説明

SPRセンサセル、SPRセンサおよびSPRセンサセルの製造方法

【課題】検出感度に優れるSPRセンサセルおよびSPRセンサを提供すること。
【解決手段】検知部30と、検知部30に隣接するサンプル配置部31とを備えるSPRセンサセル1において、検知部30に、第1樹脂からなるアンダークラッド層3と、第2樹脂からなり、アンダークラッド層3に被覆されるコア層4とを備える光導波路を備えて、コア層4のアンダークラッド層3と接触する表層に、第1樹脂が第2樹脂に浸透されている樹脂混合層23を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPRセンサセル、SPRセンサおよびSPRセンサセルの製造方法、詳しくは、光導波路を備えるSPRセンサセル、そのSPRセンサセルを備えるSPRセンサ、および、そのSPRセンサセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学分析や生物化学分析などの分野において、光ファイバを備えるSPR(表面プラズモン共鳴:Surface Plasmon Resonance)センサが用いられている。
【0003】
光ファイバを備えるSPRセンサでは、光ファイバの先端部の外周面に金属薄膜が形成されるとともに、分析サンプルが固定され、その光ファイバ内に光が導入される。そして、導入される光における特定の波長の光が、金属薄膜において表面プラズモン共鳴を発生させ、その光強度を減衰する。
【0004】
このようなSPRセンサにおいて、表面プラズモン共鳴を発生させる波長は、通常、光ファイバに固定される分析サンプルの屈折率などによって異なる。
【0005】
そのため、表面プラズモン共鳴の発生後に光強度が減衰する波長を計測すれば、表面プラズモン共鳴を発生させた波長を特定でき、また、その減衰する波長が変化したことを検出すれば、表面プラズモン共鳴を発生させる波長が変化したことを確認できるため、分析サンプルの屈折率の変化を確認できる。
【0006】
その結果、このようなSPRセンサは、例えば、サンプルの濃度の測定や、免疫反応の検出など、種々の化学分析や生物化学分析に用いることができる。
【0007】
例えば、サンプルが溶液である場合において、サンプル(溶液)の屈折率は、溶液の濃度に依存する。そのため、サンプル(溶液)を金属薄膜に接触させたSPRセンサにおいて、サンプル(溶液)の屈折率を計測することにより、サンプルの濃度を検出することができ、さらには、その屈折率が変化したことを確認することにより、サンプル(溶液)の濃度が変化したことを確認できる。
【0008】
また、免疫反応の分析では、例えば、SPRセンサにおける光ファイバの金属薄膜上に、誘電体膜を介して抗体を固定し、抗体に検体を接触させるとともに、表面プラズモン共鳴を発生させる。このとき、抗体と検体とが免疫反応すれば、そのサンプルの屈折率が変化するため、抗体と検体との接触前後において、サンプルの屈折率が変化したことを確認することにより、抗体と検体とが免疫反応したものと判断できる。
【0009】
しかしながら、このような光ファイバを備えるSPRセンサにおいては、光ファイバの先端部が微細な円筒形状であるため、金属薄膜の形成や分析サンプルの固定が困難であるという不具合がある。
【0010】
このような不具合を解決するため、例えば、光が透過するコアと、このコアを覆うクラッドとを備え、このクラッドの所定位置に、コアの表面に至るまで貫通口を形成し、この貫通口に対応した位置におけるコアの表面に、金属薄膜を形成したSPRセンサセルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
このSPRセンサセルによれば、コア表面に表面プラズモン共鳴を発生させるための金属薄膜の形成、および、その表面への分析サンプルの固定が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−19100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかるに、近年、サンプルの濃度の測定や、免疫反応の検出など、種々の化学分析や生物化学分析において、SPRセンサセルのさらなる検出精度の向上が、要求されている。
【0014】
本発明の目的は、検出精度に優れるSPRセンサセル、SPRセンサおよびSPRセンサセルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のSPRセンサセルは、検知部と、前記検知部に隣接するサンプル配置部とを備え、前記検知部は、第1樹脂からなるアンダークラッド層と、第2樹脂からなり、前記アンダークラッド層に被覆されるコア層とを備える光導波路を備え、前記コア層の前記アンダークラッド層と接触する表層に、前記第1樹脂が前記第2樹脂に浸透されている樹脂混合層が、形成されていることを特徴としている。
【0016】
このようなSPRセンサセルによれば、コア層に、第1樹脂が浸透された第2樹脂からなる樹脂混合層が形成されているため、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出することができる。
【0017】
また、本発明のSPRセンサは、上記のSPRセンサセルを備えることを特徴としている。
【0018】
