説明

PM排出量測定装置

【課題】このPM排出量測定装置は,排ガス通路を流れる排ガスの一部を導入して排ガス中のPMを帯電させて基板のPM捕集部に静電捕集し,PM排出量とPM排出濃度を測定する。
【解決手段】このPM排出量測定装置は,ハウジング7内に配設した測定パイプ8に形成した開口27を通じて露出して排ガス中のPMを静電捕集するPM捕集部9を構成する基板10,PM捕集部9に対向した測定パイプ8内で放電させてPMを帯電させるPM帯電器41,PMを静電捕集したPM捕集部9に対して光照射する光発光器13,光発光器13による光照射が反射した反射光及び散乱光を測定する反射光強度計測器14,及びPM捕集部9に捕集したPMを消失させて基板10を再生させる基板再生器15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,プラズマ放電を利用して排ガス中に含まれる粒子状物質(以下,PMという)を帯電させてPMを基板に捕集し,基板に捕集されたPMのPM排出量,PM排出濃度を測定することができるPM排出量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは,高い熱効率を有することから,結果的にディーゼル車の普及は地球温暖化防止に寄与することになる。また,ディーゼルエンジンから排出される炭素系の粒子状物質(以下,PMという)等の有害物質は,人体に有害であることから,近年,その排出量を益々低減するように規制されている。近年,PM排出量の測定方法としては,光の吸収,光散乱,荷電,重量法,光反射法等の各種情報を利用して,排気ガス中に含まれるPMの排出重量,PMの粒径,PM排出濃度の測定方法が開発されている。
【0003】
従来,排気ガス中の微粒子計測装置および計測方法として,排気ガス中に含まれる微粒子を連続的に且つ粒径に関する情報を含めて計測するものである。該微粒子計測装置は,排気ガスを互いに層を成した状態で分級通路内に流入させ,上流側に設けた帯電器で排気ガス中の微粒子を帯電させ,下流側では流れを横切る方向に電場を形成し,分級通路の側面には流れ方向に互いの位置を異ならせて複数の採取口を設ける。排気ガス中の微粒子は,電場の影響を受けて流れを横切る方向に移動し,分級通路の壁面に到達し,移動してきた微粒子を採取口から取り込んで粒子検出器により検出する(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,流体に含まれる微粒子の中から所定の粒径範囲内の微粒子だけを時系列的に計測する微粒子計測装置および計測方法が知られている。該微粒子計測装置は,帯電させた微粒子を含んだ計測対象流体と,搬送流体とが層を成すような状態で流しておき,流れに交差する方向の電場を形成し,微粒子が電場を受けて流れを横切る方向に移動する速度は,粒径に依存するので,微粒子は粒径に応じて異なる経路を通過する性質を利用して計測対象の微粒子を,所望の粒径よりも大きな微粒子と小さな微粒子とに分離して微粒子を検出する(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,粒子計測装置として,粒子個数濃度が高い流体に含まれる粒子数を高精度で計測するものが知られている。該粒子計測装置は,流体に含まれる粒子を所定の割合で除去する粒子除去部と,粒子除去部を通過した粒子を計測するセンサ部を備え,粒子除去部の粒子径に対する固有の除去特性を用いてセンサ部で計測した粒子数を補正処理する特性データメモリから成る粒子数補正手段を設けている(例えば,特許文献3参照)。
【0006】
また,交流電場を用いて微粒子を質量分級する微粒子計測装置および計測方法が知られている。該微粒子計測装置は,微粒子を帯電させ,大気圧以下の所定圧力を有する気体とともに通路部に供給し,等角度ずつ位相をずらした複数組の交流電圧を,気体の流れと直交する方向に印加し,それによって微粒子が通路部内を振動しながら進行し,電圧波形に応じた特定の質量を有する微粒子のみが,通路部を通過することができ,微粒子を直接的に質量により分級できる(例えば,特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−24409号公報
【特許文献2】特開2007−171001号公報
【特許文献3】特開2007−205829号公報
