説明

PTP包装体

【課題】ポケット部内の酸素濃度を低減でき、薬剤などの収容物を長期間変質させることのないPTP包装体を提供する。
【解決手段】本発明のPTP包装体1は、収納物を収納するポケット部4を有する底材2と、前記ポケット部4を被覆する蓋材3とを備え、底材2、蓋材3の両方又はいずれか一方を、酸素吸収剤を含ませた酸素吸収層を備えたシート材で形成したことを特徴とするものである。
このPTP包装体1は、ポケット部4内の酸素を酸素吸収剤が吸収し、ポケット部4内の酸素濃度を低減することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤、カプセル剤などの薬剤等の包装に適したPTP(プレススルーパッケージ)包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
PTP包装体は、錠剤、カプセル剤などの薬剤や菓子類などの食品等の包装として広く用いられている。
PTP包装体は、例えば、塩化ビニル(PVC)などからなるプラスチックシートに凹形のポケット部を成形し、このシートを底材としてポケット部に薬剤などを収納し、アルミ箔などからなる蓋材でポケット部を被覆するとともにポケット部以外の平面部にヒートシールなどして作製することができる。
このようなPTP包装体は、ポケット部を指先で押すことにより、その部分の蓋材が破れて収納物を容易に取り出すことができるものである。
【0003】
PTP包装体は、収納物の品質を長期間維持できるように湿気や酸素などを透過させないことが好ましい。このため、底材や蓋材に湿気や空気を透過させないアルミ箔などを積層したものが作製されている。
しかし、底材や蓋材にアルミ箔などを積層したとしても、図5に示すように、シール部分の端面から湿気や酸素などが入り込み、時間の経過とともにポケット部まで透過してしまうことがあった。
そこで、シール層を、湿気を透過させないポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)で作製したPTP包装体が開発され、湿気がポケット部にまで透過することを防止している(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−511310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のPTP包装体は、湿気の透過を防止できるが、酸素などの透過に関しては考慮されているものではなかった。
最近では、酸素により変質しやすい薬剤が開発されており、できるだけポケット部内には酸素がないことが好ましい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ポケット部内の酸素濃度を低減できるPTP包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPTP包装体は、収納物を収納するポケット部を有する底材と、前記ポケット部を被覆する蓋材とを備えたPTP包装体において、底材、蓋材の両方又はいずれか一方を、酸素吸収剤を含ませた酸素吸収層を備えたシート材で形成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明のPTP包装体は、底材、蓋材の両方又はいずれか一方を、酸素吸収剤を含ませた酸素吸収層を備えたシート材で形成したため、ポケット部内の酸素を酸素吸収剤が吸収し、ポケット部内の酸素濃度を低減することができ、薬剤などの収容物を長期間変質させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のPTP包装体を示した斜視図である。
【図2】図1のPTP包装体の横断面図である。
【図3】図1のPTP包装体の底材に用いるシート材の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】図1のPTP包装体の蓋材に用いるシート材の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】従来のPTP包装体の一例を示した周縁部付近の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、PTP包装体の一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態のPTP包装体1は、図1又は2に示すように、底材2と、蓋材3とを備えたものであり、底材2、蓋材3の両方又はいずれか一方を、酸素吸収剤を含む酸素吸収層を備えたシート材で形成したことを特徴とする。
【0012】
底材2は、矩形状のシート材に真空成形などで薬剤5などの収容物を収容する円形凹状のポケット部4を形成したものである。
【0013】
底材2は、酸素吸収層、樹脂フィルム、アルミ層などを備えたシート材から形成することができ、樹脂フィルムのみで形成することもできる。さらに、ポリクロロトリフルオロエチレンフィルムなど湿気を吸収する層を備えることもできる。アルミ層と酸素吸収層とをともに備える場合は、アルミ層よりも内側に酸素吸収層が位置するように形成する。底材2の厚みは、120μm〜220μm、特に130μm〜200μmにするのが好ましい。
【0014】
酸素吸収層は、酸素吸収剤を含有させた樹脂からなる層であり、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)などの樹脂に酸素吸収剤を含有させたフィルムから形成することができる。
酸素吸収剤としては、還元鉄、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、アスコルビン酸、MXD6ナイロン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和炭化水素等を挙げることができる。
酸素吸収剤は、酸素吸収層中に5〜30重量%、特に10〜20重量%含有させるのが好ましい。
樹脂に酸素吸収剤を含有させたフィルムは、例えば、酸素吸収剤を樹脂に混錬してペレット化し、押出しすることにより作製できる。
【0015】
