説明

RFIDタグ機能を有する粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体

【課題】物品の個体識別等を行うに際して電波を用いて非接触で外部機器と情報交換を行うRFIDタグ機能を有する粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体に関し、粘着ラベルは、従来より単純な構成で提供することおよび通信距離を高めること、粘着ラベル連続体は、巻き取りを長尺に巻くことができることおよび多数枚重ね合わせても局所的に厚くならず重ね合わせやすくICチップの破壊を防ぐこと、を課題とする。
【解決手段】RFIDタグ機能を有する粘着ラベルは、帯状アンテナとICチップとを接続してなるスレッド状インレット(スレッド)を具備し、表面シート/粘着剤/スレッドの3層構造とする。前記RFIDタグ機能を有する粘着ラベルにおいて、スレッド両端部の断面構成を、表面シート/ブースターアンテナ/粘着剤/スレッドの4層構造とする、粘着ラベル連続体において、ラベルからはみ出さない範囲でスレッド位置を周期的に変動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の個体識別等を行うに際して電波を用いて非接触で外部機器と情報交換を行うRFID(Radio Frequency IDentification)タグ機能を有する粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体ならびに粘着ラベル連続票に関する。さらに詳しくは、前記RFIDタグ機能が、帯状アンテナとパッケージ化された電子集積回路(ICチップ)とを接続してなるスレッド状インレットによって発現される、RFIDタグ機能を有する粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体ならびに粘着ラベル連続票に関する。
【背景技術】
【0002】
スレッド状インレット、すなわち両面電極を有するICチップの両面に帯状(スレッド状)の金属薄膜アンテナを異方性導電接着剤を介して接続して構成されるインレットからなる帯状のRFIDタグ(以下、本文では「スレッド状インレット」と記す。)が知られている。このようなスレッド状インレットを当業者は単に「スレッド」と呼ぶこともある。前記スレッド状インレットの構造としては、例えば、スレッド状インレット内のICチップ部の断面構成が、アンテナ/異方性導電材/ICチップ/異方性導電材/アンテナの5層構造であるものが知られている。
【0003】
前記スレッド状インレットは、長尺で幅0.1〜10mm程度の帯状の金属箔に定められた間隔でICチップを積載し接続した態様のスレッド状インレット連続体を、適切な長さに切断して製造される。
【0004】
前記スレッド状インレットの厚さについて、例えば、SOI(Silicon on Insulater)技術によるCMOSを用いた厚さが7.5μmのICチップを用い、最大厚さが50μm以下であるものが報告されている(非特許文献1を参照)。スレッド状インレットを構成するICチップの大きさ及び厚さは更に小さくすることが可能となっており、例えば大きさが0.05×0.05mm、厚さ5μmのものが報告されている(非特許文献2を参照)。
前記スレッド状インレットは、ICチップが配置される部分において、該ICチップの厚さや接続部分の構造等に起因する突起を有している。この突起の高さは、初期は60μm以上であったが、厚さ5μmの小型のICチップの登場によって15μm程度まで小さくすることが可能となった。ICチップの厚さより突起の高さが大きいのはICチップの両面に接続用部材(異方性導電材など)やアンテナ部材を配置していることによる。
【0005】
前記スレッド状インレットを表面に配置した物品において、その物品の取り扱い性などの機能や美観を損ねてしまうことがある。例えば、粘着ラベルにスレッド状インレットを直線状に配置したもの(RFIDタグ機能を有する粘着ラベル)において、スレッド状インレットおよびその突起の部分が重なり合ってしまうと、特に使用前の収納、梱包、保存時等に不具合がある。
【0006】
具体的に、粘着ラベルが一方向に並んだ形態の「粘着ラベル連続体」について説明する。粘着ラベル連続体とは、粘着ラベル個片が分離されずに連続的に一方向へ並んだ形態と、該粘着ラベル連続体上の一つ一つのラベル単票を形成するため切れ目を入れた態様の両方を指す。特に、後者(一つ一つの粘着ラベル単票を形成するため切れ目を入れた粘着ラベル連続体の態様)を本文では「粘着ラベル連続票」と記す。また、粘着ラベル連続体は粘着ラベルが剥離シート上に配置された態様も含むものとする。
【0007】
