説明

PS転炉の漏出ガス回収装置及び回収方法

【課題】 PS転炉の装入・排出口の近くに吸引部を配置してもそのメンテナンスに負担を与えることなく、マットや冷材装入時等に発生する漏出ガスを確実に回収することが可能な漏出ガス回収装置及び回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 PS転炉1の上部側に配置された排ガスフード5の一方側の側面、且つ、PS転炉1の装入・排出口3の近傍に、水冷ジャケット構造12cを有するダンパ12を備えた吸引部11を配置し、それによってPS転炉1を傾倒させて炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口3から漏出する漏出ガスを排ガスフード内5に引き込んで排気するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PS転炉の漏出ガス回収装置及び回収方法に関し、さらに詳しくは、PS転炉によって粗銅を生成する際に発生する漏出ガスを効果的に回収し、それによって操業効率を高めることを可能としたPS転炉の漏出ガス回収装置及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅の製錬は、例えば、以下のようにして行われる。まず、乾燥した微粉末の精鉱を酸素富化空気又は高温熱風と同時に精鉱バーナによって自熔炉内に吹き込み、瞬間的に酸化反応を起こさせてマットとスラグに分離する。このとき、酸化反応熱だけでは熱量が不足する場合があるので重油等の燃料によって助燃する。マットには約50〜70%の銅が含まれ、これを自熔炉のタップホールから抜き出して回収する。一方、スラグにも約1%前後の銅が含まれるのでさらに錬かん炉で錬かんし、スラグ中の銅をマットとして回収し、自熔炉からのマットとあわせてPS転炉で処理する。
【0003】
自熔炉で得られたマットをPS転炉に収容し、複数の羽口から空気又は酸素富化空気を吹き込んでマットの処理を行う。操業は回分で造かん期と造銅期に分けられ、造かん期ではマット中の硫化鉄を酸化して溶融状態のカラミ(スラグ)として分離除去する。カラミを排出した後のPS転炉には、新たに自熔炉からのマットが装入され、上記の操業が繰り返される。この造かん期を2〜3回繰り返し、生成したマット(白かわ)が、ある量に達したのち造銅期に入り粗銅を得る。尚、造かん期で得られるスラグには3〜5%の銅を含んでおり、浮遊選鉱により銅分を分離濃縮してさらに銅分の回収を行う。造かん期及び造銅期とも熱源は硫化物の酸化熱を利用し、燃料は全く用いない。特に、造銅期には反応熱が過剰となるため、電解に際して発生するアノード鋳返し材料(電解残基銅)、製錬所内の繰り返し物、銅スクラップ等の冷材を装入して温度上昇を調節する。また、操業中に発生する排ガスにはSOが7〜12%含まれており、硫酸の回収が行われる。
【0004】
PS転炉に自熔炉からのマットや冷材を装入する場合、操業を一時停止してPS転炉の正面に設けられた前面フードを開け、装入・排出口が手前側になるようPS転炉を傾倒してマットや冷材の装入が行われる。装入が終了した後は、転炉の装入・排出口が排ガスフード側に位置するように逆方向に回転させ、前面フードを閉めて操業を再開する(例えば、特許文献1(特開平11−158564号公報))。
【0005】
【特許文献1】特開平11−158564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マットや冷材等の装入のためにPS転炉を傾倒させると装入・排出口が排ガスフードの内側から外側に位置することになるので装入・排出口から立ち上るSOを含むガスは排ガスフードの外に漏れ出ることになる。そのため、排ガスフードの上部側にはそのような漏出ガスを吸引捕集する漏出ガス回収装置が設けられている。
【0007】
しかし、従来の漏出ガス回収装置にあっては、粗銅やカラミを排出する際に発生する排ガスは比較的十分に捕集することができたが、マットや冷材等の装入時に発生する漏出ガスの回収は十分とはいえなかった。なぜなら、マットや冷材等を装入すると炉内の内容物と急激に反応を起こすために発生するガスの量が粗銅やカラミを排出する場合に比べて多量となることに加え、漏出ガス回収装置の吸引部が装入・排出口から遠くに位置していたからである。
【0008】
