説明

SSB変調回路

【課題】 複素周波数変換とLPFの組合せにより、演算の処理量を軽減できるSSB変調回路を提供する。
【解決手段】 変調の場合に、入力した低周波信号をCOSテーブル6と乗算器4での乗算処理、SINテーブル7と乗算器5での乗算処理により同相信号と直交信号へ変換する直交変換手段と、その後COSテーブル8及びSINテーブル11と乗算器9,10,12,13での乗算の組合せである複素周波数変換を複素周波数変換部28で行った後に、LPF16,17で低帯域を通過させる処理を行い、同相信号へはCOSテーブル19と乗算器18での乗算処理、直交信号へはSINテーブル20と乗算器21での乗算処理を行った後に合成器22で合成処理を行ってSSB変調成分を得るSSB変調回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信装置におけるデジタル信号処理によるSSB(Single Side Band:単側波帯)変調処理方式及びSSB復調処理方式に係り、特に、計算量を大幅に軽減し、回路規模を小さくしたSSB変調回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
本発明は、デジタル信号処理によりSSB変調処理を行う送信装置及びデジタル信号処理によりSSB復調処理を行う受信装置において、従来の処理方法ではヒルベルトフィルタ処理を行う必要があった。
そのため、3kHzの帯域内で0.3〜2.7kHzの通過帯域幅において、70dB以上の十分な側波帯抑圧比を得るためには、ヒルベルトフィルタのタップ数を例えば300タップ程度とする必要があり、演算量が多いという問題点があった。
【0003】
[従来のSSB変調回路:図7]
次に、従来のSSB変調回路について図7を参照しながら説明する。図7は、従来のSSB変調回路の構成ブロック図である。
従来のSSB変調回路は、図7に示すように、入力された低周波信号が低周波信号増幅301で増幅され、アンチエリアシングフィルタのLPF(低域通過フィルタ:Low Pass Filter)302により帯域制限されAD(アナログ/デジタル)変換器303に入力される。
AD変換器303はアナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号は、デジタル信号処理部316に入力される。
【0004】
デジタル信号処理部316でSSB変調処理を行う構成は、遅延部309と、ヒルベルト変換フィルタ308と、正弦波テーブル(SINテーブル)306と、余弦波テーブル(COSテーブル)305と、遅延部309からの出力とSINテーブル306からの出力を乗算する乗算器304と、ヒルベルト変換フィルタ308からの出力とCOSテーブル305からの出力を乗算する乗算器307と、乗算器304からの出力と乗算器307からの出力を合成する合成器310とを備えている。
【0005】
[従来のSSB変調動作]
図7におけるSSB変調処理(デジタル信号処理)動作の概略は、低周波信号がヒルベルト変換フィルタ308及び遅延部309に入力される。
そして、ヒルベルト変換フィルタ308でヒルベルト変換(90度移相)された信号が乗算器307に入力され、遅延部309でヒルベルト変換フィルタ308と同一の遅延時間だけ遅延された信号が乗算器304に入力される。
更に、乗算器307で遅延部309からの出力とSINテーブル306からの値が乗算されると共に、乗算器307でCOSテーブル305からの値とヒルベルト変換フィルタ308からの出力が乗算され、乗算器304と乗算器307での乗算結果が合成器310で加算(又は減算)されて変調出力となる。
【0006】
今、変調を行う入力信号(低周波信号)をEm{sin(pt)}(pを低周波信号の角周波数、Emを低周波信号の振幅とする。)とするとヒルベルト変換フィルタ308の出力はEm{sin(pt+90°)}となる。
そして、SIN(正弦波)テーブル306の搬送波信号をEc{sin(ωt)}
とすると、COS(余弦波)テーブル305の出力はEc{cos(ωt)}となる。
【0007】
乗算器307の出力は、乗算器307及びヒルベルト変換フィルタ308の利得に関する係数をKとすると次式となる。
・Em ・Ec{sin(pt+90°)}{sin(ωt+90°)}
=K・Em ・Ec{cos(pt)}{cos(ωt)}
【0008】
同様にして、乗算器304の出力は、乗算器304の利得及び遅延部309に関する係数をKとすると、K・Em ・Ec{sin(pt)}{sin(ωt)}となる。
従って、合成器310の出力は乗算器304と乗算器307の利得が同一(K=K=K)として各々の和を取ると、
K・Em ・Ec{cos(pt)}{cos(ωt)}+K・Em ・Ec{sin(pt)}{sin(ωt)}
=K・Em ・Ec{cos(ωt−pt)} (1)
となり下側波帯が得られる。
【0009】
同様にして、乗算器304と乗算器307の利得が同一として各々の差を取ると、
K・Em ・Ec{cos(pt)}{cos(ωt)}−K・Em ・Ec{sin(pt)}{sin(ωt)}
=K・Em ・Ec{cos(ωt+pt)} (2)
となり上側波帯が得られる。
【0010】
この振幅特性と位相特性いずれかでも誤差がある場合、復調出力信号には不要な側波帯の信号が漏えいすることになる。誤差の原因はヒルベルト変換フィルタのタップ数が少ない場合に90°の移相が低周波信号の周波数によって異なる場合や90°の移相に対する偏差が生じる。
【0011】
変調入力信号の移相量(ヒルベルト変換フィルタ308での移相量)を90°+δとする。また、SINテーブル306とCOSテーブル305の90°の位相差は、デジタル信号処理を行うため偏差がないものとする。
【0012】
この場合の希望信号出力に対する不要側波帯出力の比は、
不要側波帯出力/希望波出力=
√{(K+K−2・K・Kcos(δ))/(K+K+2・K・Kcos(δ))} (3)
=Kの場合には、√{(1−cos(δ))/(1+cos(δ))} (4)
δ=0のときは、(K−K)/(K+K) (5)
で表される。
【0013】
従って、理想的なチャネルの分離が行われるためには、K=Kの条件に加えてδ=0が同時に成立することが必要である。このKとK及びδの誤差(振幅特性と位相特性の誤差)、すなわち90°移相処理(ヒルベルト変換処理)の特性が重要になる。
