説明

PCSK9遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法

【課題】PCSK9遺伝子発現を阻害でき、PCSK9遺伝子発現と関連している疾患、例えば、高脂血症を治療できる薬剤を提供する。
【解決手段】30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜25ヌクレオチドの長さであり、PCSK9遺伝子の少なくとも一部と実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖を含む、PCSK9遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)。また、dsRNAと薬学的に受容可能な担体とを一緒に含む薬学的組成物、該組成物を用いてPCSK9遺伝子発現および該遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年5月11日に出願された米国仮出願第60/799,458号、2006年6月27日に出願された米国仮出願第60/817,203号、2006年8月25日に出願された米国仮出願第60/840,089号、2006年10月18日に出願された米国仮出願第60/829,914号、2007年2月13日に出願された米国仮出願第60/901,134号への優先権を主張する。これらの仮出願の内容は、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、およびPCSK9遺伝子の発現を阻害するRNA干渉の媒介におけるその使用、ならびに高脂血症など、PCSK9をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程を治療するためのそのdsRNAの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
プロタンパク質コンバターゼサブチリシンケキシン9(PCSK9)は、サブチリシンセリンプロテアーゼファミリーのメンバーである。その他の8種の哺乳類サブチリシンプロテアーゼ、PCSK1〜PCSK8(PC1/3、PC2、フューリン、PC4、PC5/6、PACE4、PC7およびS1P/SKI−1とも呼ばれる)は、分泌経路においてさまざまなタンパク質を処理し、多様な生物学的プロセスにおいて役割を果たすプロタンパク質コンバターゼである(Bergeron,F.(2000年)J.Mol.Endocrinol.24巻、1〜22頁、Gensberg,K.、(1998年)Semin.Cell Dev.Biol.9巻、11〜17頁、Seidah,N.G.(1999年)Brain Res.848巻、45〜62頁、Taylor,N.A.、(2003年)FASEB J.17巻、1215〜1227頁およびZhou,A.、(1999年)J.Biol.Chem.274巻、20745〜20748頁)。PCSK9は、コレステロール代謝において役割を果たすことが提唱されている。PCSK9 mRNA発現は、コレステロール生合成酵素および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)と同様に、マウスでは、食餌によるコレステロール摂食によってダウンレギュレートされ(Maxwell,K.N.、(2003年)J.Lipid Res.44巻、2109〜2119頁)、HepG2細胞ではスタチンによってアップレギュレートされ(Dubuc,G.、(2004年)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24巻、1454〜1459頁)、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)トランスジェニックマウスではアップレギュレートされる(Horton,J.D.、(2003年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100巻、12027〜12032頁)。さらに、PCSK9ミスセンス突然変異は、常染色体優性高コレステロール血症の一形態(Hchola3)と関連していることがわかっている(Abifadel,M.ら(2003年)Nat.Genet.34巻、154〜156頁、Timms,K.M.、(2004年)Hum.Genet.114巻、349〜353頁、Leren,T.P.(2004年)Clin.Genet.65巻、419〜422頁)。PCSK9はまた、母集団におけるLDLコレステロールレベルの決定においても役割を果たしている可能性があるが、これは、日本人の集団では、一塩基多型(SNP)がコレステロールレベルと関連しているからである(Shioji,K.、(2004年)J.Hum.Genet.49巻、109〜114頁)。
【0004】
常染色体優性高コレステロール血症(ADH)は、一遺伝子による疾患であり、これでは、患者が、総コレステロールおよびLDLコレステロールレベルの上昇、腱黄色腫および早発性アテローム性動脈硬化症を示す(Rader,D.J.、(2003年)J.Clin.Invest.111巻、1795〜1803頁)。ADHおよび劣性型、常染色体劣性高コレステロール血症(ARH)(Cohen,J.C.、(2003年)Curr.Opin.Lipidol.14巻、121〜127頁)の発病は、肝臓によるLDL取り込みにおける欠陥による。ADHは、LDL取り込みを妨げるLDLR突然変異によっても、またはLDL上のタンパク質、LDLRと結合するアポリポタンパク質Bの突然変異によっても引き起こされ得る。ARHは、LDLR−LDL複合体の、クラスリンとのその相互作用を介したエンドサイトーシスに必要なARHタンパク質の突然変異によって引き起こされる。したがって、PCSK9突然変異が、Hchola3ファミリーにおいて原因となる場合には、PCSK9が、受容体媒介性LDL取り込みにおいて役割を果たしている可能性が高いと思われる。
【0005】
過剰発現研究により、LDLRレベル、したがって、肝臓によるLDL取り込みの制御におけるPCSK9の役割が指摘されている(Maxwell,K.N.(2004年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101巻、7100〜7105頁、Benjannet,S.ら(2004年)J.Biol.Chem.279巻、48865〜48875頁、Park,S.W.、(2004年)J.Biol.Chem.279巻、50630〜50638頁)。3または4日間の、マウスまたはヒトPCSK9のアデノウイルス媒介性過剰発現は、マウスでは、総コレステロールおよびLDLコレステロールレベルの上昇をもたらし、この効果は、LDLRノックアウト動物では見られない(Maxwell,K.N.(2004年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101巻、7100〜7105頁、Benjannet,S.ら(2004年)J.Biol.Chem.279巻、48865〜48875頁、Park,S.W.、(2004年)J.Biol.Chem.279巻、50630〜50638頁)。さらに、PCSK9過剰発現は、LDLR mRNAレベル、SREBPタンパク質レベルまたはSREBPタンパク質核対細胞質比には影響を及ぼさずに、肝臓LDLRタンパク質の深刻な減少をもたらす。これらの結果は、PCSK9が、直接的にまたは間接的に、転写後機構によってLDLRタンパク質レベルを低下させるということを示唆するものである。
【0006】
PCSK9における機能喪失突然変異が、マウスモデルで設計され(非特許文献1、ヒト個体において同定された(非特許文献2)。両方の場合において、PCSK9機能の喪失は、総コレステロールおよびLDLcコレステロールの低下につながる。15年にわたるレトロスペクティブ予後研究では、1コピーのPCSK9の喪失が、LDLcを低く変化させ、心血管心疾患の発生からのリスク−便益保護の増大につながることが示された(非特許文献3)。今日までの証拠が、PCSK9レベルの低下がLDLcを低下させるということを示すことは明らかである。
【0007】
最近、二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られる高度に保存された調節機構において遺伝子発現をブロックすることがわかった。特許文献1(Fireら)には、線虫(C.elegans)において遺伝子の発現を阻害するための、少なくとも25ヌクレオチドの長さのdsRNAの使用が開示されている。dsRNAはまた、その他の生物、例えば、植物(例えば、特許文献2、Waterhouseらおよび特許文献3、Heifetzら参照のこと)、ショウジョウバエ(例えば、Yang,D.ら、Curr.Biol.(2000年)10:1191〜1200頁)および哺乳類(WO00/44895、LimmerおよびDE10100586.5、Kreutzerら参照のこと)において標的RNAを分解することもわかっている。この天然の機構は、今では、遺伝子の異常なまたは不要な調節によって引き起こされる障害を治療するための新規種類の医薬品の開発の焦点となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第99/32619号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/53050号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/61631号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Rashidら、PNAS(2005年)102巻、5374〜5379頁
【非特許文献2】Cohenら、Nature Genetics.(2005年)37巻、161〜165頁
【非特許文献3】Cohenら、N.Engl.J.Med.(2006年)354巻、1264〜1272頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
RNAiの分野における大きな進歩およびPCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程の治療における進歩にもかかわらず、PCSK9遺伝子発現を阻害でき、PCSK9遺伝子発現と関連している疾患、例えば、高脂血症を治療できる薬剤は依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
要旨
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)を用いてPCSK9発現をサイレンシングすることによって、プロタンパク質コンバターゼサブチリシンケキシン9(PCSK9)をダウンレギュレートすることによって調節され得る疾患を治療する問題に対する解決策を提供する。
【0012】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびにこのようなdsRNAを用いて、細胞または哺乳類においてPCSK9遺伝子の発現を阻害する組成物および方法を提供する。本発明はまた、高脂血症など、PCSK9遺伝子の発現をダウンレギュレートすることによって調節され得る病状を治療するための組成物および方法を提供する。本発明のdsRNAは、30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜24ヌクレオチドの長さである領域を有し、PCSK9遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的であるRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。
【0013】
一実施形態では、本発明は、PCSK9遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、互いに相補的である少なくとも2種の配列を含む。dsRNAは、第1の配列を含むセンス鎖と、第2の配列を含むアンチセンス鎖とを含む。アンチセンス鎖は、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、相補性の領域は、30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜24ヌクレオチドの長さである。dsRNAは、PCSK9を発現する細胞と接触した際、PCSK9遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。
【0014】
例えば、本発明のdsRNA分子は、表1および表2のセンス配列からなる群から選択されるdsRNAの第1の配列からなるものであり得、第2の配列は、表1および表2のアンチセンス配列からなる群から選択される。本発明のdsRNA分子は、天然に存在するヌクレオチドからなるものであり得、または2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチドやコレステリル誘導体と連結している末端ヌクレオチドなどの少なくとも1種の修飾ヌクレオチドからなるものであり得る。あるいは、修飾ヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、2’−デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、無塩基ヌクレオチド、2’−アミノ修飾ヌクレオチド、2’−アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミダート、およびヌクレオチドを含む非天然塩基からなる群から選択され得る。通常、このような修飾配列は、表1および表2のセンス配列からなる群から選択される前記dsRNAの第1の配列、ならびに表1および表2のアンチセンス配列からなる群から選択される第2の配列に基づく。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、本発明のdsRNAの1種を含む細胞を提供する。この細胞は、通常、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞である。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、生物、通常、ヒト被験体において、PCSK9遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物であって、1種または複数種の本発明のdsRNAと、薬学的に受容可能な担体または送達ビヒクルとを含む薬学的組成物を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、以下の工程を含む、細胞においてPCSK9遺伝子の発現を阻害する方法を提供する:
(a)細胞に、二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入する工程であって、dsRNAが、互いに相補的である少なくとも2種の配列を含む工程。dsRNAは、第1の配列を含むセンス鎖と、第2の配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含み、相補性の領域は、30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜24ヌクレオチドの長さであり、dsRNAは、PCSK9を発現する細胞と接触した際、PCSK9遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。
【0018】
(b)工程(a)において生じた細胞を、PCSK9遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間維持し、それによって、細胞におけるPCSK9遺伝子の発現を阻害する工程。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、高脂血症など、PCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程を治療、予防または管理する方法であって、このような治療、予防または管理を必要とする患者に、治療上または予防上有効な量の1種または複数種の本発明のdsRNAを投与する工程を含む方法を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、細胞においてPCSK9遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、本発明のdsRNAの1種の少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結している調節配列を含むベクターを提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、細胞においてPCSK9遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。このベクターは、本発明のdsRNAの1種の少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結している調節配列を含む。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞においてヒトPCSK9遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)であって、該dsRNAが、互いに相補的である少なくとも2種の配列を含み、センス鎖が、第1の配列を含み、アンチセンス鎖が、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含む第2の配列を含み、該相補性の領域が、30ヌクレオチド未満の長さであり、該dsRNAが、該PCSK9を発現する細胞と接触した際、該PCSK9遺伝子の発現を阻害するdsRNA。
(項目2)
上記第1の配列が、表1および2からなる群から選択され、上記第2の配列が、表1および2からなる群から選択される、項目1に記載のdsRNA。
(項目3)
少なくとも1種の修飾ヌクレオチドを含む、項目1に記載のdsRNA。
(項目4)
少なくとも1種の修飾ヌクレオチドを含む、項目2に記載のdsRNA。
(項目5)
上記修飾ヌクレオチドが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチドおよびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基と結合している末端ヌクレオチドからなる群から選択される、項目3に記載のdsRNA。
(項目6)
上記修飾ヌクレオチドが、2’−デオキシ−2’−フルオロ修飾ヌクレオチド、2’−デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、無塩基ヌクレオチド、2’−アミノ−修飾ヌクレオチド、2’−アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミダート、およびヌクレオチドを含む非天然塩基からなる群から選択される、項目3に記載のdsRNA。
(項目7)
上記第1の配列が、表1および2からなる群から選択され、上記第2の配列が、表1および2からなる群から選択される、項目3に記載のdsRNA。
(項目8)
上記第1の配列が、表1および2からなる群から選択され、上記第2の配列が、表1および2からなる群から選択される、項目6に記載のdsRNA。
(項目9)
項目1に記載のdsRNAを含む細胞。
(項目10)
生物において、PCSK9遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、dsRNAと、薬学的に受容可能な担体とを含み、該dsRNAは、互いに相補的である少なくとも2種の配列を含み、センス鎖が、第1の配列を含み、アンチセンス鎖が、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含む第2の配列を含み、該相補性の領域が、30ヌクレオチド未満の長さであり、該dsRNAが、該PCSK9を発現する細胞と接触した際、該PCSK9遺伝子の発現を阻害する、薬学的組成物。
(項目11)
上記dsRNAの上記第1の配列が、表1および2からなる群から選択され、上記dsRNAの上記第2の配列が、表1および2からなる群から選択される、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目12)
上記dsRNAの上記第1の配列が、表1および2からなる群から選択され、上記dsRNAの上記第2の配列が、表1および2からなる群から選択される、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目13)
細胞においてPCSK9遺伝子の発現を阻害するための方法であって、
(a)該細胞に二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入する工程であって、該dsRNAが互いに相補的である少なくとも2種の配列を含み、センス鎖が、第1の配列を含み、アンチセンス鎖が、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含む第2の配列を含み、該相補性の領域が、30ヌクレオチド未満の長さであり、該dsRNAが、該PCSK9を発現する細胞と接触した際、該PCSK9遺伝子の発現を阻害する工程と、