このような粘着ラベル連続体において、これをロール状に巻き取る場合に前記スレッド状インレットおよびその突起が同じ幅位置に連続して巻き進められ、徐々にスレッド状インレットおよびその突起が存在する部分のみが列状に重なって厚くなっていくため、巻き取りが偏ってしまい長尺に巻くことができなくなる問題がある。また、前記粘着ラベル連続体から粘着ラベルが1以上の任意の枚数ごととなるように切り離して重ねてなる粘着ラベルの束においては、多数枚を積み重ねていくと、スレッド状インレットの突起が存在する部分のみが局所的にどんどん厚くなって重ね合わせを妨害していくため、束が崩れやすくなり取り扱い性が著しく悪くなっていくという問題がある。
【0008】
スレッド状インレットを配置する支持体において前記スレッド状インレットの突起によって生じる問題を防ぐ方法としては、その支持体を肉厚にして支持体中にスレッド状インレットの突起部を埋め込むように凹状部を形成する方法がある。この場合、凹状部を形成するための製造工程が別途必要となる。
【0009】
具体的に、RFIDタグ機能を有する粘着ラベルにおいて前記スレッド状インレットの突起に対処する方法としては、表面シート(前記支持体に相当)の一部に貫通孔を設け、スレッド状インレットの突起がこの貫通孔の内部に収まるようにすることにより粘着ラベル全体を平滑化すること、およびこの貫通孔からスレッド状インレット中のICチップが露出しないように表面シートとスレッド状インレットとの間に隠蔽シートを挿入することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この場合の粘着ラベルのスレッド状インレット部における断面構成は、表面シート/粘着剤/隠蔽シート/粘着剤/スレッド/粘着剤/剥離シートの7層であり、使用時は剥離シートを除く6層である。このような構成のラベルを製造するためには、貫通孔を形成する製造工程と、隠蔽シートの調達、加工および製造の工程とが少なくとも別途必要であるため、コスト高となる。また、前記粘着ラベル連続票ならびに前記粘着ラベル連続体においては、スレッド状インレットの突起がある部分以外のスレッド状インレットの厚さによっても長尺に巻き取ることが困難となる問題を防ぐことができない。
【0010】
RFIDタグ機能を有する粘着ラベルにおいて、その通信距離はICチップの出力、アンテナの性能により制限されるが、さらに通信距離を高めることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−90690号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】2006 ISSCC/SESSION17/RFID AND RF DIRECTIONS/17.1 An SOI−Based 7.5μm−Thick 0.15×0.15mm2RFID CHIP
【非特許文献2】2007 ISSCC/SESSION26/NON−VOLATILE MEMORIES/26.6 A0.05×0.05mm2 RFID Chip with Easily Scaled Down ID−Memory
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、
(1)RFIDタグ機能を有する粘着ラベルを従来より単純な構成で提供すること、
(2)RFIDタグ機能を有する粘着ラベルの通信距離を高めること、
(3)RFIDタグ機能を有する粘着ラベルを一方向に並べて配置した粘着ラベル連続体において、巻き取りを長尺に巻くことができるようにすること、および粘着ラベルの束において、多数枚重ね合わせても局所的に厚くならず重ね合わせを妨害せず、束が崩れにくく取り扱い性を良いものとすること、
を課題とし、これを解決するためのRFIDタグ機能を有する粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、下記の技術的構成により、前記課題を解決できたものである。
(1)RFIDタグ機能を有する粘着ラベルのスレッド状インレット部の断面構成を、表面シート/粘着剤/スレッドの3層構造とする。
(2)前記(1)記載のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルにおいて、スレッド状インレット両端部の断面構成を、表面シート/ブースターアンテナ/粘着剤/スレッド状インレットの4層構造とする。
(3)前記(1)または(2)記載のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを一方向に並べて配置したRFIDタグ機能を有する粘着ラベル連続票もしくは粘着ラベル連続体において、ラベルからはみ出さない範囲でスレッド状インレットの位置を周期的に変動(オシレート)させる。
【発明の効果】
【0015】
(1)RFIDタグ機能を有する粘着ラベルのスレッド状インレット部の断面構成を、従来表面シート/粘着剤/隠蔽シート/粘着剤/スレッド状インレット/粘着剤の6層であったのに対し、表面シート/粘着剤/スレッド状インレットの3層構造と簡易な構造とすることにより、薄くて被着体の凹凸にもよく追従するRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを提供でき、その製造コストを低減することができる。