【0014】
デジタル信号処理による処理ではこの90°移相処理をヒルベルト(変換)フィルタにより実現できるが、設計に関しては十分注意を要する。最大60dBの不要側波帯減衰量を得るためには、例としてK=Kの場合にδの最大許容値は0.1°が要求される。このような性能はアナログ素子では不可能であり、デジタル信号処理の方が実現可能性があり、図7の構成においてヒルベルト変換フィルタで実現した場合、60dBの不要側波帯減衰量では約120タップ程度、70dB以上であれば約300タップ程度のFIR(Finite Impulse Response :有限インパルス応答 )フィルタでの演算を要する。
【0015】
[従来のSSB復調回路:図8]
次に、従来のSSBを復調する方法としてデジタル信号処理で行う方法を述べる。図8は、従来のデジタル信号処理におけるSSB復調回路の構成ブロック図である。
図8に示す従来のSSB復調回路におけるデジタル信号処理部は、IF信号を入力する乗算器407,410と、乗算器407に余弦波(COS)信号を出力する余弦波(COS)テーブル409と、乗算器410に正弦波(SIN)信号を出力する正弦波(SIN)テーブル408と、乗算器407の出力をヒルベルト変換するヒルベルト変換フィルタ411と、乗算器410の出力を遅延させる遅延部412と、ヒルベルト変換器フィルタ411,遅延部412の出力を加算又は減算して復調出力を得る合成器413とから構成されている。
【0016】
尚、デジタル信号処理部の入力段には、空中線より受信信号を入力し、帯域ろ波を行う帯域ろ波器401と、帯域ろ波された信号について低雑音を増幅する低雑音増幅器402と、低雑音増幅器402からの出力信号と局部発振器404からの信号を混合する混合器403と、混合器403からの出力信号の低周波を通過させるLPF405と、LPF405からの出力をアナログからデジタルに変換するAD変換器406が設けられている。
また、デジタル信号処理部の出力段には、合成器413からの出力をデジタルからアナログに変換するDA変換器414と、DA変換器414からの出力信号の低周波を通過させるLPF415が設けられている。
【0017】
いま、受信機の中間周波段の出力として復調搬送波の上下にPチャネル、Qチャネルの2つの信号があるとすると入力信号=P{sin(Wt+pt)}+Q{sin(Wt−qt)}とする。
PとQは、各々のチャネルにおける信号の振幅である。
【0018】
乗算器407に供給されるCOSテーブル409の搬送波をEc{cos(Wt+△)}=Ec{sin(Wt+90°+△)、乗算器410に供給されるSINテーブル408の搬送波をEc{sin(Wt)}とすると、乗算器407及び乗算器410から出力される信号はそれぞれ次式となる。
ここで、△はCOSテーブル408及びSINテーブル409の偏差であり、デジタル信号処理なので実用上無視できる為「0」とする。
【0019】
乗算器407の出力E=Psin(pt)−Qsin(qt)=Psin(pt)+Qsin(qt+180°) (6)
乗算器410の出力E=Pcos(pt)+Qcos(qt)=Psin(pt+90゜)+Qsin(qt+90゜) (7)
ここで、ヒルベルトフィルタ411の出力は、誤差をδとすると、B{Psin(pt+90°+δ)+Qsin(qt−90゜+δ)}になる。
遅延部412の出力は、A{Psin(pt+90゜)+Qsin(qt+90゜)}=A{Pcos(pt)+Qcos(qt)}となる。AとBは振幅値の係数である。
【0020】
ここで、合成器413による加算処理による2つの和出力は、δ=0のときに次式となる。
和信号=A{Pcos(pt)+Qcos(qt)}+B{Pcos(pt)−Qcos(qt)}
更に、A=Bの場合に、
和信号=2APcos(pt) (8)
となり、和信号として上側波帯のPチャネルだけが現われる。
【0021】
合成器413で差信号とすると、
差信号=A{Pcos(pt)+Qcos(qt)}−B{Pcos(pt)−Qcos(qt)}
更に、A=Bの場合に、
差信号=2AQcos(qt) (9)
となり、差信号として下側波帯のQチャネルだけが現われる。
【0022】
この振幅特性と位相特性いずれかでも誤差がある場合、復調出力信号には不要な側波帯の信号が漏えいすることになる。その希望信号出力に対する比は、和信号及び差信号共に次式となる。
不要側波帯出力/希望波出力
=√{(A+B−2ABcos(δ))/(A+B+2ABcos(δ))} (10)
【0023】
従って、理想的なチャネルの分離が行われるためには、A=Bの条件に加えて、δ=0が同時に成立することが必要である。
よって、δ=0、A=Bとしたときの不要側波帯の除去特性がこの復調器の性能となる。このδの誤差、すなわちヒルベルトフィルタ411の特性が重要になる。このδの誤差に関しては和信号及び差信号いずれも同じであり次式で表せる。
【0024】
例としてA=Bとすると、
不要側波帯出力/希望波出力=√{(1−cos(δ))/(1+cos(δ))}
=tan(δ/2) (11)
【0025】
最大60dBの不要側波帯減衰比を得るためには、式(11)によりδの最大許容値は0.1°が要求される。このような性能はヒルベルトフィルタのタップ数が120タップ程度は必要である。式(10)により振幅偏差と位相偏差の両者を勘案すれば70dB程度の性能がSSB復調器では要求されるため、ヒルベルトフィルタのタップ数が300タップ程度以上必要となる。
【0026】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2001−284966号公報「SSB変調方式及びSSB復調方式」(出願人:株式会社日立国際電気/特許文献1)がある。
特許文献1には、入力を順次遅延させる遅延手段と、入力若しくは遅延出力をインパルス応答の中心に対して対称となる出力同士を減算する減算手段と、減算出力とヒルベルト変換の伝達関数を乗算する乗算手段と、乗算出力を加算する加算手段とを備えるヒルベルト変換フィルタを有するSSB変調方式及びSSB復調方式が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2001−284966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、従来の送信装置におけるデジタル信号処理によるSSB変調回路及び受信装置におけるデジタル信号処理によるSSB復調回路では、従来のヒルベルトフィルタ処理を行う必要があるため、3kHzの帯域内で0.3〜2.7kHzの通過帯域幅において、70dB以上の十分な側波帯抑圧比を得るためにはヒルベルトフィルタのタップ数を例えば300タップ程度とする必要があり、演算量が多いという問題点があった。
