TFPIおよびTFPIアナログを精製するための改良された方法
TFPIまたはTFPIアナログの高度に精製された調製物は、一般に以下の工程を含む方法を用いて調製され得る:(1)E.coli内でのTFPIまたはTFPIアナログの発現、(2)屈折体の単離、(3)屈折体の溶解、および発現したTFPIまたはTFPIアナログのリフォールディング、(4)SP−セファロース高流速(FF)クロマトグラフィー、(5)一次濃縮工程およびダイアフィルトレーション工程、(6)Q−セファロース高速(HP)クロマトグラフィー、(7)ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、(8)SP−セファロースHPクロマトグラフィー、ならびに(9)二次濃縮工程/ダイアフィルトレーション工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、同時係属中の仮出願第60/494,546号(2003年8月13日出願)、同第60/509,277号(2003年10月8日出願)、同第60/512,199号(2003年10月20日出願)による利益を主張するものであり、およびこれらの仮出願を参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、精製されたTFPIの生成に関連する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
組織因子経路インヒビター(TFPI)は長さにおいて276アミノ酸であり、そして組織因子が媒介する血液凝固のインヒビターとして機能する。特許文献1を参照のこと。TFPIのアミノ末端は負の電荷を持ち、そしてカルボキシ末端は正の電荷を持つ。このTFPIタンパク質は、3つのクニッツ型酵素インヒビタードメインを含む。TFPIは、正しくフォールディングした場合、18個のシステイン残基を含み、そして9つのジスルフィド架橋を形成する。その一次配列は、N結合型のコンセンサスグリコシル化部位(Asn−X−Ser/Thr)を3つ含む。このグリコシル化部位のアスパラギン残基は、145位、195位、および256位に位置する。TFPIはまた、リポプロテイン関連性血液凝固インヒビター(LACI)、組織因子インヒビター(TFI)、および外因性経路インヒビター(EPI)としても公知である。
【0004】
TFPIの使用は、様々な徴候の治療に提唱されており、それは、敗血症(特許文献2および特許文献3)、深部静脈血栓(特許文献4、特許文献5、および特許文献6)、虚血(特許文献7、特許文献8、および特許文献9)、再狭窄(特許文献10および特許文献11)、および癌(特許文献12および特許文献13)を含む。TFPI改変体は、アミノ末端にアラニン残基を付加した点でTFPIと異なるが(「ala−TFPI」)、敗血症の処置について、動物モデルにおいて有効であることが示されている(非特許文献1)。
【0005】
生物学的に活性な、精製されたTFPI、およびそれを取得するための方法について、当該分野において、継続的な必要性がある。
【特許文献1】米国特許第4966852号明細書
【特許文献2】米国特許第6063764号明細書
【特許文献3】国際公開第WO93/24143号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5563123号明細書
【特許文献5】米国特許第5589359号明細書
【特許文献6】国際公開第WO96/04378号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5885781号明細書
【特許文献8】米国特許第6242414号明細書
【特許文献9】国際公開第WO96/40224号パンフレット
【特許文献10】米国特許第5824644号明細書
【特許文献11】国際公開第WO96/01649号パンフレット
【特許文献12】米国特許第5902582号明細書
【特許文献13】国際公開第WO97/09063号パンフレット
【非特許文献1】Carrら、Circ.Shock 44(3)、126−37、1994
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも以下の実施形態を提供する。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む、精製された調製物を提供する。このTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。この改変された化学種は、以下のうちの1種以上を含む:逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子。
【0008】
本発明のもう1つの実施形態は、多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む、薬学的処方物である。このTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。この改変された化学種は、以下のうちの1種以上を含む:逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子。
【0009】
本発明のもう1つの実施形態は、精製されたTFPIまたはTFPIアナログを生成する方法を提供する。この方法は、以下の工程:(1)リファンピシン耐性E.coli宿主細胞内での、TFPIまたはTFPIアナログを発現する工程、(2)上記のE.coli宿主細胞から、TFPIまたはTFPIアナログを含む封入体を単離する工程、(3)上記の封入体からTFPIまたはTFPIアナログの単離して、単離されたTFPIまたはTFPIアナログを得る工程、(4)上記の単離されたTFPIまたはTFPIアナログをリフォールディングして、リフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを生成する工程、(5)Mg++存在下でのSP−セファロース高流速クロマトグラフィーによって、上記のリフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程、(6)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程、(7)Q−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程、(8)ブチルHICクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程、(9)SP−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程、および(10)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程を含み、ここで、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。このTFPIまたはTFPIアナログは、以下の要素を含むプラスミドにコードされる:(a)転写プロモーター;(b)上記の転写プロモーターに隣接するリボソーム結合部位;(c)上記のリボソーム結合部位に隣接する、TFPIまたはTFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;(d)上記のヌクレオチドコード配列に隣接する転写ターミネーター;(e)レプリコン;(f)抗生物質耐性遺伝子;および(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子。
【0010】
本発明のもう1つの実施形態は、精製されたTFPIまたはTFPIアナログを生成するための方法である。この方法は、以下の工程:(1)SP−セファロース高流速クロマトグラフィーによって、上記のリフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程、(2)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程、(3)Q−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程、(4)ブチルHICクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程、(5)SP−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程、および(6)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程を含み、ここで、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。
【0011】
本発明の、さらにもう1つの実施形態は、TFPIまたはTFPIアナログの発現の方法であって、それは、リファンピシン耐性E.coli宿主細胞を発酵培地内にて培養する工程を含む。上記のE.coli宿主細胞は、以下の要素を有するプラスミドを含む:(a)転写プロモーター;(b)上記のリクラック(reclac)転写プロモーターに隣接したリボソーム結合部位;(c)上記のリボソーム結合部位に隣接した、TFPIまたはTFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;(d)上記のヌクレオチドコード配列に隣接した、転写ターミネーター;(e)レプリコン;(f)抗生物質耐性遺伝子;および(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子。上記の発酵培地1lは、41gのブドウ糖、2.5gの(NH4)2SO4、4.0gのポリリン酸ナトリウム、7.0gのK2SO4、1.63gのMgSO4・7H2O、2.0gのメチオニン、2.0gのグリセロール、0.5mgのH3BO4、0.5gの塩化コバルト、0.13gのCuSO4・6H2O、54.0gのFeCl3・6H2O、11.0gのMnSO4・H2O、0.5gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのNaSeO3、22.0gのZnSO4・7H2O、0.01mlの濃H2SO4、および0.55mlのUCON消泡剤を含む。
【0012】
本発明の、さらにもう1つの実施形態は、多量のala−TFPI分子、ならびに20mMのクエン酸ナトリウム、300mMのL−アルギニン、および5mMのメチオニンを含み、pH5.5である、薬学的組成物である。上記のala−TFPIの約12%未満は、改変された化学種である。上記の改変された化学種は、以下のうちの1種以上を含む:逆相クロマトグラフィーにて検出されるような、酸化されたala−TFPI分子;陽イオン交換クロマトグラフィーにて検出されるような、カルバミル化されたala−TFPI分子;Promega ISOQUANT(登録商標)キットにて検出されるような、脱アミド化されたala−TFPI分子;アミノ酸解析から決定されるような、システイン付加物を含むala−TFPI分子;サイズ排除クロマトグラフィーにて検出されるような、凝集したala−TFPI分子;および、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて検出されるような、誤ってフォールディングされたala−TFPI分子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、TFPIまたはTFPIアナログ(下記に定義)を精製するための改良された方法を提供する。上記の精製方法は、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の調製物であって、その調製物の約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満が「改変された化学種」からなる調製物を生成し得る。
「改変された化学種」は、酸化されたTFPIまたはTFPIアナログ、カルバミル化されたTFPIまたはTFPIアナログ、脱アミド化されたTFPIまたはTFPIアナログ、アセチル化されたTFPIまたはTFPIアナログ、凝集したTFPIまたはTFPIアナログ、誤ってフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログである。
【0014】
上記の方法は、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの大規模な調製物(例えば、下記に定義するような、精製された200〜300gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された500gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された400〜600gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された750gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された600〜900gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された800gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された800〜1,200gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された1.2kgのTFPIまたはTFPIアナログ、あるいは精製された2.4kgのTFPIまたはTFPIアナログ)の調製に、特に適している。
【0015】
(TFPIまたはTFPIアナログ)
「TFPI」は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、グリコシル化されていないTFPIである。「TFPIアナログ」は、配列番号1に示されるようなTFPIとは異なる一次アミノ酸構造を有し(すなわち、1つ以上のアミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失、および/またはアミノ酸付加)、一方で下記に論じられるような、TFPIの1つ以上の生物学的活性を保持する。TFPIアナログはTFPIのアミノ酸配列(配列番号1)と、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%のアミノ酸同一性を有する。TFPIアナログは、ムテイン、キメラ分子、およびTFPIの断片を含む。任意のこれらの分子は、メチオニンからノルロイシンの置換、またはロイシンからノルバリンの置換を1つ以上含み得る。
【0016】
TFPIアナログと、TFPIのアミノ酸配列(配列番号1)との間の同一性の百分率は、Blast2整列化プログラム(Blosum 62、Expect 10、標準遺伝暗号、open gap 11、extension gap 1、gap x_dropoff 50、および低複雑性フィルター オフ)を用いて決定する。アミノ酸が、類似した性質を有するもう1つのアミノ酸に交換される、保存的な置換が好ましい。保存的な置換の例としては、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるが、これらに限らない。保存的なアミノ酸置換は代表的には、約1〜5アミノ酸(すなわち、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、または5アミノ酸)の範囲内で起きる。付加的なアミノ酸は、分子内の任意の場所、特にアミノ末端またはカルボキシ末端において付加され得る。アミノ酸付加は、1個、2個、5個、10個、25個、100個、またはそれ以上の付加的なアミノ酸であり得る。融合タンパク質は、アナログの定義内に含まれる。明らかに、TFPIアナログをコードするDNA内に起きた変化は、その配列をリーディングフレーム外に位置させてはならず、そして好ましくは、二次的なmRNAの構造を生成させ得る相補領域を作成しない。生物学的活性も免疫学的活性も消失させずに、どのアミノ酸残基を置換、挿入、または欠失させ得るかということを決定するための手引きは、当該分野にて周知のコンピュータープログラム(例えば、DNASTARソフトウェア、またはDayhoffら(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found.、Washington,D.C.)を参照)を用いて見出し得る。
【0017】
好ましいTFPIアナログはN−L−アラニル−TFPI(「ala−TFPI」)であって、ala−TFPIは、配列番号1のアミノ末端に付加的なアラニン残基を有する。
【0018】
アナログは、配列番号1に関連する、1〜5個の保存的なアミノ酸置換を有する「TFPIムテイン」を含む。好ましいムテインは、分子の立体配座を実質的に変化させない置換を有する。いくつかの事例において、TFPIムテインは、(1)N結合グリコシル化のための3つの部位のうちの1つ以上を除去するアミノ酸置換を有するか、(2)TFPI(配列番号1)の残基をTFPI−2の対応する残基に変化させる1〜5個のアミノ酸置換を有するか、(3)1つ以上のクニッツ型ドメイン内のP1反応部位内のアミノ酸置換を有するか、または(4)1つ以上のクニッツ型ドメイン内のP1反応部位の5個のアミノ酸中の部位にアミノ酸置換を有する。1つのTFPIムテインにおいて、TFPI(配列番号1)の第1のクニッツ型ドメインのP1反応部位内のリジン残基はアルギニンに置換される。
【0019】
TFPI(配列番号1)の様々な部分を含む、「キメラのTFPI」分子は、米国特許第5,589,359号にて記述される。
【0020】
断片は、TFPI(配列番号1)の諸部分からなるTFPIアナログである。例えば、断片は、長さが20、25、30、50、100、150、200、250、または275の連続したアミノ酸であり得る。断片の例としては、クニッツドメイン1、2、または3;クニッツドメイン1および2、または2および3;および、N末端の欠失、C末端の欠失、または両方の欠失が挙げられる。このようなアナログを作成するための実質的な手引きは、米国特許第5,106,833号に見出される。
【0021】
(TFPI、TFPIアナログ、あるいは改変されたTFPIまたはTFPIアナログの生物学的活性)
TFPIまたは改変されたTFPI(下記に定義)の生物学的活性は、第VIIa因子/TF複合体および第Xa因子の双方のアミド分解(amidolytic)活性、ならびに、プロトロンビン時間(PT)アッセイにて測定できるような、抗血液凝固活性との結合および阻害を含む。下記に定義するような改変されたTFPIアナログを含むTFPIアナログは、好ましくは、第VIIa因子/TF複合体および第Xa因子のどちらか、または双方と結合し得る。改変されたTFPIアナログを含むTFPIアナログは、好ましくは、実質的な量の抗血液凝固活性(例えば、下記に記述するPTアッセイにて測定される、TFPI(配列番号1)の、10%、30%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上の抗血液凝固活性)を有する。
【0022】
(精製されたTFPIまたはTFPIアナログの調製物)
本発明の、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの調製物は、その約12%未満が、下記に記述されるアッセイのうちの1つ以上によって検出される、改変された化学種である、TFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む。「改変されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種」は、以下の翻訳後修飾のうちの1つ以上を含む分子である:酸化(酸化されたメチオニン残基)、システイン付加物、アミノ酸改変(残余のN末端メチオニン、脱アミド化、アセチル化、およびカルバミル化)、凝集(TFPIオリゴマーまたはTFPIアナログオリゴマーの生成)、および誤ったフォールディング。
【0023】
好ましくは、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満は、逆相クロマトグラフィー(下記に記述のCN HPLC)にて検出されるように、酸化されている。好ましくは、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、陽イオン交換クロマトグラフィー(下記に記述のCEX HPLC)にて検出されるように、カルバミル化されている。さらに他の精製された調製物内において、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満は、Promega ISOQUANT(登録商標)キットを用いて測定できるように、脱アミド化されている。好ましくは、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、アミノ酸解析にて決定されるように、システイン付加物を有する。他の好ましいTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物において、上記のTFPI分子およびTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、サイズ排除クロマトグラム(SEC HPLC)にて検出されるように凝集されているか、あるいは、非変性条件下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(下記に記述)にて検出されるように、誤ってフォールディングされている。
【0024】
好ましくは、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、質量分析(下記に記述)にて検出可能なレベルのアセチル化したTFPI化学種もTFPIアナログ化学種も含まない。本発明の精製された調製物はまた、好ましくは、E.coliのタンパク質を実質的に除かれている(すなわち、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の、銀染色SDSポリアクリルアミドゲルにて検出可能なタンパク質の2ng/mg未満が、E.coliタンパク質である)。
【0025】
その他の好ましい、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、約4%未満の酸化されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、約1%未満のカルバミル化されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、約5%未満の脱アミド化されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、ならびに、約3%未満の凝集した、および/または、誤ってフォールディングしたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種を含む。
【0026】
本発明の、任意の精製されたTFPI調製物は、メチオニンからノルロイシンへの1つ以上の置換、またはロイシンからノルバリンへの1つ以上の置換を含み得る。
【0027】
(アッセイ)
下記に記すアッセイは、TFPI調製物またはTFPIアナログ調製物の純度、安定性、または生物学的活性を決定するために用いられる。
【0028】
(逆相クロマトグラフィー(CN HPLC)による純度)
逆相高速液体クロマトグラフィー法(CN HPLC)は、改変されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種(すなわち、改変(例えば、酸化されたメチオニン残基)、およびアミノ酸改変(例えば、残余のN末端メチオニン、カルバミル化、脱アミド化、およびアセチル化)を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子)を検出するために用いられる。CN HPLCはまた、メチオニンからノルロイシンへの置換を有するTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種を検出し得る;しかし、上記に記述したように、こうした化学種は「改変されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種」ではなく、そして本発明の精製された調製物内に存在し得る。
【0029】
上記のCN HPLC法は、安定に結合したシアノ−逆相カラム、ならびに、アセトニトリルおよび0.2%のトリフルオロ酢酸を含む移動層を用いる。溶離液を、214nmにおける吸光度を検出することで、タンパク質についてモニターする。結果のサンプルを、参照標準物質と比較する。純度は、主要なピークの面積百分率によって評価される。
【0030】
CN HPLCにて測定されるように、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満は、酸化されたメチオニン残基を有する。
【0031】
(アミノ酸解析による、遊離のシステインの定量)
遊離のシステインの定量を可能にする任意のアミノ酸解析方法が、システイン付加物を有するTFPI分子またはTFPIアナログ分子の定量に用いられ得る。例えば、Barkholt&Jensen、Anal Biochem.1989年3月;177(2):318−22;Hoogerheide&Campbell、Anal Biochem.1992年2月14日;201(1):146−51;Athertonら、Anal Biochem.1993年7月;212(1):98−105;Haleら、Anal Biochem.1994年1月;216(1):61−6;Mannebergら、Anal Biochem.1995年11月1日;231(2):349−53;Thannhauserら、J Protein Chem.1998年1月;17(1):37−43;Yanら、J Chromatogr A.1998年7月10日;813(1):187−200;米国特許第4,670,403号;および米国特許第4,784,962号に開示された方法を参照のこと。代表的には、TFPI分子またはTFPIアナログ分子を還元した後に放出される遊離のシステインを定量する。
【0032】
アミノ酸解析によって決定されるように、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、システイン付加物を有する;より好ましくは、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、検出され得るレベルのシステイン付加物を全く含まない。
【0033】
(脱アミド化アッセイ)
Promega ISOQUANT(登録商標)キット(Promega Technical Bulletin No.TBI001(ISOQUANT(登録商標)Isoaspartate Detection Kit、改訂 8/99))またはそれに相当するものが、イソアスパラギン酸の間接的な測定を通して、TFPIの脱アミド化またはTFPIアナログの脱アミド化を決定するために用いられる。手短に言えば、上記のキットは、S−アデノシル−L−メチオニン(SAM)のメチル基の、イソアスパラギン酸への転移を触媒する、タンパク質イソアスパルチルメチル転移酵素(PIMT)を利用する。この反応は副産物であるS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)を生成し、SAHは続いて、タンパク質の脱アミド化のレベルを定量するために、RP−HPLC(Carlson&Riggin、Analytical Biochemsitry 278,150−55,2000)にて解析される。
【0034】
このアッセイにて測定されるように、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満は脱アミド化されている。
【0035】
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC HPLC))
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC HPLC)は、TFPIオリゴマーまたはTFPIアナログオリゴマー(すなわち、凝集した形態)から、TFPI単量体またはTFPIアナログ単量体を検出するために用いられる。この方法は、BioRad Bio−Sil SEC 250−5ならびに、40%のアセトニトリルおよび0.75%のトリフルオロ酢酸を含む移動層を用いる。溶出液を、214nmにおける吸光度にて、タンパク質についてモニターする。単量体およびオリゴマーは、水力学的半径に基づいて分離される。純度は、面積百分率によって評価される。
【0036】
サイズ排除クロマトグラフィーの2つの方法が、TFPIまたはTFPIアナログの凝集した形態の検出に用いられ得る。1つの方法は、40%のACN、0.75%のTFA、50mMのMgCl2バッファーを溶出液として用い、そして220nmに設定したUV検出器を用いる。もう一方の方法は、溶出液として処方バッファー(300mMのL−アルギニン、20mMのクエン酸ナトリウム、pH 5.5)、ならびに、280nmでの励起および320nmでの発光に設定した蛍光検出器を用いる;このシステムを有する上記のSECカラム全長にわたる重量バランスは85%である。
【0037】
SEC HPLCにて測定されるように、精製されたTFPIまたはTFPIアナログ中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は凝集されている。
【0038】
(SDS−PAGE(クーマシーブルー染色、非還元的状態))
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を非還元的条件下にて行い、そして、クーマシーブルー染色を用いて、誤ってフォールディングしたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種の検出に用いる。この方法は、14%のアクリルアミドゲルおよびコロイド性のクーマシー染色を用いる。還元されたサンプルおよび還元されていないサンプルを、参照標準物質と比較する。非還元的条件下にて、誤ってフォールディングされた形態のTFPIまたはTFPIアナログは、TFPIまたはTFPIアナログよりも、わずかに大きな電気泳動的な移動度を有し、他方で、還元的状態下では、電気泳動的な移動度に違いはない。精製された調製物中の、凝集した、および/または誤ってフォールディングした化学種の割合を決定するために、その結果を、参照標準物質と比較する。
【0039】
SDS PAGEにて測定されるように、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、誤ってフォールディングされている。
【0040】
(SDS−PAGE(銀染色))
SDS PAGEを非変性条件下にて行い、そして、銀染色を用いて、精製プロセスの間には除かれないE.coliタンパク質の同定に用いる。上記のサンプルは、14%アクリルアミドゲルに注ぐ前に還元する。サンプルの結果は、参照標準物質と比較する。
【0041】
精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、実質的に、E.coliタンパク質が除かれている(すなわち、銀染色SDSポリアクリルアミドゲルにて検出可能な、本発明の精製された調製物中のタンパク質の2ng/mg未満が、E.coliタンパク質である)。
【0042】
(CEX HPLC)
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)は、カルバミル化したTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、あるいは電荷の関係したTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種の存在の検出に用いられる。上記のCEX−HPLC法は、Pharmacia Mono−S HR 5/5−ガラスカラムを用いる。上記のカラムは、80%のバッファーA(pH 5.4にて、20mMの酢酸ナトリウム三水和物:アセトニトリル溶液(70:30 v/v))および20%のバッファーB(pH 5.4にて、20mMの酢酸ナトリウム三水和物−1.0Mの塩化アンモニウム−アセトニトリル溶液(70:30 v/v))にて平衡化される。サンプルを注入した後、TFPIを溶出するために、0.7ml/分の流速にて、21分間内に20%のバッファーB〜85%のバッファーBの勾配が適用される。タンパク質のピークは、280nmにおける吸光度、または、励起に280nmおよび発光に320nmを用いた蛍光によって検出される。
【0043】
CEX HPLCにて測定されるように、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、カルバミル化されている。
【0044】
(質量分析)
質量分析法は、下記の、特定の実施例にて記述される。本発明の精製されたTFPI調製物は、好ましくは、質量分析によるアッセイによって検出し得るレベルのアセチル化されたTFPI化学種を含まない。
【0045】
(プロトロンビン時間アッセイ)
PTアッセイは、Coag−A−Mate MTX II器械(Organon Teknika)上にて行われる。TFPIサンプルまたはTFPIアナログサンプルは、まずバッファー(2Mの尿素、20mMのリン酸ナトリウム、250mMのNaCl、pH 7.2)にて150μg/mlに希釈され、続いてTBSAバッファー(50mMのTris、100mMのNaCl、1mg/mlのウシ血清アルブミン、pH 7.5)にて30μg/mlに希釈され、そして最後に、TBSAバッファーにて12〜15μg/mlに希釈される。アッセイのために、10μlの希釈したサンプルを、まず90μlのプールしたVerify I(Organon Teknika、カタログ番号59566)に混ぜ、試験トレー(Organon Teknika、カタログ番号35014)に充填し、そして上記のCoag−A−Mate内に配置する。次いで、200μlのSimplastin Excel(Organon Teknika、カタログ番号52001)を、凝固プロセスを開始するために加える。この凝固時間は、標準物質中のTFPIまたはTFPIアナログの濃度の対数に対する、凝固時間(秒)の対数の標準プロットと比較することで、投入したTFPIまたはTFPIアナログの濃度に変換される。相対的な効力は、試験サンプル中のTFPIおよびTFPIアナログの阻害活性を、TFPIおよびTFPIアナログのコントロールの阻害活性と比較することで、計算される。