(2)スレッド状インレット両端部にブースターアンテナを加えることによりRFIDタグ機能を有する粘着ラベルの通信距離を延ばすことができる。
(3)粘着ラベル連続票もしくは粘着ラベル連続体において、粘着ラベルからはみ出さない範囲でスレッド位置を周期的に変動させることにより、粘着ラベル連続体の巻き取りおよび粘着ラベルの束において、スレッド状インレットおよびその突起の存在する部分のみが列状に重なって厚くなることがないので、
粘着ラベル連続体においては巻き取りが偏らず長尺に巻くことができ、
剥離シート付き粘着ラベルの束においては、多数枚重ね合わせても局所的に厚くならないので重ね合わせを妨害せず、束が崩れにくく取り扱い性が良いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を構成するスレッド状インレットの例を示す斜視透視図である。
【図2】図1のスレッド状インレットの側面図である。
【図3】本発明のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルの斜視透視図である。
【図4】図3のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルの断面図である。
【図5】本発明のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルにおいてブースターアンテナを有する場合の例を示す正面透視図である。
【図6】図5のブースターアンテナを有する粘着ラベルの断面図である。
【図7】図5のブースターアンテナを有する粘着ラベル連続票の概念図である。
【図8】粘着ラベル連続票を示す斜視図である。
【図9】粘着ラベル連続体の表面シート側をハーフカットして粘着ラベル単票に分離して粘着ラベル連続票とすることを示す断面図である。
【図10】粘着ラベル連続票もしくは粘着ラベル連続体においてスレッド位置を周期的に変動(オシレート)させて配置する例を示す図である。
【図11】粘着ラベル連続票もしくは粘着ラベル連続体においてスレッド位置を周期的に変動(オシレート)させて配置する際の帯状アンテナあるいはスレッド連続体の図10とは別の態様の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1および図2は、本発明を構成するスレッド状インレットSについて、その構造の例を示している。この例では、図2のように、両面電極を有するICチップ1の両面が異方性導電材2を介して帯状のアンテナ3に接続される構成であり、ICチップがある部分におけるスレッド状インレットの断面構成は、アンテナ3/異方性導電接着剤2/ICチップ1/異方性導電材2/アンテナ3の5層構造となっており、この部分が前記スレッド状インレットの突起の部分である。
【0019】
前記両面電極を有するICチップ1としては、13.56MHz帯もしくは2.54GHz帯の電波で動作する一般的なRFID用ICチップが使用できるが、本発明の粘着ラベルに使用するためにはICチップ1の外形寸法が小さい方が好ましい。ICチップ1の外形寸法がアンテナ3の幅より大きいと、アンテナとの電気的接続に不具合を生じやすく、本発明の粘着ラベルと外部機器との通信が困難になる恐れがある。
【0020】
前記異方性導電材2は、樹脂に導電性を持つ微細な金属粒子を分散させてなる接着剤やフィルム、あるいは異方性導電ペーストから適宜選択される。
【0021】
前記帯状のアンテナ3としては、金属箔や導電性蒸着フィルム等を用いることができる。金属箔と金属蒸着フィルムとを比較すると、金属箔はより薄膜化できる点や製造コストが抑えられる点で有利であり、導電性蒸着フィルムはスレッドの機械的強度を上げられる点で有利であるから、用途により適宜選択すれば良い。
【0022】
前記金属箔を構成する金属種としては、導電性であれば特に限定されるものではないが、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、銀などを用いることができる。
前記導電性蒸着フィルムの蒸着層を構成する化学種としては、導電性であれば特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、銀などの金属や、カーボンなどを用いることができる。フィルムとしては、蒸着膜形成を妨げず、常温で折り曲げても割れない程度の強度がある材質であれば特に限定するものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル、ナイロン等の汎用ポリマーからなるフィルムを好ましく用いることができ、耐熱性や機械強度が必要な場合にはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリイミドなどのエンジニアリングプラスチックからなるフィルムを選択することもできる。
