説明

PMDエミュレータ

測定対象光を入射する入射光ファイバ71と、M基のDGDセクション76と(M−1)個の偏波回転部80とが交互に接続され、両端にDGDセクションが配置された第1の偏波回転部73と、偏波回転部73に接続する任意の偏波状態から任意の偏波状態へ変更する任意−任意偏波コントローラ75と、第1の偏波回転部73と同様の第2の偏波回転部74と、測定対象光を出射する出射光ファイバ72とを順々に接続したPMDエミュレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、信号光が伝播される際に発生する偏波モード分散(Polarization−ModeDispersion:PMD)の評価を行うため、又は、光伝送路の補償を行うために用いられるPMDエミュレータに関するものである。
【背景技術】
近年の光伝送システムの進展、普及に伴い、システムの伝送容量を増大させるために、波長分割多重(WDM)方式による多チャンネル化が進められている。
この多チャンネル化と並んで、伝送容量を増大させる方法としては、各チャンネルの光パルスのビットレートを増大させる方法があり、現在では、10Gb/sの導入が進んでいる。そして、最近では、今後実用化が期待されている40Gb/sの導入が展望されている。
このようなハイビットレートの光パルス伝送路においては、その伝送品質の劣化を招くいくつかの要素がある。
その一つが、偏波モード分散(Polarization−ModeDispersion:PMD)である。これは、光パルスの伝送路である光ファイバの中でランダムに発生する複屈折に基因して、伝送されている光パルスにおいて、本来は縮退しているべき直交偏波モードが分離してパルス幅を拡大させるという現象である。このような現象を発現した光パルスは、正しい光信号としての機能を発揮しないことになる。
従って、最近の光ファイバでは、このPMDを小さくする努力がなされている。しかしながら、その値は、せいぜい0.25ps/km1/2程度である。そして、そのような光ファイバを用いて40Gb/sのビットレートを採用した場合、光伝送が可能な距離は、長くても100km程度であり、それ以上の距離の光伝送を実現することは出来ない。
また、これまでに敷設されてきた古い光ファイバのPMDは、1ps/km1/2程度であるため、ビットレートを10Gb/sにするとその光伝送可能な距離は170km程度であり、ビットレート40Gb/sにすると10km程度までしか光伝送を実現することができない。
このように、既設の光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、ビットレートを10Gb/sに高める場合や、次世代光伝送システム用に新たな光ファイバを敷設してそのビットレートを40Gb/s以上で運転しようとする場合には、PMDの影響が顕著に現れ、その結果、伝送容量が大きく、実用的な光伝送システムの構築が困難になる。
従って、高ビットレート伝送を行う光伝送システムにおけるPMD特性の評価を行ったり、光伝送システムに生じたPMDを補償することが必要であり、その解決のために、PMDエミュレータが用いられる。
ここで、光伝送システムのPMD耐性評価等のために、実線路のSingle Mode Fiber(SMF)のPMD特性をエミュレートするために用いられるPMDエミュレータの従来例を説明する。もし、実験室で実際のSMFを用いてPMDの評価を行おうとすれば、実験室は、SMFが敷設された場所よりもさらに環境が安定しているため、実際よりもさらに長時間を要することになる。従って、PMDエミュータを用いて、PMD評価を行うことが有効である。
この実施例で取り扱うSMFは、長さが数十〜数百kmで、PMDは0〜数10ps程度であり、2次以上のPMDを含む場合を想定している。このエミュレータにおいては、1次PMD(Differential Group Delay:DGD)と2次以上のPMDとして影響の大きい2次PMD(Second Order Polarization Mode Dispersion:SOPMD)を取り扱っている。
この実施例のPMDエミュレータの概要図を図18に示す。多数の(例えば100セクション)DGDセクション161〜161が回転連結によりモデリングされている。この実施例の場合には、DGDセクションに複屈折部を用いている。このセクション数が多いほうが、実際のSMFの特性に近づくことになるため、実際のSMFに近いPMD特性を得るためには、非常に大掛かりで高価なPMDエミュレータが必要となる。
SMFのPMD特性を得るために、DGDセクション161a〜161nを回転させる。この回転速度は、各々のDGDセクションによって異なるが、回転速度自体は一定で、何ら速度制御等は行っていない。
図19のグラフは、このPMDエミュレータによって得られたDGDとSOPMDの特性を示す。グラフの横軸は、波長(nm)を示し、縦軸をDGD(ps)とSOPMD(ps)を示す。また、図20AはDGD分布を示し、図20BはSOPMD分布を示す。また、各波長におけるDGDとSOPMDの相関関係は、図21に示すように、正の相関となることが判明している。
しかし、このPMD特性を得るためには、多数のDGDセクションを有する大掛かりなPMDエミュレータを長時間稼動させなければならない。
次に、PMDエミュレータの代表的な装置の実施例として、US2002/80467号公報に記載されている装直について、更に具体的に説明する。(例えばUS2002/0080467号公報参照。)図17は、この装置の構成概略図であり、入射された測定対象光は、この装置を伝播されると、正確なPMDの値が得られるというものである。)
このPMDエミュレータ100は、測定対象光を入射、出射させる光ファイバ101、102と、入射、出射させる光ファイバ101、102の間に、DGD部122、132、142と位相シフト部124、134、144からなる複屈折部104、106、108と、偏波モード混合部110、112、114とが、交互で多段に接続されて構成されている。図17では、複屈折部と偏波モード混合部がN個配置された例が記載されている。なお、位相シフト部124、134、144には、位相シフト量の制御を行うためのコントローラ126、136、146が配置され、偏波モード混合部110、112、114には、偏光回転方向の制御を行うためのコントローラ116、118、120が配置されている。
また、他の従来例としては下記が挙げられる。