【0029】
[発明の目的]
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、複素周波数変換とLPFの組合せにより、演算の処理量を軽減できるSSB変調回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、デジタル信号処理によりSSB変調処理を行うSSB変調回路であって、SSB変調を行う信号を分岐して、第1の周波数の余弦波信号と第1の周波数の正弦波信号を別々に乗算して、同相信号と直交信号のデジタル信号を出力する直交変換部と、前記同相信号及び前記直交信号に対して、上側波帯又は下側波帯の一方の中心周波数が「0」となるよう複素周波数変換を行う複素周波数変換部と、前記複素周波数変換された同相信号及び直交信号に対して、前記中心周波数が「0」となるようにした信号帯域のみを抽出する低域通過フィルタと、前記低域通過フィルタから出力される同相信号と直交信号に対して、該同相信号に第2の周波数の余弦波信号を乗算し、該直交信号に第2の周波数の正弦波信号を乗算し、各々の乗算結果を合成する合成処理部とを有することを特徴とする。
【0031】
デジタル信号処理によりSSB復調処理を行うSSB復調回路であって、
SSB変調された信号に対して局部発振器からの信号を乗算して同相信号を出力すると共に、前記SSB変調された信号に対して前記局部発振器からの信号を90度移相処理した信号を乗算して直交信号を出力する直交変換部と、
前記同相信号及び前記直交信号に対して、上側波帯又は下側波帯の一方の中心周波数が「0」となるよう複素周波数変換を行う複素周波数変換部と、
前記複素周波数変換された同相信号及び直交信号に対して、前記中心周波数が「0」となるようにした信号帯域のみを抽出する低域通過フィルタと、
前記低域通過フィルタから出力される同相信号と直交信号に対して、該同相信号に第2の周波数の余弦波信号を乗算し、該直交信号に第2の周波数の正弦波信号を乗算し、各々の乗算結果を合成する合成処理部とを有することを特徴とするSSB復調回路。
【0032】
デジタル信号処理によりSSB復調処理を行うSSB復調回路であって、
SSB変調された信号を分岐して、第1の周波数の余弦波信号と第1の周波数の正弦波信号を別々に乗算して、同相信号と直交信号のデジタル信号を出力する直交変換部と、
前記同相信号及び前記直交信号に対して、上側波帯又は下側波帯の一方の中心周波数が「0」となるよう複素周波数変換を行う複素周波数変換部と、
前記複素周波数変換された同相信号及び直交信号に対して、前記中心周波数が「0」となるようにした信号帯域のみを抽出する低域通過フィルタと、
前記低域通過フィルタから出力される同相信号と直交信号に対して、該同相信号に第2の周波数の余弦波信号を乗算し、該直交信号に第2の周波数の正弦波信号を乗算し、各々の乗算結果を合成する合成処理部とを有することを特徴とするSSB復調回路。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、直交変換部が、SSB変調を行う信号を分岐して、第1の周波数の余弦波信号と第1の周波数の正弦波信号を別々に乗算して、同相信号と直交信号のデジタル信号を出力し、複素周波数変換部が、同相信号及び直交信号に対して、上側波帯又は下側波帯の一方の中心周波数が「0」となるよう複素周波数変換を行い、低域通過フィルタが、複素周波数変換された同相信号及び直交信号に対して、中心周波数が「0」となるようにした信号帯域のみを抽出し、合成処理部が、低域通過フィルタから出力される同相信号と直交信号に対して、該同相信号に第2の周波数の余弦波信号を乗算し、該直交信号に第2の周波数の正弦波信号を乗算し、各々の乗算結果を合成するSSB変調回路としているので、複素周波数変換部における複数周波数変換処理と低域通過フィルタにおけるろ波により、演算の処理量を軽減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るSSB変調回路の構成ブロック図である。
【図2】SSB変調処理1の波形を示す図である。
【図3】SSB変調処理2の波形を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る第1のSSB復調回路の構成ブロック図である。
【図5】SSB復調処理の波形を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る第2のSSB復調回路の構成ブロック図である。
【図7】従来のSSB変調回路の構成ブロック図である。
【図8】従来のデジタル信号処理におけるSSB復調回路の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るSSB変調回路は、送信機において用いられ、送信(変調)の場合に、入力した低周波信号をCOSテーブルの乗算処理、SINテーブルの乗算処理により同相信号と直交信号へ変換する手段と、その後COSテーブル又はSINテーブルの乗算の組合せである複素周波数変換を行った後に、LPF(低域通過フィルタ)で低帯域を通過させる処理を行い、同相信号へはCOSテーブルの乗算処理、直交信号へはSINテーブルの乗算処理を行った後に合成処理によりSSBの変調処理を行うものである。
【0036】
また、本発明の実施の形態に係るSSB復調回路は、受信機において用いられ、従来のフィルベルトフィルタを使用する方式に替えて、受信(復調)の場合は入力信号を同相信号と直交信号へ変換する手段と、その後COSテーブル又はSINテーブルの乗算の組合せである複素周波数変換を行った後に、LPF(低域通過フィルタ)で低帯域を通過させる処理を行い、同相信号へはCOSテーブルの乗算処理、直交信号へはSINテーブルの乗算処理を行った後に合成処理によりSSBの復調処理を行うものである。
