説明

PLY−GBS突然変異ライシン

いろいろなB群連鎖球菌(GBS)細菌の処置に有用な方法、組成物および製品を提供する。ある種のPlyGBS突然変異ライシンを含めたいろいろな細菌ライシンを提供する。具体的には、B群連鎖球菌(GBS)細菌に対して、非突然変異PlyGBS細菌ライシンより大きい殺傷活性を有するPlyGBS突然変異ライシンを含めた、B群連鎖球菌(GBS)細菌に対する溶解殺傷活性を有するPlyGBS突然変異ライシンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B群連鎖球菌(GBS)細菌などのある種の細菌を迅速に且つ特異的に検出するまたは殺傷するファージ関連溶解酵素の識別および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B群連鎖球菌(GBS)またはストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)は、米国の新生児細菌感染の主因である(Baker, C.J., and M.S. Edwards, "Group B streptococcal infections," p.1091-1156 in J. Remmington and J.O. Klein (ed.), Infectious diseases of the fetus and newborn infants, 5th ed. The W.B. Saunders Co. Philadelphia, PA (2001))。GBSは、通常は、ヒトの生殖管および下部消化管に定着しているが、正常経膣分娩の際に、母体から乳児へと垂直感染することがありうる。新生児GBS疾患の一般的な発症には、敗血症、髄膜炎、肺炎および関節感染症が含まれる。妊婦の約21%は、膣内にGBSを定着しているので、かなり高い割合の乳児が、GBS感染に関連した症状を発症している。例えば、敗血症は、GBS定着のある女性には、1,000分の16の出産で認められるが、GBS定着のない女性には、1,000分の0.4の出産でしか認められない(Regan, J.A., M.A. Klebanoff, R.P. Nugent & 7 other authors. 1996. Colonization with group B streptococci in pregnancy and adverse outcome. Am. J. Obstet. Gynecol. 174: 1354-1360)。
【0003】
分娩時抗生物質予防薬(IAP)は、新生児GBS定着および早期開始感染を有効に減少させることができるので、疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)(CDC)によって示唆される一次予防である(Centers for Disease Control and Prevention, "Prevention of perinatal group B streptococcal disease: a public health perspective," Morbid. Mortal. Weekly Rep. 45: 1-24(1996); and Centers for Disease Control and Prevention, "Prevention of perinatal group B streptococcal disease: revised guidelines from CDC," Morbid. Mortal. Weekly Rep. 51: 1-22(2002))。IAPは、通常は、GBSを定着している妊婦に、分娩4時間前に与えられて、垂直感染を予防する。しかしながら、妊婦へのGBS培養スクリーニングが常套でない多くの地域が存在するし、しかも抗生物質の普遍的投与は、新生児に潜在的脅威を与えるかもしれない。抗生物質耐性は、若干のGBS臨床分離菌が、エリスロマイシンおよびクリンダマイシンに耐性であることが既に判明していることから、もう一つの主要な関心事である(Fernandez, M., M. Hickman, and C.J. Baker, "Antimicrobial susceptibilities of group B streptococci isolated between 1992 and 1996 from patients with bacteremia or meningitis," Antimicrob. Agents Chemother. 42: 1517-1519(1998); Centers for Disease Control and Prevention, "Prevention of perinatal group B streptococcal disease: revised guidelines from CDC," Morbid. Mortal. Weekly Rep. 51: 1-22(2002))。したがって、直接的で且つ有効なIAP代替物が要求されている。
【0004】
病原性細菌の検出および処置への一つの有望なアプローチは、溶菌薬としてのバクテリオファージ溶解酵素の使用である。細菌宿主溶解に関与するバクテリオファージ溶解酵素は、ライシンとしても知られている。多数のライシンは、子孫ファージを放出するために、細菌細胞壁を急速分解することができる(Young, R. 1992. Bacteriophage lysis: mechanism and regulation. Microbiol. Rev. 56:430-481)。構造的には、ライシンは、ペプチドグリカン結合への酵素活性を与えるアミノ末端ドメインと、細菌細胞壁中の炭水化物エピトープへの結合特異性を与えるカルボキシ末端ドメインと一緒のモジュールタンパク質として一般的に見出される(Loessner, M., K. Kramer, F. Ebel, and S. Scherer, "C-terminal domains of Listeria monocytogenes bacteriophage murein hydrolases determine specific recognition and high-affinity binding to bacterial cell wall carbohydrates," (Mol. Microbiol. 44:335-349(2002); Lopez, R., E. Garcia, P. Garcia, and J.L. Garcia, "The pneumococcal cell wall degrading enzymes: a modular design to create new lysins?," MicroB. Drug Resist. 3:199-211(1997); Lopez, R., M.P. Gonzalez, E. Garcia, J.L. Garcia, and P. Garcia, "Biological roles of two new murein hydrolases of Streptococcus pneumoniae representing examples of module shuffling," Res. Microbiol. 151:437-443(2002); Sheehan, M.M., J.L. Garcia, R. Lopez, and P. Garcia, "The lytic enzyme of the pnemococcal phage Dp-1: a chimeric enzyme of intergeneric origin," Mol. Microbiol. 25:717-725(1997))。ライシンは、ペプチドグリカン基質に対して、次の、すなわち、ムラミダーゼ、グルコサミニダーゼ、N−アセチルムラミル−L−アラニンアミダーゼおよびエンドペプチダーゼの少なくとも一つの酵素活性を与えると考えられる(Young, R., "Bacteriophage lysis: mechanism and regulation," Microbiol. Rev. 56:430-481(1992))。バクテリオファージから精製されたライシンは、外因的に適用されて、細菌溶解に影響を与えることができる(Loeffler, J.M., D. Nelson, and V.A. Fischetti, "Rapid killing of Streptococcus pneumoniae with a bacteriophage cell wall hydrolase," Science. 294:2170-2172(2001); Loessner, M., G. Wendlinger, and S. Scherer, "Heterogeneous endolysins in Listeria monocytogenes bacteriophages: a new class of enzymes and evidence for conserved holin genes within the siphoviral lysis cassettes," Mol. Microbiol. 16:1231-1241(1995); Loessner, M., S.K. Maier, H. Daubek-Puza, G. Wendlinger, and S. Scherer, "Three Bacillus cereus bacteriophage endolysins are unrelated but reveal high homology to cell wall hydrolases from different bacilli," J. Bacteriol. 179:2845-2851(1997); Nelson, D., L. Loomis, and V.A. Fischetti, "Prevention and elimination of upper respiratory colonization of mice by group A streptococci by using a bacteriophage lytic eyzyme," Prot. Natl. Acad. Sci. USA. 98:4107-4112(2001))。
【0005】
ライシンは、通常は、そのライシンが由来するファージが単離された細菌種にきわめて特異的である(Fischetti, V.A. 2003. Novel method to control pathogenic bacteria on human mucous membranes. Ann. N. Y. Acad. Sci. 987:207-214; Fischetti, V.A. 2001. Phage antibacterials make a comeback. Nature Biotechnol. 19:734-735)。ライシンが標的指向する細菌の範囲は、該当するバクテリオファージよりもあまり制限されないが、ライシンは、ある程度の特異性を依然として維持していて、片利共生生物を含めた他の細菌への最小限の作用を有する。バクテリオファージ宿主範囲は、大きく制限されて、その細菌宿主上の一つの特異的抗原だけを認識するが、ファージライシンは、あまり制限されないで、宿主細菌の特定の種に共通の特異的炭水化物分子を認識する。
【0006】
ファージライシンへの細菌の耐性は、バクテリオファージ吸着と比較したところ、少なくとも二つの理由で、生じる可能性が少ないと考えられる。第一に、ライシンへの暴露時の細菌溶解は、ほとんど即時であり、細菌に突然変異の可能性をほとんど与えないし、そして第二に、ライシンは、突然変異させない選択的圧力下にある細菌細胞壁中の高度に保存された分子に結合する。対照的に、多数の抗生物質への細菌の耐性は、しばしば、容易に識別される。更に、溶原変換での問題は、ファージライシンで減少するまたは排除されるので、動物の試験および処置は、ライシンを用いて有効に行うことができる。
【0007】
細菌の混入、定着および感染の診断および制御において有効な療法および物質が、引き続き要求されている。更に、殺細菌作用を有する化合物は、無生物の表面および目的物上の細菌脱汚染に有用でありうる。与えられるバクテリオファージ溶解酵素は、B群連鎖球菌(GBS)細菌の検出または殺傷に有用な物質を提供する場合に有用である。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、細菌殺傷活性を有するPlyGBSペプチド変異体を含む細菌ライシンに関する。例えば、PlyGBSペプチド変異体は、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSペプチドの溶解殺傷活性より大きい、同細菌に対する溶解殺傷活性を有するPlyGBS突然変異ライシンでありうる。
【0009】
PlyGBS酵素(SEQ ID NO:1)の溶解活性と比較して、GBS細胞に対する改善された溶解活性を有するライシンを開示する。高活性(hyperactive)PlyGBS突然変異ライシンは、in vitro および in vivo 双方の試験で示されるように、PlyGBSタンパク質単独と比較して、GBS細胞に対する大きい殺傷活性を与えることができる。それらライシンは、plyGBS遺伝子に適用されるDNA突然変異誘発法を用いて、PlyGBSタンパク質溶解突然変異酵素から誘導される突然変異溶解酵素であってよい。GBSタンパク質に対して増加した溶解活性を示すポリネオPlyGBS突然変異酵素も、識別され且つ特性決定されている。
【0010】
PlyGBS突然変異ライシンなどのPlyGBSライシンの殺傷活性は、下の実施例3に記載の in vitro 細菌殺傷検定を行うことによって、または下の実施例4に記載の in vivo 細菌殺傷検定を行うことによって定量することができる。高活性PlyGBS突然変異体は、GBS細胞に対して、PlyGBS(SEQ ID NO:1)より少なくとも1.5倍〜約40倍大きい溶解活性、少なくとも約14倍〜約40倍大きい溶解活性、または少なくとも約25倍〜約40倍大きい溶解活性を与えることができる。高活性PlyGBS突然変異ライシンには、PlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)、PlyGBS80(SEQ ID NO:3)、PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)、PlyGBS94(SEQ ID NO:8)およびPlyGBS95(SEQ ID NO:9)の群より選択されるものが含まれる。PlyGBS(SEQ ID NO:1)は、N末端[アミノ酸(aa)1〜107]エンドペプチダーゼドメイン;中心(aa150〜394)ムラミダーゼドメイン;およびC末端領域(aa395〜443)を含有する。突然変異体PlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)(SEQ ID NO:2)は、アスパラギン酸からグルタミン酸への一つのアミノ酸変化(D374E)を有する。突然変異体PlyGBS80(SEQ ID NO:3)(aa1〜164)(SEQ ID NO:3)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(aa1〜138)(SEQ ID NO:4)は、ナンセンス突然変異によってもたらされる終止コドンのために、一部切断された突然変異体である。PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)は、plyGBS遺伝子中のbp424〜1255を欠失したアウトオブフレーム(out-of-frame)欠失から誘導されたので、結果として、それは、plyGBS遺伝子のC末端領域(bp1256〜1332)のフレームシフトのために、PlyGBSの最初の141アミノ酸+余分の13アミノ酸(DGHALTIQSRRNG)をコードしている。高活性PlyGBS突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)(SEQ ID NO:8)は、N末端エンドペプチダーゼドメイン(最初の146アミノ酸)を含有していて、突然変異体PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(最初の138アミノ酸)(SEQ ID NO:4)に似ている。これら二つの突然変異体において、同様のレベルの溶解活性が認められた。PlyGBS95(SEQ ID NO:9)(SEQ ID NO:9)は、中心ムラミダーゼドメインのインフレーム(in-frame)欠失(aa147〜348欠失)を有する。
【0011】
ある種のPlyGBS突然変異ライシンの構造を、更に開示する。いくつかの高活性PlyGBS突然変異体には、PlyGBSのN末端領域からのエンドペプチダーゼドメインのみを含有し且つ野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)の約三分の一長さである一部切断突然変異体が含まれる。これら突然変異体は、PlyGBSと比較して、25〜40倍の特異的活性増加を有することがありうるし、そして更に、いくつかの連鎖球菌種に対して同様の活性スペクトルを有することがありうる。PlyGBSは、二つの推定上の触媒ドメインと、C末端の未指定ドメインを有する。PlyGBS突然変異体PlyGBS95(SEQ ID NO:9)(SEQ ID NO:9)およびPlyGBS94(SEQ ID NO:8)(SEQ ID NO:8)の比較は、C末端の欠失が、その特異性または溶解活性に有意に作用することはないということを示している。高活性PlyGBS突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)(SEQ ID NO:8)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(SEQ ID NO:4)は、中心およびC末端の領域に一部切断を有することがありうるが、それらが、細胞壁結合ドメインを含むことなく、触媒ドメインを有するにすぎないという点で、リゾチームに似ていると考えられる。これら突然変異体に存在するエンドペプチダーゼドメインは、GBSバクテリオファージB30からの別の溶解酵素PlyGBS(SEQ ID NO:1)中で最近識別されたCHAPドメインとほぼ同一である(Pritchard, D.G., S. Dong, J.R. Baker, and J.A. Engler, "The bifunctional peptidoglycan lysin of Streptococcus agalactiae bacteriophage B30," Microbiology 150: 2079-2087 (2004))。しかしながら、これら一部切断された突然変異体中のCHAPドメインは、それだけで、GBSに対して活性であるのみならず、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)を上回って有意に活性が増加している(25〜40倍)。CHAPドメインは、多数のファージライシン中に広く存在するが、これらCHAPドメインで、細胞壁結合ドメインの会合を伴うことなく溶解活性を有すると報告されたものはない。
【0012】
貯蔵安定性および最適pHのような、高活性PlyGBS突然変異体の生化学的特性を、PlyGBS(SEQ ID NO:1)と比較した。突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)は、塩濃度が50〜100mMの場合に、その最適活性を有するが、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)の最適NaCl濃度は、約200mMである。特に、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)突然変異体は、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)の僅か三分の一を含有しているのに、突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)に感受性である連鎖球菌種全てに対して溶解活性を維持している。
【0013】
高活性PlyGBS突然変異体は、PlyGBSよりも溶解活性であるので、野生型PlyGBSよりも速い速度でGBSを殺傷して、時間有効性を必要とすると考えられる将来の分娩時療法に利点を与えることができる。高活性PlyGBS突然変異体は、in vivo 投与されて、GBS定着の減少を引き起こすことができる。例えば、高活性PlyGBS突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)は、in vivo のGBS定着を減少させる効力を調べるマウス膣内モデルで用いられた。単回用量のPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(SEQ ID NO:5)は、GBS定着を、処置前の5.54log(平均で約3.5x10cfu/マウス)〜処置後4時間の1.68log(50cfu/マウス未満)へと減少させた。高活性PlyGBS突然変異体の in vivo 投与は、例えば、分娩の際の新生児GBS感染を減少させるのに用いられて、分娩時抗生物質予防薬に置き換わる代わりのアプローチを提供することができる。
【0014】
本発明の他のシステム、方法、特徴および利点は、次の図面および詳細な説明の検討で、当業者に明らかであろうまたは明らかになるであろう。このような追加のシステム、方法、特徴および利点は全て、本明細書中に包含されるものである。
【0015】
詳細な説明
用いられているある種の用語の定義およびそれらの本開示への適応性を、下に与える。
「高活性PlyGBS突然変異体」という用語は、実質的に同一の試験条件下において、PlyGBS酵素と比較して、GBSに対して増大した活性を有するPlyGBS突然変異ライシンを意味する。
【0016】
「単離された」という用語は、出発材料から少なくとも部分的に精製された意味である。
「精製された」という用語は、生物学的材料の濃度が、カラムクロマトグラフィー、HPLC、沈降、電気泳動等が含まれるがこれに制限されるわけではないいずれかの精製法によって適度に増加し、それによって、材料を調製することに関与する前駆物質または他の化学物質などの不純物を部分的に、実質的にまたは完全に除去したことを意味する。したがって、均一であるまたは実質的に均一である(例えば、電気泳動またはクロマトグラフィーなどの分離手順で単一のタンパク質シグナルを生じる)材料は、単離されたおよび精製されたという意味の範囲内に包含される。当業者は、必要な精製量は、その材料の使用に依存するということを理解するであろう。例えば、ヒトへの投与を予定した組成物は、通常は、調節標準にしたがって高度に精製されるべきである。
【0017】
「バクテリオファージに遺伝コードされた溶解酵素」という用語は、宿主細菌に対して少なくとも若干の溶解活性を有するポリペプチドを意味する。
「ポリペプチド」は、天然に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドに該当するアミノ酸を含んで成る分子を意味する。そのポリペプチドには、保存的置換が含まれてよく、この場合、天然に存在するアミノ酸は、同様の性状を有するもので置き換えられていて、このような保存的置換は、そのポリペプチドの機能を変更しない(例えば、Lewin "Genes V" Oxford University Press Chapter 1, pp.99-13 1994 を参照されたい)。
【0018】
「天然配列ファージ関連溶解酵素」は、天然に由来する酵素と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。このような天然配列酵素は、天然から単離することができるし、または組換えまたは合成手段によって生じることができる。「天然配列酵素」という用語は、具体的には、その酵素の天然に存在する形(例えば、選択的スプライシングされたまたは修飾された形)および天然に存在する変異体を包含する。一例として、天然配列酵素は、B群連鎖球菌(GBS)に特異的なバクテリオファージからの遺伝子に遺伝コードされている成熟または完全長ポリペプチドである。
【0019】
ある量に関して用いられる「約」という用語は、挙げられた量と同等である挙げられた量の変動、例えば、予定の目的または機能について挙げられた量とは非実質的に異なる量を包含する。
【0020】
「有効量」という用語は、望ましくない副作用を引き起こすことなく、所望の作用を達成するのに十分な活性成分の量を意味する。若干の場合、所望の作用を得ることと、望ましくない作用の激しさを制限することとの間に平衡を達成することが必要でありうる。用いられる活性成分の量は、活性成分のタイプおよび本発明の組成物について予定される使用に依存して異なるであろう。
【0021】
「変異ポリペプチド配列ファージ関連溶解酵素」は、B群連鎖球菌(GBS)または Streptococcus agalactiae に特異的なバクテリオファージに遺伝コードされた機能的に活性な溶解酵素であって、記載の配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の、または少なくとも99.5%ものアミノ酸配列同一性を有するものを意味する。
【0022】
本明細書中で識別される溶解酵素ポリペプチド配列に関する「ポリペプチド配列同一性パーセント(%)」は、特定の溶解酵素ポリペプチド配列を整列させ、そして必要ならば、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後に、そして配列同一性の一部分として保存的置換を全く考慮することなく、それら配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的の整列方法を、下に記載する。
【0023】
PlyGBSライシン
B群連鎖球菌(GBS)細菌に対して殺傷活性を有するバクテリオファージライシンを提供する。好ましいバクテリオファージライシンは、PlyGBS活性と比較して、GBSに対して増大した殺傷活性を有するPlyGBSライシンの高活性PlyGBS突然変異酵素およびその変異体である。GBSに対して殺傷活性を有するいくつかの高活性PlyGBS突然変異酵素を、下記の実施例において識別し且つ特性決定する。他の例は、他のグラム陽性細菌に対する特異的活性を有するライシンを提供するが、それには、記載のライシンの変異体およびフラグメントが含まれる。
【0024】