【0023】
図3は、本発明のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルLの基本構成を、斜視透視図で示している。表面シート5の片面にスレッド状インレットSが配置され、スレッド状インレットSが配置された面の反対面となる表面シート側に帯状の膨らみYと、突起Xが存在している。前記帯状の膨らみYおよび突起Xを含め、本発明のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルLの基本構成について図4でさらに詳しく説明する。
【0024】
図4は本発明のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルLの基本構成について、図3に示したa−a´、b−b´およびc−c´における断面図をそれぞれ示したもので、表面シート5の片面に粘着剤4の層を有するとともに該粘着剤4を介して前記スレッド状インレットS配置されるという本発明の基本構成を示している。表面シート5の表面において、スレッド状インレットSのアンテナ3(図1参照)部分の厚さにより前記帯状の膨らみYが存在している。さらに表面シート5において、スレッド状インレットSのICチップ1(図1参照)部分の厚さにより前記突起Xが存在している。表面シート5の表面に存在する突起Xは、同じく表面シート5の表面に存在する帯状の膨らみYより飛び出している。粘着ラベルLにおいて、スレッド状インレットSが配置される部分の断面は、表面シート5/粘着剤4/スレッド状インレットSの3層構造、それ以外の部分は表面シート5/粘着剤4の2層構造である。本発明の粘着ラベルLは、前記2層構造の部分で露出している粘着剤4により、任意の被着体に粘接着することができる。本発明の粘着ラベルLは、スレッド状インレットSの部分は粘着剤4が露出していないため粘接着しないが、スレッド状インレットSの幅が粘着ラベルLの幅に対して狭いので、実用上問題のない粘接着力を得ることができる。
【0025】
前記粘着剤4は、シリコーン樹脂系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、天然ゴム系粘着剤など、特に限定することなく用途に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記表面シート5としては、上質紙、コート紙、キャストコート紙、感熱記録紙などの紙、PETフィルム、PPフィルムなどのプラスチックフィルム、及び合成紙(例えば「ユポ(R)」)など、シート状の材料であれば特に限定することなく、用途に応じて適宜選択することができる。
【0027】
図5〜7は、本発明のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルLにおいてブースターアンテナ7を有する場合を例示したものである。ブースターアンテナ7を有する粘着ラベルHは、図5の正面透視図からわかるように、一対のブースターアンテナHがスレッド状インレットSの両端部にそれぞれ配置されている。
【0028】
図6は図5に示したブースターアンテナ7を有する粘着ラベルHのd−d´における断面を図示したもので、表面シート5の片面の一部にブースターアンテナ7が配置され表面シート5と同じ平面形状の粘着剤4の層を介して前記スレッド状インレットSが配置されている。つまり、ブースターアンテナ7を有する粘着ラベルHにおいて、スレッド状インレットSとブースターアンテナ7とが配置される部分の断面構成は、表面シート5/ブースターアンテナ7/粘着剤4/スレッド状インレットSの4層構造であり、スレッド状インレットSのみ配置されブースターアンテナ7が配置されない部分(スレッド状インレットSの中心付近)の断面構成は、図示しないが、表面シート5/粘着剤4/スレッド状インレットSの3層構造であり、それ以外の部分は、表面シート5/粘着剤4の2層構造である。
【0029】
前記ブースターアンテナ7は、双極子型アンテナを成すスレッド状インレットSの両端部付近にそれぞれ配置するものであり、粘着ラベルHの単票に対して1対2個以上のブースターアンテナ7を配置する。ブースターアンテナ7を配置すると、本発明の粘着ラベルの電波の送受信感度が向上する効果を奏する。1対のブースターアンテナ7の配置は、使用する電波の周波数や感度を考慮するとともにスレッド状インレットSの前記突起部分すなわちICチップ1(図1参照)が配置されている部分を中心として対称的に配置すると、電波の伝送ロスが少なく感度が高くなり通信距離を伸ばしやすいので好ましい。1対のブースターアンテナ7とスレッドSとは粘着剤を介して電気的に接続されていなくても一定の効果があるが、スレッドSの両端で異方性導電材料等により電気的に接続されるとさらに感度が高くなる場合がある。