そのため、従来はマットや冷材等の装入の際には、発生する漏出ガスの発生を抑えるため装入・排出口の傾倒を頻繁に行う等、装入に長時間を要することとなり操業能率を悪化させる要因となっていた。
【0009】
さらに、PS転炉の装入・排出口の近傍は排ガスに含まれるダストが固化成長したいわゆる「べコ」の発生が著しく、その除去にも時間がかかるおそれがあることから装入・排出口の近傍に吸引部を設けることは困難であると考えられていた。
【0010】
そこで、本発明は、PS転炉の装入・排出口の近くに吸引部を配置してもそのメンテナンスに負担を与えることなく、これまで十分とはいえなかったマットや冷材装入時等に発生する漏出ガスを確実に回収することが可能な漏出ガス回収装置及び回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、PS転炉を傾倒させて炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口から漏出するガスを回収するPS転炉の漏出ガス回収装置において、PS転炉の上部側に配置された排ガスフードの一方側の側面、且つ、PS転炉の装入・排出口の近傍に、水冷ジャケット構造を有するダンパを備えた吸引部を配置し、それによって漏出ガスを排ガスフード内に引き込んで排気するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のPS転炉の漏出ガス回収装置において、吸引部から吸引された漏出ガスを排気するための煙道内にさらに煙道を密閉するためのダンパを設けたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のPS転炉の漏出ガス回収装置において、PS転炉を傾倒させて炉内からカラミや粗銅を取り出す際に装入・排出口から漏出するガスを回収する第二の吸引部が排ガスフードの側面近傍にさらに設けられており、炉内にマットや冷材等を装入する際には、第二の吸引部からの吸引を停止して吸引部(以下「第一の吸引部」という)によって漏出ガスを回収し、PS転炉からカラミや粗銅を取り出す際には第一の吸引部の吸引を停止して第二の吸引部によって漏出ガスを回収するように構成されてなることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、PS転炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口から漏出するガスを、PS転炉の上部側に配置された排ガスフードの一方側の側面で且つPS転炉の装入・排出口の近傍に設けられた水冷ジャケット構造を有するダンパを備えた吸引部によって排ガスフード内に引き込んで回収するようにしたことを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収方法を提供する。
【0015】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、PS転炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口から漏出するガスは、PS転炉の上部側に配置された排ガスフードの一方側の側面で且つPS転炉の装入・排出口の近傍に設けられた水冷ジャケット構造を有するダンパを備えた第一の吸引部よって排ガスフード内に引き込んで回収すると共に、PS転炉からカラミや粗銅を取り出す際に装入・排出口から漏出するガスは、排ガスフードの側面近傍に設けられた第二の吸引部によって回収するようにしたことを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収装置及び回収方法によれば、漏出ガス回収装置の吸引部に水冷ジャケット構造を有するダンパを設けることとしたのでPS転炉の装入・排出口の近傍に吸引部を配置することが可能となり、そのため炉体を傾倒させてマットや冷材等を装入した際に発生する漏出ガスを有効に回収することができるという効果がある。そのため、漏出ガスを気にすることなくマットや冷材等を一度に装入することできるので従来よりも操業効率を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収装置及び回収方法について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収装置の一実施形態の概要を示す斜視図、図2はその正面図である。
【0018】
