説明

TRPM5モジュレーターのスクリーニング方法

本発明は、TRPM5に結合し、TRPM5イオンチャンネル活性を調節し、および/または細胞内のTRPM5の発現を変化させる分子の同定において有用な方法に関する。本明細書において説明するようなTRPM5チャンネルはTRPM5ポリペプチドを含有し、このポリペプチドは、TRPM5核酸によってコード化されている。本明細書において説明するイオンチャンネルは、好ましくは、本明細書において説明する特異なTRPM5特性の1つ以上を示す1種以上の新規なTRPM5ポリペプチドから、HEK-293細胞中に形成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2003年2月21日に出願された米国仮出願第60/448,955号の優先権を主張する。
(政府助成研究または開発に関する声明)
本発明は、NIH(米国衛生研究所)認可第R01-GM065360号、第R01-NS040927号および第R01-GM63954号による政府助成によりなされた。米国政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、本明細書において“TRPM5”と標示する、カルシウム活性化非選択性(“CAN”)膜貫通性チャンネルポリペプチド類を識別する新たな群の使用に関する。
(背景技術)
イオンチャンネルは、生存細胞の細胞原形質膜中に組み込まれた膜貫通型マルチサブユニットたんぱく質であり、該細胞原形質膜は、上記原形質膜の細胞外面から細胞の内部領域への特異性イオンの通過を可能にする。特異性イオン輸送は、孔立体構造の変化に基づき開閉し得る中枢水性孔により促進される。イオンゲートが開いているとき、イオンは、上記チャンネル内を自由に流動する。イオンゲートが閉じているとき、イオンは、チャンネルを透過するのを阻止される。イオンチャンネルは、大多数の多細胞真核生物種においてさらに無数の種々の細胞タイプにおいて見出される。イオンチャンネルは、電圧ゲート型またはリガンドゲート型のいずれかであり得る。チャンネルの開閉は、特定のチャンネルが開放されるかまたは閉鎖されるかのいずれのプロセスである。1つのイオンチャンネルは、種々の“開放”または“閉鎖”状態範囲を占有し得る。従って、上記開閉プロセスは、1つのチャンネルが特定の開閉レベルに達する前に、特定の転移状態配列または別の転移状態の内包を必要とし得る。上記開閉プロセスは、上記チャンネルが開放するまたは閉鎖する様式を幾つかの方法で変化させるまたはこの様式に影響を与える物質または因子によって調節される。1つのチャンネルは、神経伝達物質、内部の一次または二次メッセンジャー、または他の生物活性剤のようなリガンドによって開閉され得る。該リガンドは、チャンネルたんぱく質上の1個以上の結合部位に結合するか、或いは上記チャンネルと結合するレセプターに結合するかのいずれかである。上記チャンネルが電圧ゲート型である場合、膜電位の変化が、チャンネルたんぱく質内の荷電要素の立体構造変化により、チャンネルの開閉を誘発する。1つのチャンネルがリガンドゲート型または電圧ゲート型のいずれであれ、当該チャンネルの1部分の変化は、当該チャンネルの異なる部分に透過性経路の開閉をもたらす効果を発生させる。
【0003】
一過性レセプター電位(TRP)たんぱく質は、イオンチャンネルの典型的な構造特徴を有する多様な群のたんぱく質である。TRPたんぱく質は、種々の生物体、組織、並びに電気刺激性および電気非刺激性細胞のような細胞タイプにおいて発現される。上記TRPチャンネルは、次の3つの主要下位群に分類されている:“標準(canonical)”に対するTRPC、“メラスチニン(melastinin)-レセプター様”に対するTRPM、および“バニロイド-レセプター様”に対するTRPV。これまでに見出された5種のTRPチャンネルは、全て、6個の推定膜貫通型ドメインと僅かに疎水性の孔形成領域からなっている。これらTRPたんぱく質のN-およびC-末端ドメインは、共に細胞質内性である。これらの構造類似性にもかかわらず、各TRPチャンネルの機能は、同じ下位群のメンバー間においてもさえも、チャンネル相互で異なっている。
ヒトTPRM下位群は、現在、8つのメンバーからなっている。数種のTRPMたんぱく質の活性化機序は解明されており、各々が特異的イオン選択性と特定の作用機序を有することが証明されている。
【0004】
(発明の開示)
本発明は、本明細書において“TRPM5”と標示する、カルシウム活性化非選択性(“CAN”)膜貫通性チャンネルポリペプチド類を識別する新たな群の使用に関する。さらに、本発明は、TRPM5をコード化する組換え核酸の使用にも関する。本発明の1つの局面は、TRPM5ポリペプチドに対する候補生物活性剤の結合性の測定方法、TRPM5ポリペプチド活性調節の測定方法、および1価カチオン類に対するTRPM5チャンネル透過性の測定方法を含む。さらに、本発明は、TRPM5ポリペプチド類をコード化する核酸類の細胞発現の調節方法にも関する。
本発明の1つの実施態様は、TRPM5ポリペプチドに結合する候補生物活性剤のスクリーニング方法を提供する。この方法においては、TRPM5ポリペプチドを候補剤と接触させ、候補剤がTRPM5ポリペプチドと結合するかどうかを判定する。本発明の1つの実施態様は、TRPM5ポリペプチドを2種以上の候補剤のライブラリーと接触させ、その後、1種以上の候補剤のTRPM5ポリペプチドに対する結合性を判定することを含む。好ましい実施態様においては、TRPM5ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に記載されているアミノ酸配列またはSEQ ID NO:1に記載されている核酸配列によってコード化されているポリペプチドを含む。
さらなる実施態様においては、本発明は、TRPM5ポリペプチドを含むチャンネルの1価カチオン透過性を調節する生物活性候補剤のスクリーニング方法を提供する。この実施態様においては、上記チャンネルを生物活性候補剤と接触させ、上記チャンネルを活性化させ、1価カチオン透過性の調節を検出する。幾つかの実施態様においては、上記候補剤(1種以上)は、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を増大させる。他の実施態様においては、上記候補剤(1種以上)は、TRPM5チャンネルのカチオン透過性を低下させる。本発明のさらに他の実施態様においては、TRPM5チャンネルを透過する1価カチオン類としては、Na+、K+およびCs+がある。好ましい実施態様においては、上記チャンネルは、カルシウムイオノフォアまたはカルシウム移動性レセプター作用薬によって誘発させる細胞内カルシウム濃度の上昇によって活性化させる。
【0005】
好ましい実施態様においては、上記候補剤は、上記組換え細胞または上記チャンネルを含む細胞パッチ膜の膜電位を、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を増大させるかまたは低下させるかのいずれかによって変化させる。膜電位は、例えば、電圧測定により或いはビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3))のような膜電位感受性プローブまたはSBFIのようなナトリウム特異性プローブにより測定し得る。
さらなる実施態様においては、TRPM5ポリペプチドを含む上記チャンネルは、TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸および構成プロモーター下に操作的に結合されたまたは安定的に移入された誘発性プロモーターを含む組換え細胞内に存在する。上記組換え細胞を、TRPM5ペプチドを発現させTRPM5ポリペプチドを含むチャンネルを形成するように誘発させる。上記細胞を生物活性候補剤と接触させ、上記チャンネルを活性化させ、1価カチオン活性の調節を検出する。さらなる実施態様においては、上記細胞を1価カチオン指示薬、好ましくは蛍光指示薬と接触させる。この実施態様においては、1価カチオンの細胞内レベルを、該カチオンに対し特異性の1価カチオン指示薬を使用して検出する。特異性1価カチオン指示薬の例としては、Na+に対して特異性のSBFI、またはK+に対して特異性のPBFIがある。
好ましい実施態様においては、上記候補剤は、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を増大させるかまたは低下させるかのいずれかにより、上記組換え細胞の膜電位を変化させる。該膜電位は、例えば、電圧測定により或いはビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3))のような膜電位感受性プローブにより測定し得る。
【0006】
本発明のもう1つの目的は、TRPM5チャンネルの1価イオン透過性の測定方法を提供することである。この方法においては、TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸、構成性または誘発性の、好ましくは誘発性の操作的に結合させたプロモーターを含む組換え細胞を調製する。上記組換え核酸を発現させ、TRPM5ポリペプチドを含むチャンネルを形成させ、該チャンネルを活性化させ、該チャンネルの1価カチオン透過性を検出する。
1つの実施態様においては、上記細胞を1価カチオン指示薬、好ましくは蛍光指示薬と接触させる。この実施態様においては、1価カチオンの細胞内レベルを、該カチオンに対し特異性の1価カチオン指示薬を使用して検出する。特異性1価カチオン指示薬としては、Na+に対して特異性のSBFI、またはK+に対して特異性のPBFIがある。
さらなる実施態様においては、上記細胞を生物活性候補剤と接触させる。好ましい実施態様においては、上記1価カチオンレベルを組換えTRPM5を発現させない細胞中の内生レベルと比較する。もう1つの実施態様においては、上記細胞は、上記チャンネルの活性を調節する因子の測定において任意の組換的に発現させたチャンネルたんぱく質と一緒に使用し得る任意の細胞であり得る。上記組換えチャンネルの発現は、好ましくは、誘発性プロモーターの制御下においてである。
本発明のさらなる目的は、TRPM5ポリペプチドの発現を調節し得る候補生物活性剤のスクリーニング方法を提供することである。この方法においては、TRPM5ポリペプチドを発現し得る組換え細胞を調製する。該組換え細胞を候補剤と接触させ、TRPM5ポリペプチド発現に対する候補剤の効果を判定する。幾つかの実施態様においては、上記候補剤は、小分子、たんぱく質、ポリペプチド、または核酸(例えば、アンチセンス核酸)を含み得る。本発明のもう1つの実施態様においては、TRPM5ポリペプチド発現レベルを候補生物活性剤の存在下に測定し、これらのレベルを内生TRPM5発現レベルと比較する。TRPM5ポリペプチド発現を調節する候補剤を非組換え細胞中で試験して、同じ効果が再現されているかどうかを判定し得る。
【0007】
さらに、本発明は、候補生物活性剤が、TRPM5ポリペプチドに結合し、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し或いはTRPM5ポリペプチドの発現を調節し得るかを検証する方法も提供する。1つの実施態様は、TRPM5ポリペプチドに結合し得るものと前以って同定した候補生物活性剤を調製し、TRPM5ポリペプチドを該候補生物活性剤と接触させ、そして、該候補剤がTRPM5ポリペプチドに結合するかどうかを検出することを含む。
もう1つの実施態様は、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し得るものと前以って同定した候補生物活性剤を調製し、TRPM5チャンネルを該候補生物活性剤と接触させ、TRPM5チャンネルを活性化させ、そして、該候補剤がTRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節するかどうかを検出することを含む。さらなる実施態様は、TRPM5ポリペプチドの発現を調節しえるものと前以って同定した候補生物活性剤を調製し、TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸を発現し得る組換え細胞を調製し、該細胞を候補生物活性剤と接触させ、そして、TRPM5ポリペプチドの発現に対する上記生物活性剤の効果を検証することを含む。
(図面の簡単な説明)
〔図1A−E〕TRPM5が膜貫通性たんぱく質およびカルシウム活性化型カチオンチャンネルであることを証明する試験を示す。
〔図1A〕pcDNA3-TRPM5およびpcDNA3のみを安定的に移入したHEK-293細胞のノーザンブロット分析を示す。ブロットは、32P-ラベル化TRPM5 cDNAとハイブリッド化させた。各シグナルレーンの等負荷性を実証するために、上記ブロットは、TRPM5転写体の検出後にストリッピングし、32P-ラベル化β-アクチンcDNAとハイブリッド化させた。
〔図1B〕EGFP-TRPM5融合たんぱく質を発現するHEK-293細胞の共焦点レーザー顕微鏡分析を示す。EGFP-TRPM5の3D分布は、有意量のたんぱく質が外側細胞膜に局在化していることを実証している。
〔図1C〕500 nM [Ca2+]iを潅流させたHEK-293細胞中のTRPM5内向きおよび外向き電流の平均発生を示す(n = 5)。電流は、ぞれぞれ、−80mVまたは+80mVで測定した。
〔図1D〕500 nM [Ca2+]iにより細胞全体形状を確立した後の5秒または40秒で測定したTRPM5電流の典型的なI/V曲線を示す。
〔図1E〕TRPM5電流の濃度応答曲線を示す(左軸、塗潰し丸;n = 5〜20)。上昇期に対する適合度により、850nMの見掛けEC50を得(ヒル係数4)、抑制期のIC50は、1.1μMであった(ヒル係数6)。右軸は、種々の濃度の細胞内[Ca2+]iにより誘発されたTRPM4電流の投与量依存性を示す(WebmaxCにより再計算したデータ、方法の章参照)。これらのデータに対する適合度により、885nMのEC50を得る(ヒル係数3.6)。
〔図2A−D〕TRPM5が1価カチオンチャンネルであることを証明する試験を示す。
〔図2A〕500 nM [Ca2+]iを潅流させ、棒で示す時間で等張CaCl2 (120mM)を表面潅流させたTRPM5過発現HEK-293細胞の平均電流を示す(n = 3)。適用中、内向き電流は抑制され、外向き電流は増大した。データは、漏電控除しなかった。
〔図2B〕等張Ca2+の適用前(薄線)および適用終了時(濃線)の典型的なI/V曲線を示す。挿入図は、逆転電位のマイナス値へのシフトを実証している。
〔図2C〕棒で示しているように、TRPM5を活性化するための、1mM Na-EDTAと20 U/mlのトロンビンを含む2価-無NaCl系細胞外溶液(DVF)の適用を示す(n = 5)。
〔図2D〕DVF適用中の典型的なI/V曲線を示す。
〔図3A−F〕TRPM5活性化がカルシウム変化速度に依存性であることを証明する試験を示す。データは、パッチ-クランプとfura-2記録法の組合せを使用して得た。
〔図3A〕それぞれ、−80mVおよび+80mVで測定した平均電流を示す(n = 5)。棒は、トロンビン(20 U/ml)の適用を示す。
〔図3B〕図3Aにおけるのと同じ細胞のトロンビン適用に対する応答における平均[Ca2+]iシグナルを示す(n = 5)。
〔図3C〕図3Aから採用し、識別平均カルシウムシグナル(右軸)上に重ね合せた平均外向き電流を示す。チャンネルの活性化は[Ca2+]iの変化割合と並行して生じていることに注目されたい。
〔図3D〕トロンビン適用中に測定した、図3Aからの全細胞確立90秒後の漏電控除I/V曲線を示す。
〔図3E〕50μMのシクロピアゾン酸により誘発された−80mVまたは+80mVでの電流の典型的例(n = 9細胞)を示す。矢印は、内生TRPM4活性の突発を指し示している(挿入パネル中のサンプルI/V)。
〔図3F〕図3Eにおいて示したのと同じ細胞の相応するfura-2測定値を示す。棒は、CPA適用を示す。
〔図4A−D〕Ca2+が、裏返し(inside-out)パッチ内のTRPM5単チャンネルを活性化することを証明する試験を示す。
〔図4A〕裏返しパッチを、TRPM5チャンネルを安定的に発現しているHEK-293細胞から引き離す試験を示す。単チャンネルを記録するために、−100mVから+100mVの4.5秒の勾配プロトコールを勾配間で待ち時間なしに設けた。 Ca2+適用中にチャンネル活性を有しない勾配を漏電補正に使用した。データは、2.9kHzフィルター設定において獲得し、表示目的で50Hzにおいてデジタルフィルタリングした。上方パネルは0Ca2+溶液中へのパッチの刺激時間を示し、3つの中央パネルは300nMのCa2+へのパッチ暴露中に獲得したデータの連続例である。最後のパネルは、Ca2+の適用を停止し除去した1秒後の例である。このパッチは、少なくとも7つのチャンネルを有していた。各点線は、TRPM5の逆転電位(0 mV)で始まり−100mVまたは+100mVのいずれかで終わる個々の1つのチャンネルを通る単チャンネル電流の外挿を示している。正電位における傾斜は28pSのチャンネル電導度を与えおり、内向き電流における傾斜は23pSである。記録は、この方法で記録した5つのパッチ全ての代表である。対照細胞(TRPM5を発現しないWT HEK-293)においては、7つのパッチのうちの3つがCa2+適用中にイオンチャンネル活性を有してなく、3つのパッチが3本までのTRPM4様チャンネルを有しており、1つのパッチがCa2+活性化Cl-チャンネルを含んでいた。
〔図4B〕300nMのCa2+暴露中に4.5秒勾配により集めた、TRPM5単チャンネル(75の勾配)のアンサンブルI/V曲線およびWT HEK-293細胞(対照、98の勾配)において行った記録を示す。
〔図4C〕TRPM5単チャンネルの電流-電圧関係を示す。各点は、5つのパッチにより電圧当り15〜25事象を測定して算出し、平均化し、電流対電圧(+S.E.M.)としてプロットした。
〔図4D〕TRPM5発現性パッチ(A、BおよびCにおけるのと同じパッチ、n = 5)の300nMのCa2+への暴露前、暴露中および暴露後に測定し、0mV〜+100mVでの勾配電流を積分することによって評価した平均電荷を示す。
