説明

TIM−3、Th1特異的細胞表面分子に関連した組成物および方法

【課題】免疫応答の調節に有用な組成物および方法が必要とされる。
【解決手段】上記課題は、標的組織へのT細胞移動を促進または減少させるのに有用な組成物および方法を提供することによって解決された。抗原提示細胞(APC)活性化の促進または阻害に有用な組成物および方法もまた、提供される。本発明は、Th1細胞表面上に優先的に発現する分子であるTIM−3の機能的特徴の発見に関する。これらの方法は、癌、感染症、アレルギー、喘息、および自己免疫疾患等の障害の処置に有用である。この方法は、標的組織へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を被験体に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概ね免疫応答の調節に有用な組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、Th1特異的細胞表面分子、すなわちT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子−3(T cell Immunoglobulin and Mucin domain−containing molecule−3)(TIM−3)の機能に関係し、かつ本明細書でともに開示される標的組織へのT細胞移動およびマクロファージ活性のレベルでの免疫エフェクター細胞機能を促進および阻害する方法に関する。また、本発明は疾患、例えば癌、感染性疾患、アレルギー、喘息、および自己免疫疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ナイーブCD4+Tヘルパー細胞の活性化によって、少なくとも2種類の異なったエフェクター集団、Th1細胞およびTh2細胞の分化が生ずる。Mosmann TRら (1986) J Immunol 136:2348−57; Mosmann TRら (1996) Immunol Today 17:138−46; およびAbbas AKら (1996) Nature 383:787−793。Th1細胞は、細胞内病原体に対する細胞媒介免疫応答、遅延型過敏反応(Sher A ら (1992) Annu Rev Immunol 10:385−409)、および器官特異的自己免疫疾患の誘導に、一般に関連しているサイトカイン(インターフェロンガンマ(IFN−γ)、インターロイキン−2(IL−2)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、およびリンホトキシン)を産生する。Liblau RSら (1995) Immunol Today 16:34−38。Th2細胞は、細胞外寄生虫感染の制御に欠かすことができず、かつアトピー性およびアレルギー性疾患を促進させるサイトカイン(IL−4、IL−10、およびIL−13)を産生する。Sher Aら (1992) Annu Rev Immunol 10:385−409。疾患でのそれらの異なった役割に加えて、Th1およびTh2細胞は互いの増殖および機能を相互に調節し合う。従って、Th2細胞の優先誘導が自己免疫疾患を抑制し(Kuchroo VKら (1995) Cell 80:707−18; Nicholson LBら (1995)
Immunity 3:397−405)、Th1細胞の優先誘導が喘息、アトピー、およびアレルギーの誘導を制御することができる。Lack Gら (1994) J Immunol 152:2546−54; Hofstra CLら(1998) J
Immunol 161:5054−60。
【0003】
これらのT細胞サブセットの機能について多くの知見が得られている一方で、それらを区別する表面分子についての知見はわずかしかない。Syrbe U ら (1999)
Springer Semin Immunopathol 21:263−85。いくつかのグループは、特定のケモカインおよび共起刺激分子受容体とTh1細胞との結合を報告している。Loetscher Pら (1998) Nature 391:344−45; Bonecchi Rら (1998) J Exp Med 187:129−34; Sallusto Fら (1998) J Exp Med 187:875−83; Venkataraman Cら (2000) J Immunol 165:632−36。同様に、いくつかのグループは特定のケモカインおよび共起刺激分子受容体とTh2細胞との結合を報告している。Bonecchi Rら (1998) J Exp Med 187:129−34; Sallusto Fら (1998) J Exp Med 187:875−83; Jourdan Pら (1998) J Immunol 160:4153−57; Zingoni Aら (1998) J Immunol 161:547−51; McAdam A Jら (2000) J Immunol 165:5035−40; Lohning Mら
(1998) Proc Natl Acad Sci USA 95:6930−35。しかし、それらの分子の大部分の発現に定量的な差がある。
【0004】
Levinsonに発行された米国特許第6,084,083号は、「200遺伝子産物(200 gene product)」と呼ばれるマウスTh1制限細胞表面分子を、そのヒトホモログととともに開示している。そこでは、マウス200遺伝子産物が免疫ブロブリン(Ig)スーパーファミリーの280アミノ酸膜結合要素として開示されている。マウス200遺伝子産物のヒトホモログは、そこでは免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの301アミノ酸膜結合メンバーとして開示されている。200遺伝子および200遺伝子産物のマウスおよびヒト形態の全長ヌクレオチドおよびアミノ酸配列、200遺伝子産物に特異的な抗体、ならびに200遺伝子産物の可溶形態が開示されている。Th1制限細胞表面分子として同定されるにもかかわらず、200遺伝子の機能および200遺伝子の内因性リガンドは、米国特許第6,084,083号では開示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要約)
本発明は、分化したTh1細胞で優先的に発現する膜貫通タンパク質TIM−3の同定ならびに構造的特徴付けおよび機能的特徴付けに部分的に基づいている。TIM−3のヒト形態およびマウス形態の両方の全長ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を開示する。これらの配列を、米国特許第6,084,083号に開示されている独自に発見された200遺伝子および200遺伝子産物の対応配列と比較することで、それらの同一性が明らかとなる。しかし、驚くべきことに、TIM−3に対する抗体のインビボ投与は、ヒトの脱髄疾患である多発性硬化症のモデルとして幅広く認知されているTh1依存自己免疫疾患である実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の臨床的重症度および病理学的重症度を高める。TIM−3に対する抗体の生体内投与はまた、マクロファージの数および活性レベルをも高める。TIM−3は、マクロファージ活性化および/または機能を調整することで、自己免疫疾患の誘導に重要な役割を果たし得る。従って、TIM−3は、末梢リンパ球組織でのマクロファージの活性化および増殖に重要な役割を果たす。さらに、この明細書で開示されるように、T細胞とマクロファージとのあいだの同族相互作用は、このマクロファージの増殖および活性化に関わっている。マクロファージの増殖および活性化は、Th1細胞によって誘導され、かつTIM−3依存型である。
【0006】
本発明は、エフェクターTh1細胞上でのTIM−3発現により、標的組織へのTh1細胞移動が促進されて感染症および免疫応答が調整されるという思いがけない知見にも部分的に基づいている。この明細書でさらに開示されるように、エフェクターTh1細胞によるTIM−3依存的輸送が、TIM−3に対する抗体によって増強され得、可溶形態のTIM−3により阻害され得る。
【0007】
全長TIM−3は、IgVドメインおよびムチンドメインを含む細胞外領域、膜貫通領域、および細胞質領域を有する膜結合型タンパク質として発現すると考えられている。本発明はまた、ムチン領域および膜貫通領域が欠如しているTIM−3の二者択一的接合(alternatively spliced)変異体の発明者による驚くべき発見にも部分的に基づいている。このTIM−3二者択一的接合変異体は、可溶性TIM−3の天然に生ずる形態を表していると考えられている。
【0008】
本発明の一態様では、TIM−3に特異的に結合するモノクローナル抗体8B.2C12が提供される。本発明の別の態様では、モノクローナル抗体8B.2C12を発現するハイブリドーマ8B.2C12がまた、提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、本発明はTIM−3に対して特異的に結合するモノクローナル抗体25F.1D6を提供する。本発明の別の態様に基づいて、本発明はモノクローナル抗体25F.1D6を発現するハイブリドーマ25F.1D6も提供する。
【0010】
他の態様では、本発明は、TIM−3に特異的な前述のモノクローナル抗体を含む医薬組成物を提供する。一態様では、医薬組成物は、モノクローナル抗体8B.2C12と薬理学的に許容される担体とを含む。別の態様では、医薬組成物はモノクローナル抗体25F.1D6と薬理学的に許容される担体とを含む。
【0011】
また、TIM−3に特異的な前述のモノクローナル抗体を含む医薬組成物を調整する方法も提供する。一態様では、本発明は医薬組成物を調製する方法を提供する。この方法は、モノクローナル抗体8B.2C12を薬学的に許容される担体に配置する工程を包含する。別の態様では、本発明は医薬組成物を調製する方法を提供する。この方法は、モノクローナル抗体25F.1D6を薬学的に許容される担体に配置する工程を包含する。
【0012】
別の態様では、本発明は、標的組織で免疫応答の増強を必要としている被験体を処置する方法を提供する。この方法は、標的組織へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を前記被験体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子はTIM−3に特異的な抗体である。いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子は、TIM−3に特異的な抗体のフラグメントである。
【0013】
一実施形態では、TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ8B.2C12によって発現される抗体である。別の実施形態では、TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ25F.1D6によって発現される抗体である。
【0014】
いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子はTIM−3の細胞外領域に結合する。この明細書で開示するTIM−3の構造に従って、いくつかの実施形態では、TIM−3の細胞外領域はIgVドメインまたはそのフラグメントであり、さらにいくつかの実施形態でTIM−3の細胞外ドメインはムチンドメインまたはそのフラグメントである。
【0015】
好ましい実施形態では、被験体は癌に罹っているか、または癌に罹る危険性がある。いくつかの好ましい実施形態では、被験体は感染症に罹っているか、または感染症に罹る危険性がある。
【0016】
本発明のこの態様に基づくいくつかの実施形態において、標的組織は、脳、胸部、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胃、腸、卵巣、子宮、精巣、前立腺、骨髄、骨、筋、および皮膚からなる群から選択される。好ましい実施形態では、標的組織は中枢神経系である。
【0017】
好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0018】
また、本発明のこの態様に基づいて、いくつかの実施形態では、投与は標的組織以外の部位に対しておこなわれる。いくつかの実施形態では、投与は標的細胞に関連したリンパ節以外の部位に対しておこなわれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、投与は全身である。好ましい実施形態において、投与は静脈内投与である。
【0020】
また、いくつかの実施形態において、本発明のこの態様によれば、この方法は、被験体に対するアジュバントの投与をさらに包含する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明のこの態様に基づく方法は、被験体に対する抗腫瘍剤の投与をさらに包含する。いくつかの好ましい実施形態では、抗腫瘍剤が腫瘍特異的抗体またはその腫瘍特異的フラグメントを含む。
【0022】
この態様に基づく方法の一部として、他の薬剤を投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、方法はまた、被験体に対するサイトカインの投与をも包含する。いくつかの実施形態では、本発明のこの態様に基づく方法は、被験体に対する抗菌薬の投与をさらに包含する。いくつかの実施形態では、方法は被験体に対する抗ウイルス薬の投与をさらに包含する。いくつかの実施形態では、本発明のこの態様に基づく方法は、被験体に対する抗真菌薬の投与をさらに包含する。いくつかの実施形態では、方法は被験体に対する駆虫剤の投与をさらに包含する。
【0023】
別の態様では、本発明は腫瘍の処置を必要としている被験体を処置する方法を提供する。この態様に基づく方法は、腫瘍へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を被験体に投与する工程を包含する。
【0024】
一実施形態では、TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ8B.2C12によって発現された抗体である。別の実施形態では、TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ25F.1D6によって発現された抗体である。
【0025】
別の態様では、本発明は、感染症に対する処置を必要としている被験体を処置する方法を提供する。この態様に基づく方法は、感染症へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を前記被験体に投与する工程を包含する。
【0026】
一実施形態では、TIM−3結合分子はハイブリドーマ8B.2C12によって発現された抗体である。別の実施形態では、TIM−3結合分子はハイブリドーマ25F.1D6によって発現された抗体である。
【0027】
別の態様では、本発明は被験体の標的組織へのT細胞移動を減少させる方法を提供する。この態様に基づく方法は、被験体の標的組織へのT細胞移動を減少させるために、有効量のTIM−3リガンド結合分子を被験体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態では、TIM−3リガンド結合分子は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインを含む。一実施形態では、少なくとも1つのドメインはIgVドメインである。いくつかの実施形態では、TIM−3リガンド結合分子は可溶性TIM−3である。好ましくは、前記可溶性TIM−3は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと、免疫グロブリンの定常部H鎖またはその一部とを含む融合タンパク質である。一実施形態では、少なくとも1つのドメインはIgVドメインである。
【0028】
いくつかの実施形態において、被験体は標的組織の自己免疫疾患に対する処置を必要としている。特定の好ましい実施形態では、標的組織は、中枢神経系、膵島、および関節滑液からなる群から選択される。特定の好ましい実施形態では、自己免疫疾患は、多発性硬化症、1型真性糖尿病、および慢性関節リウマチからなる群から選択される。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は喘息またはアレルギーを処置または予防する方法を提供する。本発明のこの態様に基づく方法は、喘息またはアレルギーを処置または予防するために、被験体のT細胞でのTIM−3の活性または発現を高める工程を包含する。1実施形態において、T細胞はTh2細胞である。
【0030】
さらなる態様によれば、本発明は被験体のTh2媒介疾患を処置する方法を提供する。この方法は、Th2媒介疾患に罹った被験体のTh2細胞の表面上で、Th2媒介疾患を処置するのに有効な量のTIM−3を発現させる工程を包含する。好ましい実施形態では、Th2媒介疾患は喘息である。
【0031】
本発明の別の態様では、抗原提示細胞(APC)活性化を促進させる方法を提供する。この方法は、APCを活性化させるために、有効量のTIM−3リガンド結合分子をAPCに接触させる工程を包含する。
【0032】
いくつかの実施形態では、APCはマクロファージである。いくつかの実施形態では、APCは樹状細胞である。
【0033】
いくつかの実施形態では、TIM−3リガンド結合分子はTIM−3の細胞外領域の少なくとも1つのドメインを含む。一実施形態では、少なくとも1つのドメインはIgVドメインである。いくつかの実施形態で、TIM−3リガンド結合分子は可溶性TIM−3である。好ましくは、可溶性TIM−3は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと、免疫グロブリンの定常部H鎖またはその一部とを含む融合タンパク質である。一実施形態では、少なくとも1つのドメインは、IgVドメインである。
【0034】
別の態様によれば、本発明はAPC活性化を促進させる方法を提供する。この態様に基づく方法は、T細胞にTIM−3結合分子を接触させ、さらにAPCにT細胞を接触させてAPCを活性化させる工程を包含する。
【0035】
いくつかの実施形態では、APCはマクロファージである。いくつかの実施形態では、APCは樹状細胞である。
【0036】
いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子は、TIM−3に特異的な抗体である。一実施形態では、TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ8B.2C12によって発現される抗体である。別の実施形態ではTIM−3結合分子は、ハイブリドーマ25F.1D6によって発現される抗体である。
【0037】
いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子は、TIM−3に特異的な抗体のフラグメントである。いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子は、TIM−3の細胞外領域に結合する。
【0038】
いくつかの実施形態では、この方法は、T細胞のT細胞抗原受容体によって特異的に結合した抗原をT細胞に接触させることをさらに包含する。
【0039】
いくつかの実施形態では、この方法は、TIM−3に特異的な抗体をAPCに接触させることを、さらに包含する。
【0040】
本発明のこの態様に基づくいくつかの実施形態では、T細胞とAPCとの接触がエキソビボでおこなわれる。
【0041】
1つの好ましい実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
【0042】
本発明のさらに別の態様に基づいて、APC活性を阻害する方法が提供される。この方法は、APCの活性化を阻害するために、TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤を有効量でAPCに接触させる工程を包含する。
【0043】
いくつかの実施形態では、APCはマクロファージである。いくつかの実施形態では、APCは樹状細胞である。
【0044】
いくつかの実施形態では、TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、可溶性TIM−3である。
【0045】
いくつかの実施形態では、TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、TIM−3の細胞外領域の少なくとも1つのドメインを含む。一実施形態では、少なくとも1つのドメインはIgVドメインである。
【0046】
いくつかの実施形態では、TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンの定常部H鎖またはその一部とを含む融合タンク質である。一実施形態では、少なくとも1つのドメインはIgVドメインである。
【0047】
いくつかの実施形態では、TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でTIM−3をコードする核酸とハイブリダイゼーションする能力のあるアンチセンスポリヌクレオチドである。
【0048】
別の態様によれば、本発明は細胞内感染を処置または予防する方法をさらに提供する。この態様に基づく方法は、マクロファージ上のTIM−3リガンドにTIM−3発現細胞を接触させることで、マクロファージの活性化を促進させる工程を包含する。
【0049】
さらに別の態様によれば、本発明は癌を処置または予防する方法を提供する。この態様に基づく方法は、APC上のTIM−3リガンドにTIM−3発現細胞を接触させ、さらにAPCに癌抗原を接触させることで、前記APCの活性化を促進させる工程を包含する。
【0050】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
標的組織の免疫応答増強を必要としている被験体を処置する方法であって、
標的組織へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記TIM−3結合分子は、TIM−3に特異的な抗体である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ8B.2C12によって発現される抗体である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ25F.1D6によって発現される抗体である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記TIM−3結合分子は、TIM−3に特異的な抗体のフラグメントである、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記TIM−3結合分子は、TIM−3の細胞外領域に結合する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記TIM−3の細胞外領域は、IgVドメインまたはそのフラグメントである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記TIM−3の細胞外領域は、ムチンドメインまたはそのフラグメントである、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記被験体は、癌に罹っているか、もしくは癌に罹る危険性がある、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記被験体は、感染症に罹っているか、もしくは感染症に罹る危険性がある、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記標的組織は、脳、胸部、肺、腎臓、肝臓、膵、胃、腸、卵巣、子宮、精巣、前立腺、骨髄、骨、筋、および皮膚からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記標的組織が中枢神経系である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記被験体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記投与が前記標的組織部位以外の部位に対しておこなわれる、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記投与が前記標的組織に関連するリンパ節以外の部位に対しておこなわれる、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記投与が全身投与である、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記投与が静脈内投与である、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記被験体に対するアジュバントの投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記被験体に対する抗腫瘍剤の投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記抗腫瘍剤が腫瘍特異的抗体またはその腫瘍特異的フラグメントを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記被験体に対するサイトカインの投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記被験体に対する抗菌薬の投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記被験体に対する抗ウイルス薬の投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記被験体に対する抗真菌薬の投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記被験体に対する駆虫剤の投与をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目26)
