説明

RFIDタグおよびそれを用いた通信装置

【課題】引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際に、その熱がRFICチップに直接的に伝わってしまうことを効率よく抑制、防止することが可能な、小型で信頼性の高いRFIDタグおよびそれを用いた通信装置を提供する。
【解決手段】絶縁性基材10と、絶縁性基材10に形成されたアンテナパターン14と、絶縁性基材10の一方端部寄りの位置に搭載されたRFICチップ1と、RFICチップ1に接続され、絶縁性基材10の他方端部寄りの位置に配設された、引き出し配線用リード線3がはんだ付けされる引き出し配線用パッド13とを備えたRFIDタグA1において、RFICチップ1と引き出し配線用パッド13とを結ぶ仮想直線上にチップ型耐熱保護素子2を搭載する。チップ型耐熱保護素子2として、アンテナパターン14と並列に配設され、共振周波数の同調用コンデンサとして機能するチップ型セラミックコンデンサを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDシステムに用いられるRFIDタグおよび通信装置に関し、詳しくは、リーダライタと非接触で無線通信し、リーダライタとの間で情報を伝達するために用いられるRFIDタグおよびそれを用いた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダライタとRFID(Radio Frequency Identification)タグとを非接触で無線通信し、リーダライタとRFIDタグとの間で情報を伝達するRFIDシステムが普及している。
このRFIDシステムとしては、13MHz帯を利用したHF帯RFIDシステム、900MHz帯を利用したUHF帯RFIDシステムが一般的である。
【0003】
そして、HF帯RFIDシステムにおいて利用されるRFIDタグとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に、高周波信号を処理するRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuits )チップと、無線信号を送受するためのコイル状アンテナとを備えたRFIDタグが提案されている。
【0004】
ところで、近年、RFICチップに直接的にデータを書き込むため、あるいは、RFICチップから直接的にデータを読み出すため、RFIDタグに、外部への引き出し配線用パッドが設けられる場合がある。すなわち、RFIDタグを通信装置の内部に設置して、筺体内部の他の回路に接続することにより、直接に、RFICチップへのデータの書き込みや、RFICチップからのデータの読み出しを行うことができるような構成とする場合がある。
【0005】
この場合、引き出し配線用パッドを介しての、他の回路との直接的な(DC的な)接続は、代表的には、リード線をはんだ付けする方法によって行われることになる。
しかしながら、RFIDタグに設けた引き出し配線用パッドにリード線をはんだ付けする方法の場合、RFIDタグがはんだ付けの際の熱にさらされるため、搭載されたRFICチップが熱的ダメージを受けるおそれがある。
そして、RFICチップが熱的ダメージを受けると、本来のRFICチップとしての動作が不安定になったり、不能になったりするおそれがある。また、アンテナとの接続信頼性が低下するおそれもある。
【0006】
これに対し、はんだ付けの際に、RFICチップに熱が伝わらないように、はんだ付け工程においてのみ、RFICチップを耐熱保護材によりカバーすることも考えられるが、耐熱保護材を設ける工程や、さらにはそれを除去するための工程が必要になり、製造工程が煩雑化して、コストの増大を招くという問題点がある。
【0007】
さらに、RFICチップが熱的ダメージを受けないように、はんだ付けを必要とせずに接続する方法として、RFIDタグにコネクタを搭載する方法も考えられるが、コネクタを搭載するとRFIDタグが大型化してしまうという問題点がある。
【0008】
さらに、RFIDタグにコネクタを設ける方法の場合、コネクタを配置する位置によっては、アンテナ(特にコイルアンテナ)の電気的特性に悪影響を及ぼすという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−42083号公報
【特許文献2】特開2002−175511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、引き出し配線用パッドを備え、該パッドにリード線をはんだ付けする際の熱がRFICチップに直接的に伝わってしまうことを抑制、防止することができるように構成された、小型で信頼性の高いRFIDタグおよびそれを用いた通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)にかかるRFIDタグは、
主面を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に形成されたアンテナパターンと、