ファージムラリティック(muralytic)酵素PlyGBSは、例えば、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49:111-117(2005) に記載のように、in vitro または in vivo でGBS細胞を溶解するのに用いることができる。PlyGBSは、細菌細胞壁を消化して、細胞を浸透圧溶解に感受性にさせることによって細菌を殺傷することができるバクテリオファージライシンの群に属する。例えば、マウスモデルにおいて、単回用量のPlyGBSは、膣内および口腔咽頭内双方のGBS定着を有意に減少させることができる。PlyGBSなどのファージムラリティック酵素の投与は、分娩前の妊婦の膣内GBS定着を減少させて、または新生児のいろいろな身体部位を脱汚染して、それによって、GBS関連新生児感染の発症を減少させるために、分娩時抗生物質予防薬への有望な代替物である。
【0025】
ライシンは、概して、モジュール構造で存在する。N末端モジュールは、ある種の細菌の細菌細胞壁を分解する能力を有すると考えられる触媒ドメインから成る。その触媒ドメインにしばしば関連した酵素活性は、アミダーゼ、エンドペプチダーゼ、グルコサミダーゼおよびムラミダーゼである。C末端分子は、標的細菌細胞壁上の炭水化物エピトープに親和力を有すると考えられる結合ドメインから成る。その結合ドメインは、ライシンの特異性を決定すると考えられる。
【0026】
GBS細菌に対して有効なバクテリオファージ溶解薬を、それに関して該当するポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列と一緒に提供する。与えられる溶解酵素を含む組成物は、GBS細菌を含めた、記載のようなグラム陽性細菌のいくつかのタイプに関する診断、処置および脱汚染の用途に有用でありうる。溶解酵素を含む組成物、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を用いた処置および脱汚染の方法を、更に開示する。
【0027】
GBS細菌菌株への溶解作用を示す高活性PlyGBS突然変異酵素、具体的には、一つまたはそれを超える細菌種に対して殺傷活性を有するライシンを記載する。それらライシンには、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより大の相同性を有するポリペプチド配列を含む高活性PlyGBS突然変異ライシンが含まれる。
【0028】
抗細菌薬としての溶解酵素の治療的適用に関する次の参考文献は、本明細書中にそのまま援用される。Cheng, Q., D. Nelson, S.W. Zhu, and V.A. Fischetti, "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005); Loeffler, J.M., D. Nelson, and V.A. Fischetti. 2001. Rapid killing of Stroptococcus pneumoniae with a bacteriophage cell wall hydrolase. Science 294: 2170-2172; Nelson, D., Loomis, and V.A. Fischetti. 2001. Prevention and elimination of upper respiratory colonization of mice by group A streptococci by using a bacteriophage lytic enzyme. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 4107-4112; and Schuch, R., D. Nelson, and V.A. Fischetti. 2002. A bacteriolytic agent that detects and kills Bacillus anthracis. Nature 418: 884-889。
【0029】
PlyGBS突然変異ライシンなどのPlyGBSライシンの殺傷活性は、下の実施例3に記載の in vitro 細菌殺傷検定を行うことによって、または下の実施例4に記載の in vivo 細菌殺傷検定を行うことによって定量することができる。
【0030】
突然変異原性PlyGBS突然変異体
図1の表に関して、高活性PlyGBS突然変異ライシンには、PlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)、PlyGBS80(SEQ ID NO:3)、PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)、PlyGBS94(SEQ ID NO:8)およびPlyGBS95(SEQ ID NO:9)から成る群より選択されるライシンが含まれる。図2は、PlyGBSと、ランダム突然変異誘発によって生じたいくつかの突然変異体の略図である。PlyGBS(SEQ ID NO:1)は、N末端[アミノ酸(aa)1〜107]エンドペプチダーゼドメイン;中心(aa150〜394)ムラミダーゼドメイン;およびC末端領域(aa395〜443)を含有する。突然変異体PlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)は、アスパラギン酸からグルタミン酸への一つのアミノ酸変化(D374E)を有する。突然変異体PlyGBS80(SEQ ID NO:3)(aa1〜164)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(aa1〜138)は、ナンセンス突然変異によってもたらされる終止コドンのために、一部切断された突然変異体である。PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)は、plyGBS遺伝子中のbp424〜1255を欠失したアウトオブフレーム欠失に由来したので、結果として、それは、plyGBS遺伝子のC末端領域(bp1256〜1332)のフレームシフトのために、PlyGBSの最初の141アミノ酸+余分の13アミノ酸(DGHALTIQSRRNG)をコードしている。
【0031】
二つの高活性PlyGBS突然変異ライシンを、ミューテーター菌株E.coli XL−1 Red から得た。第一のPlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)は、アスパラギン酸からグルタミン酸へのアミノ酸変化(D374E)を生じる単一の点突然変異を有する。そのPlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)突然変異体は、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)より14倍高い特異的活性を有する。第二の突然変異体PlyGBS80(SEQ ID NO:3)は、plyGBS遺伝子の中心に終止コドン(Q164Stop)を有して、一部切断された分子を生じる。PlyGBS80(SEQ ID NO:3)突然変異体は、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)の最初の163アミノ酸だけを含有しているが、PlyGBS(SEQ ID NO:1)より1.5倍高い特異的活性を有する。
【0032】
二つの高活性突然変異体は、PCRランダム突然変異誘発により識別した。突然変異体PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)は、終止コドンの包含の結果として、双方とも、一部切断された突然変異体であるという点で、PlyGBS80(SEQ ID NO:3)に似ている。PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)突然変異体は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)の最初の138アミノ酸を有する。有意には、PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)突然変異体は、野生型PlyGBSより約25倍高い特異的活性を有する。別の突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)は、plyGBS遺伝子中のbp424〜1255領域を包含していない。結果として、それは、plyGBS遺伝子のC末端領域(bp1256〜1332)のフレームシフトのために、PlyGBS(SEQ ID NO:1)の最初の141アミノ酸+余分の13アミノ酸だけをコードしている。この突然変異体は、野生型より約40倍高い特異的活性を有する。
【0033】
二つの高活性突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)は、Q−Sepharose 陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製し、それら活性画分をプールし、勾配SDS−PAGEゲル上で分析した。図3に示されるように、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)突然変異体は、表1に挙げられる理論分子量(17.0KDa、15.3KDa)の領域近くに泳動した。図3は、精製されたPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(レーン1)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(レーン2)および野生型PlyGBS(レーン3)についてのクーマシー(commassie)ブルー染色SDS−PAGEゲル(4〜20%勾配)を示し、プロテインラダーの分子質量は、キロダルトン(KDa)で示している。
【0034】
【表1】

【0035】
PlyGBS欠失突然変異体
PlyGBS(SEQ ID NO:1)は、エンドペプチダーゼおよびムラミダーゼの二つの触媒ドメインと、C末端未指定ドメインを有する。(Cheng, Q., D. Nelson, S.W. Zhu, and V.A. Fischetti, "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005))。高活性PlyGBS突然変異体として識別されたPlyGBS突然変異体のいくつかは、一つの触媒ドメインのみを含有するが、依然として、野生型PlyGBSより高い活性を有する一部切断された突然変異体である。欠失突然変異体は、PlyGBSのドメイン体制に基づいて設計した。C末端の欠失は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)溶解酵素の特異性および溶解活性を保持しているPlyGBS突然変異体を与える。C末端の欠失には、高活性欠失突然変異体PlyGBS95(SEQ ID NO:9)およびPlyGBS94(SEQ ID NO:8)を比較することによって示されるように、その特異性または溶解活性への実質的な作用がなかった。高活性突然変異体(PlyGBS94(SEQ ID NO:8)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4))は、中心およびC末端の領域に一部切断を有するが、それらが、細胞壁結合ドメインを含むことなく、触媒ドメインを有するにすぎないという点で、リゾチームに似ていると考えられる。しかしながら、卵白リゾチーム(Sigma, St. Louis, MO)には、GBSに対して、更には、これら一部切断されたPlyGBS突然変異体が標的指向する多数の他の細菌種に対して、有意の溶解活性が認められなかった。これら突然変異体に存在するエンドペプチダーゼドメインは、GBSバクテリオファージB30からのPlyGBS溶解酵素(SEQ ID NO:1)中で最近識別されたCHAPドメインに似ている。Pritchard et al., "The bifunctional peptidoglycan lysin of Streptococcus agalactiae bacteriophage B30," Microbiology 150: 2079-2087 (2004)。しかしながら、高活性PlyGBSの一部切断された突然変異体中のCHAPドメインは、それだけで、GBSに対して活性であるのみならず、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)を上回って有意に活性が増加している(約1.5〜約40倍)。CHAPドメインは、多数のファージライシン中に広く存在するが、CHAPドメインは、典型的に、細胞壁結合ドメインの会合を伴うことなく溶解活性を有することはない。
【0036】
図4は、PlyGBSおよびいくつかの一部切断された突然変異体の略図である。突然変異体PlyGBS92(SEQ ID NO:6)は、中心ムラミダーゼドメイン(aa150〜394)を含有するにすぎないが、PlyGBS93(SEQ ID NO:7)は、ムラミダーゼ+C末端ドメイン(aa150〜443)を有する。突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)は、N末端エンドペプチダーゼドメイン(aa1〜146)を含有する。比較のために、中心ムラミダーゼドメインのインフレーム欠失(aa147〜348欠失)を有するPlyGBS95(SEQ ID NO:9)を構築した。図4に示されるように、高活性PlyGBS突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)は、N末端エンドペプチダーゼドメイン(最初の146アミノ酸)を含有し、上で得られた突然変異体PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(最初の138アミノ酸)に似ている。これら二つの突然変異体において、同様のレベルの溶解活性が認められた。突然変異体PlyGBS92(SEQ ID NO:6)は、PlyGBSの中心に位置する推定上のムラミダーゼドメインを含有するが、PlyGBS93(SEQ ID NO:7)突然変異体は、ムラミダーゼドメイン+C末端領域を含有する。突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)中に存在する活性エンドペプチダーゼドメインと比較すると、これら欠失突然変異体はどちらも、GBSに対する溶解活性を全く有していなかった。中心ムラミダーゼドメインのインフレーム欠失を含有する突然変異体(PlyGBS95(SEQ ID NO:9))の溶解活性(図4)を、更に分析した。その突然変異体は、突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)と同様の溶解活性を有する。
【0037】
PlyGBS高活性突然変異体のタンパク質安定性
図5Aは、PlyGBS、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)の4℃での相対活性を示すグラフである。図5Bは、PlyGBS(SEQ ID NO:1)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)の25%グリセロール中において80℃での安定性を示すグラフである。図5Aおよび図5Bのグラフのデータを得るために、PlyGBS(SEQ ID NO:1)と、高活性突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)を、アリコートで、緩衝液中において4℃で(図5A)および25%グリセロール中において−80℃で(図5B)貯蔵した。いろいろな時点において、これら試料の溶解活性を、GBSに対する in vitro 溶解活性で測定し、そしてVmax値を決定して、相対活性を計算した。図5Aに示されるように、4℃では、野生型PlyGBSは、40日間を超えて安定であるが、突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)については、それぞれ、僅か25%および30%の活性を同期間保持し、そして60日目にほとんど失った。しかしながら、これらタンパク質を25%グリセロール中において−80℃で貯蔵した場合(図5B)、3種類全てのタンパク質が、より良い安定性プロフィールを40日目まで有して、60日目の損失もより少なかった。
【0038】
PlyGBSと高活性PlyGBS突然変異ライシンとの溶解活性の比較
図6Aおよび図6Bは、PlyGBSおよびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)について、Vmaxの決定によって溶解活性を測定する in vitro 検定においていろいろな量のPlyGBS(SEQ ID NO:1)および突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(2μg、10μg、50μgおよび100μg)を用いた殺傷作用の比較を示すグラフである。図6Aに示される検定結果を得るために、in vitro 検定において、いろいろな量(2μg、10μg、50μgおよび100μg)のPlyGBS(SEQ ID NO:1)および突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)を用い、そしてOD600の減少を、分光光度計によって監視した。溶解活性は、吸光度の経時減少の初期速度として表した(−mOD600/分)。図6Aに示されるように、Vmaxは、100μgの野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)を用いた場合、僅か−22.8mOD600/分であるが、10μgおよび100μgの突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)についてのVmax値は、それぞれ、−60.5mOD600/分および−266.5mOD600/分である。Vmaxは、OD600降下の初期速度、すなわち、細胞溶解速度を測定するが、100μgの高活性突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)を用いる場合、細胞溶解は、この条件下において正確に測定されるにはあまりに速く生じたので、過小評価されていると考えられる。
【0039】
in vitro 細胞生存率検定における突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の効力を調べた。図6Bに示される検定結果を得るために、in vitro 生存率検定において、同量のPlyGBS(SEQ ID NO:1)およびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(約3,000μg)を用いた。図6Bに示されるように、細胞生存率は、突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)との60分インキュベーション後に約6log減少したが、野生型PlyGBSについては、同時間で僅か2log減少した。10分インキュベーションでは、細胞生存率は、突然変異体について3log減少したが、野生型については、1log未満減少した。これら結果は、突然変異酵素が、GBSに対して有意に増加した溶解活性を有するということを示している。
【0040】
PlyGBSライシンのライシン活性は、塩濃度によって影響されることがありうる。図7のグラフに示される結果を得るために、PlyGBS(SEQ ID NO:1)および突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の溶解活性を、0〜500mMの範囲のいろいろなNaCl塩濃度で測定した。図7は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)およびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)突然変異体の溶解活性への塩濃度の作用を示すグラフである。図7に示されるデータを得るために、精製されたPlyGBS(SEQ ID NO:1)およびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)を、2mM Tris−HCl(pH7.4)に対して一晩透析し、そしていろいろな量の5M NaClを加えて、in vitro 活性検定のための所望の塩濃度を与えた。PlyGBS(SEQ ID NO:1)またはPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の最適塩濃度下における最高溶解活性を、相対活性を計算する標準の100%と考える。図7に示されるように、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)の最適NaCl濃度は、約200mMであるが、突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の最適値は、約50〜100mMへと移行した。図7に示される結果は、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)酵素が、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)突然変異体より広い範囲の塩にわたって活性を保持したが、その突然変異体は、これら変化に一層感受性であったということを示唆している。突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)のpH活性プロフィールを、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)と比較した場合、双方とも、pH5.0にピークを有した。
【0041】
突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)ライシンの活性スペクトルを、同量のライシンを用いて、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)ライシンと比較した。PlyGBS(SEQ ID NO:1)は、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)(GAS)、S.エクイ(S. equi)(GCS)および唾液連鎖球菌(S. salivarius)などの多数の連鎖球菌群および種に対して比較的広いスペクトルを有する(本明細書中にそのまま援用される、Cheng, Q., D. Nelson, S.W. Zhu, and V.A. Fischetti, "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005))。図8は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)およびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)のライシン特異性を比較するグラフである。図8に示されるデータを得るために、in vitro 検定において、同用量のPlyGBSまたはPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(40U)を用い、そして溶解活性を、−mOD60/分として表した。驚くべきことに、双方の酵素は、GBSおよびS.salivarius(図8)、更には、若干の他の連鎖球菌種に対して、同様のレベルの溶解活性(Vmax)を有した。他の細菌種を調べたが、ここにおいて、野生型PlyGBS(SEQ ID NO:1)酵素は、活性をほとんど〜全く有していなかったし(すなわち、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびバチルス・セレウス(Bacillus cereus))、PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)突然変異酵素は、B.cereus について僅かな活性が認められたことを除いて、同様の特異性パターンを示した(図8)。同様の結果が、PlyGBS80(SEQ ID NO:3)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)のような、若干の本発明者の他の一部切断された突然変異体で認められたが、それらは、B.cereus に対して若干の殺傷作用を示す。
【0042】
精製された突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)標品を、GBSに対するその溶解活性について、下の実施例におよび Cheng, Q., D. Nelson, S.W. Zhu, and V.A. Fischetti, "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のマウス膣内モデルにおいて調べた。図9は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)またはPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)でのマウス膣内のGBS定着の制御を示す in vivo 試験結果を示している。図9に示されるデータを得るために、β−エストラジオールバレラートで同調後のマウス膣内に、GBSを定着させた。GBS接種1日後、三群のマウスを、緩衝液(n=10)か、1,500μgのPlyGBS(SEQ ID NO:1)(n=10)かまたは、1,500μgのPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(n=10)で処置した。各々のマウスで、処置前(0時試料)と、2〜4時間間隔での処置後に(2時間および4時間試料)、膣内スワブ採取した。膣内スワブのコロニー計数を、各々の時間間隔について同群内で平均し、プロットした。誤差バーは、平均の標準誤差である。図9に示されるように、突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)で処置されたマウスは、緩衝液対照と比較して、統計的有意降下(処置前の5.54log〜処置後4時間後の1.68log平均)を示した(p<0.0001)。野生型PlyGBSは、5.38log〜処置後4時間後の2.28log平均へのGBSの降下を生じた。統計的分析は、突然変異体PlyGBS90−1が、処置後4時間のPlyGBS処置よりも有効なGBS定着減少を示したということを示した(p=0.0037)。したがって、突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)は、GBS定着の一層有効な減少を示した。
