説明

TC−83由来アルファウイルスベクター、粒子および方法

本開示は、TC-83 VEE由来レプリコンと、アルファウイルスレプリコン粒子と、適当な宿主細胞に導入された時少なくとも1つの抗原の発現を指令するTC-83アルファウイルスレプリコン粒子を含有する免疫原性組成物とを提供する。本明細書に記載のTC-83 VEE由来ARPは、先行技術のARPと比較してより低いベクター特異的免疫応答を受けるという点で改良されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は組換えDNA技術、詳しくは真核細胞への外来核酸の導入、さらに詳しくは免疫療法および/または遺伝子治療への応用に有用なアルファウイルス(alphavirus)レプリコン粒子を産生するための組成物と方法に関する。特に本発明は、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan Equine Encephalitis virus;VEE)ワクチン株TC-83に基づくアルファウイルスレプリコン粒子系の遺伝的背景を開示する。
【0002】
種々のウイルスが、トガウイルス(Togaviridae)科のメンバーであるアルファウイルス属に含まれる。アルファウイルスゲノムは、1本鎖のメッセンジャーRNAであり、5'末端がメチル化キャップで3'末端が可変長ポリ(A)領域(variable-length poly(A) tract)により修飾されている。単一のウイルスタンパク質を含有する構造サブユニットであるカプシドは、正20面体ヌクレオカプシドでRNAゲノムと結合する。ビリオン中ではヌクレオカプシドは、膜貫通タンパク質スパイク(それぞれが、2つの糖タンパク質E1とE2の3つのヘテロダイマー複合体からなる)の規則的なアレイで覆われた脂質エンベロープに囲まれている。Paredesら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:9095-9099を参照されたい。シンドビスウイルス(Sindbis virus)およびセムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)は原型アルファウイルスと見なされ、広く研究されている。Schlesinger、「トガウイルス科とフラビウイルス科(The Togaviridae and Flaviviridae)」、プレナムパブリッシング社(Plenum Publishing Copr.)、ニューヨーク(1986)を参照されたい。VEEウイルスもまた広く研究されており、例えば米国特許第5,185,440号、5,505,947号、および5,643,736号を参照されたい。
【0003】
増殖欠陥性アルファウイルス粒子(アルファウイルスレプリコン粒子と呼ぶ)の使用は、ウイルスベクター送達系として非常に有望であることが証明されている。レプリコンは、アルファウイルス構造遺伝子の一部またはすべての代わりに1つ以上の異種抗原を運搬するように構築される。レプリコンは、レプリコンによってコードされないウイルス構造タンパク質を発現するヘルパー構築体とともにアルファウイルス許容細胞中に導入されるか、またはレプリコンは、構造タンパク質を発現することができるパッケージング細胞中に導入される。次にレプリコンは、発現された構造タンパク質により、完全なアルファウイルスゲノムのパッケージングと同様にパッケージングされる。これらのパッケージングされたレプリコンまたはアルファウイルスレプリコン粒子は、次に動物に接種される。粒子は宿主細胞中に入り、次にレプリコンは、サブゲノミックmRNAから非常に高いレベルで、導入された異種コード配列または他の機能性配列を発現する。以後のウイルスの子孫は、レプリコンが必要なウイルスパッケージング(構造)遺伝子のすべてはコードしないため、アセンブリーが阻止される。
【0004】
レプリコンのアルファウイルス遺伝的背景とレプリコンをパッケージングするのに使用されるアルファウイルス構造タンパク質の両方が、レプリコン粒子の最終的性能に大きな影響を与える。VEEウイルスはリンパ栄養性であり、比較的少ない免疫用量で強い細胞性および体液性免疫応答を与えるため、アルファウイルスの中でもワクチンベクターとして好適である(Davis, NLら、(1996) J. Virol. 70(6):3781-7;MacDonald, GHとJohnston RE、(2000)J. Virol. 74(2):914-922;Caley IJら、(1997)J. Virol. 71:3031-3038;Hevey Mら、(1998)Virology 251(1):28-37;Caley IJら、(1999)Vaccine 17:23-24;Pushko, Plら、(2001)Vaccine 19:142-153)。
【0005】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)のいくつかの株が知られてり、これらの株内でサブタイプが認められている。南北米大陸の熱帯地域および亜熱帯地域では、ウマの蚊媒介流行性脳炎で病毒性のVEE株が分離された。サブタイプIA/B中にある最も病毒性の動物間流行性株の1つであるトリニダードドンキー(Trinidad Donkey;TRD)株は組織培養で連続的に継代されて、TC-83として知られている生きた弱毒化株(Bergeら、(1961)Amer. J. Hyg. 73:209-218)が作成された。この株は、ほとんどのヒトとウマでVEE特異的中和抗体を誘発し、これらの両方の種でワクチンとしての使用が成功している(MoKinneyら、(1972)「ベネズエラウマ脳炎において不活性化された生きたVEEワクチン−総説(Inactivated and live VEE vaccines - A Review)」中、369-376頁、Sc. Pub. No.243 パンアメリカン保健機構(Pan American Health Organization)、ワシントンD.C.:Walton TEら、(1972)Am. J. Epidemiol. 95:247-254;Pittman PRら、(1996)Vaccine 14(4):337-343)。しかしこのワクチンは、安全性と効力の点でいくつかの問題を有する。まずこれは、ヒトのワクチンで有害な、時にやや重症の反応を引き起こす。第2にTC-83株はマウスへの残存病毒性を示し、脳内(i.c.)または皮下(s.c.)接種後は、乳児マウスにとって致死的である(Ludwig Gら、(2001)Am. J. Trop. Med. Hyg. Jan-Feb;64(1-2):49-55)。第3にTC-83株は、ヒトでは不応答者(すなわち接種後に体液性応答を示さない個体)が高率に存在する(Pittman PRら、(1996)Vaccine 14(4):337-343)。最後にTC-83株は、親のTRD株または他の動物間流行性VEE株と比較して特にインターフェロンに対して感受性である(Spotts, DRら、(1998)J. Virol. 72:10286-10291)。かかるインターフェロンに対する感受性の増大は、レプリコン粒子中の異種遺伝子が感染細胞中では効率的に発現されず、かかる粒子はインビボであまり免疫原性ではないことを予測させる。VEEのTC-83ワクチン株に関連するこれらの有害な要因のすべてのために、従来の研究者は、より弱毒化された株を増殖コンピタントVEEベクターとしてまたはレプリコン粒子系で使用することを探求してきた(例えば、Davis NLら、(1994)Arch. Virol. Suppl. 9:99-109;Davis NLら、(1996)J. Virol. 70(6):3781;Pushkoら、(1997)本明細書中;Pratt WDら、(2003)Vaccine 21(25-26):3854-3862)。
【0006】
変異とアルファウイルス株の組合せを最適化して、ワクチンおよび/または遺伝子治療応用で使用される最も有効なアルファウイルスレプリコン粒子を提供するニーズがいまだに存在する。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
本発明は、特定のアルファウイルス株(すなわち、VEEのTC-83)に基づく感染性の複製欠陥性の高免疫原性アルファウイルスレプリコン粒子の組成物、およびその製造法を提供する。既に記載されているように(例えば、米国特許第5,792,462号;6,156,558号;5,811,407号;6,008,035号;6,583,121号;WO03/023026号;米国特許公報2003/0119182号を参照されたい、これらのすべては参照することにより本明細書に援用する)、いくつかの異なるアルファウイルスおよびこれらのキメラから機能性アルファウイルスレプリコン粒子が作成されている(例えば、米国特許公報第2003/0148262号を参照)。これらの粒子はワクチンや遺伝子治療応用に有用であり、アルファウイルスレプリコン粒子の最適特性はこれらの応用で異なる。例えば、遺伝子治療応用ではレプリコンからのタンパク質の発現を減少させることが有用であり、従ってかかる発現を低下させる技術が開発されている(例えば米国特許第5,843,723号と6,451,592号を参照)。ワクチン応用では、レプリコンからの異種RNAの発現の最大化、任意の抗ベクター応答の最小化、および免疫系の組織や細胞の標的化が好ましい特徴である。アルファウイルスであるベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスおよび南アフリカアルボウイルスNo.86は、ワクチン応用において特に有用であることが証明されている。複製コンピタントウイルスが生成されるまれな場合にこれらのアルファウイルスベクターの安全性を改良するために、アルファウイルスゲノム断片中に少なくとも1つの弱毒化変異が導入されている。本発明者は、免疫原性組成物で使用される驚くほど有効なVEE粒子調製物を与え、かつワクチンベクター系として有用な他の驚くほど有利な性質(精製調製物を容易に調製する能力を含む)を有するアルファウイルスレプリコン粒子系の遺伝的背景として、VEEのTC-83株を使用できることを発見した。
【0008】
本発明者は、VEEのTC-83株が、そこからレプリコンワクチン粒子を得るための驚くほど良好なアルファウイルス株であることを発見した。TC-83配列の完全な配列は公表されている(Kinney RMら、(1989)Virology 170:19-30;Kinney RMら(1993)J. Virol. 67(3):1269-1277により補正された)。この生きた弱毒化ワクチン株のゲノムは、これが得られた病毒性の親株とは異なる12個の差異を有する:5'非コード領域のヌクレオチド3での単一ヌクレオチド置換(G→A);nsP2-16(Ala→Asp)、nsP3-260(Ser→Thr)、E2-7(Lys→Asn)、E2-85(His→Tyr)、E2-120(Thr→Arg)、E2-192(Val→Asp)、E2-296(Thr→Ile)、およびE1-161(Leu→Ile)でのアミノ酸置換;E2-278(U→C)とE1-211(A→U)での2つのサイレントヌクレオチド置換、および3'非コード領域のヌクレオチド11,405での単一ヌクレオチドの欠失(UU→U)。Kinneyら、1993(本明細書中)は、生きたTC-83株の弱毒化表現型(すなわち、マウスでの低下した神経病毒性)は、ヌクレオチド3の変異(GからA)とE2変異、特にE2-120変異によることを示唆している。このヌクレオチド3の変異はVEEの野生型株中に導入されると、株を弱毒化することが証明されている(White LJら、(2001)J. Virol. 75:3706-3718)。しかし使用された方法は他の変異からの寄与を排除せず、TC-83ゲノム中の多くの他の非保存的変異の存在が、これがレプリコン粒子系の有効な遺伝的背景として機能できるかどうかを予測することを不可能にしている。
【0009】
本発明者は、TC-83株に基づいてレプリコン粒子ワクチンを作成し、これは、ワクチンや遺伝子治療応用の両方でいくつかの驚くほど有利な特性(特に限定されないが、野生型VEEに基づく粒子または他の弱毒化変異を有するもので得られる収率と比較してはるかに高い収率;抗ベクター応答の低下;純度の上昇;1つのみ、2つまたは3つの弱毒化変異を有する他のVEE株に匹敵する優れた免疫原性、およびワクチンとして使用される生きたTC-83株に対する動物の明らかな非応答性と比較して、非応答性ではないことを含む)を有する。
【0010】
さらに本発明者は、VEETC83構造タンパク質をアルファウイルスレプリコンにパッケージングすると、細胞培養物からレプリコン粒子ワクチンの有意に高い収率が得られることを発見した。すなわちVEETC83構造タンパク質は、他のアルファウイルス(VEEの他の株を含む)からレプリコンをパッケージングするのに有利に使用することができる。
【0011】
すなわち本発明は、(i) 1つ以上の異種RNA配列をコードするアルファウイルスレプリコンRNA(ここで、レプリコンRNAは、アルファウイルスRNAの転写を開始する5'配列、レプリコンRNAの複製に必要なTC-83アルファウイルス非構造タンパク質を一緒にコードする1つ以上のヌクレオチド配列、異種RNAによりコードされるポリペプチドを発現する手段、および3' RNAポリメラーゼ認識配列を含む)と、(ii) TC-83由来のカプシドタンパク質と;および(iii) TC-83由来のアルファウイルス糖タンパク質とを含む組換えアルファウイルス粒子を提供する。
【0012】
本発明はまた、他のワクチン株、特に免疫原性レプリコン粒子組成物で使用するために遺伝子操作することができるTC-83の特性と類似の特性を有するものを提供する。
【0013】
また、感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子の集団が提供され、ここで該集団は、アルファウイルスパッケージングシグナルを含むVEE TC-83レプリコンRNAと目的の核酸をコードする1つ以上の異種RNA配列とを含み、アルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如したレプリコン粒子を含み、かつ該集団は、108 個のTC-83レプリコン粒子当たり10個以下の複製コンピタントTC-83ウイルス粒子を含有する。