前記アンテナパターンに接続され、前記絶縁性基材の前記主面上における一方端部寄りの位置に搭載されたRFICチップと、
前記RFICチップに接続され、前記絶縁性基材の前記主面上における他方端部寄りの位置に配設された、引き出し配線用リード線がはんだ付けされる引き出し配線用パッドと、
前記主面上における前記RFICチップと前記引き出し配線用パッドとを結ぶ仮想直線上に搭載されたチップ型耐熱保護素子と
を具備すること、を特徴としている。
【0012】
また、本発明のRFIDタグにおいては、前記チップ型耐熱保護素子は、前記RFICチップと同等以上の高さを有するものであることが好ましい。
【0013】
また、前記RFICチップと前記引き出し配線用パッドとが互いに正対する領域を通過する全ての仮想直線が遮られるような態様で、前記チップ型耐熱保護素子が配設されていることが好ましい。
なお、この場合、チップ型耐熱保護素子として、RFICチップと同等以上の幅(上記仮想直線に直交する方向の寸法)を有する1つのチップ型耐熱保護素子を用いるようにしてもよく、また、複数個のチップ型耐熱保護素子を用いて、幅方向(上記仮想直線に直交する方向)の全領域において、チップ型耐熱保護素子が、RFICチップと引き出し配線用パッドの間に位置するようにしてもよい。
【0014】
また、前記チップ型耐熱保護素子は、前記引き出し配線用パッドよりも前記RFICチップに近い位置に配設されていることが好ましい。
【0015】
また、前記チップ型耐熱保護素子は、セラミックを素体とするチップ型セラミック部品であることが好ましい。
【0016】
また、前記チップ型セラミック部品は、前記RFICチップから見て前記アンテナパターンと並列に配設され、共振周波数の同調用コンデンサとして機能するチップ型セラミックコンデンサであることが好ましい。
【0017】
また、前記絶縁性基材は、平面視したときに長手方向を有し、前記RFICチップは前記長手方向の一端側に配置されており、前記引き出し配線用パッドは前記長手方向の他端側に配置されていることが好ましい。
【0018】
また、前記絶縁性基材は、フレキシブル絶縁性基材であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の通信装置は、引き出し配線用リード線を介して他の回路と接続されたRFIDタグを備える通信装置であって、前記RFIDタグとして、本発明(請求項1〜8のいずれかに記載の発明)にかかるRFIDタグが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明(請求項1)にかかるRFIDタグは、絶縁性基材の主面上における一方端部寄りの位置にRFICチップを搭載し、他方端部寄りの位置に引き出し配線用パッドを配設するとともに、RFICチップと引き出し配線用パッドとを結ぶ仮想直線上にチップ型耐熱保護素子を搭載するようにしているので、引き出し配線用パッドへの引き出し配線用リード線(以下、単に「リード線」ともいう)のはんだ付けの際の熱がRFICチップに直接に伝わってしまうことを抑制、防止することが可能で、信頼性の高いRFIDタグを得ることができる。
なお、チップ型耐熱保護素子としては、RFIDタグを構成する回路に用いられるチップ型セラミックコンデンサなどを、チップ型耐熱保護素子としても利用することが好ましいが、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がRFICチップに伝わることを抑制する目的で用意されたチップ型セラミック部品(特にRFIDタグを構成するための回路素子ではない部品)を搭載するようにしてもよい。
【0021】
また、チップ型耐熱保護素子として、RFICチップの高さと同等以上の高さを有するチップ型耐熱保護素子を用いることにより、はんだ付けの際の熱が輻射によりRFICチップに伝わることを効果的に抑制、防止することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0022】
また、RFICチップと前記引き出し配線用パッドとが互いに正対する領域を通過する全ての仮想直線が遮られるような態様で、チップ型耐熱保護素子を配設することにより、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がRFICチップに伝わってしまうことをさらに効果的に抑制、防止することが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
【0023】
また、チップ型耐熱保護素子を、引き出し配線用パッドよりもRFICチップに近い位置に配設することにより、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がチップ型耐熱保護素子を回り込んでRFICチップに伝わることを抑制することが可能になり、さらに信頼性の高いRFIDタグを提供することが可能になる。また、チップ型耐熱保護素子がRFICチップの近傍に配設されている場合、特にチップ型耐熱保護素子の背がRFICチップより高い場合には、上方から他の部材が落下したり、接近したりした場合にも、それらによってRFICチップ1がダメージを受けることを防止することができる。