【0046】
(精製手順の概要)
本発明の精製方法(「方法C」)は一般に以下の工程を含む:(1)E.coli内にてTFPIまたはTFPIアナログを発現する工程、(2)屈折体を単離する工程、(3)上記屈折体を溶解し、そして発現したTFPIまたはTFPIアナログをリフォールディングする工程、(4)SP−セファロース高流速(FF)クロマトグラフィー工程、(5)一次濃縮およびダイアフィルトレーション工程、(6)Q−セファロース高速(HP)クロマトグラフィー工程、(7)ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程、(8)SP−セファロースHPクロマトグラフィー工程、および(9)二次濃縮/ダイアフィルトレーション工程。随意的に、濃縮/ダイアフィルトレーション工程は、ブチルHIC工程とSP−セファロースHPクロマトグラフィー工程との間に含まれ得る。
【0047】
本発明の上記の精製方法は、Gustafsonら、Protein Expression and Purification 5、233−41、1994;WO 96/40784;米国特許第6,319,896号;および米国特許第6,323,326号に記述された従来の精製方法(「方法B」)よりも少ない改変されたTFPI化学種およびTFPIアナログ化学種を含む、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の調製物を生成する。
【0048】
TFPIまたはTFPIアナログの精製は、一連のクロマトグラフィー操作によるフォールディング工程の後に、大部分は達成される。1工程の溶出を用いる、上記のSPセファロース捕獲カラムを除いて、残りのクロマトグラフィー工程は全て、画分収集、およびどの画分をプールすべきかということを決定するための分析を用いる。実際的な生産見込みから、画分は、プールするためのある最小の要求に応じる。しかし、必要ならば、ピークの画分のみを収集し、そして引き続くクロマトグラフィー操作を通して実行されるならば、さらに高いレベルの純度を得ることができる。これらの改変された形態のTFPIを除くことで、この精製方法は、上記の調製物の約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満が、改変された化学種からなる、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の調製物を生成し得る。
【0049】
表1は、方法Bを用いて生成された組換え型ala−TFPIの純度、および本発明の方法を用いて生成された組換え型ala−TFPIの純度を比較する。さらに、下記に記述した、発現系、発酵制御戦略、および屈折体の単離手順は、結果として、従来の生成方法と比較して、生産されるTFPIまたはTFPIアナログの量において5倍を超える増加をもたらす。
【0050】
【表1】
1単量体(SDS PAGE)または主要なピーク(HPLC)に対する%として表した値。
2メチオニン1モル当たりのノルロイシンの置換の%で表した。
3ロイシン1モル当たりのノルバリンの置換の%で表した。
【0051】
この手順のある局面(例えば、上記ブチルHIC工程、細胞の収集の間のDTPAキレート剤の使用、(特にMg++存在下での)SP−セファロース高流速クロマトグラフィー、および改良された発酵方法)は一般に、TFPIまたはTFPIアナログ以外のタンパク質に適している。
【0052】
TFPIまたはTFPIアナログの工業規模での生成に適した、この精製方法の好ましい実施形態を、下記に記述する。
【0053】
(TFPIまたはTFPIアナログの発現)
(TFPIまたはTFPIアナログをコードする配列)
TFPIの野生型のアミノ酸配列を、配列番号1に示す。上記に定義したTFPIまたはTFPIアナログをコードする任意のヌクレオチド配列が、発現されるTFPIまたはTFPIアナログをコードするために用いられ得る。ala−TFPIにとって好ましいコード配列は、図15に示す。
【0054】
(TFPIまたはTFPIアナログの生成)
組換え型のTFPIまたはTFPIアナログは、当該分野で周知の、任意の適した宿主細胞(例えば、酵母宿主細胞または哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞、HepG2細胞、Chang肝細胞、またはSK肝癌細胞))内で生成され得る。例えば、米国特許第5,212,091号、同第6,103,500号、および同第6,323,326号を参照のこと。このように組換え的に生成されたTFPIまたはTFPIアナログは、下記に記述したような、本発明の方法を用いて精製され得る。
【0055】
(E.coli宿主細胞)
TFPIまたはTFPIアナログは、好ましくは、E.coli宿主細胞内にて生成される。TFPIの生成に用いられる好ましいE.coli株は「MON210」とよばれ、この「MON210」は、ブダペスト条約の規定の下で、2003年10月8日に、American Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108,USAに寄託された(登録番号PTA−5564)。MON210は、野生型E.coli株W3110(Backman、Bacteriologica Reviews 36、525−57、1996)から、W3110→MON105→LBB358→MON210の順序を含む多段階のプロセスを通して、産生された。
【0056】
E.coli MON210株は、LBB358株からいくつかの工程を経て産生された。産生プラスミドのコンカテマー化(concatemerization)を減少させるために、P1形質転換(CsonkaおよびClark、J.Bacteriol.143、529−530、1980)によって、LBB358株にrecA56変異を導入し、その結果、LBB358recA−株を得た。次いでLBB358recA−から、Tn10に存在するテトラサイクリン耐性遺伝子を、フザリン酸選抜によって除き、LBB358recA− T10株を産生した。自発的に起こる、リファンピシン耐性に関連する、度合いの変化する転写物伸長を選抜するために、LBB358recA− T10株にプラスミドpMON26335rop+を導入し、LBB358recA− T10/pMON26335rop+株を産生した。TFPI生成のレベルの増加を示した、リファンピシン耐性株の1つを選抜し、次いでプラスミドpMON26335rop+を除いた。結果として産生された培養物をMON210とよんだ。
【0057】
(プラスミド)
E.coli宿主細胞内にてTFPIまたはTFPIアナログを発現させるために用いるプラスミドは、以下の遺伝子要素を有する:転写プロモーター、リボソーム結合部位、TFPIまたはTFPIアナログをコードする配列、転写ターミネーター、レプリコン、抗生物質耐性遺伝子、およびN末端メチオニンを除去する酵素。特に好ましい要素を、表2に示す。
【0058】
【表2】
プラスミド「pMON37621」は、上記の好ましい要素のそれぞれを含む。pMON37621のプラスミド地図を、図1に示す。このプラスミドは、ala−TFPI、およびE.coli内にてタンパク質を高レベルで生産するに有用な制御要素をコードする最適化された構造遺伝子を含む。このpMON37621プラスミドは、上記のala−TFPIコード領域の改変を除いて、pMON9197から産生された。
【0059】
(pMON37621の構築)
プラスミドpMON37621は、プラスミドpMON9197から始まって構築された。pMON9197は、ala−TFPIをコードする最適化された遺伝子、第10遺伝子リボソーム結合部位(Olinsら、Gene 73、227−35、1988)、スペクチノマイシン耐性遺伝子(Flingら、Nucleic Acid Research 13、7095、1985)、MAP遺伝子(Ben−Bassat、J.Bacteriol.169、751−57、1987)、およびpBR327の複製起点(Bolivar、Gene 2、95−113、1977)を含む。上記のリクラックプロモーター(米国特許第5,212,091号を参照のこと)をpMON9197に挿入し、本来のtacプロモーターと交換して、プラスミドpMON26335を産生した。
【0060】
上記のリクラックプロモーター(米国特許第5,212,091号)は、ala−TFPI遺伝子の転写を指向するために用いられる。上記のリボソーム結合部位は、バクテリオファージT7の第10遺伝子から得られる。上記の転写ターミネーターは標準のターミネーター配列に基づき、そして2254とよばれる。上記の複製起点はpBR322に由来する。産生プラスミドのコピー数のより良い制御のために、pBR322由来のrop遺伝子(Polisky、Cell 55、929−32,1988)をpMON26335に挿入し、結果としてプラスミドpMON26335rop+を得た。pMON37621の構築の最終工程は、バクテリオファージP22ターミネーターを、2254とよばれる転写ターミネーター(配列番号42;米国出願番号第09/044,369号の配列番号3を参照のこと)と置換することであった。プラスミドpMON37621はまた、宿主にストレプトマイシンおよびスペクチノマイシンへの耐性を与えるアミノグリコシドヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子、ならびにN末端メチオニンの除去を亢進させるためのE.coliメチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)遺伝子を保有する。
【0061】
(製造株MON210/pMON37621の調製)
製造株MON210/pMON37621は、MON210にpMON37621を形質転換することで産生される。形質転換は、当該分野で公知の任意の手段によって達成され得る。形質転換されたMON210/pMON37621のグリセロールストックが調製され得、そして保存用細胞バンクおよび作業用細胞バンクの樹立に用いられ得る。
【0062】
(保存用細胞バンクおよび作業用細胞バンクの調製)
保存用細胞バンクおよび作業用細胞バンクは、以下のように、製造株から調整される。保存用細胞バンクの調製のためには、親MON210/pMON37621の凍結バイアルを解凍し、そして、スペクチノマイシンを含む、規定された産生播種培地内で、約9世代、振盪フラスコ内で増殖させる。次いで、10%のグリセロールを含む細胞のバイアルを凍結してよく、そして−70℃にて維持してよい。作業用細胞バンクは、保存用ストックバイアルを解凍し、そして保存用細胞バンクについて記述したように細胞を増殖させることで調製し得る。
【0063】
(発酵条件)
製造発酵プロセスは、3つの工程を含む:(1)種1振盪フラスコ、(2)種2発酵槽、および(3)10,000L生産発酵槽。この発酵プロセスの間に用いられる培養液の組成を、表3に収載する。KOHおよびH2SO4が、種1培養液および種2培養液の培養液pHを合わせるために用いられる。NH4OHおよびH2SO4が、発酵槽の培養液のpHを合わせるために用いられる。NH4OHはまた、発酵の間にpHを制御するためにも用いられる。
【0064】
USP精製水を、発酵プロセスを通して用いる。選択的抗生物質であるスペクチノマイシンを、作業用細胞バンクの調製中に用い、そして種菌の調製または発酵プロセスの間には用いない。
【0065】
【表3】
1上記の発酵槽の最初の体積は6400Lである。
2最初の実際のグルコース濃度は、セレローズの含水量(9%未満)に起因して34〜42g/Lである。
3最初に加えられた3.5LのUcon消泡剤。さらなる消泡剤(12.5Lまで)が、発酵の間に加えられ得る。
【0066】
(種1−振盪フラスコ)
上記の発酵プロセスは、作業用細胞バンクの凍結バイアルの解凍から始まる。このバイアル(1mL)の中身を、種1振盪フラスコ内の0.5Lの種1培養液の接種に用いる。このフラスコを、37±2℃でインキュベートし、そして200RPMで混ぜる。この培養物は、細胞濃度が0.9〜1.7ODに達するまで、約9世代間増殖させられる。次いで上記の種1培養物を、種2発酵槽に移す。
【0067】
(種2−30L発酵槽)
30Lの種2培養液に、種1培養物の0.5L容量を接種する。上記の種2培養液は、基本的に種1培養液と同一であるが、0.1mL/LのUcon消泡剤を添加している点で異なる。上記の種2発酵は、好ましくは、37±2℃の温度で、6±2LPMの空気散布と共に行われる。上記の培養液の最初のpHは、好ましくは7.2±0.2である。
【0068】
細胞が、0.9〜1.7ODの濃度まで、約6世代、増殖させられた場合、上記の種2培養物を10,000L発酵槽に移す。
【0069】
(10,000L産生発酵槽)
上記の種2発酵槽の全ての中身を、約6,400Lの産生培養液を入れた10,000L発酵槽に移す。上記の産生培養液の組成を表3に示す。上記の産生発酵槽は、以下のパラメーターについて制御される。増殖段階の温度は、好ましくは37±2℃である。温度設定値を、TFPIまたはTFPIアナログの発現の誘導の約0.5時間前に、37℃から30℃に変更し、そして発現段階の温度は、好ましくは30±2℃である。pHを、濃NH4OHの添加によって制御し、好ましくは6.9±0.2である。グルコースの最初の供給が枯渇した場合、および栄養分の供給の開始の直前において、約pH7.4±0.2までの一時的なpHの棘波が起きる。最後に、溶存酸素(好ましくは0.1〜0.5atm)は、攪拌速度、散布速度、および散布ガス中の酸素の割合の調整によって制御される。
【0070】
10,000Lの産生発酵における細胞の増殖は、開始培養液のグルコースを用いた、単純なバッチ培養として始まる。pHの7.4±0.2への増加によって示されるように、細胞密度が約40ODに達する場合、グルコースは枯渇する。このとき、グルコース/栄養素の供給を開始する。この栄養素の供給は、550g/Lのグルコース、18g/Lのポリリン酸ナトリウム、6.65g/Lの硫酸マグネシウム、および4g/Lのメチオニンを含む。栄養素の供給速度は、指数関数的に増加させる。
【0071】
細胞密度が約100ODに達する場合、上記の培養物を、TFPIまたはTFPIアナログを産生するように、IPTGの添加(例えば、1発酵ごとに187±3gのIPTG、通常の体積=9500L)によって誘導し、そして、この発現段階の間のグルコースレベルを制限するために、上記のグルコース/栄養素供給速度を減少させる。温度設定値を、上記の培養物が誘導後1時間以内に30±2℃に達するように変更する。上記の培養物を誘導後約12時間に収集する。収集時のTFPIまたはTFPIアナログの濃度は、SDS−PAGE解析によって決定されるように、約5g/LのTFPIである。
【0072】
(細胞の収集、屈折体の溶解、および発現したTFPIのリフォールディング)
(細胞の収集)
細胞の収集のために、発酵ブロスをpH5.5〜6に調整し、そして酸素およびグルコースの送達を中断する。攪拌を減少し、そしてブロス温度を5〜10℃に低下させる。キレート剤であるDTPAを、最終濃度1mMとなるように加える。上記のDTPAの添加は、クエン酸でpHを5.5〜6.0に調整したストック溶液を用いてなされる。収集培養物を、上清中の固形物の損失が最小限になるような流速で作動させたBTUX−510遠心機に送る。収集した細胞を含む固形物を、発酵槽が空になるまで、引き続いてタンクにポンプで汲み出す。精製水を、収集した細胞に、体積が約10,000リットルになるまで加え、DTPAを最終濃度が1mMとなるように加え、そして、前記に記述したように、BTUX−510遠心機を通して処理する。この洗浄工程を、全てで2回繰り返す。
【0073】
(屈折体(RB)の単離)
上記の細胞洗浄工程の後、屈折体(RB、封入体としても公知)の回収を始める。回収は、上記の固形物が宿主細胞の細片を含まない基本的にきれいな屈折体になるまで、繰り返されるホモジェナイズ、遠心分離、および上記の固形物への体積追加の工程を含む。ホモジェナイザーは、約9000psigの一定の圧力で操作し、そしてBTUX−510遠心機またはそれに相当するものは、上清中の固形物の損失が最小限になるような流速で作動させる。
【0074】
(体積の縮小)
連続的な遠心分離および体積追加プロセスの第1段階(ダイア遠心分離(diacentrifugation))の間、その体積は約5000Lから約2500Lへ減少する。遠心分離による上清は捨てられ、そして固形物を収集する。この工程および引き続く工程のためのDTPA濃度は、10mMである。
【0075】
(バッチダイア遠心分離1)
RB単離プロセスの次の工程は、バッチダイア遠心分離である。この工程の間、前工程にて調製された粗製RBスラリーを、最終的なRBスラリーが、混入する細胞性物質をほとんど含まなくなるまで、繰り返しホモジェナイズし(連続的な方法で)、そして遠心分離する(バッチ方法で)。代表的には、望ましいRB純度を達成するためには、BTUX−510遠心機またはそれに相当するものを用いた、3回のバッチ工程が用いられる。バッチダイア遠心分離のための遠心分離パラメーターは、体積の減少のために示されたパラメーターと同一である。
【0076】
(バッチダイア遠心分離2)
第2のバッチダイア遠心分離工程の最後において、望ましくない発酵不純物(例えば、核酸および金属)を除くために、クエン酸ナトリウムバッファーによる洗浄を用いる。この工程の最後において、クエン酸ナトリウムを、最終濃度150mM、pH約5.5〜6.0となるように加える。
【0077】
(バッチダイア遠心分離3)
第3のバッチダイア遠心分離工程のために、SC−35遠心機またはそれに相当するものが用いられる。バッチダイア遠心分離3は、約2500LのRBスラリー体積から始まる。上清を捨て、そして固形物を別々に収集する。この工程の間、収集される固形物の体積は、宿主細胞の不活性化前に最終体積が500Lを超えないように、最小化される。
【0078】
(宿主細胞不活性化)
前工程において収集されたRBスラリーは、残余の組換え細菌細胞(約103〜105細胞/ml)を含む。これらの生存可能な細胞を、上記のRBスラリーが容器に分配され得る前に、不活性化する。残余のE.coli細胞を、1−オクタノール(約50%の固形物を含むスラリーに対して、0.2%v/w)に5〜10℃にて30分間接触させることで、不活性化する。
【0079】
(RBスラリーの分配および貯蔵)
不活性化の後、上記のRBスラリー(「RB中間体」)を、同等の部分に分配し、凍結する。例えば、上記の不活性化したRBスラリーを、7.5Lずつのアリコートにて、−20℃未満で、都合良く凍結する。
【0080】
(溶解およびリフォールディング)
下記に記述するリフォールディング反応は、10,000Lの工業規模においても、1日で完了し得る。リフォールディング工程におけるTFPIまたはTFPIアナログの量は、20,000gである。上記のリフォールディング反応の間、TFPIまたはTFPIアナログの濃度は、2g/Lである。上記のリフォールディング化学作用は、正しいジスルフィド結合を形成するための、システインの結合および銅触媒性の酸化を含む。
【0081】
解凍したRB中間体を、6Mの尿素、2g/Lのポリリン酸、50mMのトリス、50mMのグリシンを含み、pHが10のタンクに移し、剪断ミキサーを用いてホモジェナイズし、ストックDTT溶液を添加して還元する。還元され、ホモジェナイズされたRB溶液をフォールディングタンクに移し、このフォールディングタンクは、移送後、約3.5Mの尿素、50mMのトリス、50mMのグリシン、2g/Lのポリリン酸、および1mMのDTTを含み、pHが10.2である。フォールディングは、0.2μMの塩化第二銅および0.6mMのシステインの添加によって開始される。約24時間後、10μMの塩化第二銅を加える。約1時間後、塩化マグネシウムを最終濃度が50mMとなるように加え、そして47.5%の酢酸溶液を用いて、フォールディングされたプールのpHを5.5に調整する。必要に応じて、調整したフォールディングされたプールは約2日間保持し得、このことは、上記のプールの一部を取り出し、そして次の精製工程を通してサブロット(sublot)として処理することを可能にする。
【0082】
(SP−セファロース高流速クロマトグラフィー)
SP−セファロースFF樹脂をもちいた陽イオン交換クロマトグラフィーを、最初の捕捉工程に用いる。上記のカラムの装填容量は、総タンパク質40g/Lである。上記のカラムを、20mMのクエン酸ナトリウム、3Mの尿素、pH6にて平衡化する。上記の調整したフォールディングされたプールを、デプスフィルターおよび0.45μMフィルターを通して濾過し、そして上記のカラムに注ぐ。装填後、上記のカラムを平衡化バッファーにて洗浄し、次いで中間塩洗浄(約150mMのクエン酸ナトリウム)にて洗浄する。タンパク質は、約190mMのクエン酸ナトリウムを用いて溶出される。この溶出工程の間のA280のトレースが増加したら、プール工程を開始する。このプール工程は、約3カラム容量、またはA280のトレースが基線に戻るまで続ける。溶出後、上記のカラムを0.5NのNaOH溶液にて再生し、そしてさらなるサブロットの処理のために再平衡化するか、または保存のために0.1NのNaOHにて洗浄する。タンパク質の濃度およびカラムの回復を決定するために、上記のプールの吸光度を278nmにて測定する。
【0083】
(第1の濃縮/ダイアフィルトレーション)
上記のSPのプールを、6Nの酢酸を用いてpHを4.5〜5.0に調整し、12〜14g/Lに濃縮し、そして、10kDa膜を用い、20mMの酢酸、15mMのNaCl、3Mの尿素を含み、pHが4.25の、8容積のダイアフィルトレーションバッファーにて、ダイアフィルター処理(diafilter)する。ダイアフィルター処理された溶液を上記の系から排出し、そして工程の回収率を決定するために、濃度を278nmにて決定する(代表的には、10〜12g/Lの範囲)。次いで、上記のダイアフィルター処理されたプールを0.2μmのフィルターを通して、滅菌した袋の中へ濾過し、そして、Q−セファロースHPクロマトグラフィー工程を行うまで、少なくとも3ヶ月間、2〜8℃にて維持し得る。
【0084】
(Q−セファロースHPクロマトグラフィー)
濃縮し、ダイアフィルター処理したSPのプールを、最終濃度で約4Mの尿素、20mMのNaCl、20mMのトリスとなり、pHが7.6〜8.5となるように調整し、そして、Q−セファロースHPカラムに充填する。カラムを、4Mの尿素、20mMの塩化ナトリウム、20mMのトリスを含み、pHが8であるバッファーにて平衡化する。装填後、上記のカラムを平衡化バッファーにて洗浄し、次いで、50mMの塩化ナトリウムを含む平衡化バッファーにて洗浄する。TFPIを、バッファー内での50〜80mMの塩化ナトリウムの勾配10CVを用いて溶出する。TFPIを含む画分は、適切な画分に含まれていることを確認するための、SDS PAGEによる画分解析およびHPLC解析に基づいてプールし得る。
【0085】
TFPIまたはTFPIアナログの溶出の後、上記のカラムを150mMの塩化ナトリウムバッファーにて洗浄し、次いで、0.5NのNaOHおよび1MのNaClを含む溶液にて再生する。サブロットは、上記に記述したようにカラムを平衡化した後に、処理し得る。カラムは、0.1NのNaOH内で保存し得る。上記のプールの278nmでの吸光度を、タンパク質の濃度およびカラムの回復を決定するために用いる。
【0086】
(ブチルHICクロマトグラフィー)
上記のQ−セファロースHPクロマトグラフィー工程からのプールを、2.5MのNaCl、2Mの尿素、100mMのクエン酸ナトリウム、pH6にて調整し、そしてブチル650Mカラムに装填する。装填後、上記のカラムを、3CVの1.7MのNaCl、2Mの尿素、100mMのクエン酸ナトリウム、pH6にて洗浄する。生成物を、2Mの尿素および100mMのクエン酸ナトリウムを含み、pHが6であるバッファー中で、1.7MのNaCl〜0MのNaClの勾配10CVにて溶出する。上記のカラムは、「結合および溶出」方式で操作する。画分を収集し、プール中の適切な画分の封入を確認するために、HPLC解析にて解析する。溶出後、上記のカラムを、塩を含まないバッファーにて洗浄する。カラムの再生は、0.5NのNaOHを用いて行う。さらなるサブロットを処理する場合には、上記のカラムを再平衡化してもよく、または保存のために0.1NのNaOHにて洗浄してもよい。タンパク質の濃度およびカラムの回復を決定するために、上記のプールの吸光度を278nmにて測定する。
【0087】
(SP−セファロースHPクロマトグラフィー)
カルバミル化したTFPI化学種または誤ってフォールディングしたTFPI化学種を除くために、高速陽イオン交換クロマトグラフィー工程を、洗練させる工程として用いる。上記のブチルプールを、3.9Mの尿素を含みpH5.5のバッファーにて約5倍に希釈し、導電率を2〜8℃にて約15.6にする。調整したブチルプールを、20mMのクエン酸ナトリウム、3Mの尿素、pH5.5にて平衡化したSP−セファロースHPカラムに装填する。装填後、上記のカラムを、400mMのNaCl、3Mの尿素、20mMのクエン酸ナトリウムを含み、pH5.5であるバッファー1.5CVにて洗浄する。タンパク質を、3Mの尿素、20mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5内にて400〜650mMのNaClの勾配17CVを用いて溶出する。
【0088】
上記のUV吸光度の上昇が起きた場合、画分を収集する。カルバミル化した物質、および誤ってフォールディングした物質は、溶出ピークの上昇する部分にて溶出する。タンパク質の溶出後、上記のカラムを、3Mの尿素、20mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5中の1Mの塩化ナトリウムにて、次いで0.5MのNaOHを含む溶液にて再生する。次いで、上記のカラムを洗浄し、そして0.1NのNaOH内で保存する。上記の画分は、純度を決定するために、CEX HPLCおよびSDS PAGEにて解析する。
【0089】
主要なTFPIまたはTFPIアナログを含むピークとして、含まれる物質の95%を超える部分を含む画分を、SP−セファロースHPのプールを生成するために合わせ得る。好ましくは、この画分は、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を超えるTFPIまたはTFPIアナログを含む。この精製工程の収量を決定するために、さらなる製造過程のアッセイ(278nmにおける吸光度によるタンパク質濃度)が行われ得る。
【0090】
(第2の濃縮/ダイアフィルトレーション)
第2の(最後の)濃縮/ダイアフィルトレーション工程にはまた、10kDa膜も用いる。上記のSP−セファロースHPプールを約12g/Lタンパク質まで濃縮し、そして、300mMのL−アルギニン、および20mMのクエン酸ナトリウムを含み、pH5.5であるバッファー8容量にてダイアフィルター処理する。ダイアフィルター処理した溶液を回収し、この工程の収量を決定するために、278nmにてタンパク質濃度を測定する。代表的には、最終のタンパク質濃度は、上記のユニットを流した後、約10mg/mLである。
【0091】
薬物原料は0.2μmの滅菌したフィルターを通して濾過してよく、そして、好ましくは60℃未満で、最低24ヶ月間保存され得る。
【0092】
(薬物の処方)
上記に記述された方法に従って生産されたTFPIまたはTFPIアナログは、治療的な投与に適している。好ましい実施形態において、薬学的処方物は、20mMのクエン酸ナトリウム、300mMのL−アルギニン、および5mMのL−メチオニン、pH5.5中に、0.15mgのala−TFPI/mLを含む。第60/438,519号、第60/494,577号、第60/509,260号、第60/512,090号、第60/438,524号、第60/494,547号、第60/509,276号、および第60/512,092号に開示された処方物も参照のこと。
【0093】
本開示に引用される全ての特許、特許出願、および参考文献は、本明細書において明白に、その全体が参考として援用される。上記の開示は一般に、本発明を記述する。本開示における特定の実施例は、例証のみの目的で提供され、そして本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
(アミノ酸解析およびアミノ酸組成の決定)
それぞれのロットの組換えala−TFPI(rTFPI)薬物原料の3つの複製アリコートであって、それぞれが約600ピコモル(約20μg)のタンパク質を含むアリコートを、1%のフェノールを含む、不断に沸騰したHCl100μL内にて、減圧中で110℃にて22時間、加水分解した。還元、およびシステイン残基のカルボキシメチル化の後に得られた調製物のサンプルを、同様に処理した。遊離のアミノ酸をBeckman Model 6300アミノ酸解析装置を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって分離した。この装置は、タンパク質の加水分解産物をナトリウムバッファーと共に解析するための、製品のプログラムによって操作した。カラムのニンヒドリンによる誘導体化の後、上記のアミノ酸を、570nmにて一級アミンを、または440nmにてプロリンを定量化した。このシステムの較正は、Beckmanアミノ酸標準混合物の使用を通して達成された。全てのサンプルは、内部標準としてノルロイシン(Nle)を用いて、「棘波を描いた」。
【0095】
(イオン交換法によるノルバリンおよびホモシトルリンの定量)
Beckman 6300アミノ酸解析装置を用いて、ノルバリンおよびホモシトルリンを定量化した。このとき、バリンからの、ノルバリンおよびホモシトルリンの分離を容易にするような、ナトリウムバッファー溶出プロトコール改変を使用した。この分離プロトコールにおいて、2つのバッファーを用いた:6NのHClにてpH3.75に滴定したBeckmanバッファーNa−F、および、pHも濃度も変えないBeckmanバッファーNa−D。上記のプログラムは、Na−Fを最初の溶出液として使用し、カラム温度は25℃であった。流量を40分間維持し、その間にカラムの温度を、30分間のイソクラティクな溶出の後に75℃まで上昇させた。注入後40分において、もう15分間のイソクラティクな溶出のためにNa−Dを用いた。このプログラムは、ノルバリン、バリンおよびホモシトルリンの基線分離を生じ、そして塩基性アミノ酸の分離を維持した。
【0096】
タンパク質の加水分解を、上記に記述したように行った。このシステムの較正は、Beckmanアミノ酸標準混合物の使用を通して達成された。ノルバリンは、Sigmaから入手した重量測定標準に対して定量した。ホモシトルリンは、オハイオ州のICN Biomedicalsから購入し、そして重量測定標準をシステムの較正(下記を参照のこと)のために調製した。サンプルを上記のカラムに「過度に装填し」、そしてrTFPI内にて出現率の低いアミノ酸(タンパク質1モル当たり3モル)であるヒスチジンを、タンパク質中のロイシン(ノルバリン)およびリジン(ホモシトルリン)の含有量に基づいた取り込みレベルを算出するためのサンプル内に存在するrTFPIのモル数を定義するために、定量した。
【0097】
(RP−HPLC法によるホモシトルリンの定量)
ホモシトルリンは、Waters AccQ・Tagアミノ酸解析法を用いて定量した。タンパク質を、1%のフェノールを含む6NのHCl内にて、110℃で22〜24時間加水分解し;遊離のアミノ酸を、ホウ酸塩バッファーの存在下で、高いpHにて、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)にて誘導体化した。このように、一級アミンおよび二級アミンの双方を、安定な蛍光性の誘導体に変換した。ここで、これらの蛍光性の誘導体は、逆相(RP)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した。コントロール実験から、アミノ酸アナログの25%が、酸加水分解の間にリジンに変換されることが示される。この反応を説明するために、このデータに補正因子を適用した。ノルバリンの定量の場合のように、ヒスチジンを定量してサンプル内に存在するrTFPIのモル数を定義し、このタンパク質のリジン含有量に基づいて改変のレベルを算出した。
【0098】
(エドマン分解によるN末端アミノ酸配列解析)
たくさんのバルクのrTFPI生成物のN末端配列解析を、エドマン分解によって行った。この配列解析のそれぞれのサイクルの間に、タンパク質サンプルを、揮発性の塩基、カップリング試薬(フェニルイソチオシアネート)、および無水酸に曝露して、N末端アミノ酸残基のフェニルチオヒダントイン(PTH)誘導体を放出し、このことにより、N末端において1つ残基が少ないタンパク質を産生している。遊離のPTH−アミノ酸誘導体を、逆相HPLCによって確認した。
【0099】
配列解析は、Perkin−Elmer Biosystems(PEB) Procise 494タンパク質配列決定装置によって達成した。1:10に希釈し、約50ピコモルのタンパク質を含む、それぞれのロットのrTFPIの1.5−μLアリコートを水に希釈し、そしてポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜上に直接装填した。賦形剤を除くために、ProSorbシステム(PEB)を用いた。プログラム、プロトコール、および試薬は、器具製造業者によって供給された。
【0100】
(スルフヒドリル基の還元およびカルボキシメチル化(RCM))
サンプルを、o−リングキャップを有する1.5mLの微量遠心チューブに移し、そしてSavant Speed−Vac濃縮装置での減圧遠心分離によって乾燥した。それぞれのサンプルを、0.2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、6.0Mのグアニジン塩酸塩、0.003Mのエチレンジアミン四酢酸を含み、pHが8.5である、還元およびカルボキシメチル化(RCM)バッファー250μLに溶解し、そして、ジスルフィド結合を還元するために、1.0MのDTTを15μL加えた。このチューブにアルゴンガスを流し、そして酸素を排除するためにきつく蓋をした。このサンプルを、Thermomixer内にて60℃で1時間インキュベートした。新鮮なヨウ化酢酸ナトリウム(IAA)溶液を、上記のRCMバッファーの4倍希釈のアリコート内にて調製し(0.25g/mL、1.2M)、そしてIAA溶液26μLを、それぞれのrTFPIサンプルに加えた。このチューブにアルゴンガスを流し、そして酸素を排除するためにきつく蓋をした。カルボキシメチル化反応を、室温にて、遮光して、30分間行った。反応混合液をNAP−5カラムにて脱塩した。それぞれの反応の最終生成物のアリコートを、アミノ酸解析によって、タンパク質濃度を定量した。