【0014】
また、感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子の集団を含む組成物が提供され、ここで(1) 各粒子は、1つ以上の異種RNA配列をコードするアルファウイルスレプリコンRNAを含み、アルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如しており、(2) 集団は、細胞培養物での継代により測定すると、検出可能な複製コンピタントなウイルス(RCV)を持たず、(3) レプリコンRNAはTC-83由来であり、かつ集団は薬剤学的に許容される担体とともに製剤化される。アルファウイルス構造タンパク質は、アルファウイルスVEEワクチン株TC-83、野生型VEE株、または構造タンパク質をコードするアルファウイルスゲノム配列中に1つ以上の弱毒化変異を含有するVEEの他の株由来でもよい。具体例においてTC-83構造タンパク質は、例えばE1-81に1つ以上の追加の弱毒化変異(例えばPheからIle)を有してもよい。
【0015】
また、感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子の集団を含む組成物が提供され、ここで(1) 各粒子は、1つ以上の異種RNA配列をコードするアルファウイルスレプリコンRNAを含み、アルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如しており、(2) 粒子のコートを含む構造タンパク質はVEETC83由来であり、そして(3)集団は、細胞培養物での継代により測定すると、検出可能な複製コンピタントなウイルス(RCV)を持たず、かつ集団は薬剤学的に許容される担体とともに製剤化される。この組成物では、アルファウイルスレプリコンRNAは、野生型VEE株、またはレプリコン内に含有されるアルファウイルスゲノム配列内に1つ以上の弱毒化変異を含有するVEEの他の非TC-83株由来でもよい。具体例においてTC-83構造タンパク質は、例えばE1-81に1つ以上の追加の弱毒化変異(例えばPheからIle)を有してもよい。
【0016】
また、薬剤学的に許容される担体中に感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子の集団を含む免疫原性組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象の免疫応答を生成する方法が提供され、ここで該組成物は、アルファウイルスパッケージングシグナルを含むVEE TC-83レプリコンRNAと、免疫原をコードする1つ以上の異種RNA配列とを含み、アルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如した粒子を含み、かつ該組成物は、108 個のTC-83レプリコン粒子当たり10個未満の複製コンピタントTC-83粒子を含有する。
【0017】
また、(1) 異種RNA配列、例えばウイルスに対して異種のコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如したVEETC83レプリコンRNAと、(2) TC-83構造タンパク質をコードする1つ以上の核酸とを含む、感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子を産生するためのヘルパー細胞が提供される。あるいは構造タンパク質は、野生型VEE構造糖タンパク質、VEE3014構造糖タンパク質、VEE3040糖タンパク質、VEE3042糖タンパク質、およびVEE3526糖タンパク質よりなる群から選択されるが、好ましくは弱毒化病毒性を与えるアミノ酸置換を含有するVEE構造糖タンパク質よりなる群から選択され、かつVEEカプシドは、野生型配列から、または自己タンパク質分解切断部位が欠失している配列から産生される。
【0018】
また、(1) 異種RNA配列、例えばウイルスに対して異種のコード配列を含み、アルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如したアルファウイルスレプリコンRNAと、(2) TC-83構造タンパク質をコードする1つ以上の核酸とを含む、感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子を産生するためのヘルパー細胞が提供される。
【0019】
本発明はさらに、感染性の増殖欠陥性TC-83レプリコン粒子が産生されるように、すべてのVEE構造タンパク質をコードする組換えDNA分子と少なくとも1つの異種RNAをコードするTC-83レプリコンRNAとを、細胞集団に導入することを含む、感染性の増殖欠陥性TC-83レプリコン粒子を産生する方法を提供し、ここでVEE構造糖タンパク質は以下のVEE株の1つから得られる:TC-83、3014,3040,3042および3526。これらの株は本明細書においてVEETC83、VEE3014などと呼ばれる。
【0020】
また、感染性の増殖欠陥性のレプリコン粒子が産生されるように、すべてのVEETC83構造タンパク質をコードする組換えDNA分子と少なくとも1つの異種RNAをコードするアルファウイルスレプリコンRNAとを、細胞集団に導入することを含む、感染性の増殖欠陥性アルファウイルスレプリコン粒子を産生する方法が提供され、ここでVEEレプリコンRNAは野生型VEE株から得られるか、または少なくとも1つの弱毒化変異(例えば、ヌクレオチド3のAへの変異)を取り込む。
【0021】
細胞の集団に、(i) それぞれが少なくとも1つの(しかしすべてではない)VEE構造タンパク質をコードする2つの組換え核酸分子と、(ii) 少なくとも1つの異種RNAをコードするTC-83レプリコンRNAとを導入することを含む、感染性の増殖欠陥性アルファウイルスレプリコン粒子を産生する方法であって、2つの組換え核酸分子は一緒に、細胞中で感染性の増殖欠陥性TC-83レプリコン粒子を産生するのに必要なすべてのVEE構造タンパク質をコードし、かつさらにアルファウイルス構造タンパク質は以下のVEE株(TC-83、3014,3040,3042および3526)の1つから得られることを特徴とする上記方法。これらの株は典型的には、本明細書において「VEETC83」、「VEE3014」などと呼ばれる。
【0022】
また、ヘパリン親和性クロマトグラフィーにより、カラムまたはバッチ精製法により、精製された感染性の増殖欠陥性TC-83レプリコン粒子を有利に与える方法が提供される。TC-83由来レプリコン粒子のユニークなヘパリン結合特性は、一回の精製工程によって混入タンパク質や核酸を除去することを可能にする。
【0023】
また、本発明のレプリコン粒子の集団の免疫原性量を対象に投与することを含む、対象の免疫応答を誘発する方法が提供される。
【0024】
本発明はまた、米国特許第5,643,576号に記載のようにワクチン中での発現のための異種遺伝子を運搬するかまたは運搬しない生きた弱毒化アルファウイルスワクチン、または機能性RNA(例えばアンチセンス、抑制RNA、または治療タンパク質をコードする干渉RNA)の発現を指令する生きた弱毒化アルファウイルスベクターの産生にも適用される。本発明の方法は、(a) TC-83レプリコン核酸を宿主細胞中に導入する工程(ここで、該レプリコン核酸は、該アルファウイルスレプリコン核酸中に、少なくともアルファウイルスパッケージングシグナルと、発現可能な目的のタンパク質もしくは機能性RNAの少なくとも1つのコード配列を含み、宿主細胞はARPの産生に必要なアルファウイルス構造タンパク質を発現して修飾宿主細胞を産生することができる);(b) 構造タンパク質の発現とアルファウイルスレプリコン核酸の複製とを可能にする条件下で、培地中で該修飾宿主細胞を培養し、次にアルファウイルスレプリコン核酸をパッケージングしてARPを生成する工程;(c) 場合により、修飾宿主細胞を培地から分離する工程;および(d) 工程(b)または(c)後に、少なくとも約0.20M、好ましくは約0.5〜約5Mのイオン強度を有する水溶液(本明細書において「放出培地」)に修飾宿主細胞を接触させて、ARPを水溶液中に放出させてARP含有溶液を産生する工程、とを含む。放出培地のイオン強度は、ビリオンまたはARPを不活性化しない塩を使用して達成することができ、適当な塩には、特に限定されないが、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、重炭酸アンモニウム、およびヘパリンファーストフロー(heparin Fast Flow)がある。好ましくは放出培地は、pHが約6〜約9、好ましくは約6.5〜約8.5の緩衝液を含む。細胞が培地から分離されない時、固体の塩または濃縮溶液を添加して細胞からARP(またはビリオン)を放出するためのイオン強度を上昇させて、培地のイオン強度を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
以下の説明と定義は、当業者に対して本開示を明瞭にするために提供される。
【0026】
本発明において、nmはナノメートルを、mlはミリリットルを、VEEはベネズエラウマ脳炎ウイルスを、EMCは脳心筋炎ウイルスを、BHKはベビーハムスター腎細胞を、HAは血球凝集素遺伝子を、GFPは緑色蛍光タンパク質遺伝子を、Nはヌクレオカプシドを、FACSは蛍光活性化細胞ソーター解析を、IRESは内部リボゾーム侵入部位を、そしてFBSは胎児牛血清を意味する。「E2アミノ酸(例えば、Lys、Thrなど)番号」という表現は、E2遺伝子の指定の残基での指定のアミノ酸を示し、またE1遺伝子の特定の残基でのアミノ酸を示すのに使用される。
【0027】
本明細書において用語「アルファウイルス」は当該分野で通常の意味を有し、VEE、SFV、シンドビス、ロスリバーウイルス(Ross river virus)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)、チクングンヤウイルス(Chikungunya)、エスエーエーアール86(S.A. AR86)、エバグレーズウイルス(Everglades virus)、ムカンボウイルス(Mucambo)、バルマーフォレストウイルス(Barmah forest virus)、ミデルビュルフウイルス(Middelburg virus)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)、オニョンニョンウイルス(O'nyong-nyong virus)、ゲタウイルス(Getah virus)、サギヤマウイルス(Sagiyama virus)、ベバルウイルス(Bebaru virus)、マヤロウイルス(Mayaro virus)、ウナウイルス(Una virus)、アウラウイルス(Aura virus)、ワタロアウイルス(Whataroa virus)、バンバンキウイルス(Banbanki virus)、キジラガッチウイルス(Kyzylagach virus)、ハイランズジェイウイルス(Highlands J virus)、フォ−トモルガンウイルス(Fort Morgan virus)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)、およびバギークリークウイルス(Buggy creek virus)などの種々の種がある。本発明の構築体と方法で使用される好適なアルファウイルスは、VEE、S.A. AR86、シンドビス(例えばTR338、米国特許第6,008,035号を参照)、およびSFVである。
【0028】
本発明の方法で使用される「アルファウイルス許容細胞(Alphavirus-permissive cells)」は、完全なウイルスRNA転写体でトランスフェクトするとウイルス粒子を生成することができる細胞である。アルファウイルスは広い宿主範囲を有する。適当なパッケージング細胞の例には、特に限定されないが、ベロ(Vero)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、ニワトリ胚繊維芽細胞、DF-1、293、293T、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および昆虫細胞がある。
【0029】
本明細書において用語「弱毒化変異」および「弱毒化アミノ酸」は、変異が置換変異であろうとフレーム内欠失または付加変異であろうと、当該分野の標準的用語(例えばB. Davisら、Microbiology 132(第3版、1980)参照)に従って、生きたウイルスで、その宿主でアルファウイルスが疾患を引き起こす確率を低下(すなわち病毒性の喪失)させるヌクレオチド変異(ポリペプチドをコードするウイルスゲノムの領域内であってもなくてもよい)またはヌクレオチド変異によりコードされるアミノ酸を意味する。用語「弱毒化変異」は、変異が、弱毒化されてもウイルスを生存活性にする「回復」変異と組合わされる場合を除き、ウイルスに対して致死的な変異は除外される。VEE構造タンパク質の弱毒化変異の例には、特に限定されないが、Johnstonらの米国特許第5,505,947号、Johnstonらの米国特許第5,185,440号、Davisらの米国特許第5,643,576号、Johnstonらの米国特許第5,792,462号、およびJohnstonらの米国特許第5,639,650号がある(これらの開示内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0030】
VEE E1糖タンパク質の具体的な弱毒化変異は、アミノ酸81位、272位または253位の任意の1つでの弱毒化変異を含む。VEE-3042変異体から作成されたアルファウイルスレプリコン粒子は、E1-81(E1タンパク質のアミノ酸81)でイソロイシン置換を含有し、VEE-3040変異体から作成されたウイルスレプリコン粒子は、E1-253で弱毒化変異を含む。VEE E2糖タンパク質の具体的な弱毒化変異には、アミノ酸76位、120位または209位の任意の1つで弱毒化変異を含む。VEE-3014変異体から作成されたアルファウイルスレプリコン粒子は、E1-272とE2-209の両方で弱毒化変異を含む(米国特許第5,792,492号を参照)。VEE E3糖タンパク質の具体的な弱毒化変異には、アミノ酸56-59の欠失からなる弱毒化変異を含む。VEE-3526変異体から作成されたウイルスレプリコン粒子は、E3(aa56-59)にこの欠失と、E1-253に第2の弱毒化変異を含む。アルファウイルスについて一般に、E3とE2の間の切断ドメイン中の欠失または置換は、切断されないE3/E2ポリタンパク質を与え、弱毒性である。