【0024】
また、例えば、積層セラミックコンデンサなどのセラミックを素体とするチップ型セラミック部品は、耐熱性に優れているため、チップ型耐熱保護素子として好適に利用することができる。
【0025】
また、アンテナパターンと並列に配設され、共振周波数の同調用コンデンサとして機能するチップ型セラミックコンデンサをチップ型耐熱保護素子として用いるようにした場合、チップ型耐熱保護素子を別途用意することなく、RFIDタグに用いられる部品だけで、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がRFICチップに伝わることを効果的に抑制することが可能で、信頼性の高いRFIDタグを得ることが可能になり、特に有意義である。
【0026】
また、絶縁性基材として、平面視したときに長手方向を有するものを用い、RFICチップを、絶縁性基材の長手方向の一端側に配置し、引き出し配線用パッドを長手方向の他端側に配置することにより、RFIDタグ全体の平面面積に対して、RFICチップと引き出し配線用パッドとの距離を大きく確保することが可能になり、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がRFICチップに伝わることをより確実に抑制することが可能になる。
【0027】
また、前記絶縁性基材として、湾曲させたり、丸めたりすることが可能なフレキシブル絶縁性基材を用いることにより、例えば通信装置を構成する筐体などに貼り付けたりする場合の位置選択の自由度が高く、取り扱い性に優れたRFIDタグを提供することが可能になる。
【0028】
また、引き出し配線用リード線を介して他の回路と接続されたRFIDタグを備える通信装置に、本発明(請求項1〜8のいずれかに記載の発明)にかかるRFIDタグを用いることにより、直接に、RFICチップへのデータの書き込みや、RFICチップからのデータの読み出しを行うことが可能で、小型かつ高信頼性の通信装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例(実施例1)にかかるRFIDタグを構成する絶縁性基材の構成、すなわち、アンテナパターンや引き出し配線用パッド、部品搭載用パッドなどが配設された状態の絶縁性基材を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1に示した絶縁性基材に、レジストパターンを形成するとともに、RFICチップ、チップ型耐熱保護素子(チップ型セラミックコンデンサ)を搭載した本発明の一実施例にかかるRFIDタグを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】図2のRFIDタグに、引き出し配線用リード線をはんだ付けした状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかるRFIDタグの等価回路を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例(実施例2)にかかるRFIDタグの構成を示す分解平面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施例(実施例3)にかかるRFIDタグの構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例(実施例4)にかかる通信装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0031】
本発明のRFIDタグは、絶縁性基材に搭載されたRFICチップと、絶縁性基材に形成されたアンテナパターンと、絶縁性基材の表面に形成された引き出し配線用パッドとを備えている。
【0032】
アンテナパターンはRFICチップの入出力端子に接続されており、引き出し配線用パッドは、同じくRFICチップの入出力端子に接続されている。RFICチップは絶縁性基材の一方端部寄りの位置に配設されており、引き出し配線用パッドは絶縁性基材の他方端部寄りの位置に配設されている。
【0033】
なお、RFICチップは、識別コードなどの情報を記録するためのロジック回路や、通信相手(リーダライタ)から送られてきた高周波信号を処理し、さらに通信相手への応答信号を生成するためのロジック回路などを有している。
【0034】
アンテナパターンは放射素子として機能するものであり、たとえば、HF帯RFIDシステム用タグの場合には、コイル状導体パターンを利用することができる。また、UHF帯RFIDシステム用タグの場合には、ダイポール型導体パターンを利用することができる。
【0035】
引き出し配線用パッドは、引き出し配線用リード線などが、はんだ付けなどの熱処理を伴って接合されるパッドであって、RFICチップに直接的にデータを書き込むため、あるいは、RFICチップから直接的にデータを読み出すための外部接続用パッドとして機能するものである。
【0036】
