説明

RAGE融合タンパク質と使用方法

【課題】終末糖化産物受容体(RAGE)の調節
【解決手段】第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチド配列を含むRAGE融合タンパク質を開示する。前記RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチド・ドメイン、及び免疫グロブリンCH2ドメインに直接連結されたドメイン間リンカーを利用できる。そのような融合タンパク質は、RAGEリガンドに対する特異的で、高い親和性結合を提供しうる。また、RAGE媒介性病理の治療法としてのRAGE融合タンパク質の使用も開示しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
当該出願は、2006年2月9日付で出願された米国特許仮出願番号第60/771,619号に基づいて合衆国法典第35巻第119条(e)の下に優先権を主張する。米国特許仮出願番号第60/771,619号の開示の全体を本明細書中に援用する。
【0002】
本発明の分野
本発明は終末糖化産物受容体(RAGE)の調節に関する。特に、本発明は、RAGEポリペプチドを含む融合タンパク質、そのような融合タンパク質の作製方法、及びRAGEベースの障害の処置のためのそのようなタンパク質の使用について説明する。
【背景技術】
【0003】
背景
アルドース糖とタンパク質又は脂質のインキュベーションは、タンパク質のアミノ基の非酵素的な糖化及び酸化を引き起こして、アマドリ付加化合物を形成する。時間が経つにつれて、その付加物は、さらなる転位、脱水、及び他のタンパク質との架橋を受けて、最終糖化反応物(AGE)として知られる複合体を形成する。AGEの形成を促進する要因として、(例えば、アミロイドーシスなどの場合の)遅れたタンパク質の代謝回転、高いリジン含量を有する高分子の蓄積、及び(例えば、糖尿病などの場合の)高い血糖値がある(Hori ら、J. Biol. Chem. 270;25752-761ページ(1995年))。AGEは、糖尿病及び正常な老化に関連する合併症を含む様々な障害に関係している。
【0004】
AGEは、単球、マクロファージ、微小血管系の内皮細胞、平滑筋細胞、メサンギウム細胞、及びニューロンの細胞表面受容体への特異的、且つ、飽和結合を見せる。終末糖化産物受容体(RAGE)は、免疫グロブリン超遺伝子ファミリー分子のメンバーである。RAGEの細胞外(N末端)ドメインは、3つの免疫グロブリン型領域:1つのV(可変)型領域と、それに続く2つのC型(定常)ドメインを含む(Neeperら、J. Biol. Chem. 267:14998-15004ページ(1992年);Schmidtら、Circ.(付録)96#194(1997年))。1つの膜貫通ドメイン、及び短い、高電荷のサイトゾル側末端が、細胞外ドメインに続く。N末端の細胞外ドメインは、RAGEのタンパク質分解、又はV及びCドメインを含む可溶性RAGE(sRAGE)を作り出すための分子生物学的アプローチによって単離することができる。
【0005】
RAGEは、白血球、ニューロン、ミクログリア細胞、及び血管内皮細胞を含む多様な細胞型で発現される(例えば、Horiら、J. Biol. Chem. 270:25752-761ページ(1995年))。高いRAGEレベルは、老化した組織(Schleicherら、J. Clin, Invest.、99(3):457-468ページ(1997年))、並びに糖尿病の網膜、血管系、及び腎臓(Schmidtら、Nature Med. 1:1002-1004ページ(1995年))においてもまた見られる。
【0006】
AGEに加えて、他の化合物が、RAGEに結合し、そして調節することができる。RAGEには、アミロイド-β(Aβ)、血清アミロイドA(SAA)、最終糖化産物(AGE)、S100(カルグラヌリン・ファミリーの炎症誘発性メンバー)、カルボキシメチルリジン(CML)、アンホテリン、及びCD11b/CD18を含む多数の機能的、及び構造的に多様なリガンドが結合する(Bucciarelliら、Cell Mol. Life Sci. 59:1117-128ページ(2002年);Chavakisら、Microbes Infect. 6:1219-1225ページ(2004年);Kokkolaら、Scand. J. Immunol. 61:1-9ページ(2005年);Schmidtら、J. Clin. Invest. 108:949-955ページ(2001年);Rockenら、Am. J. Pathol. 162:1213-1220ページ(2003年))。
【0007】
例えば、AGE、S100/カルグラヌリン、β-アミロイド、CML(Nε-カルボキシメチルリジン)、アンホテリンといったリガンドのRAGEへの結合は、様々な遺伝子の発現を修飾することがわかっている。これらの相互作用は、次に、p38の活性化、p21ras、MAPキナーゼ、Erk1-2リン酸化、及び炎症性シグナル伝達の転写メディエーターであるNF-κBの活性化を含むシグナル伝達機序を開始することができる(Yehら、Diabetes 50:1495-1504ページ(2001年))。例えば、多くの細胞型において、RAGEとそのリガンドの間の相互作用が酸化ストレスを発生させることができ、それによって、フリーラジカル感受性転写因子であるNF-κBの活性化を引き起こし、そしてNP-κBの活性化が、例えばサイトカインIL-10及びTNF-αといった遺伝子を調節する。さらに、RAGE発現はNF-κBを介して上方制御され、そして、炎症又は酸化ストレス部位にて高められた発現を見せた。(Tanakaら、J. Biol. Chem. 275:25781-25790ページ(2000年))。よって、上方スパイラル、しばしば有害なスパイラルがリガンドの結合によって開始された正のフィードバック・ループによって増幅される。
【0008】
異なる組織及び臓器におけるRAGEの活性化は、多くの病態生理学的因果関係につながる可能性がある。RAGEは、以下の:急性及び慢性炎症(Hofmannら、Cell 97:889-901ページ(1999年))、例えば高い血管透過といった糖尿病の後期合併症の発生(Wautierら、J. Clin. Invest. 97:238-243ページ(1995年))、腎障害(Teilletら、J. Am. Soc. Nephrol. 11:1488-1497ページ(2000年))、動脈硬化(Vlassaraら、The Finnish Medical Society DUODECIM, Ann. Med. 28:419-426ページ(1996年))、及び網膜障害(Harainesら、Diabetologia 42:603-607ページ(1999年))を含む様々な病態にかかわる。RAGEは、アルツハイマー病(Yanら、Nature 382:685-691ページ(1996年))、並びに腫瘍侵襲及び転移(Taguchiら、Nature 405:354-357ページ(2000年))にもかかわる。
【0009】
RAGEの広範囲の発現、及び多数の様々な病態モデルにおけるそのいかにも多面的な役割にもかかわらず、RAGEは正常な発生に不可欠であるように見えない。例えば、RAGEノックアウト・マウスには目立った異常な表現型はなく、慢性的に刺激された場合にRAGEは疾患病理学における役割を果たす可能性がある一方で、RAGEの阻害はいずれかの望ましくない急性表現型の原因となるとは考えられないことを示唆している(Liliensiekら、J. Clin. Invest. 113:1641-50ページ(2004年))。
【0010】
RAGEへの生理的リガンドの拮抗性結合は、過剰濃度のAGE及び他のRAGEリガンドによって引き起こされた病態生理学的変化を下方制御することができる。内因性リガンドのRAGEへの結合を減少させることによって、RAGE媒介性障害に関連している症候を軽減できる。可溶性RAGE(sRAGE)は、効果的に、RAGEのRAGEリガンドへの結合に拮抗することができる。しかしながら、sRAGEは、インビボに投与された場合に、1又は複数の障害に処置的有効であるには短すぎるかもしれない半減期を有する可能性がある。よって、AGE及び他の生理的リガンドのRAGE受容体への結合に拮抗する、所望の薬理動態学特性を有する化合物を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0011】
概要
本発明の態様は、RAGE融合タンパク質、及びそのようなタンパク質の使用方法を含む。本発明は、様々な方法で実施されてもよい。本発明の態様は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を含むかもしれない。1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含む。RAGE融合タンパク質は、免疫グロブリンのCH2ドメイン、又はCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結したRAGEポリペプチドをさらに含むことができる。
【0012】
本発明は、RAGE融合タンパク質を作製する方法も含む。1つの態様において、前記方法は、RAGEポリペプチドを第二の非RAGEポリペプチドに連結することを含む。1つの態様において、前記RAGEポリペプチドは、RAGEリガンド結合部位を含む。前記方法は、RAGEポリペプチドを免疫グロブリンのCH2ドメイン又はCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結することを含んでもよい。
【0013】
他の態様において、本発明は、対象のRAGE媒介性障害を処置するための方法及び組成物を含んでもよい。前記方法は、本発明のRAGE融合タンパク質を対象に投与することを含んでもよい。その組成物は、医薬として許容される担体中に本発明のRAGE融合タンパク質を含んでもよい。
【0014】
本発明の特定の態様に関連する様々な利点がある。1つの態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、対象に投与された場合に、代謝的に安定でありうる。また、本発明のRAGE融合タンパク質は、RAGEリガンドに対して高親和性結合を示すことができる。ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、高ナノモル〜低マイクロモルの範囲内の親和性でRAGEリガンドが結合する。生理学的RAGEリガンドに高親和性で結合することによって、本発明のRAGE融合タンパク質は、RAGEへの内因性リガンドの結合を抑制し、それによって、RAGE媒介性疾患を改善する手段を提供するために使用することができる。
【0015】
また、本発明のRAGE融合タンパク質を、タンパク質又は核酸の形態で提供することができる。ある例示的な態様において、RAGE融合タンパク質は、全身に投与され、そしてRAGEによって一部が介在される血管疾患を潜在的に処置するために血管系内に残ってもよい。別の例示的な態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンドが疾患の病変の原因となる所に、疾患を処置するために局所的に投与することができる。あるいは、RAGE融合タンパク質をコードする核酸コンストラクトは、一過性の局所的発現がRAGEリガンドと受容体との相互作用を抑制することができる部位に、例えばウイルス又は裸のDNAといった適切な担体の使用によって提供されてもよい。よって、投与は、一過性であるか(例えば、RAGE融合タンパク質が投与される場合)、又は、実際は永久的であってもよい(例えば、RAGE融合タンパク質が組換えDNAとして投与される場合)。
【0016】
本発明の追加の特徴を以下説明する。本願発明が以下の請求項、説明、及び図面に説明される詳細に限定されないことは理解されるべきである。本発明は、他の態様が可能であり、そして様々な方法で実践又は実施することができる。
【0017】
詳細な説明
本願明細書のために、別段の指示のない限り、本明細書中に使用される成分、反応条件などの数量を表現する全ての数字が、全ての場合に、用語「約」によって修飾されることは理解されるべきである。従って、それとは反対に指示のない限り、以下の明細書中で説明される数的パラメータは、本発明によって得られるべき所望の特性に依存して変化する可能性がある概算値である。少なくとも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、それぞれの数的パラメータは、報告する有効数字の数の観点から、そして普通の丸めの技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0018】
本発明の幅広い範囲を説明する数値域及びパラメータは概算値であるにもかかわらず、特定の態様において説明される数値はできるだけ的確に報告する。しかしながら、どんな数値もそれらのそれぞれの試験計測において見られる標準偏差から生じるいくらかの誤差を本来必ず含む。そのうえ、本明細書中に開示された全ての範囲が、その中に包含されるあらゆる部分的な範囲を取り込むことが理解される。例えば、「1〜10」の規定された範囲は、最小値の1と最大値の10の間の(及びそれを含めて)あらゆる部分的な範囲;すなわち、1以上の最小値、例えば、1〜6.1に始まって、そして10以下、例えば、5.5〜10の最大値で終わる全ての部分的な範囲を含むことが理解されるべきである。さらに、「本明細書中に援用される」といわれるあらゆる参考文献は、その全体が援用されると理解されるべきである。
【0019】
本願明細書に使用される、単数形(「a」、「an」、及び「the」)が、特別に、且つ、はっきりと1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象物を含むことが、さらに留意される。用語「又は」は、他のものを明確に指示する言葉のない限り、用語「及び/又は」と互換性を持って使用される。
【0020】
また、用語「部分」及び「フラグメント」は、ポリペプチド、核酸、又は他の分子コンストラクトの一部を表すために互換性を持って使用される。
【0021】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、部分的又は完全長のいずれかのタンパク質を含むことができるタンパク質分子を説明するために互換性を持って本明細書中に使用される。
【0022】
当業界で周知のように、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「オリゴペプチド」は、あるアミノ酸のアルファ炭素のカルボキシル基と、第2のアミノ酸のアルファ炭素のアミノ基の間の縮合反応によって形成されたペプチド結合を通じてそのアルファ炭素が連結されるアミノ酸(通常、L-アミノ酸)の連鎖である。通常、タンパク質を作り出すアミノ酸は、アミノ末端残基で始まって、そしてタンパク質のカルボキシ末端残基に向かって増加する順序で付番される。
【0023】
本明細書中では、用語「上流」は、その分子がタンパク質である場合、第2の残基に対してN末端側にある残基を表し、又はその分子が核酸である場合、第2の残基に対して5’側にある残基を表す。同様に、本明細書中では、用語「下流」は、その分子がタンパク質である場合、第2の残基に対してC末端側にある残基を表し、又はその分子が核酸である場合、第2の残基に対して3'側にある残基を表す。
【0024】
他に規定されない限り、本明細書中では、全てが技術的及び科学的な用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を持っている。専門家は、当業界の定義及び用語について、特に分子生物学の最新のプロトコール(例えば、Ausubel, P.M.ら、Short Protocols in Molecular Biology、第4版、第2章、John Wiley & Sons、N.Y.を参照のこと)を対象にする。アミノ酸残基に関する略語は、20個の一般的なL-アミノ酸の1つを表すのに当業界で使用される標準的な3文字、及び/又は1文字コードである。
【0025】
「核酸」は、例えばデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)といったポリヌクレオチドである。前記用語は、一本鎖核酸、二本鎖核酸、並びにヌクレオチド又はヌクレオシド類似体から作られるRNA及びDNAを含むのに使用される。
【0026】
用語「ベクター」は、細胞内に第2の核酸分子を輸送するのに使用できる核酸分子を表す。1つの態様において、ベクターは、ベクター内に挿入されたDNA配列の複製を可能にする。ベクターは、少なくともいくつかの宿主細胞において核酸分子の発現を促進するためにプロモーターを含むことができる。ベクターは、自律的に(染色体外)複製できるか、又は宿主細胞染色体内に統合されることができる。1つの態様において、前記ベクターは、ベクター内に挿入された核酸配列の少なくとも一部に由来するタンパク質を産生することができる発現ベクターを含むことができる。
【0027】
当業界で知られているように、互いに核酸配列をハイブリダイズするための条件は、低いストリンジェンシー〜高いストリンジェンシーにわたるものとして説明できる。一般に、高ストリンジェント・ハイブリダイゼーション条件は、高熱にて低塩バッファー中でハイブリッド物を洗浄することを表す。ハイブリダイゼーションは、65℃にて、当業界で標準的なハイブリダイゼーション溶液、例えば0.5MのNaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用し、そしてプローブの長さに依存して室温〜68℃の温度で0.25MのNaHPO4、3.5%のSDS中で洗浄し、続いて0.1×SSC/0.1%のSDSで洗浄することによって結合したDNAを選別することであろう(Ausubelら)。例えば、高ストリンジェンシーな洗浄は、14塩基のオリゴヌクレオチドプローブに対して37℃にて、17塩基のオリゴヌクレオチドプローブに対して48℃にて、20塩基のオリゴヌクレオチドプローブに対して55℃にて、25塩基のオリゴヌクレオチドプローブに対して60℃にて、又は約250ヌクレオチドの長さのヌクレオチドプローブに対して65℃にて6×SSC/0.05%のピロリン酸ナトリウム中で洗浄することを含む。核酸プローブは、例えば、[γ-32P]ATPでの末端標識、又はランダムプライマー標識による放射性標識ヌクレオチド、例えば[α-32P]dCTPの取り込みによって放射性ヌクレオチドで標識されることができる。あるいは、プローブは、ビオチン化又はフルオレセイン標識ヌクレオチドの取り込みによって標識されることができ、そしてそのプローブスは、ストレプトアビジン又は抗フルオレセイン抗体を使用して検出される。
【0028】
本明細書中では、「小有機分子」は、少なくとも1つの炭素原子を含む2,000ダルトン未満の分子量の分子である。
【0029】
用語「融合タンパク質」は、2つ以上タンパク質由来のアミノ酸配列を持つタンパク質又はポリペプチドを表す。融合タンパク質は、また、別々のタンパク質に由来するアミノ酸部分の間にアミノ酸の連結領域を含むこともできる。
【0030】
本明細書中では、「非RAGEポリペプチド」は、RAGE又はそのフラグメントに由来しないあらゆるポリペプチドである。そのような非RAGEポリペプチドは、免疫グロブリン・ペプチド、二量化ポリペプチド、安定化ポリペプチド、両親媒性ペプチド、あるいはタンパク質のターゲティング又は精製のための「タグ」を提供するアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドを含む。
【0031】
本明細書中では、「免疫グロブリン・ペプチド」は、免疫グロブリン重鎖又はその一部を含むかもしれない。1つの態様において、重鎖の一部は、Fcフラグメント又はその一部でありうる。本明細書中では、Fcフラグメントは、単量体型又は二量体型のいずれかの、重鎖のヒンジ・ポリペプチド、並びに免疫グロブリンの重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む。または、CH1及びFcフラグメントを、免疫グロブリン・ポリペプチドとして使用できる。重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、又はIgA(α)のいずれかから得ることができる。さらに、重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、あるいは生体活性を変化させるするこれらのアイソタイプ又はサブタイプの変異群のいずれか1つから得ることができる。変更されうる生物学的活性の例は、例えばヒンジ領域の修飾による、いくつかのFc受容体に結合するアイソタイプの能力の低下を含む。
【0032】
用語「同一性」又は「パーセント同一の」は、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の間の配列同一性を表す。パーセント同一性は、2つの配列をアラインすることによって測定できて、そして比較された配列によって共有された位置における同じ残基(すなわち、アミノ酸又はヌクレオチド)の数を表す。配列のアラインメント及び比較は、当業界において標準的なアルゴリズムを使用して(例えば、Smith and Waterman、1981年、Adv. Appl Math. 2:482ページ;Needleman and Wunsch、1970年、J. Mol. Bid. 48:443ページ;Pearson and Lipman、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444ページ)又はBLAST及びFASTAとして公的に利用可能なこれらのアルゴリズムのコンピュータ化したバージョン(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive, Madison, WI)によって行われることができる。また、National Institutes of Health、Bethesda, MDを通じて利用可能なENTREZが、配列比較に使用できる。1つの態様において、2つの配列のパーセントの同一性は、各アミノ酸のギャップを2つの配列の間の1つのアミノ酸のミスマッチであるかのように加重するように1のギャップ加重を有するGCGを使用して決定されることができる。
【0033】
本明細書中では、用語「保存残基」は、同じ構造、及び/又は機能を有する多くのタンパク質の中で同じであるアミノ酸を表す。保存残基の領域は、タンパク質の構造又は機能に重要である可能性がある。よって、3次元タンパク質において特定される近接する保存残基は、タンパク質の構造又は機能に重要である可能性がある。保存残基又は三次元構造の保存領域を見つけるために、異なる種から又は同じ種の個体からの同じか又は類似したタンパク質の配列の比較が、行われるかもしれない。
【0034】
本明細書中では、用語「相同体」は、野生型アミノ酸配列と一定の相同性を有するポリペプチドを意味する。相同性比較は、目で見て、又は、より一般的には、容易に利用可能な配列比較プログラムを利用して行うことができる。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列の間の相同性パーセントについて計算できる(例えば、Wilbur, W. J. and Lipman, D. J.、1983年、Proc. Nail Acad. Sci. USA, 80:726-730ページ)。例えば、相同性配列を、別の態様において、互いに、少なくとも70%同一、75%同一、80%同一、85%同一、90%同一、95%同一、97%同一、又は98%同一、あるいは99%同一であるアミノ酸が含まれるようにすることができる。
【0035】
本明細書中では、用語、少なくとも90%同一は、指示された配列に対して90〜99.99%の同一性の範囲におよぶ配列をそこに含み、且つ、その間の全ての範囲を含んでいる。よって、用語、少なくとも90%同一は、指示された配列に対して91、91.5、92、92.5、93、93.5、94、94.5、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99、99.5パーセント同一である配列をそこに含んでいる。同様に、用語、「少なくとも70%同一」は、70〜99.99%同一の範囲にわたり、その間の全ての範囲を含む配列を含んでいる。同一性パーセントの測定は、本明細書中に説明したアルゴリズムを使用して測定される。
【0036】
本明細書中では、ポリペプチド又はタンパク質の「ドメイン」は、独自の単位を含むポリペプチド又はタンパク質に沿った領域を含む。ドメインは、構造、配列、及び/又は生物学的活性の面から規定されることができる。1つの態様において、ポリペプチド・ドメインは、タンパク質の残りの部分から実質的に独立した様式で折り畳まれたタンパク質の領域を含むことができる。ドメインは、例えば、これだけに制限されることなく、PFAM、PRODOM、PROSITE、BLOCKS、PRINTS、SBASE、ISREC、PROFILES、SAMRT、及びPROCLASSといったドメイン・データベースを使用して同定できる。
【0037】
本明細書中では、「免疫グロブリン・ドメイン」は、免疫グロブリンのドメインと構造的に相同であるか、又は同一であるアミノ酸配列である。免疫グロブリン・ドメインのアミノ酸配列の長さは、どんな長さであってもよい。1つの態様において、免疫グロブリン・ドメインは、250アミノ酸未満でありうる。1つの例において、免疫グロブリン・ドメインは、約80〜150アミノ酸の長さでありうる。例えば、IgGの可変領域、並びにCH1、CH2、及びCH3領域は、それぞれ免疫グロブリン・ドメインである。他の例において、IgMの可変、CH1、CH2、CH3、及びCH4領域は、それぞれ免疫グロブリン・ドメインである。
【0038】
本明細書中では、「RAGE免疫グロブリン・ドメイン」は、免疫グロブリンのドメインと構造的に相同であるか、又は同一であるRAGEタンパク質からアミノ酸配列である。例えば、RAGE免疫グロブリン・ドメインは、RAGEのV-ドメイン、RAGEのIg様C2タイプ1ドメイン(「C1ドメイン」)、又はRAGEのIg様C2タイプ2ドメイン(「C2ドメイン」)を含むことができる。
【0039】
本明細書中では、「ドメイン間リンカー」は、2つのドメインを連結させるポリペプチドを含む。Fcヒンジ領域は、IgGのドメイン間リンカーの例である。
【0040】
本明細書中では、「直接連結された」は、連結される2つの基の間にいかなる介在原子も持たない2つの異なる基(例えば、核酸配列、ポリペプチド、ポリペプチド・ドメイン)の間の共有結合とみなす。
【0041】
本明細書中では、「リガンド結合ドメイン」は、リガンドが結合する原因となるタンパク質のドメインを表す。用語、リガンド結合ドメインは、リガンド結合ドメイン又はその一部に関する相同体を含む。この関連で、リガンド結合ドメインの結合特異性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、又は親水性における類似性に基づいてリガンド結合部位において、計画的なアミノ酸置換を行うことができる。
【0042】
本明細書中では、「リガンド結合部位」は、リガンドと直接相互作用するタンパク質内の残基、又はリガンドと直接相互作用する残基に極めて接近したリガンドの位置決めに関与する残基を含む。リガンド結合部位内の残基の相互作用は、モデル又は構造におけるリガンドに対する残基の空間的近接によって規定することができる。用語、リガンド結合部位は、リガンド結合部位の相同体又はその一部を含んでいる。これに関連して、計画的なアミノ酸置換が、リガンド結合部位の結合特異性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水度、又は親水性の類似性に基づいてリガンド結合部位内で行われてもよい。リガンド結合部位は、タンパク質又はポリペプチドの1又は複数のリガンド結合ドメイン内に存在することができる。
【0043】
本明細書中では、用語「相互作用」は、リガンド又は化合物、あるいはその一部若しくはフラグメントと、注目の第2の分子の一部との間の近接条件を表す。相互作用は、非共有結合、例えば水素結合、ファンデルワールス相互作用、静電気、又は疎水性相互作用の結果であるかもしれず、あるいはそれは共有結合でありうる。
【0044】
本明細書中では、「リガンド」は、リガンド結合部位と相互作用する分子、化合物、あるいは、基質若しくはアナログ又はその一部を含む物体を表す。本明細書中に記載のとおり、用語「リガンド」は、注目のタンパク質に結合する化合物を表すことができる。リガンドは、アゴニスト、アンタゴニスト、又はモジュレーターであってもよい。又は、リガンドは生物学的効果を有することができない。又は、リガンドは他のリガンドの結合を妨げ、それによって、生物学的効果を抑制することができる。リガンドは、これだけに制限されることなく、低分子阻害剤を含むことができる。これらの小分子は、ペプチド、ペプチドミメティックス、有機化合物等を含むことができる。リガンドは、また、ポリペプチド、及び/又はタンパク質を含むことができる。
【0045】
