説明

SIP電話機、同機器におけるファイル転送システム、ファイル転送方法、ファイル転送プログラム

【課題】プロキシサーバの能力に依存することなく発呼装置と着呼装置の間でファイルの送受信サービスを行う。
【解決手段】SIPに準拠してプロキシサーバ13経由で発呼して着呼装置12との間で音声パスのセッションを確立するSIP電話機(発呼装置11)であって、音声パスのセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、着呼装置12にデータパスのセッション確立を要求する要求発行部111と、特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して着呼装置12との間でデータパスのセッションを確立するセッション確立部112と、データパスのセッション確立後、プロキシサーバ13とは独立して、着呼装置12から当該着呼装置12が管理するファイルの取得を行うファイル取得部113と、を含み構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIP(Session Initiation Protocol)に準拠してプロキシ経由で発呼して着呼装置との間で音声パスのセッションを確立する、SIP電話機、同機器におけるファイル転送システム、ファイル転送方法、ファイル転送プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したSIP電話機において、遠隔地にある着呼装置配下のファイルをアクセスするために、FTP(File transfer Protocol)、又はHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)による通信を要している。例えば、電話会議中に音声パスのセッションが設定されているケースでも、同音声パスのセッションルートとは別に、着呼装置配下のファイルをダウンロードするために、FTP又はHTTPによるデータパスのセッション確立が必要である。
【0003】
また、新たに音声通話ソフトウエアを適用したファイル交換アプリケーションを利用した場合には、プロキシサーバに相当するノードを経由してファイルの送受信を行う必要があり、その転送速度は、プロキシサーバの能力に依存する。このため、プロキシサーバの能力に依存することなく、ファイルの送受信サービスを提供できるシステムの出現が望まれていた。
【0004】
一方で、例えば、特許文献1に開示されているように、音声や映像の通話と並列にテキスト情報を受信することができるように、テキスト情報の送受信のために通話セッションを確立する要求を生成し、その要求に基づき通話セッションを確立するようにしたIP電話装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−64761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された技術によれば、SIPを用い、発呼者と着呼者との間で、音声通信とファイルの送受信を実現可能である。しかしながら、このファイル送受信サービスを実現するためには、音声通話のための音声パスのセッションが必要であり、ファイルの転送速度は、依然としてプロキシサーバの能力に依存する。
【0007】
(発明の目的)
本発明の目的は、プロキシサーバの能力に依存することなく発呼装置と着呼装置の間でファイルの送受信サービスが可能な、SIP電話機、同機器におけるファイル転送システム、ファイル転送方法、ファイル転送プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1のSIP電話機は、SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼して着呼装置との間で音声パスのセッションを確立するSIP電話機であって、前記音声パスのセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する要求発行部と、前記特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立するセッション確立部と、前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行うファイル取得部と、を含む。
【0009】
本発明の第1のSIP電話機におけるファイル転送システムは、SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼装置と着呼装置とが音声パスのセッションを確立して通話を行うSIP電話機におけるファイル転送システムであって、前記音声パスのセッション確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する前記発呼装置と、前記発装置から前記データパスのセッション確立要求を受信し、前記発呼装置のアクセス認証を行う前記着呼装置と、を備え、前記発呼装置は、前記着呼装置から前記アクセス認証の結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立し、前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行う。