(b)工程(a)において生じた細胞を、該PCSK9遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間維持し、それによって、該細胞におけるPCSK9遺伝子の発現を阻害する工程と
を含む方法。
(項目14)
PCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程を治療、予防または管理する方法であって、該方法は、このような治療、予防または管理を必要とする患者に、治療上または予防上有効な量のdsRNAを投与する工程を含み、該dsRNAは、互いに相補的である少なくとも2種の配列を含み、センス鎖が、第1の配列を含み、アンチセンス鎖が、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含む第2の配列を含み、該相補性の領域が、30ヌクレオチド未満の長さであり、該dsRNAが、該PCSK9を発現する細胞と接触した際、該PCSK9遺伝子の発現を阻害する、方法。
(項目15)
細胞においてPCSK9遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、dsRNAの少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結している調節配列を含み、該dsRNAの鎖のうち一方が、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的であり、該dsRNAが、30塩基対未満の長さであり、該dsRNAが、該PCSK9を発現する細胞と接触した際、該PCSK9遺伝子の発現を阻害する、ベクター。
(項目16)
項目15に記載のベクターを含む細胞。
(項目17)
細胞においてヒトPCSK9遺伝子の発現レベルを低下させるための二本鎖リボ核酸(dsRNA)であって、該dsRNAが、互いに相補的である少なくとも2種の配列を含み、センス鎖が、第1の配列を含み、アンチセンス鎖が、PCSK9をコードするmRNAの少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含む第2の配列を含み、該dsRNAが、該PCSK9を発現する細胞と接触した際、該PCSK9遺伝子の発現レベルが低下する、二本鎖リボ核酸。
(項目18)
上記接触によって、上記PCSK9遺伝子の発現レベルが低下する、項目17に記載のdsRNA。
(項目19)
上記接触を、in vitroで30nM以下で実施する、項目17に記載のdsRNA。
(項目20)
生物においてPCSK9遺伝子の発現レベルを低下させるための薬学的組成物であって、項目17に記載のdsRNAと、薬学的に受容可能な担体とを含む、薬学的組成物。
(項目21)
PCSK9が関連している障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療上有効な量の項目17に記載のdsRNAを投与する工程を含む、方法。
(項目22)
PCSK9関連障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療上有効な量の項目17に記載のdsRNAを投与する工程を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ND−98脂質の構造を示す図である。
【図2】C57/BL6マウス(5匹の動物/群)における、PCSK9 mRNAの種々のORF領域を対象とする(グラフに示されるORF位置に対応している第1のヌクレオチドを有する)、16種のマウス特異的(AL−DP−9327〜AL−DP−9342)PCSK9 siRNAのin vivoスクリーニングの結果を示す図である。各処理群にわたって、肝臓溶解物における、PCSK9 mRNA対GAPDH mRNAの比の平均をとり、PBSで処理した対照群または非関連siRNA(血液凝固因子VII)で処理した対照群と比較した。
【図3】C57/BL6マウス(5匹の動物/群)における、PCSK9 mRNAの種々のORF領域を対象とする(グラフに示されるORF位置に対応している第1のヌクレオチドを有する)16種のヒト/マウス/ラット交差反応性(AL−DP−9311〜AL−DP−9326)PCSK9 siRNAのin vivoスクリーニングの結果を示す図である。各処理群にわたって、肝臓溶解物における、PCSK9 mRNA対GAPDH mRNAの比の平均をとり、PBSで処理した対照群または非関連siRNA(血液凝固因子VII)で処理した対照群と比較した。 PCSK9 mRNAのサイレンシングは、総血清コレステロールレベルの低下をもたらした。 PSCK9メッセージsiRNAをノックダウンするという点で最も効果的なものが、最も顕著なコレステロール低下効果(約20〜30%)を示した。
【図4】C57/BL6マウス(5匹の動物/群)における、16種のマウス特異的(AL−DP−9327〜AL−DP−9342)PCSK9 siRNAのin vivoスクリーニングの結果を示す図である。各処理群にわたって、総血清コレステロールレベルの平均をとり、PBSで処理した対照群または非関連siRNA(血液凝固因子VII)で処理した対照群と比較した。
【図5】C57/BL6マウス(5匹の動物/群)における、16種のヒト/マウス/ラット交差反応性(AL−DP−9311〜AL−DP−9326)PCSK9 siRNAのin vivoスクリーニングの結果を示す図である。各処理群にわたって、総血清コレステロールレベルの平均をとり、PBSで処理した対照群または非関連siRNA(血液凝固因子VII)で処理した対照群と比較した。
【図6】PCSK9のサイレンシングについてのin vitroおよびin vivo結果の比較を示す図である。
【図7】サル初代肝細胞を用いた、PCSK9のサイレンシングについてのin vitro結果を示す図である。
【図8】pcsk−9に対する、LNP−01に製剤されたsiRNAのin vivo活性を示す図である。
【図9】種々の時点での、LNP−01に製剤された化学修飾9314および10792親分子のin vivo活性を示す図である。修飾された形の10792がin vivoサイレンシング活性を示すことが明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)を用いてPCSK9遺伝子をサイレンシングすることによって、PCSK9遺伝子のダウンレギュレーションによって調節され得る疾患を治療する問題に対する解決策を提供し、したがって、高脂血症などの疾患のための治療を提供する。
【0024】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびにそのdsRNAを用いて、細胞または哺乳類においてPCSK9遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、PCSK9遺伝子の発現をダウンレギュレートすることによって調節され得る病状および疾患を治療するための組成物および方法を提供する。dsRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスによるmRNAの配列特異的分解を導く。
【0025】
本発明のdsRNAは、30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜24ヌクレオチドの長さである領域を有し、PCSK9遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的であるRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。これらのdsRNAを使用することで、ナトリウム輸送に関与するmRNAの標的分解が可能となる。本発明者らは、細胞ベースのアッセイおよび動物アッセイを用いて、極めて低い投与量のこれらのdsRNAが、RNAiを特異的かつ効率的に媒介し、その結果、PCSK9遺伝子の発現の大幅な阻害をもたらし得ることを実証した。したがって、これらのdsRNAを含む本発明の方法および組成物は、PCSK9をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程を治療するのに、例えば、高脂血症の治療において有用である。
【0026】
以下の詳細な説明は、標的PCSK9遺伝子の発現を阻害するための、dsRNAおよびdsRNAを含有する組成物の作製方法および使用方法、ならびに、高脂血症など、PCSK9の発現をダウンレギュレートすることによって調節され得る疾患を治療するための組成物および方法を開示する。本発明の薬学的組成物は、30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜24ヌクレオチドの長さであり、PCSK9遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である相補性の領域を含むアンチセンス鎖を有するdsRNAと、薬学的に受容可能な担体とを一緒に含む。
【0027】
したがって、本発明の特定の態様は、本発明のdsRNAと、薬学的に受容可能な担体とを一緒に含む薬学的組成物、この組成物を用いてPCSK9遺伝子の発現を阻害する方法およびこの薬学的組成物を用いて、PCSK9の発現をダウンレギュレートすることによって調節され得る疾患を治療する方法を提供する。
【0028】
I.定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲に用いた特定の用語および語句の意味を以下に提供する。本明細書のその他の部分における用語の用法とこの項に提供されるその定義の間に明らかな不一致がある場合には、この項にある定義を優先するものとする。
【0029】
「G」、「C」、「A」および「U」は各々通常、塩基として、それぞれグアニン、シトシン、アデニンおよびウラシル含むヌクレオチドを表す。しかし、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」はまた、以下にさらに詳述される修飾ヌクレオチドまたは代替置換部分も指す場合があることは理解される。当業者は、グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルは、このような置換部分を保有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変更することなく、その他の部分によって置換され得るということは十分に承知している。例えば、限定するものではないが、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシンまたはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成し得る。したがって、ウラシル、グアニンまたはアデニンを含有するヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含有するヌクレオチドで置換されている場合がある。このような置換部分を含む配列は、本発明の実施形態である。
【0030】
本明細書において、「PCSK9」とは、プロタンパク質コンバターゼサブチリシンケキシン9遺伝子またはタンパク質(FH3、HCHOLA3、NARC−1、NARC1としても知られる)を指す。PCSK9のmRNA配列は、ヒト:NM_174936、マウス:NM_153565およびラット:NM_199253として提供されている。
【0031】
本明細書において、「標的配列」とは、PCSK9遺伝子の転写の際に形成されたmRNA分子のヌクレオチド配列の連続した部分、例えば、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを指す。
【0032】
本明細書において、用語「配列を含む鎖」とは、標準ヌクレオチド命名法を用いて呼ばれる配列によって記載されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0033】
本明細書において、また特に断りのない限り、用語「相補的」とは、当業者には理解されるように、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列と関連して記載するために用いられる場合に、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの、特定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして二本鎖構造を形成する能力を指す。このような条件は、例えば、ストリンジェントな条件であり得、これでは、ストリンジェントな条件として、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50Cまたは70Cで12〜16時間と、それに続く洗浄が挙げられる。その他の条件、例えば、生物内で遭遇され得るような生理学的に関連のある条件を適用できる。当業者は、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な適用に従って、2種の配列の相補性の試験にとって最も適当な条件のセットを決定することができる。
【0034】
これは、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの、第1および第2のヌクレオチド配列の全長にわたる塩基対形成を含む。このような配列は、本明細書では互いに対して「十分に相補的」と呼ばれ得る。しかし、本明細書において、第1の配列が、第2の配列に対して「実質的に相補的」と呼ばれる場合には、2種の配列は十分に相補的である場合もあり、または、その最終的な適用に最も関連した条件下でハイブリダイズする能力を保持しながら、ハイブリダイゼーションの際に、1つまたは複数の、通常、4、3または2つ以下のミスマッチした塩基対を形成する場合もある。しかし、2種のオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションの際に、1つまたは複数の一本鎖突出を形成するよう設計されている場合には、このような突出は、相補性の決定に関してミスマッチとみなされないものとする。例えば、一方のオリゴヌクレオチド、長さ21ヌクレオチドと、もう一方のオリゴヌクレオチド、長さ23ヌクレオチドとを含み、長い方のオリゴヌクレオチドが短い方のオリゴヌクレオチドに対して十分に相補的である21ヌクレオチドの配列を含むdsRNAは、本発明の目的上、やはり「十分に相補的」と呼ぶことができる。
【0035】
本明細書において「相補的な」配列とは、それらのハイブリダイズする能力に対する上記の必要条件が満たされている限り、非ワトソン−クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成された塩基対を含み得る、またはそれらから全体的に形成されたものであり得る。
【0036】
本明細書において、用語「相補的な」、「十分に相補的な」および「実質的に相補的な」とは、その使用の関連から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の間の、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列の間の塩基マッチングに対して用いる場合もある。
【0037】
本明細書において、メッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部と実質的に相補的である」ポリヌクレオチドとは、注目する(例えば、PCSK9をコードする)mRNAの連続部分と実質的に相補的であるポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、配列が、PCSK9をコードするmRNAの中断されていない部分と実質的に相補的である場合に、PCSK9 mRNAの少なくとも一部と相補的である。
【0038】
本明細書において、用語「二本鎖RNA」または「dsRNA」とは、2種の逆平行の、上記で定義されるような実質的に相補的な核酸鎖を含む二本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を指す。二本鎖構造を形成するこの2種の鎖は、1つの大きなRNA分子のうちの異なる部分であってもよいし、または別個のRNA分子であってもよい。別個のRNA分子の場合には、このようなdsRNAは、文献では、siRNA(「低分子干渉RNA」)と呼ばれることが多い。2種の鎖が1つの大きな分子のうちの一部であり、したがって、一方の鎖の3’末端と、二本鎖構造を形成しているそれぞれのもう一方の鎖の5’末端の間で、ヌクレオチドの中断されていない鎖によって接続されている場合には、接続しているRNA鎖は、「ヘアピンループ」、「短いヘアピンRNA」または「shRNA」と呼ばれる。2種の鎖が、一方の鎖の3’末端と、二本鎖構造を形成しているそれぞれのもう一方の鎖の5’末端の間で、ヌクレオチド中断されていない鎖以外の手段によって共有結合によって接続されている場合には、接続している構造は、「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は同数のヌクレオチドを有する場合もあり、異なる数のヌクレオチドを有する場合もある。塩基対の最大数は、最短のdsRNAの鎖中のヌクレオチド数から二本鎖中に存在するあらゆる突出を差し引いたものである。dsRNAは、二本鎖構造に加え、1つまたは複数のヌクレオチド突出を含み得る。さらに、本明細書に用いられる「dsRNA」は、リボヌクレオチドの化学修飾、例えば、複数のヌクレオチドでの相当な修飾を含み、本明細書に開示され、または当技術分野で知られているすべての種類の修飾を含み得る。siRNA型分子において用いられる、このような修飾はいずれも、本明細書および特許請求の範囲の目的上、「dsRNA」によって包含される。
【0039】
本明細書において、「ヌクレオチド突出」とは、dsRNAの一方の鎖の3’末端が、もう一方の鎖の5’末端を越えて伸びている、またはその逆の場合に、対を形成していないヌクレオチドまたはdsRNAの二本鎖構造から突出しているヌクレオチドを指す。「ブラント」または「平滑末端」とは、dsRNAの末端に対を形成していないヌクレオチドがないこと、すなわち、ヌクレオチド突出がないことを意味する。「平滑末端化された」dsRNAとは、その全長にわたって二本鎖になっている、すなわち、分子のいずれの末端にもヌクレオチド突出がないdsRNAである。明確にするために、siRNAの3’末端または5’末端とコンジュゲートしている化学キャップまたは非ヌクレオチド化学部分は、siRNAが突出を有するか、平滑末端化されているかどうかを判定する際には考慮されない。
【0040】
用語「アンチセンス鎖」とは、標的配列と実質的に相補的である領域を含むdsRNAの鎖を指す。本明細書において、用語「相補性の領域」とは、本明細書において定義される、配列、例えば、標的配列と実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性の領域が、標的配列に対して十分に相補的でない場合は、ミスマッチは、末端領域において最も許容され、存在すれば、1つまたは複数の末端領域、例えば、5’および/または3’末端の6、5、4、3または2ヌクレオチド内において通常許容される。
【0041】
本明細書において、用語「センス鎖」とは、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的である領域を含むdsRNAの鎖を指す。
【0042】
「細胞に導入すること」は、dsRNAに関する場合には、当業者には理解されるであろうが、細胞への取り込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取り込みは、自発的な拡散性細胞プロセスまたは能動的細胞プロセスを介して、または助剤もしくは装置によって起こり得る。この用語の意味は、in vitroの細胞に限定されるものではなく、dsRNAはまた、生命体の一部である「細胞に導入」され得る。このような例では、細胞への導入は、生物への送達を含む。例えば、in vivo送達には、dsRNAを組織部位に注射してもよいし、全身投与してもよい。細胞へのin
vitro導入は、当技術分野で既知の方法、例えば、エレクトロポレーションおよびリポフェクションを含む。
【0043】
用語「サイレンシングする」および「の発現を阻害する」とは、PCSK9遺伝子に関する限り、本明細書では、PCSK9遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を指し、PCSK9遺伝子が転写され、PCSK9遺伝子の発現が阻害されるよう処理されている第1の細胞または細胞群から単離され得るPCSK9遺伝子から転写されるmRNA量の、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのようには処理されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比べた減少によって示される。阻害度は通常、以下によって表される。
【0044】
【数1】

