説明

RFID通信・人体通信併用通信構造

【課題】データキャリアやデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、RFIDの通信範囲が極力損なわれることなく、人体通信を高精度に行うことの可能なRFID通信・人体通信併用通信構造の提供。
【解決手段】非接触データキャリア読み取りシステムと、人体通信システムとに併用されるRFID通信・人体通信併用通信構造である。それらのシステムの固定通信端末同士、携帯通信端末同士の少なくともいずれかにおける送受信アンテナ1と電極対2とが重なった状態で配置され、電極対を構成する電極2a,2bは、対応する送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなり、複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ所定形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を介して非接触でデータキャリアに記録された情報の読み取り等を行う非接触データキャリア読み取りシステム等のRFID(Radio Frequency Identification)通信システムと、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体としての人体に誘起させ、誘起した電界を検出して情報の送受信を行う人体通信システムとに併用される通信構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図10はRFID通信システムの基本構成の一例を示すブロック図である。
RFID通信システムは、質問器であるデータキャリア読み取り装置10と、応答器であるICカード等のデータキャリア20を有して構成されている。
【0003】
データキャリア読み取り装置10は、質問電磁波を送信すると共に応答電波を受信する第1の送受信アンテナとしてのデータキャリア読み取り側送受信アンテナ11と、送受信回路部12aとコントローラ12bとを有する、第1の駆動制御部としての読み取り駆動制御部12とを有して構成されている。
データキャリア読み取り側送受信アンテナ11は、例えば、巻き線コイルや、プリント基板にループ状に形成されたものなどで指向性を有するように構成されている。
送受信回路部12aは、送信回路12a−1と、受信回路12a−2と、データキャリア読み取り側送受信アンテナ11を介して送信及び受信するための回路(図示省略)や送信信号および受信信号を処理するための回路(図示省略)を備えている。
【0004】
コントローラ12bは、データキャリア20に記録されている情報の入力をするためのアンテナ駆動を制御するプログラムが組み込まれたマイクロコンピュータで構成されている。
また、データキャリア読み取り装置10は、ホストコンピュータ等の上位の関連設備13と接続され、識別情報を取得するための端末装置として固定した状態で設けられている。
【0005】
データキャリア20は、質問電磁波を受信すると共に応答電磁波を送信する第2の送受信アンテナとしてのデータキャリア側送受信アンテナ21と、送受信回路部22aとデータを書き換え可能なメモリ部22bとを有する、第2の駆動制御部としてのICチップ22を、軽薄短小で携帯可能に形成された合成樹脂製外装体(図示省略)に内蔵している。
データキャリア側送受信アンテナ21は、例えば、巻き線コイルや、プリント基板にループ状に形成されたものなどで指向性を有するように構成されている。
送受信回路部22aは、送信回路22a−1と、受信回路22a−2と、データキャリア側送受信アンテナ21を介して送信及び受信するための回路(図示省略)や送信信号および受信信号を処理するための回路(図示省略)を備えている。
【0006】
そして、このように構成されたRFID通信システムでは、データキャリア読み取り装置10は、コントローラ12bからの制御信号に基づいて、送信回路12a−1を介して質問信号をデータキャリア読み取り側送受信アンテナ11に出力し、データキャリア読み取り側送受信アンテナ11が質問信号を電磁波として送信する。
データキャリア20は、データキャリア読み取り装置10に近づけることにより、データキャリア読み取り側送受信アンテナ11からの質問電磁波をデータキャリア側送受信アンテナ21で受信し、受信回路22a−2を介して質問信号を抽出しメモリ22bから質問信号の内容に応答するデータを読み出し、送信回路22a−1を介して応答信号をデータキャリア側送受信アンテナ21に出力し、データキャリア側送受信アンテナ21が応答信号を電磁波として送信する。
データキャリア読み取り装置10は、データキャリア20のデータキャリア側送受信アンテナ21から送信された応答電磁波をデータキャリア読み取り側送受信アンテナ11で受信し、受信回路12a−2を介して応答信号をコントローラ12bに送信する。
コントローラ12bは、応答信号から所定の識別情報及びその他の関連情報を抽出し、上位の関連設備13からの入出力命令に応じて情報を送信する。
【0007】
図11は人体通信システムの基本構成の一例を示す説明図で、(a)は全体を示す模式図、(b)は固定送受信手段の概略構成を示すブロック図、(c)は携帯送受信手段の概略構成を示すブロック図である。
図11の人体通信システムは、固定送受信手段30と、携帯送受信手段40を有して構成されている。
固定送受信手段30は、第1の電極対31と第1の送受信機32と第1のコンピュータ33とを備えている。
第1の電極対31は、人体50に接触可能に配置された第1の通信電極31aと人体に非接触に配置された第1の接地電極31bとからなり、夫々第1の送受信機32に接続されている。
第1の送受信機32は、第1のコンピュータ33からの送信データを第1の電極対31に送信し、第1の電極対31を介して電界伝達媒体としての人体50に電界を誘起させる。また、第1の送受信機32は、人体50に誘起された電界を第1の電極対31を介して検出し、受信データに変換して第1のコンピュータ33に送信する。
携帯送受信手段40は、第2の電極対41と第2の送受信機42と第2のコンピュータ43とを備えている。
第2の電極対41は、人体50に接触するように配置された第2の通信電極41aと人体50に非接触に配置された第2の接地電極41bとからなり、夫々第2の送受信機42に接続されている。
第2の送受信機42は、第2のコンピュータ43からの送信データを第2の電極対41に送信し、第2の電極対41を介して電界伝達媒体としての人体50に電界を誘起させる。また、第2の送受信機42は、人体50に誘起された電界を第2の電極対41を介して検出し、受信データに変換して第2のコンピュータ43に送信する。
そして、人体通信システムにおいては、第2の通信電極41aの面を人体50に接触するようにして携帯送受信手段40をユーザが携帯した状態で、人体50を第1の通信電極31aに接触させることにより、夫々の電極対31,41に接続された送受信機32,42を介して第2のコンピュータ41と第1のコンピュータ31が通信を行うことができる。
【0008】
従来、RFID通信システムは、例えば、ドアの開閉を行う入退室管理システムや、ロッカーの施開錠システム等のセキュリティーシステムに用いられてきている。
しかるに、RFID通信システムにおいては、ユーザは、通信を行うために、ICカード等のデータキャリアを取り出し、データキャリア読み取り装置に近接させ、読み取り完了後に収納しなければならず、データキャリアの出し入れが煩雑化するという問題がある。
これに対し、人体通信システムにおいては、ユーザは、携帯送受信手段を携帯していれば、固定送受信手段の電極に身体を接触させるだけで通信でき、携帯送受信手段を出し入れするような煩雑さがない。
【0009】
このため、従来のRFID通信システムを用いたセキュリティーシステム等については、人体通信システムを用いたセキュリティーシステム等へ切り替えることが望まれる。
しかし、セキュリティーシステムによっては、両者を並存させることが望ましい場合がある。
【0010】
例えば、ドアの開閉を行う入退室管理システムにおいて、ユーザのIDの認証を行う側(例えばドア側)に設置されている固定通信端末が、データキャリア読取装置であるICカードリーダの送受信アンテナ、電界通信を行うトランシーバに接続された電極のいずれであっても、ユーザが携帯する携帯通信端末で交信できるように構成すれば、システム切り替えのためのコストや時間を低減できる。
【0011】
また、例えば、ICカードを用いたロッカーの施開錠システムの場合、夫々のロッカーのドアに設けられているデータキャリア読み取り装置に接続するホストコンピュータ等の上位の関連設備にユーザのIDを予め登録、変更、削除等する必要があるが、ロッカーのユーザが頻繁に変動するような使用態様において、これらの登録、変更、削除をその都度、コンピュータの入力装置を介して行うのでは操作が煩雑化する。
しかるに、このような煩雑さを解消すべく、例えば、予めユーザのIDが記憶されたICカードの他にユーザのIDの登録、変更、削除等をデータキャリア読み取り装置に接続されたコンピュータに対して指示する指示用のICカードをデータキャリアとして備えたロッカーの施開錠システムが、例えば、次の非特許文献1に記載されている。
このシステムでは、ユーザのIDを登録、変更等する場合、データキャリア読み取り装置に、指示用のICカードを近づけてデータキャリア読み取り装置に接続されたコンピュータがユーザのIDの入出力を行いうる状態にした後、ユーザのIDが記憶されたICカードを近づけることによって、ユーザのIDの登録、変更等を行うことができるようになっている。