【0010】
本発明の第1のSIP電話機におけるファイル転送方法は、SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼装置と着呼装置とが音声パスのセッションを確立して通話を行うSIP電話機におけるファイル転送方法であって、前記発呼装置が、前記音声パスのセッション確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する第1のステップと、前記着呼装置が、前記発呼装置から前記データパスのセッション確立要求を受信し、前記発呼装置のアクセス認証を行う第2のステップと、前記発呼装置が、前記着呼装置から前記アクセス認証の結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立し、前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行う第3のステップと、を有する。
【0011】
本発明の第1のSIP電話機のファイル転送プログラムは、コンピュータ上で実行され、SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼して着呼装置との間で音声パスのセッションを確立するSIP電話機のファイル転送プログラムであって、前記コンピュータに、前記音声パスセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する要求発行処理と、前記特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立するセッション確立処理と、前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行うファイル取得処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プロキシサーバの能力に依存することなく発呼装置と着呼装置の間でファイルの送受信サービスが可能な、SIP電話機、同機器におけるファイル転送システム、ファイル転送方法、ファイル転送プログラムを提供することができる。
【0013】
その理由は、発呼装置が、特定のエクステンション押下による着呼装置からのアクセス認証結果を取得してデータパスのセッションを確立し、着呼装置が管理するファイルを自動的に取得するからである。発呼装置は、着呼装置との間で音声パスのセッションを確立した後は、プロキシサーバを経由することなく、着呼装置との間でのトランザクッションが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態によるSIP電話機におけるファイル転送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態によるSIP電話機の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態によるSIP電話機のファイル取得インタフェースを実現するSDP記述の一例を示す図である。
【図4】本実施の形態によるSIP電話機の動作を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態によるSIP電話機のファイルス転送システムのトランザクションシーケンス図(音声パスのセッション確立)である。
【図6】本実施の形態によるSIP電話機のファイルス転送システムのトランザクションシーケンス図(データパスのセッション確立)である。
【図7】本実施の形態2によるSIP電話機の動作を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態2によるSIP電話機のファイルス転送システムのトランザクションシーケンス図(確立するパスの確認)である。
【図9】本実施の形態2によるSIP電話機のファイルス転送システムのトランザクションシーケンス図(音声パス及びデータパスセッション確立)である。
【図10】本実施の形態2によるSIP電話機のファイルス転送システムのトランザクションシーケンス図(データパスのみセッション確立)である。
【図11】本実施の形態、2によるSIP電話機のファイルス転送システムのトランザクションシーケンス図(ファイル転送)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態の構成)
図1は、本実施の形態によるSIP電話機におけるファイル転送システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
SIPは、周知のように、マルチメディアセッションやVoIP(Voice over Internet
Protocol)を応用したIP電話等で用いられる2以上のクライアント間でセッションを確立するためのプロトコルであり、実際の電話等通信を行うための通信機器の情報はSDP(Session
Description Protocol)で処理し、データ通信にはRTP(Real-time Transport Protocol)を用いる。つまり、SIPは、セッションの開始、変更、終了といった基本的な機能のみを提供するセッション層のプロトコルである。
【0018】