【0031】
用語「5'アルファウイルス複製認識配列」および「3'アルファウイルス複製認識配列」は、非構造アルファウイルスレプリカーゼタンパク質により認識されてウイルスRNAの複製を引き起こす、アルファウイルス中の配列またはそこから得られる配列を意味する。これらは時に、5'末端と3'末端、またはアルファウイルス5'および3'配列と呼ばれる。本発明の構築体において5'末端と3'末端の使用は、2つの末端間でコードされるRNA配列の複製を引き起こす。アルファウイルス中に存在する3'アルファウイルス複製認識配列は典型的には約330ヌクレオチドの長さであり、これは、より詳細に規定された最小3'複製認識配列を含有する。アルファウイルス中に保存されたこの最小3'複製認識配列は、19ヌクレオチド配列である(Hillら、J. Virol. 2693-2704, 1997)。これらの配列は、標準的な分子生物学的方法により修飾して、組換えの可能性をさらに小さくするか、またはクローニング部位を導入することができる(ただし、これらはアルファウイルス複製機構により認識されなければならない)。
【0032】
用語「最小5'アルファウイルス複製認識配列」は、アルファウイルスの非構造タンパク質による認識を可能にするが、配列を含むRNA分子の顕著なパッケージング/組換えを引き起こさない最小配列を意味する。好適な実施態様において最小5'アルファウイルス複製認識配列は、この配列を含むRNAのパッケージング/組換えの観察される頻度の50〜100倍の低下を引き起こす。ヘルパーのパッケージング/組換えは、いくつかの方法、例えばLuとSilverの方法(J. Virol. Methods 2001, 91(1):59-65)により評価することができる。
【0033】
用語「アルファウイルスRNAレプリコン」、「アルファウイルスレプリコンRNA」、「アルファウイルスRNAベクターレプリコン」、「レプリコン」および「ベクターレプリコンRNA」は、非構造タンパク質遺伝子を発現するRNA分子を示すのに同義で使用され、それ自体の複製(Am)を指令することができ、かつ少なくとも5'および3'アルファウイルス複製認識配列(これらは、上記したように最小配列であるが、アルファウイルスからの全領域でもよい)、アルファウイルス非構造タンパク質のコード配列、およびポリアデニル化領域を含む。これはさらに、プロモーターおよび/またはIRESを含有してもよい。本発明で有用な具体的なレプリコンには以下がある:VEETC83に基づくレプリコン(ここでは「VEETC83レプリコン」と呼ぶ);VEEの野生型配列に基づくレプリコン(ここでは「VEE3000レプリコン」と呼ぶ);およびVEE3000に基づくが、TC83中に存在する弱毒化変異の1つ(すなわちヌクレオチド3での「A」への変異)をさらに含むレプリコン(ここでは「VEE3000nt3A」と呼ぶ)。
【0034】
アルファウイルスRNAベクターレプリコンは、目的の異種核酸(例えば遺伝子)を発現するように設計され、異種RNAまたは異種配列とも呼ばれ、ウイルス、原核生物または真核生物由来の広範囲の配列から選択することができる。異種配列の範疇の例には、特に限定されないが、免疫原(抗原性タンパク質を含む)、サイトカイン、毒素、治療用タンパク質、酵素、アンチセンス配列、および免疫応答調節物質がある。
【0035】
本発明のアルファウイルスRNAレプリコンはまた、アルファウイルス構造タンパク質を発現し、こうして構造タンパク質が得られるアルファウイルスに対するワクチンを生成するように遺伝子操作してもよい。JohnstonらとPoloら(発明の背景で引用された)は、かかるアルファウイルスRNAレプリコンの多くの構築体を記載し、かかる構築体は参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明で使用されるアルファウイルスRNAレプリコンの具体例は、1つ以上の弱毒化変異、1つ以上のヌクレオチドのヌクレオチド欠失、付加、もしくは置換である弱毒化変異、またはキメラ構築体の再構成を含む変異があり、これは、適切な野生型アルファウイルスと比較して変異を含む生きたウイルスの病毒性の喪失を引き起こす。弱毒化ヌクレオチド置換(レプリコン中のアミノ酸の変化を引き起こす)の例には、アルファウイルスS.A.AR86中のnsP1アミノ酸538位、nsP2アミノ酸96位、またはnsP2アミノ酸372位の変異を含む。
【0036】
用語「アルファウイルス構造タンパク質」は、アルファウイルスによりコードされる構造タンパク質の1つまたは組合せを意味する。これらは、ウイルスによりポリタンパク質として産生され、文献では一般にC-E3-E2-6k-E1として示される。E3と6kは、2つの糖タンパク質E2とE1の膜移動/輸送シグナルとして機能する。すなわち本明細書の用語E1の使用は、E1、E3-E1、6k-E1、またはE3-6k−E1を意味し、用語E2の使用は、E2、E3-E2、6k-E2、またはE3-6k-E2を意味することができる。
【0037】
用語「ヘルパー」またはヘルパー構築体は、1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質を発現することができる核酸分子を意味する。
【0038】
用語「ヘルパー細胞」および「パッケージング細胞」は本明細書において同義で使用され、アルファウイルスレプリコン粒子が産生される細胞を意味する。ヘルパー細胞は、1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードするヘルパーのセットを含む。本明細書に開示されるようにヘルパーはRNAまたはDNAでもよい。細胞は、アルファウイルス許容性の任意の細胞である。本発明のある実施態様において、ヘルパー細胞またはパッケージング細胞はさらに、異種RNA依存性RNAポリメラーゼおよび/または配列特異的プロテアーゼを含む。
【0039】
本明細書に同義で使用される用語「アルファウイルスレプリコン粒子」、「ウイルスレプリコン粒子」、「VRP」または「組換えアルファウイルス粒子」は、1つ以上の異種RNA配列を発現するアルファウイルスレプリコンRNAを取り込んだビリオン様構造複合体を意味する。ビリオン様構造複合体は典型的には、カプシドとレプリコンRNAからなるヌクレオカプシドを取り込んだ脂質エンベロープ中に埋め込まれた1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質を含む。脂質エンベロープは典型的には、粒子が産生される細胞の原形質膜から得られる。好ましくはアルファウイルスレプリコンRNAは、アルファウイルスカプシドタンパク質からなるヌクレオカプシド構造により囲まれ、アルファウイルス糖タンパク質は細胞由来脂質エンベロープに埋め込まれる。これらのレプリコン粒子は増殖欠陥性(または「複製欠陥性」と同義)であり、これは、ある宿主細胞中で産生される粒子が、ヘルパー機能(すなわち、レプリコン核酸をパッケージングするのに必要なアルファウイルス構造タンパク質)の欠如のために、その宿主細胞中で子孫粒子を産生できないことを意味する。しかしレプリコン核酸はそれ自体を複製することができ、それが導入されている宿主細胞内に発現されることができる。本発明のレプリコン粒子は、VEETC83レプリコン粒子と呼ばれ、これは、TC83レプリコンRNAもしくはTC83構造タンパク質、またはTC83レプリコンRNAとTC83構造タンパク質の両方を含む粒子を示す。
【0040】
本明細書で言及されるアミノ酸配列中に存在する任意のアミノ酸は、当該分野で通常使用される3文字および1文字略語を有する:A、Ala、アラニン;C、Cys、システイン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;F、Phe、フェニルアラニン;G、Gly、グリシン;H、His、ヒスチジン;I、Ile、イソロイシン;K、Lys、リジン;L、Leu、ロイシン;M、Met、メチオニン;N、Asn、アスパラギン;P、Pro、プロリン;Q、Gln、グルタミン;R、Arg、アルギニン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;V、Val、バリン;W、Try、トリプトファン;Y、Tyr、チロシン。
【0041】
本明細書において特定の配列により指令される発現は、関連する下流の配列の転写、すなわちDNA分子からのメッセンジャーRNAの産生、アルファウイルスサブゲノミックプロモーターからのメッセンジャーRNAの産生である。特定の応用について適宜および所望であれば、転写されたmRNAは次に翻訳され、タンパク質が合成される。すなわち本発明のある実施態様において、レプリコンまたはヘルパー構築体は、それぞれ目的の異種核酸(NOI)をコードするメッセンジャーRNAの転写、または1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードするmRNAの転写を指令する。これらのmRNAは、真核細胞内で「キャップされ」ており、すなわちmRNAの5'末端にメチル-7-グアノシン(5')pppN構造(「キャップ」または「5'キャップ」)が存在し、このキャップは、mRNAからタンパク質を合成する翻訳開始因子により認識される。すなわち26Sプロモーターが転写を指令し、「キャップ」が翻訳の開始シグナルを与える。
【0042】
別の実施態様においてレプリコンまたはヘルパー構築体は、転写を指令するプロモーター;IRES要素;およびコード配列を含み、IRES要素は、コード配列の翻訳がWIPO公報第WO2004/085660で詳述されているように、全体にまたは一部が、IRES要素により指令されるキャップ非依存性機構を介するように、機能的に位置している。特に翻訳レベルでの核酸発現の制御は、アルファウイルス26Sサブゲノミックプロモーターの下流と翻訳されるコード配列の上流に内部リボゾーム侵入部位(IRES)を導入することにより行われる。IRES要素は、これがmRNAの翻訳を指令し、こうして5'キャップからのmRNAの翻訳開始を最小化、制限、または防止する。この「IRES指令」キャップ非依存性翻訳は、複製と転写を改変する可能性のあるアルファウイルス非構造タンパク質遺伝子の大きな修飾を引き起こさない。具体的な実施態様においてレプリコンおよび/またはヘルパー構築体は、プロモーターとIRES要素との間に位置したスペーサー核酸を含む。スペーサー核酸は、メッセンジャーRNAの5'キャップからの少なくとも一部の、およびある実施態様ではすべての翻訳を防止するのに充分な長さの任意のランダムなまたは特異的非コード核酸配列を含むかまたはこれからなり、その結果、翻訳は次に一部またはすべてがIRESにより指令される。あるいはスペーサー核酸は、メッセンジャーRNAの5'キャップからの少なくとも一部のおよびおそらくすべての翻訳活性を妨害するのに充分な二次構造を核酸に付与する長さと配列構造である。
【0043】
適当なIRES要素には、特に限定されないが、ピコルナウイルス、例えばポリオウイルス(PV)またはヒトエンテロウイルス71、例えば7423/MS/87株およびそのBrCrからの;脳心筋炎ウイルス(EMCV)からの;口蹄疫ウイルス(FMDV)からの;フラビウイルス、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)からの;ペスチウイルス、例えば古典的豚コレラウイルス(CSFV)からの;レトロウイルス、例えばマウス白血病ウイルス(MLV)からの;レンチウイルス、例えばサル免疫不全症ウイルス(SIV)からの;細胞mRNA IRES要素、例えば翻訳開始因子、例えばelF4GまたはDAP5からの;転写因子、例えばc-Myc(YangとSarnow, Nucleic Acids Research 25:2800-2807 (1997))またはNF-kB抑制因子(NRF)からの;増殖因子、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF-2)および血小板由来増殖因子B(PDGF B)からの;ホメオティック遺伝子、例えばアンテナペディア(Anntennapedia)からの;生存タンパク質、例えばアポトーシスの伴性インヒビター(XIAP)またはApaf-1からの;シャペロン、例えば免疫グロブリン重鎖結合タンパク質BiP(Martinez-Salasら、Journal of General Virology 82:973-984 (2001))からの、植物ウイルスからのウイルスIRES要素、ならびに現在公知のまたは後に同定される任意の他のIRES要素がある。
【0044】