【0012】
非特許文献1に記載のような複数種類のデータキャリアを用いたロッカーの施開錠システムにおいては、全てのICカードを人体通信用の携帯送受信手段に切り替えることがデータキャリアの出し入れの煩雑さを解消するためには望ましいが、全てのICカードを人体通信用の携帯送受信手段に切り替えるのはコスト高となってしまう。
このため、ユーザのIDが記録されたICカードのみを人体通信用の携帯送受信手段に切り替え、その他の指示用のICカードについてはそのまま用いることができるように、ロッカー側に設置されたデータキャリア読み取り装置側の固定通信用端末に人体通信用の送受信手段を兼ね備えさせて、人体通信とRFID通信とを併用できるようにすることが望ましい。
【0013】
従来、RFID通信と人体通信を併用可能にした通信構造としては、例えば、次の特許文献1に記載の電界通信手段をICカードに取り付けた構造が記載されている。
特許文献1に記載の併用構造においては、電界通信用の電極がICカードの送受信アンテナ上に重ねられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−183489号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ウチダオフィスカタログp438〜p439、“SECURAGE”−ICカード対応収納システム−、[online]、平成23年5月18日検索、URL:http://www.uchida.co.jp/osyohin/catalog/ebook/index.html#page=440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、RFID通信用の送受信アンテナの交信領域に金属部材が存在すると、金属材料に渦電流が誘起され、渦電流により生じる磁界(反磁界)が送受信アンテナから発する磁界をキャンセルする方向に働き、送受信アンテナ同士の通信範囲が損なわれてしまう。また、この渦電流による磁界のキャンセル効果は、RFID通信用の送受信アンテナの交信領域に重なる金属材料の面積が大きいほど、大きくなる。
一方、人体通信用の電極は、安定した人体通信を行うことができるように、人体との接触面積を、例えば、人の掌の大きさ程度、確保する必要がある。
【0017】
しかるに、例えば、特許文献1に記載のように、ICカードに電界通信手段を取り付けた場合、RFID通信用の送受信アンテナ上における電界通信用の電極が重なった領域において、RFID通信用の送受信アンテナ同士の通信範囲が大きく損なわれてしまう。
しかし、RFID通信用の送受信アンテナ同士の通信範囲を損ねないように、電界通信用の電極を小型化すると、人体との接触面積が小さくなりすぎて、安定した人体通信を行うことが困難になる。
また、RFID通信用の送受信アンテナと重ならない位置に、安定した人体通信を行うことができる相当程度の大きさの電界通信用の電極を備えたのでは、全体の構造が大型化してしまう。
【0018】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、データキャリアやデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、RFIDの通信範囲が極力損なわれることなく、人体通信を高精度に行うことの可能なRFID通信・人体通信併用通信構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明によるRFID通信・人体通信併用通信構造は、質問情報を質問電磁波として送信するとともに応答電磁波を受信する第1の送受信アンテナを有する固定通信端末と、前記質問電磁波を受信するとともに応答情報を前記応答電磁波として送信する第2の送受信アンテナとを有する携帯通信端末を用いて交信を行う非接触データキャリア読み取りシステムと、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体に誘起させるとともにこの誘起した電界を検出して情報の送受信を行う第1の送受信器と前記第1の送受信器に接続される第1の電極対を有する固定通信端末と、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体に誘起させるとともにこの誘起した電界を検出して情報の送受信を行う第2の送受信器と前記第2の送受信器に接続される第2の電極対を有する携帯通信端末を用いて交信を行う人体通信システムとに併用されるRFID通信・人体通信併用通信構造であって、前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの固定通信端末同士、該非接触データキャリア読み取りシステム及び該人体通信システムの携帯通信端末同士の少なくともいずれかにおける、前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置され、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、対応する送受信アンテナの一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなり、前記複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ所定形状に形成されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、少なくとも一つの櫛型部を有するのが好ましい。
【0021】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つ櫛型形状に形成されているのが好ましい。
【0022】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、二つの前記櫛型部を有し、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つ串刺し形状に形成されているのが好ましい。
【0023】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して45°〜90°の所定角度で交差する複数の交差部を有するのが好ましい。
【0024】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して45°で交差する複数の交差部を有するのが好ましい。
【0025】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して垂直に交差する複数の交差部を有するのが好ましい。
【0026】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つ波状に形成されているのが好ましい。
【0027】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、少なくとも一つの前記櫛型部と、一端が前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して垂直に交差し他端が前記櫛型部と接続する複数の交差部とを有し、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つのが好ましい。
【0028】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、二つの前記櫛型部を有してなる串刺し形状部と、一端が前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して垂直に交差し他端が前記串刺し形状部と接続する複数の交差部とを有し、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つのが好ましい。
【0029】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの固定通信端末同士における前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置されているのが好ましい。
【0030】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの携帯通信端末同士における前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置されているのが好ましい。
【0031】
また、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造においては、前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの固定通信端末同士、該非接触データキャリア読み取りシステム及び該人体通信システムの携帯通信端末同士の夫々における前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、データキャリア又はデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、RFIDの通信範囲が極力損なわれることなく、人体通信を高精度に行うことの可能なRFID通信・人体通信併用通信構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナの構成を示す図、(b)は(a)の送受信アンテナに重ねる人体通信用の電極の構成を示す図、(c)は(a)の送受信アンテナに(b)の人体通信用の電極が重なった状態を示す図である。