【0101】
(タンパク質の脱塩)
いくつかの場合において、タンパク質を、解析または酵素的消化に先立って脱塩する。Vydac C4ガードカートリッジ(4.6×20mm;粒子サイズは5ミクロン)を、賦形剤(例えば、尿素、アルギニン、またはグアニジン塩酸塩)からタンパク質を分離するために用い、この賦形剤は多くの種類の解析を妨害し得る。1〜2ミリグラムのタンパク質のサンプルを、水中に0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)(バッファーA)内で平衡化した上記のカラムに注入した。タンパク質を、上記のカートリッジから、流速毎分1.0mLにて、バッファーB(水中に80%のアセトニトリル:0.1%のTFA)の以下の勾配(終末点)にて溶出した:0分=0%B;5分=0%B;15分=90%B;18分=90%B;20分=0%B。上記の溶離液を、波長220nmで、2.0吸光度単位フルスケール(AUFS)の範囲にて、モニターした。全ての賦形剤は、溶出の最初の5分間に溶出した。rTFPIのピークを手動で収集し、そして揮発性溶媒を減圧遠心分離にて除いた。
【0102】
(エンドプロテイナーゼ消化;非還元化ペプチド断片の生成)
10μLの、ロットMAECM014由来のrTFPIを、0.8μGのAsp−N(Boehringer Mannheim)により、150μLの100mMのTris−HCl、pH6.8中で消化した。10μLのrTFPIを、1.8mMの酢酸亜鉛により、150μLの100mMのTris−HCl、pH6.8中で消化した。上記のAsp−N消化は、37℃にて18時間行った。150μLの8Mのグアニジン塩酸塩溶液の添加によって消化を終結させ、そしてサンプルを、解析前に、−80℃にて保存した。
【0103】
(トリプシン消化;RCMペプチド断片の生成)
RCM後の80μLずつのrTFPIのアリコートを、トリプシン消化のために、1.5mL微小遠心チューブに移した。Promegaブタトリプシン(20μg)を0.05M酢酸(40μL)に溶解し、そしてこのトリプシン溶液(0.5mg/mL)1.6μLを、それぞれのrTFPIサンプルに加えた。最終のrTFPI濃度は、35mMトリス(pH8)内にて0.4mg/mLであり、ここでトリプシン/TFPIの割合は1/50(w/w)であった。上記のトリプシン消化を、37℃にて18時間行った。サンプルの凍結により消化を停止させ、解析前に、−80℃にて保存した。
【0104】
(非還元的Asp−N +42/43DaペプチドのGlu−Cエンドプロテイナーゼによる予備消化)
HPLCにより単離したペプチドを、減圧遠心分離にて乾燥した。それぞれのサンプルを、pH4の30mM酢酸アンモニウム溶液50μLに再溶解した。それぞれのペプチドサンプルに、約0.5μgのエンドプロテイナーゼGlu−Cを加えた。この消化は、室温で一晩にて進めた。pH8の1MのTris−HClバッファーの添加にて、pHを8に調整し;次いで、LC−MSによる解析に先立って、1MのDTT0.5μLを60℃にて30分間用いることで、還元した。
【0105】
(還元条件下でのGlu−CペプチドのArg−Cエンドプロテイナーゼによる予備消化)
HPLCにより単離したペプチドを、減圧遠心分離にて乾燥した。消化バッファーは、150mMのTris−HClおよび15mMの塩化カルシウムで、pHは7.5であった。酵素活性化バッファーは、消化の直前に、キット(Boehringer Mannheim)にて供給される凍結乾燥された材料に300μLの水を加えて作った。エンドプロテイナーゼArg−C酵素溶液は、5μgの凍結乾燥された酵素を250μLの水の中で再構成することで調製した。それぞれのサンプルを、3μLの活性化バッファーおよび1μLのArg−C酵素溶液に加えて、7μLの消化バッファーに、再溶解した。この消化は、MALDI−TOF−MSによる解析に先立って、37℃にて2時間で進めた。
【0106】
(高速勾配LC−MS;インタクトなrTFPIの分子量の測定)
インタクトなrTFPIの分子量の測定を、Perkin−Elmer Sciex API 100質量分析計(LC−MS)とインターフェースで接続されたMichrom Ultrafast Microprotein Analyzer (UMA) HPLCシステムを用いて行った。サンプル(それぞれ約2μg)を、逆相(RP)カラム(Zorbax Cyano、1mm×150mm)に注入した。溶媒Aは、水および0.1%のTFA内に5%のアセトニトリルであり、溶媒Bは、0.09%のTFAを含むアセトニトリルであった。勾配溶出は、流速50μL/分にて、10分間に5%B〜95%Bにて行った。流出液を、フローセルの後で10:1の割合にて分配し、約5μL/分でAPI 100質量分析計のエレクトロスプレーイオン源に指向させた。上記のイオンスプレーの電圧を4.5kVに設定し、そして開口部の電圧を50ボルトに設定した。この装置は、製造業者によって供給されるポリプロピレングリコール(PPG)混合物から発生するイオンによって、較正した。
【0107】
エレクトロスプレーイオン化の間、ペプチドまたはタンパク質を、低いpHにて質量分析計のイオン源に導入する。タンパク質およびペプチド中の塩基性部分(アルギニン残基、リジン残基およびヒスチジン残基の側鎖中の窒素原子、およびN末端残基のα−アミノ基)を、種々の程度にプロトン化し、このことは結果として複数の荷電状態の分子イオン(例えば、[M+H]+および[M+2H]2+)を生じ、この荷電状態は、プロトン化のために接触しやすい部位の数に依存する。この検出器は、ソフトウェアのアルゴリズムによって分子量を計算し得る、分子イオンの電荷に対する質量の比(m/z)を記録する。この方法における上記の測定の質量の精度は、rTFPIの分子量の0.01%(±3Da)であった。
【0108】
(低速勾配LC−MS;個々のrTFPI成分のインタクトな分子量の測定)
5μgのサンプルを、逆相(RP)カラム(Zorbax Cyano、1mm×150mm)にて解析した。溶媒Aは水および0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)中の5%のアセトニトリルであって、溶媒Bは0.09%のTFAを含むアセトニトリルであった。勾配溶出は、流速50μL/分にて、30分間に27%B〜32%Bにて行った。エレクトロスプレーイオン化質量分析計の操作は、上記に記したとおりに行った。
【0109】
(非還元的ペプチド消化物のLC−MS;ペプチドの質量測定)
上記のAsp−N消化物の10μLのアリコートを、Perkin−Elmer Sciex API 100質量分析計とインターフェースで接続されたMichrom Ultrafast Microprotein Analyzer (UMA) HPLCシステムを用いたLC−MS解析に供した。サンプルを、Vydac C18、Reliasisl C18、またはZorbax Cyanoカラム(1mm×150mm、粒子サイズ5μm、および細孔サイズ300オングストローム)を用いたLC−MSのための逆相(RP)カラムに注入した。溶媒Aは水および0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)内に5%のアセトニトリルで、そして溶媒Bは0.09%のTFAを含むアセトニトリルであった。勾配溶出は、流速50μL/分にて、25分間に5〜25%の溶媒B、および30分間に25%〜36%のBにて行った。トリプシン消化物のためには、勾配溶出は、80分間に5%〜45%のBにて行った。流出液を、フローセルの後で10:1の割合で分配し、約5μL/分でAPI 100質量分析計のエレクトロスプレーイオン源に指向させた。イオンスプレー電圧を4.5kVに設定し、そして開口部の電圧を50ボルトに設定した。この装置は、製造業者によって供給されるポリプロピレングリコール(PPG)混合物から発生するイオンによって、較正した。LC−MSによる分子量測定の質量の精度は、rTFPIペプチドの質量の範囲内で、±1Daであった。
【0110】
(MALDI−TOF MS;ペプチドの正確な質量計測)
MALDI−TOF質量スペクトルは、窒素レーザー(337ナノメートル、4ナノ秒のパルス)および、遅延引き出し(delayed−extraction)イオン源を備えた、Bruker Reflex装置上にて得られた。解析のためのサンプルは、1μLのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸の飽和溶液に1μLを加えることで調製した。混合物をボルテックスし、そして1μLをサンプル標的に装填した。風乾したサンプル/マトリックス混合物を、真空ロックを用いて、質量分析計に導入した。加速電圧に20kV、リフレクトロン(reflectron)電圧に21.5kVを用いて、スペクトルを記録した。遅延性イオンの引き出しのために、サンプルプローブと抽出レンズとの間に、6kVの電位差を適用した。外部較正標準として公知のペプチドの混合物を用いて、スペクトルを較正した。遅延引き出しMALDI−TOF MSによる分子量測定の質量の精度は、外部較正を用いて±0.5Daであった。いくつかの場合において、サンプル中の公知のペプチドを用いて、スペクトルを較正した。この場合、質量の精度は、ペプチドの質量が2,000Da以下(約10ppm)の場合に、±0.02Daであった。
【0111】
(ナノES MSおよびMS/MS;ペプチド改変の同定)
特注のイオン源(Wilm and Mann、EMBL、Heidelberg、Germany)および、最新の高圧衝突セルを備えた、Perkin Elmer Sciex API−III三連四重極装置上にて、実験を行った。それぞれのサンプルの約1μLを、金で覆ったガラス毛細管針に装填し、そして立体顕微鏡を用いて、質量分析計源内に位置させた。質量スペクトルを、解析するペプチドに適したm/zの範囲にわたって、8秒/走査にて、0.1Daのステップサイズ(step size)を用いて記録した。この装置は、PPG混合物から発生するイオンを用いて較正し、このPPG混合物は製造者から供給された。
【0112】
低エネルギー衝突誘起解離直列質量スペクトル(CID−MS/MS)を、陽イオン型にて取得した。サンプルを、上記のように、MSイオン源に導入した。二次四重極を、50〜親イオンのm/zの範囲のm/zにわたって、5〜10秒/走査にて、1Daのステップサイズを用いて走査した。開口部の電位を40ボルトに設定し、そして衝突エネルギーを約60電子ボルトとした。直列質量分析において、目的の分子イオンは、ペプチドの混合物の中で、選択的に衝突セルに導入され得る。衝突セル内での不活性ガスによる衝撃は、結果として、そのペプチドのアミド結合における断片化をもたらす。衝突セル内で生成された上記の断片を、二次質量分析計にて解析する。直列の質量スペクトルは、任意の共有結合性の改変の位置を含むアミノ酸配列情報を提供する。
【0113】
(質量の割り当て;モノアイソトピック(Monosiotopic)質量)
遅延イオン引き出しMALDI−TOF MSによるペプチドの解析において、純粋なペプチドの質量スペクトルは、高い分解能にて多くのピークを有し、それぞれのピークは、特定の同位元素存在量を有するペプチドに対応する。化合物のモノアイソトピック質量は、その化合物内の元素の最も軽い安定同位体の質量(例えば、炭素は12.0000Da;98.90%の存在量)の和である。天然の存在量が1.10%である、質量が13.0034Daの炭素の安定同位体が存在するため、100以上の炭素原子を有する任意の有機化合物は、1つ以上の炭素−13異性体を有する。ペプチドの質量スペクトルの主要なイオンは、1つの水素イオンの単純な捕捉に起因する;較正ソフトウェアの使用により、炭素−12異性体への割り当てを利用することで、上記のスペクトルの構成成分のモノアイソトピック質量が得られる。同位体ピークがその異性体のレベルで分離し得た場合(例えば、より低い質量値でか、または高分解能の装置を用いることを通して)、モノアイソトピック分子質量がMS解析によって得られる。
【0114】
(質量の割り当て;平均値)
ペプチドまたはタンパク質の平均分子量は、その分子のそれぞれの元素の化学的平均質量の和である。元素の平均化学的質量は、すべての安定同位体の質量の和(例えば、炭素は12.0111Da)であり、相対的存在量として重さを計られる。モノアイソトピックピークが分離し得なかった場合(例えば、高い質量値で)、平均分子量がMS解析によって得られる。
【0115】
(実施例2)
(標準物質の薬物物質放出試験)
CEX HPLCおよびSEC HPLCにて評価した、方法Bに従って調製したrTFPIの純度および、方法Cに従って調製したrTFPIの純度の比較を、それぞれ図2および図3に示す。クーマシー染色または銀染色を用いたSDS PAGE解析を、それぞれ図4および図5に示す。これらのデータは、これらの放出アッセイによる、方法Bの薬物物質と方法Cの薬物物質との間の比較性を示す。CN HPLCによる同じ物質の比較を、図11に示す。
【0116】
(主要な成分の物理的な性質決定)
(アミノ酸組成)
方法Cに従って調製したrTFPIについて決定されたアミノ酸組成を表4に示す。アミノ酸の回収は、1分子ごとの残基に標準化した。理論的な値は、rTFPI遺伝子のヌクレオチド配列から予測した。アスパラギン酸残基およびアスパラギン残基はアスパラギン酸(Asx)として回収した;グルタミン酸残基およびグルタミン残基はグルタミン酸(Glx−全てのアミド連結は酸処理により加水分解される)として回収した。システインの値は、RCMタンパク質調製物の中のカルボキシメチル−システインの定量化によって決定した。トリプトファンは、標準の加水分解条件下では破壊されるため、決定しなかった(ND)。イソロイシンの回収は、この残基により形成される結合が、22〜24時間では部分的にしか加水分解されないため、低かった。システインの値は、上記の方法の誤差範囲内で、ヨード酢酸試薬との完全な反応性を示す。上記の2つの参照ロットのタンパク質のアミノ酸組成は、このタンパク質の予測された配列と一致する。
【0117】
【表4】
サンプルは還元し、およびカルボキシメチル化した。
結果は、タンパク質1モル当たりのアミノ酸残基のモル数として表す。
Trpは全く定量しない。
Asx=Asp+Asn;Glx=Glu+Gln
(N末端)
エドマン分解によるN末端配列解析の結果を表5に示す。示された収量は、それぞれの分解サイクルにおける、対応するPTH−アミノ酸誘導体の回収の総量である。同一性は、それぞれのサイクルにおける相対的な回収から推論した:繰り返さない残基の場合における、最大の増加;繰り返す残基の場合における、持続して高い収量(他の誘導体の大きな増加は無しで)。サイクル回収における相違は、サンプルの沈着の間の、PVDF膜上の上記の2つのロットに由来するタンパク質の回収の相違を反映する。それぞれのロットから同じ結果を得た:rTFPI遺伝子のヌクレオチド配列から予測されたものと正確に一致した、主要素をなす15残基の配列。
【0118】
【表5】
*ピコモル単位のPTH−アミノ酸としてのサイクル収量。
【0119】
(分子量)
LC−MSによるインタクトなrTFPIの解析から、それぞれのロットの主要な成分が、上記遺伝子の配列から予測される分子量(9つのジスルフィド結合を有し、理論的分子量が34,004Da)を有することが示された。このことは、上記の組換え細胞株によってタンパク質の全体が発現されることを示す。図6は、方法Bに従って調製したrTFPIロット(MAECM014)の逆重畳積分エレクトロスプレー質量スペクトル、および方法Cに従って調製したrTFPIロット(PB5806)の逆重畳積分エレクトロスプレー質量スペクトルを示す。少数のRTFPIの成分もまた観察され、そしてこれらの構造の更なる詳細は他で示す。表6には、LC−MS解析の間に観察された主要なrTFPI分子イオンの質量を収載する。
【0120】
【表6】
1質量の精度は、約±3Da。
【0121】
(一次構造)
rTFPIの全体の配列を、ロットMAECM014およびロットPB5806についての、非還元的(天然の)タンパク質のAsp−Nエンドプロテイナーゼペプチド地図の解析、ならびにLC−MSによるRCMタンパク質のトリプシンによって生じたペプチド地図の解析の併用によって、確かめた。LC−MSを用いると、従来のペプチド地図および、クロマトグラムにおけるペプチドの分子量がともに、単一の実験で得られる。Asp−Nペプチド地図およびトリプシンによって生じたペプチド地図は、一次構造を確かめるためのタンパク質配列の重複した領域に関する情報を提供した。図7は、LC−MS解析の間に記録した、ロットMAECM014およびロットPB5806の非還元的rTFPIについてのAsp−NペプチドのUVクロマトグラムを示す。表7には、測定された分子イオンのm/zと、Asp−Nペプチドについて理論的に予測されたm/z値との比較から、Asp−Nペプチド地図内で同定されたペプチドを収載する。図8は、LC−MS解析の間に記録した、ロットMAECM014およびロットPB5806のRCM rTFPIについてのトリプシンによって生じたペプチドのUVクロマトグラムを示す。表8には、測定された分子イオンのm/zと、rTFPIのトリプシンによって生じたペプチドについて理論的に予測されたm/z値との比較から、トリプシンによって生じたペプチド地図内で同定されたペプチドを収載する。Asp−Nペプチド地図およびトリプシンによって生じたペプチド地図からのLC−MS結果を合わせると、そのタンパク質配列の100%(277残基中277)の説明となり、そして双方のロットにおけるタンパク質の一次構造が確認される。
【0122】
上記のペプチド地図作製の結果は、方法Cに従って生成したrTFPIの一次構造だけでなく、カルバミル化されたrTFPI不純物の除去も確認する。方法Bの方法が用いられた場合に起きる、rTFPIへの+42Daの改変が、第3のクニッツドメイン(206〜258残基)に結合したタンパク質の領域に存在すると同定した。方法Cに従って調製したrTFPIのAsp N消化物およびトリプシンにより生ずる消化物の解析から、このドメインに対応するペプチドが、改変されていないrTFPIの理論的な質量に一致した質量を有することが示される。このことは、上記の修正された方法によって生成されたrTFPIから、カルバミル化された化学種が精製されたことを示す。さらに、この解析の間に、検出可能なレベルのホモシトルリンは見つからず、このことは、上記のrTFPIサンプル内からカルバミル化されたリジン残基がないことと矛盾しない。
【0123】
【表7】
*1500Daより少ないモノアイソトピック質量、1500Daを超える平均分子量。
HPLCのピーク4およびピーク7はそれぞれ、クニッツ領域内のジスルフィド結合で一緒にされた2つのペプチドを含んだ。
【0124】
【表8】
*1500Daより少ないモノアイソトピック質量;1500Daを超える平均分子量。
【0125】
(二次/三次構造)
rTFPIの二次/三次構造を、ロットMAECM014およびロットPB5806のAsp−Nエンドプロテイナーゼペプチド地図の解析から確認した。ここで、インタクトなクニッツドメインが認められた(図11および表8)。図9はrTFPI構造を図示し、これは3つのクニッツドメインおよびAsp−N切断部位を示す。非変性条件下にて、上記のクニッツドメイン間のAsp−N切断に起因して、7つのペプチドが認められる。これらのペプチドのうちの2つはまた、内部的にも切断されるが、結果として生じるペプチドは、ジスルフィド結合によって一緒にされる(図9)。上記のデータは、天然のタンパク質の二次/三次構造について予測されたとおり、クニッツドメイン内のジスルフィド結合の存在および、クニッツドメイン間のジスルフィド結合の非存在と矛盾しない。
【0126】
(実施例3)
(微量な成分の同定および性質決定)
(CN HPLCによる純度の評価)
方法Bに従って調製したrTFPIのCN HPLCクロマトグラム(A)と、方法Cに従って調製したrTFPIのCN HPLCクロマトグラム(B)の比較を図10に示す。このアッセイによって分離された全てのピークがrTFPIを含む。ES−MSを用いたピークの解析から、方法Bの物質は、理論的な質量を有するrTFPIを約75%、16原子質量単位だけ増加した質量を有しかつ酸化したメチオニン残基を含むと考えられるrTFPI(ピーク1)を5〜10%、および、42原子質量単位または43原子質量単位だけ増加した質量を有しかつアセチル化したリジン残基を含むと考えられるrTFPI(ピーク3)を約15%含む。方法Cに従って調製された物質は、約90%のrTFPIの主要なピーク、および酸化したメチオニン残基を含む5〜10%のrTFPI(ピーク1)を含む。前の方法とは異なり、本発明の方法では、感知できるほどのレベルのアセチル化したrTFPIを生成しないようである。本発明の方法に対する参照標準(ピーク2、図10)は小さな肩を示す。この肩は、rTFPIの主要なピークのすぐ前に溶出し、そして、以下の節にて記述する、ロイシンに対するノルバリンでの置換を含むrTFPIとして同定された。
【0127】
(ノルバリンの誤取り込みの同定)
ロイシンに対するノルバリンでの置換は、E.coliにて発現された異種タンパク質中で同定され、そしてtRNAレベルでの誤取り込みを通して生じると考えられる(Apostolら、J.Biol.Chem.272、28980−88、1997)。rTFPIは15残基のロイシン残基を含み、そしてロイシンの代わりのノルバリンの取り込みは、90位、100位、181位および191位に位置する4残基に同定された。方法Bに従って調製されたrTFPIロット(MAECM014)および方法Cに従って調製されたrTFPIロット(PB5806)の特定の部位における誤取り込みのレベルは、LC−MSの間に記録される、通常のRCM rTFPIのトリプシンにより生じるペプチドのUVピーク面積と、相当するノルバリンを含むトリプシンにより生じるペプチドのUVピーク面積との比較により推定した。ノルバリンの総量は、アミノ酸解析により定量した。
【0128】
(収集したCN HPLCの肩中のノルバリンの同定)
CN HPLCアッセイでの上記の肩中のrTFPIの平均分子量は、LC−MSによって31,989Daと同定された。この値は、rTFPIについて予測された分子量(32,004Da)よりも、15Da±3Daだけ低い。この改変の性質を同定するために、ピーク2(図10)のタンパク質を還元およびカルボキシメチル化し、そして次いで、トリプシンで消化した。このトリプシンにより生じたペプチドをLC−MSにて解析し、そして、MALDI−TOF MSによる正確な質量の測定のために収集した。収集した6つの画分の内4つは、予測された分子量よりも14Da低い、モノアイソトピック分子量を示した(表9)。このペプチドを、ナノES MS/MSおよびエドマン分解にて配列決定した。上記の改変は、90位、100位、181位および191位における予測されるロイシン残基でのノルバリンの取り込みと同定され、そして、エドマン配列解析の間のPTH−アミノ酸の保持時間によって確認された。
【0129】
【表9】
ロットPB6096のCN HPLCピーク2由来の、トリプシンにより生じたペプチドを、LC−MSにより単離した。
ノルバリンはnVと略し、そして上記のペプチド配列中にて太字体で示す。
nV100、nV90、nV181およびnV191はそれぞれ、100位、90位、181位および191位における誤取り込みを示す。
【0130】
(LC−MSによる、特定部位におけるノルバリン誤取り込みの定量)
上記のRP HPLCの肩が、ノルバリンを誤取り込みしたrTFPIの画分を含むに過ぎない可能性があったことから、方法Cに従って調製した分画していない参照物質を、ノルバリン含有ペプチドの定量について解析した。ロットPB5806を還元し、アルキル化し、そして次いでトリプシンで消化した。ノルバリン含有ペプチドの定量のために、4反復のLC−MS解析を行った。分子量の同定のために完全走査方式を用いて、そしてノルバリン含有ペプチドの検出感度の上昇のために選択イオンモニタリング(SIM)を用いて、データを取得した。
【0131】
図12Aでは、LC−MSの間の30〜60分間に記録したUVクロマトグラムを示す。約51分に溶出するピークは、平均分子量2585.2Daの、トリプシンにより生じたペプチドT(88〜108)として同定された。ペプチドT(88〜108)のSIMクロマトグラムを図12Bに示す。UV検出器によるペプチドの検出と、LC−MSの間の質量分析計での検出との間にはわずかな遅れがあり、それは、これらの2つの検出器の間を溶出液が移動するためにかかる時間に起因することに注意されたい。約48分および49分に溶出する小さなピークは、それぞれ、100位の残基にてノルバリンの誤取り込みが起きたペプチドT(88〜108)(ペプチドnV100)、および90位の残基にてノルバリンの誤取り込みが起きたペプチドT(88〜108)(ペプチドnV90)として同定された(平均分子量2571.2Da;理論的質量2571.2Da)。上記のノルバリンの取り込み部位は、エドマン分解、およびナノES MS/MS解析によって上記で同定されたrTFPIロットPB6096中のRP HPLCの肩に由来するペプチドとの比較に基づいた。
【0132】
図12CではペプチドnV100およびペプチドnV90のSIMクロマトグラムを示し、ここではこれらの2つのペプチドが明らかに観察される。ペプチドT(88〜108)、ペプチドnV100およびペプチドnV90の割合は、上記のUVクロマトグラム(図12A)でのピーク面積、および4つの別々の解析から得られる値から算出した。178残基〜196残基を含むトリプシンにより生じたペプチド内でのノルバリン置換の度合いを定量するためにも、同様の研究方法を用いた。
【0133】
表10では、4反復のLC−MS解析における、90位、100位、181位および191位の残基におけるノルバリンの誤取り込みの定量を示す。配列番号34〜39に示されるペプチドについて、215nmにおけるピーク面積を積分した。ペプチド1、ペプチド2およびペプチド3についてピーク面積を総計し、そしてその総計に対するそれぞれのピークの割合を計算して、そしてこの表に示す。同様のことをペプチド4、ペプチド5およびペプチド6について行った。ノルバリンはnVと略し、そしてペプチド配列中にて太字体で示す。誤取り込みの相対量を、ノルバリン含有ペプチドのUVピーク面積と、相当する非置換ペプチドとの比較から算出した。
【0134】
こうしたいろいろな要素を含む結果は、ノルバリン置換が、参照ロットPB5806(方法Cに従って調製された)において、90位、100位、181位および191位の残基において起きたことを示す。これらの部位における取り込みのレベルは、それぞれ3.3%、4.3%、2.8%および1.4%である。このことは、PB5806における誤取り込みのモルのレベルが、少なくとも11.8%であることと一致する。対照的に、方法Bに従って調製した参照ロット(MAECM014)におけるノルバリンの誤取り込みは、おそらく100位の残基において、極小のレベルでしか検出されず、そして0.2%未満であると推定された。
【0135】
【表10】
(アミノ酸解析による総ノルバリン誤取り込みの定量)
表11では、イオン交換アミノ酸解析による、rTFPI調製物中のノルバリン定量の結果の概略を示す。この結果は、ノルバリンとして誤取り込みされたロイシンのモルベースでの百分率として表される。この解析方法では、ロットMAECM014(方法Bの参照)のrTFPI内には、検出可能な量のノルバリンはない。しかし、方法Cの参照(PB5806)および、上記の新しい方法によって調製した他のロットは、ロイシン1モル当たり、平均で2.64%のノルバリンを含む。ロイシンに代わるノルバリンの誤取り込みがランダムに起き、そしてrTFPI分子1つごとに平均で1つのノルバリンがある場合、このことは、40%以下のrTFPI分子が1つのノルバリン置換を有することを示す。これらの結果は、上記のLC−MSのデータから生成された相対量の予測を確かなものとする。
【0136】
【表11】
(インビトロでの活性に対するノルバリン置換の影響)
表12では、方法Bに従って調製した物質に対するインビトロでのPT生物活性、および方法Cに従って調製した物質に対するインビトロでのPT生物活性の概略を示す。ノルバリンの存在は、rTFPIのインビトロでの生物学的活性に不利に影響しない。たとえ、CN HPLCの純度が実質的に上昇したとしても、PT活性は定常のままである。このことは、この異質性が、活性に極小の影響しか有しないことを示す。
【0137】
【表12】
ND、決定せず。PT活性は、コントロールに対する%として表す;放出規格は50〜150%。
【0138】
(実施例4)
(陽イオン交換HPLCによる純度評価における微量な構成要素)
図13では、SP−セファロースHPクロマトグラフィーを行う前および後のrTFPIの比較を示す。このSP−セファロースHPクロマトグラフィー工程の後で、主要なピークの純度は89%(装填)から100%(プール)に増加する。
【0139】
(実施例5)
(インタクトな分画していないrTFPI薬物物質の解析)
LC−MSによるインタクトなrTFPIの解析を、方法Cに従って調製した物質の同一性を実証するために行った。主要な構成成分の観察された質量は32,007Daである。このことは、rTFPIの理論的な質量が32,004Daであることと一致する。これらの結果は、組換え細胞株によって完全なタンパク質が発現されていることを示す。
【0140】
(低速勾配LC−MS)
分画していない、rTFPIロットMAECM014(方法Bに従って調製)、ならびにrTFPIロットPB5806、PB6096、およびPB6770(方法Cに従って調製)を、早期に溶出するピークおよび後期に溶出するピークの割り当てを確かめるために、低速勾配LC−MSにて解析した。
【0141】
図14ではLC−MSの間に記録したUVクロマトグラムを示し、ここで、早期に溶出するピークは全てのrTFPIロットにおいて観察されるが、後期に溶出するピークはMAECM014参照ロットでのみ観察される。このクロマトグラムは純度評価アッセイにより観察されたクロマトグラムと類似しているが、LC−MSによってピークがより少なくしか分解されない点で異なり、このことは、この解析において内径の小さな(microbore)カラムの方法を用いることに起因する。全てのサンプルにおける早期に溶出するピークの逆重畳積分質量スペクトルから、全てのスペクトルにおいて観察される主要な分子イオンは、メチオニンスルホキシドを含むrTFPIと一致することが決定された。
【0142】
方法Cに従って調製した物質はまた、通常のTFPIよりも28Da低い分子量を有する分子イオンも含む。このことは、TFPI分子が、予測されるロイシン残基において、一分子あたり2つの部位のノルバリンの取り込みを含むことと一致する。ロットMAECM014において後期に溶出するピークの逆重畳積分質量スペクトルから、1つの構成成分が+42/43Daの化学種であることを含むことが決定された。新たなロットのUVクロマトグラムの同一の領域に由来する逆重畳積分質量スペクトルは、+42/43Daの構成成分の量が顕著に少ないことを示す。この知見は、アセチル化したrTFPIが、方法Bに従って調製した参照物質には同定されるが、方法Cに従って調製した物質には同定されないことと一致する。
【0143】
(高速勾配LC−MS)
方法Bの参照の質量スペクトルは、通常のrTFPIよりも+42/43Da高い分子量を有する微量の成分を示す(約15%の相対存在量)。Asp−NおよびArg−Cによる連続的な消化によってrTFPIロットMAECM014から単離された2つの微量なペプチドを、MALDI−TOF MSによる正確な質量測定および、ナノES MS/MSによる配列解析に基づき、アセチル化したペプチドとして同定した(
【0144】
【化1】
、配列番号40、および
【0145】
【化2】
、配列番号41)。この単離したペプチドでは、+42Daの(アセチル化した)改変を有するインタクトなrTFPIロットMAECM014における、+42/43Daの化学種の割合が同定されていない。しかし、CEX−HPLCおよび、上記の低速勾配LC−MSからのデータと総合すると、CN HPLCによって方法B参照ロットにおいて検出される+42/43Daの微小な成分は、主にアセチル化したrTFPIであるようである。
【0146】
(実施例6)
(E.coliタンパク質の除去)
方法Bに従って生産したrTFPI調製物中のE.coliタンパク質の相対量と、方法Cに従って生産したrTFPI調製物中のE.coliタンパク質の相対量とを比較するために、後者の方法によるサンプルを、E.coliタンパク質に対して産生した抗体を用いた抗体ELISAアッセイを用いて解析した。
【0147】
表13の結果は、この精製方法が、推定のE.coli不純物をこのアッセイにおける検出レベル未満にまで除去するのに効果的であることを示す。
【0148】
【表13】
(実施例7)
(ノルロイシン置換)
細菌性タンパク質において、メチオニンのアナログであるノルロイシンが、メチオニンの代わりになり得ることはよく立証されている。組換えタンパク質を過剰生産するようにストレスをかけられているE.coli細胞において、この置換は特に優勢であり得る。組換えala−TFPIは5つのメチオニン残基を有し、カルボキシ末端に1つを含む。本明細書にて記述される方法では、アミノ酸置換の量を増やさずに発現レベルを向上させる。
【0149】
3ロットのrTFPIを方法Cに従って調製し、そしてノルロイシン置換について試験した。結果を表14に示す。ここで、ノルロイシンは総メチオニンの百分率として表す。
【0150】
【表14】
これらの物質中のノルロイシンのレベルは、方法Bに従って調製した物質中の存在レベルよりも僅かに低かった。定量の限界は1%であり;このように、双方のレベルとも、このアッセイによる正確な定量のレベルを下回っている。
【0151】
(実施例8)
(脱アミド化の測定)
(較正用標準調製物)S−アデノシル−ホモシステイン(SAH)標準物質を、Promega SAH Stock Standard(15.1μM)を、Milli−Q水を用いて、0.625μM、1.25μM、2.50μM、および3.75μMの濃度まで希釈することで、HPLC解析のために調製した。サンプルは、HPLCによる解析以前は、2〜8℃にて保った。
【0152】