ブースターアンテナ7の平面形状は、図5のように長方形でもよいし、使用する電波の周波数や感度を考慮して適宜設計できる。一方、ブースターアンテナ7の厚さは電波送受信性能にほとんど関係しないので、粘着ラベルを薄くするためには可能な範囲で薄くすることが望ましい。ブースターアンテナ7を構成する材料としては、金属箔、導電性蒸着膜、メッキ、または導電性インクのいずれかひとつを含む導電性材料、あるいは磁性材料を挙げることができる。この場合、蒸着膜、メッキ、金属箔に用いられる材料としてはアルミ、銅、亜鉛、ニッケルもしくは銀などの金属が選択でき、蒸着であれば前記金属に加えてカーボンを選択することもできる。または導電性インクとしては銀ペースト等が用いられる。また、粘着剤は高周波電波による通信であるため、通常の粘着剤でも通信可能であるが、より確実にするため導電性粘着剤を用いることも可能である。
【0030】
図7は、図5のブースターアンテナ7を有する粘着ラベルを一方向に複数枚数並べて配置する「ブースターアンテナを有する粘着ラベル連続体Hc」(図は省略する)の一形態である「ブースターアンテナを有する粘着ラベル連続票Hs」を説明するための概念図である。剥離シート6上で、スレッド状インレットSが一線上になるように複数の粘着ラベルHが一列に並んでいる。一番手前のラベルを半分はがしてみると、粘着ラベルHのスレッド状インレットSがあり、さらに一対2個のブースターアンテナ7が粘着剤越しに透けて見えている。
【0031】
図8および図9は、本発明の粘着ラベル連続体Lcおよびその一形態である粘着ラベル連続票Lsを説明するための概念図である。
粘着ラベル連続票Lsは、図8のように、複数のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルLが、剥離シート6上で、スレッド状インレットSが一線上になるように複数枚数一列に並んで配置されている。(8−1)は不用となるラベルのワクW部分がある状態、(8−2)は該ワクWを除去した状態であり、いずれの形態であっても構わない。
【0032】
図9は本発明の粘着ラベル連続体Lcを本発明の粘着ラベル連続票Lsに仕上げる工程として、粘着ラベル連続体Lcの表面シート5側をハーフカットして粘着ラベルL単票を形成することを示す断面図である。(9−1)は粘着ラベル連続体Lcの形態、(9−2)は粘着ラベル連続体Lcの表面シート5側をハーフカットして粘着ラベルL単票を形成した形態、(9−3)は粘着ラベル連続体Lcの表面シート5側をハーフカットして粘着ラベルL単票を形成し、さらにワクWを除去した形態である。
【0033】
前記ハーフカットは表面シート5側からダイカットを行えば良い。
ハーフカットの技術について、一般に、表面シート/粘着剤/剥離シートという3層からなる粘着ラベルであれば、該表面シートが確実にされる程度の深さで切れ込みを入れれば、たとえ該粘着剤層を切断しきれなかったとしても、使用時には粘着ラベルを単票に分離することが可能である。しかしながら、本発明においては、図9の断面図でも明らかな通り、粘着剤4よりも剥離シート6側にあるスレッドSを確実に切断しなければならないため、表面シート5側から侵入させたダイカットの刃は、粘着剤4層よりも深く、剥離シート6の内部に到達するまで侵入させて切る必要がある。この結果、剥離シート6の厚さが薄いと剥離シート6も切断されてしまう可能性があるため、製造工程上の理由から剥離シート6は適度な厚さを有することが好ましく、なおかつ幅方向、流れ方向で厚さのバラツキが小さいことが要求される。このため、剥離シート6の厚さは一般的な剥離シートであるダイレクトシリコーン塗工したグラシンタイプ剥離シートの厚さ(60μm程度)より厚いことが好ましい。
【0034】
そこで、剥離シート6としては、グラシン紙、目止め剤塗工紙、ポリエチレンラミネートした上質紙が、幅方向、流れ方向で厚さのバラツキが小さく適当な厚さが得られる点で好ましく用いることができる。中でもポリエチレンラミネートした上質紙は密度が低いため厚くしても軽量となるため量産品の運搬やコストの面でより好ましい。該上質紙がいわゆる嵩高紙タイプであれば、厚くできるのでさらに好ましい。
【0035】
なお、ハーフカット技術に関して、前記ブースターアンテナを有する粘着ラベル連続票Hsの製造に要する条件および技術は、上記粘着ラベル連続票Lsの製造を例にして説明した条件および技術と同様である。
【0036】
次に、粘着ラベル連続体において該粘着ラベルからはみ出さない範囲でスレッド状インレット位置を周期的に変動させて配置することについて、図10〜11を用いて説明する。なお、本発明の粘着ラベル連続体Lc(粘着ラベル連続票Lsを含む)と、本発明のブースターアンテナを有する粘着ラベル連続体Hc(ブースターアンテナを有する粘着ラベル連続票Hsを含む)とについて、全く同様にスレッド状インレット位置を配置することができる。そこで、以下の説明は、本発明の粘着ラベル連続体Lc(粘着ラベル連続票Lsを含む)を代表例とするが、本発明のブースターアンテナを有する粘着ラベル連続体Hc(ブースターアンテナを有する粘着ラベル連続票Hsを含む)の場合も全く同様に実施できる。