〔図5A−E〕ラットインスリノーマベータ細胞INS-1が内生TRPM5様電流を発現すること証明する試験を示す。
〔図5A〕種々のヒトおよびネズミ細胞系由来の全RNAが説明しているようにして分離され、cDNAに転写されたことを示す。RT PCRを、TRPM4/Trpm4およびTRPM5/Trpm5遺伝子に対する種特異性プライマーにより実施した。産生物を分離し、シークエンシングした。非RT系PCR産生物の対照として、逆転写酵素なしのRTプロトコールを実施した。等量のcDNAを、β-アクチン産生物量により実証するときに使用した。ヒト細胞系RamosおよびHela並びにネズミ細胞系Min、A20およびCath.Aに由来するcDNAは、TRPM5/Trpm5転写体を含有する。TRPM4/Trpm4 cDNA産生物は、ヒトHela、JurkatおよびWt128細胞系並びに3種のネズミ細胞系の全てにおいて見出された。
〔図5B〕培養膵臓ベータ(INS-1)細胞中での内生Trpm5発現を示す。該INS-1細胞系に由来する全RNAを説明しているようにして分離し、cDNAに転写させた。RT PCRを、Trpm5遺伝子に対する囓歯類特異性プライマーにより実施した。産生物を分離し、シークエンシングした。非RT系PCR産生物の対照として、逆転写酵素なしのRTプロトコールを実施した。ラットINS-1細胞系に由来するcDNAは、内生Trpm5転写体を含有する。
〔図5C〕800 nM [Ca2+]iを潅流させた典型的なINS-1細胞(n = 8)において測定し、さらに、それぞれ−80mVおよび+80mVで測定した全細胞電流の発生を示す。TRPM5活性化の遅延は細胞間で変動したので(26秒〜109秒)、平均値(500 nM [Ca2+]iでの平均遅延 = 63±11 (n = 3)秒、800 nM [Ca2+]iでの平均遅延 = 53±10秒 (n =8)、統計的有意差なし)の代りに1つの例を示している。全ての場合において、TRPM5様電流は、活性化し、完全に不活化する。ならし試験後に観察された電流の初期低下は、保持電位(0mV)でのDRKチャンネルの不活化に基づいている。データは、12番目の勾配(全細胞確立24秒後)をその前およびその後の勾配から控除することによって漏電補正した。
〔図5D〕ピークにおいて抽出したTRPM5様電流の平均生データ(n = 8)のトレースを示す。データは、電流発生前の適切な対照勾配を控除することによって漏電補正した。漏電補正逆転電位は、発現系(−5mV)におけるよりも僅かに負である、おそらくは若干の小混在性K+および/またはCl-電流による−17mV±1mV (n = 8)であった。
〔図5E〕INS-1細胞中の内生TRPM5様電流の投与量応答曲線を示す。100nM (n = 3)も300nM (n = 3)も何ら電流を活性化していなかったことに注目されたい。500nM (n = 3)および800nM (n = 8)において、明確な一過性のTRPM5様電流が活性化されていた。1μM [Ca2+]iは大きなさらなるCa2+活性化電流を生じ(n = 6、データは示していない)、これは、分離におけるTRPM5の正確な評価を阻害していた。
〔図6〕1〜約3913の核酸配列(SEQ ID NO:1)を含むTRPM5 cDNAの核酸分子を示す。
〔図7〕1〜約1165の配列(SEQ ID NO:2)を含むヒトTRPM5ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0008】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、1部では、TRPM5ポリペプチドに結合し、TRPM5イオンチャンネル活性を調節し、さらに細胞内のTRPM5ポリペプチドの発現を変化させる分子の同定において有用な方法に関する。本明細書において説明するようなTRPM5チャンネルはTRPM5ポリペプチド(TRPM5たんぱく質とも称する)を含み、このポリペプチドは、TRPM5核酸によってコード化されている。本明細書において説明するイオンチャンネルは、好ましくは、HEK-293細胞のようなヒト胚腎臓細胞系中に形成され、1種以上の新規なTRPM5ポリペプチドを含み、本明細書において説明する特異なTRPM5特性の1つ以上を示す。
TRPM5は、細胞内Ca2+レベルの急速な上昇によって活性化される(Prawitt D, et al, “TRPM5 is a transient Ca2+-activated cation channel responding to rapid changes in [Ca2+]I”, Proc Natl Acad Sci U S A. 100(25):15166-71 (2003);該文献は、参考として本明細書に合体させる)。
細胞内Ca2+レベルの上昇は、イノシトール1,4,5-トリホスフェート(InsP3)産生性レセプター作用薬、即ち、カルシウムイオノフォアの存在により、或いは急速なCa2+変化を誘発させる任意の他の手段によって誘発させ得る。
本明細書において説明するように、用語“TRPM5”は、Ca2+調節された膜貫通性チャンネルポリペプチド類の新規な群のメンバーを称する。これらのポリペプチドは、そのアミノ酸配列、これらポリペプチドをコード化する核酸、およびTRPM5の新規な性質によっても特徴付けされる。そのような新規な性質としては、細胞質Ca2+レベルの急速上昇による特異的な活性化、Ca2+による直接の開閉、有意のCa2+透過のないNa+、K+およびCs+のような1価カチオンの伝導、膜電位の調節によるCa2+流入の調節、およびCa2+依存性不活性化の不存在がある。
【0009】
本明細書においてSEQ ID NO:2 (図7)として開示するTRPM5ポリペプチドの配列は、ヒト腎臓細胞に由来していた。しかしながら、TRPM5は、種々の哺乳動物組織(例えば、ヒト(NCBI受託番号 NM014555)、マウス(NCBI受託番号 AB039952、AF228681、AY280364、AY280365、NM020277)およびチンパンジー(NCBI受託番号 ABAY401206))において広範に発現する。
TRPM5は、味覚受容体細胞、神経細胞(Cath.A)、バーキットリンパ腫細胞(Ramos)、並びに繊維芽細胞(A20)、上皮子宮頚がん由来細胞(Hela)および膵臓ベータ細胞(Min)のような種々の胎児および成人ヒト組織における4.5-kb転写体として発現する(図5A) (Prawitt, D. et al., Hum. Mol. Genet. 9, 203-16 (2000);Perez, et al., Nat. Neurosci., 5: 1169-1176 (2002);Zhang, et al., Cell, 112: 293-301 (2003);Enklaar, T. et al., Genomics 67, 179-87 (2000);これらの文献は、全て参考として本明細書に合体させる)。
各種の組織におけるTRPM5の存在は、作用薬誘発性細胞内Ca2+放出を電気活性およびその後の細胞応答と関連付ける手段として、上記のチャンネルの総括的役割を指標する。
TRPM5が膵臓ベータ細胞中に存在し、[Ca2+]iの変化が電気活性に関連しているという知見は、インシュリン放出におけるTRPM5にかかわっている。インシュリン放出の細胞機能におけるTRPM5関与のさらなる裏付けは、非肥満性タイプII糖尿病の遺伝子モデルであるGoto-Kakizaki (GK)ラットからもたらされる。成獣GKラットは、ベータ細胞塊の減少、インシュリン分布障害および軽微な高血糖症を示し、さらに、TRPM5レベルの強力な低下を有することが報告され(Irminger, J. et al. 38th EASD Annual Meeting Abstract #444 (2002))、この細胞タイプにおけるTRPM5の臨界的役割と一致している。TRPM5のCa2+感受特性は、一過性の脱分極性刺激を発生させるのに理想的に適しており、上記細胞背景および上記たんぱく質を発現させる他の細胞における電気活性の初期誘発並びに電気活性の脈動変化の双方に寄与し得る。
【0010】
TRPM5遺伝子は、各種小児および成人腫瘍並びにBeckwith-Wiedemann症候群における異型接合性の喪失に関連する染色体領域(I 1p15.5)の機能性分析中に同定された((Prawitt, D. et al., Hum. Mol. Genet. 9, 203-16 (2000))。
トポロジープログラムは、全長TRPM5ポリペプチドが、6個の膜貫通性ドメインを含有する膜貫通性たんぱく質であること、即ち、共焦点レーザー顕微鏡分析により検証している知見(図1B)を予測している。
TRPM5チャンネルは、全細胞および切除膜パッチの双方における[Ca2+]iの上昇によって直接活性化される。TRPM5は、25 pSの単チャンネル導電度に特徴を有し、1価カチオン類に対して特異性であり、Ca2+に対しては本質的に不透過性である。従って、TRPM5は、上記活性化メカニズムおよび選択性をCa2+活性化カチオンチャンネルTRPM4と共有するが(Launay, P. et al., Cell 109, 397-407 (2002))、TRPM4と異なり、細胞内レセプター介在Ca2+放出により強力に活性化され、[Ca2+]iの絶対濃度によるよりはむしろ[Ca2+]iの変化速度に依存する一過性の活性化をもたらす。TRPM5とは、該物質が[Ca2+]iの絶対値よりもむしろ[Ca2+]iの変化速度に応答するので、CANを識別するものを称する。
TRPM5電流の強度は、チャンネル活性の増大を誘発させる1μMまでの[Ca2+]iレベルに依存するが、その後、抑制的になり、鐘状の投与量応答曲線を生じる(図1E)。TRPM5のもう1つの特徴は、全Ca2+濃度において観察されるTRPM5電流の明白且つ急速な不活性化であり、この不活性化はCa2+によって直接介在されるのではなくてむしろTRPM5固有の特性を示しているか、或いは調節メカニズムによって生じていることを示唆している。これら電流の一過性は、TRPM5の明確な特徴であり、TRPM4の持続的活性化と区別される。さらに、TRPM4は、短いCa2+放出過渡性に比較的無応答性であり、十分に活性化させるにはCa2+流入を必要とする(Launay, P. et al., Cell 109, 397-407 (2002))。
【0011】
TRPM5は、天然源に由来し得、或いは組換え的に修飾してTRPM5変異体を調製し得る。用語“TRPM5配列”は、詳細には、天然産切断または分泌形(例えば、細胞外ドメイン配列またはアミノ末端フラグメント)、天然産変異体形(例えば、別法によるスプライシング形)および天然産対立遺伝子変異体を包含する。ヒト腎臓細胞由来のTRPM5ポリペプチドの生来の配列は、SEQ ID NO:2の1から約1165のアミノ酸を含む全長または成熟生来配列TRPM5ポリペプチドである(図7)。
本発明の方法または他の目的において使用し得るTRPM5ポリペプチドとしては、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列またはそのフラグメントとの少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも約95%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド類がある。そのようなTRPM5ポリペプチド類としては、例えば、1個以上のアミノ酸残基をSEQ ID NO:2配列のN-またはC-末端においてさらに1個以上の内部ドメイン内で置換および/または欠落させたTRPM5ポリペプチド類がある。当業者であれば、アミノ酸の変更により、グリコシル化部位の数もしくは位置の変更または膜固定特性の改変のように、TRPM5ポリペプチド変異体の転写後過程を変更し得ることは、認識していることであろう。しかしながら、TRPM5ポリペプチド類は、全て、本明細書において説明するようなTRPM5ポリペプチドの1つ以上の新規な特性を示す。
本発明において同定したTRPM5ポリペプチド配列に関しての“パーセント(%)アミノ酸配列同一性”とは、配列を位置合わせ(aligning)し、必要に応じて、間隙を導入して最高パーセント配列同一性を達成した後の、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基 (図7)と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義し、如何なる同類置換も配列同一性の1部としてはみなさない。%同一性値は、WU-BLAST-2 (Altschul et al., Methods in Enzymology, 266:460-480 (1996))によって産出し得る。WU-BLAST-2は幾つかの検索パラメーターを使用し、その殆どは、デフォルト値に対して設定されている。調整可能なパラメーターは、次の値により設定する:オーバーラップスパン = 1、オーバーラップフラクション = 0.125、ワード限界(T) = 11。HSP SおよびHSP S2パラメーターは、動的値であり、特定の配列の構成および興味ある配列を検索する特定のデータベースの構成に依存するプログラム自体によって確立される;しかしながら、値は、感度を増大させるように調整し得る。%アミノ酸配列同一性値は、合致する同一残基数を位置合わせ領域中の“より長い”配列の残基総数で割ることによって決定する。“より長い”配列は、位置合わせ領域中の最も実際的な残基を有する配列である(アライメントスコアを最大にするためにWUBLAST2により導入した間隙は無視する)。
【0012】
さらなる実施例においては、本明細書において使用する%同一性値は、PILEUPアルゴリズムを使用して算出する。PILEUPは、遂次ペアワイズアライメントを使用して、1群の関連配列からマルチプル配列アライメントを創出する。また、PILEUPは、アライメントを創出するのに使用するクラスタリング関係を示す系図をプロットすることもできる。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351-360 (1987)の遂次アライメント法の簡素化法を使用する;該方法は、Higgins & Sharp CABIOS 5:151-153 (1989)に記載されている方法に類似している。有用なPILEUPパラメーターには、3.00のデフォルトギャップ加重、0.10のデフォルトギャップ長加重、および加重末端ギャップがある。
さらにもう1つの実施態様においては、ヒト由来または他の生物体由来のTRPM5ポリペプチドは、オリゴヌクレオチドプローブまたは適切なゲノムもしくはcDNAライブラリーを含む縮退ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーを使用して、同定し分離することができる。当業者において認識されているように、SEQ ID NO:2のアミノ酸 1〜1165(図7)をコード化しているSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列含むTRPM5の特異な核酸配列(図6)またはその1部は、プローブまたはPCRプライマー配列としてとりわけ有用である。当該技術において一般的に知られているように、好ましいPCRプライマーは、長さにおいて約15〜約35個のヌクレオチドであり、約20〜約30個が好ましく、必要に応じてイノシンを含有し得る。PCR反応の条件は、当該技術において周知である。
【0013】
好ましい実施態様においては、TRPM5は、組換え法を使用して、即ち、組換えTRPM5核酸の発現により調製する“組換えたんぱく質”または“組換えポリペプチド”である。組換えたんぱく質は、少なくとも1以上の特徴によって天然産たんぱく質と区別される。例えば、該たんぱく質は、その野生タイプ宿主においては通常随伴しているたんぱく質および化合物類の幾つかまたは全てから分離しまたは精製し得、従って、実質的に純粋であり得る。例えば、分離たんぱく質は、その天然状態においては通常随伴しており、与えられたサンプル中の総たんぱく質の好ましくは少なくとも約0.5質量%、より好ましくは少なくとも約5質量%を構成する物質の少なくとも幾つかを含んでいない。実質的に純粋なたんぱく質は、総たんぱく質の少なくとも約75%を構成し、少なくとも約80%が好ましく、少なくとも約90%がより好ましく、少なくとも約95%がとりわけ好ましい。上記の定義は、異なる生物体中の1つの生物体または宿主細胞からのたんぱく質の産生を含む。また、上記たんぱく質は、誘発性プロモーターまたは高発現プロモーターの使用により、通常観察されるよりも有意に高濃度で調製して、上記たんぱく質を増大濃度レベルで調製するようにし得る。また、上記たんぱく質は、後述するような、エピトープタグの付加またはアミノ酸置換、付加もしくは欠落におけるように、天然においては通常見出せない形であり得る。
さらなる実施態様においては、TRPM5変異体は、ロイシンのセリンによる置換のような1個のアミノ酸を他の類似の構造的および/または科学的特性を有するアミノ酸で置換することによって、即ち、同類アミノ酸置換によって組換え的に操作し得る。
さらなる実施態様においては、置換、欠落、付加またはこれらの任意の組合せを使用して、TRPM5変異体を調製することもできる。一般に、これらの変更は、数個のアミノ酸において実施して分子の改変を最小限にする。しかしながら、より大きな変更もある種の状況においては許容し得る。TRPM5ポリペプチド特性の小改変を所望する場合は、置換を下記の表1に従って一般に実施する。









【0014】
表1

【0015】