【0037】
複素周波数変換では正弦波及び余弦波のテーブルにより乗算器が4個及び加算(減算)器が2個で構成されているために、ヒルベルトフィルタ処理より処理量を大幅に低減することが可能である。
【0038】
つまり、変調処理及び復調処理において、いずれもSINテーブル及びCOSテーブルにより乗算処理を行うものであり、ヒルベルトフィルタのようにタップ数が300タップ以上と多く、それに伴う乗算処理に比べると上記LPF処理のフィルタタップ数が各々最大でも60タップ程度であることや、上記COSテーブル及びSINテーブルの乗算並びにその組合せである複素周波数変換の乗算処理の個数が1サンプリング当たり合計8個であることを加味しても総合的な乗算回数が大幅に処理が軽減できる。
【0039】
[本SSB変調回路:図1]
本発明の実施の形態に係るSSB変調回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るSSB変調回路の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係るSSB変調回路(本SSB変調回路)は、図1に示すように、低周波増幅器1と、LPF2と、AD変換器3と、乗算器4と、乗算器5と、COSテーブル6と、SINテーブル7と、COSテーブル8と、乗算器9と、乗算器10と、SINテーブル11と、乗算器12と、乗算器13と、加算器14と、加算器15と、LPF16と、LPF17と、乗算器18と、COSテーブル19と、SINテーブル20と、乗算器21と、合成器22と、DA変換器23と、LPF24と、混合器25と、局部発振器26と、BPF(Band Pass Filter:帯域通過フィルタ)27とを基本的に有している。
【0040】
ここで、乗算器4から合成器22までが、デジタル信号処理部を構成している。
また、COSテーブル8から加算器15までが、複素周波数変換部28を構成している。
尚、請求項における「直交変換部」は、乗算器4、乗算器5、COSテーブル6、SINテーブル7に相当し、「複素周波数変換部」は、複素周波数変換部28に相当し、「低域通過フィルタ」は、LPF16、LPF17に相当し、「合成処理部」は、乗算器18、COSテーブル19、SINテーブル20、乗算器21、合成器22に相当している。
【0041】
[本SSB変調回路の各部]
本SSB変調回路の各部について具体的に説明する。
低周波増幅器1は、入力した低周波信号を増幅し、LPF2に出力する。
LPF2は、アンチエリアシングフィルタであり、低周波増幅器1から入力された信号について低帯域を通過させてAD変換器3に出力する。
AD変換器3は、LPF2からの信号をアナログ/デジタル変換して乗算器4と乗算器5に出力する。
【0042】
乗算器4は、AD変換器3からのデジタル信号を同相信号にするためにCOSテーブル6からデータを入力し、デジタル信号とデータとを乗算し、乗算器9と乗算器10に出力する。
つまり、乗算器4は、第1の周波数の余弦波信号を低周波信号のデジタル信号に乗算して角周波数に変換し、同相信号を出力する。
また、乗算器5は、AD変換器3からのデジタル信号を直交信号にするためにSINテーブル7からデータを入力し、デジタル信号とデータとを乗算し、乗算器12と乗算器13に出力する。
つまり、乗算器5は、第1の周波数の正弦波信号を低周波信号のデジタル信号に乗算して角周波数に変換し、直交信号を出力する。
COSテーブル6は、同相信号に変換するための第1の周波数の余弦波のデータ(角周波数)を記憶する。
SINテーブル7は、直交信号に変換するための第1の周波数の正弦波のデータ(角周波数)を記憶する。
【0043】
COSテーブル8は、USB(上側波帯)又はLSB(下側波帯)のいずれか一方の中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換するための余弦波のデータを記憶する。
乗算器9は、乗算器4からの出力とCOSテーブル8からのデータを乗算し、加算器14に出力する。
乗算器10は、乗算器4からの出力とSINテーブル11からのデータを乗算し、加算器15に出力する。
SINテーブル11は、USB(上側波帯)又はLSB(下側波帯)のいずれか一方の中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換するための正弦波のデータを記憶する。
【0044】
乗算器12は、乗算器5からの出力とSINテーブル11からのデータを乗算し、加算器14に出力する。
乗算器13は、乗算器5からの出力とCOSテーブル8からのデータを乗算し、加算器15に出力する。
【0045】
つまり、乗算器9では、同相信号に余弦波信号を乗算することで、USB又はLSBのいずれか一方の中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換する周波数変換を行っている。
また、乗算器10では、同相信号に正弦波信号を乗算することで、USB又はLSBのいずれか一方の中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換する周波数変換を行っている。
また、乗算器12では、直交信号に正弦波を乗算することで、USB又はLSBのいずれか一方の中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換する周波数変換を行っている。
また、乗算器13では、直交信号に余弦波を乗算することで、USB又はLSBのいずれか一方の中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換する周波数変換を行っている。
【0046】
加算器14は、乗算器9の出力と乗算器12の出力を加算し、同相出力としてLPF16に出力する。つまり、周波数変換された同相信号(余弦波乗算)と周波数変換された直交信号(正弦波乗算)が加算されることで、同相出力が複素周波数変換されたことになる。
加算器15は、乗算器13の出力から乗算器10の出力を減算し、直交出力としてLPF17に出力する。つまり、周波数変換された直交信号(余弦波乗算)から周波数変換された同相信号(正弦波乗算)が減算されることで、直交出力が複素周波数変換されたことになる。
【0047】