本明細書中では、「モジュレーター化合物」は、注目の分子の生物学的活性を変化させるか、又は部分的に変更する分子を表す。モジュレーター化合物は、注目の分子の活性を高めるか又は下げるか、あるいは、物理的若しくは化学的特性、又は機能的若しくは免疫的性質を変化させることができる。RAGEに関して、モジュレーター化合物は、RAGE又はその一部の活性を高めるか若しくは下げるか、あるいは特性、又は機能的若しくは免疫的性質を変化させることができる。モジュレーター化合物は、天然の、及び/又は化学的に合成された、又は人工のペプチド、修飾したペプチド(例えば、リンペプチド)、抗体、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖、糖脂質、複素環式化合物、ヌクレオシド、若しくはヌクレオチド、又はその部分、あるいは小さな有機又は無機分子を含むことができる。モジュレーター化合物は、内因性の生理学的化合物であるか、あるいはそれは天然の又は合成の化合物でありうる。又は、モジュレーター化合物は、小有機分子でありうる。用語「モジュレーター化合物」は、また、化学的に修飾したリガンド又は化合物をも含むので、異性体及びラセミ体を含む。
【0046】
「アゴニスト」は、受容体に結合して、関連する受容体に特異的な薬理学的応答を引き出す複合体を形成する化合物を含む。
【0047】
「アンタゴニスト」は、アゴニストに、又は受容体に結合して、実質的な薬理学的応答をもたらすことなくアゴニストによって誘発される生物学的応答を抑制することができる複合体を形成する化合物を含む。
【0048】
RAGEアゴニストは、このため、RAGEに結合し、RAGE媒介性細胞過程を刺激することができ、且つ、RAGEアンタゴニストは、RAGE媒介性過程がRAGEアゴニストによって刺激されるのを抑制することができる。例えば、ある態様において、RAGEアゴニストによって刺激された細胞過程は、TNF-α遺伝子転写の活性化を含む。
【0049】
用語「ペプチドミメティックス」は、分子間の相互作用においてペプチドの代用の役目を果たすコンストラクトを表す(Morganら、1989年、Ann. Reports Med. Chem., 24:243-252ページ)。ペプチドミメティックスは、アミノ酸、及び/又はペプチド結合を含むことができるが、ペプチド、アゴニスト、又はアンタゴニストの構造的及び機能的特徴を保持する合成のコンストラクトを含むことができる。ペプチドミメティックスは、また、ペプトイド、オリゴペプトイド(Simonら、1972年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:9367ページ)、及び本発明のペプチド、アゴニスト、又はアンタゴニストに対応するアミノ酸のあらゆる可能性のある配列に相当する設計された長さのペプチドを含むペプチド・ライブラリをも含んでいる。
【0050】
用語「処置すること」又は「処置する」は、疾患又は障害の症候を改善することを表し、且つ、障害を治すか、障害の発症を実質的に防ぐか、又は対象の病状を改善することを含むことができる。本明細書中では、用語「処置」は、対象が罹患している所定の障害に関する処置の全領域を表し、その障害から生じる1つの症候又は大部分の症候の緩和、特定の障害の治癒、又は障害の発症の予防を含んでいる。
【0051】
本明細書中では、用語「EC50」は、計測された生物学的効果の50%をもたらすアゴニストの濃度と規定される。例えば、計測可能な生物学的効果を有する処置薬のEC50は、アゴニストが生物学的効果の50%を見せる値を含むことができる。
【0052】
本明細書中では、用語「IC50」は、測定した効果の50%の阻害をもたらすアゴニストの濃度と規定される。例えば、RAGE結合のアンタゴニストのIC50は、アンタゴニストがRAGEのリガンド結合部位へのリガンドの結合を50%まで減少させる値を含むことができる。
【0053】
本明細書中では、「有効量」は、対象における所望の効果を発生さるのに有効であるアゴニストの量を意味する。用語「治療上有効量」は、求められている動物又はヒトの処置応答を引き出す薬物又は医薬的なアゴニストの量を意味する。有効量を含む実際の用量は、投与経路、対象の体格と健康状態、処置される障害等に依存するかもしれない。
【0054】
用語「医薬として許容される担体」は、本明細書中では、例えばRAGE媒介性障害又は疾患の処置のために投与される処置組成物に関してヒト又は動物の対象における使用に好適な化合物及び組成物を表すことができる。
【0055】
用語「医薬組成物」は、本明細書中では、従来の無毒の担体、希釈剤、アジュバント、溶媒等を含む単位投与量製剤として、例えば、経口的に、非経口的に、局所的に、吸入スプレーによって、鼻腔内的に、又は経直腸的に哺乳動物宿主に投与することができる組成物を意味する。
【0056】
用語「非経口」は、本明細書中では、皮下注射、静脈内、筋肉内、嚢内注射、又は注入技術を含んでいる。
【0057】
本明細書中では、「拒絶反応」は、細胞、組織、又は臓器の破壊に至るか、又は細胞、組織、又は臓器への損害に至る組織における免疫又は炎症応答を表す。拒絶された細胞、組織、又は臓器は、拒絶反応が高まっているのと同じ対象に由来するか、又は異なる対象から拒絶反応を示している対象に移植されたかもしれない。
【0058】
本明細書中では、用語「細胞」は、それぞれ独立した生存システムを含む哺乳動物の生存システムの構造及び機能単位を表す。当業界で知られているとおり、細胞は、核、細胞質、細胞内オルガネラ、及び細胞を取り囲んで、細胞が他の細胞から独立することを可能にする細胞壁を含んでいる。
本明細書中では、用語「組織」は、類似した構造及び機能を有するか、又は特定の機能を実行するために一緒に動作する細胞集合体を表す。組織は、類似した細胞の一群、及び細胞を取り囲む細胞間物質を含むことができる。組織は、これだけに制限されることなく、筋肉組織、神経組織、及び骨を含んでいる。
【0059】
本明細書中では、「臓器」は、何らかの特定の機能に専門化した動物体内の完全に差別化された構造及び機能単位を表す。臓器は、特定の機能又は機能群を実行する組織群を含むことができる。臓器は、これだけに制限されることなく、心臓、肺、脳、目、胃、脾臓、膵臓、腎臓、肝臓、腸、皮膚、子宮、膀胱、及び骨を含んでいる。
【0060】
RAGE融合タンパク質
本発明の態様は、RAGE融合タンパク質、そのような融合タンパク質の作製方法、及びそのような融合タンパク質の使用方法を含む。本発明は、様々な方法で実施することができる。
【0061】
例えば、本発明の態様は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を提供する。1つの態様において、RAGE融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含むことができる。ある態様において、リガンド結合部位は、RAGE融合タンパク質のN末端ドメインの大部分を含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン又はその一部を含むことができる。ある態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む。
【0062】
他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第23〜53アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第24〜52アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第31〜52アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第31〜116アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第19〜52アミノ酸を含むことができる。
【0063】
ある態様において、RAGEポリペプチドは、免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリン・ドメインの一部(例えば、そのフラグメント)を含むポリペプチドに連結されてもよい。1つの態様において、免疫グロブリン・ドメインを含むポリペプチドは、少なくとも1つのヒトIgGのCH2又はCH3ドメインの少なくとも一部を含む。
【0064】
RAGEタンパク質又はポリペプチドは、完全長のヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)、又はヒトRAGEのフラグメントを含むことができる。本明細書中では、RAGEポリペプチドのフラグメントは、少なくとも5アミノ酸の長さであり、30アミノ酸より長い長さでありうるが、完全なアミノ酸配列未満である。本発明のタンパク質、方法、及び組成物に関する別の態様において、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一である配列、又はそのフラグメントを含むことができる。例えば、1つの態様において、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりむしろ最初の残基としてグリシンを有するヒトRAGE又はそのフラグメントを含むことができる(例えば、Neeperら(1992)を参照のこと)。又は、ヒトRAGEは、シグナル配列を取り除いた完全長のRAGE(例えば、配列番号2又は配列番号3)(図1A及び1B)、あるいはそのアミノ酸配列の一部を含むことができる。
【0065】
本発明のRAGE融合タンパク質は、また、sRAGE(例えば、配列番号4)、sRAGEと少なくとも90%同一のポリペプチド、又はsRAGEのフラグメントを含むことができる。本明細書中では、sRAGEは、膜貫通領域又は細胞質側末端を含まないRAGEタンパク質である(Parkら、Nature Med. 4:1025-1031ページ(1998年))。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりむしろ最初の残基としてグリシンを有するヒトsRAGE又はそのフラグメントを含むことができる(例えば、Neeperら(1992年)を参照のこと)。又は、RAGEポリペプチドは、シグナル配列が取り除かれたヒトsRAGE(例えば、図1Cの中の配列番号5若しくは配列番号6、又は図16Aの中の配列番号45を参照のこと)、又はそのアミノ酸配列の一部を含むことができる。
【0066】
他の態様において、RAGEタンパク質は、RAGEのVドメインを含むことができる(例えば、図1Dの中の配列番号7若しくは配列番号8(Neeperら(1992年);Schmidtら(1997年))、又は図16Aの中の配列番号46を参照のこと)。又は、RAGEのVドメインに少なくとも90%同一の配列又はそのフラグメントを使用できる。
【0067】
又は、RAGEタンパク質は、RAGEのVドメインのフラグメントを含むことができる(例えば、図1Dの中の配列番号9若しくは配列番号10、又は図16Aの中の配列番号47)。1つの態様において、RAGEタンパク質は、リガンド結合部位を含むことができる。ある態様において、リガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。さらに他の態様において、RAGEフラグメントは合成ペプチドである。
【0068】
よって、本発明のRAGE融合タンパク質に使用されるRAGEポリペプチドは、完全長RAGEのフラグメントを含むことができる。当業界で知られているように、RAGEは、それぞれがドメイン間リンカーによって互いに連結された、Vドメイン、並びにC1及びC2ドメインの3つの免疫グロブリン様ポリペプチド・ドメインを含む。完全長のRAGEは、また、C2ドメインの下流側、且つ、C2ドメインに連結された膜貫通ポリペプチド及び細胞質側末端(C末端)も含んでいる。
【0069】
ある態様において、RAGEポリペプチドは、いかなるシグナル配列残基も含んでいない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGEの第1〜22残基又は第1〜23残基のいずれかを含むことができる。さらに、当業界で知られているように、融合タンパク質のN末端がグルタミンである(例えば、シグナル配列が第1〜23残基を含む)態様において、N末端のグルタミン(Q24)が環化されて、ピログルタミン酸(pE)を形成することができる。そのような分子のコンストラクトの例が、配列番号45、46、47、48、49、50、及び51として示され、並びにRAGE融合タンパク質が56及び57として示されている。
【0070】
当業界で認識されているように、本発明のRAGE融合タンパク質のCH3領域は、特定の組換え系で発現された場合に、翻訳後修飾を通して切り落とされるC末端アミノ酸を持つことができる(例えば、Liら、BioProcessing J. 2005年;4, 23-30ページ)。ある態様において、切り落とされたC末端アミノ酸は、リジン(K)である。
【0071】
よって、様々な態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに相当する、ヒトRAGEの23〜116アミノ酸(配列番号7)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはヒトRAGEの24〜116アミノ酸(配列番号8)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜116アミノ酸(配列番号46)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに相当する、ヒトRAGEの124〜221アミノ酸(配列番号11)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。他の態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに相当する、ヒトRAGEの227〜317アミノ酸(配列番号12)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜123アミノ酸(配列番号13)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはヒトRAGEの24〜123アミノ酸(配列番号14)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Q24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜123アミノ酸(配列番号48)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、及びこれら2つのドメインを連結するドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜226アミノ酸(配列番号17)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはヒトRAGEの24〜226アミノ酸(配列番号18)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Q24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜226アミノ酸(配列番号50)又はそれと90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、sRAGEに相当する(すなわち、V、C1、C2ドメイン、及びドメイン間リンカーをコードする)、ヒトRAGEの23〜339アミノ酸(配列番号5)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはヒトRAGEの24〜339アミノ酸(配列番号6)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Q24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜339アミノ酸(配列番号45)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、これらの配列のそれぞれのフラグメントを使用できる。
【0072】
RAGE融合タンパク質は、RAGE又はそのフラグメントに由来しない数タイプのペプチドを含むことができる。RAGE融合タンパク質の第2のポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。1つの態様において、免疫グロブリン・ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖、又はその一部(すなわち、フラグメント)を含むことができる。例えば、重鎖フラグメントは免疫グロブリンのFcフラグメントに由来するポリペプチドを含むことができるが、ここで、Fcフラグメントは、モノマーとして重鎖ヒンジ・ポリペプチド、及び免疫グロブリン重鎖のCH2とCH3ドメインを含む。重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、又はIgA(α)のいずれか1つから得ることができる。さらに、重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、又は生体活性を変化させるするこれらのアイソタイプ又はサブタイプの突然変異体のいずれか1つから得ることができる。第2のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、あるいはこれらのドメインのいずれか、又は両方の一部を含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン又はその一部を含むポリペプチドは、配列番号38又は配列番号40を含むことができる。免疫グロブリン・ペプチドは、配列番号39又は配列番号41の核酸配列によってコードされていてもよい。また、配列番号38又は配列番号40における免疫グロブリン配列は、また、配列番号52又は配列番号53によってもコードされていてもよいが、ここで、上記配列のC末端にてプロリン(CCGからCCCへ)及びグリシン(GGTからGGGへ)をコードするコドンのサイレント塩基変化が、終止コドン近くのクリプティックRNAスプライシング部位を取り除く。
【0073】
免疫グロブリン鎖のFc部分は、in vivoにおいて炎症誘発性でありうる。よって、1つの態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、免疫グロブリンに由来するドメイン間ヒンジ・ポリペプチドよりむしろRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0074】
よって、1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、免疫グロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチド、又は免疫グロブリンのCH2ドメインのフラグメント若しくは一部に直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの態様において、CH2ドメイン又はそのフラグメントは、配列番号42を含むことができる。ある態様において、配列番号42のフラグメントは、最初の10アミノ酸が取り除かれた配列番号42を含む。1つの態様において、RAGEポリペプチドは、リガンド結合部位を含むことができる。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン又はその一部を含むことができる。ある態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む。
【0075】
本発明のRAGE融合タンパク質に使用するRAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。追加的に又は択一的に、RAGEのフラグメントは、ドメイン間リンカーを含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、上流(すなわち、N末端により近い)又は下流(すなわち、C末端により近い)のドメイン間リンカーに連結されたRAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。さらに他の態様において、RAGEポリペプチドは、それぞれがドメイン間リンカーによって互いに連結された2つの(又はそれより多い)RAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。RAGEポリペプチドは、1又は複数のドメイン間リンカーによって互いに連結された複数のRAGE免疫グロブリン・ドメインを更に含むことができ、そしてN末端のRAGE免疫グロブリン・ドメイン、及び/又はC末端の免疫グロブリン・ドメインに結合させた端末ドメイン間リンカーを有する。RAGE免疫グロブリン・ドメインとドメイン間リンカーの更なる組み合わせが、本発明の範囲内にある。
【0076】
1つの態様において、RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はそのフラグメントを含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結したRAGEドメイン間リンカーを含む。免疫グロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、又はこれらのドメインのいずれか若しくはその両方の一部を含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン又はその一部を含むポリペプチドは、配列番号38又は 配列番号40を含むことができる。
【0077】
先に説明したように、本発明のRAGE融合タンパク質は、RAGE由来の単独の又は複数のドメインを含むことができる。また、RAGEポリペプチド・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質のフラグメントを含むことができる。例えば、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに相当する、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEの23〜136アミノ酸(配列番号15)又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸(配列番号16)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸(配列番号49)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第2のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜251アミノ酸(配列番号19)又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸(配列番号20)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸(配列番号51)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。
【0078】
例えば、1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。RAGE融合タンパク質は、第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、そして第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸に直接連結されるように、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第1のRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。1つの態様において、4ドメインRAGE融合タンパク質は、配列番号32を含むことができる。別の態様において、4ドメインRAGE融合タンパク質は、配列番号33、配列番号34、又は配列番号56を含む。
【0079】
あるいは、3ドメインRAGE融合タンパク質は、RAGEに由来する1つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。例えば、RAGE融合タンパク質は、CH2免疫グロブリン・ドメイン又はCH2免疫グロブリン・ドメインの一部のN末端アミノ酸に、RAGEドメイン間リンカーを介して連結された1つのRAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。1つの態様において、3ドメインRAGE融合タンパク質は、配列番号35を含むことができる。別の態様において、3ドメインRAGE融合タンパク質は、配列番号36、配列番号37、又は配列番号57を含むことができる。
【0080】
RAGEドメイン間リンカーフラグメントは、天然においてRAGE免疫グロブリン・ドメインの下流に存在し、それ故にそこに連結できるペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGEのVドメインに関しては、ドメイン間リンカーは、天然においてVドメインから下流側に存在するアミノ酸配列を含むことができる。ある態様において、リンカーは、完全長のRAGEの第117〜123アミノ酸に相当する配列番号21を含むことができる。又はリンカーは、天然のRAGE配列の追加部分を持ったペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流にいくつかのアミノ酸(例えば、1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸)を含むドメイン間リンカーが使用できる。よって、1つの態様において、ドメイン間リンカーは、完全長のRAGEの第117〜136アミノ酸を含む配列番号23を含むことができる。又はリンカーのいずれかの末端から、例えば1、2、又は3個のアミノ酸が欠失している配列番号21のフラグメントが使用できる。別の態様において、リンカーは、配列番号21又は配列番号23と少なくとも70%同一、75%同一、80%同一、85%同一、90%同一、95%同一、97%同一、98%同一、又は99%同一であるペプチドを含むことができる。
【0081】
RAGEのC1ドメインに関して、リンカーは、天然においてC1ドメインの下流に存在するペプチド配列を含むことができる。ある態様において、リンカーは、完全長のRAGEの第222〜251アミノ酸に相当する配列番号22を含むことができる。又は、リンカーは、天然のRAGE配列の追加部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流のいくつかのアミノ酸(1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸)を含むリンカーが使用できる。又は、配列番号22のフラグメントが使用でき、リンカーのいずれかの末端から、例えば1〜3、1〜5、若しくは1〜10、又は1〜15のアミノ酸を取り除くことができる。例えば、1つの態様において、RAGEドメイン間リンカーは、第222〜226アミノ酸に相当する配列番号24を含むことができる。又は、ドメイン間リンカーは、RAGEの第318〜342アミノ酸に相当する配列番号44を含むことができる。
【0082】
さらに、コードされた配列の中の1つのアミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸(一般的に約5%未満、そしてより一般的に約1%未満)の変更、付加、又は欠失する個々の置換、欠失、付加は、変更が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす保存的に修飾された変化であることを当業者は認識しているであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的な置換表は、当業界で周知である。以下の実例群:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、
は、それぞれ、互いに保存的に置換されるアミノ酸を含む。
【0083】
保存的置換は、(天然又は修飾された)置換するアミノ酸が置換されるアミノ酸と構造的に関連する、すなわち、置換アミノ酸とほぼ同じサイズと電子的特性を有する置換である。よって、置換アミノ酸は、本来のアミノ酸と同じ又は類似した側鎖内の官能基を有するであろう。「保存的置換」は、また、側鎖内の官能基が好適な保護基によって保護されることを除いて、置換されるアミノ酸と同じ置換アミノ酸を利用することも表す。
【0084】
当業界で知られているように、アミノ酸は、酵素学的又は非酵素反応のいずれかの作用機序によってそれらの天然の構造から化学的に修飾されるようになることができる。例えば、1つの態様において、N末端のグルタミン酸又はグルタミンは、脱水を伴って環化されて、ピログルタミン酸(pyroE又はpE)を形成することができる。(Cheliusら、Anal. Chem. 78:2370-2376ページ(2006年)及びBursteinら、Proc. National Acad. Sci. 73:2604-2608ページ(1976年))。さらに、配列番号56のRAGE融合タンパク質は、(完全長のRAGEの番号付けに基づく)第24残基のグルタミンよりむしろ第24残基のグルタミン酸をコードする核酸配列を通じて接近される可能性がある。