さらなる実施態様においては、機能におけるまたは免疫学的同一性における実質的な変更は、表1に示す置換基よりも同類性の小さい置換基を選択することによって実施する。例えば、より有意に影響を与える置換を実施し得る:改変領域におけるポリペプチド主鎖の構造、例えば、アルファ-ヘリカルまたはベータ-シート構造;ターゲット部位での分子の電荷または疎水性;または側鎖の嵩。上記ポリペプチドの性質に最大の変化を発生させることが一般的に期待されている置換基は、次の置換基である:(a) 親水性残基、例えば、セリルまたはスレオニルを、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルと置き換える(またはそれら疎水性残基で置換する);(b) システインまたはプロリンを任意の他の残基と置き換える(またはこれら他の残基で置換する);(c) 電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニルまたはヒスチジルを、電気陰性残基、例えば、グルタミルまたはアスパルチルと置き換える(またはこれら電気陰性残基で置換する);或いは、(d) 嵩高な側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンを、側鎖を有さない残基、例えば、グリシンと置き換える(または側鎖を有さない残基で置換する)。この実施態様のTRPM5変異体は、本明細書において当初定義したようなTRPM5特性の1つ以上を示す。
さらなる実施態様においては、上記変異体類は、変異体類を必要に応じてTRPM5ポリペプチドの特性を改変するように選択しているものの、天然産相同物と同じ定性的生物学的活性を典型的に示し、同じ免疫応答を引き出す。また、上記変異体は、TRPM5ポリペプチドの生物学的活性を改変するようにも設計し得る。例えば、グリコシル化部位を改変し或いは除去し得る。
【0016】
核酸変異体によりコード化されたポリペプチド類は、本明細書において定義した新規なTRPM5ポリペプチド特性の少なくとも1つを示す。
本明細書において使用するとき、“TRPM5核酸”またはその文法的等価物は、前述した新規なTRPM5ポリペプチド特性の1つ以上を示すTRPM5ポリペプチドをコード化する核酸を称する。TRPM5核酸はSEQ ID NO:1 (図6)に対する配列相同性を示し、相同性は、配列を比較することによりまたはハイブリッド化アッセイにより決定する。
TRPM5ポリペプチドをコード化するTRPM5核酸は、図6に示すcDNA (SEQ ID NO:1)に対して相同性である。そのようなTRPM5核酸は、好ましくは約75%よりも多く相同性であり、より好ましくは約80%よりも多く、より好ましくは約85%よりも多く、最も好ましくは約90%よりも多く相同性である。幾つかの実施態様においては、上記相同性は、約93%、95%、97%、98%または99%ほどに高い。この点における相同性は、配列類似性または同一性を意味し、同一性が好ましい。相同性目的における好ましい比較は、既知のTRPM5配列に対してシークエンシング差異を含有する配列を比較することである。この相同性は、限定するものではないが、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムのような当該技術において既知の標準方法を使用し、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970) の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, PNAS USA 85:2444 (1988) の類似性方法における検索により、これらアルゴリズムのコンピュータ処理実行 (Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA;Genetics Computer Group社、ウィスコンシン州マジソン、 サイエンスドライブ)により、Devereux et al., Nucl. Acid Res. 12:387-395 (1984)) に記載されているBest Fit 配列プログラムにより、好ましくはデフォルト設定を使用してまたは閲覧によって決定する。
【0017】
好ましい実施態様においては、本明細書において使用する%同一性値は、PILEUPアルゴリズムを使用して算出する。PILEUPは、遂次ペアワイズアライメントを使用して、1群の関連配列からマルチプル配列アライメントを創出する。また、PILEUPは、アライメントを創出するのに使用するクラスタリング関係を示す系図をプロットすることもできる。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351-360 (1987)の遂次アライメント法の簡素化法を使用する;該方法は、 Higgins & Sharp CABIOS 5:151-153 (1989)に記載されている方法に類似している。有用なPILEUPパラメーターには、3.00のデフォルトギャップ加重、0.10のデフォルトギャップ長加重、および加重末端ギャップがある。
好ましい実施態様においては、BLASTアルゴリズムを使用する。BLASTは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, (1990) および Karlin et al., PNAS USA 90:5873-5787 (1993)に記載されている。とりわけ有用なBLASTプログラムは、Altschul et al., Methods in Enzymology, 266:460-480 (1996) (http://blast.wustl/edu/blast/README.html)から得られるWU-BLAST-2である。WU-BLAST-2は幾つかの検索パラメーターを使用し、その殆どは、デフォルト値に対して設定されている。調整可能なパラメーターは、次の値により設定する:オーバーラップスパン = 1、オーバーラップフラクション = 0.125、ワード限界(T) = 11。HSP SおよびHSP S2パラメーターは、動的値であり、特定の配列の構成および興味ある配列を検索する特定のデータベースの構成に依存するプログラム自体によって確立される;しかしながら、値は、感度を増大させように調整し得る。%アミノ酸配列同一性値は、合致する同一残基数を位置合わせ領域中の“より長い”配列の残基総数で割ることによって決定する。“より長い”配列は、位置合わせ領域中の最も実際的な残基を有する配列である(アライメントスコアを最大にするためにWU-BLAST-2により導入した間隙は無視する)。
好ましい実施態様においては、“パーセント(%)核酸配列同一性”は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド残基配列(図6)と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセントとして定義する。好ましい方法は、それぞれ、1および0.125に設定したオーバーラップスパンおよびオーバーラップフラクションにより、デフォルトパラメーターの設定したWUBLAST2のBLASTNモジュールを使用する。
上記アライメントは、位置合わせする配列中に間隙の導入を含む。さらに、SEQ ID NO:1の配列(図6)よりも多いかまたは少ないヌクレオシドを含有する配列においては、相同性のパーセントは、ヌクレオシドの総数に対しての相同性ヌクレオシド数に基づき決定することを理解されたい。即ち、例えば、本発明において同定した配列よりも短い、後述するような配列の相同性は、短い方の配列中のヌクレオシド数を使用して決定する。
【0018】
上述したように、TRPM5核酸は、ハイブリッド化試験によって決定させた相同性によっても定義し得る。ハイブリッド化は、低緊縮条件において、好ましくは中度の緊縮条件において、最も好ましくは高緊縮条件において測定する。そのような相同性核酸によりコード化されたたんぱく質は、本明細書において定義した新規なTRPM5ポリペプチド特性の少なくとも1つを示す。即ち、例えば、SEQ ID NO:1 (図6)として示される配列を有する核酸およびその補体に高緊縮下にハイブリッド化させた核酸は、これらの核酸がTRPM5特性を有するたんぱく質をコード化することを条件として、TRPM5核酸配列とみなされる。
ハイブリッド化反応の“緊縮性”は、当業者であれば容易に決定し得、一般に、プローブ長、洗浄温度および塩濃度による経験的算術である。一般に、長いプローブほど、適切なアニーリングのために高温度を必要とし、一方、短いプローブほど低温度を必要とする。ハイブリッド化は、一般に、相補性ストランドがその溶融温度よりも低い環境中に存在するときの変性DNAの再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリッド化性配列間での所望相同性の度合が高いほど、使用し得る相対的温度は高い。結果として、相対的温度が高いほど反応条件をより緊縮にする傾向を有し、一方、低い温度ほど緊縮性は低いということになる。ハイブリッド化反応の緊縮性のさらなる例については、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照されたい;該文献は、参考としてその全体を本明細書に合体させる。
本明細書において定義するような“緊縮条件”または“高緊縮条件”は、下記によっても特定し得る:
(1) 洗浄中に、低イオン強度および高温を、例えば、0.015M 塩化ナトリウム/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1% ドデシル硫酸ナトリウムを50℃で使用する;(2) ハイブリッド化中に、ホルムアミドのような変性剤を、例えば、0.1%ウシ血清アルブミンを含む50%(容量/容量)ホルムアミド/0.1% Ficoll/0.1% ポリビニルピロリドン/pH 6.5の50mM リン酸ナトリウム緩衝液(750mM 塩化ナトリウム、75mM クエン酸ナトリウムを含む)を42℃で使用する;または、(3) 50%ホルムアミド、5×SSC (0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt's溶液、超音波処理サケ精子DNA (50μg/ml)、0.1% SDSおよび10% 硫酸デキストランを42℃で、0.2×SSC (塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中での42℃および55℃の50%ホルムアミド中での洗浄、およびその後のEDTAを含有する0.1×SSCからなる55℃での高緊縮洗浄と共に使用する。
【0019】
“中度の緊縮条件”は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているようにして特定し得、上述した条件よりも低緊縮性の洗浄溶液およびハイブリッド化条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用を含む。中度緊縮条件の例は、20% ホルムアミド、5×SSC (150mM NaCl、15mM クエン酸トリナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×Denhardt's溶液、10% 硫酸デキストラン、および20mg/mL 変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での1夜インキュベーション、並びにその後の約37〜50℃の1×SSC中でのフィルター洗浄である。当業者であれば、プローブ長等のような要因を適応させるのに必要なこととして、温度、イオン強度等を如何にして調整するかは、認識していることであろう。一般に、緊縮条件は、確定させたイオン強度pHにおいて、特異性配列の熱溶融点(Tm)よりも約5〜10℃低いように選定する。Tmは、ターゲットに対し相補性のプローブの50%が平衡時にターゲット配列にハイブリッド化する温度(確定させたイオン強度、pHおよび核酸濃度下での)である(ターゲット配列が過剰に存在するとき、Tmにおいて、プローブの50%が平衡時に占める)。緊縮条件は、塩濃度がpH 7.0〜8.3において約1.0M未満のナトリウムイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0M ナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短プローブ(例えば、10〜50個のヌクレオチド)においては少なくとも約30℃、長プローブ(例えば、50個よりも多いヌクレオチド)においては少なくとも約60℃である条件であろう。また、緊縮条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても達成し得る。
もう1つの実施態様においては、低めの緊縮ハイブリッド化条件を使用する;例えば、中度または低緊縮条件を、当該技術において知られているようにして使用し得る。ハイブリッド化反応の緊縮性に関するさらなる詳細については、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照されたい。
【0020】
本明細書において定義するようなTRPM5核酸は、特定するような一本鎖または二本鎖であり得、或いは二本鎖または一本鎖配列の双方の部分を含有する。当業者においては認識されているように、一本鎖の輪郭は、他のストランドの配列も決定する;即ち、本明細書において説明する配列は、配列の補体も含む。
上記核酸は、DNA、ゲノムおよびcDNA、RNAまたはハイブリッドであり得、上記核酸は、デオキシリボ-およびリボ-ヌクレオチド類の任意の組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン等のような塩基類の任意の組合せを含有する。本明細書において使用するとき、用語“ヌクレオシド”は、ヌクレオチド類、ヌクレオシドとヌクレオシドアナログ類、およびアミノ修飾ヌクレオシドのような修飾ヌクレオシド類を包含する。さらに、“ヌクレオチド”は、非天然産アナログ構造体も包含する。即ち、例えば、各々塩基を含有するペプチド核酸の個々の単位は、本明細書においてはヌクレオシドと称する。
TRPM5核酸は、本明細書において定義するように、組換え核酸である。本明細書における用語“組換え核酸”とは、一般にポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって生体外において当初から形成され、天然には通常見出せない形の核酸を意味する。即ち、線状形の分離核酸または通常は結合しないDNA分子を連結反応させることによって生体外で形成させた発現ベクターは、双方とも、本発明の目的において組換えとみなす。組換え核酸は、一旦調製し宿主細胞または生物体内に再導入させると、非組換え的に、即ち、生体外操作よりはむしろ宿主細胞の生体内細胞機構を使用して複製することを理解されたい;しかしながら、そのような核酸は、組換え的に産生されると、その後、非組換え的に複製されるものの、本発明の目的においては依然として組換えとみなす。TRPM5核酸分子のホモログ類および対立遺伝子類は、上記定義に包含される。
【0021】
TRPM5たんぱく質(SEQ ID NO:2)をコード化する組換えcDNA核酸(SEQ ID NO:1)またはその1部は、cDNAライブラリー用のハイブリッド化プローブとして使用して、他の多細胞真核生物種由来の全長TRPM5遺伝子を分離し、或いは特定のTRPM5ヌクレオチドコード配列に対して所望の配列同一性を有するさらに他の遺伝子(例えば、TRPM5ポリペプチドの天然産変異体または他の多細胞真核生物種由来のTRPM5ポリペプチドをコード化する遺伝子)を分離し得る。必要に応じて、上記プローブの長さは、約20〜約50個の塩基であろう。上記ハイブリッド化プローブは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列に或いはTRPM5の特定の生来ヌクレオチド配列のプロモーター、エンハンサー、要素およびイントロン類のようなゲノム配列に由来し得る。例えば、1つのスクリーニング方法は、TRPM5遺伝子のコード領域を、約40個の塩基の選定されたプローブを合成する既知のDNA配列を使用して分離することを含むであろう。
ハイブリッド化プローブは、32Pもしくは35Sのような放射性ヌクレオチドまたはアビジン/ビオチンカップリング系によりプローブにカップリングさせたアルカリホスファターゼのような酵素ラベルのような種々のラベルにより標識化し得る。本発明のTRPM5遺伝子の配列に対し相補性の配列を有する標識化プローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAのライブラリーをスクリーニングして該プローブがハイブリッド化するのはそのようなライブラリーのどのメンバーかを判定するのに使用し得る。ハイブリッド化は、以前に説明されている。
また、上記プローブは、PCR法において使用して、密接に関連するTRPM5ヌクレオチドコード配列を同定するための配列プールを生成させ得る。また、TRPM5ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を使用して、そのTRPM5をコード化する遺伝子のマッピングのための、さらに遺伝子障害を有する個々人の遺伝子分析のためのハイブリッド化プローブを構築することもできる。本発明において提供するヌクレオチド配列は、現場ハイブリッド化、既知の染色体マーカーに対する結合分析およびライブラリーによるハイブリッド化スクリーニングのような既知の方法を使用して、染色体および染色体の特定領域へマッピングさせ得る。
【0022】
もう1つの実施態様においては、上記TRPM5ポリペプチドをコード化するDNAは、TRPM5 mRNAを有し且つ該mRNAを検出可能レベルで発現するものと信じられる組織から調製したcDNAから得ることができる。従って、ヒトTRPM5 DNAは、ヒト組織から調製したcDNAライブラリーまたはヒト腎臓組織から調製したcDNA腎臓ライブラリーから好都合に取得し得る。また、上記TRPM5コード化遺伝子は、多細胞真核生物ゲノムライブラリーから或いはオリゴヌクレオチド合成によっても得ることができる。