【0043】
変異ポリペプチド
SEQ ID NO:1のポリペプチド配列によってコードされたライシンに加えて、本開示は、ある種の変異ポリペプチドであって、それらのフラグメント、およびある種の置換を含むポリペプチドを含めたものを更に提供する。それら変異ポリペプチドは、高活性PlyGBS突然変異ライシンであってよい。例えば、変異ポリペプチドは、PlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)、PlyGBS80(SEQ ID NO:3)、PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)、PlyGBS94(SEQ ID NO:8)およびPlyGBS95(SEQ ID NO:9)の群より選択される高活性PlyGBS突然変異ライシンである。開示されているような、修飾されたまたは変更された形のタンパク質またはペプチドおよびペプチドフラグメントには、化学合成されている、または組換えDNA技術によって製造されている、または双方のタンパク質またはペプチドおよびペプチドフラグメントが含まれる。これら技術には、例えば、キメラ作製(chimerization)およびシャッフリング(shuffling)が含まれる。タンパク質またはペプチドを、化学合成によって生じる場合、それは、好ましくは、化学前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない、すなわち、それは、タンパク質の合成に関与する化学前駆物質または他の化学物質から分離される。したがって、タンパク質のこのような標品は、目的のポリペプチド以外、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%未満の化学前駆物質または化合物を有する。
【0044】
「変異ポリペプチド配列ファージ関連溶解酵素」は、開示されているような完全長天然配列溶解酵素ポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性溶解酵素ポリペプチドであってよい。このような溶解酵素ポリペプチド変異体には、例えば、一つまたはそれを超えるアミノ酸残基が、完全長天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に加えられているまたは欠失している溶解酵素ポリペプチドが含まれる。溶解酵素ポリペプチド変異体は、開示されているような、完全長天然配列溶解酵素ポリペプチド配列;シグナルペプチドを欠いた溶解酵素ポリペプチド配列;シグナルペプチドを含むまたは不含の溶解酵素ポリペプチドの細胞外ドメイン;または完全長溶解酵素ポリペプチド配列のいずれか他の具体的に定義されたフラグメントと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するであろうし、そして少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%のアミノ酸配列同一性を有することができる。溶解酵素変異ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長さ、しばしば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200または300アミノ酸長さまたはそれより大であってよい。
【0045】
このようなファージ関連溶解酵素変異体には、例えば、一つまたはそれを超えるアミノ酸残基が、SEQ ID NO:1〜9の配列のN末端またはC末端に加えられているまたは欠失している溶解酵素ポリペプチドが含まれる。ある例において、一つまたはそれを超えるアミノ酸は、配列中のいずれか一つまたは複数の位置または配列部分に置換されている、欠失しているおよび/または加えられている。
【0046】
識別されたファージ関連溶解酵素配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント」は、ファージ関連溶解酵素配列を同じリーディングフレーム中で整列させ、そして必要ならば、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後に、そして配列同一性の一部分として保存的置換を全く考慮することなく、それら配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的の整列は、当該技術分野における技術の範囲内であるいろいろな方法で、例えば、ブラストソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて達成することができる。
【0047】
アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のポリペプチド整列は、当該技術分野における技術の範囲内であるいろいろな方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたは Megalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較されている配列の完全長にわたる最大整列を達成するのに必要とされるいずれかのアルゴリズムを含めた、整列を測定するのに適当なパラメーターを決定することができる。
【0048】
アミノ酸配列同一性パーセント値は、更に、下記のように、WU−BLAST−2コンピュータープログラム(Altschul et al., Methods in Enzymology 266:460-480 (1996))を用いることによって得ることができる。WU−BLAST−2検索パラメーターの大部分は、暗黙値に設定する。暗黙値に設定されないものは、次の値で設定する。オーバーラップスパン=1、オーバーラップ率=0.125、ワード閾値(T)=11およびスコアリングマトリックス=BLOSUM62。WU−BLAST−2を用いる場合、アミノ酸配列同一性パーセント値は、(a)天然溶解酵素ポリペプチドに由来する配列を有する、目的の溶解酵素ポリペプチドのアミノ酸配列と、WU−BLAST−2によって決定されるような、目的の比較アミノ酸配列(すなわち、溶解酵素変異ポリペプチドであってよい、目的の溶解酵素ポリペプチドが比較されている配列)との間の対合する同一アミノ酸残基の数を、(b)目的の溶解酵素ポリペプチドのアミノ酸残基の全数で割ることによって決定する。例えば、「アミノ酸配列Bを有するまたはそれに少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列Aを含むポリペプチド」という表現において、アミノ酸配列Aは、目的の比較アミノ酸配列であり、そしてアミノ酸配列Bは、目的の溶解酵素ポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0049】
アミノ酸配列同一性パーセントは、更に、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402(1997))を用いて決定することができる。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov からダウンロードすることができる。NCBI−BLAST2は、いくつかの検索パラメーターを用いるが、その場合、それら検索パラメーターは全て、暗黙値に設定し、例えば、アンマスク(unmask)=イエス、ストランド=全て、期待発生=10、最小の低コンプレキシティー長さ=15/5、マルチパスe値=0.01、マルチパス定数=25、最終のギャップ付き整列のドロップオフ=25およびスコアリングマトリックス=BLOSUM62が含まれる。
【0050】
アミノ酸配列比較のためにNCBI−BLAST2を用いる場合、ある一定のアミノ酸配列Bへの、Bとの、Bに対する、ある一定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性パーセント(或いは、ある一定のアミノ酸配列Bへの、Bとの、Bに対するある一定のアミノ酸配列同一性パーセントを有するまたは含む、ある一定のアミノ酸配列Aと云うことができる)は、次のように計算する。
【0051】
100x分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムNCBI−BLAST2により、AおよびBのそのプログラムの整列中において同一対合として評点されるアミノ酸残基の数であり、そしてYは、B中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、BへのAのアミノ酸配列同一性パーセントは、AへのBのアミノ酸配列同一性パーセントと等しくないということは理解されるであろう。
【0052】
ライシンフラグメント
若干の例において、記載のSEQ ID NO:1またはその変異体などのポリペプチド配列を含めた、ライシンの生物学的活性フラグメントを提供する。それら変異ポリペプチドには、高活性PlyGBS突然変異ライシンが含まれる。変異ポリペプチドは、PlyGBS86−6(SEQ ID NO:2)、PlyGBS80(SEQ ID NO:3)、PlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)、PlyGBS94(SEQ ID NO:8)およびPlyGBS95(SEQ ID NO:9)から成る群より選択される高活性PlyGBS突然変異ライシンであってよい。「フラグメント」には、前述のポリペプチドのアミノ酸配列の全部ではないが一部分と全く同じであるアミノ酸配列を有する変異ポリペプチドが含まれてよい。フラグメントは、「独立(free-standing)」していてよいし、またはそれらが一部分または領域を形成している一層大きいポリペプチド、最も好ましくは、単一の連続領域として、単一の一層大きいポリペプチド中に含まれていてよい。
【0053】
記載のような、実施例のタンパク質またはペプチドフラグメントの生物学的活性部分には、本開示のファージタンパク質のアミノ酸配列に由来するまたは十分に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれるが、それは、ファージタンパク質の完全長タンパク質より少ないアミノ酸を包含し且つ該当する完全長タンパク質の少なくとも一つの活性を示す。典型的に、生物学的活性部分は、該当するタンパク質の少なくとも一つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。本開示のタンパク質またはタンパク質フラグメントの生物学的活性部分は、例えば、10、25、50、100アミノ酸長さより小さいまたは大きいポリペプチドでありうる。更に、タンパク質の他の領域が欠失しているまたは加えられている他の生物学的活性部分は、組換え技術によって製造し且つ天然の形のポリペプチドの一つまたはそれを超える機能的活性について評価することができる。
【0054】
フラグメントには、例えば、アミノ末端を包含する一連の連続した残基、またはカルボキシル末端を包含する一連の連続した残基のような、Natural Binding Region または変異体の少なくとも50アミノ酸長さ領域に該当するアミノ酸配列の一部分(例えば、50%の配列同一性、少なくとも60%、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、または少なくともまたは98%もの配列同一性)を有する一部切断ポリペプチドが含まれてよい。宿主細胞中の分解形のポリペプチドを、更に提供する。更に提供されるのは、αヘリックスおよびαヘリックス形成領域、βシートおよびβシート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、α両親媒性領域、β両親媒性領域、可変性領域、表面形成領域、基質結合領域および高抗原指数領域を含むフラグメントのような、構造的または機能的属性によって特性決定されるフラグメントである。
【0055】
更に提供されるのは、GBS細菌に対して少なくとも10、10、10または10の結合活性を有するフラグメントであって、同様の活性または改善された活性を有するもの、または望ましくない活性が減少しているものを含めたフラグメントである。更に好都合なのは、結合領域が細菌壁に特異的に結合するところのこのような望ましい臨床的機能を与える検出可能な標識または殺細菌性標識と結合部位のコンジュゲートである。
【0056】
本開示のポリペプチドのフラグメントである変異体は、該当する完全長ポリペプチドをペプチド合成によって製造するのに用いることができ;したがって、これら変異体は、本開示の実施例の完全長ポリペプチドを製造するための中間体として用いることができる。
【0057】
溶解酵素ペプチドフラグメントは、多数の慣用的な技術のいずれかによって製造することができる。所望のペプチドフラグメントは、化学合成することができる。別のアプローチは、酵素消化によって、例えば、特定のアミノ酸残基で画定される部位のところでタンパク質を切断することが知られている酵素でタンパク質を処理することによって、または適する制限酵素でDNAを消化し且つ所望のフラグメントを単離することによって溶解酵素フラグメントを生じることを行う。また別の適する技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチドをコードしているDNAフラグメントを単離し且つ増幅させることを行う。DNAフラグメントの所望の末端を画定するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’および3’プライマーで用いられる。好ましくは、溶解酵素ポリペプチドフラグメントは、少なくとも一つの生物学的および/または免疫学的活性を、開示されている天然溶解酵素ポリペプチドと共有する。
【0058】
例えば、本開示のポリペプチドのコーディング配列のフラグメントのライブラリーは、変異体のスクリーニングおよび引き続きの選択のための多彩なポリペプチド集団を生じるのに用いることができる。例えば、コーディング配列フラグメントのライブラリーは、目的のコーディング配列の二本鎖PCRフラグメントを、1分子につき約1回だけニッキングが起こる条件下においてヌクレアーゼで処理し;その二本鎖DNAを変性させ;そのDNAを復元して、異なったニック入り産物からのセンス/アンチセンス対を包含しうる二本鎖DNAを形成させ;S1ヌクレアーゼでの処理により、再形成された二重らせんから一本鎖部分を除去し;そして得られたフラグメントライブラリーを発現ベクター中に連結することによって生じることができる。この方法により、目的のタンパク質のいろいろなサイズのN末端および内部のフラグメントをコードする発現ライブラリーを誘導することができる。点突然変異または一部切断によって作られる組合せライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、およびある選択された性状を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術は、当該技術分野において知られている。大きい遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための、高処理分析にしたがう最も広く用いられている技術は、典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター中にクローニングし;得られたベクターライブラリーで適当な細胞を形質転換し;そして所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードしているベクターの単離を容易にする条件下において組合せ遺伝子を発現させることを包含する。ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を増大させる技術である回帰的アンサンブル突然変異誘発(REM)は、本開示のタンパク質の変異体を識別するスクリーニング検定との組合せで用いることができる(Arkin and Yourvan (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811 7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327 331)。
【0059】
タンパク質またはペプチドフラグメントの免疫学的活性部分には、ファージ酵素を認識する抗体に結合する領域が含まれうる。この場合、タンパク質(またはそのタンパク質をコードする核酸)の最小部分は、ライシンタンパク質を作るファージに特異的として認識可能であるエピトープであってよい。したがって、抗体を結合すると期待されうるし且つ有用である最小ポリペプチド(およびそのポリペプチドをコードする関連核酸)は、8、9、10、11、12、13、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、85または100アミノ酸長さであってよい。8、9、10、11、12または15アミノ酸長さと同程度に短い小配列は、エピトープとして働くのに十分な構造を確実に含むが、5、6または7アミノ酸長さの一層短い配列は、ある条件においてはエピトープ構造を示し且つ価値を有することがありうる。したがって、SEQ ID NO:1で記載されるタンパク質の最小部分には、5、6、7、8、9または10アミノ酸長さと同程度に小さいポリペプチドが含まれてよい。
【0060】
このような小さいタンパク質および/または核酸(または一層大きい分子のタンパク質および/または核酸領域)と機能性を共有する相同性タンパク質および核酸は、当業者に理解されるように製造することができる。相同性であってよいこのような小さい分子、および一層大きい分子の短い領域は、実施例として予定されるが、制限されない。このような有効な領域の相同性は、SEQ ID NO:1と比較して、少なくとも50%、65%、75%、85%、少なくとも90%、95%、97%、98%、または少なくとも99%であってよい。これら相同性パーセント値は、保存的アミノ酸置換のために、変更を包含しない。
【0061】
記載のようなエピトープは、抗体を生じるのに用いることができるし、そして更に、ライシンタンパク質を認識する分子への結合を検出するのに用いることができる。別の例は、規則的免疫感作または相展示アプローチなどによるエピトープの使用によって生じることができる抗体または他の特異的結合剤のような分子であるが、その場合、結合剤が可能ならば、エピトープを用いてライブラリーをスクリーニングすることができる。このような分子は、ライシンタンパク質の一つまたはそれを超えるエピトープ、またはライシンタンパク質をコードする核酸を認識する。エピトープを認識する抗体は、単クローン性抗体、ヒト化抗体、または抗体タンパク質の一部分であってよい。望ましくは、エピトープを認識する分子は、そのエピトープについて、その分子が血清アルブミンについて有するのと同程度の少なくとも10倍強い特異的結合を有する。特異的結合は、親和力(Km)として測定することができる。特異的結合は、同じ条件下において、血清アルブミンへのそれよりも少なくとも10、10、10、10、10、10、10またはそれよりなお高くあってよい。
【0062】
一つの例において、抗体または抗体フラグメントは、ライシンタンパク質の存在を検出するのに有用な形である。いろいろな形およびそれらの合成方法は、当業者に理解されるように知られている。抗体は、蛍光体のようなレポーター分子または原子;光学的シグナルを生じる酵素;ケミルミフォア(chemilumiphore);微粒子;または放射性原子と共役(共有結合複合体形成)することができる。抗体または抗体フラグメントは、例えば、動物の免疫感作後に、in vivo で合成することができる。抗体または抗体フラグメントは、遺伝的組換え後に、細胞培養によって合成することができる。抗体または抗体フラグメントは、細胞合成および化学修飾の組合せによって製造することができる。
【0063】
変異体ポリペプチド
置換変異体は、アミノ酸配列中の少なくとも一つの残基が除去され、そして異なった残基がその場所に挿入されたものである。このような置換は、タンパク質の特性を微細にモジュレーションすることが望まれる場合、次の表2にしたがって行うことができる。表2は、タンパク質中の元のアミノ酸に置き換えることができるし、そして保存的置換とみなされるアミノ酸を示している。
【0064】
【表2】

【0065】
機能または免疫学的同一性の実質的な変化は、表2の場合よりも保存的でない置換を選択することによって、すなわち、(a)置換区域のポリペプチド主鎖の、例えば、シートまたはらせんコンホメーションとしての構造;(b)標的部位の分子の電荷または疎水性;または(c)側鎖の嵩を維持することへのそれらの作用が一層有意に異なる残基を選択することによって作られる。概して、タンパク質性状の最大変化を生じると期待される置換は、(a)親水性残基、例えば、セリルまたはトレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルに(またはで)置換される;(b)システインまたはプロリンが、いずれか他の残基に(またはで)置換される;(c)陽性側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニルまたはヒスタジルが、陰性残基、例えば、グルタミルまたはアスパルチルに(またはで)置換される;または(d)嵩高側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有していないもの、例えば、グリシンに(またはで)置換されるものであろう。
【0066】
これらアミノ酸の置換または欠失または付加の作用は、溶解タンパク質の誘導体について、感染した細菌宿主中のファージによって示されるDNA架橋薬への感受性を補足するタンパク質誘導体の能力を分析することによって評価することができる。これら検定は、上記のように、タンパク質誘導体をコードしているDNA分子を細菌中にトランスフェクションすることによって行うことができる。
【0067】
溶解酵素ポリペプチドの機能または免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換区域のポリペプチド主鎖の、例えば、シートまたはらせんコンホメーションとしての構造;(b)標的部位の分子の電荷または疎水性;または(c)側鎖の嵩を維持することへのそれらの作用が有意に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖性状に基づく群に分けられる。
【0068】
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gin、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0069】
非保存的置換は、これらクラスの一つが別のクラスにメンバー交換することを必要とすることがありうる。このような置換された残基は、更に、保存的置換部位に、または残りの(非保存的)部位に導入することができる。
【0070】
ポリペプチド変異は、オリゴヌクレオチドに媒介される(部位特異的)突然変異誘発、アラニン走査およびPCR突然変異誘発のような、当該技術分野において知られている方法を用いて行うことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter et al., Nucl. Acids Res., 13:4331(1986); Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10:6487(1987)]、カセット突然変異誘発[Wells et al., Gene, 34:315(1985)]、制限選択突然変異誘発[Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317:415(1986)]または他の既知の技術は、クローン化DNAに行って、溶解酵素変異体DNAを生じることができる。
【0071】
走査アミノ酸分析は、相接する配列に沿った一つまたはそれを超えるアミノ酸を識別するのに用いることもできる。例えば、走査アミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸であってよい。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリンおよびシステインが含まれる。アラニンは、β炭素を越えた側鎖を脱離し且つ変異体の主鎖コンホメーションをあまり変更しないと考えられるので、それは、典型的に、この群の中で好ましい走査アミノ酸である[Cunningham and Wells, Science. 244: 1081-1085(1989)]。更に、アラニンは、最も一般的なアミノ酸であるので、典型的に好ましい。更に、それは、埋没した位置でも露出した位置でも、頻繁に見出される[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol. 150:1(1976)]。アラニン置換が、適当量の変異体を生じない場合、等配電子(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
【0072】
キメラ融合タンパク質
若干の例において、ライシンは、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合した溶解酵素を含むキメラ分子を形成するように修飾することもできる。「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチドに機能的に連結した本開示のポリペプチドの全部または(例えば、生物学的活性)部分を含む。キメラタンパク質またはペプチドは、例えば、二つまたはそれを超える活性部位を有する二つまたはそれを超えるタンパク質を組み合わせることによって生じる。キメラタンパク質およびペプチドは、同じまたは異なった分子に独立して作用することができるので、二つまたはそれを超える異なった細菌感染を同時に処置する可能性を有する。キメラタンパク質およびペプチドは、更に、2か所以上の場所の細胞壁を切断することによって細菌感染を処置するのに用いられる。
