説明

PRAME由来ペプチド及びこれらを含んでいる免疫原性組成物

本発明は、100 アミノ酸以下の長さを有し、ヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からの少なくとも 19の連続するアミノ酸を含むペプチドであって、ヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からの少なくとも一つの HLA クラス II エピトープ および 少なくとも一つの HLA クラス I エピトープを含むペプチドおよび癌の治療および/または予防のための医薬としてそれ自体の又は組成物におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、医学および免疫学の分野に関する。特に、被験者に投与された際にインビボで抗腫瘍細胞免疫応答を惹起する能力のあるワクチン組成物を調製するためのペプチド, ワクチンおよび方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
腫瘍関連抗原PRAME(メラノーマ細胞で優先的に発現される抗原)は、最初にメラノーマ細胞を溶解する能力のある細胞傷害性 T リンパ球によって認識される抗原として同定された(Ikeda et al., Immunity. 1997; 6:199-208.)。腫瘍抗原PRAMEは広範囲のヒト癌で過剰発現されることが知られているにもかかわらず、その分子の機能が最近まで不明であった。最近、PRAMEは、RAR(レチノイン酸レセプター)シグナル伝達の優性リプレッサー(dominant repressor)として同定された。PRAMEがRAの存在下でRARと結合し、Polycombタンパク質の補充(recruitment)をとおしてリガンド誘導性レセプター活性化および標的遺伝子転写が阻止されることが示された。PRAMEがRAR標的プロモーターに存在し、RA誘導性の分化, 成長アレスト(growth arrest), およびアポトーシスを阻害することが示された。逆に, RA耐性ヒトメラノーマにおけるRNA干渉でのPRAME発現の阻害によって、RARシグナル伝達が回復し、インビトロおよびインビボでのRAの抗増殖効果の感受性が復帰(reinstated)する(Epping et al., Cell. 2005;122(6): 835-47)。ヒトの悪性疾患(malignancies)で頻繁に観察されるPRAMEの過剰発現によって、RARシグナル伝達をアンタゴナイズすることにより腫瘍細胞の成長および生存優位性(survival advantages)が提供されえる。
【0003】
PRAMEは実際に広域の固形腫瘍および30%の急性白血病で発現されることが認められ、他方で正常組織の発現は精巣, 子宮内膜に及び非常に低いレベルで卵巣および副腎(adrenals)に限定される。それは確立された腫瘍抗原であり、免疫療法を標的とする潜在的な適用は、当該技術分野において詳細に記載され、US 5,830,753, US 6,297,050, US 6,339,149 , EP 0783511 B1, WO 01/52612 および US 2005/0221440 A1で議論されている。腫瘍抗原および抗腫瘍細胞免疫応答を惹起する及び抗腫瘍ワクチンを調製する魅力的な候補標的としてのPRAMEの潜在性を指し示す多くの文献があるにもかかわらず、PRAME由来のペプチドおよびエピトープが天然で保存されることを強める僅かなデータのみが利用可能であり、これらは効果的な抗腫瘍T細胞応答を樹立するために必要とされるこれらのエピトープの免疫原性を示すことが可能なデータではなかった。本発明は、この課題を解決し、新しく同定されたMHCクラス I および II エピトープを含んでいる改善されたPRAME由来ペプチドおよびこれらのペプチドを含んでいる組成物を提供する。
【0004】
[発明の概要]
US 6,297,050 , WO01/52612 および US 2005/0221440A1は、エピトープおよびこれらの エピトープを含むペプチドをコード化しているPRAME由来核酸分子を提供する。従来技術に開示されたペプチドを含んでいるPRAME由来および/またはPRAMEエピトープは、ワクチン接種(vaccination)のための組成物の活性成分として適用しえる。係るペプチドは予測アルゴリズムおよびプロテアソーム切断の決定を結合することで同定されたHLA クラス I 提示エピトープに基づいていたが、CD8+ CTL 応答の至適な誘導のために選択された配列がHLA クラス I 分子 および HLA クラス II 分子で提示された両方の配列を含むことが必要であるとの事実を考慮していなかった。そのうえ、これらのエピトープおよびペプチドが実際にインビボでヒトの免疫応答をマウントする(mounting)能力があるかどうかを提供するデータはない。
【0005】
本発明は、CD4+ T ヘルパー リンパ球 (Th 細胞) および CD8+ 細胞傷害性 T リンパ球 (CTL) 応答の両方を惹起する能力のあるペプチドおよび組成物を提供する。本発明の主な課題は、確かめられたCD4+ Th および CD8+ CTL エピトープの両方の存在によりさらに効果的であるペプチドを含んでいる新しい抗腫瘍PRAMEエピトープ及びこれらを含んでいるワクチン接種目的の組成物を提供することである。本発明のペプチド含有組成物は、合成で作出でき(それ故、完全に規定される)、製造, 品質管理および安全保証の目的に有利である。本発明のペプチドは、至適に設計されて、同時にCD4+ Th およびCD8+ CTL応答を誘導することでPRAMEを発現している悪性疾患に対する強い治療上および/または防御性(protective)の免疫応答を誘発するワクチンとして使用され、高いパーセンテージの患者に適用可能である(というのも、これらのペプチドに含有されるHLA クラス IおよびHLA クラス II エピトープは、広域のHLAハプロタイプの適用範囲を有しているからである)。
【0006】
本発明は、新しく同定されたエピトープを含んでいるPRAMEタンパク質から由来する改善されたペプチドを提供する。本発明によるPRAME由来ペプチド配列は、幾つかの厳密な要求を満たす:つまり、それらは効率的に合成されるため十分小さいが、専門(professional)の抗原提示細胞によって取込まれるために十分大きい。本発明によるペプチドは、容易に20S プロテアソームでデグラデーションされ、HLA クラス I 提示可能な断片またはエピトープを放出する。本発明によるペプチドは、好ましくは少なくとも一つの HLA クラス I および 少なくとも一つの HLA クラス II エピトープを含む。HLA クラス II-提示可能なエピトープは、プロテアソーム非依存性経路で本発明のペプチドから切除される。これらのクラス II エピトープが至適な CD8+ エフェクター T 細胞および CD8+ メモリー T 細胞形成のために存在することが必須である。というのも、CD4+ Th細胞が樹状細胞(DC)に必要なシグナルを提供し、これらDCに至適で強い(robust)なCD8+ エフェクター同様にメモリー T細胞の応答を誘発することを許容するからである。本発明のペプチドに存在するエピトープは、患者における多くのHLA ハプロタイプを網羅する、広範囲のMHCハプロタイプの広範囲のHLA クラス I および HLA クラス II 分子(特に、ヒトにおけるこれらのHLA 分子の最も優勢なもの)に提示されることが可能である。本発明のペプチドは、HLA クラス I 結合能およびプロテアソームでのC末端生成の両方が実験的に確立されたHLA-A1, HLA-A2, HLA-A3, HLA-A24, HLA-A68, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B35, HLA-B60, HLA-B61 および HLA-B62提示細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) エピトープを含む。HLA-A2 結合 CTL エピトープ含有ペプチドは、最も好適である(HLA-A2は、ヒトにおいて最も優勢なHLA クラス I 分子なので)。
好ましくは、本発明によるペプチドは、加えて、健常人の対照および/または癌患者でのエキソビボ分析で決定される試験ずみのCD4+ Th 細胞反応性を有し、CD8+ エフェクターT-細胞産生のみならず、適切なCTL記憶をも保証する。加えて、本発明のペプチドに存在するHLA クラス I 結合 CTL エピトープは、好ましくは健常ドナーおよび/または癌患者においてインビトロおよび/またはインビボでCTLを誘発する能力で確認された試験ずみのCD8+ CTL 細胞刺激活性を有する。
【0007】
特に、本発明は上記の多くの又は全ての要求を充足するPRAME アミノ酸配列からの33ないし35の連続的なアミノ酸(aa.)の20の群のPRAME由来ペプチドを開示し、これらは悪性疾患または癌の治療または予防に使用するために, およびPRAMEを(過剰)発現している悪性疾患(特に、腫瘍)を治療および/または予防するワクチン接種のための組成物に提供するために、別々に使用されてもよい又は2, 3, 4, 5, 10, 全ての20ペプチドまでの任意の組み合わせで使用されてもよい。それ故、本発明は、20の群のPRAME由来ペプチドの少なくとも 1 および 好ましくは 2または3以上のペプチドを含んでいる免疫原性の組成物を開示する。免疫原性の組成物は、好ましくはさらにインビトロおよび/またはインビボで抗腫瘍活性を示す本発明のペプチドおよびエピトープの免疫原性活性を非常に増強する及び至適化するために選択される免疫モジュレーターおよびアジュバント(より好ましくは、合成アジュバント)を含む。
【0008】
[発明の説明]
抗腫瘍ワクチンは、ヒト乳頭腫ウイルス (HPV), カポジ肉腫 ヘルペスウイルス (KSHV), エプスタイン Bar ウイルス誘発性のリンパ腫(EBV)を含むウイルス誘発性の悪性疾患のみならず、腫瘍抗原(例えば、MAGE, BAGE, RAGE, GAGE, SSX-2, NY-ESO-1, CT-抗原, CEA, PSA, p53 またはPRAME)を提示する散発性の悪性疾患などの抗癌治療から悪性疾患の治療または予防法にわたる多くの治療分野に適用が見出される。任意の抗腫瘍ペプチドワクチンで得られる最も好適な免疫応答は、前記ペプチド内のT細胞エピトープで惹起されるT細胞応答である。好ましい結果がえられる抗腫瘍T-細胞応答は、HLA クラス I拘束性CTL応答および同時にHLA クラス II 拘束性Th応答の両方からなるだろう、また有利なB-細胞応答を伴なってもよい。幾つかの文献によって、クラス II エピトープ提示樹状細胞(DC)との相互作用でCD4+ T細胞がCD40 リガンドをアップレギュレートすることが実証されている。
【0009】
CD4+ Th 細胞のCD40 リガンドとDC上のCD40 分子との相互作用によって、DCの活性化が導かれる。活性化DCsは、アップレギュレートした共同刺激分子を提示し、CTL-促進サイトカインを分泌する。これによって、MHC クラス I拘束性エピトープを提示するような活性化DCで誘導される強いCD8+ CTL応答が許容されるのみならず、さらにより強いCTL記憶応答をも許容される(Ridge et al. 1998, Nature 393:474; Schoenberger et al.1998, Nature 393:480; Sun et al. 2004, Nat. Immunol. 5:927)。長い(35 aa.)ペプチドでのワクチン接種につづく強い抗腫瘍 CD8+ CTL応答のためにDCにおけるCD40 発現の必要性が、Zwaveling等〔Zwaveling et al. (2002, J. Immunol. 169:350)〕に公開された。最近、我々は、長いペプチドに含まれるMHC クラス II エピトープによるCD4+ Th 応答の誘導なしで、誘導されたCD8+ CTL 応答は強くなく(less vigorous)、短命(short lived)で、完全にCD8+ CTL記憶が欠損していることを見出した。
【0010】
PRAMEによってコード化されたHLA クラス I 提示細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープは、全長PRAME タンパク質分子から又は短いPRAMEがコード化する不完全(defective)なリボソーム産物(DRIPS; Yewdell et al., 2002, Mol. Immunol 39:139)から一連の規定(defined)の細胞内機構によって細胞内で産生される。
【0011】
第一に、CTLエピトープを規定する優性なイベントは、サイトゾルのペプチダーゼでの酵素消化をとおしたそのフランキングタンパク質領域(flanking protein regions)からのエピトープ(またはエピトープ前駆体)の放出である。多触媒性のプロテアソームは、圧倒的多数のCTL エピトープの正確(exact)なC末端の生成に必要とされると考えられる主な酵素複合体である(Rock et al., 2004, Nat. Immunol. 5:670)。他方で、CTLエピトープのアミノ末端の生成は、さらによりフレキシブルである。というのも、サイトゾルおよび小胞体(ER)に存在している幾つかのアミノ末端エキソ-ペプチダーゼ(ERAP1, ピューロマイシン 感受性 アミノペプチダーゼ, ブレオマイシン 加水分解酵素などのような)及びそれらのトリミング酵素(trimming enzymes)は、N末端伸長エピトープ前駆体をその正確な長さに短縮する能力を有するからである。対照的に, C末端のトリミングは、報告されていない。従って、PRAMEタンパク質におけるプロテアソーム切断部位の実験的な決定によって、HLA クラス I 分子を結合しえる内因性に産生されたPRAME ペプチド 断片のC-末端が同定される。主として塩基性のC末端残基を有するCTL エピトープが関与している特殊なケースにおいて、非-プロテアソーム酵素活性がエピトープのC-末端の生成に必要である(Tenzer et al., 2005; Cell. Mol. Life Sci 62:1025 および Seifert et al., 2003, Nat. Immunol. 4:375を参照されたい)。また、本発明は、我々が酵素 Nardilysin (EC 3.4.24.61) および Thimet オリゴペプチダーゼ (TOP) (EC 3.4.24.15)の非プロテアソーム性の二重作用によってC-末端で産生されると同定した新規の HLA-A3提示CTL エピトープを開示する。
【0012】
第二に、酵素的に産生されたペプチド断片(9 - 11 aaの長さを有する)は、それらが産生される細胞において利用可能なHLA クラス I 分子への結合能を有するべきである。ペプチドのHLA クラス I 分子への結合は、いわゆるアンカーポジションで必要とされるaa. 残基を具備するペプチドに限定される。HLA 分子の高度な多型性のため、各クラス I 分子は好適なアンカー残基を含んでいる別の好適な結合モチーフを有する。
【0013】
酵素の消化(多くはプロテアソームによる)およびHLA クラス I ペプチド結合の両方の現象は実験的に試験されえる。係る試験の結果の組み合わせによって、HLA クラス I 提示CTLエピトープの信頼のおける正確な選択が許容される(Kessler et al., 2001, J. Exp. Med. 173:73)。さらに、PRAMEから同定された推定上のHLA クラス I 提示CTLエピトープの有用性を確認するために、合成エピトープペプチドをインビトロCTL応答を誘発する免疫原能(immunogenic capacity)に関して試験してもよい。一旦、同定されたエピトープに対して反応性であるCTL系統が産生されたら、このCTL系統(または、その系統から由来するクローン)は機能的な CTL認識アッセイで腫瘍細胞におけるCTL エピトープの細胞表面発現を確認するために使用しえる(Kessler et al., 2001, J. Exp. Med. 173:73)。