初めに、PS転炉1の概要について説明する。PS転炉1は、概略として円筒横型の炉体2を備えており、その上面部には装入・排出口3が形成されている。炉体2の内部は耐熱材、例えば、マグネサイト又はクロム・マグネサイト煉瓦等によって内張りされている。また、電動機1bによって回転するローラ1a、1aが炉体2の側面に接するように配置されており、これによって炉体2が傾倒可能とされている。このような傾倒機構によって炉体2を傾倒させることによりマットや冷材等の装入又はカラミや粗銅等の排出等が行われる。尚、マット等の炉体2内への装入は、炉体2を傾倒させて装入・排出口3を排ガスフード5の外側へ位置させることによって行われ、内容物を炉体2外へ排出する際には炉体2をさらに大きく傾倒させて装入・排出口3から流出させるようにして行われる。一方、炉体2の側面下方には羽口2aが多数設けられており、ここから酸素富化空気又は加圧空気を直接マットの中に吹き込むようになっている。
【0019】
PS転炉1の上方には排ガスフード5が配置されており、排ガスフード5の正面には排ガスフード5に沿うようにスライドしつつ開閉する前面フード6が配置されている。前面フード6の開閉は、前面フード6に取り付けられたワイヤWを天井側へ引き上げ又は引き下げすることで行われるようになっている。操業中は図3に示すように、炉体2の装入・排出口3が排ガスフード5の内側に位置するように炉体2を回転させると共に、前面フード6を閉じ、炉内で発生するガスを排ガスフード5と繋がった廃熱ボイラ7へ送られるようになっている。廃熱ボイラー7の後方には排ガスフード5内の排ガスを吸引する図示しない吸引口が設けられている。この吸引口は、後述する第一の漏出ガス回収装置10及び第二の漏出ガス回収装置50の動作状況に応じて適宜開閉されるようになっている。回収された排ガスは、排ガスフード5から廃熱ボイラ7を経て硫酸工場に運ばれ、硫酸の製造に供せられる。一方、マットや冷材を炉体2内に装入する場合は、前面フード6を開け、炉体2を手前側に傾倒させて装入・排出口3を排ガスフード5の内側から外側に位置させ、レードル9によって炉体2内へ装入する。
【0020】
PS転炉1の周囲には炉体2を傾倒させたときに装入・排出口3から発散するガスが四方へ広がらないように排ガスの拡散防止壁8が設けられている。そして、拡散防止壁8の上部はレードル9の移動等のため開放状態となっている。
【0021】
そして、排ガスフード5の側面側で、且つ、装入・排出口3の近傍設けられた開口部5aには本発明に係る第一の漏出ガス回収装置10の吸引部11が配置されている(図3参照)。第一の漏出ガス回収装置10の吸引部11は、図4及び図5に示すように、開口部5aを開閉するための第一のダンパ12を備えている。
【0022】
第一のダンパ12は、排ガスフード5の側面に形成された開口部5aを開閉するための開閉板12aと、開閉板12aを動作させて開口部5aを開閉する油圧シリンダ12bを備えており、油圧シリンダ12bによって開閉板12aを可動させて開口部5aを開閉するようになっている。また、開閉板12aは、図7(a)(b)に示すように、その内部には冷却水を流通させるための水路12cが形成されてジャケット構造とされている。水路12cは、供給口12dから導入した冷却水を排出口12eから抜き出すようにして形成されている。また、水路12cは開閉板12aの内部に設けられているほか、開口部5aの周囲に位置する排ガスフード5の側面にも配置されている(図5参照)。このような構成により、高温に曝される開閉板12a及びその周囲は水路12c内を流れる冷却水によって適度に冷却されて過熱による動作不良が防止される。また、排ガスに含まれるダストの固化により発生するべコの付着が抑制されると共に、付着したベコは脆く容易に除去が可能なので短時間で除去作業を終了することができる。尚、開閉板12aは厚さ約50mmの鉄製とされている。
【0023】