腫瘍の処置を必要としている被験体を処置する方法であって、
該腫瘍へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を該被験体に投与することを含む、方法。
(項目27)
前記TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ8B.2C12によって発現された抗体である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ25F.1D6によって発現された抗体である、項目26に記載の方法。
(項目29)
感染症に対する処置を必要としている被験体を処置する方法であって、
該感染症へのT細胞移動を促進させるために、有効量のTIM−3結合分子を該被験体に投与することを含む、方法。
(項目30)
前記TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ8B.2C12によって発現された抗体である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記TIM−3結合分子は、ハイブリドーマ25F.1D6によって発現された抗体である、項目29に記載の方法。
(項目32)
被験体の標的組織へのT細胞移動を減少させる方法であって、
該被験体の標的組織へのT細胞移動を減少させるために、有効量のTIM−3リガンド結合分子を該被験体に投与することを含む、方法。
(項目33)
前記TIM−3リガンド結合分子は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインを含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記少なくとも1つのドメインがIgVドメインである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記TIM−3リガンド結合分子が可溶性TIM−3である、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記可溶性TIM−3は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと、免疫グロブリンの定常重鎖またはその一部とを含む融合タンパク質である項目35に記載の方法。
(項目37)
前記少なくとも1つのドメインは、IgVドメインである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記被験体は、前記標的組織の自己免疫疾患に対する処置を必要としている、項目32に記載の方法。
(項目39)
前記標的組織は、中枢神経系、膵島、および関節滑液からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目40)
前記自己免疫疾患は、多発性硬化症、1型真性糖尿病、および慢性関節リウマチからなる群から選択される、項目38に記載の方法。
(項目41)
喘息またはアレルギーを処置または予防する方法であって、喘息またはアレルギーを処置または予防するために、被験体のT細胞でのTIM−3の活性または発現を高めることを含む、方法。
(項目42)
前記T細胞がTh2細胞である、項目41の方法。
(項目43)
被験体のTh2媒介障害を処置する方法であって、
Th2媒介障害に罹った被験体のTh2細胞の表面上で、Th2媒介障害を処置するのに有効な量のTIM−3を発現させることを含む、方法。
(項目44)
前記Th2媒介障害が喘息である、項目43に記載の方法。
(項目45)
抗原提示細胞(APC)活性化を促進させる方法であって、APCを活性化させるために、有効量のTIM−3リガンド結合分子を前記APCに接触させることを含む、方法。
(項目46)
前記APCがマクロファージである、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記APCが樹状細胞である、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記TIM−3リガンド結合分子がTIM−3の細胞外領域を含む、項目45に記載の方法。
(項目49)
前記TIM−3リガンド結合分子が可溶性TIM−3である、項目45に記載の方法。
(項目50)
前記可溶性TIM−3は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと、免疫グロブリンの定常重鎖またはその一部とを含む融合タンパク質である、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記少なくとも1つのドメインがIgVドメインである、項目求50に記載の方法。
(項目52)
前記方法が細胞内感染を処置または予防する方法である、項目49に記載の方法。
(項目53)
前記方法が癌を処置または予防する方法である、項目49に記載の方法。
(項目54)
APC活性化を促進させる方法であって、
T細胞にTIM−3結合分子を接触させる工程、
APCに該T細胞を接触させて該APCを活性化させる工程、
を含む、方法。
(項目55)
前記TIM−3結合分子がTIM−3に特異的な抗体である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記TIM−3結合分子がハイブリドーマ8B.2C12によって発現される抗体である、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記TIM−3結合分子がハイブリドーマ25F.1D6によって発現される抗体である、項目54に記載の方法。
(項目58)
前記TIM−3結合分子は、TIM−3に特異的な抗体のフラグメントである、項目54に記載の方法。
(項目59)
前記TIM−3結合分子がTIM−3の細胞外領域に結合する、項目54に記載の方法。
(項目60)
前記T細胞のT細胞抗原受容体によって特異的に結合した抗原を、T細胞に接触させることをさらに含む、項目54に記載の方法。
(項目61)
TIM−3に特異的な抗体を、前記APCに接触させることを、さらに含む、項目54に記載の方法。
(項目62)
前記T細胞と前記APCとの接触がエキソビボでおこなわれる、項目54に記載の方法。
(項目63)
前記抗原が腫瘍抗原である、項目60に記載の方法。
(項目64)
マクロファージ活性化を阻害する方法であって、APCの活性化を阻害するために、TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤を有効量で該APCに接触させることを含む、方法。
(項目65)
前記TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、可溶性TIM−3である、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインを含む、項目64に記載の方法。
(項目67)
前記少なくとも1つのドメインがIgVドメインである、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤は、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンの定常重鎖またはその一部とを含む融合タンパク質である、項目64に記載の方法。
(項目69)
前記少なくとも1つのドメインがIgVドメインである、項目68に記載の方法。
(項目70)
細胞内感染を処置または予防する方法であって、
マクロファージ上のTIM−3リガンド結合分子にTIM−3発現細胞を接触させることで、マクロファージの活性化を促進させることを含む、方法。
(項目71)
癌を処置または治療する方法であって、
前記APC上のTIM−3リガンドにTIM−3発現細胞を接触させ、前記APCに癌抗原を接触させることで、該APCの活性化を促進させることを含む、方法。

【図面の簡単な説明】
【0051】
以下の図面は、説明することのみを目的として提供され、本発明の理解または実施に必要とするものではない。
【図1A】TIM−3を発現するための図示した種々の細胞型のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。Th1細胞、Th2細胞、Tc1細胞、およびTc2細胞は、TIM−3(実線)またはイソタイプ対照群(点線)に対して、ラットのモノクローナル抗体(mAb)で染色した。
【図1B】マウスTIM−3の推定アミノ酸配列(mTIM−3;配列番号2)およびヒトTIM−3の推定アミノ酸配列(hTIM−3;配列番号4)のグラフ表示および対比であり、それぞれIgV様ドメイン、ムチンドメイン、膜貫通領域、および細胞質領域が示されている。
【図1C】mTIM−3cDNA(CHOmTIM−3)またはベクター単独のいずれかでトランスフェクションされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のフローサイトメトリー分析を示す一組のグラフである。安定なピューロマイシン耐性細胞を、TIM−3(実線)またはイソタイプ対照群(点線)に対して、mAbで染色した。
【図1D】SJLマウスから分離された種々の図示細胞系統および細胞由来の全RNAを逆転写酵素−ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)分析で測定した対照群のグリセルアクデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)RNAに対するTIM−3RNAの相対的発現を示す棒グラフである。
【図2】Th1に傾いた条件およびTh2に傾いた条件のもとで、図示した種々の回数繰り返して刺激を与えた後のTh1DO11.10CD4+T細胞の表面上でのTIM−3発現(実線、特異的染色;点線、イソタイプ対照群)にIFN−γ、IL−4、およびIL−10の細胞内発現を加えたフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。
【図3A】時間経過に伴う対照群のGAPDH RNAに対するTIM−3RNAの相対的発現を示す一組の棒グラフであり、EAEを誘導するためにペプチドPLP139−151で免疫した後の図示日数で、SJLマウスから取ったリンパ節(LN)および脳細胞由来の全RNAをRT−PCR分析で測定したものである。対応する臨床疾患スコアは、示したとおりである。
【図3B】EAEを誘導するためのPLP139−151による免疫後10日目のSJLマウスの脳、リンパ節(LN),および脾臓に由来する異なる細胞群(図示)でのTIM−3発現のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである(実線、特異的染色;点線、イソタイプ対照群)。
【図4】EAEに対する抗TIM−3抗体処置の効果を示す一連の顕微鏡写真である。パネルAおよびパネルBは、臨床疾患のピーク時に免疫化後12日目の抗TIM−3処置マウスの脊髄における炎症性/脱髄性病変を示す。浸潤物は、好中球と単核細胞との混合物からなる。血管周囲フィブリン析出(矢印)は血管炎および脈管損傷を示す。完全な末梢神経根(Bの中の暗く染色された部分)の一部は右側にあり、一方その領域の中枢神経系(CNS)ミエリンの大部分は見あたらない。Mag.=411X。パネルCおよびパネルDは、移動後30日目に犠牲になった抗TIM−3処置マウスの脊髄後柱での血管周囲単核細胞浸潤に関連した広範囲な脱髄化を示す。挿入図(D):貧食されたミエリンフラグメントを持つマクロファージ(暗い点)の図面である。Mag.=137X;挿入図=411X。パネルEおよびパネルFは、免疫化後30日目に殺したイソタイプ対照群mAb処置マウスの後柱への同様な浸潤を示すもので、より少ないマクロファージとより広がった領域の完全な(暗く染色された)ミエリンとを持つ。Mag.=137X。パネルA、パネルC、およびパネルE、ヘマトキシリンおよびエオシン染色;パネルB、D、およびF、ミエリン用クルーヴァーバレラ染色。
【図5A】PLP139−151および所定の抗TIM−3または対照群の抗原(rIgG)による免疫化後10日目にSJLマウスから採取した脾細胞の、種々の図示量からなるPLP139−159(PLP)またはノイラミニダーゼ101−120(Nase)ペプチドに反応した生体外(in vitro)増殖を示す一組のグラフである。
【図5B】PLP139−151および所定の抗TIM−3または対照群の抗体(rIgG)による免疫化後10日目にSJLマウスから採取し、かつ種々の図示個体群からなる脾臓細胞のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。
【図5C】PLP139−151および所定の抗TIM−3または対照抗体(rIgG2a)による免疫後10日目にSJLマウスから採取した混合および純化脾細胞の図示個体群の増殖応答を示す棒グラフである。灰色の棒、透過性0.2μm膜によって分離した純化T細胞および非T細胞;黒色の棒、膜なし。
【図5D】5x10個のTIM−3発現PLP139−151特異的Th1 5B6細胞を0日目に注射してPLP139−151により免疫したSJLマウスから3日日に採取した脾細胞のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。レシピエントもまた、0および2日目に抗TIM−3または抗ICOS(対照)抗体を注射した。FSC、前方散乱;SSC、側方散乱。
【図6A】1×10個のTIM−3発現PLP139−151特異的Th1 5B6細胞を0日目に注射してPLP139−151により免疫したSJLマウスの脾および脳から3日日に採取したCFSE標識T細胞のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。レシピエントもまた、0および2日目に抗TIM−3、抗ICOS(対照)、または抗ICOSL(対照)抗体を注射した。
【図6B】1x10個のTIM−3発現PLP139−151特異的Th1 5B6細胞を0日目に注射してPLP139−151により免疫したSJLマウスの脾および脳から7日日に採取したCFSE標識T細胞のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。レシピエントもまた、0、2、4、および5日目に抗TIM−3、抗ICOS(対照)、または抗ICOSL(対照)抗体を注射した。
【図7】ビオチン化した可溶性TIM−3タンパク質(TIM−3Ig−ビオチン)による染色を行った場合、種々の図示細胞株(樹状細胞(DC)、マクロファージ、およびB細胞)のフローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。
【図8A】PLP139−151ペプチドにより免疫し、PBS、対照hIgG、または可溶性TIM−3融合タンパク質(mTIM−3Ig/hFcまたはmTIM−3/hFc)で10日間処置したSJLマウスから得た脾細胞の増殖を示すグラフである。
【図8B】Th1サイトカインIL2およびIFN−γの分泌に対するmTIM−3/hFcの刺激効果を示す一組のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(発明の詳細な説明)
本発明は、活性化Th1細胞の表面で選択的に発現する分子の機能的特徴の新たな認識に関する。特定の分子(ここではTIM−3と称する)のヌクレオチドおよびアミノ酸一次配列は、すでに米国特許第6,084,083号に記載されている。TIM−3が予測外にもマクロファージの活性化および増殖化に重要な役割を果たしていることが本発明によって発見された。また、驚くべきことに、マクロファージのTIM−3依存活性および拡大が予測外にもTIM−3発現T細胞とマクロファージとの間で同族の相互作用に関わっていることが、本発明によって発見された。この知見と一致して、マクロファージおよび樹状細胞を含む抗原提示細胞(APC)がTIM−3のリガンドまたは受容体を発現することが、本発明によってさらに発見された。
【0053】
TIM−3に結合する分子、例えばTIM−3に対する抗体は、驚くべきことに、マクロファージの活性化および増殖を誘導することが、本発明によって発見された。TIM−3を指向する分子の結合により誘導されたマクロファージの活性化によって、例えば、中枢神経系(CNS)内の組織を含む標的組織内へのマクロファージの移動が促進される。例えば、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)が遺伝的に発症しやすいマウス(ヒトの脳のTh1型自己免疫疾患である多発性硬化症のインビボモデル)を抗TIM−3で処置すると、結果として大量の活性化マクロファージがCNSに浸潤することを特徴とする非常に重症型のEAEを招くことが、本発明によって発見された。このように、TIM−3に対する抗体の投与は、この自己免疫疾患を改善するよりはむしろ、予想外にも悪化させた。
【0054】
従って、いくつかの局面では、本発明はAPC活性化の促進(例えば、細胞内感染、癌、および自己免疫疾患の処置または予防)に有用な方法を提供する。
【0055】
さらに意外にも、本発明に基づいてさらに発見されたことは、エフェクターTh1細胞上でTIM−3が発現することによって、標的組織へのTh1細胞の移動が促進されるということである。予測外にも、TIM−3に依存した、標的組織へのTh1細胞移動は、TIM−3に対する抗体によって増進することができる。従って、いくつかの局面では、本発明は、例えば標的組織での免疫応答の増強が求められているような場合に、該標的組織内へのT細胞の移動を促進させるのに有用な方法を提供する。
【0056】
さらに、また重要なこととして、本発明によれば、標的細胞に対するTIM−3依存性のTH1細胞移動を可溶性TIM−3によって阻害することができることを、驚くべきことに発見した。従って、いくつかの他の局面では、本発明は、標的組織、例えば自己免疫疾患の被験体の標的組織へのT細胞移動を減少させるのに有用な方法を提供する。
【0057】
本明細書で用いられるように、「TIM−3」は配列番号1(マウス)、配列番号3(ヒト)、同様にそれらのホモログ、対立遺伝子、および機能変異体、例えば配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされる遺伝子産物を示す。配列番号1のマウスのヌクレオチド配列に対応する遺伝子産物は、配列番号2である。配列番号3のヒトのヌクレオチド配列に対応する遺伝子産物は、配列番号4であり、配列番号5のヒトのヌクレオチド配列に対応する遺伝子産物は、配列番号6である。配列番号3のヌクレオチド配列は、一つの塩基、476(配列番号3ではT、また配列番号5ではG)によって、別々に決定された配列番号5のヌクレオチド配列とは異なる。このようなたった一つヌクレオチドの違いによって、コードされたアミノ酸が140番目の位置で配列番号4のL(ロイシン)から配列番号6のR(アルギニン)に変化する。図1Bに示すように、TIM−3は、膜貫通タンパク質であり、細胞外領域(シグナルペプチド、IgVドメイン、およびムチンドメインを含むもので、各々については後述する)、膜貫通領域、および細胞質領域を有する。通常、TIM−3は、活性化Th1細胞の表面で優先的に発現する。本発明のTIM−3cDNAは、以下の配列番号1、3、および5にそれぞれ示すように、寄託番号AF450241〜AF450243として、GenBankデータベースに寄託されている。本発明のTIM−3アミノ酸配列は、寄託番号AAL65156−AAL65158でGenBankデータベースに寄託されており、以下の配列番号2、4、および6にそれぞれ示す。
配列番号1−−マウスTIM−3cDNAのヌクレオチド配列
GenBank寄託番号AF450241
【0058】
【化1】


配列番号3−−ヒトTIM−3cDNA、クローン1のヌクレオチド配列
GenBank寄託番号AF450242
【0059】
【化2】

配列番号5−−ヒトTIM−3cDNA、クローン2のヌクレオチド配列
GenBank寄託番号AF450243
【0060】
【化3】

配列番号2−−マウスTIM−3のアミノ酸配列
GenBank寄託番号AAL65156
【0061】
【化4】

配列番号4−−ヒトTIM−3、クローン1のアミノ酸配列
GenBank寄託番号AAL65157
【0062】
【化5】

配列番号6−−ヒトTIM−3、クローン2のアミノ酸配列
GenBank寄託番号AAL65158
【0063】
【化6】

TIM−3の機能変異体として、分子が全長TIM−3の少なくとも一つの機能的特徴を保持しているという条件で、全長TIM−3の変異、付加、欠失、および短縮(トランケーション)を示す分子が挙げられる。例えば、細胞質ドメインの大部分または全てが欠けるようにして短縮されたTIM−3分子は、TIM−3に対するリガンドまたは受容体と結合する能力を保持すると思われる。
【0064】
本発明の特定の局面は、選択された組織へのT細胞の移動を促進する方法を含む。
【0065】
本発明の一局面では、標的組織の免疫応答増強を必要としている被験体を処置する方法を提供する。この方法は、被験体に対して有効量のTIM−3結合分子を投与して標的組織へのT細胞移動を促進することを含む。
【0066】
本発明の別の局面では、腫瘍の処置を必要としている被験体を処置する方法を提供する。本発明のこの局面に基づく方法は、腫瘍の処置を必要としている被験体に、有効量のTIM−3結合分子を投与することでその腫瘍へのT細胞の移動を促進することを含む。
【0067】
さらに別の局面では、本発明は、感染の処置を必要としている被験体を処置する方法を提供することである。本発明のこの局面に基づく方法は、感染の処置を必要としている被験体に、有効量のTIM−3結合分子を投与することでその感染へのT細胞の移動を促進することを含む。
【0068】
本明細書中で用いられるように、「処置する」および「処置」は、被験体で処置される障害または疾患の発症を防ぐために、その症状を改善するために、あるいはその進行を遅らせるかもしくは停止させるために、被験体に対して治療的介入をおこなうことを意味する。治療的介入は、処置される障害または疾患の発症を防ぐため、症状を緩和するため、またはその進行を遅らせるかもしくは停止させるために、治療上有効量の物質を投与することができる。
【0069】
本明細書中で用いられるように「被験体」は、任意の脊椎動物、好ましくはほ乳類、より好ましくはヒトを意味している。被験体の例として、ヒト、ヒト以外の霊長類、齧歯類動物、モルモット、ウサギ、羊、豚、山羊、牛、馬、犬、猫、鳥、および魚が挙げられる。
【0070】
本明細書中で用いられるように、「免疫応答の増強を必要としている被験体」とは、免疫応答の不全または欠如に関連している疾患、障害、または状態を呈するか、もしくはなり得る危険性のある被験体、あるいは免疫応答を増すことによって軽減され得る被験体をいう。免疫応答の増強を必要としている被験体は、一般的であり、当業者によって容易に認識される。若年および熟年の、慢性疾患または急性増悪(acute−on−chronic)慢性疾患の被験体、易感染性障壁であることから感染症に罹りやすい被験体(嚢胞性線維症の被験体を含む)、薬物誘発性免疫不全症の被験体、危篤状態の被験体、外科手術間近の被験体、先天性または遺伝性免疫不全症の被験体、後天性免疫不全症の被験体(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の被験体を含む)、持続感染症の被験体、細胞内感染症の被験体、および癌の被験体は、すべて免疫応答の増強を必要としている被験体である。ここに羅列したものは、代表的なものであって、いかなるかたちであれ制限するものではない。
【0071】
本明細書中で用いられるように「標的組織」とは、免疫エフェクター活性の部位を表している組織をいう。被験体のいかなる組織であっても標的組織となり得る。標的組織の例として、脳または中枢神経系、胸部、肺、腎臓、肝臓、膵(特に膵島を含む)、胃、腸、卵巣、子宮、精巣、前立腺、骨髄、骨、関節滑液、筋、および皮膚が挙げられる。代表的に、標的組織は、癌、感染症、および該組織の炎症状態に関わる状況を除けば、リンパ組織とは本来関連性のない組織である。従って、代表的ではないが、標的組織として、リンパ節、脾臓、粘膜リンパ組織(例えばパイエル斑が含まれる)、または胸腺が挙げられる。
【0072】
本明細書中で用いられるように、「TIM−3結合分子」はTIM−3に対して特異的に結合する任意の分子である。TIM−3結合分子は、低分子、ポリペプチド、抗体または抗体フラグメント、ポリヌクレオチド、多糖類を含む炭水化物、脂質、薬物、ならびにそれらの模倣体、誘導体、およびそれらの組み合わせとすることができる。TIM−3結合分子は、自然界で見つけることができ、あるいは当業者に公知の適切なインビトロ法および合成法によって誘導または合成するこができる。例えば、TIM−3結合分子は、低分子ライブラリーをTIM−3との結合能についてスクリーニングすることで同定される低分子であり得る。
【0073】
