説明

S−(−)−アムロジピンまたはその塩の製造方法及びそれに用いられる中間体

本発明は高光学純度S−(−)−アムロジピンまたはその塩を製造するための新規な方法及びそれに用いる中間体化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はS−(−)−アムロジピン(S−(−)−amlodipine)またはその塩の製造方法及びそれに用いられる中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
化(II)のアムロジピンは狭心症、高血圧、心不全などのような心血管疾患に対する有効な治療剤として立証されている、長期間作用型カルシウムチャンネル遮断剤(long−acting calcium channel blocker)である。
【化1】

【0003】
アムロジピンは、同量のS−(−)−アムロジピン及びR−(+)−アムロジピンで構成されたラセミ体である。マウスの大動脈のカルシウム誘発性収縮において、化(I)のS−(−)−アムロジピンの活性は、R−(+)−アムロジピンよりも1,000倍以上高く、前記ラセミ体のアムロジピンよりも2倍以上高い(非特許文献1(J.E.Arrowsmithら、J.Med.Chem.29、(1986)、1696))。従って、アムロジピンのカルシウムチャンネル遮断剤としての薬理作用は、主にS−(−)−アムロジピンによって達成される。また、国際特許公開WO 93/10779号(特許文献1)には光学的に純粋なS−(−)−アムロジピンが高血圧または狭心症の治療においても有効であると記載されている。
【化2】

【0004】
これまで光学的に純粋なS−(−)−アムロジピンを製造する多様な方法が開発されている。例えば、欧州特許公開第0,331,315号(特許文献2)及び非特許文献2[S.Goldmannら、J.Med.Chem.35、(1989)、3341]は特定中間体を用いる光学分割(optical resolution)によるS−(−)−アムロジピンを製造する方法を開示している。しかし、この方法は工程段階が複雑である。
【0005】
S−(−)−アムロジピンのD−(−)−酒石酸塩をジメチルスルホキシド溶媒和物として選択的に結晶化させることを含むS−(−)−アムロジピンの製造方法が国際特許公開WO 95/25722号(特許文献3)に開示されている。
【0006】
また、国際特許公開WO 03/035623号(特許文献4)及びWO 2006/043148号(特許文献5)は、S−(−)−アムロジピンのD−(−)−酒石酸塩を、N,N−ジメチルアセトアミド溶媒和物またはN,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物として選択的に結晶化させてS−(−)−アムロジピンを製造する方法を開示している。また、国際特許公開WO 01/60799号(特許文献6)、WO 2005/049571号(特許文献7)及び大韓民国特許第0476636号(特許文献8)は、アムロジピンをジメチルスルホキシドを含む溶媒中で酒石酸塩を形成させることによって光学分割してS−(−)−アムロジピンを製造する方法を開示している。
【0007】
しかし、S−(−)−アムロジピンの酒石酸塩のジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドの溶媒和物の選択的結晶化を含む前記方法は次のような問題がある。
【0008】
少なくとも150℃以上の高沸点を有し、水溶性溶媒であるジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドは、反応後、蒸留によって不純物を含む水分を除去しにくいために純粋な形態で回収できない。従って、結晶化したS−(−)−アムロジピンの酒石酸塩を濾過した後、一部の結晶化されていないR−(−)−アムロジピン酒石酸塩を含む濾液を、焼却などによって廃棄しなければならない。さらに、前記溶媒は高極性を有するので、製品に吸収されて残留しやすい。従って、前記溶媒の残量を厳格に制限しているICHガイドライン(非特許文献3:ICH Harmonized Tripartite Guideline, Impurities : Guideline for Residual Solvents Q3C(R3)、2006)の規定純度要求を満たすために、前記製品をさらに精製しなければならない。
【0009】
そこで、本発明者らは低沸点を有する有機溶媒を用いる方法を開発するために鋭意研究を重ねた結果、S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩と尿素との結晶複合体の形成を含む新規方法を見出し、本発明を完成するように至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許公開WO 93/10779号
【特許文献2】欧州特許公開第0,331,315号
【特許文献3】国際特許公開WO 95/25722号
【特許文献4】国際特許公開WO 03/035623号
【特許文献5】国際特許公開WO 2006/043148号
【特許文献6】国際特許公開WO 01/60799号
【特許文献7】国際特許公開WO 2005/049571号
【特許文献8】大韓民国特許第0476636号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J. E. Arrowsmithら、J. Med. Chem. 29、(1986)、1696
【非特許文献2】S. Goldmannら、J. Med. Chem. 35、(1989)、3341
【非特許文献3】ICH Harmonized Tripartite Guideline, Impurities : Guideline for Residual Solvents Q3C(R3)、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、新規な中間体としてS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩と尿素との複合体、即ち、S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体(2:1:1)を用いる、高光学純度を有するS−(−)−アムロジピンまたはその塩の改善された製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施態様によれば、
(i)水と120℃以下の沸点を有する水溶性有機溶媒からなる混合溶媒中で化(II)のアムロジピンをD−(−)−酒石酸を尿素と反応させて化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を選択的に結晶化・沈殿させる段階;
(ii)前記化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液中において塩基で処理して化(I)の S−(−)−アムロジピンの製造する段階;及び
(iii)オプションとして、化(I)のS−(−)−アムロジピンまたは前記化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液中で薬学的に許容される酸で処理して薬学的に許容される化(I)のS−(−)−アムロジピン塩を得る段階を含む、化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法が提供される。
【化3】