【0037】
図10は、本発明の粘着ラベル連続体Lc(粘着ラベル連続票Lsを含む)において、複数枚数の前記RFIDタグ機能を有する粘着ラベルLからはみ出さない範囲でスレッド状インレットSの位置を周期的に変動させて配置する(以下、このように配置することを簡単のため「オシレート配置する」と記す。)場合の例を示す図である。なお、スレッド状インレットSの位置を「周期的に変動させて配置する」とは、連続して配列するスレッド状インレットSによって「形成される模様が、一定のパターンの繰り返しとなる」ことを意味する。
【0038】
(10−0)はスレッド状インレットSの位置を周期的に変動させて配置するためのスレッド状インレット連続体Scのデザイン例を示す平面透視図である。
(10−1)および(10−2)は粘着ラベル連続票(LsまたはHs)のデザイン例を示す平面透視図である。特に(10−2)は(10−1)からワクWを除去した形態である。
(10−3)は(10−0)〜(10−2)の例におけるICチップ1の位置を模式的に示した平面透視図で、前記粘着ラベル連続体Lcにおいて、スレッド状インレットSがオシレート配置されるのに伴い該ICチップ1の位置も前記粘着ラベルLからはみ出さない範囲で周期的に変動させて配置されている。
【0039】
スレッド状インレットSをオシレート配置する際、複数枚数の前記RFIDタグ機能を有する粘着ラベルLからはみ出さない範囲で配置することが必要である。粘着ラベルLからはみ出してしまうと、前記粘着ラベル連続体Lcの表面シート5(図9参照)側をハーフカットして粘着ラベル連続票Lsとして複数の粘着ラベルL単票を形成する際に、スレッドがはみ出した粘着ラベルL単票は、スレッド状インレットSが切断され破壊されてしまう。
【0040】
スレッド状インレットSをオシレート配置する振幅、周期は、粘着ラベルLのサイズやロールの長さにより適宜決定すればよい。
例えば、幅80mm×長さ60mmの粘着ラベルLが一列に並んでなるような粘着ラベル連続体Lcを直径200mmのロールで巻き取る際には、スレッド状インレットSのオシレート配置は、粘着ラベル幅両端から2mm程度ずつ内側の振幅76mm程度、20mで1往復程度の周期で行うと、粘着ラベル連続体Lcを長尺ロールで巻くことができるようになるので好ましい。
【0041】
また、RFIDタグの通信距離を確保するため、粘着ラベルのスレッド状インレットの中心部分にICチップが配置されるようにする必要がある。このため、前記粘着ラベル単票を形成する工程においてはICチップの位置(スレッド中のアンテナのスリットの位置)を光電管により検出しながら、ICチップがスレッド状インレットの中心位置になるように注意深く製造する必要がある。
【0042】
粘着ラベル面のスレッド状インレット位置が定められている場合には、粘着ラベル全面を使用してスレッド状インレットをオシレート配置させることができないので、粘着ラベルのスレッド状インレットを配置できない粘着剤上に、インレット機能を有さないダミースレッドを1個もしくは複数個オシレート配置して粘着ラベル連続体を構成することにより、粘着ラベル連続体を長尺ロールで巻くことができるようになる。
ダミースレッドとしては、金属箔や導電性蒸着フィルムなどの前記帯状のアンテナの部材を使用することができる以外に、プラスチックフィルム、粘着剤、接着剤、紙等の電気絶縁性の部材を使用することもできる。ダミースレッドの厚さは、スレッド状インレットの厚さ程度とする必要があり、好ましくは帯状のアンテナの厚さ以上、スレッド状インレットの突起部分の厚さ以下である。
【0043】
図11は、粘着ラベル連続票もしくは粘着ラベル連続体において、複数枚数のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルLからはみ出さない範囲でスレッド状インレット位置を周期的に変動させて配置する際の帯状アンテナあるいはスレッド状インレット連続体の形状デザインについて、図10とは別の例を示す図である。
(11−1)は正弦波のようにスレッド状インレットの位置を曲線的に変動させた例であり、(11−2)は階段のようにスレッド状インレットの位置を直線的に変動させた例である。本発明における帯状アンテナあるいはスレッド状インレット連続体の形状デザインはこれらの図で制限されるものではなく、連続して配列するスレッド状インレットSによって形成される模様が、一定のパターンの繰り返しとなる限りにおいて、自由にデザインすることができる。
【0044】