図1を参照すると、本実施の形態によるSIP電話機におけるファイル転送システム10は、SIP電話機としての発呼装置(UAC11)と、着呼装置(UAS12)と、プロキシサーバ(Proxy13)と、を含み構成される。
【0019】
ユーザエージェントは、SIPリクエストを処理するための論理的な構成要素であり、このユーザエージェントにはUAC(User agent Client)とUAS(User Agent Server)の2種類がある。ここでは、SIP電話機は、発信の際にはUACとなり、着信の際にはUASとなる。このため、前者のUACを発呼装置11、後者のUASを着呼装置12という。
【0020】
発呼装置11は、SIPリクエストを生成し、送信し、レスポンスを受信し処理する。着呼装置12は、SIPリクエストを受信し、処理してレスポンスを生成し、送信する。着呼装置12は、自身が管理する配下のファイルをファイル格納部120に格納してものとする。プロキシサーバ14は、SIPリクエストの次の転送先を解決し、そのリクエストを転送するサーバである。
【0021】
上述したシステム構成において、本実施の形態によるファイル転送システム10において、発呼装置11は、音声パスのセッション確立時、特定のエクステンション押下により、着呼装置にデータパスのセッション確立を要求し、着呼装置12は、発呼装置11からデータパスのセッション確立要求を受信し、発呼装置11のアクセス認証を行う。そして、発呼装置11は、着呼装置12からアクセス認証の結果を取得して着呼装置12との間でデータパスのセッションを確立し、当該データパスのセッション確立後、プロキシサーバ13とは独立して、着呼装置12から当該着呼装置12が管理するファイルをファイル格納部120からダウンロードにより取得する動作を実行する。詳細は後述する。
【0022】
図2は、本実施の形態によるSIP電話機(発呼装置11)の構成を示すブロック図である。図2によれば、発呼装置11は、要求発行部111と、セッション確立部112と、ファイル取得部113と、を含み構成される。
【0023】
要求発行部111は、音声パスのセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、着呼装置12にデータパスのセッション確立を要求する機能を有する。ここでいうエクステンションとは、発呼装置11と着呼装置12との間で予め規定された特定のキー押下シーケンスであり、例えば、数字キー[1、3、5]を連続して押下した場合を想定している。
【0024】
セッション確立部112は、着呼装置12から、特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して着呼装置12との間でデータパスのセッションを確立する機能を有する。
【0025】
このため、セッション確立部12は、音声パス、およびデータパスのセッションを確立する場合、着呼装置12からの音声パスを破棄しないことへの確認要求に対する応答を行い、後述するファイル取得部113による確立された音声パスとデータパスを通じたファイルの取得を指示し、ファイルの取得後、データパスのセッションを切断するか、あるいは、データセッションのみを確立する場合、着呼装置12から音声パスを破棄することの確認要求に対する応答を行い、後述するファイル取得部113による確立されたデータパスを通じたファイルの取得を指示し、ファイルの取得後、データパスのセッションを切断する。
【0026】
ファイル取得部113は、データパス確立部112によるデータパスのセッション確立後、プロキシサーバ13とは独立して、着呼装置12から当該着呼装置12が管理する配下のファイル(ファイル格納部120に登録されている)の取得を行う機能を有する。
【0027】
このため、ファイル取得部113は、後述するSDPのメディアタイプに、ファイル取得用に新たに定義される記述を解読し、着呼装置12からファイルを取得するインタフェースと、セッション確立部112によるデータパスの確立後、着呼装置12にファイル取得要求を発行して着呼装置12から要求ファイルを取得し、着呼装置12で行われる誤りチェックの結果照合に基づき、再度ファイル取得要求を発行するか、終了するアプリケーションとを含む。
【0028】
図3に、本実施の形態によるSIP電話機のファイル取得インタフェースを実現するSDP記述の一例が示されている。以下に説明するファイル取得インタフェースによれば、音声パスのセッション確立時のトランザクッションと同手順で、データパスを確立することができる。これは、データパス確立のSDPを一部拡張することが可能だからである。ここでは、拡張されたSDPは、後述するトランザクションre−INVITw/SDPメッセージ(図6のT11)に付加送信されることとする。詳細は後述する。
【0029】
ところで、SDPには、(1)セッションの名前と目的、(2)セッションがアクティブな時間、(3)セッションを構成するメディア、(4)そのメディアを受信するための情報、(5)カンファレンスで使用する帯域に関する情報、(6)セッションに責任をもつ人物のコンタクト情報が記述され、格納されている。このうち、メディア記述の“m=”(メディア名と伝送アドレス)の部分には、現在、RFC4566では、「audio」、「video」、「application」、「text」、「message」のメディアタイプが定義されている。発呼装置11と着呼装置12との間では、このSDP記述により接続能力が決まる。このため。新たに、メディアタイプとして“file”を定義することにより、発呼装置11と着呼装置12の間で、ファイル転送の相互接続を可能とするファイル取得インタフェースを提供できる。
