鎖特異性DNA染料を用いて低初期テンプレート・コピー数を定量できる。これらの染料を用いる簡便性のため有利である。二重鎖特異性DNA染料は全ての増幅で使用でき、カスタム的に蛍光標識したオリゴヌクレオチドは必要としない。二重鎖特異性DNA染料による超低コピー数の定量には非常に良好な増幅特異性か又は、本発明で提供されるように非特異性増幅から所望の生成物を区別するための手段を必要とする。
【0157】
<実施例17>
本発明による生成物純度決定のアプローチを用いて二重鎖特異性DNA染料蛍光のサイクルあたり1回モニタリングに基づく定量PCRを改良した。蛍光は精製βグロビン・テンプレートの初期濃度を変化させた一連の反応について(図42A参照)生成物のポリメラーゼ伸長後に各サイクル毎1回計測した。βグロビン・テンプレートと増幅条件は実施例7に示した通りとした。バックグラウンド蛍光以上の対数直線性増加は初期テンプレート濃度によって変化するサイクル数で始まった。反応あたり10の6乗から10の2乗コピーまでの5種類の反応のプロットがおよそ4サイクルだけ隔たっている。反応あたり平均10の2乗個のコピーのサンプルは反応効率の低下を示し、初期コピー数100未満の反応はあまり有用でない蛍光プロファイルを示した。10及び1(平均)コピーを含む反応での蛍光プロファイルは逆の順番で増加し、陰性対照は約30サイクル後に増幅を示した。これはプライマー・ダイマーの増幅やその他非特異性増幅生成物に由来するもので二重鎖特異性DNA染料のサイクルあたり1回の蛍光モニタリングでは意図した生成物から識別することができない。
【0158】
各サンプルについて解離ピークを計測し(図42B)たところ電気泳動の結果と良く相関することが分かった(図42C)。ゼロ及び1平均初期テンプレート・コピー数を含む反応は予想される536塩基対のロケーションに識別可能な電気泳動バンドを作らなかった。10及び100初期コピー・テンプレートを含む反応は弱い電気泳動バンドを示した。これは、ゼロ及び1初期コピーを含む反応で意図した生成物範囲(90〜92℃)でのDNA解離なし、また10及び100コピーでこの温度範囲に弱いピークを示した解離ピーク分析と良く一致している。10の3乗から10の6乗初期コピーを含む反応での強い電気泳動バンドは想定した90〜92℃範囲での大きな解離ピークと良く相関している。
【0159】
解離ピーク積分によって求めた、全生成物に対する意図した生成物の比は10の5乗コピーでの0.28からゼロ初期テンプレート・コピーでの0.0002までに広がっている。図41Aの各々の蛍光値は適当な比率で乗算して補正プロットを得た(図42Dの「補正蛍光」で示す)。この手順は10及び1初期テンプレート・コピーの間まで定量の有効ダイナミック・レンジを拡大した。
【0160】
解離ピークは非特異性生成物から特異性生成物を識別でき(図40)一緒に混合された2種類の精製PCR生成物を識別できるので、単一の試験管内で一緒に増幅された2種類の特異性生成物の識別にも有用なはずである。本発明によるPCR反応の連続モニタリングによって得られた解離曲線は多重PCRで有用である。
【0161】
<実施例18>
本実施例では、ゲノムDNAから2種類の遺伝子フラグメントを同時に増幅しSYBRTMグリーンI蛍光でモニタした。各増幅サイクルの間、異なった増幅生成物が生成物の長さ、GC比、及びその他従来技術で周知の要因に依存する解離温度で変性する。各生成物が解離する温度は二重鎖特異性DNA染料であるSYBRTMグリーンIでモニタできる。嚢胞性線維症遺伝子からの81塩基対フラグメントは本明細書で配列ID No.14及び配列ID No.15として記載したプライマーを用いて増幅し、これに併せて本明細書で配列ID No.16及び配列ID No.17として記載したプライマーを用いたc−erbB−2(HER2/neu)オンコジーンの98塩基対フラグメントを増幅した。
【0162】
増幅反応は50mMトリスHClpH8.3、3mMMgCl2、500μg/mlウシ血清アルブミン、各200μMのdNTP、0.5μM嚢胞性線維症プライマー、0.3μMのHER2/neuプライマー、1:30,000倍希釈SYBRTMグリーンI、1単位AmpliTaqゴールドDNAポリメラーゼ(パーキン・エルマー社、カリフォルニア州フォスターシティ)、50ngのヒトゲノムDNAを10μlに含有していた。
【0163】
95℃30分でポリメラーゼの活性化後、サンプルは94℃0秒(傾き=20)、55℃秒(傾き=20)、70℃10秒(傾き=20)で35回サイクルした。サンプルを70℃に冷却し、0.2℃/秒の傾斜で94℃までの間蛍光を連続計測した。解離曲線(図43)は78℃(CFTR)と88℃(neu)で解離する2種類の別個の生成物を明確に示した。2種類の生成物はTmにおいておよそ10℃だけ異なっており容易に識別できる。
【0164】
多重増幅は増幅中の内部対照が必要とされる場合に有用である。たとえば、多くの転位はブレークポイントの各々の側にプライマーを配置することによりPCRで検出できる。増幅が起こらない場合、DNAが無傷で阻害剤が存在していない限り転位は存在しない。これらの可能性は同じ反応混合物で陽性対照の遺伝子座を増幅することにより除外できる。このような対照の増幅は同時的な増幅と検出の内部対照として最も良く行なわれる。
【0165】
<実施例19>
本実施例では、実施例18の手順にしたがうが95℃30分でのポリメラーゼ活性化後に、94℃0秒(傾き=20)、55℃0秒(傾き=20)、70℃10秒(傾き=20)で20サイクル、これに続けて94℃0秒(傾き=1)、55℃0秒(傾き=20)、70℃20秒(傾き=20)で15サイクルにわたりサンプルをサイクルした。サイクル26〜31では、70℃から94℃までの1℃/秒の各遷移中に蛍光を連続的に計測した。解離曲線は解離ピークに変換して表示した(図44)。CFTRフラグメントの増幅効率がneuフラグメントより大きく見えることに注意されたい。増幅効率は解離ピークデータを実施例16と同様に積分することで厳密に決定できる。
【0166】
対照を参照したこの種の定量データは多くの応用を有している。たとえば、ある種のオンコジーン、たとえばHER2/neuは多くの腫瘍では生体内増幅している。つまり、遺伝子がゲノムDNA内で、時には数倍に複製されている。しばしば腫瘍の臨床的挙動はオンコジーン複製の度合に依存する。オンコジーンと対照テンプレートの増幅により相対的コピー数の定量評価ができる。さらに別の例として、HIV又はhepatitis C(C型肝炎)に感染した患者でのウィルス負荷の定量は予後と治療の面で重要である。対照テンプレートを使用し対照と自然テンプレート両方の増幅中の増幅効率をモニタすることで初期テンプレート・コピー数の正確な定量が実現される。
【0167】
相対的定量に解離曲線を使用する本発明の特徴についてここで説明する。本発明によれば、解離曲線のさらなる用途が定量PCRである。図42は解離ピークの下側部分と特異的生成物の量の間に相関があることを示した。2種類のPCR生成物の相対的定量は2種類の生成物が同様の効率で増幅された場合(又は異なる効率が既知であり補正される場合)に可能である。解離ピーク面積の積分による(実施例16参照)2種類の生成物の相対的定量は本発明の側面である。
【0168】
<実施例20>
実施例18の嚢胞性線維症遺伝子及びHER−2−neu遺伝子フラグメントを実施例2と同様に増幅精製し、175μg/mlに調製した。サンプルを様々な比率(合計8μl)で混合しバッファ(1μl)とSYBRTMグリーンI(1μl)に添加した。終濃度は50mMトリスpH8.3、3mMMgCl2、250μg/mlウシ血清アルブミン、1:30,000倍希釈SYBRTMグリーンIだった。解離曲線は0.2℃/秒で計測し背景蛍光を減算しピークは実施例16で説明したように積分した。結果を図45に示す。解離ピークの下の相対面積と2種類の生成物の相対量の間には優れた相関が見られた。
【0169】
2種類のPCR生成物の相対的定量は多くの定量PCR応用で重要である。2種類又はそれ以上の生成物の多重増幅とそれに続く解離ピーク以下の面積の積分はこうした分野できわめて有用である。mRNAはハウスキーピング遺伝子のmRNA量に対して相対定量されることが多い。
【0170】
相対的定量の別の重要な用途は競合的定量PCRにある。代表的には同じプライミング部位を有しているがオリジナル標的配列からの長さが異なる競合遺伝子を合成する。既知の量の競合遺伝子を未知のサンプルに加え相対的定量を行なう。長さよりTmで標的遺伝子と異なる競合遺伝子を作ることができる。生成物の相対量は解離ピーク下側の面積を比較することで定量できる。生成物の一方の量が分かっている場合、オリジナルの標的の量を得ることができる。解離ピーク方を用いることで未知のサンプル各々に付いて多数の試験管で増幅し反応中の様々なサイクル数で試験管を抜き取って反応の対数直線性部分を見つけ出すことによる現在使用されている方法より有意に簡単になる。2種類の生成物の相対量を決定しなければならない。通常これはdNTPの一方を放射性同位元素で標識しておきアガロースゲル電気泳動後に各バンドに含まれる標識の量を定量することで行なっている。これに比較すると、本発明によれば反応を連続的にモニタできるので増幅の対数直線性部分は簡単に同定できる。解離ピークの積分によって相対的定量は迅速に行なうことができる。終日処理は1時間以内にまで短縮される。
【0171】
前述の議論から、DNA増幅中の蛍光モニタリングは非常に強力な分析技術であることが理解されよう。配列特異性の検出と定量が望まれる場合、共鳴エネルギー転移プローブを二重鎖特異性DNA染料の代わりに使用できる。ハイブリダイゼーション・プローブのTmは単一塩基の不整合が存在する場合に約4〜8℃シフトする。ハイブリダイゼーション・プローブが突然変異部位に配置された場合単一塩基の変移はプローブ解離温度のシフトとして検出できる。
【0172】
<実施例21>
第V因子ライデン変異はアミノ酸基506(R506Q)でグルタミン基をアルギニン基に置換する単一塩基変化(GからA)である。さらに詳しくは、R.M.バーティナら、活性タンパクC抵抗性の関与する血液凝固第V因子突然変異(R. M. Bertina et al., Mutation in Blood Coagulation Factor V Associatedwith Resistance to Activated Protein C, 369 Nature 64-67 (1994))及びJ.ヴォアベルグら、特発性静脈塞栓症と第V因子Arg506の単一の点突然変異の関連性(J. Voorberg et al., Association of Idiopathic VenousThromboembolism with a Single Point-Mutation at Arg 506 of Factor V, 343Lancet 1535-36 (1994))を参照されたい。どちらも本明細書で参照に含まれる。本明細書で用いられる「第V因子ライデン変異部位」は野生型のグアニン塩基が第V因子ライデン変異種ではアデニン塩基で置き換えられている第V因子遺伝子のヌクレオチド位置を表わす。配列IDno. 9は野生型第V因子遺伝子、配列IDno. 10は第V因子ライデン遺伝子の対応する部分を示し、各々の場合で31番目に関連ヌクレオチドがある。第V因子遺伝子の完全なヌクレオチド配列は、本発明で参照に含まれるR.J.ジェニーらヒト第V因子の完全なcDNAと誘導アミノ酸配列順序(R. J. Jenny et al., Complete cDNA and DerivedAmino Acid Sequence of Human Factor V, 84 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA4846-50 (1987))に記載されており、配列はジーンバンク遺伝子座HUMF10で得ることもできる。突然変異第V因子タンパクのアミノ酸変化はこの凝固因子を分解抵抗性にし凝固及び血栓の傾向を増加させる。先天性血栓症のもっとも共通の原因として、この突然変異が臨床分子遺伝学研究室で行なわれる共通のラボテストの標的である。
【0173】
第V因子ライデン変異分析の標準法はPCRによる遺伝子セグメントを増幅してから、野生型配列は切断するが突然変異種は切断しない制限酵素エンドヌクレアーゼで得られた増幅生成物を消化し、ゲル電気泳動により消化された野生型と未消化の変異生成物とを識別する。(R.M.バーティナら、前出)これは定義された突然変異に付いての分析のための従来技術で周知の方法である。このような試験は、通常約4時間かかり、これにはPCR増幅(2時間)、酵素消化(1時間)、電気泳動(1時間)を含む。増幅後のステップにはサンプル試験管を開き、酵素を追加し、消化されたサンプルを電気泳動装置へ移し換えるステップが含まれる。増幅後処理は最終生成物の汚染の危険を増加し用手的操作はサンプルのラベル間違いを防ぐ注意が必要である。点突然変異を同時に増幅分析する方法ではこれらの配慮が不要になる。
【0174】
同じ装置内で30分以内に第V因子ライデン変異の増幅と分析を完了する方法は変異遺伝子座を含むヒトゲノムDNAサンプルの一部を非対称的に増幅し、続けて増幅DNAの解離曲線を採取し分析するステップを含む。ゲノムDNAは従来技術で周知の方法、たとえば本明細書で参照に含めるJ.サムブルックら、分子クローニング:検査マニュアル(J. Sambrook et al., Molecular Cloning: ALaboratory Manual (2nd ed., 1989))にしたがって調製する。望ましくは、解離曲線を蛍光性ハイブリダイゼーション・プローブによる前述の共鳴エネルギー転移法によって取得する。このようなアッセイではホモ接合性野生型、ホモ接合性変異種、ヘテロ接合性遺伝子型を容易に判別する。好適実施例において、オリゴヌクレオチド・プローブはフルオレセインで3’末端標識し共鳴エネルギー転移でのCy5標識プライマーに近い増幅DNAとハイブリダイゼーションするように設計される。本法は性質のわかっている突然変異ならどんなものにでも応用可能である。
【0175】
プローブ・オリゴヌクレオチドは長さ約15〜40ヌクレオチド残基が望ましい。プローブは約10ヌクレオチド程度にまで少ない残基を含むのが良いと考えられるが、こうした短鎖オリゴヌクレオチドに考えられる欠点としては特異性の低さ、低い解離温度、バックグラウンドの増加が挙げられる。40残基より大きいオリゴヌクレオチドも使用できるが不必要に高価である。つまりプローブ・オリゴヌクレオチドのサイズ上の制約は機能によって課せられる制約だけである。プローブ・オリゴヌクレオチドは突然変異部位に広がるべきだが、変異はプローブの5’−又は3’−末端ヌクレオチド残基どちらかに対応しないのが望ましい。本発明は解離曲線に基づくものであるので、また末端での塩基対の欠如は内部よりも解離性に対する影響が少ないことが知られているので、プローブは突然変異が内部で発生するように設計すべきである。
【0176】
選択した突然変異遺伝子座の増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマーは、長さ約15〜30残基が望ましい。好適範囲より短いプライマーも使用できるが所望する程の特異的にはならない。同様に、好適範囲より長いプライマーも使用できるが、不必要に高価である。つまりPCRプライマーのサイズに関する制約は機能によって課せられる制約だけである。
【0177】
共鳴エネルギー転移対間の距離も本発明の正しい機能性に重要である。共鳴エネルギー転移対間の最適距離は約5ヌクレオチドである。約2から8ヌクレオチドの距離が好適だが、約10〜15ヌクレオチドまでの距離が機能する。隣接ヌクレオチドに共鳴エネルギー転移対を有するのは共鳴エネルギー転移対間の距離がDNAらせん上の遺伝子座によって影響されるため必ずしも有益ではない。
【0178】
本実施例において、PCR増幅は50mMトリスpH8.3、3mMMgCl2、500μg/mlウシ血清アルブミン、各200μMのdNTP、0.5μMCy5標識プライマー(配列ID no. 11)、0.2μM未標識対立プライマー(配列ID no.12)、0.1μMフルオレセイン標識プローブ(配列ID no.13)、0.4単位Taqポリメラーゼ、50ngヒトゲノムDNAを含む10μl反応混合物で実施した。4種類の異なるDNAサンプルを試験した:第V因子ライデン変異がホモ接合性のヒト由来のヒトゲノムDNA、ヘテロ接合性のヒト由来のヒトゲノムDNA、野生型第V因子対立遺伝子ホモ接合型のヒト由来のヒトゲノムDNA、DNAなしの陰性対照である。Cy5標識プライマー、フルオレセイン標識プローブ、突然変異部位(*印で表わす)の方向性は以下に示す通りである:
【0179】