【0014】
本発明は、インタクト(intact)なヒトのPRAMEタンパク質抗原から由来する慎重に選択されたペプチド配列を提供する。係るペプチドは、大きく改善され、広範囲のPRAME陽性の癌を有する患者に投与した際に増強した長期のCD8+ CTLのエフェクターおよび記憶応答を生じる。PRAME中の新しく同定されたCD4+ Th および CD8+ CTL 細胞エピトープ, 同様にPRAME由来合成ペプチド及びこれらを含んでいる免疫原性の組成物は、本発明の一部である。
【0015】
本発明のペプチドは好ましくはワクチンの単独または併用または免疫原性組成物の一部として使用されるので、ペプチドは好ましくはワクチンペプチド(vaccine peptides)および配合ワクチン組成物(composition vaccine compositions)と称される。
【0016】
インビトロで効率的に合成できるので、相対的に短いペプチドの使用は医学的な目的に非常に好適であり、約 100 アミノ酸よりも大きな本来(native)のタンパク質に関しては不可能である又は非経済的である。ペプチドの化学合成はルーチンで行われ、様々な適切な方法が当業者に知られている。ペプチドの化学合成によって、標準化が困難で広範な精製および品質管理の手段を必要とするインタクトなタンパク質の組換え型の生産に関連する課題が克服される。HLA クラスI および クラスII エピトープの長さを超える長さを有するペプチド(例えば、本明細書中に記載される長さを有する)は、ワクチン成分としての使用に特に有利である。というのも、それらは、WO02/070006に説明されるとおり専門の抗原提示細胞(特に、DC)に取り込まれるために十分に大きく、含まれるHLA クラスI および クラスII エピトープの細胞表面提示が生じる前にDCにおいてプロセスされるからである。従って、非抗原提示細胞における最小限のHLA クラス I エピトープの組織的(systemic)な提示によるT細胞耐性(T cell tolerance)の不利な誘導〔Toes et al., 1996, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 93:7855 および Toes et al., 1996, J. Immunol. 156:3911に示されるとおり〕は、本明細書中に記載される長さを有する本発明のペプチドの適用によって阻止される〔Zwaveling et al., 2002, J. Immunol. 169:350に示されるとおり〕。
【0017】
CTL および/または Th 細胞のT細胞 レセプターに提示されるエピトープを含んでいるペプチドは、好ましくは幾つかの要求性を充足する。前記ペプチドは、好ましくはHLA クラス I および HLA クラス II エピトープの両方を含むために十分な長さを有する。さらにまた、好ましくは前記ペプチドは、それぞれクラス I および II 分子との結合を可能にするこれらのHLA クラス I および II 結合部内にアンカー残基を含む。ペプチド および 提示するMHC分子の間の相互作用の安定性は、有意で効果的な免疫応答を産生するために十分であるべきである。本発明において、ペプチド および 提示するMHC分子の間の相互作用の安定性は、前記ペプチドが中等度ないし高度の親和性結合を有する場合に十分であると考えられる〔ここで、IC50 < 約5 μMは高度の親和性結合と考えられ, 約5 μM < IC50 < 約 15 μMは中等度の親和性結合と考えられ, 約 15 μM < IC50 < 100 μMは低度の親和性結合と判断され、およびIC50 > 約 100 μMは無結合と認識された〕。
【0018】
エピトープのC末端を産生する特異的なプロテアソーム切断部位は、好ましくはより大きなペプチドから解放(liberated)され、HLA クラス I 分子に提示されるためのエピトープ aa. 配列の直後(exactly after)で提示される。長さの要求性はHLA クラスII提示エピトープに対して厳密性は低いので、クラス II 結合 ペプチドの正確な酵素的な生成の絶対性は低い。これらの要求性が本発明に使用されて、好適な CTL および Th 細胞 エピトープの組み合わせを含みワクチン接種目的で非常に適切なペプチドである全長PRAMEタンパク質配列におけるペプチドが限定(localize)され、設計される。
【0019】
そのうえ、インビトロおよびエキソビボのT細胞実験は、好ましくは実質的な CD4+ Th および CD8+ CTL 応答を誘発する本発明によるペプチドの能力を確認するために使用される。本発明のペプチドは、PRAME腫瘍抗原から由来する最も強力で最も広く適用可能なHLA クラス I および クラス II 提示T細胞エピトープを含んでいる化学的に合成されえる相対的に短いペプチドの選択に顕著な改善を提供する。前記ペプチドは、それらのプロテアソーム切断に関して特に至適化され、好ましくはHLA クラス I および クラス II エピトープの両方を含む。本発明のペプチド内に含まれるCTL エピトープのC-末端の20S プロテアソームによる解放によって、CD8+ CTL 刺激能を有するHLA クラス I 結合断片が提供される。
【0020】
本発明の第一側面において、好ましくは少なくとも一つの HLA クラス II Th細胞 エピトープおよび好ましくは少なくとも一つの HLA クラス I 細胞傷害性 T細胞 エピトープをも含んでいる配列番号 21で表されるヒト PRAME タンパク質の509アミノ酸配列から選択される連続的(contiguous)なアミノ酸配列を含んでいるペプチドが提供される。好ましくは、前記ペプチドは、100 アミノ酸以下の長さを有し、ヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列(即ち、配列番号 21)から選択される少なくとも 19の連続するアミノ酸が含まれ、前記ペプチドは好ましくは少なくとも一つの HLA クラス II エピトープ および 好ましくは少なくとも一つの HLA クラス I エピトープも含み, 好ましくは(必然的ではないが)双方がヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からのものである。より好ましくは、ペプチドにおいて、少なくとも一つの HLA クラス II エピトープ および 少なくとも一つの HLA クラス I エピトープは、ヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からの連続するアミノ配列内に存在する。
【0021】
明確性に関して、本発明のペプチドは、好ましくは少なくとも一つの HLA クラス I提示エピトープを含み、好ましくは少なくとも一つの HLA クラス II提示エピトープも含む。これらのエピトープの各々は、提示可能であり、本願の明細書等に記載のとおりプロセスされる後に細胞に提示される対応している特異的な HLA 分子に結合する。それ故、各々のHLA エピトープは、HLA 結合および/または提示可能なエピトープと称されてもよい。
【0022】
ペプチド内に含まれるヒト PRAME タンパク質からの連続するアミノ酸配列の長さは、好ましくは少なくとも 19, 20, 21, 22, 25, 27, 30, 33 または35 アミノ酸であり、好ましくは100, 80, 60, 50, 45, 40, 35, 33 または30 アミノ酸以下である。より好ましくは、ペプチド内に含まれるヒト PRAME タンパク質からの連続するアミノ酸配列の長さは、19-45であり、さらにより好ましくは30-40アミノ酸であり、さらにより好ましくは30-35であり、最も好ましくは33-35アミノ酸である。別の好適な態様において、本発明のペプチドは、本願の明細書等で規定される任意のヒト PRAME タンパク質からの連続するアミノ酸配列からなる。本発明のペプチドは、容易に合成され、専門の抗原提示細胞により取込まれるために十分に大きく、プロテアソームでプロセスされ、十分な物理的能力(physical capacity)および少なくとも一つの HLA クラス Iおよび一つのHLA クラス II エピトープを含む長さを有するものであってもよい。任意で、ペプチドは、N-またはC-末端のエクステンション(extensions)を含んでいてもよく、これは一例を挙げるとバイオアベイラビリティー, 細胞取り込み, プロセシングおよび/または溶解度を増強しえるアミノ酸, 修飾されたアミノ酸または他の官能基であってもよい。
【0023】
好ましくは、本発明によるペプチドに含まれるクラス II CD4+ Th 細胞エピトープは、ヒトの癌患者および/または健常な対照におけるCD4+ Th 細胞を活性化する能力がある。活性化は、好ましくはエキソビボまたはインビボで評価される、より好ましくは腫瘍細胞がPRAME抗原を発現するヒト癌患者において評価される。最も好ましくは、HLA クラス II エピトープは、CD4+ Th 記憶応答を活性化(CD45RO-陽性 CD4+ Th 細胞の活性化)する能力がある。これによって、DCのCD40がトリガーとなる「殺しのライセンス(licence to kill)」シグナル(Lanzavecchia, 1998, Nature 393:413)での強いCD8+ エフェクターおよびメモリーCTL応答が導かれる。
【0024】
本発明のペプチドは、さらにHLA クラス I エピトープを含む。前記HLA クラス I エピトープは、好ましくはプロテアソームの切断でC-末端でプロセスされる。加えて、前記HLA クラス I エピトープは、好ましくはCD8+ CTL 応答を活性化する能力がある。最も好ましくは、CTL活性化能は、ヒトの健常な対照個体又はなおより好ましくはヒト癌患者においてエキソビボおよび/またはインビボで実証される。好ましくは、ヒト癌患者において、腫瘍はPRAME抗原を発現する。一つのペプチド内のHLA クラス I およびクラス II エピトープの両方の存在は、効果的なCTL細胞応答をマウントすること及び維持することにおける相乗作用により特に有利であることが観察されている(Zwaveling et al., 2002, J. Immunol. 169:350に示される)。
【0025】
本発明のPRAMEペプチドにおけるHLAクラス I エピトープは、好ましくは処理されるヒト被験者の集団において優勢なHLA対立遺伝子に提示される能力がある。本発明のPRAME由来ペプチドにおける好適な HLA クラス I エピトープは、HLA-A1, HLA-A2, HLA-A3, HLA-A24, HLA-A68, HLA-B7, HLA-B8, HLA-A35, HLA-B60, HLA-B61 および HLA-B62に結合する能力があるエピトープである。最も好適なHLA クラス I CTL エピトープは、HLA-A2 結合 PRAME エピトープである。というのも、HLA-A2は、表 1に示されるとおり白人, 黒人, アメリカインディアン(Indian-American)および東洋人の集団の全てにおいて非常に優勢だからである。好ましくは、HLA クラス I エピトープは、高度のペプチド結合能 (IC50 < 約 5 μM ペプチド) または 少なくとも中等度の親和性 (5 μM < IC50 < 約 15 μM ペプチド)を有する。
【0026】
より好適な態様によると、本発明のペプチドは、100 アミノ酸以下の長さを有し、アミノ酸配列の配列番号1-20からなる群から選択される又はアミノ酸配列の配列番号6, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 14, 15, 16, 18, 1, 2, 3, 4, 13, 17, 19 および配列番号20からなる群から選択されるヒト PRAME タンパク質からの連続するアミノ酸配列を含む〔ヒト PRAME タンパク質のaa. 1-33は配列番号1, aa. 19-53 (配列番号2), aa. 47-79 (配列番号3), aa. 69-101 (配列番号4), aa. 80-114 (配列番号5), aa. 94-126 (配列番号6), aa. 112-144 (配列番号7), aa. 133-166 (配列番号8), aa. 173-207 (配列番号9), aa. 190-223 (配列番号10), aa. 234-268 (配列番号11), aa. 247-279 (配列番号12), aa. 262-294 (配列番号13), aa. 284-316 (配列番号14), aa. 295-327 (配列番号15), aa. 353-387 (配列番号16), aa. 399-431 (配列番号17), aa. 417-450 (配列番号18), aa. 447-480 (配列番号19), aa.477-509 (配列番号20)で表される〕。ヒト PRAME タンパク質の全長アミノ酸配列は、配列番号 21を与えられた。
【0027】
この群内のより好適なペプチドには、HLA-A2または他の支配的なHLA クラス I エピトープを含む配列番号6, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 14, 15, 16, および18が含まれる。この亜群内の本発明の最も好適なペプチドには、配列番号6, 5, 8, 14, 15, 16 および18が含まれ、これらの全てにはPRAME腫瘍抗原から内因性にプロセスされる場合に天然で提示されるエピトープを認識するCTLを誘導することが実証されているHLA-A2 結合 エピトープが含まれる。
【0028】
本発明のPRAME由来ペプチドは、一または二以上のアミノ酸の欠失または置換(付加的なアミノ酸または官能基でのN-および/またはC-末端でのエクステンションによる)で修飾されてもよく、これによりバイオアベイラビリティー, T細胞へのターゲティングが改善されえる、又はアジュバントまたは(共)刺激性の機能を提供する免疫調節物質(immune modulating substances)が具備または放出されえる。N-および/またはC-末端での任意での付加的なアミノ酸は、好ましくはPRAMEアミノ酸配列における対応するポジションに存在しない、より好ましくはそれらはPRAME アミノ酸配列(配列番号 21)からのものではない。当業者は、天然のヒトのPRAMEの対立遺伝子バリアントのPRAME アミノ酸配列が本発明に明示的に含まれることを認識する。
【0029】
本発明のPRAME由来ペプチドは、化学合成で入手可能であり、引き続き精製される(例えば、例 1を参照されたい)。本発明のPRAME由来ペプチドは、好ましくは35, 20, 10, 5 または0%以下のDMSOを含んでいる生理的に許容される水様(watery)の溶液(例えば、PBS)において可溶性である。このような溶液において、ペプチドは、好ましくは少なくとも 0.5, 1, 2, 4, または8 mg ペプチド/mlの濃度で可溶性である。より好ましくは、本発明の二以上の異なるPRAME由来ペプチドの混合物は、係る溶液中で少なくとも 0.5, 1, 2, 4, または8 mg ペプチド/mlの濃度で可溶性である。
【0030】