このSPRセンサでは、コア層に、第1樹脂が浸透された第2樹脂からなる樹脂混合層が形成されているSPRセンサセルが用いられるため、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出することができる。
【0019】
また、本発明のSPRセンサセルの製造方法は、基板の上に、第2樹脂からなるコア層を所定パターンで形成する工程と、前記基板の上において、第1樹脂を、前記コア層を被覆するとともに、前記コア層の表層に前記第1樹脂を浸透させるように、塗布および加熱する工程と、前記第1樹脂を硬化させることにより、前記第1樹脂からなるアンダークラッド層を形成するとともに、前記コア層の前記アンダークラッド層と接触する表層に、前記第1樹脂が前記第2樹脂に浸透されている樹脂混合層を形成する工程とを備えることを特徴としている。
【0020】
このようなSPRセンサセルの製造方法によれば、コア層に、第1樹脂が浸透された第2樹脂からなる樹脂混合層を形成することができるため、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出できるSPRセンサセルを製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のSPRセンサセル、SPRセンサおよびSPRセンサセルの製造方法によれば、簡易な構成により、検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のSPRセンサセルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すSPRセンサセルの断面図である。
【図3】図1に示すSPRセンサセルの製造方法を示す工程図であって、(a)は、基板の上に、第2樹脂からなるコア層を形成する工程、(b)は、基板の上において、第1樹脂を、コア層を被覆するとともに、コア層の表層に第1樹脂を浸透させるように塗布および加熱する工程、(c)は、第1樹脂を硬化させ、第1樹脂からなるアンダークラッド層を形成するとともに、コア層のアンダークラッド層と接触する表層に樹脂混合層を形成する工程、(d)は、コア層およびアンダークラッド層から基板を剥離させる工程、(e)は、基板が剥離されることにより露出されたコア層およびアンダークラッド層の表面に、保護層を形成する工程、(f)は、保護層の表面にオーバークラッド層を形成する工程、(g)は、オーバークラッド層から露出される保護層の表面に、コア層を被覆するように金属薄膜を形成する工程を示す。
【図4】本発明のSPRセンサセルの他の実施形態を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明のSPRセンサの一実施形態を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明のSPRセンサセルの一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示すSPRセンサセルの断面図である。
【0024】
SPRセンサセル1は、図1および図2に示すように、平面視略矩形の有底枠形状に形成されており、検知部30と、検知部30に隣接するサンプル配置部31とを備えている。
【0025】
検知部30は、サンプル配置部31に配置されるサンプルの状態や、その変化を検知するために設けられており、光導波路2を備えている。
【0026】
なお、以下のSPRセンサセル1の説明において、方向に言及するときは、SPRセンサセル1にサンプルを配置するときの状態を上下の基準とする。すなわち、図1において、紙面上側を上側とし、紙面下側を下側とする。
【0027】
光導波路2は、本実施形態においては、SPRセンサセル1そのものであり、アンダークラッド層3、コア層4、保護層5およびオーバークラッド層6を備えている。
【0028】
アンダークラッド層3は、第1樹脂(後述)からなり、上下方向に所定の厚みを有する平面視略矩形平板状に形成されている。
【0029】
コア層4は、第1樹脂(後述)とは異なる第2樹脂(後述)からなり、アンダークラッド層3の幅方向(厚み方向と直交する方向、以下同じ)および厚み方向の両方と直交する方向に延びる略角柱形状(詳しくは、幅方向に扁平する断面矩形状)に形成され、アンダークラッド層3の幅方向略中央部の上端部において、アンダークラッド層3に被覆(埋設)されている。なお、以下のSPRセンサセル1の説明において、コア層4が延びる方向を、光導波路2内を光が伝播する伝播方向とする。
【0030】
また、コア層4は、その伝播方向両面がアンダークラッド層3の伝播方向両面と面一となり、その上面がアンダークラッド層3の上面と面一となるように配置されている。つまり、コア層4は、その上面が、アンダークラッド層3から露出されている。
【0031】
コア層4が、その上面がアンダークラッド層3の上面と面一となるように、アンダークラッド層3に被覆(埋設)されていれば、金属薄膜7(後述)や金属粒子層8(後述)を形成したときに、金属材料(後述)や金属粒子10(後述)を、コア層4の上側のみに効率よく配置することができる。
【0032】
また、コア層4は、単一樹脂層22と、樹脂混合層23とから形成されている。
【0033】
単一樹脂層22は、略角柱形状(詳しくは、幅方向に扁平する断面矩形状)に形成され、その上面がアンダークラッド層3の上面と面一となるように配置されている。
【0034】