未標識対立プライマーの配列はTGTTATCACACTGGTGCTAA(配列ID no.12)で増幅生成物は長さ186塩基対だった。Cy5標識プライマーは実施例8の通りに取得した。サイクル条件は94℃0秒(傾き=20)、50℃10秒、72℃0秒(傾き=1)で50サイクル、これに続けて45℃まで冷却し、解離曲線について94℃まで0.2℃/秒の傾きで連続蛍光モニタリングした。遅い温度遷移レート(0.2℃/秒──図46)では増幅の終りに最高品質の解離曲線が得られたが、50℃と94℃の間を1℃/秒で各サイクル中モニタリングしても明らかな遺伝子型同定が提供された(図47)。解離曲線は温度について蛍光の負の導関数対温度(−dF/dT対T)をプロットすることにより視覚化するのがもっとも簡単である。このようなプロットでは生の蛍光データから全ての考えられる遺伝子型の容易な視覚的同定が可能である。
【0180】
プライマーの3’−末端にCy5標識が近付く程、共鳴エネルギー転移シグナルは大きくなる。しかし、3’−末端はポリメラーゼ伸長のための自由3’−ハイドロキシル基を有していなければならずCy5の配置が3’−末端に近すぎると(3’又は次体塩基どちらかへ)ポリメラーゼ付着と伸長を阻害する。3’−フルオレセイン・プローブはできる限りプライマーに近くハイブリダイゼーションすべきで(1〜3塩基の僅かなオーバラップは許容され得る)突然変異部位はプローブ中央に近くあるべきである。ハイブリダイゼーションした蛍光物質間の5塩基の隔たりと23merプローブの8番塩基での突然変異が突然変異遺伝子と野生型配列の間に8℃の解離曲線シフトをもたらした(図46)。
【0181】
プローブ解離による突然変異の検出は1つの標識プローブと1つの標識プライマーの代わりに2種類の標識プローブで行なうこともできる。本実施例において、一方のプローブはCy5で5’に標識し他方のプローブはフルオレセインで3’に標識する。これらの蛍光プローブはどちらもアミダイトから直接合成できるので、プライマー/プローブ系のような手作業による合成過程は必要とされない。フルオレセイン標識プローブは、突然変異部位がフルオレセイン標識プローブの中央付近にくるように設計すべきである。Cy5標識プローブの長さは変異部位に広がるフルオレセイン標識プローブより高い温度で(>5℃)解離するように設計すべきである。フルオレセインからのバックグラウンドはCy5からのバックグラウンドよりも問題になるので、Cy5標識プローブの濃度は望ましくはフルオレセイン標識プローブの2〜5倍にすべきである。2種類のプローブは同一鎖のゲノムDNAにハイブリダイゼーションするはずで共鳴エネルギー転移対は約0から5ヌクレオチド残基離れるはずである。これ以外に、突然変異部位に広がるプローブをCy5で標識し、もう一方のプローブをフルオレセインで標識しても良い。
【0182】
第V因子ライデン変異の検出のために本明細書で開示した特定のプローブ及びプライマーは単に説明のためのものであり、本明細書に記載した原理及びガイドラインにしたがうことにより当業者が不当な実験なしで突然変異のための他のプローブ及びプライマーを設計することができるであろうことは理解されよう。また本発明はゲノムDNAにおける単一塩基の突然変異の検出に関して記載しているが、同じ原理をcDNAの変異の検出に応用できることも又理解されよう。さらに、同じ技術を用いて、突然変異又は多型性が存在する場合に解離温度が変化するようにハイブリダイゼーション・プローブを設計することにより挿入及び削除を検出できる。本発明はプローブが野生型に対して突然変異遺伝子にハイブリダイゼーションした場合に解離温度に相違が出るように設計できる既知のあらゆる突然変異を検出するために使用できる。
【0183】
前述の実施例ではフルオレセインとCy5を共鳴エネルギー転移標識として使用したが、他のアクセプターたとえばCy5.5などもフルオレセインとともに使用できる。
【0184】
<実施例22>
実施例21の第V因子遺伝子座を前出の通りだがプライマーをCy5の代わりにCy5.5で標識して増幅した。Cy5.5の発光は683ナノメートル・ロングパス・ダイクロイックと683〜703ナノメートル・バンドパス干渉フィルタを介して観察した。Cy5.5のフルオレセインに対する比はほぼサイクル30でバックグラウンド以上に増加し非対称増幅の50サイクルでおよそ比率が2倍になった。野生型DNAで増幅した場合、プローブTmは解離ピークで判定すると65〜66℃だった。
単一塩基突然変異を検出する別の実施例を掲載する。
【0185】
<実施例23>
アラニンをバリン残基に変換し易熱性酵素が得られるメチレンテトラハイドロ葉酸(MTHFR)レダクターゼ遺伝子(C677T)のよくみられる点突然変異が存在する。この突然変異はMTHFR活性を減少し、従来技術で公知の通り若年性血管障害や血栓症の独立した危険因子であるとされてきたホモシステイン血漿レベルを増加させることがある。プライマーの一方をCy5で標識した(TGAAGGAGAAGGTGTCT*GCGGGA)(配列ID no.25)。ここでT*はCy5に結合した改変T残基を表わす(合成と精製については実施例9を参照)。プローブ配列はフルオレセイン−CCTCGGCTAAATAGTAGTGCGTCGA(配列ID no.26)また他方のプライマーはAGGACGGTGCGGTGAGAGTG(配列ID no.27)だった。MTHFR遺伝子の198塩基対フラグメントを、10μlあたり50mMトリスpH8.3、2mMMgCl2、500μg/mlウシ血清アルブミン、各200μMのdNTP、0.5μMのCy5標識プライマー、0.1μM対立プライマー、0.1μMフルオレセイン標識プローブ、0.4単位Taqポリメラーゼ、でヒトゲノムDNA50ngから増幅した。各サイクルは長さ30秒で94℃での変性に続けて20秒60℃での組み合せアニーリング/伸長ステップから構成された。60サイクル後、次のように解離曲線を測定した:0.5℃/秒で50〜65℃、0.1℃/秒で65〜75℃、0.5℃/秒で75〜94℃まで加熱した。基線減算と解離ピークへの変換後に、全ての考えられる遺伝子型が容易に識別された(図48)。
【0186】
ハイブリダイゼーション・プローブの識別力を多重又は競合PCRの大きな利点にも使用した。たとえば、単一の内部の塩基変化を伴うように人工テンプレートを設計しハイブリダイゼーション・プローブは実施例21及び23のように基線変化をカバーするように設計する。競合遺伝子及び天然テンプレートの相対的増幅は実施例16のように解離ピークを測定積分することで決定される。これ以外に、異なる温度で異なる標的から順番に解離する多重検出プローブを使用する場合、同じ分析によって相対的定量が実現される。一般に、二重鎖特異性DNA染料について前述した全ての定量技術をハイブリダイゼーション・プローブによる配列特異性にすることができる。
【0187】
===生成物アニーリング速度論による絶対生成物濃度===
生成物濃度の決定はまた本発明を用いると有利に実施される。二重鎖DNA形成の連続モニタリングによりアニーリング速度論による増幅の全てのサイクルでのDNA定量ができる。サンプル温度を変性温度から急速に低下させ、もっと低いがプライマーのアニーリングを防止するのには未だ充分に高い温度で一定に維持する(図2)。生成物アニーリング速度は秒単位速度論にしたがう(本明細書で参照に含めるB.ヤング&M.アンダーソン、溶液ハイブリダイゼーションの定量分析(B. Young & M. Anderson, Quantitative analysis of solution hybridization, In: Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach 47-71, (B. Hames, S. Higgins eds.,1985))参照)。何らかの任意のPCR生成物と温度について、二次速度定数を測定できる。速度定数が分かると、未知のDNA濃度は実験的アニーリング・データから求めることができる。冷却は瞬間的になることはなく、一定温度に到達する前に何らかのアニーリングが発生する。急冷は速度定数とDNA濃度決定に利用できるデータ量を最大化する。本技術は純粋なPCR生成物を要求するが、これは本発明を用いる温度サイクル中にも得られる解離曲線によって保証できる。本発明によるこの定量法はサンプル間のあらゆるシグナル強度変化とは有利にも無関係である。
【0188】
<実施例24>
βグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントをヒトゲノムDNA(実施例7)から増幅して精製(実施例2参照)した。異なる量の精製DNAを5μlの50mMトリスpH8.3、3mMのMgCl2中の1:30,000倍希釈SYBRTMグリーンIに混和した。サンプルは94℃で変性させた後85℃まで急冷した。520〜550ナノメートルの蛍光を時間経過に併せて85℃でモニタした。異なる濃度のDNAを調べた時、アニーリング曲線の形状はDNA濃度に特徴的だった(図49参照)。任意のPCR生成物と温度で、二次速度定数を決定できる。図50は5μl中の536塩基対フラグメント100ngについて85℃での二次アニーリング速度定数の決定を示す。図50に図示した二次速度式を用い、曲線はFmax、Fmin、t0及びkを浮動パラメータとして非線形最小二乗回帰により適合させた。この種の曲線適合のための分析プログラムは従来技術で周知である(たとえば、カリフォルニア州モントレーのデルタポイント社製DeltaGraphのユーザ定義曲線適合)。速度定数が分かると、未知のDNA濃度は実験的アニーリング・データから求めることができる。
【0189】
速度定数(k)を定義すると、未知のサンプルについてDNA濃度を決定できる。未知のサンプルの蛍光対時間曲線を非線形最小二乗回帰式で、望ましくはリアルタイムでの温度サイクル中に(たとえば、LabViewプログラミング環境(ナショナル・インストルメント社、テキサス州オースチン)において非線形Levenberg−Marquardt法と説明されている方法を用いることで)適合させる。この適合では、Fmax、Fmin、t0、(DNA)は浮動パラメータ、またkは定数である。
【0190】
ある種の蛍光染料は濃度依存的にアニーリングに悪影響することから、異なる標準DNA濃度での速度定数を決定することによって、生成物アニーリングについての二次速度論を調べる。関連性を定義し適合のための別の式も必要に応じて組み込む。
【0191】
また本発明の範囲内にはプローブ・アニーリング速度を用いて生成物濃度を決定することが含まれる。蛍光共鳴エネルギー転移の速度はプライマー・アニーリング温度より高いプローブ・アニーリング温度まで急降下した後の時間経過にしたがう(図2)。標識プライマーと1種類の標識プローブによる増幅の場合、アニーリング速度(及び蛍光の発生)は2次である。2種類の標識プローブを使用する場合、蛍光発生速度は3次である。これら2種類の構成を図18に図示してある。プローブの濃度が生成物濃度より大幅に高い場合、可能性を記述するのには疑似一次式及び疑似二次式で充分である。これらの異なる条件での近似速度式は従来技術で公知となっている(B.ヤング&M.アンダーソン、前掲書)。本発明の目的では、実験的に調べられており必要な場合には補正される近似速度式を従来技術で示唆していることで充分である。
【0192】
プローブ・アニーリング速度を用いて生成物濃度を決定する場合、考えられる干渉作用としては生成物のアニーリング(分岐移動によるプローブの移動)とプローブを介したプライマーのアニーリング及び伸長が含まれる。後者はプローブのTmがプライマーのTmより高くプローブのアニーリング温度がプライマー・アニーリングを最小限に押えるように選択されている場合には最小になる。図13は伸長が起こった場合でも蛍光が約20秒にわたり時間とともに増加することを示している。この期間中、蛍光の増加は生成物濃度に依存する。
【0193】
プローブアニーリング速度は生成物アニーリングによって生成物濃度を決定する前述の方法と同様に生成物濃度を決定するために使用される。ステップを要約すると次のようになる:(1)系の適当な速度平衡を選択する、(2)既知のDNA標準を測定して速度定数を決定する、(3)異なる濃度から得られた異なる速度定数を比較することで速度平衡の変化を調べる、(4)速度定数を用いて未知試料のDNA濃度をプローブ・アニーリング・データから決定する。
【0194】
===温度サイクル制御のための蛍光フィードバック===
エンドポイント分析やサイクル毎分析とは対照的に、本発明では各温度サイクル全体を通しての蛍光もモニタできる。連続蛍光モニタリングは温度サイクル・パラメータの制御に使用できる。本発明はリアルタイム制御と増幅最適化のために蛍光フィードバックを使用する。二重鎖特異性DNA染料又は蛍光標識オリゴヌクレオチド・プローブを含むPCRサンプルの連続蛍光モニタリングは、個別の増幅サイクル中のハイブリダイゼーション及び解離をモニタするために使用できる。この情報を温度サイクル装置内部の温度制御アルゴリズムで使用して熱サイクル条件を改善しカスタマイズすることができる。従来のPCRは増幅前に全てのサイクル・パラメータをプログラミングして実施している。連続モニタリングでは、アニーリング、伸長、変性の連続観察に基づいて、熱サイクル条件の決定を増幅中に行なうことができる。ハイブリダイゼーション情報を用いて温度サイクルを制御することで考えられる利益としては:
1.各サイクルでPCR生成物の完全な変性を保証でき、同時に、
a.過剰に高い変性温度への暴露を最小限に抑さえる、つまり増幅生成物及びポリメラーゼの熱による損傷を回避できる。生成物が変性温度に暴露される時間を制限するのは長い生成物の増幅でとくに有用である。
b.変性温度を最小限に抑さえることにより反応特異性が増加する。これは意図している増幅生成物よりTmが高い生成物に対抗して選択する。
【0195】
2.各サイクルでプライマー・アニーリングに充分な時間を保証することによって増幅効率を最大にすることができ、同時に、
a.ある程度の効率でプライマー・アニーリングに達するのに必要とされる以上に長引かせないことにより増幅に必要な時間量を最小限に抑さえる。
b.アニーリング温度での時間を最小限に抑さえることにより反応特異性を拡大する。
【0196】
3.各サイクルの生成物伸長に充分な時間を保証することにより増幅効率を最大にすることができ、同時に、
a.生成物伸長を完了するのに必要とされる以上に長引かせないことにより増幅に必要とされる時間量を最小限に抑さえる。
b.意図した増幅生成物より長い生成物に対抗して選択することにより反応特異性を拡大する。
【0197】
4.得られた蛍光レベル又は増幅の現在の効率に依存した熱サイクル変化を開始する。たとえば、過剰増幅及び非特異性反応生成物は効率がある程度のレベルにまで落ちた時点で熱サイクルを終了することによって最小限に抑さえることができる。別の例として、蛍光が検出可能になった時点で解離曲線取得のためにゆっくりした温度傾斜を開始するように温度サイクルを変更することができる。これはゆっくりした温度傾斜を初期サイクルで使用する必要がないので時間を節約できる。本発明の継続的実施でその他の望ましい変化が明らかになるであろう。
【0198】
制御は蛍光データからの反応パラメータ推定に基づいている。オリジナルの蛍光データは時間に対する蛍光の変化として測定したか(変性、アニーリング、伸長の温度特異性速度)、温度に対する蛍光の変化として測定したか(生成物又はプローブTm)、又は増幅範囲の変化として測定したか(増幅収量と効率)のいずれかである。これらの速度、Tmとその一次及び二次導関数を使用して変性温度及び時間、プライマー・アニーリング温度及び時間、プローブ・アニーリング温度及び時間、酵素伸長温度及び時間、サイクル数を含む反応の最適パラメータを決定する。
【0199】
二重鎖特異性DNA染料は変性の制御、伸長の制御、及びある程度の増幅レベル又は効率で熱サイクル変化を開始するために使用する。共鳴エネルギー転移染料は以下の実施例の後で説明するようにアニーリングの制御に使用する。
【0200】
<実施例25>
市販の蛍光モニタリング熱サイクラ(ライトサイクラLC24、アイダホ・テクノロジー社製、アイダホ州アイダホ・フォールズ)を変更してソフトウェアが温度/時間セットポイントでプログラムされず、蛍光値を測定してからこれらの値を熱サイクラ制御に使用するようにした。
【0201】
機能ブロック図に図示してあるように(図51)、ランタイム・プログラムはシリアル及びDAQボード・インタフェース経由でライトサイクラと通信する。これによって温度又は蛍光データのいずれかへの高レベルのアクセスが可能になり、いずれかを温度制御用にボード・レベル・ソフトウェアで使用できる。しかし、装置の本実施例において、制御装置・ハードウェア・レベルでは温度データだけをデジタル形状に変換している。蛍光データはアナログ形状のままデジタル測定ボード・インタフェース経由で送出され、ランタイム・プログラムによって分析され、シリアル・インタフェース経由でボード・レベル・ソフトウェアに送り返される。
【0202】
===生成物解離制御===
