RFIDタグ
【課題】衝撃に強く良好な通信を行えるようにしたRFIDタグを提供する。
【解決手段】RFIDタグは、RFIDインレット1を取り付けた基材2と、基材2の少なくとも一辺に設けた貼付部3と、貼付部3を被貼付物Nに貼付する貼付手段4とからなるものとし、さらに、その基材2と貼付部3のうち、少なくとも基材2は、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有するものとする。
【解決手段】RFIDタグは、RFIDインレット1を取り付けた基材2と、基材2の少なくとも一辺に設けた貼付部3と、貼付部3を被貼付物Nに貼付する貼付手段4とからなるものとし、さらに、その基材2と貼付部3のうち、少なくとも基材2は、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に貼付され該物品の管理等に使用されるRFIDタグに関し、特に、衝撃に強く既定通りの良好な通信を行えるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
この種のRFIDタグは各種の分野で幅広く利用されている。例えばコンテナで搬送される荷物(物品)の入出庫をRFIDタグで管理するシステムがある。このシステムでは予めコンテナ情報や荷物情報を格納したRFIDタグをコンテナや荷物に貼付する。そして、コンテナが通過する入出庫ゲートにおいて、コンテナや荷物のRFIDタグからコンテナ情報や荷物情報を読取ることで、どのコンテナで何の荷物が搬送されたか等、荷物の入出庫管理を行う。
【0003】
上記のようなシステム等で使用されるRFIDタグとしては、例えば、特許文献1に開示された構造のものが知られている。同文献1のRFIDタグ(T)は、RFIDインレット(Ta、Tb、J)を取り付けた基材(1)の一辺に貼付部(2)を設け(同文献1の図1参照)、この貼付部(2)を荷物等の被貼付物に貼付することで、被貼付物から外に向けて少し離れた位置にRFIDインレット(Ta、Tb、J)を配置できるようにしている。これは、被貼付物やその内容物の材質によってRFIDタグ(T)の通信距離が変化する等、通信に関する被貼付物の影響を極力小さくするためである。
【0004】
しかしながら、同文献1のRFIDタグ(T)によると、被貼付物に貼付したとき、RFIDインレット(Ta、Tb、J)が被貼付物から外方へ突出するため、RFIDインレットに他の部材が衝突し易く、衝突による衝撃力でRFIDインレットが破損するという問題点がある。また、衝突の衝撃で基材(1)が折れ曲がってしまい、元に戻らないという事態も生じる。基材(1)が折れ曲がって元に戻らないと、RFIDインレットを構成する通信アンテナ(Tb)も同様に折れ曲がったまま元の状態に戻らず、RFIDタグ(T)の通信距離が変化する等、通信に支障が生じ、既定通りの良好な通信を行うことができないという問題点もある。
【0005】
尚、上記説明中のカッコ内の符号は、特許文献1で用いられている符号である。
【0006】
【特許文献1】特開2007−34868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、衝撃に強く既定通りの良好な通信を行えるようにしたRFIDタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、RFIDインレットを取り付けた基材と、上記基材の少なくとも一辺に設けた貼付部と、上記貼付部を被貼付物に貼付する貼付手段とからなり、上記基材と上記貼付部のうち、少なくとも基材が、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力が解除された後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有することを特徴とする。
【0009】
上記柔軟性と弾性を有する基材とは、以下の試験方法によって特定される試験の結果、戻り角度Θが45度以上、90度以下になるものとしてよい。
【0010】
<試験方法>
本試験は、水平面と垂直面とが連続して設けられている試験台を用い、上記基材を試験片とする。そして、この基材の試験片を試験台の垂直面から外方へ5cm突出させ、この状態で試験片を手で掴んで90度曲げた後、その手を離す。そして、手を離してから5秒経過した後、試験台の水平面を基準面として、試験台の水平面と試験片とのなす角度を戻り角度Θとして測定する。
【0011】
上記貼付手段は、上記貼付部の裏面に粘着剤層を設け、その粘着力によって上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式、あるいは、上記貼付部にネジ挿入孔を設け、ネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式を採用することができる。
【0012】
上記貼付部は、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態になっていて、2枚のシートに分離可能である構成を採用してもよい。
【0013】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、上記貼付手段は、分離した上記2枚のシートのそれぞれにネジ挿入孔を設け、このネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0014】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、上記貼付手段は、被貼付物に固定冶具として一対の爪を設けるとともに、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両方のシートを上記両爪の下に滑り込ませことで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0015】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、上記貼付手段は、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両シートの裏面に両面テープを貼付し、この両面テープを介して上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0016】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に自己粘着性エラストマー樹脂シートが露出する構成になっていて、上記貼付手段は、上記自己粘着性エラストマー樹脂シートの自己粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0017】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面にセパレータシートが露出し、更にそのセパレータシートを剥離すると、粘着剤層が露出する構成になっていて、上記貼付手段は、上記粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0018】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に両面テープが露出し、更にその両面テープ表面の保護テープを剥離すると、両面テープの粘着剤層が露出する構成になっていて、上記貼付手段は、上記両面テープの粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0019】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に金属板が露出する構成になっていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、貼付部を被貼付物の縁部付近に貼付することで、被貼付物から外に向けて少し離れた位置にRFIDインレットを配置できることから、被貼付物やその内容物の材質によってRFIDタグの通信距離が変化する等、通信に関する被貼付物の影響を極力小さくすることができ、既定通りの良好な通信を行えるRFIDタグを提供できる。
【0021】
ところで、上記のように貼付部を被貼付物の縁部付近に貼付すると、RFIDインレットは、被貼付物から外方に突出することになるので、他の物体と衝突する可能性がある。
【0022】
しかしながら、本発明によると、上記のような衝突が生じたときは、基材が柔軟に湾曲することで衝突の衝撃力を逃がすので、衝突によるRFIDインレットの破損を効果的に防止することができる。しかも、衝突で湾曲した基材はその基材自体の弾性によって衝突前の元の形態に戻るため(形態の復元性)、RFIDインレットを構成する通信アンテナが基材と一緒に湾曲したままの状態になることや、それによってRFIDタグの通信距離が変化する等、通信に支障が生じることもなく、衝撃に強くかつ既定通りの良好な通信を行えるRFIDタグを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1、図2は本発明の一実施形態であるRFIDタグの説明図である。
【0025】
<RFIDタグTの概略>
図1のRFIDタグTは、RFIDインレット1を取り付けた基材2と、基材2の一辺2Aに設けた貼付部3と、貼付部3を被貼付物Nに貼付する貼付手段4とから構成される。図2のRFIDタグTも同様である。
【0026】
<RFIDインレットの詳細>
RFIDインレット1は、図示しないRFIDリーダライタ等の無線通信装置との間で通信を行うためのICチップ1Aと通信アンテナ1Bとを備え、これら全体をフィルム層1Cにより覆って保護した形態になっている。フィルム層1Cを用いずICチップ1Aと通信アンテナ1Bを直接基材2に埋設する方式も採りうる。なお、ICチップ1Aや通信アンテナ1Bの具体的な構成は周知であるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0027】
<基材の詳細>