本発明によるペプチドの好適な使用は医薬としての使用であり、より好ましくは前記ペプチドがワクチン又はその活性成分として使用される。各ペプチドは、癌の治療 および/または予防に、ヒトの癌または新生物疾患の治療または予防のための医薬(好ましくは、ワクチン)の製造のために、単独で又は好ましくは本発明の少なくとも一つまたは二または三または四または五ペプチド以上の併用で使用しえる。これらの疾患は、好ましくは癌細胞がPRAME腫瘍抗原を発現する血液学的な悪性疾患および固形腫瘍を含む。本発明による係る医薬および/または抗腫瘍ワクチンは、次の広範ではないリストのPRAME発現ヒト新生物疾患を患っている又は発生するリスクがある患者を処置するために使用しえる: そのリストとは、メラノーマ, リンパ腫, 乳頭腫, 乳房または頚部の癌腫, 急性および慢性の白血病, 髄芽腫, 非小細胞肺癌腫(non-small cell lung carcinoma), 頭頸部癌(head and neck cancer), 腎臓の癌腫, 膵臓の癌腫, 前立腺癌, 小細胞肺癌, 多発性骨髄腫, 肉腫および血液学的な悪性疾患(慢性骨髄性白血病 および急性骨髄性白血病のような)である。
【0031】
更なる側面において、本発明は、さらに上記で規定した少なくとも一, 少なくとも二, 少なくとも三, 少なくとも四つの本発明によるペプチドおよび任意で一または二以上の薬学的に許容される賦形剤(特に、アジュバントおよび免疫モジュレーター)を含んでいるヒトの被験者の治療および/またはワクチン接種に有用であろう組成物に関する。好ましくは、前記組成物は、薬学的組成物である及び/又は医薬として使用するために意図される。薬学的組成物は、好ましくはワクチン接種のために意図される。薬学的組成物は、好ましくは癌の治療および/または予防に、ヒトの新生物疾患または癌の治療または予防のための医薬(好ましくは、ワクチン)の製造のために使用される。新生物疾患(癌)の非網羅的(non-exhaustive)なリストは、既に本願の明細書等に与えられている。好ましくは組成物は、少なくとも 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 12, 15 および20までの異なるペプチドを含む。代わりに又は前の好適な態様と組み合わせて、組成物に存在するペプチドは、100アミノ酸以下の長さを含み、アミノ酸配列の配列番号1-20(表 6にリストされる)からなる群から選択されるヒトPRAMEタンパク質からの連続するアミノ酸配列を含む。より好ましくは、この組成物に存在するペプチドは、配列番号6, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 14, 15, 16, および 18の亜群内で選択される。それらの全ては、HLA-A2または他の優勢(predominant)なHLA クラス I エピトープを含む。最も好適な本発明の組成物に存在するペプチドは、配列番号6, 5, 8, 14, 15, 16 および 18の亜群内で選択される。代わりに、2又はそれ以上のペプチドが、被験者または治療される被験者の集団のHLA対立遺伝子に適合(match)させるために選択されてもよい。
【0032】
医薬の製剤(Formulation), 投与の様式および薬学的に許容される賦形剤の使用は、当該技術分野において知られており、慣例的である〔一例を挙げるとRemington(Remington; The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition 2005, University of Sciences in Philadelphia)に記載される〕。本発明の薬学的組成物および医薬は、好ましくは静脈内または皮下(subcutaneous), または筋肉内へと適切に製剤化されるが、粘膜投与または皮内(intradermal)および/または真皮内(intracutaneous)の投与(例えば、注射による)などの他の投与経路が予見(envisaged)できる。
【0033】
さらに、本発明の少なくとも一つの ペプチド および/または 少なくとも一つの 組成物の投与が単一投与(single administration)として実施されることが本発明に包含される。代わりに、少なくとも一つの ペプチド および/または 少なくとも一つの組成物の投与を必要な場合に繰り返してもよく、および/または本発明の別のペプチドおよび/または組成物を連続的(sequentially)に投与してもよい。
【0034】
本発明による薬学的に許容される組成物は、好ましくは少なくとも一つの免疫応答刺激化合物またはアジュバントを含んでもよい。有利に(Advantageously)、本発明による薬学的組成物は、付加的に一または二以上の合成アジュバントを含んでもよい。これらのアジュバントは、本発明による薬学的組成物に混合されてもよい又は治療される哺乳類またはヒトに別々に投与されてもよい。特に好適なものは、Toll様レセプターを介して作用することが知られているアジュバントである。生得的な免疫系を活性化する能力のある免疫修飾化合物(Immune modifying compounds)は、TLR's 1-10を含んでいるToll様レセプター(TLR's)を介して特によく活性化できる。TLR レセプターを活性化する能力のある化合物及びその修飾および誘導体は、当該技術分野において詳細に記載される。TLR1は、細菌性リポタンパク質およびそのアセチル化形態で活性化されえる。TLR2は、加えて、細菌から又は宿主からのグラム陽性の細菌性の糖脂質, LPS, LPA, LTA, フィムブリエ(fimbriae), 外膜タンパク質(outer membrane proteins), 熱ショックタンパク質、および放線菌のリポアラビノマンナン(lipoarabinomannans)で活性化されえる。TLR3は、dsRNA(特に、ウイルス起源), または化学物質ポリ(I:C)で活性化されえる。TLR4は、宿主から又は細菌起源からのグラム陰性の LPS, LTA, 熱ショック タンパク質, ウイルス性の被膜またはエンベロープタンパク質, タキソールまたはその誘導体, ヒアルロナン含有オリゴ糖およびフィブロネクチンで活性化されえる。TLR5は、細菌性の鞭毛またはフラゲリンで活性化されえる。TLR6は、放線菌のリポタンパク質およびB群レンサ球菌熱不安定可溶性因子(GBS-F; group B Streptococcus heat labile soluble factor)またはブドウ球菌モジュリン(Staphylococcus modulins)で活性化されえる。TLR7は、イミダゾキノリン(imidazoquinolines)で活性化されえる。TLR9は、非メチル化CpG DNAまたはクロマチン - IgG 複合体で活性化されえる。特に、TLR3, TLR7 およびTLR9は、ウイルス感染に対する生得的な免疫応答の媒介に重要な役割を担う。そして、これらのレセプターを活性化する能力のある化合物は、本発明による治療の方法に及び組成物に使用するために又は医薬に特に好適である。特に好適なアジュバントには、dsRNA, ポリ(I:C), TLR3 および TLR9 レセプターのトリガーとなる非メチル化CpG DNA, IC31, IMSAVAC, Montanide ISA-51(Seppic 7, Franceで生産されたアジュバント)を含む合成で生産される化合物が含まれるが、これらに限定されない。別の好適な態様において、合成のアジュバント化合物は、本発明のペプチドに物理的に連結される。アジュバントおよび共刺激性(costimulatory)の化合物または官能基とHLA クラス I およびHLA クラス II エピトープ含有ペプチドとの物理的な連結によって、抗原をインターナライズし、代謝し、提示する抗原提示細胞(特に、樹状細胞)の同時刺激(simultaneous stimulation)での免疫応答の増強が提供される。
【0035】
さらにまた、WO99/61065 および WO03/084999に記載される抗原提示細胞(共)刺激性分子と組み合わせた本発明のペプチドおよび組成物の使用が好適である。特に、4-1-BB および/または CD40 リガンドの使用, アゴニスト性抗体(agonistic antibodies)又はその機能的な断片及び誘導体, 同様に類似するアゴニスト性活性を有する合成化合物は、好ましくは別々に又は本発明のペプチドと組み合わせで、さらに被験者における至適な免疫応答のマウントを刺激するために治療される被験者に投与される。
【0036】
加えて、好適な態様には、ミネラル油(例えば、Montanide ISA 51)またはPGLAなどの緩徐な放出ビヒクルにTLR リガンド および/または 抗 CD40/抗-4-1 BB 抗体などの付加的な免疫刺激因子を存在させる又は非存在でのペプチドの送達が含まれる。
【0037】
本文書及びその請求項において、「含む(to comprise)」の動詞及びその変化形は、その単語につづく事項が含まれるが、具体的に言及されない事項が除外されない非限定的な意味で使用される。加えて、不定冠詞「a」または「an」による事項の参照によって、一および僅か一つの事項が存在することを明らかに必要とする文脈がないかぎり一を超える事項が存在する可能性が除外されない。従って、不定冠詞「a」または「an」は、通常「少なくとも一つ(at least one)」を意味する。
【0038】
本発明は、さらに発明の範囲を限定するものとして解釈されない以下の例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1.1】精製したプロテアソームでのインビトロ消化で決定されたヒト PRAME タンパク質からの合成ペプチド内のプロテアソーム切断部位。主要な及び低頻度の切断部位(それぞれ消化物質のおおよそ5%で表される)は、それぞれ太字および細字の矢印で示される。
【図1.2】精製したプロテアソームでのインビトロ消化で決定されたヒト PRAME タンパク質からの合成ペプチド内のプロテアソーム切断部位。主要な及び低頻度の切断部位(それぞれ消化物質のおおよそ5%で表される)は、それぞれ太字および細字の矢印で示される。
【図2】サイトゾル抽出物および精製酵素でのインビトロ酵素消化分析で決定されたPRA190-198の酵素的なN末端およびC末端の解放。
【図3a】51Cr-放出細胞毒性アッセイで測定されたPRAME由来CTLエピトープに対するCTLでのペプチドおよび腫瘍細胞の特異的な認識。パネル A, HLA-A2 提示エピトープの認識。
【図3b】51Cr-放出細胞毒性アッセイで測定されたPRAME由来CTLエピトープに対するCTLでのペプチドおよび腫瘍細胞の特異的な認識。パネル B, 他のHLA クラス I 分子で提示されたエピトープの認識。
【図4】プロテアソームで消化された長いPRAME ペプチドの断片における予測されるエピトープのインタクト性の例。
【0040】
a 競合結合実験で決定されたHLA クラス I 結合 ペプチド(表3を参照されたい)。
【0041】
b 免疫プロテアソーム(immuno-proteasome)での消化後に得られた断片は、それらのC-末端に応じて整えられた。開始および終了のaa.が、リストされた。
【0042】
c 強度は、1 hのインキュベーション時間で消化された27-merの総計マスピーク強度(total summed mass-peak intensities)の%として表された。
【0043】
[例]
本発明において、患者におけるPRAME発現癌細胞に対する効率的および成功したワクチン-誘導性のT細胞応答の誘導に要求される異なる側面は、至適なPRAME由来ワクチン ペプチドの設計および選択に関する組み合わせである。至適なPRAMEワクチンペプチドは、少なくとも一つ、好ましくはそれ以上のCD4+ Th リンパ球 応答を誘発する能力が証明された少なくとも一つのPRAME由来ペプチドとともに含まれるべきである。実験セクションは、配列および長さ/サイズに関してワクチン接種のためのPRAME由来ペプチドの至適な設計および選択に必要とされるパラメータを提供する。実験セクションは、全長 PRAME タンパク質に存在し、19-45 アミノ酸の至適な 長さを有しているペプチドに組み合わせることができる、HLA クラス I 提示CTL エピトープおよびCD4+ Th リンパ球反応性誘導ペプチドのインビトロおよびインビボでの同定および確認の両方を開示する。
【0044】
例 1: PRAMEからのHLA クラス I 提示ペプチドの同定
ペプチドの合成での生産
これらの研究に使用された全てのペプチドを、標準のFmoc化学を用いて自動化マルチプルペプチドシンセサイザー(Abimed AMS 422)における固相ストラテジーにより合成した。CTL誘導のための短いペプチドを、20 μlのDMSOに溶解し、0.9% NaClで1 mg/mlのペプチド濃度に希釈し、使用前に-20゜Cで貯蔵した。HLA クラス I ペプチド 結合 アッセイに使用されたフルオレッセイン標識参照ペプチドを、Cys-誘導体として合成した。標識化を、5-(ヨードアセトアミド)フルオレッセイン(Fluka Chemie AG, Buchs, Switzerland)でpH 7.5 (Na-リン酸水溶液/アセトニトリル 1:1 v/v)で行った。標識ペプチドを、セファデックス G-10で脱塩し、さらにC18 RP-HPLCで精製した。標識ペプチドを、質量分析で分析した。インビトロプロテアソーム 消化 分析およびCD4+ Th リンパ球反応性の分析に使用される27-merおよび22-merのポリペプチドを、上記に記載のとおり合成し、アセトニトリル-水のグラディエントでの逆相-HPLCで精製し、アセトニトリル-水から一晩凍結乾燥した。純度を、質量分析で確認した。
【0045】
HLA クラス I 結合測定のためのPRAMEペプチドのプレセレクション
最も優勢であるHLA クラス I 分子への潜在的な結合能を有する8, 9, 10 または11 アミノ酸の長さを有するPRAMEペプチドの選択を、ペプチド 結合 予測 アルゴリズム BIMAS (http://bimas.cit.nih.gov/molbio/hla_bind/) (Parker, et al., 1994, J. Immunol. 152:163) および SYFPEITHI (http://www.syfpeithi.de/)で行った。これらのコンピュータアルゴリズムは、所望のHLA クラス I 分子の結合モチーフを満たしている全長 PRAME タンパク質に含まれるペプチドを探索する。HLA クラス I 分子を、ヒトの集団において高度または少なくとも中等度の普及率(prevalences)で選択した(HLA-A1, HLA-A2, HLA-A3, HLA-A24, HLA-A68, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B35, HLA-B60, HLA-B61 および HLA-B62である)。これらの HLA クラス I 分子のヒト集団の間の普及率は、表 1に示される。
【0046】
前記アルゴリズムを用いて、全長 PRAME タンパク質を、選択したHLA クラス I 分子へ予測される(効率的な)結合能を有するペプチドに関してスクリーニングした。高い予測結合能を有するPRAME ペプチド(長さ 9, 10 または11 aa.)を、合成で生産して、競合ベースのHLA クラス I 結合 アッセイにおいて、それらの結合能を決定する実際の実験が可能となった。特定のHLA クラス I 分子への結合に対する高い予測スコアが実際の高親和性の結合と必ずしも相関しないので(Kessler et al., 2003, Hum Immunol. 64:245によって示された)、このような結合測定が結合能の評価に必要とされる。
【0047】
【表1】