意図したPCR生成物についての解離ピークを測定し、基線レベル蛍光は生成物が完全に解離した温度で反応カクテルを含むサンプルで測定した。
次に反応の各サイクルではこの蛍光値を目標として使用した。生成物変性へのアプローチは2段階で行ない蛍光値を遠隔計算機へ分析のために送信し値に到達したことの指示が返される要件によるタイムラグを克服した。各生成物の解離ステップでは、蛍光が中間値に達するまで温度を増加し、次いで加熱出力を低減しておよそ3℃/秒の温度傾斜速度とすることで、蛍光を分析する時間と生成物変性が発生したことを熱サイクラに通知する時間を計算機に与えるようにした。
得られた温度/時間プロット(図52)は増幅生成物の濃度が上昇するとサイクル20以降で解離温度における特徴的増加を示している。生成物Tmは生成物濃度の関数である。
【0203】
===生成物アニーリング/伸長===
アニーリング/伸長を組み合せた温度での伸長維持中に蛍光をモニタし、この情報を使用して充分だが過剰にならない時間が生成物伸長に与えられることを保証するようにした。蛍光は10秒間隔でモニタし、蛍光が設定可能な比率(代表的には1.00〜1.05)以上で増加した場合にはアニーリング/伸長ステップが継続された。それ以外の場合には次の生成物解離ステップを開始した。10秒の間隔はアニーリング/伸長温度に最小限20秒の時間を与えられるように選択した。
得られた蛍光/時間プロット(図52)は増幅生成物の濃度が増加するとアニーリング/伸長組み合せ温度でのドエル時間における特徴的増加を示している。プライマー濃度とポリメラーゼが制限因子になると各サイクルで生成物伸長を完了するのにはさらに多くの時間が必要とされる。
【0204】
===増幅プラトー===
各アニーリング/伸長ステップの終りで、蛍光値を計測して格納した。この値が最低のエンドサイクル蛍光値の1.2倍に増加してからユーザ設定可能な比率(代表的には1.00〜1.05)未満で増加が停止した時点で、熱サイクルを終了した。これに代わり、生成物Tmによるゆっくりした0.1〜0.2℃/秒の温度傾斜を入力してサンプル蛍光を連続モニタすることにより解離曲線取得ステップを開始した。
得られた蛍光/時間プロット(図52)では25サイクルの増幅後にサイクル毎蛍光比の増加が1.00未満に落ち反応が終了したことを示している。
【0205】
本発明の1つの実施例において、増幅プラトー検出を用いて多重サンプル・ランでの各サンプルについて各サンプルに最適な温度で高解像度解離曲線を採取する。サンプルが増幅プラトーに達すると、そのサンプルについて解離曲線を取得し、次いで、別の反応が増幅プラトーに達するまで通常の温度サイクルを再開する。
【0206】
伸長から区別されるアニーリングのリアルタイム・モニタリング及び制御も本発明により提供される。プライマーの一方がCy5で3’末端標識してある場合には、伸長は発生し得ない。しかし、標識プライマー(1〜10%)が未標識プライマー(90〜99%)と混合されている場合、増幅効率は僅かに減少することになるが、アニーリングは二重鎖特異性DNA染料からCy5への蛍光エネルギー転位として観察可能である。Tmが最低のプライマー(従来技術で周知のように最も近い隣接熱動力学により決定される)はCy5で標識しSYBRTMグリーンIは二重鎖特異性DNA染料として含まれる。これ以外に、等価の相補オリゴヌクレオチドによりプライマー・アニーリングを間接的にモニタすることができる。長さとTmが最低温度で解離するプライマーと同じオリゴヌクレオチドは増幅配列に対して相補性を持たないように設計される。このオリゴヌクレオチドはCy5で5’標識しこれの補体はフルオレセイン又は何らかの他の共鳴エネルギー転移対で3’標識する。これらのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは共鳴エネルギー転移が後続する。一方のプローブの濃度は最低のTmのプライマーの濃度と同じにし、他方のプローブの濃度はこれより大幅に低くして生成物にアニーリングするプライマーの疑似一次速度論を近似する疑似一次速度論を得るようにする。アニーリングの効率をモニタしこれらの方法の1つによるアニーリング温度及び時間の制御に使用する。
【0207】
温度と時間のセットポイントを蛍光フィードバック制御で完全に置き換えることも本発明の範囲に含まれる。たとえば、3種類のサンプルがフィードバック機能のある蛍光温度サイクラに配置される。サンプルは、
1.増幅生成物とSYBRTMグリーンIを含む無反応サンプル。
2.Tmが最低のプライマーと等しいTmを有し前述の濃度の相補的に蛍光標識したプライマーを含む無反応サンプル。
3.増幅すべきサンプルとSYBRTMグリーンI。
【0208】
増幅の各サイクルで、生成物の変性は温度が増加するのに併せてサンプル1をモニタすることで保証される。解離曲線はリアルタイムで求まりサンプルが変性した時点で、アニーリング・ステップへの移行が開始される。プライマー・アニーリングはサンプル2の2種類の相補的プライマーのハイブリダイゼーションにより間接的にモニタされる。プライマーの一方はフルオレセインで3’標識され他方のプライマーはCy5又は同様の染料で5’標識される。サンプル2が670/540ナノメートルでの蛍光比の増加によって表わされるプライマー・ハイブリダイゼーションを示すまで温度を下げる。この比は、蛍光対がハイブリダイゼーションにより接近する時に蛍光体間の共鳴エネルギー転移により増加する。生成物伸長に続けて実施例25に示したように1つまたはそれ以上の実際のサンプルの蛍光をモニタリングする。
【0209】
<概要>
前述の議論から、ハイブリダイゼーションをモニタするためのDNA増幅中の連続蛍光モニタリングがきわめて強力な分析技術であることが理解されよう。本明細書に記載した方法を使用し存在する初期テンプレート・コピー数に依存すると生成物の同定及び定量は温度サイクルの開始後5乃至20分で実現できる。本発明は従来技術においてこれまで利用できなかった幾つかの利点を実現する。たとえば、本発明は生成物純度、多重PCR又は競合的PCRによる相対的定量、アニーリング速度論による絶対生成物定量をモニタするための単色蛍光法と蛍光体サイクル数プロットによる初期テンプレート定量法の改良とを提供するものである。本発明はまた、配列変化検出、多重PCR又は競合的PCRによる相対的定量、プローブ・アニーリング速度論による生成物定量、蛍光体サイクル数プロットによる初期テンプレート定量のための2色配列特異的方法も提供する。
【0210】
以下の表はPCRの連続モニタリングに有用な二重鎖特異性DNA染料、加水分解プローブ、ハイブリダイゼーション・プローブを比較したものである。二重鎖特異性DNA染料の蛍光はDNAの鎖状態に依存する。2重標識加水分解プローブはプローブが加水分解される時に無傷のドナーフルオロフォアが増加する一方で消光する。ハイブリダイゼーション・プローブはハイブリダイゼーションが2つの蛍光物質を互いに近付ける場合共鳴エネルギー転移の増加に依存する。
【0211】
【0212】
本発明によれば、時間、温度、蛍光を毎秒1〜10回取得し生成物および/またはプローブ・ハイブリダイゼーションの詳細を温度サイクル中に観察する。二重鎖特異性DNA染料により温度に対する生成物のハイブリダイゼーションを用いて解離曲線で生成物を同定する。さらに、相対的生成物定量はTmが異なる2種類又はそれ以上の異なる生成物の多重増幅により実現される。さらに、競合的PCRは2種類又はそれ以上の生成物が異なるTmを有するように共通プライマーに対する内部配列を変更することで行なわれる。絶対生成物定量は変性した生成物を急冷しアニーリング速度論を観察することで得られる。蛍光体サイクル数のプロットによる初期テンプレート定量の感度は生成物解離曲線の分析によって増加し非特異性増幅及びカーブフィッティング・アルゴリズム制御を行なう。最後に、変性条件、伸長時間、及び生成物終了の制御のための即時的蛍光フィードバックは生成物の鎖状態を二重鎖特異性DNA染料によりモニタすることで得られる。
【0213】
温度サイクル中の蛍光でプローブ・ハイブリダイゼーションをモニタする能力は強力なツールである。本発明はPCR中の配列特異性検出及び定量でプローブ・ハイブリダイゼーション(加水分解ではない)に依存する2色蛍光法を提供する。ハイブリダイゼーション・プローブのアニーリング速度論及び解離は蛍光物質間のエクソヌクレアーゼ加水分解に頼るプローブでは得られない情報を提供する。配列特異性プローブのハイブリダイゼーションの連続モニタリングは温度変化につれて共鳴エネルギー転移へ続く。プローブの解離は配列と生成物への相補性によって決定される特性温度で発生する。本発明による2種類のスキーム(1)2種類の隣接ハイブリダイゼーション・プローブ、及び(2)標識プライマーを取り込む一本鎖PCR生成物にハイブリダイゼーションする1種類の標識プローブを詳解した。配列特異性プローブの解離温度はPCR中の生成物を同定し識別できる。DNA多型性又は単一塩基突然変異を含む突然変異はプローブのTmシフトにより検出される。さらに、相対的生成物定量は各々の生成物から異なる温度で解離する1種類又はそれ以上のプローブを用いて少なくとも2種類の生成物の多重増幅により実現される。さらに、競合PCRは1種類又はそれ以上のプローブが競合遺伝子及び自然のテンプレートに異なるTmでハイブリダイゼーションするように両プライマーの内側にある配列を改変することにより実施される。これ以外にも相対又は競合PCRはプローブにことなる蛍光物質たとえばCy5やCy5.5などで標識した多色分析によって行なわれる。絶対生成物濃度はプローブ・アニーリング速度論の分析により求められる。初期テンプレート・コピー数はカーブフィッティング・アルゴリズムにより蛍光体サイクル数のプロットから求められる。
【0214】
1回のPCR反応で多重分析を所望する場合、識別可能な発光スペクトルを有する異なった蛍光標識を使用して複数生成物を同定するのが共通の技術である。分析は利用できる蛍光物質の限られた数と利用できるこれらの蛍光物質の発光スペクトルがオーバラップしていることで複雑になる(H.M.シャピロら、前出)。解離曲線で生成物又はプローブ・ハイブリダイゼーションの分析は多数PCR生成物を識別する別の方法である。温度サイクル中にハイブリダイゼーションを追跡することにより、多数生成物を識別するのに必要とされるプローブ個数および/またはスペクトルの色を最小限に抑さえることができる。本発明はその精神又は基本的特徴から逸脱することなくその他の特定の態様で実現することもできる。詳述した実施例はすべての点で図示を目的とするのみであって制限的な意味合いに見なすべきものではない。したがって本発明の範囲は前述の説明によってではなく後述の請求項によって示される。請求項の等価物の意味及び範囲内に納まる全ての変化は本発明の範囲内に包含されるべきものである。
解離曲線や他の分析を行うためのプログラムコードは、以下の頁に示される。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1A及び図1Bは平衡PCRの典型例(A)と動的PCRの典型例(B)を表わすグラフである。
【図2】図2は蛍光ハイブリダイゼーションモニタリングに有用な温度対時間セグメントを表わす。
【図3】図3はPCRの高速温度サイクルで代表的な温度対時間のチャートである。
【図4】図4は4種類の異なる温度/時間プロファイル(A〜D)の結果と、これらから得られた30サイクル後の増幅生成物である。
【図5】図5A、図5B、図5CはPCRの蛍光をモニタする3種類の異なる方法での蛍光生成メカニズムを示し、(A)二重鎖DNA染料、(B)加水分解プローブ、(C)ハイブリダイゼーション・プローブである。
【図6】図6はCy5TMの一価N−ハイドロキシサクシニミド・エステルの化学構造を表わす。
【図7】図7はCy5.5TMの一価N−ハイドロキシサクシニミド・エステルの化学構造を表わす。
【図8】図8はフルオレセイン(実線)の発光スペクトルとCy5(破線)の励起スペクトルを表わす。
【図9】図9はPCR中の各サイクルでフルオレセインとCy5で標識した隣接するハイブリダイゼーション・プローブの間に発生する共鳴エネルギー転移を示す。
【図10】図10はPCR中に生成される共鳴エネルギー転移シグナルにおいてCy5プローブとフルオレセイン・プローブの比を変化させる効果を示す。
【図11】図11はPCR中に生成される共鳴エネルギー転移シグナルにおいて任意のプローブ比でのプローブ濃度を変化させる効果を示す。
【図12】図12はPCR中に生成される共鳴エネルギー転移シグナルにおいて標識オリゴヌクレオチドの間の間隔の効果を示す。
【図13】図13はTaqDNAポリメラーゼ(exo+;実線)とTaqDNAポリメラーゼのStoffel断片(exo−;点線)を用いた増幅30サイクル直後の、隣接するハイブリダイゼーション・プローブによるPCR中の蛍光発生に対する温度サイクルおよびポリメラーゼの種類の蛍光エネルギー転移による隣接プローブ・ハイブリダイゼーションの時間経過を示す。温度は太線で図示されている。
【図14】図14はTaqDNAポリメラーゼ(exo+;実線)と、TaqDNAポリメラーゼのStoffel断片(exo−;破線)とKlenTaqDNAポリメラーゼ(exo−;点線)による増幅での蛍光比対サイクル数のプロットである:上部パネル──サイクルは94℃と60℃の間で20秒間60℃で保持、中央パネル──サイクルは94℃と60℃の間で120秒間60℃で保持、下部パネル──サイクルは94℃と60℃の間で60℃から75℃までゆっくりと温度上昇。
【図15】図15はSybrTMグリーンIを用いてモニタした多数の異なる初期テンプレート・コピー反応での蛍光体サイクル数のプロットである:0,(△);1,(■);10,(─)102,(−);103,(+);104,(●)、105,(◇);106,(×);107,(▲);108,(□);109,(◆)。
【図16】図16は2重標識加水分解プローブを用いてモニタした多数の異なる初期テンプレート・コピー反応での蛍光比対サイクル数のプロットである:0,(─);1,(▲);10,(○);102,(*);103,(●);104,(□);105,(+);106,(■);107,(◇);108,(×);109,(◆)。
【図17】図17は隣接ハイブリダイゼーション・プローブでモニタした多数の異なる初期テンプレート・コピー反応での蛍光比対サイクル数のプロットである:0,(─);1,(▲);10,(○);102,(*);103,(●);104,(□);105,(+);106,(■);107,(◇);108,(×);109,(◆)。
【図18】図18は共鳴エネルギー転移によりモニタされる2種類のハイブリダイゼーション・プローブ設計を区別する蛍光比対サイクル数のプロットである:(◇)は各々フルオレセインとCy5で標識した2種類のハイブリダイゼーション・プローブ;(◆)はCy5で標識したプライマーとフルオレセインで標識したプローブである。
【図19】図19Aから図19Cは、PCRでの3種類の蛍光モニタリング技術の比較を提供し、二重鎖特異性DNA染料SYBRグリーンI(A)、2重標識フルオレセイン/ローダミン加水分解プローブ(B)、Cy5標識プライマーとフルオレセイン標識ハイブリダイゼーション・プローブ(C)を含む;図19Dは図19Aから図19Cまでに表わされている3種類のモニタリング技術の変動係数を示す。
【図20】図20はSYBRグリーンIでモニタされる標準増幅の代表的対数蛍光対サイクル数のプロットを示す。
【図21】図21は図20のデータのサイクル20〜27に適合させた双曲線を示す。
【図22】図22は増幅データから初期コピー数を決定するため未知サンプルに適合させた双曲線を表わす。
【図23】図23は各サイクル隣接ハイブリダイゼーション・プローブでモニタされる5種類の標準の代表的な蛍光対サイクル数のプロットで、初期コピー数は次のように表わしてある:103,(●);104,(◇);105,(▲);106,(□);107,(◆)。
【図24】図24は図23の標準データに適合させた曲線を示す。
【図25】図25は各サイクル加水分解プローブでモニタされる5種類の標準の代表的な蛍光対サイクル数のプロットを示し、初期コピー数は次のように表わしてある:1.5,(●);15,(◇);150,(▲);1500,(□);15,000,(◆)。
【図26】図26は図25の標準データに適合させた曲線を示す。
【図27】図27はSYBRグリーンIでモニタされる3種類の標準増幅の代表的対数蛍光対サイクル数のプロットを示し、ここでは(■);(●);(▲)である。
【図28】図28は図27の標準データに適合させた異なる曲線を示す。
【図29】図29A及び図29Bは時間対蛍光(A)と時間対温度(B)のプロットで温度と蛍光の間の逆比例関係を明示している。
【図30】図30は温度対時間、蛍光対時間、蛍光対温度の2Dプロットを示すチャートでSYBRグリーンIの存在下におけるhepatitis B(B型肝炎)ゲノムの180塩基対フラグメントの増幅について3Dプロットとしても図示してある。