そして、RFICチップと引き出し配線用パッドとを結ぶ仮想直線上には、チップ型耐熱保護素子が搭載されている。このチップ型耐熱保護素子は、少なくともRFICチップよりも耐熱性に優れた素子であって、特に、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際に生じる熱に対して安定な素子である。
【0037】
このように、はんだ付けされる引き出し配線用パッドを有するRFIDタグにおいて、RFICチップと引き出し配線用パッドとを結ぶ仮想直線上に、チップ型耐熱保護素子を搭載することにより、はんだ付け時に、引き出し配線用パッドからRFICチップに直接伝わろうとする熱を、チップ型耐熱保護素子によって遮断することが可能になる。その結果、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱により、RFICチップがダメージ(熱的ダメージ)を受けにくくなり、小型であるにもかかわらず、信頼性の高いRFIDタグを、複雑な構成を必要とせずに得ることが可能になる。
【0038】
通常、RFICチップはシリコン半導体をベース材料としたものであり、その耐熱性は200〜300℃程度である。チップ型耐熱保護素子は、これよりも高い耐熱性を有していることが好ましく、特に、セラミックを素体とするチップ型セラミック部品であることが好ましい。また、チップ型セラミック部品は、引き出し配線用パッドよりもRFICチップに近い位置に配設されていることが好ましく、さらには、RFICチップに隣接配置されていることが好ましい。
【0039】
このチップ型耐熱保護素子(チップ型セラミック部品)としては、RFICチップから見てアンテナパターンと並列に配置され、共振周波数の同調用コンデンサとしての機能を果たすチップ型セラミックコンデンサを利用することが可能である。
【0040】
ただし、チップ型セラミック部品は、アンテナパターン(アンテナコイル)に並列接続された同調用コンデンサに限定されるものではなく、たとえばRFICチップとアンテナパターンとのインピーダンスを整合するための整合回路素子であってもよい。すなわち、RFIDタグを構成するための回路素子の一つまたは複数をチップ型耐熱保護素子(チップ型セラミック部品)として、RFICチップと引き出し配線用パッドとを結ぶ仮想直線上に配置することができる。ただし、本発明は、チップ型耐熱保護素子として、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がRFICチップに伝わることを抑制する目的で用意されたチップ型セラミック部品(特にRFIDタグを構成するための回路素子ではない部品)を用いることを排除するものではない。
【0041】
このチップ型耐熱保護素子は、引き出し配線用パッド側からRFICチップの側面が全く見えないような態様で配設されることが好ましい。そのためには、チップ型耐熱保護素子は、RFICチップと同等以上の高さおよび幅を有していることが好ましい。
【0042】
なお、幅方向において、引き出し配線用パッド側からRFICチップの側面が見えないようにするにあたっては、幅の大きい1つのチップ型耐熱保護素子を用いる場合に限らず、複数のチップ型耐熱保護素子を並べて配設することにより、幅方向における全ての領域で、引き出し配線用パッド側からRFICチップの側面が見えないように構成することも可能である。
【0043】
チップ型耐熱保護素子は、上述のように、引き出し配線用パッド側からRFICチップの側面が全く見えないような高さや幅を有していたり、複数個が配設されていたりすることが好ましいが、RFICチップの側面の一部が見えるような構成であってもよい。一部に遮られていない部分がある場合にも、チップ型耐熱保護素子により遮られている分だけ、はんだ付け時の輻射熱がRFICチップに伝わることを抑制することができる。
【0044】
すなわち、本発明のRFIDタグにおいては、はんだ付け時にRFICチップに伝達される熱が、RFICチップにダメージを与えない程度にまでチップ型耐熱保護素子によって遮られるように構成されていればよい。
【0045】
絶縁性基材の平面形状は、通常は、矩形状とされるが、平面視したときに長軸および短軸を有した非点対称形状であること(例えば、平面形状が長方形であること)が好ましい。この場合、RFICチップを長軸の一端側に配置し、引き出し配線用パッドを長軸の他端側に配置することにより、RFICチップと引き出し配線用配線パッドとの距離を大きく確保することが可能になり、引き出し配線用パッドへのリード線のはんだ付けの際の熱がRFICチップに伝わることをより確実に抑制することができる。
【0046】
また、絶縁性基材は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの樹脂基材であってもよく、また、低温焼結が可能なLTCCをはじめとするセラミック系材料からなるもの(セラミック基材)であってもよい。
【0047】
特に、絶縁性基材を、フレキシブルな熱可塑性樹脂を用いたフレキシブル絶縁性基材とした場合、RFIDタグに外部応力が加わっても、変形して応力を吸収し、割れや欠けなどの発生を回避することができる。
したがって、絶縁性基材としては、上述のようなフレキシブル絶縁性基材を用いることが好ましい。