【0045】
あるいは、阻害度は、PCSK9遺伝子転写と機能的に関連しているパラメータ、例えば、細胞によって分泌されるPCSK9遺伝子によってコードされるタンパク質の量または特定の表現型、例えば、アポトーシスを示す細胞数の減少という点から得てもよい。原則として、PCSK9遺伝子サイレンシングは、構成的に、または遺伝子操作によって標的を発現する任意の細胞において、任意の適当なアッセイによって決定することができる。しかし、所与のdsRNAが、PCSK9遺伝子発現を特定の程度に阻害するか、したがって、本発明に包含されるどうかを判定するために参照が必要とされる場合には、以下の実施例に示されるアッセイがこのような参照として役立つであろう。
【0046】
例えば、特定の例では、PCSK9遺伝子の発現は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも約20%、25%、35%または50%抑制される。いくつかの実施形態では、PCSK9遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも約60%、70%または80%抑制される。いくつかの実施形態では、PCSK9遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも約85%、90%または95%抑制される。表1、2は、種々の濃度の種々のPCSK9
dsRNA分子を用いるin vitroアッセイにおいて得られた発現の阻害についての広範な値を提供する。
【0047】
本明細書において、PCSK9発現との関連で、用語「治療する」、「治療」などは、PCSK9遺伝子をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程の軽減または緩和を指す。本発明との関連で、本明細書において以下の列挙される任意のその他の状態と関連する限り(PCSK9遺伝子をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程以外)、用語「治療する」、「治療」などは、このような状態と関連している少なくとも1つの症状を軽減または緩和すること、またはこのような状態の進行を遅延もしくは逆行させることを意味する。例えば、高脂血症との関連では、治療は、血清脂質レベルの低下を含む。
【0048】
本明細書において、語句「治療上有効な量」および「予防上有効な量」とは、PCSK9遺伝子をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程またはPCSK9遺伝子をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程の顕在的症状の治療、予防または管理において治療上の利益を提供する量を指す。治療上有効である具体的な量は、一般の開業医によって容易に決定することができ、当技術分野で既知の因子、例えば、PCSK9遺伝子をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程の種類、患者の病歴および年齢、PCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程の段階およびその他のPCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程に反するものの投与に応じて変わり得る。
【0049】
本明細書において、「薬学的組成物」は、薬理学的に有効な量のdsRNAと、薬学的に受容可能な担体とを含む。本明細書において、「薬理学的に有効な量」、「治療上有効な量」または単純に「有効な量」とは、意図される薬理学的結果、治療結果または予防結果が生じるのに有効なRNAの量を指す。例えば、疾患または障害と関連している測定可能なパラメータの少なくとも25%の減少がある場合に所与の臨床治療が有効であると考えられる場合には、疾患または障害の治療のための薬物の治療上有効な量は、そのパラメータの少なくとも25%の減少を達成するのに必要な量である。
【0050】
用語「薬学的に受容可能な担体」とは、治療薬を投与するための担体を指す。このような担体として、それだけには限らないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せが挙げられ、以下により詳細に記載される。この用語は、厳密には、細胞培養培地を排除する。
【0051】
本明細書において、「形質転換された細胞」とは、dsRNA分子が発現され得るベクターが導入されている細胞である。
【0052】
II.二本鎖リボ核酸(dsRNA)
一実施形態では、本発明は、細胞または哺乳類において、PCSK9遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供し、dsRNAは、PCSK9遺伝子の発現において形成されるmRNAの少なくとも一部と相補的である相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含み、相補性の領域は、30ヌクレオチド未満の長さ、通常、19〜24ヌクレオチドの長さであり、前記dsRNAは、前記PCSK9遺伝子を発現する細胞と接触した際、前記PCSK9遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。dsRNAは、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成するのに十分に相補的である2種のRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、PCSK9遺伝子の発現の際に形成されるmRNAの配列に由来する、標的配列に対して実質的に相補的である、通常、十分に相補的である相補性の領域を含み、もう一方の鎖(センス鎖)は、アンチセンス鎖に対して相補的である領域を含み、その結果、2種の鎖は、適した条件下で組み合わされると、ハイブリダイズし、二本鎖構造を形成する。一般に、二本鎖構造は、15と30の間、より一般には、18と25の間、さらにより一般には、19と24の間、最も一般には、19と21の間の塩基対の長さである。同様に、標的配列に対する相補性の領域は、15と30の間、より一般には、18と25の間、さらにより一般には、19と24の間、最も一般には、19と21の間のヌクレオチドの長さである。本発明のdsRNAは、1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチド突出をさらに含み得る。dsRNAは、以下にさらに論じられる当技術分野で既知の標準法によって、例えば、自動化DNAシンセサイザー、例えば、Biosearch、Applied Biosystems,Inc.から市販されているものの使用によって合成できる。好ましい実施形態では、PCSK9遺伝子は、ヒトPCSK9遺伝子である。特定の実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、表1および2のセンス配列から選択される鎖と、表1および2のアンチセンス配列からなる群から選択される第2の配列とを含む。表1および2に提供される標的配列のどこかを標的とする代替アンチセンス作用物質は、標的配列およびフランキングPCSK9配列を用いて容易に決定することができる。
【0053】
さらなる実施形態では、dsRNAは、表1および2に提供される配列の群から選択される少なくとも1種のヌクレオチド配列を含む。その他の実施形態では、dsRNAは、この群から選択される少なくとも2種の配列を含み、少なくとも2種の配列のうち一方は、少なくとも2種の配列のもう一方に対して相補的であり、少なくとも2種の配列のうち一方は、PCSK9遺伝子の発現で生じるmRNAの配列に対して実質的に相補的である。通常、dsRNAは、2種のオリゴヌクレオチドを含み、1種のオリゴヌクレオチドは、表1および2においてセンス鎖として記載され、第2のオリゴヌクレオチドは、表1および2においてアンチセンス鎖として記載される。
【0054】
当業者ならば十分に承知しているであろうが、20から23具体的には、21塩基対の二本鎖構造を含むdsRNAは、RNA干渉を誘導するのに特に有効であると認められている(Elbashirら、EMBO2001年、20巻:6877〜6888頁)。しかし、他の者が、より短いか、より長いdsRNAも、同様に有効であり得るということを見出した。上記の実施形態では、表1および2に提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質のために、本発明のdsRNAは、最小21ntの長さの少なくとも1種の鎖を含み得る。一方または両方の末端で数ヌクレオチド少ないだけの、表1および2の配列のうち1種を含むより短いdsRNAが、上記のdsRNAと比較して同様に有効であり得るということは合理的に期待できる。したがって、表1および2の配列のうちの1種に由来する少なくとも15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の連続するヌクレオチドの部分配列を含み、本明細書において以下に記載されるFACSアッセイにおいて、PCSK9遺伝子の発現を阻害するその能力が、全配列を含むdsRNAと、5、10、15、20、25または30%以下の阻害により異なるdsRNAが本発明によって考慮される。表1および2に提供される標的配列内を切断するさらなるdsRNAは、PCSK9配列および提供される標的配列を用いて容易に作製できる。
【0055】
さらに、表1および2に提供されるRNAi作用物質は、RNAiに基づく切断に感受性のあるPCSK9 mRNA中の部位を特定する。したがって、本発明は、本発明の作用物質の1種によって標的とされる配列内を標的とするRNAi作用物質をさらに含む。本明細書において、第2のRNAi作用物質は、第2のRNAi作用物質が、第1のRNAi作用物質のアンチセンス鎖に対して相補的であるmRNA内のどこかのメッセージを切断する場合に、第1のRNAi作用物質の配列内を標的とするといわれる。このような第2の作用物質は、通常、PCSK9遺伝子中の選択された配列と連続する領域から得られたさらなるヌクレオチド配列と結合している、表1および2に提供される配列のうち1種に由来する少なくとも15の連続するヌクレオチドからなる。例えば、標的PCSK9遺伝子の次の6ヌクレオチドと組み合わせた、配列番号1の最後の15ヌクレオチド(加えられたAA配列を引く)から、表1および2に提供される配列の1種に基づいている21ヌクレオチドの一本鎖作用物質が生じる。
【0056】
本発明のdsRNAは、標的配列に対して1つまたは複数のミスマッチを含み得る。好ましい実施形態では、本発明のdsRNAは、わずか3つのミスマッチしか含まない。dsRNAのアンチセンス鎖が、標的配列に対してミスマッチを含む場合には、ミスマッチ領域が相補性の領域の中心に位置しないことが好ましい。dsRNAのアンチセンス鎖が、標的配列に対してミスマッチを含む場合には、ミスマッチが、いずれかの末端から5ヌクレオチドに、例えば、相補性の領域の5’または3’末端のいずれかから5、4、3、2または1ヌクレオチドに限定されることが好ましい。例えば、PCSK9遺伝子の領域と相補的である23ヌクレオチドのdsRNA鎖については、dsRNAは、通常、中心の13ヌクレオチド内にはミスマッチを全く含まない。本発明内に記載される方法を用いて、標的配列に対してミスマッチを含むdsRNAが、PCSK9遺伝子の発現を阻害するのに有効であるかどうかを判定することができる。PCSK9遺伝子の発現の阻害において、ミスマッチを含むdsRNAの有効性を考慮することは、特に、PCSK9遺伝子中の特定の相補性の領域が、集団内に多型配列変動を有するとわかっている場合には重要である。
【0057】
一実施形態では、dsRNAの少なくとも一方の末端は、1〜4、通常、1または2ヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチド突出を有する。少なくとも1つのヌクレオチド突出を有するdsRNAは、平滑末端化された対応物よりも予想外に優れた阻害特性を有する。さらに、本発明者らは、1つだけのヌクレオチド突出の存在が、その全体的な安定性に影響
を及ぼすことなく、dsRNAの干渉活性を強化するということを発見した。1つだけの突出を有するdsRNAは、in vivo、ならびに、さまざまな細胞、細胞培養培地、血液および血清において特に安定かつ有効であるとわかった。通常、一本鎖突出は、アンチセンス鎖の3’末端に、あるいは、センス鎖の3’末端に位置している。dsRNAはまた、通常、アンチセンス鎖の5’末端に位置している平滑末端を有していてもよい。このようなdsRNAは、改善された安定性と阻害活性を有しており、したがって、低い投与量、すなわち、1日あたり5mg/受容者の体重1kg未満での投与が可能となる。通常、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチド突出を有し、5’末端はブラントである。別の実施形態では、突出中の1つまたは複数のヌクレオチドが、チオリン酸ヌクレオシドで置換されている。
【0058】
さらにもう1つの実施形態では、dsRNAは、安定性を増強するよう化学修飾されている。本発明の核酸は、当技術分野で十分に確立された方法、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、「Current protocols in nucleic acid chemistry」、Beaucage,S.L.ら(編)、John Wiley & Sons,Inc.、New York、NY、USAに記載されるものによって合成および/または修飾できる。化学修飾として、それだけには限らないが、2’修飾、オリゴヌクレオチドの糖または塩基のその他の部位での修飾、オリボヌクレオチド鎖への非天然塩基の導入、リガンドまたは化学部分への共有結合およびヌクレオチドリン酸塩間結合の、チオリン酸塩などの別の結合での置換が挙げられる。1を超えるこのような修飾が用いられていてもよい。
【0059】
2種の別個のdsRNA鎖の化学結合は、種々の周知の技術のうちいずれによっても、例えば、共有結合、イオン結合または水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールスまたはスタッキング相互作用を導入することによって、金属イオンの配位によって、またはプリン類似体を用いることによって達成できる。通常、dsRNAを修飾するために用いることができる化学基として、制限するものではないが、メチレンブルー;二官能基、通常、ビス−(2−クロロエチル)アミン;N−アセチル−N’−(p−グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4−チオウラシル;およびソラーレンが挙げられる。一実施形態では、リンカーは、ヘキサ−エチレングリコールリンカーである。この場合には、dsRNAは、固相合成によって作製され、ヘキサ−エチレングリコールリンカーが、標準方法に従って組み込まれる(例えば、Williams,D.J.およびK.B.Hall、Biochem.(1996年)35巻:14665〜14670頁)。特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端およびセンス鎖の3’末端が、ヘキサエチレングリコールリンカーを介して化学的に結合している。別の実施形態では、dsRNAの少なくとも1つのヌクレオチドは、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート基を含む。dsRNAの末端の化学結合は、通常、三重らせん結合によって形成される。表1および2は、本発明の修飾されたRNAi作用物質の例を提供する。
【0060】
さらにもう1つの実施形態では、2種の一本鎖の一方または両方のヌクレオチドが、例えば、制限するものではないが、特定のヌクレアーゼなどの細胞酵素の分解活性を妨げるか、阻害するよう修飾されている場合もある。核酸に対する細胞酵素の分解活性を阻害するための技術は、当技術分野で既知であり、それだけには限らないが、2’−アミノ修飾、2’−アミノ糖修飾、2’−F糖修飾、2’−F修飾、2’−アルキル糖修飾、非荷電主鎖修飾、モルホリノ修飾、2’−O−メチル修飾およびホスホルアミダート(例えば、Wagner、Nat.Med.(1995年)1巻:1116〜8頁参照のこと)が挙げられる。したがって、dsRNA上のヌクレオチドの少なくとも1つの2’−ヒドロキシル基は、化学基によって、通常、2’−アミノまたは2’−メチル基によって置換される。また、少なくとも1つのヌクレオチドが、ロックドヌクレオチドを形成するよう修飾されてもよい。このようなロックドヌクレオチドは、リボースの2’−酸素を、リボースの4’−炭素と連結するメチレン橋を含む。ロックドヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、Koshkin,A.A.ら、Tetrahedron(1998年)、54巻:3607〜3630頁)およびObika,S.ら、Tetrahedron Lett.(1998年)、39巻:5401〜5404頁)に記載されている。オリゴヌクレオチドへの、ロックドヌクレオチドの導入によって、相補配列の親和性が改善され、融点が数度高まる(Braasch,D.A.およびD.R.Corey、Chem.Biol.(2001年)、8巻:1〜7頁)。
【0061】
dsRNAにリガンドをコンジュゲートすることによって、細胞吸収ならびに特定の組織へのターゲッティングまたは肝臓細胞などの特定の細胞種による取り込みを増強することができる。特定の例では、細胞膜の直接透過および/または肝細胞を通じた取り込みを促進するようdsRNAに疎水性リガンドがコンジュゲートされている。あるいは、dsRNAにコンジュゲートされたリガンドは、受容体媒介性エンドサイトーシスの基質である。これらのアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドならびにdsRNA物質の細胞透過を促進するために用いられてきた。例えば、コレステロールが種々のアンチセンスオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ、そのコンジュゲートされていない類似体と比較して、実質的により活性な化合物が得られてきた。M.Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002年、12巻、103頁参照のこと。オリゴヌクレオチドとコンジュゲートしているその他の親油性化合物として、1−ピレン酪酸、1,3−ビス−O−(ヘキサデシル)グリセロールおよびメントールが挙げられる。受容体媒介性エンドサイトーシスのリガンドの一例として、葉酸がある。葉酸は、葉酸受容体媒介性エンドサイトーシスによって細胞に入る。葉酸を保持するdsRNA化合物は、葉酸受容体媒介性エンドサイトーシスによって細胞に効率的に輸送される。Liおよび共同研究者らは、葉酸の、オリゴヌクレオチドの3’末端との結合が、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みの8倍の増大をもたらしたと報告している。Li,S.;Deshmukh,H.M.; Huang,L.Pharm.Res.1998年、15巻、1540頁。オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされているその他のリガンドとして、ポリエチレングリコール、炭水化物クラスター、架橋剤、ポルフィリンコンジュゲート、送達ペプチドおよびコレステロールなどの脂質が挙げられる。
【0062】
特定の例では、カチオン性リガンドの、オリゴヌクレオチドとのコンジュゲーションは、ヌクレアーゼに対する耐性の改善をもたらす。カチオン性リガンドの代表的な例として、プロピルアンモニウムおよびジメチルプロピルアンモニウムがある。興味深いことに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、カチオン性リガンドがオリゴヌクレオチド中に分散される場合に、mRNAに対するその高い結合親和性を保持すると報告された。M.Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002年、12巻、103頁およびその中の参照文献を参照のこと。