【図2】本発明の実施例2にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる人体通信用の通信電極の構成を示す図、(b)は送受信アンテナに重ねる人体通信用の接地電極の構成を示す図、(c)は送受信アンテナに(a)の人体通信用の通信電極が重なった状態を示す図である。
【図3】図2の第1変形例にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる人体通信用の通信電極の構成を示す図、(b)は送受信アンテナに重ねる人体通信用の接地電極の構成を示す図、(c)は送受信アンテナに(a)の人体通信用の通信電極が重なった状態を示す図である。
【図4】図2の第2変形例にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる人体通信用の通信電極の構成を示す図、(b)は送受信アンテナに重ねる人体通信用の接地電極の構成を示す図、(c)は送受信アンテナに(a)の人体通信用の通信電極が重なった状態を示す図である。
【図5】本発明の実施例3にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造においてRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が重なった状態を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例4にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造においてRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が重なった状態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例5にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造においてRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が重なった状態を示す説明図である。
【図8】本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造を用いたドアの施開錠システムの一構成例を示す説明図で、(a)は人体通信によるドアの施開錠を行う場合の模式図、(b)はRFID通信によるドアの施開錠を行う場合の模式図、(c)はRFID通信・人体通信併用通信構造を備えた固定通信端末の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造を用いたロッカーの施開錠システムの一構成例を示す説明図で、(a)は外観を示す図、(b)はRFID通信・人体通信併用通信構造を備えた固定通信端末の構成を示すとともにRFID通信によるロッカーの施開錠を行う場合の模式図、(c)は人体通信によるロッカーの施開錠を行う場合の模式図である。
【図10】RFID通信システムの基本構成の一例を示すブロック図である。
【図11】人体通信システムの基本構成の一例を示す説明図で、(a)は全体を示す模式図、(b)は固定送受信手段の概略構成を示すブロック図、(c)は携帯送受信手段の概略構成を示すブロック図である。
【図12】RFID通信システムにおける通常の通信状態での送受信アンテナから発する磁界の一例を模式的に示す説明図である。
【図13】RFID通信において送受信アンテナの交信領域に導電性材料が存在する通信状態での送受信アンテナから発する磁界の一例を模式的に示す説明図で、データキャリア側及びデータキャリア読み取り側の送受信アンテナの間においてデータキャリア側送受信アンテナに重なるように導電性材料が存在する場合における磁界を示す図である。
【図14】RFID通信用の送受信アンテナに重ねる電極の面積及び形状と渦電流により生ずる反磁界の影響を受ける領域を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナの上に平板状の電極を重ねた例を示す図、(b)はRFID通信用の送受信アンテナの上にE型の電極を重ねた例を示す図、(c)はRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対し90度で交差する複数の交差部を有する櫛形状の電極を重ねた例を示す図、(d)はRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対し45度で交差する複数の交差部を有する2つの櫛型部を持つ串刺し形状の電極を重ねた例を示す図、(e)はRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対し45度で交差する複数の交差部を有する網状の電極を重ねた例を示す図である。
【図15】RFID通信用の送受信アンテナを構成する導線上に交差角度を夫々変えて金属片を重ねた状態を示す該略図で、(a)は0度(即ち、交差しない)の状態を示す図、(b)は交差角度が15度の状態を示す図、(c)は交差角度が30度の状態を示す図、(d)は交差角度が45度の状態を示す図、(e)は交差角度が60度の状態を示す図、(f)は交差角度が75度の状態を示す図、(g)は交差角度が90度の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施形態の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
図12はRFID通信における通常の通信状態での送受信アンテナから発する磁界の一例を模式的に示す説明図、図13はRFID通信において送受信アンテナの交信領域に導電性材料が存在する通信状態での送受信アンテナから発する磁界の一例を模式的に示す説明図で、データキャリア側及びデータキャリア読み取り側の送受信アンテナの間においてデータキャリア側の送受信アンテナに重なるように導電性材料が存在する場合における磁界を示す図である。
【0035】
通常の通信状態では、図12に示すように、データキャリア読み取り側(リーダライタ側)の送受信アンテナから発する磁束ループが、データキャリア側(ICカード側)の送受信アンテナを貫通する。すると、データキャリア側の送受信アンテナに磁界が発生して電流が流れる。
これに対し、図13に示すように、データキャリア側(ICカード側)の送受信アンテナの交信領域に金属等の導電体材料が重なるように存在する場合、データキャリア読み取り側(リーダライタ側)の送受信アンテナから発する磁界により導電体材料から渦電流が誘起され、渦電流により生じる磁界(反磁界)がデータキャリア読み取り側の送受信アンテナから発する磁界をキャンセルする方向に働き、データキャリア側送受信アンテナを磁束ループが貫通し難くなる。その結果、データキャリア側送受信アンテナからは磁界が発生し難くなり、送受信アンテナの磁界が弱められて交信が阻害され易くなってしまう。
この渦電流による磁界のキャンセル効果は、RFID通信用の送受信アンテナの交信領域に重なる電極の面積が大きいほど、また、送受信アンテナを構成する導線に重なる電極の角度が小さいほど(即ち、平行に近いほど)大きくなる。
【0036】
図14はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる電極の面積及び形状と渦電流により生ずる反磁界の影響を受ける領域を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナの上に平板状の電極を重ねた例を示す図、(b)はRFID通信用の送受信アンテナの上にE型の電極を重ねた例を示す図、(c)はRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対し90度で交差する複数の交差部を有する櫛形状の電極を重ねた例を示す図、(d)はRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対し45度で交差する複数の交差部を有する2つの櫛型部を持つ串刺し形状の電極を重ねた例を示す図、(e)はRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対し45度で交差する複数の交差部を有する網状の電極を重ねた例を示す図である。図14中、楕円及び円の部分は、電極により発生する渦電流により送受信アンテナの磁界がキャンセルされる効果が大きい領域を示している。
【0037】
送受信アンテナ1は、矩形ループ状に形成された導線1aで構成されている。送受信アンテナ1の導線1aに電流が流れると導線1aを中心として磁界が生じる。ここで、導電性材料を送受信アンテナ1の交信領域に近づけると、導電性材料が送受信アンテナ1から導線1aを中心として発する磁界により渦電流を誘起され、渦電流により送受信アンテナ1から発する磁界をキャンセルする方向に働く磁界(反磁界)が生ずる。
【0038】
図14(a)の例の場合、平板状の電極2が、RFID通信用の送受信アンテナ1上及び送受信アンテナ1の内側領域全体を覆うように重なっており、RFID通信用の送受信アンテナ1の交信領域に重なる電極2の面積が大きい。このため、渦電流による磁界のキャンセル効果が非常に大きくなる。
【0039】
