説明

Pseudomonasaeruginosaの検出および/または監視のための組成物、キットおよび関連する方法

本発明は、Pseudomonas aeruginosaの種特異的検出のための組成物、方法及びキットを提供する。本発明の一態様によれば、Pseudomonas aeruginosa転写媒介性増幅アッセイ用組成物が提供される。この組成物は、E.coli 23s rRNA参照配列(受託番号V00331)の塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にするT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする非T7プライマーオリゴヌクレオチドとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2007年4月2日に出願された米国仮特許出願第60/909,687号(この仮出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
配列表に関する記載
本願に関連する配列表は、紙複製物の代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に援用される。配列表を含むテキストファイルの名称は、390082_402PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは、18KBであり、2008年4月2日に作成され、明細書の出願と同時に米国PCT受理官庁にEFS−Web経由で電子形式で提出される。
【0003】
発明の分野
本発明は、試験のために、例えば、診断試験のために、血液製剤スクリーニングのために、バイオプロセス、食品、水、工業若しくは環境試料における微生物検出のために、さらに、他の目的のために採取された試料中の均一若しくは不均一な核酸混合物の大小様々な一成分として、又は単独で存在し得る、Pseudomonas aeruginosaを種特異的に同定するための組成物、方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0004】
特定の核酸配列の検出及び/又は定量化は、微生物の同定及び分類、感染症の診断、遺伝子異常の検出及び特性分析、癌に関連した遺伝子変化の特定、疾患に対する遺伝的感受性の研究、種々の治療に対する応答の測定などに重要な技術である。かかる手順は、食料品、水、工業及び環境試料、保存用種(seed stocks)、並びに特定の微生物の存在を監視する必要があり得る他のタイプの材料における、微生物の検出及び定量化にも有用である。
【0005】
核酸増幅アッセイは、従来の微生物学的技術よりも高感度であり、短時間で結果が得られるので、臨床検査、バイオプロセスモニタリング、又は特別な試料タイプにおける特定の微生物の検出が要求される他のあらゆる状況において、微生物の検出に適切である。さらに、増幅方法は、合成培地上での培養が困難又は不可能である膨大な数の微生物の検出に使用することができる。それでも、これらの手法については制約があり、その多くは、核酸増幅方法の感度が高く、その結果、意図しない副生物が増幅されることに由来する。
【0006】
Pseudomonas aeruginosaは、ヒトに感染するグラム陰性菌であり、治療が特に困難になり得るグラム陰性菌である。さらに、この生物体は、多数の生物薬剤工程における幾つかの公知汚染菌の一つである。したがって、Pseudomonas aeruginosa及び他の関連生物体の存在を検出及び監視する高感度で迅速な方法が絶えず求められている。Pseudomonas aeruginosaの迅速で正確な検出及び/又は定量化は極めて望ましいが、従来の試薬及び技術を用いて実際に達成することは困難であった。例えば、実験室での培養技術は、試料を24〜48時間インキュベートして、生物体を巨視的に検出可能なレベルに増殖させる必要がある。次いで、Pseudomonas aeruginosaを関連Pseudomonads及び他の腸内細菌から識別するために継代培養技術及び代謝アッセイが必要であり、更に24〜48時間を必要とし得る。
【0007】
したがって、対象試料中のPseudomonas aeruginosaを特異的かつ選択的に同定することができる迅速で堅牢な検出システムが当分野では依然として必要とされている。本明細書で更に記述するように、本発明は、これらの要求を満たし、他の関連した利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、全般的に、検出の特異性、感度及び速度に関して改善及び他の利点を提供する、Pseudomonas aeruginosaの検出に使用される組成物、キット及び方法をもたらすものである。以下に更に考察するように、本発明は、Pseudomonas aeruginosa 23s rRNAの特別な領域が、これらの改善及び別の利点を与える核酸増幅反応の好ましい標的であることを確認した。
【0009】
したがって、本発明の一態様によれば、Pseudomonas aeruginosa転写媒介性増幅アッセイ用組成物が提供される。この組成物は、E.coli 23s rRNA参照配列(受託番号V00331)の塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列(complement)を標的にするT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする非T7プライマーオリゴヌクレオチドとを含む。本明細書で更に記述し、立証するように、この領域内で特に明確な特異性を有するT7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドの使用によって、Pseudomonas aeruginosaを検出するための転写媒介性増幅反応における感度及び選択性が改善される。
【0010】
本発明のこの態様の特定の一実施形態においては、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0011】
より特別な一実施形態においては、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0012】
より具体的な一実施形態においては、T7プロバイダーは、本明細書に定義される、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、非T7プライマーは、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される。
【0013】
本発明の特に好ましい一組成物は、本明細書に定義される、T7プロバイダー配列番号2及び非T7プライマーオリゴヌクレオチド配列番号24を含む。
【0014】
上で考察したT7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、本発明による組成物は、検出オリゴヌクレオチド、伸長オリゴヌクレオチド、ブロッカーオリゴヌクレオチドなど、転写媒介性増幅反応の1つ以上の態様を促進又は改善するのに役立つ1種類以上の追加のオリゴヌクレオチドタイプ及び/又は別の増幅試薬を更に含むことができる。
【0015】
例えば、一実施形態においては、本発明の組成物は、検出オリゴヌクレオチド、好ましくはトーチオリゴヌクレオチド又は分子ビーコンを更に含むことになる。特定の一実施形態においては、検出オリゴヌクレオチドは、本明細書に定義される、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択されるトーチオリゴヌクレオチドである。
【0016】
本発明の組成物は、伸長オリゴヌクレオチドも更に含むことができる。特定の一実施形態においては、伸長オリゴヌクレオチドは、本明細書に定義される、配列番号43又は配列番号44から選択される。
【0017】
本発明の組成物は、ブロッカーオリゴヌクレオチドも更に含むことができる。特定の一実施形態においては、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、本明細書に定義される、配列番号29、配列番号26、配列番号40又は配列番号42から選択される。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態においては、組成物は、本明細書に定義される、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド配列番号2及び非T7プライマーオリゴヌクレオチド配列番号24を含み、場合によってはブロッカーオリゴヌクレオチド配列番号29、トーチオリゴヌクレオチド配列番号54、伸長オリゴヌクレオチド配列番号44、標的捕捉オリゴヌクレオチド配列番号68を更に含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチド配列番号73を更に含む。
【0019】
本発明の別の一態様によれば、Pseudomonas aeruginosa転写媒介性増幅アッセイを実施するためのキットが提供される。このキットは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にするT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする非T7プライマーオリゴヌクレオチドとを含む。
【0020】
本発明のこの態様の特定の一実施形態においては、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0021】
別の特定の一実施形態においては、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0022】
より具体的な一実施形態においては、T7プロバイダーは、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、非T7プライマーは、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される。
【0023】
別の特定の一実施形態においては、T7プロバイダーは配列番号2であり、非T7プライマーは配列番号24である。
【0024】
本発明のキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、検出オリゴヌクレオチド、伸長オリゴヌクレオチド、ブロッカーオリゴヌクレオチドなど、転写媒介性増幅反応において望まれる又は好ましい1種類以上の追加のオリゴヌクレオチド及び/又は別の試薬を更に含むことができる。例えば、本発明のキットは、トーチオリゴヌクレオチド、分子ビーコンなどの検出オリゴヌクレオチドを更に含むことができる。特定の一実施形態においては、例えば、キットは、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択されるトーチオリゴヌクレオチドを含む。
【0025】
本発明のキットは、伸長オリゴヌクレオチドも更に含むことができる。特定の一実施形態においては、伸長オリゴヌクレオチドは、配列番号43又は配列番号44から選択される。
【0026】
本発明のキットは、ブロッカーオリゴヌクレオチドも更に含むことができる。特定の一実施形態においては、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、配列番号29、配列番号26、配列番号40又は配列番号42から選択される。
【0027】
より具体的な一実施形態においては、本発明のキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド、配列番号2及び非T7プライマーオリゴヌクレオチド、配列番号24を含み、場合によってはブロッカーオリゴヌクレオチド配列番号29、トーチオリゴヌクレオチド配列番号54、伸長オリゴヌクレオチド配列番号44、標的捕捉オリゴヌクレオチド配列番号69を更に含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチド配列番号73を更に含む。
【0028】
本発明の更に別の一態様によれば、試料中のPseudomonas aeruginosaの存在を検出する方法が提供される。この方法は、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドを用いて転写媒介性増幅アッセイを実施するものであって、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーオリゴヌクレオチドは、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0029】
特定の一実施形態においては、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0030】
別の特定の一実施形態においては、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域の配列を標的にする。
【0031】
より具体的な一実施形態においては、T7プロバイダーは、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、非T7プライマーは、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される。
【0032】
別のより具体的な一実施形態においては、T7プロバイダーは配列番号2であり、非T7プライマーは配列番号24である。
【0033】
上で考察した組成物及びキットと同様に、本発明のこの態様による方法は、検出オリゴヌクレオチド、ブロッカーオリゴヌクレオチド、伸長オリゴヌクレオチドなど、転写媒介性増幅反応において有効である、追加の補助的なオリゴヌクレオチド及び/又は試薬を更に含むことができる。
【0034】
例えば、方法は、トーチオリゴヌクレオチド、分子ビーコンなどの検出オリゴヌクレオチドの使用を利用することができる。一実施形態においては、トーチオリゴヌクレオチドは、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択される。
【0035】
本方法は、配列番号43、配列番号44などの伸長オリゴヌクレオチド、又は配列番号29、配列番号26、配列番号40、配列番号42などのブロッカーオリゴヌクレオチドの使用を利用することもできる。
【0036】