基材2は、(A)合成ゴム、ウレタン、シリコーンなど、ゴムのように弾性に富む高分子化合物であるエラストマーからなるシート、または、(B)藁を原料とする黄ボール紙や木材パルプで作った白ボール紙のようなボール紙(板紙)、市販のコピー用紙等の紙類シート、若しくは、(C)フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック製シート、不織布製シート、あるいは、(D)これらのシート(先に例示した(A)から(B)のシート)のうち少なくともいずれか2枚のシート(例えば透明のウレタンシートとコピー用紙)を貼り合わせた複合シート等からなり、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有するものである。
【0028】
上記基材2の素材は、先に例示したウレタンなどに限定されない。しかしながら、金属等のように電磁波を反射する素材や吸収する素材は、RFIDタグTの通信に支障が生じるから、本発明において使用可能な基材2の素材から除外される。
【0029】
上記のような柔軟性と弾性を有する基材2は、以下の試験方法によって特定される試験の結果、戻り角度Θが45度以上、90度以下になるものである。戻り角度Θが45度以上、90度以下であるものは、上記のような柔軟性と弾性を有することを意味する。
【0030】
[試験方法の説明]
本試験は、水平面と垂直面とが連続して設けられている図12の試験台を用い、上記基材2を試験片とする。そして、この基材2の試験片を試験台の水平面から外方へ5cm突出させ、この状態で試験片を手で掴んで90度曲げた後、その手を離す。そして、手を離してから5秒経過した後、試験台の垂直面を基準面として、試験台の垂直面と試験片とのなす角度を戻り角度Θとして測定する。
【0031】
[試験結果の説明]
図13は上記試験結果の説明図である。図中「素材」という項目は試験片として採用した基材2の素材を示している。尚、図中「エラストマーI」と「エラストマーII」は製造メーカの違いであり、エラストマーIは「日本マタイ(株)製、エスマーURS(製品名)」、エラストマーIIは「日本ユニポリマー(株)製、Ding Zing Film(製品名)」である。プラスチックIとプラスチックIIも同様に製造メーカの違いであり、プラスチックIIについては「太平化学製品(株)PETG(製品名)」を使用した。なお、プラスチックIの製造メーカ等は不明である。紙については市販のコピー用紙を使用し、ボール紙については白ボールを使用した。
【0032】
図13中の「幅(mm)、高さ(mm)、厚さ(mm)」という項目は、試験片として採用した基材2の幅、高さ、厚さを示している。図中の「戻り角度」という項目は、その左欄の記載内容(幅、高さ、厚さ、素材)によって特定される基材2の試験片の戻り角度Θ(上記試験の実測値)を示している。さらに、図中の「通信可否」という項目は、戻り角度が付いた状態においてRFIDリーダライタ等の無線通信装置との間で通信を行ったときの通信結果を「○」と「×」で示したものである。ここで「○」は通信可、「×」は通信不可を示している。
【0033】
図13の試験結果から分かるように、本試験では、一部の基材2の試験片(素材がエラストマーIで幅50mm、高さ90mm、厚さ0.6mmのもの)を除き、ほかの基材2の試験片の戻り角度Θは、いずれも45度以上、90度以下となった。これは、試験片として採用した基材2が先に説明した柔軟性と弾性を有していることを意味している。また、戻り角度Θが55度〜90度の範囲では、RFIDリーダライタ等の無線通信装置との間で通信可能であることも分かった。
【0034】
従って、戻り角度Θが55度〜90度の範囲内となった上記試験片は、いずれも、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有する基材2として、本発明で利用することができる。
【0035】
<貼付部の詳細>
貼付部3は、基材2と同じ材料または異なる材料で作製することができる。基材2と異なる材料で貼付部3を作製する場合には、基材2と貼付部3を面一に接合する接合手段を要するが、基材2と同じ材料で貼付部3を作製する場合には、かかる接合手段は省略される。図1は基材2と貼付部3を同じ材料で形成した例を示している。
【0036】
図1のRFIDタグTでは、貼付部3を通信アンテナ1Bと平行な基材2の一辺2Aに設けているが、例えば図2のように通信アンテナ1Bと垂直な基材2の一辺2Bに貼付部3を設けることもできるし、また、この貼付部3は、基材2の一辺2A、2Bだけでなく、必要に応じて基材2の別の辺や、更に基材2の全辺に形成することもできる。さらに、図1のRFIDタグTでは、貼付部3を基材2と同じ寸法としているが、例えば図2のように貼付部3を基材2より小さい寸法にしたり、図示は省略するが、貼付部3を基材2より大きい寸法にしたりすることもできる。
【0037】
<貼付手段の詳細>
貼付手段4については各種考えられるが、図1のRFIDタグTでは、その貼付手段4の具体的な方式として、粘着剤の粘着力を利用する方式を採っている。この方式は、貼付部3の裏面に、両面テープの貼付あるいは粘着剤の塗布による粘着剤層4Aを設け、その粘着力によって貼付部3を被貼付物Nに貼付する方式である。
【0038】
図示は省略するが、上記貼付手段4については、上記粘着剤層4Aの代わりに、例えばマグネットシートを貼付部3の裏面に貼り付け、その磁力によって貼付部3を被貼付物Nに貼付する方式を採用することもできる。
【0039】
次に、上記のように構成されたRFIDタグTの使用例などについて、図1ないし図3を基に説明する。
【0040】
図1、図2に示した本RFIDタグTは、例えば、図3のように貼付部3を被貼付物Nの縁部外面に貼付する形態で使用される。このとき、図3のように貼付部3の全面が被貼付物Nに貼付されるようにしてもよいし、図示は省略するが、貼付部3の一部が被貼付物Nに貼付されるようにしてもよい。
【0041】
上記のように貼付部3を被貼付物Nの縁部付近に貼付すると、基材2とこれに取り付けられたRFIDインレット1は、被貼付物Nから外に向けて少し離れた位置に配置されることから、被貼付物Nやその内容物の材質によってRFIDタグTの通信距離が変化する等、通信に関する被貼付物Nの影響は小さくなり、既定通りの良好な通信を行うことが可能となる。
【0042】
また、上記のように貼付部3を被貼付物Nの縁部付近に貼付すると、RFIDインレット1や基材2は、図3のように被貼付物Nから外方に突出することになるので、何らかの他の物体と衝突する可能性がある。他の物体との衝突は、被貼付物Nの搬送時だけでなく、被貼付物Nの保管時にも生じる可能性がある。しかしながら、他の物体がRFIDインレット2に衝突すると、図3の二点破線で示すように、基材2が柔軟に湾曲することで衝突の衝撃力を逃がすので、衝突によるRFIDインレット1の破損は効果的に防止される。
【0043】
さらに、上記のような衝突で湾曲した基材2はその基材2自体の弾性によって衝突前の元の形態に戻るため(形態の復元性)、RFIDインレット1の通信アンテナ1Bが基材2と一緒に湾曲したままの状態になることや、それによってRFIDタグTの通信距離が変化する等、通信に支障が生じることもなく、RFIDタグTは既定通りの良好な通信を行うことができる。
【0044】
図4は、本発明の他の実施形態であって、図1、図2のRFIDタグとは異なる貼付手段を採用したRFIDタグの説明図である。なお、貼付手段4以外の構成は、図1、図2のRFIDタグと同様であるため、同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0045】
図4のRFIDタグTの貼付手段4はネジ4Cを利用する方式(ネジ止め方式)を採用したものである。この方式は、貼付部3にネジ挿入孔4Bを設け、ネジ挿入孔4Bにネジ4Cを挿入して被貼付物N側のネジ孔4Dに締め付け固定することで、貼付部3を被貼付物Nに貼付するようにしたものである。
【0046】
図5ないし図11は、本発明の他の実施形態の説明図であって、図1のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用したRFIDタグの説明図である。
【0047】
図1のRFIDタグTの貼付形態は、基材2と貼付部3とが同一面となるように貼付される形態である。これに対して、図5ないし図11のRFIDタグTの貼付形態は、いずれも貼付部3を土台として基材2が起立した姿勢で貼付される形態である。このような起立姿勢での貼付を可能とするために、図5ないし図11のRFIDタグTでは以下の構成を採用した。
【0048】
図5ないし図11のRFIDタグTでは、基材2と貼付部3は、エラストマー樹脂からなる2枚のシートS1、S2を、そのシート厚方向に重ねた形態になっている。
【0049】
そして、基材2を構成する2枚のシートS1、S2は、そのシートS1、S2間にRFIDインレット1を介在させて接着している。このため、基材2は2枚のシートS1、S2に分離して開くことはできない。基材2の接着とは、2枚のシートS1、S2に熱と圧力を加えることによって、そのシートS1、S2面どうしを接合することと、接着剤で2枚のシートS1、S2を接合することを含む。
【0050】
この一方、貼付部3の部分を構成する2枚のシートS1、S2は接着されていない。このため、貼付部3は2枚のシートS1、S2に分離して開くことができる。このように2枚のシートS1、S2に分離可能な貼付部3は、例えば図5(b)のように開かれた後に、同図(c)のように被貼付部Nに貼付される。
【0051】
図5ないし図7のRFIDタグTにおいては、上記の如く貼付部3だけを2枚のシートS1、S2に分離可能とするために、基材2の接着時に、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2間に図示しない第3のシートを介在させるようにした。この図示しない第3のシートは上記基材2の接着後に除去される。
【0052】
また、貼付手段4の具体例として、図5のRFIDタグTではネジ4Cを利用し、図6のRFIDタグTでは固定冶具4Eを利用し、図7のRFIDタグTでは両面テープ4Fを利用した。
【0053】
図5のネジ4Cを利用した貼付手段4は、図5(a)(b)のように貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2のそれぞれにネジ挿入孔4Bを設け、このネジ挿入孔4Bにネジ4Cを挿入して被貼付物N側のネジ孔4Dに締め付け固定することで、図5(c)のように貼付部3が被貼付物Nに貼付されるようにしたものである。