【0030】
(第1の実施の形態の動作)
図4は、本実施の形態によるIP電話機の動作を示すフローチャートである。図4を参照すると、発呼装置11は、まず、プロキシサーバ13経由で着呼装置12との間で音声パスのセッション確立を行なう(ステップS401)。図5に、このためのトランザクションシーケンスが示されている。
【0031】
図5を参照すると、トランザクションT1〜T8により、プロキシサーバ13を経由して、発呼装置11が着呼装置12を発呼し、音声パスのセッションを確立する。この手順を実行するにあたり、発呼装置11は、呼を開始するために、まず、着呼装置12に、INVITE w/SDPメッセージを送信し(T1、T2)、着呼装置12は、このINVITEメッセージに対応するRingingメッセージ18xを発呼装置11に送信する(T3、T4)。そして、着呼装置12が応答可能な状態になると、発呼装置11に200(OK)w/SDPメッセージを送信し(T5、T6)、この200(OK)w/SDPメッセージに対し、発呼装置11は、ACKメッセージを送信し、通話のための音声パスのセッションを確立する(T7、T8)。その後、発呼装置11と着呼装置12との間で発呼者と着呼ぶ者との間で通話が開始される。
【0032】
説明を図4に戻す。上述したステップS401での音声パスのセッション確立後、発呼装置11は、要求発行部111が、特定のエクステンション押下を検出すると(ステップST402“Yes”)、着呼装置12に対してファイル取得要求のためのDTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)を送信する(ステップST403)。
【0033】
これを受けた着呼装置12では、受信したDTMFに基づきファイルへのアクセスの資格があるか否かについての認証を行う。そして、そのアクセス認証の結果を要求のあった発呼装置12に返送する。
【0034】
発呼装置11では、セッション確立部112がこのアクセス認証の結果を得、アクセス資格がない、所謂認証不成立の場合には(ステップS404“No”)、セッションを切断する(ステップS408)。一方、アクセス資格がある、所謂認証成立時には(ステップS404“Yes”)、発呼装置11と着呼装置12との間でデータパスのセッションを確立する(ステップST405)。
【0035】
続いて、セッション確立部112は、ファイル取得部113に制御を移し、ファイル制御部113は、セッションが確立されたデータパスを通じて、着呼装置12のファイル格納部120に格納された配下のファイルの転送を開始すべくダウンロードを開始する(ステップS406)。このファイルダウンロードの仕組みについては後述する。そして、ファイルダウンロード完了後(ステップS407“Yes”)、セッション確立部112に制御が移り、セッション確立部112は、セッションを切断して終了する(ステップS408)。
【0036】
図6に、このためのトランザクションシーケンスが示されている。図6によれば、上述した音声パスのセッション確立後、発呼装置11が、特定のエクステンション押下を検出すると、着呼装置12に対してファイル取得要求のためのDTMFを送信する(T9)。これを受けた着呼装置12では、受信したDTMFに基づきファイルへのアクセスの資格があるか否かについての認証を行ない、そのアクセス認証の結果を要求のあった発呼装置12にINFOにて返送する(T10)。
【0037】
発呼装置11では、認証結果(認証成立)を受信すると、着呼装置12に対し、上述した拡張されたSDPを含み記述されたre−INVITE w/SDPメッセージを送信し(T11)、これを受けた着呼装置12は、応答可能な状態になると、発呼装置11に対して200(OK)w/SDPメッセージを送信する(T12)。そして、発呼装置11は、ACKメッセージを送信し(T13)、音声パス及びデータパスのセッションを確立し、セッションが確立された音声パス及びデータパスを通じて、着呼装置12配下のファイルの転送を開始すべくダウンロードを開始する。そして、ファイルダウンロード完了後、セッションを切断してトランザクションシーケンスを終了する(T14)。
【0038】
上述した本実施の形態によれば、発呼装置11は、着呼装置12と音声パスのセッション確立後、音声パスのセッション確立の延長上にデータパスのセッションを確立することができる。音声パスを確立することで、発呼装置11と着呼装置12間で音声通話を行いながら、例えば、エクステンション情報を、発呼装置11と着呼装置12間で伝搬する等、データ交換が可能になる。
【0039】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、発呼装置11は、プロキシサーバ13を経由して着呼装置12に発呼して音声パスのセッションを確立した後、発呼装置11の特定のエクステンション押下により、着呼装置12配下のファイルを自動でダウンロードにより取得することができる。このため、プロキシサーバ13の能力に依存することなく、発呼装置11および着呼装置12の能力に応じたファイル提供サービスを得ることが可能になる。