【0048】
a HLA 抗原に関する表現型の頻度は、Marsh等(Marsh et al., The HLA FactsBook., 1999)によって与えられるような遺伝子頻度を用いて推定された。
_________________________________________________________________________
【0049】
HLA クラス I ペプチド 結合能の決定
HLA クラス I 結合能の実験的な測定に関して、HLA クラス I の競合ベース(competition-based)の細胞結合アッセイをHLA-A1, HLA-A2, HLA-A3, HLA-A24, HLA-A68, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B35, HLA-B60, HLA-B61 および HLA-B62に関して発生させたものに使用した(Kessler et al., 2003, Hum Immunol. 64:245)。EBVで形質転換したヒトB細胞(B-LCL)は、それらの自然に提示されたHLA クラス I ペプチドから穏やかな酸処理で「除かれた(stripped)」ものを使用した。B-LCLを収穫し、リン酸緩衝食塩水 (PBS)で洗浄した。そして、ペレット(2 - 15x106 細胞)を、氷に5 min置いた。溶出を、氷冷したクエン酸緩衝剤(0.263 M クエン酸 および 0.123 M Na2HPO4の1:1の混合物, 表 2にリストされたpHに調整した)に正確に90 sで細胞をインキュベートして行った。その後すぐに、細胞を、2% FCSを含んでいる氷冷IMDMで緩衝し、同じ培地でもう一回洗浄し、2% FCS および 2 μg/ml ヒト β2-microglublin (β2M)を含んでいるIMDM培地(Sigma, St. Louis, MO, USA)に4x105 細胞/mlの濃度で再懸濁した。
【0050】
PBS/BSA 0.5%において各競合検査ペプチドの八つの連続的な二倍希釈を作った(最高濃度 600 μM, 6倍アッセイ濃度)。アッセイにおいて、検査ペプチドを、100 μM〜0.8 μMで試験した。異なる HLA クラス I 競合 アッセイに使用されたフルオレセイン (Fl)-標識参照ペプチド及びそれらの供給源は、表 2にリストされる。これらのペプチド(試験でHLA クラス I 分子において高い結合親和性が確立された)を、PBS/BSA 0.5%に6倍の最終的なアッセイ濃度で溶解した。96-ウェルのV-bottemプレートのウェルにおいて、25 μlの競合(検査)ペプチドを25 μlのFl-標識参照ペプチドと混合した。引き続いて、除かれたB-LCLを、4x104/ウェルで100 μl/ウェルに添加した。4゜Cで24 hインキュベーションした後、細胞を1% BSAを含んでいるPBSで三回洗浄し、0.5% パラホルムアルデヒドで固定し、FACScan フローサイトメトリー (Becton Dickinson)で分析して平均蛍光 (MF)を測定した。Fl-標識参照ペプチド結合のパーセンテージ阻害を、次の式を用いて計算した:
(1-(MF参照 + 競合ペプチド - MFバックグラウンド) / (MF参照ペプチド - MFバックグラウンド)) x 100%。
【0051】
競合ペプチドの結合親和性は、Fl-標識参照ペプチドの50%の結合を阻害する濃度(IC50)として表される。IC50は、非線形回帰分析を適用することで計算した。IC50 < 5 μMは高親和性と考えられ, 5 μM < IC50 < 約 15 μMは中等度親和性結合と考えられ, 約 15 μM < IC50 < 100 μMは低親和性結合と判断され、IC50 > 100 μMは結合がないと認識された。
【0052】
【表2】