【0054】
図6の固定冶具4Eを利用した利用した貼付手段4では、図6(c)のように被貼付物N側に固定冶具4Eとして一対の爪4E1、4E2を設けている。そして、図6(a)のように閉じている貼付部3を図6(b)のように2枚のシートS1、S2に分離して開き、開いた両方のシートS1、S2を図6(c)のように一対の爪4E1、4E2の下に滑り込ませことで、貼付部3が被貼付物Nに貼付されるようにした。
【0055】
図7の両面テープ4Fを利用した貼付手段4は、図7(a)のように閉じている貼付部3を図7(b)のように2枚のシートS1、S2に分離して開き、開いた両シートS1、S2の裏面に市販の両面テープ4Fを貼付し、両面テープ4Fを介して貼付部3が被貼付物Nに貼付されるようにした(図7(c)参照)ものである。
【0056】
なお、図7の両面テープ4Fはテープ基材40の両面に粘着剤層41を設けた構成になっているが、これに代えて、図示は省略するが、テープ基材40のない両面テープを採用することもできる。
【0057】
図8ないし図11のRFIDタグTは、先に説明した第3のシートを使用せずに、以下の構成を採用することで、貼付部3だけを2枚のシートS1、S2に分離可能としたものである。
【0058】
図8のRFIDタグTにおいても、図8(b)のように、基材2を構成する2枚のシートS1、S2は、そのシートS1、S2間にRFIDインレット1を介在させた状態で接着されるが、このような基材2の接着前に、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面には、図8(a)のように自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4が所定の圧力で圧着される。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2間には2枚の自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4が介在するようになる。
【0059】
上記2枚の自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4どうしは、上記基材2の接着過程では完全接着せず、後で分離することができる。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図8(b)のように自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4を中心として分離可能となる。
【0060】
上記のような自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4を採用したRFIDタグTでは、図8(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、そのシートS1、S2の開き面に自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4が露出するので、この自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4の自己粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる(図8(c)参照)。
【0061】
要するに、上記自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4は、貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離可能とする機能と、貼付部3を被貼付物Nに貼付するための貼付手段としての機能を発揮する。
【0062】
自己粘着性エラストマー樹脂シートには、両面とも自己粘着性を有するもの(両面粘着タイプ)と、片面のみに被粘着性処理を施したもの(片面非粘着タイプ)がある。この片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを例えば図8のRFIDタグTにおける2枚のシートS1、S2として使用すれば、自己粘着性エラストマー樹脂シートのみで基材2と貼付部3を構成することができる。この構成は、具体的には、先に説明した片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを2枚使用する方式と1枚使用する方式とが考えられるので、それぞれの方式について以下、簡単に説明する。
【0063】
片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを2枚使用する方式では、それぞれの自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面どうしを対向させ、その両シート間にRFIDインレットを介在させた状態で、当該両シート全体をそれぞれの自己粘着力で貼り合せるものとする。これにより、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態の基材(RFIDインレットを含む部分)と貼付部(それ以外の部分)とが一体に形成される。その貼付部を構成する2枚のシートどうしも、基材を構成する2枚のシートと同様に、互いに接着している状態になっている。しかしながら、この貼付部を構成する2枚のシートはそれぞれの自己粘着力によって互いに接着しているだけなので、後で分離することができる。そして、かかる貼付部を2枚のシートに分離し開くと、自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面が当該シートの開き面として露出するので、その粘着面の自己粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる。
【0064】
片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを1枚使用する方式では、その自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面が内側になるように当該シートを半分に折り曲げて貼り合わせるとともに、その貼り合わせ面間にRFIDインレットを介在させるものとする。これにより、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態の基材(RFIDインレットを含む部分)と貼付部(それ以外の部分)とが一体に形成される。その貼付部を構成する2枚のシートどうしも、基材を構成する2枚のシートと同様に、互いに接着している状態になっている。しかしながら、この貼付部を構成する2枚のシートはそれぞれの自己粘着力によって互いに接着しているだけなので、後で分離することができる。そして、かかる貼付部を2枚のシートに分離して開くと、自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面が当該シートの開き面として露出するので、その粘着面の自己粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる。
【0065】
図9のRFIDタグTは、先に説明した自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4に代えて、粘着剤層4AとセパレータシートS5、S6の組合せを採用したものである。この場合、図9(a)のように、粘着剤層4Aは貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面にそれぞれ設けられ、セパレータS5、S6はその粘着剤層4A上に貼付される。
【0066】
従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2間にはセパレータシートS5、S6が2枚介在するようになる。これらのセパレータシートS5、S6どうしは上記基材2の接着過程では接合しないので、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図9(b)のようにセパレータシートS5、S6を中心として分離可能となる。
【0067】
上記のような粘着剤層4AとセパレータシートS5、S6の組合せを採用したRFIDタグTでは、図9(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、シートS1、S2の開き面にセパレータシートS5、S6が露出し、更にそのセパレータシートS5、S6を剥離すると、粘着剤層4Aが露出するので、その粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる(図9(c)参照)。
【0068】
図9では、粘着剤層4AとセパレータシートS5、S6の組合せを2枚使用したが、これらは互いに繋がっていて1枚の形態になっていてもよい。
【0069】
図10のRFIDタグTは、先に説明した自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4に代えて、両面テープ4Fを採用したものである。図10(a)のように、両面テープ4Fは、上記基材2の接着前に、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面にそれぞれ貼付される。貼付された両面テープ4Fはその粘着剤層41を保護する保護テープ42どうしが互いに向かい合うようになっていて、保護テープ42どうしは上記基材2の接着過程では接合しない。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図10(b)のように保護テープ42を中心として分離可能になる。
【0070】
上記のような両面テープ4Fを採用したRFIDタグTでは、図10(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、シートS1、S2の開き面に両面テープ4Fが露出し、更にその両面テープ4F表面の保護テープ42を剥離すると、両面テープ4Fの粘着剤層41が露出するので、その粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる(図10(c)参照)。