【0014】
本発明の他の実施態様によれば、化(I)のS−(−)−アムロジピンの製造において有用な中間体である化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、低沸点の有機溶媒と非常に安価な固形の尿素とを用いて高光学純度のS−(−)−アムロジピン及びその塩を既存の光学分離方法に比べて親環境的かつ経済的に簡便に製造することができる。
【0016】
(発明の詳細な記載)
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明によるS−(−)−アムロジピンの製造方法は水と120℃以下の低沸点を有する水溶性有機溶媒との混合溶媒中で化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を選択的に沈殿させることを特徴とする。
【0017】
段階(i)において、本発明で用いられる中間体である化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体は前記混合溶媒中で結晶化するので沈殿により得られる。具体的に、化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体は、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒に尿素及びアムロジピンを加え、この混合物を均質になるまで加熱及び攪拌した後、これに水に溶解させたD−(−)−酒石酸を加えて攪拌して得られた溶液を冷却して化(III)の S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体の沈殿を誘導し、濾過により沈殿物を分離することによって得られる。前記加熱及び攪拌段階は室温〜80℃範囲の温度で行われる一方、冷却して沈殿を誘導する段階は5℃〜室温の範囲で1〜24時間溶液を攪拌することによって行われる。
【0018】
本発明に用いられる有機溶媒は、水溶性であるとともに120℃以下の沸点を有する溶媒であり、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、酢酸メチル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びこれらの混合物で構成される群から選ばれ得る。前記有機溶媒は水に対して20〜80体積%範囲の量で水と混合され得、前記有機溶媒と水の混合溶媒はアムロジピン1gに対して3〜12ml範囲の量で用いられる。さらに、D−(−)−酒石酸と尿水はアムロジピン1モルに対して各々0.25〜0.5及び0.5〜5当量の量で用いられる。
【0019】
段階(i)で得られた粗(crude)S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体のS−(−)−アムロジピン成分は、少なくとも95%ee(enantiomeric excess)の光学純度を有する。
【0020】
また、段階(i)で得られた粗S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体は、更に高い光学純度の産物を得るために前記混合溶媒からさらに再結晶させ得る。
【0021】
例えば、前記再結晶は、段階(i)で得られたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を前記有機溶媒と水との混合溶媒中に懸濁させ、この懸濁液を室温〜80℃で均質溶液が得られるまで加熱し、80℃で30分〜2時間攪拌した後、前記溶液を5℃〜室温に徐々に冷却した後、1〜24時間攪拌することによって行われる。前記反応には段階(i)で用いられる混合溶媒であり得、この混合溶媒は、好ましくは、S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体1gに対して5〜15ml範囲の量で用いられる。
【0022】
再結晶させたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体のS−(−)−アムロジピン成分は、少なくとも98%ee以上の光学純度を有する。一層高い光学純度を有するS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を得るためには更なる結晶過程を行う。
【0023】
段階(i)で得られた化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体は、2分子のS−(−)−アムロジピン、1分子のD−(−)−酒石酸塩及び1分子の尿素(2:1:1)から形成される結晶複合体であって、約200℃の融点を有する。
【0024】
段階(ii)において、S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液中において塩基で中和することによって光学的に純粋なS−(−)−アムロジピンを得る。
【0025】
化(I)のS−(−)−アムロジピンの製造は、水に懸濁されたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液で処理して溶液のpHを7〜10に調節することを含む。中和により放出されたS−(−)−アムロジピンは、ジクロロメタンまたはクロロホルムのような有機溶媒で抽出し、前記抽出物を濃縮することによって分離し得る。
【0026】
また、得られたS−(−)−アムロジピンをジクロロメタンやヘキサンなどの適切な溶媒の中に再結晶化させ得る。
【0027】