(rTFPIサンプルの調製)サンプルの調製に先立って、rTFPIのバルクの薬物物質サンプル(10.0mg/ml)を、rTFPI処方バッファーを用いて0.15mg/mlまで希釈した。次いで、それぞれのrTFPIサンプルを、30μlの5×Promega Reaction Buffer、3μlのS−アデノシル−L−メチオニン、および30μlのPIMTを含む反応混合物に、87μlのTFPIを加えることで、インキュベートのために調製した。短時間のボルテックスの後、サンプルを、30℃に維持したウォーターバスにて30分間インキュベートした。インキュベート後、それぞれのサンプルに30μlのPromega Stop Solution NRを加え、続いて短時間ボルテックスした。サンプルは、HPLCによる解析以前は、2〜8℃に保った。
【0153】
(RP−HPLC)SAHの測定は、CarlsonおよびRiggin2によって開発された、改変されたRP−HPLC方法を用いて行った。サンプルの解析は、YMC ODS−AQ 5μm、120A、4.6×250mmカラム(Waters P/N AQ12S052546WT)を装着したWaters Alliance HPLCシステムを用いて行った。溶離液Aは、25mMのKH2PO4、10mMの1−オクタンスルホン酸、および10%のメタノールからなり、一方、溶離液Bは100%メタノールとした。上記のシステムを10%の溶離液Bにて、流速1.0ml/分で平衡化した。上記のカラムを周囲温度に維持し、260nmでモニターして検出した。サンプルの注入後(SAH標準物質について40μl、およびTFPIサンプルについて100μl)、15分間にわたる溶離液Bの10〜60%の勾配、続いて90%の溶離液Bによる3分間のカラム洗浄によって、分離を達成した。次いで上記のカラムを、次の注入に先立って、9分間の最初の条件(10%の溶離液B)にて再平衡化した。
【0154】
(データ解析)SAH標準物質セットについて較正曲線を生成した後、それぞれのTFPIサンプルについて、pmol単位でSAHのレベルを決定した。次いで、それぞれのTFPIサンプルについての脱アミド化のレベルを、以下の式を用いて決定した:
脱アミド化(%)=SAH(pmol)/(注入したTFPI(pmol))×100
(rTFPI薬物生成物の安定性)表15に示すように、相対的なアミド化レベルは、保存時間および温度の関数として増加する。ロットQA0477についてのサンプルセットの安定性は、以下の終点脱アミド化レベルを示した:5.2%(−60℃、22ヶ月)、26%(+8℃、24ヶ月)、および57%(+25℃、6ヶ月)。
【0155】
(rTFPIのバルクの薬物物質の安定性)−60℃にて約24ヶ月保存した、4つのバルクの薬物のロットの解析から、脱アミド化のレベルは4.6%〜7.6%の間で変化し、平均値が5.8%であることが明らかとなった(表15)。この脱アミド化レベルは、相当する条件において保存したTFPI薬物生産物(5.2%)と極めて類似した。
【0156】
(臨床の返品のサンプル)表15に示すように、+5℃にて約2年間保存した3つの臨床の返品ロットの解析から、脱アミド化のレベルは平均15.9%であることが示された。これらの結果は、同一の条件にて保存したAnOps保持サンプル(15.4%の脱アミド化)と極めて類似した。
【0157】
【表15】
このように、Promega ISOQUANT(登録商標)による方法は単純であり、そして、rTFPIサンプル中の相対的な脱アミド化のレベルを測定する、比較的速い手段である。上記の結果から、rTFPI中の相対的な脱アミド化は保存時間および温度の関数として増加することが示され;rTFPIの臨床の返品およびAnOpsの保持サンプルが、類似した脱アミド化レベルを示し;そしてrTFPIバルク薬物物質および薬物生成物は双方とも、類似したレベルの脱アミド化を示した。
【0158】
(実施例9)
(TFPIによるプロトロンビン時間の延長の説明)―プロトロンビン時間アッセイは血漿に基づいた凝固アッセイであって、ここで凝固は、TFおよびカルシウム(インノビン(Innovin))を血漿に添加することで開始される。TFPIは、用量に依存した様式でプロトロンビン時間を延長する。TFPIまたはTFPIアナログの試験サンプルは、このアッセイにおけるTFPIまたはTFPIアナログの標準物質と比較し得る。
【0159】
(プロトコール:)全プロトロンビン時間アッセイ(PT)プログラムを、MLA Electra 9000血液凝固測定装置(coagulometer)上で実行した。反応を、血漿サンプルへμl単位のインノビンを添加した器具によって開始した。凝血塊を形成する時間を記録した。100μlの血漿に加えられた、10μlのアルギニン/リン酸バッファーは、何も加えない血漿と類似した凝固時間(それぞれ10.9秒および11.0秒)を与えた。0〜4.5μg/mlのrTFPIによる検量線を用いて、試験サンプルの活性を、rTFPI標準物質と比較した。三連の解析による平均値を、表16に示す。
【0160】
【表16】
(実施例10)
(生存調査)
新しく調製した、臨床的なグレードのrTFPI(TFPI 92)と、部分的に脱アミド化および酸化した、臨床的なグレードの物質(TFPI 78)とを比較するために、マウスの盲腸結紮および盲腸穿刺の調査を行った。このモデルは、直接的な糞便の汚染および盲腸の壊死による、複数菌の腹腔における感染および複数菌の全身性感染を引き起こし、ヒトの腹腔内敗血症をそっくりに模倣する。Opalら、Critical Care Medicine 29、13−18、2001。
【0161】
TFPIの双方の調製物は、方法Cに従って調製した。rTFPI 78、rTFPI 92、または希釈したコントロールのいずれも、48時間にわたって、盲検様式で与えた(皮下(SQ)、12時間毎×4用量)。外科的手順に先立ち、およびその48時間後に、菌血症の定量的なレベル、内毒素の定量的なレベル、およびサイトカイン(腫瘍壊死因子αおよびインターロイキン6)の定量的なレベルを決定するために、血液を得た。上記の動物を毎日観察し、そして死亡が起きたときにその死亡を記録した。実験期間の最後において、器官障害の組織学的な証拠についての検死評価、および定量的細菌学的な検死評価を、全ての動物が受けた。
【0162】
カプラン―マイヤー生存曲線を図16に示す。部分的に酸化し、脱アミド化した形のrTFPIを与えられたマウスに比べて、新たに調製したrTFPIを与えられたマウスについて、有意な生存上の利点があった。双方のrTFPIグループは、コントロールグループにおいて希釈液を与えられたマウスよりもうまくやった。予想通りに、偽手術されたマウス(盲腸の確認を含むが、結紮および穿刺は含まない外科的処置)は、7日間の調査期間の間、生存した。上記の2つのrTFPI処置したグループの間では、菌血症、内毒血症、およびサイトカイン生産の二次終点に有意差は無かった。
【0163】
この調査は、TFPIが、血液の細菌レベル、内毒素レベル、またはサイトカインレベルでは説明できない機構を通して、生存上の優位性を提供するようであることを立証する。脱アミド化、酸化したTFPIは、新たに調製したTFPIよりも低い保護しか提供しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】プラスミドpMON37621の地図。
【図2】2ロットの組換えala−TFPI(rTFPI)調製物の、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)による比較。10μgのサンプルをPharmacia Mono S 5/5陽イオン交換カラムに注ぎ、そして、30%のアセトニトリルおよび0.02Mの酢酸ナトリウム中の、0.2〜0.85Mの塩化アンモニウムの直線勾配にて分離した。カラム溶離液を214nmにおけるUV吸光度にてモニターした。上部のクロマトグラムはロットPB5806(方法C(下記に定義)に従って調製)に由来する;下部のクロマトグラムはロットMAECM014(方法B(下記に定義)に記述した方法に従って調製)に由来する。
【図3】2ロットのrTFPI調製物の、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC HPLC)による比較。10μgのサンプルをBioRad Bio−Sil SEC 250−5カラムに注ぎ、そして、40%のアセトニトリルおよび0.75%のトリフルオロ酢酸を含むイソクラティク溶離液を用いて分離した。カラム溶離液を280nmにおけるUV吸光度にてモニターした。上部のクロマトグラムはロットPB5806(方法Cに従って調製)に由来する;下部のクロマトグラムはロットNA0182(方法Bに従って調製)に由来する。
【図4】還元型のrTFPIサンプルおよび非還元型のrTFPIサンプルのSDS PAGE。サンプルを、14%トリス−グリシンゲルを用いて解析し、クーマシー染色を用いて可視化した。約3μgのサンプルを、それぞれのレーンに注いだ。レーン1〜6のサンプルの電気泳動は還元的な条件下にて行った;レーン8〜12のサンプルの電気泳動は非還元的な条件下にて行った。サンプルは以下のようにロードした:レーン1、分子量標準物質;レーン2および8、ロットNA0182(方法B(下記に定義)に従って調製)のサンプル;レーン3および9、ロットMAECM014(方法Bに従って調製)のサンプル;そして、レーン4および10、5および11、ならびに6および12、それぞれ、ロットPB5666のサンプル、ロットPB5806のサンプル、ならびにロットPB6096のサンプル(方法Cに従って調製)。
【図5】銀染色解析を用いたSDS PAGE。サンプルをDTTで還元し、そして14%トリス−グリシンゲルを用いて解析した。約0.5mgのrTFPIサンプル(方法Cに従って調製)をそれぞれのレーンに注いだ。このサンプルは、分子量標準物質(レーン1)、参照ロットPB5806(方法Cに従って調製)由来のサンプル(レーン2および3)、2ngのウシ血清アルブミン(66KDa)および0.25ngの炭酸脱水酵素(31KDa)(レーン4)、5ngのウシ血清アルブミン(66KDa)および0.25ngの炭酸脱水酵素(31KDa)(レーン5)、ならびにロットPB6636由来の3つ組のサンプル(レーン6〜8)およびロットPB6770由来の3つ組のサンプル(レーン9〜11)(方法Cに従って調製)を含んだ。レーン12はブランクである。
【図6】インタクトなタンパク質の分子量を示す、逆重畳積分エレクトロスプレー質量スペクトル。図6A、rTFPIロットMAECM014(方法Bに従って調製)。図6B、rTFPIロットPB5806(方法Cに従って調製)。観察される、主要成分の質量は、理論的な分子量32,004Daに一致する。
【図7】非還元型のAsp−NペプチドのLC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。ロットMAECM014由来の非還元型のサンプル(図7A)およびロットPB5806由来の非還元型のサンプル(図7B)を、Asp−N消化およびLC−MS解析に供した。同定されたピークの分子量を、表8に示す。
【図8】非還元型のAsp−NペプチドのLC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。ロットPC1058由来の非還元型のサンプルを、Asp−N消化およびLC−MS解析に供した。
【図9】RCMトリプシンペプチドのLC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。図9A、rTFPIロットMAECM014。図9B、rTFPIロットPB5806。
【図10】3つのクニッツ領域および予測されるジスルフィド結合を描いた、rTFPIのアミノ酸配列。矢印は、方法Cに従って調製したrTFPIを、非還元的な条件下でAsp−Nにて消化した結果として生じる、切断部位を示す。切断は、クニッツ領域間の、実線の矢印で示されたAsp−N部位に観察され、結果として7つの主要なペプチドを生じた。破線の矢印で示される、クニッツ領域内の切断は、結果として、互いにジスルフィド結合によって保たれるペプチドを生じた。内部的に切断されたペプチド内の切断部位における水分子の付加は、結果として分子量を、予想される非切断ペプチドよりも18Da高くした。破線の矢印で示される内部切断の特異的部位は、過去の研究に基づく。この観察されるAsp−Nペプチドは、rTFPIの予想される二次構造/三次構造に一致する。
【図11】rTFPI薬物物質のCN HPLC。図11A、方法Bに従って調製された物質。図11B、方法Cに従って調製された物質。10μgのサンプルを、Zorbax 300SB−CNカラムに注ぎ、アセトニトリルおよび0.2%のトリフルオロ酢酸を含む勾配を用いて分離した。カラム溶離液は、214nmにおけるUV吸光度を用いてモニターした。小さなピークは、酸化されたメチオニン残基を含むrTFPI(1)、ロイシンから置換されたノルバリンを含むrTFPI(2)、および、アセチル化された残基またはカルバミル化された残基を含むrTFPI(3)である。
【図12】ロットPB5806に由来するRCMトリプシンペプチドの、部分的なUVクロマトグラム。図12A、実線の矢印はノルバリン含有ペプチドを示し、破線の矢印は対応する正常なペプチドT(88−108)を示す。図12B、ペプチドT(88−108)のSIMクロマトグラムで、m/zは1293.6。図12C、ノルバリンの誤取り込みをしたペプチドT(88−108)のSIMクロマトグラムで、m/zは1286.6であって、ここで、nV90およびnV100は、それぞれ、90位の残基のノルバリンおよび100位の残基のノルバリンに対応する。
【図13】SP−セファロースHPのサンプルの、CEX−HPLCを用いた、製造過程のアッセイ。上部のサンプルは、カラムへ装填したものを表し、そして下部のサンプルは、SP−セファロースFFを用いたクロマトグラフィーを行った後の、カラムのプールを表す。
【図14】緩慢な勾配の逆相LC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。図14A、ロットMAECM014。図14B、ロットPB5806。図14C、ロットPB6096。図14D、ロットPB6770。影付きの線は、逆重畳積分質量スペクトルによって特徴付けられたUVクロマトグラムの領域を示す。初期の溶出領域は、方法Bに従って調製された物質および、方法Cに従って調製された物質中とほぼ同じ割合でメチオニンスルホキシドを含むrTFPIとして同定された。後期の溶出領域は、方法Bに従って調製された物質中でアセチル化残基を含むrTFPIとして同定された。
【図15−1】pMON9197中の発現カセットのヌクレオチド配列(上部のヌクレオチド配列は、配列番号43に示される)。この配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、Met39およびMet75の双方に翻訳開始を減少させたala−TFPI、および転写ターミネーターを含む。列の上のヌクレオチドは、pMON6875またはpMON6655内にて、そのヌクレオチドの部位に存在するヌクレオチドである。上記の置換は内部の翻訳開始を減少させるためになされ、そしてこの置換はコードされるala−TFPIタンパク質の配列に影響を及ぼさない。翻訳終止コドンの付近の、列の上のヌクレオチドは、pMON6655中のその領域に存在する。pMON6655内で用いられる終止コドンはTAGである。TAGに続く記号^^^は64ヌクレオチドの欠失を表し、この欠失はClaIの認識部位およびEcoRIの認識部位を含む。pMON6655中のHindIII部位に続く配列は、pMON9197における配列と同一(MAP遺伝子がpMON9197に挿入されることを除いて)である。
【図15−2】pMON9197中の発現カセットのヌクレオチド配列(上部のヌクレオチド配列は、配列番号43に示される)。この配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、Met39およびMet75の双方に翻訳開始を減少させたala−TFPI、および転写ターミネーターを含む。列の上のヌクレオチドは、pMON6875またはpMON6655内にて、そのヌクレオチドの部位に存在するヌクレオチドである。上記の置換は内部の翻訳開始を減少させるためになされ、そしてこの置換はコードされるala−TFPIタンパク質の配列に影響を及ぼさない。翻訳終止コドンの付近の、列の上のヌクレオチドは、pMON6655中のその領域に存在する。pMON6655内で用いられる終止コドンはTAGである。TAGに続く記号^^^は64ヌクレオチドの欠失を表し、この欠失はClaIの認識部位およびEcoRIの認識部位を含む。pMON6655中のHindIII部位に続く配列は、pMON9197における配列と同一(MAP遺伝子がpMON9197に挿入されることを除いて)である。
【図15−3】pMON9197中の発現カセットのヌクレオチド配列(上部のヌクレオチド配列は、配列番号43に示される)。この配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、Met39およびMet75の双方に翻訳開始を減少させたala−TFPI、および転写ターミネーターを含む。列の上のヌクレオチドは、pMON6875またはpMON6655内にて、そのヌクレオチドの部位に存在するヌクレオチドである。上記の置換は内部の翻訳開始を減少させるためになされ、そしてこの置換はコードされるala−TFPIタンパク質の配列に影響を及ぼさない。翻訳終止コドンの付近の、列の上のヌクレオチドは、pMON6655中のその領域に存在する。pMON6655内で用いられる終止コドンはTAGである。TAGに続く記号^^^は64ヌクレオチドの欠失を表し、この欠失はClaIの認識部位およびEcoRIの認識部位を含む。pMON6655中のHindIII部位に続く配列は、pMON9197における配列と同一(MAP遺伝子がpMON9197に挿入されることを除いて)である。
【図16】カプラン−マイヤー生存曲線。X軸、生存;Y軸、時間(時間)。
【技術分野】
【0001】
本願は、同時係属中の仮出願第60/494,546号(2003年8月13日出願)、同第60/509,277号(2003年10月8日出願)、同第60/512,199号(2003年10月20日出願)による利益を主張するものであり、およびこれらの仮出願を参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、精製されたTFPIの生成に関連する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
組織因子経路インヒビター(TFPI)は長さにおいて276アミノ酸であり、そして組織因子が媒介する血液凝固のインヒビターとして機能する。特許文献1を参照のこと。TFPIのアミノ末端は負の電荷を持ち、そしてカルボキシ末端は正の電荷を持つ。このTFPIタンパク質は、3つのクニッツ型酵素インヒビタードメインを含む。TFPIは、正しくフォールディングした場合、18個のシステイン残基を含み、そして9つのジスルフィド架橋を形成する。その一次配列は、N結合型のコンセンサスグリコシル化部位(Asn−X−Ser/Thr)を3つ含む。このグリコシル化部位のアスパラギン残基は、145位、195位、および256位に位置する。TFPIはまた、リポプロテイン関連性血液凝固インヒビター(LACI)、組織因子インヒビター(TFI)、および外因性経路インヒビター(EPI)としても公知である。
【0004】
TFPIの使用は、様々な徴候の治療に提唱されており、それは、敗血症(特許文献2および特許文献3)、深部静脈血栓(特許文献4、特許文献5、および特許文献6)、虚血(特許文献7、特許文献8、および特許文献9)、再狭窄(特許文献10および特許文献11)、および癌(特許文献12および特許文献13)を含む。TFPI改変体は、アミノ末端にアラニン残基を付加した点でTFPIと異なるが(「ala−TFPI」)、敗血症の処置について、動物モデルにおいて有効であることが示されている(非特許文献1)。
【0005】
生物学的に活性な、精製されたTFPI、およびそれを取得するための方法について、当該分野において、継続的な必要性がある。
【特許文献1】米国特許第4966852号明細書
【特許文献2】米国特許第6063764号明細書
【特許文献3】国際公開第WO93/24143号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5563123号明細書
【特許文献5】米国特許第5589359号明細書
【特許文献6】国際公開第WO96/04378号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5885781号明細書
【特許文献8】米国特許第6242414号明細書
【特許文献9】国際公開第WO96/40224号パンフレット
【特許文献10】米国特許第5824644号明細書
【特許文献11】国際公開第WO96/01649号パンフレット
【特許文献12】米国特許第5902582号明細書
【特許文献13】国際公開第WO97/09063号パンフレット
【非特許文献1】Carrら、Circ.Shock 44(3)、126−37、1994
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも以下の実施形態を提供する。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む、精製された調製物を提供する。このTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。この改変された化学種は、以下のうちの1種以上を含む:逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子。
【0008】
本発明のもう1つの実施形態は、多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む、薬学的処方物である。このTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。この改変された化学種は、以下のうちの1種以上を含む:逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子。
【0009】
本発明のもう1つの実施形態は、精製されたTFPIまたはTFPIアナログを生成する方法を提供する。この方法は、以下の工程:(1)リファンピシン耐性E.coli宿主細胞内での、TFPIまたはTFPIアナログを発現する工程、(2)上記のE.coli宿主細胞から、TFPIまたはTFPIアナログを含む封入体を単離する工程、(3)上記の封入体からTFPIまたはTFPIアナログの単離して、単離されたTFPIまたはTFPIアナログを得る工程、(4)上記の単離されたTFPIまたはTFPIアナログをリフォールディングして、リフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを生成する工程、(5)Mg++存在下でのSP−セファロース高流速クロマトグラフィーによって、上記のリフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程、(6)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程、(7)Q−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程、(8)ブチルHICクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程、(9)SP−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程、および(10)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程を含み、ここで、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。このTFPIまたはTFPIアナログは、以下の要素を含むプラスミドにコードされる:(a)転写プロモーター;(b)上記の転写プロモーターに隣接するリボソーム結合部位;(c)上記のリボソーム結合部位に隣接する、TFPIまたはTFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;(d)上記のヌクレオチドコード配列に隣接する転写ターミネーター;(e)レプリコン;(f)抗生物質耐性遺伝子;および(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子。
【0010】
本発明のもう1つの実施形態は、精製されたTFPIまたはTFPIアナログを生成するための方法である。この方法は、以下の工程:(1)SP−セファロース高流速クロマトグラフィーによって、上記のリフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程、(2)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程、(3)Q−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程、(4)ブチルHICクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程、(5)SP−セファロースHPクロマトグラフィーによって、上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程、および(6)上記の精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程を含み、ここで、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満は、改変された化学種である。
【0011】
本発明の、さらにもう1つの実施形態は、TFPIまたはTFPIアナログの発現の方法であって、それは、リファンピシン耐性E.coli宿主細胞を発酵培地内にて培養する工程を含む。上記のE.coli宿主細胞は、以下の要素を有するプラスミドを含む:(a)転写プロモーター;(b)上記のリクラック(reclac)転写プロモーターに隣接したリボソーム結合部位;(c)上記のリボソーム結合部位に隣接した、TFPIまたはTFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;(d)上記のヌクレオチドコード配列に隣接した、転写ターミネーター;(e)レプリコン;(f)抗生物質耐性遺伝子;および(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子。上記の発酵培地1lは、41gのブドウ糖、2.5gの(NH4)2SO4、4.0gのポリリン酸ナトリウム、7.0gのK2SO4、1.63gのMgSO4・7H2O、2.0gのメチオニン、2.0gのグリセロール、0.5mgのH3BO4、0.5gの塩化コバルト、0.13gのCuSO4・6H2O、54.0gのFeCl3・6H2O、11.0gのMnSO4・H2O、0.5gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのNaSeO3、22.0gのZnSO4・7H2O、0.01mlの濃H2SO4、および0.55mlのUCON消泡剤を含む。
【0012】
本発明の、さらにもう1つの実施形態は、多量のala−TFPI分子、ならびに20mMのクエン酸ナトリウム、300mMのL−アルギニン、および5mMのメチオニンを含み、pH5.5である、薬学的組成物である。上記のala−TFPIの約12%未満は、改変された化学種である。上記の改変された化学種は、以下のうちの1種以上を含む:逆相クロマトグラフィーにて検出されるような、酸化されたala−TFPI分子;陽イオン交換クロマトグラフィーにて検出されるような、カルバミル化されたala−TFPI分子;Promega ISOQUANT(登録商標)キットにて検出されるような、脱アミド化されたala−TFPI分子;アミノ酸解析から決定されるような、システイン付加物を含むala−TFPI分子;サイズ排除クロマトグラフィーにて検出されるような、凝集したala−TFPI分子;および、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて検出されるような、誤ってフォールディングされたala−TFPI分子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、TFPIまたはTFPIアナログ(下記に定義)を精製するための改良された方法を提供する。上記の精製方法は、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の調製物であって、その調製物の約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満が「改変された化学種」からなる調製物を生成し得る。
「改変された化学種」は、酸化されたTFPIまたはTFPIアナログ、カルバミル化されたTFPIまたはTFPIアナログ、脱アミド化されたTFPIまたはTFPIアナログ、アセチル化されたTFPIまたはTFPIアナログ、凝集したTFPIまたはTFPIアナログ、誤ってフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログである。
【0014】
上記の方法は、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの大規模な調製物(例えば、下記に定義するような、精製された200〜300gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された500gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された400〜600gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された750gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された600〜900gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された800gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された800〜1,200gのTFPIまたはTFPIアナログ、精製された1.2kgのTFPIまたはTFPIアナログ、あるいは精製された2.4kgのTFPIまたはTFPIアナログ)の調製に、特に適している。
【0015】
(TFPIまたはTFPIアナログ)
「TFPI」は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、グリコシル化されていないTFPIである。「TFPIアナログ」は、配列番号1に示されるようなTFPIとは異なる一次アミノ酸構造を有し(すなわち、1つ以上のアミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失、および/またはアミノ酸付加)、一方で下記に論じられるような、TFPIの1つ以上の生物学的活性を保持する。TFPIアナログはTFPIのアミノ酸配列(配列番号1)と、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%のアミノ酸同一性を有する。TFPIアナログは、ムテイン、キメラ分子、およびTFPIの断片を含む。任意のこれらの分子は、メチオニンからノルロイシンの置換、またはロイシンからノルバリンの置換を1つ以上含み得る。
【0016】
TFPIアナログと、TFPIのアミノ酸配列(配列番号1)との間の同一性の百分率は、Blast2整列化プログラム(Blosum 62、Expect 10、標準遺伝暗号、open gap 11、extension gap 1、gap x_dropoff 50、および低複雑性フィルター オフ)を用いて決定する。アミノ酸が、類似した性質を有するもう1つのアミノ酸に交換される、保存的な置換が好ましい。保存的な置換の例としては、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるが、これらに限らない。保存的なアミノ酸置換は代表的には、約1〜5アミノ酸(すなわち、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、または5アミノ酸)の範囲内で起きる。付加的なアミノ酸は、分子内の任意の場所、特にアミノ末端またはカルボキシ末端において付加され得る。アミノ酸付加は、1個、2個、5個、10個、25個、100個、またはそれ以上の付加的なアミノ酸であり得る。融合タンパク質は、アナログの定義内に含まれる。明らかに、TFPIアナログをコードするDNA内に起きた変化は、その配列をリーディングフレーム外に位置させてはならず、そして好ましくは、二次的なmRNAの構造を生成させ得る相補領域を作成しない。生物学的活性も免疫学的活性も消失させずに、どのアミノ酸残基を置換、挿入、または欠失させ得るかということを決定するための手引きは、当該分野にて周知のコンピュータープログラム(例えば、DNASTARソフトウェア、またはDayhoffら(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found.、Washington,D.C.)を参照)を用いて見出し得る。
【0017】
好ましいTFPIアナログはN−L−アラニル−TFPI(「ala−TFPI」)であって、ala−TFPIは、配列番号1のアミノ末端に付加的なアラニン残基を有する。
【0018】
アナログは、配列番号1に関連する、1〜5個の保存的なアミノ酸置換を有する「TFPIムテイン」を含む。好ましいムテインは、分子の立体配座を実質的に変化させない置換を有する。いくつかの事例において、TFPIムテインは、(1)N結合グリコシル化のための3つの部位のうちの1つ以上を除去するアミノ酸置換を有するか、(2)TFPI(配列番号1)の残基をTFPI−2の対応する残基に変化させる1〜5個のアミノ酸置換を有するか、(3)1つ以上のクニッツ型ドメイン内のP1反応部位内のアミノ酸置換を有するか、または(4)1つ以上のクニッツ型ドメイン内のP1反応部位の5個のアミノ酸中の部位にアミノ酸置換を有する。1つのTFPIムテインにおいて、TFPI(配列番号1)の第1のクニッツ型ドメインのP1反応部位内のリジン残基はアルギニンに置換される。
【0019】
TFPI(配列番号1)の様々な部分を含む、「キメラのTFPI」分子は、米国特許第5,589,359号にて記述される。
【0020】