【0053】
HLA クラス I 結合 アッセイの結果
実際の結合測定によって、49のPRAME ペプチド(9または10 aa. 長)がHLA-A2に対して高度または中等度の親和性(表 3a)を提示し、表 3bに示されたように、93のペプチド(8-, 9-, 10-, 11-mers)が他の HLA クラス I 分子 (HLA-A1, HLA-A3, HLA-A24, HLA-A68, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B35, HLA-B60, HLA-B61 および HLA-B62)に高度または中等度の結合能を有することが明らかとされた。これらのHLA クラス I 結合能が証明されたペプチドを、さらにそれらのフランキングタンパク質配列からのプロテアソーム切断での酵素的な解放に関してプロテアソーム消化分析の結果を用いて分析した(図 1)。表 4にリストされるとおり、この分析によって、(1)高親和性のHLA クラス I 結合能を有し、(2)プロテアソーム切断で産生されたC末端であり、(3)プロテアソーム消化分析においてインタクトであると認められるペプチドの選択が可能となる。
【0054】
【表3A−1】

【表3A−2】

【0055】
a 前記ペプチドのN末端 アミノ酸 (aa.)のPRAMEにおけるポジション。ペプチドは、それらの開始aa.でソートされた。
【0056】
b 前記ペプチドのAa. 配列
c 前記ペプチドの長さ
d IC50は、50%のFL-標識参照ペプチドの結合を阻害するために必要とされるペプチド濃度である(IC50 μM)。IC50 < 約 15 μMを有するペプチドは、それらの結合親和性に関連して潜在的にCTL エピトープであると考えられる。
________________________________________________________________________
【0057】
【表3B−1】