【図31】図31はSYBRグリーンIの存在下でヒトβグロビン遺伝子の536塩基対フラグメントの増幅についての蛍光対温度投影図である。
【図32】図32A及び図32Bは加水分解プローブについての温度による蛍光比の直線性変化(A)とハイブリダイゼーション・プローブでの温度によるラジカルな変化(B)とを示すプロットを提供する。
【図33】図33は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下にexo−ポリメラーゼによる増幅の蛍光比対温度プロットを示す。
【図34】図34は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下でexo+ポリメラーゼによる増幅の蛍光比対温度プロットを示す。
【図35】図35は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下にexo−ポリメラーゼによる増幅中の温度、時間、蛍光の三次元プロットを示す。
【図36】図36は隣接ハイブリダイゼーション・プローブの存在下にexo+ポリメラーゼによる増幅中の温度、時間、蛍光の三次元プロットを示す。
【図37】図37はhepatitis B(B型肝炎)ウィルス(●;50%GC、180bp)、βグロビン(▲;53.2%GC、536bp)、前立腺特異抗原(×;60.3%GC、292bp)のPCR増幅生成物での解離曲線を示す。
【図38】図38は0.1℃から5.0℃の加熱レートにおけるhepatitis B(B型肝炎)ウィルスのPCR増幅生成物の解離曲線を示す。
【図39】図39はSYBRTMグリーンIの各種濃度におけるhepatitis B(B型肝炎)ウィルスのPCR増幅生成物の解離曲線を示す。
【図40】図40A及び図40Bは(a)追加テンプレートなし、(b)低いストリンジェンシーの条件下で10の6乗コピーの追加テンプレート、(c)高いストリンジェンシーの条件下での10の6乗コピーの追加テンプレートで増幅したβグロビン断片物についての、(A)解離曲線と、(B)電気泳動分画バンドを示す。
【図41】図41A及び図41Bはhepatitis Bウィルス断片(HBV)、βグロビン、及びこれらの混合物の(A)解離曲線と、(B)解離ピークを示す。
【図42】図42Aから図42Dは(A)様々な量のβグロビン・テンプレートからPCR増幅した生成物についての相対蛍光対サイクル数のプロット、各種生成物の(B)解離ピークと(C)電気泳動バンド、(D)(A)のデータの補正蛍光を示す。
【図43】図43A及び図43Bは嚢胞性線維症遺伝子及びc−erbB−2オンコジーンの混合物のPCR増幅生成物からの(A)解離曲線と、(B)解離ピークを示す。
【図44】図44は嚢胞性線維症遺伝子(CFTR)とc−erbB−2(neu)について様々なサイクル数での解離ピークを示す。
【図45】図45はCFTRとneuPCT生成物の積分解離ピークのグラフである。
【図46】図46A及び図46Bは第V因子ライデン変異ヘテロ接合性のヒト(実線)、第V因子ライデン変異ホモ接合性のヒト(点線)、野生型ホモ接合性(破線)、DNAのない対照(一点鎖線)のPCR生成物についての(A)解離曲線と、(B)解離ピークを示す。
【図47】図47は第V因子ライデン変異ホモ接合性サンプル(実線)、第V因子ライデン変異ヘテロ接合性(点線)、野生型ホモ接合性(一点鎖線)のPCR生成物の40サイクル中の連続モニタの蛍光比対温度のプロットを示す。
【図48】図48はメチレンテトラヒドロ葉酸遺伝子のホモ接合型突然変異(実線)、野生型ホモ接合性(破線)、ヘテロ接合突然変異(点線)、DNAのない対照(一点鎖線)の解離ピークを示す。
【図49】図49は各種の初期テンプレート量から増幅したβグロビンPCR生成物のアニーリング曲線の形状を示す。
【図50】図50は初期テンプレート濃度を決定するための2次速度定数の決定を示す。
【図51】図51は蛍光データから熱サイクルを制御するためのブロック図である。
【図52】図52A及び図52Bは(A)20サイクル後に取得した温度対時間のプロットと、(B)25サイクル後に取得した蛍光対時間のプロットを示し、熱サイクルは蛍光データから制御した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、 標的配列の隣接部分にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブ存在下に標的配列をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するステップであって、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されて、前記標的配列と前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質及び受容体蛍光物質が互いに25ヌクレオチド以内にあるようにし、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、 前記供与体蛍光物質によって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記蛍光エネルギー転移対からの放射を検出するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、標的配列の隣接部分にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブ存在下に標的配列をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するステップであって、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されて、前記標的配列と前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質及び受容体蛍光物質が互いに25ヌクレオチド以内にあるようにし、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、 前記供与体蛍光物質によって吸収される波長の光で前記サンプルを励起するステップと、 前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質が約0〜5ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質が約0〜2ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質が1ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法であって、(a)前記生物学的サンプルに2種類の核酸プライマーと核酸プローブの有効量を添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々受容体蛍光物質と供与体蛍光物質を含む蛍光エネルギー転移対の1つの構成要素で標識され、前記標識されたプローブは前記標識されたプライマーの15ヌクレオチド以内の前記標的核酸配列の増幅されたコピーにハイブリダイゼーションするステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、 (c)前記供与体蛍光物質によって吸収される選択した波長の光で前記生物学的サンプルを照明するステップと、 (d)前記サンプルの蛍光放射を検出するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記サンプルの温度依存性蛍光をモニタするステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いから約4〜6ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
生物学的サンプルの標的核酸配列を増幅する方法の改良であって、 (a)前記生物学的サンプルに核酸結合蛍光体の有効量を添加するステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応を用い、初期の所定の温度と時間パラメータを用いて前記生物学的サンプルを熱サイクルし、次いで (i)前記ポリメラーゼ連鎖反応中に前記蛍光体によって吸収される光の選択した波長で前記生物学的サンプルを照明するステップと、 (ii)前記サンプルからの蛍光をモニタして前記ポリメラーゼ連鎖反応に最適な温度及び時間パラメータを決定するステップと、 (iii)前記蛍光にしたがって前記初期温度及び時間パラメータを調節するステップと、 を含む前記標的核酸配列を増幅するステップと、 を含むことを特徴とする改良。
【請求項10】
前記蛍光体は二重鎖特異性核酸結合染料を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光体は前記標的核酸配列にハイブリダイゼーションする蛍光標識オリゴヌクレオチド・プローブを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光体はオリゴヌクレオチド・プローブの対を含み、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記供与体蛍光物質放射と前記受容体蛍光物質吸収のスペクトルが25%未満でオーバラップし、前記受容体蛍光物質は100,000M-1cm-1以上のピーク吸光係数を有し前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質と受容体蛍光物質は互いから15ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
生物学的サンプルの標的核酸配列を検出するための方法であって、 (a)前記生物学的サンプルに前記標的核酸配列とハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド・プローブ対の有効量を添加し、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識され、前記供与体蛍光物質の放射スペクトルと前記受容体蛍光物質の吸収スペクトルが25%未満でオーバラップし、前記受容体蛍光物質は100,000M-1cm-1以上のピーク吸光係数を有し前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質と受容体蛍光物質が互いの25ヌクレオチド以内にあるようにするステップと、 (b)前記供与体蛍光物質によって吸収される光の選択した波長で前記生物学的サンプルを照明するステップと、 (c)前記生物学的サンプルの放射を検出するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記共鳴エネルギー転移対は受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は前記2種類のプローブの前記標的核酸配列とのハイブリダイゼーション時に互いに約0〜5ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの約0〜2ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの1ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
フルオレセインで標識した第1のプローブとCy5又はCy5.5で標識した第2のプローブを含むことを特徴とする蛍光エネルギー転移対。
【請求項22】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法であって、 標的配列の隣接部分にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブ存在下に標的配列をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するステップであって、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されて、前記標的配列と前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質及び受容体蛍光物質が互いに25ヌクレオチド以内にあるようにし、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、 前記供与体蛍光物質によって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの放射を検出するステップと、 前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの約0〜5ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの約0〜2ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの1ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モニタするステップは前記標的配列から溶解する前記プローブの溶解プロファイルを決定するステップを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項28】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法であって、 SYBRTMグリーンI存在下にポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、SYBRTMグリーンIにより吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの放射を検出するステップと、 前記SYBRTMグリーンIからの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記モニタするステップは前記増幅した標的配列の溶解プロファイルを決定するステップを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、 (a)2種類の核酸プライマーと核酸プローブの有効量を前記生物学的サンプルに添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは互いに受容体蛍光物質と供与体蛍光物質を含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブが前記標識されたプライマーの15ヌクレオチド以内の前記標的核酸配列の増幅コピーとハイブリダイゼーションするステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、 (c)前記供与体蛍光物質によって吸収される選択した波長の光で前記生物学的サンプルを照明して前記サンプルの蛍光放射を検出するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記サンプルの温度依存性蛍光をモニタするステップをさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記モニタするステップは前記増幅した標的配列の溶解プロファイルを決定するステップを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いから約4〜6ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