より具体的には、単一樹脂層22は、コア層4の全体に対して厚み方向長さおよび幅方向長さが短く、かつ、伝播方向長さが等しい略角柱形状に形成されており、コア層4の幅方向略中央部の上端部において、樹脂混合層23に被覆(埋設)されている。
【0035】
樹脂混合層23は、コア層4のアンダークラッド層3と接触する表層として形成され、より具体的には、コア層4の下部および幅方向両側部において、単一樹脂層22を囲う断面視略凹形状(コ字状)に形成されている。また、樹脂混合層23は、その上面がアンダークラッド層3および単一樹脂層22の上面と面一となるように、配置されている。
【0036】
つまり、コア層4は、その上面が、単一樹脂層22および樹脂混合層23から、アンダークラッド層3と面一に形成されるとともに、幅方向両面および下面が、樹脂混合層23から形成されている。
【0037】
また、コア層4の伝播方向両端部には、光源12(後述)および光計測器13(後述)が光学的に接続される。
【0038】
保護層5は、必要により、アンダークラッド層3およびコア層4の上面をすべて被覆するように、平面視においてアンダークラッド層3と同じ形状の薄層として形成されている。
【0039】
保護層5が形成されていると、例えば、サンプルが液状である場合に、サンプルによってコア層4が膨潤することを防止することができる。
【0040】
オーバークラッド層6は、保護層5の上において、その外周がアンダークラッド層3の外周と平面視において略同一となるように、平面視矩形の枠形状に形成されている。
【0041】
これにより、光導波路2は、アンダークラッド層3およびコア層4の上に形成される保護層5を底壁とし、オーバークラッド層6を側壁とする有底枠形状に形成されている。
【0042】
サンプル配置部31は、SPRセンサ11(後述)によって分析されるサンプルを収容するために設けられ、検知部30に隣接するように配置されている。
【0043】
より具体的には、サンプル配置部31は、コア層4の上側において、保護層5とオーバークラッド層6とで囲まれる部分として、区画されている。
【0044】
また、このようなサンプル配置部31には、金属薄膜7が設けられている。
【0045】
金属薄膜7は、図2に示すように、サンプル配置部31内において、保護層5を均一に被覆するように形成されている。つまり、金属薄膜7は、コア層4の上面を均一に被覆するように形成されている。
【0046】
なお、詳述しないが、SPRセンサセル1には、必要により、光導波路2を支持する支持部材(図示せず)を設けることができる。
【0047】
図3は、図1に示すSPRセンサセルの製造方法を示す工程図である。
【0048】
次いで、このSPRセンサセル1の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0049】
この方法では、まず、図3(a)に示すように、平板状の基板9を用意し、次いで、その基板9の上に、コア層4を形成する。
【0050】
基板9は、例えば、シリコン、ガラスなどのセラミック材料、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄合金などの金属材料、例えば、ポリイミド、ガラス−エポキシ、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料などから形成されている。好ましくは、セラミック材料から形成されている。基板9の厚みは、例えば、10〜5000μm、好ましくは、10〜1500μmである。
【0051】
コア層4は、第2樹脂から形成されており、そのような第2樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、またはこれらのフッ素化変性体や重水素化変性体、さらには、フルオレン変性体などの樹脂材料が挙げられる。これら樹脂材料は、好ましくは、感光剤を配合して、感光性樹脂として用いられる。
【0052】
コア層4を形成するには、例えば、上記した樹脂のワニス(樹脂溶液)を調製して、そのワニスを、上記した所定パターンで基板9の表面に塗布した後、乾燥し、必要により、加熱硬化させる。また、感光性樹脂が用いられる場合には、基板9の全面にワニスを塗布および乾燥し、フォトマスクを介して紫外線照射し、現像によりパターンとし、次いで、必要により、加熱硬化する。
【0053】
加熱条件としては、加熱温度が、例えば、70〜250℃、好ましくは、70〜150℃であり、加熱時間が、例えば、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間である。
【0054】
このようにして形成されるコア層4の厚みは、例えば、2〜150μmであり、幅は、例えば、2〜150μmである。
【0055】
次いで、この方法では、図3(b)に示すように、基板9の上において、コア層4を被覆するとともに、第1樹脂と接触するコア層4の表層に第1樹脂を浸透させるように、第1樹脂を上記パターンで塗布および加熱する。
【0056】
第1樹脂としては、例えば、上記と同様の樹脂材料から、コア層4の単一樹脂層22よりも屈折率が低くなるように調整された樹脂材料が挙げられる。
【0057】
第1樹脂を基板9の上に塗布するには、例えば、上記した樹脂のワニス(樹脂溶液)を調製して、そのワニスを基板9の上に、例えば、キャスティング、スピンコータなどによって、コア層4を被覆するように塗布した後、第1樹脂がコア層4(第2樹脂)に浸透するように、加熱する。
【0058】