【0071】
なお、図10の両面テープ4Fはテープ基材40の両面に粘着剤層41を設けた構成になっているが、これに代えて、図示は省略するが、テープ基材40のない両面テープを採用することもできる。
【0072】
図10では、両面テープ4Fを2枚使用したが、これらは互いに繋がっていて1枚の形態になっていてもよい。
【0073】
図11のRFIDタグTは、先に説明した自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4に代えて、金属板50を採用したものである。図11(a)のように、金属板50は、上記基材2の接着前に、U字状に折り曲げて、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面間に介挿される。そして、金属板50とシートS1、S2は図示しない粘着剤によって一体に接合されるか、シートS1、S2の自己粘着性によって金属板50と当該シートS1、S2は一体に接合される。一方、金属板50の折り曲げ対向面どうしは上記基材2の接着過程では接合しない。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図11(b)のように金属板50を中心として分離可能になる。
【0074】
上記のような金属板50を採用したRFIDタグTでは、図11(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、そのシートS1、S2の開き面に金属板50が露出する。そして、例えば、この金属板50を被貼付物の上に置いたり、先に説明した図6の一対の爪4E1、4E2の下に滑り込ませたりすることによって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる。
【0075】
図5ないし図11のRFIDタグTにおいては、いずれも基材2と貼付部3の構成としてエラストマー樹脂からなる2枚のシートS1、S2をそのシート厚方向に重ねた形態を採用したが、そのようなエラストマー樹脂シートの代わりに、紙製シートを上記のように2枚重ねとする形態を採用することもできる。この場合、基材2を構成する2枚の紙製シートは接着剤等によって貼り合わせるようにしてよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は本発明の一実施形態であるRFIDタグの説明図であり、同図(a)はRFIDタグの平面図、同図(b)は図中B1−B1断面図である。
【図2】図2は本発明の他の実施形態であるRFIDタグの平面図である。
【図3】図3は本発明に係るRFIDタグの使用状態の説明図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態であるRFIDタグの説明図であり、同図(a)はRFIDタグの平面図、同図(b)は図中B2−B2断面図である。
【図5】図5は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)はRFIDタグの断面図、同図(b)は貼付部を2枚のシートに分離した状態の断面図、同図(c)はRFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図6】図6は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)はRFIDタグの断面図、同図(b)は貼付部を2枚のシートに分離した状態の断面図、同図(c)はRFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図7】図7は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)はRFIDタグの断面図、同図(b)は貼付部を2枚のシートに分離した状態の断面図、同図(c)はRFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図8】図8は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は、基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図、同図(c)は、RFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図9】図9は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は、基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図、同図(c)は、RFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図10】図10は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図、同図(c)は、RFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図11】図11は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は、基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図である。
【図12】図12は、試験方法の説明図である。
【図13】図13は、試験結果の説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 RFIDインレット
1A ICチップ
1B 通信アンテナ
1C フィルム層
2 基材
2A、2B 基材の一辺
3 貼付部
4 貼付手段
4A 粘着剤層
4B ネジ挿入孔
4C ネジ
4D ネジ孔
4E 冶具
4F 両面テープ
40 両面テープのテープ基材
41 両面テープの粘着剤層
42 両面テープの保護テープ
50 金属板
S1、S2 シート
S3、S4 自己粘着性エラストマー樹脂シート
S5、S6 セパレータシート
T RFIDタグ
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に貼付され該物品の管理等に使用されるRFIDタグに関し、特に、衝撃に強く既定通りの良好な通信を行えるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
この種のRFIDタグは各種の分野で幅広く利用されている。例えばコンテナで搬送される荷物(物品)の入出庫をRFIDタグで管理するシステムがある。このシステムでは予めコンテナ情報や荷物情報を格納したRFIDタグをコンテナや荷物に貼付する。そして、コンテナが通過する入出庫ゲートにおいて、コンテナや荷物のRFIDタグからコンテナ情報や荷物情報を読取ることで、どのコンテナで何の荷物が搬送されたか等、荷物の入出庫管理を行う。
【0003】
上記のようなシステム等で使用されるRFIDタグとしては、例えば、特許文献1に開示された構造のものが知られている。同文献1のRFIDタグ(T)は、RFIDインレット(Ta、Tb、J)を取り付けた基材(1)の一辺に貼付部(2)を設け(同文献1の図1参照)、この貼付部(2)を荷物等の被貼付物に貼付することで、被貼付物から外に向けて少し離れた位置にRFIDインレット(Ta、Tb、J)を配置できるようにしている。これは、被貼付物やその内容物の材質によってRFIDタグ(T)の通信距離が変化する等、通信に関する被貼付物の影響を極力小さくするためである。
【0004】
しかしながら、同文献1のRFIDタグ(T)によると、被貼付物に貼付したとき、RFIDインレット(Ta、Tb、J)が被貼付物から外方へ突出するため、RFIDインレットに他の部材が衝突し易く、衝突による衝撃力でRFIDインレットが破損するという問題点がある。また、衝突の衝撃で基材(1)が折れ曲がってしまい、元に戻らないという事態も生じる。基材(1)が折れ曲がって元に戻らないと、RFIDインレットを構成する通信アンテナ(Tb)も同様に折れ曲がったまま元の状態に戻らず、RFIDタグ(T)の通信距離が変化する等、通信に支障が生じ、既定通りの良好な通信を行うことができないという問題点もある。
【0005】
尚、上記説明中のカッコ内の符号は、特許文献1で用いられている符号である。
【0006】
【特許文献1】特開2007−34868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、衝撃に強く既定通りの良好な通信を行えるようにしたRFIDタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、RFIDインレットを取り付けた基材と、上記基材の少なくとも一辺に設けた貼付部と、上記貼付部を被貼付物に貼付する貼付手段とからなり、上記基材と上記貼付部のうち、少なくとも基材が、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力が解除された後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有することを特徴とする。
【0009】
上記柔軟性と弾性を有する基材とは、以下の試験方法によって特定される試験の結果、戻り角度Θが45度以上、90度以下になるものとしてよい。
【0010】
<試験方法>
本試験は、水平面と垂直面とが連続して設けられている試験台を用い、上記基材を試験片とする。そして、この基材の試験片を試験台の垂直面から外方へ5cm突出させ、この状態で試験片を手で掴んで90度曲げた後、その手を離す。そして、手を離してから5秒経過した後、試験台の水平面を基準面として、試験台の水平面と試験片とのなす角度を戻り角度Θとして測定する。
【0011】
上記貼付手段は、上記貼付部の裏面に粘着剤層を設け、その粘着力によって上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式、あるいは、上記貼付部にネジ挿入孔を設け、ネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式を採用することができる。