既設伝送路に発生するPMDは時間方向および周波数方向に分布を示し、その分布は理論的に示されている確率密度分布に従い、DGD(1次PMD)はマクスウェル分布、SOPMD(2次PMD)についても対応した確率密度関数が与えられている。(OPTICAL FIBER TELECOMMUNICATIONS,VOLUME IVB,Chapter 5“Polarization−Mode Dispersion”参照。)伝送評価実験を行う場合にはその時間方向の分布が重要であり、そのような実際の伝送路のPMDを模擬するPMDエミュレータとしては、図22に示すように偏波保持ファイバや複屈折結晶からなるDGDセクションの多段構成とし、さらに各セクションの間に可変の偏光回転素子を配置してそれら全ての回転角度をランダムに回転させる装置が提案されている。(例えばProc.OFC02,paper ThA3,pp374−375,2002参照。)
上述のUS2002/0080467号公報に示される従来のPMDエミュレータでは、偏波モード混合部として、YVO4、LiNbO3を使用し、電気光学効果を利用しているので、圧電素子などの大規模な装置を必要とし、またその消費電力も大きいという問題がある。また、YVO4、LiNbO3は、挿入損失が大きいという問題もある。
また、従来のPMDエミュレータにおいては、発生させたPMDの時間分布を理論的な確率密度関数に十分近づかせるためには、DGDセクションの段数を多数にする必要があり、このような装置では制御部分がDGDセクションの数に従って多数になるため、装置が複雑で高価になるという問題点がある。光伝送システムを評価するためには、この部品点数の多い装置を長時間稼動させてPMD特性を得る必要がある。
また、従来のPMDエミュレータは、全データPMD値を得るまで、長時間PMDエミュレータを稼動させて、始めて統計的にPMD特性(分布)を得ることができるのであって、ある時点での所望のPMD値だけを再現するようなことは不可能である。
また、平均GDG値を変えるためには、各DGDセクションのDGD特性自体を変更しなければ、対応できない問題がある。
また、従来のPMDエミュレータでは、あくまで接続角度を変化せせるものであり、逆に角度を固定してPMD特性を得ることは不可能である。
従って、本発明の目的は、前記従来技術の課題を鑑みてなされたもので、低消費電力で安定動作し、挿入損失が小さく、従来よりも部品点数が少なく、複雑で高価な装置を必要とせず、ある時点での所望のDGD値を発生させることが可能であり、各セクションのGDG値を変えることなく平均GDGを変えることが可能であり、また、接続角度を変えることなくPMD特性の得られるPMDエミュレータを提供することにある。
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本発明のPMDエミュレータの第1の実施形態は、測定対象光を入射する入側光ファイバと、
前記測定対象光を出射する出側光ファイバと、
M(Mは2以上の整数)基のDGDセクションと(M−1)個の偏波回転子とが交互に接続され、両端にDGDセクションが配置された第1の偏波回転部と、
N(Nは2以上の整数)基のDGDセクションと(N−1)個の偏波回転子とが交互に接続され、両端にDGDセクションが配置された第2の偏波回転部と、
任意の偏波状態から任意の偏波状態へ変更する任意−任意偏波コントローラと、
が備えられ、
前記入側光ファイバと前記第1の偏波回転部の入側のDGDセクションとが接続され、前記第1の偏波回転部の出側のDGDセクションと前記任意−任意偏波コントローラの入側の接続点とが接続され、前記任意−任意偏波コントローラの出側の接続点と前記第2の偏波回転部の入側のDGDセクションとが接続され、前記第2の偏波回転部の出側のDGDセクションと前記出側光ファイバとが接続されたことを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、前記偏波コントローラが、偏波位相子の両端に偏波回転子が接続されたことを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、前記Mの値が2であり、前記Nの値が2であることを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、シミュレーションにより求められた制御パラメータに基づいて前記偏波回転子を制御することによって、所望のPMD値を発生させることを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、前記DGDセクションのDGD特性を変えることなく、前記偏波回転子を制御することによって、平均GDGを変化させることを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、40個以上のDGDセクションをランダムな相対角度で接続し、その全体に温度変動を与える温度制御機構を備えたことを特徴とするPMDエミュレーである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、前記DGDセクションに、正規分布に従った、異なるDGD値を持たせたことを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、DGD値の正規分布の標準備差が、その正規分布の平均値の20%であることを特徴とするPMDエミュレータである。
本発明のPMDエミュレータの他の実施形態は、前記DGDセクションが偏波保持ファイバまたは一軸性複屈折結晶であることを特徴とするPMDエミュレータである。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のPMDエミュレータの一構成例を示す図である。
図2は、PMDの計算値と、従来の100基のGDGセクションを有するPMDエミュレータによる測定値とを比較したグラフである。
図3は、PMDの計算値と、4基のGDGセクションを有するPMDエミュレータにおいて、一定の回転を行って測定した測定値とを比較したグラフである。
図4は、GDGの計算値と、本発明の4基のGDGセクションを有するPMDエミュレータによる測定値とを比較したグラフである。
図5は、本発明のPMDエミュレータの他構成例を示す図である。
図6は、図5のPMDエミュレータの他の構成例を示す図である。
図7は、図6のPMDエミュレータの他の構成例を示す図である。
図8は、図6のPMDエミュレータのさらに他の構成例を示す図である。