図14(b)の例の場合、E型の電極2’が、RFID通信用の送受信アンテナ1の内側領域において空隙をつくっている。また、RFID通信用の送受信アンテナ1の交信領域に重なるE型の電極2’の面積は、図14(a)の例の平板状の電極2に比べれば小さいが、送受信アンテナ1の三辺の幅方向を大きく覆うように重なる部分の面積が非常に大きい。このため、渦電流による磁界のキャンセル効果が大きくなる。
【0040】
これに対し、図14(c)の例の場合、RFID通信用の送受信アンテナ1を構成する導線1aに対し90度で交差する複数の交差部を有する櫛形状の電極2”が、送受信アンテナ1の内側領域において空隙をつくっている。また、電極2”は、複数の交差部が導線1aと点状に重なるとともに、一部が導線1aと並列に重なるが、電極2”を形成する金属片が送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅であるため、RFID通信用の送受信アンテナ1の交信領域に重なる面積は、図14(a)、図14(b)に示した平板状の電極2や、E型の電極2’に比べて非常に小さくなっている。
【0041】
また、図14(d)の例の場合、RFID通信用の送受信アンテナ1を構成する導線1aに対し45度で交差する複数の交差部を有する2つの櫛型部を持つ串刺し形状の電極2”’が、導線1aの内側領域において空隙をつくっている。また、電極2”’は、複数の交差部が導線1aと点状に重なるとともに、電極2”’を形成する金属片が送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅であるため、RFID通信用の送受信アンテナ1の交信領域に重なる面積は、図14(a)、図14(b)に示した平板状の電極2や、E型の電極2’に比べて非常に小さくなっている。
【0042】
図14(e)の例の場合、RFID通信用の送受信アンテナ1を構成する導線1aに対し45度で交差する複数の交差部を有する網状の電極2””が、導線1aの内側領域において空隙をつくっている。また、電極2””は、複数の交差部が導線1aと点状に重なるとともに、電極2””を形成する金属片が送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅であるため、RFID通信用の送受信アンテナ1の交信領域に重なる面積は、図14(a)、図14(b)に示した平板状の電極2や、E型の電極2’に比べて非常に小さくなっている。
しかし、図14(e)の例のように電極を網状に形成した場合、多数の閉ループが形成され、閉ループにより誘導電流が生じ、それに伴う誘導磁界により送受信アンテナの磁界が弱められて交信が阻害され易くなる。
【0043】
しかるに、本件出願人は、RFID通信用の送受信アンテナに重なる金属材料の面積、形状、交差角度、閉ループの有無と、渦電流による交信の阻害量との関係について、次のような実験を行った。
【0044】
(実験1)RFIDループアンテナ上に重ねる電極の形態を異ならせた場合の電波強度及び交信距離の測定
矩形ループ状であって一辺の幅が2mmのRFID通信用のデータキャリア読み取り装置(ICカード読み取り装置)の送受信アンテナ上に、(1)電極(金属材料)を重ねない場合、(2)図14(a)に示すような平板状の電極を重ねた場合、(3)図14(b)に示すようなE型の電極を重ねた場合、(4)図14(d)に示すような櫛形状(複数の交差部が90度で交差)の電極を重ねた場合、(5)図14(c)に示すような串刺し形状(複数の交差部が45度で交差)の電極を重ねた場合、(6)図14(e)に示すような網状の電極を重ねた場合、の夫々について、電波強度、交信距離を計測した。なお、電波強度の計測に際しては、電波強度を測定する治具をRFID通信用の送受信アンテナ上20mmの位置に設定した。また、交信距離の計測に際しては、上記(1)〜(6)の夫々の状態のRFID通信用の送受信アンテナを備えたデータキャリア読み取り装置に、矩形ループ状のRFID通信用の送受信アンテナを備えたデータキャリア(ICカード)を対面させて交信可能となった最も遠い距離を測定した。
表1は上記夫々の場合における、データキャリア読み取り装置の電波強度、データキャリア読み取り装置とデータキャリアとの間での交信可能な範囲(距離)を示す表である。
【0045】
表1

【0046】
(実験2)RFIDループアンテナ上に重ねる金属片の角度を異ならせた場合の電波強度の測定
矩形ループ状であって一辺の幅が2mmのRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線上に、送受信アンテナの一辺の幅(2mm)よりも太幅である幅10mmの金属片を、交差角度を(1)0度(交差せず、送受信アンテナの一辺を幅方向が隠れるように大きく覆う状態)、(2)15度、(3)30度、(4)45度、(5)60度、(6)75度、(7)90度に夫々変えて重ねた場合の夫々について、電波強度を計測した。なお、電波強度の計測に際しては、電波強度を測定する治具をRFID通信用の送受信アンテナ上20mmの位置に設定した。
図15(a)〜(g)は夫々の場合におけるRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線に対する金属片の交差状態を示す該略説明図である。
【0047】
表2は金属片が上記夫々の交差角度でデータキャリア読み取り装置の送受信アンテナを構成する導線に重なっている場合におけるデータキャリア読み取り装置の電波強度を示す表である。
表2

※RFIDループアンテナ上に電極用金属片が存在しない状態での電波強度は66Vpp
【0048】
(実験3)RFIDループアンテナに重ねる電極用金属片の太さを異ならせた場合の電波強度の測定
矩形ループ状であって一辺の幅が2mmのRFID通信用の送受信アンテナを構成する導線上に、(1)幅2.5mm×長さ60mm、(2)幅5mm×長さ60mm、(3)幅10mm×長さ60mmの金属片を、交差角度を(1)0度(交差しない状態)、(2)45度、(5)90度に夫々変えて重ねた場合の夫々について、電波強度を計測した。なお、電波強度の計測に際しては、電界強度を測定する治具をRFID通信用の送受信アンテナ上20mmの位置に設定した。
【0049】
表3は金属片が上記夫々の太さ及び交差角度でデータキャリア読み取り装置の送受信アンテナを構成する導線に重なっている場合におけるデータキャリア読み取り装置の電波強度を示す表である。
表3

※RFIDループアンテナ上に電極用金属片が存在しない状態での電波強度は65.2Vpp
【0050】
表1に示すように、送受信アンテナ上に図14(b)に示すようなE型の電極を重ねた場合の電波強度は32.4Vppで、電極(金属材料)を重ねない場合の電波強度(66Vpp)のほぼ半分のパワーに減った。
これに対し、送受信アンテナ上に図14(c)、図14(d)に示すような櫛型形状、串刺し形状の電極を重ねた場合の電波強度は夫々、51.6Vpp、52.8Vppで、電極(金属材料)を重ねない場合の電波強度(66Vpp)の約80%のパワーを維持できた。
なお、図14(c)に示すような櫛形状の電極を重ねた場合の電波強度が、導線に並列に重なる部分が多いにもかかわらず、図14(d)に示すような串刺し形状の電極を重ねた場合の電波強度と比較してそれ程の差が生じないのは、電極を構成する金属片の幅が送受信アンテナの一辺の幅と略同程度であるため、その並列に重なる領域において送受信アンテナの一辺が電極2”’により幅方向に大きくは覆われず、渦電流の影響が少なくなるからと考えられる。
また、図14(e)に示す網状の電極を重ねた場合の電波強度は、34.8Vppとなり、同じ電極面上で閉ループが生じるために電波強度が弱くなることが実証された。
【0051】
また、表2に示すように、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅に比べて太い場合には、RFIDループアンテナを構成する導線上を金属片が交差する角度が45度〜90度での電波強度に変化が見られなかった。また、交差角度が0度のときと90度のときとでは、電波強度に10Vpp程度の差が生じた。
【0052】
また、表3に示すように、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅と比較して略同程度及び2.5倍程度の場合には、RFIDループアンテナを構成する導線上を交差する角度が0度、45度、90度の夫々の場合の電波強度に大きな変化は見られなかった。但し、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅と比較して2.5倍程度の場合は、略同程度の場合よりも3.2〜5.6Vpp程度、電波強度が弱くなった。これに対し、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅と比較して5倍程度の場合には、交差角度が0度のときと、45度及び90度のときとでは、電波強度に10Vpp程度の差が生じた。また、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅と比較して5倍程度の場合は、略同程度の場合よりも7.2〜18Vpp程度、電波強度が弱くなった。これらのことから、金属片が細いものは、交差角度の違いによる影響は受けず、金属片が太いものは、交差角度が90度に近いものほど、電波強度も強くなる傾向にあるといえる。また、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅と比較して略同程度のものは、渦電流の影響が極めて少なく電波強度を強く維持でき、金属片の幅がRFIDループアンテナの一辺の幅よりも太くなるにつれて、渦電流の影響が大きくなり電波強度が弱くなることが実証できた。