【0012】
上記貼付部は、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態になっていて、2枚のシートに分離可能である構成を採用してもよい。
【0013】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、上記貼付手段は、分離した上記2枚のシートのそれぞれにネジ挿入孔を設け、このネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0014】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、上記貼付手段は、被貼付物に固定冶具として一対の爪を設けるとともに、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両方のシートを上記両爪の下に滑り込ませことで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0015】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、上記貼付手段は、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両シートの裏面に両面テープを貼付し、この両面テープを介して上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0016】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に自己粘着性エラストマー樹脂シートが露出する構成になっていて、上記貼付手段は、上記自己粘着性エラストマー樹脂シートの自己粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0017】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面にセパレータシートが露出し、更にそのセパレータシートを剥離すると、粘着剤層が露出する構成になっていて、上記貼付手段は、上記粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0018】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に両面テープが露出し、更にその両面テープ表面の保護テープを剥離すると、両面テープの粘着剤層が露出する構成になっていて、上記貼付手段は、上記両面テープの粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであってもよい。
【0019】
上記分離可能な貼付部を採用する場合、かかる貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に金属板が露出する構成になっていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、貼付部を被貼付物の縁部付近に貼付することで、被貼付物から外に向けて少し離れた位置にRFIDインレットを配置できることから、被貼付物やその内容物の材質によってRFIDタグの通信距離が変化する等、通信に関する被貼付物の影響を極力小さくすることができ、既定通りの良好な通信を行えるRFIDタグを提供できる。
【0021】
ところで、上記のように貼付部を被貼付物の縁部付近に貼付すると、RFIDインレットは、被貼付物から外方に突出することになるので、他の物体と衝突する可能性がある。
【0022】
しかしながら、本発明によると、上記のような衝突が生じたときは、基材が柔軟に湾曲することで衝突の衝撃力を逃がすので、衝突によるRFIDインレットの破損を効果的に防止することができる。しかも、衝突で湾曲した基材はその基材自体の弾性によって衝突前の元の形態に戻るため(形態の復元性)、RFIDインレットを構成する通信アンテナが基材と一緒に湾曲したままの状態になることや、それによってRFIDタグの通信距離が変化する等、通信に支障が生じることもなく、衝撃に強くかつ既定通りの良好な通信を行えるRFIDタグを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1、図2は本発明の一実施形態であるRFIDタグの説明図である。
【0025】
<RFIDタグTの概略>
図1のRFIDタグTは、RFIDインレット1を取り付けた基材2と、基材2の一辺2Aに設けた貼付部3と、貼付部3を被貼付物Nに貼付する貼付手段4とから構成される。図2のRFIDタグTも同様である。
【0026】
<RFIDインレットの詳細>
RFIDインレット1は、図示しないRFIDリーダライタ等の無線通信装置との間で通信を行うためのICチップ1Aと通信アンテナ1Bとを備え、これら全体をフィルム層1Cにより覆って保護した形態になっている。フィルム層1Cを用いずICチップ1Aと通信アンテナ1Bを直接基材2に埋設する方式も採りうる。なお、ICチップ1Aや通信アンテナ1Bの具体的な構成は周知であるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0027】
<基材の詳細>
基材2は、(A)合成ゴム、ウレタン、シリコーンなど、ゴムのように弾性に富む高分子化合物であるエラストマーからなるシート、または、(B)藁を原料とする黄ボール紙や木材パルプで作った白ボール紙のようなボール紙(板紙)、市販のコピー用紙等の紙類シート、若しくは、(C)フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック製シート、不織布製シート、あるいは、(D)これらのシート(先に例示した(A)から(B)のシート)のうち少なくともいずれか2枚のシート(例えば透明のウレタンシートとコピー用紙)を貼り合わせた複合シート等からなり、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有するものである。
【0028】
上記基材2の素材は、先に例示したウレタンなどに限定されない。しかしながら、金属等のように電磁波を反射する素材や吸収する素材は、RFIDタグTの通信に支障が生じるから、本発明において使用可能な基材2の素材から除外される。
【0029】
上記のような柔軟性と弾性を有する基材2は、以下の試験方法によって特定される試験の結果、戻り角度Θが45度以上、90度以下になるものである。戻り角度Θが45度以上、90度以下であるものは、上記のような柔軟性と弾性を有することを意味する。
【0030】
[試験方法の説明]
本試験は、水平面と垂直面とが連続して設けられている図12の試験台を用い、上記基材2を試験片とする。そして、この基材2の試験片を試験台の水平面から外方へ5cm突出させ、この状態で試験片を手で掴んで90度曲げた後、その手を離す。そして、手を離してから5秒経過した後、試験台の垂直面を基準面として、試験台の垂直面と試験片とのなす角度を戻り角度Θとして測定する。
【0031】
[試験結果の説明]
図13は上記試験結果の説明図である。図中「素材」という項目は試験片として採用した基材2の素材を示している。尚、図中「エラストマーI」と「エラストマーII」は製造メーカの違いであり、エラストマーIは「日本マタイ(株)製、エスマーURS(製品名)」、エラストマーIIは「日本ユニポリマー(株)製、Ding Zing Film(製品名)」である。プラスチックIとプラスチックIIも同様に製造メーカの違いであり、プラスチックIIについては「太平化学製品(株)PETG(製品名)」を使用した。なお、プラスチックIの製造メーカ等は不明である。紙については市販のコピー用紙を使用し、ボール紙については白ボールを使用した。
【0032】
図13中の「幅(mm)、高さ(mm)、厚さ(mm)」という項目は、試験片として採用した基材2の幅、高さ、厚さを示している。図中の「戻り角度」という項目は、その左欄の記載内容(幅、高さ、厚さ、素材)によって特定される基材2の試験片の戻り角度Θ(上記試験の実測値)を示している。さらに、図中の「通信可否」という項目は、戻り角度が付いた状態においてRFIDリーダライタ等の無線通信装置との間で通信を行ったときの通信結果を「○」と「×」で示したものである。ここで「○」は通信可、「×」は通信不可を示している。
【0033】
図13の試験結果から分かるように、本試験では、一部の基材2の試験片(素材がエラストマーIで幅50mm、高さ90mm、厚さ0.6mmのもの)を除き、ほかの基材2の試験片の戻り角度Θは、いずれも45度以上、90度以下となった。これは、試験片として採用した基材2が先に説明した柔軟性と弾性を有していることを意味している。また、戻り角度Θが55度〜90度の範囲では、RFIDリーダライタ等の無線通信装置との間で通信可能であることも分かった。
【0034】
従って、戻り角度Θが55度〜90度の範囲内となった上記試験片は、いずれも、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有する基材2として、本発明で利用することができる。
【0035】
<貼付部の詳細>
貼付部3は、基材2と同じ材料または異なる材料で作製することができる。基材2と異なる材料で貼付部3を作製する場合には、基材2と貼付部3を面一に接合する接合手段を要するが、基材2と同じ材料で貼付部3を作製する場合には、かかる接合手段は省略される。図1は基材2と貼付部3を同じ材料で形成した例を示している。
【0036】
図1のRFIDタグTでは、貼付部3を通信アンテナ1Bと平行な基材2の一辺2Aに設けているが、例えば図2のように通信アンテナ1Bと垂直な基材2の一辺2Bに貼付部3を設けることもできるし、また、この貼付部3は、基材2の一辺2A、2Bだけでなく、必要に応じて基材2の別の辺や、更に基材2の全辺に形成することもできる。さらに、図1のRFIDタグTでは、貼付部3を基材2と同じ寸法としているが、例えば図2のように貼付部3を基材2より小さい寸法にしたり、図示は省略するが、貼付部3を基材2より大きい寸法にしたりすることもできる。
【0037】
<貼付手段の詳細>