第2の核酸と比較して第1の核酸における選択した配座での相違を検出する方法であって、(a)ポリメラーゼ連鎖反応により前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記選択したセグメントとこれに対応するセグメントは各々が前記選択した配座を含み、前記選択した配座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、 (b)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、 前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で、また前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識して、前記供与体蛍光物質と受容体蛍光物質が前記2種類のプローブと前記増幅生成物とのハイブリダイゼーション時に共鳴エネルギー転移関係になるようにし、前記プローブの一方は前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成して前記一方のプローブが前記選択した配座にまたがり前記第1の核酸において前記第2の核酸の溶解プロファイルから識別可能な相違が存在する場合に溶解プロファイルを示すようにするステップと、 (c)前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸の対応するセグメントとを有効量のプローブの存在下においてポリメラーゼ連鎖反応により増幅して増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントとを得て、少なくともこれらの一部分が共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた両方のプローブを有するようにするステップと、 (d)前記プローブをハイブリダイゼーションした前記増幅した選択セグメント及び前記増幅した対応セグメントを、蛍光共鳴エネルギー転移対によって蛍光が顕在化するように選択した波長の光で照明するステップと、 (e)温度の関数として蛍光放射を測定し前記第1の核酸の増幅された選択セグメントから溶解する前記プローブの一方の第1の溶解プロファイルと前記第2の核酸の増幅された対応セグメントから溶解する前記プローブの一方の第2の溶解プロファイルを決定するステップと、 (f)前記第1の溶解プロファイルを前記第2の溶解プロファイルと比較し、これらの相違が前記サンプル核酸における相違の存在を示すようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記共鳴エネルギー転移対が供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5及びCy5.5から構成されるグループから選択した構成要素を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記供与体と前記受容体がプローブに結合され、両方のプローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記供与体と前記受容体が約25ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記供与体と前記受容体がプローブに結合され、前記プローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記供与体と前記受容体が約0〜5ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記共鳴エネルギー転移供与体と前記共鳴エネルギー転移受容体が前記プローブに結合され、前記プローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記供与体と前記受容体が約0〜2ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記共鳴エネルギー転移供与体と前記共鳴エネルギー転移受容体が前記プローブに結合され、前記プローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記受容体と前記供与体が1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第2の核酸と比較して第1の核酸における選択した配座での相違を検出する方法であって、(a)ポリメラーゼ連鎖反応により前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸の対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記選択したセグメントとこれに対応するセグメントは各々が前記選択した配座を含み、前記選択した配座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、 (b)オリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プライマーの一方と前記プローブが各々供与体蛍光物質と受容体蛍光物質を含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識したプローブと標識したプライマーを前記増幅生成物にハイブリダイゼーションして前記供与体と前記受容体が共鳴エネルギー転移関係にあるようにし、前記プローブは前記増幅生成物とハイブリダイゼーションするように構成して前記プローブが前記選択した配座にまたがり前記第1の核酸において前記第2の核酸の溶解プロファイルから識別可能な相違が存在する場合溶解プロファイルを示すようにするステップと、 (c)有効量のプライマーとプローブの存在かにおいてポリメラーゼ連鎖反応により前記第1の核酸の選択セグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅して増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントとを得て、少なくともこれらの一部が共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記標識プライマー及びプローブを両方とも有するようにするステップと、 (d)前記標識プライマー及びプローブがハイブリダイゼーションしている前記増幅した選択セグメントと前記増幅した対応セグメントを選択した波長の光で照明して蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を顕在化するステップと、 (e)温度の関数として蛍光放射を測定して第1の核酸の前記増幅選択セグメントから前記一方のプローブ溶解の第1の溶解プロファイルと第2の核酸の前記増幅対応セグメトから前記一方のプローブ溶解の第2の溶解プロファイルにおいて決定するステップと、 (f)前記第1の溶解プロファイルを前記第2の溶解プロファイルと比較し、ここでの相違が前記サンプル核酸における相違の存在を示すようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5及びCy5.5から構成されるグループから選択した構成要素を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記供与体と前記受容体が前記標識したプライマー及びプローブに結合され、前記標識したプローブ及びプライマーが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションする場合に前記供与体と前記受容体が約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記供与体と前記受容体が前記標識したプライマー及びプローブに結合され、前記標識したプローブ及びプライマーが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションする場合に前記供与体と前記受容体が約4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
個人のゲノムの選択された配位でのヘテロ接合を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異性対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、その各々が選択された配位を含み、 (a)前記個人からサンプルとなるゲノムDNAを採得するステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記突然変異対立遺伝子の第1の選択したセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択したセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択されたセグメントとの両方ともが前記選択された配位を含むステップと、 (c)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プローブの一方は受容体蛍光物質で標識し前記プローブの他方は蛍光共鳴エネルギー転移対の供与体蛍光物質で標識して前記増幅した第1と第2の選択セグメントと前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記プローブの一方は前記選択された配位にまたがり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の溶解プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の溶解プロファイルを示すようにするステップと、 (d)ポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプローブの存在下でサンプル・ゲノムDNAの前記第1と第2の選択ヤグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分が共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされたプローブを両方とも有するようにするステップと、 (e)前記標識したプライマーとプローブがハイブリダイゼーションされている前記増幅した第1と第2の選択セグメントを選択した波長の光で照明して前記供与体及び受容体による蛍光を顕在化するステップと、 (f)温度の関数として蛍光放射を測定して、前記増幅した第1の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第1の溶解プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第2の溶解プロファイルとを決定するステップと、 (g)前記第1の溶解プロファイルと前記第2の溶解プロファイルとを比較し、識別可能な溶解プロファイルが前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
前記蛍光共鳴エネルギー転移対が、供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブと基準オリゴヌクレオチドが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が25ヌクレオチド残基以上に離れないようにすることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が約0〜5ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が約0〜2ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
個人のゲノムにおいて選択された配座でのヘテロ接合性を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異性対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、その各々が選択された配座を含み、(a)前記個人からサンプルとなるゲノムDNAを採得するステップと、(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記突然変異対立遺伝子の第1の選択したセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択したセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択されたセグメントとの両方ともが前記選択された配座を含むステップと、(c)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プライマーの一方と前記プローブが各々供与体蛍光物質と受容体蛍光物質とを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブと標識されたプライマーが前記増幅された第1と第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションして前記プローブの一方が前記選択した配座にまたがり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の溶解プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の溶解プロファイルを示すようにするステップと、(d)ポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプローブ及びプライマーの存在下でサンプル・ゲノムDNAの前記第1と第2の選択セグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分が両方とも共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされたプローブを有するステップと、(e)選択した波長の光によりハイブリダイゼーションされたプローブを有する前記増幅された第1と第2の選択セグメントを照明して、前記供与体と受容体による蛍光を顕在化するステップと、(f)温度の関数として蛍光放射を測定して、前記増幅した第1の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第1の溶解プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第2の溶解プロファイルとを決定するステップと、(g)前記第1の溶解プロファイルと前記第2の溶解プロファイルとを比較して、識別可能な溶解プロファイルが前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記供与体と前記受容体が前記標識プライマー及びプローブに結合され、前記標識プライマー及びプローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションする場合前記供与体と前記受容体が約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記供与体と前記受容体が前記標識プライマー及びプローブに結合され、前記標識プライマーとプローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物が2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プローブ、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物においてポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法であって、(a)前記混合物に(1)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識され、選択された温度条件と単価イオン強度で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成された有効量のオリゴヌクレオチド・プライマーと、(2)前記供与体又は前記受容体で標識され、前記プローブと基準オリゴヌクレオチドの間で一方が前記供与体で標識され他方が前記受容体で標識され、前記基準オリゴヌクレオチドは前記選択された温度及び単価イオン強度の条件下で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドが両方とも前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合前記供与体及び前記受容体が共鳴エネルギー転移関係にあるようにする有効量の基準オリゴヌクレオチドとを添加するステップと、(b)前記核酸の選択セグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して前記増幅生成物を得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、(c)選択した波長の光でハイブリダイゼーションされたプローブと基準オリゴヌクレオチドとを有する前記増幅生成物を照明して前記蛍光共鳴エネルギー対による蛍光を顕在化させ、蛍光放射をモニタして、前記蛍光放射が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記蛍光共鳴エネルギー転移対はフルオレセインと、Cy5及びCy5.