本発明のこの態様のより具体的な一実施形態においては、転写媒介性増幅方法は、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド配列番号2及び非T7プライマーオリゴヌクレオチド配列番号24の使用を利用し、ブロッカーオリゴヌクレオチド配列番号29、トーチオリゴヌクレオチド配列番号54、伸長オリゴヌクレオチド配列番号44、標的捕捉オリゴヌクレオチド配列番号69の使用を更に利用し、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチド、配列番号73の使用を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】近縁のPseudomonads10CFUで得られた実時間蛍光シグナルと比較したP.aeruginosa約10CFUの増幅で得られた実時間蛍光シグナルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、臨床試料、バイオプロセス試料、食品試料、水試料、工業試料、環境試料、Pseudomonas aeruginosaを含むことが知られている、又は疑われる、任意の他の試料タイプなどの試料中のPseudomonas aeruginosaの存在を検出、監視及び/又は定量化する組成物、方法及びキットに一般に関する。本発明の特定の組成物、方法及びキットは、Pseudomonas aeruginosaの増幅による検出における感度、特異性及び選択性を改善する。
【0039】
Pseudomonas aeruginosaに特異的な増幅オリゴヌクレオチドの詳細な分析の結果として、本発明は、Pseudomonas aeruginosaの増幅による検出に好ましい標的として、E.coli 23s rRNA参照配列(受託番号V00331)約700から1000ヌクレオチド塩基の領域に対応するPseudomonas aeruginosaの特別な領域(以下「800領域」と記述する。)を特定した。したがって、本発明は、対象試料中のPseudomonas aeruginosaの種特異的検出における、増幅オリゴヌクレオチド、組成物、反応混合物、キットなど、及びそれらの使用に関する。
【0040】
本発明の用語及び概念は、それに反することを明記しない限り、及び/又は別段の記載がない限り、本明細書に記載の意味を有する。特に断らない限り、本明細書で使用する科学的・技術的用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。一般的定義は、分子生物学の技術に関連した技術書、例えば、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,2nd ed.(Singleton et al.,1994,John Wiley&Sons,New York,N.Y.)、又はThe Harper Collins Dictionary of Biology(Hale & Marham,1991,Harper Perennial,New York,N.Y.)に記載されている。特に断らない限り、本明細書で利用又は企図される技術は、当業者に周知の標準方法である。本明細書に含まれる実施例は、一部の好ましい実施形態を説明するものである。
【0041】
「1」の実体という用語は、その実体の1以上を指すことに留意されたい。例えば、「1個の核酸」は、1個以上の核酸を表すものと理解される。したがって、「1」、「1以上」及び「少なくとも1」という用語は、本明細書では区別なく使用することができる。さらに、本明細書に引用される各参考文献は、参照によってその全体が本明細書に具体的に援用される。
【0042】
核酸増幅及び検出
当業者であればわかることであるが、本発明の好ましいオリゴヌクレオチド、組成物、反応混合物及びキットは、Pseudomonas aeruginosaの検出を改善するために核酸増幅方法に使用される。かかる方法及び技術は、周知であり、確立されているが、核酸増幅、検出などの説明のための好ましい態様を以下に考察する。
【0043】
核酸
「核酸」という用語は、単一の「核酸」及び複数の「核酸」を包含するものとし、共有結合した2個以上のヌクレオチド、ヌクレオシド又は核酸塩基(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)の任意の鎖を指す。核酸としては、ウイルスゲノム若しくはその一部、DNA若しくはRNA、細菌ゲノム若しくはその一部、真菌、植物若しくは動物のゲノム又はその一部、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、又は合成DNA若しくはRNAが挙げられるが、これらだけに限定されない。核酸は、線状(例えば、mRNA)、環状(例えば、プラスミド)又は分枝状、さらには二本鎖又は一本鎖状であり得る。核酸は、核酸の機能又は挙動を変える修飾塩基を含み得る(例えば、更なるヌクレオチドが核酸に付加するのを防止する3’末端ジデオキシヌクレオチドの付加)。本明細書では核酸の「配列」とは、核酸を構成する塩基の配列を指す。「ポリヌクレオチド」という用語は、核酸鎖を意味するのに本明細書では使用することができる。本願を通して、核酸は、5’末端から3’末端方向に命名される。標準核酸(例えば、DNA及びRNA)は、「3’から5’方向」に、すなわち、成長する核酸の5’末端にヌクレオチドが付加することによって、典型的には合成される。
【0044】
「ヌクレオチド」は、リン酸基、五炭糖及び窒素塩基からなる核酸のサブユニットである。RNA中に存在する五炭糖はリボースである。DNAでは、五炭糖は2’−デオキシリボースである。この用語は、リボースの2’位のメトキシ基(2’−O−Me)など、かかるサブユニットの類似体も含む。本明細書では、「T」残基を含むメトキシオリゴヌクレオチドは、リボース部分の2’位のメトキシ基と、ヌクレオチドの塩基位置のウラシルとを有する。
【0045】
「非ヌクレオチド単位」は、ポリマーのハイブリダイゼーションにさほど関与しない単位である。かかる単位は、例えば、ヌクレオチドとの重要な水素結合に関与してはならず、5種類のヌクレオチド塩基又はその類似体のうちの1種類を成分として有する単位を除外する。
【0046】
標的核酸/標的配列
「標的核酸」とは、増幅すべき「標的配列」を含む核酸である。標的核酸は、本明細書に記載のDNA又はRNAとすることができ、一本鎖又は二本鎖とすることができる。標的核酸は、標的配列に加えて、増幅されなくてもよい別の配列を含んでもよい。典型的な標的核酸としては、ウイルスゲノム、細菌ゲノム、真菌ゲノム、植物ゲノム、動物ゲノム、ウイルス、細菌又は真核細胞由来のrRNA、tRNA又はmRNA、ミトコンドリアDNA、染色体DNAなどが挙げられる。
【0047】
標的核酸は、実施する増幅アッセイの目的に基づいて、任意の数の出所から単離することができる。標的核酸の出所としては、犯罪の証拠から、環境試料(例えば、水又は土壌試料)から、食品から、工業試料から、cDNAライブラリーから、又は全細胞RNAからの臨床検体(例えば、血液、尿、唾液、糞便、精液又は髄液)が挙げられるが、これらだけに限定されない。「単離する」とは、標的核酸を含む試料がその自然環境から採取されることを意味するが、この用語は、いかなる程度の精製も内包しない。必要に応じて、本発明の標的核酸は、本発明の種々のオリゴヌクレオチドとの相互作用に利用することができる。この用語は、例えば、標的核酸を細胞から遊離させる細胞溶解又は細胞透過処理を含み、続いて一連の単離及び洗浄段階などの1つ以上の精製段階を実施することができる。例えば、その内容を参照により本明細書に援用する、Clark他、「Method for Extracting Nucleic Acids from a Wide Range of Organisms」、米国特許第5,786,208号を参照されたい。これは、例えば、血液試料中に存在するヘムなど、増幅反応を妨害し得る成分を含む可能性がある試料の場合に特に重要である。その内容を参照により本明細書に援用する、Ryder他、「Amplification of Nucleic Acids from Mononuclear Cells Using Iron Complexing and Other Agents」、米国特許第5,639,599号を参照されたい。増幅のために標的核酸を種々の出所から調製する方法は、当業者に周知である。本発明の標的核酸は、本明細書に記載の増幅反応前にある程度精製することができるが、試料をそれ以上操作せずに増幅反応に加える場合もある。
【0048】
「標的配列」という用語は、増幅すべき標的核酸の特定のヌクレオチド配列を指す。「標的配列」は、オリゴヌクレオチド(例えば、プライミングオリゴヌクレオチド及び/又はプロモーターオリゴヌクレオチド)が本発明のプロセス中に複合体を形成する相手となる、複合化配列(complexing sequence)を含む。標的核酸が最初に一本鎖である場合、「標的配列」という用語は、標的核酸中に存在する「標的配列」に相補的である配列も指す。「標的核酸」が最初に二本鎖である場合、「標的配列」という用語は、センス(+)とアンチセンス(−)の両方の鎖を指す。当業者であればわかることであるが、標的配列を選択する際には、無関係な又は近縁の標的核酸を識別するように、「独特の」配列を選択すべきである。当業者であればわかることであるが、「独特の」配列は、試験環境から判断される。少なくとも、(より詳細に本明細書に記述する)検出プローブによって認識される配列は、試験環境下で独特であるべきであるが、可能な全配列の中で独特である必要はない。さらに、検出プローブによって認識されるには標的配列が「独特の」配列を含んでいなければならないが、プライミングオリゴヌクレオチド及び/又はプロモーターオリゴヌクレオチドが「独特の」配列を必ずしも認識しているとは限らない。一部の実施形態においては、関連生物体ファミリーに共通した標的配列、例えば、試料中に存在し得る1種類以上のPseudomonadsに共通した配列を選択することが望ましい場合もある。別の状況では、極めて高度に特異的な標的配列、又は検出プローブ及び増幅オリゴヌクレオチドによって認識される少なくとも高度に特異的な領域を有する標的配列は、近縁の生物体、例えば、病原性と非病原性のE.coliを識別するように選択される。本発明の標的配列は、任意の実用的な長さとすることができる。最小の標的配列は、より詳細に本明細書に記述する、プライミングオリゴヌクレオチド(又はその相補配列)とハイブリッド形成する領域、プロモーターオリゴヌクレオチド(又はその相補配列)のハイブリッド形成領域とハイブリッド形成する領域、及び検出に使用される領域、例えば、検出プローブとハイブリッド形成する領域を含む。検出プローブとハイブリッド形成する領域は、プライミングオリゴヌクレオチド(又はその相補配列)とハイブリッド形成する領域、又はプロモーターオリゴヌクレオチド(又はその相補配列)のハイブリッド形成領域とハイブリッド形成する領域と重複してもよく、又は該ハイブリッド形成する領域内に含まれてもよい。これら最低限の要件に加えて、標的配列の最適な長さは、幾つかの考慮事項、例えば、二次構造の量、又は配列内の自己ハイブリッド形成領域によって決まる。典型的には、本発明の標的配列は、約100ヌクレオチド長から約150から約250ヌクレオチド長の範囲である。最適な又は好ましい長さは、本明細書に記載の方法によって決定することができる異なる条件下で変わり得る。「アンプリコン」という用語は、標的配列内に含まれる配列に相補的又は相同である、増幅手順中に生成する核酸分子を指す。
【0049】
核酸「同一性」
ある実施形態においては、本発明の核酸は、参照核酸の連続塩基領域と少なくとも80%、90%又は100%同一である連続塩基領域を含む。低分子核酸、例えば、本発明のある種のオリゴヌクレオチドの場合、「問い合わせ(query)」核酸の塩基領域と参照核酸の塩基領域の同一性の程度は、手操作によるアラインメントによって決定することができる。「同一性」は、比較する核酸の糖及び骨格領域とは無関係に、窒素塩基の配列のみを比較することによって決定される。したがって、問い合わせ:参照塩基配列アラインメントは、DNA:DNA、RNA:RNA、DNA:RNA、RNA:DNA、又はその任意の組合せ若しくは類似物とすることができる。(RNA中の)Uを(DNA中の)Tに変換することによって、対応するRNAとDNAの塩基配列を比較することができる。
【0050】
オリゴヌクレオチド及びプライマー
本明細書では「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ」又は「オリゴマー」という用語は、単一の「オリゴヌクレオチド」及び複数の「オリゴヌクレオチド」を包含するものとし、本発明の増幅方法及び後続の検出方法における試薬として使用される、ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸塩基又は関連化合物の2個以上からなるポリマーを指す。オリゴヌクレオチドは、DNA及び/又はRNA及び/又はその類似体とすることができる。オリゴヌクレオチドという用語は、試薬に対する特別な機能を意味するのではなく、本明細書に記載のすべてのかかる試薬を網羅するのに包括的に使用される。オリゴヌクレオチドは、多様な機能を果たすことができ、例えば、相補鎖に特異的であり、相補鎖とハイブリッド形成可能であり、さらに核酸ポリメラーゼの存在下で伸長することができる場合にはプライマーとして機能することができ、RNAポリメラーゼによって認識される配列を含み、転写可能である場合にはプロモーターを与えることができ(例えば、T7プロバイダー)、適切に位置する及び/又は修飾されている場合には、ハイブリダイゼーションを阻止する、又はプライマー伸長を妨害する、機能を果たすことができる。本発明の特定のオリゴヌクレオチドをより詳細に以下に記述する。
【0051】
本明細書では、オリゴヌクレオチドは、増幅反応における、又は増幅反応の増幅産物の検出における、その特定の機能によってのみ限定される、実質的に任意の長さとすることができる。しかし、ある実施形態においては、好ましいオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列又はその相補鎖の一領域に相補的である少なくとも約10、12、14、16、18又は20個の連続塩基を含む。連続塩基は、オリゴヌクレオチドが結合する標的配列に対して、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは完全に相補的である。ある種の好ましいオリゴヌクレオチドは、一般に約10〜100、10〜75、10〜50又は10〜25塩基長であり、場合によっては修飾ヌクレオチドを含む。
【0052】
明確な配列及び化学構造のオリゴヌクレオチドは、化学又は生化学合成によって、さらに、組換え核酸分子(例えば、細菌又はウイルスベクター)からのin vitro又はin vivo発現によってなど、当業者に公知の技術によって生成させることができる。本開示によって意図されるように、オリゴヌクレオチドは、野生型染色体DNA又はそのin vivo転写産物のみからなるものではない。
【0053】