TIM−3結合分子は、ペプチドのファージディスプレイを用いての生成および同定され得る。さらに別の例として、TIM−3結合分子は、可溶性TIM−3リガンドを含むTIM−3リガンドであり得る。本明細書中で用いられるように「TIM−3リガンド」とは、TIM−3の細胞外領域に特異的に結合する一種のTIM−3結合分子をいう。TIM−3リガンドは、自然に生ずるTIM−3受容体またはTIM−3カウンターレセプターであり、免疫系の特定の細胞、例えばマクロファージおよび樹状細胞で発現されると考えられている。また、TIM−3リガンドは、T細胞上に発現したTIM−3と接触する他の特定の細胞(例えば、内皮細胞および粘膜上皮細胞など)でも発現され得ると考えられている。TIM−3によるTIM−3リガンドの結合は、TIM−3リガンドを表面に発現している細胞および/またはTIM−3を表面に発現している細胞の内部へ、信号を伝達することができる。また、TIM−3リガンドは、TIM−3への結合について、天然に生ずるTIM−3リガンドと競合する任意のTIM−3結合分子を称する。従って、TIM−3リガンドとして、限定されるものではないが、TIM−3に結合する天然型のTIM−3リガンドが含まれる。
【0074】
「可溶性TIM−3リガンド」とは、細胞膜から分離される任意の形態のTIM−3リガンドをいう。可溶性TIM−3リガンドは、C末端短縮形の全長可溶性TIM−3リガンドまたはTIM−3リガンドの膜貫通欠損型であってもよい。一実施形態では、可溶性TIM−3リガンドとは、TIM−3リガンドの少なくとも細胞外ドメインと別のポリペプチドとを含む融合タンパク質をいう。一実施形態では、可溶性TIM−3リガンドは、例えばペプチド結合を介して、IgG等の免疫グロブリンのFcフラグメントに共有結合
したTIM−3リガンドの細胞外領域を含む融合タンパク質である。
【0075】
いくつかの実施形態では、TIM−3結合分子はTIM−3に特異的な抗体またはTIM−3に特異的な抗体のフラグメントである。本明細書中で用いられるように、「TIM−3に特異的な抗体」とは、TIM−3エピープに特異的に結合する免疫グロブリンであり、この結合はTIM−3エピトープと免疫グロブリンの可変ドメインとの相互作用を介しておこなわれる。「TIM−3に特異的な抗体のフラグメント」とは、そのフラグメントが由来するインタクトな免疫グロブリンの可変ドメインとエピトープとの相互作用を介して、TIM−3エピトープに特異的に結合するTIM−3に特異的なインタクトな抗体の一部をいうこととする。また、エピトープと可変ドメインとの相互作用を介してTIM−3エピトープに特異的に結合するTIM−3に特異的なインタクトな抗体の一部分の操作された等価物も、「TIM−3に特異的な抗体のフラグメント」ということとする。当技術分野で周知のように、インタクトな抗体は、一般に、可変ドメインと少なくとも1つの定常ドメインとを有する。可変ドメインでは、重鎖および軽鎖が寄与しており、重鎖および軽鎖がともに抗原と抗体との結合に特異的な接触残基の範囲を提供している。定常ドメインは、抗原に特異的なものではなく、むしろ特定のアイソタイプの抗体すべてに多少なりとも共通しており、すなわち特定の免疫エフェクター細胞で発現するFc受容体に対する補体の結合または抗原とは無関係な抗体結合にかかわるものであってもよい。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。さらに、抗体は、ネイティブのもの、または部分的もしくは全体的に操作されて、処置される宿主の潜在的な免疫原性を減少させるものとすることができる。所定の抗原に特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生成および単離の方法は、当技術分野でかなり記載されている。例えば、KohlerおよびMilstein (1975) Nature 256:495−7; Harlow およびLane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、N.Y、現行版を参照のこと。
【0076】
TIM−3に特異的な抗体は、任意の適切な種に由来する抗体を包含することが意味される。例えば、特定の抗原に対する抗体は、適切な宿主をその抗原で免疫することで産生される。免疫される宿主は、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、およびヒトを含む様々な種から選択できる。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体を生成する方法も当技術分野では周知であり、そのような抗体の例が今日臨床で用いられている。当業者は、抗体の産生元となる種に加えて、免疫グロブリンの様々なアイソタイプまたはクラスが存在することを認識している。それらの例として、IgG、IgA、IgE、IgM、およびIgDが挙げられる。これらのクラスのなかで、さらにサブクラスまたはサブタイプが存在し、例えばヒトIgGサブタイプとしてIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が挙げられ、一方マウスIgGサブタイプとしてIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3が挙げられる。TIM−3に特異的な抗体とは、任意のアイソタイプおよびサブタイプを含むことを意味している。いくつかの実施形態では、抗体はIgGである。
【0077】
いくつかの実施形態で、TIM−3結合分子はTIM−3の細胞外領域に結合する。用語「TIM−3の細胞外領域」とは、TIM−3遺伝子産物を発現する細胞の細胞外表面に、通常は実質的に存在している発現TIM−3遺伝子産物の一部分をいう。本発明によれば、TIM−3の予測アミノ酸配列は、細胞外領域、膜貫通領域、および細胞質または細胞内領域を含む。細胞外領域は、マウスTIM−3のN末端側の191個のアミノ酸残基とヒトTIM−3のN末端側の200個のアミノ酸残基とを含むと予測され、各々に21アミノ酸からなる信号ペプチドが1つ含まれる。この信号ペプチドを、マウスTIM−3の細胞外領域は長さが170アミノ酸、またヒトTIM−3の細胞外領域は長さが179アミノ酸となるように、発現タンパク質産物から開裂することができる。
【0078】
TIM−3の細胞外領域は、少なくとも2のドメイン、すなわちIgVドメインとムチンドメインとを含むと考えられている(図1B参照)。TIM−3のIgVドメインは、免疫グロブリン可変ドメインと構造的類似性を共有しており、マウスTIM−3のアミノ酸22〜132およびヒトTIM−3のアミノ酸22〜131を占めていると考えられている。ムチンドメインは、マウスTIM−3のアミノ酸133〜191およびヒトTIM−3のアミノ酸132〜200を占めると考えられている。
【0079】
本明細書中で用いられるように、用語「IgVドメインまたはそのフラグメント」とは、TIM−3の細胞外領域の全長IgVドメイン、または宿主の免疫のための抗原として使用されるのに十分な長さのTIM−3細胞外領域の全長IgVドメインの一部分をいう。特異的抗体と接触するタンパク質抗原の線状決定基の長さが約6アミノ酸であると、一般に考えられている。このように、代表的に、フラグメントは、上述のように特定したIgVドメインに含まれる配列番号2または配列番号4にもとづいた少なくとも6個の連続したアミノ酸を含む。
【0080】
本明細書中で用いられるように、用語「ムチンドメインまたはそのフラグメント」とは、TIM−3細胞外領域の全長ムチンドメイン、または宿主を免疫する抗原として用いられるのに十分な長さのTIM−3細胞外領域の全長ムチンドメインの一部分をいう。フラグメントは、代表的に、上述のように特定したムチンドメインに含まれる配列番号2または配列番号4にもとづいた少なくとも6個の連続したアミノ酸を含む。
【0081】
本明細書中で用いられるように「有効量」とは、所望の結果または状態の発生を促進、または望まない結果または状態の発生を減少または阻害するかのいずれかにとって十分な任意の量である。いくつかの例では、所望の結果または状態は、可能な結果または状態の範囲の一端を表す理想である。そのような例で、有効量は、この有効量なしで達成または観察されるものよりも所望の理想に近い結果または状態に関連する任意の量である。従って、有効量は、所望の結果または状態の発生を促進するが、最終点を成し遂げる必要はない。
【0082】
本明細書中で用いられるように「T細胞移動」とは、Tリンパ球が免疫応答活性の部位に移動することをいう。ナイーブT細胞は、非自己抗原または「危険」信号の存在に対してそのナイーブT細胞の環境をサンプリングしながら、身体全体を循環してリンパ組織を出たり入ったりする。リンパ組織は、T細胞上に発現している抗原特異的T細胞受容体と、この受容体の同族抗原との遭遇促進を助けるのに特に適している。特化した抗原提示細胞(APC)は、リンパ組織内に集中し、抗原との相互作用およびT細胞への抗原提示に特に適応して、特定の抗原を認識するように遺伝的にプログラムされたT細胞による免疫応答を開始させる。特定の抗原との遭遇に応答してT細胞が活性化した後、T細胞が増殖して分化が起こり、サイトカイン等の種々の分泌産物および細胞関連産物を生成し、さらにその抗原に関連した組織部位に移動する。このプロセスの結果として、活性化T細胞が増殖して特定組織部位に戻る間、ナイーブT細胞がランダムに循環する。
【0083】
いくつかの実施形態では、被験体は癌に罹っているか、癌にかかる危険性がある。本明細書中で用いられるように「癌」とは、身体諸器官および系の正常な機能を妨げる制御されない細胞増殖をいう。癌に罹っている被験体は、被験体の身体に存在する客観的に測定可能な癌細胞を持つ被験体である。癌に罹る危険性のある被験体は、癌を発症しやすい被験体である。このような被験体として、癌の発症の家族歴または癌の発症に対する遺伝的素因を持つ被験体を挙げることができる。また、癌に罹る危険性のある被験体として、発癌物質に曝された事実または疑いのある被験体も挙げられ得る。
【0084】
元の場所から移動して生体器官に蔓延する癌は、罹患した器官の機能的悪化を介して被験体の死を最終的にもたらし得る。造血系の癌(例えば白血病)は、被験体の正常な造血系コンパートメントを打ち負かすことができ、それによって最終的に死をもたらす造血系障害(貧血、血小板減少、および好中球減少のかたちで)に至る。
【0085】
転移は、原発腫瘍から身体の他の部分にまで癌細胞が蔓延することで生ずる原発腫瘍の位置とは異なる癌細胞の領域である。原発腫瘍塊の診断時に、転移の存在について被験体の観察をおこなうことができる。転移は、特定の症状の観察に加え、磁気共鳴画像(MRI)走査、コンピュータ断層撮影(CT)走査、血球数および血小板数、肝機能検査、胸部X線、および骨走査を単独または組み合わせて使用することで、最もよく検出される。
【0086】
癌は、限定されるものではないが、例えば基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳およびCNS癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸および直腸癌;結合組織癌;消化器系癌;子宮体癌;食道癌;眼癌;頭部および頸部の癌;胃癌;上皮内腫瘍;腎臓癌;喉頭癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば小細胞癌および非小細胞癌);ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;メラノーマ;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(例えば唇、舌、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮癌;泌尿器系の癌、同様に他の癌腫および肉腫が挙げられる。
【0087】
いくつかの好ましい実施形態では、被験体は感染症に罹っているか、もしくは感染症に罹る危険性がある。本明細書中で用いられるように「感染症」とは、宿主内で複製する外来の生物または因子が宿主内に存在することに起因し得る疾患または症状をいう。感染症は、感染性生物または因子によって、一般に正常な粘膜または他の組織のバリアが破られることを意味する。感染症に罹った被験体は、被験体の身体に存在する客観的に測定可能な感染性生物または因子を持つ被験体である。感染症に罹る危険性のある被験体は、感染症が発症しやすい被験体である。そのような被験体は、例えば、感染性生物または因子に曝されたことを知っているか、もしくは疑いのある被験体である。また、感染症に罹る危険性のある被験体として、感染性生物または因子に対して免疫応答する能力が損なわれることに関連した症状を呈する被験体が含まれ、例えば先天性または後天性免疫欠乏の被験体、放射線療法または化学療法を受けている被験体、熱傷を負った被験体、外傷を負った被験体、外科手術または他の侵襲性の医療的または歯科的手順を受けた被験体が挙げられる。
【0088】
感染症は、関係する感染性生物または因子のカテゴリーに基づいて、細菌、ウイルス、真菌、または寄生生物に幅広く分類される。他のあまり一般的ではない種類の感染症も当技術分野で知られており、例えばリケッチア、マイコプラズマが関与する感染症、ならびにスクラピー、牛スポンジ様脳症(BSE)、およびプリオン病(クール病およびクロイツフェルト−ヤーコプ病)を引き起こす因子が挙げられる。感染を引き起こす細菌、ウイルス、真菌、および寄生生物の例は、当技術分野で周知である。感染は、急性、亜急性、慢性、または潜伏性であり、さらに限局性または全身性であり得る。さらに、感染症は、宿主内での感染生物または因子のライフサイクルの少なくとも1フェーズのあいだ、主に細胞内または細胞外のものであり得る。
【0089】
細菌は、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の両方を含む。グラム陽性細菌の例として、限定されるものではないが、パスツレラ(Pasteurella)種、スタヒロコッカス(Staphylococci)種、およびストレプトコッカス(Streptococcus)種が挙げられる。グラム陰性細菌の例として、限定されるものではないが、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)種、およびサルモネラ(Salmonella)種が挙げられる。感染性細菌の具
体例として、それに限定されるものではないが、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pyloris)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、レジオネラ菌(Legionella pneumophilia)、ミコバクテリア(Mycobacteria)種(例えば、M.ツベクロシス(M.tuberculosis)、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラ(M.intracellulare)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)(A群レンサ球菌)、ストレプトコッカスアガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群レンサ球菌)、ストレプトコッカス(Streptococcus)(ビリダン(viridans)群)糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカスボビス(Streptococcus bovis)、レンサ球菌(Streptococcus)(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター(Campylobacter)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラムルトシダ(Pasturella multocida)、(バクテロイデス(Bacteroides)種、フゾバクテリウムヌクレエータム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラスモニリフォルミス (Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、フランベジアトレポネーマ(Treponema pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)、リケッチア(Rickettsia)、およびイスラエル放線菌(Actinomyces israelii)が挙げられる。
【0090】
ヒトに感染症を引き起こすことがわかっているウイルスの例として、限定されるものではないが、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、HIV−1(HTLV−IIIともいう)、HIV−2、LAVもしくはHTLV−III/LAV、またはHIV−III等のヒト免疫不全ウイルス、さらにHIV−LP等の他の分離株;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス); フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、はしかウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイリス、およびナイロウ
イルス);アレナウイルス科(Arenaviridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae); ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvoviridae)(パルボウイルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(大部分のアデノウイルス); ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)(ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(Poxviridae)(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカブタコレラウイルス);さらに、未分類のウイルス(例えば、スポンジ様脳症の病原因子、デルタ型肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠損不随体と思われる)、非A、非B型肝炎の因子(クラスI=経腸的に伝達される;クラス2=非経口的に伝達される(すなわち、C型肝炎)、ノーウォークおよび関連ウイルス、さらにアストロウイルス)が挙げられる。
【0091】
真菌の例として、アスペルギルス(Aspergillus)種、ブラストミセスデルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、他のカンジダ種、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコックスネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマカプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、クラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ノルカジア(Nocardia)種、ニューモシスチスカリニ(Pneumocystis carinii)が挙げられる。
【0092】
寄生生物は、限定されるものではないが、血液由来および/または組織寄生生物、例えばバーベシアミクロチ(Babesia microti)、バーベシアダイベーゲンス(Babesia divergens)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、リーシュマニア(Leishmania)種、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、およびトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma gambiense)およびローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiense)(アフリカの睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi(シャーガス病))、およびトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、扁虫、線形動物が挙げられる。
【0093】
本明細書中で用いられるように、「標的組織と関連するリンパ節」とは、組織から循環しているリンパが戻ると予期されるかまたは戻ると示された任意のリンパ節または他のリンパ組織をいう。上記のように、血液内のリンパ球は、その循環をサンプル組織に残す。循環に戻るために、組織内のリンパ球はリンパ内皮を進んでリンパ循環に入り、輸入リンパ管を介して流入領域リンパ節へと流れる。リンパ節と該リンパ節が働く組織との解剖学および関連は、当業者に周知である。所定の標的組織は、複数の流入領域リンパ節を持つことができる。リンパ節の非限定的な例として、大動脈、腋窩、気管支肺、頬側、腹腔、頸部、嚢胞性、三角筋胸筋、腸骨、鎖骨下、鼡径部、肋間、内胸、頚静脈二腹筋、頚静脈肩甲舌骨筋、腰部、乳様突起、縦隔、腸間膜、後頭、傍大動脈、直腸傍、耳下腺、胸部、膝窩、大動脈前、肺、耳介後方、咽頭後方、下顎骨下、顎下、肩甲下、滑車上、扁桃、および気管支のリンパ節が挙げられる。
【0094】
同様に本発明のこの態様に基づいて、いくつかの実施形態では、上記方法は被験体に対してさらにアジュバントの投与を伴う。本明細書中で用いられるように「アジュバント」とは、免疫応答の抗原非特異性の刺激物質をいう。アジュバントの使用は、可溶性抗原に対して強い抗体応答を誘発する上で不可欠なものである(Harlow およびLane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、N.Y、現行版、本明細書により援用される)。アジュバントの全体的な作用は劇的であり、その重要性は過度に強調されることはない。アジュバントの作用は、使用される抗原の投与量をかなり少なくすることを可能とし、より持続的である抗体反応を生ずる。免疫応答の非特異的活性化は、免疫応答を得る上での成功と失敗との違いをしばしば意味する。避けるべき理由が特にない限り、アジュバントは初回注射の際に用いるべきである。ほとんどのアジュバントは、2種類の成分を取り込む。一方の成分は、急速な異化作用(例えば、リポソームまたは合成界面活性剤(Hunterら、1981))から抗原を保護するように設計される。リポソームの効果は、トラップされた分子を免疫系が認識できないことから、イムノゲンが外側の脂質層に取り込まれた場合にのみ生ずる。他方の成分は、非特異的に免疫応答を刺激する物質である。これらの物質は、リンフォカイン濃度の上昇によって作用する。リンフォカインは、抗原処理細胞の活性を直接刺激して、注射部位で局所炎症性反応を引き起こす。初期のころの研究は、加熱殺菌された菌(Dienes 1936)またはリポポリサッカライド(LPS)(Johnsonら 1956)に完全に依存していた。LPSは、かなり有毒であり、その構成成分の分析から、アジュバントとしてのその特性のほとんどがリピドAとして知られている部分であることが示されている。リピドAは、親LPS分子のより良いアジュバント特性のほとんどを保持したままでLPSよりもかなり毒性が低い合成および天然の形態で、多く入手することができる。リピドA化合物の送達は、リポソームを用いてしばしばおこなわれる。
【0095】