【0085】
RAGE融合タンパク質の製造方法
本発明は、また、RAGE融合タンパク質を作製する方法を含む。よって、1つの態様において、本発明は、第二の非RAGEポリペプチドと連結した、RAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを共有結合するステップを含むRAGE融合タンパク質を作製する方法を含む。例えば、連結されたRAGEポリペプチドと第二の非RAGEポリペプチドは、組換えDNAコンストラクトによってコードされていてもよい。その方法は、さらに、DNAコンストラクトを発現ベクターに組み込むステップを含むことができる。また、その方法は、宿主細胞の中に発現ベクターを挿入するステップを含むことができる。
【0086】
例えば、本発明の態様は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を提供する。1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含むことができる。ある態様において、リガンド結合部位は、RAGE融合タンパク質のN末端ドメインの大部分を含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン又はその一部を含むことができる。ある態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む。
【0087】
ある態様において、RAGEポリペプチドは、免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリン・ドメインの一部(例えば、そのフラグメント)を含むポリペプチドに連結されることができる。1つの態様において、免疫グロブリン・ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2又はCH3ドメインの少なくとも一方の少なくとも一部を含む。
【0088】
RAGE融合タンパク質は、組み換えDNA技術によって設計できる。例えば、1つの態様において、本発明は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に相補的であるものを含むか、又は特定の同一性を有する単離された核酸配列を含むことができる。ある態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEリガンド結合部位を含むことができる。
【0089】
RAGEタンパク質又はポリペプチドは、完全長のヒトRAGE(例えば、配列番号1)又はヒトRAGEのフラグメントを含むことができる。ある態様において、RAGEポリペプチドは、シグナル配列残基を全く含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長のRAGE(配列番号1)の第1〜22残基又は第1〜23残基のいずれかを含むことができる。別の態様において、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一である配列、あるいはそのフラグメントを含むことができる。例えば、1つの態様において、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりむしろ最初の残基としてグリシンを有するヒトRAGE又はそのフラグメントを含むことができる(例えば、Neeperら、(1992年)を参照のこと)。又は、ヒトRAGEは、ヒトRAGEは、シグナル配列を取り除いた完全長のRAGE(例えば、配列番号2又は配列番号3)(図1A及び1B)あるいはそのアミノ酸配列の一部を含むことができる。また、本発明のRAGE融合タンパク質は、また、sRAGE(例えば、配列番号4)、sRAGEと少なくとも90%同一のポリペプチド、又はsRAGEのフラグメントを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりむしろ最初の残基としてグリシンを有するヒトsRAGE又はそのフラグメントを含むことができる(例えば、Neeperら、(1992年)を参照のこと)。又は、ヒトRAGEは、シグナル配列が取り除かれたsRAGE(例えば、図1Cの中の配列番号5若しくは配列番号6、又は図16Aの中の配列番号45を参照のこと)、あるいはそのアミノ酸配列の一部を含むことができる。他の態様において、RAGEタンパク質は、Vドメイン(例えば、図1Dの中の配列番号7若しくは配列番号8、又は図16Aの中の配列番号46を参照のこと)を含むことができる。又は、Vドメインと少なくとも90%同一の配列、又はそのフラグメントを使用できる。又はRAGEタンパク質は、Vドメインの一部を含むRAGEのフラグメント(例えば図1Dの中の配列番号9若しくは配列番号10、又は図16Aの中の配列番号47を参照のこと)を含むことができる。ある態様において、リガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。さらに他の態様において、RAGEフラグメントは合成ペプチドである。
【0090】
ある態様において、核酸配列は、ヒトRAGEの1〜118アミノ酸又はそのフラグメントをコードする配列番号25を含む。例えば、配列番号25の第1〜348ヌクレオチドを含む配列が、ヒトRAGEの1〜116アミノ酸をコードするのに使用できる。又は、核酸は、ヒトRAGEの1〜123アミノ酸をコードする配列番号26を含むことができる。又は、核酸は、ヒトRAGEの1〜136アミノ酸をコードする配列番号27を含むことができる。又は、核酸は、ヒトRAGEの1〜230アミノ酸をコードする配列番号28を含むことができる。又は、核酸は、ヒトRAGEの1〜251アミノ酸をコードする配列番号29を含むことができる。又は、これらの核酸配列が、RAGEポリペプチドフラグメントをコードするのに使用できる。
【0091】
RAGE融合タンパク質は、RAGE又はそのフラグメントに由来しない数タイプのペプチドを含むことができる。RAGE融合タンパク質の第2のポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、又はIgA(α)のいずれか1つから得ることができる。さらに、重鎖(その一部)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、又は生体活性を変化させるするこれらのアイソタイプ若しくはサブタイプの変異体のいずれか1つから得ることができる。第2のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、又はこれらのドメインのいずれか、若しくは両方の一部を含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン又はその一部を含むポリペプチドは、配列番号38又は配列番号40を含むことができる。免疫グロブリン・ペプチドは、配列番号39又は配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。別の態様において、配列番号38又は配列番号40における免疫グロブリン配列が、また、配列番号52又は配列番号53によってそれぞれコードされることもできる。
【0092】
免疫グロブリン鎖のFc部分は、in vivoにおいて炎症誘発性でありうる。よって、本発明のRAGE融合タンパク質は、免疫グロブリンに由来するドメイン間ヒンジ・ポリペプチドよりむしろRAGEに由来するドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、組換えDNAコンストラクトによってコードされることができる。また、その方法は、DNAコンストラクトを発現ベクター内に組み込むステップを含むことができる。また、その方法は、宿主細胞内に発現ベクターをトランスフェクションすることを含むことができる。
【0093】
よって、1つの態様において、本発明は、免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドにRAGEポリペプチドを連結する共有結合ステップを含むRAGE融合タンパク質の作製方法を含む。1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含むことができる。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン又はその一部を含むことができる。ある態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む。
【0094】
例えば、1つの態様において、本発明は、免疫グロブリンのCH2ドメイン又はそのフラグメントを含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドをコードする核酸を含む。1つの態様において、CH2ドメイン又はそのフラグメントは、配列番号42を含む。ある態様において、配列番号42のフラグメントは、最初の10個のアミノ酸が取り除かれた配列番号42を含む。第2のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38又は配列番号40を含むことができる。免疫グロブリン・ペプチドは、配列番号39又は配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。配列番号38又は配列番号40における免疫グロブリン配列は、また、配列番号52又は配列番号53によってコードされることもできるが、ここで、上記配列のC末端にてプロリン(CCGからCCCへ)及びグリシン(GGTからGGGへ)をコードするコドンのサイレント塩基変化が、終止コドン近くのクリプティックRNAスプライシング部位を取り除く。
【0095】
1つの態様において、RAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はそのフラグメントを含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、又はこれらのドメインの両方、若しくはいずれかの一部を含むポリペプチドを含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン又はその一部を含むポリペプチドは、配列番号38又は配列番号40を含むことができる。
【0096】
本発明のRAGE融合タンパク質は、RAGE由来の1つの又は複数のドメインを含むことができる。また、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長のRAGEタンパク質のフラグメントを含むことができる。例えば、1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。RAGE融合タンパク質は、第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、そして第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメイン又はそのフラグメントを含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第1のドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、これらの2つのドメインに連結されたドメイン間リンカー、及びC1の下流の第2のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜251アミノ酸(配列番号19)又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸(配列番号20)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸(配列番号51)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。1つの態様において、配列番号30又はそのフラグメントを含む核酸コンストラクトは、4ドメインRAGE融合タンパク質をコードできる。他の態様において、配列番号54を含む核酸コンストラクトは、4ドメインRAGE融合タンパク質をコードできるが、ここで、上記配列のC末端にてプロリン(CCGからCCCへ)及びグリシン(GGTからGGGへ)をコードするコドンのサイレント塩基変化が、終止コドン近くのクリプティックRNAスプライシング部位を取り除くために組み入れられる。
【0097】
あるいは、3ドメインRAGE融合タンパク質は、RAGEに由来する1つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。例えば、RAGE融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2免疫グロブリン・ドメイン又はそのフラグメントを含むポリペプチドのN末端アミノ酸に連結された1つのRAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜136アミノ酸(配列番号15)又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸(配列番号16)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸(配列番号49)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。1つの態様において、配列番号31又はそのフラグメントを含む核酸コンストラクトは、3ドメインRAGE融合タンパク質をコードできる。他の態様において、配列番号55を含む核酸コンストラクトは、3ドメインRAGE融合タンパク質をコードできるが、ここで、上記配列のC末端にてプロリン(CCGからCCCへ)及びグリシン(GGTからGGGへ)をコードするコドンのサイレント塩基変化が、終止コドン近くのクリプティックRNAスプライシング部位を取り除く。
【0098】
RAGEドメイン間リンカーフラグメントは、天然においてRAGE免疫グロブリン・ドメインの下流に存在し、よって、そこに連結されるペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGEのVドメインに関して、ドメイン間リンカーは、天然においてVドメインから下流側に存在するアミノ酸配列を含むことができる。ある態様において、リンカーは、完全長のRAGEの第117〜123アミノ酸に相当する配列番号21を含むことができる。又は、リンカーは、天然のRAGE配列の追加部分を持ったペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流にいくつかのアミノ酸(例えば、1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸)を含むドメイン間リンカーを使用できる。よって、1つの態様において、ドメイン間リンカーは、完全長のRAGEの第117〜136アミノ酸を含む配列番号23を含む。又は、リンカーのいずれかの末端から1、2、又は3個のアミノ酸を取り除いた配列番号21のフラグメントを使用できる。別の態様において、リンカーは、配列番号21又は配列番号23と少なくとも70%同一、又は80%同一、あるいは90%同一である配列を含むことができる。
【0099】
RAGEのC1ドメインに関して、リンカーは、天然においてC1ドメインの下流に存在するペプチド配列を含むことができる。ある態様において、リンカーは、完全長のRAGEの第222〜251アミノ酸に相当する配列番号22を含むことができる。又は、リンカーは、天然のRAGE配列の追加部分を持ったペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流にいくつかのアミノ酸(1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸)を含むリンカーを使用できる。又は、リンカーのいずれかの末端から、例えば1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸を取り除いた配列番号22のフラグメントを使用できる。例えば、1つの態様において、RAGEドメイン間リンカーは、第222〜226アミノ酸に相当する配列番号24を含むことができる。又は、ドメイン間リンカーは、RAGEの第318〜342アミノ酸に相当する配列番号44を含むことができる。
【0100】
前記方法は、さらに、DNAコンストラクトを発現ベクター内に組み込むステップを含むことができる。よって、ある態様において、本発明は、免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質をコードする発現ベクターを含む。ある態様において、RAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを持ったコンストラクト、例えば、本明細書に記載のものを含む。例えば、細胞をトランスフェクションするのに使用する発現ベクターは、配列番号30又はそのフラグメント、配列番号54又はそのフラグメント、配列番号31又はそのフラグメント、あるいは配列番号55又はそのフラグメントの核酸配列を含むことができる。
【0101】
前記方法は、さらに、本発明の発現ベクターで細胞をトランスフェクションするステップを含むことができる。よって、ある態様において、本発明は、その上記細胞が、免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を発現するように、本発明のRAGE融合タンパク質が発現される発現ベクターでトランスフェクションされた細胞を含む。ある態様において、RAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結させたRAGEドメイン間リンカーを持ったコンストラクト、例えば本明細書中に説明したものを含む。例えば、発現ベクターは、配列番号30又はそのフラグメント、配列番号54又はそのフラグメント、配列番号31又はそのフラグメント、あるいは配列番号55又はそのフラグメントの核酸配列を含むことができる。
【0102】
例えば、プラスミドは、異なる長さのヒトRAGEの5’側のcDNA配列を、ヒトIgG1(γ1)の3’側のcDNA配列と融合することによってRAGE-IgG融合タンパク質を発現するように構築されることができる。発現カセット配列は、標準的な組換え技術を使用して、例えばpcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen, CA)といった発現ベクター内に挿入されることができる。
【0103】
また、前記方法は、宿主細胞内に本発明の発現ベクターをトランスフェクションすることを含むことができる。RAGE融合タンパク質は、発現コンストラクトが、例えばレトロウイルス又はアデノウイルスといったウイルスを使用して哺乳動物細胞内に導入される系を含む哺乳動物発現系で発現されることができる。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当業界で周知であり、そしてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から利用可能な多くの不死化細胞株を含んでいる。これらは、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、及び他の多くの細胞株が含まれる。細胞株は、どの細胞株がRAGE融合タンパク質の高い発現レベルを有するかを決定することで選択できる。使用できる他の細胞株は、例えばSf9細胞といった昆虫細胞株である。植物宿主細胞は、例えば、タバコ、アラビドプシス、ウキクサ、トウモロコシ、小麦、ジャガイモなど含んでいる。細菌宿主細胞は、E.コリ(E. coli)及びストレプトミセス(Streptomyces)種を含んでいる。酵母宿主細胞は、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含んでいる。RAGE融合タンパク質遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞内に導入される場合、RAGE融合タンパク質は、宿主細胞内でのRAGE融合タンパク質の発現、又は宿主細胞が培養される培養液中へのRAGE融合タンパク質の分泌を可能にするのに十分な時間、宿主細胞を培養することによって産生される。RAGE融合タンパク質は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養液から回収されることができる。
【0104】
RAGE融合タンパク質をコードする核酸分子、及びこれらの核酸分子を含む発現ベクターは、好適な哺乳動物、植物、細菌、又は酵母宿主細胞のトランスフェクションに使用されることができる。形質転換は、宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するためのあらゆる既知の方法によってでもよい。哺乳動物細胞内への異種ポリヌクレオチドの導入の方法は、当業界で周知であり、そしてデキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション、リポソーム中へのポリヌクレオチドのカプセル化、及び核内へのDNAの直接的な微量注射を含んでいる。さらに、核酸分子は、ウイルス・ベクターによって哺乳動物細胞内に挿入されることができる。植物細胞の形質転換方法は、当業界で周知であり、アグロバクテリウム媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、直接注入、エレクトロポレーション、及びウイルス形質転換を含む。細菌及び酵母細胞を形質転換する方法もまた当業界で周知である。
【0105】
発現ベクターは、また、プラスミドを微細粒子、好ましくは金の上に沈着させ、そしてその粒子を標的細胞又は発現系の中に飛び込ませる、DNAバイオリスティクスを使用して発現系に提供されることもできる。DNAバイオリスティックス技術は、当業界で周知であり、そして、例えば「遺伝子銃」といったデバイスは細胞内(例えば、Helios Gene Gun、Bio-Rad Labs., Hercules, CA)及び皮膚内(PMED Device、PowderMed Ltd., Oxford, UK)への微細粒子のデリバリーのために市販されている。
【0106】
産生細胞株からのRAGE融合タンパク質の発現は、多くの既知の技術を使用して強化することができる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)及び血漿でコードされたネオマイシン耐性系は、一定の条件下で発現を強化するための一般的なアプローチである。
【0107】
異種細胞株によって発現されたRAGE融合タンパク質は、互いに異なるグリコシル化パターンを持つ可能性がある。しかしながら、本明細書中に提供されたか、又は本明細書中に提供されたアミノ酸配列を含む核酸分子によってコードされた全てのRAGE融合タンパク質は、RAGE融合タンパク質のグリコシル化にかかわらず、当該発明の一部である。
【0108】
1つの態様において、組換え発現ベクターは、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)内にトランスフェクションされ、そして発現が最適化されることができる。別の態様において、前記細胞は、0.1〜20グラム/リットル、0.5〜10グラム/リットル、又は約1〜2グラム/リットルを産生できる。
【0109】
当業界で知られているとおり、そのような核酸コンストラクトは、例えば、注目の突然変異を含むプライマーを用いた核酸鋳型のPCR増幅のように、突然変異によって修飾できる。このようにして、RAGEリガンドに対する親和性を変えることを含むポリペプチドを、設計することができる。1つの態様において、突然変異配列は、開始DNAと90%以上同一でありうる。そのようなものとして、変異体は、ストリンジェント条件下(すなわち、1モルの塩中でのDNA二本鎖の融解温度(TM)より約20〜27℃低い温度に相当)でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0110】
コード配列は、適切な宿主内に発現ベクターをトランスフェクションすることによって発現することができる。例えば、組換えベクターは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内に安定してトランスフェクションすることができ、そしてRAGE融合タンパク質を発現する細胞を選択し、そしてクローニングすることができる。ある態様において、組換えコンストラクトを発現する細胞は、抗生物質G418を適用することによって、プラスミドにコードされたネオマイシン耐性について選択される。個々のクローンを選択でき、そして、細胞上清のウェスタンブロット分析によって検出される高レベルの組換えタンパク質を発現するクローンを高めることができ、そして、その遺伝子産物を、プロテインAカラムを使用した親和性クロマトグラフィーで精製した。
【0111】
本発明のRAGE融合タンパク質をコードする組換え核酸の態様のサンプルが、図2〜5及び図17〜20に示されている。例えば、先に説明したように、組換えDNAコンストラクトによって作り出されたRAGE融合タンパク質は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドを含むかもしれない。RAGE融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのドメイン、及び免疫グロブリンに由来する2つのドメインを含むことができる。このタイプの構造を有するRAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)をコードする核酸コンストラクトの例が、図2(配列番号30)及び図17(配列番号54)に示されている。図2及び図17に示されているように、(ボールド体で強調された)コード配列1〜753がRAGEのN末端タンパク質配列をコードする一方で、754〜1386はIgGタンパク質配列をコードする。
【0112】
配列番号30又は配列番号54、あるいはそれらと少なくとも90%同一の配列に由来する場合、RAGE融合タンパク質は、配列番号32の4ドメイン・アミノ酸配列、又はシグナル配列が取り除かれたポリペプチドを含むことができる(例えば、図4の中の配列番号33若しくは配列番号34、又は図19の中の配列番号56を参照のこと)。図4及び図19において、RAGEアミノ酸配列は、ボールド体で強調されている。免疫グロブリン配列は、IgGのCH2及びCH3免疫グロブリン・ドメインである。図6Bに示されるように、完全長のTTP-4000 RAGE融合タンパク質の初めの251個のアミノ酸は、RAGEポリペプチド配列として、第1〜22/23アミノ酸を含むシグナル配列、第23/24〜116アミノ酸を含む(リガンド結合部位を含む)V免疫グロブリン・ドメイン、第117〜123アミノ酸を含むドメイン間リンカー、第124〜221アミノ酸を含む第2の免疫グロブリン・ドメイン(C1)、及び第222〜251アミノ酸を含む下流ドメイン間リンカーを含む。
【0113】
ある態様において、RAGE融合タンパク質は、必ずしも、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができるわけではない。例えば、RAGE融合タンパク質は、RAGEに由来する1つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。このタイプのRAGE融合タンパク質をコードする核酸コンストラクトの例が、図3(配列番号31)及び図18(配列番号55)に示されている。図3及び図18に示されているように、(ボールド体で強調された)第1〜408ヌクレオチドのコード配列がRAGEのN末端タンパク質配列をコードする一方で、409〜1041の配列はIgG1(γ1)タンパク質配列をコードする。
【0114】
配列番号31又は配列番号55、あるいはそれらと少なくとも90%同一の配列に由来する場合、RAGE融合タンパク質は、配列番号35の3ドメイン・アミノ酸配列、又はシグナル配列が取り除かれたポリペプチドを含むことができる(例えば、図5の中の配列番号36若しくは配列番号37、又は図20の中の配列番号57を参照のこと)。図5及び図20において、RAGEアミノ酸配列は、ボールド体で強調されている。図6Bに示されるように、完全長のTTP-3000 RAGE融合タンパク質の初めの136個のアミノ酸は、RAGEポリペプチドとして、第1〜22/23アミノ酸を含むシグナル配列、第23/24〜116アミノ酸を含む(リガンド結合部位を含む)V免疫グロブリン・ドメイン、及び第117〜136アミノ酸を含むドメイン間リンカーを含む。137〜346の配列は、IgGのCH2及びCH3免疫グロブリン・ドメインを含む。
【0115】