5から構成されるグループから選択した構成要素であることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物が2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プライマー、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物におけるポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法は、 (a)前記混合物に有効量の核酸結合蛍光染料を添加するステップと、 (b)前記核酸結合蛍光染料が添加された前記混合物でポリメラーゼ連鎖反応により前記選択した核酸セグメントを増幅して核酸結合蛍光染料が結合した前記増幅生成物を得るステップと、 (c)核酸結合蛍光染料が結合している増幅生成物に選択した波長の光を照明してここからの蛍光を顕在化し、蛍光放射をモニタして、前記蛍光放射が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項58】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択される構成要素とすることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
二重鎖特異性蛍光染料を含むポリメラーゼ連鎖反応混合物のアニーリング、延長、変性フェーズの反復サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応の温度サイクル・パラメータを制御する方法であって、前記パラメータは前記アニーリング・フェーズの持続時間と、前記変性フェーズの持続時間と、サイクル数とを含み、(a)選択した波長の光で前記反応を照明して前記蛍光染料からの蛍光を顕在化させ前記反復アニーリング、拡張、変性フェーズの間に蛍光を連続モニタするステップと、(b)少なくとも、(i)前記拡張フェーズの間に蛍光が増加を停止する持続時間、又は(ii)前記変性フェーズの間に前記蛍光が基線レベルまで減少する持続時間、又は(iii)前記拡張フェーズの間に前記蛍光が所定のレベルに達した回数 を決定するステップと、(c)前記拡張フェーズの間に蛍光が増加を停止する時間の長さに基づいた前記拡張フェーズの長さ、前記変性フェーズの間に蛍光が前記基線レベルまで減少した時間の長さに基づいた前記変性フェーズの長さ、又は前記拡張フェーズの間に蛍光が前記所定レベルに達したサイクル数に基づくサイクル数を調節するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択される構成要素とすることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
選択したポリメラーゼ連鎖反応混合物における増幅生成物の濃度を決定する方法であって、(a)前記増幅生成物の既知の濃度のハイブリダイゼーションのレートをモニタすることにより選択した温度と反応条件での前記増幅生成物での2次速度定数を決定するステップと、(b)前記増幅生成物の未知の濃度でのアニーリング速度を決定するステップと、(c)前記アニーリング速度と前記2次速度定数から前記増幅生成物の濃度を計算するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
前記アニーリング速度は多数サイクルの増幅後に決定されることを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記二次速度定数を決定するステップは、 既知の濃度の前記増幅生成物と有効量の二重鎖特異性蛍光染料とを含む第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以上に上昇して変性増幅生成物を得るステップと、 前記既知の量の変性増幅生成物を含む前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以下の選択した温度まで急冷すると同時に時間の関数として前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の蛍光を連続モニタするステップと、 極大蛍光、極小蛍光、極小蛍光の時間、及び増幅生成物の既知の濃度での2次速度定数を決定するため、式:
ただしFは蛍光、Fmaxは極大蛍光、Fminは極小蛍光、kは2次速度定数、t0はFminでの時間、[DNA]は前記増幅生成物の既知の濃度とする から時間の関数として蛍光をプロットするステップと、 を含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択される構成要素とすることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
競合的定量ポリメラーゼ連鎖反応による選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法であって、(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択したセグメントと相補的テンプレートのこれに対応する選択したセグメントを増幅してこれらの増幅生成物を得るように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対の各々の有効量と、(ii)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識された有効量のオリゴヌクレオチド・プローブであって、前記プローブが前記競合的テンプレートの増幅生成物から溶解する溶解温度から識別可能な溶解温度での前記選択したテンプレートの増幅生成物から溶解するように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されている前記プローブと、(iii)前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が前記供与体により標識され他方が前記受容体により標識されているとして、前記供与体又は前記受容体で標識された有効量の基準オリゴヌクレオチドであって、前記基準オリゴヌクレオチドは前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に前記供与体と前記受容体が共鳴エネルギー転移関係になるように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするよう構成されたオリゴヌクレオチドと、 を含む反応混合物において、 ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の選択したテンプレートと既知の量の前記競合的テンプレートを増幅して前記増幅生成物を得るステップと、(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照明して蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を顕在化させ、反応混合物の温度が変化して前記選択したテンプレートの前記増幅生成物から溶解する前記プローブの第1の溶解曲線と前記競合的テンプレートから溶解する前記プローブの第2の溶解曲線とを得る場合に温度の関数として蛍光放射を決定するステップと、(c)前記第1と第2の溶解曲線から第1と第2の溶解溶解ピークに変換して当該溶解ピークから前記選択したテンプレートと前記競合的テンプレートの相対量を決定するステップと、(d)前記既知の量の前記競合的テンプレートと、前記選択したテンプレート及び競合的テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
前記基準オリゴヌクレオチドはオリゴヌクレオチド・プライマーの対の一方であることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅ヤグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約25ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約0〜5ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブとトランスファヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約0〜2ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブとトランスファヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記基準ヌクレオチドが前記オリゴヌクレオチド・プライマーの一方ではないことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項76】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
フルオレセインとCy5からなることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項80】
フルオレセインとCy5.5からなることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項81】
ポリメラーゼ連鎖反応において選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法であって、(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅した第1の生成物を得るように構成された第1の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において基準テンプレートの選択した第2のセグメントを増幅して増幅した第2の生成物を得るように構成された第2の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(iii)核酸結合蛍光染料の有効量と、 を含む反応混合物において、 ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の前記選択したテンプレートを増幅して前記増幅した第1の生成物を得る及び既知の量の前記基準テンプレートを増幅して前記増幅した第2の生成物を得るステップと、(b)選択した波長の光で前記反応混合物を照明して核酸結合蛍光染料による蛍光を顕在化させ、温度の関数として放射された蛍光を連続的にモニタして第1の生成物と第2の生成物が異なる温度で溶解するような前記増幅生成物の溶解曲線を得るステップと、(c)前記溶解曲線を溶解溶解ピークに変換して当該溶解ピークから前記選択したテンプレートと前記基準テンプレートの相対量を決定するステップと、(d)前記既知の量の前記基準テンプレートと選択したテンプレート及び基準テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項82】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項84】
陽性対照テンプレートも含むポリメラーゼ連鎖反応において選択したテンプレートの増幅をモニタする方法であって、(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅された第1の生成物を得るように構成された第1の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において、陽性対照テンプレートの選択された第2のセグメントを増幅して増幅された第2の生成物を得るように構成された第2の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(iii)有効量の核酸結合蛍光染料と、を含む反応混合物において、前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するための条件に前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをさらすステップと、(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照明して核酸結合蛍光染料による蛍光を顕在化し、前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクル中に温度の関数として放射される蛍光を連続的にモニタして前記選択したテンプレートが増幅される場合前記増幅された第1の生成物の第1の溶解ピークを、また前記陽性対照テンプレートが増幅される場合前記増幅された第2の生成物の第2の溶解ピークを取得するステップとを含み、前記第2の溶解曲線の取得はポリメラーゼ連鎖反応が作用したことを表わし、前記第1の溶解曲線の取得は前記選択した第1のセグメントが増幅可能であることを表わし、前記第1の溶解曲線が欠如していることは前記選択した第1のセグメントが増幅不可能であることを表わす ことを特徴とする方法。
【請求項85】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項87】
個人の第V因子ライデン変異を検出する方法であって、第V因子ライデン変異は野生型と比較して第V因子ライデン変異配座での単一塩基変化で構成され、(a)前記個人からサンプル・ゲノムDNAを採得するステップと、(b)対照として野生型ゲノムDNAを提供するステップと、(c)前記サンプル・ゲノムDNAと前記野生型ゲノムDNAの選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択したセグメントは第V因子ライデン変異配座を含み、第V因子ライデン変異配座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、(d)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プローブは前記増幅された生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブが前記変異配座にまたがり前記サンプル・ゲノムDNAに前記野生型ゲノムDNAの溶解プロファイルから区別できる第V因子ライデン変異が存在する場合溶解プロファイルを示すステップと、(e)共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識された転移オリゴヌクレオチドを提供し、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が共鳴エネルギー転移供与体で標識され他方が共鳴エネルギー転移受容体で標識されているとして、前記転移オリゴヌクレオチドは前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成して前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に共鳴エネルギー転移供与体と共鳴エネルギー転移受容体が共鳴エネルギー転移関係にあるようにするステップと、(f)有効量のオリゴヌクレオチド・プローブと転移オリゴヌクレオチドの存在下でサンプル・ゲノムDNAと野生型ゲノムDNAの前記選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応により増幅して、増幅された選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、(g)前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクルの間の温度の関数として蛍光を測定してサンプル・ゲノムDNAの前記増幅セグメントから溶解する前記プローブの溶解プロファイルと前記野生型ゲノムDNAの増幅セグメントから溶解する前記プローブの溶解プロファイルとを取得するステップと、(h)前記サンプル・ゲノムDNAについての前記溶解プロファイルを前記野生型ゲノムDNAについての前記溶解プロファイルと比較し、これらの差が前記サンプル・ゲノムDNAにおける第V因子ライデン変異の存在を表わすステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項88】
前記転移オリゴヌクレオチドはオリゴヌクレオチド・プライマーの対の一方であることを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記オリゴヌクレオチド・プライマーが配列ID no:11及び配列ID no:12であることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
配列ID no:11はCy5又はCy5.5で標識されることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記オリゴヌクレオチド・プローブが配列ID no:13であることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項93】
配列ID no:13がフルオレセインで標識されることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合されて、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項95】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合されて、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合約4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記転移オリゴヌクレオチドは前記オリゴヌクレオチド・プライマーの一方ではないことを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項97】
前記共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記オリゴヌクレオチド・プライマーが配列ID no:11と配列ID no:12であることを特徴とする請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記オリゴヌクレオチド・プローブが配列ID no:13であることを特徴とする請求項98に記載の方法。
【請求項100】
配列ID no:13がフルオレセインで標識されることを特徴とする請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記転移オリゴヌクレオチドがCy5又はCy5.5で標識されることを特徴とする請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に25ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に約0〜5ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に約0〜2ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項104に記載の方法。
【請求項106】
溶解プロファイルにおける相違が少なくとも約2℃の熱溶解温度における相違を表わすことを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項107】
配列ID no:11のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項108】
配列ID no:12のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項109】
配列ID no:13のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項110】
核酸ハイブリダイゼーションを分析するための方法であって、(a)分析すべき核酸サンプルと核酸結合蛍光体とを含む混合物を提供するステップと、(b)温度を≧毎秒0.1℃の速度で変化させながら蛍光をモニタするステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項111】
前記核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記核酸結合蛍光体はオリゴヌクレオチド・プローブの対を含み、前記プローブの一方が蛍光共鳴エネルギー転移対の供与体で標識され前記プローブの他方が受容体で標識されることを特徴とする請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記プローブの一方がポリメラーゼ連鎖反応増幅用のプライマーであることを特徴とする請求項112に記載の方法。
【請求項114】
未知の量の核酸を含むサンプルの初期コピー数を定量する方法であって、(a)ポリメラーゼ連鎖反応により既知の濃度の少なくとも一つの標準を、前記標準と核酸結合蛍光体とを含む混合物中で増幅するステップと、(b)サイクル数の関数として蛍光を測定して一組のデータ点を得るステップと、(c)初期核酸濃度とサイクル数の関数として蛍光を記述する任意の所定の式に前記データ点を当てはめるステップと、(d)前記サンプルと前記核酸結合蛍光体とを含む混合物中で未知の量の核酸を含む前記サンプルを増幅してこれの蛍光をモニタするステップと、(e)ステップ(c)で求めた式から初期核酸濃度を決定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項115】
前記核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記核酸結合蛍光体はオリゴヌクレオチド・プローブの対を含み、その一方が蛍光共鳴エネルギー転移対の供与体で標識され他方が受容体で標識されることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記プローブの一方が増幅用プライマーであることを特徴とする請求項116に記載の方法。
【請求項118】
放射スペクトルを有する供与体蛍光物質と吸収スペクトルを有し消光係数が100,000M-1cm-1より大きい受容体蛍光物質とを含み、前記供与体蛍光物質の放射スペクトルと前記受容体蛍光物質の吸収スペクトルが25%以下でオーバラップすることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項119】
前記供与体蛍光物質がフルオレセインであり前記受容体蛍光物質がCy5又はCy5.5であることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項120】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、 核酸結合蛍光体の存在下にポリメラーゼ連鎖反応によって前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的とされる核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加して少なくとも変性温度と延長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップを含むステップと、 前記核酸結合蛍光体により吸収される波長の光によって前記サンプルを励起するステップと、 前記サンプルの温度が変化する際に前記核酸結合蛍光体からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項121】
前記核酸結合蛍光体は二重鎖核酸結合蛍光染料を含むことを特徴とする請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記二重鎖核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記温度依存性蛍光を用いて前記増幅生成物を同定することを特徴とする請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記増幅生成物が溶解曲線の分析によって同定されることを特徴とする請求項123に記載の方法。
【請求項125】
2種類又はそれ以上の増幅生成物の相対量を溶解曲線の分析によって求めることを特徴とする請求項124に記載の方法。
【請求項126】
溶解曲線より下の領域が多重ガウス曲線の和の非線形最小自乗法回帰で見付けられることを特徴とする請求項124に記載の方法。
【請求項1】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、 標的配列の隣接部分にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブ存在下に標的配列をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するステップであって、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されて、前記標的配列と前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質及び受容体蛍光物質が互いに25ヌクレオチド以内にあるようにし、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、 前記供与体蛍光物質によって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記蛍光エネルギー転移対からの放射を検出するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、標的配列の隣接部分にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブ存在下に標的配列をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するステップであって、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されて、前記標的配列と前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質及び受容体蛍光物質が互いに25ヌクレオチド以内にあるようにし、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、 前記供与体蛍光物質によって吸収される波長の光で前記サンプルを励起するステップと、 前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質が約0〜5ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質が約0〜2ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質が1ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法であって、(a)前記生物学的サンプルに2種類の核酸プライマーと核酸プローブの有効量を添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは各々受容体蛍光物質と供与体蛍光物質を含む蛍光エネルギー転移対の1つの構成要素で標識され、前記標識されたプローブは前記標識されたプライマーの15ヌクレオチド以内の前記標的核酸配列の増幅されたコピーにハイブリダイゼーションするステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、 (c)前記供与体蛍光物質によって吸収される選択した波長の光で前記生物学的サンプルを照明するステップと、 (d)前記サンプルの蛍光放射を検出するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記サンプルの温度依存性蛍光をモニタするステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いから約4〜6ヌクレオチドの距離にあることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