オリゴヌクレオチドは、所与の修飾が所与のオリゴヌクレオチドの所望の機能に適合する限り、どのようにでも修飾することができる。当業者は、所与の修飾が本発明の所与のオリゴヌクレオチドに適切である、又は望ましいかどうかを容易に判断することができる。修飾としては、塩基修飾、糖修飾、骨格修飾などが挙げられる。塩基修飾としては、アデニン、シチジン、グアノシン、チミン及びウラシルに加えて以下の塩基、すなわち、C−5プロピン、2−アミノアデニン、5−メチルシチジン、イノシン、並びにdP及びdK塩基の使用が挙げられるが、これらだけに限定されない。ヌクレオシドサブユニットの糖類は、例えば、リボフラノシル部分に2’−O−メチル置換を有するリボヌクレオシドを含めて、リボース、デオキシリボース及びその類似体であり得る。Becker他、米国特許第6,130,038号を参照されたい。他の糖修飾としては、2’−アミノ、2’−フルオロ、(L)−アルファ−スレオフラノシル及びペントピラノシル修飾が挙げられるが、これらだけに限定されない。ヌクレオシドサブユニットは、リン酸ジエステル結合、修飾された結合などの結合によって、又はオリゴヌクレオチドとその相補標的核酸配列のハイブリダイゼーションを妨げない非ヌクレオチド部分によって、連結することができる。修飾された結合としては、標準リン酸ジエステル結合がホスホロチオアート結合、メチルホスホナート結合などの異なる結合で置換された結合などが挙げられる。核酸塩基サブユニットは、例えば、DNAの天然デオキシリボースホスファート骨格を(核酸塩基サブユニットをカルボキシメチルリンカーによって中央の第二級アミンに結合させる2−アミノエチルグリシン骨格などの)偽ペプチド骨格で置換することによって、連結することができる。偽ペプチド骨格を有するDNA類似体は、「ペプチド核酸」又は「PNA」と一般に称され、Nielsen他、「Peptide Nucleic Acids」、米国特許第5,539,082号によって開示されている。別の結合修飾としては、モルホリノ結合が挙げられるが、これだけに限定されない。
【0054】
本発明によって企図されるオリゴヌクレオチド又はオリゴの非限定的例としては、二環式及び三環式のヌクレオシド及びヌクレオチド類似体を含む核酸類似体(LNA)が挙げられる。Imanishi他、米国特許第6,268,490号、及びWengel他、米国特許第6,670,461号を参照されたい。修飾オリゴヌクレオチドがその意図された機能を果たすことができる(例えば、厳密なハイブリダイゼーション条件若しくは増幅条件下で標的核酸とハイブリッド形成し、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼと相互作用し、それによって伸長又は転写を惹起することができる)という前提で、任意の核酸類似体が本発明によって企図される。検出プローブの場合には、修飾オリゴヌクレオチドは、厳密なハイブリダイゼーション条件下で標的核酸と優先的にハイブリッド形成することもできなければならない。
【0055】
本発明のためのオリゴヌクレオチドの設計及び配列は、以下に示すその機能によって決まるが、幾つかの変数を一般に考慮しなければならない。最も重要な変数としては、長さ、融解温度(Tm)、特異性、系中の他のオリゴヌクレオチドとの相補性、G/C含量、ポリピリミジン(T、C)又はポリプリン(A、G)配列(stretch)、及び3’末端配列が挙げられる。これら及び他の変数の制御は、オリゴヌクレオチド設計の標準で周知の側面であり、多数のオリゴヌクレオチド候補を最初にスクリーニングするのに種々のコンピュータプログラムを容易に利用することができる。
【0056】
オリゴヌクレオチド(又は別の核酸)の3’末端は、以下に示すように、ブロッキング成分を用いて種々の方法でブロックすることができる。「ブロックされた」オリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA依存性DNAポリメラーゼによってヌクレオチドがその3’末端に付加することによって効率的に伸長してDNAの相補鎖を生成することがない。したがって、「ブロックされた」オリゴヌクレオチドは「プライマー」になり得ない。
【0057】
本開示では、特定の配列の群から選択される配列「を含む」、「からなる」又は「から本質的になる」核酸配列を有するオリゴヌクレオチドとは、オリゴヌクレオチドが、基本的で新規な特性として、厳密なハイブリダイゼーション条件下で、群の列挙された核酸配列のうちの1個の正確な相補配列を有する核酸と安定にハイブリッド形成する能力のあることを意味する。正確な相補配列としては、対応するDNA又はRNA配列などが挙げられる。
【0058】
指定の核酸配列に実質的に対応するオリゴヌクレオチドとは、言及されたオリゴヌクレオチドが、厳密なハイブリダイゼーション条件下で同じ標的核酸配列とハイブリッド形成する点で、参照核酸配列と類似したハイブリダイゼーション特性を有するように、該オリゴヌクレオチドが参照核酸配列に十分類似していることを意味する。
【0059】
本発明の実質的に対応するオリゴヌクレオチドは、言及された配列とは異なり得るが、それでも同じ標的核酸配列とハイブリッド形成し得ることを当業者は理解されたい。核酸からのこの変化は、配列内の同一塩基の割合、又はプローブ若しくはプライマーとその標的配列との間の完全に相補的な塩基の割合として示すことができる。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドは、塩基の同一性又は相補性のこれらの割合が100%から約80%である場合に、参照核酸配列に実質的に対応する。好ましい実施形態においては、割合は100%から約85%である。より好ましい実施形態においては、この割合は100%から約90%とすることができ、別の好ましい実施形態においては、この割合は100%から約95%である。当業者は、容認できないレベルの非特異的ハイブリダイゼーションを引き起こさずに、相補性の様々な割合において特定の標的配列とハイブリッド形成するのに必要となり得るハイブリダイゼーション条件の種々の改変を理解するはずである。
【0060】
「ヘルパーオリゴヌクレオチド」又は「ヘルパー」とは、例えば、その内容を参照により本明細書に援用する米国特許第5,030,557号に記載のように、標的核酸に結合し、異なる二次及び/又は三次構造を標的核酸に強制して、検出プローブ又は他のオリゴヌクレオチドと標的核酸のハイブリダイゼーションの速度及び程度を増加させるように設計されたオリゴヌクレオチドを指す。ヘルパーは、標的核酸配列とのハイブリダイゼーションを補助するのに、さらに、プライマー、標的捕捉及び別のオリゴヌクレオチドの機能を補助するのに使用することもできる。
【0061】
ブロッキング成分
本明細書では「ブロッキング成分」は、オリゴヌクレオチド又は別の核酸が核酸ポリメラーゼによって効率的に伸長することができないように、オリゴヌクレオチド又は別の核酸の3’末端を「ブロックする」のに使用される物質である。ブロッキング成分は、小分子、例えばリン酸基又はアンモニウム基とすることができ、或いは修飾ヌクレオチド、例えば、3’2’ジデオキシヌクレオチド若しくは3’デオキシアデノシン5’−三リン酸(コルジセピン)、又は別の修飾ヌクレオチドとすることができる。別のブロッキング成分としては、例えば、3’から5’方向の配向を有するヌクレオチド若しくは低分子ヌクレオチド配列の使用(その結果、3’末端に遊離ヒドロキシル基が存在しない。)、3’アルキル基、3’非ヌクレオチド部分(例えば、その内容を参照により本明細書に援用する、Arnold他、「Non−Nucleotide Linking Reagents for Nucleotide Probes」、米国特許第6,031,091号を参照されたい。)、ホスホロチオアート、アルカンジオール残基、ペプチド核酸(PNA)、3’末端に3’ヒドロキシル基のないヌクレオチド残基、又は核酸結合タンパク質の使用が挙げられる。好ましくは、3’−ブロッキング成分は、3’から5’方向の配向を有するヌクレオチド若しくはヌクレオチド配列、又は3’非ヌクレオチド部分を含み、3’2’−ジデオキシヌクレオチドも遊離ヒドロキシル基を有する3’末端も含まない。3’−ブロッキングオリゴヌクレオチドを調製する別の方法は、当業者に周知である。
【0062】
プライミングオリゴヌクレオチド又はプライマー
プライミングオリゴヌクレオチド又は「プライマー」は、少なくともその3’末端が核酸鋳型に相補的であるオリゴヌクレオチド、及び(水素結合又はハイブリダイゼーションによって)鋳型と複合体を形成して、RNA又はDNA依存性DNAポリメラーゼによって合成を開始するのに適切であるプライマー:鋳型複合体を生成するオリゴヌクレオチドである。プライミングオリゴヌクレオチドは、共有結合したヌクレオチド塩基がその3’末端に付加することによって伸長する。該塩基は、鋳型に相補的である。その結果は、プライマー伸長産物である。本発明のプライミングオリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも10ヌクレオチド長であり、最高15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド長以上まで伸長し得る。適切な好ましいプライミングオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されている。(逆転写酵素を含めて)実質的にすべての公知DNAポリメラーゼは、DNA合成を開始するためにオリゴヌクレオチドと一本鎖鋳型の複合体形成(「プライミング」)を必要とするのに対して、RNA複製及び転写(DNAからのRNAの複製)は、一般にプライマーを必要としない。DNAポリメラーゼによって伸長されるまさにその性質によって、プライミングオリゴヌクレオチドは、3’−ブロッキング成分を含まない。
【0063】
プロモーターオリゴヌクレオチド/プロモーター配列
当分野で周知のとおり、「プロモーター」は、核酸に結合し、特定の部位におけるRNAの転写を開始するシグナルとして、DNA依存性RNAポリメラーゼ(「転写酵素」)によって認識される特異的核酸配列である。結合のためには、かかる転写酵素は、プロモーター配列を含む領域において伸長反応によって二本鎖になったDNAを必要とすると一般に考えられたが、本発明者らは、RNAの効率的転写が、鋳型核酸を用いた伸長反応によって二本鎖プロモーターが形成されない条件下でも起こり得ることを確認した。鋳型核酸(転写される配列)は、二本鎖である必要はない。個々のDNA依存性RNAポリメラーゼは、転写促進効率が著しく異なり得る種々のプロモーター配列を認識する。RNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合して転写を開始するときには、プロモーター配列は、転写される配列の一部ではない。したがって、それによって産生されるRNA転写物は、プロモーター配列を含まない。
【0064】
本明細書では「プロモーターオリゴヌクレオチド」又は「プロバイダー」とは、第1及び第2の領域を含むオリゴヌクレオチドであって、その3’末端からのDNA合成の開始を阻止するように修飾されたオリゴヌクレオチドである。本発明のプロモーターオリゴヌクレオチドの「第1の領域」は、鋳型DNAとハイブリッド形成する塩基配列を含み、ハイブリッド形成配列は3’に位置するが、プロモーター領域に必ずしも隣接しない。本発明のプロモーターオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成部分は、典型的には少なくとも10ヌクレオチド長であり、最高15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド長以上まで伸長し得る。「第2の領域」は、RNAポリメラーゼ用のプロモーター配列を含む。本発明のプロモーターオリゴヌクレオチドは、上述したように、その3’末端にブロッキング成分を好ましくは含むRNA又はDNA依存性DNAポリメラーゼ、例えば、逆転写酵素によって伸長することができないように操作される。適切な好ましいプロモーターオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されている。
【0065】
終結オリゴヌクレオチド
本発明においては、「終結オリゴヌクレオチド」又は「ブロッカーオリゴ」は、プライミングオリゴヌクレオチドを含む新生核酸のプライマー伸長を「終結させ」、それによって新生核酸鎖に明確な3’末端を与えるように、標的配列の5’末端付近の標的核酸の領域に相補的である塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。終結オリゴヌクレオチドは、新生核酸鎖に所望の3’末端を与えるのに十分な位置において、標的核酸とハイブリッド形成するように設計される。終結オリゴヌクレオチドの位置決めは、その設計に応じて変更することができる。終結オリゴヌクレオチドは、修飾でも無修飾でもよい。ある実施形態においては、終結オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個以上の2’−O−メチルリボヌクレオチドを用いて合成される。これらの修飾ヌクレオチドは、相補的二重鎖の熱安定性を向上させる。2’−O−メチルリボヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼに対するオリゴヌクレオチドの抵抗性を高め、それによって修飾オリゴヌクレオチドの半減期を延長する機能も果たす。例えば、その内容を参照により本明細書に援用する、Majlessi et al.(1988)Nucleic Acids Res.26,2224−9を参照されたい。2’−O−メチルリボヌクレオチドに加えて、又はその代わりに、本明細書に記載の別の修飾を利用することができる。例えば、終結オリゴヌクレオチドは、PNA又はLNAを含むことができる。例えば、その内容を参照により本明細書に援用する、Petersen et al.(2000)J.Mol.Recognit.13,44−53を参照されたい。本発明の終結オリゴヌクレオチドは、典型的には、伸長を阻止するブロッキング成分をその3’末端に含む。終結オリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼによる新生核酸鎖の更なる伸長を終結させるために、オリゴヌクレオチドに結合したタンパク質又はペプチドも含むことができる。本発明の終結オリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも10塩基長であり、最高15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド長以上まで伸長し得る。適切な好ましい終結オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されている。終結オリゴヌクレオチドは、典型的又は必然的に3’ブロッキング成分を含むが、「3’ブロックされた」オリゴヌクレオチドは、必ずしも終結オリゴヌクレオチドではないことに留意されたい。本発明の別のオリゴヌクレオチド、例えば、プロモーターオリゴヌクレオチド及びキャッピングオリゴヌクレオチドも、同様に、典型的又は必然的に3’ブロックされる。
