TiO2でコーティングされた銀ナノ粒子の製造方法
【課題】表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を100℃〜200℃の温度で加熱して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得る工程を含み、前記多価アルコールが、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである製造方法。チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液中、チタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比が、0.2〜2の範囲が好ましい。銀ナノ粒子が、ロッド状、ネットワーク状または粒状のいずれかの形態であることが好ましい。
【解決手段】チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を100℃〜200℃の温度で加熱して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得る工程を含み、前記多価アルコールが、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである製造方法。チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液中、チタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比が、0.2〜2の範囲が好ましい。銀ナノ粒子が、ロッド状、ネットワーク状または粒状のいずれかの形態であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TiO2でコーティングされた銀ナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は、その粒子径がナノメートル、すなわち10-9mレベルのサイズを有する、限定された個数の金属原子が集まって構成される粒子である。このような金属ナノ粒子は、単位質量あたりの表面積が非常に大きく、そのため、表面が非常に活性である。さらに、金属ナノ粒子は、金属の種類によっては触媒作用、導電性等の特性を有し、今後様々な分野での応用が期待されている。特に、電子用配線を形成するための主な材料として利用すると、電子部品の高速度化、高密度化の実現が可能になるため、この金属ナノ粒子は、注目を集めている。
【0003】
金属ナノ粒子の製造方法としては、ポリオール法が広く知られている。そのポリオール法としては、例えば、ヘキサクロロ白金酸を原料に用いる製造方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この製造方法によれば、コバルト、銅、ニッケルおよび貴金属のロッド状金属ナノ粒子を製造することができる。また、AgNO3とPVPを原料とするロッド状、直方体状などの様々な形態の金属ナノ粒子の製造方法も知られている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、AgNO3とPVPとのエチレングリコール(EG)溶液と、FeCl3とNaClのEG溶液とを150℃で混合し、ロッド状の金属ナノ粒子を製造する方法も知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、これらのポリオール法によって金属ナノ粒子の表面を無機物でコーティングすることは困難であるという欠点があった。
【0005】
一方、化学還元法によって金属ナノ粒子の表面を無機物でコーティングする方法が知られている(例えば、非特許文献4〜6参照)。しかしながらこの還元法には、多くの工程を必要とし、複雑な方法であるという欠点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C.Ducamp-Sanguesaら、J. Solid State Chem.,1992年、第100巻、p272。
【非特許文献2】Younan Xiaら、Science, 2002年、第298巻、p2176。
【非特許文献3】Younan Xiaら、Langmuir, 2005年、第21巻、p8077。
【非特許文献4】Sioss J.A.ら、Langmuir, 2007年、第23巻、p11334。
【非特許文献5】H. Sakaiら、J.Sm.Chem.Soc., 2006年、第128巻、p.4944。
【非特許文献6】Y. D. Yinら、Nano. Letters, 2002年、第2巻、p.427。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、TiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造する方法であって、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を100℃〜200℃の温度で加熱して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得る工程を含む。前記多価アルコールは、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1(a)】実施例1で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1(b)】実施例2で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1(c)】実施例3で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1(d)】実施例4で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(a)】実施例5で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(b)】実施例6で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(c)】実施例7で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(d)】実施例8で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(a)】実施例9で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(b)】実施例10で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(c)】実施例11で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(d)】実施例12で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(a)】実施例13で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(b)】実施例14で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(c)】実施例15で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(d)】実施例16で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(a)】実施例17で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(b)】実施例18で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(c)】実施例19で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(d)】実施例20で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図6A】R−酸化チタン(ルチル型)および銀粒子のXRDパターンである。
【図6B】R−酸化チタン(ルチル型)A−酸化チタン(アナターゼ型)および実施例13で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図6C】実施例14〜16で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図7A】R−酸化チタン(ルチル型)および実施例20で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図7B】A−酸化チタン(アナターゼ型)のXRDパターンである。
【図7C】銀粒子のXRDパターンである。
【図7D】実施例17および18で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図7E】実施例19で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図8(a)】実施例21で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図8(b)】実施例21で得られた銀ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図9】実施例22で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図10】実施例21で得られた銀ナノ粒子および銀粒子のUVチャートである。
