説明

STQ−ペプチド

本発明は、ラミニンの天然形態に対してよりも実質的に大きなアフィニティーを有するタンパク分解ラミニン又は変性ラミニンに特異的に結合するアンタゴニストを投与することによって、組織において血管形成を阻害するための方法を記載する。腫瘍増殖、腫瘍転移又は再狭窄の治療的処置のためにこのようなアンタゴニストを利用する方法も記載され、インビボ及びエキソビボの両方で正常組織又は疾患組織における血管形成の診断マーカーとしてこのようなアンタゴニストを使用する方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願番号第60/458,523号(2003年3月28日出願)に対して米国特許法119条(e)に基づく優先権を請求する。この仮出願の内容は、その全体が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に医学分野に関し、さらに詳細には、変性ラミニンの選択的なアンタゴニストを含む活性薬剤を用いる、血管形成、腫瘍増殖及び転移を阻害又は検出するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
腫瘍増殖及び転移は毎年多くの人々に影響を与える。600,000を超える新規な癌症例が毎年米国で診断されていると概算される(Vamer,J.ら、Cell Adh.Commun.1995;3:367−374)。
【0004】
転移(一次腫瘍塊から離れた部位への悪性腫瘍細胞の広がり)は、複雑な一連の事象にかかわる(Liottaら、Cell 1991;64:327−336;Wyckoffら、Cancer Res.2000;60:2504−2511;Kurschatら、Clinc.Exp.Dermatol.2000;25:482−489)。転移性カスケードは、一次腫瘍塊から腫瘍細胞を解離させる細胞−細胞相互作用における変化をもたらす一連の遺伝子改変によって開始される。解離した細胞は、タンパク分解性に改変された細胞外マトリックス(ECM)を通って局所的に侵入し、移動する。解離した細胞は、循環系に到達する。転移性の堆積を確立するために、循環する腫瘍細胞は宿主の免疫不全を回避しなければならず、微細血管系中に捕捉されなければならず、循環の外側に溢出されなければならない。次いで、腫瘍細胞は新しい部位でECMに進入し、増殖し、血管形成を誘発し、増殖し続ける。
【0005】
血管形成をブロックするように設計された治療は、固体腫瘍の増殖及び転移に顕著に影響を与える場合がある。腫瘍血管形成をブロックすることは、種々の動物モデルにおいて腫瘍増殖を顕著に阻害し、ヒトの臨床データはこの内容を同様に支持し始めている(Varner,J.ら、Cell Adh.Commun.1995;3:367−374)。これら及び他の研究は、最少の大きさを超えて腫瘍が拡大し続けるためには固体腫瘍の増殖が新しい血管増殖を必要とすることを示唆する(Vamerら、1995;Blood,C.H.ら、Biochim.Biophys.Acta.1990;1032:89−118;Weidner,N.ら、J Natl.Cancer Inst.1992;84:1875−1887;Weidner,N.ら、N.Engl.J Med.1991;324:1−7;Brooks,P.C.ら、J Clin.Invest.1995;96:1815−1822;Brooks P.C.ら、Cell 1994;79:1157−1164;Brooks,P.C.et al,Cell 1996;85:683−693;Brooks,P.C.ら、Cell 1998;92:391−400)。それ故に、血管形成の阻害は、癌及び転移性疾患の処置の見込みがある。
【0006】
血管形成は、既存の血管から新しい血管が成長する生理学的プロセスである(Varnerら、1995;Bloodら、1990;Weidnerら、1992)。この複雑なプロセスは、増殖因子、細胞接着レセプター、マトリックス分解酵素及び細胞外マトリックス成分を含む種々の分子の協力が必要である(Varnerら、1995;Bloodら、1990;Weidnerら、1992)。
【0007】
血管形成の阻害はさらに、例えば、眼球疾患(例えば、黄斑変性及び糖尿病性網膜症)及び炎症性疾患(例えば、関節炎及び乾癬)を含む、制御されていない血管成長によって特徴付けられる他の疾患の処置において有用である場合がある(Varnerら、1995)。
【0008】
多くの研究者は、血管形成を開始する増殖因子及びサイトカインに対する抗−血管形成アプローチに注目した(Varnerら、1995;Bloodら、1990;Weidnerら、1992;Weidnerら、1991;Brooksら、1995;Brooksら、1994;Brooksら、1997)。しかし、血管形成を刺激する能力を有する多くの増殖因子及びサイトカインが存在する。それ故に、1個のサイトカインをブロックする治療的な利益は、この重複に起因して限定された利益しか有さない場合がある。他の抗−血管形成標的に対する興味はほとんどなかった。
【0009】
近年の研究は、新しい血管の成長を行う微細環境を提供する目的で、血管形成が、血管の周囲の細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質分解性の再形成を必要とすることを示唆する(Varnerら、1995;Bloodら、1990;Weidnerら、1992;Weidnerら、1991;Brooksら、1995;Brooksら、1994;Brooksら、1997)。細胞外マトリックスタンパク質は、単なる構造的役割以上の役割を果たす。これらのタンパク質はさらに、接着、移動、増殖、分化及び隣接細胞の遺伝子発現を制御する一連の多様な生物学的機能を示す(Roskellyら、Curr.Op.Cell Biol.1995;7:736−747)。
【0010】
血管形成の阻害は、腫瘍増殖及び転移を制限するための有用な治療法である。血管形成の阻害は、(1)「血管形成分子」、例えば、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)の放出の阻害、(2)血管形成分子(例えば、抗−bFGF抗体)の中和、及び(3)血管形成刺激に対する内皮細胞の応答の阻害によって影響を受ける場合がある(Folkmanら、Cancer Biology.1992;3:89−96)。いくつかの潜在的な内皮細胞応答阻害剤、例えば、コラゲナーゼ阻害剤、基底膜ターンオーバー阻害剤、血管形成阻害ステロイド、カビから誘導される血管形成阻害剤、血小板因子4、トロンボスポンジン、関節炎薬剤、例えば、D−ペニシルアミン及び金チオマレート、ビタミンD3アナログ、及びα−インターフェロンは、血管形成を阻害するために使用されることが記載されている。さらに提案される血管形成の阻害剤はさらに、以下の文献に記載されている(Bloodら、1990;Mosesら、Science.1990;248:1408−1410;Ingberら、Lab.Invest.1988;59:44−51;及び米国特許第5,092,885号;第5,112,946号;第5,192,744号;及び第5,202,352号)。Brooksら、(PCT WO 00/40597)は、種々の変性コラーゲン型内の潜在領域に結合する抗体を開示する。
【0011】
ラミニンは、細胞外マトリックス糖タンパク質の大きなファミリーである。ラミニンは、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、軸索突起増殖を促進し、腫瘍細胞の転移性挙動に影響を与えることが知られている(米国特許第5,092,885号)。ラミニンは、少なくとも10個のイソ型が存在するが、基底膜の主要成分であり、細胞マトリックスの結合、遺伝子発現、細胞タンパク質のチロシンホスホリル化及び分枝形態発生を媒介することが示されている(Streuliら、J.Cell Biol.1993;129:591−603;Malinda及びKleinman,Int.J.Biochem.Cell Biol.1996;28:957−1959;Timpl及びBrown,Matrix Biol 1994;14:275−281;Tryggvason,Curr.Op.Cell Biol.1993 5:877−882;Stahlら、J.Cell Sci.1997;110:55−63)。
【0012】
ラミニンは、IV型コラーゲン、ヘパリン、ガングリオシド及び細胞表面レセプターに結合し、種々の上皮細胞及び腫瘍細胞の接着及び増殖を促進し、軸策突起の外殖を促進する。ラミニンは、細胞マトリックス相互作用を媒介し、IV型コラーゲン、ヘパリンサルフェートプロテオグリカン及びニドゲン−エンタクチンに結合する全ての基底膜の構造成分であると考えられている。
【0013】
ラミニン分子は、交差形状に整列する3つのポリペプチド鎖(α、β及びγ)で構成される。異なるα、β及びγ鎖が組み合わされ、多くの種類のラミニンファミリーを構成する(Jones,J.C.R.ら、Micr.Res.Tech.2000;51:211−213;Patarroyo,M.ら、Semin.Cancer Biol.2002;12:197−207)。ラミニンの変性は、血管形成、腫瘍増殖及び転移を制御する潜在制御領域を示す場合がある。これらの潜在領域の拮抗作用は、血管形成、腫瘍増殖及び転移の診断及び阻害のための認識されていない手段を提供する。
【0014】
驚くべきことに、変性ラミニンに選択的なアンタゴニストが血管形成、腫瘍増殖及び転移を阻害することが発見された。変性ラミニンに特異的に結合するペプチドアンタゴニストは、癌、炎症性疾患及び他の血管形成に関連する疾患を処置するための強力な新規化合物のための基本を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
血管形成は、癌及び他の血管形成に関連する疾患の開始、維持、増殖及び/又は拡大において必要であり、重要である。血管形成を阻害し、癌及びこれらの他の疾患を処置するという目標は、本発明の変性ラミニンの選択的なアンタゴニストによって満たされる。さらに、本発明のアンタゴニストは、変性ラミニンに対する腫瘍細胞の接着を直接的に阻害する。
【0016】
本発明は、哺乳動物の組織において、血管形成を阻害する量の変性ラミニンの選択的なアンタゴニストを含む薬剤を哺乳動物に投与することによる、血管形成、腫瘍増殖及び転移を阻害するための方法を提供する。