【0073】
一つの例において、このようなキメラ分子は、抗標識抗体が選択的に結合しうるエピトープを与える標識ポリペプチドと溶解酵素の融合を含む。エピトープ標識は、概して、溶解酵素のアミノ末端またはカルボキシル末端に置かれる。このようなエピトープ標識付きの形の溶解酵素の存在は、標識ポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。更に、エピトープ標識の供給は、エピトープ標識に結合する抗標識抗体または別のタイプのアフィニティーマトリックスを用いたアフィニティー精製によって溶解酵素を容易に精製することを可能にする。いろいろな標識ポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体は、当該技術分野において周知である。例には、ポリヒスチジン(ポリhis)標識またはポリヒスチジン・グリシン(ポリhis−gly)標識;fluHA標識ポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field et al., Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165(1988)];c−myc標識およびそれの8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体および9E10抗体[Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616(1985)1];および単純ヘルペス(Herpes Simplex)ウイルス糖タンパク質D(gD)標識およびその抗体[Paborsky et al., Protein Engineering: (6):547-553 (1990)]が含まれる。他の標識ポリペプチドには、Flag−ペプチド[Hopp et al., BioTechnology, 6:1204-1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martin et al, Science 255:192-194(1992)];αチューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Chem., 266:15163-15166(1991)1];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識(Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397(1990))が含まれる。
【0074】
別の例において、キメラ分子は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定領域と溶解酵素の融合を含んでよい。二価の形のキメラ分子(「イムノアドヘシン(immunoadhesin)」とも称される)について、このような融合は、IgG分子のFc領域へありうる。Ig融合には、Ig分子中の少なくとも一つの可変領域の代わりに、可溶性(膜貫通ドメイン欠失または失活)形の溶解酵素ポリペプチドの置換が含まれてよい。免疫グロブリン融合には、IgG1分子のヒンジCH2およびCH3、またはヒンジCH1、CH2およびCH3領域が含まれてよい。免疫グロブリン融合の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5,428,130号も参照されたい。
【0075】
別の例おいて、キメラタンパク質またはペプチドは、そのN末端に異種シグナル配列を含有する。例えば、本開示のポリペプチドの天然シグナル配列は、除去し且つ別のタンパク質からのシグナル配列と交換することができる。例えば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列は、異種シグナル配列として用いることができる(本明細書中に援用される、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, 1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例には、メリチンおよびヒト胎盤アルカリ性ホスファターゼ(Stratagene; La Jolla, California)の分泌配列が含まれる。また別の例において、有用な原核生物異種シグナル配列には、phoA分泌シグナル(Sambrook et al., 上記)およびプロテインA分泌シグナル(Pharmacia Biotech; Piscataway, New Jersey)が含まれる。
【0076】
有用な融合タンパク質の別の例は、本開示のポリペプチドが、GST配列のC末端に融合しているGST融合タンパク質である。このようなキメラタンパク質は、本開示の組換えポリペプチドの精製を容易にすることができる。
【0077】
別の例は、本開示のポリペプチドの全部または一部分が、免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列に融合している免疫グロブリン融合タンパク質を示している。免疫グロブリン融合タンパク質は、医薬組成物中に包含され且つ対象に投与されて、(可溶性または膜に結合した)リガンドと、細胞(受容体)表面上のタンパク質との間の相互作用を阻害し、それによって、in vivo シグナル伝達を抑制することができる。その免疫グロブリン融合タンパク質は、本開示のポリペプチドのコグネイトリガンドのバイオアベイラビリティーを変更することができる。リガンド/受容体相互作用の阻害は、細胞生存をモジュレーションする(すなわち、促進するまたは阻害する)細菌関連疾患および障害双方を処置するのに治療的に有用でありうる。更に、本開示の免疫グロブリン融合タンパク質は、対象において本開示のポリペプチドに対して向けられた抗体を生じるのに;リガンドを精製するのに;そしてスクリーニング検定においては、リガンドと受容体の相互作用を阻害する分子を識別するのに、免疫原として用いることができる。本開示のキメラおよび融合のタンパク質およびペプチドは、標準的な組換えDNA技術によって生じることができる。
【0078】
別の例において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含めた慣用的な技術によって合成することができる。或いは、遺伝子フラグメントのPCR増幅を、二つの連続した遺伝子フラグメント間に相補的オーバーハングを生じた後、それらを、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングし且つ再増幅させることができるアンカープライマーを用いて行うことができる(すなわち、Ausubel et al., 上記を参照されたい)。更に、融合部分(すなわち、GSTポリペプチド)を既にコードしている多数の発現ベクターが、商業的に入手可能である。本開示のポリペプチドをコードしている核酸は、このような発現ベクター中に、融合部分が本開示のポリペプチドにインフレームで連結されるようにクローン化することができる。
【0079】
シグナル配列との組合せ
ポリペプチドのシグナル配列は、目的の分泌タンパク質または他のタンパク質の分泌および単離を容易にすることによるのと同様に、本開示のタンパク質およびペプチドおよびペプチドフラグメントの粘膜へおよび粘膜からの膜貫通移動を容易にすることができる。シグナル配列は、典型的に、一つまたはそれを超える切断イベントにおいて分泌中に成熟タンパク質から概して切断される疎水性アミノ酸のコアを特徴とする。このようなシグナルペプチドは、それらが、分泌経路を介して通過する時に、成熟タンパク質からのシグナル配列の切断を可能にするプロセシング部位を含有する。記載のポリペプチドは、更に、シグナル配列自体へも、シグナル配列の不存在下におけるポリペプチド(すなわち、切断産物)へも、シグナル配列を含むことができる。一例において、本開示のシグナル配列をコードしている核酸配列は、普通は分泌されないまたはそれ以外の場合も単離し難いタンパク質のような目的のタンパク質へ、発現ベクター中で機能的に連結することができる。そのシグナル配列は、発現ベクターが形質転換される真核生物宿主によるような、タンパク質の分泌を支配するが、その後、または同時に、シグナル配列は切断される。次に、タンパク質は、技術認識されている方法により、細胞外媒質から容易に精製することができる。或いは、シグナル配列は、GSTドメインを有するような、精製を容易にする配列を用いて、目的のタンパク質に連結することができる。
【0080】
別の例において、シグナル配列は、調節配列、すなわち、プロモーター、エンハンサー、リプレッサーを識別するのに用いることができる。シグナル配列は、ペプチドの最もアミノ末端の配列であるので、そのアミノ末端側のシグナル配列に隣接する核酸は、転写に影響を与える調節配列であろうと考えられる。したがって、シグナル配列の全部または一部分をコードするヌクレオチド配列は、シグナル配列およびその隣接する領域を識別し且つ単離するプローブとして用いることができ、そしてこの隣接する領域を調べて、その中の調節要素を識別することができる。本開示のポリペプチドの変異体は、変更されたアミノ酸配列を有することができるし、そしてアゴニスト(模擬体)かまたはアンタゴニストとして機能することができる。変異体は、突然変異誘発、すなわち、不連続の点突然変異または一部切断によって生じることができる。アゴニストは、天然に存在する形のタンパク質の生物活性の部分集合または実質的に同じ活性を保持することができる。タンパク質のアンタゴニストは、天然に存在する形のタンパク質の一つまたはそれを超える活性を、例えば、目的のタンパク質を包含する細胞シグナリングカスケードの下流または上流のメンバーに競合的に結合することによって阻害することができる。したがって、特異的な生物学的作用は、限られた機能を有する変異体での処置によって引き出すことができる。天然に存在する形のタンパク質の生物活性の部分集合を有する変異体での対象の処置は、対象への副作用が、天然に存在する形のタンパク質での処置に相対して少ないことがありうる。アゴニスト(模擬体)かまたはアンタゴニストとして機能する本開示のタンパク質の変異体は、本開示のタンパク質の突然変異体、すなわち、一部切断突然変異体の組合せライブラリーを、アゴニストまたはアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって識別することができる。一例において、多彩な変異体ライブラリーは、核酸レベルでの組合せ突然変異誘発によって作成され、多彩な遺伝子ライブラリーによってコードされている。多彩な変異体ライブラリーは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列中に酵素的に連結して、可能性のあるタンパク質配列の一組の縮重が、個々のポリペプチドとして、または或いは、一組のより大きい融合タンパク質として(すなわち、ファージ展示について)発現可能であるようにすることによって生じることができる。本開示のポリペプチドの可能性のある変異体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から生じるのに用いることができるいろいろな方法がある。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当該技術分野において知られている(すなわち、本明細書中に援用される、Narang (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al., (1984) Science 198:1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11:477 を参照されたい)。
【0081】
シャッフリングされた酵素
開示された一つまたはそれを超える溶解酵素ペプチドまたは変異体、遺伝子産物またはペプチドを含むシャッフリングされたタンパク質またはペプチドに、ランダムに切断され且つ再集合して一層活性なまたは特異的なタンパク質にされる二つ以上の関連ファージタンパク質またはタンパク質ペプチドフラグメントについて、ある種の例を提供する。シャッフリングされたオリゴヌクレオチド、ペプチドまたはペプチドフラグメント分子を、選択しまたはスクリーニングして、所望の機能的性状を有する分子を識別する。この方法は、例えば、Stemmer、米国特許第6,132,970号(Method of shuffling polynucleotides);Kauffman、米国特許第5,976,862号(Evolution via Condon based Synthesis);および Huse、米国特許第5,808,022号(Direct Codon Synthesis)に記載されている。これら特許の内容は、本明細書中に援用される。シャッフリングは、鋳型タンパク質より10〜100倍を超えて活性であるタンパク質を生じるのに用いられる。鋳型タンパク質は、異なったいろいろなライシンまたはホーリン(holin)タンパク質の中から選択される。シャッフリングされたタンパク質またはペプチドは、例えば、一つまたはそれを超える結合ドメインおよび一つまたはそれを超える触媒ドメインを構成する。結合ドメインまたは触媒ドメインは各々、同じまたは異なったファージまたはファージタンパク質に由来する。シャッフリングされたドメインは、単独でかまたは、他の遺伝子または遺伝子産物との組合せで、ペプチドフラグメントへと翻訳可能である、遺伝子または遺伝子産物としてのオリゴヌクレオチド基材分子であるかまたは、それらは、ペプチド基材分子である。遺伝子フラグメントには、DNA、RNA、DNA RNAハイブリッド、アンチセンスRNA、リボザイム、EST、SNIP、および他のオリゴヌクレオチド基材分子であって、単独でかまたは他の分子との組合せで、ペプチドαへと翻訳可能なまたは不能なオリゴヌクレオチド分子を生じるもののいずれかの分子が含まれる。
【0082】
ポリペプチドの共有結合修飾
溶解酵素、またはそのフラグメントまたは変異体の共有結合修飾について、他の例を提供する。共有結合修飾の一つのタイプは、溶解酵素ポリペプチドの標的アミノ酸残基を、溶解酵素のN末端またはC末端の残基または選択された側鎖と反応可能である有機誘導体形成薬と反応させることを包含する。二官能性薬での誘導体形成は、例えば、抗溶解酵素抗体を精製する方法で用いるための水不溶性支持体マトリックスまたは表面へ溶解酵素を架橋するのに有用であるし、逆もまた同じである。一般的に用いられる架橋薬には、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン;グルタルアルデヒド;N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル;3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルを含めたホモ二官能性イミドエステル;ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミド;およびメチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオールプロピオイミデートなどの物質が含まれる。
【0083】
他の修飾には、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基の、それぞれ該当するグルタミル残基およびアスパルチル残基への脱アミド;プロリンおよびリシンのヒドロキシル化;セリル残基またはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化;リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のαアミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & C., San Francisco, pp 79-86(1983)];N末端アミンのアセチル化;およびいずれかのC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0084】
溶解酵素ポリペプチドの提供される別のタイプの共有結合修飾は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変更することを含む。天然グリコシル化パターンを変更することは、天然配列溶解酵素中に見出される一つまたはそれを超える炭水化物部分を(根底にあるグリコシル化部位を除去することによってかまたは、化学的および/または酵素的手段によってグリコシル化を欠失させることによって)欠失すること、および/または天然配列溶解酵素中に存在していない一つまたはそれを超えるグリコシル化部位を加えることを本明細書中の目的で意味するものである。更に、その句は、存在するいろいろな炭水化物部分の性質および比率の変化を伴う、天然タンパクのグリコシル化の定量的変化を包含する。
【0085】
溶解酵素ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を変更することによって達成することができる。その変更は、例えば、(O連結したグリコシル化部位について)天然配列溶解酵素への一つまたはそれを超えるセリン残基またはトレオニン残基の付加、またはそれによる置換によって行うことができる。溶解酵素アミノ酸配列は、DNAレベルでの変化によって、具体的には、溶解酵素ポリペプチドをコードしているDNAを、所望のアミノ酸へと翻訳するであろうコドンが生じるように予め選択された塩基のところで突然変異させることによって変更することもできる。
【0086】
溶解酵素ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによる。このような方法は、当該技術分野において、例えば、1987年9月11日公開のWO87/05330号および Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306(1981) に記載されている。
【0087】
溶解酵素ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にまたは酵素的に、またはグリコシル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードしているコドンの突然変異置換によって達成することができる。化学的な脱グリコシル法は、当該技術分野において知られているし、例えば、Hakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987) および Edge et al., Anal. Biochem., 118:131 (1981) によって記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al., Meth. Enzymol., 138:350(1987) によって記載のように、いろいろなエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成することができる。
【0088】
溶解酵素の別のタイプの共有結合修飾は、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号;または第4,179,337号に示された方法で、溶解酵素ポリペプチドを、いろいろな非タンパク質性ポリマーの一つ、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンへと連結することを含む。
【0089】
ホーリンタンパク質
細菌ライシンは、ホーリンタンパク質を含んでいてもよいし、またはそれとの組合せで投与されてよい。ホーリンタンパク質は、例えば、一つまたはそれを超える溶解酵素ペプチド、またはそれらの変異体またはフラグメントとの組合せで投与することができる。ホーリンタンパク質は、細胞膜中に孔を生じ、更に用いることができる。ホーリンタンパク質または「ホーリン」は、致死的膜損傷を形成することがありうる。溶解タンパク質のように、ホーリンタンパク質は、ファージにコードされ且つ運ばれる。大部分のホーリンタンパク質配列は、短く、そしてきわめて親水性のカルボキシ末端ドメインを含むが、全体としては事実上、疎水性である。多くの場合、推定上のホーリンタンパク質は、ファージの酵素的活性ドメイン中の異なったリーディングフレーム上にコードされている。他の場合、ホーリンタンパク質は、細胞壁溶解タンパク質をコードしているDNAの隣のまたは近くのDNA上にコードされている。ホーリンタンパク質は、しばしば、ファージ感染の後期中に合成され且つ細胞質膜中で見出され、そこで、それらは膜損傷を引き起こす。
【0090】
ホーリンは、一次構造分析に基づく二つの一般的なクラスに分類することができる。クラスIホーリンは、通常は、95残基またはそれより長いが、三つの可能性のある膜貫通ドメインを有することがありうる。クラスIIホーリンは、通常は、より小さく、少なくとも約65〜95残基であり、荷電した残基および疎水性残基の分布が、二つのTMドメインを示している(Young, et al. Trends in Microbiology v.8, No.4, March 2000)。しかしながら、グラム陽性宿主のファージについては少なくとも、二重成分溶解システムは、普遍的でないかもしれない。ホーリンの存在は、いくつかのファージについて示されたまたは示唆されたが、全てのファージについて推定上のホーリンをコードしている遺伝子は、まだ見出されていない。ホーリンは、例えば、乳酸球菌バクテリオファージTuc2009、乳酸球菌NLC3、肺炎球菌バクテリオファージEJ1、ラクトバチルス・ガセリ(LactoBacillus gasseri)バクテリオファージNadh、Staphylococcus aureus バクテリオファージTwort、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)バクテリオファージ、肺炎球菌ファージCp1、枯草菌(Bacillus subtillis)ファージM29、デルブリュック乳酸桿菌(LactoBacillus delbrueckki)バクテリオファージLL Hライシン、および Staphylococcus aureus のバクテリオファージN11を含めたいくつかの細菌中に存在することが分かった。(Loessner, et al., Journal of Bacteriology, Aug. 1999, p.4452 4460)。
【0091】
ポリヌクレオチド
ライシンは、かなり多数の異なった方法によって生じこるとができる。その溶解酵素は、このGBS細菌に特異的なバクテリオファージによって送達される遺伝コードをこのGBS細菌に感染させることによって生じる。別の例において、溶解酵素は、適するハイブリダイゼーション条件下において、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列をコードしているポリヌクレオチド配列の塩基の補体とハイブリッド形成する配列、またはSEQ ID NO:1を有する一つまたはそれを超えるポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列の塩基の配列を有するDNAを含む核酸からの組換え体生産によって生じる。溶解酵素は、溶解酵素の遺伝子をファージゲノムから取り出し、この遺伝子を転移ベクター中に導入し、そしてこの転移ベクターを発現系中にクローニングすることによって生じることができるが、この場合、転移ベクターはプラスミドである。発現系は、上に挙げられた群のいずれかより、またはE.coli より選択される細菌であってよい。別の発現系において、酵素の生産は、細胞不含発現系による。
【0092】
記載された溶解酵素ポリペプチドをコードしている完全長天然ポリヌクレオチド配列に加えて、溶解酵素変異体を製造することができると考えられる。遺伝コードの縮重は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を維持しながら、DNA分子のヌクレオチド配列中の主要な変異を可能にするので、それら実施例の範囲を更に広げる。例えば、代表的なアミノ酸残基は、アラニンである。これは、ヌクレオチドコドントリプレットGCTによってcDNA中にコードされうる。遺伝コードの縮重ゆえに、三つの他のヌクレオチドコドントリプレット、すなわち、GCT、GCCおよびGCAも、アラニンをコードする。したがって、遺伝子のヌクレオチド配列は、コードされるタンパク質のアミノ酸組成またはタンパク質の特性に影響を与えることなく、この位置でこれら三つのコドンのいずれかへと変化しうると考えられる。具体的なアミノ酸のヌクレオチドコドンの変異および遺伝コードは、当業者に周知である。遺伝コードの縮重に基づいて、変異DNA分子は、上記のような標準的なDNA突然変異誘発技術を用いて、開示されたcDNA分子から誘導することができるし、またはDNA配列の合成によることができる。遺伝コードの縮重に基づく配列変異によって、開示されたcDNA配列に緊縮条件下でハイブリッド形成しないDNA配列は、この開示によって本明細書中に包含される。
【0093】
溶解酵素変異体は、例えば、適当なヌクレオチド変化を溶解酵素DNA中に導入することによって、および/または所望の溶解酵素ポリペプチドの合成によって製造することができる。当業者は、アミノ酸変化が、グリコシル化部位の数または位置を変化させるまたは膜アンカリング(anchoring)特性を変更するように、溶解酵素の翻訳後プロセスを変更することができるということを理解するであろう。
【0094】
当業者は、本明細書中に記載のDNA突然変異誘発技術が、溶解タンパク質の必須特性を依然として維持する、GBS細菌に特異的なバクテリオファージライシンをコードする広範囲のDNA分子を生じることができるということを理解するであろう。新たに誘導されるタンパク質は、更に、より十分に下に記載されるように、溶解タンパク質の特性への変異を得るために選択することができる。このような誘導体には、僅かな欠失、付加および置換を含めた、アミノ酸配列の変異を有するものが含まれる。アミノ酸配列変異を導入する部位は、予め決定されるが、突然変異自体は、予め決定される必要がない。例えば、ある一定部位での突然変異の実行を最適にするには、ランダム突然変異誘発を、標的コドンまたは領域で行い、そして発現されたタンパク質変異体を、所望の活性の最適組合せについてスクリーニングすることができる。上記のような既知の配列を有するDNA中の所定の部位での置換突然変異を行う技術は、周知である。アミノ酸置換は、典型的に、単一の残基部分であり;挿入は、通常は、1〜10アミノ酸残基の程度であろうし;そして欠失は、約1〜30残基であろう。欠失または挿入は、単一の形であってよいが、好ましくは、隣接する対、すなわち、2残基の欠失または2残基の挿入で行われる。置換、欠失、挿入またはいずれかそれらの組合せは、最終コンストラクトに達するように組み合わせることができる。