アジュバントとして、限定されるものではないが、ミョウバン(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム);石鹸木(キラヤ)(Q.saponaria)の樹皮から精製したサポニン、例えばQS21(HPLC分画による21番目にピークに溶出する糖脂質);アクイラバイオファーマシューティカルズ社(Aquila Biopharmaceuticals、Inc.、Worcester、MA));ポリ(ジ(カルボキシルアトフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;米国ウイルス研究所(Virus Research Institute、USA);モノホスホリルリピッドA等のリポ多糖類誘導体(MPL;リビイムノケムリサーチ社(Ribi ImmunoChem Research、Inc.、Hamilton、MT)、ムラミルジペプチド(MDP;リビ(Ribi))およびスレオニル−ムラミルジペプチド(t−MDP;リビ(Ribi));OM−174(リピドAに関連したグルコサミン二糖;OMファーマSA(OM Pharma SA、Meyrin、Switzerland))、およびリーシュマニア伸長生長因子(精製されたリーシュマニア属(Leishmania)タンパク質;コリクサコーポレーション(Corixa Corporation、 Seattle、 WA)、エマルジョン系製剤、例えば、鉱油、非鉱油、油中水形(W/O)または油中水中油形(O/W/O)エマルジョン、水中油形(O/W)エマルジョン(例えば、モンタニデ(Montanide)アジュバントのセピックISAシリーズ(Seppic ISA series));さらにPROVAX、ISCOM(混合サポニン類および脂質を含み、抗原を保持することができる細孔でウイルスサイズの粒子を形成する免疫賦活性複合体;SB−AS2)(MPLおよびQS21を含む水中油(O/W)形エマルジョンであるスミスクラインビーチャム(SmithKline Beecham)アジュバントシステムNo.2;スミスクラインビーチャムバイオロジカルズ(SmithKline Beecham Biologicals[SBB]、Rixensart、Belgium);SB−AS4(ミョウバンおよびMPLを含むスミスクラインビーチャムアジュバントシステムNo.4、SBB、ベルギー);ミセルを形成する非イオン性ブロック共重合体、例えばCRL1005(ポリオキシエチレンの鎖によって隣接された疎水性ポリオキシプロピレンの直鎖を含む;ベクセル社(Vaxcel、Inc.、Norcross、GA);およびシンテックスアジュバント製剤(SAF、Tween80および非イオン性ブロック共重合体を含む水中油(O/W)形エマルジョン;シンテックスケミカルズ社(Syntex Chemicals、Inc.、Boulder、CO)が挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明のこの態様に基づく方法は、被験体への抗腫瘍剤の投与を伴う。本明細書中で用いられるように、「抗腫瘍剤」、または同等に「制癌剤」は、癌の処置を目的として被験体に投与され因子をいう。本明細書中で用いられるように、「癌を処置する」ことは、癌発生を予防すること、癌の症状を緩和すること、および/または樹立した癌の増殖を阻害することを含んでいる。別の態様では、癌が発症する危険性を減らすことを目的として、癌を発症する危険性のある被験体に対して制癌剤を投与する。この明細書では、癌治療を目的とした様々な種類の薬剤について説明する。この明細書において、制癌剤は、化学療法剤、免疫療法剤、癌ワクチン、ホルモン療法、および生体応答修飾物質として分類される。それに加えて、本発明の方法は、本発明のTIM−3結合分子とともに複数の制癌剤を使用することを、取り入れることを意図する。一例として、必要に応じて、TIM−3結合分子を化学療法剤および免疫療法剤の両方とともに投与することができる。あるいは、制癌剤は免疫療法剤および癌ワクチン、または化学療法剤および癌ワクチン、または化学療法剤、免疫治療剤、および癌ワクチンを包含することができ、これらは癌に罹っているか、もしくは癌を発症する危険性がある一被験体を処置するために被験体に、すべて投与され得る。
【0097】
制癌剤は、様々な方法で機能する。いくつかの制癌剤は、腫瘍細胞に特有の生理学的機能を標的にして作用する。例として、癌によって変異した特定の遺伝子またはその遺伝子産物(例えば、主にタンパク質)を標的とすることが挙げられる。そのような遺伝子として、限定されるものではないが、癌遺伝子(例えば、Ras、 Her2、 bcl−2)、癌抑制遺伝子(例えばEGF、p53、Rb)、および細胞周期標的(例えばCDK4、p21、テロメラーゼ)が挙げられる。制癌剤は、癌細胞によって変えられた信号伝達経路および分子機構を交互に標的とすることができる。細胞表面上に発現したエピトープを介した癌細胞のターゲッティングは、モノクローナル抗体の使用を通じて達成される。このような後者の種類の制癌剤を、この明細書では一般的に免疫療法と呼ぶ。
【0098】
他の制癌剤は、癌細胞以外の細胞を標的とする。例えば、いくつかの薬剤(すなわち、癌ワクチン)は、免疫系が癌細胞を攻撃するように初回刺激を与える。さらに別の薬剤(脈管形成抑制薬と呼ばれる)は、固形腫瘍の血液供給を攻撃することによって機能する。最も悪性の癌が転移することができる(すなわち、原発腫瘍部位から離れ、遠位組織に播種されることで、二次性腫瘍を形成する)ので、この転移を妨げる薬剤もまた癌の処置に有用である。脈管形成抑制剤として、ベーシックFGF(b−FGF)、VEGF、アンジオポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、TNF−α、TNP−470、トロンボスポンジン−1、血小板第4因子、CAI、およびインテグリンファミリータンパク質に属する特定のものが挙げられる。この種の薬剤の1つのカテゴリーは、メタロプロテイナーゼ抑制剤であり、この薬剤は、癌細胞が原発腫瘍部位を出て別の組織に滲出する際に使用する酵素を阻害する。
【0099】
本明細書中で用いられるように、化学療法剤は、免疫療法剤または癌ワクチンのカテゴリーには分類されない他の形態の制癌剤すべてを包含する。本明細書中で用いられる化学療法剤は、化学剤および生物剤の両方を包含する。これらの薬剤の機能は、癌細胞が延命していく際に依存する細胞活性を阻害することである。化学療法剤のカテゴリーに、アルキル化/アルカロイド剤、代謝拮抗剤、ホルモンまたはホルモン類似体、および種々雑多な抗悪性腫瘍剤を含む。ほとんどは、全てではないにしても、これらの薬剤は癌細胞に対して直接毒性を示し、免疫刺激を必要としない。
【0100】
現在開発途上にあるか、もしくは臨床で使用されている化学療法剤として、限定されるものではないが、5−FUエンハンサー、9−AC、AG2037、AG3340、アグリカネース阻害剤、アミノグルテチミド、アムサクリン(Amsacrine)(m−AMSA)、脈管形成阻害剤、抗−VEGF(Anti−VEGF)、アスパラギナーゼ、アザシチジン(Azacitidine)、バチマスタート(Batimastat)(BB94)、BAY 12−9566、BCH−4556、ビス−ナフタルイミド、ブスルファン(Busulfan)、カペシタビン(Capecitabine)、カルボプラチン(Carboplatin)、カルムスタイン(Carmustaine)+ポリフェプルオサン(Polifepr Osan)、cdk4/cdk2阻害剤、クロロブシル(Chlorombucil)CI−994、シスプラチン(Cisplatin)、クラドリビン(Cladribine)、CS−682、シタラビン(Cytarabine) HCl、D2163、ダクチノマイシン(Dactinomycin)、ダウノルビシン(Daunorubicin) HCl、デポサイト(DepoCyt)、デキシホサミド(Dexifosamide)、ドセタタキセル(Docetaxel)、ドラスタイン(Dolastain)、ドキシフルリジン(Doxifluridine)、ドキソルブシン(Doxorubicin)、DX8951f、E 7070、EGFR、エピルビシン(Epirubicin)、エリスロポイエチン(Erythropoietin)、エストラムスチン(Estramustine)リン酸ナトリウム、エトポシド(Etoposide) (VP16−213)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、FK 317、フラボピリドール(Flavopiridol)、フロキシウリジン(Floxuridine)、フルダラビン(Fludarabine)、フルオロウラシル (5−FU)、フルタミド、フラジリン(Fragyline)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ヘキサメチルメラミン (HMM)、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド(Ifosfamide)、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、インターロイキン2、イリノテカン(Irinotecan)、ISI641、クレスチン(Krestin)、レモナール(Lemonal)DP2202、酢酸ロイプロリド(Leuprolide acetate)(LHRH放出因子類似体)、レバミゾール(Levamisole)、LiGLA(リチウム−ガンマ−リノレート)、ロジンシーズ(Lodine Seeds)、ロメテクソール、ロムスチン(Lomustine)(CCNU)マリミスタット(Marimistat)、塩酸メクロレタミン(窒素マスタード)、酢酸メゲステロール、メグラミン(Meglamine) GLA、メルカプトプリン、メスナ(Mesna)、ミトグアゾン(Mitoguazone(メチルGAG;メチルグリオキサール ビスーグアニルヒドラゾン;MGBG)、ミトタン(Mitotane)(o.p’−DDD)、ミトキサントロン(Mitoxantrone)、ミトキサントロンHCl、MMI
270、MMP、MTA/LY 231514、オクトレオチド(Octreotide)、ODN 698、OK−432、オーラルプラチナム(Oral Platinum)、オーラルトキソイド(Oral Taxoid)、パクリタキセル(Paclitaxel)(タキソール(TAXOL)(登録商標))、PARP 阻害剤、PD 183805、ペントスタチン(Pentostatin)(2’デオキシコフォルミシン)、PKC 412、プリカミシン(Plicamycin)、プロカルバジン(Procarbazine)HCl、PSC 833、ラリトレキセド(Ralitrexed)、RAS ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、RAS癌遺伝子阻害剤、セムスチン(Semustine)(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン(Streptozocin)、スラミン(Suramin)、クエン酸タモキシフェン、タキサン(Taxane)類似体、テモゾロミド(Temozolomide)、テニポシド(Teniposide)(VM−26)、チオグアニン(Thioguanine)、チオテパ(Thiotepa)、トポテカン(Topotecan)、チロシンキナーゼ、UFT(テガフル/ウラシル)、バルルビシン(Valrubicin)、VEGF/b−FGF阻害剤、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、VX−710、VX−853、YM 116、ZD0101、ZD0473/アノルムド(Anormed)、ZD1839、ZD9331が挙げられる。
【0101】
免疫療法剤は、特異的に癌抗原と結合またはそれを認識する抗体または抗体フラグメントに由来する薬剤である。免疫療法の目的は、樹立した腫瘍に対して患者の免疫応答を高めることである。免疫療法の一方法は、アジュバントの使用を含む。微生物(例えば、カルメット−ゲラン杆菌(bacillus Calmette−Guerin))由来のアジュバント物質は、動物の腫瘍に対する免疫応答を高め、抵抗を高める。
【0102】
いくつかの癌細胞は、抗原性であり、免疫系の標的となりうる。一態様では、TIM−3結合分子と制癌剤(特に、癌免疫治療として分類されたもの)との併用投与は、腫瘍抗原に対する特異的な免疫応答の刺激に有用である。
【0103】
本明細書中で用いられるように、用語「腫瘍抗原」および「癌抗原」とは、置き換え自在に用いられ、癌細胞によって異なる発現を示すとともに、それによって癌細胞の標的化に利用可能な抗原をいう。癌抗原は、明らかに腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激しうる抗原である。それらの抗原のいくつかは、必ずしも発現されるわけではないが、正常な細胞によってコードされている。これらの抗原は、通常は正常細胞でサイレントな状態にある(すなわち、発現していない)抗原、分化の特定の段階でのみ発現する抗原、および一時的に発現される抗原(例えば、胚性または胎児性抗原)によって特徴づけられる。他の癌抗原は、変異細胞遺伝子によってコードされるもので、例えば癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、変異体p53)、内部欠失または染色体転座の結果生ずる融合タンパク質が挙げられる。さらに別の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスに運ばれる遺伝子等のウイルス遺伝子によってコードされ得る。
【0104】
腫瘍抗原は、一般に腫瘍または癌細胞の表面に結合するペプチドであり、MHC分子との関連でAPCの表面で発現した場合に、免疫応答を引き起こす能力がある。癌抗原は、例えば癌ワクチンに存在するもの、または癌免疫治療の調製に使用されるものは、Cohen PAら(1994) Cancer Res 54:1055−8に記載されているように、癌細胞粗抽出物から部分的に抗原を精製することによって、または組み換え技術、または既知の抗原のデノボ(de novo)合成によって、調製することができる。癌抗原は、特定の抗原の免疫原性部分の形で用いることができ、またはいくつかの例では、細胞全体または腫瘍腫瘤を抗原として用いることができる。そのような抗原は、組み換え技術によって、または当技術分野において公知の任意の手段によって、単離または合成することができる。
【0105】
免疫監視機構の理論は、免疫系の主要機能が腫瘍形成前に腫瘍性細胞を検出および除去することである。この理論の基本原理は、癌細胞が正常細胞と抗原的に異なることから、免疫学的に不適合の同種移植片の拒絶を引き起こす拒絶と類似する免疫反応が誘発されるということである。研究によって、腫瘍細胞が抗原の発現において質的または量的に異なることが確認されている。例えば、「腫瘍特異的抗原」は、正常細胞ではなく腫瘍細胞に特異的に結合する抗原である。腫瘍特異的抗原の例は、DNAウイルスまたはRNAウイルスによって誘発される腫瘍のウイルス抗原である。「腫瘍関連」抗原は、腫瘍細胞および正常細胞の両方に存在するが、腫瘍細胞では異なる量で、または異なる形状で存在する。そのような抗原の例は、腫瘍胎児性抗原(例えば、癌胎児抗原)、分化抗原(例えば、TおよびTn抗原)、および癌遺伝子産物(例えば、HER/neu)である。
【0106】
すでに指摘したように、腫瘍特異的遺伝子のポリペプチド産物は、宿主免疫監視機構の標的であり、腫瘍得的遺伝子産物に特異的なCTLのクローンの1つ以上の選択および増大を引き起こし得る。この現象の例として、MAGE遺伝子ファミリーによってコードされるタンパク質およびそのフラグメントが挙げられる。PCT出願(PCT/US92/04354、1992年11月26日発行)では、「MAGE」ファミリー(腫瘍特異的遺伝子ファミリー)が開示されている。これらの遺伝子の発現産物は、次に細胞表面上に発現されるペプチドにプロセシングされる。このことは、特異的CTLによる腫瘍細胞の溶解をもたらすことができる。上記遺伝子は、「腫瘍拒絶抗原先駆体」または「TRAP」分子をコードすると言われており、さらにそれから誘導されるペプチドは「腫瘍拒絶抗原」または「TRA」と呼ばれる。この遺伝子ファミリーに関するさらなる情報については、Traversari Cら(1992)Immunogenetics 35:145−52; van der Bruggen Pら(1991)Science 254:1643−47を参照のこと。また、米国特許第5,342,774号も参照されたい。
【0107】
MAGE遺伝子ファミリーに加えて、腫瘍抗原もまたMAGE−Xp遺伝子ファミリー(米国特許第5,587,289号)、チロシナーゼ遺伝子(PCT公報WO94/14459)、メラン(Melan)−A遺伝子(PCT公報WO94/21126)、BAGE遺伝子(米国特許第5,571,711号およびPCT公報WO95/00159)、GAGE遺伝子(米国特許第5,610,013号およびPCT公報WO95/03422)、RAGE遺伝子ファミリー(米国特許第5,939,526号)、PRAME(元はDAGE)遺伝子(PCT公報WO96/10577)、MUM−1/LB−33B遺伝子(米国特許第5,589,334号)、NAG遺伝子(米国特許第5,821,122号)、FB5(エンドシアリン(endosialin))遺伝子(米国特許第6,217,868号)、およびPMSA遺伝子(米国特許第5,939,818号)によってコードされる。前述のリストは、あくまでも典型例を挙げたものであって、それによって制限されるように理解されるべきではない。
【0108】
インビトロおよびインビボで腫瘍標的を殺傷することができる異なる種類の細胞、すなわちナチュラルキラー細胞(NK細胞)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK細胞)、および活性化マクロファージが同定されている。NK細胞は、特定の抗原に対して事前に感作することなく腫瘍細胞を殺すことができ、その活性は標的細胞上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によってコードされるクラスI抗原の存在を必要としない。NK細胞は、発生期の腫瘍の制御および転移性増殖の制御に関係していると考えられている。NK細胞とは対照的に、CTLは、腫瘍抗原に対する感作後およびMHCクラスIも発現する腫瘍細胞上で標的抗原が発現される場合にのみに、腫瘍細胞を殺すことができる。CLTは、移植された腫瘍およびDNAウイルスによって引き起こされた腫瘍の拒絶におけるエフェクター細胞であると考えられている。LAK細胞は、NK細胞およびCTL群とは異なったヌルリンパ球のサブセットである。活性化マクロファージは、抗原非依存的でもなく、一旦制限されたMHCが活性化することもない様式において、腫瘍細胞を殺すことができる。活性化マクロファージは、該マクロファージが浸潤した腫瘍の増殖速度を減少させると考えられる。インビトロアッセイによって、別の免疫機構、例えば、抗体依存性反応、細胞媒介性細胞傷害性反応および抗体+補体による溶解が確認されている。しかし、これらの免疫エフェクター機構は、インビボでのNK細胞、CTL、LAK細胞、およびマクロファージの機能よりも、インビボでの重要性が劣るものと考えられる(総説として、Piessens WF およびDavid J、「Tumor Immunology」、Scientific American Medicine、第2巻、Scientific American Books、N.Y.、pp.1−13、1996を参照のこと)。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗腫瘍剤は、腫瘍特異的抗体またはその腫瘍特異的フラグメントを含む。用語「腫瘍特異的抗体」とは、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体をいう。本明細書で用いられ場合、「腫瘍特異的抗体フラグメント」とは、腫瘍特異的抗原に特異的に結合する腫瘍特異的抗体のフラグメントをいう。一般に、フラグメントは、抗原特異性および結合に寄与する超可変ドメインを持つ可変領域の少なくとも一部分を含む。腫瘍特異的抗体フラグメントの例として、限定されるものではないが、腫瘍特異的抗体由来のFab、Fv、Fab’、およびF(ab’)フラグメントが挙げられる。
【0110】
好ましくは、腫瘍抗原は癌細胞の細胞表面に発現される。さらにより好ましくは、抗原は、正常細胞では発現されないか、または少なくとも癌細胞で発現されるレベルと同じレベルでは発現されない抗原である。抗体に基づく免疫治療は、癌細胞の細胞表面に結合させ、それによって内因性の免疫系を刺激して癌細胞を攻撃することによって機能し得る。抗体に基づく治療が機能する別の方法は、癌細胞に対して毒性のある物質の特異的標的化のための送達系としてである。抗体は、一般に毒素(例えば、リシン(例えば、トウゴマの実由来)、カリーチアマイシン(calicheamicin))、およびメータシノイド(maytansinoid)、ヨウ素131およびイットリウム90等の放射性同位元素、化学療法剤(本明細書での記載通り)、または生物的反応修飾物質と結合する。このように、毒性物質を癌の領域に集中させ得、正常細胞に対する非特異的毒性を最小化することができる。
【0111】
癌抗原に特異的な抗体の使用に加えて、血管系に結合する抗体(例えば内皮細胞に結合するもの)もまた本発明では有用である。固形腫瘍は、一般に新しく形成された血管に依存して生存するので、ほとんどの腫瘍は新たな血管の生長を強化し、かつ刺激する能力がある。その結果、多くの制癌剤の戦略の1つは、腫瘍を養っている血管および/またはそのような血管を支持する結合組織(または間質)に攻撃を加えることである。
【0112】
現在用いられているか、もしくは開発されている癌免疫治療剤の例としては、限定されるものではないが、リツキサン(Rituxan)、IDEC−C2B8、抗CD20 Mab、パノレックス(Panorex)、3622W94、腺癌ハーセプチン(Herceptin)上の抗EGP40(17−1A)膵癌腫(pancarcinoma)抗原、抗Her2、抗EGFr、BEC2、抗イデオタイプGDエピトープ、オバレックス(Ovarex)、B43.13、抗イデオタイプCA125、4B5、抗VEGF、RhuMAb、MDX−210、抗HER−2、MDX−22、MDX−220、MDX−447、MDX−260、抗GD−2、クアドラメット(Quadramet)、CYT−424、IDEC−Y2B8、オンコリム(Oncolym)、Lym−1、SMART M195、ATRAGEN、LDP−03、抗CAMPATH、ior t6、抗CD6、MDX−11、OV103、ゼナパックス(Zenapax)、抗Tac、抗IL−2レセプター、MELIMMUNE−2、MELIMMUNE−1、CEACIDE、プレターゲット(Pretarget)、ノボ(Novo)MAb−G2、TNT、抗ヒストン、グリオーマブ(Gliomab)−H、GNI−250、EMD−72000、リンホシド(LymphoCide)、CMA 676、モノファーム(Monopharm)−C、ior egf/r3、ior c5、抗FLK−2、SMART 1D10、SMART ABL 364、およびImuRAIT−CEAが挙げられる。
【0113】
癌ワクチンは、癌細胞に対して内因性の免疫応答を刺激することを目的とする薬である。現在、生産されたワクチンは、主に体液免疫系(すなわち抗体依存的免疫応答)を活性化させる。現在開発中の他のワクチンは、腫瘍細胞を殺すことができる細胞傷害性リンパ球を含む細胞媒介性免疫系を活性化させることに重点を置いている。癌ワクチンは、一般に、両方のAPC(例えば、マクロファージおよび樹状細胞)に対して、および/または他の免疫細胞(例えばT細胞、B細胞、およびNK細胞)に対して、癌抗原の提示を強化する。
【0114】
癌ワクチンはいくつかの形態のうちの1つをとることができるけれども、後述するように、癌ワクチンの目的は、APCによるそのような抗原の内因性プロセッシングと、MHCクラスI分子との関連で細胞表面上での抗原掲示の最終的な掲示を促進するために、癌抗原および/または癌関連抗原をAPCに送達することである。癌ワクチンの1つの形態は、被験体から除去され、エキソビボで処理され、さらに全細胞として被験体に再び導入された癌細胞調製物である全細胞ワクチンである。腫瘍細胞の溶解物もまた、免疫応答を引き起こす癌ワクチンとして用いることができる。癌ワクチンの別の形態は、癌特異的または癌関連の小さなタンパク質を用いてT細胞を活性化させるペプチドワクチンである。癌関連タンパク質は、癌細胞によって単独に発現されないタンパク質である(すなわち、他の正常細胞はこれらの抗原をなおも発現し得る)。しかし、癌関連抗原の発現は、一般に特定の種類の癌によって一貫して上方制御される。癌ワクチンの別の形態では、インビトロで癌抗原または癌関連抗原に曝された全樹状細胞を含む樹状細胞ワクチンである。樹状細胞の溶解物または膜画分もまた、癌ワクチンとして用いることができる。樹状細胞ワクチンは、APCを直接活性化することが可能である。他の癌ワクチンとして、ガングリオシドワクチン、熱ショックタンパク質ワクチン、ウイルスワクチンおよび細菌ワクチン、ならびに核酸ワクチンが挙げられる。
【0115】
いくつかの実施形態で、この方法は被験体にサイトカインを投与することを含む。本明細書で用いられる場合、「サイトカイン」とは、ナノモルからピコモルの濃度でヒト調節因子として作用し、また正常状態または病的状態のいずれかで個々の細胞および組織お機能的活性を調節する可溶性タンパク質およびペプチドの多様な群のいずれかをいう。これらのタンパク質もまた、細胞間の相互作用を直接媒介し、細胞外環境でおこなわれるプロセスを調節する。サイトカインの例として、限定されるものではないが、インターロイキンIL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、およびインターフェロン−γ(IFN−γ)を含むインターフェロン;腫瘍壊死因子(TNF)、トランスホーミング増殖因子−β(TGF−β);FLT−3リガンド;およびCD40リガンドが挙げられる。
【0116】
サイトカインは、T細胞応答に関して役割を果たす。ヘルパー(CD4+)T細胞は、他のT細胞を含む他の免疫系細胞に作用する可溶因子の産生を通して、哺乳類の免疫応答を組織化する。大部分の成熟したCD4+Tヘルパー細胞は、2つあるサイトカインの性質、すなわちTh1またはTh2のうちの1つを表す。マウスのTh1サブセットは、遅延型過敏反応、細胞媒介性免疫、および免疫グロブリンのIgG2aへのクラススイッチを促進する。マウスのTh2サブセットは、B細胞を活性化させ、抗体産生を促進させ、さらにIgG1およびIgEへのクラススイッチングを誘導して、液性免疫を誘発する。いくつかの実施形態では、サイトカインがTh1サイトカインであることが好ましい。
【0117】
いくつかの実施形態では、本発明のこの局面に従う方法は、さらに被験体に抗菌剤を投与することを含む。「抗菌剤」とは、細菌を殺すか、または細菌の増殖あるいは機能を阻害する薬剤をいいう。広範囲の細菌を殺すか、または阻害するのに有効な抗菌剤は、しばしば広域性抗生物質と呼ばれる。抗菌剤の別の種類は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌に対して、主に効果的である。これらの種類の抗菌剤は、しばしば狭域性抗生物質と呼ばれる。単一の微生物または疾患に対して効果的であり、他の種類の細菌に対しては効