ライブラリーは、興味ある遺伝子または該遺伝子によってコード化されたたんぱく質を同定するように設計されたプローブ(TRPM5 DNAに対する抗体または少なくとも約20〜80個の塩基を有するオリゴヌクレオチド類のような)によってスクリーニングし得る。cDNAまたはゲノムライブラリーの選定されたプローブによるスクリーニングは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) に記載されているような標準手法を使用して実施し得る;該文献は、その全体を参考として本明細書に合体させる。TRPM5をコード化する遺伝子を分離する別の手段は、PCR方法論を使用することである[Sambrook等、前出; Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)、これらの文献はその全体を参考として本明細書に合体させる]。
以下の例は、cDNAライブラリーのスクリーニング方法を説明する。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性を最小限にするに十分な長さと十分な明確性を有すべきである。該オリゴヌクレオチドは、好ましくは、該オリゴヌクレオチドをスクリーニングするライブラリー中のDNAへのハイブリッド化時に検出し得るように標識化し得る。標識化方法は、当該技術において周知であり、32P標識化ADPRのような放射性ラベルの使用、ビオチン化または酵素標識化を含む。中緊縮性および高緊縮性のようなハイブリッド化条件は、前出のSambrook等において示されており、前述したとおりである。
そのようなライブラリースクリーニング方法において同定した配列は、GenBankのような公的データベースまたは他の私的配列データベースに寄託され入手し得る他の既知の配列と比較し、位置合わせし得る。確定した分子領域内または全長配列に亘っての配列同一性(アミノ酸またはヌクレオチドレベルにおける)は、種々のアルゴリズムを使用し、前述したようにして相同性を特定するALIGN、DNAstar、BLAST、BLAST2およびINHERITのようなコンピュータソフトウェアプログラムを使用する配列アライメントによって判定し得る。
【0023】
本明細書において定義するようなTRPM5ポリペプチドをコード化する核酸は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列(図6)の全部または1部を使用しての選定したcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。前出のSambrook等において記載されている通常のプライマー拡張手法を使用して、cDNAに逆転写され得ないmRNAのプレカーサーおよび加工用中間体を検出する。
TRPM5ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列(またはその補体)は、染色体および遺伝子マッピングにおけるさらにはアンチセンスRNAおよびDNAの産生におけるハイブリッド化プローブとしての使用のような分子生物学技術における種々の用途を有する。
もう1つの実施態様においては、本明細書において定義するようなTRPM5核酸は、天然産TRPM5核酸を検出する診断用途、並びにスクリーニング用途のような種々の用途において有用である;例えば、TRPM5核酸配列に対する核酸プローブを含むバイオチップを生成させ得る。最も広い意味においては、“核酸”もしくは“オリゴヌクレオチド”またはこれらの文法的等価物は、本明細書においては、一緒に共有結合した少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。
もう1つの実施態様においては、SEQ ID NO:1のTRPM5核酸配列(図6)は、上述したように、より大きい遺伝子のcDNAフラグメントである、即ち、該配列は核酸セグメントである。この意味での“遺伝子”は、コード領域、非コード領域、並びにコードおよび非コード領域の混合物を含む。従って、当業者において認識されているように、本発明において提供する配列を使用して、TRPM5遺伝子のさらなる配列を、より長めの配列または全長配列をクローニングするための当該技術における周知の方法を使用することによって得ることができる;前出のManiatis等およびAusubel等を参照されたい、これらの文献は、明示的に、参考として本明細書に合体させる。
TRPM5核酸を、上述したようにして一旦同定すると、該核酸はクローニングし得、必要であれば、その構成部分を組換えてTRPM5遺伝子全体を形成させ得る。例えば、プラスミドまたは他のベクター内に含まれたまたはこれらから線状核酸セグメントとして切除された天然源から一旦分離されると、上記組換えTRPM5核酸は、他の多細胞真核生物体由来の他のTRPM5核酸、例えば、さらなるコード領域を分離し、同定するプローブとして、さらに使用し得る。また、上記TRPM5核酸は、修飾または変異体TRPM5核酸を調製する“プレカーサー”核酸としても使用し得る。
【0024】
もう1つの実施態様においては、上述したようにTRPM5ポリペプチドをコード化するTRPM5核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は、クローニング(該DNAの増幅)または発現用の複製可能なベクター中に挿入し得る。各種のベクター類は、公的に入手可能である。上記ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ウィルス粒子またはファージの形であり得る。適切な核酸配列を、種々の手法により、上記ベクター中に挿入し得る。一般に、DNAは、当該技術において公知の方法を使用して、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(1ヶ所以上)に挿入する。ベクター成分としては、限定するものではないが、一般に、1以上のシグナル配列、複製起源、1種以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終止配列がある。これら成分の1つ以上を含有する適切なベクター類の構築は、当業者にとって既知の標準連結反応方法を使用する。
そのようなベクターを含む宿主細胞も提供する。例えば、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、COS細胞、ヒト骨髄から分離した細胞、ヒト脾臓または腎臓細胞、ヒト心臓組織から分離した細胞、ヒト膵臓細胞、並びにヒト白血球および単球細胞のような哺乳動物宿主細胞系がある。宿主細胞のさらに詳細な例としては、SV40によって形質転換させたサル腎臓CV1系 (COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓系(懸濁培養における増殖においてサブクローニングした293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR (CHO、Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));ヒト膵臓β-細胞;マウスセルトリ細胞 (TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞 (Hep G2、HB 8065);および、マウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562、ATCC CCL51)がある。適切な宿主細胞の選択は、当業者の範囲内のことと思われる。好ましい実施態様においては、HEK-293細胞を宿主細胞として使用する。さらに、TRPM5ポリペプチドの産生方法も提供し、宿主細胞をTRPM5ポリペプチド発現に適する条件下において培養し、TRPM5ポリペプチドを細胞培養物から回収することを含む。
宿主細胞内で一旦発現すると、TRPM5ペプチドは、少なくとも1種のTRPM5ポリペプチドを含むTRPM5チャンネルを形成し得る。
【0025】
もう1つの実施態様においては、構成性または誘発性いずれかのプロモーターを通常含有し、且つTRPM5コード化核酸配列に操作的に結合させてmRNA合成を指向する発現およびクローニングベクターを使用する。種々の潜在的宿主細胞によって認識されるプロモーターは周知である。哺乳動物宿主細胞中でのTRPM5 DNAコード化ベクターの転写は、好ましくは、誘発性プロモーターにより、例えば、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたはイムノグロブリンプロモーターからさらにはヒートショックプロモーターから得られたプロモーター類により制御する。本発明において実用し得る誘発性プロモーターの例としては、単一または二成分系のいずれかで使用し且つヒートショックにより得られたhsp 70;銅またはカドミウムのいずれかによって誘発させたメタロチオネインプロモーター(Bonneton et al., FEBS Lett. 1996 380(1-2): 33-38);ショウジョウバエレチノイド類によって誘発させたショウジョウバエオプシンプロモーター (Picking, et al., Experimental Eye Research. 1997 65(5): 717-27);およびテトラサイクリン誘発性全長CMVプロモーターがある。同定されたプロモーター全てのうちで、テトラサイクリン誘発性全長CMVプロモーターが最も好ましい。構成的プロモーターの例としては、発現が特異性プロモーターおよびエンハンサーにより或いは局所位置作用により制御されるGAL4エンハンサートラップ系;および、操作的に結合させたプロモーターのタイプにより構成性または誘発性のいずれかであり得る大腸菌由来のトランスアクチベーター応答性プロモーターがある。
TRPM5をコード化するDNAの高級真核生物体による転写は、エンハンサー配列を上記ベクター中に挿入することによって増大させ得る。エンハンサーは、通常およそ10〜300 bpのcis-作用性DNA要素であり、プロモーター上でその転写を増大させるように作用する。多くのエンハンサー配列が、現在、哺乳動物遺伝子から知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテインおよびインシュリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーを使用する。例としては、複製起源の後面(bp 100〜270)上でのSV40エンハンサー、サイトメガロウィルス早期プロモーターエンハンサー、複製起源の後面上でのポリオーマエンハンサーおよびアデノウィルスエンハンサーがある。エンハンサーは、TRPM5コード配列に対して位置5'または3'においてベクター中にスプライシングさせ得るが、好ましくは、プロモーターからの部位5'に位置させる。
【0026】
本発明の方法は、TRPM5ポリペプチドまたはTRPM5ポリペプチドをコード化する核酸を、TRPM5に結合し、TRPM5イオンチャンネルの活性を調節し、または細胞内でのTRPM5発現を改変する候補生物活性剤を同定するのに使用する。
本発明の1つの実施態様は、TRPM5に結合し得る候補生物活性剤のスクリーニング方法を提供する。結合アッセイにおける好ましい実施態様においては、TRPM5または候補生物活性剤のいずれかを、例えば、蛍光、化学発光、化学または放射能シグナルで標識化して、候補剤のTRPM5に対する結合性を検出する手段を提供する。また、ラベルは、適切な基質を与えたときに、検出し得る生成物を産生させるアルカリホスファターゼまたはヒオースラディッシュペルオキシダーセのような酵素であり得る。また、ラベルは、酵素に結合するが酵素によって触媒作用または改変されない酵素インヒビターのような標識化化合物または小分子であってもよい。また、ラベルは、ストレプタビジンに特異的に結合するエピトープタグまたはビオチンのような成分または化合物であってもよい。ビオチンの例においては、ストレプタビジンを上述のようにして標識化し、それによって結合TRPM5についての検出可能なシグナルを提供する。当該技術において知られているように、未結合標識化ストレプタビジンは、分析前に除去する。また、TRPM5を表面上に固定または共有結合させ、標識化候補生物活性剤と接触させてもよい。また、候補生物活性剤のライブラリーをバイオチップ上に固定または共有結合させ、標識化TRPM5と接触させてもよい。バイオチップを使用するのに使用し得る方法は、当該技術において周知である。
本明細書において使用するときの用語“候補生物活性剤”は、TRPM5に結合し、TRPM5イオンチャンネルの活性を調節し、または細胞内でのTRPM5発現を改変する任意の分子を説明するものとする。分子は、本明細書において説明するように、オリゴペプチド、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチドまたは多価カチオン等であり得る。一般に、複数のアッセイ混合物を種々の薬剤濃度で並行して操作して種々の濃度に対する識別応答を得る。典型的には、これら濃度の1つは、陰性対照として、ゼロ濃度において或いは検出レベル以下で作動する。
【0027】
候補剤は数多くの化学群を包含するが、典型的には、候補剤は、多価カチオンもしくは有機分子、または100ダルトンよりも大きく約2,500ダルトン(D)未満の分子量を有する小有機分子である。好ましい小分子は、2000D未満、1500D未満、1000D未満または500D未満である。候補剤は、たんぱく質との構造的相互作用、とりわけ水素結合のために必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも1個のアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2個の官能性化学基を含む。候補剤は、多くの場合、1個以上の上記官能基により置換された環状炭素または複素環構造および/または芳香族またはポリ芳香族構造を含む。また、候補剤は、ペプチド類、糖類、脂肪酸類、ステロイド類、プリン類、ピリミジン類、これらの誘導体類、構造的アナログ類または組合せのような生体分子においても見出される。とりわけ好ましいのは、ペプチド類である。
候補剤は、合成または天然化合物のライブラリーのような広範囲の源から得られる。例えば、ランダム型オリゴヌクレオチドの発現のような多くの手段を、広範囲の有機化合物および生体分子のランダムおよび直接合成において利用し得る。また、植物および動物抽出物の形の天然化合物のライブラリーも入手可能であり或いは容易に生成させ得る。さらに、天然または合成的に生成させたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生物学的手段により容易に修飾し得る。既知の薬理剤をアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化のような直接またはランダム化学修飾に供して構造的アナログ類を生成させることもできる。
候補剤は、イオンチャンネルたんぱく質に結合することが知られているまたはイオンチャンネルたんぱく質の活性を調節することが知られている、或いは細胞内でのイオンチャンネルたんぱく質の発現を改変させる生物活性剤であり得る。また、候補剤は、イオンチャンネルたんぱく質に結合することまたはイオンチャンネルたんぱく質の活性を調節すること或いは細胞内でのイオンチャンネルたんぱく質の発現を改変させることが以前には知られていない生物活性剤でもあり得る。
【0028】
好ましい実施態様においては、上記候補生物活性剤は、たんぱく質であり得る。本明細書における“たんぱく質”とは、少なくとも2個の共有結合アミノ酸を意味し、たんぱく質類、ポリペプチド類、オリゴペプチド類およびペプチド類を包含する。該たんぱく質は、天然産アミノ酸とペプチド結合またはペプチド擬態構造体から構成され得る。即ち、本明細書において使用するときの“アミノ酸”または“ペプチド残基”は、天然産および合成アミノ酸の双方を意味する。例えば、ホモ-フェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的においてアミノ酸とみなす。また、“アミノ酸”は、プロリンおよびヒドロキシプロリンのようなイミノ酸残基も包含する。その側鎖は、(R)または(S)形状のいずれかであり得る。好ましい実施態様においては、上記アミノ酸は、(S)またはL-形状である。非天然産側鎖を使用する場合、非アミノ酸置換基を、例えば、生体内分解を阻止または遅延させるために使用し得る。
好ましい実施態様においては、候補生物活性剤は、天然産たんぱく質または天然産たんぱく質のフラグメントである。即ち、例えば、たんぱく質類を含有する細胞抽出物またはたんぱく質細胞抽出物のランダムまたは直接消化物を使用し得る。この方法において、多細胞真核生物たんぱく質のライブラリーを、本発明の方法におけるスクリーニングのために調製し得る。この実施態様においてとりわけ好ましいのは、多細胞真核生物たんぱく質および哺乳動物たんぱく質のライブラリーであり、後者が好ましく、ヒトたんぱく質がとりわけ好ましい。
好ましい実施態様においては、候補生物活性剤は、約5〜約30個のアミノ酸のペプチドであり、約5〜約20個のアミノ酸が好ましく、約7〜約15個のアミノ酸がとりわけ好ましい。上記ペプチドは、上記で概略したような天然産たんぱく質の消化物、ランダムペプチドまたは“バイアス型”ランダムペプチドであり得る。本明細書における“ランダム型”または文法的等価物は、各核酸およびペプチドが、それぞれ、ランダムヌクレオチドおよびアミノ酸から本質的になることを意味する。これらのランダムペプチド類(または核酸類、以下で説明する)は、一般に化学合成されるので、任意の位置において任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を合体し得る。その合成方法は、ランダム型たんぱく質または核酸を生成させるように設計して、配列長に亘って可能性ある組合せの全てまたは殆どの形成を可能にし、それによってランダム型候補生物活性たんぱく質剤のライブラリーを形成させ得る。
【0029】
1つの実施態様においては、上記ライブラリーは完全にランダム化されており、どの位置にも配列優先性または一定性はない。好ましい実施態様においては、上記ライブラリーは、バイアス型である。即ち、配列内の幾つかの位置は、一定に保持されているか或いは限られた数の可能性から選択されるかのいずれかである。例えば、好ましい実施態様においては、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、立体的にバイアス型(小または大いずれかの)残基の確定群内で、核酸結合性ドメインの創生;架橋のためのシステイン、SH-3ドメインのためのプロリン、セリン、スレオニン、チロシンまたはリン酸化部位のためのヒスチジンの創生等に向かってまたはプリン等に対してランダム化されている。