【0063】
本発明のリガンドがコンジュゲートしているdsRNAは、例えば、dsRNAへの連結分子の結合から得られる、ペンダント反応性官能性を保有するdsRNAを用いることによって合成できる。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、任意の種々の保護基を保有する合成されたリガンドまたはそれと結合している連結部分を有するリガンドと直接反応できる。本発明の方法は、いくつかの好ましい実施形態では、リガンドで適切にコンジュゲートされており、さらに、固体支持体物質と結合している場合もあるヌクレオシドモノマーを用いることによって、リガンドがコンジュゲートしているdsRNAの合成を促進する。このような、場合により固体支持体物質と結合していてもよいリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートは、本発明の方法のいくつかの好ましい実施形態に従って、選択された血清結合性リガンドと、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’位
置に局在する連結部分との反応によって調製される。特定の例では、dsRNAの3’末端と結合しているアラルキルリガンドを保有するdsRNAを、まず、長鎖アミノアルキル基を介してコントロールド・ポア・ガラス(controlled−pore−glass)支持体にモノマービルディングブロックを共有結合によって結合することによって調製する。次いで、ヌクレオチドを標準的な固相合成技術によって、固体支持体と結合しているモノマービルディングブロックに結合する。モノマービルディングブロックは、ヌクレオシドであってもよいし、または固相合成と適合するその他の有機化合物であってもよい。
【0064】
本発明のコンジュゲートに用いられるdsRNAは、固相合成の周知の技術によって都合よく日常的に作製され得る。このような合成のための機器は、例えば、Applied
Biosystems(Foster City、CA)をはじめ、いくつかの製造供給元から市販されている。当技術分野で既知の、このような合成のための任意のその他の手段を、追加として、または代替として用いてもよい。同様の技術を用いて、その他のオリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体を調製することも知られている。
【0065】
特定の修飾されたオリゴヌクレオチドの合成に関する教示は、以下の米国特許に見出すことができる:ポリアミンがコンジュゲートしているオリゴヌクレオチドが描写されている米国特許第5,138,045号および同5,218,105号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドの調製のためのモノマーが描写されている米国特許第5,212,295号;修飾された主鎖を有するオリゴヌクレオチドが描写されている米国特許第5,378,825号および同5,541,307号;主鎖が修飾されたオリゴヌクレオチドおよび還元的カップリングによるその調製が描写されている米国特許第5,386,023号;3−デアザプリン環構造をベースとする修飾された核酸塩基およびその合成方法が描写されている米国特許第5,457,191号;N−2置換プリンをベースとする修飾された核酸塩基が描写されている米国特許第5,459,255号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドの調製方法が描写されている米国特許第5,521,302号;ペプチド核酸が描写されている米国特許第5,539,082号;β−ラクタム主鎖を有するオリゴヌクレオチドが描写されている米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドの合成のための方法および材料が描写されている米国特許第5,571,902号;アルキルチオ基を有するヌクレオシド(これでは、このような基は、ヌクレオシドの種々の部位のいずれかに結合しているその他の部分とのリンカーとして用いられ得る)が描写されている米国特許第5,578,718号;高いキラル純度のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドが描写されている米国特許第5,587,361号および同5,599,797号;2’−O−アルキルグアノシンおよび関連化合物、例えば、2,6−ジアミノプリン化合物の調製のための方法が描写されている米国特許第5,506,351号;N−2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドが描写されている米国特許第5,587,469号;3−デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドが描写されている米国特許第5,587,470号;両方とも、コンジュゲートされている4’−デスメチルヌクレオシド類似体が描写されている米国特許第5,223,168号および米国特許第5,608,046号;主鎖が修飾されたオリゴヌクレオチド類似体が描写されている米国特許第5,602,240号および米国特許第5,610,289号;とりわけ、2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドを合成する方法が描写されている米国特許第6,262,241号および同5,459,255号。
【0066】
本発明の、リガンドがコンジュゲートしているdsRNAおよび配列特異的に連結しているヌクレオシドを有するリガンド−分子では、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドを、標準的なヌクレオチドまたはヌクレオシド前駆体または連結部分をすでに保有するヌクレオチドまたはヌクレオシドコンジュゲート前駆体、リガンド−ヌクレオチドま
たはリガンド分子をすでに保有するヌクレオシド−コンジュゲート前駆体または非ヌクレオシドリガンド保有ビルディングブロックを用い、適したDNAシンセサイザーで構築することができる。
【0067】
連結部分をすでに保有するヌクレオチド−コンジュゲート前駆体を用いる場合には、通常、配列特異的に連結しているヌクレオシドの合成を、完了し、次いで、リガンド分子を連結部分と反応させて、リガンドがコンジュゲートしているオリゴヌクレオチドを形成する。種々の分子、例えば、ステロイド、ビタミン、脂質およびレポーター分子を保有するオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、先に記載されている(Manoharanら、PCT出願WO93/07883を参照のこと)。好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは連結しているヌクレオシドは、リガンド−ヌクレオシドコンジュゲートから誘導したホスホルアミダイト、さらに、市販の、オリゴヌクレオチド合成に通常用いられる標準ホスホルアミダイトおよび非標準ホスホルアミダイトを用い、自動化シンセサイザーによって合成される。
【0068】
オリゴヌクレオチドのヌクレオシドへ、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アリル、2’−O−アミノアルキルまたは2’−デオキシ−2’−フルオロ基を組み込むことによって、オリゴヌクレオチドに、ハイブリダイゼーション特性の増強が与えられる。さらに、ホスホロチオエート主鎖を含有するオリゴヌクレオチドは、増強されたヌクレアーゼ安定性を有する。したがって、本発明の官能基を有する、連結しているヌクレオシドは、ホスホロチオエート主鎖または2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アミノアルキル、2’−O−アリルもしくは2’−デオキシ−2’−フルオロ基のいずれか、または両方を含むよう増強することができる。当技術分野で既知のいくつかのオリゴヌクレオチド修飾の要約した一覧表は、例えば、PCT公開WO200370918に見られる。
【0069】
いくつかの実施形態では、5’末端にアミノ基を有する、本発明の官能基を有するヌクレオシド配列を、DNAシンセサイザーを用いて調製し、次いで、選択されたリガンドの活性エステル誘導体と反応させる。活性エステル誘導体は、当業者にはよく知られている。代表的な活性エステルとして、N−ヒドロスクシンイミドエステル、テトラフルオロフェノールエステル、ペンタフルオロフェノールエステルおよびペンタクロロフェノールエステルが挙げられる。アミノ基と活性エステルの反応によって、選択されたリガンドが、連結基を介して5位と結合しているオリゴヌクレオチドが生じる。5’末端のアミノ基は、5’−Amino−Modifier C6試薬を用いて調製できる。一実施形態では、リガンド分子は、リガンド−ヌクレオシドホスホルアミダイトを用いることによって5’位のオリゴヌクレオチドとコンジュゲートすることができ、これでは、リガンドは、5’−ヒドロキシ基と直接またはリンカーを介して間接的に連結している。このようなリガンド−ヌクレオシドホスホルアミダイトは、通常、5’末端にリガンドを保有する、リガンドがコンジュゲートしているオリゴヌクレオチドを提供するために自動化合成手順の最後に用いられる。
【0070】
修飾されたヌクレオシド間結合または主鎖の例として、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよびその他のアルキルホスホネート、例えば、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホルアミダート、例えば、3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステルおよび通常の3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’連結している類似体およびヌクレオシド単位の隣接する対が、3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2’に連結している逆の極性を有するものが挙げられる。種々の塩、混合塩および遊離酸の形も含まれる。
【0071】
上記のリン原子含有結合の調製に関する代表的な米国特許として、それだけには限らないが、米国特許第3,687,808号;同4,469,863号;同4,476,301号;同5,023,243号;同5,177,196号;同5,188,897号;同5,264,423号;同5,276,019号;同5,278,302号;同5,286,717号;同5,321,131号;同5,399,676号;同5,405,939号;同5,453,496号;同5,455,233号;同5,466,677号;同5,476,925号;同5,519,126号;同5,536,821号;同5,541,306号;同5,550,111号;同5,563,253号;同5,571,799号;同5,587,361号;同5,625,050号および同5,697,248号が挙げられ、その各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
修飾されたヌクレオシド間結合または中にリン原子を含まない(すなわち、オリゴヌクレオシド)主鎖の例は、短鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキル糖間結合または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子糖間結合または複素環式糖間結合によって形成される主鎖を有する。これらとして、モルホリノ結合(一部は、ヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファマート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を有するものおよび混合N、O、SおよびCH成分部分を有するその他のものが挙げられる。
【0073】
上記のオリゴヌクレオシドの調製に関する代表的な米国特許として、それだけには限らないが、米国特許第5,034,506号;同5,166,315号;同5,185,444号;同5,214,134号;同5,216,141号;同5,235,033号;同5,264,562号;同5,264,564号;同5,405,938号;同5,434,257号;同5,466,677号;同5,470,967号;同5,489,677号;同5,541,307号;同5,561,225号;同5,596,086号;同5,602,240号;同5,610,289号;同5,602,240号;同5,608,046号;同5,610,289号;同5,618,704号;同5,623,070号;同5,663,312号;同5,633,360号;同5,677,437号および同5,677,439号が挙げられ、その各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
特定の例では、オリゴヌクレオチドは、非リガンド基によって修飾されていてもよい。いくつかの非リガンド分子は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強するためにオリゴヌクレオチドとコンジュゲートされており、このようなコンジュゲーションを実施するための手順は、科学文献で入手可能である。このような非リガンド部分として、脂質部分、例えば、コレステロール(Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1989年、86巻:6553頁)、コール酸(Manoharanら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、1994年、4巻:1053頁)、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、1992年、660巻:306頁;Manoharanら、Bioorg.Med.Chem.Let.、1993年、3巻:2765頁)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl.Acids
Res.、1992年、20巻:533頁)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら、EMBO J.、1991年、10巻:111頁;Kabanovら、FEBS Lett.、1990年、259巻:327頁;Svinarchukら、Biochimie、1993年、75巻:49頁)、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995年、36巻:3651頁;Sheaら、Nucl.Acids Res.、1990年、18巻:3777頁)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleosides & Nucleotides、1995年、14巻:969頁)またはアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995年、36巻:3651頁)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim.Biophys.Acta、1995年、1264巻:229頁)またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(Crookeら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1996年、277巻:923頁)が挙げられている。このようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許は、上記に列挙されている。通常のコンジュゲーションプロトコールは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを保有するオリゴヌクレオチドの合成を含む。次いで、適当なカップリングまたは活性化試薬を用いて、アミノ基を、コンジュゲートされている分子と反応させる。コンジュゲーション反応は、さらに固体支持体と結合しているオリゴヌクレオチドを用いて、または溶液相中のオリゴヌクレオチドの切断後に実施してよい。通常、HPLCによるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの精製によって、純粋なコンジュゲートが得られる。コレステロールコンジュゲートの使用は、このような部分が、PCSK9発現部位である肝臓細胞を標的とすることを増大できるために、特に好ましい。
【0075】
ベクターにコードされるRNAi作用物質
本発明のdsRNAはまた、in vivoで細胞内に組換えウイルスベクターから発現され得る。本発明の組換えウイルスベクターは、本発明のdsRNAをコードする配列と、dsRNA配列を発現するための任意の適したプロモーターとを含む。適したプロモーターとして、例えば、U6またはH1 RNA polIIIプロモーター配列およびサイトメガロウイルスプロモーターが挙げられる。その他の適したプロモーターの選択は、当技術分野の技術の範囲内である。本発明の組換えウイルスベクターはまた、特定の組織において、または特定の細胞内環境においてdsRNAを発現するための誘導可能または調節可能プロモーターを含み得る。in vivoで本発明のdsRNAを細胞に送達するために組換えウイルスベクターを用いることは、以下により詳細に論じる。
【0076】
本発明のdsRNAは、2種の、別個の、相補的なRNA分子として、または2つの相補性領域を含む単一のRNA分子のいずれかとして組換えウイルスベクターから発現させることができる。
【0077】
発現されるdsRNA分子(複数可)のコード配列を受容できる任意のウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(AV);アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルスなどに由来するベクターを使用してよい。ウイルスベクターの親和性は、必要に応じて、ベクターを、その他のウイルスに由来するエンベロープタンパク質またはその他の表面抗原を用いてシュードタイプ化することによって、または種々のウイルスカプシドタンパク質を置換することによって、改変することができる。
【0078】
例えば、本発明のレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなどに由来する表面タンパク質を用いてシュードタイプ化できる。本発明のAAVベクターは、ベクターを、異なるカプシドタンパク質血清型を発現するよう操作することによって、種々の細胞を標的とするよう作製することができる。例えば、血清型2ゲノム上の血清型2カプシドを発現するAAVベクターは、AAV2/2と呼ばれる。AAV2/2ベクター中のこの血清型2カプシド遺伝子を、血清型5カプシド遺伝子によって置換し、AAV2/5ベクターを作製することができる。種々のカプシドタンパク質血清型を発現するAAVベクターを構築する技術は、当技術分野の技術の範囲内であり、例えば、参照によってその全開示内容が本明細書に組み込まれる、Rabinowitz J Eら(2002年)、J Virol 76巻:791〜801頁参照のこと。
【0079】
本発明に使用するのに適した組換えウイルスベクターの選択、dsRNAを発現するための核酸配列をベクターに挿入するための方法およびウイルスベクターを、注目する細胞に送達する方法は、当技術分野の技術の範囲内にある。例えば、参照によってその全開示内容が本明細書に組み込まれる、Dornburg R(1995年)、Gene Therap.2巻:301〜310頁;Eglitis M A(1988年)、Biotechniques 6巻:608〜614頁;Miller A D(1990年)、Hum Gene Therap.1巻:5〜14頁;Anderson W F(1998年)、Nature 392巻:25〜30頁およびRubinson D Aら、Nat.Genet.33巻:401〜406頁参照のこと。