生物学的サンプルの標的核酸配列を増幅する方法の改良であって、 (a)前記生物学的サンプルに核酸結合蛍光体の有効量を添加するステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応を用い、初期の所定の温度と時間パラメータを用いて前記生物学的サンプルを熱サイクルし、次いで (i)前記ポリメラーゼ連鎖反応中に前記蛍光体によって吸収される光の選択した波長で前記生物学的サンプルを照明するステップと、 (ii)前記サンプルからの蛍光をモニタして前記ポリメラーゼ連鎖反応に最適な温度及び時間パラメータを決定するステップと、 (iii)前記蛍光にしたがって前記初期温度及び時間パラメータを調節するステップと、 を含む前記標的核酸配列を増幅するステップと、 を含むことを特徴とする改良。
【請求項10】
前記蛍光体は二重鎖特異性核酸結合染料を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光体は前記標的核酸配列にハイブリダイゼーションする蛍光標識オリゴヌクレオチド・プローブを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光体はオリゴヌクレオチド・プローブの対を含み、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記供与体蛍光物質放射と前記受容体蛍光物質吸収のスペクトルが25%未満でオーバラップし、前記受容体蛍光物質は100,000M-1cm-1以上のピーク吸光係数を有し前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質と受容体蛍光物質は互いから15ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
生物学的サンプルの標的核酸配列を検出するための方法であって、 (a)前記生物学的サンプルに前記標的核酸配列とハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド・プローブ対の有効量を添加し、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識され、前記供与体蛍光物質の放射スペクトルと前記受容体蛍光物質の吸収スペクトルが25%未満でオーバラップし、前記受容体蛍光物質は100,000M-1cm-1以上のピーク吸光係数を有し前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質と受容体蛍光物質が互いの25ヌクレオチド以内にあるようにするステップと、 (b)前記供与体蛍光物質によって吸収される光の選択した波長で前記生物学的サンプルを照明するステップと、 (c)前記生物学的サンプルの放射を検出するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記共鳴エネルギー転移対は受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は前記2種類のプローブの前記標的核酸配列とのハイブリダイゼーション時に互いに約0〜5ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの約0〜2ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの1ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
フルオレセインで標識した第1のプローブとCy5又はCy5.5で標識した第2のプローブを含むことを特徴とする蛍光エネルギー転移対。
【請求項22】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法であって、 標的配列の隣接部分にハイブリダイゼーションする2種類の核酸プローブ存在下に標的配列をポリメラーゼ連鎖反応により増幅するステップであって、前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で標識され、前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識されて、前記標的配列と前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記供与体蛍光物質及び受容体蛍光物質が互いに25ヌクレオチド以内にあるようにし、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度との間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、 前記供与体蛍光物質によって吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの放射を検出するステップと、 前記蛍光エネルギー転移対からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの約0〜5ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの約0〜2ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いの1ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モニタするステップは前記標的配列から溶解する前記プローブの溶解プロファイルを決定するステップを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項28】
生物学的サンプルにおける標的核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応増幅をリアルタイムでモニタする方法であって、 SYBRTMグリーンI存在下にポリメラーゼ連鎖反応により前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼとプライマーを前記生物学的サンプルに添加するステップと少なくとも変性温度と延長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップとを含むステップと、SYBRTMグリーンIにより吸収される波長の光で前記生物学的サンプルを励起して前記生物学的サンプルからの放射を検出するステップと、 前記SYBRTMグリーンIからの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記モニタするステップは前記増幅した標的配列の溶解プロファイルを決定するステップを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、 (a)2種類の核酸プライマーと核酸プローブの有効量を前記生物学的サンプルに添加し、前記プライマーの一方と前記プローブは互いに受容体蛍光物質と供与体蛍光物質を含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブが前記標識されたプライマーの15ヌクレオチド以内の前記標的核酸配列の増幅コピーとハイブリダイゼーションするステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記標的核酸配列を増幅するステップと、 (c)前記供与体蛍光物質によって吸収される選択した波長の光で前記生物学的サンプルを照明して前記サンプルの蛍光放射を検出するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記サンプルの温度依存性蛍光をモニタするステップをさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記モニタするステップは前記増幅した標的配列の溶解プロファイルを決定するステップを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記供与体蛍光物質と前記受容体蛍光物質は互いから約4〜6ヌクレオチド以内にあることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
第2の核酸と比較して第1の核酸における選択した配座での相違を検出する方法であって、(a)ポリメラーゼ連鎖反応により前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記選択したセグメントとこれに対応するセグメントは各々が前記選択した配座を含み、前記選択した配座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、 (b)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、 前記プローブの一方は蛍光エネルギー転移対の受容体蛍光物質で、また前記プローブの他方は供与体蛍光物質で標識して、前記供与体蛍光物質と受容体蛍光物質が前記2種類のプローブと前記増幅生成物とのハイブリダイゼーション時に共鳴エネルギー転移関係になるようにし、前記プローブの一方は前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成して前記一方のプローブが前記選択した配座にまたがり前記第1の核酸において前記第2の核酸の溶解プロファイルから識別可能な相違が存在する場合に溶解プロファイルを示すようにするステップと、 (c)前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸の対応するセグメントとを有効量のプローブの存在下においてポリメラーゼ連鎖反応により増幅して増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントとを得て、少なくともこれらの一部分が共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた両方のプローブを有するようにするステップと、 (d)前記プローブをハイブリダイゼーションした前記増幅した選択セグメント及び前記増幅した対応セグメントを、蛍光共鳴エネルギー転移対によって蛍光が顕在化するように選択した波長の光で照明するステップと、 (e)温度の関数として蛍光放射を測定し前記第1の核酸の増幅された選択セグメントから溶解する前記プローブの一方の第1の溶解プロファイルと前記第2の核酸の増幅された対応セグメントから溶解する前記プローブの一方の第2の溶解プロファイルを決定するステップと、 (f)前記第1の溶解プロファイルを前記第2の溶解プロファイルと比較し、これらの相違が前記サンプル核酸における相違の存在を示すようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記共鳴エネルギー転移対が供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5及びCy5.5から構成されるグループから選択した構成要素を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記供与体と前記受容体がプローブに結合され、両方のプローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記供与体と前記受容体が約25ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記供与体と前記受容体がプローブに結合され、前記プローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記供与体と前記受容体が約0〜5ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記共鳴エネルギー転移供与体と前記共鳴エネルギー転移受容体が前記プローブに結合され、前記プローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記供与体と前記受容体が約0〜2ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記共鳴エネルギー転移供与体と前記共鳴エネルギー転移受容体が前記プローブに結合され、前記プローブが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションした場合前記受容体と前記供与体が1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第2の核酸と比較して第1の核酸における選択した配座での相違を検出する方法であって、(a)ポリメラーゼ連鎖反応により前記第1の核酸の選択したセグメントと前記第2の核酸の対応するセグメントとを増幅するように構成したオリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記選択したセグメントとこれに対応するセグメントは各々が前記選択した配座を含み、前記選択した配座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、 (b)オリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プライマーの一方と前記プローブが各々供与体蛍光物質と受容体蛍光物質を含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識したプローブと標識したプライマーを前記増幅生成物にハイブリダイゼーションして前記供与体と前記受容体が共鳴エネルギー転移関係にあるようにし、前記プローブは前記増幅生成物とハイブリダイゼーションするように構成して前記プローブが前記選択した配座にまたがり前記第1の核酸において前記第2の核酸の溶解プロファイルから識別可能な相違が存在する場合溶解プロファイルを示すようにするステップと、 (c)有効量のプライマーとプローブの存在かにおいてポリメラーゼ連鎖反応により前記第1の核酸の選択セグメントと前記第2の核酸のこれに対応するセグメントとを増幅して増幅された選択セグメントと増幅された対応セグメントとを得て、少なくともこれらの一部が共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記標識プライマー及びプローブを両方とも有するようにするステップと、 (d)前記標識プライマー及びプローブがハイブリダイゼーションしている前記増幅した選択セグメントと前記増幅した対応セグメントを選択した波長の光で照明して蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を顕在化するステップと、 (e)温度の関数として蛍光放射を測定して第1の核酸の前記増幅選択セグメントから前記一方のプローブ溶解の第1の溶解プロファイルと第2の核酸の前記増幅対応セグメトから前記一方のプローブ溶解の第2の溶解プロファイルにおいて決定するステップと、 (f)前記第1の溶解プロファイルを前記第2の溶解プロファイルと比較し、ここでの相違が前記サンプル核酸における相違の存在を示すようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5及びCy5.5から構成されるグループから選択した構成要素を含むことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記供与体と前記受容体が前記標識したプライマー及びプローブに結合され、前記標識したプローブ及びプライマーが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションする場合に前記供与体と前記受容体が約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記供与体と前記受容体が前記標識したプライマー及びプローブに結合され、前記標識したプローブ及びプライマーが前記増幅した選択セグメント又は前記増幅した対応セグメントにハイブリダイゼーションする場合に前記供与体と前記受容体が約4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
個人のゲノムの選択された配位でのヘテロ接合を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異性対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、その各々が選択された配位を含み、 (a)前記個人からサンプルとなるゲノムDNAを採得するステップと、 (b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記突然変異対立遺伝子の第1の選択したセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択したセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択されたセグメントとの両方ともが前記選択された配位を含むステップと、 (c)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プローブの一方は受容体蛍光物質で標識し前記プローブの他方は蛍光共鳴エネルギー転移対の供与体蛍光物質で標識して前記増幅した第1と第2の選択セグメントと前記2種類のプローブのハイブリダイゼーション時に前記プローブの一方は前記選択された配位にまたがり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の溶解プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の溶解プロファイルを示すようにするステップと、 (d)ポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプローブの存在下でサンプル・ゲノムDNAの前記第1と第2の選択ヤグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分が共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされたプローブを両方とも有するようにするステップと、 (e)前記標識したプライマーとプローブがハイブリダイゼーションされている前記増幅した第1と第2の選択セグメントを選択した波長の光で照明して前記供与体及び受容体による蛍光を顕在化するステップと、 (f)温度の関数として蛍光放射を測定して、前記増幅した第1の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第1の溶解プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第2の溶解プロファイルとを決定するステップと、 (g)前記第1の溶解プロファイルと前記第2の溶解プロファイルとを比較し、識別可能な溶解プロファイルが前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
前記蛍光共鳴エネルギー転移対が、供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブと基準オリゴヌクレオチドが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が25ヌクレオチド残基以上に離れないようにすることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が約0〜5ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が約0〜2ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記供与体と前記受容体が前記プローブに結合され前記プローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
個人のゲノムにおいて選択された配座でのヘテロ接合性を検出する方法であって、前記ゲノムは突然変異性対立遺伝子とこれに対応する基準対立遺伝子とを含み、その各々が選択された配座を含み、(a)前記個人からサンプルとなるゲノムDNAを採得するステップと、(b)ポリメラーゼ連鎖反応により前記突然変異対立遺伝子の第1の選択したセグメントと前記これに対応する基準対立遺伝子の第2の選択したセグメントを増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記第1と第2の選択されたセグメントとの両方ともが前記選択された配座を含むステップと、(c)オリゴヌクレオチド・プローブの対を提供し、前記プライマーの一方と前記プローブが各々供与体蛍光物質と受容体蛍光物質とを含む蛍光エネルギー転移対の一方の構成要素で標識され、前記標識されたプローブと標識されたプライマーが前記増幅された第1と第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションして前記プローブの一方が前記選択した配座にまたがり前記増幅された第2の選択セグメントによる第2の溶解プロファイルから識別可能な前記増幅された第1の選択セグメントによる第1の溶解プロファイルを示すようにするステップと、(d)ポリメラーゼ連鎖反応により有効量のプローブ及びプライマーの存在下でサンプル・ゲノムDNAの前記第1と第2の選択セグメントを増幅して増幅された第1と第2の選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分が両方とも共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされたプローブを有するステップと、(e)選択した波長の光によりハイブリダイゼーションされたプローブを有する前記増幅された第1と第2の選択セグメントを照明して、前記供与体と受容体による蛍光を顕在化するステップと、(f)温度の関数として蛍光放射を測定して、前記増幅した第1の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第1の溶解プロファイルと前記増幅した第2の選択セグメントから溶解する前記一方のプローブの第2の溶解プロファイルとを決定するステップと、(g)前記第1の溶解プロファイルと前記第2の溶解プロファイルとを比較して、識別可能な溶解プロファイルが前記サンプル・ゲノムDNAのヘテロ接合性を表わすようにするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセインを又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記供与体と前記受容体が前記標識プライマー及びプローブに結合され、前記標識プライマー及びプローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションする場合前記供与体と前記受容体が約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記供与体と前記受容体が前記標識プライマー及びプローブに結合され、前記標識プライマーとプローブが前記増幅された第1の選択セグメント又は前記増幅された第2の選択セグメントにハイブリダイゼーションされる場合前記供与体と前記受容体が4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物が2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プローブ、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物においてポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法であって、(a)前記混合物に(1)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識され、選択された温度条件と単価イオン強度で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成された有効量のオリゴヌクレオチド・プライマーと、(2)前記供与体又は前記受容体で標識され、前記プローブと基準オリゴヌクレオチドの間で一方が前記供与体で標識され他方が前記受容体で標識され、前記基準オリゴヌクレオチドは前記選択された温度及び単価イオン強度の条件下で前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドが両方とも前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合前記供与体及び前記受容体が共鳴エネルギー転移関係にあるようにする有効量の基準オリゴヌクレオチドとを添加するステップと、(b)前記核酸の選択セグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して前記増幅生成物を得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、(c)選択した波長の光でハイブリダイゼーションされたプローブと基準オリゴヌクレオチドとを有する前記増幅生成物を照明して前記蛍光共鳴エネルギー対による蛍光を顕在化させ、蛍光放射をモニタして、前記蛍光放射が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記蛍光共鳴エネルギー転移対はフルオレセインと、Cy5及びCy5.