【特許文献4】特開2008−111791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで,PM排出量測定装置によるPM排出量や濃度の測定には,種々の測定装置や測定方法が開発されているが,簡単で且つ低コストのものが未だに提供されていないのが現状である。そこで,本発明者は,粒子状物質であるPMを含んでいる排気ガスの流れに対して,高圧電源から高圧を印加してプラズマ放電を発生させ,排気ガス流れをプラズマ放電によって回転する基板に排気ガス中のPMを捕集し,PMを捕集した基板に対して光照射をし,反射してくる反射光を測定して排気ガス中に含まれるPMの排出重量,PM排出濃度を測定することを開発した。
【0009】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,粒子状物質であるPMを含む排ガスの一部を測定パイプに取り込んで,前記測定パイプを流れる排ガス中に含まれる前記PMをPM捕集部を構成する基板に静電捕集し,前記PM捕集部に光を照射して反射してくる反射光及び散乱光を測定し,前記基板に静電捕集された前記PMに起因する反射光及び散乱光の強度の変化を演算することによって,PM排出量及びPM排出濃度を見積もって排ガス中のPM濃度を測定するものであり,前記基板への前記PMの静電捕集の測定を予め決められた間隔で不連続的に繰り返し行って前記排ガスに含まれるPM排出量及びPM排出濃度を測定するものであって,例えば,エンジンからの排ガス中に含まれるPMを捕集浄化する排ガス浄化装置を備えたシステムに適用して,排ガス浄化装置の作動状態や作動制御を行うのに利用できるPM排出量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,化石燃料の燃焼によって発生する排ガスを排出する排ガス通路に前記排ガスを取り入れる導入パイプと前記排ガスを回収する回収パイプとによって前記排ガス通路にバイパスして設けられたPM排出量測定装置において,
前記導入パイプと前記回収パイプとが取り付けられたハウジング,前記ハウジング内に配設されて入口が前記導入パイプに出口が前記回収パイプに接続された測定パイプ,前記測定パイプの途中に設けた開口を通じて前記測定パイプ内に一部が露出して前記排ガスに含まれるPMを静電捕集するPM捕集部を構成し且つ前記ハウジング内で回転する基板,前記基板内に内蔵されたリード線を通じて接地された接地電極,前記基板に対向して配設されて前記測定パイプ内にプラズマ放電を発生させて前記PMを帯電させるPM帯電器,前記PMを静電捕集した前記基板の前記PM捕集部に対して光照射するための光発光器,前記光発光器による光照射が前記PM捕集部で反射した反射光及び散乱光を測定する反射光強度計測器,及び前記PM捕集部に帯電捕集した前記PMを消失させて前記基板を再生させる基板再生器を有することを特徴とするPM排出量測定装置に関する。
【0011】
このPM排出量測定装置において,前記基板は,セラミックス,ガラス,金属酸化物から選択された1種以上の絶縁材料から円筒状の管部材に形成されており,予め決められた所定の方向で且つ所定の速度で回転可能に構成されている。
【0012】
また,前記PM帯電器は,高圧電源に接続された帯電用電極と前記帯電用電極を被覆した絶縁管とから構成されており,前記帯電用電極を印加して前記帯電用電極と前記接地電極との間に前記測定パイプ内に前記プラズマ放電を発生させ,前記プラズマ放電によって前記排ガス中に含まれる前記PMを帯電させ,帯電した前記PMを前記基板に静電捕集させるものである。
【0013】
また,前記基板再生器は,高圧電源に接続された再生用電極と前記再生用電極を被覆した絶縁管とから構成されており,前記プラズマ放電によって前記基板の前記PM捕集部に捕集された前記PMをCOとCO2 に反応消失させて前記基板から除去するものである。
【0014】
このPM排出量測定装置は,前記光発光器である発光ランプからの入射光を直接/又は光ケーブルを介して前記PM捕集部に照射すると共に,同時に,前記反射光強度計測器である光ダイオードによって前記基板の前記PM捕集部からの前記反射光及び前記散乱光を測定するものである。
【0015】
このPM排出量測定装置は,前記測定パイプには,前記排ガスの温度を測定する温度計,及び前記排ガスの流量を測定するガス流量計が設けられている。