本発明のRAGE融合タンパク質は、第2のポリペプチドを含まないRAGEポリペプチドを上回る改善されたインビボにおける安定性を含むことができる。RAGE融合タンパク質は、安定性、有効性、作用強度、及び生物学的利用能を高めるためにさらに修飾されてもよい。よって、本発明のRAGE融合タンパク質は、翻訳後過程又は化学修飾によって修飾されることができる。例えば、RAGE融合タンパク質は、L-、D-又は天然にないアミノ酸、α-二基置換アミノ酸、又はN-アルキル・アミノ酸を含むように合成的に調製されてもよい。さらに、タンパク質は、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、例えばホスファチジルイノシトールといった脂質の付着、ジスルフィド結合の形成によって修飾されてもよい。さらに、ポリエチレングリコールが、RAGE融合タンパク質の生物学的安定性を高めるために加えられることができる。
【0116】
RAGE融合タンパク質へのRAGEアンタゴニストの結合
本発明のRAGE融合タンパク質は、多くの用途を含むことができる。例えば、本発明のRAGE融合タンパク質は、例えばRAGEアゴニスト、アンタゴニスト、又はモジュレーターといったRAGEリガンドを同定するための結合アッセイに使用されることができる。
【0117】
例えば、1つの態様において、本発明は以下の:(a)第二の非RAGEポリペプチドに連結している、リガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を準備し;(b)注目の化合物及びRAGEに対して既知の結合親和性を有するリガンドを、RAGE融合タンパク質と混合し;そして(c)注目の化合物の存在下、RAGE融合タンパク質への既知のRAGEリガンドの結合を測定すること、を含むRAGEモジュレーターの検出方法を提供する。ある態様において、リガンド結合部位は、RAGE融合タンパク質のN末端ドメインの大部分を含む。
【0118】
RAGE融合タンパク質は、また、RAGEモジュレーターの検出のためのキットを提供することができる。例えば、1つの態様において、本発明のキットは、(a)ポジティブコントロールとしてRAGEに対して既知の結合親和力を有する化合物;(b)第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質であって、上記RAGEポリペプチドがRAGEリガンド結合部位を含むもの;及び(c)取扱説明書、を含むことができる。ある態様において、リガンド結合部位は、RAGE融合タンパク質のN末端ドメインの大部分を含む。
【0119】
例えば、RAGE融合タンパク質は、強力なRAGEリガンドを同定するための結合アッセイで使用できる。そのような結合アッセイの態様の一例において、既知のRAGEリガンドは、各ウェルが約100マイクロリットル(μL)の総容積を収容できる場合に、1ウェルあたり約5マイクログラムの濃度で固体基板(例えば、Maxisorbプレート)上にコートすることができる。プレートは、4℃で一晩インキューベートされ、リガンドを吸着させる。あるいは、より高い温度(例えば、室温)でのより短いインキュベーション時間を使用することができる。リガンドを前記基板に結合させる時間の後に、アッセイ・ウェルは吸引され、そして非特異的結合をブロックするために、ブロッキング・バッファー(例えば、50mMのイミダゾール・バッファー中、1%のBSA、pH7.2)を加えることができる。例えば、ブロッキング・バッファーは、室温で1時間、プレートに加えておくことができる。プレートは、次に、吸引される、及び/又は洗浄バッファーで洗浄されることができる。1つの態様において、20mMのイミダゾール、150mMのNaCl、0.05%のTween-20、5mMのCaCl2、及び5mMのMgCl2、pH7.2を含むバッファーが、洗浄バッファーとして使用できる。RAGE融合タンパク質は、次に、漸増する希釈度でアッセイ・ウェルに加えられることができる。RAGE融合タンパク質は、次に、結合が平衡に達するように、アッセイ・ウェル中で固定化リガンドと一緒にインキューベートしてもよい。1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、37℃で約1時間、固定化リガンドと一緒にインキューベートしてもよい。別の態様において、より低温でより長いインキュベーション時間を使用することができる。RAGE融合タンパク質と固定化リガンドがインキューベートされた後に、あらゆる非結合RAGE融合タンパク質を取り除くために、前記プレートは洗浄されることができる。固定化リガンドに結合したRAGE融合タンパク質は、様々な方法で検出されることができる。1つの態様において、検出にはELISAを用いる。よって、1つの態様において、モノクローナル・マウス抗ヒトIgG1、ビオチン化ヤギ抗マウスIgG、及びアビジン連結アルカリホスファターゼを含む免疫検出複合体は、アッセイ・ウェルに固定されたRAGE融合タンパク質に加えられることができる。RAGE融合タンパク質と免疫検出複合体の間の結合が平衡に達するように、免疫検出複合体を固定されたRAGE融合タンパク質と結合させることができる。例えば、前記複合体を、RAGE融合タンパク質と室温で1時間結合させることができる。その時点で、洗浄バッファーでアッセイ・ウェルを洗浄することによって、あらゆる非結合複合体が取り除かれることができる。結合複合体は、アルカリホスファターゼ基質であるパラ-ニトロフェニルリン酸(PNPP)を加え、そして405nmの吸光度の増大としてPNPPのパラニトロフェノール(PNP)への転換を測定することによって検出できる。
【0120】
ある態様において、RAGEリガンドは、ナノモル(nM)又はマイクロモル(μM)の親和性でRAGE融合タンパク質に結合する。本発明のRAGE融合タンパク質へのRAGEリガンドの結合を説明する実験が、図7に示されている。それぞれ、1.082mg/mL及び370mg/mLの初期濃度を有するTTP-3000(TT3)及びTTP-4000(TT4)の溶液が、調製された。図7に示されるとおり、様々な希釈度にて、RAGE融合タンパク質TTP-3000及びTTP-4000は、固定されたRAGEリガンドであるアミロイドβ(Abeta)(Biosource製のアミロイドβ(1〜40))、S100b(S100)、及びアンホテリン(Ampho)に結合することができ、吸光度の増大をもたらす。リガンドの不存在(すなわち、BSAのみでコートする)において、吸光度の増大は全くなかった。
【0121】
本発明の結合アッセイは、RAGEへのリガンド結合を定量化するために使用できる。別の態様において、RAGEリガンドは、0.1〜1000ナノモル(nM)、又は1〜500nM、又は10〜80nMの範囲にわたる結合親和性で本発明のRAGE融合タンパク質に結合することができる。
【0122】
本発明のRAGE融合タンパク質は、また、RAGEに結合する能力を持っている化合物を同定するためにも使用できる。それぞれ図8及び9に示されているように、RAGEリガンドは、TTP-4000(TT4)又はTTP-3000(TT3)RAGE融合タンパク質に結合する固定されたアミロイドβと競争するその能力をアッセイされることができる。よって、10μMの最終アッセイ濃度(FAC)のRAGEリガンドが、最初のTTP-4000溶液(図8)又はTTP-3000(図9)の1:3、1:10、1:30、及び1:100の濃度にてRAGE融合タンパク質のアミロイド-βへの結合に置き換わり得ることが分かった。
【0123】
細胞エフェクターの調節
本発明のRAGE融合タンパク質の態様が、RAGEによって媒介される生物学的反応を調節するために使用できる。例えば、RAGE融合タンパク質は、RAGE誘導性の遺伝子発現増大を調節するように設計できる。よって、ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、生体酵素の機能を調節するために使用できる。例えば、RAGEとそのリガンドの間の相互作用は、酸化ストレス、そしてNF-κBの活性化、及び、例えばサイトカインであるIL-1β、TNF-α等のNF-κB制御遺伝子を作り出すことができる。さらに、例えばp21ras、MAPキナーゼ、ERK1、及びERK2に関与するものなどの他のいくつかの調節経路が、AGE及びRAGEに対する他のリガンドの結合によって活性化されることが示された。
【0124】
細胞エフェクターであるTNF-αの発現を調節するための本発明のRAGE融合タンパク質の使用は、図10に示されている。THP-1骨髄細胞は、10%のウシ胎児血清を補ったRPMI-1640培地中で培養され、そしてS100bによるRAGEの刺激によってTNF-αを分泌するように誘導されてもよい。RAGE融合タンパク質の存在下でそのような刺激が生じた場合に、RAGEにS100bが結合することによるTNF-αの誘導は抑制されるかもしれない。よって、図10に示されているように、10μgのTTP-3000(TT3)又はTTP-4000(TT4)RAGE融合タンパク質の添加は、約50%〜75%までTNF-αのS100b誘導を減少させる。RAGE融合タンパク質TTP-4000は、sRAGEのように、TNF-αのS100b誘導の遮断に少なくとも同じくらい有効でありうる(図10)。TTP-4000及びTTP-3000のRAGE配列に対する阻害の特異性は、IgGのみがS100b刺激細胞に加えられた実験によって示される。アッセイへのIgG及びS100bの添加は、S100b単独と同じのTNF-αレベルを示している。
【0125】
RAGE融合タンパク質の生理学的特徴
sRAGEがRAGE媒介性疾患の調節において治療効果を有することができるとはいえ、ヒトsRAGEは、血漿中におけるsRAGEの比較的短い半減期に基づく独立した治療法として限界があるかもしれない。例えば、齧歯動物sRAGEは、正常なラット及び糖尿病ラットにおいて約20時間の半減期を持っているのに対して、sRAGEの免疫反応性の保持によって評価した場合に、ヒトsRAGEは2時間未満の半減期しかなかった(Renardら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、290:1458-1466ページ(1999年))。
【0126】
sRAGEと類似した結合特性を有するが、より安定した薬理動態学的特性を有するRAGE処置法を作り出すために、1又は複数のヒト免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEリガンド結合部位を含むRAGE融合タンパク質が使用できる。当業界で知られているように、免疫グロブリン・ドメインは、免疫グロブリン重鎖のFc部分を含むことができる。
【0127】
免疫グロブリンのFc部分は、RAGE融合タンパク質にいくつかの特質を与えることができる。例えば、Fc融合タンパク質は、多くの場合、何時間〜数日、上記融合タンパク質の血中半減期を拡張することができる。薬理動態学的の安定性の増大は、一般に、FcRn受容体と、FcフラグメントのCH2とCH3領域間のリンカーとの相互作用の結果である(Winesら、J. Immunol. 164:5313-5318ページ(2000年))。
【0128】
免疫グロブリンFcポリペプチドを含む融合タンパク質は安定性が高いという利点をもたらすが、免疫グロブリン融合タンパク質は、宿主内に導入された場合に、炎症反応を引き起こす可能性がある。炎症反応は、主に、融合タンパク質の免疫グロブリンのFc部分に起因するかもしれない。排除される必要がある罹患した細胞型(例えば、癌細胞、自己免疫疾患を引き起こすリンパ球の集団)で標的が発現される場合、炎症誘発性反応が望ましい特性でありうる。ほとんどの可溶タンパク質が免疫グロブリンを活性化しないので、標的が可溶タンパク質である場合には、炎症誘発性反応は中立の特性でありうる。しかしながら、その破壊が有害な副作用をもたらす細胞型にて標的が発現される場合には、炎症誘発性反応は負の特性でありうる。また、炎症の多くのメディエーターが周辺組織に対して有害であり、及び/又は全身作用を引き起こす可能性があるので、炎症カスケードが組織標的に結合する融合タンパク質の場所にて構築される場合には、炎症誘発性反応は負の特性でありうる。
【0129】
免疫グロブリンFcフラグメントの一次炎症誘発性部位は、CH1とCH2の間のヒンジ部に存在する。このヒンジ領域は、様々な白血球上のFcR1〜3と相互作用し、そしてこれらの細胞が標的を侵襲する誘因となる(Winesら、J. Immunol. 164:5313-5318ページ(2000年))。
【0130】
RAGE媒介性疾患のための治療法として、RAGE融合タンパク質は炎症反応の発生を必要とされないかもしれない。よって、本発明のRAGE融合タンパク質の態様は、免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を含むことができるが、ここで、上記免疫グロブリンのFcヒンジ領域は取り除かれ、そしてRAGEポリペプチドで置き換えられている。このように、炎症細胞上でのRAGE融合タンパク質とFc受容体との相互作用を最小限にすることができる。しかしながら、RAGE融合タンパク質の様々な免疫グロブリン・ドメイン間の適切な積重ね、及び他の3次元構造の相互作用を維持することは、重要であるかもしれない。よって、本発明のRAGE融合タンパク質の態様は、免疫グロブリン重鎖の正常なヒンジ領域の代わりに、RAGEのVとC1ドメインを分離する生物学的に不活性な、しかし、構造的に類似したRAGEドメイン間リンカー、又はRAGEのC1とC2ドメインを分離するリンカーを置換できる。よって、RAGE融合タンパク質のRAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインの下流で天然に見られて、RAGEの免疫グロブリン・ドメイン/リンカーフラグメントを形成するドメイン間リンカー配列を含むことができる。このように、RAGE又は免疫グロブリンのいずれかによって導かれた免疫グロブリン・ドメイン間の3次元相互作用を維持することができる。
【0131】
ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、sRAGEと比べて、薬理動態学的安定性のかなりの増大を含むことができる。例えば、図11は、RAGE融合タンパク質TTP-4000はいったんリガンドの飽和状態にすると、それが300時間より長い半減期を保持できることを示している。これは、ヒト血漿中のほんの数時間のsRAGEの半減期とは対照的である。
【0132】
よって、ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質が、許容できない量の炎症を引き起こすことなくRAGE媒介性疾患を処置する手段としてRAGEに対する生理的リガンドの結合に拮抗するように使用されてもよい。本発明のRAGE融合タンパク質は、IgGと比べて、炎症誘発性反応の発生のかなりの減少を示すことができる。例えば、図12に示されるとおり、RAGE融合タンパク質TTP-4000は、TNF-α放出のヒトIgG刺激が検出される条件下、細胞からのTNF-α放出を刺激しない。
【0133】
RAGE融合タンパク質を用いた疾患の処置
本発明は、また、ヒト対象におけるRAGE媒介性障害の処置のための方法を含むこともできる。ある態様において、前記方法は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を対象に投与することを含むことができる。
【0134】
ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、様々な経路で投与されることができる。本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、腹腔内(IP)注射を用いることができる。あるいは、RAGE融合タンパク質は、経口的に、鼻腔内に、又はエアゾール剤として投与されることができる。他の態様において、投与は静脈注射(IV)である。RAGE融合タンパク質は、また、皮下注射されることもできる。他の態様において、RAGE融合タンパク質の投与は、動脈注射である。他の態様において、投与は舌下である。また、投与は、時限放出性カプセル剤が用いられることもできる。さらに他の態様において、投与は、座剤などによるように経直腸でありうる。例えば、皮下投与は、自己投与が望まれる場合の慢性障害を処置するために有用でありうる。
【0135】
様々な動物モデルが、治療法としてRAGEを調節する化合物の使用の正当性を確認するのに使用された。これらのモデルの例は、以下の通りである:
a)sRAGEは、RAGEを介した内皮、平滑筋、及びマクロファージ活性化を抑制することによって糖尿病ラット及び正常ラットの両方における動脈傷害後のラット再狭窄モデルでの新生内膜形成を阻害した(Zhouら、Circulation 107:2238-2243ページ(2003年));
b)sRAGE又は抗RAGE抗体のいずれかを使用したRAGE/リガンド相互作用の阻害は、マウス全身性アミロイドーシス・モデルにおけるアミロイド斑形成を減少させた(Yanら、Nat. Med. 6:643-651ページ(2000年))。アミロイド斑の減少に伴って起こることは、炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)及びマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の減少であり、並びに処置された動物においてNF-κBの活性化を低下させた;
c)RAGEトランスジェニック・マウス(RAGE過剰発現及びRAGEドミナントネガティブ)は、マウスADモデルにおけるプラーク形成及び認知機能障害を示す(Arancioら、EMBO J. 23:4096-4105ページ(2004年));
d)sRAGEでの糖尿病ラットの処置が、血管の透過性を低下させた(Bonnardel-Phuら、Diabetes 48:2052-2058ページ(1999年));
e)sRAGEでの処置が、糖尿病アポリポタンパク質E-ヌル・マウスにおけるアテローム性動脈硬化症を減少させ、そしてdb/dbマウスにおける糖尿病性腎症の機能的及び形態学的な症候を予防した(Hudsonら、Arch. Biochem. Biophys. 419:80-88ページ(2003年));そして
f)sRAGEは、マウスコラーゲン誘導関節炎モデル(Hofmannら、Genes Immunol. 3:123-135ページ(2002年))、マウス実験的アレルギー性脳脊髄炎モデル(Yanら、Nat. Med. 9:28-293ページ(2003年))、及びマウス炎症性腸疾患モデル(Hofmannら、Cell, 97:889-901ページ(1999年))における炎症の重症度を軽減させた。
【0136】
よって、ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、RAGEによって媒介される糖尿病から生じる糖尿病、及び/又は合併症の症状を処置するのに使用できる。別の態様において、糖尿病又は糖尿病の後期合併症の症状は、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、足の糖尿病性壊疽、糖尿病の心血管系合併症、又は糖尿病性神経障害を含むことができる。
【0137】
その発現が糖尿病の病理に関連する分子の受容体として最初に同定されたRAGE自体は、糖尿病性合併症の病理生理学に不可欠である。インビボにおいて、そのリガンドとのRAGE相互作用の阻害が、糖尿病性合併症及び炎症の複数のモデルにおいて治療法であることが示された(Hudsonら、Arch. Biochem, Biophys. 419:80-88ページ(2003年))。例えば、抗RAGE抗体での2カ月の処置は、糖尿病マウスにおける腎臓機能を正常化し、かつ、異常な腎臓組織病理を減少させた(Flyvbjergら、Diabetes 53:166-172ページ(2004年))。さらに、RAGEリガンドに結合し、且つ、RAGE/リガンド相互作用を阻害する可溶性型のRAGE(sRAGE)での処置は、糖尿病アポリポタンパク質E-ヌル・マウスにおけるアテローム性動脈硬化症を軽減し、及びdb/dbマウスにおける糖尿病性腎障害の機能的及び形態学的な病理を弱めた(Bucciarelliら、Circulation 106:2827-2835ページ(2002年))。
【0138】
また、最終糖化反応物(AGE)の形成を最終的にもたらす高分子の非酵素的糖酸化が、高血糖及び全身的又は局所的な酸化ストレスに関連する他の症状の存在下、腎不全症が炎症部位にて増強されることが示された(Dyerら、J. Clin. Invest. 91:2463-2469ページ(1993年);Reddyら、Biochem. 34:10872-10878ページ(1995年);Dyerら、J. Biol. Chem. 266:11654-11660ページ(1991年);Degenhardtら、Cell Mol. Biol. 44:1139-1145ページ(1998年))。血管系におけるAGEの蓄積は、透析関連アミロイド症の対象に見られるか(Miyataら、J. Clin. Invest. 92;1243-1252ページ(1993年);Miyataら、J. Clin. Invest. 98:1088-1094ページ(1996年))、又は、通常、糖尿病の対象の血管系及び組織によって典型的に示されるような(Schmidt ら、Nature Med. 1:1002-1004ページ(1995年))AGE-β2-ミクログロブリンから成る関節アミロイドのように局所的に起こる可能性がある。糖尿病対象における長期にわたるAGEの進行性の蓄積は、内因性クリアランス機構がAGE堆積部位にて有効に機能できないことを示唆している。そのような蓄積されたAGEは、多くの作用機序によって細胞特性を変更させる能力を有する。RAGEは正常組織及び血管系において低レベルで発現されるが、受容体のリガンドが蓄積する環境において、RAGEが上方制御されることが示された(Liら、J. Biol. Chem. 272:16498-16506ページ(1997年);Liら、J. Biol. Chem. 273:30870-30878ページ(1998年);Tanakaら、J. Biol. Chem. 275:25781-25790ページ(2000年))。RAGE発現は、糖尿病の血管系内の内皮、平滑筋細胞、及び浸潤性単核食細胞において増強される。また、細胞培養における研究は、そのAGE-RAGE相互作用が血管の恒常性に重要な細胞特性の変化を引き起こすことを実証した。
【0139】
糖尿病に関連する病理の処置におけるRAGE融合タンパク質の使用が、図13に説明されている。RAGE融合タンパク質TTP-4000は、血管障害後の平滑筋増殖及び内膜膨張を測定することを伴うラット糖尿病モデルの再狭窄で評価された。図13で説明されるように、減少させる、TTP-4000処置は、用量反応様式での糖尿病に関連した再狭窄における内膜/中膜(I/M)比を有意に減少させることができる(図13A;表1)。また、TTP-4000処置は、用量反応様式で再狭窄に関連する血管平滑筋細胞の増殖を有意に減少させることができる。
【0140】
【表1】

【0141】
他の態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、また、アミロイドーシス及びアルツハイマー病を処置するか、又は回復に向かわせるのに使用することもできる。RAGEは、アミロイド-β(Aβ)、並びにSAA及びアミリンを含む他のアミロイド形成タンパク質の受容体である(Yanら、Nature 382:685-691ページ(1996年);Yanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:5296-5301ページ(1997年);Yanら、Nat. Med. 6:643-651ページ(2000年);Sousaら、Lab. Invest. 80:1101-1110ページ(2000年))。また、AGE、S100b、及びAβタンパク質を含むRAGEリガンドは、ヒトの老人斑を取り囲む組織に見られる(Luthら、Cereb. Cortex 15:211-220ページ(2005年);Petzoldら、Neurosci. Lett. 336:167-170ページ(2003年);Sasakiら、Brain Res. 12:256-262ページ(2001年);Yanら、Restor. Neural Neruosci. 12:167-173ページ(1998年))。RAGEが、サブユニット(アミロイド-βペプチド、アミリン、血清アミロイドA、プリオン誘導ペプチド)の組成にかかわらずβ-シート線維性物質に結合することが示された(Yanら、Nature 382:685-691ページ(1996年);Yanら、Nat. Med. 6:643-651ページ(2000年))。さらに、アミロイドの堆積は、RAGEの発現増強をもたらすことが示された。例えば、アルツハイマー病(AD)の対象の脳において、RAGE発現はニューロン及びグリアで増強される(Yanら、Nature 382:685-691ページ(1996年))。RAGEリガンドの発現と同時に、RAGEは、ADの個体の海馬内の星状細胞及びミクログリア細胞において上方制御されるが、しかしADでない個体においては上方制御されていない(Lueら、Exp. Neural. 171:29-45ページ(2001年))。これらの調査結果は、RAGEを発現する細胞が、老人斑周辺のRAGE/RAGEリガンド相互作用によって活性化されることを示唆している。また、インビトロにおいて、Aβ媒介性ミクログリア細胞活性化は、RAGEのリガンド結合部位に対する抗体で妨げることができる(Yanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:5296-5301ページ(1997年))。RAGEが原線維集合の中心として機能できることもまた証明した(Deaneら、Nat. Mad. 9:907-913ページ(2003年))。
【0142】
また、sRAGE又は抗RAGE抗体のいずれかを使用するインビボにおけるRAGE/リガンド相互作用の阻害は、マウス全身性アミロイドーシス・モデルにおけるアミロイド斑の形成を減少させることもできる(Yanら、Nat. Med. 6:643-651ページ(2000年))。ニューロン内でヒトRAGE、並びにスウェーデン型及びロンドン型突然変異を持つヒト・アミロイド前駆タンパク質(APP)を過剰発現する二重トランスジェニック・マウス(突然変異hAPP)は、それらの単独突然変異hAPPトランスジェニック対応物より早く学習欠陥及び神経病理学的異常性を発症する。対照的に、同じ突然変異hAPPの背景においてRAGEのドミナントネガティブ形態を発現するニューロンに起因して減少したAβシグナル伝達能力を有する二重トランスジェニック・マウスは、それらの単独のAPPトランスジェニック対応物と比べて神経病理学的及び学習の異常の遅い発現を示す(Arancioら、EMBO J. 23:4096-4105ページ(2004年))。
【0143】
さらに、RAGEアミロイド相互作用の阻害が、細胞のRAGE及び細胞ストレス・マーカーの発現(並びにNF-κB活性化)を減少させ、且つ、(初期段階においてでさえ)アミロイドが富化された環境における、並びにアミロイド蓄積による細胞特性の混乱の両方に果たすRAGEアミロイド相互作用の役割を示唆するアミロイド沈着を減少させることが示された(Yanら、Nat. Med. 6:643-651ページ(2000年))。
【0144】
よって、本発明のRAGE融合タンパク質は、また、アミロイドーシスを減少させるため、並びにアルツハイマー病(AD)に関連するアミロイド斑及び認知機能障害を減少させるために使用できる。先に説明したように、sRAGEは、ADの動物モデルにおいて脳のアミロイド斑形成、そして炎症性マーカーのその後の増大の両方を減少させることが分かった。図14A及び14Bは、ADであって、TTP-4000又はマウスsRAGEのいずれかで3カ月間、処置されたマウスは、溶媒又はヒトIgGのネガティブコントロール(IgG1)を受けた動物に比べてより少ないアミロイド-β(Aβ)斑及びより低い認識障害を示した。sRAGEのように、TTP-4000は、また、ADに関連している炎症性サイトカインIL-1及びTNF-α(データ未掲載)を減少させることもできる。
【0145】
また、本発明のRAGE融合タンパク質は、アテローム性動脈硬化及び他の心臓血管疾患を処置するのにも使用できる。よって、虚血性心疾患は、糖尿病の対象において特に深刻であることが示された(Robertsonら、Lab Invest. 18:538-551ページ(1968年);Kannelら、J. Am. Med. Assoc. 241:2035-2038ページ(1979年);Kannelら、Diab. Care 2:120-126ページ(1979年))。さらに、研究は、糖尿病の対象のアテローム性動脈硬化が糖尿病に罹患していない対象よりも加速され、且つ、広範囲に及ぶことを示した(例えば、Wallerら、Am. J. Med. 69:498-506ページ(1980年);Crallら、Am. J. Med. 64:221-230ページ(1978年);Hambyら、Chest 2:251-257ページ(1976年);及びPyoralaら、Diab. Metab. Rev. 3:463-524ページ(1978年)を参照のこと)。糖尿病に伴う促進化アテローム性動脈硬化の理由は多いが、AGEの減少がプラーク形成を減少させることができることが示された。
【0146】