【0080】
好ましいウイルスベクターは、AVおよびAAVに由来するものである。特に好ましい実施形態では、本発明のdsRNAは、例えば、U6またはH1 RNAプロモーター、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターのいずれかを含む組換えAAVベクターから、2つの別個の、相補的な一本鎖RNA分子として発現される。
【0081】
本発明のdsRNAを発現するのに適したAVベクター、組換えAVベクターを構築するための方法およびベクターを標的細胞に送達するための方法は、Xia Hら(2002年)、Nat.Biotech.20巻:1006〜1010頁に記載されている。
【0082】
本発明のdsRNAを発現するのに適したAAVベクター、組換えAVベクターを構築するための方法およびベクターを標的細胞に送達するための方法は、参照によりその全開示内容が本明細書に組み込まれる、Samulski Rら(1987年)、J.Virol.61巻:3096〜3101頁;Fisher K Jら(1996年)、J.Virol、70巻:520〜532頁;Samulski Rら(1989年)、J.Virol.63巻:3822〜3826頁;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願WO94/13788;および国際特許出願WO93/24641に記載されている。
【0083】
III.dsRNAを含む薬学的組成物
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるdsRNAと、薬学的に受容可能な担体とを含む薬学的組成物を提供する。dsRNAを含む薬学的組成物は、高脂血症などのPCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程など、PCSK9遺伝子の発現または活性と関連している疾患または障害を治療するのに有用である。このような薬学的組成物は、送達様式に基づいて製剤される。一例として、非経口送達によって肝臓に送達するために製剤される組成物がある。
【0084】
本発明の薬学的組成物は、PCSK9遺伝子の発現を阻害するのに十分な投与形で投与される。本発明者らは、本発明のdsRNAを含む組成物は、その改善された効率のために、驚くほど低い投与量で投与できるということを見出した。1日あたり受容者の体重1キログラムあたり5mg dsRNAという投与量は、PCSK9遺伝子の発現を阻害または抑制するのに十分であり、患者に全身投与してよい。
【0085】
通常、dsRNAの適した用量は、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.01〜5.0ミリグラムの範囲、通常、1日あたり体重1キログラムあたり1μg〜1mgの範囲にある。薬学的組成物は、1日1回投与してもよいし、またはdsRNAは、2、3またはそれより多い分割用量として、1日を通して適当な間隔で投与してもよく、またはさらに連続注入または放出制御製剤による送達を用いてもよい。その場合には、各分割用量に含まれるdsRNAは、総1日投与量を達成するために、相応に、より少ないものでなくてはならない。投与単位はまた、例えば、数日間にわたるdsRNAの持続放出を提供する従来の持続放出製剤を用いて、数日間にわたる送達のために調合される場合もある。持続放出製剤は、当技術分野で周知である。
【0086】
当業者には当然のことながら、それだけには限らないが、疾患または障害の重篤度、これまでの治療、被験体の全体的な健康状態および/または年齢ならびに存在するその他の疾患を含めた特定の因子が、被験体を有効に治療するために必要とされる投与量およびタイミングに影響を及ぼし得る。さらに、治療上有効な量の組成物を用いた被験体の治療は、単回の治療または一連の治療を含み得る。本発明によって包含される個々のdsRNAの、有効な投与量およびin vivo半減期の推定は、本明細書の他の場所に記載されるように、従来の方法論を用いて、または適当な動物モデルを用いたin vivo試験に基づいて行うことができる。
【0087】
マウス遺伝学の進歩によって、種々のヒト疾患、例えば、PCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって媒介され得る病理学的過程の研究のためのいくつかのマウスモデルが作製されている。dsRNAのin vivo試験には、ならびに、治療上有効な用量を決定するために、このようなモデルが用いられる。
【0088】
任意の方法を用いて、本発明のdsRNAを哺乳類に投与することができる。例えば、投与は直接;経口または非経口(例えば、皮下、脳室内、筋肉内または腹膜内注射によって、または点滴によって)であってもよい。投与は迅速(例えば、注射によって)であってもよいし、または一定時間をかけて行ってもよい(例えば、遅い注入または徐放製剤の投与)。
【0089】
通常、高脂血症の哺乳類を治療する場合には、非経口手段によってdsRNA分子を全身投与する。例えば、リポソームを用いて、または用いずに、コンジュゲートされているか、またはコンジュゲートされていない、または製剤されているdsRNAを、患者に、静脈内に投与できる。このようなために、dsRNA分子は、組成物、例えば、アルコールなどの通常の溶媒中の滅菌および非滅菌水性溶液、非水性溶液、または液体もしくは固体オイルベース中の溶液に製剤できる。このような溶液はまた、バッファー、希釈剤およびその他の適した添加剤を含み得る。非経口、くも膜下腔内または脳室内投与のためには、dsRNA分子は、組成物、例えば、同様に、バッファー、希釈剤およびその他の適した添加剤(例えば、浸透促進剤、担体化合物およびその他の薬学的に受容可能な担体)を含み得る滅菌水溶液に製剤できる。
【0090】
さらに、dsRNA分子は、例えば、米国特許第6,271,359号に記載されるように、哺乳類に、生物学的手段または非生物学的手段として投与できる。非生物学的送達は、種々の方法、例えば、制限するものではないが、(1)リポソームに、本明細書に提供されるdsRNA酸分子を負荷することおよび(2)dsRNA分子を、脂質またはリポソームと複合体を形成させて核酸−脂質または核酸−リポソーム複合体を形成することによって達成できる。リポソームは、in vitroで細胞をトランスフェクトするのによく用いられるカチオン性および中性脂質からなるものであり得る。カチオン性脂質は、負に荷電した核酸と複合体を形成し(例えば、帯電結合)リポソームを形成することができる。カチオン性リポソームの例として、制限するものではないが、リポフェクチン、リポフェクタミン、リポフェクトエース(lipofectace)およびDOTAPが挙げられる。リポソームを形成する手順は、当技術分野で周知である。リポソーム組成物は、例えば、ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンから形成され得る。多数の親油性物質が市販されており、例えば、リポフェクチン(登録商標)(Invitrogen/Life Technologies、Carlsbad、Calif.)およびエフェクテン(商標)(Qiagen、Valencia、Calif.)がある。さらに、市販のカチオン性脂質、例えば、DDABまたはDOTAPを用いて全身送達方法を最適化することができ、DDABまたはDOTAPは各々、中性脂質、例えば、DOPEまたはコレステロールと混合することができる。いくつかの場合には、Templetonら(Nature Biotechnology、15巻:647〜652頁(1997年))によって記載されるものなどのリポソームを使用できる。その他の実施形態では、ポリエチレンイミンなどのポリカチオンを用いて、in vivoおよびex vivoで送達を達成することができる(Bolettaら、J.Am Soc.Nephrol.7巻:1728頁(1996年))。核酸を送達するためのリポソームの使用に関するさらなる情報は、米国特許第6,271,359号、PCT公開WO96/40964およびMorrissey,D.ら、2005年、Nat Biotechnol.23巻(8号):1002〜7頁に見出すことができる。
【0091】
生物学的送達は、制限するものではないが、ウイルスベクターの使用をはじめとする種々の方法によって達成することができる。例えば、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスおよびヘルペスウイルスベクター)を用いて、dsRNA分子を肝臓細胞に送達することができる。標準的な分子生物学の技術を用いて、本明細書に提供される1種または複数種のdsRNAを、核酸を細胞に送達するためにこれまでに開発された多くのさまざまなウイルスベクターのうちの1種に導入することができる。これらの得られたウイルスベクターを用い、例えば、感染によって1種または複数種のdsRNAを細胞に送達することができる。
【0092】
本発明のdsRNAは、薬学的に受容可能な担体または希釈中に製剤できる。「薬学的に受容可能な担体」(本明細書では、「賦形剤」とも呼ばれる)とは、薬学的に受容可能な溶媒、懸濁剤または任意のその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。薬学的に受容可能な担体は、液体であってもよいし、固体であってもよく、所望の容積、一貫性およびその他の適切な輸送および化学特性を提供するよう考慮して計画された投与様式に応じて選択することができる。通常の薬学的に受容可能な担体は、例として、制限するものではないが以下を含む:水;生理食塩水;結合剤(例えば、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトースおよびその他の糖類、ゼラチンまたは硫酸カルシウム);滑沢剤(例えば、デンプン、ポリエチレングリコール、または酢酸ナトリウム);崩壊剤(例えば、デンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)。
【0093】
さらに、PCSK9遺伝子を標的とするdsRNAを、その他の分子、分子構造または核酸の混合物と混合され、封入され、コンジュゲートされるか、そうでなければ、結合しているdsRNAを含有する組成物に製剤することができる。例えば、1種または複数種の、PCSK9遺伝子を標的とするdsRNA作用物質を含有する組成物は、その他の治療薬、例えば、他の脂質低下剤(例えば、スタチン)を含み得る。
【0094】
PCSK9の発現をダウンレギュレートすることによって調節され得る疾患を治療する方法
本明細書に記載される方法および組成物を用いて、PCSK9遺伝子発現をダウンレギュレートすることによって調節され得る疾患および状態を治療できる。例えば、本明細書に記載される組成物を用いて、高脂血症およびその他の形の脂質インバランス(inbalance)、例えば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症およびこれらの障害と関連している病状、例えば、心疾患および循環器疾患を治療できる。
【0095】
PCSK9遺伝子の発現を阻害する方法
さらに別の態様では、本発明は、哺乳類においてPCSK9遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。本方法は、標的PCSK9遺伝子の発現がサイレンシングされるよう、哺乳類に本発明の組成物を投与することを含む。本発明のdsRNAは、その高い特異性のために、標的PCSK9遺伝子の(一次またはプロセシングされた)RNAを特異的に標的とする。dsRNAを用いて、これらのPCSK9遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法は、本明細書において他の箇所に記載されるように実施できる。
【0096】
一実施形態では、本方法は、dsRNAを含む組成物を投与することを含み、dsRNAは、治療される哺乳類のPCSK9遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的であるヌクレオチド配列を含む。治療される生物が、哺乳類、例えば、ヒトである場合には、組成物は、当技術分野で既知の任意の手段、例えば、それだけには限らないが、経口または非経口経路、例えば、静脈内の、筋肉内の、皮下、経皮、気道(エアゾール)投与によって投与され得る。好ましい実施形態では、組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。
【0097】
特に断りのない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることができるが、適した方法および材料は、以下に記載されている。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参照文献は、参照によりその全文が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、単に例示的なものであって制限であることを意図するものではない。
【実施例】
【0098】
PCSK9遺伝子の遺伝子ウォーキング
siRNA設計を実施し、2つの別個の選択物
a)PCSK9ヒトおよびマウスまたはラットいずれかのmRNAを標的とするsiRNAおよび
b)標的遺伝子PCSK9に対して予測される特異性を有する全ヒト反応性siRNAにおいて同定した。
【0099】
ヒト、マウスおよびラットPCSK9のmRNA配列を用いた:ヒト配列NM_174936.2を、完全siRNA選択手順の際の参照配列として用いた。
【0100】
第1の工程において、ヒトおよびマウスならびにヒトおよびラットPCSK9 mRNA配列において保存されている19マーのストレッチを、同定し、その結果、ヒトおよびマウスに対して交差反応性のsiRNAならびにヒトおよびラット標的に対して交差反応性のsiRNAが選択された。
【0101】
第2の選択で、ヒトPCSK9を特異的に標的とするsiRNAを同定した。ヒトPCSK9のすべての可能性ある19マーの配列を抽出し、候補標的配列として定義した。ヒト、サルに対して交差反応性の配列ならびにマウス、ラット、ヒトおよびサルに対して交差反応性のものがすべて、表1および2に列挙されている。それらの配列の化学修飾された形ならびにin vitroおよびin vivoアッセイ両方におけるそれらの活性も、表1および2に列挙されており、図2〜8に例が示されている。
【0102】
候補標的配列およびそれらの対応するsiRNAを順位付けし、適当なものを選択するために、無関係な標的と相互作用するそれらの予測される可能性(オフターゲットの可能性)を順位付けパラメータとしてとった。オフターゲットの可能性が低いsiRNAを、好ましいものとして規定し、in vivoではより特異的であると仮定した。
【0103】
siRNA特異的なオフターゲットの可能性を予測するために、以下の仮定を行った:
1)鎖の位置2〜9(5’から3’に数えて)(シード領域)は、配列の残り(非シードおよび切断部位領域)よりも、オフターゲットの可能性により寄与している可能性がある。
【0104】
2)鎖の位置10および11(5’から3’に数えて)(切断部位領域)は、非シード領域よりも、オフターゲットの可能性により寄与している可能性がある。
【0105】
3)各鎖の位置1および19は、オフターゲット相互作用と関連がない。
【0106】
4)各遺伝子および各鎖のオフターゲットスコアは、遺伝子の配列に対するsiRNA鎖配列の相補性およびミスマッチの位置に基づいて算出できる。
【0107】
5)予測されるオフターゲットの数ならびに最高のオフターゲットスコアには、オフターゲットの可能性が考慮されなければならない。
【0108】
6)オフターゲットスコアは、オフターゲットの数よりもオフターゲットの可能性とより関連があると考慮されるべきである。
【0109】
7)導入された内部修飾によるセンス鎖活性の失敗の可能性を推定すると、アンチセンス鎖のオフターゲットの可能性のみが関連する。
【0110】
可能性のあるオフターゲット遺伝子を同定するために、19マーの候補配列を、公的に入手可能なヒトmRNA配列に対するホモロジー検索にかけた。
【0111】
19マーのインプット配列各々の以下のオフターゲット特性を、オフターゲット遺伝子各々について抽出し、オフターゲットスコアを算出した:
非シード領域中のミスマッチの数
シード領域中のミスマッチの数
切断部位領域中のミスマッチの数
オフターゲットスコアは、以下の仮定1〜3を考慮するために算出した:
オフターゲットスコア=シードミスマッチの数*10
+切断部位ミスマッチの数*1.2
+非シードミスマッチの数*1
インプット19マー配列に対応する各siRNAの最も関連のあるオフターゲット遺伝子を、最低オフターゲットスコアを有する遺伝子として規定した。したがって、最低オフターゲットスコアを、各siRNAの関連オフターゲットスコアとして規定した。
【0112】
dsRNA合成
試薬の供給源
試薬の供給源が本明細書に特に示されていない場合は、このような試薬は、分子生物学において適用するための品質/純度規格の分子生物学の試薬の任意の供給業者から得てよい。
【0113】
siRNA合成
一本鎖RNAは、Expedite8909シンセサイザー(Applied Biosystems、Applera Deutschland GmbH、Darmstadt、Germany)を用い、固相支持体としてコントロールド・ポア・ガラス(CPG、500Å、Proligo Biochemie GmbH、Hamburg、Germany)を用いて、1μモルスケールでの固相合成によって作製した。RNAおよび2’−O−メチルヌクレオチドを含有するRNAは、それぞれ、対応するホスホルアミダイトおよび2’−O−メチルホスホルアミダイトを用い、固相合成によって作製した(Proligo Biochemie GmbH、Hamburg、Germany)。これらのビルディングブロックを、例えば、Current protocols in nucleic acid chemistry、Beaucage,S.L.ら(編)、John Wiley & Sons,Inc.、New York、NY、USAに記載される標準的なヌクレオシドホスホルアミダイト化学を用いてオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択された部位に組み込んだ。ホスホロチオエート結合は、ヨウ素酸化剤溶液を、アセトニトリル中、Beaucage試薬(Chruachem Ltd、Glasgow、UK)の溶液(1%)と取り替えることによって導入した。さらなる補助的試薬は、Mallinckrodt Baker(Griesheim、Germany)から入手した。
【0114】
陰イオン交換HPLCによる粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護および精製は、確立された手順に従って実施した。収率および濃度は、分光光度計(DU640B、Beckman Coulter GmbH、Unterschleissheim、Germany)を用い、260nmという波長での、それぞれのRNAの溶液のUV吸収によって求めた。二本鎖RNAは、アニーリングバッファー(20mM リン酸ナトリウム、pH6.8;100mM 塩化ナトリウム)中で相補鎖の等モル溶液を混合し、85〜90℃の水浴中で3分間加熱し、3〜4時間という時間をかけて室温に冷却することによって作製した。アニーリングしたRNA溶液は、使用まで−20℃で保存した。
【0115】
3’−コレステロールがコンジュゲートしているsiRNA(本明細書では、−Chol−3’と呼ばれる)の合成には、RNA合成に適切に修飾された固相支持体を用いた。修飾された固相支持体は以下のとおりに調製した:
ジエチル−2−アザブタン−1,4−ジカルボキシレートAA
【0116】
【化1】