【0040】
その理由は、発呼装置11および着呼装置12間で音声パスのセッション確立後は、プロキシサーバ13を経由せず、発呼装置11と着呼装置12間で発呼装置11および着呼装置12の能力に応じたトランザクションの送受信が可能であるからである。
【0041】
また、本実施の形態によれば、SDPを拡張するだけで、同様のトランザクションにより、容易にデータパスのセッションを確立することが可能になる。
【0042】
その理由は、SDPのメディアタイプに、ファイル転送用として、新たに“file”を定義(拡張)することでファイル取得インタフェースを提供し、このため、発呼装置11と着呼装置12上に新たなアプリケーションを実装することなく、RFC4566のSIPトランザクションの中で、発呼装置11及び着呼装置12を相互接続することが可能であるためである。
【0043】
(第2の実施の形態の構成)
上述した第1の実施の形態が有する構成に加え、発呼装置11が要求発行時に、「DTMFパスのみ確立」の情報を付加することにより、音声およびデータパスのセッションを確立する場合と、データパスのみ確立する場合の2通りの制御が可能になる。このためのSIP電話機(発呼装置11)の動作が図7にフローチャートで示され、図8にそのトランザクションシーケンスが示されている。
【0044】
以下に説明する第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態同様、図1に示したファイル転送システム10、および図2に示したSIP電話機(発呼装置11)の構成、及び図3に示したSDPの拡張例を用いるものとする。
【0045】
(第2の実施の形態の動作)
図7によれば、発呼装置11(要求発行部111)は、音声パスのセッション確立時の要求に「DTMFパスのみ確立」の情報を付加して着呼装置12へ送信する(ステップS701)。これを受けた着呼装置12は、「DTMFパスのみ確立」の情報が送信されたことの確認を発呼装置11に送信する。以降、発呼装置11が特定のエクステンション押下により着呼装置12にDTMFを送信し、着呼装置12がアクセス認証を行い、その認証結果を発呼装置11へ返送し、データパスのセッションを確立する動作は図4に示す第1の実施の形態と同様である。ここではその手順が図示省略されている。
【0046】
上述した着呼装置12からの「DTMFパスのみ確立」の確認に対し、発呼装置11は、音声及びデータパスのセッションを確立する場合と、データパスのセッションのみを確立した場合とでは異なる処理を実行する。
【0047】
すなわち、音声及びデータパスのセッションを確立する場合、着呼装置12は、音声パスを破棄しないことの確認を発呼装置と11に対して行なう。これを受けた発呼装置11は(ステップS702“No”)、セッション確立部112にて確認応答を行い、ファイル取得部113にて、確立された音声パスとデータパスを通じてファイルのダウンロードを行う(ステップS706)。ファイル取得部113は、ダウンロード終了後(ステップS707“Yes”)、セッション確立部112に制御を移し、セッション確立部112は、データパスのセッションを切断し、このとき、音声パスのセッションのみ維持する制御を行う(ステップS708)。このため、セッション確立部112は、音声パスが不要になった時点で音声パスのセッションを切断することになる。したがって、発呼装置11は、着呼装置12との間でファイルのダウンロード終了後も通話による情報交換が可能になる。
【0048】
一方、データパスのセッションのみを確立する場合、着呼装置12は、音声パスを破棄することの確認を発呼装置と11に対して行なう。これを受けた発呼装置11は(ステップS702“Yes”)、セッション確立部112にて確認応答を行い、ファイル取得部113にて、確立されたデータパスを通じてファイルのダウンロードを行う(ステップS703)。ファイル取得部113は、ダウンロード終了後(ステップS704“Yes”)、セッション確立部112に制御を移し、セッション確立部112は、データパスのセッションを切断して一連の動作を終了する(ステップS705)。この場合、発呼装置11は、着呼装置12との間で通話を行うことなく自動でファイルをダウンロードすることが可能になる。
【0049】
上述した着呼装置12からの「DTMFパスのみ確立」の確認に対するパス情報の確認についてのトランザクションシーケンスが、図8に示されている。
【0050】
図8を参照すると、トランザクションT15〜T17により、発呼装置11は、プロキシサーバ13を経由して着呼装置12を発呼し、音声パスのセッションを確立する。このとき、発呼装置11は、生成されるSIPリクエストに、「DTMFパスのみ確立」の情報を付加して送信する(T15)。これを受けた着呼装置12は(T16)、「DTMFパスのみ確立」の情報が送信されたことの確認(INFO)を発呼装置11に対して行う(T17)。
【0051】
続いて発呼装置11は、エクステンションの押下を検出して、着呼装置12に対しDTMFを送信し(T18)、これを受信した着呼装置12でDTMFに基づくファイル格納部120に格納されたファイルへのアクセス権限があるか否かのアクセス認証を行う。そして、この認証結果INFOを発呼装置11に返送する(T19)。
【0052】