【0066】
伸長オリゴヌクレオチド
「伸長オリゴヌクレオチド」又は「伸長オリゴ」とは、T7プロバイダーと同じ意味のオリゴヌクレオチドを指し、構造を開く、又は特異性を改善する、ヘルパーオリゴヌクレオチドとして作用することができる。伸長オリゴヌクレオチドは、プロモーターオリゴヌクレオチドの第1の領域の3’末端に隣接する、又はその近くの鋳型DNAとハイブリッド形成する。伸長オリゴヌクレオチドは、伸長オリゴヌクレオチドの5’末端塩基がプロモーターオリゴヌクレオチドの3’末端塩基の3、2又は1塩基以内にあるように、鋳型DNAとハイブリッド形成することが好ましい。最も好ましくは、伸長オリゴヌクレオチドの5’末端塩基は、伸長オリゴヌクレオチド及びプロモーターオリゴヌクレオチドが鋳型DNAとハイブリッド形成するときに、プロモーターオリゴヌクレオチドの3’末端塩基に隣接する。伸長オリゴヌクレオチドの伸長を防止するために、3’末端ブロッキング成分が典型的には含まれる。伸長オリゴヌクレオチドは、好ましくは10から50ヌクレオチド長、より好ましくは20から40ヌクレオチド長、最も好ましくは30から35ヌクレオチド長である{米国特許出願公開第2006/0046265号参照}。
【0067】
プローブ
「プローブ」又は「検出プローブ」とは、検出しようとする標的配列の領域と厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリッド形成するように、該領域に部分的又は完全に相補的である塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む分子を意味する。当業者には理解されるように、プローブは、人の介在なしには天然に存在しない形で(例えば、異質な核酸で組み換えられた、単離された、又はある程度精製された)、単離核酸分子、又はその類似体を含む。
【0068】
本発明のプローブは、ヌクレオシド又は核酸塩基が厳密なハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションに実質的に影響を及ぼさない限り、さらに、検出プローブの場合には、標的核酸との優先的なハイブリダイゼーションを阻止しない限り、標的領域の外側に追加のヌクレオシド又は核酸塩基を有することができる。標的捕捉配列(一般に、ポリA、ポリT、ポリU末端などのホモポリマー鎖(tract))、プロモーター配列、RNA転写用結合部位、制限エンドヌクレアーゼ認識部位などの非相補配列も含まれる場合があり、又は非相補配列は、プローブ、標的核酸若しくはその両方に触媒作用活性部位、ヘアピン構造などの所望の二次若しくは三次構造を与える配列を含むことができる。
【0069】
プローブは、好ましくは、少なくとも1個の検出可能な標識を含む。標識は、放射性同位体、酵素、酵素補因子、酵素基質、色素、ハプテン、化学発光分子、蛍光分子、リン光分子、電気化学発光分子、発色団、所定の条件下で標的核酸と安定にハイブリッド形成することができない塩基配列領域、及びこれらの混合物を含めて、ただしこれらだけに限定されない任意の適切な標識化物質とすることができる。特に好ましい一実施形態においては、標識はアクリジニウムエステルである。本発明のある種のプローブは、標識を含まない。例えば、非標識「捕捉」プローブを使用して、標的配列又はその複製物を濃縮することができ、次いで標的配列又はその複製物を第2の「検出」プローブによって検出することができる。例えば、参照により本明細書に援用する、Weisburg他、「Two−Step Hybridization and Capture of a Polynucleotide」、米国特許第6,534,273号を参照されたい。検出プローブは典型的には標識されるが、ある種の検出技術では、プローブを標識する必要はない。例えば、Nygren他、「Devices and Methods for Optical Detection of Nucleic Acid Hybridization」、米国特許第6,060,237号を参照されたい。
【0070】
「安定な」又は「検出が安定」とは、反応混合物の温度が核酸二重鎖の融解温度よりも少なくとも2℃低いことを意味する。反応混合物の温度は、より好ましくは、核酸二重鎖の融解温度よりも少なくとも5℃低く、更により好ましくは、反応混合物の融解温度よりも少なくとも10℃低い。
【0071】
「優先的にハイブリッド形成する」とは、厳密なハイブリダイゼーションアッセイ条件下で、本発明のプローブがその標的配列又はその複製物とハイブリッド形成して、安定なプローブ:標的ハイブリッドを形成し、同時に、安定なプローブ:非標的ハイブリッドの形成が最小限に抑えられることを意味する。したがって、プローブは、非標的配列よりも十分高い程度で標的配列又はその複製物とハイブリッド形成して、増幅中に形成される標的配列の複製RNA又は相補DNA(cDNA)を当業者が正確に定量することができる。
【0072】
明確な配列のプローブは、化学合成によって、さらに、組換え核酸分子からのin vitro又はin vivo発現によってなど、当業者に公知の技術によって生成させることができる。好ましくは、プローブは10から100ヌクレオチド長、より好ましくは12から50塩基長、更により好ましくは18から35塩基長である。
【0073】
ハイブリッド形成/ハイブリダイゼーション
核酸ハイブリダイゼーションは、完全又は部分的に相補的であるヌクレオチド配列を有する2本の核酸鎖が所定の反応条件下で一体となって、安定な二本鎖ハイブリッドを形成するプロセスである。どちらの核酸鎖も、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)又はその類似体とすることができる。したがって、ハイブリダイゼーションは、RNA:RNAハイブリッド、DNA:DNAハイブリッド、RNA:DNAハイブリッド、又はその類似体を含み得る。この二本鎖構造の2本の構成鎖は、ハイブリッドとも称し、水素結合によって一体化される。この水素結合は、最も一般的には、塩基アデニンとチミン若しくはウラシル(AとT若しくはU)又はシトシンとグアニン(CとG)を単一核酸鎖上に含むヌクレオチド間で形成されるが、塩基対合は、これらの「正規の(canonical)」対のメンバーではない塩基間でも形成され得る。非正規塩基対合は、当分野で周知である。(例えば、Roger L.P.Adams et al.,”The Biochemistry Of The Nucleic Acids”(11th ed.1992)を参照されたい。)
「厳密な」ハイブリダイゼーションアッセイ条件とは、特定の検出プローブが、試験試料中に存在する他の核酸よりも標的核酸とハイブリッド形成することができる条件を指す。これらの条件は、プローブのGC含量及び長さ、ハイブリダイゼーション温度、ハイブリダイゼーション試薬又は溶液の組成、並びに得ようとするハイブリダイゼーション特異性の程度を含めて、諸因子に応じて変わり得ることを理解されたい。特定の厳密なハイブリダイゼーション条件を以下に開示する。
【0074】
「核酸ハイブリッド」、「ハイブリッド」又は「二重鎖」とは、各鎖が他方の鎖に相補的であり、化学発光若しくは蛍光検出、オートラジオグラフィー、又はゲル電気泳動を含めて、ただしこれらだけに限定されない手段によって検出するのに、厳密なハイブリダイゼーション条件下で領域が十分に安定である、二本鎖水素結合領域を含む核酸構造を意味する。かかるハイブリッドは、RNA:RNA、RNA:DNA又はDNA:DNA二重鎖分子を含み得る。
【0075】
「相補的」とは、2個の一本鎖核酸の類似領域のヌクレオチド配列、又は同じ一本鎖核酸の異なる領域が、安定な二本鎖水素結合領域において、厳密なハイブリダイゼーション又は増幅条件下で、一本鎖領域同士がハイブリッド形成することを可能にする、ヌクレオチド塩基組成を有することを意味する。一方の一本鎖領域のヌクレオチドの連続配列が、他方の一本鎖領域のヌクレオチドの類似配列と一連の「正規」水素結合塩基対を形成することができ、その結果、AがU又はTと対形成し、CがGと対形成するときには、ヌクレオチド配列は「完全に」相補的である。
【0076】
「優先的に」ハイブリッド形成するとは、厳密なハイブリダイゼーションアッセイ条件下で、ある種の相補的ヌクレオチド又は核酸塩基配列がハイブリッド形成して、安定なハイブリッドをより不安定な別の二重鎖よりも優先的に形成することを意味する。
【0077】
核酸増幅
上述したように、本発明は、一般に、核酸増幅方法を用いて対象試料中のPseudomonas aeruginosaを検出するための組成物及び方法に関する。「増幅」又は「核酸増幅」とは、本明細書に更に記述するように、意図した特定の標的核酸配列の少なくとも一部を含む標的核酸の複数の複製体の産生を意味する。複数の複製体は、アンプリコン又は増幅産物とも称する。
【0078】
本発明の組成物及び方法は、Pseudomonas aeruginosaを含むことが知られている、又は疑われる、本質的にあらゆる対象試料タイプに対して実施することができる。これらの試料タイプとしては、生物試料、臨床試料、工業試料などが挙げられる。好ましい一実施形態においては、試料は、Pseudomonas aeruginosaが公知の又は疑われる汚染菌である、生物薬剤学的プロセス(バイオプロセス)の流れである。本明細書では「バイオプロセス」とは、一般に、意図した、又は意図しない、生細胞若しくは生物体又はその成分が存在する任意のプロセスを指す。例えば、その少なくとも1個が、生細胞、生物体若しくはその成分を含み、又は意図しない汚染の結果としてかかる細胞、生物体若しくは成分を含む、1個以上の試料又は試料の流れを利用する本質的にあらゆる製造又は他のプロセスは、バイオプロセスとみなせる。多数のかかるプロセスにおいては、プロセス内の生細胞、生物体又はその成分の存在及び/又は出所を検出、特定及び/又は制御する能力を有することが望ましい。本発明の方法によって、例えば、1個以上のバイオプロセス試料及び/又は流れの中のPseudomonas aeruginosaの存在及び/又は出所を迅速に高感度で監視することができる。
【0079】
多数の周知の核酸増幅方法は、二本鎖核酸の変性と、プライマーとのハイブリッド形成とを交互に行う熱サイクルを必要とするが、核酸増幅の別の周知の方法は等温である。PCRと一般に称されるポリメラーゼ連鎖反応法(米国特許第4,683,195号、同4,683,202号、同4,800,159号、同4,965,188号)は、変性、逆ストランドへのプライマー対のアニーリング、及びプライマー伸長からなる複数のサイクルによって、標的配列のコピー数を指数関数的に増加させる。RT−PCRと称する変法では、逆転写酵素(RT)を使用して、mRNAから相補DNA(cDNA)を作製し、次いでcDNAをPCRによって増幅してDNAの複数の複製体を作製する。LCRと一般に称されるリガーゼ連鎖反応(Weiss,R.1991,Science254:1292)は、標的核酸の隣接領域とハイブリッド形成する2組の相補DNAオリゴヌクレオチドを使用する。DNAオリゴヌクレオチドは、熱変性、ハイブリダイゼーション及び連結の繰り返しサイクルにおいて、DNAリガーゼによって共有結合されて、検出可能な二本鎖連結オリゴヌクレオチド産物を産生する。別の方法は、SDAと一般に称される鎖置換増幅(Walker,G.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:392−396、米国特許第5,270,184号及び同5,455,166号)である。SDAは、標的配列の逆ストランドへのプライマー配列対のアニーリングと、二重鎖ヘミホスホロチオアート化(hemiphosphorothioated)プライマー伸長産物を産生するdNTPαSの存在下でのプライマー伸長と、半修飾(hemimodified)制限エンドヌクレアーゼ認識部位のエンドヌクレアーゼ媒介性ニッキングと、既存の鎖を置換し、次回のプライマーアニーリング、ニッキング及び鎖置換のための鎖を作製する、切れ目の3’末端からのポリメラーゼ媒介性プライマー伸長とからなるサイクルによって、産物の幾何級数的な増幅をもたらす。高温性SDA(tSDA)は、高温性エンドヌクレアーゼ及びポリメラーゼを本質的に同じ方法においてより高温で使用する(欧州特許第0 684 315号)。別の増幅方法としては、NASBAと一般に称される、核酸配列に基づく増幅(米国特許第5,130,238号)、Q−βレプリカーゼと一般に称される、プローブ分子自体を増幅するRNAレプリカーゼを使用する増幅方法(Lizardi,P.et al.,1988,BioTechnol.6:1197−1202)、転写に基づく増幅方法(Kwoh,D.et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173−1177)、自家持続配列複製法(Guatelli,J.et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874−1878)、及びTMAと一般に称される転写媒介性増幅(米国特許第5,480,784号及び同5,399,491号)が挙げられる。公知の増幅方法の更なる考察については、Persing,David H.,1993,”In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques” in Diagnostic Medical Microbiology: Principles and Applications(Persing et al.,Eds.),pp.51−87(American Society for Microbiology,Washington,DC)を参照されたい。
【0080】
本発明の好ましい一実施形態においては、Pseudomonas aeruginosaは、転写に基づく増幅技術によって検出される。好ましい転写に基づく一増幅システムは、RNAポリメラーゼを利用して、標的領域の複数のRNA転写物を産生する、転写媒介性増幅(TMA)である。例示的なTMA増幅方法は、その内容を参照によりその全体を本明細書に援用する、米国特許第5,480,784号、同5,399,491号、米国特許出願公開第2006/0046265号及びその中で引用されている参考文献に記載されている。TMAは、逆転写酵素及びRNAポリメラーゼの存在下で標的核酸とハイブリッド形成する「プロモーター−プライマー」を用いて、二本鎖プロモーターを形成する。この二本鎖プロモーターから、RNAポリメラーゼはRNA転写物を産生する。この転写物は、RNA転写物とハイブリッド形成することができる第2のプライマーの存在下で次回以降のTMAの鋳型となることができる。PCR、LCR、又は熱変性を必要とする別の方法とは異なり、TMAは、RNase H活性を利用して、RNA:DNAハイブリッドのRNA鎖を消化し、それによってプライマー又はプロモーター−プライマーとのハイブリダイゼーションに利用可能なDNA鎖を作製する、等温方法である。一般に、増幅のために用意される逆転写酵素に付随するRNase H活性を利用する。