【0117】
水中、エチルグリシネートヒドロクロリド(32.19g、0.23モル)の撹拌氷冷溶液(50mL)に、4.7Mの水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を加えた。次いで、アクリル酸エチル(23.1g、0.23モル)を加え、混合物を、TLCによって反応の完了が確認されるまで室温で撹拌した。19時間後、ジクロロメタン(3×100mL)を用いて溶液を分配した。有機層を、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を蒸留すると、AA(28.8g、61%)が得られた。
【0118】
3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル−アミノ)−ヘキサノイル]−アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB
【0119】
【化2】

【0120】
ジクロロメタン(50mL)にFmoc−6−アミノ−ヘキサン酸(9.12g、25.83mmol)を溶解し、氷で冷却した。0℃で、この溶液に、ジイソプロピルカルボジイミド(3.25g、3.99mL、25.83mmol)を加えた。次いで、ジエチル−アザブタン−1,4−ジカルボキシレート(5g、24.6mmol)およびジメチルアミノピリジン(0.305g、2.5mmol)の添加を続けた。この溶液を室温にし、さらに6時間撹拌した。反応の完了をTLCによって確認した。反応混合物を、真空濃縮し、酢酸エチルを加えて、ジイソプロピル尿素を沈殿させた。この懸濁液を濾過した。濾液を、5%塩酸水溶液、5%炭酸水素ナトリウムおよび水で洗浄した。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮すると、粗生成物が得られ、これをカラムクロマトグラフィー(50% EtOAC/ヘキサン)によって精製すると11.87g(88%)のABが得られた。
【0121】
3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピオン酸エチルエステルAC
【0122】
【化3】