好適な実施態様において本発明のIRES要素は、例えば脳心筋炎ウイルス(EMCV、ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号NC001479)、コオロギ麻痺病ウイルス(cricket paralysis virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF218039)、キイロショウジョウバエ(Drosophila)Cウイルス(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF014388)、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(Plautia stali intestine virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AB006531)、ムギクビレアブラムシ腸管ウイルス(Rhopalosiphum padi virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF022937)、ヒメトビピーウイルス(Himetobi P virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AB017037)、急性蜂麻痺ウイルス(acute bee paralysis virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF150629)、ブラッククイーンセルウイルス(Black queen cell virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF183905)、サシガメ(Triatoma)ウイルス(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF178440)、エンドウヒゲナガアブラムシウイルス(Acyrthosiphon pisum virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF024514)、感染性軟化病ウイルス(infectious flacherie virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AB000906)、および/または腐そ病ウイルス(Sacbrood virus)(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号AF092924)から得られる。さらに、合成IRES要素が記載されており、これは天然に存在するIRES要素の機能を模倣するために、当該分野で公知の方法に従って設計することができる(Chappell, SAら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 97(4):1536-41を参照)。
【0045】
具体例においてIRES要素は、昆虫IRES要素、または本発明の組換えアルファウイルス粒子のパッケージングのために選択される特定のヘルパー細胞株中で機能性であるが、粒子のための標的宿主細胞(例えばヒト対象)中では機能性ではないかまたはわずかに機能性である他の非哺乳動物IRES要素でもよい。これは、パッケージング細胞に毒性であるかまたはアルファウイルスパッケージングプロセスに有害であるNOIについて有用である。
【0046】
本明細書において用語「構造タンパク質」または「アルファウイルス構造タンパク質」は、RNAレプリコンのパッケージングに必要であるアルファウイルスにコードされるタンパク質の1つ以上を意味し、典型的には成熟アルファウイルス中のカプシドタンパク質、E1糖タンパク質、およびE2糖タンパク質を含む(セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)のようなあるアルファウイルスは、成熟コート中に追加のタンパク質E3を含有する)。用語「アルファウイルス構造タンパク質」は、アルファウイルスによりコードされる構造タンパク質の1つまたは組合せを意味する。これらは、ポリタンパク質として合成され(ウイルスゲノムから)、一般に文献でC-E3-E2-6k-E1として記載されている。E3と6kは、2つの糖タンパク質E2とE1の膜移動/輸送シグナルとして機能する。すなわち用語E1の使用は本明細書においてE1、E3-E1、6k-E1、またはE3-6k-E1を意味し、用語E2の使用は本明細書においてE2、E3-E2、6k-E2、またはE3-6k-E2を意味する。
【0047】
本明細書に記載したようにアルファウイルスの構造タンパク質をコードする核酸配列は、1つ以上のヘルパー核酸分子内に分布している(例えば、第1のヘルパーRNA(またはDNA)および第2のヘルパーRNA(またはDNA))。さらに1つ以上の構造タンパク質は、レプリコン核酸と同じ分子上に存在するが、ただしレプリコンと生じるアルファウイルス粒子がさらなるアルファウイルス粒子の産生について増殖欠陥性であるように、少なくとも1つの構造タンパク質はレプリコンRNAから欠失される。本明細書において用語「欠失している」または「欠失」は、特定のセグメントの完全な欠失、または標準的使用に従って、セグメントを非機能性(inoperative)または非機能性(nonfunctional)にするのに充分な部分の特定のセグメントの欠失を意味する。例えばTeminらの米国特許第4,650,764号を参照されたい。多数の核酸分子内のヘルパー核酸配列の分布は、組換え事象により複製コンピタントなウイルス(RCV)が生成される頻度を最小にする。複製と転写のためにアルファウイルス認識シグナルを利用しないDNAヘルパー構築体の場合は、組換えの理論的頻度は、かかるシグナルを利用する2成分のRNAヘルパー系より低い。
【0048】
感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子を産生するのに使用されるパッケージング細胞とも呼ばれるヘルパー細胞は、レプリコン核酸をパッケージングするのに充分なアルファウイルス構造タンパク質を発現するかまたは発現できなければならない。構造タンパク質は、レプリコンベクターの導入と同時またはその前にヘルパー細胞中に導入されるRNAのセット、典型的には2つから産生することができる。第1のヘルパーRNAは、少なくとも1つのアルファウイルス構造タンパク質をコードするがすべてのアルファウイルス構造タンパク質はコードしないRNAを含む。第1のヘルパーRNAは、アルファウイルスE1糖タンパク質をコードするがアルファウイルスカプシドタンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質はコードしないRNAを含む。あるいは第1のヘルパーRNAは、アルファウイルスE2糖タンパク質をコードするが、アルファウイルスカプシドタンパク質とアルファウイルスE1糖タンパク質はコードしないRNAを含む。さらなる実施態様において第1のヘルパーRNAは、アルファウイルスE1糖タンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質とをコードするが、アルファウイルスカプシドタンパク質はコードしないRNAを含む。第4の実施態様において第1のRNAは、アルファウイルスカプシドをコードするがいずれのアルファウイルス糖タンパク質もコードしないRNAを含む。第5の実施態様において第1のヘルパーRNAは、カプシドと糖タンパク質の1つ(E1またはE2)をコードするが、両方はコードしないRNAを含む。
【0049】
これらの第1のヘルパーRNAの任意のものと組合せて2つのヘルパーRNAを使用する好適な実施態様において、第2のヘルパーRNAは、第1のヘルパーRNAによってはコードされない1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードする。例えば第1のヘルパーRNAがアルファウイルスE1糖タンパク質のみをコードする場合、第2のヘルパーRNAはアルファウイルスカプシドタンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質の両方をコードする。第1のヘルパーRNAがアルファウイルスカプシドタンパク質のみをコードする場合、第2のヘルパーRNAは両方のアルファウイルス糖タンパク質をコードする。第1のヘルパーRNAがアルファウイルスE2糖タンパク質のみをコードする場合、第2のヘルパーRNAはアルファウイルスカプシドタンパク質とアルファウイルスE1糖タンパク質との両方をコードする。第1のヘルパーRNAがカプシドとアルファウイルスE1糖タンパク質の両方をコードする場合、第2のヘルパーRNAは、アルファウイルスカプシドタンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質の1つまたは両方をコードするRNAを含んでよい。
【0050】
すべてのヘルパー核酸において、これらの分子はさらに、ヘルパー細胞中でコードされる構造タンパク質配列の発現(翻訳と、適宜転写または複製シグナルを包含する)に必要な配列を含むと考えられる。かかる配列は、例えばプロモーター(ウイルス、原核生物または真核生物を含む、誘導性または構成性)、IRES、および5'と3'ウイルスレプリカーゼ認識配列を含むことができる。1つ以上の糖タンパク質を発現するヘルパー核酸の場合、これらの配列は、核酸構築体中で構造タンパク質をコードする領域のN末端でリーダー配列またはシグナル配列で有利に発現されると考えられる。リーダー配列またはシグナル配列はアルファウイルス(例えばE3または6k)から得られるか、または組織プラスミノーゲンアクチベータシグナルペプチドまたは合成配列のような異種配列でもよい。すなわち例として、第1のヘルパー核酸がカプシド-E3-E1をコードするRNA分子であって、第2のヘルパー核酸がカプシド-E3-E2をコードするRNA分子でもよい。あるいは、第1のヘルパーRNAがカプシドのみをコードし、第2のヘルパーRNAがE3-E2-6k-E1をコードしてもよい。さらに、ウイルスゲノム中に存在するパッケージングシグナルまたは「カプシド化配列」は、すべてのヘルパー核酸には存在しない。好ましくは、任意のかかるパッケージングシグナルは、すべてのヘルパー核酸から欠失される。
【0051】
アルファウイルス粒子の産生
本発明のアルファウイルスレプリコン粒子は、ヘルパー構築体とレプリコン核酸とをヘルパー細胞中に導入して、アルファウイルスレプリコン粒子を産生するようにヘルパーとレプリコン分子が機能することにより、産生される。RNAヘルパーを使用する実施態様において、ヘルパーは多くの方法で細胞中に導入することができる。RNAは、細胞ゲノムに組み込まれることなくヘルパー細胞中で発現することができるRNAまたはDNA分子として導入することができる。導入方法には、電気穿孔法、ウイルスベクター(例えば、SV40、アデノウイルス、ノダウイルス、アストロウイルス)、および脂質介在トランスフェクションがある。あるいはこれらは、細胞中に安定に形質転換されている1つ以上の発現カセットから発現することができ、こうしてパッケージング細胞株が樹立される(例えば、米国特許第6,242,259号を参照)。
【0052】
他の実施態様においてヘルパーは、感染性アルファウイルスレプリコン粒子中にウイルスレプリコンRNAをパッケージングするのに必要なすべてのポリペプチドをコードする単一のDNA分子である。単一のDNAヘルパーは、当該分野で公知の任意の手段(典型的にはRNAの摂取が必要なものと比較して、電圧を上げて、しかし感染性アルファウイルスレプリコン粒子を産生するパッケージング細胞の能力を破壊するほど高くは無い電圧を用いる電気穿孔法を含む)によりパッケージング細胞中に導入することができる。DNAヘルパーは、アルファウイルスRNAベクターレプリコンの導入/発現の前、同時、または後に導入することができる。あるいはヘルパー機能は、このフォーマットおよび誘導性プロモーター下で、アルファウイルスRNAベクターレプリコンの導入/発現の前にパッケージング細胞ゲノム中に取り込み、次にアルファウイルスRNAベクターレプリコンの導入の前、同時、または後に適切な刺激で誘導することができる。
【0053】
アルファウイルス構造タンパク質を発現する組換えDNA分子はまた、それ自体をインビボで2つの別の分子に分解することができる単一のヘルパーから作成することができる。すなわち製造の容易さと製造効率の点から単一のヘルパーを使用する利点が保持され、2成分発現系を使用しなくても2成分のヘルパー系の利点が保持される。DNAヘルパー構築体を使用することができ、第2のセットでは、RNAヘルパーベクターが使用される。かかる系は、Smithら「アルファウイルスレプリコンベクター系(Alphavirus Replicon Vector Systems)」、米国特許公報2003-0119182A1に詳述されている(参照することにより本明細書に援用する)。
【0054】
DNAヘルパー構築体について、DNAからRNAの転写を指令するためのプロモーター(すなわちDNA依存性RNAポリメラーゼ)が使用される。本明細書においてプロモーターは、ポリメラーゼにより認識され、関連(下流の)配列の転写を引き起こすのに充分なヌクレオチドの配列である。本発明のある実施態様においてプロモーターは構成性である(下記参照)。あるいはプロモーターは制御されており、すなわち関連配列の転写を引き起こすように構成性には作用しない。誘導性の場合は、(i) インデューサー分子が、その中またはその上で培養される培地中に存在する時、または(ii) 細胞が暴露される条件が誘導性条件に変化される時にのみ、関連配列が転写されるように、発現の制御を仲介する配列が存在する。本明細書において転写制御配列はプロモーター配列を含み、環境シグナルに応答した関連配列の制御発現のためのシス作用性配列をさらに含むことができる。
【0055】
RNAヘルパー実施態様においてプロモーターは、インビトロ転写反応においてRNAを合成するのに使用され、この用途に適した具体的なプロモーターには、SP6、T7、およびT3 RNAポリメラーゼプロモーターがある。DNAヘルパー実施態様において、プロモーターは細胞内で機能してRNAの転写を指令する。構築体のインビボ転写のための可能なプロモーターには、真核生物プロモーター、例えばRNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、またはウイルスプロモーター、例えばMMTVおよびMoSV LTR、SV40早期領域、RSVまたはCMVがある。本発明のための多くの他の適当な哺乳動物プロモーターおよびウイルスプロモーターが当該分野で利用できる。あるいは細菌またはバクテリオファージ、例えばSP6、T7、およびT3からのDNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターが、インビボDNA用途で使用され、一致するRNAポリメラーゼは、別のプラスミド、RNAベクター、またはウイルスベクターを介して細胞に提供される。具体例では、一致するRNAポリメラーゼは、誘導性プロモーターの制御下で、ヘルパー細胞株に安定に形質転換することができる。
【0056】