図9は、図6のPMDエミュレータのさらに他の構成例を示す図である。
図10は、偏波モード分散測定装置の構成例を示す図である。
図11は、PMDエミュレータのPMD特性と理論計算値をDGD備により示したグラフである。
図12は、PMDエミュレータのPMD特性と理論計算値をSOPMD値により示したグラフである。
図13は、PMDエミュレータのPMD特性と理論計算値を、SOPMD値をPCDの絶対値とPSDに分解して示したグラフである。
図14は、DGD分布の計算結果を示す図である。
図15は、40基以上のDGDセクションを相対角度をランダムに接続して構成されたPMDエミュレータを示す図である。
図16は、図15に示すPMDエミュレータにおいて、DGD分布の計算結果を示す図である。
図17は、従来のPMDエミュレータの一構成例を示す図である。
図18は、従来のPMDエミュレータの一構成例を示す図である。
図19は、SMFのDGDとSOPMの特性を示すグラフである。
図20は、DGD分布とSOPMD分布を示すグラフである。
図21は、DGDとSOPMDの関係を示すグラフである。
図22は、従来のPMDエミュレータの一構成例を示す図である。
図23は、本発明のLN導波路型偏波コントローラの概要図である。
図24は、モード変換器として用いる場合の、屈折率の状態を示し模式図である。
図25は、上下電極の大きさは同じで、互いに符号が異なる非対称な電圧を掛ける方法を示した図である。
図26は、上下電極の大きさ、及び符号が同じ電圧を掛ける方法を示した図である。
図27は、導波路上に有効に掛かる電解成分について、元の状態と変化後の状態を示した図である。
図28は、上下電極の大きさ、及び符号が同じ電圧を掛ける方法における効果を示した図である。
図29は、波長版として用いる場合の原理を示した図である。
図30は、波長板動作時の屈折率状態を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照ながら説明する。
まず最初に、PMDエミュレータの原理について説明する。複数の偏光回転子と複数の偏光保持フアイバ(PMF)または、複数の備光回転子と複数の複屈折結晶を用いたPMDエミュレータのPMDは、再起的に計算が可能である。(n+1)セクション後の1次PMDベクトルで(n+1)と2次PMDベクトルでτω(n+1)はPMD接続関係式で表され、それは下記のように表される。

なお、τn+1はn+1番目のDGDセクションの1次PMDベクトルT(n)は1〜nセクションの1次PMDベクトル、Rnはn番目の回転偏光子による回転接続を表すマトリクスである。
特に2セクションのDGDで発生されるPMDの量は、2つのセクションのDGDをτ1、τ2とし、回転接続角をβとして、下記のように表され、

これらは周波数に依存しない。下付は微分を表す。ここでτはDGD、αは光搬送波の角周波数である。このとき、2次PMDベクトルは必ず1次ベクトルに直交するため、SOPMDの成分はPSDのみである。
逆に、2セクションより多いDGDで発生されたPMDは周波数に関して周期的なDGDと2成分を含むSOPMDをもち、そのFSRは1つのPMFの長さにより決定される。3セクションより多い場合には、複数のFSR(Free Spect−rumrange)がミキシングされるが、各FSRを等しい値とすることによりエミュレータ全体として1つのFSRを持たせることが可能であり、安定したエミュレータ特性を実現できる。またFSRを同量変化させることにより、特性の形はそのままに周波数方向へ特性をシフトさせることができる。
次にこの原理に基づいた本発明のPMDエミュレータの実施形態について具体的に説明する。
図1に、本発明の偏波コントローラを備えたPMDエミュレータのひとつの実施形態を示す。この実施形態のPMDエミュレータ70では、DGDセクション76、77(M=2)が備えられた第1の偏波回転部73と、DGDセクション78、79(N=2)が備えられた第2の偏波回転部74を有しており、計4基のDGDセクションが備えられている。
図1Aに示すように、第1の偏波回転部73は、DGDセクション76に偏波回転子80が接続され、この偏波回転子80にDGDセクション77が接続されて構成されている。また、第2の偏波回転部74は、DGDセクション78に偏波回転子81が接続され、この偏波回転子81にDGDセクション79が接続されて構成されている。
測定対象光を入射する入側光ファイバ71は、第1の偏波回転部73の入側のDGDセクション76と接続されている。また、第1の偏波回転部73の出側のDGDセクション77は、任意−任意偏波コントローラ75の入側の接続点と接続されている。また、任意−任意偏波コントローラ75の出側の接続点は、第2の偏波回転部74の入側のDGDセクション78と接続されている。また、第2偏波回転部74の出側のDGDセクション78には、測定対象光を出射する出側光ファイバ72が接続されている。
DGDセクション76〜79は、PMF(Polarization Maintaining Fiber)で構成されているが、PMFの代わりにTiO2等の複屈折結晶を用いてもよい。
また、偏波回転子80,81は、ファラデー回転子を用いることもできるし、または、1/2波長板を回転させることによっても実現できる。
図1Bには、本実施形態の任意−任意偏波コントローラ75の構成を示す。任意−任意偏波コントローラ75は、任意−任意偏波コントローラの最も一般的な構成である、偏波位相子82の両端に偏波回転子83と偏波回転子84が接続された構成を有している。
この構成は、他の構成に較べて部品点数が少なく、安価な装置を提供することが可能である。
この任意−任意偏波コントローラ75を構成している偏波回転子83,84は、ファラデー回転子の適用が可能であるし、また、1/2波長板を回転させることも可能である。偏波位相子82は、偏波回転子を2つの1/4波長板ではさみ合わせることにより実現可能である。
このPMDエミュレータ70では、入側光ファイバ71を伝送された測定対象光が、DGDセクション76、偏波回転子80、DGDセクション77、偏波回転子83、偏波位相子82、偏波回転子84、DGDセクション78、偏波回転子81、DGDセクション79の順で伝搬され、出側光ファイバ72から外部へ伝送される。
なお、外側のDGDセクション76とDGDセクション79が結晶から構成されている場合には、図示されていないが、入側光ファイバ71と出側光ファイバ72の端末にはコリメータが取り付けられる。