【0016】
また,前記排ガス中のPM排出量は,前記基板の回転半径及び回転速度,前記基板の前記PM捕集部に捕集された前記PM捕集量による前記反射光の変化,前記温度計で測定された排ガス温度,及び前記ガス流量計で測定された前記排ガスの流量から成る情報を演算し,前記排ガス中のPM排出量及びPM排出濃度を見積もって測定するものである。
【0017】
このPM排出量測定装置において,前記測定パイプが配置された前記ハウジング内は,前記導入パイプから取り込んだ前記排ガスを浄化した清浄ガスが吹き込まれて前記測定パイプ内の圧力より高く調整されて前記測定パイプから前記ハウジング内へは前記排ガスが侵入しないものである。
【0018】
このPM排出量測定装置は,前記基板再生器を配設した後流側の前記基板における前記PM捕集部に対して光照射するための別の光発光器,及び前記別の光発光器による光照射が前記PM捕集部で反射した反射光及び散乱光を測定する別の反射光強度計測器を設け,再生された前記基板の前記PM捕集部における前記PMの捕集状態を測定するものである。
【発明の効果】
【0019】
このPM排出量測定装置は,上記のように構成されているので,排ガス通路を流れる排ガスに含まれるPMのPM排出量やPM排出濃度を,簡単な装置で容易に且つ正確に,しかも繰り返し測定することができる。また,このPM排出量測定装置を,例えば,エンジンやバーナの燃焼ガスを排出する排ガス通路に設けると,排ガス中のPM排出量を正確に且つ容易に測定することができ,更に,自動車等の移動体のエンジンからの排ガスを排気する排ガス通路に排ガス浄化装置が取り付けられている場合には,本装置を排ガス浄化装置の下流側に設けることによって,排ガス浄化装置の浄化状態を検査することができ,それに応じて排ガス浄化装置の浄化力を調整することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明によるPM排出量測定装置の一実施例を示しており,PM捕集部の反射光強度を1点で計測するタイプを示す概略説明図である。
【図2】この発明によるPM排出量測定装置におけるPM捕集,基板再生,及び入射光と反射・散乱光の経路を示す概略説明の斜視図である。
【図3】この発明によるPM排出量測定装置の別の実施例を示しており,PM捕集部の反射光強度を2点で計測するタイプを示す概略説明の斜視図である。
【図4】この発明によるPM排出量測定装置における基板に対するPM塗布量と反射光強度の逆数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,図面を参照して,この発明によるPM排出量測定装置の実施例を説明する。まず,図1及び図2を参照して,この発明によるPM排出量測定装置1の一実施例を説明する。図1及び図2には,PM排出量測定装置1において,基板10に構成されたPM捕集部9に堆積されたPM捕集量を光照射と反射光強度とをそれぞれ1点で計測するタイプが示されている。
【0022】
PM排出量測定装置1は,概して,石油,石炭,天然ガス,メタンハイドレード等の化石燃料を燃焼させることによって発生するPMを含んだ排ガスG(以下,Gは省略)を排出する排ガス通路2から排ガスを取り入れる導入パイプ3と,PMが捕集されてしまった排ガスを排ガス通路2に戻す回収パイプ4とによって排ガス通路2にバイパスして設けられている。実施例1では,基板10は,回転可能に構成され,接地電極18を内蔵したタイプが用いられている。
【0023】
PM排出量測定装置1は,特に,導入パイプ3と回収パイプ4とが取り付けられたハウジング7,ハウジング7内に配設されて入口5が導入パイプ3に出口6が回収パイプ4に連通された測定パイプ8,測定パイプ8に設けられた開口27を通じて測定パイプ8内に露出して排ガスに含まれる粒子状物質であるPMを捕集するPM捕集部9を構成し且つハウジング7内で回転する基板10,基板10内に内蔵されたリード線34を通じて接地された接地電極18,基板10のPM捕集部9に対向して配設されて測定パイプ8内で弱いプラズマ放電を発生させてPMを帯電させる帯電用電極12を持つPM帯電器41,基板10のPM捕集部9の光照射部32に対して光照射するための光発光器13,光発光器13による光照射が基板10のPM捕集部9で反射した反射光及び散乱光を測定する反射光強度計測器14,及び基板10のPM捕集部9に静電捕集したPMをPM捕集部9から除去する基板再生器15を有していることを特徴としている。