加熱条件としては、加熱温度が、例えば、60〜150℃、好ましくは、100〜150であり、加熱時間が、例えば、1〜30分間である。
【0059】
なお、感光性樹脂が用いられる場合には、次いで、紫外線照射する。このとき、必要により、フォトマスクを介して紫外線照射し、必要により、現像する。
【0060】
次いで、この方法では、図3(c)に示すように、第1樹脂を、例えば、加熱により硬化させ、第1樹脂からなるアンダークラッド層3を形成する。このとき、コア層4として、コア層4のアンダークラッド層3と接触する表層に、第1樹脂が第2樹脂に浸透されている樹脂混合層23が形成されるとともに、樹脂混合層23に埋設される単一樹脂層22が形成される。
【0061】
加熱条件としては、加熱温度が、例えば、70〜250℃、好ましくは、70〜150℃であり、加熱時間が、例えば、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間である。
【0062】
このようにして形成されるアンダークラッド層3の、コア層4の表面からの厚みは、例えば、2〜500μmである。
【0063】
なお、樹脂混合層23の、単一樹脂層22を囲んでいる各辺の厚み、および、単一樹脂層22の厚みは、特に制限されず、第2樹脂に対する第1樹脂の浸透の度合いなどにより、適宜決定される。
【0064】
これにより、基板9に接触される下面において、アンダークラッド層3とコア層4とが面一に形成される。
【0065】
なお、このようにして形成されるアンダークラッド層3の屈折率は、コア層4の単一樹脂層22の屈折率より低く設定されており、例えば、1.42以上、1.55未満である。
【0066】
また、コア層4の単一樹脂層22の屈折率は、アンダークラッド層3の屈折率より高く設定されており、例えば、1.44以上、1.65以下である。
【0067】
また、樹脂混合層23の屈折率は、通常、アンダークラッド層3の屈折率を超過し、単一樹脂層22の屈折率未満であり、具体的には、その積層方向において、アンダークラッド層3側から単一樹脂層22側に向けて、アンダークラッド層3の屈折率から単一樹脂層22の屈折率まで連続的に変化している。
【0068】
次いで、この方法では、図3(d)に示すように、アンダークラッド層3およびコア層4から基板9を剥離させ、アンダークラッド層3およびコア層4を上下反転させる。
【0069】
すると、アンダークラッド層3およびコア層4の基板9に接触されていた面が上面として露出される。
【0070】
次いで、この方法では、図3(e)に示すように、アンダークラッド層3およびコア層4の上に保護層5を形成する。
【0071】
保護層5を形成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどが挙げられ、好ましくは、それらの材料から、コア層4よりも屈折率が低くなるように調整された材料が挙げられる。
【0072】
保護層5を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法などの方法が挙げられ、好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。
【0073】
このようにして形成される保護層5の厚みは、例えば、1〜100nm、好ましくは、5〜20nmである。また、保護層5の屈折率は、コア層4の屈折率より低く設定されており、例えば、1.25以上、1.55未満である。
【0074】
次いで、この方法では、図3(f)に示すように、オーバークラッド層6を、保護層5の上に、上記したパターンで形成する。
【0075】
オーバークラッド層6を形成する材料としては、上記したアンダークラッド層3と同様の樹脂材料(第1樹脂)が用いられる。
【0076】
オーバークラッド層6を形成するには、例えば、別途、上記した材料から平面視矩形枠形状のシートを形成し、そのシートをオーバークラッド層6として、保護層5の上に積層する。
【0077】
なお、オーバークラッド層6を保護層5の上に積層するときには、予め、保護層5の表面に、シランカップリング剤などの公知のプライマーを処理した後、積層することもできる。保護層5の表面を上記したプライマーにより処理しておけば、金属薄膜7や金属粒子層8(後述)を形成したときに、その金属材料(後述)や金属粒子10(後述)を保護層5に強固に固着させることができる。
【0078】
シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0079】
プライマーとして、シランカップリング剤を処理する場合には、例えば、シランカップリング剤のアルコール溶液を保護層5に塗布し、その後、加熱処理する。
【0080】
また、オーバークラッド層6を形成するには、例えば、上記した樹脂のワニス(樹脂溶液)を調製して、そのワニスを、上記したパターンで保護層5の表面に塗布した後、乾燥させ、必要により硬化させることもできる。また、感光性樹脂が用いられる場合には、保護層5の全面にワニスを塗布し、乾燥後に、フォトマスクを介して露光し、必要により、露光後加熱した後、現像によりパターンとし、次いで、加熱することもできる。
【0081】
このようにして形成されるオーバークラッド層6の厚みは、例えば、5〜200μm、好ましくは、25〜100μmである。また、オーバークラッド層6の屈折率は、コア層4の屈折率より低く設定されており、例えば、アンダークラッド層3の屈折率と同様に設定されている。なお、保護層5の屈折率がコア層4の屈折率より低い場合には、オーバークラッド層6の屈折率は、必ずしも、コア層4の屈折率より低くなくてもよい。