【0017】
本発明はさらに、哺乳動物の組織において、腫瘍細胞の接着を阻害する量の変性ラミニンの選択的なアンタゴニストを含む薬剤を哺乳動物に投与することによる、腫瘍増殖及び転移を阻害するための方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、変性ラミニンに特異的に結合し、哺乳動物において血管形成、腫瘍増殖及び転移を阻害するために使用可能なペプチドアンタゴニストを提供する。より特定的には、本発明は、血管形成、腫瘍増殖及び転移を阻害する変性ラミニン選択的なアンタゴニストを含む生物学的に活性な薬剤を提供する。変性ラミニンに対する本発明のペプチドアンタゴニストの結合アフィニティーは、ラミニンの天然形態に対するアンタゴニストの結合アフィニティーよりも実質的に大きい。
【0019】
本発明において使用するための好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、アミノ酸配列NH−S−T−Q−N−A−S−L−L−S−L−T−V−C−COOHを含むペプチドである
本発明において使用するための別の好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、アミノ酸配列NH−K−G−G−C−S−T−Q−N−A−Q−L−L−S−L−I−V−G−K−A−COOHを含むペプチド(STQ−ペプチド)である。
【0020】
本発明において使用するための別の好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、アミノ酸配列NH−K−G−G−S−T−Q−N−A−Q−L−L−S−L−I−V−G−K−A−COOHを含むペプチド(STQ−ペプチド−S)である。
【0021】
本発明の別の実施形態では、変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤に接合される。
【0022】
別の局面では、本発明は、検出可能に標識された変性ラミニン選択的なアンタゴニストに組織を暴露することによって、哺乳動物の組織において血管形成を検出するための方法を提供する。
【0023】
なおさらなる実施形態では、本発明は、検出可能に標識された変性ラミニン選択的なアンタゴニストに試験される組織を暴露することによって、腫瘍組織、転移、腫瘍侵襲、微生物侵襲、関節炎、炎症性疾患、又は哺乳動物の組織においてラミニンの変性により特徴付けられるか又はラミニンの変性に関連する任意の他の疾患又は状態を検出するための方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、変性ラミニン選択的なアンタゴニストを用いて、血管形成、腫瘍増殖、転移、微生物侵襲、関節炎、炎症性疾患、又は哺乳動物の組織においてラミニンの変性により特徴付けられるか又はラミニンの変性に関連する任意の他の疾患又は状態を阻害するための組成物及び方法、並びに、血管形成、腫瘍増殖、転移、微生物侵襲、関節炎、炎症性疾患、又は哺乳動物の組織においてラミニンの変性により特徴付けられるか又はラミニンの変性に関連する任意の他の疾患又は状態を検出するための組成物及び方法を提供する。
【0025】
本発明の方法は、癌細胞を確立し維持するのに必要な新しい血管の形成を阻害する生物学的に活性な薬剤を提供する。さらに、本発明は、腫瘍組織、転移、炎症性疾患、又は哺乳動物の組織においてラミニンの変性に関連する任意の他の疾患又は状態を直接的に阻害する方法及び組成物を提供する。本発明の活性な薬剤は、変性ラミニンに選択的に結合し、それによって、血管形成、腫瘍増殖、転移、関節炎、炎症性疾患、及びこのようなラミニンとの細胞相互作用に関連する他の疾患又は状態を防ぐ。
【0026】
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「血管形成」は、「新芽形成」を含む組織の血管新生、脈管形成、又は血管拡大に関与する種々のプロセスを含む。これらの血管形成プロセスの全ては、血管の基底膜内の細胞外マトリックスタンパク質ラミニンの破壊に関与する。外傷性の傷の治癒中に起こる血管形成、黄体形成及び胚形成は、正常な生理の一部分である。しかし、哺乳動物の血管形成の主要な部分は、疾患プロセスに関連する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「アンタゴニスト」は、天然に生じる生物学的活性を阻害する化合物を指す。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「潜在エピトープ」は、天然ラミニン内の認識のために露出されないが、変性ラミニンのアンタゴニストによって認識可能なラミニン配列である。天然構造中で溶媒に露出されないか、又は部分的にしか溶媒に露出されないペプチド配列は、強力な潜在エピトープである。エピトープが溶媒に露出されないか、又は部分的にしか溶媒に露出されない場合、分子の内部に埋め込まれていると考えられる。潜在エピトープの配列は、アンタゴニストの特異性を決定することによって同定することができる。候補潜在エピトープはさらに、例えば、天然ラミニンの3つの二次元構造を調べることによって同定することができる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「ラミニン」は、α、β及びγ鎖で構成される細胞外マトリックスのファミリーを指す(Jones,J.C.R.ら、Micr.Res.Tech.2000;51:211−213;Patarroyo,M.ら、Semin.Cancer Biol.2002;12:197−207)。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「天然ラミニン」は、主として天然に生じる天然形態であるラミニンを指す。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「変性ラミニン」は、もはや主として天然に生じる天然形態ではないラミニンを指す。変性ラミニンは、変性全長ラミニン又はラミニンのフラグメントであることができる。ラミニンのフラグメントは全長ラミニンよりも短い任意のラミニン配列であることができる。実質的に天然構造を有するラミニンのフラグメントについて、変性は天然全長ラミニンについて行うことができる。フラグメントはさらに、実質的に天然構造を保有しないか、又は実質的に天然形態ではない領域を有するような大きさであることができる。用語「変性ラミニン」は、「タンパク分解されたラミニン」を包含する。「タンパク分解されたラミニン」は、タンパク分解酵素の作用によって構造的に改変されたラミニンを指す。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「変性ラミニン選択的なアンタゴニスト」は、天然ラミニンに対してよりも変性ラミニンに対して実質的に大きな結合アフィニティーを有する基質である。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「エピトープ」は、本発明のアンタゴニストによって認識されるアミノ酸配列又は配列である。エピトープは、直鎖ペプチド配列であることができるか、又は非連続アミノ酸配列で構成されることができる。アンタゴニストは1つ以上の配列を認識することができ、それ故に、エピトープは1つよりも多い別個のアミノ酸配列標的を定義することができる。アンタゴニストによって認識されるエピトープは、当該技術分野で周知のペプチドマッピング及び配列分析技術によって決定することができる。
【0034】
用語「ペプチド」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上の共有結合した一連のアミノ酸を指す。直鎖、環状又は分枝のペプチドを本発明の実施において使用することができる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド模倣物」は、ペプチドの活性を模倣する化合物を指すために使用される。ペプチド模倣物は、ペプチドではないが、非ペプチド結合によって結合するアミノ酸を含んでもよい。ペプチド模倣物において、潜在エピトープの3つの二次元構造と特異的に相互作用するペプチドの3つの二次元構造は、ペプチドではない分子によって複製される。
【0036】
「血管新生」は、本明細書中で使用される場合、新しい血管の発生を意味する。血管新生は、新しい血管が形成する、血管形成のプロセス及び/又は血管形成の結果を指してもよい。
【0037】
本明細書中で定義される場合、「患者」は、血管形成疾患、腫瘍増殖又は転移の処置が望ましい任意の哺乳動物である。好ましい患者としては、農業的又は家畜としての哺乳動物が挙げられ、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラバ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、及びラットが挙げられる。特に好ましい患者はヒトである。
【0038】
句「薬学的に受容可能な」は、「一般的に安全であるとみなされる」、例えば、生理学的に許容され、代表的には、ヒトに投与される場合、アレルギー又は類似の不利な反応、例えば、異常亢進、めまいなどを起こさない、分子単位及び組成物を指す。好ましくは、本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な」は、動物、及びさらに特定的にはヒトにおいて使用するために、政府又は州政府の当局の規制によって承認されるか、又は他の一般的に認識される薬局方に列挙されるものを意味する。用語「キャリア」は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は化合物が共に投与されるビヒクルを指す。このような薬学的キャリアは滅菌液、例えば水及びオイル(石油、動物油、植物油、又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等)であることができる。水又は水溶液、食塩溶液及びデキストリン水溶液及びグリセロール水溶液は、好ましくはキャリアとして、特に注射可能な溶液として使用される。好適な薬学的キャリアは、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0039】