例えば、本発明のRAGE融合タンパク質は、また、脳卒中を処置するために使用できる。脳卒中の疾患関連動物モデルにおいてTTP-4000をsRAGEと比べた場合に、TTP-4000が梗塞部容積の非常に大きな減少を提供することがわかった。このモデルにおいて、マウスの中頚動脈が結紮され、そして脳卒中を形成するように再潅流される。脳卒中を処置又は予防するRAGE融合タンパク質の有効性を評価するために、再潅流直前にマウスをsRAGE、TTP-4000、又はコントロール免疫グロブリンによって処置した。表2に見ることができるように、これらの動物における梗塞部面積に限っては、TTP-4000がsRAGEよりも有効であり、その優れた血漿中の半減期のためTTP-4000がsRAGEより大きな保護を維持できたことを示唆した。
【0147】
【表2】

【0148】
他の態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、癌の処置のために使用されることができる。1つの態様において、本発明のRAGE融合タンパク質を使用して処置される癌は、RAGEを発現する癌細胞を含む。例えば、本発明のRAGE融合タンパク質で処置されることができる癌は、一部の肺癌、一部のグリオーマ、一部の乳頭腫等を含む。アンホテリンは、RAGEと相互作用することが示された高移動度群Iの非ヒストン染色体DNA結合タンパク質である(Rauvalaら、J. Biol. Chem. 262:16625-16635ページ(1987年);Parkikinenら、J. Biol. Chem. 268:19726-19738ページ(1993年))。アンホテリンが、神経突起伸長を促進し、並びに線溶系の(また、細胞移動性に寄与することも知られている)プロテアーゼ複合体の集合のための表面としての役割を担うことが示されている。さらに、RAGEを遮断することの局所的な腫瘍増殖抑制効果が、原発腫瘍モデル(C6グリオーマ)、Lewis肺転移モデル(Taguchiら、Nature 405:354-360ページ(2000年))、及びv-Ha-ras導入遺伝子を発現するマウスにおける自然発生的な乳頭腫(Lederら、Proc. Natl. Acad. Sci. 87:9178-9182ページ(1990年))において観測された。
【0149】
さらに他の態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、炎症を処置するために使用されることができる。別の態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、炎症性腸疾患に関連する炎症、関節リウマチに関連する炎症、乾癬に関連する炎症、多発性硬化症に関連する炎症、低酸素血症に関連する炎症、脳卒中に関連する炎症、心臓発作に関連する炎症、出血性ショックに関連する炎症、敗血症に関連する炎症、臓器移植に関連する炎症、創傷治癒不良に関連する炎症、又は、自己(例えば、自己免疫)又は非自己(例えば、移植された物)細胞、組織、又は臓器の拒絶反応に関連する炎症を処置するために使用されることができる。
【0150】
例えば、血栓溶解処置に続いて、例えば顆粒球といった炎症細胞は、虚血組織に浸潤して、低酸素血症によって死滅したよりも多くの細胞を破壊できる酸素ラジカルを産生する。抗体又は他のタンパク質アンタゴニストと共に組織に浸潤することもできる好中球に関与する好中球上の受容体を阻害することで、反応を改善することが示された。RAGEはこの好中球受容体のリガンドであるので、RAGEフラグメントを含むRAGE融合タンパク質は、おとりとして作用し、好中球が再潅流部位に往来するのを防いで、それによって更なる組織破壊を防ぐことができる。炎症の予防におけるRAGEの役割は、sRAGEが、恐らく、内皮細胞、平滑筋細胞の増殖、及びRAGEによるマクロファージ活性化を抑制することによって、糖尿病及び正常ラットの両方における動脈傷害後のラット再狭窄モデルでの新生内膜の拡張を抑制したことを示す研究によって示すことができる(Zhouら、Circulation 107:2238-2243ページ(2003年))。さらに、sRAGEは、遅延型過敏症、実験的自己免疫性脳炎、及び炎症性腸疾患を含む炎症モデルを抑制した(Hofinanら、Cell 97:889-901ページ(1999年))。
【0151】
ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、自己免疫による障害を処置するため使用されることができる、例えば、ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、腎不全を処置するために使用されることができる。よって、本発明のRAGE融合タンパク質は、全身性ループス腎炎又は炎症性ループス腎炎を処置するために使用されることができる。例えば、S100/カルグラヌリンは、結合ペプチドによって連結された2つのEF-ハンド領域を特徴とする密接に関連したカルシウム結合性ポリペプチドのファミリーを含むことが示された(Schaferら、TIBS 21:134-140ページ(1996年);Zimmerら、Brain Res. Bull. 37:417-429ページ(1995年);Rammesら、J. Biol. Chem. 272:9496-9502ページ(1997年);Lugeringら、Eur. J. Clin. Invest. 25:659-664ページ(1995年))。それらはシグナル・ペプチドを欠いているが、嚢胞性繊維症及び関節リウマチのように、特に慢性の免疫/炎症反応の部位にて、S100/カルグラヌリンが細胞外空間との接触を得ることが長い間知られていた。RAGEは、S100/カルグラヌリン・ファミリーの多くのメンバーの受容体であり、例えばリンパ球及び単核食細胞といった細胞に対するそれらの炎症誘発性効果を媒介する。また、遅延型過敏症応答、IL-10ヌル・マウスにおける大腸炎、コラーゲン誘導性関節炎、及び実験的自己免疫性脳炎モデルについての研究は、RAGEリガンド相互作用(おそらく、S100/カルグラヌリンとの相互作用)が炎症カスケードにおいて基部に近い役割を担っていることが示唆された。
【0152】
I型糖尿病は、本発明のRAGE融合タンパク質での処置によって予防又は改善できる自己免疫異常である。例えば、sRAGEが非肥満性糖尿病(NOD)マウスから重症複合免疫不全症(NOD-scidマウス)を伴うNODマウスへの脾細胞の移植を可能にできることが示された。NOD-scidマウスは、自然発症の糖尿病を示さないが、しかし、次に糖尿病が引き起こされるように島細胞を破壊できる免疫細胞の存在を必要とする。sRAGEで処置されたNOD-scid移植個体は、sRAGEで処置されなかったNOD-acid移植個体と比べた場合に、糖尿病(NOD)マウスから移植された脾細胞によって引き起こされた糖尿病の発症の減少が示されたことがわかった(米国特許公報2002/0122799)。この特許公報中に発明者によって述べられているように、このモデルにおいてsRAGEを使用した実験結果は、例えば、将来の免疫療法及び島移植が起こる可能性がある臨床現場といったヒトの疾患に関連している。
【0153】
よって、ある態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、第1の部位から第2の部位への少なくとも1つの臓器、組織、又は複数個の細胞の移植に関連する炎症を処置するために使用されることができる。第1の部位及び第2の部位は、異なる対象、又は同じ対象に存在することができる。別の態様において、移植細胞、組織、又は臓器は、膵臓、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、肺、骨髄、血液、骨、筋、内皮細胞、動脈、静脈、軟骨、甲状腺、神経系の細胞、又は幹細胞を含む。例えば、本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、第1の非糖尿病対象から第2の糖尿病対象を条件とした島細胞の移植を容易にするために使用されることができる。
【0154】
他の態様において、本発明は、本発明のRAGE融合タンパク質の治療上有効量を対象に投与することによって骨粗鬆症を処置する方法を提供できる(Zhouら、J. Exp. Med. 203:1067-1080ページ(2006年))。ある態様において、骨粗鬆症を処置する方法は、対象の骨密度を高めるか、又は対象の骨密度の低下の速度を減少させるステップをさらに含むことができる。
【0155】
よって、種々の選択された態様において、本発明は、治療上有効量の本発明のRAGE融合タンパク質を対象に投与することによって対象のRAGEとAGEの相互作用を抑制するための方法を提供できる。本発明のRAGE融合タンパク質を使用して処置される対象は、動物でありうる。ある態様において、その対象はヒトである。対象は、AGE関連疾患、例えば糖尿病、糖尿病性合併症、例えば腎障害、神経障害、網膜障害、足の壊死、アミロイドーシス、又は腎不全、及び炎症に罹患しているかもしれない。又は、対象はアルツハイマー病の個体でありうる。別の態様において、対象は癌の個体でありうる。さらに他の態様において、対象は、全身性ループス腎炎又は炎症性ループス腎炎に罹患しているかもしれない。他の疾患が、RAGEによって媒介されている可能性があるので、そのため、本発明のRAGE融合タンパク質を使用して処置することができる。よって、本発明の追加的な別の態様において、RAGE融合タンパク質は、ヒト又は動物の対象におけるクローン病、関節炎、脈管炎、腎障害、網膜障害、及び神経障害の処置に使用されることができる。他の態様において、自己免疫応答(例えば、自己の拒絶反応)及び非自己免疫応答(例えば、非自己の拒絶反応)の両方に関与する炎症が、RAGEによって媒介される可能性があるので、それにより、本発明のRAGE融合タンパク質を使用して処置されることができる。
【0156】
治療上有効量は、対象のAGE又は他のタイプの内因性RAGEリガンドと、RAGEとの相互作用を妨げることができる量を含むことができる。従って、その量は、処置される対象により異なる。化合物の投与は、時間毎、日毎、月毎、年毎であるか、又は単回事象でありうる。様々な別の態様において、RAGE融合タンパク質の有効量は、約1ng/kg体重〜約100mg/kg体重、又は約10μg/kg体重〜約50mg/kg体重、又は約100μg/kg体重〜約20mg/kg体重の範囲にわたることができる。実際の有効量は、当業界において標準的な方法を使用した用量/応答アッセイによって確立されることができる(Johnsonら、Diabetes. 42:1179ページ(1993年))。よって、当業者に知られているとおり、有効量は、化合物の生物学的利用能、生理活性、及び生物分解能に依存するかもしれない。
【0157】
組成物
本発明は、医薬として許容される担体と混合した本発明のRAGE融合タンパク質を含む組成物を含むことができる。RAGE融合タンパク質は、第二の非RAGEポリペプチドと連結したRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含むことができる。ある態様において、リガンド結合部位は、RAGE融合タンパク質のN末端ドメインの大部分を含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン又はその一部を含むことができる。ある態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む。
【0158】
他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第22〜51アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第23〜51アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第31〜51アミノ酸を含むことができる。他の態様において、リガンド結合部位は、配列番号1の第31〜116アミノ酸を含むことができる。
【0159】
ある態様において、RAGEポリペプチドは、免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリン・ドメインの一部(例えば、そのフラグメント)を含むポリペプチドに連結できる。1つの態様において、免疫グロブリン・ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2又はCH3ドメインの少なくとも一方の少なくとも一部を含む。
【0160】
RAGEタンパク質又はポリペプチドは、完全長のヒトRAGE(例えば、配列番号1)、又はヒトRAGEのフラグメントを含むことができる。ある態様において、RAGEポリペプチドは、あらゆるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の第1〜22残基又は第1〜23残基のいずれかを含むことができる。別の態様において、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一の配列、又はそのフラグメントを含むことができる。例えば、1つの態様において、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりむしろ第1の残基としてグリシンを有するヒトRAGE又はそのフラグメントを含むことができる(例えば、Neeperら(1992年)を参照のこと)。又は、ヒトRAGEは、シグナル配列が取り除かれた完全長のRAGE(例えば、配列番号2又は配列番号3)(図1A及び1B)又はそのアミノ酸配列の一部を含むことができる。
【0161】
また、本発明のRAGE融合タンパク質は、sRAGE(例えば、配列番号4)、sRAGEと少なくとも90%同一のポリペプチド、又はsRAGEのフラグメントを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりむしろ第1の残基としてグリシンを有するヒトsRAGE又はそのフラグメントを含むことができる(例えば、Neeperら、(1992年)を参照のこと)。又は、ヒトRAGEは、シグナル配列が取り除かれたsRAGE(例えば、図1Cの中の配列番号5若しくは配列番号6、又は図16Aの中の配列番号45を参照のこと)又はそのアミノ酸配列の一部を含むことができる。他の態様において、RAGEタンパク質は、Vドメインを含むことができる(例えば、図1Dの中の配列番号7若しくは配列番号8、又は図16Aの中の配列番号46を参照のこと)。又は、Vドメインと少なくとも90%同一の配列、又はそのフラグメントを使用できる。又は、RAGEタンパク質は、Vドメインの一部を含むRAGEのフラグメントを含むことができる(例えば、図1Dの中の配列番号9若しくは配列番号10、又は図16Aの中の配列番号47を参照のこと)。ある態様において、リガンド結合部位は、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号47又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。さらに他の態様において、RAGEフラグメントは合成ペプチドである。
【0162】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに相当する、ヒトRAGE(配列番号7)の第23〜116アミノ酸又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGE(配列番号8)の第24〜116アミノ酸又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜116アミノ酸(配列番号46)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに相当する、ヒトRAGEの124〜221アミノ酸(配列番号11)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。他の態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに相当する、ヒトRAGEの227〜317アミノ酸(配列番号12)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜123アミノ酸(配列番号13)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはヒトRAGEの24〜123アミノ酸(配列番号14)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Q24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜123アミノ酸(配列番号48)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、及びこれらの2つのドメインを連結するドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜226アミノ酸(配列番号17)又はそれと少なくとも90%同一の配列、又はヒトRAGEの24〜226アミノ酸(配列番号18)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Q24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜226アミノ酸(配列番号50)又はそれと90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、sRAGE(すなわち、V、C1、及びC2ドメイン、並びにドメイン間リンカーをコードするもの)に相当する、ヒトRAGEの23〜339アミノ酸(配列番号5)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはヒトRAGEの24〜339アミノ酸(配列番号6)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、RAGEポリペプチドは、Q24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜339アミノ酸(配列番号45)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。又は、これらの配列のそれぞれのフラグメントを使用できる。
【0163】
RAGE融合タンパク質は、RAGE又はそのフラグメントから得られないいくつかのタイプのペプチドを含むことができる。RAGE融合タンパク質の第2のポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、又はIgA(α)のいずれか1つから得ることができる。さらに、重鎖(又はその一部)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、又は生体活性を変化させるするこれらのアイソタイプ又はサブタイプの変異体のいずれか1つから得ることができる。第2のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、あるいはこれらのドメインのいずれか又は両方の一部を含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、又はその一部を含むポリペプチドは、配列番号38又は配列番号40を含むことができる。免疫グロブリン・ペプチドは、配列番号39又は配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。配列番号38又は配列番号40の免疫グロブリン配列は、また、配列番号52又は配列番号53によってコードされることもできる。
【0164】
免疫グロブリン鎖のFc部分は、インビボにおいて炎症誘発性でありうる。よって、1つの態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、免疫グロブリンに由来するドメイン間ヒンジ・ポリペプチドよりむしろRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0165】
よって、1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、免疫グロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチド又はそのフラグメントに直接連結されたRAGEポリペプチドをさらに含むことができる。1つの態様において、CH2ドメイン又はそのフラグメントは、配列番号42を含む。ある態様において、配列番号42のフラグメントは、第1〜10アミノ酸が取り除かれた配列番号42を含む。
【0166】
1つの態様において、RAGEポリペプチドは、RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が、免疫グロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチド又はそのフラグメントのN末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結したRAGEドメイン間リンカーを含む。免疫グロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチド又はその一部は、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、あるいはこれらのドメインの両方又はいずれかの一部を含むことができる。ある例示的な態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチド、又はその一部は、配列番号38又は配列番号40を含むことができる。
【0167】
本発明のRAGE融合タンパク質は、RAGE由来の単独の又は複数のドメインを含むことができる。また、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長のRAGEタンパク質のフラグメントを含むことができる。例えば、1つの態様において、RAGE融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。RAGE融合タンパク質は、第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、そして第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメインを含むポリペプチド又はそのフラグメントのN末端アミノ酸に直接連結されるように、第1のRAGE免疫グロブリン・ドメイン、並びに第2のRAGE免疫グロブリン・ドメイン及び第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のドメイン間リンカーを含むことができる。
【0168】
例えば、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、これらの2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第2のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜251アミノ酸(配列番号19)又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸(配列番号20)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸又はそれと少なくとも90%同一の配列(配列番号51)を含むことができる。1つの態様において、配列番号30又はそのフラグメントを含む核酸コンストラクトは、4ドメインRAGE融合タンパク質をコードできる。他の態様において、配列番号54を含む核酸コンストラクトは4ドメインRAGE融合タンパク質をコードできるが、ここで、上記配列のC末端にてプロリン(CCGからCCCへ)及びグリシン(GGTからGGGへ)をコードするコドンのサイレント塩基変化が、終止コドン近くのクリプティックRNAスプライシング部位を取り除くように組み入れられる。
【0169】
あるいは、3ドメインRAGE融合タンパク質は、RAGEに由来する1つの免疫グロブリン・ドメイン、及びヒトFcポリペプチドに由来する2つの免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。例えば、RAGE融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2免疫グロブリン・ドメイン又はそのフラグメントを含むポリペプチドのN末端アミノ酸に連結された単独のRAGE免疫グロブリン・ドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに相当する、ヒトRAGEの23〜136アミノ酸(配列番号15)又はそれと少なくとも90%同一の配列、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸(配列番号16)又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいはQ24が環化してpEを形成する、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸(配列番号49)又はそれと少なくとも90%同一の配列を含むことができる。1つの態様において、配列番号31又はそのフラグメントを含む核酸コンストラクトは、3ドメインRAGE融合タンパク質をコードすることができる。その他の態様において、配列番号55を含む核酸コンストラクトは、3ドメインRAGE融合タンパク質をコードすることができるが、ここで、上記配列のC末端にてプロリン(CCGからCCCへ)及びグリシン(GGTからGGGへ)をコードするコドンのサイレント塩基変化が、終止コドン近くのクリプティックRNAスプライシング部位を取り除くように組み入れられる。
【0170】
RAGEドメイン間リンカーフラグメントは、天然においてRAGE免疫グロブリン・ドメインの下流に存在し、それによりそこに連結されるペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGEのVドメインについて、ドメイン間リンカーは、天然においてVドメインから下流側に存在するアミノ酸配列を含むことができる。ある態様において、リンカーは、完全長RAGEの第117〜123アミノ酸に相当する配列番号21を含むことができる。又は、リンカーは、天然のRAGE配列の追加部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流にいくつかのアミノ酸(例えば、1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸)を含むドメイン間リンカーが使用できる。よって、1つの態様において、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEの第117〜136アミノ酸を含む配列番号23を含む。又は、リンカーのいずれかの末端から、例えば1、2、又は3個のアミノ酸を取り除いた配列番号21のフラグメントを使用できる。別の態様において、リンカーは、配列番号21又は配列番号23と少なくとも70%同一であるか、80%同一であるか、又は90%同一である配列を含むことができる。
【0171】
RAGEのC1ドメインについて、リンカーは、天然においてC1ドメインの下流に存在するペプチド配列を含むことができる。ある態様において、リンカーは、完全長のRAGEの第222〜251アミノ酸に相当する配列番号22を含むことができる。又は、リンカーは、天然のRAGE配列の追加部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流にいくつかのアミノ酸(1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸)を含むリンカーが使用できる。又は、リンカーのいずれかの末端から、例えば1〜3、1〜5、1〜10、又は1〜15個のアミノ酸を取り除いた配列番号22のフラグメントを使用できる。例えば、1つの態様において、RAGEドメイン間リンカーは、第222〜226アミノ酸に相当する配列番号24を含むことができる。又は、ドメイン間リンカーは、RAGEの第318〜342アミノ酸に相当する配列番号44を含むことができる。
【0172】
医薬として許容される担体は、当業界で知られる標準的な医薬として許容されるあらゆる担体を含むことができる。1つの態様において、医薬担体は液体であり、そして、RAGE融合タンパク質又は核酸コンストラクトは溶液の形態でありうる。他の態様において、医薬として許容される担体は、散剤、凍結乾燥散剤、又は錠剤の形態の固体でありうる。又は、医薬担体は、ゲル剤、坐剤、又はクリーム剤状でありうる。別の態様において、担体は、リポソーム、マイクロカプセル、ポリマー・カプセル化細胞、又はウイルスを含むことができる。よって、用語、医薬として許容される担体は、これだけに制限されることなく、あらゆる標準的な医薬として許容される担体、例えば、水、アルコール、リン酸緩衝生理的食塩溶液、糖(例えば、ショ糖又はマンニトール)、オイル又はエマルジョン、例えばオイル/水エマルション又はトリグリセリド・エマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、コートした錠剤、及びカプセル剤を含む。
【0173】