【図11】実施例17で得られた銀ナノ粒子、R−酸化チタン(ルチル型)、A−酸化チタン(アナターゼ型)および銀粒子のUVチャートである。
【図12】実施例23で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図13】実施例24で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
二酸化チタン(TiO2)の製造法の一つに、チタンアルコキシドを出発原料とするゾルゲル法が知られている。このゾルゲル法によれば、チタンのアルコキシドを加水分解して、水酸化チタンを得、この水酸化チタンを焼成して二酸化チタンを得ることができる。
【0012】
本発明の製造方法は、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を加熱する工程を含む。この工程により、チタンアルコキシドを加水分解させ、得られる水酸化チタンをテンプレートとして用いる。これにより、表面がTiO2で均一にコーティングされた銀ナノ粒子を製造することができる。このように本発明の製造方法によれば、無機物でコーティングされた金属ナノ粒子を容易に効率良く得ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記チタンアルコキシドは、以下の式(I)で表わされる。
Ti(OR)4 (I)
前記式(I)中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。具体的には、前記チタンアルコキシドは、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン等であるのが好ましい。
【0014】
本発明において前記多価アルコールは、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである。このような多価アルコールとししては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールが好ましい。
【0015】
本発明において、多価アルコール溶液中におけるチタンアルコキシドおよび硝酸銀の合計濃度は、例えば、0.01〜5モル/Lの範囲であり、より好ましくは0.05〜2モル/Lの範囲である。
【0016】
本発明において、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液の加熱温度は、100℃〜200℃であり、好ましくは120〜180℃の範囲であり、より好ましくは140〜170℃の範囲である。チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液の加熱時間は特に限定されないが、例えば、0.5〜5時間の範囲であり、好ましくは1〜2時間の範囲である。この加熱温度の条件を変更することによって、得られる銀ナノ粒子の形態を制御することができる。具体的には、加熱温度が低いほど、得られる銀ナノ粒子の形態は、より太く短いロッド状である。また、加熱温度は一定の温度であっても、2種類以上の温度を組み合わせてもよい。例えば、120〜130℃の範囲で0〜0.5時間、次いで140〜170℃の範囲で1〜2時間加熱してもよい。このように2種類以上の温度を組み合わせて加熱することにより、表面にアモルファス状のTiO2でコーティングされた細いロッド状の銀ナノ粒子を得ることができる。
【0017】
また、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を加熱する際、圧力もかけてもよい。例えば、封管、オートクレーブ等により圧力をかけてもよい。かける圧力としては、例えば0〜10パスカルである。このように圧力をかけて加熱することにより、表面にアモルファス状のTiO2でコーティングされた細いロッド状の銀ナノ粒子を得ることができる。
【0018】
本発明において、前記チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液中、チタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比は、例えば0.01〜5の範囲であり、好ましくは0.1〜2の範囲であり、より好ましくは0.2〜0.8の範囲である。このモル比の条件を変更することによって、得られる銀ナノ粒子の形態を制御することができる。具体的には、モル比が0.1〜2の範囲の場合、得られる銀ナノ粒子の形態はロッド状が優勢であり、モル比が1〜3の範囲の場合、得られる銀ナノ粒子の形態はロッド状に加えてネットワーク状が混在する。
【0019】
本発明において、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液は、更にポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリマーを含んでもよい。
【0020】
本発明において、得られた表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子は、遠心分離、ろ過等の通常の分離方法により溶液から単離してもよい。単離された銀ナノ粒子は、エタノール、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。単離された銀ナノ粒子および洗浄された銀ナノ粒子は、25〜60℃で乾燥してもよい。
【0021】
また、本発明において、前記銀ナノ粒子は、例えば、ロッド状、ネットワーク状または粒状のいずれかの形態であってもよい。このような形態の銀ナノ粒子は、その状態に固有の特異な性質を示し、様々な分野で応用できるからである。
【0022】
また、本発明において、前記TiO2のコーティングは、アモルファス状であるのが好ましい。
【0023】
また、本発明は、本発明の製造方法により調製した、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子である。表面のTiO2は、ルチル型、アナターゼ型、またはブルッカイト型であり、アナターゼ型であるのが好ましい。TiO2がアナターゼ型であれば、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を光触媒として用いることが可能だからである。前記光触媒としては、太陽電池の光触媒、化学反応の光触媒等が挙げられる。また、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子は、絶縁性であり、かつ、熱伝導性である。このような銀ナノ粒子は、樹脂と混合して成形することにより、樹脂の熱伝導性を高めることができる。
【0024】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
【0025】
種々のスペクトルは、以下の機器を用いて測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)画像は株式会社日立ハイテクノロジーズFE−SEM S−5000を用いて測定した。透過型電子顕微鏡(TEM)画像は日本電子株式会社 JEOL 200CXを用いて測定した。X線回折測定は、X線回折装置(株式会社リガク製、型番:RINT RAPID II)にて管電圧40kW、管電流30mAの条件で行った。UV測定は、UV測定装置(日本分光株式会社製、型番:JASCO V−600)を用いて行った。
【実施例1】
【0026】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.089g、0.52ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=0.2)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.22g、収率約82%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(a)に示す。図1(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例2】
【0027】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.265g、1.56モル;硝酸銀/TIPTモル比=0.6)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(b)に示す。図1(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例3】
【0028】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.442g、2.6ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=1)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.42g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(c)に示す。図1(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例4】
【0029】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.886g、5.2ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=2)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.66g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(d)に示す。図1(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例5】