【0082】
また、このようなオーバークラッド層6において、サンプル配置部31の大きさおよび形状は、特に限定されず、サンプルの種類や用途に応じて、適宜決定される。SPRセンサセル1の小型化を図る場合には、好ましくは、サンプル配置部31を小さく形成する。
【0083】
次いで、この方法では、図3(g)に示すように、金属薄膜7を、サンプル配置部31内において、コア層4を被覆するように形成する。
【0084】
金属薄膜7を形成する金属材料としては、例えば、金、銀、白金、銅、アルミニウム、および、それらの合金などが挙げられる。
【0085】
これら金属材料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0086】
金属薄膜7を形成するには、例えば、必要により、まず、金属薄膜7のパターンの逆パターンのレジストを形成して、金属薄膜7を形成する部分の周辺をマスキングする。その後、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの蒸着法により、コア層4(必要により形成されるレジストから露出するコア層4)の上面に、金属薄膜7を形成する。その後、レジストが形成されている場合には、エッチングや剥離などにより、レジストを除去する。
【0087】
なお、金属薄膜7は、必要により、複数積層することができる。
【0088】
このようにして形成される金属薄膜7の厚み(複数積層される場合には、その合計厚み)は、例えば、40〜70nm、好ましくは、50〜60nmである。
【0089】
このようにして、SPRセンサセル1を製造することができる。
【0090】
このようなSPRセンサセル1の製造方法によれば、コア層4に、第1樹脂が浸透された第2樹脂からなる樹脂混合層23を形成することができるため、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出できるSPRセンサセル1を製造することができる。
【0091】
そして、このSPRセンサセル1では、サンプル配置部31にサンプルが収容(配置)されることにより、金属薄膜7とサンプルとが接触される。すなわち、サンプルは、サンプル配置部31において、オーバークラッド層6に取り囲まれている。
【0092】
このようなSPRセンサセル1によれば、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出することができる。
【0093】
つまり、このようなSPRセンサセル1によれば、コア層4に、第1樹脂が浸透された第2樹脂からなる樹脂混合層23が形成されているため、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出することができる。
【0094】
図4は、本発明のSPRセンサセルの他の実施形態を示す断面図である。なお、上記した部材に対応する部材については、図4において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
上記した説明では、サンプル配置部31には、金属薄膜7を設けたが、例えば、サンプル配置部31には、金属薄膜7に代えて、金属粒子層8を設けることができる。
【0096】
金属粒子層8は、図4に示すように、サンプル配置部31内において、保護層5を均一に被覆するように形成されている。つまり、金属粒子層8は、コア層4の上面を均一に被覆するように形成されている。
【0097】
金属粒子層8を形成する金属粒子10としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、白金などの金属からなる粒子、例えば、シリカ、カーボンブラックなどの無機粒子の表面が上記した金属により被覆された粒子、例えば、樹脂などの有機粒子の表面が上記した金属により被覆された粒子などが挙げられる。好ましくは、金属からなる粒子が挙げられ、より好ましくは、クロム粒子、金粒子が挙げられる。
【0098】
金属粒子10の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡観察により観察された任意の100個の粒子の平均値として算出され、例えば、5〜300nm、好ましくは、10〜150nmである。
【0099】
金属粒子層8を形成するには、詳しくは図示しないが、例えば、上記した金属粒子10を公知の溶媒に分散させて粒子分散液を調製し、その粒子分散液を、保護層5に塗布し、乾燥する。
【0100】
なお、金属粒子10として金粒子が分散された金粒子分散液は、市販されており、例えば、EMGCシリーズ(British BioCell International Ltd.製)などが挙げられる。
【0101】
このようにして形成される金属粒子層8では、各金属粒子10は、好ましくは、厚み方向に互いに積層されずに、単粒子層として形成される。また、各金属粒子10は、互いに接触しないように、わずかに間隔を隔てて、それぞれ独立して配置される。
【0102】
そして、金属粒子層8は、平面視において、アンダークラッド層3から露出されたコア層4の表面積、すなわち、サンプル配置部31の面積のうち、例えば、15〜60%、好ましくは、20〜50%を被覆している。金属粒子層8が、上記した割合(被覆率)で、アンダークラッド層3から露出されたコア層4を被覆していると、ほぼすべての金属粒子10が独立して配置された単粒子層として、金属粒子層8が形成されるので、サンプルの濃度や変化などをより精度よく検出することができる。