【0081】
TMA法の一変法においては、一増幅プライマーは、増幅すべき配列に対して3’位において標的RNAの結合部位とハイブリッド形成することができる、標的結合配列の5’に位置する、二本鎖のときに機能的になるプロモーター配列を含むオリゴヌクレオチドプロモーター−プライマーである。プロモーター−プライマーは、T7 RNAポリメラーゼ認識に特異的であるときには「T7プライマー」と称することができる。ある状況下では、プロモーター−プライマーの3’末端、又はかかるプロモーター−プライマーの亜集団は、プロモーター−プライマー伸長を妨害する、又は低下させるように修飾することができる。無修飾プロモーター−プライマーから、逆転写酵素は、標的RNAのcDNA複製体を作製するが、RNase H活性は標的RNAを分解する。次いで、第2の増幅プライマーはcDNAに結合する。このプライマーは、「T7プライマー」と区別するために「非T7プライマー」と称することができる。この第2の増幅プライマーから、逆転写酵素は別のDNA鎖を作製し、機能的プロモーターを一端に有する二本鎖DNAを生成する。二本鎖のときには、プロモーター配列は、RNAポリメラーゼに結合して、プロモーター−プライマーがハイブリッド形成する標的配列の転写を開始することができる。RNAポリメラーゼは、このプロモーター配列を使用して、複数のRNA転写物(すなわち、アンプリコン)、一般に約100から1,000個の複製体を産生する。新規に合成された各アンプリコンは、第2の増幅プライマーに付着する(anneal)ことができる。次いで、逆転写酵素は、DNA複製体を産生するが、RNase H活性は、このRNA:DNA二重鎖のRNAを分解する。次いで、プロモーター−プライマーは、新規に合成されたDNAに結合して、逆転写酵素が二本鎖DNAを産生できるようにする。この二本鎖DNAから、RNAポリメラーゼは複数のアンプリコンを産生する。したがって、2個の増幅プライマーを用いて、10億倍の等温増幅を実施することができる。
【0082】
TMAの別の変法は、1個のプライマーと1個以上の追加の増幅オリゴマーを使用して、核酸をin vitroで増幅し、試料中の標的配列の存在を示す転写物(アンプリコン)を作製する(その詳細を参照により本明細書に援用する、Becker他、米国特許出願公開第2006/0046265号に詳述されている。)。手短に述べると、単一プライマーTMA法は、プライマー(又は「プライミングオリゴマー」)、(例えば、3’ブロッキング成分を含めることによって)その3’末端からDNA合成が開始するのを阻止するように修飾された修飾プロモーターオリゴマー(又は「プロモーター−プロバイダー」)を使用し、場合によっては、標的鎖からcDNAが伸長するのを停止させる結合性分子(例えば、3’ブロックされた伸長オリゴマー)を使用してもよい。この方法は、標的配列の複数の複製体を合成し、標的配列を含む標的RNAをプライミングオリゴマー及び結合性分子で処理する段階を含む。この段階で、プライマーは標的鎖の3’末端とハイブリッド形成する。RTは、プライマーの3’末端からプライマー伸長を開始して、標的鎖との二重鎖のcDNA(例えば、RNA:cDNA)を産生する。3’ブロックされた伸長オリゴマーなどの結合性分子を反応に使用すると、結合性分子は、標的配列の5’末端近くに隣接する標的核酸に結合する。すなわち、結合性分子は、増幅すべき標的配列の5’末端に隣接した標的鎖に結合する。プライマーがRTのDNAポリメラーゼ活性によって伸長されてcDNAを産生するときには、標的鎖に結合した結合性分子にプライマー伸長産物が達すると重合は停止するので、cDNAの3’末端は、結合性分子の位置によって決まる。したがって、cDNAの3’末端は、標的配列の5’末端に相補的である。RNase(例えば、RTのRNase H)がRNA鎖を分解するときには、RNA:cDNA二重鎖は分離するが、任意の形の鎖分離を使用できることを当業者は理解されたい。次いで、プロモーター−プロバイダーオリゴマーは、cDNA鎖の3’末端近くでcDNAとハイブリッド形成する。プロモーター−プロバイダーオリゴマーは、RNAポリメラーゼのための5’プロモーター配列と、cDNAの3’領域中の配列に相補的である3’領域とを含む。プロモーター−プロバイダーオリゴマーは、プロモーター−プロバイダーオリゴマーの3’末端からDNA合成が開始するのを阻止するブロッキング成分を含む修飾3’末端も有する。プロモーター−プロバイダー:cDNA二重鎖においては、cDNAの3’末端は、プロモーターオリゴマーを鋳型として使用したRTのDNAポリメラーゼ活性によって伸長されて、プロモーター配列をcDNAに付加し、機能的二本鎖プロモーターを産生する。次いで、プロモーター配列に特異的なRNAポリメラーゼは、機能的プロモーターに結合し、cDNAに相補的であり、最初の標的鎖から増幅された標的領域配列と実質的に同一である、複数のRNA転写物を転写する。次いで、生成した増幅RNAは、プライマーに結合し、更なるcDNA産生の鋳型として役立つことによって、プロセスを通して再度循環され、試料中に存在する最初の標的核酸から多数のアンプリコンを最終的に産生することができる。単一プライマー転写を伴う増幅方法の一部の実施形態は、結合性分子を含まず、したがって、プライマーから作製されるcDNA産物は未確定の3’末端を有するが、増幅段階は、実質的にはすべての他の段階について上述したように進行する。
【0083】
適切な増幅条件は、本開示を考慮して当業者が容易に決定することができる。「増幅条件」とは、本発明による核酸増幅を可能にする条件を指す。増幅条件は、一部の実施形態においては、本明細書に記載の「厳密なハイブリダイゼーション条件」よりも厳密性を低くすることができる。本発明の増幅反応に用いられるオリゴは、その意図された標的に増幅条件下で特異的であり、該標的とハイブリッド形成するが、より厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリッド形成しても、しなくてもよい。一方、本発明の検出プローブは、厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリッド形成する。下記実施例の項は、本発明による標的核酸配列を増幅するのに好ましい増幅条件を提供するが、本発明による核酸増幅を実施する別の許容される条件は、使用する特定の増幅方法に応じて当業者が容易に確認することができる。
【0084】
本発明の増幅方法は、ある実施形態においては、増幅反応の感度、選択性、効率などを向上させるのに有効である1種類以上の別のタイプのオリゴの使用も好ましくは利用する。これらのオリゴとしては、例えば、終結オリゴヌクレオチド、伸長又はヘルパーオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。
【0085】
標的捕捉
ある実施形態においては、増幅前に、例えば標的捕捉手法を用いて、試料から標的核酸を精製又は濃縮することが好ましい場合がある。「標的捕捉」(TC)とは、一般に、磁気的に誘引可能な粒子などの固体担体上に標的ポリヌクレオチドを捕捉することを指し、固体担体は、標的ポリヌクレオチド精製手順の1つ以上の洗浄段階中に標的ポリヌクレオチドを保持する。このようにして、標的ポリヌクレオチドは、後続の核酸増幅段階前に十分に精製される。多数の標的捕捉方法が公知であり、本明細書に記載の方法と併用するのに適切である。
【0086】
「捕捉オリゴヌクレオチド」、「捕捉オリゴ」又は「捕捉プローブ」とは、標準塩基対合によって標的核酸中の標的配列と特異的にハイブリッド形成し、固定化プローブ上の結合相手に結合して、標的核酸を担体に捕捉する、核酸オリゴマーを指す。捕捉オリゴマーの一例は、2つの結合領域、すなわち配列結合領域(すなわち、標的特異的部分)と固定化プローブ結合領域を、通常は同じオリゴマー上に含むが、2つの領域は、1種類以上のリンカーによって連結された2種類のオリゴマー上に存在してもよい。
【0087】
「固定化オリゴ」、「固定化プローブ」又は「固定化核酸」とは、捕捉オリゴマーを担体に直接又は間接的に連結する核酸結合相手を指す。担体に連結された固定化プローブは、捕捉プローブに結合した標的を試料中の結合していない材料から分離するのを容易にする。任意の担体、例えば、溶液中の遊離したマトリックス又は粒子を使用することができる。担体は、種々の材料、例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ガラス、ポリアクリラート、混合ポリマー、ポリスチレン、シランポリプロピレン又は金属のいずれかで構成され得る。説明のための例は、磁気的に誘引可能な粒子(例えば、固定化プローブが(例えば、共有結合、キレート化又はイオン相互作用によって)直接的又は(例えば、リンカーを介して)間接的に結合する単分散常磁性ビーズ(均一サイズ±5%))である担体を使用する。結合は核酸ハイブリダイゼーション条件中で安定である。
【0088】
例えば、米国特許出願公開第20060068417号に記載の説明のための一手法は、標的に相補的な領域を含む少なくとも1種類の捕捉プローブオリゴヌクレオチドと、捕捉担体上の固定化プローブに標的核酸を結合させる特異的結合対の1メンバーとを使用し、したがって別の試料成分から分離された後に標的核酸が捕捉担体から放出される、捕捉ハイブリッドを形成する。
【0089】
別の説明のための一方法においては、Weisburg他は、米国特許第6,110,678号において、捕捉プローブ、及び好ましくは温度のみが異なる、2通りのハイブリダイゼーション条件を用いることによって、結合した固定化プローブを用いて、試料中の標的ポリヌクレオチドを、磁気的に誘引可能な粒子などの固体担体上に捕捉する方法を記述した。2通りのハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションの順序を制御し、第1のハイブリダイゼーション条件は、標的ポリヌクレオチドへの捕捉プローブのハイブリダイゼーションを可能にし、第2のハイブリダイゼーション条件は、固定化プローブへの捕捉プローブのハイブリダイゼーションを可能にする。この方法は、捕捉された標的ポリヌクレオチド、又は増幅された標的ポリヌクレオチドを検出することによって、試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を検出するのに使用することができる。
【0090】
別の説明のための標的捕捉技術(米国特許第4,486,539号)は、標的ポリヌクレオチドを捕捉し、その存在を検出する、ハイブリダイゼーションサンドイッチ技術を含む。この技術は、固体担体に結合したプローブによる標的ポリヌクレオチドの捕捉、及び検出プローブと捕捉された標的ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを含む。標的ポリヌクレオチドとハイブリッド形成しない検出プローブは、固体担体から容易に洗浄除去される。したがって、残存する標識は、試料中に最初に存在する標的ポリヌクレオチドと関連づけられる。
【0091】
別の説明のための標的捕捉技術(米国特許第4,751,177号)は、標的ポリヌクレオチドと固体担体に固定されたポリヌクレオチドの両方とハイブリッド形成する媒介ポリヌクレオチドを使用する方法を含む。媒介ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドを固体担体に連結して、結合標的を生成する。標識されたプローブは、結合標的とハイブリッド形成することができ、結合していない標識されたプローブ(pro)は、固体担体から洗浄除去することができる。
【0092】
更に別の説明のための標的捕捉技術は、標的ポリヌクレオチドを検出する方法を記述した米国特許第4,894,324号及び同5,288,609号に記載されている。この方法は、標的の同じ又は逆ストランドに相補的である2個の一本鎖ポリヌクレオチドセグメントを利用し、標的ポリヌクレオチドとの二重ハイブリッドの形成をもたらす。一実施形態においては、ハイブリッドは担体上に捕捉される。
【0093】
別の説明のための標的捕捉技術、欧州特許第0 370 694号においては、核酸を検出する方法及びキットは、特異的結合相手で標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー及びプライマー伸長産物を固定化する。標識は、固体担体に結合したその受容体と特異的に複合体を形成する。
【0094】
上記捕捉技術は、単なる説明のためのものであって、限定的なものではない。実際、増幅前に対象の標的核酸配列を精製するのに有効であれば、当業者に利用可能な本質的にあらゆる技術を使用することができる。
【0095】
核酸検出
特定の核酸ハイブリダイゼーションの監視に使用することができる本質的にあらゆる標識及び/又は検出システムを、本発明に関連して使用して、Pseudomonas aeruginosaアンプリコンを検出することができる。多数のかかるシステムが公知であり、当業者に利用可能であり、その説明のための例を以下に手短に考察する。
【0096】
検出システムは、典型的には、対象となる標的核酸の検出を容易にするために、いずれかのタイプの検出オリゴを使用する。「検出オリゴ」又は「検出プローブ」とは、標的核酸を検出するために、核酸ハイブリダイゼーションを促進する条件下で、増幅された配列を含めた標的配列と特異的にハイブリッド形成する核酸オリゴを指す。検出は、直接的(すなわち、標的と直接的にハイブリッド形成するプローブ)でも間接的(すなわち、プローブを標的に連結する中間構造とハイブリッド形成するプローブ)でもよい。プローブの標的配列は、一般に、プローブが特異的にハイブリッド形成する、より大きい配列内の特定の配列を指す。検出プローブは、標的配列が存在するか否かによって、標的特異的配列と、プローブの3次元構造に寄与する別の配列又は構造とを含むことができる(例えば、米国特許第5,118,801号、同5,312,728号、同6,835,542号及び同6,849,412号)。
【0097】