一方、S−(−)−アムロジピンの薬学的に許容される塩は、国際特許公開WO 93/10779号、WO 03/043989号、WO 2004/024689号、WO 2006/043148号またはWO 2005/058825号及び大韓民国特許第2006/006840号に開示された塩だけではなく、これらの水和物であってもよく、この中でベンゼンスルホン酸塩、マレイン酸エステル、ニコチン酸塩、カンファースルホン酸塩及びそれらの水和物は本技術分野において緊要な酸付加塩である。
【0028】
本発明の薬学的に許容されるS−(−)−アムロジピン塩は、2つの方法で製造し得るが、化(I)のS−(−)−アムロジピンを前記引用された従来の技術の方法に基づいて薬学的に許容される適切な酸と反応させるか、または化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液中で薬学的に許容される適切な酸と反応させる。
【0029】
前記薬学的に許容される酸は、ベンゼンスルホン酸、マレイン酸、ニコチン酸及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれ得る。
【0030】
例えば、S−(−)−アムロジピン(1S)−(+)−カンファースルホン酸塩水和物は、S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液、例えば、20〜60体積%の水とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン及びこれらの混合物で構成された群から選ばれる40〜80体積%の有機溶媒を含む混合溶媒に溶解させ;これにS−(−)−アムロジピン1モル当り1〜1.1モル当量の(1S)−(+)−カンファースルホン酸を加え;有機溶媒の含量が20体積%以下になるまで水を加え;結晶化した固体を濾過することによって製造することができる。
【0031】
本発明の方法により製造された高光学純度のS−(−)−アムロジピンまたはその塩は心血管疾患に対して効果的な治療剤として用いられることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
下記実施例は本発明を例示するだけのものであり、これらにより本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
【0033】
S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体(化(III)の化合物)の製造
(1−1)
尿素50.0gを水250mlに溶解させた後、これに2−プロパノール600ml及びアムロジピン112.5gを加えてから50℃に加熱した。得られた混合物にD−(−)−酒石酸10.4gを水50mlに溶解させて添加し、50℃で1時間攪拌した。前記溶液を徐々に室温に冷却し、15時間攪拌した後、さらに5℃に冷却してから3時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過し、2−プロパノールで洗浄した後、50℃で乾燥して黄色結晶粉末状の粗S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体(51.6g;収率:73%)を得た。
沸点:198.5〜199.3℃;
[α]25:−27.2゜(c=0.1、DMF);
光学純度(HPLC):95.3%ee(鏡像体過剰率)。
【0034】
(1−2)
(1−1)で得られたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体50.0gを2−プロパノール125ml及び水125mlの混合物に懸濁させ、70℃に加熱して均質溶液を得た。これに2−プロパノール250mlを加えてから室温に徐々に冷却して18時間攪拌した後、さらに5℃に冷却し、3時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過した後、2−プロパノールで洗浄し、50℃で乾燥して黄色結晶粉末状の非常に純粋な形態の標題化合物(45.1g;収率:90%)を得た。
融点:201.8〜202.8℃;
[α]25:−30.6゜(c=0.1、DMF);
S−(−)−アムロジピン光学純度(HPLC):99.8%ee;
酒石酸含量(HPLC):14.71%(理論値:14.60%);
尿素含量(HPLC):5.75%(理論値:5.84%);
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ7.35(d,2H),7.22(m,4H),7.10(m,2H),5.42(br,4H,尿素−NH),5.3(s,2H),4.63(dd,4H),4.0(q,4H),3.88(s,2H,酒石酸−CH(OH)−),3.61(t,4H),3.50(s,6H),2.97(t,4H),2.31(s,6H),1.10(t,6H);
IR(KBr,cm−1):3499,3382,3342,3217,2951,1688,1635,1603,1480,1423,1285,1207,1104,1044,1025。
(実施例2〜8)
【0035】
S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体(化(III)の化合物)の製造
下記表1に示したそれぞれの有機溶媒を用いて混合溶媒の体積(有機溶媒:水=3:1の体積比)がアムロジピン1g当り8mlであり、D−(−)−酒石酸及び尿素の量が1モルのアムロジピンを基準としてそれぞれ0.25及び1モル当量である条件下で、実施例1(1−1)の方法と類似した方法を繰り返して標題化合物を得た。
〈表1〉
【表1】