【0123】
0℃のジメチルホルムアミド中、20%ピペリジンに、3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−ヘキサノイル]−アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB(11.5g、21.3mmol)を溶解した。溶液を1時間撹拌し続けた。反応混合物を真空濃縮し、残渣に水を加え、生成物を酢酸エチルを用いて抽出した。粗生成物をその塩酸塩に変換することによって精製した。
【0124】
3−({6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル−アミノ)−プロピオン酸エチルエステルAD
【0125】
【化4】

【0126】
ジクロロメタンに、3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピオン酸エチルエステルAC(4.7g、14.8mmol)の塩酸塩を入れた。この懸濁液を、氷上で0℃に冷却した。この懸濁液に、ジイソプロピルエチルアミン(3.87g、5.2mL、30mmol)を加えた。得られた溶液に、コレステリルクロロホルメート(6.675g、14.8mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物をジクロロメタンを用いて希釈し、10%塩酸で洗浄した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(10.3g、92%)によって精製した。
【0127】
1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}−4−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステルAE
【0128】
【化5】

【0129】
カリウムt−ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を、30mLの無水トルエンでスラリーにした。この混合物を氷上で0℃に冷却し、5g(6.6mmol)のジエステルADを、撹拌しながら20分以内でゆっくりと加えた。添加温度を5℃より低く維持した。撹拌を0℃で30分間続け、1mLの氷酢酸を加え、続いて直ちに、40mLの水中、4gのNaHPO・HOを加えた。得られた混合物を、各100mLのジクロロメタンを用いて2回抽出し、合わせた有機抽出物を、各10mLのリン酸バッファーで2回洗浄し、乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を、60mLのトルエンに溶解し、0℃に冷却し、3部分の50mLの冷pH9.5炭酸バッファーを用いて抽出した。水性抽出物を、リン酸を用いてpH3に調整し、5部分の40mLのクロロホルムを用いて抽出し、これらを合わせ、乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を、25%酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製すると、1.9gのb−ケトエステル(39%)が得られた。
【0130】
[6−(3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−6−オキソ−ヘキシル]−カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAF
【0131】
【化6】

【0132】
テトラヒドロフラン(10mL)中、b−ケトエステルAE(1.5g、2.2mmol)および水素化ホウ素ナトリウム(0.226g、6mmol)の還流混合物に、メタノール(2mL)を1時間という時間をかけて滴下した。撹拌を、還流温度で1時間続けた。室温に冷却した後、1N HCl(12.5mL)を加え、混合物を、酢酸エチル(3×40mL)を用いて抽出した。合わせた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空濃縮すると、生成物が得られ、これをカラムクロマトグラフィー(10% MeOH/CHCl)によって精製した(89%)。
【0133】
(6−{3−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチル]−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル}−6−オキソ−ヘキシル)−カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAG
【0134】
【化7】

【0135】
ジオールAF(1.25gm 1.994mmol)を、ピリジン(2×5mL)とともに真空蒸発させることによって乾燥させた。無水ピリジン(10mL)および4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(0.724g、2.13mmol)を、撹拌しながら加えた。反応を、室温で一晩実施した。メタノールを加えることによって反応をクエンチした。反応混合物を真空濃縮し、残渣に、ジクロロメタン(50mL)を加えた。有機層を、1M炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。トルエンとともに蒸発させることによって、残存するピリジンを除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した(2%MeOH/クロロホルム、5%MeOH/CHClにおいてRf=0.5)(1.75g、95%)。
【0136】
コハク酸モノ−(4−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチル]−1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1Hシクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}−ピロリジン−3−イル)エステルAH
【0137】
【化8】

【0138】
化合物AG(1.0g、1.05mmol)を、無水コハク酸(0.150g、1.5mmol)およびDMAP(0.073g、0.6mmol)と混合し、40℃で一晩真空乾燥させた。混合物を、無水ジクロロエタン(3mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.318g、0.440mL、3.15mmol)を加え、この溶液を、アルゴン雰囲気下、室温で16時間撹拌した。次いで、ジクロロメタン(40mL)を用いて希釈し、氷冷クエン酸水溶液(5重量%、30mL)および水(2×20mL)を用いて洗浄した。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮乾固した。残渣を、したがって次の工程に用いた。
【0139】
コレステロール誘導体化CPG AI
【0140】
【化9】

【0141】
ジクロロメタン/アセトニトリルの混合物(3:2、3mL)に、コハク酸塩AH(0.254g、0.242mmol)を溶解した。その溶液に、アセトニトリル(1.25mL)中、DMAP(0.0296g、0.242mmol)、アセトニトリル/ジクロロエタン(3:1、1.25mL)中、2,2’−ジチオ−ビス(5−ニトロピリジン)(0.075g、0.242mmol)を逐次加えた。得られた溶液に、アセトニトリル(0.6ml)中、トリフェニルホスフィン(0.064g、0.242mmol)を加えた。反応混合物の色が明橙色に変わった。溶液を、リストアクションシェーカー(wrist−action shaker)を用いて短時間(5分)撹拌した。長鎖アルキルアミン−CPG(LCAA−CPG)(1.5g、61mM)を加えた。この懸濁液を2時間撹拌した。CPGを焼結漏斗を通して濾過し、アセトニトリル、ジクロロメタンおよびエーテルを用いて逐次洗浄した。無水酢酸/ピリジンを用いて、未反応のアミノ基をマスキングした。CPGの達成された負荷は、UV測定を行うことによって測定した(37mM/g)。
【0142】
5’−12−ドデカン酸ビスデシルアミド基(本明細書では、「5’−C32−」と呼ばれる)または5’−コレステリル誘導体基(本明細書では、「5’−Chol−」と呼ばれる)を保持するsiRNAの合成は、コレステリル誘導体については、Beaucage試薬を用いて酸化工程を実施して、核酸オリゴマーの5’末端にホスホロチオエート結合を導入したという点を除いて、WO2004/065601に記載されるとおり実施した。
【0143】
核酸配列は、標準的な命名法および具体的には表1〜2の略語を用いて以下に表されている。
【0144】
【化10】