【表3B−2】

【表3B−3】

【表3B−4】

【0058】
a N-termのPRAMEにおけるポジション; ペプチドはHLA分子 および 開始ポジションでソートされた。
【0059】
b 前記ペプチドのアミノ酸(aa.)配列
c 前記ペプチドの長さ
d 前記ペプチドが結合するHLA クラス I 分子
e IC50: 50%のFL-標識参照ペプチドの結合を阻害するペプチド濃度(IC50 μM)。IC50 < 約 15 μMを有するペプチドは、それらの結合親和性に関連して、潜在的にCTLエピトープである。Pred., 高い結合親和性が予測されるが、未検であることを指摘する。
________________________________________________________________________
【0060】
例 2: 全長PRAMEにおけるプロテアソーム切断部位の決定
インビトロでのプロテアソーム媒介性切断の分析の材料および方法
20S プロテアソームを、Groettrup等〔Groettrup et al. (J.Biol.Chem. 270:23808-23815.;1995)〕に記載のとおりB-LCL 細胞株から精製した。この細胞タイプは、免疫プロテアソームを含有することが知られている。高いLMP2 および 7 含有量が、2-D イムノ-ブロッティングで確認された。動力学を評価するために、消化を異なるインキュベーション期間で行った。ペプチド(27 mers, 20 μg)を、記載(Eggers, et al. 1995. J. Exp. Med. 182:1865)のとおり、1 μgの精製プロテアソームと300 μlのプロテアソーム消化緩衝剤中で37゜Cで1 h, 4 h および24 hインキュベーションした。トリフルオロ酢酸を添加して消化を中止し、サンプルを質量分析前-20゜Cで貯蔵した。
【0061】
エレクトロスプレーイオン化質量分析を、およそ250 nL/minの流速でのオンラインでナノエレクトロスプレーインターフェースを備えるハイブリッド クアドラポール飛行時間質量分析機〔Q-TOF (Micromass)〕で行った。インジェクションを、専用のミクロ/ナノ HPLCオートサンプラー〔FAMOS (LC Packings)〕で行った。消化溶液を、水-メタノール-酢酸(95:5:1, v/v/v)に五倍に希釈し、水-メタノール-酢酸 (95:5:1, v/v/v)中でプレカラム(MCA-300-05-C8; LC Packings)にトラップした。プレカラムの洗浄を3 min行って、消化物に存在する緩衝剤を除去した。引き続いて、トラップした検体を、250 nl/minの流速で70% Bから90% Bを10 minで到達する急勾配グラディエント(steep gradient)で溶出した〔A: 水-メタノール-酢酸 (95:5:1, v/v/v); B: 水-メタノール-酢酸 (10:90:1, v/v/v)〕。この低い溶出速度によって、必要であれば同じ溶出の間に少数の付加的なMS/MS 実験が許容される。質量スペクトルを、質量 50-2000 Daで毎秒記録した。分解能(resolution)によって、モノアイソトピック質量(また、多価に荷電したイオンから)の直接的な決定が許容される。質量スペクトルにおけるピークを、Biolynx/タンパク質ソフトウェア (Micromass)を用いて消化された前駆体ペプチドにおいて探索した。質量スペクトルにおけるピークの強度を使用して、プロテアソーム消化で生じたペプチドの相対的な量を確認した。
【0062】
インビトロでのプロテアソーム媒介性の切断分析の結果
ほとんど全体のPRAME aa. 配列をカバーする二十九のオーバーラップするPRAME ペプチド(大抵は27-mers)を、精製した20S プロテアソームでインビトロで消化した。消化のインターバルは、1 hr, 4 hr および 24 hrであった。消化断片の質量スペクトル分析によって、消化したPRAMEペプチド内の多頻度(abundant)および低頻度(low abundant)のプロテアソーム切断部位が明らかとされた。
【0063】
図 1は、指摘した合成ペプチドを精製したプロテアソームで1 時間インキュベーションした後に認められた主要(消化物質の5%以上で表される)な及び低頻度の切断部位(消化物質の5%未満で表される)を示す。この時点は、最も確実な生理的な酵素活性を反映する。
【0064】
インビトロでのプロテアソーム切断で生じたペプチド断片の同定を使用して、一方で高度または中等度の親和性結合HLA クラス I ペプチド(表 3a, 3b)のC末端産生を、他方でプロテアソーム切断後にインタクトな断片としてエピトープの存在が評価された。図 4は、プロテアソーム切断後にインタクトと認められ、インビボで生じる可能性が高いエピトープを代表している結合ペプチドの例およびプロテアソーム切断後にインタクトに保持されないので、インビボで認められる可能性が低い結合ペプチドの例を示す。高度または中等度の親和性 HLA クラス I 結合能を示し、インビトロでプロテアソーム切断後に正しい(correct)C末端を有するインタクトな断片として認められたPRAME ペプチドは、表 4にリストされる。このペプチドの選択物は、細胞内で産生される可能性が高く、腫瘍細胞の細胞表面におけるHLA クラス I 分子において自然に提示(naturally presented)されたので、それらは患者におけるCTL 応答を誘発するために好適である。
【0065】
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【0066】
a 提示エピトープのN-末端のPRAME中のポジション。ペプチドは、開始aa.でソートされた。
【0067】
b 前記ペプチドのaa. 配列。
【0068】
c 前記ペプチドが結合するHLA クラス I 分子。
【0069】
d 1 h 消化後のエピトープのC-末端の生成:
分類: 多頻度(++) > 5%存在, 低頻度(+) < 5%存在。
【0070】
e 1 h 消化後の消化断片に認められるインタクトなエピトープ: (+), 存在する; (-), 存在しない; (ND), 合成のインプットペプチドの人工的な終端(artificial ends)が原因で決定できなかった; (NT), 未検, しかし、Nardilysinで多頻度に作られることが予測される。
【0071】
f PRA(190-198)のC-末端は、例 3 および 図 2で説明されるとおり最初にNardilysin、引き続いてThimetオリゴペプチダーゼ(TOP)が関与している非-プロテアソーム切断経路で生じる。
【0072】
PRA(16-24), PRA(150-158), PRA(150-159), PRA(253-262) および PRA(254-262)のC-末端は、Nardilysinの多頻度の切断部位で直接的に作られることが予測された。加えて、後者の二つのペプチド〔PRA(253-262), および PRA(254-262)〕は、それらのC-末端でプロテアソーム切断により生じることが実験的に示された。
________________________________________________________________________
【0073】
例 3: 非プロテアソーム切断は、プロテアソーム非依存性のHLA-A3-提示CTLエピトープ PRAME 190-198のC-末端を生成するために必要とされる
幾つかの臨時的(occasional)なCTLエピトープ(大抵はそれらのC-末端に塩基性の残基を有する)は、それらのC-末端を解放するための付加的な酵素での非-プロテアソーム切断を必要とする(Tenzer et al., 2005; Cell. Mol. Life Sci 62:1025 および Seifert et al., 2003, Nat. Immunol. 4:375)。本発明は、C-末端がプロテアソームと独立にNardilysin (EC 3.4.24.61) および Thimet オリゴペプチダーゼ (TOP; EC 3.4.24.15)の二つの連続的な切断で生じる一つの係るCTL エピトープ(aa. 配列 ELFSYLIEKを有するPRAMEにおけるポジション 190-198)を含む。
【0074】
ELFSYLIEK エピトープの産生における関与に加えて、Nardilysinは直接の切断でHLA-A3 結合ペプチドPRA16-24 (SMSVWTSPR), HLA-A68結合ペプチドPRA150-158 および PRA150-159 (EAAQPMTKK および EAAQPMTKKR), HLA-A24結合ペプチドPRA254-262 および HLA-B*3501結合ペプチドPRA253-262のC-末端を効率的に産生することが予測された。後者の二つのペプチド(PRA254-262 および PRA253-262)は、C-末端でプロテアソーム切断によっても作られる(表 4に示される)。
【0075】
PRAME190-198のN-末端およびC-末端の酵素産生の決定の材料および方法および結果
プロテアソーム, NardilysinおよびThimetオリゴペプチダーゼ (TOP)の精製調製物を20 nMの濃度で使用して、無細胞系において合成のHLA-A3提示CTL エピトープ ELFSYLIEK (PRA190-198)にその天然のフランキング領域を伴うものを包含している27-mer (PRA182-208), 19-mer (PRA190-208), 13-mer (PRA190-202), 12-mer (PRA190-201) および 11-mer (PRA190-200)のペプチド(20 uMの濃度で)を消化した。図 2に要約されるとおり、この包括的な消化分析によって、PRA190-198のN-末端が効率的にプロテアソーム切断部位で解放されることが明らかとされた。しかしながら、大多数のCTL エピトープと対照的にC-末端の解放は、Nardilysinでの最初の切断を必要とし、11-mer, 12-mer および 13-merの前駆体エピトープペプチドPRA190-200; 190-201; 190-202と続く11-, 12- および 13-merの前駆体ペプチドから最小の9-mer ELFSYLIEK エピトープへの更なるTOP-媒介性デグラデーションの両方が生じる。
【0076】
加えて、(RNA干渉法によって)NardilysinまたはTOPのいずれかのレベルが抑制された標的細胞(PRAMEおよびHLA-A3陽性)のELFSYLIEK エピトープを認識しているCTL クローンを用いた機能的な認識実験(図 3を参照されたい)によって、これらの二つの酵素が生細胞における9-mer ELFSYLIEK PRA190-198 CTL エピトープの産生に決定的(crucially)に必要とされることが確認された(データ示さず)。
【0077】
HLA-A3 の結合モチーフとHLA-A11の結合モチーフとの近似性(closeness)が理由で、この新規エピトープはHLA-A11で提示される新規エピトープとしても請求される。HLA-A11 および PRAMEを発現している標的細胞は、CTL 抗-ELFSYLIEKで特異的に認識された(データ示さず)。
【0078】
例 4: 同定されたCTL エピトープ リンパ球の免疫原性の決定および内因性産生
免疫原性の分析を、同定された推定上の HLA クラス I 提示 CTL エピトープのサブセットに関して行った。免疫原性を、合成で生産したCTL エピトープに対するCTLのインビトロ誘導で決定した。さらにまた、発生させたCTL (クローン)を、PRAMEおよび正しいHLA クラス I 分子を共発現している腫瘍細胞を認識する能力に関して試験した。
【0079】
CTLのバルク培養物(bulk cultures)を、以下の選択されたHLA クラス I 結合 PRAME 由来 CTL エピトープに対して誘導した。ペプチド PRA100-108 (VLDGLDVLL), PRA142-151 (SLYSFPEPEA), PRA300-309 (ALYVDSLFFL), PRA371-380 (ALLERASATL), および PRA425-433 (SLLQHLIGL)を選択した。というのも、これらのペプチドが、HLA-A2において提示されるCTL エピトープと予測されたからである。さらに、CTLを、HLA-A3において提示されたCTL エピトープであるPRA190-198 (ELFSYLIEK), HLA-B7 提示エピトープであるPRA113-122 (RPRRWKLQVL), およびHLA-B8 発現 CTL エピトープであると予測されたPRA258-267 (QMINLRRLLL)に対して誘導した。
【0080】
CTL クローンのインビトロ産生および機能的な CTL アッセイの手順
CTL誘導のための末梢血単核球(PBMC)を、Ficoll-Paque法で健常ドナーの血液から得た。PBMCに存在する全てのAPCを至適に使用するために、我々は活性化B細胞および一次誘導工程の間にAPCとして使用される成熟DCの混合を生じる培養系を開発した。PBMCを、SRBC-ロゼット形成でT細胞フラクションとB細胞および単球を含んでいるフラクションとに分離した。T細胞フラクションを、低温保存した。単球およびB細胞の混合物を、24 ウェルプレートで1x106 細胞/ウェルの濃度を800 U/ml GM-CSF, 500 U/ml IL-4 (PeproTech Inc.) および 500 ng/ml CD40 mAb (クローン B-B20; Serotec)を含んでいる完全(complete)な培養培地中で6 日間培養した。この培養系によって、三重(threefold)の効果が達成された:すなわち、
i) GM-CSFおよびIL-4によって、単球の未成熟樹状細胞への分化が誘導された、
ii) IL-4およびCD40 mAbによって、B細胞の活性化および増殖が生じた(Schultze, et al. 1997, J Clin. Invest. 100:2757)および
iii) CD40 mAbによって、未成熟樹状細胞の成熟が媒介された(Cella, et al. 1996. J Exp Med 184:747)。3日目に、サイトカイン および CD40 mAbを補充した。CTL誘導能をさらに促進するために、APC-混合物を付加的な 2 日間で0.4 ng/ml LPS (Difco Labs), 500 U/ml IFN (Boehringer Mannheim) および 500 ng/ml CD40 mAbで培養した。3日目に、APC-混合物を、50 μg/ml ペプチド (各ペプチドを別々に)で4 hでRTでパルスし, 照射(30 Gy)し、フリーのペプチドを洗浄して除去した。低温保存した自己のT細胞フラクションを、解凍し、磁性ビーズ (Dynal)を用いてCD4+ T細胞を枯渇させた。一次誘導を、96ウェルのU-bottem プレートで行った。10,000/ウェルの濃度でのAPCを、50,000 CD8+ T細胞/ウェルで10% ヒト プール血清 (HPS), 5 ng/ml IL-7 (PeproTech) および 0.1 ng/ml IL-12 (Sigma)を含んでいる培養培地で共培養した。誘導の開始後7日目に、CTLのミクロ培養物(micro-cultures)を、収穫し(プールし)、洗浄し、40,000 応答細胞(responder cells)/ウェルの濃度で96-ウェルU-bottem プレートで10% HPS, 5 ng/ml IL-7 および 0.1 ng/ml IL-12を含んでいる培養培地中で再刺激した。Schultze等〔Schultze et al. (1997, J Clin. Invest. 100:2757)〕によって記載されたプロトコールで作り、照射(75 Gy)し、MHC I 分子から自然に提示されたペプチドを除去するための穏やかな酸溶出の後に、2% FCS および 3 μg/ml β2-microglublin (Sigma)を含んでいる培養培地で4 hでRTでペプチドパルス(50 μg/ml)した自己活性化B細胞(MHC結合実験の材料および方法を参照されたい)を、再刺激APC(restimulator APC)として10,000 細胞/ウェルの濃度で使用した。再刺激を、類似する様式〔20 IU/ml lL-2(Chiron Corp.)で置換されるIL-7は例外〕で14 および 21日で繰り返した。29日目に、CTLバルク培養を、標準の限界希釈手順でクローン化した。CTLクローンを、10% FCS, 1.5% 白血球凝集素(leucoagglutinin)(Sigma) および 240 IU/ml IL-2を含んでいる培養培地に同種のPBMC および B-LCLからなるフィーダー混合物を用いて7〜12日間ごとの特異的な刺激で維持した。
【0081】
ペプチドをロードした標的細胞または腫瘍標的細胞を殺傷するCTL能の機能解析に関して、標準のクロム放出アッセイを使用した。51Cr 標識化 (1 h)後、標的細胞 (2000/ウェル)を、96-ウェル-U-bottem プレート中の最終容量100 μl完全培養培地における様々な数のエフェクター細胞に添加した。37゜Cでの4 h インキュベーション後、上清を収穫した。トリプリケートウェル(triplicate wells)での平均%特異的溶解を、次の式にしたがって計算した: (実験的放出 - 自然放出) / (最大放出 - 自然放出) x 100%。
【0082】
CTLによる腫瘍細胞の免疫原性および機能的な認識の分析の結果。
【0083】
インビトロでのCTL誘導に関して選択した8ペプチド〔これらはPRA100-108 (HLA-A2), PRA142-151 (HLA-A2), PRA300-309 (HLA-A2), PRA371-380 (HLA-A2), PRA425-433 (HLA-A2), PRA190-198 (HLA-A3), PRA113-122 (HLA-B7) および PRA258-267 (HLA-B8)である〕は、全てB-LCL標的細胞に発現された正しいHLA クラス I 分子にロードされた場合に誘導ペプチドを高度に特異的に認識したバルクのCTL培養を誘導する能力がある(データ示さず)。引き続いて、これらの CTL バルクを限界希釈でクローン化し、CTLクローンを作出した。
【0084】
CTL クローンは、外因性にロードされた合成ペプチド(図3A および 3B, 上のパネル)として又は腫瘍細胞に提示された内因性に産生された及び自然に発現されたCTLエピトープ(図3A および 3B, 下のパネル)のいずれかとして彼等を上昇させたCTLエピトープを効率的に認識した。従って、HLA-A2提示ペプチド(図3A) および HLA-A3, HLA-B7 および HLA-B8提示ペプチド(図3B)の両方は、真性(genuine)のCTLエピトープである。これらのデータによって、これらの8つのCTLエピトープの免疫原性が確認され、それらの細胞表面発現が証明され、我々のCTLエピトープ予測の正確性が示される。これは次の事項を指摘している。その事項とは、全ての同定され予測されたCTL エピトープ(表 4にリストされる)が、腫瘍細胞の発現標的である可能性が高く、正しいHLA クラス I 分子を発現しているPRAME陽性癌を有する患者におけるCTL 応答の誘導に適していることである。
【0085】
例 5: PRAMEにおけるHLA クラス II 結合 ペプチドに対するCD4+ T ヘルパー細胞反応性の決定
PRAME発現腫瘍細胞を根絶する能力があるワクチン誘導性の抗-腫瘍 CD8+ CTL 応答の至適な誘導および維持に関して、同時のCD4+ Th 応答の誘導が必要とされる(例えば、Bourgeois, et al, 2002. Eur.J.Immunol. 32:2199; Kumaraguru, et al, 2004. J.Immunol. 172:3719; Janssen, et al, 2003. Nature 421:852; Hamilton, et al, 2004. Nat.Immunol. 5:873)。この現象に寄与する一次的な機構は、CD40-リガンドCD40相互作用を介した専門の抗原提示細胞〔主に、樹状細胞(DCs)〕の成熟におけるCD4+ ヘルパー T 細胞集団により提供される援助であり、これは「ライセンシングモデル(licensing model)」と称される(Schoenberger, et al., 1998. Nature 393:480; Lanzavecchia. 1998. Nature 393:413)。幾つかの証拠によって、係るCD4+ Th応答なしで、CD8+ 応答がないか又は最適以下で誘導され、メモリー CD8+ T細胞応答の維持 および リコール(recall)が損なわれることが示された(Belz, et al., 2002. J.Virol. 76:12388)。従って、CD4+ Th 細胞を誘導する能力のあるPRAME タンパク質におけるHLA クラス II 結合 ペプチドを同定することが重要である。これらの PRAME ペプチドは、二つの異なる スクリーニングアッセイを用いて同定された。CD4+ Th 細胞増殖およびTh 細胞により産生されるIFNγの両方を使用して、HLA クラス II 結合に必要な長さ (22-merまたは27-mer ペプチド)を有する51のオーバーラップ PRAME ペプチドのパネルに対する反応性を評価した。最初に、これらの オーバーラップ PRAME ペプチドに予測された結合能を有するHLA クラス II 分子を同定した。
【0086】
PRAMEから由来するオーバーラップ ポリペプチド(27-merまたは22-mer)のHLA クラス II 結合 プロフィールのインシリコでの決定
HLA クラス II ペプチド 結合は、HLA クラス I 結合よりも厳密性が低い。HLA クラス IIにおけるペプチド結合は、少なくとも 13 aa.長であり、非常に長くてもよい。というのも、HLA クラス II 結合溝のオープンエンドによって、クラス II 分子へのペプチド結合が許容されて、両方の端で溝をこえて伸びるからである。従って、HLA クラス II 結合 ペプチドの長さの要求性は、HLA クラス I 分子におけるペプチド結合の要求性よりも非常にフレキシブルである。さらにまた、この趣旨に沿って、HLA クラス IIにおけるペプチド結合は、HLA クラス Iにおける結合よりもより無差別(promiscuous)である。しばしば、13〜25 aa.の長さのポリペプチドは、複数の HLA クラス II 分子に結合する能力を有する。HLA クラス II 分子のこれらのフレキシブルなペプチド結合特性の利点は、予測されたペプチド結合を検証するために実際の実験の結合アッセイがあまり必要とされないことである。
【0087】
HLA クラス II 結合の予測に関して、インターネットで自由に利用可能なアルゴリズムが使用された。このアルゴリズムは、「ProPred」(at: http://www.imtech.res.in/raghava/propred/)である(Singh et al, 2001, Bioinformatics 17:1236を参照されたい)。このアルゴリズムを用いて、51のオーバーラップしているペプチドを異なる HLA クラス II 分子の結合モチーフの存在に関してスクリーニングし、結果を分析した。表 5Aに示されるとおり、CD4+ T細胞 反応性に関して試験した全てのオーバーラップ ペプチドは、複数の HLA クラス II 分子 (使用したカットオフ: 各クラス II 対立遺伝子に関して全長 PRAMEからの五つの予想された最高の結合ペプチド)に関して予想された効率的な結合能を有していた。
【0088】
【表5A−1】