細胞内で機能するDNA構築体は、細胞内にトランスフェクトされた自律性プラスミドとして機能することができ、またはこれらはゲノム中に安定に形質転換することができる。これらの実施態様においてプロモーターは構成性プロモーターでもよく、すなわち細胞内に導入されて下流の配列に機能できる形で結合した時、インデューサー分子の添加の必要無くまたは誘導性条件に変化させる必要無く、細胞内に導入された下流の配列の転写を指令するプロモーターでもよい。あるいは、細胞が適切な刺激(インデューサー)に暴露された時のみ、構築体によりコードされる機能性メッセンジャーRNAを細胞が産生するように、プロモーターは誘導性でもよい。誘導性プロモーターを使用する時は、ヘルパー構築体はインデューサーへの暴露と同時、その前、またはその後にパッケージング細胞中に導入され、かつ構築体とインデューサーの両方が存在する時は、アルファウイルス構造タンパク質の発現が起きる。あるいは細胞内で機能するように設計された構築体は、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、レトロウイルス、ノダウイルス、ピコルナウイルス、水疱性口内炎ウイルス、および哺乳動物pol IIプロモーターを有するバキュロウイルスを介して、細胞内に導入することができる。
【0057】
本発明のヘルパーまたはアルファウイルスRNAレプリコンベクターをコードするRNA転写体(mRNA)がヘルパー細胞中にいったん存在すると(上記したように、インビトロまたはインビボのアプローチで)、これは最終的に翻訳されて、コードされたポリペプチドまたはタンパク質を産生する。ある実施態様においてアルファウイルスRNAベクターレプリコンはインビトロでDNAプラスミドから転写され、次に電気穿孔法によりヘルパー細胞内に導入される。別の実施態様において本発明のRNAベクターレプリコンはインビボでDNAベクタープラスミドから転写され、これはヘルパー細胞中にトランスフェクトされ(例えば、米国特許第5,814,482号を参照)るか、またはこれはウイルスまたはウイルス様粒子を介してヘルパー細胞に送達される。
【0058】
本発明の実施態様においてアルファウイルスRNAレプリコンまたはヘルパーをコードする1つ以上の核酸は、VEETC83ゲノムから得られる配列からなり、これは、上記したTC-83ワクチン株の弱毒化された性質に寄与する変異を含有する。さらにアルファウイルス構造タンパク質(すなわち、カプシド、E1糖タンパク質およびE2糖タンパク質)をコードする核酸またはレプリコン構築体の1つ以上は、1つ以上の追加の弱毒化変異を含有してもよい。
【0059】
対象を免疫する方法
本明細書において「免疫応答を誘発する」および「対象を免疫する」は、対象における本発明の粒子および/または組成物により産生されるタンパク質および/またはポリペプチド(例えば免疫原、抗原、免疫原性ペプチド、および/または1つ以上のエピトープ)に対する体液性および/または細胞性免疫応答の出現を含む。当該分野で公知のように「体液性」免疫応答は抗体を含む免疫応答を意味し、当該分野で公知のように「細胞性」免疫応答はTリンパ球および他の白血球、特にHLA制限細胞障害性T細胞(すなわち「CTL」)による免疫原特異的応答を意味する。処理された免疫原すなわちペプチド断片が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)HLAタンパク質(これはクラスIとクラスIIの2つの大きなタイプがある)とともに表示される時に、細胞性免疫応答が起きる。クラスI HLA制限CTLは一般に9量体ペプチドに結合し、これらのペプチドを細胞表面上に提示する。HLAクラスI分子の関連でこれらのペプチド断片は、Tリンパ球上の特異的T細胞受容体(TCR)タンパク質により認識されて、T細胞が活性化される。活性化は多くの機能性結果[特に限定されないが、直接、細胞障害性またはアポトーシス事象または非破壊性機構(例えばインターフェロン/サイトカインの産生)の活性化を介して、HLA−ペプチド複合体を有する細胞の破壊を引き起こす特異的T細胞サブセットの拡張を含む]を引き起こす。クラスI MHCタンパク質を介する免疫原の提示は、典型的にはCD8+ CTL応答を刺激する。
【0060】
細胞性免疫応答の他の態様は、HLA クラスII−制限T細胞応答(ヘルパーT細胞の活性化を含む)を含み、これは、MHC分子と一緒にペプチド断片をその表面に表示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の活性を刺激し注目する。少なくとも2つのタイプのヘルパー細胞が認識されている:T-ヘルパー1細胞(Th1)(これは、サイトカインであるインターロイキン2(IL-2)およびインターフェロンガンマを分泌する)およびT-ヘルパー2細胞(Th2)(これはサイトカインであるインターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)およびインターロイキン10(IL-10)を分泌する)。クラスII MHCタンパク質を介する免疫原の提示は、CD4+ CTL応答とともにBリンパ球の刺激を誘発し、これは抗体応答を引き起こす。
【0061】
本明細書において「免疫原性ポリペプチド」、「免疫原性ペプチド」または「免疫原」は、対象の免疫応答を誘発する任意のペプチド、タンパク質またはポリペプチドを含み、ある実施態様において免疫原性ポリペプチドは、疾患に対する対象のある程度の防御を与えるのに適している。これらの用語は、「抗原」と同義に使用することができる。
【0062】
ある実施態様において本発明の免疫原は、1つ以上の「エピトープ」を含むか、これらから基本的になるか、またはこれらからなる。「エピトープ」はアミノ酸残基のセットであり、特定の免疫グロブリンによる認識に関与している。T細胞においてエピトープは、T細胞受容体タンパク質および/またはMHC受容体による認識に必要なアミノ酸残基であると定義される。インビボまたはインビトロの免疫系状況において、エピトープは分子の集団的特徴、例えば免疫グロブリン、T細胞受容体および/またはHLA分子により認識される部位を一緒に形成する一次、二次、および/または三次ペプチド構造、および/または電荷を意味する。B細胞(抗体)エピトープの場合、これは典型的には最小で3〜4個のアミノ酸、好ましくは少なくとも5個のアミノ酸で、約50個のアミノ酸までの範囲である。好ましくは体液性応答誘導性エピトープは、5〜30個のアミノ酸、通常12〜25個のアミノ酸、および最も一般的には15〜20個のアミノ酸である。T細胞エピトープの場合は、エピトープは少なくとも約7〜9個のアミノ酸を含み、ヘルパーT細胞エピトープについては、少なくとも約12〜20個のアミノ酸を含む。典型的にはかかるT細胞エピトープは、7〜15個のアミノ酸、例えば7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。
【0063】
本発明のアルファウイルス粒子は、対象の免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を発現する(例えば、ワクチン接種)ために、または免疫療法のために(例えば癌または腫瘍を有する対象を治療するために)使用される。すなわちワクチンの場合は本発明は、アルファウイルス粒子の集団の免疫原性量を対象に投与することを含んでなる、対象の免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0064】
「免疫原性量」は、アルファウイルス粒子を含む製剤を投与された対象の免疫応答を誘発するのに充分な感染性アルファウイルス粒子の量である。治療される対象の年齢と種により、約104〜約109、特に投与当たり106〜108の感染単位の量が適切であると考えられる。薬剤学的に許容される担体の例には、特に限定されないが、無菌の発熱性物質を含まない水、および発熱性物質を含まない生理食塩水がある。
【0065】
本発明の「対象」には、特に限定されないが、温血動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ネコ、イヌ、ブタ、ラット、およびマウスがある。本発明の種々の組成物(例えば、核酸、粒子、集団、医薬組成物)の投与は、いくつかの異なる経路のいずれかにより行われる。具体例では組成物は、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内、鼻内、頭蓋内、舌下、膣内、直腸内、経口、または局所的に投与される。本明細書の組成物は、皮膚乱切法により、またはパッチもしくは液体を介して経皮的に投与される。組成物は、時間をかけて組成物を放出する生体分解性物質の形で皮内に投与してもよい。
【0066】
本発明の組成物は、疾患を予防するために予防的に、または疾患を治療するために治療的に使用することができる。治療できる疾患には、ウイルス、細菌、真菌または寄生体により引き起こされる感染性疾患、および癌がある。異常タンパク質の発現または正常なタンパク質の過剰発現を含む慢性疾患(例えばアルツハイマー病、多発性硬化症、卒中など)もまた治療することができる。
【0067】
本発明の組成物は、最適化され他のワクチン接種法と組合せて、最も広い(すなわち、免疫応答のすべての態様、上記した特徴を含む)細胞性および体液性応答を与える。ある実施態様においてこれは、異種プライム−追加免疫法の使用を含み、ここでは本発明の組成物が、異なる種類のワクチン[例えば以下の1つ以上:病原体または腫瘍由来の免疫原、組換え免疫原、ネーキッド核酸、脂質含有残基とともに調製された核酸、非アルファウイルスベクター(特に限定されないが、ポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスベクター、水疱性口内炎ウイルスベクター、パラミクソウイルスベクター、パルボウイルスベクター、パポバウイルスベクター、レトロウイルスベクターがある)、および他のアルファウイルスベクター]を含む組成物と組合せて使用される。ウイルスベクターは、ウイルス様タンパク質または核酸でもよい。アルファウイルスベクターは、レプリコン含有粒子、DNAベースのレプリコン含有ベクター(時に「エルビス(ELVIS)」システムと呼ばれる、例えば米国特許第5,814,482号を参照)またはネーキッドRNAベクターでもよい。具体例ではVRPはプライミング接種として使用でき、次に上記で列挙した組成物の1つを使用して1回以上の追加免疫接種が行われる。あるいはVRPは、上記で列挙した組成物の1つを使用してプライミング接種後、1回以上の追加免疫接種で使用することができる。
【0068】
本発明の組成物はまた、慢性または潜在性(これは典型的には、対象の強い免疫応答を誘発できないため持続する)の感染性物質に対する免疫応答を生成するのに使用することができる。慢性または潜在性の感染性物質の例には、特に限定されないが、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、およびヒトパピローマウイルスがある。これらの感染性物質からのペプチドおよび/またはタンパク質をコードする本発明のアルファウイルスレプリコン粒子は、本明細書に記載の方法に従って細胞または対象に投与することができる。
【0069】
あるいは、免疫原性タンパク質またはペプチドは、任意の腫瘍または癌細胞抗原である。好ましくは腫瘍または癌抗原は癌細胞の表面で発現される。具体的な乳癌の癌抗原の例はHER2とBRCA1抗原である。他の癌および腫瘍細胞抗原の例は、S.A. Rosenberg、(1999) Immunity 10:281に記載されており、特に限定されないがMART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE&、SART-1、PRAME、p15およびp53抗原、ウィルムズ腫瘍抗原、チロシナーゼ、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)β-ヒドロキシラーゼ(HAAH)、およびEphA2(上皮細胞チロシンキナーゼ、国際特許公報第WO01/12172号を参照)がある。
【0070】
本発明の免疫原性ポリペプチドまたはペプチドはまた、国際特許公報WO99/51263(これはかかる抗原の教示のために、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された「普遍的」もしくは「人工的」癌もしくは腫瘍細胞抗原でもよい。
【0071】
種々の実施態様において本発明の異種核酸は、アンチセンス核酸配列をコードすることができる。「アンチセンス」核酸は、アンチセンス核酸の作用により産生の阻害または低下について標的化されるポリペプチドをコードする核酸を発現するかまたはこの発現に関与する核酸のすべてまたは一部(例えば、遺伝子、cDNA、および/またはmRNA)に相補的な(インビボでまたはインビトロの厳密性条件下でハイブリダイズできる)核酸分子(すなわち、DNAまたはRNA)である。アンチセンス核酸が、標的化されるポリペプチドをコードする核酸の一部に相補的な場合、アンチセンス核酸は、それが機能性ポリペプチドの翻訳を阻害するように、そのポリペプチドをコードする核酸の5'末端に充分近くでハイブリダイズする。典型的にはこれは、アンチセンス核酸が、これがハイブリダイズする核酸の5'側の半分または3分の1内の配列に相補的であることを意味する。
【0072】
本発明のアンチセンス核酸はまた、標的遺伝子産物をコードするmRNAを加水分解することにより細胞中の標的核酸の発現を阻害する触媒性RNA(すなわちリボザイム)をコードしてもよい。さらにハンマーヘッドRNAを、イントロンスプライシングを防止するためのアンチセンス核酸として使用することができる。本発明のアンチセンス核酸は、アンチセンス技術について日常的なプロトコールに従って産生し試験することができる。
【0073】