「実質的に大きなアフィニティー」は、標準化合物と比較した場合に標的化合物について少なくとも1.5倍大きい、より好ましくは、少なくとも10倍大きい、最も好ましくは、少なくとも100倍大きい結合アフィニティーを意味する。選択的なアンタゴニストは、変性ラミニン(標的化合物)に特異的であり、選択的なアンタゴニストの結合アフィニティーは、天然ラミニン(標準化合物)と比較される。見かけの結合アフィニティー測定は、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)又は当業者によく知られた他の技術、例えば、表面プラスモン共鳴技術(BIOCORE 2000システムで分析される)(Liljebladら、Glyco.J.2000;17:323−329)、及び標準的な測定及び従来の結合アッセイ(Heeley,R.P.,Endocr.Res.2002;28:217−229)を用いてなすことができる。
【0040】
「治療的に有効量」は、処置される組織における血管形成において測定可能な減少を生じるのに十分な変性ラミニン選択的なアンタゴニストの量、すなわち、血管形成を阻害する量;又は腫瘍増殖、転移、関節炎、炎症性疾患又は変性ラミニンに関連する状態において測定可能な減少を生じるのに十分な変性ラミニン選択的なアンタゴニストの量である。
【0041】
用語「処置」は、血管形成、腫瘍増殖、転移、微生物侵襲、関節炎、炎症又はラミニンの変性に関連する任意の他の疾患又は状態を防ぐための、又はすでに存在する血管形成、腫瘍増殖、転移、微生物侵襲、関節炎、炎症、又はラミニンの変性により特徴付けられるか又はラミニンの変性に関連する任意の他の疾患又は状態をこれらの疾患又は状態をもつ患者において阻害するための、及び/又はこのような疾患又は状態に関連する症状を改善するための、変性ラミニン選択的なアンタゴニストの投与を意味するために本明細書中で使用される。
【0042】
用語「単位用量」は、本発明の治療組成物を参照して使用される場合、各単位が、単独又は好適な希釈剤、キャリア、ビヒクル、又は他の賦形剤を含む組成物のいずれかにおいて所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性物質を含有する、被検体のために単位用量として好適な物理的に別個の単位を指す。
【0043】
(変性ラミニンアンタゴニスト)
本発明の生物学的に活性な薬剤は、変性ラミニンに対して強力な結合アフィニティーを有する化合物を含む。本発明の変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、天然ラミニンに対するよりも変性ラミニンに対して実質的に大きなアフィニティーを有して結合するアミノ酸配列を含有する。
【0044】
本発明において使用するための1つの好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストはSTQ−ペプチドである。STQ−ペプチドは、高い特異性を有して変性ラミニンに結合する。STQペプチドのアミノ酸配列は、NH−K−G−G−C−S−T−Q−N−A−Q−L−L−S−L−I−V−G−K−A−COOHである。STQ−ペプチドは変性ラミニン内の領域に結合し、変性ラミニンとの細胞相互作用を阻害する。細胞外マトリックス内の機能性エピトープとの接着性細胞相互作用は、血管形成、腫瘍増殖及び転移のインビボでの制御において役割を有する(Xu,Jら、J.Cell Biol.2001;154:1069−1079;Hangiaら、Am.J.Pathol.2002;161:1429−1437)。STQ−ペプチドは血管形成(以下の実施例5)及び腫瘍増殖及び転移(以下の実施例6)をインビボで強力にブロックすることが示された。
【0045】
本発明において使用するための別の好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストはSTQ−ペプチド−Sである。STQ−ペプチド−Sは変性ラミニンに対して高い特異性を有して結合し、変性ラミニンとの細胞相互作用を阻害する。STQ−ペプチド−Sのアミノ酸配列はNH−K−G−G−S−T−Q−N−A−Q−L−L−S−L−I−V−G−K−A−COOHである。
【0046】
本発明において使用するためのさらに好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、変性ラミニンに対して高い特異性を有して結合し、変性ラミニンとの細胞相互作用を阻害する、アミノ酸−配列NH−S−T−Q−N−A−S−L−L−S−L−T−V−C−COOHを有する。
【0047】
例えば、順次固相結合アッセイは、変性ラミニン選択的なアンタゴニストを同定するために使用することができる。変性ラミニンアンタゴニストを同定するための好ましい方法は、減法免疫化(Xu,J.ら、Hybridoma.2000;19:375−385)及び減法ファージディスプレイ(Amstutz P.ら、Curr.Opin.Biotechnol.2001;12:400−405)である。
【0048】
変性の好ましい方法は、熱変性がインビボでほとんど免疫原性を有さない少量の小さなフラグメントを生じるため、熱変性である。ラミニンは、例えば、100℃で15分間ラミニンを加熱することによって変性することができる。変性はさらに、カオトロピック薬剤を用いてラミニンを処理することによって達成することができる。好適なカオトロピック薬剤としては、例えば、グアニジニウム塩が挙げられる。ラミニンはさらに、電離線、非電離線(紫外線)、熱損傷及び機械的応力又は力によって変性することができる。ラミニンはさらに、タンパク分解によって変性することができる。特に、タンパク分解したラミニンは、メタロプロテイナーゼ(例えば、MMP−1、MMP−2又はMMP−9)又はエラスターゼを用いてラミニンを処理することによって、又はラミニン変性活性を含有する細胞抽出物を用いてラミニンを処理することによって調製することができる。タンパク分解したラミニンはさらに、組織において、血管新生、腫瘍増殖、転移、微生物侵襲、関節炎及び炎症の部位で天然に生じる場合がある。
【0049】
例えば、ラミニンの変性は、光学的性質、例えば、タンパク質の吸光度、円二色性又は蛍光における分光的変化によって、核磁気共鳴によって、ラマン分光法によって、又は任意の他の好適な技術によってモニタリングすることができる。
【0050】
次いで、得られた変性ラミニンフラグメントを固体マトリックスに固定することができる。ラミニンに結合することが知られているペプチドは、ペプチドライブラリーから得ることができる(Amstutz P.ら、Curr.Opin.Biotechnol.2001;12:400−405)。ラミニンに結合するペプチドは固体マトリックスの上を通すことができる。変性ラミニンに結合するペプチドは固体マトリックスに接着する。次いで、接着ペプチドを固体マトリックスから洗い流し、天然ラミニンが固定される第2の固体マトリックスの上を通す。第2の固体マトリックスに結合しないペプチドは、変性ラミニン選択的なアンタゴニストである。
【0051】
本発明において使用される選択的なペプチド及びポリペプチドアンタゴニストは、当業者に周知のいくつかの異なる技術を用いて生成することができる。例えば、2ハイブリッドシステム(例えば、Fields,S.,Nature.1989;340:245−6)は、ラミニンペプチドに結合するライブラリーからタンパク質アンタゴニストを選択するための「bait」としてラミニンフラグメントを使用する。このシステム及びその操作は、Green,D.M.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2003;100:1010−1015及びGyuris,J.ら、Cell.1993 75:791−803に記載される。潜在的なアンタゴニストのライブラリーは、例えば、cDNAライブラリーから誘導することができる。別の実施形態では、潜在的なアンタゴニストは、インテグリンα6β4及びα3β1、コラーゲン及び特定のプロテオグリカンのような既知のラミニン結合タンパク質の改変体であることができる(Bellcinb,A.M.,Stepp,M.A.,Micro.Res.Tech.2000;51:280−301;Jones,J.C.R.ら、Micr.Res.Tech.2000;51:211−213;Patarroyo,M.ら、Semin.Cancer Biol.2002;12:197−207)。このようなタンパク質は、ランダムに突然変異誘発することができるか、又は遺伝子シャッフリングを行うことができるか、又は配列多様性を作成するための他の周知の技術を行うことができる(Tani,P.H.ら、Biochm.J.2002;365:287−294;Stephanopoulos,G.,Nat.Biotechnol.,2002;20:666−668)。
【0052】
本発明のペプチドアンタゴニストはさらに、Zhao,H.ら、Cur.Opin.Biotechnol.2002;13:104−110及びGuo,Z.ら、Biochemistry.2002;41:10603−10607に開示されるような分子進化技術を用いて作成することができる。タンパク質のライブラリーは、突然変異誘発、遺伝子シャッフリング又は分子多様性を作成するための他の周知の技術によって作成することができる。多くの改変体を表すタンパク質プールは、例えば、変性ラミニンが結合する固体マトリックスの上をこのようなタンパク質プールを通すことによって、それらが変性ラミニンに結合する能力について選択することができる。例えば、塩勾配を有する溶出によって、変性ラミニンについてのアフィニティーを有する改変体を精製することができる。ネガティブ選択工程がさらに含まれてもよく、それによってこのようなプールが天然ラミニンが結合する固体マトリックスの上を通される。ろ液はラミニンの天然形態についてのアフィニティーが低いプール中の改変体を含有する。
【0053】
