説明

UVランプシステム及びその改善したマグネトロン制御方法

【課題】マグネトロンの寿命を伸ばすことができる、基材を照射するための紫外線ランプシステムの提供。
【解決手段】基材を照射するための紫外線ランプシステムが、マグネトロンと該マグネトロンに物理的に取り付けられたメモリとを含む。無電極ランプが、マグネトロンから発生するマイクロ波エネルギーによって励起された場合、紫外線光を放射するように構成される。主制御回路が、マグネトロンに関連する動作データをメモリに読み書きすべく動作可能となる。紫外線ランプシステムは、マグネトロンからマイクロ波エネルギーを発生させることにより動作する。無電極ランプ内のプラズマが、マイクロ波エネルギーで励起されて紫外線光を放射する。マグネトロンに関連する動作データが追跡され、マグネトロンに関連するメモリに書き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に紫外線ランプシステムに関し、特に、紫外線ランプの過去の動作データの保持に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、接着剤、シーリング剤、インク、及びコーティング剤などの材料を加熱し、回復させるために紫外線(「UV」)ランプシステムが使用される。紫外線ランプシステムは、マイクロ波エネルギーで無電極プラズマランプを励起することにより動作する。無電極ランプは、金属のマイクロ波キャビティ又はチャンバ内に搭載される。マグネトロンなどの1又はそれ以上のマイクロ波発生装置が、導波管を介してマイクロ波チャンバの内部に結合される。マグネトロンは、マイクロ波エネルギーを供給して、無電極ランプ内に密封されたガス混合からプラズマを起こし、これを維持する。プラズマは、紫外線及び赤外線波長を有するスペクトル線又は光子で強く重み付けされた電磁放射線の特性スペクトルを放射する。
【0003】
UVランプシステムで使用されるマグネトロンは、総動作時間、起動回数、スタンバイモードにある時間、電力レベル、並びにその他の条件を含む多くの要因により寿命が決まる消耗アイテムである。マグネトロンがいつ故障するか、或いはいつ寿命が尽きるかを予測するには、その動作履歴を知る必要がある。寿命の限界をより正確に予測することに加え、履歴を利用して、保証要求を検証し、故障分析のためにより役立つ情報を提供し、動作パラメータを調整することによりマグネトロンの寿命を伸ばすこともできる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
マグネトロンと、このマグネトロンに物理的に取り付けられたメモリとを備えた紫外線ランプシステムを提供する。無電極ランプは、マグネトロンから発生したマイクロ波エネルギーによって励起された場合、紫外線光を放射するように構成される。ランプシステムにおける主制御回路は、マグネトロンに関連する動作データをメモリに読み書きすべく動作可能である。いくつかの実施形態では、メモリは、マグネトロンに取り付けられた不揮発性コンピュータメモリチップを含む。
【0005】
別の実施形態では、紫外線ランプシステムは、主制御回路と電気通信しかつメモリと電気通信する中間制御回路を含む。主制御回路は、マグネトロンに関する動作データを追跡すると共に中間制御回路と通信して、追跡した動作データをこの中間制御回路に提供するように構成される。中間制御回路は、動作データをメモリとの間で読み書きすべく動作可能である。中間制御回路は、CANプロトコルを使用して主制御回路と通信する。
【0006】
別の実施形態では、紫外線ランプシステムが第2のマグネトロンを含む。この実施形態の主制御回路は、第1のマグネトロン及び第2のマグネトロンに関連する動作データをメモリに書き込むべく動作可能である。
【0007】
動作データは、フィラメントの使用時間、電力を受けた実働時間、電源オン/オフの繰り返し回数、スタンバイモードにある時間、マグネトロンの初期電力レベル、マグネトロンの出力レベル、及びこれらの組み合わせを含む。
【0008】
紫外線ランプシステムは、マグネトロンからマイクロ波エネルギーが発生することにより動作し、このマイクロ波エネルギーが無電極ランプ内でプラズマを励起して紫外線光を放射する。マグネトロンに関する動作データが追跡され、マグネトロンに関連するメモリに書き込まれる。また、このマグネトロンに関する動作データをメモリから読み出すこともできる。
【0009】
いくつかの実施形態では、このメモリから読み出した動作データに基づいてマグネトロンの動作パラメータが調整される。別の実施形態では、メモリから読み出した動作データからマグネトロンの寿命の限界が予測され、マグネトロンが予測される寿命の限界に近いことに対応してマグネトロンを交換すべき旨の提案が行われる。
【0010】