クローニング、DNA単離、増幅と精製のための標準的方法、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含む酵素反応のための標準的方法、および種々の分離技術は、当業者に公知で一般的に使用されているものである。多くの方法が、Sambrookら、(1989) 「分子クローニング(Molecular Cloning)」、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、プレインビュー、ニューヨーク;マニアティス(Maniatis)ら、(1982) 「分子クローニング(Molecular Cloning)」、コールドスプリングハーバーラボラトリー、プレインビュー、ニューヨーク;Wu(編)(1993) Meth. Enzymol. 218, 第1部;Wu(編)(1979) Meth. Enzymol. 68;Wuら(編)(1983) Meth. Enzymol. 100と101;GrossmanとMoldave(編)Meth. Enzymol. 65;Miller(編)(1972) 「分子遺伝学の実験(Experiments in Molecular Genetics)」、コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク;OldとPrimrose (1981) 「遺伝子操作の原理(Principles of Gene Manipulation)」、カリホルニア大学プレス(University of California Press)、バークレイ;SchleifとWensink (1982) 「分子生物学の実際的方法(Practical Methods in Molecular Biology)」;Glover(編)(1985) 「DNAクローニング(DNA Cloning)」第1巻と第2巻、アイアールエルプレス(IRL Press)、オクスフォード、英国;HamesとHiggins(編)(1985) 「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」、アイアールエルプレス(IRL Press)、オクスフォード、英国;SetlowとHollaender (1979) 「遺伝子操作:原理と方法(Genetic Engineering: Principles and Methods)」、第1〜4巻、プレヌム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク;およびアウスベル(Ausubel)ら (1992) 「分子生物学の現代のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、グリーン/ウィレイ(Greene/Wiley)、ニューヨーク、ニューヨーク州、およびこれらで参照されている他の文献に記載されている。略語や命名法が使用されている場合は、当該分野で標準的であると考えられ、本明細書で引用したような専門雑誌で一般的に使用されているものである。
【0074】
本明細書で引用されるすべての文献は、本開示との不一致が無い程度に、参照することにより本明細書に援用する。
【0075】
本明細書においてマーカッシュグループおよび他の分類が使用される時、群のすべての個々のメンバーおよび群の可能なすべての組合せや小組合せは、本開示に個々に含まれるものとする。明細書においてある範囲(例えば温度範囲、時間の範囲、または組成の範囲)が与えられる場合、すべての中間の範囲や小範囲ならびに与えられた範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれるものとする。
【0076】
本明細書において「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「特徴とする」と同義であり、変更可能であり、追加の未記載の要素または方法の工程を排除しない。本明細書において「からなる(consisting of)」は、請求項の要素に記載されていない要素、工程、または成分は排除する。本明細書において「から基本的になる」は、請求項の基本的かつ新規特性に実質的に影響を与えない物質または工程を排除しない。本明細書における用語「含む(comprising)」の記載は、特に明細書または請求項の組成物の成分の記載または装置の成分の記載は、「から基本的になる」または「からなる(consisting of)」と交換できる。
【0077】
当業者は、具体的に例示されたもの以外の方法、技術、操作、例えば採取および/または精製法もしくは操作、出発物質、培地、および試薬は、不要な実験をすることなく本発明の実施において使用できることを理解するであろう。かかる方法、技術、操作、出発物質、培地、および試薬のすべての当該分野で公知の機能性同等物は、本明細書に含まれるものとする。
【0078】
本明細書の記載は多くの具体的な記載を含むが、これらは決して本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の実施態様のいくつかの例を例示するものである。本明細書で引用されるすべての文献は、本開示との不一致が無い程度に、参照することにより本明細書に援用する。本明細書の一部の文献は、追加の出発物質、追加の合成方法、追加の分析方法、および本発明の追加の用途を与えるために、参照することにより本明細書に援用する。
【0079】
以下の例は例示目的であり、請求された本発明の範囲を決して限定するものではない。当業者に明らかな例示の物品の変更は、本発明の範囲内であると考えられる。
【実施例】
【0080】
実施例1. TC-83レプリコンの産生
疾病管理センター(Centers for Disease control and Prevention)から得られたTC-83感染性cDNAクローンであるpVE/IC-92から、VEEのTC-83株に基づくレプリコンプラスミドを作成した。このクローンの配列は、Kinneyら (1993) J. Virol. 67:1269により公表された。pVE/IC-92配列は、E1-119でのAla-Val変異(Kinneyにより導入されたクローニングアーチファクト)と、ゲノム配列からクローン由来ウイルスを区別するために意図的に導入されたnsp1における3つのサイレント変異(1613でA→G;1616でC→A;1619でT→C)の存在により、TC-83ウイルスゲノム配列とは異なる。本発明者は、pVE/IC-92クローン中のE1位置に追加のサイレント変異を同定した。「サイレント」とは、核酸配列の変化が、その核酸配列によりコードされるアミノ酸の変化を引き起こさないことを意味する。
【0081】
まずカナマイシン抵抗性(「KN(R)」)をコードする発現可能な配列をTC-83完全長クローン中に移動させてpVEK/IC-92を作成することにより、TC-83レプリコンベクター(「pVEK」)を作成した。既存のVEEレプリコン(例えばpERKプラスミド、米国特許公報第2002-141975、実施例2を参照)(これは、VEE26Sプロモーターと3'UTR(非翻訳領域)とを有する)をApaIとNotI制限酵素を用いて消化し、この断片をpVEK/IC-92の同じ部位に連結することにより、TC-83構造タンパク質遺伝子の代わりに複クローニング部位を挿入した。生じるプラスミドは、COLE1複製開始点(ORI)を使用して細菌中で複製され、TC-83 5'UTRと3'UTR、TC83非構造タンパク質(nsP)配列、VEE26Sプロモーター、および複クローニング部位を、すべてインビトロRNA転写のためのT7ポリメラーゼプロモーターの下流に含有する。
【0082】
あるいはTC-83クローンの構造タンパク質を、キメラ異種遺伝子、例えばHIV gag(GAG)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子、またはアルファウイルス(VEE、EEEまたはWEE)糖タンパク質ポリタンパク質配列で置換した。
【0083】
VEE26Sプロモーターが異種遺伝子の転写を駆動する第2のTC-83ベースのレプリコンを作成し、内部リボゾーム侵入部位(IRES)をプロモーターの下流に挿入した(本明細書において「IRESレプリコン」と呼び、具体的には「VEETC83IRES」)。このレプリコンを、pERK-342EnGGAG(本明細書において「VEE3000IRES」と呼ぶ)[これは、pVEK-IC92中へApaI-SphI断片として、サブゲノミックプロモーターとEMCV IRESの間にpERKのEcoRV制限酵素部位を挿入された342bpの配列(配列番号1)(pCDNA3.1 DNAの消化からのAluI断片;インビトロゲン社(Invitrogen Inc.);カールスバード、カリホルニア州)を含有する野生型VEEに基づくレプリコンである]から作成した。この342bp配列は、IRESが翻訳の制御要素であることを確実にするために挿入され、以下の配列を有する:
【0084】
【化1】

【0085】
クローニングを、EMCV IRES中のApaI制限酵素部位の存在のために2工程で行った。
【0086】
大腸菌(E.coli)をプラスミドで形質転換し、次にマーリゲンバイオサイエンシーズ(Marligen Biosciences)(イジャムスビル(Ijamsville)、メリーランド州)高純度プラスミド精製システム(これは、専用のイオン交換樹脂を使用して高度に精製されたプラスミドDNAを与える)を使用してDNAプラスミドを単離することにより、レプリコンプラスミドを作成した。あるいは、RNA、タンパク質またはエンドトキシンの無いDNAを与える別のDNA精製法も許容される。
【0087】
精製したレプリコンプラスミドのアリコートを、T7ポリメラーゼを使用してNotI線状化プラスミドDNAからインビトロで転写した。典型的には、T7リボマックスエクスプレスシステム(T7 RiboMAX Express System)(プロメガ(Promega)、マジソン、ウィスコンシン州)(これは、大規模なRNA産生を可能にするT7 RNAポリメラーゼ、組換えRNasin(登録商標)RNaseインヒビター、および酵母無機ピロリン酸の混合物を含有する)を使用した。生じたRNAを次にRNeasy Midiキット(キアゲン(Qiagen)、バレンシア(Valencia)、カリホルニア州)(これは、シリカゲルベースの膜を使用してRNAに結合し、これを混入タンパク質から除去精製する)を使用して精製した。あるいは、RNaseを含まない水中の精製RNAを与える別のRNA精製スキームが許容される。
【0088】
実施例2 TC-83ヘルパーの産生
A. DNAヘルパー
pCDNA-VSp(これは、米国特許公報第2003-0119182号、実施例5に記載される)から、TC-83 DNAヘルパーを構築した。pCDNA-VSpは、CMVプロモーターからVEE3014 VEE構造タンパク質が直接発現されるDNAヘルパーである。TC-83変異を含有する糖タンパク質遺伝子配列を、pVE/IC-92からSpeIとScaI制限酵素を使用して消化し、同じ酵素で消化したpCDNA-VSp中に連結した。E1-119に導入された変異(これはKinneyら (1993) J. Virol.、前述、により、VE/IC-92を産生するためのcDNAクローニングのアーチファクトとして観察されたが、修正されなかった)を、クイックチェンジ(quick change)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、ラホヤ(La Jolla)、カリホルニア州)とプライマーTC83E1119F(GCCTTGCGGATCATGCTGAAGCATATAAAGCGC)(配列番号2)とTC83E1119R(GCGCTTTATATGCTTCAGCATGATCCGCAAGGC)(配列番号3)とを使用して修復してpCDNA-T83rを作成した。
【0089】
DNAヘルパープラスミドで形質転換された大腸菌(E.coli)培養物をプレシン社(Puresyn, Inc.)(マルベルン(Malvern)、ペンシルバニア州)に送り、ここでこれらは培養され、生じたDNAをポリフロ(PolyFlo)(登録商標)技術を使用して精製し、少なくとも5mg/mlで、検出可能なRNA、ssDNA、線状プラスミドまたは染色体DNAを含まないDNA調製物を得た。
【0090】
B. RNAヘルパー
VEE株TC-83(「VEETC83」)はカプシド構造タンパク質中にアミノ酸変異を含まず、従ってTC-83カプシドヘルパーは、任意のVEE株(例えば、Pushkoら、1997、および米国特許第5,792,462号;6,156,558号;5,811,407号;および6,008,035号に記載されている)から構築することができる。TC83糖タンパク質ヘルパーを、pCDNA-TC83r(前述)からSpeIとNdeIで消化し、同じ酵素で消化したVEE糖タンパク質ヘルパーRNA(上記文献および米国特許公報第2002-0141975号、実施例4に記載されている、参照することにより本明細書に援用する)中にクローニングして、3014糖タンパク質配列を除去し、5'と3'配列を残して作成した。ある実施態様においてE1 81の追加の変異(PheからIle)を部位特異的突然変異誘発によりTC-83糖タンパク質ヘルパー中に遺伝子操作で作成した(本明細書において「GP-E181l」と呼ぶ)。
【0091】
正確に上記レプリコンプラスミドについて記載したように、各ヘルパープラスミドを、NotIで線状化したプラスミドDNAからT7ポリメラーゼを使用してインビトロ転写した。
【0092】
実施例3. 種々のヘルパーを用いるTC-83レプリコンのパッケージング
TC83レプリコンRNA(HIV GAG遺伝子を発現する)と1つ以上のヘルパー核酸(表1を参照)をVero細胞中へ同時電気穿孔して、VEETC83レプリコン粒子(VRP)を作成した。電気穿孔後、OptiPRO(登録商標)(ギブコ(Gibco)、カールスバード、カリホルニア州)を含有する2つのT300フラスコ中に細胞を接種し、約18時間インキュベートした。各フラスコから培地を取り出し、各フラスコに10mMのリン酸ナトリウム緩衝液中の0.5M 塩洗浄溶液10mlを加え、室温で約5分間インキュベートした後、採取し、ろ過した。塩洗浄物および/またはVero細胞上の採取した培地の連続希釈物を、96ウェルプレート中で37℃で5% CO2で一晩インキュベートして、VRPを力価測定した。MeOHで固定したVero細胞上の抗GAG間接免疫蛍光アッセイを使用して、GAG VRP感染細胞を検出し、特定の希釈でGAG陽性細胞を計測して力価を測定した。同様に、UV顕微鏡下で特定の希釈でGAG陽性細胞数を計測して、GFP-VRP力価を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例4.