【0024】
このPM排出量測定装置1は,測定パイプ8に途中に形成された開口27において基板10が測定パイプ8内に露出し,その露出した領域がPM捕集領域となる。基板10は,その表面上にPMが捕集されて,PMが捕集された部分がPM捕集部9を構成することになる。また,基板10は,アルミナ等のセラミックス,ガラス,金属酸化物から選択された1種以上の絶縁材料から円筒状の絶縁管の形状に形成されており,予め決められた所定の方向で且つ所定の速度で回転可能に構成されている。基板10は,図2に示すように,例えば,両端に絶縁管11を備え且つ内部に接地電極18を内蔵した円筒体に形成され,ハウジング7内で支持部材36に回転可能に支持されており,上記円筒体の外周面にはアルミナ等で構成されたPM捕集部9を備えている。PM捕集部9の一部は,測定パイプ8に設けた開口27を通じて測定パイプ8内に常に露出状態に配設されている。従って,基板10が一回転すると,PM捕集部9を持つ基板10の全周が開口27を通じて測定パイプ8内に露出することになる。基板10に内蔵されている接地電極18は,リード線34を通じてアースされている。
【0025】
また,PM帯電器41は,高圧電源21に接続した帯電用電極12と,帯電用電極12を被覆した絶縁管22とから構成されている。PM排出量測定装置1は,PM帯電器41で測定パイプ8内に発生した弱いプラズマ放電によって排ガス中に含まれるPMが帯電され,帯電したPMがPM捕集部9に静電捕集されるように構成されている。また,PM排出量測定装置1では,光発光器13である発光ランプからの入射光は,直接/又は光ケーブルを介してPM捕集部9に導入されて光照射部32が照射されると共に,同時に,PM捕集部9からの反射光及び散乱光は,反射光強度計測器14である光ダイオードによって測定するように構成されている。反射光強度計測器14による測定値は,コントローラ40のコンピュータに情報として入力される。
【0026】
また,基板再生器15は,高圧電源に接続した再生用電極26と,再生用電極26を被覆した絶縁管25とから構成されている。基板再生器15は,再生用電極26を印加することによって強いプラズマ放電を発生させ,該プラズマ放電によってPM捕集部9に捕集されているPMをCO,CO2 に反応消失させてPM捕集部9から除去し,基板10を再生するものである。このPM排出量測定装置は,測定パイプ8には,PM帯電器41の下流側(又は上流側)に位置して排ガスの温度を測定する温度計16,及び排ガスの流量を測定するガス流量計17が設けられている。PM帯電器41の下流側における測定パイプ8を流れる排ガスは,PMが捕集された後の浄化された排ガスが流れ,回収パイプ4を通じて排ガス通路2へ回収される。
【0027】
このPM排出量測定装置1は,測定パイプ8が配置されたハウジング7内には,供給ポンプ39を作動して導入パイプ3から排ガス取込みパイプ37を通じて取り込んだ排ガスをフイルタ38に通して浄化した清浄ガスを清浄ガス供給パイプ23から吹き込んでおり,ハウジング7内は,測定パイプ8内の圧力より高く調整されて測定パイプ8からハウジング7内へは排ガスが流入できないように調整されている。
【0028】
このPM排出量測定装置1において,コントローラ40は,高圧電源21,高圧電源24,光発光器13,及び反射光強度計測器14の作動を制御し,供給ポンプ39,及び基板10を回転駆動するモータ(図示せず)を駆動制御する。また,反射光強度計測器14,温度計16,及びガス流量計17から得られた情報は,コントローラ40のコンピュータに入力され,コントローラ40の制御に利用される。このPM排出量測定装置1は,上記のように構成されており,排ガス中のPM排出量は,基板10の回転半径及び回転速度,PM捕集部9に捕集されたPM捕集量による反射光の変化,温度計で測定された排ガス温度,及びガス流量計17で測定された排ガスの流量から成る情報をコントローラ40に設けたコンピュータで演算し,排ガス中のPM排出量及びPM排出濃度を見積もって測定するものである。
【0029】