【0103】
そして、このSPRセンサセル1では、サンプル配置部31にサンプルが収容(配置)されることにより、金属粒子層8とサンプルとが接触される。すなわち、サンプルは、サンプル配置部31において、オーバークラッド層6に取り囲まれている。
【0104】
このようなSPRセンサセル1によれば、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出することができる。
【0105】
つまり、このようなSPRセンサセル1によれば、オーバークラッド層6が、金属粒子層8と接触するサンプルを取り囲むように形成されているので、サンプルを容易に金属粒子層8の表面に配置することができるため、作業性の向上を図ることができる。
【0106】
図5は、本発明のSPRセンサの一実施形態を示す概略側断面図である。
【0107】
次いで、SPRセンサセル1を備えるSPRセンサ11について、図5を参照して説明する。
【0108】
SPRセンサ11は、図5に示すように、光源12と、光計測器13と、上記したSPRセンサセル1とを備えている。
【0109】
光源12は、例えば、白色光源、単色光光源などの公知の光源であって、光源側光コネクタ14を介して光源側光ファイバ15に接続され、この光源側光ファイバ15が、光源側光ファイバブロック16を介してSPRセンサセル1(コア層4)の伝播方向一方側端部に接続されている。
【0110】
また、SPRセンサセル1(コア層4)の伝播方向他方側端部には、計測器側光ファイバブロック17を介して計測器側光ファイバ18が接続されており、この計測器側光ファイバ18は、計測器側光コネクタ19を介して光計測器13に接続されている。
【0111】
光計測器13は、図示しないが、公知の演算処理装置に接続され、データの表示、蓄積および加工を可能としている。
【0112】
また、このようなSPRセンサ11において、SPRセンサセル1は、公知のセンサセル固定装置(図示せず)によって固定されている。センサセル固定装置(図示せず)は、所定方向(例えば、SPRセンサセル1の幅方向)に沿って移動可能とされており、これにより、SPRセンサセル1が任意の位置に配置されている。
【0113】
また、光源側光ファイバ15は、光源側光ファイバ固定装置20に固定され、計測器側光ファイバ18は、計測器側光ファイバ固定装置21に固定されている。
【0114】
光源側光ファイバ固定装置20および計測器側光ファイバ固定装置21は、公知の6軸移動ステージ(図示せず)の上に固定されており、光ファイバの伝播方向、幅方向(伝播方向と水平方向において直交する方向)および厚み方向(伝播方向と垂直方向において直交する方向)と、それら各方向(3方向)を軸とする回転方向(3方向)とに可動とされている。
【0115】
このようなSPRセンサ11によれば、光源12、光源側光ファイバ15、SPRセンサセル1(コア層4)、計測器側光ファイバ18および光計測器13を一軸上に配置することができ、これらを透過するように、光源12から光を導入することができる。
【0116】
そして、このSPRセンサ11では、上記したSPRセンサセル1、つまり、コア層4に、第1樹脂が浸透された第2樹脂からなる樹脂混合層23が形成されているSPRセンサセル1が用いられるため、サンプルの濃度や変化などを精度よく検出することができる。
【0117】
以下において、このSPRセンサ11の一使用態様について説明する。
【0118】
この態様では、例えば、まず、図5に示すSPRセンサセル1のサンプル配置部31に、サンプルを収容(配置)し、サンプルと金属薄膜7(または、金属粒子層8)とを接触させる。次いで、光源12から所定の光を、光源側光ファイバ15を介してSPRセンサセル1(コア層4)に導入する(図5に示す破線矢印L1参照)。
【0119】
SPRセンサセル1(コア層4)に導入された光は、コア層4内において全反射を繰り返しながら、SPRセンサセル1(コア層4)を透過するとともに、一部の光は、コア層4の上面において、保護層5を介して金属薄膜7(または、金属粒子層8)に入射され、表面プラズモン共鳴により減衰される。
【0120】
その後、SPRセンサセル1(コア層4)を透過した光は、計測器側光ファイバ18を介して光計測器13に導入される(図5に示す破線矢印L2参照)。
【0121】
つまり、このSPRセンサ11において、光計測器13に導入される光は、コア層4において表面プラズモン共鳴を発生させた波長の光強度が減衰している。
【0122】
表面プラズモン共鳴を発生させる波長は、SPRセンサセル1に収容(配置)されたサンプルの屈折率などに依存するため、光計測器13に導入される光の、光強度の減衰を検出することにより、サンプルの屈折率の変化を検出することができる。
【0123】
より具体的には、例えば、光源12として白色光源を用いる場合には、光計測器13によって、SPRセンサセル1の透過後に光強度が減衰する波長(表面プラズモン共鳴を発生させる波長)を計測し、その減衰する波長が変化したこと検出すれば、サンプルの屈折率の変化を確認することができる。
【0124】