添付の図面は本発明の実施形態を示すと共に、上述した本発明についての一般的な説明及び以下に示す詳細な説明と併せて、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで図面を参照すると、図1は、マイクロ波エネルギーによる無電極ランプ12の励起に依拠する紫外線ランプシステム10のブロック図である。無電極ランプ12が金属のマイクロ波チャンバ14内に搭載される。マグネトロン16が、導波管18を介してマイクロ波チャンバ14の内部に結合される。マグネトロン16は、紫外線光20を発生させるために無電極ランプ12にマイクロ波エネルギーを供給する。紫外線光20は、マイクロ波チャンバ14からチャンバ出口22を通り、微細メッシュの金属スクリーン24を通過して外部へと導かれ、この金属スクリーン24は、チャンバ出口22を覆い、マイクロ波エネルギーの放出を阻止することができる一方で、紫外線光20がマイクロ波チャンバ14の外へ伝達されるようにする。
【0012】
メモリ26は、マグネトロン16に物理的に取り付けられると共に、マグネトロン16に関する動作データを保存するように構成される。紫外線ランプシステム10に関する動作データは、通常電源装置に関連する主制御回路28により追跡及び保存される。しかしながら、主制御回路28は、一般にマグネトロン16の交換時には追跡を行わないため、従って特定のマグネトロン16に関連するあらゆる動作データが失われる可能性がある。メモリ26は、主制御回路28と電気通信を行う。主制御回路28は、マグネトロン16に関する動作データを定期的に書き込んで、マグネトロン16の使用履歴を提供すべく動作可能である。メモリ26がマグネトロン16に取り付けられていることにより、この履歴はマグネトロン16と共に保持される。この結果、例えばマグネトロン16の保証及び故障の問題に関連してマグネトロンの履歴を使用することができる。
【0013】
図2に示す、紫外線ランプシステム40の代替の実施形態では、マグネトロン16上のメモリ26と共に中間制御回路42を使用することができる。中間制御回路42は、主制御回路28及びマグネトロン16上のメモリの両方と電気通信を行う。主制御回路28のメモリ26への接続を容易にすることに加え、中間制御回路42はまた、主制御回路28が現在追跡していない追加の動作パラメータを追跡すべく動作可能であり、或いは主制御回路28の代わりに動作パラメータを追跡することもできる。
【0014】
主制御回路28は、多導体ケーブルによりランプヘッドに接続された電源格納装置(図示せず)内に配置される。多導体ケーブルは、約100フィートまでの長さであってもよい。ケーブル内の導体数を最小にし、信頼性のある信号を確保するために、中間制御回路42及び主制御回路28は、CANプロトコルなどのデジタルリンク44を使用して通信を行うが、別の実施形態では別の通信プロトコルを使用してもよい。主制御回路28から得られる動作パラメータのすべては、デジタルリンク44を介して中間制御回路42へ送信され、その後、この中間制御回路42が、これらの動作パラメータをマグネトロン16上のメモリ26に書き込む。
【0015】
上述したように、いくつかの実施形態では、動作データの追跡を主制御回路28と中間制御回路42との間で分割することができ、この場合、例えば、主制御回路28が実際のフィラメントの使用時間の数値を追跡する一方で、中間制御回路42がマグネトロン16の出力レベルを追跡する。その後、主制御回路28が、追跡したフィラメントの使用時間を中間制御回路42へ通信し、さらにこの中間制御回路42がフィラメントの使用時間をメモリ26に保存することになる。
【0016】
紫外線ランプシステム10の別の実施形態は、追加のマグネトロン及び将来の可能性としてこれらのマグネトロンに取り付けられた追加のメモリを含むことができる。例えば、図3の紫外線ランプシステム50の実施形態は、一対のマグネトロン52、54を必要とするシステムである。これらのマグネトロン52、54は、導波管56、58を介してチャンバ14の内部に結合される。2つのマグネトロン52、54の一方にメモリ60が物理的に取り付けられ、両方のマグネトロン52、54の動作データを追跡する。マグネトロン52、54は常に対の形で設置及び/又は交換されることになるため、この実施形態には単一のメモリ60を使用することができる。複数のマグネトロンを有するさらに別の実施形態では、個々のマグネトロンがそれ自体のメモリを有することができる。
【0017】
再度図1を参照すると、マグネトロン16のメモリ26に保存された履歴データを複数の目的のために使用することができる。例えば、マグネトロン16の動作時間数が分かっている場合、マグネトロン16の寿命の限界を正しく予測することができる。この履歴データを使用して、寿命の限界を予測し、故障発生の前にマグネトロン16を交換すべき旨の提案を行うメッセージを電源表示に従事するオペレータに表示することにより故障を防ぐことができる。また、紫外線ランプシステム10が、マグネトロン16が寿命の限界に近いと予測した場合、紫外線ランプシステム10は、例えば、フィラメントに対する電流を増やしてマグネトロン16の延命を支援することができる。