このPM排出量測定装置1では,コントローラ40は,高圧電源21から帯電用電極12へ高電圧を印加して,帯電用電極12と基板10に内蔵の接地電極18との間に弱いプラズマ放電を発生させ,測定パイプ8を流れる排ガス中に含まれるPMを帯電させ,帯電したPMを基板10のPM捕集部9に静電捕集させる制御を行う。また,コントローラ40は,高圧電源24から再生用電極26へ高電圧を印加して,再生用電極26と基板10に内蔵の接地電極18との間に強いプラズマ放電を発生させ,基板10のPM捕集部9に付着したPMをCO,CO2 に反応消失させてPM捕集部9からPMを除去する制御を行う。
【0030】
このPM排出量測定装置1について,PM捕集量の計量可能性の確認に関しては,次のとおりである。基板10として,セラッミク基板(アルミナ板)を作製し,該セラッミク基板にディーゼルエンジンから排気される排ガスから捕集したPMを塗布した。次いで,PMを塗布したセラッミク基板に対して光発光器13によって光照射強度を一定にして,セラッミク基板に照射し,そこで,セラッミク基板の光反射強度を測定した。その結果,図4に示すグラフからも分かるように,PM塗布量は,0.12mg/cm2 以下において,反射光の強度1の逆数と直線関係にあるが,0.12mg/cm2 以上になると,PM塗布量が急激に変わる別の直線関係を持つようになる。0.12mg/cm2 以下におけるPM塗布量と反射光の強度1の逆数との関係は,より正確にPM塗布量を計算できることを確認できた。
【0031】
排ガス通路2から取り込んだ排ガスの一部は,導入パイプ3を通じてPM排出量測定装置1の入口5に導入され,該排ガスをPM捕集部9に通した後に,出口6から回収パイプ4を通じて排ガス通路2に戻るように構成されている。PM帯電器41では,帯電用電極12を印加した電圧により弱い放電が発生し,該放電によって,PMが帯電し,PM捕集部9に静電捕集される。基板10が回転してPM捕集部9が光照射部32へ進み,そこで,光を発生する光発光器13から投射された光は,光照射部32まで光導入管19を通じて導入され,PM捕集部9のPMの捕集状態に対応して反射光と散乱光となって反射され,それらの光を集光した後に,集光した反射光は光導出管20を経て,反射光強度計測部14で反射光や散乱光の強度が測定される。PM捕集部9に照射する光の一部が捕集したPMに吸収されるため,PM捕集部9から反射又は散乱してくる光の強度が変化,即ち低下する。基板回転速度,PM捕集による反射光強度の変化と付属している排ガス温度とガス流量を測定する装置から得たガス温度とガス流量の情報をコンピュータが演算する。
【0032】
例えば,PM排出量やPM排出濃度は,式(1)と(2)でそれぞれ見積もることができる。
式1は,PM排出量(g/h)を示している。即ち,式1は次のとおりである。
(g/h)=k・(V/V1 )・〔(a/I)+b〕・r(T/T1
式2は,PM排出濃度(g/Nm3 )を示している。即ち,式2は次のとおりである。(g/Nm3 )=k・(1/V1 )・〔(a/I)+b〕・r(273.15/T1
但し,V,V1 は,それぞれ排ガス総流量と測定器に入る排ガス流量,単位m3 /h である。 T,T1 は,それぞれ排ガス温度と測定器に入る排ガス温度(単位はK)である。a,bは,定数であり,図1に示す実験結果から求められる。rは,基板の回転数であり,単位は回転/時間である。I は,反射光と散乱光の強度である。273.15は,排ガス流量を標準状態(273.15K,1 気圧)に換算するための定数であり,単位は絶対温度Kである。kは,計測器定数である。
【0033】
次いで,基板10が回転してPM捕集部9がPM除去部である基板再生器15へ進み,そこで,PMを捕集した基板10は高圧電源21からの電力で再生用電極26が高電圧に印加され,再生用電極26と接地電極18との間により強い放電が発生し,放電で生成する活性酸素種によって,PM捕集部9に付着しているPMがCOとCO2 まで酸化されて消失され,基板10のPM捕集部9が再生される。
【0034】
次に,図3を参照して,この発明による別の実施例であるPM排出量測定装置1AによるPM捕集部に堆積されたPM捕集量を反射光強度を2点で計測するタイプについて説明する。実施例2のPM排出量測定装置1Aは,実施例1のPM排出量測定装置1と比較して,2つの光発生器13,28を構成したものであり,光発光器28及び反射光強度計測器29を設けて基板10のPM捕集部9に対して光照射部33を設けた以外は,実施例1と同様な構成を有しているので,以下の説明では,同一部材については同一符号を付し,重複する説明は,ここでは省略する。