また、本実施形態では、第1の偏波回転部に備えられたDGDセクション数M=2であり、第2の偏波回転部に備えられたDGDセクション数N=2であるPMDエミュレータの実施形態について説明したが、M、Nはその他2以上の任意の整数を取ることが可能である。
次に、図1に示される4基のDGDセクションを備えたPMDエミュレータ70を精密に制御することによって、PMDの分布を得る手順を説明する。上述のように、従来では、DGDセクションの多数のセクションを接続したPMDエミュレータを長時間稼動させて、PMDの分布を得る必要があった。つまり、全てのデータを採取した後、初めて統計的にPMDの特性が得られるものであり、特定の時点でのPMD特性を発生させることは不可能であった。
しかし、上述のPMDエミュレータ70では、各偏波回転子の回転を精密に制御することによって、ある特定の時点の所望のPMD値を再現することが可能である。
具体的には、まず、コンピュータ計算によって多数のDGDセクションを有するPMDエミュレータのシミュレーションを行い、DGD、SOPMD値の時間的変化を求める。(実際に、PMDエミュレータを稼動させない。)そして、同じくコンピュータ計算によって非線形フイッティングを行い、所望のDGD値,SOPMD値となる場合の、PMDエミュレータ70の各偏波回転子の制御パラメータを算出することができる。この算出された制御パラメータを用いて、実際にDGG4セクションのPMDエミュレータ70を稼動させることによって、正確に、所望のDGD,SOPMD値を発生させることができる。
このPMDエミュレータ70で発生させたDGD値,SOPMD値は、出側光ファイバ72に接続された偏波モード分散測定装置によって測定することができる。
同様に制御パラメータを用いて、種々のDGD,SOPMD値を発生させることを繰り返すことによって、SMFの時間的な統計分布を再現することも可能である。
さらに、従来のPMDエミュレータでは、全体の平均DGDを変化させるためには、PMDエミュレータを構成する各DGDセクションのDGD特性を変える必要があったが、本発明に係るPMDエミュレータ70においては、偏波回転子を精密に制御することによって変化させることができる。
ここで、図2Aは、計算値によるDGDの特性と、従来の100セクションのPMDエミュレータによるDGDの実測値の特性を対比できるように示したグラフである。このPMDエミュレータの平均GDGは10psである。
図2Bは、計算値によるSOPMDの特性と、従来のPMDエミュレータによるSOPMDの実測値の特性を対比できるように示したグラフである。DGD、SOPMD共に、計算値と実測値がほぼ一致していることがわかる。
また、図2Cは、DGDとSOPMDの実測値の相関関係を示すグラフである。両者は、ほぼ正の相関があることを示している。
図3Aは、計算値によるDGDの特性と、8psのGDGを有するDGDセクションを4基備えた本発明に係るPMDエミュレータにおいて、(特別な制御を行わず)一定回転速度で回転させた場合のDGD特性の実測値を対比できるように示したグラフである。
図3Bは、計算値によるSOPMDの特性と、DGD4セクションのPMDエミュレータ70において、一定回転速度で回転させた場合のSOPMDの実測値の特性を対比できるように示したグラフである。DGD値、SOPMD値共に、計算値と実測値が異なる値を示していることが示されている。
また、図3Cは、DGDとSOPMDの実測値の相関関係を示すグラフである。両者には、定かな相関が見られないことを示している。
図4Aは、計算値によるDGDの特性と、8psのDGDを有するDGDセクションを4基を備えた本発明に係るPMDエミュレータにおいて、偏波回転子を精密に制御した場合のDGDの実測値の特性を対比できるように示したグラフである。
図4Bは、計算値によるSOPMDの特性と、GDG4セクションのPMDエミュレータ70において、偏波回転子を精密に制御した場合のSOPMD特性の実測値を対比できるように示したグラフである。DGD値、SOPMD値共に、計算値と実測値がほぼ一致していることがわかる。
また、図4Cは、DGDとSOPMDの実測値の相関関係を示すグラフである。両者は、ほぼ正の相関があることを示している。
以上のように、本発明のPMDエミュレータの実施形態として、4基のDGDセクションと、偏波位相子の両端に2個の偏波回転子が接続された構成を有する任意−任意偏波コントローラを備えたPMDエミュレータについて説明を行ってきたが、本発明の実施形態は、それだけに限られない。以下に、本発明のPMDエミュレータその他の実施形態を説明する。
図5は本発明の他の実施形態に係わる構成を示す図である。本装置例のPMDエミュレータ10は、測定対象光を入射、出射させる光ファイバ12、14と、両光ファイバ12、14間に、4つのDGDセクション16と、3つの偏波コントローラ18とが交互に接続して配置されている。偏波コントローラ18は、一つのフアラデー回転子で構成され、DGDセクション16はPMF(Polarization Maintang Fiber)で構成されている。なお、DGDセクション16は、PMFの代わりにTiO2等の複屈折結晶を用いてもよい。
このPMDエミュレータ10では、入射側の光ファイバ12を伝送してきた測定対象光が、第1のDGDセクション16、第1の偏波コントローラ18、第2のDGDセクション16、第2の偏波コントローラ18、第3のDGDセクション16、第3の偏波コントローラ18、第4のDGDセクション16の順で伝播され、出射側の光ファイバ14に結合される。なお、第1のDGDセクション16および第4のDGDセクション16が、結晶から構成されている場合は、図示しないが、入射、出射させる光ファイバ12、14の端末にコリメータを取り付ける。
また、図5では、4つのDGDセクション16と3つの偏波コントローラ18が交互に接続されて構成されているが、各個数はこの構成に限られない。例えば、DGDセクション16は、5つ、6つ‥・N個配置されてもよい。また、偏波コントローラ18は、DGDセクション16間に配置されるので、DGDセクション16の数より一つ少ない数だけ配置されることになる。つまり、DGDセクション16の配置数がN個であれば、偏波コントローラ18の配置数は、(N−1)個となる。
偏波コントローラ18では、フアラデー回転子により、DGDセクション16から出射された光の偏波回転を制御するものである。磁場の中で光が磁場と平行に進むと偏光面が回転するフアラデー効果を利用して、進行光と逆方向の光の偏波面角度を制御するものである。フアラデー回転子は、約20mA経度の電流により、偏波回転を制御しているため、消費電力が少ないというのが一つの特徴である。