断片は、TFPI(配列番号1)の諸部分からなるTFPIアナログである。例えば、断片は、長さが20、25、30、50、100、150、200、250、または275の連続したアミノ酸であり得る。断片の例としては、クニッツドメイン1、2、または3;クニッツドメイン1および2、または2および3;および、N末端の欠失、C末端の欠失、または両方の欠失が挙げられる。このようなアナログを作成するための実質的な手引きは、米国特許第5,106,833号に見出される。
【0021】
(TFPI、TFPIアナログ、あるいは改変されたTFPIまたはTFPIアナログの生物学的活性)
TFPIまたは改変されたTFPI(下記に定義)の生物学的活性は、第VIIa因子/TF複合体および第Xa因子の双方のアミド分解(amidolytic)活性、ならびに、プロトロンビン時間(PT)アッセイにて測定できるような、抗血液凝固活性との結合および阻害を含む。下記に定義するような改変されたTFPIアナログを含むTFPIアナログは、好ましくは、第VIIa因子/TF複合体および第Xa因子のどちらか、または双方と結合し得る。改変されたTFPIアナログを含むTFPIアナログは、好ましくは、実質的な量の抗血液凝固活性(例えば、下記に記述するPTアッセイにて測定される、TFPI(配列番号1)の、10%、30%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上の抗血液凝固活性)を有する。
【0022】
(精製されたTFPIまたはTFPIアナログの調製物)
本発明の、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの調製物は、その約12%未満が、下記に記述されるアッセイのうちの1つ以上によって検出される、改変された化学種である、TFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む。「改変されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種」は、以下の翻訳後修飾のうちの1つ以上を含む分子である:酸化(酸化されたメチオニン残基)、システイン付加物、アミノ酸改変(残余のN末端メチオニン、脱アミド化、アセチル化、およびカルバミル化)、凝集(TFPIオリゴマーまたはTFPIアナログオリゴマーの生成)、および誤ったフォールディング。
【0023】
好ましくは、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満は、逆相クロマトグラフィー(下記に記述のCN HPLC)にて検出されるように、酸化されている。好ましくは、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、陽イオン交換クロマトグラフィー(下記に記述のCEX HPLC)にて検出されるように、カルバミル化されている。さらに他の精製された調製物内において、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満は、Promega ISOQUANT(登録商標)キットを用いて測定できるように、脱アミド化されている。好ましくは、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、アミノ酸解析にて決定されるように、システイン付加物を有する。他の好ましいTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物において、上記のTFPI分子およびTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、サイズ排除クロマトグラム(SEC HPLC)にて検出されるように凝集されているか、あるいは、非変性条件下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(下記に記述)にて検出されるように、誤ってフォールディングされている。
【0024】
好ましくは、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、質量分析(下記に記述)にて検出可能なレベルのアセチル化したTFPI化学種もTFPIアナログ化学種も含まない。本発明の精製された調製物はまた、好ましくは、E.coliのタンパク質を実質的に除かれている(すなわち、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の、銀染色SDSポリアクリルアミドゲルにて検出可能なタンパク質の2ng/mg未満が、E.coliタンパク質である)。
【0025】
その他の好ましい、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、約4%未満の酸化されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、約1%未満のカルバミル化されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、約5%未満の脱アミド化されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、ならびに、約3%未満の凝集した、および/または、誤ってフォールディングしたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種を含む。
【0026】
本発明の、任意の精製されたTFPI調製物は、メチオニンからノルロイシンへの1つ以上の置換、またはロイシンからノルバリンへの1つ以上の置換を含み得る。
【0027】
(アッセイ)
下記に記すアッセイは、TFPI調製物またはTFPIアナログ調製物の純度、安定性、または生物学的活性を決定するために用いられる。
【0028】
(逆相クロマトグラフィー(CN HPLC)による純度)
逆相高速液体クロマトグラフィー法(CN HPLC)は、改変されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種(すなわち、改変(例えば、酸化されたメチオニン残基)、およびアミノ酸改変(例えば、残余のN末端メチオニン、カルバミル化、脱アミド化、およびアセチル化)を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子)を検出するために用いられる。CN HPLCはまた、メチオニンからノルロイシンへの置換を有するTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種を検出し得る;しかし、上記に記述したように、こうした化学種は「改変されたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種」ではなく、そして本発明の精製された調製物内に存在し得る。
【0029】
上記のCN HPLC法は、安定に結合したシアノ−逆相カラム、ならびに、アセトニトリルおよび0.2%のトリフルオロ酢酸を含む移動層を用いる。溶離液を、214nmにおける吸光度を検出することで、タンパク質についてモニターする。結果のサンプルを、参照標準物質と比較する。純度は、主要なピークの面積百分率によって評価される。
【0030】
CN HPLCにて測定されるように、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満は、酸化されたメチオニン残基を有する。
【0031】
(アミノ酸解析による、遊離のシステインの定量)
遊離のシステインの定量を可能にする任意のアミノ酸解析方法が、システイン付加物を有するTFPI分子またはTFPIアナログ分子の定量に用いられ得る。例えば、Barkholt&Jensen、Anal Biochem.1989年3月;177(2):318−22;Hoogerheide&Campbell、Anal Biochem.1992年2月14日;201(1):146−51;Athertonら、Anal Biochem.1993年7月;212(1):98−105;Haleら、Anal Biochem.1994年1月;216(1):61−6;Mannebergら、Anal Biochem.1995年11月1日;231(2):349−53;Thannhauserら、J Protein Chem.1998年1月;17(1):37−43;Yanら、J Chromatogr A.1998年7月10日;813(1):187−200;米国特許第4,670,403号;および米国特許第4,784,962号に開示された方法を参照のこと。代表的には、TFPI分子またはTFPIアナログ分子を還元した後に放出される遊離のシステインを定量する。
【0032】
アミノ酸解析によって決定されるように、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、システイン付加物を有する;より好ましくは、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、検出され得るレベルのシステイン付加物を全く含まない。
【0033】
(脱アミド化アッセイ)
Promega ISOQUANT(登録商標)キット(Promega Technical Bulletin No.TBI001(ISOQUANT(登録商標)Isoaspartate Detection Kit、改訂 8/99))またはそれに相当するものが、イソアスパラギン酸の間接的な測定を通して、TFPIの脱アミド化またはTFPIアナログの脱アミド化を決定するために用いられる。手短に言えば、上記のキットは、S−アデノシル−L−メチオニン(SAM)のメチル基の、イソアスパラギン酸への転移を触媒する、タンパク質イソアスパルチルメチル転移酵素(PIMT)を利用する。この反応は副産物であるS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)を生成し、SAHは続いて、タンパク質の脱アミド化のレベルを定量するために、RP−HPLC(Carlson&Riggin、Analytical Biochemsitry 278,150−55,2000)にて解析される。
【0034】
このアッセイにて測定されるように、精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満は脱アミド化されている。
【0035】
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC HPLC))
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC HPLC)は、TFPIオリゴマーまたはTFPIアナログオリゴマー(すなわち、凝集した形態)から、TFPI単量体またはTFPIアナログ単量体を検出するために用いられる。この方法は、BioRad Bio−Sil SEC 250−5ならびに、40%のアセトニトリルおよび0.75%のトリフルオロ酢酸を含む移動層を用いる。溶出液を、214nmにおける吸光度にて、タンパク質についてモニターする。単量体およびオリゴマーは、水力学的半径に基づいて分離される。純度は、面積百分率によって評価される。
【0036】
サイズ排除クロマトグラフィーの2つの方法が、TFPIまたはTFPIアナログの凝集した形態の検出に用いられ得る。1つの方法は、40%のACN、0.75%のTFA、50mMのMgCl2バッファーを溶出液として用い、そして220nmに設定したUV検出器を用いる。もう一方の方法は、溶出液として処方バッファー(300mMのL−アルギニン、20mMのクエン酸ナトリウム、pH 5.5)、ならびに、280nmでの励起および320nmでの発光に設定した蛍光検出器を用いる;このシステムを有する上記のSECカラム全長にわたる重量バランスは85%である。
【0037】
SEC HPLCにて測定されるように、精製されたTFPIまたはTFPIアナログ中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は凝集されている。
【0038】
(SDS−PAGE(クーマシーブルー染色、非還元的状態))
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を非還元的条件下にて行い、そして、クーマシーブルー染色を用いて、誤ってフォールディングしたTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種の検出に用いる。この方法は、14%のアクリルアミドゲルおよびコロイド性のクーマシー染色を用いる。還元されたサンプルおよび還元されていないサンプルを、参照標準物質と比較する。非還元的条件下にて、誤ってフォールディングされた形態のTFPIまたはTFPIアナログは、TFPIまたはTFPIアナログよりも、わずかに大きな電気泳動的な移動度を有し、他方で、還元的状態下では、電気泳動的な移動度に違いはない。精製された調製物中の、凝集した、および/または誤ってフォールディングした化学種の割合を決定するために、その結果を、参照標準物質と比較する。
【0039】
SDS PAGEにて測定されるように、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、誤ってフォールディングされている。
【0040】
(SDS−PAGE(銀染色))
SDS PAGEを非変性条件下にて行い、そして、銀染色を用いて、精製プロセスの間には除かれないE.coliタンパク質の同定に用いる。上記のサンプルは、14%アクリルアミドゲルに注ぐ前に還元する。サンプルの結果は、参照標準物質と比較する。
【0041】
精製されたTFPI調製物またはTFPIアナログ調製物は、実質的に、E.coliタンパク質が除かれている(すなわち、銀染色SDSポリアクリルアミドゲルにて検出可能な、本発明の精製された調製物中のタンパク質の2ng/mg未満が、E.coliタンパク質である)。
【0042】
(CEX HPLC)
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)は、カルバミル化したTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種、あるいは電荷の関係したTFPI化学種またはTFPIアナログ化学種の存在の検出に用いられる。上記のCEX−HPLC法は、Pharmacia Mono−S HR 5/5−ガラスカラムを用いる。上記のカラムは、80%のバッファーA(pH 5.4にて、20mMの酢酸ナトリウム三水和物:アセトニトリル溶液(70:30 v/v))および20%のバッファーB(pH 5.4にて、20mMの酢酸ナトリウム三水和物−1.0Mの塩化アンモニウム−アセトニトリル溶液(70:30 v/v))にて平衡化される。サンプルを注入した後、TFPIを溶出するために、0.7ml/分の流速にて、21分間内に20%のバッファーB〜85%のバッファーBの勾配が適用される。タンパク質のピークは、280nmにおける吸光度、または、励起に280nmおよび発光に320nmを用いた蛍光によって検出される。
【0043】
CEX HPLCにて測定されるように、本発明の精製された調製物中の、上記のTFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.13%未満は、カルバミル化されている。
【0044】
(質量分析)
質量分析法は、下記の、特定の実施例にて記述される。本発明の精製されたTFPI調製物は、好ましくは、質量分析によるアッセイによって検出し得るレベルのアセチル化されたTFPI化学種を含まない。
【0045】
(プロトロンビン時間アッセイ)
PTアッセイは、Coag−A−Mate MTX II器械(Organon Teknika)上にて行われる。TFPIサンプルまたはTFPIアナログサンプルは、まずバッファー(2Mの尿素、20mMのリン酸ナトリウム、250mMのNaCl、pH 7.2)にて150μg/mlに希釈され、続いてTBSAバッファー(50mMのTris、100mMのNaCl、1mg/mlのウシ血清アルブミン、pH 7.5)にて30μg/mlに希釈され、そして最後に、TBSAバッファーにて12〜15μg/mlに希釈される。アッセイのために、10μlの希釈したサンプルを、まず90μlのプールしたVerify I(Organon Teknika、カタログ番号59566)に混ぜ、試験トレー(Organon Teknika、カタログ番号35014)に充填し、そして上記のCoag−A−Mate内に配置する。次いで、200μlのSimplastin Excel(Organon Teknika、カタログ番号52001)を、凝固プロセスを開始するために加える。この凝固時間は、標準物質中のTFPIまたはTFPIアナログの濃度の対数に対する、凝固時間(秒)の対数の標準プロットと比較することで、投入したTFPIまたはTFPIアナログの濃度に変換される。相対的な効力は、試験サンプル中のTFPIおよびTFPIアナログの阻害活性を、TFPIおよびTFPIアナログのコントロールの阻害活性と比較することで、計算される。
【0046】
(精製手順の概要)
本発明の精製方法(「方法C」)は一般に以下の工程を含む:(1)E.coli内にてTFPIまたはTFPIアナログを発現する工程、(2)屈折体を単離する工程、(3)上記屈折体を溶解し、そして発現したTFPIまたはTFPIアナログをリフォールディングする工程、(4)SP−セファロース高流速(FF)クロマトグラフィー工程、(5)一次濃縮およびダイアフィルトレーション工程、(6)Q−セファロース高速(HP)クロマトグラフィー工程、(7)ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程、(8)SP−セファロースHPクロマトグラフィー工程、および(9)二次濃縮/ダイアフィルトレーション工程。随意的に、濃縮/ダイアフィルトレーション工程は、ブチルHIC工程とSP−セファロースHPクロマトグラフィー工程との間に含まれ得る。
【0047】
本発明の上記の精製方法は、Gustafsonら、Protein Expression and Purification 5、233−41、1994;WO 96/40784;米国特許第6,319,896号;および米国特許第6,323,326号に記述された従来の精製方法(「方法B」)よりも少ない改変されたTFPI化学種およびTFPIアナログ化学種を含む、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の調製物を生成する。
【0048】
TFPIまたはTFPIアナログの精製は、一連のクロマトグラフィー操作によるフォールディング工程の後に、大部分は達成される。1工程の溶出を用いる、上記のSPセファロース捕獲カラムを除いて、残りのクロマトグラフィー工程は全て、画分収集、およびどの画分をプールすべきかということを決定するための分析を用いる。実際的な生産見込みから、画分は、プールするためのある最小の要求に応じる。しかし、必要ならば、ピークの画分のみを収集し、そして引き続くクロマトグラフィー操作を通して実行されるならば、さらに高いレベルの純度を得ることができる。これらの改変された形態のTFPIを除くことで、この精製方法は、上記の調製物の約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満が、改変された化学種からなる、TFPI分子またはTFPIアナログ分子の調製物を生成し得る。
【0049】
表1は、方法Bを用いて生成された組換え型ala−TFPIの純度、および本発明の方法を用いて生成された組換え型ala−TFPIの純度を比較する。さらに、下記に記述した、発現系、発酵制御戦略、および屈折体の単離手順は、結果として、従来の生成方法と比較して、生産されるTFPIまたはTFPIアナログの量において5倍を超える増加をもたらす。
【0050】
【表1】
1単量体(SDS PAGE)または主要なピーク(HPLC)に対する%として表した値。
2メチオニン1モル当たりのノルロイシンの置換の%で表した。
3ロイシン1モル当たりのノルバリンの置換の%で表した。
【0051】
この手順のある局面(例えば、上記ブチルHIC工程、細胞の収集の間のDTPAキレート剤の使用、(特にMg++存在下での)SP−セファロース高流速クロマトグラフィー、および改良された発酵方法)は一般に、TFPIまたはTFPIアナログ以外のタンパク質に適している。
【0052】
TFPIまたはTFPIアナログの工業規模での生成に適した、この精製方法の好ましい実施形態を、下記に記述する。
【0053】
(TFPIまたはTFPIアナログの発現)
(TFPIまたはTFPIアナログをコードする配列)
TFPIの野生型のアミノ酸配列を、配列番号1に示す。上記に定義したTFPIまたはTFPIアナログをコードする任意のヌクレオチド配列が、発現されるTFPIまたはTFPIアナログをコードするために用いられ得る。ala−TFPIにとって好ましいコード配列は、図15に示す。
【0054】
(TFPIまたはTFPIアナログの生成)
組換え型のTFPIまたはTFPIアナログは、当該分野で周知の、任意の適した宿主細胞(例えば、酵母宿主細胞または哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞、HepG2細胞、Chang肝細胞、またはSK肝癌細胞))内で生成され得る。例えば、米国特許第5,212,091号、同第6,103,500号、および同第6,323,326号を参照のこと。このように組換え的に生成されたTFPIまたはTFPIアナログは、下記に記述したような、本発明の方法を用いて精製され得る。
【0055】
(E.coli宿主細胞)
TFPIまたはTFPIアナログは、好ましくは、E.coli宿主細胞内にて生成される。TFPIの生成に用いられる好ましいE.coli株は「MON210」とよばれ、この「MON210」は、ブダペスト条約の規定の下で、2003年10月8日に、American Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108,USAに寄託された(登録番号PTA−5564)。MON210は、野生型E.coli株W3110(Backman、Bacteriologica Reviews 36、525−57、1996)から、W3110→MON105→LBB358→MON210の順序を含む多段階のプロセスを通して、産生された。
【0056】
E.coli MON210株は、LBB358株からいくつかの工程を経て産生された。産生プラスミドのコンカテマー化(concatemerization)を減少させるために、P1形質転換(CsonkaおよびClark、J.Bacteriol.143、529−530、1980)によって、LBB358株にrecA56変異を導入し、その結果、LBB358recA−株を得た。次いでLBB358recA−から、Tn10に存在するテトラサイクリン耐性遺伝子を、フザリン酸選抜によって除き、LBB358recA− T10株を産生した。自発的に起こる、リファンピシン耐性に関連する、度合いの変化する転写物伸長を選抜するために、LBB358recA− T10株にプラスミドpMON26335rop+を導入し、LBB358recA− T10/pMON26335rop+株を産生した。TFPI生成のレベルの増加を示した、リファンピシン耐性株の1つを選抜し、次いでプラスミドpMON26335rop+を除いた。結果として産生された培養物をMON210とよんだ。
【0057】
(プラスミド)
E.coli宿主細胞内にてTFPIまたはTFPIアナログを発現させるために用いるプラスミドは、以下の遺伝子要素を有する:転写プロモーター、リボソーム結合部位、TFPIまたはTFPIアナログをコードする配列、転写ターミネーター、レプリコン、抗生物質耐性遺伝子、およびN末端メチオニンを除去する酵素。特に好ましい要素を、表2に示す。
【0058】
【表2】
プラスミド「pMON37621」は、上記の好ましい要素のそれぞれを含む。pMON37621のプラスミド地図を、図1に示す。このプラスミドは、ala−TFPI、およびE.coli内にてタンパク質を高レベルで生産するに有用な制御要素をコードする最適化された構造遺伝子を含む。このpMON37621プラスミドは、上記のala−TFPIコード領域の改変を除いて、pMON9197から産生された。
【0059】
(pMON37621の構築)
プラスミドpMON37621は、プラスミドpMON9197から始まって構築された。pMON9197は、ala−TFPIをコードする最適化された遺伝子、第10遺伝子リボソーム結合部位(Olinsら、Gene 73、227−35、1988)、スペクチノマイシン耐性遺伝子(Flingら、Nucleic Acid Research 13、7095、1985)、MAP遺伝子(Ben−Bassat、J.Bacteriol.169、751−57、1987)、およびpBR327の複製起点(Bolivar、Gene 2、95−113、1977)を含む。上記のリクラックプロモーター(米国特許第5,212,091号を参照のこと)をpMON9197に挿入し、本来のtacプロモーターと交換して、プラスミドpMON26335を産生した。
【0060】
上記のリクラックプロモーター(米国特許第5,212,091号)は、ala−TFPI遺伝子の転写を指向するために用いられる。上記のリボソーム結合部位は、バクテリオファージT7の第10遺伝子から得られる。上記の転写ターミネーターは標準のターミネーター配列に基づき、そして2254とよばれる。上記の複製起点はpBR322に由来する。産生プラスミドのコピー数のより良い制御のために、pBR322由来のrop遺伝子(Polisky、Cell 55、929−32,1988)をpMON26335に挿入し、結果としてプラスミドpMON26335rop+を得た。pMON37621の構築の最終工程は、バクテリオファージP22ターミネーターを、2254とよばれる転写ターミネーター(配列番号42;米国出願番号第09/044,369号の配列番号3を参照のこと)と置換することであった。プラスミドpMON37621はまた、宿主にストレプトマイシンおよびスペクチノマイシンへの耐性を与えるアミノグリコシドヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子、ならびにN末端メチオニンの除去を亢進させるためのE.coliメチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)遺伝子を保有する。
【0061】
(製造株MON210/pMON37621の調製)
製造株MON210/pMON37621は、MON210にpMON37621を形質転換することで産生される。形質転換は、当該分野で公知の任意の手段によって達成され得る。形質転換されたMON210/pMON37621のグリセロールストックが調製され得、そして保存用細胞バンクおよび作業用細胞バンクの樹立に用いられ得る。
【0062】
(保存用細胞バンクおよび作業用細胞バンクの調製)
保存用細胞バンクおよび作業用細胞バンクは、以下のように、製造株から調整される。保存用細胞バンクの調製のためには、親MON210/pMON37621の凍結バイアルを解凍し、そして、スペクチノマイシンを含む、規定された産生播種培地内で、約9世代、振盪フラスコ内で増殖させる。次いで、10%のグリセロールを含む細胞のバイアルを凍結してよく、そして−70℃にて維持してよい。作業用細胞バンクは、保存用ストックバイアルを解凍し、そして保存用細胞バンクについて記述したように細胞を増殖させることで調製し得る。
【0063】
(発酵条件)
製造発酵プロセスは、3つの工程を含む:(1)種1振盪フラスコ、(2)種2発酵槽、および(3)10,000L生産発酵槽。この発酵プロセスの間に用いられる培養液の組成を、表3に収載する。KOHおよびH2SO4が、種1培養液および種2培養液の培養液pHを合わせるために用いられる。NH4OHおよびH2SO4が、発酵槽の培養液のpHを合わせるために用いられる。NH4OHはまた、発酵の間にpHを制御するためにも用いられる。
【0064】
USP精製水を、発酵プロセスを通して用いる。選択的抗生物質であるスペクチノマイシンを、作業用細胞バンクの調製中に用い、そして種菌の調製または発酵プロセスの間には用いない。
【0065】
【表3】
1上記の発酵槽の最初の体積は6400Lである。
2最初の実際のグルコース濃度は、セレローズの含水量(9%未満)に起因して34〜42g/Lである。
3最初に加えられた3.5LのUcon消泡剤。さらなる消泡剤(12.5Lまで)が、発酵の間に加えられ得る。
【0066】
(種1−振盪フラスコ)
上記の発酵プロセスは、作業用細胞バンクの凍結バイアルの解凍から始まる。このバイアル(1mL)の中身を、種1振盪フラスコ内の0.5Lの種1培養液の接種に用いる。このフラスコを、37±2℃でインキュベートし、そして200RPMで混ぜる。この培養物は、細胞濃度が0.9〜1.7ODに達するまで、約9世代間増殖させられる。次いで上記の種1培養物を、種2発酵槽に移す。
【0067】
(種2−30L発酵槽)
30Lの種2培養液に、種1培養物の0.5L容量を接種する。上記の種2培養液は、基本的に種1培養液と同一であるが、0.1mL/LのUcon消泡剤を添加している点で異なる。上記の種2発酵は、好ましくは、37±2℃の温度で、6±2LPMの空気散布と共に行われる。上記の培養液の最初のpHは、好ましくは7.2±0.2である。
【0068】
細胞が、0.9〜1.7ODの濃度まで、約6世代、増殖させられた場合、上記の種2培養物を10,000L発酵槽に移す。
【0069】
(10,000L産生発酵槽)
上記の種2発酵槽の全ての中身を、約6,400Lの産生培養液を入れた10,000L発酵槽に移す。上記の産生培養液の組成を表3に示す。上記の産生発酵槽は、以下のパラメーターについて制御される。増殖段階の温度は、好ましくは37±2℃である。温度設定値を、TFPIまたはTFPIアナログの発現の誘導の約0.5時間前に、37℃から30℃に変更し、そして発現段階の温度は、好ましくは30±2℃である。pHを、濃NH4OHの添加によって制御し、好ましくは6.9±0.2である。グルコースの最初の供給が枯渇した場合、および栄養分の供給の開始の直前において、約pH7.4±0.2までの一時的なpHの棘波が起きる。最後に、溶存酸素(好ましくは0.1〜0.5atm)は、攪拌速度、散布速度、および散布ガス中の酸素の割合の調整によって制御される。
【0070】
10,000Lの産生発酵における細胞の増殖は、開始培養液のグルコースを用いた、単純なバッチ培養として始まる。pHの7.4±0.2への増加によって示されるように、細胞密度が約40ODに達する場合、グルコースは枯渇する。このとき、グルコース/栄養素の供給を開始する。この栄養素の供給は、550g/Lのグルコース、18g/Lのポリリン酸ナトリウム、6.65g/Lの硫酸マグネシウム、および4g/Lのメチオニンを含む。栄養素の供給速度は、指数関数的に増加させる。
【0071】
細胞密度が約100ODに達する場合、上記の培養物を、TFPIまたはTFPIアナログを産生するように、IPTGの添加(例えば、1発酵ごとに187±3gのIPTG、通常の体積=9500L)によって誘導し、そして、この発現段階の間のグルコースレベルを制限するために、上記のグルコース/栄養素供給速度を減少させる。温度設定値を、上記の培養物が誘導後1時間以内に30±2℃に達するように変更する。上記の培養物を誘導後約12時間に収集する。収集時のTFPIまたはTFPIアナログの濃度は、SDS−PAGE解析によって決定されるように、約5g/LのTFPIである。
【0072】
(細胞の収集、屈折体の溶解、および発現したTFPIのリフォールディング)
(細胞の収集)
細胞の収集のために、発酵ブロスをpH5.5〜6に調整し、そして酸素およびグルコースの送達を中断する。攪拌を減少し、そしてブロス温度を5〜10℃に低下させる。キレート剤であるDTPAを、最終濃度1mMとなるように加える。上記のDTPAの添加は、クエン酸でpHを5.5〜6.0に調整したストック溶液を用いてなされる。収集培養物を、上清中の固形物の損失が最小限になるような流速で作動させたBTUX−510遠心機に送る。収集した細胞を含む固形物を、発酵槽が空になるまで、引き続いてタンクにポンプで汲み出す。精製水を、収集した細胞に、体積が約10,000リットルになるまで加え、DTPAを最終濃度が1mMとなるように加え、そして、前記に記述したように、BTUX−510遠心機を通して処理する。この洗浄工程を、全てで2回繰り返す。
【0073】
(屈折体(RB)の単離)
上記の細胞洗浄工程の後、屈折体(RB、封入体としても公知)の回収を始める。回収は、上記の固形物が宿主細胞の細片を含まない基本的にきれいな屈折体になるまで、繰り返されるホモジェナイズ、遠心分離、および上記の固形物への体積追加の工程を含む。ホモジェナイザーは、約9000psigの一定の圧力で操作し、そしてBTUX−510遠心機またはそれに相当するものは、上清中の固形物の損失が最小限になるような流速で作動させる。
【0074】
(体積の縮小)
連続的な遠心分離および体積追加プロセスの第1段階(ダイア遠心分離(diacentrifugation))の間、その体積は約5000Lから約2500Lへ減少する。遠心分離による上清は捨てられ、そして固形物を収集する。この工程および引き続く工程のためのDTPA濃度は、10mMである。
【0075】
(バッチダイア遠心分離1)
RB単離プロセスの次の工程は、バッチダイア遠心分離である。この工程の間、前工程にて調製された粗製RBスラリーを、最終的なRBスラリーが、混入する細胞性物質をほとんど含まなくなるまで、繰り返しホモジェナイズし(連続的な方法で)、そして遠心分離する(バッチ方法で)。代表的には、望ましいRB純度を達成するためには、BTUX−510遠心機またはそれに相当するものを用いた、3回のバッチ工程が用いられる。バッチダイア遠心分離のための遠心分離パラメーターは、体積の減少のために示されたパラメーターと同一である。
【0076】
(バッチダイア遠心分離2)
第2のバッチダイア遠心分離工程の最後において、望ましくない発酵不純物(例えば、核酸および金属)を除くために、クエン酸ナトリウムバッファーによる洗浄を用いる。この工程の最後において、クエン酸ナトリウムを、最終濃度150mM、pH約5.5〜6.0となるように加える。
【0077】
(バッチダイア遠心分離3)
第3のバッチダイア遠心分離工程のために、SC−35遠心機またはそれに相当するものが用いられる。バッチダイア遠心分離3は、約2500LのRBスラリー体積から始まる。上清を捨て、そして固形物を別々に収集する。この工程の間、収集される固形物の体積は、宿主細胞の不活性化前に最終体積が500Lを超えないように、最小化される。
【0078】
(宿主細胞不活性化)