貼付手段4については各種考えられるが、図1のRFIDタグTでは、その貼付手段4の具体的な方式として、粘着剤の粘着力を利用する方式を採っている。この方式は、貼付部3の裏面に、両面テープの貼付あるいは粘着剤の塗布による粘着剤層4Aを設け、その粘着力によって貼付部3を被貼付物Nに貼付する方式である。
【0038】
図示は省略するが、上記貼付手段4については、上記粘着剤層4Aの代わりに、例えばマグネットシートを貼付部3の裏面に貼り付け、その磁力によって貼付部3を被貼付物Nに貼付する方式を採用することもできる。
【0039】
次に、上記のように構成されたRFIDタグTの使用例などについて、図1ないし図3を基に説明する。
【0040】
図1、図2に示した本RFIDタグTは、例えば、図3のように貼付部3を被貼付物Nの縁部外面に貼付する形態で使用される。このとき、図3のように貼付部3の全面が被貼付物Nに貼付されるようにしてもよいし、図示は省略するが、貼付部3の一部が被貼付物Nに貼付されるようにしてもよい。
【0041】
上記のように貼付部3を被貼付物Nの縁部付近に貼付すると、基材2とこれに取り付けられたRFIDインレット1は、被貼付物Nから外に向けて少し離れた位置に配置されることから、被貼付物Nやその内容物の材質によってRFIDタグTの通信距離が変化する等、通信に関する被貼付物Nの影響は小さくなり、既定通りの良好な通信を行うことが可能となる。
【0042】
また、上記のように貼付部3を被貼付物Nの縁部付近に貼付すると、RFIDインレット1や基材2は、図3のように被貼付物Nから外方に突出することになるので、何らかの他の物体と衝突する可能性がある。他の物体との衝突は、被貼付物Nの搬送時だけでなく、被貼付物Nの保管時にも生じる可能性がある。しかしながら、他の物体がRFIDインレット2に衝突すると、図3の二点破線で示すように、基材2が柔軟に湾曲することで衝突の衝撃力を逃がすので、衝突によるRFIDインレット1の破損は効果的に防止される。
【0043】
さらに、上記のような衝突で湾曲した基材2はその基材2自体の弾性によって衝突前の元の形態に戻るため(形態の復元性)、RFIDインレット1の通信アンテナ1Bが基材2と一緒に湾曲したままの状態になることや、それによってRFIDタグTの通信距離が変化する等、通信に支障が生じることもなく、RFIDタグTは既定通りの良好な通信を行うことができる。
【0044】
図4は、本発明の他の実施形態であって、図1、図2のRFIDタグとは異なる貼付手段を採用したRFIDタグの説明図である。なお、貼付手段4以外の構成は、図1、図2のRFIDタグと同様であるため、同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0045】
図4のRFIDタグTの貼付手段4はネジ4Cを利用する方式(ネジ止め方式)を採用したものである。この方式は、貼付部3にネジ挿入孔4Bを設け、ネジ挿入孔4Bにネジ4Cを挿入して被貼付物N側のネジ孔4Dに締め付け固定することで、貼付部3を被貼付物Nに貼付するようにしたものである。
【0046】
図5ないし図11は、本発明の他の実施形態の説明図であって、図1のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用したRFIDタグの説明図である。
【0047】
図1のRFIDタグTの貼付形態は、基材2と貼付部3とが同一面となるように貼付される形態である。これに対して、図5ないし図11のRFIDタグTの貼付形態は、いずれも貼付部3を土台として基材2が起立した姿勢で貼付される形態である。このような起立姿勢での貼付を可能とするために、図5ないし図11のRFIDタグTでは以下の構成を採用した。
【0048】
図5ないし図11のRFIDタグTでは、基材2と貼付部3は、エラストマー樹脂からなる2枚のシートS1、S2を、そのシート厚方向に重ねた形態になっている。
【0049】
そして、基材2を構成する2枚のシートS1、S2は、そのシートS1、S2間にRFIDインレット1を介在させて接着している。このため、基材2は2枚のシートS1、S2に分離して開くことはできない。基材2の接着とは、2枚のシートS1、S2に熱と圧力を加えることによって、そのシートS1、S2面どうしを接合することと、接着剤で2枚のシートS1、S2を接合することを含む。
【0050】
この一方、貼付部3の部分を構成する2枚のシートS1、S2は接着されていない。このため、貼付部3は2枚のシートS1、S2に分離して開くことができる。このように2枚のシートS1、S2に分離可能な貼付部3は、例えば図5(b)のように開かれた後に、同図(c)のように被貼付部Nに貼付される。
【0051】
図5ないし図7のRFIDタグTにおいては、上記の如く貼付部3だけを2枚のシートS1、S2に分離可能とするために、基材2の接着時に、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2間に図示しない第3のシートを介在させるようにした。この図示しない第3のシートは上記基材2の接着後に除去される。
【0052】
また、貼付手段4の具体例として、図5のRFIDタグTではネジ4Cを利用し、図6のRFIDタグTでは固定冶具4Eを利用し、図7のRFIDタグTでは両面テープ4Fを利用した。
【0053】
図5のネジ4Cを利用した貼付手段4は、図5(a)(b)のように貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2のそれぞれにネジ挿入孔4Bを設け、このネジ挿入孔4Bにネジ4Cを挿入して被貼付物N側のネジ孔4Dに締め付け固定することで、図5(c)のように貼付部3が被貼付物Nに貼付されるようにしたものである。
【0054】
図6の固定冶具4Eを利用した利用した貼付手段4では、図6(c)のように被貼付物N側に固定冶具4Eとして一対の爪4E1、4E2を設けている。そして、図6(a)のように閉じている貼付部3を図6(b)のように2枚のシートS1、S2に分離して開き、開いた両方のシートS1、S2を図6(c)のように一対の爪4E1、4E2の下に滑り込ませことで、貼付部3が被貼付物Nに貼付されるようにした。
【0055】
図7の両面テープ4Fを利用した貼付手段4は、図7(a)のように閉じている貼付部3を図7(b)のように2枚のシートS1、S2に分離して開き、開いた両シートS1、S2の裏面に市販の両面テープ4Fを貼付し、両面テープ4Fを介して貼付部3が被貼付物Nに貼付されるようにした(図7(c)参照)ものである。
【0056】
なお、図7の両面テープ4Fはテープ基材40の両面に粘着剤層41を設けた構成になっているが、これに代えて、図示は省略するが、テープ基材40のない両面テープを採用することもできる。
【0057】
図8ないし図11のRFIDタグTは、先に説明した第3のシートを使用せずに、以下の構成を採用することで、貼付部3だけを2枚のシートS1、S2に分離可能としたものである。
【0058】
図8のRFIDタグTにおいても、図8(b)のように、基材2を構成する2枚のシートS1、S2は、そのシートS1、S2間にRFIDインレット1を介在させた状態で接着されるが、このような基材2の接着前に、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面には、図8(a)のように自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4が所定の圧力で圧着される。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2間には2枚の自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4が介在するようになる。
【0059】
上記2枚の自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4どうしは、上記基材2の接着過程では完全接着せず、後で分離することができる。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図8(b)のように自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4を中心として分離可能となる。
【0060】
上記のような自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4を採用したRFIDタグTでは、図8(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、そのシートS1、S2の開き面に自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4が露出するので、この自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4の自己粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる(図8(c)参照)。
【0061】
要するに、上記自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4は、貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離可能とする機能と、貼付部3を被貼付物Nに貼付するための貼付手段としての機能を発揮する。
【0062】
自己粘着性エラストマー樹脂シートには、両面とも自己粘着性を有するもの(両面粘着タイプ)と、片面のみに被粘着性処理を施したもの(片面非粘着タイプ)がある。この片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを例えば図8のRFIDタグTにおける2枚のシートS1、S2として使用すれば、自己粘着性エラストマー樹脂シートのみで基材2と貼付部3を構成することができる。この構成は、具体的には、先に説明した片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを2枚使用する方式と1枚使用する方式とが考えられるので、それぞれの方式について以下、簡単に説明する。
【0063】