一方、排ガスフード5の側面に形成された開口部5aと連通する第一の漏出ガス回収装置10の煙道20の途中にはさらに2箇所に煙道20を密閉するためのダンパ13、14が配置されている。煙道20をダンパ12、13、14によって密閉するのは操業中における排ガスフード5からの排ガスの吸引に影響が出ないようにするためである。すなわち、操業中に排ガスフード5から回収される排ガスを硫酸工場に送るラインと第一の漏出ガス回収装置10によって漏出ガスを回収するラインとは別ラインとなっており、操業中に第一の漏出ガス回収装置10のガス回収ラインからフリーエアーが入り込んでしまうと操業中に発生するガスの回収の能力が著しく低下するだけでなく、能力低下に伴って排ガスが排ガスフード5から洩れるおそれがあるからである。従って、操業中は排ガスフード5と連通する煙道20を含む第一の漏出ガス回収装置10のガス回収ラインは確実に閉塞できるようにしておく必要がある。また、それとは逆に、第一の漏出ガス回収装置10によって漏出ガスを回収する場合には、廃熱ボイラ7の後方に設けられた開閉可能な上述の図示しない吸引口を閉じて第一の吸引部11からの漏出ガスの吸引に影響が出ないようになっている。尚、本実施形態では煙道20内には2つのダンパを設けたが配置するダンパの数はこれに限定されるものではない。
【0024】
第一の漏出ガス回収装置10の煙道20は、排ガスフード5の側面に形成された開口部5aから排ガスフード5の側面に対して直交する方向に水平に伸び、そして水平に略直角に曲がった第一の角部20aを経て排ガスフード5の側面と平行になる方向に進み、さらに垂直方向に90°曲がった第二の角部20bによって上方へ向かって伸び、そして、排気ダクト20cを介して回収ダクト60と連結されている。そして、第一の角部20aの近傍には第二のダンパ13が設けられ、第二の角部20bの近傍には第三のダンパ14が設けられている。
【0025】
第二のダンパ13及び第三のダンパ14はそれぞれ油圧シリンダ13a、14aによって煙道20を閉塞・開放するように動作するようになっている。第一から第三の各ダンパ12、13、14は、第一のダンパ12の開閉に連動して開閉するように構成することが好ましいが、もちろん、それぞれ単独で動作するように構成することも可能である。これにより、通常操業の際には第一から第三のダンパ12、13、14を閉じて第一の漏出ガス回収装置10の動作を停止させ、排ガスフード5による排ガスの回収が行われる。そして、PS転炉1内にマットや冷材を装入する際には、第一から第三のダンパ12、13、14を開いて第一の漏出ガス回収装置10の動作を動作させ、装入・排出口3から漏れ出す漏出ガスを吸引部11によって排ガスフード5内に引き込み、開口部5aから煙道20を通り、排気ダクト20cを介して回収ダクト60によって回収が行われる。
【0026】
一方、第一の漏出ガス回収装置10が設置された側とは反対側の排ガスフード5の近傍には第二の吸引部51が配置された第二の漏出ガス回収装置50が設けられている。第二の漏出ガス回収装置50は、従来も配置されていた排ガス回収装置であり、図1に示すように、排ガスフード5の外側に漏れ出した排ガスを第二の吸引部51によって吸引して回収する装置である。第一の吸引部51によって回収された排ガスは、排気ダクト50aから回収ダクト60を通って脱硫設備に運ばれるようになっている。但し、第一の漏出ガス回収装置10の設置に伴い、第二の漏出ガス回収装置50には第二の吸引部51から回収ダクト60に至る所定箇所に従来にはない図示しないダンパを新たに設けられており、第一の漏出ガス回収装置10の動作中は当該ダンパによって回収ダクト60との通気性を遮断して第一の漏出ガス回収装置10の吸引に影響が出ないように両者が連携して動作するようにされている。
【0027】
第二の吸引部51は、排ガスフード5の外側でPS転炉1の上部に配置されている。粗銅やカラミの排出の際に装入・排出口3から漏れ出す漏出ガスは排ガスフード5内を経て回収できないのでそのような漏出ガスを排ガスフード5の外部において回収を行うようにしたものである。すなわち、粗銅やカラミの排出の場合に第二の漏出ガス回収装置50によって漏出ガスの回収を行うようにしたのは炉外への排出の際はマットや冷材を装入する場合よりも炉体2をさらに傾倒させる必要があるので装入・排出口3が排ガスフード5から遠く離れることになり第一の漏出ガス回収装置10による排ガスフード5を経由しての漏出ガスの回収ができないからである。第二の漏出ガス回収装置50の第二の吸引部51から回収された漏出ガスも第一の漏出ガス回収装置10と同様に回収ダクト60によって回収されるようになっている。従って、第二の漏出ガス回収装置50による漏出ガスの吸引に影響が出ないようにするために、粗銅やカラミを排出する場合には第一から第三のダンパ12、13、14を閉じて第一の漏出ガス回収装置10の動作を停止させて第二の吸引部51によって漏出ガスの回収を行う。また、マットや冷材を装入する際には、第二の漏出ガス回収装置50の動作を停止させて第一の漏出ガス回収装置10による回収を行う。
【0028】