LPF16は、加算器14からの出力について低帯域を通過させ、乗算器18に出力する。つまり、同相出力について、中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換した周波数帯域のみを通過させる処理を行う。
LPF17は、加算器15からの出力について低帯域を通過させ、乗算器21に出力する。つまり、直交出力について、中心周波数をベースバンドの周波数「0」に変換した周波数帯域のみを通過させる処理を行う。
【0048】
乗算器18は、LPF16からの出力とCOSテーブル19からのデータを乗算し、合成器22に出力する。つまり、同相出力を第2の周波数に変換する処理を行う。
COSテーブル19は、第2の周波数の余弦波のデータ(角周波数)を記憶する。
SINテーブル20は、第2の周波数の正弦波のデータ(角周波数)を記憶する。
乗算器21は、LPF17からの出力とSINテーブル20からのデータを乗算し、合成器22に出力する。つまり、直交出力を第2の周波数に変換する処理を行う。
合成器22は、乗算器18からの出力と乗算器21からの出力を合成してDA変換器23に出力する。当該合成器22において、SSB変調波が得られる。
【0049】
DA変換器23は、合成器22からの出力をデジタル/アナログ変換して、アナログ信号をLPF24に出力する。
LPF24は、DA変換器23からの出力について低帯域を通過させる。
混合器25は、LPF24からの出力と局部発振器26の発振信号を混合し、BPF27に出力する。
局部発振器26は、無線送信を行うための基準信号を発振する。
BPF27は、混合器25からの出力について特定帯域を通過させてアンテナに出力する。
【0050】
[本SSB変調回路の動作]
本SSB変調回路の動作について説明する。
入力された低周波信号は低周波増幅器1により増幅され、アンチエリアシングフィルタの目的のLPF2により周波数的にサンプリング周波数に対して折り返し位置にある信号が除去され、AD変換器3によりアナログからデジタル信号へ変換される。
【0051】
デジタル信号処理部では、入力された信号がCOSテーブル6からのデータと乗算器4により乗算され、同相信号になる。また、入力された信号がSINテーブル7からのデータと乗算器5により乗算され、直交信号になる。
【0052】
[同相信号と直交信号:図2(a)]
同相信号と直交信号に変換された信号は、図2(a)で示される。図2は、SSB変調処理1の波形を示す図である。図2(a)では、直交変調処理後の波形を示している。図では、縦軸が電力(振幅)を示し、横軸が周波数を示している。
入力信号を直交変調すると、周波数fcに対してΔf下側に下側波帯(LSB:Lower Side Band)が、Δf上側に上側波帯(USB:Upper Side Band)が形成される。
【0053】
同相信号とCOSテーブル8の出力を乗算器9で乗算した出力と、直交信号とSINテーブル11の出力を乗算器12で乗算した信号とを、加算器14で加算して複素周波数変換部28の同相出力とする。
【0054】
直交信号とCOSテーブル8の出力を乗算器13で乗算した出力から、同相信号とSINテーブル11の出力を乗算器10で乗算した信号を、加算器15で減算して複素周波数変換部28の直交出力とする。
【0055】
[複素周波数変換のUSB信号:図2(b)]
複素周波数変換部28の出力は、所望の変調波がUSB(上側波帯)の場合、図2(b)で示されるように、USB(上側波帯)の中心周波数がベースバンドの周波数「0」になるように変換される。
【0056】
[複素周波数変換のLSB信号:図2(c)]
LSB(下側波帯)が所望の変調波の場合も図2(c)で示されるように、LSB(下側波帯)の中心周波数がベースバンドの周波数「0」になるように変換される。
所望の変調波がUSBの場合か、LSBの場合かを選択する場合には、COSテーブル8及びSINテーブル11の周波数を変更すればよいので、USB/LSB切り替え信号をCOSテーブル8及びSINテーブル11に入力して各々のテーブルの値を変更する。
【0057】
[LPF処理後のUSB信号:図3(d)]
複素周波数変換部28の同相出力と直交出力は、各々LPF16及びLPF17の低域通過フィルタにより低帯域の信号を通過させる。この2つのLPFにより図3(d)で示されるように、所望波がUSBの場合はLSBが除去される。図3は、SSB変調処理2の波形を示す図である。
【0058】
[LPF処理後のLSB信号:図3(e)]
図3(e)に示すように、所望波がLSBの場合はLPF16及びLPF17によりUSBが除去される。
【0059】
[周波数変換処理後のUSB信号:図3(f)]
その後、COSテーブル19とLPF16の出力が乗算器18で乗算された出力と、SINテーブル20とLPF17の出力が乗算器21で乗算された出力とが、合成器22で加算又は減算されて、SSB変調波として出力される。
周波数変換処理後のSSB変調波がUSB信号の場合は、図3(f)で示されるようなSSB変調波として出力される。
【0060】
[周波数変換処理後のLSB信号:図3(g)]
また、周波数変換処理後のSSB変調波がLSB信号の場合は、図3(g)で示されるようなSSB変調波として出力される。
【0061】
図1において、入力された低周波信号をcos(pt)とする。乗算器4の出力は、COSテーブル6の角周波数をωctとすると、次式となる。
{cos(pt)}{cos(ωct)}
=(1/2){cos(ωct+pt)+cos(ωct−pt)} (12)
【0062】
乗算器5の出力は、SINテーブル7の角周波数もCOSテーブル6と同じωctとすると、次式となる。
{cos(pt)}{sin(ωct)}
=(1/2){sin(ωct+pt)+sin(ωct−pt)} (13)
【0063】
乗算器9の出力は、COSテーブル8の角周波数をωc′'tとすると、COSテーブル8と乗算器4の出力が乗算器9で乗算され、次式となる。
(1/2){sin(ωct+pt)+sin(ωct−pt)}cos(ωc′t)
=(1/4){cos(ωc′t−ωct−pt)+cos(ωc′t−ωct+pt)} (14)
【0064】
乗算器12の出力は、SINテーブル11の角周波数をωc′tとすると、SINテーブル11と乗算器5の出力が乗算器12で乗算され、次式となる。
(1/2){cos(ωct+pt)+cos(ωct−pt)}sin(ωc′t)