【0053】
ところで、RFID通信用の送受信アンテナは、図14(a)に示したように、略矩形のループ形状に形成されている。また、人体通信用の電極は、通信精度を確保するためには、例えば掌等、人体と接触可能なある程度の面積を持つことが必要である。
【0054】
これらの実験結果及び考察から、本件出願人は、RFID通信用の送受信アンテナと重なるように対向配置される電極対を構成する夫々の電極が、対応する送受信アンテナの一辺の幅と略同程度の幅の金属片からなり、複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ所定形状に形成されている本発明の通信構造を想到するに至った。
【0055】
本発明によれば、非接触データキャリア読み取りシステムの送受信端末と重なるように配置される電極対を構成する夫々の電極を、対応する送受信アンテナの一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなる所定形状に形成したので、最も強い磁界のキャンセル効果を生じ易い送受信アンテナの導線近傍における電極用の金属片から誘起される渦電流の影響を極力抑えることができる。また、本発明によれば、上記夫々の電極を、複数の金属片を介して全ての空隙が開く所定形状に形成したので、複数の空隙から送受信アンテナの磁界を貫通させることができ、送受信アンテナの導線の内側領域における電極用の金属片から誘起される渦電流の影響も極力抑えることができ、しかも、閉ループを生じないため、誘導電流の影響を受けずに済む。
さらに、本発明によれば、上記夫々の電極を、全体で掌と接触可能な面積を持つ所定形状に形成したので、人体通信における通信精度を確保することができる。
このため、本発明によれば、データキャリアやデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、RFID通信における電磁誘導方式による交信範囲に与える影響を極力小さくし、且つ、人体通信の精度を高めることができる。
【0056】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
実施例1
図1は本発明の実施例1にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナの構成を示す図、(b)は(a)の送受信アンテナに重ねる人体通信用の電極の構成を示す図、(c)は(a)の送受信アンテナに(b)の人体通信用の電極が重なった状態を示す図である。なお、説明の便宜上、図1においては人体通信用の電極は通信電極、接地電極のうちの一方のみを示してある。
【0057】
なお、本発明の各実施例のRFID通信・人体通信併用通信構造は、非接触データキャリア読み取りシステム及び人体通信システムの固定通信端末同士、非接触データキャリア読み取りシステム及び該人体通信システムの携帯通信端末同士の少なくともいずれかにおける送受信アンテナと電極対とが重なった状態で配置されている。送受信アンテナに重なる電極対以外の部分の構成は、図10や図11等で示した非接触データキャリア読み取りシステム及び人体通信システムの構成、その他の従来技術における公知の構成が採用されている。
【0058】
実施例1のRFID通信・人体通信併用通信では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図1(b)、図1(c)に示すように、送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなる2つの櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)を有し、複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ串刺し形状に形成されている。
櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)は、導線1aに対して45°で交差する複数の交差部2a11〜n(2b11〜n)を有している。
【0059】
実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)が、送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなる2つの櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)を有する串刺し形状に形成されているので、最も強い磁界のキャンセル効果を生じ易い送受信アンテナ1の導線1a近傍における電極用の金属片から誘起される渦電流の影響を極力抑えることができる。また、夫々の電極2a(2b)が、複数の金属片を介して全ての空隙が開く串刺し形状に形成されているので、複数の空隙から送受信アンテナ1の磁界を貫通させることができ、送受信アンテナ1の導線1aの内側領域における電極用の金属片から誘起される渦電流の影響も極力抑えることができ、しかも、閉ループを生じないため、誘導電流の影響を受けずに済む。さらに、夫々の電極2a(2b)が、全体で掌と接触可能な面積を持つ串刺し形状に形成されているので、人体通信における通信精度を確保することができる。
このため、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、データキャリアやデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、RFID通信における電磁誘導方式による交信範囲に与える影響を極力小さくし、且つ、人体通信の精度を高めることができる。
【0060】
なお、通信電極2aと接地電極2bとは、送受信アンテナ1に対し、互いが同じ向き、線対称となる向きのいずれの向きになるように重ねても構わない。
【0061】
実施例2
図2は本発明の実施例2にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる人体通信用の通信電極の構成を示す図、(b)は送受信アンテナに重ねる人体通信用の接地電極の構成を示す図、(c)は送受信アンテナに(a)の人体通信用の通信電極が重なった状態を示す図である。RFID通信用の送受信アンテナの構成は図1(a)に示した構成と同じである。なお、説明の便宜上、図2においては送受信アンテナに人体通信用の接地電極が重なった状態についての図示を省略する。
【0062】
実施例2のRFID通信・人体通信併用通信では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図2(a)〜図2(c)に示すように、送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなる1の櫛型部2a1(2b1)を有し、複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ櫛形状に形成されている。
櫛型部2a1(2b1)は、導線1aに対して垂直に交差する複数の交差部2a11〜n(2b11〜n)を有している。
その他の構成は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0063】
実施例2のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)が、送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなる1つの櫛型部2a1(2b1)を有する櫛形状に形成されているので、櫛形状の通信電極2a(接地電極2b)の一部2a1a,2a1b,2a1c(2b1a,2b1b,2b1c)が導線1aと並列に重なっているものの、その並列に重なる領域において送受信アンテナの一辺が通信電極2a(接地電極2b)により幅方向に大きくは覆われず、並列に重なる領域における渦電流の影響を極力抑えることができる。
その他の作用効果は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0064】
第1変形例
図3は図2の第1変形例にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる人体通信用の通信電極の構成を示す図、(b)は送受信アンテナに重ねる人体通信用の接地電極の構成を示す図、(c)は送受信アンテナに(a)の人体通信用の通信電極が重なった状態を示す図である。RFID通信用の送受信アンテナの構成は図1(a)に示した構成と同じである。なお、説明の便宜上、図3においては送受信アンテナに人体通信用の接地電極が重なった状態についての図示を省略する。
【0065】
第1変形例のRFID通信・人体通信併用通信構造では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図3(a)〜図3(c)に示すように、図2の例の電極における導線1aと並列に重なる一部2a1a,2a1b(2b1a,2b1b)を備えず、導線1aと並列に重なる部分が2a1c(2b1c)のみの櫛形状に形成されている。その他の構成は、図2のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0066】
第1変形例のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、図2の例と比べて導線1aと並列に重なる面積が減るので、渦電流の影響をより抑えることができる。