A. TC-83構造タンパク質による種々の異種アルファウイルス糖タンパク質遺伝子を発現するVEETC83レプリコンのパッケージング
種々の異種核酸を発現するレプリコンを、TC-83株から全アルファウイルス構造タンパク質を発現する単一のTC-83 DNAヘルパーを使用してパッケージングした。この例では、異種遺伝子は他のアルファウイルスからの糖タンパク質カセットであった。また、TC-83または3014株からのVEE糖タンパク質を発現するTC-83レプリコンが含まれる。これらの構築体のそれぞれで、糖タンパク質をコードする異種核酸は、各ウイルスからのE3-E2-6k-E1ポリタンパク質を含む。該糖タンパク質カセットは以下のように同定される:西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)Cba87株から「WEE CBA87」、および「東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)フロリダ91株から「EEE4002」。
【0095】
WEEカセットについて、WEEウイルス糖タンパク質遺伝子のヌクレオチド配列を、E3のアミノ末端セリンコドンから出発してE1のカルボキシ末端アルギニンコドン(配列番号4)に、以下のようにTC-83レプリコンにクローン化した。
【0096】
【化2】

【0097】
EEEカセットについて、FEEウイルス糖タンパク質遺伝子(フロリダ91株)のヌクレオチド配列をTC-83レプリコン中に、E3のアミノ末端セリンコドンから出発してE1のカルボキシ末端ヒスチジンコドン(配列番号5)に、以下のようにクローン化した。
【0098】
【化3】

【0099】
レプリコンRNA(記載のアルファウイルス糖タンパク質ポリタンパク質を発現する)と、TC-83構造タンパク質をコードする単一のDNAヘルパーの108個のVero細胞への同時電気穿孔により、TC-83-VEEレプリコン粒子(VRP)を作成した。電気穿孔後、OptiPRO(登録商標)(ギブコ(Gibco)、カールスバード、カリホルニア州)を含有する2つのT300フラスコ中に細胞を接種し、約18時間インキュベートした。次にフラスコから培地を取り出し、各フラスコに10mMのリン酸ナトリウム緩衝液中の0.5M 塩洗浄溶液10mlを加え、室温で約5分間インキュベートした後、採取し、ろ過した。Vero細胞上の採取したVRPの連続希釈物を、96ウェルプレート中で37℃で5% CO2でインキュベートして、VRPを力価測定した。1:1のアセトン:MeOHで固定されたVero細胞上の抗WEE、抗VEE、または抗EEE間接免疫蛍光アッセイを使用して、アルファウイルス糖タンパク質発現VRP感染細胞を検出し、特定の希釈で陽性細胞を計測して力価を測定した。結果を表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
B. VEETC83またはVEE3014構造タンパク質によるSARSから遺伝子を発現するVEETC83および野生型VEEレプリコンのパッケージング
重症急性呼吸症候群ウイルスからのS2糖タンパク質遺伝子(「SARS-S2」)を、SARSコロナウイルスカプシドクローン(SARSコロナウイルスのウルバニ(Urbani)株;受け入れ番号AY278741;米国疾病管理センターから得られた、アトランタ、ジョージア州)からPCR増幅し、pERKレプリコン(上記実施例1に記載)中にBamHI制限断片としてエンテロウイルス71(EV71)IRESのすぐ下流に挿入した。SARS-S2糖タンパク質遺伝子を発現することができるこのレプリコンを、3014またはTC83構造タンパク質を使用してVRP中にパッケージングした。2つの別個のRNAヘルパーからまたは単一のDNAヘルパーから、構造タンパク質を発現した。スプリットRNAヘルパーアプローチについて、30μgのレプリコンRNAをそれぞれ30μgのVEEカプシドRNAヘルパーおよびVEE糖タンパク質ヘルパー(VEE3014またはVEETC83から、上記実施例2Bを参照)と組合せ、1.2×108個のVero細胞に同時電気穿孔した。この実験では電気穿孔法は、それぞれ580Vと25μFの4つのパルスを使用して0.4cmのギャップキュベットで行った。単一のDNAヘルパー(VEETC83構造ポリタンパク質またはVEE3014構造ポリタンパク質の全配列をコードする)を用いるパッケージングについて、30μgのレプリコンRNAを150μgのDNAヘルパーと組合せ、250Vと950μFの単一のパルスを使用して0.4cmのギャップキュベットで1.2×108個のVero細胞に同時電気穿孔した。VRPを作成し、採取し、実施例3Aに記載のように力価測定し、細胞当たりの収穫を表3に報告する。TC-83糖タンパク質ヘルパー(上記、カプシド配列はVEETC83とVEE3014の両方で同じである)を使用するVRPの細胞当たりの収穫は、RNAまたはDNAヘルパーフォーマットであっても、3014糖タンパク質ヘルパーで回収される収率よりほとんど4倍大きかった。
【0102】
【表3】

【0103】
C. VEETC83 DNAヘルパーを使用するVRPの収穫増強
3Bの実験は、VEETC83 DNAヘルパーがVRPのより高い収穫に関連していることを示した(EP#3-5をEP#6-8と比較)。これは第2のセットの実験で確認され、ここでは、GAG遺伝子またはGFPを発現するレプリコンRNAをpCDNA-TC83rまたはpCDNA-VSpヘルパーとともにパッケージングした(表4を参照)。これらの試験はまた、同時電気穿孔の前にDNAヘルパーを再懸濁した溶液(例えば、水(H2O)、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、またはトリスEDTA(10mM トリス塩酸、1mM EDTA、pH8.0)は、DNAを何ヶ月も(例えば1、3、4、5または6ヶ月)-20℃で保存しても収穫に大きな影響を与えないことを確認した。
【0104】
【表4】

【0105】
実施例5. TC-83 VRPのヘパリン親和性クロマトグラフィー
細胞の1M 塩による洗浄によりVero細胞から採取したTC-83 VRPを16mMリン酸ナトリウム(SP)pH7.4を用いて希釈して、0.12Mまたはそれ以下の塩化ナトリウム濃度を得た。次に該溶液をヘパリンセファロースフロー樹脂を含有する樹脂(アマシャム(Amersham))に線速度5ml/分でのせた。上昇する塩化ナトリウム濃度(約120mMから1M)の線形勾配を用いて、TC-83 VRPを溶出した。TC-83 VRPは、pH7.4で塩化ナトリウム濃度が約3Mで溶出する。図1は、この方法により精製したTC-83 VRPの溶出プロフィールを示す。鋭いUVピーク(画分14と23の間)はVRP溶出に対応する。1e9 VRPより大きい画分(画分18〜23)をカラムから採取し、1%ヒト血清アルブミンと5%ショ糖中で直接希釈して調製した。調製前に、精製したバルクVRPの1e8 感染単位(IU)をSDS-PAGEにより分画し、カプシドまたは糖タンパク質特異抗体を使用して銀染色またはウェスタンブロットにより分析して純度を評価した(図2)。銀染色ゲルでは、サイズがカプシドと糖タンパク質に対応するバンドのみが明らかであり、驚くべきレベルの純度を示した。
【0106】
実施例6. TC-83 VRPの免疫原性
TC-83 VRPの免疫原性を実験室動物で試験した。
【0107】
BALB/cマウス(1群5匹)を記載のVRP粒子を用いて、記載の用量で足せきに皮下接種して免疫した。動物を3回免疫した(3週間間隔で)。体液性応答を、第1回と第2回の追加免疫接種の7日後にGAG ELISAにより測定し、細胞応答を第2回の追加免疫接種の7日後にインターフェロン−ガンマELISPOTにより測定した。表6に示したELISAとELISPOTデータは、それぞれ各群5匹のマウスから計算した幾何平均と算術平均である。VEEベクターに対する応答を、VEE中和アッセイにより評価した(下記参照)。
【0108】
【表5】

【0109】
* 3000および3014 VRP中のレプリコンは、レプリコンのヌクレオチド3でAへの変異を含む。
** VEE3000とVEE3014 VRPは、それぞれ野生型(VEE3000)とVEE3014 構造タンパク質でパッケージングされる;VEETC83 VRPは、TC83構造タンパク質でパッケージングされるTC83由来レプリコンRNAを含有する。
【0110】
各TC-83処理群の各マウスが体液性および細胞性免疫応答で応答したことを証明するために、各処理群で記録した5つの応答の範囲を以下の表7に示す。
【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
【表8】

【0114】
また霊長類試験も行った。同じHIV clade C gag遺伝子を含有するTC-83レプリコンワクチンの免疫原性を、サザンリサーチ研究所(the Southrn Research Institute)(フレデリック、メリーランド州)でカニクイザル(cynomolgus macaques)で試験した。試験で使用した構築体は上記したように、EMCV IRESと342ヌクレオチドのスペーサー配列を含有するTC-83 IRESレプリコンであった(実施例1を参照)。各ワクチンを、皮下および筋肉内注射により6匹の動物に投与した(1つの経路に3匹)。動物に1×108個のワクチン粒子を0、1、および6ヶ月目に3回接種した。各追加免疫接種の2週間後、ならびに最初の追加免疫の20週間後(すなわち、第2回目の追加免疫の前)にgagに対する体液性免疫応答を分析した。抗ベクター応答も測定した(実施例6Cを参照)。各接種の2週間後に行った臨床化学検査と血液学的検査(ヘモグロビン、WC、血小板数)により追加の安全性データを得た。
【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
また霊長類モデルでも細胞免疫を測定した。種々のVRP(この中にHIV gagコード配列が発現された)をワクチン接種したカニクイザル(cynomolgus macaques)の抗Gag T細胞応答を、インターフェロンガンマELISPOTアッセイを使用して、HIV Gagタンパク質からの重複9量体または15量体ペプチドのプールを使用して測定した。データを、ワクチン接種プロトコールを受けた動物の総数に対する正に応答する動物の数として、表12に示す。正に応答する動物は、その応答が、無関係のペプチドプールに対する応答のバックグランドを引いた後に10スポットより大きいものとして定義した。
【0118】
【表11】

【0119】
細胞内サイトカイン染色(ICS)分析を使用してカニクイザル(macaques)のT細胞応答も分析した(追加免疫2の6週間後に細胞を精製し、Gag重複15量体ペプチドに対する応答でIL-2とIL-4産生をICSにより分析した)。結果を表13に示すが、ここで正に応答する動物は、その応答が、無関係のペプチドプールに対する応答の少なくとも2倍であるものとして定義した。
【0120】
【表12】

【0121】
カニクイザル(macaques)の累積T細胞応答を表14に要約する。
【0122】
【表13】

【0123】
Gag特異的ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)を使用して体液性免疫を測定した。HIV-1 サブタイプC分離株DU-422(AIDS Res. Hum. Retroviruses. 2003 Feb;19(2):133-44)からの精製した組換えヒスチジンタグのついた(his)-p55を、コーティング抗原として使用した。簡単に説明するとBHK細胞を、his-p55を発現するVEEレプリコンRNAを用いてトランスフェクトし、トリトンX-100溶解物を調製した。市販の樹脂を使用して業者の説明書に従って金属イオン親和性(ニッケル)クロマトグラフィーによりタンパク質を精製した。
【0124】
追加免疫7日後のマウス血清を、標準的な間接ELISAによりGag特異抗体の存在について評価した。Gag特異的総免疫グロブリンの検出のために、IgM、IgGおよびIgAを検出する第2ポリクローナル抗体を終点力価測定に使用した。簡単に説明すると、96ウェルのマキシソープ(Maxisorp)ELISAプレート(ヌンク(Nunc)、ナパービル(Naperville)、イリノイ州)を、各ウェルにつき40〜80ngのhis-p55を含有する0.05M 炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6(シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州)50μlでコーティングした。プレートを接着性プラスチックでカバーして、4℃で一晩インキュベートした。翌日、非結合抗原を捨てて、プレートを200μlのブロッキング緩衝液(3%w/v BSAを含有するPBS)で室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSで6回洗浄し、緩衝液(1%w/v BSAと0.05%v/v ツイーン20を有するPBS)で連続2倍希釈した試験血清50μlを抗原コーティングウェルに加えた。各アッセイに陽性対照としてマウス抗p24モノクローナル抗体(ゼプトメトリックス(Zeptometrix)、バッファロー、ニューヨーク州)を含めた。各アッセイの陰性対照は、ブランク(血清以外のすべての試薬と処理を有するウェル)と出血前(pre-bleed)血清を含んだ。プレートを室温で1時間インキュベートし、次にPBSで6回洗浄した。希釈緩衝液で所定の濃度に希釈した50μl/ウェルのアルカリホスファターゼ(AP)結合ヤギ抗マウスポリ-イソタイプ二次抗体(シグマ(Sigma))を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSで6回洗浄後、100μlのp−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)基質(シグマ(Sigma))を加えた。血清抗体ELISA力価測は、405nmでの光学密度がバックグランド(ブランクウェル)より0.2大きいかまたはこれ以上である最大の血清希釈率の逆数として定義した。
【0125】