果的ではない他の抗菌剤は、しばしば制限域性抗生物質と呼ばれる。抗菌剤は、しばしば作用の主な形態に基づいて分類される。一般に、抗菌剤は、細胞壁合成阻害剤、細胞膜阻害剤、タンパク質合成阻害剤、核酸合成阻害剤または機能阻害剤、および拮抗阻害剤である。
【0118】
本発明で有用な殺菌剤として、限定されるものではないが、天然ペニシリン、半合成ペニシリン、クラブラン酸、セファロスポリン、バシトラシン、アンピシリン、カルベニシリン、オキサシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピぺラシリン、メチシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、セファロシン、セファピリン、セファレキシン、セファマンドール、セファクロール、セファゾリン、セフロキシン、セフォキシチン、セフォタキシーム、セフスロジン、セフェタメト、セフィキシーム、セフトリアキソン(ceftriaxone)、セフォペラゾン、セフタジジン、モキサラクタム、カルバペネム、イミペネム、モノバクテム(monobactem)、スズトレオナム(euztreonam)、バンコマイシン、ポリミキシン、アムホテリシンB、ナイスタチン、イミダゾール、クロトリマゾール、ミコナノゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコゾナール、リファンピン)、エタンブートル、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、マクロライド系、アミノグリコシド系、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン(tobramycin)、アミカシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、オレアンドマイシン(oleandomycin)、アジスロマイシン、クロラムフェニコール、キノロン系、co−トリモキサゾール(co−trimoxazole)、ノルフロキサシン、シプロキサシン、エノキサシン、ナリジクス酸、テマフロキサシン、スルホンアミド、ガントリシン、およびトリメトプリム;アセダプソン(Acedapsone);アセトスルホンナトリウム;アラメシン(Alamecin);アレキシジン;アムジノシリン;アムジノシリンピボキシル(Amdinocillin Pivoxil);アミサイクリン;アミフロキサシン;メシル酸アミフロキサシン;アミカシン;硫酸アミカシン;アミノサリチル酸;アミノサリチル酸ナトリウム;アモキシシリン;アンフォマイシン;アンピシリン;アンピシリンナトリウム;アパルシリンナトリウム(Apalcillin Sodium);アパラマイシン;アスパルトシン:硫酸アストロマイシン;アビラマイシン(Avilamycin);アボパルシン(Avoparcin);アジスロマイシン;アズロシリン;アズロシリンナトリウム;塩酸バカンピシリン;バシトラシン;パシトラシンメチレンジスアリシレート(Bacitracin Methylene Disalicylate);バシトラシン亜鉛(Bacitracin Zinc);バンベルマイシン(Bambermycins);ベンゾイルパスカルシウム(Benzoylpas Calcium);ベリスロマイシン;硫酸ベタマイシン;ビアペネム;ビニラマイシン;塩酸ビフェナミン;ビスピリチオンマグスルフェクス;ブチカシン;硫酸ブチロシン;硫酸カプレオマイシン;カルバドクス;カルベニシリン二ナトリウム;カルベニシリンインダニルナトリウム;カルベシリンフェニルナトリウム;カルベニシリンカリウム;カルモナムナトリウム;セファクロール;セファドロキシル;セファマンドール;セファマンドールナフェート(Cefamandole Nafate);セファマンドールナトリウム;セファパロール;セファトリジン;セファザフルールナトリウム;セファゾリン;セファゾリンナトリウム;セフブペラゾン;セフジニル;セフェピム(Cefepime);塩酸セフェピム;セフェテコール(Cefetecol);セフィキシム;塩酸セフメノキシム;セフメタゾール;セフメタゾールナトリウム;セフォニシド一ナトリウム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾンナトリウム;セフォラニド;セフォタキシムナトリウム;セフォテタン;セフォテタン二ナトリウム;セフォテタン二ナトリウム;塩酸セフォチアム;セフォキシチン;セフォキシチンナトリウム;セフピミゾール;セフピミゾールナトリウム;セフピラミド;セフピラミドナトリウム;セフピロムナトリウム;セフポドキシムプロキセチル;セフプロジル;セフロキサジン;セフスロジンナトリウム;セフタジジム;セフチブテン;セフチゾキシムナトリウム;セフトリアキソンナトリウム;セフロキシム;セフロキシムアキセチル;セフロキシムピボキセチル;セフロキシムナトリウム;セファセトリルナトリウム(Cephacetrile Sodium);セファレキシン;塩酸セファレキシン;セファログリシン;セファロリジン;セファロチンナトリウム;セファピリンナトリウム;セフラジン;塩酸セトサイクリン;セトフェニコール;クロラムフェニコール;クロラムフェニコールパルミチン酸塩;クロラムフェニコールパントテン酸塩複合体(Chloramphenicol Pantothenate Complex);クロラムフェニコールコハク酸ナトリウム;クロルヘキシジンホスファニレート;クロロキシレノール;クロルテトラサイクリン重硫酸塩;塩酸クロルテトラサイクリン;シノキサシン;シプロフロキサシン;塩酸シプロフロキサシン;シロレマイシン;クラリスロマイシン;塩酸クリナフロキサシン;クリンダマイシン;塩酸クリンダマイシン;クリンダマイシンパルミテート塩酸塩(Clindamycin Palmitate Hydrochloride);クリンダマイシンリン酸塩;クロファジミン;クロキサシリンベンザチン;クロキサシリンナトリウム;クロキシキン(Cloxyquin);コリスチンメタナトリウム;硫酸コリスチン;クメルマイシン;クメルマイシンナトリウム;シクラシリン(Cyclacillin);サイクロセリン;ダルフォプリスチン;ダプソン;ダプトマイシン;デメクロサイクリン;塩酸デメクロサイクリン;デメサイクリン;デノファンジン;ジアベリジン;ジクロキサシリン;ジクロキサシリンナトリウム;硫酸ジヒドロストレプトマイシン;ジピリチオン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;ドキシサイクリンカルシウム;ドキシサイクリンフォスファテックス(Doxycycline Fosfatex);ドキシサイクリンヒクレート(Doxycycline Hyclate);ドロキサシンナトリウム;エノキサシン;エピシリン;塩酸エピテトラサイクリン;エリスロマイシン;エリスロマイシンアシストレート(Erythromycin Acistrate);エリスロマイシンエストレート(Erythromycin Estolate);エリスロマイシンエチル酢酸塩(Erythromycin Ethylsuccinate);エリスロマイシングルセプテート(Erythromycin Gluceptate);エリスロマイシンラクトビオネート(Erythromycin Lactobionate);エリスロマイシンプロピロネート;エリスロマイシンステアリン酸塩;塩酸エタンブトール;エチオナミド;フレロキサシン;フロキサシリン;フルダラニン;フルメキン(Flumequine);ホスホマイシン;ホスホマイシントロメタミン;フモキシシリン;フラゾリウムクロリド;酒石酸フラゾリウム;フシジン酸ナトリウム;フシジン酸;硫酸ゲンタマイシン;グロキシモナム;グラミシジン;ハロプロジン;ヘタシリン;ヘタシリンカリウム;ヘキセジン;イバフロキサシン;イミペネム;イソコナゾール;イセパマイシン;イソニアジド;ジョサマイシン;硫酸カナマイシン;キタサマイシン;レボフラルタドン;レボプロピルシリンカリウム(Levopropylcillin Potassium);レキシスロマイシン;リンコマイシン;塩酸リンコマイシン塩酸塩;ロメフロキサシン;塩酸ロメフロキサシン;ロメフロキサシンメシレート;口ラカルベフ(Loracarbef);マフェニド;メクロサイクリン;スルホサリチル酸メクロサイクリン;メガロミシンリン酸カリウム(Megalomicin Potassium Phosphate);メキドクス;メロペネム;メタサイクリン;塩酸メタサイクリン;メテナミン;メテナミン馬尿酸塩;メテナミンマンデル酸塩(Methanamine Mandelate);メチシリンナトリウム;メチオプリム;塩酸メトロニダゾール;リン酸メトロニダゾール;メズロシリン;メズロシリンナトリウム;ミノサイクリン;塩酸ミノサイクリン;塩酸ミリカマイシン;モネンシン;モネンシンナトリウム;ナフシリンナトリウム;ナリジクセートナトリウム;ナリジクス酸;ナタマイシン;ネブラマイシン;ネオマイシンパルミチン酸塩;硫酸ネオマイシン;ネオマイシンウンデシレン酸塩;硫酸ネチルミシン;ニュートラマイシン;ニフラデン;ニフラルデゾン;ニフラテル;ニフラトロン;ニフラダジル;ニフルイミド;ニフルピリノール;ニフルキナゾール;ニフルチアゾール;ニトロサイクリン;ニトロフラントイン;ニトロミド;ノルフロキサシン;ノボビオシンナトリウム;オフロキサシン;オルメトプリム;オキサシリンナトリウム;オキシモナム;オキシモナムナトリウム;オキソリン酸;オキシテトラサイクリン;オキシテトラサイクリンカルシウム;塩酸オキシテトラサイクリン;パルジマイシン;パラクロロフェノール;パウロマイシン;ペフロキサシン;ペフロキサシンメシレート;ペナメシリン;ペニシリンGベンザチン;ペニシリンGカリウム;ペニシリンGプロカイン;ペニシリンGナトリウム;ペニシリンV;ペニシリンVベンザチン;ペニシリンVヒドラバミン;ペニシリンVカリウム;ペンチジドンナトリウム;フェニルアミノサリチル酸塩;ピペラシリンナトリウム;ピルベニシリンナトリウム;ピリジシリンナトリウム;塩酸ピリミシン;ピバンピシリン塩酸塩(Pivampicillin Hydrochloride);ピバンピシリンパモエート;ピバンピシリンプロベネート;硫酸ポリミキシンB;ポルフィロマイシン;プロピカシン;ピラチナミド;ピリチオン亜鉛(Pyrithione Zine);キンデカミン酢酸塩(Quindecamine Acetate);キヌプリスチン;ラセフェニコール;ラモプラニン;ラニマイシン;レロマイシン;レプロマイシン(Repromicin);リファブチン;リファメタン;リファメキシル;リファミド;リファンピン;リファペンチン;リファキシミン;ロリテトラサイクリン;硝酸ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン(Rosaramicin);ロサラミマインブチル酸塩;ロサラマイシンプロピオン酸塩;ロサラマイシンリン酸ナトリウム;ロサラマイシンステアリン酸塩;ロソキサシン;ロキサルソン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;サンフェトリネムナトリウム;サルモキシシリン;サルピシリン;スコパファンジン;シソマイシン;硫酸シソマイシン;スパルフロキサシン;塩酸スペクチノマイシン;スピラマイシン;塩酸スタリマイシン;ステフィマイシン;硫酸ストレプトマイシン;ストレプトニコジド(Streptonicozid);スルファベンズ;スルファベンズアミド;スルファセタミド;スルファセタミドナトリウム;スルファサイチン(Sulfacytine);サルファジアジン;サルファジアジンナトリウム;スルファドキシン;スルファレン;スルファメラジン;スルファメーテル(Sulfameter);スルファメタジン;スルファメチゾール;スルファメトキサゾール;スルファモノメトキシン;スルファモキソール;スルファニレート亜鉛(Sulfanilate Zinc);スルファニトラン;スルファサラジン;スルファソミゾール;スルファチアゾール;スルファザメト(Sulfazamet);スルフィソキサゾール;アセチルスルフィソキサゾール;スルフィソキサゾールジオラミン;スルホミキシン;スロペネム;スルタミシリン;サンシリンナトリウム;塩酸タランピシリン;テイコプラニン;塩酸テマフロキサシン;テモシリン;テトラサイクリン;塩酸テトラサイクリン;テトラサイクリンリン酸塩複合体(Tetracycline Phosphate Complex);テトロキソプリム;チアンフェニコール;チフェ

ンシリンカリウム;チカルシリンクレシルナトリウム;チカルシリン二ナトリウム;チカルシリン一ナトリウム;チクラトン;チオドニウムクロリド;トブラマイシン;硫酸トブラマイシン;トスフロキサシン;トリメトプリム;硫酸トリメトプリム;トリスルファピリミジン;トロールアンドマイシン(Troleandomycin);硫酸トロスペクトロマイシン;チロトリシン;バンコマイシン;塩酸バンコマイシン;バージニアマイシン;およびゾルバマイシンが挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態では、本方法は被験体に抗ウイルス剤を投与する工程をさらに包含する。本明細書中で用いられるように、「抗ウイルス剤」は、ウイルスによる細胞の感染症または細胞内でのウイルスの複製を防ぐ化合物をいう。抗ウイルス剤は、抗菌剤よりもかなり少ない。なぜなら、ウイルス複製のプロセスは宿主細胞のDNA複製とかなり密接に関連しており、非特異的な抗ウイルス剤がしばしば宿主に対して毒性を示すことがあるからである。抗ウイルス剤によって遮断または阻害することができるウイルス感染症のプロセスにはいくつかの段階がある。これらの段階には、宿主細胞に対するウイルスの付着(免疫グロプリンまたは結合ペプチド)、ウイルスの脱殻(例えば、アマンタジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えば、インターフェロン)、ウイルスRNAまたはDNAの複製(例えば、ヌクレオシド類似体)、新たなウイルスタンパク質の突然変異(例えば、プロテアーゼインヒビター)、ならびにウイルスの出芽および放出が含まれる。
【0120】
ヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドに類似ているが、不完全な、または異常なデオキシリボース基もしくはリボース基を持っている合成化合物である。いったんヌクレオチド類似体が細胞に入ると、類似体はリン酸化を受けて三リン酸塩を生じ、ウイルスDNAまたはRNAへの取り込みにおいて正常なヌクレオチドと拮抗する。いったん、ヌクレオチド類似体の三リン酸塩形態が成長中の核酸鎖に取り込まれると、それによってウイルスポリメラーゼとの不可逆的な会合が生じて連鎖停止となる。ヌクレオチド類似体としては、限定されるものではないが、アシクロビル(単純ヘルペスウイルスおよび水痘帯状疱疹ウイルスの処置に用いられる)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置に用いられる)、イドクスウリジン、リバビリン(呼吸合胞体肺炎ウイルスの処置に用いられる)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、およびジドブジン(アジドチミジン)が挙げられる。
【0121】
インターフェロンは、免疫細胞と同様にウイルス感染細胞によって分泌されるサイトカインである。インターフェロンは、感染細胞に隣接する細胞上の特異的レセプターに結合することによって作用し、ウイルスによる感染症から細胞を守る細胞の変化を引き起こす。INF−αおよびINF−βはまた、感染細胞の表面でMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子の発現を誘導することによって、宿主免疫細胞認識のための抗原提示の増加をもたらす。これらのインターフェロンは、組み換え体の形で入手可能であり、B型およびC型慢性肝炎感染症の処置に利用されている。抗ウイルス療法で効果的である投薬量で、ときどきインターフェロンによる激しい副作用(例えば発熱、倦怠感、および体重減少)が生じる。
【0122】
免疫グロブリン療法は、ウイルス感染症予防のために用いられる。ウイルス感染症のための免疫グロブリン療法は、細菌感染症とは異なる。なぜなら、抗原特異的であるよりはむしろ、細胞外ビリオンと結合し、ウイルス感染症に罹りやすい細胞にビリオンが付着して入るのを防ぐことで、免疫グロブリン治療が機能するためである。この治療は、抗体が宿主に存在している期間、ウイルス感染症の予防にとって有用である。一般に、免疫グロブリン療法には2種類ある。すなわち、通常の免疫グロブリン療法と超免疫グロブリン療法とである。通常の免疫グロブリン療法は、正常血液提供者の血清から調製してプールされる抗体産物を利用する。このプールされた産物は、A型肝炎、パルボウイルス、エンテロウイルス等、広範囲のヒトウイルスに対して抗体価の低い抗体(特に新生児(仔)において)を含む。超免疫グロブリン療法は、特定のウイルスに対して抗体価の高い抗体を持つ個体の血清から調製した抗体を利用する。それらの抗体は、次いで、特定のウイルスに対して用いられる。超免疫グロブリンの例として、帯状ヘルペス免疫グロブリン(免疫無防備状態の小児および新生児での水痘の予防に有用)、ヒト狂犬病免疫グロブリン(狂暴な動物に噛まれた被験体の暴露後予防投与に有用)、B型肝炎免疫グロブリン(B型肝炎ウイルスの予防、特にこのウイルスに曝された被験体で有用)、およびRSV免疫グロブリン(呼吸器合胞体ウイルス感染症の処置に有用)が挙げられる。
【0123】
従って、本発明に有用な抗ウイルス剤には、限定されるものではないが、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオシド類似体、およびタンパク質分解酵素阻害剤が含まれる。抗ウイルス剤の具体的な例として、限定されるものではないが、アセマナン(Acemannan);アシクロビル(Acyclovir);アシクロビルナトリウム(Acyclovir Sodium);アデホビル(Adefovir);アロブジン(Alovudine);アルビルセプトスドトクス(Alvircept Sudotox);アマンタジン塩酸塩(Amantadine Hydrochloride);アラノチン(Aranotin);アリルドン(Arildone);アテビルジンメシレート(Atevirdine Mesylate);アブリジン(Avridine);シドホビル;シパムフィリン(Cipamfylline);シタラビン塩酸塩(Cytarabine Hydrochloride);デルビルジンメシレート(Delavirdine Mesylate);デシクロビル(Desciclovir);ジダノシン(Didanosine);ジソキサリル(Disoxaril);エドクスウジン(Edoxudine);エンビラデン(Enviradene);エンビロキシム(Enviroxime);ファムシクロビル(Famciclovir);ファモチン塩酸塩(Famotine Hydrochloride);フィアシタビン(Fiacitabine);フィアルリジン(Fialuridine);フォサリレート(Fosarilate);フォスカーネットナトリウム(Foscarnet Sodium);フォスホネットナトリウム(Fosfonet Sodium);ガンシクロビル(Ganciclovir);ガンシクロビルナトリウム(Ganciclovir sodium);イドクスウリジン(Indoxuridine);ケトキサール(Kethoxal);ラミブジン(Lamivudine);ロブカビル(Lobucavir);メモチン塩酸塩(Memotine Hydrochloride);メチサゾン(Methisazone);ネビラピン(Nevirapine);ペンジクロビル(Penciclovir);ピロダビル(Pirodavir);リバビリン(Ribavvirin);リマンタジン塩酸塩(Rimantadine Hydrochloride);サキナビルメシレート(Saquinavir Mesylate);ソマタジン塩酸塩(Somantadine hydrochloride);ソリブジン(Sorivudine);スタトロン(Statolon);スタブジン(Stavudine);チロロン塩酸塩(Tilorone Hydrochloride);トリフルリジン(Trifluridine);バラシクロビル塩酸塩(Valacyclovir Hydrochloride);ビダラビン(Vidarabine);ビダラビンリン酸塩(Vidarabine Phosphate);ビダラビンリン酸ナトリウム(Vidarabine Sodium Phosphate);ビロキシム(Viroxime);ザルシタビン(Zalcitabine);ジドブジン(Zidovudine);およびジンビロキシム(Zinviroxime)が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明のこの局面に基づく方法は、被験体に対する抗真菌剤の投与がさらに含まれる。「抗真菌剤」は、感染性の真菌を殺すか、または増殖あるいは機能を阻害する薬剤である。抗真菌剤は、しばしばその作用機序によって分類される。いくつかの抗真菌剤は、グルコースシンターゼを阻害することで細胞壁阻害剤として機能する。これらの薬剤として、限定されるものではないが、バシウンギン(basiungin)/ECBが挙げられる。他の抗真菌剤は、膜の完全性を不安定にすることによって機能する。そのようなものとして、限定されるものではないが、イミダゾール類、例えば、クロトリマゾール(clotrimazole)、セルタコゾール(certacozole)、フルコナゾール(fluconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ミコナゾール(miconazole)、およびボリコナコール(voriconacole)、ならびに、FK 463、アンホテリシン(amphotericin)B、BAY 38−9502、MK 991、プラディマイシン(pradimicin)、UK292、ブテナフィン(butenafine)、およびテルビナフィン(terbinafine)が挙げられる。他の抗真菌剤は、キチン(例えば、キチナーゼ)または免疫抑制(501クリーム)を壊すことによって作用する。
【0125】
従って、本発明に有用な抗真菌剤として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イミダゾール類、501クリーム、およびアクリソルシン(Acrisorcin)、アンブルチシン(Ambruticin)、アモロルフィン(Amorolfine)、アンホテリシン(Amphotericin)B、アザコナゾール(Azaconazole)、アザセリン(Azaserine)、バシフジン(Basifungin)、BAY 38−9502、ビフォナゾール(Bifonazole)、ピフェナミン塩酸塩(Biphenamine Hydrochloride)、 ビスフィルチオンマグスルフェクス(Bispyrithione Magsulfex)、ブテナフィン(Butenafine)、ブトコナゾール硝酸塩(Butoconazole Nitrate)、ウンデシレン酸カルシウム(Calcium Undecylenate)、カンジシジン(Candicidin)、カルボル−フクシン(Carbol−Fuchsin)、キチナーゼ(Chitinase)、クロルダントイン(Chlordantoin)、シクロピロクス( Ciclopirox)、シクロピロクスオラミン(Ciclopirox Olamine)、シロファンジン(Cilofungin)、シスコナゾール(Cisconazole)、クロトリマゾール(Clotrimazole)、クプリミキシン(Cuprimyxin)、デノファンジン(Denofungin)、ジピリチオン(Dipyrithione)、ドコナゾール(Doconazole)、エコナゾール(Econazole)、エコナゾール硝酸塩(Econazole Nitrate)、エニルコナゾール(Enilconazole)、エトナム硝酸塩(Ethonam Nitrate)、フェンチコナゾール硝酸塩(Fenticonazole Nitrate)、フィリピン(Filipin)、FK 463、フルコナゾール(Fluconazole)、フルシトシン(Flucytosine)、ファンギマイシン(Fungimycin)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ハミシン(Hamycin)、イソコナゾール(Isoconazole)、イトラコナゾール(Itraconazole)、カラファンジン(Kalafungin)、ケトコナゾール(Ketoconazole)、ロモファンジン(Lomofungin)、リジマイシン(Lydimycin)、メパルトリシン(Mepartricin)、ミコナゾール(Miconazole)、ミコナゾール硝酸塩(Miconazole Nitrate)、MK 991、モネンシン(Monensin)、モネンシンナトリウム(Monensin Sodium)、ナフチフィンン塩酸塩(Naftifine Hydrochloride)、ネオマイシンウンデシレン酸塩(Neomycin Undecylenate)、ニフラテル(Nifuratel)、ニフルメロン(Nifurmerone)、ニトラルアミン塩酸塩(Nitralamine Hydrochloride)、ナイステイン(Nystatin)、オクタン酸、オロコナゾール硝酸塩(Orconazole Nitrate)、オキシコナゾール硝酸塩(Oxiconazole Nitrate)、オキシファンジン塩酸塩(Oxifungin Hydrochloride)、パラコナゾール塩酸塩(Parconazole Hydrochloride)、パルトリシン(Partricin)、ヨウ化カリウム、プラジミシン(Pradimicin)、プロコロノール(Proclonol)、ピリチオン亜鉛(Pyrithione Zinc)、ピロルニトリン(Pyrrolnitrin)、ルタマイシン(Rutamycin)、サングイナリウムクロリド(Sanguinarium Chloride)、サペルコナゾール(Saperconazole)、スコパファンジン(Scopafungin)、硫化セレニウム(Selenium Sulfide)、セルタコナゾール(Sertaconazole)、シネファンジン(Sinefungin)、スルコナゾール硝酸塩(Sulconazole Nitrate)、テルビナフィン(Terbinafine)、テルコナゾール(Terconazole)、チラム(Thiram)、チクラトン(Ticlatone)、チオコナゾール(Tioconazole)、トルシクレート(Tolciclate)、トリンデート(Tolindate)、トルナフテート(Tolnaftate)、トリアセチン(Triacetin)、トリアファンジン(Triafungin)、UK 292、ウンデシレン酸、ビリドフルビン(Viridofulvin)、ボリコナゾール(Voriconazole)、ウンデシレン酸亜鉛、およびジノコナゾール塩酸塩(Zinoconazole Hydrochloride)。