前工程において収集されたRBスラリーは、残余の組換え細菌細胞(約103〜105細胞/ml)を含む。これらの生存可能な細胞を、上記のRBスラリーが容器に分配され得る前に、不活性化する。残余のE.coli細胞を、1−オクタノール(約50%の固形物を含むスラリーに対して、0.2%v/w)に5〜10℃にて30分間接触させることで、不活性化する。
【0079】
(RBスラリーの分配および貯蔵)
不活性化の後、上記のRBスラリー(「RB中間体」)を、同等の部分に分配し、凍結する。例えば、上記の不活性化したRBスラリーを、7.5Lずつのアリコートにて、−20℃未満で、都合良く凍結する。
【0080】
(溶解およびリフォールディング)
下記に記述するリフォールディング反応は、10,000Lの工業規模においても、1日で完了し得る。リフォールディング工程におけるTFPIまたはTFPIアナログの量は、20,000gである。上記のリフォールディング反応の間、TFPIまたはTFPIアナログの濃度は、2g/Lである。上記のリフォールディング化学作用は、正しいジスルフィド結合を形成するための、システインの結合および銅触媒性の酸化を含む。
【0081】
解凍したRB中間体を、6Mの尿素、2g/Lのポリリン酸、50mMのトリス、50mMのグリシンを含み、pHが10のタンクに移し、剪断ミキサーを用いてホモジェナイズし、ストックDTT溶液を添加して還元する。還元され、ホモジェナイズされたRB溶液をフォールディングタンクに移し、このフォールディングタンクは、移送後、約3.5Mの尿素、50mMのトリス、50mMのグリシン、2g/Lのポリリン酸、および1mMのDTTを含み、pHが10.2である。フォールディングは、0.2μMの塩化第二銅および0.6mMのシステインの添加によって開始される。約24時間後、10μMの塩化第二銅を加える。約1時間後、塩化マグネシウムを最終濃度が50mMとなるように加え、そして47.5%の酢酸溶液を用いて、フォールディングされたプールのpHを5.5に調整する。必要に応じて、調整したフォールディングされたプールは約2日間保持し得、このことは、上記のプールの一部を取り出し、そして次の精製工程を通してサブロット(sublot)として処理することを可能にする。
【0082】
(SP−セファロース高流速クロマトグラフィー)
SP−セファロースFF樹脂をもちいた陽イオン交換クロマトグラフィーを、最初の捕捉工程に用いる。上記のカラムの装填容量は、総タンパク質40g/Lである。上記のカラムを、20mMのクエン酸ナトリウム、3Mの尿素、pH6にて平衡化する。上記の調整したフォールディングされたプールを、デプスフィルターおよび0.45μMフィルターを通して濾過し、そして上記のカラムに注ぐ。装填後、上記のカラムを平衡化バッファーにて洗浄し、次いで中間塩洗浄(約150mMのクエン酸ナトリウム)にて洗浄する。タンパク質は、約190mMのクエン酸ナトリウムを用いて溶出される。この溶出工程の間のA280のトレースが増加したら、プール工程を開始する。このプール工程は、約3カラム容量、またはA280のトレースが基線に戻るまで続ける。溶出後、上記のカラムを0.5NのNaOH溶液にて再生し、そしてさらなるサブロットの処理のために再平衡化するか、または保存のために0.1NのNaOHにて洗浄する。タンパク質の濃度およびカラムの回復を決定するために、上記のプールの吸光度を278nmにて測定する。
【0083】
(第1の濃縮/ダイアフィルトレーション)
上記のSPのプールを、6Nの酢酸を用いてpHを4.5〜5.0に調整し、12〜14g/Lに濃縮し、そして、10kDa膜を用い、20mMの酢酸、15mMのNaCl、3Mの尿素を含み、pHが4.25の、8容積のダイアフィルトレーションバッファーにて、ダイアフィルター処理(diafilter)する。ダイアフィルター処理された溶液を上記の系から排出し、そして工程の回収率を決定するために、濃度を278nmにて決定する(代表的には、10〜12g/Lの範囲)。次いで、上記のダイアフィルター処理されたプールを0.2μmのフィルターを通して、滅菌した袋の中へ濾過し、そして、Q−セファロースHPクロマトグラフィー工程を行うまで、少なくとも3ヶ月間、2〜8℃にて維持し得る。
【0084】
(Q−セファロースHPクロマトグラフィー)
濃縮し、ダイアフィルター処理したSPのプールを、最終濃度で約4Mの尿素、20mMのNaCl、20mMのトリスとなり、pHが7.6〜8.5となるように調整し、そして、Q−セファロースHPカラムに充填する。カラムを、4Mの尿素、20mMの塩化ナトリウム、20mMのトリスを含み、pHが8であるバッファーにて平衡化する。装填後、上記のカラムを平衡化バッファーにて洗浄し、次いで、50mMの塩化ナトリウムを含む平衡化バッファーにて洗浄する。TFPIを、バッファー内での50〜80mMの塩化ナトリウムの勾配10CVを用いて溶出する。TFPIを含む画分は、適切な画分に含まれていることを確認するための、SDS PAGEによる画分解析およびHPLC解析に基づいてプールし得る。
【0085】
TFPIまたはTFPIアナログの溶出の後、上記のカラムを150mMの塩化ナトリウムバッファーにて洗浄し、次いで、0.5NのNaOHおよび1MのNaClを含む溶液にて再生する。サブロットは、上記に記述したようにカラムを平衡化した後に、処理し得る。カラムは、0.1NのNaOH内で保存し得る。上記のプールの278nmでの吸光度を、タンパク質の濃度およびカラムの回復を決定するために用いる。
【0086】
(ブチルHICクロマトグラフィー)
上記のQ−セファロースHPクロマトグラフィー工程からのプールを、2.5MのNaCl、2Mの尿素、100mMのクエン酸ナトリウム、pH6にて調整し、そしてブチル650Mカラムに装填する。装填後、上記のカラムを、3CVの1.7MのNaCl、2Mの尿素、100mMのクエン酸ナトリウム、pH6にて洗浄する。生成物を、2Mの尿素および100mMのクエン酸ナトリウムを含み、pHが6であるバッファー中で、1.7MのNaCl〜0MのNaClの勾配10CVにて溶出する。上記のカラムは、「結合および溶出」方式で操作する。画分を収集し、プール中の適切な画分の封入を確認するために、HPLC解析にて解析する。溶出後、上記のカラムを、塩を含まないバッファーにて洗浄する。カラムの再生は、0.5NのNaOHを用いて行う。さらなるサブロットを処理する場合には、上記のカラムを再平衡化してもよく、または保存のために0.1NのNaOHにて洗浄してもよい。タンパク質の濃度およびカラムの回復を決定するために、上記のプールの吸光度を278nmにて測定する。
【0087】
(SP−セファロースHPクロマトグラフィー)
カルバミル化したTFPI化学種または誤ってフォールディングしたTFPI化学種を除くために、高速陽イオン交換クロマトグラフィー工程を、洗練させる工程として用いる。上記のブチルプールを、3.9Mの尿素を含みpH5.5のバッファーにて約5倍に希釈し、導電率を2〜8℃にて約15.6にする。調整したブチルプールを、20mMのクエン酸ナトリウム、3Mの尿素、pH5.5にて平衡化したSP−セファロースHPカラムに装填する。装填後、上記のカラムを、400mMのNaCl、3Mの尿素、20mMのクエン酸ナトリウムを含み、pH5.5であるバッファー1.5CVにて洗浄する。タンパク質を、3Mの尿素、20mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5内にて400〜650mMのNaClの勾配17CVを用いて溶出する。
【0088】
上記のUV吸光度の上昇が起きた場合、画分を収集する。カルバミル化した物質、および誤ってフォールディングした物質は、溶出ピークの上昇する部分にて溶出する。タンパク質の溶出後、上記のカラムを、3Mの尿素、20mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5中の1Mの塩化ナトリウムにて、次いで0.5MのNaOHを含む溶液にて再生する。次いで、上記のカラムを洗浄し、そして0.1NのNaOH内で保存する。上記の画分は、純度を決定するために、CEX HPLCおよびSDS PAGEにて解析する。
【0089】
主要なTFPIまたはTFPIアナログを含むピークとして、含まれる物質の95%を超える部分を含む画分を、SP−セファロースHPのプールを生成するために合わせ得る。好ましくは、この画分は、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を超えるTFPIまたはTFPIアナログを含む。この精製工程の収量を決定するために、さらなる製造過程のアッセイ(278nmにおける吸光度によるタンパク質濃度)が行われ得る。
【0090】
(第2の濃縮/ダイアフィルトレーション)
第2の(最後の)濃縮/ダイアフィルトレーション工程にはまた、10kDa膜も用いる。上記のSP−セファロースHPプールを約12g/Lタンパク質まで濃縮し、そして、300mMのL−アルギニン、および20mMのクエン酸ナトリウムを含み、pH5.5であるバッファー8容量にてダイアフィルター処理する。ダイアフィルター処理した溶液を回収し、この工程の収量を決定するために、278nmにてタンパク質濃度を測定する。代表的には、最終のタンパク質濃度は、上記のユニットを流した後、約10mg/mLである。
【0091】
薬物原料は0.2μmの滅菌したフィルターを通して濾過してよく、そして、好ましくは60℃未満で、最低24ヶ月間保存され得る。
【0092】
(薬物の処方)
上記に記述された方法に従って生産されたTFPIまたはTFPIアナログは、治療的な投与に適している。好ましい実施形態において、薬学的処方物は、20mMのクエン酸ナトリウム、300mMのL−アルギニン、および5mMのL−メチオニン、pH5.5中に、0.15mgのala−TFPI/mLを含む。第60/438,519号、第60/494,577号、第60/509,260号、第60/512,090号、第60/438,524号、第60/494,547号、第60/509,276号、および第60/512,092号に開示された処方物も参照のこと。
【0093】
本開示に引用される全ての特許、特許出願、および参考文献は、本明細書において明白に、その全体が参考として援用される。上記の開示は一般に、本発明を記述する。本開示における特定の実施例は、例証のみの目的で提供され、そして本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
(アミノ酸解析およびアミノ酸組成の決定)
それぞれのロットの組換えala−TFPI(rTFPI)薬物原料の3つの複製アリコートであって、それぞれが約600ピコモル(約20μg)のタンパク質を含むアリコートを、1%のフェノールを含む、不断に沸騰したHCl100μL内にて、減圧中で110℃にて22時間、加水分解した。還元、およびシステイン残基のカルボキシメチル化の後に得られた調製物のサンプルを、同様に処理した。遊離のアミノ酸をBeckman Model 6300アミノ酸解析装置を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって分離した。この装置は、タンパク質の加水分解産物をナトリウムバッファーと共に解析するための、製品のプログラムによって操作した。カラムのニンヒドリンによる誘導体化の後、上記のアミノ酸を、570nmにて一級アミンを、または440nmにてプロリンを定量化した。このシステムの較正は、Beckmanアミノ酸標準混合物の使用を通して達成された。全てのサンプルは、内部標準としてノルロイシン(Nle)を用いて、「棘波を描いた」。
【0095】
(イオン交換法によるノルバリンおよびホモシトルリンの定量)
Beckman 6300アミノ酸解析装置を用いて、ノルバリンおよびホモシトルリンを定量化した。このとき、バリンからの、ノルバリンおよびホモシトルリンの分離を容易にするような、ナトリウムバッファー溶出プロトコール改変を使用した。この分離プロトコールにおいて、2つのバッファーを用いた:6NのHClにてpH3.75に滴定したBeckmanバッファーNa−F、および、pHも濃度も変えないBeckmanバッファーNa−D。上記のプログラムは、Na−Fを最初の溶出液として使用し、カラム温度は25℃であった。流量を40分間維持し、その間にカラムの温度を、30分間のイソクラティクな溶出の後に75℃まで上昇させた。注入後40分において、もう15分間のイソクラティクな溶出のためにNa−Dを用いた。このプログラムは、ノルバリン、バリンおよびホモシトルリンの基線分離を生じ、そして塩基性アミノ酸の分離を維持した。
【0096】
タンパク質の加水分解を、上記に記述したように行った。このシステムの較正は、Beckmanアミノ酸標準混合物の使用を通して達成された。ノルバリンは、Sigmaから入手した重量測定標準に対して定量した。ホモシトルリンは、オハイオ州のICN Biomedicalsから購入し、そして重量測定標準をシステムの較正(下記を参照のこと)のために調製した。サンプルを上記のカラムに「過度に装填し」、そしてrTFPI内にて出現率の低いアミノ酸(タンパク質1モル当たり3モル)であるヒスチジンを、タンパク質中のロイシン(ノルバリン)およびリジン(ホモシトルリン)の含有量に基づいた取り込みレベルを算出するためのサンプル内に存在するrTFPIのモル数を定義するために、定量した。
【0097】
(RP−HPLC法によるホモシトルリンの定量)
ホモシトルリンは、Waters AccQ・Tagアミノ酸解析法を用いて定量した。タンパク質を、1%のフェノールを含む6NのHCl内にて、110℃で22〜24時間加水分解し;遊離のアミノ酸を、ホウ酸塩バッファーの存在下で、高いpHにて、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)にて誘導体化した。このように、一級アミンおよび二級アミンの双方を、安定な蛍光性の誘導体に変換した。ここで、これらの蛍光性の誘導体は、逆相(RP)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した。コントロール実験から、アミノ酸アナログの25%が、酸加水分解の間にリジンに変換されることが示される。この反応を説明するために、このデータに補正因子を適用した。ノルバリンの定量の場合のように、ヒスチジンを定量してサンプル内に存在するrTFPIのモル数を定義し、このタンパク質のリジン含有量に基づいて改変のレベルを算出した。
【0098】
(エドマン分解によるN末端アミノ酸配列解析)
たくさんのバルクのrTFPI生成物のN末端配列解析を、エドマン分解によって行った。この配列解析のそれぞれのサイクルの間に、タンパク質サンプルを、揮発性の塩基、カップリング試薬(フェニルイソチオシアネート)、および無水酸に曝露して、N末端アミノ酸残基のフェニルチオヒダントイン(PTH)誘導体を放出し、このことにより、N末端において1つ残基が少ないタンパク質を産生している。遊離のPTH−アミノ酸誘導体を、逆相HPLCによって確認した。
【0099】
配列解析は、Perkin−Elmer Biosystems(PEB) Procise 494タンパク質配列決定装置によって達成した。1:10に希釈し、約50ピコモルのタンパク質を含む、それぞれのロットのrTFPIの1.5−μLアリコートを水に希釈し、そしてポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜上に直接装填した。賦形剤を除くために、ProSorbシステム(PEB)を用いた。プログラム、プロトコール、および試薬は、器具製造業者によって供給された。
【0100】
(スルフヒドリル基の還元およびカルボキシメチル化(RCM))
サンプルを、o−リングキャップを有する1.5mLの微量遠心チューブに移し、そしてSavant Speed−Vac濃縮装置での減圧遠心分離によって乾燥した。それぞれのサンプルを、0.2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、6.0Mのグアニジン塩酸塩、0.003Mのエチレンジアミン四酢酸を含み、pHが8.5である、還元およびカルボキシメチル化(RCM)バッファー250μLに溶解し、そして、ジスルフィド結合を還元するために、1.0MのDTTを15μL加えた。このチューブにアルゴンガスを流し、そして酸素を排除するためにきつく蓋をした。このサンプルを、Thermomixer内にて60℃で1時間インキュベートした。新鮮なヨウ化酢酸ナトリウム(IAA)溶液を、上記のRCMバッファーの4倍希釈のアリコート内にて調製し(0.25g/mL、1.2M)、そしてIAA溶液26μLを、それぞれのrTFPIサンプルに加えた。このチューブにアルゴンガスを流し、そして酸素を排除するためにきつく蓋をした。カルボキシメチル化反応を、室温にて、遮光して、30分間行った。反応混合液をNAP−5カラムにて脱塩した。それぞれの反応の最終生成物のアリコートを、アミノ酸解析によって、タンパク質濃度を定量した。
【0101】
(タンパク質の脱塩)
いくつかの場合において、タンパク質を、解析または酵素的消化に先立って脱塩する。Vydac C4ガードカートリッジ(4.6×20mm;粒子サイズは5ミクロン)を、賦形剤(例えば、尿素、アルギニン、またはグアニジン塩酸塩)からタンパク質を分離するために用い、この賦形剤は多くの種類の解析を妨害し得る。1〜2ミリグラムのタンパク質のサンプルを、水中に0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)(バッファーA)内で平衡化した上記のカラムに注入した。タンパク質を、上記のカートリッジから、流速毎分1.0mLにて、バッファーB(水中に80%のアセトニトリル:0.1%のTFA)の以下の勾配(終末点)にて溶出した:0分=0%B;5分=0%B;15分=90%B;18分=90%B;20分=0%B。上記の溶離液を、波長220nmで、2.0吸光度単位フルスケール(AUFS)の範囲にて、モニターした。全ての賦形剤は、溶出の最初の5分間に溶出した。rTFPIのピークを手動で収集し、そして揮発性溶媒を減圧遠心分離にて除いた。
【0102】
(エンドプロテイナーゼ消化;非還元化ペプチド断片の生成)
10μLの、ロットMAECM014由来のrTFPIを、0.8μGのAsp−N(Boehringer Mannheim)により、150μLの100mMのTris−HCl、pH6.8中で消化した。10μLのrTFPIを、1.8mMの酢酸亜鉛により、150μLの100mMのTris−HCl、pH6.8中で消化した。上記のAsp−N消化は、37℃にて18時間行った。150μLの8Mのグアニジン塩酸塩溶液の添加によって消化を終結させ、そしてサンプルを、解析前に、−80℃にて保存した。
【0103】
(トリプシン消化;RCMペプチド断片の生成)
RCM後の80μLずつのrTFPIのアリコートを、トリプシン消化のために、1.5mL微小遠心チューブに移した。Promegaブタトリプシン(20μg)を0.05M酢酸(40μL)に溶解し、そしてこのトリプシン溶液(0.5mg/mL)1.6μLを、それぞれのrTFPIサンプルに加えた。最終のrTFPI濃度は、35mMトリス(pH8)内にて0.4mg/mLであり、ここでトリプシン/TFPIの割合は1/50(w/w)であった。上記のトリプシン消化を、37℃にて18時間行った。サンプルの凍結により消化を停止させ、解析前に、−80℃にて保存した。
【0104】
(非還元的Asp−N +42/43DaペプチドのGlu−Cエンドプロテイナーゼによる予備消化)
HPLCにより単離したペプチドを、減圧遠心分離にて乾燥した。それぞれのサンプルを、pH4の30mM酢酸アンモニウム溶液50μLに再溶解した。それぞれのペプチドサンプルに、約0.5μgのエンドプロテイナーゼGlu−Cを加えた。この消化は、室温で一晩にて進めた。pH8の1MのTris−HClバッファーの添加にて、pHを8に調整し;次いで、LC−MSによる解析に先立って、1MのDTT0.5μLを60℃にて30分間用いることで、還元した。
【0105】
(還元条件下でのGlu−CペプチドのArg−Cエンドプロテイナーゼによる予備消化)
HPLCにより単離したペプチドを、減圧遠心分離にて乾燥した。消化バッファーは、150mMのTris−HClおよび15mMの塩化カルシウムで、pHは7.5であった。酵素活性化バッファーは、消化の直前に、キット(Boehringer Mannheim)にて供給される凍結乾燥された材料に300μLの水を加えて作った。エンドプロテイナーゼArg−C酵素溶液は、5μgの凍結乾燥された酵素を250μLの水の中で再構成することで調製した。それぞれのサンプルを、3μLの活性化バッファーおよび1μLのArg−C酵素溶液に加えて、7μLの消化バッファーに、再溶解した。この消化は、MALDI−TOF−MSによる解析に先立って、37℃にて2時間で進めた。
【0106】
(高速勾配LC−MS;インタクトなrTFPIの分子量の測定)
インタクトなrTFPIの分子量の測定を、Perkin−Elmer Sciex API 100質量分析計(LC−MS)とインターフェースで接続されたMichrom Ultrafast Microprotein Analyzer (UMA) HPLCシステムを用いて行った。サンプル(それぞれ約2μg)を、逆相(RP)カラム(Zorbax Cyano、1mm×150mm)に注入した。溶媒Aは、水および0.1%のTFA内に5%のアセトニトリルであり、溶媒Bは、0.09%のTFAを含むアセトニトリルであった。勾配溶出は、流速50μL/分にて、10分間に5%B〜95%Bにて行った。流出液を、フローセルの後で10:1の割合にて分配し、約5μL/分でAPI 100質量分析計のエレクトロスプレーイオン源に指向させた。上記のイオンスプレーの電圧を4.5kVに設定し、そして開口部の電圧を50ボルトに設定した。この装置は、製造業者によって供給されるポリプロピレングリコール(PPG)混合物から発生するイオンによって、較正した。
【0107】
エレクトロスプレーイオン化の間、ペプチドまたはタンパク質を、低いpHにて質量分析計のイオン源に導入する。タンパク質およびペプチド中の塩基性部分(アルギニン残基、リジン残基およびヒスチジン残基の側鎖中の窒素原子、およびN末端残基のα−アミノ基)を、種々の程度にプロトン化し、このことは結果として複数の荷電状態の分子イオン(例えば、[M+H]+および[M+2H]2+)を生じ、この荷電状態は、プロトン化のために接触しやすい部位の数に依存する。この検出器は、ソフトウェアのアルゴリズムによって分子量を計算し得る、分子イオンの電荷に対する質量の比(m/z)を記録する。この方法における上記の測定の質量の精度は、rTFPIの分子量の0.01%(±3Da)であった。
【0108】
(低速勾配LC−MS;個々のrTFPI成分のインタクトな分子量の測定)
5μgのサンプルを、逆相(RP)カラム(Zorbax Cyano、1mm×150mm)にて解析した。溶媒Aは水および0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)中の5%のアセトニトリルであって、溶媒Bは0.09%のTFAを含むアセトニトリルであった。勾配溶出は、流速50μL/分にて、30分間に27%B〜32%Bにて行った。エレクトロスプレーイオン化質量分析計の操作は、上記に記したとおりに行った。
【0109】
(非還元的ペプチド消化物のLC−MS;ペプチドの質量測定)
上記のAsp−N消化物の10μLのアリコートを、Perkin−Elmer Sciex API 100質量分析計とインターフェースで接続されたMichrom Ultrafast Microprotein Analyzer (UMA) HPLCシステムを用いたLC−MS解析に供した。サンプルを、Vydac C18、Reliasisl C18、またはZorbax Cyanoカラム(1mm×150mm、粒子サイズ5μm、および細孔サイズ300オングストローム)を用いたLC−MSのための逆相(RP)カラムに注入した。溶媒Aは水および0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)内に5%のアセトニトリルで、そして溶媒Bは0.09%のTFAを含むアセトニトリルであった。勾配溶出は、流速50μL/分にて、25分間に5〜25%の溶媒B、および30分間に25%〜36%のBにて行った。トリプシン消化物のためには、勾配溶出は、80分間に5%〜45%のBにて行った。流出液を、フローセルの後で10:1の割合で分配し、約5μL/分でAPI 100質量分析計のエレクトロスプレーイオン源に指向させた。イオンスプレー電圧を4.5kVに設定し、そして開口部の電圧を50ボルトに設定した。この装置は、製造業者によって供給されるポリプロピレングリコール(PPG)混合物から発生するイオンによって、較正した。LC−MSによる分子量測定の質量の精度は、rTFPIペプチドの質量の範囲内で、±1Daであった。
【0110】
(MALDI−TOF MS;ペプチドの正確な質量計測)
MALDI−TOF質量スペクトルは、窒素レーザー(337ナノメートル、4ナノ秒のパルス)および、遅延引き出し(delayed−extraction)イオン源を備えた、Bruker Reflex装置上にて得られた。解析のためのサンプルは、1μLのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸の飽和溶液に1μLを加えることで調製した。混合物をボルテックスし、そして1μLをサンプル標的に装填した。風乾したサンプル/マトリックス混合物を、真空ロックを用いて、質量分析計に導入した。加速電圧に20kV、リフレクトロン(reflectron)電圧に21.5kVを用いて、スペクトルを記録した。遅延性イオンの引き出しのために、サンプルプローブと抽出レンズとの間に、6kVの電位差を適用した。外部較正標準として公知のペプチドの混合物を用いて、スペクトルを較正した。遅延引き出しMALDI−TOF MSによる分子量測定の質量の精度は、外部較正を用いて±0.5Daであった。いくつかの場合において、サンプル中の公知のペプチドを用いて、スペクトルを較正した。この場合、質量の精度は、ペプチドの質量が2,000Da以下(約10ppm)の場合に、±0.02Daであった。
【0111】
(ナノES MSおよびMS/MS;ペプチド改変の同定)
特注のイオン源(Wilm and Mann、EMBL、Heidelberg、Germany)および、最新の高圧衝突セルを備えた、Perkin Elmer Sciex API−III三連四重極装置上にて、実験を行った。それぞれのサンプルの約1μLを、金で覆ったガラス毛細管針に装填し、そして立体顕微鏡を用いて、質量分析計源内に位置させた。質量スペクトルを、解析するペプチドに適したm/zの範囲にわたって、8秒/走査にて、0.1Daのステップサイズ(step size)を用いて記録した。この装置は、PPG混合物から発生するイオンを用いて較正し、このPPG混合物は製造者から供給された。
【0112】
低エネルギー衝突誘起解離直列質量スペクトル(CID−MS/MS)を、陽イオン型にて取得した。サンプルを、上記のように、MSイオン源に導入した。二次四重極を、50〜親イオンのm/zの範囲のm/zにわたって、5〜10秒/走査にて、1Daのステップサイズを用いて走査した。開口部の電位を40ボルトに設定し、そして衝突エネルギーを約60電子ボルトとした。直列質量分析において、目的の分子イオンは、ペプチドの混合物の中で、選択的に衝突セルに導入され得る。衝突セル内での不活性ガスによる衝撃は、結果として、そのペプチドのアミド結合における断片化をもたらす。衝突セル内で生成された上記の断片を、二次質量分析計にて解析する。直列の質量スペクトルは、任意の共有結合性の改変の位置を含むアミノ酸配列情報を提供する。
【0113】
(質量の割り当て;モノアイソトピック(Monosiotopic)質量)
遅延イオン引き出しMALDI−TOF MSによるペプチドの解析において、純粋なペプチドの質量スペクトルは、高い分解能にて多くのピークを有し、それぞれのピークは、特定の同位元素存在量を有するペプチドに対応する。化合物のモノアイソトピック質量は、その化合物内の元素の最も軽い安定同位体の質量(例えば、炭素は12.0000Da;98.90%の存在量)の和である。天然の存在量が1.10%である、質量が13.0034Daの炭素の安定同位体が存在するため、100以上の炭素原子を有する任意の有機化合物は、1つ以上の炭素−13異性体を有する。ペプチドの質量スペクトルの主要なイオンは、1つの水素イオンの単純な捕捉に起因する;較正ソフトウェアの使用により、炭素−12異性体への割り当てを利用することで、上記のスペクトルの構成成分のモノアイソトピック質量が得られる。同位体ピークがその異性体のレベルで分離し得た場合(例えば、より低い質量値でか、または高分解能の装置を用いることを通して)、モノアイソトピック分子質量がMS解析によって得られる。
【0114】
(質量の割り当て;平均値)
ペプチドまたはタンパク質の平均分子量は、その分子のそれぞれの元素の化学的平均質量の和である。元素の平均化学的質量は、すべての安定同位体の質量の和(例えば、炭素は12.0111Da)であり、相対的存在量として重さを計られる。モノアイソトピックピークが分離し得なかった場合(例えば、高い質量値で)、平均分子量がMS解析によって得られる。
【0115】
(実施例2)
(標準物質の薬物物質放出試験)
CEX HPLCおよびSEC HPLCにて評価した、方法Bに従って調製したrTFPIの純度および、方法Cに従って調製したrTFPIの純度の比較を、それぞれ図2および図3に示す。クーマシー染色または銀染色を用いたSDS PAGE解析を、それぞれ図4および図5に示す。これらのデータは、これらの放出アッセイによる、方法Bの薬物物質と方法Cの薬物物質との間の比較性を示す。CN HPLCによる同じ物質の比較を、図11に示す。
【0116】
(主要な成分の物理的な性質決定)
(アミノ酸組成)
方法Cに従って調製したrTFPIについて決定されたアミノ酸組成を表4に示す。アミノ酸の回収は、1分子ごとの残基に標準化した。理論的な値は、rTFPI遺伝子のヌクレオチド配列から予測した。アスパラギン酸残基およびアスパラギン残基はアスパラギン酸(Asx)として回収した;グルタミン酸残基およびグルタミン残基はグルタミン酸(Glx−全てのアミド連結は酸処理により加水分解される)として回収した。システインの値は、RCMタンパク質調製物の中のカルボキシメチル−システインの定量化によって決定した。トリプトファンは、標準の加水分解条件下では破壊されるため、決定しなかった(ND)。イソロイシンの回収は、この残基により形成される結合が、22〜24時間では部分的にしか加水分解されないため、低かった。システインの値は、上記の方法の誤差範囲内で、ヨード酢酸試薬との完全な反応性を示す。上記の2つの参照ロットのタンパク質のアミノ酸組成は、このタンパク質の予測された配列と一致する。
【0117】
【表4】
サンプルは還元し、およびカルボキシメチル化した。
結果は、タンパク質1モル当たりのアミノ酸残基のモル数として表す。
Trpは全く定量しない。
Asx=Asp+Asn;Glx=Glu+Gln
(N末端)
エドマン分解によるN末端配列解析の結果を表5に示す。示された収量は、それぞれの分解サイクルにおける、対応するPTH−アミノ酸誘導体の回収の総量である。同一性は、それぞれのサイクルにおける相対的な回収から推論した:繰り返さない残基の場合における、最大の増加;繰り返す残基の場合における、持続して高い収量(他の誘導体の大きな増加は無しで)。サイクル回収における相違は、サンプルの沈着の間の、PVDF膜上の上記の2つのロットに由来するタンパク質の回収の相違を反映する。それぞれのロットから同じ結果を得た:rTFPI遺伝子のヌクレオチド配列から予測されたものと正確に一致した、主要素をなす15残基の配列。
【0118】
【表5】
*ピコモル単位のPTH−アミノ酸としてのサイクル収量。
【0119】
(分子量)
LC−MSによるインタクトなrTFPIの解析から、それぞれのロットの主要な成分が、上記遺伝子の配列から予測される分子量(9つのジスルフィド結合を有し、理論的分子量が34,004Da)を有することが示された。このことは、上記の組換え細胞株によってタンパク質の全体が発現されることを示す。図6は、方法Bに従って調製したrTFPIロット(MAECM014)の逆重畳積分エレクトロスプレー質量スペクトル、および方法Cに従って調製したrTFPIロット(PB5806)の逆重畳積分エレクトロスプレー質量スペクトルを示す。少数のRTFPIの成分もまた観察され、そしてこれらの構造の更なる詳細は他で示す。表6には、LC−MS解析の間に観察された主要なrTFPI分子イオンの質量を収載する。
【0120】
【表6】
1質量の精度は、約±3Da。
【0121】
(一次構造)
rTFPIの全体の配列を、ロットMAECM014およびロットPB5806についての、非還元的(天然の)タンパク質のAsp−Nエンドプロテイナーゼペプチド地図の解析、ならびにLC−MSによるRCMタンパク質のトリプシンによって生じたペプチド地図の解析の併用によって、確かめた。LC−MSを用いると、従来のペプチド地図および、クロマトグラムにおけるペプチドの分子量がともに、単一の実験で得られる。Asp−Nペプチド地図およびトリプシンによって生じたペプチド地図は、一次構造を確かめるためのタンパク質配列の重複した領域に関する情報を提供した。図7は、LC−MS解析の間に記録した、ロットMAECM014およびロットPB5806の非還元的rTFPIについてのAsp−NペプチドのUVクロマトグラムを示す。表7には、測定された分子イオンのm/zと、Asp−Nペプチドについて理論的に予測されたm/z値との比較から、Asp−Nペプチド地図内で同定されたペプチドを収載する。図8は、LC−MS解析の間に記録した、ロットMAECM014およびロットPB5806のRCM rTFPIについてのトリプシンによって生じたペプチドのUVクロマトグラムを示す。表8には、測定された分子イオンのm/zと、rTFPIのトリプシンによって生じたペプチドについて理論的に予測されたm/z値との比較から、トリプシンによって生じたペプチド地図内で同定されたペプチドを収載する。Asp−Nペプチド地図およびトリプシンによって生じたペプチド地図からのLC−MS結果を合わせると、そのタンパク質配列の100%(277残基中277)の説明となり、そして双方のロットにおけるタンパク質の一次構造が確認される。
【0122】