次に、PMDエミュレータの他の実施形態について図6を参照して説明する。図6に示すPMDエミュレータ30は、図5に示したPMDエミュレータ10に位相子32を配置させた点が異なる構成となっている。さらに説明すると、図6のPMDエミュレータ30は、DGDセクション16と、偏波コントローラ18の構成、配置は同一であるが、各備波コントローラ18に1つづつの位相子32が接続されている点が、図5のPMDエミュレータ10とは異なる構成である。なお、位相子32は、2つの1/4波長板の間にフアラデー回転子を配置させた構成である。
図6に示すように、位相子32は、DGDセクション16をN個配置させた場合、(N−1)個配置される。つまり、図2の構成では、位相子32と偏波コントローラ18とが同じ数だけ配置されることになる。位相子32の配置場所は、偏波コントローラ18の入射光ファイバ12側である。
なお、位相子32は、配置場所により、配置個数を(N−2)個にすることが可能である。この場合の一構成例を図3により説明する。
図7は、DGDセクション16がN個配置され、偏波コントローラ18が(N−1)個配置され、位相子32が(N−2)個配置されたPMDエミュレータ40を示す構成図である。
図7では、入射用光ファイバ12側から第1DGDセクション16、第1偏波コントローラ18、第1位相子32の順に配置され、続いて第2DGDセクション16、第2備波コントローラ18、第2位相子32が配置されている。図示は省略するが、引き続き、第3、第4‥・第n−2番目と配置される。続いて、第n−1番目では、第n−1DGDセクション16、第n−1偏波コントローラ18が配置され、第n番目は、第nDGDセクション16のみが配置されている。なお、第nDGDセクション16には、出射用光ファイバ14が接続されている。
また、図7の変形例として、図8に示すようなPMDエミュレータ50の構成としてもよい。第1DGDセクション16、第1偏波コントローラ18の順に配置され、続いて第2DGDセクション16、第1位相子32、第2備波コントローラ18の順に配置され、第3DGDセクション16、第2位相子32、第3偏波コントローラ18の順に配置させる。続いて、第4、第5・‥第n−1番目まで同様に配置され、第n番目に第n備波コントローラ18が配置されている。
さらに図8の変形例として、図9に示すようなPMDエミュレータ60の構成としてもよい。第2備波コントローラ18と第2DGDセクション16との間に第1位相子32を配置させ、第2偏波コントローラ18と第3DGDセクション16との間に第2位相子32を配置させる構成としてもよい。この場合、偶数番目の偏波コントローラ18とその前段と後段に位置するDGDセクション16との間に位相子32が接続されることになる。
上述では、図7〜図9に、位相子32が(N−2)個配置された構成例についてそれぞれ説明してきたが、これらを組合わせても良いということは言うまでもない。言い換えると、入射用光ファイバL12が接続された第1DGDセクション16と、出射用光ファイバ14が接続された第nDGDセクション16以外のDGDセクションには位相をシフトするための位相子32が配置されているということになる。
次に具体的な実施例について説明する。まず、図5に示したPMDエミュレータについて具体的に説明する。偏波コントローラ18は、偏光回転子として機能する3つのフアラデー回転子である。備波コントローラ18には、それぞれ接続された4つのDGDセクション16が接続されているが、これらはPMFで構成されている。
決まったFSRを持つように、すべてのDGDセクション16のPMFは同じ長さとした。すべてのPMFのDGDは7.5psである。FSRは13・3GHzであるが、すべての位相が同じになるように調整した。この位相についてすべてのDGDセクション16において同量シフトさせることにより、PMDの形を変えずに周波数シフトをさせることが可能である。位相のシフトは位相シフタ32(図6〜図9を参照)やDGDセクションの温度調節(図示しないが、ペルチェ、ヒータ等を使用する。)で実現できる。
DGDセクション16は4セクションであるが、一部の回転接続角を0度に設定することによりセクション数を減らすことができ、周波数依存性のない2セクションも実現できる。
DGD、PCD(Polarization Chromatic Dispersion)、PSD(polarization−state Depolarization)、SOPMDは性質上関連しているので、完全に自由に独立して値を選択することはできないが、1つより大きい目標プロファイルに対して同時に非線形フィッティングを行なうことにより、可能な範囲の回転接続角度を求めることができるようにした。図5〜図9に示したPMDエミュレータでは、回転接続角を偏波コントローラ(ファラデー回転子)で調節できるようにし、算出した接続角を±3度以内の精度で実現できるようになっている。
次に、PMDエミュレータを用いた偏波モード分散測定器50の構成を図10に示す。この偏波モード分散測定器50は、通常の偏光解析法であり、偏波コントローラ58として、偏光子58aと、偏光回転子の機能を有するフアラデー回転子58bを用いた。
入射偏波状態はストークス空間で直交する2点からミューラーマトリクス法(MMM)によりPMDベクトルを求めた。PMDベクトルを求めるのには波長が点必要だが、2次PMDを求めるには波長がもう1点必要である。よって、ある波長における2次PMDを正確に求めるためには、波長3点における偏波状態2状態について偏波状態が時間的に変化しないうちに測定する必要がある。
今回,反応速度の早い偏波コントローラ(ファラデー回転子)を用いることにより、測定時間が短くなり、PMDベクトルを正確に測定することが可能となった。この結果、2成分の2次PMD量を正確にすることができるようになった。フアラデー回転子のπ/2回転に要する時間は0.2ms未満である。
次に、PMDエミュレータの再現性について説明する。周波数依存性をもつDGDの周波数特性を固定して、2次PMD量の異なる状態をPMDエミュレータで再現した。中心波長1548nmにおけるDGDの値が20ps、SOPMDの値が全周波数域において75,100,125psとなるように目標値を設定した。フアラデー回転子による回転角は下記のとおりである。
SOPMD 75ps2:31.0,67.5,31.0[deg.]