Gag抗原特異的インターフェロンガンマ(IFN-γ)分泌細胞を、IFN-γ ELISPOTアッセイを使用して検出した。TC-83 VRP-GAG免疫BALB/cマウスから、R-10培地(100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.1mM MEM非必須アミノ酸溶液、0.01Mヘペス、2mM グルタミン、および10% 熱不活性化胎児牛血清を補足したRPMI1640培地)中で脾膜の物理的破壊により、脾臓リンパ球の単一細胞懸濁物を調製した。リンパ球M密度勾配遠心分離(アキュレットサイエンティフック(Accurate Scientific)、ウェストベリー(Westbury)、ニューヨーク州)によりリンパ球を単離し、2回洗浄し、新鮮なR-10培地に再懸濁した。すべての非分離脾臓リンパ球集団を試験した。
【0126】
マウスIFN-γ ELISPOTキット(モノクローナル抗体テクノロジー(Monoclonal antibody Technology)、ナクカ(Nacka)、スエーデン)を使用してアッセイを行った。生きた細胞を、抗IFN-γモノクローナル抗体でプレコーティングしておいたマルチスクリーンイモビロン−Pエリスポット(Multiscreen Immobilon-P ELISPOT)プレート(ELISPOT公認96ウェルろ過プレート、ミリポア(Millipore)、ベッドフォード(Bedford)、マサチューセッツ州)中の個々のELISPOTウェル中に接種し、16〜20時間インキュベートした。緩衝液で数回洗浄して細胞を取り出し、ウェルをビオチン化抗IFN-γモノクローナル抗体とインキュベートし、次に洗浄し、アビジン−ペルオキシダーゼ複合体(ベクタスタイン(Vectastain)ABCペルオキシダーゼキット、ヴェクターラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリンゲーム(Burlingame)、カリホルニア州)とインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを洗浄し、基質(アビジン−ペルオキシダーゼ複合体錠剤、シグマ(Sigma))と室温で4時間インキュベートしてスポット(これは、培養中の個々のIFN-γ分泌細胞の位置を示す)の形成を促進した。プレートをツァイス(Zeiss)KS ELISPOTシステムを用いて自動分析により数えた。
【0127】
gagを発現する種々のVRP構築体を用いて免疫したマウスのリンパ球中のGag特異的IFN-γ分泌細胞を、免疫優性CD8 H−2Kd-制限HIV-Gagペプチドまたは無関係のCD8 H−2Kd制限インフルエンザ-HAペプチドで16〜20時間刺激した(5%CO2、37℃)。ペプチドを10μg/mlで試験し、nef対照を20μg/mlで試験した。ペプチドの無い細胞をバックグランド対照として使用した。陽性対照としてウェスタンブロットを4μg/mlのコンカナバリンAで同様の時間刺激した。ペプチドを合成し、ニューイングランドペプチド(New England Peptide)で>90%まで精製した。
【0128】
C. VEE中和アッセイ
ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスに対する中和抗体活性を、VEEレプリコン粒子(VRP)を使用して免疫動物(マウスまたはカニクイザル(cynomolgus monkey))の血清試料で測定した。試験は、血清中に存在する中和抗体によりVRP感受性細胞の産生性VRP感染の予防を評価するように設計される。このアッセイでは、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する規定量の増殖欠陥VRPを動物の血清の連続希釈物と混合し、インキュベートし、細胞単層上に接種した。さらにインキュベート後、細胞単層をUV光下でGFP陽性細胞について観察した。血清中のVEEウイルス特異的中和抗体により、GFP発現VRP(「GFP-VRP」)の感染性が妨害され「中和」される。
【0129】
アッセイは以下のように行われる:1日目:免疫動物(マウスまたはカニクイザル(cynomolgus monkey))の血清を56℃で30分間熱不活性化し、次に培地[アール塩(Earle's Salts)とL-グルタミンを有し、インビトロゲン(Invitrogen)11095072、0.1mM 非必須アミノ酸、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを補足したMEM]で連続希釈する。これらの希釈物を規定量(5×103〜1.5×104)のGFP-VRPと混合し、4℃で一晩インキュベートする。2日目:50μlの血清:GFP-VRP混合物を96ウェルプレートのコンフルエントなVero細胞に加え、37℃で1時間インキュベートする。血清:GFP-VRP混合物を取り出し、100μlの新鮮な培地で置換し、37℃で一晩インキュベートする。3日目:GFP陽性細胞の数をUV光下で定量する。各試料について80%中和レベルを測定し、GFP-VRP単独または陰性対照血清(すなわち、免疫前血清)とプレインキュベートGFP-VRPで感染した対照ウェル中の格子当たりのGPCの数の20%より小さいかまたはこれと等しい格子当たりの平均GFP陽性細胞(GPC)を与える最大の血清希釈率として定義される。
【0130】
【表14】

【0131】
【表15】

【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、ヘパリン親和性クロマトグラフィーによるTC-83ウイルスレプリコン粒子の溶出プロフィールを示す。
【図2】図2は、ヘパリン親和性クロマトグラフィー後のTC-83ウイルスレプリコン粒子のSDS-PAGEの結果を示し、タンパク質は銀染色と、カプシド特異的および糖タンパク質特異的抗体を使用するウェスタンブロッティングと染色により視覚化される。
【図3】図3は、TC-83レプリコンクローニングベクターpVEKのプラスミド地図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TC-83由来アルファウイルスレプリコン粒子(ARP)の製造方法であって:
(a) TC-83由来アルファウイルスレプリコン核酸を宿主細胞中に導入(ここで、該レプリコン核酸は、少なくとも1つのウイルスパッケージングシグナルと、該アルファウイルスレプリコン核酸中で発現可能な少なくとも1つの異種コード配列または機能性配列とを含み、該宿主細胞は少なくとも1つのヘルパー機能を含む)して、修飾宿主細胞を産生する工程;
(b) 該少なくとも1つのヘルパー機能の発現を可能にする条件下で該修飾宿主細胞を培養し、該TC-83由来アルファウイルスレプリコン核酸の複製と、かつ該アルファウイルスレプリコン核酸のパッケージングとを可能にして、ARPを生成する工程、とを含む、上記方法。
【請求項2】
以下の工程:
(c) 工程(b)後の修飾宿主細胞に少なくとも約0.2Mのイオン強度を有する水溶液を接触させて、ARPを水溶液中に放出してARP含有溶液を生成する工程;
(d) 工程(c)のARP含有溶液からARPを採取する工程、とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の宿主細胞の少なくとも1つのヘルパー機能は、該宿主細胞のゲノム内に安定に組み込まれた核酸配列によりコードされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該宿主細胞の少なくとも1つのヘルパー機能は、該アルファウイルスレプリコン核酸に結合することができるカプシドタンパク質と少なくとも1つのアルファウイルス糖タンパク質とをコードする少なくとも1つのヘルパー核酸上に導入され、該アルファウイルス糖タンパク質は該アルファウイルスレプリコン核酸および該カプシドタンパク質と結合し、少なくとも1つのヘルパー核酸分子は該アルファウイルスレプリコン核酸とともに宿主細胞中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ヘルパー機能は、前記2つのヘルパー核酸分子のそれぞれが少なくとも1つのウイルスヘルパー機能をコードする少なくとも2つのヘルパー核酸分子によりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン強度は0.5M〜5Mである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのヘルパー核酸分子はDNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レプリコン核酸は電気穿孔法により該宿主細胞に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項2に記載の工程(c)の前に、細胞洗浄工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
細胞洗浄溶液は塩を含まず、DNAseをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルファウイルスレプリコンベクターと1つ以上のヘルパー核酸分子とを電気穿孔法によりアルファウイルス許容細胞に導入することを含む、TC-83由来アルファウイルスレプリコン粒子の製造方法であって、電気穿孔法時の培地中のアルファウイルス許容細胞は少なくとも108細胞/ml培地の濃度であり、アルファウイルスRNAレプリコンベクターは約35μg/mlの濃度で、電気穿孔の前に細胞に加えられる、上記方法。
【請求項12】
前記電気穿孔法は、電極間のギャップが0.4〜1.0cmである電気穿孔用キュベット中で行われる、請求項1または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘルパー核酸はアルファウイルス構造タンパク質をコードする単一のDNA分子である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
DNAヘルパーは少なくとも100μg/mlの濃度である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルファウイルス許容細胞培養物はVero細胞培養物である、請求項1または11に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)の後にイオン交換クロマトグラフィー工程が続く、請求項1または11に記載の方法。
【請求項17】
本方法で使用される塩洗浄工程は、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、NH4Cl、(NH4)2SO4、NH4HCO3、および酢酸NH4よりなる群から選択される、請求項2または11に記載の方法。
【請求項18】
請求項1または17に記載の方法により調製されるアルファウイルスレプリコン粒子調製物。
【請求項19】
TC-83由来アルファウイルスレプリコン核酸。
【請求項20】
感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子と薬剤学的に許容される担体とを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象の免疫応答を生成する方法であって、ここで各粒子は、アルファウイルスパッケージングシグナルと免疫原をコードする1つ以上の異種RNA配列とを含むアルファウイルスレプリコンRNAを含み、かつ該アルファウイルスレプリコンRNAはアルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如しており、各粒子はVEETC83からの構造タンパク質を含む、上記方法。
【請求項21】
組成物は、筋肉内、皮下または腹腔内注入により投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アルファウイルスレプリコンRNAはベネズエラウマ脳炎ウイルス由来である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
1つの異種RNA配列が存在する、又は2つの異種RNA配列が存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子を含む組成物であって、該粒子はベネズエラウマ脳炎ウイルスTC83構造タンパク質とアルファウイルスレプリコンRNAとを含み、該アルファウイルスレプリコンRNAは、アルファウイルスパッケージングシグナルと少なくとも1つの免疫原をコードする1つ以上の異種RNA配列とを含み、かつ該アルファウイルスレプリコンRNAは構造タンパク質をコードする配列が欠如した、上記組成物。
【請求項25】
アルファウイルスレプリコンRNAはベネズエラウマ脳炎ウイルス由来である、請求項24の組成物。
【請求項26】
該組成物は医薬調製物である、請求項24の組成物。
【請求項27】
感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子を産生するためのヘルパー細胞であって:
(a) 異種RNA配列をコードしており、かつアルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如している、アルファウイルスレプリコンRNA;
(b) すべてではないが少なくとも1つのベネズエラウマ脳炎ウイルスTC83構造タンパク質をコードする第1のヘルパーRNA;および
(c) 第1のヘルパーRNAによりコードされる少なくとも1つのベネズエラウマ脳炎ウイルスTC83構造タンパク質をコードせず、第1のヘルパーRNAによりコードされない少なくとも1つのベネズエラウマ脳炎ウイルスTC83構造タンパク質をコードする第2のヘルパーRNA、とを含む上記細胞。
【請求項28】
感染性の増殖欠陥性アルファウイルス粒子を産生するためのヘルパー細胞であって:
(a) 異種RNA配列をコードしており、かつアルファウイルス構造タンパク質をコードする配列が欠如している、アルファウイルスレプリコンRNA;および
(b) すべてのベネズエラウマ脳炎ウイルスTC83構造タンパク質をコードする1つ以上のヘルパーDNAプラスミド、とを含む上記細胞。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−537761(P2007−537761A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527482(P2007−527482)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/017766
【国際公開番号】WO2005/113782
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505222750)アルファバックス,インコーポレイティド (4)
【Fターム(参考)】