【0018】
同様に、データを取得し、分析して、マグネトロン16がアクティブに、又はスタンバイモードで使用されている時間数を判断することができる。スタンバイモードでは、マグネトロンのフィラメントは加熱されるが、ランプ12は点灯されない。ランプシステムの所有者及び製造業者の両方に役立つ可能性のあるその他のデータとしては、フィラメントの加熱時間数、電源オン/オフの繰り返し回数、マグネトロン16の初期電力レベル、及びマグネトロンの出力レベルを含むことができる。
【0019】
例えば、上述のデータを使用して保証要求又は問題点を検証することができる。マグネトロンが早々に故障して数百時間使用した後に返却された場合、メモリ26に保存したマグネトロン16に関連するデータを分析して、故障の原因を判断することができる。この故障が純粋なマグネトロン16の故障である可能性を示すデータに基づいて、保証により交換が補われることになる。或いは、マグネトロン16が数千時間の間スタンバイ状態にされていた(フィラメント電力が印加されていた)ことにより、装置固有の問題による理由ではなく、マグネトロン16が寿命の限界に達したという理由によって故障する場合もある。
【0020】
また、新しいマグネトロンを顧客に出荷したときに、このマグネトロンに関する出力レベルを最初に保存することにより、メモリ26を新しいマグネトロン16に関して使用することもできる。いくつかのマグネトロンの出力に関する規格は、約2.8kWから約3.2kWまでに及ぶ。メモリ26に保存した出力データを使用して、マグネトロン16の設置時の出力設定を調整することにより、100%の出力が約2.8kWの下限に等しくなるようにすることができる。例えば、図3の紫外線ランプシステム50の2つのマグネトロンの構成では、マグネトロン52が2.8kWの出力定格値を有し、マグネトロン54が3.1kWの出力定格値を有するようにすることができる。主制御回路26は、2つのマグネトロン52、54の出力定格値をメモリ60から読み込み、マグネトロン54の入力を調整して、マグネトロン54の最大出力がマグネトロン52の2.8kWを超えないようにすることができる。
【0021】
マグネトロン52、54は消耗アイテムであるため、これらは、ランプシステム50の耐用年数にわたって何度も交換されることになる。いくつかの重要な用途では、UV強度及び露光時間は、この用途のプロセス開発中に決定される。(マグネトロンの出力に比例する)UV強度の偏差により、プロセスが規格に適合しないようになる可能性がある。これは、通常、一対のマグネトロン52、54を交換するたびに生じ、「プロセス」をマニュアルで調整して所望の結果を得なければならなくなる。マグネトロン52、54の出力特性を含む動作データをメモリ60から読み取ることにより、主制御回路28は、マグネトロン52、54に対する最大出力を約2.8kWまで自動的に調整し、紫外線ランプシステム50の安定した出力レベルを生成し続け、「プロセス」に対するあらゆるマニュアル再調整の必要性を排除できるようになる。
【0022】
ここで図4のフローチャートを参照すると、マグネトロンに関する動作データがブロック100において追跡される。動作データは、ブロック102において定期的に更新され、次にブロック104においてメモリに書き込まれる。動作データを一度メモリに保存すると、ランプシステムの動作中にこの保存データをブロック106において読み込み、前述したように保証要求に関連して、又はその他の目的のために使用することができる。ランプの動作中に動作データが読み込まれると、ブロック108において、このデータを使用してその他の動作パラメータを予測又は調整すること、例えば、上述したようにマグネトロンの寿命の限界を予測したり、或いはマグネトロンのフィラメント電流を調整したりすることができる。
【0023】
様々な実施形態の説明により本発明を示し、これらの実施形態についてかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細事項に制限したり、或いは何らかの形で限定したりすることは出願者の意図ではない。当業者であれば、追加の利点及び修正を容易に見てとれるであろう。従って、本発明は、その広い態様において図示及び説明した特定の詳細事項、代表的な装置及び方法、並びに例示的な実施例に限定されるものではない。このため、出願者の全体的な発明概念の思想及び範囲から逸脱することなく、このような詳細事項から逸脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】メモリを有するマグネトロンを含む紫外線ランプシステムを示すブロック図である。
【図2】メモリを有するマグネトロンを含む紫外線ランプシステムの代替の実施形態を示すブロック図である。
【図3】メモリを有する2つのマグネトロンを含む紫外線ランプシステムの実施形態を示すブロック図である。