その他の作用効果は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0067】
第2変形例
図4は図2の第2変形例にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造の要部構成を示す説明図で、(a)はRFID通信用の送受信アンテナに重ねる人体通信用の通信電極の構成を示す図、(b)は送受信アンテナに重ねる人体通信用の接地電極の構成を示す図、(c)は送受信アンテナに(a)の人体通信用の通信電極が重なった状態を示す図である。RFID通信用の送受信アンテナの構成は図1(a)に示した構成と同じである。なお、説明の便宜上、図3においては送受信アンテナに人体通信用の接地電極が重なった状態についての図示を省略する。
【0068】
第2変形例のRFID通信・人体通信併用通信構造では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図4(a)〜図4(c)に示すように、送受信アンテナ1を構成する導線1aの幅よりも細幅の複数の金属片からなる2つの櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)を有し、複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ串刺し形状に形成されている。
櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)は、導線1aに対して垂直に交差する複数の交差部2a11〜n,2a1’1,2,2a21〜n(2b11〜n,2b1’1,2,2b21〜n)を有し、また、導線1aと並列に重なる部分を備えない。その他の構成は、図2のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0069】
第2変形例のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、導線1aと並列に重なる領域が存在せず、導線1aと重なる部分が導線1aに対して垂直に交差する複数の交差部2a11〜n,2a1’1,2,2a21〜n(2b11〜n,2b1’1,2,2b21〜n)のみであるので、渦電流の影響を実施例1よりも抑えることができる。
その他の作用効果は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0070】
実施例3
図5は本発明の実施例3にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造においてRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が重なった状態を示す説明図である。RFID通信用の送受信アンテナの構成は図1(a)に示した構成と同じである。なお、説明の便宜上、図5においても人体通信用の電極は通信電極、接地電極のうちの一方のみを示してある。
【0071】
実施例3のRFID通信・人体通信併用通信構造では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図5に示すように、送受信アンテナ1の一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなり、複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ波状に形成されている。
その他の構成は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0072】
実施例3のRFID通信・人体通信併用通信構造によっても、実施例1と同様、データキャリアやデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、RFID通信における電磁誘導方式による交信範囲に与える影響を極力小さくし、且つ、人体通信の精度を高めることができる。
その他の作用効果は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0073】
実施例4
図6は本発明の実施例4にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造においてRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が重なった状態を示す説明図である。RFID通信用の送受信アンテナの構成は図1(a)に示した構成と同じである。なお、説明の便宜上、図6においても人体通信用の電極は通信電極、接地電極のうちの一方のみを示してある。
【0074】
実施例4のRFID通信・人体通信併用通信構造では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図6に示すように、1つの櫛型部2a1(2b1)と、一端が導線1aに対して垂直に交差し他端が櫛型部2a1(2b1)と接続する複数の交差部2c〜2cとを有し、全体で送受信アンテナ1の基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つように形成されている。
その他の構成は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0075】
実施例4のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、送受信アンテナ1を構成する導線1aの内側領域に櫛型部2a1(2b1)を備えるとともに、導線1a上の領域に一端が導線1aに対して垂直に交差し他端が櫛型部2a1(2b1)と接続する複数の交差部2c〜2cを備えたので、掌と接触可能な面積を大きく確保しながら、渦電流の影響を極力抑えることができる。
その他の作用効果は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0076】
実施例5
図7は本発明の実施例5にかかるRFID通信・人体通信併用通信構造においてRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が重なった状態を示す説明図である。RFID通信用の送受信アンテナの構成は図1(a)に示した構成と同じである。なお、説明の便宜上、図7においても人体通信用の電極は通信電極、接地電極のうちの一方のみを示してある。
【0077】
実施例5のRFID通信・人体通信併用通信構造では、非接触データキャリア読み取りシステムにおける送受信アンテナ1と重なるように対向配置される電極対2を構成する夫々の電極(通信電極2a、接地電極2b)は、図7に示すように、2つの櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)と、一端が導線1aに対して垂直に交差し他端が櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)と接続する複数の交差部2c1〜2c1,2c2〜2c2とを有し、全体で送受信アンテナ1の基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つように形成されている。
その他の構成は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0078】
実施例5のRFID通信・人体通信併用通信構造によれば、送受信アンテナ1を構成する導線1aの内側領域に櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)を備えるとともに、導線1a上の領域に一端が導線1aに対して垂直に交差し他端が櫛型部2a1,2a2(2b1,2b2)と接続する複数の交差部2c1〜2c1,2c2〜2c2を備えたので、実施例4と同様、掌と接触可能な面積を大きく確保しながら、渦電流の影響を極力抑えることができる。
その他の作用効果は、実施例1のRFID通信・人体通信併用通信構造と略同じである。
【0079】
次に、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造を用いた通信システムの例を、図面を用いて説明する。
図8は本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造を用いたドアの施開錠システムの一構成例を示す説明図で、(a)は人体通信によるドアの施開錠を行う場合の模式図、(b)はRFID通信によるドアの施開錠を行う場合の模式図、(c)はRFID通信・人体通信併用通信構造を備えた固定通信端末の構成を示すブロック図である。なお、図10に示したRFID通信システム、図11に示した人体通信システムの夫々における各部材と構成が同じものが同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0080】
図8の例のドアの施開錠システムでは、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造は、非接触データキャリア読み取りシステムと人体通信システムとが重畳した携帯通信端末40’に設けられている。
携帯通信端末40’は、図8(c)に示すように、非接触データキャリア読み取りシステムにおいてデータキャリアを構成するデータキャリア側送受信アンテナ1と、ICチップ22と、人体通信システムにおいて携帯送受信手段を構成する電極対2(通信電極2a、接地電極2b)と、第2の送受信機42と第2のコンピュータ43とを有して構成されている。