【0030】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.22g、収率約82%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(a)に示す。図2(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例6】
【0031】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(b)に示す。図2(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例7】
【0032】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.42g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(c)に示す。図2(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例8】
【0033】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.66g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(d)に示す。図2(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例9】
【0034】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.22g、収率約82%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(a)に示す。図3(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例10】
【0035】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例11】
【0036】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.42g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(c)に示す。図3(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例12】
【0037】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.66g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(d)に示す。図3(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例13】
【0038】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.23g、収率約86%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(a)に示す。図4(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例14】
【0039】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.33g、収率約87%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(b)に示す。図4(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例15】
【0040】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.45g、収率約92%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(c)に示す。図4(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例16】
【0041】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.69g、収率90%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(d)に示す。図4(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例17】
【0042】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.23g、収率約86%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例18】
【0043】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.33g、収率約87%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(b)に示す。図5(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例19】
【0044】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.45g、収率約92%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(c)に示す。図5(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例20】
【0045】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.69g、収率約90%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(d)に示す。図5(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【0046】
[銀ナノ粒子X線回折]
実施例13、14、15および16で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子のX線回折を測定した。また、対照として銀粒子、A−酸化チタン(アナターゼ型)およびR−酸化チタン(ルチル型)のX線回折も測定した。得られたX線パターンを図6A〜図6Cに示す。同様にして、実施例17、18、19および20で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子、A−酸化チタン(アナターゼ型)およびR−酸化チタン(ルチル型)のX線回折を測定した。得られたX線パターンを図7A〜図7Eに示す。
【0047】
図6A〜図6Cおよび7A〜図7Eに示すように、本発明の製造方法により得られた銀ナノ粒子は、TiO2のピーク(θ=25.4、27.5、36.3°付近)およびAgのピーク(θ=38.7、45.1、65°付近)の両方が確認できた。従って、本発明の製造方法により得られた銀ナノ粒子は、その表面がTiO2でコーティングされていることが確認できた。また、図6A〜図6Cおよび7A〜図7Eから、加熱温度またチタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比が増加するに伴い、Agのピークが強く確認できた。このことから、得られた銀ナノ粒子におけるAgの量が増加したことが確認できた。
【実施例21】
【0048】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.265g、1.56ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=0.6)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を120℃で1時間、次いで150℃で1時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図8(a)に、透過型電子顕微鏡(TEM)画像を図8(b)に示す。図8(a)および(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、表面がアモルファス状のTiO2でコーティングされたロッド状の
銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。また、図8(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、銀ナノ粒子の表面に形成されたコーティングが均一であることが確認できた。
【実施例22】
【0049】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.265g、1.56ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=0.6)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液をオートクレーブにより加圧下に150℃で2時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(0.33g、収率85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図9に示す。図9に示すように、本発明の製造方法によれば、表面がアモルファス状のTiO2でコーティングされたロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【0050】