【表5A−2】

【表5A−3】

【表5A−4】

【0089】
CD4+ T 細胞増殖 アッセイ および CD4+ T細胞 IFNγ ELISPOT アッセイに関する手順
CD4+ T 細胞増殖 アッセイに関して、健常ドナーまたはPRAME-陽性癌の患者のいずれかから得た総PBMC (1.5x10e5 細胞/ウェル)を、10% 自己血清(autologous serum)および10 μg/mlの51 オーバーラップ 27-merまたは22-mer PRAME ペプチドを補充したRPMI 培養培地中でU-底面 96-ウェルプレートの8ウェルに播種した。6日目に、50 μlの3H-チミジン (1 mCi/50 ml)を添加し、7日目に3H-チミジンの取込みを測定した。
【0090】
IFNγ ELISPOT アッセイに関して、CD45RO+ 細胞をMiltenyi BiotecのCD45RO磁性ビーズを用いてPBMCから単離した。引き続いて、CD45RO+ (および CD45RO-陰性)細胞を、各々51のオーバーラップする27-mer または22-merのPRAMEペプチドのパネル(panel)からの5つの異なるペプチドの10 ペプチド混合物を補充した10% ヒト プール血清を有するIMDMに4:1の比で自己の照射されたPBMCと共に24-ウェルプレートの10ウェル(2-3x10e6 細胞/ウェル)に播種した。各ペプチドのペプチド濃度は5 μg/mlであり、IL-2 (150 IU/ml)を2日目に添加した。10日目に、ペプチド刺激したCD45RO培養物を、計数し、IFNγ ELISPOT プレートに自己の放射線照射したPBMCとペプチドの非存在下または別々のペプチド番号1〜51の5 μg/mlの存在下で1:1の比でトリプリケートで共に播種した。
【0091】
51のPRAME 27-mer/22-mer ペプチドのパネルに対するCD4+ T細胞反応性の結果
8健常ドナーおよび7PRAME陽性癌患者の末梢における51のオーバーラップPRAMEペプチドに対するCD4+ Th 細胞反応性の分析によって、51 ペプチドのうちの28がCD4+ Th 細胞でのIFNγ 産生を誘導し、36 ペプチドがCD4+ Th 細胞増殖を誘導することが明らかとされた(表 5B)。
【0092】
【表5B−1】