また、例えば、光源12として単色光光源を用いる場合には、光計測器13によって、SPRセンサセル1の透過後における単色光の光強度の変化(減衰の度合い)を計測し、その減衰の度合いが変化したことを検出すれば、上記と同様に、表面プラズモン共鳴を発生させる波長が変化したことを確認でき、サンプルの屈折率の変化を確認することができる。
【0125】
そのため、このようなSPRセンサ11では、サンプルの屈折率の変化に基づいて、例えば、サンプルの濃度の測定や、免疫反応の検出など、種々の化学分析や生物化学分析に用いることができる。
【0126】
より具体的には、例えば、サンプルが溶液である場合には、サンプル(溶液)の屈折率は、溶液の濃度に依存するため、そのサンプル(溶液)を金属薄膜7(または、金属粒子層8)に接触させたSPRセンサ11において、サンプル(溶液)の屈折率を検出すれば、そのサンプルの濃度を測定することができる。また、サンプル(溶液)の屈折率が変化したことを検出すれば、サンプル(溶液)の濃度が変化したことを確認することができる。
【0127】
また、免疫反応の検出においては、例えば、SPRセンサセル1の金属薄膜7(または、金属粒子層8)上に、誘電体膜を介して抗体を固定し、抗体に検体を接触させる。このとき、抗体と検体とが免疫反応すればサンプルの屈折率が変化するため、抗体と検体との接触前後においてサンプルの屈折率が変化することを検出することにより、その抗体と検体とが免疫反応したものと判断することができる。
【0128】
そして、このようなSPRセンサセル1、SPRセンサ11、および、SPRセンサセル1の製造方法によれば、簡易な構成により、検出感度の向上を図ることができる。
【0129】
なお、上記した実施形態では、SPRセンサセル1には、コア層4を1つ形成したが、コア層4の数は、特に制限されず、互いに幅方向に間隔を隔てて、複数形成することもできる。
【0130】
光導波路2が複数のコア層4を備える場合には、このSPRセンサセル1を備えるSPRセンサ11により、サンプルを複数回同時に分析できるため、分析効率を向上することができる。
【0131】
また、上記した実施形態では、コア層4を、略角柱形状に形成したが、コア層4の形状としては、特に制限されず、コア層4を、例えば、断面視略半円形状(半円柱形状)、断面視略凸形状(凸柱形状)など、任意の形状に形成することができる。
【0132】
また、上記した実施形態では、金属薄膜7(または、金属粒子層8)を、サンプル配置部31内において、保護層5をすべて被覆するように形成したが、金属薄膜7(または、金属粒子層8)を、少なくとも、コア層4を被覆するように、コア層4の上側のみに形成することもできる。
【0133】
また、上記した実施形態では、SPRセンサセル1の上端部は開放されているが、SPRセンサセル1の上端部には、サンプル配置部31を被覆する蓋を設けることもできる。これによれば、測定中に、サンプルが外気に接触することを防止することができる。
【0134】
また、サンプル配置部31を被覆する蓋に、サンプル配置部31内へサンプル(液状)を注入するための注入口と、サンプル配置部31からサンプルを排出するための排出口とを設け、サンプルを、注入口から注入し、サンプル配置部31内を通過させて、排出口から排出することもできる。これによれば、サンプル配置部31内にサンプルを流しながら、サンプルの物性を連続的に測定することができる。
【実施例】
【0135】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
【0136】
製造例1(第1樹脂の製造)
ビスフェノキシエタノールフルオレングリシジルエーテル35質量部、脂環式エポキシ樹脂である3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート40質量部、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート25質量部および4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50質量%プロピオンカーボネート溶液2質量部を混合することにより、第1樹脂(非溶剤系の感光性エポキシ樹脂組成物)を調製した。
【0137】
製造例2(第2樹脂の製造)
ビスフェノキシエクノールフルオレングリシジルエーテル70質量部、1,3,3−トリス{4−〔2−(3−オキセクニル)〕ブトキシフェニル}ブタン30質量部および4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50質量%プロピオンカーボネート溶液1質量部を乳酸エチルに溶解することにより、第2樹脂(感光性エポキシ樹脂組成物)を調製した。
【0138】
実施例1
シリコン基板(基板)の上に、製造例2で得られた第2樹脂を用いて、厚み50μm、幅50μmの略角柱形状に塗布した後、70℃で10分加熱することにより溶剤を揮発させた。次に、フオトマスクを介して、紫外線照射し、さらに70℃で10分加熱して反応を完了させた。次に、γ−ブチロラクトンの現像液で現像し、厚み50μm、幅50μmの略角柱形状のコア層を形成した(図3(a)参照)。
【0139】
次いで、製造例1で得られた第1樹脂を、コア層の表面(上面)からの厚みが100μmとなるように、コア層を披覆するように基板上に塗布し、140℃で5分加熱した。この加熱処理により、第1樹脂がコア層の表層の第2樹脂に浸透した(図3(b)参照)。
【0140】