[UV測定]
実施例21で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子のUVを測定した。また、対照として銀粒子のX線回折も測定した。得られたUVチャートを図10に示す。同様にして、実施例17で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子のUVを測定した。得られたUVチャートを図11に示す。
【0051】
図10〜11に示すように、本発明の製造方法により得られた表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子は、可視領域で光を吸収することを確認できた。この結果より、本発明の表面がTiO2(アナターゼ型)でコーティングされた銀ナノ粒子は、光触媒として優れた特性を示すことを確認できた。
【実施例23】
【0052】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.442g、2.6ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=1)を、プロピレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を150℃で2時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(0.45g、収率92%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図12に示す。図12に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例24】
【0053】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.442g、2.6ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=1)を、グリセロール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を150℃で2時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(0.43g、収率87%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図13に示す。図13に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
太陽電池の光触媒としても適用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、TiO2でコーティングされた銀ナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は、その粒子径がナノメートル、すなわち10-9mレベルのサイズを有する、限定された個数の金属原子が集まって構成される粒子である。このような金属ナノ粒子は、単位質量あたりの表面積が非常に大きく、そのため、表面が非常に活性である。さらに、金属ナノ粒子は、金属の種類によっては触媒作用、導電性等の特性を有し、今後様々な分野での応用が期待されている。特に、電子用配線を形成するための主な材料として利用すると、電子部品の高速度化、高密度化の実現が可能になるため、この金属ナノ粒子は、注目を集めている。
【0003】
金属ナノ粒子の製造方法としては、ポリオール法が広く知られている。そのポリオール法としては、例えば、ヘキサクロロ白金酸を原料に用いる製造方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この製造方法によれば、コバルト、銅、ニッケルおよび貴金属のロッド状金属ナノ粒子を製造することができる。また、AgNO3とPVPを原料とするロッド状、直方体状などの様々な形態の金属ナノ粒子の製造方法も知られている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、AgNO3とPVPとのエチレングリコール(EG)溶液と、FeCl3とNaClのEG溶液とを150℃で混合し、ロッド状の金属ナノ粒子を製造する方法も知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、これらのポリオール法によって金属ナノ粒子の表面を無機物でコーティングすることは困難であるという欠点があった。
【0005】
一方、化学還元法によって金属ナノ粒子の表面を無機物でコーティングする方法が知られている(例えば、非特許文献4〜6参照)。しかしながらこの還元法には、多くの工程を必要とし、複雑な方法であるという欠点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C.Ducamp-Sanguesaら、J. Solid State Chem.,1992年、第100巻、p272。
【非特許文献2】Younan Xiaら、Science, 2002年、第298巻、p2176。
【非特許文献3】Younan Xiaら、Langmuir, 2005年、第21巻、p8077。
【非特許文献4】Sioss J.A.ら、Langmuir, 2007年、第23巻、p11334。
【非特許文献5】H. Sakaiら、J.Sm.Chem.Soc., 2006年、第128巻、p.4944。
【非特許文献6】Y. D. Yinら、Nano. Letters, 2002年、第2巻、p.427。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、TiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造する方法であって、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を100℃〜200℃の温度で加熱して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得る工程を含む。前記多価アルコールは、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1(a)】実施例1で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1(b)】実施例2で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1(c)】実施例3で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1(d)】実施例4で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(a)】実施例5で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(b)】実施例6で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(c)】実施例7で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2(d)】実施例8で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(a)】実施例9で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(b)】実施例10で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(c)】実施例11で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3(d)】実施例12で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(a)】実施例13で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(b)】実施例14で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(c)】実施例15で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4(d)】実施例16で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(a)】実施例17で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(b)】実施例18で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(c)】実施例19で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5(d)】実施例20で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図6A】R−酸化チタン(ルチル型)および銀粒子のXRDパターンである。