【0126】
いくつかの実施形態では、この方法は、被験体に駆虫剤の投与を含む。「駆虫剤」とは、感染性の寄生虫を殺すか、もしくは寄生虫の増殖または機能を阻害する薬剤をいう。本発明において有用な駆虫剤(殺寄生虫薬ともいう)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルベンダゾール(albendazole)、アンホテリシン(amphotericin)B、ベンズニダゾール(benznidazole)、ビチオノール(bithionol)、クロロキン(chloroquine)HCl、クロロキンリン酸塩(chloroquine phosphate)、クリンダマイシン(clindamycin)、デヒドロエメチン(dehydroemetine)、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamazine)、ジロキサニドフロエート(diloxanide furoate)、ドキシサイクリン(doxycycline)、エフロルニチン(eflornithine)、フラゾリドン(furazolidaone)、糖質コルチコイド、ハロファントリン(halofantrine)、ヨードキノール(iodoquinol)、アイバルメクチン(ivermectin)、メベンダゾール(mebendazole)、メフロキン(mefloquine)、メグルミンアンチモン酸塩(meglumine antimoniate)、メラルソプロール(melarsoprol)、メトリフォネート(metrifonate)、メトロニダゾール(metronidazole)、ニクロサミド(niclosamide)、ニフルチモクス(nifurtimox)、オキサムニキン(oxamniquine)、パロモマイシン(paromomycin)、ペンタミジンイセチオン酸塩(pentamidine isethionate)、ピペラジン(piperazine)、プラジカンテル(praziquantel)、プリマキンリン酸塩(primaquine phosphate)、プログアニル(proguanil)、ピランテルパモエート(pyrantel pamoate)、ピリメタンミンスルホンアミド(pyrimethanmine−sulfonamides)、ピリメタミンスルファドキシン(pyrimethanmine−sulfadoxine)、キナクリン(quinacrine)HCl、キニーネ硫酸塩(quinine sulfate)、キニジングルコン酸塩(quinidine gluconate)、スピラマイシン(spiramycin)、スチボグルコネートナトリウム(stibogluconate sodium)(ナトリウムアンチモングルコン酸塩(sodium antimony gluconate))、スラミン(suraminn)、テトラサイクリン(tetracycline)、チアベンダゾール(thiabendazole)、チニダゾール(tinidazole)、トリメスロプリムスルファメトオキサゾール(trimethroprim−sulfamethoxazole)、およびトリパルサミド(tryparsamide)(これらのうちのいくつかは、単独で、あるいは他のものと組み合わせて用いられる)。
【0127】
本発明の特定の局面は、選択された組織へのT細胞移動を阻害する方法を含む。
【0128】
従って、本発明の別の局面では、被験体の標的組織へのT細胞移動を少なくする方法を提供する。この局面に基づく方法は、有効量のTIM−3リガンド結合分子を被験体に投与して、被験体の標的細胞へのT細胞移動を少なくすることを含む。本明細書で用いられる場合、「TIM−3リガンド結合分子」とは、TIM−3リガンドに結合する任意の分子(TIM−3も含まれる)をいう。
【0129】
TIM−3自体に加えて、TIM−3リガンド結合分子は、低分子、ポリペプチド、抗体または抗体のフラグメント、ポリヌクレオチド、多糖類を含む炭水化物、脂質、薬物、ならびにそれらの模倣体、誘導体、および組み合わせであり得る。TIM−3結合分子は、天然に見いだすことできるか、あるいは当業者に公知の適当なインビトロ法および合成方法を用いて、誘導または合成することができる。例えば、TIM−3リガンド結合分子は、TIM−3リガンドに結合する能力について低分子のライブラリーをスクリーニングすることで同定される低分子である。別の例として、ペプチドのファージディスプレイを用いて、TIM−3リガンド結合分子の生成および同定をおこなうことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、TIM−3リガンド結合分子は、可溶性TIM−3である。「可溶性TIM−3」とは、TIM−3の任意の形態をいい、細胞膜から解離したTIM−3の機能的改変体を含む。可溶性TIM−3は、全長TIM−3のC末端側が切断された形態またはTIM−3の膜貫通欠失バージョンである。いくつかの実施形態では、TIM−3リガンド結合分子は、TIM−3の細胞外領域のシグナルドメインを有する(すなわち、IgVドメインまたはムチンドメイン)。一実施形態では、可溶性TIM−3は、全長TIM−3の選択的スプライシング改変体であり、ムチンドメンも膜貫通領域も含まないが、IgVドメインおよび細胞内領域を含む。いくつかの実施形態では、TIM−3リガンド結合分子は、TIM−3の細胞該領域を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、可溶性TIM−3は融合タンパク質であり、TIM−3の細胞外領域にある少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンの定常重鎖またはその一部とを含んでいる。一実施形態では、可溶性TIM−3とは、TIM−3の細胞外ドメインにある少なくとも1つのドメインと別のポリペプチドとを含む融合タンパク質をいう。一実施形態において、可溶性TIM−3は、ペプチド結合等を介して、IgG等の免疫グロブリンのFcフラグメントに共有結合したTIM−3の細胞外領域を含む融合タンパク質であり、そのような融合タンパク質は一般にホモ二量体である。一実施形態において、可溶性TIM−3は、ペプチド結合等を介して、IgG等の免疫グロブリンのFcフラグメントに共有結合したTIM−3の細胞外領域のIgVドメインだけを含む融合タンパク質であり、そのような融合タンパク質は一般にホモ二量体である。当技術分野で周知なように、Fcフラグメントは2本の部分的定常重鎖のホモ二量体である。各々の定常重鎖は、すくなくともCH1ドメインと、ヒンジと、CH2およびCH3ドメインとを含む。そのようなFc融合タンパク質の各々の単量体は、免疫グロブリンの定常重鎖またはその一部分(例えば、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメイン)に結合したTIM−3の細胞外領域を含む。いくつかの実施形態で定常重鎖は、免疫グロブリンのヒンジ領域に対してN末端であるCH1ドメインの一部または全てを含む。別の実施形態では、定常重鎖はヒンジを含むがCH1ドメインは含まない。さらに別の実施形態では、定常重鎖はヒンジおよびCH1ドメインを除き、例えばIgGのCH2ドメインおよびCH3ドメインのみを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、被験体は標的組織の自己免疫疾患に対する処置を必要とする。「自己免疫疾患」は、被験体自身の抗体が宿主組織と反応するか、もしくは免疫エフェクターT細胞が内因性の自己ペプチドに対して自己反応性を示し、組織の破壊を生ずる疾患の1つのクラスである。従って、免疫応答は、自己抗原と呼ばれる被験体自身の抗原に対して開始される。自己免疫疾患として、限定されるものではないが、慢性関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫脳脊髄炎、重症筋無力症(MG)、橋本病、グッドパスチャー症候群、天疱瘡(例えば尋常天疱瘡)、グレーヴズ病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合型結合組織病、多発筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎(例えば半月状の糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、インスリン耐性、および自己免疫真性糖尿病(真性1型糖尿病;インスリン依存型糖尿病)が挙げられる。最近、自己免疫疾患としてアテローム硬化およびアルツハイマー病が含まれることがわかった。
【0133】
本明細書で用いられる場合、「自己抗原」とは、正常宿主組織の抗原を言う。正常宿主組織は、癌細胞を含まない。このように、自己免疫疾患との関連において、自己抗原に対して開始される免疫応答は望ましくない免疫応答であり、正常組織の破壊および損傷に関わり、その一方で癌抗原に対して開始される免疫応答は望ましい免疫応答であって、腫瘍または癌の破壊に貢献する。
【0134】
さらに別の態様では、本発明は、喘息またはアレルギーの処置または予防のための方法を提供する。本発明の局面に従う方法は、被験体のT細胞においてTIM−3の活性または発現を増加させて、喘息またはアレルギーを処置または予防することを含む。
【0135】
本明細書で用いられる場合、「喘息」とは、炎症によって特徴づけられ、また気道を狭くし、吸入された薬剤に対する気道の反応性が高まることによって特徴づけられる呼吸器系の障害をいう。喘息は頻繁であり、限られはしないが、アトピーおよびアレルギー症状に関連している。
【0136】
本明細書で用いられる場合、「アレルギー」とは、物質(アレルゲン)に対する後天性過敏症をいう。アレルギー症状として、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、花粉症、気管支炎族、蕁麻疹(発疹)、および食物アレルギー、ならびに他のアトピー症状が含まれる。「アレルギーを持つ被験体」とは、アレルゲンに対して反応してアレルギー反応を生ずるか、もしくはその危険性を持つ被験体をいう。「アレルゲン」とは、罹りやすい被験体でアレルギー反応または喘息反応を誘発しうる物質をいう。アレルゲンのリストは、莫大で、花粉、昆虫毒液、動物の鱗屑、ダスト、菌類胞子、および薬剤(例えばペニシリン)を含むことができる。
【0137】
自然の動物および植物のアレルゲンの例として、以下の属に特異的なタンパク質が含まれる
【0138】
【数1】

さらに別の態様によれば、本発明は被験体のTh2媒介障害を処置する方法を提供する。この方法は、Th2媒介障害を処置するために、Th2媒介障害を持つ被験者のTh2細胞の表面にTIM−3を有効量発現させることを含む。ここで用いられるように「Th2媒介障害」とは、Th2免疫応答の発生関連した疾患をいう。ここで用いられる「Th2免疫応答」とは、少なくとも1種類のTh2サイトカインまたはTh2抗体の誘導をいう。好ましい実施形態では、複数のTh2サイトカインまたはTh2抗体が誘導される。従って、Th2媒介障害は、Th2応答の誘導に関連した疾患であり、少なくとも1種類のTh2サイトカインまたはTh2抗体を部分的または完全に誘導すること、あるいは少なくとも1種類のTh2サイトカインまたはTh2抗体のレベルを増加することをいう。これらの障害は当該技術分野において公知であり、例えば、限定されるものではないが、喘息およびアレルギー等のアトピー症状(アレルギー性鼻炎を含む)、胃腸アレルギー(食物アレルギー、好酸球増加、結膜炎、糸球体腎炎)、特定の病原(例えば駆虫薬)に対する感受性(例、リーシュマニア症)および特定のウイルス感染症(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む)、および特定の細菌感染(例えば結核とらい腫らい)が挙げられる。
【0139】
Th2媒介障害とは対照的に、ここで用いられるように「Th1媒介障害」とは、Th1免疫応答の発生に関連した疾患をいう。ここで用いられる「Th1免疫応答」とは、少なくとも1種類のTh1サイトカインまたはTh1抗体の誘導をいう。好ましい実施形態では、複数のTh1サイトカインまたはTh1抗体が誘導される。従って、Th1媒介疾患は、Th1応答の誘導に関連した疾患であり、少なくとも1種類のTh1サイトカインまたはTh1抗体を部分的または完全に誘導すること、あるいは少なくとも1種類のTh1サイトカインまたはTh1抗体のレベルを増加することをいう。これらの障害は当該技術分野において公知であり、例えば、限定されるものではないが、自己免疫(特に臓器特異的)障害、乾癬、Th1炎症性障害、細胞外寄生体(例えば蠕虫に対する反応)による感染、固形臓器同種異系移植片拒絶反応(例えば急性の腎臓同種異系移植片拒絶反応)、B型肝炎(HBV)感染(例えばHBV急性相または回復位相)と関連する症候、慢性C型肝炎(HCV)感染、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、多発硬化(MS)、亜急性リンパ球性甲状腺炎(無症状の甲状腺炎)、クローン病、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、サルコイドーシス、アテローム硬化、急性の対宿主性移植片病(GvHD)、糸球体腎炎、反糸球体基底膜疾患、ヴェゲナー肉芽腫症、炎症性ミオパチー、シェーグレン症候群、ペーチェット症候群、リウマチ様関節炎、ライム関節炎、および原因不明の反復流産が挙げられる。いくつかの実施形態では、Th1媒介障害は、アテローム性動脈硬化症、細胞外寄生体による感染症、B型肝炎(HBV)感染(例えばHBV急性相または回復位相)と関連する症候、慢性C型肝炎(HCV)感染、無症状の甲状腺炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、糸球体腎炎、反糸球体基底膜疾患、ヴェゲナー肉芽腫症、炎症性ミオパチー、シェーグレン症候群、ペーチェット症候群、リウマチ様関節炎、および原因不明の反復流産からなる群から選択される。
【0140】
別の態様によれば、本発明は、APC活性化を促進する方法を提供する。この態様に基づく方法は、TIM−3リガンド結合分子をT細胞に接触させ、T細胞にAPCを接触させてAPCを活性化することを含む。
【0141】
ここで用いられるように「抗原提示細胞」、またはそれに等しく「APC」とは、特化した細胞をいう。免疫系に属すか、もしくは免疫系に属する細胞と相互作用することができるかのいずれかである、その細胞表面に、抗原と主要組織適合性複合体(MHC)分子との間の複合体を提示する特化した細胞をいう。また、自己の状況において抗原特異的リンパ球に対して抗原(すなわち、自己MHC)を提示することに加えて、APCも頻繁に、追加的な細胞表面レセプター/カウンターレセプターとの対の間の同族の相互作用を介して、そして例えば、サイトカインおよびケモカインの分泌産物を介して、追加的な共刺激信号を、そのように連動するリンパ球に与える。APCは、単核食細胞(例えば単球/マクロファージ)、Bリンパ球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、および特定の内皮細胞を含むと考えられている。特定の実施形態例では、APCはマクロファージである。特定の実施形態では、APCは樹状細胞である。例えば、マクロファージと樹状細胞とを含む
特定のAPCがそれらの細胞表面でTIM−3リガンドを提示することが、本発明によって発見された。
【0142】
本発明のさらにもう1つの態様によれば、APC活性化を阻害する方法を提供する。方法は、APCの活性を阻害するために、TIM−3の活性または発現を減少させる有効量の薬剤をAPCに接触させることを含む。「TIM−3の活性または発現を減少させる薬剤」は、ここで用いられるように、TIM−3とそのリガンドとの相互作用を効果的に遮断すること、またはTIM−3の発現を妨害することのいずれかによって、TIM−3の機能を減少させる薬剤をいう。そのような薬剤は、TIM−3結合分子、TIM−3リガンド結合分子、およびTIM−3のアンチセンスの形態をとることができる。
【0143】
本発明の別の態様によれば、細胞内感染症を処置または予防するための方法をさらに提供する。この態様に基づく方法では、マクロファージ上のTIM−3リガンドをTIM−3発現細胞と接触させ、マクロファージ活性化を促進することが含まれる。ここで用いられるように「細胞内感染症」とは、感染宿主の細胞内で感染性微生物または因子が生き残り、かつ複製する感染性微生物または因子による感染症をいう。多くの細菌、真菌、寄生虫、および全てのウイルスが細胞内感染症に関与する。リステリア菌(Listeria
monocytogenes)および種々のミコバクテリア(M.tuberculosisを含む)等の細胞内細菌は、マクロファージ内での分解に耐性であり、それによって食細胞内で生存および複製し得る。そのような細胞内細菌は、普通に、感染微生物を根絶しようとうする免疫系の能力にとっては特に攻撃性がある。細胞内感染症の重要な別の例は、リーシュマニア属の偏性細胞内原生動物を含む。
【0144】
被験体に投与する場合、本発明のTIM−3結合分子およびTIM−3リガンド結合分子を薬学的に許容可能な製剤の状態で投与する。そのような製剤は、通常、塩、緩衝剤、保存剤、互換性のある担体、補助的な薬剤(例えば、アジュバンドおよびサイトカイン)、さらに任意に他の治療薬を薬学的に許容される濃度で含むことが可能である。従って、TIM−3結合分子およびTIM−3リガンド結合分子と任意の補助薬とを含む「カクテル」が企図される。補助薬はそれ自体でTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子と共役して補助薬の送達を高めることができる。
【0145】
本発明に基づいて作られるすべての薬学的試料に含まれるTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子の好ましい量は、治療上有効な量であって、またその医学的に許容される量とするべきである。本発明の医薬組成物に含まれるTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子の実際の投与量は、特定の患者に対して所望の治療上の応答を達成するのに有効な量からなるTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子の医薬組成物、および患者に対する毒性のない投与形態が得られるように、変えることができる。
【0146】
選択された投与量および投与頻度は、様々な要因、例えばTIM−3結合分子およびTIM−3リガンド結合分子を含む治療薬の投与経路、投与時間、および排出率、処置の持続時間、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子と組み合わせた他の薬物、化合物、および/または材料、処置を施されている患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および病歴、さらに当医療分野で周知の同様の要因に依存する。例えば、投与計画は健康な成人を基準にして妊娠女性、授乳婦、および小児によって変化するようである。
【0147】
当技術の通常の技術を持っている医師は、容易に、必要とする医薬組成物の治療上有効な量を決定し、かつ処方することができる。例えば、医師は、本発明の医薬組成物で用いられるTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子の用量を、所望の治療効果が得られるのに必要とされる量よりも低い濃度で用い、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0148】
治療に用いるために、TIM−3結合分子およびTIM−3リガンド結合分子は、医薬組成物として処方することができる。本発明の医薬組成物は、有効量のTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子と、任意の他の医薬とを薬学的に許容される担体に含む。用語「薬学的に許容される担体」とは、ヒトまたは他の脊椎動物に投与するのに適した1種類以上の適合性の固形または液体状のフィラー、希釈剤、または封入剤を意味する。用語「担体」は、天然または合成の有機成分または無機成分を意味しており、それによって活性成分が組み合わさり、応用を容易にする。また、医薬組成物の成分も、所望の薬学的効果を実質的に損なうような相互作用が存在しないような様式で、本発明のTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子と混合することが可能であり、またお互いに混合することも可能である。
【0149】
適当な液状または固形の医薬組成物の形態は、例えば、吸入のための水溶液または塩溶液、マイクロカプセル化、エンコリエート化(enchchleated)、微小金粒子上への塗布、リポソームへの含有、噴霧化、エアゾール、皮膚への埋め込み用ペレット、または皮膚を引っ掻く鋭い物体上に乾燥させたものである。また、医薬組成物は、顆粒、散剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル(マイクロカプセル)、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、活性化合物を遅延性放出する滴剤または製剤も含み、また製剤の賦形剤および添加剤ならびに/または補助剤(例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、調味料、甘味料または可溶化剤)が、先に述べたように慣習的に使われる。医薬組成物は、種々の薬物送達系での使用に適している。薬物送達法についての簡単な総説は、この明細書で参考として援用されるLanger R (1990)Science 249:1527−33を見よ。
【0150】
治療に用いるために、有効量のTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を、全身的に、または皮膚もしくは粘膜等の所望の面のいずれかに、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を送達する任意の様式によって被験体に投与することができる。本発明の医薬組成物を「投与すること」は、当業者に公知のいかなる手段によっても行える可能性がある。投与の好ましい経路として、限定されるものではないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮内(intracutaneous)、皮下(subcutaneous)、皮内(intradermal)、皮下(subdermal)、経皮、局所、鼻腔内、気管内、吸入、眼、膣、および直腸が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、好ましい投与経路は、全身または静脈内である。
【0151】
全身的に送達することが望ましい場合、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を注射(例えば、ボーラス注入法または持続注入)による非経口投与用に製剤化してもよい。注射用の剤形は、保存剤を添加し、1回用量の形態(例えばアンプル)であってもよく、あるいは複数回投与容器の形態であってもよい。TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子は、油性もしくは水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンといった形態をとることが可能であり、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤等の製剤設計用薬剤を含むものであってもよい。
【0152】
非経口投与用の医薬剤形として、TIM−3結合分子の水溶液または水溶性剤形のTIM−3リガンド結合分子が挙げられる。さらに、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子の懸濁液を、適当な油性注射懸濁液として調製してもよい。適当な親油性溶媒またはビヒクルとして、ゴマ油等の脂肪油またはエチルオレイン酸塩またはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。注射用水性懸濁液は、この懸濁液の粘性を高める物質、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含むものであってもよい。必要に応じて、上記懸濁液はまた、適当な安定剤、または高濃度溶液の調製を可能とする化合物の溶解性を高める薬剤を含むものであってもよい。