発呼装置11は、認証が不成立の場合はここでセッションを切断し、成立した場合には、データパスのセッション確立が行われる。データパスのセッション確立は、発呼装置11からのre−INVITEw/SDPの発行(T20)、これに対する着呼装置12からの200(OK)w/SDPの発行、発呼装置11からのACKメッセージの送信(T22)により実行される。
【0053】
なお、トランザクションT15で発行されるINVITEw/SDPに「DTMFパスのみ確立」の情報が付加された結果、着呼装置12からの「DTMFパスのみ確立」の確認に対し、音声およびデータパスのセッションを確立する場合は図9、データパスのセッションのみ確立する場合には図10にそれぞれ示した、トランザクションシーケンスが実行される。
【0054】
図9を参照すると、着呼装置12は、発呼装置11に対して音声パスを破棄しないことの確認を行い(T23)、これを受けてセッション確立部112は、その返答をおこなう(T24)。続いて、発呼装置11は、確立された音声パスとデータパスを通じて、ファイルのダウンロードを開始する。ファイルダウンロードを行うインタフェースの仕組みは、図3に示したSDPの記述による。ファイルダウンロード完了後、発呼装置11は、データパスのセッションを切断し、本シーケンスを終了する(T28)。この場合、発呼装置11は、上述したように着呼装置12からファイルをダウンロードして取得した後も、通話による情報交換が可能である。
【0055】
図10を参照すると、着呼装置12は、音声パスを破棄することの確認を発呼装置11に対して行い(T29)、その確認への返答を行う(T30)。続いて、発呼装置11は、確立されたデータパスを通じて、ファイルダのウンロードを開始する。ファイルダウンロードのインタフェースの仕組みは、図3に示したSDPの記述による。ファイルのダウンロード完了後、発呼装置11では、データパスのセッションを切断し、本シーケンスを終了する(T31)。この場合、発呼装置11は、着呼装置12と通話することなく、自動でファィルダウンロードを行うことが可能である。
【0056】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、発呼装置11と着呼装置12との間に、音声パス及びデータパスのセッションを同時に確立することができるため、音声交換をしながら、データ交換を行うことが可能になる。また、本実施の形態によれば、プロキシサーバ13を経由することなく、発呼装置11と着呼装置12の間でデータパスのセッションのみを確立することもできるため、発呼装置11と着呼装置12間の操作を簡便化した容易なデータのやりとりが可能となる。したがって、発呼装置11と着呼装置12間は、内線電話操作の延長上で、遠隔地と音声通話およびファィルアクセスを同時に、または、自動で遠隔地のファイルにアクセスすることができる。
【0057】
その理由は、発呼装置11と着呼装置12間で、セッション確立時に、音声および音声パス確立操作の延長上にデータパスを同時に確立する場合、もしくはデータのパスのみ確立する場合を指定することができるためである。
【0058】
なお、上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態において、ファイルダウンロードにおけるアプリケーションの仕組みは、図11に示すトランザクションシーケンスにより推測される。
【0059】
図11を参照すると、データパスの確立後、発呼装置11(ファイル取得部113)は、ファィルダウンロードのリクエストを着呼装置12に送信する(T32)。着呼装置12は、受信するDTMFに基づいて、公開ファイルを提示し、発呼装置11にファイルを転送する(T33)。着呼装置12から発呼装置11にファイルを転送後、ファイル取得部113では、転送単位毎にチェックサムの計算を行い、そのチェックサムの結果を着呼装置12へ送信する(T34)。
【0060】
これを受けて着呼装置12では、受信したチェックサムと、着呼装置12が有するチェックサムを参照して先に受信したチェックサムと照合し、その結果を発呼装置11(ファイル取得部113)に送信する(T35)。発呼装置11では、照合の結果によってはセッション確立部112に制御が移り、問題がない場合はシーケンスを終了するが、問題がある場合は、T32以降のシーケンスを繰り返す。
【0061】
なお、図2に示すSIP電話機10が有する機能は、全てをソフトウエアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。例えば、要求発行部111が、音声パスのセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、着呼装置12にデータパスのセッション確立を要求し、セッション確立部112が、特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して着呼装置12との間でデータパスのセッションを確立し、ファイル取得部113が、データパスのセッション確立後、プロキシサーバ13とは独立して、着呼装置12から当該着呼装置12が管理するファイルの取得を行う、それぞれのデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現してもよく、また、その少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