【図6B】R−酸化チタン(ルチル型)A−酸化チタン(アナターゼ型)および実施例13で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図6C】実施例14〜16で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図7A】R−酸化チタン(ルチル型)および実施例20で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図7B】A−酸化チタン(アナターゼ型)のXRDパターンである。
【図7C】銀粒子のXRDパターンである。
【図7D】実施例17および18で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図7E】実施例19で得られた銀ナノ粒子のXRDパターンである。
【図8(a)】実施例21で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図8(b)】実施例21で得られた銀ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図9】実施例22で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図10】実施例21で得られた銀ナノ粒子および銀粒子のUVチャートである。
【図11】実施例17で得られた銀ナノ粒子、R−酸化チタン(ルチル型)、A−酸化チタン(アナターゼ型)および銀粒子のUVチャートである。
【図12】実施例23で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図13】実施例24で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
二酸化チタン(TiO2)の製造法の一つに、チタンアルコキシドを出発原料とするゾルゲル法が知られている。このゾルゲル法によれば、チタンのアルコキシドを加水分解して、水酸化チタンを得、この水酸化チタンを焼成して二酸化チタンを得ることができる。
【0012】
本発明の製造方法は、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を加熱する工程を含む。この工程により、チタンアルコキシドを加水分解させ、得られる水酸化チタンをテンプレートとして用いる。これにより、表面がTiO2で均一にコーティングされた銀ナノ粒子を製造することができる。このように本発明の製造方法によれば、無機物でコーティングされた金属ナノ粒子を容易に効率良く得ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記チタンアルコキシドは、以下の式(I)で表わされる。
Ti(OR)4 (I)
前記式(I)中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。具体的には、前記チタンアルコキシドは、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン等であるのが好ましい。
【0014】
本発明において前記多価アルコールは、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである。このような多価アルコールとししては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールが好ましい。
【0015】
本発明において、多価アルコール溶液中におけるチタンアルコキシドおよび硝酸銀の合計濃度は、例えば、0.01〜5モル/Lの範囲であり、より好ましくは0.05〜2モル/Lの範囲である。
【0016】
本発明において、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液の加熱温度は、100℃〜200℃であり、好ましくは120〜180℃の範囲であり、より好ましくは140〜170℃の範囲である。チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液の加熱時間は特に限定されないが、例えば、0.5〜5時間の範囲であり、好ましくは1〜2時間の範囲である。この加熱温度の条件を変更することによって、得られる銀ナノ粒子の形態を制御することができる。具体的には、加熱温度が低いほど、得られる銀ナノ粒子の形態は、より太く短いロッド状である。また、加熱温度は一定の温度であっても、2種類以上の温度を組み合わせてもよい。例えば、120〜130℃の範囲で0〜0.5時間、次いで140〜170℃の範囲で1〜2時間加熱してもよい。このように2種類以上の温度を組み合わせて加熱することにより、表面にアモルファス状のTiO2でコーティングされた細いロッド状の銀ナノ粒子を得ることができる。
【0017】
また、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を加熱する際、圧力もかけてもよい。例えば、封管、オートクレーブ等により圧力をかけてもよい。かける圧力としては、例えば0〜10パスカルである。このように圧力をかけて加熱することにより、表面にアモルファス状のTiO2でコーティングされた細いロッド状の銀ナノ粒子を得ることができる。
【0018】
本発明において、前記チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液中、チタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比は、例えば0.01〜5の範囲であり、好ましくは0.1〜2の範囲であり、より好ましくは0.2〜0.8の範囲である。このモル比の条件を変更することによって、得られる銀ナノ粒子の形態を制御することができる。具体的には、モル比が0.1〜2の範囲の場合、得られる銀ナノ粒子の形態はロッド状が優勢であり、モル比が1〜3の範囲の場合、得られる銀ナノ粒子の形態はロッド状に加えてネットワーク状が混在する。
【0019】
本発明において、チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液は、更にポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリマーを含んでもよい。
【0020】
本発明において、得られた表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子は、遠心分離、ろ過等の通常の分離方法により溶液から単離してもよい。単離された銀ナノ粒子は、エタノール、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。単離された銀ナノ粒子および洗浄された銀ナノ粒子は、25〜60℃で乾燥してもよい。
【0021】
また、本発明において、前記銀ナノ粒子は、例えば、ロッド状、ネットワーク状または粒状のいずれかの形態であってもよい。このような形態の銀ナノ粒子は、その状態に固有の特異な性質を示し、様々な分野で応用できるからである。
【0022】
また、本発明において、前記TiO2のコーティングは、アモルファス状であるのが好ましい。
【0023】
また、本発明は、本発明の製造方法により調製した、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子である。表面のTiO2は、ルチル型、アナターゼ型、またはブルッカイト型であり、アナターゼ型であるのが好ましい。TiO2がアナターゼ型であれば、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を光触媒として用いることが可能だからである。前記光触媒としては、太陽電池の光触媒、化学反応の光触媒等が挙げられる。また、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子は、絶縁性であり、かつ、熱伝導性である。このような銀ナノ粒子は、樹脂と混合して成形することにより、樹脂の熱伝導性を高めることができる。
【0024】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
【0025】
種々のスペクトルは、以下の機器を用いて測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)画像は株式会社日立ハイテクノロジーズFE−SEM S−5000を用いて測定した。透過型電子顕微鏡(TEM)画像は日本電子株式会社 JEOL 200CXを用いて測定した。X線回折測定は、X線回折装置(株式会社リガク製、型番:RINT RAPID II)にて管電圧40kW、管電流30mAの条件で行った。UV測定は、UV測定装置(日本分光株式会社製、型番:JASCO V−600)を用いて行った。
【実施例1】
【0026】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.089g、0.52ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=0.2)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.22g、収率約82%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(a)に示す。図1(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例2】
【0027】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.265g、1.56モル;硝酸銀/TIPTモル比=0.6)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(b)に示す。図1(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例3】