(実施例9、10)
【0036】
S−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体(化(III)の化合物)の製造
下記表2に示したそれぞれの有機溶媒を用いて混合溶媒の体積(有機溶媒:水=2:1の体積比)が実施例7で得られたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体1g当り8mlである条件下で、実施例1(1−2)の方法と類似した方法を繰り返して下記表2に示したように精製された形態の標題化合物を得た。
〈表2〉
【表2】

(実施例11)
【0037】
S−(−)−アムロジピン(化(I)の化合物)の製造
実施例1(1−2)で得られたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体20gをジクロロメタン200ml及び水150mlに懸濁させ、2N水酸化ナトリウムで前記溶液のpHを9に調整した。生成された有機層を分離し、水100mlで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残渣にヘキサンを滴加した後、強く攪拌して生成された沈殿物を均質化させた。沈殿物を濾過し、減圧下で40℃で乾燥して白色結晶粉末状の標題化合物(14.3g;収率:90%)を得た。
融点:108〜110℃;
[α]25:−31.9゜(c=1.0、MeOH);
S−(−)−アムロジピン光学純度(HPLC):99.9%ee。
(実施例12)
【0038】
S−(−)−アムロジピンの(1S)−(+)−カンファースルホン酸塩の製造
実施例11で得られたS−(−)−アムロジピン10gを2−プロパノール30ml及び水30mlの混合溶媒に懸濁させ、これに(1S)−(+)−カンファースルホン酸塩5.7gを加え、前記混合物を40℃に加熱して均質溶液を得た。前記溶液を室温に冷却した後、濾過して生成された不溶物を除去し、濾液に水120mlを徐々に滴加して4時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過し、2−プロパノール及び水(1/5、v/v)の混合溶媒で洗浄した後、40℃で乾燥して白色結晶粉末状の水和物形態の標題化合物(14.5g;収率:88%)を得た。
融点:146〜149℃;
含水量:4.5%;
[α]25:−7.2゜(c=1.0、MeOH);
S−(−)−アムロジピン光学純度(キラルHPLC):99.9%ee;
H−NMR(CDCl,ppm):δ7.75(s,4H),7.45−6.09(m,4H,ArH),5.39(s,1H),4.77(q,2H),4.03(m,2H),3.85(m,2H),3.58(s,3H),3.35(m,2H),3.05(q,2H),2.50−2.20(m,2H),2.38(s,3H),2.10−1.80(m,3H),1.75(m,1H),1.38(m,1H),1.15(t,3H),1.00(s,3H),0.80(s,3H)。
IR(KBr,cm−1):3431,3395,3077,2953,1748,1691,1643,1611,1438,1289,1206,1099,1041。
(実施例13)
【0039】
S−(−)−アムロジピンの(1S)−(+)−カンファースルホン酸塩の製造
実施例1(1−2)で得られたS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体20gをイソプロパノール25ml及び水25mlの混合溶媒に懸濁させ、これに(1S)−(+)−カンファースルホン酸塩9.07gを加え、40℃に加熱して均質溶液を得た。濾過して不溶物を除去し、濾液に水200mlを徐々に滴加し、室温で4時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過し、2−プロパノール及び水(1/5、v/v)の混合溶媒で洗浄し、40℃で乾燥して白色結晶粉末状の水和物形態の標題化合物(23.2g;収率:89%)を得た。
融点:147〜150℃;
含水量:4.5%;
[α]25:−7.3゜(c=1.0、MeOH);
S−(−)−アムロジピン光学純度(HPLC):99.9%ee。
【0040】
以上、本発明を前記具体的な実施例と関連して述べたが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で当分野における熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることを勿論のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)水と120℃以下の沸点を有する水溶性有機溶媒からなる混合溶媒中で化(II)のアムロジピンをD−(−)−酒石酸を尿素と反応させて化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を選択的に結晶化・沈殿させる段階;
(ii)前記化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液中において塩基で処理して化(I)の S−(−)−アムロジピンの製造する段階;及び
(iii)オプションとして、化(I)のS−(−)−アムロジピンまたは前記化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体を水溶液中で薬学的に許容される酸で処理して薬学的に許容される化(I)のS−(−)−アムロジピン塩を得る段階
を含む、化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法:
【化1】

【請求項2】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、酢酸メチル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項3】
前記混合溶媒中での前記有機溶媒含量が20〜80体積%の範囲である、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項4】
前記混合溶媒がアムロジピン1g当り3〜12mlの量で用いられる、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項5】
前記D−(−)−酒石酸がアムロジピン1モル当り0.25〜0.5当量の量で用いられる、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項6】
前記尿素がアムロジピン1モル当り0.5〜5モル当量の量で用いられる、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項7】
前記段階(i)で得られた化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体が、前記段階(ii)を行う前に混合溶媒を用いて結晶・再沈殿される、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項8】
前記再沈殿に用いられる混合溶媒の量が化(III)のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体1g当り5〜15mlである、請求項7記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項9】
前記段階(ii)において、前記塩基を添加して反応液のpHを7〜10の範囲に調節する、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項10】
前記薬学的に許容される塩が、ベンゼンスルホン酸塩、マレイン酸エステル、ニコチン酸塩、カンファースルホン酸塩及びその水和物からなる群から選ばれる、請求項1記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項11】
前記薬学的に許容される塩が(1S)−(+)−カンファースルホン酸塩である、請求項10記載の化(I)のS−(−)−アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩の製造方法。
【請求項12】
化(III):
【化2】

のS−(−)−アムロジピン・D−(−)−酒石酸塩・尿素複合体。

【公表番号】特表2010−518155(P2010−518155A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549511(P2009−549511)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000530
【国際公開番号】WO2008/100023
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】