本発明のペプチド及びポリペプチドはさらに、ファージディスプレイによって作成することができる。ファージディスプレイは、バクテリオファージのコートタンパク質との融合物として発現される選択技術である。この結果は、融合したタンパク質は、バイロン(viron)の表面上に示され、そのDNAがバイロン内の融合タンパク質残基をコードすることである(Smith G.P.,Science 1985;228:1315−1317;Smith G.P.ら、Methods Enzymol.1993;217:228−257)。ファージディスプレイは、パンニングと呼ばれるインビトロプロセスを用いて種々の標的分子のためのペプチドリガンドの迅速な同定を可能にする。パンニングは、例えば、ファージディスプレイされたペプチドのライブラリーを標的でコーティングされたマイクロタイタープレートと共にインキュベーションし、結合していないファージを洗い流し、結合したファージを溶出させることによって行われる。次いで、溶出したファージを増幅し、さらなる結合/増幅サイクルを行い、結合する配列に有利なプールを豊富にする。パンニングを3〜4回行った後、個々のクローンをDNA配列決定によって同定する。
【0054】
ランダム化したペプチド又はタンパク質は、ファージコートタンパク質との融合物としてファージミド(ファージ及びプラスミドの組み合わせについての用語)粒子の表面で発現させることができる。一価ファージディスプレイの技術は広く利用可能である(例えば、Lowman H.B.ら、Biochemistry.1991;30:10832−8を参照)。ランダム化ペプチド又はタンパク質ライブラリーを発現するファージは、天然ラミニン分子が結合する固体マトリックスと共にパンニングすることができる。残ったファージは天然ラミニンに結合しないか、又は実質的に天然ラミニンとアフィニティーが減少した状態で結合する。次いで、ファージを変性ラミニンが結合する固体マトリックスに対してパンニングする。結合したファージを単離し、溶液条件の変化によって、又は適切に設計された構築物のために、ランダム化ペプチド又はタンパク質ライブラリーとファージコートタンパク質とを接続するリンカー領域のタンパク分解による開裂によって、固体マトリックスから分離する。単離されたファージを配列決定して、選択されたアンタゴニストの同一性を決定することができる。
【0055】
周知のELISAアッセイを使用して、本発明の実施において使用するためのラミニン選択的なアンタゴニストを同定することができる。
【0056】
ペプチド又はポリペプチドは、ペプチド又はポリペプチドが変性ラミニン又は天然ラミニンに結合するか否かを決定するための固相ELISAを用いてアンタゴニストとして同定することができる。ELISAアッセイは、種々の種類のラミニン及び他の細胞外マトリックス成分を用いて有用である。結合アフィニティーのレベルは、表面プラスモン共鳴技術(BIOCORE 2000システムによって分析される)(Liljebladら、Glyco.J.2000;17:323−329)及び従来のスキャッチャード結合アッセイによる標準測定(Heeley,R.P.,Endocr.Res.2002;28:217−229)によって決定することができる。
【0057】
固相ELISAはさらに、ラミニンの変性形態について特異性を示すが、ラミニンの天然形態について特異性を示さない化合物を同定するために使用することができる。特異性アッセイは、変性ラミニン及び天然ラミニンに結合する能力について潜在的なアンタゴニストが別個のアッセイチャンバーにおいて同時にスクリーニングされるパラレルELISAを行うことによって行われる。
【0058】
アンタゴニストはさらに、変性ラミニンを含有する固体マトリックスに結合する能力によって同定することができる。溶液条件(例えば、塩濃度、pH、温度等)を変更した後、推定アンタゴニストを集める。適切な溶液条件下で、それらが天然ラミニンが固定された固体マトリックスを通る能力によって推定アンタゴニストをさらに同定する。
【0059】
ヒトを含む任意の無脊椎動物又は脊椎動物由来のラミニン分子とともに本発明のアンタゴニストを使用することができる。ラミニン分子の例は、Belldkinb,A.M.,Stepp,M.A.,Micro.Res.Tech.2000;51:280−301;Jones,J.C.R.ら、Micr.Res.Tech.2000;51:211−213;及びPatarroyo,M.ら、Semin.Cancer Biol.2002;12:197−207中に見出すことができる。好ましくは、ラミニンは哺乳動物のラミニンである。さらに好ましくは、哺乳動物は、ブタ、ウシ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ロバ、ウマ又はラバである。特に好ましい実施形態では、ラミニンはヒトのラミニンである。
【0060】
本発明において使用するための活性薬剤は、1つ以上の変性ラミニンアンタゴニストを含む。変性ラミニンのアンタゴニストは、ラミニンの天然形態に対するよりも変性ラミニンに対して実質的に大きい結合アフィニティーを有する任意のペプチド、ポリペプチド又はペプチド模倣物(例えば、有機化合物、炭水化物又は化学物質)であることができる。
【0061】
本発明のペプチドアンタゴニストは、例えば、ホスホリル化、ヒドロキシル化又はメチル化によって改変されてもよい。活性を高め得るさらなる改変としては、ペプチド環化及びペプチド安定化が挙げられる。
【0062】
別の実施形態では;本発明は、ペプチドが変性ラミニンのアンタゴニストであるが、天然ラミニンのアンタゴニストではない限り、アミノ酸残基配列が本明細書中に示される、ポリペプチドのアナログ、フラグメント又は化学誘導体を含む。それ故に、ペプチドは、その使用において特定の利点を与えるような種々の変化、置換、挿入、及び欠失を行うことができる。この観点において、本発明の変性ラミニンアンタゴニストペプチドは、1つ以上の変化が行われ、ペプチドが本明細書中で定義されるような1つ以上のアッセイにおいて変性ラミニン選択的なアンタゴニストとして機能する能力を保持している、引用されたペプチドの配列を含む。
【0063】
アミノ酸のカップリングは、当業者にとってよく知られた技術によって達成されてもよく、例えば、Stewart及びYoung,Solid Phase Synthesis,1984,Second Edition,Pierce Chemical Co.,Rockford,ILに提供される。
【0064】
アンタゴニストは、血管形成、血管増殖、転移、関節炎又は変性ラミニンとの細胞相互作用に関連する他の疾患又は状態を受ける腫瘍又は他の組織に対して送達するために、シスプラチン、ビンブラスチン及びゲムシタビンのような細胞毒素と接合することができる。このような接合体は、細胞溶解素又は外毒素、例えば、リシンA、ジフテリア毒素A、又はシュードモナス外毒素及びそれらのフラグメントを用いて作成することができる。本発明において使用するための好ましい細胞毒素はシスプラチンである。細胞傷害性剤はさらに、血管形成組織、腫瘍増殖、転移又は変性ラミニンとの細胞相互作用を受ける他の組織に対する放射能活性の毒性用量を局所的に送達するように、同位元素で放射能活性標識することができる。
【0065】
アンタゴニストは、血管形成、腫瘍増殖、転移、関節炎又は変性ラミニンとの細胞相互作用を受ける他の組織に対して送達するために、抗−血管形成化合物のような細胞増殖抑制剤と接合することができる。好ましい細胞増殖抑制剤は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤である。好ましいMMP阻害剤はMarimistat(British Biotech,Oxford,United Kingdomから入手可能)である。
【0066】
(血管形成阻害についてのインビボアッセイ)
本発明の選択的なペプチドアンタゴニストは、組織において血管形成を調整する能力についてアッセイすることができる。当業者に公知の任意の好適なアッセイ、例えば、ニワトリ漿尿膜(CAM)アッセイ、又はウサギ眼アッセイ、又はキメラマウスアッセイを使用してこのような効果をモニタリングすることができる。いくつかの非限定的な技術が本明細書中に記載される。
【0067】
1つの血管形成アッセイは、ニワトリ漿尿膜(CAM)にける血管形成を測定し、CAMアッセイと呼ばれる。CAMアッセイは当業者に周知であり、腫瘍組織の血管形成及び血管新生を測定するために使用される(Ausprunkら、Am.J.Pathol.1975;79:597−618及びOssonskiら、Cancer Res.1980;40:2300−2309)。
【0068】
CAMアッセイの間、全組織の血管形成が起こる。このアッセイは、CAM内又はCAM上で増殖した組織内のニワトリの胚血管の増殖を測定する。それ故に、CAMアッセイは、インビボ血管形成についての妥当なモデルである。
【0069】
CAMアッセイは、新しい血管増殖の量及び程度の両方に基づいて血管形成の阻害を測定する。さらに、CAM上に移植された任意の組織、例えば腫瘍組織の増殖をモニタリングすることが可能である。
【0070】
最後に、CAMアッセイは、アッセイシステムにおける毒性の内部制御が存在するため、特に有用である。アッセイが実行可能な間、成長するニワトリの胚は、試薬を試験するために露出される。胚の健康は、毒性の指標である。
【0071】
別のアッセイでは、血管形成はインビボウサギ眼モデルで測定され、このアッセイは「ウサギ眼アッセイ」と呼ばれる。ウサギ眼アッセイは、当業者に周知であり、サリドマイドのような血管形成阻害剤の存在下で血管形成及び血管新生の両方を測定するために使用される(D’Amatoら、Proc.Natl.Acad.Sci.1994;91:4082−4085)。
【0072】
ウサギ眼アッセイは、角膜内の角膜の縁から増殖するウサギの血管によって実証された血管形成が眼の天然の透明の角膜から容易に視覚化可能なため、インビボ血管形成についての十分に認識されたアッセイである。さらに、血管形成の刺激又は阻害、又は血管形成の抑制の程度及び量の両方が時間経過とともに容易にモニタリング可能である。
【0073】
ウサギは、使用される任意の試験試薬に暴露され、それ故に、ウサギの健康は、試験試薬の毒性の指標である。
【0074】