幾つかの周知の標識化システムのいずれかを使用して、検出を容易にすることができる。「標識」とは、検出される、又は検出可能なシグナルをもたらす、プローブに直接的又は間接的に結合した部分又は化合物を指す。直接的結合は、共有結合又は非共有結合性相互作用(例えば、水素結合、疎水性又はイオン相互作用、及びキレート又は配位化合物形成)を使用することができるのに対して、間接的結合は、(例えば、検出可能なシグナルを増幅する抗体又は追加のオリゴヌクレオチド(単数又は複数)を介して)架橋部分又はリンカーを使用することができる。いずれの検出可能な部分も、例えば、放射性核種、ビオチン、アビジンなどのリガンド、酵素、酵素基質、反応基、検出可能な色を付与する色素、粒子(例えば、ラテックス又は金属ビーズ)などの発色団、発光化合物(例えば、生物発光、リン光又は化学発光化合物)、及び蛍光化合物を使用することができる。好ましい実施形態は、混合物中の結合した標識プローブが、結合していない標識プローブと比較して検出可能な変化を示す、均一系において検出可能である「均一な検出可能な標識」を含む。これによって、ハイブリッド形成した標識プローブをハイブリッド形成していない標識プローブから物理的に取り出さずに、標識を検出することができる(例えば、米国特許第6,004,745号、同5,656,207号及び同5,658,737号)。好ましい均一な検出可能な標識としては、化学発光化合物、より好ましくは、周知の標準AE、AE誘導体などのアクリジニウムエステル(「AE」)化合物が挙げられる(米国特許第5,656,207号、同5,658,737号及び同5,948,899号)。標識を合成する方法、標識を核酸に結合させる方法、及び標識からのシグナルを検出する方法は周知である(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)第10章、及び米国特許第6,414,152号、同5,185,439号、同5,658,737号、同5,656,207号、同5,547,842号、同5,639,604号、同4,581,333号及び同5,731,148号)。AE化合物を核酸に連結する好ましい方法は公知である(例えば、米国特許第5,585,481号、並びに米国特許第5,639,604号、カラム10、6行からカラム11、3行、及び実施例8を参照されたい。)。好ましいAE標識位置は、プローブの中央領域、及びA/T塩基対の領域近傍、プローブの3’若しくは5’末端、又は所望の標的配列と比較してプローブが検出すべきでない公知配列とのミスマッチ部位若しくはその近傍である。
【0098】
好ましい一実施形態においては、少なくともある程度の自己相補性を示すオリゴは、ハイブリッド形成していないプローブを検出前にまず除去する必要なしに、試験試料中のプローブ:標的二重鎖の検出を容易にすることが望ましい。例として、「分子トーチ」と称する構造は、連結領域によって連結され、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下で互いにハイブリッド形成する、(「標的結合ドメイン」及び「標的閉鎖ドメイン」と称する)自己相補性の明確な領域を含むように設計される。変性条件に曝されると、完全に相補的でも部分的に相補的でもよい、分子トーチの2個の相補的領域は、融解し、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件が復帰したときに標的配列とのハイブリダイゼーションに利用可能な標的結合ドメインが残る。分子トーチは、標的結合ドメインが、標的閉鎖ドメインよりも標的配列とのハイブリダイゼーションを優先するように設計される。分子トーチの標的結合ドメイン及び標的閉鎖ドメインは、分子トーチが標的核酸とハイブリッド形成するときとは対照的に、分子トーチが自己ハイブリッド形成するときには異なるシグナルが生成されるように位置する相互作用標識(例えば、蛍光体/クエンチャー対)を含み、それによって付随する存続可能な標識を有する非ハイブリッド形成プローブの存在下で試験試料中のプローブ:標的二重鎖を検出することができる。分子トーチは、その開示を参照により本明細書に援用する米国特許第6,361,945号に詳細に記載されている。
【0099】
本発明に関連して使用することができる自己相補的ハイブリダイゼーションアッセイプローブの別の例は、「分子ビーコン」と一般に称される構造である。分子ビーコンは、標的相補配列を有する核酸分子、標的核酸配列の非存在下でプローブを閉構造で保持する親和性対(又は核酸アーム)、及びプローブが閉構造であるときに相互作用する標識対を含む。分子ビーコン標的相補配列と標的核酸のハイブリダイゼーションは、親和性対のメンバーを分離させ、それによってプローブを開構造に変化させる。開構造への変化は、例えば蛍光団とクエンチャー(例えば、DABCYLとEDANS)などであってもよい標識対の相互作用の低下によって検出可能である。分子ビーコンは、その開示を参照により本明細書に援用する米国特許第5,925,517号に詳細に記載されている。特定の核酸配列の検出に有用である分子ビーコンは、本明細書に開示するプローブ配列の1つのどちらかの端部に、蛍光団を含む第1の核酸アーム、及びクエンチャー成分を含む第2の核酸アームを取り付けることによって作製することができる。この構造では、本明細書に開示するPseudomonas aeruginosa特異的プローブ配列は、生成した分子ビーコンの標的相補的「ループ」部分として働く。
【0100】
分子ビーコンは、好ましくは、検出可能な標識の相互作用対で標識される。好ましい検出可能な標識は、FRET又は非FRETエネルギー移動機構によって相互作用する。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、原子間距離よりもかなり長い距離にわたって、熱エネルギーへの変換なしに、さらに、供与体と受容体が動力学的な衝突をせずに、発色団間の共鳴相互作用による、分子又は分子系における吸収部位からその利用部位へのエネルギー量子の無放射伝達を含む。「供与体」は、エネルギーを最初に吸収する部分であり、「受容体」は、その後にエネルギーが伝達される部分である。FRETに加えて、励起エネルギーが供与体から受容体分子に移動することができる少なくとも3つの別の「非FRET」エネルギー移動プロセスがある。
【0101】
一方の標識によって放出されたエネルギーが、FRET機構でも非FRET機構でも、他方の標識によって受け取られ、又は吸収されるように、2個の標識が十分に接近して保持されるときには、2個の標識は「エネルギー移動関係」にあるとされる。これは、例えば、分子ビーコンがステム(stem)二重鎖の形成によって閉状態で維持され、分子ビーコンの一方のアームに結合した蛍光団からの蛍光発光が、他方のアームのクエンチャー成分によって消光される場合である。
【0102】
分子ビーコンの説明のための標識部分としては、蛍光団と、蛍光消光性を有する第2の部分(すなわち、「クエンチャー」)が挙げられる。この実施形態においては、特徴的なシグナルは、特別な波長の適当な蛍光であるが、代わりに可視光シグナルとすることもできる。蛍光が関与するときには、発光変化は、好ましくはFRET又は放射性エネルギー移動若しくは非FRET形式による。閉状態の1対の相互作用標識を有する分子ビーコンが、適切な周波数の光によって刺激されると、蛍光シグナルが第1のレベルで発生するが、第1のレベルは極めて低い場合がある。この同じ分子ビーコンが開状態で、適切な周波数の光によって刺激されると、蛍光団とクエンチャー成分が互いに十分に分離され、その間のエネルギー移動が実質的に不可能になる。その条件下では、クエンチャー成分は、蛍光団成分からの蛍光を消光することができない。蛍光団が適切な波長の光エネルギーによって刺激されると、第1のレベルより高い第2のレベルの蛍光シグナルが発生する。蛍光の2つのレベルの差は、検出可能であり、測定可能である。蛍光団とクエンチャー成分をこのように使用すると、分子ビーコンは、「開」構造でのみ「オン」であり、容易に検出可能なシグナルを発することによってプローブが標的に結合したことを示す。プローブの構造状態は、標識部分間の相互作用を調節することによって、プローブから発生するシグナルを変化させる。
【0103】
非FRET対からFRETを識別しようとしない、本発明に関連して使用することができる供与体/受容体標識対の例としては、フルオレセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANS/フルオレセイン、EDANS/DABCYL、クマリン/DABCYL、フルオレセイン/フルオレセイン、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/DABCYL、ルシファーイエロー/DABCYL、BODIPY/DABCYL、エオシン/DABCYL、エリスロシン/DABCYL、テトラメチルローダミン/DABCYL、テキサスレッド/DABCYL、CY5/BH1、CY5/BH2、CY3/BH1、CY3/BH2、及びフルオレセイン/QSY7色素が挙げられる。当業者は、供与体と受容体色素が異なるときには、エネルギー移動は、受容体の増感蛍光の出現によって、又は供与体蛍光の消光によって、検出できることを理解されたい。供与体と受容体種が同じときには、エネルギーは、結果として生じる蛍光偏光解消によって検出することができる。DABCYL、QSY 7色素などの非蛍光受容体は、有利には、直接(すなわち、非増感)受容体励起に起因するバックグラウンド蛍光の潜在的問題を解消する。供与体−受容体対の1メンバーとして使用することができる好ましい蛍光団成分としては、フルオレセイン、ROX、(CY5などの)CY色素などが挙げられる。供与体−受容体対の別のメンバーとして使用することができる極めて好ましいクエンチャー成分としては、Biosearch Technologies,Inc.(Novato,Calif)から入手可能であるDABCYL、Black Hole Quencher成分などが挙げられる。
【0104】
合成技術、並びに標識を核酸に結合させる方法、及び標識を検出する方法は、当分野で周知である(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)第10章、Nelson他、米国特許第5,658,737号、Woodhead他、米国特許第5,656,207号、Hogan他、米国特許第5,547,842号、Arnold他、米国特許第5,185,439号及び6,004,745号、Kourilsky他、米国特許第4,581,333号、並びにBecker他、米国特許第5,731,148号を参照されたい。)。
【0105】
好ましいPSEUDOMONAS AERUGINOSAオリゴ及びオリゴセット
本明細書に記載のとおり、本発明によるPseudomonas aeruginosa核酸を増幅及び検出するのに好ましい部位は、Pseudomonas aeruginosa 23s rRNAの800領域に存在することが判明した。さらに、この領域内の特に好ましいオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドセットが、改善された感度、選択性及び特異性でPseudomonas aeruginosa 23sを増幅するために特定された。本発明のオリゴヌクレオチドは、Pseudomonas aeruginosa標的配列と高い特異性でハイブリッド形成することができ、その結果、試料中のPseudomonas aeruginosaの存在及び/又はレベルを検出し、Pseudomonas aeruginosaの存在を他のPseudomonadsの存在から区別するのに使用することができる核酸増幅反応に関与できることを理解されたい。
【0106】
例えば、一実施形態においては、本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、Pseudomonas aeruginosa 23s rRNAの800領域を高度の特異性で標的にする。言うまでもなく、本発明の増幅オリゴヌクレオチドを考察するときには、増幅反応に使用される第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、増幅すべき標的核酸配列の逆ストランドに対して特異性を有することを理解されたい。
【0107】
特定の一実施形態においては、本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、第2のオリゴヌクレオチドは、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0108】
本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、転写に基づく増幅反応、好ましくは転写媒介性増幅(TMA)反応において、Pseudomonas aeruginosaの標的核酸配列を増幅するのに特に有効である。
【0109】
本発明のある種の増幅オリゴヌクレオチドは、転写媒介性増幅反応に使用され、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0110】
本発明のある種のより具体的な増幅オリゴヌクレオチドは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする。
【0111】
本発明の別の特定の増幅オリゴヌクレオチドは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーは、E.coli 23s rRNAの塩基約739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーは、E.coli 23s rRNAの塩基約918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAを標的にする。
【0112】
特定の好ましい一実施形態においては、本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーは、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、非T7プライマーは、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される。
【0113】
別の好ましい一実施形態においては、本発明の増幅オリゴヌクレオチドは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーは配列番号2であり、非T7プライマーは配列番号24である。
【0114】
増幅反応に使用される特別なT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、追加のオリゴヌクレオチドも増幅反応に関連して一般に使用されることを理解されたい。例えば、ある実施形態においては、増幅反応は、検出オリゴヌクレオチド(例えば、トーチオリゴヌクレオチド)、ブロッカーオリゴヌクレオチド及び/又は伸長オリゴヌクレオチドの1種類以上の使用も利用する。
【0115】
下記表1は、特に好ましい特徴を有すると本発明によって確認された、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド、非T7プライマーオリゴヌクレオチド、及び別の補助的なオリゴヌクレオチド(例えば、ブロッカーオリゴヌクレオチド、伸長オリゴヌクレオチド及びトーチオリゴヌクレオチド)の具体例である。
【0116】
【表1−1】