好ましい実施態様においては、候補生物活性剤は、核酸である。
たんぱく質類について上記で一般的に説明したように、核酸候補生物活性剤は、天然産核酸、ランダム核酸または“バイアス型”ランダム核酸であり得る。例えば、原核生物または真核生物ゲノムの消化物を、たんぱく質類について上記で概略したようにして使用し得る。
好ましい実施態様においては、候補生物活性剤は、有機化学成分であり、その広範囲のものが文献において入手し得る。
好ましい実施態様においては、アンチセンスRNAおよびDNA類を生体内でのある種のTRPM5遺伝子の発現を阻止するための治療薬として使用し得る。短アンチセンスオリゴヌクレオチド類が細胞内に取込まれ、これらオリゴヌクレオチドが、細胞膜によるその限られた取込みによって生じるその低細胞内濃度にもかかわらず、インヒビターとして作用することは、既に証明されている。(Zamecnik et al., (1986), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4143-4146)。該アンチセンスオリゴヌクレオチド類は、例えば、その負帯電性ホスホジエステル基を非帯電性基で置換することによって修飾してその取り込みを増強させ得る。好ましい実施態様においては、TRPM5アンチセンスRNAおよびDNA類を使用して、TRPM5遺伝子のmRNA類への転写を阻止し、TRPM5 mRNAのたんぱく質への翻訳を抑制し、且つ先在するTRPM5たんぱく質の活性を遮断し得る。
【0030】
もう1つの実施態様は、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節する候補生物活性剤のスクリーニング方法を提供する。TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性の調節は、例えば、候補生物活性剤の存在および不存在下の全細胞パッチクランプアッセイまたは単一チャンネル膜パッチアッセイにおいて内向きおよび外向き電流を測定することによって判定し得る。別の実施態様においては、1価カチオン活性の調節を、TRPM5チャンネルを含む細胞の1価カチオン電流および/または膜電位の機能としてモニターする。例えば、膜電位の調節を膜電位感受性プローブの使用により検出する。好ましい実施態様においては、上記膜電位感受性プローブは、ビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3))のような蛍光プローブである(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes;該文献は、参考として本明細書に合体させる)。蛍光膜電位感受性プローブの使用は、膜電位変化の迅速検出を、蛍光顕微鏡測定法、フローサイトメトリー、および蛍光検出を使用する高処理量スクリーニング法の使用を含む蛍光分光測定法のような方法の使用によりモニターすることによって可能にする (Alvarez-Barrientos, et al., “Applications of Flow Cytometry to Clinical Microbiology”, Clinical Microbiology Reviews, 13(2): 167-195, (2000))。
候補剤によるTRPM5チャンネルの1価カチオン透過性の調節は、TRPM5を発現する細胞を1価カチオンおよび1価カチオンと反応してシグナルを発生させる1価カチオン指示薬と接触させることによって判定し得る。1価カチオンの細胞内レベルを、候補生物活性剤の存在および不存在下における指示薬シグナルを検出することによって測定する。もう1つの実施態様は、TRPM5を発現する細胞中の細胞内1価カチオンレベルをTRPM5を発現しない細胞と、候補生物活性剤の存在および不存在下において比較することを含む。
【0031】
本明細書において使用するとき、1価カチオン指示薬は、細胞膜に容易に浸透可能であるか、さもなければ、例えば、リポソーム類等により細胞中に輸送され易く、細胞に入ったとき、1価カチオンとの接触時に増強されるかまたは失活されるかのいずれかである蛍光シグナルまたは他の検出可能なシグナルを示す分子である。本発明において有用な1価カチオン指示薬の例は、Haugland, R.P. Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals., 9th ed. Molecular Probes, Inc Eugene, OR, (2001)に記載されている(該文献は、その全体を参考として本明細書に合体させる)。
好ましい実施態様においては、1価カチオン指示薬は、ナトリウム指示薬である。ナトリウム指示薬の例は、SBFI、CoraNaグリーン、CoraNaレッド、およびナトリウムグリーンである(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。さらに好ましい実施態様においては、1価カチオン指示薬は、PBFIのようなカリウム指示薬である(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。
細胞内Ca2+レベルは、Ca2+に対して特異性の指示薬を使用して検出可能である。Ca2+に対して特異性である指示薬としては、fura-2、indo-1、rhod-2、fura-4F、fura-5F、fura-6Fおよびfura-FF、fluo-3、fluo-4、オレゴングリーン488 BAPTA、カルシウムグリーン(Calcium Green)、X-rhod-1、およびfura-レッドがある(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。
さらに好ましい実施態様においては、細胞内Ca2+レベルと1価カチオンの細胞中への流入を同時に測定する。この実施態様においては、Ca2+特異性指示薬を使用してCa2+レベルを検出し、1価カチオン特異性指示薬を使用して1価カチオンレベルを検出する。Ca2+指示薬と1価カチオン特異性指示薬は、各指示薬に由来する各シグナルを同時に検出できるように選択する。例えば、両指示薬は蛍光シグナルを有するが、両指示薬の励起および/または発光スペクトルは、各指示薬に由来するシグナルを同時に検出し得るように識別性である。
【0032】
さらにまだ好ましい実施態様においては、 細胞内Ca2+レベルと膜電位の変化の双方を同時に測定する。この実施態様においては、Ca2+特異性指示薬を使用してCa2+レベルを検出し、膜電位感受性プローブを使用して膜電位の変化を検出する。 Ca2+指示薬と膜電位感受性プローブは、該指示薬およびプローブに由来する各シグナルを同時に検出し得るように選択する。例えば、上記指示薬およびプローブの双方は蛍光シグナルを有するが、両指示薬の励起および/または発光スペクトルは、各指示薬に由来するシグナルを同時に検出し得るように識別性である。
TRPM5チャンネルの調節を測定する前に、TRPM5は、細胞内Ca2+レベルの急速上昇により活性化されて膜を横切る1価カチオンの流動を可能にしなければならない。細胞内Ca2+レベルの上昇は、カルシウムイオノフォア、トロンビン、イノシトール1,4,5-トリスホスフェート(InsP3)産生性レセプター作用薬の存在により或いは急速Ca2+変化を誘発する任意の他の手段により、誘発させ得る。
本発明の好ましい実施態様においては、TRPM5チャンネルは、カルシウムイオノフォアにより活性化させる。カルシウムイオノフォアは、脂質二分子膜中に溶解し且つカルシウムに対する透過性を増大させる小疎水性分子である。カルシウムイオノフォアの例としては、イオノマイシン、カルシマイシンA23187および4-ブロモカルシマイシンA23187がある(Sigma-Aldrich社カタログ2004/2005、該カタログは、参考として本明細書に合体させる)。
好ましい実施態様においては、TRPM5のイオン透過性は、インタクト(無欠)細胞、好ましくはHEK-293細胞(TRPM5をコード化する核酸を含むベクターおよび該ベクターに操作的に結合させている誘発性プロモーターによって形質転換されている)中で測定する。プロモーターの誘発後に、TRPM5ポリペプチドが産生し、TRPM5チャンネルを形成する。細胞内イオンの内生レベルは、誘発前に測定し、その後、誘発後に測定した細胞内イオンレベルと比較する。SBFIおよびPBFIのような蛍光分子を使用して細胞内1価カチオンレベルを検出し得る。Na+、K+、Cs+および他の1価カチオンに対するTRPM5透過性は、このアッセイにおいて測定し得る。
TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性は、該チャンネルを開放したときに増大させ得る。TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性は、該チャンネルを閉鎖したときに低下させ得る。
【0033】
候補生物活性剤は、例えば、脊椎動物の神経系、免疫系および筋肉系の細胞のような各種細胞中のTRPM5チャンネルを開放し得る。TRPM5チャンネルの開放は、例えば、脊椎動物における免疫応答の減少または低下をもたらし得る。本明細書において説明した薬剤類のような生物活性剤は、免疫応答の減少または低下が脊椎動物の改善された状態をもたらす疾患、該疾患に伴う症状、自己免疫もしくは移植片対宿主拒絶反応のような障害、または他の関連自己免疫障害の治療において有用である(即ち、上記疾患、上記疾患に伴う症状、または障害は、予防され、軽減されまたは消失する)。
開放状態にある上記チャンネルは細胞膜電位を脱分極させるので、上記チャンネルは、電圧活性型Na+およびCa2+チャンネルのような電圧感受性チャンネルを有する細胞内の電気活性を誘発させる。この後、そのような刺激性細胞中へのCa2+流入が続き、幾つかの細胞において神経伝達物質またはホルモン類の放出として現れるエキソサイトーシスに至る。電気的刺激はインシュリン分泌性細胞の特徴でもあり、TRPM5は膵臓ベータ細胞中で発現するので、TRPM5は、ベータ細胞の脱分極に関与し、最終的にはインシュリン放出を生じる。
さらなる実施態様においては、候補生物活性剤は、例えば、脊椎動物の神経系、免疫系および筋肉系の細胞のような各種細胞中のTRPM5チャンネルを閉鎖し得る。TRPM5チャンネルの閉鎖は、例えば、脊椎動物における免疫応答の増強または増補をもたらし得る。本明細書において説明した薬剤類のような生物活性剤は、免疫応答の増強または増補が脊椎動物の改善された状態をもたらす疾患、該疾患に伴う症状、乳がんおよび結腸がんまたは他の形状のがんのような疾患の治療において有用である(即ち、上記疾患、上記疾患に伴う症状、または障害は、予防され、軽減されまたは消失する)。
【0034】
もう1つの実施態様は、細胞中でのTRPM5の発現レベルを調節する候補生物活性剤のスクリーニングを提供する。細胞中のTRPM5発現を全体的に抑制する候補剤を使用し、それによって細胞フェノタイプを改変し得る。さらに好ましい実施態様においては、細胞中のTRPM5発現を増強させる候補剤を使用し、それによって細胞フェノタイプを改変する。これらの候補剤の例としては、アンチセンスcDNAおよびDNA類、調節結合性たんぱく質および/または核酸類、並びにTRPM5をコード化する核酸の転写または翻訳を調節する本明細書において説明する任意の他の候補生物活性剤がある。
本発明のさらにもう1つの実施態様は、候補生物活性剤がTRPM5に結合し、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し、或いはTRPM5ポリペプチドの発現を調節し得ることを検証する方法を提供する。検証方法は、例えば、生物活性剤がTRPM5に結合し、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し、或いはTRPM5ポリペプチドの発現を調節するものとして推定的に同定される臨床または診断用途における使用を見出している。検証方法は、例えば、TRPM5に対する結合性、TRPM5の1価カチオン透過性の調節またはTRPM5発現の調節についての候補生物活性剤のスクリーニングについて上記で説明したアッセイ法である。
さらにもう1つの実施態様においては、本発明は、TRPM5ポリペプチド上の特異的なエピトープ、例えば、SEQ ID NO:2の1〜約1165のアミノ酸を含むたんぱく質(図7)の特異的なエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。そのような抗体は、TRPM5に対する結合性のみならずそのTRPM51価カチオン透過性を調節する能力についてもアッセイし得る。
【0035】
抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、ポリクローナル抗体を含み得る。ポリクローナル抗体の調製方法は、当業者にとって公知である。ポリクローナル抗体は、哺乳類において、例えば、免疫化剤と必要に応じてのアジュバントの1回以上の注入により産生させ得る。典型的には、免疫化剤および/またはアジュバントを哺乳類中に複数回の皮下または腹腔内注射により注入する。免疫化剤は、TRPM5ポリペプチドまたはその融合たんぱく質を含み得る。免疫化剤を免疫化する哺乳類中で免疫原性であることが知られているたんぱく質に接合させることは有用であり得る。そのような免疫原性たんぱく質の例には、限定するものではないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチオグロブリン、および大豆トリプシンインヒビターがある。使用し得るアジュバントの例には、フロイントの完全アジュバントおよびMPL-TDMアジュバントモノホスホリルリピッドA、合成トレハロースジコリノミコレート)がある。免疫化プロトコールは、当業者であれば、過度の経験なしで選定し得ることである。
抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、モノクローナル抗体をさらに含み得る。そのようなモノクローナル抗体は、TRPM5ポリペプチドと結合する以外に、TRPM5チャンネル1価カチオン透過性を調節する生物活性候補剤としても同定し得る。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されている方法のようなハイブリドーマ方法を使用して調製し得る。ハイブリドーマ方法においては、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物を免疫化剤によって典型的に免疫し、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する或いは産生し得るリンパ球を引き出す。また、リンパ球は生体外でも免疫化し得る。
免疫化剤は、TRPM5ポリペプチドまたはその融合たんぱく質を典型的に含む。一般に、ヒト起源細胞を所望する場合には末梢血リンパ球(“PBLs”)を使用し、非ヒト哺乳動物源を所望する場合には脾臓細胞、腎臓細胞またはリンパ節細胞を使用する。リンパ球は、その後、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を使用して、不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を生成させる[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化細胞系は、通常、形質転換哺乳動物細胞、とりわけ囓歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラットまたはマウス細胞系を使用する。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない不死化細胞の増殖または生存を抑制する1種以上の物質を含有する適切な培養培地中で培養する。例えば、親細胞が酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠乏する場合、上記ハイブリドーマ用の培養培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを典型的に含み(“HAT”培地)、これらの物質はHGPRT欠乏細胞の増殖を阻止する。
【0036】
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択した抗体産生性細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、且つHAT培地のような培地に対して感受性である細胞系である。より好ましい不死化細胞系は、例えば、カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerおよびメリーランド州ロックビルのAmerican Type Culture Collectionから入手し得るネズミミエローマ系である。ヒトミエローマおよびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系も、ヒトモノクローナル抗体類の産生について記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
その後、上記ハイブリドーマ細胞を培養した培養培地を、TRPM5ポリペプチドに対して特異性のモノクローナル抗体の存在についてアッセイし得る。好ましくは、上記ハイブリドーマ細胞により産生させたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により或いはラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)のような生体外結合アッセイにより測定する。そのような技術およびアッセイ法は、当該技術において既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のScatchard分析により測定し得る。