【0153】
あるいは、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子は、使用前に、適当なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)とともに構成するために粉末状の形態であってもよい。
【0154】
当該分野で周知の薬学的に許容される担体と活性化合物とを組み合わせることによって、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を経口投与用として容易に処方することができる。処置すべき被験体が経口摂取するために、そのような担体によって、本発明の化合物を、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、その他に製剤化することが可能である。経口用途のための医薬製剤を、固形の賦形剤として得ることができ、得られた混合物を任意に磨り潰し、必要に応じて適当な補助剤を加えた後に、顆粒混合物を処理して錠剤または糖衣剤のコアを得る。特に、適当な賦形剤は、ラクトース、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類等のフィラー、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース等のセルロース製剤、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩類(例えばアルギン酸ナトリウム)等の崩壊剤を添加してもよい。任意に、経口用の剤形も、内部酸状態を中和するために生理食塩水または緩衝液に配合してもよく、あるいは担体をいっさい含まずに投与することも可能である。
【0155】
糖衣剤のコア部は、適当なコーティングが施されている。この目的のために、濃縮糖液を使用してもよい。この場合、任意にアラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有するものであってもよい。識別用に染料または顔料を錠剤または糖衣錠のコーティングに加えてもよく、またそれによって活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけることも可能である。
【0156】
経口的に用いることができる医薬製剤として、ゼラチンから作られているプッシュフィット型(push−fit)カプセル、同様に、ゼラチンと可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)とから作られる密閉型のソフトカプセルが挙げられる。プッシュフィット型カプセルは活性成分を含み、該活性成分はラクトース等のフィラー、デンプン等の結合剤、および/またはタルクもしくはマグネシウムステアリン酸塩等の滑沢剤、さらに状況に応じて安定剤と混和した状態にある。ソフトカプセルの場合、活性化合物を適当な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、または液状ポリエチレングリコールに溶解または懸濁してもよい。それに加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与用に処方されたマイクロスフェアも用いることができる。そのようなマイクロフェアについては、当技術分野において十分に規定されている。経口投与用の全ての剤形は、そのような投与に適した用量でなければならない。
【0157】
頬投与の場合、組成物は、従来通りに配合された錠剤またはトローチ剤の形状をとることが可能である。
【0158】
吸入による投与の場合、本発明に基づいて使用されるTIM−3結合分子およびTIM−3リガンド結合分子は、適当な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適当な気体の使用とともに、加圧パックまたはネブライザーからエアゾール噴霧製剤のかたちで簡便に送達されてもよい。加圧したエアゾールの場合、バルブを設けることによって用量単位を定め、測定量を送達するようにしてもよい。吸入器または注入器に用いるゼラチン等のカプセルおよびカートリッジは、化合物と適切な粉末ベース(例えばラクトースまたはデンプン)との粉末混合物を含有させて処方するものであってもよい。エアロゾル送達系を調製するための技術は、当業者に周知である。一般に、そのような系は、治療の生物学的特性、例えばTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子の免疫調節能を有意に損なうことがない成分を利用すべきである。例えば、SciarraおよびCutie、「エアロゾル」(“Aerosols”)、 Remington’s Pharmaceutical Sciences、 第18版、 1990、 pp 1694−1712を見よ(参考として援用される)。当業者は、過度の実験法に頼らずにエアロゾル生成のための種々のパラメータおよび条件を容易に決定することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、局所投与が好ましい。皮膚に対して局所投与する場合、本発明に基づくTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を軟膏、ゲル、クリーム、ローション、またはイオン導入用経皮貼布(transdermal patch for iontophoresis)として処方することが可能である。局所投与を達成する1つの方法として、経皮投与、例えばイオン導入によるものが含まれる。イオン導入による透過は、市販のパッチを用いて達成することができる。このパッチは、特定のパッチに応じて、数時間乃至数日間、あるいは数週間にわたる間、完全な皮膚を介して連続的に化合物を送達する。この方法は、比較的に高濃度で皮膚を通してTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子ならびに/あるいはさらなる医薬の送達を制御することを可能とする。イオン導入パッチの一例は、米国カリフォルニア州ロスアンゼルスのジェネラルメディカル社(General Medical Company)より販売さ
れるLECTRO PATCHTMである。このパッチによって、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子および/もしくは追加薬物を含むレザバーの電子刺激を用いて、皮膚を介した連続的または周期的に投与され得る異なる濃度の投与量が与えられる。
【0160】
皮膚に局所投与するために、軟膏、ゲル、クリームおよびローションを水溶性または油性の基剤単独と、あるいは適当な増粘剤および/またはゲル化剤とともに処方することができる。ローションは、水溶性または油性の基剤とともに処方され得、代表的に、さらに1種類以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、または着色剤を含む(例えば、薬学的に許容されるゲルを主成分とした局所担体の概要に関して、Mueller D.らに発行され、「局所麻酔用無菌ゲル(Sterile Topical Anesthetic Gel)」と題する米国特許第5,563,153号)を見よ)。上記軟膏、ゲル、クリーム、またはローションは、任意に、日焼け止め化合物、香料、保湿剤、または着色剤を含むように処方することができる。日焼け止め化合物として、紫外線を阻止するために用いられる有機および無機の物質が挙げられる。実例となる有機日焼け止め化合物は、パラアミノ安息香酸(PABA)、ケイ皮酸塩、サリチル酸塩、ベンゾフェノン、アントラニル酸塩、ジベンゾイルメタン、およびカンフル(camphore)の誘導体である。例えば、日焼け止め無機化合物の例として、酸化亜鉛および二酸化チタニウムが挙げられる。例えば、オクチルメトキシシナメートおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾンとも知られている)を用いることができる。オクチルメトキシナメートおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンは、Parsol
MCXおよびBezophenone−3という商標で、それぞれ市販される。他の例として、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸(RonaからEusolex232として市販されている)およびオクチルジメル−p−アミノ安息香酸(Haarmann & Reimerから市販されているオクチルジメチルPABA)が挙げられる。エマルジョンに用いられる日焼け止め剤の正確な量は、太陽のUV照射から所望される保護の度合いに応じて変えられ得る。
【0161】
TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を、経直腸または経膣組成物、例えば坐剤または停留浣腸(例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤主成分を含む)にも処方することが可能である。
【0162】
すでに説明した剤形に加えて、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を蓄積製剤として処方することも可能である。そのような長時間作用性の剤形を、適当な高分子材料または疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョン)またはイオン交換樹脂、またはやや溶けにくい誘導体(例えば、やや溶けにくい塩類)とともに処方してもよい。
【0163】
医薬組成物もまた、適当な固形またはゲル相担体あるいは賦形剤を含むことができる。そのような担体または賦形剤の例として、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、および重合体(例えば、ポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0164】
TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子と追加の薬剤とをそれ自体(混ぜもの無しで)投与してもよいし、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。医薬で使用する場合、塩は薬学的に許容されるものでなければならない。しかし、薬学的に許容されない塩を、その薬学的に許容される塩を調製するために都合よく用いることも可能である。そのような塩として、限定されるものではないが、以下の酸から調製される塩が挙げられる。すなわち、酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、蟻酸、臭化水素、塩化水素、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸、および酒石酸である。また、そのような塩類は、アルカリ金属またはアルカリ土属塩類(例えば、カルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩)として調製することもできる。
【0165】
適当な緩衝剤として、酢酸および塩(1〜2% w/v);クエン酸および塩(1〜3% w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5% w/v);さらにリン酸および塩(0.8〜2% w/v)が挙げられる。適当な保存剤として、ベンズアルコニウム塩化物(0.003〜0.03% w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9% w/v);パラベン類(0.01〜0.25% w/v);およびチメロサール(0.004〜0.02% w/v)が挙げられる。
【0166】
医薬組成物は、都合よく単位投薬形態で存在することが可能であり、また製薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製することが可能である。全ての方法は、TIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子を、1種類以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、組成物は、一様に、かつ密接にTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子と液状担体、微細に分かれた固形担体、あるいはそれら両方とを会合させ、必要に応じて産物を成形することによって調製される。
【0167】
他の送達系は、持続放出性、遅延放出性、または,徐放性の送達系を含み得る。そのような系は、本発明のTIM−3結合分子またはTIM−3リガンド結合分子が繰り返して投与されるのを避けることができ、被験体および医師にとって利便性が高まる。多くの型の放出性送達系が利用可能であり、また当業者に公知である。それらは、ポリタクティックおよびポリグリコール酸、ポリ無水物、およびポリカプロラクトン等のポリマーを主成分とする系;ワックスコーティング、従来の結合剤および賦形剤等を用いた圧縮錠剤を含む。腸上皮への材料送達を高めるための生体粘着性ポリマー系が公知であり、公表PCT出願WO93/21906に記載されている。薬剤を腸上皮に送達するためのカプセルもまた、公表PCT出願WO93/19660に記載されている。
【0168】
上記組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1種類以上の単位投薬形態を含むことが可能なパックまたはディスペンサー装置の中に含まれていてもよい。例えば、パックは金属箔またはプラスチック箔を含むもので、例えばブリスターパックであってもよい。パックまたはディスペンサー装置は、投薬指示が添えられることもある。
【0169】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、それらがさらに制限を受けるものと決して解釈してはならない。この出願の至る所で引用された全ての参照(引用文献、発行された特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願)の内容全体を、本明細書では参考として明確に援用する。
【実施例】
【0170】
(実施例1)
Th1特異的mAbの産生。新規なTh1特異的細胞表面タンパク質を同定するため、ルイスラット(Lewis rat)およびLou/Mラットに、樹立Th1特異的クローンAE7および生体外(in vitro)で分化させた5B6由来Th1細胞系(Waldner Hら(2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:3412−17)とDO11.10 TCRトランスジェニックマウス由来Th1細胞系とを含むTh1T細胞クローンおよび細胞系を接種した。メスのルイスラットおよびLou/Mラット(ハーランスプラーグ−ドーリー社(Harlan Sprague−Dawley、Inc.))は、1〜5×10個のTh1極性分化(Th1−polarized)T細胞クローンおよび/または細胞系の皮下(s.c.)注射の組み合わせによって3回接種された。これらのラットを追加免疫し、その4日後、ポリエチレングリコール1450を用い、HAT培養液中で選別することによって、脾臓細胞を骨髄腫細胞(受託番号ATCC CRL8006)と融合した(Kohler Gら(1975) Nature 256:495−97)。約20,000のモノクローナル抗体(mAb)からなるパネルを作製した。融合プレートのウェルからとった上清を、Th1T細胞およびTh2T細胞のフローサイトメトリーによってスクリーニングした。Th1T細胞で陽性のシフトを示したがTh2T細胞では示さなかったハイブリドーマウェルの全てで、クローンを増殖させ、2回限界希釈してサブクローニングを行った。Th1細胞を選択的に染色した2種のmAb、すなわち8B.2C12および25F.1D6の特徴づけをさらに行った。これらのmAbは、細胞表面のあるタンパク質を認識するが、そのタンパク質は、樹立CD4+Th1細胞およびCD8+Tc1細胞上には存在するが、CD4+Th2細胞およびCD8+Tc2細胞上には存在しない(図1A)。
【0171】
(実施例2)
(TIM−3のクローニング) AE7Th1クローンのmRNAとpAXFベクターとを用いて、真核細胞発現ライブラリーを作製した。Seedによって開発された方法に基づく発現クローニング(Seed Bら(1987)Proc Natl Acad Sci USA 84:3365−69))によってライブラリーのスクリーニングを行った。免疫選択された個々のプラスミドをCOS細胞へトランスフェクトし、その後、抗TIM−3抗体を用いて間接免疫蛍光染色した。陽性のクローンを配列決定した。この方法により、281アミノ酸からなり、以下のドメインをもつI型膜タンパク質をコードするマウスcDNAを同定した。すなわち、IgV様ドメインと、それに続く、31%のセリン残基およびトレオニン残基を含むムチン様ドメインとからなる細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン;ならびに細胞質領域である(図1B)。cDNAによって発現されるこの遺伝子産物をTIM−3、すなわちT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子と名付けた。細胞質領域は6つのチロシンを有し、そのうちの1つはチロシンリン酸化モチーフRSEENIY(配列番号7)の一部である。細胞外ドメインは4カ所のN結合型グリコシル化部位、および5カ所のO結合型グリコシル化部位を有す。
【0172】
ゲノムデータベースサーチと逆転写酵素−ポリメラ−ゼ連鎖反応(RT−PCR)とによって、TIM−3のヒトホモログを同定した。それはマウスTIM−3と、全体で63%のアミノ酸同一性を、細胞質ドメイン内では77%の同一性を有し、そのなかには上述のチロシンリン酸化部位の保存が含まれる(図1B)。データベースサーチによって、TIM−3が腎傷害分子(Kidney Injury Molecule−1(KIM−1))/HCVcr−1、ヒトA型肝炎ウイルス(hepatitis A virus)に対する受容体、およびTIM−2と近縁であることが判明した。これら3つのファミリーメンバー(KIM−1、TIM−2およびTIM−3)すべてが類似のIg/ムチン構造を有し、さらにこれらの遺伝子はヒト染色体の5q33.2、およびマウス染色体11に位置する(McIntire JJら(2001)Nat Immunol 2:1109−1116)。
【0173】
(実施例3)
(TIM−3のインビトロ発現) TIM−3cDNA発現構築物を用いて、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary(CHO))細胞の安定したトランスフェクトを行った。安定したトランスフェクト体をフローサイトメトリーおよび免疫沈降で分析し、クローニングしたタンパク質がTIM−3であり、さらにそれが細胞表面に発現されていることを確認した(図1C)。
【0174】
様々な細胞系(Th1、Th2、樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞)ならびにSJL T細胞、B細胞、およびCD11b+細胞におけるこの遺伝子の発現を、定量的RT−PCRによって測定した。TIM−3の転写産物は、インビボ由来CD11b+細胞でも低レベルの発現がみられたが、Th1細胞においてのみ最高レベルで存在した(図1D)。抗TIM−3抗体を用いたフローサイトメトリー分析を行い、TIM−3がナイーブT細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞では発現していないことを確認した。これらのデータは、これらの抗体によって認識される分子が主として、分化したTh1細胞またはTc1細胞で発現され、少なくともタンパク質レベルにおいては、他の造血性細胞型では発現されないことを示唆する。
【0175】
(実施例4)
(TIM−3発現の動態) T細胞分化におけるTIM−3タンパク質の発現動態を調べるため、Th1分化誘導条件(Th1−polarizing conditions)またはTh2分化誘導条件下で、ナイーブDO11.10 TCRトランスジェニックT細胞のインビトロ活性化を行った。各回の再刺激の後、サイトカインを誘導するために、Th1およびTh2細胞をPMA/イオノマイシン(ionomycin)で刺激し、その後TIM−3およびCD4に対するmAbで染色し、さらに細胞内染色によってサイトカイン発現の検出を行った。この実験において、Th2細胞ではTIM−3がみられなかったが、Th1細胞では、3回目のインビトロ分化誘導(in vitro polarization)の後で検出された(図2)。従って、TIM−3の発現はT細胞分化の後期であり、このことは、TIM−3がそれ自体ではT細胞分化に寄与していないかもしれないが、Th1細胞の移動および/またはエフェクター機能に役割を持つ可能性があることを示唆している。
【0176】
(実施例5)
(EAEにおけるTIM−3の発現) 次いで、CNSのTh1媒介自己免疫疾患であるEAEの、進行期におけるTIM−3発現を調べた。EAE感受性であるSJLマウスを脳炎誘発性プロテオリピドタンパク質(PLP)の139〜151ペプチドHSLGKWLGHPDKF(配列番号8;クオリティー コントロールド バイオケミカルズ(Quality Controlled Biochemicals))で免疫した。EAEを誘導するため、メスのSJLマウス(生後4〜8週)(ジャクソンラボラトリー(The Jackson Laboratory))の各側部に、400μgの結核菌(Mycobacterium tuberculosis;ディフコ(Difco))を含む完全フロイントアジュバント(CFA;ディフコ)に乳状化した50μgのPLP139〜151ペプチドを皮下(s.c.)注射した。以下のように段階付けされたEAEの兆候について、マウスを毎日検査した。すなわち、弛緩した尾、1;不均一な足並みおよび立ち直り反射異常、2;完全後肢麻痺、3;前後肢麻痺、4;瀕死状態、5である。マウスは、病状を記録し、免疫後の様々な時点で屠殺し、脾臓、脳、およびリンパ節を取り除き、TIM−3の発現を調べた。
【0177】
タックマン(Taqman(登録商標))ストラテジー(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems))を用い、リアルタイム逆転写酵素−定量的ポリメラ−ゼ連鎖反応(RT−QPCR)を行った。総RNAをトリゾール(TRIzol)によって単離し、DNaseIで処理した。逆転写によってRNAをcDNAに変換し、10ngのcDNAをTaqman(登録商標)PCRに用いた。TIM−3、および内部参照であるグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現レベルを、それぞれ6−カルボキシフルオレセイン(FAM)またはVIC(登録商標;アプライドバイオシステムズ)で標識したプローブを用いた多重PCRによって測定した。TIM−3のプライマーおよびプローブは、プライマーエクスプレスソフトウェア(Primer Express v1.0、アプライドバイオシステムズ)を用いて、2.8kb転写産物の3’UTR内に設計した。GAPDHのプライマー/プローブセットはアプライドバイオシステムズから購入した。以下に示すTIM−3特異的プライマーおよびプローブをTIM−3用に使用した。すなわち、
順方向プライマー:CAAGCCGGTGGACCTCAGT (配列番号9);
逆方向プライマー:AGATGGGAGCCAGCACAG (配列番号10);
プローブ:AGCTGCCTGCCCAGTGCCCTT (配列番号11)
である。
【0178】
TIM−3−FAMおよびGAPDH−VICの同時測定によって、試料当たりに添加されたcDNAの量を正規化する(normalize)ことが可能になった。PCRは、タックマン(登録商標)標準PCRマスターミックス(Universal PCR Master Mix)と、ABI PRISM7700シークエンス ディテクション
システム(Sequence Detection System)とを用いて行った。比較閾値サイクル(C)を用いて、無組織対照群(標準物質(calibrator))に対する遺伝子発現を決定した。従って、定常状態のmRNAレベルは、標準物質に対してn倍の差異があるとして表現される。各試料に対し、TIM−3のC値を式ΔC=CTIM−3−CTGAPDHを用いて正規化した。相対的発現レベルを決定するには、以下の式を用いた。すなわち、
ΔΔC=ΔCT(1)試料−ΔCT(1)標準物質
であり、相対的TIM−3発現量をグラフにするのに用いた値は、式2−ΔΔCTを用いて算出した。
【0179】