【0062】
以上好ましい実施の形態と実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも、上述実施の形態及び実施例に限定されるものでなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、発呼装置11(SIP電話機)がプロキシサーバ13を経由して着呼装置12に発呼し、音声パスのセッション確立後、発呼装置11の特定のエクステンション押下により、着呼装置12配下のファイルをプロキシサーバ13とは独立して自動でダウンロードにより取得することができるため、特に、マルチメディアセッションやVoIPを応用したIP電話機等で用いられる2以上のクライアント間でセッションを確立するSIPを用いてファイル転送を行う全ての用途に利用して顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
10:ファイル転送システム
11:SIP電話機(発呼装置(UAC))
12:着呼装置(UAS)
13:プロキシサーバ(Proxy)
111:要求発行部
112:セッション確立部
113:ファイル取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIP(セッション・イニシェーション・プロトコル)に準拠してプロキシサーバ経由で発呼して着呼装置との間で音声パスのセッションを確立するSIP電話機であって、
前記音声パスのセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する要求発行部と、
前記特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立するセッション確立部と、
前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行うファイル取得部と、
を備えたことを特徴とするSIP電話機。
【請求項2】
前記セッション確立部は、
前記音声パス、およびデータパスのセッションを確立する場合、前記着呼装置からの音声パスを破棄しないことへの確認要求に対する応答を行い、前記ファイル取得部による前記確立された音声パスとデータパスを通じたファイルの取得を指示し、前記ファイルの取得後、前記データパスのセッションを切断することを特徴とする請求項1記載のSIP電話機。
【請求項3】
前記セッション確立部は、
前記データセッションのみを確立する場合、前記着呼装置から音声パスを破棄することの確認要求に対する応答を行い、前記ファイル取得部による前記確立されたデータパスを通じたファイルの取得を指示し、前記ファイルの取得後、前記データパスのセッションを切断することを特徴とする請求項1記載のSIP電話機。
【請求項4】
前記ファイル取得部は、
SDP(セッション・デスクリプション・プロトコル)のメディアタイプに、前記ファイル取得用に、新たに定義される記述を解読し、前記着呼装置から前記ファイルを取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載のSIP電話機。
【請求項5】
前記ファイル取得部は、
前記セッション確立部によるデータパスの確立後、前記着呼装置にファイル取得要求を発行して前記着呼装置から要求ファイルを取得し、前記着呼装置で行われる誤りチェックの結果照合に基づき、再度ファイル取得要求を発行するか、終了することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載のSIP電話機。
【請求項6】
SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼装置と着呼装置とが音声パスのセッションを確立して通話を行うSIP電話機におけるファイル転送システムであって、
前記音声パスのセッション確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する前記発呼装置と、
前記発装置から前記データパスのセッション確立要求を受信し、前記発呼装置のアクセス認証を行う前記着呼装置と、を備え、
前記発呼装置は、
前記着呼装置から前記アクセス認証の結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立し、前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行うことを特徴とするSIP電話機におけるファイル転送システム。
【請求項7】
SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼装置と着呼装置とが音声パスのセッションを確立して通話を行うSIP電話機におけるファイル転送方法であって、
前記発呼装置が、前記音声パスのセッション確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する第1のステップと、
前記着呼装置が、前記発呼装置から前記データパスのセッション確立要求を受信し、前記発呼装置のアクセス認証を行う第2のステップと、