本発明では、スレッド状インレットの粘着ラベルへの挿入は、粘着シートの製造工程時に表面シートに粘着剤を塗工後に剥離シートと貼り合わせる際に挿入することもできるし、粘着シートのシール印刷工程で印刷後ダイカットする前に粘着シートと剥離シートを一旦剥がした後に挿入することもできる。後者の方は印刷パタ−ンとスレッド状インレットの位置合せが容易である。
【0045】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定するものではない。
【実施例1】
【0046】
RFIDタグ機能を有する粘着ラベルを以下のように作製した。
【0047】
RFIDタグ機能を発現するスレッド状インレットは、以下の両面電極を有するICチップ(2.54GHzのμ−CHIPプロトコル品;大きさ0.05mm×0.05mm×5μm)とアンテナ部材(日本製箔株式会社製 PACAL21片ツヤ品;厚さ12μmのアルミニウム箔)とが異方導電フィルム(日立化成株式会社製 アニソルムAC−200)で接着され、幅1.5mm図1および図2に示す形状のものを使用した。
【0048】
剥離シートは、コロナ放電処理(前処理;出力5KW)した嵩高上質紙(日本製紙株式会社製 オペラクリームマックス64g/m 厚さ115μm)の片面に、ポリエチレン樹脂(住友化学株式会社製 スミカセン)を厚さ15μmエクストルージョンラミネータによりラミネート加工し、該ラミネート加工面をさらにコロナ放電処理(後処理;出力3KW)し、シリコーン系軽剥離用離型剤(信越化学株式会社製 KS−837、硬化触媒CAT−PL−50T対シリコーン樹脂1部添加)をオフセットグラビアコーターにて塗工(塗工量0.7g/m)することにより、厚さ130μmの剥離シートを作製した。なお、本実施例の剥離シートの厚さは、一般的な剥離シートであるダイレクトシリコーン塗工したグラシンタイプ剥離シートの厚さ(例えば60μm)と比較して2倍程度厚いものである。
【0049】
次に、前記剥離シートにアクリル系水性粘着剤(東洋インキ株式会社製 オリバインBPW5935)をコンマコーターにて塗工量20g/mで塗工して乾燥した後、粘着剤塗工面側と表面シート(A2コート紙;日本製紙株式会社製 オーロラコート紙104.7g/m)と貼り合せた後に巻き取って粘着紙原反を作製した。
【0050】
前記粘着紙原反をスリットして90mm幅に整え、表面シートにシール印刷機で所定の絵柄を印刷した後、粘着層と剥離シートとの間にスレッド状インレットを挿入するため、剥離シートと表面シートを一旦剥がし、スレッド状インレット連続体を粘着ラベル幅両端から2mm程度ずつ内側の振幅76mm程度、20mで1往復程度の周期でオシレート配置させながら挿入し、ニップロールで再度貼り合せてRFIDタグ機能を有する粘着ラベル連続体を作製した。この際、スレッド連続体のICチップの位置を光電管により検出しながら、後工程で粘着ラベル単票を形成した際の各粘着ラベルにおけるスレッド状インレットのICチップ位置が該スレッド状インレットの中心位置になるようにスレッド状インレット連続体の張力を調整しながら前記挿入、貼り合わせを行った。さらに、前記粘着ラベル連続体に対し、ダイカットロールにてラベルの表面シートが幅80mm×長さ60mmの大きさ、挿入されたスレッド状インレットが60mmの長さで確実に切れる深さまでハーフカットを行い、ワクWの部分はカス取り装置で除去して、直径200mmのロールで巻き取ったRFIDタグ機能を有する粘着ラベル連続票およびRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを作製した。
【実施例2】
【0051】
表面シートを以下のものとした以外は実施例1と同様にして、実施例2のRFIDタグ機能を有する粘着ラベル連続票およびRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを作製した。
ラベルの基材:A2コート紙(日本製紙株式会社製 オーロラコート紙104.7g/m
両面グラビア印刷機により表面側に絵柄印刷、裏面側にブ−スターアンテナとして以下の条件で所定のパターンで予め印刷したものを用いた。裏面使用インク:銀ペーストの導電性インク(アチソンPM−460A)、インク盛り量:3μm。
【0052】
(比較例1)
スレッド状インレット連続体をオシレート配置させずに幅40mmの位置に固定して挿入し、粘着ラベル連続体に対しラベルの表面シートが幅80mm×長さ60mmの大きさで確実に切れる深さまでダイカットロールにてハーフカットを行った以外は実施例1と同様にして、比較例1のRFIDタグ機能を有する粘着ラベル連続票およびRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを作製した。
【0053】
(比較例2)
剥離シートをダイレクトシリコーン塗工したグラシンタイプ剥離シート(厚さ60μm)とし、スレッド状インレット連続体をオシレート配置させずに幅40mmの位置に固定して挿入した以外は実施例1と同様にして、比較例1のRFIDタグ機能を有する粘着ラベル連続票およびRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを作製した。