データキャリア側送受信アンテナ1は、図10に示したデータキャリア側送受信アンテナ21と同様に質問電磁波を受信すると共に応答電磁波を送信する。
電極対2(通信電極2a、接地電極2b)は、夫々、図11に示した人体50に接触するように配置された第2の通信電極41aと人体50に非接触に配置された第2の接地電極41bに相当し、夫々第2の送受信機42に接続されている。
データキャリア側送受信アンテナ1と電極対2(通信電極2a、接地電極2b)は、例えば、実施例1〜5のいずれかの態様で重なるように対向配置されている。
ICチップ22、第2の送受信機42、第2のコンピュータ43、その他図8に示すデータキャリア読み取り装置10、固定送受信手段30は、夫々図10ないし図11に示したものと同様に構成されている。
【0081】
このように構成されたRFID通信・人体通信併用通信構造を用いたドアの施開錠システムでは、固定通信端末が、図8(a)に示すように固定送受信手段30で構成されている場合、ユーザは、携帯通信端末40’を、通信電極2aの面を人体50に接触するようにして携帯した状態で、人体50を第1の通信電極31aに接触させる。これにより、人体50が電界伝達媒体となって、夫々の電極対31,2に接続された送受信機32,42を介して第2のコンピュータ43と第1のコンピュータ33とが通信を行うことができるようになる。
第2の送受信機42は、第2のコンピュータ43に記憶されていた所定の識別情報を送信データとして電極対2に送信し、電極対2を介して電界伝達媒体としての人体50に電界を誘起させる。第1の送受信機32は、人体50に誘起された電界を第1の電極対31を介して検出し、受信データとして所定の識別情報に変換して第1のコンピュータ33に送信する。
第1のコンピュータ33は、予め記憶しておいた認証データを所定の識別情報と符合させる。そして、認証データと所定の識別情報が一致する場合、ドアを開錠し、一致しない場合、ドアを施錠した状態を保持する。
【0082】
また、固定通信端末が、図8(b)に示すようにデータキャリア読み取り装置10で構成されている場合、ユーザは、携帯通信端末40’を、データキャリア読み取り側送受信アンテナ11に近づける。これにより、データキャリア側送受信アンテナ1とデータキャリア読み取り側送受信アンテナ11との間で磁界が誘起され、夫々の送受信アンテナ11,1に接続された読み取り駆動制御部12、ICチップ22を介して通信を行うことができる。
データキャリア側送受信アンテナ1は、データキャリア読み取り側送受信アンテナ11からの質問電磁波を受信する。ICチップ22は、質問信号を抽出すると共に質問信号の内容に応答する所定の識別情報を応答信号としてデータキャリア側送受信アンテナ1に出力する。データキャリア側送受信アンテナ1は、応答信号を電磁波として送信する。
データキャリア読み取り装置10では、データキャリア側送受信アンテナ1から送信された応答電磁波をデータキャリア読み取り側送受信アンテナ11で受信し、読み取り駆動制御部が、応答信号から所定の識別情報を抽出し、ホストコンピュータ等の上位の関連設備13に送信する。
関連設備13は、予め記憶しておいた認証データを所定の識別情報と符合させる。そして、認証データと所定の識別情報が一致する場合、ドアを開錠し、一致しない場合、ドアを施錠した状態を保持する。
【0083】
図9はRFID通信・人体通信併用通信構造を用いたロッカーの施開錠システムの一構成例を示す説明図で、(a)は外観を示す図、(b)はRFID通信・人体通信併用通信構造を備えた固定通信端末の構成を示すとともにRFID通信によるロッカーの施開錠を行う場合の模式図、(c)は人体通信によるロッカーの施開錠を行う場合の模式図である。なお、図10に示したRFID通信システム、図11に示した人体通信システムの夫々における各部材と構成が同じものが同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0084】
図9の例のロッカーの施開錠システムでは、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造は、非接触データキャリア読み取りシステムと人体通信システムとが重畳した固定通信端末30’に設けられている。
固定通信端末30’は、図9(b)、図9(c)に示すように、非接触データキャリア読み取りシステムにおいてデータキャリア読み取り装置を構成するデータキャリア読み取り側送受信アンテナ1と、読み取り駆動制御部12と、人体通信システムにおいて固定送受信手段を構成する電極対2(通信電極2a、接地電極2b)と、第1の送受信機32と第1のコンピュータ33とを有して構成されている。
データキャリア読み取り側送受信アンテナ1は、図10に示したデータキャリア読み取り側送受信アンテナ11と同様に質問電磁波を送信すると共に応答電磁波を受信する。
電極対2(通信電極2a、接地電極2b)は、夫々、図11に示した人体50に接触するように配置された第1の通信電極31aと人体50に非接触に配置された第1の接地電極31bに相当し、夫々第1の送受信機32に接続されている。
データキャリア読み取り側送受信アンテナ1と電極対2(通信電極2a、接地電極2b)は、例えば、実施例1〜5のいずれかの態様で重なるように対向配置されている。
読み取り駆動制御部12、第1の送受信機32、第1のコンピュータ33、その他図9に示すデータキャリア20、携帯送受信手段40は、夫々図10ないし図11に示したものと同様に構成されている。なお、携帯送受信手段40の第2のコンピュータ43にはユーザのIDが記憶されている。また、データキャリア20に備わるICチップ22には、第1のコンピュータ33に対しユーザのIDの登録、削除、変更等を指示するための指示データが記憶されている。また、データキャリア20は、指示データの種類ごとに複数枚準備されている。
【0085】
このように構成されたRFID通信・人体通信併用通信構造を用いたロッカーの施開錠システムでは、ユーザのIDを登録、変更等する場合、図9(b)に示すように、ユーザは、所定の指示データ(ここでは、登録を指示するデータ)がICチップ22に記憶されているデータキャリア20を、データキャリア読み取り側送受信アンテナ1に近づける。これにより、データキャリア側送受信アンテナ21とデータキャリア読み取り側送受信アンテナ1との間で磁界が誘起され、夫々の送受信アンテナ21,1に接続された読み取り駆動制御部12、ICチップ22を介して通信を行うことができる。
データキャリア側送受信アンテナ21は、データキャリア読み取り側送受信アンテナ1からの質問電磁波を受信する。ICチップ22は、質問信号を抽出すると共に質問信号の内容に応答する所定の指示データを応答信号としてデータキャリア側送受信アンテナ21に出力する。データキャリア側送受信アンテナ21は、応答信号を電磁波として送信する。
データキャリア読み取り側送受信アンテナ1は、データキャリア側送受信アンテナ21から送信された応答電磁波を受信する。読み取り駆動制御部12は、応答信号から所定の指示データを抽出し、第1のコンピュータ33に送信する。第1のコンピュータ33は、指示データに応じて、所定の処理(ここではIDの登録)を行うように待機する。
【0086】
次いで、図9(c)に示すように、ユーザは、携帯通信端末40’を、通信電極41aの面を人体50に接触するようにして携帯した状態で、人体50を第1の通信電極2aに接触させる。これにより、人体50が電界伝達媒体となって、夫々の電極対41,2に接続された送受信機42,32を介して第2のコンピュータ43と第1のコンピュータ33とが通信を行うことができる。
第2の送受信機42は、第2のコンピュータ43に記憶されていたユーザのIDを送信データとして第2の電極対41に送信し、第2の電極対41を介して電界伝達媒体としての人体50に電界を誘起させる。第1の送受信機32は、人体50に誘起された電界を、電極対2を介して検出し、受信データとしてユーザのIDに変換して第1のコンピュータ33に送信する。
第1のコンピュータ33は、指示データに応じて、ユーザのIDについての登録、変更、削除処理(ここではユーザのIDの登録処理)を行う。
【0087】
第1のコンピュータ33にユーザのIDが登録された後に、図9(c)に示すように、ユーザが、携帯通信端末40’を、通信電極41aの面を人体50に接触するようにして携帯した状態で、人体50を第1の通信電極2aに接触させると、同様に、人体50が電界伝達媒体となって、夫々の電極対41,2に接続された送受信機42,32を介して第2のコンピュータ43と第1のコンピュータ33とが通信を行う。
第2の送受信機42は、第2のコンピュータ43に記憶されていたユーザのIDを送信データとして第2の電極対41に送信し、第2の電極対41を介して電界伝達媒体としての人体50に電界を誘起させる。第1の送受信機32は、人体50に誘起された電界を、電極対2を介して検出し、受信データとしてユーザのIDに変換して第1のコンピュータ33に送信する。
第1のコンピュータ33は、登録されているユーザのIDと、受信データとして送信されたユーザのIDとを符合させる。登録されているユーザのIDと受信データとして送信されたユーザのIDとが一致する場合、ロッカーを開錠し、一致しない場合、ロッカーを施錠した状態を保持する。
【0088】