【0028】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.442g、2.6ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=1)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.42g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(c)に示す。図1(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例4】
【0029】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.886g、5.2ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=2)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を80℃で4時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.66g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図1(d)に示す。図1(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例5】
【0030】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.22g、収率約82%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(a)に示す。図2(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例6】
【0031】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(b)に示す。図2(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例7】
【0032】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.42g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(c)に示す。図2(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例8】
【0033】
加熱温度を80℃の代わりに120℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.66g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図2(d)に示す。図2(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例9】
【0034】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.22g、収率約82%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(a)に示す。図3(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例10】
【0035】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例11】
【0036】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.42g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(c)に示す。図3(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例12】
【0037】
加熱温度を80℃の代わりに130℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.66g、収率約85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図3(d)に示す。図3(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例13】
【0038】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.23g、収率約86%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(a)に示す。図4(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例14】
【0039】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.33g、収率約87%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(b)に示す。図4(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例15】
【0040】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.45g、収率約92%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(c)に示す。図4(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例16】
【0041】
加熱温度を80℃の代わりに150℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.69g、収率90%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4(d)に示す。図4(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例17】
【0042】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例1と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.23g、収率約86%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例18】
【0043】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例2と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.33g、収率約87%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(b)に示す。図5(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例19】
【0044】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例3と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.45g、収率約92%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(c)に示す。図5(c)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例20】
【0045】
加熱温度を80℃の代わりに170℃にした以外は実施例4と同様にして、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.69g、収率約90%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図5(d)に示す。図5(d)に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【0046】
[銀ナノ粒子X線回折]
実施例13、14、15および16で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子のX線回折を測定した。また、対照として銀粒子、A−酸化チタン(アナターゼ型)およびR−酸化チタン(ルチル型)のX線回折も測定した。得られたX線パターンを図6A〜図6Cに示す。同様にして、実施例17、18、19および20で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子、A−酸化チタン(アナターゼ型)およびR−酸化チタン(ルチル型)のX線回折を測定した。得られたX線パターンを図7A〜図7Eに示す。
【0047】
図6A〜図6Cおよび7A〜図7Eに示すように、本発明の製造方法により得られた銀ナノ粒子は、TiO2のピーク(θ=25.4、27.5、36.3°付近)およびAgのピーク(θ=38.7、45.1、65°付近)の両方が確認できた。従って、本発明の製造方法により得られた銀ナノ粒子は、その表面がTiO2でコーティングされていることが確認できた。また、図6A〜図6Cおよび7A〜図7Eから、加熱温度またチタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比が増加するに伴い、Agのピークが強く確認できた。このことから、得られた銀ナノ粒子におけるAgの量が増加したことが確認できた。