=(1/4){cos(ωc′t−ωct−pt)+cos(ωc′t−ωct+pt)} (15)
【0065】
乗算器10の出力は、SINテーブル11の角周波数をωc′tとすると、SINテーブル11と乗算器4の出力が乗算器10で乗算され、次式となる。
(1/2){cos(ωct+pt)+cos(ωct−pt)}sin(ωc′t)
=(1/4){sin(ωc′t−ωct−pt)+sin(ωc′t−ωct+pt)} (16)
【0066】
乗算器13の出力は、COSテーブル8の角周波数をωc′tとすると、COSテーブル8と乗算器5の出力が乗算器13で乗算され、次式となる。
(1/2){sin(ωct+pt)+sin(ωct−pt)}cos(ωc′t)
=(1/4){sin(ωct−ωc′t−pt)+sin(ωct−ωc′t+pt)} (17)
【0067】
加算器14では、乗算器9と乗算器12の出力が加算(式(8)+式(9))され、次式となる。
+14=(1/2){cos(ωc′t−ωct−pt)+cos(ωc′t−ωct+pt)} (18)
【0068】
加算器15では、乗算器10の反転出力と乗算器13の出力が加算(式(11)−式(10))され、次式となる。
+15=−(1/2){sin(ωc′t−ωct−pt)+sin(ωc′t−ωct+pt)} (19)
【0069】
加算器14及び加算器15の同相信号及び直交信号の各々の出力はfC' > fCとして、図2(b)における(fC'−fC)=Δf/2(Δfは変調される信号の必要な帯域)となるようにfC' を選ぶようにする。
この場合は、図2(b)に示すように、USBが所望のSSB変調信号の場合である。
【0070】
図2(c)に示すように、LSBが所望のSSB変調信号の場合は、fC > fC'として、図2(c)における(fC −fC')=Δf/2(Δfは変調される信号の必要な帯域)となるようにfC' を選ぶようにする。
【0071】
LPF16及びLPF17においてUSBの場合は、各々式(12)及び式(13)でcos(ωc′t−ωct+pt)及びsin(ωc′t−ωct+pt)の成分が抽出される。LSBの場合は各々cos(ωc′t−ωct−pt)及びsin(ωc′t−ωct−pt)が抽出される。
【0072】
LPF16の出力信号は、乗算器18で角周波数がωc′′のCOSテーブル19と乗算され、USBの場合、次式となる。この場合、BPF(帯域通過フィルタ)27により三角関数の乗算における周波数の和の成分のみ出力されるものとすると、次式となる。
(1/2){cos(ωc′t−ωct+pt)}{cos(ωc′′t)}
=(1/4){cos(ωc′′t+ωc′t−ωct+pt)} (20)
【0073】
BPF27でなくとも図示されていないデジタル信号処理においてBPF処理を行ってもよい。尚、ωc′,ωc及びωc′′の周波数関係と当該BPFの特性については要求されるSSBの側帯波抑圧比に対してBPFの不要波抑圧比が同等以上となるように設計されることを想定している。
更に、差の信号の場合にはUSBとLSBが反転するが、予め図1のUSB/LSBの切り替えの極性により対応できる。差の信号の場合、BPF27に替えてLPF24で抽出してもよい。
【0074】
LPF17の出力信号は、乗算器21で角周波数がωc′′のSINテーブル20と乗算され、乗算器21の出力は、USBの場合において和の信号をBPFで抽出すると、次式となる。
(1/2){−sin(ωc′t−ωct+pt)}{sin(ωc′′t)}
=(1/4){cos(ωc′′t+ωc′t−ωct+pt)} (21)
【0075】
合成器22で式(14)と式(15)を加算することにより、USB波(SSB変調波)である(1/2){cos(ωc′′t+ωc′t−ωct+pt)}が得られる。
尚、式(6)〜式(15)の係数は計算の課程によるものなので、実際の信号は変調信号として適切な振幅の係数が増幅作用により乗じるものとする。
【0076】
LSBの場合もUSBの場合と同様に、和の信号を抽出するとして、cos(ωc′′t+ωc′t−ωct−pt)の変調波成分が得られる。
以上により、図3(f)又は(g)に示すように、SSB変調波(USB又はLSB)が得られる。
【0077】
[第1のSSB復調回路:図4]
次に、本発明の実施の形態に係る第1のSSB復調回路について図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る第1のSSB復調回路の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る第1のSSB復調回路(第1のSSB復調回路)は、図4に示すように、帯域ろ波器101と、低雑音増幅器102と、乗算器103と、乗算器104と、局部発振器105と、90度移相器106と、LPF107と、LPF108と、AD変換器109と、AD変換器110と、乗算器111と、乗算器112と、乗算器113と、乗算器114と、COSテーブル115と、SINテーブル116と、加算器117と、加算器118と、LPF119と、LPF120と、乗算器121と、COSテーブル122と、SINテーブル123と、乗算器124と、合成器125と、DA変換器126と、LPF127とを基本的に有している。
【0078】
ここで、乗算器111からDA変換器126までが、デジタル信号処理部を構成している。
また、乗算器111から加算器118までが、複素周波数変換部128を構成している。複素周波数変換部128mp構成及び動作は、図1の複素周波数変換部28と同様である。
尚、課題を解決するための手段に記載した「直交変換部」は、乗算器103、乗算器104、局部発振器105、90度移相器106、LPF107、LPF108、AD変換器109、AD変換器110に相当し、「複素周波数変換部」は、複素周波数変換部128に相当し、「低域通過フィルタ」は、LPF119、LPF120に相当し、「合成処理部」は、乗算器121、COSテーブル122、SINテーブル123、乗算器124、合成器125に相当している。
【0079】
[第1のSSB復調回路の動作]
次に、第1のSSB復調回路における動作を説明する。
復調処理においても変調処理と同様の処理方法により復調を行う。