本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、様々な経路を用いることができる。よって、本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、腹腔内(IP)注射を用いることができる。あるいは、RAGE融合タンパク質は、経口的に、鼻腔内に、又はエアゾール剤として投与できる。他の態様において、投与は静脈注射(IV)である。RAGE融合タンパク質は、また、皮下に注入されてもよい。他の態様において、RAGE融合タンパク質の投与は動脈内へのものである。他の態様において、投与は舌下へのものである。また、投与は、時限放出カプセル剤を利用することができる。例えば、自己投与が望ましい場合に、皮下投与が慢性障害を処置するために有用でありうる。
【0174】
医薬組成物は、無毒の非経口的に許容される溶剤又は溶媒中の無菌注射液の形態でありうる。利用できる、許容される溶媒及び溶剤の中には、水、リンゲル液、3-ブタンジオール、等張食塩溶液、又は、例えば、生理的に許容されるクエン酸、酢酸、グリシン、ヒスチジン、リン酸、トリス、又はコハク酸バッファーのような水性緩衝液が存在するかもしれない。注射液は、化学的分解及び凝集体の形成に対して保護する安定化剤を含むことができる。安定化剤は、抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシ・アニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシ・トルエン(BHT)、バッファー(クエン酸、グリシン、ヒスチジン)、又は界面活性剤(ポリソルベート80、ポロクサマー)を含むことができる。溶液は、また、例えば、ベンジルアルコール及びパラベンといった抗菌性防腐剤を含むことができる。溶液は、また、凝集を減少させるための界面活性剤、例えばポリソルベート80、ポロクサマー、又は当業界で知られている他の界面活性剤を含むこともできる。溶液は、また、ヒト血液と同様になるように組成物の浸透圧を調整するために、例えば糖又は生理食塩水といった他の添加物を含むこともできる。
【0175】
医薬組成物は、希釈剤を用いた再構成後の注射のための無菌の凍結乾燥散剤の形態でありうる。希釈剤は、注射用の水、注射用の静菌性水、又は無菌の生理食塩水でありうる。凍結乾燥散剤は、融合タンパク質の溶液を凍結乾燥させて、乾燥形態のタンパク質を作り出すことによって製造することができる。当業界で知られているとおり、凍結乾燥タンパク質は、通常、タンパク質の液体溶液に比べて高い安定性と長い貯蔵寿命を有する。凍結乾燥散剤(ひと塊(cake))は、多くが、pHを調整するためのバッファー、例えば、生理的に許容されるクエン酸、酢酸、グリシン、ヒスチジン、リン酸、トリス、又はコハク酸バッファーを含む。凍結乾燥散剤は、また、その物理的及び化学的な安定性を維持するためのリオプロテクタント(lyoprotectants)を含むことができる。一般的に使用されるリオプロテクタントは、例えばショ糖、マンニトール、又はトレハロースといった非還元糖及び二糖である。凍結乾燥散剤は、化学的分解及び凝集体の形成に対して保護するために安定化剤を含むことができる。安定化剤は、これだけに制限されることなく、抗酸化剤(BHA、BHT)、バッファー(クエン酸、グリシン、ヒスチジン)、又は界面活性剤(ポリソルベート80、ポロクサマー)を含むことができる。凍結乾燥散剤は、また、例えばベンジルアルコール又はパラベンといった抗菌性防腐剤も含むことができる。凍結乾燥散剤は、また、凝集を減らすために界面活性剤、例えばポリソルベート80及びポロクサマーも含むことができる。凍結乾燥散剤は、また、散剤の再構成のときにヒト血液と同じようになるように浸透圧を調整する添加物(例えば、糖又は生理食塩水)も含むことができる。凍結乾燥散剤は、また、増量剤、例えば糖又は二糖も含むことができる。
【0176】
また、注射用の医薬組成物は、油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、先に記載した好適な分散又は湿潤剤、及び懸濁化剤を使用して既知の方法に従って処方されることができる。さらに、無菌の、不揮発性油が、溶剤又は懸濁化剤として便利に利用される。このために、合成のモノ又はジグリセリドを使用したあらゆる無菌性の不揮発性油もまた用いることができる。また、油性懸濁液は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、又はココナッツ油の中に、あるいは鉱油、例えば流動パラフィンの中に、有効成分を懸濁させることによって処方できる。例えば、注射剤の調製において、脂肪酸、例えばオレイン酸が使われる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコールを含むことができる。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸の添加によって保存されることができる。
【0177】
本発明の医薬組成物は、また、水中油型エマルジョン又は水性懸濁液の形態であってもよい。油性相は、植物油、例えばオリーブ油、若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば流動パラフィン、あるいはその混合物でありうる。好適な乳化剤は、天然ゴム、例えばアラビアゴムゴム若しくはトラガントゴム、天然のリン脂質、例えば大豆、レシチン、脂肪酸に由来するエステル又は部分エステル、並びにヘキシトール無水物、例えば、ソルビタン・モノオレエート、及びエチレンオキサイドを有する上記部分エステル縮合物、例えばポリオキシエチレン・ソルビタンでありうる。
【0178】
水性懸濁液は、また、賦形剤との混合物中に活性物質を含むことができる。そのような賦形剤は、例えばカルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニールピロリドン、トラガントゴム、及びアラビアゴム;分散又は湿潤剤、例えば天然のホスファチド、例えばレシチン、又は脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又は、長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキサイドの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又は、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルと、エチレンオキサイドの縮合物、例えばポリオキシエチレン・ソルビトール・モノオレエート、又は脂肪酸とヘキシトール無水物、例えば、ポリエチレン・ソルビタン・モノオレエートに由来する部分エステルと、エチレンオキサイドの縮合物を含むことができる。
【0179】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な分散性の散剤及び顆粒剤は、分散剤、懸濁化剤、及び1又は複数の防腐剤の混合物の状態で活性物質を提供できる。好適な防腐剤、分散剤、及び懸濁化剤については先に説明されている。
【0180】
組成物は、また、本発明の化合物の直腸投与用の坐剤の形態であってもよい。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸温度で液体であるため、直腸内で融解して薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤と、薬物を混合することによって調製されることができる。そのような材料は、例えばココアバター及びポリエチレングリコールを含んでいる。
【0181】
局所使用のために、本発明の化合物を含むクリーム剤、軟膏剤、ゼリー剤、溶液又は懸濁液が使用できる。局所適用は、また、洗口剤及びうがい薬も含むことができる。好適な防腐剤、抗酸化剤、例えばBHA及びBHT、分散剤、界面活性剤、又はバッファーを使用できる。
【0182】
本発明の化合物は、また、リポソーム・デリバリー・システム、例えば小単層小胞(small unilamellar vesicles)、大単層小胞、及び多層小胞の形態で投与できる。リポソームは、様々なリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、又はホスファチジルコリンから形成されることができる。
【0183】
ある態様において、本発明の化合物は、代謝酵素による循環からのクリアランスをさらに遅らせるために修飾されてもよい。1つの態様において、化合物は、水溶性高分子、例えばポリエチレングリコール(PEG)、PEGの共重合体、及びポリプロピレングリコール、ポリビニールピロリドン又はポリプロリン、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニールアルコール等の共有結合によって修飾されることができる。そのような修飾は、また、水溶液中への化合物の溶解性を高めることもできる。重合体、例えばポリエチレングリコールは、1又は複数の活性アミノ残基、スルフィドリル残基、又はカルボキシル残基に共有結合させることができる。カルボン酸又は炭酸誘導体の活性エステルを含むPEGの多数の活性型、特に脱離基がアミノ基との反応のためのN-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェノール、イミダゾール、又は1-ヒドロキシ-2-ニトロベンゼン-3-スルフォン、スルフィドリル基との反応のための多重モード又はハロ・アセチル誘導体、及び炭水化物基との反応のためのアミノヒドラジン又はヒドラジド誘導体であるものについて説明されている。
【0184】
本発明の融合タンパク質と一緒に使用できるタンパク質製剤のさらなる調製方法は、米国特許番号第6,267,958号及び同第5,567,677号に記載されている。
【0185】
本発明の更なる側面において、本発明のRAGE融合タンパク質は、他の既知の処置薬を用いたアジュバント療法処置、又は併用療法処置において利用されることができる。以下のものは、本発明のRAGE融合タンパク質モジュレーターと組み合わせて利用されることができるアジュバント及び追加的な処置剤の不完全な一覧表である:
【0186】
抗癌剤の薬理学的分類:
1.アルキル化剤:シクロホスファミド、ニトロソ尿素、カルボプラチン、シスプラチン、プロカルバジン
2.抗生物質:ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン
3.代謝拮抗剤:メトトレキサート、シタラビン、フルオロウラシル、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及び細胞損害性癌の化学療法薬
4.植物アルカロイド:ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、パクリタクセル
5.ホルモン:タモキシフェン、酢酸オクトレオチド、フィナステリド、フルタミド
6.生物学的反応修飾物質:インターフェロン、インターロイキン
【0187】
関節リウマチに対する処置の薬理学的分類
1.鎮痛剤:アスピリン
2.NSAID(非ステロイド系抗炎症薬):イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク
3.DMARD(疾患修飾抗リウマチ薬):メトトレキサート、金剤、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン
4.生物学的反応修飾物質、DMARD:エタネルセプト、インフリキシマブ、グルココルチコイド、例えばベクロメタゾン、メチルプレドニソロン、ベタメサゾン、プレドニゾン、デキサメサゾン、及びヒドロコルチゾン
【0188】
糖尿病に対する処置の薬理学的分類
1.スルホニル尿素類:トルブタミド、トラザミド、グリブリド、グリピジド
2.ビグアニド:メトホルミン
3.種々の経口剤:アカルボース、トログリタゾン
4.インスリン:
【0189】
アルツハイマー病に対する処置の薬理学的分類
1.コリンエステラーゼ阻害剤:タクリン、ドネペジル
2.抗精神病薬:ハロペリドール、チオリダジン
3.抗うつ薬:デシプラミン、フルオキセチン、トラゾドン、パロキセチン
4.抗けいれん剤:カルバマゼピン、バルプロ酸
【0190】
ある態様において、本発明の組成物は、単独の又は複数の追加的な処置薬と組み合わせて、治療上有効量のRAGE融合タンパク質を含むことができる。これまで説明したアゴニストに加えて、以下の処置剤:免疫抑制薬、例えばシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、及び他のFK-506型免疫抑制剤を、本発明のRAGE融合タンパク質と組み合わせて使用することができる。
【0191】
1つの態様において、本発明は、それ故に、RAGE媒介性疾患を処置する方法を提供できるが、上記方法は、以下の:アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的反応修飾物質、鎮痛剤、NSAID、DMARD、生物学的反応修飾物質(例えば、グルココルチコイド)、スルホニル尿素、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、抗けいれん剤、並びに免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、及び他のFK-506型免疫抑制剤から成る群から選択される処置薬と組み合わせて、処置として有効量のRAGE融合タンパク質を、それを必要とする対象に投与することを含む。更なる態様において、本発明は、以下の:アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的反応修飾物質、鎮痛剤、NSAID、DMARD、生物学的反応修飾物質(例えば、グルココルチコイド)、スルホニル尿素、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、並びに免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、及び他のFK-506型免疫抑制剤から成る群から選択される処置薬の1種類以上を更に含む、先に説明した本発明の医薬組成物を提供する。
【実施例】
【0192】
本発明によって包含される本発明の概念の特徴及び利点を、以下に続く実施例において更に説明する。
実施例1A:RAGE融合タンパク質の製造
2つのプラスミドを構築して、RAGE-IgG融合タンパク質を発現させた。両方のプラスミドを、ヒトRAGE由来の異なる長さの5’側のcDNA配列と、ヒトIgG(γ1)からの同じ3’側のcDNA配列とを連結することによって構築した。これらの発現配列(すなわち、連結産物)を、次に、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen, CA)内に挿入した。RAGE融合タンパク質コード領域をコードする核酸配列を、図2及び3に示す。TTP-4000RAGE融合タンパク質について、第1〜753の核酸配列(ボールド体で強調した)が、RAGEのN末端タンパク質配列をコードするのに対して、第754〜1386の核酸配列は、IgGタンパク質配列をコードする(図2)。TTP-3000について、第1〜408の核酸配列(ボールド体で強調した)が、RAGEのN末端タンパク質配列をコードするのに対して、第409〜1041の核酸配列はIgGタンパク質配列(図3)をコードする。
【0193】
RAGE融合タンパク質を作り出すために、配列番号30又は配列番号31のいずれかの核酸配列を含む発現ベクターを、CHO細胞内に安定的にトランスフェクションした。ポジティブな形質転換体を、プラスミドによって与えられるネオマイシン耐性について選択し、そしてクローン化した。上清のウェスタンブロット分析によって検出される高生産クローンを増やし、そして、その遺伝子産物を、プロテインAカラムを使用したアフィニティ・クロマトグラフィーによって精製した。細胞が1リットルあたり約1.3グラムのレベルで組換え型のTTP-4000を産生するように、発現を最適化した。
【0194】
実施例1B:RAGE融合タンパク質の産生
プラスミドを構築して、RAGE-IgG融合タンパク質を発現させた。プラスミドを、ヒトRAGE由来の5’側のcDNA配列と、ヒトIgG(γ1)からの3'側のcDNA配列とを連結することによって構築した。cDNAを増幅するためにPCR法を使用した。さらに、5’末端において、PCRプライマーが、クローニングからのECO RI制限酵素部位、及びコザック・コンセンサス翻訳開始配列を加えた。3’末端において、PCRプライマーが、終止コドンの直後にXho I制限を加えた。3’末端において、PCRプライマーが、また、終止コドン近くに免疫グロブリン部分内のクリプティックRNAスプライシング部位を取り除く2つのサイレント塩基変化も含んでいた。プロリン(配列番号32のタンパク質配列における番号付けに基づく第409残基)をコードするコドンをCCGからCCCに変更し、そして、グリシン(配列番号32のタンパク質配列における番号付けに基づく第410残基)をコードするコドンをGGTからGGGに変更した。PCRフラグメントを、Eco RI及びXho Iで消化し、次に、(Eco RIとの互換性末端を形成するために)Mfe Iで消化し、且つ、Xho Iで消化したレトロベクター・プラスミド(pCNS-新しいMCS-WPRE(新しいori)、Gala, Inc.から入手可能)内に挿入した。クローン化プラスミド及びクローニング接合部から成る挿入部分を配列決定し、クローニング中に突然変異が起こらなかったことを保証した。
【0195】
RAGE-IgG融合タンパク質を作り出すために、配列番号54の核酸配列を含む発現ベクターを、CHO細胞内の安定的にトランスフェクションした。
【0196】
トランスフェクション細胞によって発現される単離されたRAGE融合タンパク質TTP-4000の配列を、配列番号34又は配列番号56、あるいは配列番号34及び配列番号56の両方のいずれかとして様々な特徴付け研究によって確認した。よって、配列番号32の最初の23個のアミノ酸によってコードされるシグナル配列を開裂させ、そしてN末端残基は、グルタミン(Q)、又はピログルタミン酸(pE)、あるいはその混合物であった。特徴付け研究は、また、(配列番号34又は配列番号56の番号付けに基づく)N2及びN288におけるグリコシル化部位をも示し、そして、この組換えシステムにおいて発現される場合に、RAGE融合タンパク質のCH3領域が、翻訳後修飾を通じて開裂されるC末端残基を持つ可能性があることも示した。
【0197】
実施例2:RAGE-IgG1融合タンパク質の活性を試験する方法
A.インビトロにおけるリガンド結合
既知のRAGEリガンドを、1ウェルあたり5マイクログラムの濃度でMaxisorbプレート表面上にコートした。プレートを4℃で一晩インキューベートした。リガンド・インキュベーションに続いて、プレートを吸引し、そして、50mMのイミダゾール・バッファー(pH7.2)中、1%のBSAから成るブロッキング・バッファーをプレートに加えた(室温で1時間)。プレートを、次に、吸引し、及び/又は洗浄バッファー(20mMのイミダゾール、150mMのNaCl、0.05%のTween-20、5mMのCaCl2、及び5mMのMgCl2、pH7.2)で洗浄した。1.082mg/mLの初期濃度にてTTP-3000の溶液(TT3)、及び370μg/mLの初期濃度にてTTP-4000の溶液(TT4)を調製した。RAGE融合タンパク質を、初期サンプルを漸増する希釈度にて加えた。RAGE融合タンパク質を、固定化リガンドと一緒に37℃で1時間インキューベートし、その後、そのプレートを洗浄し、そしてRAGE融合タンパク質の結合についてアッセイした。結合を、21ng/100μLの最終アッセイ濃度(FAC)まで1:11,000に希釈したモノクローナル・マウス抗ヒトのIgG1、500ng/μLのFACまで1:500に希釈したビオチン化ヤギ抗マウスIgG、及びアビジン連結アルカリホスファターゼを含む免疫検出複合体の添加によって検出した。複合体を、固定化RAGE融合タンパク質と一緒に室温で1時間インキューベートし、その後、プレートを洗浄し、そして、アルカリホスファターゼ基質・パラニトロフェニルホスファート(PNPP)を加えた。固定化RAGE融合タンパク質への複合体の結合を、405nmにて分光光度測定で計測されるPNPPのパラ-ニトロフェノール(PNP)への転換を測定することによって定量化した。
【0198】
図7で説明されるように、RAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)及びTTP-3000(TT3)は、既知のRAGEリガンドであるアミロイド-β(Aβ)、S100b(S100)、及びアンホテリン(Ampho)と特異的に相互作用する。リガンドの不存在下、すなわち、BSAコートのみ(BSA又はBSA+洗浄)において、免疫検出複合体の非特異的結合に起因するレベルを超える吸光度の増大はなかった。アミロイド-βが標識リガンドとして使用される場合には、アッセイ前にアミロイド-βをプレインキュベートする必要があるかもしれない。アミロイド-βがプリーツシート形態でRAGEに選択的に結合することができるので、プレインキュベーションはアミロイド-βのプリーツシート形態への自己集合を可能にすることができる。
【0199】
RAGE融合タンパク質TTP4000及びTTP-3000とRAGEリガンドの間の特異的な相互作用の更なる証拠は、RAGEリガンドがRAGE融合タンパク質に結合するために既知のRAGEリガンドと効果的に競合できることを示す研究において例示される。これらの研究において、先に説明したように、アミロイド-β(A-β)をMaxisorbプレート上に固定し、そしてRAGE融合タンパク質を加えた。さらに、RAGEリガンドを、RAGE融合タンパク質と同時にいくつかのウェルに加えた。
【0200】
TTP-4000が123μg/mL(1:3希釈、図8)で存在していた場合に、RAGEリガンドが、TTP-4000(TT4)の結合を約25%〜30%まで妨げることができるのがわかった。TTP-4000の初期溶液を10又は30倍に希釈した場合(1:10又は1:30)、固定化リガンドへのRAGE融合タンパク質の結合はRAGEリガンドによって完全に抑制された。同様に、TTP-3000が360μg/mL(1:3希釈、図9)で存在する場合に、RAGEリガンドは、TTP-3000(TT3)の結合を約50%まで妨げた。TTP-3000の初期溶液を10倍に希釈した場合(1:10)、固定化リガンドへのRAGE融合タンパク質の結合はRAGEリガンドによって完全に抑制された。よって、RAGEリガンドへのRAGE融合タンパク質の結合の特異性は用量依存性であった。また、図8及び9に示されているように、RAGE融合タンパク質の不存在、すなわち、免疫検出複合体のみを使用した(「複合体のみ」)の場合、本質的に結合は検出されなかった。
【0201】
B.細胞ベースのアッセイにおけるRAGE融合タンパク質の効果
これまでの研究によると、骨髄性THP-1細胞がRAGEリガンドに応答してTNF-αを分泌する可能性があることが示されている。このアッセイでは、THP-1細胞を、ATCCによって提供されたプロトコールを使用して10%のFBSを補ったRPMI-1640培地中で培養した。その細胞を、RAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)又はTTP-4000(TT4)(10μg)、sRAGE(10μg)、ヒトIgG(10μg)(すなわち、ネガティブコントロールとして)の不存在下、及び存在下の両方で、0.1mg/mlのS100bを伴ったRAGEの刺激によってTNF-αを分泌するように誘導した。THP-1細胞によって分泌されたTNF-αの量を、細胞培養へのタンパク質添加の24時間後に、TNF-αのための市販のELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を使用することで計測した。図10の結果は、RAGE融合タンパク質が、これらの細胞におけるTNF-αのS100b/RAGEに誘発された産生を抑制するということを実証している。図10に示されているとおり、10μgのRAGE融合タンパク質TTP-3000又はTTP-4000の添加で、S100b(0.1mg/ml FAC)によるTNF-αの誘導はそれぞれ約45%〜70%まで減少した。TNF-αのS100b誘導を妨げることにおいて、融合タンパク質TTP-4000は、少なくともsRAGEと同じくらい有効でありうる(図10)。TTP-4000及びTTP-3000のRAGE配列に対する阻害の特異性は、S100b刺激細胞にIgG単独で加えられた実験によって示されている。アッセイへのIgG及びS100bの添加は、S100b単独の場合と同じレベルのTNF-αを示している。RAGE融合タンパク質のRAGE配列に対するTTP-4000及びTTP-3000によるTNF-α誘導の阻害の特異性は、S100b刺激細胞にIgGのみを加えた実験によって示される。アッセイへのIgG、すなわち、RAGE配列を持たないヒトIgG(SigmaヒトIgGを10μg/ウェルで加えた)及びS100bの添加が、S100b単独の場合と同じレベルのTNF-αを示すことがわかった。
【0202】
実施例3:TTP-4000の薬物動態額的特性
ヒトsRAGEと比べてTTP-4000が優れた薬理動態学特性を有するか否かを判定するために、ラット及び非ヒト霊長類をTTP-4000の静脈内(IV)注射(5mg/kg)に供し、次に、TTP-4000の存在について血漿を評価した。これらの実験では、2匹の未処置雄サルに、末梢静脈中へのTTP-4000の単回IV大量投与(5mg/ml/kg)と、それに続く約1.0ミリリットル(mL)の生理食塩水洗浄液を与えた。血液サンプル(約1.0mL)を、投薬前(すなわち、TTP-4000注射の前)、又は投薬後0.083、0.25、0.5、2、4、8、12、24、48、72、96、120、168、240、288、及び336時間に、(リチウム・ヘパリン)を含む試験管内に採取した。採取に続いて、その試験管を、冷却(2〜8℃)下、1500×gで15分間の遠心分離にかけるまで湿った氷上に(最大30分)に置いた。それぞれの得られた血漿サンプルを、次に、実施例6に記載されるように、注射に続いて様々な時点でELISAを使用してRAGEポリペプチドについてアッセイするまで冷凍(−70℃±10℃)で保存した。
【0203】
図11に示される動力学的特性は、2匹の動物におけるアルファ相のかなり急な勾配によって証明されるように、TTP-4000がそのリガンドをいったん飽和すると、300時間を越える末端半減期を維持することを明らかにする。この半減期は、血漿中のヒトsRAGEの半減期(一般に約2時間)よりも有意に長いので、急性及び準慢性適応症のための単回注射の機会を与える。図11において、各曲線は同じ実験条件下の異なる動物を表す。
【0204】
実施例4:TTP-4000のFc活性化
ヒトIgGと比べた場合のRAGE融合タンパク質TTP-4000によるFc受容体の活性化を測定するために実験を実施した。Fc受容体の活性化を、Fc受容体を発現するTHP-1細胞からのTNF-α分泌を測定することによって計測した。これらの実験では、96ウェル・プレートを10μg/ウェルのTTP-4000又はヒトIgGでコートした。Fc刺激がTNF-α分泌をもたらした。TNF-αの量を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって計測した。
【0205】
よって、このアッセイにおいて、骨髄細胞株THP-1(ATTC番号TIB-202)を、ATCCの指示に従って10%のウシ胎仔血清を補ったRPMI-1640培地中で維持した。通常、1ウェルあたり40,000〜80,000細胞を、加熱凝集した(63℃で30分間)TTP-4000又はヒトIgG1のいずれかを10ug/ウェルでウェルをプレコートすることによるFc受容体刺激を介してTNF-αを分泌するように誘発した。THP-1細胞によって分泌されたTNF-αの量を、指示に従って市販のTNF ELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN # DTA00C)を使用して、処理したウェル内の24時間の細胞培養物から回収した上清において計測した。
【0206】
結果は、図12に示されるが、ここで、TTP-4000が2 ng/ウェル未満のTNFしか産生せず、そしてIgGは40ng/ウェルより多く産生することがわかった。
【0207】
実施例5:TTP-4000のインビボにおける活性
ヒト疾病のいくつかのin vivoモデルにおいて、TTP-4000の活性をsRAGEと比較した。
A.再狭窄の動物モデルにおけるTTP-4000