【図4】図1の紫外線ランプシステムのメモリに動作データを保存する方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を照射するための紫外線ランプシステムであって、
マグネトロンと、
前記マグネトロンから発生したマイクロ波エネルギーによって励起された場合、紫外線光を放射するように構成された無電極ランプと、
前記マグネトロンに物理的に取り付けられたメモリと、
前記マグネトロンに関連する動作データを前記メモリに書き込むべく動作可能な、前記メモリと電気通信する主制御回路と、
を備えることを特徴とする紫外線ランプシステム。
【請求項2】
前記主制御回路は、さらに前記メモリから動作データを読み込むべく動作可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線ランプシステム。
【請求項3】
前記主制御回路と電気通信しかつ前記メモリと電気通信する中間制御回路をさらに備え、
前記主制御回路は、前記マグネトロンの動作データを追跡すると共に前記中間制御回路と通信を行って、追跡した動作データを該中間制御回路に提供するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線ランプシステム。
【請求項4】
前記中間制御回路は、前記メモリとの間で動作データを読み書きすべく動作可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の紫外線ランプシステム。
【請求項5】
前記中間制御回路は、CANプロトコルを使用して前記主制御回路と通信する、
ことを特徴とする請求項3に記載の紫外線ランプシステム。
【請求項6】
前記マグネトロンは第1のマグネトロンであり、前記紫外線ランプシステムは第2のマグネトロンをさらに備え、前記主制御回路は、前記第1のマグネトロンと前記第2のマグネトロンとに関連する動作データを前記メモリに書き込むべく動作可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線ランプシステム。
【請求項7】
前記動作データは、フィラメントの使用時間、電力を受けた実働時間、電源オン/オフの繰り返し回数、スタンバイモードにある時間、前記マグネトロンの初期電力レベル、前記マグネトロンの出力レベル、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線ランプシステム。
【請求項8】
紫外線ランプシステムを動作させる方法であって、
マグネトロンからマイクロ波エネルギーを発生させるステップと、
無電極ランプ内において、マイクロ波エネルギーでプラズマを励起して紫外線光を放射させるステップと、
前記マグネトロンに関連する動作データを追跡するステップと、
前記マグネトロンに物理的に取り付けられたメモリに前記動作データを書き込むステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記動作データは、フィラメントの使用時間、電力を受けた実働時間、電源オン/オフの繰り返し回数、スタンバイモードにある時間、前記マグネトロンの初期電力レベル、前記マグネトロンの出力レベル、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マグネトロンに関連する前記動作データを前記メモリから読み込むステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記メモリから読み込んだ前記動作データに基づいて、前記マグネトロンの動作パラメータを調整するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記動作データは前記マグネトロンの初期電力レベルであり、前記動作データを調整するステップは、安定した出力を供給するために、前記初期電力レベルに基づいて前記マグネトロンの出力パーセンテージを調整するステップを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記メモリから読み込んだ前記動作データから前記マグネトロンの寿命の限界を予測するステップと、
前記予測される寿命の限界に近いことに対応して、マグネトロンを交換すべき旨の提案を行うステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−152203(P2009−152203A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324501(P2008−324501)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(399018677)ノードソン コーポレイション (15)
【氏名又は名称原語表記】Nordson Corporation
【住所又は居所原語表記】28601 Clemens Road Westlake Ohio 44145−1119 USA
【Fターム(参考)】