説明

POSシステムおよび入出力制御方法

【課題】POSシステムにおける入出力装置の取り扱いを簡易化する技術を提供する。
【解決手段】POSシステム(100)は、販売に関するデータを入力する複数の入力装置(10)と、販売に関するデータを出力する複数の出力装置(20)と、複数の入力装置及び出力装置に接続された制御装置(50)とを備える。制御装置は、複数の入力装置のそれぞれが入力するデータに関し実行すべき情報処理を判別し当該情報処理を表す識別情報を生成する入力制御部(31)と、生成された識別情報に対応する情報処理を実行する処理実行部(40)と、実行された情報処理に伴い出力すべきデータを当該出力装置へ供給する出力制御部(33)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗等に設置されるPOS(Point Of Sales)システムに関し、特に、テンキー及びカードリーダ等の複数の入力装置を具備するPOSシステムの入出力処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗等にて販売管理を行うPOSシステムが知られている。POSシステムは、一般に、テンキーやバーコードリーダあるいはカードリーダ等の入力装置と、ディスプレイ及びプリンタのような出力装置と、これら入力装置及び出力装置から入出力されるデータに関する情報処理を実行する制御装置とを備える。
【0003】
POSシステムに関する従来の技術として、例えば、後述の特許文献1及び特許文献2に記載のものがある。特許文献1に記載の技術は、シリアルデータを扱う入出力手段とパラレルデータを扱う処理手段との間にパラレル−シリアル変換を行う手段を備えることにより、一体型POSシステムと分離型POSシステムとを共通化するというものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術は、複数のPOS入出力装置を具備するPOSシステムの中央制御部にマルチタスク管理部を備え、このマルチタスク管理部が、各POS入出力装置の電源オンを契機に、対応するタスクを起動し、同装置の電源オフにより当該タスクを終了させるというものである。
【特許文献1】特開昭63−305456号公報
【特許文献2】特開平02−230393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のPOSシステムでは、入力装置を制御する処理と、その装置から入力されるデータの処理とが一連の処理として取り扱われる。そのため、複数の入力装置によりデータを入力する際は、特定の入力順序を設定する必要があった。例えば、レジカウンタでの精算業務では、商品の価格バーコードを順次読み取って価格の合計を算出後、入金処理に先立ちポイントカードのような付加的な情報を読み取り、最終的に、支払い金額の入力あるいはキャッシュカードを読み取るといった順序が規定される。
【0006】
しかしながら、このように特定の入力順序が規定されると、例えば、上記事例においてポイントカードを最後に読み取るなど、入力操作が規定の順序通りに行われない場合、入力が受け付けられず、結果、操作のやり直しが発生するという不都合がある。よって、店舗従業員等、POSシステムの利用者は、複雑な操作手順を規定どおり正確に習熟しなければならない。
【0007】
また、例えば、入力装置の制御方法が変更される、あるいは、一部の入力装置が交換される際に、ソフトウェア上の修正作業が煩雑になるという問題がある。その理由は、入力装置の動作制御と入力データの情報処理とが一体に扱われるため、部分的な変更であっても、その変更対象がシステム全体に及ぶためである。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、POSシステムにおける入出力装置の取り扱いを簡易化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るPOSシステムは、販売に関するデータを入力する複数の入力装置と、前記複数の入力装置に接続された制御装置とを備え、前記制御装置は、前記複数の入力装置のそれぞれが入力するデータに関し実行すべき情報処理を判別し当該情報処理を表す識別情報を生成する入力制御部と、生成された識別情報に対応する情報処理を実行する処理実行部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の入力装置の制御と、それらから入力されたデータに関する情報処理とを別個に処理するよう構成したことから、予め入力順序を規定するといった操作上の制限を設けることが不要となる。これにより、POSシステムにおける操作が簡易となり、結果、業務を円滑に遂行することができる。また、入力装置の入れ替え等の変更があっても、その変更に伴うソフトウェアの修正範囲がシステム全体に及ぶことを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1に、本発明の実施形態のシステム構成を示す。本実施形態のPOSシステム100は、入力装置群10および出力装置群20と、これらに接続された制御装置50とを備える。
【0012】
入力装置群10は、販売管理に必要とされるデータを入力するバーコード読み取り機、磁気カード読み取り機、及び、ファンクションキーボード等の複数の入力手段10_1〜10_nから構成される。出力装置群20は、販売管理に必要なデータを出力するプリンター及びディスプレイ等を含む複数の出力手段20_1〜20_mから構成される。
【0013】
制御装置50は、図1に示すように、入力装置群10及び出力装置群20に対する入出力データを処理する入出力部30と、入出力データに関するメッセージを入出力部30との間で授受する処理実行部40とを備える。なお、入出力部30及び処理実行部40は、制御装置50の記憶装置(図示略)に保存されているプログラムをCPU(図示略)が実行することにより実現される機能構成である。
【0014】