次に、上述した第一の漏出ガス回収装置10の動作について本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収方法の好ましい一実施形態と共に説明する。図8は本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収方法の好ましい一実施形態のフローチャートである。
初めに、操業中はPS転炉1の装入・排出口3を排ガスフード5内に位置させると共に前面フード6を下げた状態で排ガスの回収を行っている(ステップS0)。尚、通常操業の場合は第一の漏出ガス回収装置10の第一から第三のダンパ12、13、14を閉じてその動作を停止させている。
【0029】
マットや冷材を装入する場合(ステップS1)は、前面フード6を天井側へ引き上げると共に炉体2を手前に傾倒させて装入・排出口3を排ガスフード5の外側に位置させる。そして、第一の漏出ガス回収装置10の第一から第三のダンパ12、13、14を開いてその動作を開始する(ステップS2)。このとき、第二の漏出ガス回収装置50に設けた図示しないダンパによって回収ダクト60との連通を遮断すると共に廃熱ボイラ7の後方に設けられた開閉可能な図示しない吸引口を閉じて第一の吸引部11からの漏出ガスの吸引に影響が出ないようにする。これにより、装入・排出口3から漏れ出す漏出ガスは第一の吸引部11によって排ガスフード5内に引き込れ、排ガスフード5に設けられた開口部5aから煙道20を通り、排気ダクト20cを介して回収ダクト60によって回収される。そして、PS転炉1内への装入物の装入が終了したら、装入・排出口3が排ガスフード5内に位置するように炉体2を元の位置に戻し、前面フード6を下げると共に第一から第三のダンパ12、13、14を閉じて第一の漏出ガス回収装置10の動作を停止させ、通常操業を行う(S0)。
【0030】
一方、粗銅やカラミを排出する場合(ステップS3)は、前面フード6を天井側へ引き上げると共に炉体2をさらに大きく手前に傾倒して装入・排出口3を排ガスフード5の外側に位置させる。そして、第一から第三のダンパ12、13、14を閉じて第一の漏出ガス回収装置10の動作を停止させると共に、第二の漏出ガス回収装置50を動作させて漏出ガスの回収を行う(ステップS4)。これにより、装入・排出口3から漏れ出す漏出ガスは第二の吸引部51によって吸引され、排気ダクト50aを介して回収ダクト60によって回収される。尚、第二の漏出ガス回収装置50の動作は廃熱ボイラ7の後方の吸引口の開閉に影響されることはない。そして、PS転炉1外への排出が終了したら、装入・排出口3を排ガスフード5内に位置になるよう炉体2の姿勢を戻し、前面フード6を下げると共に第二の漏出ガス回収装置50の動作を停止させて通常操業を行う(S0)。以下、順次これを繰り返すことによりPS転炉1の操業を行う。
【実施例】
【0031】
PS転炉へのマットの装入の際に、排ガスフード5の前面に設けられた前面フード6を天井側に引き上げ、装入・排出口3からマットを装入し、第一の漏出ガス回収装置10により吸引部11から漏出ガスの吸引を行った。このとき、第二の漏出ガス回収装置50の第二の吸引部51と回収ダクト60との連通は遮断すると共に廃熱ボイラ7の後方に設けられた開閉可能な吸引口は閉じた。装入・排出口3から漏れ出る漏出ガスは排ガスフード5内を経て第一の漏出ガス回収装置10により吸引されて回収されたので漏出ガスを気にすることなくレードル9による装入を一度に行うことができた。また、水路12cに冷却水を流しながら開閉板12aを冷却しつつ操業を行ったため発生したべコは排除しやすく、しかもベコによる第一のダンパ12の開閉への影響は見られなかった。
【比較例】
【0032】
第一の漏出ガス回収装置10を設けずに装入・排出口3へのマットの装入を行った場合は、装入・排出口3から立ち上る漏出ガスが十分に回収できずレードル9によるPS転炉1内への装入が一度に出来なかった。また、排ガスフード5の内側面部はべコの付着が激しく、その除去にも時間を要することとなった。
【0033】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、例えば、第一の漏出ガス回収装置10と第二の漏出ガス回収装置50とを排ガスフード5の同じ側面側に設ける等、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収装置の一実施形態の概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示すPS転炉の漏出ガス回収装置の正面図である。