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、そのクローンを制限希釈手法によりサブクローニングし、標準法により増殖させる(Goding、前出)。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、ダルベッコの変性イーグル培地およびRPMI-1640培地がある。また、ハイブリドーマ細胞は、哺乳類の腹水のような生体内で増殖させてもよい。
サブクローンが分泌するモノクローナル抗体は、培養培地または腹水から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーのような通常のイムノグロブリン精製手法により分離し精製し得る。
【0037】
また、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されている方法のような組換えDNA法によっても調製し得る。本発明のモノクローナル抗体をコード化するDNAは、通常の手法を使用して(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコード化する遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に分離し、シークエンシングし得る。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい源として役に立つ。分離すると、上記DNAを発現ベクター中に導入し、その後、このベクターを、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、さもなければイムノグロブリンたんぱく質を産生しないミエローマ細胞のような宿主細胞中に移入して、組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体合成を得ることができる。また、上記DNAは、例えば、コード配列を相同性のネズミ配列の代りのヒト重鎖および軽鎖定常ドメインで置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison等、前出)或いはイムノグロブリンコード配列に非イムノグロブリンポリペプチドのコード配列の全部または1部を共有結合させることによっても修飾し得る。そのような非イムノグロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインで置換し得、或いは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインで置換してキメラ2価抗体を創生し得る。
抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、1価抗体をさらに含み得る。1価抗体の調製方法は、当該技術において周知である。例えば、1つの方法は、イムノグロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、Fc領域内の任意の点で一般に切断して重鎖架橋を阻止するようにする。また、関連システイン残基を他のアミノ酸残基で置換するかまたは欠除させて架橋を阻止するようにする。
【0038】
生体外方法も、1価抗体を調製するのに適している。抗体フラグメント、とりわけ、Fabフラグメントを生成させるための抗体の消化は、当該技術において既知の定常法を使用して達成し得る。
抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含み得る。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形は、非ヒトイムノグロブリン由来の最低限の配列を含有するキメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合下位配列のような)である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種のCDR (ドナー抗体)由来の残基で置換されているヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク残基を相応する非ヒト残基で置換する。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも外来CDRまたはフレームワーク配列にも見出せない残基も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒトイムノグロブリンのCDR領域に相応する少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろうし、FR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒトイムノグロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、最適には、イムノグロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトイムノグロブリンの定常領域の少なくとも1部も含む[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988);および Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]
非ヒト抗体のヒト化方法は、当該技術において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源から導入した1種以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、“外来”残基と称され、典型的には、“外来”可変ドメインから取っている。ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)]に従い、囓歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の相応する配列で置き換えることによって本質的に実施し得る。従って、そのような“ヒト化”抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、インタクトヒト可変ドメインよりも実質的に小さい配列が非ヒト種由来の相応する配列によって置換されている。実際に、ヒト化抗体は、幾つかのCDR残基、おそらくは幾つかのFR残基が囓歯類抗体中の類似部位由来の残基によって置換されている典型的なヒト抗体である。
【0039】
また、ヒト抗体も、ファージ表示ライブラリーのような当該技術において既知の各種方法を使用して産生させ得る[Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]。Cole等およびBoerner等の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製において利用し得る[Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);および Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒトイムノグロブリン座をトランスジェニック動物、例えば、内生イムノグロブリン遺伝子を部分的にまたは完全に不活化しているマウス中に導入することによっても調製し得る。誘発時に、ヒト抗体産生が観察され、これは、遺伝子再配置、集合および抗体レパートリーのような全ての点においてヒトにおいて観察される産生に密接に類似している。この方法は、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号、第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号;並びに、以下の科学刊行物に記載されている:Marks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)。
抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、ヘテロ接合抗体をさらに含み得る。ヘテロ接合抗体は、2つの共有結合抗体からなる。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を好ましくない細胞に対してターゲッティングすること[米国特許第4,676,980号]およびHIV感染症の治療[WO 91/00360号;WO 92/200373号;EP 03089号]に対して提案されている。該抗体は、架橋剤を関与させる方法のような合成たんぱく質化学における既知の方法を使用して生体外で調製し得ることが意図される。例えば、抗毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して或いはチオエーテル結合を形成させることにより構築し得る。この目的における適切な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミデート、並びに、例えば、米国特許第4,676,980号に記載されている試薬がある。
【0040】
さらなる実施態様においては、抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、種々の利用性を有する。例えば、抗-TRPM5ポリペプチド抗体は、TRPM5ポリペプチドの診断アッセイ、例えば、特異性細胞、組織または血清中でのその発現の検出において有用であり得る。拮抗結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイおよび不均質または均質相のいずれかで実施する免疫沈降アッセイのような当該技術において既知の各種診断アッセイ法を使用し得る[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]。診断アッセイにおいて使用する抗体は、検出可能な成分で標識化し得る。検出可能な成分は、直接または間接的に検出可能なシグナル産生し得るべきである。例えば、検出可能な成分は、3H、14C、32P、35Sまたは125Iのような放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリンのような蛍光または化学発光化合物;またはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素であり得る。Hunter et al., Nature, 144:945 (1962);David et al., Biochemistry, 13:1014 (1974);Pain et al., J. Immunol. Meth., 40:219 (1981);およびNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載されている方法のような、抗体を検出可能成分に接合させるための当該技術において既知の方法を使用し得る。
さらに、TRPM5抗体は、TRPM5チャンネルの1価カチオンに対する透過性を調節するその能力についてスクリーニングする本発明の方法において使用し得る。
【0041】
(実施例)
実施例1
TRPM5を発現するHEK-293細胞の産生
CMV (サイトメガロウィルス)プロモーターが高レベルのTRPM5転写体を誘発させる安定なHEK-293クローンを産生させた。
RT-PCRにおいて、プライマーを、増幅生成物を少なくとも1つのイントロン領域上まで及ばせ且つ増幅cDNA生成物が150〜500bpの範囲であるような方法で一般的に消化した。ノーザンブロットを次のようにして調製した:全RNAを、RNeasy (Qiagen社)を使用し、製造業者プロトコールに従い細胞培養物から精製した。濃度は、光度計により測定した。20μgのサンプルを1.2%変性用ゲル(Ix MOPS)上で電気泳動させ、転移させ、ヒト全長TRPM5配列(NCBI受託番号NM 014555)のヌクレオチド2529〜3025を示すTRPM5の場合、ExpressHybハイブリッド化溶液(Clontech社)中で32P標識化プローブと65℃(高緊縮)でハイブリッド化させ(ゲル精製し、cDNAフラグメントをシークエンシングし)、製造業者の高緊縮洗浄プロトコールに従い洗浄し、増感スクリーン(Amersham社)により−80℃で1〜3日間オートラジオグラフィー処理(RPN-9、Amersham社)した。
長スプライスバージョンの完全ORFを含有するヒトTRPM5 cDNA (Prawitt, D. et al., Hum. Mol. Genet. 9, 203-16 (2000))を、Xhol/Xbal消化pcDNA3 (Invitrogen社)ベクター中に、pBKS+中間体を使用してクローニングし、シークエンシングにより検証した。増強緑色蛍光たんぱく質(Enhanced-Green-Fluorescent-Protein (EGFP))の停止コドンを有さないORFを、Kpn1 (5'AAAAAGGTACCGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGG、SEQ ID NO:3;翻訳のためのKozak理想開始部位も創生する)およびXho1 (5'-AAAACTCGAGCCCTTGTACA GCTCGTCCATGC、SEQ ID NO:4)のためのフランキング制限部位を含有する各プライマーにより、pBI-EGFPベクターDNA (Clontech社)上でPCR増幅させ、PCR生成物をKpn1/Xho1制限pcDNA3-TRPM5構築物中に直接クローニングし、EGFPを翻訳後のTRPM5のN-末端部分と融合させた。各クローンを完全シークエンシングにより検証した。構築物をPvu1消化により線状化し、0.4cmエレクトロポレーションバイアル中での960μF、0.3KVのエレクトロポレーション(Biorad社)を使用してHEK-293細胞中に移入させた。移入細胞を、1.37mg/mlのG418 (PAA社)を含有するDMEM培地中での増殖により選択した。選択性培地を1日おきに交換し、選択性を少なくとも2週間保った。その後、単一生存細胞クローンを24ウェルプレート中で分離した。集団を早期継代数において凍結し、これらのストックはさらなる試験において使用した。mRNAを発現した安定クローンを、ノーザンブロット分析(図1A)により同定した。陰性対照として、空発現構築主鎖を含有するHEK-293細胞の安定クローンを産生させた。
【0042】
上述したように、TRPM5は、N-末端領域中でEGFPタグ付けした。図1Bの共焦点レーザー顕微鏡分析において示すように、EGFP-TRPM5発現は、489nm波長の光による励起によって容易に検出可能であり、該たんぱく質の有意の画分が細胞質膜に局在化されている。
HEK-293 (ヒト胚腎細胞)、WT128およびG401 (ヒトビルムス腫瘍細胞)、Hela、Jurkat (ヒトT-細胞)、MIN (マウス13-細胞)、並びにpcDNA3、pcDNA3-TRPM5およびpcDNA3-EGFP-TRPM5を発現する安定な移入HEK-293細胞を、10%のFCS (Min細胞15%FCS)および2mMのグルタミンを含有するDMEM (PAN社)中で37℃/5%CO2において培養した。培地にペニシリン(100IU/ml)/ストレプタビジン(100μg/ml;Invitrogen)を加え、移入クローンの場合には、G418 (1.37mg/ml;PAA社)も加えた。Ramos (ヒトバーキットリンパ腫細胞)およびCath.a (ネズミ神経細胞)細胞を、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.15%(質量/容量)のNaHCO3、10mMのHepes、2mMのL-グルタミン、0.25%のグルコース、さらに、Ramos細胞の場合には10%のFCS、Cath.aの場合には10%のウマ血清および5%のFCSを加えたRPMI 1640 (Sigma社)培地中に保った。A20 (ネズミ線維芽細胞)を、0.05μMのβ-メルカプト-エタノール、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのL-グルタミン、0.3%の炭酸ナトリウムおよび10%のFCSを含有するIMDM培地(Gibco BRL社)中に保った。TRPM5/pcDNA3構築物を移入したHEK-293細胞を、10%FCSを加えたDMEM培地によりガラスカバースリップ上で増殖させた。
ガラスカバースリップ上で増殖させた細胞を記録室に移し、次の組成(mMでの)の標準変性リンガー溶液中に保った:NaCl 140、KCl 2.8、CaC12 1、MgC12 2、グルコース 10、Hepes・NaOH 10、pH 7.2;浸透圧は、典型的に298〜308 mOsmの範囲であった。細胞内ピペット充填溶液は、以下を含有していた(mMで):K-グルタメート 120、NaCl 8、MgC12 1、K-BAPTA 10、HEPES・CsOH、pH 7.2 (KOHで調整)。遊離[Ca2+]iを調整するために、上記所望濃度に、WebMaxC v2.1 (スタンフォード大学より入手可能)により算出するような適切量のCaCl2を添加した。Fura-2測定の場合には、細胞内K-BAPTAを200μMのfura-2で置換えた。Fura-2は、カルシウム指示薬である(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。溶液交換は、広口先端ピペットからの圧力噴射により実施した。トロンビン(NaCl系緩衝液)は、Sigma社から購入した。
【0043】
実施例2
TRPM5の分析:TRPM5はカルシウム活性化性チャンネルである