別のアッセイは、キメラマウス:ヒトモデルにおける血管形成を測定し、これはキメラマウスアッセイと呼ばれる(Yanら、J Clin.Invest.1993;91:986−996)。移植された皮膚片が正常なヒトの皮膚に組織学的に非常に類似し、実際のヒトの血管が移植されたヒト皮膚からヒト腫瘍組織へと移植されたヒトの皮膚の表面上で増殖するように、全組織の血管新生が起こるため、キメラマウスアッセイは、インビボ血管形成のための有用なアッセイモデルである。ヒト移植内の血管新生の起源は、ヒトに特異的な内皮細胞マーカーと用いた血管新生の免疫組織化学染色によって示すことができる。
【0075】
キメラマウスアッセイは、新しい血管増殖の抑制の量及び程度の両方に基づいて血管新生の抑制を示す。さらに、移植された皮膚の上に移植された任意の組織、例えば腫瘍組織の増殖に対する影響をモニタリングしてもよい。最後に、アッセイシステムにおいて細胞毒性についての内部制御が存在するため、このアッセイは有用である。キメラマウスは使用される任意の試験試薬に暴露され、それ故に、マウスの健康は毒性の指標である。
【0076】
(疾患の処置)
選択的なアンタゴニストに対する天然ラミニンの結合ではなく、選択的なアンタゴニストに対する変性ラミニンの結合が、哺乳動物(ヒト及び他の動物を含む)の組織において、血管形成、腫瘍増殖、転移、関節炎、変性ラミニンとの細胞相互作用に関連する他の状態又は疾患を阻害する。血管形成は、種々の疾患プロセスにおいて必要とされる。血管形成の阻害によって、疾患が妨害され、症状が改善し、いくつかの症例では、疾患が治癒する場合がある。
【0077】
新しい血管の増殖が異常組織の増殖を支持する場合、血管形成の阻害は、組織に対する血管の供給を減らし、血管供給の要求に基づく組織塊の減少に貢献する。例としては、数ミリメートル厚未満の腫瘍増殖のために血管新生が継続的に必要である場合、及び固体腫瘍転移の確立のために血管新生が継続的に必要な場合に、腫瘍の増殖が挙げられる。新しい血管の増殖が疾患に関連する病理の原因であるか、又は病理に貢献する場合、血管形成の阻害は、疾患の悪影響を減らす。例としては、乾癬、リウマチ様関節炎、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、再狭窄、黄斑変性等が挙げられる。
【0078】
本発明の方法は、血管新生及び変性ラミニンとの細胞相互作用が関与する他のプロセスについて高い選択性を有し、他の生物学的プロセスには高い選択性を有さない治療であるため、部分的に有効である。変性ラミニン単独の結合が血管形成及び変性ラミニンとの細胞相互作用が関与する他のプロセスを選択的に阻害することができるという発見は、洗剤的に高い特異性を有し、比較的低い毒性を有する治療組成物の開発を可能にする。
【0079】
組織において血管形成を阻害するための本発明の方法、及びそれ故に、血管形成に関連する疾患を処置するための方法を実施するための本発明の方法は、血管形成処置の必要な患者に、天然ラミニンに対する結合と比較して、変性ラミニン又はタンパク分解されたラミニンに対して選択的な結合が可能な、治療的に有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを含む組成物を投与する工程を含む。従って、本方法は、本発明の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを含む治療的に有効量の薬学的組成物を患者に投与する工程を含む。
【0080】
本発明は、処置が必要な動物(哺乳動物及びヒトを含む)の組織において、血管形成、腫瘍増殖、転移、関節炎、炎症性疾患、及び変性ラミニンとの細胞相互作用に関連する他の疾患又は状態を阻害し、それによって、血管形成に依存する組織における事象を阻害するための方法を提供する。一般的に、本方法は、血管形成を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを含む薬学的組成物を動物に投与する工程を含む。
【0081】
本発明はさらに、腫瘍血管形成を阻害することによって腫瘍血管新生を阻害するための方法を提供する。特定の実施形態では、処置される組織は、固体(悪性)腫瘍、転移、皮膚癌、乳癌、血管腫又は血管線維腫等の癌を有する患者の腫瘍組織であり;阻害される血管新生は、腫瘍組織の血管新生が存在する腫瘍組織の血管新生である。本方法によって処置可能な代表的な固体腫瘍組織としては、肺、膵臓、乳房、直腸、喉頭、卵巣、カポージ肉腫及び類似組織が挙げられる。
【0082】
腫瘍組織の血管形成の阻害は、腫瘍増殖において血管新生が重要な役割を果たすため、顕著な成長である。血管新生の非存在下では、腫瘍組織は必要な栄養を得られず、増殖が遅くなり、さらなる増殖が停止し、退縮し、究極的には壊死し、腫瘍が死ぬか又は排除される。さらなる顕著な進化は、腫瘍細胞の変性ラミニンへの接着をブロックし、腫瘍細胞が組織中で確立されることを防ぐことによる腫瘍増殖及び転移の直接的な阻害である。
【0083】
別の局面では、本発明は、変性ラミニンのアンタゴニストを含む生物学的に活性な組成物の投与による、腫瘍増殖及び転移の形成を阻害するための方法を提供する。(1)転移性がん細胞が一次細胞から出ることができるように、転移の形成はラミニンの変性及び一次腫瘍の血管形成が必要であり、(2)二次部位での腫瘍の確立はラミニンの変性及び転移の増殖を支持する血管新生が必要であるため、これらの方法は特に有効である。
【0084】
さらに、本発明は、変性ラミニンとの腫瘍細胞相互作用を直接的に阻害することによって腫瘍増殖及び転移を阻害するための方法を提供する。腫瘍細胞は、組織中で腫瘍細胞を確立させ、増殖するために組織に接着しなければならない。本発明の方法及び組成物は、変性ラミニンに対する腫瘍細胞相互作用をブロックすることによって組織に対する腫瘍細胞の接着を直接的に阻害する。
【0085】
さらなる実施形態では、本発明は、上述の方法のいずれかを他の治療、例えば、固体腫瘍に対して行われる化学治療法と組み合わせて行うことを可能にする。血管形成阻害剤は、化学治療法の前、治療中、治療後にこのような処置を必要とする患者に投与されてもよい。好ましくは、血管形成阻害剤は、化学治療後に患者に投与される。この際に、腫瘍組織は、血液及び栄養を腫瘍組織に提供することによって回復するために、血管形成を誘発させることによって毒性攻撃に応答する。固体腫瘍を除去するための患者における外科手術の後に転移に対する予防法として、血管形成阻害剤を患者に投与することも好ましい。
【0086】
それ故に、本明細書中で開示される腫瘍増殖、転移、及び血管新生を阻害する方法は、腫瘍組織増殖を阻害するために、腫瘍転移形成を阻害するために、確立された腫瘍を退縮させるために適用することができる。
【0087】
血管新生が重要であると考えられている種々の疾患が存在する。これらは血管形成疾患と呼ばれ、限定されないが、炎症性障害(例えば免疫性及び非免疫性炎症)、慢性関節リウマチ及び乾癬;不適切又は都合の悪い血管の侵襲に関連する障害、例えば、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、再狭窄、アテローム硬化性血小板における毛管増殖及び骨粗しょう症;及び腫瘍増殖を支持するために血管新生が必要な癌に関連する障害、例えば、固体腫瘍、固体腫瘍転移、血管繊維腫、後水晶体繊維増殖症、血管腫、カポージ肉腫等の癌が挙げられる。他の好適な腫瘍としては、黒色腫、癌腫、肉腫、繊維肉腫、グリオーム及び神経膠星状細胞腫が挙げられる。
【0088】
従って、疾患組織における血管形成を阻害する方法は、疾患を処置し、疾患の症状を改善し、疾患に依存して、治癒に貢献する場合もある。
【0089】
1つの実施形態では、本発明は、変性ラミニン選択的なアンタゴニストを投与することによって哺乳動物(例えばヒト)組織において血管形成を阻害するための方法を意図する。
【0090】
本明細書中で記載される場合、任意の種々の組織、又は組織化された組織で構成される臓器は、皮膚、筋肉、消化管、結合組織、関節、骨等の組織を含む疾患状態における血管形成を支持することができ。ここで、血管は血管形成刺激の際に侵襲する。本明細書中で使用される場合、組織は、例えば、血清、血液、脳脊髄液、血漿、尿、滑液、硝子体液のような全ての体液、分泌物等を包含する。
【0091】
関連する1つの実施形態では、処置される組織は炎症性組織であり、阻害される血管形成は、炎症組織の血管新生が存在する炎症性組織の血管形成である。この種類では、本方法は、免疫性又は非免疫性の炎症性組織における(例えば、乾癬組織における)、関節炎組織における(例えば、慢性関節リウマチを持つ患者におけるような)血管形成の阻害を意図する。
【0092】
別の実施形態では、処置される組織は、糖尿病性網膜症、黄斑変性又は血管新生緑内障を持つ患者のレチナール組織であり、阻害される血管形成は、レチナール組織の血管新生が存在するレチナール組織の血管形成である。
【0093】
再狭窄は、血管中の以前の狭窄部位での平滑筋細胞(SMC)移動及び増殖のプロセスである。再狭窄中の血管に関連するSMCの移動及び増殖は、本発明の方法及び組成物によって阻害される血管形成のプロセスに関連する。本発明はさらに、患者において本発明の方法及び組成物に従って血管形成に関連するプロセスを阻害し、血管狭窄を正しく行うための手順による、再狭窄の阻害を意図する。それ故に、本明細書中に開示される方法及び組成物は、経皮経管冠動脈形成術、冠状動脈バイパス術、抹消動脈バイパス術、腸間膜動脈バイパス術、及び頚動脈血管内膜切除術又は血管形成術の部位で使用することができる。
【0094】
変性ラミニン選択的なアンタゴニストを投与するための用量範囲は、アンタゴニストの形態及びその効力に依存し、血管形成及び血管形成によって媒介される疾患症状が改善される所望の効果を与えるのに十分な量である。その用量は、過粘稠度症候群、肺水腫、鬱血性心不全等のような悪い副作用を生じるほど多くないべきである。一般的に、その用量は、患者における年齢、状態、性別及び疾患の程度に伴って変動し、当業者によって決定することができる。その用量はさらに、任意の合併症の事象において、医師によって調整することができる。
【0095】
変性ラミニン選択的なアンタゴニストの効力は、種々の手段、例えば、本明細書中に開示されるようなCAMアッセイにおける血管形成の阻害、インビボウサギ眼アッセイ、インビボキメラマウス:ヒトアッセイによって測定することができる。
【0096】