【0054】
以上にようにして作成した実施例および比較例の粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体、粘着ラベル連続票について作動距離、連続巻取り性、単票分離の確実さについてそれぞれ評価した。それぞれの結果は表1のとおりであった。
【0055】
(作動距離)
粘着ラベルのRFIDタグ機能を確認するために、2.54GHzのμ−CHIPプロトコルのリーダで動作確認テストを行った。表中の数字は、確実に動作することを確認できた距離である。
【0056】
(連続巻き取り性)
粘着ラベル連続体、粘着ラベル連続票の連続巻き取り性を確認するために、直径200mmのロールでそれぞれ長さ100m巻き取りが可能かどうかを確認した。○は巻き取り可能であったこと、×は巻き崩れが発生し巻き取り不可能であったことを示す。
【0057】
(単票形成の確実さ)
ハーフカットされた粘着ラベル連続票において粘着ラベルの特にスレッド状インレット連続体が確実に切断されて粘着ラベル単票が形成できているかどうかを確認した。○は切断完全、×は切断不完全であったことを示す。
さらに、剥離シートが貫通して切断されていないかどうかを確認した。○は剥離シート貫通なし、×は剥離シート貫通ありであったことを示す。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明によれば、薄くて被着体の凹凸にもよく追従するRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを提供でき、その製造コストを低減することができ、スレッド状インレット両端部にブースターアンテナを加えることによりRFIDタグ機能を有する粘着ラベルの通信距離を高めることができ、粘着ラベル連続体においては巻き取りが偏らず長尺に巻くことができ、剥離シート付き粘着ラベルの束においては、多数枚重ね合わせても局所的に厚くならないので重ね合わせやすく取り扱い性を良くすることができる、というような優れた効果を発現でき、特に大量のラベルを貼り付ける必要がある商品や輸送物の管理用RFIDタグにおいて嵩張り、重量増加、通信距離、コスト等の点で優れたRFIDタグ機能を有する粘着ラベルおよび粘着ラベル連続体ならびに粘着ラベル連続票を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ICチップ
2 異方性導電材
3 アンテナ
4 粘着剤
5 表面シート
6 剥離シート
7 ブースターアンテナ
S スレッド状インレット
Sc スレッド状インレット連続体
L 粘着ラベル
Lc 粘着ラベル連続体
Ls 粘着ラベル連続票
H ブースターアンテナ付き粘着ラベル
Hs ブースターアンテナ付き粘着ラベル連続票
W ラベルのワク(不用部分)
X ラベルの突起
Y ラベルの帯状の膨らみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートの片面に粘着剤の層を有するとともに該粘着剤を介してスレッド状インレットが配置されることを特徴とするRFIDタグ機能を有する粘着ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルにおいて、スレッド状インレット両端部の断面構成を、表面シート/ブースターアンテナ/粘着剤/スレッド状インレットの4層構造とすることを特徴とするRFIDタグ機能を有する粘着ラベル。
【請求項3】
前記ブースターアンテナが、金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ、および導電性インクのいずれかひとつを含む導電性材料もしくは磁性材料からなることを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ機能を有する粘着ラベル。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のRFIDタグ機能を有する粘着ラベルを、一方向に複数枚数を並べて配置する粘着ラベル連続体であって、該粘着ラベルからはみ出さない範囲でスレッド状インレット位置を周期的に変動させて配置することを特徴とする粘着ラベル連続体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−70480(P2011−70480A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222108(P2009−222108)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【出願人】(591064379)昌栄印刷株式会社 (15)
【Fターム(参考)】