【0035】
PM排出量測定装置1Aは,主として,回転する接地電極18を内蔵した基板10,PMを捕集するためのPM帯電器41(高圧電源21,帯電用電極12,絶縁管11から成る),基板10を再生するための高圧電源21と再生用電極26,絶縁管25,2つの光発生器13,28,2つの反射光強度測定部14,29,温度計16,及びガス流量計17から構成されている。PM排出量測定装置1Aの作動は,実施例1のPM排出量測定装置1と比較して,光発生器28及び反射光強度測定部29を備えている以外は,同様である。光発生器28及び反射光強度測定部29は,主として,PMをPM捕集部9に捕集する前の基板10の状態に対して,PM捕集部9が基板再生器15のPM除去部を通過しているが,それでもなおPM捕集部9に残存するPMの付着状態を測定し,測定値を更に的確にするものである。
【0036】
PM排出量測定装置1Aでも,PM排出量測定装置1と同様に,PM捕集部9に照射する光の一部が捕集されたPMに吸収されるため,PM捕集部9から反射または散乱してくる光の強度が変化し低下する。基板10の回転速度,PM捕集による反射光強度の変化と付属している排ガス温度とガス流量を測定する装置から得たガス温度とガス流量の情報からコンピュータで演算し,PM排出量或いはPM排出濃度を測定する。
【0037】
例えば,PM排出量やPM排出濃度は,式(3)と(4)でそれぞれ見積もることができる。
式3は,PM排出量(g/h)を示している。即ち,式3は次のとおりである。
(g/h)=k・(V/V1 )・〔(a/(I−I0 )+b〕・r(T/T1 ) 式4は,PM排出濃度(g/Nm3 )を示している。即ち,式4は次のとおりである。(g/Nm3 )=k・(1/V1 )・〔(a/(I−I0 )+b〕・r(273.15/T1 ) 但し,V,V1 は,それぞれ排ガス総流量と測定器に入る排ガス流量,単位m3 /h である。 T,T1 は,それぞれ排ガス温度と測定器に入る排ガス温度(単位はK)である。a,bは,定数であり,図1に示す実験結果から求められる。rは,基板の回転数であru単位:回転/時間)。I0 とI は,PM捕集前後の反射光と散乱光の強度である。273.15は,排ガス流量を標準状態(273.15K,1 気圧)に換算するための定数であり,単位は絶対温度Kである。kは,計測器定数である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明によるPM排出量測定装置は,ディーゼルエンジン等の炭化水素系燃焼機関からの排ガスに含まれる煤,黒煙,環境中に浮遊する固体粒子状物質,即ち,PMの排出量やその濃度を測定するものであり,自動車等の移動体に設けたエンジンの排ガスを浄化する排ガス浄化装置と並設してその作動状態を制御するのにも利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1,1A PM排出量測定装置
2 排ガス通路
3 導入パイプ
4 回収パイプ
5 入口
6 出口
7 ハウジング
8 測定パイプ
9 PM捕集部
10 基板
11,22,25 絶縁管
12 帯電用電極
13,28 光発光器
14,29 反射光強度計測器
15 基板再生器
16 温度計
17 ガス流量計
18 接地電極
19,30 光導入管
20,31 光導出管
21,24 高圧電源
23 清浄ガス供給パイプ
26 再生用電極
27 開口
32,33 光照射部
34 接地電極リード線
37 排ガス取り込みパイプ
38 フイルタ
39 供給ポンプ
40 コントローラ
41 PM帯電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料の燃焼によって発生する排ガスを排出する排ガス通路に前記排ガスを取り入れる導入パイプと前記排ガスを回収する回収パイプとによって前記排ガス通路にバイパスして設けられたPM排出量測定装置において,