また、アンテナパターンは、銀や銅を主成分とする導電材料によって構成されている。
【0048】
なお、本発明のRFIDタグは、13MHz帯を利用したHF帯RFIDシステムに好適であるが、900MHz帯を利用したUHF帯RFIDシステム、さらにはそれより高い周波数帯を利用したRFIDシステムにも利用することができる。
【0049】
また、本発明は、引き出し配線用リード線を介して他の回路と接続されたRFIDタグを備える通信装置にも向けられる。本発明の通信装置においては、RFIDタグとして本発明のRFIDタグが用いられていることから、直接に、RFICチップへのデータの書き込みや、RFICチップからのデータの読み出しを行うことが可能で、小型かつ高信頼性の通信装置を提供することができる。
【0050】
なお、通信装置の構成としては、RFIDタグが、通信装置を構成する筺体の内側または表側に貼り付けられ、引き出し配線用パッドにはんだ付けされた引き出し配線用リード線を介して、上記筺体内に収容された内部のプリント配線板に設けられた他の回路に接続されているような構成が例示される。そして、このような通信装置としては、たとえば携帯電話などの通信端末などが挙げられる。
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1(a),(b)は、本発明の一実施例(実施例1)にかかるRFIDタグを構成する絶縁性基材の構成を示す図、図2(a),(b)は、絶縁性基材にレジストパターンを形成するとともに、RFICチップ、チップ型耐熱保護素子(チップ型セラミックコンデンサ)を搭載した本発明の一実施例にかかるRFIDタグを示す図である。
【0052】
このRFIDタグA1を構成する絶縁性基材10は、フレキシブルな絶縁性基材(フレキシブル絶縁性基材)であって、図1に示すように、一方主面にRFICチップ1(図2,3)を搭載するためのパッド11、チップ型耐熱保護素子として機能するチップ型セラミックコンデンサ2(図2,3)を搭載するためのパッド12、引き出し配線用リード線3(図3)がはんだ接続されるパッド(引き出し配線用パッド)13、および、アンテナパターン(アンテナコイル)14を備えている。他方主面には、アンテナパターン(アンテナコイル)14の一端を引き回すためのブリッジ配線15が設けられている。
【0053】
そして、チップ型耐熱保護素子(チップ型セラミックコンデンサ)2を搭載するためのパッド12は、RFICチップ1(図3)を搭載するためのパッド11と、引き出し配線用リード線3にはんだ接続される引き出し配線用パッド13とを結ぶ仮想直線上に配設されている。
【0054】
また、この絶縁性基材10の表面には、図2に示すように、アンテナパターン14などを覆うように、レジストパターン16が設けられている。ただし、レジストパターン16には複数の開口部16aが設けられており、この開口部16aは、RFICチップ1を搭載するためのパッド11、チップ型耐熱保護素子2を搭載するためのパッド12、引き出し配線用リード線3にはんだ接続される引き出し配線用パッド13を露出させるように所定の位置に形成されている。
【0055】
そして、RFICチップ1を搭載するためのパッド11に、低温はんだなどの導電性接合材を介してRFICチップ1が実装され、チップ型セラミックコンデンサ(チップ型耐熱保護素子)2を搭載するためのパッド12に、同じく低温はんだなどの導電性接合材を介してチップ型セラミックコンデンサ2が実装されることにより、図2に示すような構造を有する、本発明の一実施例にかかるRFIDタグA1が形成される。
【0056】
なお、この実施例1において、チップ型耐熱保護素子として用いられているチップ型セラミックコンデンサ2は、図4の等価回路図に示すように、RFICチップ1から見てアンテナパターン(コイルL1)14と並列に配設されたコンデンサC1と機能するものであって、共振周波数の同調用コンデンサとして用いられているものである。
【0057】
また、この実施例1では、チップ型セラミックコンデンサ2として、RFICチップ1よりも背が高く、幅の狭いものが用いられており、引き出し配線用パッド13側からは、チップ型セラミックコンデンサ2に遮られてRFICチップ1が高さ方向において見えず、幅方向において少し見える(RFICチップ1の両端部が少し見える)ように構成されている。
【0058】
図3(a),(b)は、図2のRFIDタグA1に、引き出し配線用リード線3を引き出し配線用パッド13にはんだ付けした状態(詳しくは、引き出し配線用リード線3の心線(銅線)をはんだ18により引き出し配線用パッド13にはんだ付けした状態)を示す図であるが、このような態様で、引き出し配線用リード線3を引き出し配線用パッド13にはんだ付けするに際し、実施例1のRFIDタグA1においては、図2,3に示すように、RFICチップ1と引き出し配線用パッド13とを結ぶ仮想直線上に、チップ型耐熱保護素子として機能するチップ型セラミックコンデンサ2が配置されているため、引き出し配線用リード線3のはんだ付けの際の熱がRFICチップ1に伝わることが効率的に抑制、防止される。
【0059】