【表5B−2】

【0093】
例 6: 主要なワクチンの要求性を充足するワクチンペプチドの選択
一または二以上のPRAME由来ペプチドを含んでおり、PRAME陽性腫瘍に対する免疫応答を誘導する至適で規定されたT細胞誘導組成物は、HLA クラス I 拘束性CD8+ CTL 応答および, 同時に, HLA クラス II 拘束性CD4+ T ヘルパー 応答の両方を誘発しなければならない。Th 細胞応答は、誘導を増強するため及びCTL 応答を維持するために必要とされる。
【0094】
さらにまた、HLA 分子の広範な多型性が原因で、至適なワクチンは、被験者の大きな潜在的な集団のために本ワクチンの使用を許容する広域のHLA ハプロタイプ適用範囲を有するために設計される必要がある。さらにまた、ワクチンは、高いパーセンテージのPRAME 陽性の癌を有する個々の患者に適切であるべきである。それゆえ、本発明のワクチン組成物は、集団中で高い普及率の異なる HLA クラス I 分子に提示される複数の PRAME CTL エピトープを含有する。HLA クラス II 分子における高度に無差別な結合のために、この要求性はCD4+ T ヘルパー 細胞誘導ペプチドに関して要求される厳密性は低い。表 4に要約されるCTL エピトープおよび表 5A および 5BにリストされるCD4+ T ヘルパー エピトープの同定によって、PRAME 陽性癌のための規定のワクチンに含有されるワクチンペプチドの設計が可能となる。
【0095】
ワクチン組成物は、30 - 35 aa.の長さのPRAME由来ペプチドを含む。というのも、幾つかの利点がこのサイズのペプチドと関連するからである。前に述べたとおり、係るペプチドは、原則的に容易に合成される。さらにまた、それらはHLA クラス I 提示 CTL エピトープ および HLA クラス II 提示T ヘルパー エピトープの両方を含むために十分な長さを有する。最後に、非常に重要な事項は、この長さのペプチドが、エピトープ ( CTL および T ヘルパーの両方)が抗原提示細胞によって提示される前に専門の抗原提示細胞(特に、樹状細胞)によりプロセスされる必要があることである(Zwaveling, et al, 2002. J.Immunol. 169:350)。結果的に、非専門の抗原提示細胞における提示および生物体をとおした組織的な伝播(systemic spread)は起こらないので、最小の HLA クラス I 提示 CTL エピトープでのワクチン接種後に観察される耐性の誘導は生じない(Toes, et al, 1996. J.Immunol. 156:3911; Toes, et al, 1996. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 93:7855.)。従って、この長さのワクチンペプチドは、短い最小のHLA クラス I エピトープまたは全長タンパク質に対して優れている。
【0096】
同定されたCD8+ CTL エピトープ および CD4+ T ヘルパー 反応性のPRAME由来ペプチドの情報を用いて、20のPRAMEワクチンペプチドを設計した。これは以下の三つの主要なルールを満たす:
1) 少なくとも一つの CTL エピトープ、好ましくは二以上、最も好ましくは免疫原性がCTL誘導によって確認されたCTL エピトープ、より好ましくはHLA-A2によって提示可能なCTL エピトープを含んでいる、
2) 少なくとも一つの CD4+ T ヘルパー細胞反応性のペプチド, 好ましくはPRAME 陽性の悪性疾患を有している患者及び健常ドナーの両方に反応性のものを含んでいる、および
3) 19-45の長さのaa., 好ましくは 30〜35のアミノ酸。
【0097】
表 6にリストされるPRAME由来ペプチドは、本発明にしたがって設計され、これらの要求性を充足する。表 6におけるPRAME由来ペプチドは、ヒト被験者におけるPRAMEを発現する悪性疾患および腫瘍に対し、インビボで当該技術において以前に記載されたPRAMEの断片および組成物よりも効果的で、増強した、長期の免疫応答をマウントする優れた能力を有する。
【0098】
表 6にリストされるとおり本発明のペプチドの各々を、実際に上記の例1に記載のとおり合成し、精製した。しかしながら、表 6におけるペプチドと同じ判定基準を用いて最初に設計された一つのペプチド(配列番号 22: 配列番号 21のアミノ酸 222-256)に関して、我々はその実施においてそれは許容される純度(2%未満の正しい配列)で合成できないことを見出した。我々はさらに本発明のこれらのペプチドの各々が生理的に許容される塩溶液(多くとも 35%のDMSOを含んでいる)において0.5 - 8 mg/mの範囲の濃度で可溶性であることに注目する。
【0099】
【表6−1】

【表6−2】

【表6−3】

【表6−4】

【表6−5】

【表6−6】

【表6−7】

【表6−8】

【表6−9】

【表6−10】

【表6−11】

【表6−12】

【表6−13】

【表6−14】

【表6−15】

【表6−16】

【表6−17】

【0100】
a 33 〜35 aa. 長のワクチン ペプチド: ペプチド ID No.および全長 PRAME タンパク質における最初と最後のaa.のポジション。
【0101】
b CD4+ Th 細胞反応性に関して試験したHLA クラス II 結合 ペプチドの開始および終了ポジション (aa.)。
【0102】
c HLA クラス II 結合 ペプチドに対するCD4+ Th 細胞反応性。名称: IFNγ : 指摘したペプチドで刺激した後に観察されたIFNγ-応答; Prolif.: 指摘したペプチドで刺激した後に観察された増殖応答。
【0103】
d HLA クラス I 結合 ペプチドのN末端 アミノ酸のPRAMEにおけるポジション。ペプチドは、開始aa.でソートされた。
【0104】
e HLA クラス I 結合ペプチドのAa. 配列
f HLA クラス I 結合 ペプチドの長さ
g IC50は、50%のFL-標識参照ペプチドの結合を阻害するために必要とされるペプチド濃度である(IC50 mM)。Pred., 予想された高い結合親和性。
【0105】
h プロテアソーム媒介性の消化によるHLA クラス I 結合 ペプチドの正しいC末端を含んでいる断片の産生。
【0106】
消化を1 h 消化で評価した。というのも、これが生理的に最も妥当(relevant)な時点だからである。
【0107】
分類: (++) > 5%存在する断片, (+) < 5%存在する断片, (-) C-term.を含んでいる断片が認められなかった。
【0108】
IC50 < 15 mMを有するペプチドは、それらの結合親和性に関連して潜在的にCTL エピトープであると考えられる。
【0109】
i 1 h 消化後の消化断片に認められるインタクトなエピトープ: (+), 存在する; (-), 存在しない; (ND), 合成のインプットペプチドの人工的な端(artificial ends)が原因で決定できなかった; (NT), nardilysinでの消化後のこれらのエピトープのインタクト性は未検。
【0110】
j 腫瘍細胞を特異的に認識するこの特定の HLA/ペプチド 組み合わせに対して誘導されるCTL。分類: +, CTLが誘導され、腫瘍細胞を認識する; -, CTLが誘導されるが、腫瘍細胞を認識しない; n.t., 未検
k HLA-A3 提示CTL エピトープ PRA(190-198) (ELFSYLIEK)は、例 3 および 図 2で説明されるとおり非-プロテアソーム切断で生じる。PRA(16-24), PRA(150-158), PRA(150-159), PRA(253-262) および PRA(254-262)のC-末端は、Nardilysinの多頻度の切断部位で直接的に作られることが予測された。加えて、後者の二つのペプチド〔PRA(253-262), および PRA(254-262)〕は、それらのC-末端でプロテアソーム切断により生じることが実験的に示された(表 4を参照されたい)。
【0111】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100 アミノ酸以下の長さを有し、ヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からの少なくとも 19の連続するアミノ酸を含むペプチドであって、ヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からの少なくとも一つの HLA クラス II エピトープ および 少なくとも一つの HLA クラス I エピトープを含むペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって、少なくとも一つの HLA クラス II エピトープ および 少なくとも一つの HLA クラス I エピトープがヒト PRAME タンパク質のアミノ酸配列からの連続するアミノ配列内に存在するペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載のペプチドであって、連続するアミノ酸配列の長さが30〜40 アミノ酸, 好ましくは 30〜35 アミノ酸 および より好ましくは 33〜35 アミノ酸であるペプチド。
【請求項4】
先行する請求項の何れか一項に記載のペプチドであって、前記HLA クラス II エピトープは、ヒトの癌患者および/または健常な対照におけるCD4+ Th 細胞を活性化する能力があるペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載のペプチドであって、前記HLA クラス II エピトープは、CD45RO 陽性の CD4+ Th細胞を活性化する能力があるペプチド。
【請求項6】
先行する請求項の何れか一項に記載のペプチドであって、前記HLA クラス I エピトープは、プロテアソームの切断でC-末端でプロセスされるペプチド。
【請求項7】
請求項6に記載のペプチドであって、前記HLA クラス I エピトープは、ヒトの癌患者および/または健常な対照におけるCD8+ CTLを活性化する能力があり、好ましくはHLA-A2 エピトープであるペプチド。
【請求項8】
先行する請求項の何れか一項に記載のペプチドであって、アミノ酸配列の配列番号 6, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 14, 15, 16, 18, 1, 2, 3, 4, 13, 17, 19 および配列番号20からなる群から選択される, 好ましくはアミノ酸配列の配列番号 6, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 14, 15, 16, および18からなる群から選択される, より好ましくはアミノ酸配列の配列番号 6, 5, 8, 14, 15, 16 および18からなる群から選択されるヒトPRAMEタンパク質からの連続するアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項9】
請求項 1〜8の何れかに規定された少なくとも一つのペプチドを含み、任意で少なくとも一つの アジュバントを含むワクチン接種のための組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、請求項8に規定したアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも 3 ペプチドを含んでいる組成物。
【請求項11】
前記アジュバントはToll様レセプターを介して作用する、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
医薬として、好ましくはワクチンとしての使用のための請求項 1〜8の何れかに記載のペプチドまたは請求項9〜11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
癌の治療または予防における使用のための請求項12に記載のペプチドまたは組成物。
【請求項14】
癌の治療または予防のための医薬、好ましくはワクチンの製造のための請求項 1〜8の何れかに記載のペプチドまたは請求項9〜11の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項14に記載の使用であって、前記癌は、メラノーマ, リンパ腫, 乳頭腫, 乳房または頚部の癌腫, 急性および慢性の白血病, 髄芽腫, 非小細胞肺癌腫, 頭頸部癌, 腎臓の癌腫, 膵臓の癌腫, 前立腺癌, 小細胞肺癌, 多発性骨髄腫, 肉腫および慢性骨髄性白血病および急性骨髄性白血病のような血液学的な悪性疾患からなる群から選択される使用。

【図1.1】
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【図1.2】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−522748(P2010−522748A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500861(P2010−500861)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050171
【国際公開番号】WO2008/118017
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509268576)
【氏名又は名称原語表記】Academisch Ziekenhuis Leiden h.o.d.n. LUMC
【住所又は居所原語表記】Albinusdreef 2, NL−2333 ZA Leiden, The Netherlands
【Fターム(参考)】