入出力部30は、入力装置群10からのデータを処理する入力制御部31と、出力装置群20に対しデータを出力する出力制御部33とを有する。処理実行部40は、主処理42の処理の中から入力制御部31のメッセージに対応する処理を実行し、その処理に伴い出力すべきデータを出力制御部33へ供給する入出力エンジン41を有する。
【0015】
入力制御部31は、入力装置群10の各入力手段10_1〜10_nの動作を制御するための通信機能を含む。また、入力制御部31は、入力装置群10との個別の通信により得られた入力データをもとに後述の入力変換テーブル32を検索して入力データに対応する機能を特定する。さらに、その機能を表すメッセージを作成して処理実行部40へ通知する。
【0016】
出力制御部33は、出力処理に関し処理実行部40から通知されるメッセージに基づいて、出力すべきデータを該当の出力手段20_1〜20_nへ供給する。
【0017】
入出力エンジン41は、入力制御部31から受信したメッセージをもとに後述の機能テーブル43を検索し、メッセージが表す機能に対応する処理を特定する。そして、特定した処理を主処理42へ通知し、それを実行させる。また、入出力エンジン41は、主処理42が実行した処理に伴い出力装置群200で表示すべきデータについてメッセージを作成し、それを出力制御部33へ供給する。
【0018】
図2に、入力制御部31が参照する入力変換テーブル32の一例を示す。入力変換テーブル32は、入力装置群10からの入力データと、そのデータを入力した入力装置およびデータ種別との関連を表すものである。
【0019】
図2に示す例は、「売上登録」モードにおける入力データに関する入力変換テーブル32である。例えば、「担当入力待ち」状態において、入力手段(10_1〜10_n)の一つである「バーコード読み取り機」からのデータ入力があったとき、入力制御部31は、それを「担当者コード入力」と認識する。この場合、入力制御部31は、「担当者コード入力」の「機能ID」を入出力エンジン41へ通知するために、所定の「引渡しデータ」を記述したメッセージを作成し、それを入出力エンジン41へ供給する。
【0020】
図3に、入出力エンジン41が参照する機能テーブル43の一例を示す。機能テーブル43は、入力制御部31からのメッセージが表す「機能ID」と、それに対し主処理42が実行すべき処理とを関連付けたものである。図示のテーブルによれば、例えば、「機能ID」が「担当者コード入力」である場合、実行すべき処理として、「TANTO_IN」が設定されている。この場合、入出力エンジン41は、「TANTO_IN」の実行を主処理42へ指示する。これにより、主処理42が「TANTO_IN」を実行する。
【0021】
図4に、出力制御部33が参照する出力変換テーブル34の一例を示す。出力変換テーブル34は、入出力エンジン41からのメッセージに記載の「機能ID」と、それに対し出力装置群20が行うべき出力処理とを関連付けたものである。図示のテーブルによれば、例えば、受信した「機能ID」が「売上取引終了」である場合、出力制御部33は、出力手段である「レシートプリンタ」に「売上レシート出力」を実行するよう指示することになる。
【0022】
図5に示すフローチャートを参照して、入力制御部31の処理手順について説明する。まず、入力装置群10にてバーコードの読み取り等の入力動作が起こると、その入力データを入力制御部31が受信する(ステップA1)。
【0023】
入力制御部31は受信したデータをもとに入力変換テーブル32を検索する(ステップA2)。このとき、入力変換テーブル32に該当の情報がない場合(ステップA3:No)、すなわち対象のデータが事前にテーブルに定義されていない場合、その入力データを受け付けることなく次のデータ入力を待つ。
【0024】
また、対象のデータが入力変換テーブル32に定義されている場合(ステップA3:Yes)、入力制御部31は、検索により得た機能IDを含むメッセージを作成する(ステップA4)。そして、作成したメッセージを入出力エンジン41へ送信する(ステップA5)。
【0025】
入力制御部31は、入力装置群10からのデータ入力を受ける都度、上記手順(ステップA2〜A5)を繰り返す。
【0026】
図6に示すフローチャートを参照して、入出力エンジン41の処理手順について説明する。入出力エンジン41は、入力制御部31からのメッセージを受信すると(ステップB1)、そこから機能IDを読み出し、読み出した機能IDをもとに機能テーブル43を検索する(ステップB2)。機能テーブル43に該当する情報がない場合は(ステップB3:No)、その機能IDは事前に定義されていないと判断し、処理を終了する。
【0027】
一方、対象の機能IDが定義されている場合(ステップB3:Yes)、入出力エンジン41は、定義されている機能IDに関連付けられた処理の種別を認識し、その処理の実行を主処理42に指示する(ステップB4)。また、入出力エンジン41は、主処理42での処理の実行に伴い出力装置群20へ出力すべきデータと、出力処理の機能IDとを含むメッセージを作成する(ステップB5)。そして、作成したメッセージを出力制御部33へ送信する(ステップB6)。
【0028】
入出力エンジン41は、入力制御部31から機能IDのメッセージを受信する都度、上記手順(ステップB2〜B6)を繰り返す。
【0029】
図7に示すフローチャートを参照して、出力制御部33の処理手順について説明する。出力制御部33は、出力処理に関する入出力エンジン41からのメッセージを受信すると(ステップC1)、メッセージに記載の機能IDをもとに出力変換テーブル34を検索する(ステップC2)。出力変換テーブル34に該当する情報がない場合は(ステップC3:No)、その機能IDは事前に定義されていないと判断し、処理を終了する。
【0030】
一方、対象の機能IDが定義されている場合(ステップC3:Yes)、出力制御部33は、定義されている機能IDに関連付けられた出力手段(20_1〜20_m)と、その出力手段に実行させる処理とを特定する(ステップC4)。そして、特定した出力手段に対し、出力すべきデータを供給すると共に、それを出力するよう指示する(ステップC5)。