片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを2枚使用する方式では、それぞれの自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面どうしを対向させ、その両シート間にRFIDインレットを介在させた状態で、当該両シート全体をそれぞれの自己粘着力で貼り合せるものとする。これにより、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態の基材(RFIDインレットを含む部分)と貼付部(それ以外の部分)とが一体に形成される。その貼付部を構成する2枚のシートどうしも、基材を構成する2枚のシートと同様に、互いに接着している状態になっている。しかしながら、この貼付部を構成する2枚のシートはそれぞれの自己粘着力によって互いに接着しているだけなので、後で分離することができる。そして、かかる貼付部を2枚のシートに分離し開くと、自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面が当該シートの開き面として露出するので、その粘着面の自己粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる。
【0064】
片面非粘着タイプの自己粘着性エラストマー樹脂シートを1枚使用する方式では、その自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面が内側になるように当該シートを半分に折り曲げて貼り合わせるとともに、その貼り合わせ面間にRFIDインレットを介在させるものとする。これにより、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態の基材(RFIDインレットを含む部分)と貼付部(それ以外の部分)とが一体に形成される。その貼付部を構成する2枚のシートどうしも、基材を構成する2枚のシートと同様に、互いに接着している状態になっている。しかしながら、この貼付部を構成する2枚のシートはそれぞれの自己粘着力によって互いに接着しているだけなので、後で分離することができる。そして、かかる貼付部を2枚のシートに分離して開くと、自己粘着性エラストマー樹脂シートの粘着面が当該シートの開き面として露出するので、その粘着面の自己粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる。
【0065】
図9のRFIDタグTは、先に説明した自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4に代えて、粘着剤層4AとセパレータシートS5、S6の組合せを採用したものである。この場合、図9(a)のように、粘着剤層4Aは貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面にそれぞれ設けられ、セパレータS5、S6はその粘着剤層4A上に貼付される。
【0066】
従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2間にはセパレータシートS5、S6が2枚介在するようになる。これらのセパレータシートS5、S6どうしは上記基材2の接着過程では接合しないので、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図9(b)のようにセパレータシートS5、S6を中心として分離可能となる。
【0067】
上記のような粘着剤層4AとセパレータシートS5、S6の組合せを採用したRFIDタグTでは、図9(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、シートS1、S2の開き面にセパレータシートS5、S6が露出し、更にそのセパレータシートS5、S6を剥離すると、粘着剤層4Aが露出するので、その粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる(図9(c)参照)。
【0068】
図9では、粘着剤層4AとセパレータシートS5、S6の組合せを2枚使用したが、これらは互いに繋がっていて1枚の形態になっていてもよい。
【0069】
図10のRFIDタグTは、先に説明した自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4に代えて、両面テープ4Fを採用したものである。図10(a)のように、両面テープ4Fは、上記基材2の接着前に、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面にそれぞれ貼付される。貼付された両面テープ4Fはその粘着剤層41を保護する保護テープ42どうしが互いに向かい合うようになっていて、保護テープ42どうしは上記基材2の接着過程では接合しない。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図10(b)のように保護テープ42を中心として分離可能になる。
【0070】
上記のような両面テープ4Fを採用したRFIDタグTでは、図10(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、シートS1、S2の開き面に両面テープ4Fが露出し、更にその両面テープ4F表面の保護テープ42を剥離すると、両面テープ4Fの粘着剤層41が露出するので、その粘着力によって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる(図10(c)参照)。
【0071】
なお、図10の両面テープ4Fはテープ基材40の両面に粘着剤層41を設けた構成になっているが、これに代えて、図示は省略するが、テープ基材40のない両面テープを採用することもできる。
【0072】
図10では、両面テープ4Fを2枚使用したが、これらは互いに繋がっていて1枚の形態になっていてもよい。
【0073】
図11のRFIDタグTは、先に説明した自己粘着性エラストマー樹脂シートS3、S4に代えて、金属板50を採用したものである。図11(a)のように、金属板50は、上記基材2の接着前に、U字状に折り曲げて、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2の対向面間に介挿される。そして、金属板50とシートS1、S2は図示しない粘着剤によって一体に接合されるか、シートS1、S2の自己粘着性によって金属板50と当該シートS1、S2は一体に接合される。一方、金属板50の折り曲げ対向面どうしは上記基材2の接着過程では接合しない。従って、貼付部3を構成する2枚のシートS1、S2は、上記基材2の接着後でも、図11(b)のように金属板50を中心として分離可能になる。
【0074】
上記のような金属板50を採用したRFIDタグTでは、図11(b)のように貼付部3を2枚のシートS1、S2に分離し開くと、そのシートS1、S2の開き面に金属板50が露出する。そして、例えば、この金属板50を被貼付物の上に置いたり、先に説明した図6の一対の爪4E1、4E2の下に滑り込ませたりすることによって、貼付部3を被貼付物Nに貼付することができる。
【0075】
図5ないし図11のRFIDタグTにおいては、いずれも基材2と貼付部3の構成としてエラストマー樹脂からなる2枚のシートS1、S2をそのシート厚方向に重ねた形態を採用したが、そのようなエラストマー樹脂シートの代わりに、紙製シートを上記のように2枚重ねとする形態を採用することもできる。この場合、基材2を構成する2枚の紙製シートは接着剤等によって貼り合わせるようにしてよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は本発明の一実施形態であるRFIDタグの説明図であり、同図(a)はRFIDタグの平面図、同図(b)は図中B1−B1断面図である。
【図2】図2は本発明の他の実施形態であるRFIDタグの平面図である。
【図3】図3は本発明に係るRFIDタグの使用状態の説明図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態であるRFIDタグの説明図であり、同図(a)はRFIDタグの平面図、同図(b)は図中B2−B2断面図である。
【図5】図5は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)はRFIDタグの断面図、同図(b)は貼付部を2枚のシートに分離した状態の断面図、同図(c)はRFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図6】図6は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)はRFIDタグの断面図、同図(b)は貼付部を2枚のシートに分離した状態の断面図、同図(c)はRFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図7】図7は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)はRFIDタグの断面図、同図(b)は貼付部を2枚のシートに分離した状態の断面図、同図(c)はRFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図8】図8は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は、基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図、同図(c)は、RFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図9】図9は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は、基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図、同図(c)は、RFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図10】図10は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図、同図(c)は、RFIDタグの貼付部を被貼付部に貼付した状態の断面図である。