【0117】
【表1−2】

さらに、下記表2は、本発明の組成物、キット及び方法に使用するのに特に好ましいオリゴヌクレオチドセットであって、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド配列番号2及び非T7プライマーオリゴヌクレオチド、配列番号24を含み、場合によっては、ブロッカーオリゴヌクレオチド配列番号29、トーチオリゴヌクレオチド配列番号54、伸長オリゴヌクレオチド配列番号44、標的捕捉オリゴヌクレオチド配列番号69を更に含み、場合によっては、標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチド配列番号73を更に含む。
【0118】
【表2】

優れたアッセイ性能をもたらす、800領域に由来する特に好ましい増幅オリゴヌクレオチドが本発明によって特定されたが、同じ又は類似の性能目標が達成されるのであれば、800領域に由来し、本明細書に具体的に記載のものからわずかに改変された別のオリゴヌクレオチドも使用できることを認識されたい。例えば、800領域に由来し、本発明による増幅反応に有用であるオリゴヌクレオチドは、増幅及び/又は検出手順に実質的に影響を及ぼさないのであれば、本明細書で確認されるものとは異なる長さを有することができる。本発明の好ましいオリゴヌクレオチドに対するこれら及び別の定常的なわずかな改変を従来の技術によって実施することができ、かかる改変が、本明細書で提供する1つ以上の利点を維持する程度まで、かかる改変は本発明の精神及び範囲内と考えられる。
【0119】
PSEUDOMONAS AERUGINOSAの検出に好ましい組成物及びキット
本発明は、Pseudomonas aeruginosaの23s rRNAの800領域を検出するポリヌクレオチド増幅反応を実施するための組成物、反応混合物及びキットも包含する。例示的なキットは、Pseudomonas aeruginosaの23s rRNAの800領域の逆ストランドに相補的である第1及び第2の増幅オリゴヌクレオチドを含む。ある種の好ましいキットは、転写を伴う増幅反応、好ましくはTMA反応に使用される本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを含む。好ましい一実施形態においては、本発明のキットは、本明細書に記載のT7プロバイダーオリゴヌクレオチド、本明細書に記載の非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、場合によっては、本明細書に記載の検出オリゴヌクレオチド、捕捉オリゴヌクレオチド、ブロッカーオリゴヌクレオチド及び/又は伸長オリゴヌクレオチドの1種類以上を含めて、増幅及び/又は検出を容易にする1種類以上の別の補助的なオリゴヌクレオチドを更に含んでもよい。
【0120】
ある実施形態においては、本発明は、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1及び第2のオリゴヌクレオチドがPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの800領域を高い特異性で標的にする、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。言うまでもなく、この800領域内のある種の残基を標的にする本発明の増幅オリゴヌクレオチドを考察するときには、増幅反応に使用される第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、増幅すべき標的核酸配列の逆ストランドに相補的であることを理解されたい。
【0121】
特定の一実施形態においては、本発明は、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドが、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、第2のオリゴヌクレオチドが、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする、増幅反応に使用される、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。
【0122】
別の一実施形態においては、本発明は、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする、転写媒介性増幅反応に使用される、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。
【0123】
より特別な一実施形態においては、本発明は、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基約900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする、転写媒介性増幅反応に使用される、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。
【0124】
より具体的な一実施形態においては、本発明は、T7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基約739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列の相補配列を標的にし、非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基約918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa 23s rRNAの領域中の配列を標的にする、転写媒介性増幅反応に使用される、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。
【0125】
好ましい一実施形態においては、本発明は、少なくともT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーが、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、非T7プライマーが、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される、転写媒介性増幅反応に使用される、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。
【0126】
別の好ましい一実施形態においては、本発明は、少なくともT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドを含み、T7プロバイダーが配列番号2であり、非T7プライマーが配列番号24である、転写媒介性増幅反応に使用される、組成物、反応混合物及びキットをもたらす。
【0127】
増幅反応に使用される特別なT7プロバイダーオリゴヌクレオチドと非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、追加の補助的なオリゴヌクレオチドも増幅反応に関連して一般に使用されることを理解されたい。例えば、ある実施形態においては、本発明の組成物、反応混合物及びキットは、標的捕捉オリゴヌクレオチド、トーチオリゴヌクレオチド、ブロッカーオリゴヌクレオチド及び/又は伸長オリゴヌクレオチドの1種類以上も更に含む。
【0128】
例えば、一実施形態においては、本発明の組成物、反応混合物及び/又はキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、トーチオリゴヌクレオチドを更に含む。特定の一実施形態においては、トーチオリゴヌクレオチドは、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択される。好ましい一実施形態においては、トーチオリゴヌクレオチドは配列番号54である。
【0129】
別の一実施形態においては、本発明の組成物、反応混合物及び/又はキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、伸長オリゴヌクレオチドを更に含む。特定の一実施形態においては、伸長オリゴヌクレオチドは、配列番号43又は配列番号44から選択される。
【0130】
別の一実施形態においては、本発明の組成物、反応混合物及び/又はキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、ブロッカーオリゴヌクレオチドを更に含む。特定の一実施形態においては、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、配列番号29、配列番号26、配列番号40又は配列番号42から選択される。
【0131】
別の一実施形態においては、本発明の組成物、反応混合物及び/又はキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド及び非T7プライマーオリゴヌクレオチドに加えて、標的捕捉オリゴヌクレオチドを更に含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチドを更に含む。特定の一実施形態においては、標的捕捉オリゴヌクレオチド配列番号69及び標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチドは、配列番号73である。
【0132】
特に好ましい一実施形態においては、本発明の組成物、反応混合物及び/又はキットは、T7プロバイダーオリゴヌクレオチド、配列番号2及び非T7プライマーオリゴヌクレオチド、配列番号24を含み、場合によってはブロッカーオリゴヌクレオチド配列番号29、トーチオリゴヌクレオチド配列番号54、伸長オリゴヌクレオチド配列番号44、標的捕捉オリゴヌクレオチド配列番号69を更に含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴヌクレオチド配列番号73を更に含む。
【0133】
本発明の一般的原理は、以下の非限定的実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。
【実施例】
【0134】
本発明のある態様及び実施形態を説明する実施例を以下に示す。以下の実施例は、実際に実施された実験の詳細を正確に反映すると考えられるが、実際に実施された研究と以下に示す実験の詳細との間には、これらの実験の結論、又は実験を実施する当業者の能力に影響を及ぼさない、幾つかの軽微な不一致が存在する可能性がある。当業者は、これらの実施例が、実施例に記載する特定の実施形態に本発明を限定するものではないことを理解されたい。さらに、当業者は、本明細書に記載の技術、材料及び方法を用いて、依然として本発明の精神及び範囲内で、これら及び関連した方法を実施するための代替の増幅系を容易に考案し、最適化することができる。
【0135】
別段の記載がない限り、以下の実施例におけるオリゴヌクレオチド及び修飾オリゴヌクレオチドは、標準ホスホルアミダイト化学反応によって合成され、その種々の方法は当分野で周知である。例えば、その内容を参照により本明細書に援用する、Carruthers,et al.,154 Methods in Enzymology,287(1987)を参照されたい。本明細書に別段の記載がない限り、修飾ヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチドであり、そのホスホルアミダイト類似体として合成に使用された。単一プライマー増幅(参照により本明細書に援用する、Becker他、米国特許出願公開第2006/0046265号)に用いられるブロッカーオリゴヌクレオチドの場合、3’末端ブロッキング成分は、3’−ジメチルトリチル−N−ベンゾイル−2’−デオキシシチジン、5’−スクシノイル−長鎖アルキルアミノ−CPG(Glen Research Corporation、Cat.No.20−0102−01)を用いて調製される「逆C」3’−3’結合からなった。分子トーチ(参照により本明細書に援用する、Becker他、米国特許第6,849,412号参照)は、オリゴヌクレオチドに結合した、C9非ヌクレオチドリンカー連結領域、5’−フルオレセイン(「F」)蛍光団及び3’−ダブシル(「D」)クエンチャー成分を用いて標準方法によって調製された。
【0136】
以下の実施例に記載するように、多種多様な増幅試薬及び条件の解析によって、Pseudomonas aeruginosaの種特異的検出のための高感度で選択的な増幅プロセスが開発された。
【0137】
(実施例1)
説明のためのアッセイ試薬及び手順の記述
以下の実施例は、本明細書に記載のTMA実験に用いられる典型的なアッセイ試薬、手順、条件などを記述する。それに反することを明記しない限り、試薬調製、装置調製及びアッセイ手順は、本質的に以下に記載のように実施された。
【0138】
A. 試薬及び試料
1. 増幅試薬。「増幅試薬」又は「Amp試薬」は、近似濃度の以下の成分で構成された:0.5mM dATP、0.5mM dCTP、0.5mM dGTP、0.5mM dTTP、10mM ATP、2mM CTP、2mM GTP、12.7mM UTP、30mM MgCl及び33mM KClのpH7.7の50mM HEPES緩衝剤溶液。プライマー及び他のオリゴヌクレオチドをAmp試薬に添加した。
【0139】
2. 酵素試薬。「酵素試薬」は、近似濃度の以下の成分で構成された:120mM KCl、10% TRITON(登録商標)X−100、160mM N−アセチル−L−システイン及び1mM EDTAを含むpH7.0の75mM HEPES緩衝剤中の1180RTU/μLモロニーマウス白血病ウイルス(「MMLV」)逆転写酵素(「RT」)及び260PU/μL T7 RNAポリメラーゼ。ここで、1RTUのRT活性は、dT 1nmolを基質に37℃で20分で取り込み、1PUのT7 RNAポリメラーゼ活性は、RNA転写物5fmolを37℃で20分で産生する。
【0140】
3. 洗浄溶液。「洗浄溶液」は、0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、150mM NaCl及び1mM EDTAのpH7.5の10mM HEPES緩衝剤溶液で構成された。
【0141】
4. 標的捕捉試薬。「標的捕捉試薬」(TCR)は、近似濃度の以下の成分で構成された:pH6.5の、dTdA30末端を有する1種類以上の捕捉プローブ及び任意に選択される捕捉ヘルパープローブの各々60pmol/mL、常磁性オリゴ(dT)14微粒子(Seradyn)250から300ug/mL、250mM HEPES、100mM EDTA及び1.88M LiCl。
【0142】
5. 溶解試薬。「溶解緩衝剤」は、100mM tris、2.5mMコハク酸、10mM EDTA及び500mM LiClを含むpH6.5の緩衝剤中の1%ラウリル硫酸リチウムで構成された。
【0143】
6. 標的rRNA試料。rRNA試料は、本明細書に記載の実験において使用する前に、水、0.1%LiLS又は溶解試薬中で保存された。
【0144】
B. 標的捕捉
後続の増幅のために核酸試料を精製及び調製する典型的な標的捕捉手順は、本質的に以下に示すように実施される。
【0145】
1. 試験試料100uL、標的捕捉オリゴヌクレオチドを含むTCR 50μL、及び溶解試薬1mLを混合する。混合物を60℃で15分間インキュベートする。
【0146】
2. 洗浄溶液及び適切な磁性粒子洗浄・分離装置(例えば、磁気分離ラック、GEN−PROBE(登録商標)Target Capture System,Gen−Probe Cat.No.5207、又はThermo Labsystemsから入手可能なKingFisher(登録商標)磁性粒子プロセッサシステム)を用いて、処理反応混合物からTCR磁性粒子を捕捉し、洗浄する。
【0147】
3. 洗浄後、磁性粒子を増幅試薬100μLに再懸濁させる。
【0148】
C. 標的の増幅及び検出
実時間TMA増幅反応を本質的に以下のように実施した。試料30μL、Amp試薬中の増幅及び検出オリゴヌクレオチド、又は標的捕捉手順から得られたAmp試薬中の再懸濁粒子30μLを60℃で10分間インキュベートした。次いで、温度を低下させ、反応混合物を42℃に平衡化した。酵素試薬10μLを添加した。反応混合物を混合し、実時間検出システム(例えば、Bio−Rad Laboratoriesから入手可能なOpticon(商標)若しくはChromo4(商標)検出システム、又はFluoDia(登録商標)T70装置)中で42℃でインキュベートした。
【0149】
(実施例2)
Pseudomonas aeruginosa(Pae)オリゴセットの設計及び初期試験
E.coli 23s rRNA(受託番号V00331)の約700から1000(「800領域」)及び約1400から1600(「1500領域」)ヌクレオチド塩基位置に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の2つの領域を標的にした増幅及び検出オリゴヌクレオチドを評価のために設計し、合成した。
【0150】
【表3−1】

【0151】
【表3−2】

【0152】
【表3−3】

【0153】
【表4】

23S 1500領域設計を試験した。結果を下記サイクル時間として示す。サイクル時間はTtimeに比例する。オリゴの4つの組合せを試験した。オリゴセット番号2は、Pae rRNAの1E+06回の複製における曲線形状(図示せず)及び最も早いサイクル時間に基づいて、最良の候補であった。
【0154】
【表5−1】

【0155】
【表5−2】

1500領域オリゴセット2を用いた幾つかの最適化実験を、オリゴ濃度を変えて実施した(結果示さず)。しかし、800領域の長鎖アンプリコンオリゴセット(単数又は複数)を用いた同時試験は、汚染された試薬によるバックグラウンドのレベルが低下した。したがって、23S rRNAの800領域に対してT7プロバイダー及び非T7プライマーが、試験した多数の他のオリゴセットに比べて、実時間単一プライマーTMAアッセイにおいて最高シグナル及び最低バックグラウンドを示したとの結果に基づいて、800領域を更なる最適化のための好ましい領域として選択した。実時間TMAアッセイにおけるオリゴのスクリーニングを実施し、異なるトーチ及びブロッカーも分析した。最良のオリゴセットを選択する判定基準としては、Pseudomonas aeruginosa rRNAの10e3回の複製において最低バックグラウンド及び最高シグナルを有することなどが挙げられた。
【0156】
ブロッカーオリゴヌクレオチド及びトーチオリゴヌクレオチドを含めて、3組の最初の好ましいオリゴセットをこの分析から選択した。これらのセットを標準短鎖アンプリコンセットS1及びF11、並びに長鎖アンプリコンセットLA2と称する(下記表6)。3組のセットの各々は良好に機能したが、LA2オリゴセットは、バックグラウンドがなく、最高の感度を示した。さらに、LA2オリゴセットは、生成したアンプリコンが約196塩基長であり、典型的な短鎖アンプリコン(86〜110ヌクレオチド塩基)F11及びS1よりも長く、異常であった。
【0157】
【表6−1】

【0158】
【表6−2】

(実施例3)
Pseudomonas aeruginosaオリゴセットの更なる特定
バックグラウンドシグナルを更に低下させ、特異性及び感度を改善するために、幾つかの追加のオリゴセットを設計し、試験した。感度を改善するために「伸長」オリゴも導入した。これらの実験を標的捕捉なしで実施した。
【0159】
伸長オリゴの添加及び再設計の前に、(「標準」系と称する)1組の試験オリゴセットは、「LA2」オリゴセットから得られた増幅オリゴと、「F11」オリゴセットから得られたトーチとの組合せで構成された(下記表7)。しかし、このオリゴセットは、Pseudomonas putidaに曝露したときに特異性の問題があり、わずかに高いバックグラウンドシグナルを有し、1×10回の複製におけるPseudomonas aeruginosaの出現時間が遅かった。再設計及びスクリーニングによって、これらの問題に対処する3組の有望な新しいオリゴセット(下記セット1〜3)が得られた。3組のオリゴセットはすべて、特異性を改善し、バックグラウンドシグナルを低下させるトーチ配列番号54、アッセイ感度を改善する伸長オリゴ、及び再設計された増幅オリゴを含んだ。
【0160】
さらに、これらの新しいオリゴセットを別のオリゴセット(下記セット4)及び「標準LA」オリゴセットと比較した。新しいオリゴセットのすべては、トーチ配列番号54を含み、「標準」オリゴセットより性能が優れていた。
【0161】
下記表7に、この分析段階における好ましいオリゴセットを要約する。下記表7に、好ましいT7プロバイダー、非T7プライマー、伸長オリゴ及びブロッカーオリゴの配列を示す。
【0162】
【表7】

【0163】
【表8−1】

【0164】
【表8−2】

(実施例4)
Pseudomonas aeruginosaオリゴセットの更なる特性分析及び最適化
下記表9〜13に、本発明のある好ましいオリゴセットの特定及び最適化に関する代表的データを要約して示す。実時間TMA反応から得られたAveRange(RFU)及びTTime(min)結果を示す。好ましいオリゴは、曲線形状(図示せず)並びにAveRange及びTTimeの結果によってこの分析から決定される。好ましいオリゴセットは、ゼロPae rRNA複製レベルにおいて、最低の相対蛍光単位(RFU)及び最長TTimeを有する。ゼロPae rRNA複製レベルにおける高いRFU値は、試薬内の汚染の可能性を示す。
【0165】
表9にオリゴセットS1の結果の概略を示す。
【0166】
【表9】