【0095】
ファージ関連溶解酵素配列に関する「核酸配列同一性パーセント」は、ファージ関連溶解酵素配列を整列させ、そして必要ならば、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後、それら配列中のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドの百分率という意味である。核酸配列同一性パーセントを決定する目的の整列は、公的に入手可能なコンピューターソフトウェアの使用が含まれるがこれに制限されるわけではない、当業者の技術の範囲内であるいろいろな方法で達成することができる。
【0096】
GBSに特異的なバクテリオファージに遺伝的にコードされる溶解酵素およびそれら酵素のフラグメントをコードするヌクレオチド配列に加えて、対応して提供されるのは、溶解酵素cDNA分子またはその相補鎖に緊縮条件下でハイブリッド形成するDNA分子と、cDNA分子の相補的DNA鎖である。このようなハイブリッド形成性分子には、ヌクレオチドの置換、欠失および付加を含めた、僅かな配列変化のみが異なるDNA分子が含まれる。この開示によって更に考えられるのは、ポリメラーゼ連鎖反応において有用なプライマーまたは有効なDNAハイブリダイゼーションプローブとして用いることができるオリゴヌクレオチドのような、cDNA分子またはその相補鎖の少なくともセグメントを含む単離されたオリゴヌクレオチドである。ハイブリッド形成性DNA分子および溶解酵素cDNA上の変異体は、標準的な分子生物学技術によって容易に生じることができる。
【0097】
ファージ関連溶解酵素をコードしているいろいろな単離されたcDNA配列およびこのような遺伝子配列とハイブリッド形成する部分配列は、溶解酵素の組換え生産に有用である。この場合の代表的な核酸配列は、SEQ ID NO:1〜9のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、これらポリペプチド配列をコードしているDNAの相補的配列と緊縮条件下でハイブリッド形成する一つおよび複数の配列である。これら配列および図に示されているものとハイブリッド形成する核酸の配列のまた更に別の変異体は、更に、得ることができる天然の変異体を含めた、本開示による溶解酵素の生産での使用が考えられる。
【0098】
特異的DNA突然変異の検出は、特異的オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーション(Wallace et al. (1986). Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:257-261);直接DNAシークエンシング法(Church and Gilbert (1988). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1991-1995);制限酵素の使用(Flavell et al. (1978). Cell 15:25);変性試薬含有ゲル中の電気泳動移動度の基準での区別(Myers and Maniatis (1986). Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:275-284);RNアーゼ保護(Myers et al. (1985). Science 230:1242);化学的切断(Cotton et al. (1985). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397-4401)(本明細書中に援用される);およびリガーゼに媒介される検出法(Landegren et al., 1988)のような方法によって達成することができる。
【0099】
多数の考えられる変異DNA分子には、M13プライマー突然変異誘発のような標準的なDNA突然変異誘発技術によって生じるものが含まれる。これら技術の詳細は、Sambrook et al. (1989) In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.(本明細書中に援用される)に与えられている。このような技術の使用により、開示されたものとは僅かに異なる変異体を生じることができる。具体的に開示されたものの誘導体であるDNA分子およびヌクレオチド配列であって、ヌクレオチドの欠失、付加または置換により、開示されたものとは異なるが、BSMRタンパク質の機能的特性を有するタンパク質を依然としてコードしているものは、本開示によって考えられる。更に包含されるのは、開示されたペプチド配列の全てまたは一部分をコードしているDNA分子またはそれらの変異体から誘導される小さいDNA分子である。このような小さいDNA分子には、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして用いるのに適するオリゴヌクレオチドが含まれる。これら小さいDNA分子は、それ自体で、DBS細菌に特異的なバクテリオファージに遺伝的にコードされる溶解酵素の少なくともセグメントを含むであろうし、そしてPCRの目的には、遺伝子の少なくとも10〜15ヌクレオチド配列、より好ましくは、15〜30ヌクレオチド配列を含むであろう。開示されたDNA分子から上記のように誘導されるDNA分子およびヌクレオチド配列は、更に、開示されたDNA配列に緊縮条件下でハイブリッド形成するDNA配列またはそれらのフラグメントとして定義することができる。
【0100】
正常配列または突然変異配列に特異的なオリゴヌクレオチドは、商業的に入手可能な機械を用いて化学的に合成し、同位体(32Pなど)で放射性標識し、または(ビオチンなどの標識で(Ward and Langer et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6633-6657 1981)(本明細書中に援用される))非放射性標識し、そして電気泳動後のゲルからの転移またはドットブロットによって膜または他の固体支持体上に固定された個々のDNA試料にハイブリッド形成させる。これら特異的配列の存在または不存在は、オートラジオグラフィーまたは蛍光定量または比色定量反応のような方法で可視化する(Gebeyehu et al. Nucleic Acids Res. 15:4513-4534 1987)(本明細書中に援用される)。
【0101】
遺伝子の正常形と突然変異形との間の配列差は、Church and Gilbert (1988)(本明細書中に援用される)の直接DNAシークエンシング法によって示すこともできる。クローン化されたDNAセグメントは、特異的DNAセグメントを検出するプローブとして用いることができる。この方法の感度は、PCRと組み合わされた場合にきわめて増大する(Stoflet et al. Science 239:491-494, 1988)(本明細書中に援用される)。このアプローチにおいて、増幅された配列中にあるシークエンシング用プライマーは、修飾されたPCRによって生じる二本鎖PCR産物または一本鎖鋳型と一緒に用いられる。配列決定は、放射性標識されたヌクレオチドでの慣用的な手順によって、または蛍光標識での自動シークエンシング手順によって行われる。このような配列は、記載の実施例による溶解酵素の生産に有用である。
【0102】
特定の度合いのストリンジェンシーに該当するハイブリダイゼーション条件は、選択されたハイブリダイゼーション法の性質、および用いられるハイブリッド形成性DNAの組成および長さに依存して異なる。概して、ハイブリダイゼーション温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(特に、ナトリウムイオン濃度)は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定するであろう。特定の度合いのストリンジェンシーに達するのに必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算は、Sambrook et al. (1989), In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., chapters 9 and 11,(本明細書中に援用される)によって論じられている。
【0103】
このような計算の例は、次の通りである。ハイブリダイゼーション実験は、標的DNA分子へのDNA分子(例えば、GBS細菌に特異的な細菌に遺伝的にコードされる溶解酵素の天然の変異体)のハイブリダイゼーションによって行うことができる。標的DNAは、例えば、当該技術分野において周知の且つ Sambrook et al. (1989) In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.(本明細書中に援用される)に記載の技術であるサザンブロッティング(Southern (1975). J. Mol. Biol. 98:503)により、アガロースゲル中で電気泳動され、そしてニトロセルロース膜に移された該当するcDNAであってよい。同位体P(32)標識されたdCTPで標識された標的プローブとのハイブリダイゼーションは、6倍SSCのような高イオン強度の溶液中において、融解温度Tm(下に記載される)より低い20〜25℃である温度で行われる。サザンブロット上の標的DNA分子が、10ngまたはそれを超えるDNAを含有する場合のこのようなサザンハイブリダイゼーション実験について、ハイブリダイゼーションは、(10CPM/mugに等しいまたはそれより大の比活性を有する)1〜2ng/mlの放射性標識プローブを用いて6〜8時間行われる。ハイブリダイゼーション後、ニトロセルロースフィルターを洗浄して、バックグラウンドハイブリダイゼーションを除去する。洗浄条件は、特異的ハイブリダイゼーションシグナルを保持しながらバックグラウンドハイブリダイゼーションを除去することが可能な程度に緊縮である。「Tm」という用語は、有効なイオン条件下において、放射性標識プローブ分子がその標的DNA分子にハイブリッド形成することがない温度より上の温度である。
【0104】
このようなハイブリッド分子のTmは、次の方程式から算出することができる。Tm=81.5℃−16.6log10のナトリウムイオン強度)+0.41(%G+C)−0.63(ホルムアミド%)−(600/l)(式中、l=塩基対中のハイブリッドの長さ)。この方程式は、0.01M〜0.4Mの範囲内のナトリウムイオン濃度に妥当であるが、より高いナトリウムイオン濃度の溶液中のTmの計算には、あまり正確ではない(Bolton and McCarthy (1962). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:1390)(本明細書中に援用される)。その方程式は、更に、30%〜75%の範囲内のG+C含量を有するDNAに妥当であり、そして更に、100ヌクレオチド長さを超えるハイブリッドに当てはまる。オリゴヌクレオチドプローブの挙動は、Sambrook et al. (1989) In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.(本明細書中に援用される)の11章に詳細に記載されている。
【0105】
したがって、%GC=45%を有するcDNAのオープンリーディングフレームの最初の150塩基対に由来する150塩基対DNAプローブの例として、特定のストリンジェンシーを生じるのに必要なハイブリダイゼーション条件の計算は、次のように行うことができる。
【0106】
ハイブリダイゼーション後にフィルターを0.3XSSC溶液中で洗浄すると仮定すると、ナトリウムイオン=0.045M;%GC=45%;ホルムアミド濃度=0 l=150塩基対(Sambrook et al. の方程式を参照されたい)、そしてTm=74.4℃。二本鎖DNAのTmは、相同性が1%減少する毎に、1〜1.5℃減少する(Bonner et al. (1973). J. Mol. Biol. 81:123)。したがって、この与えられた例について、フィルターを0.3倍SSC中において59.4〜64.4℃で洗浄することは、90%に相当するハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを生じるであろうし;標的BSMR cDNAに相対して10%を超える配列変異を有するDNA分子は、ハイブリッド形成しないであろう。或いは、ハイブリッド形成したフィルターを0.3倍SSC中において65.4〜68.4℃で洗浄することは、94%のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを生じるであろうし;標的BSMR cDNAに相対して6%を超える配列変異を有するDNA分子は、ハイブリッド形成しないであろう。上の例は、完全に、理論的説明として与えられる。当業者は、他のハイブリダイゼーション技術を利用することができるということ、および実験条件の変動が、ストリンジェンシーについて別の計算を必要とするであろうということを理解するであろう。
【0107】
若干の例において、緊縮条件は、その条件下において、25%を超える配列変異(「ミスマッチ」とも称される)を有するDNA分子がハイブリッド形成しない条件として定義することができる。一つの例において、緊縮条件は、その条件下において、15%、10%または好ましくは、6%を超えるミスマッチを有するDNA分子がハイブリッド形成しない条件である。
【0108】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、しかも概して、プローブ長さ、洗浄温度および塩濃度に依存した経験的計算値である。概して、より長いプローブは、適当なアニーリングのために、より高い温度を必要とするが、より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、概して、相補鎖が、それらの融解温度より低い環境中に存在する場合に、変性したDNAを再アニーリングする能力に依存する。ハイブリッド形成可能な配列とプローブとの間の所望の相同性度合いが高いほど、用いることができる相対温度は高い。結果として、より高い相対温度は、反応条件を一層緊縮にする傾向があると考えられるが、より低い温度は、あまり緊縮にしないということになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細および説明については、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995) を参照されたい。
【0109】
本明細書中に定義の「緊縮条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために、低イオン強度および高温、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃で用いる;(2)ハイブリダイゼーションの際に、ホルムアミドなどの変性剤、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液をpH6.5で含む50%(v/v)ホルムアミドを、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムと一緒に42℃で用いる;または(3)50%ホルムアミド、5XSSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0〜1%ピロリン酸ナトリウム、5Xデンハート溶液、音波処理済みサケ精子DNA(50□g/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で用い、0.2XSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中において42℃でおよび50%ホルムアミド中において55℃で洗浄後、EDTA含有0.1XSSCから成る高ストリンジェンシー洗浄を55℃で行うものによって定義することができる。
【0110】
「中程度緊縮条件」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989 に記載のように定義することができるが、それには、上記のものよりあまり緊縮でない洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用が含まれる。中程度緊縮条件の例は、20%ホルムアミド、5XSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5Xデンハート溶液、10%硫酸デキストランおよび20mg/mlの変性剪断済みサケ精子DNAを含む溶液中において37℃で一晩インキュベーション後、フィルターを1倍SSC中において約37〜50℃で洗浄することである。当業者は、プローブ長さ等のような因子に適応するのに必要なように、温度、イオン強度等を調整する方法を理解するであろう。
【0111】
ライシンのポリヌクレオチドを発現するベクター/宿主細胞
記載されたライシンポリペプチド配列の一つをコードしている一つまたは複数のポリヌクレオチド、またはその変異体またはフラグメントを含むベクターであって、正に結合領域から形成されたベクター、または結合領域と他のタンパク質との連結反応/コンジュゲートまたはライシンタンパク質全体と同程度のベクターを含めたものを、更に提供する。他の例は、本開示のベクターで遺伝子操作される宿主細胞、および組換え技術による本開示のポリペプチドの生産に関する。細胞不含翻訳系は、本開示のDNAコンストラクトに由来するRNAを用いてこのようなタンパク質を生じるのに用いることもできる。
【0112】
組換え生産について、宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチドまたは発現系またはそれらの一部分を包含するように遺伝子操作することができる。宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、衝撃導入(ballistic introduction)および感染などの、Davis et al., BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,(1986) および Sambrool et al., MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989) のような多数の標準的な実験室手引きに記載の方法によって行うことができる。
【0113】
適当な宿主の代表的な例には、連鎖球菌属(Streptococci)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、エンテロコッカス属(Enterococci)、E.coli、ストレプトミセス属(Streptomyces)および Bacillus subtillis 細胞のような細菌細胞;酵母細胞およびアスペルギルス属(Aspergillus)細胞のような真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞のような昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293および Bowes 黒色腫細胞のような動物細胞;および植物細胞が含まれる。
【0114】
いろいろな発現系を用いて、本開示のポリペプチドを生じることができる。このようなベクターには、特に、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入要素、酵母染色体要素、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスに由来するベクター;およびコスミドおよびファージミドのような、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素に由来するものなどのそれらの組合せに由来するベクターが含まれる。発現系コンストラクトは、発生(engender)発現と同様に調節する制御領域を含有してよい。概して、宿主中でポリヌクレオチドを維持する、増殖させるまたは発現するおよび/またはポリペプチドを発現するのに適するいずれかの系またはベクターは、これに関する発現に用いることができる。適当なDNA配列は、例えば、Sambrool et al., MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL(上記)に示されたものなどのいろいろな周知の且つ常套の技術のいずれによっても、発現系中に挿入することができる。
【0115】
翻訳されたタンパク質の、小胞体ルーメン中への、周辺腔中へのまたは細胞外環境中への分泌について、適当な分泌シグナルは、発現されるポリペプチド中に包含させることができる。これらシグナルは、そのポリペプチドに内因性であってよいし、またはそれらは、異種シグナルであってよい。
【0116】
本開示のポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた周知の方法によって、組換え体細胞培養物から回収し且つ精製することができる。高速液体クロマトグラフィーも、精製に用いられる。タンパク質をリフォールディングする周知の技術は、単離および/または精製の際にポリペプチドが変性する場合、活性なコンホメーションを再生するのに用いることができる。
【0117】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「機能的に連結」している。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、そのポリペプチドのDNAに機能的に連結している;プロモーターまたはエンハンサーは、それが、配列の転写に影響を与える場合、コーディング配列に機能的に連結している;またはリボソーム結合部位は、それが、翻訳を容易にするように位置している場合、コーディング配列に機能的に連結している。概して、「機能的に連結」は、連結されているDNA配列が相接していること、分泌リーダーの場合、相接していて且つリーディング相中であることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、相接している必要はない。連結は、好都合な制限部位での連結反応によって達せられる。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、慣用的な実施にしたがって用いる。
【0118】
診断検定
検出検定は、好都合には、共役した結合剤と被検体との間の結合反応が起こる異種フォーマットを利用後、未結合の共役した結合剤を除去する洗浄工程を行う。例えば、金ゾル粒子を、結合領域を含むタンパク質で、結合タンパク質を粒子表面上に固定させて調製することができる。タンパク質と細菌との間に結合が生じると、それら粒子は、合体し且つ着色産物を形成する。同じように、結合タンパク質は、例えば、βガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素と共有結合で複合体形成することができる。洗浄後、残りの結合した酵素を、蛍光性または化学発光性の基質などの基質を加えることによって検出することができる。結合タンパク質は、希土類蛍光体のような、シグナルを生じることができるいずれか他の試薬と複合体形成し、そして時間分解蛍光、放射性物質および放射能測定、または規則的蛍光標識および蛍光によって検出することができる。
【0119】
結合領域と検出可能標識との共役は、合成化学または生物学的過程によって行うことができる。例えば、結合領域をコードするまたはライシンタンパク質全体のDNA配列は、グリーン蛍光タンパク質(GFP)のような検出可能マーカーまたはアルカリ性ホスファターゼのような酵素をコードしている遺伝情報に連結することができる。これは、N末端触媒ドメインを除去し且つそれをインフレームで、グリーン蛍光タンパク質(GFP)のような指標分子と交換することによって結合ドメインのDNAを分離し、そして発現された融合分子をGBS細菌の識別のために精製することによって達成されうる。結合ドメインは、免疫グロブリンG分子と同様の結合親和力有するので、マーカー付き結合ドメインは、ほとんど誤りのない正の活性を有するGBS細菌を、有効に識別するであろう。更に、必要ならば、酵素ドメインが、少なくとも部分的に失活するが、依然として、結合ドメインが細胞壁中のその基質に結合するように機能することを可能にするようにすることにより、GFP分子または酵素を、ライシン酵素全体の5’末端で融合させうる。
【0120】
触媒ドメインから分離される単離された結合タンパク質は、発現させ、精製し、そしてフルオレセインイソチオシアネート、ローダミンイソチオシアネートおよび当業者に知られているその他などの多数の蛍光分子を用いて標識することができる。結合ドメインは、識別のために、結合領域がGBS細菌に接着後、ビオチンで修飾して、ビオチン−アビジン複合体の形成を可能にすることができる。
【0121】
他の触媒ドメインは、結合領域に加えることができる。別の系について、Diaz et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87:8125(1990) に示されたように、触媒ドメインは、他のファージ溶解酵素からの触媒ドメインと交換して、GBS細菌のペプチドグリカン細胞壁中の他の結合を切断することができる。例えば、N末端触媒ドメイン(アミダーゼ)をコードするγライシン遺伝子の5’末端部分は、除去し、そして他のGBSファージのファージ溶解酵素からの、そしてなお、他のグラム陽性およびグラム陰性細菌のファージからの触媒ドメインと交換することができる。これら触媒ドメインは、他のアミダーゼ(より高い活性または特別な特徴を有することがありうる)、ムラミダーゼ、グルカミニダーゼまたはエンドペプチダーゼであってよいが、それらは全て、γライシンの結合ドメインに遺伝的に融合した場合、GBS細菌のペプチドグリカン中のそれらのそれぞれの結合を切断するであろう。関連した例において、異なった特異性を有する二つまたは三つ(またはそれを超える)タンデム触媒ドメインは、単一のγライシン結合ドメインに融合して(すなわち、ムラミダーゼ・グルカミニダーゼ・アミダーゼ)、GBS細菌細胞壁ペプチドグリカン中のこれら結合を切断して、きわめて活性な切断酵素を生じることができる。Navarre(Identification of a D alanyl glycine endopeptidase activity. J Biol Chem. 1999 May 28;274:15847 56.)は、三重酵素ドメインが、バクテリオファージ溶解酵素中に存在しうるということを示した。