SOPMDlOOps2:26.も 65.2,26.4[deg.]
SOPMD125ps2:21.8,63.5,21.8[deg.]
このときのPMDエミュレータのPMD特性と理論計算値を図11、図12に示す。図11がDGD値、図12がSOPMD値である。PMDエミュレータにより生成されたPMD特性は再現性があり、理論計算値と良く一致していることがわかる。
SOPMD値が100psであるものについて、図13にSOPMDをPCDの絶対値とPSDに分解して表示した。PCDとPSDを精度良く分解して生成、測定できていることが分かる。DGDの周期的性質から、中心波長においてPCDが0であるため、中心波長においてSOPMDの成分はPSDのみ、中心波長から離れるに従ってPCSの割合が増し、半周期のところで再度PSD成分になるという特性をもつ。
周波数依存性のない状態は2セクションのDGDでエミュレートでき、このとき2次PMDは同じように75、100、125ps2に設定することができる。このPMDエミュレータを用いて、同じSOPMD値をもつ状態を2種類以上実現でき、このエミュレータを用いることにより、光通信システムにおける2成分の2次PMDによる性能低下を見積もることが可能となるであろう。
上述したように、偏波コントローラ(フアラデー回転子)を用いたプログラム可能なPMDエミュレータと偏波モード分散測定装置により正確な測定が可能となる。なお、このPMDエミュレータは安定であり、PMDエミュレータで発生したPMDを偏波モード分散測定装置で測定したDGDと2次PMDの2成分は理論計算と良く一致した。
次に、DGDセクションの接続角度は固定し、温度変動によって位相を変化させることによってエミュレートを行うPMDエミュレータの実施形態について説明する。
以下に、モード結合部分を多数含む実際の伝送路のモデルを用いて説明する。モード結合部分を多数含む伝送路をジョーンズマトリクスで表すと数式5のようになる。

すなわち、直線位相子を表すジョーンズマトリクスと回転を表すジョーンズマトリクスが交互に掛かる形である。
ここで、Tiは偏波保持ファイバや複屈折結晶を用いる場合、環境温度によって光の振動周期レベルでは揺らいでいる。今、Tiの環境温tによる光の振動周期レベルでの揺らぎをTiと分離して8Ti(t)とすると、数式5中の指数部分は、

と置くことが出来る。ここで、Φi(ω)はDGDセクションの揺らぎを無視した成分による位相を表しており、これは周波数のみに依存する。一方、Φi(ω,t)は環境温度による揺らぎ成分による位相を表しており、これは周波数と環境温度に依存する。
従って、このモデルにおいて可変となるパラメータは回転角度θiと揺らぎによる位相Φi(ω,t)となる。今、PMDの時間分布のみを問題とするのでωを定数と考えて、それぞれθi(t)、δΦi(t)とおきなおす。
以上のモデルに対して、DGDセクションの段数を変えて、θi(t)のみをランダムに振った場合(8村t)はランダム値で固定)、8村t)のみをランダムに振った場合(δΦi(t)はランダム値で固定)、両方をランダムに振った場合でのDGD(1次PMD)の分布を計算した結果を図2に示す。なお、それぞれの計算において、平均DGDが30psとなるようにDGDセクションの値を定めている。さらに周波数方向の周期性を排除するために各DGDセクションを、標準偏差を平均値の20%として正規分布させている。Total DGDは使用されているDGDセクションのDGDの総和を表し、Average DGDは使用されているDGDセクションの平均値を表している。
図14によれば、回転θi(t)のみを振った場合と両方を振った場合は9セクションでも理輸値に近い分布を示しているが、位相δΦi(t)のみを振った場合には40セクション程度でないと分布が近づかないことがわかる。すなわち、回転をランダムに変えると位相を変える場合に比べて少ないセクションで理輸値に近い分布が得られることになる。しかし、回転をランダムに変える機構を実際に装置として組み立てる場合には9セクションであっても複雑になってしまう。一方、位相をランダムにかえる場合には、各セクションのDGD値が異なっていれば、温度に対する位相変化率がそれぞれ異なることになるため、各セクションを個別に温度変動させる必要はなく、一括に温度変動をさせることによって各セクションの位相がランダムに振ることができる。
以上のことから、図15に示すような40セクション以上のDGDセクション、例えば偏波保持ファイバを、相対角度をランダムに接続して構成し、全体の温度を変動させれば、制御機構が1つの簡単なPMDエミュレータを構成できる。
図16に、実際に50セクションで平均DGDが30psとなるように設計試作した温度制御付きPMDエミュレータの、室温で放置した(温度変動無)の場合と温度制御機構による温度変動有の場合のDGD分布を示す。温度変動の有、無を比較すると、温度変動によって位相がランダムに分布し、その結果、上記計算の通りの理論値に近いDGD分布が得られていることが分かる。
(その他の実施形態)
本発明のその他の実施形態として、LN導波路型偏波コントローラについて説明を行う。
この実施形態では、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶(以下LN)を基板材料とし、LN基板上にTiを蒸着、熱拡散させることにより、光導波路を形成する。この際、光の伝播方向はLN結晶の光学軸であるC軸方向(z軸と同等)の方向に伝播する。
デバイスの構成図及び断面図を図23に示す。デバイスを構成するLN結晶はx軸方位に切り出されており、導波路及び制御用の電極は+x面に形成される。
制御用の電極の配置パターンとしては導波路直上に配置される中心電極と、導波路から離れて配置される上段電極、及び上段電極とは逆方向に導波路から離れて配置される下段電極により構成される。