図3Aは、対照群であるGAPDHの発現に対する、TIM−3RNAの発現を示す。免疫後、TIM−3 mRNAがリンパ節でアップレギュレートされ、EAE発症の直前である免疫後7日目に発現ピークになることを、定量的RT−PCRを用いて示した。リンパ節での発現は、その疾患が進行するにともなってダウンレギュレートされた。脳では、TIM−3 mRNA発現は着実に増加し、疾患の初期(10〜13日目あたり)にピークになった。TIM−3 mRNAの発現は、その後ダウンレギュレートされ、疾患スコアの最大時には基礎レベル近くにまでなる(図3A)。この発現パターンは、タンパク質レベルでも、フローサイトメトリー(FACS)分析によって確認された(図3B)。10日目に、脳、脾臓、およびリンパ節から取った細胞を、TIM−3、CD4、CD8、CD11b、CD19およびB220によりmAbで染色した。ヒストグラムは、異なる細胞集団におけるTIM−3の発現を表す(点線、アイソタイプ対照群;実線、特異的染色)。免疫後、周辺細胞では非常に少数のCD4+T細胞(<2%)でTIM−3が発現されているのに対して、CNSでは、疾患の臨床的症状の発症時に存在するCD4+およびCD8+T細胞の大部分でTIM−3が特異的に発現された(図3B)。CNSにおけるTIM−3+T細胞の数は、疾患が進行するのにしたがい減少した。これらのデータは、インビボで、TIM−3がT細胞上で発現され、EAEの発症に重要な役割を果たしていることを示唆する。さらにこれのデータは、TIM−3が、分化したTh1細胞で発現することにより、Th1細胞が優先的にCNS組織に浸潤すること、およびTIM−3を発現する細胞は、CNSで増殖するうえでの優位性を有することを可能にする。
【0180】
(実施例6)
(抗TIM−3投与に続く超急性のEAE) TIM−3のインビボでの機能をさらに調べるため、EAEの進行に対する抗TIM−3抗体投与の影響をテストした。PLP139〜151ペプチドにより前もって免疫したSJLマウスに、抗TIM−3抗体またはアイソタイプの一致した対照群ラットIg(rIgG2a)を投与し、EAEの進行を観察した。メスのSJLマウス(生後4〜8週間)(ジャクソンラボラトリー(Jackson Laboratory))の各側部に、400μgの結核菌(M.tuberculosis)を含んだCFA中にある25〜75μgのPLP139〜151ペプチドを皮下(s.c.)注射した。さらに各マウスに、0.1mlのPBS中にある100ngの百日咳毒素(pertussis toxin)(リストバイオロジカルラボラトリーズ(List Biological Laboratories))を静脈(i.v.)注射した。100μgの抗TIM−3抗体(0.2〜0.8EU/mgの毒素活性)もしくは100μgの対照rIgGまたはPBSを、0日目にから1日おきに10〜16日間、マウスに腹腔内(i.p.)注射した。上述のように段階付けされたEAEの兆候について、マウスを毎日検査した。疾患のピーク時または実験の最後に、脳と脊髄を取り出して10%ホルマリンで固定し、炎症および脱随についての病理組織学的検査をおこなった。
【0181】
抗TIM−3で処置されたマウスは、超急性で特殊なEAEを進行させ、体重減少の増大、倦怠、および運動失調を示し、さらに後肢麻痺をともなわず、時には尾も正常でありながら前肢麻痺を示した。抗TIM−3抗体で処置された群は、疾患の発症時には正常であったが、rIgG2aで処置された対照群と比較して、疾患の進行が加速され、その結果はっきりとより重篤な臨床症状を示し、死亡率も増大している(表1)。
【0182】
組織学的には、抗TIM−3抗体で処置されたマウスは、概ね典型的な急性EAEの所見を示したが、rIgG2aで処置された対照群と比較して、髄膜および柔組織の両方で炎症性の病巣の増加が認められた(表1)。
【0183】
【表1】

また抗TIM−3抗体で処置された動物で、臨床兆候の発症直後に屠殺した動物では、血管周囲の局所的フィブリン沈着とともにCNS炎症湿潤している好中球および単核球の数が多いことが示され、このことにより、血管傷害および超急性炎症性応答が示唆された(図4Aおよび4B)。さらに、抗TIM−3抗体で処置された動物で、30日目に屠殺した動物は、rIgG2aで処置された動物と比較して、より広範囲の脱髄病変を示した(図4Cおよび4D 対 図4EおよびF)。抗TIM−3抗体で処置された動物の脱髄病変部に、検出可能なファゴサイトーシスされたミエリン断片を含む活性化マクロファージが満たされていた(図4D、挿入図)。活性化マクロファージが、EAEにおいて脱髄を引き起こす主要細胞であること(Gordon EJら(1995)J Neuroimmunol 62:153−60)と、活性化マクロファージを減少させることにより、EAEが阻害されること(Tran EHら(1998)J Immunol 161:3767−75)が以前に示されている。従って本願出願人は、活性化マクロファージが抗TIM−3抗体処置で誘導されたことにより、超急性の疾患表現型ならびに炎症およびに脱髄の促進が引き起こされたと考える。
【0184】
(実施例7)
(インビトロにおけるCD11b+細胞の抗TIM−3媒介活性化および増殖) TIM−3のインビボでの機能と、すでに観察されているEAEでの役割とをさらに理解するため、EAEになりやすいメスのSJLマウス(生後4〜8週間)の各側部に、CFA中に乳状化された50μgのPLP139〜151を皮下(s.c.)注射し、100μgの抗TIM−3抗体もしくは100μgの対照rIgGまたはPBSを、1日おきに腹腔内(i.p.)注射した。マウスを10日目に屠殺して脾臓を取り出し、脾臓細胞の単離をおこなった。脾臓細胞を5x10細胞/mlで丸底96穴プレートに入れ、PLP139〜151、または対照抗原であるノイラミニダーゼ101〜120ペプチドEALVRQGLAKVAYVYKPNNT(配列番号12;Nase;クオリティー コントロールド バイオケミカルズ)の濃度を増大させながら(0−100μg/mL)48時間刺激した。1プレートあたり1μCiの[H]チミジンを、プレートに12時間パルス投与した。取り込まれた放射線標識チミジンを、ベータプレート(Beta Plate)シンチレーションカウンター(ワラック(Wallac))を用いて測定した。rIgG2aで処置された対照群マウス由来の脾臓細胞は、低レベル(バックグラウンド)の増殖性反応(1000−5000cpm)を示し、特異的抗原の添加とともに、用量依存的に増殖性を増大させた。一方、抗TIM−3処置マウス由来の脾臓細胞は、特異的抗原に対する反応は同様であったが、抗原の非存在下で6〜10倍の基礎反応を有した(図5A)。抗TIM−3処置マウス由来の脾臓細胞をフローサイトメトリー分析した結果、CD11b+細胞集団、すなわち単球/マクロファージを主に含む細胞集団に、2〜3倍の増加が認められた。
【0185】
抗TIM−3処置マウスからのCD11b+細胞の増殖を確かめ、それによる基礎増殖反応への貢献の可能性を確かめるため、5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)を、上述のように抗TIM−3またはrIgG2a対照抗体で処置された免疫されたSJLマウスの飲用水に投与した(8mg/ml)。マウスを10日後に屠殺し、CD4、CD8、CD11b、CD11c、CD19、B220、およびBrdUに対するmAbで、脾臓細胞を染色した。抗TIM−3処置マウス由来の脾臓細胞を、rIgG2a処置マウス由来の脾臓細胞に対して、フローサイトメトリー分析した結果、CD11b+細胞のみが、BrdU+細胞およびBrdU−細胞両方の細胞数を増加させていることが判明した(図5B)。これらCD11b+細胞の3分の2がBrdUを取り込み、かつMHCクラスIIを高レベルで発現しており(図5B)、これらの活性化されたCD11b+細胞が、抗TIM−3処置マウスの高い基礎反応において重要な役割を果たしているという考えと一致する。
【0186】
(実施例8)
(抗TIM−3処置APC細胞およびT細胞の基礎増殖性反応における相乗効果) 基礎増殖性反応における、T細胞および非T細胞、特にCD11b+細胞の役割を明らかにするため、T細胞および非T細胞を、抗TIM−3処置マウスおよびrIgG2a処置マウスの脾臓から単離した。全脾臓細胞またはT細胞(10)のいずれかを、2×10個のB細胞、2×10個のCD11b+細胞、または紫外線照射された脾臓細胞の存在下あるいは非存在下で培養し、増殖性反応を測定した(Hチミジンの取り込みを三連で測定)。抗TIM−3処置マウスから単離したT細胞、B細胞、またはCD11b+単球の単独で示す基礎増殖性反応が穏やかなものでしかなかったのに対して、B細胞と、CD11b+細胞との両方を抗TIM−3処置T細胞と共培養したときに、高い基礎反応を再現した(図5C)。対照として、rIgG2a処置マウスからのT細胞に、B細胞、単球、またはB細胞と単球の両方を加えたときには、相加的な効果しか生み出されなかった(図5C(黒色棒))。交差増殖実験を行ったところ、抗TIM−3処置T細胞をrIgG2a処置B細胞およびCD11b+細胞に加えることにより、基礎増殖性反応の増大が認められた。しかし、最大の基礎増殖性反応を得るためには、抗TIM−3処置T細胞と、抗TIM−3処置非T細胞の両方が必要であった。脾臓細胞をFc受容体(FcR)阻害抗体とインキュベートしても、基礎増殖性反応の低下がみられず、従って、FcR媒介の架橋の可能性を、この機構から排除可能であると示唆された。さらに、紫外線照射された非T細胞を抗TIM−3処置T細胞に加えても、同様な高い基礎増殖性反応が再構成されなかったので、T細胞と非T細胞との相乗効果があらためて確認された。
【0187】
(実施例9)
(T細胞と非T細胞との同族的相互作用) 基礎反応の増大に、T細胞と非T細胞との同族的相互作用が必要であるかを明らかにするため、別々に設定した実験で、T細胞および非T細胞を、細胞接触を阻害する浸透性の0.2μmアナポア(Anapore)メンブレンで分離し、増殖性反応を測定した。同じく図5C(灰色の棒)に示されているように、抗TIM−3処置T細胞を抗TIM−3処置非T細胞から分離させたことにより、増殖性反応に劇的な低下が生じた。これは、T細胞と非T細胞との同族的相互作用が必須であることを示すものである。
【0188】
(実施例10)
TIM−3発現T細胞は、APCの増殖(expansion)および活性化を調節する。TIM−3発現T細胞がマクロファージおよび他の非T細胞の増殖および活性化を調節するか、直接検討するため、5×10個のTIM−3+ Th1 5B6トランスジェニックT細胞(PLP139〜151に対する特異性を有する)を、ナイーブSJLレシピエントに養子移植した。その後このレシピエントを、PLP139〜151で免疫し、0日目および2日目に抗TIM−3抗体または抗ICOS抗体(T細胞抗体結合対照群として)で処置した。3日目に脾臓細胞を取り出し、CD11b、F4/80、B220、およびMHCクラスIIに対するmAbで細胞を染色した。移植から3日後に脾臓細胞をフローサイトメトリー分析した結果、抗TIM−3処置群では、活性化されたCD11b+/F4/80+細胞の数に劇的な増加が認められたが、抗ICOS抗体処置マウスではみられなかった。サブセット2(図5D)では、CD11b+/F4/80+マクロファージの数に2〜3倍の増加があった。これらのF4/80+マクロファージでは、MHCクラスIIも高いレベルで発現されており、これらの細胞がより活性化されていたことを示す。
【0189】
まとめると、これらの結果は、非T細胞とTIM−3発現Th1細胞との間の同族的相互作用が、抗TIM−3処置の影響を受け、その結果CD11b+/F4/80+マクロファージが増殖し、かつ活性化されることを示す。この発見を説明するかもしれない、いくつかの潜在的メカニズムを以下に挙げる:a)抗TIM−3が、分化したTh1細胞表面上のTIM−3タンパク質をインビボで架橋し、炎症促進性サイトカイン(IFN−γおよびTNFなど)の産生を増幅し得、そのことにより次にマクロファージの活性化が誘導されうる;b)抗TIM−3抗体により、分化したTh1細胞の脳への移動が促進され得、それらの細胞により、脳における循環系からのマクロファージの細胞流入が増大され得る;c)抗TIM−3によって、TIM−3と、マクロファージ上に潜在的に存在する阻害性リガンドとの同族的相互作用がブロックされ得、こうして、Th1細胞によって産生される炎症促進性サイトカインの存在下では、マクロファージの活性化が増強され得る。これらの異なった潜在的作用メカニズムは、必ずしも相互に排除するものではないと理解されるべきものであり、また、これらは他のいかなる作用メカニズムも除外するものではないと理解されるべきものである。
【0190】
加えて、Th1細胞およびTh2細胞は、お互いの機能を相互に調節するため、Th1細胞でのTIM−3の発現、およびそれに続くTIM−3保有Th1細胞の標的組織部位への移動は、喘息およびアトピーの調節にも役割をもつと考えられている。従って、TIM−3は、Th1細胞表面に選択的に発現されている分子であるのに加えて、マクロファージの活性化および自己免疫疾患の重篤性の増大に機能的役割を有する。これらのデータと、喘息耐性マウスでの結果とは、ともに、TIM−3遺伝子ファミリーのメンバーが、自己免疫とアレルギーの調節とに重要な役割を果たしていることを示唆している。
【0191】
(実施例11)
TIM−3は、Th1細胞の標的組織への移動を促進する。マクロファージの活性化における役割に加えて、TIM−3はエフェクターTh1細胞の移動にも役割をもつ。より具体的には、TIM−3の発現は、Th1細胞が炎症部位および標的組織へ移動するのを促進し、それらの場所でTh1細胞は組織傷害および自己免疫を媒介し得る。従って、Th1細胞表面のTIM−3の発現、またはTIM−3とそのリガンドとの相互作用に影響を与えると、Th1細胞がそれらの標的組織部位へ移動し免疫応答および炎症を媒介するのを、促進または抑制することになり得る。
【0192】
TIM−3の発現が分化したTh1細胞の標的組織への移動を促進するという仮説を検証するため、以下の実験を行った。5B6トランスジェニックマウス由来の、PLP139〜151特異的トランスジェニックT細胞を活性化し、Th1条件下で極性化した。FACS染色により、すべての細胞でのTIM−3の発現を検査した。活性化され、かつ極性化されたT細胞を、最後の活性化の後10日目に回収し、色素である5,6−カルボキシフルオレセインジアセテートスクシニミジルエステル(CFSE)で染色した。細胞はこの色素で標識され、細胞が分裂するに従い色素が希釈される。簡単には、3μM CFSE(Molecular Probe、Eugene、OR)を補充されたPBSに、5B6 Th1細胞を1×10細胞/mlで、室温で5〜10分間インキュベートした。引き続いて細胞をRPMIで洗浄し、PBSに再懸濁し、同系のナイーブレシピエントに移植した(1×10細胞/マウス)。次いで、レシピエントを、CFA中のPLP139〜151ペプチドで免疫し、さらに実験期間中1日おきに、100μgの抗TIM−3または対照群抗体(抗ICOSまたは抗ICOSL)を投与した。マウスを3日目と7日目とに屠殺にし、被移植マウスのリンパ節、脾臓および脳におけるCFSE標識細胞の存在と数(パーセンテージ)とを、フローサイトメトリーで分析した。移入後3日目には、CFSE標識細胞は、移入されるレシピエントの脾臓にのみ検出され、リンパ節、または脳では検出されなかった(図6A)。しかし、7日目には、抗TIM−3抗体で処置された群の大部分のCFSE標識細胞は脳で検出され、脾臓におけるCFSE標識細胞の数は減少していた(図6B)。対照的に、対照抗体で処置された群では、大部分のCFSE標識細胞は依然としてこれらマウスの脾臓で検出され、非常に少数の細胞がこれらのマウスの脳で検出された(図6B)。この実験の結果は、TIM−3発現T細胞の、CNSなどの組織部位への移動(migration and trafficking)が、インビボで抗TIM−3抗体処置によって促進され、それによりEAE誘導が促進されることを示唆している。
【0193】
まとめると、このデータは、CNS組織に浸潤するT細胞の大部分がTIM−3を発現していることと、抗TIM−3処置に続いて、それらの細胞のCNSへの移動が促進されることとを示し、従って、標的組織への移動におけるTIM−3の役割を強く支持するものである。
【0194】
(実施例12)
(TIM−3リガンドは、APCで発現されている) Th1細胞上のTIM−3を架橋することによる、マクロファージおよびCD11b+細胞の活性化メカニズムをさらに解明するため、マクロファージおよび他のCD11b+細胞で発現される、TIM−3に対する受容体またはリガンドの存在を立証するための実験を行った。TIM−3を、遺伝的にヒト免疫グロブリンの定常領域に融合させ、可溶性TIM−3Ig融合タンパク質を調製した。TIM−3リガンドを様々な細胞型で同定するため、この可溶性タンパク質をビオチン化し、フローサイトメトリー実験に使用した。図7に示されているように、この因子を用いて、可溶性TIM−3Igが樹状細胞(D2Sc1)細胞株およびマクロファージ(RAW264.7)細胞株の細胞に結合するが、マウスB細胞株(LS102.9)の細胞には、全く結合しないか、結合しても弱く結合するのみであることが観察された。さらなる実験により、TIM−3Igがインビトロでマウス正常細胞に結合することと、インビボでCD11b+細胞に結合することが示された。
【0195】
(実施例13)
(可溶性TIM−3) マウスTIM−3の全長および選択的スプライシング型を、RT−PCRに基づく方法を用いて単離した。マウスTIM−3遺伝子の5’および3’非翻訳領域(UTR)にプライマーを設計し、コンカナバリンA活性化脾臓細胞から調製したcDNAを用いたPCRに使用した。大きさがおおよそ1kbと800bpである2つのアンプリコンをクローニングし、配列決定した。1kbアンプリコンの予測アミノ酸翻訳は、シグナルペプチドドメイン、IgVドメイン、ムチンドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインからなるオープンリーディングフレームを明らかにした。対照的に、800bp産物からのオープンリーディングフレームを分析したところ、シグナルペプチドドメイン、IgVドメイン、および細胞質ドメインのみの存在を明らかにした。選択的にスプライシングされた可溶型TIM−3の推定アミノ酸配列を、配列番号13として提供する。
配列番号13--TIM−3の選択的にスプライシングされた形態のアミノ酸配列
【0196】
【化7】

ムチンドメインおよび膜貫通領域が存在しないことは、マウスTIM−3遺伝子からのエクソン3、エクソン4、およびエクソン5のスプライシングと一致した。このデータは、800bpアンプリコンによってコードされる産物が、選択的にスプライシングされた可溶型TIM−3に相当することと一致する。
【0197】
(実施例14)
(可溶性TIM−3融合タンパク質構築物) 潜在的TIM−3リガンドを同定し、T細胞反応の調節におけるTIM−3リガンドの機能的役割を明らかにするために、ヒトFcテール(tail)に融合したマウスTIM−3の細胞外部分を有する、2つの融合タンパク質を構築した。第1の構築物、すなわちmTIM−3/hFc融合タンパク質は、マウスTIM−3の細胞外領域全体(IgVドメインおよびムチンドメイン)を有し、それがヒトFcテールに融合している。第2の構築物、すなわちmTIM−3Ig/hFc融合タンパク質は、マウスTIM−3のIgVドメインのみを有し、それがヒトFcテールに融合している。選択的スプライシング型のTIM−3がシグナルペプチド、IgVドメイン、および細胞質ドメインのみをもつことを示すデータから、この分泌型TIM−3にIg特異的なリガンドがある可能性が示唆されたので、この第2の融合タンパク質を構築した。これら2つの融合タンパク質は、TIM−3リガンド結合分子であり、TIM−3リガンドと相互作用し、またTIM−3リガンドの同定に利用することができる。
【0198】
(実施例15)
(可溶性TIM−3の投与に続く超急性EAE) これら可溶性TIM−3融合タンパク質構築物の実験的自己免疫性脳髄膜炎(EAE)の発生に対する影響を明らかにする、SJLマウスに、100ngの百日咳毒素を含んだ完全フロイントアジュバント(CFA)中にある50μgのPLP139〜151を静脈注射により免疫し、さらに0日目から10日目まで1日おきに、100μgのTIM−3/hFc、100μgのmTIM−3Ig/hFc、100μgのヒトIgG(対照群)、または100μlのPBSを、腹腔内注射する処置をした。mTIM−3Ig/hFcまたはmTIM−3/hFcのいずれかで処置されたマウスは、疾患の重篤性と死亡率の両方で明らかなように(表2参照)、より重篤なEAEを進行させた。mTIM−3/hFcで処置されたマウスは平均疾患スコアが2.69であり、それに対して対照群のhIgG処置マウスは平均疾患スコアが1.86、PBS処置マウスは1.89であった。mTIM−3/hFcで処置されたマウスは、死亡率でも、増大した値31.3%を示し、それに対して対照群のhIgG処置マウスは5.8%、PBS処置マウスは5.6%であった。このような、mTIM−3/hFc処置による重篤性および死亡率の増大は、抗TIM−3抗体で処置したマウスでみられたEAEの増大を想起させるものであり、TIM−3リガンドのブロックまたは活性化により、TIM−3それ自体をブロックまたは活性化するのと同じ効果が引き起こされることを示唆している。
【0199】
【表2】

(実施例16)
(脾臓細胞の、可溶性TM−3媒介活性化および増殖) このEAE増大を引き起こすインビボ機構をさらに理解するため、実施例15の記載のように、融合タンパク質または対照タンパク質で免疫および処置されたSJLマウスを、10日目に屠殺し、脾臓を除いた。全脾臓細胞を、チミジン取り込みによって測定された増殖アッセイを行うために、5×10細胞/ウェルでプレートに入れた。hIgG処置対照群およびPBS処置対照群の基礎増殖率が低かった(約10000cpm)のに対して、mTIM−3/hFc(約60000cpm)またはmTIM−3Ig/hFc(約140,000)で処置したマウスからの脾臓細胞は、ペプチドで再刺激しなくても非常に高いレベルで増殖した(図8A)。この結果は、再び、マウスを抗TIM−3抗体で処置したときにみられた結果を想起するものである。48時間目にとった上清を用いてサンドイッチELISAを行い、サイトカイン産生を測定した。mTIM−3/hFcで処置されたマウスはIFN−γ(4111pg/ml)、およびIL−2(592pg/ml)を高いレベルで産生し、一方hIgG処置対照群およびPBS処置対照群はIFN−γまたはIL−2を全く産生しなかった(図8B)。また、mTIM−3/hFcで処置されたマウスは、IL−4も、hIgG処置対照群より3倍多く産生した(図8B)。まとめると、mTIM−3Ig/hFcまたはmTIM−3/hFcのいずれかで処置されたマウスからの全脾臓細胞は、高度に活性化されており、大量のTh1サイトカイン(IFN−γおよびIL−2)を産生し、そしてTh2サイトカインであるIL−4を相当量産生することが、この結果により明らかになった。IL−10またはTFN−αは検出されなかった。
【0200】
mTIM−3/hFc処置マウスの活性化された脾臓環境がどのタイプの細胞で構成されているのかを調べるため、免疫および融合タンパク質処置の後10日目に全脾臓細胞をとり、エキソビボで直接染色し、FACS分析にかけた。mTIM−3/hFc処置マウスの脾臓からとったCD4+細胞およびCD8+T細胞は、ネガティブ対照群であるIgGまたはPBSで処置されたマウスからの対応する細胞より、活性マーカーであるCD25およびCD69をかなり高いレベルで発現した。このデータは、mTIM−3/hFcで処置された、免疫されたSJLマウスの脾臓からのT細胞が、ペプチドによる再刺激なしに、高度に活性化されていることを示す。
【0201】
(実施例17)
(TIM−3リガンドを同定するための可溶性TIM−3の使用) どのような細胞がTIM−3リガンドを発現するのかを明らかにするため、SJLマウス、NODマウス、BALB/cマウス、およびC57BL/6マウスからとったナイーブ脾臓細胞を、mTIM−3Ig/hFcおよびmTIM−3/hFc融合タンパク質を用いて染色した。適切に選択された細胞表面マーカーを用いた共染色により、脾臓細胞の個々の集団を同定した。フローサイトメトリー分析の結果、mTIM−3Ig/hFcが、ナイーブCD4+T細胞および活性化CD4+T細胞を特異的に染色することが判明した。従って、選択的スプライシング可溶型TIM−3の潜在的リガンドの1つは、CD4+T細胞で発現されていることが明らかになった。
【0202】
本発明を、特定の実施形態に関して説明したが、これら実施形態の詳細は、限定として理解されるべきものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な等価物、変化、および改変がなされ得、そのような等価な実施形態が本発明の一部であると理解される。本明細書で同定または引用されたすべての参考文献、特許および特許公報は、それらの全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞移動を促進させるための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2009−235099(P2009−235099A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168305(P2009−168305)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【分割の表示】特願2003−563488(P2003−563488)の分割
【原出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【出願人】(500471962)ザ ブライハム アンド ウイミンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (3)
【出願人】(500122857)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】