【0122】
いろいろな慣用的リンカー、例えば、米国特許第4,680,338号に開示された無水物・イソチオシアネートリンカーなどの選択的逐次リンカーのような、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、カルボジイミド、ビスヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒド等を用いることができる。
【0123】
治療的組成物
溶解酵素は、更に、GBS細菌への暴露に関連した状態に予防的処置を提供するのに、または感染によって既に病気になったものへの治療的処置として用いることができる。記載されたファージ関連溶解酵素は、GBS細菌に特異的であり、そして好ましくは、GBS細菌の細胞壁を有効に且つ効率よく分解する。
【0124】
記載された溶解酵素ポリペプチドは、更に、治療薬として用いることができる。本発明の溶解酵素ポリペプチドは、薬学的に有用な組成物を製造する既知の方法にしたがって製剤化することができるが、それによって、それらの溶解酵素生成物は、薬学的に許容しうる担体ビヒクルとの混合物中で混合される。GBS細菌感染の予防的および治療的処置に用いることができる組成物には、更に、シャッフリングされたおよび/またはキメラの酵素、およびその酵素を、口腔および鼻腔の粘膜内層に達しさせる担体システムまたは経口デリバリー様式で入れるような、粘膜内層への適用手段(担体システムまたは経口デリバリー様式など)が含まれる。
【0125】
本明細書中で用いられる「担体」には、それに暴露される細胞または哺乳動物に、用いられる投薬量および濃度で無毒性である、薬学的に許容しうる担体、賦形剤または安定化剤が含まれる。しばしば、生理学的に許容しうる担体は、pH緩衝化水溶液である。生理学的に許容しうる担体の例には、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含めた酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含めた単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;および/またはTWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICSTMなどの非イオン界面活性剤が含まれる。
【0126】
修飾された溶解酵素を担体システムまたは経口デリバリー様式に入れる前にまたはその時点で、その酵素は、約5.0〜約8.0のような、約5.0、6.0、7.0、8.0のpHまたはその間のいずれか0.05間隔のpH、または5.2、6.5、7.4、7.5および8.5のpH値を含めた、その間の多数の0.05であるいずれかの間隔を含めた、適するpH範囲を維持するための安定用緩衝剤環境中であってよい。
【0127】
治療的製剤は、所望の純度を有する活性成分と、任意の生理学的に許容しうる担体、賦形剤または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))とを、凍結乾燥された製剤または水溶液の形で混合することにより、貯蔵用に製造される。許容しうる担体、賦形剤または安定化剤は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに無毒性であり、そしてリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含めた酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含めた単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;および/またはTWEENTM、PLURONICSTMまたはPEGなどの非イオン界面活性剤を包含する。
【0128】
溶解酵素のための担体はいずれも、慣用的な手段によって製造することができる。しかしながら、アルコールを担体中に用いる場合、酵素は、酵素の変性を妨げるために、ミセル、リポソーム、または「逆」リポソーム中であるべきである。同様に、溶解酵素が担体中に入っていて、そして担体を加熱するまたは加熱した場合、このような配置は、酵素の熱変性を免れるために、担体をある程度冷却した後に行われるべきである。担体は、好ましくは、無菌である。一つまたはそれを超える溶解酵素は、液体の形でまたは凍結乾燥した状態でこれら物質に加えることができ、それで、それは、液体に遭遇した時に可溶化するであろう。
【0129】
安定用緩衝剤
安定用緩衝剤は、ライシン酵素の最適活性を可能にするはずである。緩衝剤は、ジチオトレイトールなどの還元試薬を含有してよい。安定用緩衝剤は、更に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩のような金属キレート化試薬であってよいしまたはそれを包含してよいし、またはそれは、リン酸塩緩衝剤またはクエン酸リン酸塩緩衝剤、またはいずれか他の緩衝剤を含有してもよい。これらファージおよび他のファージのDNAコーディングは、組換え酵素が、三か所以上の場所で一つの細胞壁を攻撃することを可能にする;組換え酵素が、二つ以上の細菌種の細胞壁を切断することを可能にする;組換え酵素が、他の細菌を攻撃することを可能にする;またはいずれかそれらの組合せをするように変更することができる。組換えバクテリオファージ生産酵素への変更のタイプおよび数は、数えきれない。かなりのキメラ溶解酵素およびシャッフリングされた溶解酵素は、単独でまたはホーリンタンパク質と一緒に、GBS細菌への暴露を処置するように集合させることができる。
【0130】
粘膜接着剤
若干の例において、治療的組成物は、その組成物を粘膜内層に向けて、定着している病原細菌を殺傷する場合に、粘膜接着剤と、溶解酵素またはキメラのおよび/またはシャッフリングされた溶解酵素、またはそれらのペプチドフラグメントを含む。開示され且つ記載されたような粘膜内層には、例えば、上部および下部気道、眼、頬腔、鼻、直腸、膣、歯周ポケット、腸管および結腸が含まれる。粘膜組織の天然の排除または浄化機構ゆえに、慣用的な剤形は、適用部位において、いずれか有意の時間長さで保持されない。
【0131】
これらおよび他の理由のために、一つまたはそれを超えるファージ酵素および他の相補薬と一緒に一定時間にわたって投与される、粘膜組織へ接着性を示す物質を有することは好都合である。具体的には、制御放出能力を有する物質が望ましく、徐放性粘膜接着剤の使用は、かなりの注目を集めた。
【0132】
J.R. Robinson(本明細書中に援用される米国特許第4,615,697号)は、粘膜ドラッグデリバリーに用いられるいろいろな制御放出ポリマー性組成物の概説を与える。その特許は、生体接着剤および有効量の処置薬を包含する制御放出処置組成物を記載している。その生体接着剤は、水膨潤性であるが、水不溶性の繊維状で架橋したカルボキシ官能性ポリマーであって、(a)少なくとも約80%が、少なくとも一つのカルボキシル官能基を含有する複数の反復単位と、(b)ポリアルケニルポリエーテルを実質的に不含の約0.05〜約1.5パーセントの架橋剤とを含有するポリマーである。Robinson のポリマーは、水膨潤性であるが、不溶性であるので、それらは、架橋していて、熱可塑性ではないし、しかも活性剤と一緒に製剤化し且ついろいろな剤形にするのに、本出願のコポリマー系程容易ではない。ミセルおよびマルチラメラミセルも、酵素の放出を制御するのに用いることができる。
【0133】
親水性および疎水性の物質の組合せである粘膜接着剤を必要とする他のアプローチは、知られている。E.R. Squibb & Co 製の Orahesive(登録商標)は、口腔粘膜に接着するための、粘着性炭化水素ポリマー中のペクチン、ゼラチンおよびナトリウムカルボキシメチルセルロースの組合せである接着剤である。しかしながら、親水性および疎水性の成分のこのような物理的混合物は、最終的には分離する。対照的に、本開示の親水性および疎水性のドメインは、不溶性コポリマーを生じる。
【0134】
援用もされる米国特許第4,948,580号は、生体接着剤経口ドラッグデリバリーシステムを記載している。その組成物には、分散したポリエチレンを含有する鉱油などの軟膏基材中に分散したコポリマーポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)およびゼラチンから形成される凍結乾燥したポリマー混合物が含まれる。米国特許第5,413,792号(本明細書中に援用される)は、(A)3:6〜6:3の重量比で存在してよいポリオルガノシロキサンおよび水溶性ポリマー性物質を含むペースト様基材と、(B)活性成分とを含むペースト様製剤を開示している。米国特許第5,554,380号は、少なくとも二つの相を有する油中水系を含有する固体または半固体の生体接着剤経口摂取可能ドラッグデリバリーシステムを請求している。一方の相は、約25容量%〜約75容量%の内部親水性相を含むが、もう一方の相は、約23容量%〜約75容量%の外部疎水性相を含み、この場合の外部疎水性相は、三つの成分、すなわち、(a)乳化剤、(b)グリセリドエステルおよび(c)ロウ物質を含んで成る。米国特許第5,942,243号は、抗細菌薬を投与するのに有用な若干の代表的な放出物質を記載しており、その開示は援用される。
【0135】
治療的組成物は、生物学的活性剤の制御放出のために、親水性主鎖および疎水性グラフト鎖を含むグラフトコポリマーから本質的に成るポリマー性粘膜接着剤を含有してよい。そのグラフトコポリマーは、(1)エチレン性不飽和官能基を有するポリスチレンマクロモノマーと、(2)エチレン性不飽和官能基を有する少なくとも一つの親水性酸性モノマーとの反応生成物である。それらグラフト鎖は、ポリスチレンから本質的に成るが、親水性モノマー部分の主ポリマー鎖の若干のものは、酸性官能基を有する。グラフトコポリマー中のポリスチレンマクロモノマーの重量パーセントは、約1〜約20%であり、グラフトコポリマー中の全親水性モノマーの重量パーセントは、80〜99%であり、そしてこの全親水性モノマーの少なくとも10%が酸性である場合、十分に水和した場合のこのグラフトコポリマーは、少なくとも90%の平衡水分を有する。
【0136】
それらコポリマーを含有する組成物は、適用部位での組織液の収着によって徐々に水和して、粘膜表面へ接着性を示すきわめて軟質のゼリー様素材を生じる。その時間中、組成物は粘膜表面に接着しているので、それは、粘膜組織によって吸収される薬理学的活性剤の徐放を与える。
【0137】
これら例の組成物の粘膜接着性は、大部分は、ポリスチレングラフトコポリマー中の鎖の親水性酸性モノマーによって生じる。それら酸性モノマーには、アクリル酸およびメタクリル酸、2アクリルアミド2メチルプロパンスルホン酸、2スルホエチルメタクリレートおよびビニルホスホン酸が含まれるが、これに制限されるわけではない。他の共重合性モノマーには、N,Nジメチルアクリルアミド、グリセリルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0138】
本開示の組成物は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルピロリドン)およびナトリウムカルボキシメチルセルロース可塑剤などの他のポリマー性物質、および他の薬学的に許容しうる賦形剤を、その組成物の粘膜接着性への有害な作用を引き起こさない量で含有してもよい。本開示の組成物の剤形は、慣用法によって製造することができる。
【0139】
医薬品
本開示は、更に、一つまたはそれを超える薬剤および一つまたはそれを超えるライシンを含む組成物を提供する。更に提供されるのは、別々にまたは組合せで投与される一つまたはそれを超える薬剤および一つまたはそれを超えるライシンの投与を組み合わせた処置方法である。
【0140】
用いることができる医薬品には、抗微生物薬、抗炎症薬、抗ウイルス薬、局所麻酔薬、コルチコステロイド、駆逐的治療薬、抗真菌薬および抗アンドロゲンが含まれる。局所製剤中で用いることができる活性医薬品には、抗微生物薬、特に、ダプソン、エリスロマイシン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、クリンダマイシンおよび他の抗微生物薬のような、抗炎症性を有するものが含まれる。抗微生物薬の重量百分率は、約0.5%〜約10%である。
【0141】
局所麻酔薬には、テトラカイン(tetracaine)、テトラカイン塩酸塩、リドカイン、リドカイン塩酸塩、ジクロニン(dyclonine)、ジクロニン塩酸塩、ジメチソキン(dimethisoquin)塩酸塩、ジブカイン、ジブカイン塩酸塩、ブタムベンビクレート(butambenpicrate)およびプラモキシン(pramoxine)塩酸塩が含まれる。局所麻酔薬の典型的な濃度は、全組成物の約0.025重量%〜約5重量%である。ベンゾカインなどの麻酔薬も、約2重量%〜約25重量%の好ましい濃度で用いることができる。
【0142】
用いることができるコルチコステロイドには、ベタメタゾンジプロピオネート、フルオシノロンアクチナイド、ベタメタゾンバレラート、トリアムシノロンアクチナイド、クロベタゾールプロピオネート、デソキシメタゾン(desoximetasone)、ジフロラゾン(diflorasone)ジアセテート、アムシノニド(amcinonide)、フルランドレノリド(flurandrenolide)、ヒドロコルチゾンバレラート、ヒドロコルチゾンブチラートおよびデソニド(desonide)が含まれ、約0.01重量%〜約1.0重量%の濃度で提示される。ヒドロコルチゾンまたはメチルプレドニゾロンアセテートなどのコルチコステロイドの濃度は、約0.2重量%〜約5.0重量%であってよい。
【0143】
サリチル酸または乳酸などの駆逐的治療薬も、用いることができる。約2重量%〜約40重量%の濃度を用いることができる。カンタリジンは、例えば、約5重量%〜約30重量%の濃度で利用することができる。局所組成物中で用いることができる典型的な抗真菌薬と、適する重量濃度の例には、オキシコナゾール硝酸塩(0.1%〜5.0%)、シクロピロクスオラミン(0.1%〜5.0%)、ケトコナゾール(0.1%〜5.0%)、ミコナゾール硝酸塩(0.1%〜5.0%)およびブトコナゾール(butoconazole)硝酸塩(0.1%〜5.0%)が含まれる。他の局所薬は、当業者に理解されるであろうように起こりうるいろいろな局所重感染に向けるように包含されてよい。
【0144】
典型的に、薬物組合せを用いた処置には、感染に対する予防および疼痛の軽減を与える局所抗生物質ゲル剤のための、ポリマイシン(polymycin)B硫酸塩などの局所麻酔薬との組合せでの抗生物質;およびテトラカインとの組合せでのネオマイシン硫酸塩が含まれる。別の例は、円形脱毛症(alopecia ereata)の処置のための、ベタメタゾンジプロピオネートなどのコルチコステロイドとの組合せでのミノキシジル(minoxidil)の使用である。白癬感染の処置のための、コルチゾンなどの抗炎症薬と、ケトコナゾールなどの抗真菌薬との組合せも、一例である。
【0145】
組成物は、ダプソンおよびエトキシジグリコールを含んでよいが、それは、超微粒状薬物対溶解した薬物の最適比を可能にする。この比率は、皮膚角質層上ドメイン中で機能するように角質層中または上に保持される薬物の量に比較される、送達される薬物の量を決定する。ダプソンおよびエトキシジグリコールのシステムには、「CARBOPOL(登録商標)」ゲル化ポリマー、メチルパラベン、プロピルパラベン、二酸化チタン、BHA、および「CARBOPOL(登録商標)」を中和する苛性アルカリ物質と混合された精製水が含まれてよい。
【0146】
感染の処置を促進するために、治療薬は、更に、溶解酵素の殺細菌活性を増強することもできる少なくとも一つの相補薬を包含してよい。その相補薬は、溶解酵素の治療的作用を相乗的に増大させるのに有効である量の、エリスロマイシン、クラリスロマイシン(clarithromycin)、アジスロマイシン(azithromycin)、ロキシスロマイシン(roxithromycin)、マクロライドファミリーの他のメンバー、ペニシリン、セファロスポリン、およびいずれかそれらの組合せでありうる。実際には、いずれか他の抗生物質を、修飾された溶解酵素と一緒に用いることができる。同様に、他の溶解酵素は、他の細菌感染を処置するための担体中に包含されてよい。ホーリンタンパク質は、治療的処置に包含されてよい。
【0147】
若干の例において、修飾された溶解酵素の治療的作用を増強する有効量の緩和界面活性剤は、治療的組成物中にまたはそれとの組合せで用いることができる。適する緩和界面活性剤には、特に、ポリオキシエチレンソルビタンおよび脂肪酸(Tween 系列)のエステル;オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X系列);nオクチルβDグルコピラノシド;nオクチルβDチオグルコピラノシド;nデカルβDグルコピラノシド;nドデシルβDグルコピラノシド;および生体内に存在する界面活性剤、例えば、脂肪酸、グリセリド、モノグリセリド、デオキシコレートおよびデオキシコレートのエステルが含まれる。
【0148】
ライシンを含む組成物の投与
PlyGBSなどの一つまたはそれを超える溶解酵素、またはその変異体またはフラグメントを含む治療的組成物は、いずれか適する手段によって対象に投与することができる。一つまたは複数の(修飾されたまたは未修飾の)溶解酵素の適用手段には、直接手段、間接手段、担体手段および特殊な手段またはいずれかの手段組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。溶解酵素の直接適用は、鼻内スプレー剤、点鼻剤、鼻軟膏剤、洗鼻剤、鼻注入剤、鼻パッキング、気管支スプレー剤および吸入器によってよいし、または間接的に、咽頭ロゼンジ、うがい液または含嗽剤によって、または外鼻孔に適用される軟膏剤の使用によって、またはいずれかこれらの組合せおよび類似の適用方法によってよい。溶解酵素を投与することができる形には、ロゼンジ、トローチ、キャンディー、注入剤、チューインガム、錠剤、散剤、スプレー剤、液剤、軟膏剤およびエアゾル剤が含まれるが、これに制限されるわけではない。GBS細菌への暴露は、鼻を介することが考えられる。細菌への暴露については、できるだけ早く処置されることが最良である。
【0149】
一つまたは複数の溶解酵素を、鼻内スプレー剤、点鼻剤、鼻軟膏剤、洗鼻剤、鼻注入剤、鼻パッキング、気管支スプレー剤、経口スプレー剤および吸入器の使用によって直接的に導入する場合、その酵素は、担体として働く液体と一緒に、液体またはゲル環境中であってよい。修飾された酵素の乾燥無水物型は、吸入器および気管支スプレーによって投与することができるが、液体の形のデリバリーを用いることもできる。
【0150】
酵素が加えられるロゼンジ、錠剤またはガムは、糖、コーンシロップ、いろいろな染料、無糖甘味剤、着香剤、いずれかの結合剤、またはそれらの組合せを含有してよい。同様に、いずれのガム基材製品も、アラビアゴム、カルナウバロウ、クエン酸、トウモロコシデンプン、食用着色剤、着香剤、無糖甘味剤、ゼラチン、グルコース、グリセリン、ガム基材、セラック、サッカリンナトリウム、糖、水、白ロウ、セルロース、他の結合剤およびそれらの組合せを含有してよい。
【0151】
ロゼンジは、更に、スクロース、トウモロコシデンプン、アラビアゴム、トラガカントゴム、アネトール(anethole)、亜麻仁、樹脂油剤、鉱油およびセルロース、他の結合剤およびそれらの組合せを含有してよい。本開示の別の例では、デキストロース、スクロースまたは他の糖の代わりに、糖代用品が用いられる。
【0152】
上記のように、酵素は、鼻内スプレーで入れることもできるが、その場合、スプレーが担体である。鼻内スプレーは、長時間作用型または時限式放出スプレーでありうるし、そして当該技術分野において周知の手段によって製造することができる。吸入薬を用いることもできるので、酵素は、肺中を含めた気管支路中へと更に到達することができる。
【0153】
溶解酵素のための担体はいずれも、慣用的な手段によって製造することができる。しかしながら、うがい液または同様のタイプの製品はいずれも、酵素の変性を妨げるために、アルコールを含有しないのが好適であるが、リポソーム中および他の保護様式および形の酵素は、アルコール中で用いることができる。同様に、一つまたは複数の酵素を、製造過程中に、咳止めドロップ、ガム、キャンディーまたはロゼンジ中に入れる場合、このような配置は、酵素の熱変性を免れるために、ロゼンジまたはキャンディーの硬化前であるが、咳止めドロップまたはキャンディーがある程度冷却した後に行われるべきである。酵素は、更に、有効であるのに十分に高い投薬量で、咳止めドロップ、ガム、キャンディーまたはロゼンジの表面上に噴霧することができる。
【0154】
酵素は、液体の形でまたは凍結乾燥した状態でこれら物質に加えることができ、それで、それは、唾液などの体液に遭遇した時に可溶化するであろう。酵素は、更に、ミセルまたはリポソーム中であってよい。
【0155】
ライシンの投薬量
感染を処置する一つまたは複数の酵素の有効投薬量率または有効量は、一つまたは複数の酵素が、治療的に用いられるかまたは予防的に用いられるかということ;レシピエントの感染性細菌への暴露継続時間;個体のサイズおよび体重等に一部依存するであろう。酵素を含有する組成物の使用継続時間も、その使用が、毎時、毎日または毎週の短い一定時間でありうる場合は、その使用が予防目的であるかどうかということ;または使用法が、何時間、何日間または何週間と、および/または1日基準で、または当日中の定時間隔で続くことができるように、一層集中的な組成物使用計画が要求されることがありうる場合は、その使用が治療目的であるかどうかということに依存する。用いられるいずれの剤形も、最低数の単位を最低量の時間与えるべきである。有効量または有効投薬量の酵素を与えることができる酵素の活性単位の濃度は、鼻および口経路の湿潤または湿気環境中の体液につき約10単位/ml〜約500,000単位/mlの範囲内、局所でも同様、そして可能ならば、約10単位/ml、20単位/ml、30単位/ml、40単位/ml、50単位/ml、60単位/ml、70単位/ml、80単位/ml、90単位/mlまたは100単位/ml〜約50,000単位/mlの範囲内であってよい。したがって、代表的な値には、約200単位/ml、300単位/ml、500単位/ml、1,000単位/ml、2,500単位/ml、5,000単位/ml、10,000単位/ml、20,000単位/ml、30,000単位/mlおよび40,000単位/mlが含まれる。より具体的に、活性酵素単位への時間暴露は、活性酵素単位/mlの所望の濃度に影響することがありうる。「長時間」放出または「徐」放担体として分類される担体(例えば、ある種の鼻内スプレー剤またはロゼンジなど)は、一層長時間にわたる以外は、より低い濃度の活性(酵素)単位/mlを有するまたは与えることがありうるが、「短時間」放出または「速」放担体(例えば、含嗽剤など)は、一層短時間にわたる以外は、高濃度の活性(酵素)単位/mlを有するまたは与えることがありうるということに注目すべきである。活性単位/mlの量および暴露継続時間は、感染の性状、処置が予防的であるか治療的であるかということ、および他の変数に依存する。したがって、投薬回数は、それらの状況に依存するであろうし、そして1日〜何週間もの継続時間で、1〜4回/日またはそれを超えることがありうる。感染は、皮膚で起こりうるので、したがって、このような組成物は、米国特許第6,056,954号および第6,056,955号に記載されたものなどの周知のビヒクルを用いて、局所適用のためにも製剤化することができる。
【0156】
処置方法
細菌感染、具体的には、GBS細菌感染を処置するのに溶解酵素を用いることには、多数の利点がある。ライシンの、それらの明確な触媒ドメインおよび結合ドメインを含むモジュール設計は、それらを、別の病原体に対する使用のために細菌特異性および触媒活性を改善するまたは適合させることができるドメイン交換実験に理想的にする。ライシンの触媒および結合の標的(それぞれ、ペプチドグリカンおよび関連炭水化物)は、生存率にきわめて不可欠であるので、ライシン耐性は希であろう。
【0157】
「処置」は、治療的処置および予防策または防止策の双方を意味するが、この場合、目的は、標的とされる病原性状態または障害を妨げるまたは減速させる(減少させる)ことである。処置を必要としているものには、既に障害があるもの、更には、障害を有する傾向があるもの、または障害が防止されるべきものが含まれる。
【0158】
処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜および飼育動物、およびイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ等のような、動物園、スポーツまたはペット用の動物を含めた哺乳動物として分類されるいずれかの動物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0159】
in vivo 投与に用いられる製剤は、好ましくは、無菌である。これは、凍結乾燥および再構成の前または後の、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成される。本明細書中の治療的組成物は、概して、滅菌出入口を有する容器、例えば、皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル中に入れられる。
【0160】
投与経路は、既知の方法にしたがって、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内または病変内経路による注射または注入、局所投与であり、または徐放性システムによる。細菌の暴露または感染を処置する場合、溶解酵素は、非経口または経口または経鼻腔を含めた、いずれか適する様式で投与することができる。
【0161】