【0031】
以上説明した実施形態によれば、入出力装置(10/20)に対する動作制御と、入出力データの情報処理とを、入出力部30及び処理実行部40により別個に取り扱うよう構成したことから、入力順序を規定するといった操作上の制限を設けることが不要となる。これにより、POSシステムにおける操作が簡易となり、結果、業務を円滑に遂行することができる。
【0032】
また、装置の変更によるソフトウェアの修正範囲が広範囲にわたることを回避できる。その理由は、入出力装置に関する処理を入出力部30に集約したためである。すなわち、例えば入力データに関しては、各入力装置(10)からの入力データを「機能ID」のような一定のインタフェース情報に変換するよう構成したので、入力装置の変更時には、各テーブル(31/43)の対象箇所を修正しさえすればよい。
【実施例】
【0033】
図8に、上記実施形態の一実施例の構成を示す。本実施例は、図1のPOSシステム100に関する、より具体的な構成を提示するものである。本実施例のPOSシステム100Aは、携帯用の小型POS端末200を前述の入出力部30とし、また、パーソナルコンピュータ210を処理実行部40として構成したシステムである。
【0034】
小型POS端末200は、入力手段206としてのバーコードリーダやカードリーダ、及び、出力手段207としての小型ディスプレイやレシートプリンタを具備する携帯情報端末である。また、小型POS端末200は、図1の入力変換テーブル32及び出力変換テーブル34、並びに、入力制御部31及び出力制御部33と同様な機能を果たす入力変換テーブル203及び出力変換テーブル205、並びに、入力制御部201及び出力制御部202を有する。
【0035】
パーソナルコンピュータ210は、入出力エンジン212、主処理213、機能テーブル214、マスタ情報215及び売上情報216を有し、これらは、図1にて対応するものと同様の機能を果たす。
【0036】
小型POS端末200及びパーソナルコンピュータ210は、有線LANあるいは無線LANの通信機能(204/211)により、入出力処理に関する前述のメッセージを交信する。
【0037】
本実施例によれば、POSシステムの入出力データに関する主な情報処理はパーソナルコンピュータ210により行うよう構成したことから、小型POS端末200としては、入出力装置(206/207)を具備するものでれば、比較的簡易な携帯情報端末により本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の入力変換テーブルに関する説明図である。
【図3】実施形態の機能テーブルに関する説明図である。
【図4】実施形態の出力変換テーブルに関する説明図である。
【図5】実施形態の入力制御部の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】実施形態の実行エンジンの動作手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態の出力制御部の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】実施形態の一実施例のシステム構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
100 POSシステム
10 入力装置群
10_1〜10_n 入力手段
20 出力装置群
20_1〜20_m 出力手段
30 入出力部
31 入力変換テーブル
32 入力制御部
33 出力制御部
40 処理実行部
41 入出力エンジン
42 主処理
43 機能テーブル
44 マスタ情報
45 売上情報
50 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
販売に関するデータを入力する複数の入力装置と、前記複数の入力装置に接続された制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の入力装置のそれぞれが入力するデータに関し実行すべき情報処理を判別し当該情報処理を表す識別情報を生成する入力制御部と、生成された識別情報に対応する情報処理を実行する処理実行部とを有することを特徴とするPOSシステム。
【請求項2】
さらに、販売に関するデータを出力する複数の出力装置を備え、
前記制御装置は、実行された情報処理に伴い出力すべきデータを当該出力装置へ供給する出力制御部を有することを特徴とする請求項1記載のPOSシステム。
【請求項3】
前記入力制御部は、生成した前記識別情報を通信メッセージにより前記処理実行部へ供給し、
前記処理実行部は、出力すべき前記データを通信メッセージにより前記出力制御部へ供給することを特徴とする請求項2記載のPOSシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記入力制御部および出力制御部を有する携帯情報端末と、前記処理実行部を有し且つ前記携帯情報端末と通信可能に接続された情報処理端末とから構成されることを特徴とする請求項2記載のPOSシステム。
【請求項5】
販売に関するデータを入力する複数の入力装置に接続された制御装置が、
前記複数の入力装置のそれぞれが入力するデータに関し実行すべき情報処理を判別し当該情報処理を表す識別情報を生成し、
生成された識別情報に対応する情報処理を実行することを特徴とする入出力制御方法。
【請求項6】
前記制御装置が、
販売に関するデータを出力する複数の出力装置に接続され、
実行された情報処理に伴い出力すべきデータを当該出力装置へ供給することを特徴とする請求項5記載の入出力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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