TRPM5を発現する細胞を実施例1におけるようにして調製した。細胞を、遊離Ca2+濃度をBAPTAとCaC12との適切な混合物により500nMに緩衝させている内部溶液により潅流させた。貯蔵量欠乏(store depletion)を誘発させないこのプロトコールを使用して、細胞全体形状の確立後に直ちに活性化され急速に不活性化して一過性の電流応答を発生させるような大きい膜電流が観察された(図1C)。これらの試験条件下でのTRPM5電流の活性化動力学は、-3秒のピークに対する半分の時間、-10秒でのピーク電流自体に特徴を有する。電流は、-13秒の半分の時間による基本値まで同様に急速に不活性化する。そのような電流は、WT細胞においては決して観察されず、TRPM5を発現するHEK-293細胞が[Ca2+]iの上昇に応答するイオンチャンネルに寄与していることを示唆している、即ち、TRPM5がCa2+活性化性カチオンチャンネルであることを指標している。
図1Dに示しているように、TRPM5電流の電流-電圧関係は、-5±0.2mVの逆転電位により明確に外向きに整流している(n = 51)。この整流は、単チャンネル増幅または透過特性によるものではなく、むしろ、正膜電圧がチャンネル開放を助長し、負電圧がその開放可能性を減じるという強い電圧依存性によって生じている。この電圧依存性は、TRPM5の特徴であり、TRPM4の電圧依存性よりも有意に顕著である。
TRPM5電流の強度は[Ca2+]iレベルに依存しており、[Ca2+]iは、1μMまではチャンネル活性の上昇を誘発させるが、その後抑制性になり、鐘状の投与量応答曲線を生ずる(図1E)。これらのデータに適応させた投与量応答曲線は、1μM辺りでのピークでもって、活性化において850nMのEC50値を、抑制において1.1μMのIC50を与える。両曲線は、かなり高い協調性に特徴を有する(それぞれ、4および-6のヒル係数)。−80mVにおいては、1μMの[Ca2+]iによって得られた内向き電流の平均ピーク増幅は、-440pA±270pAであった(n = 5)。この挙動はTRPM5とTRPM4とをさらに区別しており、TRPM4の活性は、1.3μMまでのレベルにおいての抑制の兆候もなく、高レベルの[Ca2+]iにおいてプラトー化する(文献9、データは示していない)。
【0044】
もう1つの明確な特徴は、全てのCa2+濃度において観察された顕著且つ急速なTRPM5電流の不活性化であり、TRPM5電流がCa2+によって直接介在されるのではなく、むしろTRPM5固有の性質を表すか或いは調節機構によって生じていることを示唆している。不活性化は活性化が進行している間に生じるので、TRPM5電流の理論的ピーク増幅は、観察される2nAよりもかなり高いようである。これら電流の一過性は、TRPM5の明確な特徴であり、TRPM5をTRPM4の持続性の活性化から区別している。HEK-293細胞は低レベルの内生TRPM4チャンネルを発現するが、これらのチャンネルは図1Cに示す電流に有意には寄与しないことに留意すべきである;何故ならば、TRPM4チャンネルは、50秒の遅れで典型的に活性化し、これらの条件下においては+80mVにおいて約200pAの外向き電流にしか達しないからである。
図1Dにおいて示すように、TRPM5電流は、0mV辺りの逆転電位による強い外向き整流に特徴を有し、TRPM5電流が非選択性のイオン透過通路を示すことを示唆している。即ち、外向き電流は、K+イオンに搬送され、内向き電流は優勢な細胞外イオン種Na+によって搬送される(即ち、[Na+]o/[K+]i)。主要細胞外および細胞内イオン種が[Na+]o/[Cs+]iまたは[K+]o/[K+]iまたは[K+]o/[Cs+]iである数種のイオン置換試験を実施し、全ての場合において、電流-電圧関係は、図1Dに示す関係と極めて類似しており、TRPM5がNa+、K+およびCs+に対し同様に透過性であることを示唆していた。
【0045】
試験方法
カルシウム測定
細胞質カルシウム濃度は、各々20msにおいて360および390nmでfura-2蛍光を励起するように調整した単色光源を使用する光電子倍増管系装置(TILL Photonics社、ドイツ国ミュンヘン)により、5Hzの速度でモニターした。発光を光電子倍増管により450〜550回の試験で検出し、そのアナログシグナルをサンプリングし、X-チャートソフトウェア(HEKA社、ドイツ国ランブレヒト)により処理した。蛍光比を、較正カルシウム濃度によるパッチ-クランプ試験に由来する較正パラメーターに基づき、遊離細胞内カルシウム濃度に変換した。
パッチ-クランプ試験
パッチ-クランプ試験は、21〜25℃で密封細胞全体形状において実施した。高解像力電流記録は、コンピュータ系パッチ-クランプ増幅装置(EPC-9、HEKA社、ドイツ国ランブレヒト)によって取得した。パッチピペットは、標準細胞内溶液で満たした後2〜4MS2の耐性を有していた。細胞全体形状の確立直後に、−100〜+100mVの電圧範囲にまたがる50ms時間の電圧勾配を、300〜600秒の期間に亘って0.5Hzの速度で0mVの保持電位から実施した。全ての電圧を、細胞内アニオンとしてグルタメートを使用したときの外部および内部溶液間の10mVの液界電位に対して補正した。電流は、2.9kHzでフィルタリングし、100ps間隔でデジタル化した。容量電流および直列抵抗を測定し、各電圧勾配前にEPC-9の自動電気容量補正を使用して補正した。膜電流の低解像力一過性発生を、−80および+80mVでの電流増幅を個々の勾配電流記録から差引くことによって評価した。適用可能な場合、平均したデータの統計的誤差は、n回測定による平均±S.E.M.として示し、統計的有意性をスチューデントt-検定により評価した。単チャンネル測定においては、裏返しパッチを、Ca2+を含有せず1mMのNa-EDTAを含む変性標準外部溶液中に入れた。単チャンネルを記録するためには、−100mVから+100mVmまでの280psでデジタル化した4.5sの勾配プロトコールを各勾配間で待ち時間なしで与えた。Ca2+適用中にチャンネル活性を有さない勾配を漏電補正に使用し、得られた全ての勾配から控除した。データ収集は、2.9kHzフィルター設定においてであり、表示目的のために50Hzでデジタル的にフィルタリングした。
【0046】
実施例3
TRPM5の分析:TRPM5はCa2+を搬送しない
TRPM5を、細胞を標準細胞外溶液中に浴しながら、500 nM [Ca2+]iにより活性化させ、その後、等張CaCl2溶液(120mM)に暴露させた。図2Aにおいて理解し得るように、これによって、内向き電流の完全抑制と外向き電流の僅かな上昇が生じた。これらの条件下での電流-電圧関係を図2Bに例証しており、当初Na+により搬送された負電位での内向き電流が、細胞を等張Ca2+に暴露させたときに、完全に抑制されていることを実証している。外部Na+の不存在下においては、逆転電位は、内向き電流を搬送し得る透過性イオンの不存在のために、負電位にシフトしている(図2Bの挿入図)。2価イオンがTRPM5チャンネルを透過しないことをさらに確認するために、2価を含まない細胞外溶液中に適用したCa2+移動性レセプター作用薬トロンビンにより、TRPM5を活性化させる試験を実施した(図3も参照されたい)。2価イオンを搬送するイオンチャンネル、例えば、TRPM7 (Nadler, M. J. et al., Nature 411, 590-5 (2001)) または貯蔵量誘発性Ca2+電流ICRAC (Hoth, M. & Penner, R., Nature 355, 353-6 (1992);Hoth, M. & Penner, R., J. Physiol. (Lond.) 465, 359-86 (1993))は、通常、細胞を2価を含まない溶液に暴露させたときに大きな内向き電流を発生させる。図2Cにおいて理解し得るように、内向き電流は外向き電流よりも有意に小さいままであり、これらの条件下でのTRPM5電流の電流-電圧関係は強い外向き整流を維持しており(図2E)、生理学条件下でのTRPM5の小さい内向き電流は2価イオン透過遮断によるものではないことを示唆している。即ち、TRPM5チャンネルは、何ら認識し得る量のCa2+を搬送せず、従って、1価カチオンに対して特異性であるCa2+活性化非選択性(CAN)チャンネルである。
【0047】
実施例4
TRPM5の分析:TRPM5は細胞内Ca2+レベルの上昇によって活性化される
生理学的条件下においては、TRPM5電流は、InsP3産生に関連する作用薬によるレセプター刺激後に活性化することが、InsP3産生が[Ca2+]iの上昇をもたらすことから予測されるであろう。この理論を、膜電流および[Ca2+]iをトロンビン介在Ca2+放出後に同時測定する電圧-クランプ試験を実施することによって試験した。全細胞電流を電圧勾配により連続的にモニターした。しかしながら、この場合、[Ca2+]iを一定値に緩衝させなかったが、代りに、[Ca2+]iを自由に変動させた。[Ca2+]iの変化は、fura-2でモニターした。
図3は、そのような試験条件下において得られた平均応答を例証している(n =5)。棒で示す時間中のトロンビン刺激は、それぞれ+80および−80mVでの内向きおよび外向き電流の一過性の上昇(図3A)と平行した大きなCa2+放出一過性(図3B)を生じていた。図3Fに示す電流ピークで得られた平均電流-電圧関係は、TRPM5の特徴である強い外向き整流を示している。Ca2+放出によるTRPM5の強い活性化は、短いCa2+放出一過性にかなり無応答性であり且つ十分に活性化するにはCa2+流入を必要とするTRPM4((Launay, P. et al., Cell 109, 397-407 (2002))) からTRPM5を区別している。トロンビンによるTRPM5の活性化は、ピペット溶液中の10mM BAPTAの含有がトロンビンによるTRPM5活性化を一貫して抑制していたことから、[Ca2+]iの上昇に全体的に依存していた(n = 6、データは示していない)。
【0048】
図3における[Ca2+]iシグナルの動力学および電流応答の綿密な検証は、両者は同時に生じているものの、電流応答が発生および減衰の双方において極めて鋭敏であり且つ遊離[Ca2+]iのレベルを厳密には反映していないことを明らかにしている。代りに、TRPM5電流応答は、[Ca2+]iの変化速度を反映しているようであり、現実の電流応答との比較における[Ca2+]iの変化速度に関して[Ca2+]iシグナルの分析を促している。図3Cは、この分析を、時間間隔に亘っての[Ca2+]i変化の時間派生事象(ΔCa2+/Δt;これは、nM/sで表した[Ca2+]iの変化速度を反映している)をTRPM5の+80mVでの適切に尺度付けした絶対電流増幅上に重ね合せることによって例証している。事実、2つのトレースは事実上同一であり、電流が[Ca2+]iの変化速度に密接に従っていることを示唆している。
試験により、[Ca2+]i絶対値よりもむしろ[Ca2+]iの変化速度がTRPM5活性の一次決定因子であることを確認した。試験条件は、[Ca2+]iをトロンビンにより得られたレベルと同様な或いはそのレベルよりも上でさえあるレベルに、但し遅めの速度で上昇させるように設計した。滑面小胞体Ca2+ATP合成酵素を抑制し((Goeger, D. E., et. al., Biochem. Pharmacol. 37, 978-81 (1988)))、且つ遅い速度での[Ca2+]iの波状上昇に特徴を有する[Ca2+]iの持続性上昇を生じるシクロピアゾン酸(CPA)を使用した。図3Eおよび3Dは、CPAにより誘発された[Ca2+]iの変化とそれぞれ+80および−80mVで得られる電流の典型的な例を例証している。CPAは、[Ca2+]iを1pMよりも上に良好に上昇させているものの(パネルE)、比較的ゆっくり上昇させており、有意のTRPM5電流は誘発し得ていない。図4Dにおいて矢印により示している時間においては、イオンチャンネルの幾分かの活性が存在するが、これは、電流-電圧関係によって明らかなように、TRPM4によるものであり、本発明者等の以前の報告((Launay, P. et al. Cell 109, 397-407 (2002))) と全く一致していることに注目されたい。このことは、TRPM5電流が、有意の電流増幅を促進させるために[Ca2+]iの急速な変化を実際に必要とすることを示唆している。
【0049】
実施例5
膜パッチ試験を使用してのTRPM5単チャンネル特性の分析
TRPM5の単チャンネル特性を、パッチ-クランプ法の裏返し形状の無細胞切除膜パッチにおいて分析した。全細胞試験におけるのと同様な電圧プロトコールを使用した、即ち、−100〜+100mVの全体的電圧範囲にまたがった電圧勾配を0mVの保持電位からの0.5Hzの一定間隔で適用した。全細胞プロトコールとの唯一の違いは、勾配時間を、TRPM5チャンネルの極端な電圧依存性により稀である負電位でのチャンネル開放を検出する機会を最大にするために、4,5秒に延長したことである。図4Aは、少なくとも7つのTRPM5チャンネルを含有する膜パッチを、当初、1mMのEDTAをさらに含有させた無Ca2+ NaCl系溶液中に裏返し形状で切除した代表的な試験(n = 5)を示す(上方パネル;パッチ切除は、矢印でマークしている)。パッチは、パッチの細胞質面が、Ca2+を300nMに緩衝させたグルタミン酸カリウム系溶液に暴露させるまでは、全くそのままであった(中央パネル)。グルタミン酸カリウム系溶液は、標準の全細胞試験の試験条件を擬態させるのに使用した。これらの条件下において、複数チャンネルの活性がパッチの細胞質面を上昇Ca2+に暴露させている間に観察され、チャンネル活性は無Ca2+溶液を再導入させたときに急速に低下した(下方パネル)。
TRPM5チャンネル活性は、正電位が開放可能性の増大並びに開放時間の増大の双方に特徴を有していた点で強い電圧依存性を示し、このことは、75の単チャンネル電流記録のアンサンブル平均(図4B)および全細胞記録において観察された外向き整流(図1D)の双方において観察された強い外向き整流を説明している。個々の電位において測定した単チャンネル電流は線状電流-電圧関係を示し(図4C)、−100〜+100mVの電圧範囲に亘っての直線回帰により評価したとき、25pSの単チャンネル電導度を得ており、TRPM4の電導度((Launay, P. et al., Cell 109, 397-407 (2002))と同一である。
【0050】
実施例6
膵臓ベータ細胞中でのTRPM5の分析
TRPM5を、膵臓ベータ細胞のような種々の異なる組織中で発現させる(図5A)。膵臓ベータ細胞中のTRPM5の存在は、糖尿病 Goto-Kakizaki (GK)ラット、即ち、非肥満性タイプII糖尿病の遺伝子モデルが強力に低減されたTRPM5レベルを有することが報告されていることから(Irminger, J. et al. 38th EASD Annual Meeting Abstract #444 (2002))、興味がある。
TRPM5は、もう1つのベータ細胞系のINS-1においても見出される(図5B)。INS-1系を使用して天然細胞に関してのTRPM5の電気生理学特性を評価した。膵臓ベータ細胞系INS-1はTRPM5を発現させたので、これらの細胞における天然TRPM5電流を、不均質HEK-293発現系においてTRPM5を活性化させたのと同じ試験プロトコール(実施例1〜3)を使用して試験した。図5Cは、上昇レベルのCa2+ (800nM)を含有した細胞内溶液によるINS-1細胞の潅流が一過性電流を誘発させ、その電流-電圧関係(図5D)が外向き整流性であり、移入HEK-293細胞中のTRPM5において得られた電流-電圧特性に密接に類似していたことを例証している。同様に、INS-1細胞中での天然TRPM5電流活性化の投与量応答曲線は不均質系中のTRPM5の投与量応答曲線と類似していたが、分析は、高めの[Ca2+]iにおける他のCa2+活性化性電流の多大な活性化故に、800nMよりも高いCa2+レベルまで及ぶことができなかった。
【0051】
本発明を説明してきたが、当業者にとっては、数多くの変更および修正を特許請求する精神および範囲から逸脱することなくなし得ることは明白であろう。
本明細書において引用した全ての刊行物および特許は、全ての目的において参考として本明細書に合体させる。
【0052】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】pcDNA3-TRPM5およびpcDNA3のみを安定的に移入したHEK-293細胞のノーザンブロット分析を示す。ブロットは、32P-ラベル化TRPM5 cDNAとハイブリッド化させた。各シグナルレーンの等負荷性を実証するために、上記ブロットは、TRPM5転写体の検出後にストリッピングし、32P-ラベル化β-アクチンcDNAとハイブリッド化させた。
【図1B】EGFP-TRPM5融合たんぱく質を発現するHEK-293細胞の共焦点レーザー顕微鏡分析を示す。EGFP-TRPM5の3D分布は、有意量のたんぱく質が外側細胞膜に局在化していることを実証している。
【図1C】500 nM [Ca2+]iを潅流させたHEK-293細胞中のTRPM5内向きおよび外向き電流の平均発生を示す(n = 5)。電流は、ぞれぞれ、−80mVまたは+80mVで測定した。
【図1D】500 nM [Ca2+]iにより細胞全体形状を確立した後の5秒または40秒で測定したTRPM5電流の典型的なI/V曲線を示す。
【図1E】TRPM5電流の濃度応答曲線を示す(左軸、塗潰し丸;n = 5〜20)。上昇期に対する適合度により、850nMの見掛けEC50を得(ヒル係数4)、抑制期のIC50は、1.1μMであった(ヒル係数6)。右軸は、種々の濃度の細胞内[Ca2+]iにより誘発されたTRPM4電流の投与量依存性を示す(WebmaxCにより再計算したデータ、方法の章参照)。これらのデータに対する適合度により、885nMのEC50を得る(ヒル係数3.6)。
【図2A】500 nM [Ca2+]iを潅流させ、棒で示す時間で等張CaCl2 (120mM)を表面潅流させたTRPM5過発現HEK-293細胞の平均電流を示す(n = 3)。適用中、内向き電流は抑制され、外向き電流は増大した。データは、漏電控除しなかった。