前記発呼装置が、前記着呼装置から前記アクセス認証の結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立し、前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行う第3のステップと、
を有することを特徴とするSIP電話機におけるファイル転送方法。
【請求項8】
前記第2のステップは、
前記音声パス、およびデータパスのセッションを確立する場合、前記着呼装置からの音声パスを破棄しないことへの確認要求に対する応答を行う処理と、
前記音声パスおよびデータパスのセッション確立後、前記確立された音声パスとデータパスを通じたファイル転送を指示する処理と、
前記ファイルの取得後、前記データパスのセッションを切断する処理と、を含むことを特徴とする請求項7記載のSIP電話機におけるファイル転送方法。
【請求項9】
前記第2のステップは、
前記データパスのセッションのみを確立する場合、前記着呼装置から音声パスを破棄することの確認要求に対する応答を行うサブステップと、
前記データパスのセッション確立後、前記確立されたデータパスを通じたファイル転送を指示するサブステップと、
前記ファイルの取得後、前記データパスのセッションを切断するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項7記載のSIP電話機におけるファイル転送方法。
【請求項10】
前記第3のステップは、
SDPのメディアタイプに、前記ファイル取得用に、新たに定義される記述を解読し、前記確立した音声パスとデータパス、もしくはデータパスを通じて前記着呼装置との間でデータ転送を行うサブステップ、を含むことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項記載のSIP電話機におけるファイル転送方法。
【請求項11】
前記第3のステップは、
前記データパスの確立後、前記着呼装置にファイル取得要求を発行するサブステップと、
前記着呼装置とのデータ転送によりファイルを取得し、前記着呼装置で行われる誤りチェックの結果照合に基づき、再度ファイル取得要求を発行するか、終了するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項記載のSIP電話機におけるファイル転送方法。
【請求項12】
コンピュータ上で実行され、SIPに準拠してプロキシサーバ経由で発呼して着呼装置との間で音声パスのセッションを確立するSIP電話機のファイル転送プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記音声パスのセッションの確立時、特定のエクステンション押下により、前記着呼装置にデータパスのセッション確立を要求する要求発行処理と、
前記特定のエクステンション押下によるアクセス認証結果を取得して前記着呼装置との間でデータパスのセッションを確立するセッション確立処理と、
前記データパスのセッション確立後、前記プロキシサーバとは独立して、前記着呼装置から当該着呼装置が管理するファイルの取得を行うファイル取得処理と、
を実行させることを特徴とするファイル転送プログラム。
【請求項13】
前記セッション確立処理は、
前記音声パス、およびデータパスのセッションを確立する場合、前記着呼装置からの音声パスを破棄しないことへの確認要求に対する応答を行う処理と、
前記音声パスおよびデータパスのセッション確立後、前記確立された音声パスとデータパスを通じたファイル転送を指示する処理と、
前記ファイルの取得後、前記データパスのセッションを切断する処理と、を含むことを特徴とする請求項12記載のファイル転送プログラム。
【請求項14】
前記セッション確立処理は、
前記データパスのセッションのみを確立する場合、前記着呼装置から音声パスを破棄することの確認要求に対する応答を行う処理と、
前記データパスのセッション確立後、前記確立されたデータパスを通じたファイル転送を指示する処理と、
前記ファイルの取得後、前記データパスのセッションを切断する処理と、を含むことを特徴とする請求項12記載のファイル転送プログラム。
【請求項15】
前記ファイル取得処理は、
SDPのメディアタイプに、前記ファイル取得用に、新たに定義される記述を解読し、前記確立した音声パスとデータパス、もしくはデータパスを通じて前記着呼装置との間でデータ転送を行う処理、
を含むことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項記載のファイル転送プログラム。
【請求項16】
前記ファイル取得処理は、
前記データパスの確立後、前記着呼装置にファイル取得要求を発行する処理と、
前記着呼装置とのデータ転送によりファイルを取得し、前記着呼装置で行われる誤りチェックの結果照合に基づき、再度ファイル取得要求を発行するか、終了する処理と、を含むことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項記載のファイル転送プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−55247(P2011−55247A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202220(P2009−202220)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】