本発明の医薬組成物の投薬量および望ましい薬物濃度は、考えられる具体的な使用に依存して異なることがありうる。適当な投薬量および投与経路の決定は、普通の医師の技術の十分に範囲内である。動物実験は、ヒト療法に有効な用量の決定に信頼性のある指針を与える。有効用量の種間スケーリングは、Mordenti, J. and Chappell, W. "The use of interspecies scaling in toxicokinetics" In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi et al., Eds., Pergamon Press, New York 1989,pp.42-96 に規定された原理にしたがって行うことができる。
【0162】
溶解酵素の in vivo 投与を用いる場合、通常の投薬量は、投与経路に依存して、1日につき約10ng/kg〜100mg/kg(哺乳動物体重)までまたはそれを超える、または約1μg/kg/日〜10mg/kg/日であってよい。具体的な投薬量およびデリバリー方法に関する指針は、下にも、更には、参考文献に与えられている。異なった製剤は、異なった処置用化合物および異なった障害に有効であろうということ、例えば、一つの器官または組織に標的指向する投与は、別の器官または組織へのものとは異なった方式のデリバリーを必要とすることがありうるということが考えられる。
【0163】
溶解酵素の投与を必要とするいずれかの疾患または障害の処置に適する放出特性を有する製剤において、溶解酵素の徐放性投与が望まれる場合、溶解酵素のマイクロカプセル封入が考えられる。徐放性のための組換えタンパク質のマイクロカプセル封入は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン−(rhIFN−)、インターロイキン−2およびMNrgp120で首尾良く行われた。Johnson et al., Nat. Med., 2:795-799 (1996);Yasuda, Biomed. Ther., 27:1221-1223 (1993);Hora et al., Bio/Technology. 8:755-758 (1990);Cleland, "Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polyactide Polyglycolide Microsphere Systems." in Vaccine Design: The Subuit and Adjuvant Approach, Powell and Newman, eds, (Plenum Press: New York, 1995), pp.439462;WO97/03692号、WO96/40072号、WO96/07399号;米国特許第5,654,010号。
【0164】
これらタンパク質の徐放性製剤は、ポリ乳酸コグリコール酸(PLGA)ポリマーを、その生体適合性および広範囲の生分解性ゆえに用いることができる。PLGAの分解生成物である乳酸およびグリコール酸は、ヒト体内で速やかに一掃されうる。更に、このポリマーの分解能力は、その分子量および組成に依存して、何ヶ月〜何年かに調整することができる。Lewis, "Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer," in: M. Chasin and R. Lander (Eds.), Biodegradable Polymer as Drul: Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。
【0165】
皮膚感染
局所感染を処置するための組成物は、本開示によって製造された少なくとも一つのライシンの有効量と、感染した皮膚に少なくとも一つの溶解酵素を送達する担体を含む。溶解酵素の適用様式には、多数の異なったタイプおよび組合せの担体が含まれるが、それには、水性液、アルコール基材液、水溶性ゲル、ローション、軟膏、非水性液基材、鉱油基材、鉱油およびワセリンのブレンド、ラノリン、リポソーム、血清アルブミンまたはゼラチンなどのタンパク担体、粉末セルロースカルメル、およびそれらの組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。治療薬を含有する担体のデリバリー様式には、塗布、スプレー、時効パッチ、液体吸収ワイプ、およびそれらの組合せが含まれるが、これに制限されるわけではない。溶解酵素は、包帯に直接的にかまたは、他の担体の一つの中で適用することができる。それら包帯は、湿気のあるまたは乾燥した状態で販売されていてよいが、その場合、酵素は、包帯上の凍結乾燥した形である。この適用方法は、感染した皮膚の処置に最も有効である。
【0166】
局所用組成物の担体は、ポリマー増粘剤、水、保存剤、活性な界面活性剤または乳化剤、酸化防止剤、遮光薬、および溶媒または混合溶媒系を包含する半固体またはゲル様のビヒクルを含んでよい。米国特許第5,863,560号(Osborne)は、薬剤への皮膚の暴露を助けることができる多数の異なった担体組合せを論じている。
【0167】
用いることができるポリマー増粘剤には、化粧品および医薬産業においてしばしば用いられる親水性および水アルコール性のゲル化剤のような、当業者に知られているものが含まれる。親水性または水アルコール性のゲル化剤は、例えば、「CARBOPOL(登録商標)」(B.F. Goodrich, Cleveland, Ohio)、「HYPAN(登録商標)」(Kingston Technologies, Dayton, N.J.)、「NASTROSOL(登録商標)」(Aqualon, Wilmington, Del.)、「KLUCEL(登録商標)」(Aqualon, Wilmington, Del.)または「STABILEZE(登録商標)」(ISP Technologies, Wayne, N.J.)を含むことができる。ゲル化剤は、組成物の約0.2重量%〜約4重量%を構成してよい。より具体的には、「CARBOPOL(登録商標)」の組成重量パーセント範囲の例は、約0.5%〜約2%であってよいが、「NASTROSOL(登録商標)」および「KLUCEL(登録商標)」の重量パーセント範囲は、約0.5%〜約4%であってよい。「HYPAN(登録商標)」および「STABILEZE(登録商標)」双方の組成重量パーセント範囲は、約0.5%〜約4%であってよい。
【0168】
「CARBOPOL(登録商標)」は、カルボマー(carbomer)という借用一般名を与えられている多数の架橋アクリル酸ポリマーの一つである。これらポリマーは、水中に溶解し、そして水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミンまたは他のアミン塩基などの苛性アルカリ物質で中和時に、透明なまたは僅かに濁ったゲルを形成する。「KLUCEL(登録商標)」は、水中に分散する且つ完全な水和時に均一ゲルを形成するセルロースポリマーである。他のゲル化ポリマーには、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム、MVE/MAデカジエンクロスポリマー、PVM/MAコポリマーまたはそれらの組合せが含まれる。
【0169】
保存剤は、本発明において用いることもでき、例えば、全組成物の約0.05重量%〜0.5重量%を構成してよい。保存剤の使用は、製品が微生物汚染されているとしても、その製剤が、微生物成長を妨げるまたは減少させるであろうことを確実にする。本発明において有用な若干の保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロロキシレノール(chloroxylenol)、安息香酸ナトリウム、DMDMヒダントイン、3−ヨード−2−プロピルブチルカルバメート、ソルビン酸カリウム、クロルヘキシジンジグルコネートまたはそれらの組合せが含まれる。
【0170】
二酸化チタンは、遮光薬として用いられて、光増感に対する予防薬として役立つことができる。別の遮光薬には、ケイ皮酸メチルが含まれる。更に、BHAは、酸化防止剤として用いられて、エトキシジグリコールおよび/またはダプソンを酸化による変色から保護することもできる。別の酸化防止剤は、BHTである。
【0171】
一つの例において、本発明は、約0.5%〜10%のカルボマーと、溶解した状態および超微粒状態双方で存在する約0.5%〜10%の医薬品とを有する外皮用組成物を含む。溶解した医薬品は、角質層を越える能力を有するが、超微粒状医薬品にはない。アミン塩基、水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液の添加は、ゲルの形成を完成する。より具体的には、医薬品には、抗炎症性を有する抗微生物薬であるダプソンが含まれてよい。超微粒状物対溶解したダプソンの一つの典型的な比率は、5またはそれ未満である。
【0172】
別の例において、本発明は、約1%のカルボマー、約80〜90%の水、約10%のエトキシジグリコール、約0.2%のメチルパラベン、超微粒状ダプソンおよび溶解したダプソン双方を含めた約0.3%〜3.0%のダプソン、および約2%の苛性アルカリ物質を含む。より具体的には、カルボマーには、「CARBOPOL(登録商標)980」が含まれてよいし、そして苛性アルカリ物質には、水酸化ナトリウム溶液が含まれてよい。
【0173】
一つの例において、上部気道の細菌感染がある場合、その感染は、その細菌に特異的なバクテリオファージに感染している細菌によって生じる少なくとも一つの溶解酵素の有効量と、その溶解酵素を口、咽頭または鼻経路に送達するための担体とを含む組成物で予防的にまたは治療的に処置することができる。溶解酵素は、ホーリンタンパク質と一緒に用いることができる溶解酵素、キメラ溶解酵素および/またはシャッフリングされた溶解酵素、またはそれらの組合せであってよい。溶解酵素は、溶解酵素の活性を可能にするpHを有する環境中であってよい。ある個体が、上部気道障害を有する誰かに会ったとしても、溶解酵素は、粘膜内層中に存在し且つ感染性細菌のいずれの定着も防止するであろう。
【0174】
非経口投与
若干の例において、感染は、非経口処置することができる。用いることができる酵素は、上のように、溶解酵素、キメラ溶解酵素、シャッフリングされた溶解酵素、およびそれらの組合せである。それら酵素は、筋肉内、静脈内、皮下、真皮下(subdermally)またはそれらの組合せに投与することができる。一つの例において、感染は、一つまたは複数の適当なシャッフリングされたおよび/またはキメラの溶解酵素および酵素用担体を含む治療薬を患者に注射することによって処置することができる。担体は、蒸留水、生理食塩水溶液、アルブミン、血清またはいずれかそれらの組合せを含んで成ってよい。より具体的には、注入または注射用の液剤は、慣用法において、例えば、p−ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤またはエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩などの安定化剤の添加で製造することができるが、それは、次に、融合容器、注射バイアルまたはアンプル中に移すことができる。或いは、注射用配合物は、他の成分を含んでかまたは含むことなく、凍結乾燥し、そして使用時に適宜、緩衝化溶液または蒸留水中に溶解させることができる。不揮発性油、リポソームおよびオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルも、本明細書中において有用である。他のファージ関連溶解酵素は、ホーリンタンパク質と一緒に、組成物中に包含されてよい。
【0175】
筋肉内注射が、選択された投与用式である場合、等張製剤を用いることができる。概して、等張性のための添加剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトールおよびラクトースが含まれうる。若干の場合、リン酸緩衝化生理食塩水のような等張溶液を用いる。安定化剤には、ゼラチンおよびアルブミンが含まれる。若干の例において、血管収縮薬を製剤に加える。医薬製剤は、無菌で且つ発熱物質不含で与えられる。概して、上記のように、静脈内注射は、最も適当でありうる。
【0176】
担体は、好適には、等張性および化学的安定性を増大させる物質などの微量の添加剤を含有する。このような物質は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに無毒性であり、それには、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはそれらの塩などの緩衝剤;アスコルビン酸などの酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン;グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンまたはアルギニンなどのアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、トレハロースまたはデキストリンを含めた単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの対イオン;ポリソルベート、ポロキサマーまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤;および/または中性塩、例えば、NaCl、KCl、MgCl、CaCl等が含まれる。
【0177】
グリセリンまたはグリセロール(1,2,3プロパントリオール)は、薬学的使用のために商業的に入手可能である。グリセリンまたはグリセロールは、注射用滅菌水または塩化ナトリウム注射剤または他の薬学的に許容しうる水性注射液中で希釈し、そして0.1〜100%(v/v)、1.0〜50%または約20%の濃度で用いることができる。
【0178】
DMSOは、多くの局所適用される薬物の浸透を増大させる顕著な能力を有する非プロトン性溶媒である。DMSOは、注射用滅菌水または塩化ナトリウム注射剤または他の薬学的に許容しうる水性注射液中で希釈し、そして0.1〜100%(v/v)の濃度で用いることができる。特に、静脈内溶液を製造する場合、ビヒクルには、リンガー液、緩衝化溶液およびデキストロース溶液も含まれてよい。
【0179】
酵素を、担体システムまたは経口デリバリー様式中に入れる前にまたはその時点で、酵素が、約5.0〜約7.5のpH範囲を維持している安定化緩衝環境中にあることは、望まれることがありうる。
【0180】
安定化緩衝剤は、酵素の最適活性を可能にするはずである。緩衝剤は、ジチオトレイトールなどの還元試薬であってよい。安定化緩衝剤は、更に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩などの金属キレート化試薬であってよいしまたはそれを包含してよいし、またはそれは、リン酸緩衝剤またはクエン酸リン酸緩衝剤を含有してよい。担体中で見出される緩衝剤は、溶解酵素のために環境を安定にするのに役立ちうる。
【0181】
非経口投与される酵素の有効投薬量率または有効量および処置継続時間は、感染の重症度、患者の体重、感染性細菌へのレシピエントの暴露継続時間、感染の重症度、およびいろいろな多数の他の変数に一部依存するであろう。組成物は、どこにでも、1日1回〜数回適用することができるし、しかも短期間または長期間適用することができる。使用法は、何日間または何週間と続いてよい。用いられるいずれの剤形も、最低数の単位を最低量の時間与えるべきである。有効量または有効投薬量の酵素を与えると考えられる酵素の活性単位の濃度は、約10単位/ml(組成物)、20単位/ml、30単位/ml、40単位/ml、50単位/ml、60単位/ml、70単位/ml、80単位/ml、90単位/mlまたは100単位/ml〜約10,000,000単位/mlの範囲内、約1000単位/ml〜約10,000,000単位/ml、そして約10,000単位/ml〜約10,000,000単位/mlの範囲内であってよい。活性単位/mlの量および暴露継続時間は、感染の性状に依存し、そして担体接触量(the amount of contact the carrier)は、溶解酵素を有することを可能にする。酵素は、体液環境中にある場合に最も良く働くということを記憶しているべきである。したがって、酵素の有効性は、担体に閉じ込められている水分量に一部関係している。処置用の酵素の濃度は、血液中の細菌計数および血液容量に依存している。
【0182】
感染の処置を促進するために、治療薬は、更に、溶解酵素の殺細菌活性を増強することもできる少なくとも一つの相補薬を包含してよい。その相補薬は、GBS細菌に対して有効ないずれかの抗生物質でありうる。同様に、他の溶解酵素は、他の細菌感染を処置するために包含されてよい。
【0183】
更に、細胞膜を越えて酵素を輸送することを助けるのに、多数の方法を用いることができる。酵素は、リポソーム中で輸送することができるが、その酵素は、既知の技術によってリポソーム中に「挿入」されている。同様に、酵素は、逆ミセル中であってよい。酵素は、更に、PEG化されて(pegylated)、酵素の不活性部分にポリエチレングリコールを取り付けることができる。或いは、疎水性分子を用いて、細胞膜を越えて酵素を輸送することができる。最後に、酵素のグリコシル化を、細胞膜上の特異的インターナリゼーション受容体を標的にして用いることができる。
【実施例】
【0184】
材料
制限エンドヌクレアーゼは、New England Biolabs(Beverly, MA)より入手した。用いた試薬は全て、特に断らない限り、Sigma(St. Louis, MO)より購入した。本研究において用いられる細菌菌株およびプラスミドは、実施例の最後の表3に挙げている。
【0185】
実施例1:PlyGBSのクローニングおよび配列整列
GBSファージNCTC11261ゲノムライブラリーのクローンを、GBS NCTC11237細菌オーバレイ上の可能性のあるライシン遺伝子についてスクリーニングした。ライシン遺伝子の完全配列(plyGBS)は、ファージNCTC11261ゲノムDNAのシークエンシング法によって得た。類似性検索は、ヌクレオチドおよびアミノ酸双方のレベルで、この遺伝子が、GBSファージB30ライシン(SEQ ID NO:1)(GenBank 受託番号AAN28166)、Streptococcus pyogenes M1ファージ関連ライシン(AAK33905)および Streptococcus equi ファージ関連ライシン(AF186180)を含めたいろいろな連鎖球菌種からの数種類のライシンに90%を超えて同一であった。
【0186】
推定上のPlyGBSタンパク質配列と、肺炎球菌ファージCp−1ライシン(Cpl−1)およびブドウ球菌ファージ187ライシン(Ply187)との整列は、PlyGBSが、三つの異なったドメインを有することを示した。N末端の107アミノ酸は、エンドペプチダーゼとして機能するPly187中のドメインに27%同一である。アミノ酸150〜394(中心ドメイン)について、PlyGBSは、Cpl−1のN末端ムラミダーゼドメインに46%の同一性を示す。二つのアミノ酸AspおよびGluも、PlyGBS中の158位(Asp)および185位(Glu)に存在する。
【0187】
実施例2:PlyGBSの特性決定
推定されたアミノ酸配列に基づき、PlyGBSは、4.88の理論pI値(等電点)を有する。イオン交換クロマトグラフィーの溶離緩衝液としての25mM Tris−HCl(pH7.4)で、タンパク質は、陰性に荷電し、そして陽電荷Q−Sepharose 陰イオン交換体に結合した。酵素を、NaCl勾配で溶離し、そして活性画分をプールし且つSDS−PAGEで分析した。約50KDaの主要タンパク質バンドは、PlyGBSの理論分子質量(49.6KDa)と相関した。Coomassie 染色SDS−PAGEゲル上のデンシトメトリーを走査することによって>95%純度であると推定された最終標品を、引き続きの実験全てに用いた。
【0188】
精製されたPlyGBSの最適pHは、4.0.0間の活性pH範囲で約5.0であると決定した。PlyGBSのゲル濾過クロマトグラフィーは、そのタンパク質がモノマーとして機能することを示している。
【0189】
実施例3:in vitro のPlyGBS活性(光学濃度 in vitro 溶解殺傷検定)
種々の細菌菌株への in vitro のPlyGBS活性を調べるために、全菌株を、一晩接種し、継代培養し(1:100)、そして増殖させてOD600=0.3とした。細胞を遠心分離し、そして1/10容量のリン酸緩衝液(40mM,pH5.0)中に再懸濁させた。100マイクロリットルアリコートの細菌溶液(5x10〜10cfu/ml)を、指定量のPlyGBSと一緒に37℃で60分間インキュベートした。分光光度計を用いて、溶解活性を監視し、ミリOD600/分の降下(−mOD600/分)として測定した。この反応の初期速度を、溶解速度として定義する。細菌生存率を決定するために、上の検定によるGBS菌株NCTC11237の細胞を、遠心分離し、希釈し、そして細胞計数のためにTHY寒天平板上にプレーティングした。全ての実験を三重反復で行い、そしてリン酸緩衝液(pH5.0)の添加を伴う対照実験を、同じ条件下で行った。
【0190】
GBS細胞に対する in vitro のPlyGBS活性を決定するために、GBS細胞(NCTC11237、血清型IIIR)を、40単位のPlyGBSと370℃で60分間混合した。OD600は、10分以内にベースラインへと降下して、急速度の細胞溶解を示したが、それは、60分で認められた生存率の2log減少で確証される。血清型Ia、Ib、Ic/II、IIR、IIIR、更には、優先的に存在する血清型IIIおよびVを示す多数のGBS菌株を、溶解活性に基づくPlyGBS感受性について調べた場合、同様の溶解速度(−mOD600/分)が、ある種の菌株−菌株変動を伴って認められた。
【0191】
GBSに加えて、いろいろな種である細菌菌株を分析して、PlyGBSへのそれらの in vitro 感受性を決定した。異なった Lancefield 群に属する調べられた連鎖球菌菌株の中で、PlyGBSは、連鎖球菌A群、C群、G群およびL群に対して有意の溶解活性を有したが、D群、E群およびN群に対してはほとんど〜全く活性が無かった。PlyGBSのムラリティック活性も、S.ゴルドニイ(S. gordonii)、S.オラリス(S. oralis)、S.salivarius、S.ソブリナス(S. sobrinus)およびS.ミュータンス(mutans)を含めた非 Lancefield 口腔連鎖球菌種に対して調べた。PlyGBSは、S.salivarius、S.gordonii およびS.mutans に対して中〜低活性を有したが、調べられた他の二つの片利共生種に対する活性は無かった。二つの非連鎖球菌グラム陽性種、Bacillus cereus および Staphylococcus aureus、または二つの膣内片利共生細菌、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)およびL.クリスパータス(L. crispatus)では、溶解活性は認められなかった。
【0192】
位相差顕微鏡および電子顕微鏡を用いて、GBS細胞へのライシンの溶解作用を可視化した(「溶解活性」の一例)。通常は、無傷のGBSは、緩衝液対照中で短鎖を形成する。PlyGBSライシンでの処置後、細胞は溶解して、細胞質内容物を放出し、そして光学顕微鏡で不透明になった。他のライシンについて電子顕微鏡で認められるように、PlyGBSによって生じた細胞壁の弱点は、細胞質膜の押し出しおよび破壊を引き起こすが、それは、分裂している細胞の隔壁領域内により多く局在していると考えられる。細胞質内容物の引き続きの喪失は、細胞を空の「細胞ゴースト」へと形質転換する。
【0193】
実施例4:in vivo のPlyGBS活性(マウスモデル in vivo 殺傷検定)
6週齢BALB/c雌マウスを、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)より購入した。マウス膣腔内の細菌定着は、発情期に一層効率がよいと考えられるので、全てのマウスの発情周期を、0.1mgのβ−エストラジオールバレラートの皮下接種によって1日目に同調させた。3日目に、30匹のマウスに麻酔し、そして約10個のストレプトマイシン耐性GBS NCTC11237細胞を、マイクロピペットを用いて膣内接種した(40mMリン酸緩衝液、pH5.0中の20μl用量)。4日目に、マウス膣内を、20μlのリン酸緩衝液(pH5.0)で処置し、そしてアルギン酸カルシウム繊維を先端につけた超微細スワブ(Fischer, Pittsburgh, PA)でスワブ採取した。5%ヒツジ血液およびストレプトマイシン(200μg/ml)を含有するTHY寒天平板表面に、湿潤スワブで画線接種して、ベースライン定着を決定した。次に、マウスを無作為抽出して、20μlのリン酸緩衝液、pH5.0(n=15)かまたは10単位のPlyGBSライシン(n=15)で膣内に処置した。処置後2時間および4時間に、力価決定のために、全てのマウスで再度スワブ採取した。
【0194】
新生児の分娩後処置にPlyGBSを用いることができるかどうか調べるために、38匹のマウスに、約108個のStrR GBS NCTC11237細胞(経口で20μlおよび外鼻孔各々に20μl)の上部気道チャレンジを行った。翌朝、マウス口腔咽頭をスワブ採取し、ベースライン定着を上記のように計数した。マウスを無作為抽出し、そして20μlのリン酸緩衝液、pH5.0(n=18)かまたは10単位のPlyGBSライシン(n=20)を経口および鼻内投与した。処置後2時間および24時間に、全マウスの口腔咽頭をスワブ採取して、細菌計数を決定した。
【0195】
統計的分析のために、MIXED Model(SAS Mixed Procedure 製)を用いて、定着状態を群間比較した。P値<0.05を有意とみなした。
in vivo 殺傷検定を行って、マウス膣モデルに定着したGBSにPlyGBSを投与することによって調べたPlyGBSの in vivo 溶解活性を評価した。この試験を行うために、二つのマウス群の膣内に、10cfuのStrR GBS細胞でチャレンジした。引き続き、24時間後、膣腔をスワブ採取して、初期定着率(0時試料、処置前)を決定した。次に、マウス膣内を、緩衝液(n=15)かまたはPlyGBS(n=15)で処置し、そして処置後2時間および4時間にスワブ採取した。緩衝液対照動物では、無視しうる作用しか認められなかった。対照的に、単回用量のPlyGBSで処置された被験動物は、緩衝液対照と比較した場合(p<0.0001)、2時間および4時間双方の間隔において、細菌負荷量の有意の減少(約3log降下)を示した。
【0196】