樹脂フィルムとしては、従来からPTP包装体に用いられているフィルムを用いることができ、例えば、2軸延伸ナイロン、無延伸ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルムなどを用いることができる。
【0016】
アルミ層は、樹脂フィルムにアルミを蒸着させたり、アルミ箔を積層したりして形成することができる。
【0017】
底材2に用いるシート材の一例としては、図3に示すように、外側から、ナイロンフィルムで形成したナイロン層21、アルミ箔で形成したアルミ層22、ポリエチレンフィルムで形成したポリエチレン層23、ポリエチレンに還元鉄を含有させたフィルムで形成した酸素吸収層24、ポリエチレンフィルムで形成したポリエチレン層25の順に積層したものを用いることができる。
ポリエチレン層23/酸素吸収層24/ポリエチレン層25は、多層共押出しにより作製することができる。また、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンを用いてもよい。酸素吸収速度を調整するため、エバール(商品名)などのEVOHを用い、ポリエチレン/EVOH+酸素吸収剤/ポリエチレンの多層共押出しフィルムなどを用いることもできる。この場合も、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンでもよい。酸素吸収速度を遅らせる場合は、EVOH/EVOH+酸素吸収剤/EVOHの多層共押出しフィルムなどを用いることができる。これらの層構成は、包装する医薬品などの収容物との兼ね合いによる。
【0018】
底材2の最内層を酸素吸収層にするとポケット部4内に収容した薬剤5と反応してしまうおそれがあるので、最内層は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなど収容した薬剤と反応せずかつヒートシールできるフィルムを用いるのが好ましい。
【0019】
蓋材3は、矩形状のシート材で形成してあり、底材2のポケット部4以外の上面に、ヒートシールや接着剤などで貼付して、ポケット部6を被覆するものである。
【0020】
蓋材3は、酸素吸収層、樹脂フィルム、アルミ層などを備えたシート材から形成することができ、樹脂フィルムのみで形成することもでき、また、アルミ層の単層とすることもできる。さらに、ポリクロロトリフルオロエチレンフィルムなど湿気を吸収する層を備えることもできる。アルミ層と酸素吸収層とをともに備える場合は、アルミ層よりも内側に酸素吸収層が位置するように形成する。蓋材3の厚みは、20μm〜40μm、特に22μm〜30μmにするのが好ましい。
【0021】
酸素吸収層は、酸素吸収剤を含有させた樹脂からなる層であり、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)などの樹脂に酸素吸収材を含有させたフィルムから形成することができる。
酸素吸収剤としては、還元鉄、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、アスコルビン酸、MXD6ナイロン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和炭化水素等を挙げることができる。
酸素吸収剤は、酸素吸収層中に5〜30重量%、特に10〜20重量%含有させるのが好ましい。
樹脂に酸素吸収剤を含有させたフィルムは、例えば、酸素吸収剤を樹脂に混錬してペレット化し、押出しすることにより作製できる。
【0022】
樹脂フィルムとしては、従来からPTP包装体に用いられているフィルムを用いることができ、例えば、2軸延伸ナイロン、無延伸ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルムなどを用いることができる。
【0023】
アルミ層は、樹脂フィルムにアルミを蒸着させたり、アルミ箔を積層したりして形成することができる。
【0024】
蓋材3に用いるシート材の一例としては、図4に示すように、外側から、アルミ箔で形成したアルミ層31、ポリエチレンフィルム32、ポリエチレンに還元鉄を含有させたフィルムで形成した酸素吸収層33、ポリエチレンフィルム34の順に積層したものを用いることができる。
【0025】
蓋材3の最内層を酸素吸収層にするとポケット部4内に収容した薬剤5と反応してしまうおそれがあるので、最内層は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなど収容した薬剤と反応せずかつヒートシールできるフィルムを用いるのが好ましい。
【0026】
PTP包装体1は、底材2、蓋材3の両方又はいずれか一方を、酸素吸収剤を含む酸素吸収層を備えたシート材で形成したため、ポケット部4内の酸素を吸収することができ、ポケット部4内の酸素濃度を低減することができる。そのため、ポケット部4内に収容した薬剤などを長期間変質させることなく保存できる。
【符号の説明】
【0027】
1PTP包装体 2底材 3蓋材 4ポケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納するポケット部を有する底材と、前記ポケット部を被覆する蓋材とを備えたPTP包装体において、底材、蓋材の両方又はいずれか一方を、酸素吸収剤を含ませた酸素吸収層を備えたシート材で形成したPTP包装体。
【請求項2】
前記シート材は、前記酸素吸収層の外側にアルミ層を備えたものである請求項1に記載のPTP包装体。
【請求項3】
前記シート材は、最内層に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルのいずれかからなる層を備えたものである請求項1又は2に記載のPTP包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−42371(P2011−42371A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189703(P2009−189703)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(396023328)株式会社タケトモ (6)
【Fターム(参考)】