上記のペプチド地図作製の結果は、方法Cに従って生成したrTFPIの一次構造だけでなく、カルバミル化されたrTFPI不純物の除去も確認する。方法Bの方法が用いられた場合に起きる、rTFPIへの+42Daの改変が、第3のクニッツドメイン(206〜258残基)に結合したタンパク質の領域に存在すると同定した。方法Cに従って調製したrTFPIのAsp N消化物およびトリプシンにより生ずる消化物の解析から、このドメインに対応するペプチドが、改変されていないrTFPIの理論的な質量に一致した質量を有することが示される。このことは、上記の修正された方法によって生成されたrTFPIから、カルバミル化された化学種が精製されたことを示す。さらに、この解析の間に、検出可能なレベルのホモシトルリンは見つからず、このことは、上記のrTFPIサンプル内からカルバミル化されたリジン残基がないことと矛盾しない。
【0123】
【表7】
*1500Daより少ないモノアイソトピック質量、1500Daを超える平均分子量。
HPLCのピーク4およびピーク7はそれぞれ、クニッツ領域内のジスルフィド結合で一緒にされた2つのペプチドを含んだ。
【0124】
【表8】
*1500Daより少ないモノアイソトピック質量;1500Daを超える平均分子量。
【0125】
(二次/三次構造)
rTFPIの二次/三次構造を、ロットMAECM014およびロットPB5806のAsp−Nエンドプロテイナーゼペプチド地図の解析から確認した。ここで、インタクトなクニッツドメインが認められた(図11および表8)。図9はrTFPI構造を図示し、これは3つのクニッツドメインおよびAsp−N切断部位を示す。非変性条件下にて、上記のクニッツドメイン間のAsp−N切断に起因して、7つのペプチドが認められる。これらのペプチドのうちの2つはまた、内部的にも切断されるが、結果として生じるペプチドは、ジスルフィド結合によって一緒にされる(図9)。上記のデータは、天然のタンパク質の二次/三次構造について予測されたとおり、クニッツドメイン内のジスルフィド結合の存在および、クニッツドメイン間のジスルフィド結合の非存在と矛盾しない。
【0126】
(実施例3)
(微量な成分の同定および性質決定)
(CN HPLCによる純度の評価)
方法Bに従って調製したrTFPIのCN HPLCクロマトグラム(A)と、方法Cに従って調製したrTFPIのCN HPLCクロマトグラム(B)の比較を図10に示す。このアッセイによって分離された全てのピークがrTFPIを含む。ES−MSを用いたピークの解析から、方法Bの物質は、理論的な質量を有するrTFPIを約75%、16原子質量単位だけ増加した質量を有しかつ酸化したメチオニン残基を含むと考えられるrTFPI(ピーク1)を5〜10%、および、42原子質量単位または43原子質量単位だけ増加した質量を有しかつアセチル化したリジン残基を含むと考えられるrTFPI(ピーク3)を約15%含む。方法Cに従って調製された物質は、約90%のrTFPIの主要なピーク、および酸化したメチオニン残基を含む5〜10%のrTFPI(ピーク1)を含む。前の方法とは異なり、本発明の方法では、感知できるほどのレベルのアセチル化したrTFPIを生成しないようである。本発明の方法に対する参照標準(ピーク2、図10)は小さな肩を示す。この肩は、rTFPIの主要なピークのすぐ前に溶出し、そして、以下の節にて記述する、ロイシンに対するノルバリンでの置換を含むrTFPIとして同定された。
【0127】
(ノルバリンの誤取り込みの同定)
ロイシンに対するノルバリンでの置換は、E.coliにて発現された異種タンパク質中で同定され、そしてtRNAレベルでの誤取り込みを通して生じると考えられる(Apostolら、J.Biol.Chem.272、28980−88、1997)。rTFPIは15残基のロイシン残基を含み、そしてロイシンの代わりのノルバリンの取り込みは、90位、100位、181位および191位に位置する4残基に同定された。方法Bに従って調製されたrTFPIロット(MAECM014)および方法Cに従って調製されたrTFPIロット(PB5806)の特定の部位における誤取り込みのレベルは、LC−MSの間に記録される、通常のRCM rTFPIのトリプシンにより生じるペプチドのUVピーク面積と、相当するノルバリンを含むトリプシンにより生じるペプチドのUVピーク面積との比較により推定した。ノルバリンの総量は、アミノ酸解析により定量した。
【0128】
(収集したCN HPLCの肩中のノルバリンの同定)
CN HPLCアッセイでの上記の肩中のrTFPIの平均分子量は、LC−MSによって31,989Daと同定された。この値は、rTFPIについて予測された分子量(32,004Da)よりも、15Da±3Daだけ低い。この改変の性質を同定するために、ピーク2(図10)のタンパク質を還元およびカルボキシメチル化し、そして次いで、トリプシンで消化した。このトリプシンにより生じたペプチドをLC−MSにて解析し、そして、MALDI−TOF MSによる正確な質量の測定のために収集した。収集した6つの画分の内4つは、予測された分子量よりも14Da低い、モノアイソトピック分子量を示した(表9)。このペプチドを、ナノES MS/MSおよびエドマン分解にて配列決定した。上記の改変は、90位、100位、181位および191位における予測されるロイシン残基でのノルバリンの取り込みと同定され、そして、エドマン配列解析の間のPTH−アミノ酸の保持時間によって確認された。
【0129】
【表9】
ロットPB6096のCN HPLCピーク2由来の、トリプシンにより生じたペプチドを、LC−MSにより単離した。
ノルバリンはnVと略し、そして上記のペプチド配列中にて太字体で示す。
nV100、nV90、nV181およびnV191はそれぞれ、100位、90位、181位および191位における誤取り込みを示す。
【0130】
(LC−MSによる、特定部位におけるノルバリン誤取り込みの定量)
上記のRP HPLCの肩が、ノルバリンを誤取り込みしたrTFPIの画分を含むに過ぎない可能性があったことから、方法Cに従って調製した分画していない参照物質を、ノルバリン含有ペプチドの定量について解析した。ロットPB5806を還元し、アルキル化し、そして次いでトリプシンで消化した。ノルバリン含有ペプチドの定量のために、4反復のLC−MS解析を行った。分子量の同定のために完全走査方式を用いて、そしてノルバリン含有ペプチドの検出感度の上昇のために選択イオンモニタリング(SIM)を用いて、データを取得した。
【0131】
図12Aでは、LC−MSの間の30〜60分間に記録したUVクロマトグラムを示す。約51分に溶出するピークは、平均分子量2585.2Daの、トリプシンにより生じたペプチドT(88〜108)として同定された。ペプチドT(88〜108)のSIMクロマトグラムを図12Bに示す。UV検出器によるペプチドの検出と、LC−MSの間の質量分析計での検出との間にはわずかな遅れがあり、それは、これらの2つの検出器の間を溶出液が移動するためにかかる時間に起因することに注意されたい。約48分および49分に溶出する小さなピークは、それぞれ、100位の残基にてノルバリンの誤取り込みが起きたペプチドT(88〜108)(ペプチドnV100)、および90位の残基にてノルバリンの誤取り込みが起きたペプチドT(88〜108)(ペプチドnV90)として同定された(平均分子量2571.2Da;理論的質量2571.2Da)。上記のノルバリンの取り込み部位は、エドマン分解、およびナノES MS/MS解析によって上記で同定されたrTFPIロットPB6096中のRP HPLCの肩に由来するペプチドとの比較に基づいた。
【0132】
図12CではペプチドnV100およびペプチドnV90のSIMクロマトグラムを示し、ここではこれらの2つのペプチドが明らかに観察される。ペプチドT(88〜108)、ペプチドnV100およびペプチドnV90の割合は、上記のUVクロマトグラム(図12A)でのピーク面積、および4つの別々の解析から得られる値から算出した。178残基〜196残基を含むトリプシンにより生じたペプチド内でのノルバリン置換の度合いを定量するためにも、同様の研究方法を用いた。
【0133】
表10では、4反復のLC−MS解析における、90位、100位、181位および191位の残基におけるノルバリンの誤取り込みの定量を示す。配列番号34〜39に示されるペプチドについて、215nmにおけるピーク面積を積分した。ペプチド1、ペプチド2およびペプチド3についてピーク面積を総計し、そしてその総計に対するそれぞれのピークの割合を計算して、そしてこの表に示す。同様のことをペプチド4、ペプチド5およびペプチド6について行った。ノルバリンはnVと略し、そしてペプチド配列中にて太字体で示す。誤取り込みの相対量を、ノルバリン含有ペプチドのUVピーク面積と、相当する非置換ペプチドとの比較から算出した。
【0134】
こうしたいろいろな要素を含む結果は、ノルバリン置換が、参照ロットPB5806(方法Cに従って調製された)において、90位、100位、181位および191位の残基において起きたことを示す。これらの部位における取り込みのレベルは、それぞれ3.3%、4.3%、2.8%および1.4%である。このことは、PB5806における誤取り込みのモルのレベルが、少なくとも11.8%であることと一致する。対照的に、方法Bに従って調製した参照ロット(MAECM014)におけるノルバリンの誤取り込みは、おそらく100位の残基において、極小のレベルでしか検出されず、そして0.2%未満であると推定された。
【0135】
【表10】
(アミノ酸解析による総ノルバリン誤取り込みの定量)
表11では、イオン交換アミノ酸解析による、rTFPI調製物中のノルバリン定量の結果の概略を示す。この結果は、ノルバリンとして誤取り込みされたロイシンのモルベースでの百分率として表される。この解析方法では、ロットMAECM014(方法Bの参照)のrTFPI内には、検出可能な量のノルバリンはない。しかし、方法Cの参照(PB5806)および、上記の新しい方法によって調製した他のロットは、ロイシン1モル当たり、平均で2.64%のノルバリンを含む。ロイシンに代わるノルバリンの誤取り込みがランダムに起き、そしてrTFPI分子1つごとに平均で1つのノルバリンがある場合、このことは、40%以下のrTFPI分子が1つのノルバリン置換を有することを示す。これらの結果は、上記のLC−MSのデータから生成された相対量の予測を確かなものとする。
【0136】
【表11】
(インビトロでの活性に対するノルバリン置換の影響)
表12では、方法Bに従って調製した物質に対するインビトロでのPT生物活性、および方法Cに従って調製した物質に対するインビトロでのPT生物活性の概略を示す。ノルバリンの存在は、rTFPIのインビトロでの生物学的活性に不利に影響しない。たとえ、CN HPLCの純度が実質的に上昇したとしても、PT活性は定常のままである。このことは、この異質性が、活性に極小の影響しか有しないことを示す。
【0137】
【表12】
ND、決定せず。PT活性は、コントロールに対する%として表す;放出規格は50〜150%。
【0138】
(実施例4)
(陽イオン交換HPLCによる純度評価における微量な構成要素)
図13では、SP−セファロースHPクロマトグラフィーを行う前および後のrTFPIの比較を示す。このSP−セファロースHPクロマトグラフィー工程の後で、主要なピークの純度は89%(装填)から100%(プール)に増加する。
【0139】
(実施例5)
(インタクトな分画していないrTFPI薬物物質の解析)
LC−MSによるインタクトなrTFPIの解析を、方法Cに従って調製した物質の同一性を実証するために行った。主要な構成成分の観察された質量は32,007Daである。このことは、rTFPIの理論的な質量が32,004Daであることと一致する。これらの結果は、組換え細胞株によって完全なタンパク質が発現されていることを示す。
【0140】
(低速勾配LC−MS)
分画していない、rTFPIロットMAECM014(方法Bに従って調製)、ならびにrTFPIロットPB5806、PB6096、およびPB6770(方法Cに従って調製)を、早期に溶出するピークおよび後期に溶出するピークの割り当てを確かめるために、低速勾配LC−MSにて解析した。
【0141】
図14ではLC−MSの間に記録したUVクロマトグラムを示し、ここで、早期に溶出するピークは全てのrTFPIロットにおいて観察されるが、後期に溶出するピークはMAECM014参照ロットでのみ観察される。このクロマトグラムは純度評価アッセイにより観察されたクロマトグラムと類似しているが、LC−MSによってピークがより少なくしか分解されない点で異なり、このことは、この解析において内径の小さな(microbore)カラムの方法を用いることに起因する。全てのサンプルにおける早期に溶出するピークの逆重畳積分質量スペクトルから、全てのスペクトルにおいて観察される主要な分子イオンは、メチオニンスルホキシドを含むrTFPIと一致することが決定された。
【0142】
方法Cに従って調製した物質はまた、通常のTFPIよりも28Da低い分子量を有する分子イオンも含む。このことは、TFPI分子が、予測されるロイシン残基において、一分子あたり2つの部位のノルバリンの取り込みを含むことと一致する。ロットMAECM014において後期に溶出するピークの逆重畳積分質量スペクトルから、1つの構成成分が+42/43Daの化学種であることを含むことが決定された。新たなロットのUVクロマトグラムの同一の領域に由来する逆重畳積分質量スペクトルは、+42/43Daの構成成分の量が顕著に少ないことを示す。この知見は、アセチル化したrTFPIが、方法Bに従って調製した参照物質には同定されるが、方法Cに従って調製した物質には同定されないことと一致する。
【0143】
(高速勾配LC−MS)
方法Bの参照の質量スペクトルは、通常のrTFPIよりも+42/43Da高い分子量を有する微量の成分を示す(約15%の相対存在量)。Asp−NおよびArg−Cによる連続的な消化によってrTFPIロットMAECM014から単離された2つの微量なペプチドを、MALDI−TOF MSによる正確な質量測定および、ナノES MS/MSによる配列解析に基づき、アセチル化したペプチドとして同定した(
【0144】
【化1】
、配列番号40、および
【0145】
【化2】
、配列番号41)。この単離したペプチドでは、+42Daの(アセチル化した)改変を有するインタクトなrTFPIロットMAECM014における、+42/43Daの化学種の割合が同定されていない。しかし、CEX−HPLCおよび、上記の低速勾配LC−MSからのデータと総合すると、CN HPLCによって方法B参照ロットにおいて検出される+42/43Daの微小な成分は、主にアセチル化したrTFPIであるようである。
【0146】
(実施例6)
(E.coliタンパク質の除去)
方法Bに従って生産したrTFPI調製物中のE.coliタンパク質の相対量と、方法Cに従って生産したrTFPI調製物中のE.coliタンパク質の相対量とを比較するために、後者の方法によるサンプルを、E.coliタンパク質に対して産生した抗体を用いた抗体ELISAアッセイを用いて解析した。
【0147】
表13の結果は、この精製方法が、推定のE.coli不純物をこのアッセイにおける検出レベル未満にまで除去するのに効果的であることを示す。
【0148】
【表13】
(実施例7)
(ノルロイシン置換)
細菌性タンパク質において、メチオニンのアナログであるノルロイシンが、メチオニンの代わりになり得ることはよく立証されている。組換えタンパク質を過剰生産するようにストレスをかけられているE.coli細胞において、この置換は特に優勢であり得る。組換えala−TFPIは5つのメチオニン残基を有し、カルボキシ末端に1つを含む。本明細書にて記述される方法では、アミノ酸置換の量を増やさずに発現レベルを向上させる。
【0149】
3ロットのrTFPIを方法Cに従って調製し、そしてノルロイシン置換について試験した。結果を表14に示す。ここで、ノルロイシンは総メチオニンの百分率として表す。
【0150】
【表14】
これらの物質中のノルロイシンのレベルは、方法Bに従って調製した物質中の存在レベルよりも僅かに低かった。定量の限界は1%であり;このように、双方のレベルとも、このアッセイによる正確な定量のレベルを下回っている。
【0151】
(実施例8)
(脱アミド化の測定)
(較正用標準調製物)S−アデノシル−ホモシステイン(SAH)標準物質を、Promega SAH Stock Standard(15.1μM)を、Milli−Q水を用いて、0.625μM、1.25μM、2.50μM、および3.75μMの濃度まで希釈することで、HPLC解析のために調製した。サンプルは、HPLCによる解析以前は、2〜8℃にて保った。
【0152】
(rTFPIサンプルの調製)サンプルの調製に先立って、rTFPIのバルクの薬物物質サンプル(10.0mg/ml)を、rTFPI処方バッファーを用いて0.15mg/mlまで希釈した。次いで、それぞれのrTFPIサンプルを、30μlの5×Promega Reaction Buffer、3μlのS−アデノシル−L−メチオニン、および30μlのPIMTを含む反応混合物に、87μlのTFPIを加えることで、インキュベートのために調製した。短時間のボルテックスの後、サンプルを、30℃に維持したウォーターバスにて30分間インキュベートした。インキュベート後、それぞれのサンプルに30μlのPromega Stop Solution NRを加え、続いて短時間ボルテックスした。サンプルは、HPLCによる解析以前は、2〜8℃に保った。
【0153】
(RP−HPLC)SAHの測定は、CarlsonおよびRiggin2によって開発された、改変されたRP−HPLC方法を用いて行った。サンプルの解析は、YMC ODS−AQ 5μm、120A、4.6×250mmカラム(Waters P/N AQ12S052546WT)を装着したWaters Alliance HPLCシステムを用いて行った。溶離液Aは、25mMのKH2PO4、10mMの1−オクタンスルホン酸、および10%のメタノールからなり、一方、溶離液Bは100%メタノールとした。上記のシステムを10%の溶離液Bにて、流速1.0ml/分で平衡化した。上記のカラムを周囲温度に維持し、260nmでモニターして検出した。サンプルの注入後(SAH標準物質について40μl、およびTFPIサンプルについて100μl)、15分間にわたる溶離液Bの10〜60%の勾配、続いて90%の溶離液Bによる3分間のカラム洗浄によって、分離を達成した。次いで上記のカラムを、次の注入に先立って、9分間の最初の条件(10%の溶離液B)にて再平衡化した。
【0154】
(データ解析)SAH標準物質セットについて較正曲線を生成した後、それぞれのTFPIサンプルについて、pmol単位でSAHのレベルを決定した。次いで、それぞれのTFPIサンプルについての脱アミド化のレベルを、以下の式を用いて決定した:
脱アミド化(%)=SAH(pmol)/(注入したTFPI(pmol))×100
(rTFPI薬物生成物の安定性)表15に示すように、相対的なアミド化レベルは、保存時間および温度の関数として増加する。ロットQA0477についてのサンプルセットの安定性は、以下の終点脱アミド化レベルを示した:5.2%(−60℃、22ヶ月)、26%(+8℃、24ヶ月)、および57%(+25℃、6ヶ月)。
【0155】
(rTFPIのバルクの薬物物質の安定性)−60℃にて約24ヶ月保存した、4つのバルクの薬物のロットの解析から、脱アミド化のレベルは4.6%〜7.6%の間で変化し、平均値が5.8%であることが明らかとなった(表15)。この脱アミド化レベルは、相当する条件において保存したTFPI薬物生産物(5.2%)と極めて類似した。
【0156】
(臨床の返品のサンプル)表15に示すように、+5℃にて約2年間保存した3つの臨床の返品ロットの解析から、脱アミド化のレベルは平均15.9%であることが示された。これらの結果は、同一の条件にて保存したAnOps保持サンプル(15.4%の脱アミド化)と極めて類似した。
【0157】
【表15】
このように、Promega ISOQUANT(登録商標)による方法は単純であり、そして、rTFPIサンプル中の相対的な脱アミド化のレベルを測定する、比較的速い手段である。上記の結果から、rTFPI中の相対的な脱アミド化は保存時間および温度の関数として増加することが示され;rTFPIの臨床の返品およびAnOpsの保持サンプルが、類似した脱アミド化レベルを示し;そしてrTFPIバルク薬物物質および薬物生成物は双方とも、類似したレベルの脱アミド化を示した。
【0158】
(実施例9)
(TFPIによるプロトロンビン時間の延長の説明)―プロトロンビン時間アッセイは血漿に基づいた凝固アッセイであって、ここで凝固は、TFおよびカルシウム(インノビン(Innovin))を血漿に添加することで開始される。TFPIは、用量に依存した様式でプロトロンビン時間を延長する。TFPIまたはTFPIアナログの試験サンプルは、このアッセイにおけるTFPIまたはTFPIアナログの標準物質と比較し得る。
【0159】
(プロトコール:)全プロトロンビン時間アッセイ(PT)プログラムを、MLA Electra 9000血液凝固測定装置(coagulometer)上で実行した。反応を、血漿サンプルへμl単位のインノビンを添加した器具によって開始した。凝血塊を形成する時間を記録した。100μlの血漿に加えられた、10μlのアルギニン/リン酸バッファーは、何も加えない血漿と類似した凝固時間(それぞれ10.9秒および11.0秒)を与えた。0〜4.5μg/mlのrTFPIによる検量線を用いて、試験サンプルの活性を、rTFPI標準物質と比較した。三連の解析による平均値を、表16に示す。
【0160】
【表16】
(実施例10)
(生存調査)
新しく調製した、臨床的なグレードのrTFPI(TFPI 92)と、部分的に脱アミド化および酸化した、臨床的なグレードの物質(TFPI 78)とを比較するために、マウスの盲腸結紮および盲腸穿刺の調査を行った。このモデルは、直接的な糞便の汚染および盲腸の壊死による、複数菌の腹腔における感染および複数菌の全身性感染を引き起こし、ヒトの腹腔内敗血症をそっくりに模倣する。Opalら、Critical Care Medicine 29、13−18、2001。
【0161】
TFPIの双方の調製物は、方法Cに従って調製した。rTFPI 78、rTFPI 92、または希釈したコントロールのいずれも、48時間にわたって、盲検様式で与えた(皮下(SQ)、12時間毎×4用量)。外科的手順に先立ち、およびその48時間後に、菌血症の定量的なレベル、内毒素の定量的なレベル、およびサイトカイン(腫瘍壊死因子αおよびインターロイキン6)の定量的なレベルを決定するために、血液を得た。上記の動物を毎日観察し、そして死亡が起きたときにその死亡を記録した。実験期間の最後において、器官障害の組織学的な証拠についての検死評価、および定量的細菌学的な検死評価を、全ての動物が受けた。
【0162】
カプラン―マイヤー生存曲線を図16に示す。部分的に酸化し、脱アミド化した形のrTFPIを与えられたマウスに比べて、新たに調製したrTFPIを与えられたマウスについて、有意な生存上の利点があった。双方のrTFPIグループは、コントロールグループにおいて希釈液を与えられたマウスよりもうまくやった。予想通りに、偽手術されたマウス(盲腸の確認を含むが、結紮および穿刺は含まない外科的処置)は、7日間の調査期間の間、生存した。上記の2つのrTFPI処置したグループの間では、菌血症、内毒血症、およびサイトカイン生産の二次終点に有意差は無かった。
【0163】
この調査は、TFPIが、血液の細菌レベル、内毒素レベル、またはサイトカインレベルでは説明できない機構を通して、生存上の優位性を提供するようであることを立証する。脱アミド化、酸化したTFPIは、新たに調製したTFPIよりも低い保護しか提供しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】プラスミドpMON37621の地図。
【図2】2ロットの組換えala−TFPI(rTFPI)調製物の、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)による比較。10μgのサンプルをPharmacia Mono S 5/5陽イオン交換カラムに注ぎ、そして、30%のアセトニトリルおよび0.02Mの酢酸ナトリウム中の、0.2〜0.85Mの塩化アンモニウムの直線勾配にて分離した。カラム溶離液を214nmにおけるUV吸光度にてモニターした。上部のクロマトグラムはロットPB5806(方法C(下記に定義)に従って調製)に由来する;下部のクロマトグラムはロットMAECM014(方法B(下記に定義)に記述した方法に従って調製)に由来する。
【図3】2ロットのrTFPI調製物の、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC HPLC)による比較。10μgのサンプルをBioRad Bio−Sil SEC 250−5カラムに注ぎ、そして、40%のアセトニトリルおよび0.75%のトリフルオロ酢酸を含むイソクラティク溶離液を用いて分離した。カラム溶離液を280nmにおけるUV吸光度にてモニターした。上部のクロマトグラムはロットPB5806(方法Cに従って調製)に由来する;下部のクロマトグラムはロットNA0182(方法Bに従って調製)に由来する。
【図4】還元型のrTFPIサンプルおよび非還元型のrTFPIサンプルのSDS PAGE。サンプルを、14%トリス−グリシンゲルを用いて解析し、クーマシー染色を用いて可視化した。約3μgのサンプルを、それぞれのレーンに注いだ。レーン1〜6のサンプルの電気泳動は還元的な条件下にて行った;レーン8〜12のサンプルの電気泳動は非還元的な条件下にて行った。サンプルは以下のようにロードした:レーン1、分子量標準物質;レーン2および8、ロットNA0182(方法B(下記に定義)に従って調製)のサンプル;レーン3および9、ロットMAECM014(方法Bに従って調製)のサンプル;そして、レーン4および10、5および11、ならびに6および12、それぞれ、ロットPB5666のサンプル、ロットPB5806のサンプル、ならびにロットPB6096のサンプル(方法Cに従って調製)。
【図5】銀染色解析を用いたSDS PAGE。サンプルをDTTで還元し、そして14%トリス−グリシンゲルを用いて解析した。約0.5mgのrTFPIサンプル(方法Cに従って調製)をそれぞれのレーンに注いだ。このサンプルは、分子量標準物質(レーン1)、参照ロットPB5806(方法Cに従って調製)由来のサンプル(レーン2および3)、2ngのウシ血清アルブミン(66KDa)および0.25ngの炭酸脱水酵素(31KDa)(レーン4)、5ngのウシ血清アルブミン(66KDa)および0.25ngの炭酸脱水酵素(31KDa)(レーン5)、ならびにロットPB6636由来の3つ組のサンプル(レーン6〜8)およびロットPB6770由来の3つ組のサンプル(レーン9〜11)(方法Cに従って調製)を含んだ。レーン12はブランクである。
【図6】インタクトなタンパク質の分子量を示す、逆重畳積分エレクトロスプレー質量スペクトル。図6A、rTFPIロットMAECM014(方法Bに従って調製)。図6B、rTFPIロットPB5806(方法Cに従って調製)。観察される、主要成分の質量は、理論的な分子量32,004Daに一致する。
【図7】非還元型のAsp−NペプチドのLC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。ロットMAECM014由来の非還元型のサンプル(図7A)およびロットPB5806由来の非還元型のサンプル(図7B)を、Asp−N消化およびLC−MS解析に供した。同定されたピークの分子量を、表8に示す。
【図8】非還元型のAsp−NペプチドのLC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。ロットPC1058由来の非還元型のサンプルを、Asp−N消化およびLC−MS解析に供した。
【図9】RCMトリプシンペプチドのLC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。図9A、rTFPIロットMAECM014。図9B、rTFPIロットPB5806。
【図10】3つのクニッツ領域および予測されるジスルフィド結合を描いた、rTFPIのアミノ酸配列。矢印は、方法Cに従って調製したrTFPIを、非還元的な条件下でAsp−Nにて消化した結果として生じる、切断部位を示す。切断は、クニッツ領域間の、実線の矢印で示されたAsp−N部位に観察され、結果として7つの主要なペプチドを生じた。破線の矢印で示される、クニッツ領域内の切断は、結果として、互いにジスルフィド結合によって保たれるペプチドを生じた。内部的に切断されたペプチド内の切断部位における水分子の付加は、結果として分子量を、予想される非切断ペプチドよりも18Da高くした。破線の矢印で示される内部切断の特異的部位は、過去の研究に基づく。この観察されるAsp−Nペプチドは、rTFPIの予想される二次構造/三次構造に一致する。
【図11】rTFPI薬物物質のCN HPLC。図11A、方法Bに従って調製された物質。図11B、方法Cに従って調製された物質。10μgのサンプルを、Zorbax 300SB−CNカラムに注ぎ、アセトニトリルおよび0.2%のトリフルオロ酢酸を含む勾配を用いて分離した。カラム溶離液は、214nmにおけるUV吸光度を用いてモニターした。小さなピークは、酸化されたメチオニン残基を含むrTFPI(1)、ロイシンから置換されたノルバリンを含むrTFPI(2)、および、アセチル化された残基またはカルバミル化された残基を含むrTFPI(3)である。
【図12】ロットPB5806に由来するRCMトリプシンペプチドの、部分的なUVクロマトグラム。図12A、実線の矢印はノルバリン含有ペプチドを示し、破線の矢印は対応する正常なペプチドT(88−108)を示す。図12B、ペプチドT(88−108)のSIMクロマトグラムで、m/zは1293.6。図12C、ノルバリンの誤取り込みをしたペプチドT(88−108)のSIMクロマトグラムで、m/zは1286.6であって、ここで、nV90およびnV100は、それぞれ、90位の残基のノルバリンおよび100位の残基のノルバリンに対応する。
【図13】SP−セファロースHPのサンプルの、CEX−HPLCを用いた、製造過程のアッセイ。上部のサンプルは、カラムへ装填したものを表し、そして下部のサンプルは、SP−セファロースFFを用いたクロマトグラフィーを行った後の、カラムのプールを表す。
【図14】緩慢な勾配の逆相LC−MS解析の間に記録されたUVクロマトグラム。図14A、ロットMAECM014。図14B、ロットPB5806。図14C、ロットPB6096。図14D、ロットPB6770。影付きの線は、逆重畳積分質量スペクトルによって特徴付けられたUVクロマトグラムの領域を示す。初期の溶出領域は、方法Bに従って調製された物質および、方法Cに従って調製された物質中とほぼ同じ割合でメチオニンスルホキシドを含むrTFPIとして同定された。後期の溶出領域は、方法Bに従って調製された物質中でアセチル化残基を含むrTFPIとして同定された。
【図15−1】pMON9197中の発現カセットのヌクレオチド配列(上部のヌクレオチド配列は、配列番号43に示される)。この配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、Met39およびMet75の双方に翻訳開始を減少させたala−TFPI、および転写ターミネーターを含む。列の上のヌクレオチドは、pMON6875またはpMON6655内にて、そのヌクレオチドの部位に存在するヌクレオチドである。上記の置換は内部の翻訳開始を減少させるためになされ、そしてこの置換はコードされるala−TFPIタンパク質の配列に影響を及ぼさない。翻訳終止コドンの付近の、列の上のヌクレオチドは、pMON6655中のその領域に存在する。pMON6655内で用いられる終止コドンはTAGである。TAGに続く記号^^^は64ヌクレオチドの欠失を表し、この欠失はClaIの認識部位およびEcoRIの認識部位を含む。pMON6655中のHindIII部位に続く配列は、pMON9197における配列と同一(MAP遺伝子がpMON9197に挿入されることを除いて)である。
【図15−2】pMON9197中の発現カセットのヌクレオチド配列(上部のヌクレオチド配列は、配列番号43に示される)。この配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、Met39およびMet75の双方に翻訳開始を減少させたala−TFPI、および転写ターミネーターを含む。列の上のヌクレオチドは、pMON6875またはpMON6655内にて、そのヌクレオチドの部位に存在するヌクレオチドである。上記の置換は内部の翻訳開始を減少させるためになされ、そしてこの置換はコードされるala−TFPIタンパク質の配列に影響を及ぼさない。翻訳終止コドンの付近の、列の上のヌクレオチドは、pMON6655中のその領域に存在する。pMON6655内で用いられる終止コドンはTAGである。TAGに続く記号^^^は64ヌクレオチドの欠失を表し、この欠失はClaIの認識部位およびEcoRIの認識部位を含む。pMON6655中のHindIII部位に続く配列は、pMON9197における配列と同一(MAP遺伝子がpMON9197に挿入されることを除いて)である。
【図15−3】pMON9197中の発現カセットのヌクレオチド配列(上部のヌクレオチド配列は、配列番号43に示される)。この配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、Met39およびMet75の双方に翻訳開始を減少させたala−TFPI、および転写ターミネーターを含む。列の上のヌクレオチドは、pMON6875またはpMON6655内にて、そのヌクレオチドの部位に存在するヌクレオチドである。上記の置換は内部の翻訳開始を減少させるためになされ、そしてこの置換はコードされるala−TFPIタンパク質の配列に影響を及ぼさない。翻訳終止コドンの付近の、列の上のヌクレオチドは、pMON6655中のその領域に存在する。pMON6655内で用いられる終止コドンはTAGである。TAGに続く記号^^^は64ヌクレオチドの欠失を表し、この欠失はClaIの認識部位およびEcoRIの認識部位を含む。pMON6655中のHindIII部位に続く配列は、pMON9197における配列と同一(MAP遺伝子がpMON9197に挿入されることを除いて)である。
【図16】カプラン−マイヤー生存曲線。X軸、生存;Y軸、時間(時間)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む、精製された調製物であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が改変された化学種であり、ここで該改変された化学種が以下:
逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および
非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子