入力されたSSB変調波の信号は、帯域ろ波器101により必要な帯域に制限され、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)102で所要の増幅度まで増幅され、乗算器103及び乗算器104に入力される。
【0080】
局部発信器105の信号は、乗算器103に入力され、入力された受信信号と乗算(混合)されて、LPF107(アンチエリアシングフィルタ)に入力される。
局部発信器105の他方の出力は、90度移相器106により90度移相され、乗算器104に入力され、入力された受信信号と乗算(混合)されて、LPF108(アンチエリアシングフィルタ)に入力される。
【0081】
LPF107及びLPF108の出力は、各々同相信号及び直交信号としてAD変換器109及びAD変換器110に入力され、各々アナログ信号からデジタル信号に変換されて複素周波数変換部128に入力される。
【0082】
複素周波数変換部128では、入力された同相信号とCOSテーブル115の出力を乗算器111で乗算した出力と、直交信号とSINテーブル116の出力を乗算器113で乗算した信号を加算器117で加算して複素周波数変換部128の同相出力とする。
複素周波数変換部128では、入力された直交信号とCOSテーブル115の出力を乗算器114で乗算した出力から、同相信号とSINテーブル116の出力を乗算器112で乗算した信号を加算器118で減算して複素周波数変換部128の直交出力とする。
【0083】
[SSB復調処理:図5]
図5に、図4のSSB復調回路におけるSSB復調処理を示す、図5は、SSB復調処理の波形を示す図である。
図5において、SSB変調波(USB)が希望波の場合を示しているが、図1及び図2,3の場合と同様に、図4の構成でCOSテーブル115とSINテーブル116の周波数を切り替えることによりLSBが希望波の場合とすることができる。
【0084】
[直交変調処理後の波形:図5(a)]
図5(a)では、上記アナログ処理でSSB変調波(USB)が直交復調され、LPF107及びLPF108に入力され、その出力がAD変換109及びAD変換110に入力された信号を表している。
この場合、SSB変調波(USB)の搬送周波数fcがベースバンドの周波数「0」に変換される。
【0085】
[複素周波数変換処理後図5(b)]
AD変換器109とAD変換器110から出力された信号は複素周波数変換部128に入力され、その出力は図5(b)で示されるように、USB(上側波帯)の中心周波数がベースバンドの周波数「0」になるように変換される。
【0086】
[LPF処理後の波形:図5(c)]
複素周波数変換部128の同相出力と直交出力は、各々LPF119及びLPF120の低域通過フィルタにより低帯域が通過される。このLPFにより図5(c)で示されるように、LSB(下側波帯)が除去される。
【0087】
[周波数変換後の波形:図5(d)]
その後、COSテーブル122からの出力とLPF119の出力が乗算器121で乗算され、SINテーブル123からの出力とLPF120の出力が乗算器124で乗算され、乗算器121の出力と乗算器124の出力が合成器125で合成されて、周波数変換が行なわれて、USBのSSB復調波すなわち低周波信号が出力される。
その低周波信号が、DA変換器126及びLPF127(スムージングフィルタ)により図5(d)で示されるように出力される。
SSB復調処理は、受信(復調)する所望波がUSBの場合であるが、図1のSSB変調処理と同様の原理によりUSBとLSBを切り替える。
【0088】
[第2のSSB復調回路:図6]
次に、本発明の実施の形態に係る第2のSSB復調回路(第2のSSB復調回路)について図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施の形態に係る第2のSSB復調回路の構成ブロック図である。
図6では、AD変換器に入力される信号がIF(中間周波数)の場合である。
【0089】
図6の第2のSSB復調回路において、図4のSSB復調回路との相違点は、図4のSSB復調回路では、局部発振器105、90度移相器106等を用いてアナログ処理にて同相信号と直交信号を生成したが、図6のSSB復調回路では、デジタル変換した信号を分岐して、COSテーブル208と乗算器207及びSINテーブル209と乗算器210を用いて同相信号と直交信号を生成していることである。
【0090】
尚、課題を解決するための手段に記載した「直交変換部」は、乗算器207、COSテーブル208、SINテーブル209、乗算器210に相当し、「複素周波数変換部」は、複素周波数変換部219に相当し、「低域通過フィルタ」は、LPF220、LPF221に相当し、「合成処理部」は、乗算器222、COSテーブル223、SINテーブル224、乗算器225、合成器226に相当している。
【0091】
[第2のSSB復調回路の動作]
入力されたSSB変調波の信号は、帯域ろ波器201により必要な帯域に制限され、低雑音増幅器(LNA)202で所要の増幅度まで増幅され、乗算器203に出力される。
局部発信器204の信号は、乗算器203に入力され、低雑音増幅器202から入力した受信信号と乗算器203で乗算(混合)され、LPF205(アンチエリアシングフィルタ)に入力される。
【0092】
LPF205の出力は、AD変換器206に入力され、各々アナログ信号からデジタル信号に変換されて乗算器207及び乗算器210に入力され、乗算器207で入力信号とCOSテーブル208の出力が乗算され、乗算器210で入力信号とSINテーブル209の出力が乗算され、各々同相信号及び直交信号となり、複素周波数変換部219に入力される。
【0093】
図5(a)では図4のSSB復調回路での処理と同様に、上記デジタル処理で直交復調された様子(複素周波数変換部219の入力信号)を示している。
複素周波数変換部219では、入力した同相信号とCOSテーブル211の出力を乗算器212で乗算し、直交信号とSINテーブル214の出力を乗算器215で乗算し、乗算器212の出力と乗算器215の出力を加算器217で加算して複素周波数変換部219の同相出力とする。
【0094】
また、複素周波数変換部219では、入力した直交信号とCOSテーブル211の出力を乗算器216で乗算し、同相信号とSINテーブル214の出力を乗算器213で乗算し、乗算器216の出力と乗算器213の出力を加算器218で減算して複素周波数変換部219の直交出力とする。