【図3】図1に示すPS転炉の漏出ガス回収装置の側面図である。
【図4】第一の漏出ガス回収装置の概要を示す正面図である。
【図5】図4に示す第一の漏出ガス回収装置の側面図である。
【図6】図4に示す第一の漏出ガス回収装置の平面図断面である。
【図7】(a)は第一のダンパの水冷ジャケット構造を示す正面断面、(b)はその側面図である。
【図8】本発明に係るPS転炉の漏出ガス回収方法の一実施形態のフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
W ワイヤ
1 PS転炉
2 炉体
3 装入・排出口
5 排ガスフード
5a 開口部
6 前面フード
7 廃熱ボイラ
8 拡散防止壁
9 レードル
10 第一の漏出ガス回収装置
11 第一の吸引部
12 第一のダンパ
12a 開閉板
12b 油圧シリンダ
12c 水路
13 第二のダンパ
14 第三のダンパ
20 煙道
20a 第一の角部
20b 第二の角部
20c 排気ダクト
50 第二の漏出ガス回収装置
50a 排気ダクト
51 第二の吸引部
60 回収ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PS転炉を傾倒させて炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口から漏出するガスを回収するPS転炉の漏出ガス回収装置において、
前記PS転炉の上部側に配置された排ガスフードの一方側の側面、且つ、当該PS転炉の装入・排出口の近傍に、水冷ジャケット構造を有するダンパを備えた吸引部を配置し、それによって前記漏出ガスを排ガスフード内に引き込んで排気するようにしたことを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のPS転炉の漏出ガス回収装置において、
前記吸引部から吸引された漏出ガスを排気するための煙道内にさらに煙道を密閉するためのダンパを設けたことを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のPS転炉の漏出ガス回収装置において、
PS転炉を傾倒させて炉内からカラミや粗銅を取り出す際に装入・排出口から漏出するガスを回収する第二の吸引部が前記排ガスフードの側面近傍にさらに設けられており、
炉内にマットや冷材等を装入する際には、前記第二の吸引部からの吸引を停止して前記吸引部(以下「第一の吸引部」という)によって漏出ガスを回収し、前記PS転炉からカラミや粗銅を取り出す際には前記第一の吸引部の吸引を停止して第二の吸引部によって漏出ガスを回収するように構成されてなることを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収装置。
【請求項4】
PS転炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口から漏出するガスを、前記PS転炉の上部側に配置された排ガスフードの一方側の側面で且つ当該PS転炉の装入・排出口の近傍に設けられた水冷ジャケット構造を有するダンパを備えた吸引部によって排ガスフード内に引き込んで回収するようにしたことを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収方法。
【請求項5】
PS転炉内にマットや冷材等を装入した際に装入・排出口から漏出するガスは、前記PS転炉の上部側に配置された排ガスフードの一方側の側面で且つ当該PS転炉の装入・排出口の近傍に設けられた水冷ジャケット構造を有するダンパを備えた第一の吸引部よって排ガスフード内に引き込んで回収すると共に、前記PS転炉からカラミや粗銅を取り出す際に装入・排出口から漏出するガスは、排ガスフードの側面近傍に設けられた第二の吸引部によって回収するようにしたことを特徴とするPS転炉の漏出ガス回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−35763(P2009−35763A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199412(P2007−199412)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】