5から構成されるグループから選択した構成要素であることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
(1)核酸、ただし前記核酸又はそのポリメラーゼ連鎖反応増幅した生成物が2種類の異なった相補鎖から構成され、(2)前記核酸の選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して増幅生成物を得るように構成された2種類のオリゴヌクレオチド・プライマー、(3)前記ポリメラーゼ連鎖反応を触媒するためのDNAポリメラーゼを含むポリメラーゼ連鎖反応混合物におけるポリメラーゼ連鎖反応の完了を決定する方法は、 (a)前記混合物に有効量の核酸結合蛍光染料を添加するステップと、 (b)前記核酸結合蛍光染料が添加された前記混合物でポリメラーゼ連鎖反応により前記選択した核酸セグメントを増幅して核酸結合蛍光染料が結合した前記増幅生成物を得るステップと、 (c)核酸結合蛍光染料が結合している増幅生成物に選択した波長の光を照明してここからの蛍光を顕在化し、蛍光放射をモニタして、前記蛍光放射が前記反応の完了を表わすプラトー・フェーズに達した時点でサイクルを決定するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項58】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択される構成要素とすることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
二重鎖特異性蛍光染料を含むポリメラーゼ連鎖反応混合物のアニーリング、延長、変性フェーズの反復サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応の温度サイクル・パラメータを制御する方法であって、前記パラメータは前記アニーリング・フェーズの持続時間と、前記変性フェーズの持続時間と、サイクル数とを含み、(a)選択した波長の光で前記反応を照明して前記蛍光染料からの蛍光を顕在化させ前記反復アニーリング、拡張、変性フェーズの間に蛍光を連続モニタするステップと、(b)少なくとも、(i)前記拡張フェーズの間に蛍光が増加を停止する持続時間、又は(ii)前記変性フェーズの間に前記蛍光が基線レベルまで減少する持続時間、又は(iii)前記拡張フェーズの間に前記蛍光が所定のレベルに達した回数 を決定するステップと、(c)前記拡張フェーズの間に蛍光が増加を停止する時間の長さに基づいた前記拡張フェーズの長さ、前記変性フェーズの間に蛍光が前記基線レベルまで減少した時間の長さに基づいた前記変性フェーズの長さ、又は前記拡張フェーズの間に蛍光が前記所定レベルに達したサイクル数に基づくサイクル数を調節するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択される構成要素とすることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
選択したポリメラーゼ連鎖反応混合物における増幅生成物の濃度を決定する方法であって、(a)前記増幅生成物の既知の濃度のハイブリダイゼーションのレートをモニタすることにより選択した温度と反応条件での前記増幅生成物での2次速度定数を決定するステップと、(b)前記増幅生成物の未知の濃度でのアニーリング速度を決定するステップと、(c)前記アニーリング速度と前記2次速度定数から前記増幅生成物の濃度を計算するステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
前記アニーリング速度は多数サイクルの増幅後に決定されることを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記二次速度定数を決定するステップは、 既知の濃度の前記増幅生成物と有効量の二重鎖特異性蛍光染料とを含む第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以上に上昇して変性増幅生成物を得るステップと、 前記既知の量の変性増幅生成物を含む前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の温度を、前記増幅生成物の変性温度以下の選択した温度まで急冷すると同時に時間の関数として前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物の蛍光を連続モニタするステップと、 極大蛍光、極小蛍光、極小蛍光の時間、及び増幅生成物の既知の濃度での2次速度定数を決定するため、式:
ただしFは蛍光、Fmaxは極大蛍光、Fminは極小蛍光、kは2次速度定数、t0はFminでの時間、[DNA]は前記増幅生成物の既知の濃度とする から時間の関数として蛍光をプロットするステップと、 を含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択される構成要素とすることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
競合的定量ポリメラーゼ連鎖反応による選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法であって、(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択したセグメントと相補的テンプレートのこれに対応する選択したセグメントを増幅してこれらの増幅生成物を得るように構成したオリゴヌクレオチド・プライマーの対の各々の有効量と、(ii)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識された有効量のオリゴヌクレオチド・プローブであって、前記プローブが前記競合的テンプレートの増幅生成物から溶解する溶解温度から識別可能な溶解温度での前記選択したテンプレートの増幅生成物から溶解するように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成されている前記プローブと、(iii)前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が前記供与体により標識され他方が前記受容体により標識されているとして、前記供与体又は前記受容体で標識された有効量の基準オリゴヌクレオチドであって、前記基準オリゴヌクレオチドは前記プローブと前記基準オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に前記供与体と前記受容体が共鳴エネルギー転移関係になるように前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするよう構成されたオリゴヌクレオチドと、 を含む反応混合物において、 ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の選択したテンプレートと既知の量の前記競合的テンプレートを増幅して前記増幅生成物を得るステップと、(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照明して蛍光共鳴エネルギー転移対による蛍光を顕在化させ、反応混合物の温度が変化して前記選択したテンプレートの前記増幅生成物から溶解する前記プローブの第1の溶解曲線と前記競合的テンプレートから溶解する前記プローブの第2の溶解曲線とを得る場合に温度の関数として蛍光放射を決定するステップと、(c)前記第1と第2の溶解曲線から第1と第2の溶解溶解ピークに変換して当該溶解ピークから前記選択したテンプレートと前記競合的テンプレートの相対量を決定するステップと、(d)前記既知の量の前記競合的テンプレートと、前記選択したテンプレート及び競合的テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
前記基準オリゴヌクレオチドはオリゴヌクレオチド・プライマーの対の一方であることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅ヤグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約25ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約0〜5ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブとトランスファヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約0〜2ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブとトランスファヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記基準ヌクレオチドが前記オリゴヌクレオチド・プライマーの一方ではないことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項76】
前記共鳴エネルギー転移対は供与体としてフルオレセイン又受容体としてCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記供与体と前記受容体は前記プローブ及び基準オリゴヌクレオチドに結合され、前記プローブと基準ヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションした場合に前記供与体と前記受容体が約4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
フルオレセインとCy5からなることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項80】
フルオレセインとCy5.5からなることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項81】
ポリメラーゼ連鎖反応において選択した核酸テンプレートの濃度を決定する方法であって、(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅した第1の生成物を得るように構成された第1の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において基準テンプレートの選択した第2のセグメントを増幅して増幅した第2の生成物を得るように構成された第2の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(iii)核酸結合蛍光染料の有効量と、 を含む反応混合物において、 ポリメラーゼ連鎖反応により、未知の量の前記選択したテンプレートを増幅して前記増幅した第1の生成物を得る及び既知の量の前記基準テンプレートを増幅して前記増幅した第2の生成物を得るステップと、(b)選択した波長の光で前記反応混合物を照明して核酸結合蛍光染料による蛍光を顕在化させ、温度の関数として放射された蛍光を連続的にモニタして第1の生成物と第2の生成物が異なる温度で溶解するような前記増幅生成物の溶解曲線を得るステップと、(c)前記溶解曲線を溶解溶解ピークに変換して当該溶解ピークから前記選択したテンプレートと前記基準テンプレートの相対量を決定するステップと、(d)前記既知の量の前記基準テンプレートと選択したテンプレート及び基準テンプレートの相対量とに基づいて前記選択したテンプレートの濃度を計算するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項82】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項84】
陽性対照テンプレートも含むポリメラーゼ連鎖反応において選択したテンプレートの増幅をモニタする方法であって、(a)(i)ポリメラーゼ連鎖反応において前記選択したテンプレートの選択した第1のセグメントを増幅して増幅された第1の生成物を得るように構成された第1の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(ii)ポリメラーゼ連鎖反応において、陽性対照テンプレートの選択された第2のセグメントを増幅して増幅された第2の生成物を得るように構成された第2の対のオリゴヌクレオチド・プライマーの各々の有効量と、(iii)有効量の核酸結合蛍光染料と、を含む反応混合物において、前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するための条件に前記選択したテンプレートと前記陽性対照テンプレートをさらすステップと、(b)前記反応混合物を選択した波長の光で照明して核酸結合蛍光染料による蛍光を顕在化し、前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクル中に温度の関数として放射される蛍光を連続的にモニタして前記選択したテンプレートが増幅される場合前記増幅された第1の生成物の第1の溶解ピークを、また前記陽性対照テンプレートが増幅される場合前記増幅された第2の生成物の第2の溶解ピークを取得するステップとを含み、前記第2の溶解曲線の取得はポリメラーゼ連鎖反応が作用したことを表わし、前記第1の溶解曲線の取得は前記選択した第1のセグメントが増幅可能であることを表わし、前記第1の溶解曲線が欠如していることは前記選択した第1のセグメントが増幅不可能であることを表わす ことを特徴とする方法。
【請求項85】
前記核酸結合蛍光染料はSYBRTMグリーンI、臭化エチジウム、ピコグリーン、アクリジン・オレンジ、チアゾール・オレンジ、YO−PRO−1、クロモマイシンA3から構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項87】
個人の第V因子ライデン変異を検出する方法であって、第V因子ライデン変異は野生型と比較して第V因子ライデン変異配座での単一塩基変化で構成され、(a)前記個人からサンプル・ゲノムDNAを採得するステップと、(b)対照として野生型ゲノムDNAを提供するステップと、(c)前記サンプル・ゲノムDNAと前記野生型ゲノムDNAの選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅するように構成されたオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供し、前記選択したセグメントは第V因子ライデン変異配座を含み、第V因子ライデン変異配座のコピーを含む増幅生成物を得るステップと、(d)蛍光共鳴エネルギー転移対の共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを提供し、前記プローブは前記増幅された生成物にハイブリダイゼーションするように構成されて前記プローブが前記変異配座にまたがり前記サンプル・ゲノムDNAに前記野生型ゲノムDNAの溶解プロファイルから区別できる第V因子ライデン変異が存在する場合溶解プロファイルを示すステップと、(e)共鳴エネルギー転移供与体又は共鳴エネルギー転移受容体で標識された転移オリゴヌクレオチドを提供し、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドの間で一方が共鳴エネルギー転移供与体で標識され他方が共鳴エネルギー転移受容体で標識されているとして、前記転移オリゴヌクレオチドは前記増幅生成物にハイブリダイゼーションするように構成して前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方が前記増幅生成物にハイブリダイゼーションする場合に共鳴エネルギー転移供与体と共鳴エネルギー転移受容体が共鳴エネルギー転移関係にあるようにするステップと、(f)有効量のオリゴヌクレオチド・プローブと転移オリゴヌクレオチドの存在下でサンプル・ゲノムDNAと野生型ゲノムDNAの前記選択したセグメントをポリメラーゼ連鎖反応により増幅して、増幅された選択セグメントを得るようにし、少なくともその一部分は共鳴エネルギー転移関係にある蛍光共鳴エネルギー転移対によりこれらにハイブリダイゼーションされた前記プローブと前記転移オリゴヌクレオチドの両方を有するようにするステップと、(g)前記ポリメラーゼ連鎖反応の増幅サイクルの間の温度の関数として蛍光を測定してサンプル・ゲノムDNAの前記増幅セグメントから溶解する前記プローブの溶解プロファイルと前記野生型ゲノムDNAの増幅セグメントから溶解する前記プローブの溶解プロファイルとを取得するステップと、(h)前記サンプル・ゲノムDNAについての前記溶解プロファイルを前記野生型ゲノムDNAについての前記溶解プロファイルと比較し、これらの差が前記サンプル・ゲノムDNAにおける第V因子ライデン変異の存在を表わすステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項88】
前記転移オリゴヌクレオチドはオリゴヌクレオチド・プライマーの対の一方であることを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記オリゴヌクレオチド・プライマーが配列ID no:11及び配列ID no:12であることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
配列ID no:11はCy5又はCy5.5で標識されることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記オリゴヌクレオチド・プローブが配列ID no:13であることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項93】
配列ID no:13がフルオレセインで標識されることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合されて、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合約15ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項95】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合されて、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合約4〜6ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記転移オリゴヌクレオチドは前記オリゴヌクレオチド・プライマーの一方ではないことを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項97】
前記共鳴エネルギー転移対はフルオレセインとCy5又はCy5.5を含むことを特徴とする請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記オリゴヌクレオチド・プライマーが配列ID no:11と配列ID no:12であることを特徴とする請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記オリゴヌクレオチド・プローブが配列ID no:13であることを特徴とする請求項98に記載の方法。
【請求項100】
配列ID no:13がフルオレセインで標識されることを特徴とする請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記転移オリゴヌクレオチドがCy5又はCy5.5で標識されることを特徴とする請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に25ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に約0〜5ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に約0〜2ヌクレオチド残基以上離れないようにすることを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記共鳴エネルギー転移供与体及び前記共鳴エネルギー転移受容体がヌクレオチド残基に結合され、前記プローブと転移オリゴヌクレオチドが前記増幅セグメントにハイブリダイゼーションされる場合に1ヌクレオチド残基だけ離れるようにすることを特徴とする請求項104に記載の方法。
【請求項106】
溶解プロファイルにおける相違が少なくとも約2℃の熱溶解温度における相違を表わすことを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項107】
配列ID no:11のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項108】
配列ID no:12のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項109】
配列ID no:13のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項110】
核酸ハイブリダイゼーションを分析するための方法であって、(a)分析すべき核酸サンプルと核酸結合蛍光体とを含む混合物を提供するステップと、(b)温度を≧毎秒0.1℃の速度で変化させながら蛍光をモニタするステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項111】
前記核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記核酸結合蛍光体はオリゴヌクレオチド・プローブの対を含み、前記プローブの一方が蛍光共鳴エネルギー転移対の供与体で標識され前記プローブの他方が受容体で標識されることを特徴とする請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記プローブの一方がポリメラーゼ連鎖反応増幅用のプライマーであることを特徴とする請求項112に記載の方法。
【請求項114】
未知の量の核酸を含むサンプルの初期コピー数を定量する方法であって、(a)ポリメラーゼ連鎖反応により既知の濃度の少なくとも一つの標準を、前記標準と核酸結合蛍光体とを含む混合物中で増幅するステップと、(b)サイクル数の関数として蛍光を測定して一組のデータ点を得るステップと、(c)初期核酸濃度とサイクル数の関数として蛍光を記述する任意の所定の式に前記データ点を当てはめるステップと、(d)前記サンプルと前記核酸結合蛍光体とを含む混合物中で未知の量の核酸を含む前記サンプルを増幅してこれの蛍光をモニタするステップと、(e)ステップ(c)で求めた式から初期核酸濃度を決定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項115】
前記核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記核酸結合蛍光体はオリゴヌクレオチド・プローブの対を含み、その一方が蛍光共鳴エネルギー転移対の供与体で標識され他方が受容体で標識されることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記プローブの一方が増幅用プライマーであることを特徴とする請求項116に記載の方法。
【請求項118】
放射スペクトルを有する供与体蛍光物質と吸収スペクトルを有し消光係数が100,000M-1cm-1より大きい受容体蛍光物質とを含み、前記供与体蛍光物質の放射スペクトルと前記受容体蛍光物質の吸収スペクトルが25%以下でオーバラップすることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項119】
前記供与体蛍光物質がフルオレセインであり前記受容体蛍光物質がCy5又はCy5.5であることを特徴とする蛍光共鳴エネルギー転移対。
【請求項120】
生物学的サンプルの標的DNA配列を分析するための方法であって、 核酸結合蛍光体の存在下にポリメラーゼ連鎖反応によって前記標的配列を増幅し、前記ポリメラーゼ連鎖反応には前記標的とされる核酸配列に対する熱安定性ポリメラーゼ及びプライマーを前記生物学的サンプルに添加して少なくとも変性温度と延長温度の間で前記生物学的サンプルを熱サイクルするステップを含むステップと、 前記核酸結合蛍光体により吸収される波長の光によって前記サンプルを励起するステップと、 前記サンプルの温度が変化する際に前記核酸結合蛍光体からの温度依存性蛍光をモニタするステップと、 を含むことを特徴とする方法。
【請求項121】
前記核酸結合蛍光体は二重鎖核酸結合蛍光染料を含むことを特徴とする請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記二重鎖核酸結合蛍光染料がSYBRTMグリーンIであることを特徴とする請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記温度依存性蛍光を用いて前記増幅生成物を同定することを特徴とする請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記増幅生成物が溶解曲線の分析によって同定されることを特徴とする請求項123に記載の方法。
【請求項125】
2種類又はそれ以上の増幅生成物の相対量を溶解曲線の分析によって求めることを特徴とする請求項124に記載の方法。
【請求項126】
溶解曲線より下の領域が多重ガウス曲線の和の非線形最小自乗法回帰で見付けられることを特徴とする請求項124に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図87】
【図88】
【図89】
【図90】
【図91】
【図92】
【図93】
【図94】
【図95】
【図96】
【図97】
【図98】
【図99】
【図100】
【図101】
【図102】
【図103】
【図104】
【図105】
【図2】
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【図5】
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【図9】
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【図13】
【図14】
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【図17】
【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
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【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
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【図36】
【図37】
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【図65】
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【図72】
【図73】
【図74】
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【図76】
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【図78】
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【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図87】
【図88】
【図89】
【図90】
【図91】
【図92】
【図93】
【図94】
【図95】
【図96】
【図97】
【図98】
【図99】
【図100】
【図101】
【図102】
【図103】
【図104】
【図105】
【公開番号】特開2010−46063(P2010−46063A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−192560(P2009−192560)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願平10−500916の分割
【原出願日】平成9年6月4日(1997.6.4)
【出願人】(399047002)ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデーション (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192560(P2009−192560)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願平10−500916の分割
【原出願日】平成9年6月4日(1997.6.4)
【出願人】(399047002)ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデーション (4)
【Fターム(参考)】
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