次いで、紫外線照射して、さらに120℃で10分加熱することにより反応を完了させた。これにより、アンダークラッド層を形成するとともに、コア層のアンダークラッド層と接触する表層に、第1樹脂が第2樹脂に浸透されている樹脂混合層を形成し、また、樹脂混合層に埋設される単一樹脂層を形成した(図3(c)参照)。
【0141】
次いで、アンダークラッド層およびコア層からシリコン基板を剥離させ(図3(d)参照)、アンダークラッド層およびコア層を上下反転させた。
【0142】
次いで、アンダークラッド層およびコア層の上に、スパッタリング法により、厚み10nmの二酸化ケイ素薄膜を保護層として形成した(図3(e)参照)。
【0143】
次いで、アンダークラッド層およびコア層の上に、オーバークラッド層を、第1樹脂を用いて、開口部を備える形状に形成し、これにより、サンプル配置部を区画した(図3(f)参照)。
【0144】
次いで、サンプル配置部(オーバークラッド層の開口部)に、スパッタリング法により、1nmのクロム薄膜、および、50nmの金薄膜を順次積層し、金属薄膜を形成した(図3(g)参照)。
【0145】
このようにして、SPRセンサセルを得た。なお、アンダークラッド層の屈折率は、1.531、単一樹脂層の屈折率は、1.584であり、混合樹脂層の屈折率は、その積層方向において、アンダークラッド層側から単一樹脂層側に向けて、1.531から1.584に連続的に変化していた。
【0146】
実施例2
クロム薄膜および金薄膜の積層に代えて、金粒子分散液(EMGC50、British BioCell International Ltd.製)を、サンプル収容部内の保護層に塗布し、乾燥した後、保護層に付着していない金粒子を除去するために、サンプル収容部内の保護層をエタノールで洗浄し、保護層の上に金属粒子層を形成した以外は、実施例1と同様にして、SPRセンサセルを得た(図4参照)。なお、金属粒子(金粒子)による被覆率は、30%であった。
【0147】
比較例1
140℃で5分加熱する工程を省略して、第1樹脂が第2樹脂(コア層の表層)に浸透しないようにした以外は、実施例1と同様にして、樹脂混合層を備えていないSPRセンサセルを得た。
【0148】
比較例2
140℃で5分加熱する工程を省略して、第1樹脂が第2樹脂(コア層の表層)に浸透しないようにした以外は、実施例2と同様にして、樹脂混合層を備えていないSPRセンサセルを得た。
【0149】
評価
各実施例および各比較例により得られたSPRセンサセルを、SPRセンサ(図5参照)に固定した。
【0150】
その後、SPRセンサセルのサンプル収容部に、サンプルとして濃度が異なる5種のエチレングリコール水溶液(濃度:1質量%(屈折率:1.33389)、5質量%(屈折率:1.33764)、10質量%(屈折率:1.34245)、20質量%(屈折率:1.35231)、30質量%(屈折率:1.36249))を50μL投入し、コア層の一端から、実施例1および比較例1では波長555nm、実施例2および比較例2では波長633nmの光を入射し、他端から射出した光の強度を測定した。
【0151】
そして、エチレングリコール水溶液が無い状態での光の強度を100%とした場合の透過率(%)を求めた。
【0152】
そして、エチレングリコール水溶液の屈折率をX軸、透過率をY軸として、それらの関係をXY座標にプロットして、検量線を作成し、その傾きを求めた。その値を表1に示す。なお、傾き(絶対値)が大きいほど検出感度が高いことを示す。
【0153】
【表1】

【0154】
結果
樹脂混合層を形成した各実施例は、樹脂混合層を形成していない比較例に比べ、傾き(絶対値)が大きかった。
【符号の説明】
【0155】
1 SPRセンサセル
2 光導波路
3 アンダークラッド層
4 コア層
6 オーバークラッド層
11 SPRセンサ
23 樹脂混合層
30 検知部
31 サンプル配置部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知部と、前記検知部に隣接するサンプル配置部とを備え、
前記検知部は、第1樹脂からなるアンダークラッド層と、第2樹脂からなり、前記アンダークラッド層に被覆されるコア層とを備える光導波路を備え、
前記コア層の前記アンダークラッド層と接触する表層に、前記第1樹脂が前記第2樹脂に浸透されている樹脂混合層が、形成されていることを特徴とする、SPRセンサセル。
【請求項2】
請求項1に記載のSPRセンサセルを備えることを特徴とするSPRセンサ。
【請求項3】
基板の上に、第2樹脂からなるコア層を所定パターンで形成する工程と、
前記基板の上において、第1樹脂を、前記コア層を被覆するとともに、前記コア層の表層に前記第1樹脂を浸透させるように、塗布および加熱する工程と、
前記第1樹脂を硬化させることにより、前記第1樹脂からなるアンダークラッド層を形成するとともに、前記コア層の前記アンダークラッド層と接触する表層に、前記第1樹脂が前記第2樹脂に浸透されている樹脂混合層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、SPRセンサセルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−107902(P2012−107902A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255168(P2010−255168)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】