この中心電極、上段電極、下段電極により1つの‘段’が形成され、ここでは1つの段が1つの波長板として機能することになる(補足A参考)。全体の偏波コントローラとしては波長板が3段、もしくは4段により構成され、波長板の特徴を示す値としては初段、2段目、3段目、4段目がそれぞれλ/4、λ/2、λ/4、λ/a(最終段の値は未定)となる。また、波長板の特徴を位相差で表現した場合にはそれぞれ(π/2 rad、π rad、π/2 rad、b rad)となる。
各段を波長板として機能させるには、中心の電極をGNDに取り、両脇の電極にそれぞれ図1に示す電圧を印加する。波長板の位相差Δφ、及び角度θが与えられた場合のVc、及びVsの値は
Vs=(Δφ/π)・Vπ・cos(2θ)+Vb
Vc=(Δφ/π)・VO・sin(2θ)
で表すことができる。(補足B.及びC.を参照)。(ここでVO,Vπ,Vbは定数)
このLN導波路型偏波コントローラを、モード変換器として用いる場合と、波長板として用いる場合が考えられる。
まず、モード変換器として用いる場合を説明する。
LN結晶中を光が光学軸方向に伝播する際には、媒質に起因する屈折率はどちらの方向もnoの値であるが、ここではTiの拡散により導波路を形成しているため、導波路の構造に起因する見た目上の屈折率の変化が起り等価的な屈折率の値はTEモードとTMモードで異なる。
屈折率の状態を図24のように楕円で表示した場合、入射光はそれぞれ楕円の長軸方向の成分と短軸方向の成分に分割され(電圧を掛けない状態では図24の状態であるのでTE、及びTMモードになる)、位相差Δφは二つの等価的な屈折率の差(ΔnTE−ΔnTM)と伝播距離(厚みd)の積と比例の関係がある。
Δφ∝|ΔnTE−ΔnTM|・d
よって、伝播距離dは電極の長さによって決まるので、波長板のような位相差が一定の場合には二つの屈折率差が一定であるように制御する。
上下電極に電圧を印加する手法、及びその際の状態の変化は次のようになる。制御のための電圧印加の方法には2通りがあり、
(1)上下電極に大きさは同じで互いに符号が異なる非対称な電圧を掛ける方法(図25参照。)
(2)上下電極で大きさ、及び符号が同じ電圧を掛ける方法(図26参照。)である。
上述の(1)の方向で電圧を印加した場合には、導波路上に有効に掛かる電界成分の方向としてはy方向になり、図27のように元の状態を点線、変化後の状態を実線で表すことができる。
(x軸とy軸で大きさが同じで符号が異なる屈折率の変化が起り、屈折率の変化量は電圧の大きさに比例する)
このように適切な電圧を(1)の方向に印加することにより、例えば導波路化に伴い見た目上の屈折率が変化し、屈折率の状態が楕円形状になったものを円形に修正することができる。
また、電圧印加量を調節することにより、x軸方向の光の成分が見る屈折率とy軸方向の光の成分が見る屈折率が異なる状態にすることができ、このような状態に置いては導波路から出射される光のy方向成分(TEモード)とx方向成分(TMモード)との間に位相差が生じることになり、電圧の印加量によって調節することが可能である。
次に上述の(2)の方法で電圧を印加した際の効果を図28に示す。この際には電圧印加に伴う導波路上に有効的に作用を及ぼす電界成分はx方向となる。
なお、この場合において初期の状態では▲1▼の方向に電圧が掛かっており、導波路化に伴い楕円化した状態を円形に戻してあるものとする。
この状態においては楕円の長軸、及び短軸方向は元の座標系から45°傾いた状態に配置され、屈折率の変化量は印加電圧Vcに比例する。
この状態において、電圧印加に伴う楕円の変化の差がある一定量になった場合(屈折率の差に起因する楕円の長軸方向成分と短軸方向成分の位相差がπradになった場合)、TEモード(y軸方向)で入射された光は完全にTMモード(x軸方向)に変換される。
また、逆にTMモードで入射された光はTEモードに変換される。位相差がπradでない他の値の場合においてはTE(TM)モードで入射された光の一部分がTMモードに変換されることになり、電圧印加量によってTE−TMモード変換の度合いを調節できることになり、モード変換器として機能する。
(対象特許では説明に用いた方法とは電圧の印加方法は異なるが、このような原理を用いてTE−TMモード変換機として機能させている)
モード変換器としての動作用件をまとめると
(1)y方向の電界成分は導波路化に伴う楕円化した屈折率の状態を円に戻す量を印加
(2)x方向の電界成分は起こしたいモード変換の度合いに応じて量を調節する
また、y方向の電界を発生させる電圧をVs、x方向の電界を発生させる電圧をVcとすれば
Vs=Vb(Vb:定数(導波路化に伴う楕円化した屈折率の状態を円に戻す電圧))
Vc=Vc(値はモード変換を起こしたい度合いにより調整)
次に、LN導波路型偏波コントローラを波長板として利用する場合について説明する。
一般的に波長板とは光が伝播する方向に対して光の偏光状態により2つの屈折率を持ったものであり、光が波長板に入射された際には、波長板に固有の2つの偏光状態の間に固定の位相差を付与することができる光学素子である。
(光の偏光状態を他の偏光状態に変換するために使用し、最も一般的なものは水晶(LNでも可)を板状に加工したものである。(図29参照。)
また、任意の入射偏光状態から他の任意の偏光状態に変換するには、波長板を回転接続することにより実現することが、可能であるため、複数の(C軸)回転角が回転可能な波長板を用いることにより、任意の偏光変換が可能な偏波コントローラを実現することができる。
波長板として動作させる際にもx方向の電界成分とy方向の電界成分を印加することにより実現することができる。しかし、波長板として動作をさせる際には波長板の特徴を示すパラメータである二つの軸間の固定された位相差と回転角度を設定する必要があるため(図30参照。)、電圧の印加量はモード変換器とは異なる。