RAGE融合タンパク質TTP-4000を、血管傷害後21日間の平滑筋増殖及び内膜拡張の計測に関与するラット糖尿病モデルの再狭窄において評価した。これらの実験では、左総頸動脈のバルーン障害を、標準的は手順を使用してザッカー糖尿病、及び非糖尿病のラットにおいて実施した。IgG、TTP-4000、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の初回量(3mg/ラット)を、傷害の1日前に腹腔内(IP)に投与した。維持量を、傷害の7日目後まで一日おき(すなわち、傷害後1、3、5、及び7日目)に提供した。維持量は、高=1つの群に1mg/動物、又は低=もう1つの群に0.3mg/動物であった。血管平滑筋細胞(VSMC)増殖を測定するために、動物を、傷害の4日後と21日後に屠殺した。細胞増殖の計測のために、4日目の動物には、安楽死の18、12、及び2時間前にブロモデオキシウリジン(BrDdU)50mg/kgの腹腔内投与を与えた。屠殺後、左及び右の頚動脈の全体を採取した。標本を、包埋前の少なくとも24時間Histochoice中に保存した。VSMC増殖の評価を、マウス抗BrdUモノクローナル抗体を使用することで実施した。蛍光標識ヤギ抗マウス二次抗体を適用した。切片あたりのBrdU陽性の核の数を、処置計画を伏せられた2人の観察者によってカウントした。
【0208】
残ったラットを、形態測定分析のために21日目に屠殺した。形態測定分析を、ファン・ギーソン染色によって染色した頚動脈の(5mm離れた)連続切片上でコンピュータ化したデジタル顕微鏡の面積測定ソフトウェアであるImage-Pro Plusを使用して、実験群をわからないようにした観察者によって実施した。全てのデータを平均±SDとして表した。統計的分析を、SPSSソフトウェアを用いて実施した。連続的変量を、対応のないt検定を使用して比較した。P≦0.05の値を、統計的に有意であると考えた。
【0209】
図13A及び13Bに見られるように、TTP-4000処置は、用量応答様式で内膜/中膜の比、及び血管平滑筋細胞増殖を有意に減少させた。図13Bでは、Y軸はBrdU増殖細胞の数を表す。
【0210】
B.APの動物モデルにおけるTTP-4000
TTP-4000がマウスADモデルにおけるアミロイド形成と認知機能障害に影響を及ぼすかどうか評価するために、実験を実施した。実験には、PDGF-B鎖プロモーターの制御下のヒト・スウェーデン型突然変異アミロイド前駆タンパク質(APP)を発現するトランスジェニック・マウスを利用した。時間が経つにつれて、これらのマウスは、高レベルのRAGEリガンドであるアミロイド-β(Aβ)を産生した。これまでは、3カ月間のsRAGE処置が、このモデルにおける脳内のアミロイド斑形成及び炎症性マーカーの関連した増加の両方を減少させることが示された。
【0211】
この実験に使用されるAPPマウス(雄)を、血小板由来成長因子B(PDGF-B)鎖遺伝子プロモーターの制御下、マウス卵内への(スウェーデン型及びロンドン型の突然変異を有する)ヒトAPP遺伝子の微量注射によって設計した。そのマウスを、C57BL/6の生い立ちを持つものにおいて発生させ、そしてそれはMolecular Therapeutics Inc.によって開発された。動物に不断給餌し、そして同胞交配によって維持した。このコンストラクトから発生したマウスは、6カ月齢にて開始するアミロイド沈着を発現した。動物を、6カ月齢にし、次に90日間維持し、そしてアミロイド定量化のために屠殺した。
【0212】
APPトランスジェニック・マウスに、6カ月齢から開始して90日間、一日おきに[qod(i.p.)]溶媒又はTTP-4000を投与した。実験の終わりに、動物を屠殺し、脳内のAβ斑負荷について調べた(すなわち、斑の数)。6カ月のコントロールAPP群を、アミロイド沈着のベースラインを決定するのに使用した。さらに、研究の終わりに、動物を行動(モリス水迷路)分析にかけた。調査員には試験化合物が分からないようにした。サンプルを、0.25ml/マウス/一日おきでマウスに与えた。さらに、1群のマウスに200ug/日のヒトsRAGEを与えた。
【0213】
1.アミロイドβ堆積
組織学的検査のために、動物を、ペントバルビタール・ナトリウム(50mg/kg)の腹腔内投与(IP)で麻酔した。動物に、4℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)と、それに続いて4%のパラホルムを経心臓的に潅流した。脳を取り出し、4%のパラホルムアルデヒド中に一晩、置いた。その脳を、パラフィン処理し、そして包埋した。脳を通した10枚の連続した30μm厚の切片を得た。トランスジェニック動物の脳内のアミロイド沈着を検出するために、切片を一次抗体(Aβペプチド抗体)に4℃で一晩、晒した(Guoら、J. Neurosci. 22:5900-5909ページ(2002年))。切片を、トリス緩衝食塩水(TBS)中で洗浄し、二次抗体を加え、そして室温で1時間インキューベートした。洗浄後に、切片を、ベクターABC Eliteキット(Vector Laboratories)に指示されるとおりにインキューベートし、そしてジアミノ安息香酸(DAB)で染色した。反応を水により止めて、キシレンでの処理後にカバースリップを乗せた。各切片内のアミロイド領域を、Quick Captureフレーム取り込みカード、オリンパス顕微鏡に備え付けられたヒタチCCDカメラ、及びカメラ・スタンドを備えたPower Macintosh(登録商標)コンピュータから成るコンピュータを利用した画像解析システムを用いて測定した。NIH画像分析ソフトウェア、v. 1.55を使用した。画像を得、そしてアミロイドの総面積を、10枚の切片にわたって測定した。処置状況を伏せられた1人のオペレーターが全ての測定を実施した。切片のアミロイド量を合計し、そして切片の総数で割ることで、アミロイド量を計算した。
【0214】
定量分析のために、酸素結合免疫吸着検査法(ELISA)を、APPトランスジェニック・マウス(Biosource International, Camarillo, CA)の脳内のヒト総Aβ、Aβtotal、及びAβ1-42のレベルを測定するために使用した。Aβtotal及びAβ1-42を、塩酸グアニジンによってマウスの脳から抽出し、そして製造業者による説明のとおりに定量した。このアッセイは、脳からの全Aβペプチド(可溶性と凝集性の両方)を抽出する。
【0215】
2.認識機能
モリス水迷路試験を以下のとおり実施した。全てのマウスを、実験の終わりにモリス水迷路試験で一度試験した。マウスを、1.2mのオープンフィールド水迷路で訓練した。プールを、30cmの深さまで水で満たし、そして25℃に維持した。エスケープ・プラットフォーム(10cm四方)を水面の1cm下に配置した。試験中、プラットフォームをプールから取り出した。手掛かり試験(cued test)を、白いカーテンで囲まれて、あらゆる余分な迷路の手掛りを隠したプールの中で行った。全ての動物に、連続した3日間、空間的な事前訓練を与えなかった(NSP)。これらの試験は、プラットフォームを見つけるための記憶の保持力を測定するための最終的な行動試験のための動物を調製するためにある。これらの試験は、記録されなかったが、訓練目的だけのためのものであった。訓練する、及び研究を学習するために、カーテンは余分な迷路の手掛りを取り除いた(これは水泳障害を伴う動物の識別を可能にする)。1日目に、マウスを、20秒間、隠したプラットフォーム上に置き(試験1)、試験2〜3のために、動物を、手掛かりのあるプラットフォーム又は隠したプラットフォーム(試験4)から10cm離れた水中に放して、プラットフォームまで泳がせた。試験の2日目に、隠したプラットフォームを、プールの中央、又はそれぞれの象限の中央の間で無作為に移動させた。動物を、無作為に壁と向き合わせてプール内に放し、そして60秒でプラットフォームに到達させた(試験3)。3番目の試験において、動物に、隠したプラットフォームによる2つと、手掛かりのあるプラットフォームによる1つの、3つの試験を与えた。NSP後の2日間、動物を、最終的な行動試験(モリス水迷路試験)にかけた。これらの試験(動物1匹あたり3つ)のために、プラットフォームをプールの1つの象限の中央に配置し、そして動物を無作為に壁に向かい合わせて放した。動物に、プラットフォームを見つけさせるか、又は60秒間、泳がせた(反応時間、プラットフォームを見つける時間)。全ての動物を、投薬の4〜6時間以内に試験し、そして試験群が分からないようにしたオペレーターによって試験するために無作為に選択させた。
【0216】
結果を、平均±標準偏差(SD)として表した。アミロイド及び行動研究における相違の有意性を、t-検定を使って分析した。6カ月齢のAPPコントロール群とTTP-4000処置動物、並びに9カ月齢のAPP溶媒処置群とTTP-4000処置動物の間で比較をした。0.05未満の相違を有意であると見なした。アミロイド及び行動における変化の百分率を、各群におけるデータの合計を取り、そしてコントロールで割ることによって決定した(すなわち、1、i.p./6カ月コントロール=%変化)
【0217】
図14A及び14Bは、TTP-4000又はマウスsRAGEのいずれかで3カ月間処置したマウスが、溶媒及びネガティブコントロールであるヒトIgG1(IgG1)処置動物に比べてより少ないAβ斑、及びより少ない認知機能障害しか持たないことを示している。このデータは、TTP-4000がトランスジェニック・マウス・モデルにおけるAD病理の減少に有効であることを示唆している。sRAGEのように、TTP-4000が炎症性サイトカインであるIL-1及びTNF-αを下げることができることもわかった(データ未掲載)。
【0218】
C.脳卒中の動物モデルにおけるTTP-4000の有効性
脳卒中の疾患関連動物モデルにおいて、TTP-4000をsRAGEとも比較した。このモデルでは、マウスの中央頚動脈を1時間結紮し、続いて23時間の再潅流をして、その時点でマウスを屠殺し、そして脳内の梗塞の面積を評価した。再潅流直前に、マウスを、sRAGE、又はTTP-4000、あるいはコントロール免疫グロブリンによって処理した。
【0219】
これらの実験では、雄C57BL/6に、250μl/マウスにて溶媒を、又はTTP試験物質(250μl/マウスにてTTP-3000、TTP-4000)を注射した。マウスには、虚血の開始の1時間後に腹腔内に注射した。マウスを、1時間の大脳虚血、それに続く24時間の再潅流にさらした。虚血を誘発するために、各マウスを麻酔し、そして外部加温により体温を36〜37℃に維持した。左の総頚動脈(CCA)を首の正中切開により露出させた。顕微手術クリップを、内頸動脈(ICA)の起始部のそばに置いた。ECAの遠位末端を、絹糸で結紮し、そして切断した。6-0絹糸を、ECA断端のそばで軽く結んだ。ナイロン縫合糸の精密研磨された先を、ECA断端にそっと挿入した。6-0絹糸の輪を前記断端の周りで絞り、そしてナイロン縫合糸を前大脳動脈で静止するまで内頚動脈(ICA)の中に通して進め、それによって前交通動脈及び中大脳動脈を咬合する。ナイロン縫合糸を適所に据えた1時間後に、動物を再び麻酔し、直腸温度を記録し、そして縫合糸を取り除き切片部を閉じた。
【0220】
ペントバルビタール・ナトリウム(50mg/kg)の腹腔内投与で動物を麻痺し、次に、脳を取り出すことによって梗塞量を測定した。その脳を、次に、梗塞領域を通る4枚の2mm切片に区分し、そして2%の塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)中に30分間置いた。その後、切片を、4%のパラホルムアルデヒド中に一晩置いた。各切片の梗塞領域を、Quick Captureフレーム取り込みカード、カメラ・スタンドに据え付けられたヒタチCCDカメラを備えたPower Macintosh(登録商標)コンピュータから成るコンピュータを利用した画像解析システムを用いて測定した。NIH画像分析ソフトウェア、v. 1.55を使用した。画像を得、そして切片を通して総梗塞面積を測定した。処置状況を伏せられた1人のオペレーターが全ての測定を実施した。切片の梗塞量を合計して総梗塞量を計算した。結果を平均±標準偏差(SD)として表した。梗塞量データの相違の有意性は、t-検定を使って分析した。
【0221】
表2中のデータによって説明されるように、これらの動物における梗塞領域を制限することにおいて、TTP-4000はsRAGEよりも効果的であり、より優れた血漿中半減期のため、これらのマウスにおいてTTP-4000がより大きな保護を維持できたことを示唆している。
【0222】
実施例6:ELISAによるRAGE融合タンパク質の検出
最初に、1×PBS pH7.3中、10ug/mLの濃度にて50uLのRAGE特異的モノクローナル抗体1HB1011を、一晩のインキュベーションによってプレートにコートする。レディーフォーユースの場合、プレートを、300uLの1×イミダゾール-Tween洗浄バッファーで3回洗浄し、そして1%のBSAでブロックした。(希釈した)サンプルと、既知のTTP-4000希釈物の標準希釈物を、100uLの最終量で加える。サンプルを、室温で1時間インキューベートする。インキュベーション後に、そのプレートを3回洗浄する。1%のBSAを含む1×PBS中、ヤギ抗ヒトIgG1 1(Sigma A3312)APコンジュゲートを加え、室温で1時間インキューベートする。プレートを3回洗浄する。呈色をパラニトロフェニルホスファートではっきりさせた。
【0223】
実施例7:RAGE融合タンパク質へのRAGEリガンド結合の定量
図15は、種々の固定化された既知のRAGEリガンドに対するTTP-4000による飽和結合曲線を示している。リガンドを、マイクロタイタープレート上に固定し、0〜360nMの漸増する濃度のRAGE融合タンパク質の存在下でインキューベートする。RAGE融合タンパク質-リガンド相互作用を、融合キメラのIgG部分に特異的である、アルカリホスファターゼを抱合したポリクローナル抗体を使用して検出する。相対Kdsを、Graphpad Prizmソフトウェアを使用して計算し、そしてRAGE-RAGEリガンド値の立証された文献値と照合した。HMG1B=アンホテリン、CML=カルボキシメチルリジン、Aβ=アミロイドβ1-40。
【0224】
実施例8:同種間移植拒絶反応を予防するためのRAGE融合タンパク質の使用
RAGE遮断剤には、同種間移植拒絶反応をブロックすることを期待することができる。これらの実験は、本発明のRAGE融合タンパク質を使用したリガンド-RAGE相互作用の遮断剤が、移植した動物が目標濃度を下回る血糖値を維持した時間の長さによって計測される、健常ドナーから糖尿病動物に移植された島細胞の拒絶反応を軽減するか否かを調査した。本明細書中で議論したように、島細胞移植を受けた糖尿病動物へのRAGE融合タンパク質(例えば、TTP-4000)の投与が、移植の2つ(同種間と同系間)の動物モデルにおいて、高血糖の再発とそれによる移植した島細胞の拒絶反応をかなり遅らせたことがわかった。
【0225】
A.マウスにおける同種間の島移植
第1の実験セットは、RAGE融合タンパク質(TTP-4000)の投与が移植された島細胞の同種間拒絶反応、及びC57BL/6J(B6)マウス糖尿病モデルにおける糖尿病の再発を調節するか否かを試験した。
糖尿病の動物モデル
C57BL/6J(6〜8週齢)(B6)マウスを、200mg/kgでのストレプトゾトシン(STZ)(Sigma Chemical Co., St Louis, MO)の単回静脈内投与によって糖尿病にした。BALB/cJ(6〜8週齢)(BALB)マウスは、島移植のためのドナーとしての役割を担い、それにより島移植に関する同種不一致をもたらす。
【0226】
膵島の分離
マウス(BALB/c)を塩酸ケタミン/塩酸キシラジン溶液(Sigma, St Louis MO)で麻酔した。1.5mg/mlのコラゲナーゼP(Roche Diagnostics, Branchburg, NJ)を含む冷ハンクス平衡塩類溶液(HBSS, Gibco, Grand Island NY)3mlの導管内注射の後に、膵臓を、外科的に得、そして37℃で20分間、消化した。膵島を、HBSSで洗浄し、4つの異なる密度(26%、23%、20%、及び11%)を持つPolysucrose 400(Cellgro, Hemdon VA)を使用することで不連続勾配遠心分離によって精製した。20%と23%の層の界面の組織片を、回収し、洗浄し、そしてHBSS中に再懸濁した。個々の膵島、遊離の付随する腺房、血管及び管組織を、倒立顕微鏡下で選び出し、移植のための高度に精製された膵島を得た。
【0227】
膵島の移植
ストレプトゾトシン誘発糖尿病C57BL/6(B6)マウスは、糖尿病の診断の2日以内に島移植を受けた。BALB/cJ(6〜8週齢)(BALB)マウスが、同種間島移植のためのドナーの役割を担った。移植のために、ドナー・マウスからの500〜600個の新しく分離した膵島(すなわち、約550個の膵島相当物)を、輸液セットで吸い上げ、そして移植個体の右腎の被膜下空間内に移植した。
【0228】
試験化合物での処置
膵島を移植してすぐに、試験化合物を投与した。どの程度コントロール動物がうまくいっているかどうかに依存して、投与を約60日間続けた。マウスに、以下の処置計画(表3)に従って、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、PBS中のTTP4000、又はPBS中のIgGのいずれかの0.25mlを注射した。
【0229】
【表3】

【0230】
膵島移植片機能の観察
膵島移植片機能を、膵島移植後の最初の2週間は毎日、続いてその後は一日おきの連続した血糖測定によって観察した。糖尿病の好転は、2回の連続した測定値にて200 mg/dl未満の血糖値と規定した。2回の連続した測定値にて血糖が250mg/dlを超えた場合に、移植片の喪失を確定した。結果を表4中に示す。
【0231】
【表4】

【0232】
B6マウスにおけるBALB/c膵島に対する同種間移植片拒絶反応へのTTP-4000を投与することの効果を、図21のカプラン-マイヤー累積生存率プロットとして示す。全く処置されていない動物(コントロール)、又は溶媒(PBS)又は(ヒトIgG1)で処理された動物とは対照的に、TTP-4000で処置された動物(第1群及び第3群)に関する移植不全の検出以前の期間の延長があったように思われる。様々な統計的分析(マンテル-コックス・ロングランク、ブレスロー-ゲーハン-ウィルコクソン;ターロン-ウェア、ピトー-ピトー-ウィルコクソン;及びハリントン-フレミング)を使用すると、コントロールとTTP-4000(群1群と第3群)の相違は有意であった(表5)。
【0233】
【表5】

【0234】
B.自己免疫疾患のモデルとしてのNODマウスにおける膵島移植
第2の実験セットは、同種間NOD移植モデルを使用して、RAGE融合タンパク質(すなわち、TTP-4000又はTTP-3000)の投与がNODマウスにおける糖尿病の再発の経過を調節するか否かを試験した。
糖尿病の動物モデル
突発性自己免疫性非肥満糖尿病マウス(NOD/LtJ)(12〜25週齢)が膵島細胞のための移植個体としての役割を担った一方で、若い前糖尿病性NOD/LtJマウス(6〜7週齢)が同種間島移植のドナーとしての役割を担った。移植のための膵島を、A節において先に記載のとおり分離した(同種間島移植)。
【0235】
膵島の移植
糖尿病NOD/LtJマウスは、糖尿病の診断の2日以内に膵島移植を受けた。ドナー・マウスからの500〜600個の新しく分離された膵島(約550個の膵島相当物)を、輸液セットを用いて吸い上げ、そして右腎の被膜下空間内に移植した。
試験化合物での処置
膵島を移植してすぐに、試験化合物を投与し、そして約8週間続けた。マウスに、以下の処置計画(表6)に従って、PBS、PBS中のTTP4000、又はPBS中のTTP-3000のいずれかの0.25mlを注射した。
【0236】
【表6】

【0237】
膵島移植片機能の観察
膵島移植片機能を、膵島移植後の最初の2週間は毎日、続いてその後は一日おきの連続した血糖測定によって観察した。糖尿病の好転は、2回の連続した測定値にて200 mg/dl未満の血糖と規定した。2回の連続した測定値にて血糖が250mg/dlを超えた場合に、移植片の喪失の割合を確定した。結果を表7中に示す。
【0238】
【表7】

【0239】
糖尿病NODマウスにおける同種間移植した膵島の拒絶反応へのTTP-4000を投与することの効果を、図22のカプラン-マイヤー累積生存率プロットとして示す。表7のデータに示されるとおり、全く処置されていない動物(コントロール)とは対照的に、TTP-4000で処置された動物(第1群)及びTTP-3000で処置された動物(第3群)に関する移植不全の検出以前の期間の延長があったように思われる。図22は、TTP-4000で処置した動物(第1群)及び全く処置していない動物に関する移植不全の検出以前の期間の延長を示している。様々な統計的分析(マンテル-コックス・ロングランク、ブレスロー-ゲーハン-ウィルコクソン;ターロン-ウェア、ピトー-ピトー-ウィルコクソン;及びハリントン-フレミング)を使用すると、コントロールとTTP-4000(群1群)及びコントロールとTTP-3000(第3群)の相違は有意であった(表8)。
【0240】
【表8】

【0241】
前述のものは、本発明の主要部の単なる例示とみなされる。当業者にとって、多数の修飾及び変化は容易に想到するものであるため、示すとともに説明した実際の態様に本発明を限定するものとは解されず、特許請求の範囲内の全ての適当な修飾物及び均等物が本発明の概念の範囲内にあるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1A】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルA、配列番号1、ヒトRAGEのアミノ酸配列;及び配列番号2、第1〜22アミノ酸から成るシグナル配列を含まないヒトRAGEのアミノ酸配列。
【図1B】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルB、配列番号3、第1〜23アミノ酸から成るシグナル配列を含まないヒトRAGEのアミノ酸配列。
【図1C】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルC、配列番号4、ヒトsRAGEのアミノ酸配列;配列番号5、第1〜22アミノ酸から成るシグナル配列を含まないヒトsRAGEのアミノ酸配列;及び配列番号6、第1〜23アミノ酸から成るシグナル配列を含まないヒトsRAGEのアミノ酸配列。
【図1D】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルD、配列番号7、ヒトRAGEのVドメインを含むアミノ酸配列;配列番号8、ヒトRAGEのVドメインを含む代替のアミノ酸配列;配列番号9、ヒトRAGEのVドメインのN末端フラグメント;配列番号10、ヒトRAGEのVドメインの代替のN末端フラグメント;配列番号11、ヒトRAGEの124〜221アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号12、ヒトRAGEの227〜317アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号13、ヒトRAGEの23〜123アミノ酸から成るアミノ酸配列。
【図1E】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルE、配列番号14、ヒトRAGEの24〜123アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号15、ヒトRAGEの23〜136アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号16、ヒトRAGEの24〜136アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号17、ヒトRAGEの23〜226アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号18、ヒトRAGEの24〜226アミノ酸から成るアミノ酸配列。
【図1F】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルF、配列番号19、ヒトRAGEの23〜25 1アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号20、ヒトRAGEの24〜251アミノ酸から成るアミノ酸配列;配列番号21、RAGEドメイン間リンカー;配列番号22、第2のRAGEドメイン間リンカー;配列番号23、第3のRAGEドメイン間リンカー;配列番号24、第4のRAGEドメイン間リンカー。
【図1G】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルG、配列番号25、ヒトRAGEの1〜118アミノ酸をコードするDNA;配列番号26、ヒトRAGEの1〜123アミノ酸をコードするDNA;及び配列番号27、ヒトRAGEの1〜136アミノ酸をコードするDNA。
【図1H】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルH、配列番号28、ヒトRAGEの1〜230アミノ酸をコードするDNA;配列番号29、ヒトRAGEの1〜251アミノ酸をコードするDNA。
【図1I】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルI、配列番号38、ヒトIgGのCH2及びCH3ドメインの部分アミノ酸配列;配列番号39、ヒトIgGヒトCH2及びCH3ドメインの一部をコードするDNA;配列番号40、ヒトIgGのCH2及びCH3ドメインのアミノ酸配列。
【図1J】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示す:パネルJ、配列番号41、ヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインをコードするDNA;配列番号42、ヒトIgGのCH2ドメインのアミノ酸配列;配列番号43、ヒトIgGのCH3ドメインのアミノ酸配列;及び配列番号44、第5のRAGEドメイン間リンカー。
【図2】本発明の態様による第1のRAGE融合タンパク質(TTP-4000)コード領域のDNA配列(配列番号30)を示している。ボールド体で強調したコード配列1〜753がRAGEのN末端タンパク質配列をコードする一方で、配列754〜1386はヒトIgG(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図3】本発明の態様による第2のRAGE融合タンパク質(TTP-3000)コード領域のDNA配列(配列番号31)を示している。ボールド体で強調したコード配列1〜408がRAGEのN末端タンパク質配列をコードする一方で、配列409〜1041はヒトIgG(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図4】配列番号32、配列番号33、及び配列番号34のアミノ酸配列を示しており、それぞれが本発明の別の態様による4ドメインRAGE融合タンパク質をコードするアミノ酸配列である。RAGE配列を、ボールド体のフォントで強調する。
【図5】配列番号35、配列番号36、及び配列番号37のアミノ酸配列を示しており、それぞれが本発明の別の態様による3ドメインRAGE融合タンパク質をコードするアミノ酸配列である。RAGE配列を、ボールド体のフォントで強調する。
【図6A】パネルAは、本発明の別の態様によるヒトRAGEと、ヒトIgγ-1のFcタンパク質のタンパク質ドメイン、並びにTTP-3000(136位にて)、及びTTP-4000(251位にて)を作製するのに使用される開裂ポイントの比較を示している。
【図6B】パネルBは、本発明の別の態様によるTTP-3000とTTP-4000の領域構造を示している。
【図7】本発明の態様によるsRAGE、並びに第1のRAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)及び第2のRAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)に関する、RAGEリガンドであるアミロイド-β(A-β)、S100b(S100)、及びアンホテリン(Ampho)に対するインビトロ結合アッセイの結果を示している。
【図8】本発明の態様による、免疫検出試薬のみを含んでいるネガティブコントロール(「複合体のみ」)、及びRAGEアンタゴニスト(「RAGEリガンド」)によるそのような結合の拮抗作用と比較した場合の、第1のRAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)(「タンパク質」)に関するアミロイド-βに対するインビトロ結合アッセイの結果を示している。
【図9】本発明の態様による、免疫検出試薬のみを含んでいるネガティブコントロール(「複合体のみ」)、及びRAGEアンタゴニスト(「RAGEリガンド」)によるそのような結合の拮抗作用と比較した場合の、第2のRAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)(「タンパク質」)に関するアミロイド-βに対するインビトロ結合アッセイの結果を示している。
【図10】本発明の態様による、RAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)及びTTP-4000(TT4)、並びにsRAGEによるS100b-RAGE誘発性TNF-α産生の阻害を測定する細胞ベースのアッセイの結果を示している。
【図11】本発明の態様によるRAGE融合タンパク質TTP-4000の薬理動態学的特性を示しており、その中で、各曲線は同じ実験条件下の異なる動物を表す。
【図12】本発明の態様による炎症反応の手段としてRAGE融合タンパク質TTP-4000による刺激、及びヒトIgGによる刺激に起因するTHP-1細胞からのTNF-α放出の相対レベルを示している。