その結果、RFICチップと引き出し配線用パッドの間に、はんだ付けの際の熱影響を防止するための保護壁など設けたりすることを必要とせずに、簡易なプロセスにて、引き出し配線用リード線をはんだ付けすることが可能なRFIDタグを得ることができる。
【実施例2】
【0060】
図5は、本発明の他の実施例(実施例2)にかかるRFIDタグA2の構成を示す分解平面図である。
【0061】
この実施例2のRFIDタグA2は、図5に示すように、多層構造を有するアンテナパターン14を備えている。
すなわち、図5に示すように、1層目の絶縁性基材(フレキシブル基材)10aには、RFICチップ1や引き出し配線用パッド3に接続された第1コイル(第1アンテナパターン)14aを有し、2層目の絶縁性基材(フレキシブル基材)10bには、第1コイル14aと同方向に電流が流れるように接続・巻回された第2コイル(第2アンテナパターン)14bが形成されている。そして、第1コイル14aと第2コイル14bとは、ビア導体17を介して直接的に接続され、多層構造を有するアンテナパターン14を構成している。
【0062】
その他の構成は上述の実施例1のRFIDタグA1の場合と同様である。また、図5において、図1〜3と同一符号を付した部分は、同一または相当する部分を示している。
【0063】
なお、第1コイル14aと第2コイル14bとは、容量を介して接続されていてもよく、また、パウチングなどの方法を利用して直接的に接続されていてもよい。
この実施例2では、2層構造のアンテナパターン14を備えたRFIDタグA2を示したが、アンテナパターンは、3層以上のコイルを積み重ねて構成することも可能である。
【実施例3】
【0064】
図6は、本発明のさらに他の実施例(実施例3)にかかるRFIDタグA3の構成を模式的に示す斜視図である。
【0065】
この実施例3のRFIDタグA3は、図6に示すように、チップ型耐熱保護素子として、RFICチップ1よりも背の高い、複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cおよび2dを備えている。
本実施例のRFIDタグA3では、図6に示すように、引き出し配線用パッド13からRFICチップ1の方向を見たときに、RFICチップ1が見えないように、複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cを、引き出し配線用パッド13と、RFICチップ1の間を遮るように配置している。すなわち、複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cを、絶縁性基材10の主面に平行で、かつ、RFICチップ1と引き出し配線用パッド13とを結ぶ仮想直線に直交する方向の全領域において、RFICチップ1と引き出し配線用パッド13との間を遮るような態様で配設している。
【0066】
また、この実施例3のRFIDタグA3では、図6に示すように、複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cが配設された領域とは、RFICチップ1を挟んで逆側の領域(RFICチップを1を挟んで対向する領域)に、RFICチップ1よりも背の高いもう一つのチップ型セラミック部品2dを搭載している。
【0067】
その他の構成は上述の実施例1のRFIDタグA1の場合と同様である。また、図5において、図1〜3と同一符号を付した部分は、同一または相当する部分を示している。
【0068】
この実施例3のRFIDタグA3のように、チップ型耐熱保護素子として、複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cを上述のような態様で備えた構成とした場合、リード線のはんだ付けの際の熱に対する耐熱性をより向上させることができる。
【0069】
また、この実施例3のRFIDタグA3では、図6に示すように、複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cが配設された領域とは、RFICチップ1を挟んで逆側の領域にもチップ型セラミック部品2dを搭載しており、RFICチップ1よりも背の高い複数のチップ型セラミック部品2a,2b,2cおよび2dにより、RFICチップ1が取り囲まれているため、上方から他の部材が落下したり、接近したりした場合にも、それらによってRFICチップ1がダメージを受けることを防止することができる。
【0070】
なお、複数のチップ型耐熱保護素子を構成するチップ型セラミック部品2a,2b,2c,2dは、その一部あるいは全部が、アンテナコイルに対して各々並列に接続された同調用チップ型セラミックコンデンサであってもよい。
【実施例4】
【0071】
図7は、本発明の実施例にかかる通信装置Bを示す正面断面図である。
この通信装置においては、図7に示すように、通信用の回路配線が形成され、その主面に回路素子21やバッテリーパック22などが搭載されたプリント基板23が筐体24内に収容されている。
【0072】
そして、筐体24の内側の所定の位置に、本発明の実施例にかかるRFIDタグA(例えば、実施例1〜3のRFIDタグA1)が接着剤25を介して貼り付けられ、その引き出し配線用パッド13に、引き出し配線用リード線3がはんだ付けされることにより、RFIDタグA1とプリント基板23の回路配線が直接に接続されている。