モード変換器においてはy軸方向の電界成分はTE−TMモード間の屈折率差を補正し、楕円の形状を円にする量を印加する必要があるが、波長板として動作させるためには求める位相差と回転角度に応じて、x方向の電界成分と連動してy方向の電界成分を調節する必要がある。
逆に言えば波長板として動作をさせる為には波長板の回転量に応じてy方向の電界印加量は楕円を円する電界印加量からズレた値にする必要がある。
また、同様にy方向の電界を発生させる電圧をVs、x方向の電界を発生させる電圧をVcとすれば
Vs=(Δφ/π)・Vπ・cos(2θ)+Vb
Vc=(Δφ/π)・VO・sin(2θ)
となる。ここでΔφ、θは波長板の位相差、及び角度であり、VO、Vπ、Vb(Vbの値はB.と同様で導波路化に伴う楕円化した屈折率の状態を円に戻す電圧)は定数である。
以上のように、従来のPMDエミュレータにおいては、多数のDGDセクションが必要であり装置が複雑で高価になったが、本発明のPMDエミュレータでは、非常に少ないGDGセクションを有するシンプルで安価な装置によって、PMD特性を得ることができる。
また、本発明のPMDエミュレータを用いれば、シュミレーションによって得られた制御パラメータに基づいて制御することによって、ある時間における所望のDGD値,SOPMD値を発生させ、モニタすることが可能である。
また、本発明のPMDエミュレータにおいては、各GDGセクションのPMD特性を変えることなく、偏波回転子を精密に制御することによって、平均GDGを可変にすることが可能である。
また、本発明のPMDエミュレータによれば、偏波コントローラは、フアラデー回転子が配置されてなるので、少ない消費電力で偏波回転を制御することが出来る。また、フアラデー回転子は、ガーネット結晶を使用しているため、YVO4、LiNbo3と比べ、挿入損失を小さくすることができる。
また、本発明のPMDエミュレータでは、ひとつの制御装置で温度制御を行うことによって位相を変化させ、GDGセクションの接続角度を固定したままPDMをエミュレートすることが可能であり、従来に比べて非常にシンプルで安価な装置で、PDM特性を得ることができる。
更に、本発明のLN導波路型偏波コントローラを、モード変換器や波長板として適用することができる。




【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象光を入射する入側光ファイバと、
前記測定対象光を出射する出側光ファイバと、
M(Mは2以上の整数)基のDGDセクションと(M−1)個の偏波回転子とが交互に接続され、両端にDGDセクションが配置された第1の偏波回転部と、
N(Nは2以上の整数)基のDGDセクションと(N−1)個の偏波回転子とが交互に接続され、両端にDGDセクションが配置された第2の偏波回転部と、
任意の偏波状態から任意の偏波状態へ変更する任意−任意偏波コントローラと、
が備えられ、
前記入側光ファイバと前記第1の偏波回転部の入側のDGDセクションとが接続され、前記第1の偏波回転部の出側のDGDセクションと前記任意−任意偏波コントローラの入側の接続点とが接続され、前記任意−任意偏波コントローラの出側の接続点と前記第2の偏波回転部の入側のDGDセクションとが接続され、前記第2の偏波回転部の出側のDGDセクションと前記出側光ファイバとが接続されたことを特徴とするPMDエミュレータ。
【請求項2】
前記偏波コントローラが、偏波位相子の両端に偏波回転子が接続されたことを特徴とする請求項1に記載のPMDエミュレータ。
【請求項3】
前記Mの値が2であり、前記Nの値が2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のPMDエミュレータ。
【請求項4】
シミュレーションにより求められた制御パラメータに基づいて前記偏波回転子を制御することによって、所望のPMD値を発生させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のPMDエミュレータ。
【請求項5】
前記DGDセクションのDGD特性を変えることなく、前記偏波回転子を制御することによって、平均GDGを変化させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のPMDエミュレータ。
【請求項6】
40個以上のDGDセクションをランダムな相対角度で接続し、その全体に温度変動を与える温度制御機構を備えたことを特徴とするPMDエミュレータ。
【請求項7】
前記DGDセクションに、正規分布に従った、異なるDGD値を持たせたことを特徴とする請求項6に記載のPMDエミュレータ。
【請求項8】
DGD値の正規分布の標準備差が、その正規分布の平均値の20%であることを特徴とする請求項7に記載のPMDエミュレータ。
【請求項9】
前記DGDセクションが偏波保持ファイバまたは一軸性複屈折結晶であることを特徴とする請求項6から8の何れか1項に記載のPMDエミュレータ。

【国際公開番号】WO2004/029699
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【発行日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539499(P2004−539499)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012150
【国際出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】