前記導入パイプと前記回収パイプとが取り付けられたハウジング,前記ハウジング内に配設されて入口が前記導入パイプに出口が前記回収パイプに接続された測定パイプ,前記測定パイプの途中に設けた開口を通じて前記測定パイプ内に一部が露出して前記排ガスに含まれるPMを静電捕集するPM捕集部を構成し且つ前記ハウジング内で回転する基板,前記基板内に内蔵されたリード線を通じて接地された接地電極,前記基板に対向して配設されて前記測定パイプ内にプラズマ放電を発生させて前記PMを帯電させるPM帯電器,前記PMを静電捕集した前記基板の前記PM捕集部に対して光照射するための光発光器,前記光発光器による光照射が前記PM捕集部で反射した反射光及び散乱光を測定する反射光強度計測器,及び前記PM捕集部に帯電捕集した前記PMを消失させて前記基板を再生させる基板再生器を有することを特徴とするPM排出量測定装置。
【請求項2】
前記基板は,セラミックス,ガラス,金属酸化物から選択された1種以上の絶縁材料から円筒状の管部材に形成されており,予め決められた所定の方向で且つ所定の速度で回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のPM排出量測定装置。
【請求項3】
前記PM帯電器は,高圧電源に接続された帯電用電極と前記帯電用電極を被覆した絶縁管とから構成されており,前記帯電用電極を印加して前記帯電用電極と前記接地電極との間に前記測定パイプ内に前記プラズマ放電を発生させ,前記プラズマ放電によって前記排ガス中に含まれる前記PMを帯電させ,帯電した前記PMを前記基板に静電捕集させることを特徴とする請求項1又は2に記載のPM排出量測定装置。
【請求項4】
前記基板再生器は,高圧電源に接続された再生用電極と前記再生用電極を被覆した絶縁管とから構成されており,前記プラズマ放電によって前記基板の前記PM捕集部に捕集された前記PMをCOとCO2 に反応消失させて前記基板から除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のPM排出量測定装置。
【請求項5】
前記光発光器である発光ランプからの入射光を直接/又は光ケーブルを介して前記PM捕集部に照射すると共に,同時に,前記反射光強度計測器である光ダイオードによって前記基板の前記PM捕集部からの前記反射光及び前記散乱光を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPM排出量測定装置。
【請求項6】
前記測定パイプには,前記排ガスの温度を測定する温度計,及び前記排ガスの流量を測定するガス流量計が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のPM排出量測定装置。
【請求項7】
前記排ガス中のPM排出量は,前記基板の回転半径及び回転速度,前記基板の前記PM捕集部に捕集された前記PM捕集量による前記反射光の変化,前記温度計で測定された排ガス温度,及び前記ガス流量計で測定された前記排ガスの流量から成る情報を演算し,前記排ガス中のPM排出量及びPM排出濃度を見積もって測定することを特徴とする請求項6に記載のPM排出量測定装置。
【請求項8】
前記測定パイプが配置された前記ハウジング内は,前記導入パイプから取り込んだ前記排ガスを浄化した清浄ガスが吹き込まれて前記測定パイプ内の圧力より高く調整されて前記測定パイプから前記ハウジング内へは前記排ガスが侵入しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のPM排出量測定装置。
【請求項9】
前記基板再生器を配設した後流側の前記基板における前記PM捕集部に対して光照射するための別の光発光器,及び前記別の光発光器による光照射が前記PM捕集部で反射した反射光及び散乱光を測定する別の反射光強度計測器を設け,再生された前記基板の前記PM捕集部における前記PMの捕集状態を測定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のPM排出量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−237237(P2011−237237A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107944(P2010−107944)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(509185192)株式会社 ACR (9)
【Fターム(参考)】