【図11】図11は、図1ないし図3のRFIDタグとは異なる貼付形態を採用した本発明に係るRFIDタグの説明図であって、同図(a)は、基材を接着する前のRFIDタグ部品断面図、同図(b)は、基材の接着後に貼付部を2枚のシートに分離し開いた状態のRFIDタグの断面図である。
【図12】図12は、試験方法の説明図である。
【図13】図13は、試験結果の説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 RFIDインレット
1A ICチップ
1B 通信アンテナ
1C フィルム層
2 基材
2A、2B 基材の一辺
3 貼付部
4 貼付手段
4A 粘着剤層
4B ネジ挿入孔
4C ネジ
4D ネジ孔
4E 冶具
4F 両面テープ
40 両面テープのテープ基材
41 両面テープの粘着剤層
42 両面テープの保護テープ
50 金属板
S1、S2 シート
S3、S4 自己粘着性エラストマー樹脂シート
S5、S6 セパレータシート
T RFIDタグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDインレットを取り付けた基材と、
上記基材の少なくとも一辺に設けた貼付部と、
上記貼付部を被貼付物に貼付する貼付手段とからなり、
上記基材と上記貼付部のうち、少なくとも基材が、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有すること
を特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
請求項1に記載された柔軟性と弾性を有する基材とは、以下の試験方法によって特定される試験の結果、戻り角度Θが45度以上、90度以下になるものであること
を特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
<試験方法>
本試験は、水平面と垂直面とが連続して設けられている試験台を用い、上記基材を試験片とする。そして、この基材の試験片を試験台の垂直面から外方へ5cm突出させ、この状態で試験片を手で掴んで90度曲げた後、その手を離す。そして、手を離してから5秒経過した後、試験台の水平面を基準面として、試験台の水平面と試験片とのなす角度を戻り角度Θとして測定する。
【請求項3】
上記貼付手段は、上記貼付部の裏面に粘着剤層を設け、その粘着力によって上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式、あるいは、上記貼付部にネジ挿入孔を設け、ネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
上記貼付部は、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態になっていて、2枚のシートに分離可能であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
上記貼付手段は、分離した上記2枚のシートのそれぞれにネジ挿入孔を設け、このネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
上記貼付手段は、被貼付物に固定冶具として一対の爪を設けるとともに、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両方のシートを上記両爪の下に滑り込ませことで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
上記貼付手段は、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両シートの裏面に両面テープを貼付し、この両面テープを介して上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項8】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に自己粘着性エラストマー樹脂シートが露出する構成になっていて、
上記貼付手段は、上記自己粘着性エラストマー樹脂シートの自己粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項9】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面にセパレータシートが露出し、更にそのセパレータシートを剥離すると、粘着剤層が露出する構成になっていて、
上記貼付手段は、上記粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項10】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に両面テープが露出し、更にその両面テープ表面の保護テープを剥離すると、両面テープの粘着剤層が露出する構成になっていて、
上記貼付手段は、上記両面テープの粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項11】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に金属板が露出する構成になっていること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項1】
RFIDインレットを取り付けた基材と、
上記基材の少なくとも一辺に設けた貼付部と、
上記貼付部を被貼付物に貼付する貼付手段とからなり、
上記基材と上記貼付部のうち、少なくとも基材が、他の物体との衝突による衝撃力で湾曲する柔軟性と、その衝撃力がなくなった後に湾曲前の元の形態に復元できる弾性とを有すること
を特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
請求項1に記載された柔軟性と弾性を有する基材とは、以下の試験方法によって特定される試験の結果、戻り角度Θが45度以上、90度以下になるものであること
を特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
<試験方法>
本試験は、水平面と垂直面とが連続して設けられている試験台を用い、上記基材を試験片とする。そして、この基材の試験片を試験台の垂直面から外方へ5cm突出させ、この状態で試験片を手で掴んで90度曲げた後、その手を離す。そして、手を離してから5秒経過した後、試験台の水平面を基準面として、試験台の水平面と試験片とのなす角度を戻り角度Θとして測定する。
【請求項3】
上記貼付手段は、上記貼付部の裏面に粘着剤層を設け、その粘着力によって上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式、あるいは、上記貼付部にネジ挿入孔を設け、ネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を上記被貼付物に貼付する方式であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
上記貼付部は、2枚のシートをその厚さ方向に重ねた形態になっていて、2枚のシートに分離可能であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
上記貼付手段は、分離した上記2枚のシートのそれぞれにネジ挿入孔を設け、このネジ挿入孔にネジを挿入して被貼付物側のネジ孔に締め付け固定することで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
上記貼付手段は、被貼付物に固定冶具として一対の爪を設けるとともに、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両方のシートを上記両爪の下に滑り込ませことで、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
上記貼付手段は、上記貼付部を2枚のシートに分離して開き、開いた両シートの裏面に両面テープを貼付し、この両面テープを介して上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項8】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に自己粘着性エラストマー樹脂シートが露出する構成になっていて、
上記貼付手段は、上記自己粘着性エラストマー樹脂シートの自己粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項9】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面にセパレータシートが露出し、更にそのセパレータシートを剥離すると、粘着剤層が露出する構成になっていて、
上記貼付手段は、上記粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項10】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に両面テープが露出し、更にその両面テープ表面の保護テープを剥離すると、両面テープの粘着剤層が露出する構成になっていて、
上記貼付手段は、上記両面テープの粘着剤層の粘着力によって、上記貼付部を被貼付物に貼付するものであること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【請求項11】
上記貼付部は、2枚のシートに分離し開かれたときに、そのシートの開き面に金属板が露出する構成になっていること
を特徴とする請求項4に記載のRFIDタグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−72737(P2010−72737A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236861(P2008−236861)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
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