治療的に有効量の本発明の変性ラミニンアンタゴニストは、代表的には、薬学的に受容可能な組成物において投与される場合、約0.1マイクログラム(μg)/ミリリットル(ml)〜約200μg/ml、好ましくは約1μg/ml〜約150μg/mlの血漿濃度を達成するのに十分なペプチドの量である。約500g/モルの質量を有するポリペプチドに基づいて、好ましい血漿モル濃度は、約2マイクロモル濃度(μM)〜約5ミリモル濃度(mM)、好ましくは約100μM〜1mMポリペプチドアンタゴニストである。異なって述べると、体重あたりの用量は、1日又は数日間、1日に1回以上の用量投与において、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg〜約200mg/kgを変動することができる。
【0097】
変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、例えば、非経口で、注射によって、又は時間をかけて徐々に注入することによって投与することができる。血管形成を防ぐための好ましい投与モードは、1つ以上の生物学的に活性な本発明の薬剤を含有する治療組成物を静脈内投与することによる。従って、それらのアンタゴニスト及び誘導体が、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、局所、眼球内、経口、鼻腔内投与することができ、ぜん動性手段によって送達することができる。本発明の治療組成物は、例えば、単位用量の注射におけるように、静脈内投与されてもよい。
【0098】
好ましい実施形態では、変性ラミニン選択的なアンタゴニストが、1回の静脈内用量において投与される。
【0099】
上記組成物は、投薬処方物と適合性の様式で、治療的に有効な量で投与される。投与される量及びタイミングは処置される患者、患者の症状が活性成分を利用する能力、及び所望の治療効果の程度に依存する。投与されることが必要な活性成分の正確な量は、医師の判断に依存し、個々の個人に特有である。しかし、全身適用のための好適な用量範囲は本明細書中に開示され、投与経路に依存する。投与のための好適な治療法はさらに変動可能であるが、初期投与の後に、注射又は他の投与によって1時間以上の時間間隔で繰り返し用量を投与することが代表的である。あるいは、インビボ治療において特定される範囲に血中濃度を維持するのに十分な連続的な静脈内注入が意図される。
【0100】
血管形成の阻害及び腫瘍退縮は、アンタゴニストの初期投与の7日後に起こる場合がある。好ましくは、アンタゴニストの投与は繰り返され、組織は7日間〜6週間、さらに好ましくは約14日〜28日間、アンタゴニストにさらされる。
【0101】
再狭窄を阻害するために、変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、代表的には、狭窄を軽減させる手術の後に約2日〜約28日、さらに代表的には手術後の最初の約14日間投与される。
【0102】
(治療組成物)
本発明は、本発明の治療方法を実施するのに有用な治療組成物を意図する。本発明の治療組成物は、薬学的に受容可能なキャリアと共に、活性成分としてその中に溶解又は分散している本明細書中に記載されるような変性ラミニン選択的なアンタゴニストを含有する。好ましい実施形態では、治療変性ラミニン選択的なアンタゴニスト組成物は、治療目的のために哺乳動物又はヒト患者に投与される場合、免疫抗原性ではない。好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストはSTQ−ペプチドである。別の好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストはSTQ−ペプチド−Sである。別の好ましい変性ラミニン選択的なアンタゴニストは、アミノ酸配列NH−S−T−Q−N−A−S−L−L−S−L−T−V−C−COOHを有する。
【0103】
その中に溶解又は分散した活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当該技術分野で十分に理解されて折り、配合物に基づいて限定される必要はない。代表的には、このような組成物は、液体溶液又は懸濁物のいずれかとして注射可能なように調製されるが、使用前に液体中で溶液又は懸濁物にするのに好適な固体形態もまた調製することができる。この調製物はさらに、乳化することができる。
【0104】
活性成分は、薬学的に受容可能で、活性成分と適合性であり、本明細書中に記載される治療方法において使用するために好適な量で賦形剤と混合することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等及びそれらの組み合わせである。それに加えて、所望な場合、この組成物は、活性成分の効能を向上させる少量の補助基質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤等を含有することができる。
【0105】
本発明の治療組成物は、本明細書中の成分の薬学的に受容可能な塩を含むことができる。薬学的に受容可能な塩としては、無機酸、例えば、塩酸又はリン酸、又は有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸等と形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩はさらに、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、3アンモニウム、カルシウム又は水酸化鉄、及び有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導することができる。特に好ましいのは、TFA及びHClの塩である。
【0106】
薬学的に受容可能なキャリアは当該技術分野で周知である。液体キャリアの例は、活性成分及び水に加えて物質を含有しない滅菌水溶液であるか、又は生理学的pH値でリン酸ナトリウムのようなバッファー、生理食塩水又はその両方、例えばリン酸緩衝化食塩水を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水性キャリアは、1つより多い緩衝塩、及び塩、例えば、塩化ナトリウム及び塩化カリウム、デキストロース、ポリエチレングリコール及び他の溶質を含有することができる。
【0107】
液体組成物はさらに、それに加えて及び水を排除した液体相を含有することができる。このようなさらなる液体相の例は、グリセリン、植物油、例えば、綿実油、及び水−油エマルションである。
【0108】
治療組成物は、血管形成を阻害する、腫瘍増殖を阻害する、又は転移を阻害する量の本発明の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを含有し、全治療組成物の重量あたり、0.01〜90重量%のアンタゴニストを含有するように処方される。好ましい治療組成物の配合物は、全治療組成物の重量あたり、0.05〜50重量%のアンタゴニストを含有する。最も好ましい治療組成物の配合物は、全治療組成物の重量あたり、0.1〜20重量%のアンタゴニストを含有する。重量%は、全治療組成物に対する阻害剤の重量の比である。従って、例えば、0.1重量%は、全組成物100gあたり阻害剤0.1グラムである。
【0109】
(検出方法)
本発明の変性ラミニンアンタゴニストはさらに、血管形成、腫瘍増殖、関節炎、又は組織において変性ラミニンとの細胞相互作用に関連する他の疾患又は状態を検出するのに好適である。このような検出方法は、エキソビボ及びインビボで使用されてもよい。例えば、エキソビボ方法は、生検標本における血管形成、腫瘍増殖又は転移の検出である。
【0110】
標的組織に対する検出可能に標識された変性ラミニン選択的なアンタゴニストの結合は、直接的又は間接的のいずれかで検出可能である。直接的な検出は、検出可能な標識、例えば、蛍光色素、放射能タグ、常磁性重金属又は診断染料を含む、上記アンタゴニスト上で行うことができる。
【0111】
間接的な検出は、変性ラミニン選択的なアンタゴニストと相互作用する検出可能な二次試薬を用いて行われる。上記アンタゴニストを認識する検出可能に標識された抗体を使用して、例えば、アンタゴニストの位置を視覚化することができる。間接的な検出の他の方法はさらに、当業者に公知である。
【0112】
インビボイメージング方法は、被検体の身体中で変性ラミニンに対して特異的に結合する標識されたアンタゴニストの検出を可能にする。標識されたアンタゴニストは、例えば、静脈内又は筋肉内で、患者に投与される。インビボ検出方法としては、磁気共鳴分光法、陽電子射出断層撮影法(PET)及び単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)が挙げられる。インビボイメージングの目的のために、利用可能な検出装置の種類は、所与の標識の選択において主な因子である。例えば、放射能活性同位体及び常磁性同位体は、インビボイメージングに特に好適である。使用される装置の種類は、放射性核種の選択を導く。例えば、選択された放射性核種は、所与の種類の装置について検出可能な崩壊の種類を有さなければならない。しかし、診断イメージングを視覚化するための任意の従来の方法を本発明に従って利用することができる。1つの実施形態では、放射性核種は、中間的な官能基を用いることによって直接的又は間接的のいずれかで抗体に結合してもよい。金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合するためにしばしば使用される中間的な官能基は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。放射能活性同位体として好適な金属イオンの例は、99mTc、123I、131I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、125I、68Ga、72As、89Zr、及び201Tlである。特に核磁気共鳴映像法(「MRI」)において有用な常磁性同位体の例としては、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr、及び56Feが挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は本発明を説明するが、限定するものではない。