【0145】
HuH7、HepG2、Helaおよび初代サル肝細胞におけるPCSK9 siRNAスクリーニングにより、高活性配列が発見される
HuH−7細胞は、JCRB Cell Bank(Japanese Collection of Research Bioresources)(Shinjuku、Japan、カタログ番号JCRB0403)から入手した。細胞は、加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell、Kendro Laboratory Products、Langenselbold、Germany)中、5% COを含む雰囲気下中37℃で、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号S0115)、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号A2213)および2mM L−グルタミン(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号K0282)を含むよう補給したダルベッコのMEM(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号F0435)で培養した。HepG2およびHela細胞は、American Type Culture Collection(Rockville、MD、カタログ番号HB−8065)から入手し、加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell、Kendro Laboratory Products、Langenselbold、Germany)中、5%COを含む雰囲気下、37℃で、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号S0115)、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号A2213)、1×非必須アミノ酸(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号K−0293)および1mMピルビン酸ナトリウム(Biochrom AG、Berlin、Germany、カタログ番号L−0473)を含むよう補給したMEM(Gibco Invitrogen、Karlsruhe、Germany、カタログ番号21090−022)で培養した。
【0146】
siRNAを用いるトランスフェクションには、96ウェルプレートに、HuH7、HepG2またはHela細胞を、2.0×10個細胞/ウェルという密度で播種し、直接トランスフェクトした。siRNA(単回用量スクリーニングのための30nM)のトランスフェクションは、リポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH、Karlsruhe、Germany、カタログ番号11668−019)を製造業者によって記載されるとおりに用いて実施した。
【0147】
トランスフェクションの24時間後、HuH7およびHepG2細胞を溶解し、Quantigene Exploreキット(Genosprectra、Dumbarton Circle Fremont、USA、カタログ番号QG−000−02)を用い、プロトコールに従ってPCSK9 mRNAレベルを定量した。PCSK9 mRNAレベルは、GAP−DH mRNAに対して標準化した。各siRNAについて、8個の個々のデータ点を集めた。PCSK9遺伝子と関係のないsiRNA二本鎖を対照として用いた。所与のPCSK9特異的siRNA二本鎖の活性は、対照siRNA二本鎖で処理した細胞におけるPCSK9 mRNA濃度に対する処理細胞におけるPCSK9 mRNA濃度のパーセントとして表した。
【0148】
初代カニクイザル肝細胞(低温保存)は、In vitro Technologies,Inc.(Baltimore、Maryland、USA、カタログ番号M00305)から入手し、加湿インキュベーター中、5%COを含む雰囲気下37℃で、InVitroGRO CP培地(カタログ番号Z99029)で培養した。
【0149】
siRNAを用いるトランスフェクションには、96ウェルプレートにおいて、初代カニクイザル細胞を、コラーゲンコートしたプレート(Fisher Scientific、カタログ番号08−774−5)に3.5×10個細胞/ウェルという密度で播種し、直接トランスフェクトした。2連での、siRNA(8つの30nMから出発した2倍希釈シリーズ)のトランスフェクションを、リポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH、Karlsruhe、Germany、カタログ番号11668−019)を、製造業者によって記載されるとおりに用いて実施した。
【0150】
トランスフェクションの16時間後、培地を、Torpedo Antibiotic Mix(In vitro Technologies,Inc、カタログ番号Z99000)を加えた新鮮InVitroGRO CP培地に変更した。
【0151】
培地変更の24時間後、初代カニクイザル細胞を溶解し、PCSK9 mRNAレベルを、Quantigene Exploreキット(Genosprectra、Dumbarton Circle Fremont、USA、カタログ番号QG−000−02)をプロトコールに従って用いて定量した。PCSK9 mRNAレベルは、GAPDH mRNAに対して標準化した。次いで、標準化したPCSK9/GAPDH比を、リポフェクタミン2000のみの対照のPCSK9/GAPDH比に対して比較した。
【0152】
表1〜2(および図6)には、結果が要約されており、種々の用量での種々の細胞株におけるin vitroスクリーニングの実施例を提供する。PCSK9転写物のサイレンシングは、所与の用量での残存する転写物のパーセンテージとして表した。高活性配列とは、100nm以下の用量の所与のsiRNAでの処理後に70%未満の転写物しか残存していないものである。極めて活性な配列とは、100nM以下の用量での処理後に60%未満の転写物しか残存していないものである。活性な配列とは、高用量(100nM)での処理後に85%未満の転写物しか残存していないものである。活性なsiRNAの例はまた、以下に記載される脂肪様(lipidoid)製剤でマウスにおいてin vivoでスクリーニングした。in vitroで活性な配列はまた、概して、in vivoにおいても活性であった(図6の例を参照のこと)。
【0153】
PCSK9 siRNAのin vivo有効性スクリーニング
製剤手順
脂肪様LNP−01・4HCl(分子量1487)(図1)、コレステロール(Sigma−Aldrich)およびPEG−セラミドC16(Avanti Polar Lipids)を用いて、脂質−siRNAナノ粒子を調製した。エタノール中の各々の保存溶液を調製した:LNP−01、133mg/mL;コレステロール、25mg/mL、PEG−セラミドC16、100mg/mL。次いで、LNP−01、コレステロールおよびPEG−セラミドC16保存溶液を42:48:10モル比で合わせた。合わせた脂質溶液を、最終エタノール濃度が35〜45%となり、最終酢酸ナトリウム濃度が100〜300mMとなるよう、水性siRNA(酢酸ナトリウム、pH5中)と迅速に混合した。混合すると、脂質−siRNAナノ粒子が自発的に形成された。いくつかの場合には、所望の粒径分布に応じて、得られたナノ粒子混合物を、サーモバレル(thermobarrel)押し出し機(Lipex Extruder、Northern Lipids,Inc)を用い、ポリカーボネートメンブレン(100nmカットオフ)を通して押し出した。その他の場合には、押し出し工程は省略した。エタノール除去および同時バッファー交換は、透析または接線フロー濾過のいずれかによって達成した。バッファーは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2に交換した。
【0154】
製剤の特徴付け
標準法または押し出しフリー(extrusion−free)法のいずれかによって調製された製剤を、同様の方法で特徴付ける。まず、製剤を、目視検査によって特徴付ける。それらは、凝集体または沈殿物を含まない白色がかった透明の溶液であるはずである。脂質−ナノ粒子の粒径および粒径分布を、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern、USA)を用いて動的光散乱によって測定する。粒子の大きさは、20〜300nmであるはずであり、理想的には、40〜100nmである。粒径分布は、単峰型であるはずである。製剤、ならびに封入された画分中の総siRNA濃度は、色素排除アッセイを用いて推定する。製剤されたsiRNAのサンプルを、製剤破壊界面活性剤、0.5% Triton−X100の存在下または不在下で、RNA結合性色素Ribogreen(Molecular Probes)とともにインキュベートする。製剤中の総siRNAは、標準曲線と比較した、界面活性剤を含有するサンプルに由来するシグナルによって求める。封入された画分は、総siRNA含量から、「遊離」siRNA含量(界面活性剤の不在下でのシグナルによって測定される)を差し引くことによって求める。封入されたsiRNAのパーセントは、通常、>85%である。
【0155】
ボーラス投与
C57/BL6マウス(5匹/群、8〜10週齢、Charles River Laboratories、MA)における、製剤されたsiRNAのボーラス投与は、27Gニードルを用い、尾静脈注射によって実施した。siRNAは、10μl/体重1gで5mg/kg用量の送達を可能にする0.5mg/ml濃度でLNP−01に製剤し(次いで、PBSに対して透析し)た。マウスを赤外線ランプ下に約3分間維持し、その後各注射を投与した。
【0156】
投与の48時間後、マウスをCO窒息によって屠殺した。0.2mlの血液を後眼窩出血によって回収し、肝臓を採取し、液体窒素中で凍結した。血清および肝臓は−80℃で保存した。
【0157】
凍結した肝臓を、6850Freezer/Mill Cryogenic Grinder(SPEX CentriPrep,Inc)を用いて粉砕し、粉末を、分析まで−80℃で保存した。
【0158】
PCSK9 mRNAレベルを、QuantiGene Reagent System(Genospectra)製の分岐DNA技術に基づくキットを、プロトコールに従って用いて検出した。10〜20mgの凍結肝臓粉末を、600μlの0.16μg/mlのTissue and Cell Lysis溶液(Epicentre、#MTC096H)中、プロテイナーゼK(Epicentre、#MPRK092)に、65℃で3時間溶解した。Genospectra捕獲プレート上で、90μlのLysis Working Reagent(2容積の水中の1容積の保存Lysis Mixture)に、10μlの溶解物を加え、マウスPCSK9およびマウスGAPDHまたはシクロフィリンBに特異的なプローブセットとともに52℃で一晩インキュベートした。Capture Extender(CE)、Label Extender(LE)およびブロッキング(BL)プローブの核酸配列は、QuantiGene ProbeDesignerソフトウェア2.0(Genospectra、Fremont、CA、USA、カタログ番号QG−002−02)の助けを借りて、PCSK9、GAPDHおよびシクロフィリンBの核酸配列から選択した。化学発光を、Victor2−Light(Perkin Elmer)で相対光単位として読み取った。各処理群にわたって、肝臓溶解物におけるGAPDHまたはシクロフィリンB mRNAに対するPCSK9 mRNAの比の平均をとり、PBSで処理した対照群または非関連siRNA(血液凝固因子VII)で処理した対照群と比較した。
【0159】
StanBio Cholesterol LiquiColorキット(StanBio Laboratoriy、Boerne、Texas、USA)を、製造業者の使用説明書に従って用いて、マウス血清において総血清コレステロールを測定した。測定は、495nmでVictor2 1420 Multilabel Counter(Perkin Elmer)で行った。
【0160】
(実施例)
LNP−01リポソームに製剤された32PCSK9 siRNAを、マウスモデルにおいてin vivoで試験した。実験は、5mg/kg siRNA用量で実施し、少なくとも10PCSK9 siRNAは、PBSで処理した対照群と比較して40%を超えるPCSK9 mRNAノックダウンを示したのに対し、非関連siRNA(血液凝固因子VII)で処理した対照群は効果がなかった(図2〜5)。PCSK9転写物のサイレンシングはまた、これらの動物におけるコレステロールの低下とも関連していた(図4〜5)。さらに、in vitroで活性であったそれらの分子と、in vivoで活性なものとの間に強力な相関関係があった(図6)。種々の化学修飾を含む配列もin vitro(表1および2)およびin vivoでスクリーニングした。例として、あまり修飾されていない配列9314および9318、その配列のより修飾された形9314−(10792、10793および10796);9318−(10794、10795、10797)を両方ともin vitro(初代サル肝細胞において)またはLNP−01に製剤されたin vivo(9314および10792)で試験した。図7(表1および2も参照のこと)は、親分子9314および9318を示しており、修飾された形はすべてin vitroで活性である。図8は、一例として、親9314とより高度に修飾された10792配列の双方ともin vivoで活性であり、マウスにおいて内因性PCSK9の50〜60%サイレンシングを示すことを示す。図9は、親9314および10792のその他の化学修飾された形の活性をさらに例示するものである。
【0161】
dsRNA発現ベクター
本発明の別の態様では、PCSK9遺伝子発現活性を調節するPCSK9特異的dsRNA分子は、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写単位から発現される(例えば、Couture,Aら、TIG.(1996年)、12巻:5〜10頁;Skillern,A.ら、国際PCT公開WO00/22113、Conrad、国際PCT公開WO00/22114およびConrad、米国特許第6,054,299号参照のこと)。これらの導入遺伝子は、宿主ゲノムに組み込まれる導入遺伝子として組み込まれ、遺伝され得る、線状構築物、環状プラスミドまたはウイルスベクターとして導入できる。導入遺伝子はまた、染色体外プラスミドとして遺伝されることを可能にするよう構築できる(Gassmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995年)92巻:1292頁)。
【0162】
dsRNAの個々の鎖は、2つの別個の発現ベクター上にあるプロモーターによって転写させ、標的細胞に同時にトランスフェクトしてもよい。あるいは、dsRNAの個々の鎖各々を、両方とも同一の発現プラスミド上に位置しているプロモーターによって転写させることもできる。好ましい実施形態では、dsRNAは、リンカーポリヌクレオチド配列によって結合されている逆方向反復として発現され、その結果、dsRNAはステムおよびループ構造を有する。
【0163】
組換えdsRNA発現ベクターは、通常、DNAプラスミドまたはウイルスベクターである。ウイルスベクターを発現するdsRNAは、それだけには限らないが、アデノ随伴ウイルス(総説については、Muzyczkaら、Curr.Topics Micro.Immunol.(1992年)158巻:97〜129頁));アデノウイルス(例えば、Berknerら、BioTechniques(1998年)6巻:616頁)、Rosenfeldら(1991年、Science 252巻:431〜434頁)およびRosenfeldら(1992年)、Cell 68巻:143〜155頁))参照のこと);またはアルファウイルスならびに当技術分野で既知のその他のものに基づいて構築できる。レトロウイルスも、多くのさまざまな細胞種、例えば、上皮細胞にin vitroおよび/またはin vivoで種々の遺伝子を導入するために用いられてきた(例えば、Eglitisら、Science(1985年)230巻:1395〜1398頁;DanosおよびMulligan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998年)85巻:6460〜6464頁;Wilsonら、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85巻:3014〜3018頁;Armentanoら、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87巻:6141〜6145頁;Huberら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻:8039〜8043頁;Ferryら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻:8377〜8381頁;Chowdhuryら、1991年、Science 254巻:1802〜1805頁;van Beusechem.ら、1992年、Proc.Nad.Acad.Sci.USA 89巻:7640〜19頁;Kayら、1992年、Human Gene Therapy3巻:641〜647頁;Daiら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻:10892〜10895頁;Hwuら、1993年、J.Immunol.150巻:4104〜4115頁;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO89/07136;PCT出願WO89/02468;PCT出願WO89/05345;およびPCT出願WO92/07573を参照のこと)。形質導入し、細胞のゲノムに挿入された遺伝子を発現することができる組換えレトロウイルスベクターは、組換えレトロウイルスゲノムを適したパッケージング細胞株、例えば、PA317およびPsi−CRIPにトランスフェクトすることによって作製することができる(Cometteら、1991年、Human Gene Therapy 2巻:5〜10頁;Coneら、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81巻:6349頁)。組換えアデノウイルスベクターは、感受性宿主(例えば、ラット、ハムスター、イヌおよびチンパンジー)においてさまざまな細胞および組織に感染させるために用いることができ(Hsuら、1992年、J.Infectious Disease、166巻:769頁)、また、感染のために、有糸分裂的に活性な細胞が必要ではないという利点も有する。
【0164】
本発明のDNAプラスミドまたはウイルスベクターいずれかにおけるプロモーターによって駆動されるdsRNA発現は、真核生物RNAポリメラーゼI(例えば、リボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えば、CMV初期プロモーターまたはアクチンプロモーターまたはU1 snRNAプロモーター)または広くRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6 snRNAまたは7SK RNAプロモーター)または原核生物プロモーター、例えば、発現プラスミドが、T7プロモーターからの転写に必要なT7RNAポリメラーゼもコードするという条件でT7プロモーターであり得る。プロモーターは、導入遺伝子発現を膵臓に方向付けることもできる(例えば、the insulin regulatory sequence for pancreas(Bucchiniら、1986年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83巻:2511〜2515頁)参照のこと)。
【0165】
さらに、導入遺伝子の発現は、誘導可能調節配列および発現系、例えば、特定の生理学的調節因子、例えば、循環血糖値またはホルモンに対して感受性である調節配列を用いることによって正確に調節することができる(Dochertyら、1994年、FASEB J.8巻:20〜24頁)。このような、細胞における、または哺乳類における導入遺伝子発現の制御に適した誘導可能な発現系として、エクジソンによる、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学誘導物質およびイソプロピル−β−D1−チオガラクトピラノシド(EPTG)による調節が挙げられる。当業者ならば、dsRNA導入遺伝子の意図される用途に基づいて、適当な調節/プロモーター配列を選択することができる。
【0166】
通常、dsRNA分子を発現できる組換えベクターは、以下に記載されるように送達され、標的細胞中に持続する。あるいは、dsRNA分子の一過性の発現を提供するウイルスベクターを使用してもよい。このようなベクターは、必要に応じて反復して投与できる。発現されると、dsRNAは、標的RNAと結合し、その機能または発現を調節する。dsRNAを発現するベクターの送達は、例えば、静脈内投与または筋肉内投与による全身であってもよいし、患者から移植された標的細胞への投与と、それに続く患者への再導入によってであってもよいし、所望の標的細胞への導入を可能にする任意のその他の手段によってであってもよい。
【0167】
dsRNA発現DNAプラスミドは、通常、カチオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクタミン)または非カチオン性脂質ベースの担体(例えば、Transit−TKO(商標))との複合体として標的細胞にトランスフェクトされる。1週間以上の期間にわたる、単一のPCSK9遺伝子または複数のPCSK9遺伝子の種々の領域を標的とするdsRNA媒介性ノックダウンのための多重脂質トランスフェクションも、本発明によって考慮される。本発明のベクターが、宿主細胞にうまく導入されることは、種々の既知方法を用いてモニターできる。例えば、一過性のトランスフェクションは、レポーター、例えば、蛍光マーカー、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)で示され得る。ex vivo細胞の安定なトランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞に特定の環境因子(例えば、抗生物質および薬剤)に対する耐性、例えば、ハイグロマイシンB耐性を提供するマーカーを用いて確実に行われ得る。
【0168】
PCSK9特異的dsRNA分子はまた、ベクターに挿入し、ヒト患者のための遺伝子治療ベクターとして用いることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与によって(米国特許第5,328,470号参照のこと)、または定位注射によって(例えば、Chenら(1994年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA
91巻:3054〜3057頁参照のこと)被験体に送達できる。遺伝子治療ベクターの医薬品は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている持続放出マトリックスを含むことができる。あるいは、組換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターから完全な遺伝子送達ベクターが無傷で生じ得る場合には、医薬品は、遺伝子送達系を生成する1種または複数種の細胞を含み得る。
【0169】
当業者ならば、本開示内容に具体的に示されるものに加えて、本発明を、添付の特許請求の範囲の最大限に実施することを可能にする方法および組成物に精通している。
【0170】
【表1−1】

【0171】
【表1−2】

【0172】
【表1−3】

【0173】
【表1−4】

【0174】
【表1−5】

【0175】
【表1−6】

【0176】
【表1−7】

【0177】
【表1−8】

【0178】
【表1−9】

【0179】
【表1−10】

【0180】
【表1−11】

【0181】
【表1−12】

【0182】
【表1−13】

【0183】
【表1−14】

【0184】
【表1−15】

【0185】
【表1−16】

【0186】
【表1−17】

【0187】
【表1−18】

【0188】
【表1−19】

【0189】
【表1−20】

【0190】
【表1−21】

【0191】
【表1−22】

【0192】
【表1−23】

【0193】
【表1−24】

【0194】
【表1−25】

【0195】
【表1−26】

【0196】
【表1−27】

【0197】
【表1−28】

【0198】
【表1−29】

【0199】
【表1−30】

【0200】
【表1−31】

【0201】
【表1−32】

【0202】
U、C、A、G:リボヌクレオチドに対応する;T:デオキシチミジン;u、c、a、g:2’−O−メチルリボヌクレオチドに対応する;Uf、Cf、Af、Gf:2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチドに対応する;ヌクレオチドが配列中に記されている場合には、それらは3’−5’ホスホジエステル基によって連結している;「s」が差し込まれたヌクレオチドは、3’−O−5’−Oホスホロチオジエステル基によって連結している;接頭辞「p−」によって表されない限り、オリゴヌクレオチドは、最も5’のヌクレオチドに5’−リン酸基を有していない;すべてのオリゴヌクレオチドは、最も3’のヌクレオチドに3’−OHを保持する。
【0203】
【表2−1】

【0204】
【表2−2】

【0205】
【表2−3】

【0206】
【表2−4】

【0207】
U、C、A、G:リボヌクレオチドに対応する;T:デオキシチミジン;u、c、a、g:2’−O−メチルリボヌクレオチドに対応する;Uf、Cf、Af、Gf:2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチドに対応する;moc、mou、mog、moa:2’−MOEヌクレオチドに対応する;ヌクレオチドが、配列中に記されている場合には、それらは3’−5’ホスホジエステル基によって連結している;ab:3’−末端無塩基ヌクレオチド;「s」が差し込まれたヌクレオチドは、3’−O−5’−Oホスホロチオジエステル基によって連結している; 接頭辞「p−」によって表されない限り、オリゴヌクレオチドは、最も5’のヌクレオチドに5’−リン酸基を有していない;すべてのオリゴヌクレオチドは、最も3’のヌクレオチドに3’−OHを保持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−246544(P2010−246544A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108836(P2010−108836)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2009−510173(P2009−510173)の分割
【原出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508290910)アルニラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】