【実施例21】
【0048】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.265g、1.56ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=0.6)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を120℃で1時間、次いで150℃で1時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(約0.32g、収率約84%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図8(a)に、透過型電子顕微鏡(TEM)画像を図8(b)に示す。図8(a)および(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、表面がアモルファス状のTiO2でコーティングされたロッド状の
銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。また、図8(b)に示すように、本発明の製造方法によれば、銀ナノ粒子の表面に形成されたコーティングが均一であることが確認できた。
【実施例22】
【0049】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.265g、1.56ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=0.6)を、エチレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液をオートクレーブにより加圧下に150℃で2時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(0.33g、収率85%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図9に示す。図9に示すように、本発明の製造方法によれば、表面がアモルファス状のTiO2でコーティングされたロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【0050】
[UV測定]
実施例21で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子のUVを測定した。また、対照として銀粒子のX線回折も測定した。得られたUVチャートを図10に示す。同様にして、実施例17で得られた、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子のUVを測定した。得られたUVチャートを図11に示す。
【0051】
図10〜11に示すように、本発明の製造方法により得られた表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子は、可視領域で光を吸収することを確認できた。この結果より、本発明の表面がTiO2(アナターゼ型)でコーティングされた銀ナノ粒子は、光触媒として優れた特性を示すことを確認できた。
【実施例23】
【0052】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.442g、2.6ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=1)を、プロピレングリコール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を150℃で2時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(0.45g、収率92%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図12に示す。図12に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【実施例24】
【0053】
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(0.75g、2.6ミリモル)および硝酸銀(0.442g、2.6ミリモル;硝酸銀/TIPTモル比=1)を、グリセロール(50mL)中に室温で溶解させた。得られた溶液を150℃で2時間加熱した。加熱後に得られた懸濁液を遠心分離し、得られた析出物をエタノールで洗浄し、その後、常温常圧下に乾燥して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得た(0.43g、収率87%)。得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図13に示す。図13に示すように、本発明の製造方法によれば、ロッド状の銀ナノ粒子を製造できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
太陽電池の光触媒としても適用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造する方法であって、
チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を100℃〜200℃の温度で加熱して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得る工程を含み、前記多価アルコールが、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである製造方法。
【請求項2】
前記チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液中、チタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比が、0.2〜2の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チタンアルコキシドが、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタンおよびテトラノルマルブトキシチタンからなる群から選択される1種以上である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記銀ナノ粒子が、ロッド状、ネットワーク状または粒状のいずれかの形態である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱が、2種類以上の温度を組み合わせて行われ、
前記TiO2のコーティングが、アモルファス状である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により調製した、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子。
【請求項1】
表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を製造する方法であって、
チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液を100℃〜200℃の温度で加熱して、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子を得る工程を含み、前記多価アルコールが、水酸基を2以上有する炭素数2〜6の多価アルコールである製造方法。
【請求項2】
前記チタンアルコキシドおよび硝酸銀を含む多価アルコール溶液中、チタンアルコキシドに対する硝酸銀のモル比が、0.2〜2の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チタンアルコキシドが、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタンおよびテトラノルマルブトキシチタンからなる群から選択される1種以上である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記銀ナノ粒子が、ロッド状、ネットワーク状または粒状のいずれかの形態である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱が、2種類以上の温度を組み合わせて行われ、
前記TiO2のコーティングが、アモルファス状である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により調製した、表面がTiO2でコーティングされた銀ナノ粒子。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−122206(P2011−122206A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280895(P2009−280895)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構、共同研究業務委託研究「超ハイブリッド材料技術開発(ナノレベル構造制御による相反機能材料技術開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構、共同研究業務委託研究「超ハイブリッド材料技術開発(ナノレベル構造制御による相反機能材料技術開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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