【0114】
(実施例1−変性ラミニンエピトープに特異的に結合するペプチドの作成)
減法ファージディスプレイを使用して、変性ラミニンに特異的に結合するペプチドを作成した。ペプチドをバイロンの表面上でバクテリオファージのコートタンパク質との融合物として発現させた。ファージ−ディスプレイしたペプチドのライブラリーを標的(ウェル1〜4において天然ラミニン、ウェル5において変性ラミニン)でコーティングしたマイクロタイタープレートとともにインキュベートし、結合していないファージを洗い流し、特異的に結合したファージを溶出させることによって、パンニングを行った。溶出したファージを増幅し、繰り返しパンニングを行うことによって結合する配列を多く含むプールを豊富にした。
【0115】
1日目に、25μg/mlの濃度でラミニンを0.1M NaHCO(pH8.6)に溶解し、次いで、溶液を15分間沸騰させ、熱的に変性したラミニンを得た。次いで、この溶液を室温まで冷却した。
【0116】
天然ラミニン(沸騰させていない)100μlを4つのウェル(Nunc−ImmunoTM MaxisorpTM、Nalge Nunc International,Rochester,New Yorkから入手可能)に添加し、変性ラミニン(沸騰させた)100μlを5番目のウェルに添加した。上部を密閉し、プレート表面が濡れるまでプレートを繰り返し攪拌し、穏やかに攪拌しながら4℃の温度で一晩インキュベーションした。
【0117】
2日目に、LB/tet培地10mlをER2738 E.coli株の1個のコロニーと共に接種した。LB/tet培地を以下のように調製した:LB培地1Lを10g/Lのバクトトリプトン及び5g/LのNaClから調製した。混合物を121℃で15分間オートクレーブにかけ、室温で保存した。エタノール中のテトラサイクリン20mg/mlのテトラサイクリンストックを調製し、暗室で20℃で保存し、使用前に攪拌した。LB/tetプレートをLB培地及び15g/lの寒天から調製し、121℃で15分オートクレーブにかけ、70℃未満まで冷却した。次いで、テトラサイクリンストック1mlを添加し、混合物をプレートに注いだ。プレートを暗室中で4℃で保存した。
【0118】
コーティング溶液を第1のウェルに注ぎ、ウェルをTEST(TBS+0.1%(v/v)Tween−20)で2回洗浄した。TBSを50mM Tris−HCl(pH7.5)及び150mM NaClから調製し、121℃で15分間オートクレーブにかけ、室温で保存した。
【0119】
次いで、2×1011のファージ(元のライブラリー10μl、New England Bio Labs,Inc.から得られる)をTEST100μlで希釈し、第1のウェル上にピペットで取った。次いで、第1のウェルを4℃で60分間穏やかにロックした。
【0120】
第2のウェルのコーティング溶液を出し、ウェルをTBSTで2回洗浄した。第1のウェルからの上清を第2のウェルにピペットで取った。第2のウェルを4℃で60分間穏やかにロックした。
【0121】
第3のウェルのコーティング溶液を出し、ウェルをTBSTで2回洗浄した。第2のウェルからの上清を第3のウェルにピペットで取った。第3のウェルを4℃で60分間穏やかにロックした。
【0122】
第4のウェルのコーティング溶液を出し、ウェルをTBSTで2回洗浄した。第3のウェルからの上清を第4のウェルにピペットで取った。第4のウェルを4℃で60分間穏やかにロックした。
【0123】
第5のウェルのコーティング溶液を出し、ブロッキングバッファー(0.1M NaHCO(pH8.6)、5mg/ml BSA、0.02% NaN3、滅菌ろ過し、4℃で保存)で満たした。次いで、第5のウェルを4℃で60分間インキュベートした。次いで、ブロッキングバッファー溶液を捨て、第5のウェルをTESTで6回洗浄した。第4のウェルからの上清を第5のウェルにピペットで取り、第5のウェルを室温で60分間インキュベートした。次いで、溶液を出し、第5のウェル及び第5のウェルをTESTで10回洗浄した。
【0124】
第5のプレートに結合したファージを0.2M グリシン−HCl(pH2.2)で溶出させた。溶出の後、ファージを増幅させ、滴定した。次いで、ファージをパンニングの次のラウンドのために使用した。2日目のプロセスを3回繰り返し、ファージを用いるそれぞれの時間に、以前の操作の最後に作成した。
【0125】
最後の工程は分離及びDNAによるペプチドの同定であり、STQ−ペプチドを得た。
【0126】
(実施例2−変性ラミニンのペプチドアンタゴニストが、変性ラミニンに対するレチナール染色上皮(RPE)細胞接着をブロックした)
インビボ細胞接着アッセイを行って、STQ−ペプチドが細胞接着を制御する変性ラミニン内の機能性エピトープに結合するか否かを決定した。非組織培養処理された48−ウェルプレートを変性ラミニンでコーティングした。STQ−ペプチドの非存在下、100μg/mlの濃度でSTQ−ペプチドの存在下、200μg/mlの濃度でSTQ−ペプチドの存在下でヒトRPE細胞をコーティングされたウェルに接着させた。
【0127】
ヒト変性ラミニン(25μg/ml)を48−ウェル非組織培養処理されたプレート上に固定した。ウェルを洗浄しPBS(リン酸緩衝化食塩水)中の1%BSA(ウシ血清アルブミン)と共に37℃で1時間インキュベートした。副集密的なRPE細胞を集め、洗浄し、RPMI−1640培地、1mM MgCl、0.2mM MnCl、及び0.5% BSAを含有する接着バッファー中に再懸濁させた。STQ−ペプチドの非存在下、100μg/ml又は200μg/mlの濃度でSTQ−ペプチドの存在下で、RPE細胞(10)を接着バッファー200μl中に再懸濁させ、各ウェルに添加し、37℃で30分接着させた。接着していない細胞を除去し、Petitclercら、Cancer Res.1999;59:2724−2730に記載されるように、接着した細胞を結晶バイオレットで10分間染色した。ウェルをPBSで3回洗浄し、細胞に関連する結晶バイオレットを10%酢酸100μlを添加することによって溶出させた。溶出した結晶バイオレットを600nmの波長での光学密度を測定することによって、細胞接着を定量した。
【0128】
100μg/ml又は200μg/mlのいずれかでのSTQ−ペプチドの存在は、変性ラミニンに対するRPE細胞の接着を95%より多くブロックした(図1)。
【0129】
(実施例3−STQ−ペプチド−Sが変性ラミニンに対する黒色腫細胞接着をブロックした)
接着アッセイを実施例2及びPetriclercら、Cancer Res.1999;59:2724−2730に記載される方法に従って行った。STQ−ペプチド−Sの非存在下、50μg/mlの濃度でSTQ−ペプチド−Sの存在下で、非組織培養処理された48−ウェルプレートを変性ラミニンでコーティングした。ヒトM21黒色腫細胞及びマウスB16マウス黒色腫細胞をコーティングされたウェルに接着させた。STQ−ペプチド−SはM21及びB16国職種細胞の接着を約80%ブロックした(図2)。
【0130】
(実施例4−STQ−ペプチドによる、変性ラミニンに対するRPE細胞接着の濃度依存阻害)
1セットの非組織培養処理された48−ウェルプレートを、実施例2及びPetticlercら、Cancer Res.1999;59:2724−2730に記載される方法に従って、異なる濃度のSTQ−ペプチドの存在下、天然ラミニンでコーティングした。非組織培養処理されたプレートの別のセットを、異なる濃度のSTQ−ペプチドの存在下、変性ラミニンでコーティングした。STQ−ペプチドは、変性ラミニンでコーティングされたウェルに対してRPE細胞接着の濃度依存阻害を示した。STQ−ペプチドは、試験されるSTQ−ペプチドの任意の濃度で、天然ラミニンでコーティングされたウェルに対するRPE細胞接着についてはほとんど効果がなかった(図3)。
【0131】
(実施例5−STQ−ペプチドは鶏CAMモデルにおけるbFGF誘発性血管形成をブロックした)
10日齢のニワトリ胚の漿尿膜(CAM)内で、bFGFを用いて血管形成を誘発させた。24時間後、8〜10の胚をSTQ−ペプチド(100μg/胚)を1回注射して処置した。3日のインキュベーションの終了時に、CAM組織を分析のために除去した。STQ−ペプチドの注射は、フィルターディスクの密閉領域内の分枝血管の数を顕著に減らした。STQ−ペプチド1回注射は、95%より多くbFGFを阻害した(図4)。ペプチド注射後に副作用はなんら注記されなかった。8〜10のニワトリ胚を各2グループにおいて試験し、試験される24〜30のニワトリ胚全てについて実験を3回繰り返した。
【0132】
(実施例6−STQ−ペプチドはB16黒色腫転移をインビボで阻害した)
12日齢のニワトリ胚(SPAFAS,North Franklin,CTから得た)に、STQ−ペプチドの存在下(100ug/胚)又は非存在下で、転移性B16黒色腫細胞(Chambersら、J Natl.Cancer Inst.1992;84:797−803)を静脈内注射した。それぞれの実験について、各条件のセットについて8〜10のニワトリを試験し、実験を3回繰り返した。胚を7日間インキュベートし、殺した。ニワトリの肺を転移について分析した。B16黒色腫転移は、別個の黒色の病変として見えた。STQ−ペプチドあり及びSTQ−ペプチドグループなしの場合について、ニワトリの肺表面上のB16腫瘍病変を数えることによって転移を定量した。B16黒色腫の転移は、STQ−ペプチドグループなしの場合と比較して、STQ−ペプチドグループありの場合に95%より多く阻害された(図5)。
【0133】
これらの結果は、STQ−ペプチドがインビボにおける腫瘍転移の強力な阻害剤であることを示す。
【0134】
(実施例7−転移性乳癌をもつ患者の処置)
肝臓に対して転移性の乳癌をもつ60kgの患者から肝臓機能試験のために血を抜き取った。患者は、肝臓転移の大きさ及び数を調べるために腹部CTスキャンを受けた。身体検査を用いて保健専門家によって;全血計測、BUN、及びクレアチニンのような血液試験;及びEKGによって、患者の全体的な医療状態を評価した。
【0135】