同様に、二つのマウス群に、経口および鼻内送達される全10cfuのStrR GBSでチャレンジして、マウス上部気道に定着したGBSを減少させるのにPlyGBSを用いることができるかどうかを決定した。同経路による単回用量のライシンで処置されたマウスは、緩衝液対照群と比較した場合(p<0.0001)、2時間および24時間双方のスワブ採取間隔において、GBS定着の有意の減少を示した。
【0197】
実施例5:E.coli ミューテーター菌株を用いた突然変異誘発によるPlyGBS突然変異ライシン生産
Escherichia coli XL−1 Red 菌株(Stratagene, Inc., La Jolla, CA,表3)を用いて、野生型菌株より有意に高い突然変異率を生じる三つの主要DNA修復経路(muts、mutDおよびmutT)の欠損によるPlyGBSのランダム突然変異を生じさせた。野生型plyGBS遺伝子を含有するプラスミドpCQJ67−2を、E.coli XL−1 Red 中に形質転換し、カナマイシン(50μg/ml)を補足したLB平板上において37℃で一晩増殖させた。コロニーを寒天平板から掻き取り、継代培養して(1:100)もう一晩増殖させて、プラスミドDNA中で突然変異を蓄積させた。翌朝、培養物を継代培養して余分に6時間増殖させ、そしてプラスミドDNAを製造した。ランダム突然変異を含有する得られたブラスミドを、タンパク質発現菌株E.coli BL21(DE3)中に形質転換し、そして5,000を超えるクローンを、以前に、Schuch, R.D. Nelson, and V.A. Fischetti, "A bacteriolytic agent that detects and kills Bacillus anthracis," Nature 418: 884-889 (2002) に記載されたような透明ゾーン法を用いて、野生型PlyGBSより良いライシン活性についてスクリーニングした。プロモーター領域中のいずれか可能性のある突然変異を免れるために、野生型より良い活性を有するクローンからのプラスミドDNAを製造し、NcoIおよびXhoIで消化した。放出されたplyGBS遺伝子フラグメントを、pET28a中にクローン化し、そして得られたプラスミドを、E.coli BL21(DE3)中に形質転換して、増加したライシン活性を確かめた。DNA配列分析を用いて、突然変異の位置を決めた。
【0198】
実施例6:誤りがちのPCR法を用いた遺伝子突然変異誘発
利用された別の突然変異誘発法は、「Diversify PCR Random Mutagenesis Kit」(BD Bioscience, Palo Alto, CA)であった。その手順は、ヌクレオチド包含の忠実度を減少させる条件下でPCR反応を行い、得られたPCRフラグメントをクローン化後、改善されたライシン活性を有する新規な突然変異についてライブラリーをスクリーニングすることを行う。PCR突然変異率は、反応中のマンガン濃度を320μMで保持することによって約2.7/1,000bpを選択した。二つのPCRプライマーが、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に挙げられている。PCR産物を、NcoIおよびXhoIで消化し、そしてスクリーニングするために、上述の方法を用いて、pET28a中にクローン化した。多数回のPCR突然変異誘発を行って、ライシン活性を改善した。
【0199】
実施例7:plyGBS欠失突然変異体の構築
いくつかの欠失突然変異体を、野生型plyGBSのドメイン体制に基づいて構築したが、図4に、概略地図を示す。全ての領域を、PCR増幅させ、そしてタンパク質発現のためにpET28a中にクローン化した。プラスミドpCQJ92(表3)から発現された突然変異体PlyGBS92(SEQ ID NO:6)は、推定上のムラミダーゼドメイン[アミノ酸(aa)150〜394]をコードしている。突然変異体PlyGBS93(SEQ ID NO:7)は、aa150〜443の領域をを含有するが、それは、N末端エンドペプチダーゼドメインを欠失している。pCQJ94(表3)から発現された突然変異体PlyGBS94(SEQ ID NO:8)は、推定上のエンドペプチダーゼドメインである最初の146aaを含有する。中心ムラミダーゼドメインの欠失(aa147〜348間の欠失)を含有する別の突然変異体PlyGBS95(SEQ ID NO:9)は、HindIII/XhoIで消化されたPCRフラグメント(plyGBS遺伝子のC末端、bp1045〜1332)をpCQJ94中に挿入することによって構築されたpCQJ95から発現させた。突然変異体発現のために構築されたプラスミドを全て、配列決定して、予想された欠失を確かめた。
【0200】
実施例8:ライシンの活性および安定性の比較
いろいろな突然変異体のライシン活性を比較するために、クローンを、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載されたのと同じ条件下において、増殖させ且つ10ml容量中のタンパク質過発現のために誘導した。タンパク質粗製抽出物を、in vitro 活性検定に用いた。タンパク質活性を定量するために、大型バッチ(1リットル)培養物を、各々の突然変異体から製造した。それら突然変異体は、野生型酵素と同様のpI(等電点)を有したので(表1)、精製は、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように、陰イオン交換クロマトグラフィーによって行った。活性画分をプールし、そして4〜20%勾配 Tris−HClプレキャストSDS−PAGEゲル(Bio-Rad, Hercules, CA)上で電気泳動した。ライシン活性は、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように定量した。タンパク質濃度を、BCA Protein Assay Kit(Pierce, Rockford, IL)を用いて決定して、各々の突然変異体の比活性を算出した。
【0201】
ランダム突然変異誘発により得られた突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)は、野生型PlyGBSより有意に高い比活性を有したので、それら突然変異体の安定性を、貯蔵条件下において野生型と比較した。新たに精製された野生型PlyGBSを、二つの突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)と同様、4℃で直接的に、または25%グリセロール中において−80℃で貯蔵した。in vitro 活性検定は、溶解活性を監視する分光光度計を用いて、いろいろな時点(0日、20日、40日および60日)で行い、ミリOD600/分の降下(−mOD600/分)として測定した。その in vitro 活性検定は、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように行った。この反応の初期速度(Vmax)を、溶解速度として定義し、そしてそれを用いて、いろいろな時間間隔でタンパク質安定性を比較した。
【0202】
実施例9:高活性突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の特徴
高活性突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の特徴を、野生型PlyGBSと比較した。PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の in vitro 溶解活性を、二つの異なった方法で測定した。最初に、本発明者は、いろいろな量の精製されたPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)および野生型PlyGBS(2μg、10μg、50μgおよび100μg)を、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように in vitro 検定で用いて、Vmax値を測定した。更に、本発明者は、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように、in vitro 生存率検定において、GBSへの突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の殺傷効力を調べた。突然変異体の特異性および最適pHを、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように分析した。
【0203】
溶解活性への塩濃度の作用を調べるために、精製されたPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBSを、2mM Tris−HCl(pH7.4)に対して一晩透析した。いろいろな量の5M NaClを、透析されたタンパク質試料中に加えて、0〜500mM塩濃度下におけるVmax値を、Cheng, Q. et al., "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005) に記載のように分光光度計を用いて決定した。
【0204】
実施例10:突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)の in vivo 活性
突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)を、従来の研究で開発されたマウス膣モデル(本明細書中に援用される、Cheng, Q., D. Nelson, S.W. Zhu, and V.A. Fischetti, "Removal of group B streptococci colonizing the vagina and oropharynx of mice with a bacteriophage lytic enzyme," Antimicrob. Agents Chemother. 49: 111-117 (2005))において、in vivo のGBSに対して調べた。簡単にいうと、1日目に、20週齢BALB/c雌マウス(Charles River Lab, Wilmington, MA)の発情周期を、β−エストラジオールバレラートで同調させた(McLean, N.W, and I.J. Rosenstein, "Characterization and selection of a Lactobacillus species to recolonize the vagina of women with recurrent bacterial vaginosis," J. Med. Microbiol. 49: 543-552 (2000))。3日目に、マウス膣内に、106コロニー形成性単位(cfu)のStrR NCTC11237GBS細胞でチャレンジした。4日目に、膣腔をスワブ採取して、処置前定着状態(0時試料)を決定した。次に、それらマウスを無作為抽出して三群とし、そして緩衝液(n=10)か、1,500μgのPlyGBS(n=10)かまたは1,500μgの突然変異体PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(n=10)で膣内に処置した。次に、マウス膣内を、処置後2時間および4時間にスワブ採取した。5%ヒツジ血液およびストレプトマイシン(200μg/ml)を補足したTHY寒天平板(本明細書中に援用される、Nelson, D., L. Loomis, and V.A. Fischetti, "Prevention and elimination of upper respiratory colonization of mice by group A streptococci by using a bacteriophage lytic eyzyme," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 4107-4112 (2001))を用いて、湿潤スワブからのコロニー計数を決定した。MIXED Model(SAS Mixed Procedure 製)を用いて、統計的分析において定着状態を群間比較し、P値<0.05を有意とみなした。
【0205】
【表3】

【0206】
【表4】

【0207】
本発明のいろいろな態様を記載したが、更に多くの態様および実施が、本発明の範囲内で可能であるということは、当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、請求の範囲およびそれらの同等物を考える以外は、制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0208】
本発明は、次の図面および説明を参照して、より良く理解することができる。図中の成分は、必ずしも、本発明のある種の側面の実例を与え且つ決定づけるものではない。
【図1】図1は、PlyGBS配列(SEQ ID NO:1)および記載される種々のPlyGBS突然変異体の配列(SEQ ID NO:2〜9)を挙げる表である。
【図2】図2は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)と、GBS細胞に対して増加した溶解活性を有するいくつかのPlyGBS突然変異体の略図である。
【図3】図3は、精製されたPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)(レーン1)、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(レーン2)および野生型PlyGBS(レーン3)についてのクーマシー(commassie)ブルー染色SDS−PAGEゲル(4〜20%勾配)であり、プロテインラダーの分子質量は、キロダルトン(KDa)で示している。
【図4】図4は、PlyGBSおよびいくつかの一部切断された突然変異体の略図である。
【図5】図5Aは、PlyGBS、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)の4℃での相対活性を示すグラフであり;図5Bは、4℃貯蔵でのPlyGBS、PlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)およびPlyGBS90−8(SEQ ID NO:4)の25%グリセロール中において−80℃での安定性を示すグラフである。
【図6】図6Aは、PlyGBSおよびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)について、いろいろな量(2μg、10μg、50μgおよび100μg)のPlyGBSおよびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)での殺傷作用を比較するグラフであり;図6Bは、PlyGBSおよびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)について、同量のPlyGBSおよびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)(約3,000μg)を用いて、in vitro 生存率での殺傷作用を比較するグラフである。
【図7】図7は、酵素の溶解活性への塩濃度の作用を示すグラフである。
【図8】図8は、in vitro 検定におけるPlyGBS(SEQ ID NO:1)およびPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)のライシン特異性を示すグラフである。
【図9】図9は、PlyGBS(SEQ ID NO:1)またはPlyGBS90−1(SEQ ID NO:5)でのマウス膣内GBS定着の制御を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌ライシンを含む治療的組成物であって、該細菌ライシンが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9から成る群より選択されるアミノ酸配列に少なくとも70%の相同性を有する単離されたアミノ酸配列を含み、ここにおいて、該細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対する殺傷活性を有する治療的組成物。
【請求項2】
殺傷活性が、第一B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より少なくとも約1.5倍大きい、第一B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性であり、ここにおいて、第一溶解殺傷活性および第二溶解殺傷活性を、光学濃度 in vitro 溶解殺傷活性検定によって測定し;ここにおいて、
a.光学濃度 in vitro 溶解殺傷活性検定は、検定混合物の第一OD600を、検定混合物を形成時に測定し、そして検定混合物を形成後60分に検定混合物の第二OD600を測定することによって行い、
b.検定混合物は、100μLのB群連鎖球菌細菌懸濁液と、100μLの細菌ライシン溶液とを、約25℃の温度で混合することによって形成し;
c.細菌懸濁液は、被接種細菌を、継代培養し且つ0.3のOD600に増殖させた後、約5.0のpHのリン酸緩衝化生理食塩水(40mM)に加えたものを含み;
d.細菌ライシン溶液は、細菌ライシン標品を、約5.0のpHのPBS中に40ライシン活性単位/mLで含み;そして
e.ライシン活性単位は、細菌OD600の50%減少を15分で引き起こす細菌ライシンの最高希釈の逆数である、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項3】
細菌ライシンが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9から成る群より選択される単離されたアミノ酸配列を含み、ここにおいて、該細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より少なくとも約25倍大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有する、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項4】
細菌ライシンが、SEQ ID NO:5の単離されたアミノ酸配列を含み、ここにおいて、該細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より約40倍大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有する、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項5】
B群連鎖球菌細菌を含む細菌懸濁液と、約5.0のpHのPBS中に40ライシン活性単位/mLで3,000μgの細菌ライシン標品との60分間のインキュベーションが、コロニー形成単位/mLで測定されるB群連鎖球菌細菌生存率の少なくとも約400倍の減少を引き起こす、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項6】
単離されたアミノ酸配列が、本質的に、SEQ ID NO:2から成る、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項7】
単離されたアミノ酸配列が、本質的に、SEQ ID NO:3から成る、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項8】
単離されたアミノ酸配列が、本質的に、SEQ ID NO:4から成る、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項9】
単離されたアミノ酸配列が、本質的に、SEQ ID NO:5から成る、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項10】
単離されたアミノ酸配列が、本質的に、SEQ ID NO:8から成る、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項11】
単離されたアミノ酸配列が、本質的に、SEQ ID NO:9から成る、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項12】
ホーリン(holin)タンパク質を更に含む、請求項1に記載の治療的組成物。
【請求項13】
細菌ライシンを含む治療的組成物であって、該細菌ライシンが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9から成る群より選択される単離されたアミノ酸配列を含む治療的組成物。
【請求項14】
細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より少なくとも約1.5倍大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有し、ここにおいて、第一溶解殺傷活性および第二溶解殺傷活性を、光学濃度 in vitro 溶解殺傷活性検定によって測定し;ここにおいて、
a.光学濃度 in vitro 溶解殺傷活性検定は、検定混合物の第一OD600を、検定混合物を形成時に測定し、そして検定混合物を形成後60分に検定混合物の第二OD600を測定することによって行い、
b.検定混合物は、100μLのB群連鎖球菌細菌懸濁液と、100μLの細菌ライシン溶液とを、約25℃の温度で混合することによって形成し;
c.細菌懸濁液は、被接種細菌を、継代培養し且つ0.3のOD600に増殖させた後、約5.0のpHのリン酸緩衝化生理食塩水(40mM)に加えたものを含み;
d.細菌ライシン溶液は、細菌ライシン標品を、約5.0のpHのPBS中に40ライシン活性単位/mLで含み;そして
e.ライシン活性単位は、細菌OD600の50%減少を15分で引き起こす細菌ライシンの最高希釈の逆数である、請求項12に記載の治療的組成物。
【請求項15】
細菌ライシンが、SEQ ID NO:5の単離されたアミノ酸配列を含み、ここにおいて、該細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より約40倍大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有する、請求項13に記載の治療的組成物。
【請求項16】
細菌ライシンが、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9から成る群より選択される単離されたアミノ酸配列を含み、ここにおいて、該細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より少なくとも約25倍大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有する、請求項13に記載の治療的組成物。
【請求項17】
B群連鎖球菌細菌を含む細菌懸濁液と、約5.0のpHのPBS中に40ライシン活性単位/mLで3,000μgの細菌ライシン標品との60分間のインキュベーションが、コロニー形成単位/mLで測定されるB群連鎖球菌細菌生存率の少なくとも約400倍の減少を引き起こす、請求項13に記載の治療的組成物。
【請求項18】
細菌ライシンを含む治療的組成物であって、該細菌ライシンが、SEQ ID NO:5に少なくとも約85%の相同性を有する単離されたアミノ酸配列を含み、ここにおいて、該細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有し、ここにおいて、第一溶解殺傷活性および第二溶解殺傷活性を、光学濃度 in vitro 溶解殺傷活性検定によって測定し;ここにおいて、
a.光学濃度 in vitro 溶解殺傷活性検定は、検定混合物の第一OD600を、検定混合物を形成時に測定し、そして検定混合物を形成後60分に検定混合物の第二OD600を測定することによって行い、
b.検定混合物は、100μLのB群連鎖球菌細菌懸濁液と、100μLの細菌ライシン溶液とを、約25℃の温度で混合することによって形成し;
c.細菌懸濁液は、被接種細菌を、継代培養し且つ0.3のOD600に増殖させた後、約5.0のpHのリン酸緩衝化生理食塩水(40mM)に加えたものを含み;
d.細菌ライシン溶液は、細菌ライシン標品を、約5.0のpHのPBS中に40ライシン活性単位/mLで含み;そして
e.ライシン活性単位は、細菌OD600の50%減少を15分で引き起こす細菌ライシンの最高希釈の逆数である治療的組成物。
【請求項19】
細菌ライシンが、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSの第二溶解殺傷活性より約40倍大きい、B群連鎖球菌細菌に対する第一溶解殺傷活性を有する、請求項17に記載の治療的組成物。
【請求項20】
ホーリンタンパク質を更に含む、請求項17に記載の治療的組成物。
【請求項21】
溶解酵素が、キメラ溶解酵素またはシャッフリングされた溶解酵素である、請求項17に記載の治療的組成物。
【請求項22】
治療的組成物であって、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSペプチドの殺傷活性より大きい、B群連鎖球菌細菌に対する殺傷活性を有するPlyGBSペプチド変異体を含む細菌ライシンを含む治療的組成物。
【請求項23】
B群連鎖球菌細菌感染の処置用の組成物の製造におけるPlyGBSペプチド変異体の使用であって、PlyGBSペプチド変異体が、B群連鎖球菌細菌に対するPlyGBSペプチドの殺傷活性より大きい、B群連鎖球菌細菌に対する殺傷活性を有するPlyGBS突然変異体である使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−506033(P2009−506033A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527998(P2008−527998)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/032176
【国際公開番号】WO2007/024628
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(592054292)ザ ロックフェラー ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】