【図2B】等張Ca2+の適用前(薄線)および適用終了時(濃線)の典型的なI/V曲線を示す。挿入図は、逆転電位のマイナス値へのシフトを実証している。
【図2C】棒で示しているように、TRPM5を活性化するための、1mM Na-EDTAと20 U/mlのトロンビンを含む2価-無NaCl系細胞外溶液(DVF)の適用を示す(n = 5)。
【図2D】DVF適用中の典型的なI/V曲線を示す。
【図3A】それぞれ、−80mVおよび+80mVで測定した平均電流を示す(n = 5)。棒は、トロンビン(20 U/ml)の適用を示す。
【図3B】図3Aにおけるのと同じ細胞のトロンビン適用に対する応答における平均[Ca2+]iシグナルを示す(n = 5)。
【図3C】図3Aから採用し、識別平均カルシウムシグナル(右軸)上に重ね合せた平均外向き電流を示す。チャンネルの活性化は[Ca2+]iの変化割合と並行して生じていることに注目されたい。
【図3D】トロンビン適用中に測定した、図3Aからの全細胞確立90秒後の漏電控除I/V曲線を示す。
【図3E】50μMのシクロピアゾン酸により誘発された−80mVまたは+80mVでの電流の典型的例(n = 9細胞)を示す。矢印は、内生TRPM4活性の突発を指し示している(挿入パネル中のサンプルI/V)。
【図3F】図3Eにおいて示したのと同じ細胞の相応するfura-2測定値を示す。棒は、CPA適用を示す。
【図4A】裏返しパッチを、TRPM5チャンネルを安定的に発現しているHEK-293細胞から引き離す試験を示す。単チャンネルを記録するために、−100mVから+100mVの4.5秒の勾配プロトコールを勾配間で待ち時間なしに設けた。 Ca2+適用中にチャンネル活性を有しない勾配を漏電補正に使用した。データは、2.9kHzフィルター設定において獲得し、表示目的で50Hzにおいてデジタルフィルタリングした。上方パネルは0Ca2+溶液中へのパッチの刺激時間を示し、3つの中央パネルは300nMのCa2+へのパッチ暴露中に獲得したデータの連続例である。最後のパネルは、Ca2+の適用を停止し除去した1秒後の例である。このパッチは、少なくとも7つのチャンネルを有していた。各点線は、TRPM5の逆転電位(0 mV)で始まり−100mVまたは+100mVのいずれかで終わる個々の1つのチャンネルを通る単チャンネル電流の外挿を示している。正電位における傾斜は28pSのチャンネル電導度を与えおり、内向き電流における傾斜は23pSである。記録は、この方法で記録した5つのパッチ全ての代表である。対照細胞(TRPM5を発現しないWT HEK-293)においては、7つのパッチのうちの3つがCa2+適用中にイオンチャンネル活性を有してなく、3つのパッチが3本までのTRPM4様チャンネルを有しており、1つのパッチがCa2+活性化Cl-チャンネルを含んでいた。
【図4B】300nMのCa2+暴露中に4.5秒勾配により集めた、TRPM5単チャンネル(75の勾配)のアンサンブルI/V曲線およびWT HEK-293細胞(対照、98の勾配)において行った記録を示す。
【図4C】TRPM5単チャンネルの電流-電圧関係を示す。各点は、5つのパッチにより電圧当り15〜25事象を測定して算出し、平均化し、電流対電圧(+S.E.M.)としてプロットした。
【図4D】TRPM5発現性パッチ(A、BおよびCにおけるのと同じパッチ、n = 5)の300nMのCa2+への暴露前、暴露中および暴露後に測定し、0mV〜+100mVでの勾配電流を積分することによって評価した平均電荷を示す。
【図5A】種々のヒトおよびネズミ細胞系由来の全RNAが説明しているようにして分離され、cDNAに転写されたことを示す。RT PCRを、TRPM4/Trpm4およびTRPM5/Trpm5遺伝子に対する種特異性プライマーにより実施した。産生物を分離し、シークエンシングした。非RT系PCR産生物の対照として、逆転写酵素なしのRTプロトコールを実施した。等量のcDNAを、β-アクチン産生物量により実証するときに使用した。ヒト細胞系RamosおよびHela並びにネズミ細胞系Min、A20およびCath.Aに由来するcDNAは、TRPM5/Trpm5転写体を含有する。TRPM4/Trpm4 cDNA産生物は、ヒトHela、JurkatおよびWt128細胞系並びに3種のネズミ細胞系の全てにおいて見出された。
【図5B】培養膵臓ベータ(INS-1)細胞中での内生Trpm5発現を示す。該INS-1細胞系に由来する全RNAを説明しているようにして分離し、cDNAに転写させた。RT PCRを、Trpm5遺伝子に対する囓歯類特異性プライマーにより実施した。産生物を分離し、シークエンシングした。非RT系PCR産生物の対照として、逆転写酵素なしのRTプロトコールを実施した。ラットINS-1細胞系に由来するcDNAは、内生Trpm5転写体を含有する。
【図5C】800 nM [Ca2+]iを潅流させた典型的なINS-1細胞(n = 8)において測定し、さらに、それぞれ−80mVおよび+80mVで測定した全細胞電流の発生を示す。TRPM5活性化の遅延は細胞間で変動したので(26秒〜109秒)、平均値(500 nM [Ca2+]iでの平均遅延 = 63±11 (n = 3)秒、800 nM [Ca2+]iでの平均遅延 = 53±10秒 (n =8)、統計的有意差なし)の代りに1つの例を示している。全ての場合において、TRPM5様電流は、活性化し、完全に不活化する。ならし試験後に観察された電流の初期低下は、保持電位(0mV)でのDRKチャンネルの不活化に基づいている。データは、12番目の勾配(全細胞確立24秒後)をその前およびその後の勾配から控除することによって漏電補正した。
【図5D】ピークにおいて抽出したTRPM5様電流の平均生データ(n = 8)のトレースを示す。データは、電流発生前の適切な対照勾配を控除することによって漏電補正した。漏電補正逆転電位は、発現系(−5mV)におけるよりも僅かに負である、おそらくは若干の小混在性K+および/またはCl-電流による−17mV±1mV (n = 8)であった。
【図5E】INS-1細胞中の内生TRPM5様電流の投与量応答曲線を示す。100nM (n = 3)も300nM (n = 3)も何ら電流を活性化していなかったことに注目されたい。500nM (n = 3)および800nM (n = 8)において、明確な一過性のTRPM5様電流が活性化されていた。1μM [Ca2+]iは大きなさらなるCa2+活性化電流を生じ(n = 6、データは示していない)、これは、分離におけるTRPM5の正確な評価を阻害していた。
【図6】1〜約3913の核酸配列(SEQ ID NO:1)を含むTRPM5 cDNAの核酸分子を示す。
【図7】1〜約1165の配列(SEQ ID NO:2)を含むヒトTRPM5ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むことを特徴とする、TRPM5ポリペプチドと結合し得る候補生物活性剤のスクリーニング方法:
a) 前記TRPM5ポリペプチドと前記候補剤とを接触させる工程;および、
b) 前記候補剤の前記TRPM5ポリペプチドに対する結合性を測定する工程。
【請求項2】
2種以上の前記候補剤のライブラリーを、前記TRPM5ポリペプチドと接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記TRPM5ポリペプチドが、SEQ ID NO:2の1〜約1,165のアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記TRPM5ポリペプチドが、SEQ ID NO:1の1〜約3,913のヌクレオチドを含む核酸によってコード化されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
下記の工程を含むことを特徴とする、TRPM5ポリペプチドを含有するチャンネルの1価カチオン透過性を調節し得る候補生物活性剤のスクリーニング方法:
a) 前記チャンネルを前記候補剤と接触させる工程;
b) 前記チャンネルを活性化させる工程;および、
c) 前記候補剤が前記チャンネルの1価カチオン透過性を調節するかどうかを検出する工程。
【請求項6】
前記チャンネルの1価カチオン透過性を前記候補剤と接触させることによって増大させる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記チャンネルの1価カチオン透過性を前記候補剤と接触させることによって低下させる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記1価カチオンをNa+、K+およびCs+からなる群から選択する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、細胞を1価カチオン指示薬と接触させることをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記指示薬が蛍光分子を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光分子がSBFIを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記調節を前記指示薬によって検出する、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記候補剤との接触が、組換え細胞の膜電位を変化させる、請求項5記載の方法。
【請求項14】
前記組換え細胞の膜電位を膜電位感受性プローブによってモニターする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記膜電位感受性プローブが、ビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3))である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記チャンネルをカルシウムイオノフォアによって活性化させる、請求項5記載の方法。
【請求項17】
下記の工程を含むことを特徴とする、TRPM5ポリペプチドを含むチャンネルの1価カチオン透過性を調節し得る候補生物活性剤のスクリーニング方法:
a) TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸と操作的に結合させた誘発性プロモーターを含む組換え細胞を調製する工程;
b) 前記組換え細胞を誘発させて、前記TRPM5ポリペプチドを発現させ、且つ前記TRPM5ポリペプチドを含むチャンネルを形成させる工程;
c) 前記組換え細胞を生物活性候補剤と接触させる工程;
d) 前記チャンネルを活性化させる工程;および、
e) 前記チャンネルの1価カチオン透過性の調節を検出する工程。
【請求項18】
前記1価のカチオンをNa+、K+およびCs+からなる群から選択する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を前記候補剤と接触させることによって増大させる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を前記候補剤と接触させることによって低下させる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記細胞を1価カチオン指示薬と接触させることをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記指示薬が蛍光分子を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記蛍光分子がSBFIを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記調節を前記指示薬によって検出する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記候補剤との接触が、前記組換え細胞の膜電位を変化させる、請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記組換え細胞の膜電位を膜電位感受性プローブによってモニターする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記膜電位感受性プローブが、ビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3))である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記TRPM5チャンネルをカルシウムイオノフォアによって活性化させる、請求項17記載の方法。
【請求項29】
下記の工程を含むことを特徴とする、TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性の測定方法:
a) TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸を含む組換え細胞を調製する工程;
b) 前記TRPM5ポリペプチドを発現させ、前記TRMP5ポリペプチドを含むチャンネルを形成させる工程;
c) 前記チャンネルを活性化させる工程;および、
e) 前記チャンネルの1価カチオン透過性を検出する工程。
【請求項30】
前記1価カチオンを、Na+、K+およびCs+.22からなる群から選択する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、前記細胞を1価カチオン指示薬と接触させることをさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記指示薬が蛍光分子を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記蛍光分子がSBFIを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記1価カチオン透過性を前記指示薬によって検出する、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記組換え細胞を候補生物活性剤と接触させることをさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記測定が、前記細胞内1価カチオンレベルを、前記TRPM5ポリペプチドを発現しない細胞中の細胞内1価カチオンレベルと比較することをさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記測定が、前記細胞内1価カチオンレベルを、前記TRPM5ポリペプチドを発現しないが前記候補剤と接触させた細胞中の細胞内1価カチオンレベルと比較することをさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記TRPM5チャンネルをカルシウムイオノフォアによって活性化させる、請求項29記載の方法。
【請求項39】
下記の工程を含むことを特徴とする、TRPM5ポリペプチドの発現を調節し得る候補生物活性剤のスクリーニング方法:
a) TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸を発現し得る組換え細胞を調製する工程;
b) 前記細胞を前記候補剤と接触させる工程;および
c) 前記候補剤の前記組換え核酸の発現に対する効果を測定する工程。
【請求項40】
前記測定工程が、前記細胞のフェノタイプである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記候補生物活性剤が、小分子、たんぱく質、ポリペプチドまたは核酸を含む、請求項1,5,17,29または39記載の方法。
【請求項42】
下記の工程を含むことを特徴とする、候補生物活性剤がTRPM5チャンネルに結合し得ることの検証方法:
a) TRPM5チャンネルに結合し得るものとして前以って同定した候補生物活性剤を取得する工程;
b) TRPM5ポリペプチドを前記候補剤と接触させる工程;および、
c) 前記候補剤の前記TRPM5ポリペプチドに対する結合性を判定する工程。
【請求項43】
下記の工程を含むことを特徴とする、候補生物活性剤がTRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し得ることの検証方法:
a) 前記TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し得るものとして前以って同定した候補生物活性剤を取得する工程;
b) 前記TRPM5チャンネルを前記候補生物活性剤と接触させる工程;
c) 前記TRPM5チャンネルを活性化させる工程;および、
d) 前記候補生物活性剤が前記TRPM5チャンネルの1価カチオン透過性を調節し得るかどうかを検出する工程。
【請求項44】
下記の工程を含むことを特徴とする、前記候補生物活性剤がTRPM5ポリペプチドの発現を調節し得ることの検証方法:
a) TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸の発現を調節し得るものとして前以って同定した候補生物活性剤を取得する工程;
b) TRPM5ポリペプチドをコード化する組換え核酸を発現し得る組換え細胞を調製する工程;
c) 前記細胞を前記候補生物活性剤と接触させる工程;および、
d) 前記生物活性剤の前記組換え核酸の発現に対する効果を検証する工程。

【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−519592(P2006−519592A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501186(P2006−501186)
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/005316
【国際公開番号】WO2004/076632
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505315085)ザ クイーンズ メディカル センター (5)
【Fターム(参考)】