これら図8、図9の例のRFID通信・人体通信併用通信構造を用いた通信システムの例においては、携帯通信端末と固定通信端末の一方の側の端末にRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極が、実施例1〜3のいずれかの態様で重なるように対向配置されている。このため、データキャリアやデータキャリア読み取り装置を大型化させずに、人体通信を行う場合には、通信精度を確保するために必要な、例えば掌等、人体と接触可能なある程度の面積を持つことができ、また、RFID通信を行う場合には、電極に誘起される渦電流による磁界のキャンセル効果を極力抑えることができる。
なお、図8、図9の例では、携帯通信端末と固定通信端末のうちの一方の端末におけるRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極を重ねた構成について説明したが、本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造は、携帯通信端末と固定通信端末の両方の端末におけるRFID通信用の送受信アンテナに人体通信用の電極を重ねてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のRFID通信・人体通信併用通信構造は、RFID通信と人体通信の両方の通信を行う機能を備えた入退室管理システムや、ロッカーの施開錠システム等のセキュリティーシステムに有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 送受信アンテナ
1a 導線
1b 基板面
2、2’、2”、2”’ 電極(対)
2a 通信電極
2b 接地電極
2a1、2a2、2b1、2b2 櫛型部
2a11〜n、2a1’1,2、2a21〜n、2b11〜n、2b1’1,2、2b21〜n、2c1〜n、2c11〜n、2c21〜n 交差部
2a1a〜2a1c、2b1a〜2b1c 導線1aと並列に重なる部分
10 データキャリア読み取り装置
11 データキャリア読み取り側送受信アンテナ(第1の送受信アンテナ)
12 読み取り駆動制御部(第1の駆動制御部)
12a 送受信回路部
12a−1 送信回路
12a−2 受信回路
12b コントローラ
13 関連設備
20 データキャリア
21 データキャリア側送受信アンテナ(第2の送受信アンテナ)
22 ICチップ(第2の駆動制御部)
22a 送受信回路部
22a−1 送信回路
22a−2 受信回路
22b メモリ部
30 固定送受信手段
30’ 固定通信端末
31 第1の電極対
31a 第1の通信電極
31b 第1の接地電極
32 第1の送受信機
33 第1のコンピュータ
40 携帯送受信手段
40’ 携帯通信端末
41 第2の電極対
41a 第2の通信電極
41b 第2の接地電極
42 第2の送受信機
43 第2のコンピュータ
50 人体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問情報を質問電磁波として送信するとともに応答電磁波を受信する第1の送受信アンテナを有する固定通信端末と、前記質問電磁波を受信するとともに応答情報を前記応答電磁波として送信する第2の送受信アンテナとを有する携帯通信端末を用いて交信を行う非接触データキャリア読み取りシステムと、
送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体に誘起させるとともにこの誘起した電界を検出して情報の送受信を行う第1の送受信器と前記第1の送受信器に接続される第1の電極対を有する固定通信端末と、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体に誘起させるとともにこの誘起した電界を検出して情報の送受信を行う第2の送受信器と前記第2の送受信器に接続される第2の電極対を有する携帯通信端末を用いて交信を行う人体通信システムとに併用されるRFID通信・人体通信併用通信構造であって、
前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの固定通信端末同士、該非接触データキャリア読み取りシステム及び該人体通信システムの携帯通信端末同士の少なくともいずれかにおける、前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置され、
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、対応する送受信アンテナの一辺の幅と略同程度の幅の複数の金属片からなり、前記複数の金属片を介して全ての空隙が開き、且つ、全体で掌と接触可能な面積を持つ所定形状に形成されていることを特徴とするRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項2】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、少なくとも一つの櫛型部を有することを特徴とする請求項1に記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項3】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つ櫛型形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項4】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、二つの前記櫛型部を有し、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つ串刺し形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項5】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して45°〜90°の所定角度で交差する複数の交差部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項6】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して45°で交差する複数の交差部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項7】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して垂直に交差する複数の交差部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項8】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つ波状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項9】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、
少なくとも一つの前記櫛型部と、
一端が前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して垂直に交差し他端が前記櫛型部と接続する複数の交差部とを有し、
全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つことを特徴とする請求項2に記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項10】
前記送受信アンテナと重なるように対向配置される前記電極対を構成する夫々の電極は、
二つの前記櫛型部を有してなる串刺し形状部と、
一端が前記対応する送受信アンテナを構成する導線に対して垂直に交差し他端が前記串刺し形状部と接続する複数の交差部とを有し、
全体で前記対応する送受信アンテナの基板面と略同じ外形及び大きさの面積を持つことを特徴とする請求項2に記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項11】
前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの固定通信端末同士における前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項12】
前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの携帯通信端末同士における前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。
【請求項13】
前記非接触データキャリア読み取りシステム及び前記人体通信システムの固定通信端末同士、該非接触データキャリア読み取りシステム及び該人体通信システムの携帯通信端末同士の夫々における前記送受信アンテナと前記電極対を構成する夫々の電極とが重なるように対向配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のRFID通信・人体通信併用通信構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−30877(P2013−30877A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164088(P2011−164088)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(510178943)株式会社シービーエヌ (2)
【Fターム(参考)】