のうちの1種以上を含む、精製された調製物。
【請求項2】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満が酸化されている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項3】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満がカルバミル化されている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項4】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満が脱アミド化されている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項5】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約2%未満がシステイン付加物を含む、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項6】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が凝集している、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項7】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が誤ってフォールディングされている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項8】
前記多数のTFPI分子が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項9】
前記TFPIアナログ分子が、ala−TFPI分子である、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項10】
多量のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む薬学的処方物であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が改変された化学種であり、ここで、該改変された化学種が以下:
逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および
非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子
のうちの1種以上を含む、薬学的処方物。
【請求項11】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が酸化されている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項12】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満がカルバミル化されている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項13】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満が脱アミド化されている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項14】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満がシステイン付加物を含む、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項15】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が凝集している、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項16】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が誤ってフォールディングされている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項17】
前記多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子のメンバーが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するTFPI分子である、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項18】
前記多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子のメンバーが、ala−TFPI分子である、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項19】
以下を含む薬学的処方物であって:
多数のala−TFPI分子であって、ここで、該ala−TFPI分子の約12%未満が改変された化学種であり、ここで、該改変された化学種が以下:
逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたala−TFPI分子;
陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたala−TFPI分子;
Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたala−TFPI分子;
アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むala−TFPI分子;
サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したala−TFPI分子;および
非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたala−TFPI分子
の1種以上を含み、
ここで、該薬学的処方物は、20mMのクエン酸ナトリウム、300mMのL−アルギニン、および5mMのメチオニンを含み、pH5.5である、薬学的処方物。
【請求項20】
精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子を生成する方法であって、以下の工程:
(1)リファンピシン抵抗性E.coli宿主細胞内でTFPIまたはTFPIアナログを発現する工程であって、ここで、該TFPIまたは該TFPIアナログは以下の要素:
(a)転写プロモーター;
(b)該リクラック転写プロモーターに隣接した、リボソーム結合部位;
(c)該リボソーム結合部位に隣接した、該TFPIまたは該TFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;
(d)該ヌクレオチドコード配列に隣接した、転写ターミネーター;
(e)レプリコン;
(f)抗生物質耐性遺伝子;および
(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子
を含むプラスミドにコードされる工程;
(2)E.coli宿主細胞から、該TFPIまたは該TFPIアナログを含む封入体を単離する工程;
(3)該封入体から該TFPIまたは該TFPIアナログを単離して、単離されたTFPIまたはTFPIアナログを得る工程;
(4)該単離されたTFPIまたはTFPIアナログをリフォールディングして、リフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを生成する工程;
(5)Mg++の存在下で、SP−セファロース高流速クロマトグラフィーにて、該リフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程;
(6)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程;
(7)Q−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程;
(8)ブチルHICクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程;
(9)SP−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程;
(10)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が、改変されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子である、工程
を含む、方法。
【請求項21】
前記転写プロモーターがリクラックプロモーターである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リボソーム結合部位が、バクテリオファージT7の第10遺伝子に由来するリボソーム結合部位である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ヌクレオチドコード配列がala−TFPIをコードする、請求個20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヌクレオチドコード配列が配列番号44である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記転写ターミネーターが、配列番号42に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記レプリコンが、pBR322の複製起点を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記レプリコンが、pBR322由来のropコピー数制御遺伝子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記抗生物質耐性遺伝子がストレプトマイシンアデニルトランスフェラーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記N末端メチオニン除去酵素が、E.coliのメチオニンアミノペプチダーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記E.coli宿主細胞がMON210(ATCC登録番号 PTA−5564)である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
TFPI分子またはTFPIアナログ分子を精製する方法であって、該方法は以下の工程:
(1)SP−セファロース高流速クロマトグラフィーにて、組換え的に生成したTFPI分子またはTFPIアナログ分子を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程;
(2)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程;
(3)Q−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程;
(4)ブチルHICクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程;
(5)SP−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程;
(6)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が、改変されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子である、工程
を含む方法。
【請求項32】
前記SP−セファロース高流速クロマトグラフィーがMg++の存在下で行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子が酵母細胞内で生成される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子が哺乳動物細胞内で生成される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物細胞がHepG2細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物細胞がChang肝細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞がSK肝癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
TFPIまたはTFPIアナログを発現させる方法であって、以下:
(1)発酵培地内にてリファンピシン耐性E.coli宿主細胞を培養する工程であって、ここで、該E.coli宿主細胞は、以下の要素:
(a)転写プロモーター;
(b)該リクラック転写プロモーターに隣接したリボソーム結合部位;
(c)該リボソーム結合部位に隣接した、TFPIまたはTFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;
(d)該ヌクレオチドコード配列に隣接した、転写ターミネーター;
(e)レプリコン;
(f)抗生物質耐性遺伝子;および
(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子;
を有するプラスミドを含む工程
を含み、ここで、1リットルの該発酵培地は、41gのブドウ糖、2.5gの(NH4)2SO4、4.0gのポリリン酸ナトリウム、7.0gのK2SO4、1.63gのMgSO4・7H2O、2.0gのメチオニン、2.0gのグリセロール、0.5mgのH3BO4、0.5gの塩化コバルト、0.13gのCuSO4・6H2O、54.0gのFeCl3・6H2O、11.0gのMnSO4・H2O、0.5gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのNaSeO3、22.0gのZnSO4・7H2O、0.01mlの濃H2SO4、および0.55mlのUCON消泡剤を含む、方法。
【請求項40】
前記転写プロモーターがリクラックプロモーターである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記リボソーム結合部位が、バクテリオファージT7の第10遺伝子に由来するリボソーム結合部位である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ヌクレオチドコード配列がala−TFPIをコードする、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ヌクレオチドコード配列が配列番号44である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記転写ターミネーターが、配列番号42に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記レプリコンが、pBR322の複製起点を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記レプリコンが、pBR322由来のropコピー数制御遺伝子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記抗生物質耐性遺伝子がストレプトマイシンアデニルトランスフェラーゼである、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記N末端メチオニン除去酵素が、E.coliのメチオニンアミノペプチターゼである、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記E.coli宿主細胞がMON210(ATCC登録番号PTA−5564)である、請求項39に記載の方法。
【請求項1】
多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む、精製された調製物であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が改変された化学種であり、ここで該改変された化学種が以下:
逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および
非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子
のうちの1種以上を含む、精製された調製物。
【請求項2】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満が酸化されている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項3】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満がカルバミル化されている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項4】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満が脱アミド化されている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項5】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約2%未満がシステイン付加物を含む、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項6】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が凝集している、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項7】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が誤ってフォールディングされている、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項8】
前記多数のTFPI分子が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項9】
前記TFPIアナログ分子が、ala−TFPI分子である、請求項1に記載の精製された調製物。
【請求項10】
多量のTFPI分子またはTFPIアナログ分子を含む薬学的処方物であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が改変された化学種であり、ここで、該改変された化学種が以下:
逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むTFPI分子またはTFPIアナログ分子;
サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したTFPI分子またはTFPIアナログ分子;および
非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたTFPI分子またはTFPIアナログ分子
のうちの1種以上を含む、薬学的処方物。
【請求項11】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が酸化されている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項12】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満がカルバミル化されている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項13】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約9%未満が脱アミド化されている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項14】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満がシステイン付加物を含む、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項15】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が凝集している、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項16】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約3%未満が誤ってフォールディングされている、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項17】
前記多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子のメンバーが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するTFPI分子である、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項18】
前記多数のTFPI分子またはTFPIアナログ分子のメンバーが、ala−TFPI分子である、請求項10に記載の薬学的処方物。
【請求項19】
以下を含む薬学的処方物であって:
多数のala−TFPI分子であって、ここで、該ala−TFPI分子の約12%未満が改変された化学種であり、ここで、該改変された化学種が以下:
逆相クロマトグラフィーで検出されるような、酸化されたala−TFPI分子;
陽イオン交換クロマトグラフィーで検出されるような、カルバミル化されたala−TFPI分子;
Promega ISOQUANT(登録商標)キットで検出されるような、脱アミド化されたala−TFPI分子;
アミノ酸解析で決定されるような、システイン付加物を含むala−TFPI分子;
サイズ排除クロマトグラフィーで検出されるような、凝集したala−TFPI分子;および
非変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるような、誤ってフォールディングされたala−TFPI分子
の1種以上を含み、
ここで、該薬学的処方物は、20mMのクエン酸ナトリウム、300mMのL−アルギニン、および5mMのメチオニンを含み、pH5.5である、薬学的処方物。
【請求項20】
精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子を生成する方法であって、以下の工程:
(1)リファンピシン抵抗性E.coli宿主細胞内でTFPIまたはTFPIアナログを発現する工程であって、ここで、該TFPIまたは該TFPIアナログは以下の要素:
(a)転写プロモーター;
(b)該リクラック転写プロモーターに隣接した、リボソーム結合部位;
(c)該リボソーム結合部位に隣接した、該TFPIまたは該TFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;
(d)該ヌクレオチドコード配列に隣接した、転写ターミネーター;
(e)レプリコン;
(f)抗生物質耐性遺伝子;および
(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子
を含むプラスミドにコードされる工程;
(2)E.coli宿主細胞から、該TFPIまたは該TFPIアナログを含む封入体を単離する工程;
(3)該封入体から該TFPIまたは該TFPIアナログを単離して、単離されたTFPIまたはTFPIアナログを得る工程;
(4)該単離されたTFPIまたはTFPIアナログをリフォールディングして、リフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを生成する工程;
(5)Mg++の存在下で、SP−セファロース高流速クロマトグラフィーにて、該リフォールディングしたTFPIまたはTFPIアナログを精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程;
(6)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程;
(7)Q−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程;
(8)ブチルHICクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程;
(9)SP−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程;
(10)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が、改変されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子である、工程
を含む、方法。
【請求項21】
前記転写プロモーターがリクラックプロモーターである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リボソーム結合部位が、バクテリオファージT7の第10遺伝子に由来するリボソーム結合部位である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ヌクレオチドコード配列がala−TFPIをコードする、請求個20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヌクレオチドコード配列が配列番号44である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記転写ターミネーターが、配列番号42に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記レプリコンが、pBR322の複製起点を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記レプリコンが、pBR322由来のropコピー数制御遺伝子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記抗生物質耐性遺伝子がストレプトマイシンアデニルトランスフェラーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記N末端メチオニン除去酵素が、E.coliのメチオニンアミノペプチダーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記E.coli宿主細胞がMON210(ATCC登録番号 PTA−5564)である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
TFPI分子またはTFPIアナログ分子を精製する方法であって、該方法は以下の工程:
(1)SP−セファロース高流速クロマトグラフィーにて、組換え的に生成したTFPI分子またはTFPIアナログ分子を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を生成する工程;
(2)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次調製物を濃縮して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を生成する工程;
(3)Q−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの一次濃縮調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を生成する工程;
(4)ブチルHICクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの二次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を生成する工程;
(5)SP−セファロースHPクロマトグラフィーにて、該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの三次調製物を精製して、精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を生成する工程;
(6)該精製されたTFPIまたはTFPIアナログの四次調製物を濃縮して、精製されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子の二次濃縮調製物を生成する工程であって、ここで、該TFPI分子またはTFPIアナログ分子の約12%未満が、改変されたTFPI分子またはTFPIアナログ分子である、工程
を含む方法。
【請求項32】
前記SP−セファロース高流速クロマトグラフィーがMg++の存在下で行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子が酵母細胞内で生成される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記TFPI分子またはTFPIアナログ分子が哺乳動物細胞内で生成される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物細胞がHepG2細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物細胞がChang肝細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞がSK肝癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
TFPIまたはTFPIアナログを発現させる方法であって、以下:
(1)発酵培地内にてリファンピシン耐性E.coli宿主細胞を培養する工程であって、ここで、該E.coli宿主細胞は、以下の要素:
(a)転写プロモーター;
(b)該リクラック転写プロモーターに隣接したリボソーム結合部位;
(c)該リボソーム結合部位に隣接した、TFPIまたはTFPIアナログをコードするヌクレオチドコード配列;
(d)該ヌクレオチドコード配列に隣接した、転写ターミネーター;
(e)レプリコン;
(f)抗生物質耐性遺伝子;および
(g)N末端メチオニン除去酵素をコードする遺伝子;
を有するプラスミドを含む工程
を含み、ここで、1リットルの該発酵培地は、41gのブドウ糖、2.5gの(NH4)2SO4、4.0gのポリリン酸ナトリウム、7.0gのK2SO4、1.63gのMgSO4・7H2O、2.0gのメチオニン、2.0gのグリセロール、0.5mgのH3BO4、0.5gの塩化コバルト、0.13gのCuSO4・6H2O、54.0gのFeCl3・6H2O、11.0gのMnSO4・H2O、0.5gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのNaSeO3、22.0gのZnSO4・7H2O、0.01mlの濃H2SO4、および0.55mlのUCON消泡剤を含む、方法。
【請求項40】
前記転写プロモーターがリクラックプロモーターである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記リボソーム結合部位が、バクテリオファージT7の第10遺伝子に由来するリボソーム結合部位である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ヌクレオチドコード配列がala−TFPIをコードする、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ヌクレオチドコード配列が配列番号44である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記転写ターミネーターが、配列番号42に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記レプリコンが、pBR322の複製起点を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記レプリコンが、pBR322由来のropコピー数制御遺伝子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記抗生物質耐性遺伝子がストレプトマイシンアデニルトランスフェラーゼである、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記N末端メチオニン除去酵素が、E.coliのメチオニンアミノペプチターゼである、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記E.coli宿主細胞がMON210(ATCC登録番号PTA−5564)である、請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図16】
【公表番号】特表2007−528211(P2007−528211A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523168(P2006−523168)
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/000234
【国際公開番号】WO2005/019265
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(505177221)カイロン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/000234
【国際公開番号】WO2005/019265
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(505177221)カイロン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
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