【0095】
複素周波数変換部219の出力は、図5(b)で示されるように、USB(上側波帯)の中心周波数がベースバンドの周波数「0」になるように変換される。
複素周波数変換部219の同相出力と直交出力は、各々LPF220及びLPF221の低域通過フィルタにより低帯域が通過される。このLPFにより図5(c)で示されるように、LSB(下側波帯)が除去される。
【0096】
その後、COSテーブル223とLPF220の出力が乗算器222で乗算され、SINテーブル224とLPF221の出力が乗算器225で乗算され、乗算器222からの出力と乗算器225からの出力が合成器226で合成されて周波数変換される。
そして、DA変換器227及びLPF228(スムージングフィルタ)により図5(d)で示されるように、USBが希望波の場合のSSB復調波として出力される。
【0097】
図6における以上の処理の説明は、SSB復調処理において、受信(復調)する所望波がUSBの場合であるが、図1のSSB変調回路での処理と同様の原理によりUSBとLSBを切り替えることができるものである。
【0098】
尚、図4のSSB復調回路は、図6のSSB復調回路の乗算器207を図4のアナログ処理の乗算器103に、図6のCOSテーブル208を図4の局部発振器105に、図6の乗算器210を図4の乗算器104に、図6のSINテーブル209を図4の局部発振器105と90度移相器106に、各々置き換えたものである。
【0099】
図4は、アナログ処理でベースバンド帯域に高周波信号を変換するダイレクトコンバージョン方式の受信機において本発明の処理方式を適用して、SSB変調信号以外の他のデジタル変調信号を復調する受信機と兼用、又は変調方式を切り替えて使用する場合に適用できる。
【0100】
尚、デジタル信号処理については、FPGA(Field Programmable Gate Array),DSP(Digital Signal Processor)等の論理回路を構成できるハードウエアあるいは数値演算を行うソフトウエアのいずれでも実現可能である。
【0101】
[実施の形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の実施の形態によれば、従来のSSB変調処理及びSSB復調処理をデジタル信号処理で行う場合において、ヒルベルトフィルタを使用することによりフィルタのタップ数が多くなり演算量が多いという問題点を解決するものである。
【0102】
本実施の形態では、ヒルベルトフィルタを使用する場合と比較して、不要波成分の同等の除去比を得るために、COSテーブル又はSINテーブルの乗算による複素周波数変換又は周波数変換の処理により従来のヒルベルトフィルタを使用した場合にタップ数が多いことにより乗算回数が増大してしまうという問題点に対して、計算量を大幅に軽減するSSB変調処理及びSSB復調処理方式を提供するものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、複素周波数変換とLPFの組合せにより、演算の処理量を軽減できるSSB変調回路に好適である。
【符号の説明】
【0104】
1…低周波増幅器、 2…LPF、 3…AD変換器、 4…乗算器、 5…乗算器、 6…COSテーブル、 7…SINテーブル、 8…COSテーブル、 9…乗算器、 10…乗算器、 11…SINテーブル、 12…乗算器、 13…乗算器、 14…加算器、 15…加算器、 16…LPF、 17…LPF、 18…乗算器、 19…COSテーブル、 20…SINテーブル、 21…乗算器、 22…合成器、 23…DA変換器、 24…LPF、 25…混合器、 26…局部発振器、 27…BPF、 28…複素周波数変換部、 101…帯域ろ波器、 102…低雑音増幅器、 103…乗算器、 104…乗算器、 105…局部発振器、 106…90度移相器、 107…LPF、 108…LPF、 109…AD変換器、 110…AD変換器、 111…乗算器、 112…乗算器、 113…乗算器、 114…乗算器、 115…COSテーブル、 116…SINテーブル、 117…加算器、 118…加算器、 119…LPF、 120…LPF、 121…乗算器、 122…COSテーブル、 123…SINテーブル、 124…乗算器、 125…合成器、 126…DA変換器、 127…LPF、 128…複素周波数変換部、 201…帯域ろ波器、 202…低雑音増幅器、 203…乗算器、 204…局部発振器、 205…LPF、 206…AD変換器、 207…乗算器、 208…COSテーブル、 209…SINテーブル、 210…乗算器、 211…COSテーブル、 212…乗算器、 213…乗算器、 214…SINテーブル、 215…乗算器、 216…乗算器、 217…加算器、 218…加算器、 219…複素周波数変換部、 220…LPF、 221…LPF、 222…乗算器、 223…COSテーブル、 224…SINテーブル、 225…乗算器、 226…合成器、 227…DA変換器、 228…LPF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号処理によりSSB変調処理を行うSSB変調回路であって、
SSB変調を行う信号を分岐して、第1の周波数の余弦波信号と第1の周波数の正弦波信号を別々に乗算して、同相信号と直交信号のデジタル信号を出力する直交変換部と、
前記同相信号及び前記直交信号に対して、上側波帯又は下側波帯の一方の中心周波数が「0」となるよう複素周波数変換を行う複素周波数変換部と、
前記複素周波数変換された同相信号及び直交信号に対して、前記中心周波数が「0」となるようにした信号帯域のみを抽出する低域通過フィルタと、
前記低域通過フィルタから出力される同相信号と直交信号に対して、該同相信号に第2の周波数の余弦波信号を乗算し、該直交信号に第2の周波数の正弦波信号を乗算し、各々の乗算結果を合成する合成処理部とを有することを特徴とするSSB変調回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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