患者の体重(60kg)に体重あたりの用量(1kgあたり150mg)を乗じることにより、STQ−ペプチド用量を9000mgと計算した。この用量のSTQ−ペプチドを水溶液中で混合し、2時間かけて抹消静脈カテーテルを介して静脈内投与した。STQ−ペプチド注入後、副作用の出現について、患者を保健専門家によって2時間モニタリングした。このような副作用が存在しなければ、患者を家に帰した。
【0136】
STQ−ペプチド注入2週間後、患者を繰り返して肝臓機能試験及びCTスキャンした。肝臓機能試験値の低下は、腫瘍転移の退縮を示し得る。転移の大きさ及び/又は数の減少のCTスキャンの視覚化は、転移の処置が成功したことを示す。
【0137】
本明細書中の本文で引用される全ての特許及び刊行物は、本明細書中にその全体を参考として組み込まれる。
【0138】
さらに、本発明の上記記載は、例示及び説明の目的のために示され、本明細書中の実施の正確な様式に本発明を限定することを意図しないことが理解される。それ故に、本発明の精神から逸脱することなく変更が当業者によってなされ得ること、及び本発明の範囲が添付の特許請求の範囲を用いて解釈されるべきであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、未処理の変性ラミニン(NT)に対する、100μg/mlのSTQ−ペプチド濃度でSTQ−ペプチド処理された変性ラミニンに対する、及び200μg/mlのSTQ−ペプチド濃度でSTQ−ペプチド処理された変性ラミニンに対する、ヒトレチナール染色された上皮(RPE)細胞の接着を示す図である。
【図2】図2は、未処理の変性ラミニン(NT)及びSTQ−ペプチド−S処理された変性ラミニンに対する、M21ヒト黒色腫細胞及びB16マウス黒色腫細胞の接着を示す図である。
【図3】図3は、異なる濃度のSTQ−ペプチドで処理された天然ラミニン及び異なる濃度のSTQ−ペプチドで処理された変性ラミニンに対するRPE細胞の接着を示す図である。
【図4】図4は、bFGFで誘発された血管形成の後にSTQ−ペプチド処理をしない場合、及び、bFGFで誘発された血管形成の後にSTQ−ペプチド処理をした場合の、CAM血管形成する血管の定量を示す図である。
【図5】図5は、STQ−ペプチドで処理されていない(NT)ニワトリ胚肺及びSTQ−ペプチドで処理されたニワトリ胚肺における、B16黒色腫転移の定量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ラミニン選択的なペプチドアンタゴニスト。
【請求項2】
前記アンタゴニストが、アミノ酸配列NH−S−T−Q−N−A−S−L−L−S−L−T−V−C−COOHを含むペプチドである、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項3】
前記アンタゴニストが、アミノ酸配列NH−K−G−G−C−S−T−Q−N−A−Q−L−L−S−L−I−V−G−K−A−COOHを含むペプチドである、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項4】
前記アンタゴニストが、アミノ酸配列NH−K−G−G−S−T−Q−N−A−Q−L−L−S−L−I−V−G−K−A−COOHを含むペプチドである、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項5】
変性ラミニンに対する前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストの結合アフィニティーが、天然ラミニンに対する該アンタゴニストの結合アフィニティーよりも実質的に大きい、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項6】
変性ラミニンに対する前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストの結合アフィニティーが、天然ラミニンに対する該アンタゴニストの結合アフィニティーよりも100倍大きい、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項7】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが変性ラミニンとの細胞相互作用を阻害する、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項8】
変性ラミニン選択的なアンタゴニスト及び薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項9】
前記組成物が細胞傷害性剤を含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物が放射性物質を含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物が細胞増殖抑制剤を含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
血管形成を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において血管形成を阻害するための方法。
【請求項13】
変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程と、
該患者において結合した選択的な変性ラミニンアンタゴニストを検出する工程とを含む、患者において血管形成を検出する方法。
【請求項14】
血管形成を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において腫瘍を処置する方法。
【請求項15】
血管形成を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において転移を処置する方法。
【請求項16】
血管形成を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において血管形成疾患を処置する方法。
【請求項17】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、局所、眼球内、経口、鼻腔内、又はぜん動性手段によって投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストの用量範囲が、0.1mg/kg/日〜300mg/kg/日である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストの用量範囲が、10mg〜3000mgである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが化学治療薬剤と組み合わせて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが放射性物質と組み合わせて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが細胞増殖抑制剤に接合されて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が哺乳動物である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記患者がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
腫瘍細胞接着を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において腫瘍細胞接着を阻害するための方法。
【請求項26】
変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程と、
該患者において結合した変性ラミニン選択的なアンタゴニストを検出する工程とを含む、患者において腫瘍細胞接着を検出する方法。
【請求項27】
腫瘍細胞接着を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において腫瘍を処置する方法。
【請求項28】
腫瘍細胞接着を阻害する有効量の変性ラミニン選択的なアンタゴニストを患者に投与する工程を包含する、患者において転移を処置する方法。
【請求項29】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、局所、眼球内、経口、鼻腔内、又はぜん動性手段によって投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストの用量範囲が、0.1mg/kg/日〜300mg/kg/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストの用量範囲が、10mg〜3000mgである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが化学治療薬剤と組み合わせて投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが放射性物質と組み合わせて投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記変性ラミニン選択的なアンタゴニストが細胞増殖抑制剤に接合されて投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が哺乳動物である、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記患者がヒトである、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−524241(P2006−524241A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509356(P2006−509356)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/009332
【国際公開番号】WO2004/087734
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(500350265)ニューヨーク ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】