【0073】
このように構成された通信装置においては、RFIDタグA(A1)とプリント基板23の回路配線が、引き出し配線用パッド13にはんだ付けされた引き出し配線用リード線3により接続されているため、RFICチップへのデータの書き込みや、RFICチップからのデータの読み出しを直接に行うことができる。
【0074】
したがって、本発明によれば、直接に、RFICチップへのデータの書き込みや、RFICチップからのデータの読み出しを行うことが可能で、小型かつ高信頼性の通信装置を提供することができる。
【0075】
なお、本発明は、上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 RFICチップ
2 チップ型耐熱保護素子(同調用チップ型セラミックコンデンサ)
2a,2b,2c チップ型耐熱保護素子(チップ型セラミック部品)
2d 逆側の領域に配設されたチップ型セラミック部品
3 引き出し配線用リード線
10 絶縁性基材(フレキシブル基材)
10a 1層目の絶縁性基材(フレキシブル基材)
10b 2層目の絶縁性基材(フレキシブル基材)
11 RFICチップを搭載するためのパッド
12 チップ型耐熱保護素子を搭載するためのパッド
13 引き出し配線用パッド
14 アンテナパターン(アンテナコイル)
14a 第1コイル(第1アンテナパターン)
14b 第2コイル(第2アンテナパターン)
15 ブリッジ配線
16 レジストパターン
16a レジストパターンの開口部
17 ビア導体
18 はんだ
21 回路素子
22 バッテリーパック
23 プリント基板
24 筐体
25 接着剤
A,A1,A2,A3 RFIDタグ
B 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に形成されたアンテナパターンと、
前記アンテナパターンに接続され、前記絶縁性基材の前記主面上における一方端部寄りの位置に搭載されたRFICチップと、
前記RFICチップに接続され、前記絶縁性基材の前記主面上における他方端部寄りの位置に配設された、引き出し配線用リード線がはんだ付けされる引き出し配線用パッドと、
前記主面上における前記RFICチップと前記引き出し配線用パッドとを結ぶ仮想直線上に搭載されたチップ型耐熱保護素子と
を具備すること、を特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記チップ型耐熱保護素子は、前記RFICチップと同等以上の高さを有するものであることを特徴とする、請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記RFICチップと前記引き出し配線用パッドとが互いに正対する領域を通過する全ての仮想直線が遮られるような態様で、前記チップ型耐熱保護素子が配設されていることを特徴とする請求項1または2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記チップ型耐熱保護素子は、前記引き出し配線用パッドよりも前記RFICチップに近い位置に配設されていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記チップ型耐熱保護素子は、セラミックを素体とするチップ型セラミック部品であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記チップ型セラミック部品は、前記RFICチップから見て前記アンテナパターンと並列に配設され、共振周波数の同調用コンデンサとして機能するチップ型セラミックコンデンサであることを特徴とする、請求項5に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記絶縁性基材は、平面視したときに長手方向を有し、前記RFICチップは前記長手方向の一端側に配置されており、前記引き出し配線用パッドは前記長手方向の他端側に配置されていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のRFIDタグ。
【請求項8】
前記絶縁性基材は、フレキシブル絶縁性基材であること、を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のRFIDタグ。
【請求項9】
引き出し配線用リード線を介して他の回路と接続されたRFIDタグを備える通信装置であって、
前記RFIDタグとして、請求項1〜8のいずれかに記載のRFIDタグが用いられていること、を特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248154(P2012−248154A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121744(P2011−121744)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】