【図13A】本発明の別の態様による糖尿病動物における再狭窄を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示しており、その中で、パネルAは、ネガティブコントロール(IgG)と比較した場合に、TTP-4000RAGE融合タンパク質が内膜/中膜の比を低下させたことを示している。
【図13B】本発明の別の態様による糖尿病動物における再狭窄を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示しており、その中で、パネルBは、RAGE融合タンパク質TTP-4000が用量反応性の様式で血管平滑筋細胞増殖を減少させたことを示している。
【図14A】本発明の別の態様によるアルツハイマー病(AD)の動物におけるアミロイド形成と認知機能障害を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示している。その中で、パネルAは、RAGE融合タンパク質TTP-4000が脳内のアミロイド負荷を減少させたこと示している。
【図14B】本発明の別の態様によるアルツハイマー病(AD)の動物におけるアミロイド形成と認知機能障害を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示している。その中で、パネルBは、RAGE融合タンパク質TTP-4000が認知機能障害を改善したことを示している。
【図15】本発明の態様による種々の固定された既知のRAGEリガンドに対してTTP-4000を用いた飽和結合曲線を示している。
【図16A】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示している:パネルA、配列番号45、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成した第1〜23アミノ酸から成るシグナル配列を含まないヒトsRAGEアミノ酸配列、配列番号46、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成したヒトsRAGEのVドメインを含む代替のアミノ酸配列、配列番号47、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成したヒトRAGEのVドメインの代替のN末端フラグメント、配列番号48、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成したヒトRAGEの24〜123アミノ酸から成るアミノ酸配列。
【図16B】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示している:パネルB、配列番号49、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成したヒトRAGEの24〜136アミノ酸から成るアミノ酸配列、配列番号50、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成したヒトRAGEの24〜226アミノ酸から成るアミノ酸配列、配列番号51、N末端にてグルタミン残基が環化されて、ピログルタミン酸を形成したヒトRAGEの24〜251アミノ酸から成るアミノ酸配列。
【図16C】本発明の別の態様による様々なRAGE配列及び免疫グロブリン配列を示している:パネルC、配列番号52、配列番号38の中のヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインの一部をコードする代替のDNA配列、配列番号53、配列番号40の中のヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインをコードする代替のDNA配列。
【図17】本発明の態様による第1のRAGE融合タンパク質(TTP-4000)コード領域の代替のDNA配列(配列番号54)を示している。ボールド体で強調したコード配列1〜753がRAGEのN末端タンパク質配列をコードし、そして配列754〜1386がヒトIgG(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図18】本発明の態様による第2のRAGE融合タンパク質(TTP-3000)コード領域の代替のDNA配列(配列番号55)を示している。ボールド体で強調したコード配列1〜408がRAGEのN末端タンパク質配列をコードし、そして配列409〜1041がヒトIgG(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図19】本発明の別の態様による4ドメインRAGE融合タンパク質をコードするアミノ酸配列である配列番号56を示している。RAGE配列をボールド体のフォントで強調した。
【図20】本発明の別の態様による3ドメインRAGE融合タンパク質をコードするアミノ酸配列である配列番号57を示している。RAGE配列をボールド体のフォントで強調した。
【図21】本発明の別の態様による同種間膵島細胞移植の拒絶反応を軽減させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示しており、白(空の)丸は未処置コントロール動物を意味し;斜線の網掛け円は第1の投与量にてTTP-4000で処置された動物を意味し;波形の網掛け円は第2の投与量にてTTP-4000で処置された動物を意味し;菱形で満たされた円はコントロールPBSで処置された動物を意味し;及び黒円はコントロールIgGで処置された動物を意味している。
【図22】本発明の別の態様による同種間膵島細胞移植の拒絶反応を軽減させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示しており、白(空の)丸は未処置コントロール動物を意味し;及び黒円はTTP-4000で処置された動物を意味している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記RAGEポリペプチドが、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを、当該RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸が当該ドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、当該RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質のフラグメントを含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第1のRAGEドメイン間リンカーを、当該第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が当該第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、且つ、当該第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部のN末端アミノ酸に直接連結されるようにさらに含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
配列番号32、配列番号33、配列番号34、又は配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号33、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号34、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記免疫グロブリンCH2ドメイン又はその一部に直接連結されたRAGEドメイン間リンカーが、配列番号22又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号24又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
RAGEドメイン間リンカーを介して、CH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に連結された単独のRAGE免疫グロブリン・ドメインを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号35、配列番号36、配列番号37、又は配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号36、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号37、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記免疫グロブリンCH2に直接連結されたRAGEリンカーが、配列番号21又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号23又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする単離された核酸配列。
【請求項15】
前記RAGEポリペプチドが、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを、当該RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸が当該ドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、当該RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項14に記載の単離された核酸配列。
【請求項16】
配列番号30の配列又はそのフラグメント、配列番号31の配列又はそのフラグメント、配列番号54の配列又はそのフラグメント、あるいは配列番号55の配列又はそのフラグメントを含む、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
請求項1に記載のRAGE融合タンパク質をコードする発現ベクター。
【請求項18】
前記RAGEポリペプチドが、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを、当該RAGE 免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸が当該ドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、当該RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
配列番号30又はそのフラグメント、配列番号31又はそのフラグメント、配列番号54又はそのフラグメント、あるいは配列番号55又はそのフラグメントの配列を含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項20】
免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を発現するように、請求項17に記載の発現ベクターでトランスフェクションした細胞。
【請求項21】
配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号56、又は配列番号57に規定されるアミノ酸配列を含むRAGE融合タンパク質を発現するように、請求項17に記載の発現ベクターでトランスフェクションした細胞。
【請求項22】
C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号33、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号34、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号36、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号37、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号56、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号57のアミノ酸配列を含むRAGE融合タンパク質を発現するように、請求項17に記載の発現ベクターでトランスフェクションした細胞。
【請求項23】
治療上有効量の請求項1に記載のRAGE融合タンパク質を含む組成物。
【請求項24】
前記RAGEポリペプチドが、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを、当該RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸が当該ドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、当該RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質のフラグメントを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記RAGEポリペプチドが、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第1のRAGEドメイン間リンカーを、当該第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が当該第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、且つ、当該第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部のN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号32、配列番号33、配列番号34、又は配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記RAGE融合タンパク質が、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号33、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号34、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記融合タンパク質が、RAGEドメイン間リンカーを介して、CH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に連結された単独のRAGE免疫グロブリン・ドメインを含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号35、配列番号36、配列番号37、又は配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記RAGE融合タンパク質が、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号36、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号37、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前記RAGE融合タンパク質が注射溶液として処方される、請求項23に記載の組成物。
【請求項35】
前記RAGE融合タンパク質が、無菌凍結乾燥散剤として処方される、請求項23に記載の組成物。
【請求項36】
RAGEポリペプチドを、免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに共有結合させるステップを含む、請求項1に記載のRAGE融合タンパク質の製造方法。
【請求項37】
前記RAGEポリペプチドが、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを、当該RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸が当該ドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、当該RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が前記免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質のフラグメントを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記RAGEポリペプチドが、第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第1のRAGEドメイン間リンカーを、当該第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が当該第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、且つ、当該第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部のN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEドメイン間リンカーを介して、CH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に連結された単独のRAGE免疫グロブリン・ドメインを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記融合タンパク質が、組換えDNAコンストラクトによってコードされる、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記DNAコンストラクトを発現ベクター内に組み込むステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
宿主細胞内に発現ベクターをトランスフェクションすることをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
RAGE融合タンパク質をコードする核酸配列を含む細胞内でRAGE融合タンパク質を発現させることを含む、請求項1のRAGE融合タンパク質の製造方法。
【請求項47】
発現されたRAGE融合タンパク質が、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号56、又は配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
発現されたRAGE融合タンパク質が、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号33、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号34、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号36、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号37、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号56、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
免疫グロブリンのCH2ドメイン又は免疫グロブリンRAGE融合タンパク質のCH2ドメインの一部を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質の製造方法であって、細胞内に請求項16に記載の核酸によってコードされた当該RAGE融合タンパク質を発現させることを含む前記方法。
【請求項50】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、 CHO細胞、NS0細胞、HeLa細胞、COS細胞、及びSP2細胞から成る群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が、前記細胞を培養し、そしてそこからタンパク質を回収することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1に記載のRAGE融合タンパク質を対象に投与することを含む、対象のRAGE媒介性障害の処置方法。
【請求項54】
前記RAGEポリペプチドが、RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを、当該RAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸が当該ドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結され、且つ、当該RAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸が免疫グロブリンのCH2ドメイン又はその一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に直接連結されるように含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号10又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
RAGE免疫グロブリン・ドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質のフラグメントを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第2のRAGEドメイン間リンカーに連結された第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインと第1のRAGEドメイン間リンカーを、当該第1のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第1のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのN末端アミノ酸が当該第1のドメイン間リンカーのC末端アミノ酸に連結され、当該第2のドメイン間リンカーのN末端アミノ酸が当該第2のRAGE免疫グロブリン・ドメインのC末端アミノ酸に連結され、且つ、当該第2のRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がCH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部のN末端アミノ酸に直接連結されるようにさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号33、配列番号34、又は配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記RAGE融合タンパク質が、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号33、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号34、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
免疫グロブリンCH2ドメイン又はその一部に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号22又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号24又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
RAGEドメイン間リンカーを介して、CH2免疫グロブリン・ドメイン又は免疫グロブリンのCH2ドメインの一部を含むポリペプチドのN末端アミノ酸に連結された単独のRAGE免疫グロブリン・ドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号36、配列番号37、又は配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記RAGE融合タンパク質が、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号36、C末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号37、又はC末端のリジン・アミノ酸残基を持たない配列番号57のアミノ酸配列を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
免疫グロブリンCH2又はその一部に直接連結されたRAGEドメイン間リンカーが、配列番号21又はそれと少なくとも90%同一の配列、あるいは配列番号23又はそれと少なくとも90%同一の配列を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記投与方法が、対象へのRAGE融合タンパク質の静脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与の少なくとも1つを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記融合タンパク質を、糖尿病の症候、又は糖尿病の後期合併症の症候を処置するために使用する、請求項53に記載の方法。
【請求項67】
前記糖尿病、又は糖尿病の後期合併症の症候が、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、足の糖尿病性壊疽、心血管系の合併症、又は糖尿病性神経障害のうちの少なくとも1つを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記融合タンパク質を、アミロイドーシス又はアルツハイマー病のうちの少なくとも1つを処置するために使用する、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記融合タンパク質を、癌を処置するために使用する、請求項の53に記載の方法。
【請求項70】
前記融合タンパク質を、炎症を処置するために使用する、請求項の53に記載の方法。
【請求項71】
前記融合タンパク質を、自己免疫、炎症性腸疾患、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、低酸素血症、脳卒中、心臓発作、出血性ショック、敗血症、又は創傷治癒障害の中の少なくとも1つに関連する炎症を処置するために使用する、請求項53に記載の方法。
【請求項72】
前記自己免疫が、皮膚細胞、膵臓細胞、神経細胞、筋細胞、内皮細胞、心臓細胞、肝細胞、腎細胞、心臓、骨髄細胞、骨、血球細胞、動脈細胞、静脈細胞、軟骨細胞、甲状腺細胞、又は幹細胞の中の少なくとも1つの拒絶反応を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記融合タンパク質を、腎不全を処置するため使用する、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記融合タンパク質を、第1の部位から第2の部位への少なくとも1つの臓器、組織、又は多数の細胞の移植に関連する炎症、及び/又は拒絶反応を処置するため使用する、請求項53に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の部位と第2の部位が異なる対象に存在する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の部位と第2の部位が同じ対象に存在する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記移植された細胞、組織、又は臓器が、膵臓、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、骨髄、血液、骨、筋、動脈、静脈、軟骨、甲状腺、神経系の細胞、組織、若しくは臓器、又は幹細胞を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
治療上有効量の、請求項1に記載のRAGE融合タンパク質を投与することを含む、細胞、組織、又は臓器の移植拒絶反応の予防方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図13A】
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【公開番号】特開2007−215543(P2007−215543A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−29408(P2007−29408)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(507036832)トランステック ファーマ,インコーポレイティド (11)
【Fターム(参考)】