表10は、S1オリゴセットをF11オリゴセットと比較し、F11のゼロ複製レベルにおけるRFUの最初の低下を示す。この知見は、後続の試験のために蓄積された。
【0167】
【表10】

オリゴセットLA2及び以前にスクリーニングされたオリゴの組合せを試験し、0複製レベルにおけるRFU値の低下がやはり示された(例えば、表11)。LA2オリゴセットは、以前に試験したセットよりもはるかに長鎖のアンプリコンを生成し、ゼロP.aeruginosa rRNA複製レベルにおけるPseudomonas aeruginosa汚染レベルは一層低下した(表11)。
【0168】
【表11】

さらに、LA2オリゴセットを用いて種々のトーチを試験した。結果を表12に示す。
【0169】
【表12】

表13に、関連生物体との交差反応に対する異なるトーチの試験結果を要約する。約1E+08回のrRNA複製である、約1E+05コロニー形成単位(CFU)における関連生物体Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida、Myroides種、Pseudomonas cepacia、Pseudomonas fluorescens及びPseudomonas pickettiiの細胞溶解物を用いて、特異性試験を実施した。
【0170】
【表13】

(実施例5)
特異的標的捕捉と非特異的標的捕捉の評価
特異的標的捕捉(TC)オリゴヌクレオチド、配列番号66〜71及び特異的TCヘルパーオリゴヌクレオチド、配列番号72&73を、Pseudomonas aeruginosa核酸を標的にするように設計した。ポリdTdA30末端、(k)18−dTdA30(「k」は、オリゴヌクレオチドに組み入れられたグアニン(G)とウラシル(U)又はチミン(T)塩基の無秩序な組合せである。)を含む無秩序な2’−メトキシポリ(k)配列を有する非特異的捕捉オリゴヌクレオチド、配列番号65も合成した。
【0171】
【表14】

Pseudomonas aeruginosa核酸に対する特異的標的捕捉オリゴ及びヘルパーオリゴを非特異的標的捕捉と比較した。表15に、特異的標的捕捉及びヘルパーオリゴと非特異的標的捕捉オリゴを用いて得られた例示的な結果の概略を示す。
【0172】
【表15】

表16に、P.putidaの存在下での特異的標的捕捉と非特異的標的捕捉の結果の概略を示す。これらの実験によれば、P.aeruginosa核酸の捕捉、増幅及び検出を単体及びP.putida核酸の存在下で試験したときの、特異的標的捕捉オリゴと非特異的標的捕捉オリゴの性能及び特異性は同等であった。
【0173】
【表16】

(実施例6)
Pseudomonas aeruginosaに関連した生物体との交差反応性の低下
この実施例は、Pseudomonas aeruginosaの近縁の生物体の交差反応性及び増幅を低下させるために実施した追加の実験を記述する。10CFUレベルの近縁Pseudomonads P.stutzeri、P.pseudoalcaligenes及びP.mendocinaと比較して、10CFUのP.aeruginosaで得られたシグナルを示す実時間アッセイデータの例示的なグラフ表示を図1に示す。
【0174】
グラフ表示に対して、AveRange(RFU)及びTTime(min)又はサイクル時間(min)結果を下表に示す。生データファイルを解析するスプレッドシートを作成し、陽性及び陰性P.aeruginosaの結果をアッセイの妥当性と一緒に求めた。陽性の結果は、バックグラウンドを減算したデータから、カットオフ値750、Trimmeanサイクル71〜76に対する相対蛍光単位(RFU)を用いて求められる。アッセイの妥当性は、UIC(内部標準)の結果に基づいて、陰性P.aeruginosaの結果についてのみ確認される。
【0175】
表17に示した情報は、終了した実験の一部である。表17は、これらの最も近縁のPseudomonas生物体の溶解物の試験を、幾つかの周囲の生物体と一緒に示す。示したすべての実験結果は、表17に示すオリゴセットを使用した。1コロニー形成単位(CFU)は、約1000回のrRNA複製に相当する。3種類の交差反応生物体として特定された同じATCC系統を試験し、結果を確認した。興味深いことに、これらの実験のグラフ表示(図示せず)を解析すると、交差反応生物体を用いた増幅は平坦部を示した。
【0176】
【表17】

表17の結果に基づいて、3種類の生物体を用いた次の実験では、同じ低レベルの平坦部が異なるレベルで生じるかどうかを判定するためにCFUの滴定に注目した。
【0177】
表18に、分析したCFU滴定の結果を示す。滴定は、同じ低レベルの増幅及び平坦部を示し、出現時間のみがCFUレベルに基づいて変化する(図示せず)。
【0178】
【表18】

次の実験(表19)は、これらの交差反応生物体の1種類の存在下でPseudomonas aeruginosaの結果を評価することに焦点をおいた。以前の特異性実験では、P.putidaは、選択された最終のオリゴセットとは異なるオリゴセットと交差反応し、したがって、P.putidaをPseudomonas aeruginosaの回収に注目するための追加の対象として使用した。その結果、Pseudomonas aeruginosaシグナルは、P.putidaのCFUレベルが増加するにつれある程度抑制されるが(図示せず)、P.mendocinaではそれよりも大きいPseudomonas aeruginosa阻害が見られ、これは予想外であった。表19のP.putidaの陽性/陰性結果は、低レベルの陽性であり、同じ標的捕捉反応からの複製と比較して一貫していなかった。
【0179】
【表19】

P.mendocinaとPae及びP.putidaの配列比較に基づくと、Pseudomonas aeruginosa増幅の完全な阻害は起こったはずがなく、したがって全3種類の交差反応生物体を用いて実験を繰り返し、TTimeアルゴリズムによって解析した(表20)。予想どおりに、Pseudomonas aeruginosa増幅は、最初の結果とは対照的に、これらの別の生物体の存在下では起こらず、Pseudomonas aeruginosa RFUシグナルがある程度抑制されるにすぎない。
【0180】
【表20】

示した結果は、rRNAを用いて試験されたPseudomonas aeruginosaを除いて、細胞溶解物を用いて試験された。これらの溶解物を用いた予想外の結果に基づいて、生物体から得られた精製RNAを用いて、類似のPseudomonas aeruginosa回収実験を実施した(表21)。P.stutzeri、P.pseudoalcaligenes及びP.mendocinaで同じ交差反応が見られたが、これらのレベルにおけるこれらの生物体のrRNAの存在下でPseudomonas aeruginosaシグナルは抑制されない。
【0181】
【表21】

これらの結果によれば、Pseudomonas aeruginosaの種特異的検出は、近縁の生物体の存在下でも、実時間TMAデータの諸特性(例えば、実時間TMA反応から作成されるRFU曲線のサイズ及び形状)に基づいて、本発明によって達成することができる。したがって、本発明の方法を使用して、Pseudomonas aeruginosaの存在を検出するだけでなく、存在し得る他の関連生物体を検出することもできる。例えば、観察されたRFU値が適切なしきい値を超える場合、試料はPseudomonas aeruginosaを含むと結論することができ、さらに、他の近縁生物体の存在を示していると判断される範囲でより低いRFU値が観察される場合、試料はこれらの近縁生物体の1種類以上も含むと結論することができる。したがって、生物体によって示される異なるTMAシグナル特性に基づいて、Pseudomonas aeruginosaとこれらの関連生物体の1種類以上の同時/差動的検出に本発明の方法を使用することができる。
【0182】
上記種々の実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。本明細書で参照された、及び/又は出願データシートに列挙された、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物のすべてを参照によりその全体を本明細書に援用する。実施形態の態様は、必要に応じて、改変して、種々の特許、出願及び刊行物の概念を使用して、更なる実施形態を提供することができる。
【0183】
上記詳細な説明に照らして、これら及び他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲においては、使用する用語は、特許請求の範囲を、本明細書に開示する特定の実施形態及び特許請求の範囲に限定すると解釈すべきではなく、かかる特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と一緒に、すべての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T7プロバイダーオリゴ及び非T7オリゴを含む、Pseudomonas aeruginosa核酸増幅アッセイに使用するための組成物であって、該T7プロバイダーオリゴが、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、該非T7オリゴが、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、Pseudomonas aeruginosa核酸増幅アッセイに使用するための組成物。
【請求項2】
前記T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、前記非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、前記非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記T7プロバイダーが、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、前記非T7プライマーが、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記T7プロバイダーが配列番号2であり、前記非T7プライマーが配列番号24である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
検出オリゴを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記検出オリゴがトーチオリゴ又は分子ビーコンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記トーチオリゴが、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
伸長オリゴを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記伸長オリゴが、配列番号43又は配列番号44から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ブロッカーオリゴを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ブロッカーオリゴが、配列番号29、配列番号26、配列番号40又は配列番号42から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
T7プロバイダーオリゴ、配列番号2及び非T7オリゴ、配列番号24を含み、場合によってはブロッカーオリゴ配列番号29、トーチオリゴ配列番号54、伸長オリゴ配列番号44、標的捕捉オリゴ配列番号69を更に含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴ配列番号73を更に含む、Pseudomonas aeruginosa核酸増幅アッセイに使用するための組成物。
【請求項14】
T7プロバイダーオリゴ及び非T7オリゴを含む、Pseudomonas aeruginosa増幅アッセイに使用するためのキットであって、該T7プロバイダーオリゴが、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、該非T7オリゴが、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、Pseudomonas aeruginosa増幅アッセイに使用するためのキット。
【請求項15】
前記T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、前記非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、前記非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、請求項14に記載のキット。
【請求項17】
前記T7プロバイダーが、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、前記非T7プライマーが、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
前記T7プロバイダーが配列番号2であり、前記非T7プライマーが配列番号24である、請求項14に記載のキット。
【請求項19】
検出オリゴを更に含む、請求項14に記載のキット。
【請求項20】
前記検出オリゴがトーチオリゴ又は分子ビーコンである、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記トーチオリゴが、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択される、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
伸長オリゴを更に含む、請求項14に記載のキット。
【請求項23】
前記伸長オリゴが、配列番号43又は配列番号44から選択される、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
ブロッカーオリゴを更に含む、請求項14に記載のキット。
【請求項25】
前記ブロッカーオリゴが、配列番号29、配列番号26、配列番号40又は配列番号42から選択される、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
T7プロバイダーオリゴ、配列番号2及び非T7オリゴ、配列番号24を含み、場合によってはブロッカーオリゴ配列番号29、トーチオリゴ配列番号54、伸長オリゴ配列番号44、標的捕捉オリゴ配列番号69を更に含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴ配列番号73を更に含む、Pseudomonas aeruginosa核酸増幅アッセイ用キット。
【請求項27】
試料中のPseudomonas aeruginosaの存在を検出するための方法であって、該方法は、T7プロバイダーオリゴ及び非T7オリゴを用いて核酸増幅アッセイを実施することを含み、該T7プロバイダーオリゴが、E.coli 23s rRNAの塩基約725〜825に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、該非T7オリゴが、E.coli 23s rRNAの塩基約845〜950に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、方法。
【請求項28】
前記T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基725〜775に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、前記非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基900〜950に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記T7プロバイダーが、E.coli 23s rRNAの塩基739〜766に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列を標的にし、前記非T7プライマーが、E.coli 23s rRNAの塩基918〜943に対応するPseudomonas aeruginosa核酸の領域中の配列の相補配列を標的にする、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記T7プロバイダーが、配列番号2、配列番号1、配列番号11又は配列番号14から選択され、前記非T7プライマーが、配列番号22、配列番号24、配列番号19又は配列番号15から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記T7プロバイダーが配列番号2であり、前記非T7プライマーが配列番号24である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
増幅された核酸を検出オリゴを用いて検出することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記検出オリゴがトーチオリゴ又は分子ビーコンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記トーチオリゴが、配列番号51、配列番号54、配列番号50又は配列番号56から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
伸長オリゴを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記伸長オリゴが、配列番号43又は配列番号44から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ブロッカーオリゴを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記ブロッカーオリゴが、配列番号29、配列番号26、配列番号40又は配列番号42から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記T7プロバイダーオリゴが配列番号2であり、前記非T7オリゴが配列番号24であり、前記方法は、場合によってはブロッカーオリゴ配列番号29、トーチオリゴ配列番号54、伸長オリゴ配列番号44、標的捕捉オリゴ配列番号69の使用を含み、場合によっては標的捕捉ヘルパーオリゴ、配列番号73の使用を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記増幅された核酸の検出が実時間で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
P.aeruginosa核酸が、近縁のPseudomonadsの存在下で特異的に検出される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
検出カットオフが設定され、それによってP.aeruginosa核酸、及びすべてではないが1種類以上の近縁のPseudomonadsが検出される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
Pseudomonas aeruginosa 23sリボソーム核酸の800領域又は1500領域を増幅するように設計された2種類以上の増幅オリゴヌクレオチドを含む試料中のPseudomonas aeruginosaを検出するための組成物。
【請求項44】
Pseudomonas aeruginosa 23sリボソーム核酸を検出するための1種類以上のプローブを更に含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
試料中のPseudomonas aeruginosaの存在を検出するための方法であって、該方法は、請求項43に記載の増幅オリゴヌクレオチドを用いて核酸増幅アッセイを実施すること、及び増幅された核酸を請求項44に記載の1種類以上のプローブを用いて検出することを含む、方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−510612(P2011−510612A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502276(P2010−502276)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/059186
【国際公開番号】WO2008/122053
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(500506530)ジェン−プロウブ インコーポレイテッド (58)
【Fターム(参考)】